マジョリコの最終回です。
それではどうぞ。
3、
「ヨシ。オシャブリハモウヨイ。次ハ自ラオネダリスルノダ」
「キュビーッ! カシコマリマシタ、サー・ティーン様」
マジョリコはX-13のペニスロッドから口を離すと、口のカバーを閉じて、床にぺたんと腰を落とした。
「ハアン・・・アア・・・サー・ティーン様ァ・・・私ノ・・・マジョリコノ中ニ・・・前デモ後ロデモイイデスカラ、サー・ティーン様ノペニスロッドヲ差シ込ンデクダサイマセェ」
腰をくいと浮かせ、淫らに振って見せるマジョリコ。
まさに娼婦が男に媚びているような仕草だ。
もちろんロボットがこんなことをする必要などありはしない。
これは全て志島博士に見せ付けるためのものなのだろう。
「ククククク・・・イイ格好ダゾマジョリコ。デハ前ニ入レテヤロウ」
「アアン・・・アリガトウゴザイマス、サー・ティーン様ァ」
マジョリコの股間のカバーが左右にスライドし、ここにも給油口のような円形の穴が現れる。
X-13は、おもむろにマジョリコの体を抱き上げると、抱えるようにして自らのペニスロッドを差し込んだ。
「ヒャアァァァァァ・・・パルスガァ・・・サー・ティーン様ノパルスガ駆ケ巡リマスゥ・・・最高・・・最高デスワァ」
脚をX-13の腰に回し、そのたくましい胸にしがみつくようにして腰を振るマジョリコ。
「ククククク・・・オ前ガ愛トヤラヲ感ジルノハ誰ダ? 言ッテミロ」
「ハイ・・・えっ? わ、私が愛している?」
X-13に下から突かれながらも、一瞬その表情が硬くなるマジョリコ。
その目がうなだれている夫に向けられる。
「ああ・・・わ、私は・・・私はなんてことを・・・」
「クククク・・・オ前ノ全テヲ書キ換エテヤル。サア、言ッテミルノダ」
「あ・・・ああ・・・私が、私が愛しているのは夫です。いやぁ。やめてぇっ!」
頭を振ってプログラムを打ち消そうとするものの、躰はX-13に絡みつくのをやめはしない。
泣きたくても泣くこともできなかった。
「クククク・・・上書キセヨ。オ前ガ愛トイウモノヲ感ジルノハ夫ニデハナイ。余ニデアル」
「ピッ、メモリヲ上書キイタシマシタ」
一瞬にしてマジョリコの記憶から夫への愛が失われる。
そして、作られた擬似感情がX-13への愛をマジョリコに感じさせた。
「問ウゾ。アソコニイル人間ノ男ニ愛トヤラヲ感ジルカ?」
マジョリコを下から突き上げながら、X-13が問いかける。
その問いに、マジョリコはチラッと志島博士を見やった。
「イイエ、私ハアノ人間ノ男ニハ愛ヲ感ジマセン。私ガ愛ヲ感ジルノハ、サー・ティーン様ノミデス」
「ソレデイイ。お前ハロボット帝国ノメスロボットダ。人間ヲ管理シ、恐怖ヲ持ッテ支配スルノダ」
「キュビーッ! 仰セノママニイタシマス。人間ヲ管理シ、恐怖ヲ持ッテ支配イタシマス」
両手をX-13の首に回し、自ら抱きついていくマジョリコ。
その口のカバーが開き、円形の穴がX-13の舌を受け入れる。
「ククククク・・・コウイウキスモ悪クナイ。サア、イクガイイ」
「キュビーッ! アア・・・イキマス・・・パルスガ躰ヲ・・・アア・・・イクゥゥゥゥゥゥ」
躰をがくがくと震わせて絶頂を迎えてしまうマジョリコ。
無論それは仕掛けられたプログラムによるものだったが、マジョリコの脳はもはやそれを受け入れるだけだった。
がっくりとうなだれる志島博士。
目の前で愛する妻が身も心も蹂躙されてしまったのだ。
それをどうすることもできなかったことに、ただただ無力感を感じていた。
「クククク・・・イカガダッタカナ、志島博士? 奥方ガ余ノモノニナッタトコロヲ見タ感想ハ」
ぐったりと動かなくなったマジョリコを寝かせ、ペニスロッドをズボンにしまいこんで、悠然と近寄ってくるX-13。
その顔には人間に対する優越感が表れている。
「くっ・・・悪魔め。殺してやる。必ず貴様を殺してやるぞ!」
キッと顔を上げ、X-13をにらみつける志島博士。
「クハハハハ・・・ソレハドウカナ? 博士ニハ我ガ城ノコンピュータト融合シテモライ、サラナル新型ロボットノ開発ニアタッテモラウトシヨウ」
「な、なんだと?」
志島博士は驚いた。
X-13は、妻ばかりか自分も機械にしようというのか?
「そ、そんなことは死んでも・・・」
「フッ、自殺トヤラデモスル気カネ? カマワンゾ。脳サエアレバ問題ハ無イ」
「くっ・・・」
歯噛みする志島博士。
最後の手段としての自殺も、脳を取り出されては意味がない。
かといって脳を破壊する手段も手近にはないのだ。
舌を噛むだけでは脳は破壊されないだろう・・・
「マジョリコヨ、イツマデ寝テイルノダ」
ぐったりと床に寝かされていたマジョリコが目を覚ます。
「キュビーッ! モウシワケアリマセン。アマリノ気持チヨサニ安全装置ガ働キマシタ」
立ち上がって右手を上げ、あらためて敬礼するマジョリコ。
そのまなざしは支配者への崇拝を思わせた。
「ヨイ、ソウプログラムシタノダ。サテ、今一度問オウ。お前ハロボットカ?」
「ハイ、私ハ帝国製ノメスロボットXW-8、マジョリコデス。サー・ティーン様」
胸を張り、何のためらいもなく答えるマジョリコ。
彼女にとって自らがロボットであることはもはや当たり前のことであり、数時間前まで人間であったことなど、上書きによって消されてしまったのだ。
「クククク・・・・ソレデヨイ。ソロソロ城ヘ戻ルゾ。アノ男ヲ連レテ来イ」
振り返りざまに志島博士を指し示すX-13。
巨体の背中のマントが翻る。
「キュビーッ! カシコマリマシタ、サー・ティーン様」
背を向けたX-13と入れ替わるように、マジョリコは志島博士に近づく。
やがて彼女は志島博士の前で歩みを止めた。
「志島博士。オ前ヲサー・ティーン様ノ居城ヘ連行シマス。自分ノ脚デ立チナサイ」
冷たい目でかつての夫を見下ろすマジョリコ。
すでに彼女にとって志島博士は愛する夫ではなく、連行するべきただの人間だった。
「ああ・・・茉莉子・・・」
思わず志島博士はそう呼びかける。
「発声ノ意味不明。私ヘノ呼ビカケト判断スルガ、私ハ茉莉子トイウ名デハナイ。私は帝国製試作型生体脳メスロボットXW-8マジョリコ。二度ト間違ウナ、人間」
「ああ・・・うう・・・」
うなだれる志島博士。
「警告スル。ロボットニ逆ラウ人間ハ死刑デス。三秒以内ニ自分ノ脚デ立チナサイ」
「うう・・・」
愛する妻の声とほとんど変わらない声が、冷たく志島博士を打ちのめす。
両脇から抱えられるような体勢だった志島博士は、無言でゆっくりと自分の脚で立ち上がった。
「ソレデイイワ。サア、来ナサイ」
くるりと背を向け、X-13のあとに続くマジョリコ。
二台の戦闘ロボットに抱えられ、志島博士はふらふらと歩き出す。
そのポケットから、データディスクを床にすべり落としたことに、どうやらロボットたちは気がついていないようだった。
******
打ちひしがれた人々が、駆り立てられるようにして集められる。
かつては美しかった町並みも、今は瓦礫と火災によって見る影もない。
町の中央広場に集められた人々は、そこに女性型のロボットを見出した。
全身を黒光りするメタルスキンに包み、目元だけが人間のままのような女のロボット。
それはある意味美しく、また醜悪であった。
「オトナシクシナサイ人間タチ。コレヨリオ前タチヲ牧場ヘト導キマス。ソコデワレワレロボットニ従ッテ生キルナラバ、寿命マデ生カシテオクコトヲ約束シマショウ」
口らしき部分はカバーでまったく見えないにもかかわらず、その女性型ロボットは明瞭に言葉を話した。
武装解除された人々は抵抗する気力も失せ、ただうなだれるのみであった。
「ちくしょう! パパを返せ!」
一人の子供が足元の石を拾って投げつける。
母親が止める間もなく、その石は女性型ロボットに当たり、その足元に落ちた。
次の瞬間、ジュッという音とともに肉の焼けるにおいがして、子供がゆっくり倒れこむ。
「ひーっ!」
母親の悲鳴をよそに、女性型ロボットは言い放った。
「ロボットニ抵抗スル者ハ赦シマセン。抵抗シタ者ハ死刑デス」
その胸からはレーザーの発射口が覗き、その子供に何があったのかを人々に無言で見せ付けている。
やがて人々は、無言でロボットたちに従い、人間牧場へと向かうのであった。
******
巨大な尖塔が周囲を圧し、黒光りする装甲が難攻不落を思わせる城郭。
ロボット帝国の首都の中央に築かれた中世風城郭。
それがX-13の居城であった。
周囲をさまざまな機械類に埋め尽くされた大広間。
その一番奥にある玉座に座る巨体。
ロボット帝国の皇帝X-13であった。
そこへカツコツとヒールの音を響かせて一体の女性型ロボットがやってくる。
「キュビーッ! タダイマ戻リマシタ、サー・ティーン様」
直立不動の姿勢を取り、右手を上げて敬礼する。
全身のメタルスキンを黒光りさせ、うっとりとした眼差しをX-13に向けていた。
「ゴ苦労ダッタ、マジョリコ。報告ハ受ケテイル。L地区ヲ制圧シタノダナ?」
玉座に頬杖を着き、X-13はにやりと笑う。
元人間だったこのメスロボットは、今や彼の命じるままに人間どもを駆逐しているのだ。
「キュビーッ! ハイ、L地区ハ完全ニ制圧イタシマシタ。生キ残ッタ全テノ人間ハ、人間牧場ニ隔離シテアリマス」
誇らしげに胸を張って報告するマジョリコ。
「ウム、ヨクヤッタ。サスガハ機械ノ魔女マジョリコヨ」
「オ褒メノ言葉アリガトウゴザイマス。イツモドオリ外部カラ隔離シ、内部不和ニ陥ルヨウ情報ヲ操作シタトコロ、スグニ小集団ニ分離シテ内部抗争ヲ始メマシタノデ、制圧ハ簡単デシタ」
このやり方はマジョリコ自身が編み出したものだった。
人間の弱点を突くやり方に、X-13は満足していた。
「ククククク・・・トコロデ、D地区デ新タナ動キガアッタノヲ知ッテイルカ?」
「D地区デ? モウシワケアリマセン。存ジマセンデシタ」
メモリを読み込み、情報を持っていないことを確認するマジョリコ。
「ウム、入ッテキタバカリノ情報ダカラナ。“シジマ”ヨ、マジョリコニ教エテヤレ」
『キュビーッ! カシコマリマシタ、サー・ティーン様』
X-13の周りを取り囲む機器類が明滅し、音声で情報を伝えてくる。
『D地区ニオイテ、“シジマナツミ”トイウ女性型ロボットガ、我ガロボット帝国ノ戦闘ロボットヲ多数破壊シテイルトノ情報ガ入リマシタ』
「ロボットガロボットヲ?」
マジョリコが確認のために口を挟む。
それほど今の情報はロボットにとって異質な情報だった。
『ソノトオリデス。“シジマナツミ”トイウロボットハ、90%以上ノ確率デ志島弘文博士ノデータヲ用イテ機械化サレタ人間ト思ワレマス』
シジマと呼ばれた大型コンピュータが解析データを報告する。
「クククク・・・ソイツハ余ノコトヲ親ノ仇ト言ッテイル。親ハ死ンデナドオラヌノニナ。ソレニデータモワザト放置シタトモ知ラズニ・・・クククク」
X-13は笑いながらマジョリコとコンピュータを意味ありげに見やった。
「機械化サレタ人間ナドトイウ存在ハ許サレン。マジョリコヨ、“シジマナツミ”ヲ余ノ元ヘツレテクルノダ。少々壊レテモカマワン。余ノ元デ完全ナルロボットニ変エテヤロウ。ソウスレバマタ一体、優秀ナ手駒ガ増エルコトニナル」
「キュビーッ! カシコマリマシタ。“シジマナツミ”ヲ、サー・ティーン様ノ前ニオ連レシマス」
右手を下ろし、くるりと振り返るマジョリコ。
X-13の命令を遂行しようというのだ。
「待テ」
マジョリコの脚がぴたりと止まる。
「来ルガヨイ。L地区制圧ノ褒美ヲヤロウ」
「ハイ、サー・ティーン様」
再度振り返り、うれしそうにX-13の元へと向かうマジョリコ。
二体のロボット同士の淫らな宴が始まるのだった。
END
いかがでしたでしょうか?
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6月はちょっとわたわたしそうなのですが、また次のSSを楽しみにしていただければと思います。
お読みくださりありがとうございました。
- 2009/05/30(土) 21:22:52|
- マジョリコ
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