第二次世界大戦中、ドイツ海軍は通商破壊の主力として、潜水艦(Uボート)を多用しました。
中心となったのはⅦ型であり、それに次いで一回り大きなⅨ型が大西洋上で英国商船を多数撃沈いたしました。
彼らの主な攻撃手段は魚雷であり、浮上攻撃できた大戦初期には搭載砲による攻撃もありました。
今日われわれがUボートとして頭に思い浮かべるのは、おそらくこの二種類が一般的でしょう。
そんなUボートの中にあって、魚雷攻撃ではなく別の攻撃手段を主として作られたのがⅩ(10)型でした。
UⅩ型は、機雷敷設用のUボートだったのです。
隠密行動のできる潜水艦で機雷をひそかに設置するというアイディアは、第一次大戦のときにすでに実現しておりました。
帝政ドイツ海軍は、U117級という機雷敷設用潜水艦を就役させていたのです。
UⅩ型は、その流れを汲む大型機雷敷設用潜水艦でした。
UⅩ型は、船体の中心線に沿う形で機雷を搭載する筒を縦に6本、船体両側に同じく縦に12本ずつ組み込まれ、合計66個の機雷をその筒の中に搭載することができました。
そして海中を進みながら、この筒の下から機雷を放出し、海底に設置していくことができたのです。
機雷搭載用の筒などのため船体は大きくなり、UⅦ型が水中で排水量850トンほどだったのに比べ、UⅩ型は水中では2100トンを越える大きな潜水艦でした。
一応魚雷発射管は持っていたものの、わずかに二本であり、しかも船体後部に後ろ向きに付けられているという事実が、このUⅩ型に求められたのが機雷設置だということを如実に現しているといえるでしょう。
八隻作られたUⅩ型でしたが、本来の機雷敷設の任務に就くことはあまりありませんでした。
大量に就役したⅦ型やⅨ型の魚雷発射管から投下できる機雷ができたりしたために、わざわざⅩ型に機雷設置させる必要がなくなってしまったのです。
UⅩ型の用途は機雷設置とは別のところに見いだされました。
機雷設置のために長大な航続力を与えられたUⅩ型は、燃料タンクが大きくたくさんの燃料を積めたため、燃料補給用Uボートとして運用されることになったのです。
以前紹介した補給用UボートUⅩⅣ型ほどの補給能力は持ちませんでしたが、それでも機雷搭載用の筒を補給物資搭載用にしたりして、ある程度の補給もできたようです。
こうしてUⅩ型は潜水タンカーとしてその多くが使われました。
また、同じように機雷搭載用のスペースを船倉に改修し、そこに物資を積んで潜水輸送艦として使われる艦もありました。
その中には、日本との連絡交流のためにインド洋を通りインドネシアのジャカルタなどまでやってきたものもあったのです。
八隻が作られたUⅩ型でしたが、そのうち六隻が連合軍の攻撃によって沈みました。
そして残り二隻のうちの一隻、U219は日本が接収し、1948年に解体という数奇な運命をたどってます。
本来の用途ではない任務に就かされる軍艦は数多くありますが、UⅩ型もまたそのような軍艦だったんですね。
それではまた。
- 2008/10/19(日) 21:08:00|
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