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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

望まぬ対峙

五ヶ月ぶりの「帝都奇譚」です。
なかなか進まなくてすみません。
もう少しお付き合いくださいませ。


30、
「うふふ・・・そんなものを私に向けるなんて、ひどい人ですのね。私はただあなたの血が飲みたいだけなのに・・・」
摩耶子の赤い目に負けないほどの赤い唇が笑みを浮かべる。
「ごめんこうむりますわ。私の血の一滴すらも、あなたには差し上げませんことよ」
和バサミを胸のところで構え、歯を食いしばる月子。
最後の最後で仕事を果たせなかった後悔が胸を痛くする。
だが、目の前の少女はすでに魔に取り付かれてしまったのだ。
浄化することこそ彼女の役割だ。

「そうですか・・・私には血を下さらないんですのね・・・」
一瞬うつむき、悲しそうな表情を浮かべる摩耶子。
だが・・・
「ならば、力ずくであなたの血をいただくわ」
摩耶子は牙をむき出して飛び掛ってくる。

和バサミを突き出して摩耶子の爪を受け流す。
鋭く尖った爪はもはや人のものではない。
何とか一撃はしのいだものの、そう何度もは難しいだろう。
じりじりと後退する月子。
おかげで破魔札の入った上着から遠ざかってしまう。
間に摩耶子が入り込んでいるのだ。
上着の中の破魔札を摩耶子はわかっているのかもしれない。

ぺろりと舌なめずりをする摩耶子。
真っ赤な唇にピンク色の舌がゆっくりと蠢く。
躰のあちこちから血をにじませた月子はとても美しく美味しそう。
恐れることはないのに・・・
血を飲ませてくれるだけでいいのに・・・
摩耶子はそう思う。
それがかつての自分には想像もできない思いだということすら、今の摩耶子にはわからないことだった。

長期戦は不利。
そう思った月子は一気に勝負に出る。
摩耶子はまだ変化したて。
力を使いこなすまでには至ってない。
そう判断した月子は、和バサミを構えて飛び掛る。
無論これはフェイントであり、とっさにカバーするであろう摩耶子との体勢を入れ替えるためのもの。
何とかその隙に上着の中の破魔札を手に入れなくては・・・
月子の目は人間離れした跳躍で攻撃を避ける摩耶子から、椅子の背もたれにかかっている上着に注がれた。

ガシャンと窓の割れる音がする。
後で弁済する必要があるだろうが、今は致し方ない。
狭い室内で対峙するのはあまりにも不利。
とりあえず再度外にでて、そこで摩耶子を迎え撃つ。
そのために月子は上着を手に入れ、そのまま窓を突き破って外に飛び出したのだ。
はたして体力の低下した自分にどこまでできるかわからないが、魔に堕ちた摩耶子をほうっておくわけには行かないのだ。
ほうっておけば摩耶子はまた新たにしもべを増やすだろう。
そうなってしまっては遅すぎる。

夜着に身を包んだ摩耶子がゆっくりと現れる。
「うふふ・・・だめですよ月子さん。窓ガラスを割っちゃうなんて。他の人たちが起きてきたらどうするんですか?」
「そのときはそのとき。あなたに心配していただかなくても大丈夫よ」
手にした上着から破魔札を取り出す月子。
和バサミを捨て、再び髪を留めていたリボンを解く。
ふう・・・
改めて深呼吸をする月子。
破魔札とリボンを手にした今、ようやく態勢は整った。
これでやっと戦える。

摩耶子の表情が引き締まる。
先ほどまでの月子とはうって変わった凛々しさに、ただならぬ相手になったと悟ったのだ。
「さすが退魔師ですね。先ほどとは違いますわ」
「ええ、これでも魔を相手にするのは慣れてますから」
「残念ですわ。あなたとこうして戦わなくてはならないなんて・・・おとなしくエキスを差し出してはくださいませんの?」
摩耶子の言葉に月子は首を振る。
「それはできないわ。魔に堕ちたあなたを元に戻すことはもうできない。でも、あなたを滅することはできる。残念だけど、あなたをほうっておくわけにはいかないわ」
破魔札を口にくわえ、両手でリボンをぴんと張る。
再びリボンに輝きが灯った。

「くっ・・・」
額から汗が流れる。
脚が震える。
消耗しきった月子にとって、リボンに力を込めるのは、さらに消耗を増すことだ。
立っているのさえ苦しくなる。
一撃。
おそらく一撃しか許されない。
一撃で摩耶子を浄化するしかない。
じっとりと汗をかく手のひら。
月子は気力でリボンを握り締めていた。

「うふふ・・・震えているんじゃないですか?」
摩耶子の口元に笑みが浮かぶ。
もう彼女にとっては月子は獲物に過ぎない。
弱った獲物を前にして、摩耶子は優位に立っていると感じているのだ。
口に破魔札をくわえたまま、何も言わずに摩耶子をにらみつける月子。
その額に汗が浮かぶ。
まさかヴォルコフとの戦いの後に、連続でこのようなことになるとは思いもしなかった。
だけど逃げるわけには行かない。

「うふふ・・・それじゃ行きますね」
摩耶子の姿勢が低くなり、バネがはじけるように飛び出した。
  1. 2009/03/05(木) 21:40:58|
  2. 帝都奇譚
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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