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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ローカストの最期(1)

お待たせいたしました。
160万ヒット記念SS「ローカストの最期」を、今日から四日間連続で投下いたします。

今回の作品は、いわゆる改造モノです。
異形化の範疇になるものだと思います。

私、舞方は、昭和の初代仮面ライダーで育ちました。
仮面ライダーに出てくる改造人間たちは善も悪もあこがれでした。
今回のSSは、その昭和ライダーへのオマージュとなります。
そして、私がお世話になった方々、Beef様やmaledict様の作品へのオマージュでもあります。
作中、どこかで見たようなシーンや、どこかで聞いたようなセリフが出てくると思いますが、あえて引用したものも多くあります。

そんなオマージュに満ちた作品ですが、楽しんでいただければ幸いです。
それではどうぞ。


(1)
「う・・・うう・・・」

えっ?
私は驚いた。
誰かのうめき声?
いったいなんなの?
私は思わず足を止める。
カバンとケーキの入った箱を持ちながら、私は周囲を見渡した。

街灯がぽつんとあるだけの寂しい通り。
普段なら足早に通り過ぎるところだ。
まわりは新興住宅街の近くにある雑木林。
この時間だと暗くて気味が悪くさえ感じる。

「うう・・・」
「誰? 誰か居るの?」
私は恐る恐る呼びかけてみる。
変質者だったらどうしようとか、林の中で待ち伏せされたとかは思わなかった。
だって、あまりにも苦しそうなうめき声。
きっと怪我かなんかで苦しんでいるに違いない。
「誰? どこにいるの?」
私はもう一度声をかけた。

                      ******

「で、痛々しさに見てられなくてここへつれて来たってわけね?」
診察室のとなりにある待合室で、私は愛子(あいこ)先生にそう言われ肩をすくめる。
愛子先生は白衣を着てきりっとメガネをかけた美人女医さんだ。
私がアルバイトしている喫茶店の店主である志織(しおり)さんの親友と言ってもいい人で、時折お店に来てくれる常連さんでもある。
私も時たま風邪を引いたときなどにはお世話になっていて、近所でも評判のいいお医者さまなのだ。
「だって・・・怪我しているようだったし、とりあえず愛子先生のところへ行かなきゃって思ったんです」
「うちは内科なんだけどねぇ」
苦笑する愛子先生。
そういえばそうだ。
私ったら動転したのかそんなことすら思い浮かばなかったのだ。
とにかく早くお医者さんにって思ったら、愛子先生のところへ来ていたのだ。

「そ、それで怪我のほうは?」
「怪我はたいしたことないみたい。というか、結構直りかけなんだよね。それよりも極端に疲労しているみたいだわ」
愛子先生が私の向かい側の椅子に座る。
「疲労ですか?」
「そうなのよ。なんだか極端に体力を消耗しちゃっているみたいなの。いったいどこの娘であんな雑木林で何をしていたのかしらね」
腕組みをする愛子先生。
「とりあえずは休ませたから雪美(ゆきみ)ちゃんは帰ってもいいわよ。あとは引き受けるわ」
「はい、そうします。あ、これ、彼女が目を覚ましたら食べさせてあげてください」
私は持っていたケーキの箱を差し出した。
喫茶店のもらいものだが、甘いものは疲労回復にもいいだろう。
「わかったわ。彼女が目を覚ましたら渡すわね」
「あの・・・」
私は愛子先生にケーキを渡し、気になることを聞いてみた。
「警察に届けるんですか?」
「それは彼女が目を覚まして事情を聞いてからね。もしかしたら乱暴されたのかもしれないし」
それは私も思ったこと。
裸であちこちにうっすらと傷があって雑木林で倒れていた少女なんて、誰だって乱暴されたんじゃないかって真っ先に考える。
それもあって愛子先生のところにつれてきたってのもあるんだけどね。
「でも、どうやらその様子は無いわね。あったとしても未遂だったと思うわ」
「未遂・・・ですか」
私はホッとした。
でも、きっと怖い目にあったに違いない。
私とたぶん同年代ぐらいだから、他人事とは思えない。
私は彼女を愛子先生に預け、矢木沢(やぎさわ)医院を後にした。

                      ******

翌朝早く矢木沢医院に駆け込んだ私は、病室のベッドの上で朝食もそこそこにショートケーキをもくもくと食べている彼女に会った。
「あ、彼女があなたをうちに運んできてくれたのよ。古木葉(ふるきば)雪美ちゃん」
愛子先生が私を紹介してくれる。
すると彼女はなんだか不安そうに目をそらす。
「彼女は池住聡里(いけずみ さとり)ちゃんと言うんですって。それだけは教えてくれたわ。ほかは何にもしゃべってくれないの」
肩をすくめる愛子先生。
医者としてもいろいろ訊きたいことはあるんだろうけど、お手上げって言う感じ。
「古木葉です。よろしく」
私はぺこりと頭を下げる。
すると彼女もおずおずとだけど頭を下げてくれた。
茶色のショートの髪にくりくりした目が可愛い感じの人。
でも、なんだか少し怖い感じもする。
まるで人を寄せ付けないかのような・・・
「そのケーキは彼女があなたにって置いていったものよ。お礼言っておいてね」
愛子先生はそう言って病室を出てしまう。
もしかしたら話しやすいように気を使ってくれたのかも・・・

「あの・・・そのケーキはバイト先からもらったものなので、お礼とか気にしないでくださいね」
私はもしかして言わなくてもいい事を言ったかも・・・
「私にはかまわないで。一休みして体力が回復したらここも出て行くから」
私、何か拒絶されている?
「あ、でも無理しないほうが・・・」
「私がここにいると迷惑をかけてしまう。それに・・・私はもう普通じゃない・・・」
なんだかすごく落ち込んでいるみたい。
あ、もしかして夕べ乱暴されかかったから?
私で力になれることはないかな・・・
「迷惑なんて、愛子先生はそんなこと思わないですよ。それに夕べのことはすごくショックだったと思うけど、未遂だったって言うし・・・」
気休めにもならないだろうけど私はそう言った。
もしかしたら彼女は自分が穢されちゃったと思っているかもしれないし。
「あなたに何がわかるの!!」
いきなり声を荒げられて私はびっくりした。
「ご、ごめんなさい」
そうだよね。
未遂でも何でもショックだったよね。
私ったらそんなことも・・・
「ごめんなさい。一人にしてくれるかしら」
「は、はい。私学校に行ってきます」
うつむいている聡里さんを置いて、愛子先生に学校に行くことを告げた。

                      ******

「はい、古木葉です」
バイトの終了直後、私の携帯が鳴る。
『あ、雪美ちゃん? 大変なの。池住さんが病室を抜け出しちゃったの』
「ええっ?」
携帯の向こうから聞こえてきた愛子先生の言葉に私は驚いた。
確かに朝はひと休みしたら出て行くって言っていたし、躰の傷もたいしたことないようだったけど・・・
抜け出すなんてよくないよ。
まだ体力だって戻ってないだろうし。
『とりあえず私は手近を探してみるから、雪美ちゃんも探してみてくれるかしら』
「わかりました。バイトが終わったんですぐに行きます」
私は愛子先生にそう伝えると携帯を閉じた。

「何かあったの? 車だしましょうか?」
カウンターを拭いていた志織さんが心配そうに私を見る。
志織さんはこの喫茶店「アモーレ」のオーナー兼店長さん。
私のいわば雇用主さんなのだ。
「今朝お話した愛子先生のところにお連れした女の人がいなくなっちゃったんだそうです。それで愛子先生が私にも探してみて欲しいって」
「そうなの? それじゃ車のほうが広い範囲を探せるわね。待ってて」
エプロン姿のまま上着を羽織る志織さん。
後ろで束ねた髪が凛々しく見える。
「すみません。お願いします」
私はエプロンをはずし、着替えもそこそこに志織さんの車に乗る。
まずは昨日彼女に会った雑木林に行ってみよう。
もしかしたらいるかもしれない気がするの。
私は志織さんに雑木林に向かってもらうようにお願いした。

                     ******

暗闇を切り裂くヘッドライト。
黒々とした樹木が不気味この上ない。
そんな中、私は池住さんがいないかと目を凝らしていた。
「普通もし誰かに襲われていたりしたら、病院とかどこかに保護されていたいと思うわよね・・・」
志織さんも池住さんがなぜ抜け出したのかわからないみたい。
もしかしたら治療費を心配したりしたのかもしれないけど、愛子先生なら相談にだって乗ってくれるだろうし、せめて一言ぐらい言ってくれればいいのにと思う。

それは突然だった。
ダンッと音がして、人影が突然道路に転がってきたのだ。
「ひあっ」
思わず急ブレーキを踏む志織さん。
たぶん寸前で止まったとは思うんだけど、あまりのことに私も志織さんも車の外に飛び出した。

「大丈夫ですか・・・えっ?」
車の前に転がった人影に声をかけた志織さんが凍りつく。
私もヘッドライトに照らされたその人影を見て息を飲んだ。
「な、なんなの、これ・・・」
志織さんの声が震える。
私たちの目の前でゆっくり立ち上がるその人影は、ヘッドライトに照らされているにもかかわらず真っ黒な姿をしていたのだ。

「危ない!! 逃げて!!」
突然声がする。
私がその声が誰のものか確かめる前に、立ち上がった黒い人影が私たちの方を向いた。
それは不気味な姿。
女の人が真っ黒な躰にぴったりしたゴム状の服を身にまとったような姿。
腰はくびれ、お尻のところはややふくらみ、そして形のよい胸が二つの双丘を成している。
たぶんとてもスタイルのいい女性なんだろうけど、そのゴムスーツを着たような姿は異様だった。
しかも顔全体までゴム状のマスクで覆われていて、目も鼻も口もない。
ううん、鼻の盛り上がりや眼窩のくぼみなど顔らしくは見えるんだけど、全てがマスクで覆われているのだ。
どうやって外を見ているのかわからない。
そしてその黒い女性は、自分の乳房を持ち上げるように手を添えた。

「キャッ!」
いきなり志織さんが突き飛ばされる。
それとほぼ同時に黒い女の胸から液体が飛び出し、志織さんのいた場所を通って車に降りかかった。
「ヒッ!」
私は息を飲んだ。
液体のかかったところの車のボディがみるみる溶けていく。
な、何なのこれは?
志織さんは大丈夫なの?
私はあまりのことに口元を押さえながら志織さんの突き飛ばされたほうに眼をやった。

「あ・・・」
志織さんの前に一人の少女が立っている。
しかもそれは私たちが探していた相手。
「池住さん・・・」
私は思わず彼女の名を呼んでいた。
「何でこんなところに来たの! 早く逃げなさい!」
池住さんは志織さんをかばうようにして立ち、黒い女たちに身構えている。
気が付かなかったけど、黒い女たちは三人もいる。
いずれもスタイルがいい女性の姿をしているけど、目も鼻も口もない真っ黒なゴム状のマスクに覆われていて、誰が誰なのかさっぱりわからない。

「に、逃げろって・・・私たちはあなたを探しに・・・愛子先生のところを抜け出したって言うから・・・」
私はひざががくがく震えるのを感じながらも、何とかそう言った。
いったいこれは何なの?
ここで何が起こっているの?
池住さんとこの黒い女の人は何か関係があるの?
私にはさっぱりわからない。

「仕方ないでしょ。痕跡を残してしまったらしかったから、あのままあの病院にいるわけにはいかなかったのよ。そんなことより早く逃げなさい!」
池住さんは、背後の志織さんが立ち上がるのを待っている。
志織さんは黒い女の人に車を溶かされたのと突き飛ばされたのがショックなのか、ようやく立ち上がるところだった。
「志織さん、こっちへ」
半分溶かされた車の陰から私は志織さんを呼ぶ。
志織さんはそれに気が付いたのか、私のほうへと向かい始めた。

「あ、危ない!!」
私は思わず叫んでしまう。
志織さんが歩き始めたのに気を取られたのか、池住さんの目が志織さんを向いたとき、黒い女たちがいっせいに胸を持ち上げる。
液体が池住さん目がけて放たれ、それに気が付いた彼女はかわそうとしたものの、間に合わずに液体をかぶってしまったのだ。

「キャーッ!!」
「いやあっ!!」
私も志織さんも悲鳴を上げる。
車を溶かしてしまう液体をかぶったら、無事ですむはずがない。
ジュワッという音がして、鼻を突くような刺激臭が漂ってくる。
「池住さん・・・」
あまりのことに立ち尽くす私の横で、志織さんは車のトランクを開けていた。
「雪美ちゃん、これ!!」
志織さんはトランクからウィンドウォッシャーを取り出すと、そのポリ容器を手渡してくる。
「えっ?」
「早く中和するの!! 水がないからせめてそれで!!」
そういう志織さんももう一個のポリ容器を持っていた。
「は、はい」
私はポリ容器のふたを開け、倒れている池住さんに駆け寄ろうと走り出した。

愛子先生から渡されたのだろう赤いジャージを着ていた池住さん。
その赤いジャージは見る影もなくドロドロに溶けている。
池住さん自体がどうなっているのかは想像も付かない。
でも、このウィンドウォッシャーをかければ、少しでも中和されて助かるかもしれない。
私は必死で池住さんに向かっていこうとした。
でも、私の足は止まってしまった。

「あ・・・あああ・・・」
私の前に立ちはだかる三人の黒い女たち。
ポリ容器を抱えたまま私は恐怖に立ち尽くす。
志織さんも私の背後で同じように動けなくなっていた。
「あ、あなたたちはいったい・・・」
「キキー・・・ワタシタチノスガタヲミタモノハ、イカシテハオカナイワ」
「キキー・・・オマエタチモシヌノヨ」
黒い女たちの抑揚のない声が響く。
そして、彼女たちはゆっくりと二つの胸を持ち上げた。
  1. 2009/05/04(月) 22:14:15|
  2. ローカストの最期
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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