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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ビーストの浄化

ホーリードールの12回目です。

戦闘シーンは難しい。
上手く戦っているように感じていただければ幸いです。

12、
「グルルル・・・」
脇腹に負った傷は浅くはない。
だが相手も一方は手負い。
私の牙でとどめを刺してやる。
私はビースト。
闇の力を得たビースト。
光なんかに負けはしない。
「グルルル・・・」
再びうなり声を上げ、ビーストは飛び掛った。

ビーストが飛び掛ってくる。
その鋭い牙は彼女たちをたやすく切り刻む。
だが、相手は一体に過ぎない。
闇の少女は手を出してこない。
なぜかはわからないが好都合。
であれば、一体が牙に捕らえられているときはもう一体は自由に動けることになる。
動きが鈍いのはどちら?
ホーリードールサキはレイピアを構えてジャンプする。
敵の狙いはホーリードールアスミ。
であれば、ホーリードールアスミが牙に捕らえられたときこそがチャンス。
飛び上がったホーリードールサキは空中で一回転すると、何のためらいもなくレイピアをホーリードールアスミに向かって突き出した。

飛び掛ってくるビースト。
無表情にそれを眺めているホーリードールアスミ。
彼女の脇ではホーリードールサキがジャンプして戦闘体勢に入って行く。
彼女の狙いはただ一つ。
ビーストを浄化すること。
そのためにはビーストの動きを止めなくてはならない。
動きを止める。
簡単なこと。
動かなければそれでいい。
彼女はただまっすぐに立ち尽くして、次の瞬間を待った。

目の前で光の少女が立ち尽くす。
それは先ほどの狩りの時と同じ光景。
抵抗のすべを持たない人間どもは、あまりの恐怖に立ち尽くす。
子供を抱えた母親も、タバコを吸っていた男性も、バッグを持って帰路を急ぐOLも、みんな私の前では立ち尽くす。
目を見開いて恐怖におびえ、叫び声を上げることすらできないままにのど笛を噛み切られる。
それは一瞬の出来事。
口の中に広がる温かい甘さ。
金属の味が食欲をそそる。
血しぶきが飛び散り、ひゅうと空気の漏れる音がして肺の中の空気が出て行く。
あとは倒れるのみ。
心臓が数回鼓動を行なうが、それで終わる。
美味い心臓にありつける。
そんな先ほどの光景が脳裏をよぎる。
たったそれだけ。
たったそれだけが致命的だった。
ビーストの目は赤いコスチュームから覗く白い首筋だけに注がれる。
うっすらと浮き出る血管すら見えるようだ。
白磁のような白い肌。
そこ目掛けて飛び掛る。

ザシュッ!!
黒い液体が周囲に飛び散る。
重たい衝撃がのどを貫く。
さっきまで目の前にあった白い首筋は今も目の前。
躰が止まっている。
獲物を押さえつけようとした前足は光の少女の肩に食い込んでいる。
だが食いつけない。
躰が前に行かない。
イタイ・・・
イタイイタイ・・・
イタイイタイイタイ・・・
のどが焼け付く。
何が起こったの?
私に一体何が起こったの?

「ビースト!」
それは一瞬の出来事。
わずかの間に形勢は変わる。
ビーストが食いつくはずだった光の手駒は立ち尽くし、ビーストは上空からのどを地面に串刺しにされていた。
地面に叩きつけられるビースト。
その背中に乗り、のどを貫くレイピアをさらに押し込む青の少女。
「ビースト!」
レディベータはただ叫ぶ。
自分の作り出したビーストが今まさに敗れた瞬間。
もはやあのビーストの命は長くない。
死ぬ。
消滅する。
跡形もなくなってしまうのだ。
「ビースト!」
また叫ぶ。
叫べばあのビーストが立ち上がるかのように。
事実それは立ち上がる。
四つん這いで背中の少女を振り落とすように。
実際は少女の方が降りたに過ぎない。
青いレイピアを抜き去り、次の獲物を狙っている。
なんだろう・・・
レディベータの頬に何かが流れる。
なんだろう・・・
手駒同士の戦いでこちらが手駒を失ったに過ぎないのに・・・
「グルルル・・・」
よたよたとよろめくようにビーストは彼女の方に向かってくる。
その目はじっと彼女を見つめている。
「ビースト!」
ぽたぽたと足元が濡れる。
目が霞んでよく見えない。
どうしてだろう・・・
どうしてこんなに胸が苦しいんだろう・・・

「コロナ!」
ホーリードールアスミのかざした手から白いオーラが舞う。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ」
黒い大型犬のようなビーストの足元から炎が吹き上がり、彼女の全身を焼き尽くす。
火柱が消え去った時、そこには炭化した女性の死体が転がっているだけだった。
「浄化完了」
「残るは彼女」
二人は無表情でうなずく。
ホーリードールサキはレイピアを再び構え、ホーリードールアスミは転がっていた杖を手にする。
「つっ・・・」
思わず肩を押さえるホーリードールアスミ。
肩の傷は深かった。

目の前で風に吹き散らされていくビーストだったものの灰。
そこにはもう何もない。
彼女が作り出したビーストは消えてしまった。
光の手駒に消されてしまった。
赦せない・・・
赦せないよ・・・
この二人・・・殺す!
殺してやる!
レディベータが両手を高く上げる。
その頭上に闇が渦を巻き始め、その中から巨大な長柄の鎌が現れる。
しっかりと両手でその鎌を受け取るレディベータ。
「行くよ、“ブラディサイズ”」
レディベータは大鎌を構えた。

「死ねぇぇぇぇぇ!」
大鎌を振りかぶり突進するレディベータ。
「かわす」
「ええ」
飛び上がって初撃をかわす二人のホーリードールたち。
レディベータの大鎌はうなりを上げて空を切る。
まるで空間すら切り取られたかのように、触れてもいない街灯がすっぱりと断ち切られる。
「!」
あまりの威力に目を見張る二人。
轟音を立てて倒れる街灯が土煙を上げた。
「うふふ・・・どう? 私のブラディサイズ。いい切れ味でしょ」
こともなげに大鎌を構え直すレディベータ。
黒いレオタードを纏った少女には似つかわしくない大きさだ。
「うりゃぁぁぁぁぁぁ!」
素早く駆け出し、二撃目を繰り出すレディベータ。
「ハアッ!」
ホーリードールサキの青いレイピアが斬撃を受け流そうと鎌の刃に挑むが、もとより受けきれるものではない。
乾いた金属音を発して宙に舞う青いレイピア。
「ドールサキ!」
すぐさま援護すべくホーリードールアスミより呪文が放たれる。
白いオーラが先ほどと同じようにレディベータに纏わりつく。
「やあっ!」
しかし、レディベータが大鎌を一旋すると白いオーラはかき消され、呪文は効力を失った。
「そんな、まさか・・・」
「甘いわよ! 私はデスルリカ様より漆黒の闇を賜った女。あなた方とは出来が違う!」
駆け込みながら大鎌を振り回すレディベータ。
その鋭い切り込みにホーリードールアスミも思わず後ろへジャンプする。
「ドールアスミ!」
「大丈夫ですわ。それにしても手強い・・・」
お腹を押さえて膝をつくホーリードールアスミ。
大鎌によって切り裂かれた空間がまたしても傷口を作っていた。
「でも浄化しなければならない。闇は駆逐する。ゼーラ様のために」
ホーリードールアスミがすっと立ち上がる。
「うん。闇は駆逐する。ゼーラ様のために」
ホーリードールサキは弾かれたレイピアを拾い、素早く天にかざす。
「大いなる光よ。我に力を・・・」
パチパチと音がして、周囲の街灯の電球がはじけ飛ぶ。
その放電が電気の球となり、ホーリードールサキのレイピアの上で巨大な塊となる。
「雷爆!」
そのままレイピアをレディベータに向かって振り下ろすホーリードールサキ。
巨大な電気の塊はそのままうなりを上げてレディベータに襲い掛かった。

「闇の抱擁!」
だが、レディベータの左手が彼女の前で円を描くと、漆黒の闇が広がって球電を飲み込んでいく。
「そんな?」
闇に吸い込まれた電気の塊はなんら意味を持たずに消え去ってしまう。
「それではこれを!」
ホーリードールアスミの杖が空間に円を書き、魔法陣が作り出される。
「フリーズクラッシュ!」
魔法陣の中央から強烈な冷気が噴出し、レディベータを襲う。
近くにあるものを凍らせて進む冷気の固まり。
一瞬にして進路上の地面もベンチも樹木も凍りつき、レディベータそのものすら凍りつかせる。
「やった」
次の瞬間には凍ったもの全てが粉砕されるはず。
いかに闇の少女といえどもこれにはかなわないだろう。
「やあっ!」
だが、そんな思いはこの一言で消し飛んでしまう。
ベンチも樹木も細かく粉砕されたのに、レディベータの足元にはただ細かい氷のかけらだけ。
大鎌を構えた少女はまったくの無傷だった。

「今度はこっちが行くわ! ブラディサイズ!」
大鎌を振り上げてホーリードールサキに向かうレディベータ。
雷爆もフリーズクラッシュも効かない相手では不利はまぬがれない。
レイピアを構えてあとずさるが、それよりも速く大鎌の切っ先がホーリードールサキのコスチュームを真横に薙いだ。
「うああっ!」
赤い血が飛び散り、ホーリードールサキががくりと膝をつく。
「ドールサキ!」
思わず駆け寄ろうとするホーリードールアスミ。
だが、返す刀で横薙ぎにされる大鎌の一撃がホーリードールアスミをも切り裂いていく。
「キャアッ!」
躰をかばった右腕にすっぱりと裂け目ができ、血がしぶく。
「あははははは・・・死ね死ねぇっ!」
とどめとばかりに大鎌を振り上げるレディベータ。

『限界のようね。お下がりなさい』
二人の頭の中に声が響く。
「ゼ、ゼーラ様?」
「ゼーラ様?」
二人は思わず口にする。
『今のあなたたちでは勝てない相手。ここは下がるのです』
「ハイ、ゼーラ様・・・」
「仰せのままに・・・」
二人の体が光に包まれる。
「う・・・何・・・」
まばゆい光に一瞬幻惑されるレディベータ。
光は巨大な球となり、やがてハレーションを起こして周囲を白く染めて行く。
「く・・・」
やむを得ずに目を閉じ、光が収まるのを待つレディベータ。
やがて光が収束し、あたりは再び夜のしじまに覆われる。
だが、二人の光の少女の姿はどこにもいなかった・・・
[ビーストの浄化]の続きを読む
  1. 2006/06/07(水) 21:55:20|
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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