FC2ブログ

舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

疑問解決

「世界の艦船」11月号が手に入りました。
cover-s_20081006184032.jpg

今月の特集は新世代のコルベットということで、各国の新型コルベットを紹介しています。
現代の軍艦は高価なので、フリゲートクラスでも装備できる国は限られますし、また海上からの大きな脅威を受けない国はコルベットで充分なんでしょうね。

現代のコルベットは対艦ミサイルを装備していたり、対潜ヘリコプターを装備しているものまであるので、実質フリゲートクラスと遜色ないものも多いですから、フリゲートを二隻装備するよりもコルベットを四隻装備するという考え方もあるかもしれません。

このコルベットの特集よりもうれしかったのは、前回のときにもお話した港で働く船の話。
今回は警察艇でした。
つまり海のパトカーですね。

東京湾には以前は水上警察署があり、そこが警察艇を運用していたのですが、今は湾岸警察署に統合されて、そこの水上安全課というのが運用しているとのこと。
25隻を擁し常時20隻が即応体制にあるんだとか。

私が以前からずっと気になっていたのが、水上警察と海上保安庁の受け持ち区域分けなんですよ。
どこまでが水上警察でどこからが海上保安庁の管轄なのか。
結構気になっていたんですよねー。

今回の記事では、河川に関しては水上警察が、港区外は海上保安庁が、そして港内に関しては両者の協議で決まるとか。
特に線引きは無いんだそうですね。
びっくりです。
これで長年の疑問が解決ーーー(笑)

毎回毎回いろいろな情報を提供してくれる雑誌に感謝感謝です。

今回はこんなところで。
それではまた。
  1. 2008/10/06(月) 19:26:28|
  2. 本&マンガなど
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3

艦載機を癒してくれる一角獣

皆さんは「ユニコーン」という空想上の生物をご存知でしょうか?
一角獣とも言われ、ファンタジーなどのイラストや映像では馬によく似ているものの、額に角が生えた生物として描かれていることが多いようです。
手塚治虫氏のマンガでのちにアニメとなった「ユニコ」のモチーフともなった生き物ですね。

このユニコーン、非常に獰猛な生き物で、人に馴れることは一切無いのですが、唯一清楚な処女にだけは気を許し、そのひざで寝てしまうといいます。
ユニコーンの角にはあらゆる病気を治す効力があるといわれ、物語でもその角を巡って人々が悲喜こもごもの展開を見せてくれることになります。

このユニコーンの角の癒しの効力にあやかったものかどうかはわからないのですが、英国海軍には珍しい工作空母ともいうべき航空母艦「ユニコーン」というのがありました。

英国海軍は第二次世界大戦前に航空母艦の運用を検討した際、母艦そのものは長期間の作戦行動が行なえても、攻撃力である艦載機が損耗してしまうと戦力が大幅に減じてしまうことに問題点を感じておりました。
そこで艦載機の補給や修理、整備を行なえる特殊工作艦を建造することに決定します。
工作艦とは、艦内に修理設備を持ち、出先でいろいろな修理整備が行なえるように作られた軍艦(補助艦)の事を言い、今回の計画はいわば艦載機専用の工作艦を作るというものだったのです。

最初は普通の輸送艦タイプの工作艦として計画されたそうなのですが、艦載機を取り扱うとなれば航空母艦のような形をしていることが望ましいということで、途中から航空母艦としても運用可能な工作空母として建造されることが決まります。

こうして建造されたのが、英国海軍航空母艦「ユニコーン」でした。

ユニコーンは外形上は海面から非常に高い位置に飛行甲板を備えたずんぐりむっくりの太った航空母艦という印象の艦でした。
これは艦内に二層の格納庫を持ち、さらに修理工作設備を持つという特殊な条件を満たすためのものであり、基準排水量15000トンほどの軽空母とは思えないものでした。

このユニコーンは、一隻しか作られなかったのですが、「ヴィクトリアス」級正規空母三隻を支援する能力を持ち、きわめて高い支援能力を発揮することが可能でした。

しかし、1943年に完成したユニコーンは、第二次世界大戦中の英海軍の空母戦力不足の影響を受け、工作空母としての能力を発揮する機会には恵まれませんでした。

むしろ英海軍は、このユニコーンを通常の航空母艦として運用することを選んだのです。
そのため本国艦隊に編入されたり、サレルノ上陸作戦の支援に回されたりと忙しい日々を送りました。

戦局が好転してきた大戦後半、ようやくユニコーンは本来の工作空母としての任務に戻ります。
航空機輸送やインド洋に進出しての東洋艦隊の支援任務など、ここでもユニコーンは便利に使われました。

幸いにして、第二次世界大戦を無事に生き残ったユニコーンは、予備役としてつかの間の平和を楽しみましたが、朝鮮戦争が始まるとまた現役に復帰して、輸送や修理任務に当たりました。

こうして二度目の現役を終えたのち、1959年にスクラップとなり解体されました。

息の長い幸運な軍艦でしたが、通常の空母としてだけではない修理能力を持つという部分がユニコーンを価値あるものにしていたのでしょうね。
こういう艦種の必要性を感じ、建造した英国海軍の先見の明だったのかもしれません。

それではまた。
  1. 2008/10/05(日) 20:15:36|
  2. 趣味
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ライバルを越えろ

第一次世界大戦において世界で初めて戦車を実戦参加させた英国は、当然のごとく自国製の戦車がオーソドックスなものと考えておりました。
つまり、戦車とは塹壕を越えるためにちょうだいな履帯(キャタピラ)を持つひし形の形をしたものだという概念です。

ところが、同じく第一次世界大戦でフランスのルノー社が作り出した戦車は、小型軽量で二人しか乗れない戦車で、長さも短いために塹壕を越えるための補助用の尾そりをつけているというものでしたが、戦車というものの概念を決定付けるほどの装備を備えておりました。
車体上部で回転する回転砲塔です。

今、われわれが戦車といわれて思い浮かべるものは、まさに車体の上に回転する砲塔を載せたものでしょう。
ルノー社の作り出したこの小型戦車ルノーFTは、まさに戦車というものの形を決めたといっていいほどの戦車でした。

このルノーFTは、当然のごとく使い勝手のいい優れた戦車ということで、大量生産が行なわれました。
一説によれば三千両もが造られたといいます。

第一次世界大戦が終わると、各国は戦争で疲弊した経済の建て直しに入りました。
真っ先に削られたのは、当然のことでしたが肥大した軍事費でした。
軍備は縮小され、余剰の装備は廃棄されるかバーゲン品として売り出されました。

軍事費が減らされては、軍需産業は自国の軍だけに製品を売っていたのでは会社の経営が困難になってしまいます。
英国の軍需産業の一つヴィッカース社も、外国に兵器を売って利益を上げて行こうと考えました。

これからの兵器として戦車に目をつけていたヴィッカース社ではありましたが、各国の軍備縮小や軍事費削減などにより、英国製の大型ひし形戦車を購入しようとする国などどこにもありませんでした。
一方で、軍の機械化は進めたい各国は、経費のかからない豆戦車としてカーデン・ロイド社の作った軽戦車には興味を示し、カーデン・ロイド社は豆戦車を売って利益を上げておりました。

とはいえ、カーデン・ロイド社の軽戦車は、薄い装甲に機関銃が一丁(もしくは二丁)のみという、本当に小さな戦車とも呼べないものであり、回転砲塔もありません。
安いとはいえ、これではやはり戦車として使うには不安です。

そこで各国はフランスのルノーFTを購入しておりました。
ルノーFTであれば大砲の付いた砲塔を持つ立派な戦車であり、加えてフランスが余剰品としてバーゲン価格で売っていたので、安く購入できたのです。

ですが、1920年代半ばともなってきますと、第一次世界大戦時に作られたルノーFTでは機動性の不足などいろいろと不満も出てきます。
ヴィッカース社はそこに目をつけました。
ルノーFTと同じぐらいの大きさの使い勝手のよい新型戦車を作って、各国に売り込もうとしたのです。

ライバルのルノーFTが重さ六トンだったことから、新型戦車はヴィッカースは新型戦車も六トンで作ろうと計画しました。
六トンぐらいであれば、当時の港湾設備などでも船からの積み下ろしができ、橋や鉄道を使うにもそれほど問題は無かったのです。
四十トン近いひし形重戦車では輸送だけでも大変なのでした。

ヴィッカース社は当然のことながら、後発であることを生かしてルノーFTをあらゆる面で上回ろうとします。
足回りは簡単な構造ではあるが、それだけに信頼性が高いリーフスプリング式の懸架装置を採用し、履帯も長距離行動可能な新型履帯の開発に成功。
この履帯はのちに日本が試験的に輸入したこの戦車を分析することで、その後の日本戦車の履帯開発にも生かされます。

エンジンは車体の後ろにガソリンエンジンを置き、車内とは隔壁で区切って音や熱などが車内に入らないようにしました。
これは当たり前のようなことですが、当時はほとんどの戦車の車内ではエンジンがむき出しで置かれていたのです。

信頼性の高い足回りに新型の履帯、そしてエンジンにも恵まれたこのヴィッカース社の「六トン戦車」(開発時の目標だった重量がそのまま戦車の名称になりました)は、ライバルのルノーFTが最高でも時速約八キロしか出せなかったのに比べ、時速約三十キロまで出せる快速戦車となりました。

こうして基本車体ができたヴィッカース六トン戦車は、ここで面白い方法を取ります。
今でこそオーナー国の仕様に合わせるというのはどのメーカーでもやりますが、ヴィッカース社はこの戦車でその方式を取り入れたのです。

機関銃を一丁装備した砲塔(銃塔)を横並びに二つ付けた機関銃装備タイプや、砲塔に大砲と機関銃を装備した大砲装備タイプなど、何種類かの武装を購入しようつする国に提示。
さらにエンジンを前に置いたタイプや砲塔無しのトラクタータイプなど、各国の希望をできるだけかなえようとしたのです。

大砲を装備したヴィッカース六トン戦車は、装備や装甲などのために最終的には約八トンになりましたが、それほど大きな問題とはならず、何よりこうした仕様の多様さや信頼性の高さで、各国が購入してくれるようになりました。

肝心の英国では採用されませんでしたが、六カ国が自国の装備としてこの六トン戦車を購入し、試験や研究目的では日本も購入いたしました。
さらにポーランドやソ連では、この六トン戦車を改良発展させて第二次世界大戦に使用しています。

世界的な軍備縮小の中、ヴィッカース六トン戦車は世界的なベストセラー戦車として、第二次世界大戦直前の戦車勢力に大きな影響を与えたのでした。

それではまた。
  1. 2008/10/04(土) 20:25:42|
  2. 趣味
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

去っていく人たち

右肩が痛くて困ってます。
痛いというかだるいような重たい感じ。
腕が上がらないとかじゃないんですが、どうにも・・・
首の辺りから肩に下がり、今は腕の付け根辺りが痛いです。
文字打ちもしんどいです。
やれやれ・・・

今日から阪神はヤクルトと四連戦ですね。
神宮でとなるので少し心配。
何とか早く優勝を決めて欲しいけど、最後までもつれるんでしょうね。

先日はオリックスバファローズの清原和博選手が引退しました。
引退セレモニーを見た人も多いのではないでしょうか。
いろいろと言われもしましたが、一時代を築いた選手には間違い無いと思いますので、お疲れ様でしたと言ってあげたいです。
松坂投手に言わせると、どうも投手がストレートを投げたくなる打者だったそうですよ。
清原自身もストレートで勝負するものだと思っていた節があるようで、藤川投手とのやり取りは記憶に残るものでしたね。

今後はどういう道に進まれるのでしょうね。
コーチ監督へと進むんでしょうか。
指導者としての立場になった場合、どういう力量を見せてくれるのか楽しみでもありますね。

華やかな引退セレモニーで惜しまれながら引退する人もいる一方で、今年も志半ばで球団を解雇される戦力外通告の季節ともなりました。

阪神からも第一次として三人の名が発表されておりましたが、その中に正田樹投手の名がありました。

正田投手は桐生一高から日本ハムに入り、新人王も獲得した投手でしたけど、その後は伸び悩んで阪神へとトレードされ、先発投手陣の一人として期待されましたけど、ついに阪神での一軍登板は無いままに戦力外になってしまいました。

トレードで阪神に来たときには期待していたんですけどねぇ。
残念です。
どこか拾ってくれるところはあるのかな。
仕方の無いこととはいえ、きびしいことですね。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2008/10/03(金) 20:37:58|
  2. スポーツ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3

焼却

130万ヒット記念SS第三弾は「グァスの嵐」の22回目です。
ホントこんなときしか更新しなくてすみません。
今回もちょっとだけしか書いてませんが、お読みいただければ幸いです。

22、
「うわ、降ってきた・・・」
ぽつぽつと降り出した雨にエミリオは思わず天を仰ぐ。
幸いなことに風はまだ激しくなく、ミストス島はもう目の前だ。
四本腕で器用に帆を操るゴルドアンと舵を握るエミリオが息をピッタリ合わせて、巧みにファヌー『エレーア』をミストス島に寄せていく。
「あそこの岩陰にちょうどいい停泊場所がありますから」
ミューの指差す先には、樹木が切れ込んでくぼみになっている箇所がある。
確かにあれならいい停泊場所には違いない。
「よし、あそこに寄せよう」
「わかった」
ゴルドアンもエミリオもすぐに理解すると、『エレーア』は静々とそちらに寄っていく。
驚いたことに、くぼみとなっている岩陰には木で作られた桟橋が設置されていた。
「桟橋?」
てっきり無人島だとばかり思っていたミストス島だったので、桟橋があったことにエミリオは驚いたのだ。
もっとも、ミューが寄ってくれと言ったのだ。
人がいても何の不思議もないのではあるが。

『エレーア』は数分後には桟橋に停泊することに成功していた。
ロープでがっちりと桟橋に固定して流されないようにする。
これで少々の嵐でも大丈夫だろう。
エミリオはホッと一安心することができた。

「ここで少し待っていてもらえますでしょうか?」
ミューはそう言って一人で桟橋に降りようとする。
バランスのとりづらいファヌーから桟橋へ飛び移るのは慣れが必要だ。
それなのにミューはこともなげに飛び移る。
「ミュー、待ってよ」
エミリオが呼び止める。
「はい?」
その声に振り向くミュー。
きらきらした瞳がとても可愛らしい。
「ここへは何をしにきたのか言ってくれないか? 手伝えることがあれば手伝いたい」
またしてもミューの表情が曇る。
そのことがエミリオはすごく気になるのだ。
きっと何かを抱えているに違いない。
少しでもそれを軽くしてやりたいのだ。
おせっかいと言われるだろうけど、エミリオはそういう男だった。

「・・・・・・」
しばらく無言でうつむいたままのミュー。
「ごめんなさい」
やがて絞り出すような声がミューの口から発せられる。
「エミリオ様にはまだ今は言えません。ここで待っていてください。すぐ戻ります」
「ミュー・・・」
くるりと背を向けて島の奥へ駆け出して行くミュー。
エミリオはその後姿を見て肩を落とす。
「仕方ないわよエミリオ。ミューちゃんにはミューちゃんの事情があるんだろうから」
ふと気が付くと、フィオレンティーナがそばに寄り添ってくれている。
そのことがエミリオにとってはすごくうれしかった。

桟橋から少し離れたところにある一軒の家。
木で作られたその家の前に来たとき、ミューは言いようのないパルスがシナプス回路を駆け巡るのを感じていた。
それは今まで感じたことない感覚。
何か胸部が締め付けられるような感覚が走ったのだ。

「マスター・・・いいえ、チアーノ様。ミューは壊れてしまったのでしょうか? こんな感覚は初めてです。胸が苦しい」
少女を模して作られた少し膨らんだ胸をミューは両手で押さえる。
きっと私、Μ-Τ6は壊れてしまったのだ。
そうじゃなければこんなに苦しいはずがない。
造られてから二年と八ヶ月。
そのうち十一ヶ月と二十四日をチアーノ様をマスターと呼んで過ごしてきた。
星系探査用の補助ロボットとして造られたはずなのに、料理をしたりおしゃべりしたりしてばかりいたから壊れてしまったんだ。
「チアーノ様・・・ミューは寂しいです」
眼をつぶり、しばしたたずむミュー。
メモリーの中のチアーノ老人に思いを馳せるのだった。

だが、ミューにはやらなければならないことがある。
チアーノ老人が自航船を破壊した今、それに関する資料も破棄してしまわなくてはならない。
技術的なレベルとしてはこの星に広まってもかまわないレベルのものではあるが、やはりチアーノ老人が自航船を破棄した以上は資料も破棄するのが正しいだろう。
ミューはそう思ってわざわざこの島に立ち寄ってもらったのだった。

くっと顔を上げるミュー。
そこに先ほどのような表情はない。
かくんと左手首を折り曲げ、内部に仕込まれたレーザートーチをむき出しにする。
そして、思い出の詰まった家に対して照射した。

家がぱちぱちと音を立てて燃え上がる。
そこにあったすべてのものを炎が飲み込んで行く。
チアーノ老人の暮らしぶりも、ミューがそこにいたことも。
すべてが炎の中に消えて行く。

ミューは物置小屋にもレーザーを放つ。
そこには水素発生のための電気分解器が置かれている。
ミューにとっての活動源である水素は、水からの電気分解で得ていたのだ。
その電気分解器がなくなれば、タンクの中の残量だけがミューを稼働させることになる。
残量はあと70パーセントほど。
六十五日ほどで機能停止に追い込まれる。
おそらくミューの一生はそこで尽きることになるのだろう。
だが、ミューはそれでかまわなかった。
  1. 2008/10/02(木) 20:23:46|
  2. グァスの嵐
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

10月02日のココロ日記(BlogPet)

舞方雅人さんのことを考えていたら、胸がきゅぅっとなりました。

*このエントリは、ブログペットのココロが書いてます♪
  1. 2008/10/02(木) 10:31:42|
  2. ココロの日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5

悔やみきれない思い

130万ヒット記念SS第二弾として、「帝都奇譚」の29回目をお送りします。
うだうだと続いてしまっているこの作品ですが、もう少しお付き合いくださいませ。

29、
「終わったのですね?」
勝手口から屋敷に入った月子は、いきなり声をかけられたことに驚いた。
「摩耶子さん・・・起きていらっしゃったのですか?」
月子の前には、夜着を羽織った摩耶子が立っていたのだ。
心配そうな表情を浮かべている摩耶子に、月子は優しく笑顔を向ける。
「はい。すべて終わりました。あなたを狙う魔物はもうおりません。多少の後始末は残るでしょうが、帝都は元通りの平和な日々に戻るでしょう」
憲兵隊の入生田さんにも教えてあげなければね・・・
ふとそんなことも思う月子。
「よかった・・・月子さんが無事で本当によかった・・・」
ホッと胸をなでおろす摩耶子。
「摩耶子さんこそこんな時間にどうしたのです?」
「あ、私はどうしても寝付けなくて。布団の中で眼をつぶっていたら悲鳴のようなものが聞こえて・・・」
ふう・・・
月子がため息をつく。
どうにかして音を遮断するような結界を用意しないとダメだわね。
「そうでしたか。お騒がせしてしまいました。もう大丈夫ですから、ごゆっくりお休みくださいませ。明日に差し支えますよ」
「まだ休むことはできません」
「えっ?」
月子は驚いた。
いきなり摩耶子が強い口調で言い放ったのだ。
驚くには充分なことだった。
「月子さん自分がどういう状態かわかってますか? 傷だらけです。手当てしないとダメですわ」
「えっ? あ、ああ・・・いいんですよ、これぐらい平気ですから。自分で手当てぐらいできます」
「ダメです。私のためにこんな怪我を負ったのですから、手当てぐらいはさせてください。さあ、こっちへ」
月子の腕を取って居間に向かう摩耶子。
なんとなくその必死さが月子には面白く感じてしまう。
苦笑しつつも月子は摩耶子に連れて行かれるままになるのだった。

「ああ・・・ひどい・・・」
躰にぴったりした月子の洋服を脱がせると、あちこちに傷ついた箇所がある。
いくつかはすっぱりと切り裂かれ、いくつかは肉が抉り取られたようにもなっていた。
ほかにも治癒してはいるもののいくつかの傷跡があり、月子がただならぬ戦いの場に身をおいていることがしのばれる。
「摩耶子さん、もういいの。気分が悪くなったら困るわ。あとは私がやるから薬箱だけ置いておいてくださいな」
摩耶子が持ってきた薬箱から、脱脂綿と消毒液を取り出す月子。
つい摩耶子の好意に甘えてしまったが、傷口を見せるなどということはするべきではなかった。
うかつなことをしてしまったと月子は悔やむ。
鷹司のお嬢様に見せるべきものではなかったのだ。

「摩耶子さん?」
脱脂綿に消毒液を含ませ、傷口に当てようとした月子は、ふと雰囲気の異様さに気が付いた。
摩耶子が無言になってしまったのは、てっきり傷口を見て気分が悪くなったものと思っていたのだ。
だが、月子が顔を上げたとき、摩耶子はじっと彼女の傷口を見つめていたのだ。
「摩耶子さん?」
「飲み・・・たい・・・」
「えっ?」
月子はぞっとした。
まさか・・・
そんな・・・

反射的に飛び退ろうとする月子。
だが、間に合わなかった。
普段の月子ならかわせたはずのことだったが、ヴォルコフとの戦いでの消耗が激しい今の月子は動きが鈍っていたのだ。

「あぐっ!」
月子の左腕に激痛が走る。
摩耶子の腕がすばやく月子の左腕を掴み、噛み付いてきたのだ。
「ま、摩耶子さん・・・ど、どうして・・・」
どうして気が付かなかったのか?
いったいいつの間に彼女は魔に犯されてしまっていたのか。
左腕から急速に熱が奪われていくのを感じ、月子は必死で振りほどく。
摩耶子の爪が食い込むのもかまわずに、蹴飛ばすようにして突き飛ばし、どうにか距離をとる。

「ま、摩耶子さん・・・あなた・・・すでに・・・」
唇を噛む月子。
立ち上がった摩耶子の目は真っ赤に輝き、冷たい笑みを浮かべている。
「月子さん、私・・・喉が渇くの。あなたの血が飲みたいの。いいでしょ?」
目がかすむ。
任務を果たせなかった悔しさが、摩耶子を魔に貶めてしまったふがいなさが押し寄せる。
一瞬にして結構な量の血を奪われたのか、躰に震えが走る。
寒い・・・
月子は気力を振り絞り、脱いで椅子にかけた洋服に目を留める。
あの中にはまだ破魔札がある。
それを手に入れねば・・・

「ごめんなさい」
摩耶子が首を振る。
「私・・・どうしようもないの。喉が渇いてどうしようもないの・・・」
「そう・・・残念ね。残り少なくなっちゃったみたいだけど・・・あげるわけには行かないわ」
じりじりと椅子の方へと歩を進める月子。
その目は摩耶子からはずされることはない。
だが、だからといって赤い瞳を見るわけにも行かない。
魔力を持つ赤い瞳は見たものを魅入ってしまう。
ひざががくがくと震えながらも、月子は破魔札を取りに行くのだった。

「もう・・・だめですよ、月子さん。おとなしく血を飲ませてください。それだけでいいんですから」
何か吹っ切れたような表情を浮かべる摩耶子。
もはや彼女の中では獲物から血を吸うのは当たり前に思われるようになっていたのだ。
今ならばわかる。
小夜の血を吸ったのも私。
小夜は今頃また誰かの血を・・・
うふふ・・・
なんだか素敵だわぁ・・・
夜がこんなに気持ちがいいものだったなんて・・・
月子さんにも教えてあげなくちゃね・・・

躰が軽い。
今にもどこかに飛んでいってしまえそう。
すごい。
気持ちいい。
まるで生まれ変わったみたいだわ。
ああ・・・最高・・・

摩耶子がいきなりジャンプする。
月子目がけて飛び掛ってきたのだ。
間一髪で転がるようにかわす月子。
先ほどからうかつすぎることに、手元には武器になるようなものは何もない。
傷口の手当てのために服も脱いでしまい、今は下着だけなのだ。
まだ珍しい洋装の下着姿の月子。
白い肌にとてもよくマッチしている。
だが、今は身に着けているものがこれだけという心もとない状態に、月子は臍をかんでいた。

躰が重い。
まるで鉛か鉄でも飲み込んでいるかのよう。
苦しい。
ヴォルコフとの戦いで受けた消耗が回復できない。
このままではいけない。
何とかしなくては。
とは思うものの、今はどうしようもない。
とっさに転がってよけたものの、すでに摩耶子の動きは人間を越え始めている。

摩耶子さん・・・
暗澹たる思いの月子。
もはや元に戻すことは叶わない。
消滅させて魂を救ってやるしかない。
それができるのはここには自分しかいないのだ。
しっかりしなさい月子。
あなたは退魔師じゃない。
自分を叱咤して立ち上がる。
摩耶子が飛び掛ってきたときにひっくり返された薬箱。
そこから転がりでた和バサミ(握りバサミ)を手に取る。
今はこれが唯一の武器。
月子は和バサミを構えて摩耶子と対峙した。
  1. 2008/10/01(水) 20:48:08|
  2. 帝都奇譚
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
前のページ

カレンダー

09 | 2008/10 | 11
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

AquariumClock 2

プロフィール

舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

ブログバナー


バナー画像です。 リンク用にご使用くださってもOKです。

カテゴリー

FC2カウンター

オンラインカウンター

現在の閲覧者数:

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

管理人にメールなどを送りたい方はこちらからどうぞ

ブログ内検索

RSSフィード

ランキング

ランキングです。 来たついでに押してみてくださいねー。

フリーエリア

SEO対策: SEO対策:洗脳 SEO対策:改造 SEO対策:歴史 SEO対策:軍事

フリーエリア