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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

悔やみきれない思い

130万ヒット記念SS第二弾として、「帝都奇譚」の29回目をお送りします。
うだうだと続いてしまっているこの作品ですが、もう少しお付き合いくださいませ。

29、
「終わったのですね?」
勝手口から屋敷に入った月子は、いきなり声をかけられたことに驚いた。
「摩耶子さん・・・起きていらっしゃったのですか?」
月子の前には、夜着を羽織った摩耶子が立っていたのだ。
心配そうな表情を浮かべている摩耶子に、月子は優しく笑顔を向ける。
「はい。すべて終わりました。あなたを狙う魔物はもうおりません。多少の後始末は残るでしょうが、帝都は元通りの平和な日々に戻るでしょう」
憲兵隊の入生田さんにも教えてあげなければね・・・
ふとそんなことも思う月子。
「よかった・・・月子さんが無事で本当によかった・・・」
ホッと胸をなでおろす摩耶子。
「摩耶子さんこそこんな時間にどうしたのです?」
「あ、私はどうしても寝付けなくて。布団の中で眼をつぶっていたら悲鳴のようなものが聞こえて・・・」
ふう・・・
月子がため息をつく。
どうにかして音を遮断するような結界を用意しないとダメだわね。
「そうでしたか。お騒がせしてしまいました。もう大丈夫ですから、ごゆっくりお休みくださいませ。明日に差し支えますよ」
「まだ休むことはできません」
「えっ?」
月子は驚いた。
いきなり摩耶子が強い口調で言い放ったのだ。
驚くには充分なことだった。
「月子さん自分がどういう状態かわかってますか? 傷だらけです。手当てしないとダメですわ」
「えっ? あ、ああ・・・いいんですよ、これぐらい平気ですから。自分で手当てぐらいできます」
「ダメです。私のためにこんな怪我を負ったのですから、手当てぐらいはさせてください。さあ、こっちへ」
月子の腕を取って居間に向かう摩耶子。
なんとなくその必死さが月子には面白く感じてしまう。
苦笑しつつも月子は摩耶子に連れて行かれるままになるのだった。

「ああ・・・ひどい・・・」
躰にぴったりした月子の洋服を脱がせると、あちこちに傷ついた箇所がある。
いくつかはすっぱりと切り裂かれ、いくつかは肉が抉り取られたようにもなっていた。
ほかにも治癒してはいるもののいくつかの傷跡があり、月子がただならぬ戦いの場に身をおいていることがしのばれる。
「摩耶子さん、もういいの。気分が悪くなったら困るわ。あとは私がやるから薬箱だけ置いておいてくださいな」
摩耶子が持ってきた薬箱から、脱脂綿と消毒液を取り出す月子。
つい摩耶子の好意に甘えてしまったが、傷口を見せるなどということはするべきではなかった。
うかつなことをしてしまったと月子は悔やむ。
鷹司のお嬢様に見せるべきものではなかったのだ。

「摩耶子さん?」
脱脂綿に消毒液を含ませ、傷口に当てようとした月子は、ふと雰囲気の異様さに気が付いた。
摩耶子が無言になってしまったのは、てっきり傷口を見て気分が悪くなったものと思っていたのだ。
だが、月子が顔を上げたとき、摩耶子はじっと彼女の傷口を見つめていたのだ。
「摩耶子さん?」
「飲み・・・たい・・・」
「えっ?」
月子はぞっとした。
まさか・・・
そんな・・・

反射的に飛び退ろうとする月子。
だが、間に合わなかった。
普段の月子ならかわせたはずのことだったが、ヴォルコフとの戦いでの消耗が激しい今の月子は動きが鈍っていたのだ。

「あぐっ!」
月子の左腕に激痛が走る。
摩耶子の腕がすばやく月子の左腕を掴み、噛み付いてきたのだ。
「ま、摩耶子さん・・・ど、どうして・・・」
どうして気が付かなかったのか?
いったいいつの間に彼女は魔に犯されてしまっていたのか。
左腕から急速に熱が奪われていくのを感じ、月子は必死で振りほどく。
摩耶子の爪が食い込むのもかまわずに、蹴飛ばすようにして突き飛ばし、どうにか距離をとる。

「ま、摩耶子さん・・・あなた・・・すでに・・・」
唇を噛む月子。
立ち上がった摩耶子の目は真っ赤に輝き、冷たい笑みを浮かべている。
「月子さん、私・・・喉が渇くの。あなたの血が飲みたいの。いいでしょ?」
目がかすむ。
任務を果たせなかった悔しさが、摩耶子を魔に貶めてしまったふがいなさが押し寄せる。
一瞬にして結構な量の血を奪われたのか、躰に震えが走る。
寒い・・・
月子は気力を振り絞り、脱いで椅子にかけた洋服に目を留める。
あの中にはまだ破魔札がある。
それを手に入れねば・・・

「ごめんなさい」
摩耶子が首を振る。
「私・・・どうしようもないの。喉が渇いてどうしようもないの・・・」
「そう・・・残念ね。残り少なくなっちゃったみたいだけど・・・あげるわけには行かないわ」
じりじりと椅子の方へと歩を進める月子。
その目は摩耶子からはずされることはない。
だが、だからといって赤い瞳を見るわけにも行かない。
魔力を持つ赤い瞳は見たものを魅入ってしまう。
ひざががくがくと震えながらも、月子は破魔札を取りに行くのだった。

「もう・・・だめですよ、月子さん。おとなしく血を飲ませてください。それだけでいいんですから」
何か吹っ切れたような表情を浮かべる摩耶子。
もはや彼女の中では獲物から血を吸うのは当たり前に思われるようになっていたのだ。
今ならばわかる。
小夜の血を吸ったのも私。
小夜は今頃また誰かの血を・・・
うふふ・・・
なんだか素敵だわぁ・・・
夜がこんなに気持ちがいいものだったなんて・・・
月子さんにも教えてあげなくちゃね・・・

躰が軽い。
今にもどこかに飛んでいってしまえそう。
すごい。
気持ちいい。
まるで生まれ変わったみたいだわ。
ああ・・・最高・・・

摩耶子がいきなりジャンプする。
月子目がけて飛び掛ってきたのだ。
間一髪で転がるようにかわす月子。
先ほどからうかつすぎることに、手元には武器になるようなものは何もない。
傷口の手当てのために服も脱いでしまい、今は下着だけなのだ。
まだ珍しい洋装の下着姿の月子。
白い肌にとてもよくマッチしている。
だが、今は身に着けているものがこれだけという心もとない状態に、月子は臍をかんでいた。

躰が重い。
まるで鉛か鉄でも飲み込んでいるかのよう。
苦しい。
ヴォルコフとの戦いで受けた消耗が回復できない。
このままではいけない。
何とかしなくては。
とは思うものの、今はどうしようもない。
とっさに転がってよけたものの、すでに摩耶子の動きは人間を越え始めている。

摩耶子さん・・・
暗澹たる思いの月子。
もはや元に戻すことは叶わない。
消滅させて魂を救ってやるしかない。
それができるのはここには自分しかいないのだ。
しっかりしなさい月子。
あなたは退魔師じゃない。
自分を叱咤して立ち上がる。
摩耶子が飛び掛ってきたときにひっくり返された薬箱。
そこから転がりでた和バサミ(握りバサミ)を手に取る。
今はこれが唯一の武器。
月子は和バサミを構えて摩耶子と対峙した。
  1. 2008/10/01(水) 20:48:08|
  2. 帝都奇譚
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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