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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

プロローグ・魔女生誕(2)

魔法機動ジャスリオン2ndシーズン先行販売DVD、「プロローグ・魔女生誕」の二回目です。
楽しんでいただければ幸いです。


「それじゃさようならー」
「気をつけてお帰りになってくださいね」
「また明日ね~」
何事も無く迎えた放課後。
陸上部の珠恵をいつも待っているために帰りは少し遅くなる。
その間、摩子と寿美は図書館で時間をつぶすのだ。
もっとも読む本は大いに違う。
意外と化学系の本をたしなむ摩子に対し、寿美は普通の小説やライトノベルを読むことが多かった。
待たなくていいと言う珠恵だったが、摩子も寿美もなんとなく待ってしまう。
どうせ早く帰ってもすることもないし、手伝いを言いつけられるのが関の山。
それなら好きな小説を静かに読んでいるのも悪くない。
寿美はそう思っているし、そういう時間が好きだった。
それに珠恵が戻れば三人でおしゃべりの時間になる。
ファーストフードのお店に寄って、軽く食事をしながらのおしゃべりはこの上なく楽しい。
このなんでもない日常が寿美はとても好きだった。
そして、いつもの交差点でそれぞれが帰路に就いたのだった。

突然寿美のポケットの中で携帯電話が振動する。
振動パターンを変えてあるので、メールではなく電話の着信だ。
寿美は急いで携帯電話を取り出して開いてみる。
「えっ?」
摩子か珠恵だろうと思っていた期待は見事に裏切られた。

着信:マザー

「だ、誰?」
寿美の手が震える。
通話ボタンに伸ばしかけていた指が止まる。
マザーなんて知らない。
そんな人知らない。
だが、振動は続いている。
やむ気配は無い。
寿美は昼間の得体の知れない恐怖を思い出した。
思わず携帯電話を投げ出したくなる。
だが・・・
手が動かなかった。

「えっ?」
見ると携帯電話のボディに機械の回路図のようなものが浮かび上がっている。
その回路図のようなものが携帯電話のボディから広がって、寿美の手に絡み付いてくるのだ。
「いやぁっ!」
寿美は辺りもかまわずに叫び声を上げる。
いく人かの通りがかりの人が彼女の方を見るが、やがて何事も無かったかのように通り過ぎていく。
「な、なんなのぉ」
寿美は周りの様子を気にする余裕など無かった。
必死で手を振って携帯電話を放り投げようとするが、彼女の右手はいうことを聞いてくれない。
ゆっくりと通話ボタンに伸びていく寿美の指。
「いやぁっ!」
通話ボタンが押され、携帯電話の振動が止まる。
画面が通話中の表示に変わり、そしてその表示画面が真っ黒になっていく。
そして、その漆黒の画面の中に黄色い眼が現れたとき、それを見た寿美の眼から意思の光が失われた。

ゆっくりと携帯電話を耳に当てる寿美。
彼女の眼はまっすぐ正面を見据えてはいたが、何も映し出してはいない。
「はい・・・かしこまりましたマザー」
寿美の唇がゆっくりと言葉をつむぎだし、携帯電話がパタンと閉じられる。
寿美はそのまま何事も無かったかのように家路を歩き始めるのだった。

                          ******

「あれ?」
寿美はふとわれに返る。
気が付くともう夜の九時。
「あれれ?」
ベッドに座ってぼんやりしていたらしい。
布団の上には携帯電話が置かれている。
メールチェックでもしているうちにうつらうつらしちゃったかな?
よくわからないけどそういうことなのかもしれない。
見るとメールを発信した跡がある。
摩子ちゃんと珠恵ちゃんにだ。
何を送ったっけ?
送った内容を確認しようと思ったところに母親の声が聞こえてくる。
『寿美ー、お風呂入っちゃいなさいよ』
「あ、ハーイ」
寿美はとりあえずお風呂を優先して入ることにした。
メールに関してはいずれ摩子や珠恵から返事が来るだろう。
多分明日のこととか他愛もないことを送ったから記憶に残っていないんだ。
寿美はそう結論付け、お風呂に入るために自室を後にした。

「ふう・・・いいお風呂だったよぅ」
新しいパジャマに着替えて自室に戻ってくる寿美。
短めの髪は乾かすのに手間がかからなくていい。
摩子ちゃんはきっと大変なんだろうなぁと思う。
つやつやの髪を手入れするのは大仕事だ。
でも、摩子ちゃんはお嬢様だから、もしかしてそういうのを手伝ってくれる人がいたりするのかも。
そんなことを考えてポフッとベッドに腰を下ろす。
その手が携帯電話に触れ、寿美は携帯電話に眼をやった。
そうだ・・・お声を聞かなくちゃ・・・
寿美はなぜかそんなことを思う。
なぜそんなことを思ったのかわからないが、声を聞かなくてはならない。
寿美はおもむろに携帯電話を手にとって開くと、ゆっくりと耳に当てる。
寿美の眼がすぐにとろんとうつろになり、まるで子守唄でも聞いているかのような心地よさを感じているようだった。
「はい・・・マザー。おやすみなさいませ」
パタンと携帯電話を閉じると寿美は布団にもぐりこむ。
そして携帯電話を握り締めたまま眠るのだった。

                            ******
「おはよう」
「おはようございます」
「おはよう」
いつもと変わらぬはずの登校時の出会い。
いつもと変わらぬはずの挨拶。
だが、何かが微妙に違っていた。
寿美も摩子も珠恵もどこかうつろな眼をしている。
そして三人とも一様に携帯電話を握り締めていた。

「あら?」
いつものように玄関付近で純玲の到着を待っている巻雲綾。
その眼がなんとなくふらふらと校門を通り過ぎていく三人の女子生徒に注がれる。
学校に入ってこないでどこに行くのかしら・・・
不思議に思ったが、知り合いでもないし声をかけるには遠すぎる。
どこかに寄ってからまた学校へ来るのかもしれない。
何せ朝礼まではまだ時間がある。
純玲ちゃんがその時間内に来てくれればいいのだけど・・・
くすっと笑みを漏らす綾。
今日はたぶんぎりぎりだろう。
何せ夕べは純玲の好きな深夜アニメの日。
間に合ってくれるといいのだけれど・・・
綾は息を切らせて走ってくるであろう純玲に思いを馳せていた。
先ほどの三人のことなど、綾にはもう思い出すことなどできなかったのだ。

                       ******

ふらふらと何かに導かれるかのように歩みを進めていく三人の少女たち。
いつしか彼女たちは無言でただ歩いていた。
学校を通り過ぎ、駅とも反対方向に歩いていく。
途中、いく人かの通りがかりの人々がいぶかしげにはしたものの、声などかけるはずも無い。
やがて三人は無言で人通りの少ない裏路地に入っていった。

寂れたビルディングの地下の廊下。
誰も周囲に人はいない。
廊下の左右には鍵のかかった部屋がある。
以前はアルコールを中心とした飲食店が数件入っていた地下店舗だが、今はいずれも空き店舗だ。
その廊下の突き当たりに三人は立っていた。
三人の少女たちは、無言で携帯電話を突き当たりの壁にかざす。
すると、彼女たちの持っていた携帯電話からまたしても機械の回路状のものが広がり、壁に向かって伸びていく。
回路状の筋は壁に到達するとそこで広がり始め、やがて漆黒の円形の回路図として形を形成する。
やがて、彼女たち三人は無言でその円形の回路図に向かって歩いていき、その躰がどうしたことか回路図の中に消えていった。
コンクリートの壁しかなかった地下の通路の突き当たり。
黒い回路図が消えた後には少女たち三人の姿はまったく消えうせていた。

                       ******

「ん・・・んあ・・・あれ?」
「ううーん・・・こ、ここは?」
漆黒の闇の中、少女たちがゆっくりと目を覚ます。
ふわふわして足元がおぼつかない。
何か宙に浮いているような感じがする。
「こ、ここはどこ?」
「わ、私たちは一体どこにいるの?」
「な、何なんですかここは?」
いきなりの事態に頭がパニックになる。
周りはまったく何も見えないし、手がかりも無ければ立つための床も無い。
ともすれば叫びだしたくなりそうな思いを寿美は必死に押さえつける。
「摩子ちゃん、珠恵ちゃん」
「寿美、摩子、ここは一体?」
きょろきょろと左右を見渡す珠恵にも、この状況は理解できないようだった。
「寿美さん、珠恵さん、とにかく落ち着きましょう。とりあえず三人とも無事なようですね」
摩子の言葉は二人に向けられたものであったが、彼女自身にも向けられている。
こんな上下左右の無い空間に突然放り出されれば、誰だってパニックになってしまうだろう。
それでも三人いるという心強さが、彼女たちを多少救っているのも確かであった。
寿美と珠恵は摩子の言葉にこくんとうなずくと、何とか三人の距離を縮めようと動いてみる。
だが、何か濃密な液体の中にでも漬けられているような感じがして、三人の距離は付かず離れずのままだった。
泳ぐようなマネまでして見せる珠恵だったが、それでもさっぱり近づかない。
会話もできるし、そう離れているわけではないのだが、お互いの手同士が微妙に届かないというもどかしい距離。
三角形の頂点のそれぞれで互いに手を伸ばしている光景は、普通街中でやっていればおかしな光景だったろう。
「無理だね」
「そのようですわ」
珠恵も摩子もため息をついて肩を落とす。
寿美も二人と触れ合えないことでまたしても恐怖感が募ってくるのを押さえ切れなかった。

『ふふふふふ・・・』
突然闇の中に不気味な笑い声が響いてくる。
一瞬顔を見合わせた三人は、その声が互いに発したものではないとわかり、周囲に眼を凝らした。
「誰? 誰なの?」
「誰なんですか? どこにいるんですか?」
寿美は恐怖に震えて声も出せないというのに、珠恵も摩子も不気味な笑い声に呼びかけている。
二人がいてくれて本当によかったと寿美は思った。

『ようこそ、可愛い娘たちよ』
闇の中から再び声がする。
そして、闇の中に巨大な黄色い切れ長の眼が二つ浮かび上がった。
「ひっ」
「きゃぁー」
寿美は思わず悲鳴を上げてしまう。
それは・・・その眼は紛れもなくあの携帯電話の液晶画面に映し出された眼に違いなかったからだ。
「あなたは一体誰なんですか? ここは一体どこなんですか? 私たちをどうするつもりなんですか!」
語尾を強くしてその眼に摩子が問いかける。
それは彼女たち三人の共通した思いだ。
こんなわけのわからない空間にはいたくない。
そもそもこれは現実なのかどうかもわからない。
『妾はマザー。ボードマザー。この暗黒の世を統べる闇機械軍団アクマシンの母』
「ボード・・・マザー?」
珠恵が思わず漏らした言葉に、それを肯定するかのように黄色の目が瞬きをした。
『妾はボードマザー。そして・・・そなたたちはこれよりそのような不完全な生命体であることを捨て、妾の可愛い娘として生まれ変わるのです』
「えっ?」
「生まれ変わる?」
互いの顔を見合わせる三人。
生まれ変わるとはどういうことなのだろう・・・
  1. 2008/02/15(金) 19:28:41|
  2. 魔法機動ジャスリオン
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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