以前PSで出ていたゲームのリメイクなんですが、当ブログにリンクしていただいているグレンディさんの紹介もあって手に入れてみました。
やったことのあるゲームなんですが、以前の行動やキャラなどはもう忘れちゃっていたので、新たな気持ちで取り組めました。
ローディングなどには多少時間がかかるものの、キャラの動きはいいですね。
新たな気持ちと言うよりもエロい気持ちが先に立ってしまったのはナイショです。(笑)
と言うのも、アイリーンと言う女騎士さんがいるんですが、彼女がパーティにいる時に最後のとどめを彼女がさすとポーズを取ってくれるんですね。
とどめを刺すと、そのキャラがポーズをとるんですが、彼女は上半身とひざ下を鎧で覆っているんですが、太ももの辺りとおへその辺りをどうも鎖帷子かなんかで覆っているようなんですね。
それがまるでパンティストッキングを穿いているかのように見えてしまうもので、パンストやタイツ足の好きな私はついつい最後のとどめを彼女にさせたくなってしまいました。
他にもタイツ足のダークエルフやとても鎧とは思えないおへそ&太もも丸出しの女将軍とかかわいいキャラがいるので楽しいです。
まあ、こういった邪な楽しみはおいといても、ゲームとしてもできはとてもよいと思います。
TRPGっぽい感じがあって私は好きですね。
これで悪落ちやMCイベントがあればなぁ。
それではまた。
- 2006/03/31(金) 22:19:28|
- PCゲームその他
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昨日のようなSSは受けなかったですかね?
まあ、個人的な趣味むき出しでしたからね。
でも、少女が黒いタイツを穿いたタイツ足って大好きなんですよ。(笑)
さて、今日はミリタリーネタを。
日本の軍用航空機、とりわけ戦闘機に関しては、零戦(ゼロ戦とは読まない)の防弾装備を持たないという事実があまりにも有名すぎて、人命軽視の攻撃一辺倒の戦闘機ばかりに思われがちなんですが、零戦はともかく、その他の戦闘機、とりわけ陸軍機は防弾にはある程度考慮されていたのが事実のようですね。
ノモンハンの戦いでソ連空軍の戦闘機と戦い、その高性能を遺憾なく発揮した陸軍中島97式戦闘機でしたが、武装の強化と防弾装備については課題を残しました。
そのため陸軍としては、中島に時期戦闘機として開発中の戦闘機にその点を盛り込むよう指示します。
その結果、武装は97式戦闘機の7.7ミリ機銃二丁から、12.7ミリ機銃二丁へと強化され、さらには防弾タンクを装備したり、操縦者背面の装甲版を強化したりして、当時の戦闘機としてはかなり防弾に配慮された試作戦闘機キ43が完成しました。
ただ、速度は思ったほど高速ではなかったためにキ43は陸軍にとって魅力の無い機体に見えてしまいました。
そのため一時はキ43不要論まで出てしまったのです。
しかし、情勢がキ43を救いました。
南方侵攻作戦においては航続距離の長大さが求められ、キ43の航続距離の長さが見直されたのです。
結局速度はそれほどではないものの、航続距離の長さと、ある程度の格闘戦性能を持つキ43は正式に陸軍に採用され、一式戦闘機「隼」として量産されることになりました。
日本の戦闘機としては第二位に量産数である五千機を生産した一式戦闘機は、陸軍の主力戦闘機として、太平洋戦争の初期に活躍することになります。
人命軽視を言われる日本軍ですが、少なくても97式戦闘機から一式戦闘機へと繋がるラインにおいては、装甲防御にも充分な注意が払われていたんですね。
後の四式戦闘機「疾風」にもその思想は受け継がれ、四式戦闘機は陸軍の戦闘機の中では一番バランスが取れ、米軍戦闘機に比肩する戦闘機として米軍パイロットにも恐れられることになります。
そのバランスのよさは一式戦闘機譲りだったんですね。
- 2006/03/30(木) 22:11:08|
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今日はちょっと毛色の変わったSSを投下してみますね。
当ブログにもリンクしていただいている「林田相丘Escalation2XXX」様や、うずまき道様のところからリンクされている「オンナセントウイン」様などで、女の子が戦闘員となるイラストやお話があったので、書いてみたものです。
楽しんでいただければ幸いです。
「あれ? どうしたのそれ?」
私はその言葉に振り向いた。
そこにはいつも私の隣の席にいる和穂(かずほ)ちゃんがにこやかに立っていた。
「えっ? 何のこと?」
私は手提げバッグにレオタードをしまいこむ。
アルバイト先から持ってきた制服なのだ。
「それよ、それ。黒いレオタードみたいだったけど・・・奈々美(ななみ)ちゃんって体操かなんかやっていたっけ?」
「ああこれ?」
私はバッグの口を閉じながら和穂ちゃんに向き直る。
「アルバイト先の制服なのよ。すごく気に入っちゃったからちょっと家でも着たくなって持ち帰ったの」
これは本当のこと。
だって・・・すごく着心地がよくて・・・いつでも着ていたくなっちゃうんだもん。
「制服? ちょっと見ただけだったけど・・・そんな制服があるの?」
「うん。素敵な制服でしょ?」
「そ、そうかな・・・だって、躰の線出ちゃわない?」
あ、和穂ちゃんはわかっていないんだ。
躰の線が出るのは動きやすさを追求するからなのよね。
それに躰の線が出たって気にならないけどなぁ。
「別に気にならないよ。みんな同じ制服だから大丈夫だよ」
「わ、私はパスだなぁ。レオタードが制服だなんて、なんかコスプレみたいで変じゃない?」
コスプレぇ?
ひどいなぁ。
これはれっきとした組織の制服なのに・・・
これを着たらすごく気持ちいいんだよ。
他の洋服なんか着たくなくなっちゃうんだよ。
「和穂ちゃんにはわからないのよ。この制服の素晴らしさがね」
私はちょっと残念に思う。
和穂ちゃんさえよければ今度首領様にお願いしてアルバイトに雇ってもらおうと思っていたのに・・・
和穂ちゃんだっていろいろと欲しいものがいっぱいあるって言っていたし、欲しいものを奪い取って、お給料ももらえるって最高よね。
そりゃあ、怪人様のお世話とかって、結構大変なこともあるけど。
でも私は今のアルバイトが大好きなの。
「あ、いっけない! バイトに遅れちゃう。それじゃね、和穂ちゃん」
「あ、うん。バイバイ」
私は手提げバッグと肩掛け鞄を持って教室を出る。
遅刻したら大変。
首領様に怒られて処分されちゃうわ。
私は急いでアルバイト先へ向かった。
郊外にある廃工場。
ここはバブルがはじけた後に倒産した工場なの。
危険だと言うことで立ち入り禁止になっているんだけど、それは表向き。
ここの地下が私のアルバイト先なのです。
面接の時にはここが仕事場だなんて思いもしなかったけど、今になってみるとすごく考えられているなぁって思う。
ここならば人目につかないし、地下だから多少の音や振動はごまかせるし、誘拐してきた人たちを閉じ込めておくにも便利だしね。
私はあたりを確認して、人目が無いのを確かめた後で工場の事務所に入る。
荒れ果てた事務所のロッカーを開けると、正面にある髑髏をあしらったレリーフがあって、そこに私は手をかざすの。
そうするとレリーフの目の部分が輝くから、私は自分の組織員番号を言うの。
「私は木葉(きば)奈々美。女戦闘員173号です」
するとレリーフからの光が私をチェックして、間違いないとわかるとロッカーがスライドして通路が現れるのよ。
私が入るとすぐに入り口は閉じられて、あらゆる侵入者を拒むの。
私も最初にここへ連れてこられた時には驚いたわ。
でも、こうしないと無断で侵入する人がいるかもしれないもんね。
通路を歩いていくと、さらに頑丈な扉があって、そこには黒い全身タイツを身につけた戦闘員さんが立っているわ。
戦闘員さんは男の方なんだけど、全身を今言ったとおり躰にぴったりした全身タイツで覆い、ブーツと手袋、それに目だけを出したマスクを被っているの。
そうなると誰が誰だかわからなくなりそうなんだけど、そうじゃないのよね。
今のままだと私にもわからないんだけど、きちんと制服を着ると、ちゃんと誰が何号で誰が何号ってわかるのよ。
すごいことだよね。
それに、あんまりしゃべらなくったって、相手の考えが伝わってくるから、意思の疎通だって問題ないわ。
最初はキィーッって叫んでいるだけだと思ったんだけど、ちゃんと伝わるんだもん。
驚いちゃった。
私は彼らのところへ行く前に着替えを済ませなくちゃいけないわ。
扉の手前に更衣室が用意されていて、そこを使って着替えるの。
でも、あんまり使っている人を見たことは無いわね。
みんなこの制服が気に入っちゃって着替えたくなくなっちゃうのかも。
その気持ち、わかるなぁ。
私も通いじゃなくて、寮に入れるようになったらずっと着っぱなしでいたいなぁ。
私は戦闘員さんたちに頭を下げると、更衣室へ入る。
女戦闘員173号って書かれているロッカーを開けて、鞄を放り込む。
ロッカーの足元には私用のハイヒールのブーツがあって、制服に着替えたらこれを履かなければならない。
私は手提げ鞄を開けて中に入っている制服を丁寧に取り出す。
和穂ちゃんが言っていた黒いレオタード。
下に穿く黒いタイツ。
男の人は全身タイツだけど、女の人はタイツとレオタードなのよね。
頭に被る目だけが出るマスク。
当然これも黒。
肘から先を覆う黒い長手袋。
そして、組織の髑髏のマークの付いたベルト。
これが制服一式なの。
さあ、さっさと着替えなくちゃ。
わずらわしい学校のブレザーをまず脱いで、スカートを下ろし、ブラウスを脱いでいく。
なんて着心地の悪い制服なんだろう・・・
学校の制服も組織の制服に変更して欲しいなぁ。
脱ぎ終わったら、次は下着。
制服の下は下着なんか着けないのよ。
ブラを外して、ショーツを脱いで、ハイソックスも脱ぎ捨てる。
いっそ本当に捨てちゃおうかとも思うけど、我慢我慢。
私はまだ正規の組織員じゃないから、自宅通いなの。
正規の組織員になると、家族を始末して組織の寮に移れるんだけどね。
それまでは組織のことはなるべく知られないようにしなくちゃいけないの。
私の両親も私のアルバイト先は知らないわ。
どこかのコンビニででも働いていると思っているんでしょうね。
ふふふ・・・おろかな人たち。
さて、いよいよ制服が着れるわ。
いつもなんだかわくわくしちゃう。
まずは黒いタイツを手にとってつま先をたくし上げるの。
そして私の場合は右足から差し入れて、次に左足を入れるのよ。
そしてゆっくりとたくし上げて行くんだけど、この瞬間がたまらないのよね。
肌にピッタリ吸い付くようなタイツの感触はたまらないわ。
腰まで上げるだけでもすごく気持ちよくて、もうそれだけでイッちゃいそう。
しわを伸ばして脚にフィットさせると、私の脚そのものが黒く変化したようでとても素敵。
次はレオタード。
これも右足から差し入れて次に左足。
腰までくいっと引き上げてから胸元までたくし上げる。
それから垂れ下がった袖に腕を通して行くわ。
最初は右腕。
そして左腕。
腕を通したら、うう・・・あんまり自慢できない胸を収めるようにしてレオタードを首元まで上げるの。
その後はちょっとコツがいるけど、背中のファスナーを上まで上げて完成。
見て!
どこからどこまでも黒に覆われた私。
もう叫びだしたくなるぐらい気持ちいいの。
私はいつもここでくるくると二三回回転して鏡に全身を映し出してみるわ。
和穂ちゃんは躰の線が出るからいやって言っていたけど、この気持ちよさは最高よ。
おっと、いけないいけない。
いつまでもこんなことをしていたら怒られちゃうわ。
私はブーツを取り出してサイドファスナーを引き下げる。
ベンチに腰掛けて脚に通し、サイドファスナーを引き上げる。
立ち上がると、少し背が高くなって気持ちがいい。
最初はヒールが不安定かなって思っていたけど、ぜんぜんそんなこと無いのよね。
むしろこのヒールで蹴りを入れると相手は痛いだろうなって思うわ。
首領様に逆らう奴には当然の痛みだけどね。
後は手袋を嵌めて、ベルトを付ける。
髑髏のマークが腰のところでアクセントとなってかっこいい。
最後に頭からマスクを被る。
最初は髪の毛が邪魔だったから上手く被れなくて。
結局ショートカットにしたのよね。
お母さんにも和穂ちゃんにもどういう心境の変化かって聞かれたけど、心境の変化っていうより必要に迫られただけなのよね。
私は髪の毛を整えてマスクを被り、目のところがピッタリあうように調節する。
後は首元もしっかり覆うようにセットして着替え終了。
鏡を見ると、そこには全身を黒い制服で覆われ、目だけを出した女戦闘員が私を見つめている。
なんて素敵なんだろう・・・
早く着替えなくていい組織員になりたいなぁ。
そのためには頑張らなくちゃ。
私は鏡の前で右手を上げて叫ぶ。
「キィーッ!」
うん。
これでよし。
私は更衣室の扉を開けて、アジトの扉へ向かっていった。
- 2006/03/29(水) 21:17:58|
- 女幹部・戦闘員化系SS
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今日はホリドルでも帝都でもなく、ローネフェルトの続きを投下しますね。
楽しんでいただければ幸いです。
それではー。
『そっちー! 武装の準備できてんの?』
『推進剤は満タンか? 敵は待っていちゃくれないんだぞ!』
『パイロットは誰が乗るんだよ? この艦にはパイロットは乗っていないんだろ?』
『艦長命令だ! たまっころから上がってきたやつが乗るんだろ!』
『宇宙の実戦大丈夫なのかよ?』
『知るか!』
喧騒に満ちているハンガーデッキ。
全ての会話が一つの周波数で行なわれているために、誰が誰に向かって言っている言葉なのか慣れないと聞きづらい。
ノーマルスーツとヘルメットをつけた私は、ハンガーデッキにやってくる。
無論私の後ろにはアヤメが付き従ってきていたが、私ははたと思い当たった。
アヤメはモビルスーツで宇宙戦をこなしたことはあったのだろうか・・・
うかつだった・・・
アヤメが宇宙戦闘機乗りだったことばかり考えていて、モビルスーツでの宇宙戦闘をこなしたことがあったのかは聞いていなかったわ。
「アヤメ、あなた宇宙戦闘は?」
『えっ? もちろんありますよぉ。』
よかった・・・
『シミュレーションですけどぉ』
ヘルメットのバイザーの向こうで笑みを浮かべているアヤメ。
「・・・あなたは残りなさい。これは命令です!」
『えっ?』
私の言葉に意外だと言う表情に変わるアヤメ。
でも、宇宙でのモビルスーツ戦は簡単なものではない。
敵の戦力ははっきりしていないけれど、モビルスーツだっているでしょう。
だとしたらいくらアヤメでも・・・
『いやです・・・』
「えっ?」
『いやです・・・お姉さまのそばにいさせてくださいぃ』
アヤメは首を振る。
でも・・・
「これは命令よ! あなたは今回は艦に残りなさい!」
『いやですぅ』
この娘は・・・
「宇宙での実戦経験の無いあなたは足手まとい・・・」
私はハッとした。
『足手まとい・・・』
アヤメの表情が凍りつく。
「アヤメ・・・ち、違うの」
『あ・・・足手まとい・・・あは・・・あははは・・・私は・・・足手まといなんだ・・・お姉さまの・・・邪魔なんだわ・・・』
アヤメの口元には自虐的な笑みが浮かび、その目からはぽろぽろと涙が零れ落ちる。
『私・・・捨てられた・・・お姉さまに捨てられちゃった・・・あは・・・あははは・・・』
糸の切れた人形のように立ち尽くしつぶやいているアヤメ。
「アヤメ!」
私はアヤメを抱きしめる。
『私は・・・私は捨てられた・・・』
「違う・・・違うから・・・そうじゃないから」
私は必死でアヤメをなだめる。
『大尉殿! 何をしているんです! 発進準備できているんですよ!』
「わかっている!」
私は思わず怒鳴りつける。
「えっ?」
『うふ・・・うふふ・・・』
薄く冷たい笑みを浮かべて私を押しやるアヤメ。
「アヤメ!」
『うふふ・・・』
トンッとキャットウォークを踏み出し、モビルスーツへ飛んで行くアヤメ。
「アヤメ! 待って!」
私は自分のうかつさに後悔したが、それどころではない。
『ああっ! ミナヅキ少尉、それは大尉殿が乗るはずじゃ?』
『邪魔だ! どけ!』
「アヤメ!」
後を追った私の目の前でYMS-11のハッチが閉じる。
モノアイが輝き、固定具から機体が外される。
「アヤメ! 待ちなさい!」
『どけ! 邪魔するなぁ! 私は・・・私は足手まといじゃないぃ!』
YMS-11はゆっくりと歩き出し、後部発進口へ向かう。
『どけぇぇぇぇぇ!』
「アヤメェェェェェ!」
私の声をよそにすざまじい勢いの推進剤が撒き散らされ、YMS-11はブリュメルを飛び立っていった。
『敵艦よりモビルスーツが発進したようです! その数一機!』
『一機だと? 時間を稼ぐつもりだな。逃がすなよ!』
ブリッジの通話がコクピットに流れてくる。
モビルスーツが出てきたか・・・
当然のことだろうな。
ジオンの制宙権の要はモビルスーツだ。
ムサイ級の巡洋艦始めジオンの艦艇はおおよそモビルスーツの搭載能力を備えている。
今まで出撃してこなかった方が不自然だったのだ。
もっとも、今回の敵はあまり戦闘に手馴れた感じはなかったが・・・
『敵モビルスーツ、急速接近!』
『バカな! 速すぎる!』
嘘だろ・・・
艦長の驚きは俺と同じだ。
ザクならこんなに・・・
まさか赤い彗星?
地球にいると聞いたが・・・
あのHLVで?
俺はじりじりしながらコクピットに座っていた。
『熱紋照合・・・データにありません!』
『新型か?』
新型?
赤い彗星でもR型ザクでもない?
勘弁してくれよ・・・
そんな奴と戦わせられるのは・・・
『バーナード少尉! 出撃だ! 発進しろ!』
ロイス・メンデス艦長の命令が下る。
俺は唇を噛み締めた。
仕方が無い。
命令ならば従うしかない。
「ラバフ曹長、モード軍曹、出撃だ!」
『『了解!』』
僚機の返事を聞きながら俺はRB-79「ボール」を発進させる。
アヤメ・・・アヤメ・・・無事でいて・・・
私は06FZを発進させる。
以前乗っていた06Cとは雲泥の違い。
これが同じザクだと言うの?
まるでまったくの別物だわ。
『マリー。ミナヅキ少尉の機体はまっすぐに敵艦に向かっているわ。それにしても速い』
「彼女を援護できますか?」
『やってみるわ。速度維持のまま回頭! 主砲、斉射二連。撃てー!』
ベクトルはそのままに回頭したブリュメルが主砲を斉射する。
もちろん牽制以外の何者でもないものの、連邦軍をかく乱できればそれでいい。
敵は巡洋艦が二隻。
小物が発進している。
モビルポッドのようね。
あんなのにアヤメがやられるとは思えないけど・・・
集中攻撃を受けたら危ないわ。
私は06FZを敵の只中に踊り入らせた。
『どけぇぇぇぇぇぇ!』
『隊長ぉぉぉぉぉぉ・・・』
「イスタンブール」所属の三番機が一瞬にして破片となる。
「速い!」
ほんの一瞬にして敵の新型は急激に接近して一撃離脱する。
照準機に捉える暇さえありはしない。
しかも敵は我が軍の戦闘用周波数に割り込んで笑い声を上げている。
いや、泣き声にも聞こえるか。
『あは・・・あははははは・・・私は・・・私は・・・』
「ラバフ曹長、モード軍曹、俺の周囲に集まれ。集中射をかける!」
『『了解!』』
すぐに俺の周囲に二機のモビルポッドが集まってくる。
わずかな機動性しか持たないボールは、その唯一の長所である砲撃力を集中するしか勝ち目は無い。
『隊長、敵の新型の速度は・・・』
「わかっている。R型にまさるとも劣らないスピードだ」
だが・・・
敵の攻撃はモビルスーツらしくない。
R型の場合はその速度変更能力、つまり機動力を生かして急速に接近し、ベクトルを合わせて攻撃し、また速度を上げて離脱すると言うものだ。
しかし今回の新型は直線的に接近し、速度を落とすことなく攻撃を加えて去っている。
まるでセイバーフィッシュのようだ。
これならやれるかもしれない。
「いいか。敵は速度こそ速いが動きは単調だ。「サラゴサ」を基点に二時の方角、下角12度に射点を設定。次の接近時に一斉射撃だ!」
『『了解!』』
二人の返事に俺はタイミングを計る。
だが、そうは簡単にはいかないらしい。
『隊長。もう一機来ます』
やっぱりな・・・
たった一機のわけが無いんだ。
「構うな。新型に集中しろ!」
だいたい残存ボール五機で・・・
『ウワァーッ!』
光が走る。
訂正・・・残存ボール四機では一機のモビルスーツだけでも手一杯だ。
せめてジムがあれば・・・
『捨てないで・・・私はこんなに戦えるの・・・捨てないで下さいお姉さま・・・お姉さまぁぁぁぁ』
「アヤメ! 落ち着いて。誰もあなたを捨てたりはしないわ。だからコースを変えて!」
あれではいけない・・・
コースが丸わかりだわ。
あれでは未来位置に砲弾を集中されてしまう。
「アヤメ!」
敵のモビルポッドが固まっているのがわかる。
手強い・・・
あの集中砲火は食らってはただではすまない。
きっと優秀な指揮官が指揮を取っているのだろう。
もう一隻から発進したモビルポッドがばらばらなのに対して統制が取れている。
『私は戦える・・・私は戦えますお姉さま・・・だから・・・だからぁ』
「アヤメェ!」
視界の片隅でモビルポッド三機の主砲が火を噴いた。
『きゃあーっ!』
「アヤメェッ!」
YMS-11は敵の張った弾幕に頭から突っ込んでしまった。
砲弾のいくつかが至近弾となり、装甲に被害を与えて行く。
『ああ・・・あああ・・・』
「アヤメ! 下がって! ブリュメルへ下がって!」
私は必死になって06FZを走らせる。
最大速度の違いがこれほどとは・・・
この06FZだって以前の06Cや06Fに比べれば機動性は上がっていると言うのに・・・
「この距離では・・・」
私は無駄弾になるのを承知でシュツルムファウストを発射する。
なんとしてもあのモビルポッドの連携を崩さなければ。
『ごめんなさい・・・お姉さま、ごめんなさい・・・』
「アヤメ!」
アヤメのYMS-11はコースを変えない。
バカな・・・
その先には・・・
『やったぁっ!』
「まだだ! 続けて撃ち込め! まだ撃破したわけじゃない!」
俺はトリガーを引き絞る。
残弾はこの際気にしない。
残したところで沈められてしまえば意味が無い。
『隊長、あのモビルスーツはコースを変えません。このままでは・・・』
俺はハッとした。
まさかあのモビルスーツはイスタンブールに突っ込むつもりか?
「ボール04よりイスタンブール! 避けるんだ!」
俺は思わず叫んでいた。
「アヤメ! コースを変えなさい!」
『お姉さま・・・お姉さま・・・お姉さま・・・』
だめだ・・・今のアヤメは正気じゃない。
アドラー少佐たちが・・・
私は唇を噛む。
このままではコースの前方に弾幕を張られるか、敵巡洋艦に激突してしまう。
敵巡洋艦は回避行動に入ったようだけど・・・間に合うかどうか・・・
仕方ないわ。
私はトリガーを引く。
マシンガンの銃弾が一直線に伸びて行く。
「当たって・・・」
私はスクリーンを凝視する。
『隊長、イスタンブールが!』
俺の目の前でマシンガンの銃弾がイスタンブールの推進器部分に吸い込まれていく。
だめだ・・・
俺はとっさにそう思った。
エンジン部分の直撃は艦にとっては致命的だ。
ある程度の装甲はしてあっても、マシンガンの直撃に耐えるには巡洋艦の装甲は薄すぎる。
サラミス級巡洋艦CC-163イスタンブールは紅蓮の炎を吹き上げた。
「やった」
私は思わずつぶやいた。
これで敵巡洋艦の爆発はYMS-11の速度を殺し、コースも歪めてくれるはず。
少なくとも次の斉射を食らうことはまぬがれるはずだわ。
『きゃぁー!』
アヤメの悲鳴が聞こえてくる。
巡洋艦の爆発のエネルギーがYMS-11を翻弄しているのだろう。
「アヤメ、アヤメ!」
私は呼びかける。
『あ・・・お。お姉さま?』
よかった・・・
まともな返事が返ってきたわ。
「よかった・・・アヤメ、無事?」
『ああ・・・はい・・・お姉さまぁ、私は無事ですぅ』
よかった・・・本当によかった・・・
「アヤメ。機体の制御はできる? できるならブリュメルに後退して」
『は、はい。だ、大丈夫みたいですぅ。後退します』
アヤメのYMS-11は推進剤の尾を引きながらも転回し、ブリュメルへ向かった。
後は・・・
どうするんだ?
まだやるのか?
確かに敵の一機は後退中だが、敵にはまだ無傷のザクがある。
それに比べてこちらはイスタンブールを失い、ボールも二機失っている。
ちょっかいをかけた代償にしてはあまりにも大きい。
もっとも、それを後悔する暇も無くイスタンブールとともに艦隊司令は沈んでいるが・・・
『こちらサラゴサ。全機集結せよ。全機集結せよ!』
俺はホッとした・・・
後退するのだ。
ジオンの補給艦や商船相手ならともかく、巡洋艦に対してはモビルスーツを持たない連邦の巡洋艦が数で勝っていても意味が無いということなのだ。
モビルスーツが無ければ・・・
「こちらランディス・バーナード。サラゴサに後退します」
俺はボールをサラゴサへの軌道に乗せた。
「後退してくれたか・・・」
私はホッとした。
これ以上やりあうのはこちらもつらい。
あの連携したモビルポッド相手では多少のダメージは覚悟しなくてはならないだろう。
後退してくれてよかった・・・
『こちらはブリュメル。ミナヅキ少尉の収容完了。大尉殿も後退してください』
「了解」
私は06FZを帰還軌道に乗せてブリュメルへと向かっていった。
[敵艦離脱]の続きを読む
- 2006/03/28(火) 20:18:59|
- ガンダムSS
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なかなか思ったように書く時間が取れませんね。
言い訳ばかりですみません。
「帝都奇譚」第七話です。
ようやく役者が揃ってきた感じです。
7、
「そこで何をしているか!」
懐中電灯の明かりが向けられる。
「こ、これは・・・陸軍の方々ですか? 先ほどの銃声はいったい?」
敬礼しながら近づいてくる警視庁の巡査が二人。
「私は東京憲兵隊所属の憲兵曹長で、入生田というものだ」
入生田曹長が一歩前に出る。
「ハッ。われわれは警視庁のものです。先ほどこちらで銃声がしたものですから」
「先ほど巡査が暴漢に襲われたようだ。我々が来た時にはもう倒れていた」
曹長が倒れている巡査を指し示す。
「こ、これは! おい、おい、青山!」
二人の巡査が倒れている巡査のそばに駆け寄る。
「だめだ・・・死んでいる」
すでにこと切れている巡査を見て二人は首を振った。
「ここで一体何が? その燃えた死体のようなものは一体?」
巡査の一人が入生田曹長に向かう。
「軍の機密だ! 巡査ごときの知るところではない!」
「ハ、ハッ! 失礼いたしました!」
入生田曹長の言葉にただ敬礼を返すしかない巡査。
「おい、お前たち。後片付けは任せたぞ。俺は側車を借りていく」
「ハッ、了解しました」
入生田曹長は二人の部下に後を任せると、表通りに向かう。
「何をしている。早く来なさい」
入生田曹長はふと振り返ると灯を手招きする。
「えっ? わ、私ですか?」
灯は慌ててあとを追った。
「警視庁はあの魔物のことは知らないのですか?」
側車に乗せられた灯は運転している入生田曹長に訊いてみた。
「知りません。いや、知らせていません。新聞記者だということですが、どうかあなたも他言は無用に願います」
無表情で前方を見据えたまま入生田曹長はそう言った。
「どうしてですか? あんな化け物がいたと言うのに」
「“いた”ではなくまだ“いる”のですよ」
「・・・・・・」
その言葉は灯にとっても予想されていたことだった。
化け物に対しての手際のよさは、逆に言えばそれだけ化け物との経験を積んでいることになる。
「それなら余計に!」
「これは陸軍でも一部の者しか知りません。自分は帝都を担当する東京憲兵隊所属のために知りましたが、あの魔物のことは近衛師団でも知りません」
「えっ? それはどういう・・・」
「これ以上は聞かないで下さい。それに、この件からは手を引きなさい」
そう言って灯をにらむ入生田曹長。
「で、でも・・・」
「これ以上関わるようであれば、憲兵隊があなたを逮捕しなくてはなりません。それを避けるためにもです」
灯は驚いた。
逮捕とは穏やかじゃない。
「この件には陸軍が絡んでいます。地方人が首を突っ込んでいい話ではないんです」
「地方人って、私は帝都生まれですよ!」
灯の剣幕に一瞬きょとんとする入生田曹長。
「ああ、あははははは・・・」
「何が可笑しいんですか?」
突然笑い出した入生田曹長に灯はいぶかしむ。
「あなたの身内に陸軍の軍人はいませんか? 地方人というのは軍人以外を差しているんですよ」
「え? そうなんですか?」
灯は知らなかったのだ。
「とにかく、これ以上は関わらないように。いいですね?」
灯はうなずくしかなかった。
月がかげる。
音もなく降り立つ人影。
降り立ったのは瓦屋根の上。
鷹司の屋敷の屋根の上だ。
「ククク・・・迎えに来たぞ。黒き血の持ち主よ」
不気味な笑い声が響く。
「ん・・・」
寝返りをうつ摩耶子。
窓が音もなく開き、カーテンが揺れる。
静かに滑り込むように人影が入ってくる。
ベッドの上の摩耶子に影が掛かる。
「ククク・・・」
人影は男の姿をしていた。
その舌が唇をぺろりと舐める。
影はゆっくりと摩耶子にのしかかって来る。
舌が長く伸び、摩耶子の首筋に近づいていく。
「んん・・・」
摩耶子は再び寝返りをうった。
「こんばんは。魔物さん」
摩耶子の寝室の扉が開く。
「!」
男が振り向く。
青い瞳が差し込まれた明かりに輝いた。
「貴様・・・」
「貴様呼ばわりですか魔物さん? 私は破妖月子。この娘さんをお護りするのが私の仕事」
先ほど摩耶子と会ったときとは別人のような鋭い目つき。
服装も動きやすいことを目的としたのか、躰のラインが出るような蠱惑的とも言えるワンピースを着ている。
「ほう・・・なかなかに美しい・・・わがしもべには相応しいようだ」
にたりと笑みを浮かべる男。
その舌から唾液が滴り落ちる。
「ごめんこうむりますわ。名前も名乗れないような男とはね」
すっと手をかざす月子。
その手に手裏剣が手挟まれている。
「ほう・・・やる気か? 人間風情が・・・」
「魔物風情が偉そうですわね。怖いのかしら?」
クスリと笑みを浮かべる月子。
「よかろう・・・相手になってやる。我が名はヴォルコフ。ニコライ・ペトロ-ヴィッチ・ヴォルコフ。ロシア帝国皇帝陛下より伯爵の位を賜ったものだ」
男の姿が月明かりに照らされる。
黒いスーツを纏ったその姿は、確かに紳士と言っても過言ではない。
金髪と碧眼が異国人であることをまざまざと物語っていた。
「魔物風情が伯爵とは笑わせますわね。さすがに欧州は懐が広いと言うことでしょうか」
じりじりと距離を詰める月子。
ヴォルコフも爪を輝かせて月子と対峙する。
「ふん・・・いささか口が悪いが・・・しつければいい手駒になりそうだ・・・」
「ごめんですわ」
月子の手裏剣がきらめき、ヴォルコフの伸びた舌を切りつける。
「ぬうっ! まさか・・・」
血しぶきを上げて切り裂かれるヴォルコフの舌。
その血が飛び散り、寝ていた摩耶子にも降りかかる。
「くすっ、まさか切り裂けるはずが・・・ですか? 甘いですわね」
月子が微笑む。
「魔物相手は・・・慣れていますから」
「ちっ・・・やむを得ん」
窓を開けて飛び出すヴォルコフ。
「待ちなさい!」
続いて月子も飛び出していく。
あとにはただ風が入り込み・・・摩耶子は口元に飛び散っていた血を・・・舐めてしまっていた。
[ヴォルコフ伯爵]の続きを読む
- 2006/03/27(月) 22:40:41|
- 帝都奇譚
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こんばんはー。
ほんのちょっとですけどローネフェルトの投下です。
少しだけなんですが、許してくださいね。
あてがわれた部屋に入った私はノーマルスーツのファスナーを下ろして寝台に腰掛ける。
「ふう・・・」
どうやらしばらくはこの艦に厄介にならなければならないのかも・・・
アウリアでのことが頭をよぎる。
まだまだ未熟だった頃・・・
あれからたった半年ちょっとしか経っていないなんて信じられない・・・
「お姉さま」
「アヤメ?」
扉が開いてアヤメが入ってくる。
「!」
まだ艦内時間は19:00を過ぎたばかりだと言うのに、ノーマルスーツの胸元をはだけている。
「お姉さま・・・うふふ」
「アヤメ・・・ちょ・・・だめ・・・」
私が止める間もなくアヤメが抱きついてきて、唇を押し付けてくる。
「ん・・・あ・・・」
アヤメの舌が割り入って来る。
私はそっとアヤメを離した。
「あ・・・お姉さま・・・」
悲しそうなアヤメの顔。
私はこの時アヤメと楽しむ気にはなれなかった。
警報が鳴る。
『全乗員に通達! 全乗員に通達! 本艦は有力なる敵艦と遭遇せり。これより戦闘態勢に入る』
「アヤメ!」
私は跳ね起きる。
「はい! 大尉殿!」
アヤメもすぐにノーマルスーツのファスナーを上げ、戦闘準備に入る。
『全乗員に通達! これより五秒後に本艦は全力加速を十五秒行なう! ショックに備えよ!』
私とアヤメはすぐに背中を艦尾側の壁に貼り付ける。
巡洋艦の全力加速は最大3Gにもなる。
気をつけないと壁に叩きつけられてしまうのだ。
刹那、強い加速が躰にかかり、ブリュメルが加速したことを物語る。
「お姉さま、有力なる敵艦って・・・」
「おそらく連邦の巡洋艦隊ね。最低でも二隻」
私の言葉にアヤメの表情に複雑なものが浮かぶ。
そうか・・・
彼女は連邦の宇宙戦闘機乗り・・・
連邦の巡洋艦は僚友として頼りになる存在だったはず・・・
「アヤメ・・・」
そのとき艦に振動が走る。
ピピピピピ・・・
部屋に設置されたインターコムが鳴いている。
来たか・・・
私は重い躰を引き上げるようにしてインターコムに取り付いた。
「ローネフェルトです」
『マリー、お願い。敵を振り切れないの。出撃を頼めるかしら?』
苦境の表情のリーザ。
「了解。出撃するわ。でも・・・」
『さっき報告が入ったわ。YMS-11とMS-06FZの宇宙用セッティングは終了しているって』
「それじゃ・・・」
あのアクト・ザクが使えると言うの?
『好きに使ってちょうだい。あとは何とでもするから』
リーザがにやりと笑う。
「了解」
私はわくわくする気持ちを感じていた。
[敵艦接近]の続きを読む
- 2006/03/26(日) 22:27:11|
- ガンダムSS
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北海道という僻地でもやっていた深夜アニメ「パピヨンローゼ」が終わっちゃいました。
まさか全部で六話しかないとは思いもしなかった・・・
でも、オタク心をくすぐる楽しいアニメだった気がします。(笑)
スサノオ三姉妹がいい味だしていたなぁ。
一番末っ子のミキちゃん(鬼神将軍)が可愛かったなぁ。
また続きをやってくれないかなぁ。
「よみがえる空」も全12話みたいですね。
救助ものなので、長編は難しいでしょうが、短いなぁ。
もう少しやって欲しい。
面白いアニメなので楽しませていただきました。
[終わっちゃった・・・]の続きを読む
- 2006/03/25(土) 22:03:43|
- アニメ
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真珠湾攻撃によって米英との戦端を開いた大日本帝国は、緒戦に大戦果を上げました。
真珠湾での米軍戦艦隊、マレー沖海戦での英軍戦艦隊の撃滅は無敵日本艦隊のイメージを内外に与えます。
しかし、シンガポールが落ち、インドネシアが陥落したあとも、インド洋は英軍の東洋艦隊がまだ健在でした。
ソマーヴィル提督貴下の東洋艦隊は新鋭戦艦プリンス・オブ・ウェールズとレパルスを失ってはいたものの、空母インドミタブルとハーミズは無傷であり、旧式戦艦と高速巡洋艦を主力とした水上艦隊も侮りがたい戦力を保有しておりました。
日本海軍はインド洋の英国艦隊の駆逐を図るべく、インド洋作戦を展開します。
主力となるのは真珠湾攻撃より戻ってきた南雲機動部隊でした。
真珠湾攻撃の後で損傷した加賀を除く、赤城、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴の五隻の空母を中核とした南雲機動部隊は、向かうところ敵無しの無敵艦隊として、意気揚々とインド洋に出撃いたしました。
インド洋には英国東洋艦隊の拠点セイロン島のコロンボ軍港がありました。
南雲機動部隊は陸用爆弾を搭載した艦載機を発進させ、コロンボ軍港を攻撃します。
南雲長官は英軍の空母の襲撃を考え、艦載機の半数を魚雷や対艦爆弾装備で残しておきましたが、攻撃隊より攻撃が不十分との連絡を受け、対艦攻撃装備を陸用攻撃装備に変更します。
そのとき偵察機より報告が入り、英国の巡洋艦を発見との連絡を受けた南雲長官は、直ちに陸用攻撃装備を再び対艦攻撃装備に転換するように命じました。
息詰まるような転換作業は無事に終わり、南雲機動部隊の各艦からは攻撃機が無事に飛び立ちます。
彼らは発見した巡洋艦に対し、実に命中率88%と言う数値で一瞬にして轟沈します。
その後、小型空母ハーミズも撃沈し、英国東洋艦隊はかなりの痛手を受けました。
南雲機動部隊は赫々たる戦果を上げて帰還。
その後ミッドウェー攻略に参加します。
その後の南雲機動部隊の結果はご存知のことと思いますが、その結果の元となる行動がこのインド洋で行われていたと言うのは、敵艦発見の報告を届けたのが、利根の索敵機であるということもあり、因縁めいていると思うのは私だけでしょうか。
英国艦隊にわずかの運があれば、ミッドウェーの悲劇はインド洋で起こっていたかもしれないんですね。
それではまた。
- 2006/03/24(金) 22:36:00|
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当ブログにリンクしていただいております林田相丘様より、戦闘員バトンなるものを手渡されました。
戦闘員と言うものにはやはり思い入れがあるので、私もバトンを受け取り、質問に答えたいと思います。
と、言うことで、以下がその回答です。
【戦闘員バトン】
Question 1.パソコンまたは本棚に入っている『戦闘員』は?
講談社の仮面ライダーオフィシャルマガジンなどですね。
あとは自分のSSに時たま出てきたりします。
Question 2.今妄想している『戦闘員』は?
デライトシリーズで強化レオタードと網タイツの女戦闘員や、悪つくに出てきた蟻型女戦闘員などですね。
一般の女の子が戦闘員にされたりするのが萌えです。
Question 3.最初に出会った『戦闘員』は?
年齢が年齢ですから、まさに初代仮面ライダーの黒戦闘員ですね。
ベレー帽戦闘員はまだ見ていなかったです。
Question 4.特別な思い入れのある『戦闘員』は?
やはり仮面ライダーの女戦闘員でしょうか。
レオタードと言う名称を知らなかった当時ですが、あの衣装には惹かれたものです。
Question 5.最後にバトンを回したい5人
うーん・・・
すでに林田さんが指名されていますからねぇ。
空風鈴様、姫宮 翼様、漆黒の戦乙女様、沙弥香様、Enne様
この方々にお願いしましょうか。
もちろん、拒否していただいて結構ですので。
回答は当ブログのコメント欄でも結構ですよ。ww
[戦闘員バトン]の続きを読む
- 2006/03/23(木) 21:59:58|
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第六軍は最初防衛線の崩壊をそれほど深刻なものとは考えていませんでした。
司令部を移動中だったこともあり、途切れ途切れの情報しか入らなかったため、ソ連軍の反撃がそれほど大規模なものとは思えなかったんですね。
しかし、刻一刻と状況が判明してくるにしたがって、容易ならざる事態が発生したことがわかり始めてきたのです。
第六軍司令官パウルス上級大将は、とりあえずは現状を維持するが、危機的状況になった場合は行動の自由を許可願いたいと打電しますが、ヒトラーによって拒否されます。
「第六軍は現地を固守せよ」とのヒトラーの命令が届いた時、ソ連軍の部隊は両翼を突破し、ついに合流を果たしておりました。
第六軍は包囲されてしまったのです。
「我々には充分な物資がないため、現状維持は困難である」との電報を第六軍は発しますが、「必要な物資は空輸で補給する」とヒトラーは返電します。
ヒトラーはゲーリング空軍司令官に空輸での第六軍の補給は可能かどうか尋ねましたが、ゲーリングはろくな研究もせずに可能であると言い切ります。
そのためドイツ空軍は輸送機はおろか爆撃機まで動員して第六軍への補給を行なうことになりますが、猛烈な対空砲火や天候などの悪条件により、第六軍の必要な物資を空輸することはできませんでした。
一方、包囲された第六軍救出のために、マンシュタイン元帥が呼ばれ、救出部隊を編成します。
マンシュタインは全力を挙げて第六軍の救出に取り掛かりますが、やはり兵力不足とソ連軍の圧倒的戦力により、救出部隊の前進は阻まれてしまいます。
マンシュタインは、包囲されている第六軍側も全力で現地を撤退し、救出部隊へ向かって進軍してくれるように要請しますが、ヒトラーの命令がある以上現地を離れるわけにはいかないとパウルスは拒否します。
もちろんヒトラーは死守命令を出しており、第六軍がスターリングラードを離れることは断固拒否します。
結局第六軍はスターリングラードを離れることはなく、救出部隊が力尽きるとともに、第六軍の救出は不可能となりました。
ソ連軍はじょじょに包囲を縮めていき、わずかながらでも空輸が行なわれていた飛行場もソ連軍に奪われて万事休します。
食料も弾薬も燃料も無くなった第六軍はついに力尽き、1943年1月31日、パウルスはついに降伏します。
2月2日には包囲内の全てのドイツ軍が降伏し、これによって第六軍は壊滅しました。
捕虜になったドイツ軍人は約10万人。
そのうち戦後に解放され、ドイツに帰ってきたのは、わずか6千人ぐらいだったと言うことです。
[第六軍の最後]の続きを読む
- 2006/03/22(水) 22:30:14|
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今日は久し振りにホーリードールの投下をしますね。
久々なので、ちょっとだけですが、楽しんでいただければ幸いです。
9、
「あれ?」
自宅へ帰ってきた紗希は、七時近いにもかかわらず明かりがついていないことに気が付いた。
「お母さん、まだ帰ってきていないんだ・・・」
ちょっと心配になる紗希。
留理香はいつも六時半ぐらいには自宅に着いている。
会社の残業などはほとんど無かったのだ。
「どうしたのかな・・・まあ、遅くなったことを怒られなくてよかったけど」
ペロッと舌を出し、いたずらっぽく笑う紗希。
そのまま玄関へ行き鍵を開ける。
「ただいまぁ」
そう言って靴を脱ぎ、居間に入って行く。
室内はしーんとしており、ちょっと寂しい。
いつものことだけど、今日は暗くなってしまっているので、余計に寂しく感じるのかもしれない。
「えへへ、ちょっと寂しいよね」
紗希は灯りをつけて、テレビをつける。
すぐに景気のいいCMの音が室内にあふれてきた。
これで少しは寂しさがまぎれると言うもの。
紗希は二階へ上がって自分の部屋に鞄を置くと、再び下へ降りてくる。
今日はおやつを食べていないので、ちょっとお腹が空いている。
「う~・・・今何か食べちゃったら、晩御飯入らなくなっちゃうよね・・・」
冷蔵庫の前で立ち止まり、逡巡してしまう紗希。
「う~・・・我慢我慢」
首を振って流し台に向かう紗希。
「洗い物は残っていないし・・・メモも無いか・・・」
留理香は基本的に出かける前に家事を済ませて行く。
何かしておいて欲しいことがある時にはメモを残してあるはずなのだ。
「今晩は何をするつもりなのかなぁ・・・」
結局冷蔵庫を開けて中を覗きこむ紗希。
幾つもの食材が整然と並べられて、留理香の几帳面さがうかがえた。
「うーん・・・わかんないや」
冷蔵庫を閉めて居間に戻る紗希。
ソファに座ってテレビを見る。
テレビでは夕方に起こった奇妙な生き物によるバス襲撃事件が放映されていた。
ファッションビルの入り口から現われる三人の女。
その姿は生まれ変わる以前の姿となんら変わることは無い。
シックなブラウンのスーツに身を包んだ荒蒔留理香と、パステルグリーンのスーツの上坂美野里、それに白のブラウスとチェックのスカートを身につけた小鳥遊雪菜の三人である。
「うふふふ・・・いいわね、レディベータ。次はあなたの力を見せて御覧なさい」
「はい、デスルリカ様。お任せ下さいませ」
にこやかに微笑む雪菜。
だがその笑みは昼に紗希や明日美に見せた笑顔ではなかった。
「うふふ・・・期待しているわよ、ベータ」
「ありがとうございます、アルファ様」
美野里が雪菜の躰をそっと抱く。
雪菜は甘えるように躰を寄せた。
「レディアルファ、あなたは確か一人暮らしね? 次の指示があるまで普段通りにしていなさい」
「はい、デスルリカ様」
美野里がうなずく。
「いいこと、二人とも。光の手駒が現れたからにはそれの排除が必要だわ。くれぐれも単独で狙われないようにね。もっとも、あなたたちの闇の力は強力ですから、心配はいらないと思うけど、気をつけるに越したことはないわ」
「わかりました、デスルリカ様」
「ご心配にはおよびません」
二人の可愛いしもべたちを見て留理香も微笑む。
この娘達ならば充分に闇の力を発揮してくれるだろう・・・
あとは・・・
「うふふ・・・さて、帰りましょうか」
「「はい、デスルリカ様」」
三人は笑みを浮かべ、それぞれの方向へ帰っていった。
スーパーの買い物袋を提げて帰ってくる留理香。
「遅くなったわ。きっと紗希はお腹空かせているわね」
紗希のことを考えるとつい笑みがこぼれるのは仕方が無い。
我が娘ながら夫の影響を受けたのか、運動神経はかなりいいほうだろう。
もっとも、その分燃費が悪いのか、紗希はご飯をよく食べる。
育ち盛りの子供だから当然だし、美味しく食事をしてくれる紗希は料理の作り甲斐もある。
今日はどんな笑顔で食べてくれるかと思うと、自然と顔がほころぶのだ。
「ただいま」
玄関をくぐる留理香。
「お帰りなさーい」
すぐに居間から紗希が顔を出してくる。
「遅くなってごめんね。ちょっと新しい仕事ができたものだから」
そう・・・世界を闇に染めるという大事な仕事が・・・
「ううん、大丈夫だよ。でも、お腹空いちゃったよー」
「うふふふ、待っててね。すぐに用意するから」
留理香は靴を脱ぐと、肌色のストッキングに包まれた綺麗な足を台所へ運んで行く。
「お母さん、手伝うよ。今日はなに作るの?」
「ありがとう・・・そうね・・・ハンバーグとも思ったんだけど、オムレツなんかどう?」
買い物袋からひき肉と卵を取り出す留理香。
「あ、オムレツいいな。そうしようよ、お母さん」
紗希もにこやかな笑みでたまねぎを取り出し、水洗いを始める。
二人はいつものように仲良く晩御飯の準備を始めるのだった。
夜の闇が心地よい。
街のネオンの明かりが邪魔だったが、それもいずれは駆逐されるだろう。
「はあ・・・」
雪菜は胸に手を当てる。
闇の力を得て生まれ変わった自分。
それはなんて素晴らしいことなのだろう・・・
「デスルリカ様のおかげ・・・」
妖しい笑みが浮かぶ。
「ちょっと、そこのあなた」
呼びかけられた雪菜の顔が一瞬にして曇る。
せっかく気分よく歩いていると言うのに、どうしてこの下等な生き物どもは無粋なのだろう・・・
「やっぱり私たちが支配するべきなのよね」
「えっ?」
振り向いた雪菜の目に近づいてきた女性警察官が映る。
「もう八時近いのよ。こんなところで一人で何をしているの? 塾の帰り?」
にこやかに目線を合わせるべくしゃがみこむ女性警察官。
明るい栗色の髪の優しそうな女性警察官だ。
「ふうーん・・・うふふ・・・優しそうな人。あなたはどんな闇を持っているのかしらね」
「闇? 何を言っているのあなた?」
ちょっといぶかしげにする女性警官。
その不思議そうな表情をよそに、雪菜は妖しい笑みを浮かべる。
「うふふふ・・・」
突然雪菜の周りに闇がわだかまり始める。
「えっ? 何?」
驚く女性警官。
見る見るうちに闇は雪菜の躰を覆い、やがてその中から漆黒の衣装を纏った少女が現れる。
「え、ええっ?」
思わずあとずさる女性警官。
闇の中から現れたのは肩までの黒髪にカチューシャを嵌め、柔らかなボディラインをあらわにした黒いレオタードを着た少女だったのだ。
大人びた黒い手袋にロングブーツを履いていて、先ほどの少女とはまるで別人である。
「あ、あああ・・・」
思わずその発する気配に気圧される女性警官。
ぺたんと尻餅をついてしまい、スカートの中の下着とパンストのセンターシームが見えてしまう。
「うふふふ・・・あなたの中の闇を見せてもらうわ」
ゆっくりと近づくレディベータ。
「あ、あなたは一体?」
後ずさりながら青ざめた顔でレディベータの顔を見つめている。
「ふふ・・・私は闇の女レディベータ」
「レディベータ?」
「そう。私はレディベータ。あなたの闇を引き出してあげるわ」
レディベータはそう言って女性警官の頭を両手でガシッと押さえ込む。
「ヒッ! い、いやぁっ! 助けて松川さーん!」
必死で同僚の名を呼ぶ女性警官。
だが、近くのミニパトで待機している同僚は来てくれる様子がない。
「くすくす・・・無駄よ。私がすでに結界を張ったの。ここには誰も近寄れないわ」
「あ、あああ・・・」
恐怖の表情でレディベータを見上げる女性警官に、そっと口づけをするレディベータ。
「む、むぐ・・・」
レディベータの舌が女性警官の舌に絡まり、甘い液体が流れ込んでくる。
「あ、あぐ・・・」
「うふふふふ・・・」
唇を離すレディベータ。
どろっとした黒い液体がつと糸を引いた。
「美味しーい」
出来たてのオムレツを頬張る紗希。
その表情は幸せそのものだ。
ひき肉とみじん切りの野菜の甘さが卵に包まれて美味しいハーモニーを奏でている。
紗希は本気で母親の料理は世界一だと思う。
こんな美味しい料理は他には無い。
もっとも、この点については明日美とは意見を異にしてしまう。
明日美に言わせると世界一の料理は明日美のお母さんだそうなのだ。
そりゃあ、明日美ちゃんのお母さんのお料理は美味しいけど・・・
うちのお母さんの方が一番だよね・・・
紗希は思わず笑みが浮かぶ。
その様子を見ている留理香にも笑みが浮かんだ。
たっぷり食べなさい、紗希・・・
もうすぐこの世界は闇に閉ざされるわ・・・
その時にはあなたは私のそばで闇の女として生まれ変わるのよ・・・
私があなたを飛び切りの闇の女にしてあげるわ・・・
一緒にご主人様にお仕えしましょうね・・・
留理香はパクパクと食べている紗希の顔を見つめている。
「ん? お母さん、見つめられるとなんか食べづらいよ」
紗希が少し赤くなる。
思わず照れてしまったのだ。
「うふふ・・・ごめんなさい。紗希が闇の女になるのが楽しみだから・・・」
「えっ? 何のこと?」
「あ、なんでもないわ。気にしなくていいのよ」
留理香は自分の分を台所に取りに行く。
そういえば・・・
レディベータが光の手駒は紗希と明日美ちゃんに似ているって言っていたわね・・・
まさか・・・ね・・・
留理香は考えを振り払った。
[美味しいオムレツ]の続きを読む
- 2006/03/21(火) 21:22:31|
- ホーリードール
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「帝都奇譚」の続きを投下します。
前回の選択肢については、以下の通りになりました。
1、やっぱり怪しげなところに向かっている灯。・・・0票
2、一刻も早く魔物化してほしい摩耶子。・・・4票
3、女学院での暗躍に期待の桜。・・・0票
4、ここは搦め手でいくということで美月。・・・1票
5、大穴狙いで破妖月子。・・・1票
以上でした。
投票してくださった方々、どうもありがとうございました。
ということで、摩耶子を襲わせてもらうつもりなんですが、灯のシーンを終わらせたいので、本日は灯のシーンを投下します。
摩耶子襲撃はもう少し待ってくださいませ。
6、
「おおっと、足元に気をつけて」
ふらつく足取りの雛華を抱くようにカフェーから出てくる三倉。
「あ・・・ふう・・・」
心ここにあらずといった感じで三倉に寄りかかる雛華。
「おっとと・・・」
三倉は通りを行きかう人力車を呼びとめ、雛華を乗せて隣に座る。
「ふふふ・・・またお付き合いいただけますね?」
「・・・・・・」
三倉の言葉にこくんとうなずく雛華。
その様子はエキスを吸われてしまった衰弱だけとは思えず、三倉はちょっと不思議に思う。
「おや、ずいぶんと素直ではないですか」
「ああ・・・そ、そんなこと・・・」
顔をそむける雛華。
「まあ、いいでしょう。またあなたのエキスをいただきますよ。クックック・・・」
三倉の顔に不気味な笑みが浮かんだ。
「えーと・・・確かこのあたりなのよね」
潮の香りがする港の倉庫街をうろつく小鳥遊灯。
活動的な洋装を身につけた彼女はズボンと上着といういでたちだ。
街灯もなくなるこのあたりは、夜の闇が色濃く感じられた。
「うう・・・不気味だなぁ・・・」
灯はそうつぶやく、背筋を震わせる。
人影はこのあたりまで来るとまったく無く、表通りの喧騒もこの時間になるとほとんど聞こえてこない。
「まあ、今日出てくるとは限らないんだけど・・・」
なかば出てこないことを期待しつつ、灯は倉庫街を歩いていく。
東京湾を行きかう船の汽笛が物悲しげに鳴っていた。
「ヒッ!」
小さな悲鳴が灯の耳に聞こえる。
「えっ?」
その声は倉庫街の闇の奥から聞こえたようだった。
「だ、誰かいるの?」
灯はついそう声をかけてしまう。
だが、返事がかえってくるわけでもない。
「い、行ってみなくちゃ・・・」
灯はちょっとした恐怖を感じながらも、持ち前の記者精神で現場に向かう。
倉庫の影から悲鳴がしたと思われるあたりを覗き見る。
三日月の月明かりが差し込むだけの裏通りはほとんど見通しが利かない。
「あれは?」
灯の視線の先には二人の人影があった。
男が二人。
羽織袴の書生風の若い男と、港湾労働者風のがっしりした男。
驚いたことに二人の男は抱き合っていた。
まるで男と女が抱き合うように・・・
灯は息を飲む。
男同士が抱き合うなんて、どういうことなんだろう。
だが、そのがっしりした男は何かもがいているようだった。
もう少し明かりがあれば・・・
灯はそう思うが、手近なところには燭台もカンテラも無い。
「ぐ、ぐぐぐ・・・」
なにやらくぐもった声がする。
闇に目が慣れてきた灯はその二人の様子がじょじょにわかってきた。
「あ、ああ・・・」
灯の口が開いていく。
書生風の男はもう一人の男に口付けをしていた。
いや、口付けではない。
口から何かが出て、もう一人の口に入り込んでいるのだ。
な、何なの?
あれは何なの?
灯は足が震えてくる。
悲鳴を上げたかったが、それをしてしまったら最後のような気がして、悲鳴を上げることはできなかった。
やがて、陽炎のようなものが立ち昇り、港湾労働者風の男がぐったりとなって行く。
「あ・・・がが・・・」
書生風の男ののどが脈動するたびに、もう一人は縮んで行くかのように萎びていく。
「あああ・・・」
灯の目の前で男は見る見るうちにミイラのように干からびていった。
躰中の水分を抜かれたようなその男は、ぼろきれのように放り投げられて地面に横たわる。
「イヤーッ!」
書生風の男が灯の方を見たとき、灯はたまらずに悲鳴を上げていた。
その顔が青白く、まるで生きて歩く死人のように思えたのだ。
逃げなくちゃ・・・
逃げなくちゃ・・・
灯は必死になってその場から離れようとする。
足はガクガクし、まるで根が生えてしまったかのように動けない。
書生風の男は灯を見つけるとにたりと笑う。
その目は赤く、人の物とは思えない。
「あ、ああ・・・た、助けて・・・」
灯は動けなかった。
振り向けば、その瞬間に死が待ち構えていそうで振り向くことができなかった。
「シャーッ!」
不気味なうなり声を上げる男。
その青白い顔はまさに歩く死人。
目だけがぎらぎらと赤く輝いているその様子は、すでにこの世のものではない存在を思わせた。
「イヤーッ!」
灯の悲鳴がむなしく響いた。
「こんな時間までどこをほっつき歩いていたんだ!」
屋敷の玄関の明かりがつき、当主である白鳳幸一が出迎える。
仕方なかったのよ・・・
全てはあなたを護るためなのに・・・
雛華は幸一の叱責を理不尽に思う。
今までの雛華なら決して抱かなかったような思い。
夫である幸一に従い、良き妻であろうとしてきた雛華。
でも、特高警察が二人を引き裂こうとしているというのに・・・
どうしてこの男は平気な顔をしているのかしら・・・
「申し訳ありません、あなた。警視庁の方々と打ち合わせが長引いてしまって・・・」
「警視庁にも困ったものだな。私の妻をいいように使ってくれる。今度父上を通じて一言言ってやらなければならんな」
腕組みをしたまま雛華を見つめている幸一。
「まあいい、入りなさい」
「はい、あなた」
雛華は靴を脱ぎあがりこむ。
「食事はおヨネさんが作ってくれたが、食べたのか?」
「あ、はい。いただきました」
「ふん、外食とはいい身分だな。明日は教壇に立てるのだろうな?」
「・・・・・・はい」
うつむきながら幸一の後についていく雛華。
なぜかいつものことなのに、雛華の神経はささくれ立った。
私はどうしてこんな男のそばにいるのだろう・・・
私は何をしているのだろう・・・
「どうした?」
「あ、いえ、別に・・・」
「あまり顔色がよくないな・・・今日はもう寝なさい」
「はい、それではお休みなさい」
雛華はホッとした思いで幸一の元を離れる。
今はとにかくゆっくりと眠りたかった。
「ふう・・・」
鞄の中身を確かめてベッドに寝転がる摩耶子。
その首元には先ほど破妖月子という女性からもらったお守り袋がぶら下がっていた。
「お守り・・・か・・・」
パジャマに着替えて布団にもぐりこむ摩耶子。
明日も女学院がある。
摩耶子にとって女学院は楽しい場所だ。
桜もいるし、学友がたくさんいる。
摩耶子は明日の楽しい女学院生活を夢見て眠りについた。
「クククク・・・」
吹きすさぶ風の中、忍び笑いが聞こえる。
カーテンが閉まる前、摩耶子の部屋の中はそこからはよく見えた。
足元のおぼつかない教会の尖塔の上に笑い声の主は立っていた。
「ようやく見つけたぞ・・・黒き血の持ち主よ・・・」
その言葉は風にかき消されていった。
「そこで何をしている!」
懐中電灯の明かりが闇を切り裂く。
その明かりに書生風の男は一瞬たじろいだ。
「た、助けて・・・」
灯はその明かりの方に振り向いた。
懐中電灯の明かりが直接向かってきてその持ち主が何者なのかはわからない。
だが、目の前のこのよくわからない存在よりはよほどましであろう。
「キシャーッ!」
新たに現れた存在に対し、敵意をむき出しにする書生風の男。
爪をむき出しにし、まるで動物のような振る舞いだ。
「な、なんだ、貴様は」
一瞬うろたえたような声。
「気をつけて。その人は異常よ!」
灯の言葉に反応したのか、書生風の男は懐中電灯の方へ向かって飛び掛る。
「うわぁっ!」
懐中電灯の明かりが逸れる。
「速い!」
灯は目を見張った。
書生風の男は一瞬屈んだかと思うと、信じられない跳躍で懐中電灯を持つ男へ向かって飛び掛っていったのだ。
「ぐわぁっ!」
懐中電灯が地面に転がる。
その明かりが周囲の壁に反射してうっすらと明るくなる。
「イヤァーッ!」
薄明かりの中で灯が見たものは、喉首を食いちぎられて血しぶきを上げている巡査の姿だった。
「誰かー! 誰か来てー!」
必死になって叫ぶ灯。
巡査ののど笛を食い破った男は、血にまみれた口でにたりと笑うと、死体を放り投げる。
そして、再び灯の方に向き直った。
「あ・・・あは・・・あははは・・・」
笑いがでる。
おかしくなんか無いのに・・・
笑いたくなんか無いのに・・・
「あはははははは・・・」
涙が出る。
灯は笑いながら泣いている。
死にたくない。
死にたくないよぅ・・・
銃声が響く。
書生風の男の右肩に風穴が開く。
仰け反る男。
だが、まるで痛みなど感じないかのようににたりと笑い体を起こす。
「化け物め!」
再び銃声が響く。
灯が振り向くと、一人の軍服を着た男が拳銃を持って立っていた。
「陸軍の兵隊さん?」
助かった・・・
灯は思わずへたり込む。
「バカ! 腰を抜かす奴があるか! 逃げるんだ!」
陸軍のカーキ色の軍服が怒鳴る。
でも・・・そんなこと言ったって・・・
「キシャーッ!」
「この野郎っ!」
三度銃声が響き、書生風の男は頭を撃ち抜かれる。
「グギャッ」
飛び掛ろうとした体勢を崩し、その場に崩れる男。
ピクピクと躰を痙攣させるが、やがて動かなくなる。
「曹長殿、今の銃声は?」
二人の帝国陸軍兵士が懐中電灯を持ってやって来る。
「魔物の一匹だ。ガソリンを持って来い」
「ハッ! 了解しました!」
兵士たちは敬礼するとすぐさま駆け出した。
灯はようやく人心地付いたように立ち上がる。
「死んだんですか?」
動かなくなった男にそっと近づく灯。
このあたりは記者精神がなせるものだ。
「いや、死んではいない。動かなくなっただけだ。もっとも、すでに死んでいるとも言えるのだがな」
「死んではいない?」
思わず後ずさる灯。
「こいつは帝都に巣くう魔物だ。燃やしてやらなければまた動き出す」
「また動く?」
驚く灯。
頭部に銃弾を受けてまた動き出すなんて信じられない。
だけど、この兵隊さんはさも当たり前のように言ってのける。
「それにしても、君は何でこんなところにいたんだ?」
彼は拳銃を相変わらず魔物に向けたまま灯の方をチラッと見る。
「あ、その・・・私は帝都毎朝新報の記者で、小鳥遊灯といいます。ここのところ帝都を騒がせている夜歩く死体の噂について調べておりました」
灯は素直にこの軍人にはしゃべることにした。
助けてもらった礼もあるし、何より、この兵隊さんの腕に「憲兵」の腕章が巻かれていたからだ。
憲兵なんだ・・・この人・・・
陸軍の兵隊さんがそばにいるというのは心強いが、憲兵となるとちょっと居住まいが悪く感じる。
「新聞記者? あなたが?」
「ムッ、いけませんか?」
灯はちょっとむっとして、社員証を提示する。
「いや、失礼した。自分は帝国陸軍東京憲兵隊所属の入生田朝春(いいだ ともはる)憲兵曹長です」
「入生田さん・・・ですか」
灯はぺこりと頭を下げた。
そろそろ三十代にさしかかろうかという感じの入生田曹長は、人懐こい笑みを浮かべて灯にうなずく。
「曹長殿、お待たせしました」
二人の憲兵がガソリンの入った容器を携えてくる。
「うむ、そいつにかけて燃やせ」
「ハッ」
入生田曹長の命令に一人がガソリンをかけ、もう一人がマッチを用意する。
「下がっていなさい」
「はい」
灯はそっと後ろに下がり、動かない魔物の様子を窺う。
「点けます」
「うむ」
兵士がマッチをすり、火のついたマッチを魔物に放る。
たちまち火炎に包まれる魔物。
パチパチと音を立て燃え上がる。
「射撃用意!」
「ハッ!」
入生田曹長の号令に、二人の憲兵も拳銃を構える。
燃え盛る魔物は何事も起こらないかに見えた。
だが、魔物の躰がビクッと跳ねたかと思うと、ゆっくりと立ち上がろうとし始めたのだ。
「ヒッ!」
灯はすぐに入生田曹長の後ろに隠れこむ。
「撃て!」
三人の拳銃が火を噴く。
ビシビシッと音を立てて銃弾が魔物にめり込んで行く。
「グオォォォゥゥワァァ・・・」
立ち上がりかけた魔物は再びその場に倒れこんだ。
「射撃止め!」
入生田曹長は二人の部下の発砲を止めさせ、つかつかと魔物に近づいていく。
恐る恐る見ていた灯の目前で、入生田曹長は魔物の頭部に一発銃弾を撃ちこんだ。
「これでよし。後は燃え尽きるのを待つだけだ」
「何なんですか・・・これは・・・」
戻ってきた入生田曹長に灯は再び尋ねる。
今見たことなのに、信じることができないのだ。
「言ったでしょう、魔物だと。それにあなた自身歩く死体を捜していたんでしょう?」
「まさか・・・本当にいたなんて・・・」
灯は燃え尽きて行く魔物の姿を見つめていた。
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- 2006/03/20(月) 22:12:40|
- 帝都奇譚
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久々にローネフェルトのSSを投下します。
あまり時間が無かったので、ちょっとだけですけど。
お楽しみいただければ幸いです。
「アマリア・ローネフェルト、入ります」
私はブリュメルの艦長室にやってきていた。
『どうぞー』
明るい声が私を向かえる。
艦長となってもこの明るい声は士官学校時代と同じだわ。
「失礼します」
私はドアを開けて艦長室に入り込む。
「いらっしゃい。よく無事に宇宙へ上げってこられたわね」
デスクの向こうからにこやかな笑みを浮かべてリーザが出迎えた。
私は一応きちんと敬礼して筋を通す。
「ありがとうございます、艦長」
「堅苦しい挨拶は抜きよ。一杯いかが?」
デスクの脇にある冷蔵庫からチューブを取り出すリーザ。
中身はきっとお酒でしょうね。
私は放り投げられたチューブを受け取ると、口をねじる。
「とりあえず今の無事を祝って乾杯」
「乾杯」
私は冷えたワインを喉に流し込む。
無重力はすぐに酔いがまわるから、ほどほどにしなくては・・・
「ふう・・・」
「美味し・・・」
私たちは思わず顔を見合わせてしまう。
「それにしてもよく無事で・・・」
リーザの笑みが私には嬉しい。
「いろいろあったけどね」
それは本当のこと。
私はみんなのおかげでここにいる。
それは忘れてはいない。
「ところであなたさえ良ければこの艦に残って欲しいんだけど」
「えっ?」
私は驚いた。
次の配置はまだ決まっていないけれど、おそらくソロモンに配置されるものと思っていたのだ。
「でも、この艦には固有のモビルスーツ隊が・・・」
「この艦はね、就役したばかりなのよ」
ワインのチューブを再び口にするリーザ
「慣熟訓練の最中に、軌道の設定が一番早いという理由でHLVの回収をさせられたわけ」
「訓練中に?」
私は驚いた。
確かに艦内には若い連中が多く、中には学生と思われる者がいたのは知っていたけど、就役したばかりとは思わなかった。
「おかげで正規のモビルスーツ隊はまだ乗せていないのよ。モビルスーツの数も少ないしね」
「そうだったの・・・」
「マリーがこの艦のモビルスーツ隊を指揮してくれるなら、これほど心強いことは無いんだけど」
リーザが微笑む。
この微笑みに弱いのよね。
私は思わず苦笑した。
「私はかまわないんだけど・・・司令部が許可してくれるかしら・・・」
「それは私の根回し次第ね。とりあえずマリー自身の答えを聞いておきたいわ」
「私は構わないわ。リーザの艦にいられるなら嬉しいもの」
それは本当のこと。
宇宙で生死を賭けるのなら、気心の知れた者が背後に控えていてくれる方がいい。
「ありがとう。今この艦は軌道を外れて会合点へ向かっているわ」
「会合点?」
「ええ、補給艦との会合を行なうの。そこで補給を受けた本艦はそのままソロモン空域のパトロールに入るわ」
リーザの顔が曇る。
「まさか? そのまま?」
慣熟訓練中の艦艇をそのままパトロールに配備するなんて聞いたことがない。
「連邦軍の宇宙での反攻が近づいているのよ。各艦艇は補助艦艇や特設艦艇まで前線に貼り付けられているわ。訓練未了とは言えブリュメルは巡洋艦なのよ」
つまり、一隻も無駄にはできないのだ。
どんな船でもいいからかき集めて、連邦軍の前に放り出す。
それで敵の侵攻が少しでも遅れれば、その間に本国は防備を整えるというわけか・・・
「本来なら本艦は補給艦からモビルスーツ隊を受け取る手はずになっているわ。でも、私は順調に受け取れるとは思っていない」
リーザの言葉に私もうなずく。
地上での状況から考えて、宇宙の状況が以前と変わりないとは思えない。
MS-09Rリックドムが配備されているというけど、各艦艇が全て装備できるとは思えないものね。
「幸い、今回HLVで上がってきたモビルスーツは、ほんのちょっとの改修で宇宙での使用に問題が無い機種ばかり。私はこれを補給艦に渡さないつもりよ」
「でも、それは命令違反では?」
「ええ、額面どおりならね。でも、あなた方の乗ってきたHLVは打ち上げ時に損傷を受けていた。損傷が激しいモビルスーツは破棄したといえば、確認は難しいでしょうね」
リーザが笑みを浮かべる。
まあ、蛇の道は蛇。
補給艦側でもあえて問い詰めることも無いかもしれないわね。
『艦長、ブリッジへお願いします』
艦長室のスピーカーから声が流れる。
「艦長です。今行きます」
ローザはそう言うとワインのチューブをダストボックスへ入れる。
「補給艦とのランデブーまではまだ10時間以上もあるわ。それまではゆっくりしていて」
「ええ、そうさせていただくわ」
私はうなずくと、リーザとともに部屋を出た。
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- 2006/03/19(日) 22:13:16|
- ガンダムSS
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スターリングラードの占領を目論みながらも、完全占領を果たしきれない第六軍はそのもてる全力をスターリングラードの市街地につぎ込みます。
スターリングラードに突出したドイツ軍はその側面を長々と晒すことになってしまいました。
もちろんドイツ軍とて側面の防備を怠ろうとしていたわけではありませんでしたが、兵力不足がその防備を満足にさせてはくれませんでした。
ソ連の大河ドン川を天然の防壁とすれば、兵力不足は補えると考えたドイツ軍は、ドン川に沿って薄い防衛線を敷いていました。
ドン川に沿ってドイツ軍の側面を護っていたのは同盟国軍であるルーマニア軍でした。
スターリングラードを頂点にドン川沿いにルーマニア第三軍、もう一方のヴォルガ川沿いにルーマニア第四軍が配置され、第六軍の側面を担当していたのです。
ルーマニア軍は士気こそ旺盛でしたが、ドイツ軍のように装備が整った軍隊ではありませんでした。
ごくわずかの対戦車砲を持つだけの純粋な歩兵師団が主力だったのです。
ドイツ軍でもその脆弱さは危険視されておりました。
しかし、兵力不足がその危険に目をつぶらせてしまったのです。
ドイツ軍がとった手段は、わずかの予備兵力を穴埋め用としてルーマニア軍の後方に置いておくことだけでした。
ドイツ軍の情報部はソ連軍が反撃を企てていることをまったく察知できませんでした。
ソ連軍の兵力は枯渇し、反撃の余裕などまったく無いと思われていたのです。
ところがソ連軍は着々と兵力を増強していました。
スターリングラードの市街戦に兵士を投入しながらも、さらに反撃の兵力を用意している。
その人的資源の豊富さは脅威ですらありました。
1942年11月19日。
ジューコフ将軍は「天王星」作戦を発動しました。
大小各種3500門を数える砲が、あらかじめ照準を合わせてあったルーマニア軍陣地を砲撃。
ルーマニア軍の陣地は一瞬にして崩壊。
ルーマニア軍の兵士は果敢に反撃を行ないますが、続いてなだれ込んできたT-34を主力とした戦車部隊と、それに付随する白い迷彩服の歩兵の大群がルーマニア軍を蹴散らしました。
わずかの時間でルーマニア軍の防衛線は崩壊したのです。
ルーマニア第三軍の崩壊を知ったドイツ第四十八装甲軍団は直ちに反撃を決意。
指揮下の部隊に出撃を命じます。
しかし、第四十八装甲軍団は装甲軍団とは名ばかりでした。
中心となる戦力は第二十二装甲師団しかなく、しかもその第二十二装甲師団さえもが、一個連隊を引き抜かれておりました。
しかも、想像を絶する事態がこの第二十二装甲師団には起こっておりました。
装備している百四両の戦車の、実に七十両近くが行動不能だったのです。
燃料が無かったわけでも、弾薬が無かったわけでも、搭乗する戦車兵がいなかったわけでもありません。
原因はネズミでした。
冬季の寒さで戦車が動けなくなるのを防いだり、カモフラージュのために、各戦車には藁がかぶせてありました。
その藁のぬくもりに惹かれて、大量のネズミがその藁にもぐりこんでいたのです。
ネズミは永久に伸びる歯を削るためにいろいろなものを齧ります。
ドイツ軍の各戦車はエンジン部分の配線を齧られてしまい、まったく動くことができなかったのです。
わずかに残った行動可能な戦車では、怒涛のごときソ連軍を食い止めることはできませんでした。
防衛線は完全に破られたのでした。
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- 2006/03/18(土) 22:15:17|
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当初、ドイツ軍の進撃は順調に進みました。
「A軍集団」に属する第四装甲軍と第六軍は迎え撃つ(というより時間稼ぎ)のソ連第五十七軍・第六十二軍・第六十四軍の三個軍を押し捲り、その戦力をスターリングラード近郊にまで押し込みます。
後が無いソ連軍はとにかく手持ちの兵をかき集めてスターリングラードに向かわせました。
ハリウッド映画「スターリングラード」の冒頭シーンでもあったように、丸腰の兵をとにかくかき集めたのです。
しかし、ドイツ軍の空陸一体の攻撃はとどまるところを知らず、ソ連軍はついにスターリングラード市街地に押し込められてしまいました。
おそらくドイツ軍将兵の誰もがスターリングラードの陥落は時間の問題と捉えたことでしょう。
しかし、ここからソ連軍は驚異的な粘りを発揮します。
党の偉大な(?)指導者「スターリン」の名を冠したこの都市が陥落することは、ソ連の威信の上からも赦されることではありませんでした。
また、ロシア人にとっては母なるヴォルガ川を失うことは、国民の士気の面からも、赦されなかったのです。
ソ連第六十二軍はスターリングラードを死守するしかなくなってしまいました。
彼らはヴォルガ川を越えて撤退することは赦されませんでした。
ヴォルガ川の河川交通もドイツ軍の攻撃で滞りがちになる中、乏しい補給に苦しみながら抵抗を続ける第六十二軍でしたが、戦局利あらず、ついに市街地の九割を失い、残るは渡船場とわずかな市街地のみにまで追い詰められました。
ところが、ドイツ軍の攻勢もここで力尽きることになります。
「市街地と森は兵を飲み込む」との戦場のことわざどおりに、スターリングラードの市街地はドイツ歩兵を飲み込み続けました。
砲爆撃で崩れた建物は、崩れる前よりいっそう手強い防御拠点となり、あちこちから出没するソ連軍歩兵によって、ドイツ軍歩兵は確実にその数を減らし続けていったのです。
あるときは排気ダクトから、あるときは下水道から、あるときは工場の壊れた機械の中から射撃を受け、ドイツ軍兵士の命が奪われていったのです。
もちろんそれ以上に、スターリンと党中央部の冷酷な戦争指導により、こちらが攻撃をしている間は敵を釘付けにできるということで、幾人もの兵士が二人に一丁しかないライフルを渡されて市街地に投入されました。
彼らはアマチュア同然であり、ドイツ軍の攻撃によって驚くほど簡単に撃ち倒されていきました。
恐れて後退してくる兵士には、容赦なく本来なら敵に向けられるべき銃弾が機関銃によって撃ち込まれました。
一見無意味に思えるこの人海戦術によって、ソ連軍はドイツ軍を市街地に釘付けにし、反攻のチャンスを待ったのです。
ドイツ軍はスターリングラードの早期占領を目指し、市街戦闘のプロフェッショナルである戦闘工兵を投入します。
しかし、養成にかなりの時間がかかる彼ら戦闘工兵は数が少なく、五個大隊しか投入できませんでした。
貴重な貴重なプロフェッショナルたちは、その能力を発揮すべく市街地へ入っていき、そこですりつぶされていきました。
かき集められたほとんど訓練も受けていないようなソ連兵との交換にするには、あまりにも貴重な戦力でしたが、彼らは戻っては来ませんでした。
そうやってソ連軍が血と肉によって時間を稼いでいる間に、ソ連軍はようやく反撃態勢を整えることができました。
いよいよ、ジューコフ将軍の反撃が開始されます。
「天王星」作戦の開始です。
[飲み込まれた兵たち]の続きを読む
- 2006/03/17(金) 21:39:19|
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1942年。
前年のバルバロッサ作戦はモスクワ前面で力尽き、ドイツ軍は冬の到来とともに戦線縮小を余儀なくされてしまいました。
モスクワまであとわずかと迫りながらも、ついに市街地に突入することはできませんでした。
「諸君らは戦争経済というものをご存じない!」と豪語するヒトラーは、1942年の雪解けとともに再度のソ連攻撃作戦に取り掛かります。
作戦名「青」(ブラウ)。
この作戦はモスクワを目指すものではなく、ソ連南部のコーカサス地方における資源地帯の奪取と、ヴォルガ川によって内陸と結ばれている河川交通の遮断を目的としてソ連南部地区に対し攻勢を行なうというものでした。
そのヴォルガ川の河川交通を扼し、工業都市でもあるのが「スターリングラード」でした。
最初、ドイツ軍はスターリングラードに執着していたわけではありませんでした。
ドイツ軍の目標はコーカサス地方の油田地帯だったのです。
しかし、ソ連の奥地は広く、ドイツ軍は行けども行けども奥地に引きずり込まれるだけでした。
結局ドイツ軍はドン川流域でのソ連軍の包囲撃滅も、コーカサス地方の油田も手に入れることはできませんでした。
つまり、「青」作戦は失敗に終わったのです。
しかし、「青」作戦の失敗は無敵ドイツ軍の世界に与えたイメージを失わせることになり、ヒトラーとして容認できるものではありませんでした。
何とかして目に見える結果を欲しがったヒトラーの前に、敵国の指導者スターリンの名前がぶら下がった都市が指呼の距離に位置していたのです。
それが「スターリングラード」でした。
ヒトラーは目に見える結果として、この都市の占領を目指すことにしたのです。
その目的のためにスターリングラードには第6軍と第4装甲軍の二個軍が向けられました。
悲劇の始まりでした。
[ヒトラーの目論見]の続きを読む
- 2006/03/16(木) 22:06:50|
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アニメ、「宇宙戦艦ヤマト」は、初回放映時には、裏番組に「アルプスの少女ハイジ」が放映されていたために、視聴率を稼ぐことができませんでした。
そのため全52話の予定が、全26話に変更されたことは有名な事実ですね。
そのため、いくつかのエピソードが省かれることとなりましたが、後半の山場の一つとして省かれること無く放映されたのが七色星団での艦隊戦、いわゆる七色星団の決戦です。
この時ガミラスの名将ドメル将軍は極端な艦隊編成でヤマトを迎え撃ちました。
それは護衛の艦隊をまったく保持しない空母単独での機動部隊編成でした。
各戦線より集められた選りすぐりの艦隊空母戦力(と、思われる)を集結し、航空戦力の乏しい(と、思われる)宇宙戦艦ヤマトを航空戦力にて沈めてしまおうというものでした。
その時に集められたのが、主力となる第1、第2、第3の三段空母でした。
三段の飛行甲板を持ち、一度に発艦できる航空機の数を増やすことを目的としたデザインと思われるのですが、はたして宇宙空間で飛行甲板が必要なのか? と言う疑問は無きにしも非ずですね。(笑)
本来の各戦線で作戦行動についていた時には、各空母ともに戦闘機、爆撃機、雷撃機を混載し、バランスの取れた航空戦力を搭載していたと思われるのですが、なぜか、ドメル将軍は各空母の艦載機を統一するという挙に出ます。
すなわち、第1空母には戦闘機のみを搭載。
第2空母は爆撃機のみ、第3空母には雷撃機のみという編成にします。
各搭載機が、各空母と同じ色で塗装されていたところを見ると、艦載機の配置換えと同時に色の塗り直しも行なわれたものと思われます。
なぜそのようなことを行なったのかは、ドメル将軍が戦死している以上永遠の謎なのですが、統一運用上の目的があったものと思われます。
ともあれ、ドメル機動部隊は瞬間物質移送機の威力もあり、ヤマトを戦闘不能に近い状態まで追い詰めます。
ヤマトの希望である、艦首波動砲もドリルミサイルで封じられ、万事休します。
ここでドメル将軍は信じられない行動にでます。
空母機動部隊の利点である航空機による攻撃を取りやめ、なんと砲撃戦でヤマトをしとめようとするのです。
ドメル機動部隊には確かに砲撃力に優れる攻撃空母が存在しました。
しかし、航空機運用に特化した三段空母は対空砲ぐらいしか持たないと思われ、事実砲撃は攻撃空母のみが行なっておりました。
しかも、砲撃戦に持ち込むために空母艦隊はヤマトに接近することを余儀なくされます。
防御力に乏しい空母が砲撃戦の距離に近づくことは自殺行為以外の何者でもありません。
ドメル将軍はもし砲撃でしとめたいとのロマンをかなえたいのであれば、攻撃空母と旗艦のみで突入するべきでした。
万一の反撃に備え、空母は後方に控えさせるべきだったでしょう。
結局、真田技師長という測定不能のファクターにより、ドリルミサイルは無力化され、あまつさえ機動部隊に戻ってきてしまうという大失態を犯してしまいます。
空母艦隊は壊滅。
旗艦のみ残ったドメル将軍は特攻をして自爆によりヤマトに損害を与えるのみという結果に終わりました。
他の戦線での活躍は我々にはうかがい知ることができませんが、ことヤマトとの戦いにおいてはドメル将軍は名将というには程遠い戦闘を繰り広げているようであり、ガミラスの各戦線での戦いが実はそれほど激戦ではなかった可能性がありますね。(笑)
もっとも、名将が名将に相応しい戦いをしていれば、ヤマトは沈んでいたかもしれません。(笑)
でも、もう少し戦いようがあったと思うんですけどね。
それではまた。
[七色星団の戦闘]の続きを読む
- 2006/03/15(水) 22:21:46|
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今日は「帝都奇譚」第五回目を投下します。
今日は前回の選択肢の結果を発表しますね。
1、お約束どおり事件を追う灯が魔物に襲われる。・・・0票
2、三倉とデート中の雛華が魔物に襲われる。・・・2票
3、同じく雛華が襲われるが、魔物は三倉本人だった。・・・3票
4、灯でも雛華でもなく屋敷へ向かう途中の摩耶子、桜、美月&運転手が襲われる。・・・1票
5、まだ早い。誰も襲われずに日常が続く。・・・1票
ということで、三倉が魔物であるということになりました。
これは私も驚きでした。
私の予想では2番かなって思っていたものですから。
いやな野郎の三倉は早々に魔物に殺されて終わりだろうと思っていたんですよ。
ですが、結果は3番。
ということで、三倉には更なる活躍をしてもらうことになりそうです。
お楽しみいただければ幸いです。
5、
こじんまりとした部屋にはテーブルと椅子が設えられ、ゆっくりと料理や酒を楽しめるようになっていた。
テーブルには真っ白なテーブルクロスがかけられ、すでに冷えた白ワインとワイングラスが置かれている。
三倉は雛華を席に着かせると、自分も向かい側の席に着いた。
「それではお近づきのしるしに」
ワインを開けてそれぞれのワイングラスに注ぎ込む。
白ワインのきらきらした輝きが電灯に照らされて美しかった。
三倉はグラスを持ち上げて乾杯を誘うが、雛華は顔をそむける。
もちろん二人でこんな場所にいることを乾杯で祝うつもりなど無いからだ。
「やはり俺のことが好きになれませんかな? 雛華先生」
「あ、当たり前です! あなたのような卑怯者を好きになれるはずがありません!」
メガネの奥の雛華の目が三倉をにらみつける。
「クックック・・・そうですかね? そんなに旦那が好きなのか?」
「当たり前です! あなたは一体何を考えているんですか?」
ニヤニヤ笑ったままワインを飲み干す三倉に、雛華はぞっとしたものを感じる。
もしかしたら私は最悪の選択をしてしまったのかもしれない。
でも・・・
雛華は決意する。
どんなことがあっても、この男に躰を穢されることだけは避けてみせる。
最悪の場合は舌を噛んででも・・・
「まあまあ、さっきも言ったようにお近づきのしるしに一緒に食事をしたいだけなんですよ。そう警戒しないで下さい」
「・・・・・・」
自ら二杯目を注いで飲み干す三倉。
相変わらず好色そうな目つきは隠そうともしなく、雛華の胸のあたりを正面から見つめている。
白衣を脱いだ雛華はブラウスとスカートに上着を羽織っている。
しなやかな躰には洋服がよく似合っていた。
短めの髪の毛は少し茶色っぽく、流行の髪型でまとめられ、メガネがその知的な雰囲気を強調している。
控えめに言ってもかなりの美人であることは間違い無く、女学院の教師たちの間でもその美貌は羨望の的だった。
お見合いで白鳳家へ嫁いで来たものの、夫の幸一とは仲むつまじく、うらやましがられるような夫婦だったのだ。
「お腹が空いているんでしょうきっと。人間腹が減ると怒りっぽくなるものです」
そう言って三倉は女給を呼んでオーダーを告げる。
程なくいい香りをした料理が運ばれてきて、二人の前に並べられた。
「どうぞご遠慮なく。ここのビーフステーキは絶品ですよ」
三倉はそう言って湯気を立てている肉にナイフを入れていく。
先ほどから無言でうつむいていた雛華は、そう言われても手が出せる心境ではなかった。
「結構です・・・」
目の前には美味しそうな牛肉の焼けたものが置いてある。
これが夫との食事ならどんなに嬉しいことだろう・・・
だが、どんなに美味しそうな料理も、今の雛華には喉を通りそうに無かった。
「食欲が無いようですな・・・まあ、いいでしょう」
口元をナプキンで拭い、ワインを飲む三倉。
「ところで先生。先生はあの死体をどう思いますか?」
「えっ?」
雛華は突然の三倉の言葉に戸惑った。
まさかこんなところであの死体のことが三倉の口から出てこようとは・・・
「俺の言う通りアカどもの仕業と思いますか?」
「・・・・・・いいえ」
雛華はどう答えようかと逡巡したが、結局自分の思うとおりに答える。
「そう。雛華先生の言うとおりだ。あれはアカどもの仕業ではない」
ポケットから紙巻きタバコを取り出してマッチで火をつける三倉。
「えっ?」
雛華はまたも驚いた。
するとこの男はわかっていてアカどもの仕業と言っていたのか?
「あれはね、先生・・・」
ふうと煙を吐き出す三倉。
「“新たな世界に生きる者”の仕業ですよ」
「“新たな世界に生きる者”?」
雛華は訊き返す。
それは初めて聞く言葉だからだ。
「そう、“新たな世界に生きる者”。そいつらの仕業です」
三倉は再びタバコの煙を吐き出す。
「一体どんな人たちなんですか?」
雛華は訊かずにはいられなかった。
その人たちが一体どんな方法で人間をあんなふうにミイラ化したのか、それを知りたかったからだ。
「どんな人たち・・・ねえ・・・」
三倉の顔に笑みが浮かぶ。
「見た目は普通の人間ですよ。ただ・・・」
「ただ?」
ワイングラスを傾ける三倉に続きを促す雛華。
「食事が変わり、力も強くなる」
にやりと笑う三倉。
その笑みに雛華は言い知れない恐怖を感じた。
「奴らはこんな食事は喜ばない。奴らが喜ぶのは・・・人間のエキスだ」
フォークで無造作に肉を突き刺す三倉。
それをまるで忌々しいかのように食いちぎる。
「人間の・・・エキス?」
雛華は恐怖を感じていた。
ここから先は聞かない方がいい・・・
雛華はそう思ったものの、どうしても続きを聞くのをやめることができなかった。
「そう。人間のエキスだ。奴らはそれを吸う」
「吸う?」
「そう、吸い尽くすんだ」
三倉はそう言って、口の中の肉をワインで流し込み、再び灰皿のタバコに手を伸ばす。
「まさか・・・まさかあの死体は・・・」
雛華の体が震える。
エキスを吸うだなんて・・・
「そう。吸い尽くされたなれの果てさ」
タバコの煙を吐き出す三倉。
「じょ、冗談ですわ・・・事実であるはずが・・・」
雛華は薄く笑う。
普段の雛華なら非科学的として一笑に付していたであろう。
だが、あの死体を見てしまっている以上、非科学的と断じることができなかったのだ。
「ま、冗談ではないんだがな。それに、あんなふうに死体を残すなど出来損ないである証拠だ」
「出来損ない?」
「クックック・・・“新たな世界に生きる者”にも不出来な奴らがいるのさ」
タバコを灰皿でもみ消す三倉。
「不出来な奴ら?」
一体どういうことなのか?
雛華にとってはわからないことばかり。
「新たな世界に適応できなかった奴もいるってことだよ。雛華先生」
三倉は含み笑いを浮かべてワインのボトルを取り出す。
だが、それはすでに空になっていた。
「チッ、空か・・・まあ、こんなものよりも極上のものが目の前にあるからな・・・」
「えっ?」
雛華は逃げ出したかった。
だが、なぜか足が動かない。
「せっかくの機会を生かせない奴がいるってことですよ雛華先生」
三倉はぺろりと舌なめずりをする。
「機会?」
「そう。新たな世界に適応したなら、こんな素晴らしいことは無いんですよ。エキスを吸い尽くして死体を残すなんてのは出来損ないの仕業だ。死体なんてのはね・・・燃やせばいいんですよ。雛華先生」
「燃やす・・・」
確かにそれなら灰しか残らないかもしれない。
ミイラ化した死体は骨も内臓もぼろぼろだから、全て燃え尽きてしまうかもしれない・・・
「クックック・・・先生」
「えっ?」
三倉が自分を見つめていることに気がつく雛華。
その目は赤く、鋭かった。
「先生のエキスはどんな味がするのかな? きっと極上の味でしょうねぇ・・・クックック・・・」
雛華の背筋は凍りついた。
「はあ・・・確かに信じられない話しよねぇ」
ため息をつきながらとぼとぼと歩いている小鳥遊灯。
肩からバッグを提げて歩く姿はハイカラ女性のはずなのだが、今は肩を落としているために見る影も無い。
ミルクホールで30分ばかり鷹司摩耶子と白妙桜に囲まれて話をしたのだが、青白い顔をして夜歩く死体の話になったとき、桜に一笑に付されたのだった。
『ばかばかしいですわ。確かに変死体の話は気になりますが、言うに事欠いて夜歩く死体ですって?』
『桜さん、そんなことをおっしゃっては・・・』
『いいえ、摩耶子さん。私たちは白鳳女学院の女学生ですのよ。迷信や非科学的な幽霊話とはキッパリ手を切らなければいけませんですわ』
「非科学的かぁ・・・」
灯は苦笑する。
彼女自身夜歩く死体だなどというものを信じているわけではない。
元はといえば助兵衛、もとい助野兵衛の持ち込んだ情報なのだ。
あの「帝都のお騒がせ探偵」を自称するおじさんは、人はいいのだが探偵のとして脳ではそれほどでもない。
彼が解決した事件は片手で数えるほどしかないかもしれない。
しかし、その人の良さで幾多の人々との繋がりを持っていることもまた事実なのだった。
「何かと見間違えたのよね・・・」
灯はそうつぶやく。
色が白いのはきっと人を月明かりや街灯の明かりで見たせい。
夢遊病患者あたりが夜歩いているのを見れば、人はそれを死体が歩いていると思い込んでも不思議ではない。
いまだ江渡時代を引き摺っているような老人や、明次時代を懐かしむような中年以上の人ならともかく、今は太正時代。
科学的に言って死体が歩くことなどありえないではないか。
あくまでその噂の真実を突き止めるのが彼女の仕事なのだということを、せめて摩耶子ちゃんにはわかって欲しかった。
「ま、結果を示せばわかってくれるわよね」
灯はそうつぶやくと噂の中心である港の方へ向かっていった。
声がでない・・・
目をそらすこともできない・・・
躰が動かない・・・
雛華は震える体を椅子に釘付けにしたまま身動きが取れなかった。
三倉の目。
あの赤く輝く目を見た途端に躰の自由が失われてしまった。
助けて・・・
誰か私を助けて・・・
あなた・・・
「クックック・・・雛華先生、動けないでしょう」
「あ・・・ああ・・・」
かろうじてうめき声を出す雛華。
「俺の目はね・・・にらみつけるだけで人間を動けなくさせることができるんだよ」
ゆっくりと立ち上がる三倉。
「先ほど話していた“新たな世界に生きる者”の中には俺も含まれていてね・・・クックック」
べろりと舌なめずりをする三倉。
その舌は異様に長く、胸まで下がってくる。
「ヒッ!」
小さな悲鳴を上げるしかできない雛華。
「クックック・・・この舌で獲物のエキスを奪うのさ。そう、雛華先生の極上のエキスをね」
「い・・・や・・・」
雛華は必死に首を振ろうとする。
しかし、その目はしっかりと三倉の長い舌に釘付けだった。
「クックック・・・心配は要りませんよ。俺は出来損ないとは違う。あなたのエキスを吸い尽くしたりはしませんよ」
三倉はゆっくりとテーブルを回って雛華のそばに近づいてくる。
「俺はね、わかるんですよ。あなたは極上のエキスを持っている。そう、一回で吸い尽くすのがもったいないほどね」
「ひ・・・あ・・・」
三倉の舌が生き物のように鎌首をもたげる。
その先端はまるで夫の股間についている男性器の先端にそっくりだった。
違うところがあるとすれば、それは付いているところと長さ、それに先端に開いた口から見える小さな牙の群れだった。
「クックック・・・その代わり先生には極上の快楽を上げましょう。どうやらこの舌でエキスを吸われる時にはとんでもない快感を感じるようなんでね」
「あ・・・ああ・・・」
三倉の舌が雛華の頬にそっと触れる。
ぬるっとした唾液が雛華の頬に付き、彼女は吐き気を覚えた。
「そう、俺はね。もうすでに三人の娘のエキスをいただいたよ。みんなあんあんといい声で鳴きながらエキスを吸わせてくれたもんだ」
舌を出しているにもかかわらず、三倉の発音ははっきりしている。
これも“新たな世界に生きる者”だからなのか?
三倉の舌はうねうねと触手のように動き、雛華の首筋をそっと撫でる。
「ひあっ」
躰をビクッとさせる雛華。
もう嫌悪感と恐怖とで彼女の精神は崩壊しそうだった。
「くっくっく・・・」
三倉は動けない雛華の上着をそっと脱がせる。
動けないと言っても雛華の躰が硬くなっているわけではない。
三倉は難なく上着を脱がせ、ブラウスのボタンも外していく。
「い・・・や・・・」
死にそうなほどの屈辱でありながら、雛華は何もできない。
三倉の舌が首筋から頬をなで、三倉の手はブラウスの前を開けて、ブラジャーに包まれた雛華の胸を揉み始める。
「ふ、あ・・・あ・・・」
顔が赤くなり、恥辱と屈辱で涙があふれてくる。
「クックック・・・さて、雛華先生のエキスをいただきますかね」
三倉の舌が雛華の口元に忍び寄り、無理やり雛華の口中に入り込む。
必死で口を閉じて頑張ったものの、雛華の口はこじ開けられ、たちまちのうちにのどの奥まで三倉の舌が入り込んできた。
「む、ぐ・・・」
「クックック・・・すぐに気持ちよくなってくるさ」
その三倉の言葉が終わらぬうちに雛華はのどの奥に鋭い痛みを感じる。
「あぐっ」
三倉の舌先が雛華ののどの奥に噛み付いたのだ。
やがてそこからじわりとした疼きとともに雛華の中から何かが吸い取られていく。
「あ・・・あ・・・」
雛華の躰がほんのりと色づき始め、暖かくなってくる。
「クックック・・・」
三倉の手で揉まれている胸も、ブラジャーの上からでもわかるほどにピンと立ってくる。
「ああ・・・あああ・・・」
のどの奥から何かを吸われつつも、雛華は凄まじい快楽に襲われているのだった。
躰を震わせ、下着をぐしょぐしょに濡らすほどの愛液を流してしまう雛華。
目の前の男のおぞましさも、自分の身に降りかかっている状況も、雛華の脳裏からは失せていく。
ゴクゴクと音を立てて雛華のエキスを飲み込んでいく三倉。
だが、その手は雛華の胸や下腹部を愛撫することを止めはしない。
「なんて美味いエキスだ。やはり飲み干してしまうのはもったいない」
三倉は名残惜しくも舌を引き抜き、口の中に戻す。
そして、右手の指をスカートの中に差し入れて、下着の上から雛華の敏感なところを刺激してやった。
「ひゃうぅぅぅぅぅん」
躰をしならせてあっという間に絶頂に達してしまう雛華。
「達したようだな、雛華先生」
「ああ・・・はい・・・」
三倉の問いに雛華はそう答えていた。
次に襲われるのは誰?
1、やっぱり怪しげなところに向かっている灯。
2、一刻も早く魔物化してほしい摩耶子。
3、女学院での暗躍に期待の桜。
4、ここは搦め手でいくということで美月。
5、大穴狙いで破妖月子。
よければ選択肢の投票をお願いいたします。
メールでも受け付けます。
メールアドレスは以下の通りです。
masatomaikata¥hotmail.com
¥の部分を@にしてお送り下さいませ。
よろしくお願いいたします。m(__)m
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- 2006/03/14(火) 19:49:55|
- 帝都奇譚
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本日、おかげさまで20万ヒットに到達いたしました。
これも皆様のご支援の賜物です。
ありきたりで申し訳ありませんが、改めてお礼を申し述べさせていただきます。
どうもありがとうございました。m(__)m
先ほどの時点でのアクセス数です。
ページビュー合計: 200102 今日のページビュー: 773
今週のページビュー: 1709 1 時間以内のページビュー: 75
これからも皆さんのご支援のほどよろしくお願いいたします。
えーと・・・
今日は「帝都奇譚」の4回目を投下いたしますね。
ただ、申し訳ありませんが、前回提示の選択肢の結果をシーンとして出すところまでいきませんでした。
そのため、選択肢の結果についてはまだ表示いたしません。
ご了承下さいませ。
それではー。
4、
「送ってくださってありがとうございました」
摩耶子は屋敷の玄関前まで送ってくれたことに感謝してぺこりと頭を下げた。
「いいえ、こちらこそお付き合いくださってありがとうございました。また明日女学院でお会いいたしましょう」
「お疲れ様でした、鷹司のお嬢様」
わざわざドアから降りて深々と頭を下げる美月。
英国風のメイド姿がさまになっている。
「またお誘い下さい。今日は楽しかったですわ」
摩耶子はにこやかに手を振る。
「行きますよ、美月。小山田、やってちょうだい」
「はい、お嬢様」
自動車の後席から手を振り、にこやかな桜の笑顔を残して走り去っていくのを、摩耶子は見えなくなるまで見送った。
「ふう、楽しかった」
自分の荷物は学生鞄と紙袋がひとつだけ。
桜の買物振りに比べたら慎ましやかなものだったが、それでも摩耶子にとって自分で買ってきたアクセサリーは貴重な財産に思える。
「ただいま戻りました」
玄関を入り、頭を下げている使用人に鞄を渡すと摩耶子は自室へ向かおうとする。
「お嬢様、実光(さねみつ)様がお呼びでございます。どうぞこちらへ」
和服姿の使用人が摩耶子を呼ぶ。
白妙家とは違い鷹司家では使用人は和服姿である。
「お爺様が?」
「はい」
鷹司実光は現当主鷹司昭光の父である。
まだ五十八歳の彼は政界にも太いパイプを持ち、鷹司家の実力者でもあった。
「わかりました」
摩耶子はセーラー服のまま居間へ向かう。
「失礼いたします」
ドアを開けて洋間に入る摩耶子。
「おお、来たか」
羽織袴姿でキセルからタバコの煙がたなびいている実光。
がっしりとした体格はまだまだ精力を感じさせる。
鋭い眼光は、以前の実光を知る人物に言わせるとだいぶ柔らかくなったとのことだったものの、まだまだ鋭さを失ってはいない。
椅子に腰掛けているその実光とは別に、居間にはもう一人の人物がいた。
摩耶子の知らない人物であり、美しく優しそうな女性だった。
最近見かけるようになってきた洋服とスカートを身につけ、ハンドバッグを膝の上においている。
摩耶子よりは年上だろうが、生活じみたところが無く、とらえどころのない感じもさせている。
髪の毛を後ろで束ねて垂らしているところは神社の巫女を思わせた。
「お爺様がお呼びと聞きましたものですから」
「そうじゃ。彼女を紹介しておこうと思ってな」
実光がキセルで彼女を指し示す。
無礼とおもわれても仕方が無いことなのに、その女性はにこやかに微笑んでいた。
「こちらは宮内省に勤める才媛でな。破妖月子(はよう つきこ)さんじゃ」
「破妖月子ですわ。よろしくお願いいたします」
椅子から立ち上がり、優雅に礼をする月子。
その微笑みは見るものを温かくさせる。
「あ、初めまして。鷹司摩耶子です」
摩耶子も頭を下げる。
宮内省に勤めるというからには優秀な方なのだろうけど、そのようなエリート的な感じは感じられないわ・・・
摩耶子はそう思った。
「彼女は帝都の裏の世界に関わりがあってな。なにやらわからんが、お前のことで来られたのだ」
「私のことで?」
摩耶子は驚いた。
この女性が私に何の用があるというのだろう。
「では、かなりお待たせしてしまったのでしょうか? 大変申し訳ございません」
「いえいえ、突然押しかけた私の方が悪いのです。ですが、直接お渡ししたいものがあったものですから」
頭を下げる摩耶子をさえぎり、月子は鞄の中から一つのお守りを取り出した。
西洋の洋服とスカートを身に付けた女性が取り出したものが神社のお守りということで、摩耶子はそのアンバランスさに思わず笑みが浮かんでしまう。
「これは私がこしらえたものです。多少の魔を払う力はあるでしょう。どうか、肌身離さずに持っていてください。いいですね」
「は、はあ・・・」
摩耶子はなにやらよくわからなかったが、とりあえずそのお守りを受け取った。
赤い布で作られたお守り袋は神社名も何も書いてはいない。
でも、持っていると何か心が温かくなるような感じがした。
「いいですね。肌身離さずに持っていてくださいね」
「はい・・・」
茶色の瞳が正面から摩耶子を見つめている。
摩耶子は素直に頷いた。
ガクガクと震えが走る。
できるだけ離れようとするが、座席の狭さがそうさせてくれない。
「次の角を右だ。わかっているだろう?」
「へい、大丈夫でさぁ旦那」
粋な車夫の返事も遠くから聞こえる汽笛のよう・・・
私はなぜこんな男と人力車に乗っているのだろう・・・
特別高等警察というものはそんなにえらいものなの?
私と夫をどうしようというの?
もう警視庁には来たくない。
頼まれても来ないわ。
雛華はそう思いながらも、黙って人力車の座席に座っているしかできなかった。
「ヒッ!」
突然雛華が小さな悲鳴を上げる。
三倉の右手が雛華の太ももに触れたのだ。
「やめてください!」
雛華は三倉をにらみつけた。
「おお、すみませんな先生。ちょっと揺れたんでね。思わず体を支えてしまった」
ニヤニヤしながら手を引っ込める三倉。
相変わらず紙巻きのタバコをくわえ、煙を吐き出している。
いやらしい目つきは雛華の肢体を遠慮なく眺めていた。
「旦那、もうすぐつきますぜ」
「おう、すまんな」
三倉はそう言って正面を向き、タバコの煙を吐き出した。
銀座の一角。
人の通りとざわめきと明るいネオンが昼間を思わせる。
一軒のカフェーの前で人力車は停車した。
銀座のカフェー「フジ」。
上流階級の方々も出入りする有名なカフェーである。
「ご苦労さん」
そう言って三倉は車夫に運賃を払い、雛華に手を差し出す。
「結構です」
雛華は周囲をちらちらと盗み見て、三倉の手をきっぱりと断った。
そうして、知った顔がいないことを確認した上で小走りにフジの玄関へ入り込む。
「おう、まったく嫌われたもんだ・・・ククク・・・」
タバコを道路に落とし、靴で踏みつけて下卑た笑みを浮かべる三倉。
そのまま雛華の後を追うようにフジへ入っていった。
「いらっしゃいませ」
ボーイが二人を出迎える。
「奥の部屋を一つ用意してくれ。店長に三倉だと言えばわかる」
雛華の隣に立つと三倉はそう言ってボーイを下がらせた。
「どうです雛華先生? いい店でしょ? 奥の部屋を今用意させますからね」
「・・・・・・」
相変わらずニヤニヤ笑いながら、三倉は雛華の腰に手を回す。
「ヒッ!」
再び小さな悲鳴を上げる雛華。
「おっと、大きな声を上げないほうがいいですよ雛華先生。白鳳幸一氏が困った状況になりますからねぇ」
「ひ、卑怯者・・・」
雛華は悔しさに歯噛みしながら三倉をにらみつける。
しかしこの男は雛華がここで大声を上げて逃げたとしたら、夫を見逃しはしないだろう。
夫を守るためにはこの場は我慢するしかない・・・
「三倉様、お部屋の準備が整いました。どうぞこちらへ」
「おう、すまんな」
呼びに来たボーイの先導で、二人は部屋に向かい、カフェーの奥へ入っていった。
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- 2006/03/13(月) 22:30:20|
- 帝都奇譚
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機動戦士ガンダム、一年戦争秘録「MSイグルー」のノベライズを読みました。
いやぁ、ガンダムの世界で谷甲州張りの軌道の相違やベクトルの問題などを書いてくれる方がいらっしゃるとは。
もう楽しく読ませていただきました。
一年戦争もしっかり定着して? 外伝的な作品も結構出てくるようになりましたね。
かく言う私自身もしっかりローネフェルトストーリーを書かせていただいていますし。(笑)
それにしても三話分のストーリーのうち、モビルスーツがメインメカとして扱われるのは最終話だけなんですね。
聞いたことの無いようなメカばかりで、まさに秘録という感じでした。
よければ手に取ってみてください。
今日は短いですがこれにて。
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- 2006/03/12(日) 23:10:10|
- 本&マンガなど
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大正期の日本陸軍はさまざまな近代化を進めてきます。
その中に盛り込まれた中に陸軍の航空部隊がありました。
黎明期の陸軍航空隊はもちろん輸入機が全盛でした。
フランス製の航空機を輸入して使用することが多かったようですが、徐々に国内生産も行なわれるようになります。
モーリス・ファルマンやスパッド、ニューポールなどのフランス機を模倣したりライセンス生産をしたりした日本のl航空機製作会社はやがてひとり立ちをするべく思考錯誤を繰り返していきます。
そんな中、中島知久平率いる日本飛行機製作所(後の中島飛行機)は日本人設計の航空機を試作して陸軍に提示します。
その試作の中の五型が陸軍の審査を通り、中島式五型として練習機として採用されました。
当時としては数多い20機の量産命令を受けて、日本飛行機製作所の経営は安定。
最終的には手ごろで使い勝手のいい練習機として100機もの生産が行なわれました。
航空機の国内生産のための航空機会社の育成を目指した陸軍と、中島知久平の陸軍への影響力が合わさって量産にうつされた機体ですが、いい機体だったんでしょうね。
中島は後に陸軍の航空機生産の主力として、97式戦闘機や一式戦闘機「隼」を送り出すのですが、この中島式五型練習機が無ければ、後の発展は無かったかもしれないですね。
それではまた。
- 2006/03/11(土) 22:38:48|
- 趣味
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えーと・・・本日通販で購入しました、「カレン・オルテンシア萌え萌えバスタオル」が我が家に到着いたしました。(笑)
いい年をしてこのようなものを購入してしまったことに我ながら苦笑を禁じえませんね。(笑)
でも、か~いいんですよ、カレン嬢。
Fate/hollow ataraxiaにでてくるキャラクターの中でダントツに大好きなキャラクターです。
幼い感じを残しながらも、冷たく突き放したようなその言動。
衛宮士郎を翻弄するかのように現れて、やっぱり翻弄して去っていく。
戦闘用コスチュームは男を意識したとしか思えないようなレオタードとタイツっぽい衣装。
コスプレする方は大変でしょう。(笑)
近くに居たらきっと殴ってやりたくなるかもしれませんが、手元に一人欲しいです。
どこかに落ちていないかなぁ。(笑)
まあ、それもこれも奈須きのこ氏の文章と武内崇氏の素敵なイラストのコラボレーションの賜物。
これからも素敵なキャラとストーリーで楽しませていただきたいものです。
少しでもあの文章の巧みさに近づけたらいいなぁ。
頑張らねば。
それではまた。
- 2006/03/10(金) 21:59:58|
- PCゲームその他
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大正11年に竣工した世界で一番最初に初めから航空母艦として建造された航空母艦ですね。
まだ飛行機自体が発展途上であり、その運用方法自体も定まっていなかったため、試行錯誤の末にとりあえず作ってみましたという作品です。
竣工当時は飛行甲板右舷側に小さな艦橋構造物を持っていましたが、もちろん着艦時に邪魔になるということで、すぐに撤去されてしまいます。
その後、戦艦艦隊の上空直援用として艦隊に編入され、長らく使用されますが、昭和に入り訓練用航空母艦として鳳翔は第二の人生を歩むことになります。
太平洋戦争中は発着艦訓練用として海軍空母航空隊の育成に大きく寄与しますが、戦局利あらずして、海軍空母航空隊は壊滅。
鳳翔での訓練も取り止めとなり、なすところ無く呉に係留されて終戦を迎えます。
一番最初に作られた小型空母で、空母機動部隊に編入して運用するには小さすぎ、機動部隊とともに行動することが無かったのが幸いしたのでしょう。
日本の空母で終戦時に健在だったのは少なかったですが、鳳翔はその一隻となりました。
日本の海軍空母航空隊の誕生から終焉までを見続けた鳳翔。
最後には空母はあっても航空機もパイロットも無いという状況を彼女はどういう思いで見ていたのでしょうか・・・
それではまた。
- 2006/03/09(木) 22:46:39|
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SS3で大正時代(SS内では架空の太正時代ですが)を背景にしたホラーものを書いているわけですが、その当時日本で最大最強の戦艦として君臨していたのが、戦艦「長門」と同型艦「陸奥」でした。
竣工当時基準排水量約32000トン。
40センチ砲連装砲塔を4基備え、その砲撃力は当時世界でも一級品でした。
出力8万馬力。
最大速力26.5ノット。
大正9年に竣工後、同型艦陸奥と入れ代わり立ち代わり連合艦隊の旗艦を務めます。
昭和16年に巨大戦艦「大和」が就役しますが、国民には知らされず、一般市民は相変わらず最大の戦艦は長門・陸奥だと信じていたのです。
大正から昭和にかけて連合艦隊の象徴はまさしく長門・陸奥であり、国民の期待を一身に集めた戦艦でした。
日本国民が大和・武蔵の存在を知ったのは戦後であり、それまではまったく知らされなかったのです。
世界の7大戦艦に数えられた長門と陸奥。
その生涯は対照的でした。
呉の泊地で一水兵の仕業とも言われる謎の爆沈をした陸奥。
引き揚げられることも無くそのままスクラップとなります。
一方終戦まで何とか生き残った長門。
しかし、連合軍に接収され、ビキニ環礁での原爆実験に供されます。
爆心地に近いところに置かれたにもかかわらず、爆発に耐えた長門は、一瞬にして沈んだ米軍艦艇をあざ笑うかのように浮かび続け、ある朝忽然と姿を消していました。
その最後を誰にも見せることなく、人知れず沈んだ長門。
その最後は日本戦艦の最後の意地だったのかもしれません。
それではまた。
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- 2006/03/08(水) 22:19:35|
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コメントありがとうございました。
投票の時間があまり無かったのは申し訳ありません。
今回は二番の投票が多かったので、二番のルートを選んだストーリーを展開しますね。
これからもご協力お願いいたします。m(__)m
3、
ルート2、「すみません桜さん、私ちょっと用事がありまして・・・」
通りの向こうを小走りに通り過ぎて行く小鳥遊灯。
呼び止めるのもどうかと思われたが、猫をも殺す好奇心、朝の変死体事件のことが何となく摩耶子は気になった。
朝、あの話題が出た後で女学院内のクラスメートに尋ねてみたものの、ほとんどの女学生はそんな事件のことはまったく気に留めていないのか、知らない人たちばかりであった。
隣に居る桜も例外ではなく、変死体の話を持ち出すと黙って首を振るだけだった。
「すみません桜さん、私ちょっと用事がありまして・・・」
摩耶子は意を決して灯に話を聞いてみようと思い、桜の元を辞去しようとする。
「どうかなさいまして、摩耶子さん? 行くところがあるのでしたら自動車でお送りしますわ」
桜が行きかけた摩耶子に声をかける。
「あ、いえ、知り合いが居たものですから。新聞記者の・・・」
「新聞記者?」
摩耶子が新聞記者などと知り合いであるということにちょっと怪訝そうな顔をする桜。
鷹司家ともあろう者が新聞記者に目を付けられているわけでは無いと思うが・・・
「ええ、私の古い友人で小鳥遊灯さんという方なんです。今朝お話した変死体事件を追っていらっしゃる方ですわ」
「ああ、それでなのね。摩耶子さんが変死体事件なんていうものですから、何事かと思いましたわ」
得心がいったように桜は頷く。
彼女にとっては世間の雑事に一つに過ぎないし、関わりがあることではないからだ。
「変死体って、最近巷で騒がれているエジプトミイラの呪いってお話ですか?」
大量にあった荷物を自動車に押し込めた美月が何となく口を挟む。
セーラー服の少女二人と比べ、彼女は黒を基調とした英国風のメイド服を身につけている。
そのため三越の前という人通りの多いこの場所では、この三人は非常に人々の目を惹いていた。
「エジプトミイラの呪い? 美月、詳しく教えなさい」
「え? あ、す、すみません桜様。私も父から聞いただけですので・・・」
美月はかしこまってしまう。
彼女の父は白妙家の園丁をやっており、親子で屋敷に仕えているのだ。
「いいから話しなさい。呪いだなんて馬鹿らしいけど、摩耶子さんの知り合いが追いかけているのであれば気になりますもの」
「桜さん・・・」
摩耶子は苦笑する。
桜は気にいった人物に対しては援助を惜しまない。
それが多少押し付けがましくなることもあるのは、お嬢様のなせる業か。
だが、摩耶子はそういった桜が好きであった。
「あら?」
気がつくと灯の姿が消えている。
通りを曲がって行ってしまったのだろうか。
「桜さん、すみませんが私はこれで」
摩耶子は灯を追って駆け出そうとする。
「あ、摩耶子さんお待ちなさい。自動車で追いましょう」
「えっ?」
「自動車の方が早いですわ。それに興味もわきましたし」
桜がにこやかに自動車へ誘う。
摩耶子は少し躊躇したものの、桜の好意に甘えることにした。
「小山田、わかっていると思うけど、ゆっくり摩耶子さんが捜しやすい速度で走るのよ」
「はい、お嬢様」
制服と制帽を身につけた運転手が桜の指示に返事する。
車内は四人の人間と桜の荷物でいっぱいだったので、速度を出そうにも出せなかったに違いないが、摩耶子は素直に好意を喜んだ。
「それで、美月。先ほどの話をしなさい」
「あ、はい、桜様。父が言っていたには、先日職人さんたちとお会いした時にそういう話が出たそうで」
美月はそのときの様子を思い出しながら話し始める。
助手席の美月の膝の上にはいくつかの荷物が載せられていて、それを崩さないようにしているのが傍目からでもよくわかった。
「半月ほど前に港の倉庫に棺桶のようなものが運び込まれるのを見た人が居て、ミイラでも運んできたんじゃないかって思ったそうなんです」
「棺桶? それがどうしてミイラなの?」
桜は当然の疑問を口にする。
「えーと、その・・・先々月に三越で英国展があったじゃないですか。その時にエジプトのミイラってのが展示されたらしくって、それを見た人だったそうなんです」
自信が無いみたいにうつむき加減でしゃべる美月。
先ほどまでの元気は無い。
「ふう、短絡的ですわ。英国展でミイラを見たから棺桶の中身がミイラだなんて」
桜があきれる。
それについては摩耶子も苦笑せざるをえない。
「そう思いますけど、船で棺桶を運んで来るなんて変じゃありませんか?」
「それは確かにそうですが、でも本当に棺桶だったのでしょうか」
摩耶子は見間違いということもありうると思う。
「あう・・・それはわかりません。でも、その棺桶を見てからミイラの変死体が出たそうなんで、エジプトミイラの呪いじゃないかって・・・」
「まったく・・・それが短絡的だというのですわ。呪いだなんてばかばかしい」
美月が言い出したわけではないのだが、桜はまったく相手にしない。
「それにしても見つかりまして? 摩耶子さん」
「それが・・・どうも見失ってしまったようですわ」
摩耶子は窓の外を歩いていく人たちを目で追っている。
人の流れはじょじょに増えてきており、その中から一人の女性を探し出すのは次第に困難になり始めていた。
「仕方ないですわね。もうお仕事の終わる終業時間も過ぎましたし・・・あまり遅くなっては鷹司のおじ様に叱られてしまいますわね」
確かにそれは違いないだろう。
いくら放任とはいえ、嫁入り前の淑女が出歩いていい時間ではなくなりつつある。
「そうですね。今日はやめにしておきます。灯さんのお仕事の邪魔になってもいけないですし」
摩耶子はふうとため息をついて、背もたれにもたれかかった。
また今度会えた時にしよう・・・
そう思ったとき、視界のはしを歩いていく灯の姿が目に入る。
「居ました!」
思わず声を上げてしまう。
「小山田! 止めて!」
「はい、お嬢様」
桜の声と同時に自動車は急ブレーキをかける。
「キャァッ!」
美月の抱えていた商品がフロントウインドウへ飛んでいく。
しかし、美月はすぐに体勢を立て直して、商品を再び抱えあげた。
「どこですの?」
「あそこです」
桜が摩耶子の前を乗り越えて窓から外を見た。
ハイカラな洋装に身を包み、髪をショートにした小鳥遊灯が歩いている。
「あの方?」
「ええ、彼女が小鳥遊灯さんです」
摩耶子はにこやかに微笑んだ。
「灯さん」
灯は自分の名前を呼ぶ声に呼び止められる。
振り向くと黒塗りの自動車から降り立った摩耶子の姿が目に入った。
「摩耶子ちゃん」
にこやかに笑みを浮かべて灯は摩耶子のほうへ向かう。
「お仕事中にすみません。今朝のお話にちょっと興味があって・・・」
はにかむようにうつむく摩耶子。
鷹司家の令嬢たる者が市井の雑事に興味を持ったことが恥ずかしいようだ。
「初めまして」
摩耶子と同じつやつやした長い黒髪をなびかせた少女が自動車から降りてくる。
「あ、こちら、私の同級生の白妙桜さんです」
「白妙桜です。以後お見知りおきを」
物腰柔らかく一礼する桜。
武道を嗜むのか、その身ごなしには隙が無い。
「私の学友である摩耶子さんのお知り合いである灯さんが新聞記者をお勤めとお聞きいたしまして、恥じらいも無くお話を聞かせていただこうと参りました次第ですわ」
「話って・・・まさか干からびた死体の?」
灯は戸惑う。
白鳳女学院に通う令嬢に聞かせてもいい話なのか判断できなかったからだ。
「たいした話じゃないし・・・聞いても面白く無いと思うけど・・・」
灯はとりあえず話してもいい部分だけ話すことにして、ミルクホールに二人を誘った。
「納得がいかない・・・」
与えられた部屋で遺体のサンプルを調べていた白鳳雛華はそうつぶやいた。
どう考えても納得がいかないのだ。
考古学者によって持ち込まれたミイラでも検査しているような気がしてならないのだ。
これがわずか一昨日には生きていた人間とは思えない。
どこをどうやったらこんなふうに人間の水分を抜き取ることができるのか?
人間をどこか巨大なヒーターのある部屋に閉じ込めてしばらく放っておけばこうなるかもしれない。
でも、そんなことをして放り出しておくなんてばかげているし、だいたい一日二日では無理だろう。
「ふう・・・」
メガネを外して目をこする。
時計を見ると、すでに午後の6時を回っている。
「もうこんな時間・・・」
今日はここまでにして引き上げよう。
結局今日は女学院を空けてしまった。
きっと夫はやれやれと思っているに違いない。
雛華はメガネをかけなおすと、白衣を調えて席を立つ。
部屋を出ると暗い廊下を歩く靴音だけが響いていく。
いやな雰囲気だわ・・・
警視庁の地下などで夜を迎えるものではないわね。
雛華はそう思いながら階段を上がっていく。
「お帰りですかな? “雛華”先生」
タバコをふかし、カンカン帽を右手でひょいと持ち上げて挨拶する三倉警部補。
「ええ、今日は失礼いたします」
メガネの奥に嫌悪感を秘めた眼差しを向け、雛華は警視庁の玄関へ向かう。
「つれないですな先生。アカどもがあの女に何をしたのかわかりましたかね?」
三倉は再びカンカン帽を被ると、雛華のほうへ近寄ってくる。
「それはまだですわ。一体なぜあんなことになったのか見当も・・・」
それは事実だ。
雛華にはあの死体の状況がまったく理解できない。
注射器で血を吸い出したとしても、ああはなりはしないだろう。
「そうでしたか・・・困りましたなぁ。何とかアカどもの仕業だという事実をでっち上げてくれませんかねぇ」
「でっち上げ?」
雛華は目の前でにたにたと笑っている男にぞっとした。
この男はあの死体がどうしてああなったかなどはどうでもいいのだ。
共産主義者がこの事件を引き起こしたとして逮捕したいだけなのだ。
「いやいや、言葉が悪かったですな。先生のお力でアカどもの仕業だと“証明”して欲しいのですよ」
ニヤニヤと笑いながらタバコの煙を吐き出す三倉。
「そんなのは無理ですわ。あの死体が殺人か事故死かもわからないのに」
「先生。そんなことはどうでもいいんですよ。先生はただひと言、アカどもの仕業ですと言ってくださればいいんです。悪いようにはしません」
雛華は吐き気がした。
特別高等警察とはこういう人が居る部署なのか?
「おことわりします」
思わず声が大きくなり、警視庁の廊下を行きかう警官たちが足を止める。
「何でもない、何でもないんだ!」
三倉が怒鳴り声を上げて、足を止めた警官たちを追いやってしまう。
「いや、まったく、嫌われましたなぁ。雛華先生。私は結構先生が気に入ったんですよ。先生は美しい上に聡明でいらっしゃる。男としては征服したくなるってもんです」
「せ、征服?」
雛華は背筋に寒いものが走った。
この男は私を狙っている?
冗談ではない。
彼女は心より愛する夫を心に思い描く。
もしこの男が彼女をものにしようとでもするなら、この男は死体を抱かなくてはならないだろう。
「まあ、どうです? お近づきのしるしに食事でも。ご馳走いたしますよ」
三倉の手が雛華の手を取る。
「やめてください! 人を呼びますよ!」
雛華は手を振り払って玄関へ向かう。
これ以上この男と話しているなど耐えられなかった。
「おーい、先日捕らえたアカ野郎が確か白鳳幸一氏がどうとか言っていなかったっけか?」
聞こえよがしにそう特高課の方へ声をかける三倉。
その言葉に冷水を浴びせられたように雛華は立ち止まる。
「白鳳幸一氏と言やぁ、白鳳女学院の理事長様だよなぁ。まさかそんな方がアカとつるんでるなんてことはねえだろなぁ」
雛華は歯噛みする。
特別高等警察ににらまれれば夫は社会的に抹殺されてしまうかもしれない・・・
どうすればいいの・・・
「いや、まあ、俺の勘違いだろうなぁ」
そういいながら三倉は立ち止まった雛華のそばにやってくる。
「雛華さん、食事でもいかがですか?」
「ご、ご一緒・・・しま・・・す・・・」
三倉の顔にいやらしい笑みが浮かんだ。
今後の展開は?
1、お約束どおり事件を追う灯が魔物に襲われる。
2、三倉とデート中の雛華が魔物に襲われる。
3、同じく雛華が襲われるが、魔物は三倉本人だった。
4、灯でも雛華でもなく屋敷へ向かう途中の摩耶子、桜、美月&運転手が襲われる。
5、まだ早い。誰も襲われずに日常が続く。
メールアドレスは以下の通りです。
masatomaikata¥hotmail.com
¥の部分を@にしてお送り下さいませ。
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- 2006/03/07(火) 20:33:44|
- 帝都奇譚
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最初にお詫びを。
どうやらコメントはいただけなかったようなんですが、メッセやメールで選択肢をいただいておりまして、その中では一番が多く支持されました。
そのため今回は一番の選択肢を選んだ摩耶子ということでストーリーを進めました。
良ければコメントをいただければと思いますが、コメントしづらいようでしたらメールでも結構ですので、よろしくお願いしますねー。m(__)m
今回作中に登場人物といたしまして、FX_MC様の白妙 桜と上坂 美月のお二人、それと妄想狐様よりいただきました白鳳 雛華の三人を登場させていただきました。
キャラの投稿ありがとうございました。
では続きです。
2、
ルート1、そろそろ学校へ行かなくちゃ。
「大変興味深いお話だとは思うのですが、私はそろそろ学校へ行かなければなりませんので、これにて失礼いたしますわ。灯さん、お仕事頑張って下さいませ」
摩耶子は丁寧に深々とお辞儀をする。
挨拶は基本中の基本であり、鷹司家の令嬢として恥じないようにしなくてはならない。
「ありがとう摩耶子ちゃん。この事件の真実は私が掴んで見せるわ」
灯がにこやかに微笑む。
摩耶子のこの言葉が彼女の運命を決してしまったことに、今はまだ二人とも気がついてはいない。
「それではまた。ごきげんよう皆様」
摩耶子は長い漆黒の黒髪をなびかせてくるりと向きを変える。
鞄を手にして歩き始める摩耶子は、まさにお嬢様と呼ぶに相応しく見えることだろう。
灯はそんな摩耶子を見送り、助野とともにその場をあとにした。
「いけないいけない、遅れちゃう」
二人の前では優雅に別れた摩耶子だったが、やはり相当に時間を失ってしまっていることは確かだった。
やむなく摩耶子は革靴を履いていることをいいことに小走りに走り出す。
スカートが翻り、はしたないにもほどがあるが、今日だけは許してもらうしかないだろう。
「はあはあ・・・」
息が切れ、それでも校門が見えてきたとき、ようやく摩耶子は安堵の思いを抱くことができた。
どうやら遅刻はしないで済みそうだわ。
摩耶子は足を緩め、息を整えるべく歩き始める。
淑女たるものが息を切らして校門を駆け込むなどということがあってはならないのだ。
「ふう・・・」
摩耶子の周囲に他の女学生たちの姿も多くなってくる。
紺色のセーラー服に身を包んだ彼女たちは、帝都の新時代の象徴でもあり、周囲の人々の耳目を集める存在なのだ。
このセーラー服を穢すような行為は厳として慎まなければならない。
摩耶子はそう言い聞かせてきた。
鷹司摩耶子(たかつかさ まやこ)。
丙安時代より連綿と続く公家の名門鷹司家。
その傍流とはいえ摩耶子もまたその鷹司家の一員であり、伯爵鷹司昭光の長女としてそれなりの教育を受けるべくこの白鳳女学院へ通っている。
将来をかわした許嫁こそまだ居ないものの、卒業とともに父の薦める縁談を受け入れ、良妻賢母となるのが夢だった。
女生徒たちのざわめきを破るかのようにエンジン音が響いてくる。
黒塗りの一台の自動車が通りをやってきたのだ。
自動車はクラクションを鳴らして校門の前に止まると、お仕着せの洋服を着た運転手が颯爽と降りてきて後席のドアを開ける。
「ご苦労様」
運転手にそう声をかけ、後席から降り立つ一人の女学生。
すらっとした西洋人風のプロポーションをし、切れ長の目は深い知性を感じさせる。
その髪は摩耶子と同じように長い黒髪で、惜しげもなく風に晒している。
「美月、鞄を」
「はい、桜様」
後席の奥から少女が鞄を差し出す。
黒革の鞄はつややかに朝日に映え、桜と呼ばれた女学生はそれを無言で受け取った。
女学生の名前は白妙桜(しろたえ さくら)。
摩耶子の同級生である。
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
「行ってらっしゃいませ、桜様」
運転手と、後席から降りてきた少女はそれぞれ恭しく一礼をして桜を見送る。
「行ってまいりますわ。後は頼みますわよ」
「「はい」」
運転手と少女の声が見事にハモる。
摩耶子はその光景をほほえましく見ていた。
「おはようございます、桜さん」
摩耶子は近づいていき声をかけた。
「あら、摩耶子さん。おはようございます」
にこやかに頭を下げる桜。
名門白妙家のお嬢様だが、物腰は柔らかだ。
公家出身の鷹司家とは違い、武家出身の白妙家は江渡時代には大名家だった家柄だ。
晴岡四万八千石の大名家白妙家は現在は華族に列せられ、子爵家として遇されている。
その武家としての矜持からか、桜も薙刀を嗜み、その腕前は侮れない。
「今日は遅いんじゃありません? いつもはもう教室に入っていらっしゃるでしょう?」
「ええ、今日は知り合いとお会いしたものですから。ところでそちらのお嬢様は?」
摩耶子は桜のそばに立っている少女に目を向けた。
「え? ああ、私付きのメイドで上坂美月(こうさか みつき)といいますわ。美月、ご挨拶なさい。こちらは鷹司家の摩耶子さんですわよ」
桜が摩耶子を紹介する。
「はい、初めまして摩耶子様。私は上坂美月と申します。桜様のお世話をさせていただいておりますので、これからよろしくお願いいたします」
ショートカットの小柄な少女がぺこりとお辞儀する。
「ええ、こちらこそ初めまして。よろしくね」
摩耶子もお辞儀をして挨拶を返す。
「さて、行きましょうか摩耶子さん」
「ええ、桜さん」
摩耶子は桜に頷くと二人は校門をくぐって校舎に入っていった。
「これが一昨日まで生きていた人間だというのですか?」
ひんやりとした地下室に女性の声が響く。
彼女が驚くのも無理は無い。
目の前の寝台に寝かされている遺体はまさにミイラそのものだったからだ。
「持ち物からも間違いありません。カフェー旭屋の女給で下原梅子19歳です」
黒い制服を身につけた巡査がメモを読み上げる。
「19歳? これが?」
メガネの奥の目が再び見開かれる。
白衣を身にまとい、髪を後ろでまとめた彼女は恐る恐る遺体に手を触れる。
遺体とは言え、かさかさになりまったく水分を失ったような皮膚は、とても19歳の若い女性のものとは思えなかった。
「で、先生の見立てはどうなんです? こいつはね、アカに繋がりがあるかも知れんのです。それで俺たちが内偵を進めていたんですがね」
遺体を安置した地下室だというのに遠慮なくタバコをふかしている中年の男。
その煙が彼女に不快感を感じさせる。
彼女の名は白鳳雛華(はくほう ひなか)。
その苗字が示すように白鳳女学院の創業者たる白鳳源次郎(はくほう げんじろう)の孫の一人、白鳳幸一(はくほう こういち)の妻である。
夫の白鳳幸一は白鳳女学院の理事長を務めており、彼女も普段は白鳳女学院で教鞭をとっているが、帝都医科大学に特例で入学を認められるほどの才媛であり、正式な医師免許を持っていることから、こうして監察医まがいのことをすることもあるのだった。
もちろん、依頼の半分はこの才媛に対するやっかみであり、変死体を見せ付けては、この才女が悲鳴を上げるのを楽しみにするというまことに厄介なものでもあったのだが・・・
「アカに?」
この娘が共産主義者だというの?
でも、そのこととこの変死とは結びつかないわ。
「ああ、こいつの店に出入りしている連中にアカの手先が居るとみているんだがね。こいつはその連絡役を努めていたと思われるんだ」
ふうーっとタバコの煙を吐き出す男。
「白鳳先生、こちらは警視庁特別高等警察の三倉警部補です。この遺体に不審を抱かれまして」
「三倉誠一(みくら せいいち)です。よろしく、先生」
三倉警部補が笑みを浮かべながら手を差し出してくる。
その好色そうないやらしい笑みに雛華はぞっとしたものを感じた。
「白鳳幸一の妻、雛華でございます。よろしく」
雛華はわざと幸一の妻であることをあからさまに言い立てて三倉の矛先をかわす。
「あははは、こりゃ嫌われましたかな?」
執念深いヘビのような鋭い目で雛華を見てくる三倉。
「まあ、そりゃいいとしてだ。アカどもが口封じをしたってことは?」
「共産主義者だからと言って人間をミイラにするなんてできるはずがありませんわ」
雛華は首を振った。
いくら共産主義者でもできることではないだろう。
それにしてもいったい何が起こったというのだろうか・・・
今日は学校を休まなきゃならないようね・・・
雛華はこの遺体の検査に取り掛かることにした。
「はあ・・・」
私が馬鹿でした・・・
助兵衛さんは結局たいした情報は持っていなかった・・・
灯は結局ミルクホールでカフェをおごらされる羽目になっただけだった。
そのあと社へ出社し、近況報告をしたあとデスクにも追い払われるようにあしらわれ、自室で一眠りを終えたところだった。
「う~・・・落ち込んじゃうなぁ・・・でもしっかりしないと」
両の頬をパシパシと叩きながら、灯は自分に気合を入れる。
「さて、取材だ取材」
灯は顔を洗い、化粧をして身支度をする。
時間は午後の4時。
特に抱えた事件があるわけでもない灯は言ってみれば遊撃隊だ。
前もって下調べをし、事件性が高くなれば他の記者の出番となる。
今回もそのはずだった。
「今日は港の方をもう一回探ってみようかしら。第一と第二の変死体はあそこで発見されたものね」
灯はそうつぶやくと自室をあとにした。
「ふう・・・今日は白鳳先生はついにお顔を見せられませんでしたね」
「そうですわね。また警視庁のお手伝いではないでしょうか」
三越デパートの表玄関から顔を出す摩耶子と桜。
学校が終わったあと摩耶子は桜に連れられて日本橋の三越デパートまでやって来ていたのだ。
自動車でわざわざ連れてきてもらい、美月を従えてのショッピングは気恥ずかしくも楽しいものだった。
鷹司家は伯爵家ではあるが、財力は白妙家のほうがあるかもしれない。
摩耶子はそんなことを考えながら、桜が次々と洋服や手袋などを買って行くのを一緒に付き合っていた。
桜は羽でも生えているかのようにあちこちの売り場へと飛び回り、そのあとを摩耶子と美月が追いかけるという図式が展開し、その時にいろいろとおしゃべりしたことで、美月とも打ち解けて話すようになっていた。
美月は桜のためにかいがいしく立ち回り、桜の買ったものを両手に抱え手がふさがっているにもかかわらず、さらに桜の買うものを受け取ろうとするので、摩耶子のほうが見かねるぐらいであった。
三人、正確には二人のお嬢様と一人の使用人は三越でのショッピングを楽しんで、今出てきたところだったのだ。
「ああ、満足ですわ。思いのほか安く買えましたもの」
「良かったわね、桜さん」
胸に手を置いて満足そうな微笑みを浮かべている桜を見ると摩耶子も気持ちが暖かくなる。
「今日はお付き合いいただいてありがとう。お屋敷までお送りいたしますわね」
桜が三越前に停車している自動車に摩耶子を誘う。
「ありがとう桜さん」
摩耶子もその誘いを受け入れようと思った。
そのとき、摩耶子の視界にバッグを抱えて小走りに通りを通り過ぎる灯の姿が入ってくる。
どうやら朝の一件で手掛かりを追っているようだ。
摩耶子は・・・
1、「ありがとう桜さん」
自動車で屋敷に送ってもらう。
2、「すみません桜さん、私ちょっと用事がありまして・・・」
朝の事件のことが何となく気になるので灯を追う。
3、「すみません桜さん、私ちょっと用事がありまして・・・」
灯を追うわけではないが、日本橋界隈をもう少し楽しみたい。
4、「すみません桜さん、私、実は学院に忘れ物をしてしまいまして・・・」
自動車で学院まで乗せて行ってもらう。
以上四つの選択肢以外でも結構です。
よければ送って下さいませ。m(__)m
メールアドレスは以下の通りです。
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- 2006/03/06(月) 22:05:56|
- 帝都奇譚
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先日来提案してきました「帝都奇譚SS」第一回目を投下します。
先日コメントいただきましたOZ様の小鳥遊灯嬢を早速使わせていただきました。
この場を借りてお礼を申し上げます。
ストーリーの展開上チラッとしか出せないキャラとなる可能性もありますが、その辺はどうかご容赦下さいませ。
あと、お持ちのイメージと異なってしまうかもしれません。
それもご容赦のほどを。m(__)m
あとカテゴリをSS3にしました。
それでは始めますねー。
1、
帝都東京。
第一次世界大戦も終わり、経済特需も終わってしまった現在、経済には陰りが見えていた。
しかし、そんな陰りよりももっと濃い闇が帝都を覆い始めていることに、人々は気が付いてはいなかった。
「ふわぁ・・・」
思わず大きなあくびをしてしまってから、ハッとなってあたりを見渡す。
山高帽に洋装の紳士が眉をひそめ、ご婦人らしい和服姿の女性は思わず顔をそむけていた。
他にもそのあまりの出来事に驚いた表情の紳士淑女の人たち。
しまった・・・
あまりの恥ずかしさに顔から火が出る思いの中、足早にその場を彼女は立ち去る。
本通りを離れ人通りも少なくなってから、ようやく彼女は一息ついた。
「あーあ、失敗失敗。大あくびしちゃうなんて淑女にあるまじき・・・だわ」
とは言っても眠いものは仕方が無い。
昨夜はほとんど寝ていないのだ。
まだまだ新米の記者である彼女は、足でスクープをモノにするしかない。
彼女の名前は小鳥遊 灯(たかなし あかり)。
「帝都毎朝新報」と言う小さいながらも売り上げ好調な新聞社に勤めている21歳の新聞記者だ。
もちろん帝都日日や朝日新聞のような大手新聞社とは違い、ゴシップ記事などを売り物にするいわば三流新聞社ではあるが、そういう会社だからこそ彼女のような女性も記者として使ってくれているのである。
周りの人たちは嫁にも行かずにとか、行き遅れるとかいろいろ言ってくるものの、彼女自身はこの仕事で自立して行きたいと願っている。
「あれ?」
裏道から目をこすりながら現れた洋装の女性に摩耶子は気が付いた。
活動的なズボンを穿いていて、まるで男性のよう。
手提げバッグも持っているところをみるとお仕事へ行くところだと思うけど・・・
必死にあくびを噛み殺しているところが何となくおかしかった。
と・・・
「灯さん?」
摩耶子はその女性が小鳥遊家の灯であることに気が付いた。
摩耶子の鷹司家と灯の小鳥遊家はその苗字とは違い、先祖代々の付き合いがある。
灯も父親に連れられて以前はよく摩耶子の家に遊びに来ていたものだった。
摩耶子は灯の方へと歩いていく。
「灯さん、灯さんですよね?」
にこやかに話しかける摩耶子。
長い髪の毛が風に翻る。
灯は眠そうな目を摩耶子に向けていたが、やがて気が付いたと見えてにこやかな表情を浮かべた。
「鷹司の・・・摩耶子ちゃんだったわね」
しばらく会っていなかった姉妹のように二人はにこやかに会釈した。
「お久し振りです、灯さん。お仕事に行く途中ですか?」
紺色のセーラー服というのだろうか。
西洋化を推し進めているといわれる白鳳女学院の制服に身を包んだ摩耶子の姿に灯は普段の摩耶子を見出せない。
「おはよう、摩耶子ちゃん。見違えちゃったわ。着物姿しか見たこと無かったから」
「ああ、これですね? セーラー服って言うんですよ。女学院の制服なんです」
摩耶子はくるりと一回転してみせる。
スカートが翻り、健康そうな脚が覗いていた。
「素敵な服ね。似合っているわ」
「ありがとうございます。この道を行くと白鳳女学院なんですよ。知ってました?」
鞄を両手で持ち、にこやかに微笑んでいる摩耶子。
良家の息女として、将来を嘱望される男子に嫁ぐ日を夢見ている少女に相応しい笑みだ。
「そうだったね。摩耶子ちゃんは白鳳女学院に通っていたんだったね」
「灯さんは何をしていらっしゃるんですか?」
「あ、私? あははは・・・新聞記者なのよ。駆け出しだけど・・・」
照れくさそうに苦笑する灯。
「新聞記者さんですか? すごい」
摩耶子はまるで我が事のように嬉しかった。
しきたりや格式を重んじる鷹司家にあっては息の詰まるような日常生活を過ごさなければならない。
何も考えることなくその家の敷いたレールをたどるだけならば、そんな思いはしないのだろうけど、幸か不幸か摩耶子の父鷹司昭光(たかつかさ あきみつ)はわりと放任主義で、摩耶子は好き勝手させてもらえる状況だった。
そのためか、自ら仕事を持ち働いている女性というものに摩耶子はある種の憧れを持っていたのだ。
「すごくなんて無いわよ。下働きだもん・・・」
語尾がごにょごにょと濁ってしまう。
それでも何となく照れくさそうに灯は微笑んでいた。
髪を短く切りそろえ、活動的な洋装の灯の姿は摩耶子にはまぶしく見える。
二人はしばらくぶりに会ったことなど忘れたかのように和やかだった。
「キャー!」
突然通りに悲鳴が上がる。
「何?」
「何ですか?」
思わず二人は悲鳴の方を振り返る。
「おっとっと・・・怪しい者じゃない怪しい者じゃないよ」
そこには無精ひげを生やし、着物と袴を身につけた男が首を振っていた。
見たところ浮浪者のようなぼさぼさの髪の毛をし、不潔さすら感じさせるようなみすぼらしさである。
「俺ぁちょっとセーラー服に見惚れていただけだぁ。何もしねえよ」
「助兵衛さん!」
摩耶子が驚いたことに、灯はその男と知り合いなのかその男の方に駆け出して行く。
悲鳴を上げた女性は、摩耶子と同じ白鳳女学院の女生徒らしく、セーラー服を着て泣いている。
「灯さん」
摩耶子も何があったのか気になって走り出す。
「助兵衛さん、何したんですか?」
泣いている女子生徒を引き寄せて男をにらみつける灯。
「お、灯か? 俺ぁ何もしてねえって。それに俺は助兵衛じゃなくて、助野兵衛(すけのひょうえ)だ」
助野と名乗った男は決まり悪そうに頭を掻く。
「似たようなものです。それに何もしていなければなぜこの子が泣いているんですか?」
灯は女子生徒を背中側に回し、間に入る形をとる。
程なく摩耶子もその場に着き、女子生徒に声をかけた。
「どうなさったんです? 大丈夫ですか?」
「グスッ・・・はい・・・あまりじろじろと見られるので気分が悪くなって・・・」
女子生徒がすすり泣きながら頷く。
「まあ、なんて不躾な」
摩耶子はあきれた。
この男は助兵衛と言われていたが間違いない。
「助兵衛さん!」
「わーった、悪かったって。これ、この通り」
助野は悪びれた様子も無く頭を下げる。
きっとこの男はいつもこういうことをしているんだわ。
摩耶子は少し嫌悪感を持った。
「グスッ、もういいです。学校行かなくちゃ・・・」
女子生徒はこの件はもう忘れたいとでも言うようにその場を走り去る。
摩耶子も灯もそれをただ見送るしかできなかった。
「で? 朝っぱらからこんなところで何をしていたんです? 助兵衛さん?」
灯が胡散臭そうに助野を見る。
「俺は助兵衛じゃねえ! 助野兵衛だ。まあ、それはいいとして、ほら、昨日の朝このあたりでもついに出ただろ」
「ついに出た?」
摩耶子はそろそろ学校へ行かなくてはと思ったが、助野の言葉につい足を動かすのを忘れてしまう。
「ああ、干からびた死体さ」
にやりと笑う助野。
「まさか、助兵衛さんもそれを?」
灯が口元に手を当てる。
「おっ? てことは灯もそれを調査中か?」
「ええ、躰中の水分を抜き取られて死んでいるって奴でしょ? すでに五人目よ」
「五人も? 躰中の水分を?」
摩耶子は驚いた。
先日以来新聞に掲載されていた変死体といわれたもの。
それがその干からびた死体というのだろうか?
「私も夕べはその事件の手掛かりを探したんだけど、収穫無し。助兵衛さん。情報交換しません?」
「お、いいねぇ」
助野は灯の提案に飛びついた。
摩耶子は・・・
1、そろそろ学校へ行かなくちゃ。
2、事件には興味があるわ。良ければ聞かせてもらえるかな。
3、灯さんがこんな男と一緒に居るのは間違っているわ。引き離さなくちゃ。
4、恐ろしい事件だわ。外に居たくない。
コメントで行動を指示していただくと言っても、どうしたらいいかわからないですよね。
こんなふうに選択肢にして見ました。
何番の行動をさせるか、コメントいただければ嬉しいです。
もちろん、これ以外の行動をコメントでいただくのも大歓迎です。
また、付け足しも大歓迎です。
(例)
3、灯さんがこんな男と一緒に居るのは間違っているわ。引き離さなくちゃ。
そして一緒にミルクホールでお茶しましょ。
なんて感じで。
とりあえず始めてみました。
どうなるか私自身が非常に楽しみです。
ご参加よろしくお願いします。m(__)m
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- 2006/03/05(日) 22:25:24|
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提案で提示したSSの背景を少し。
時代は「太正11年」(大正ではない)。
現在の平成日本へと続く大正時代ではなく、架空の「太正」と言う時代にして、実際の時代背景と違うところがあっても容認していきます。
舞台は帝都東京。
現実の大正11年の東京にできるだけ近づけたいですが、資料が乏しい部分もあり、そぐわない部分も出てくると思います。
そのため太正11年としたいと思います。
第一次世界大戦終結後の日本はそれなりの経済発展を進めて行きますが、まだまだ貧しい国であり、現在の日本とは比べ物になりません。
道路には自動車はほとんど無く、人力車が中心です。
中には自転車も使われています。
郊外(特に場所は定めていませんが)にある白鳳女学院。
良家の息女が通うお嬢様学校。
名家、華族、上流と言われる方々の娘たちが多いが、中には平民の息女も通う。
鷹司家。
現実の鷹司家とはまったく関係ありません。
伯爵家であり、公家の血筋。
父親が放任主義のため、摩耶子は割りと自由にしている。
破妖家。
日本の怪奇現象に深くかかわりがある一族らしい。
まあ、こういった背景を考えても、うまく使えるとは限らないんですけどね。
とりあえず考えて見ました。
どんな話になって行くのか・・・
私もドキドキです。
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- 2006/03/04(土) 22:34:22|
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先日の提案を少し進めてみたいと思います。
時は大正11年。
帝都東京の白鳳女学院に通う女学生「鷹司摩耶子(たかつかさ まやこ)」はある事件に巻き込まれる。
血を抜かれたようになり、ミイラ化した死体。
夜歩く死人の噂。
摩耶子の周りで奇怪な事件が頻発する。
果たしてこの事件の真相は?
というわけで、ホラーSSを書いてみたいと思います。
で、以前書いたようにヒロインや登場人物の行動を読者参加で決めて行きたいと思います。
ヒロインや登場人物の行動をコメントしていただき、それに添った行動を取らせて行きます。
それから、登場人物も募集します。
ぜひ私のキャラをSSに参加させたいという方はふるってコメントにキャラを送ってください。
もちろんそのキャラの行動は基本的にキャラを投稿してくれた方に任せます。
例1
三田村 一男(みたむら かずお)
年齢 26歳
警視庁巡査
「帝都の治安を護ることに命を賭けているが、しばしば行き過ぎてしまい無実の人も犯人扱いしてしまう。また現実主義者なので、怪奇現象を信じない」
例2
助野 兵衛(すけの ひょうえ)
年齢 42歳
私立探偵(自称)
「帝都のお騒がせ探偵(自称)。調査と称してよく女湯を覗いたりする困った男。怪奇現象などに出会うと真っ先に逃げ出すタイプ」
例3
鴻野 二郎(こうの じろう)
年齢 22歳
帝国陸軍少尉
「士官学校を出たばかりの新米少尉。帝国陸軍の栄光を信じ、神国日本を世界の一等国とすることを夢見る。純情素朴な青年」
こんな感じでキャラを送っていただければ、SS中に登場させていこうと思います。
よければ送って下さいませ。
もちろんこの中の誰かをコントロールしたいというのでも結構です。
あと、現時点での登場人物を紹介します。
鷹司 摩耶子(たかつかさ まやこ)
年齢 17歳
名門鷹司家の娘。
白鳳女学院に通う女学生。
おとなしめで清楚な女性だが、芯は強く、怪異にもひるまない。
破妖 月子(はよう つきこ)
年齢 ?歳
陰陽師の血を引く破妖家の娘。
帝都の怪異に完全と立ち向かう・・・はず。
触手SSの破妖 汀のご先祖か?
以上です。
ストーリーは基本骨子だけは考えていますが、他はまったく白紙です。
皆さんとともに作って行きたいです。
よろしければご協力下さいませ。m(__)m
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- 2006/03/03(金) 21:59:14|
- 帝都奇譚
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うちには猫が居ます。
野良猫を拾ったものなんですが、もううちに居ついて十数年経ちます。
若い頃は近所の番長を張るほどの血気盛んな猫で、二、三日帰らないこともざらでした。
しかし、今はもう老猫となり、父に甘えるだけのわがまま猫です。
この猫は病気を患っています。
病名は糖尿病。
人間と同じく、毎日朝晩とインシュリン注射が欠かせません。
飼い主である私や父が求められるままに猫の喜ぶ食事を与えていたのが原因だったのでしょう。
水ばかり飲むようになり、ふらふらして自分が何をしているのかもわからないような感じでした。
動物病院で検査をしてもらったところ、糖尿病だと判明しました。
糖尿病はインシュリンが生産できなくなり、躰を壊してしまう病気です。
うちの猫はその日からインシュリン注射が必要な躰になってしまいました。
朝晩毎日一日も欠かさずにインシュリン注射を行ないます。
その甲斐あってか、うちの猫は発病してから5年以上経ちますが、とりあえず生きています。
もちろんその間一日だって注射を休むことはできません。
猫は辛いでしょう。
しかし、これは飼い主の責任です。
猫の健康管理を怠ったツケなのです。
喜ぶからと言って好きなものばかり与えているとこういったしっぺ返しが来ます。
皆さんも生き物を飼っている方が居ると思います。
健康管理はきちんとしてあげてください。
最後に苦しむのは動物なのですから。
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- 2006/03/02(木) 22:17:56|
- 日常
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今日はちょっと時間を作ることができたので、宇宙に上がったローネフェルトを投下しますねー。
楽しんでいただければ幸いです。
無重力・・・
体を支えるものが何も無い世界。
コロニーで生まれ育った私には馴染み深い世界。
この浮遊感も久し振りだけど、何か懐かしい。
モニターに広がる宇宙空間。
星々のきらめきは地上で見るよりもずっと多く、まるで深淵に飲み込まれてしまいそう。
「お姉さま・・・」
背後から声を掛けられる。
いつの間にかこの呼び方に慣れてしまった自分が怖い。
「アヤメ、お姉さまはやめにしてって言ってるでしょ」
私はもう何度言ったかわからないセリフを吐く。
言ってやめてもらったためしは無いのだけども。
「うふふふ・・・はぁい、お姉さまぁ」
アヤメはまるっきりやめる気が無い様子で私に擦り寄ってくる。
このじゃれ付く猫のような仕草にも、腕の中の暖かさも慣れてしまった自分が怖い。
「まったく・・・アヤメは甘えん坊なんだから・・・」
私はそっとアヤメを抱きしめる。
ノーマルスーツ越しでもアヤメの体温が感じられるような気がするのは気のせいかしら・・・
ゆっくりとロールを続けるHLV。
その中で私はそっとアヤメに口付ける。
軌道上での会合までまだ楽しむ時間は充分にあった。
ゆっくりと近づいてくるムサイ級軽巡洋艦「ブリュメル」。
初期の頃のタイプではなく、砲塔を二基に減らした簡易量産型のタイプ。
砲塔を二基に減らしただけでどれほどの量産効果が上がるのか私にはわからない。
けど、砲撃力の低下に見合うものとも思えないけれど・・・
ブリュメルはゆっくりとベクトルを合わせるためにロールを行ないつつ近づいてくる。
そうすることによって全周走査を行ないつつHLVの回収を行なうのだ。
このHLVに乗っているのは人間ばかりではない。
キリマンジャロにあったモビルスーツのうち、宇宙での使用に耐えるものを搭載してあるのだ。
それらをすべて回収して帰投する。
おそらくはそういう命令が出ているはず。
自艦を危険に晒さない限り回収を優先しなければならないでしょうね、ブリュメルの艦長は。
『間もなく本船はブリュメルとランデブーを行ないます。全乗員はノーマルスーツを着用してドッキングに備えてください』
アナウンスが流れ、私は再びノーマルスーツを身につける。
モニターに映っているブリュメルはもうスクリーンいっぱいにまで広がっていた。
私はベッドに寝ているアヤメをそっと揺り起こした。
ハッチを開けるとそこはもう何も無い空間。
その何も無い空間の向こう側にブリュメルのハッチが開いている。
私はトンと床を蹴り、躰を空間に躍らせる。
途端に私は上下左右の無い空間に放り出され、目の前のブリュメルのハッチにたどり着くまではなすすべも無く漂うだけしかできなくなる。
ブリュメルのハッチでは担当員が手を伸ばしてくれていて、私はその手をがっちりと掴む。
そして躰をひねると、私はブリュメルのハッチに躰を入り込ませた。
『ようこそブリュメルへ。乗船を許可いたします』
担当員が敬礼をして私を迎え入れる。
「ありがとう。私はアマリア・ローネフェルト大尉。以後よろしくね」
私も敬礼を返し、奥へ通じる通路をリフトグリップで移動する。
勝手知ったるなんとやら。
私も第一次降下作戦前までは同じムサイ級軽巡の「アウリア」に乗っていたのだ。
どこをどう行けば格納庫に出られるかぐらいはすぐわかる。
あのHLVが搭載してきたモビルスーツが格納されるはず。
いったい何を搭載してきたのか見ておきたいわ。
私は足早に格納庫へ急いだ。
『固定作業急げ! 連邦のパトロールが来る前に離脱するんだ!』
『搬入はあと一機です!』
さまざまな声が飛び交うブリュメルのモビルスーツ格納庫。
私は躰を手すりに引っ掛け、勢いを止める。
搬入されてきている機体は三機。
真新しいグリーン塗装に塗られたばかりの06F2。
砂漠塗装から塗り直されたのだろう。
後は見たことの無い機体だわ。
「ねえ、ちょっと」
私は格納庫の整備要員に声をかける。
『はい、あっ、何でありましょうか?』
呼び止められた整備兵が私の階級章に驚いて敬礼する。
「私は今のHLVで来たアマリア・ローネフェルト大尉なんだけど、あの機体は何なのか知ってる?」
『ああ、はい。右の機体が地上試験に回されたYMS-11。左の機体はザクの改良型でMS-06FZですよ』
「YMS-11?」
聞いたことの無い機体だわ。
でも、全体のフォルムは何となくザクの改良型を思わせる。
『ええ、何でもマグネットコーティングとやらで、駆動をスムースに行なえるようにしたザクらしいですよ。確かアクト・ザクって言ったかな』
「アクト・ザク・・・」
どちらかというと黒に近いようなグレー塗装は精悍さを感じさせるわね。
私はこのアクト・ザクに乗ってみたいと思った。
『そこ! 何をサボっているの?』
パイロット用ではない一般兵用のゆったりしたノーマルスーツを身につけた士官がこちらにやってくる。
そのゆったりしたノーマルスーツの上からでも大きな胸が柔らかいラインを形作っているのがわかる。
そんなことを考えて私は苦笑した。
『す、すみません艦長! こちらの大尉殿に搬入したモビルスーツの説明をさせていただいておりました』
『こちらの大尉に?』
整備兵が敬礼して私を紹介するのを、胡散臭そうに受け取る士官。
階級は少佐だがこのブリュメルの艦長?
「失礼しました。HLVから移乗しましたアマリア・ローネフェルト大尉です。勝手に艦内をうろつき申し訳ありません」
私は敬礼して正面を向く。
『えっ? マリー? マリーなの?』
えっ?
私をマリーと呼ぶ人は少ないわ。
いったい?
『私よ、私。アウリアまで一緒だったリーザ・オスハイマーよ』
少佐がガシッと私の肩を掴む。
「リーザ! っと、オ、オスハイマー大尉?」
私は驚いた。
士官学校時代からアウリアまで一緒だったリーザ・オスハイマーなの?
『今は少佐よ。それにそんな呼び方じゃなくて、士官学校時代と同じくリーザでいいわよ』
バイザーの向こうでいつもと変わらぬ笑顔を見せてくれるリーザ。
階級こそ彼女が先んじているものの、私たちはよく一緒に居たものだ。
彼女は艦船勤務を望み、私はパイロットを志望した。
その甲斐あってか、彼女は巡洋艦に配属され、航海長から今や艦長となったわけね。
「リーザ・・・おめでとう。艦長になったのね?」
『ありがとう。ごめんね、今は作業中だから。発進したら部下を呼びにやらせるわ。それまで艦内でくつろいでいて』
そう言ってリーザは身を翻す。
『そこ! 固定作業にいつまでかかっているの? 発進するわよ!』
『もう終わります』
整備兵たちの声を背に私は格納庫を離れることにした。
30分後、HLVを二つのエンジンの間にはさみこんだブリュメルは発進した。
連邦軍パトロール艦隊の出現も無く、作業を無事終えたブリュメルは粛々と航海を続けて行く。
その行き先がどこになるのか私は知らない。
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- 2006/03/01(水) 21:53:33|
- ガンダムSS
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