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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

いったい誰だったんでしょうね

エルアラメインの戦いと米軍の北アフリカ上陸のトーチ作戦によって、ロンメル率いるドイツアフリカ軍団(正式にはイタリア軍なども含めたアフリカ装甲軍。のちアフリカ軍集団)の命運は定まりました。
ロンメルもドイツ本国に引き戻され、1943年5月にはフォン・アルニム指揮下で連合軍に降伏することになります。

それより先、連合軍は北アフリカ制圧後のヨーロッパ侵攻作戦として、ギリシャやイタリア、スペインまで含めた地域への侵攻を考えておりました。
しかし、一度北アフリカに兵力や物資を集積し、一気に地中海を横断してイタリアやギリシャへの侵攻という計画はいかにも無謀で、多くの兵力や物資が地中海の藻屑になりかねないものでした。

そのため、直接ヨーロッパ本土への侵攻ではなく、中継地点を確保するための上陸作戦を行い、そこを足がかりにしてヨーロッパへ向かうという二段構えの作戦が考えられることになります。
その中継地点として選ばれたのが、地中海に浮かぶ大きな島シシリー(シチリア)でした。

シシリー島は地中海の真ん中近い位置にある上に、イタリア半島を長靴に見立てたときのつま先に蹴られているといえるほどの近さを持っております。
シシリー島を確保すれば、イタリア半島への進撃に好都合であることは地図上からも明らかでした。

しかし、逆に言えばこれはドイツ及びイタリアの枢軸軍にとっても、シシリー島が連合軍に狙われることが一目瞭然ということになります。
当然枢軸軍は防備を固めてくるでしょう。
そんな硬い防御をしているところにのこのこと上陸などすれば、手痛い損害を受けるのは目に見えておりました。
何とか枢軸軍がシシリー島に防備を固めるのを阻止したい。
連合軍は頭を悩ませることになりました。
そして・・・ついにある作戦を行うことにしたのです。

1943年4月30日。
スペイン、カディスの海岸に一人の英軍将校の軍服を着た遺体が漂着します。
遺体は英軍海兵隊の大尉の軍服を着ており、救命胴衣を着けていたことから、どうやら乗っていた航空機が海上に不時着して投げ出されたあとで死亡してしまったもののようでした。

通常であれば戦争中でもあり、このような遺体が漂着するのは珍しいことではありませんでしたが、問題はこの遺体が鎖でつないだカバンを身につけていることでした。
何か、よほど大事なものが入っているに違いありません。

すぐにスペイン警察などの手で身元の確認と検死、所持品の確認が行われました。
すると、以下のことが判明したのです。

遺体は英国海兵隊のウィリアム・マーチン大尉。
死因は海水による溺死。
そしてカバンの中身は連合軍にとっては誠に重要な手紙が三通入っていたのでした。

当時スペインは中立国ではありましたが、スペイン内戦以降ナチスドイツとはわりと親密な友好関係を保っており、ドイツのスパイも多数暗躍しておりました。
彼らは中立国であるスペインに大使館を持つ英国やアメリカなどの情報を収集していたのです。
英国海兵隊ウィリアム・マーチン大尉の遺体漂着も、すぐに彼らの耳に入りました。
いえ、当のスペイン当局より情報が渡されていたのです。

ドイツのスパイは当然その手紙に関心を持ちました。
もしかしたら、何か重大な内容が記されているかもしれないのです。

手紙の入ったカバンはスペイン当局によって慎重に開けられ、中の手紙も開封されました。
のちにこの手紙もカバンも英国大使館に引き渡されるのですが、見た目には開けたことはまったくわからないようになっていたということです。

ですが、手紙の内容はスペイン当局の知るところとなりました。
そして、ドイツのスパイにも知られることになったのです。
その手紙の内容は驚くべきものでした。
連合軍の地中海方面における次の作戦目標が、サルジニア島及びギリシャであると記されていたのです。
ドイツ軍は重要機密の入手に狂喜いたしました。

ウィリアム・マーチン大尉は、アフリカの英国中東軍司令官アレキサンダー大将に宛てたもの一通と、英国地中海艦隊司令官カニンガム大将に宛てたものが一通、そして、連合軍最高司令官アイゼンハワーに宛てたものが一通の計三通の手紙をカバンに入れていたのです。
彼はその手紙を携えてアフリカに向かっている途中、事故によって海に投げ出され、溺死したに違いありません。
まさにドイツにとっては僥倖でした。

すぐさまドイツは情報の裏を取るべく、マーチン大尉の所持品などから大尉の足取りを推測。
ナイトクラブの半券などから時間的符合が一致し、手紙の信憑性は高いとみなされました。
ドイツは連合軍の侵攻は従来考えられたシシリーではなく、サルジニア及びギリシャであり、シシリー上陸こそ連合軍の欺瞞であると考えたのです。

これこそが連合軍の作戦でした。
連合軍は偽の手紙で、ドイツ軍にシシリーから目をそらせることに成功したのです。
英国海軍情報部の立案した「挽肉作戦」が成功した瞬間でした。

「挽肉作戦」は死体に手紙を持たせてドイツ軍を欺こうというものでした。
英国海軍情報部はさまざまな検証を行い、自然死もしくは溺死した死体であれば、航空機事故に見せかけて海に放出することが可能という結論を得ます。
一番の問題は死体の調達でした。
普通は親族が遺体を使用することなど拒否するでしょう。
あちこち奔走した挙句、ついに英国海軍情報部は一人の遺体を手に入れることに成功します。
死体の身元を明かさないことを条件に(おそらくは多額の報酬もあったでしょう)、遺体を使用してもかまわないという近親者が現れたのです。
死体の問題は解決しました。

次に情報部は架空の人物を作り上げました。
ウィリアム・マーチン大尉という人物です。
実在感を持たせるために女子部員による“恋人”からの手紙や、架空の“父親”からの手紙も持たせ、さらには時間的符合を一致させるためにナイトクラブの半券なども用意。
さらに念を入れて、マーチン大尉がうっかり者という側面を出すためにわざわざ身分証を“再発行”までしたのです。

名も知らぬ遺体はこうしてマーチン大尉となりました。
ドイツ軍はまんまとこの作戦にだまされました。
サルジニア島やギリシャで連合軍を待ち受けるよう指示したヒトラーの下に、連合軍がシシリー島に上陸を開始したことが伝えられるのは、1943年7月10日のことでした。
  1. 2008/02/03(日) 21:34:05|
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02月03日のココロ日記(BlogPet)

裏づけは金なり……

*このエントリは、ブログペットのココロが書いてます♪
  1. 2008/02/03(日) 08:16:03|
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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