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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

セーラー服の少女

「帝都奇譚」の31回目です。
それではどうぞ。


31、
来た!
震えていた脚がいきなり反応する。
訓練の賜物だ。
摩耶子の突き出す鋭い爪をぎりぎりのところでかわしきる。
「つっ」
頬に走る一筋の傷。
やはり躰が付いていかないのだ。
かわしたように見えてかわしきれていなかった。

月子の背後に降り立った摩耶子が、その様子を見て笑みを浮かべる。
「うふふ・・・もう限界なんじゃないですか? あの男と戦った後で私とこうして戦うなんて無茶ですよ。おとなしくしてください」
月子はすばやく振り返り摩耶子と向き合う。
頬の傷から血がにじんでいるが、彼女も笑みを浮かべていた。

再び飛び掛る摩耶子。
その突き出された腕に向かってリボンを放る。
リボンの先端が摩耶子の右腕に巻きつき、月子は摩耶子の勢いをそのままに弧を描くようにして地面に叩きつける。
「ぐうっ」
背中から叩きつけられた摩耶子が小さくうめき声を上げ、一瞬月子に複雑な思いが交差した。
その一瞬が摩耶子を立ち直らせ、彼女はすばやくリボンを解いて飛び退る。
破魔札を使うチャンスを逸したのだ。
月子はおのれの甘さを感じずにはいられない。

摩耶子の目が怒りに輝いている。
赤く染まった瞳は、人間のものではない。
直視しないようにしながらも、月子は今さらながらに背筋が凍る。
昨日まで普通の、ごく普通の少女だったのに・・・
今は完全なる魔物と化してしまっているのだ。
これこそが吸血鬼の恐るべきところ。
一つの街が滅びるのなどたやすいもの。
欧州では昔から恐れられてきた魔物なのだ。
月子はあらためてリボンを構えなおした。

ふと摩耶子の目が月子から外れる。
屋敷と外を隔てる塀に向けられたのだ。
月子はその意図をとっさに悟る。
摩耶子は屋敷の外に出るつもりだ。
それはさせるわけには行かない。

だが遅かった。
跳躍する摩耶子。
人間には不可能な距離を跳び、塀の上に着地する。
すぐさま月子も塀に向かって駆け出し、リボンを塀に投げつけて密着させ、それを引き寄せるようにして塀の上に飛び上がる。
塀の上に上がってきた月子ににやっと笑いかけると、摩耶子は塀を飛び降りる。
「くっ! 待ちなさい! あなたの相手は私でしょ!」
くわえていた破魔札を手に取り、摩耶子の気を引こうとする月子。
さっきまで逃げ出す気配など無かったのに、いきなり逃げ出すとはどういうつもりなのか?

月子の言葉もむなしく、摩耶子は角を曲がっていく。
「待ちなさい!」
月子も塀を飛び降りて後を追う。

「キャーッ!」
しまった・・・
月子は臍をかむ。
摩耶子の狙いはこれだったのか?
通行人を襲って血を奪い、力を増す。
月子との戦いのための力を得るつもりなのだろう。
「そう簡単には!」
月子は急いで角を曲がった。

そこでは一人の少女が今しも摩耶子に襲われるところだった。
「てぇーい!」
月子は破魔札の一枚を放り投げる。
牽制になればいいのだ。
狙い通り摩耶子は投げられた破魔札を避けるために少女から離れる。
そして民家の屋根にジャンプした。

「大丈夫?」
少女のもとに駆け寄る月子。
見ると摩耶子と同じ学校のセーラー服を着ている。
こんな時間にどうしてこんなところにいたのかわからないが、とにかく今はこの場から逃げてもらわなくては・・・
「は、はい、大丈夫です」
少女が返事をする。
見たところ無事なようだ。
あのちょっとした時間では血を吸ったりまでできなかったのだろう。

「すぐにここから逃げて。ここは危険よ」
そういいながらも月子は摩耶子が飛び上がった民家の屋根に目を移す。
摩耶子を逃がすわけには行かない。
ここで逃げられては・・・

「そうですね。危険ですよね」
いきなり右腕に走る痛み。
急速に奪われていく体温。
しまった・・・
月子は必死で少女を振りほどく。
だが、すでに月子は立っていることができなかった。

連戦による疲労が警戒心を奪ったのか、月子は少女に対する警戒を緩めていた。
これほどあからさまな罠だったのに、気が付くことができなかった。
同じセーラー服を着ているのだ。
すでに少女は摩耶子の影響下にあると考えてもよかったはずなのに・・・
急速にかすんでいく視界の中で月子は悔やんでも悔やみきれないうかつさを呪った。
  1. 2009/03/06(金) 21:09:40|
  2. 帝都奇譚
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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