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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ローカストの最期(2)

160万ヒット記念SS「ローカストの最期」の二回目です。
つかの間の日常というところでしょうか。

それではどうぞ。


(2)
「ザームの女戦闘員ども、その人たちに手を出すんじゃないわよ!」
「えっ?」
私は驚いた。
「い、池住さんなの?」
私は彼女が倒れていたところに眼をやった。
すると、倒れていた彼女がゆっくりと起き上がる。
着ていた衣服はドロドロに溶け、池住さん自体も躰の表面が溶け出している。
「い、池住さん・・・」
何で?
何でそんな姿なのに立てるの?

「キキー・・・ワタシタチノサンガキカナイトイウノ?」
黒い女たちは三人とも私や志織さんではなく池住さんに向き直る。
「効いたわよ。あなたたちの酸を食らうのは初めてだったからね。おかげで表面がぼろぼろじゃない。擬態するのって結構疲れるのよ」
池住さんはそういうと、躰を一瞬震わせた。

「えっ?」
私は一瞬何が起こったのかわからなかった。
池住さんの姿が一瞬にして変わってしまったのだ。
さっきまでの溶けかかった躰ではなく、なんていうかまるで大きな昆虫のような姿。
頭には髪の毛があったところが緑色のヘルメットのようなものに覆われ、額には二本の触角が伸びて、丸い大きな複眼のような目が二つ付いている。
躰も緑色の硬そうな外皮に覆われ、胸は同心円状の節でできた昆虫のお尻のようなものが二つ双丘をなしている。
腕と脚にはトゲトゲの突起が一列に並び、硬そうな手袋とブーツを履いたようになっていた。
唯一人間らしいのが口元だけで、柔らかそうな唇が覗いていた。

「い、池住さん。その姿はいったい・・・」
「話は後よ。下がってなさい」
「は、はい」
私は手にしたポリ容器を抱きかかえるようにしてあとずさる。
「雪美ちゃん、こっちよ」
志織さんもゆっくりとあとずさり、私たちは黒い女からできるだけ離れるようにする。
「キキー・・・ざーむノウラギリモノ、イナゴオンナ」
「残念ね。私はザームの一員になった覚えはないの。それどころか、こんな躰にされた恨みがあるだけよ!!」
奇妙な姿になった池住さんはそういうと、三人の黒い女たちに跳びかかっていった。

戦いは一瞬にしか感じなかった。
三人の黒い女たちは、いずれも池住さんのパンチやキックに吹き飛ばされ、あっという間に動かなくなってしまったのだ。
そして驚いたことに、倒された黒い女たちはみるみる液状になって溶けてしまうと、すぐに跡形もなく消え去ってしまった。

「池住さん・・・」
私は奇妙な姿をしている彼女に声をかける。
「・・・・・・二人とも大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です」
自分の躰を確かめて私はうなずく。
「ええ、私も大丈夫よ。でも・・・いったい何がどうなっているのか・・・」
私も志織さんも今ここで起こったことが信じられない。
いったい、彼女は何者なんだろう。
「ふう・・・巻き込んじゃってごめんなさい。今のはザームの女戦闘員。簡易型の改造人間よ」
「女戦闘員? 改造人間?」
「とりあえず上に羽織るものをくれないかしら、説明はその後でするわ」
池住さんの口元に苦笑とも取れる笑みが浮かぶ。
志織さんが上着を貸すと、池住さんはその上着を羽織り、みるみるうちに以前の姿に戻っていった。
「とりあえず、移動しましょう。追っ手を潰したから、しばらくは大丈夫だと思う」
池住さんの言葉に私たちはうなずくと、とりあえずはここから近い愛子先生のところへ向かうことにした。

                      ******

池住さんを探しにでていた愛子先生と合流し、矢木沢医院に戻ったときには、すでに夜九時を過ぎていた。
私はすぐに両親に電話して、もうちょっと遅くなる旨を告げる。
遅くなることに心配する両親に、志織さんからも説明してもらって何とか納得してもらうと、愛子先生と志織さん、それに私とで池住さんから事情を聞いた。

池住さんから聞かされた話しはとても信じられないようなものだった。
あのような黒い女の人たちに遭っていなければ、たぶん頭がおかしい人なんだと思ったに違いない。

池住さんは、ザームという組織によって躰を改造されてしまった改造人間ならしい。
ザームとは、とても信じられないけど世界征服をたくらむ秘密結社とのこと。
あの緑色の硬そうな姿こそ池住さんの真の姿であり、今こうして人間の姿をとっているのは人間社会に溶け込むための擬態能力を使っているという。
池住さんは私と同じ高校二年生で、部活で体操をやっていたために身体能力を見込まれて、ザームに誘拐されたらしい。
ザームのアジトに連れて行かれた彼女は、そこでイナゴの能力を移植され改造人間にされてしまったのだ。
肉体の改造が終わると、今度は精神の改造が行なわれるという。
それを行なわれてしまうと、ザームへの忠誠心を植えつけられてしまい、ザームこそが全てとなってしまうというのだ。
幸い、彼女は精神改造の前に何らかの不都合があり、アジトを抜け出すことができたらしい。
そのため、ザームは彼女を出来損ないとして処分しようとしているとのこと。
池住さんはザームの追っ手を逃れるために、あの女戦闘員と戦ったものの、変化した肉体のコントロールになれていなかったせいもあって急速に消耗してしまい、そこに私が通りかかったのだそうだ。

池住さんは、これ以上の迷惑は掛けられないと言って出て行こうとしたんだけど、愛子先生も志織さんもそれを許しはしなかった。
だって、これからどうするのか聞いたら、自分を改造したザームは赦せないしこれからも狙ってくるだろうから戦うって言うんだもん。
そんな危険なことに黙って出て行かせるなんてできないって愛子先生が反対し、志織さんも同意する。
おそらく彼女の実家は見張られているだろうし、しばらくこの街で身を隠したほうがいいというのだ。
愛子先生は何とか彼女の躰を元に戻せないか研究してみるというし、志織さんは近くのアパートを手配するのでそこで暮らすようにと勧めた。
池住さんは驚いた顔をして、何度もここにいてもいいのかと聞いてきたけど、そんなのいいに決まっているよね。
ザームのような恐ろしい組織があるなら、きっと何とかしなきゃいけないんだ。
どうしたらいいのかはよくわからないけど、みんなで力を合わせればきっと何とかできるよね。

                       ******

「おはようございまーす」
もう午後だけど、私はいつもそう言って喫茶店「アモーレ」の扉を開ける。
職場での挨拶はいつでもおはようございますなのだ。
「遅いよ雪美ちゃん。さては居残りさせられたのかな?」
ニヤニヤと笑いながら意地悪そうに私を見る聡里ちゃん。
くりくりした目がなんだか輝いているのは気のせいかな?
「ち、違います。今日は掃除当番が長引いたんです」
私はお客さんがいないのを見て取ると、着替えるために奥へ行く。
さすがに制服のままで接客するわけには行かないしね。

「志織さん、それじゃ私は・・・」
「はい、お疲れ様聡里ちゃん」
私が着替えてエプロンをつけてお店に出ると、入れ替わりに聡里ちゃんがエプロンをはずして着替えに行く。
しばらくすると、革つなぎにヘルメットを手にした聡里ちゃんが出てきて、そのままカウンターに座った。

「志織さん、コーヒーお願い」
「はい。今日はどうするの?」
志織さんがコーヒーの準備をする。
私はお客さんに備えてテーブルなどを拭いたりする。
「西区のほうを回ってみるよ。そろそろ奴らもまた動き出しそうだしね」
「そうね。前回の事件からそろそろ三週間。ザームが動き始めてもおかしく無いわね」
いつものブレンドコーヒーを聡里ちゃんの前に置き、志織さんはそう言った。

あれから愛子先生と志織さん、そして私の三人は、ザームという組織の恐ろしさを改めて知ることになった。
最初はこのことを警察やお役所に訴えてみたのだけれど、どこもそんなザームなんて組織のことは知っておらず、かえってこちらが変な人間だと思われる始末だった。
愛子先生も志織さんも、公的機関に頼るのは早々にあきらめ、自分たちのできる範囲で聡里ちゃんに協力しようということにし、聡里ちゃんがザームと戦うのを陰ながら手伝っている。

私はというと・・・
愛子さんからも志織さんからも、これが一番大事なことだからしっかり心して励んで欲しいといわれた重要任務を託された。
すなわち、聡里ちゃんの友人としてごく普通に付き合うこと。
これこそが私が任された大事な任務だった。

「それじゃ後は雪美ちゃんに任せるね。行ってきます」
コーヒーを飲み終えて、ヘルメットを片手に喫茶店を出て行く聡里ちゃん。
スタイルがいいから、革のつなぎがとてもよく似合っている。
程なくバイクのエンジン音がして、聡里ちゃんのバイクが走り去って行くのがわかった。

聡里ちゃんは改造人間だ。
邪悪な組織ザームにつかまって、無理やり改造されちゃったのだ。
でも、精神までは改造されなかった。
だから彼女はザームを憎んでいる。
自分を改造し、世界を征服しようとしているザームを憎んでいる。

ザームは女王を頂点とする女系社会らしい。
どういう基準かわからないけど、素質があると認めた女性を誘拐して、改造人間に改造してしまう。
改造人間には男性は選ばれないらしく、ザームを構成するのは女性の改造人間ばかりらしい。
何らかの生き物の力を移植した改造人間を作り出し、あの黒い女戦闘員を配下にして世界征服の計画を実行する。
聡里ちゃんもイナゴの能力を移植され、そのまま精神改造されてしまえば、今頃はザームのために活動していたのかもしれない・・・
人間を改造してその心までゆがめてしまう・・・
私はそんなザームが恐ろしいと同時に、絶対に赦してはいけないと思った。

私たちと聡里ちゃんが出会ってから数ヶ月。
愛子先生は患者の診療を行ないながら、つてを頼って大学病院に聡里ちゃんの細胞を分析してもらったり、独自に調べたりして、何とか聡里ちゃんを元の躰に戻せないか研究している。

志織さんは喫茶店をやりながら、新聞やテレビのニュースなどからザームの活動らしきものを抜き出して、聡里ちゃんに知らせている。
最初は的外れのものばかりだったけど、最近は馴れてきたこともあって、ザームの仕業に違いないものを見事に当てたりしているのだ。

ザームのことは誰も知らないけど、奴らが確実にこの日本に手を伸ばしてきているのは間違いない。
何の変哲もない殺人事件なんかでも、実は裏でザームが動いているなんてことも多くなっている。
油断はできないのだ。

「西区に何かあったんですか?」
私はテーブルの砂糖を補充したりしながら、志織さんに聞いてみた。
「ううん、今のところは特に。通常のパトロールってところね」
志織さんもいつものにこやかな笑顔で答えてくれる。

いつザームに狙われるかわからないということで、聡里ちゃんは学校へは行ってない。
なので、午前中から午後にかけては聡里ちゃんは「アモーレ」でアルバイトをしている。
午後になって私が顔を出すと、入れ替わりで街の調査やパトロールに出かけるのだ。
聡里ちゃんのおかげで、お昼の時間も手が足りるので助かると志織さんは喜んでいた。

「ふう・・・」
「どうしたんですか? 志織さん」
ため息をついた志織さんが、私は思わず気になった。
「聡里ちゃん・・・今日も無事に終わってくれるといいけど・・・」
私はドキッとした。
そう、聡里ちゃんは戦っているのだ。
ザームの魔の手からみんなを守るために。
そしてこれ以上の不幸な改造人間を増やさないように。
残念ながら、今はまだその願いは届いてないけれど、いつかきっとザームを滅ぼして聡里ちゃんが人間に戻れる日が来ますように・・・

「大丈夫ですよ。なんたって聡里ちゃんは正義のヒロイン“ローカスト”なんですから。ザームなんかに負けませんよ」
ローカストっていうのは、私たちの間で改造後の姿を現した聡里ちゃんのこと。
いくらなんでも“イナゴ女”なんていう呼び方はあんまりだという理由から。
ザームを倒すために戦っている聡里ちゃんは、正義の変身ヒロインローカストなのだ。

「そうよね。聡里ちゃんは大丈夫よね」
笑顔を作る志織さん。
でも、やっぱり多少の心配はぬぐえない。
このところザームの改造人間も手ごわくなっている。
元となる素体にもさまざまな女の人が使われているようだ。
先日のタガメ女のときは、スイミングクラブの一グループがまるまる改造され、女性コーチはタガメ女に、女子生徒たちは女戦闘員へと改造されてしまったらしい。
ローカストに全員倒されてはしまったものの、集団失踪事件として新聞をにぎわしたっけ・・・
他にもカマキリ女やハチ女、ゴキブリ女などザームによって改造されてしまった人が大勢いる。
日本全国で行方が知れなくなっている人たちの中には、ザームに改造されちゃった人も多いんだろうな。

そういった改造されてしまった人々を元に戻すために、愛子先生は研究しているんだよね。
愛子先生の研究がうまく行けば、ローカストだってただザームの改造人間を倒すだけじゃなく、元に戻すことができるかもしれない。
愛子先生の研究がうまく行きますように・・・

「さて、そろそろまたお客さんが来はじめる時間よ。気合入れてがんばりましょう」
「はい、志織さん」
私はそう返事して、仕事を再開するのだった。

                       ******

「ありがとうございましたー」
カランカランと入り口の鐘が鳴り、最後のお客さんが帰っていく。
「ふう・・・終わったぁ」
志織さんがうんと伸びをする。
「夕方から結構込みましたね。忙しかったぁ」
私もつい首を回して力を抜く。
「お疲れ様、雪美ちゃん」
「志織さんこそお疲れ様です」
なんとなく顔を見合わせてしまう私たち。
思わず笑顔が出てしまう。

と、電話のベルが鳴る。
「はいはーい」
すぐに受話器を取る志織さん。
「はい、喫茶アモーレです・・・あら、愛子?」
私は後片付けをしながら、聞くともなしに志織さんの声を聞く。
「えっ? 今から? ううん・・・それはかまわないけど・・・えっ? 思い違い? ザームのこと?」
えっ?
ザームのこと?
私の手が思わず止まった。
「わかったわ。すぐにいく。ええ、雪美ちゃんも一緒にね」
そう言って受話器を置く志織さん。
「雪美ちゃん、帰り家まで送るから一緒に来てくれる? 愛子がなんだか私たちに話があるって」
「あ、そうなんですか?」
「ええ。何でも私たちはザームに関して思い違いをしているとか・・・詳しくは矢木沢医院で話したいって」
志織さんはエプロンのまま車のキーを取りに行く。
「わかりました。聡里ちゃんには連絡しなくていいんですか?」
「うん、なんだか彼女にはまだ聞かせられないとか。とりあえず私たちだけにってことらしいわ」
車のキーを取ってきた後、玄関先の看板を中に入れてCLOSEの札を下げる志織さん。
私はすぐに着替えを済ませ、志織さんの車で矢木沢医院へ向かうことにした。
  1. 2009/05/05(火) 20:51:55|
  2. ローカストの最期
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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