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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

グレイバー蛇足(1)

今日から四日連続でSSを一本投下いたします。

これは先日投下しました「グレイバー」の続編ですが、言ってしまえば蛇足です。

本来「グレイバー」はあれで完結したものでしたが、私自身が続きを妄想してしまったのと、多少の続きが見たいと言うリクエストをいただいたことで、つい形にしてしまいました。

あくまで蛇足ですので、お気に召さないところが有るかもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです。

それではどうぞ。

1、
「チクショー!!」
苛立ちの声とともにテーブルに叩きつけられる拳。
セーバースーツを着ていないからいいようなものの、もし着ていたらあのテーブルは粉々に砕け散っていたに違いない。
「落ち着けよ政司(せいじ)! 秋奈(あきな)ちゃんは頭のいい娘だ。きっと無事にどこかで救出を待っているさ」
永戸(ながと)君がいらだつ粟端(あわはし)君を落ち着かせようとするけど、たぶんあれでは落ち着けないわ。
「落ち着けだって? もう秋奈がいなくなって一週間にもなるんだぞ! てめえよくそんなことが言えるなっ!」
今にも永戸君に掴みかかろうとする粟端君。
これではチームワークはズタズタだわ・・・
「政司、秋奈ちゃんがいなくなって苦しんでいるのはお前だけじゃない。このベースにいる誰もが心配しているんだ。警察だって優先的に動いてくれているし、このベースの警務部門も動いている。そのうち結果は出る。それまで待て」
私が口を開こうとした時、西下(にしした)君が静かに口を開く。
体格の大きさのせいもあるのか、どっしりと構えているようなところが頼もしい。
「とにかく、何らかの事件に巻き込まれたことは疑いないわ。ただ、それがルイン絡みであるという証拠はないし、捜査力を持たない我々が動いたところで得るものは少ないわ。粟端君、待つのも重要なことよ」
そう、二十歳そこそこの女性が行方をくらませるような事件はルイン絡みでなくても充分に起こりえる。
むしろ陵辱目的あたりで連れ去られたと考える方が正しいのかもしれない。
「盛逸(もりはや)司令・・・」
唇を噛んで拳を握り締めている粟端君。
無理もないわ・・・
秋奈ちゃんはたった一人の大事な妹ですものね。
私は秋奈ちゃんが今どういう状況なのかを憂えて、胸が苦しかった。

「そういえば、四釜(しかま)さんもここ二日ばかりいないんですね?」
私は西下君にうなずく。
「美智代(みちよ)ちゃんは体調不良でお休み中よ。彼女も秋奈ちゃんの失踪を相当気にかけていたから、きっとそのせいもあるかもしれないわ」
交代制とは言え、メインオペレータの二人がいない。
これはセーバーチームにとっても少なくない痛手だ。
もし、これがルインの手によるものだとしたら・・・
でも、彼女たちがセーバーチームのオペレーターであるということは第一級の機密事項のはず。
ルインに知られるということなど万が一にもありえるはずが・・・
「どっちにしても、何かあったときにはすぐに出動できるようにしていてちょうだい。あなたたちだけが世界を救う希望なんですからね」
私がそう言ってセーバーチームの面々を見渡すと、彼らは力強く頷いた。

「それじゃ、後はお願いね」
私はハンドバッグの中身を確認して立ち上がる。
「了解です。司令も少し休んでくださいね。お疲れのようですから」
副司令の神楽崎安奈(かぐらざき あんな)が少し心配そうに私の方を見つめている。
大丈夫よ。
まだまだ二日三日の徹夜ぐらいは大丈夫。
でも、気力は保てても、お肌にはよくないわよね。
「大丈夫よ。でも、家に帰って少し休むわ。何かあったら連絡をちょうだい」
「はい。お疲れ様でした」
安奈に手を振って、私はセーバーベースの司令室を後にする。
彼女はこの春に着任したばかりの若手士官。
防衛大のエリート教育を受けているけど、少し杓子定規というか臨機応変さが足りなく感じる。
規程に乗っ取って組織を運用することはもちろん重要だけど、そればかりでは足元をすくわれるかもしれない。
そのあたりを上手く教えてあげられればいいんだけど・・・

「お疲れ様でした。お気をつけて」
「ありがとう。それじゃお先に失礼するわ」
ゲートの警備員に見送られ、私はカモフラージュされた建物から外へ出る。
残業を終えたOLのような振りをして建物から出てきた私を気に留めるものなど誰もいない。
これこそがセーバーチームを安全に保つための工夫なのだ。
仰々しく護衛の車付きで送り迎えするのも悪くはないのかもしれない。
でも、それこそ目立つことこの上ないし、護衛を上回る戦力で攻められたらどの道意味がない。
目立たないこと。
一般人であること。
これこそが最大の防御になるはず。
もちろん最大限の注意は払う。
ハンドバックの中にはスタンガンや位置報知システムや通信機などが入っている。
何かあれば、すぐにでもセーバーチームに知らせが行くようになっているのだ。
さて、今日はどのように帰ろうか。

宵の口の街なかは人でにぎわっている。
そういえばもうすぐ七夕だわね。
私のふるさとは八月に七夕を行なうから、かえってちょっとぴんと来ないけど、デパートなどのショーウィンドウは浴衣や夏物衣料のマネキンで楽しげだ。
そろそろ冷たいものの美味しい季節。
秋奈ちゃんが無事に戻ったら、お祝いにみんなでビヤガーデンに繰り出すのもいいかもしれない。
私はそんなことを考えながら、駅前の大型書店に立ち寄った。

できるだけパターンにならないように、それでいて気まぐれに行き先を決めて帰り道のルートを分散する。
そのためにまっすぐ家に帰ることはほとんどない。
尾行などにもできるだけ気を付けて、人ごみの中を縫うようにして歩く。
書店に寄って出たばかりの小説を一冊買ってきたのもそのため。
尾行に気がつきやすく撒きやすい。

で、ケーキ屋の前にいるのは予定外中の予定外。
まずったわね。
この通りを通るんじゃなかったわ。
ここのケーキって美味しいのよ。
ついつい食べたくなっちゃうじゃない。
どうせ家に戻ったって、秋奈ちゃんの事もあるし休むに休めないわ。
仮眠を取るぐらいが関の山。
食事は司令部でサンドイッチをつまんだから問題ないし・・・
ケーキかぁ・・・
私は自分のスタイルが気になる。
こればかりは世の女性はみんな気になることよね。
普段から体力維持と体型維持を兼ねた運動をしているとは言え、少しでも気を抜くわけには行かない。
でも・・・
疲労回復のためにも甘いものの一つぐらいは・・・
決めた。
一個だけ買って、家でお茶にしましょう。
小説を読みながらお茶してリラックスすれば、少しは疲労も取れるでしょうしね。
うん、そうしましょう。
私は一人頷くと、ケーキショップの入り口をくぐっていた。

ふう・・・
近づいてくる私のマンション。
と言っても、半分以上はセーバーチームの予算から出されているんだけどね。
今日も何事も無く帰りつけたみたい。
マンションはセキュリティもしっかりしているし、まず問題ない。
この行き帰りの時間だけが危険といえば危険な時間。
でも、ルインが嗅ぎつけているとは思えな・・・
あれは?
マンションの玄関付近の植え込みの脇に放り投げられたように置かれたピンク色の携帯端末。
作動していることを示す赤いLEDが点滅している。
間違いない。
あのピンクの携帯端末は秋奈ちゃんの携帯端末だわ。
この近くに来ているの?
もしかしたら逃げてきて私に助けを求めに来たの?
私はすぐにそのピンク色の携帯端末に近づいた。

「こんばんは」
その声を暗がりの中から聞いた時、私は自分のうかつさに呪詛の言葉を吐きたくなった。
こんなのは罠に決まっていたのだ。
都合よく私の住むマンションの入り口近くに落ちていた秋奈ちゃんの携帯端末。
ちょっと考えればわかることだったのに・・・
私は暗がりの中の人影を確認することもなく飛び退る。
距離をとって逃げ出すのだ。
そしてすぐさまセーバーチームに・・・

だが遅かった。
振り向いた私の前に黒尽くめの女が立っていた。
のっぺらぼうのように目も鼻も耳もない。
その代わり、口元だけが黒一色の中から覗いていた。
その唇も黒いことに気が付いたとき、私は首筋に衝撃を受ける。
「あぐっ」
全身に痺れが走り、私はその場に崩折れた。
うふふという笑い声とともに足音が近づいてくる。
意識がどんどん遠くなっていく。
「ダメですよ、司令。いくらルートを変えたって、行き着くところは同じなんですから」
ああ・・・その通りだわ・・・
でもね・・・
ここを嗅ぎつけられるとは思っていなかった・・・の・・・よ・・・
  1. 2007/08/02(木) 19:12:45|
  2. グレイバー
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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