皆さんは「ユニコーン」という空想上の生物をご存知でしょうか?
一角獣とも言われ、ファンタジーなどのイラストや映像では馬によく似ているものの、額に角が生えた生物として描かれていることが多いようです。
手塚治虫氏のマンガでのちにアニメとなった「ユニコ」のモチーフともなった生き物ですね。
このユニコーン、非常に獰猛な生き物で、人に馴れることは一切無いのですが、唯一清楚な処女にだけは気を許し、そのひざで寝てしまうといいます。
ユニコーンの角にはあらゆる病気を治す効力があるといわれ、物語でもその角を巡って人々が悲喜こもごもの展開を見せてくれることになります。
このユニコーンの角の癒しの効力にあやかったものかどうかはわからないのですが、英国海軍には珍しい工作空母ともいうべき航空母艦「ユニコーン」というのがありました。
英国海軍は第二次世界大戦前に航空母艦の運用を検討した際、母艦そのものは長期間の作戦行動が行なえても、攻撃力である艦載機が損耗してしまうと戦力が大幅に減じてしまうことに問題点を感じておりました。
そこで艦載機の補給や修理、整備を行なえる特殊工作艦を建造することに決定します。
工作艦とは、艦内に修理設備を持ち、出先でいろいろな修理整備が行なえるように作られた軍艦(補助艦)の事を言い、今回の計画はいわば艦載機専用の工作艦を作るというものだったのです。
最初は普通の輸送艦タイプの工作艦として計画されたそうなのですが、艦載機を取り扱うとなれば航空母艦のような形をしていることが望ましいということで、途中から航空母艦としても運用可能な工作空母として建造されることが決まります。
こうして建造されたのが、英国海軍航空母艦「ユニコーン」でした。
ユニコーンは外形上は海面から非常に高い位置に飛行甲板を備えたずんぐりむっくりの太った航空母艦という印象の艦でした。
これは艦内に二層の格納庫を持ち、さらに修理工作設備を持つという特殊な条件を満たすためのものであり、基準排水量15000トンほどの軽空母とは思えないものでした。
このユニコーンは、一隻しか作られなかったのですが、「ヴィクトリアス」級正規空母三隻を支援する能力を持ち、きわめて高い支援能力を発揮することが可能でした。
しかし、1943年に完成したユニコーンは、第二次世界大戦中の英海軍の空母戦力不足の影響を受け、工作空母としての能力を発揮する機会には恵まれませんでした。
むしろ英海軍は、このユニコーンを通常の航空母艦として運用することを選んだのです。
そのため本国艦隊に編入されたり、サレルノ上陸作戦の支援に回されたりと忙しい日々を送りました。
戦局が好転してきた大戦後半、ようやくユニコーンは本来の工作空母としての任務に戻ります。
航空機輸送やインド洋に進出しての東洋艦隊の支援任務など、ここでもユニコーンは便利に使われました。
幸いにして、第二次世界大戦を無事に生き残ったユニコーンは、予備役としてつかの間の平和を楽しみましたが、朝鮮戦争が始まるとまた現役に復帰して、輸送や修理任務に当たりました。
こうして二度目の現役を終えたのち、1959年にスクラップとなり解体されました。
息の長い幸運な軍艦でしたが、通常の空母としてだけではない修理能力を持つという部分がユニコーンを価値あるものにしていたのでしょうね。
こういう艦種の必要性を感じ、建造した英国海軍の先見の明だったのかもしれません。
それではまた。
- 2008/10/05(日) 20:15:36|
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