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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

貫く一撃

22、
シュッという音がしてレディアルファの目の前を青い光が走る。
ホーリードールサキのレイピアが流れるような軌跡を描く。
「クッ」
先ほどまでの余裕はレディアルファから消えていた。
彼女の手にはこんなレイピアなどものともしない大斧ヘルアクスが握られているものの、ホーリードールサキの動きに翻弄されてしまっているのだ。
「光の手駒の癖に・・・」
歯噛みするレディアルファ。
先ほどから優勢だったのは彼女のはずだった。
二回三回とヘルアクスの漸撃をただ耐え忍ぶだけだったホーリードールサキが、左腕への一撃を受けたときから自己保存を捨てたのだ。
まるで刺し違えることを望むかのような動きにレディアルファは戸惑った。
光の手駒は無表情に冷酷にただただレイピアを繰り出してくる。
無言。
先ほどまでの気合の入った掛け声すら発しない。
不気味であった。
「に・・・ん・・・ぎょう・・・?」
まさにドールなのか?
ふざけている。
これが光のやり方なのか?
「やあっ!」
レディアルファはヘルアクスを横薙ぎにして振るう。
そして勢いのままに左手にアクスを任せ、身を沈めて向かってくるであろうホーリードールサキの腹部を狙って右手を手刀のごとく叩き込む。
だが、その瞬間は来なかった。
「なに?」
レディアルファの前からホーリードールサキの姿は消えていたのだった。

「さようなら、光の手駒さん。あなたの顔は見飽きたのよね」
レディベータのブラディサイズが振り下ろされる。
だが、それより一瞬早く青色の閃光がホーリードールアスミの腹部を突き破ってほとばしり、レディベータを貫いた。
「ゲフッ!」
よろめくレディベータ。
視界の片隅では同じようにホーリードールアスミとカメレオンビーストが崩折れる。
「ベータ!」
レディアルファが臍を噛む。
ホーリードールサキを引き付けておけなかったのは彼女のミスだ。
だが、それにしても・・・
レイピアの先から青い閃光を発した時のまま動きを止めていたホーリードールサキがゆっくりとホーリードールアスミの方へ近づいていく。
「状況は?」
「・・・内臓の損傷度30%。戦闘行動能力低下。30分以上の行動は不可能」
無表情のままでお腹を押さえるホーリードールアスミ。
だが、そこからは赤い血がわずかに流れている。
「止血が追いつかない・・・」
「無視して。今は闇を浄化するのみ」
ホーリードールサキの言葉にこくんとホーリードールアスミがうなずく。

「ゲフ・・・ま、まさか仲間ごと撃ち抜いてくるとはね・・・」
ブラディサイズを杖代わりに、よろめくように立つレディベータ。
すぐにレディアルファが駆けつけて闇の少女を支え上げる。
「ごめんなさい、ベータ。私が・・・」
「アルファお姉さま・・・私は大丈夫・・・」
腹部を押さえるレディベータ。
その顔には苦痛がうかがえる。
「ベータ・・・クッ、勝負は預ける。光の手駒よ、この次は覚悟しなさい!」
「アルファお姉さま、私のことは・・・」
「引き上げるわ。つかまっていなさい」
少女を抱えあげるレディアルファ。
そのままタンと床を蹴って飛び上がった。

「逃がさない!」
それを見たホーリードールサキも床を蹴り上げる。
しかし、足首に何かが絡みつき、飛び上がれない。
「何?」
足元を見下ろすホーリードールサキ。
カメレオンビーストのピンク色の舌が彼女の足首に絡まっている。
「ゲ・・・ゲゲ・・・」
腹部から内臓をはみ出させながらも、なおその舌でホーリードールサキの行動を封じようとしているのだ。
「邪魔!」
ホーリードールサキの青いレイピアが一閃する。
どす黒い血を撒き散らしながら、カメレオンビーストの舌が切断されてのた打ち回る。
「ゲゲゲー!」
耐え難い激痛に身をよじるカメレオンビースト。
「浄化します。コロナ!」
ホーリードールアスミの杖が宙に魔方陣を描き、数千度の炎が巻き起こる。
「ギャァァァァァァ」
カメレオンビーストの絶叫がとどろき、炎が跡形もなく焼き尽くす。
だが、その間に闇の女たちの姿は消え去っていた。

「浄化完了」
「闇の穢れは消えました」
お互いにうなずき合う二人のドール。
地上では赤色回転灯の輝きとサイレンの音が鳴り響いている。
ブティックの惨状が人々を呼び寄せたのだろう。
「そろそろ行動限界です。引き上げましょう」
「ええ。ゼーラ様の御許に」
無表情で地上を見下ろしていた二人の少女は、光の球に包まれ姿を消した。

******

「あれ?」
気が付くと夜の帳が町を覆っている。
ひんやりした空気がベンチに座っていた紗希の頬を撫でて行く。
いつの間に公園に来たのだろう?
それにいつの間にこんなに時間が経ってしまったのだろう?
ふと気が付くと、隣には明日美ちゃんが座っている。
だけど身じろぎ一つしていない。

どうしたんだろう?
「明日美ちゃん?」
紗希は気になって声をかける。
だが返事はない。
まっすぐ前を見たまま動かないのだ。
まるで人形みたい・・・
紗希はふとそう思う。
そこにいる明日美からは、生きているという感じがどうしても感じられなかったのだ。
「明日美ちゃん!」
少し声を荒げてみる。
すると、明日美はゆっくりと振り向いた。
「私を呼びましたか? サキ」
とたんに紗希はぞっとした。
「変だ・・・」
思わず腰が引ける。
明日美ちゃんなのに明日美ちゃんじゃないみたいだ。
「どうしたのですか? サキ」
まっすぐに見つめてくる明日美の瞳。
その奥に底知れない恐怖を紗希は感じてしまう。
「変だ・・・変だよ・・・明日美ちゃん・・・どうしちゃったの、明日美ちゃん?」
助けなきゃ・・・
明日美ちゃんを助けなきゃ・・・
紗希は勇気を振り絞って明日美の肩を揺さぶった。
「どうしたのですか? サキ・・・ちゃ・・ん・・・」
「明日美ちゃん、変だよ! しっかりしてよ! 目を覚まして!」
必死に明日美を揺さぶる紗希。
そうしないと明日美が遠くへ行ってしまいそうなのだ。
「私は目を覚ましています。多少血が損なわれていますが、行動に支障ありません」
「いやだよ・・・いやだよ明日美ちゃん! そんなのいやだよ!」
紗希は首を振る。
「どうした・・・のですか、サキ・・・ちゃん? そんなに感情をむき出しにするのはおかしいですわ」
なされるままに肩を揺さぶられながら、明日美は笑みを浮かべて紗希を見つめる。
それは多少乱暴に扱われても、持ち主に笑顔を見せ続ける人形そのものであった。
「明日美ちゃん!」
紗希は気が狂いそうになった。
いったいどうして・・・
『やれやれ・・・本当に面倒だわね』
紗希の動きが止まる。
『ホーリードールサキ。今の感情と記憶は捨てなさい』
「はい・・・ゼーラ様」
いずこからかの声にうなずく紗希。
『ホーリードールアスミ。同様に今の記憶を捨て、かりそめの世界へ戻りなさい』
「はい。ゼーラ様」
何事もなかったかのようにすっと立ち上がる明日美。
かつての明日美であれば絶対にしなかったであろうこと、紗希に一言も言わずにその場を立ち去ることを明日美は何のためらいもなく行なう。
『まったく・・・手間の掛かること・・・』
そして・・・
紗希も無言で立ち上がると、無表情のままかりそめの世界、彼女の家へ向かうのだった。
  1. 2007/04/06(金) 20:33:45|
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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