fc2ブログ

舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

出発

ボトムズストーリーの二回目です。

お楽しみいただければ幸いです。

2、
ふう・・・
やれやれだわ。
私は薄暗い町の雑踏に身を置いた。
ク・ローウンの町。
饐えた金属のさびが彩る背徳の町。
メルキアのウドにも匹敵する闇の町。
バトリングに一喜一憂し、意味の無い大金が乱舞する。
でも、私たちには回っては来ない。
バトリングから抜け出したくても金が無くては抜け出せない。
ATのパイロットは生かさず殺さず。
興行が成り立たなくなるようなことは行なわれないのだ。
私は道の端で店を出してる屋台に入り、串焼きを手に入れる。
ここク・ローウンではなかなかいける食べ物の一つだ。
「あいよ。50ギルダンだ」
えっ?
「な、何よそれ? 昨日まで20ギルダンだったでしょ?」
「いやなら食ってくれなくてもいいんだぜ! 材料が不足気味なんだ」
店の親父が不機嫌そうにこちらをにらむ。
ふん、材料って言ったって、そこらをうろついている野良ロロガスじゃないの。
「わかったわよ」
私は仕方なく50ギルダンを払って串焼きにかぶりつく。
美味しい・・・
ソースがピリッとしていい味なのよね。
でも50ギルダンは高い。
クソー。
毎日のように価格が変動する。
安定とは程遠いこの町。
犯罪が多発し、人が死んでいく。
私は食べ終わった串を道端に投げ捨てた。

「よう、姉ちゃん。一晩いくらだ?」
酔って酒瓶を片手に下げた親父が酒臭い息を吐きかけてくる。
私は無視を決め込み、通り過ぎようとしたが、親父は肩を掴んでくる。
「待てよ、姉ちゃん」
「・・・離せ」
私は肩越しに振り向いて親父をにらみつけた。
「う・・・」
親父はおずおずと手を引っ込める。
私はそのまま親父を無視してその場を後にする。
「ケッ、バカヤロー」
親父の怒鳴り声が背後で響いた。
やれやれだわね。

「やはりここにいたか、アイスブルー」
しけた酒場でグラスを傾けていた私の背後から声がかかる。
振り向くと赤い気密服、つまりはATのパイロットスーツに身を包んだ背の高い男が立っていた。
「ターロス大尉殿?」
私は驚いた。
ギルガメス軍アーボイン星系駐留軍第5機甲大隊時代の私の上官だ。
アイスブルーというあだ名も、私の目が冷たさを湛えた氷のような青さだということで彼が付けたもの。
髭もじゃの顎はあれ以来変わっていない。
「大尉殿、どうして?」
私は思わずカウンターから立ち上がると敬礼をしていた。
悲しい性だわね。
「楽にしろよ。もう戦争は終わったんだ。俺も軍を退役した」
つかつかと私のそばにやってくるターロス大尉。
酒場の連中は一斉に私たちの方を見ているが、仕方が無い。
「ハッ、しかしどうして?」
私は右手を下げ、大尉に席を用意する。
「お前を探していたんだ。アイスブルー」
「私を?」
私は酒場の親父に大尉の分の酒を用意してもらう。
「ああ、どうだ? 金は欲しくないか?」
金?
もちろん欲しい。
金さえあればこんなところでバトリングなんかはしていない。
でも・・・
「金は欲しいですが・・・どういうことですか?」
「AT乗りを探している。ある会社の仕事でな」
グラスを傾けるターロス大尉。
なるほど・・・
後ろ暗い仕事というわけか。
どうしたものか・・・
「お前なら100万ギルダン出そう。どうだ」
100万ギルダン?
バトリングをやっていては手に入らない金額だわ。
私は決心する。
「わかりました」
「そう言ってくれると思ったよ。これは手付けだ。三日後までに宇宙港へ来い」
ターロス大尉がグラスを空にする。
「宇宙港?」
「ああ、詳しくは宇宙へ出てからだ」
「わかりました]
私も一気にグラスを空にした。
また、硝煙の臭いが私を待っているのだ。
席を立ったターロス大尉を私は黙って見送った。

眼下に小さくなっていく惑星テクトン。
すでにシャトルは軌道上の貨客船に接近している。
行く先はわからない。
宇宙港に来た私を待っていたのはターロス大尉だけ。
パイロットスーツに身を包んだ大尉はシャトルのチケットを私に渡すと、無言で先に立って歩いていく。
私も黙ってその後に従うしかない。
すでに私の身は大尉に預けられたのだ。
余計なことは聞く必要は無い。
そうして私はシャトルに乗り込んだのだった。
着慣れないパイロットスーツは息苦しい。
「マッチメーカーは素直に手放してくれたか?」
「いいえ」
私は大尉の質問に即答する。
そう、サゴンはなだめたり脅したり必死になって引き止めてきた。
ただ、幸い私の場合はサゴンの口車に乗ってうかうかと専属契約をしてこなかったので、バトリングを離れることに支障はなかったのだ。
最後はグダグダと文句を言われたものの、私はサゴンと縁を切った。
まあ、この仕事がうまくいけば、独立してやっていくための頭金ぐらいにはなる。
うまくいけばだが・・・
「わかっているとは思うが、これは作戦行動だ。これから一定期間お前はある作戦に従事してもらうことになる。いいな?」
「わかっています、大尉殿」
私はうなずいた。
AT乗りを集めて一人100万払うというのだ。
傭兵として働けということなのだ。
そう・・・血と硝煙の世界。
あの血なまぐさい世界が待っている。
私はなぜか心がはやるのを感じていた。
  1. 2006/10/05(木) 22:00:27|
  2. ボトムズSS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3

カレンダー

09 | 2006/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

時計

プロフィール

舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

ブログバナー


バナー画像です。 リンク用にご使用くださってもOKです。

カテゴリー

FC2カウンター

オンラインカウンター

現在の閲覧者数:

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

管理人にメールなどを送りたい方はこちらからどうぞ

ブログ内検索

RSSフィード

ランキング

ランキングです。 来たついでに押してみてくださいねー。

フリーエリア

SEO対策: SEO対策:洗脳 SEO対策:改造 SEO対策:歴史 SEO対策:軍事

フリーエリア