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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

お姉さま

日本でも豪雪に悩まされていますが、ポーランドでも雪で屋根が潰れて怪我人や死者が出てしまったようですね。

雪は重いという事実が雪に降るところ以外だとなかなかわかってもらえないんですよね。
豪雪地帯の皆様、これから春に近づきますが、くれぐれもご注意下さい。

今日はローネフェルトの更新です。
楽しんでいただければ幸いです。

11月ともなると砂漠も冷える。
星が瞬くほどの晴天だと急激に冷え込むのだ。
私はサムソントレーラーの荷台に横たわったジムに掛けられたシートの内側にもぐりこみ、毛布をまとって寒さに備える。
いつまで中隊はここにいるのだろう・・・
私もこの砂漠でしばらく過ごすことになりそうだわね。
カナダの森林とは大違い。
ここはまさに砂ばかり。
地球と言うのはこれほど変化に富んでいるものなのね・・・
「寒・・・」
私は何も考えずに眠りにつく。

ん?
温かい・・・?
私はふと何かがそばにあるような気がして目を覚ます。
「すう・・・すう・・・」
「な?」
私は驚いた。
赤子のように安心しきったようなミナヅキ少尉の寝顔がそこにあったのだ。
「ミ、ミナヅキ少尉・・・」
私は思わず声を上げてしまう。
「ん・・・あふ・・・大尉殿ぉ・・・」
うっすらと目を開けるミナヅキ少尉。
「うふふ・・・大尉殿ぉ・・・温かいんですねぇ」
私の毛布の上に彼女の毛布を掛け、ちゃっかりともぐりこんでいるミナヅキ少尉に苦笑する。
「どういうつもり? 自分のモビルスーツのそばにいたんじゃないの?」
「大尉殿のそばに居たかったんですぅ。私は・・・私は大尉殿のそばに居たいんですぅ」
何か咎められたように急にうつむいてしまうミナヅキ少尉。
やはり感情の起伏が激しいような気がするわ。
「一人で居るのはいや・・・一人はいやですぅ」
「ミナヅキ少尉・・・」
私は上半身を起こして彼女を見つめる。
「一人はいや・・・一人ぼっちになるのはいやなのぉ・・・」
ミナヅキ少尉は首を振る。
「ミナヅキ少尉・・・あなたは・・・あなたはなぜここにいるの?」
「えっ?」
顔を上げるミナヅキ少尉。
「あなたは連邦軍のパイロットだったんでしょう? なぜ我が軍のパイロットとしてここにいるの?」
それは私が以前から思っていたことだった。
「連邦軍・・・」
ピクッと肩を震わせるミナヅキ少尉。
その目がみるみるうちに見開かれていく。
「いやぁ! 違う・・・違う違う違うぅ! 私はジオン軍のアヤメ・ミナヅキ。階級は少尉。認識番号00790268579。私はジオン軍人ですぅっ!」
両手で頭を抱えるようにして首を振るミナヅキ少尉。
私は驚いた。
まさかこんな反応が返ってくるとは思いもしなかったのだ。
「ミ、ミナヅキ少尉。しっかりして! 私が悪かったわ。あなたは立派なジオンの軍人よ」
「私はジオンの軍人ですぅ・・・」
取り乱すミナヅキ少尉を私は抱きかかえる。
「ええ、そうよ。あなたはジオンの軍人。アヤメ・ミナヅキ少尉よ」
「!」
顔を上げるミナヅキ少尉。
これだわ・・・
この表情は全てを他人に預けきっている表情だわ・・・
「大尉殿・・・そうですよねぇ? 私はジオン軍人ですよねぇ」
「そう、そうよ。あなたはジオン軍人よ」
私は苦笑する。
砂漠の真ん中で子犬のようにその身をゆだねてくる女を抱きかかえて夜を過ごしているなんて・・・
「うふふ・・・大好きですぅ。お姉さまぁ」
私の胸に擦り寄るミナヅキ少尉。
「ほえ? お、お姉さま?」
きっと私は目が丸くなっていただろう。
そりゃあ、私だって軍人だし、そういう習慣があることも知っている。
でも・・・
私がお姉さま?
「はい。大尉殿は私のお姉さまですぅ。うふふふ・・・温かい」
「ちょ、やめ、やめなさい」
私はミナヅキ少尉を振り払おうとするものの、彼女は擦り寄るのをやめない。
「うふふふ・・・いやですぅ。お姉さまと一緒に寝るんですぅ」
「ちょ、やめ、やめてってば・・・」
「一緒に寝るんですぅ・・・」
すごく嬉しそうなミナヅキ少尉の笑顔。
私はその笑顔に負けてしまった。

「ローネフェルト大尉殿。旅団司令部から郵便が届いています」
朝早いというのにブラウン伍長が郵便物を届けてくれる。
「ありがとう」
私は手紙を受け取り差出人を確認した。
ソロモン駐留部隊所属、オットー・ホス准将閣下。
「まさか返事が来るとは・・・」
私は感謝した。
「教官。ありがとうございます」
検閲の手が入っていない封書。
参謀部特権で送ってくれたに違いない。
私のわがままを聞いてもらえたなんて・・・
訓練学校の教官というつてで頼みごとをしてしまったけれど、まさか返事が来るとは思っていなかったわ。
私は手紙を持ってサムソンの助手席に腰掛けると封を切る。
「アヤメ・ミナヅキ少尉及びザルコフ機関調査報告書・・・か」
私は念のために運転席に鍵をかけ、誰も入れないようにしてから読み始めた。

私は書類を読んでいく。
それは私のような末端の兵士に知られてもいい程度の情報でしかなかったが、それでも驚くべき内容だった。
ザルコフ機関。
それは端的に言って、最近売り出し中のニュータイプ育成機関のフラナガン機関と同じように戦場で最強の兵士を作り出すための機関と言っていいらしい。
ザルコフ機関が目指したものは、薬物によって人間の反応を早め、戦場での反射能力の高い兵士を作り出そうとしたようだ。
ところが実験は失敗し、薬物中毒患者を作り出すだけに終わってしまった。
アドラー少佐もザルコフ機関によって薬物調整を受けた一人だという。
少佐はエリートとして期待され、その能力をさらに高めるべくキシリア・ザビ閣下直々の命でザルコフ機関に回されるも、薬物により精神の安定さを欠くようになってしまう。
戦場のような興奮状態になると自己のコントロールが利かなくなり、状況把握に問題がでてしまうらしい。
結局、ザルコフ機関は抹消され、アドラー少佐はしばらく後方勤務に回されていたようだ。
ところが今回の戦争でアドラー少佐も実戦部隊に配属される。
ザルコフ機関でのことは表面には出ずに、少佐はグラナダ攻略戦に参加。
その時に地球連邦月面防衛隊所属のアヤメ・ミナヅキ大尉を捕虜にする。
少佐は親衛隊には彼女を渡さずに、キシリア・ザビ閣下のつてを頼って『連邦軍の情報を実戦部隊が把握する目的のため』と言う名目で彼女を手元に置いた。
それから何が行なわれたのかは調査報告書でもはっきりしない。
断片的なことだけだが、彼女は他の捕虜をその自らの手で殺させられている。
自らの手で同僚を殺させられるとは・・・
陵辱され、薬物を使われ、精神も肉体も蹂躙される。
そんな目に遭ったら、その苦痛を逃れるためならば何でもするようになるかもしれないわ・・・
少佐の言うとおりにしていれば痛い目に遭わない。
少佐の言うとおりにしていれば何も考えなくてもいい・・・
片方で陵辱し、片方で救いを与えてやる。
それに薬物を重ねれば忠実なメス奴隷の出来上がりというわけか・・・
私は暗澹たる思いに捕らわれた。

だが、アドラー少佐はやりすぎた。
複数の捕虜が姿を消し、薬物の在庫が合わなくなり、噂も広がり始めた。
そのためグラナダは彼をその部下ともども地上へ送ったというわけか・・・
でも、予想に反してそれなりに彼は生き延びてきた。
一つにはアヤメ・ミナヅキ准尉が予想以上にモビルスーツの適性があったこと。
また一つには彼の部下たちがそれなりに彼によっていい目を見せてもらっていたことだ。
そのため彼はそれなりの敬意を払われ先日まで生き延びていた。
臭いものにふたをしたかった突撃機動軍は彼のわがままにもそれなりに配慮していたらしい。
カナダに居る山猫の噂を聞いた彼は私を呼び寄せた。
そういうことだったわけか・・・

私は手紙をたたむと、外に出て火をつけた。
この手紙がほかに見られるとホス准将の立場が悪くなるかもしれない。
もっとも、見せてもいいものだから見せてくれたんでしょうけどね。

「お姉さまぁ! お姉さまぁ!」
外でミナヅキ少尉の声がする。
ふう・・・
しょうがないわね。
私はサムソンの助手席から外に出る。
「あっ、お姉さまぁ」
すぐにミナヅキ少尉は私を見つけて駆け寄ってきた。
「ミナヅキ少尉。言ったでしょ? お姉さまはやめてって」
「ええ? でもぉ・・・」
しょげてしまうミナヅキ少尉。
「夕べはお姉さまって呼んだらアヤメって答えてくれたのにぃ・・・」
私は顔から火が出るほど赤くなったに違いない。
「ゆ、ゆ、ゆ、夕べは夕べです。お姉さまはやめなさい!」
私はつい大声を出していた。

「オーネトの油田?」
私はボスマン中隊長に聞き返す。
「ああ、そこまで行けば一時的だがガウの離着陸ができるようになっているらしい」
「しかし、連邦軍の哨戒ラインに引っかかりますね」
指揮車のテーブルに地図が広げられ、位置関係が示される。
ヒューリック大尉がそこには記されていない線を指で引いていく。
「砂漠を横断して連邦軍の哨戒ラインを突破ですか・・・」
私もその難しさに顔をしかめているだろう。
「しかし行くしかないな。このままではいずれトリポリも落ちるだろうし、そうなれば我らには行くところが無い」
「オーネトからキリマンジャロへ行って宇宙へ上がりますか・・・砂漠で死ぬよりは宇宙で死にたいですからね」
ヒューリック大尉に私も賛成したい。
でも、ジオン軍人として悔いの無い死に方ができれば・・・
私は首を振った。
できれば死にたくはない。
サイド3に帰ってパン屋を継ぎたい。
私の作ったパンで・・・
私は苦笑した。
これだけたくさんの人を殺しておいてパン屋もないものよね。
「ローネフェルト大尉の小隊に先に立ってもらおう。ジオンの国籍マークを消せば連邦のモビルスーツに違いないわけだからな。一時的にでも混乱させられるだろう」
「それは戦争法規違反です」
私は反対した。
「シールドには国籍マークを描いておく。シールドを背負っていて見えなかったのなら、それは敵の落ち度だ」
ボスマン少佐がニヤリとする。
詭弁だけど・・・
「一機だけでは仕方が無いのでは?」
ヒューリック大尉もあまり乗り気ではなさそう。
「もちろんだ。ミナヅキ少尉にもジムに乗ってもらう」
「そ、それは・・・申し訳ありませんがその件に関してはご勘弁願えませんでしょうか」
私はどうしても躊躇する。
ミナヅキ少尉は連邦軍人だったのだ。
ジムに乗せることで彼女の精神の安定が崩れるかもしれない。
「ローネフェルト大尉。これは指示ではなく命令だ。ミナヅキ少尉にもジムに乗ってもらう」
ボスマン少佐の言葉が重くのしかかった。 [お姉さま]の続きを読む
  1. 2006/01/30(月) 20:14:11|
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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