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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

悪堕ちと魔族化は違うと思うんだがなぁ・・・

ぴんくはてな様のエロゲー、「魔法少女ナユタ」プレイいたしました。
いろいろあるかもしれませんが、ゲームとしては素直に面白かったです。

CGも綺麗ですし、立ち絵ですら発光ラインが入ったり消えたりして結構力入っているなと感じました。
ストーリーもサブヒロインの悲しい末路などなかなかに楽しませていただきました。

エロゲーとしては標準的なレベルを軽くクリアしていると思いますし、価格も良心的でしょう。
いい作品だと思います。
[悪堕ちと魔族化は違うと思うんだがなぁ・・・]の続きを読む
  1. 2007/03/31(土) 20:57:16|
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祝 セ・リーグ開幕 なのに・・・

今日からプロ野球セントラルリーグも開幕です。

144試合という長丁場。
シーズン一位でも日本シリーズには出られないプレーオフ制度など、今年から変わったものもありますが、今年も楽しい季節がやってきました。

まあ、十五年ぐらい前あたりの阪神暗黒時代はそんなふうにも思わなかったかもしれませんけど、それでも開幕は今年こそって意気込んだものでしたねー。

で、開幕試合。
阪神は広島とでした。
結果は・・・
無残1対4・・・orz

八回のワンアウト満塁、バッター金本。
これがレフトフライ。
ランナー帰れず。
ツーアウトになってバッター今岡。
これが三振です・・・orz

今日はこのシーンにつきますね。
残念でした。
明日頑張ってくれー。

と、いうことで、セ・リーグ開幕を楽しみにしていた舞方でした。
それではまた。
  1. 2007/03/30(金) 21:52:39|
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アメリカ南北戦争概略その18

年が明けて1863年1月25日、アンブローズ・バーンサイドは解任され、ジョゼフ・フッカー少将が新たにポトマック軍の司令官に任命されました。
ファイティング・ジョーとあだ名されるフッカーに、リンカーンはポトマック軍の命運を託したのでした。

フッカーはとにかく時間を掛けて北軍ポトマック軍を立て直すことに全力を尽くします。
春になる頃にはポトマック軍は陣容を立て直し、十三万を数えるほどになりました。

一方、南軍リー将軍はフッカーが当分動き出さないことを考慮して、ロングストリート将軍の部隊を別方面の北軍に差し向けます。
そのためリーの手元には六万しか残りませんでした。
しかし、フレデリクスバーグの陣地に篭もって防御に徹すれば、フッカーの大軍にも渡り合えると考えていたのです。

当然のことフッカーは、そのような堅固な防御陣地に篭もる南軍に対して正面攻撃を再度行なうような愚行をするつもりはまったくありません。
彼はリーの南軍を何とかその防御陣地より引きずり出そうと考えていたのです。

彼はリーの軍勢をおびき出すために、大胆にも軍勢の半数近くをフレデリクスバーグの西側にあるチャンセラーズヴィルという町に集結させ、そこからフレデリクスバーグの側面を突くように見せかけます。
フッカーはさらに軍勢を送り込み、最終的には手持ちの七個軍団の内五個軍団までもチャンセラーズヴィルに送り込みました。

こうなるとリーは決断を迫られます。
このまま挟撃を受けるわけには行きません。
リーはアーリー指揮下の一個師団のみをフレデリクスバーグに残し、全軍をもってチャンセラーズヴィルの北軍主力を撃破することにします。

1863年5月1日。
フッカーの前衛はリーの放った索敵隊と接触。
この時点で前線指揮官たちは広い平地に進出して南軍を迎え撃つべきと主張しましたが、フッカーはチャンセラーズヴィル近郊に設置した防御拠点に後退を命じます。
拠点に拠って戦うことで、リーの攻撃を受け流し、その後に反撃に転ずるつもりだったのかもしれません。

フッカーが拠点に篭もったのを確認したリーは、逆に大胆な行動に出ます。
なんと四万ほどまでに減っていた(アーリーの師団などを分派したため)自軍を、さらに分けたのです。
彼は二万五千の兵力を信頼するジャクソンに預け、北軍の側面を迂回させて半包囲陣形を取るつもりだったのです。

これは賭けでした。
フッカーが動き出せば、リーは残った一万五千で北軍七万三千を引き受けなくてはならないのです。

5月2日の午前10時、ジャクソン隊が迂回行動に入ります。
しかし、この行動は北軍シクルズ隊に発見されます。
シクルズ隊との小競り合いの後、ジャクソンはさらに迂回を進め、夕方にはほぼ北軍の背後とも言うべき位置まで進出しました。

シクルズ隊のジャクソン隊発見の報告はフッカーの元にも届けられましたが、フッカーはシクルズ隊から離脱したジャクソン隊はきっと後退したのだろうと考えました。
まさかジャクソン隊が背後までぐるっと迂回行動を取っているとは思いもしなかったのです。

5月2日午後5時ごろ。
オリヴァー・ハワード少将率いる北軍第十一軍団は、日没が近い事と後方にいるという安心感からか夕食の準備を進めていました。
その時、周囲の林の中からジャクソン率いる南軍の兵士たちが喚声を上げながら現れ、北軍兵士たちの度肝を抜きます。
ハワード隊はあっという間に組織立った抵抗をする能力を失い、ほぼ壊滅状態に陥ります。
後退は壊走になり、連鎖反応で隣接した部隊も次々とパニックになりました。

馬上で叱咤するジャクソンに鼓舞され、南軍兵士たちは思うままに暴れまわりましたが、日没も過ぎ、周囲が暗くなって来たあたりで、ようやく北軍も防御体勢を整えることに成功します。

満月に近い月齢の明るさのため、夜間での攻撃が可能と判断したジャクソンは、北軍の防御ラインの弱点を探すべく、自らが偵察に出ます。
数人の幕僚とともに馬上の人となったジャクソンは、偵察を終えると、新たな攻撃を指示するために自軍部隊に戻って行きました。
悲劇はこの時起こります。

南軍部隊の周囲には当然警戒のために歩哨(警戒担当の兵士)が立っておりました。
夜間、月明かりがあるとはいえ、敵味方の識別は困難です。
歩哨は木立を抜けて近づいてくる騎馬の一団が、まさか自分たちの敬愛する司令官だとはまったく思いませんでした。
まず一発。
続いて周囲の歩哨からもまばらな射撃が行なわれ、騎馬の一団が倒れこみます。
恐る恐る近づいた歩哨が確認したその姿は、紛れもなくジャクソン将軍のものでした。

ジャクソンが受けた銃弾は二発とも三発とも伝えられておりますが、重傷だったのは左腕で、彼は左腕切断を余儀なくされます。
そのため、以後のジャクソン隊の指揮はA・P・ヒルが取ることになりました。
しかし、そのA・P・ヒルもその後の小競り合いで負傷。
騎兵指揮官のスチュアートが臨時指揮官となります。

結局夜襲は取りやめとなりましたが、それでも南軍が押していることに変わりはありませんでした。
フッカーは防備を固め、何とかリーの攻撃をしのごうとします。

翌5月3日。
またもリーを驚愕させることが起こります。
フレデリクスバーグに残してきたアーリー師団が、対岸の北軍セジウィック隊に攻撃され、後退したというのです。

リーはやむなくスチュアートに後を任せ、自身は軍勢を率いてアーリーの救援に向かいます。
5月4日、セジウィック隊とリーの軍勢が衝突。
双方痛みわけのような戦闘でしたが、セジウィックが後退。
再びラパハノック川の北岸に戻ります。

それを聞いたフッカーも軍勢をチャンセラーズヴィルより後退。
ここに「チャンセラーズヴィルの戦い」は終結します。

南軍の損害一万三千、北軍は一万六千の兵を失いました。
戦場に残ったのは南軍であり、またしても北軍は手痛い敗北をこうむったのです。

しかし、南軍にとっては最大の悲劇が戦闘終結後に起こります。
左腕切断の重傷だったストーンウォール・ジャクソンことトーマス・ジョナサン・ジャクソン将軍が、当時の不衛生な治療のため、感染症にかかって死亡したのです。
5月10日のことでした。
「川を渡って・・・木陰で休もう・・・」
これが最後の言葉でした。

信頼する部下であり、個人的にも親友であったジャクソンの死はリーを打ちのめしました。
「彼は左腕を失ったが、私は右腕を失った・・・」
南軍にとってはあまりにも大きな損失でした。

その19へ
  1. 2007/03/29(木) 20:47:12|
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アメリカ南北戦争概略その17

「アンティータムの戦い」以後、マクレランが解任された東部の北軍ポトマック軍(いわゆる日本の関東軍とかドイツ第六軍とか言うのと同じ単位としての“軍”)は、新たな指揮官としてアンブローズ・バーンサイド少将が任命されました。
あの、「バーンサイド橋」へ幾度も攻撃を仕掛け、そのたびに撃退されたバーンサイドです。

これはリンカーンが彼を認めていたから任命したというよりは、単に彼が序列上の先任だったというに過ぎないものでしたが、バーンサイドの威勢のよい姿とその特徴的な頬ひげから、多少の安心感を感じさせるものではありました。

マクレランの後任となった彼がまず着手したのが、ポトマック軍をラパハノック川を渡らせ、再びリッチモンドへと向かわせることでした。
そのために彼は、フレデリクスバーグという町で渡河することにしました。
この町はラパハノック川に沿ってできた街で、南岸には高地があり、そこを占拠することで以後の布陣を有利にできると考えたのです。

ポトマック軍総勢十二万の軍勢が動き出し、そのうちの先遣隊が北側の河岸に到着したのは1862年11月17日でした。
(その16で西部方面では年明けになりましたが、東部はまだ1862年のことを書いております)
その時点ではフレデリクスバーグの防備は手薄であり、南軍兵数百がいるに過ぎませんでした。

ただし、ラパハノック川に架かる橋は全て落とされており、北軍の大軍勢は渡河用の仮設橋が届くまで待機をさせられる羽目になります。
渡河用の仮設橋の資材が届いたのは11月22日でした。
その時にはすでにリー将軍麾下の南軍がフレデリクスバーグ近郊の高地に布陣しており、防備を固めてしまったあとでした。

バーンサイドは決断します。
あの「バーンサイド橋」も最終的には落とせました。
フレデリクスバーグでの渡河も決行するべきであると。

南軍はこの時点ですでにラパハノック川南岸に大きく二つに分かれて陣を敷いておりました。
左翼にロングストリートの軍勢、右翼にジャクソンの軍勢です。
その間の距離はかなり離れてはおりましたが、リーは七万の軍勢を二手に分けていたのです。

バーンサイドは自軍も二手に分け、二箇所で同時に渡河することでロングストリート、ジャクソンの両陣地を同時攻撃することにします。
そこでフレデリクスバーグ前面と、やや下流三キロほどのところにそれぞれ三本の仮設橋を作らせることにしました。

架橋は南軍の妨害を撥ね退けながら行なわれ、約二週間ほどもかかってできあがります。
橋ができあがると北軍は隊列を組んでラパハノック川を渡河、12月13日には南軍陣地への攻撃を開始します。
「フレデリクスバーグの戦い」です。

しかし、これは戦いと呼べるものにはなりませんでした。
整列してフレデリクスバーグ郊外の高地に向かう北軍サムター隊及びフッカー隊は、まるで射撃の的のように撃ち倒されて行きます。
何とか斜面にたどり着いた兵士たちも、今度は側面や正面からの撃ち下ろしの射撃に倒されていきます。
どうにか斜面を登っても、そこには南軍の防御陣が待ち構えており、近付く者を一斉射撃が見舞います。
ほぼ一方的な虐殺でした。
その様子を見ていた南軍リー将軍は、一言こう言ったと言います。
「戦争がむごたらしいのは結構なことだ。戦争を好む奴らが多すぎる」

下流域を渡河してジャクソン隊の攻撃に回った北軍フランクリン隊は五万の軍勢を恐る恐る前進させます。
ジャクソンの陣地からの砲撃は北軍の足を止めさせましたが、ジョージ・ゴードン・ミード少将率いる師団が南軍の背面に回ることに成功。
しかし、南軍が適切な反撃を行なったために後退を余儀なくされます。
その後はこう着状態に陥りました。

フレデリクスバーグ郊外の高地への攻撃は一日中続き、北軍兵士は損害をものともせず味方の死体を乗り越えて前進しましたが、最後まで高地を奪取することはできませんでした。
日暮れとなり、ついにバーンサイドも攻撃を中止し後退します。
「フレデリクスバーグの戦い」は終わりました。

北軍の損害は一万二千に及びました。
ほとんどが高地への斜面で倒された兵たちでした。
南軍は五千の損害。
明らかに南軍の勝利でした。

「兵たちの勇猛さはこれ以上はないと思われるほどのものであった。一方将軍たちの指揮ぶりはこれ以下はないと思われるほどひどかった」
北部のある新聞の評価だそうです。

バーンサイドは何とか再度リーの側面から攻撃しようと考え、兵士たちを駆り立てます。
折りしもそぼ降る雨の中の行軍となったため、道はぬかるみ砲も兵も身動きが取れなくなります。
酒を支給してまでの行軍を続けてみたものの、結局北軍はファルマス近郊の野営地に後退することになりました。

リンカーンはこれによりバーンサイドを解任。
わずか81日間のポトマック軍司令官の地位でした。

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  1. 2007/03/28(水) 20:52:51|
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また一人・・・

俳優の植木等さんが亡くなられました。

グループサウンズ「クレージーキャッツ」の一員として活躍し、その後は俳優として一世を風靡したことは皆様ご存知の通り。

個性的な俳優としていい演技なさっていましたよね。
「お呼びでない? お呼びでない・・・こりゃまった失礼いたしました!」
など名セリフもいろいろありました。

また一人逝ってしまいましたね。
寂しいことです。

今日は選抜高校野球でも旭川南も負けちゃいました。
残念ですー。

今日はこれにて。
それではまた。
  1. 2007/03/27(火) 20:47:04|
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アメリカ南北戦争概略その16

東部方面で「アンティータムの戦い」が行なわれる前、リーの軍勢の北上に従って、西部方面でも南軍が動きを開始します。

ブラクストン・ブラッグ将軍麾下の三万五千の南軍が、いまだ去就の定まらぬケンタッキー州中央部への行軍を開始したのです。

西部方面の北軍は、少し前からまたしても指揮権分断という悪条件に陥っておりました。
西部方面の北軍総司令官だったヘンリー・ハレックが、北軍の総司令官としてワシントンに呼び出され、以後リンカーンの下で参謀総長とも言うべき職務に就いたのです。
そのため西部の北軍はグラント率いる軍勢と、ビューウェル率いる軍勢の二つが別々の行動をする事態になりました。

一方南軍も、ハレックにより追い詰められていたボーリガールがデイビス大統領によって罷免され、ブラッグ将軍が指揮を取ることになりました。
彼は、北軍ビューウェル隊がのんびりとした行軍でテネシー州チャタヌーガへ南下しようとしていたのを、逆に討って出て撃破しようと目論んだのです。
彼は先手を取ってチャタヌーガに軍勢を集め、そこでいったん休養をとった後、さらに北上を開始しました。

慌てたのはビューウェルです。
彼は五万五千ほどの軍勢を預かっておりましたが、ブラッグ隊三万五千に加え、彼と同調しようと目論んでいる南軍エドワード・カービー・スミス将軍の一万が合流すればその差はわずか一万ほど。
彼は無理をせずにいったんルイヴィルまで後退します。
ルイヴィルで防御を固め、そこで南軍を迎え撃つつもりでした。

しかし、ブラッグは攻撃しませんでした。
彼はペリーヴィルでスミス隊と合流した後、ケンタッキー州の州都フランクフォートへ出かけていたのです。

ビューウェルはワシントンのハレックから進撃するように催促されていました。
進撃しなければ指揮権を剥奪すると脅されて、やむなくビューウェルは討って出ます。
両軍は1862年10月8日、ペリーヴィル近郊でぶつかり合いました。

この戦いは小競り合いと言うには大きく、会戦と言うには小さい戦いでしたが、北軍は四千二百、南軍は三千四百ほどの損害を出しました。
そして、兵力の少ない南軍は後退を余儀なくされます。
一応の勝者は北軍でした。

しかし、後退する南軍を追撃もせずにただ見送ったビューウェルはここで解任。
後任にはウィリアム・ローズクランズが後を継ぎます。

一方の南軍もせっかくケンタッキーに侵攻しながら、なすすべなく帰ってきたブラッグに批判が集まります。
デイビス大統領のお気に入りだったブラッグは、解任こそまぬがれますが、ジョーゼフ・ジョンストンが怪我から軍務に復帰したのを契機に、西部方面の南軍総司令に彼が就任。
ブラッグはジョンストンの配下に回されます。

ローズクランズはワシントンのハレックよりまたも指揮権剥奪をちらつかせた脅しを受けますが、ビューウェルと違って彼は準備ができ次第と答えてそれっきり無視しました。

それでも進撃をしないわけには行きません。
ローズクランズは麾下の軍勢四万七千をクリスマスの翌日ナッシュヴィルから南下させます。

1862年12月30日。
両軍はマーフリーズボロという町の郊外に布陣します。
北軍ローズクランズは四万七千。
対する南軍ブラッグ隊は三万七千。
両軍ともそれぞれ相手の右翼側への攻撃を主軸に戦闘を展開する腹積もりでした。
一つだけ違ったのは、ローズクランズが翌午前7時を攻撃開始時刻にしたのに対し、ブラッグは夜明けをもって攻撃開始と定めたのです。

開けて1862年12月31日。
大晦日の夜明けから戦闘が開始されました。
マーフリーズボロ近郊を流れる川から名前を取った「ストーンズ川の戦い」(南軍呼称マーフリーズボロの戦い)です。

夜明けとともに動き出した南軍がやはり主導権を握りましたが、北軍右翼はフィリップ・シェリダン将軍率いる師団がどうにか持ちこたえます。
南軍はじわじわと北軍右翼を追い詰め、シェリダンもじりじりと後退。
北軍は結局右翼が押し込まれてLの字のような陣形になりますが、終始粘って南軍に出血を強いました。

明けて1863年1月1日。
この日は双方とも戦闘を再開するには至らず、穏やかな時が両軍の間に流れます。

1863年1月2日。
今度はローズクランズが先手を取り、南軍側面の丘に兵を差し向けます。
それを見たブラッグも兵を差し向け、双方で丘の取り合いの激戦が始まりました。
結局丘は南軍が確保したものの、北軍陣地からの絶え間ない砲撃により撤収。
双方とも得るものない戦いに終始してしまいます。

ことここに至り、ブラッグは部下の勧めもあって後退を決意。
1月3日の夜に南軍は戦場を離脱しました。

三日間の戦いで、南軍はおよそ一万二千、北軍も一万三千の兵を死傷させてしまいました。
生き延びられただけでホッとしたローズクランズは追撃を断念。
1863年は前年同様またしても血まみれで始まりました。

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  1. 2007/03/26(月) 20:54:37|
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震度6

今日午前9時40分ごろ、石川県を中心に地震がありましたね。
輪島市や七尾市では震度6強と聞きました。

亡くなられた方もいらっしゃいますし、怪我をされた方も大勢いらっしゃるようです。
被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

地震国日本ですから、数年に一度大きい地震がありますね。
「災害は忘れた頃にやってくる」を肝に銘じて行きたいものです。

とはいえ備えらしい備えをしていないんですよねー。
今回の地震をきっかけに備えをしておかないとなー。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2007/03/25(日) 20:08:12|
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アメリカ南北戦争概略その15

甲子園では春の選抜高校野球大会が始まりましたし、プロ野球もパシフィックリーグは開幕です。

いよいよ春本番ですねー。
北海道日本ハムは降雨コールド引き分けでした。
今年は優勝厳しいだろうなぁ~。
阪神はどうかなー。
どっちもがんばれー!

というわけで、南北戦争です。
ようやく前半戦が終了し、中盤に差し掛かるところですね。
もう少しお付き合い下さいませ。


「アンティータムの戦い」は終わりました。
戦場には北軍が残り、南軍はメリーランドより後退しました。

損害は大きかったものの、これはまさに勝利でした。
しかも大きな勝利でした。
自軍の損害と、なおピンカートン情報などによって幻影の南軍に翻弄されていたマクレランは確固たる追撃をすることができず、リーの軍勢をヴァージニアに逃してしまうという状況ではありましたが、勝利には違いありません。

そして、この勝利が一番影響を与えたのは、戦場ではありませんでした。

南部の独立を認めず、この戦争を連邦制維持のための戦争と捉えていたリンカーンは、南部社会及び経済に取り、何が一番ダメージを与えるかを見極めておりました。

「奴隷制」です。
奴隷制を崩壊させることこそが、南部を崩壊させることなのです。

南部の社会は奴隷制が深く根付いておりました。
奴隷制の廃止は、南部にとっては政治、経済、さらには文化に至るまで失うことになるのです。
それは北部にとっては南部に対する報復心をも満たすものでした。

さらに奴隷は兵士として戦ってはいなかったものの、陣地設営や後方支援、食糧増産などに駆り出されていました。
奴隷がいなくなれば、南軍の戦力が大幅ダウンするのは目に見えていたのです。

そして、奴隷解放という名目は、諸外国に対しても実に口当たりのいい戦争目的でした。
この戦争は北部にとっては虐げられた人々を解放する正義の戦争であると印象付けることができるのです。

奴隷解放。
そのスローガンをリンカーンは発表するチャンスをうかがっておりました。
南軍が押せ押せムードでいる時に発表しても、それはさしたる効果を持たないどころか、苦し紛れのやけっぱちな行為ととられかねません。
発表には北軍の勝利が必要でした。

その勝利が「アンティータムの戦い」で手に入りました。
スカッとした勝ち方ではなかったかもしれません。
しかし、マクレランはリンカーンが待ち望んでいた勝利を献上することができたのです。
戦場から後退した以上、南軍は勝利を主張することはできませんでした。

1862年9月23日。
リンカーン大統領は「アンティータムの戦い」のわずか五日後に、「奴隷解放予備宣言」を発表します。
これは翌1863年1月1日をもって叛乱地域に存在する全ての奴隷は自由とするというもので、北部連邦内の奴隷に関しては今までどおりという、非常に矛盾した内容でした。

しかし、この予備宣言の効果は大きく、英国及びフランスによる干渉はほぼ排除されることになります。
奴隷を解放するというインパクトのある宣言を前にしては、南部諸州同盟を独立国として承認することははばかられてしまったのです。
また、この宣言により、南北戦争がもはや相手側の崩壊を持ってしか終戦にはなりえなくもなったのです。
この宣言が出される以前であれば、南北両政府は互いの妥協点を見出し、南部が連邦制にとどまる替わりに奴隷制の尊属が認められるということもありえました。
しかし、この宣言が出された以上、妥協はありえなくなります。
南部はその社会を維持するためにも戦わなくてはなりませんでした。

勝利者となったマクレランではありましたが、リンカーンは彼に失望しておりました。
リーの軍勢を追撃することもせずにその場にとどまり続けた彼は、やがてリンカーンにより解任されます。
ポトマック軍は敬愛する司令官を失いました。
マクレランはこれ以後二度と軍の指揮を取ることはできませんでした。
彼はこの後反リンカーンの立場を取って1864年の大統領選挙に出馬し、リンカーンに敗れます。
その後はヨーロッパに一時滞在し、帰国してのちはニュージャージー州の知事として地方自治に携わります。
1885年、五十九歳で死去。
北軍を組織化し、戦える軍勢にしたのは間違いなく彼の功績でした。
アンティータム以後の北軍司令官は、彼が作り上げた北軍をただ上手に運用したに過ぎません。

ともあれ、一つの局面が終結しました。

その16へ
  1. 2007/03/24(土) 21:28:22|
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アメリカ南北戦争概略その14

リーの布陣したシャープスバーグ近郊は防御拠点としてはそれなりの場所でした。
広い川幅のアンティータム川が前面に広がり、その川岸は斜面となって攻撃側を苦しめる防壁となります。
左翼(南軍から北軍を見て)には林やトウモロコシ畑が射線をさえぎり、中央部の平地に向かってはダンカー派の教会(ダンカー教会と呼ばれる)付近の高地に大砲を据えて射界に収めてありました。
さらに窪地に作られた切り通し道路が天然の塹壕となって部隊を保護してくれます。
防御陣地を作る暇のなかったリーにとってはありがたい地形でした。

しかし、いかんせん南軍は北軍の半分の戦力です。
北軍の総攻撃を受けた場合、この場を支えきれるかどうかは疑問でした。

一方、八万の軍勢を戦場に集結させたマクレランでしたが、前日の戦いの折に重傷者を収容した建物の二階で作戦会議を開くなどをしたため、うめき声と悲鳴ですでに戦う前からげんなりしていました。
戦力差2:1の状況であれば、いろいろと取りえる策はあったでしょう。
マクレランは麾下の軍勢を南軍を半包囲するような形で両翼に展開させました。
北から第一軍団(フッカー隊)、第十二軍団(マンスフィールド隊)、第二軍団(サムナー隊)、第五軍団(ポーター隊)、第九軍団(バーンサイド隊)の五隊です。

今となっては彼が何を考えていたかを知るすべはありませんが、戦闘というものに造詣の深いマクレランは、おそらくナポレオン戦術に範を得ていたのかもしれません。
彼はまず右翼(北軍から見て)から攻撃し、継いで左翼、そして中央から予備隊を投入して突破するという作戦だったと思われます。
しかし、この作戦は数の優位さをまったく生かすことができません。
現実にも北軍は苦戦を強いられることになります。

1862年9月17日。
朝のコーヒーすら飲むことができないまま、ジョゼフ・フッカー率いる北軍第一軍団が南軍左翼に攻撃を開始します。

余談ですが、彼のあだ名はファイティング・ジョーと呼ばれるのですが、これは公式文書の一文の句読点の位置が、「戦闘中(ファイティング)、ジョー・フッカー」となるべきところを、「ファイティング・ジョー、フッカー」としてしまったためらしいです。
また、規律に厳しくなかった彼が、北軍部隊の行軍に民間人が入り込むことを許したために、売春婦が出入りするようになり、以来売春婦のことをフッカーと隠語で呼ぶようになり、現在に続いているとのことです。
(異説あり:ただしフッカー=売春婦が広まったのは南北戦争から)

ファイティング・ジョーのあだ名に相応しく、彼は勇んでダンカー教会周辺の南軍へ向かいます。
その近辺にいたのはジョン・B・フッド准将率いる南軍でしたが、彼は冷静に北軍の攻撃を受け止め、フッカー隊に出血を強いて行きます。
横合いの高地からの砲撃と、フッド隊の射撃により、フッカー隊はただただ損害ばかり多い前進を続けることになります。

第一軍団(フッカー隊)の苦境を支援するべく動き出したのが、ジョゼフ・マンスフィールド率いる第十二軍団でした。
フッカー隊の隣に配された彼の軍団は、トウモロコシ畑を横切ってダンカー教会を目指します。
待ち受けるのは同じく南軍フッド隊。
彼らの射撃でトウモロコシ畑は血の海となり、マンスフィールドも馬上で銃弾を受け戦死。
同じ頃にフッカーも負傷します。
しかし、それでも数に優る北軍は必死に攻撃し、午前九時ごろにはどうにかダンカー教会周辺を確保しました。

北軍はさらにエドウィン・V・サムナーの第二軍団に前進を命じ更なる圧迫を加えようとします。
彼はアンティータム川北側の浅瀬を渡り、南軍中央部の切り通し道路に攻撃を加えました。
そこを守っていたのは南軍D・H・ヒルの部隊でした。
天然の塹壕に立て篭もったヒルの部隊は、せまり来る北軍サムナー隊を打ち倒して行きます。
南軍の射撃により甚大なる損害をサムナー隊は出しますが、それでもじりじりと南軍を押して行き、D・H・ヒル隊は三時間ほど粘ったのちについに切り通し道路を明け渡します。
後退する南軍と前進する北軍の兵士たちの死体が折り重なり、切り通し道路はのちに「血の小径(こみち)」と呼ばれる事になります。

左翼及び中央部での北軍の猛攻により、南軍防御陣は崩壊の危機に瀕しました。
ここでのもう一押しがあれば南軍を全面潰走に導くこともできたかもしれません。

しかし、マクレランは第一、第十二、第二軍団のあまりの損害の多さに躊躇します。
彼はこの三つの軍団に一時的に進撃を停滞させ、左翼(北軍側の)に位置するアンブローズ・バーンサイド麾下の第九軍団に攻撃命令を出します。

これにより南軍左翼は壊滅の危機をまぬがれ、南軍は体勢を整える時間的猶予を得ることができました。
このマクレランの判断は最悪の結果となってしまいます。

バーンサイドはアンティータム川に架かる石の橋を目指して進撃します。
ほかにもいくつかの渡れる浅瀬はあったのですが、彼は偵察をしておかなかったので、知らなかったのです。
一本の頑丈な石橋が、戦いの焦点となりました。
南軍ロバート・トゥームズ准将率いる部隊がこれを迎撃します。
とはいえ、南軍は持てる兵力のほとんどを左翼と中央に移しておりました。
石橋周辺を守るのはわずかに数百人の南軍兵士たちだけ。
まさに北軍の巨大兵力からすれば鎧袖一触の危険すらありました。

しかし、橋という狭い通路によって北軍は戦力を展開できません。
南軍のわずかな兵士たちの射撃が北軍第九軍団を釘付けにします。
バーンサイドは苛立ち、何度も攻撃を仕掛けますが、そのたびに撃退され、以後、この橋は「バーンサイド橋」と呼ばれるようになります。

午後一時ごろ、ようやくバーンサイドの第九軍団は橋を奪取。
そのままトゥームズ隊を蹴散らしてシャープスバーグのリーの本陣に迫ります。
しかし、攻撃に手間取っているうちに時間だけが過ぎて行きました。

午後三時ごろ、果敢に攻め立てる北軍第九軍団の横合い、南方から新たな軍勢が現れます。
南軍A・P・ヒルの部隊でした。
ようやくこの戦場に合流してきたのです。

A・P・ヒルの出現は北軍第九軍団にとってはまさに予想外でした。
横合いから攻撃を受けた第九軍団は、たまらずに「バーンサイド橋」まで後退します。
戦闘はここで日暮れにより終結しました。
「アンティータムの戦い」は終わったのです。

翌9月18日は双方ともにらみ合いに終始し、9月19日にリーは戦場を離脱しました。
南軍はメリーランド州を離れ、ヴァージニア州まで後退したのです。
戦場に残ったのは北軍でした。

9月17日のわずか一日の戦いにおいて、北軍は一万二千五百の死傷者を出し、南軍も一万から一万四千ほどといわれる死傷者を出しました。
一日の死傷者数計二万五千近くというのは、合衆国史上最大であり、この記録は第二次世界大戦、ベトナム戦争、湾岸戦争を経た現在まで破られておりません。
まさに血みどろの一日だったのです。

その15へ
  1. 2007/03/23(金) 20:11:00|
  2. アメリカ南北戦争概略
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バグアイドモンスター

アメリカの静かな山間の村フリーダム。
先ほどまで降っていた雪も止み、真夜中となった今は物音一つすら立たない。

いや、静か過ぎた。
いつもなら獲物を探すふくろうの声や、狼の遠吠えなどが聞こえてくるはずなのだ。
まったく静まりかえった村に、いま上空から何かが近づいてくる。

赤や黄色のカラフルな明かりを明滅させ、ウィンウィンと奇妙な音を立てて降下して来るそいつは、宙に浮かぶ円盤のような形をしている。
そう、まさしく空飛ぶ円盤なのだ。

やがて円盤は怪しげな光線で地面を焼き払うと、林の中に作り上げたその着陸地に静かに降り立つ。
その横腹にあるハッチが開くと、反重力を使った空中浮揚装置である反重力スレッドに乗った怪しげな生き物が姿を現した。
昆虫のような大きな目(BUG-EYED)を持つ化け物(MONSTERS)、いわゆるBEMだ。
彼らは人間で言うところの両腕の位置にくねくねと動く触手を持ち、器用に機器類を操作する。
反重力スレッドの上にはそんなBEMどもが数体乗り込み、まさにフリーダムの民家に近づいていくのだ。
住民は明日も今日と変わらぬ一日と信じて安らぎに包まれた眠りの中。
ついに宇宙からの侵略が人知れず始まろうとしているのだった。

BEMの目的は「女」
彼らはどういうわけか人類の女を手に入れるべく現れたのだ。
しかも人間とは似ても似つかぬ彼らでありながら、美しい女を求めるのは人間と同じ。
はたしてフリーダムの住民の運命やいかに・・・

というわけで、前から買おうかどうか悩んでいた「RPGamr」誌vol8(国際通信社)、手に入れちゃいました。
この雑誌についている付録が、今述べたような設定を持つボードゲーム「バグアイドモンスター」なんです。

いやー、もうね1986年発行の「シミュレーター」誌№6(翔企画)に紹介記事が載って以来、ず~~~~と気にはなっていたんですよねー。
何せ、エイリアンが(BEMが)地球人の女をさらいに来るんですよ。
こういう設定のバカゲーはなかなかお目にかかれないでしょう。
それが雑誌付録として日本語訳されて出るなんてもうね、嬉しいですよね。
でも、買うかどうか悩みました。
何せバカゲー。(これは褒め言葉ですよー)
相手もいないしゲーム自体するチャンスが・・・
と思っていたんですけど、今逃すと絶対手に入らなくなるなと思って買っちゃいました。

いいですねー。
まだソロプレイですけど、実にまじめにバカゲーを作っているのをひしひしと感じます。
BEMは女をさらいに住民の家に忍び込むんですが、女性にはそれぞれ魅力(ゲームでは色気値)が数値で表わされていて、最高6から最低1までの十五人います。
この十五人の女性をできるだけ宇宙船に連れ込むのがBEMの目的なんですが、連れ込んだ女性の色気値の合計が高いほどBEM側の勝利となります。

コマにはそれぞれ格闘に使う腕力と射撃に使う命中値があり、BEMも無敵の存在ではなく人間の持つナイフや銃に殺されちゃうこともあります。
また、女をさらいに来たBEM側は、地球人の女性の魅力に参っちゃうのか、肉欲値というのが各BEMに設定されていて、女性と一緒にいる場合その肉欲値と女性の色気値を足して、2D6でそれ以下の目を出しちゃうと発情してしまい、そのターンは移動戦闘ができなくなります。

得点の高い美人をさらいに行くも、あまりの美しさにBEMが全て発情してしまい、その家の住民にタコ殴りされてしまうというのも充分ありえます。
(実際ソロプレイでは五体のBEMが美人に見とれて全滅した)

人類側は、いかに早くBEM襲来を近所の人々に知らせて村人をたたき起こすかにかかっています。
中には主人がアル中でさらに民主党支持者だということで、何を言ってもほら話と思われて村人に相手にされない家族もありますが、普通の人は隣家に助けを求めれば、そこの家の人がおきて一緒に戦ってくれます。
アメリカらしくショットガンや拳銃も各家庭にはありますし、消防署には斧、農家には牧草用のフォーク、山間の村なのでチェーンソーを所持している家もあり、BEM側のレーザーガンといい勝負です。
実際BEM側は住民が起き出してしまうと勝ち目が薄くなりますので、できるだけ静かに活動することになるでしょう。

それにしても・・・
私だったらついつい追加ルールを付けてプレイしたくなりますねー。
連れ去られた女性は、一ターンをUFO内で過ごすことで洗脳され、BEM側によってコントロールされる。
コントロールされた女性コマは住民に怪しまれずに行動できるため、各家庭に侵入した最初の戦闘は住民側は反撃できない。
などなど・・・
かなりBEM側有利になっちゃうでしょうけど、やっぱりさらったからには洗脳したいですよねー。
そういう追加ルールを付けたくなるようなゲームでした。
今度はぜひ相手を見つけてプレイしよう。

それではまたー。
  1. 2007/03/22(木) 20:52:51|
  2. ウォーゲーム
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アメリカ南北戦争概略その13

ポープの敗北により、戦争の主導権は南部諸州同盟側に移りました。
この時期英国では、北部連邦が更なる敗北を重ねた場合には、南部の分離独立を前提とした仲介を行なう用意を内閣が考えるまでになります。
北部連邦としてはこれ以上の敗北はなんとしても食い止めたいところでした。

半島戦役でさしたる成果を挙げられなかったマクレランにとっても、ここで目に見える成果を上げることが必要でした。
せっかく営々と築き上げてきた地位も名声も失うことになりかねないのです。
マクレランは意を決して南軍との決戦を目論みました。

一方リーも手に入れた主導権をむざむざ取り返されるようなことはいたしません。
彼は南軍によるメリーランド侵攻を実施します。
これはワシントン北西部を支配することによって、北からの圧力をワシントンにかけることができ、同時に北部の潤沢な物資を手に入れることで、兵士たちの給養状態を改善しようという目論みもあったようです。

リーはまず軍勢をフレデリックという町に集結させ、そこからハーパーズ・フェリーという町にいる北軍守備隊一万二千を包囲するべく、軍勢を四つに分けて進めます。

リーの軍勢の位置をキャッチしたマクレランは、全軍を上げてこれを補足するべく行軍を開始しますが、やはりそこは彼自身の臆病とも言えるほどの慎重さで、軍勢は遅々として進みません。
リーはそれをわかっていたのです。
分進合撃は上手くいけば敵を包囲できますが、その前に個別に各個撃破される危険が高く、なかなか上手くいかないことが多いのですが、今回リーはマクレランなら大丈夫と踏んでいたのでしょう。

とはいえ、ここである事件が起こります。
リーが各軍団に出した命令191号を記した文書が北軍の手に渡ってしまったのです。

一説によれば、南軍士官の一人がこの命令による各軍団の配置を記した紙で三本のタバコを包んでいたところ、それがいつの間にかポケットから落ちて北軍兵士に拾われてしまったものらしいです。
この計画書を拾ったマクレランは大喜びで、「これでボビー・リーを打ち負かすことができなかったら、俺は喜んで田舎に引退するよ」と言ったそうですが、リーにとってはまさに一大事でした。

マクレランが作戦計画書を手に入れたことを、地元の南軍贔屓の住民から聞き入れたリーは(このあたり軍事機密というものの重要性がまだ理解されていなかったのだろうか? 南軍も北軍もわりと情報がぽんぽん漏れているような気がします)、軍勢を分離していることの脆弱さに気付き、急いで再集結をはかります。

しかし、すでに広がってしまった各軍勢を呼び戻すのは時間がかかります。
南軍が分離していることを知ったマクレランは、合計で十万になる軍勢で南軍を圧迫し始めました。

しかし、南軍はD・H・ヒルとラファイエット・マクローズの軍勢がどうにか北軍前衛を食い止めます。
そうこうしているうちにジャクソンはハーパーズ・フェリーを包囲。
1862年9月15日、ハーパーズ・フェリーは降伏します。

この時降伏した一万二千という捕虜の数字は、太平洋戦争において日本軍によりフィリピンが陥落するまではアメリカ軍にとっては最大の数字でした。

リーが危機に陥っていることを知ったジャクソンは、すぐさま部隊を引き連れて北上。
リーの布陣するシャープスバーグの町に到着したのは翌9月16日。
マクレランの北軍がD・H・ヒルや、マクローズの妨害を排除して、シャープスバーグに姿を現すのはそのわずか数時間後というきわどさでした。

それでもリーの軍勢は四万一千。
対するマクレランは後方守備などに兵を置いているとはいえ八万七千。
両軍はシャープスバーグの町近辺にアンティータム川をはさんで対峙します。
南北戦争でも名高い「アンティータムの戦い」の幕が切って落とされます。

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  1. 2007/03/21(水) 21:10:52|
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アメリカ南北戦争概略その12

マクレランに愛想を尽かしたリンカーンは、まだマクレランが軍を率いていた頃から、ワシントン周辺の兵力をかき集めて新軍を編成します。

マクレランのポトマック軍に対してヴァージニア軍と名付けられたこの軍勢は、四万五千の戦力を持ち、司令官に西部方面(何度も言いますが、ワシントンから見て西部というだけで、実際はアメリカ中北部)で活躍していたジョン・ポープ少将を担ぎ出しました。

ポープは自分の戦ってきた西部の戦歴を自慢することでリンカーン以下の信頼を勝ち得たものの、将兵に対しては逆に東部の将兵を小ばかにしたような態度と取られてしまい、人気を得ることはできませんでした。

そんな中ポープはハリソンズ・ランディングに後退して立て篭もるマクレランをしり目に、ワシントン方面から南下。
ゴードンズヴィルという地点へ向かいます。
ここは鉄道の重要な結節点であり、ここを押さえることで南軍の鉄道による移動に対して効果的に分断できる地点でした。

北軍の新編成のヴァージニア軍の動きを察知したロバート・E・リーは麾下の将軍から一番信頼をしている“ストーンウォール”ジャクソンに一万二千の軍勢を預けてゴードンズヴィルへ向かわせます。

ジャクソンはゴードンズヴィルを守るどころか逆に討って出ます。
ポープの前衛に配されたバンクス将軍の八千をシーダーマウンテンで迎撃したジャクソンは、自軍の数の優位にかえって戸惑ったのか、彼らしくない戦いで損害を重ねたものの、どうにか北軍を撃破します。

バンクス隊が撃破されたポープはゴードンズヴィルへ向かうのをあきらめ、軍勢を北へ後退させます。
ジャクソンもそれ以上の攻撃は行なわずにロングストリートと合流。
陣容を整えた上でポープの軍に向かいました。

その頃マクレランは南軍の目がポープのヴァージニア軍に向いているのをいいことに、ゆったりと退却にかかります。
ポープの軍と合流して圧倒的多数で南軍と戦うということは、すでに彼の頭にはないようでした。

ジャクソンはリーの提案によってポープの軍を迂回してその補給路を断つ作戦に出ます。
ジャクソンはロングストリートと再度分離し、自軍部隊だけを率いてぐるっとポープ軍を迂回して長躯マナサスへ向かい、ポープの補給物資を奪いました。
南軍兵士は見たこともないほどの大量の略奪品にしばし時を忘れたほどでした。

背後に南軍が回ったことを知ったポープはすぐに全軍をそちらに向けました。
補給を断たれた軍勢はもろいものです。
ポープはなんとしても補給路を再度開く必要がありました。

ポープの軍勢が向かってくることを知ったジャクソンはマナサス西方の丘の上に陣を敷きます。
ポープもこしゃくなジャクソンに対して軍勢を進めます。
マナサス西方の丘で両軍は激突することになりました。
第二次ブル・ランの戦い(南軍呼称第二次マナサスの戦い)の始まりです。

ジャクソンが後退すると読んでいたポープは全軍を両翼展開させてジャクソン軍を包囲することにします。
しかし、ジャクソンの遅滞戦術に阻まれたポープ軍の一翼を担うポーター将軍は前進できずに終わってしまいます。
ロングストリートの援軍がジャクソン軍に合流するのを阻止できなかったばかりか、軍勢を集結させたポープは結局数の優位を生かせない正面攻撃に終始してしまい、最悪のタイミングでロングストリート軍に側面を突かれるという大失態を犯します。

北軍はかろうじて秩序だった後退を行なうことに成功。
全軍潰走の憂き目を見ることだけは避けました。
北軍の損害は一万六千。
南軍は九千の損害でした。

ハリソンズ・ランディングより撤退したマクレランは、それ見たことかとほくそえみ、一方のポープは部隊の指揮官に対し当り散らすという体たらくで、リンカーンは結局再度マクレランに北軍の指揮をゆだねるしかありませんでした。

幸いなことにリンカーンら上層部の評価とは裏腹に、マクレランは兵士たちには非常に好かれておりました。
第二次ブル・ランの戦いの敗戦で意気消沈していた北軍兵士たちに対し、マクレランが再び指揮を取ると宣言しただけで、北軍兵士の士気は上がり軍勢は再び立ち上がったのです。

リーとマクレランの再度の決戦が行なわれることになりました。

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  1. 2007/03/20(火) 20:56:05|
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パンツァーグルッペクライスト

昨日はまた友人(先輩:先日のアステロイドのプレイをしてくださった方とは別人。いつものゲームをしてくださる方です)にお越しいただいて、ウォーゲームの日でした。

日曜午後は軍司令官という状況なので、長い時間がかかるゲームはなかなかプレイできません。
それなりの部屋の広さはあると思いますが、それでもA1フルマップをテーブルに広げると、いっぱいいっぱいですしね。
(それでもうちのテーブルがちょうどA1サイズなので助かること)

まあ、飲み物を置くスペースがなくなりますし、予備のユニット(コマ)を置くスペースもなくなるし、フルマップのゲームは時間がかかりそうだし・・・
(そんなこともないんですけどね)

で、自然とハーフマップぐらいのお手軽ゲームに目が向きます。
GDW社あたりの120シリーズ(120個のコマで120分でルールが読めて120分でプレイができるからとか)や翔企画のSSシリーズ(スモールシミュレーションゲーム・・・だったかな?)あたりがいいんでしょうけど、以前ホビージャパン社から出ていた「タクテクス」誌付録ゲームは、基本的にハーフマップだしお手軽だし(以前紹介した中国農場もタクテクス付録)ということで、昨日もタクテクス付録ゲームをすることにしました。
(本来なら一所懸命にユニットを切って整理した「アンティータムの戦い」コマンドマガジン日本版/国際通信社59号付録あたりをやりたかったんですけどね。南北戦争だし)

で、昨日のプレイは「パンツァーグルッペクライスト」(タクテクス誌29号第二付録)

ウォーゲーマーなら知らぬ人はいない(今はそうでもないかな? かつてはそうでした)かの有名な「パンツァーグルッペグデーリアン」というゲームのルールをそのまま流用し、バルバロッサ作戦時のドイツ南方軍集団戦区の戦いを表わしたゲームです。

付録として付いていたのは知っていましたし、ユニットも別売のを購入して持っていたんですが、実はこれが初プレイ。
無論対戦する上で恥ずかしくないようにソロプレイはしておきました。

初期配置は一応フリーなんですが、前線をZOC(ゾーンオブコントロール:支配地域のこと、ゾックと読む・・・一つのユニットはその周囲にも部隊を展開しているとみなされ、その影響としてユニットの周囲にはこの支配地域を持つことになる。ゲームによって効果はさまざまだが、このゲームでは敵のZOCに入るとそれ以上の移動はできない。さらに離脱もできない)で隙間なく収めるように指示されているので、実のところ配置できるヘクス(地図上の六角形の升目のこと)は決まっちゃいます。

ただし、ソ連軍側は全ての部隊が裏返しにされ、歩兵(狙撃兵:ソ連軍は歩兵とは呼ばずに狙撃兵と呼んだ)か装甲部隊とわかるだけで、戦力がどのくらいあるかは戦ってみないとわからない状態で配置されます。
つまり、ここは重要だと思って部隊を置いても戦力が低いカス部隊だったり、平地でボケッとしている部隊が実は意外に強力だったりと、ドイツ軍側もソ連軍側もドキドキ状態。
これがこのPGG(パンツァーグルッペグデーリアン)システムのよいところ。

例によって防御側が好きな先輩はソ連軍側。
(いつもなんだけど、この先輩はどこの国が好きだからやりたいとは言わない。とりあえず防御側がいいらしい。アフリカ戦のように前半ドイツ側が攻撃して後半英軍側が攻撃するようなゲームの場合どっちをやるんだろう?)
前線に薄く広がるソ連軍を見て、攻撃側のドイツ軍が配置する。
と、言ってもこちらも前線をZOCで覆わなければならないので、やはり配置は薄く広く。

しかし、こちらには装甲師団という牙がある。
第11、第13、第14装甲師団の攻撃力と、ドイツ軍の機械化部隊にだけ許されている二度目の移動をフルに使ってゲーム盤の東端から突破しなくてはならないのだ。
パンツァーフォー!

第一ターン、全戦線でドイツ軍の攻勢が始まる。
突破できそうなところに戦力を集中し、ほかは足止めのためだけで戦闘はしない。
早速装甲師団と歩兵師団二つで川の向こうの森にいるソ連軍を攻撃。
裏返っているユニットを表にしてドキドキの戦力確認。
げげっ、7戦力もあるー?
このゲーム中一二を争う強力部隊。
何でこんなのがこんなところに・・・
ほかにも5とか6とかがウヨウヨ。
突破できませんよー・・・orz

とは言うもののどうにか敵を後退させ、第二移動でオーバーラン(移動の途中で敵を攻撃してさらに移動)してどうにか突破口を開く。
リヴォフ(ソ連の都市:占領すると10点もらえる)前面が開いたので、装甲師団を長躯リヴォフに駆け込ませて占領。
ソ連軍は司令部のそばにいないと補給が切れて戦力ダウンというルールがあるため、各地で補給切れをする。
そうなればドイツの装甲師団は強力だ。
突破して包囲して除去していく。
最初は心配したがどうにかなりそうと思ったのもつかの間、増援部隊と残存戦力をかき集めたソ連軍がリヴォフに逆襲を仕掛けてきた。

ソ連軍は後退して戦線を張り直すだろうと思っていた私はリヴォフ周辺の敵を掃討するために歩兵部隊を展開しており、リヴォフには装甲師団が単独でいたのだ。
なんと、独ソ戦が始まったばかりのこの時期に、「スターリングラード」もかくやと思われるがごとき市街戦が勃発。
包囲された第16装甲師団(増援で入ってきて長躯リヴォフに駆け込んだ)と、それを包囲するソ連軍部隊の間で激しい戦いが繰り広げられる。
私は引き抜ける部隊を集め、リヴォフを包囲するソ連軍をさらに外側から包囲するという状態。
頭悪いことやっているなーと思いつつ、ゲーム盤上のほぼ半数のユニットがリヴォフ周辺で激戦を繰り広げるという体たらく。
最終的に外と内からの攻撃でソ連軍は撃破され、盤上にはわずかな数のソ連軍しか残らなくなる。
こうなるとほぼ突破が可能となったので、投了となった。

お互いしょうもない戦いを繰り広げたような気がして反省。
でも、このゲームは楽しめるということが確認できました。

その後は同じタクテクス誌付録の「ワグラムの戦い」を時間までプレイ。
自作ユニットがなかなか上手くできたので満足。
でも別売ユニットがあればなぁ。

戦いそのものはまさにグダグダ・・・orz
オーストリア軍に押し込まれてしまいました。
時間切れ投了でしたけど、続けていてもフランス軍勝てなかっただろうなー。

と、言う感じで楽しみました。
少しでも雰囲気が伝われば幸いです。
それではまた。
  1. 2007/03/19(月) 20:24:45|
  2. ウォーゲーム
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魔リングエンドBバージョン

皆様すでにご存知とは思いますが、沙弥香様のサイト「沙弥香の脳内妄想」にて、沙弥香様の作品の二次創作SSを掲載させていただきました。

沙弥香様が快くこちらでの掲載もお許しいただきましたので、今回掲載させていただきます。

なお、大元となりました「魔リング」につきましては、「沙弥香の脳内妄想」3月5日から3月15日まで四回に渡って掲載されておりますので、ぜひぜひそちらもお楽しみいただければと思います。

沙弥香様、このたびはありがとうございました。

1.
香山まどか(こうやま まどか) ―
彼女は光の世界の神々が造り給うた正義の指輪、「エンジェルリング」のパワーで指輪の戦士、「アゼリアピンク」に変身する。
「ムーブ・オン!」
可憐だが力強い彼女の声が響く。
これがまどかの変身の掛け声だ。
閃光が煌めき、まどかの全身を包みこむ。
指輪に秘められた神々しい力が、彼女の着ている衣服を、しなやかで、かつ強靭な「アゼリア・スーツ」に変化させる。
そのいでたちは、スモークのかかったアイシールドを備えたうなじから額まですっぽりと覆うヘルメット。
中央に銀色のラインが走るジャケット、両サイドに銀色のラインが描かれたボトムスーツ。
そしてロンググローブにロングブーツ。
そのどれもが明るいピンク色に彩られ、彼女の引き締まった健康的なボディをしっかりとガードする。
彼女は、日夜、闇の世界の悪魔たちが造り上げた「魔リング」を持つ魔獣戦隊と戦い、地上の平和を守ってくれているのだ。
「アゼリア・ショォォォット!!」
指輪に秘められたパワーが無数の細かい光の弾丸となって魔獣を打ち抜く。
「ギャァァァァ!!!」
魔獣は断末魔の叫び声を上げてその場に倒れこむ。
あとはお決まりの大爆発である。

ドドーンッ・・・!!!

魔獣は耳を劈く爆発音とともに木っ端微塵に吹き飛び、跡形もなく消え去る。
「やったわ・・・」
魔獣を倒した後は愛車「アゼリア・クルーザー」というオートバイに乗り込み、颯爽と去ってゆく。
その正体は決して人に知られることはないのだ。

我々の地上世界を征服しようと、闇世界から次々と送り込まれる魔獣たち。
その姿は地球上の動植物が人間と合体したような造形だ。
ある物は哺乳類、両生類、爬虫類に至るまでの動物たちと。
またある者はウツボカズラやハエトリ草、モウセンゴケのような食虫植物からバラのようなトゲをもつものまでの植物類。
そしてまたある者はムカデやサソリ、蜘蛛やカマキリなどの昆虫類と人間がそれぞれ合体したような姿というわけだ。
魔獣たちは人間のように二本足で歩行し、まさに人間と他の生物の合成体のようであった。
彼らはいずれも、闇の世界の悪魔たち造られた証である「魔リング」を指に嵌めている。
悪魔の指輪「魔リング」の力によって作られた魔物たちなのである。
もちろん、ベースになった生物の特徴を最大限に生かし、それぞれが破壊活動に有利な特殊能力を持ち合わせている。

しかし、そんな恐ろしい力を持った魔獣たちも、アゼリアピンクに変身したまどかの敵ではなかった。
やはり正義の光パワーは悪の闇の力に勝るのだ。

 ************************

「ブニュニュニュニュ!!!!」
奇怪な鳴き声とともに、またしても魔獣が現れた!
まどかの出番である。
「ムーブ・オン!」
閃光の中から姿を現すアゼリアピンク。
魔獣の前に立ちはだかる。
「地上の平和を脅かす魔獣ども!このアゼリアピンクがいる限り、お前たちの好きにはさせないわッ!」
颯爽と前口上を述べ、ファイティングポーズをとるアゼリアピンク。
(ン・・・?なんなのかしら?この魔獣は?)
目の前の魔獣を見て、まどかはヘルメットの中で目を丸くした。
これまでの魔獣たちはその姿形からベースとなる生物がわかり、さらにある程度その能力が予測できた。
しかし、その魔獣は違った。
その魔獣はいつものものとはタイプが異なり、ベースとなる地球上の生物が全く想像できないのだ。
確かに四肢を持つ人間型をしてはいるが、全身がブヨブヨでところどころがドクンドクンと脈打っている。
(なんだかとても弱そうだけど・・・いけないわ、油断は禁物ね)
寸分の隙も窺わせず、まどかは魔獣に飛びかかる。
「アゼリア・キーック!!」
「アゼリア・パーンチッ!!」
まどかのキックとパンチが炸裂する。
コンクリートの壁など厚さ1mあってもぶち壊せる破壊力だ。
しかし、そのパワーも魔人のブヨブヨした体に吸収されてしまう。
「くっ・・・なんなの、こいつは・・・?」
まったく効き目がない様子にまどかは困惑する。
「アゼリアマシンガンパーンチッ!!!」
「アゼリアマシンガンキーック!!!」
打撃技を連続で繰り出すが効果がない。
次第に、まどかの表情に焦りが見え始める。
「オホホホホッ!!お前の技など、この”ヴァギナー・イヴィル”がぜーんぶ吸い取ってくれるわ!」
脳味噌にキリキリと響くような甲高い声で、自信満々に名乗りを上げる魔獣。
「その声は・・・?女?・・・初めてのタイプだわね・・・」
今までの魔獣といえば、全て人間の男性がさまざまな生物と合体したような造形だった。
改めて見れば、確かにこの魔獣「ヴァギナーイヴィル」は女性らしいフォルムをしている。
声を聞くまで意識をしていなかったためにその造形には気がつけなかったのだが・・・
「アゼリア・ショォォォット!!」
まどかは打撃系の技は諦め、必殺のエネルギー放出系の技を早々と繰り出した。
「ウグゥ・・・・!!!」
腹部にアゼリアショットの直撃を受け、苦悶の表情を浮かべる魔獣ヴァギナーイヴィル。
命中したところを両手で押さえている。
「・・・やったか・・・?」
怯む敵を見ながらも、ファイティングポーズは崩さない。
相手が爆裂するまでは油断は出来ないのだ。

2.
「・・・なッ!?」
まどかが驚いたのも無理はない。
「くッ・・・ふぅぅぅ・・・オホホホホ!危なかったわ・・・」
ブズブズと音を立てて煙を上げてはいるが、ヴァギナーイヴィルの腹部は少し焦げただけだった。
「ばかな・・・あれをまとも喰らっても大丈夫だなんてっ!」
「オホホホホ!お腹いっぱいで消化不良を起こすところだったわ!」
(エ、エネルギー吸収能力!?)
魔獣ヴァギナーイヴィルは、まどかの放った必殺アゼリアショットの光球すらも、そのブヨブヨの体の中に取り込んでしまったのだ。
恐るべしヴァギナーイヴィルの能力である。
(まずい・・・かくなる上はあの必殺技を・・・
 でも、それにはもう少しエネルギーの充填が必要だわ・・・)
まどかが強い理由の一つに、光のエネルギーを利用しているところにある。
昼の間、太陽が昇ってさえいれば、たとえ雲が垂れ込めて雨が降っていたとしても、光のエネルギーを吸収し、自らの戦闘エネルギーに変換することができるのだ。
アゼリアショットが破られた今、さらなる必殺技を繰り出すには、もう少し太陽エネルギーを吸収し力を蓄えておく必要があった。
(時間稼ぎをしなければ・・・)

ブニョッ・・・!
ブニョニョニョッ!!!

はッ・・・!?
持久戦に持ち込もうとした矢先、突然、ヴァギナーイヴィルが反撃に転じたのだ。
なんと彼女は、ブニョブニョの自分の体を自ら引き千切っては投げ、引き千切っては投げつけてくる。
「なッ・・・なんなの、こいつはッ・・・?」
千切られた肉片の一つがまどかの指輪をとらえる。
(え・・・?)
「きゃぁぁぁ!!!」
突然のことに思わず悲鳴を上げるまどか。
どういうわけか、変身が解けてしまったのだ。
(ま、まずい・・・これは、いったい・・・?)
見ると、まどかの右手に肉片の一部がこびりつき、エンジェルリングにベットリと貼り付いている。
(ま、まさか・・・こいつ・・・指輪から変身エネルギーを吸い取っている・・・?!)
まどかはこびりついた肉片を振り払う。
肉片はビチャっという音を立てて地面に落ちる。
アゼリアピンクでいる間はそれだけでもエネルギーを急激に消耗する。
アゼリアショットを放ったあとのただでさえ残り少ないエネルギーが、ヴァギナーイヴィルが放った肉片によって吸収されてしまったのだろう。
エネルギーが激減すると変身時の姿を維持できず、アゼリアピンクはまどかに戻ってしまうのだ。
「オーホッホッホッホ! これでお前はアゼリアピンクではなくなったわ」
高笑いするヴァギナーイヴィル。
(まずい・・・やられる・・・)
まどかの姿である以上、アゼリアピンクの能力は使えない。
このままではヴァギナーイヴィルにいいように嬲り殺されてしまうだろう。
何とか時間を稼いで、再度光のエネルギーが充填されるまで耐えなくてはならない。
まどかはエネルギーを失ったふらつく躰でどうにか立ち上がると、ヴァギナーイヴィルから距離をとる。
少しでも遠ざかって相手の動きに対応できる時間を作らねば。
「オホホホホ! もはや立っているのがやっとのようね。でも安心なさい。とどめを刺すなんてことはしないわ。逃げるなら逃げていいわよ。オホホホホ!」
勝ち誇った笑いをあげるヴァギナーイヴィル。
だが、その余裕があとで自分の首を締めるのだ。
まどかはそう考え、ここはいったん引くことにする。
このままでは勝負にならないし、自分が倒されることは、この世界が闇で包まれてしまうことを意味するからだ。
(この借りは必ず返すわ・・・私を見逃したことを後悔することね)
唇を噛み締めながらアゼリア・クルーザーに跨るまどか。
悔しさにぎりぎりと歯噛みしながら、彼女はその場を走り去った。

3.
(どうしたのだろう・・・何か変だわ・・・)
霞む目を瞬きしながらまどかはエネルギーが回復しないことに不安を覚えていた。
いつもならまどかに戻ってしまえば消費エネルギーが少ないために、日常生活に支障の無いぐらいまでならば瞬時に回復すると言っていい。
しかし今日は違う。
よほど奪われたエネルギーが多かったのか、さっきから躰がふらふらしたままなのだ。
(まずいわ・・・このままじゃ事故を起こしちゃう)
まどかはアゼリア・クルーザーを繁華街の駐車スペースに乗り入れた。
光のエネルギーを失っている今、アゼリア・クルーザーもただの250ccのバイクに過ぎない。
まどかはどこかで休むために、ふらつく躰でバイクを降りる。
(そういえばヘルメットを被っていなかったんだわ)
そんな基本的なことすら忘れているほど衰弱しているというのだろうか。
いつもの癖でヘルメットをしまおうとして、収納スペースに入ったままのヘルメットを見たまどかは苦笑した。
(いけないいけない・・・しっかりしなきゃ・・・こんなところを魔獣に襲われたらたまらないわ)
頭を振って意識をはっきりさせると、まどかは休めそうな場所を探して駐車スペースを後にする。

「ちょ、ちょっと! 大丈夫ですか?」
(あれ?)
気がつくとまどかは思い切り地面に倒れこんでいた。
とっさの受身を取ったのか、怪我らしい怪我はしていなかったのだが、ふらふら歩いていてどうやら目の前のこの男性にぶつかってしまったらしい。
「あ、ご、ごめんなさい」
アゼリアピンクに変身する前のパンツスーツ姿で転がっているまどかは慌てて起き上がろうとする。
「さ、どうぞ」
すっと差し出される手に、まどかは一瞬どきっとした。
「あ、ありがとうございます」
まどかは男の手を取ると引き上げられるままに立ち上がる。
「ふらふらしていると危ないよ。飲みすぎたんじゃないの?」
そういう男も少しお酒が入っているよう。
顔が赤いのはそのせいか?
三十代半ばぐらいだろうか。
結構いい男と言えないことも無い。
「そんなことは無いんですけど・・・どうもすみません」
「いやいや。気にすることは無いよ」
頭を下げたまどかに男はにこやかに笑ってくる。
「それでは失礼します。どうもすみませんでした」
まどかはそう言って足を踏み出しかけたが、やはりまだふらついてしまう。
「おっとっと・・・」
男が思わず手を差し伸べる。
「危ないなぁ。えーと、もし迷惑でなければ送って行こうか?」
「え?」
その言葉にまどかは戸惑う。
(男の人に送ってもらうなんて・・・)
そう思うまどかだったが、口から出た言葉は彼女の予想もしないものだった。
「お願い・・・できますか?」
「喜んで」
男は嬉しそうにそう言うと、まどかと一緒に歩き出した。

(いい感じの人だわ・・・)
強引なそぶりもなく適度に距離をとってくれるこの名も知らぬ男性に、まどかは心地よいものを感じる。
(彼ならばちょっと遊んでもいいかもしれない)
いつものまどかならば考えもしなかったであろう思い。
それがまどかの中で急速に膨れ上がって行くのを、まどかは不思議にすら思わなかった。
そっと彼のそばに寄り添い、自ら彼の腕に自分の腕を絡めて行く。
男は最初戸惑ったようだったものの、すぐにまどかの腕を自らも絡め取った。
「気分がすぐれないようなら・・・どこかで休もうか?」
あからさまな男の誘い。
だが、まどかはうなずく。
彼が欲しかった。
この何か飢えたような渇きを癒して欲しかったのだ。
「あそこがいいかな?」
歓楽街の中でも派手なネオンが輝くあたり。
その中の一軒のラブホテルが目に入る。
まどかは彼の赴くままにそのラブホテルに入っていった。

「いい部屋だね・・・」
男はそう言って上着をハンガーにかける。
まどかは何か頭がぼうっとして、彼の言葉も良くわからない。
(何だろう・・・私・・・どうかしちゃったのかしら・・・)
ヴァギナーイヴィルと戦ってから何かがおかしい。
だが何がおかしいのかわからない。
ただベッドに腰を下ろして彼を待つ。
彼ならばこの渇きを癒してくれるはず。
(彼が欲しい・・・)
(彼の・・・が欲しい・・・)
無意識に舌なめずりをするまどか。
ピンク色の舌が艶めかしく唇の上を這っていく。
「大丈夫かい? 本当に」
男はまどかの隣に腰を下ろした。
ほんとに休むだけならたまったものではない。
「ねえ・・・」
「ん?」
「ちょうだい」
まどかがそう言って男の方を見る。
その目は何か潤んでいて、男に火をつけるのに充分だ。
「ああ、すぐに食べさせてやるよ」
男はそう言ってまどかの唇を味わおうと顔を寄せる。
だが、まどかはついと躰を沈め、そのまま床にへたり込む。
そして男の前に躰をずらすと、そのまま男のズボンのファスナーを下ろし始めた。
「おいおい、シャワーも浴びていないのにしゃぶってくれるのか?」
男は驚いたが、まどかはもうシャワーなどどうでもよかった。
カチャカチャとベルトを外し、ズボンのホックをはずしてトランクスをむき出しにすると、そのトランクスもズボンと一緒に引き下ろす。
そして、すでに屹立している男のモノを、その唇でくわえ込んだ。
(ああ・・・)
ジュプジュプと唾液をまぶし、舌を絡めるようにして男のサオを嘗め回すまどか。
その表情に淫らな喜びが浮かぶ。
(美味しい・・・美味しいわ・・・男の人のチンポがこんなに美味しかったなんて・・・)
むさぼるように男のサオをくわえ込み、頭を上下させていくまどか。
男はただその気持ちよさにオウオウとしか声も出ない。
「はあん・・・はああん・・・」
袋を愛撫し、舌を這わせて再びサオをくわえ込む。
付き合ったことのある彼氏にすらしたことの無いような濃厚なフェラチオで、男のモノははちきれんばかりにたぎっていく。
「う・・・で、でるっ」
とたんにまどかの口の中にネットリとした液体がほとばしる。
(あ・・・美味しい・・・)
かつて一度もそのように思ったことなど無い白濁液を、まどかはまるで甘美な液体であるかのように舌で転がしていく。
(美味しい・・・精液がこんなに美味しいものだったなんて・・・美味しいわ)
くちゅくちゅと唾液と混ぜ合わせ、充分に味わった上で飲み干していく。
その顔にはこれ以上無い喜悦が浮かんでいた。
「飲んでくれたのかい? 嬉しいな」
「あん・・・だってこんなに美味しいんですもの。精液って最高の飲み物だわ」
うっとりとまどかは舌で唇を舐める。
だがまだ乾きは満たされてはいない。
飲み込んだ精液がまどかの躰に染み渡る。
だがまだまだ足りないのだ。
(ああ・・・精液がエネルギーとなって私の躰を駆け巡るわ・・・でもまだ・・・まだ足りない・・・)
まどかは自らも服を脱ぎ、男をベッドの上に押し倒す。
そして再び硬さを増してきた男のモノを、自らの股間に擦り付けるようにして楽しみ、ゆっくりと男の上に跨った。

4.
シャワールームに水音が響く。
まどかは気分がよかった。
まるで生まれ変わったような気分だ。
(セックスがこんなに気持ちよかったなんて・・・)
それほど経験が多いわけではないが、先ほどのセックスは今までのとはまるで違ったのだ。
彼女の躰がまるでグニャグニャになったかのように、男のモノに吸い付き締め上げて搾り取ったとでもいうような密着具合だったのだ。
(あの人のはとても気持ちよかったわ・・・うふふ・・・いっぱいもらっちゃったわね・・・躰中に染み渡ってエネルギーも満タンよ)
下腹部を押さえてたっぷり受け取った男の精液に満足する。
今ならアゼリアピンクに変身することもできそうだ。
そう思ったまどかは、右手に輝くエンジェルリングに念を込める。
「ムーブ・オン」
その瞬間、まどかの躰を漆黒の闇が覆う。
(えっ?)
いつもならピンク色の輝きが彼女を覆い、ピンクと銀に彩られたアゼリアスーツに包まれるのだ。
しかし彼女を覆ったのは漆黒の闇。
なんだかよくわからないが、いつもとは違う。
(な、何が起こったの?)
まどかはいぶかしく思ったものの、闇に包まれるとすごく気持ちよくなってくる。
(あ・・・何・・・これ・・・)
いつもの変身は瞬時に行なわれるのだが、今回は時間がかかる。
まるでじわじわと闇が躰に纏わり付いてくる感じだ。
それにともなってなんともいえない心地よさが躰の内側から沸き起こってくる。
躰が闇と絡み合い、それぞれが一体となってまどかの躰を構成して行くような感じ。
そんな感じが広がり、まどかは何も考えられなくなっていた。

「えっ?」
意識が飛んだのはほんの一瞬だったのかもしれない。
流れ出るシャワーの音がまどかの意識を呼び戻す。
(いけないいけない・・・出しっぱなしだったわ)
シャワーから離れて変身していたので、お湯を被ってはいなかったが、シャワールームは湯気で真っ白だ。
まどかは手を伸ばしてシャワーのコックをひねる。
(え?)
シャワーのコックに伸びた手は真っ黒だった。
(え?)
まどかは驚いて自分の姿を見下ろしてみる。
「ええっ?」
思わずまどかは声を上げる。
彼女の姿はまったく想像もしていない姿になっていたのだ。

まどかの格好はいつもの健康的なピンクのアゼリアスーツではなく、真っ黒の光沢のあるハイネックのレオタード姿だった。
しかもヘソの部分を中心に腹部が大きくくりぬかれ、胸元にも大胆なカットが施されている。
乳房の谷間も露わな、あと少しで乳首までもが見えるかと思えるほどだ。
脚は黒の網タイツを穿いており、同じく黒のエナメルのブーツに肘まである黒のロンググローブ。
そのいでたちは、どう見ても正義の戦士などという格好ではなく、悪の女幹部の様相を呈していた。
「ど、どういうこと?」
鏡の湯気をふき取り、自分の姿を確認するまどか。
その目にはアイシャドウが引かれ、唇には黒の口紅が乗せられている。
妖艶な笑みはこれが自分なのかと思えるほどに色っぽい。
「こ、これが・・・私?」
まどかは唖然とした。
アゼリアピンクに変身したはずなのに、これはいったいどういうことなのか?
(私はいったいどうしちゃったの?)
考えてもわかるはずが無い。
もしかしたらあのヴァギナーイヴィルの肉片が何かの作用を起こしたのかもしれない。
でも・・・
でも、そんなことはどうでもよかった。
(これが私・・・うふふ・・・素敵・・・)
鏡の中からまどかを見つめる顔は美しかった。
漆黒のボンデージレオタードもすごくよく似合っている。
二の腕までのロンググローブも、太ももを覆う網タイツも膝までのロングブーツも全てがあつらえたかのようにまどかにピッタリだった。
そう、これ以外の姿はまどかにとっては意味が無い姿なのだ。
この姿こそが彼女の本当の姿なのだ。
「これが・・・私・・・うふふふふふふふ」
まどかは妖しく笑い続けていた。

寝ていた男が目を覚ます。
まさに搾り尽くされたと言っていいかもしれない。
それほど先ほどのセックスは凄まじかった。
あんな女は始めてだ。
できればこの一回だけじゃなく、これからもお付き合いしたいものだ。
そんなことを考えているとシャワー室の扉が開く。
二回戦も悪くない。
そう思った男はくわえたタバコをもう少しで落とすところだった。
シャワー室から現れたまどかはまさに妖艶な漆黒の魔女と言っていいようないでたちだったのだ。
「そ、その姿は?」
「うふふ・・・どうかしら? 美しいでしょ? 私、この姿がとても気に入ったの」
まどかがロンググローブに包まれた右手の人差し指を唇に当てる。
「ああ、似合うよ・・・」
男は早くも股間のモノをそそり立たせる。
先ほどたっぷり出したというのに、まだまだ出し足りないかのようだ。
まどかも男の上のシーツが持ち上がっていることに気がつく。
それが何かすごく嬉しく感じると同時に、まどかの中にむくむくとわきあがってくる感情があった。
(ああん・・・美味しそう・・・)
舌なめずりをするまどか。
ベッドの上にいる男はまさに獲物。
まどかにとっては餌なのだ。
「うふふ・・・あなたって美味しそう。食べちゃいたいわぁ」
まどかはゆっくりと男のベッドに近づいていく。
男は至福の瞬間をベッドの上で待ち望んだ。

「うふふ・・・」
まどかは妖艶な笑みを浮かべて男の上に跨る。
そして男の上に覆いかぶさるように男を抱きかかえた。
「おいおい、確かに似合うけど、服着たまんまか?」
男は苦笑しながら、上に被さるように来るまどかを抱きかかえようと、両脇から手を伸ばす。
だが、その手は彼女を抱きかかえることはできなかった。
まどかの躰がまるでゼリーのようにぶよぶよと波打ち始めたのである。
「う、うわぁっ! な、なんだ?」
男は驚きの声を上げたが、その間にもまどかの躰はまるでアメーバのようにうねうねと広がって行く。
「うふ・・・うふふ・・・」
頭部から流れる漆黒の髪の毛も、躰を覆っていた黒いボンデージレオタードも、身につけていた黒いロンググローブもブーツも、みんなみんなうねうねと真っ黒なゼリーのように変化して行く。
その中でまどかの美しい顔だけがそのままで笑みを浮かべているのだ。
「う、うわぁっ! た、助けてくれぇっ!」
男は必死にもがくものの、ぶよぶよしたゼリー状のまどかの躰はなんなく男を包み込んで行く。
まるで底なし沼に引き込まれるかのように、男の顔も黒いゼリーに飲み込まれて見えなくなる。
「うふふ・・・気持ちいいわぁ・・・私の躰・・・なんて素敵なのかしら・・・」
まどかは自分の躰の変化に気がついていた。
だが、それはもはや彼女にとっては当たり前のことだった。
今の彼女はただ男を溶かして吸収するだけしか考えていなかった。
「ジュルジュル・・・うふふふ・・・どうかしら、私の躰は? あなたは私に包まれて溶けていくの・・・私がちゃんと食べてあげる」
まどかはうっとりと快感に包まれながら消化液を分泌する。
まどかの躰に包まれながらももがいていた男は、やがて動きが静かになる。
そして・・・まどかの躰が再び人間の姿を取り戻した時、男の痕跡は何も残ってはいなかった。
「はあん・・・美味しかったわぁ。人間を食べるのって最高。もう人間以外なんて食べたく無いわぁ。エネルギーも充分。今まで光のエネルギーなんかに頼っていたのがバカみたい」
まどかは黒いロンググローブに包まれた指先を舐め、妖しく微笑む。

「オホホホホ」
突然部屋に笑い声が響く。
「誰?」
瞬時に身構えるまどか。
アゼリアピンクとして戦っていたのは伊達ではない。
やがて部屋が暗闇に包まれると、片隅の闇の中からぶよぶよした人型の影が立ち上がる。
「オホホホホホ! 人間を食べるなんてねぇ。言ったでしょう。もうお前はアゼリアピンクなどではなくなったのよ」
姿を現したのはヴァギナーイヴィルだ。
「ヴァギナーイヴィル・・・」
身構えたまどかだったが、目の前に現れたのがヴァギナーイヴィルだとわかると、急速に敵愾心が薄れて行くのを感じる。
いや、それどころか彼女に跪き、その声に従いたくなりすらしたのだ。
(あ・・・ど、どうして? 私はいったい?)
「オホホホホ。どうしてかわかるかい? お前が嵌めているリング。それが答えさ」
「エンジェルリング?」
まどかの右手に光るリング。
思わずまどかはそれを見る。
(あ・・・)
まどかの指に嵌まっていたエンジェルリングは変化していた。
祈りを捧げる天使の姿が浮き彫りされていたはずなのに、今の彼女の指に嵌まっているのはいやらしい笑いをした背中にコウモリの羽根を生やした悪魔の女性の姿だったのだ。
(これは・・・魔リング)
そう、今彼女の指に嵌まっているのは、今まで彼女が倒してきた魔獣が嵌めていた魔リングなのだ。
「オホホホホ。わかったかい? お前のエンジェルリングは私の肉片で魔リングへと変貌したのさ。その魔リングを嵌めて変身をしたお前はもう・・・オホホホホ」
ヴァギナーイヴィルの高笑いが響く。
(ああ・・・そうだったの・・・うふふふ・・・なんて素敵・・・これが魔リング・・・すごく素敵だわぁ)
まどかの表情がうっとりとしたものになる。
「私は・・・もう・・・」
顔を上げるまどか。
その顔には邪悪な笑みが浮かんでいた。
「オホホホホ。そう、お前はもはやアゼリアピンクでは無い。闇の魔獣ブラックアメーバとなったのよ」
(ああ・・・そう・・・そうよ・・・私はブラックアメーバ・・・闇の魔獣ブラックアメーバなんだわ)
まどかはもはやそのことを喜んでいた。
アゼリアピンクなどという存在は消え去った。
ここにいるのは闇の魅力に取り付かれ、邪悪な喜びに身を浸す魔獣だ。
「私は・・・ブラックアメーバ。うふふふ・・・私は闇の魔獣ブラックアメーバですわ」
「オホホホホ。どうやら身も心も闇に染まったようね。そう、お前は闇の魔獣ブラックアメーバ。これからは闇の世界のために働くのよ」
ヴァギナーイヴィルが満足そうにうなずく。
「ジュルジュル・・・はい、ヴァギナーイヴィル様。私は闇の魔獣ブラックアメーバ。これからは人間どもをたっぷりと食べ、この世界を闇で覆い尽くしてやりますわ。うふふふふふ」
まどかは口元に手の甲を当てて笑い、これからの邪悪な行為に喜びを感じて躰を震わせた。
  1. 2007/03/18(日) 21:02:41|
  2. 異形・魔物化系SS
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アメリカ南北戦争概略その11

マクレランの北軍が当然のことながら幾つもの軍団に分かれていることに目をつけたリーは、ジャクソンとの合流後、北軍の一部に対して局所的優勢をもって攻撃し、もって北軍の戦力を削る作戦に出ました。
狙いはチカホミニー川北岸にいるフィッツジョン・ポーター少将の率いる北軍第五軍団。

リーはマグルーダーとヒューガーの合計二万五千に北軍主力をひきつけさせ、ロングストリートとA・P及びD・Hの両ヒル、そしてシェナンドー峡谷から馳せ参じたジャクソンの合計約五万にポーター隊を攻撃させることにします。

6月26日。
この日は南軍にとってはまたしても攻撃に不手際が生じてしまいます。
マグルーダーとヒューガーは見事に牽制攻撃を成功させ、圧倒的兵力を持つマクレランの主隊をひきつけます。
しかし、メカニクスヴィルという土地でポーター隊を当たった南軍部隊は、それぞれがまったく連携が取れずにほぼA・P・ヒル隊単独攻撃となってしまいます。
結局南軍はポーター隊を攻めきれずに後退。
翌日の再攻撃に向けて再編成に入ります。

しかし、終始南軍側が自軍よりも兵数が多いと信じ込んでいたマクレランは、南軍の攻撃に後退を決意。
ポーター隊にメカニクスヴィルを放棄させてゲインズ・ミルまで下がらせ、主力はなんとジェームズ川のほとりハリソンズ・ランディングまで後退することに決めたのです。

6月27日。
ゲインズ・ミルにおいて南軍五万が北軍ポーター隊三万五千に襲い掛かります。
南軍は終始北軍を圧倒し、ついにポーター隊はチカホミニー川を渡って総退却となりました。
しかし、北軍の優勢な砲火は南軍に多大なる犠牲を強い、この戦いの勝利者となった南軍でしたが、その損害は八千にも及びました。(北軍損害は約四千)

マクレランは北軍砲艦隊が支援してくれるハリソンズ・ランディングまで何とか後退して、部隊を立て直すつもりでした。
一方リーはそれまでにマクレランを叩き潰さねばなりません。
兵力的に劣勢な南軍でしたが、ここは攻勢に出るしかありませんでした。

6月29日にはサヴェッジ駅で後退する北軍後衛と戦闘。
翌30日にはフレイザー農場で戦闘になります。

この七日戦争の最中、シェナンドー峡谷であれほどの活躍をしたジャクソンはまったく振るいませんでした。
メカニクスヴィルでもゲインズ・ミルでも戦闘に遅れ、このフレイザー農場の戦いにも顔を出しません。
結局この日もA・P・ヒル隊とロングストリート隊が北軍に襲い掛かりましたが、甚大な損害を受けて跳ね返されます。
北軍は整然とフレイザー農場を後にしました。

7月1日。
マルヴァーン・ヒルに防御陣を敷いた北軍に対し、リーは攻撃を仕掛けるしかありませんでした。
むざむざとマクレランに逃げられるわけには行かないのです。
しかし、当然相手の防御陣に無策で突撃するつもりはありません。
マルヴァーン・ヒルに砲撃を加え、それによって防御陣の一角を突き崩してから突撃という手はずでした。
お昼過ぎから始まった砲撃戦は、北軍優勢のまま進みます。
このままでは突撃に移ることはできないと感じていたリーでしたが、何を思ったのか命令の行き違いなのか、マグルーダー隊とD・H・ヒル隊が突撃を開始します。
丘の上に陣取った北軍からの射撃は凄まじく、マグルーダー隊もD・H・ヒル隊もほとんど虐殺と呼んでよいような状況に見舞われました。
南軍は慌てて後退。
北軍はその日の夜ハリソンズ・ランディングに逃げ込みました。
七日戦争はここに終結したのです。

いずれの戦いにおいても南軍は攻撃側でありかつ戦場を手に入れた側でありましたが、北軍は整然と後退し、常に南軍に甚大な損害を与え続けました。
最終的な七日戦争での損害は、北軍一万五千に対し南軍が二万。
勝利を得たとはいえ人的資源の少ない南軍にとってはつらい戦いでした。

ハリソンズ・ランディングに逃げ込んだマクレランは、リンカーンに対し増援を求めます。
リンカーンは五万の増援を打診しますが、自軍の兵力に不安を持っているマクレランはそれでは少なすぎると文句を言いました。
リンカーンはがっかりして、マクレランではリッチモンドは落とせないと思い、ついにマクレラン隊をヨークタウン半島から撤退させることにしました。
ついに南軍は半島から北軍を追い出したのです。
半島戦役の終焉、そして、新たなる戦いの幕開けでした。

その12へ
  1. 2007/03/17(土) 20:43:30|
  2. アメリカ南北戦争概略
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アメリカ南北戦争概略その10

ヨークタウン半島でマクレランとジョンストンのにらみ合いが続いていた1862年3月から6月頃にかけて、北部シェナンドー峡谷において、南軍“ストーンウォール”ジャクソン将軍による北軍への撹乱攻撃が幾度となく行なわれていました。
これは直接的には北部からのワシントンへの圧力により北軍兵力を釘付けにし、間接的にはそれによってマクレランへの増援を阻止するという意味合いがありました。

全部隊を集めても一万六千ほどのジャクソン隊でしたが、彼はその少ない軍勢を縦横無尽に操り、まさにその名声を高めるに足る戦いを繰り広げます。

3月下旬。
まだマクレランがヨークタウン半島に上陸する以前から、ジャクソンは動き出していました。
まだ三千という少ない兵力しか持ち合わせていなかった彼でしたが、北軍ナサニエル・バンクス将軍の九千の部隊にカーンズタウンというところで戦闘を挑みます。

この戦闘はさすがにジャクソンの後退に終わりましたが、シェナンドー峡谷というワシントンに近い場所での戦闘でもあり、リンカーンは小ざかしいジャクソンにとどめを刺すべく軍勢を差し向けました。
向けられたのはマクドゥウェル将軍麾下の約四万。
そう、マクレランから取り上げた部隊です。
マクドゥウェルはシェナンドー峡谷にジャクソンを追い詰めるべく勇躍進発いたしました。

しかしジャクソンはまさに神出鬼没。
部隊を統合して一万六千ほどにしたジャクソンは、マクドゥウェルの本隊とは戦わず、各地に散った守備隊を潰しにかかります。

5月8日にはフリーモント率いる北軍一万五千をマクドゥウェル(こちらは地名)の戦いで撃破。
5月23日にはフロントロイヤルの守備隊を撃破。
5月25日にはバンクス隊九千をウィンチェスターで撃破。
バンクスははるかかなたのポトマック川まで逃げ回る始末でした。
6月8日、クロス・キーズでフリーモントの残存部隊と再度交戦、これを撃破。
6月9日にはマクドゥウェルが分派したシールズ隊一万をポートリパブリックで追い散らしました。

結局北軍はジャクソンを追い詰めるどころか、六万近くの軍勢がシェナンドー峡谷に釘付けになるという事態でした。
「徒歩の騎兵」とまで言われた神出鬼没のジャクソン隊は、結局北軍に捕捉されることなく、6月末にはシェナンドー峡谷を後にします。
リーの部隊と合流し、マクレランをリッチモンド近辺から追い出すためにです。
一万六千の軍勢が南軍には加わり、北軍は六万の軍勢をマクレランから引き離されてしまったのでした。

いよいよリッチモンド周辺での「七日戦争」が始まります。
(一週間戦争ではありませんよ(笑))

その11へ
  1. 2007/03/16(金) 21:29:37|
  2. アメリカ南北戦争概略
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アステロイド

親愛なる地球の皆さん。
私はニコル・ドラクロワ。
私は今、最後の手紙を宇宙艇に託します。
この手紙をもしどなたかが拾ったなら、私たちの最後の様子をどうか地球の人々に知らせて下さいませ。
私たちは最後まであきらめなかったと・・・

西暦2007年5月から6月にかけて(ゲーム上の事件が起こったとき。ちなみにゲームの出版は1980年。その時にははるかな未来に感じたでしょうね)起こった未曾有の事件は地球を震撼させた。

小惑星帯に浮かぶ採掘用鉱山小惑星97B(ナインセブン・ブラボー)は、気の狂ったマクドナルド教授の自殺を機に地球への墜落軌道に乗ってしまう。

今となってはマクドナルド教授がなぜ自殺したのか詳しい理由はわからない。
しかし、彼は自分一人で死ぬのを拒み、全地球人類を道連れにしようとしたのである。

巨大な小惑星は外部から破壊することはかなわない。
内部の制御コンピュータを破壊して、自壊するようにセットする必要があるのだ。

しかし、近くに小惑星に災厄前に到達できる宇宙船は一隻だけ。
ワールドニュースサービスのレポーター兼カメラマンのスクープ・フィリップスの宇宙艇だけだったのだ。
彼は自分もその小惑星破壊活動に参加することを条件に宇宙艇を提供。
かくして、宇宙艇に乗れる人数12人のみが、アステロイドへ向かったのである。
人類の未来のために・・・

ということで、ボードゲーム「アステロイド」GDW/HJを先輩とプレイすることになりました。
このゲームはTRPGッぽい要素を多分に含む面白いものです。
雰囲気を少しでもわかっていただければと、プレイレポートを掲載しますねー。

小惑星を地球に落とそうとするコンピュータ(マクドナルド教授によりプログラムされた狂ったコンピュータ)側を先輩が、私はそのコンピュータを破壊しようとする侵入者側をプレイすることになりました。

このゲームは侵入者側は12人のキャラクターを選んで、宇宙艇に乗って出発します。
今回私が選んだのは以下の人たちでした。

1、ドラクロワ教授 :今回の災厄に最初に気が付いた老教授。
移動力が2しかなく、かなり足手まといだが、コンピュータ制御のためには必要な人物。

2、ニコル :教授の娘。
何しに来たのかよくわからないが、教授とセットで選ぶ必要あり。
彼女がいると他の男とのロマンスが発生する。

3、ハンソン少佐 :優秀なパイロットであり射撃の名手。
今回の小惑星破壊作戦のリーダー。

4、ラッキー :宇宙一幸運な男と豪語する男。
ゲーム開始時に無作為に選ぶラッキーポイント(15から35までの間)が残っている限り、敵の射撃ははずれ、彼の射撃は必中し、壊れたロボットは蹴飛ばすだけで修理できるというキャラ。
基本的にヒーローであり、今回も彼が中心だった。

5、マスル :ラッキーと兄弟。怪力の持ち主。
ラッキーに必ず付いてくるキャラ。
接近戦闘の格闘力6はゲーム中最強の一人。

6、カーター :試作品のパワードスーツを着ている。
格闘と防御に優れているので盾として使える。

7、スクープ :カメラマン兼レポーター。
絶対に選ばなければならないキャラ。
彼が生き残れば、今回の小惑星破壊作戦が映画として封切られ、金儲けができる。

8、ガナー :射撃の名手。
重エネルギーライフルを持つため、攻撃力はキャラ中最強。

9、デモン :爆発物の名手。
彼だけが爆薬を二個持つことができ(他のキャラは一個のみ)、爆発範囲も広くなる。

10、キルビー :コンピュータ専門家。
彼とドラクロワ教授(それとラッキーポイントの残っているラッキー)のみが狂ったコンピュータのスイッチを切ることができる。(他のキャラはコンピュータを破壊するだけ)

11、ジョーンズ夫人 :超能力者。
三分の二の確率で隠されている物品の内容を知ることができる。
でも、いてもいなくてもほとんど意味なし。

12、ドラクロワ教授のロボットA及びB
小惑星内のロボットとは違い、教授に従うロボット。
射撃はできないが格闘力が6とマスル並み。
二台で一人とみなされるため、厳密には13キャラとなった。

いよいよ侵入開始。
目の前にはエアロック。
そこを潜り抜け、まずはハンソン少佐が入って行く。
マップには裏返されたコンピュータ側のコマがあるのみ。
慎重に通路を進み、ドアを発見。
鍵が無いため開かないので、蹴り開けることにする。
(サイコロ一個で格闘力以下が出れば開く)
ガンッ!
ハンソンは足を痛めてその場にうずくまる。
(開かなかった。別にダメージがあるわけではないが・・・)
後続に任せてハンソンは先へ進む。
そのあとに続くのはガナー。
重エネルギーライフルがきらりと輝く。
通路の角から覗き見ると、驚いたことに小惑星内の雑用をする雑用ロボットと侵入者を排除するよう作られた警備ロボットが早くも向かってきた。
早くも始まる射撃戦。
ハンソン少佐が雑用ロボットを倒したものの、ガナーと警備ロボットが相撃ち。
開始二ターン目にして一人が死ぬという状況に暗澹たる思いとなる。

教授のロボットがドアを開ける。
中にいたのは雑用ロボット。
起動していない雑用ロボットはチットを引く事で敵になったり動かなかったり味方になったりするのですが、引いたチットはエネミー。
幸いそばにいたマスルがその雑用ロボットを叩き潰す。

ジョーンズ夫人の超能力や、通路に落ちている鍵などを見つけたことで、ガナーの死亡以後は結構スムーズに進み始める。
コンピュータ側が繰り出してくるロボットも、どうにか対処して破壊して行く。
一画でコンピュータ端末を発見した時がこちらにとっての運命の分かれ目でした。

コンピュータ端末はキルビーか教授がいれば、サイコロの目で本体の位置を知ることができるというもの。
ここでコンピュータの位置を把握してしまえば、以後の行動はかなり楽になる。
私は万全を期すためにキルビーと教授の二人に端末を操作させることにした。

この時の侵入者側は、かなり広く散開していた。
これが取り返しのつかない悲劇を呼ぶ。
教授とキルビーが端末にたどり着いたことで、本体の位置を引き出そうとする。
サイコロで4・5・6のどれかがでれば判明するのだ。
私はここぞとばかりに振った。
出目は2。
本体は不明のまま。
さらに警報が出されるかチェックしなければならない。
出目は3。
警報が発令され、階下で警備ロボット一体が活動を開始する。
さらにショートするかどうかのチェック。
ここで1が出ると操作していたキャラは感電して死亡する。
今回は教授とキルビーがいるので二人分振らなくてはならない。
キルビーはなんと1。
教授は5で大丈夫だったが、キルビーが感電死してしまった。

さらに悪いことは重なるもので、階下で行動を開始した警備ロボットが階段を上ってくる。
階段のそばで警戒していたハンソン少佐が警備ロボットの射撃で死亡。
せっかくニコルの恋人という立場を手に入れた直後だった。
さらにそばにいたジョーンズ夫人も一撃で黒焦げになる。
ラッキーは遠くにいたために必死で駆けつけるも、その間に警備ロボットはカーターとマスルを血祭りに。
さらに部屋で震えていた教授も殺される。

たった一台の警備ロボットに五人も殺されたのだ。
ラッキーがラッキーポイントを使って仕留めたものの、これまで数あるアステロイドのプレイの中でもこれほどの被害にあったのは初めてだ。
ほとんどここで投了したくなるほどだった。

残ったのはラッキー・ニコル・スクープ・デモン・教授のロボットBのみ。
ガナー・ハンソン・ジョーンズ夫人・マスル・カーター・ドラクロワ教授が警備ロボットにより死亡。
ロボットAは採掘ロボットと相撃ちになり、デモンは負傷してロボットBに担がれている状態だ。
それでも行くしかない。
あきらめては地球は壊滅する。
私は彼らを前進させた。

その後はラッキーのラッキーポイントがモノを言い、無傷のままで進んで行く。
しかし、ラッキーポイントは着々と減っていた。
はたして間に合うのか?

ついに見つけたコンピュータ。
ラッキーはスイッチを切るべく叩いてみる。
「ラッキーポイントが尽きたね」
先輩の無情な一言が私に向けられた。
ついにラッキーの運が尽きたのだ。
やむを得ずデモンがコンピュータを爆破して、自爆装置のスイッチを入れる。
これで人類は救われた。
しかし、これから脱出が待っている。
コンピュータが破壊されたことで、基地の全ロボットが動き出したのだ。
残りはわずかといえども、警備ロボットが一台残っている。
必死に逃げるキャラクター。
ついに出口に繋がる階段に到達した時、警備ロボットが現れた。
ラッキーは警備ロボットの射撃でついに死亡。
雑用ロボットの攻撃で、警備ロボットを驚異的な出目で破壊した(1で命中1で破壊)スクープも死んだ。
デモンが最後の雑用ロボットを破壊した時、残ったのはニコルとデモン、それにロボットBだけだった・・・

「デモンって宇宙艇の操縦できたっけ?」
私は先輩に確認する。
パイロットがいなければ宇宙艇は飛ばせない。
ニコルもデモンもパイロットの能力はなかった・・・

小惑星97Bは地球に到達する前に破壊された。
しかし、小惑星を破壊に行った者たちは誰も帰ってはこなかった。
爆発の衝撃で飛ばされたであろう無人で漂う宇宙艇からは、ニコル・ドラクロワの手紙が見つかったという・・・

初めてです。
誰も脱出できなかった。
このゲームはもう何度やったかわからないぐらいなんですが、これほど悲惨な目にあったのは初めてでした。
でも面白かったー。
先輩とはまたやりましょうということで今日はお開きとなりました。
今度は脱出するぞー。

それではまた。
  1. 2007/03/15(木) 21:47:38|
  2. ウォーゲーム
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アメリカ南北戦争概略その9

う~
20年前の自分にカツを入れたいよ~。
どうしてあの頃買い逃したのかなぁ。
タクテクス誌の1987年10月号付録「ワグラムの戦い」の別売ユニットを買いそびれたんですよねー。
何で買わなかったのかなー。
「マレンゴの戦い」と「イエナ・アウエルシュタットの戦い」のコマは持っているのにね。
当時は買う気にならなかったんだろうなー。
タイムマシンがほしいよー。(笑)

さて、アメリカ南北戦争概略もその9です。
まだしばしお付き合い下さいませー。

マクレランが上陸後進軍を停止したことは、南部諸州同盟にとってはまたとない僥倖でした。
南部同盟大統領ジェファーソン・デイビスは急遽作戦会議を開き、今後の方針を探ります。

ブル・ラン(マナサス)近辺にとどまっていたジョゼフ・ジョンストンは、マクレランの上陸以前からすでにリッチモンド近くまで戻っており、このまま南軍をリッチモンド周辺に集めて北軍を迎え撃とうと進言しました。
一方デイビスの軍事顧問という立場になっていたロバート・E・リーは、ヨークタウン半島において北軍を撃破し、リッチモンドへの脅威を取り除くという進言をします。
デイビスはリーの進言を受け入れ、ジョンストン隊にマグルーダーと合流を果たし、できるだけ北軍を食い止めるよう指示しました。
「半島戦役」の始まりです。

ジョンストンはしぶしぶながら命令に従います。
彼の部隊はマグルーダーの部隊と合わせても五万五千を超えるぐらい。
一方のマクレランは、なんだかんだ言っても戦力をかき集め(マクドゥウェル隊は来なかったが)十万の戦力を集結させていたのです。
これでは勝負になろうはずがありません。
ジョンストンはヨークタウンの町近辺に陣を敷き、そこで北軍をただ待ち受けるだけとなりました。

マクレランはこのヨークタウン半島に上陸するにあたり、綿密な作戦を練っていました。
ヨーク川を北軍艦隊の支援の下で一部部隊(これに特別訓練を施したマクドゥウェル隊を充てるつもりだった)を南軍の後背に上陸させ、前後からの挟撃で一気に南軍を屠るつもりだったのです。

しかしこれは叶いません。
マクドゥウェル隊は来ず、ヨーク川への入り口付近の南軍砲台が思いのほか強力なのと装甲艦ヴァージニアの脅威がまだあったため、北軍艦隊の支援が当てにできなかったからです。
マクレランは次善の策として、大兵力による陣地攻略戦に切り替えます。
敵の銃火を避けるために、塹壕を掘りながら徐々に徐々に南軍陣地に近づくのです。

無論これは大規模な土木工事が必要なため、時間がかかります。
しかし、時間さえかければ、かなり効果的に陣地攻撃ができるのです。
マクレランはここでも教科書どおりの攻撃をすることにしたのです。

ジョンストンは北軍が土木工事を始めたのを見て、ヨークタウンでは持ちこたえられないと覚悟しました。
無論援軍を要請はしていたのですが、援軍が間に合わないと感じた彼は自発的にヨークタウンを放棄。
ウィリアムズバーグ付近まで後退します。
1862年5月3日のことでした。

マクレランは一兵も損なうことなくヨークタウンの町を手にいれ満足でした。
海軍の支援もマクドゥウェル隊の不足も彼の手腕にかかればちょっとしたハンデに過ぎなかったとさえ思ったかもしれません。
南軍の放棄した五十六門もの大砲は勝利の証であり、マクレランはリンカーンに大勝利の報告をします。

しかし、勝利を得るために使った一ヶ月という時間は後々北軍に重くのしかかりました。
リッチモンド周辺に南軍部隊が集結し、防備を整えるのに間に合ったからです。

ジョンストンはウィリアムズバーグも放棄してリッチモンド周辺に陣を敷きマクレランを待ち構えました。
両軍は5月31日、フェアオークスという駅の近くにあるセブンパインズという小さな町でぶつかります。
北軍呼称フェアオークスの戦い(南軍呼称セブンパインズの戦い)です。

この戦いは両軍ともに軍を分割し、バラバラになった状態で戦うという、褒められたものではありませんでした。
北軍は十万もの軍勢であるがゆえに近くを流れるチカホミニー川で両岸に分断されてしまいます。
マクレランの主力は東岸に、西岸にはハインツェルマンとキーズの二個軍団が配されました。
ジョンストンも麾下の軍勢を二手に分け、マグルーダーとA・P・ヒルの部隊にマクレランをひきつけさせ、主力は老ピートことジェームズ・ロングストリートに率いらせて、キーズの部隊を叩き潰すつもりでした。

しかし、ジョンストンの命令は適当で混乱を招き、ロングストリートは部隊を見当はずれの方に導いてしまって右往左往する羽目になります。
ロングストリートと共同で北軍キーズ隊を攻撃するはずだったD・H・ヒル(先ほどのA・P・ヒルとは別人)は、待てど暮らせどロングストリートが来ないので、ついに単独でキーズ隊に攻撃を開始。

リッチモンドを背後にして果敢に戦う南軍兵士は、北軍兵士を圧倒しましたが、総兵力に余裕のある北軍は援軍を差し向けます。
D・H・ヒル単独では攻撃にも限界があり、やがて日没とともに南軍は後退。
戦闘は終結しました。

北軍の損害は五千ほど。
対する南軍の方が六千ほど失った上に、司令官ジョンストンが負傷。
指揮を取ることができなくなりました。

一見南軍の方が損害もひどく司令官も失って被害が大きく感じますが、この戦闘で五千の兵力を失ったマクレランはまたしても“戦闘はいやだ病”が再発。
以後リッチモンドを目の前にしながら進軍は止まりました。
逆に南軍は司令官の負傷ということもあり、デイビスはリーに軍勢の指揮を任せます。
南軍は最高の司令官を得ることになったのでした。
半島戦役は次の局面を迎えます。

その10へ
  1. 2007/03/14(水) 20:43:42|
  2. アメリカ南北戦争概略
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アメリカ南北戦争概略その8

ジョージ・ブリントン・マクレラン。
「南北戦争の問題児」と評価されることもある北軍の将軍ですが、実際彼ほど毀誉褒貶の激しい人も珍しいかもしれません。
しかし、いろいろと言われても、北軍という巨大軍事組織を組織化して運営することができたのは、ひとえにマクレランの功績と言っていいでしょう。
新兵の教育、兵站の確立、いわゆる参謀本部と呼ばれるものの構成。
どれをとってもマクレラン以上に北軍を組織化することのできた人はいなかったと言ってもいいかもしれません。
彼の不幸はその組織化した軍隊を戦わせる時の指揮能力に問題があったということでしょう。

ともかく、ブル・ランの戦い以後、リンカーンの指示により、北軍は三年間契約の兵士を四十万集めるという、一大軍備増強に励みます。
北軍の名目上の総司令官はアナコンダプランを提出したスコット将軍でしたが、彼はもう七十歳を超えた老人であり、実戦での指揮など取れるはずもなく、実質上はマクレランが北軍総司令官と言ってもいい位置におりました。
マクレランは北軍の兵士を訓練し続けると同時に情報の収集にも余念がありませんでした。
彼は鉄道会社の社長をしていた時期に知り合った有名なる探偵、アラン・ピンカートンを使って情報収集に努めていたのです。

アメリカでは知らぬ者の無いほど有名なピンカートン探偵社創立の人アラン・ピンカートンは、情報収集のプロとして、マクレランにさまざまな南軍の情報をもたらします。
それは南部諸州同盟政府にまで入り込んだスパイなども駆使した有力なものでしたが、致命的な弱点がありました。
ピンカートンは情報を鵜呑みにしたのです。

ある村人がその村を南軍の部隊一万人が通過したと言います。
またある脱走兵が、俺の部隊は一万人いたと言ったとします。
情報を収集する者は、これらを精査しなくてはなりません。
もしかしたら、村人と脱走兵は同じ部隊のことを言っているかもしれないのです。
しかし、ピンカートンはそうは思いませんでした。
南軍部隊は二万人いると決め付けるのです。
本当は一万人しかいないはずの南軍は、こうして地図上に倍の戦力をもってあらわされることになります。
ピンカートン情報を基にして作戦を立てるマクレランもそのスタッフも、終始南軍は自分たちよりも優勢だと信じて疑いませんでした。

そのため、マクレランはただただリンカーンに兵員増強を願い出て、訓練ばかりに明け暮れます。
敵を攻撃するには、敵より多い兵力を整えることが第一です。
敵より少数で敵を攻撃しても勝てるはずがありません。
マクレランはその軍事上の常識をただただ律儀に守ろうとしていたのです。

しかし、リンカーンには政治的思惑などもあり、いつまで立っても軍勢を動かさないマクレランに痺れを切らします。
1862年2月。
ついにリンカーンは戦時一般命令第一号を発します。
つまり大統領命令です。
2月22日のジョージ・ワシントン誕生日かそれ以前に軍勢を動かせというこの命令により、マクレランはやむを得ず南軍首都リッチモンド攻略に向けて動き出します。

と、言っても、ブル・ラン(マナサス)周辺に陣取っている南軍と直接戦うことは彼には考えられないことでした。
戦闘というものは、例えそれが小競り合いであったとしても、彼が手塩にかけて育ててきた兵士たちを傷つけ殺してしまいます。
彼は戦闘というものがとにかくいやでした。
軍人である以上戦わねばならないのですが、彼はできるなら戦闘はしたくなかったのです。

そこで彼はチェサピーク湾に突き出したヨークタウン半島の先端にあるモンロー要塞の近辺に、海路軍勢を送り込み、そこから半島を北上して、半島の付け根にあるリッチモンドを攻略するという作戦を立てます。
モンロー要塞はリッチモンド近辺にありながらも北軍が保持していた要塞であり、そこからならば、ブル・ラン(マナサス)近辺の南軍に邪魔されずにリッチモンドへ向かえると判断したのです。

マクレランはこの作戦にポトマック軍(ワシントン近辺の北軍の軍勢を一つの軍組織にまとめたもの)のほぼ全力を投入することを考えておりました。
兵力は集中して使うべきであり、数の力を発揮することができるからです。
たとえワシントン周辺が手薄になっても、リッチモンドの危機を南軍が放っておけるはずもなく、ワシントンへ南軍が向かうことはできないとも考えました。

しかし、この作戦にリンカーンは難色を示します。
全軍を率いて行くのはさすがにやめてほしいとリンカーンはマクレランに命じました。
万万が一、ワシントンが攻撃を受けるようなことがあれば、政治上それは敗北と取られかねないからです。
マクレランは南軍がそんなことはできるはずは無いと思いましたが、大統領の命令には逆らえません。
やむを得ず彼は一部の部隊を残して行くことにします。

ちょうどこの頃、チェサピーク湾ハンプトンローズでは、ヴァージニア対モニターの海上戦闘があり、北軍はどうにかチェサピーク湾の制海権を保持します。
マクレランは今が好機とばかりに軍勢に乗船を命じ、モンロー砦に向けて出港しました。

続いて第二陣として出港しようとしていた北軍マクドゥウェル部隊(ブル・ラン戦の司令官・今は軍団長に格下げ)でしたが、思わぬ命令が届きます。
出港停止です。

リンカーンと陸軍長官スタントンが調べたところ、マクレランがワシントン防備に残して行く軍勢があまりにも少ないことに気がついたリンカーンが、ついにマクレランの頭ごなしにマクドゥウェル部隊の出港を取りやめさせたのです。

チェサピーク湾を渡り、ヨークタウン半島の先端モンロー要塞の近くに無事上陸したマクレランは、第二陣が届かないと知り唖然とします。
ただでさえ戦いたくなかったマクレランは、これでほぼやる気をなくしました。
彼の目の前にはモンロー要塞監視のための南軍マグルーダー将軍指揮下の三千人が居るだけでした。
マクレランの手元には、マクドゥウェル部隊が減ったとはいえ七万人が居たのです。
しかし、マクレランは兵力を政府によって減らされたことを嘆くだけで前進しようとはしません。

南軍は貴重な時間を手に入れることができたのです。

その9へ
  1. 2007/03/13(火) 21:02:12|
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アメリカ南北戦争概略その7

シャイローの戦いが行なわれていた頃、海でも戦史に残る戦いが行なわれておりました。
「ハンプトンローズの戦い」です。

この戦いは史上初の装甲された軍艦同士の砲撃戦という位置づけで有名であり、私の旧ブログ2005年10月12日にも取り上げさせていただきました。

北軍が焼き捨てた蒸気フリゲートを南軍が引き上げ、鉄道のレールを使って作った装甲板を貼り付けた装甲艦ヴァージニア(北軍名称メリマック)は、南部海軍の切り札としてチェサピーク湾を封鎖する北部海軍の木造フリゲートを蹴散らします。

南部が装甲艦を建造していることをすでに知っていた北部海軍は、装甲には装甲をということで、画期的な小型沿岸用装甲艦モニターを建造。
1862年3月9日、ついにハンプトンローズ沖で両艦は激突します。

戦いそのものは、双方の軍艦の主砲が相手の装甲を撃ち抜けないという状況で、四時間以上にわたる砲撃はほとんど効果がなく、艦首衝角を向けての体当たり攻撃も双方の動きが機敏なために体当たりそのものができない状況でした。

結局モニターは弾薬欠乏と操舵室への直撃により、損傷そのものはなかったものの艦長が後退を決意。
ヴァージニアの方も砲撃による浸水がひどくなってきたために引き上げます。
海戦は双方痛み分けに終わりました。

ヴァージニアとモニターとの戦いはこの一戦だけで、この後二度と双方が戦うことはありませんでした。
ヴァージニアをもってしても封鎖を突き破ることができなかった南軍は、以後じわじわと封鎖の影響が経済を締め付けることになります。

一方ミシシッピ川の河口でも北部海軍が戦果を上げることに成功します。

デービット・ファラガット提督率いる北軍艦隊は、ミシシッピ川の河口にあるニューオーリンズの攻略に向かいます。
ニューオーリンズのさらに下流には、南軍が砦を築いて河口を封鎖しておりました。
両岸の砦と鎖で丸太をつないだフェンスが船舶の交通を遮断していたため、北軍の河川輸送船は陸軍を送ることができません。
そのためファラガット提督は河川砲艦隊で砦に砲撃を仕掛けつつ、フェンスを破壊するという作戦を取りました。

両岸の砦との砲撃戦は苛烈を極めましたが、北軍艦隊はついにフェンスを超え河川輸送艦をさかのぼらせることに成功。
上流に上陸した北軍兵士により砦は陥落します。
ファラガットは砦の陥落を待つことなく河川砲艦隊を率いてニューオーリンズを砲撃。
ニューオーリンズは1862年4月25日に降伏します。

これによりシャイローでの北軍の勝利とニューオーリンズの陥落によりミシシッピ川の制水権がほぼ北軍の手に落ちます。
中央部の要地メンフィスとヴィックスバーグはまだ南軍が保持しておりましたが、ミシシッピ川の東西交通はかなり制限されることになりました。

そして、ワシントン周辺では新たなる戦いが始まります。

その8へ
  1. 2007/03/12(月) 20:35:20|
  2. アメリカ南北戦争概略
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期待できるかなぁ

いよいよ今月末、トライアングル様から新作「魔法戦士シンフォニックナイツ」がでますねー。

前作の「光臨天使エンシェル・レナ」にも洗脳された友人とか出てきましたし、「魔法戦士プリンセス・ティア」にはヒロインがまさに悪落ちするエンドがあったので、今作にも期待です。

まあ、あまり期待しすぎるとはずれてしまうことも多いので、適度の期待にとどめておこうかと。

最近は悪落ちをエンディングの一つに加えてくれる作品も多いようですが、なかなかそういう情報って手に入らないですよねー。
(まあ、エンドを一つネタバレするわけですから当然か)

悪落ちファンとしては悪落ちシーンのためだけに金を払ってもいいとは思うんですが・・・
まあ、難しいかな。

今日は南北戦争お休みします。
それではまたー。
  1. 2007/03/11(日) 21:24:39|
  2. PCゲームその他
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アメリカ南北戦争概略その6

やっぱり南北戦争はマイナーかな。
需要低そうですけど、最後までは続けますねー。
間にいろいろとはさんではいきますので。

シャイローのキャンプにいたグラントは、南軍が攻勢に出るとはまったく考えていませんでした。
折りしもリンカーンが、西部(場所としてはケンタッキー州ですから、アメリカ中北部のさらに東部寄りなんですが、ワシントン付近よりは西という事で西部方面とされていました。西部劇の西部とはまったく位置が違います)の北軍がハレックとビューウェルの二人に指揮権があると言う状況は好ましく無いとして、ハレックにビューウェルの軍を指揮下に置くよう命令したところ、ハレックはグラントとビューウェルを合流させて南軍にあたらせようとしました。

その頃南軍はアルバート・シドニー(A・S)・ジョンストンの元に軍勢を集結。
東部からブル・ランで北軍を蹴散らしたボーリガールを麾下に加え、総勢四万の軍勢でグラントの北軍を潰しにかかります。

ビューウェルの軍勢が合流してしまったのでは北軍の方が人数で上回ってしまいます。
そのためにグラント軍がまだ四万のうちに叩いてしまわねばなりません。
ジョンストンは部隊を混乱を避けるために二手に分け、二本の街道を使ってシャイローを目指しました。
しかし行軍はそれでも混乱し、ぐずぐずと時間ばかりかかりました。
ようやく攻撃態勢を整えたのは、進軍開始から二日後のことで、この分では北軍はすでにこちらの行動を察知して防御を固めているに違いないと思ったボーリガールは、絶望から攻撃中止を進言します。

しかし、A・S・ジョンストンはボーリガールの不安を一蹴。
翌日1862年4月6日、シャイローの北軍に攻撃を仕掛けました。
北軍四万対南軍四万、ブル・ランの戦い以上の軍勢がここシャイローで戦うことになりました。

グラントはすぐさま応戦・・・できませんでした。
彼はシャイローにいなかったのです。

彼は砂埃の舞うキャンプ地よりも、快適な北軍砲艦を使ってサヴァンナの町まで骨休めに出かけていたのです。
異変を察知したグラントは大至急シャイローに向かいますが、彼が到着するまでの間、北軍は次席指揮官W・T・シャーマンにゆだねられたのでした。

4月6日早朝、北軍が朝食を楽しんでいたまさにその時、南軍のときの声が上がります。
北軍はまったく予想もしていなかった攻撃にただ右往左往するばかり、さしものシャーマンも後退を命じるしかありませんでした。

一方南軍も両翼に広く展開して攻め寄せたために、指揮統制が困難になってしまいます。
A・S・ジョンストンが必死に統制をはかりますが、両軍はただ混戦状態で射撃を繰り返すばかりとなりました。
それでも奇襲の効果はてきめんで、南軍は北軍を圧倒します。
北軍はどうにか木立を盾にして最後の防戦に努めます。
ここを突破されれば背後に川がある北軍は全滅も覚悟しなければなりませんでした。

この防戦はついに南軍を押しとどめます。
前線近くで指揮を取っていたA・S・ジョンストンは銃弾に当たって負傷。
南軍の攻撃に陰りが見えました。

お昼ごろにはグラントも到着。
彼は粘り強い指揮で北軍を立て直します。

ついに夕刻までに決着はつかず、北軍はキャンプを守りきります。
南軍は翌日の再攻撃のために再編成を行ないましたが、A・S・ジョンストンは指揮が取れず、ボーリガールは弱気になっている上に、北軍にはビューウェル軍の先鋒一万五千が到着します。

そのため、翌日はグラントの方が攻勢に出て、南軍を圧倒。
ボーリガールは後退を命じました。

結局戦場に残ったのは北軍でした。
北軍は勝利を宣言し、グラントはまたも勝利者となりました。
しかし、北軍の戦死傷者は一万三千人にも及びました。
南軍も死傷者数では一万を超えさらにA・S・ジョンストンを失いました。
負傷が元で死亡したのです。

双方合わせて二万四千近くもの死傷者を出したことは人々にとって慄然とする出来事でした。
ブル・ランの戦いから半年ほどで五倍の損害を出すほどに戦争は激化したのです。
戦争は巨大な吸血ポンプであることを人々はあらためて思い知りました。

その7へ
  1. 2007/03/10(土) 20:41:09|
  2. アメリカ南北戦争概略
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アメリカ南北戦争概略その5

第一次ブル・ランの戦いの敗戦は、リンカーンをがっかりとさせました。
北軍にとって幸いなことに、南軍は北軍の残した物資を略奪するのに夢中だったのと疲労が重なり、追撃が行なえなかったため、ワシントンが攻撃を受けることはありませんでした。

リンカーンはこの戦争が長期にわたることを受け入れ、兵役期限三年間の義勇兵を募集します。
そして、大部隊の指揮には向かないことを露呈してしまったマクドゥウェルを解任し、後任としてバージニア地域で小規模の作戦を部下のおかげで成功させ、マスコミによって一躍国民的英雄に祭り上げられていたジョージ・ブリントン・マクレランを司令官に任命します。

マクレランはクリミア戦争に観戦武官として従事したこともあり、北軍内での評価はすこぶる高い男でした。
彼は若いナポレオンとまでいわれ、彼自身もそのつもりであのナポレオンの有名な右手を軍服のボタンの間に差し入れるポーズを取って写真を写したことすらありました。
34歳で医者の息子で鉄道会社の社長でもあった彼は、まさに毛並みのよいお坊ちゃんであり、後々そのお坊ちゃまなところが彼の足を引っ張ることになります。

とは言うものの、組織運営の手腕にかけてはピカ一だった彼は、北軍を烏合の衆から戦闘集団へと変えて行くことになります。
ワシントン周辺の東部の北軍は一日八時間の猛訓練を課すマクレランにより、1861年一杯を訓練で過ごすことになりました。
南軍も急速に陣容を立て直した北軍を目の当たりにし、攻撃をしようにも手が出せない状態となってしまったために、お互いににらみ合いの状態が続くことになります。

一方東部とは離れたケンタッキー州では、北部連邦、南部諸州同盟双方がこの州を自軍陣営に引き入れようと工作をしていましたが、思うような成果を上げることはできませんでした。
ケンタッキー州は奴隷州ではありましたが、今回の戦争にはできれば中立でいたかったのです。
それというのも、ケンタッキー州はエイブラハム・リンカーンとジェファーソン・ディビスの両大統領の出身地であり、綿花栽培も工業も程よく発展していたために、どちらにもいい顔をしていたかったのです。
中にはケンタッキー出身のクリッテンデン上院議員の息子のように長男は北軍、次男は南軍に参加したなどということもあったようです。

最初に動いたのは南軍でした。
どっちつかずのケンタッキーに業を煮やした南部諸州同盟は、軍を送り込んでコロンバスというミシシッピ河畔の町を制圧します。
こうなると北軍も負けてはいられません。
ミシシッピ川の支流テネシー川の河畔の町パデューカを制圧。
両軍がケンタッキーでにらみ合う状況になります。

この時、パデューカの町を制圧した北軍の指揮官が、のちに北軍最高の名将と言われたユリシーズ・シンプソン・グラントでした。
オハイオ州生まれの彼は、正確にはハイラム・シンプソン・グラントという名前でした。
父親は事業を手広くやっていましたが、ハイラム少年を社交的で無いため事業には向かないと判断し、士官学校に放り込んでしまいます。
その時受け付けた事務員が彼の名前を“ユリシーズ”と間違え(どう間違ったらそうなるのかわかりませんが)、以後彼はユリシーズ・シンプソン・グラントと名乗るようになります。

士官学校卒業後に職を転々としたグラントでしたが、南北戦争が始まると志願して参加。
准将の階級をもらって、北軍の一部隊を率いていたのでした。

ケンタッキー方面の南軍の司令官はアルバート・シドニー・ジョンストン。
彼は北軍に対し防衛線を固める策にでます。
それに対し北軍はヘンリー・ウェージャー・ハレックとドン・カルロス・ビューウェルがそれぞれの部隊を率いてジョンストンと対峙します。
ハレックの指揮下にいたグラントは、テネシー川の河川交通を遮断しているヘンリー砦の攻略を命じられました。

年も明けて1862年2月。
グラントは河川砲艦隊を指揮する北部海軍のアンドルー・フット提督と共同でヘンリー砦に攻めかかります。
水陸両面からの攻撃に、ヘンリー砦は程なく陥落。
グラントは意気揚々と次のドネルソン砦に向かいます。
ジョンストンは援軍を送りますが、援軍としては少なすぎ、ドネルソン砦も陥落。
南軍に対して華々しい勝利を得たグラントは、北部の人々にとってはまるで救世主のようにもてはやされました。

面白くないのはハレックでした。
部下のグラントが手柄を独り占めしているように感じたのか、彼はグラントが酒癖が悪いことを理由に罷免。
しかし、このことはかえって彼自身を危うくさせかねないほどの話題となったために、グラントを呼び戻します。
結局グラントは彼の親友ウィリアム・テカムセ・シャーマンの部隊とともに、ピッツバーグ・ランディング付近のシャイローという場所で部隊の休養と再編成を行なうことになりました。
ジョンストン率いる南軍は、ヘンリー砦とドネルソン砦の陥落で大幅に後退しており、敵が近くに居るなどとは思いもしておりませんでした。
「平和な場所」という意味を持つシャイローという土地が、まさに戦場となる時が来るのです。

その6へ
  1. 2007/03/09(金) 21:15:14|
  2. アメリカ南北戦争概略
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アメリカ南北戦争概略その4

地図を見てもらえればわかると思いますが、広大なアメリカという土地でありながら、北部連邦の首都ワシントンと、南部諸州同盟の首都として制定されたリッチモンドとは、わずかに140キロほどしか離れていませんでした。
東京から静岡の手前ぐらいまでの距離でしょう。
この距離にお互いの陣営は目を奪われてしまったのです。
相手側の首都を落とすことができれば、この戦争はすぐに終わる・・・と。

北軍司令官アーヴィン・マクドゥウェルは、自軍部隊が烏合の衆であるという認識で、戦闘をする状態では無いと思っていましたが、北部連邦議会は「リッチモンドへ!」の大合唱に包まれており、三ヶ月という期限で兵士を雇った以上、使わずに解雇するわけには行かない状態でした。
そのためリンカーンはマクドゥウェルに対し攻撃命令を出さないわけには行かなかったのです。
マクドゥウェルは五万五千の軍勢を預けられ、やむなくリッチモンドへ向け進撃を開始しました。

一方南部諸州同盟側も状況は似たようなもので、ワシントンを攻撃しろという声に押され、ジェファーソン・ディビスは三万七千ほどの軍勢をワシントンに差し向けます。
それをジョゼフ・ジョンストンとピエール・ギュスターブ・トータント・ボーリガール(ボーレガードともボールゲールとも書かれることあり)の二人に任せ、二方向からワシントンに向かう作戦を取りました。

敵が二方向からワシントンに向かっていることを知ったマクドゥウェルは、自軍部隊も二手に分けそれぞれに対処することにしました。
自分は主力の三万五千を率い、ロバート・パターソン少将に残り一万八千を渡して南軍のジョンストン隊に当たらせることにしたのです。

二手に軍を分けたとはいえ、北軍は人的戦力において優位であり、マクドゥウェルの三万五千対ボーリガールの二万二千、パターソンの一万八千対ジョンストンの一万二千とそれぞれが南軍に対して多い人数を確保しておりました。

しかし、当時の乏しい情報収集力では相手の軍勢の正確な規模を推し量ることは難しいものでした。
パターソンはジョンストンの南軍が終始自軍より規模が大きいと信じて、積極的に攻撃を仕掛けることをためらってしまったのです。
そのため、ジョンストン隊を捕捉しておくという役目を果たすことができず、結局彼の一万八千はこの後の戦いになんら寄与することはできませんでした。

前面にマクドゥウェルの北軍が迫っていることを知ったボーリガールは、すぐにジョンストンを呼び寄せます。
そして、自身はマナサスの鉄道駅付近に陣取って、マクドゥウェルを待ち受けました。
一方マクドゥウェルは、のろのろとした行軍を続けマナサス付近のブル・ラン川(きっと近くを牛が走っていたんでしょうね)付近に陣取ります。
その時にはすでに南軍側にはジョンストン隊が到着した後でした。

マクドゥウェルは自軍と南軍との戦力差がほとんどなくなったことに気がつきましたが、それでも奇襲によって勝利を掴むことは可能だと考えました。
彼は手持ちの兵力の三分の一を別働隊にして夜のうちに右翼の森に向かわせ、早朝夜明けとともに南軍側面へ奇襲攻撃をかけることにしたのです。

上手く行けば南軍に対しかなりの効果を与えるであろうこの作戦でしたが、いかんせん北軍の兵士は未熟な新兵同然の連中でした。
しかも、別働隊の指揮官も地理不案内なために右往左往しながら進む有様で、結局夜明けになっても攻撃開始地点の森にはたどり着けませんでした。

ボーリガールは北軍の一部が迂回行動を取っていることを察知し、その対処のために一部の部隊をマシューズ・ヒルという丘に差し向けました。

午前十時過ぎ、ようやく北軍の攻撃が開始されます。
世に言う第一次ブル・ランの戦い(北軍側の呼び方;南軍側呼称は第一次マナサスの戦い)の始まりでした。

この戦いにはワシントン周辺から物見遊山の人々が大勢訪れておりました。
着飾った紳士淑女が、ピクニックよろしく食べ物を食べ酒を飲みながら戦争を一目見ようとやって来ていたのです。
何せ大きな戦争から100年近く経っているのです。
戦争というものを知らな過ぎました。
やがて戦場に大砲の音が響き、銃弾が飛び交い始めると、人々は不安になります。
戦争ってこんなにひどいものなのか?
そう思い始めたのもつかの間、流れ弾が人々の周辺に着弾するようになると、もはや戦争見物などとは言っていられません。
人々は我先にその場を逃げて行きました。

北軍はテイラー准将の部隊が独断でブル・ラン川の浅瀬を渡り、別働隊と共同でマシューズ・ヒルに圧力をかけたために、南軍は丘を放棄して後背のもう一つの丘ヘンリー・ハウス・ヒルへ後退します。
ヘンリー・ハウス・ヒルを失えば、南軍は総崩れになりかねません。
北軍は嵩にかかって丘に攻め寄せます。

その時、敢然と丘に立っていたのがトーマス・ジョナサン・ジャクソン准将でした。
彼は部下の兵たちを北軍の砲撃の受けづらい反対斜面に配置して、そこから丘を登ってくる北軍を迎え撃ったのです。
銃弾飛び交う斜面の上で(か、どうかはわかりませんが)立って指揮を取るジャクソンの姿は、南軍兵士に勇気を与えます。
「見ろ、ジャクソン将軍が石壁のように立っているぞ!」
この言葉はのちにジャクソン将軍にストーンウォール(石壁)というニックネームを与えることになり、以後ジャクソン将軍はストーンウォール・ジャクソンと呼ばれるようになりました。

ヘンリー・ハウス・ヒルでの戦いが一進一退を続ける中、青い軍服の騎兵隊が北軍砲兵隊に近づきました。
青い軍服は北軍の基本色です。
南軍は灰色の軍服が基本だったので、北軍砲兵は当然この騎兵隊は味方だと信じておりました。

しかし、この騎兵隊は南軍騎兵隊でした。
双方とも物資不足の中かき集められた兵士たちは、手に入る生地で軍服をこしらえたため、北軍でありながら灰色っぽい軍服を着ていた連中や、南軍でありながら青い軍服を着ていた連中がいたのです。

南軍騎兵の攻撃に北軍砲兵は蹴散らされ、捕獲された大砲がかつての味方に火を噴きます。
北軍はこの攻撃に後退を開始。
しかし、南軍の更なる攻撃と、北軍兵士の未熟さから、後退は大混乱となり敗走へと変わります。
散り散りばらばらになって逃げていく北軍でしたが、南軍もまた疲労困憊していました。
南軍は逃げる北軍を追撃でとどめを刺すことができなかったのです。

この戦いは両軍にとって初めての大規模戦闘でした。
北軍の損害は死傷行方不明合わせて約二千九百。
南軍も約二千の損害でした。
この数字は双方の政府にとっては悪夢のような数字でした。
たかだか一回の戦闘でこれほどの損害が出るということと、戦闘に勝ったからと言って戦争が終わるわけでは無いこと。
この二点を深く刻み込まれた双方の政府は、これ以後損害の回復と、長期戦に対する備えに全力を尽くすことになります。

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  1. 2007/03/08(木) 21:16:48|
  2. アメリカ南北戦争概略
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アメリカ南北戦争概略その3

サムター要塞への南軍の攻撃により、戦争は避けられなくなりました。
しかし、この時点で北部連邦も南部諸州同盟も戦争に対する備えはまったくありませんでした。
何が足りないと言って、一番足りないのは兵士の数でした。

アメリカは英国との間に戦った独立戦争以後、大きな戦争をそれほど体験していませんでした。
カナダの植民地との戦いや、メキシコとの戦い、それに原住民(ネイティブアメリカン=いわゆるインディアン)との戦いには、それほど多くの兵員を必要としなかったのです。
そのため、アメリカ全土で正規軍の兵士はわずか二万名に満たなかったといい、北部も南部もとにかく兵士を集めることに躍起になりました。

サムター要塞陥落の翌日(1861年4月15日)、リンカーンは北部連邦を南部同盟の暴徒から守るために義勇兵を募ります。
この義勇兵の任期は三ヶ月。
長期にわたって拘束するものではありませんでした。
リンカーンは戦争が長期にわたるとは考えていなかったのです。

北部連邦と南部諸州同盟との国力差はまさに圧倒的と言ってもいいものでした。
人口は2200万対500万(プラス奴隷が300万)。
工業生産高は15億ドル対1・5億ドル。
南部が北部を上回っているのは農業生産高だけと言っても過言ではありませんでした。
まさに10対1ほどの国力差だったのです。

北軍総司令官(当時)ウィンフィールド・スコット少将(この当時合衆国軍の最高階級は少将でした。おそらくジョージ・ワシントンが中将であったため、少将以上を作りづらかったのでしょう)は、血生臭い戦闘を避け、海岸線を封鎖して経済的に締め上げ、ミシシッピ川を制圧して南部を東西に分断すれば、南部は経済的に立ち行かなくなり、連邦に戻ってくるとリンカーンに訴えました。
このアイディアは大蛇がぐるっと南部を取り囲んで締め上げるイメージから、「アナコンダプラン」と呼ばれましたが、まさにその後の北部の主戦略となります。

しかし、リンカーンもその他の人々もこのアイディアに当初反対でした。
効果は上がるだろうが、それまでに途方も無い時間がかかるからです。
だいたい封鎖する船自体が北軍にはありませんでした。
北部海軍はまったくもって弱体だったのです。
それに圧倒的な国力を背景に一戦して南軍を撃ち破れば戦争は終わるという考えが支配的で、長期戦になると予想したものは一握りだったのです。

リンカーンの呼びかけにより、北部では一気に七万五千の義勇兵が集まりました。
南部でもデイビスの呼びかけで続々と兵士が集まります。
北部も南部も兵士はどうにか目処が立ちました。

しかし、困ったことに彼らを指揮する者たちがいませんでした。
士官学校出身の士官はまったく数が足りなかったのです。
結局両軍とも将軍はともかく、実戦部隊を指揮する中級の士官(少佐とか大尉とか少尉とか)は義勇軍の中から選挙によって兵士たちに選ばせました。
それしか方法がなかったのです。
それでもこの方法だと、職場の親方や工場の経営者などいくらかでも人の上に立った経験のあるものが選ばれて、それなりに有効な手段だったそうです。
後は実戦を生き残ることができれば、士官として成長するだろうというものでした。
(ちなみにこの方法は、第二次世界大戦のときのソ連軍も同じでした)

リンカーンはかねてより目をかけていた一人の士官を呼びつけました。
ロバート・エドワード・リー。
南北戦争最高の名将と言われたリー将軍です。
彼は連邦軍の士官としても、その有能さを発揮していたため、リンカーンは北軍の指揮を彼に取らせるつもりだったのです。

しかし、リーは首を振りました。
リーの故郷バージニア州は、彼が呼び出された前日に南部諸州同盟に参加していたのです。
故郷を敵に回すことはできないと、リーはリンカーンに告げ、その場を辞去します。
北軍は最高の人材を失うと同時に敵に回してしまいました。

やむを得ずリンカーンは北軍の指揮をアーヴィン・マクドゥウェルに取らせます。
彼は軍内でも三つの点で有名な男でした。
一つ目は広範な軍事知識。
二つ目は幕僚会議を充実させたこと。
そして三つ目はデザートに西瓜を丸ごと一個食べるといわれる食欲でした。

マクドゥウェルは武器を持った民間人でしか無い義勇兵を、何とか戦える兵士にしようと訓練に励みます。
しかし、そうこうしているうちに雇用期限の三ヶ月はあっという間に過ぎようとしてしまいました。
リンカーンはせっかく集めた兵士を訓練するだけで解雇するなど耐えられるものではありませんでした。
リンカーンはマクドゥウェルに進軍を命じます。
目標はリッチモンド。
南部諸州同盟の首都でした。
南北戦争最初の本格的な会戦、第一次ブル・ランの戦い(第一次マナサスの戦い)が始まります。

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  1. 2007/03/07(水) 21:17:32|
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アメリカ南北戦争概略その2

サウスカロライナ州にあるチャールストン港は、アメリカ屈指の貿易港でした。
その良港を諸外国の軍隊から守るために、港の入り口にはいくつかの要塞が築かれます。
その一つがサムター要塞でした。

サウスカロライナ州が連邦を離脱し南部同盟に加わった時も、要塞群は北部連邦に所属したままでした。
ジェファーソン・デイビスはリンカーンに対し要塞を明け渡すように使者を送りますが、リンカーンはぐずぐずと使者に会うのを避けて返事をしません。

要塞群のひとつモルトリー要塞の守備隊指揮官はロバート・アンダーソン少佐という人物でした。
彼は70人の部下とともに、防御しやすいサムター要塞に移り、そこで北部からの援軍を待つつもりでした。

サムター要塞は港の中央にある島に作られた当時最新鋭の要塞で、充分すぎるほどの防御力を持っていました。
しかし、基本的には港に侵入する敵艦を攻撃する要塞ですので、内陸側からの攻撃は考慮されておりません。

それでも島の上の要塞ということで他の要塞よりは防御しやすかったのです。

戦闘に備えて移動した北部連邦軍(以後北軍)兵士たちと、使者に会おうとしないリンカーンの態度に南部同盟は、北部が開戦やむなしの意思を持っていることを悟ります。

南部同盟軍(以後南軍)はついにサムター要塞を陸上から包囲。
アンダーソン少佐に降伏を迫ります。

わずか70人の部下では要塞にこもっても勝ち目はありません。
しかしアンダーソンは北軍仕官として降伏を拒否します。
ただし、食糧不足なので、数日後には降伏せざるを得ないだろうとも付け加えました。

しかし南軍はその回答に満足せず、1861年4月12日、ついに砲撃を開始しました。
この日をもって南北戦争の開戦日とされています。

アンダーソン少佐は部下を鼓舞し、次々と撃ち込まれる砲弾を必死に耐え忍びます。
対岸の要塞を砲撃するようにはできていないサムター要塞は積極的な反撃も行なえないまま、それでも三日間耐えました。

これ以上の篭城はできないと判断したアンダーソン少佐はついに降伏を決意。
南軍も三日間耐え抜いた北軍兵士たちを礼節をもって迎え入れ、港の沖合いにやってきた北軍輸送船に引き渡します。
この三日間の戦闘は驚いたことに両軍の死傷者0というものでした。
わずかに戦闘後の降伏時に北軍の大砲が暴発し、怪我人が出たのが唯一だったのです。

サムター要塞の降伏は北部の人々を愕然とさせました。
南部の独立容認派は黙り込み、南部に対して思い知らせるべきだという声が大勢を占めるようになります。
後戻りはできなくなりました。

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  1. 2007/03/06(火) 21:02:18|
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アメリカ南北戦争概略その1

日本では勝海舟が咸臨丸でアメリカに渡り、桜田門外で大老井伊直弼が殺害された1860年。

アメリカではエイブラハム・リンカーンが大統領に選出されました。
(実際の就任は1861年3月)

この時点でアメリカは二つに分裂することになりました。
実質的な「アメリカ南北戦争」の始まりと言っていいかもしれません。

日本では、ほとんどの人がアメリカ南北戦争という言葉は知っていても、なぜ起こったのか、誰が活躍したのか、その後どうなったのかなどはほとんど知られていません。
非常にマイナーな戦争といえるでしょう。

そこで、ちょっとだけ南北戦争について書かせていただきますねー。

ヨーロッパでは1789年のフランス革命以来戦乱に明け暮れました。

自国への革命の波及を恐れた各国がフランスを潰そうと躍起になり、それに対抗してフランスではナポレオンが権力を握って行きます。

1815年のワーテルローの戦いにより、ナポレオン戦争は終わりを告げますが、その間アメリカではヨーロッパの戦争にともない工業製品が求められるようになったため、北部では人口の集中と工業化が発展します。
一方アメリカ南部ではヨーロッパの綿花需要の増大にともない、綿花産業が飛躍的に発展。
大農場主が奴隷を使って綿花を大量に栽培するようになりました。

北部は自国の工業の発展育成のためには、ヨーロッパ先進国の工業製品に高い関税をかけ、アメリカに入ってこないようにしようとします。
南部は逆に綿花輸出のためには関税を下げて安く輸出しようとします。

経済面の南北格差は、いつしか農場で働く黒人奴隷の問題にクローズアップされ、奴隷を必要としない北部と奴隷を財産として必要とする南部の対立はますます激しくなりました。

そんな中でのリンカーンの大統領選出は、彼が北部側の政策を推し進める人物だったこともあり、南部にとっては容認できるものではなかったのです。

今でも問題になるアメリカ憲法解釈問題なのですが、当時の南部は州は必要であれば連邦を離脱できると考えており、リンカーン選出によりサウスカロライナ、ジョージア、アラバマ、ミシシッピ、フロリダ、ルイジアナ、テキサスの七州が連邦脱退を表明。
その後ノースカロライナ、ヴァージニア、アーカンソー、テネシーも相次いで離脱を表明します。

この十一州はあらためて南部諸州同盟を成立させ、初代大統領ジェファーソン・デイビスを選出して北部と決別した道を歩むことにしたのです。

北部は最初、いずれ南部は戻ってくるだろうから、しばらく放っておこうという雰囲気が支配的でした。
一方南部も北部はさほど抵抗せずに南部の独立を認めるだろうと思っていたのです。

そのお互いの思惑が一変するのはある事件がきっかけでした。
南部同盟軍による、サムター要塞への攻撃です。

2へ続く
  1. 2007/03/05(月) 21:45:03|
  2. アメリカ南北戦争概略
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点数的にはリードしたものの・・・

今日も友人とウォーゲームを楽しみました。

今日プレイしたのはタクテクス誌1986年5月号付録の「チャイニーズファーム(中国農場)」SPI/HJです。

以前私のブログでも取り上げましたが、チャイニーズファームとはもともと日本が援助して作った大規模農場でしたが、漢字が記載されていた書類などから、ここは中国人が作った農場であると勘違いされ、チャイニーズファームと名付けられました。

今回のゲームは第四次中東戦争での、イスラエル軍によるスエズ運河逆渡河作戦を扱ったゲームであり、先日私のブログで紹介したオール・タンク・ドクトリンによる被害から立ち直った後のイスラエル軍対エジプト軍のゲームです。

今回も例によって攻撃側のイスラエル軍を私が、防御側のエジプト軍を友人が受け持ちました。

展開としては有力な部隊を展開させるイスラエル軍が、航空支援のもとスエズ運河を渡ってエジプト軍を撃破する・・・はずだったんですが。
史実同様にエジプト軍のSAM(対空ミサイル)の迎撃により、イスラエル空軍は次々と撃墜されエジプト軍に勝利得点を与えてしまいます。

地上軍も機動戦とは程遠く、ゲームシステムの制限もあって、うじうじ進むイスラエル軍と、うじうじ後退するエジプト軍という、まるで第一次世界大戦のような動きの無い戦いになりました。

スエズ運河を渡った部隊も、エジプト軍の反撃で追い返されてしまったり、対岸で支援も受けられずに壊滅したりと、どうもまずい攻めが目立ってしまいました。

包囲により除去したエジプト軍のコマは結構多かったのですが、SAMで撃墜された空軍が与えてしまった勝利得点により、得点的には拮抗するなど、勝っているのやら負けているのやらという状況が続きます。

最終的に時間切れ投了となったのですが、わずかにイスラエル軍が優勢と言う感じでした。

でも、まったく勝ったという気もしませんでしたし、かえって押されていたイメージの残る対戦でした。

第四次中東戦争という現代機甲戦でありながら、迂回包囲もできずに平押しで攻めるだけ。
我ながら情けない対戦でした。
次回は頑張るぞー。

それではまたー。
  1. 2007/03/04(日) 21:09:16|
  2. ウォーゲーム
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闇の声

マタンゴの原作になった小説ではありません。

「闇の声」はブラックサイク様の出世作となったアダルトゲームです。

もともとのコンセプトは、よくある脱出モノが閉じ込められた洋館からいかにして脱出するかというのを描いているのに対し、脱出されてしまったらバッドエンドという館側の視点で何か作れないかというものだったそうです。

そのコンセプトに基づき、プレイヤーは館の主「闇の声」となって、手駒である館の女主人「小夜子」と可愛い美少女メイドの「K」を使って、館に迷い込んできた六人の人間を堕落させ、館にとどまることが幸せと思うようにしていくというものです。

期間は一ヶ月ですが、一人一人の行動は一日一回誰かに接触させるというものですので、一回のプレイはそれほど時間はかからないかも。

最初は小夜子とKだけを使い、それぞれを六人の誰かに接触させることで堕落させていくわけですが、堕落度が一定レベルを超えますと、その人間も手駒として使えるという、非常にMC好きにはたまらない内容となっております。

堕落の度合いも徐々に落ちて行く感じが素晴らしく、異常な行動を取り始めることに本人は気が付かないというか、それが当たり前だと感じてしまう状態になるので、まさに洗脳と言ってもいいでしょう。

ただ、効率よく堕落させないと、途中で脱出してしまう人物も出ちゃいますし、最終的に全員落とすのは慣れるまでは大変です。

まあ、パズルの要領ですので、いっぺんわかってしまえばだいぶ楽にはなりますけどね。

堕落させられる六人それぞれが、二通りの堕落の方向を持っています(特別編のみ、初回版は土屋と久保は一通りしかない)ので、それぞれの組み合わせが膨大になります。
その一つ一つを確かめるのが作業でもあるんですが楽しいんですよね。

亜梨栖:猫耳少女or女王様
喜美江:自堕落or淫乱
萌  :派手好きor自慰中毒
冬姫 :女装好きor女性化
土屋 :性豪orアナル好き(アナル好きは特別編のみ)
久保 :卑屈orフェラ好き(フェラ好きは特別編のみ)

このようになりますので、猫耳亜梨栖と派手好き萌の時と女王様亜梨栖と自慰中毒の萌では当然展開が違うわけです。

楽しい組み合わせもあればパッとしない組み合わせもありますので、これとこれはどうかなーと組み合わせを楽しむことができますよ。

古いゲームとなっちゃいましたが、ダウンロード販売で安く手に入れられますし、雑誌「メガストア」に付録(初回版の方)として付いたりしましたので手に入れやすいほうではないかなと思います。

私の大好きなゲームですので、一度お試し下さいませ。
嵌まりますよー。(笑)

それではまた。
  1. 2007/03/03(土) 19:46:10|
  2. PCゲームその他
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女性用の鎧

中国四国地方の地図を開いてみてください。

瀬戸内海が大きく出ているのがいいのですが、愛媛県と広島県にはさまれた海域に、「芸予諸島」という島々があります。

この芸予諸島の中に「大三島」という島がありますが、この島にある「大山祗(おおやまづみ)神社」という神社は日本有数の古い神社で、国宝や重要文化財も多数収められております。

その数多くの文化財の中には刀剣や鎧も多く収められているのですが、その中に現存する鎧では唯一と言われる女性用の鎧が収められています。

正式名称は「紺糸裾素懸威胴丸(こんいとすそすがけおどしどうまる)」

胸の部分は膨らみ、腰を絞られ、裾の草摺り部分は普通より広くまるでスカートのようになっています。
着用したのは鶴姫(つるひめ)という女性といわれ、地元では女性ながらに戦に出て大内氏から島を守ろうとした勇者として語り継がれています。

鶴姫は大山祗神社の大祝(大宮司)安用(おおほおり やすもち)の娘として生まれました。
この家は代々河野水軍一族で、鶴姫も武芸に通じていたそうです。

1541年、大内氏の勢力が芸予諸島にも及び、河野水軍と村上水軍は大内氏と戦いましたが、兄が死んだのち、十六歳の鶴姫は漆黒の長い髪をなびかせ、この紺色の胴丸を身につけて先頭に立って戦を指導したと言います。

ある時は遊女に変装して大内氏の船に乗り込み、敵将を自慢の怪力で抱え込んで短刀で刺し殺したと言いますから、力も相当に強かったのでしょう。

1543年、武運拙く大三島は大内氏の軍勢の前に陥落し、鶴姫も恋人を失います。
鶴姫は最後の一戦を大内氏に挑んだ後、ついに再び帰ることはありませんでした。

逸話といい最後といい「日本のジャンヌダルク」と呼ばれるのもわかりますね。
生き残ったという説もありますが、日本人は落ち延びて生き残ってほしいという人には生き残り伝説を与えますから、おそらく鶴姫の場合もそうなのではないかと思います。

鎧に関してはイメージ検索すると出てくると思います。
それではまた。
  1. 2007/03/02(金) 21:39:04|
  2. 趣味
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マチルダたん鹵獲

昨日の記事に対して、ジャック様が大変妄想心を刺激してくださるコメントを下さいましたので、ついつい書いてしまいました。

英軍歩兵戦車マークⅡマチルダを擬人化して鹵獲されるところです。
しょうもないものを書いていると笑って読んでやってください。

それではドゾー。

私は歩兵戦車マークⅡマチルダ。
国王陛下の軍隊の機甲旅団の中核よ。
私の自慢はこのすごーく厚いドレス。
そこらの男じゃ歯が立たないわよ。
華奢な脚だってジャパニーズスタイルって言われる長いスカートで隠しているから大丈夫。
ダンスの途中に足をもつれさせるなんてことは無いわ。
でもね、この分厚いスカートのせいで、走るのだけは遅いの。
それだけがちょっと困っちゃうのよね。
何せ今いる所は暑い暑い砂漠なの。
砂漠って拠点が少ないから、どうしても機動戦が多くなるのよね。
クルセイダーちゃんは巡航戦車だからいいけれど、私やバレンタインちゃんは走るのが遅いから困っちゃうの。
でも、この厚いドレスのおかげでちょっとぐらい叩かれてもまったく平気。
だから、あのマカロニ野郎どもなんか、まったく私たちには歯が立たないのよ。
様無いわよね。

でもね、最近ちょっと状況が変わったの。
あのちょび髭親父のお気に入りのロンメルって奴がこの砂漠にやってきたのよ。
二号とか三号とか四号とかってお妾さん一杯引き連れちゃってさ。
いやな奴。
私たちはあんな奴には負けないんだから。
そりゃあ、私たちの上官ってあんまり頼りにならない感じだけど、でも姉妹たちは一杯いるから大丈夫よね。

そんなある日、私はたくさんの姉妹たちや、同じ歩兵戦車のバレンタインちゃんたちと一緒にちょび髭親父の部下どものところへ出かけたの。
もちろん、大勢の歩兵さんたちと一緒にね。
暑い砂漠だけど、平らな砂地はそれなりに走りやすいし、敵の数は少ないから楽勝よ。
ヨーロッパで見せ付けた私のドレスの威力もあるしね。
ちょび髭の部下どもには、私のドレスを破くことのできるような対戦車砲は持っていないもの。
思う存分に暴れてあげる。
見てらっしゃい。

見つけたわ。
敵の拠点よ。
おとなしくしているみたいだけど、あんたらはこのアフリカにいるだけで邪魔なの。
さっさとこの砂漠から出て行きなさい。
私は歩兵さんたちを引き連れて、姉妹たちとともに突進する。
あ、もちろん歩兵さんたちはちゃんと私に付いて来られるわよ。
私は歩兵戦車なんだから、走るのは遅いけど、ちゃんと歩兵さんの速度に合わせてあげられるの。
ちゃんと考えているんだから。

どうやら敵は陣地で防御するみたいね。
あーん、どうしよう。
私って歩兵さんの支援のための歩兵戦車なんだけど、陣地攻撃って苦手なのよね。
ほら、陣地攻撃に適している炸裂弾。
榴弾って言うんだけど、私ってあれ持っていないのよ。
お友達のバレンタインちゃんも同様で、このあたりは私たちの開発者がどう考えていたのか聞きたいぐらい。
まあ、でも行くしかないわ。
私の分厚いドレスで敵弾を弾きながら、機関銃を撃ちまくってやる!

え?
あ・・・
嘘?
あ・・・マチルダ五号ちゃんも?
嘘、嘘よー!
どうして私たちの厚いドレスがこうも簡単に破られちゃうわけ?
そんなバカな!
あ・・・またしても・・・
そ、そんなー。
ああー!
それは無いでしょ!
それって高射砲じゃない!
戦車撃つ大砲じゃないわ!
卑怯よ、卑怯!
う~、なんて憎たらしい!

あっ、痛っ!
ああ~、履帯が切られちゃったわ。
う、動けない・・・
ど、どうしよう・・・
あっ、みんなどこへ行くの?
いやぁっ、逃げないでぇ!
戻ってきてぇ!
置いて行かないでよぉ!
待ってぇ!
ああ・・・・・・
行っちゃったわ・・・
どうしよう・・・

あっ、ドイツ兵がやってきたわ。
私はもう動けない。
どうしようもないよー。
誰か助けてー!

あーあ・・・捕まっちゃった。
こんなはずじゃなかったのになぁ。
どうしてこうなっちゃったのかしら。
どれもこれも、あの高射砲が悪いのよ。
高射砲で戦車を撃つなんて卑怯だわ。
戦争にだってルールがあるのよ。
なんて言ってても仕方ないわね。
私は捕虜なんだからおとなしくするしかないか。

あら?
あれはバレンタイン八号車ちゃんだわ。
彼女も捕まっちゃったのね。
残念だけど、仲間がいてちょっと嬉しい。
どうやら彼女は地雷を踏んだようね。
私と同じく履帯が切れちゃって身動きが取れなかったんだわ。
足を怪我したら動けないもんね。
仕方ないよね。

あれ?
ドイツの連中がバレンタインちゃんに何か始めるわ。
何をする気かしら。
あら?
もしかして足回りの怪我を治してくれているの?
結構優しいのかも。
バレンタインちゃんも嬉しそうだわ。
このまま修理してもらえば、いざという時いつでも逃げられるもんね。

あ、私のところにも来た。
私の足も直してくれるのね?
ありがとう。
私ちょび髭親父は大嫌いだけど、ドイツの軍人さんはちょっと見直しちゃった。
うん、それでいいわ。
もう大丈夫。
これでまた走れるわ。

ち、ちょっと!
あなたたち何しているの?
バレンタインちゃんに何をしているのよ!
や、やめなさい!
そんな黒の十字マークを大きく書くなんてやめてー!
私たちは国王陛下に忠誠を誓ったイギリス軍の戦車なのよ!
そんな十字のマークなんて見るのもいや・・・
え?
やだ、バレンタインちゃん何を言っているの?
私は総統閣下に忠誠を・・・誓いますですって?
ど、どういうことなの?
しっかりして、バレンタインちゃん!
えっ?
あなたもすぐにわかるですって?
このマークを付けられれば身も心も総統閣下に捧げるようになるって?
そ、そんな・・・
そんなのはいやぁっ!
しっかりしてバレンタインちゃん!
あなたは洗脳されているのよ!
目を覚まして!

あ・・・来る。
ドイツ人がペンキと刷毛をもってこっちに来る。
いやぁっ!
私はイギリス軍よ!
ドイツ軍なんかじゃないわ!
ドイツ軍になるのはいやぁっ!
ああ・・・黒いペンキが私のドレスに・・・
ああ・・・ドイツの黒い十字のマークが・・・
私のドレスを・・・染めて・・・行く・・・
私は・・・
私はイギ・・・リ・・・

うふふ・・・
さあ、出撃よ。
ロンメル将軍のもと、総統閣下のためにイギリス軍を駆逐するの。
このアフリカはおろか中東も総統閣下のもの。
スエズはもう目前だわ。
神出鬼没のロンメル将軍を恐れ崇めるがいい。
私はドイツアフリカ軍団のMkⅡ748(e)。
こうして形式番号もいただいたわ。
今の私はもう身も心も総統閣下のもの。
うふふふ・・・
イギリス人ども、このアフリカから出て行くがいいわ!
  1. 2007/03/01(木) 21:20:07|
  2. その他短編SS
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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