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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ありがとうございました

先ほど四十万ヒットを達成いたしました。

四十万・・・すごいですよ。
本当に皆様のおかげです。
ありがとうございました。

四十万ヒットの記念作品というのは今のところ考えておりませんが、とりあえず「グァスの嵐」第十四回目です。

これでようやくミュー拾い上げが終了です。
長かったなぁ。

14、
「とにかく急ごう。マスターが心配だ」
エミリオとゴルドアンは、急ぎファヌーを走らせる。
おそらく間に合わないだろう。
この距離からでも赤々と燃えている船の炎が見えるのだ。
多分、到着までには船は沈む。
でも・・・
でももしかしたら・・・
そう願わずにはいられない。
あんな可愛い娘を悲しませたくない。
ただそれだけだが、かなうものなら願いをかなえてあげたいのだ。
気になるのは燃え盛る船のそばから動こうとしない軍のギャレー。
あの船を追ってきたということは、もしかしたら何か密輸をしていたのかもしれない。
だとしたら・・・どうする?
エミリオは考える。
「ああ・・・」
フィオレンティーナが口元に手を当てる。
「だめか・・・」
ゴルドアンも思わず目をそらす。
燃え盛る船から、一塊の大きな物体が、火だるまになりながら転落していったのだ。
おそらくは、自ら船を飛び降りた人間に間違いないだろう。
「マ、マスターーーーーー!」
ミューの叫びがあたりに響いた。

「ああ・・・」
最後の力を振り絞った老人が舷側を乗り越える。
副長を初めとするギャレーの乗員はただなすすべもなく見守っているしかできなかった。
鍵をはずされた自航船はじょじょに浮力を失って行く。
そんな中で老人は、確実な死を選んだのだ。
炎の塊となりながら、老人ははるか下方の密雲に飲み込まれる。
もはやあの老人を救うすべは無い。
終わったのだ。
何もかも。
「副長」
呼びかけられた副長はどきっとする。
今の提督には関わりたく無いが、呼びかけられたら無視はできない。
「何でしょう、提督」
「引き上げだ。帰還するぞ」
意気消沈した提督の姿に何となく哀れを感じる。
だが、副長のその思いはすぐに否定されることになる。
「そうだ、副長・・・確かまだ女のガキがいたな」
「は?」
「ほら、海に放り出された少女だよ。今頃は心細くて震えているのではないかな?」
よく言う・・・あなたが見捨てたのではないか。
副長は苦笑する。
「助けに行かねばならんな。何か知っているかも知れんしな」
そっちが重要なのだろうな。
「わかりました。反転だ。配置に付け!」
「ハハッ」
水兵たちが配置に飛びついて行く。
「後方より小型船が近づいてきます」
「何?」
水兵の報告に後方を見やる副長。
確かに一本マストの小型船が近づいてくる。
「副長、臨検しろ。もしかしたらガキを拾い上げているかも知れん」
「わかりました」
提督の言葉に副長ははっきりとうなずいた。

「ギャレーがこっちを向いたな・・・」
ゴルドアンが厳しい表情をする。
おそらくエミリオと同じことを考えているのだろう。
「フィオ、泣いている暇は無いぞ。どれでもいい、空いた樽を見つけてミューを中に隠すんだ」
ゴルドアンの言葉にえっという表情を浮かべるフィオレンティーナ。
一瞬彼女はエミリオの方を向くが、彼がうなずくのを見て彼女もまたうなずいた。
「ミュー、こっちに来て!」
「えっ? はい」
ミューは少し考え込むような感じを見せたが、すぐにフィオレンティーナに従った。
フィオレンティーナはファヌーの中央へ行き、少し考えた挙句に空になった飲料水の樽にミューを入れようとする。
「これがいいわ」
樽の蓋を開けるフィオレンティーナ。
飲料水用の樽も荷物用の樽と同じでその大きさは結構ある。
本来は空になった樽は、タガをはずして分解しておくものだが、いちいち分解するのも面倒だったので、エミリオはそのままにしておいたのだ。
それが役に立つとは。
フィオレンティーナがミューの躰を抱きかかえようとしたが、ミューは自分で隣の樽に登ってそこから入り込む。
ミューの小柄な躰が幸いし、何とか身をかがめて入れたようだ。
「ちょっと狭いです」
「いいからおとなしくして」
フィオレンティーナが上からふたを閉めてしまう。
「静かにしているんだぞ」
ゴルドアンもぴしゃりと言い放つ。
「わかりました」
ミューのくぐもった声が樽の中から聞こえてきた。

日光を避けるためのシートをかけ、他の樽と並べておく。
これでちょっと目にはわからないだろう。
一連の動作が終わった頃には、ギャレーが近づいてくるのがはっきりとわかるようになっていた。
「来たな・・・」
「やっぱりあの娘を狙ってきたんだろうか・・・」
「さあな・・・」
ゴルドアンが首を振る。
「あの娘・・・どうするんだ? 引き渡すつもりは・・・無いんだろ?」
「わからない・・・でも、軍に引き渡してもあの娘が幸せになるとは思えないよ」
「まあ、そりゃそうだが・・・困ったことにならなきゃいいがな」
苦笑するゴルドアン。

「おーい! そこのファヌー! 停船せよ! こちらはリューバ海軍である! 停船せよ!」
士官が声をかける。
ほんとに小さな小型船だ。
沿岸航行ぐらいが関の山だろう。
それでも荷をいっぱいに積んでいるのか、結構沈み込んでいる。
そのため少し上から声をかけるような体勢になっているのだ。
相手のファヌーは了解の印に手を振っている。
驚いたことにバグリー人がいる。
器用に四本の腕で帆を操っているのだ。
このあたりにはあまり見かけない種族であるので、水兵たちがものめずらしそうに覗き込む。
「船火事はどうなったんですか? 煙が見えたので助けが必要かと思ったんですが」
ファヌーの後部で舵柄を握っている青年が声をかけてくる。
「沈んだよ。燃え落ちた」
「沈んだんですか? なんてこった・・・」
青年の顔が曇る。
「おい、しゃべっている暇は無いぞ!」
そう言って舷側に顔を出す副長。
「おい、今から臨検する。いいな!」
「ええっ?」
驚く青年。
それはそうだろう。
救援にはせ参じたと思ったら臨検とは。
水兵の一人は苦笑した。

「やはり臨検か・・・」
「フィオも隠していたほうがよかったな・・・」
エミリオは急に心配になった。
まさかと思うが、ここは海の上だ。
何があっても誰も文句は言えない。
だが、いまさら逃げ出せもしないし、逃げても追いつかれるだけだ。
無事に済むのを祈るしかない。
「ようし、そっちへ移るからな」
そう声がかかり、数人の水兵によって鍵がかけられる。
こちらのほうが若干沈み込んでいるのだが、鍵をかけて引き寄せることで、オールを立てれば舷側に接舷することができる。
すぐに数人の兵士たちが乗り込んできた。

「あの女は?」
エスキベル提督が顎をしゃくる。
「乗組員の一人だそうです。あの少女とは違います」
フィオレンティーナのことを副長が説明する。
「あのガキは乗っておらんのか?」
「はい、どうやら拾い上げなかったようです。見てもいないとか」
「本当か? 隠しているのではないか?」
チッと舌打ちする提督。
すでにガキも沈んだのか・・・
「提督、中身は小麦です」
いくつかの樽を開けた水兵が中身を手にとって見せている。
「ふん」
そっけなく返事して、提督はエミリオをにらみつける。
「貴様が船長だと?」
「そうです」
「ふん、若造が・・・で、本当にガキは拾い上げなかったんだな?」
「ガキなんて拾いませんよ。船火事のようだったから急いで来たんですから」
エミリオもキッと提督を見据える。
「若造、名前は?」
「エミリオ・オルランディ」
「オルランディか・・・覚えておくぞ。おい、引き上げさせろ」
エスキベル提督が手を振って水兵たちを呼び戻す。
「ハッ、おい、引き上げろ!」
「ハハッ」
樽を蹴飛ばしたり、中身をぶちまけたりしていた水兵たちが上手にロープを伝ってギャレーに戻って行く。
「戻り次第出発だ。周囲をもう一度捜索するぞ」
「ハッ」
苦虫を噛み潰したような提督に敬礼し、副長はうんざりする思いだった。
  1. 2006/09/29(金) 21:57:38|
  2. グァスの嵐
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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