第一次世界大戦で威力を発揮した兵器に機関銃がありますが、塹壕の一画に据え付けられ、ホースから水を撒くがごとく銃弾を吐き出す機関銃は、突撃する兵士にとっては恐怖以外の何者でもありませんでした。
その機関銃から身を守りつつ前進するために考えられたのが、初期の戦車なのですが、それはまた別の話。
この湯水のように銃弾を発射する機関銃ですが、気をつけないとならないのが銃身の加熱でした。
たいていの機関銃は、ライフル銃と同じく銃身にライフル(螺旋の溝)が刻んであります。
銃弾がこの溝によって回転しながら銃口を飛び出て行くことで、銃弾がまっすぐ飛んでいくのです。
当然、銃弾が溝によって回転する時には、摩擦によって熱が発生します。
一発二発ではどうということもありませんが、機関銃のように数多くの銃弾を撃ち続けるようになると、その熱も膨大なものになり、銃身はやがて真っ赤に焼けてきます。
銃身は金属で作られます。
金属は熱を受けると膨張し、柔らかくなってゆがみを生じてしまいます。
加熱された銃身は柔らかくなってゆがみ、すぐに磨耗してしまいます。
そうなれば銃弾はまっすぐ飛ばず、命中を期待できなくなってしまいます。
それを防ぐには、銃身を冷やしながら撃つのが一番ですが、軽機関銃のようにタタタンタタタンと断続的に撃つ機関銃であれば、放熱用の金属フィンなどでの空気冷却でも充分なのですが、ダダダダと陣地で連続的に撃ち続けなくてはならない重機関銃ですと、空冷では間に合わない状況になってきます。
そこで、ハイラム・マキシムなどは機関銃の銃身を水の入ったスリーブで覆ってしまう水冷機関銃を製作します。
英軍も水冷重機関銃を採用しており、ヴィッカースのMK1が部隊に配備されました。
水冷重機関銃は、水と弾丸があれば長時間にわたって撃ち続けられるため、陣地防御用の重機関銃としては相当に有効なものでした。
弱点は、水の入る冷却用スリーブや複水缶などが重量がかさみ、重くなってしまうことで、いったん布陣した後は容易に陣地変換ができないことでしょう。
ヴィッカースも例外ではなく、銃本体が18キロ、三脚が22キロもあり人力での搬送は大変だったでしょう。
しかし、性能はそこそこで、一分間に五百発の銃弾を撃つことができ、銃身も一分間二百発の速度で撃つのであれば約一万発の発射に耐えられる上に交換もたやすかったそうです。
冷却水は約四リットル入り、約三千発撃つと沸騰してその後は千発ごとに一リットルぐらいずつ蒸発していくそうで、水の補給が不可欠でした。
砂漠の戦いでは必要なのは飲料水ばかりでは無いんですね。
もっとも、どこへ行ってもお茶を嗜む英軍は、ドイツ軍など敵軍に向けてひとしきり撃ったあと、沸騰した冷却水でお茶を淹れていたとのことで、さすが英国人というところでしょうか。
それではまた。
- 2007/06/17(日) 21:52:23|
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