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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

破魔の短剣

昨日に続いて帝都奇譚です。

よろしければドゾー。

15、
躰が自由に動かせない。
何にも増してこれは恐怖だ。
手をつかまれてただ連れて行かれるだけ。
いっそのこと意識を失ってでも居たのならまだましだろう。
叫ぶことさえできはしない。
巡査を呼べばいいと言われ、周囲の人は黙って彼女を通してしまった。
宮内省の職員?
それがいったいなんだというの。
私は会わなければならない人が待っているのよ。
危険な状態?
これ以上の危険な状態など考えられないわ。
そう思うだけで雛華は黙ってついていくしかない。
細い小道に連れ込まれ、人々の喧騒が遠ざかる。
これから何が待ち構えるのか・・・
雛華は背筋に冷たいものが走るのを感じていた。

「詳しく話もせずに連れて来てすみません」
月子は連れて来た雛華を前にして頭を下げた。
だが、詳しく話したところで結果は同じだっただろう。
相手は魔に取り憑かれていることなど否定し、彼女はやはり札を使うことになっただろうから。
ただ、これから先は違う。
ここできちんと説明するのは相手に対しても必要なこと。
しっかりと状況を認識してもらえば、それだけ魔も祓いやすくなる。
「あなたの躰は今は自由にはなりません。私が封じているからです。声も出せません。お判りですね?」
建物の壁を背にした目の前のメガネの女性がコクコクとうなずく。
洋装にメガネといい、彼女はなかなか先進的な女性のようだ。
それだけに魔に付け狙われることになったのかもしれない。
「私は宮内省に籍を置く退魔師。破妖月子と申します。あなたのように魔に取り憑かれている方を見過ごすわけには参りません。これから、あなたの魔を祓います。いいですね」
目の前の女性の目が見開かれる。
やはり気がついては居なかった。
それはそうだろう。
魔に取り憑かれていることを自覚できる人間などまずいない。
月子は構わずに魔を祓う準備を始める。
札を取り出して呪を唱え、そのまま足元に落とす。
札は落ちると同時に燐光を発し、一瞬周囲を青白く染め上げた。
燐光が消え去った後、小路の左右を確認する月子。
たまたま用事があったのか、それとも近道をするつもりだったのか、男が小路に入ろうとする。
だが、男は小路の手前で向きを変え、小路に入らずにそのまま通りを進んでいった。
結界は問題ないわね。
月子は結果に満足する。

宮内省の退魔師?
魔に取り憑かれている?
雛華にとってはわからないことだらけだ。
魔を祓うなどといわれても素直に応じられるはずもない。
だが、躰が動かせない以上まな板の上の鯉なのだ。
どうすることもできはしない。
助けて・・・
誰か助けて・・・

江渡時代の鎖国はいい面も悪い面もこの国にもたらした。
悪い面としては近代化が遅れ、富国強兵を合言葉に無理やり近代化を図らなければならなくなったことだろう。
その歪みが西南戦争であり、日清戦争であり、日露戦争だったのだ。
一方いい面はといえば、独自の文化が今も受け継がれていることと、欧州の魔物が入りづらかったということだろう。
江渡期には西洋の魔物についてはまったく考慮する必要が無かったのだ。
しかし、世の中は明次維新後ガラッと変わった。
外国人が入り込み、それとともに外国の文化や技術、外国の魔物が入り込むようになったのだ。
退魔師はそれに対処するために欧米の魔物についての知識を身につける必要に迫られた。
もちろん、月子も破妖一族の人間として身につけている。

吸血鬼と呼ばれる存在。
その中にはさまざまなバリエーションがあるが、ヴォルコフはその中のひとつだろう。
そのヴォルコフによってもたらされた災厄が彼女に取り憑いているのだ。
吸血鬼は仲間を増やすことができる厄介な代物。
放っておけば彼女もまた吸血鬼と化す。
捨て置くことができないのはそういうわけだ。
肉体の穢れを取り去り、魔の力を祓い去る。
そのための手立てを講じるのだ。
月子はまた札を取り出すと、目をつぶり印を組んで呪を込める。
そして、その札を口にくわえ、懐から呪術用の短剣を取り出す。
その鈍い輝きに目の前の女性は、恐れを抱くようにかすかに震えた。
人間としての刃物に対する恐怖と、魔の存在としての聖なる物に対する恐れ。
二重の恐れが彼女を包み込んでいるのだろう。
「動かないで」
月子はくわえた札を左手に取ると、それを目の前の女性の左胸に当てる。
ピクッと女性の躰が震えるのがわかる。
月子は呪を唱え、右手の短剣に念を込める。
そして、月子は短剣を札の上から彼女の胸に突き刺した。
  1. 2006/10/28(土) 21:54:57|
  2. 帝都奇譚
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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