どの戦車にもマニュアル、いわゆる取扱説明書はあるとは思うんですが、「ティーガーⅠ」にもとても素敵なマニュアルがありました。
(余談ですが、ティーガーⅠと呼ばれるようになったのは、もちろんティーガーⅡ、いわゆるケーニッヒティーガーができてからです。それ以前は単なるティーガーでした)
私はそのマニュアルを、デルタ出版社発行のシュトルム&ドランクシリーズ№1、「ティーガー」で拝見させていただき、すごく楽しめたものでした。
以下にいくつか抜粋させていただきますね。
操縦手に対して
「スキーのクロスカントリーの選手は競技に参加する準備に二時間を必要とする(食事、ワックス塗り、柔軟体操など)。そうしないと最高の機材もつらい訓練も水泡に帰してしまう。ティーガーの操縦手は、ティーガーを活躍させる準備に二時間を必要とする。そうしないと小さなことのために動かなくなってしまう。治療よりも予防の方がよい。だからスタートする前には必ず次の点をチェックせよ(ガソリン、オイル、油圧、電流、水、始動、待機状態)」
こういった書き出しに始まり、各項目が書き込まれていきます。
例えばエンジン回転数を一定に保ちなさいと言った項目では・・・
「26回転を一分間に、上手な人はヴィンナ・ワルツを踊るときに3/4拍子のリズムでそれだけ回れる。その時音楽は耳の中に溶け込み、動きと上手にバランスを取る。それより遅いと退屈してしまうが、だからと言って速く回るとめまいを起こしてしまうし、パートナーも怒って去っていってしまう。2600回転毎分を4ストロークで、ティーガーはこのリズムを愛している」
このように何かの例えを出して書かれているのが非常に多いですね。
あと、やはり男社会の軍隊であるためか、女性になぞらえることがすごく多いです。
例えば無線手の場合・・・
「無線手と無線機は、それが言葉に表わせないぐらい一体でなければならない。それが(無線機が)素晴らしい女性であるかのように」
装填手の場合・・・
ティーガーの砲弾はわかりやすいように色分けされておりました。
徹甲榴弾は黒、榴弾は黄色とかいうように。
「ブロンドであれ、黒、白、あるいは灰色になってしまったものであれ婚約者のように大事に世話をせよ。そのときの効果は絶大だ。ちょっとした一押し(砲に対して砲弾を装填すること)で、熱いハートは君のもの」
砲手の場合・・・
ドイツ軍は照準などに際してシュトリヒという単位を用いました。
1シュトリヒは円(360度)を6400に分けた一つを差しました。
「恋人のエルヴィラは君のために誕生日のお祝いのケーキを焼いてくれた。直径が2キロもの巨大なケーキだ。師団のみんながエルヴィラのケーキをもらおうとしたので、君はそれを6400個に切り分けた。そうするとこのケーキは中心のところでは厚さがほとんど無いにもかかわらず、1000メートル先の外周部では1メートルもの厚さがあるのだ。エルヴィラは一切れの長さが2000メートルになったとしても喜んでケーキを焼いてくれるだろう。その時外周部では厚さが2メートルになる。もっとも、こんなケーキは野戦郵便では受け付けてくれないだろう」
こういった感じで読み手に理解しやすいように、例えを使っているんですね。
さらにはイラストも付いているので、楽しく読めたでしょう。
おそらくティーガーの乗員は、このマニュアルを何度も繰り返し読んだんでしょうね。
それではまた。
- 2007/02/04(日) 21:37:32|
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