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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

愛していない

「グァスの嵐」16回目です。

ちょっと展開が変わってくると思います。
それではどうぞ。

16、
連れて来られたのは小屋のひとつだった。
「ここは?」
クラリッサは思わずそう尋ねる。
陽射しを遮ることができるのは嬉しいが、何をされるのかわからないのは恐ろしい。
「ん? つまらん所だ。気にすることは無い」
「は・・・あ・・・」
そう言われては黙るしか無い。
あ・・・
すぐそばにいる男。
海賊のキャプテンだという男。
その男の広い背中に思わず目が行ってしまう。
ドクン・・・
あ・・・
匂い・・・
男の匂い・・・
クラリッサの躰が反応してしまう。
薬のせいだったが、クラリッサは欲情してしまった。
あ・・・
抱いて・・・欲しい・・・
広い背中に寄りかかりたい・・・
きつく抱きしめて欲しい・・・
クラリッサは頭を振る。
いけない・・・
私は・・・
私にはダリオが・・・
そう思いながらも彼女の下腹部は疼きを放つ。
男のモノを欲しがっている。
クラリッサは歯を食いしばるしかできなかった。

「・・・れい・・・ら・・・」
小屋の奥から声が聞こえる。
何を話しているのだろう?
「ここだ」
ダリエンツォが扉を開く。
「入るんだ」
促されるようにしてクラリッサは部屋に入る。
そこはこじんまりした部屋で、椅子とテーブルが置いてあるだけだった。
ベッドが無いということは、無理やり躰を奪うつもりではないのだろう。
でも、こんなところで何を?
「あ・・・の・・・」
クラリッサが振り返る。
「そこに座って静かにするんだ。声を立てるな」
口元で人差し指を立てるダリエンツォの仕草が妙におかしい。
「は・・・い」
何となくその姿にホッとしたものを感じ、躰の疼きも心なしか軽くなる。
クラリッサは言われたとおりに椅子に座って静かにする。

「・・・がい・・・しら・・・なん・・・す・・・」
あ・・・
隣の部屋から声が聞こえる。
さっきかすかに聞こえていた声。
その声が誰のものか・・・
それがはっきりわかった時、クラリッサは泣き出しそうになってしまった。
ダリオ・・・
ああ・・・あの声はダリオだわ・・・
生きていてくれたんだわ・・・
「あ・・・うう・・・」
思わず嗚咽が漏れる。
だが、それは許されなかった。
ダリエンツォが布切れで彼女の口を押さえたのだ。
「む、むぅーっ!」
思わず暴れだそうとしたクラリッサに、ダリエンツォがもう片方の手でナイフを抜いてみせる。
「騒ぐな」
ごくりと唾を飲み込み、クラリッサは無言でうなずく。
「声を立てるな。いいな?」
ダリエンツォがにらんでくる中、クラリッサはコクコクとただうなずいた。
「ようし・・・いい娘だ」
ナイフをしまい、クラリッサの口に当てた布を取る。
「静かに聞いているんだ。面白いことが聞ける」
面白いこと?
それは一体?

もう何度も答えてきたことだった。
彼らはその答えに満足していたんじゃないのだろうか?
両手を後ろ手に縛られ、椅子に座らせられたままダリオ・ガンドルフィは恐怖に身を震わせていた。
またしても拷問されるのか?
いやだ・・・
もういやだ・・・
俺はただ提督の命令に従っただけなんだ・・・
あの女が欲しいならくれてやる。
あんな女に関わったばかりにこのざまだ。
無事に解放される保証も無い。
貧乏くじを引かされちまった・・・
「クックック・・・うちのキャプテンは何事にも確実性を求めるものでね。君の証言に食い違いが無いかどうか、何度でも訊かせてもらうよ」
頭にバンダナを巻いた水夫頭と思わしき人物が前に立っている。
痩せた男で、その手には結んでこぶを作った短めのロープが、そのこぶを外側の頂点にして二つ折りにして握られている。
簡易の棍棒かムチといったところか。
だが、そんなものでも、振り下ろされた時の痛みは耐えがたい。
「では、再度訊かせてもらおう。君の名前は?」
「・・・ダリオ・ガンドルフィ・・・」
静かに口を開くダリオ。
その姿に颯爽とした青年仕官の面影は無い。
もう何度答えたというのだろう。
だが、聞かれたからには答えなければまた痛い目に遭う。
「身分は?」
「ラマイカ海軍の五十人水兵長・・・」
「あのカラビータに載っていた理由は?」
畳み掛けるように簡易ムチを持った水夫頭が尋ねる。
機械的に繰り返すことで思考する暇を与えずに反射的な答えを求めるのだ。
「任務の一環でラマイカに向かうために乗船していました」
「その任務とは?」
水夫頭がにやりと笑う。
その笑いはまるで骸骨が笑っているような不気味さをダリオに感じさせた。
「クラリッサ・モルターリという女性と偽装結婚するというものです」
そのことも何度も言ってきた。
どうせ彼女はどこかの娼館に娼婦として売られるのだろうし、いまさら任務のことを考えても無駄だろう。
もともとダリオはこんな任務には乗り気ではなかった。
愛してもいない女に愛を囁いたうえ、形だけでも結婚するなんてのはいやだった。
クラリッサは美人かもしれないが、彼には別の想い人がいたのだ。
出世が引き換えでなかったら、誰があんな田舎臭い女と・・・
「偽装結婚? どういうことだ?」
水夫頭の顔をダリオは見上げた。
もう何度も言っているにもかかわらず、まだ信じてもらえないのか?
俺は命令に従っただけで、偽装結婚をしてどうするのかの詳しい話はセラトーリ提督からはまだ聞かされていないんだ。
「あの女をとにかく愛しているように見せかけ信用させろと言われた。それ以後のことはまだ聞いていない。本当なんだ。信じてくれ!」
「クックック・・・ではあの女が好きではないのか?」
「好きなものか! 命令でなければ誰があんな女・・・」
ダリオの吐き棄てるような言葉が部屋に響いた。

思ったとおりのダリオの答えにダリエンツォは満足していた。
目の前の女は真っ青な顔をしてガタガタと震えている。
無理も無い。
精神の支えが無くなったんだからな。
これでかなりやりやすくなるはずだ。

あ・・・
今のは・・・何?
愛していな・・・い?
偽・・・装?
全て・・・嘘・・・だった・・・の?
ちが・・・う・・・よね?
嘘・・・だよね?
私・・・は・・・ダリオのために・・・必死で・・・
必死で・・・

『ほう、ではあの女はどうなっても構わないのか?』
『いまさら・・・それにもうあんたらが充分楽しんだんだろ? そんな汚れた女なんか・・・』
ち・・・が・・・う・・・
汚れてなんかいない・・・
私は汚れてなんかいない・・・
クラリッサの頬を涙が伝う。
握り締めた両手は血の気が無く白かった。
「来い」
不意にその手が握られる。
ダリエンツォが彼女の手を引いたのだ。
夢遊病のようにクラリッサは立ち上がる。
もう一分でも一秒でもこんなところには居たくなかった。
  1. 2006/12/13(水) 21:05:49|
  2. グァスの嵐
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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