書くのは楽しいですねぇ。
今日は休みをフルに使ってSSを書いていました。
というわけで、ホーリードールの五回目を投下します。
楽しんでいただければ幸いです。
5、
二人が教室に入っていくと、もうほとんどの生徒たちは給食を食べ終えてしまったあとだった。
「はう~・・・もう残っていないかも~」
泣きそうな情けない声を出してしまう紗希。
彼女にとって給食を食べられないということは、それだけで死にそうな気持ちになってしまう。
紗希にとって元気の源は食事なのだ。
「紗希ちゃん。とにかく残っていないか調べてみましょう」
落ち込みかけている紗希を元気付けようと、明日美は食缶の方へ歩き出す。
いつも食缶が空になるということは、人気メニューでもない限りそうはない。
だが、今日はあいにくイカのカリン揚げだ。
イカにカレー味をつけて油で揚げたこのメニューは明日美も大好きな人気メニューだった。
もしかしたらもう無いかも・・・
明日美自身もちょっと悲しくなる。
「紗希ちゃん、明日美ちゃん。こっちこっち」
二人を呼ぶ声に振り向く明日美。
教室の片隅に机が並べてあり、その上には給食の食器が並んでいた。
そして埃がかからないようにクロスがかけられている。
「こっちだよー。紗希ちゃん、明日美ちゃん」
その机に着いて手を振っている一人の少女。
白いブラウスに可愛いリボンがついた服を着て、肩までの髪とカチューシャをトレードマークにしている。
「雪菜ちゃん」
「雪菜ちゃん」
二人の声がハーモニーを奏でる。
「もう、遅いよ。食べちゃうところだったのよ」
そう言いながらもニコニコと二人を迎える小鳥遊 雪菜(たかなし ゆきな)。
「ごめんね、後片付けが長引いてって・・・そんなに長引いた覚えないんだけどなぁ」
「待っててくれたのですか? どうもありがとうございます」
二人は呼んでくれた雪菜のところへ行く。
「そんなことはいいの。さ、食べましょ。もうお腹ぺこぺこよ」
雪菜がクロスを取り払うと、もう冷めちゃったものの美味しそうな給食が三人分机の上に並べられている。
「うわぁ! 取り置いてくれたんだ。ありがとー」
紗希は喜んで席に着くなり食べ始める。
「もう、紗希ちゃんたら」
「うふふふ、紗希ちゃんらしいよね。明日美ちゃん、食べよう」
明日美があきれるなか、雪菜は席について給食を食べ始めた。
「本当にありがとうございます。雪菜ちゃん」
「いいのよ」
明日美が頭を下げるが雪菜はにこやかに微笑んで頷くだけだった。
「美味しーい」
紗希は幸せそうにイカのカリン揚げを食べている。
その表情を見ていると、明日美も雪菜もなぜかほほえましく感じるのだった。
「紗希ちゃん幸せそう」
「本当ですわ。食べている紗希ちゃんはとても可愛いですわ」
「う、そ、そうかな」
口をもぐもぐさせながら照れくさそうに紗希は笑った。
「あら?」
「どうしました? 雪菜ちゃん」
スプーンを口に運ぶのをやめ、明日美は雪菜の方を向く。
「二人ともそんなペンダント・・・していたかしら?」
雪菜は今まで見たことのない、二人の胸に輝くペンダントを見る。
「え? あれ? してた・・・はずだよね・・・」
「ええ・・・そう・・・思いますわ」
紗希も明日美も一瞬不思議な感覚に捕らわれる。
何かこのペンダントによって自分が自分で無くなって行くような・・・
そんな不気味な感じを一瞬抱いてしまったのだ。
だが、それはすぐに吹き払われ、ペンダントに対する疑問はなくなってしまう。
「結構似合っているよね?」
「ええ。紗希ちゃんは青、明日美ちゃんは赤なんですね。いいなぁ。おそろいで」
紗希と明日美を交互に見比べてうらやましがる雪菜。
「私も欲しいなぁ」
「それでしたら今度一緒に買いに行きましょう。私も紗希ちゃんに教えていただいたお店ですから」
明日美が微笑む。
「ええ? 嘘。明日美ちゃんが教えてくれたんだよ」
紗希が首を振った。
「あら? そうでしたか? どこで買ったんでしたかしら」
明日美は不思議そうにペンダントに眼を落とした。
その明日美の胸の上でペンダントは鈍く不気味に光っていた。
放課後。
紗希と明日美は教室の掃除を終えて帰宅の途に着く。
鞄を持って夕暮れの通学路を歩いていく二人。
「今日は雪菜ちゃんにとてもお世話になってしまいましたわね」
「うん。おかげで給食が食べられたもんね」
二人にとって雪菜は五年生になってから知り合った友人だった。
だが、今ではずっと昔から知り合っていたかのような気がするほどの仲良しと言っていい。
グループなどが違ったりするために、紗希と明日美ほど一緒にいるわけではないが、多くの時間をともに過ごすことが多いのだ。
「今日は雪菜ちゃんは中心街に用事があるそうですわ」
「うん、バスに乗って行くって言っていたもんね」
「残念ですわ。今日はお母様がアップルパイをご用意しているはずですので、一緒に遊びに来て欲しかったのですが」
明日美の表情が少しかげる。
せっかくのお母さんのアップルパイをみんなで楽しく味わいたかったのだ。
「また今度呼んであげようよ。雪菜ちゃんもきっと喜ぶよ」
紗希はそう言って慰める。
「ええ、そうですわね。それに今日は紗希ちゃんが一緒ですから、お母様も喜んでくださいますわ」
「そうかな? お邪魔じゃないかな? いつも家のお母さんはご迷惑を掛けないようにねってうるさいんだ」
ぶらぶらと楽しくおしゃべりをしながら歩みを進めて行く二人。
「そんな、迷惑だなんて思ったことは一度もありませんわ。お母様だってそう思っているはずですわ」
「だといいんだけど・・・」
ちょっと自信が無い紗希。
元気で活発な彼女は時々ドジもやってしまう。
それが紗希にはちょっと気になることだったのだ。
「紗希ちゃん、心配いりませんわ。さ、早く帰ってお母様のアップルパイを食べましょう」
「うん、そうだね。ご馳走になるね」
「ええ、どうぞご遠慮なく」
にこやかに微笑む明日美。二人は夕暮れの道を明日美の家へ向かって歩いていった。
「うふふふ・・・さあ、暴れなさい。お前には破壊という闇を広めてもらうわ」
人気の無いビルの屋上。
夕暮れの太陽を背にしたシルエットはまさしく女性。
まるで何も着ていないかのような躰のラインをむき出しにしていながらも、何かその姿は神々しささえ感じさせる。
全身を真っ黒なピッタリとフィットした衣装に包み、手足の先さえも真っ黒なブーツと手袋で覆っている。
その視線の先には地上を蠢く虫けらにも等しい人間どもの姿。
その中へふらふらと酔っ払いのようにビルから歩き出して行く巨大で毛むくじゃらな生き物。
醜悪なゴリラを模したようなその姿に、人々は始めは訝しみ、次には悲鳴が周囲を圧するようになる。
「うふふふ・・・始まったわ」
真っ黒に塗られた唇を艶めかしい赤い舌が舐めて行く。
それはこれから起こる惨劇への期待に他ならなかった。
ドクン・・・
「えっ?」
立ち止まる紗希。
「どうしたので・・・」
ドクン・・・
明日美の言葉も止まってしまう。
ドクンドクン・・・
心臓が激しく鼓動する。
「あ・・・な、何・・・何なの、これ!」
「な、何でしょう。胸が・・・胸が苦しい感じが・・・」
二人は思わず顔を見合わせてしまう。
『さあ・・・』
『さあ・・・選ばれし少女たちよ・・・』
『時が来ました・・・』
『さあ・・・目覚めるのです・・・』
『ホーリードールたちよ!』
直接頭に響いてくる甘い声。
「ホ、ホーリードール?」
「い、いや。いやです。私はいやです!」
紗希の横で狂ったように首を振る明日美。
「あ、明日美ちゃん・・・」
「紗希ちゃん・・・聞いてはだめ・・・聞いてはだめです!」
明日美は耳をふさぎ、必死になって声から逃れようとする。
紗希はそんな明日美に驚き、何とかしようと思ったが、頭に響いてくる声が甘く囁きかけてくるのを拒絶できなかった。
「あ、明日美ちゃん・・・さ、逆らわないで・・・」
「紗希ちゃん! だめです! 惑わされないで!」
明日美は歯を食いしばって紗希の方へ手を伸ばす。
親友が惑わされるのを見過ごしにはできないのだ。
『さあ・・・目覚めなさい! ホーリードールサキよ!』
「は・・・い・・・ゼーラ様・・・」
紗希の瞳はたちまち虚ろになり、その胸から下がっているペンダントを手にとって差し上げる。
ペンダントが青く発光し、その光に紗希は包まれていく。
「紗希ちゃん・・・だめです・・・」
頭の中の声はますます強くなり、明日美の意識を奪い去って行く。
『さあ、次はあなたの番です、ホーリードールアスミ! 目覚めなさい!』
「ああ・・・あああ・・・」
すうっと明日美の瞳から光が失われていく。
「は・・・い・・・ゼーラ様の仰せのままに・・・」
明日美も胸のペンダントを握り締めて天高く持ち上げた。
赤い光がはじけるように広がって明日美の躰を飲み込んでいった。
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- 2006/01/16(月) 22:40:15|
- ホーリードール
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と言うことで、本日の更新です。
ローネフェルトの新たな戦場はアフリカとなります。
この砂漠の地で新たな戦いに望むローネフェルトをお届けしますねー。
潮風が吹いている。
太陽が照り付けている。
「オーライ、オーライ」
U-34から物資が陸揚げされていく。
ニューヤークからの輸送物資はこうして潜水艦で細々と輸送するしかない。
地中海の輸送ルートはすでに失われていた。
今回無事にトリポリにたどり着けたのは僥倖というほかは無い。
途中連邦のフリゲートに追跡を受けたものの、何とか振り切ることができたのは艦長の腕前のおかげだったでしょう。
私は艦長以下のU-34の乗組員に別れを告げ、艦を後にした。
ジャブローから帰還した私はすぐに軍本部に呼ばれ一階級の昇進を受けた。
ジャブローを攻略できなかったにもかかわらず、生き残ったものには昇進が与えられたのだ。
それは敗北を糊塗する目的と士気阻喪を阻止する目的の二つがあったのだろうけど、それが上手くはいかなかったことは明白だった。
ミナヅキ少尉は軍病院に入れられ、私は待機命令を受けてニューヤークに留まった。
その後多少の小競り合いがあったものの、我が軍は後退続き。
地上の拠点も次々と失っていた。
私は命令を受けてU-34に乗り込み、ジオン海軍の一員として水中用モビルスーツ乗りとなるのだと思った。
ところが今私はU-34を追い出され、このアフリカの港町で所在無げに過ごしている。
「宇宙へ行けって言ったって・・・どうしたらいいのよ・・・」
私は荷物を手にして桟橋を後にする。
「アマリア・ローネフェルト中尉殿。いえ、大尉殿でしたね。アフリカへようこそ」
小柄な少女が着こなせない軍服を着て敬礼していた。
「あなたは?」
私は答礼を返しながらそう尋ねる。
「はい、私はジオンアフリカ軍団所属、第999軽旅団、第444モビルスーツ中隊のモニカ・ブラウン伍長です」
まだほんの少女と言っていいかもしれないわ。
我が軍の人材不足は深刻のようね。
「アマリア・ローネフェルト大尉よ。よろしく」
「どうぞこちらへ。少佐殿がお待ちかねです」
ブラウン伍長が私の荷物を引き取り、先に立って歩き出す。
「少佐殿?」
私は一瞬アドラー少佐を思い出す。
「オスカー・ボスマン少佐殿です。第444モビルスーツ中隊の中隊長です」
ブラウン伍長が歩く先には車が用意されていた。
「どうぞ。大尉殿」
「ありがとう、伍長」
私は開けられたドアから中に乗り込む。
ブラウン伍長はすぐに私の荷物をトランクに放り込み、そのまま運転席に着くと車を発進させた。
「どこへ向かうの?」
「第444中隊の集結地が近くなんです。そちらにご案内するように申し付かっています」
「そう・・・」
私は少し襟元を緩める。
そろそろ晩秋だと言うのにこの暑さはどうだろう。
さすがに北アフリカと言うことか・・・
砂漠化だけはとどまり無く、すでにサハラは以前の倍近くの広さになっているという。
かつてヨーロッパの強国同士が最後の騎士道を発揮した場所。
狐やネズミがいると言うけどホントなのかしら・・・
私は窓の外を眺める。
舗装された道路とところどころに椰子の木が立っている以外は砂ばかり・・・
こんなだだっ広い場所ではすぐに発見されてしまうだろう。
こんなところで戦っているなんて想像もつかないわね。
第444中隊の集結地というのはすぐに見つかった。
数両のマゼラアタックやサムソントレーラーが砂漠の中で一団となって停止しているのだ。
空爆でも受けたらひとたまりも無いように思える。
キャリフォルニアやカナダ方面で見たようなグリーン塗装ではなく、デザートイエローに塗られたマゼラアタックやサムソンたち。
なるほど、これは意外と見つけにくいのかもしれないわ。
サムソンの一団の中に一台のホバートラックがある。
正面と側面にはでかでかと我がジオンの国籍マークが描かれていた。
ブラウン伍長はそのホバートラックのそばに車をつける。
「ブラウン伍長・・・これって・・・」
「はい、第444中隊の司令部車両です。見てお判りの通り、連邦軍のホバートラックを捕獲したものです」
ブラウン伍長は私のためにドアを開けてホバートラックに招き入れてくれる。
私はデザートイエローに塗られた連邦軍の車両に初めて足を踏み入れた。
ホバートラックの中は、狭いけれどもテーブルや地図などが広げられ、椅子が設置されて司令部として使えるようになっていた。
その椅子に座っていた二人の少佐がすっと立ち上がって私の方を向く。
「アマリア・ローネフェルト大尉です。ニューヤークから参りました」
私は敬礼して反応を探る。
「ああ、聞いている。宇宙に上がるってこともな。だが、宇宙へ上がるには敵の前線を突破しなくてはならん」
銀髪の少し禿げかけた太目の中年の少佐がそう言って頷く。
「敵の前線を?」
「そうだ。そのためしばしの間君は我が第444中隊に所属してもらうことになる。これはノイエン・ビッター閣下もご承知下されている」
はあ・・・話がうますぎると思ったわ。
要はここで敵を食い止めなければ、宇宙には上がれないってことね。
「了解しました。以後、よろしくお願いいたします」
私は再び敬礼した。
「うむ、よろしく頼むぞ、大尉。君には期待しておるのだ。何せ君はカナダ、アラスカ、そしてジャブローの生き残りなのだからな」
太目のお腹を揺らして笑っている少佐。
察するところこの少佐がボスマン少佐ということか・・・
「ほう、それはすごい。ぜひとも我が中隊にほしいものだ」
現地人よろしくターバンを頭に巻いたもう一人の少佐が私のほうへやってくる。
「第999軽旅団、第443モビルスーツ中隊のロンメルだ。ここに飽きたらいつでも俺のところにくるがいい」
そう自己紹介をして笑うロンメル少佐。
豪放磊落な感じでたたき上げの軍人と言う感じがする。
信頼の置ける指揮官という感覚ではロンメル少佐のほうがボスマン少佐より上のようだわ。
「ロンメル。それは困るぞ。彼女にはこれから我が隊の中核となってもらわねばならんのだ」
「ふん、それはそうだろう。君のところはモビルスーツはあってもパイロットがいないのだからな」
パイロットがいない?
いったいどういうこと?
「そんなことは無い。まだ三人残っている」
ボスマン少佐が言った言葉に私は驚いた。
三人?
たった三人?
それじゃ中隊とはとても言えないわ。
「三人か・・・実態は小隊と言うわけか・・・」
ロンメル少佐が首を振る。
「本国からの補充が届かんからな・・・パイロットは誰でもそばに置きたいものよ」
「ふん、誰でもと言いながら、しっかりと優秀なパイロットを受け取ったじゃないか」
ふふ・・・ボスマン少佐に対する恨み言のようだわ。
「ビッター閣下によくも取り入ったものよ」
「だが、パイロットもいなければ機体も無い。これでどうやって戦えと言うのか・・・」
「ふん、弱音を吐くな! 俺はいざとなればここで何年でも戦ってやるさ」
ロンメル少佐はそう言って外へ出て行く。
「いいか、ローネフェルト大尉。さっき言ったことは本当だ。いつでも俺のところに来い」
「ハッ、機会がありましたら、その時にはぜひ」
私は敬礼をしてロンメル少佐を見送った。
「まあ、座れ」
私は勧められるままに席に着く。
「自己紹介がまだだったな。俺がオスカー・ボスマン少佐。第444モビルスーツ中隊の指揮官だ」
薄くなった銀髪をなでつけながらボスマン少佐がそう自己紹介をする。
指揮官としての腕がどうなのかはわからないが、しばらくはこの人の下に居なくてはならないらしい。
「あらためまして、アマリア・ローネフェルトです。よろしくお願いいたします」
私は立ち上がって敬礼する。
「ああ、構わん、座ってくれ」
「はい」
私は再び席に着く。
「これが辞令だ。君には第二小隊を率いてもらう。ただし、今は君だけしかおらん」
「私だけ?」
私は辞令を受け取ると目を通す。
そこにはただ簡潔にボスマン少佐の指揮下に組み入れられる旨が記されていた。
「ああ、本国にはパイロットの補充を頼んではいるが・・・なかなか来なくてな・・・」
「そうですね。補給ルートは各所で寸断されていますから」
「だが、明後日には二人到着する予定だ。ロンメルは物資調達に関しては達人だが、人を調達するのは俺の方が上手いぞ」
そう言ってボスマン少佐は笑った。
「まあ、とにかく明後日には君の部下も紹介できるだろう。それまではゆっくりしていてくれ。中隊もここを動けんしな」
「わかりました。一つよろしいでしょうか?」
私は気になったことを尋ねる。
「ん? なんだ?」
「私のモビルスーツはあるのでしょうか?」
「心配するな。モビルスーツだけは七機ある。1から3番機までは第一小隊が使うが、残りは好きに使え」
ボスマン少佐は手元の書類に目を通す。
補給の不均衡がこういった形で現れているのか・・・
パイロットがここにはいなくてモビルスーツがある。
ところがある場所ではパイロットがいてモビルスーツが無いのだ。
「わかりました。品定めをさせていただきます」
「ああ、ブラウン伍長に部屋を用意させる。あとは彼女に任せろ」
「了解しました。それでは失礼いたします」
私は敬礼してボスマン少佐の指揮車両を後にした。
「こういうこと・・・」
私は驚いていた。
ブラウン伍長に案内されて連れて行かれた先はサムソントレーラーの場所だった。
「すみません、大尉殿。いつ連邦軍の攻撃があってもいいように各車両自体がパイロットの宿舎のようになっているんです」
「なるほどね。それで乗り手のいない4、5、6、7号車のどれかを好きに使えってことか・・・」
私はシートをかぶせられている車両を見てまわる。
それにしても・・・
いったいここは何なんだろう・・・
指揮車両もそうだが、物資輸送用のトラックはほとんど全てが連邦軍の捕獲品だわ。
それにマゼラアタックに混じって61式戦車まであるし・・・
まさか・・・
私は手近のサムソンのシートをはぐってみる。
「これは・・・」
サムソントレーラーの荷台に載せられていたのは、紛れも無く連邦軍のジムだった。
各所に砂漠用のフィルターを噛ませてある砂漠戦仕様のジム。
その胴体には胸のところにジオンの国籍マークが入っている。
「ほかも全部そうなの?」
私はブラウン伍長に尋ねた。
「全部と言うわけではありません。第一小隊はすべてジオン製モビルスーツですし、残りの四機のうち二機だけが捕獲したジムとなります」
「残りの二機は?」
「MS-06Dと05です」
「ふう・・・」
私はため息をついた。
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- 2006/01/16(月) 18:49:35|
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