今日はローネフェルトの話をお届けします。
ちょっとずつしか書けていないのが情けないですねー。
困ったものです。
「クッ」
私は思わず口にする。
黄色のジムはやはり通常では考えられない運動性を発揮して、私のビームサーベルをかわしたのだ。
「速い!」
私は15をぐんと沈み込ませて黄色のジムのビームサーベルをかわして行く。
狙いすませたようなビームサーベルの一撃が私の頭上を通り過ぎる。
やはり手強い。
そのままの位置にいたら片腕ぐらいは持って行かれたかもしれない。
だけど・・・
「冗談じゃない!」
やられてたまるか!
死んでたまるか!
私は死んでたまるものか!
私は一気にバーニアノズルを噴かして体当たりに近い状態に持って行く。
そしてそのままビームサーベルを繰り出すのだ。
相手が息を飲むのがわかる。
「イッケェー!」
私の掛け声とともにビームサーベルが繰り出され、黄色のジムの胴を貫く。
はずだった・・・
「ソフィア!」
思わず俺は叫んでしまう。
目の前で繰り広げられるモビルスーツ戦。
それはまるで剣の舞いを見ているかのようだ。
だが、その舞いは一つ間違えば命が無い。
今もソフィアのライトアーマーは一瞬の差で胴体を貫かれることを避けていた。
その差はわずかにコンマ何秒かといったところだろう。
俺も部下たちも、それにどうやらあの鎧型モビルスーツの部下たちと思われるリックドムも、思わず見入ってしまうような剣の舞い。
それはこの激戦の中に生まれた一瞬の空白。
「ミスティ、アナスタシア、油断するな!」
『はい!』
『了解です』
俺たちはいつでも撃てるようにリックドムに砲門を向けている。
向こうは幸いなことにバズーカは無い。
だが、いつでもヒートサーベルで切り込める位置を保っている。
それでもやはりあの鎧型モビルスーツが気になるのか、モノアイは左右を行き来して落ち着かない。
撃つべきなのか?
常識的に考えれば撃つべきだ・・・
だが、相手だってそうやすやすとは撃たしてくれない。
軌道だって常に微妙に変化させている。
こちらに向かうことも、あの鎧型を援護に行くこともできる位置だ。
慕われているな・・・
隊長としては望みえる最高のものかもしれない。
『中尉殿、撃たないんですか?』
かすれるような声でミスティが訊いてくる。
「まだ撃つな!」
なぜだろう・・・
俺は撃たせなかった。
周囲では激戦が続いている。
だけど・・・
ほぼ大勢は決まった。
ジオンはこのア・バオア・クーでも負けたのだ。
『マリー、マリー! 聞こえる? 聞こえたら返事をして!』
この忙しい時に・・・
私は入ってくる通信を無視し、目の前の敵に集中する。
この敵を倒さねば・・・
『グワデンが撤収するわ。デラーズ大佐が戦場を離脱するのよ! あなたはどうするの?』
どうするって言われても・・・
モニターの片隅で一団の艦船が深宇宙へ向かい離脱するのが見える。
モビルスーツも続々と向かっているようだ。
「あれは・・・」
私は思わず笑みを浮かべた。
片腕の14がグワデンへ向かっている。
どうやら生き残っているようね・・・
私は牽制でビームサーベルを振り回し、いったん距離をとる。
「撤退命令は出ているの?」
『でていないわ。というより大混乱中よ。司令部はヒステリーだし、シャア大佐は落とされるし・・・』
あのシャア大佐も落とされたのか・・・
『もうお終いよ。部隊はてんでに逃走中。デラーズ大佐の部隊を含めれば三割が戦場を離脱中よ』
もうお終いか・・・
その通りだわね。
でも、撤退命令の無いうちに戦場を離脱するのは・・・
それに・・・
あのジムが逃がしてくれるかな・・・
私はモニターに映る黄色いジムを見つめる。
どんな男が乗っているのかしらね・・・
私はゆっくりとビームサーベルを構え直した。
「ガンダムが沈んだ?」
俺は耳を疑った。
アムロ・レイがやられたのか?
『識別信号の反応が無くなったとのことです』
アナスタシアの冷静な声が現実であることをうかがわせた。
『中尉殿、あれを!』
なんだ?
出港する軍艦?
こんな混戦状態で発進してくるというのか?
『ザンジバル級です!』
「わかってる。だけど、いまさらどうするつもりだ?」
『ああっ』
「なにっ!」
俺は驚いた。
発進してきたザンジバル級は、発進直後にブリッジを直撃されたのだ。
あれではブリッジの要員は助かるまい。
次々と砲撃がザンジバルに集中する。
すでにア・バオア・クーの周辺には敵艦艇はほとんどいない。
モビルスーツの脅威も去りつつある今、艦艇の主砲は獲物を探してうずうずしていたのだ。
そこへ飛び出すなど自殺行為もいいところだ。
俺は炎上するザンジバルを黙って見ているだけだった。
- 2006/09/23(土) 22:39:01|
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