ちょっとだけですがローネフェルトです。
あの方の登場ですー。
『こちらは航路哨戒の突撃艇ジッコ114号。接近中の艦艇へ、その所属を明らかにされたし』
パトロールについているジッコ突撃艇の一隻だわ。
「こちらはソロモン駐留艦隊第4艦隊第17戦隊所属の軽巡洋艦ブリュメルだ。これよりソロモンに入港する」
リーザの声が艦橋に響く。
颯爽とした彼女はいつ見てもかっこいいわね。
『データ確認。軽巡ブリュメルと認識。お帰りなさい』
「ありがとう。ジッコ114号」
リーザが通信を切る。
「各員へ、これより本艦はソロモンに入港する。入港準備にかかれ!」
慌ただしくなるブリュメルの艦内。
きびきびした乗組員はいつ見ても気持ちがいい。
この艦がリーザの下で統一されているのがよくわかる。
私は作業の邪魔になると思い、艦橋を後にしようとした。
「どこ行くの、マリー?」
背後から声を掛けられる。
「作業の邪魔になると思って。パイロット控え室へ引き上げるわ」
私は振り向いてそう言った。
「構わないわよ。ここまで来れば連邦軍だっていないでしょうし、それにだいぶお疲れじゃないの?」
意味ありげに微笑むリーザ。
私は苦笑する。
あの後アヤメは自分の暴走を恥じたのか、借りてきた猫のようにおとなしくなった。
ところが、私がパトリシアを紹介した途端に、アヤメの中に火が点いたらしい。
二人して私の気を惹こうとするのだ。
おかげで私は双方からお茶や食事を一緒にしたいと誘われて息つく暇も無い。
リーザはそのことを言っているのだ。
「ミナヅキ少尉の話は聞いたわ。正直言って私は手元に置くのは賛成できないけど・・・」
「でも、彼女を本国に帰したらモルモットにされるのが・・・」
「わかっているわ。あなたがそれを望んでいないこともね」
私は結局リーザのそばに戻る。
「でも、必要以上に深入りするのは避けた方がいいわ。ミナヅキ少尉は普通じゃないのよ」
「わかっているわ・・・けど・・・」
リーザの忠告は痛いほどわかる。
でも、いまさら彼女を見捨てるなんてできはしない。
「ふう・・・仕方ないわねぇ」
リーザが肩をすくめる。
「ごめんね、リーザ」
私は謝るしかできなかった。
『ブリュメル入港。係留作業かかれ!』
『物資搬入は予定通り。各員は所定の位置につけ!』
『外周チェックを行なう班は作業にかかれ!』
『搭載モビルスーツの搬出準備!』
『係留作業終了後、艦長は要塞司令部まで出頭のこと』
さまざまな通信が飛び交う第3宙港。
軽巡洋艦ブリュメルはしばしそこに巨体を休める。
宇宙要塞ソロモン。
我がジオンの最前線要塞基地である。
重要拠点の一つだが、連邦軍のルナツー要塞や我がジオンのア・バオア・クー要塞に比べれば一回り小型の要塞といえるだろう。
コロニー建設のために取り寄せた小惑星をくり抜いて作ってある点では他の二大要塞と変わらないが、軍港施設が充実し、モビルスーツの出撃基地としての役割が重視されている点で違いがある。
もっとも、現在では工廠設備も付随され、単独での長期戦闘に耐えられるようになっているのは変わらない。
個人的には小型要塞であるがゆえに一番バランスが取れていると私は思う。
ルナツーのように大型の小惑星を使っていると、その一部分しか利用してない上に、基地のある反対側は無防備と言っても差し支えないらしい。
その点ソロモンはまさに星型。
宇宙に浮かぶダビデの星のような前後左右に突き出た腕が濃密な火線を形成し、接近する敵艦艇を撃滅するのである。
まさに我がジオンの守り神。
ソロモンが健在な以上、連邦軍の進撃もこのルートからでは頓挫するに違いない。
とは言うものの、最近の連邦軍の戦力増強振りは目を見張るものがあるわ。
苦戦を強いられることになりそうね。
「何とか、艦長の権限であなたたちをこのブリュメル所属のモビルスーツ隊に配属してもらうように手配してみるわ」
「ありがとうリーザ。でも無理はしないでね」
私は要塞司令部へ向かうリーザを見送る。
それにしてもこの戦力の充実振りはどうだろう。
この宇宙港だけでもチベ級の重巡が二隻に、ムサイ級の軽巡が五隻。
さらにはジッコ級の突撃艇やガトル級の宇宙戦闘機もいっぱい。
肝心のモビルスーツは奥の格納ブロックなので、ここからは見えないけれど、きっと09Rがひしめいているんでしょうね。
連邦軍なんかに負けるもんですか。
「本国からは新型を一機しか送らないというのか?」
「どうも総帥は戦力をグラナダとア・バオア・クーに集中させる腹積もりのようです」
通路を歩いてくる巨大な体躯。
肩にとげの付いたいかめしい軍服はもしかすると・・・
「ええい! ソロモンを見捨てるつもりか、兄上は!」
「キシリア閣下の思惑も絡んでいるようでして・・・」
「姉上もか?」
「はあ・・・フォンブラウンに怪しい動きがあるとかで、こちらに戦力は回せないとのことです」
小柄な頭の薄い高級参謀を連れた巨体が私のほうへやってくる。
私は通路の脇に寄り、背筋を伸ばして敬礼した。
「ラコック・・・俺は違うぞ!」
「は?」
「俺は兄貴や姉上とは違う。俺はジオンという国を、ジオンの国民を守るために戦う! ゼナやミネバを守るようにジオンの国民を守って見せるぞ!」
私の前を通り過ぎる巨大で暖かい司令官。
私は彼の言葉がすごく嬉しかった。
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- 2006/04/06(木) 21:29:44|
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