今日は本の紹介。
もうかなり昔の本なんですが、私がすごく心に残った短編が入っていたので、それを中心に。
というか、それ以外の話はもう覚えてないんですけどね。
ほかの作者様ごめんなさい。
文庫本に異形コレクションというシリーズがございます。
井上雅彦様が監修したホラーアンソロジーシリーズでして、毎回テーマを決めて作家様たちがそのテーマに乗っ取ったホラー短編(時には中編)を書き下ろすというシリーズです。
いくつかの出版社を経てシリーズを重ねられているようですが、私もそのうちの初期シリーズの二冊ほどに手を出したことがありまして、今回ご紹介する「水妖」もそのうちの一冊です。
「水妖」は読んで字のごとく、水にまつわるホラー短編を集めたアンソロジーで、26の作品が収められていました。
出版されたのが平成10年ですから、もう10年も前の作品ということになりまして、事実私自身読んではいるのですが、今思い出せるのはたった一つの作品だけなんです。
それは、「貯水槽」と題された作品で、村田基様という作家様の作品。
内容がすごく素敵で、今でも気に入っている作品です。
SS創作に多少影響受けているかもしれません。
ある古いマンション。
そこに引っ越してきた男は、水道水の味が変だと感じた。
かなり古いマンションで住人も少なく、水道水の味に文句を言う人は居ないらしい。
だが、気になった男は、ある日貯水槽を確認しようと屋上に上がる。
そして貯水槽の中を覗きこんだ男が目にしたのは・・・
水の中に浮かぶ一人の少女だった。
誤って落ちたのだと言う少女は男に助けを求めるが、水中を漂う少女の美しさに心奪われた男は少女をそのまま貯水槽で飼い始める。
自力では出られない少女を、男はある意味支配し観賞するのだ。
食事を与え、泳ぎづらそうなスカートや下着を脱がせてウェットスーツに着替えさせ、いるかのようなしなやかな肢体を見て楽しんでいく。
はじめは出してと喚いていた少女も、やがてその境遇を受け入れたのか、男に与えられる食事で生きるようになり、まるで水棲人間のように水の中での暮らしに順応する。
男は少女の美しさに惹かれ、少女を抱きたいと夢想するが、貯水槽から出せば逃げられる可能性があって抱くことができない。
だが、少女を抱きたいという欲求は募る一方となり・・・
結末は書きません。
ここまで書いてですがごめんなさい。
表題は10年後にこの貯水槽を覗いた新聞記者が聞いたセリフです。
もうね。
何というか男の気持ちがよくわかる。
ウェットスーツに包まれた少女の姿が脳裏に浮かびます。
抱きしめたくなるのもわかるなぁ。
少女自体がウェットスーツ状の皮膚を持つ水で生きる生き物になってしまった・・・
そんな感じで、すごく好きなお話でした。
異形化の一種ですよね。
古本屋とかで見かけられたら立ち読みしてみてください。
素敵なお話ですよ。
それではまた。
PS:今日は前夜祭。
皆様、本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。
- 2008/07/15(火) 20:29:38|
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