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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

アメリカ南北戦争概略その28

しばらく間が開きましたが、南北戦争概略の28回目です。
終戦までもう少しお付き合い下さいませ。

1863年は南部諸州同盟にとっては一つの転回点となる年でした。
この年を境に、南部諸州同盟は攻勢に出ることが叶わなくなってしまうのです。

7月の「ゲティスバーグの戦い」
同月の「ヴィックスバーグ陥落」
11月の「チャタヌーガ解囲」
南軍にとっては厳しい戦いが続きました。

「ゲティスバーグの戦い」の前月、6月20日には、南部諸州同盟の首都リッチモンドのあるヴァージニア州において、その北西部がウェストヴァージニア州として分離。
アメリカ合衆国第三十五番目の州となり、即座に北部連邦に加盟するという有様であり、南部諸州同盟はじょじょに勢力を失っていきます。

11月19日には、7月の「ゲティスバーグの戦い」で戦死した両軍兵士たちのための国立墓地がゲティスバーグ戦場跡にできあがり、その式典においてリンカーンは有名な演説を行ないます。

わずか257語、1449字の二分間の演説だったとされていますが、以下のような内容でした。

「八十七年前、建国の父であった我々の祖先は、全ての人々は生まれながらにして平等であるという理念を持って、この新しい自由の国を設立いたしました。・・・(中略)・・・神の加護のもと新しく誕生した自由の国。人民の、人民による、人民のための政治をこの地上より失わせるようなことがあってはなりません!」

リンカーンは国民ではなく人民という言葉を使うことにより、北部連邦も南部諸州同盟も含めた広い意味でアメリカを表しました。
アメリカは不可分であり、今の状態こそが異常な状態であるという事を知らしめようとしたのかもしれません。

戦争の大勢はほぼ決まりつつありました。
国力の差がここへ来て如実に表れてきたのです。

北部連邦の人的物的な豊富さは、南部を圧倒し始めました。
北軍は今までも、多少の損害を受けても比較的素早くその損害から回復できました。
一方南軍は、人的損害を回復する術を持ちませんでした。
その差がじわじわと広がります。

中堅指揮官の損失は特に軍の行動に深刻な問題を投げかけました。
南軍上層部にとって、それは頭の痛い問題でした。

それでも戦争は続きました。
戦争は終わらせることこそがもっとも困難であるということかもしれません。
そうして1863年は暮れました。

明けて1864年。
南部諸州同盟にとっては最後のチャンスになる年でした。
アメリカ合衆国大統領選挙がある年です。

この1864年という年に、南軍が各所で軍勢を維持しつつ、北軍にダメージを与え続けていけば、その損害の大きさに辟易した北部連邦の住民が、選挙でリンカーンを選ばないかもしれないのです。
そうなれば、分離した状態のままでの休戦という話もでてくるかもしれません。
合衆国大統領がリンカーンでさえなければ、それは充分にありえる話なのです。

そのわずかな可能性に南部諸州同盟の命運がかかりました。
南軍はできるだけ北軍にダメージを与えつつ、軍勢を保持していかなければなりません。
リーの手腕の見せ所でした。

その29へ
  1. 2007/04/30(月) 20:52:26|
  2. アメリカ南北戦争概略
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プリンセスメーカー2

先日、ミクシィのトラブルで、ガイナックス取締役の赤井孝美氏が辞任するという騒ぎがありましたが、その赤井氏の代表作品の一つが、「プリンセスメーカー」シリーズであることは、論をまたないでしょう。

育成シミュレーションゲームの傑作として、評価も高く、楽しめる作品群であると思います。

ただ、私は「プリンセスメーカー2」と、「プリンセスメーカー ゆめみる妖精」の二つしかやっていませんので、他の作品についてはなんともいえません。

でも、この二つだけに限っても、面白いですよね。
時間がかかるというのが、繰り返しプレイという点では難点かもしれませんが、画面を動くちびキャラの娘に感情移入しちゃいますよねー。

で、悪堕ち大好きな舞方としては、たとえ鬼畜な親といわれようとも、因業系エンドは見過ごせません。(笑)

「プリンセスメーカー2」には、因業系エンドとしてもさまざまなものがあります。
私が一番好きなのは、当然のごとく「魔王化エンド」
娘の魔王としての姿は最高です。(笑)

「暗黒街のボスエンド」も捨てがたい。
漆黒の衣装を身に纏った娘はかっこいいです。

ボンデージ好きの舞方を直撃したのが、「SM女王様エンド」
色っぽい娘のボンデージ姿は素敵でした。

「魔王の嫁エンド」もありますし、別に洗脳されているわけではありませんが、悪に染まった娘は楽しめました。

すでに「プリンセスメーカー5」もでているとのことですが、まだやっていない「プリンセスメーカー4」をまずやらないとですね。
因業系エンドは健在なのかな。
魔王化エンドあるといいなぁ。

それではまた。
  1. 2007/04/29(日) 20:53:43|
  2. PCゲームその他
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エチオピアのライオン

今日は先輩とゲームの日。

まあ、別に曜日を決めてやっているわけでは無いのですけど。

今日プレイしたのは、「エチオピアのライオン」 コマンドマガジン日本版/国際通信社。

1935年に起こった、イタリア軍のエチオピア侵攻がテーマのゲームです。

史実では、エチオピア人の強固な抵抗にあったイタリア軍が、航空機や戦車だけでは飽き足らず、毒ガスを大量に使用してどうにか勝利したという非道な戦争です。

先輩は防御側のエチオピア軍。
私はムッソリーニの栄光を司るイタリア軍。
双方とも、このゲームは初めてなので、インストプレイです。

070428_1316~01.jpg

初期配置は決まっているので、それぞれユニットを配置。
それにしても、エチオピアという国が、ほとんど高地で占められていることに驚きです。

070428_1352~01.jpg

前進して行くイタリア軍。
エチオピアは、各部族ごとにスタックして抵抗します。

近代火力のイタリア軍は、航空機が威力を発揮。
というよりも、航空機がないと前進できません。

070428_1431~01.jpg

スタックして抵抗するエチオピア軍。
高地に陣取ると、なかなか強力。

070428_1510~01.jpg

順調に進んでいたイタリア軍ですが、思いがけず後方にエチオピア軍が進出。
これってヤバいんじゃない?
後方が遮断されそう。

070428_1634~01.jpg

とりあえず後方に進出したエチオピア軍を排除したものの、ついに首都アジスアベバにエチオピアの皇帝ユニットと親衛隊が出現。
これはまた結構強力。

070428_1646~01.jpg

前線に進出してきた皇帝陛下。
防御ががっちり固まります。

と、言うところで時間切れ投了。

この後の展開としては、毒ガスを撒き散らしてイタリア軍が遮二無二進撃するパターンになりそう。

システムは、ZOC離脱ありのマストアタック。
イタリア軍といえどもステップロスはないので、包囲されたらあっという間に除去されます。
進撃は包囲に充分気をつける必要がありそう。

簡単なシステムですが、ZOCで戦線を張るほどのユニット数はないので、双方スタックのぶつかり合いになる感じです。
今日はインストプレイでしたので、また改めてやると違う展開になりそう。

次回またプレイしてみようという気になるゲームでした。
今度はもう少し進撃をスムーズにやりたいなぁ。

それではまた。
  1. 2007/04/28(土) 19:43:24|
  2. ウォーゲーム
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美香の災難(3)

美香の災難最終話です。

例のごとくぶっつりと切ったという感じですので、姉との絡みはありません。
それについては、いずれまた別の機会にでもと思います。

それでは、お楽しみいただければ幸いです。

3、
「ひゃん」
ゲルダの指が私の顎に触れた。
それだけなのに私の躰にはまるで電気が走ったようにびくんと震える。
「んふふ・・・気持ちよくなって来たでしょ?」
「そんなこと・・・ない・・・」
うそだ・・・
気持ちいいよぉ・・・
躰がポカポカする・・・
ふわふわ浮いている感じがすごく気持ちいい・・・
はあん・・・
気持ちいいよぉ・・・
どうにかなっちゃいそうだよぉ・・・
「強がり言っちゃって。そういう娘はお姉さん大好き」
ゲルダの唇が私の口に触れる。
暖かくて柔らかい・・・
とても気持ちいい・・・
舌が口の中に入ってくる。
私の舌を探している。
はあん・・・
「んちゅ・・・んちゅ」
気がつくと私の舌はゲルダの舌に絡んでいた。
どうして?
憎いのに・・・
理生ちゃんを奪った相手なのに・・・
でも・・・
気持ちいいよぉ・・・

「んふふ・・・そろそろ心も躰も蕩けてきたみたいね。それじゃ始めるわよ」
始める?
何を始めるのだろう?
ああ・・・
なんか頭がぼうっとする・・・
何も考えずに、ただこのふわふわの中に漂っていたい。
私の上に被さるようにしたゲルダは、私の躰に息を吹きかけるような仕草をした。
すると、私の服が全て塵になっていく。
あ・・・
恥ずかしい・・・
私は躰を隠そうとした。
でも・・・
すぐに恥ずかしさは消え去った。
それどころか、裸でふわふわ浮いているととても気持ちがいい。
別に・・・いいや。
私は漂うままに身を任せることにする。

ゲルダはやっぱり口からどろっとした液体をたらしてくる。
リオちゃんの上にたらしたような真っ黒な奴じゃない。
リオちゃん?
リオちゃんって・・・誰だったかな・・・
思い出せない・・・
頭がぼうっとして・・・
いいや・・・
そのうち思い出すよね・・・
「んふふ・・・」
どこかで誰かが笑っている・・・
ふわふわして本当に気持ちがいい。
たらされたのは赤茶色の液体。
私の両脚にかけられて、つま先から太ももが赤茶色になっていく。
あ・・・
誰かの指が私の脚を触っている。
はあん・・・
気持ちいいよぉ・・・
つま先をクニクニっていじって、それから踵を引っ張っている。
何をしているのかな?
私はそっと足先を見る。
あれ?
私の足の指が無くなってる?
ピンととがって靴を履いているみたい。
踵も引っ張られてハイヒールみたいになっているよ。
あれ?
私の足・・・
私の足・・・って・・・
最初からそうだったっけ?
思い出せない・・・
思い出せないけど・・・
いいか・・・

「んふふ・・・次は両手よ」
私はその声にすっと両手を前に差し出す。
目の前の人が・・・えーと・・・
「気にすることはないわ。何も考えなくていいのよ。ただ気持ちよくなっていればいいの」
「はい」
私はうなずいた。
だって、考えるのはめんどくさいし、気持ちいいんだもん。
私の両腕には、やっぱり赤茶けた液体がたらされて、グニグニといじられていく。
うふふ・・・
粘土細工みたい。
私の腕グニャグニャになっちゃうよ。
でもちっとも痛くないし、むしろ気持ちいいよ。
「んふふ・・・お姉さん上手でしょ? 粘土細工は得意なの」
そうなんだ・・・
それじゃ私は安心だね。
すごく気持ちいいよ。
私の両手は二の腕から先が赤茶色に染まり、指先には鋭い爪が作られる。
ガントレットとか言う硬い手袋を嵌めたような私の腕。
何でも引き裂けそうな爪。
鋭くてかっこいい。

「ひゃ」
思わず私の口から声が漏れちゃった。
だってひんやりした液が私のお腹にかけられたんだもん。
あはあ・・・
私は感じるままに息を吐き、続いて訪れる快感を待つ。
指が、手のひらが、液体を私の体に塗り広げ、そして形を変えていく。
私のお腹と胸は赤茶色の硬いコルセットのような外骨格に覆われる。
股間もお尻もしっかりと覆って脆弱な部分を無くしていく。
あはは・・・
私の躰・・・カチカチになっちゃったよ。

「んふふ・・・さてさてお楽しみの部分にかかりますよー」
あはは・・・
とっても楽しそう。
私は液体をかけられるのを待つ。
えっ?
私はくるんと裏返しにされた。
上も下も右も左もないようなところに浮いているのだから、別に気にはならないんだけど、どうするつもりなんだろう・・・
あん・・・
お尻にとろっとしたものがたらされる。
硬くなっているお尻だけど、感触を感じることはまったく変わらない。
すごいことだわ。
指と手のひらがくにくにと私のお尻をこね回す。
ああん・・・
気持ちいいよぉ・・・
だんだんお尻が引き伸ばされているんだわ。
どうなるんだろう・・・
見たいなぁ・・・

でもその願いはすぐに叶った。
私のお尻からは太い赤茶色の塊が伸びていく。
それは私の躰の前側にも届く長さになり、クニクニといじられながら形を整えていく。
そして、先端に作られたこぶのような塊が、先がとがった二つの塊に分けられる。
ああ・・・そうか・・・
これはハサミ。
カニみたいな大きなハサミなんだ。
うふふ・・・
「キャッ、こら! まだ動かさないの!」
えへへ・・・怒られちゃった。
でも、動かしてみたいよね。
だからちょっとだけ動かしてみたの。
ちゃんとカシカシと動くよ。
なんでも挟んじゃいそうだよ。
私は大きなハサミになったお尻がすぐに好きになっていた。

「あとは頭ね」
私の頭に赤茶色の液体がかけられる。
目をつぶって身を任している私の頭を、クニクニとこねていく彼女の指。
髪の毛が硬く固まってヘルメットのような外骨格となっていく。
私が目を開けたときには、私の躰は作り変えられてしまっていた。

「かんせーい! うんうん、こんなものかな」
目の前の女性は腰に手を当てて私を上から下まで眺めている。
「あ、心配しなくていいわよ。ちょっとした目的があるから顔はそのままにしたし、人間っぽい部分もあちこちあるけど、柔らかさはともかく強靭さは他の部分以上だから、ちょっとやそっとじゃ傷付かないわよ」
そうなんだ・・・
ちょっと安心。
「それじゃ最後の仕上げね」
え?
完成じゃ・・・?
「わぷっ」
私の口はまたしても彼女の唇にふさがれる。
とろとろと流し込まれる液体を、私は舌を絡めながらむさぼるように飲み込んだ。
ああ・・・
躰に何か真っ黒いものが染み渡っていく・・・
素敵・・・
私は・・・
私は生まれ変わるんだ・・・

「んふふ・・・気分はどうかしら? モンスターアニソラヴィス」
「はい、最高の気分です。ゲルダ様」
私はあらためて自分の姿を見下ろした。
赤茶けた外骨格に覆われた私の躰。
お尻から伸びたハサミはハサミムシの名に相応しく鋭く強力。
鋼鉄の柱だってへし折ってやれるわ。
ああ、早く暴れたい。
フューラーとゲルダ様の御為に人間どもを根絶やしにするのよ。
あははは・・・
笑いが止まらないわ。
「うふふ・・・暴れたくてたまらないって顔ね」
「はい、ゲルダ様。はやく・・・その・・・ご命令を」
私はわくわくしながら命令を待つ。
「うふふ・・・いい娘ね。でも油断しちゃだめよ。MEチームがあなたを倒しに来るわ。もっとも・・・そのときが楽しみなんだけど・・・うふふ」
「あ、MEチーム・・・MEチームは敵です。お任せ下さいゲルダ様。私・・・私必ずMEチームを葬り去ってご覧に入れますから」
私は爪で引き裂くように宙を裂く。
MEチーム。
お前たちに私の爪とハサミの味を味あわせてやるんだから。
待っていなさい!
私はMEチームとの戦いに心を躍らせた。
  1. 2007/04/27(金) 20:15:11|
  2. 美香の災難
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美香の災難(2)

昨日に続きまして二回目です。

お楽しみいただければ幸いです。

2、
躰がふわふわする・・・
ここはどこ?
周りは暗い。
まるで水の中に浮かんでいるみたい。
上も下も感じない。
ここはどこなの?
「う・・・はあ・・・ん・・・ふあ・・・」
え?
今の声は?
「うふふふ・・・どう? 気持ちいいでしょ?」
「は・・・はい・・・気持ち・・・いいですぅ・・・」
理生ちゃん?
理生ちゃんの声なの?
「ふふふ・・・見てごらんなさい。あそこにいるのは誰?」
「ああ・・・美香ちゃんですぅ」
理生ちゃん?
どこにいるの?
私はきょろきょろとあたりを見回すけど、暗闇に包まれて何も見えない。
「うふふ・・・さあ、あなたの姿を見てもらいなさい」
「ひゃ、ひゃい・・・ゲルダさまぁ」
えっ?
ゲルダ様?
一体何が起こっているの?

私が困惑していると、闇の中の一画がぼうっと明るくなってくる。
すると、光に包まれた繭のようなものの中に、二人の姿が見えてくる。
でも・・・
アレは何?
理生ちゃんの躰が・・・
理生ちゃんの躰が真っ黒だよ・・・

「あはあ・・・美香ちゃん見てぇ。私・・・ゲルダ様にとろとろの液体をかけていただいちゃった・・・」
今まで見たことのない妖艶な笑みを浮かべた理生ちゃんが私の方を向く。
その躰はべたべたした黒い粘液で覆われている。
そして・・・その粘液に包まれながら、理生ちゃんは自分で胸をもてあそんでいた。
「理生ちゃん!」
私は駆け寄ろうとした。
でも、躰が上手く動かせない。
とらえどころがないのだ。
足を動かしても手を動かしても、ただ宙をもがくだけ。
ちっとも近づくことができないのだ。
「うふふ・・・無駄よ。そこは空間の牢獄。動いたところで消耗するだけ。おとなしく彼女の変態を見ていてあげなさい」
ゲルダの声が耳に届く。
くう・・・
理生ちゃんが変な目にあっているのに・・・
お姉ちゃん・・・助けて。
MEチームはどこにいるの?
誰でもいいから助けて。

「はあぁん・・・」
耳をふさぎたくなる理生ちゃんの艶のある声。
べたべたしていた黒い粘液は、じょじょに艶のあるものになってきている。
固まってきている?
一体理生ちゃんをどうするつもりなの?
もうやめて。
私は叫びだしたかった。
「うふふ・・・ほら理生、固まってきたのがわかるでしょ?」
「ふぁい・・・私の躰・・・固くなってます・・・」
「さあ、仕上げよ。たっぷりと受け取りなさい」
私の目の前で、理生ちゃんの顔にゲルダの口からどろっとした黒い粘液がかけられる。
思わず吐き気を催す私と違い、理生ちゃんはうっとりとしてその液体を受け止めた。
タールのような液体が理生ちゃんの顔を覆いつくしていく。
息ができないんじゃないかと思うけど、理生ちゃんは苦しみはしていない。
鼻の盛り上がりや目の周りのくぼみなど基本的な凹凸だけが見えている理生ちゃんの顔。
それはまるで真っ黒なマネキン人形のようだった。

「うふふふ・・・」
ゲルダの指が理生ちゃんの顔をなぞる。
「ヒッ?」
私は息を飲んだ。
ゲルダの指が理生ちゃんの頭にめり込んだのだ。
「いやぁぁぁぁぁ!」
私は叫んだ。
理生ちゃんが・・・
理生ちゃんが死んじゃう!
「あらあら、大丈夫よ。私、こう見えても手先は器用なんだから」
牙の覗く口元に笑みを浮かべて、ゲルダは私に向かって微笑みかける。
ぐちゃぐちゃと理生ちゃんの頭をこね回すゲルダ。
まるで粘土のように形を変えていく理生ちゃんの頭。
細長く伸ばされたり、また丸くまとめられたり・・・どうなっているの?
そして、ゲルダは理生ちゃんの頭を作り変えていく。
目のあたりには巨大な丸いレンズ状のもの。
口は上下ではなく左右に開く顎になる。
額からは短い角のようなものが作られる。
あれは触角?
するとあの目は複眼?
どんどん理生ちゃんが理生ちゃんでなくなっていく。
テレビや新聞で見慣れた形・・・
モンスターの手先、スレイブアントだ・・・
理生ちゃんがスレイブアントになっちゃった・・・

「うふふふふ・・・さあ、起きなさい。スレイブアント」
「キィッ!」
理生ちゃんは一声鳴いてゆっくりと起き上がる。
全身が黒い外骨格に覆われた蟻型の戦闘員。
スレイブアントがなぜ女性っぽい姿をしているのか、私はこの時わかった。
スレイブアントは人間の女性から作られるんだ・・・
理生ちゃん・・・
私は涙を流すしかできなかった。

「うふふ・・・気分はどうかしら? お前は何者か言ってごらん」
「キィッ! サイコウノキブンデス。ワタシハすれいぶあんと。ふゅーらートげるだサマにチュウセイヲチカウモノデス」
抑揚のない声で理生ちゃんが答える。
「うふふ・・・いい娘ねぇ。さあ、仲間のところへお行きなさい。命令があるまで待機するのよ」
「キィッ!」
映画で見たドイツ兵のように右手を上げて敬礼する理生ちゃん。
その姿がすうっと闇の中に消えていく。
あ・・・
私は思った。
これが理生ちゃんとの別れなんだ。
もう・・・理生ちゃんには会えないんだ・・・
悔しい・・・
悔しいよ・・・
どうして・・・
どうしてお姉ちゃんは来てくれなかったの?

「うふふ・・・お待たせ。次はあなたの番よ」
ゲルダの姿がすっと近づいてくる。
「悪魔・・・あなたは悪魔よ! 理生ちゃんを返して! 元に戻して返してよ!」
私は精いっぱいゲルダをにらみつける。
死んだって構わない。
絶対赦さないんだから。
「あら、そんなの無理に決まっているじゃない」
あっさりとゲルダが言う。
「割れたお皿は元には戻らないわ。あなただってわかっているんでしょ?」
悔しい・・・
悔しい・・・
わかっているよ。
理生ちゃんが元に戻ることはないんでしょ。
もう、理生ちゃんはいなくなってしまったのよ・・・
「それにね、彼女はもう何も悩んだり苦しんだりすることはないのよ。自我など無くなった彼女は無我の境地なの。命令に従うだけでとても幸せなのよ」
「そんなの幸せなんかじゃない!」
私は首を振った。
そんなの幸せなんかじゃないよ!
悔しいよぉ・・・
この女が憎いよぉ・・・
「んふふ・・・いいわねぇ、そのどす黒い感情。お姉さんそういう感情は大好きよ」
ゲルダが私の頬を伝う涙をペロッと舐める。
「やめて! 私はあなたを赦さないんだから! あなたなんかお姉ちゃんに倒されちゃえばいいのよ!」
私は思いっきりゲルダの顔をひっぱたこうとした。
でも、私の振った腕は簡単にゲルダの手に止められちゃう。
悔しい、悔しいよぉ・・・
こんな奴なんか、こんな奴なんかぁ・・・
「うふふ・・・さあて、それはどうかしらね? もしそんな目に遭いそうならきっとあなたが助けてくれると思うけど」
いたずらっぽく笑うゲルダ。
「ふざけないで! 誰があなたなん・・・ぷわっ」
ゲルダの唇がいきなり私の口をふさぐ。
な、何を?
私が離れようともがくと、いきなり私の口の中にどろっとしたものが流し込まれる。

私は理生ちゃんの顔にかけられたものを思い出して、必死に飲み込むのを止めようとする。
でも無理だった。
どろっとしたものは、まるで意思を持つかのように私ののどを滑り落ちていく。
「ぷはっ」
口を離され、私は息を吸い込む。
その様子をゲルダはニコニコと楽しそうに覗き込んでいた。
「な、何? 今のは何?」
私はぞっとした。
私も・・・私も理生ちゃんみたいになっちゃうの?
「今のはあなたの躰を変えるための前段階のお薬よ。すぐに躰が火照っていい気持ちになってくるわ」
「躰を変える?」
「そう。心配しなくてもいいわ。あなたの自我は奪わない。あなたにはスレイブアントではなくモンスターになってもらうわ」
「モンスターに?」
そんな・・・
私をモンスターにって?
モンスターも人間だったというの?
だから人間ぽい姿をしていたというの?
そんなのって・・・
  1. 2007/04/26(木) 19:32:18|
  2. 美香の災難
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美香の災難(1)

今日から三日間で短編一本投下いたします。
ホントは一気に投下したほうがいいんでしょうけど、ちょっとばかり余裕も欲しいかなと。(笑)

楽しんでいただけたら幸いです。

1、
ピピピピ・・・ピピピピ・・・

電子音がお姉ちゃんの腕時計型の通信機から鳴り響く。
「はい、嶋鳥(しまとり)です」
すぐにお姉ちゃんは私に隠すようにして通信機に返事をした。
「はい・・・はい・・・わかりました、埠頭ですね? すぐ行きます」
ぱちんとカバーを閉じて通信機を袖の中に隠すと、お姉ちゃんはふうとため息をついた。
「ごめんね、美香(みか)。お姉ちゃん行かなくちゃ」
「また・・・モンスター?」
私は静かにそう訊いた。
返事はわかりきっているのに・・・
「ええ、埠頭に出現して暴れているらしいわ。すぐに行かなくちゃ」
お姉ちゃんはそう言いながら皮つなぎに着替えると、ヘルメットを手に玄関へ向かう。
「気を付けて・・・」
私は祈るようにそう言うしかない。
モンスターと戦うお姉ちゃんが怪我をしないように、傷付かないように祈るしかない。
「大丈夫。何かあったらすぐにベースに知らせてね。一応この近辺はガードされているはずだけど・・・」
慌ただしくブーツを履いて手袋を嵌めるお姉ちゃん。
「由香(ゆか)? 出かけるの?」
キッチンから母が出てくる。
洗い物をしていたのだろう、手をエプロンで拭いていた。
「ええ、行って来るわ。お母さん」
そう言って玄関の扉を開けて出て行くお姉ちゃん。
すぐにオートバイのエンジン音が響き、遠ざかって行く。
「お姉ちゃん・・・」
私はお姉ちゃんの無事を祈らずにはいられなかった。

いつの頃からか姿を現した異形の存在モンスター。
動物と人間を掛け合わせたようなその姿は、まるで一昔・・・ううん二昔前の特撮番組を思い起こさせるものだった。
黒尽くめの蟻のような兵士たち(スレイブアントというらしい)を操り、人々を殺傷し建物を破壊する。
警察も自衛隊も歯が立たない存在に、日本中はパニックとなった。
都市機能は麻痺し、経済も混乱した。
高校生の私にはよくわからないことだったけど、雑誌もお菓子も手に入りにくくなったことは確かだった。
父は警察官として精いっぱい市民の安全を守った。
でも・・・父は帰ってこなかった。
モンスターに殺されたのだ。
姉も私もわんわん泣いた。
どうしてこんな目に遭うんだろうって思った。
政府は米軍に出動を依頼したらしい。
でも、米軍も歯が立たなかった。
戦闘員を一人倒すのに、米軍兵士や民間人が十人以上も死んでいく。
あまりのことに米軍は首都圏に核を落とすことまで考えたとか。
幸いそれは回避されたけど・・・

結局この危機に対応できたのは、ある研究施設だった。
そう、モンスターが特撮番組ならば、対応する機関も特撮番組だった。
新澤(あらさわ)研究所。
何を研究していたのかはよくわからない。
でも、ここが提示した強化スーツがモンスター対策の切り札となったのだ。
政府は首都圏を激甚災害指定するとともに、最優先で新澤研究所の強化スーツに予算を回して完成させた。
そして、素質(何の素質なのかはよくわからない)のある人間を選抜し、強化スーツを着てモンスターと戦うチームを作り上げたのだ。
モンスター・エクスタミネーター。
通称ME。
このMEチームに、私のお姉ちゃんは所属していた。

私たちから父を奪ったモンスターを、お姉ちゃんは許せなかった。
父の後を継いで警察官になると言っていたお姉ちゃんにとって、父は尊敬する存在であり、先輩だったのだ。
だから、お姉ちゃんがどうしてかMEチームに入ったことも私は理解しているつもりだし、応援もしている。
でも・・・
もし・・・
もしお姉ちゃんまでが居なくなったら・・・
私には耐えられないよ・・・

ポーズ画面のまま止まっている対戦ゲーム。
いつもモンスターと戦っているくせに、対戦ゲームだといい勝負になるのは、手加減してくれているのだろうか・・・
私はスイッチを切って、画面を消す。
静かになった部屋が何か寂しさを感じさせる。
『美香ー! そろそろ寝なさい!』
母の声が聞こえてくる。
「ハーイ」
私はそう返事をして、寝る支度をするために部屋をでた。

『昨晩現れたモンスターは、MEチームの前に敗退。幸い死傷者もなく、政府はMEチームを高く評価するとともに・・・』
「行ってきまーす」
テレビから流れるニュースの声を聞き流して、私は玄関をでる。
お姉ちゃんはまだ帰ってきてはいない。
きっとスーツの点検やら身体検査やらで足止めされているのだろう。
まだまだ強化スーツは新しい技術なのだ。
データはいくらあっても足りないぐらい。
戦い一つ一つがデータ収集も兼ねている。
お姉ちゃんはモルモットなのだ。
安全かどうかすらわからないスーツ。
そんなのを着て戦うお姉ちゃん。
何もかもがひどすぎる。
モンスターなんて全部いなくなればいいのに・・・

「おはよー」
私はいつもの街角で声をかけられる。
一緒の学校へ行く狩田理生(かりた りお)ちゃんだ。
小柄な理生ちゃんはセーラー服がよく似合う。
くりくりした目が特徴的な娘で、何となく愛らしい小動物を思わせる。
私は彼女とは馬が合って、今では親友だと思っている。
「おはよー」
私は手を上げて理生ちゃんを迎えた。
「ねえねえ、テレビ見た? MEチームがモンスターを倒したって言ってたよ」
理生ちゃんが目を輝かせている。
彼女はMEチームのファンなのだ。
米軍も歯が立たなかったモンスターに対し、政府は切り札を持っているということを国民に知らせなくてはならなかった日本政府は、MEチームを秘匿することはできなかった。
そのため、そのスーツを着ている人間こそ明かされていないものの、MEチームそのものは公に存在が認められている。
マスコミもさすがにその正体を探るようなことは、報道各局の申し合わせで行なってはいないものの、モンスターとの戦いはテレビで報道されたりもするのだ。
そうなれば、特撮ドラマと変わらない。
ファンクラブができたり、2chの掲示板に『MEチームの正体はダルダ?』なんていうスレが立ったりもする。
うんざりだわ・・・
「そ、そう・・・よかったね」
私は当たり障りのない返事をするしかない。
身内がMEチームだと知られるわけにはいかないし、何よりMEチームをアイドルみたいに考えるのは間違っているよ。
「かっこいいよねーMEチーム。やっぱり私はMEピンクとMEホワイトが好きだなぁ」
「そ、そうかな」
五人いるMEチームは色でスーツが分かれている。
MEレッド、MEブルー、MEグリーンが男性で、MEホワイトとMEピンクが女性。
お姉ちゃんはそのどちらかなんだけど、それはさすがに教えてくれない。
でも、たぶんホワイトなんだと思う。
テレビに映る仕草がピンクよりホワイトの方がお姉ちゃんらしいのだ。
私はそんなことを考えながら、理生ちゃんと歩き始めた。

「あれ?」
朝だというのに周りを歩いているのは誰もいない。
車も先ほどから通らない。
「ねえ、理生ちゃん・・・変じゃない?」
「うん、私もそう思う。怖いよ、美香ちゃん」
私の腕をぎゅっと掴む理生ちゃん。
『うふふふふ・・・』
「えっ?」
どこからともなく聞こえてきた笑い声に私と理生ちゃんは顔を見合わせた。
「怖い」
「理生ちゃん、逃げよう」
私はとにかくここから逃げようと思う。
どこへ行けばいいのかわからないけど、ここにいては危険だ。
走り出そうとした私たちの前の地面に、黒い影がいくつも現れる。
「えっ?」
影はそのまま真っ黒い人型になって起き上がる。
「スレイブアント!」
私は思わずそう叫んでいた。
黒い人型はモンスターの手先となる蟻型戦闘員スレイブアントだ。
「いやあっ!」
理生ちゃんが悲鳴を上げる。
私は理生ちゃんの手を引いて、何とか逃げようと振り向いた。

「逃げようとしても無駄よ」
振り向いた私たちの前に一人の女性が立ちはだかる。
女性?
私は目の前の相手をにらみつけた。
その姿は紛れもなく女性。
でも、黒いコルセットのような衣装と、ひざまでのブーツ、それに肘までの手袋をはめ、背中には大きく広がった黒い翼が生えている。
さらに頭の両脇には角が生え、お尻から垂れ下がっているのは尻尾のよう。
マンガの中から抜け出してきた女悪魔の姿だわ。
「うふふふ・・・この状況で私をにらみつけるなんて。さすがはあのMEホワイトの妹といったところかしら」
「えっ?」
私は驚いた。
どうして知っているの?
「私はゲルダ。フューラーより軍団の指揮を任されているわ」
軍団?
彼女がモンスターを操っているの?
私は逃げ道を探したけど、すでに囲まれてしまっていて、逃げるのは難しそうだった。
「私たちをどうするの? 殺すの?」
「心配は要らないわ。あなたには利用価値がある。ふふ・・・そっちの娘も利用してあげるわ」
牙の生えた口元に笑みを浮かべるゲルダ。
美しい顔をしているのに、なんて冷たい笑みなんだろう。
「理生ちゃん・・・走れる?」
私は小さな声でそっと理生ちゃんに聞いてみる。
でも理生ちゃんは首を振った。
がたがた震えている理生ちゃんはとても走れる状態じゃない。
私は覚悟を決めた。

「彼女に用はないでしょ? MEホワイトの妹である私だけを連れて行けばいいわ。彼女は解放して」
私はそっと理生ちゃんを私の背後に回す。
何とか彼女だけでも逃がさなきゃ。
お姉ちゃん・・・助けて・・・
「あら? その娘が死んでもいいのかしら? 私は私の姿を見た者を黙って帰しはしないわよ。一緒に来たほうがその娘の未来も明るいと思うけど?」
ペロッと舌なめずりをするゲルダ。
私は唇を噛んだ。
「連れて行きなさい。二人ともよ」
「キィッ」
スレイブアントたちが私と理生ちゃんの腕を掴む。
そして、世界が暗転した。
  1. 2007/04/25(水) 20:41:30|
  2. 美香の災難
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これまた古いんですが

過去に「タクテクス」誌に紹介されたことがあるので、ご存知のシミュレーションゲーマーも多いかもしれませんが、面白いマンガを紹介いたします。

「鏡の国の戦争」1・2 いしいひさいち著 潮出版社

これ、多少戦争とか軍隊というものに興味のある方なら、思わず笑ってしまうネタが満載です。
いしいひさいち先生ってちゃんと軍隊を知っている人なんでしょうね。

基本は四コママンガです。
中には見開き二ページの八コマというのもありますが、ほとんどは四コマです。

文章だけの紹介ですと、面白みがわかりづらいかもしれませんが、一例を挙げますね。

統合参謀本部と思われる一室。
陸軍、海軍、空軍の三人の司令官がお互い仲悪そうにむすっと集まっている。

統合参謀本部長?:「この作戦は三軍の緊密な協力が不可欠だ。お互い過去の行きがかりは捨て、それぞれ最精鋭の部隊を提供してもらいたい」

三軍司令官たち:「はい」(しぶしぶながらも)

後日、司令部に参集したのは・・・

陸軍航空隊
海軍陸戦隊
空軍空挺部隊

・・・・・・orz

この四コマを見た時には吹き出すと同時に感心しましたね。

いや、その通りなんですもん。

陸軍航空隊も海軍陸戦隊も空軍空挺部隊も、それぞれの軍のエリート扱いされている場合が多いですよね。
精鋭を出せといわれて出してくるのもわかるんですよ。

でも違うだろーと(笑)
それぞれ異なる戦いを主とする部隊を出してどうするの。

と、言うような面白いマンガが載っています。
まあ、中には似たようなネタが多くなっている部分もあるのは否めませんが。

古いマンガですので、手に入れるのは難しいかもしれません。(こんなのばかりですみませんです)
ですが、何かの折にご覧になってみるのもいいかもしれませんです。

それではまた。
  1. 2007/04/24(火) 21:08:01|
  2. 本&マンガなど
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新たなリンク先です

今日は新しいリンク先をご紹介いたします。

MACXE'S様やうずまき道様などに、魅力的なSSを投稿なさっている、未朱ツヅラ様のブログ、「内性の私」です。

「内性の私」
URLはこちらです。
http://blog.livedoor.jp/misyu_t613/

引越しをされたばかりですが、「バロム1」に出てきた戦闘員「アントマン」に変貌してしまう女の子を書いた魅力的なSSを掲載されておりますです。

ぜひぜひご訪問いただいて、素晴らしいSSに触れてください。
虜になること請け合いですよ。

ツヅラ様、これからもよろしくお願いいたします。

それではまた。
  1. 2007/04/23(月) 20:19:18|
  2. ネット関連
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セダンキャンペーン

今日も先輩とウォーゲームです。

今日のお題は「セダンキャンペーン1870」コマンドマガジン日本版73号付録/国際通信社。

先日のプレイでは、ルール把握がきちんと出来ていなかったため、再度の挑戦です。

このゲームは、ドイツ統一を目指すプロイセン王国と、ヨーロッパの覇者としてプロイセンの勃興を苦々しく思っているフランス帝国の戦い、いわゆる普仏戦争を描いたゲームです。

史実では、ナポレオン・ボナパルトの威光を頼りにしたフランス皇帝ナポレオン三世が、その麾下の軍勢とともに、プロイセン軍の捕虜となってしまうという体たらくにより、プロイセンが圧勝した戦争です。

今日は珍しく先輩が攻撃側のプロイセン軍。
私がナポレオン三世率いるフランス軍です。

070422_1311~01.jpg

これが初期配置。
プロイセン軍はほぼ全てを中央部に集め、ストラスブールは無視する気配です。

070422_1327~01.jpg

第一ターン終了時。
プロイセン軍の圧倒的戦力がフランス軍に襲い掛かってきます。
フランス皇帝としては、都市に立て篭もっての抗戦しか手段はありません。

070422_1425~01.jpg

メッツに篭もるわがフランス軍に殺到して来るプロイセン軍。
しかし、ここでプロイセンはメッツをも無視することが判明します。

070422_1451~01.jpg

プロイセン軍は全軍を二手に分け、ナンシーとセダンに向かいます。
ナンシーにはフランス軍は一部隊、セダンも二部隊ずつ篭もっているものの、戦力の少ない部隊なので、メッツよりも陥落しやすいのです。

070422_1524~01.jpg

完全に無視されたメッツ(画面中央)と、包囲されたナンシーとセダン(画面手前と左奥)。
こうなると、後はサイコロの目次第です。

ここから先は両軍とも何もすることがありません。
プロイセン軍はひたすらサイコロの目が1であることを望み、フランス軍は1が出ないことを望むだけ。
ゲームとしては終わったといえるでしょう。

つきはフランス軍にありました。
先輩のサイコロの目は振るわず、ナンシーに至っては四回連続で4という憂き目を見ます。
結局最終ターンになってもナンシーが陥落しただけで、ゲーム上はフランス軍の勝利となりました。

しかし、たまたまサイコロの目に助けられただけで、フランス軍としてもプロイセン軍としても上手い戦いではなかったでしょう。
もう少し戦い方を練る必要がありそうです。

再戦を約束して今日は終了。
また来週にでもプレイしようかな。
今度はしっかりとした戦いで勝ちたいものです。

それではまた。
  1. 2007/04/22(日) 21:22:01|
  2. ウォーゲーム
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エンディングが・・・

TV北海道で新しく始まったアニメに、「らき☆すた」がございます。

原作は皆様ご存じ「コンプティーク」に掲載されている四コママンガですけど、アニメになって動いているのを見るのもいいものですね。

ヒロインたちが可愛くて、なかなか遊び心満載(二話のUFOキャッチャーの景品にはケロロ軍曹がww)です。

驚いたのはエンディング。

なんとヒロインたちがカラオケボックスで歌う歌が、エンディングになっているんですね。

しかも懐かしい特撮が二話続けて流されるとはビックリでした。
(一話目が「宇宙鉄人キョーダイン」二話目が「アクマイザー3」とは)

原作マンガも大好きですが、アニメの方も楽しいです。
一度ご覧になってみてくださいませ。

それではまた。
  1. 2007/04/21(土) 21:22:01|
  2. アニメ
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夕べはウォーゲームでした。

夕べは先輩とウォーゲームでした。

プレイしたのはコマンドマガジン73号付録の「セダンキャンペーン」とアバロンヒルの「スコードリーダー」です。

「セダンキャンペーン」の方はちょっとルールのよくわからないところがあったために、途中で投了。
プロイセンがまったく都市を落とせない状況でした。orz

そこで以前よりやりたかった「スコードリーダー」(アドバンスではない)をプレイ。

ソロプレイはいつもやっているのですが、他者とのプレイは久し振りです。

先輩は「スコードリーダー」はシナリオ3程度までの人なので(以前ブログに書いたときは別の方とのプレイでした)、地形の練習を兼ねて、シナリオではなくポイント購入で部隊を整える自作シナリオをやりました。

使うルールは、地形を除いては機関銃と歩兵のみ。
それだけでも結構楽しめるものですね。

先輩はドイツ軍を防御側として500ポイントで部隊を購入していただき、私はソ連軍で攻撃側として750ポイント、つまり1・5倍の兵力を購入して、対戦しました。

070419_1708~01.jpg

マップ手前からソ連軍は侵入。
マップ3の村落に立て篭もるドイツ軍を追い払って、南北の道路をつなげるのが勝利条件です。

070419_1717~01.jpg

着々と進むソ連軍。
しかし、二階建ての石造建物からのHMGがソ連軍を襲います。

070419_1729~01.jpg

何とか村落への接近路を確保しようとしますが、なかなか上手く行きません。

どうにか左右に展開したソ連軍は、三方向から村落を攻撃しますけど、どうにもドイツ軍の守りは堅い。

結局右方向から接近したソ連軍二個分隊がKIAになったのが決め手となり、ドイツ軍の勝利で幕を閉じました。

やはり村落という防御拠点にいる部隊に対しては、1・5倍程度では厳しかったかもしれないですね。
でも、機関銃と歩兵だけでしたが、面白かったですね。

先輩は射線がピンとこないようで、あまり乗り気ではないようでしたけど、また練習させて欲しいと言ってくれましたので、今度は砲やAFVをじょじょに使っていきたいものです。

それではまた。
  1. 2007/04/20(金) 20:51:52|
  2. ウォーゲーム
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アメリカ南北戦争概略その27

ミシシッピ川の制水権喪失と各港湾の封鎖は、南部諸州同盟にとって大きな痛手となってしまいます。

しかし、封鎖を突破して密貿易を図るブロッケードランナーも、同盟政府より私掠船免状を渡された私掠船も、優勢な北部連合海軍によってじょじょに数を減らされてしまいます。
封鎖を解除するには北軍の軍艦をどうにかしなくてはなりませんでした。

南部諸州同盟が使い始めたのは機雷でした。
機雷とは、接触したら爆発するように仕掛けられた水上の地雷とも言うべきもので、一度設置したら敵味方お構い無しではありましたが、上手く接触しさえすれば、大型の船舶でも大穴を開けられて沈没してしまう威力を持っておりました。
南部海軍はこの機雷を上手く設置して北部海軍の軍艦を沈めようとしたのです。

封鎖のために一定航路を遊弋していた北軍軍艦はこの機雷によって結構な損失をこうむることになりました。
爆発力が強大な機雷は、砲弾と違って水面下で爆発するために、開いた穴から水がドッと入り込むので沈みやすいのです。
しかも、新鋭の装甲艦でも水線下は装甲していないのが普通であり、被害を防ぐこともできないのでした。
そのため、北部海軍の喪失艦のうち砲撃で沈んだもの9隻に対して、機雷による喪失は27隻と三倍にもなっております。

北軍艦艇に一定の戦果をあげることができた機雷でしたが、機雷は純然たる防御兵器であり、敵艦が触れてくれなくては爆発しないものでした。
北軍艦艇が機雷に注意を払い、掃海(機雷など航行の邪魔ものを取り除くこと)を行なうようになれば、機雷は威力が減殺されてしまいます。
敵艦艇に対しては攻撃して沈めることが必要でした。

しかし、時代は装甲艦の時代になってしまいました。
装甲艦に対しては従来の大砲では損害を与えることが難しくなってしまったのは、「ハンプトンローズの戦い」での「モニター」対「ヴァージニア(メリマック)」の例を見ればわかります。

そこで登場したのが桿装水雷でした。
これは、外装水雷とも刺突水雷とも呼ばれるもので、長い銛(もり)状の円材の先端に爆薬を取り付け、それを敵艦の横腹喫水線下に刺して、逃げる時に爆発させるというものでした。

威力は絶大でしたが、敵艦に接近するのが難しく、接近中に撃たれたり、突き刺した桿装水雷の爆発に巻き込まれたりと危険極まりない代物でした。

それでも南軍はこの桿装水雷を使うしかなく、この桿装水雷によって北軍艦艇は少なからず打撃を受けたものの、危険度に見合う戦果とはなりませんでした。

水上からの接近が容易でないのであれば、水中からではどうか?
この考えによって、南部海軍は潜水艇を開発します。

最初に作られたのは半潜水艇でした。
水中に船体を沈めたものの、エンジンで動くために、煙突や吸気口は水上に出したままでした。
しかし、この半潜水艇で南軍は1863年10月、北軍装甲艦「アイアンサイズ」に損傷を与えることに成功します。

半潜水艇ではやはり水上から発見されやすい。
そう考えた南部海軍はついに潜水艇を実戦投入いたします。
円筒形のボイラーを外殻に使い、両端を閉じた上でクランクで手回しするスクリューを船尾に取り付けたこの潜水艇は、出資者の一人H・L・ハンリーの名を取って「H・L・ハンリー」と名付けられました。
ただし、ハンリー自身はこの潜水艇の訓練中の事故で死亡しております。

「H・L・ハンリー」は、1864年2月に、チャールストン港を封鎖中の北軍蒸気スループ「フサトニック」に対し、桿装水雷で攻撃。
ついにこの「フサトニック」を撃沈します。
これが史上初めての潜水艦(艇)による戦争中の敵艦撃沈第一号となりました。

残念なことに、「フサトニック」を撃沈した「H・L・ハンリー」でしたが、爆発に巻き込まれたか何かで自身も沈没。
乗組員は運命をともにしました。
2000年に引き揚げられた「H・L・ハンリー」は、今博物館で静かにその姿を訪れる方たちに見せております。

潜水艇という画期的な兵器が戦争の推移を左右するには、まだまだ時間が必要でした。
南部諸州同盟はそこまで命脈を保つことができませんでした。

半潜水艇も潜水艇も優勢な北部海軍には蟷螂の斧でした。
封鎖はついに解除されることはなかったのです。

南部諸州同盟がフランスに発注した通商破壊艦の一隻に装甲艦「ストーンウォール」というのがありました。
完成したのは1865年1月。
フランスを出港しキューバに着いた時には南北戦争は終結しておりました。
「ストーンウォール」は合衆国海軍に編入され、その後、時の江戸幕府によって購入されることになります。

しかし、これもまた日本へ到着した時には幕府が崩壊。
新政府と旧幕府勢力の双方でこの船の引渡しをアメリカに求めます。
アメリカは戊辰戦争には中立の立場でしたが、新政府側の旗色がよくなったのを見て「ストーンウォール」を新政府に引き渡します。

その後「ストーンウォール」は新政府海軍の一員として活躍。
明治の帝国海軍となった後も「東」と名付けられ、艦隊の一翼を担いました。
数奇な運命をたどった船といえるでしょう。

その28へ
  1. 2007/04/19(木) 21:57:29|
  2. アメリカ南北戦争概略
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アメリカ南北戦争概略その26

「アナコンダプラン」(当南北戦争概略その3参照)により、北部連邦は南部諸州同盟を経済的に打破するために、その海岸線及びミシシッピ川の制水権を確保する必要がありました。

戦争が始まった頃の北部連邦海軍は、軍艦の数も少なく、効果的な封鎖を行なうことができなかった上、大砲の弾を弾き返す装甲を持った装甲艦という艦種の出現により、その軍艦の構成も見直す必要に迫られておりました。

そのため、北部連邦海軍は、装甲艦に対抗するためには装甲艦をもって当たるべきだとの考えもあり、浅喫水の近海航行用装甲艦「モニター」を建造します。

「モニター」そのものは、1862年3月9日、「ハンプトンローズの戦い」において、南軍が鉄道線路を装甲板に作り変えて建造した「ヴァージニア」(北軍名称メリマック)と痛み分けの戦闘を行い、装甲艦の存在意義をアピールします。
以後、北部海軍は、同種艦を「モニター艦」という名称で呼び、多数建造して南部諸州同盟の各港湾封鎖に派遣しました。
ちなみに、「ヴァージニア」はその後の「半島戦役」の折にドック内で自爆。「モニター」も1862年12月31日、ノースカロライナのハテラス岬沖にて荒天のため沈没しております。

装甲艦はミシシッピ川の制水権確保にも大いに役立ち、ミシシッピ川流域の各造船所で建造された装甲河川砲艦は、グラント将軍の指揮するヴィックスバーグ攻略にも参加。
南軍の砲弾を弾き返しながらミシシッピ川を遡行して、陸軍の作戦に大いに貢献しました。

一方、各港湾を封鎖された南部諸州同盟も手をこまねいていたわけではありません。

「風とともに去りぬ」という映画をご存知の方も多いでしょう。
舞台となったのは南北戦争当時の南部の都市アトランタ。
ビビアン・リー扮するスカーレット・オハラとクラーク・ゲーブル扮するレット・バトラーとの恋愛ものとも言う映画ですが、このレット・バトラーが「ブロッケードランナー」(封鎖突破船)の船長という立場なんですね。

北軍の封鎖を何とかかいくぐり、英国や欧州との密貿易(北部側から見れば)に従事する船舶は、南部諸州同盟にとっては命綱と言っていいものでした。
南部は彼らを英雄として遇し、彼らの持ち帰る品々を心待ちにしていたのです。

そして、経済戦争は南軍にとっても行なわれます。
南部同盟海軍も乏しい財力をやりくりして、通商破壊を行なうための軍艦を建造します。
さらに、欧州では1856年のパリ宣言において放棄された私掠船(しりゃくせん:民間船に国家から私掠船免状を与えて敵国に対する海賊行為を働かせるもの)をも導入し、おそらく歴史上最後の私掠船免状発行国となりました。

私掠船活動そのものは、所詮民間船舶であるために、優勢な北部海軍によって割りと早い段階で鎮圧されました。
しかし、同盟海軍艦艇による通商破壊活動は、多数の艦船を有する北部海軍でもなかなか手にあまり、その跳梁を許すことになってしまいます。
(このあたりは、後のドイツ海軍対英国海軍の通商破壊とその対応戦に似ております)

通商破壊船として有名なのは南部同盟海軍スループ「アラバマ」でしょう。
「アラバマ」は南部諸州同盟の要請で、英国で建造されました。
そして、一度も南部同盟の港に寄港することなく、大西洋、インド洋、東シナ海近辺までやってきて、22ヶ月間に北部の商船60隻を拿捕、あるいは破壊いたしました。

1864年6月19日。
オーバーホールのためにフランスのシェルブールへやってきた「アラバマ」は、沖合いで遊弋していた北部海軍軍艦「キアサージ」と遭遇。
砲撃戦の後についに撃沈されました。

「アラバマ」の喪失は、南部同盟海軍の最後の輝きが失われたと言っていいかもしれません。
圧倒的な北部海軍に対抗する手段はないものか・・・
南部の出した答えの一つが姿を現します。

その27へ
  1. 2007/04/18(水) 20:47:07|
  2. アメリカ南北戦争概略
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大戦略南北戦争

A2サイズのクリアペーパーホルダー買いました。

コマンドマガジン日本版の記事にありましたが、このホルダーにウォーゲームのマップを挟み込めば、多少の汚れや多少の液こぼしは問題なさそうです。

実際やってみましたけど、いいですねー。
ユニットも動かしやすい感じです。

フルマップ(A1)はさすがに無理なので、ハーフマップまでですが、最近はハーフマップのゲームをやることが多いので、次回使ってみようと思います。

今度A1用のも買って来ようかな。


さて、このところ「アメリカ南北戦争概略」を掲載させていただいているのですが、私が南北戦争に興味を持ったのは、ある雑誌記事がもとでした。

かつてホビージャパン社から出版されていたウォーゲームマガジン「タクテクス」誌の記事です。

ちょうど当時輸入発売直前だったビクトリーゲーム社(現在はありません)の「The Civil War」(邦題:大戦略南北戦争)の販売促進として、タクテクス12号及び13号に南北戦争の記事が掲載されたのです。

それを読んだ私は、南北戦争というものに興味がわき、8000円(1984年当時)という金額を工面して、「大戦略南北戦争」を手に入れたのです。

ゲームはその名の通り戦略級で、南北戦争の戦争指導をする立場(北軍であればリンカーン、南軍であればデイビス)として、戦争を戦って行くことになります。

070417_1816~02.jpg

これがマップの一部(東部側)です。

070417_1816~01.jpg

南北双方の首都ワシントンとリッチモンド。
上側の二つの赤い丸の左側がワシントン。
下の赤い丸がリッチモンドです。
こんなに近いんですよね。

070417_1821~01.jpg

ちょっと見づらいですけど、北軍の名将グラント将軍のユニットです。
左から数値が2・2・2となっています。

この数値が将軍の能力を数値化したものです。
左が率先能力。
この数値が低いほど、効率よく大きな軍勢を動かせます。
グラントの2は最高です。

真ん中は作戦能力。
この数値は軍司令官に与えられるもので、この数値の回数だけ戦闘の時サイコロを振りなおすことができます。
つまり悪い結果をなかったことにできるのです。
グラントは2回振りなおせます。

右は戦闘能力。
戦闘の時のサイコロの目に足したり引いたりできるものです。
この数値が高いほど戦闘巧者と言えるでしょう。
グラントの2は高い数値です。

この数字は場合によっては相手側の色で書かれることがあり、相手側が有利になるような将軍もいるということになります。

南軍ではブラクストン・ブラッグぐらいですが、北軍ではマクドゥウェルとバーンサイドが3・1・1(この赤の文字が相手が有利になる数字)。
マクレランとフッカーが3・1・0となるため、戦闘では南軍が有利なことがままあります。
ちなみにリー将軍は2・3・1となるため、グラントと甲乙付けがたい能力です。

海上封鎖や河川砲艦、幾つもの軍勢や将軍の配置などやることがいろいろあるため、結構難しいゲームであり、私も人とやったのは数回しかありません。
でも、面白いゲームであることは間違いないでしょう。

一つ一つの戦闘を詳しくやるゲームではありませんが、南北戦争の流れを見るにはいいゲームだと思います。

このゲームを手に入れたことで、私はもっと南北戦争を知りたくなりました。
日本で手に入る資料は少ないんですけど、多少は手に入れることができたので、このたび概略を書いてみようと思い立ちました。

残念ながらゲームはなかなかプレイするチャンスには恵まれていませんが、いつかしっかりとプレイしたいなと思っています。

それではまた。
  1. 2007/04/17(火) 21:24:30|
  2. ウォーゲーム
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アメリカ南北戦争概略その25

「チカモーガの戦い」により、戦場を追い払われたローズクランズ率いる北軍部隊は、チャタヌーガという町に立て篭もります。
ブラクストン・ブラッグ将軍麾下の南軍が今しもチャタヌーガに殺到してくるのではないかと、ローズクランズは戦々恐々としておりました。

このテネシー川流域の要衝を保持するべく、リンカーンはこの方面のてこ入れを行ないます。
“ファイティングジョー”フッカーをこの方面へ送るとともに、本来ポトマック軍の指揮を取らせようとしていたユリシーズ・グラントに、この方面の指揮をゆだねたのです。

グラントは西部方面(何度も言うようですが、あくまでワシントンから見た西部であり、西部劇の西部ではありません。位置的には現在のアメリカ中東部です)総司令官に任じられ、チカモーガでの敗戦後精彩を欠いていたローズクランズを解任してトマスに指揮を任せます。
トマスは、チャタヌーガの防備を固めますが、やがてやってきた南軍部隊に町は半包囲されてしまいます。
町の背後はテネシー川であり、半包囲と言っても実態は包囲そのものでした。

補給が途絶え、食料にもこと欠くようになったチャタヌーガの北軍は、このまま補給が途絶えていれば来るべき冬は越せない状況であり、グラントはなんとしてでも南軍の包囲を打ち破る必要に迫られます。

幸いにしてトマス及び彼の幕僚スミス准将の機転により、テネシー川の一角に船橋を築くことができた北軍は、細々ながら補給が通じるようになります。
後は南軍を追い散らすだけでした。

補給が通じたとはいえ、チャタヌーガの北軍は態勢を立て直すには時間が必要でした。
一方外から南軍を攻撃するはずの援軍も、まだ集結には時間が必要でした。
北軍は全てにおいて時間というものが切実に必要だったのです。

その時間は南軍は提供してくれました。
南軍指揮官ブラクストン・ブラッグはチカモーガの戦い以後まったくと言っていいほどチャンスをものにできませんでした。
麾下の部隊の動きは鈍く、チャタヌーガの北軍に対して包囲すること以上の事を行なうことができませんでした。

ブラッグはとにかく全てのことを自分が計画しないと気がすまなかったのかもしれません。
彼は自分の見たい物だけを見、聞きたいことだけを聞いて一方的に命令を出すのが常だったようです。
そのため下級指揮官との折り合いが悪く、部隊行動に重大な影響を与えました。
下級指揮官は何においてもお伺いをたてねばならなかったのです。

この性癖はブラッグとロングストリートの衝突へと発展しました。
ロングストリートは誰はばかることなくブラッグを非難したために、現場の険悪さを解消しようと南部諸州同盟大統領ジェファーソン・デイビスがわざわざテネシーまで足を運ぶという事態にすらなったのです。

結果としてデイビスの訪問は状況を南部同盟にとって悪い方へと押しやってしまいます。
良かれと思ってしたことが裏目に出る。
これも戦争には付きまとうことの一つでしょう。

デイビスは角突き合せている両将軍を引き離したほうがよいと考えました。
そのため、せっかく集結していたブラッグの軍勢から一万五千をロングストリートに預け、ノックスヴィルという町方面への略奪行に向かわせることにしたのです。
チャタヌーガの包囲陣は、北軍が何もしないうちに有能な将軍と兵力を失うこととなりました。

デイビスはチャタヌーガに篭もる北軍に対して今後どうするべきかの会議を主催します。
南軍には二つの案がありました。
一つはテネシー川を渡河し、完全に町を包囲してしまう案。
もう一つは北軍の補給拠点であるブリッジポートの町を攻略する案。
どちらもチャタヌーガの補給を再度失わせるのが目的であり、成功すればチャタヌーガの北軍は降伏せざるを得ず、南部同盟始まって以来の大勝利となることが確実でした。
そうなればゲティスバーグやヴィックスバーグで失った主導権をある程度取り戻せたかもしれません。

しかし、この会議の結論を出さないまま、デイビスはリッチモンドへ帰ってしまいます。
下級指揮官たちの不満の種であるブラッグを解任することも、断固とした攻撃命令も出さないままでした。

ブラッグはやれやれといった感じで何もしませんでした。
彼が腰を上げようとしたときには、グラントが部隊を集結させ、チャタヌーガの北軍は危機を脱していたのです。

グラントの手元には親友ウィリアム・テカムセ・シャーマンの軍勢と、フッカーの軍勢、それにトマス率いるチャタヌーガの軍勢合わせて七万を数えるまでになりました。
一方のブラッグはロングストリート隊が抜けたために四万に減っておりました。

両軍は包囲陣の一角ミショナリーリッジという丘で激突します。
北軍兵士は包囲されていた鬱憤を晴らすかのように攻めまくり、士官たちが止めるのも無視して丘に攻め登りました。
南軍はまったく支えることができずに後退。
ブラッグの司令部も一時は攻撃に晒されるほどでした。
チャタヌーガの包囲は崩されたのです。

この1863年11月25日の「ミショナリーリッジの戦い」を含む「チャタヌーガの戦い」は、損害こそ北軍五千八百に対し南軍六千七百と大規模な戦いではありませんでしたが、南軍はチャタヌーガを失っただけではなく、戦争そのものも失ったと言って過言ではありませんでした。
もはや南軍の手に主導権が戻ることはなくなったのです。

その26へ
  1. 2007/04/16(月) 20:40:25|
  2. アメリカ南北戦争概略
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呪いのアイテム

いつかシナリオ中で使おうと思っていたために、今まで紹介してこなかった呪いのアイテムがあります。

以前アスキー出版より発売されていた「ウィザードリィRPG」というTRPGがございますが、ホビージャパン社より以前発行されておりました「RPGマガジン」にも、その「ウィザードリィRPG」用のシナリオが掲載されていたことがございます。

その「RPGマガジン」1990年9月号掲載のシナリオに出てきたアイテムに、「リザードマン(直立した人間型のトカゲという種族)の着ぐるみ」というものがありました。

この着ぐるみは、人間やエルフなどの人間型種族に着せることで、じわじわと着ぐるみが内部の人間型種族と融合し、やがて人間型種族は着ぐるみと一体化してしまって、身も心もリザードマンとなってしまうというものでした。

「ウィザードリィRPG」ではリザードマンは、死んだ仲間の脳を食べることで、その仲間の記憶や能力をある程度受け継ぐことができるという能力を持っています。
(これはあくまで「ウィザードリィRPG」での設定だと思います)
そのため、人間やエルフの記憶や能力も食べることができれば、種族的に有利に立てることは間違いありません。

しかし、人間やエルフなどの脳をそのまま食べても記憶や能力は受け継げません。
そこで、リザードマンの一部が実験として人間やエルフをこの着ぐるみを着せてリザードマンにして、それから脳を食べることで記憶や能力を受け継げないだろうかと考えたのです。

この脳を食べる設定はともかく、リザードマンの着ぐるみを着せられたキャラがリザードマンになってしまうという設定には萌えましたね~。
いつかシナリオに使いたいとずーっと考えておりました。

まあ、なかなか使うチャンスはなかったんですけど、おかげさまで先日使うことができました。
最後には呪いを解かれて着ぐるみが脱げるのはお約束ですけどね。

このリザードマンの着ぐるみというアイテムを考えられた佐脇洋平氏に感謝するとともに、プレイにお付き合いいただいたプレイヤーの方々にも感謝を捧げます。
ありがとうございました。

着ることで身も心も変化するってのはいいですよねー。
それではまた。
  1. 2007/04/15(日) 20:26:30|
  2. TRPG系
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パンツァーグルッペクライスト三戦目

今日も先輩においでいただいて、「パンツァーグルッペクライスト」の三戦目をプレイしました。

前回のソロプレイの研究が生かせるかな?



ということで初期配置。
このあたりは誰がやってもほぼ同じかな。

070414_1324~01.jpg

第一ターン終了後。
ソ連軍に防御力7の歩兵が出現して突破ならず。
ヤバいぞ・・・

070414_1341~01.jpg

増援を全てかき集めて、ドイツ軍の進撃を止めようとするソ連軍。
わらわらと集まってきました。
でもいいの?

070414_1355~01.jpg

予想通りソ連軍は中央部に戦力を集めたため、南部ががら空きになってしまいました。
私はすかさず南部を突破。
リヴォフ占領です。

070414_1650~01.jpg

南部を突破されたソ連軍はずるずると後退。
取り残された部隊も孤立して除去されます。

070414_1717~01.jpg

ほとんどソ連軍の部隊がなくなりました。
第6ターンでドイツ軍の勝利です。
やったぞー!!

先輩いわく、「南方を開け過ぎた。突破されてしまって対応できなくなってしまった」とのことでした。

ソロプレイでは中央突破を図りましたが、中央部に脅威を感じた先輩が中央に部隊を集めすぎちゃったんですね。
おかげで南方突破が成功しました。

ドイツ軍でここまでの勝利は初めてです。
どうにかクライスト将軍に顔向けできましょうかね?

次回は何をやろうかな?
(アドバンスではない)「スコードリーダー」(アバロンヒル)か、コマンドマガジン付録の「セダンキャンペーン」(国際通信社)でもしましょうかね?

それではまた。
  1. 2007/04/14(土) 19:29:39|
  2. ウォーゲーム
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アメリカ南北戦争概略その24

1月以来動きのなかったテネシー方面でしたが、北軍のローズクランズ少将は、頃は良しと見てついに1863年6月下旬、軍勢を動かします。

対峙していたのは南軍ブラッグ将軍麾下の軍勢でしたが、ブラッグは兵力の少なさもあり、ローズクランズの動きに翻弄されてしまいます。

テネシー川沿いのチャタヌーガという町にまで後退したブラッグでしたが、ローズクランズの北軍はチャタヌーガの西でテネシー川を渡河します。
このままでは背後に回られると考えたブラッグはチャタヌーガを放棄。
さらに南下してラファイエットという町まで後退しました。

ローズクランズは南軍が士気阻喪して逃げているものと思い、トマス、マクック、クリッテンデンの三個軍団を追撃に派遣します。
彼らはブラッグの軍勢を囲みこむように展開し、部隊間がかなり広がった状況で追撃を始めました。
1863年9月下旬のことでした。

しかし、ブラッグのところには着々と援軍が到着し始めておりました。
周辺地域の守備軍などが合流したのを皮切りに、ゲティスバーグでの敗戦後、リーによってこの方面の増援として送られた南軍きっての知将ロングストリートの先遣部隊までも合流を果たしていたのです。

これによりブラッグの手持ちは六万にまで増えました。
ローズクランズの北軍全部隊と互角の兵力となったのです。
しかも北軍はブラッグの軍勢を囲むために、三方に分かれて進軍しています。
各個撃破の絶好のチャンスでした。

まずブラッグが目標としたのは、ほんの目と鼻の先まで迫っていた北軍トマスの軍団でした。
この軍団は突出していましたし、他の北軍部隊は離れすぎていたので、各個撃破の格好の餌食となるはずだったのです。

しかし、そうはなりませんでした。
南軍内部の不協和音がもはや戦闘を不利にする作用しかもたらさなくなっていたのです。

ブラッグは指揮命令に一貫性がない男だったといわれます。
朝令暮改的な命令は軍勢の行動を阻害し、各下級指揮官を混乱させる役にしか立ちませんでした。
そのため、トマスの軍団を攻撃せよとの命令も、下級指揮官は素直に受け取ることができず、連絡と確認に時間が費やされることとなったのです。

北軍トマス軍団は自身が突出しすぎたことを警戒し、他の北軍部隊と連携を取れるように後退を始めました。
南軍の好機は去ったのです。

しかし、ブラッグは今度はチカモーガ川の西側に位置するクリッテンデンの軍団に狙いを定めます。
クリッテンデンの軍団も単独で小さな町にいるため、どうにか各個撃破が可能でした。
しかし、攻撃準備にまたも時間がかかっているうちにトマスとマクックが合流してしまいます。

こうなると、もはや双方の軍勢の正面きっての衝突しかなくなります。
9月19日20日の両日、南軍と北軍はラファイエット街道を挟んで激戦を繰り広げました。
「チカモーガの戦い」です。

この戦いではさすがのロングストリートが、北軍マクックとクリッテンデンの軍団を蹴散らし、司令官ローズクランズも後退を余儀なくされました。
トマスの軍団だけが整然と後退しましたが、結局北軍は戦場から離脱。
チャタヌーガまで退却を強いられました。

この一連の戦闘で北軍は一万六千、南軍は一万八千を失います。
戦場に残ったのは南軍であり、南軍にとっては久々の勝ちいくさでしたが、ブラッグは詰めを誤ります。
南軍は追撃をしませんでした。

ロングストリートや各下級指揮官が進言したように、この時追撃していれば、北軍ローズクランズ隊はひとたまりもなかったと言われます。
しかし、ブラッグは南北戦争中に幾人もの指揮官が感じたように、自軍の損害が大きく感じたのでしょう。
彼は部隊の再編に時間を費やしました。
翌日には追撃が可能であったといい、ロングストリートも追撃を主張しましたが、ブラッグはとどまりました。
南軍にとっては、これから数ヶ月の間幾つものチャンスを見逃していく第一歩となりました。

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  1. 2007/04/13(金) 20:14:07|
  2. アメリカ南北戦争概略
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こんなのもあったんですよー。

1990年代、80年代後半に始まったTRPGのブーム後半、こういったTRPGのリプレイ&ルールブックが発売されていたんですよー。

「エンジェル☆クエスト」シリーズ たかなみれい著 メディアックス社出版

テーブルトークRPGのリプレイ兼ルール(ルールは二巻のみ)なんですが、このTRPG、普通のファンタジーTRPGとはちょっと違います。

なんと、えっちが主体のTRPGなんですねー。

淫邪神ゼノスの魔の手が伸びるファンタジー世界フィルファナ。

ゼノスは性欲を増大させ、邪悪なる性欲で人間や動物をモンスターにしてしまう恐ろしい邪神です。
ゼノスの手によってシャクティ(性愛エネルギー)を吸収されてしまった人間や動物はゼノスモンスターとなり、ゼノスのしもべとして新たな犠牲者を襲うようになるのです。

ゼノスモンスターとなってしまった人間などを救うには、えっちをして相手をイかせてしまわねばなりません。
相手を先にイかせることができれば、ゼノスモンスターはゼノスの呪いが解けて人間(など)に戻るのです。

しかし、逆に相手より先にイかされてしまうと、シャクティを奪われ、プレイヤーキャラクターもゼノスモンスターに成り果ててしまいます。

性欲を高める魔法や、「亀甲縛り」などの技術スキル(笑)を使って、ゼノスモンスターを先にイかせるのが戦闘の一種なんですね。

キャラクターの職業(クラス)もさまざまありますが、剣士、僧侶、魔道士などの一般的な職業のほかに、調教師、奴隷など特徴的な職業もあります。

リプレイでは、村を救うためにモンスターを退治に行った剣士がえっち勝負に負けて邪悪なモンスターになっちゃったり、女領主が女モンスターにされちゃったり、プレイヤーキャラクターがモンスター化したりまでしてくれます。

いつも紹介するものが古いものですみません。
これも今となっては手に入れることはほぼ不可能でしょう。
でも、見かけたら手に取ってみてもいいかもしれません。

それではまた。
  1. 2007/04/12(木) 21:32:36|
  2. 本&マンガなど
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俺の足には鰓がある

これまた古い作品になっちゃいますが、私の好きな小説です。(ライトノベルかな)

「俺の足には鰓がある」 富永浩史著 富士見ファンタジア文庫

気になっていた彼女が突然やってきて、「あなたも改造人間になりましょう」って言って来たら・・・
私はついてっちゃうなぁ。(笑)

主人公はまさにそういう状況に追い込まれ、彼女(特撮好き、悪役好きだったために悪の組織? に改造されちゃった)の申し出を受けて改造を受けます。

で、三葉虫の改造人間になった主人公は、彼女と組織のために悪事? を働くのですが、まあ、お約束どおりバッタ型のヒーローが出てきて・・・

結構シリアスなシーンもあり、楽しませてもらった作品でした。
こういう作品ってすくないですからねー。
続編が楽しみだったんですが、現時点まで出ていません。

古い作品ですが、もしチャンスがあれば、お手に取ってみてはいかがでしょうか。
面白かったですよ。

それではまた。
  1. 2007/04/11(水) 21:19:56|
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アメリカ南北戦争概略その23

「ゲティスバーグの戦い」三日目です。
この戦いについては歴史などでチラッと習ったりはするかな?


二日目の戦闘が終わったあと、南軍にはスチュアートの騎兵隊とジョージ・ピケット少将の一個師団が到着していました。
南軍は再度の攻撃をかけるための兵力を手に入れていたのです。

一方北軍も第六軍団が戦場に到着し、兵力は増強されていました。
ミードはリーが中央突破を図るだろうと予測はしていましたが、なお左右両翼の布陣に不安があったのか、第六軍団をリトル・ラウンド・トップ及びそれに連なるビッグ・ラウンド・トップの後方に配備します。

明けて1863年7月3日。
北軍七万二千、南軍五万の両軍は更なる戦いに突入します。
この日、先に動いたのは北軍でした。
午前四時半、北軍右翼、カルプスヒル方面のスローカム将軍率いる部隊が南軍エーウェル麾下のジョンソン隊に攻撃を仕掛けたのです。
両軍は互いに激烈な銃砲撃を繰り返しましたが、この攻防は北軍に凱歌が上がります。
午前十時半、南軍はカルプスヒル方面を半包囲していた態勢からついに後退しました。

その頃南軍の司令部が置かれたセミナリーヒルでは、ついに最悪の事態が訪れてしまっておりました。
リーとロングストリート両将の対立です。
リーは前夜新たに到着したピケットの軍勢を中心にした、北軍中央に位置するセメタリーヒルへの突撃を考えておりました。
ピケットの軍勢は戦闘の疲れもなく、彼を中心に突撃をかければ、北軍陣地の突破は可能であろうと考えたのです。

しかし、ロングストリートはこれに真っ向から反対しました。
防御戦闘に巧みだった彼は、強固に構えられた防御陣地への突撃はただただ死傷者を増やすだけで、突破することはできないと考えていたのです。
「将軍、お考え直し下さい! このままの突撃は敵の餌食になるだけです」
ロングストリートは何とかリーを説得しようとしたようでした。

しかし、リーは首を振ります。
前もって南軍の全部の火砲をセメタリーヒルへの砲撃に費やし、防御陣を黙らせた上での突撃であれば勝算は充分あると考えたのです。
戦局を好転させるにはこの突撃によって北軍を分断するしかない。
リーはそう信じていたのかもしれません。

「将軍、突撃は無謀です! 現場生え抜きとして申し上げるが、ピケットの隊がたとえ今の倍の一万二千いたとしても、北軍陣地は抜けません!」
「ならばピケットに一万五千を預ければいいではないか!」
リーの言葉にロングストリートは肩を落とします。
以後、この戦いにおいてロングストリートは積極的に何かをしようという気持ちを失いました。

ジョージ・ピケット少将は有頂天でした。
メキシコとの戦争が無ければ落第だったといわれる士官学校落ちこぼれのピケットは、しかし勇猛さでは誰にも負けないという自負がありました。
この瞬間彼は同僚の誰よりも重要な任務を一万五千もの兵を率いて行なうのです。
困難かもしれませんが、当然彼はやり遂げるつもりでした。
南軍砲兵隊のウィルコックス将軍がこう言います。
「ピケット、乾杯しよう。あと数時間で地獄行きか勝利かが決まるのだから」
ピケットはうなずいて乾杯しました。

午後一時、南軍の百四十の大砲が一斉にセメタリーヒルの北軍陣地へ撃ち込まれます。
北軍陣地は猛烈な砲撃にたまらずに混乱を起こしますが、すぐさま北軍砲兵隊もいっせいに撃ち返し始めました。
双方の砲撃戦は一時間ほども続き、大砲の砲身が加熱して赤くなるほどだったと言います。
ここで北軍は砲身を冷ますためと、弾薬の供給のために一時砲撃を控えるよう命令を出します。
これがまた錯誤を生みました。

北軍砲兵隊の砲撃が少なくなったのを見た南軍砲兵隊指揮官アレキサンダー大佐は、これは南軍の砲撃で北軍の大砲や陣地が破壊されてきたためだと解釈したのです。
北軍同様に手持ちの弾薬が少なくなっていた南軍砲兵隊の指揮官であるアレキサンダーは、今こそ突撃の好機であると進言しました。
時に1863年7月3日午後三時。
ピケットは勇躍前進の命を下します。

四十二の連隊旗に従う兵士たちは約一万五千。
隊伍を組んで堂々と行進する様はまるで一幅の絵画のようだったといわれます。
南北戦争史上、南部諸州同盟のまさに最高潮の瞬間といわれるゆえんでしょう。
ラッパと太鼓の音に従って行進する兵士たちは勝利を確信していたかもしれません。

しかし、この行進は虐殺に変わります。
北軍は両翼の高地からの砲撃に加え、正面の陣地では突撃のために味方を撃たないよう南軍の砲撃が止んだのをいいことに、兵士たちが一斉に射撃を開始したのです。
さらに沈黙していた大砲も、砲身が冷え弾も供給されたために再度砲撃を開始。
人員殺傷力の高い散弾を撃ちまくります。

南軍兵士は次々と撃ち倒されていきます。
しかし、突撃は止まりません。
南軍兵士は強靭な精神力で前進を続けたのです。

北軍ウィンフィールド・ハンコック少将の無二の親友ルイス・アーミステッド准将も突撃に加わっておりました。
南軍に参加するアーミステッドを、戦争前夜自宅に招いて惜別の宴を開いたハンコックはまさに突撃の目標であるセメタリーヒルの北軍司令官でした。

アーミステッド率いる南軍兵士は北軍陣地の一角にたどり着きます。
そこは前衛砲台の一つでしたが、それでも猛烈な銃砲撃の中たどり着いたのです。
北軍兵士を蹴散らし、砲台を占拠した後、アーミステッドは銃弾に倒れました。
致命傷でした。

南軍の突撃はごく一部が北軍前衛陣地にたどり着いただけでした。
多くの兵士が血だまりの中に倒れていました。
生き残った兵士は自らの命を守るために後退するしかありませんでした。
突撃は失敗に終わったのです。

ピケット自身は生き残りましたが、率いた兵士の半数は戻りませんでした。
直属の五千名のうち戦闘に耐えられるものは八百にまで減っていました。
リーもロングストリートも戻ってくる兵士を温かく迎え、北軍の反撃に備えるべく防御を固めました。

ミードは一杯一杯でした。
どうにか南軍の突撃を追い払ったものの、反撃をする余力はありませんでした。
彼は自軍の損害に頭を痛めつつ、南軍に備えて陣を固めるだけでした。

翌1863年7月4日。
第86回目のアメリカ独立記念日でした。
昼頃より雨が降り始め、両軍がにらみ合う中、静かに南軍は退却を始めました。
ついに「ゲティスバーグの戦い」は終わったのです。

三日間の戦闘の損害は、北軍二万三千名、南軍は二万八千名でありました。
兵力の少ない南軍にとっては、もはや再起不能に近い損害でした。
これ以後南軍は防戦一方に追い込まれることになります。
そして、南軍は更なる凶報を受け取ることになりました。

5月以後包囲されながらも耐え忍んでいたミシシッピ川沿いの要塞都市ヴィックスバーグが、この7月4日ついに陥落したのです。

その24へ
  1. 2007/04/10(火) 20:49:26|
  2. アメリカ南北戦争概略
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アメリカ南北戦争概略その22

「ゲティスバーグの戦い」二日目です。


1863年7月1日夜半。
リーが待ち望んでいた「老ピート」ことジェイムズ・ロングストリートが麾下の部隊の一部(全部ではない)とともにゲティスバーグに到着しました。
早速リーは作戦会議を開き、翌7月2日に北軍を総攻撃で撃退する方針を打ち出します。

しかし、南軍の知将ロングストリートは異を唱えました。
ゲティスバーグでの戦いは小競り合いからずるずると消耗戦に転じてきており、これ以上この戦場で戦うと損害ばかりが増えると思われたのです。
彼は北軍が陣地構築をしているのを幸いとし、その隙に麾下の部隊で北軍の脇をすり抜け、ワシントンを直撃する姿勢を見せることを進言します。
A・P・ヒルとエーウェルの軍勢が北軍を引き付けていれば、ロングストリートの軍勢に差し向ける戦力はわずかでしょうし、万一全軍で北軍が向かってくるようであれば、北軍は陣地から出てこざるを得ず、ロングストリートとA・P・ヒル及びエーウェルの軍勢に挟み撃ちにされる危険を冒すことになります。
どっちに転んでも悪いことは無さそうで、成功の可能性はありそうでした。

しかしリーは首を振りました。
この「ゲティスバーグの戦い」において、南軍はどうもつきに見放されていたのかもしれません。
リーにしてみれば、ロングストリートの進言は机上の空論でした。
ミードが南軍の側面機動を見逃すはずはなく、兵力に優る北軍は南軍を各個撃破してしまうでしょう。
リーは静かに北軍陣地を指して言いました。
「ジェイムズ、敵はあそこだ」

1863年7月2日。
夏の太陽が顔を出したとき、南北両軍はゲティスバーグ近郊の向かい合った丘の上に双方陣取ってにらみ合った状態でした。
前夜、リーの手元にロングストリートの軍勢の一部が到着したように、北軍ミードの手元にも三個軍団という兵力が到着しておりました。
北軍はセメタリーヒルとカルプスヒルという二つの丘と、その南に位置するリトル・ラウンド・トップという丘にまで防御陣地を築いており、ミードはこの防御陣地で南軍を迎え撃つ腹積もりだったのです。

南軍五万、北軍六万が戦闘態勢を取りつつあった早朝、リーはロングストリートをともなって北軍陣地の視察を行ないます。
二キロほど先の丘に陣取る北軍を見て、リーはロングストリートにリトル・ラウンド・トップ方面からの攻撃を指示します。
いつ攻撃を開始できるかとロングストリートに尋ねたリーは愕然としました。
返事は午後二時であると言うのです。

いくつかの説がありますが、おそらくロングストリートは手持ちの全兵力がそろい、さらに陣地攻撃のための入念な準備をしてから攻撃したかったのでしょう。
知将であるロングストリートには、陣地攻撃など愚行と思われたのかもしれません。

そのため南軍の攻撃は散発的なものでした。
A・P・ヒルとエーウェル隊の威力偵察とも陽動ともつかないような攻撃が夕方まで続きます。
この時北軍が貝の殻のように硬く陣地に篭もっていれば、二日目はこれで終わったかもしれませんでした。

しかし、戦場に錯誤は付き物です。
リトル・ラウンド・トップ方面に配置されていた北軍シクルズ少将の第三軍団が、のこのこと丘を下って街道沿いまで前進してきていたのです。
シクルズ少将の独断とも命令の行き違いともいわれていますが、ミードは大激怒して直接シクルズに怒鳴り込んでいくほどのまずい行動でした。
この行動のおかげで、セメタリーヒルのハンコックと、本来リトル・ラウンド・トップにいるはずのシクルズとの間に大きな隙間が開いてしまったのです。
南軍にとっては一大チャンスが到来しました。

午後四時頃、南軍ロングストリート隊はようやく配置につき終わりました。
ロングストリートはまずフッド隊を、続いてマクロード隊を平地にのこのこやってきたシクルズ隊に差し向けます。
シクルズ隊は当然のごとく大損害を受け後退。
リトル・ラウンド・トップも南軍の攻撃に晒されます。

この時、リトル・ラウンド・トップにいた北軍の士官がチェンバレン大佐という人物でなかったなら、南軍はこの丘を制することができたと言われます。
チェンバレン大佐はプロの軍人ではありませんでした。
士官の足りない北軍は(これは南軍も同じことですが)大学教授のチェンバレンに大佐の肩書きを与えて、通り一遍の軍事知識を教えて促成栽培の指揮官としていたのです。

素人は時々プロの常識を超えたことをしでかします。
南軍に包囲されそうになったチェンバレンは、包囲されることを嫌ったのか、集中防御のために部隊を集結させず、逆に兵力を薄く引き延ばして左右に展開します。
横一列に広がっただけの防衛ラインは、無論南軍の効果的な一撃があればすぐに撃ち破られてしまうものでした。

しかし、女神はチェンバレンに微笑みます。
北軍が兵力を左右に展開しているのは、その後方に援軍が到着して逆包囲を目論んでいるからではないのか?
そう考えた南軍は攻撃を躊躇ってしまいました。
南軍は最大のチャンスを失いました。
この時リトル・ラウンド・トップが落ちていたら、そこからの砲撃は北軍を完膚なきまでに打ちのめしていたはずです。

結局、ハンコックが手持ちの兵力を振り分けて再度防衛線を張り直したとき、二日目の戦闘は終わりました。
エーウェルの軍勢も一時は北軍カルプスヒル方面を脅かしますが、兵力が続きませんでした。
A・P・ヒルの攻撃も頓挫していました。
南軍は手詰まりに陥っていたのです。
唯一の救いは、この日の戦闘終結後、スチュアートの騎兵隊が到着したことでした。

一方の北軍もただ粘ったというだけでした。
偶然と奇跡のような南軍の錯誤がなければ敗走していたかもしれないのです。
ミードは冷や汗を流しながら、退却もやむなしと考えておりました。
ただ、各軍団長は現状に踏みとどまることを希望しており、ミードは翌日も戦うことにします。
右翼と左翼での攻撃をしてきたリーは、おそらく明日は中央で攻めて来るだろう。
ミードは作戦会議でそう言い放ちます。
ミードの読みは正しいものでした。

その23へ
  1. 2007/04/09(月) 20:33:55|
  2. アメリカ南北戦争概略
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今日は選挙とソロプレイ

今日は統一地方選挙の投票日でした。

私も行ってきましたよー。
投票率のアップにわずかなりとも貢献してきました。

札幌は道知事、道議員、市長、市議員の四人を選ぶ選挙でした。
開票が始まっておりますが、道知事は高橋現職知事が当選確実ですね。
私は高橋知事には入れなかったんですけどね。

まあ、少しでも北海道を良くして頂ければと思います。

今日は次回に向けて「パンツァーグルッペクライスト」のソロプレイ。
前回の轍を踏まないようにセットアップから見直しです。




これが私の考えるほぼベストのセットアップかな。
中央部に装甲師団を集中し、突破口を開きます。

070408_1218~02.jpg


ソ連軍はアントライド(戦力未確認状態)なので、裏返しになって配置されます。
戦力が?マークになっているんですね。
さて、いったい何戦力なのかな?

070408_1218~01.jpg


見づらいかもしれませんが、攻撃力が6、防御力が5の部隊でした。
ソ連軍の中では結構強力な部類です。
これを装甲師団と歩兵師団の集中攻撃で撃破してドイツ軍は進撃です。

070408_1227~01.jpg


第一ターンの終了時です。
中央部に突破口が開きました。

この後は突破口を広げてどんどん進撃して行くわけですが、そうそう簡単にはいかないでしょうね。
でも、突破口を開くのはどうにかなりそうです。

次回、先輩との対戦が楽しみです。
来週あたり声をかけてみようかな。

それではまた。
  1. 2007/04/08(日) 21:04:35|
  2. ウォーゲーム
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アメリカ南北戦争概略その21

物資不足にあえぐ南軍の惨状は主に靴に現れておりました。
南軍兵士のほぼ半数は靴を履いておらず、着の身着のままに銃を担いでいるだけといった状況でした。
南軍兵士であることを示す灰色の軍服ですら満足にいきわたってはいなかったのです。

略奪行に出た南軍スチュアートの騎兵隊は、略奪そのものはそれなりに成果を上げましたが、そのために偵察という重要任務が行なえなくなり、リーは北軍主力の位置を正確にはつかめなくなります。

北軍の位置がわからない南軍は、一説によるとある噂に踊らされることになります。
「近くに北軍の軍靴を収めた倉庫があるらしい」

これは噂だったとも事実だったとも言われますが、鉄道や街道の結節点であり、部隊集結や補給の要衝であったゲティスバーグは、確かに噂を信じてしまいそうな場所でした。
索敵もかねてゲティスバーグに向かうことは、南軍にとっても理にかなったことだったのです。

「靴が欲しい」
この兵士たちの訴えを無視できなくなっていた南軍ペティグルー准将は、ついに部隊を率いてその噂を確かめるべく動き出します。
彼は麾下の部隊を率いて、ゲティスバーグという重要ではあるが小さな田舎町に向かいました。

1863年7月1日、ペティグルー隊はゲティスバーグの町の方から近づいてくる一隊を認めます。
付近の北軍側民兵が偵察にでも来たのかと思ったペティグルー隊は、近づいてくる一団に射撃を開始。
これが史上名高い「ゲティスバーグの戦い」の始まりとなりました。

ペティグルーが民兵と思った一隊は、北軍の正規の青服を着たビュフォード准将の騎兵旅団でした。
早朝だったために見誤ったのかもしれません。
双方はすぐに各部隊の上位司令部に連絡をまわします。
この瞬間、南軍も北軍も予想もしていなかった決戦に巻き込まれていくことになりました。

双方とも重要地点であるゲティスバーグ近郊での小競り合いは繰り返しておりました。
しかし、お互いに決戦を挑むには自軍の状況が良くないと思い、決戦は避けようと考えていたのです。
リーも、ミードも戦闘に流されることになるのです。

ペティグルー隊の報告を受けた師団長ヒースは、直ちにその旨を軍団長のA・P・ヒルに知らせるとともに、麾下の部隊を率いてペティグルー隊の応援に向かいます。

北軍ビュフォード隊はゲティスバーグ郊外の神学校付近の丘に部隊を布陣させました。
騎兵部隊でありましたが、全て下馬して歩兵として南軍を迎え撃ったのです。

先に援軍を受けたのは南軍でした。
ヒースの師団主力がペティグルーの部隊と合流したのです。
ヒースはそのまま丘に向かって攻撃を集中し、北軍ビュフォード隊は苦境に陥りました。

二時間後、今度は北軍に援軍が到着します。
第一軍団長レイノルズ(その20のコメントでChadwick氏が指摘していたあのレイノルズ少将です)麾下の先遣歩兵部隊が軍団長レイノルズ自ら率いてゲティスバーグに到着したのです。

戦力が増強された北軍は逆襲に転じ、一時は丘の放棄寸前まで行っていたビュフォード隊とともにヒース隊を追い返します。
しかし、その最中に、戦況を把握しようと前線に出たレイノルズ少将が南軍兵士の銃撃を受け戦死。
北軍は大事な将を失います。

ペティグルー隊が戦闘を開始したことを知らされたリーは頭を抱えました。
北軍主力の位置も定かでない今、ゲティスバーグにいるのがただの小部隊なのか、北軍主力の一部なのか判断が付かなかったのです。
スチュアートの騎兵隊の目が使えないことがリーを苦しめました。

一方の北軍司令官ミードもゲティスバーグの戦闘は小競り合いなのか、南軍主力との遭遇なのか判断が付きませんでした。
しかし、始まってしまった戦闘を止めることは、軍団に余計な損害を与えることにもなりかねませんし、かといって中途半端な増援は戦力の逐次投入となり、各個撃破されかねません。
で、あれば、全軍を投入して南軍を叩き潰す。
これが一番であるとミードは考えます。
北軍は予定外ではありましたが、全力投入を決意しました。

リーが戦場に到着したのは午後2時過ぎのことでした。
交通の要衝であるゲティスバーグは、軍勢の集結が容易であり、それゆえにリーも現状到着が早かったのです。

「ゲティスバーグの戦い」はアメリカ南北戦争史上もっとも有名な戦いであり、そのためさまざまな分析が行なわれ、すでに虚実入り乱れてさまざまな説が提示されています。
以下の文章も一つの説であるということを含み置きください。

リーはこのまま戦闘が拡大し、なし崩し的に北軍の大兵力との消耗戦的決戦になることを恐れました。
そのため、戦闘停止命令を出そうと思いましたが、まさにその時、戦場に到着したエーウェルの軍勢が北軍側面を襲います。

北軍はレイノルズを失っており、その後を継いだのはダブルディという師団長でしたが、北軍側も第十一軍団が到着しており、第十一軍団長のハワードが指揮をダブルディから引き継いでおりました。
しかし、ハワードも第十一軍団もエーウェルの側面からの攻撃にはなすすべもなく、北軍は算を乱して後退します。
北軍はかろうじてゲティスバーグ南側のセメタリーヒルと言う丘に再度防衛線を構築、そこで何とか踏みとどまります。

ここで南軍がもう一押ししていれば、歴史は違った方向へ流れたでしょう。
しかし、南軍は止まります。

この停止についてはいろいろな説があります。
一つはリーがやはりずるずるとした戦闘を避けるために部隊の集結を優先させたという説。
戦場にはまだロングストリートが到着しておらず、彼の到着を待って再度攻撃に出ようとしたのかもしれません。

もう一つはエーウェルの独断での戦闘停止という説。
当時エーウェルはマラリアに罹っており、朝からおかゆしか食べられない状態でした。
しかも、胃潰瘍と戦傷による細菌症と病気のオンパレードであり、適切な判断が下せなかったのかもしれません。
彼は北軍への攻撃は無理だとして、自軍戦力の増強がなされるまでは攻撃をしないつもりだったというのです。

ともあれ南軍は北軍への追撃をしませんでした。
北軍は貴重な時間を稼ぐことができたのです。

北軍は時間とともに各軍団が戦場に到着し始めます。
その中でミードが重視したのがウィンフィールド・スコット・ハンコック少将でした。
ミードはハンコックが塹壕戦を初めとする防御戦闘の巧者だと知っており、セメタリーヒルの防衛をゆだねたのでした。

ハンコックは期待にこたえます。
彼はセメタリーヒルばかりか、周囲の丘一帯を強化し、さらには南のリトル・ラウンド・トップまで防衛線を広げます。
このことは後に重要な意味を持ちました。

ついに南軍はにらみ合いのまま夜を迎えました。
エーウェルは防備の整わない北軍陣地への夜襲もかけませんでした。
7月1日はこうして終わったのです。

その22へ
  1. 2007/04/07(土) 21:36:21|
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貫く一撃

22、
シュッという音がしてレディアルファの目の前を青い光が走る。
ホーリードールサキのレイピアが流れるような軌跡を描く。
「クッ」
先ほどまでの余裕はレディアルファから消えていた。
彼女の手にはこんなレイピアなどものともしない大斧ヘルアクスが握られているものの、ホーリードールサキの動きに翻弄されてしまっているのだ。
「光の手駒の癖に・・・」
歯噛みするレディアルファ。
先ほどから優勢だったのは彼女のはずだった。
二回三回とヘルアクスの漸撃をただ耐え忍ぶだけだったホーリードールサキが、左腕への一撃を受けたときから自己保存を捨てたのだ。
まるで刺し違えることを望むかのような動きにレディアルファは戸惑った。
光の手駒は無表情に冷酷にただただレイピアを繰り出してくる。
無言。
先ほどまでの気合の入った掛け声すら発しない。
不気味であった。
「に・・・ん・・・ぎょう・・・?」
まさにドールなのか?
ふざけている。
これが光のやり方なのか?
「やあっ!」
レディアルファはヘルアクスを横薙ぎにして振るう。
そして勢いのままに左手にアクスを任せ、身を沈めて向かってくるであろうホーリードールサキの腹部を狙って右手を手刀のごとく叩き込む。
だが、その瞬間は来なかった。
「なに?」
レディアルファの前からホーリードールサキの姿は消えていたのだった。

「さようなら、光の手駒さん。あなたの顔は見飽きたのよね」
レディベータのブラディサイズが振り下ろされる。
だが、それより一瞬早く青色の閃光がホーリードールアスミの腹部を突き破ってほとばしり、レディベータを貫いた。
「ゲフッ!」
よろめくレディベータ。
視界の片隅では同じようにホーリードールアスミとカメレオンビーストが崩折れる。
「ベータ!」
レディアルファが臍を噛む。
ホーリードールサキを引き付けておけなかったのは彼女のミスだ。
だが、それにしても・・・
レイピアの先から青い閃光を発した時のまま動きを止めていたホーリードールサキがゆっくりとホーリードールアスミの方へ近づいていく。
「状況は?」
「・・・内臓の損傷度30%。戦闘行動能力低下。30分以上の行動は不可能」
無表情のままでお腹を押さえるホーリードールアスミ。
だが、そこからは赤い血がわずかに流れている。
「止血が追いつかない・・・」
「無視して。今は闇を浄化するのみ」
ホーリードールサキの言葉にこくんとホーリードールアスミがうなずく。

「ゲフ・・・ま、まさか仲間ごと撃ち抜いてくるとはね・・・」
ブラディサイズを杖代わりに、よろめくように立つレディベータ。
すぐにレディアルファが駆けつけて闇の少女を支え上げる。
「ごめんなさい、ベータ。私が・・・」
「アルファお姉さま・・・私は大丈夫・・・」
腹部を押さえるレディベータ。
その顔には苦痛がうかがえる。
「ベータ・・・クッ、勝負は預ける。光の手駒よ、この次は覚悟しなさい!」
「アルファお姉さま、私のことは・・・」
「引き上げるわ。つかまっていなさい」
少女を抱えあげるレディアルファ。
そのままタンと床を蹴って飛び上がった。

「逃がさない!」
それを見たホーリードールサキも床を蹴り上げる。
しかし、足首に何かが絡みつき、飛び上がれない。
「何?」
足元を見下ろすホーリードールサキ。
カメレオンビーストのピンク色の舌が彼女の足首に絡まっている。
「ゲ・・・ゲゲ・・・」
腹部から内臓をはみ出させながらも、なおその舌でホーリードールサキの行動を封じようとしているのだ。
「邪魔!」
ホーリードールサキの青いレイピアが一閃する。
どす黒い血を撒き散らしながら、カメレオンビーストの舌が切断されてのた打ち回る。
「ゲゲゲー!」
耐え難い激痛に身をよじるカメレオンビースト。
「浄化します。コロナ!」
ホーリードールアスミの杖が宙に魔方陣を描き、数千度の炎が巻き起こる。
「ギャァァァァァァ」
カメレオンビーストの絶叫がとどろき、炎が跡形もなく焼き尽くす。
だが、その間に闇の女たちの姿は消え去っていた。

「浄化完了」
「闇の穢れは消えました」
お互いにうなずき合う二人のドール。
地上では赤色回転灯の輝きとサイレンの音が鳴り響いている。
ブティックの惨状が人々を呼び寄せたのだろう。
「そろそろ行動限界です。引き上げましょう」
「ええ。ゼーラ様の御許に」
無表情で地上を見下ろしていた二人の少女は、光の球に包まれ姿を消した。

******

「あれ?」
気が付くと夜の帳が町を覆っている。
ひんやりした空気がベンチに座っていた紗希の頬を撫でて行く。
いつの間に公園に来たのだろう?
それにいつの間にこんなに時間が経ってしまったのだろう?
ふと気が付くと、隣には明日美ちゃんが座っている。
だけど身じろぎ一つしていない。

どうしたんだろう?
「明日美ちゃん?」
紗希は気になって声をかける。
だが返事はない。
まっすぐ前を見たまま動かないのだ。
まるで人形みたい・・・
紗希はふとそう思う。
そこにいる明日美からは、生きているという感じがどうしても感じられなかったのだ。
「明日美ちゃん!」
少し声を荒げてみる。
すると、明日美はゆっくりと振り向いた。
「私を呼びましたか? サキ」
とたんに紗希はぞっとした。
「変だ・・・」
思わず腰が引ける。
明日美ちゃんなのに明日美ちゃんじゃないみたいだ。
「どうしたのですか? サキ」
まっすぐに見つめてくる明日美の瞳。
その奥に底知れない恐怖を紗希は感じてしまう。
「変だ・・・変だよ・・・明日美ちゃん・・・どうしちゃったの、明日美ちゃん?」
助けなきゃ・・・
明日美ちゃんを助けなきゃ・・・
紗希は勇気を振り絞って明日美の肩を揺さぶった。
「どうしたのですか? サキ・・・ちゃ・・ん・・・」
「明日美ちゃん、変だよ! しっかりしてよ! 目を覚まして!」
必死に明日美を揺さぶる紗希。
そうしないと明日美が遠くへ行ってしまいそうなのだ。
「私は目を覚ましています。多少血が損なわれていますが、行動に支障ありません」
「いやだよ・・・いやだよ明日美ちゃん! そんなのいやだよ!」
紗希は首を振る。
「どうした・・・のですか、サキ・・・ちゃん? そんなに感情をむき出しにするのはおかしいですわ」
なされるままに肩を揺さぶられながら、明日美は笑みを浮かべて紗希を見つめる。
それは多少乱暴に扱われても、持ち主に笑顔を見せ続ける人形そのものであった。
「明日美ちゃん!」
紗希は気が狂いそうになった。
いったいどうして・・・
『やれやれ・・・本当に面倒だわね』
紗希の動きが止まる。
『ホーリードールサキ。今の感情と記憶は捨てなさい』
「はい・・・ゼーラ様」
いずこからかの声にうなずく紗希。
『ホーリードールアスミ。同様に今の記憶を捨て、かりそめの世界へ戻りなさい』
「はい。ゼーラ様」
何事もなかったかのようにすっと立ち上がる明日美。
かつての明日美であれば絶対にしなかったであろうこと、紗希に一言も言わずにその場を立ち去ることを明日美は何のためらいもなく行なう。
『まったく・・・手間の掛かること・・・』
そして・・・
紗希も無言で立ち上がると、無表情のままかりそめの世界、彼女の家へ向かうのだった。
  1. 2007/04/06(金) 20:33:45|
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60万ヒット到達です

昨日、23時30分ごろでしょうか、通算60万ヒットに到達いたしました。
本当に皆様ありがとうございます。m(__)m

一月に50万ヒット到達してから約三ヶ月。
一日あたりほぼ1000ヒットというご愛顧をいただきまして、ついに60万ヒットです。

夢のようです。
あらためまして本当に本当に皆様のおかげでございます。
ありがとうございました。

本来であればお礼として公開したかったSSがあるのですが、現状まだ途中でありお目に掛けることができません。
いつもお世話になっている方々にアドバイスをいただきながら製作中のそのSSは、完成次第皆様にお披露目いたしたいと思います。
申し訳ありませんが、完成まで今しばらくお待ち下さいませ。

で、ミード将軍のごとく代役ではございますが、「ホーリードール」の21回目をお送りいたします。
お楽しみいただければ幸いです。

21、
「ハッ!」
すぐさまレイピアをかざし、ジャンプするホーリードールサキ。
その切っ先はもちろん二人の闇の女たちだ。
青い残光が彗星の尾のように引かれ、いったん宙を舞って落ちてくる。
そして、それを援護するかのようにホーリードールアスミの杖が空中に円を書く。
その杖の軌跡をなぞるかのように空中に現れる魔法陣。
その中心から氷の塊が飛び出して、貯水タンクに向かっていった。

「ふふ・・・」
二人の闇の女は薄く笑いを浮かべると、それぞれがおのおのの得物を持ち上げる。
「ヘルアクス!」
「ブラディサイズ!」
それぞれの得物の名を高らかに呼び上げる二人の闇の女。
その瞬間にそれぞれの得物の周囲に闇の魔力が沸き起こる。
空気を振るわせる魔力はそのまま障壁となって、ホーリードールアスミの氷弾を弾き飛ばし、ビルの屋上に氷の欠片を撒き散らした。

「てぇーい!」
だが、魔力障壁をものともせずにホーリードールサキは飛び込んでいく。
青いレイピアが残光にきらめき、切り裂かれた魔力障壁すらも纏わり付かせたままにレディアルファに切りかかった。
ガキンという音が響き、あれほどの勢いで飛び込んだホーリードールサキのレイピアが動きを止める。
「クッ」
突き出した手はレイピアを握ったままで動かない。
「うふふ・・・これはこういう使い方もできるのよ」
妖艶な笑みを浮かべるレディアルファ。
先日まではその優しい笑みは同僚たちに安らぎを与えていたというのに、今の彼女の笑みはひどく邪悪だ。
彼女の手には両刃の巨大な斧が握られている。
その名をヘルアクス。
彼女はその刃の平で、ホーリードールサキのレイピアの切っ先を受け止めたのだ。

すぐさま飛び退って距離をとるホーリードールサキ。
動きを止めることは相手の反撃を呼び込んでしまうのだ。
表面上は二対二だが、相手には姿を消したビーストがいる。
力が拮抗している場合には厄介なことになりかねない。
ホーリードールサキはホーリードールアスミのそばに降り立つと、タンクの上から飛び降りたレディアルファとレディベータに注意を向けた。
「ドールサキ、あの二人は手強いですわ。注意して」
「わかっている。それよりも消えたビーストを探して、ドールアスミ」
振り向きもせずに言うホーリードールサキに、ホーリードールアスミは力強くうなずく。

「さて、お手並み拝見と行こうかしら」
獲物を前にした肉食獣のごとく、ペロッと舌なめずりをするレディアルファ。
黒く塗られた唇がぬめるようなつやを帯びる。
「ターッ!」
両手振りの大型の斧を振りかざし、レディアルファの躰が前に出る。
すぐにホーリードールサキの援護をするべく、ホーリードールアスミは杖を振りかざす。
だが、シュッという音がしてその腕に何かが絡みついた。
「えっ?」
ピンク色の細長いツタのようなものがホーリードールアスミの右腕に絡み付いている。
「しまっ」
た、まで言うこともできずに、ホーリードールアスミの右腕は強い力で引き寄せられる。
「キャァーッ!」
躰が宙に浮き、屋上を囲っているフェンスにものすごい勢いで叩きつけられるホーリードールアスミ。
それと同時に腕に巻きついていたピンク色のツタのようなものが、シュルシュルと姿を現したカメレオンビーストの口の中に吸い込まれていく。

「グッ」
その様子を見ることも無く、ホーリードールサキはレディアルファの漸撃を受け、弾き飛ばされていた。
レイピアで大斧を受け止めることは不可能。
しかし、ホーリードールサキの青いレイピアは折れることなく、かろうじて受け流すことで、ホーリードールサキの躰には傷を付けることが出来なかった。
「やるわね。私のヘルアクスを受け流すとはね」
にっこり微笑むレディアルファ。
「闇には・・・負けない」
すっと立ち上がるホーリードールサキ。

ホーリードールアスミは叩きつけられた躰の状態を確認する。
打ち付けられた背中は痛みを訴えてくるが、動作には問題がない。
「行動に支障あり、痛覚神経を一時的に遮断する」
すっと痛みを感じなくなる。
肉体に負担が掛かるために、通常は行なわないのだが、闇との戦いは全てのことに優先する。
肉体の損傷など些細なこと。
ホーリードールアスミは、叩きつけられても手放すことのなかった杖を手に無表情で立ち上がる。
「へえ、結構強く叩きつけられたはずなのに。光の手駒って面白みがないわね」
ブンという空を切る音とともにレディベータの大鎌がホーリードールアスミを襲う。
それを紙一重でかわすと、ホーリードールアスミはコロンと転がって距離をとった。
「逃がさないわよ」
レディベータがニヤリと笑う。
立ち上がりかけたホーリードールアスミを再びカメレオンビーストの舌が襲う。
レディベータに向き直っていたために、カメレオンビーストの舌はホーリードールアスミの首に絡みついた。
「うふふ・・・これでお終い」
舌を絡めたカメレオンビーストがホーリードールアスミの背後に回りこみ、両手を捕らえて動きを封じる。
それを見届けたレディベータはゆっくりとブラディサイズを振り上げた。
  1. 2007/04/05(木) 20:52:33|
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アメリカ南北戦争概略その20

リーがメリーランド州に再度侵攻しようとしたことには幾つかの理由がありました。

一つは、フッカーは撃退したものの、北軍戦力はまだ強大であり、遅かれ早かれ南部諸州同盟の首都リッチモンド目掛けて南下してくるであろうため、機先を制してワシントンへ圧力をかけること。
北軍の南下はリーにとっても南部諸州同盟にとっても悪夢であり、幾度か撃退できたとしても、最終的にはリッチモンドに篭城せざるを得なくなるでしょう。
それを防ぐには北軍を北方へ吊り上げる必要があったのです。

二つ目は、リーの率いる南軍の補給状態の悪化を北部の潤沢な物資を略奪することによって補うこと。
南部諸州同盟は工業力や輸送力に劣るため、南軍兵士の補給状態は極めて悪く、半数の兵士は靴を履いておらず、食料に関してすらかなり厳しい状態でした。
南軍は北軍と戦う前に、まず衣食を満たす必要があったのです。
それに、戦場がメリーランドに移れば、ヴァージニア州の農家は比較的無事な状態でこの秋の収穫を得ることができ、南軍の食糧事情改善の一助にもなるとの考えもありました。

三つ目は、これはリー自身はそうは思っていなかったかもしれませんが、メリーランドで北軍が危機に陥れば、北軍はあちこちから兵をかき集めるであろうから、ミシシッピ川沿いの要塞都市ヴィックスバーグの包囲が解かれる可能性が考えられること。
無論これは北軍にとってはありえないことでした。
東部の北軍は現状でもリーの軍勢に比べて優位に立っており、多少損害を受けたとしても、手付かずの兵力がまだまだありました。
西部のグラントの軍勢から兵力を引き抜く必要などまったくなかったのです。

これに対し、南軍の知将ロングストリートは別の作戦案を提示します。

鉄道を使えば部隊の移動は迅速に行なうことができます。
北部に比べ圧倒的に少ない南部の鉄道網ではありましたが、それでも東部と西部を結ぶ鉄道網はありました。
その鉄道網を使い、フッカーに対する押さえとして残すエーウェルとA・P・ヒル以外の移動可能な全ての南軍を移動させ、ちょうど東部と西部の中間あたりで戦っているブラッグ、ジョンストン、バックナーあたりの戦力と合流して、同じく中央部に位置する北軍ローズクランズの軍勢を撃破することで、北軍を東西に分離させるというものです。
こちらもあわよくば、グラントの軍勢をひきつけることで、ヴィックスバーグの解囲を目論むという点では同じでした。

しかしリーはこのロングストリートの作戦案に難色を示します。
彼は他の地域で戦勝を得るよりも、ワシントン近くの北軍を翻弄し、常にワシントンに脅威を与えることを選んだのです。
さらに先ほど述べた南軍の補給問題が、南軍の迅速な移動を妨げるであろうことも予測できました。
南軍にとっては、物資略奪という第二の理由が逼迫していたのです。

結局リーはメリーランド州へ再度の侵攻を開始します。
1863年6月3日のことでした。

後世の後知恵的な視点から見れば、リーがロングストリートの作戦案を退けたのは誤りといわれました。
ロングストリートの作戦案こそが、当時の南軍にとって最良の策であり、そのため、それを退けたリーは国家的規模の戦略眼が無いとの批判を受けることとなります。

一方リーと対峙する北軍ポトマック軍司令官“ファイティング・ジョー”フッカーは、軍の再編を終えた後、リーの出方を伺っておりましたが、南軍のスチュアートの騎兵部隊やエーウェルやA・P・ヒルの歩兵部隊などとの小競り合いから、リーが再び動き出したことを知りました。

リーが北部侵攻を狙っているのであれば、こちらはその逆手を取ってリッチモンドを攻撃するべきだという意見をフッカーはリンカーンに進言しますが、あっさりと却下。
リーの軍勢だけを相手にしろと言われたフッカーは、仕方なくリーの軍勢を補足するべく行動を開始します。

絶えず、リーの軍勢とワシントンの間にポトマック軍を位置させていたフッカーでしたが、いくつかの理由によりリンカーンと対立していました。
彼は自分の要求するところが聞き入れられるように、辞職をちらつかせてリンカーンと交渉しましたが、それは逆効果になりました。
適当な口実を見つけてフッカーを解任しようとしていたリンカーンにとって、フッカー自身が辞職をちらつかせたことは絶好の口実となったのです。
フッカーは即座に解任されました。

後任に任命されたのは、驚くべきことに西部方面で手腕を発揮していたユリシーズ・グラントでした。
リンカーンは切り札を東部に持ってくることにしたのです。

しかし、当然のことグラントは西部の戦場におりました。
5月中旬からのヴィックスバーグ攻略戦を進めている最中だったのです。
そこで、リンカーンは、当面の代役、あくまで当面の代役としてある将軍にポトマック軍を一任します。

ジョージ・ゴードン・ミード少将。
この瞬間、彼は歴史に燦然と名を残すことになります。

没落寸前のスペインとの貿易で金を支払ってもらえずに没落した父の息子として生まれたミードは、ウエストポイント(陸軍士官学校)をでた後、測量技師として陸軍と繋がりを持ちました。
メキシコとの戦争に従事した後、再び測量技師として生活。
南北戦争勃発とともに北軍に参加します。
師団長としてフレデリクスバーグやチャンセラーズヴィルで活躍したミードをリンカーンは知っていたのです。
猛将でありながらも手堅さを持つミードを、リンカーンはこの場面で一番信頼できる男としてグラントが到着するまでの間ポトマック軍の臨時司令官として任命したのです。

その21へ
  1. 2007/04/04(水) 21:00:42|
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終わりました

春の選抜高校野球大会が今日で終わりました。

静岡県の「常葉学園菊川高等学校」の優勝でした。
おめでとうございます。

また夏に向けてしばしの休息。
すぐに夏の予選が始まりますねー。

春は旭川南が出ましたが、夏はどこが出てくるかなぁ。
駒大苫小牧が成し遂げた三年連続決勝進出を破るような学校が北海道からまた出て欲しいですね。
楽しみです。

さてさて、いよいよ目前に迫ってしまいました。
ちょっと間に合いそうもないなぁ。
困ったもんだ。

それではまたー。
  1. 2007/04/03(火) 20:41:45|
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アメリカ南北戦争概略その19

「チャンセラーズヴィルの戦い」で自らの右腕とも頼んだジャクソンを失ったことで、東部の南軍は再編成を迫られました。

別働隊として派遣されていたために、「チャンセラーズヴィルの戦い」に何の貢献もできなかったロングストリート麾下の部隊が合流したことで、リーの手元には七万という軍勢が集まりました。
彼はそれを再編し、三つの軍団に編成します。
第一軍団はロングストリート。
第二軍団にはリチャード・エーウェル。
第三軍団にA・P・ヒルという布陣で、それに騎兵隊を指揮するジェームズ・スチュワートが加わり、これが現状で望みうる最高の体勢と言ってよかったでしょう。
リーはこの軍勢をもって再度のメリーランド侵攻を企てます。

一方その頃西部方面では、大きな動きが起こり始めていました。
「ヴィックスバーグ攻防戦」です。

「ストーンズ川の戦い」で北軍ローズクランズが、南軍ブラッグとにらみ合っていた頃、さらに西部のミシシッピ川において北軍ユリシーズ・グラントがミシシッピ川の完全制圧を達成するために動き出したのです。

すでに前年の1862年6月、「シャイローの戦い」の後すぐにグラントはミシシッピ川中部の要衝メンフィスを陥落させ、そこからさらに下流域の要塞都市ヴィックスバーグをうかがっておりました。

南部諸州同盟大統領ジェファーソン・デイビスは、この方面の指揮をジョン・クリフォード・ペンバートンという北部ペンシルヴァニア出身の将軍に任せることにし、以後、ペンバートンとグラントの戦いが始まります。

グラントは北軍テネシー軍司令官として約七万の軍勢を持っておりましたが、彼は部隊を親友ウィリアム・テカムセ・シャーマンと二分して、シャーマンが三万、自身は四万の軍勢を率いてヴィックスバーグに向かいます。
一方のペンバートンには二万数千の軍勢しかありませんでしたが、前任司令官のアール・ヴァン・ドーンと、勇猛なネイサン・ベドフォード・フォレストの両名の率いる二個の騎兵部隊が、グラントの後方補給線を寸断。
グラントはやむなく後退することになります。

明けて1863年、グラントは麾下の軍勢をシャーマン、ジョン・マクラーナンド、ジェームス・マクファーソンの三名の部下に三分し、再度ヴィックスバーグ攻略にかかります。

しかも、今回は陸軍兵力ばかりではなく、ディビット・ディクソン・ポーター提督率いる河川砲艦隊も協力することになります。
かつて、水の上の軍艦は、陸上要塞の固定された大型砲との撃ち合いは非常に不利なものでした。
木造の船体は砲弾に容易に穴を開けられてしまい、軍艦側の砲弾が石やレンガなどで作られた要塞外壁を崩すよりも前に沈められかねないからです。
しかし、概略その7の「ハンプトンローズの戦い」でも明らかになったように、装甲を施した軍艦は砲撃に充分耐えることができます。
将来は砲弾が再び装甲を貫くことが起こるでしょうが、この時点では装甲艦は要塞との撃ち合いに耐えられるのです。

グラントはその強みを生かすために、ポーター提督の河川砲艦隊にヴィックスバーグの砲撃をお願いします。
ポーター提督は旗艦ベントン以下の河川砲艦隊を率いてヴィックスバーグを砲撃。
1863年4月16日のことでした。
ヴィックスバーグ守備隊の砲撃を弾き返しながら、北軍艦隊はさらに南軍河川輸送船団を攻撃、ミシシッピ川を使っていたヴィックスバーグへの補給がここで閉ざされます。

さらにグラントは河川装甲艦隊を使って各軍勢をヴィックスバーグ下流域に輸送。
そこからミシシッピ川東岸を北上してヴィックスバーグ東側のジャクソンという町を奪取。
西をミシシッピ川のポーター率いる北軍河川艦隊。
東をグラント率いる北軍陸上部隊に抑えられ、ペンバートンは窮地に陥ります。

何とか包囲されることを避けようとしたペンバートンでしたが、5月16日のチャンピオンズ・ヒル、翌日のビックブラック川の戦いでグラントに押し返され、ついにヴィックスバーグに篭城となります。

グラントは余勢を駆ってヴィックスバーグに5月19日と22日に強襲を仕掛けますが、これはさすがに撃退されます。
以後、ヴィックスバーグは長期にわたる包囲戦となりました。
南軍は何とかしてヴィックスバーグの包囲を解かなくてはなりません。
ジェファーソン・デイビスはリーに対し、部隊をヴィックスバーグ救援に派遣するよう命じます。
しかし、リーはそれを拒否します。
リーには別の考えがあったのです。

その20へ
  1. 2007/04/02(月) 20:29:45|
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ぐぬぅ・・・

今日も先輩とウォーゲーム。
「星作戦」(SPI/HJ)をやろうかと考えていましたが、先輩の希望で先日プレイした「パンツァーグルッペクライスト」(HJ)に変更。
先日同様、私がドイツ軍、先輩がソ連軍を担当しました。

初期配置はほぼ決まっているので、いつもどおりのセットアップ。
後はアントライドのソ連軍が弱っちいのであれば・・・

早速ドイツ軍の攻撃開始。
・・・orz
早々に頓挫。(だめじゃん)

表になったソ連軍のユニットは軒並み強力。
防御力7とか8とかが待ち構えており、ドイツ軍の攻撃は一ターン目にして足踏みさせられました。

しかし、ソ連軍は司令部の指揮範囲外だと戦力が半減するので、第二ターンから再度突進。
増援の装甲師団の力もあって、二ターン目にはリヴォフを陥落。
前回のようなリヴォフでの市街戦は避けられました。

前回とは違いソ連軍は司令部を後方に徐々に下げ、防衛ラインを張って対抗してきます。
それを突破するのに手間取った上、今日は双方損害という戦闘結果がやたら出る羽目になり、ドイツ軍はステップを次々と失いました。

頼みの装甲師団も自動車化歩兵師団もオーバーランがことごとく相互損害に終わって突破できません。
じわじわとソ連軍のユニットを排除して行くものの、進撃は電撃戦というには程遠いのろのろしたもの。

最終的には突破を果たしたものの、時すでに遅く、ソ連軍の限定的勝利という結果に終わりました。
うーん、残念。

装甲師団の使い方も、オーバーランの活用も下手なんでしょうねー。
電撃戦ができませんでした。
修行しなければ。

それではまた。
  1. 2007/04/01(日) 20:09:54|
  2. ウォーゲーム
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