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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

バトリング

またしても気の迷いが起きてしまいました。(笑)

装甲騎兵ボトムズの二次創作ネタです。
時々書いていこうと思いますので、お付き合いのほどを。

1、
「ハア・・・ハア・・・」
息が荒くなる。
手袋の中がじっとりと汗で湿る。
ふん・・・パープルベアか・・・
動きが早いだけの出来損ない。
軽くて動かしやすいから人気は高いけど、紙切れのような装甲は犬より劣る。
私はスコープの調節をして視界を広く取る。
動きの速さで来る相手には視界が広いに越したことは無い。
ターレットを回して確認する。
動きに問題は無い。
もちろん自分で確認はしたが、整備不良はたまらない。
『アルティア、わかっているな?』
チッ・・・
わかっているわよ。
ヘッドセットに入ってくるサゴンの声が私を苛立たせる。
だけどマッチメーカーには逆らえない。
癪だけど最初の数分は相手に花を持たせてあげるわ。
私はゆっくりとフィールドに歩みでた。

ギルガメスとバララントの休戦から数ヶ月。
ここク・ローウンの町でもあぶれ者はたくさんいる。
私と同様に腕を見込まれたのやそうでないのや・・・
AT同士のバトリングで日々明け暮れるというわけだ。
周囲を観客席に囲まれたフィールド。
ここで私は戦いをやる。
武器も何も無い裸のAT同士が戦うのだ。
今日の相手はボテイグ。
バララントの太っちょを三台も撃破したと大法螺吹いている奴だ。
あいつの腕で倒せるATなど、この世のどこにもありはしない。
せいぜい八百長で四・五回勝つのがやっとのこと。
私は無造作に進み出て、相手を誘う。
紫色のパープルベア。
カメラターレットを取り外し、ステレオカメラに取り替えているタイプだ。
遠近感が取りやすいのと、軽くて速いのがとりえなので、バトリングでは人気がある。
もっとも、装甲が薄いから実戦向きではないとも言えるが。
相手は黙って動かない。
まったく・・・
動かなきゃ速さもクソも無いだろうに・・・
「仕方ない」
対処しやすいようにこちらから動いてやるか。
私はローラーダッシュで一直線にパープルベアに向かっていった。

「ほらほら、まっすぐ向かって行ってやるんだ。どうにかしたらどう?」
私は腰を落として突っ込んで行く。
パープルベアはようやく私の突込みを回避するべく動き出す。
ボテイグ!
このボケがぁ!
回り込むぐらい考えろ!
私は思わず毒づいた。
ボテイグのパープルベアはあろうことかローラーダッシュで向かってきたのだ。
客の歓声がひときわ高くなる。
そりゃそうだろう。
正面切っての殴りあいだ。
客にすれば面白いはず。
仕方ない。
一撃はくれてやる。
ターレットは勘弁して欲しいけどね。

急速に接近するパープルベア。
私のスコープドッグと同じように低い姿勢だ。
狙うことは同じだろう。
ターレットを潰しに来るはず。
いやだなぁ。
ハッチ開けて戦いたくないのよね。
私は一番装甲の厚い胸部にパンチを当てさせるべく、一瞬動きを止めてやる。
これで私が一撃を食らえばボテイグの掛け率は跳ね上がり、サゴンの懐が潤うというわけだ。
パープルベアは予想通りアームパンチを繰り出してくる。
がくんと走る衝撃。
スーツのおかげでかなりの衝撃は吸収されるが、それでもショックは大きいのよね。
目の前が一瞬にして暗くなる。
あっ?
バカァッ!
私のスコープドッグはものの見事にターレットスコープを潰されてしまった。
ボテイグの野郎は腰が引けたのだ。
一撃必中のタイミングまで待たずに、遠くからパンチを繰り出した。
そのために胸部じゃなくてターレットに食らってしまった。
カス野郎!
花を持たせるのも一苦労だわ。
八百長無しでは一勝もできないわね。
私は数歩下がって体勢を整える。
ターレット部分のハッチを開けてスコープをはずす。
私の顔が晒される。
観客の歓声が高くなる。
やれやれ・・・
私が女だってのは知っているでしょうに。

パープルベアは嵩にかかったように走りこんでくる。
私はローラーダッシュでパープルベアの右側に回り込むように走った。
何の遮蔽物も無いフィールドは身を隠すなんてできはしない。
距離をとるか近づくか。
ヒットアンドアウェイを得意とするパープルベアなら、走り回ってかく乱してくるに違いない。
普通のパイロットならば・・・ね。
パープルベアは走りこむのをやめてローラーダッシュに切り替える。
こちらの回り込みを制するつもりだ。
私は客席の方を見る。
サゴンが手を上げているのが見えた。
どうやらボテイグへの掛け金がたまったらしい。
私は思わず苦笑すると、ターンピックを打ち込んだ。

急ターンする私のスコープドッグ。
パープルベアは私が大回りをすると踏んでいたのだろう。
いきなりの回転に驚いたようだが、それでもそのままローラーダッシュで突っ込んでくる。
私は腰を落とすと、そのままの姿勢で待ち構える。
パープルベアが加速のエネルギーをそのまま持ち込むなら、こちらはそれを逆手にとってやる。
向こうの狙いはバイザーを上げてむき出しになっている私の顔面。
腰を落として待ち構えた私をほくそえんでいるだろう。
そのまま腕を伸ばしてアームパンチを繰り出せば、ミンチになる運命が待っているのだから。
でもね。
そうは行かないのよ。

私はすごい勢いで迫ってきたパープルベアのすぐ前でしゃがみこむ。
パープルベアのアームパンチは、直前まで私の顔があった位置を綺麗に通過して薬莢を打ち出した。
当然どこにも当たらなかったアームパンチの勢いは、パープルベアそのものをも引き摺って行く。
私はそのままATの頭をパープルベアの下腹部に潜らせて跳ね上げる。
パープルベアの脚が浮き上がって、そのまま宙を飛んで行く。
立ち上がって振り返ったときには、パープルベアは地面にうつぶせに倒れていた。

私はすぐに近寄ると、背後からアームパンチを腰に叩き込む。
バキンと言う派手な音がして、腕の横から薬莢が排出される。
パープルベアは腰のあたりを強打され、身動きが取れなくなる。
あっけないものだけどこれでお終い。
潰れたパープルベアからボテイグが出てきて、真っ赤になって怒鳴っている。
ハッ・・・
お決まりのセリフね・・・
女のくせにとか、女が生意気だ、とか。
女がATに乗ってバトリングをしてはいけないの?
大体あなたの腕じゃ男とか女とか言う以前でしょ。
私は観客の歓声と怒号が飛び交う中、フィールドを後にした。

「よう、アルティア。どうやらまだ生きていたようだな」
控え室に引き上げた私をバトリングのパイロットたちが出迎える。
いずれも一癖も二癖もありそうな連中だ。
中には気のいい奴もいるが、えてして長持ちはしなかったりする。
「生きているわ。悪い?」
私はロッカーからタオルを取り出して汗を拭う。
周囲の目は暖かくは無い。
女であることを意識させるような好色な目か、自分のライバルであることを考えたく無い無関心な目かだ。
「悪かねえさ。おめえのような別嬪が死んじまっちゃ楽しみが減るからな」
なれなれしく肩を抱いてくるロイリー。
悪い奴じゃないんだけどね。
私は無言で手を払いのけ、スポーツドリンクに手を伸ばす。
「つれないなぁ。まあ、アイスブルーらしいがな」
手をひらひら振りながら下がって行くロイリー。
「ほっとけよロイリー。アイスブルーは俺たちになど興味は無いってさ」
「それもそうだ。アルティアは野郎には興味ないからな」
失礼な。
興味を引く相手がいないだけでしょ。
私はスポーツドリンクでのどを潤した。

「よーうアルティア。さっきのはよかったぞー!」
小男のサゴンが控え室に入ってくる。
右手で紙幣を握り締め、ご満悦のようだ。
「よう、サゴン。ずいぶん儲けたようじゃないか?」
「女の扱いが相変わらずうまいねぇ」
「ボテイグが怒っていたぜ。話が違うってな」
あちこちから冷やかしが入る。
「うるせー! 余計なお世話だ。こちとらだって商売だからな。諸々ひっくるめりゃぎりぎりだよ」
そう言いながらも顔はにやけている。
「アルティア。よくやった。ファイトマネーだ。受け取れ」
封筒に入って手渡される現金。
私は受け取って確認する。
バカな!
「ちょっとサゴン! これは一体どういうこと? 約束の半分も無いじゃない!」
私は思わずテーブルを叩きつける。
空になった酒瓶がゴロゴロと倒れた。
「おーっとっと、仕方ねえんだよ。ATの修理費だってバカにはならんし。お前、よりにもよってターレットを壊されるとはな」
ニヤニヤと笑っているサゴン。
こいつは・・・
「ボテイグにだっていくらかは払わんとならんだろが。相手がいなくなってもいいのか?」
クッ・・・
いつもそうだ。
この町のバトリングは馴れ合いだ。
適当に勝って適当に負ける。
客の目を楽しませてこっちは儲ける。
わかっていたはずなのに・・・
「心配するなよアイスブルー。お前さんの顔ならこれからいくらでも稼げるさ。お前を倒してお楽しみにありつきたいって奴が山のようにいるんだからな」
「ちげえねえ。あははははは」
笑い声が控え室に響く。
「ふん、言ってろ」
私は封筒をわしづかみにすると、部屋を飛び出した。
  1. 2006/09/30(土) 22:12:18|
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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