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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

レディベータ

TVで戦国自衛隊のドラマをやっていますねぇ。
74式やUH-1Jといった戦車やヘリが活躍しています。

でも、弾がすぐに無くなっちゃいそうですね。

さて、ホーリードールの続きです。
ちょっとしか書けませんでしたが、お許し下さいませ。

8、
ああ・・・
気持ちいい・・・
雪菜はふわふわした気分に包まれていた。
暖かい・・・
ただ抱かれているだけなのにこんなに気持ちがいいなんて・・・
雪菜の目には何も映ってはいない。
「うふふ・・・そうよ・・・闇にその身をゆだねなさい」
デスルリカ様の声が聞こえる。
雪菜はその言葉のままに躰の力を抜く。
気持ちいい・・・
水の中に漂うような浮遊感と開放感。
「あなたは生まれ変わるのよ・・・脆弱な人間を捨てるの・・・」
「は・・・い・・・」
すごく安心する・・・
全てをゆだねてその声にのみ従う・・・
それだけで雪菜はこの上ない幸福感に包まれる。
人間を捨てる・・・
そんなものにこだわりはなかった。
この心地よい闇にただ浸っていたかった。
唇に柔らかなものが触れる。
それがキスだと気が付いた時、雪菜は至福の喜びに包まれた。

「雪菜。光とは何?」
虚ろな目をして宙を見つめている雪菜を抱きしめながら、デスルリカはそう問う。
「はい・・・光はすべての醜さを暴き出します・・・光は・・・憎むべき存在・・・」
雪菜は幸せそうに笑みを浮かべながらそうつぶやく。
「うふふ・・・いい娘ね。では人間はどうするべきかしら?」
「人間は・・・支配されるべき生き物です・・・」
雪菜の笑みは冷たい。
「そう。そして、それを支配するのがあなた。あなたは闇の女となるのよ」
「私は・・・闇の・・・女・・・」
嬉しそうにデスルリカに微笑む雪菜。
「ふふふ・・・そう・・・あなたは闇の女、レディベータ」
デスルリカがそう言うとともに漆黒の闇が雪菜の躰を包み込んで行く。
「ふあ・・・あは・・・気持ちいい・・・」
まるで繭に包み込んで行くかのように雪菜の躰は闇に覆われて見えなくなる。
「気持ちいいよぉ・・・」
雪菜の幸せそうな声だけが闇の中から流れていた。

無言で歩いている二人。
紗希も明日美も言葉を発しない。
二人で手を握り合いながらうつむいて歩いている。
それほど戦いは二人にとってはショックだった。
どうしよう・・・
紗希は戸惑う。
いつもなら紗希を励ましてくれるはずの明日美が落ち込んでしまっているのだ。
普段バカやって落ち込む紗希を助けてくれるのが明日美であり、明日美を慰めることなどほとんどなかったのだ。
「明日美ちゃん・・・」
心配そうに親友を見やる紗希。
明日美はさっきからうつむいたままで何も言ってくれない。
「お、お腹すいたね・・・お母さん、今日は何を作ってくれるかなぁ・・・あ、あはは・・・明日美ちゃんも食べて行くでしょ?」
「・・・・・・」
「え、と・・・そ、そういえばね、うちの隣の貴志川さんの猫が子猫を生んだんだよ。それがもうめちゃくちゃ可愛くて・・・今度一緒に見に行こうよ・・・」
「・・・・・・」
「あ、あうー・・・明日美ちゃん・・・」
途方に暮れる紗希。
「紗希ちゃん・・・」
「明日美ちゃん」
ハッとして明日美を見る紗希。
「ごめんなさい・・・今は何も答えられませんですわ・・・」
うつむいたままの明日美。
「う、うん。そうだよね」
紗希はやむを得ず頷く。

『ふう・・・予想通りとはいえ、これほどとは・・・仕方ないわね』
突然頭の中に響いてきた言葉に二人はハッとして身を硬くする。
「あいつだ!」
紗希はその声に聞き覚えがあった。
もちろん間違いようもなくゼーラのものである。
「いやぁっ!」
思わず明日美は耳を押さえてしゃがみこんでしまった。
「くそぉっ! 私たちをどうするつもりなの!」
『今回のショックを調整します。まったく・・・ドールへの調整に時間が掛かるとは思っていたけどこれほどとはね』
無慈悲に頭の中にゼーラの声が響く。
耳をふさいでいても関係ない。
「や、やめてぇ! 私たちに構わないで!」
「やめてくださいぃっ! もう私たちをいじらないでぇ!」
しゃがみこんで頭を振っている明日美。
『おろかな・・・お前たちはホーリードール。それを忘れないことね。調整を始めるわ』
「いやぁっ!」
「いやだぁっ!」
明日美も紗希も耳をふさいで叫び声をあげる。
しかし、二人の願いもむなしく、二人の首にかかっていたペンダントが光を発する。
「ああ・・・」
「いやぁっ!」
赤と青の光が二人を包み込み、二人の姿はかき消されていった。

「紗希ちゃん。紗希ちゃん」
大好きな少女漫画に熱中していた紗希は明日美に肩をゆすられて我に返った。
「あれ? もうこんな時間? ヤバ・・・早く帰らなきゃ・・・」
時計を見るとすでに18時を過ぎている。
いつの間にこんなに時間が経ったのだろう。
それにいつ本屋さんへ来たのだろう。
まったく覚えていないけど、マンガに夢中になっていて忘れちゃったのかな・・・
「ええ、いつの間にかずいぶん時間が経ってしまいましたわ。これでは家にお呼びするわけには行きませんですわね」
にこやかだが、ちょっと残念そうに明日美が店内の時計を見上げる。
「あう~・・・ごめんね。せっかくのアップルパイが・・・」
紗希も残念そうにうつむいてしまう。
「大丈夫ですわ。明日学校でお渡しできますわ」
「うん。ありがとう」
「さあ、帰りましょう」
明日美が差し出した手をがっちりと握る紗希。
二人は何事もなかったように本屋をあとにした。

闇が晴れて行く。
まるで煙が吹き散らされるように闇が薄れて行く。
その中から現れる一人の少女。
肩までの髪に漆黒のカチューシャ。
先ほどまでのあどけない表情は一変し、妖艶と言っていいような笑みを浮かべている。
ぬめるようにつややかな黒く塗られた唇を赤い舌がぺろりと舐める。
着ている物も一変し、白いブラウスは影も形もなくなってつややかな漆黒のレオタードを身に纏っていた。
両手には黒エナメルの長手袋を嵌め、両足には同じくロングブーツを履いている。
生まれ変わった雪菜がそこには立っていた。
「うふふふ・・・可愛い闇の少女の誕生ね。いらっしゃい。レディベータ」
「はい、デスルリカ様」
ゆっくりとデスルリカに近づくレディベータ。
その笑みはぞっとするほど冷たく、それでいて可愛い。
「私は闇の女レディベータ。デスルリカ様、これよりは何なりとご命令を」
微笑みながらデスルリカに寄り添うレディベータ。
「うふふ・・・可愛い妹ができたようだわ」
レディアルファがいとしそうにレディベータをそっと抱きしめる。
「ありがとうございます、レディアルファ様」
「アルファでいいわ」
「それでは私のこともベータとお呼び下さい」
にこやかにレディアルファを見上げるレディベータ。
「そうするわ。可愛いベータ」
「嬉しいです。アルファ様」
二人は抱き合い、その新たな絆を確かめ合う。
「うふふ・・・レディベータ。あなたもたっぷりと楽しみなさい」
「はい、デスルリカ様。楽しみです。うふふふ・・・」
冷たい笑みを浮かべるレディベータ。
「さて、今日は遅いわ。また明日楽しみましょう」
「「はい、デスルリカ様」」
デスルリカが立ち上がり、そのあとを二人の闇の女たちが続く。
あとにはすでに社員たちのいなくなった事務所に静寂だけが残った。

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  1. 2006/01/31(火) 22:40:50|
  2. ホーリードール
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お姉さま

日本でも豪雪に悩まされていますが、ポーランドでも雪で屋根が潰れて怪我人や死者が出てしまったようですね。

雪は重いという事実が雪に降るところ以外だとなかなかわかってもらえないんですよね。
豪雪地帯の皆様、これから春に近づきますが、くれぐれもご注意下さい。

今日はローネフェルトの更新です。
楽しんでいただければ幸いです。

11月ともなると砂漠も冷える。
星が瞬くほどの晴天だと急激に冷え込むのだ。
私はサムソントレーラーの荷台に横たわったジムに掛けられたシートの内側にもぐりこみ、毛布をまとって寒さに備える。
いつまで中隊はここにいるのだろう・・・
私もこの砂漠でしばらく過ごすことになりそうだわね。
カナダの森林とは大違い。
ここはまさに砂ばかり。
地球と言うのはこれほど変化に富んでいるものなのね・・・
「寒・・・」
私は何も考えずに眠りにつく。

ん?
温かい・・・?
私はふと何かがそばにあるような気がして目を覚ます。
「すう・・・すう・・・」
「な?」
私は驚いた。
赤子のように安心しきったようなミナヅキ少尉の寝顔がそこにあったのだ。
「ミ、ミナヅキ少尉・・・」
私は思わず声を上げてしまう。
「ん・・・あふ・・・大尉殿ぉ・・・」
うっすらと目を開けるミナヅキ少尉。
「うふふ・・・大尉殿ぉ・・・温かいんですねぇ」
私の毛布の上に彼女の毛布を掛け、ちゃっかりともぐりこんでいるミナヅキ少尉に苦笑する。
「どういうつもり? 自分のモビルスーツのそばにいたんじゃないの?」
「大尉殿のそばに居たかったんですぅ。私は・・・私は大尉殿のそばに居たいんですぅ」
何か咎められたように急にうつむいてしまうミナヅキ少尉。
やはり感情の起伏が激しいような気がするわ。
「一人で居るのはいや・・・一人はいやですぅ」
「ミナヅキ少尉・・・」
私は上半身を起こして彼女を見つめる。
「一人はいや・・・一人ぼっちになるのはいやなのぉ・・・」
ミナヅキ少尉は首を振る。
「ミナヅキ少尉・・・あなたは・・・あなたはなぜここにいるの?」
「えっ?」
顔を上げるミナヅキ少尉。
「あなたは連邦軍のパイロットだったんでしょう? なぜ我が軍のパイロットとしてここにいるの?」
それは私が以前から思っていたことだった。
「連邦軍・・・」
ピクッと肩を震わせるミナヅキ少尉。
その目がみるみるうちに見開かれていく。
「いやぁ! 違う・・・違う違う違うぅ! 私はジオン軍のアヤメ・ミナヅキ。階級は少尉。認識番号00790268579。私はジオン軍人ですぅっ!」
両手で頭を抱えるようにして首を振るミナヅキ少尉。
私は驚いた。
まさかこんな反応が返ってくるとは思いもしなかったのだ。
「ミ、ミナヅキ少尉。しっかりして! 私が悪かったわ。あなたは立派なジオンの軍人よ」
「私はジオンの軍人ですぅ・・・」
取り乱すミナヅキ少尉を私は抱きかかえる。
「ええ、そうよ。あなたはジオンの軍人。アヤメ・ミナヅキ少尉よ」
「!」
顔を上げるミナヅキ少尉。
これだわ・・・
この表情は全てを他人に預けきっている表情だわ・・・
「大尉殿・・・そうですよねぇ? 私はジオン軍人ですよねぇ」
「そう、そうよ。あなたはジオン軍人よ」
私は苦笑する。
砂漠の真ん中で子犬のようにその身をゆだねてくる女を抱きかかえて夜を過ごしているなんて・・・
「うふふ・・・大好きですぅ。お姉さまぁ」
私の胸に擦り寄るミナヅキ少尉。
「ほえ? お、お姉さま?」
きっと私は目が丸くなっていただろう。
そりゃあ、私だって軍人だし、そういう習慣があることも知っている。
でも・・・
私がお姉さま?
「はい。大尉殿は私のお姉さまですぅ。うふふふ・・・温かい」
「ちょ、やめ、やめなさい」
私はミナヅキ少尉を振り払おうとするものの、彼女は擦り寄るのをやめない。
「うふふふ・・・いやですぅ。お姉さまと一緒に寝るんですぅ」
「ちょ、やめ、やめてってば・・・」
「一緒に寝るんですぅ・・・」
すごく嬉しそうなミナヅキ少尉の笑顔。
私はその笑顔に負けてしまった。

「ローネフェルト大尉殿。旅団司令部から郵便が届いています」
朝早いというのにブラウン伍長が郵便物を届けてくれる。
「ありがとう」
私は手紙を受け取り差出人を確認した。
ソロモン駐留部隊所属、オットー・ホス准将閣下。
「まさか返事が来るとは・・・」
私は感謝した。
「教官。ありがとうございます」
検閲の手が入っていない封書。
参謀部特権で送ってくれたに違いない。
私のわがままを聞いてもらえたなんて・・・
訓練学校の教官というつてで頼みごとをしてしまったけれど、まさか返事が来るとは思っていなかったわ。
私は手紙を持ってサムソンの助手席に腰掛けると封を切る。
「アヤメ・ミナヅキ少尉及びザルコフ機関調査報告書・・・か」
私は念のために運転席に鍵をかけ、誰も入れないようにしてから読み始めた。

私は書類を読んでいく。
それは私のような末端の兵士に知られてもいい程度の情報でしかなかったが、それでも驚くべき内容だった。
ザルコフ機関。
それは端的に言って、最近売り出し中のニュータイプ育成機関のフラナガン機関と同じように戦場で最強の兵士を作り出すための機関と言っていいらしい。
ザルコフ機関が目指したものは、薬物によって人間の反応を早め、戦場での反射能力の高い兵士を作り出そうとしたようだ。
ところが実験は失敗し、薬物中毒患者を作り出すだけに終わってしまった。
アドラー少佐もザルコフ機関によって薬物調整を受けた一人だという。
少佐はエリートとして期待され、その能力をさらに高めるべくキシリア・ザビ閣下直々の命でザルコフ機関に回されるも、薬物により精神の安定さを欠くようになってしまう。
戦場のような興奮状態になると自己のコントロールが利かなくなり、状況把握に問題がでてしまうらしい。
結局、ザルコフ機関は抹消され、アドラー少佐はしばらく後方勤務に回されていたようだ。
ところが今回の戦争でアドラー少佐も実戦部隊に配属される。
ザルコフ機関でのことは表面には出ずに、少佐はグラナダ攻略戦に参加。
その時に地球連邦月面防衛隊所属のアヤメ・ミナヅキ大尉を捕虜にする。
少佐は親衛隊には彼女を渡さずに、キシリア・ザビ閣下のつてを頼って『連邦軍の情報を実戦部隊が把握する目的のため』と言う名目で彼女を手元に置いた。
それから何が行なわれたのかは調査報告書でもはっきりしない。
断片的なことだけだが、彼女は他の捕虜をその自らの手で殺させられている。
自らの手で同僚を殺させられるとは・・・
陵辱され、薬物を使われ、精神も肉体も蹂躙される。
そんな目に遭ったら、その苦痛を逃れるためならば何でもするようになるかもしれないわ・・・
少佐の言うとおりにしていれば痛い目に遭わない。
少佐の言うとおりにしていれば何も考えなくてもいい・・・
片方で陵辱し、片方で救いを与えてやる。
それに薬物を重ねれば忠実なメス奴隷の出来上がりというわけか・・・
私は暗澹たる思いに捕らわれた。

だが、アドラー少佐はやりすぎた。
複数の捕虜が姿を消し、薬物の在庫が合わなくなり、噂も広がり始めた。
そのためグラナダは彼をその部下ともども地上へ送ったというわけか・・・
でも、予想に反してそれなりに彼は生き延びてきた。
一つにはアヤメ・ミナヅキ准尉が予想以上にモビルスーツの適性があったこと。
また一つには彼の部下たちがそれなりに彼によっていい目を見せてもらっていたことだ。
そのため彼はそれなりの敬意を払われ先日まで生き延びていた。
臭いものにふたをしたかった突撃機動軍は彼のわがままにもそれなりに配慮していたらしい。
カナダに居る山猫の噂を聞いた彼は私を呼び寄せた。
そういうことだったわけか・・・

私は手紙をたたむと、外に出て火をつけた。
この手紙がほかに見られるとホス准将の立場が悪くなるかもしれない。
もっとも、見せてもいいものだから見せてくれたんでしょうけどね。

「お姉さまぁ! お姉さまぁ!」
外でミナヅキ少尉の声がする。
ふう・・・
しょうがないわね。
私はサムソンの助手席から外に出る。
「あっ、お姉さまぁ」
すぐにミナヅキ少尉は私を見つけて駆け寄ってきた。
「ミナヅキ少尉。言ったでしょ? お姉さまはやめてって」
「ええ? でもぉ・・・」
しょげてしまうミナヅキ少尉。
「夕べはお姉さまって呼んだらアヤメって答えてくれたのにぃ・・・」
私は顔から火が出るほど赤くなったに違いない。
「ゆ、ゆ、ゆ、夕べは夕べです。お姉さまはやめなさい!」
私はつい大声を出していた。

「オーネトの油田?」
私はボスマン中隊長に聞き返す。
「ああ、そこまで行けば一時的だがガウの離着陸ができるようになっているらしい」
「しかし、連邦軍の哨戒ラインに引っかかりますね」
指揮車のテーブルに地図が広げられ、位置関係が示される。
ヒューリック大尉がそこには記されていない線を指で引いていく。
「砂漠を横断して連邦軍の哨戒ラインを突破ですか・・・」
私もその難しさに顔をしかめているだろう。
「しかし行くしかないな。このままではいずれトリポリも落ちるだろうし、そうなれば我らには行くところが無い」
「オーネトからキリマンジャロへ行って宇宙へ上がりますか・・・砂漠で死ぬよりは宇宙で死にたいですからね」
ヒューリック大尉に私も賛成したい。
でも、ジオン軍人として悔いの無い死に方ができれば・・・
私は首を振った。
できれば死にたくはない。
サイド3に帰ってパン屋を継ぎたい。
私の作ったパンで・・・
私は苦笑した。
これだけたくさんの人を殺しておいてパン屋もないものよね。
「ローネフェルト大尉の小隊に先に立ってもらおう。ジオンの国籍マークを消せば連邦のモビルスーツに違いないわけだからな。一時的にでも混乱させられるだろう」
「それは戦争法規違反です」
私は反対した。
「シールドには国籍マークを描いておく。シールドを背負っていて見えなかったのなら、それは敵の落ち度だ」
ボスマン少佐がニヤリとする。
詭弁だけど・・・
「一機だけでは仕方が無いのでは?」
ヒューリック大尉もあまり乗り気ではなさそう。
「もちろんだ。ミナヅキ少尉にもジムに乗ってもらう」
「そ、それは・・・申し訳ありませんがその件に関してはご勘弁願えませんでしょうか」
私はどうしても躊躇する。
ミナヅキ少尉は連邦軍人だったのだ。
ジムに乗せることで彼女の精神の安定が崩れるかもしれない。
「ローネフェルト大尉。これは指示ではなく命令だ。ミナヅキ少尉にもジムに乗ってもらう」
ボスマン少佐の言葉が重くのしかかった。 [お姉さま]の続きを読む
  1. 2006/01/30(月) 20:14:11|
  2. ガンダムSS
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数なら負けんぞ!

昨日一昨日と戦時急造型船舶のことを書いてきました。

「戦いは数だよ。兄貴」
このセリフは私はまさに名セリフだと思っているのですが、それを地で行くのがスチームローラーでヨーロッパを席巻しようとしたソ連軍ではないでしょうか。

船舶とは違いますが、数の暴力と言う意味では史上最大の量産数と言っても過言ではない戦車が旧ソ連の開発したT-54/55シリーズでしょう。

1947年の量産開始以来、T-54はソ連、中国、チェコ、ポーランドなどで約56000両。
T-55のほうもソ連、チェコ、ポーランドで約37000両と、シリーズ全体では90000両を超える数が製造されたのです。

これは第二次世界大戦後に世界で作られた戦車の7割を占める数ということであり、戦後の主な紛争には必ずといって登場する戦車となりました。

場合によっては敵味方ともにT-54/55シリーズを装備していることもあるのです。

対戦中の傑作戦車T-34から発展したT-54/55は、機動性も良好で、100ミリの主砲は当時としては破壊力も充分であり、戦後の西側にとっては能力とともに充分な数があることが脅威として叫ばれたものでした。

西ドイツ(当時)のレオパルトもアメリカのM48やM60もイギリスのチーフテンも、能力的にはT-54/55を上回ることを目指し、事実上回るものでしたが、その数においては圧倒的に差をつけられており、西側諸国はその差を埋めるためにも航空戦力の充実を図ったものでした。

すでに旧式であり、戦力としての価値は低くなってしまったものの、いまだかなりの数のT-54/55シリーズが現役として残っており、さまざまな近代化改修を受けながら老骨に鞭打って頑張っているんですね。

中国製の59式や69式担克(タンク)はT-54のコピーもしくは改良型で、イラクでもかなりの数を使っていましたし、ユーゴの内戦でも一般人がモロトフカクテルよろしく火炎瓶をこのT-54/55に投げつけているシーンがTVに映されたりしていました。

中東戦争ではアラブ側より捕獲したT-54/55を改修してイスラエルでも使われていました。

まさに数こそ力というのを見せ付けてくれた戦車といえるでしょうね。
それではまた。

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  1. 2006/01/29(日) 22:44:57|
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ありがとうございます。15万ヒット

先ほどまでのアクセス数です。
ページビュー合計: 151218 今日のページビュー: 951
今週のページビュー: 7594 1 時間以内のページビュー: 65

15万ヒット達成しました。
本当にありがとうございました。m(__)m

さて、先日はアメリカの護衛艦(護衛駆逐艦)の戦時量産のすさまじさを述べましたが、日本だって負けてはいません。

日本海軍の戦時急造量産型対潜艦艇である、海防艦「丙型」「丁型」をご紹介しますね。

この二種類の海防艦は基本的には同スペックの艦艇なんですが、機関が違いました。
丙型が長距離航海能力の優れたディーゼル機関。
一方の丁型は戦時標準船に搭載された蒸気タービンでした。

ほとんど同じ船体であるにもかかわらず、機関部分が違うのは、日本の乏しい機関製造能力に起因します。

本来なら丙型だけを建造したかったのですが、日本の機関製造能力では所要数を満たすことができないことがわかりきっていました。

やむを得ず、製造が軌道に乗っていた戦時標準船用の蒸気タービンを搭載した丁型が建造されたのですが、速力は上昇したものの、航続距離は低下しました。

しかし、戦争後半の日本近海での船団護衛にはほとんど問題がなかったそうです。

丙型、丁型は日本の重要な対潜艦艇として量産が優先され、レーダーやパッシブ及びアクティブソナーを備え、爆雷も多数搭載していました。

排水量わずか750トンほどの小さな艦ですが、最後の日本海軍の主力として東奔西走し、船団護衛に従事しました。

丙型が132隻が計画され、うち53隻が就役。
丁型が143隻の計画に対し、63隻が就役しました。

制海権も制空権もない中で懸命に船団を護衛し続けたこれら海防艦は被害もまた多く、丙型は27隻、丁型も26隻を失いました。

しかし、彼らの懸命な護衛がなければ、船団の被害はさらに増加し、日本はもっと悲惨な状態に陥っていたでしょう。

彼らは日本海軍の最後の任務を黙々と果たし続けたのです。

それではまた。

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  1. 2006/01/28(土) 22:40:57|
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建造力の違い

アメリカ合衆国の工業力のすさまじさは、いまさら述べる必要もないわけですが、戦時急造艦艇においてはとりわけその能力が発揮されているように思われます。

先日「世界の艦船」増刊の「アメリカ護衛艦史」を手に入れたのですが、その記述によれば、1941年度から1943年度の間に計画された護衛駆逐艦(DE)は1005隻。

そのうち実際に建造され、完成したのが563隻。
563隻ですよ。

その数たるや、まさしくアメリカの底力を見せ付けるようではないですか。

その数ある護衛駆逐艦のうちの一種類が「バックレイ」級です。

バックレイ級は154隻が計画され、一隻も欠けることなく全艦が就役しました。

そのうちの46隻はイギリスに貸与され、6隻は最初から護衛駆逐艦ですらなく、高速輸送艦として完成しています。

ハリウッド映画「眼下の敵」でも登場し、Uボートと死闘を繰り広げているので、見たことのある方もいるでしょう。

このうちの一隻、DE635「イングランド」はわずか13日間のうちに、日本海軍の潜水艦を6隻も撃沈すると言う戦果を上げました。

日本の潜水艦は、確かにUボートに比べて探知しやすかったのは間違いないでしょうが、それにしても6隻もの撃沈というのは他に例を見ません。

アメリカの護衛駆逐艦が単なる数ではなく、確かな戦力となっていたことの証なんでしょうね。

制空権も制海権もなくなった日本及びドイツが相手ではありましたが、154隻のうち戦没艦がわずかに4隻しか無いというのが生残性の高さを示しているといえましょう。

戦後も中小国海軍に売却、あるいは貸与され、その中心戦力として活躍したようです。
戦時急造とはいえ、きちんと作られていたということなんでしょうね。

それではまた。

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  1. 2006/01/27(金) 22:39:42|
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隣の芝生は・・・

18世紀から19世紀にかけて世界の七つの海を制覇したのがイギリス海軍でした。

その主力は木造帆走戦列艦とフリゲートでした。

二層、もしくは三層以上の砲列甲板を持ち、鈍重だが圧倒的な砲撃力を持つ戦列艦は、海軍力の主力として艦隊の主戦力として活躍します。

一方フリゲートは一層もしくは一層半ぐらいの砲列甲板を持ち、速力と操作性に優れた小型の帆走軍艦でした。

世界各地に植民地を持つイギリスは、その植民地と本国を結ぶ通商線がすなわち生命線でした。

もちろんこれはイギリスばかりではなく、フランスやスペインなども大なり小なり植民地との通商線を維持しており、その航路を警備することは海軍の重要な任務の一つでした。

ヨーロッパの戦争は即植民地間での戦争となり、本国と植民地を結ぶ航路は海軍のフリゲート同士が熾烈な通商破壊戦を行なう舞台となるのです。

当時の帆走軍艦は、砲撃をしあっても沈没することはあまりありませんでした。

むしろ、砲撃により帆走能力を失わせ、切り込み部隊による白兵戦で相手の船を拿捕するのが一般的でした。

敵艦の拿捕は、すなわち自軍の戦力の増加と相手の戦力の減少と言う一石二鳥の効果を持つ上、拿捕賞金が手に入るために水兵にとっても特別ボーナスを手にするチャンスでした。

また、これは英軍に限ったことなんでしょうが、実は世界に冠たる英国海軍の戦列艦やフリゲートは造船技術的にはフランスの艦より劣っていたらしいのですね。
そのためスマートで速力も速く防御力にも優れたフランス製のフリゲートを拿捕した場合、英国海軍の艦長たちは何とかその艦を自分の物としようと躍起になったそうです。

拿捕賞金は艦長が一人で全額の二分の一。
残りの半分を士官から水兵に至るまでに階級ごとに分けられていったそうです。

ある艦長はフリゲートで華々しい成績を上げて戦列艦の艦長に抜擢された時に、これで拿捕賞金が手に入らなくなると言って嘆いたそうです。

人類が作り出したもっとも美しくもっとも重労働な乗り物。
それが帆船と言うことらしいですね。

確かに帆をいっぱいに広げて走る様は勇壮であり、また優美でもありますね。

でも、その帆走軍艦同士の戦いは、近代の戦艦同士の戦いに負けず劣らずなものだったのは間違いありません。

そのあたりもいずれ書きたいと思います。
それではまた。

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  1. 2006/01/26(木) 22:08:24|
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どこへ行った?

まだ維新の記憶も薄れていない、明治19年12月3日。
一隻の帝国海軍の巡洋艦がシンガポール港を出港しました。

目的地は日本本土。
その名を「畝傍」と言いました。

畝傍は日本帝国海軍が巡洋艦戦力を増強するために外国に発注した防護巡洋艦の一隻でした。

明治16年度計画で防護巡洋艦を三隻取得することにした日本は、その発注にあたって見積もりを取りました。
その結果、二隻を英国に、一隻をフランスに発注します。

英国の二隻はのちに「浪速」「高千穂」となり、日露戦争にも参加します。

フランスで完成した残りの一隻が畝傍であり、当時のフランスの技術の粋を集めて建造されました。

排水量3600トン。
最大速力は18・5ノット。
長距離航海用に帆装をまだ残しており、植民地警備を主としたフランス海軍の影響が色濃く出た巡洋艦でした。

畝傍は明治19年10月に竣工。
フランス人艦長の下日本に向けて回航の途につきます。

航海は順調に進み、シンガポールまでは何事もなく到着します。

しかし、12月3日に日本へ向けて出発した畝傍は、ついに日本へは到着しませんでした。

シンガポールを出港したあと、忽然と行方不明となってしまったのです。

最新鋭の巡洋艦が到着しないと言う事態に、日本帝国海軍は血眼になって捜索しましたが、ついに破片一つ発見できずに捜索は終了します。

明治20年、畝傍は亡失と認定。
帝国海軍籍より除籍されました。

畝傍の喪失は以後いろいろな仮説が立てられましたが、火災、または波浪によって沈没したのではないかと言われています。

バーミューダトライアングルでの航空機や船舶の喪失と同じように、畝傍の喪失もまたミステリーであり、もしかしたら異次元に迷い込んだのかもしれませんね。

それではまた。

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  1. 2006/01/25(水) 22:18:18|
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衝撃

ちょっと早いですが、本日の更新をやっちゃいますね。

今日はホーリードールの7回目です。
それではー。

7、
金属音が響く。
正確には金属ではない。
ホーリードールサキの繰り出す青いレイピアとビーストの爪が交わる時に発する音だ。
地下の駐車場には何台もの車があるが、それらの間を縫うようにして三体の人影が移動する。
「ドールアスミ! そっちへ行ったよ!」
「わかっていますわ。そちらへ追い込みますわね」
赤いミニスカート姿のホーリードールアスミが高級外車の屋根から両手をビーストに向けて構える。
その手のひらから赤い光弾が発射され、ビーストの足元に命中した。
『ウゴォォォォォ』
ビーストはあちこちに傷を受け、戦意を喪失していたものの、執拗に繰り出される攻撃を何とかしようと必死だった。
「行きましたわ。ドールサキ」
「うん。次でしとめる!」
青いレイピアが蛍光灯の明かりを反射して冷たく光り輝いている。
「うふふふ・・・ビーストもこれでお終いですわね」
先ほどまでの無表情さとは一変して、にこやかに笑みを浮かべているホーリードールアスミ。
「うん。闇に穢れた者を追い詰めるってわくわくするよ。気持ちいい・・・」
ホーリードールサキも何か熱に浮かされたようにうっとりとしている。
「ええ、ゾクゾクして・・・とても気持ちいいですわ・・・」
その笑みは冷たく、普段の明日美にはまったく似つかわしくないものだ。
『グオォォォォォ』
跳躍を繰り返し、ひたすら死角に入り込みながら逃亡を図るビーストだったが、二人のホーリードールの連携に阻まれて次第に追い詰められていく。
「いただきぃ!」
「ここまでですわ!」
飛び掛ったホーリードールサキのレイピアがビーストの首筋に突き刺さり、ホーリードールアスミの手から放たれた火球がビーストの全身を包み込む。
『グギャァァァァァ』
ビーストの悲鳴。
「やったね!」
「やりましたわ」
二人のホーリードールが寄り添って燃え上がるビーストを見つめる。
やがて、ビーストは崩れるように倒れこむ。
しばらくはピクピクと躰を蠢かせていたものの、それもすぐに収まってしまう。
そこには黒く焦げた男性の死体があるだけだった。
「うふふ・・・闇に穢された者の末路ね」
ホーリードールサキはつま先で死体をつつく。
そこには死者を悼む気持ちはまったくない。
「はあ・・・気持ちいいですわ・・・闇を撃ち払うって最高の気分ですわ・・・」
胸に手を当てて頬を染めているホーリードールアスミ。
「うん。最高だよね。特に死ぬところなんかピクピクってしちゃって可愛いぐらいだよね」
ホーリードールサキも同じように胸に手を当てて目をつぶり余韻を感じていく。
「それじゃ行きましょう。ドールサキ」
「うん。行こう。ドールアスミ」
二人は顔を見合わせてにこやかに微笑むと、地下駐車場を後にした。

「どうやら倒されたようです、デスルリカ様」
ふわふわした闇の中でレディアルファが跪く。
上も下もないような闇の中で雪菜は苦しい息のもとで必死に痛みを耐えていた。
「ガフッ・・・た、助けて・・・お母さん・・・」
雪菜は霞む目で闇の中を見据える。
光のまったくない闇の中だというのに、レディアルファの姿だけはしっかりと捉えることができる。
真っ黒な衣装を身に着けているにもかかわらず、その美しい輪郭は少しもぼやけることなく雪菜の目に映っている。
「あれはあくまで試作品。目的は充分に達したわ。気にすることはないわよ、レディアルファ」
優しいが凛とした声が闇の中に響く。
その声とともに一人の女性が闇の中に現れた。
頭の両脇からねじれた角が生え、すらりとした姿態にはつややかなとげ付きのレオタードを纏っている。
腰にはアクセントとして銀色のチェーンがベルト代わりに巻きついており、長手袋とハイヒールのブーツが手足を彩っていた。
「ありがとうございます、デスルリカ様」
レディアルファは神妙にうつむいている。
「です・・・る・・・りか・・・様?」
雪菜は何か夢でも見ているような思いがした。
闇から現れたのは優しい笑みを浮かべた美しい女性だったからだ。
「かわいそうに・・・」
「えっ?」
デスルリカの視線が雪菜を捉える。
「光に見捨てられた哀れな子」
「え? あ・・・」
「心配はいらないわ。私があなたを導いてあげる」
デスルリカは雪菜のそばに来るとすっとしゃがみこみその手を雪菜にかざした。
「え?」
雪菜の痛みがすうっと引いていく。
「あ・・・」
雪菜は涙があふれてきた。
誰も・・・
誰も助けてくれなかった・・・
紗希ちゃんも明日美ちゃんも助けてくれなかった・・・
みんな・・・みんな・・・私が死ねばいいと望んでいたんだ・・・
みんな・・・みんな・・・私が死にそうだったのをあざ笑っていたんだ・・・
でも・・・
でもこの人は違う・・・
この人は助けてくれた・・・
この人だけが私を・・・
「どう? 痛みは引いた?」
「はい・・・はい・・・ありがとうございます・・・ありがとうございます」
雪菜は涙を流しながらお礼を述べる。
「いいのよ。かわいそうに・・・苦しかったでしょう?」
雪菜はデスルリカに優しく抱きかかえられる。
「あ・・・あぐっ・・・えぐっ・・・うわーん!」
雪菜は極まって泣き出してしまう。
「いいのよ。思いっきり泣きなさい。そしてあなたを見捨てた光と人間どもを憎みなさい」
そっと雪菜を抱きしめるデスルリカ。
それはまるで母親が娘を抱きしめているかのようだった。
「えぐっ・・・うっうっ・・・に・・・くむ?」
泣きじゃくりながら雪菜はデスルリカを見上げる。
「そう・・・あなたの躰はぐちゃぐちゃにされてしまった・・・助かるには躰を作り変えるしかないわ」
「躰を・・・作り変える?」
雪菜は驚いた。
手術が必要だということなのか?
そんなお金が家にあるのだろうか?
でも・・・でも死にたくないよぉ・・・
「そう・・・光を憎み人間どもを闇で支配する闇の女として生まれ変わるの。そうすればあなたはもう死ななくてすむわ。あなたは死んでもいいの?」
「死にたくない・・・死にたくないです」
雪菜は首を振る。
当然だろう。
「わかっているわ。私に全てをゆだねなさい。たった一言言うだけでいいのよ」
デスルリカが妖しく微笑む。
「ひと・・・こと?」
「そう。光が憎い、人間が憎いって言うの」
光が憎い?
私は光が憎いの?
でも・・・
でも・・・
あの時そばにいた人たちが憎い・・・
私を助けてくれなかったすべての人が憎い・・・
私が死にそうだったのをあざ笑っていた二人が憎い・・・
この人の・・・デスルリカさんの言うとおりにしよう・・・
だって・・・
だって・・・私を救ってくれたのはこの人だけなんだもん・・・
「私は・・・私は光が憎い。人間が憎い!」
雪菜ははっきりとそう言った。

「あ・・・れ?」
通学路途中にある公園のベンチで紗希は気が付いた。
「私・・・いったい?」
「紗希ちゃん・・・」
隣に座っている明日美が涙を流している。
「あれ? 明日美ちゃん、どうしたの? どこか痛いの?」
紗希は驚いた。
明日美が泣いているのはどうしてなのだろう。
明日美はお嬢様として人前で感情をあらわにすることを控えるようにしつけられている。
その明日美が泣くなんてよほどのことに違いない。
「明日美ちゃん・・・」
「紗希ちゃん・・・先ほどのことは夢ですよね?」
明日美はすがるような眼で紗希を見つめる。
「えっ?」
明日美の言葉で紗希の脳裏に先ほどのビーストとの戦いが蘇る。
「あ・・・」
紗希の顔色が変わる。
「紗希ちゃん・・・あれは悪い夢なんですよね?」
「あ・・・明日美ちゃん・・・」
「夢だと言ってください、紗希ちゃん。そうじゃないと・・・そうじゃないと私・・・」
明日美はうつむきただ涙を流している。
「明日美ちゃん・・・私・・・私たち化け物と・・・」
「やめてください!」
明日美が耳をふさいでしまう。
「聞きたくありません・・・聞きたくありません・・・」
「明日美ちゃん・・・」
紗希も悲しくなってくる。
「明日美ちゃん・・・私だっておんなじだよ・・・そんなふうに言わないでよ・・・」
紗希の目からも涙が落ちてくる。
「なぜ私たちがこんな目に遭うんですか? なぜ私たちが戦わなければならないんですか?」
「明日美ちゃん・・・」
「あの・・・あの化け物は人でした。人だったんです」
紗希はその言葉にショックを受ける。
確かに死んだ化け物は人間の姿に戻っていた。
でも、人を傷つけたなんて考えたくも無かったのだ。
「そ、そんなこと・・・」
「紗希ちゃん。私たちは人を殺しちゃったんです」
明日美の手がぎゅっと握り締められる。
「あ・・・ああ・・・」
紗希も顔面が蒼白になる。
人を殺してしまったなんて・・・
いったいどうしたらいいのだろう・・・
「私、もう家へ帰れないですわ・・・お母様にもお父様にももう会えない・・・」
「明日美ちゃん・・・家へ、家へおいでよ。お母さんならきっと私たちの話を聞いてくれるよ」
「紗希ちゃん・・・」
明日美が顔を上げる。
「大丈夫だよ、明日美ちゃん。お母さんならきっと何とかしてくれるよ」
「ええ、おば様はとても頼りになりますものね」
紗希の差し出す手をがっちりと握る明日美。
二人は立ち上がって家路をたどり始めるのだった。

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  1. 2006/01/24(火) 17:20:53|
  2. ホーリードール
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密航者

ライブドア・・・相当にヤバくなっちゃいましたね。
社長も逮捕されちゃいましたし、これからの企業運営にはかなり不都合が生じてくるでしょうね。

場合によっては吸収合併もありえるでしょう。
マスコミもここぞとばかりに叩きまくっていますしね。

これからの推移を見守りたいですが、日本経済に与える影響も小さくないでしょうから、これでまたしても日本経済が冷え込むことが無いように祈るばかりです。

さて・・・
今日はローネフェルトの更新です。
表題がどういった意味を持つのか・・・
お楽しみいただければ幸いです。

乗り慣れないコクピット。
ザクとは明らかに違う設計思想で作られた操縦システム。
固めのペダルにパワーレバー。
「これが・・・ジム」
私は思わずつぶやく。
『シートは外しました。いつでもOKです』
「了解」
私はヘッドフォンに入ってきたブラウン伍長の言葉に返事を返すと手袋を嵌め直す。
「さて、あんたの乗り心地はいかがかしらね・・・」
私はパワーレバーをじょじょにスライドさせていく。
同時にペダルを操作してジムをゆっくりと立ち上がらせる。
グングングンと言うジェネレーターの響きがかなりのパワーを感じさせるわ。
これが量産型というのだから、連邦の融合炉制御技術もなかなかのものね。
私はジムをサムソンより立ち上がらせて歩き出させる。
シールドはザクと違って固定式ではなく、手で掴んでいなくてはならない。
私はサムソンのトレーラーに積んであったシールドを掴み取る。
正面にでかでかと我が軍の国籍マークが描かれているシールドは、敵味方識別には有効だろう。
私はマシンガンを確認する。
ブルパップ式のマシンガンで取り回しやすそうだし、一発の威力は低くても集弾率は良さそうだ。
そして私は背中のバックパックから突き出た柄を取り出してスイッチを入れる。
ビンと音がして赤いビームのブレードが伸び上がる。
「ビームサーベル・・・か・・・」
ジオンには無い技術・・・
それをあっさりと実用化して前線の各機体に装備する連邦軍。
私は少し暗い気持ちになる。
この戦争は・・・もう長くないのかも・・・

「これで、模擬戦でもできれば言うことないんだけどね・・・」
私は苦笑しながらジムの訓練をする。
乗り心地は申し分ない。
これなら操縦時の疲労感はかなり軽減されるはず。
ザクより操縦しやすい感じだわ。
連邦もなかなかやるわね。
私は再びジムをサムソンのトレーラーに乗せてコクピットをでる。
「いかがでした?」
駆け寄ってくるブラウン伍長。
「乗り心地はいいわね。連邦ってのは軟弱な兵ばかりなのかしらね」
私はヘルメットを取って笑った。
「奴らは地球に居座ったエリートたちですからね。戦場の厳しさなんてわからないんですよ」
くりくりした瞳を輝かせているブラウン伍長。
「そうかもしれないけど、手強い相手であることだけは確かよ。油断はしないようにね」
「了解です」
にこやかに敬礼をしてくるブラウン伍長。
私もつられて笑みを返した。
「そういえば、中隊長がお呼びでした。すぐに指揮車両に来てくださいとのことです」
「中隊長が? パイロットの件かしら」
私はヘルメットと手袋をブラウン伍長に渡し、指揮車両であるホバートラックへ向かった。

『冗談じゃありません! おことわりします!』
私が入って行くと、すぐに怒鳴り声が聞こえてくる。
誰かしら?
私はいぶかしく思いながらも少佐のもとへ行く。
「アマリア・ローネフェルト、参りました」
私は直立して敬礼する。
「来たか。これを見てくれ」
ボスマン少佐が一枚の書類をよこす。
「拝見します」
私は書類を手にとり読み始めた。
ふう・・・やはり・・・
私は悪い予感が的中したことに落胆する。
補充のパイロットは現在もっともパイロットが必要な地域へ送られ、こちらには回せなくなったという通達なのだ。
もっともパイロットが必要な地域?
前線はどこでも同じこと。
深刻なパイロット不足は我が軍を苦しめているわね。
「見たとおりだ。パイロットは来ない。君に回す部下も来なくなった」
「はい。どうやらそのようです」
ボスマン少佐に私は書類を返す。
「気の毒だとは思うが、俺のところからも部下は回せん。こっちもこれ以上失うと小隊編成ができなくなる」
私の隣に立っていた大尉が口を開いた。
「第一小隊の?」
「ああ、小隊長のハンス・ヒューリックだ。よろしく」
プラチナブロンドの髪をしたすらりと背が高い美男子だわ。
彼の言うことは良くわかる。
二機ではすでに小隊とは言いがたい。
ここはいっそ私が彼の指揮下に組み込まれる形で四機編成のほうがよいのかもしれないわね。
私がその申し出をしようとしたとき、一人の兵が入ってくる。
「少佐殿。コミュ連絡機が一機到着いたしました」
「コミュが? 一体何事だ?」
ボスマン少佐は躰をゆすって立ち上がる。

すぐにコミュでやってきた人物が指揮車両に入ってきた。
それは予想に反して、旅団本部からの伝令兵ではなかった。
首のところに憲兵章を下げた野戦憲兵の曹長だったのだ。
そして、彼に引き続いて一人の女性士官が入ってくる。
しかも彼女は手錠をかけられていた。
私は息を飲んだ。
「ミナヅキ少尉!」
私は思わず声を出していた。
「中尉殿ぉ」
すごく嬉しそうに顔をほころばせるミナヅキ少尉。
まるでずっと探していた母親にでも会ったかのようだわ。
「こら! 勝手にしゃべるな!」
野戦憲兵が声を荒げる。
「曹長、彼女は一体?」
ボスマン少佐が曹長の手から書類を受け取る。
「はっ。密航です。U-34に密航していたのを捕らえました」
密航?
一体なぜ?
「密航?」
ボスマン少佐も首をかしげた。
「本来なら脱走兵として処罰されるところなんですが、ローネフェルト大尉の下で勤めたいと言い張りまして・・・」
「私の下で?」
私は驚いた。
てっきり軍病院にいるものとばかり・・・
「私はローネフェルト中尉、いえ、大尉殿の下で働きたいんですぅ。大尉殿なら私を・・・」
「黙っていろ!」
「ウグッ」
憲兵曹長の肘がミナヅキ少尉に突き刺さる。
「やめろ!」
「やめなさい!」
私より早くヒューリック大尉の怒声が飛ぶ。
「あ・・・は、はあ」
憲兵曹長は思わず肩をすくめてしまう。
まあ、いくら憲兵と言えども相手は曹長ですからね。
もっとも、憲兵下士官は尉官クラスの士官に対して逮捕権を持っているから、不用意に扱えないけれど。
「それで? ローネフェルト大尉に身柄を預けると言うのか?」
ボスマン少佐が書類を繰る。
「はい。前線でのパイロット不足に鑑み、特別処置と言うことで旅団司令部にも許可されております」
「わかった。ローネフェルト大尉、どうだ? 小隊に必要か?」
「ハッ! ミナヅキ少尉は優秀なモビルスーツパイロットです。私でよければ彼女を引き取らせていただきます」
私は力強くそう言った。
「大尉殿ぉ・・・ありがとうございますぅ」
ミナヅキ少尉が頭を下げる。
きっとアドラー少佐を失って心細かったのかもしれない。
「よし、決まりだな。ミナヅキ少尉は第二小隊に配属する。曹長、手錠をはずしてやれ」
「ハッ」
ボスマン少佐に敬礼して憲兵曹長はミナヅキ少尉の手錠を外す。
手首をさすったのちミナヅキ少尉は私たちに敬礼した。
「アヤメ・ミナヅキ少尉ですぅ。これからよろしくお願いいたしますぅ」
「第999軽旅団、第444モビルスーツ中隊のボスマンだ。ローネフェルト大尉の第二小隊所属を命じる」
「はい。謹んで拝命いたしますぅ」
「それでは失礼します」
憲兵曹長は手錠をじゃらつかせてその場を立ち去る。
私たちは黙ってそれを見送った。 [密航者]の続きを読む
  1. 2006/01/23(月) 20:29:01|
  2. ガンダムSS
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想定外・・・かな?

ミッドウェー海戦で四隻もの大型空母を失った日本海軍は、戦力増強に努めました。

その結果、隻数だけはそれなりの陣容を揃えることができたのですが、商船改造の空母などもあり、単純に隻数だけでは戦力とはいえませんでした。

そんな中、日本機動部隊の最新鋭航空母艦として就役したのが、飛行甲板に装甲を張って防御力を高めた装甲空母「大鳳」でした。

軍艦にとって一番の脅威は魚雷と言ってもいいのですが、こと空母に限っては、その飛行甲板の脆弱さもあって、急降下爆撃もなかなか侮れない脅威でした。

何しろ、爆弾で穴が開いてしまった飛行甲板はもはやその用をなさなくなり、空母としての運用はその時点でできなくなってしまうのです。

事実ミッドウェー海戦では、日本の空母はすべて爆撃によって戦闘力を喪失してしまったのです。

英国は以前より空母の飛行甲板の脆弱性に気が付いており、飛行甲板に装甲を張ることで、その防御力を高めておりました。

しかしながら飛行甲板に装甲を張るということは、トップヘビーになるということであり、復元性の兼ね合いからも飛行甲板の下に設ける格納庫のスペースを犠牲にしなければならなくなったのです。

結果として、同時代の日米の空母よりも、英国の空母は半分ぐらいの搭載機しか搭載できなかったのです。

相手が空母を持たないドイツやイタリアであったため、英国空母の搭載機数の少なさはそれほど深刻な問題とはなりませんでしたが、それでも、インドミタブル級空母の後期型は装甲を減らして搭載機を増やしています。

軍縮条約により戦艦の数に制限のあった日本にとって、空母はその搭載機によってアメリカの戦力を剥ぎ取る重要な任務を持っていました。
そのために搭載機が少なくなるということはなかなか受け入れることのできないものでした。

しかし、その搭載機を後方から補充することができれば、搭載機の少なさはカバーできると日本海軍は考えます。

装甲空母大鳳はそういった思想の基に建造されました。

装甲版を張った大鳳は米軍の攻撃を受けてもそうそう戦闘力を失うことはありません。
そのため、思い切って敵艦隊に近づいて攻撃隊を発艦させることができます。

そして、大鳳の後方には飛行甲板が脆弱だが搭載機数の多い通常型の空母が控えていて、矢継ぎ早に大鳳へ搭載機を飛ばします。

大鳳はこれら後方の空母からの艦載機を着艦させ、前進基地として補給を行い発艦させるのです。

そうすることによって危険な海域には装甲を張った大鳳が出向き、敵の攻撃圏外には通常型空母を配置すると言う構想が出来上がりました。

しかし、ことはそうは上手く行きませんでした。

日本海軍の乾坤一擲の大反撃であるマリアナ沖海戦において、装甲空母大鳳は小沢中将の旗艦として出撃します。

付き従うは空母翔鶴、瑞鶴、隼鷹、飛鷹,、瑞鳳、龍鳳、千歳、千代田。

あとにも先にも九隻もの空母を揃えた海戦は他にはありません。

この九隻の空母から艦載機が飛び立っていき、米軍に立ち向かいますが、レーダーやVT信管を装備した米軍の防御力の前に艦載機群は壊滅。

一方、日本の対潜警戒網をかいくぐったアメリカの潜水艦は日本の空母艦隊に向けて魚雷を発射。

日本は完成したばかりの重装甲空母大鳳と真珠湾以来の歴戦の空母翔鶴を相次いで失います。

飛行甲板に張り巡らせた装甲は急降下爆撃にも充分耐えるものでしたが、一発の魚雷は大鳳の艦内にガソリンを気化させ、大爆発を起こしてしまいます。

結局手が付けられなくなった大鳳は沈没。
たった一発の魚雷によるあえない最後でした。

大鳳の沈没はある意味不沈をうたわれたタイタニックに似ているかもしれませんね。
設計者の想定外のことが起こったから沈没した・・・と言ってしまってもいいのでしょうか。

もしかしたら人間の傲慢さが沈没の原因なのかもしれませんね。

それではまた。
  1. 2006/01/22(日) 23:15:30|
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俺のことも忘れないでくれよ

1941年。
フッドを轟沈し、プリンス・オブ・ウェールズを撃破したビスマルクは、その戦闘により油の尾を引いていました。

空母アークロイヤルを発進したソードフィッシュ雷撃機は、猛烈な対空砲火をかいくぐり魚雷をビスマルクにぶつけました。

その魚雷により、舵を故障したビスマルクにはもはや逃げることはかないませんでした。

結局イギリス戦艦群によりめった打ちにされたビスマルクは、とどめの魚雷を食らい海底に没します。

ビスマルク沈没の報告を受けたヒトラーおじさんは衝撃を受け、以後水上戦闘艦は不要な危険を避ける旨通達が出されます。

完成したばかりのビスマルクの同型艦である戦艦「ティルピッツ」も、その命に従いノルウェーのフィヨルドに身を隠します。

制空権のない戦艦には活躍の場所などありません。
ティルピッツはフィヨルドの奥地に居座ったまま、無為に時を過ごすことになりました。

また、ドイツ海軍の不手際により、巡洋艦群で援ソ船団を攻撃したにもかかわらず、吹雪で船団を見つけられませんでしたなどと言って、船団に対しなすところがなかった巡洋艦隊に対しヒトラーおじさんは激怒します。

結果、ヒトラーは自分が不要な危険は冒すなと言ったにもかかわらず、危険のみを言い立てて船団を攻撃しなかった水上艦隊は必要ないと言い放ち、戦艦や巡洋艦はスクラップにしてしまえと極端なことを言い始めます。

だいたいドイツ海軍は1939年の第二次世界大戦勃発時には戦争準備はまったく整っていなかったのです。

チェコを併合したり、ラインラントに進駐したり、風雲急を告げるヨーロッパ事情に危機感を感じたドイツ海軍は、ヒトラーに開戦は時期尚早だと伝えます。

しかし、ヒトラーは堂々と戦争は海軍が準備の整う1944年までは始まらないと言い放ちました。

そのためドイツ海軍は準備不足のまま戦争に突入し、潜水艦や水上艦による通商破壊しかできない状態だったのです。

結局水上艦隊の責任を取る形でレーダー提督は辞任。
水上艦隊はスクラップこそまぬがれたものの、出撃の命令は出なくなりました。

一方イギリスはそういった事情は薄々知っていたものの、いつ通商破壊にでてくるかわからない大型戦艦をそのまま放置することはできませんでした。

フィヨルドの奥深くでただ浮いていたティルピッツも当然その目標になり、何度となく空襲を受けます。

そのたびに損害を受けたティルピッツはもはや外洋で暴れまわる希望を失ってしまったものの、ドイツ軍艦特有の強固な防御力により沈みはしませんでした。

浮いている限り枕を高くして眠れないイギリスは、ついに四発重爆による五トン爆弾をぶつけます。

その誕生以来華々しい活躍の場所をついに得られなかったティルピッツは、ドイツ海軍の終焉とともにその身をフィヨルドの海底に横たえました。

大和のような華々しい最後を飾ることはできなかったティルピッツは、ある意味ヒトラーに翻弄されたドイツ海軍そのものだったかもしれませんね。
それではまた。

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  1. 2006/01/21(土) 22:48:51|
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世界でもっとも美しい軍艦?

表題に対しては異論もあることかと思いますが、両大戦中に世界でそう認められた軍艦が、イギリス海軍の巡洋戦艦「フッド」でした。

巡洋戦艦という艦種は速度こそ防御力であると言う考えの下に建造された大型艦で、装甲は同時代の戦艦に比して薄いものの、速力は戦艦を上回り、巡洋艦に匹敵するものでした。

第一次世界大戦に入るまでは、この巡洋戦艦は各国でもてはやされ、日本でも金剛級などの巡洋戦艦が作られます。

ところが思わぬことが起こります。
第一次世界大戦のジュトランド沖海戦です。

当時の戦艦は水平に飛んでくる敵弾に対して舷側の装甲を強化して対抗するのが普通でした。
ところが、各戦艦の主砲の飛距離が格段に進歩するにしたがって、遠距離に撃ち込むために仰角をつけて撃ち出された砲弾は、着弾時には水平ではなく垂直に近い角度で上空から上甲板に落ちてくることになったのです。

ジュトランド沖海戦で、相互に撃ち合ったドイツとイギリスの戦艦及び巡洋戦艦群は、その落下してくる砲弾に翻弄され、大損害を出してしまいます。

特に装甲が元から薄かった巡洋戦艦はイギリスが三隻、ドイツも一隻が撃沈されると言う大損害でした。

1915年計画で建造された巡洋戦艦であるフッドはその完成は第一次大戦後の1920年に完成しますが、当然その戦訓を受けそれなりに強化をされた上で就役をすることになりました。

しかし、その強化が不十分であったことはのちに彼女に悲劇をもたらします。

ジュトランド沖海戦の戦訓を受けて装甲を強化されたフッドは満載排水量4万トンを超え、全長も速力発揮をしやすいように細長く、260メートルを超えていました。
当時世界最大の軍艦だったのです。

前後に38センチ連装主砲塔二基ずつ備え、中央部に艦橋構造物と煙突を備えたピラミッド型の艦影は均整が取れ、その美しさは表題のごとく形容されました。

巡洋戦艦フッドはイギリス海軍の象徴として、両大戦間のイギリス国民にとってはもっとも親しまれた軍艦だったのです。

それから20年。

1940年にドイツで戦艦「ビスマルク」が就役します。
全長こそフッドを下回るものの、排水量では上回る(資料による)ビスマルクは、世界最大の戦艦の称号をフッドから奪い去ります。

1941年、第二次世界大戦中の大西洋で、通商破壊活動を開始するべくドイツ戦艦ビスマルクは出港しました。

イギリス海軍は総力を挙げてこのビスマルクを撃沈するべく艦艇を出撃させます。

フッドもその任に当たるべく、完成したばかりの最新鋭戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」とともに出撃します。

実はこの時、完成したばかりのプリンス・オブ・ウェールズはまだ慣熟訓練も途中で、しかも各種装備の調整に作業員までが乗り組んでいる状態であり、戦力としてははなはだ心もとないものでした。

フッド艦隊はデンマーク海峡においてビスマルクを発見。
双方が砲撃を開始します。

しかし、光学照準装備に優れたドイツ軍艦であるビスマルクの射撃は正確で、フッドは瞬時に命中弾を受けてしまいます。

垂直に落ちてきたビスマルクの砲弾はフッドの薄い上甲板装甲を破り、砲弾はあろうことか弾火薬庫に直撃しました。

大爆発を起こしたフッドは真っ二つに割れて轟沈。
その間5分と無かったと言います。

一方のプリンス・オブ・ウェールズも直撃弾を受けて破損。
戦場を高速離脱します。

もう一方の当事者であるドイツ海軍も勝利したとはいえ、現場にとどまるのは得策ではなく高速で避退します。

結局、救助の艦艇がフッド轟沈の現場に到着した時、海面から救助できたのはわずかに三名と言うことでした。

両大戦の間イギリス国民に親しまれてきたフッドはこうして一瞬のうちに消え去りました。
それはあたかも第二次世界大戦を機に転落して行くイギリスを表わすものだったかもしれませんね。

それではまた。

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  1. 2006/01/20(金) 21:53:06|
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ドレッドノート

先日ある方から、ブログのミリタリーネタでリクエストをいただきました。
正直に申しまして、すごく嬉しかったんです。
ああ、読んでくれて、しかも楽しんでいただけているんだなと言うのが、文面からも伺えまして、本当にすごく嬉しかったんですね。

というわけで、早速リクエストに答えちゃいます。

昨日のブログにも登場しましたが、世界初の単一巨砲搭載艦「ドレッドノート」と言う戦艦がイギリスにおいて建造されました。

出来上がったのは1906年。
日露戦争終結の翌年でした。

今までの戦艦は巨大な主砲と発射速度の速い副砲を備えておりました。
日清戦争などでは、この副砲が、発射速度の遅い主砲よりも活躍し、妙なことに戦艦は主砲よりも副砲の攻撃力を重視するような風潮さえ生まれました。

その結果、主砲よりは砲撃力は劣るものの、副砲より強力で発射速度もそれなりの中間砲という存在がでてくることになります。

しかし、これは見た目上は巨大な主砲、速射が可能な中間砲、小型艦を打ち払う副砲といった感じでバランスが取れているように見えましたが、実は砲撃力がばらばらで制御に非常な困難をともなうことになってしまったのです。

そこでイギリスのフィッシャー提督は単一巨砲を搭載し、その砲撃力を一元化して敵艦に投射するという考えの下、このドレッドノートの建造にGOサインを出します。

このドレッドノートは、ある意味実験試作艦であり、同型艦も無いまさに一発勝負の艦でした。

その結果が良好であり、まさに革新的な新戦艦の時代を開いたために、以後、同じ思想の元で建造された単一巨砲搭載新戦艦を弩級戦艦(ドレッドノート級という意味)と呼ぶようになったのです。

しかし、このドレッドノートはあまりにも革新的な戦艦であったため、その取り扱いに習熟した水兵がおらず、特に初めて戦艦に搭載された蒸気タービンは扱いが難しく、計画値である21ノットをどうにか出せる程度でした。

本艦は新時代の戦艦の代表として有名でしたが、各国で弩級戦艦が建造されるようになると、あっという間に陳腐化してしまい、わずか1914年に始まった第一次世界大戦ではもう二線級の戦艦に成り下がってしまいました。

結局1920年には除籍。
戦艦としての寿命はわずか14年という短いものでした。

しかしながら、彼女の果たした戦艦の革新という目的は達せられ、以後世界各国は大和に至るまで弩級戦艦を作り続けることになるのです。

わずか14年という短い生涯でしたが、彼女の名は戦艦という艦種がなくなってしまった今日でも語り継がれており、これからも当分はその名が語り継がれるでしょうね。

それではまた。

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  1. 2006/01/19(木) 23:24:33|
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とほほほ・・・

日本帝国海軍の歴史的大勝利、日本海海戦は皆さんご存知だと思います。

戦艦三笠艦上に陣取った、東郷平八郎司令長官の指揮の下、日本海軍は完勝とも言えるワンサイドゲームで勝利を飾りました。

日本海軍の損失が水雷艇三隻のみに対し、ロシア艦隊はウラジオストックにたどり着いた艦船が三隻のみという惨憺たる有様で、日本海軍に捕獲された艦も五隻に上りました。

その中の戦艦二隻と、旅順港で自沈した戦艦を四隻、合計六隻もの戦艦を日本海軍は浮揚修理して日本軍艦として再就役させました。

壱岐、丹後、相模、周防、肥前、石見の六隻はそうして手に入れた元ロシア戦艦でして、日本海軍は一挙に以前の倍にもなる戦艦群を所有することになったのです。

ところが、日本海軍の目算は一瞬にして外れました。

イギリスで単一巨砲搭載の戦艦ドレッドノートが就役したのです。
この戦艦は統一された巨砲を持って一斉射撃をするという、画期的な戦艦でした。

このドレッドノートが就役したことで、世界は弩級艦の時代に突入し、今までの戦艦は一挙に旧式艦としてその存在価値が大きく減じられることになったのです。

先ほど述べた六隻も、一瞬にして旧式艦となってしまい、せっかく大量の資金と労力を投入して再就役させたものの、ほとんど意味を成さなくなってしまったのです。

結局日本は自前で弩級戦艦を建造し、河内、摂津の二隻をもって完成に至ります。

軍備と言うものは先の見通しのなかなか立てづらいものですが、六隻もの戦艦がほとんど無駄に終わってしまうと言うのも悲劇と言うべきかもしれませんね。

それではまた。

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  1. 2006/01/18(水) 22:55:55|
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血だまりの中

はうー。
今日も一日SS書きを楽しませていただきました。

まあ、まったくそれ以外のことをしていないわけではないですが、ほとんどの時間を物書きに過ごせるのは気分がいいですね。

それでは「ホーリードール」六回目を投下いたしますねー。

6、
ガタガタと揺れるバスの車内。
それほど混んでいなかったので雪菜は席に着いて本を読んでいた。
雪菜は本が好きだった。
もちろん自分のお小遣いではたくさん本を買うことなんてできはしない。
だから雪菜は図書館へ通っていた。
図書館にはたくさんの本がある。
それこそ雪菜の一生をかけても読みきれないほどの本がある。
その中から面白そうな本を探し出すのは、宝の山の中から気に入った宝石を探し出すような楽しさがあるのだ。
今日は何冊借りようかな・・・
雪菜はもうすぐ着くであろう図書館に対して思いを馳せていた。

軋むタイヤの音。
慣性の法則によって前方へ放り投げられる躰。
沸きあがる悲鳴。
「あっ・・・」
雪菜の手から本が離れて飛んでいく。
そればかりか小さな雪菜の躰までが放り出されそうになってしまう。
バスの急ブレーキで車内は混乱に陥ってしまう。
雪菜は何とか椅子にしがみついて放り出されるのを防いだが、立っていた乗客は何人かが前の方へ転んでしまっていた。
「な、何が・・・」
雪菜は飛んで行ってしまった本を探そうと、バスが止まったのを確認して立ち上がる。
「え?」
雪菜は目を疑った。
メリメリと音を立てバスの前面外板がめくれ上がっていくのだ。
「キャーッ」
「ウワーッ」
人々の悲鳴が上がる。
バスの外板を剥ぎ取って現れたのは、ゴリラのような毛むくじゃらの生き物だったのだ。
それはその巨大な腕で運転席で恐れおののいている運転手の首を掴み上げると、一瞬にしてねじ切ってしまう。
血が飛び散り、バスの前方にいた人たちの顔や服にピシャピシャとかかる。
「うわー」
「いやー」
人々は先を争って逃げようとしたものの、前側の扉のところにはそいつがいて近くの人間を手当たり次第に襲い始めている。
中央の扉は人々が殺到し、押しつぶされる者がいる状態で非常コックを操作する者がおらずに開ける事ができない。
雪菜は絶望的な思いに包まれた。
すでに本を取りに行くことも忘れ、そいつが人々を握りつぶしたり、殴り殺して行くのをただ見ているだけだった。
それはやがて彼女のところまでたどり着き、彼女をベシャッと血だまりに変えてしまうだろう。
雪菜はそれをただなすすべもなく見ているしかできなかった。

窓ガラスが割れ、血だらけになった男が何とかバスの外へ転げ出る。
バスの周りでは前面部を破壊されたバスを遠巻きにして人々がただ喚き散らし、泣き騒いでいるだけだった。
バスのタイヤの下にはぽたぽたと赤い液体が垂れており、それは最初は滴るように、それからやがて流れるようにその範囲を広げて行っていた。
その血だまりはバスの周りだけではなく、そいつが通ってきたであろうところには点々と血の跡が残っていた。
綺麗な衣装を着たマネキンを飾ってあるショーウィンドウにはべったりと真っ赤な液体がかかっていたり、壁から張り出しているネオンサインにはちぎれた手や足が引っかかり、ショートを起こして火花を散らしていたりしていた。
赤色回転灯のちかちかした光と、サイレンの音が悲鳴と交錯し、そこは阿鼻叫喚の渦となっていた。

「うふふふ・・・いつ聞いてもいい音だわ・・・」
涌坂デザイン事務所の窓から、その様子をデスルリカは指先を舐めながらうっとりとした表情で覗いていた。
カーテンの陰から見えるその光景は夕暮れから闇に至る逢魔が刻と呼ばれる時間帯にこそ相応しい。
「ふふふ・・・あの男も役に立てて本望でしょうね」
カーテンを戻して所長席に座るデスルリカ。
今、外で起こっている素敵な出来事はこの席に座っていた男によるものなのだ。
人間として有能だったか無能だったかなどどうでもいい。
今はビーストとして充分に働いてくれている。
露払いとしては充分だろう。
「あはあ・・・デスルリカ様ぁ。ご覧下さい・・・」
欲望に目をぎらぎらさせた女がやってくる。
昨日まで、いいえ、今朝までとは大違い。
貞淑を絵に描いたようにピシッとしたスーツを着こなしていた彼女は、今はブラウスの胸をはだけて黒いブラジャーを見せ付けている。
「うふふふ・・・見せたいのはその胸かしら?」
デスルリカは妖しい笑みを浮かべて目の前の女を見上げた。
「はあん・・・この胸も見ていただけるんですかぁ? 私ったらこんな素敵な胸を今まで見せないようにしていたなんて・・・バカだったんですわぁ」
デザイン画を机の上に置き、両手で胸を揉みしだくように見せ付ける。
「ふふふ・・・そのブラジャーはどうしたのかしら? 朝はおとなしいベージュじゃなかったかしらね」
「ああん・・・買ってきましたぁ。あんなベージュのブラジャーなんてバカらしくて・・・」
女は舌なめずりをしながら胸を揉んでいる。
他の女たちも一様に欲望に目をぎらつかせてその痴態を見つめていた。
「うふふ・・・あなたの夫はどう思うのかしらね」
デスルリカは意地悪く尋ねる。
「はあん・・・一人の男にこの身を与えるなんておろかですわ。夫など必要ありません。今晩からは欲望の赴くままに男を漁りまくりますわ」
「うふふ・・・それでいいのよ。それでこそお前たちに相応しい生き方だわ」
そう言ってデスルリカは机の上に置かれたデザイン画に目を落とす。
まるで女性の胸と股間のみを強調するような下着。
淫らな心でのみ身に付けられるようないやらしいデザインだ。
「いかがですか? これを身につけた女はたちまちメスの本性をむき出しにして男を襲いますわ」
「うふふふ・・・いいデザインね。早速デザインをまとめなさい」
「かしこまりました、デスルリカ様」
女は一礼をして机に戻って行く。
やがて彼女はデザイン画を前にして股間に手を伸ばし、胸と股間を激しくいじり始めてしまった。
「うふふ・・・素直になったこと」
その様子を見てデスルリカは満足した。

「何でこんなところにあんなのがいるんだ?」
「知りませんよ! 動物園から逃げ出したって話も聞きませんし」
「猟友会はまだか? 住民の避難は?」
「今取り掛かっています!」
数台のパトカーがバスを遠巻きにして取り囲む。
数人の警官たちが腰の拳銃を確認して恐る恐るバスに近づく。
バスの中からは相変わらず悲鳴が聞こえてくる。
外から中央部の扉を開けようとしたが、人が集中したためか、それともゆがんでしまったのか開こうとはしない。
反対側後部の非常口はようやく警官隊の手で開かれるが、そこから脱出できたのはわずか数人に過ぎなかった。
数人の警官が拳銃を片手に非常口から入り込む。
そこは肉片と血で彩られた悪夢の空間だった。
そして、今そいつは一人の少女を片手にぶら下げていた。

サイレンの音が近づいてきたとき、雪菜はバスの座席の下にもぐりこんだ。
狭い空間だったし、完全に隠れることなどできはしなかったが、それでも雪菜はもぐりこんだ。
悲鳴が次々と上がり、そのたびにぐしゃっとかぼきっとか言う音が聞こえてくる。
何かしら・・・これ・・・
雪菜は自分の手のひらやひざに付いた赤い液体を見つめる。
それは座席の下にとろとろと流れてきたが、雪菜はそれが何であるかわからなかった。
いや、わかりたくなかったのだ。
私・・・死ぬ・・・のか・・・な・・・
いやだ・・・
いやだ・・・
死にたくないよぉ・・・
死ぬのはいやぁ・・・
ごめんなさいごめんなさい・・・
もう嫌いなものを残したりしません・・・
ほうれん草だってちゃんと食べます・・・
お使いに行った時にお釣りをごまかしたりもしません・・・
決められた以上のお菓子を食べたりもしません・・・
ごめんなさいごめんなさい・・・
お母さんの言うこともちゃんと聞きます・・・
お手伝いだってちゃんとします・・・
宿題だってちゃんとやります・・・
明日美ちゃんのことをちょっぴりうらやましく思ったことも謝ります・・・
ごめんなさいごめんなさい・・・
だから・・・
だから・・・
誰か助けて・・・
だが、その願いは届かなかった。

「そ、その娘を放せ」
恐る恐る拳銃を構える警官たち。
言葉など通じるはずも無く思えるが、むやみやたらに撃つわけにも行かないのだ。
怪物は少女の足を持ってぶら下げており、気を失っているであろう少女を危険に晒すわけには行かない。
『ぐるる・・・』
怪物がうなり声を上げる。
薄く闇が広がっていて、バスの中は光が差し込まなくなってきている。
夕日はビルの陰に入り込み、あたりはすでに夜の気配が漂っている。
警官たちの額に汗が浮かぶ。
『ぐああああっ』
怪物は少女をバスの床に叩きつけ警官たちに飛び掛る。
「うわぁぁぁ」
拳銃の発砲音が響き渡り、それに劣らぬ悲鳴が響き渡る。

「くすくす・・・ぶざまなものだね」
バスを見下ろせるビルの屋上。
そこに二人の少女が立っていた。
一人は青い躰にぴったりしてミニスカートが付いている衣装を身にまとい、それと同色のブーツと手袋を嵌めている。
額には青い宝石の嵌まったサークレットを嵌めていて、その目はどこと無く虚ろだった。
もう一人はまったく形状が同じミニスカート型のコスチュームとブーツと手袋を身につけているが、その色は赤く、同じ赤い宝石の嵌まったサークレットが額を飾っていた。
「仕方ないですわ。所詮人間ではビーストには歯が立ちませんもの」
虚ろな目を地上に向ける赤の少女。
まだ幼さが残るその顔には表情と呼べるものが浮かんでいない。
「そうだね。それじゃ私たちが撃ち払わなきゃ・・・」
同じように無表情のまま青の少女は言う。
「ええ・・・ゼーラ様の命ずるままに・・・」
赤の少女はすっと両手を突き出して手のひらを地上へ向ける。
「いつでもいいですわ。ホーリードールサキ」
「ようし、行くよ! ホーリードールアスミ」
そう言ってホーリードールサキはビルの屋上から飛び降りた。
同時にホーリードールアスミの手のひらから真っ赤な光の玉が放たれる。
光の玉はまっすぐにバスを直撃した。

バスの天井にすっぽりと丸い穴が穿たれる。
直径一メートルほどの丸い穴。
そしてそのまま中で光ははじけるように広がった。
窓ガラスが飛び散り、周囲の警官たちが驚いて後ずさる。
ビーストは目が眩んだようにうめき声を上げながらバスの壁をぶち破って外に出てくる。
目を押さえながら左手で周囲をなぎ払うビースト。
『ウゴォォォォォ』
バスを囲んでいたパトカーの一台のボンネットが一撃を受けてべこりとひしゃげる。
「撃て、撃て!」
警官が数人発砲するが、拳銃弾はビーストの表面にめり込んだだけで、ほとんどダメージを与えはしない。
『ウゴォォォォォ』
眩んでいた目がそろそろ元に戻りつつあるらしく、ビーストは目を押さえていた手を離し、両手で警官たちに襲い掛かる。
「うわぁ」
警官たちの悲鳴が上がった。

「う・・・」
背骨に激痛が走る。
「が・・・う・・・」
あまりの痛さに声も出ない。
雪菜は歯を食いしばって目を開けた。
「!」
そこにそれは立っていた。
青いコスチュームに身を包み、右手には青く輝く細身の剣を持っている。
無表情で間合いを取り、警官たちに怪物の注意が向けられていくのを待っている少女。
「さ・・・紗希ちゃん・・・」
雪菜はその少女に見覚えがあった。
いつも元気で明るく、笑顔を浮かべると周りの人々も朗らかになるような陽だまりのような少女。
その彼女が今はまったく表情を浮かべてはいない。
いや、それよりも着ている物だって異質な感じだし、なぜここに彼女がいるのかもわからない。
もしかしたら私は死んじゃったのかも・・・
死んじゃって夢を見ているのかも・・・
「う・・・ぐ・・・」
身をよじろうとすると激痛が走る。
思わず雪菜はうめき声を上げてしまった。
「なんだ・・・生き残りがいたんだ」
ぞっとするような冷たい声。
雪菜が知っている紗希からは絶対に発しないような冷たい声。
「さ・・・きちゃ・・・ん・・・なの?」
「もう死にそうだね。闇に穢された人間なんて救うに値しないわ」
雪菜の心に突き刺さるような冷たい言葉。
「どうしたの? ホーリードールサキ」
トンと言う音がしてバスの天井に何かが降り立つ。
「生き残りがいるの。もう死ぬみたいだから放っといても平気」
「そう・・・闇に汚された人間は浄化しなければなりませんものね」
すとんと降りてきたのは明日美だった。
彼女もまた赤い衣装を身につけて冷たく無表情で怪物をにらみつける。
「あ・・・すみ・・・ちゃん・・・」
激痛に耐えながら雪菜は手を伸ばす。
「死に掛けなのは雪菜ちゃんだったんだ」
「うん」
まるでテレビの向こうでまるっきり関係の無い人が死んでいくのを見ているみたいな表情。
いや、いつもの紗希ちゃんや明日美ちゃんならそれだって多少は表情を曇らせる。
「あ・・・私・・・死ぬの?」
「そうじゃない?」
あっさりと答えるホーリードールサキ。
その顔はビーストの方を向いたままだ。
「そろそろ黙ってくださいません。ビーストの周囲から人間がいなくなってきましたわ」
ホーリードールアスミが雪菜をにらみつける。
まるで死にかけの雪菜にはまったく用がないのだというように。
「邪魔なんだよね。人間たちってさ。歯が立たないのに抵抗なんかして」
「無意味な生き物たちですからそのくらいのこともわからないのですわ。とにかくビーストを浄化しましょう」
そう言って二人の少女はその場を後にした。
「あ・・・ああ・・・あ・・・」
雪菜の目から涙がこぼれた。

警官たちを蹴散らしたビーストの周囲に赤と青の二人の少女が現れる。
ビーストは一瞬驚いたものの、即座に敵だと判断し襲い掛かって行く。
二人の少女は無表情にビーストの周囲を動いていき、赤の少女の援護の下で青の少女が斬りつけて行く。
ビーストは果敢に戦いを挑むが、二人の少女にただ翻弄されていくのだった。
やがてビーストはその場を離脱し、自己の生命の保存を目指す。
だが、二人の少女はそれを許さない。
通りを暴れながら逃げ惑うビーストを二人は容赦なく追い詰めていった。

「光の手駒か・・・」
黒くぬめるように光る唇を噛み締める。
ビーストが追い詰められ、一つのビルの地下の駐車場に逃げ込んで行くのを見下ろしていた彼女は、ビーストの命がほとんど尽きたことを感じていた。
「デスルリカ様にご報告をしなければ・・・」
この世界に光の手駒が現れるのは、ある程度は予想できたことだったが、予想できたからと言って面白い出来事ではない。
レディアルファはその場を後にしてデスルリカの元へ戻ろうとした。
「?」
何かを感じてレディアルファは振り返る。
絶望と憎しみと生存への飽くなき欲求。
それはちょっと後押しをしてあげれば素敵な闇の心に変わるだろう。
「どこから?」
レディアルファは地上を見下ろす。
「あそこ?」
破壊されたバスの残骸が目に入る。
レディアルファはすっと闇に姿を溶け込ませた。

「はあ・・・はあ・・・」
意識が霞んでくる。
床に叩きつけられた時に躰の中がぐちゃぐちゃになっちゃったのかもしれない。
誰か・・・
誰か助けて・・・
雪菜は最後の力を振り絞って叫び声を上げようとした。
その時、床に黒い穴が現れる。
「え?」
雪菜は驚いた。
そしてそこから美しく妖艶な女性が一人現れたのだ。
それは異質な光景だった。
血や肉片だらけのバスの車内に全身を黒いぴったりした衣装で身を包んだ女性が床から現れる。
普段読んでいるファンタジー小説ですら、そんなことはそうは起こらないだろう。
「あな・・・た・・・は・・・?」
苦しい息の下で雪菜は尋ねる。
「あら、可愛い女の子じゃない」
黒く塗られた唇がそうつぶやく。
「私を・・・死の世界へ・・・連れて行く・・・の・・・ですか?」
「そうね・・・あなたは生きていたいのかしら?」
くすりと薄く笑みを浮かべるレディアルファ。
「生き・・・たい・・・生きて・・・いたい・・・よ・・・」
雪菜の口から血が逆流する。
「ガホッ・・・ゲホゲホ・・・」
「ふふ・・・あなた、誰かを憎いと思う?」
苦しむ雪菜を楽しそうに見下ろしているレディアルファ。
「えっ?」
「闇の女に生まれ変わって復讐したいほど憎い相手がいるかしら?」
「そ・・・そんなの・・・いませ・・・ん」
苦しい息の中で雪菜は答えた。
「うふふ・・・まだ正直になれないようね。でもいいわ。デスルリカ様もきっとあなたには興味をお持ちになると思うし。いいお土産ができそう」
レディアルファは微笑むと雪菜のいる床を闇で満たす。
「えっ? あっ・・・」
たちまちのうちに雪菜とレディアルファは闇の中に飲み込まれていった。

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  1. 2006/01/17(火) 20:38:54|
  2. ホーリードール
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今日は半年記念。豪華二本立て

書くのは楽しいですねぇ。
今日は休みをフルに使ってSSを書いていました。
というわけで、ホーリードールの五回目を投下します。
楽しんでいただければ幸いです。

5、
二人が教室に入っていくと、もうほとんどの生徒たちは給食を食べ終えてしまったあとだった。
「はう~・・・もう残っていないかも~」
泣きそうな情けない声を出してしまう紗希。
彼女にとって給食を食べられないということは、それだけで死にそうな気持ちになってしまう。
紗希にとって元気の源は食事なのだ。
「紗希ちゃん。とにかく残っていないか調べてみましょう」
落ち込みかけている紗希を元気付けようと、明日美は食缶の方へ歩き出す。
いつも食缶が空になるということは、人気メニューでもない限りそうはない。
だが、今日はあいにくイカのカリン揚げだ。
イカにカレー味をつけて油で揚げたこのメニューは明日美も大好きな人気メニューだった。
もしかしたらもう無いかも・・・
明日美自身もちょっと悲しくなる。
「紗希ちゃん、明日美ちゃん。こっちこっち」
二人を呼ぶ声に振り向く明日美。
教室の片隅に机が並べてあり、その上には給食の食器が並んでいた。
そして埃がかからないようにクロスがかけられている。
「こっちだよー。紗希ちゃん、明日美ちゃん」
その机に着いて手を振っている一人の少女。
白いブラウスに可愛いリボンがついた服を着て、肩までの髪とカチューシャをトレードマークにしている。
「雪菜ちゃん」
「雪菜ちゃん」
二人の声がハーモニーを奏でる。
「もう、遅いよ。食べちゃうところだったのよ」
そう言いながらもニコニコと二人を迎える小鳥遊 雪菜(たかなし ゆきな)。
「ごめんね、後片付けが長引いてって・・・そんなに長引いた覚えないんだけどなぁ」
「待っててくれたのですか? どうもありがとうございます」
二人は呼んでくれた雪菜のところへ行く。
「そんなことはいいの。さ、食べましょ。もうお腹ぺこぺこよ」
雪菜がクロスを取り払うと、もう冷めちゃったものの美味しそうな給食が三人分机の上に並べられている。
「うわぁ! 取り置いてくれたんだ。ありがとー」
紗希は喜んで席に着くなり食べ始める。
「もう、紗希ちゃんたら」
「うふふふ、紗希ちゃんらしいよね。明日美ちゃん、食べよう」
明日美があきれるなか、雪菜は席について給食を食べ始めた。
「本当にありがとうございます。雪菜ちゃん」
「いいのよ」
明日美が頭を下げるが雪菜はにこやかに微笑んで頷くだけだった。
「美味しーい」
紗希は幸せそうにイカのカリン揚げを食べている。
その表情を見ていると、明日美も雪菜もなぜかほほえましく感じるのだった。
「紗希ちゃん幸せそう」
「本当ですわ。食べている紗希ちゃんはとても可愛いですわ」
「う、そ、そうかな」
口をもぐもぐさせながら照れくさそうに紗希は笑った。
「あら?」
「どうしました? 雪菜ちゃん」
スプーンを口に運ぶのをやめ、明日美は雪菜の方を向く。
「二人ともそんなペンダント・・・していたかしら?」
雪菜は今まで見たことのない、二人の胸に輝くペンダントを見る。
「え? あれ? してた・・・はずだよね・・・」
「ええ・・・そう・・・思いますわ」
紗希も明日美も一瞬不思議な感覚に捕らわれる。
何かこのペンダントによって自分が自分で無くなって行くような・・・
そんな不気味な感じを一瞬抱いてしまったのだ。
だが、それはすぐに吹き払われ、ペンダントに対する疑問はなくなってしまう。
「結構似合っているよね?」
「ええ。紗希ちゃんは青、明日美ちゃんは赤なんですね。いいなぁ。おそろいで」
紗希と明日美を交互に見比べてうらやましがる雪菜。
「私も欲しいなぁ」
「それでしたら今度一緒に買いに行きましょう。私も紗希ちゃんに教えていただいたお店ですから」
明日美が微笑む。
「ええ? 嘘。明日美ちゃんが教えてくれたんだよ」
紗希が首を振った。
「あら? そうでしたか? どこで買ったんでしたかしら」
明日美は不思議そうにペンダントに眼を落とした。
その明日美の胸の上でペンダントは鈍く不気味に光っていた。

放課後。
紗希と明日美は教室の掃除を終えて帰宅の途に着く。
鞄を持って夕暮れの通学路を歩いていく二人。
「今日は雪菜ちゃんにとてもお世話になってしまいましたわね」
「うん。おかげで給食が食べられたもんね」
二人にとって雪菜は五年生になってから知り合った友人だった。
だが、今ではずっと昔から知り合っていたかのような気がするほどの仲良しと言っていい。
グループなどが違ったりするために、紗希と明日美ほど一緒にいるわけではないが、多くの時間をともに過ごすことが多いのだ。
「今日は雪菜ちゃんは中心街に用事があるそうですわ」
「うん、バスに乗って行くって言っていたもんね」
「残念ですわ。今日はお母様がアップルパイをご用意しているはずですので、一緒に遊びに来て欲しかったのですが」
明日美の表情が少しかげる。
せっかくのお母さんのアップルパイをみんなで楽しく味わいたかったのだ。
「また今度呼んであげようよ。雪菜ちゃんもきっと喜ぶよ」
紗希はそう言って慰める。
「ええ、そうですわね。それに今日は紗希ちゃんが一緒ですから、お母様も喜んでくださいますわ」
「そうかな? お邪魔じゃないかな? いつも家のお母さんはご迷惑を掛けないようにねってうるさいんだ」
ぶらぶらと楽しくおしゃべりをしながら歩みを進めて行く二人。
「そんな、迷惑だなんて思ったことは一度もありませんわ。お母様だってそう思っているはずですわ」
「だといいんだけど・・・」
ちょっと自信が無い紗希。
元気で活発な彼女は時々ドジもやってしまう。
それが紗希にはちょっと気になることだったのだ。
「紗希ちゃん、心配いりませんわ。さ、早く帰ってお母様のアップルパイを食べましょう」
「うん、そうだね。ご馳走になるね」
「ええ、どうぞご遠慮なく」
にこやかに微笑む明日美。二人は夕暮れの道を明日美の家へ向かって歩いていった。

「うふふふ・・・さあ、暴れなさい。お前には破壊という闇を広めてもらうわ」
人気の無いビルの屋上。
夕暮れの太陽を背にしたシルエットはまさしく女性。
まるで何も着ていないかのような躰のラインをむき出しにしていながらも、何かその姿は神々しささえ感じさせる。
全身を真っ黒なピッタリとフィットした衣装に包み、手足の先さえも真っ黒なブーツと手袋で覆っている。
その視線の先には地上を蠢く虫けらにも等しい人間どもの姿。
その中へふらふらと酔っ払いのようにビルから歩き出して行く巨大で毛むくじゃらな生き物。
醜悪なゴリラを模したようなその姿に、人々は始めは訝しみ、次には悲鳴が周囲を圧するようになる。
「うふふふ・・・始まったわ」
真っ黒に塗られた唇を艶めかしい赤い舌が舐めて行く。
それはこれから起こる惨劇への期待に他ならなかった。

ドクン・・・
「えっ?」
立ち止まる紗希。
「どうしたので・・・」
ドクン・・・
明日美の言葉も止まってしまう。
ドクンドクン・・・
心臓が激しく鼓動する。
「あ・・・な、何・・・何なの、これ!」
「な、何でしょう。胸が・・・胸が苦しい感じが・・・」
二人は思わず顔を見合わせてしまう。
『さあ・・・』
『さあ・・・選ばれし少女たちよ・・・』
『時が来ました・・・』
『さあ・・・目覚めるのです・・・』
『ホーリードールたちよ!』
直接頭に響いてくる甘い声。
「ホ、ホーリードール?」
「い、いや。いやです。私はいやです!」
紗希の横で狂ったように首を振る明日美。
「あ、明日美ちゃん・・・」
「紗希ちゃん・・・聞いてはだめ・・・聞いてはだめです!」
明日美は耳をふさぎ、必死になって声から逃れようとする。
紗希はそんな明日美に驚き、何とかしようと思ったが、頭に響いてくる声が甘く囁きかけてくるのを拒絶できなかった。
「あ、明日美ちゃん・・・さ、逆らわないで・・・」
「紗希ちゃん! だめです! 惑わされないで!」
明日美は歯を食いしばって紗希の方へ手を伸ばす。
親友が惑わされるのを見過ごしにはできないのだ。
『さあ・・・目覚めなさい! ホーリードールサキよ!』
「は・・・い・・・ゼーラ様・・・」
紗希の瞳はたちまち虚ろになり、その胸から下がっているペンダントを手にとって差し上げる。
ペンダントが青く発光し、その光に紗希は包まれていく。
「紗希ちゃん・・・だめです・・・」
頭の中の声はますます強くなり、明日美の意識を奪い去って行く。
『さあ、次はあなたの番です、ホーリードールアスミ! 目覚めなさい!』
「ああ・・・あああ・・・」
すうっと明日美の瞳から光が失われていく。
「は・・・い・・・ゼーラ様の仰せのままに・・・」
明日美も胸のペンダントを握り締めて天高く持ち上げた。
赤い光がはじけるように広がって明日美の躰を飲み込んでいった。

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  1. 2006/01/16(月) 22:40:15|
  2. ホーリードール
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砂漠の山猫

と言うことで、本日の更新です。

ローネフェルトの新たな戦場はアフリカとなります。
この砂漠の地で新たな戦いに望むローネフェルトをお届けしますねー。

潮風が吹いている。
太陽が照り付けている。
「オーライ、オーライ」
U-34から物資が陸揚げされていく。
ニューヤークからの輸送物資はこうして潜水艦で細々と輸送するしかない。
地中海の輸送ルートはすでに失われていた。
今回無事にトリポリにたどり着けたのは僥倖というほかは無い。
途中連邦のフリゲートに追跡を受けたものの、何とか振り切ることができたのは艦長の腕前のおかげだったでしょう。
私は艦長以下のU-34の乗組員に別れを告げ、艦を後にした。

ジャブローから帰還した私はすぐに軍本部に呼ばれ一階級の昇進を受けた。
ジャブローを攻略できなかったにもかかわらず、生き残ったものには昇進が与えられたのだ。
それは敗北を糊塗する目的と士気阻喪を阻止する目的の二つがあったのだろうけど、それが上手くはいかなかったことは明白だった。
ミナヅキ少尉は軍病院に入れられ、私は待機命令を受けてニューヤークに留まった。

その後多少の小競り合いがあったものの、我が軍は後退続き。
地上の拠点も次々と失っていた。
私は命令を受けてU-34に乗り込み、ジオン海軍の一員として水中用モビルスーツ乗りとなるのだと思った。
ところが今私はU-34を追い出され、このアフリカの港町で所在無げに過ごしている。
「宇宙へ行けって言ったって・・・どうしたらいいのよ・・・」
私は荷物を手にして桟橋を後にする。

「アマリア・ローネフェルト中尉殿。いえ、大尉殿でしたね。アフリカへようこそ」
小柄な少女が着こなせない軍服を着て敬礼していた。
「あなたは?」
私は答礼を返しながらそう尋ねる。
「はい、私はジオンアフリカ軍団所属、第999軽旅団、第444モビルスーツ中隊のモニカ・ブラウン伍長です」
まだほんの少女と言っていいかもしれないわ。
我が軍の人材不足は深刻のようね。
「アマリア・ローネフェルト大尉よ。よろしく」
「どうぞこちらへ。少佐殿がお待ちかねです」
ブラウン伍長が私の荷物を引き取り、先に立って歩き出す。
「少佐殿?」
私は一瞬アドラー少佐を思い出す。
「オスカー・ボスマン少佐殿です。第444モビルスーツ中隊の中隊長です」
ブラウン伍長が歩く先には車が用意されていた。
「どうぞ。大尉殿」
「ありがとう、伍長」
私は開けられたドアから中に乗り込む。
ブラウン伍長はすぐに私の荷物をトランクに放り込み、そのまま運転席に着くと車を発進させた。

「どこへ向かうの?」
「第444中隊の集結地が近くなんです。そちらにご案内するように申し付かっています」
「そう・・・」
私は少し襟元を緩める。
そろそろ晩秋だと言うのにこの暑さはどうだろう。
さすがに北アフリカと言うことか・・・
砂漠化だけはとどまり無く、すでにサハラは以前の倍近くの広さになっているという。
かつてヨーロッパの強国同士が最後の騎士道を発揮した場所。
狐やネズミがいると言うけどホントなのかしら・・・
私は窓の外を眺める。
舗装された道路とところどころに椰子の木が立っている以外は砂ばかり・・・
こんなだだっ広い場所ではすぐに発見されてしまうだろう。
こんなところで戦っているなんて想像もつかないわね。

第444中隊の集結地というのはすぐに見つかった。
数両のマゼラアタックやサムソントレーラーが砂漠の中で一団となって停止しているのだ。
空爆でも受けたらひとたまりも無いように思える。
キャリフォルニアやカナダ方面で見たようなグリーン塗装ではなく、デザートイエローに塗られたマゼラアタックやサムソンたち。
なるほど、これは意外と見つけにくいのかもしれないわ。

サムソンの一団の中に一台のホバートラックがある。
正面と側面にはでかでかと我がジオンの国籍マークが描かれていた。
ブラウン伍長はそのホバートラックのそばに車をつける。
「ブラウン伍長・・・これって・・・」
「はい、第444中隊の司令部車両です。見てお判りの通り、連邦軍のホバートラックを捕獲したものです」
ブラウン伍長は私のためにドアを開けてホバートラックに招き入れてくれる。
私はデザートイエローに塗られた連邦軍の車両に初めて足を踏み入れた。

ホバートラックの中は、狭いけれどもテーブルや地図などが広げられ、椅子が設置されて司令部として使えるようになっていた。
その椅子に座っていた二人の少佐がすっと立ち上がって私の方を向く。
「アマリア・ローネフェルト大尉です。ニューヤークから参りました」
私は敬礼して反応を探る。
「ああ、聞いている。宇宙に上がるってこともな。だが、宇宙へ上がるには敵の前線を突破しなくてはならん」
銀髪の少し禿げかけた太目の中年の少佐がそう言って頷く。
「敵の前線を?」
「そうだ。そのためしばしの間君は我が第444中隊に所属してもらうことになる。これはノイエン・ビッター閣下もご承知下されている」
はあ・・・話がうますぎると思ったわ。
要はここで敵を食い止めなければ、宇宙には上がれないってことね。
「了解しました。以後、よろしくお願いいたします」
私は再び敬礼した。
「うむ、よろしく頼むぞ、大尉。君には期待しておるのだ。何せ君はカナダ、アラスカ、そしてジャブローの生き残りなのだからな」
太目のお腹を揺らして笑っている少佐。
察するところこの少佐がボスマン少佐ということか・・・
「ほう、それはすごい。ぜひとも我が中隊にほしいものだ」
現地人よろしくターバンを頭に巻いたもう一人の少佐が私のほうへやってくる。
「第999軽旅団、第443モビルスーツ中隊のロンメルだ。ここに飽きたらいつでも俺のところにくるがいい」
そう自己紹介をして笑うロンメル少佐。
豪放磊落な感じでたたき上げの軍人と言う感じがする。
信頼の置ける指揮官という感覚ではロンメル少佐のほうがボスマン少佐より上のようだわ。
「ロンメル。それは困るぞ。彼女にはこれから我が隊の中核となってもらわねばならんのだ」
「ふん、それはそうだろう。君のところはモビルスーツはあってもパイロットがいないのだからな」
パイロットがいない?
いったいどういうこと?
「そんなことは無い。まだ三人残っている」
ボスマン少佐が言った言葉に私は驚いた。
三人?
たった三人?
それじゃ中隊とはとても言えないわ。
「三人か・・・実態は小隊と言うわけか・・・」
ロンメル少佐が首を振る。
「本国からの補充が届かんからな・・・パイロットは誰でもそばに置きたいものよ」
「ふん、誰でもと言いながら、しっかりと優秀なパイロットを受け取ったじゃないか」
ふふ・・・ボスマン少佐に対する恨み言のようだわ。
「ビッター閣下によくも取り入ったものよ」
「だが、パイロットもいなければ機体も無い。これでどうやって戦えと言うのか・・・」
「ふん、弱音を吐くな! 俺はいざとなればここで何年でも戦ってやるさ」
ロンメル少佐はそう言って外へ出て行く。
「いいか、ローネフェルト大尉。さっき言ったことは本当だ。いつでも俺のところに来い」
「ハッ、機会がありましたら、その時にはぜひ」
私は敬礼をしてロンメル少佐を見送った。

「まあ、座れ」
私は勧められるままに席に着く。
「自己紹介がまだだったな。俺がオスカー・ボスマン少佐。第444モビルスーツ中隊の指揮官だ」
薄くなった銀髪をなでつけながらボスマン少佐がそう自己紹介をする。
指揮官としての腕がどうなのかはわからないが、しばらくはこの人の下に居なくてはならないらしい。
「あらためまして、アマリア・ローネフェルトです。よろしくお願いいたします」
私は立ち上がって敬礼する。
「ああ、構わん、座ってくれ」
「はい」
私は再び席に着く。
「これが辞令だ。君には第二小隊を率いてもらう。ただし、今は君だけしかおらん」
「私だけ?」
私は辞令を受け取ると目を通す。
そこにはただ簡潔にボスマン少佐の指揮下に組み入れられる旨が記されていた。
「ああ、本国にはパイロットの補充を頼んではいるが・・・なかなか来なくてな・・・」
「そうですね。補給ルートは各所で寸断されていますから」
「だが、明後日には二人到着する予定だ。ロンメルは物資調達に関しては達人だが、人を調達するのは俺の方が上手いぞ」
そう言ってボスマン少佐は笑った。
「まあ、とにかく明後日には君の部下も紹介できるだろう。それまではゆっくりしていてくれ。中隊もここを動けんしな」
「わかりました。一つよろしいでしょうか?」
私は気になったことを尋ねる。
「ん? なんだ?」
「私のモビルスーツはあるのでしょうか?」
「心配するな。モビルスーツだけは七機ある。1から3番機までは第一小隊が使うが、残りは好きに使え」
ボスマン少佐は手元の書類に目を通す。
補給の不均衡がこういった形で現れているのか・・・
パイロットがここにはいなくてモビルスーツがある。
ところがある場所ではパイロットがいてモビルスーツが無いのだ。
「わかりました。品定めをさせていただきます」
「ああ、ブラウン伍長に部屋を用意させる。あとは彼女に任せろ」
「了解しました。それでは失礼いたします」
私は敬礼してボスマン少佐の指揮車両を後にした。

「こういうこと・・・」
私は驚いていた。
ブラウン伍長に案内されて連れて行かれた先はサムソントレーラーの場所だった。
「すみません、大尉殿。いつ連邦軍の攻撃があってもいいように各車両自体がパイロットの宿舎のようになっているんです」
「なるほどね。それで乗り手のいない4、5、6、7号車のどれかを好きに使えってことか・・・」
私はシートをかぶせられている車両を見てまわる。
それにしても・・・
いったいここは何なんだろう・・・
指揮車両もそうだが、物資輸送用のトラックはほとんど全てが連邦軍の捕獲品だわ。
それにマゼラアタックに混じって61式戦車まであるし・・・
まさか・・・
私は手近のサムソンのシートをはぐってみる。
「これは・・・」

サムソントレーラーの荷台に載せられていたのは、紛れも無く連邦軍のジムだった。
各所に砂漠用のフィルターを噛ませてある砂漠戦仕様のジム。
その胴体には胸のところにジオンの国籍マークが入っている。
「ほかも全部そうなの?」
私はブラウン伍長に尋ねた。
「全部と言うわけではありません。第一小隊はすべてジオン製モビルスーツですし、残りの四機のうち二機だけが捕獲したジムとなります」
「残りの二機は?」
「MS-06Dと05です」
「ふう・・・」
私はため息をついた。 [砂漠の山猫]の続きを読む
  1. 2006/01/16(月) 18:49:35|
  2. ガンダムSS
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丸半年達成しました

昨年の7月16日にブログを開設して以来、丸々半年経ちました。

その間、皆様の温かい支援の下、あざといこともやりましたが毎日更新を続けてくることができました。

ブログを始める時にまず三日、一週間、一ヶ月、半年と目標を定めてきましたので、今日半年目を達成できたことは喜びに耐えません。

これからもできる限り続けていこうと思います。
まずは次の目標の一年を目指しますね。

体調を整えて、毎日更新を続けられるように頑張りますので、これからも皆様のご支援をよろしくお願いいたします。

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  1. 2006/01/16(月) 18:44:12|
  2. 記念日
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え? 俺のところより出来がいいの?

第二次世界大戦終結後、世界はジェット機の時代になりました。
その代表となったのがソ連軍のMIG-15と米軍のF-86でした。

ソ連軍のMIG-15はドイツの技術を取り入れた優秀なジェット戦闘機でした。
その前に作られたMIG-9はその飛行性能こそ悪いものではありませんでしたが、戦闘機として作られたにもかかわらず機関砲を取り付ける場所に困り、空気取り入れ口に機関砲を取り付けるという最悪の選択をしてしまいました。

結果、MIG-9は機関砲を撃つたびにジェットエンジンが失火する恐怖を味わう破目になってしまいました。
つまり戦闘機としては使えない代物になってしまったのです。

その教訓を得て作られたMIG-15は、戦後のジェット戦闘機の代表格として東側陣営の共通戦闘機として大量生産をされることになりました。
ソ連の常としての大量生産は一万機に及ぶものでしたが、ソ連ばかりではなく東側各国でライセンス生産が行なわれました。

高性能戦闘機を使いこなすためには、当然練習機が必要なわけで、複座型のMIG-15が練習機として採用されたのですが、本国ソ連では米軍との軍拡競争の真っ最中であり、実戦配備のための戦闘機型が優先され、練習機型までは手が回りませんでした。

そのため練習機型は主にライセンス生産を行っている国が担当して、逆にソ連に輸出するような状況となったのです。

その中でも戦前から高度な技術を有していたチェコスロバキアで生産されたMIG-15は、その仕上がりが素晴らしく、本国ソ連で生産された機体よりも優秀だったそうです。

ソ連としてははなはだ面白くない状況だったかもしれませんが、ヒトラーが最後まで手放したくなかったのがチェコスロバキアの工業技術力だったことを考えると、当然だったのかもしれませんね。

それではまた。

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  1. 2006/01/15(日) 23:42:21|
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ムーンクライシス

「ムーンクライシス」 メディアワークス社 松浦まさふみ著

機動戦士ガンダムの外伝を描いたマンガの中でも私が個人的に好きな作品の一つです。

宇宙世紀0099年。
あの一年戦争からはるかに二十年の時が流れていますが、いまだ地球圏は安定には程遠い状況でした。
しかし、ネオジオンはすでに弱体化し、一部の跳ね返りがテロリズムを繰り返すだけとなっていました。
一方連邦は財政悪化に従い、連邦軍の戦力を大幅に縮小してしまっていました。

そんなときにネオジオンの一部が月を人質に武装蜂起をします。
それに対抗できる連邦軍はわずかしかなく、そのうちの一隻「ベクトラ」のモビルスーツパイロットが主人公です。

彼はあるとき大気圏に突入して燃え尽きようとしている貨物船乗組員を寸前で救出します。
たった一人生き残ったのは若くて美しい女性でした。

実はその貨物船はネオジオンの船であり、救出された女性はネオジオンの一人だったのです。
彼女は今回の作戦の無謀さを知り、何とか仲間を止めようとして、主人公にネオジオンの作戦を伝えます。

「ベクトラ」はその情報を元にネオジオンと戦い・・・

と言う話なんですが。
そのヒロインがなんとなんと・・・(ネタバレのため自主規制)なんですよね。

美しく成長した(自主規制)様が最後には主人公と結ばれ、ともに地球へ降りていくことになります。

ネオジオン艦隊の指揮官は、彼女を主人公に預けるにあたり、ジオンの名に縛られる彼女に、実は彼女はクローンであり、ジオンの名を継ぐ資格は無いと告げます。
彼女はショックを受け、まがい物である自分は生きていても仕方ないと思い悩みますが、主人公がそんなことは関係ないんだと言って彼女を受け止めます。

最後に連邦軍の攻撃の中ネオジオン艦隊の指揮官に、われわれが護り仕えていたのは偽者だったのかと聞く部下に対して、まがい物に忠誠を尽くすばか者がいるかと言うのですが、なかなかそのあたりは読ませてくれます。

ガンダム物の中でもちょっと異色ですが、素敵ないい作品ですので、よければご一読を。
それではまた。

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  1. 2006/01/14(土) 23:23:36|
  2. 本&マンガなど
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ヤクラ

昨日に引き続きTRPGのモンスターで面白いものを紹介します。

もう古い作品となるのですが、国産ファンタジーTRPGのさきがけであります「ローズトゥロード」というTRPGがあります。

この「ローズトゥロード」のサプリメントに「ナーハン・ラムザス編」というのがあるのですが、その中に表題のヤクラというモンスターが出てきます。

このヤクラ、見た目は巨大なクモなんですが、本来は樹上生活を営むおとなしい生物なのです。
しかし、いったん繁殖期を迎えますと、中型の動物まで襲うようになります。

それはこのヤクラの繁殖方法が極めて特殊であるからにほかなりません。

ヤクラは通り掛かった中型動物や大型動物(その中には当然人間やエルフなども含まれる)に糸を吹きかけます。
糸に絡まれた動物はうまく脱出できなければやがて糸に絡めとられてしまいます。

絡め取られた動物はやがて繭状にされて樹上から吊るされてしまいます。

それからほぼ一ヶ月。
繭の中に捕らわれていた動物は繭を破って出てきます。
その時にはその動物は新たなヤクラとなっているのです。

ヤクラが子孫を増やす方法はこれだけしかなく、自己の子孫まで他の生物がいないと生み出せないという非常に変わった生き物ですが、森へ入っていった友人を探しに行き、襲ってきたヤクラを倒したら、実は友人だったということにもなりかねませんね。

もちろん以前の記憶などは無く、ただのヤクラというモンスターになってしまうのですが、何らかの拍子に変態途中の段階で繭からでてしまい、クモ女のようになってしまうってのも萌えかも知れないですね。

それではまた。

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  1. 2006/01/13(金) 23:13:56|
  2. TRPG系
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デビルスワイン

ファンタジーTRPGの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」にはいろいろなモンスターが出てまいります。
強いのも弱いのもいろいろとおります。

その中にライカンスロープという動物の姿に変身できる人間というモンスターが出てきます。
これは病気の一種で、噛み付かれたりするとうつされたりするんですが、そのライカンスロープの一種にこのデビルスワインというモンスターがいるのです。

このモンスターは太った男もしくは巨大な豚の姿をとりますが、夜には自由に姿を変えられますが、昼はどちらかの姿で過ごさなければなりません。
人間の肉が大好物で、常に人間を襲うことを考えているのですが、その特殊能力の一つにチャームの魔法を自在につかえるというのがあるんですね。

太った風采の上がらない男が二、三人の素敵な女性をはべらせているようなシーンが現出し、その女性たちは虚ろな目で男性を誘惑する。
誘われた男性たちはデビルスワインの餌となってしまうんですね。

その女性も次の気にいった女性を見つけると食べちゃうんでしょう。
そして新たな女性にチャームをかけて虜にし、思うままに操ります。

操られた女性はモンスターにその身を捧げ、彼のために男をおびき寄せ、飽きたら食べられる。
悲劇的なんですが、なんか萌えるんですよね。
デビルスワインになるのもいいかなぁ、なんて考えてもしまいます。(笑)

こんなモンスターを使ったSSもそのうち書いてみたいものですね。
それではまた。

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  1. 2006/01/12(木) 23:15:25|
  2. TRPG系
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砲塔が回らない? そんなバカな!

五号戦車パンター。
ドイツ軍の数ある戦車の中でも人気の高い戦車の一つでしょう。

T-34に対抗できる戦車としてドイツ全軍の期待を一身に集めて登場したパンターでした。
しかし、開発の時間が足りなかったために、さまざまな初期不良に悩まされることになり、最終量産型であるG型に至っても全てを解決できませんでした。

1941年6月、ドイツ軍はソ連侵攻作戦「バルバロッサ」を発動します。
事前に得ていた情報によれば、ソ連軍は数こそ多いもののそれほど強力な戦車を有してはおらず、ドイツ軍の主力戦車たる三号戦車と、それを支援する四号戦車で充分対抗可能という結論を得ていました。

ところが驚いたことにソ連軍にはまったく新しい戦車を前線に投入してきたのです。
傾斜装甲を持ち機動性の高いバランスの取れた傑作戦車。
それがT-34でした。

最初のうちこそ数も少なく、またソ連戦車兵の技量も低かったために、ベテラン戦車兵の多かったドイツ軍はその不利を補い勝つことができました。
しかし、T-34の前には主力たる三号戦車ではもはや対抗できないことが明らかになったことは、ドイツ軍の心胆を寒からしめました。

そこで次期主力戦車として開発中の戦車の開発を早め、T-34に対抗できる戦車として送り出すことにしたのです。

実は最初はT-34のあまりの完成度の高さに、そのままコピーしようという話すら持ち上がったのですが、ドイツ技術陣の誇りが許さなかったのと、より大きな理由としてエンジンをコピー生産できないことが判明したため、コピー生産は見送られました。

結局ドイツ軍は新型の重戦車と中戦車を開発して戦場に送り出しました。
それが六号重戦車ティーガーと五号中戦車パンターです。

ティーガーはご存知の通りドイツ軍の今までの戦車の延長上の戦車であり、最後の純正ドイツ戦車と言ってもいいでしょう。
ところがパンターはT-34の良いところ取りをして作り上げようとしたために、今までとは違う形状の戦車となりました。

しかもより早く生産を始めようとしてしまったために、実物大模型すら作らなかったのです。
コンピュータでシミュレーションをすることができれば問題ないでしょうが、当時そのようなものはありません。

結果として図面だけで作り上げた試作車はお粗末なものでした。

操縦手と無線手のハッチが砲塔の端っこに干渉して砲塔が回らないという体たらくだったのです。
結局、これは砲塔の角を削り取るという荒療治でこの問題を切り抜けます。

また、エンジンルームはエンジンが巨大なものになってしまったために余裕が無く、充分な冷却気を送ることができず、ちょっとしたことですぐオーバーヒートを起こしてしまうことがわかりました。
それに対し、解決策としてとられたのはエンジンに送られる混合気のガソリンの比率を高め、燃え残ったガソリンの気化熱によってエンジンを冷却するというとんでもないものでした。
結果、ただでさえ悪い燃費が異常なまでに悪くなり、パンターが活躍しづらかった原因の一つとなりました。

攻撃力、防御力、機動力が高いレベルで結実させた優秀な戦車には違いないのですが、開発時間のあまりの少なさが災いして、生産途中にいくつもの改良を泥縄的に行なわざるをえなくなってしまったんですね。
そのおかげで故障が多く、稼働率が低い戦車となってしまったのは残念です。
好きな戦車なんですけどね。

それではまた。

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  1. 2006/01/11(水) 23:16:21|
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ジャブロー攻略戦終結

長くかかりましたけど、これでひとまずローネフェルトにとってのジャブロー攻略は終結です。

アドラーが予想以上にヘタレなキャラになってしまったのが自分でも驚きでした。
あと、意外なほどアヤメ・ミナヅキ少尉に対する声援が多かったですね。

個人的にはアヤメは単なるアドラーと一緒のいやな奴という位置づけだったのですが、書いているうちにどんどん自己主張してしまい、意外な結末になってしまいました。

中身に関してはどうかお読みいただければと思います。

「居た・・・」
敵モビルスーツのほかに戦車やミサイルホバーが数機。
重装甲の07C3だけがあちこち傷だらけになりながらも耐えている。
その足元には破壊された07A。
イ中尉の機体だろう。
まさかあの男は重装甲の07C3に乗っていながら07Aのイ中尉を盾にしたというの?
赦せない・・・
ミナヅキ少尉には悪いけど、私は少佐を赦せない・・・
『来るな。来るなぁっ!』
「少佐! あなたって人はっ!」
私はザクバズーカを発射する。
同時にハンドマシンガンを発射して、ホバー機動を開始する。
ザクバズーカのHEATは連邦のモビルスーツの背中を直撃し、そのモビルスーツは炎を上げて吹き飛んだ。
ハンドマシンガンの弾はミサイルホバーや戦車を蹴散らしていく。
「どけぇっ!」
私は再び位置を変えてザクバズーカを撃ち込んだ。
敵モビルスーツは一斉にこちらを向く。
少佐の07C3を囲みつつあった敵モビルスーツは、私という新たな敵に対するために態勢を整えざるをえない。
その一瞬の隙を私は突く。
HEATが敵モビルスーツの右腕をその保持するビーム砲ごと吹き飛ばした。
敵パイロットは戦う意思をなくしたらしい。
ハッチを開放して脱出していく。
これで二機。
あとは・・・
『中尉殿! 四機そちらへ行きます。気をつけて!』
ルッグンから状況が伝えられる。
四機も周囲に向かってくるということか・・・
少しミナヅキ少尉にも手伝ってもらわないとならないかも・・・

『ご主人さまぁっ!』
敵モビルスーツたちの前に飛び出していく一台の青いモビルスーツ。
「ミナヅキ少尉!」
私は思わず叫ぶ。
なんて無茶。
敵は確かに動揺しているが、それは一時のこと。
戦力はあちらが上なのだし、姿を現してしまえば狙われる。
少佐に目が行っている状態でこちらが背後をかく乱できれば最高なのだけど・・・
「ミナヅキ少尉! 下がって!」
『ご主人様に手出しするなぁっ!』
ヒートロッドを振り回し、敵モビルスーツ群に踊りこんでいく07B。
「ミナヅキ少尉!」
ええい、できるだけ援護するしかないわね。
私は07Hをホバーで滑らせて、ザクバズーカを発射する。
ミナヅキ少尉に向かおうとしていた連邦のモビルスーツがそれを見て間一髪のところで回避していく。
命中はしなかったが仕方ない。
『誰か! 誰か俺を護ってくれぇっ!』
『ご主人様。アヤメです、ご主人様!』
ハンドマシンガンをめくら撃ちにしているアドラー少佐。
周りが見えていないのか?
『アヤメェ! 俺のそばに居てくれぇ! アヤメェ!』
『ご主人様!』
ミナヅキ少尉の07Bは巧みな操縦で敵のモビルスーツをかわしながら少佐の07C3へ近づいていく。
少佐はこちらに背を向けて敵モビルスーツに向かって弾をばら撒いているだけ。
ぶざまなものだわ。
あれでは牽制にもなりはしない。
そのうちに弾が切れてしまうだけでしょうに・・・
でも、この分ならミナヅキ少尉がうまく少佐の背後に回ってくれそうね。
今回の戦いのことはこれが終わったらしかるべき報告はさせてもらうつもりだけど、とりあえずは生き延びることが先決だものね。

「ミナヅキ少尉、アドラー少佐を確保して!」
『ご主人様!』
『来るなぁっ! 俺に寄るんじゃないっ!』
アドラー少佐の声が響く。
まさか・・・
すでに敵味方の区別もつかないほどの恐慌を?
いけない!
「ミナヅキ少尉! 下がって!」
『ご主人様ぁっ!』
『うわぁっ! 来るなぁっ!』
ただマシンガンの弾をばら撒くに過ぎない少佐の07C3が背後の気配に振り向く。
少佐を援護するために背後から近寄っていたミナヅキ少尉の07Bが、振り向いた07C3の磨き上げた正面に写りこむ。
『ご主人様ぁっ!』
『来るなぁっ!』
「ミナヅキ少尉!」
私の目前で07C3のハンドマシンガンがうなりを上げる。
至近距離で発射されたマシンガンの弾は07Bの装甲を撃ち抜いていく。
『えっ?』
間の抜けたようなミナヅキ少尉の声・・・
「アヤメェッ!」
私はザクバズーカの残弾をすべて撃ち出し、敵モビルスーツを牽制する。
敵は一瞬ひるみ、数秒の時間が生じる。
私はその隙を突いて一気に07Hを走らせた。
「アヤメェ!」
『ご・・・しゅじ・・・ん・・・』
各所から火花を吹き散らす07B。
そのままどうっと倒れこむ。
『うわぁっ! 来るな来るなぁっ!』
錯乱しマシンガンを撃ちまくるアドラー。
が、やがてその弾も尽きる。
『ひ、ひあああ・・・誰か、誰かいないのかぁっ! アヤメはどこだぁっ!』
「あんたが、あんたが撃ったんでしょうが!」
私は二本目のザクバズーカを発射して、敵モビルスーツを撃破する。
『うわぁぁぁぁぁ! 来るなぁっ!』
弾の切れたハンドマシンガンをただ振り回している07C3。
この男は実戦での極限状況を知らなかったのか?
それとも・・・薬物でもやっていたのか・・・
弾の尽きた07C3は二機の敵モビルスーツの砲撃を受けて行く。
いくら装甲の厚い07C3といえども、接近されてのビーム砲では防げない。
あちこちの装甲を切り裂かれていく07C3。
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁ』
アドラー少佐の悲鳴が上がる。
「クッ」
いまさら助けることもできないし、現状ではこちらも手一杯。
それに・・・
私は倒れている07Bへ機体を寄せる。
ミナヅキ少尉・・・
できれば生きていて欲しい。
私は二本目のザクバズーカも残弾をすべて撃ちつくす。
狙って撃ったものではないので牽制になればいい。
『キシリア閣下ぁっ!』
すでに満身創痍となった07C3が倒れこむ。
吹き上がる炎。
これで残るは私のみ。

敵モビルスーツは勝利を確信して迫ってくる。
アドラー少佐の07C3を倒した敵も私の方へ向かってくる。
ここでこれ以上抵抗しても勝てる見込みは無い。
ここを突破して収容地点へ向かうことももはや不可能。
どうする・・・
もはや脱出するのみだけど・・・
私は肩に掛けたザクマシンガンを手にして、巨大な樹木を背にする。
仕方ない・・・
「ルッグン06。マイカタ軍曹。援護をお願いします」
『了解。ですがどうします?』
「発光弾をお持ち?」
『めくらましですか? 持っていますが』
私は安堵した。

私は道具箱からガムテープを取り出し、トリガーボタンを押したままにできるように貼り付ける。
操縦を自動にセットして、ホバーで突進できるようにする。
あとは・・・
「マイカタ軍曹。無理して上空の援護をしてもらい感謝いたします。もうひと働きだけお願いしますね」
『了解です。10秒後に発光弾を投下しますのでご注意を』
「了解」
私は脱出の準備を整えた。

『5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・投下』
上空を行くルッグン06より発光弾が投下される。
私はスクリーンを遮断してヘルメットのバイザーを下ろす。
「よし」
私はトリガーボタンを押してガムテープを貼る。
そして07Hを自動操縦にしてハッチを開けた。
「うっ」
強烈な光がバイザー越しでも目を焼いてくる。
この分では連邦のモビルスーツもモニターを潰されて少しの間は目が見えないだろう。
私は間もなくダッシュを開始する07Hからウインチのワイヤーで地面に降りる。
白い光が収束して行くのを感じながら、私は07Bへ走って行く。
「あうっ」
思わず足元をすくわれそうになるホバーの風圧。
巨体を滑らせて行くファンの風はものすごい。
私が降りた07Hは自動操縦のまま走り出す。
しかもザクマシンガンを撒き散らしながら。
もちろんこんなトリックは時間稼ぎにしかならないし、ザクマシンガンはすぐに弾切れになるだろう。
でもその間に私はルッグンに拾ってもらえる。
私はまだあちこちから煙を吹いている07Bに飛びついた。

敵のモビルスーツは誰も乗っていない07Hに目を奪われた。
高速で弾をばら撒きながら走って行く07Hを、戦場を離脱する行為と見たのだろう。
すべての敵モビルスーツが走り去る07Hを追いかけ始めたのだ。
私はその隙に07Bのハッチを緊急開放する。
「ミナヅキ少尉。しっかりしなさい」
コクピットでぐったりしているミナヅキ少尉。
とりあえず血が飛び散っている様子は無い。
私はパトリシアを思い出しながらシートからベルトを外して少尉を抱きかかえる。
「ごしゅじん・・・さま・・・」
かすかな声がヘルメットを通じて聞こえてくる。
よかった・・・
まだ生きている。
私はホッとした。

眼下に広がる広大なジャングル。
私はミナヅキ少尉を抱きかかえてルッグンの予備シートについていた。
第239モビルスーツ中隊は全滅。
アドラー少佐も戦死。
他にもイ中尉、ルムンバ少尉、ブラウスキー中尉が戦死した。
この戦いで私たちは任務を果たせたのかしら・・・
敵の戦力を引き付けることができたのかしら・・・
「ジャブローに降下した部隊にも撤収命令が出たようです」
機長席のマイカタ軍曹が振り向く。
「撤収命令?」
「ええ、ジャブロー攻略は失敗です。数が少なすぎでしたね」
数が少ない・・・いや、敵が多すぎるのよ。
いつの間にか連邦はモビルスーツを大量に配備している。
これからは私たちにとって辛い戦争になりそうだわ・・・
「捨てないで・・・私を捨てないで・・・ご主人様・・・」
虚ろにつぶやいているミナヅキ少尉。
肋骨が数本ひびが入っているようで、しきりに胸を痛がっている。
私は少尉の髪の毛を梳きながら、そっと優しく抱きしめる。
「ん・・・あ・・・中尉・・・どの・・・」
うっすらと目を開けるミナヅキ少尉。
「今は帰還中よ。安心して眠っていなさい」
私はそう言って目をつぶらせる。
「は・・・い・・・中尉・・・どの・・・」
ホッとしたように微笑む少尉。
「どうか・・・私・・・を・・・拾って・・・」
そのまますっと眠りにつく。
「部下に好かれているんですね。中尉殿は」
マイカタ軍曹の隣で機器を操作している伍長がそう言う。
「ふふふ・・・そうかもしれないわね」
私は苦笑した。 [ジャブロー攻略戦終結]の続きを読む
  1. 2006/01/10(火) 18:44:27|
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ルッグン偵察機

休みはいいですねぇ。
思いっきりストレス解消ができます。

私のストレス解消はSSを書く事なんで、ストレスが溜まるとうずうずと書きたくなりますね。
というわけでローネフェルト中尉の続きです。
それにしても・・・
状況を進めるのに文章が必要だなぁ。

『ふん・・・』
ヒートロッドをするすると収納するミナヅキ少尉の07B。
私は苦笑した。
かつての味方といえども今の彼女には関係が無いということか。
『やってくれますわねぇ。中尉殿』
「ふふふ・・・助かったわ少尉。ありがとう」
『ん、えっ? ・・・ど、どう・・・いたしまして・・・』
あら・・・結構可愛いところあるじゃない。
私はちょっとした驚きを感じた。

爆発音が響いてくる。
これから向かう前方からではなく、たった今過ぎてきたばかりの後方から。
「な、何?」
『何ですかぁ?』
あまり緊張感を感じさせない物言いだが、彼女も充分に緊張しているようだわ。
私は状況を確認するために空を探す。
「居た」
そこには周辺を周回中のルッグン哨戒機が飛んでいた。
ブーメランにレドームを二つとコクピットを無理やりつけたような航空機だが実用性は高く、ミノフスキー粒子下でもそのセンサー能力は侮りがたい。
私は右肩の通信用レーザーをルッグンに向けて発信する。
「周回中のルッグン。聞こえますか? こちらはアドラー少佐指揮下の第239モビルスーツ中隊所属のアマリア・ローネフェルト中尉です。どうぞ」
『こちら第52偵察飛行隊所属のルッグン06。機長のマサト・マイカタ軍曹です。明瞭に聞こえますよ。ローネフェルト中尉殿』
ルッグンのパイロットから声が流れてくる。
「北の方角で爆発があったわ。何が起こっているの?」
『味方モビルスーツが攻撃を受けています。中尉殿の所属する中隊かと思われますが、熱源センサーによれば十数機の敵に囲まれつつあるようです』
少佐の部隊なの?
敵は少佐の部隊を攻撃しているの?
「ルッグン06。通信を中継できますか?」
『可能です。繋ぎます』
空電がガリガリとなり、やがて通信が繋がってくる。
『なんだ・・・なんでこんなに敵が居るんだ?』
『しょ、少佐殿ぉ、支え切れません。助けてください。少佐殿ぉ!』
『敵のモビルスーツ・・・敵のモビルスーツがぁ!』
『イ! 俺を護れ! 俺を護るんだよ!』
『少佐ぁっ!』
その叫びとともに爆発音が響き、遠くに黒煙が吹き上がる。
『ご、ご主人様・・・ご主人さまぁ!』
ミナヅキ少尉の07Bが黒煙の方角へ向けて走り出す。
「あ、少尉、待ちなさい!」
私はすぐにあとを追う。
今アドラー少佐のもとに向かえば敵の真っ只中に飛び込むことになる。
少尉の07Bのフィンガーバルカンと私の07Hのハンドマシンガンだけでは心もとないわ。
でも・・・
友軍を見捨てるわけには行かないか・・・

脇目も振らずに駆けて行くミナヅキ少尉の07B。
敵にすればいい的だわ。
「ミナヅキ少尉、落ち着いて! アヤメ、止まりなさい!」
『ご主人様・・・ご主人様・・・ご主人様ぁ!』
私の声など耳に入らないようだわ。
彼女とアドラー少佐の間に何があったのかは知らないけど・・・
ご主人様などと呼ばせるとはどうかしているわ・・・
でも、こうなったら仕方が無い。
ヒートホークと残りの弾でどれだけやれるかわからないけど、やるだけやるしかないわね。
私は07Hのホバーをふかし、ミナヅキ少尉の07Bの前に突出する。
『な、邪魔をする気ですかぁ?』
「そんなつもりはないわ。アドラー少佐を助けに行くんでしょ? 私が先導するわ」
私はそう言って、ヒートホークを構えたままホバーで滑るように進んで行く。
これならば歩く形の07Bより先行できる。
ただどうしても樹木が邪魔なので、それほど速度差ができるわけではないんだけど・・・
ミナヅキ少尉はしぶしぶなのかもしれないけど黙って付いてきてくれるようだ。

『アヤメは何をしているんだ! 何でおれのそばにいないんだ! 山猫はどこへ行った!』
『少佐ぁ! 弾が、弾がぁっ!』
『イ! 俺の前から離れるな! 敵が来るだろう!』
『少佐、好き勝手言わないで下さい!』
ルッグンを経由した通信が流れてくる。
「マイカタ軍曹。上空支援をお願いできますか?」
『上空支援ですか? ですがこちらは単なる偵察機ですから・・・』
ふふふ・・・マイカタ軍曹は戦々恐々としているようね。
「難しいことではありません。敵の動きをそのつど教えてくれればいいんです」
『そ、そういうことであれば』
私たちの上空を占位するルッグン06。
音響センサーと熱源センサーは充分に役立ってくれるはずだわ。

『ご主人様・・・ご主人様・・・』
ミナヅキ少尉の焦りが手に取るように伝わってくる。
『敵はどうやらモビルスーツ八機のようです』
「八機も?」
いったい連邦はいつの間にモビルスーツを量産したのか・・・
とても太刀打ちできないわ。
このままではただ倒されに行くだけになってしまう・・・
何かいい策は・・・

あれは?
私はモノアイの倍率を上げた。
「あれは・・・」
私は神に感謝した。
損傷したガウがその身を軽くするために投棄したのか、それとも少佐があらかじめ投下させておいたものか・・・
だが、これはありがたい。
樹木の間に鈍く輝く太い円筒型のコンテナ。
降下部隊用に武器弾薬を詰めた武器筒だ。
「ミナヅキ少尉、武器を補充するわ。付いて来て!」
『えっ? りょ、了解』
よかった・・・
まだ見境がなくなっているわけじゃないわ。
あとはアドラー少佐とイ中尉があと数分持ちこたえてくれれば・・・

私は武器筒のそばにたどり着くとすぐにコンテナのハッチを開ける。
「わお・・・」
私は思わず歓声を上げてしまった。
武器筒の中にはザクマシンガン及びザクバズーカ。
それぞれの弾薬。
ヒートホークにヒート剣。
クラッカーや発煙弾といった武器弾薬が入っている。
ジャイアントバズこそ無いものの、ザクバズーカはそれにまさるとも劣らない。
私はザクバズーカを二本手に取り、ザクマシンガンをスリングで肩に掛ける。
「ミナヅキ少尉も武器を手にしなさい。これからは倍する敵が相手よ」
『はい。了解です』
ふふっ・・・
ずいぶん素直じゃない・・・
私はザクマシンガンを07Bに手渡すと、そのまま少尉をあとにして先へ向かった。

「マイカタ軍曹、敵の動きは?」
『どうやら味方の二機を包囲態勢に入っているようです。かなりヤバそうですよ、中尉殿』
『ああ・・・ご主人様。待っててくださいねぇ。今行きますぅ』
私は二人の通話を聞きながらその速度を緩めない。
敵は少佐とイ中尉の二機に攻撃を集中している。
いくら敵の戦力が強大だと言っても、今頃は降下部隊がジャブロー内に侵入しているはずだし、そうそうこちらに戦力は回せないはず。
だとすれば八機の敵モビルスーツが敵のすべてと言っていいだろう。
まずは背後からの奇襲で二機ぐらいは減らしたいものだわね。
「こちら山猫。アドラー少佐、聞こえますか?」
ガリガリと空電ノイズが走る。
そろそろミノフスキー粒子下でも通話ができるはずなんだけど・・・
「アドラー少佐、聞こえますか?」
『く、来るな来るなぁ!』
「少佐?」
『しょ、少佐、何を・・・』
『うるさい! お前は俺の盾になればいいんだ! アヤメェッ! 何をしているっ! 俺のそばにいてくれぇっ!』
『しょ、少佐、止め・・・うわぁっ!』
爆発音。
吹き上がる火炎。
『中尉殿、一機やられたようです』
マイカタ軍曹から非情な通告。
「イ中尉・・・」
親しくなる暇さえなかった同僚の名をつぶやいてしまう。
『誰か俺を護れぇっ!』
アドラー少佐の声だけがむなしく響いた。 [ルッグン偵察機]の続きを読む
  1. 2006/01/09(月) 20:25:35|
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冬戦争

雪がすごいですねぇ。
私の住む北の大地も本州に日本海側ほどではないのでしょうが雪が多いです。
おかげで道路は通常二車線確保できているところが、一車線状態となりすれ違うことさえ困難です。
雪かきをしても雪捨て場に困る有様。
本州の豪雪に悩まされている方々に改めてお見舞い申し上げます。

きっとこの豪雪は1939年にフィンランドに攻め込んだソ連軍兵士も同じようにうんざりしたんでしょうね。

のちに冬戦争と呼ばれたこの戦争は、ドイツがポーランドを降伏させ支配地を増やして行くのを見たスターリンが、レニングラードを大砲の射程内に収める位置にフィンランドの国境があるのは許せんとして、フィンランドに領土の割譲を求めたのが発端でした。

もちろんスターリンとて無償でフィンランドが領土割譲に応じるとは思っていません。
割譲される領土の約二倍もの土地を、ソ連北部の不毛な領土からフィンランドにくれてやると豪語します。

ところが当然ながらそのスターリンの太っ腹な都合の良い提案はフィンランド政府によって拒否されます。
怒ったスターリンは実力行使に出、ここに冬戦争が勃発します。

スターリンの元に寄せられていた報告では弱小といわれていたフィンランド陸軍は、鎧袖一触でソ連軍の大軍団に蹴散らされる予定でした。

兵員50から60万人。
戦車1500両。
航空機800機。
これだけの数を用意したソ連軍に対し、フィンランド軍は絶望的な戦力しか持ち合わせてはいませんでした。
兵員こそ約30万人ほどかき集めたものの、戦車は数十両、航空機も数十機しかなく、火砲もほとんど装備されていませんでした。

世界はポーランドと同様にフィンランドも軍事大国であるソ連に飲み込まれてしまうに違いないと思っていました。
ソ連軍もこの戦争はあっけなく決着が付くものと思い、さほど準備をせずに戦争に突入しました。
11月の30日に開戦だというのに、一部のソ連軍は夏服装備だったり、北のフィンランドで戦うというのに南部ウクライナ地方の兵士で編成した部隊を投入したりしていたのです。

一方フィンランドはマンネルヘイム司令官の下、ゲリラ戦術でソ連軍をあちこちで分断。
小部隊に分散させられたソ連軍は各地で撃破され、それ以上に寒さと雪によって凍死する兵士が続出しました。
フィンランド軍は村々を焼き、ソ連軍に休息する場所を与えませんでした。
ソ連軍は戦車部隊丸ごとや歩兵部隊丸ごとが雪の中で凍えながら死を迎えていったのです。

さすがのスターリンもこれには驚き、上層部を一新。
部隊を後退させて再編成し、再度侵攻します。

結局フィンランドは粘りに粘った挙句ソ連軍と講和。
講和条件は戦争前より厳しいものでしたが、フィンランドは受け入れざるを得ませんでした。

しかし、小国フィンランドの驚異的な粘りは世界に衝撃を与えると同時に、ヒトラーにソ連軍恐れるに足らずの意識を植え付けてしまったのです。

二年後、1941年にドイツ軍がソ連に侵攻した時、冬を迎えるに当たってドイツ軍はソ連軍が冬まで粘るとは思っていなかったし、ソ連軍はフィンランドに教えられた雪中のゲリラ戦を展開しドイツ軍を苦しめるという状況になりました。

もしかしたらこの冬戦争が無ければ、ドイツ軍はソ連に攻め込まなかったかもしれないんですね。

それではまた。

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  1. 2006/01/08(日) 22:52:59|
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新造戦艦アンドロメダ

「宇宙戦艦ヤマト」はご存知でしょうか?
もうかなり古いアニメになってしまいましたが、一世を風靡したアニメでしたね。

その続編として劇場公開された作品が「さらば宇宙戦艦ヤマト」でした。
白色彗星帝国という新たな敵が現れ、その敵に立ち向かう宇宙戦艦ヤマトというストーリーでした。

最後には地球を救うためにその命を賭けて特攻を行なうわけですが、そのストーリーの是非はともかくとして、復興した地球の象徴として建造された新鋭艦が表題の「アンドロメダ」です。

地球防衛軍の宇宙艦隊旗艦として就役したアンドロメダは、その最新の能力によってヤマトを廃艦にまで追い込んでしまうわけですが、スタジオぬえデザインのこのアンドロメダのデザインはまさに新型戦艦としてのかっこよさにあふれていました。

艦首先端の二門の拡散波動砲はその威圧感といい迫力があり、そこから流れるラインが艦尾に向けて収束して行くんですが、艦尾には補助噴射口が四基あり、メインの噴射口を囲むように配置されています。

三連装の主砲塔が四基搭載され、その砲撃力を誇示しています。
艦載機を搭載しているかどうかは不明ですが、地球艦隊には空母もありましたので、おそらく戦闘力重視だと思います。

映画内ではさほど活躍できませんでしたが、それでも拡散波動砲は敵艦隊を撃破していますし、宇宙戦艦ヤマト2では土方艦長指揮の下土星沖海戦というアニメ史上に残る宇宙艦隊戦を戦い、白色彗星のガス体を取り払うまでの戦果を上げます。

この時の地球艦隊はスタジオぬえのデザインの中でもトップクラスで、主力戦艦以下のデザインも秀逸です。

現在に至るまでも、おそらく宇宙戦艦としてのデザインの完成度ではかなり高い部類のものになると思われ、私は今でも好きな宇宙戦艦です。

イラストに関しては掲載できませんので、各自お調べいただきたいのですが、かっこいいですよ。

それではまた。

[新造戦艦アンドロメダ]の続きを読む
  1. 2006/01/07(土) 22:29:23|
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イスラエルの獅子

新谷かおる先生の描かれたマンガ「エリア88」をご存知な方はイスラエル空軍の戦闘機「クフィルC2」はご存知でしょう。

あのマンガの中ではサキ・ヴァシュタールの愛機として縦横無尽の活躍をした機体ですが、実際にイスラエル空軍の主力戦闘機として中東戦争では活躍をした機体なのですね。

もともとイスラエルはこのクフィルC2を実用化する予定はなかったと言っていいでしょう。

フランス政府がダッソー製のミラージュⅢをイスラエルに売却してくれていたので、イスラエルはこの手軽で高性能のデルタ翼機を主力として運用しておりました。

ただ、ヨーロッパで対ソ連製航空機を予測していたミラージュⅢは中東での運用には複雑な電子機器類が災いし、その稼動性は決して高くはないものでした。

そこでイスラエル政府はダッソー社にミラージュⅢの電子機器を簡易化して航続距離を増した戦闘機を提案し、ダッソー社もその提案に基づいたミラージュ5を製造してイスラエルに売却する予定でした。

しかし・・・
アラブ諸国の圧力によりフランスはイスラエルへの武器輸出を禁止してしまいます。
ダッソー社のミラージュ5はイスラエルではなく中小諸国が、あまり高い技術力を持たなくても運用できる超音速機として高い評価を受けてベストセラーとなりました。

イスラエルはミラージュ5を購入することができなくなったため、思い切った手段をとることにしました。
ミラージュ5を国産化することにしたのです。

一番の難点であるエンジンはアメリカのF-4ファントムのエンジンを使い、無理やりミラージュの機体に載せました。
アメリカのエンジンとフランスの機体がイスラエルで合体するというあいの子戦闘機ですが、予想外にいい機体に仕上がったクフィルC2はその後の中東戦争で活躍することになります。

のちにはアメリカが異機種間訓練用戦闘機としてイスラエルよりリースしてもらったりもしたのです。
アメリカからF-15や、F-16を供与されるようになったのちも、クフィルはC7へと発展し、イスラエルの空を護りました。

それにしても・・・
いったいイスラエルはアスラン王国に何機のクフィルを売却したのだろう。
マンガの中ではかなりの数がアスラン空軍によって使われていたようですが・・・(笑)
  1. 2006/01/06(金) 22:41:26|
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残弾無し

今日から仕事始めでしたー。
休みボケでなかなか大変でしたね。
でも、いよいよ今年も始まったっていう感じですね。

さて、今日はローネフェルトの続きを投下します。
これでお正月休みで書いたSSはすべて吐き出しちゃいます。
ローネフェルトと同様私も残弾無しになりました。
しばしSSの更新はお休みになりそうです。
次の更新をお楽しみに。

私の任務は敵への陽動。
アドラー少佐以下の各モビルスーツは敵中をできるだけ派手に突破して、目標である回収地点へ向かうだけ。
派手にやればやるほど敵は勝手にこちらに寄ってくる。
その分ジャブローが手薄になるという段取りだけど、はたしてそううまく行くのかしらね。
敵の物量は想像以上。
多少引き付けたところで各個撃破されてしまうのではないだろうか。
私はそう疑問を抱きつつも07Hを走らせる。
途中数台の戦車やミサイルホバークラフトが行く手を阻んだが、ハンドマシンガンで片付けた。
しかしこれでまた残弾が心細くなる。
ハンドマシンガンの残弾が2000発。
ジャイアントバズにいたっては残り三発。
それを撃ち尽くしたら弾は無い。
私は無理やりガムテープで貼り付けられたむき出しのスイッチに目をやった。
『いいですか? 腕の交換自体はできませんでした。しかし接続のためのラインは取り付けました。無理やり取り付けましたから動作保証はできません。ですが接続は問題ないようですので使えるはずですし、試験もしました。あとは戦闘中に故障しないことを祈るのみです』
そう言っていた整備兵の言葉を思い出す。
この無理やりつけてもらったヒートホークがどれだけ私の心を落ち着けているか・・・
私は整備中隊に感謝した。

「連邦のモビルスーツ! またか!」
木立の向こうに白と赤の混じった機体の姿が見える。
対空砲やタンクもどきも一緒であるらしい。
擬装用ネットが掛けられていて見分けが付きづらい。
このあたりに我が軍が進出していることを察知しているのか、先ほどとは違って周囲に警戒を怠ってはいない様子だ。
「一対三か・・・モビルスーツだけでも」
私はモノアイを周回させ敵の陣営を確認する。
連邦のモビルスーツはシールドとビーム砲を持っている。
どうしてビーム砲なのよ・・・
マシンガンぐらい持たせられないの? 連邦は・・・
私はジャイアントバズを構える。
幸いに木立が私の機体を隠してくれているが、いつ気が付かれるかわからない。
まずは少しでも敵の戦力をそがなくては。
私はトリガーボタンを押した。

ジャイアントバズの弾は木立の向こうへ飛んで行き、連邦のモビルスーツを直撃する。
「チィッ!」
私は歯噛みした。
直撃したのは頭部だ。
あれでは致命傷にはならないわ。
それどころか・・・
連邦の三機のモビルスーツのビーム砲が手当たり次第に周囲を焼き払って行く。
樹木の陰に身を隠していてもいずれは焼き払われてしまうだろう。
「まったく・・・一人で戦わなければならないとはね」
再び樹木の陰からバズーカを発射する。
先ほど頭部を破壊したモビルスーツをようやく無力化する。
「あと一発・・・」
ホバー機動で私は07Hを滑らせる。
私がいた位置に敵のビーム砲が集中した。
「これで最後!」
私は最後の弾を打ち出す。
炎の尾を引いて弾は直進する。
この角度ならモビルスーツにはかわされるかもしれない。
しかし・・・

思ったとおり最後の弾はあっけなく二機の敵モビルスーツにはかわされる。
だが、その弾は機動性の鈍いタンクもどきを直撃する。
煮えたぎる火山のように炎を噴き上げるタンクもどき。
これでバズーカは失った。
私は残弾のなくなったバズーカを放り投げる。
二機の敵モビルスーツ相手にハンドマシンガンでは心もとない。
せめてザクマシンガンがあれば・・・
私は右手に腰のラックからヒートホークを取り出し、樹木の陰に身を隠す。
接近戦に持ち込まなければ勝機は無い。
でも・・・
ビーム砲相手に懐に飛び込めるの?

私は敵の動きを待ち構える。
敵のモビルスーツは連携してこちらを追い詰めにかかるだろう。
どちらか一方の目をそらすことができれば・・・
クラッカーも発煙弾も持ち合わせない。
どうする・・・
どうする・・・
ヒートホークで飛び掛かるのは簡単だ。
それで一機は破壊できるだろう。
でもその間にもう一機に背中を撃ち抜かれる。
それでは刺し違えることしかできないし、生き残るチャンスも少ない。
どうする・・・
どうしたらいい・・・

『そんなところで何をなさっているんですかぁ? ぐずぐずしてないで突進してくださいねぇ。中尉殿ぉ』
スピーカーから声が流れてくる。
どこに?
私はモノアイを回転させる。
樹木の陰に見え隠れする07Bはすぐに見つかった。
でも・・・
あのミナヅキ少尉は結構な腕前みたいね。
私に遅れをとらず、ここまでピッタリ食いついてくるとは。
私を監視するためでしょうけど、あの07Bのフィンガーバルカンはピッタリと私の07Hに向いている。
「ふふん。まあ、見てなさい、少尉」
悪いけど利用させてもらうわ。
私は樹木の枝を折ると、これ見よがしに敵の目に付くように振り回す。
案の定敵は警戒しながら私の動きにカメラを合わせてくる。
「そらっ」
私はその枝をミナヅキ少尉の07Bの足元に放り投げた。
敵のカメラはそれを追って・・・
『クッ、やったわね!』
ミナヅキ少尉が歯噛みするのを感じる。
「ふふっ、一機任せるわよ」
私はミナヅキ少尉より遠い側の敵機に向かってハンドマシンガンを撃ちまくる。
敵はシールドを構えて一歩後ずさった。
『やってくれる』
ミナヅキ少尉の07Bがすぐに飛び出してくる。
やはり腕は確かだわ。
『あははははは・・・私に立ち向かってくるなんていい度胸じゃない!』
フィンガーバルカンで機先を制し、ヒートロッドがうなりを上げて敵モビルスーツに絡みつく。
あっという間に敵モビルスーツはあちこちから火花を発して崩れ落ちた。
「やるわね」
私は苦笑する。
私を死地に追いやろうとした女の手を借りて、私は死地を切り抜けようとしているのだから。
「食らえっ!」
私は07Hをジャンプさせる。
ヒートホークが動力を得てその刃が赤熱する。
敵モビルスーツは一瞬の動きについてこれない。
シールドから顔を出した瞬間に私はヒートホークを振り下ろした。

鈍い振動がコクピットに伝わってくる。
07Hの重量と重力を加えた一撃は真っ赤に赤化した刃を敵のモビルスーツに食い込ませていく。
連邦のモビルスーツは動力路を断たれたらしく動きが止まる。
私はヒートホークを引き離し、連邦のモビルスーツを蹴り飛ばした。
どうっと倒れる連邦のモビルスーツ。
私は背後で忌々しい思いをしているであろうミナヅキ少尉に親指を立てて見せた。 [残弾無し]の続きを読む
  1. 2006/01/05(木) 22:06:55|
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ビースト

今日は早めの更新です。
ようやく闇側の体制が整いました。
これから光との戦いが始まるでしょう。

4、
会議室から現れた二人の姿に事務所の社員たちは息を呑んだ。
先頭に立って誇らしげに出てきた上坂美野里はまるで全裸であるかのような真っ黒な全身タイツに長手袋とハイヒールブーツといういでたちであり、そのあとに現れた荒蒔留理香にいたってはつややかなボンデージに怪しげなサークレットとマントを身に纏っていたのだ。
いったい何事かと思うのも無理はないであろう。
「き、君たち、その姿はいったい?」
所長の涌坂が驚いたように声を掛ける。
「黙りなさい! 今日からこの事務所はこのお方、デスルリカ様が支配することになるのよ」
鋭い視線を涌坂に向けるレディアルファ。
「な、何を言っているんだ、君たちは?」
涌坂が立ち上がり、二人に近づく。
いつもの二人とは違う。
いったい何があったというのだろう。
「上坂君、悪ふざけは・・・」
「やぁっ!」
近づいた涌坂をレディアルファは回し蹴りで蹴り飛ばす。
「ぐはぁっ」
もんどりうって倒れる涌坂。
「キャー」
事務所内に悲鳴が上がる。
「レディアルファ、殺してはだめよ。その男にはまだ利用価値があるわ」
デスルリカが冷ややかな目をころがっている涌坂に向けた。
「はい、デスルリカ様。ふふふ・・・命拾いしたようね」
ブーツのつま先で涌坂の腹に蹴りを入れるレディアルファ。
「グハッ」
涌坂はそのまま気を失ってしまった。
「所、所長!」
一人の女性デザイナーが涌坂に駆け寄る。
「ハッ!」
「キャン!」
レディアルファの蹴りが再び閃き、彼女も蹴り飛ばされてしまう。
「勝手なマネをするんじゃないわよ。」
レディアルファは倒れた女性のそばに立って見下ろした。
「や、やめてよ美野里」
「美野里? あはははは・・・」
足元で倒れている女性を見下ろしながら、レディアルファは高笑いする。
「あなたに美野里などと呼ばれる筋合いは無いわ。それに私はレディアルファ。上坂美野里などという人間であることなど捨てたのよ」
「みの・・・り・・・」
唖然としたように昨日までの友人を見上げる彼女。
「うふふふ・・・そういえば・・・」
いきなりブーツのヒールを倒れている彼女の肩口に食い込ませるレディアルファ。
「あぐぅ」
「あなた、以前私のアイデアを奪ってくれたわよねぇ」
「ええっ?」
ぐりぐりと加えられる圧力にヒールが食い込んで行く。
「忘れちゃった? リボンをつけることによって引き締まるって私が言ったのをあなたは奪ったでしょ」
「そ、そんな・・・あれは私だってそう感じたから・・・」
痛みに顔をゆがめながらも必死に訴える。
「お黙り! デスルリカ様、この娘殺しちゃってもよろしいですか?」
「ふふふ・・・殺したいんでしょう? 仕方ないわねぇ」
所長の椅子にゆったりと腰掛けて足を組むデスルリカ。
周囲の社員たちはあまりの事に声も出せないでいる。
「うふふ、ありがとうございますデスルリカ様。聞いたぁ? ねえ聞いたぁ? あなた殺してもいいんだって。殺してもいいんだってよ。あはははは・・・」
高笑いを続けながら、横たわる女性の顔面にブーツのヒールを振り下ろすレディアルファ。
ガスッガスッと言う音とともに血しぶきが飛び始める。
「やめ、やめて・・・上坂さんやめてぇ」
「黙って見ていなさい。騒ぐと・・・次はあなたよ」
「あ・・・は、はい」
見かねた若い女性が声を掛けるが、デスルリカの鋭い一瞥を浴びせられて言葉を失う。
「あはははは・・・どう、何とか言ったらどうなの? あっははははは・・・」
ヒールが振り下ろされるたびに血が飛び、やがて脳漿が飛んで周囲を汚して行く。
ピクピクと蠢いていた躰もやがて動きをやめ、物言わぬ骸と成り果てる。
「ふん、死んだようね。つまらない女」
まるで汚らわしいものを見るかのように見下ろし、ヒールの汚れを彼女の服になすり付けるレディアルファ。
「どう? 満足した? レディアルファ」
「はい、デスルリカ様。殺すって気持ちいいんですね」
にこやかに笑みを浮かべるレディアルファ。
「うふふ・・・当然でしょ。くだらない人間を殺すのは快感なのよ」
デスルリカもにこやかに微笑む。
その笑みはやはり妖しく美しい。

「さて、あなたたちにはこれから新しい世界を築くために働いてもらうわ」
無言で息を飲んでいる社員を前にデスルリカは穏やかに語りかける。
「あ、新しい世界とはなんだ。お前はいったい何が望みなんだ」
男性社員の一人が恐る恐る尋ねる。
「お前だって? デスルリカ様に無礼な!」
すぐさまレディアルファの右手の甲がその男の頬を張り飛ばした。
「レディアルファ、むやみに傷つけるものではないわ」
「あ、す、すみません、デスルリカ様」
デスルリカにたしなめられたレディアルファはすっと男から離れる。
「私の望み? そんなの決まっているじゃない。この世界を闇に染めることよ」
「世界を闇に・・・だと?」
いぶかしげな表情をする男性社員。
「お前たちにはこれから新たな世界を教えてあげるわ。うふふふふ・・・」
冷たく妖しい笑みを浮かべるデスルリカ。
「新しい世界?」
「そうよ。今教えてあげるわ」
そう言うとデスルリカの周囲から真っ黒な闇が吹き出して行く。
「うわぁ」
「きゃあ」
闇は薄く広がり、部屋中に広がって行く。
やがて闇は周囲の空気と一体化し、部屋の隅に逃げた社員たちにまとわり付いていく。
「うふふふ・・・デスルリカ様の素晴らしい闇よ。存分に味わいなさい」
その様子をレディアルファはにこやかに見つめていた。
「ああ、いやぁ」
「う、うわ、うわわわ」
広がってくる薄闇から逃れようと部屋の隅に押し込められていく社員たちだったが、やがて一人また一人と闇が覆っていく。
「ああ・・いやぁ・・・いや・・・い・・・や・・・」
「う、ううう・・・」
空気と一体化した闇は社員たちの呼吸とともに彼らの体内に吸収されていく。
「ああ・・・あは・・・あは・・・ん・・・はあ・・・」
「あ、ああ・・・躰が・・・躰が熱い・・・」
闇を吸い込んだ社員たちはすぐに頬を上気させ床にへたり込んでしまう。
「あ・・・あはあ・・・うふう・・・欲しい・・・欲しいよぉ・・・」
「ああ・・・女・・・女が欲しい・・・やりてぇ」
やがて社員たちは淫らにあられもなく手近な異性を求め始める。
周囲の異常さもまったく気にせずにセックスを始めてしまったのだ。
もちろんこの事務所は圧倒的に女性が多い。
異性が手近にいなかった女性たちは、なりふり構わずに同性に身を任せその秘部を愛撫しあう。
デスルリカとレディアルファの見ている前で社員たちは単なるオスとメスになり、あられもない姿を晒して快楽をむさぼって行くのであった。
「うふふふ・・・ごらんレディアルファ」
「はい、浅ましいですわ。人間の欲望を解放してやるのは素敵なことですわね」
所長に椅子に座ったデスルリカのそばに寄り添うように立つレディアルファ。
「うふふふ・・・あとは・・・」
デスルリカの冷たく妖しい笑みがその場を支配した。

「レディアルファ。あなたの力を見せて御覧なさい。あの男に」
床に倒れている涌坂を指し示すデスルリカ。
「うふふ・・・かしこまりました、デスルリカ様」
笑みを浮かべて涌坂に近づくレディアルファ。
彼のそばに立つと、気を失っている涌坂の脇腹を蹴りつける。
「起きなさい!」
「う、あ・・・」
痛みに顔をしかめ、目を覚ます涌坂。
「う・・・いったい・・・」
「お前にも新たな世界を与えてあげるわ」
レディアルファは跪くと、そっと涌坂を抱きかかえた。
「う、な、何を」
「うふふふふ・・・」
笑みを浮かべたままレディアルファは涌坂の頭を両手で押さえてキスをする。
「も、もがっ」
いきなり口をふさがれた涌坂は驚いて口を離そうとするが、驚くべきことにレディアルファの力は強く引き剥がすことができない。
「む、むぐぐぐ・・・」
もがく涌坂の口の中にレディアルファの舌が割り込んでくる。
それは生き物のように口の中を蠢き、涌坂の舌を絡め取ってくる。
やがて濃厚な甘い液体が涌坂の口に流れ込んできた。
「お、おおお・・・」
なすすべもなくその液体を飲み込まされていく涌坂。
「うふふ・・・これでお前は・・・」
口を離しほくそえむレディアルファ。
「う、ううう・・・」
涌坂の表情が変わる。
「う、うがぁ・・・か、躰が熱い」
胸を掻き毟るように服を肌蹴ていく。
「うふふふ・・・始まったようね」
「ええ、ご覧になっていてくださいませ。うふふふ」
涌坂から離れデスルリカのそばに寄り添うレディアルファ。
その間に涌坂は苦悶の表情を浮かべながら胸を掻き毟っていた。
やがてその躰がぼこぼこと波打ってくる。
「う、うがああ・・・」
涌坂はうめき声を上げながら変わっていく。
腕はメリメリと太くなり、体格も膨れ上がっていく。
「ぐ、ぐわああああ」
足も太く頑丈になり、人の1.5倍ほどの体格のゴリラのような毛むくじゃらの大男が出来上がっていく。
「うふふふ・・・この男は腕力にや体力に対する欲望があったようね」
「ええ、常日頃から体調を気にしていましたから」
「この筋肉バカが欲望のままに暴れまわるのは見ものでしょうね。うふふふ・・・」
「はい、デスルリカ様。うふふふふ・・・」
いまやビーストと呼ばれる闇の魔獣となった涌坂を前に二人の女の笑い声が響いた。

「あれ? 私ってどうしていたんだっけ?」
紗希はきょとんとして周囲を見回した。
隣には同じくきょとんとした表情で立っている明日美がいる。
「よくは覚えていませんが、何か夢を見ていたような気が」
不安そうな表情で紗希の方を見る明日美。
「うん、私もそうなんだよね。二人して立ったまま寝ていたかなぁ」
「それは無いと思いますわ、紗希ちゃん」
明日美は苦笑する。
「あ、そうだ。早く給食食べに行かなきゃ」
はっとしたように生き生きとした表情になる紗希。
「そうですね。早く参りましょう。お腹が空きましたわ」
二人は連れ立って廊下を歩いていく。
その胸には見慣れないペンダントがぶら下がっていた。

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  1. 2006/01/04(水) 13:22:10|
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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