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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

エピローグ

「帝都奇譚」の最終回です。

それではどうぞ。

32、
いそいそと買い物籠を下げ、魚屋の店先から離れる美月。
店先にいる和服の中年女性たちとは明らかに一線を画する黒い西洋メイド服を身につけた美月は、通りを行く人たちの目を惹き付ける。
今ではもう慣れてしまったこの衣装だが、以前はかなり恥ずかしく感じたものだ。
だが、文明開化から50年も経っているというのに、いまだに和服でもないだろうと今では思う。
それに、スカートひらひらとはいえ、慣れると結構動きやすい。
なので、美月はこのメイド服が気に入っていた。

「早く戻らなくちゃ・・・」
藤で作られた買い物籠は、黒いメイド服とは取り合わせが妙といえば妙だったが、美月が持つとなんだか似合う。
「今日はお嬢様のお好きなお煮付け。きっと喜んでくれるだろうな。中山さんの味付けは絶品だし・・・」
調理人の腕前を思い、夕食の買い物を終え、屋敷に向かう美月だった。

「上坂さんですね?」
いきなり呼び止められる美月。
振り返ると、すらりとした長身の女性が立っている。
黒の躰に吸い付くようなワンピースに身を包み、長い黒髪を後ろで束ねてまとめている。
薄く笑みを浮かべた口元には紅を乗せ、目には黒い日よけのメガネをかけていた。
「あなたは?」
美月は少し警戒し、相手の素性を確認する。
「失礼。私は鷹司の摩耶子お嬢様にお仕えするもので、破妖月子と申します」
そう言って黒メガネを取る女性。
その目が一瞬赤く輝いたかと思うと、美月はなんだか気分が落ち着いて、彼女に従おうと思った。
「うふふ・・・摩耶子様がお待ちかねなの。一緒に来てくださるわね?」
笑みを浮かべて美月を手招きする月子。
美月は招かれるままに月子に付き従った。

カーテンで日差しを閉ざされた暗い部屋。
奥の椅子には一人の女性が腰掛けている。
美月はよくわからないままにこの部屋に連れてこられていた。
ここは鷹司家。
立派な内装は、鷹司家の華族としての家柄を示しているかのようだ。
「白妙家のメイドを連れてまいりました」
スッと一礼する月子。
椅子に座る女性に敬意を払っていることがうかがえる。

「ご苦労様」
静かで優しげな声。
椅子に座る女性が髪の毛をそっと手でかきあげる。
いまだ珍しい女学生用のセーラー服に身を包み、黒いタイツで足を覆っている。
「日差しの中を歩いてきて喉が渇いているのではなくて? いいわよ。その娘で喉を潤しなさい」
薄闇の中で笑みを浮かべるセーラー服の少女。
美月にはその少女が誰だかよくわかっていた。
彼女の主人たる桜お嬢様のご学友。
鷹司家の摩耶子お嬢様に他ならない。
だが、なぜ自分はこんなところにいるのだろう・・・
どうしてここに来てしまったのだろう・・・
美月にはその答えが出てこなかった。

「ありがとうございます。摩耶子様」
そう言って、美月の体を抱きしめる月子。
そっとキスをするように、月子の唇が美月の唇に重ねられる。
その姿に摩耶子は満足感を味わった。

あの日、意識を失った月子はもはや退魔師としての力を発揮することはできなかった。
摩耶子はおとりとなった小夜に月子を屋敷まで運ばせ、そこで月子のエキスを存分に吸い取った。
退魔師である月子のエキスは美味であり、摩耶子の力を増幅させるのには充分だった。
そして摩耶子は、月子に自分の血を飲ませ、“新たな世界に生きる者”へと変えてやったのだ。

「うふふふ・・・美味しいかしら? 月子さん」
「ああ・・・はい、美味しいです。摩耶子様」
ぐったりとなった美月から口を離し、うっとりとした表情で月子は答える。
もはや彼女に退魔師としての意識はない。
あるのは“新たな世界に生きる者”として、摩耶子に従い獲物のエキスをすすることのみ。
美月の美味しいエキスを吸い取り、月子はとても満足だった。

「その娘にはあなたの血をあげなさい。私から桜さんへのプレゼント。彼女に私からの招待状を差し上げなくてはね。うふふふ・・・」
桜のエキスを吸い、彼女もまた“新たな世界に生きる者”へと変えてやる。
小夜と久には学園のめぼしい少女たちを襲わせる。
程なくしてこの帝都は摩耶子の支配下になるだろう。
邪魔者は・・・

「ねえ、月子さん。あなたが情報交換をなさった憲兵隊の方。なんと言いましたかしら」
「入生田曹長ですか? 彼ならすでに私が・・・」
ぺろりと舌なめずりをする月子。
抱えていた美月を床に寝せ、自らの腕を切って血をたらす。
「そう・・・後は宮内省の退魔師連中かしらね」
口元にたらされた血を無意識のうちに舐める美月を見ながら、摩耶子は再び笑みを浮かべた。
「そちらもご心配なく。私のほうで始末いたします。すでにかつて一緒に修行した神薙零(かんなぎ れい)を呼び出して私の血を与えてやりましたので」
笑みを浮かべて傷口を舐める月子。
その傷がみるみるふさがり、切った痕さえわからなくなる。
「そう、そっちは任せるわ。うふふふ・・・さあ、お立ちなさい」
摩耶子は自ら席を立ち、美月のところへ歩み寄る。
目を開けて、ゆっくりと立ち上がる美月。
その目は赤く輝き、摩耶子を崇拝するかのように見つめてくる。

「さあ、お行きなさい。そして今晩にも桜さんをお連れするの。いいわね」
「はい・・・摩耶子様」
自らの主人が桜ではなくなったことを宣言するかのように美月はそう答える。
部屋を出て行く美月の後姿を見やり、今晩桜がここへ来ることを思うと心が浮き立つのを抑えられない摩耶子だった。

END


2006年の3月5日に第一回が旧ブログで掲載されて以来、約3年もの歳月をかけてしまった「帝都奇譚」ですが、ここで一応の区切りとさせていただきます。

内容についてはもういうまでもなくグダグダになってしまいました。
使えた設定使えなかった設定さまざまです。
選択肢を提示して、多かったリクエストに沿って書くという構想も上手に消化することができませんでした。
途中でこのまま未完で沈めてしまおうと思ったことも何度もありました。

ですが、やはり書き始めた以上は、何らかの形でけりをつけようと思い、こうして最後まで書き上げることができました。

最後までお付き合いくださりありがとうございました。
本当に皆様に感謝感謝でございます。
力及ばずいいできではなかったことは平にご容赦のほどを。
この経験を糧に力量のさらなる向上を目指します。
どうかこれからも応援のほどをよろしくお願いいたします。
長い間「帝都奇譚」にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

それでは次作でまたお会いいたしましょう。
  1. 2009/03/13(金) 21:16:32|
  2. 帝都奇譚
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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