世に遅すぎた兵器というのは数々ありますが、戦時急造艦として建造されながら、戦争には間に合わなかったというのもつらいものがあります。
しかもそれが、出来合いのものを流用したにもかかわらず・・・
英国最後の戦艦「ヴァンガード」
大英帝国海軍の戦艦の歴史の最後を飾る戦艦です。
基準排水量46100トン
全長248.3メートル
最大幅32.9メートル
最大速力30ノット
英国海軍史上最大最速(巡洋戦艦除く)の戦艦でした。
主砲は38.1センチ砲連装砲塔4基8門。
副砲に13.3センチ連装両用砲8基。
40ミリ6連装機銃10基などなど。
武装としても新型戦艦として遜色ないものでした。
もし、この戦艦ヴァンガードが、第二次大戦初期に完成していれば、有力な高速戦艦となっていたでしょう。
もともとヴァンガードは第二次世界大戦の勃発により建造が中止されたライオン級の補填として一隻だけ建造された戦艦でした。
どこの軍にも、計画上は上手くいきそうだったのに、出来上がると使い道がない軍艦というものはあるものです。
英国にも、なんと常備排水量19000トンという巡洋戦艦並の大きさの船体に、38.1㎝連装主砲塔2基を装備した超大型軽巡洋艦「カレイジャス」と「グローリアス」という軍艦がありました。
速力と砲撃力で、敵巡洋艦を圧倒しようというものだったのでしょうが、あまり使い道がなく、宙に浮いた存在でした。
そこで英国海軍はこの二隻を航空母艦に改造することに決定。
カレイジャスとグローリアスは航空母艦に変身します。
その時、不要となって外された主砲塔が二隻合わせて4基。
この砲塔を何かに使えないだろうかということになったのです。
二隻の砲塔は、手っ取り早く戦艦を作るためには、まさに好都合でした。
砲塔はヴァンガードの主砲塔になることになったのです。
そして、砲身自体も「ウォースパイト」や「ロイヤル・ソブリン」「ラミリーズ」などから転用され、建造に一番手間の掛かる武装はすでにできているという状態だったのです。
後は船体や機関、レーダーなどの電子装備などを建造すればよかったのですが・・・
英国はドイツのUボートの攻撃を受け、まさに海上交通網が麻痺状態でした。
対潜水艦用の艦艇を造るのが最優先され、ヴァンガードはなかなか造ることができなかったのです。
戦争後半、やっと少し余裕ができてきた英国海軍はヴァンガードの建造に取り掛かりました。
「キングジョージⅤ」級の反省点を踏まえ、良好な凌波性とバランスの取れた対空対艦性能を備えたヴァンガードは、英国戦艦のまさに頂点と言っても過言ではありませんでした。
しかし、時すでに遅く。
ヴァンガードの完成は第二次世界大戦終結後の1946年4月でした。
ヨーロッパでの戦争終結より1年も後だったのです。
完成したヴァンガードは、戦後衰退する一方の大英帝国の最後の力の象徴として使われ、王室や政府関係者などが諸外国を訪問する時に使われたりします。
1960年、戦いという兵器にとっての最大の晴れ舞台を経験しないまま、ヴァンガードは退役。
スクラップとなってその生涯を終えました。
戦争に参加できなかったことを喜んだのか悲しんだのか・・・
ヴァンガード自身はどう思っていたのでしょうね。
それではまた。
- 2007/06/26(火) 21:42:21|
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