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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

優勝ですー

やりました!!
北海道日本ハムファイターズ、二年連続のリーグ優勝です。
すごいですー。

新庄選手の引退、小笠原選手のFA、岡島投手の大リーグ移籍と戦力の大幅ダウンを余儀なくされ、戦力補強も思うようにできなかったため、前評判はあまりよくなかった日本ハムですが、その前評判どおりに4月は最下位に低迷します。

しかし、徐々に選手たちの歯車が合い始めたのか、最少得点を最小失点で守りきるという野球が定着。

怒涛の14連勝から一位を奪取、そのまま駆け抜けちゃいましたね。

やはり投の中心ダルビッシュの存在が大きいですね。
打の方ははかばかしくなくても、ダルビッシュを中心とした先発陣と強力な抑え投手陣で乗り切ったといえるでしょう。

球団史上初の連覇。
外国人監督初の連覇。
まさに「シンジラレナーイ」優勝でした。
北海道日本ハムファイターズの皆さん、おめでとうございます。


現在「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませ。
今日からは一般の方々のご参加も受付中です。
ぜひぜひ皆様の作品をお寄せ下さいませ。
お待ちしております。

それではまた。
  1. 2007/09/30(日) 19:25:32|
  2. スポーツ
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南軍の苦しさが・・・

今日もいつものように先輩とゲームの日。
先輩においでいただき、ゲームを楽しませていただきました。

今日はシックスアングル誌付録の「ゲティスバーグ1863」です。
これは雑誌付録のカプセルゲームで、クォーターマップ一枚であのゲティスバーグの戦いを表わしたゲームです。

このゲームは北軍は師団規模、南軍は旅団規模でユニット化され、北軍は軍団単位、南軍は師団単位で行動します。

移動そのものは全ての部隊が行なえるのですが、敵に接敵するような動きや、敵ユニットへの攻撃は軍団や師団を活性化させなくてはなりません。

活性化にはコマンドチットが必要なのですが、このチットが両軍共に6枚しかありません。
つまり、攻撃できる回数が両軍とも6回しかないということなのです。

北軍は各軍の連携の悪さを表わしたのか、一枚のチットで動けるのはほとんど一個軍団のみ。
一方南軍は一枚のチットで三個師団ぐらい動けます。

今回は初めてのプレイで、先輩が北軍、私が南軍を率いることになりました。
南部連盟の最高潮の瞬間を見せ付けてやるぞー!!(オー!)

とは言うものの、このゲームは移動して接敵するまでが大変です。
活性化させれば二倍の移動力が使えるのですが、それで接敵できなければ以後戦闘ができなくなってしまう可能性大なので、活性化チットはなるべく使いたくありません。
南軍は7月2日を全般的に移動に当て、翌7月3日に大規模な攻勢をかけるつもりでした。

7月2日の夕方、この日最初で最後の攻勢をかけます。
エーウェルのチットを使い、南軍左翼から攻撃です。
北軍の陣取る勝利ポイントヘクスに対して三方向からの大規模攻撃をかけました。

しかし、北軍が陣取るのは林の中の小高い丘。
林を掻き分け丘を登るわが軍の攻撃は戦力が半分になってしまう上、北軍には2戦力が追加されるというルール。
大規模攻撃にもかかわらず1:1にしかなりません。
結果は攻撃側の後退で終わりました。

南軍は翌日の攻撃に向けて夜間に部隊の移動を進めます。
左翼での攻撃が頓挫した今、南軍に残されたのは右翼からの攻撃により勝利ポイントヘクスを奪うことのみ。

7月3日、昼12時。
左翼の牽制攻撃に続いて右翼で大規模な攻撃を南軍はかけました。
チットを惜しげもなく投入して一大攻勢です。

しかし・・・南軍の攻撃は不首尾に終わりました。
やはり防御陣地に篭もる北軍に対し、南軍の攻撃は跳ね返されてしまったのです。

南軍は部隊の損失こそ少なかったものの、勝利ポイントヘクスを一つも奪うことができませんでした。
史実同様に南軍は負けたのです。
戦場から引き上げる南軍兵士たちは肩を落としておりました。orz

小さいゲームで、ターン数も10ターンしかない手軽なゲームですが、ゲティスバーグの戦いの雰囲気を感じられるゲームでした。
ただ、チットの数が少ないので、南軍は全体での攻撃を二回もやればチットがなくなってしまいます。
補給と兵力不足に悩まされ、北軍の頑強さにてこずったL・E・リー将軍の気持ちがよくわかるゲームでした。
南軍勝てるのかなぁ・・・

その後はいつものようにASL-SK1をプレイ。
シナリオS7を楽しみました。
こっちは勝ったぞーww

現在「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませ。
metchy様、林田相丘様の作品も掲載となりました。
素晴らしい作品ですので、ぜひお読みいただければと思います。

それではまた。
  1. 2007/09/29(土) 20:37:39|
  2. ウォーゲーム
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覚えている人いるかなぁ

もうずいぶん以前(2000年だったかな)になりますが、NECインターチャネル様より「人魚の烙印」というゲームがPS用ゲームとして発売されました。
やったことある人いるかなぁ。

航空機事故に巻き込まれた高校生の主人公とその幼馴染美月。
お互いの思いが通じて、晴れて恋人同士になった二人だったが、墜落したのは不気味な島魚返島(おがえりじま)でした。

生き残った二人はハワードと玲司という二人の男に助けられますが、島の住民にいきなり襲われます。

この島は邪神を祀っており、美月は儀式を行なわれて半魚人に・・・
主人公は美月を元に戻して島から脱出できるのか?

というシチュエーションのゲームなんですが、ゲームそのものはステージクリア型のシミュレーションRPGです。
結構きつめなバランスかと思いますが、それ以上に3Dマップが見づらいのが難点でしょうか。

でも楽しめましたねぇ。
ゲームとしては・・・なんですが、なんと言ってもシチュがいい。
恋人が邪教によって怪物化なんて萌えるシチュじゃないですか。(笑)

半魚人と化した美月は戦闘力もUPしますので、人間の意識があるステージでは頼もしい味方となってくれますが、後半では当然のごとく怪物化しようとする意識との戦いになりますし、もういや、殺してぇなんて言ってきます。

一応マルチエンドで、美月を救うことができずに殺してしまった主人公が、最終ステージで邪神のしもべとして復活した美月と戦うなんてのもありますし、美月とともに島を脱出するというエンドももちろんあります。

復活した美月は「私○○君のこと殺したいくらい好き。だから死んで」なんて言ってくれますし、脱出したエンドでも、「○○君、私水が飲みたいわ・・・魚返の水が・・・」なんてセリフで画面暗転というパタなので、私はすごく楽しめました。

惜しむらくは美月とともに邪神のしもべというエンドはさすがになかったので、それが残念でしたけど、よくこんなゲームを出せましたよね。
こんなゲームがまたでないかなぁ。


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素晴らしい作品ですので、ぜひお読みいただければと思います。

それではまた。
  1. 2007/09/28(金) 19:44:02|
  2. PCゲームその他
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優勝ができませんでした

昨日の対横浜戦で敗北したことにより、今年の阪神タイガースの優勝がなくなりました。

クライマックスシリーズへの進出はまだ可能性ありますが、シーズン一位=優勝ですので、優勝はなくなったわけです。

もし優勝すれば、あの「メークドラマ」以上の12ゲーム差からの逆転優勝であり、さらに得失点差で失点の方が多いにもかかわらず優勝するという前代未聞の優勝となったわけですが、さすがにそうは行かなかったということですね。

ことにここ数試合のJFKが打たれてしまうという状況は、一シーズンフル活動してもらったツケが出ているといって過言ではないでしょう。

今年はとにかく打線が打てなかったですね。
桜井選手や林選手、狩野捕手などの活躍はありましたが、今岡選手やシーツ選手あたりの一年間通しての不振が大きく響いてしまい、それが投手陣にも悪影響を与えてしまったように思います。

また先発投手に柱がいなかったことも大きいですね。
一年間通じての軸となる投手の不在は大きかったと思います。

この点に来年の補強ポイントがあると思うので、しっかり補強をしてもらい、来年また頑張ってもらいたいですね。

それにしても今年は連勝連敗が多かった気がするなぁ。
来年はがんばれー。


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素晴らしい作品ですので、ぜひお読みいただければと思います。

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  1. 2007/09/27(木) 21:06:04|
  2. スポーツ
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これでもかってほどの重装甲

第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約により、戦車の保有を禁じられていたドイツは、トラクターの名目でひそかに戦車を開発します。

軽量、軽装甲、軽武装の非力な戦車ではありましたが、訓練用戦車としては申し分なく、また、砲塔(銃塔)に搭載された二丁の機関銃は歩兵や騎兵相手なら充分すぎる威力を持つことでもあったため、この軽戦車は一号戦車と名付けられて正式採用されました。

一号戦車は初期のドイツ軍にとっては、まさに主力と言ってもいいものでした。
ポーランド戦はおろか、フランス戦、北アフリカ戦までも使われたのです。

しかし、一号戦車はやはり安く軽く作られていたために、装甲がかなり薄いものでした。
前面装甲で13ミリしかなく、ポーランド軍の対戦車砲はおろか対戦車銃や重機関銃ですら撃ちぬけるものだったのです。

そのことはポーランドとの戦争開始前からドイツ軍でもわかっていたことでした。
重防御の陣地を迂回して後方遮断する電撃戦が、まだ机上のプランだった頃、戦車の役割は歩兵支援をしながら敵陣に突入するというものでした。
敵陣には機関銃どころか、対戦車銃や対戦車砲が備えられているのは自明の理です。
一号戦車の装甲では歯が立たないことはわかりきったことでした。

そこで1939年12月。
ポーランド戦で予想通り多数の損害を出した一号戦車の改良がクラウス・マッファイ社に命じられます。
これは改良というよりは、ほぼ新造とも言うべきもので、一号戦車にできるだけの重装甲を施すことがその目的でした。

トーションバーサスペンションに挟み込み型の転輪配置と角型のボディ。
後のティーガーにも通じる形の重装甲な戦車で、前面装甲厚はなんと80ミリ。
四号戦車が50ミリだった頃ですから、まさにティーガー(前面装甲厚100ミリ)並だったのです。
側面も50ミリと重装甲であり、大戦初期であればほとんどの対戦車砲では歯が立たなかったことでしょう。

武装は一号戦車の改良型ということで機関銃が二丁だけ。
この軽武装がこの戦車の弱点となってしまいます。

この重装甲でありながら軽武装の戦車は、一号戦車F型と命名され、正式採用されました。

しかし、完成したのは1942年の春。
この頃には独ソ戦も始まっており、ソ連軍のT-34に煮え湯を飲まされていた頃でした。
三号戦車も四号戦車も砲身を伸ばして重武装しようとしている時期に、機関銃二丁の戦車では使える場面がほとんど限られてしまいます。

結局30両が作られただけで、製造は終了してしまいました。
やはり完成が遅すぎたのです。
1939年に存在していれば凄まじい脅威となったことでしょう。

完成した一号戦車F型は、8両が実戦参加しており、ソ連軍に捕獲されちゃったりしております。
機関銃だけじゃつらかったでしょうね。

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metchy様、林田相丘様の作品も掲載となりました。
素晴らしい作品ですので、ぜひお読みいただければと思います。

あと、このブログにちょこっとだけお遊びを入れました。
探してみて下さいませ。

それではまた。
  1. 2007/09/26(水) 21:03:53|
  2. 趣味
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新しいリンク先様です

寒くなってきました。

札幌ではありませんが、最低気温がついに氷点下になりましたし、大雪山系旭岳では雪が積もって初冠雪です。

これからどんどん冬になって行きますねぇ。
雪の季節も目の前です。
つい先日は暑いなぁって言っていたのになぁ。

このたび、新たに素敵なサイト様と相互リンクを結ばせていただきました。

雪月狼様が管理なされているサイト、「魔転狼 蒼月」様でございます。
URLはこちら。
http://snowolfyue.sakura.ne.jp/

「魔転狼 蒼月」様は、雪月狼様描かれるすごく素敵で可愛い少女たちのイラストと、その少女たちが淫らに悪堕ちするシーンのイラストがメインと言う素晴らしいサイト様です。

その上、そのシーンのSSまで書かれるというのですから、もう鬼に金棒以外の何者でもありません。

ぜひぜひ一度足をお運びいただき、その素敵な世界にどっぷりと浸って下さいませ。
きっと雪月狼様の織り成す世界に魅せられると思いますよー。

現在「海」祭り開催中です。
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素晴らしい作品ですので、ぜひお読みいただければと思います。

それではまた。
  1. 2007/09/25(火) 21:00:11|
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ノモンハン17

日本軍の夜襲は、確かに効果を上げつつありました。
歩兵の数で劣るソ蒙軍は、日本軍の勇猛な歩兵夜襲の前にたじたじとなる場面も多かったのです。

しかし、西岸のソ連軍火砲が連日日本軍を痛撃してきます。
日本軍としてはただ撃たれっぱなしで、対処のしようがありませんでした。

関東軍司令部も、ようやくそのことに目を向け始めました。
重砲支援の下で戦うソ蒙軍に対し、日本軍は重砲がまったく無い状態で戦っているのです。
これでは攻勢が上手く行くはずが無いのは当たり前でした。

そこで関東軍司令部以下は、このノモンハンの戦場に重砲部隊を展開することを決めます。
我が重砲でもって、ハルハ河西岸のソ連軍重砲陣地を徹底的に砲撃し、もって歩兵の進撃を容易にしようというのです。
7月6日にはすでに関東軍砲兵司令官内山栄太郎少将が戦場に着任。
砲兵団長として満州各地よりかき集められることになる重砲の指揮をとることになります。

そして、現地で指揮を取っている第23師団長小松原中将は我が目を疑う命令を受け取ります。
「夜襲を中止し、占領地から撤収して夜襲開始前の陣地に後退すること」

小松原中将は憤慨します。
歩兵がせっかく命を賭して奪った敵陣地を明け渡せなどという命令に従えるはずがありません。
部下の小林兵団長も前線の各部隊長もそんな命令は聞きたくないに違いないのです。

小松原中将は重砲支援には感謝するが、砲兵は着陣次第歩兵援護に当たってもらい、夜襲攻撃は続けるべきとの意見を出しました。
しかし、関東軍司令部と内山少将はこれに反対します。

「せっかく重砲隊が布陣しても、歩兵の攻撃に恐れをなしたソ連軍砲兵が後退して新たな陣地に布陣してしまっては砲弾が届かなくなる。ここは一つ敵重砲を叩き潰すまでは歩兵の攻撃は控えられたい」
これが関東軍司令部と内山少将の結論でした。
関東軍司令部の命令とあれば従わないわけには行きません。
小松原中将は涙を飲んで各部隊に後退命令を出しました。

歩兵部隊の中でも山県大佐の第64連隊は、あと少しでハルハ河とホルステン河の分岐点、通称川又にかかるソ蒙軍の橋に手が届く位置にまで進出していたところでした。
武器弾薬も乏しくなってきて、戦死傷者も多く出してはいましたが、ソ連軍の戦車を数十両、ソ蒙軍の兵士も数多く倒し、兵士たちの士気はまさに最高潮といったところでした。
山県大佐にしてみれば、ここで砲兵支援を受けて突撃すれば、川又を抑えることができ、ソ蒙軍の退路を断つことができると思えるものだったのです。
そのような状況でしたから、後退命令はまさに冷水を浴びせかけるものでした。

山県大佐も上司の小林兵団長も関東軍司令部の命令に憤慨し、泣く泣く部隊を後退させます。
後知恵ではありますが、この後退は高くつきました。

7月14日。
日本軍各部隊は夜襲前の陣地線に後退。
戦場に一瞬の静寂が訪れます。

関東軍司令部は各地から重砲をかき集めまわります。
日本本土からも重砲が送られ、野戦重砲兵第1連隊の15センチ榴弾砲16門、独立野戦重砲兵第7連隊の10センチ加濃砲(加濃砲とはCANNON:カノン・キャノンに対する当て字で直射を主とする大砲のこと。対戦車砲もCANNONの一種)16門がノモンハンの戦場に到着します。
これに関東軍独自の穆稜(ムーリン)重砲兵連隊の15センチ加濃砲6門と、野砲兵第13連隊と独立野砲兵第1連隊が加わり、合計重砲38門軽砲44門が集結しました。
弾薬は2万8千発を用意して、まさに圧倒的火力でソ連軍重砲を撃滅しようとしたのです。

砲兵団の布陣は7月22日までかかりました。
そして、翌23日、満を持した関東軍の一大砲撃が始まったのです。

関東軍は自信満々でした。
2万8千発もの砲弾を用意し、各砲の基準数の五倍の砲弾を割り当てていたのです。
ソ連軍の重砲陣地は粉々になるはずでした。

しかし、近代戦においては2万8千発の砲弾など微々たる物でした。
日露戦争当時を基準に考えられていた各砲の基準砲弾数など、近代戦には無意味だったのです。

7月23日、24日の両日。
日本軍砲兵団は準備した2万8千発の大部分を消費しておりました。
しかし、ソ連軍の砲兵火力は一向に衰える気配を見せませんでした。

理由は単純でした。
日本軍の火砲の半数以上が、ソ連軍火砲陣地まで射程が足りなく届かなかったのです。
届く重砲は半数以下の38門。
それらは確かに必死でソ連軍火砲陣地“と思われる地域”に砲弾を送り込みました。

ですが、ソ連軍の火砲陣地はハルハ河西岸の台地上にありました。
いくら東岸の高い位置に観測所を設けても、日本軍砲兵は敵火砲陣地を視認することはできなかったのです。
視認できないものに砲弾を当てるのはまぐれ当たりを期待するしかできません。
確かにいくらかのまぐれ当たりはあったでしょうが、全体の砲火力を減殺するには無理がありすぎました。

関東軍は観測気球も使ってみますが、上空の制空権がこの頃からソ連軍側に傾き始めておりました。
関東軍の航空部隊も連日出撃してはおりましたが、パイロットの補充も交代要員もいない状況では、疲労が蓄積してやがて落とされてしまいます。
ソ連軍は初期の頃からいたパイロットを教官として、新たに送ったパイロットを訓練し前線に投入します。
ソ連と日本の後方支援能力の差がここでも顕著に現れ始めていたのでした。

そのため観測気球は満足な観測ができずに使用不能に追い込まれます。
砲兵団によるソ連軍砲兵力の撃滅は絵空事に終わりました。

その18へ


現在「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませ。
metchy様、林田相丘様の作品も掲載となりましたので、お楽しみに。

それではまた。
  1. 2007/09/24(月) 20:42:32|
  2. ノモンハン事件
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ASL三昧

今日は札幌歴史ゲーム友の会様に顔を出させていただきました。

私がお伺いした時には、すでに二ヶ所で対戦が始まっておりました。
HIRO様とMどりっひ様が「アンティータム」を。
札幌辺境伯様と辻代議士様が「The'45」をプレイ中でした。

私は今日も6ゾロ様とASL-SKをプレイさせていただきました。

第一戦はSK3のシナリオS23。
このシナリオはマーケットガーデン作戦における英軍部隊に対する独軍の突破戦闘を扱ったものです。

独軍には三号突撃砲が三両、英軍には57ミリ対戦車砲が二門出てくるのですが、車両の戦い方を見せていただくいいチャンスだと思い、今日も6ゾロ様に独軍を、私が英軍担当ということでやらせていただきました。

結果は、英軍の対戦車砲が三突を一両破壊したものの、独軍の突破を許してしまいゲームセット。
負けました。

昼食後に第二戦。
今度は歩兵同士の戦いであるSK1用のS8シナリオ。
独軍の守る村を突破する米軍パラシュート部隊というシナリオです。
今度は私が米軍を、今日も6ゾロ様が独軍を担当します。

今日も6ゾロ様は私の予想に反して部隊を思い切りよく後退させ、私から見てボードの右側に集中させます。
おかげで左側の部隊は順調に進撃するものの、右側から進入した部隊がなかなか進めません。

最後は独軍の射撃によって突破のための兵力が失われて終了。
最終ターンまで頑張ったんですが勝てませんでした。

少し置いて第三戦。
砲兵器を使うSK2用のS14シナリオです。
町に陣取る二門の88ミリ高射砲を中心とした独軍に対し、バズーカを抱えた米軍が突破するシナリオです。
これはダイスで陣営を決め、私が独軍、今日も6ゾロ様が米軍を担当しました。

独軍の88ミリ砲はそれなりの活躍はしたものの、米軍の射撃に操作班が6ゾロを出して除去というのを二門とも行なってしまい、88ミリ砲が無力化。
米軍の突破を防ぎきれずに負けました。

結局三戦やって三連敗。
彼我の実力差を思い知らされた対戦となりました。

しかし、ASLトーナメントの実力者今日も6ゾロ様との対戦はすごく勉強になり、またすごく楽しめるものでした。
また、歩兵のみ、砲、車両とバラエティに富んだシナリオをプレイさせていただき、それぞれの楽しさも垣間見ることができました。
この場を借りてあらためて今日も6ゾロ様に感謝を述べさせていただきます。
楽しかったぁ。


現在「海」祭り開催中です。
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それではまた。
  1. 2007/09/23(日) 20:20:48|
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パリは遠すぎた?

今日はいつもの先輩のほかに、もう一人大学時代の後輩が訪ねてきてくれました。
彼も昔はウォーゲーマー。
三人で久し振りにゲームを楽しむことにします。

選んだお題は「赤い夕陽のナポレオン」CMJ52号付録。

このゲームは連合軍(ロシア、プロイセン、オーストリア)がボヘミア軍とシレジア軍に分かれているので、それぞれを一人のプレイヤーが受け持つということで、三人プレイと相成りました。

私は相変わらず窮地に陥った皇帝ナポレオン。
一方、先輩と後輩の二人が連合軍を担当します。
先輩がブリュッヒャー、後輩がシュワルツェンベルグです。

私はまず部隊が分断しているブリュッヒャー軍に攻撃を開始。
皇帝ナポレオン直卒の+2修整を利用して大ダメージを与えるべく戦力を集中します。
しかし、ブリュッヒャー軍に大きなダメージを与えることはかなわず、単に後退させただけでした。

シュワルツェンベルグ軍の慎重さに、チャンスと見たナポレオンは今度はシュワルツェンベルグ軍を攻撃。
いくらかの損害を与えると同時に、モルティエとの連絡を回復します。

連合軍は主攻をブリュッヒャー、助攻をシュワルツェンベルグとして、ブリュッヒャーにはパリ侵攻及び都市開放に当たらせ、シュワルツェンベルグはナポレオン及びフランス軍を足止めする作戦に出ました。
ナポレオン他数個軍団が、シュワルツェンベルグ軍に包囲され、足を止められてしまいます。

ZOCtoZOCが可能なゲームですので、包囲されても壊滅はしないのですが、それでも足が止められるのはつらく、シュワルツェンベルグに関わりあっている間にブリュッヒャーは着実に都市を落としていきます。

しかし、連合軍はどちらかの軍しか動けないルールのため、ブリュッヒャーが動くときにはシュワルツェンベルグが動けないのを利用し、ナポレオンはシュワルツェンベルグの包囲から脱出。
ブリュッヒャーに落とされた都市を取り返すべく攻撃します。

以後は一進一退。
連合軍が都市を一つ取れば、ナポレオンが都市を一つ取り返すという具合に最終ターンまでもつれ込みました。
最後はパリ近郊にまで連合軍が進出するも、勝利条件を満たせなかった連合軍が敗北。
パリを守りきった(ゲーム上では)フランス軍が勝利しました。

しんどい戦いでした。
このゲームはユニットが壊滅することはまずないので、いかに都市を落とした後保持するかが鍵となります。
ナポレオンは都市を落とされてもどうにか奪還して、連合軍との都市数の差を一定にしておく必要があります。
今回はどうにかそれが上手く行ったということでしょう。

その後は三人で「SS第三帝国」CMJ72号付録をプレイ。
いわば単なるすごろくなので、わいわいと楽しくやりました。
今度は何をやるかなぁ。


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  1. 2007/09/22(土) 19:43:37|
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五つの力を一つに合わせ

第二次世界大戦中の西側連合国の主力戦車といえば、M4戦車であることは皆様異論の無いところでしょう。
傾斜した前面装甲に直立した側面装甲。
高い車高に丸っこい砲塔。
どことなくユーモラスさを感じさせるM4戦車は、実に5万台もの数が作られて、連合軍の数の象徴でもありました。

厚い装甲板に囲まれた重い戦車を動かすには、高出力のいいエンジンが必要ですが、第二次世界大戦前後に開発された戦車には航空機用のエンジンを流用しているものが多くありました。
航空機用エンジンは軽量でありながら高出力のものが多かったからです。

M4も航空機用の星型エンジン(シリンダーを放射状に配したエンジン。前後のスペースが少なくてすむ)を後部に搭載したため、車高が結構高い戦車になってしまいましたが、機動力は満足できるものを確保できました。

ところが、アメリカの工業力をもってしても、航空機の増産にエンジン供給が追い付かなくなってくる可能性がありました。
航空機用エンジンを使ってM4を作ることができなくなるかもしれなくなったのです。

そこで、M4は航空機用星型エンジンに代わるエンジンを載せるようになりました。

トラック用ディーゼルエンジンを二基載せたM4A2。
戦車用に新たに作られたガソリンエンジンを積んだM4A3
そして、あろうことか既存の大型車用ガソリンエンジンを星型に五基無理やり束ねた30気筒エンジンを搭載したM4A4などが作られたのです。

この無理やり五基束ねたエンジンはクライスラーA57エンジンといい、当然のごとく巨大なエンジンでした。
初期型はまさにただ束ねただけという感じのエンジンで、冷却水も五箇所それぞれに入れなくてはならないほどでした。
当然、整備には手間が掛かるものであり、軍用車両のエンジンとしてはあまり褒められたものではありません。

さらに、もともとのM4戦車のエンジンルームに入りきらない大きさだったため、単なるエンジンの載せ替えというわけには行かず、車体を後部に伸ばした専用車体となってしまいました。
そのために写真などでも他のM4系列とは比較的見分けが付きやすい車両となりました。

A57エンジンそのものは、幾度かの改良もあって、機械的問題点はほぼ潰されていたいいエンジンだったのですが、やはり整備に手間が掛かる点は否めなく、米軍は実戦部隊への配備を断念します。

訓練用車両としてしか使い道が無いと思われたM4A4でしたが、ドイツ軍と激しい消耗戦を繰り広げていた英軍がこのM4A4に目をつけます。

ほかのM4系列は米軍部隊への配備が優先されますが、M4A4なら米軍は使いません。
作れば作られただけ英軍が引き取ることができるのです。
問題となる整備のことも、整備兵を一所懸命に訓練すれば乗り切れると考えたのでした。

M4A4は最終的に約7500両が作られました。
そしてその95%が英軍へのレンドリースにまわされたのです。

英軍にとってはM4A4はまさに救いの神でした。
独軍の四号戦車を上回る(五分五分という意見もあるかもしれませんが)優秀な戦車を、大量に手に入れることができたのですから。
整備の問題もそれほどなく、英軍整備兵にとっては逆に信頼性の高い戦車という評判さえ受けました。

後には主砲を英国製17ポンド砲に換装したファイアフライのベース車両ともなり、まさに英軍機甲部隊の中心戦車として活躍したのでした。

捨てる神あれば拾う神ありと言うところでしょうか。


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  1. 2007/09/21(金) 20:57:10|
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こんな程度なのに遅すぎた

まだまだ世界的に戦車の価値がよく理解されていなかった時期において、日本帝国陸軍は研究の末に八九式中戦車(完成当初は軽戦車)を完成させました。

完成当時としては世界的に見ても戦車砲としては大口径砲だった57ミリ砲を搭載したり、乙型では空冷ディーゼルエンジンを搭載したりなど見るべき所も多い戦車ではありましたが、やはりいろいろな問題点も抱えていた戦車ではありました。

そこで帝国陸軍は、新たに九七式中戦車を開発、採用します。
この九七式中戦車も完成当時(1937年)では、世界最高水準の戦車でした。
(ドイツでは二号戦車を量産中、四号戦車が試作が完成した頃)

支那事変から日中戦争、そして太平洋戦争の緒戦にかけて、八九式と九七式の両戦車は日本軍の中心戦車として活躍しました。
しかし、機関銃陣地攻撃用の短砲身57ミリ砲は初速が低く、榴弾砲としてはさほど問題なかったものの、対戦車砲としては貫徹威力が低すぎました。
その問題はノモンハンでのソ連軍戦車との戦いや、太平洋戦争初期においての米軍戦車との交戦で明らかになります。

そこで日本軍は装甲貫徹力の高い速射砲を戦車の主砲として搭載することを考えました。
研究中だった47ミリ対戦車砲を戦車搭載用に改良した一式47ミリ戦車砲が作られ、これを装備した砲塔を九七式中戦車に載せたのです。
これが九七式中戦車改でした。

この47ミリ砲は米軍のM3軽戦車を撃破するのに充分な威力を持ってはおりましたが、いかんせん登場時期が遅く、九七式中戦車改が戦場に姿を表わすのは昭和17年(1942年)のことで、この頃すでに戦場にはM4中戦車が姿を現し始めていたのです。

日本軍は九七式中戦車改の装甲を少し厚くしたり、量産効率をよくするために溶接にしたりした一式中戦車を作りますが、主砲は47ミリ砲と変わらなかったため、M4にはかないませんでした。

M4に対抗できる戦車を作らなくてはならない。
そう感じた陸軍は、手っ取り早く作るために、M4の装甲を撃ち抜ける九十式野砲を戦車砲として載せることにします。

九十式野砲は口径75ミリで、装甲貫徹力はそこそこあり、M4の正面装甲を近距離では撃ち抜けるものでした。
この九十式野砲をほとんど丸ごと車輪と脚だけ外して新型砲塔で周囲を囲み、一式中戦車の車体に載せたのが三式中戦車でした。

野砲丸ごとの砲塔はやはり巨大で、スタイル的にもバランスは悪いのですが、もはやなりふり構っていられなかったんですね。
装甲は前面50ミリ、側面25ミリと、戦争後半の四号戦車よりも薄く、やはり正面切っての撃ち合いだと分が悪かったと思われます。
何より問題だったのは、手っ取り早く戦力するために野砲改造で済ませたり、一式中戦車の車体を使ったにもかかわらず、その戦力化が遅すぎたことでした。

量産開始が昭和19年(1944年)の12月では、もはや量産しようにも資材も燃料もなく、戦場に送る手段もありませんでした。
ちなみに1944年12月というと、ヨーロッパではケーニッヒティーガーを主力としたアルデンヌ攻勢(通称バルジの戦い)が行なわれていた頃です。

それでも、量産しやすかった三式中戦車は終戦までに160両ほどが製造され、本土決戦用に温存されました。
終戦により、ついにM4との交戦のチャンスは訪れなかった三式中戦車は、二両だけが残され、スクラップにされたのでした。
とにかく登場が遅すぎたんですね。

現在「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませ。

それではまた。
  1. 2007/09/20(木) 20:25:06|
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ナイロンクイーン

いつもいつも当「舞方雅人の趣味の世界」においでくださり、誠にありがとうございます。

皆様のおかげで、本日当ブログが80万ヒットを迎えることができました。
夢の100万ヒットまであと20万にまでこぎつけることができました。
本当に本当にありがとうございます。

これからもできるだけこのブログを続けて行こうと思います。
趣味のミリタリーやゲームネタ、そして、皆様にとても支持していただいておりますSSをこれからも書き綴って行こうと思いますので、どうか応援をよろしくお願いいたします。

と、いうことで、短編を一本掲載いたします。
楽しんでいただけると嬉しいです。


「ナイロンクイーン」

うねうねとレンズの向こうで蠢く物体。
伸びたり縮んだりと脈動を繰り返す。
真っ黒いツヤ無しのアメーバと言っていいだろう。
まさに待ち望んでいた結果が目の前に動いているのだ。

「成功だわ。見て」
顕微鏡の接眼レンズから目を離し、研究所主任の歴木梨菜(くぬぎ りな)が興奮気味に周りに言う。
少しきつめの顔立ちに今は満面の笑みを浮かべていた。
すぐに周囲の研究者たちも入れ代わり立ち代わり顕微鏡を覗き込む。
「おお・・・」
「これは・・・」
彼らにも今目に見えているものが半ば信じられない思いである。
無機物と有機物の融合。
ナイロン繊維を自在に操る生き物とも言うべき存在が、そこに蠢いていたのだ。
「これは画期的な発明よ。衣服に対する認識が変わるわ」
梨菜は嬉しそうに両手を広げる。
研究所主任とはいうものの、まだ若い彼女の腕はさほど信用されていなかった。
この成功は長い間の苦労が報われたといっていい。
このナイロン細胞が自在に増殖したり形を変えたりすることで、衣服はいかようにもなるのだ。
普段着を着ている状態から水着に変化させて水に入るなどということも行えるようになる。
気分次第でファッションを変えることが可能なのだ。
「おめでとうございます。主任」
目を輝かせてうっとりと梨菜を見つめてくる白衣をまとった女性。
梨菜の助手を務める一人、香嶋織江(かしま おりえ)だ。
まだ若く、いわば雑用係のような位置づけだが、梨菜を尊敬しており、助手として献身的に努めている。
幼い顔つきが可愛らしく、大きめの目がくりくりとしていた。
「ありがとう織江ちゃん。後はコントロールの問題ね」
梨菜は織江の肩に手を置くと、これからの研究方針を思い描く。
第一歩は成功した。
この後も上手く行って欲しいものだわ。
梨菜は切れ長の目を細め、薄く笑みを浮かべた。

「ふう・・・あとはいかにイメージどおりに形作らせるかと色よね。まさか全部黒一色ってわけには行かないし・・・」
研究員たちが帰った深夜の研究室で、梨菜は一人ため息をつく。
第一段階の成功は無論喜ばしいことだったが、これからもやらねばならないことは目白押し。
休まる暇など無いのだ。
あのナイロン細胞、いや、ナイロンセルとでも呼ぼうか。
そのナイロンセルを増殖させ、形と色を自在に変化できるようにする。
それはまさにファッション界だけではなく、あらゆる生活をいっぺんさせるだろう。
服を脱ぐことなく着替えることができるようになるだけではなく、たとえば突然の火災に着ているものを耐火服にしたり、重い宇宙服の代わりに全身タイツのような軽いもので済ませることができたりと、応用は幅広いはず。
それだけに梨菜はこの発明が気に入っていたし、誇りにも思っていた。
「うふふ・・・ナイロンセルはこれからもっともっと広まるわ」
そう言って嬉しさに目を細める。
「さて・・・もう一仕事する前にコーヒーでも淹れようか」
んっと伸びをして立ち上がる梨菜。
そのまま研究室を出てキッチンに向かう。
静かになった研究室で、何かがパキッと音を立てた。

「ふんふんふん・・・」
お気に入りの曲を口ずさみながら、湯気の立ったコーヒーカップを片手にドアを開ける梨菜。
「えっ?」
部屋に入ったとたんにその足が止まる。
「な、何これ・・・」
梨菜は驚いていた。
研究室の床に水溜りのようなものが広がっている。
それは真っ黒でまるでコールタールのようなものだ。
見ると、ナイロンセルを培養していたビーカーを納めたケースが割れ、そこから液状のものが床に垂れて広がっていたのだ。
「ま、まさか・・・これはナイロンセル? どうしてこんなに?」
梨菜はコーヒーカップを脇のテーブルに置くと、近寄ってしゃがみこむ。
確かに彼女はナイロンセルを培養しようとはしていたが、たった数時間でこんなに増殖するはずが無い。
だいたいそのための養分はどうしたのか?
「これって本当に?」
黒いコールタールのような液体に梨菜は恐る恐る指を近づける。
人差し指で掬い取ってみると、ねばねばするというよりはすべすべした感じだ。
そう、あのナイロンストッキングを手に取ったような肌触りなのだ。
「これってやっぱり・・・ナイロンセルだわ・・・」
床にこぼれたナイロンセルを見下ろす梨菜。
これをどうやって掬ったものかと思案する。
「雑巾じゃ吸い取れないだろうし・・・スコップのようなもので掻き取るしかないか・・・」
ため息をついて立ち上がる梨菜。
だが、用具を取りに行こうとしたとたん、足をグッと引っ張られる。
「えっ?」
慌てて足元を見ると、右足に液状のナイロンセルが張り付いている。
「ええっ?」
梨菜は急いで右足を引き離そうとしたが、液状のナイロンセルはグニューッと糸を引くようにへばりつき、放れようとしない。
「な、何よこれ!」
梨菜は慌てて手で拭い取ろうと右手を伸ばす。
「ヒッ」
小さな悲鳴が口から漏れる。
伸ばした梨菜の右手は、先ほどナイロンセルを掬った人差し指と擦りつけた親指が、そこだけ薄いナイロンの手袋をしたように黒く染まっていたのだ。
「な、何これー!!」
梨菜はもう何がなんだかわからなくなり、必死で右手を振って払おうとする。
しかし、右手の先は徐々に手の平や甲まで薄い皮膜のようなものが広がり始め、すべすべした真っ黒なナイロン手袋に包まれていく。
「い、いやー!!」
右足からも液状のナイロンセルは這い上がり始め、彼女の履いていたパンプスはぐずぐずと溶けるように消えて行く。
「だ、誰か助けてー!」
必死で逃げようとするものの、ナイロンセルに捕らわれた右足は言うことを聞かず、逆に引きずり込まれるように梨菜の躰は液状のナイロンセルに近づいていく。
「いやぁー」
白のソックスもまるで吸い込まれるように黒い皮膜に取り込まれていき、梨菜の右足は徐々に真っ黒なタイツを穿いたような姿に変わっていく。
「あ・・・ああ・・・な、何これ・・・」
梨菜は悲鳴を上げることができなくなってしまっていた。
すべすべのナイロンが右足と右手を覆い始めると、そこからえも言われぬ快感が押し寄せてきたのである。
まるで皮膚を優しく愛撫されているよう。
ナイロンが皮膚全体に浸透してくるようなのだ。

いや、それはしてくるようではなく、本当に浸透してきているのだった。
ナイロンセルは梨菜の躰に広がって行き、彼女の全身を覆いつくして行く。
すでに両足に広がった快感で、梨菜はまるで呆けたように感じてしまっていた。
じわじわとナイロンセルが彼女の両脚を黒いタイツに変えて行く間、彼女は何度もエクスタシーを迎えていた。
ショーツには染みが広がり、後から後から愛液がにじみ出てくる。
口元には涎が垂れ、悲鳴を上げることなど不可能だ。
「あ・・・あああ・・・いい・・・いいよぉ・・・」
全身を走る快感になすすべもなく翻弄され、その間にもナイロンセルは梨菜の全身を覆って行く。
白衣とスカートは分解されて吸収され、ナイロンセルの養分になっていく。
梨菜の体表組織はナイロンセルと置き換わり、皮脂なども養分として取り込まれる。
服も下着も無くなって、首から下は真っ黒な全身タイツへと変貌する梨菜。
やがてナイロンセルは梨菜の首を伝い、顎から口の中へと進入する。
すでに抵抗のすべを持たない梨菜は、流れ込むままにナイロンセルを飲み込んでいった。

のどを滑り降りたナイロンセルは、梨菜の体内をも侵食して行く。
梨菜の体内は徐々にナイロン化し、ナイロンと人間の融合した新たなる生命体へと変化していった。
「がぼっ! ゴホッ!」
梨菜は口も鼻も覆われ、やがて漆黒のナイロン皮膜は梨菜の頭部全てを覆いこむ。
梨菜の躰はすべすべのナイロンの全身タイツに包まれてしまったのだ。

真っ黒なのっぺらぼうになってしまった梨菜は、静かに動きを止めると、やがてその躰がぐずぐずと崩れていく。
そして先ほどまで床に広がっていた真っ黒な液体のように液状になると、中心からするすると上に向かって太い紐のようなものが伸び始めた。
紐はやがて梨菜の身長ほどの高さで止まると、今度は膨らみ始めて人の形を形作る。
それは真っ黒な全身タイツを着た梨菜の形を形作り、足元の液体は全てその中に吸い込まれていった。
すらっとした女性らしい美しいラインをした真っ黒な全身タイツを着たデッサン用の木製人形。
彼女はまさにそんな感じに見えた。

「ピルルルルルルー」
やがて彼女の口だった辺りから奇妙な声が発せられる。
それは歓喜の声。
新たな生き物となった自分の誕生を祝う声だった。
「ああ・・・なんて素晴らしいの? 私の躰は全てナイロンセルに置き換わった。今の私はナイロンセルウーマン、ナイロンウーマンなんだわ」
くねくねと自分の躰を愛しそうに撫で回す梨菜。
すりすりとナイロン同士の擦れ合う音がかすかに響く。
梨菜は変わってしまった。
ナイロンセルによって体の細胞を変えられてしまったのだ。
だが、それはむしろ喜ぶべきこと。
彼女にとってはこれ以上無い幸福を味わっていたのだった。
「ピルルルルルルー」
梨菜は喜びの声を上げる。
ナイロンセルが彼女に命じるのだ。
仲間を増やす。
それは梨菜自身の望みにもなっていた。

「おはようございます」
いつものように出勤してくる香嶋織江。
朝が弱い彼女は、わりと時間ぎりぎりに来ることが多い。
白衣に着替えて研究室に行けば、いつもは梨菜や他の研究員たちが仕事に取り掛かろうとしているような時間だった。
だが、今日は勝手が違っていた。
いつになく研究所が静まっている。
研究員たちの話し声もまったくしない。
研究用器具の音すらしないのだ。
「何かあったのかしら・・・」
いつものようにロッカーに荷物を入れ、白衣に着替えて廊下を進む織江。
その途中で妙なにおいがする。
「えっ? なに、このにおい・・・」
嗅いだことがあるようでいて思い出せないようなにおい。
「何だろう・・・ガスとかじゃないし・・・」
何か危険な気体かとも思ったが、それなら感知器や警報機が働いても良さそうだし、うっすらとしたにおいなのでよくわからない。
織江はとにかく研究室に向かい、ドアを開けた。

「ヒッ」
織江は目の前に広がっていた光景に息を飲む。
研究室は赤黒かった。
そしてむっとするあのにおいが立ち込めていた。
あちこちに倒れている研究者たち。
そのいずれもが白衣を赤く染めている。
あちこちを何かで突き刺されたような痕があり、床にも赤黒いものが広がっていた。
血だ・・・
あのにおいは血のにおいだったんだわ。
織江はあまりのことに声も出ない。
悲鳴を上げたくてもできないのだ。
これは何?
これは夢?
私は悪い夢を見ているんだわ・・・

「おはよう、織江ちゃん」
背後から優しい声がする。
いつも聞きなれた主任の声。
織江はホッとすると同時に、中の惨状を知らせるべく振り返る。
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」
悲鳴が上がった。

目の前にいるのは真っ黒なのっぺらぼう。
まるで影が形をもって起き上がったかのよう。
胸の膨らみや腰の括れがこの真っ黒な存在が女性であると思わせる。
「あ・・・あああ・・・」
一歩二歩とあとずさる織江。
「ピルルルルルルー、怖がらなくてもいいのよ織江ちゃん」
真っ黒な人影が言葉を発する。
口はまったく存在しないし目もありはしない。
ただ、ぼんやりとその形が浮き出ているだけといった感じだ。
でも、その人影は言葉を出した。
それは織江にとっては尊敬する主任の声だった。

「主、主任・・・主任なんですか?」
恐る恐る織江は尋ねる。
よく見ればこれはナイロンの全身タイツではないだろうか・・・
主任は黒い全身タイツを着て私をからかっているのではないだろうか・・・
いつも朝が遅い私への戒めとして・・・
でも・・・
でも、それじゃ大川さんや石黒さんは・・・
どうして血まみれなの?
背後の惨状を考えると、これがからかいなどではないことがよくわかる。
いったい何がどうなっているの?
織江はこんなところから一刻も早く逃げ出したかった。

「ピルルルルルー、ええ、私よ。遅いじゃない、織江ちゃん」
いつものように遅刻寸前だった織江を軽く咎めるような主任の声。
でも、それはこの異様な姿の人影から発せられているのだ。
「主任・・・本当に主任なんですか? いったいその格好はどうしたんですか? 大川さんや他の人たちはどうしちゃったんですか?」
織江はじわじわと後ろに下がる。
だが、ぬるっとした血溜まりに足を取られ、思わずよろめいた。
「織江ちゃん。怖がることは無いわ。あの男たちは私が殺したの。すぐに綺麗に片付けるつもりだったけど、その前に織江ちゃんが来ちゃったってわけ」
「ええっ?」
主任が殺した?
どうして?
どうしてそんなことを?
織江は信じられない。
あの聡明で優しい主任がどうして?
「男たちってだめねぇ。どうやらY染色体がナイロンセルには馴染まないらしいわ。同化しようと思ったけど、苦しむだけだし見苦しいから殺したわ」
「ナイロンセル? 同化?」
織江には何がなんだかわからない。
わかっているのは目の前の漆黒の全身タイツの女がどうやら主任であり、他の男性職員を殺してしまったらしいということ。
逃げなきゃ・・・
ここにいてはいけない・・・逃げなきゃ・・・
織江は逃げ道を探すべく視線を動かした。

「うふふふふ・・・織江ちゃん、私は生まれ変わったの。ナイロンセルによってナイロン生命体に変化したのよ。今の私は人間じゃないの。ナイロンウーマンとでも呼んでちょうだい」
ゆっくりと織江に近づいてくる真っ黒な梨菜。
織江は必死で逃げ道を探すが、入り口は梨菜がしっかり押さえてしまっている。
窓は遠いし、死体を踏み越えて行ける自信は無い。
まさに八方ふさがりの状態だった。
「ナイロン・・・ウーマン?」
織江は噛み締めるように梨菜の言葉を復唱する。
目の前の黒い人間はもはや主任では無いというのか?
そんなことがありえるのか?
「そう。私はナイロンウーマン。とても素晴らしいのよ。美しいでしょ、この躰? あなたは同化できるかしらね」
「えっ? いやっ」
突然目の前の黒い女の両手が伸びる。
それはまるでゴムの触手のようにうねうねと伸びて織江の躰に絡みつく。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ」
大声で悲鳴をあげ、必死に逃れようともがく織江。
だが、躰に何重にも絡みついた梨菜の両腕は解くことなどできはしない。
「いやぁっ! 助けてぇ!」
泣き叫ぶ織江。
その躰が徐々に梨菜の方へ引き寄せられる。
「ひいぃっ!」
「怖がることは無いの。ほんのちょっと苦しいけど、そのあとはもう気持ちよくてたまらなくなるのよ。ピルルルルルルー」
織江の顔に真っ黒な無貌の顔が迫る。
「いやぁっ!」
織江は必死にいやいやをするものの、無貌の顔がその口に覆いかぶさり、やさしくキスをした。

床に横たわる織江。
躰が小刻みに震え、痙攣しているようだ。
織江の躰にはたっぷりとナイロンセルが流し込まれていた。
織江の体内ではナイロンセルが順調に活動している。
そのことにナイロンウーマンとなった梨菜は満足していた。
やはりナイロンセルを広めるには女性をナイロン化するのがいいようだ。
無貌の真っ黒な梨菜がかすかに笑ったような仕草を見せる。
足元では織江の躰に変化が生じていた。

織江の着ている衣服がぼろぼろに分解されていく。
そして下から現れた肌は、真っ黒なナイロンと化していた。
両手、両脚にも漆黒のナイロン組織が形成され始め、織江の体表を覆っていく。
みるみるうちに織江の躰は真っ黒な全身タイツを着込んだように変化し、目も鼻も口も髪の毛も無い真っ黒なデッサン人形のように変わっていった。

やがて織江の躰はぐずぐずと溶けるように崩れ始め、床に黒い水溜りを形作る。
そしてその中心からするすると太い紐のようなものが立ち昇り、それが再び黒いデッサン人形を形作った。
着やせする織江同様に多少ぽっちゃりとしているものの、それがかえって美しく見せる漆黒の躰。
胸からお尻にかけての流れるラインはとても美しい。
「ピルルルルルルー」
生まれ変わった織江が歓喜の声を上げる。
「うふふふふ・・・これで織江ちゃんも私の仲間」
満足そうにうなずくナイロンウーマン。
新たな仲間とともにこれからはナイロンウーマンを増やしていくのだ。
「さあ、いらっしゃいナイロンウーマン」
新たな仲間を手招きする。
だが、新しく生まれたナイロンウーマンは彼女の予想外の行動を取った。
彼女のそばへやってくると、すっと跪いたのだ。
「ピルルルルー、私はナイロンウーマン。ナイロンクイーン様の忠実なるしもべ。どうかこの私にご命令を」

ナイロンクイーン・・・
そう呼ばれた梨菜だったナイロンウーマンはゆっくりとうなずく。
「私はナイロンクイーン。世界はわれらナイロンセルのもの。適応する全ての女性をナイロン化し、世界をナイロンの世界に」
「はい、ナイロンクイーン様。仰せのままに」
「ピルルルルー」
「ピルルルルー」
二人のナイロンの女たちの歓喜の声が室内に響いた。


現在「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませ。

それではまた。
皆様どうもありがとうございました。m(__)m
  1. 2007/09/19(水) 19:37:48|
  2. ナイロンウーマン
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軌道上の戦車?

ノモンハンで激闘を繰り広げた関東軍が、満州の鉄道線、いわゆる南満州鉄道を守備する独立鉄道守備隊が前身であったことはお判りいただいたと思いますが、満州事変以後、満州国となった広大な国土を防衛する立場になっても、南満州鉄道の警備は関東軍の重要な任務のうちの一つでした。

そのため、鉄道維持を任務の範囲とする工兵隊は、常日頃から鉄道レールの維持と警備を行なっていましたが、満州国内でも治安の悪い地域では匪賊が跳梁跋扈したりして、鉄道にも被害が及ぶことが多々ありました。

そのため、工兵隊は軌道警備のために特別の車両を装備することにします。
それが九五式装甲軌道車でした。

九五式装甲軌道車は、外見はまさに銃塔を装備した軽戦車といった感じで、日本陸軍の九四式軽装甲車に何となく面影が似ております。
履帯を装備しており、全体を装甲で覆ったその姿はまさに軽戦車に見えたことでしょう。
もちろん履帯での軌道外走行も可能で、良路上であれば時速約30キロメートルで走ることができました。

鉄道警備のための車両ですから、当然軌道上を走ることもでき、その時には車体下部から軌道用の鉄輪を出し、レールに乗って走りました。
前後には連結器もあり、兵士を乗せた車両を引っ張ってパトロールすることも多かったようです。
線路上では約70キロメートルも速度を出せたということです。

ただし、見た目とは裏腹に、九五式装甲軌道車の装甲は誠に薄いものでした。
前面で8ミリ、側面で6ミリという薄さで、小銃弾と砲弾の爆風と破片を防げる程度しかありません。
機関銃弾ですら、場合によっては撃ち抜かれたことでしょう。

さらに最大級の弱点は武装が無いことでした。
戦車と見紛うばかりの外見で、上部には360度回転できる銃塔があったにもかかわらず、非武装なのです。

これは日本軍の縦割り組織の弊害でした。
九五式装甲軌道車の銃塔に機関銃を装備するという話がでた時、「武装した履帯つき車両は戦車であって工兵用の車両ではない。武装するなら別の兵科が管轄することになる」ということで、工兵隊から取り上げられかねなかったのです。

結局九五式装甲軌道車は銃塔はあっても機関銃が無い車両となりました。
兵士は手持ちの銃や鹵獲した機関銃を銃塔から撃ったそうです。

車両としてはいい車両なんですが、日本軍の兵器にまつわる組織的お粗末さから逃れられなかったんですね。
残念なことです。

さてさて「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませー。

それではまた。
  1. 2007/09/18(火) 19:21:33|
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ノモンハン16

ハルハ河西岸に渡った部隊は、わずか半日で進退窮まってしまいました。
弾薬も食料もわずかしか持たず、水すら飲むことができない状況ではそれも無理ありません。
たった一本の訓練用の橋に全てを託すような行き当たりばったりの杜撰な計画がこの状況を生み出したのです。

前線に来ていた関東軍の辻参謀たちや、第23師団長小松原中将も遅まきながらそのことに気がついたようでした。
朝には勇躍出陣して行った部隊を、夕方には撤収させることにしたのです。
ハルハ河西岸での攻撃を中止し、東岸での攻撃に師団の全力を挙げる。
作戦はこのように変更されました。

7月3日午後4時。
西岸攻撃隊指揮官の小林少将は転進(進行方向を変えること。撤退では格好が悪いので、後ろに向かって前進するというごまかしを日本軍はよく行ないました)命令を受けました。
せっかく渡河をして西岸に進出したというのに、なすところ無く撤退というのはつらいものではありましたが、ソ蒙軍の戦車を相当数撃破したものの、弾薬が底をついた状況では仕方ありませんでした。

明けて7月4日午前0時。
ハルハ河西岸の日本軍部隊の撤収が始まります。
関東軍上層部が、敵は弱兵で戦意も低く、シベリア鉄道から離れているために大部隊は展開できないから、第23師団が行けば逃げるだろうという甘い見通しで始めた作戦だったため、わずかな食料と弾薬しか持たされずに西岸に放り込まれた兵士たちは、ついに撤収の憂き目を見ることになったのでした。

第71連隊と第72連隊が粛々と後退を始め、一番奥まで前進していた須見大佐の第26連隊がしんがりとなりました。
ソ蒙軍は日本軍の撤収行動に対し、幾度となく波状攻撃を仕掛けます。
そのたびに日本兵は断固たる反撃をして、ソ蒙軍に痛撃を与え組織だって撤退して行きました。

たった一本の橋も高射砲部隊が必死にソ連軍機の攻撃から守ります。
このおかげで、西岸攻撃隊は西岸に取り残されることなく、どうにか撤収することができました。
ソ蒙軍の執拗な攻撃を跳ね除け、最後の須見部隊が撤収したのは翌5日の朝でした。

日本軍のハルハ河西岸での攻勢はここに終結しました。
これ以後日本軍はハルハ河西岸に渡ることはありませんでした。

西岸から命からがら戻った兵たちも、安堵している間はありませんでした。
第23師団はこれ以後ハルハ河東岸での戦いに全力を挙げるのです。
各部隊には攻撃配置に着くよう命令が下りました。

戦場付近はわずかながら高低がありました。
西岸側が全体的に高く、東岸は西岸から見ると見下ろせる低地となっていました。
そのため、西岸に布陣したソ蒙軍の砲は日本軍を楽に砲撃できましたが、日本軍の方からはソ蒙軍の砲兵陣地が見えないという有様でした。

そのために、各部隊が移動を始めるとすぐにその周囲には砲弾が降りそそぎました。
各部隊は移動すらままならず、夜間に移動するしかありませんでした。

7月6日。
玉田大佐率いる戦車第4連隊を中心とする部隊に対し、ソ蒙軍の局所的反撃が行なわれました。
第4戦車連隊は周辺の部隊と協力して、よくこれを撃退したものの、11両の戦車が撃破されてしまいます。
すでに大きな損害を受けていた戦車第3連隊と合わせると、これで日本軍の戦車戦力はほぼ半減というものでした。

7月7日。
どうにかハルハ河東岸のソ蒙軍陣地に対する攻撃発起地点に布陣を終えた第23師団は、もはやこれしかないという日本軍のお家芸、夜襲による白兵戦を仕掛けることにします。

日露戦争当時となんら変わらぬ歩兵の肉薄攻撃が昭和になっても繰り返されることになったのですが、相手は日露戦争時のロシア軍ではありません。
ソ蒙軍は各所に縦深陣地を築き、各陣地が機関銃で相互支援ができるように配されています。
そういった、攻めるに難しいソ蒙軍の陣地に対して、日本軍の兵士は勇敢に攻め立てました。

血で血を洗うような近接戦闘が続き、ソ蒙軍もさすがにじりじりと後退を余儀なくされていきます。
日本軍はこの夜襲をもって、ソ蒙軍と互角以上の戦いを繰り広げるのでした。

前線の将兵が死に物狂いで上層部の不手際を取り戻そうと戦っているというのに、関東軍上層部ではまたしてもわけのわからないことが行なわれていました。

満州全土でのこれからのことを考えたとき、このノモンハンでこれ以上戦車を失ってしまうのは問題があると考えた関東軍司令部は、なんとこの激戦の最中に戦車第3連隊及び戦車第4連隊を引き上げる命令を発します。

もちろん、そんな命令は承服できないとして、戦車団の指揮官たる安岡少将は反発しますが、戦場と関東軍司令部がすったもんだした挙句、引き上げ命令こそうやむやになったものの、後方待機状態となり、以後第23師団は戦車の援護を受けられなくなりました。

7月7日から14日まで、日本軍はひとえに歩兵の粘り強い夜襲白兵戦によりじわじわとソ蒙軍を追い詰めて行きました。
ソ蒙軍も戦車と砲は日本軍より多かったものの、歩兵戦力については劣勢だったこともあり、日本軍の夜襲にはかなり手を焼いておりました。
日本軍が夜奪ったソ蒙軍の陣地を、翌日の日中に戦車と砲撃、航空支援によってソ蒙軍が取り戻す。
そんな激しい戦いが連日続きました。

日本軍の大隊長、中隊長の死傷者も続出しましたが、ソ蒙軍も7月11日にはヤコブレフ少将のような高級指揮官が戦死するほどの損害を出しておりました。
戦いは一進一退でした。

その17へ


さてさて「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませー。

それではまた。
  1. 2007/09/17(月) 20:46:10|
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ちょっとしたお遊びです

海マツリ会場にあるチャットには連日多くの方々がいらしてくださっております。
本当にどうもありがとうございます。
この場を借りましてお礼を述べさせていただきます。

チャットでは、皆様といろいろなお話ができて本当に楽しいです。
そんな中にはいろいろな悪落ちネタなども、お話の中で浮かんでまいります。

先日ゲームネタのお話の折に、ドラクエⅤで攫われた主人公の妻が悪堕ちしてくれればなぁとお話ししたことがありました。
ゲーム上では石にされて主人公に助けられるのを待つだけなんですが、何か悪のアイテムあたりで悪堕ちしてくれればよかったのにと思ったものです。

そんな話をちょいと書いてみました。
短いですが、よかったら読んでみてください。

悪魔のボンデージ

「クククク・・・いけませんねぇ。我が魔族に歯向かい、あまつさえ天空の武器防具を集めようとするなんて・・・」
邪悪な笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる魔族の実力者ゲマ。
このゲマこそが、ビアンカの愛するヘボヘボの父パパスを殺し、今また世界に邪悪を広めようとしている張本人なのだ。

ビアンカの夫ヘボヘボは、幼い頃母を何処とも無く連れ去られ、父パパスを殺され、母の手掛かりである天空の武器防具を求めているうちに幼馴染であったビアンカと再びめぐりあい、彼女を生涯の伴侶として共に生きることを選んでくれたのだ。
ビアンカもそのことを喜び、夫ヘボヘボとともに冒険を重ねるうちに、お腹の中に二人の結晶を儲けてようやく出産したばかりだった。

しかし、幸せは突然撃ち破られてしまう。
ビアンカは夫ヘボヘボを良く思わなかった大臣によって引き入れられたモンスターによって城から連れ去られてしまったのだ。
彼女にできたことは生まれたばかりの双子の赤ん坊をどうにか隠すことだけ。
突然のことに戦うこともできなかった彼女は、こうしてゲマの元に連れて来られていたのだった。

「あんまり人間を舐めないほうがいいわ。私の夫が黙っていないわよ」
ビアンカはそれでも気丈にゲマをにらみつける。
魔術師系統のモンスターであろうゲマは、どちらかというと策略を好むだろう。
だが、夫ヘボヘボはどんな策略だって打ち破るに違いない。
だって彼は・・・
ビアンカの胸に温かいものがあふれてくる。
私の夫だもの・・・

魔力を封じられ、両側から腕を掴まれているにもかかわらず、目の前の人間の女はまるで気力を失っていない。
だが・・・
この気丈さが好ましい。
ゲマはそう思う。
人間は面白いもので、心の支えがあるうちはなかなかへこたれたりしないものだ。
そう・・・
あの少年も奴隷の境遇から抜け出し、われら魔族に対して敵対することをやめようとはしない。
今ではグランバニアの王ですらあるのだ。
あの男が人間を束ねて魔族に反抗するようになれば・・・
面白くないことになりかねない。

「クククク・・・確かのお前の夫ヘボヘボは稀に見る男だ。我が魔族にとっても障害になりかねない」
ゲマは笑いながらビアンカの顎に手を掛ける。
両脇から腕を掴まれているビアンカは、必死に顔をそむけようとするが、ゲマの腕はそれを赦さない。
「今に夫がここまで来るわ。さっさと逃げ出したほうがいいんじゃない?」
嫌悪感をあらわにビアンカは言い放った。
でも、はたして夫は間に合ってくれるのだろうか・・・
ううん・・・絶対に夫は間に合ってくれるはず・・・
ビアンカは必死にそう信じ込む。
「クククク・・・来てもらおうではありませんか。そしてあの男に絶望というものを味合わせてやるのです」
「えっ?」
ゲマの笑みにビアンカはぞっとする。
あ・・・
こいつの狙いは夫なんだわ・・・
ヘボヘボ、来ちゃダメよ・・・
私はどうなってもいいから来ちゃダメ・・・
ビアンカは思わずゲマから目をそらした。

がさっと言う音がする。
何?
何の音?
ビアンカは思わず音の方を見てしまう。
すると、そこにはゲマが何か真っ赤な色のものを手に持っていた。
「クククク・・・気になりますか、これが?」
ゲマが手にしたものを広げる。
それはどうやら衣装のよう。
あの噂に聞く“てんしのレオタード”のように上下ひと繋がりの水着のような形をしている。
だが、色は毒々しい真っ赤な色。
つややかに照りかえる血の色のような赤。
ところどころに鋲が打ち込まれていて、まるで革鎧のよう。
「クククク・・・これは“あくまのボンデージ”といいましてね。これを着たものは呪われるのですよ」
「呪いの衣装?」
世界には呪われたアイテムというモノが存在することは知っている。
動きを止めたり、防具なのに防御力が低くなったるするのだ。
これもそういった呪いの衣装の一つなのだろうか・・・
「あくまのボンデージ・・・」
「そうです。これを着たものは生きながらにして死者となり、魔王ミルドラース様のしもべと化すのです」
「な、なんてこと・・・」
ビアンカの背筋に冷たいものが走る。
夫との冒険の間に生きる死者、いわゆるリビングデッドとは何度か遭遇していた。
安らかな眠りにつくことすら許されず、魔王の言いなりにこき使われる哀れな存在。
これを着せられたら私もそうなってしまうの?

「い、いやっ! いやですっ!」
必死に逃げようと身をよじるビアンカ。
しかし、魔力を失っている今、彼女は逃れるすべを持たなかった。
「おとなしくするのだ」
ゲマの手がビアンカの服を引きちぎる。
「いやぁー!」
ビアンカの悲鳴が響き渡った。

必死で暴れるビアンカに手を焼いたゲマは、終いにはやけつくいきで動きを封じねばならなかったものの、ビアンカはついにあくまのボンデージを着せられてしまった。
真っ赤でつややかなレオタード型のボンデージは、子供を産んだとは思えないほどのスタイルのいいビアンカにとてもよく似合う。
そして、すぐにあくまのボンデージはビアンカの肉体に影響を及ぼし始めるのだった。

ああ・・・いやぁ・・・躰が・・・躰が冷たくなっていく・・・
ビアンカの躰は急速に命の営みを止めて行き、ほんのりと赤い肌が青白くなっていく。
ああ・・・助けて・・・助けて・・・あなた・・・
肉体が冷えて行くのと同時にビアンカの心も急速に冷えて行く。
人間らしい温かい心が魔族同様の冷たい心に変わっていくのだ。
寒い・・・寒いよ・・・どうして・・・どうして助けてくれないの・・・どうして・・・
ビアンカの頬を涙が伝う。
だがその涙もすぐに乾き、表情が消えて行く。
寒い・・・
寒い・・・
どうして・・・
どうして私は寒いの?
みんなは温かいところにいるのに・・・
私だけ除け者なの?
自分たちだけ温かければいいのね・・・
赦せない・・・
赦せない・・・
温かいところなんて嫌い・・・
人間なんて大嫌い。
私は魔王様に従う。
人間たちを皆殺しにしてやるわ。

ゆっくりと起き上がるビアンカ。
真っ赤なボンデージがその身を彩っている。
青白い顔に冷たい笑みが浮かぶ。
「クククク・・・どうやら上手く行ったようですね」
「はい、ゲマ様。私は魔王ミルドラース様の忠実なしもべ。憎むべき人間どもを滅ぼすお手伝いをさせていただきますわ」
ビアンカはそう言ってゲマに跪く。
彼女の夫が彼女を救いに来たのは、それから程なくのことだった。

END

もしかしたら時系列狂っているかもしれません。
ビアンカを攫ったのはゲマじゃなかったかも・・・
そこらへんは目をつぶっていただければ幸いです。

さてさて「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませー。

それではまた。
  1. 2007/09/16(日) 21:58:59|
  2. ドラクエ系SS
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後手からの一撃?

今日はいつもの先輩とゲームの日。
お題はエポックドイツ戦車軍団の「ハリコフ」(最近はハリキフというのかな)

エポックの初心者向けウォーゲームですが、これがなかなか奥が深いという。
初期配置は独軍はわずか6ユニット。
続々とやってくる増援を駆使して、ソ連軍の進撃を食い止め、反撃で除去して行くというゲームです。

いわばCMJの「スモレンスク」のご先祖様。
今回も私が独軍を任されるものと思いきや、先輩が一言。
「俺、今回独軍やるわ」

ほほー。
私がソ連軍ですか。
いいでしょう、独軍なんぞ蹴散らしてやりますと意気込んだのもつかの間、このあとは手痛い目に遭うことになりました。

ソ連軍はともかくハリコフ向けてひた走り、独軍の防御体制が整わないうちのハリコフ占領を目指します。
一方左翼は援軍頼みでちょっとした攻撃に終始、これが独軍ターンに3個ユニット除去されてしまうというえらい目に・・・orz

これがたたって、ハリコフ占領なるものの、左翼は遅々とした進撃に陥ってしまいます。
さらに突出してきた独軍装甲師団を包囲して1:1攻撃をかけるもAR・・・orz
独軍ターンに逆に包囲されてこちらの戦車軍団が壊滅です。

その後ハリコフ方面では独軍が増援を得て盛り返します。
2:1ぐらいの攻撃があちこちで行なわれ、次々とソ連軍ユニットが除去されました。

結局独軍54点に対し、ソ連軍は43点。
勝利を得ることはできませんでした。

どうもドイツ戦車軍団系は相性が悪いのか?
勝てませんですねぇ。(笑)

この後はいつものごとくASL-SK1のシナリオ8をプレイ。
突破を図る先輩米軍を我が独軍が守りきって何とか勝利。
今日の対戦は一勝一敗に終わりました。

なんか作戦級では先輩に一日の長が、戦術級では私に一日の長があるようです。
作戦級でも頑張らなきゃなぁ。

さてさて「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませー。

それではまた。
  1. 2007/09/15(土) 19:37:53|
  2. ウォーゲーム
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小さくてもピリッと辛いよ

路上を前進してくる戦車たち。
グレーの悪魔どもだ。
ちくしょう・・・
ドイツ野郎め。
俺たちの国を好き勝手に蹂躙しやがって。
俺は照準器に目をやり、撃ってくださいと言わんばかりの白い十字に狙いをつける。
奴らの戦車の装甲は薄い。
このTKSの20ミリ機関砲でも撃ち抜ける。
落ち着け・・・
一発で仕留めるんだ・・・
俺は引き金に指をかけ、やってくるチャンスを待った。

1939年9月1日。
ドイツ軍はポーランドに侵攻を開始します。
第二次世界大戦の始まりでした。

当時、ポーランドはヨーロッパでも有数の陸軍大国でした。
勇猛な騎兵を中心とした戦力は、ドイツにもソ連にも侮りがたい戦力であるはずでした。

しかし、ポーランドは古きよき時代の陸軍国でした。
主力が歩兵であるのはともかく、機動兵力は騎兵であり、機械化兵力がかなり劣っていたのです。

ですが、ポーランドとて世界的趨勢をまったく無視していたわけではありません。
機械化兵力も揃えつつあったのです。
その中心となったのが、豆戦車TK-3とTKSでした。

世界恐慌で各国の経済は軒並み大打撃を受けました。
世界大戦(第一次)も終わり、軍事力の縮小が叫ばれる中、コストがかかる機械化兵力の整備はどの国も頭の痛い問題でした。

そんな折、イギリスで軽量快速の二人乗り偵察用軽戦車が生まれます。
カーデンロイド軽戦車です。
ほとんど必要最小限というべき装甲を持ち機関銃を備えたこの軽戦車は、戦車と言うよりも装甲トラクターといったほうがいい代物でした。
回転する銃塔も無く、前方に固定した機関銃だけの武装のカーデンロイド軽戦車でしたが、小型であるがゆえにコストも安く、手っ取り早く機械化兵力を備えたいと考えた世界各国に採用され、思った以上のベストセラー兵器となります。

ポーランドもそのカーデンロイド軽戦車を機械化の格好のアイテムとして導入しますが、それを独自改良して国産したのがTKシリーズ軽戦車でした。

第二次世界大戦勃発時には約四百両のTKシリーズが各部隊に配属され、その主力はTK-3型でした。
カーデンロイド軽戦車とあまり変化の無いTK-3は、薄い装甲に機関銃一丁という軽武装で、もちろんドイツの一号戦車よりも戦力としては劣るものでした。
しかし、勇敢なポーランド兵はこの戦車とも呼べないTK-3でドイツ軍に立ち向かったのです。

そして、このTK-3の武装強化型がTKSでした。
機関銃の代わりに20ミリ機関砲を搭載したTKSは、数こそ少ないものの、ドイツ軍の戦車に対抗できる車両としてポーランド兵の支えとなったのです。

主力だった一号二号戦車の装甲はこのTKSの20ミリ砲弾を防ぐことはできず、ロマン・オルリック見習い士官の乗るTKSはなんと13両ものドイツ軍戦車を撃破したそうです。

TK-3とTKSは全長約3メートル、重量2.6トン、装甲は3ミリから10ミリほどのほんとに小さな装甲車両ですが、ポーランドのまさに主力としてドイツ軍を迎え撃った車両でした。
ドイツ軍もこんな車両にてこずるとは思わなかったでしょうね。

さてさて「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませー。

それではまた。
  1. 2007/09/14(金) 20:37:04|
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一台欲しいなぁ

第二次世界大戦中の小型車両として世界的に有名なのは、もちろんJEEPでしょう。
有り余るほど造られたJEEPは、ドイツ軍をして米軍兵一人一人に一台与えられたのではないかとまで言わしめました。

武器貸与法、いわゆるレンドリースによって、ソ連にも大量のJEEPが送られました。
この小型万能車両は、ソ連軍でも非常に重宝され、ソ連でも同様の車両を製造するよう指示が下りました。
そうして造られたのがGAZ-64という小型車両でした。

GAZ-64はまさにソ連版JEEPとも言うべき車両で、そのデザインも酷似しており、JEEP同様にソ連兵に重宝されます。
GAZ-64は後には改良型のGAZ-67が造られ、GAZ-67は戦後も朝鮮戦争などで使われました。

ところで、1941年のバルバロッサ作戦の折、ソ連軍は大量の戦闘車両を失いました。
その中には偵察用の装甲車も多数含まれておりました。

そこでソ連軍は軽量で装甲を施した偵察用装甲車を新たに製造することを決めます。
GAZ-64はまさにうってつけの車体でした。

GAZ-64はJEEPと同じように便利な車両ではありましたが、ソ連軍にはすでに大量のJEEPがアメリカから供与されつつありました。
これからもアメリカからもらえそうなJEEPと同様の車両を作るよりも、装甲車の車台として利用したほうがいいということで、GAZ-64は以後装甲車の車台として利用されることが多くなります。

おそらく、戦場で多く見られたドイツ軍の装甲車を参考にしたのでしょうか、断面がそろばんのタマの形をした装甲車体を載せたGAZ-64はソ連軍に正式採用され、BA-64という名称になります。

装甲車体はわずか2ミリから厚くても11ミリほどで、小銃の弾や砲弾の破片を防げる程度のものでしたが、車体上部には7.62ミリの機関銃を一丁搭載した銃塔を持つこのBA-64は、ソ連軍戦車部隊の先頭に立って前方偵察に使われます。

GAZ-64がGAZ-67へ発展すると、BA-64もGAZ-67の車台を使うようになり、全長が少し伸びました。
そして操縦席横にピストルポートが設けられるなど、更なる使い勝手の良さを付されます。
GAZ-67の車体を使ったBA-64はBA-64Bと呼ばれました。

簡便で使いやすく、機動性の高いBA-64とBA-64Bはソ連軍戦車部隊には必ず見られる車両となり、ソ連軍の反攻に一役買いました。
1944年にバルバロッサ作戦以後ドイツ軍支配下となっていた、以前のソ連国境に一番乗りしたのはこのBA-64だったといわれます。

JEEPに装甲を施したような装甲車。
なんか一台欲しくなっちゃいますよね。

さてさて「海」祭り開催中です。
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  1. 2007/09/13(木) 20:52:25|
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突然かい

びっくりしましたねぇ。

安倍首相が突然の辞意表明。
選挙後も首相の座にしがみついていただけに驚きです。

国会が始まって、あまりの敵の多さや法案の先行きの不安さに愕然としたのかもしれないですね。

やめろやめろと言われていて、いざやめると無責任という言われ方も可哀想な気もしますが、それにしても投げ出した感は拭えないですね。

これから日本はどうなるのか。
国の舵取りは誰が取るのか。
不安になっちゃいますね。

新首相が誰になるのか、この先の政局が気になります。
どうなるのかなぁ。

さてさて「海」祭り開催中です。
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それではまた。
  1. 2007/09/12(水) 21:09:31|
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ノモンハン15

明けて昭和14年(1939年)7月2日。
第23師団は、ともかくも訓練用であろうがなかろうが渡河用資材には違いないので、それを使ってハルハ河に橋を架けることにします。
そのための下準備として、ハルハ河東岸攻撃隊も西岸攻撃隊も所定の位置に着くべく移動を開始しました。

東岸攻撃隊の中核となる安岡戦車隊はエンジン音と履帯の軋みを響かせて前進。
第23師団の将兵はまさに意気揚々として攻撃位置に向かいます。

夜7時過ぎ、夜陰にまぎれて渡河を行なうため、西岸攻撃隊は渡河地点に進出します。
豪雨の中、架橋工兵たちが広い平原のため目標を見失い、迷った挙句に到着するというアクシデントはあったものの、日本軍は夜半には渡河の準備にかかりました。

一方、東岸攻撃隊は折からの豪雨に夜襲を敢行。
これは偵察機による報告がソ連軍は撤退中というものであり、すぐに追撃しなくてはならないとされたためといわれます。
たぶんに作為的な偵察報告だったのではないでしょうか。

豪雨と雷の中、戦車を中心とした東岸攻撃隊は、ソ蒙軍の第一線陣地及び第二線陣地までを突破。
奇襲を受けたソ蒙軍は攻撃正面では多大なる損害を出して後退し、第三線陣地まで迫られるほどでした。

しかし、ソ蒙軍が後退中であるというのは誤報であること、さらにはソ蒙軍の陣地が予想以上に手強く、速射砲などによる戦車の損害も侮れないことがわかります。
翌3日の西岸攻撃隊との共同攻撃は厳しいものになると予想されました。

西岸攻撃隊は藤田少佐の一個大隊を架橋援護のために折りたたみのベニヤ舟で対岸に渡します。
対岸では日本軍の渡河に驚いた外蒙騎兵との小競り合いがありましたが、外蒙騎兵は程なく後退。
日本軍は鉄舟で連隊主力を渡河させ、明け方に完成した橋で後続部隊を渡す手はずを整えます。
いよいよ両岸からの一大攻勢の準備が整いつつあるように思われました。

7月3日。
西岸攻撃のための渡河は思うほどはかばかしくありませんでした。

理由は至極単純でした。
橋が一本しか無いからです。
しかも訓練用の簡易な橋であるため、雨で増水したハルハ河の流速に耐えられず、中央がぐんと下流側に押された弓状になっていました。

そのため、日本軍の部隊は徒歩で橋を渡るしかなく、自動車化部隊であった歩兵第26連隊はトラックを降りて渡らねばなりませんでした。
野砲は馬に引かせるわけには行かず、馬を一頭一頭渡した後で人力で運ばなければなりませんでしたし、トラックは積んである物資どころか、燃料タンクの燃料まで抜かなければ渡ることはできなかったのです。

日本軍渡河の情報を得たジューコフは、直ちに反撃を命じました。
橋頭堡を確保され、東岸部隊が切り離されることを恐れたのです。
このため、ソ蒙軍は手近にある兵力を次々と西岸攻撃隊に向けて投入してきました。

すでに渡河を終えた岡本大佐の歩兵第71連隊と酒井大佐の歩兵第72連隊は、ソ蒙軍の砲兵陣地を目指して南下中でした。
その二つの連隊に、ジューコフの指示でかき集められた兵力が突入してきます。
午前中の戦闘は、とにかく日本軍を食い止めようとしたソ蒙軍が、歩兵と戦車の連携を欠いたまま戦車単独で日本軍に攻撃を仕掛けてきました。
歩兵の援護なくしての戦車単独の攻撃はソ連赤軍も戒めるところではありましたが、日本軍を食い止めるためにはやむを得ないと判断したのかもしれません。

ですが、やはりこの攻撃は無謀でした。
確かにソ蒙軍は50両以上の戦車及び装甲車をもって攻撃をしてきたのですが、来襲を知って適切に布陣した日本軍の速射砲と歩兵が反撃。
後の独ソ戦でも装甲の薄さで早々に第一線を退いたBT-5及びT-26などの戦車、BA-6などの装甲車は近距離からの砲撃と、火炎瓶を持った日本兵の肉薄攻撃の前に次々と撃破されました。
ガソリンエンジン搭載のソ連軍車両は、火炎瓶攻撃には意外なほどもろく、戦場には炎上するソ連軍戦車があちこちに骸を晒すことになったのです。

しかし、このソ蒙軍の攻撃により、日本軍は前進を阻まれました。
途切れなく投入される戦車に、各所で陣を敷き対戦車戦闘に忙殺されることになったからです。
確かにソ連軍の損害は大きなものでした。
この日のハルハ河西岸だけで100両以上もの戦車と装甲車を失う羽目になったのです。
ですが、日本軍の前進を止めることには成功したのでした。

一方ハルハ河東岸では、逆に日本軍の戦車隊が痛撃を受けておりました。
西岸攻撃隊と呼応するべく進撃を開始した戦車第3連隊と第4連隊でしたが、東岸に布陣したソ蒙軍の正面からの攻撃となってしまいます。
ハルハ河西岸や東岸の砲兵陣地からの砲撃により、戦車隊とともに進撃してきた歩兵たちは続々と損害を出してしまい、やむなく戦車第3連隊長吉丸大佐は、戦車単独での攻撃に切り替えました。

この戦車単独での攻撃が無謀であるのは、ソ蒙軍の戦車攻撃を見ても明らかです。
吉丸大佐率いる戦車第3連隊は、各所からの対戦車砲の砲撃と、履帯に絡まり動きを止めてしまうピアノ線鉄条網と、東岸に配置されていたソ連軍戦車の集中攻撃を受け次々と破壊されました。
吉丸大佐自身もこの攻撃により戦死してしまいます。
日本軍は突進をあきらめるほかありませんでした。

わずか半日、7月3日の午前中で関東軍司令部の描いた作戦構想は画餅と化しました。
逃げるソ蒙軍を追尾するどころか、逆襲をこらえるのが精一杯になりつつあったのです。
東岸攻撃隊の主力である戦車部隊は、第3戦車連隊がほぼ戦闘力を喪失。
戦車第4連隊はまだ健在でしたが、数の上で圧倒的に不利な状況に追い込まれてしまいました。
加えて歩兵の損害も大きく、これ以上の攻勢をとろうにも取れない状態でした。

西岸攻撃隊も状況は似たり寄ったりでした。
ソ蒙軍の戦車を多数撃破したことで士気は旺盛でしたが、食料弾薬に乏しくなってきた上、ソ蒙軍が攻撃を突入ではなく包囲しての砲撃に切り替えてきたため、各所で歩兵が砲撃で倒されていく事態になったのです。

夏の日差しが照りつける戦場はまさに灼熱地獄でした。
関東軍の将兵を悩ませたのはこのための水不足でした。
水筒の水はとっくに無くなり、補給のあても無い。
彼らは水無しで戦わねばならなかったのです。

ハルハ河にはたった一本の訓練用の橋しかありません。
しかも、それを使って物資を送ろうにも、馬もトラックも使えません。
さらにソ連空軍機がこの橋を目標として攻撃をしてきます。
西岸攻撃隊の命運はこのたった一本の脆弱な橋が握っていたのです。

その16へ


さてさて「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませー。

それではまた。
  1. 2007/09/11(火) 20:43:45|
  2. ノモンハン事件
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残念

北海道日本ハムファイターズが首位争いをしているさなか、トレイ・ヒルマン監督の今季限りの退団が決まりました。

日本ハムとともに北海道へやってきて、日本ハムを北海道に根付かせてくださった功労者であるヒルマン監督の退団は誠に残念です。

アメリカに戻って少し休養していただき、もし縁があればまた日本で指揮を取っていただくこともあるかもしれませんね。
もちろんヒルマン監督本人はメジャーの監督をやりたいでしょうから、メジャーで指揮を取るヒルマン監督というのも大いにありえるでしょう。
早ければ来年にも?

ペナントレースも残り試合が少なくなりました。
セ・パ共に上位三球団がほぼ確定しました。
あとは一位であるか二位、三位で終わるのか。
その争いが熾烈です。

下位球団の選手の皆さんは、個人成績も気になる時期。
それぞれがいろいろな意味で全力を出してくるでしょう。

私の贔屓である阪神は、昨日の巨人戦にもどうにか勝利して首位をキープ。
首位ですよ?
シンジラレナーイww
春先の低迷から良くぞここまで。
ある意味、ベテランにこだわって勝てなかった岡田監督が、いい意味で開き直って若手にチャンスを回したら上手くいったということなのかもしれません。

最後にどこが笑うのか。
今年もプロ野球から目が離せませんねぇ。

さてさて「海」祭り開催中です。
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  1. 2007/09/10(月) 19:26:17|
  2. スポーツ
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楽しんできました

昨日今日とウォーゲームを楽しませていただきました。

昨日はいつもの先輩と「日清戦争」(GJ21号)とASL-SK1のシナリオ6をプレイ。

日清戦争は初プレイでしたので、お互いにルールの確認をしながらのプレイ。
先輩が日本軍、私が清軍を受け持ちました。
やはりさすがに日本軍の部隊は強く、清軍はじわじわと押されます。
強襲上陸により背後を断たれた清軍は旅順もあっけなく陥落します。

しかし、このゲームは日本軍に非常に厳しい勝利条件。
清軍は押されながらも時間を稼ぐことで勝利があります。

結局最終ターンには清軍のユニットがほとんど無くなったにもかかわらず、ポイントが足りずに日本軍の敗北という結果に。
なんか勝った気がしませんが勝っちゃいました。

ASLは市街地に立て篭もる独軍SS部隊を、ソ連親衛赤軍部隊が追い立てるというシナリオ。
双方ともミスの連続でしたが、どうにか勝たせてもらいました。

そして今日は札幌歴史ゲーム友の会にお邪魔させていただきました。

札幌辺境伯様と「ワグラム」(タクテクス47号)をプレイ。
オーストリア軍ファンとおっしゃる札幌辺境伯様がオーストリア軍を、私がフランス軍をプレイしました。

NAWシステムのお手軽ゲームですが、なかなかどうして双方士気阻喪状態に陥るほどの部隊の除去が続きます。

結局最終ターンまでは行ないましたが、勝利得点を取りきれないフランス軍の敗北で終了。
正面からの平押しに終始してしまったのが敗因ではないでしょうか。
でも、面白かったです。
札幌辺境伯様ありがとうございました。

さてさて「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませー。

それではまた。
  1. 2007/09/09(日) 19:55:56|
  2. ウォーゲーム
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すでに「海」祭りの会場でご覧になっている方も多いでしょうが、こちらにも投下させていただきます。

どうかよろしければ感想をいただければと思います。


頬にあたる心地よい風。
髪が翻り風になびく。
足元から伝わる力強いエンジンの響き。
絶えず上下動する床はしっかりと踏ん張っていないと跳ね飛ばされてしまいそう。
「すごいすごーい!」
後部デッキではしゃいでいるヒー子の声。
うんうん。
そうだよねー。
すごいよねー。
わくわくしちゃうよねー。
こんな素敵なクルージングタイプのプレジャーボートで海の上にいるなんて経験、滅多にできるものじゃないもんね。

潮の香りがする。
波しぶきが時折船室の窓を叩く。
蒼空がどこまでも抜けるような青さで、私たちを歓迎しているかのよう。
夏の日差しが輝き、二階の操舵席は暑いに違いない。
「ねえ、これってどのくらいのスピードが出てるの?」
ヒー子の隣で冷たいコーラに口をつけている麻理香(まりか)が二階の操舵席に声をかける。
たぶん・・・25ノットぐらいかしらね。
私は何となくだけどあたりをつける。
この手のプレジャーボートは最大速度が大体30ノット前後。
エンジンはまだ余裕あるみたいだから、きっとそのぐらいだろうと思ったのだ。
「ん? 今24ノット」
操舵席で間の抜けたような声がする。
エンジン音と波の音が結構うるさいので、少し聞き取りづらい。
「そっかー、24ノットか~・・・それってどのくらいの速さなの?」
あらら・・・
麻理香の言葉に私は苦笑した。
「しらねー」
ちょっと、オーナーの樹村(きむら)君が知らなくてどうするのよ。
船舶免許持っているんでしょ。
まあ・・・冗談だとは思うけど・・・
「1ノットは時速約1.85キロメートル。だから24ノットで・・・えーと・・・時速44キロぐらいか」
私は素早く暗算する。
「えっ? 嘘ぉ! これ絶対もっと出てるよ~」
プレジャーボートのスピード感は並じゃない。
だから麻理香が信じられないのも無理は無い。
「そんなものよ。車で走るほうが速いわよ」
私は自分も冷たいものを飲もうとキャビンに入る。
合皮と合板とは言え、いかにも豪華なキャビンの内装は私にはちょっと戸惑いを感じさせてしまう。
乾いてきているとは言え、先ほどまで泳いでいた水着のまま座ってもいいのかしらね?

私たちは大学二回目の夏休みを、この離島で過ごしているのだ。
ここにはこのボートの持ち主である樹村君のお父さんの別荘がある上、こうしてボートでダイビングもできるとあって、私たち三人は誘われたのをいいことにお邪魔しているというわけ。
樹村君は船が似合う好青年・・・とは言いがたいタイプだけど、彼の友人の大濱(おおはま)君と仲西(なかにし)君はルックスもそう悪くない。
つまり私たちは三対三の合コンをやってるようなもの。
ヒー子と大濱君が一緒のサークルという縁で、こうして私も誘われたというわけ。

「ねえねえ、ダイビング楽しみだねぇ」
麻理香がニコニコしながらキャビンに入ってくる。
「そうね」
私も思わず釣られてにこっとしてしまう。
麻理香の笑顔は天性のもので、見るものを微笑まさせずにはいられない。
そう、私たちは、この島の沖合いでダイビングをするためにボートに乗ってきたのだ。
この日のためにダイビングスクールで講習も受け、綺麗な海底に潜れる日を指折り数えていたのよ。
すでにキャビンの片隅にはエアボンベが置かれ、私たちはそれぞれ好みの水着の上にパーカーを羽織ってその時を待っている。
もっとも・・・
ヒー子はショッキングピンクのビキニだし、麻理香もパステルグリーンのビキニだというのに、私はオレンジ色のワンピース。
し、仕方ないのよ。
私は彼女たちのようにスタイルもよくないし、おへそ出せるほどの勇気も・・・なかったんだから。

「そう言えばさぁ」
麻理香がふと口にする。
後部デッキではヒー子が大濱君の腕にしなだれかかって甘えていた。
「何?」
私は麻理香の表情がいたずらっぽくなったのを見て、少し警戒する。
この娘がこんな表情をするときはろくなものじゃないわ。
「島の人に聞いたんだけど・・・」
「うんうん」
私は適当に相槌を打ち、冷たいコーラを取ろうと冷蔵庫の中に手を伸ばす。
「最近ウエットスーツの女の幽霊が出るらしいよ」
「ええっ?」
私は思わず手が止まる。
うう・・・
ひどいよぉ・・・
麻理香は私が昔から怖い話が大嫌いなこと知っているのにぃ・・・
「夜とかにぃ、真っ黒なウエットスーツを着た数人の女性がふらふらと海岸を歩いているのが何回か目撃されたんだって。足引っ張られるかもよぉ」
腕を胸の前でだらんと下げ、いわゆる“うらめしや”の格好をする麻理香。
「いやぁ!! やめてよぉ!!」
私は耳をふさぎ目をつぶって必死になって悪いイメージを振り払う。
そんなこと言われたら潜れないよぉ・・・
「あはははは・・・ごめんごめん。詩織(しおり)ってホントこの手の話に弱いよねぇ」
「ひどいよぉ・・・」
私は半ば泣きそうになりながら麻理香をにらみつけた。
怖くて楽しみにしていたダイビングができなくなったら、訴えてやるぅ・・・

「なあに? また麻理香が詩織を怖がらせているの? もしかしてあの話?」
大濱君にぶら下がったヒー子がキャビンに顔を出す。
体格のいい大濱君はヒー子がしなだれかかっているのがちょっとうれしそう。
「何だい、あの話って?」
「ウェットスーツの女の話よ。どうせ、夜に漁に出た海女さんでも見たんでしょ」
あ・・・
そうかそうか・・・
海女さんなら幽霊じゃないよね。
なーんだ・・・
よかったぁ。
私はホッと胸をなでおろす。
「でも、この島の海女さんは夜漁なんかしないって言うわ。それになんか無表情で不気味だったって・・・」
麻理香がまだ言っている。
やめてよもう・・・
「夜見たらなんでも不気味よ。夜間ダイビングを楽しんでいた人たちかもしれないし」
「でも、そんなんじゃこんな幽霊話になるわけないわ」
「もうやめてよ!! いいじゃない、なんだって!!」
私はいい加減にして欲しくて思わず声をあらくする。
「あ、ごめんごめん。もうやめる」
「うんうん、詩織は怖がりだもんねぇ。どうせなら仲西君に怖ーい助けてってしがみつけば好感度アップなのにねぇ」
二人が笑っている。
ひどい。
二人して私をからかっているんだわ。
まったく・・・
「ボクがどうかしましたか?」
操舵席の隣にいたはずの仲西君がひょいと顔を出す。
私は何となく気恥ずかしくなってしまい、顔をそらす。
「お、これは脈ありですかな姫子(ひめこ)さん」
「うむうむ、晩熟の詩織にも春の到来かにゃ」
二人は顔を見合わせてニヤニヤしている。
くぅー・・・
「いい加減にしてー!!」
私は先ほど手に取ったコーラの缶を思いっきり投げつけた。

「痛たたた・・・」
「ごめんなさいごめんなさい」
私は一所懸命に謝りながら、濡らしたタオルで仲西君の額を冷やす。
やけくそで投げた缶コーラがまさか仲西君に当たっちゃうなんて・・・
「もういいですよ。大丈夫ですから」
そう言って笑う仲西君。
三人の男性の中では一番子供っぽく見えるのは、一人称がボクだからかもしれないけど、この笑顔が少年っぽいのも事実だ。
「本当にごめんなさい」
私はもう恥ずかしいやら情けないやら何がなんだかわからない。
「おーい、そろそろ到着だぞ。あれだ」
操舵席の方から声がする。
「あの島?」
「うわぁ」
ヒー子と麻理香も声をあげる。
私も前方を見ると、ボートの行く手に近づいてくる小島が見えてきた。
島と言っても小さなもので、岩礁と言った方がいいかもしれない。
てっぺん付近に樹がいくつか生えていて、鳥がその近くを飛んでいる。
そそり立つ岩肌は切り立っていて、海岸なんてものは無く、まさに海から突き出た岩という感じ。
たぶん周囲にはごつごつした岩が海底にいいアクセントを与えているだろう。
ダイビングにはもってこいというところだわ。

「おい、樹村」
心なしか小島の方を見ていた大濱君の顔が曇っている。
「何だい?」
「あれって・・・神隠しの島じゃないのか?」
神隠しの島?
それっていったい?
「そうだよー。だからいいのさ。手付かずで自然が残っているし、島の連中は誰も来ない」
「あそこには近づくなって言われているだろ。二週間前にもボートが帰ってこなかったじゃないか」
操舵席の樹村君に苦々しい表情で訴える大濱君。
ボートが帰って来なかったって・・・ホント?
「あはははは・・・あれは沖合いに流されたんだって話だよ。ダイビングしててボートを見失うんだ。よくある話しだし、救助もされたじゃないか。神隠しなんて迷信だよ」
「だけど、助かった奴らだってウェットスーツの女の幽霊を見たって言ってたそうだし・・・」
「幻覚でも見たんだよ。窒素酔いでもしたんじゃないのか?」
樹村君はまったく気にして無いみたい。
でも大濱君は気乗りしていないようだわ。
「なあ・・・別のところにしないか? あんまりいい気分じゃねえよ」
「大丈夫だって。俺も先日潜ったし、すっげえ綺麗なんだって。なんなら大濱だけボートに残っててもいいぞ」
バカにしたような樹村君の言葉に大濱君はむっとしたよう。
「わかったよ。あんまり女性を怖がらせたらかわいそうだと思ったから言っただけだよ。別に迷信なんか信じちゃいないし、俺は潜るぞ」
「あ、それじゃ最初はボクが残るよ。誰かはボートに居た方がいいだろうし、二級免許あるからさ」
額に右手を当てたまま仲西君が左手を上げる。
そっかー。
彼って船舶免許もっているんだ。
いいなぁ。
私も取ろうかなぁ・・・
「お、いつの間に取ったんだ、このヤロー」
「つい先日。今年はみんなで船に乗るって話だったからね」
大濱君が仲西君を小突いている。
「わ、私も残ります。ちょっと船酔いしたみたいで・・・」
私は自分でも驚いたことに手を上げていた。
船酔いなんかしていないし、綺麗な海底も見たかったけど・・・
やっぱり何となく神隠しの島ってのが気になるし・・・
缶コーラをぶつけちゃった私が仲西君を置いてってのも悪い気がするしね。
「うんうん、詩織、せいぜい仲西君といちゃいちゃするんだよー」
「そうそう。『缶コーラぶつけちゃってごめんなさい。お詫びは私の躰で』ってね」
「そ、そんな」
ヒー子と麻理香のからかいに私が何か言う前に、仲西君が真っ赤になってしまう。
私もすごく恥ずかしくなって、何も言えなくなってしまった。

「それじゃ行って来るね~」
「留守番お願いなー」
「仲西君、詩織をよろしくねー」
「ま、麻理香!」
思い思いの言葉を残し、後部デッキから海に入って行くみんな。
カラフルな水着にボンベを背負っているだけなので、透明度の高いこの海ではしばらくは船上からも姿が見える。
でも、みんなが遠ざかるにしたがってやがてそれも見えなくなり、私は一休みするためにキャビンに入った。
もう・・・
ヒー子や麻理香があんなこと言うから・・・
仲西君の顔がまともに見られないじゃない。
幸いと言うかなんと言うか、仲西君は操舵席に上がってしまったので、キャビンには私一人。
みんなはしばらく戻ってこないだろうから、少しゆったりと寝そべっていようかな。
私はキャビンのソファーに横になる。
エンジンはアイドリング状態なので、とても静か。
波もほとんど無いようなものなので、ゆらゆらと気持ちいい。
夏の強い日差しもキャビンの中までは入ってこない。
はあー・・・
気持ちいい・・・

「いやぁー! た、たすけ・・・」
な、何?
私はまどろみの中から引き戻されて飛び起きる。
「仲西君! 何なの?」
私はキャビンをでて外を見る。
ヒー子?
あれはヒー子だわ!
「た、助け・・・ガボボッ」
海面に顔を出したヒー子が助けを求めている。
おかしい・・・
ヒー子は泳ぎは得意だったはず。
あれはまるで海中に引き込まれていくような・・・
「待ってろ! 今行く!」
操舵席から仲西君の声が響き、ボートのエンジンが轟音を立てる。
ヒー子のいる位置はちょっと遠い。
飛び込んで助けに行くよりも、ボートを近づけた方が早いのだ。
「たす・・・おんあ・・・ガボガッ」
必死に海面でもがいているヒー子。
でも、ボートが回頭すると、その姿が海面から消えてしまう。
「ヒー子ぉ!」
私は声を限りに叫んだ。
な、何なの・・・何があったの?
他の人は・・・他の人たちはどうなったの?
何で誰も上がってこないのよぉ・・・

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」
すざまじい悲鳴が上がる。
「な、何?」
私にはもう何が何だかわからない。
何が・・・何が起こっているの?
いやだよぉ・・・
もういやだよぉ・・・
「大濱!」
仲西君が叫ぶ。
海面に姿を現した大濱君が見える。
あれは・・・
あれは何なの?
大濱君にしがみついている人がいる。
真っ黒でつやつやのウェットスーツのようなものを着ている人。
こげ茶色の髪が海面に広がって、胸の膨らみと腰の括れがその人が女性であることを示している。
ウェットスーツの女の幽霊・・・
私はぞっとした。
作り話なんかじゃなかったんだ・・・
こんな昼間だというのに・・・
「た、助けてーーーー」
大濱君の絶望に満ちた声が夏の空に響き渡る。
「大濱、待っていろー!」
ボートを旋回させ、大濱君に向かわせる仲西君。
違う・・・
あれは幽霊なんかじゃない・・・
もっと・・・
もっと性質が悪いものだわ・・・
「ああああ・・・・・・」
「大濱ー」
大濱君にしがみついた女がこちらを見た。
その目も口も全てが無表情。
まるで生きている人とは思えない。
でも・・・
幽霊じゃないわ。
女の周囲でぼこぼこと海面が泡立つ。
白い煙が周囲で立ち昇る。
「ぎぃやぁーーーーー」
苦悶の表情で大濱君が悲鳴を上げた。
「な、何なんだよ・・・なんで海が沸騰するんだよ!」
仲西君の声も震えている。
そうか・・・
あれは海が沸騰していたのか・・・
熱いんだろうな・・・
私はデッキにへたり込んでしまった。

「しっかり・・・しっかりしろ! ダメか・・・」
あ・・・
私はあれから意識が遠くなっていたらしい。
ボートの後部デッキには、仲西君が屈みこんで何か声をかけている。
「あ・・・仲西君」
私は立ち上がると、そっちで何をしているのか見に行こうとした。
「来るな!」
「えっ?」
「・・・ごめん。そこのバスタオルを取ってくれないか?」
仲西君が振り返ったその向こうには、真っ赤に焼け爛れた・・・
「ヒッ」
「見るな!」
「う、うん」
私はキャビンからバスタオルを取り、仲西君に手渡した。
「大濱はダメだった。死んだよ」
バスタオルを後部デッキに寝かせた大濱君に被せ、仲西君はそう言った。
「死ん・・・だ?」
私は膝がガクガクした。
何で?
何で人が死ぬなんて・・・
「樹村も戻ってこない。それに神無月(かんなづき)さんも綾城(あやしろ)さんも」
そんな・・・
ヒー子も麻理香も戻ってこないなんて・・・
「一度戻ったほうがいいかもしれない。ここはやっぱり神隠しの島だったんだ」
私は言葉が出なかった。

「とにかく谷島(たにしま)さんはキャビンに入っていて。無線で助けを呼んでみるよ」
「はい」
そう言って私がキャビンに入ろうとした時、ボートの周囲の海面から勢いよく何かがジャンプして来た。
まるで特撮映像でも見ているみたい・・・
膝を抱えた人間がくるくると空中で回転し、タンという音とともにボートの上に着地したのだ。
その数三人。
いずれもが真っ黒でつやつやなゴムのようなウェットスーツに首元からつま先まで覆われていて、胸の膨らみも腰のくびれもまったく隠そうとはしていない。
驚いたことに、三人のうち一人は金髪の白人であり、無表情な青い目が不気味に輝いていた。
「な、なんだ! お前たちは!」
いきなりキャビンの天井や後部デッキに降り立った彼女たちに対し、仲西君が精一杯の声を上げる。
「オトコニハヨウハナイ。ソノオンナヲツレテイケ」
まるで機械が発声したような声で金髪の女が言い放つ。
いったい彼女たちは何なの?
私たちをどうするつもりなの?

「クッ。もしもし、もしもし」
仲西君が無線機に取り付いて必死に呼びかけを始める。
これで誰かが来てくれれば・・・
「ムダナコトヲ・・・」
キャビンの天井に立った金髪の女が操舵席に入り込み、いきなり仲西君の腕をひねり上げた。
「うわあっ」
「仲西君!」
「な、なんて力だ・・・」
マイクを取り落とし、あらぬ方向に捻じ曲げられた仲西君の腕を見て、私は胸中に絶望感が沸いてくるのを止められなかった。
「仲西君!」
叫ぶ私を両側から二人のウェットスーツの女たちが取り囲む。
「あ、ああ・・・」
膝がガクガクする・・・
怖い・・・
誰か・・・誰か助けて・・・
「谷島さん! 逃げろ!」
仲西君が叫んでいる。
でも、逃げろって言われても・・・
私は動けない。
足が言うことを聞いてくれないよぉ・・・
助けて・・・
両側からがっしりと捕らえられ、私は二人の女に取り押さえられてしまう。
彼女たちのスーツからゴムくさいような香りが私の鼻腔に流れ込んだ。
「た、谷島さん!」
「オトコハフヨウ」
そう言うと金髪の女は仲西君を抱きしめる。
「えっ? ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
仲西君の激しい悲鳴。
熱い風が私の顔にまで流れてきて、操舵席は一瞬にして炎に包まれる。
女に抱きしめられた仲西君は見る間に焼け爛れ、身につけていた海水パンツが燃え上がる。
「ああ・・・いやぁぁぁぁぁぁ」
どこかで悲鳴が聞こえた。
それが私の悲鳴だと気がつくのにそれほど時間はかからなかった。
ああ・・・そうか・・・
あの女は自ら熱を放出するんだわ・・・
その熱で周囲を焼き尽くすんだ・・・
きっと私も焼かれるんだわ・・・
私は両側から抱きかかえられるままに、ボートから海に転げ落ちるように引き込まれる。
海水が目や鼻、口から入ってくるけど、そんなのはもうどうでもよかった。
遠くで焼けたボートが爆発する音を聞きながら、私は暗い深淵に飲み込まれていった。

******

ひんやりとした空気に目が覚める。
ここはどこ?
オレンジ色の淡い照明が部屋の中を照らしている。
誰もいない。
四角い部屋には私一人。
硬く冷たい金属でできた壁は、少々のことでは傷付きもしないだろう。

あれからどうなったのだろう・・・
ここはどこなのだろう・・・
私はいったいどうなっちゃうのだろう・・・
心細いよぉ・・・
誰か助けて・・・
助けてよぉ・・・
私は水着の上にパーカーを羽織った姿のままの自分を抱きしめる。
私を拉致したあの女性たちは何者なんだろう・・・
私は殺されちゃうんだろうか・・・
それとも男たちに・・・
外国に売られちゃったりするのかな・・・
怖いよぉ・・・
ヒー子ぉ・・・
麻理香ぁ・・・
誰でもいいから助けて・・・

「デナサイ」
音も無く扉が開く。
スライド式のドアはこちら側には取っ手も無い。
入り口にはウェットスーツを身につけた女性が立っている。
「えっ?」
私は驚いた。
無表情で私を見下ろしているのは、ヒー子なのだ。
「ヒー子? 無事だったの?」
「コタイメイ“タニシマシオリ”。デナサイ」
私はぞっとした。
この声はあの金髪の女と同じ電子の声。
ヒー子は機械の声をしゃべっているの?
「ヒー子、ヒー子なんでしょ? しっかりして! いったいどうしたって言うのよ!」
私は立ち上がると、ヒー子の両腕を握り締める。
ゴムのギニュッという感覚が伝わってくるものの、その下にはずっしりとした重たいものが詰まっているよう。
これって・・・
ヒー子はどうなってしまったの?
「ワタシハコタイメイRW-221。ヒーコナドデハナイ」
無表情で私を見据えるヒー子。
その目はただ冷たく感情がまるで無い。
「あ・・・ああ・・・」
私は恐ろしくなって後ずさる。
違う・・・
これはヒー子じゃない・・・
ヒー子は・・・
ヒー子だったモノにされちゃったんだ・・・
「キナサイ」
「いやー」
私は差し出された手を振り払おうとしたけど、ヒー子の手はがっちりと私の手首を握り締めて離さない。
「離して! 離してよぉ!」
必死に振りほどこうとしたけど、ヒー子は無表情のまま私を引き寄せる。
「助けてー!」
そう叫んだとたんに、ヒー子の腕から電流が走り、私は再び意識を失った。

「・・・り・・・」
「し・・・り・・・」
「けて・・・おり・・・」
えっ?
私は耳にした声に目を覚ます。
えっ?
あれ?
私は起き上がろうとして起き上がれないことに気がついた。
両手と両脚が固定されているのだ。
「嘘・・・」
私は首を回して周囲を確認しようとする。
「詩織ぃー! 助けてぇー」
えっ?
見ると、私の右側に同じように手足を固定された麻理香が十の字に磔にされているのだ。
両腕を左右に広げ、両足は揃えるように固定され、パステルグリーンの水着も脱がされて、きちんとお手入れされた叢がはっきりと晒されている。
「麻理香。麻理香! 無事だったの?」
私はまったく相応しくない言葉をかけてしまっていた。
麻理香は無事なんかじゃない。
これから何かをされるんだわ・・・
まさかあのヒー子と同じに?
「詩織ぃー、助けてよぉー。誰かぁー! お願いやめてぇー!」
必死にもがく麻理香。
でも私はそれを黙って見ているしかできない。
私の両手も両脚も固定され、首を動かすぐらいしかできないのだ。
「やめて、お願いだからやめてー!」
私も必死に叫ぶ。
でも、ここには誰もいないのだ。
ここにいるのは私たちだけ。
あのウェットスーツの女たちも、ウェットスーツを着てしまったヒー子もいない。
いったいここは何なの?
私たちはいったいどうなるの?

グングンと音を立て、麻理香を固定した台が動き始める。
垂直に吊り下げられた麻理香の足元が左右に開き、ムワッとするゴムの臭いが広がってきた。
「いやぁっ!」
ええっ?
麻理香の足元に広がったのは、真っ黒な液体ゴムのプールのようなもの。
その上で麻理香を固定した台が吊り下げられているのだ。
「お願い。お願いよぉ。何でもするから助けてぇ!」
必死に身をよじり助けを請う麻理香。
私は次に起こる事を考えて目をそらしたかったが、目をそらすことができない。
やがて、麻理香を固定した台がゆっくりと下がり始め、麻理香の足元が液体ゴムのようなものに浸けられていく。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」
麻理香の悲鳴が上がり、私は唇を噛み締めた。

麻理香を固定した台は、麻理香の首までを液体に沈めた。
腰のあたりが浸かるまで叫んでいた麻理香だったけど、胸のあたりが浸かる頃には叫び声を上げなくなっていた。
やがて、麻理香の周囲にいくつもの管がぶら下がり、麻理香の首筋や耳、口などに器用に侵入していった。
私は必死で吐き気をこらえながら、麻理香がどうなるかを見ずにはいられなかった。
おそらく次は私なのだ。
たぶん・・・麻理香も私もあのウェットスーツを着た女性たちのようにされてしまうのだろう。
改造?
そう・・・たぶん私たちは改造されるのだ。
そして無表情で人を焼き殺すようになるのかもしれない・・・
私は悲しかった。
でも、どうすることもできなかった。

麻理香の躰が引き上げられる。
彼女の首から下は漆黒のゴムが覆い、つま先までウェットスーツを着たようになっていた。
麻理香は一言も発せず、差し込まれた管のなすがままになっている。
時々麻理香のお腹の中でうねうねと動き回っているのが見える。
ひどい・・・
こんなのってひどすぎる。

管が外れ、麻理香を固定した台が床に横になる。
手足を固定した枷が外れ、漆黒の躰にぴったりしたスーツを纏った麻理香がゆっくりと起き上がった。
「ワタシハコタイメイRW-222。コレヨリドウサカクニンヲオコナイ、ハイチニツキマス」
麻理香の目は何も見ていないかのように正面を向いたまま、私には何も言わずに歩き出す。
私はただ悲しくて、涙があふれるのを止められなかった。

「うあ」
私の腕につきたてられる管。
そこから何かが私の中に注入される。
「うああ・・・」
躰がじんじんと熱くなる。
な、何なの?
ああ・・・
始まるんだわ・・・
私もヒー子や麻理香と同じゴム人間になってしまう・・・
でも、もうどうしようもないよ・・・
お母さん・・・お父さん・・・
ごめんなさい・・・

私を載せた台が頭を上にして引き上げられる。
張り付けられた躰が空中に持ち上げられ、徐々にゆっくりと動いていく。
始まったわ・・・
私は半ばあきらめの境地で、されるがままになっている。
どちらにしろこの手枷足枷がはずれるわけじゃないのだし、誰も助けてくれる人もいやしない。
麻理香やヒー子と同じになるのだと思えば、そう恐ろしくも・・・
いや・・・
いやよ!
「いやよぉー!」
私はどうしようもなく手足をばたつかせる。
はずれっこないけど、このままはいやー。
「おかあさーん! 助けてー!」
私は声を限りに叫ぶ。
足元には真っ黒な液体のプール。
吊り下げられた台はゆっくりと下降し始める。
みるみると近づいてくる漆黒のゴムのような液体の海。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」
私はただのどの奥から泣き叫んだ。

ひた・・・
私のつま先が、そして踵が黒い液体に浸けられる。
「いやぁっ」
そのまま私はずぶずぶと黒い液体に沈んで行く。
全裸の私にネットリと纏わり付いてくるゴムのような液体。
でも・・・
意外と気持ち悪いものではないわ。
むしろ・・・
一度躰にへばりつくと、そのあとは躰を優しく包んでくれるような感じ・・・
暖かささえ感じるわ。
私は何かホッとしたような緊張がほぐれて行くようなそんな感じを受けていた。
何かしら・・・
なんかとても気持ちがいい・・・
首まで液体に浸かっていると、躰に液体が沁み込んでくる感じだわ・・・

やがて私の周囲には幾本ものチューブが下がってくる。
私は躰を覆う脱力感とともにそれらをぼんやりと眺めているだけ。
首筋や肩口にちくっとした痛みが走ったものの、その周囲からもたらされる鈍痛も今の私には心地いい。
耳からはぎりぎりと何かを差し込んでくる気配を感じるのだけれども、それが何なのかもわからないし、気にしようとしても気にならなくなっていく。
口が勝手に開いて一本のチューブを咥えると、それはのどを滑り落ちてお腹の中をかき混ぜる。
ただただ躰がだるい。
目を開いているのも億劫だわ・・・
私は私自身が何か得体の知れないものに変わっていくのをうっすらと感じていたけれど、もうそんなことはどうでもよくなっていた。
私の躰は作り変えられ、マスターの目的に沿うように変わっていく。
皮膚は全て皮膜と同化し、内臓は全て金属質の細胞に置き換えられる。
およそあらゆるところで活動でき、エネルギーの変換効率も生物とは及びもつかないものになっていく。
目は高解像度のカメラとなり、視覚情報を的確に伝えるセンサーとなる。
耳は音波ばかりではなく電波もキャッチできるアンテナとなり、マスターからの命令を余すことなく伝えてくる。
口からは音波を衝撃波として放射するシステムが備えられ、腕や足などの物理攻撃とともに相手を粉砕する手段となる。
体内の発電システムと発熱システムによって、一時的に電流を流すことも高温をもって周囲を焼くことも可能だ。
全てはマスターのため、その目的をただ達成するための機能。
私はマスターの道具となる。
あと1分42秒で脳の変換も終了する。
私はドールWR-223に生まれ変わる。

突然躰が揺れた。
地震?
激しい揺れが起こり、私はまどろみから引き戻された。
薄暗いホールの各所に赤いランプが輝き、何か緊急事態が起こったことを知らせてくる。
私はどのように行動すべきかをマスターに・・・?
違う。
違う違う。
私はマスターの道具なんかじゃない。
私は個体名谷島詩織。
ドールなんかじゃないわ!

私は夢中で手足の枷を引きちぎり、いくつものチューブを引きちぎる。
口の中にもぐりこんでいたチューブも引っこ抜いて、黒い液体の中に飛び込むと、そこを泳いで縁から体を引き上げる。
赤いランプが明滅する中、周囲にはドールの姿はなく、いずれもがマスターからの指令待ちの状態が窺えた。
チャンスだわ。
今ならこの基地から脱出することができる。
再び人間の世界に戻ることができるんだ。
私は急いで脱出口を探しにホールを出た。

幾人かの立ち尽くすドールたちのそばをすり抜ける。
みんな自律行動をとれないでいるんだわ。
マスターの命令は絶対。
マスターの指示が無ければドールたちは動けない。
私はこの幸運に感謝して通路を走りぬける。
躰が軽い。
筋肉はエネルギーを存分にパワーに変換して私の躰を力強く運んで行く。
この基地内の構造はわかっている。
私の頭に蓄積されたメモリーが私を正しく導いている。
一人での操作には難のある転送システムを避け、私はカモフラージュされた立て坑式の非常脱出口へ向かう。
そこがなぜ作られ、どうして必要だったのかはわからない。
けれど、そこからなら確実に外へ出ることができる。
私はパネル状のシャフトの入り口をこじ開けると、ひしゃげた金属の板を放り出して中にもぐりこんだ。

ゴム状に覆われた私の外皮はしっかりと金属の梯子を握り締めることができる。
足の指など無くなったつま先も滑ったりすることは無い。
全てにおいて行動しやすい形に作られたドールのボディ。
それが私を確実に地上へと導いている。
私はそれが心地よかった。

昇り始めて2分14秒後、私は脱出口のハッチにたどり着いた。
脱出口のハッチは二重構造になっている。
手前のハッチは簡単に開いたけど、最後のハッチを開ける前には手前のハッチを閉めなくてはならない。
ハンドル式のハッチはロックされていたけれど、私は指先に電極を形成して電磁ロックを焼ききる。
無駄なこと。
ドールの行動をとめることはマスターにしかできはしないのだ。
私はハッチを開けて外へ飛び出した。

『わぁ・・・綺麗・・・』
私は思わずつぶやいていた。
そこは満天の星空の下だったのだ。
しーんとした静けさの中、そよとも吹かぬ風の下に白い砂漠が広がっていたのだ。
周囲には樹はおろか草すら一本も無い。
寒々とした荒涼たる大地に私は立っていた。
『ここは・・・どこ?』
私はメモリーを探る。
しかし、書き込み途中だったのかこの場所についてのデータは見つからない。
『とにかくここにいては追っ手に見つかってしまう』
私は砂漠を走り始めた。
遠くに人工物のようなものが私のカメラに捕らえることができたのだ。
とにかくそこへ行ってみよう。
そうすればここがどこかもわかるかもしれない。
躰が変にふわふわするのを補正して私は走る。
きっと家ではお父さんとお母さんが心配しているに違いない。
せめて電話の一本も入れなくては。
私は両親の姿をメモリーから引き出して映し出していた。

『トマリナサイ。RW-223』
私の受信機に声が流れる。
私はその声に思わず立ち止まった。
私の行く手には二体のドール。
RW-221とRW-222が立っていたのだ。
違う・・・
違う違う。
ヒー子と麻理香が立っているのだ。
無表情の冷たい目。
マスターの命令が下ったのだろう。
私を捕らえに来たのだろうか・・・
『私はRW-223なんかじゃない。二人とも目を覚まして! 一緒に家に帰りましょう』
『オマエハRW-223。モドルノハマスターノモト』
『オトナシクシタガイナサイ。オマエハセイゾウトチュウ』
二人はまったく私の言葉を受け付けない。
当然だわ。
ドールはマスターに従うもの。
ドール同士といえども、マスターの命に反するような提案を受け入れるはずが無い。
私は覚悟を決めた。

勝負はあっけなかった。
ドールとしての能力を使いこなせていない私と、すでにドールとして完成したヒー子や麻理香とは勝負にはならなかったのだ。
私は躰のあちこちに機能不全を起こしながらも、必死で逃げた。
あの人工物のところに行けば・・・
それだけを考えて私は逃げた。
ヒー子も麻理香もすでにこちらに反撃の余力が無いと見てゆっくりと近づいてくる。
もう少し・・・もう少しで助けてもらえ・・・
えっ?
あれは何?
私は映像をズームする。
奇妙に角ばった構造物。
そばに旗が立っている。
赤と白の縞模様の旗。
一画に青地に白い星がたくさんある。
星条旗だ。
ここはアメリカだったの?
いや・・・ちがう・・・
あれは・・・
あれは・・・

『あははははははは』
私は笑い出してしまった。
補正をしないと躰がふらついたのは当たり前だ。
ここは・・・
ここは・・・
私はその奇妙な人工物のところにたどり着く。
四本の足を持つ金色の物体。
側面には星条旗が描かれている。
足の一本には梯子がついており、その下には奇妙な足跡がいくつも残されていた。
折りしも地平線の向こうから巨大な青い星が昇ってきた。
私は笑いが止まらない。
青い海に白い雲がかかった巨大な星。
ああ・・・
あれは地球だわ・・・
ここは月。
ここは海。
そう・・・ここは「静かの海」だったんだ。

******

「コタイメイ“ニシハラユミカ”。デナサイ」
私はマスターの命じるままに新たなドールを作り出す。
マスターが新たなドールをどのくらい必要としているのか私は知らない。
そのようなことは考える必要がない。
私はただドールRW-223としてマスターの命令に従うだけ。
私はがっくりとうなだれた女を抱きかかえるように連れ出すと、プラントで待っているRW-221に引き渡す。
これでまた新たなドールが生み出されるのだ。
私は次の指示をマスターに求めるべく通信を試みた。


「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませー。

それではまた。
  1. 2007/09/08(土) 20:28:06|
  2. 改造・機械化系SS
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祭り開催です

お待たせいたしました。

本日9月8日午前0時、「海祭り」開催でーす。

URLはこちら。
http://ssb.sakura.ne.jp/matsuri/welcome.html

まずはご覧下さいませ。

今回のテーマは「海」
海を取り込んだ黒いお話が並びます。
ぜひぜひ楽しんでくださいませ。
そして、よろしければ感想をお書き下さいませ。
感想は作者にとっては栄養剤。
何より嬉しいことなのです。

今回は作品の一般投稿も受け付けます。
9月30日からとなりますが、ぜひぜひ皆様も作品をお寄せ下さいませ。
お待ちしております。

それではお祭りの始まり始まりー。
  1. 2007/09/08(土) 00:00:00|
  2. ネット関連
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ノモンハン14

関東軍は楽観的に過ぎました。

日本軍が戦場に到着しつつある今、またソ蒙軍はハルハ河を超えて撤収するのではないか?
いや、すでに撤収中ではないのか?
そんな憶測すら飛び、偵察機の報告もソ連軍撤収中と伝えてくる始末。
これは事実誤認だったといわれるが、関東軍司令部の第23師団に対しての督戦だったかもしれません。

戦場に到着した第7師団よりの増援である歩兵第26連隊長である須見新一郎(すみ しんいちろう)大佐も、到着早々に第23師団の参謀長より「ご苦労様です。とにかく須見さんは出張ってくれさえすれば、金鵄勲章がもらえるように手はずをつけますよ」と言われたと言います。
戦場全体にソ蒙軍を見下している気配が漂っていたのでした。

第23師団の作戦は以下の通り。
第23師団のうちから歩兵第71連隊及び第72連隊、それに第7師団より派出された第26連隊を中心とした兵力に、師団捜索隊と野砲兵第13連隊が加わったものを小林少将が率いてハルハ河を渡河。
西岸に布陣するソ蒙軍の砲兵陣地を撃滅して、西岸側からハルハ河東岸に布陣したソ蒙軍の退路を断たせます。
一方、戦車第3連隊及び戦車第4連隊を中心に、歩兵第64連隊及び野砲兵第2大隊が支援する東岸攻撃隊が、ハルハ河東岸に布陣する越境ソ蒙軍を攻撃、追い立てられたソ蒙軍を追撃しつつハルハ河とホルステン河の合流点川又に追い込んで、そこで西岸攻撃隊と挟み撃ちにして撃滅するというものでした。

これは、先ごろ関東軍司令部が立てた作戦をそのままなぞったものであり、違うといえば、最初西岸に渡る予定だった第7師団が来なくなったため、西岸に渡河する部隊も第23師団の歩兵部隊ということになったぐらいでした。

第23師団は、本来はハルハ河西岸に対する攻撃には、戦車を中心とした攻撃力の大きい戦車連隊を使うつもりでした。
関東軍もそのつもりでしたし、そのためにわざわざ関東軍の虎の子の安岡(やすおか)中将指揮下の第一戦車団から安岡中将直卒で戦車第3連隊と第4連隊がこの場に駆けつけたのです。

しかし、戦車第3連隊も第4連隊もハルハ河西岸への渡河攻撃部隊には配属されませんでした。
渡河するための橋が問題だったのです。

河に橋を架けたりするのは工兵隊の役割でした。
工兵とは陣地構築をしたり、地雷を埋設や除去したり、橋を架けたり妨害物を爆破したりする重要な兵士たちです。
このノモンハンの戦場にも、連隊長斉藤(さいとう)中佐率いる工兵第23連隊がやってきておりました。
彼らはこのハルハ河を渡河するための橋を架ける任務を言い渡されたのです。

ところが、工兵第23連隊には軍用架橋のための資材がありませんでした。
支那事変に物資を取られていた関東軍には、架橋用資材すら払底していたのです。

そのため、斉藤中佐がどうにか手配できていた訓練用の架橋資材で橋を架けることになりました。
訓練用ですから、重量物を渡せるようなものではありません。
戦車など渡れるはずが無かったのです。

やむを得ず、西岸へは歩兵が渡ることになりました。
戦車は東岸攻撃に回されました。
これは作戦などと呼べるものではありません。
行き当たりばったりの軍事行動でした。

昭和14年(1939年)7月1日。
第23師団は行動を開始します。
長距離の行軍を経てきた兵士たちでしたが、士気は一様に高く、味方の多さと戦車の頼もしさに必勝の思いがみなぎっていました。

夜半からの行軍は日が高くなっても続き、シャクジン湖という湖の付近で最初の会敵がありました。
日本軍の行動開始に対処するべく、ソ蒙軍側も慌てて戦車十数両を中心とする戦力を振り向けてきたのです。
ですが、この戦闘は日本側の速射砲などがソ連側戦車を数両撃破して追い払い、近くにあるフイ高地(721高地)を確保。
初日の戦闘は終わりを告げました。

その15へ
  1. 2007/09/07(金) 19:58:36|
  2. ノモンハン事件
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80年ですか~

毎月購入している「世界の艦船」10月号を手に入れました。

特集は「アメリカ空母80年の歩み」
最初のアメリカ空母ラングレーからではなく、実用空母としての最初の空母初代レキシントンから数えて80年になるのだそうです。

写真で綴られたレキシントンからニミッツ級のロナルド・レーガンまでの流れはまさに圧巻。
第二次大戦から現在まで連綿と続く最強の米空母艦隊の中核となる空母の姿が迫力ありますね。

それにしても、翔鶴級に匹敵する巨大空母エセックス級を戦争中に20隻近くも量産できる工業力はまさにすごいの一言。
アメリカの底力ですね。

来年にはキティホークが退役し、ついに日本にも原子力空母が配備されます。
アメリカの空母は原子力空母だけになってしまうんですね。

他にはこの夏の海上イベントの写真や、豪華客船のため息の出るような素晴らしい内部写真などが掲載され、誌面を華やかにしています。

海上自衛隊の新型16DDHひゅうがの情報が出ているかなと思いましたが、どうやら詳しいのは載っていないよう。
来月号あたりかな。

何にせよ、こうして各国の軍艦や商船の情報が手に入るのはありがたいものです。

それではまた。
  1. 2007/09/06(木) 21:24:34|
  2. 本&マンガなど
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来た来たキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

関東地方に大型の台風が近づいているようですね。
明日の夜には上陸の可能性があるとのこと。
充分にご注意下さい。

明後日には北日本にも来るらしいですね。
被害が出なければいいのですが。

さてさて、今日の試合で中日が巨人に敗戦。
阪神が横浜に勝利となったことで、ついに阪神が二位浮上しましたよ。
ヤッタヤッター!!

今年はとにかく打って勝っているとか、押さえて勝っているというよりも、しのいでしのいでしのぎきって勝っている、そんな気がします。
打線は相変わらず湿り勝ちですし、今岡もいませんし林もいません。

どうにか相手より一点でも上回っていれば、JFKを投入してしのぎきる。
そんな戦いが多いですよねー。

ただ、それが何となく上手く行っているようです。
チーム防御率もセ・リーグ一(昨日の時点で)ですし、得失点差がなんと+-0(昨日の時点で)で貯金10なんて信じられませんね。

泣いても笑っても後ひと月。
最後に笑ってシーズンを終えて欲しいです。

それではまた。
  1. 2007/09/05(水) 21:23:49|
  2. スポーツ
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あの人のお兄ちゃんです

ベトナム戦争で経済的にも痛手をこうむった合衆国は、軍事関係の予算についても引き締めざるを得ませんでした。
折りしも、1960年代後半には、第二次世界大戦中に建造された数多くの駆逐艦や護衛駆逐艦が、いくら近代化を施しても退役を余儀なくされていく時期でありました。

増強著しいソ連海軍の水上艦や潜水艦に対抗するためには、高性能な艦艇は無論必要でしたが、一方で数量的優勢も確保しなくてはなりませんでした。
高性能な艦艇は当然のごとくコストがかかります。
合衆国の予算といえども、限られた中で数量と高性能を両立することはできませんでした。

そのため、高性能な兵器をある程度確保しつつ、性能には目をつぶってコストダウンを図った大量生産むきの兵器で数量的優勢を確保するという、いわゆるハイ・ロー・ミックス構想が生まれました。

そのわかりやすい例が航空機です。
コストも高いが優秀な性能のF-15と、低コストでそこそこな性能を目指したF-16(ただし、F-16は予想以上に高性能であり、F-15をしのぐ部分さえもあります)のコンビで質と量の両面を満たすことにしたのです。

海軍もハイ・ロー・ミックス構想を取り入れることにし、大きな船体で将来的発展余裕のあるある意味贅沢な駆逐艦であるスプルーアンス級駆逐艦と、安く大量に建造できることを目指したオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲイトを建造することにいたしました。

オリバー・ハザード・ペリー級は、全長135メートルほどの船体に対空ミサイルと対潜ヘリコプターを二機搭載する有力な汎用フリゲイトとして1977年に一番艦が就役。
以後12年間で合計51隻もの大量産が行なわれました。
まさに数的優勢を確保する軍艦だったのです。

オリバー・ハザード・ペリー級は、コスト削減のためにさまざまな方法を取りました。
優秀な三次元レーダーを使わずに二次元レーダーで済ませたり、アスロック発射機を備えなかったり、艦首バウソナーを装備しなかったりと、徹底したコストダウンを図りました。

しかし、艦首のスタンダード対空ミサイル発射機は対艦ミサイルハープーン発射機を兼ねており、76ミリ砲やバルカンファランクスなどの必要な装備は確保していますし、ヘリコプターによる対潜能力もしっかりと備えています。

事実合衆国海軍でこそ脇役でありハイ・ロー・ミックスのローですが、諸外国の海軍ではれっきとした主力艦として使われているものも多く、ライセンス生産や退役艦の購入も多数行なわれております。

速度こそ最高28から29ノットとやや遅めではありますが、空母機動部隊の随伴艦としても使われ、まさに合衆国海軍の小型汎用艦として活躍してきました。

近年は艦齢の古い艦から退役がはじまってきてはおりますが、まだ当分は艦隊の一角を占める重要な艦艇として重宝されるでしょう。

ちなみに一番艦の艦名となったオリバー・ハザード・ペリーとは合衆国海軍の軍人であり、「米英戦争」の折に「エリー湖の戦い」において活躍した人物です。
そして彼の弟こそ、日本人にはなじみの深いあの黒船を率いて浦賀にやってきたマシュー・カルブレーズ・ペリー提督なのです。

オリバー・ハザード・ペリー級は、冷戦と言う時代の平時の戦時量産艦だったんですね。

それではまた。
  1. 2007/09/04(火) 19:50:06|
  2. 趣味
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  4. | コメント:0

ノモンハン13

第7師団の一部を増援にまわし、一個師団強もの戦力を集中する今回の作戦に関東軍は自信を持っておりました。
鉄道より遠く離れたノモンハンにソ連軍が大部隊を展開できるはずは無い。
外蒙軍を中心とするハルハ河越境兵力を相手にするのであれば、一個師団強という戦力はまさに圧倒的なものである。
万万が一にも負けることなどは考えられないとの思いでした。

ノモンハンにソ連軍がスターリンの命で戦力を集中しているのを、モスクワで肌で感じ取っていたソ連駐在武官が、わざわざそれを知らせにシベリア鉄道経由で、増強ソ連軍の状況を調査しながら満州の新京にやってきて関東軍司令部に報告したにもかかわらず、関東軍司令部はその武官を「臆病者」とののしった上、いまさらそんなことを言う奴は切るとまで脅されたのです。
まさに敵を知らずおのれを知らずの状況だったのではないでしょうか。

ノモンハンより南西にモンゴル側に入ったところにタムスクという町がありました。
ソ蒙軍の拠点として活用され、航空隊の基地も置かれておりました。
6月中旬にカンジュル廟やアルシャンを爆撃したソ連軍航空機はここから飛び立ったものが大部分でした。
ノモンハン上空の優勢を確保するためには、関東軍にとっては叩き潰したい航空基地であったのです。

タムスクは当然モンゴル領内です。
つまりそこを攻撃するということは他国の領土への攻撃となります。
日本帝国陸海軍は天皇陛下に統帥されています。
他国への攻撃などということは、天皇陛下の命令があって初めて行なえることでした。

しかし、関東軍はこう考えました。
すでにカンジュル廟への敵軍の空襲があったからにはノモンハン一帯は戦場である。
戦場での敵軍への攻撃は軍司令官の裁量のうちにあるのであり、天皇陛下の命令による必要は無い。
タムスクの敵飛行場攻撃は関東軍司令官の裁量範囲内であるため問題ないというのでした。
もはやここまでくると笑うしかないのかもしれません。

このタムスク爆撃の計画を察知した(味方の行動を察知したというのも何なんですが・・・)東京の参謀本部ではまさに驚愕しました。
関東軍が何かをやるつもりだとは感じていましたが、第23師団一個ぐらいなら好きにやらせてやろうという空気が強かった中、他国への越境爆撃はさすがに限度を超えていると感じたのです。

しかし、参謀本部は毅然とした態度に出ませんでした。
関東軍のメンツをおもんぱかったのか、中止“勧告”を出すにとどめ、中止“命令”は出しませんでした。
参謀を派遣してやめさせようとしたのです。

関東軍は中止“勧告”では引き下がりませんでした。
東京から参謀が中止を進言しに来る前にやってしまえということにすらなったのです。

昭和14年(1939年)6月27日早朝。
第2飛行集団の百機以上の航空機がタムスクに向かって出撃。
タムスクで迎撃に上がってきた敵戦闘機や地上駐機中の敵攻撃機などに激しい攻撃を仕掛けました。
日本側は未帰還機四機、戦死七名という損害に対して百機以上の敵航空機を撃破。
ソ連側航空部隊は大損害を受けました。
完全なる奇襲だったのです。

辻参謀が歓喜して敵に与えた戦果を確認して司令部に報告。
関東軍司令部でも各員が小躍りして大戦果に酔い痴れました。
まさにしてやったりの大戦果だったのです。

当然のごとく関東軍はこの大戦果を東京の参謀本部に報告します。
中止勧告という行き違いはあったものの、参謀本部もこの大戦果には喜んでくれるに違いない。
関東軍司令部ではそう考えていました。

しかし、参謀本部から返ってきたのは「バカ者!!」という一喝でした。
確かに大戦果かもしれないが、ソ連が黙って引っ込んでいるわけが無い。
必ず報復がある。
その報復が大規模で日ソの全面戦争にでもなったらどうするつもりなのか?
いったい関東軍は何を寝ぼけているのか?
それが参謀本部の言い分でした。

関東軍司令部は色を失いました。
揃ってバカ呼ばわりされたのです。
参謀本部への反感は頂点に達しました。
犠牲が出なかったわけじゃない。
現に戦死者も出ているし、生き残った連中だって命がけで戦ったからこそ、この大戦果を生んだのだ。
兵士たちの敢闘を無視し戦果を無視する参謀本部は何事か!
これでは死んだ英霊も浮かばれないし、兵士たちに戦えなどとは言えないではないか!
だいたい報復というが、今回のこの攻撃こそ報復であって、カンジュル廟への空襲や東捜索隊などの無念を晴らすものではないのか?
参謀本部の方こそ大バカ者の集まりではないか!
参謀本部などはもはや当てにならん。
満州は我々が守るのだ。

関東軍は参謀本部に対し次のような電文を送りました。
「関東軍の基本方針は敵の不法行為を打破し、北辺の備えを強化、それによって支那事変解決に貢献するところにある。現状の認識と手段においては参謀本部と当方はいささか見解を異にしているが、北辺の些事については当方に一任して安心せられたし」
つまり、ソ連軍との戦闘など北辺の些事であるから関東軍に任せて余計なことは言うな、というのである。
なんと言う電報でしょうか。

参謀本部はついに天皇に上奏し天皇の命によりという体勢を整えます。
その上で関東軍に対してこれ以上の越境攻撃をするなという指示を出しました。

ですが、すでに遅きに失していました。
ハルハ河に陣を敷くソ蒙軍に対して、関東軍はまさに攻撃を仕掛けるべく部隊を展開中だったからです。

第二次ノモンハン戦が始まろうとしていました。

その14へ
  1. 2007/09/03(月) 20:30:40|
  2. ノモンハン事件
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  4. | コメント:0

お知らせがあります

今日はお知らせがございます。

近々正式に発表となりますが、実は今、ある祭りの準備が進んでいます。
かつて私も参加させていただきました、あの“祭り”と同様の。
今回は私も実行委員(なんていう大層なものではないですが)の一人として、祭り立ち上げのお手伝いをさせていただいております。

水面下では幾人かのSS書きの方々に接触を図り、祭りへのご参加をお願いしておりまして、好感触を得させていただいてもおります。
あの“祭り”のときの楽しかった雰囲気を再度味わっていただこうと、各SS書きの方々も腕を撫していらっしゃるご様子。

私も作品を一つ仕上げており、祭り開催と同時に公開できると思います。
公開まではもう少々お時間をいただきますが、ぜひぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。
あの“祭り”に負けないお祭りにしようと思っておりますので、どうか開催をお楽しみに。


それと札幌歴史ゲーム友の会の今日も6ゾロ様のご尽力で、ASL-SK2の日本語訳が公開されましたですね。
PDF形式でダウンロードもでき、英文ルールではわかりづらかった部分も丁寧に補足が付け加えられております。
これでますますASL-SK2に親しんでくださる方が増えると嬉しいですね。
今日も6ゾロ様ならびに札幌歴史ゲーム友の会や和訳に携わった方々に心よりお礼を申し述べさせていただきます。
どうもありがとうございました。
  1. 2007/09/02(日) 20:51:02|
  2. ネット関連
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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