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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

Uボートを狩る花たち

ツクダの「眼下の敵」のプレイイメージ想像のため(?)、昔読んだ文庫本を再度読み返しています。

タイトルは「地獄の輸送船団」 ブライアン・キャリスン著 ハヤカワ文庫。

これは大西洋をアメリカから英国まで向かう商船船団を描いた小説で、主人公はUボートでも英国護衛艦でもない、単なる商船の乗組員です。

英国商船「オリンピアン」は建造から二十年を経た老朽船。
その一等航海士デヴィッド・エリスはUボートの恐怖に苛まされながらも、黙々と英国へ向かう船団の一員としての任務に全力を尽くす。

幸運に恵まれた船団は、あと少しで英国軍哨戒機の範囲に入るところまで来ており、今晩をしのげば生き残る確率は格段に上がるはずだった。

だが、船団の行く手にはUボートの狼群が待ち構えているはず・・・
オリンピアンとエリスは生き残ることができるのか?

というストーリーなんですが、オリンピアンの所属する船団には商船が三十数隻配属され、それぞれが弾薬、食料、ガソリンなど様々なものを満載して英国に向かっています。
そのいずれもが英国が戦争を遂行する上で欠かせない重要なものですが、その三十数隻の船団を守る護衛艦はたった二隻。

その二隻のうち一隻は遠洋トロール漁船に網の代わりに爆雷投射機をつけたような武装トロール船。
そしてもう一隻が、それよりは大きいとは言え、捕鯨用のキャッチャーボートを基にした「フラワー級コルベット」です。

Uボートの損害著しい1940年ごろ、英国は船団護衛用艦艇の深刻な不足に悩まされていました。
とは言え、各造船所はすでに手一杯の軍艦建造に追われており、護衛用艦艇を建造する能力はありません。

そこで英国は民間造船所でも建造できる簡易型の護衛艦を建造して急場をしのぐことにします。

民間造船所の能力で建造できるように、船体は捕鯨用のキャッチャーボートをベースにし、そこに対潜ソナー(英国ではASDICアスディックと呼びました)を装備。
船首には10.2センチ砲一門。
船尾には爆雷投射機を舷側に向けて二基。
そして対空用に40ミリ機関砲や12.7ミリ四連装機銃のどちらかを装備。

わずか排水量950トンの小さなこの護衛艦が、英国商船団の命綱として船団護衛に付いたのです。

フラワー級というだけあって、船名には花の名がつけられまして、「アネモネ」「サンフラワー」「チューリップ」「カーネーション」などと名付けられたフラワー級コルベットが、大西洋上でUボートと死闘を繰り広げたのでした。

先ほどの小説にも「アップル・ブロッサム」という架空のフラワー級コルベットが登場しますが、それにしてもたった二隻の護衛艦ではいかんともしがたく、船団は次々とUボートに沈められていきます。

1943年になって、アメリカ軍の護衛艦艇が大量に投入されるようになるまで、こういった状況だったんでしょうね。

それではまた。
  1. 2007/07/31(火) 20:53:19|
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ノモンハン6

「満州国」(正式には満洲国。当用漢字表の趣旨に基づき教科書で使われる字体で表記)は日本の傀儡国家であるとは言え、れっきとした独立国としての体裁は整えておりました。
無論、独立国と言っても、それは各国に承認されなければなりません。
しかし、当時ソビエト連邦(以下ソ連)は、満州国を独立国としては承認しておりませんでした。

最終的(太平洋戦争終了時まで)には当時の世界の三分の一に当たる23ヶ国が承認(準承認含む)をした満州国ですが、ソ連は承認をしていません。
ソ連にとっては満州は中国の一地方に過ぎなかったのです。

そうなると、独立国家同士で決められるべき国境というものを、満州国とソ連の間で取り決めることができませんでした。
ソ連はあくまでも中国(清朝)との間の取り決めであるネルチンスク条約に基づいた国境線を中ソ国境とし、日本側も一応はそれでよしとみなすほかなかったのです。

しかし、このネルチンスク条約も国境線に関してあいまいなところが多い条約でした。
一望千里の草原や砂漠が多い土地では、国境線があいまいになるのは仕方ないことだったのかもしれません。

ですが、満州国にとっては大事な国境線であり、満州国の治安と防衛を担当する満州国軍、ひいては関東軍にとっては無視できないものでもありました。
満州国軍が頼りになるものではない以上、満州国の防衛はひとえに関東軍にかかっており、国境守備も関東軍の重要な任務の一つだったのです。

大日本帝国陸軍にとっては、日露戦争以来その主敵はロシアであり、その後を継いだソ連でした。
満州事変以後上海事変などで中国と戦争状態にありましたが、あくまでも陸軍にとっては主敵ソ連であり、特に満州国に駐留し常に隣国であるソ連の脅威を感じていた関東軍にとっては、その思いは必要以上に強いものでした。

第一次世界大戦後、ロシアでは革命が発生し、それに呼応するように各国がシベリアへ出兵します。
日本も各国軍の中で最大級の出兵をしますが、さほど益も無く、かえって最後まで出兵を続けていたために各国の批判を浴びました。
このシベリア出兵から満州事変に至るまでぐらいの間は、ソ連にとっても国内が落ち着かない時期でもあったために、満州方面でのソ連の行動はおとなしいものでした。

しかし、昭和8年(1933年)に始まった、ソ連の第二次五ヶ年計画は極東の開発が重視され、ウラジオストックを中心とするソ連極東方面は著しい経済開発と、軍事力の増強が行なわれることになります。
一方、満州防備に任じる関東軍も、広大な満州全土を守るために飛躍的な増強を見ますが、やはり日本の国力から言って、ソ連とは格差が生じます。

この背景には国力差もそうですが、ソ連の対日不信感の増大も一因でした。
ソ連は革命政権の基盤が整わないうちは、日本と事を構えたくないとして、昭和6年(1931年)には相互不可侵条約を申し入れました。
しかし、当時の日本政府は赤色革命によって生じた共産主義政権に対する恐怖と嫌悪からこれを拒否。
ソ連側は対日融和としてさらに東支鉄道の売却を持ちかけますが、これもすったもんだの挙句、売却成立までに二年を要する結果になります。
このため、ソ連は対日不信感を強め、東支鉄道売却で得た利益の大部分で、ソ満国境にトーチカ群を築くという行為に出ます。
ソ連は日本との融和をあきらめたと言っていいでしょう。

一方、日本側、特に関東軍はソ連が軍備力を強化して行くのを知りませんでした。
いえ、知っていたとしても無視しました。
関東軍の軍備を増強したとは言っても、歩兵師団三個、機械化師団一個を中心とする五万人の兵力では、極東ソ連軍二十三万にはどうあっても太刀打ちできません。
しかし、そのことを指摘するものは、「恐ソ病患者」と呼んで非難しました。
精強帝国陸軍にあって、なおその中の精強を持って自負する関東軍は、たとえ敵が幾万ありとしても、強靭な精神力を持ってあたれば、鬼神もこれを避くようにソ連軍に対しても対処できると見ていたのです。

確かにソ連軍はいくらかは増強しているだろう。
しかし、烏合の衆であるし、日露戦争では負けたではないか。
これからもこちらが断固たる態度で臨めば恐れるに足らん。
必要なのはソ連に舐められないことである。
数を頼んでこちらが少数であるがゆえに舐めた行動をソ連が起こした場合は、断固として一撃をするべきである。
そうすればソ連は懲りて満州にちょっかいをかけることもなくなるだろう。
とにかく舐められないことが肝心だ。

関東軍はそう考えていました。
以後、ソ連(ソ連の友邦国である外蒙古含む)と満州国との間の国境線不明瞭な地域における衝突は激化の一途をたどります。

その7へ
  1. 2007/07/30(月) 21:08:09|
  2. ノモンハン事件
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なかなかですねー

いまさらですが、「闘姫陵辱28」拝見いたしました。
いつもお世話になっている方から、送っていただいたのです。
本当にありがたいことです。

あの「うらぎりのどうくつ」のhiro氏も作品を掲載されているとのことで、楽しみに読ませていただきました。

さすがですね。
とても楽しませていただきました。

三人のヒロインがいて、その一人が捕らえられている状態からストーリーは始まります。
罠だから行くなというリーダーの忠告を無視して捕らわれたヒロインを助けに行くもう一人のヒロイン。
はたして彼女は仲間を救うことができるのか?

これは悪堕ち作品として水準以上の良作ではないでしょうか。
私はすごく楽しませていただきました。
もちろん物足りない面もないわけではないですが、商業誌であり、エロを重視しなくてはならない誌面でありということを考えると、これ以上を望むことは難しく思います。

ページ数の関係で連鎖堕ちの二人目だけですが、悪に染まったヒロインが邪悪に微笑む姿は最高です。

残念ながら、私個人としては、その他の作品はそれほど楽しめませんでした。
ですが、hiro氏の作品を読むだけでも価値はありそうです。
機会があれば目を通されてはいかがでしょうか。

それではまた。
  1. 2007/07/29(日) 20:23:14|
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皇帝陛下は強いのにー

いつものように先輩を招いてゲームの日。

先日手に入れたツクダの「眼下の敵」を見てもらい、Uボートに思いを馳せました。

一隻一隻がユニットとなっているこのゲームは、文字通りあの小説・映画の「眼下の敵」をプレイするシナリオがあります。
と言っても、小説の英国駆逐艦とUボートとの戦いはともかく、映画の米国護衛駆逐艦対Uボートの戦いは、米国艦がほとんど入っていないので英国のフリゲートに変更されていますけどね。

Uボート対英国護衛艦との戦いを扱ったこのゲームでは、航空機のルールがないので、空母や護衛空母、戦艦もある意味やられ役です。
主役はUボートと護衛艦なのです。

そんな話をデータカードとユニットシートを眺めながらくっちゃべっておりました。
すると、意外なことに先輩が、「今度やってみようか?」と言って下さったので、これはぜひプレイせねば。

でも、手元には学研のムック本「Uボート戦全史」「大西洋戦争」、デルタ出版の「Uボート」、海人社の「ナチスUボート」、文林堂「グラフィックアクション」19及び25と、Uボートの資料はあるけど、対する英国護衛艦隊の資料って少ないんですよねー。
上記の資料にもライバル的扱いでちらちらと載っているだけ。
せいぜい海人社の「第二次世界大戦中のイギリス軍艦」ぐらいかなぁ。

まあ、それはともかく、今日はコマンドマガジン日本版52号付録の「赤い夕陽のナポレオン」をプレイ。
コンパクトにまとまったお手軽なナポレオニックのいいゲームです。

二回目のプレイですが、前回より時間が経っているので、再確認プレイという感じ。
私が皇帝陛下率いるフランス軍で、先輩が普・墺・露連合軍。
前回と同じ布陣です。

ナポレオン率いる仏軍は、ブリュッヒャーと離れてしまっているプロイセン軍をまず攻撃。
総司令官の指揮範囲にいない部隊は将軍の作戦指揮能力がそのまま戦力となるので、実戦力よりかなり劣ることが多い。
そのため、叩けるところは叩くという機動防御を仏軍は取りました。

ヨークのプロイセン軍はナポレオンに叩かれて後退。
指揮範囲に収めようと突出してきたブリュッヒャーを返す刀で指揮下のロシア軍もろとも撃破、第一ターン途中でブリュッヒャーは指揮下部隊とともに壊滅、除去されます。

さらにナポレオンは今度はオーストリアのシュワルツェンベルクに狙いを定め、指揮範囲を広く取るために道路上に単独でいたシュワルツェンベルクも連合軍部隊の間を上手くすり抜けたモルティエが除去。
連合軍は一瞬にして司令官を二人とも失いました。

幸先のいいスタートではありましたが、このゲームは除去されても再編成で復帰します。
第二ターンには何事もなかったかのようにブリュッヒャーもシュワルツェンベルクも盤上に参上。
連合軍の部隊も次々と戦力を補充して再編成されます。

仏軍はナポレオンが一人頑張り、彼の行くところ連合軍は局地的敗北が待っています。
しかし、ナポレオンの目の届かないところでは、連合軍の将帥以上にナポレオンに率いられることに慣れた仏軍将帥があっけなく連合軍に敗退して都市を奪われます。

ナポレオンが都市を一つ奪回する間に、連合軍は二つ都市を陥落させる。
そのような状況が五ターンまで続いてしまうと、仏軍には勝ち目がなくなりました。

結局五ターン終了時で投了。
仏軍の敗北です。
最後まで粘ってもダメだったでしょう。

うーん・・・
どうしたらよかったのかなぁ。
ナポレオンと麾下の軍勢を離すのはよくないみたいですね。
とは言っても固まっているだけじゃ押し込まれちゃうしねぇ・・・

なかなか一筋縄ではいかないようです。
これもまた次回に雪辱を期したいですね。

それではまた。
  1. 2007/07/28(土) 19:33:50|
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ノモンハン5

「満州事変」によって成立をみた「満州国」ではありましたが、国際社会はその以前に満州事変が中国に対する日本の侵略であるかどうかについて調査を始めておりました。
具体的には国際連盟による調査団の派遣でした。

英国のロバート・リットンを団長とし、ほかに米、仏、独、伊の各団員からなる調査団は国際連盟によって派遣されたのですが、意外なことに調査団の派遣そのものは日本の提案でなされたものでした。

これは、関東軍の謀略によって国際的な信用が失墜していた日本として、国際社会に配慮していることをアピールする目的もあったでしょう。
しかし、より一層の目的としては、調査団が調査をし何らかの報告が出るまでは、日本に対して国際的な決議は行なわれないはずであり、その時間的猶予のうちに満州国を独立させて既成事実化しようと目論むものでもありました。
実際、リットン調査団の調査終了後、報告書の提出される前というタイミングで満州国は日満議定書を交わし、日本は満州国を承認しているのです。

昭和7年(1932年)10月に提出されたリットン調査団の報告書は、10章からなるもので外務省が翻訳したものはなんと289ページにも及ぶものでした。
その内容としては、柳条湖事件以後の日本軍の行動(いわゆる満州事変)は、中国の行為に対する自衛行動とはとても言えず、また満州国も中国人民の自由意志に基づくものではないため、日本の行為は侵略であると断定したものでした。

しかし調査報告書は、日本の行為は自衛行動をはるかに越えるものではあるものの、その根底には中国の排日反日行為があり、その中国側の行為に何より苦しんだ日本が、半ば自暴自棄的に侵略行為に及んだことも否定できないとして、中国側にも大きな責任があると断じてもいたのです。
これは、日本の主張で調査団の構成メンバーを当時の大国に限定したため、植民地支配という利害関係を持つことから、日本の主張もある程度は汲んでやろうという意志が働いたもののようでした。

この報告書を受け、国際連盟は満州問題に対して次のような提案をします。
満州事変以前の状況へ戻すことも、満州国を存続させることも日中双方にとって受け入れられない以上、満州から相互の兵力を撤兵し、国際機関によって管理する自治区とするというものです。

対外的には日中ソ三国による相互不可侵条約により国境を保全され、国内的には外国人指導の下による特別憲兵隊を置くことで管理し、行政も外国人顧問が広範囲に指導するというもので、外国人顧問の数に関しては日本人の割合を多くすることで充分に考慮するという、日本に配慮した提案だったのです。

しかし、日本はもう日満議定書の取り交わしなど満州国を完全に承認する旨を発表しており、この案は受け入れられないと突っぱねます。
日本国内にも満州国の承認は日本にとって不利なことばかりと考える人々もいましたが、軍主導によるマスコミのコントロールなどにより、日本国内はもはや満州国は日本と一体であるという気分が醸成されてしまったのでした。

結局国際連盟との間に妥協は成立せず、昭和8年(1933年)2月24日、日本代表松岡洋右(まつおか ようすけ)は国際連盟議場を退場。
日本は国際連盟を脱退し、孤立化を深めていくことになりました。

関東軍にとっては日本や世界がどうあれ、満州国というソ連に対する防壁ができたことは多いに喜ばしいものでした。
もともと陸軍は、日露戦争以後主たる敵はソ連であるとの認識を持っておりました。
その点、主たる敵をアメリカと定めた海軍とはすでに向いている方向からして違っていたのです。

日満議定書の取り決めによって、満州国に対する関東軍の影響力は絶大なものがありました。
もともと関東軍が作った国家ですから、関東軍がどのようにでもできたと言っても過言では無いのです。
関東軍司令官は、本来なら日本政府が任命するはずの特命駐満全権大使と関東庁長官を兼ねることとなり、関東軍の満州における駐兵権や関東軍司令官による満州国官吏の任免権、鉄道を始めとする陸海空の交通の管理権、国防上重要とみなされる鉱山の設定権など、満州国は関東軍が政府だったと言っていいでしょう。

こうして、「満蒙は日本の生命線である」という掛け声の下、弱体な満州国軍(日本人以外の満州国内居住の住民によって編成。日本人は満州居住でも軍に入るなら関東軍に入ることになる)を補佐し、広大な満州国(日本の約三倍の国土)を防衛するため増強の一途をたどります。

関東軍とソ連軍が国境をはさんで向き合う形が出来上がったのでした。

その6へ
  1. 2007/07/27(金) 20:33:26|
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ちょっとした愚痴

ちょっとした愚痴を一つ。
読んでくださった方々に不快な思いを与えてしまうかもしれないので、コソーリと・・・


[ちょっとした愚痴]の続きを読む
  1. 2007/07/26(木) 21:06:16|
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新しいリンク先です

ありがたいことにまたまた新たに素敵なサイト様とリンクしていただけることになりました。

芹沢軍鶏もしくは【】の人の敗北宣言(裏面)様です。
URLはこちら
http://3rd.geocities.jp/shamo0113/novels_a.html

2chのさまざまなスレに素敵な創作SSを投下なさっていらっしゃる芹沢軍鶏様のサイトでございます。
すごく素敵で面白いSSがいくつも掲載されております。
さまざまなスレに投下されているだけあって、その文章の素晴らしさはもううらやましいばかり。
さすがと唸らせられてしまいます。

皆様もぜひ足をお運びいただければと思います。
芹沢様、どうもありがとうございました。
これからよろしくお願いいたします。
  1. 2007/07/25(水) 19:46:35|
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ツクダ 「眼下の敵」

ヤフオクでツクダホビーから過去に出ていたシミュレーションゲーム「眼下の敵」を手に入れることができました。

070725_1912~01.jpg

070725_1913~01.jpg

まさか今になって、このゲームの未使用未切断どころか、未開封品にめぐり会えるとは。
やっほいやっほい\(^o^)/

これが出ていた頃はUボートなどまったく興味なかったんですよねー。
日本やアメリカの空母ばかりに目が行って・・・

でも、今は空母なんかよりも英国の小さな護衛艦に目が行っちゃいます。
このゲームもUボートより、Uボートに翻弄されながらも必死に船団を守ろうとする英国護衛艦をプレイしたいなーと思ったから手に入れたんですよ。

ルールはそれほど難しくはなさそうだけど、どうしてもプロットだからなぁ。
先輩は相手してくれなさそう・・・

でも、これで輸送船団をぼこぼこに(Uボート側)、Uボートをぼこぼこに(英国護衛艦側)にできますね。
いずれプレイしたいなぁ。

それではまた。
  1. 2007/07/25(水) 19:34:17|
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ノモンハン4

関東軍高級参謀であった石原莞爾中佐は、これからの戦争は国民全てが戦争に参加する国家総力戦であり、陸海空一帯の立体的戦争であるという、当時としては先進的な考えの持ち主でした。
その上で、いずれは日本とアメリカが世界を二分する大戦争を戦うこととなり、それが世界の帰趨を決める世界最終戦争になるという考えの持ち主でした。

しかし、そのためには日本が人口や食料、資源などの諸問題について解決することが必要であり、その解決策としては満州及び蒙古、いわゆる満蒙を日本の領土としてその広大な土地を活用することがもっともいいと考えるようになります。
満蒙はもともと漢民族の土地ではなく、そこに住む人々も漢民族よりはむしろ大和民族に近く、日本が満蒙を領有し治安維持と開発を行なうことによって、満蒙と日本はともに発展することができる。
そういうある意味身勝手な考えを持ったのです。

石原中佐の満蒙領有論は関東軍の上層部に受け入れられ、関東軍はいずれ満蒙を領有することこそ日本のため、ひいては陛下の御ためにもなることと歪んだ考えを持つようになります。
折りしも昭和6年(1931年)6月、対ソ連作戦の兵要地誌作成のためひそかに満州奥地に潜入していた中村震太郎(なかむら しんたろう)大尉と井杉延太郎(いすぎ のぶたろう)予備役曹長の二人が、中国第三屯墾軍にスパイとして捕らえられ殺害されるという事件が起きました。
いわゆる中村事件です。

石原中佐ら関東軍上層部は、この事件を契機に満蒙を武力で制圧し、日本領にしてしまうという事を考えました。
関東軍の考えを知らされた陸軍中央部は、終始弱腰であり、武力行使には反対したものの積極的中止命令を出すようなことはしませんでした。
一方中国側は関東軍の強硬な態度に驚き、殺害犯を調査して引き渡すことも視野に入れた交渉を求めましたが、すでに行動に入ろうとしていた関東軍には通じませんでした。

昭和6年(1931年)9月18日。
奉天(現瀋陽)の近く柳条湖(りゅうじょうこ)付近の満鉄の線路が爆破されました。
爆破と同時に付近の関東軍鉄道守備隊は攻撃を受け、中国軍による破壊活動であると思われました。
関東軍は直ちに出動態勢を整え、奉天を急襲します。
奉天は張学良の指示もあり無抵抗を決めたので、関東軍は難なくこれを制圧。
市内全域を掌握しました。

鉄道線路が爆破されたことを知らされてからの行動としてはあまりに手際がよすぎる奉天制圧でしたが、それも道理であり、爆破自体が関東軍の自作自演によるものでした。
張作霖の爆殺に続いて関東軍はまたも謀略を使ったのです。

関東軍主力による都市攻撃という異常事態に政府は震撼し、事件の不拡大を内外に声明として発表しましたが、陸軍中央部は「武力行使は必要最小限にとどめること」とだけ訓令し、ほぼ関東軍の行動を黙認してしまいます。

関東軍は“自衛のための必要最小限の武力行使”により、9月21日には吉林を占領。
錦州への爆撃で錦州を拠点としていた張学良を威圧し、11月18日にはチチハルを占領。
軍事力によって満州に支配地域を広げて行きます。
年が明けた昭和7年(1932年)1月3日には錦州も占領。
2月5日、ハルビンを占領。
これで満州のほとんどは関東軍の制圧下に置かれました。

この間、日本政府はなすところ無く、国際連盟による中国からの撤兵勧告も拒否権を発動して無視します。
石原中佐ら関東軍上層部は、当初満州を日本の直接統治下に置こうと考えていましたが、さすがにそこまではと陸軍中央部が反対。
替わりに清朝の廃帝愛新覚羅溥儀(あいしんかぐら ふぎ)を首班とした親日政権を樹立させ、落ち着いたところで将来的に日本に併合するということにします。
溥儀は再び皇帝となれるならと、しぶしぶながらも日本の申し出を受け、満州に向かいました。

昭和7年(1932年)3月1日、満州国建国が宣言されます。
3月9日、溥儀は満州国執政の位置につき、満州国が動き始めました。
皇帝となるはずだった溥儀でしたが、まずは執政として国家元首となったのです。

満州国は、漢民族・満州民族・朝鮮民族・蒙古民族・日本民族を五族として、その一体融和を目指す五族協和と王道楽土を唱え、国旗も五族が一体であるという五色旗を掲げるという、建前としては(あくまで建前としては)立派な理念を持った国家でした。
しかし、実態は日本の傀儡国家であり、日本人と他の人種の方々とは明らかに差別されておりました。

9月15日、日満議定書が交わされ、日本は満州国を正式に国家として承認しました。
ここに、満州国建国までの一連の事件である「満州事変」は終了します。

日本はまた新たな問題を抱えることとなりました。

その5へ
  1. 2007/07/24(火) 21:03:30|
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灰色の狼

第二次世界大戦中のドイツ軍の兵器で有名なものを挙げろと言われれば、やはり真っ先に上がるのがティーガーでしょうか。

陸の巨獣たるティーガーはやはり外せないところでありますが、空でのメッサーシュミットBf109も空軍ファンにはたまらない魅力でしょう。

そして、海軍ファンにとっては、Uボートを外すわけには行きません。

ドイツ海軍は幾種類ものUボートを建造しましたが、その中でももっとも有名なのがⅦC型でしょう。

以前私は、アメリカの護衛駆逐艦「バックレイ」級のことをブログで書きましたが、その時にアメリカの護衛駆逐艦の建造隻数は一千隻を越えると知りました。

しかし、それに負けず劣らずの量産をされたのが、このⅦC型潜水艦だったのです。
その数なんと626隻。
一つの型式の潜水艦としては、空前の量産数です。

水上排水量わずかに750トン。
全長は66メートル。
日本で言えばロ号級の中型潜水艦です。

この小さな船体を、ディーゼルとモーターで、水上17ノット、水中では7.6ノットで走らせます。

乗員は士官が4または5人、下士官兵が40人。
彼らは、生死を共にする仲間であり、一種の家族的連帯感を共有していました。
そのため、艦内では階級章はつけなかったといわれます。

前部に魚雷発射管を4門、艦尾に1門搭載し、魚雷は予備を含めて14本搭載。
たった14本ですから、大事な時にしか使えません。
そのため、甲板には主砲として8.8cm砲(いわゆる88ミリ高射砲)を搭載し、大戦前半期には貨物船などに対しては魚雷よりもこの8.8cm砲を使って沈めることも多かったようです。

艦橋には一応対空対船舶用に2㎝機関砲も搭載。
しかし、対空戦闘するぐらいなら急速潜航するでしょうね。

このUボートたちは、船団を見つけると、周囲の仲間を呼び寄せ、あたかも狼がヒツジの群れを襲うかのように、入れ代わりながら攻撃をしたため、彼らは灰色の狼と呼ばれました。

この狼の群れを制圧するため、米英は大量の艦艇を投入しなくてはならなかったんですね。

それではまた。
  1. 2007/07/23(月) 21:30:47|
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南北ともに

第89回全国高等学校野球選手権大会、いわゆる夏の甲子園大会の地区予選が日本各地で行なわれておりますね。

北海道は先日北北海道地区が、そして今日、南北海道地区が決勝戦を終え、南北の優勝校が決まりました。

驚いたことに、今年はなんと、南北北海道地区ともに駒澤大学付属校の甲子園出場ということになりました。

昨年までは南空知ブロックとして、南北海道大会に出場し、駒大苫小牧と兄弟校対決をしていた駒大岩見沢が、ブロック見直しによって南北海道から北北海道に移動。

北北海道の常連校を打ち破って、ついに北北海道大会を制覇。
夏は9年ぶり3度目の出場となりました。

一方南北海道大会は、やはり着実に強さを見せ付けた駒大苫小牧が勝ち上がります。

今日の決勝戦でも、函館工を15-0の大差で破り、南北海道大会を制しました。
なんと、5年連続7度目の夏の甲子園です。

今までは、上手く行ってもどちらかしか甲子園に行けなかった兄弟校。
それが今年は両校同時出場です。
行ける可能性ができたとたんに行ってしまう。
すごいものですねー。

昨年の斉藤投手(現早大)対田中投手(現楽天)に続いて、甲子園で南北北海道兄弟校同士の決勝なんて見せてくれないですかねー。
両校とも甲子園でがんばれー。

それではまた。
  1. 2007/07/22(日) 20:50:37|
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今日は一勝一敗

いつものように先輩とゲームの日です。
今日はお手軽ゲームの二連チャン。

まずは、コマンドマガジン日本版74号付録の「マーケットガーデン作戦」
マーケットガーデンとは言うものの、1944年後半の西部戦線全体を扱った作戦級ゲームです。

私は連合軍、先輩はドイツ軍を担当。
連合軍はまずマーケットガーデンのもととなる空挺降下のターンをランダムに決めます。
引いたチットは4。
4ターンに空挺降下が行なわれるのです。

私の立てた作戦は単純なもの。
このゲームでは、アントワープ解放までは米軍か英軍のどちらかにしか補給できないため、補給がまわらない方はほとんど前進できません。
そのため、まずはアントワープ解放を第一目標とし、史実どおりにアルンヘム近辺に空挺降下を行なってルールの都市群へ進撃するのです。
つまり主力は英軍。
私はモンティに全てを託しました。

補給を受けた英軍は機甲部隊による進撃も華々しく、スヘルデ河口付近の独軍陣地を一ヘクス落とします。
米軍は助攻として、じわじわと進撃、南方の独軍に圧力をかけて行きます。
突出した英軍機甲師団への独軍の1:1の反撃も撃退。
冷や汗モノでしたが何とかなりました。

しかし、幸運もここまで。
3ターンの進撃時、戦闘後前進で突出した英軍機甲師団二個が、独軍の2:1攻撃の前に敗北、除去されてしまいます。
英軍の進撃はここで頓挫。
アントワープ解放をしたものの、英軍にはこれ以上の進撃はほぼ不可能となりました。

そこで米軍に望みを託し、4ターンからは米軍に補給をまわします。
南方は進撃には不向きな地形であるため、史実のマーケットガーデン作戦の意味がよくわかるのですが、英軍が半身不随となってしまった今、頼れるのは米軍だけ。

そしてついに空挺降下発動。
とは言うものの、アルンヘム近郊はとても手が届きません。
やむなく三個空挺師団はミューズ川に隣接したヘクスに降下。
独軍を半包囲体勢に持ち込みます。

しかし、独軍は増援で陣地線を防御。
米軍の突破はなりませんでした。

終了時、連合軍1VP:独軍2VPで独軍勝利。
戦争はまだまだ終わりが見えない状況となってしまいました。

「スモレンスク攻防戦」もそうですが、突破って難しいですね。
戦線に穴を開けたユニットが、次の瞬間には包囲されて除去される。
そんなことばかりやっちゃいます。

今日も英軍の機甲師団が包囲されて除去されちゃいました。
情けなー

でも、次こそはって思わせる手軽さと魅力があるような気がしますね。
「スモレンスク攻防戦」とともに、またやろうという気にさせられます。
たぶん私は攻撃って下手なんでしょうねー。
練習しなくては・・・

プレイ後はASL SK1のシナリオ4をプレイ。
こちらは激戦の末に何とか勝利できました。
機会があれば詳細を書きますね。

それではまた。
  1. 2007/07/21(土) 21:02:29|
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ノモンハン3

大正14年(1925年)11月。
中国の北洋軍閥張作霖(ちょう さくりん:中国のお方であり、固有名詞を日本語読みするのははばかられるのですが、一般に日本で通用する読み方で通させていただきます)の配下である郭松齢(かく しょうれい:以下同様)が馮玉祥(ひょう ぎょくしょう)と計り、張作霖に反旗を翻しました。

満州の覇者として満州王とも呼ばれていた張作霖は日本の関東軍とも通じていましたが、日本政府と陸軍中央はこの騒動に静観の構えを見せます。
日本の権益さえ守られれば、あえて騒動に首を突っ込むことはないとの判断でした。

しかし、関東軍司令官陸軍大将白川義則(しらかわ よしのり)は、独自に張作霖を支援。
この騒動を張作霖の勝利に導きます。
陸軍中央部の意向を無視して行なわれたこの白川大将の行動が、関東軍の中央無視の最初の事例となりました。

勝利を得た張作霖でしたが、彼は日本に協力することなく、かえって米英の後ろ盾をいいことに反日排日の行動をあおります。
満鉄に平行する打通線建設など、日本の経済活動への妨害を進め、満州における日本の権益を削ろうとしたのです。

しかも、蒋介石(しょう かいせき)との軍事衝突によって敗れた張作霖の敗残兵が満州に逃げ込み、そこで排日の軍事行動を起こすということも近い将来起こりうると考えられ、在留邦人の安全と関東州及び満鉄付属地の治安維持に責任を持つ関東軍は、この際張作霖を排除してしまおうという空気が支配するようになります。

昭和3年(1928年)6月4日。
夜中の午前1時15分に北京を発した特別列車には、日本軍の求めに応じて奉天へ向かう張作霖の姿がありました。
この時、関東軍司令部に所属していた高級参謀河本大作大佐は奉天の独立鉄道守備隊第四中隊の中隊長東宮鉄男(とうみや かねお)大尉と謀議し、奉天の郊外で張作霖の乗る特別列車の爆破を計画します。

準備は6月4日の午前零時ごろから始められ、“爆破犯人”として中国人も二名用意され殺されます。
そして、瀋陽駅の一キロほど手前に爆薬を仕掛け、特別列車を待ちました。

午前5時23分。
瀋陽駅に近づいたために速度を落とした特別列車がやってきます。
東宮大尉は自らスイッチを押し、大音響とともに特別列車は吹き飛びました。

列車は編成の中ほどを爆破され、数両が吹き飛ばされました。
張作霖は爆破された車両の中から救出されたものの、後に死亡。

この件を関東軍は中国人同士の内紛の事件として発表し、しらを切りとおします。
日本国内では、首相田中義一内閣が「満州某重大事件」として追及し、陸軍中央の調査によって真実を知ることはできましたが、公表をすることはできず、河本大佐一人を処罰するにとどまりました。
これによって関東軍はさらに中央の支配を受け付けなくなっていくのです。

張作霖を排除して、関東軍の懸念は払拭されたかに見えましたが、張作霖の息子の張学良(ちょう がくりょう)は父の軍閥を継承。
さらに父と対抗していた蒋介石に従うことを表明して、満州に青天白日旗(国民党の旗)を掲げます。
いわゆる“易幟(えきし)”です。

張学良は、無論父を謀殺したのは日本だと見抜いていたため、父の弔い合戦に打って出ます。
関東軍はまたしても厄介な敵を作り上げてしまったのです。

ここにいたり、関東軍は全ての満州問題を解決し、在留邦人と日本の権益を守るには、満州そのものを大日本帝国の一部としてしまうのがよいと考えるようになりました。
その中心となったのが、関東軍参謀の石原莞爾(いしはら かんじ)中佐でした。

その4へ
  1. 2007/07/20(金) 20:24:48|
  2. ノモンハン事件
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ショック

今日はエロゲーの紹介です。

Lusterise様の「触区~学園妖触譚~」

妖魔と戦う退魔師の少女が、妖魔の姦計にかかり陵辱されてしまうという内容のエロゲーです。

主人公(プレイヤー)は永い眠りから醒めた妖魔。
以前捕らえ、快楽によってエロ落ちさせた元退魔師の少女を手駒として、ヒロインの天神明日香(あまがみ あすか)を篭絡しようとします。

主人公は人間の姿をとり、明日香を油断させて恋人として振る舞い、チャンスをうかがいます。
そして、ヒロインの妹とも言うべき希望(のぞみ)や以前主人公と戦ったことのある退魔師梓(あずさ)も絡み、陵辱の宴が始まるのでした。

と、いうことでプレイした感想を一つ。
以下はあくまで私個人の感想であることをご理解下さい。

[ショック]の続きを読む
  1. 2007/07/19(木) 21:01:38|
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米軍のは弾自体が自力で飛んで行くのに・・・

英軍のボーイズ対戦車ライフルが、有名な割りには役に立たなかったことは以前述べました。
(6/14記事参照)
しかし、それでも手元にあれば、何もないよりははるかにマシだったでしょう。

ところが英軍は、1940年の西方戦役(いわゆるドイツ軍によるオランダ、ベルギー、フランス侵攻)において、アルデンヌの森を突破してきた装甲師団に追い立てられ、ダンケルクの海岸からほとんどの装備を放り捨てて撤退する有様となりました。

戦車、砲はおろか、銃までも投げ捨てて、兵士の身一つでイギリス本土に逃げ帰ったのです。

当然、対戦車銃も放り捨てられ、英軍部隊は歩兵用の対戦車兵器がなくなってしまいます。

とにかく一刻も早く、歩兵たちが使える手軽な対戦車用の兵器を作れ!!

兵士たちのそんな欲求に基づいて、急遽作られたのが、PIAT(プロジェクター インファンタリー アンチ タンク=歩兵用対戦車投射機 ピアットと呼ばれた)でした。

これは、当時威力が知られ始めていた成型炸薬弾を弾頭にした弾体を用意し、それを雨樋のような受け皿の付いた発射機(肩当や引き金が付いている)の受け皿部分にセットし、打ち出すという代物でした。

しかし、ドイツ軍のパンツァーファウストや米軍のバズーカと違い、弾体そのものがロケットで飛んで行くようなものではなく、発射機自体に押し込められたばねが元に戻ろうとする力と、ごく少量の発射火薬によって弾体が放り出されるといった方がよい代物でした。
いわゆるばね鉄砲みたいなものなんですね。

つまり、発射するためには、まず発射機自体のばねを90kg.以上の力で押し込んでやらねばならず、非常に苦労するものだったのです。
小柄な兵士だと逆に跳ね飛ばされる危険もあったとか。

理論上はいったん押し込められたばねは、発射後その反動で再び押しもどされることになっていましたが、理論どおりに行かないのが世の常であり、英軍兵士は一発撃つごとにばねを押し込む苦労をさせられることになったのです。

それでも英軍にとってはかけがえのない携帯用対戦車兵器であり、上手く命中させることさえできれば、弾頭部の成型炸薬は75ミリから100ミリほどの装甲板を撃ちぬくことができたので、ティーガーを撃破したという記録もあるそうです。(側面から)

まあ、バズーカに比べると射程(約100メートル)は短いし、発射は苦労するしで、あまり好まれなかったそうですが、戦車に向けて撃つのではなく、トーチカ的な家屋を破壊するのにはそこそこ使えるという事で、もっぱら家屋破壊に使われたようです。

映画「遠すぎた橋」では、英軍パラシュート部隊が、橋を渡ってくるドイツ軍装甲偵察大隊に向かって、後方噴流が無いというPIAT唯一の利点を生かし、建物の中からドイツ軍装甲車両を撃ちまくってましたね。
PIATの活躍するシーンとしては一番有名なのではないでしょうか。

無骨で使いづらい兵器ですが、何となく英軍には似つかわしいような気がして、私は結構好きな兵器です。
使えと言われたら、問答無用で拒否しますけどね。(笑)

それではまた。
  1. 2007/07/18(水) 20:36:08|
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ホワイトプリム(Enne様作:g-than様画)

「舞方雅人の趣味の世界」の二周年記念として、いつもお世話になっていますEnne様よりSSを、g-than様よりそのSSのイラスト集をいただきました。

説明は・・・不要かと思いますので、どうか楽しんでいただければと思います。
それではどうぞ。

「ホワイトプリム」

「またくるよぉぉぉぉぉっ!」
光の中に包まれて崩壊して行く暗黒カフェ ホワイト・プリムの『ゲスト』。
セーバーチームの必殺技が炸裂し、『ゲスト』は砕け散ったのだ。
ヒトそっくりだけど、なんであんなおぞましいものをホワイトプリムは世に放つのだろう。
私はその様子をモニターで見ながらホッと息を吐く。
『こちらセーバーレッド。「ゲスト」は撃破した。他にいないか探ってくれ』
「了解、セーバーレッド。現在周囲にはホワイト・プリムの残党は潜んでいないようです」
私はすぐに周囲を全周探査してクリアなことを確認し、報告する。
「秋奈(あきな)ちゃん、みんなを撤収させてちょうだい。警戒も解除」
背後の一段高くなった位置から、司令の盛逸成実(もりはや なるみ)の指示が飛ぶ。
まだ若いものの、冷静沈着な司令官だ。
「了解しました」
私はいったん背後の司令にうなずくと、すぐにヘッドフォンのマイクに向かって指示を伝える。
「セーバーチームの皆さんは撤収してください。警戒態勢も解除になりました。状況終了です」
『了解した。セーバーチーム、撤収する』
セーバーレッドの永戸(ながと)さんが指示を受け取って、他のメンバーにも伝えて行く。
『秋奈ちゃん。政司(せいじ)は無事だよ。心配要らないからね』
「な、永戸さん!」
私はきっと真っ赤になっちゃったかもしれない。
そ、そりゃあお兄ちゃんのことは心配だけど、ここでモニターしているんだから無事なことぐらいわかるもん。
『秋奈! お前戦闘中もう少しましな指示よこせよな! 敵の位置とか的確に。隣の四釜(しかま)さんを見習え』
ヘッドフォンにお兄ちゃんの怒鳴り声が入ってくる。
「な、何よ! 私だって一所懸命やっているんだからね! そりゃ四釜さんのようには上手くできないけど・・・」
私は思わず言い返す。
私だってちゃんと指示を送っているつもりなのだ。
セーバーチームに頑張って欲しいのはみんな一緒なんだからね。
『秋奈ちゃん』
「あ、は、はい、永戸さん」
『大丈夫だよ。政司は憎まれ口を聞いているだけさ。俺たちには秋奈ちゃんのこと褒めているんだぜ』
『だ、誰が褒めているかよ! 薫(かおる)、変なこと言ってんじゃねえよ!』
『変なことか? いっつも秋奈もだいぶ上手くなったよなって言っているのは誰だっけ?』
セーバーグリーンの西下(にしした)さんだ。
おとなしい人だけど、怒らせると怖いんだぞってお兄ちゃんがいつも言ってる。
『うわわっ、誰がそんなこと言っているかよ! 了(りょう)てめえっ!』
『あははは・・・さあ、撤収しようぜ』
笑い声がヘッドフォンに交錯した。
セーバーチームは無敵だわ。

「お疲れ様でした」
制服を着替えて、警備員の前を通り過ぎる。
私たちオペレーターには交代要員がいて、半日ずつの勤務。
ホワイト・プリムの動き次第だけど、休日もちゃんとある。
でも・・・セーバーチームは交代要員も休日も無い。
お兄ちゃん・・・大変だよね。
日本の平和は俺が守るって意気込んでいるけど・・・
早くホワイト・プリムが壊滅して、平和な世界にならないかなぁ。
私は何の変哲も無い建物を、普通のOLのような顔をして出る。
まさか日本の平和を守るセーバーチームのオペレーターが、こんなところから電車通勤しているとは思わないでしょう。
私は駅へ向かって歩き出した。

あれ?
電車を降りた私はアパートへ向かって歩いていたが、人気の無い公園のところで何か物音がしたような気がしたのだ。
なんだろう?
もしかしたら誰かが乱暴されているのかもしれない。
私はよく考えもせずに公園に入り込む。
樹木が月明かりをさえぎって暗がりを作っている。
街灯の明かりもその暗がりには差し込まない。
私はそっとその暗がりに近づいた。

「気を失ったようね。連れて行きなさい!」
「「はい、お嬢様!」」
私は思わず息を飲んだ。
そこにいたのは、純白のドレスに身を包んだ暗黒カフェ ホワイト・プリムの女幹部インビーナと、カフェの女性型戦闘員「メイド」たち四体だったのだ。
頭部には特徴的な白いメイド・プリムと、それに黒いメイド服を着て、腰にはホワイト・プリムの紋章の入ったトレイを携え、両手には白手袋、両脚には白のニーハイストッキングと黒いメイド靴という姿で暗躍するメイドは、暗黒結社ホワイト・プリムの尖兵として『ゲスト』たちのサポートをする連中だ。
全員が女性の姿をしているのは、戦う男たちを萌え殺すためといわれるが、実はヒトじゃない、案外アリのような生き物なのかもしれない。
そういえば、都市伝説のように世間では、カフェに出入りすると『ゲスト』となり、ホワイトプリムの戦力になるのだとかそんな噂も流れていたっけ。
うん、いまは関係ないわ、メイドの足元にはセーラー服姿の少女が横たわっている。
大きな怪我はしていないようだわ。
どうやら気を失っているらしい。
塾の帰りにでもばったり奴らに出会ってしまったのだろうか。
何とかして助けなきゃ。

「もしもし、こちら粟端(あわはし)です。本部応答願います」
私は植え込みの影に身を隠し、セーバー本部に連絡を取る。
バッグの中から取り出したハンディタイプの通信機は、電波妨害に強い最新型。
のはずなんだけど・・・
イヤホンから聞こえてきたのはガリガリザリザリというノイズだけ。
なんてこと・・・これじゃ連絡取れないじゃない。
お兄ちゃんたちに来てもらわなくちゃならないのに・・・
あ、大変。
メイドがセーラー服の少女を抱え上げたわ。
このままじゃ連れて行かれちゃう。
ど、どうしよう・・・
公衆電話探している時間も無いよ。
どうしよう・・・

「引き揚げるわ。周囲を警戒なさい。カフェへの入り口を見つけられないように、よろしくて?」
にこりと笑って乗馬ムチを振るうインビーナ。
彼女の指示でメイドたちが公園の奥に向かって行く。
そうか、このまま後をつけて行けばホワイト・プリムのカフェがわかるんだ。
カフェを見つければセーバーチームにきてもらうこともできるよね。
よし、このまま後をつけよう。
彼女を見捨てるわけにいかないよ。
私はそっとメイドたちの後を追った。

どうやらあいつらは私には気がついていないみたい。
私はスパイ映画のヒロインみたく、できるだけ付かず離れずに付いていく。
インビーナは意気揚々とメイドたちを従え、先頭に立って歩いていく。
まだそれほど遅くない時間帯なのに、公園はしんとして静か。
きっと奴らが何か仕掛けをしているのかもしれない。
だから通信機も作動しないんだわ。

ええっ?
ここって?
公園の奥、市街地と公園とが入り組んでいる場所、これは病院かしら、あ、張り紙も、そっか使われなくなった病院なんだ。
きっとあの廃病院がカフェの出入り口なんだわ。
考えたものね。
ここなら公園の奥と入り組んでいて注意も惹かないものね、入り口がきっちり閉じられていないのも、いかにも見捨てられた場所って感じ。

インビーナが乗馬ムチをさっと振って、メイドたちを廃院の奥に入れていく。
黒いメイド服姿の女たちが一斉に病院に入っていくなんて、ちょっと異様かも。
でも、どうしよう・・・
あの少女も連れて行かれちゃう・・・
通信機はさっきからノイズばっかりだし・・・
あっ!
私は急いで身を隠す。
今、一瞬インビーナがこっちを見た?
こっちを見て笑ったような・・・
気のせいかな・・・
あ、入っていっちゃった・・・
どうしよう・・・

「もしもし・・・もしもし・・・」
ダメだわ・・・
聞こえるのはノイズばかり。
肝心な時に役に立たないんだから。
こうなったら公園の外へ出て公衆電話か通信機が回復するところへ戻るしか・・・
でも待って。
このまま戻ったら信じてもらえないかもしれないわ。
完璧なカムフラージュされていたら、いったん離れたらわからなくなっちゃうかもしれない。
ここは一度あの廃院を調べなきゃ・・・
セーバーチームのお仕事を少しでも減らすのも、オペレーターとしての任務よね。
私は意を決して、廃病院に近づいた。

「くっさーい・・・」
どうして使われなくなっていても病院って薬くさいのかしら・・・
私は思わず顔をしかめながら奥に入っていく。
そこには三つほどの病室があって、いずれもが扉は開いていた。
「うそ・・・誰もいない?」
私は目を疑った。
がらんとした広がりが各個室にあるだけで、ほかには何も無い。
「あいつらはどこへ行ったの?」
その時、私は病室の一つの床に何かが落ちていることに気が付いた。
ピンク色の四角いもの。
開いたドアの影でよく見えない。
私は仕方なくその病室に入って、ドアを閉めた。

ガクン
えっ?
いきなり床が沈み始める。
私は危うくバランスを崩しそうになったものの、どうにか壁によりかかって躰を支えた。
なるほどね。
ドアを閉めるとエレベータになっているのか。
やっぱりここがホワイト・プリムのカフェへの入り口なんだわ。
私はハンドバッグの中から護身用のスタンガンを取り出すと、あらためて落ちていたピンク色の物を拾ってみる。
なーんだ。
パスケースじゃない。
きっとあの少女のものだわ。
後で渡してあげなくちゃ。
私はパスケースをハンドバッグに入れ、スタンガンを構えてエレベータが止まるのを待った。

誰もいない?
エレベータが止まったところで扉が開く。
私はできるだけ壁に身を寄せて扉の向こう側を覗いてみた。
白く薄暗い通路。
奥の方で曲がっているのか、突き当たっているようにも見える。
無用心なのか・・・それとも侵入されることなど考えていないのか。
私は監視カメラみたいなものが無いかどうか確認する。
少なくともそれと思われるようなものは見当たらない。
とにかく、ここにいたらいつあいつらが戻ってくるかもしれないわね。
私はそっとエレベータをおり、通路を歩き出した。

静かな通路。
何か不気味さを感じるわ。
いったん戻った方がいいかなぁ。
でも・・・なんだかまっすぐ歩いているはずなのに、通ってきた後ろは真っ暗でよくわからない。
通信機はさっぱりだし・・・
どうしよう・・・
あ、扉があるわ。
とりあえず中を確認してみましょう。

「開いている?」
ドアノブは意外にもするりとまわった。
もしかして罠?
でも、いまさら遅いよぉ。
私は意を決してドアを開く。
そして素早く入り込んでドアを閉め、中の様子を窺った。

「だ、誰?」
薄暗がりの向こうから声が聞こえた。
え?
もしかして?
私は良く目を凝らして闇を見る。
あ・・・
どうやら部屋の奥、薄闇の向こうに鉄格子の嵌まった牢屋が設えてあるらしい。
しかも、そこにはあのセーラー服の少女が腰を下ろしていたのだ。

「大丈夫? 怪我は無い?」
私はすぐに鉄格子に駆け寄った。
「あ、あなたは?」
セーラー服の少女がすぐに起き上がって私の方に来る。
涙を浮かべている彼女はなんかとても可愛い。
「私は粟端秋奈(あわはし あきな)。セーバーチームの一員よ。助けに来たわ」
「セーバーチームの? ああ、ありがとうございます」
見るからにホッとした表情を浮かべる少女。
セーバーチームってこうしてみんなに安心を与えているんだわ。
「あなたは神宮(こうみや)さんね? パスケースを拾ったわ」
「はい、神宮弥生(こうみや やよい)です」
「珍しい苗字ね、普通はじんぐうって読んじゃうわよ」
「ええ、よく間違われます」
にこやかに笑顔を見せてくれる弥生ちゃん。
よかった、無事で。
そうとなったら脱出しなきゃ。

牢には頑丈な鍵が掛かっている。
それはそうよね。
捕らえた少女を逃がすわけにはいかないもの。
見張りもいないということは、鍵だけで充分と踏んだんでしょう。
「見張りがいないようだけど、鍵も持っていっちゃった?」
「ごめんなさい、よくわかりません。でも、そこらへんに置いてあるかも」
弥生ちゃんが首を振る。
仕方ないわよね。
気を失わされて連れて来られたんだもの。
「わかったわ。探してみるね」
私は薄闇の中、何か無いかと探してみる。
鍵さえあれば、弥生ちゃんを連れて脱出すればいいだけだ。

さすがに何も無い部屋。
鍵は見つからない。
そろそろあきらめて別の手を考えた方がいいかもしれないわね。
「粟端さん」
心細そうに牢の中で私を伺っていた弥生ちゃんが私を呼んでいる。
「秋奈でいいわよ。どうしたの?」
「壁の向こう側で声がするんです。こっちにくるみたい」
どうやら弥生ちゃんは彼女なりに様子を探ってくれていたみたい。
壁の向こうの音を聞いてくれていたんだ。
「本当? 来るのは一人?」
「一人みたいです。私の様子を確認しにくるみたい」
私はうなずいた。
一人ならばスタンガンで気絶させればいいし、上手くいけば鍵を持っているかも。
「わかったわ。入り口で待ち伏せしてやっつけちゃいましょう。どのみちここには隠れる場所が無いから、入ってこられたらばれちゃうわ。その前に・・・」
私はスタンガンを握り締める。
スタンガンと言ってもこれは強力なもの。
目盛りを最大にすれば、メイドぐらいは倒せるはず。
「気をつけてください、秋奈さん」
「ええ、任せて」
大丈夫大丈夫。
私はセーバーチームの一員。
ちゃんと護身術の訓練だって受けているんだから。

私は入り口のすぐ脇にへばりつき、敵が入ってくるのを待ち受ける。
メイドだったら、とにかくスタンガンで倒して鍵のありかを訊き出すの。
弥生ちゃんと一緒に脱出するんだから。

シュッと音がして扉がスライドする。
黒い人影が入ってきたその時、私は思い切りスタンガンを押し付けた。
「ギャウッ」
そのまま悲鳴を上げて崩れる人影。
私は急いで廊下を確かめ、他に誰もいないことを確認したところで、倒れたメイドを引きずり込んだ。

ピクリともせずに意識を失っているメイド。
見れば見るほどこいつってば人間の女性そのものだよね。
まさに、そこらへんからスタイルのいい女性を誘拐して、白いプリムと黒メイド服を着せ、ヒールの低いメイド靴と手袋を履かせましたって感じ。
でも・・・
まさか、本当にそうなんじゃ・・・
倒されたメイドを持ち帰って解剖したことがあるはずだけど・・・
人間とは違う生き物だって言っていたはず・・・
でも・・・
つやつやの唇は、女の人の唇そのものだよ・・・

「秋奈さん、どうですか?」
あっ、いけないいけない。
私は弥生ちゃんの言葉にハッとなる。
鍵を探さなきゃ。
って、ラッキー!
この腰のトレイと一緒に付けているのは鍵束じゃない。
ツいているぅ。
私は鍵束を手にとって、弥生ちゃんの閉じ込められている牢に向かう。
きっとこの中のどれかが牢の鍵に違いない。
私は一つずつ鍵を合わせ、どうにか弥生ちゃんを救出することに成功した。

気を失わせたメイドを弥生ちゃんの替わりに牢に入れて鍵をかける。
「さ、脱出よ」
私は弥生ちゃんにそう言うと、ドアをそっと開けて左右を見た。
薄暗い通路は静かで不気味。
でも、人影は無い。
私は後ろにいる弥生ちゃんにうなずいて見せると、彼女を連れてそっと部屋を出る。
こんなところはさっさと抜け出さないとね。
セーバーチームに知らせれば、お兄ちゃんたちがこんなアジトは破壊してくれるわ。
そのためにも一刻も早く・・・

変・・・だ・・・
この通路はまっすぐだったはず・・・
こんなところに曲がり角なんて・・・
迷った?
似たような通路だったから・・・
でも、一本道だったはず・・・
どうして?
私は少し焦っていた。
エレベータを降りて、一本道の通路をやってきたはずなのに・・・
部屋を出た時に左右を間違えた?
そんなはずないよ。
方向音痴じゃないもん。
でも・・・
それじゃどうしてエレベータに着かないの?

「秋奈さん・・・」
心配になったのか弥生ちゃんが背後から声をかけてくる。
「ん、何?」
私は努めて明るい声を出した。
内心の不安を知られるわけには行かないもんね。
「・・・大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫。もう少しで出口よ」
私は自分自身に言い聞かせるようにそう言った。

突然、ウインウインウインと警報が鳴り始める。
いけない!
見つかった?
『メイドの皆さん、メイドの皆さん。確保した人間が脱走してよ。すぐに捕獲なさい!』
インビーナの声だわ。
きっと牢に入れたメイドが気がついたんだ。
どうしよう・・・

「秋奈さん、大変。後ろから足音が」
弥生ちゃんが不安そうに私の肩を叩く。
振り向いた私の耳にも、確かに複数の足音がこちらに近づいてくるのが聞こえてきた。
この通路は左右を壁に囲まれたトンネル状の通路。
前後を挟まれたら逃げ場所はない。
「弥生ちゃん、走るわよ!」
「はい」
私は弥生ちゃんを引き連れて走り出す。
お願い・・・
エレベータにたどり着いて・・・

『はい、お嬢様』
『はい、お嬢様』
私は足を止める。
前からもメイドたちの声がするのだ。
「秋奈さん・・・」
「弥生ちゃん、ごめんね。どうやら挟まれちゃったわ」
私は必死に左右を見る。
どうにか逃げ場は・・・
あった!
通路の脇にドアがある。
何があるかわからないけど、このままここにいるよりはずっとマシ。
「秋奈さん」
「うん、あそこに隠れよう」
私は弥生ちゃんを連れてドアのところに行き、手を掛ける。
幸い鍵は掛かっておらず、ギイという音を立ててドアは開いた。
私は素早く中を覗く。
中は真っ暗で、何となくひんやりしていた。
どうやら敵の気配はないわね。
隠れるには都合が良さそう。
「弥生ちゃん、入るよ」
「はい」
私は弥生ちゃんをカバーするようにして部屋に入り、ドアを閉じた。

『はい、お嬢様』
『はい、お嬢様』
ドアの向こうではメイドたちの声が錯綜している。
きっと私たちを見つけられないで焦っているのかもしれない。
どうにかここを脱出しなきゃ・・・
私はともかく弥生ちゃんは民間人。
なんとしても助けなきゃ・・・
「秋奈さん・・・」
私の上着の裾をそっと握り締めてくる弥生ちゃん。
心細いんだわ。
私がもっとしっかりしなきゃ。
「大丈夫よ弥生ちゃん。絶対にここから連れ出してあげるからね」
「はい」
不安そうにしながらも笑みを見せてくれる弥生ちゃん。
えらいなぁ。
私を励ましてくれているんだわ。
ありがとう。

闇の中、寄り添って壁に背中を付け座り込んでいる私たち。
通路からはメイドの声はもうあまり聞こえない。
どうやら助かったようね。
でも、油断は禁物。
もう少し様子を見た方がいいわ。
「秋奈さん・・・あれ、なんでしょう?」
弥生ちゃんが闇の中を指差す。
薄暗い通路だったとはいえ、それでも明かりのあった通路からこの真っ暗な部屋に入ったのだ。
闇に目が慣れるまでは少しかかった。
「あれは・・・」
部屋自体はさほど広くない部屋だ。
いくつもの箱が置いてあり、上からは何か薄っぺらなものがぶら下がっている。
私は立ち上がると、そのぶら下がっているものを見に行った。

「メイド服?」
ぶら下がっていたのは、なんとあのメイドたちの着ているような漆黒のメイド服だった。
白くてレース飾りのような襞の付いたメイド・プリムといっしょに吊るされたメイド服。
これって、つまりメイドたちの衣装ってことよね。
「これって・・・メイド服ですか?」
弥生ちゃんも驚いたのか口元に両手を当てている。
「そのようね。でも、これはチャンスだわ」
「チャンス?」
弥生ちゃんに私はうなずいた。
メイドがどのように作られているのかはともかく、この衣装を着てメイドに変装したら、きっと怪しまれずにこのアジトを出ることができるわ。
「これを着て奴らの仲間に変装するの。そうしたら、怪しまれずに行動できるわ。出口も探しやすくなる」
「でも・・・そんなに上手く行くでしょうか? それに・・・着ても大丈夫なんでしょうか?」
弥生ちゃんの心配ももっともだわ。
でも、今のままじゃ、他に手段がないことも事実。
細心の注意を払って着れば、何とかなると思うわ。
「ここを抜け出すまでの間だけ。ここを抜け出したらすぐに脱ぎましょう。だからほんのちょっとだけ我慢して」
私の言葉にしぶしぶうなずく弥生ちゃん。
当然だよね。
私だってこんなところでメイド服着るなんて思わなかったもん。
でも、今のカッコじゃすぐ見つかっちゃうわ。
仕方ないのよ。

私は手を伸ばすと、ぶら下げられているメイドプリムとメイド服を取り外す。
すべすべした手触りがなんだかとても素敵。
これを素肌に着るって、もしかしてすごく気持ちいいのかも・・・
何を考えているの、私?
私は首を振ると、なんだか飾り文字のようなロゴの入った手近な箱を開け、一式全てを取り出した。
うわぁ・・・
白い目の詰まった繊維でできたような手首までの丈の手袋。
かかとが低いヒールと靴先が丸く、足の甲をバンドで止めるようになっているメイド靴。
真っ白な繊維でできているオーバーニーストッキングのようなもの、それに同じ色の下着?それからそれからこのやたらふわふわしてるのは。
わかった、メイドたちのスカートをふっくら膨らませている切り替えしが、わぁ5段にもなってるペチコート・・・のようなものだわ。
そして、暗黒カフェホワイト・プリムの紋章の入ったシルバートレイ。
まさにメイドのコスプレセットだわ。
どうしてこんなものが・・・
やっぱり中身は女の人?
そういえば女幹部インビーナだって普通の女性と変わりない姿だわ。
暗黒カフェの連中、人間と同じ姿をしているのかも・・・

見ると弥生ちゃんもメイド服を取り外して、コスプレセットを広げている。
こんなところで真剣にコスプレしようとしているなんて、なんか私たちって間抜けっぽいね。
「まず、私が着てみるね。外から見てて変だったらすぐに教えて」
「はい」
真剣な表情でうなずく弥生ちゃん。
可愛いなぁ。
こんな妹欲しいなぁ。
お兄ちゃんじゃ可愛らしさどころか、かっこよさもないもんね。

私は意を決すると、上着もスカートもブラウスも脱いでいく。
弥生ちゃんのじっと見つめる視線がちょっと恥ずかしいけれど、服のうえから着るわけにいかないもんね。
靴を脱いで、ナチュラルベージュのパンストも脱ぎ・・・
「ご、ごめん。ちょっとだけ後ろ向いてくれる?」
女同士でも何となく恥ずかしい。
「えっ? 下着も脱ぐんですか?」
弥生ちゃんが驚いた。
「うん。メイドたちが何させられるのかよくわかっていないから、スカートとかまくられたりすると困るでしょだから下着も交換しないとまずいと思うの」
「あ、はい。わかりました」
くるっと振り向いて私に背を向けてくれる弥生ちゃん。
私も弥生ちゃんに背を向けながら、ブラとショーツを脱いでいく。
ひんやりした空気が肌寒い。
まずはこれよね。
私は裸になったところで、急いで下着のようなものと白のオーバーニーストッキングのようなものを手に取った。
サイズ的に問題は無いと思うけど・・・
伸縮性有りそうだし・・・
でもこれって・・・
確かに形はオーバーニーストッキングにそっくりだけどもっとつやつやすべすべ・・・
どうやって編み上げたのかしら1箇所の継ぎもないわ見たところ伸縮部分も無いように見えるし。
穿いても下がってくるんじゃないかなぁ。
メイド服着るから大丈夫なのかな?
でも、それにしたって・・・
私は少しの間目の前のストッキングのようなものを見つめていた。
とにかく裸でいるわけにいかないわ。
私は気を引き締めると、くしゃくしゃとつま先を手繰り寄せ、右足から通していった。

「ひゃぁっ」
「ど、どうしたんですか?」
思わず私が上げてしまった声に、弥生ちゃんが心配して声をかけてくる。
「あ、いや、なんでもないの。なんでもない」
私は思わず首を振る。
穿いた瞬間の肌触りがあまりにもよくて思わず・・・なんて言えるわけないもんね。
それにしてもなんて肌触りなの・・・
すべすべしてするすると肌を滑るように引き上げられる。
つま先から足首の辺りはきゅっと引き締まるように密着して、そのまま太ももまで張り付いてくるよう。
両脚入れて腰まで引き上げると、しわも一切なく、完全に肌に吸い付いてくる。
ずり下がる気配なんてまったくない。
こんなストッキング初めてよ。
いつも穿いているストッキングとは全然違うわ。
私はちょっと脚を動かしてみる。
まったく問題なく肌に密着しているわ。
すごい。

もしかしたら、私は少し呆けていたかも。
それほどこのストッキングの履き心地はよかったのだ。
ストッキングでこれなら・・・ペチコートやメイド服なら・・・
私の心臓はドキドキと激しく打つ。
私・・・興奮している?
メイド服を着るのを楽しみにしている?
ち、違うよ・・・
これは仕方なく着るんだから・・・
私はメイド服をそっと手に取る。
すべすべした感触が気持ちいい。
ちょっとだけ・・・
ちょっとだけ・・・ね・・・
私はメイド服に頬擦りする。
気持ちいい・・・
すべすべで気持ちいいよぉ・・・

心地よさを満喫した私は、次にメイド服を着ようとしてふと気がついた。
これって・・・どうやって着るのかな?
開口部は頸回りのわずかな部分だけ。
まさかここから躰を入れられるとは思えない、エプロンドレスをスカートのほうからかぶるなんてなんかいやだし。
でも、他には開口部なんて・・・
あら?
ここが開いている。
メイド服の背中にあるシーム部分が開いているのだ。
なるほど、これならここから着られるわ。
でも、ファスナーもマジックテープのようなものもない。
一体どうやって留めるのだろう。
メイドの背中が開いていたなんて聞かないし・・・
ええい、考えていてもしょうがない。
今はこれを着て変装することが大事なのよ。
私はメイド服の背中にある開口部を広げ、脚から通していく。
ショーツを穿くように両脚を通して腰までたくし上げ、次に胸のあたりまで持ち上げて両腕を片方ずつ通していく。
袖口から両手を出すと、今度は前からかぶりこむようにして、首周りの開口部に頭を入れていく。
ペチコートのふくらみがちゃんとスカートの中に収まったのを確認してから、背中を閉じるだけに整えていく。
すべすべの生地が肌にさらさらと擦れていくのがとても気持ちいい。
「弥生ちゃん、背中を見てくれる?」
私は弥生ちゃんにお願いした。
もしかしたら見逃していただけで、ファスナーが隠れていたのかもしれないし、そうじゃないにしても、素肌が出ていないか確認してもらわなきゃ。
「はい、もうそちらを向いてもいいですか?」
「いいよ。もう着ちゃったから」
私は全身を包み込む滑らかな生地の感触を楽しみながら、エプロンドレスと胸元のリボンの位置を整えた。
メイドたちもこんなふうに緊張しながら見られているのだろうか?
頸周りのレースのような襟元の立ったカラーを整えてリボンをきゅっと締めると気分までしゃっきりする
最後に頭部を飾る特徴的なあのメイドプリムは、髪の毛もきゅっと留めつけてる。
そのため整髪に困ることはないけれど、きっと恥ずかしすぎるって思っていたのだ。
でも、そんなことはまったくない。
これで完成って気がするよ。
それに暗い部屋の中なのに、プリムを付けた途端にものがはっきり見えた。
きっと何かの仕掛けがあるのかもしれないわ。
だからアジト内が薄暗いのも納得いく。
きっとかえって明るすぎると気恥ずかしいからじゃないのかな。

「背中・・・どうすればいいんですか?」
私の背後に回ってくる弥生ちゃん。
闇の中、さっきよりもすごく気配を感じ取れる。
まるで全身が神経になったみたい。
これなら暗闇の中でも問題なく動けそう。
「背中開いているでしょ? 素肌が出ていないか見てくれる?」
「えっ? 開いてなんてないですよ。ていうか、開いていたんですか?」
「えっ? 開いてない?」
弥生ちゃんがふしぎそうに訊いてきたことに私は驚いた。
あれほど明確に開いていたのに・・・
「背中、何もないですよ。開いているどころか縫い目もないですよ」
「ええっ? 本当?」
私は躰をくねらせて背中を見てみようとする。
でも見られるはずもない。
まあ・・・いいか。
開いてないならそれでいいよね。
それよりも・・・
全身がふわふわするメイド服とストッキングに包まれる。
あはあ・・・
気持ちいいわぁ。
これってすごく気持ちいいよ。
メイドたちはみんなこんな感触を味わっているのかな?
それとも人間が着たからなのかな?
どっちにしても、この感触は素晴らしいよぉ。
「秋奈さん・・・秋奈さん!」
「はあ・・・素敵ぃ・・・」
私はきっと艶めかしい声を出していたに違いない。
だって、すごく気持ちよくて淫靡な気分になっちゃいそうなんだもん。
全身をくまなく愛撫されるようなそんな感じ・・・
もう最高・・・
「大丈夫ですか? 変じゃないですか?」
弥生ちゃんが心配してる。
変なわけない。
こんなに気持ちいいんだもん。
絶対変なわけないよ。
「大丈夫。さ、弥生ちゃんも着るのよ」
私は全身を包む心地よさに捕らわれながら、弥生ちゃんにもこの感触を味わって欲しいと思っていた。

「どう? とっても着心地がいいでしょ?」
私はストッキングとメイド服を身につけた弥生ちゃんに訊いてみた。
確かに背中の開口部は綺麗に消えている。
どういう仕組みなんだろ。
脱げなくなったりしたら大変かなぁ・・・
「はあん・・・はい、とっても・・・」
うっとりとした笑みを口元に浮かべている弥生ちゃん。
その笑みはとても淫蕩だ。
きっとあまりにも気持ちよくて蕩けるような気分になっているに違いない。
「はい、メイド靴と手袋。トレイも忘れないでね」
私がそれらを差し出すと、弥生ちゃんはこくんとうなずいて受け取り、無言でそれらを身につける。
ストッキングを穿いた弥生ちゃんの綺麗な脚が、メイド靴に差し込まれていき、両手に履いた白手袋をぎゅっぎゅっと握って指になじませる。
私は何となくその仕草に見惚れ、ただただ弥生ちゃんを眺めていた。
最後にトレイを腰に携えた弥生ちゃんは、一瞬躰をピクッとさせる。
あ、しまった!
何かあるとまずいと思って、私が先に全てを身につけるつもりだったのに、弥生ちゃんが着ていくのを見ているうちに先に全部つけられちゃった。
「弥生ちゃん、大丈夫?」
私は心配になる。
メイド服そのものは問題なくてもメイド靴やトレイに仕掛けがあったかも・・・
「えっ? なんともないですよ」
あっさりと拍子抜けするような弥生ちゃんの返事。
「ホント? なんかピクってなったから」
「そうですか? 特に何も・・・」
すっかりメイドの姿になった弥生ちゃんが首をかしげる。
わあ・・・
全身のラインが美しい・・・
すごく似合うよ・・・
私も似合うかなぁ・・・
「ならいいけど・・・」
私は弥生ちゃんが問題無さそうなのを確認して、自分の手袋とメイド靴を身につける。
最後にトレイを腰に携えて完成。
トレイを抱えたとき、一瞬全身に電気が走ったような気がして、すごく気持ちよかった。

全て身に付け終わった私たちは、どこから見ても立派なホワイト・プリムの女性型戦闘員、そう「メイド」だ。
「うん、これでいいわ」
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私はメイドの姿になった弥生ちゃんとお互いの姿を確認すると、今まで私たちが着ていた服やバッグなどをひとまとめにする。
これをどうにかしないと、もし見つかったりしたら私たちがメイドの姿をしているってばれちゃうわ。
どこかに隠さないと・・・
見つけた。
あれはダストシュートだわ。
ごみにしてしまえば見つかることもないはず。
全てごみとして処分してしまおう。
弥生ちゃんには悪いけど、ここから無事に帰ったら弁償するからね。
「弥生ちゃん、手伝って」
「えっ? どうするんですか?」
「ごめんね、悪いんだけど、この服とかバッグを処分するの。これが見つかったら変装しているのがばれちゃうでしょ」
私はとりあえず持てる分を持ってダストシュートのところへ行く。
閉じられたシューターの蓋を開け、中を覗きこんでみた。
下に向かって口が開いており、ここから投げ込めばちょっとやそっとでは見つかりそうにない。
「服・・・捨てちゃうんですか?」
「ごめんね。ここから脱出したら私が責任持って弁償するから」
私は両手を合わせて拝みこむように頭を下げた。
セーラー服も下着も何もかも捨てるって言われたら、そりゃあ困るよね。

『・・・・・・』
えっ?
今何か?
「弥生ちゃん、今何か言った?」
「えっ? いえ、別に何も」
「そう・・・」
なんか聞こえた気がしたんだけど・・・
気のせいか・・・
「じゃ、まず私のから捨てるね」
不安そうな弥生ちゃんの口元。
全身を白と黒で覆われている弥生ちゃんはとても可愛い。
て素敵だわ。
それにスタイルもいいから、メイド服がよく似合っている。
私もそうなのかな・・・
そうだといいな・・・

服も下着も靴もバッグも通信機も何もかもダストシュートに投げ捨てる。
通信機はちょっと躊躇ったものの、持っていることがばれたら取り返しがつかないので、やむを得なかった。
これで私がセーバーチームのオペレータ粟端秋奈であることを証明するものは何も無いはず。
メイドの一員としてごまかせるはずよね。
「ごめんね、弥生ちゃん。弥生ちゃんのもちょうだい」
弥生ちゃんは黙ってうなずくと、セーラー服や白のソックス、黒革の靴やカバンを手渡してくれた。
私はそれらを全てダストシュートに放り込み、弥生ちゃんの痕跡を抹消する。
これで私たちはメイドの一員。
アジト内をうろついても怪しまれることは少ないはず。
さあ、脱出路を探さなきゃ。

「弥生ちゃん、『はい、お嬢様』って言ってみて」
「えっ? はい、お嬢様・・・ですか?」
弥生ちゃんが不思議そうにする。
でもこれは重要なこと。
私たちはメイドなんだから。
「そう、『はい、お嬢様』。これはメイドたちの鳴き声って言うか発声なの。メイドとして行動するならこれは欠かせないわ」
「は、恥ずかしいですね・・・」
弥生ちゃんのメイド・プリムをつけた可愛い横顔の口元がほんのり染まる。
そりゃあ、私だって恥ずかしいけど・・・
この格好をしている以上仕方ないじゃない・・・
「いい、ちょっと練習するよ? はい、お嬢様!」
私はメイドたちがよくやる背筋を伸ばしてするお辞儀をしながら声を出してみる。
あは・・・
なんか別人になったみたいで気持ちいいね。
「は、はい、お嬢様・・・」
最後は蚊の鳴くような声になっちゃう弥生ちゃん。
きっと恥ずかしさでいっぱいなんだろうな。
でも、両手はちゃんと胸元のところで重ねあわせている。
スタイルいい弥生ちゃんはメイド服がとてもよく似合っていた。
「弥生ちゃん。今の私たちは暗黒カフェ ホワイト・プリムの女戦闘員、そうメイドなんだよ。恥ずかしがることないよ。プリムつけてればメイドなんて十把一からげ」
確かにプリムをつけてれば「メイド」でとおるだろう。
でも、個性は何となくある気もするんだけどね。
・・・ううん、メイドはメイドなりに一生懸命に働いてるんだよ、可愛いし。
「はい、お嬢様! はい、お嬢様! はい、お嬢様!」
弥生ちゃんは何度か声を出して練習してる。
もしかしたら努力家なのかも。
敬礼も何度も繰り返して可愛いなぁ。
「うん、その感じ、忘れないでね」
「はい、お嬢様!」
「あはは・・・」
弥生ちゃんがメイドの「鳴き声」で返事したので、私は思わず笑っちゃった。

「さ、行くよ」
「はい。じゃなかった、はい、お嬢様」
私は思わず笑みを浮かべると、ゆっくりとドアを開ける。
うわぁ・・・
通路がすごく明るい。
さっきまでとはまったく違うわ。
やっぱりメイドたちに合わせて作ってあるようね。
左右を見るけどメイドたちの姿はなし。
よし、このままエレベータに向かって行けばいいわね。
「ついてきて、弥生ちゃん」
私は先に立って、通路をエレベータに向かって歩き出す。
先ほどまでは迷路のように感じたこのアジトが、今は手に取るようにわかる。
この通路を右に行けば司令室。
この部屋は動力室。
あっちはメイドの居住区。
外部へのエレベータは・・・こっちね。
私は自信を持って角を曲がる。
もう迷うことはないわ。

と、曲がり角からそっと通路を伺っていた私たちの前を、一列になった三人のメイドたちが通り過ぎていく。
みんな背筋がスラリと伸びて、いかにも目的のために働いているって感じがする。
いつもお兄ちゃんの後ろにくっついている私とはずいぶん違うわ。
やっぱりかっこいいよね。

あれ?
彼女たち何か言っている?
彼女たちが立ち去っていく時に何か聞こえたような・・・
違う?
今も聞こえる?
なんだろう・・・
私はその囁くような声に耳を・・・ううん、全身の神経を向けた。

『・・・フェ・・・もべ』
『・・・身を・・・び』
『・・・に・・・を・・・服従』
『カ・ぇ・・・栄光・れ』
よく聞き取れない。
でも意味があるような・・・
ううん、すごく大事なことのような気がする・・・
不快じゃない・・・
何となく心地いい・・・
もっと聞いていたい・・・

カツコツという足音。
私たちのブーツの足音とは明らかに違う音。
それが私たちの向かっているエレベータの方からやってくる。
「秋奈さん」
どうやら背後の弥生ちゃんも気が付いたらしい。
不安そうな声に内心が現れている。
「だ、大丈夫。堂々としていればばれない」
私もそう言うのが精いっぱい。
心臓はドキドキ。
全身から冷や汗が出そう。
私は振り返って逃げ出したい気持ちを必死に抑え、ゆっくりと歩みを進める。
こんなところで逃げ出したら、変装している意味がなくなってしまう。
できるだけ普段の行動と見せかけなきゃ。

最悪だわ。
通路の向こうから歩いてきたのは、純白のドレスを身に付けた暗黒カフェ ホワイト・プリムの女幹部インビーナ。
人間と変わらない姿は、メイドのように顔をうつむけてなんかいない。
黒いショートの髪にサークレットを嵌め、白いロンググローブを嵌めた手には乗馬ムチを携えていらっしゃる。
逆らうことなどできない素敵なお嬢様だ。
背後に二体のメイドを従えて歩いてくる姿はまさにお嬢様。
思わずひれ伏してしまいそうだわ。
私はできるだけ平静を装いつつ通路の端に直立して、お嬢様が通り過ぎるのをやり過ごそうとした。

カツコツとお嬢様の白いパンプスの足音が響く。
私も弥生ちゃんも生きた心地がしない。
お願い・・・
早く通り過ぎて・・・
思わず目をつぶってしまう。

足音が止まる。
心臓がキューッと締め付けられるよう。
「あなたたち」
インビーナお嬢様の威厳ある声が響く。
「私はインビーナなのよ。お辞儀を忘れていてよ!」
しまったぁ・・・
お辞儀するのを忘れていたわ。
「は、はい、お嬢様」
「はい、お嬢様」
私は慌てて背筋を伸ばし、たどたどしく声をあげる。
私の脇では弥生ちゃんもどうにか声をあげてお辞儀をした。
「ふふふ・・・」
私はどきっとする。
インビーナが笑っているのだ。
何かおかしなところがあったのだろうか・・・
私はもう全身から冷や汗がにじみ出そうな思いで立ち尽くす。
でもすごい。
全然このメイド服はべたつかないわ。
これだけ汗をかけば、べたついて当然なのに・・・
「どうやらあなたたちは作られたばかりのようね。そんなあなたたちがどこへ行こうというのかしら? うん? 320号」
320?
私のこと?
ど、どうして?
私はハッと気がついた。
私の身につけている腰の銀のトレイ。
このトレイにはホワイト・プリムの紋章と数字が入っていたのだ。
まさしくその数字は320。
これはメイドのナンバーだったんだわ。
「そ、それは・・・」
私はどうにかこの場を逃れるべく頭を働かせる。
作られたばかりの新人ということなら、多少の変な行動はごまかせるかもしれない。

「ん? 馬鹿っ!」
突然インビーナのムチが私を打ち据える。
私はいきなりの肩口への一撃に、思わずその場にしゃがみこんだ。
「作られたばかりだからって、ナンバーが先の者より前に出るなんて何事? このお馬鹿っ!」
私は何がなんだかわからずに、肩口の痛みに顔をゆがめる。
「す、すみません。お赦しを・・・」
痛みをこらえながら、私は土下座をするようにお嬢様に頭を下げた。
今は逆らわない方がいい。
とにかくこの場を乗り切らなきゃ・・・
「あなたもあなたね!」
お嬢様の乗馬ムチの先がすっと弥生ちゃんに向けられた。
「は、はい、お嬢様・・・も、申し訳ありません」
弥生ちゃんも何がなんだかわかっていないと思うけど、とにかく彼女も頭を下げる。
一体何がいけなかったの?
「ほぼ同時に作られたのでしょうけど、ナンバーが一つでも少ない者は先輩として行動する。それがメイドの行動理念ではなくて? どうかしら、319号!」
あ・・・
弥生ちゃんは319号だったんだ・・・
私が先に歩いちゃいけなかったんだ・・・
なんてうかつ。
先輩メイドより先に立つなんて・・・
責めを受けて当然だわ。
私ったら・・・
「申し訳ありません。私がおろかでした。メイド319号より先に歩くなど、あってはならないことでした。お赦し下さいませ」
私は必死に頭を床にこすり付けるようにしてあやまった。
お嬢様だけじゃなく、弥生ちゃんにも失礼なことしちゃったんだもの・・・
どうか赦してください。

「いいわ、よろしくてよ。今回だけは許してあげる、だけど、ふらふらどこに行くつもりかしら?」
お嬢様のお言葉が重くのしかかる。
脱走しようとしていたなんて言えるはずがない。
「は、はい、お嬢様・・・アジト内の確認です。脱走した人間の捜索に協力しようと・・・」
319号の弥生ちゃんが何とかごまかそうとしている。
あまり追求しないで下さい、インビーナお嬢様。
「そう。それなら他のメイドに任せるがいいわ。あなたたちはわたくしについていらっしゃい」
ええっ?
お嬢様とご一緒するなんて・・・
「は、はい、お嬢様・・・しかし」
弥生ちゃんもどうにかついて行かずに済ませようとしてくれている。
ごめんなさい、私の数字が後なばかりに・・・
「口答えするつもり? 躾けがなっていないようね」
ビュッとインビーナお嬢様のムチが空を切る。
「はい、お嬢様! 申し訳ありません。お供いたします」
319号の弥生ちゃんの背筋が伸びる。
私はただひれ伏して、事の成り行きを見ているしかない。
「320号をつれて付いてらっしゃい。いいわね」
「はい、お嬢様! かしこまりました。320号! いつまで這い蹲っているの? 立ち上がってお嬢様にお辞儀をなさい!」
私はその言葉に弾かれたように立ち上がる。
そして全身に緊張をみなぎらせて背筋を伸ばし、これ以上はない態度でインビーナお嬢様にお辞儀をする。
「はい、お嬢様!」
「ふ・・・」
インビーナお嬢様は何か笑みを浮かべると、私と319号を交互に見て、おもむろに背を向ける。
そしてインビーナお嬢様に付き従うメイド41号と173号の後に続き、私たちは通路を歩き出した。
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『・りム・・・もべ』
『・・・身を・・・ことは・・・』
『・・・すべて・・・絶対・・・』
『・・・栄光・』
ずぅっと聞こえてくるこの囁き。
なんだかとても心地いい。
思わず私自身がそうつぶやきたくなるような気がする。
でも・・・
でも・・・
なんか変じゃない?
私の中で何かが警告を発している。
いけない・・・いけない・・・
心地よさに惑わされてはいけない・・・
そんな気がするわ。

「319号、320号、あなたたちは別命あるまでここで待機なさい。いいわね!」
連れてこられたドアの前でインビーナお嬢様がそう命じる。
命令には絶対服従。
「はい、お嬢様!」
私と319号はすぐさま両手を腰の前で重ねるとお辞儀をする。
背筋を伸ばして、胸を張ってお辞儀するのはとても気持ちがいい。
「うふっ」
インビーナお嬢様はにっこりと微笑まれると、二人のメイドを連れて通路を歩き出す。
私はその後ろ姿が見えなくなるまでお辞儀をし続けると、319号に続いてドアをくぐった。

ドアの中はこじんまりとした部屋だった。
作り付けのベッドがあり、テーブルも置かれている。
きっとメイドにとっての小間使い部屋なのだろう。
ベッドの広さから言って二人用だわ。
「私たちは別命あるまで待機よ。ゆっくりしましょ、320号」
319号がそう言ってベッドに腰掛ける。
黒いメイド服に包まれた姿がとても素敵。
柔らかそうな太ももは、純白のストッキングで包まれている。
「はい、319号」
私は少し間を開けて、319号の隣に腰掛けた。
柔らかなベッドがすごく心地いい。
メイドって、決して使い捨てなんかじゃないんだわ。
私はそれがすごく嬉しかった。

ベッドに腰掛けた私は、なんだか眠くなってきた。
319号は先ほどから何かをつぶやいているし・・・
そういえば・・・今は何時なんだろう・・・
今まで私って何していたっけ?
確か・・・セーバーベースからの帰り道・・・
私は弾かれたようにハッとなる。
私ったら何を・・・
すっかりメイドとしてこんな部屋で落ち着いて・・・
私は思わず自分の両手を見る。
白くつややかな手袋を嵌めた両手。
力強く、メイドの活動を支える両手。
違う!
違う違う!
この服だ。
この服が私をおかしくしちゃう。
メイドであることを喜んじゃう。
私は隣の319・・・違う違う、えーと・・・弥生ちゃんだ!
弥生ちゃんの方を振り向いた。

「・・・しもべ・・・」
「・・・を捧げる・・・喜び・・・」
「・・プリム・・・お嬢様・・・服従を・・・」
「・・・栄光・・・」
私はぞっとした。
弥生ちゃんはさっきからそうつぶやいていたのだ。
あの声。
耳元で囁いていた心地よい声。
あの声が囁いていた言葉。
私たちメイドにとっての大事な誓い・・・
メイドにとって?
誓い?
違う違う!
いけない、このままじゃ・・・
私は弥生ちゃんを正気づかせるために頬を張ろうとする。
先輩メイドである弥生ちゃんを叩こうとすることは、すごく勇気が要ることだったけど、私は必死で弥生ちゃんの頬を張る。
「弥生ちゃん! しっかりして!」
一瞬敵意とも言うべきものを弥生ちゃんより感じたものの、頬を押さえた弥生ちゃんの口元が少し緩んだ。
「320・・・じゃない、秋奈さん?」
「ごめん、悪いけど、すぐそれ脱いで!」
「えっ、ええっ?」
私は弥生ちゃんの返事を聞かずに、すぐにメイド靴を脱がし始める。
「や、やめてよ320号。こ、これを履いていないとお嬢様にご奉仕が・・・」
弥生ちゃんは脚を引っ込めようとするけど、私はやめるつもりはない。
右足のメイド靴を脱がせ、左足も脱がせにかかる。
「ごめんね弥生ちゃん。でもこれを着ているとおかしくなっちゃうの。メイドになっちゃうのよ」
「メイドに・・・?」
弥生ちゃんの躰がピクッと固くなる。
「だから脱がなきゃならないの。ごめんね」
私は左足の靴を脱がせ、ストッキングに包まれた脚を解放する。
後はトレイも手袋も外しちゃって・・・
「本当なんですか? 本当にメイドになっちゃうんですか?」
「確信はないけれど・・・でも、弥生ちゃんだって自分の名前よりもナンバーのほうがしっくりする気がしたでしょ?」
「そ、それは・・・」
口ごもる弥生ちゃん。
もしかして脱ぎたくないのかも・・・
私はどきっとした。
弥生ちゃんを脱がせることだけ考えていて、自分が脱ぐときのことを考えていなかった・・・
このメイド服を脱ぐ?
裸になるの?
以前の衣装は処分しちゃったし・・・
でも・・・
脱がなければ・・・
私は首を振って再度弥生ちゃんのトレイに手を掛ける。
「恥ずかしいかもしれないけど我慢して」
「わ、わかりました。わかりましたから手を離してくれませんか? 自分で脱げますから」
弥生ちゃんが私を押しとどめた。
それもそうか。
いくら同性だって衣装を脱がされるのは抵抗あるよね。
「わかったわ」
私はうなずいて手を離す。

弥生ちゃんはしぶしぶながらだったのかもしれないけど、立ち上がってトレイを置いて、手袋を脱いでいく。
私はそれを横目で見ながら、自分のトレイや手袋を外し始めた。
心臓がドキドキする。
衣服を脱ぐことがこんなにも苦しいことだなんて・・・
脱ぎたくない・・・
私の中で何かが命令してくるよう・・・
脱ぐな、脱ぐなって言ってくる。
ダメ!
脱がなきゃダメ!
脱がなきゃメイドになってしまうわ。
私はセーバーチームのオペレーターなんだから・・・

私はどうにかメイド服を脱ぎ捨てる。
必死に脱ぐって考えていたら、背中にスリットが入って脱げるようになったのだ。
今まで明るく感じていた室内が、メイド・プリムを外すと急に真っ暗な闇になる。
怖い・・・
こんな闇の中で裸でいるなんて・・・
いやだ・・・いやだよ・・・
でも、私は首を振り、必死の思いでストッキングも脱ぎ捨てる。
すっかり裸になった私は、手探りに近い状態でベッドの上からシーツを外し、それを躰に巻き付けた。
「ふう・・・」
真っ暗な中、とりあえずシーツにくるまれた私は一息つく。
弥生ちゃんはどうかしら。
私は暗がりの中に弥生ちゃんの姿を探した。

「すん・・・すん・・・」
弥生ちゃんは泣いていた。
私の言うとおりに裸になった弥生ちゃんは、肩を震わせて泣いていたのだ。
きっとつらい思いだったに違いない。
私だってメイド服を脱ぐのに必死の思いだったもん。
でも、弥生ちゃんは脱いでくれた。
私はそれが嬉しかった。
「弥生ちゃん・・・」
私は近づいて声をかけ、そっとシーツでくるんであげる。
恥ずかしいよね。
心細いよね。
こんな暗闇の中、裸でいるなんて耐えられないよね。
ごめんね。
私がこんな衣装を着て変装しようなんて言ったから・・・
「秋奈さん・・・」
弥生ちゃんが振り向いた。
闇の中でも涙に濡れた頬がわかる。
私は思わず抱きしめた。
「ごめんね、弥生ちゃん」
「秋奈さん・・・私怖い。裸でいるなんて怖い。着たいの・・・あのメイド服が着たいの」
弥生ちゃんは必死に私を見つめてくる。
でも私は首を振った。
「ダメ。それだけはダメ。あれを着たら敵の思う壺よ。私たちはメイドになっちゃう」
「敵? 敵ってなんですか? 本当にメイドになっちゃうんですか? 秋奈さんは確かめたんですか?」
「えっ?」
私はどきっとした。
そ、そりゃあ、確かめてはいないけど・・・
でも、あのメイド服を着ていたら・・・
着ていることがすごく気持ちよくて・・・
はい、お嬢様なんて言うようになって・・・
ダメ!
とにかくダメなの!
「ダメ! とにかくダメ! お願い弥生ちゃん。きっと助けが来るから。お兄ちゃんが助けに来てくれるから」
私はギュッと弥生ちゃんを抱きしめ、そう自分に言い聞かせた。

渇く・・・
渇く・・・
渇いていく・・・
露出しているのは耐えられない・・・
着たい・・・
着たい・・・
包まれたい・・・
闇の衣装に包まれたい・・・

暗闇の中、私は弥生ちゃんと二人でシーツにくるまって時を過ごす。
あれから何時間経ったのだろう・・・
何時間?
ううん・・・何日かもしれない・・・
メイド服・・・
メイド服・・・
すべすべしてとても気持ちいい・・・
着たい・・・
着たい・・・
あの心地よさに包まれたい・・・

どうしてこんなところにいるんだろう・・・
私たちはここで何をしているんだろう・・・
心が渇く・・・
じりじりと焼き尽くされるような思い。
裸だから・・・
裸だから心が渇く・・・
満たされたい・・・
漆黒の闇に包まれたい・・・

「秋奈・・・さん・・・」
弥生ちゃんが顔を上げる。
ずっとうつむいて躰を震わせていた弥生ちゃん。
「弥生ちゃん・・・もうすぐだよ・・・もうすぐ・・・」
何がもうすぐ?
もうすぐ何だと言うの?
変だ・・・
頭が働かない・・・
思うことはただ一つ・・・
メイド服が着たい・・・
「秋奈さん・・・私・・・メイド服・・・着たい・・・」
弥生ちゃんの目が私を見つめてくる。
その目が必死に訴えてくる。
「ダメ・・・着てはダメ・・・」
私はもう何度言ったかわからない言葉を繰り返す。
着てはダメ・・・
なぜダメなんだろう・・・
「秋奈さ・・・ん・・・だったら・・・だったら触るだけ・・・触るだけでいいの・・・触るだけで・・・」
「ダメ・・・それでもダメ・・・」
「どうして? どうしてなの? 触るだけでどうしていけないの?」
弥生ちゃんの声がきつくなる。
「どうしてって・・・あれに触ったら・・・触っちゃったら・・・」
触ったら・・・どうだというの?
何があるというの?
わからない・・・
思い出せない・・・
暗闇の中でどうして私たちは裸でいるんだろう・・・
手を伸ばせば、すぐにメイド服が手に届く・・・
メイド服・・・着たい・・・
あのメイド服に包まれたい・・・

「め・イ・ど・・・服・・・」
ふらっと立ち上がる弥生ちゃん。
何をする気かしら?
シーツがはずれ、暗闇の中に彼女の裸身が浮き上がる。
「メイ・・ど・ふ・く・・」
そのまま彼女はふらふらと脱ぎ散らされたメイド服やストッキングのところへ向かって行く。
いけ・・・ない・・・
私もシーツを纏ったまま立ち上がる。
メイド服はダメ・・・
メイド服はダメ・・・
私は半ば朦朧とする意識の中でそれだけを思っていた。

「はぁ・・・メイド服・・・」
弥生ちゃんがぺたんと床に座り込んでメイド服に手を伸ばす。
私は倒れこむようにして、その手の先にあるメイド服を奪い取った。

ああ・・・
なんて素敵な肌触りなんだろう・・・
これ・・・
これが欲しかったの・・・
私はこの瞬間に確信する。
このメイド服が私を満たしてくれるのだ。
このメイド服が私を包んでくれるのだ。
ああ・・・
私が飢えていたのはこの感触に包まれること。
このメイド服に包まれることだったんだわ。
私は手に取ったメイド服を思いっきり抱きしめた。

飢えた目で私をにらみつける弥生ちゃん。
私はうなずくと、抱きしめていたメイド服をそっと渡す。
このメイド服は弥生ちゃんのもの。
私のはあっちにある。
私をずーっと待っているのだ。
いつ着てくれるのかと言わんばかりに、私を待っている。
私は立ち上がるとシーツを放り出す。
こんなものに躰を包むなんてバカみたい・・・
私はすぐに私のメイド服を手に取った。

ストッキングに脚を通し、メイド服を身に付ける。
すべすべした肌触りがとても気持ちいい。
どうしてこれを脱いだりしたんだろう。
もう絶対に脱いだりしないわ。
これは私そのものなの。
私はこの衣装と一体なのよ。

ヒールの低いメイド靴を履き、両手には手首までの白手袋。
メイド・プリムに飾られた頭はすっきりとして周囲もよく見える。
「はい、お嬢様!」
再びホワイト・プリムの紋章の入ったトレイを携えた私は、すごく嬉しくなって叫んじゃった。
私の隣では、弥生ちゃんも同じように背筋を伸ばして立っている。
スタイルがいいからすごくよく似合う。
「はい、お嬢様!」
弥生ちゃんも嬉しそうに声をあげた。
ああ、なんて素晴らしいんだろう・・・
ホワイト・プリムに栄光あれ!

瞑想。
誓いの言葉。
ホワイト・プリムへの忠誠。
メイドとしての誇り。
私たちはそういったものを心行くまで味わう。

319号と一緒にする誓いの言葉の唱和。
「・・・しもべ・・・」
頭の中に囁かれる言葉と同じ言葉を紡ぐ319号の唇。
それがふと私に近づき、私の唇と重ね合わさる。
はあん・・・
全身を駆け抜ける電流のような快感が気持ちいい。
「・・・喜び・・・」
くらくらするような快楽に酔い痴れながら、私も誓いを唱和する。
そして、今度は私の唇が319号の唇と重なった。
赤く艶めかしい319号の唇。
「・・・服従・・・」
それが次の誓いの言葉を奏で、再び私の唇と重なり合う。
「ホワイト・プリム・・・」
私は誓いの最後のフレーズをつぶやきながら、319号と抱き合った。
もう私は迷ったりしない。
私はメイド320号。
この身はホワイト・プリムのもの。
もう以前の私ではないわ。

             ******

「うふふ・・・どうやら、完了したようね」
4ee8e9f9.jpg

私たちの前に立っていらっしゃるのはインビーナお嬢様。
純白のワンピースがつややかに輝いていらっしゃる。
だけどお嬢様が一体何のことを仰っているのか私にはわからない。
でも、インビーナお嬢様のお言葉は力強い。
私たちメイドを導いてくださる強さにあふれている。
「320号」
「はい、お嬢様!」
私はインビーナお嬢様にお辞儀をする。
番号を呼んでいただけるのは光栄なこと。
「あなたには特別任務についてもらうわ」
「はい、お嬢様!」
特別任務?
私はまだ作られたばかりだというのに・・・
「以前のあなたはセーバーチームのオペレーターだったわ。その記憶はあるわね?」
「はい、お嬢様! もちろんです。ですがそれは過去のことです。思い出したくもございません」
それは本当のこと。
あんな人間なんていう躾けの行き届かない生き物だったなんて考えたくも無いわ。
メイドであることは本当に幸せ。
「うふ・・・そう・・・それでいいわ。けれど、セーバーチームを壊滅させるためにはあなたの記憶が不可欠。わたくしに仕えなさい」
「はい、お嬢様! もちろんです。何なりと」
「セーバーチームの要、司令の盛逸成実を捕らえるの。よろしくて?」
インビーナお嬢様のご命令だわ。
「はい、お嬢様! かしこまりました。セーバーチームの司令官、盛逸成実を捕らえます」
私は胸を張って命令に答える。
命令は絶対服従。
それが躾けを受けたメイドの喜びなの。

「319号、あなたはこれからも320号の指導に当たってもらうわ」
えっ?
それは本当ですか、インビーナお嬢様?
私は思わず嬉しさに飛び上がりそうだった。
おそらくは別々に配属されるもの。
そう思っていた私にとっては、319号とこれからもともにあることができるのはすごく嬉しい。
インビーナお嬢様、ありがとうございます。
「よろしくて320号、あなたはわたくし達のホワイト・プリムへの昇華にとまどいと抵抗を感じていたわね?けれどそれを319号が導いてくれた。これはすばらしい事だわ」
ああ・・・
その通りです、インビーナお嬢様。
私はおろかにも人間であろうといたしました。
319号はそんな私を救ってくれたのです。
「320号、あなたはこれからも319号とともに行動し、メイドの喜びを自らのものになさい!」
「はい、お嬢様!」
「はい、お嬢様!」
私がインビーナお嬢様のお言葉に、大いなる喜びを感じて声をあげると、319号が続いて綺麗に和した服従の声をあげてくれた。

「よくってよ、では誓いの言葉を」
「「はい、お嬢様!」」
私と319号はうなずいた。
誓いの言葉。
私たちの頭の中にいつも語りかけられる言葉。
メイドにとっての大事な言葉。
それを口にすることは喜び以外の何者でもない。
「「ホワイト・プリムのしもべ」」
「「カフェに身を捧げることは喜び」」
「「カフェに全てを、お嬢様には絶対服従を」」
「「ホワイト・プリムに栄光あれ!」」
私は胸の奥から声を出し、319号とあの部屋で何度となく交し合った誓いの言葉を誇らしく宣言した。
pretty_maids03.jpg

  1. 2007/07/17(火) 19:50:32|
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二周年記念SSをもう一つ

忘れてませんよーということで、二周年記念にもう一本投下です。

久々のグァスの嵐。
もうお忘れの方も多いでしょうね。

半年振りになりますが、またチョコチョコと書いて行ければなと思っております。
よろしくですー。

17、
クラリッサを別室へ連れて来たダリエンツォは、マグカップにそっと薬を仕込む。
思考を鈍らせ言うことを聞かせやすくするする薬だ。
奴隷を調教する時に使われるという。
「飲め」
薬が混ざっているホットワインを手渡すダリエンツォ。
ほのかな甘い香りがクラリッサの鼻腔をくすぐった。
「これ?」
クラリッサが顔を上げる。
「ああ、躰が温まる」
「あ・・・」
クラリッサはそっとマグカップに口を付けた。
暖かいワインが喉に染み渡る。
はちみつでも入っているのだろうか。
甘い。
「あの男のことがわかったか?」
ピクッとクラリッサの肩が震える。
「あの男はお前を利用していたのさ」
マグを持つクラリッサの手も震える。
違う・・・
違う・・・
そう思いたい。
でも、あれは強制されて言っていたようには思えなかった。
「お前は見捨てられた。あの男はお前を捨てたのだ」
「ああ・・・」
クラリッサの頬を涙が伝う。
捨てられた・・・
私はダリオに捨てられた・・・
あんなに好きだったのに・・・
ダリオは私のことを好きじゃなかったんだ・・・
「わかっただろう? あの男がいかにひどい奴か」
ダリエンツォの言葉がクラリッサに突き刺さる。
ひどい・・・
ひどい・・・
ダリオはひどい・・・
私を・・・
私をだまして・・・
私をだましていたんだ・・・
「悔しいだろう?」
悔しい・・・
悔しい悔しい・・・
悔しい悔しい悔しい・・・
「ひどい目にあわせてやりたくないか?」
ひどい目に?
クラリッサがふと顔を上げる。
妖しく微笑むダリエンツォの顔がそこにはあった。
「ひどい・・・目に?」
「ああ・・・俺はお前の味方だ。お前を救ってやる」
救う?
私を救う?
誰から?
誰から救うの?
「俺がお前を救ってやる。お前の苦しみを解き放ってやる」
苦しみ?
この苦しみから救ってくれる?
私を救ってくれるの?
ああ・・・
嬉しい・・・
すごく嬉しいよぉ・・・
「お前を苦しめていたのは誰だ? あのダリオという奴だろう?」
ダリオが?
ダリオが私を?
そうだ・・・
ダリオは私を苦しめた。
ダリオは私を裏切った。
ダリオは私を見捨てた。
ダリオは私を苦しめた!!
「どうだ? 奴を殺したくないか?」
殺・・・す・・・?
ダリオを殺す?
ダリオを殺す・・・
ダリオを殺す。
ダリオを殺す!!
「ダリオを・・・ダリオを殺す」
クラリッサの目に狂気が宿る。
ダリエンツォはその目におのれの策が上手く行っている事を見て取った。

渡されるナイフ。
それはあらためてクラリッサを怖気づかせるには充分なもの。
だが、それはダリエンツォもわかっている。
狂気を浸透させなくてはならない。
「大丈夫だ。お前は救われる。これでお前は救われるんだ」
「私は救われる・・・私は救われる・・・」
ただただナイフを見つめ、つぶやいているクラリッサ。
その目は虚ろ。
その肩を抱き、ダリエンツォは彼女を誘った。

「もういいでしょ? あの女は好きにしていいから、俺を解放してくれませんか?」
卑屈な笑みを浮かべて周りの男どもに訴える。
なんなら多少の身代金だって払ってもらえるはず。
ガンドルフィ家は少しは金がある家なのだ。
「さあてね。キャプテンがなんと言うかな」
そう言って水夫たちが下卑た笑い声を上げる。
ダリオはため息をつくしかなかった。

その時ドアが開く。
そこから入ってきた人影を見て、ダリオは息を飲んだ。
「ク、クラリッサ・・・」
入ってきたのはキャプテン・ダリエンツォとクラリッサだった。
だが、クラリッサはうつむいてダリオの方を見ようとはしない。
「ダリオ・ガンドルフィ」
クラリッサの様子をもっとよく見ようと思ったダリオだったが、ダリエンツォに声をかけられ、そちらの方を向くしかなくなる。
「な、なんです?」
「解放されるのはお前じゃない」
ダリエンツォがにやりと笑う。
「えっ?」
俺じゃない?
それじゃクラリッサが解放されるのか?
こいつらの狙いは彼女じゃないのか?
「クラリッサ、あの男を刺せ。そうすればお前は解放されるんだ」
ダリエンツォはクラリッサにそう耳打ちして、肩を押してやる。
ふらりと二・三歩前に出るクラリッサ。
顔を上げた彼女の目は虚ろだった。

「ク、クラリッサ・・・」
両手を後ろ手に縛られ、両足も縛られているダリオは身動きが取れない。
「ダリ・・・オ・・・」
クラリッサの手には光るナイフが握られていた。
「ク、クラリッサ」
ダリオはぞっとした。
まさか・・・
まさか彼女は俺を殺す気か?
「ダリオ・・・」
ふらふらとクラリッサはダリオに近づいていく。
「よ、よせ、クラリッサ。俺だ。ダリオだ。婚約者のダリオだよ」
「婚・・・約・・・」
「そ、そうだ・・・愛してるよ、クラリッサ」
ダリオは必死で縛られた腕を解こうともがきながら、クラリッサに語りかける。
嘘がばれてしまったのは直感的に感じたが、それしか彼女を止める手立てが思いつかない。
「愛・・・してる・・・?」
ピクッと肩を震わせるクラリッサ。
その歩みが一瞬止まる。
「そうだ。愛してるよクラリッサ。一緒にうちへ行こう。家族もきっと君を待っている」
「嘘・・・よ・・・」
「えっ」
「私をまた・・・だますのね?」
クラリッサの目に異様な光が灯る。
「だ、だますなんて・・・」
ダリオが唇を噛む。
まったく・・・
なんてこった・・・
「だましてなんかいないよクラリッサ」
「無駄だよ」
ダリエンツォが首を振る。
「先ほどのお前の話しを聞かせてやった。そいつはもうお前の言葉を信じはしないさ」
「くそっ」
ダリオは舌打ちした。
「クラリッサ、あんな奴の言うことを信じるのか? 俺の愛を疑うのか?」
「い・・・や・・・」
「クラリッサ!」
「私は解放されるの・・・私は解放される・・・」
クラリッサがナイフを振り上げる。
「クラリッサ!」
どすっと言う音とともに、クラリッサの頬に血しぶきが飛び散った。
  1. 2007/07/16(月) 22:45:06|
  2. グァスの嵐
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二周年記念

新潟・長野を中心に、大きな地震がありました。
亡くなられた方も出てしまったということで、あらためて地震の恐ろしさを感じます。
被災なされた方々に、心よりお見舞い申し上げます。


さて、二周年記念として、「ホーリードール」を少しですがお送りします。

本来二周年記念として書いてきたSSもあったのですが、日程的に間に合わず、いずれ一気に掲載させていただこうと思います。

では、少しだけで申し訳ありませんが、「ホーリードール」お楽しみ下さい。

24、
「ん・・・」
人もうらやむような熱いキス。
夜の帳が下りた公園にはまだまだ人が多い。
家路を急ぐ人。
これから仕事に向かう人。
そして、二人だけの時間を楽しんでいるカップル。
彼女もそのカップルのうちの一人だ。
付き合って一年になる彰(あきら)はもったいないほどの彼。
今日はこれからホテルへ行ってたっぷりと楽しむのだ。
下着だって黒でまとめ、お手入れだってしっかりとした。
もうすぐ二人は一緒になる。
二ヵ月後には結婚式。
少し不安だけど、彰だったら私を守ってくれるよね。

「あれ?」
戸惑ったような彼の声。
「どうしたの?」
甘い口付けから引き離され、紀代美(きよみ)はちょっと不満を覚えた。
「いや・・・その、あたりが急に静かになったなと思って・・・」
紀代美を抱きしめた腕を緩め、周囲を見回す彰。
何となく背筋に冷たいものを感じて紀代美も周囲に目を配る。
「何? 何なの?」
「わからない。誰もいなくなっちまった・・・」
それは事実だった。
先ほどまで聞こえていても気にならなかった周囲の喧騒がまったく聞こえなくなっている。
人の姿も無く、噴水の近くのベンチに座る二人を、月と街灯だけが照らし続けている。
「彰・・・」
何となく恐ろしくなり、紀代美は彰にしがみつく。
「だ、大丈夫だよ。たまたまさ。そう、たまたまだよ」
自身の不安を隠すことができずにいながら、男はそう答えるしかない。
いったい何が起こっているのか?
二人にはまったく想像できなかった。

ふっと周囲の街灯が一斉に光を失う。
「きゃぁー」
悲鳴を上げる紀代美。
噴水を彩っていたさまざまな色彩のイルミネーションも消え去り、樹木が闇を増大させて不気味この上ない。
「て、停電だよ、停電」
彰は自分自身の恐怖も手伝って、紀代美をしっかりと抱きしめる。

カツコツと足音が響く。
「?」
静かな暗闇の中、人影が近づいてくるのだ。
シルエットになっているので顔はわからない。
だが、何か長い布・・・そう、マントのようなものを羽織っているような姿であることは見て取れた。
「こんばんは」
優しそうな声がする。
女の人だ。
落ち着いた大人の女性。
二人にはその声にホッとしたのと同時に、得体の知れない不気味なものをも同時に感じていた。

樹木の影が作った闇。
その影から姿を現した女性を月明かりが照らす。
「ヒッ」
月明かりが照らし出したその姿に息を飲む紀代美。
その女性は、まさに闇の中から現れた女性といっていいいでたちだった。
身に纏っているのは黒いエナメルのレオタードタイプのボンデージ。
銀色の鋲やチェーンをあしらったベルトが腰周りを飾り、肩には鋭いとげが付いたパッドが突き出している。
両手は肘から先を同じく黒エナメルの手袋が包み込む。
両脚は太ももまである黒いロングのハイヒールブーツが覆い、肩からは裏地の赤い黒マント。
そして額に嵌めたサークレットの両脇からはねじれた角が額の方へと伸びていた。

「な、なんだ、あんたは?」
彰は精いっぱいの虚勢を張る。
本当は一も二も無く逃げ出したいような恐怖を女からは感じていた。
しかし、ここで逃げたりしたら紀代美に軽蔑されてしまう。
ただそれだけのために彰はこの場にとどまっていたのだ。
「私はデスルリカ」
「デスルリカ?」
男の方には一瞥をくれるだけで、デスルリカの視線は紀代美に向けられていた。
得体の知れない恐怖にガタガタ震える彼女を、慈愛に満ちた笑みで見つめる闇の聖母。
まさにデスルリカの笑みはそう言って差し支えなかった。
「あなた。あなたには素敵な生命力が満ち溢れているわ。さあ、私にそれを差し出しなさい」
すっと誘うように右手を差し出すデスルリカ。
その目が一瞬赤く輝き、紀代美の瞳を射抜いていた。
「あ・・・」
ふらりと立ち上がる紀代美。
「き、紀代美?」
すっと自らの腕をすり抜けるようにして立ち上がった彼女に戸惑いを隠せない彰。
「紀代美!」
慌てて紀代美の腕を掴み取る彰。
おかげで紀代美の動きが止まる。
しかし、彼女の目はデスルリカに向けられ、腕を離されればすぐにでも彼女の元へ行ってしまうに違いない。
「てめぇ! 紀代美に何をした! 紀代美をどうするつもりだ!」
先ほどまでの恐怖は怒りに変わり、彰はデスルリカをにらみつける。
「お前には用は無い。死にたく無ければ邪魔をするな」
ウザったい虫けらでも見るような目でデスルリカは男をにらみつける。
くだらない人間。
黙って立ち去ればいいものを・・・
この女を確保しようとした時にどうしても結界に入れざるを得なかっただけの男。
わずらわしい・・・
「ふざけんなよコスプレババァ! 紀代美は俺の彼女だ! てめぇの好きになんかさせるかぁ!」
ピクッと躰を震わせるデスルリカと紀代美。
いずれもが彰の言葉に反応してのものだが、反応した言葉自体はまったく別物だ。
「邪魔するなだぁ! そっちこそさっさと失せな! 俺はこれでも剣道四段なんだぜ」
それは事実。
彰は高校時代は県大会で優勝したこともある実力の持ち主だった。
「紀代美、下がっていろ」
ぐいと紀代美を無理やり引き寄せ、ベンチに被さるように茂っていた木の枝を一本へし折る。
木刀としては心もとないし、使い勝手もまったくよくないのだが、このイカレタ女を相手に脅しには使えるだろう。

「そう・・・死にたいのね。その願い、かなえてあげるわ」
デスルリカの口元に冷たい笑みが広がる。
単に無視したかったから放っておいただけなのに・・・
わずらわしいから捨て置きたかっただけなのに・・・
でも・・・
邪魔するなら容赦はしない。
デスルリカはその手に漆黒のハルバードを呼び出した。
長さ三メートルほどもあろうかという漆黒の柄のハルバード。
先端には槍の穂先と斧の刃先が付いている。
突いてよし、切ってよしの実用的な武器。
もちろん魔力を帯びたそれは切れ味も並ではない。

男の顔色が変わる。
まさか武器を持ち出すとは思わなかったのだろう。
だがもう遅い。
ベータに必要な魔力を抽出する前に虫けらを一匹始末しよう。
ほんの一手間だけでいいのだ。

「クッ・・・」
男が逡巡する。
相手が持ち出したのは槍だ。
木の枝では勝負にならない。
だが・・・
だが・・・
「うわぁぁぁぁぁっ!」
男は木の枝を振りかぶって駆け出した。

「デスハルバード」
デスルリカはそう一言つぶやくと、笑みを浮かべながら無造作にデスハルバードを突き出した。
「グホッ」
男の声が響き、デスハルバードは男の胸を貫く。
そして、驚いたことにデスルリカは男の躰を突き刺したまま、デスハルバードを一閃して男の死体を遠くへ放り投げた。

すうっと実体を失うデスハルバード。
デスルリカの手にはすでに何もない。
呆けたように立ち尽くす紀代美のもとへ彼女は向かう。
「待たせたわね。さあ、あなたの生命力をちょうだい」
「は・・・い・・・デス・・・ルリカ様」
見つめられ、話しかけられるままに紀代美はうなずく。
その目はデスルリカから離れない。
「ふふ・・・」
デスルリカはそっと紀代美を抱き寄せると、静かに唇を重ねた。
「ん・・・んん・・・」
紀代美の躰が小さく震える。
そして、手の指先がぴんと伸ばされ、ガクガクと震えたかと思うと、すべすべして綺麗な肌が急速に萎び始めた。
「んんんー」
紀代美は目を見開いて恐怖に身を振りほどこうとしたものの、すでに躰の自由は利かなかった。

やがてミイラのように萎びてしまった紀代美の死体は崩れ落ち、笑みを浮かべたデスルリカだけが立っていた。
「まあまあね。さ、急いで戻らないと・・・ベータが待っているわ。それに紗希も。うふふふふ・・・」
黒く塗られた唇を舐め、妖しい笑みを浮かべたデスルリカは、優雅にその場を立ち去って行く。
結界が消え、ミイラのような紀代美の死体が見つかったのは、それから程なくのことだった。
  1. 2007/07/16(月) 20:14:29|
  2. ホーリードール
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丸二年達成です

2005年7月16日は私のブログ開始の日です。

つまり、昨日の時点で丸二年が経過しました。

だからなんだというわけではありませんが、私自身ちょっと嬉しいですね。
ここまで連続投下ができるとは正直思っていませんでしたので。

今日からまた新たな気持ちでブログを進めて行きますが、丸三年連続投下できるかな?

これからも一日一日一歩ずつ歩んで行きたいと思います。
皆様、どうぞ応援よろしくお願いいたします。
  1. 2007/07/16(月) 10:29:47|
  2. 記念日
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新規リンク先です

また新しくリンクしていただけることとなりました。

magosaku様の魅力的なSSが掲載されているブログ、「じこまんぞく」でございます。
URLはこちら、http://magosann.blog111.fc2.com/

現在のところまだ始まったばかりのブログではありますが、以前いくつかのサイトさんにSSを投下していた頃の力量はまったく健在です。

magosaku様も悪堕ちがお好きな方でございますので、展開中のSSもきっと素敵な悪堕ちストーリーになるのではないかと期待大です。

皆様もよろしければ、是非ご覧いただき、その素晴らしい世界に浸って下さいませ。

magosaku様、これからもよろしくお願いいたします。


話は変わりますが、阪神タイガースの主砲金本選手の左ひざがピンチです。
「左ひざ内側半月板損傷」ということで、半月板が水平に断裂しているとのこと。
痛そう・・・

ご存知の通り金本選手は連続フルイニング出場の記録を伸ばし続けている方ですが、できれば休場してケアして欲しいですね。
今年無理をして来年以降の選手生命を縮めてしまうようなことになれば、それこそ大変です。
阪神だけではなく、球界にとっても金本選手は若い選手の手本として大切な人です。
記録も大事ですが、お体をこそ大事にして欲しい。

阪神もいつまでも金本選手におんぶに抱っこではいけません。
無論、金本選手は精神的にも力量的にも主砲であることは間違いありません。
ですが、金本選手を見習った俺たちはここまでできるんだということを、若手には見せて欲しい。
若手の成長を見せて、金本選手を助けてあげて欲しいです。

金本選手は来年以降も阪神の中心でいて欲しい選手です。
だからこそ無理はして欲しくない。
今はただ、怪我が悪化しないことを祈るのみです。
金本選手頑張れ。
応援しています。

それではまた。
  1. 2007/07/15(日) 20:14:09|
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パリ陥落再び

今日は「第一次世界大戦」(コマンドマガジン日本版72号付録)の再戦です。

前回は協商軍の敗北でしたが、今度は負けないぞ。

と、言うところですが、前回のプレイが完全にルールを間違っていたことがわかりました。

なんと、攻撃をしたユニットは非活性状態になってしまうというのをまったく見落としていたのです。
つまり、攻撃をしたユニットはそのまま活性状態だったために、同盟軍の攻撃がとどまるところを知らなかったんですね。
どうりでパリまで来られるはずだ。

しかし、今回はルールを前回より把握しています。
おそらく前回のようなことは無いはず。
協商軍は今度こそ勝つはずです。

070714_1328~01.jpg

しかし、第一ターンのドイツ軍の攻撃は圧倒的でした。
ダイス修整もあり、フランス軍の大半が吹き飛ばされてしまいました。

070714_1328~01.jpg

英仏軍は動員力をフル活用して穴をふさぎにかかります。
前回とは違い、攻撃後には裏返るので多少楽かと思ったのですが、やはり同盟軍の攻撃は苛烈です。

しかし、東部ではロシア軍がじわじわとドイツ軍を圧迫し、ダンツィヒに迫ります。
先輩はオーストリア・ハンガリー軍を活用し、何とかロシア軍を食い止めにかかりますが、なかなか苦労しているようでした。

このまま西部では持久し、東部での戦闘でドイツ軍を圧迫すれば・・・
そう思ったのもつかの間、悲劇は起きました。

第4ターン、私はロシア軍の動員都市を二つ民需用に開放しました。
これでロシア革命はサイコロ1でしか発生しません。
ロシアが脱落することは無い。
私はそう思っていました。

しかし・・・
振ったサイの目は1。orz
ロシアで革命が勃発します。

ロシアが1915年に脱落したことで、協商軍は苦境に陥りました。
またしても私の脳裏に敗北の二文字がよぎります・・・

同盟軍は東部より戦力を引き抜き、全力で英仏軍に向かってきます。
英仏軍は全力で防御しますが、やはりじわじわと押されてきます。

そして・・・
第7ターン、ドイツ軍にストストルッペンが現れます。
英仏軍の戦線はもはやズタズタ。
私も写真を取ることも忘れ、冷や汗でパリを守ります。

第8ターン。
ドイツ軍のストストルッペンはついにパリ前面の仏軍を撃破。
戦闘後前進でついにパリに入城しました。
もはやこれまでか・・・

しかし、協商軍のターンに私は英仏軍の全力でパリに入城したストストルッペンを攻撃。
なんと、上手く撃破できました。
ストストルッペン2ユニットが除去となり、ドイツ軍の前進は止まりました。
さらには米軍の参戦で局面は変わってきます。

070714_1551~01.jpg

三次に渡るパリ攻防戦は双方かなりの損害を出しましたが、ドイツはついに動員能力を喪失。
ユニットの再編ができなくなります。

最終ターン、わずか2ユニットまでに減った西部のドイツ軍を蹴散らし、米軍がケルンに入城。
協商軍の勝利で幕を閉じました。

何とか勝ちました。
冷や汗物の勝利でした。
それにしても最後はやはり機動戦。
第一次世界大戦らしからぬ戦いになりました。

でも面白かったぁ。
ロシアが脱落した時、それにパリが陥落したときは、もう投了しようと思いましたが、最後までやってよかったです。

先輩も負けたとは言え、協商軍をあそこまで追い詰めたのだから満足と言ってました。
本当に面白かったです。

ゲームのプレイとしては上手いプレイではなかったかもしれません。
でも、すごく白熱しました。
ゲームをやったって気がしました。

次回もまた楽しいプレイをしたいです。
次は何をやろうかな。
それではまた。
  1. 2007/07/14(土) 19:54:41|
  2. ウォーゲーム
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ノモンハン(2)

明治37年(1904年)に始まった大日本帝国対ロシア帝国との戦争は、さまざまな局面で相互に錯誤を起こしつつも、旅順、奉天、日本海などでの日本側の一応の勝利により、日本有利の講和となりました。

その結果、日本はロシアより遼東半島の一部「関東州」と、長春-旅順間の鉄道線(後の南満州鉄道)に付属する土地(全長は約430キロ。しかし幅は線路を中心にしてわずか60メートルほどの細長い土地)とを手に入れることになったのです。

この関東州と鉄道付属地を統括するために、日本は明治38年関東総督府を置き、翌年には関東都督府へと変更され、その指揮下に駐留兵力二個師団約一万が置かれました。

明治40年(1907年)には長春-旅順間の鉄道線が「南満州鉄道」として営業を開始すると、関東都督府は鉄道付属地の警備として独立守備隊六個大隊を新設。
その代替として駐箚(ちゅうさつ=官吏などが駐在すること)師団を二個師団から一個師団に減じます。

大正時代に入ると、大正デモクラシーなどにより植民地経営も見直され、大正8年(1919年)に関東都督府が廃止。
政治の中枢として関東庁が設置されるに及んで、関東都督府の配下にあった駐箚一個師団と鉄道警備独立六個大隊は新たに軍事の中枢として設置された「関東軍」の指揮下に入りました。
これがノモンハンでソ連軍と対峙した関東軍の始まりでした。
(関東軍の軍とは、日本軍やソ連軍というような国家の軍隊という意味の軍ではなく、支那派遣軍や第六軍などというような単位としての軍)

関東軍の任務は、租借地である関東州と南満州鉄道の細長い付属地における防衛と治安維持というものでした。
しかし、関東軍はこと軍務に関しては大元帥陛下(天皇陛下)のみの命に従うという、統帥権の独立をたてに政府の直接指導を受けないという状態にありました。
これは関東軍だけの問題では無いのですが、この統帥権の独立が後の関東軍の異常な行動につながっていったのは否めません。

それが現実の問題となったのが、「満州事変」でした。

その3へ
  1. 2007/07/13(金) 21:10:31|
  2. ノモンハン事件
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今日は勝ち負けなし

今日は平日でしたが、先輩が遊びに来てくれまして、夕食後先ほどまでウォーゲームでした。

お題はコマンドマガジン日本版33号付録の「ロシアンキャンペーン2」

まあ、時間も短いので、できるところまでと言うか、ルールの再確認という感じのプレイでしたが、それでも42年初頭までプレイしました。

ソ連軍を先輩が、私が枢軸軍を担当です。
双方本当に久し振りでしたので、初期配置もかなり適当。
枢軸軍も装甲軍団を中心にするだけの配置です。

と、いうことでバルバロッサ作戦の開始です。
北方軍、中央軍、南方軍集団の各部隊は、目前に布陣するソ連軍に雪崩をうって攻めかかりました。

シュトゥーカの支援もあり、枢軸軍は順調にソ連軍ユニットを撃破。
私のサイコロは今日は出目もよく、次々とソ連軍ユニットが降伏し、ヴィテブスク、スモレンスク方面はまったくソ連軍ユニットがいなくなりました。

しかししかし、ソ連軍は無尽蔵とも言える補充と増援があります。
除去されたユニットもすぐさま再建されてマップ上に戻ってきます。
開けたと思った大穴も、ソ連軍ターンにはすぐにふさがってしまいました。

枢軸軍はそれでも無理やり進撃を続け、じわじわとモスクワへ迫ります。
ヴィテブスクもスモレンスクも落とし、南方ではセバストポリに迫ります。

ですが、ここでついに冬がやってきます。
枢軸軍の進撃は止まり、さらには補給も滞って、移動力も戦闘力も半減します。

モスクワを目前にして枢軸軍は反撃を食らうことになりました。
枢軸軍の限界が来たのです。

ソ連軍の冬季反攻で枢軸軍はじわじわと押し戻されました。
こうなると、早く春になるのが待ち望まれます。

そして、1942年の春。
モスクワ前面に分厚く布陣したソ連軍ユニットを見て、私はやはり手薄な南方を攻撃する「ブラウ」作戦を発動しようと思ったのでした。

と、言うところで時間切れ。
お開きとなりました。

いろいろと細かい点はありますが、やはり何となく独ソ戦の雰囲気を感じさせてくれるよいゲームだと思います。

枢軸軍がモスクワを目指すと、ソ連はモスクワを守ろうとする。
すると南方が手薄になるので、「ブラウ」作戦をしたくなる。
「ブラウ」作戦が頓挫すると、ソ連の反撃をどうにか防いで増援でやってくるSS部隊で「ツィタデル」作戦をやりたくなる。

なるようにしかならない面もあるのかもしれないですが、非常に楽しませてくれるゲームだと思います。
評価が高いのもわかりますよねぇ。

さて、次回は再度「第一次世界大戦」(CMJ72)の予定です。
今度は負けないぞー。

それではまた。
  1. 2007/07/12(木) 21:23:02|
  2. ウォーゲーム
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ノモンハン(1)

先日S&T誌のバックナンバー158号「RED SUN/RED STER」を手に入れました。

早速せこせことユニットを切り、マップを広げて初期配置。
このゲームは1939年に満州とモンゴルの国境付近で戦われた日ソの衝突、いわゆるノモンハン事件を扱っています。

初期の衝突である東捜索隊の戦闘は入っておらず、7月の日本軍の攻勢、つまり第二次ノモンハン事件といえる時点からのゲームですので、7月シナリオはまだ比較的バランスが取れているといえるにですが、それでも初期配置を見ると、やはりソ連軍の有利さが感じられ、いかに無謀な戦いであったかがわかります。

8月シナリオにもなれば、圧倒的なソ連軍による日本軍の包囲殲滅戦が待っています。
対人プレイではなくソロプレイ(ソ連軍を担当しての)に向いているとシナリオに書いてあるのも仕方ないかなというところかもしれません。

ゲームそのものに関しては、ルールが戦術級的な面を持っているために多少複雑に感じられ、まだソロプレイすらしていませんが、いずれは先輩とプレイしたいものですね。
しっかりルールを把握しなければ・・・

それにしても、日本側、ソ連側双方にとって甚大なる損害を出したこのノモンハンの戦いはどうして起こったのでしょうか?

事情を知れば知るほど、つらい話でありますね。
少しそのあたりのことを書いて行きたいと思います。

お手元に地図があれば、中国東北部を見ていただけますでしょうか?
韓半島(朝鮮半島)の北側の中国内に長春という都市があります。
この長春こそ、昭和7年3月の「満州国」独立時に新京という名で首都に定められた都市なのです。

そして、この長春より北に目を向けると、ハルビン、チチハルという満州の都市があります。
満州国にとっても重要な都市でした。

そのチチハルの西、大興安嶺という山地を越えると、モンゴルとの国境が現れます。
そして、ハイラルからマンチュウリーにかけての一帯が中国国土がモンゴルに突出するような形になっています。
逆に言えばタムサクブラグからアールシャンまでモンゴル国土が中国に対して突出しています。
このモンゴルと中国のお互いの突出部分同士の国境の中間辺りにあるのがノモンハンという集落でした。

つまり、ここは日本でもソ連でもない土地でした。
この日本でもソ連でもない土地が、両軍にとっての一大武力衝突地になったのです。

2に続く。
  1. 2007/07/11(水) 20:37:29|
  2. ノモンハン事件
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もう少しMCだとなぁ・・・

WESTVISION様のエロゲー、「Hide Mind」(ハイドマインド)をプレイさせていただきましたー。

主人公は内に対人面での問題を抱える精神科医。
特殊な能力の持ち主で、患者を催眠術にかけることで問題点を覆ってしまったり、人格を改変したりして治療します。

そんな彼の元にメイドさんを連れたヒロインが、父親に連れられてやって来ます。
精神面の病気であることさえ知らなかったヒロインは、彼の元でどう変わって行くのか・・・

結構楽しませていただきました。

箱入りのお嬢様であるヒロイン。
お付の主人公にきつく当たるメイド。
主人公とともに人里離れた診療所に暮らす看護師。
いずれも内に問題を秘めています。

ストーリーがそれぞれのルートによって徐々に明らかになっていくのはなかなか面白く、そうだったんだーと思うこともしばしば。

ただ、惜しむらくは、Hルートがちょっと物足りなかったですね。
メインルートがいろいろと絡んでいたので、HルートはもっとMCで陵辱しちゃうのかなと思ったんですが、どっちかというと中途半端な感じを受けました。

人格まで書き換えることができるという主人公でしたので、お嬢様を女王様にかえるぐらいのことをやって欲しかったんですけどねー。(笑)

まあまあ楽しめるゲームでしたので、気が向いた方はどうぞ。
それではまた。
  1. 2007/07/10(火) 20:39:48|
  2. PCゲームその他
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三成に過ぎたるものが・・・

「三成に過ぎたるものが二つあり、島の左近と佐和山のお城」
と、歌に歌われた石田三成の家老が島左近清興(しま さこん きよおき)です。

島左近は大和の国(奈良県)出身(異説あり)の武将であり、代々筒井家の家老でした。

筒井順慶に仕える松倉右近重信とともに、「筒井の右近左近」と呼ばれ、有能な家老としてその名を知られた島左近でしたが、その筒井順慶の死で雲行きが怪しくなりました。

子の筒井定次が後を継ぐと、酒色に溺れるこの若当主に対し、左近は幾度となく諫言いたしますが、一向に聞き入れられず、ついに左近は筒井家を辞去します。

その後いくつかの家に仕官しますが、やはり家老というプライドが邪魔したのか長続きしません。

そんな折、左近に声をかけたのが、あの石田三成でした。

近江水口4万石の城主石田三成は、その所領の半分の2万石を持って招いたといい、秀吉も驚いたと言います。

事務官僚の三成は、自らが不得手としている軍事面の補佐として島左近の名声に惚れ込んだのでしょう。
左近もまた、家老として以前とほぼ同等以上の禄を得ることができ、さらに一花咲かせることができると思ったに違いありません。

こうして二人は主従となり、三成が佐和山城主となった頃、冒頭の歌がうたわれたのです。

秀吉の死後、世間が風雲急を告げてくると、三成と家康は対立します。
左近は家康そのものを除くことで脅威を取り除くことができると、家康暗殺を進言しますが、三成は受け入れませんでした。

しかし、左近は家康暗殺を謀り、その実行も行ないますが、家康に察知され暗殺は失敗。
決着は戦場に移りました。

関ヶ原の戦場で、島左近は勇猛果敢に戦い、東軍の心胆を寒からしめます。
しかし、銃弾が左近を襲い、ついに左近は討ち死に。
西軍も散り散りになって敗走しました。

司馬先生の「関ヶ原」でも主人公扱いされ、TVドラマ化されたときも三船敏郎さんが演じるなど、かっこよく書かれている方ですよね。
これほどまでに名を残せたことは、左近自身にとっても本望だったでしょう。

それではまた。
  1. 2007/07/09(月) 20:59:05|
  2. 趣味
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やっぱり素敵です。

いつもお世話になっているお方から、真田クロ様の同人誌「Dark Princess2」をいただきました。
本当にいつもいつもありがたいことです。
感謝感謝です。

この同人誌は、真田クロ様のサークルで製作中のPCゲーム「Dark Princess」の設定に基づいたもので、邪神の策略によりヒロインが幾人も邪悪に染められていく中の、最初の段階で悪に染められてしまう神官ミレディアの姿を描いています。

清楚な神官ミレディアが、すでに邪神の虜になってしまったフォトンという女騎士と邪神により、エロエロな行為によって悪に染められていきます。
すごくエロティックで、クロ様の素晴らしい絵がまさに真骨頂を発揮しております。

最後は悪に堕ちたミレディアが、フォトンとともに邪神のしもべとして人間たちに牙を向く姿で締めくくられますが、もうたまらない魅力にあふれています。

「Dark Princess」のゲームそのものはまだ製作途中とのことですが、体験版をさせていただいた限りではとても楽しめそうなゲームです。
悪堕ちファンとして、非常に期待しております。

いろいろと大変だとは思いますが、一ファンとして応援させていただこうと思っております。
楽しい作品ありがとうございました。

それではまた。
  1. 2007/07/08(日) 20:29:20|
  2. 同人系
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パリ陥落

今日は久し振りに先輩をお招きしてのゲームプレイです。

先日ユニットを切ってすこーしだけソロプレイしたコマンドマガジン日本版72号付録の「第一次世界大戦」が本日のお題です。

先輩がドイツとオーストリア・ハンガリーを中心とした同盟軍。
私が英仏露を中心とした協商軍を受け持ちました。

史実では皆様ご存知の通り、アメリカの参戦により協商軍が勝利を得ます。
塹壕に篭もって戦っていれば、そのうちドイツは息切れして、アメリカの参戦で勝てるはず。
我が協商軍の勝利は疑い無しです。

070707_1436~01.jpg

第一ターン、ベルギーとルクセンブルクは落とされたものの、東部ではロシア軍の攻撃にオーストリア・ハンガリー軍はたじたじ。
西部でも綺麗な戦線がドイツの進撃を受け止めます。

070707_1458~01.jpg

西部では英仏軍が塹壕を掘り、ドイツ軍を待ち構えます。
これで戦線は膠着するはず。

070707_1616~01.jpg

なんと!
満を持して行なった乾坤一擲の大反撃、英仏連合によるドイツ軍突出部への攻撃はサイの目6を出して大失敗。
攻撃をした英仏軍が大ダメージを受けてしまい、ドイツ軍の突破を許してしまいます。
東部戦線でもロシアの攻撃は頓挫し、かなりヤバーイ状況になりました。

070707_1715~01.jpg

第七ターン、ドイツ軍はついに切り札のストストルッペンを投入して、英仏軍の戦線を突破。
英仏軍の首脳陣に敗戦の二文字が去来します。
しかも、ロシア軍は国内の革命気運に押され、戦線構築もままならない状態。
脱落は時間の問題となりました。
唯一の明るい話題は、トルコ沿岸に上陸したフランス軍が、無事展開を終えたことと、セルビアの攻撃によりブルガリアが脱落したことでした。

070707_1744~01.jpg

ストストルッペン、ついにパリに迫る。
戦線をずたずたにされた英仏軍はもはやなすすべなく後退。
パリすらもストストルッペンの脅威に晒されます。
フランス政府はここにいたりドイツとの単独講和も視野に入れた外交を開始。
アメリカの参戦により何とか脱落は食い止めたものの、もはや戦う気力はありません。
そして・・・ロシア国内では革命が勃発。
ロシアはついに同盟軍との講和を結びました。

070707_1812~01.jpg

パリ陥落直前のパリ近郊。
もはやパリにフランス軍の姿はなく、アメリカ軍が躍起になって守るのみ。
それもストストルッペンの集中攻撃により風前の灯といったところで協商国側(つまり私)が講和を提案。
投了となりました。

か・・・勝てん。orz
ここのところ負け続けです。
サイの目だって決して悪くなかった。
それでいながらこの体たらく。
どうしたもんだろう。

あと一撃でオーストリア脱落とか、トルコ脱落とかまでは行ったんですけどね。
パリが落ちちゃ仕方ない。
それにしてもこれほど戦線が動くとは。
塹壕戦というよりは機動戦という感じ。
ルール間違ってないよなぁ。

まあ、再度出直しです。
勝利を得るその日まで、頑張るぞー。

それではまたー。
  1. 2007/07/07(土) 20:31:06|
  2. ウォーゲーム
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グレイバー(5)最終回

五日間連続で投下してきましたグレイバーも今日で終了です。
拙い作品をお読みくださいました皆様、本当にありがとうございました。

そして、なんとなんと、いつもお世話になっております「Kiss in the Dark」のg-than様より、作中に出てきます暗黒組織ルインの女幹部インビーナ様のイラストをいただきました。

20070706191824.jpg

なんと素敵で凛々しいインビーナ様でしょうか。
g-than様、本当にありがとうございました。

それではグレイバーの最終回、お楽しみいただければと思います。
よろしければ読んだあとにコメントなどいただけると、とてもとても嬉しいです。
お読みいただきまして、本当にありがとうございました。


5、
弥生ちゃんはしぶしぶながらだったのかもしれないけど、立ち上がってベルトを外し、手袋を脱いでいく。
私はそれを横目で見ながら、自分のベルトや手袋を外し始めた。
心臓がドキドキする。
衣服を脱ぐことがこんなにも苦しいことだなんて・・・
脱ぎたくない・・・
私の中で何かが命令してくるよう・・・
脱ぐな、脱ぐなって言ってくる。
ダメ!
脱がなきゃダメ!
脱がなきゃグレイバーになってしまうわ。
私はセーバーチームのオペレーターなんだから・・・

私はどうにかレオタードを脱ぎ捨てる。
必死に脱ぐって考えていたら、背中にスリットが入って脱げるようになったのだ。
今まで明るく感じていた室内が、マスクを外すと急に真っ暗な闇になる。
怖い・・・
こんな闇の中で裸でいるなんて・・・
いやだ・・・いやだよ・・・
でも、私は首を振り、必死の思いでストッキングも脱ぎ捨てる。
すっかり裸になった私は、手探りに近い状態でベッドの上からシーツを外し、それを躰に巻き付けた。
「ふう・・・」
真っ暗な中、とりあえずシーツにくるまれた私は一息つく。
弥生ちゃんはどうかしら。
私は暗がりの中に弥生ちゃんの姿を探した。

「すん・・・すん・・・」
弥生ちゃんは泣いていた。
私の言うとおりに裸になった弥生ちゃんは、肩を震わせて泣いていたのだ。
きっとつらい思いだったに違いない。
私だってレオタードを脱ぐのに必死の思いだったもん。
でも、弥生ちゃんは脱いでくれた。
私はそれが嬉しかった。
「弥生ちゃん・・・」
私は近づいて声をかけ、そっとシーツでくるんであげる。
恥ずかしいよね。
心細いよね。
こんな暗闇の中、裸でいるなんて耐えられないよね。
ごめんね。
私がこんな衣装を着て変装しようなんて言ったから・・・
「秋奈さん・・・」
弥生ちゃんが振り向いた。
闇の中でも涙に濡れた頬がわかる。
私は思わず抱きしめた。
「ごめんね、弥生ちゃん」
「秋奈さん・・・私怖い。裸でいるなんて怖い。着たいの・・・あのレオタードが着たいの」
弥生ちゃんは必死に私を見つめてくる。
でも私は首を振った。
「ダメ。それだけはダメ。あれを着たら敵の思う壺よ。私たちはグレイバーになっちゃう」
「敵? 敵ってなんですか? 本当にグレイバーになっちゃうんですか? 秋奈さんは確かめたんですか?」
「えっ?」
私はどきっとした。
そ、そりゃあ、確かめてはいないけど・・・
でも、あのレオタードを着ていたら・・・
着ていることがすごく気持ちよくて・・・
ルーィなんて言うようになって・・・
ダメ!
とにかくダメなの!
「ダメ! とにかくダメ! お願い弥生ちゃん。きっと助けが来るから。お兄ちゃんが助けに来てくれるから」
私はギュッと弥生ちゃんを抱きしめ、そう自分に言い聞かせた。

渇く・・・
渇く・・・
渇いていく・・・
露出しているのは耐えられない・・・
着たい・・・
着たい・・・
包まれたい・・・
闇の衣装に包まれたい・・・

暗闇の中、私は弥生ちゃんと二人でシーツにくるまって時を過ごす。
あれから何時間経ったのだろう・・・
何時間?
ううん・・・何日かもしれない・・・
レオタード・・・
レオタード・・・
すべすべしてとても気持ちいい・・・
着たい・・・
着たい・・・
あの心地よさに包まれたい・・・

どうしてこんなところにいるんだろう・・・
私たちはここで何をしているんだろう・・・
心が渇く・・・
じりじりと焼き尽くされるような思い。
裸だから・・・
裸だから心が渇く・・・
満たされたい・・・
漆黒の闇に包まれたい・・・

「秋奈・・・さん・・・」
弥生ちゃんが顔を上げる。
ずっとうつむいて躰を震わせていた弥生ちゃん。
「弥生ちゃん・・・もうすぐだよ・・・もうすぐ・・・」
何がもうすぐ?
もうすぐ何だと言うの?
変だ・・・
頭が働かない・・・
思うことはただ一つ・・・
レオタードが着たい・・・
「秋奈さん・・・私・・・レオタード・・・着たい・・・」
弥生ちゃんの目が私を見つめてくる。
その目が必死に訴えてくる。
「ダメ・・・着てはダメ・・・」
私はもう何度言ったかわからない言葉を繰り返す。
着てはダメ・・・
なぜダメなんだろう・・・
「秋奈さ・・・ん・・・だったら・・・だったら触るだけ・・・触るだけでいいの・・・触るだけで・・・」
「ダメ・・・それでもダメ・・・」
「どうして? どうしてなの? 触るだけでどうしていけないの?」
弥生ちゃんの声がきつくなる。
「どうしてって・・・あれに触ったら・・・触っちゃったら・・・」
触ったら・・・どうだというの?
何があるというの?
わからない・・・
思い出せない・・・
暗闇の中でどうして私たちは裸でいるんだろう・・・
手を伸ばせば、すぐにレオタードが手に届く・・・
レオタード・・・着たい・・・
あのレオタードに包まれたい・・・

「レオ・・・タード・・・」
ふらっと立ち上がる弥生ちゃん。
何をする気かしら?
シーツがはずれ、暗闇の中に彼女の裸身が浮き上がる。
「レオ・・・タード・・・」
そのまま彼女はふらふらと脱ぎ散らされたレオタードやパンストのところへ向かって行く。
いけ・・・ない・・・
私もシーツを纏ったまま立ち上がる。
レオタードはダメ・・・
レオタードはダメ・・・
私は半ば朦朧とする意識の中でそれだけを思っていた。

「ハア・・・レオタード・・・」
弥生ちゃんがぺたんと床に座り込んでレオタードに手を伸ばす。
私は倒れこむようにして、その手の先にあるレオタードを奪い取った。

ああ・・・
なんて素敵な肌触りなんだろう・・・
これ・・・
これが欲しかったの・・・
私はこの瞬間に確信する。
このレオタードが私を満たしてくれるのだ。
このレオタードが私を包んでくれるのだ。
ああ・・・
私が飢えていたのはこの感触に包まれること。
このレオタードに包まれることだったんだわ。
私は手に取ったレオタードを思いっきり抱きしめた。

飢えた目で私をにらみつける弥生ちゃん。
私はうなずくと、抱きしめていたレオタードをそっと渡す。
このレオタードは弥生ちゃんのもの。
私のはあっちにある。
私をずーっと待っているのだ。
いつ着てくれるのかと言わんばかりに、私を待っている。
私は立ち上がるとシーツを放り出す。
こんなものに躰を包むなんてバカみたい・・・
私はすぐに私のレオタードを手に取った。

パンストに脚を通し、レオタードを身に付ける。
すべすべした肌触りがとても気持ちいい。
どうしてこれを脱いだりしたんだろう。
もう絶対に脱いだりしないわ。
これは私そのものなの。
私はこの衣装と一体なのよ。

膝上までのブーツを履き、両手には肘までの長手袋。
マスクに覆われた頭はすっきりとして周囲もよく見える。
「ルーィ!」
再びルインの紋章の入ったベルトを締めた私は、すごく嬉しくなって叫んじゃった。
私の隣では、弥生ちゃんも同じように背筋を伸ばして立っている。
スタイルがいいからすごくよく似合う。
「ルーィ!」
弥生ちゃんも嬉しそうに声をあげた。
ああ、なんて素晴らしいんだろう・・・
ルインに栄光あれ!

瞑想。
誓いの言葉。
ルインへの忠誠。
グレイバーとしての誇り。
私たちはそういったものを心行くまで味わう。

319号と一緒にする誓いの言葉の唱和。
「・・・しもべ・・・」
頭の中に囁かれる言葉と同じ言葉を紡ぐ319号の唇。
それがふと私に近づき、私の唇と重ね合わさる。
はあん・・・
全身を駆け抜ける電流のような快感が気持ちいい。
「・・・喜び・・・」
くらくらするような快楽に酔い痴れながら、私も誓いを唱和する。
そして、今度は私の唇が319号の唇と重なった。
黒く艶めかしい319号の唇。
「・・・服従・・・」
それが次の誓いの言葉を奏で、再び私の唇と重なり合う。
「ルイン・・・」
私は誓いの最後のフレーズをつぶやきながら、319号と抱き合った。
もう私は迷ったりしない。
私はグレイバー320号。
この身はルインのもの。
もう以前の私ではないわ。

           ******

「ふふふ・・・どうやら、完了したようだな」
私たちの前に立っているのはインビーナ様。
赤いビキニ型のアーマーがつややかに輝いている。
一体何のことなのか私にはわからない。
でも、インビーナ様のお言葉は力強い。
私たちグレイバーを導いてくださる強さにあふれている。
「320号」
「ルーィ!」
私はインビーナ様に敬礼する。
番号を呼んでいただけるのは光栄なこと。
「お前には特別任務についてもらうぞ」
「ルーィ!」
特別任務?
私はまだ作られたばかりだというのに・・・
「以前のお前はセーバーチームのオペレーターだった。その記憶はあるな?」
「ルーィ! もちろんです。ですがそれは過去のことです。思い出したくもありません」
それは本当のこと。
あんな人間なんていう統制の取れない生き物だったなんて考えたくも無いわ。
グレイバーであることは本当に幸せ。
「ふふ・・・それでいい。だが、セーバーチームを壊滅させるためにはお前の記憶が不可欠。従うのだ」
「ルーィ! もちろんです。何なりとご命令を」
「セーバーチームの要、司令の盛逸成実を捕らえよ。いいな!」
インビーナ様のご命令だわ。
「ルーィ! かしこまりました。セーバーチームの司令官、盛逸成実を捕らえます」
私は胸を張って命令に答える。
命令は絶対服従。
それがグレイバーの喜びなの。

「319号、お前にはこれからも320号の指導に当たってもらう」
えっ?
それは本当ですか、インビーナ様?
私は思わず嬉しさに飛び上がりそうだった。
おそらくは別々に配属されるもの。
そう思っていた私にとっては、319号とこれからもともにあることができるのはすごく嬉しい。
インビーナ様、ありがとうございます。
「いいか320号、お前はわがルインへの昇華にとまどいと抵抗を感じていたな。だがそれを319号が取り除いてくれたのだ。これは評価に値する」
ああ・・・
その通りです、インビーナ様。
私はおろかにも人間であろうといたしました。
319号はそんな私を救ってくれたのです。
「320号、お前はこれからも319号とともに行動し、服従の喜びを自らのものにするがいい!」
「ルーィ!」
「ルーィ!」
私がインビーナ様のお言葉に、大いなる喜びを感じて声をあげると、319号が続いて綺麗に和した服従の声をあげてくれた。

「よし、では誓いの言葉を」
「「ルーィ!」」
私と319号はうなずいた。
誓いの言葉。
私たちの頭の中にいつも語りかけられる言葉。
グレイバーにとっての大事な言葉。
それを口にすることは喜び以外の何者でもない。
「「ルインのしもべ」」
「「ルインに身を捧げることは喜び」」
「「ルインに全てを、命令には絶対服従を」」
「「ルインに栄光あれ!」」
私は胸の奥から声を出し、319号とあの部屋で何度となく交し合った誓いの言葉を誇らしく宣言した。
  1. 2007/07/06(金) 19:26:23|
  2. グレイバー
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グレイバー(4)

今日はグレイバーの四回目です。

お楽しみいただければと思います。
それではどうぞ。

4、
「弥生ちゃん、ルーィって言ってみて」
「えっ? ルーィ・・・ですか?」
弥生ちゃんが不思議そうにする。
でもこれは重要なこと。
私たちはグレイバーなんだから。
「そう、ルーィ。これはグレイバーたちの鳴き声って言うか発声なの。グレイバーとして行動するならこれは欠かせないわ」
「は、恥ずかしいですね・・・」
弥生ちゃんのマスクから見える口元がほんのり染まる。
そりゃあ、私だって恥ずかしいけど・・・
この格好をしている以上仕方ないじゃない・・・
「いい、ちょっと練習するよ? ルーィ!」
私はグレイバーたちがよくやる右手を胸のところで水平にする敬礼をしながら声を出してみる。
あは・・・
なんか別人になったみたいで気持ちいいね。
「ル、ルーィ・・・」
最後は蚊の鳴くような声になっちゃう弥生ちゃん。
きっと恥ずかしさでいっぱいなんだろうな。
でも、右手はちゃんと胸のところで水平にしている。
スタイルいい弥生ちゃんはレオタードがとてもよく似合っていた。
「弥生ちゃん。今の私たちは暗黒組織ルインの女戦闘員グレイバーなんだよ。恥ずかしがることないよ。顔だって見えないんだし」
確かに顔は見えない。
でも、表情は何となくわかるんだけどね。
「ルーィ! ルーィ! ルーィ!」
弥生ちゃんは何度か声を出して練習してる。
もしかしたら努力家なのかも。
敬礼も何度も繰り返して可愛いなぁ。
「うん、その感じ、忘れないでね」
「ルーィ!」
「あはは・・・」
弥生ちゃんがグレイバーの鳴き声で返事したので、私は思わず笑っちゃった。

「さ、行くよ」
「はい。じゃなかった、ルーィ」
私は思わず笑みを浮かべると、ゆっくりとドアを開ける。
うわぁ・・・
通路がすごく明るい。
さっきまでとはまったく違うわ。
やっぱりグレイバーたちに合わせて作ってあるようね。
左右を見るけどグレイバーたちの姿はなし。
よし、このままエレベータに向かって行けばいいわね。
「ついてきて、弥生ちゃん」
私は先に立って、通路をエレベータに向かって歩き出す。
先ほどまでは迷路のように感じたこのアジトが、今は手に取るようにわかる。
この通路を右に行けば司令室。
この部屋は動力室。
あっちはグレイバーの居住区。
外部へのエレベータは・・・こっちね。
私は自信を持って角を曲がる。
もう迷うことはないわ。

と、曲がり角からそっと通路を伺っていた私たちの前を、一列になった三人のグレイバーたちが通り過ぎていく。
みんな背筋がスラリと伸びて、いかにも目的のために働いているって感じがする。
いつもお兄ちゃんの後ろにくっついている私とはずいぶん違うわ。
やっぱりかっこいいよね。

あれ?
彼女たち何か言っている?
彼女たちが立ち去っていく時に何か聞こえたような・・・
違う?
今も聞こえる?
なんだろう・・・
私はその囁くような声に耳を・・・ううん、全身の神経を向けた。

『・・・イン・・・もべ』
『・・・身を・・・び』
『・・・に・・・を・・・服従』
『ル・ン・・・栄光・れ』
よく聞き取れない。
でも意味があるような・・・
ううん、すごく大事なことのような気がする・・・
不快じゃない・・・
何となく心地いい・・・
もっと聞いていたい・・・

カツコツという足音。
私たちのブーツの足音とは明らかに違う音。
それが私たちの向かっているエレベータの方からやってくる。
「秋奈さん」
どうやら背後の弥生ちゃんも気が付いたらしい。
不安そうな声に内心が現れている。
「だ、大丈夫。堂々としていればばれない」
私もそう言うのが精いっぱい。
心臓はドキドキ。
全身から冷や汗が出そう。
私は振り返って逃げ出したい気持ちを必死に抑え、ゆっくりと歩みを進める。
こんなところで逃げ出したら、変装している意味がなくなってしまう。
できるだけ普段の行動と見せかけなきゃ。

最悪だわ。
通路の向こうから歩いてきたのは、黒い全身タイツ型のインナーの上に赤いビキニ型のアーマーを身に付けた暗黒組織ルインの女幹部インビーナ。
人間と変わらない姿は、グレイバーのように顔を隠してすらいない。
黒いショートの髪にサークレットを嵌め、赤いロンググローブを嵌めた手には乗馬ムチを携えている。
逆らうことなどできない偉大な女幹部だ。
背後に二体のグレイバーを従えて歩いてくる姿はまさに女王様。
思わずひれ伏してしまいそうだわ。
私はできるだけ平静を装いつつ通路の端に直立して、インビーナが通り過ぎるのをやり過ごそうとした。

カツコツとインビーナの赤いブーツの足音が響く。
私も弥生ちゃんも生きた心地がしない。
お願い・・・
早く通り過ぎて・・・
思わず目をつぶってしまう。

足音が止まる。
心臓がキューッと締め付けられるよう。
「お前たち」
インビーナの威厳ある声が響く。
「私はインビーナだぞ。敬礼はどうした!」
しまったぁ・・・
敬礼するのを忘れていたわ。
「ル、ルーィ」
「ルーィ」
私は慌てて右手を胸のところで水平にし、たどたどしく鳴き声をあげる。
私の脇では弥生ちゃんもどうにか鳴き声をあげて敬礼した。
「ふふふ・・・」
私はどきっとする。
インビーナが笑っているのだ。
何かおかしなところがあったのだろうか・・・
私はもう全身から冷や汗がにじみ出そうな思いで立ち尽くす。
でもすごい。
全然このレオタードはべたつかないわ。
これだけ汗をかけば、べたついて当然なのに・・・
「どうやらお前たちは作られたばかりのようだな。そんなお前たちがどこへ行くつもりだ? え? 320号」
320?
私のこと?
ど、どうして?
私はハッと気がついた。
私の身につけている腰のベルト。
このバックルにはルインの紋章と数字が入っていたのだ。
まさしくその数字は320。
これはグレイバーのナンバーだったんだわ。
「そ、それは・・・」
私はどうにかこの場を逃れるべく頭を働かせる。
作られたばかりの新人ということなら、多少の変な行動はごまかせるかもしれない。

「ん? ばか者!」
突然インビーナのムチが私を打ち据える。
私はいきなりの肩口への一撃に、思わずその場にしゃがみこんだ。
「作られたばかりとはいえ、ナンバーが先の者より前に出るとは何事だ! 愚か者め!」
私は何がなんだかわからずに、肩口の痛みに顔をゆがめる。
「す、すみません。お赦しを・・・」
痛みをこらえながら、私は土下座をするようにインビーナに頭を下げた。
今は逆らわない方がいい。
とにかくこの場を乗り切らなきゃ・・・
「お前もお前だ」
インビーナの乗馬ムチの先がすっと弥生ちゃんに向けられた。
「ル、ルーィ・・・も、申し訳ありません」
弥生ちゃんも何がなんだかわかっていないと思うけど、とにかく彼女も頭を下げる。
一体何がいけなかったの?
「ほぼ同時に作られたのだろうが、ナンバーが一つでも少ない者は先任として行動する。それがグレイバーの行動理念ではないか! え、319号!」
あ・・・
弥生ちゃんは319号だったんだ・・・
私が先に歩いちゃいけなかったんだ・・・
なんてうかつ。
先任のグレイバーより先に立つなんて・・・
責めを受けて当然だわ。
私ったら・・・
「申し訳ありません。私がおろかでした。グレイバー319号より先に歩くなど、あってはならないことでした。お赦し下さいませ」
私は必死に頭を床にこすり付けるようにしてあやまった。
インビーナ様だけじゃなく、弥生ちゃんにも失礼なことしちゃったんだもの・・・
どうか赦してください。

「まあよい。それでどこへ行くつもりだ?」
インビーナ様のお言葉が重くのしかかる。
脱走しようとしていたなんて言えるはずがない。
「ル、ルーィ・・・アジト内の確認です。脱走した人間の捜索に協力しようと・・・」
319号の弥生ちゃんが何とかごまかそうとしている。
あまり追求しないで下さい、インビーナ様。
「そうか。それならば他の者に任せるがいい。お前たちはついてくるのだ」
ええっ?
インビーナ様と一緒なんて・・・
「ル、ルーィ・・・しかし」
弥生ちゃんもどうにかついて行かずに済ませようとしてくれている。
ごめんなさい、私の数字が後なばかりに・・・
「口答えするつもりか? しつけがなっていないようだな」
ビュッとインビーナ様のムチが空を切る。
「ルーィ! 申し訳ありません。従います」
319号の弥生ちゃんの背筋が伸びる。
私はただひれ伏して、事の成り行きを見ているしかない。
「320号をつれて後に続け。いいな」
「ルーィ! かしこまりました、インビーナ様。320号! いつまで這い蹲っているの? 立ち上がってインビーナ様に敬礼をしなさい!」
私はその言葉に弾かれたように立ち上がる。
そして全身に緊張をみなぎらせて背筋を伸ばし、これ以上はない敬礼でインビーナ様に敬礼をする。
「ルーィ!」
「ふっ・・・」
インビーナ様は何か笑みを浮かべると、私と319号を交互に見て、おもむろに背を向ける。
そしてインビーナ様に付き従うグレイバー41号と173号の後に続き、私たちは通路を歩き出した。

『・イン・・・もべ』
『・・・身を・・・ことは・・・』
『・・・すべて・・・絶対・・・』
『・・・栄光・』
ずぅっと聞こえてくるこの囁き。
なんだかとても心地いい。
思わず私自身がそうつぶやきたくなるような気がする。
でも・・・
でも・・・
なんか変じゃない?
私の中で何かが警告を発している。
いけない・・・いけない・・・
心地よさに惑わされてはいけない・・・
そんな気がするわ。

「319号、320号、お前たちは別命あるまでここで待機するのだ。いいな!」
連れてこられたドアの前でインビーナ様がそう命じる。
命令には絶対服従。
「ルーィ!」
私と319号はすぐさま右手を胸のところで水平にして敬礼する。
背筋を伸ばして、胸を張って敬礼するのはとても気持ちがいい。
「ふふっ」
インビーナ様はにっこりと微笑まれると、二人のグレイバーを連れて通路を歩き出す。
私はその後ろ姿が見えなくなるまで敬礼をし続けると、319号に続いてドアをくぐった。

ドアの中はこじんまりとした部屋だった。
作り付けのベッドがあり、テーブルも置かれている。
きっとグレイバーにとっての個室なのだろう。
ベッドの広さから言って二人用だわ。
「私たちは別命あるまで待機よ。ゆっくりしましょ、320号」
319号がそう言ってベッドに腰掛ける。
黒いレオタードに包まれた姿がとても素敵。
柔らかそうな太ももは、ストッキングで薄墨色に染まっている。
「ルーィ」
私は少し間を開けて、319号の隣に腰掛けた。
柔らかなベッドがすごく心地いい。
グレイバーって、決して使い捨てなんかじゃないんだわ。
私はそれがすごく嬉しかった。

ベッドに腰掛けた私は、なんだか眠くなってきた。
319号は先ほどから何かをつぶやいているし・・・
そういえば・・・今は何時なんだろう・・・
今まで私って何していたっけ?
確か・・・セーバーベースからの帰り道・・・
私は弾かれたようにハッとなる。
私ったら何を・・・
すっかりグレイバーとしてこんな部屋で落ち着いて・・・
私は思わず自分の両手を見る。
黒くつややかな長手袋を嵌めた両手。
力強く、グレイバーの活動を支える両手。
違う!
違う違う!
この服だ。
この服が私をおかしくしちゃう。
グレイバーであることを喜んじゃう。
私は隣の319・・・違う違う、えーと・・・弥生ちゃんだ!
弥生ちゃんの方を振り向いた。

「・・・しもべ・・・」
「・・・を捧げる・・・喜び・・・」
「ルイン・・・命令・・・服従を・・・」
「・・・栄光・・・」
私はぞっとした。
弥生ちゃんはさっきからそうつぶやいていたのだ。
あの声。
耳元で囁いていた心地よい声。
あの声が囁いていた言葉。
私たちグレイバーにとっての大事な誓い・・・
グレイバーにとって?
誓い?
違う違う!
いけない、このままじゃ・・・
私は弥生ちゃんを正気づかせるために頬を張ろうとする。
先任グレイバーである弥生ちゃんを叩こうとすることは、すごく勇気が要ることだったけど、私は必死で弥生ちゃんの頬を張る。
「弥生ちゃん! しっかりして!」
一瞬敵意とも言うべきものを弥生ちゃんより感じたものの、頬を押さえた弥生ちゃんの口元が少し緩んだ。
「320・・・じゃない、秋奈さん?」
「ごめん、悪いけど、すぐそれ脱いで!」
「えっ、ええっ?」
私は弥生ちゃんの返事を聞かずに、すぐにブーツを脱がし始める。
「や、やめてください。ど、どうして脱がなきゃ・・・」
弥生ちゃんは脚を引っ込めようとするけど、私はやめるつもりはない。
右足のブーツを脱がせ、左足も脱がせにかかる。
「ごめんね弥生ちゃん。でもこれを着ているとおかしくなっちゃうの。グレイバーになっちゃうのよ」
「グレイバーに・・・?」
弥生ちゃんの躰がピクッと固くなる。
「だから脱がなきゃならないの。ごめんね」
私は左足のブーツも脱がせ、ストッキングに包まれた脚を解放する。
後はベルトも手袋も外しちゃって・・・
「本当なんですか? 本当にグレイバーになっちゃうんですか?」
「確信はないけれど・・・でも、弥生ちゃんだって自分の名前よりもナンバーのほうがしっくりする気がしたでしょ?」
「そ、それは・・・」
口ごもる弥生ちゃん。
もしかして脱ぎたくないのかも・・・
私はどきっとした。
弥生ちゃんを脱がせることだけ考えていて、自分が脱ぐときのことを考えていなかった・・・
このレオタードを脱ぐ?
裸になるの?
以前の衣装は処分しちゃったし・・・
でも・・・
脱がなければ・・・
私は首を振って再度弥生ちゃんのベルトに手を掛ける。
「恥ずかしいかもしれないけど我慢して」
「わ、わかりました。わかりましたから手を離してくれませんか? 自分で脱げますから」
弥生ちゃんが私を押しとどめた。
それもそうか。
いくら同性だって衣装を脱がされるのは抵抗あるよね。
「わかったわ」
私はうなずいて手を離す。
  1. 2007/07/05(木) 20:50:48|
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北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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