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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

今年最後の更新です。

いよいよ今年も残り数時間になりました。
今年最後のSSを投下しますね。

今年最後の締めはローネフェルトに登場願いました。
皆様のご想像は合っていましたでしょうか?

ズン・・・ズン・・・
巨体が小刻みに振動している。
連邦軍の対空砲火だろう。
キャリフォルニアからの定期便と同じコースを取るなんて・・・
対空砲火に晒されるのは当たり前だわ。
『モビルスーツ隊、発進準備』
こんなところで?
陽動という言葉がいまさらながらに思い返される。
私はヘルメットと手袋を手に取り、モビルスーツデッキへと向かった。

「遅いんですわねぇ」
冷ややかな目で私を見つめてくるミナヅキ少尉。
先ほどの連邦軍の軍服ではなく、すでにジオンの軍服に着替えている。
「出撃には間に合うわ。何かご不満?」
「あはぁ、せいぜい生き延びてくださいねぇ。ご主人様が悲しまれるのを見たくないですからぁ」
そう言いながら彼女は07Bのコクピットのハッチを開ける。
「でもぉ、私は一向に構いませんけどねぇ。あははは・・・」
ふふんといった感じで笑みを浮かべるミナヅキ少尉。
「ありがとう。せいぜい後ろに気を付けることにするわ」
私は07Hのハッチを開けて乗り込むと、ヘルメットと手袋を身につけた。
これからの戦いは気を引き締めなくてはならない。
敵は連邦軍。
だが、それと同じぐらいアドラー少佐は油断がならないだろう。
どんな手で私を飼いならそうとするのか・・・
敵のど真ん中で支援も受けられずに孤立させ、恐れおののく姿を見てあざ笑うつもりか?
でも私は恐れたりしない。
敵の真ん中で少佐に助けを求めるぐらいなら、そのまま敵と刺し違えてやるわ。
『遅くなった。お前たち、準備はいいか?』
アドラー少佐が07C3に乗り込んで行く。
こうも統一の取れていない部隊も珍しいだろう。
整備兵の苦労がしのばれるわ。
「こちらローネフェルト。準備OKです」
『ミナヅキですぅ。OKですわぁ』
ヘルメットからミナヅキ少尉の声が流れる。
どこと無く甘ったれたような滑らかな声。
決して不快ではない。
なぜ彼女はこの部隊にいるのかしら?
捕虜として正式な待遇を受けることだってできるでしょうに・・・
それほどアドラー少佐が魅力的な男とは私には思えない。
何があったのだろう・・・
『こちらブリッジ。各機へ、射出まで30秒です』
『了解だ。二番機は続いているのか?』
『後続中です。まもなく降下ポイントへ到着です』
その声に私の手袋の中がじんわりと濡れてくる。
『聞いたとおりだ。山猫、まずはお前が降りろ。続いてアヤメ。最後に俺が続く。いいな?』
良くないとは言えないでしょうね。
モビルスーツを降下させるにはどうしても旋回や上下動をすることはできない。
つまりガウはまっすぐ一直線に飛ぶことになってしまう。
当然対空砲にとっては狙いやすいことこの上ない。
しかも連邦だってわかっているから、降下開始直前のハッチが開いた瞬間を狙ってくるのだ。
強烈な風圧を腹に食らってガウの速度がかなり落ちる上、ハッチから顔を出したモビルスーツを直撃できればその爆発はガウもろとも破壊する。
一番危険な瞬間と言っていいだろう。
その瞬間をいかに切り抜けるか・・・
腕の見せ所というわけか・・・
私はレバーを握り締め直した。

『こちらブリッジ。降下どうぞ!』
『ようし、行けぇ!』
アドラー少佐の声を聞き私は07Hを前に出す。
ん・・・
訓練で一度乗ってみたものの、このホバー移動というのは慣れないと違和感を感じるわね。
私の07Hは文字通り滑るようにハッチの前に出て行く。
ガウのハッチが開いていき、猛烈な突風が吹き込んでくる。
固定されてない器具や工具が転がって行く。
「ローネフェルト、07H、行きます」
私は機体を空中に飛び出させた。
「クッ、お、落ちる」
急激な高度ダウン。
07Hのホバー能力とバックパックのバーニアノズルを全開にして降下速度を緩めて行く。
そしてスクリーンはさっきから悲鳴を上げている。
連邦軍の対空砲が撃ち上げてくる曳光弾が周囲で炸裂しているのだ。
赤や緑や黄色が花火のようにはじけて冷たい美しさを奏でていた。
爆風がわずかながらに機体を揺らす。
降下速度を微妙に変えながら私は足元の濃密なジャングルに向かって降下していった。
『うわぁっ!』
悲鳴とそのあとに続くがりがりという空電ノイズ。
二番機から降下した機体に対空砲が直撃したのだろう。
『ブラウスキー!』
一緒に居るはずのイ中尉の声のようだわ。
となるとやられたのはブラウスキー中尉ということか・・・
地面に付くまでにすでに一機を失うとは・・・
幸先が悪いわね。
私は暗澹たる思いに包まれた。

モビルスーツの背丈ほどもある樹木の間のわずかの開きスペースに私は07Hを滑り込ませる。
ホバー独特のふわっとしたなんともいえない不安定さが私を不安にさせる。
宇宙空間ではなくしっかりとした重力を感じるにもかかわらず、この身はどこかの星空にいるような錯覚すら覚えるのだ。
『あはぁ、ボケッとしていると殺られちゃいますわよぉ』
ミナヅキ少尉のその言葉にはっとなる私。
意外といい娘?
私は07Hを走らせる。
ホバー移動は足を動かす必要が無い。
その分高機動になるが、不安定さも増す。
私はモノアイを動かして周囲の敵情を探る。
樹木の間に巧妙にカモフラージュされた対空砲が見え隠れする。
ミノフスキー粒子下ではミサイルはロケット弾と変わりが無い。
それならば弾幕を張り、まぐれ当たりを期待するしかないのだ。
とはいえそのまぐれ当たりは無視できない。
特にご丁寧にコースを定めて爆撃に来るようなガウの編隊には。
「まずはこれを」
私は07Hのハンドマシンガンを対空砲目掛けて撃つ。
軽い断続的なショックが響き、曳光弾が対空砲に飲み込まれていく。
爆発が起きて吹き飛ぶ対空砲。
『山猫! ボケッとしてないで突進しろ! 後がつかえているんだ!』
アドラー少佐の怒号が響く。
「了解!」
私はそのまま07Hを滑らせた。

周囲の樹木が次々と吹き飛ぶ。
大口径砲の直撃だわ。
あのタンクもどきか?
間接砲撃ではない。
間接砲撃なら上から降ってくるはず。
ならば直接射撃。
どこかからこちらを見ているはず。
どこだ。
私はモノアイを回転させる。
居た!
樹木の間に上半身だけを出したタンクもどきと・・・あれは!
モビルスーツ!
連邦のモビルスーツか!
しかも二機もいる。
だが、ようやくこちらに気が付いたばかりのようなうろたえぶり。
タンクもどきの砲撃で撃破できると踏んでいたのか、戦闘体制が整っていない。
私はジャイアントバズを構え、樹木の陰から発射する。
命中率の低いバズーカは近づかなくては当たりづらいが、ロケット弾は見事に敵モビルスーツの腹を直撃する。
戦艦の装甲も破れるロケット弾だ。
そのHEAT弾頭は間違いなくモビルスーツの装甲をぶち抜いたはず。
敵モビルスーツは爆炎をあげて倒れこんだ。
「やったわ」
ホッとしたのもつかの間、赤い光線がそばの樹木に突き刺さる。
バカな・・・
ビーム?
連邦はモビルスーツにビーム兵器を持たせているの?
そんな小型のビーム兵器が存在するの?
ビームはHEATなど問題外の貫通力を持っている。
一発食らったらおしゃかだわ。
私はすぐにその場を移動して狙い撃ちされないようにした。

「次!」
思わず口にしてしまう。
バズーカの弾数は限られている。
それをいかに効率よく使って行くのか。
私は木立の間を滑り抜けながら、連邦軍のモビルスーツに狙いをつける。
トリガーボタンを押すと、ジャイアントバズはバズーカの名に相応しくないほどの反動を残してHEAT弾を発射する。
盲滅法ビーム砲を撃ちまくっていたモビルスーツは次の瞬間には四散していた。
護衛のモビルスーツを失ったタンクもどきは、キャタピラを軋ませて後退を始めるが、逃がしはしない。
私は再びジャイアントバズを構えて発射する。
主砲を撃ちながら後退して行くタンクもどきだったが、バズーカの弾は直撃し破壊する。
「これで三つ。残弾は・・・」
私は残弾を確認する。
ジャイアントバズは残り三発。
私は今後の指示を仰ぐことにする。
「こちらはローネフェルト。敵の抵抗に遭いましたがこれを排除。敵の抵抗はさほどではありません」
『ようし! いいぞ、山猫。そのまま目標地点まで突破するんだ!』
アドラー少佐の声が流れてくる。
空電の雑音からするとそれほど遠くは無いらしい。
「命令は了解しましたが、当方残弾少なく長時間の戦闘は不能。武器筒の投下は行なわれたのでしょうか?」
武器の回収無しでは戦えない。
突進するならそれなりの装備を整えなくては。
『武器筒の回収は許可できない。武器筒は本隊に必要だ。山猫は山猫らしく現地調達せよ』
「な・・・」
私は歯噛みした。
奴は私が泣き付くのを待っている。
ここで私があられもなく助けてくださいご主人様と言うのを待っているんだ。
誰がそんなセリフを吐くものか。
「ローネフェルト了解。目標地点までの突破を行ないます」
『ああ、せいぜい励むことだ。助けが欲しかったらすぐに言え。助けてやるぞ』
「ありがとうございます」
私は吐き捨てるように言って通信を切る。
「さて・・・」
私は破壊したモビルスーツの残骸に近づいた。
残念なことに彼らはビーム兵器を使っていて、火薬式のマシンガンは使っていない。
これでは奪っても使うことはできない。
「困ったものね・・・ザクマシンガンでも無理やり持ってくればよかったかしら」
いけないいけない。
コクピットでの独り言が多いかも。
それにしても武器も持たせずに突進しろとはね。
私は07Hを再び走らせた。


今年はここまでです。
お付き合いくださりありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。

それでは皆さん、よいお年を。 [今年最後の更新です。]の続きを読む
  1. 2005/12/31(土) 20:53:05|
  2. ガンダムSS
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12月31日

今年も今日で終了ですね。
長いような短い一年が終了します。

延々と続く星の運動と時間の流れを人間の都合によって断ち切ったものに過ぎず、また一日が続いていくのは同じことなんですが、やはり区切りとして作られた以上一つの心の節目として一抹の寂しさがありますね。

本年7月16日に開始したこのブログもほぼ半年が過ぎました。
正確には169日ですが、その間一日も休まずにどうにか続けてくることができました。
その間先ほどまでの訪問者数をカウンターで確認したところ、ちょうど12万ヒットを超えたところでした。

拙いSSを載せ、半端な知識のミリタリーネタを載せ、とろくでもないブログですが、皆様に愛され、支持されてやってくることができました。
皆様、本当にどうもありがとうございました。m(__)m

この後本日の夜にも更新するつもりですし、来年もできる限り続けて行こうと思っておりますので、これからも皆様のご支援をよろしくお願いいたします。

本当に、本当にどうもありがとうございました。m(__)m
来年もまたよろしくお願いいたします。

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  1. 2005/12/31(土) 10:58:38|
  2. 日常
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粗製濫造

やっと休みに入りました。
というわけでSSを書き始めてはいるのですが、今日はブログで発表できない作品を書いていたので、ブログでの公開はありません。
楽しみにお待ちいただいた方々には申し訳ございません。m(__)m

うちにもやっとDVD&HDDレコーダーがやってきました。
某メーカーのダブル録画のできるタイプの奴です。
アナログ放送の録画しかできませんので、数年後には単独での録画ができなくなりますが、まあそれまではじっくりと働いてもらいましょう。(笑)

表題の粗製濫造は別にこのHDDレコーダーのことではありません。
太平洋戦争中の日本が建造した商船のことです。

大陸で中国と戦っていた陸軍にとっても太平洋戦争の勃発は重大事でした。
何せ日本は島国であり、兵隊を送るにも物資を送るにも船が必要です。
もちろん資源を獲得し、その資源を内地(本土)に送るにも船が必要です。
つまり、日本は何をするんでも船が必要不可欠なのです。

この商用船舶(商船)は開戦時には600万総トンありました。
総トンとは船の重量ではなくその船の全容量を100立方フィート=1トンとして計算したもので、物資を積む空間が重要な商船は主にこの値で計ることが多いのですが、この600万総トンの商船のうち昭和初期の頃の国力を維持するために必要な最小限の船舶数が300万総トンだったそうです。

すると残りの300万総トンが軍が使える船舶として最大限徴用した場合の上限ということになります。
ところが日本は太平洋戦争の開戦時にすでに陸軍の部隊輸送や物資輸送、海軍の機動部隊に必要な輸送船舶などを合計すると300万総トンを越えてしまっていました。

つまり最初から一隻も沈まなくても国力維持には足りなかったのです。
軍部は第一次作戦が終了後は部隊輸送は減るので徴用した船舶を民間に返すことで国力維持を図り、同時に戦時簡易量産型の商船を作ってそれによって商船数を増やす計画でした。

ところが第一次作戦が終了してもその約束は実行されず、そうこうしているうちにミッドウェーなどでの敗北により米軍の反抗が始まります。

日本は必死になって戦時簡易型の船舶を作ろうとしますが、もともとそういった研究も何も行われていなかったために平時の商船を多少簡単にしただけのものとなり、思ったほどの数は作れませんでした。

一方米軍の航空機及び潜水艦に沈められる商船の数はうなぎのぼりに上がり、日本は物資を運ぶことがほとんどできない状況に追い詰められていくのです。

資源輸送側に船を集め国力維持を図ろうとする軍務局長と部隊輸送を優先し作戦を成功させることで米軍を駆逐し、もって輸送の安全を図ろうとする参謀本部作戦課長(どちらも陸軍)がどちらがより多くの船を手にするかで殴り合いのケンカをしたことまであったそうです。

結局追い詰められた日本は安全基準などまったく無視し、とにかく浮いて動けばいいという戦時簡易量産型船舶第二型を建造することになります。

この船はとにかく浮きさえすればいいという極端な思想で作られていて、二重底も隔壁も廃止して粗悪なエンジンを載せた浮かぶ棺おけみたいな代物でした。
船倉から上を見上げたら日の光が差し込んでくるほどの隙間だらけの船であり、水漏れや機関故障によってまともには動かなかったそうです。
また、二重底も隔壁も無いのですから、一発食らったら即沈没はまぬがれません。

結果、開戦時に600万総トンであった日本の商船隊は、終戦時には30万総トンほどしか残っていなかったそうです。

そんな船であっても商船乗りたちは日本本土の窮状を救うために日夜海に出て行ったのです。
商船乗り(この方たちは軍属扱いとはいえ民間人)の方々の死亡率は50%ほどにもなり、これは陸海軍の軍人よりも多い割合なのだそうです。
二人に一人は死んだ計算なのですから、いかに船舶輸送が命がけであったことでしょう。

月並みですけど、このような犠牲はもう起こって欲しくないですね。

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  1. 2005/12/30(金) 22:35:08|
  2. 趣味
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鋭い牙を持つサイ

ドイツ軍はフランスとの戦いにおいて、装甲の厚いフランス及びイギリスの戦車に対抗するには、主力対戦車砲である37ミリ対戦車砲は無力であることが判明しました。

そのときドイツ軍の救世主として登場したのが88ミリ対空高射砲でした。

砲弾の直進性能に優れた高射砲は対戦車砲としても一級品であり、その照準に捕らえられた敵戦車は哀れな残骸となる運命をたどったのです。

対戦車砲としても優秀な88ミリ砲でしたが、弱点もありました。
その図体が大きすぎ、重量も過大だったため、対戦車砲として使うには鈍重だったのです。

おりしも対ソ連戦が始まると、秋の泥濘期や冬の深雪期には牽引式の砲はほとんど身動きできなくなってしまったのです。
そのため、88ミリ砲を自走化するという構想が自然と生まれ出ることになります。

最初はハーフトラックの荷台に載せていたのですが、不安定に過ぎるのと装甲防御力が皆無なことで、早晩本格的な対戦車自走砲を開発することになったのです。

88ミリ高射砲をさらに改良し、対戦車砲とした71口径88ミリ砲PAK43を搭載する対戦車自走砲「ナースホルン」(サイ)はこうして生まれました。

のちにケーニッヒティーゲルの主砲としてその威力を存分に発揮したPAK43は、もちろんこのサイの牙としてもすざまじい威力を発揮します。

ソ連の戦車を長遠距離から次々と撃破できる主砲を持ったナースホルンはオープントップであるが故の防御力の乏しさもあり、バランスの取れた車両ではなかったかもしれません。
しかし、いざ待ち伏せとなった場合はソ連軍は相当の出血を覚悟しなくてはならない車両だったのです。

のちにこのナースホルンの装甲防御力と機動力を高めることに成功したのが、ヤークトパンターといえるでしょう。
相当に人気のある車両ですので、またいずれそちらのほうも紹介しようと思います。

それではまた。

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  1. 2005/12/29(木) 23:58:15|
  2. 趣味
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えげつないことを・・・

今日は会社の忘年会があるんです。
帰りが遅くなるかもしれませんので、こういったえげつない手段をとってしまいますね。
そこまでして毎日更新したいのかって言われるかもしれないんですが・・・
したいんです。(笑)

もう出てから結構経っていますが、講談社から仮面ライダーオフィシャルマガジンの特別編ショッカーがでています。

やっぱりショッカーは悪の組織の原点ですよね。
無慈悲に人間を捕まえてきて、勝手に改造人間に仕立て上げ洗脳する。
ほかにも戦闘員という下っ端を用意して、怪人の位置を高めていますしね。
大幹部という存在がまた組織の大きさを感じさせますよね。

資料的価値も高く、怪人の姿がそれなりの大きさで紹介されているので、SSの参考にもなりますね。
結構重宝しています。
デライトの女戦闘員は、もろショッカーの女戦闘員のイメージですからね。(笑)
  1. 2005/12/29(木) 00:50:30|
  2. 本&マンガなど
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真田左衛門佐信繁

炬燵して語れ真田が冬の陣。(蕪村)

表題の武将の名前を見て、あっ、あの人だと思っていただいた方は、やっぱり多少マニアックな方かもしれないですね。(笑)

一般の方には真田幸村として知られる人物です。

わずか一回の戦い。
それも負け戦でありながら、これほどまでに有名な武将もちょっと類を見ないのではないでしょうか。

徳川幕府の支配がじょじょに磐石になりつつあった慶長19年(1614年)。
徳川方の言いがかりにも近い豊臣家への嫌がらせに、ついにはじけるようにして戦支度を始めてしまった豊臣家。
お味方してくれる大名家はすでに無く、豊臣家はその大坂城の防御力と財力だけを頼みとして孤立無援の戦いに望みます。

その大坂城に、さまざまな思惑を胸にした浪人たちが続々と参集し始めます。
その中にはかつて関が原の戦いで領地を失った長曾我部のような大名格の者や、後藤又兵衛のような腕に自信のあるつわものなどが含まれました。
先日このブログでも紹介した木村長門守重成のように、この戦が初陣の者もおりました。

その中で多くの者が一目置き、かつその手腕に期待を寄せたのが、この真田左衛門佐信繁。
通称真田幸村でした。

かつて真田幸村の父真田昌幸は、わずかの手勢で関が原に向かう徳川秀忠の軍を足止め、その心胆を寒からしめたものでした。
大坂城に真田が入城したと聞いた時、すでに老境に差し掛かっていた徳川家康は、「入城したは親か子か?」と聞いて震え上がったそうです。

ただ、残念なことにこの時真田昌幸はすでに亡くなっておりました。
最後のひと暴れをしたかったであろう昌幸は三年前に他界し、家康にとっては助かったのかもしれません。
昌幸が生きていれば大坂方は一枚岩となり、淀殿や大野修理あたりも口を差し挟むことが無かったのかもしれませんからね。
秀頼も「全て安房守に任せる。皆の者よいな!」と言ってくれたかもしれません。

残念なことに昌幸からその知略を受け継いだ幸村でしたが、その知名度はまだまだ及びません。
浪人方からは多大な期待をかけられつつも、大野修理ら大坂方上層部は幸村を敬して遠ざけてしまったのです。

大坂城の出丸として築かれた真田丸は、幸村以下の奮戦で徳川方の攻撃をすべて撥ね返しました。
結局大坂城に篭もられては手が出せないと悟った徳川方は、和議を結び城を裸にします。

裸城では篭もることはできません。
幸村はあくる年の夏の陣で家康目掛けて突撃に突撃を重ねます。

衆寡敵せず、幸村は討ち取られてしまいますが、その華々しさはまさに大坂の陣の中心人物でしょう。
その最後を忍びなく思った人々は、願いを込めて幸村生存説を後々まで語り継ぐのでした。

  1. 2005/12/28(水) 22:43:59|
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越後の国

ウオー!
ネタが無いよー!
誰だ、毎日更新なんて頑張っている奴は!(笑)

でも頑張るぞー!

さて、今TVでは越後長岡藩の異才河井継之助の悲劇とも言うべき北越戦争のドラマが行なわれています。
武装中立を標榜し、わずか七万四千石とは思えないほどの重武装で新政府軍にも列藩同盟にも加わらないことを基本姿勢としますが、新政府側には受け入れられず、結局列藩同盟側で戦う羽目になってしまいます。

その折のやり取りにはいろいろと諸説ありますが、河井継之助の夢見た武装中立によって長岡を第三勢力として局外に置くという理想はうたかたの夢と化してしまいました。

そのうたかたの夢のようなはかない一生を終えたのが、同じ越後の国の名を冠した大日本帝国海軍航空母艦「信濃」です。

大和型戦艦の三番艦として建造を開始された信濃は太平洋戦争の開戦にともない工事を中止されていましたが、折からのミッドウェー海戦で一挙に四隻もの空母を失った日本は、急遽この信濃を空母へと改装します。

戦艦の船体を使った信濃は重防御の不沈空母として海軍の期待を一身に集め竣工します。

しかし時すでに昭和19年。
搭載する航空機も無く、艦隊もフィリピンで壊滅状態。
日本近海も米軍潜水艦が跳梁跋扈する状態でした。

信濃は慣熟訓練中の昭和19年11月26日、米軍潜水艦の魚雷を受けて横転沈没。
完成からわずか10日間の命でした。

太平洋戦争という状況では戦艦として完成したとしても活躍の余地は無かったでしょう。
とはいえ、空母として生まれたにもかかわらず、10日しか持ち得なかったことに信濃の不幸があったのかもしれません。

はかないカゲロウのような空母でした。

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  1. 2005/12/27(火) 23:00:38|
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リザードスキンベッド

昨日に続いてゲームで気になったアイテムを紹介します。

有名なTRPGに「D&D」(ダンジョンズアンドドラゴンズ)と言うファンタジーのTRPGがあります。

もともとはこのゲームには特定の世界観は無かったのですが、エキスパートルールブックにてガゼッタワールドという世界が作り出されました。

その世界の詳細設定が別売のサプリメントとして発表されたのですが、アラビアンナイトの世界をイメージした砂漠の国家「イラルアム首長国連邦」を設定したサプリメントが有ります。

その中にシナリオのアイデアやアイテムの紹介などがあるのですが、その中にこの「リザードスキンベッド」と言うマジックアイテム(魔法の品)が有りました。

このアイテムはトカゲの皮を張ったベッドなわけですが、実は単なるベッドではなく呪われたアイテムだったのです。

このベッドはリザードマンというトカゲ人類がD&Dには出てくるのですが、このリザードマンの魔術師が自らの復活と、それにともなう奴隷を作り出すために作り上げたものでした。

このベッドは魔法の力を持ち、怪我や病気を負っている人間型生物(人間やドワーフやエルフなど)を爬虫類の血を垂らしたこのベッドに載せることで怪我や病気をたちどころに治してしまうというものでした。
どんな重症でも、それどころか死んでしまってさえも、このベッドに載せることで回復したり生き返ったりするのです。

当然このベッドは欲深い人間たちの垂涎の的となりました。

しかし、このベッドは先ほど述べたとおり呪われているのです。

このベッドに寝かされ、怪我や病気を回復した者はベッドの持ち主(もしくは使用者)に魅了され、そのものの意に従うようになります。

同時に持ち主(使用者)はベッドそのものの呪いにより、このベッドを作ったリザードマンの魔術師へと変化して行きます。
肉体がリザードマンへと変貌し、精神も今までのものからかつてのリザードマンの魔術師としての記憶や意識へと変化して行きます。

一方ベッドによって治療され、使用者に魅了された者も、じょじょに肉体と精神がリザードマンへと変化していくことになります。

その変化はゆっくりで、約三ヶ月かかるそうなんですが、その変化中の精神の葛藤なんかは考えると面白そうですね。

やがてこのベッドによって使用者はかつてのリザードマンの魔術師となり、治療されたものたちは彼に従う新たなリザードマンの奴隷となるのですね。

冒険者の一行の中に女性戦士が居て、モンスターとの戦いで傷付いた時に、まだそのベッドの呪いに気がついていない善意の持ち主が、彼女の治療をしたとしたら・・・
一緒に居る仲間たちは、彼女がじょじょにリザードウーマンになっていくのを見る羽目になるのかもしれませんね。
その善意の使用者とともにリザードマンとしてかつての仲間たちと戦うことになるのかもしれません。

なかなか萌える展開かも・・・(笑)

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  1. 2005/12/26(月) 22:46:37|
  2. TRPG系
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メリクリ

皆様メリークリスマス。
一人でイブを過ごした私には怖いものなどありませんね。(笑)
皆様はクリスマスを楽しまれましたでしょうか。

さて、もう古いTRPGとなりますが、かつてホビージャパン社から出ていたTRPGに「METALHEAD」という作品が有ります。
今となっては手に入りづらいかもしれませんが、(再販されていたかな?)この作品にブランク・ブレインと言う洗脳薬が出てきます。

もともとは発狂を抑えるなどの精神治療用の薬品なんですが、これを使用すると人格を破壊することができ、その後に新たな人格を植えつけることができるんですね。

実際にプレイで使用したことは無いのですが、プレイヤーの友人や身内のNPCを拉致監禁後解放。
プレイヤーがやれやれと思ったところで後ろから・・・的なシナリオを一人で妄想したりしていました。

実際にテロリストとかがこれを使用して、重要人物の身内を洗脳して解放なんかしてきたらヤバいでしょうね。
優しかった娘が殺人狂にされていたりして、親兄弟も構わずに殺しまくったりして・・・

でも、一度シナリオ中で使ってみたかったなぁ。(笑)
今度チャンスがあったら使ってみよう。

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  1. 2005/12/25(日) 22:38:54|
  2. TRPG系
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今日は寂しいクリスマス (笑)

今日は世間的には楽しいクリスマス・・・のはずなんですが、私は先ほど仕事から帰ってきました。(泣
一人でショートケーキをつまみに缶ビールを飲んで、チキンのレッグにかぶりつき・・・

寂しいですなぁ。(笑)

今年もシングルクリスマス。
いわゆるシングルベルですね。

一緒に過ごす彼女も妻もおりません。(笑)
どこかにダンボールに入ってニャーニャー鳴きながら「拾ってください」と書いた札を首に下げているおにゃのこは落ちていないものでしょうか。(笑)

まあ、そんな寂しい冗談はさておき、久々に「ギレンの野望・ジオンの系譜」をジオン側でプレイしております。

グフ重装型やグフ飛行試験型の使い勝手の悪さをいまさらながらに実感。
ローネフェルトも苦労するだろうなぁ。

私はどちらかというと連邦側のMSの使い勝手の良さが好きで、主にこのゲームは連邦側でプレイすることが多いのですが、それでもボールやファンファンでザクやリックドムを倒すのは至難の技ですよね。
バーナード君にも無茶させているよなぁ。

そんなことを思いながらも、次にはどんな機体に乗せてやろうかと思案しながらプレイしています。

近いうちにローネフェルトのジャブロー近辺での戦いをお届けしたいものですね。

それではまた。

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  1. 2005/12/24(土) 22:25:04|
  2. PCゲームその他
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歩兵戦車? どこがじゃ!

昨日はフランス軍の戦車の弱点というか欠点について書きましたので、今日は一緒にドイツと戦ったイギリス軍戦車の弱点というか欠点を書こうと思います。
うーん・・・大英帝国のファンである舞方にとっては厳しい事実です・・・

第一次世界大戦のときに、世界で始めて装甲で覆われた機関銃搭載車両をイギリスは戦車として戦場に送り込みました。

もっとも、開発には海軍大臣チャーチルの主導があり、海軍が開発していたために走る陸上戦艦とでも言うような代物でした。

その時に開発用のコードネームとして付けられたのが「飲料水用タンク」というネーミングだったために、戦車=タンクと呼ばれるようになったんだそうです。

その後第一次世界大戦が終結し、戦後の軍縮期にはイギリス軍も新型戦車を装備するような余裕はありませんでした。
ですが、ビッカース社の6トン戦車や、カーデンロイドの機関銃装備軽戦車など、輸出用に作られた戦車がそれなりのベストセラーとして売れたりもしました。

イギリス軍はこれからの戦争には戦車が主力となると考えはしたのですが、その使用法にはドイツと異なる考え方が用いられることになりました。
イギリス軍の戦車は異なる二系統の戦車を配備していくことになったのです。

主に機動性を重視し、軽快な戦車で快速部隊を編成し、敵陣地の迂回及び後方撹乱を受け持つ巡航戦車。
これは装甲は薄いものの、速度が速い戦車が使われます。

一方で歩兵の支援を主任務とし、歩兵の進撃に合わせて敵陣地を突破する歩兵戦車。
これは速度は歩兵の進撃速度と同程度でよいので遅いのですが、厚くがっしりとした装甲で重防御の戦車が使われました。

第二次世界大戦の初頭、イギリス軍はこの二種類の戦車を使ってドイツ軍に立ち向かったのです。

ですが、これはまったく机上の空論となってしまいました。

快速を売りとする巡航戦車は迂回や後方撹乱をしようにも着いてきてくれる歩兵がおらず、また、その装甲の薄さは対戦車砲によって簡単に撃ち抜かれてしまい、急速にその存在意義を失って行きます。

一方の歩兵戦車は、確かに装甲は厚く頑丈であるがゆえに、ドイツ軍の37ミリ対戦車砲ぐらいではびくともしないものが多かったようです。
ドイツ軍としてはやむを得ず、88ミリ高射砲を使用してその装甲を打ち抜き、撃破するしかありませんでした。

では、その重装甲に物を言わせ、歩兵とともにドイツ軍の陣地攻撃に威力を発揮したのか?

答えはノーでした。
イギリス軍の歩兵戦車は、歩兵支援をすることができなかったのです。

歩兵にとっての大敵は、確かに戦車も大敵ですが、多くは陣地に篭もって射撃してくる機関銃でした。
そしてその機関銃とともに歩兵砲もいやな存在でした。
そういったいわゆる軟目標に対して一番効果があるのは爆発力と破片効果に優れた榴弾です。
しかし、イギリス軍の歩兵戦車はこの榴弾を撃つことができない(用意されていない)主砲を装備していたのです。

結局、直撃でしか機関銃や歩兵砲を沈黙させることができない徹甲弾しか撃てないイギリス軍の歩兵戦車は歩兵支援にはまるっきりの無力だったのです。

ごく一部の支援用戦車だけが榴弾砲を装備していたのですが、数が少なく、またドイツ軍の第一目標にされてしまって破壊されてしまうことが多かったようでして、イギリス歩兵のそばにはいてくれなかったようなんですね。

この問題は戦争中盤になって、榴弾を撃てるアメリカ製戦車が大量に配備されるまでは解決できませんでした。
イギリス歩兵はアメリカ製戦車を非常に喜んだことは言うまでもありません。

快速の巡航戦車と重装甲の歩兵戦車という取り合わせは、一見有効そうでしたが、戦場の実情にはそぐわないものでした。
先を見通して計画を立てるということは難しいものですね。

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  1. 2005/12/23(金) 22:15:51|
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一人三役

昨日に引き続き、フランス崩壊について書こうと思います。
もちろんフランスがドイツに敗れたのはいろいろな要素が絡み合って発生したことであり、一面のハードやソフト面だけに起因するものでは有りません。

ですが、フランス軍がドイツの装甲師団に敗れた原因の一つとして、彼らの装備していた戦車の後進性に一面の理由があるのは否めない事実でしょう。

フランス軍は第一次世界大戦の時には有数の機械化部隊を装備しておりました。

戦車という兵器がイギリスで産声を上げた時も、彼らの作り上げた戦車というものはどちらかというと陸上を走る戦艦といったイメージの強いものでした。

その戦車を現在にまで至る車体と砲塔という基本デザインを完成させたのはフランス軍の開発したルノーFT型戦車だったのです。
車体の前方に操縦手が乗り、車体の後方にはエンジンを置き、車体中央部には砲塔が乗っかってそこに戦車長が乗り込むというルノーFT型のスタイルは、現在でも変わっていません。

その先進的な戦車を第一次世界大戦終了後のフランス軍は大量に装備しておりました。

一方第一次世界大戦の熾烈な塹壕戦はフランスの青年人口を恐ろしく激減させてしまいました。
フランスは以後人命を消費する戦争というものを極端に恐れるようになります。

そのため当時の陸軍大臣アンドレ・マジノが提唱した、国境に要塞を作ってドイツの侵攻を防ぐというコンセプトが受け入れられます。

莫大な予算をかけて構築されたマジノ要塞は、そのあおりで航空機や戦車といった兵器の近代化を恐ろしく阻害してしまいました。

加えて第一次世界大戦当時先進的だったルノーFT型戦車を大量に配備していた陸軍は、その先進性に胡坐を掻いたようなかたちとなり、以後の新型戦車もルノーFTの近代化改修バージョンのようなタイプとなってしまいました。

確かにルノーFT型戦車は当時としては優秀でしたが、最大級の弱点もまた併せ持っていたのです。

それは・・・一人用砲塔でした。

フランス軍の戦車はなんと、砲塔に一人分のスペースしか持たない戦車ばかりだったのです。

ドイツ軍はグデーリアンなどの戦車用兵に長けた軍人が、戦車を機動的に運用するには無線を装備し、かつそれぞれの役目に応じた乗組員がおのおのの任務を果たすことが大事だと考えておりました。
そのため、ドイツ軍の三号戦車や四号戦車は五人もの人間が乗り込んでいたのです。
戦車を操縦する操縦手。
無線を操作しながらいざというときには機銃を撃つ無線手。
砲に弾丸を装填する装填手。
照準を定めて砲を撃つ砲手。
周囲の状況を把握して戦車全体の指揮を取る戦車長。
これだけの人間が乗り込んでいたからこそ、ドイツ軍の戦車は有機的かつ効率的に戦場を駆け巡ることができたんですね。

一方フランス軍の戦車はまず無線を装備している戦車が極端に少なく、中隊クラスでも装備車両が無いなどということもざらだったようです。

ではどうやって戦車間の意思統一を図ったか・・・

手旗信号をハッチから出してそれで意思疎通を図ったんですね。
これでは戦闘中に指揮車両を見ていなくてはならず、不便この上なかったでしょう。

あまつさえ、先ほど述べたようにフランス軍の戦車は砲塔に一人しかいません。
つまり、その一人はまず指揮戦車の手旗信号を読み取り、次に周囲の状況を把握して操縦手に行動を命じ、主砲に弾を装填し、照準を合わせて砲を撃ち、場合によっては同軸機銃も射撃するという恐るべき忙しさだったのです。

当然そんな戦車が戦場で有効な働きはできません。
フランス軍の戦車は砲の口径や最高速度、装甲の厚さなどカタログデータでは決してドイツ軍の戦車に引けはとっていませんでした。
むしろ優れているとさえ思われていたのです。
ですが、結果は一方的でした。
フランス軍戦車は戦場でなんら働くことができなかったのです。

戦車という代物に対する見識の無さを笑うことはたやすいのですが、それよりもドイツ軍の戦車に対する見識の高さのほうを褒めるべきなのかもしれませんね。
もっとも、そのドイツ軍も一年後にT-34という自軍の戦車よりも優れた戦車に出会うことになってしまいますが。

それではまた。
  1. 2005/12/22(木) 22:32:13|
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そんなはずは・・・

1940年5月。
ヒトラーはフランス侵攻作戦、いわゆる「黄色の場合」を発動します。

マンシュタイン将軍の発案によって、ドイツ軍は従来行動不可能と考えられていたアルデンヌ森林地帯を装甲部隊により突破するという大胆不敵の行動をとります。

オランダ、及びベルギーを突破してくるであろうと思っていたフランス軍は、主力をベルギー国境方面に貼り付けておりました。
当然大規模な装甲部隊は突破できないと思い込んでいたアルデンヌ森林地帯方面には、警戒のためのごく一部の部隊が配備されているだけでした。

当時装甲部隊の陣地突破には、重砲部隊が後続し、支援砲撃を行なうことが必要であると思われておりました。
戦車だけなら少数は突破してきても、陣地によってこれを防ぐことができ、時間を稼いでいる間に味方増援部隊が来援できると考えていたのです。

もちろんドイツ軍もアルデンヌ森林地帯の装甲部隊の進撃には問題があること、それ以上に重砲部隊は身動きが取れないであろうこともわかっていました。
そのために一度は無謀な計画として退けられたのですが、ある事件とヒトラーの冒険好きな性格とが相まってマンシュタインプランは採用されました。

ドイツ軍は身動きの取れない重砲部隊の代わりに、シュツーカを使うことでその問題を解決することにしました。
急降下爆撃はある意味ピンポイントで目標を攻撃できるため、重砲よりも目標を破壊できる確率は高く、近接支援任務にはうってつけでした。
ドイツ軍はこのシュツーカと装甲部隊という取り合わせで、突破不可能と信じられていたアルデンヌの森林地帯を突破してきたのです。

フランス軍はまったく対応できませんでした。
国境線は瞬く間に突破され、助攻として行なわれたオランダ、ベルギー侵攻に目を奪われ主力をそちらに差し向けているうちに後方を遮断されるという羽目に陥りました。
わずかな部隊だけが果敢にもドイツ軍に抵抗しましたが、それも蟷螂の斧。
フランスは1940年6月22日、ドイツ軍に降伏します。
ヨーロッパ随一の強国。
最大の陸軍国フランスはわずか45日で崩壊しました。

ドイツ軍の思いもよらない奇襲攻撃が最大の効果を上げてこういった結果をもたらしたわけですが、逆に言えばフランス軍の思い込みというか硬直した思考がフランスを崩壊させたとも言えるでしょう。

軍事に限らず、思考の硬直はいい結果を生まないということなんでしょうね。

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  1. 2005/12/21(水) 22:30:50|
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デスルリカ

長くなりそうかもとは思いましたが、とりあえずの登場人物にそれぞれの役目を与えるだけで二日潰れてしまいました。

明日からは年末までちょっと休みが取れなさそうですので、しばらくSSはお休みさせていただくつもりです。
年末には正月休みに入りますので、その時にはまたSSを書くつもりですが、それまではご容赦を。

もちろんミリタリーや本の紹介などでブログそのものは更新して行く予定です。
そちらのほうでもお付き合いよろしくお願いしますね。

さて、ホーリードールと化してしまった紗希ちゃんのお母さんは・・・

2、
ここはどこ?・・・
私はどうなったの?・・・
もしかして・・・
もしかして私は・・・
もしかして私は死んでしまったの?・・・

上も下も無い。
右も左も無い。
ただ一面の闇。
目を開けているんだかつぶっているんだかそれすらもわからないような漆黒の闇。
立っているか、浮いているのか、良くわからない体勢。
でも・・・
留理香は思う。
不思議と恐怖感は無い。
ただ・・・
ただ紗希と逢えなくなってしまったのかもしれないということだけが心残りに感じている。
何があったのかはわからない。
だが、自分は死んでしまったのだろう。
そうでなければこんな漆黒の闇に一人でいる理由がわからない。
「紗希・・・」
留理香は大切で愛しい愛娘の名をいつしか呼んでいた。

『女よ』
闇の中に声が響く。
それは耳から聞こえたようでもあり、直接躰の中に響いてきたようにも感じられた。
「だ、誰?」
留理香は周囲を見渡す。
もっとも留理香の周囲は闇であり、その闇の只中に留理香の姿だけが浮かび上がっているような状態だったので、何も見えはしなかったのだが。
『女よ』
再び声が呼ぶ。
その声は何か力強くもあり、忘れかけていた夫の声を思わせるものでもあった。
「私? 私を呼んでいるの?」
『そうだ、女よ』
留理香の問いに声が答える。
「誰? あなたは誰なの?」
『我は闇。大いなる闇』
留理香は声の出所を探したが、まさしく五里霧中でありまったくわからない。
「大いなる・・・闇?」
『そうだ。我は大いなる闇。世界を破滅に導くもの』
「破滅に導く?」
留理香はぞっとした。
この声の主は世界を破壊しようというのだろうか?
でもどうやって?
留理香にはその手段は核兵器程度の認識しかできなかったが、この声の主なら可能かもしれないと思えた。
「あ、あなたはいったい何を言っているのですか? 私をどうするつもりなんですか?」
留理香は声から逃れたかった。
この声を聞いているとなぜだか心が休まって、聞き惚れてしまいそうになるのだ。
『女よ。お前は我の代理としてお前の世界を破滅に導くのだ。お前はそのために選ばれたのだ』
「そ、そんな・・・私が世界を破滅に導くだなんて・・・いや、いやです!」
留理香は必死で首を振る。
自分がそんなわけのわからないことに手を貸すだなんて、考えることさえいやだった。
『女よ。選ばれしお前には意思など不要。我より闇を注がれれば、お前は闇の女となりてわが意思に忠実に従うようになる。それはお前の意思となんら変わることは無い』
「そ、そんな・・・そんなのはいやぁっ! 誰か、誰か助けてぇっ!」
必死になってもがき逃げようとする留理香。
しかし手足はピクリとも動かない。
「いやぁっ! どうして、どうして躰が言うことを聞かないのぉっ!」
『無駄だ。女よ、おそれることは無い。お前は闇の女にふさわしい。我がお前にふさわしい力を注ぎ込んでやろう。お前はそれを受け入れればいいのだ』
ひときわ濃密な闇がねっとりと留理香の躰にまとわりついてくる。
それは肉体を持ったもののように留理香の躰を優しく愛撫し始めた。
「いやぁっ! やめてぇっ! いやぁっ!」
必死になって身をよじる留理香。
しかし闇は留理香の服をいつの間にか消し去ってしまい、生まれたままの美しい裸体を嘗め回すように包み込んで行く。
「ああっ・・・あああっ・・・」
全身に与えられる闇の愛撫に留理香の躰はいつしか反応し始め、赤く火照り始めていく。
「ああ・・・あなたぁ・・・ああ・・・いい・・・」
身動きの取れないまま柔らかく優しく愛撫され、留理香は股間からたらたらと愛液をたらし始める。
全身を包む快楽に声は甘いあえぎ声にと変わって行く。
「ああ・・・いい・・・気持ちいい・・・ああ・・・あなたぁ・・・」
夫を失ってからは久しく感じていなかった女の快楽を呼び覚まされ、留理香の心は躰とともに解きほぐされていく。
やがて濃密な闇は触手のように蠢き、留理香の奥へと入り込んで行く。
「あああっ・・・くるっ・・・いい・・・すごくいいのぉ!」
腰を浮かせてより深く受け入れようとしてしまう留理香。
浅ましい女としての快楽を望む心が留理香をメスに変えて行く。
ぐちゅぐちゅと水音を立てるほどに愛液をたらす留理香の股間は闇の触手を喜んで飲み込んでいった。
「あああ・・・すごい・・・すごいのぉ・・・もっと・・・もっと奥までちょうだい・・・」
留理香にはもう夫も紗希も存在しなかった。
あるのはただ与えられる快楽に身を任せ、淫蕩な表情で腰を振る淫らな自分があるだけだった。
「はああぁっ・・・くるっ・・・くるのぉ・・・きちゃうのぉ・・・」
ねっとりとした闇を抱きかかえるように両手を回し、両足は腰が浮いてしまう感覚にぴんと張り詰めている。
「あひゃあぁ・・・らめぇ・・・もうらめぇ・・・イくぅ・・・イくイくイッちゃうぅぅぅぅ・・・」
留理香のつま先が丸まり、躰はビクビクと痙攣をしたかのように跳ね上がる。
その瞬間、闇はその触手の先からまさに暗黒の闇を留理香の中に浸透させていく。
「あひゃぁぁぁぁ・・・」
子宮も内臓も心臓も肉体も血液も脳も全てが闇によって染め上げられていく。
留理香は闇の女としてその存在を変化させられていった。

『目覚めよ、デスルリカ』
「はい、ご主人様」
闇の中で声に答え、ゆっくりと目を覚ます留理香。
だが、そこに居たのはもはやかつての留理香ではなく、闇の力を得て闇の女デスルリカとして生まれ変わった留理香であった。
まだみずみずしさを失っていない裸身に、まがまがしき闇を纏わせ衣服を形成させていく。
やがて闇は形を成し、黒いエナメルのボンデージとなってデスルリカの躰を包み込む。
銀色の鋲やチェーンをあしらったベルトが腰周りを飾り、肩には鋭いとげが突き出している。
両手は肘から先を同じく黒エナメルの手袋が包み込み、指先には鋭い爪が付いていた。
両脚は太ももまである黒いロングのハイヒールブーツが覆い、肩からは裏地の赤い黒マントを羽織っていた。
そして額に嵌めたサークレットの両脇からはねじれた角が額の方へと伸びていた。
デスルリカは自分の姿に満足したかのように黒く塗られた唇に薄く笑みを浮かべる。
「うふふ・・・いかがですか、ご主人様? 私は大いなる闇の女デスルリカですわ」
もはや身も心も闇に染められた女がそこにはいた。
『うむ。我がしもべデスルリカよ、行くがいい。行ってお前の役目を果たすのだ』
「はい、ご主人様。この世界に闇をもたらしてやりますわ。うふふふ・・・」
妖艶な笑みを浮かべ、デスルリカはその姿を闇に溶け込ませていった。

ん・・・・・・
あら・・・
私は・・・
私はいったい?
床に寝そべっていた留理香が起き上がる。
いったい私はどうして・・・
もしかして寝てしまっていた?
「ひゃぁっ!」
思わず飛び起きる留理香。
時計を見るとまだ朝の八時半だった。
「あ・・・はあぁ・・・」
ホッとする留理香。
どうやら出かける直前に居眠りをしてしまったらしい。
それもどうやら五分ぐらいで目が覚めたようだ。
遅刻の心配はしなくて良さそう・・・
留理香はそう思い、再び身支度を整えて玄関を出る。

外はとても明るい朝の日差しが差していた。
留理香はとても不快な気分に捕らわれる。
吐き気がするようなおぞましさ。
どうしてこの世界はこんな光の中で活動をしているのだろう。
どうして安らぎのある闇に浸ろうとはしないのだろう。
どうして人は規則正しく行動しようとしているのだろう。
どうして欲望をさらけ出して快楽のままに生きようとはしないのだろう。
ムカムカする・・・
吐き気がする・・・
壊してやりたい・・・
破滅させてやりたい・・・
欲望を拡大させて自分の姿を思い知らせてやりたい・・・
そうよ・・・
こんな世界は破滅させて闇に飲み込まれてしまえばいいのよ・・・

「乗らないのかい?」
「ハッ?」
背後からの声にハッとなる留理香。
目の前にはバスが止まっている。
入り口が開き、留理香が乗るのを待っているのだ。
「あ、す、すみません」
留理香はそう言ってバスに乗り込んだ。
人々が乗り込むと、やがてバスは走り始める。
留理香はつり革につかまりバスに揺られていく。
先ほどのことが悪夢のように思い返される。
私は・・・私はなぜあんなことを思ったのかしら・・・
世界を闇で覆ってしまうだなんて・・・
でも・・・
でも・・・すごく魅力的に感じるわ・・・
闇に身をゆだねる・・・
ああ・・・なんて気持ち良さそうなのかしら・・・
留理香は何かに取り付かれたかのように闇という言葉を繰り返しつぶやいていた。

駅前にあるファッションビルの一つ。
その五階に留理香が勤めているデザイン会社のオフィスがある。
社長の涌坂 浩二(わきさか こうじ)以下ほんの二十名ほどの小さなデザイン会社だが、大手メーカーの下請けデザインを主に行なっている。
基本は頼まれればなんでもやる何でも屋だが、ここ数年は浅葉グループの傘下の服飾メーカーからの注文が舞い込むようになっていた。
もちろん留理香の娘紗希と明日美の友達付き合いのおかげである。
まだまだ発注量は少ないものの、留理香を中心としたグループがそれを引き受け、良質のデザインを納めていることでじょじょに発注量は増えていた。
今では会社の売り上げの二割に達するまでになっている。
このデザイン会社で留理香は主任という肩書きをもらい、グループのリーダーとして働いていた。

いつものようにビルの前にやってくる留理香。
しかしその表情はどこかすぐれない。
何か心なしか顔色も良くないように見えた。
ハアハア・・・
留理香は事実具合が悪かった。
整然とした街並み・・・
明るい日差し・・・
無表情で自分自身を隠して過ごしている人間たち・・・
そういったことがすごく耐えられなく感じていたのだ。
それでも日差しを避けることで少しは気分が良くなることがわかったので、できるだけ日陰を選んで歩いてきたのだった。
ドクンドクン・・・
心臓が跳ね回っている。
ハアハア・・・
息が苦しい。
早く・・・
早く本当の・・・
本当の?
本当の何?
本当の・・・自分・・・
本当の自分に戻らなくては・・・
本当の自分って・・・何?
留理香は自分の中に湧いてくるこの感情をさっきから否定していた。
本当の自分とやらを認めてしまったら、ここにいる自分は偽者になってしまう。
私は偽者なんかじゃない。
私は荒蒔留理香。
夫は荒蒔誠一。
娘は荒蒔紗希。
年齢は・・・
住所は・・・
・・・・・・・・・
そんなものはまやかし・・・
私はデスルリカ・・・
私は闇の女デスルリカ。
ちがう・・・
そんなのは違う・・・
ちがわない・・・
私はデスルリカ。
いい加減に認めることね。
荒蒔留理香は生まれ変わったのよ。
私は大いなる闇の忠実なしもべデスルリカ。
違う違う・・・
私は荒蒔留理香よ!
私は・・・わたしは・・・

「荒蒔主任、どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
ビルの前で立ち止まっていた留理香は声をかけられた。
「えっ? あっ」
振り向くと一人の若い女性が立っている。
明るいパステルグリーンのスーツを着込み、茶色の長い髪を風になびかせていた。
留理香のグループのスタッフで名を上坂 美野里(こうさか みのり)といった。
「上坂さん・・・」
「大丈夫ですか? 汗びっしょりですよ?」
美野里はハンドバッグからハンカチを取り出そうとする。
だが、留理香はそれを押しとどめた。
「大丈夫よ。ハンカチなら自分のがあるから」
留理香はビルに入って行きながらハンカチを取り出して首筋の汗を拭う。
「そうですか? 無理しないで下さいね。主任が倒れたら私たちじゃ代わりは勤まらないんですから」
にこやかに微笑む美野里。
その笑みは明るく美しい。
ドクン・・・
なんて可愛い笑顔を見せるのかしら・・・
ドクン・・・
この娘の中にも秘めた欲望があるのかしら・・・
ドクン・・・
この娘を闇に染めたら面白いかもしれないわね・・・
ドクン・・・
うふふふ・・・私の手駒にはちょうど良さそうだわ・・・
ドクンドクン・・・
留理香の目つきがすっと変わって行く。
妖しげな眼差しが取って代わる。
「ねえ、上坂さん。仕事前に少しお話できるかしら?」
「えっ? はい、もちろんです」
美野里はすぐに返事をする。
美野里にとって荒蒔留理香は敬愛する上司であり、目標とするデザイナーだ。
どんな事でも彼女にとっては勉強になるだろう。
美野里はどんな話がされるのか楽しみに感じていた。
エレベーターが五階に止まり、二人はそこで降りる。
それほど広くないビルなので、五階はワンフロア全体が涌坂デザイン事務所となっていた。
「おはようございまーす」
「おはようございます」
美野里と留理香は入り口を通って事務所に入って行く。
そのときの留理香が薄く妖艶な笑みを浮かべていることに気がついたものは誰も居なかった。

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  1. 2005/12/20(火) 19:41:27|
  2. ホーリードール
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ホーリードール

えーと・・・
どのくらいの長さになるかは未定ですが、ちょっとした長さになりそうな作品を書いています。
とりあえず、第一回を投下したいと思いますので、よろしかったら読んでみて下さいませ。

1、
「うわぁっ! 遅刻しちゃうよぉっ!」
ばたばたと階段を駆け下りてくる少女の声。
慌てていたらしく、着替えた上着のボタンが一つ外れている。
「もう・・・起こしても起きない紗希(さき)が悪いんでしょ。だめよ、ご飯食べて行かないと」
台所から出てきた母親が少女にそう言い放つ。
毎回のことと見えて苦笑いを浮かべていた。
「え~っ、そんな暇ないよぉ」
髪の毛を梳かしながら鏡で身だしなみをチェックする。
やっぱり女の子だから身だしなみは欠かせない。
「大丈夫ですわ。一緒に走って行けば十分で着きますわ」
テーブルに着いていたもう一人の少女がにこやかに微笑んでいる。
赤を基調とした服を着て長い黒髪を優雅にたらしていてどこと無くお嬢様っぽい。
「あ、明日美(あすみ)ちゃん来てたんだ。ごめんね待たせちゃって」
どこと無く少年を思わせるような活発さをうかがわせる紗希がテーブルに着く。
「ううん、私もさっき来たところですわ。おばさまに上がって待っててって言われまして」
コーヒーカップのホットミルクを両手で持って一口飲む明日美。
二人とも近所の小学校に通う小学生である。
「ごめんね、明日美ちゃん。紗希ったらいつもいつもお寝坊さんで・・・」
コーヒーカップのミルクとトーストを持ってくる母親。
まだ若くその美しさは近所でも評判になるほどで、紗希としては鼻が高い。
「いつもじゃないよぉ。今日は特別・・・」
後の方は言葉が濁る。
「ふふふ・・・特別なの? そうよねぇ。今日は特別遅かったわねぇ」
「もう、お母さんの意地悪ぅ!」
赤くなってミルクをがぶ飲みする紗希。
「あつつ・・・」
「大丈夫ですか、紗希ちゃん? おばさま、もう許してあげてください」
心配そうに紗希を見る明日美。
「ええ、よかったわね紗希。明日美ちゃんが優しい娘で」
にこやかに二人を見る母親。
娘にとてもいい友人が居ることに喜びを感じているのだ。
「うう・・・もう行ってきます。明日美ちゃん、行こ」
トーストをくわえたまま鞄を持って席を立つ紗希。
「あ、待ってください紗希ちゃん。それでは行ってまいります、おばさま」
明日美は丁寧に頭を下げて鞄を持つと紗希の後を追う。
「はい、行ってらっしゃい。紗希のことよろしくね」
玄関先まで行って二人を見送ると、二人の小学生は元気に駆け出して行くところだった。
「車に気をつけるのよ」
彼女はそう言って自分も仕度を整えるべく戻っていった。

「ふう・・・」
娘が学校へ行ってしまった後の静かになった室内はなんともいえない寂しさをもたらす。
もっとも彼女にはその静けさや寂しさに浸っている余裕はない。
荒蒔 留理香(あらまき るりか)は娘紗希を生んで半年で夫を交通事故で亡くしていた。
死亡時の保険金と服飾デザイナーとしての仕事が彼女を経済面から支えてくれたため、彼女は一人で紗希を育てている。
紗希は母一人娘一人の状況でも明るく優しい娘に育ってくれている。
留理香にとっても自慢の娘だった。
それに学校に入ってからは親友とも言うべき浅葉 明日美(あさば あすみ)ちゃんが付いていてくれている。
浅葉グループの傍流ということだが、それでも立派な家に住むお嬢様であり、嬉しいことに彼女の勤めているデザイン会社にも仕事をまわしてくれたりもしてくれているのだ。
もちろんそのことを明日美ちゃんの両親が鼻に掛けるようなことは決してない。
単に娘の友人の母親がたまたま腕のいいデザイナーであるので、そこに発注しているに過ぎないということらしい。
それでもありがたいことであり、デザイン会社としては彼女を主任デザイナーとして遇していた。
「さて、出かけなくちゃね」
帰ってきてすぐに夕食の準備をできるように冷蔵庫の中身を確認し、今日の献立を考えながら身支度を整えて行く。
「今日は早く帰ってこれそうだし、紗希の好きなハンバーグにしようかしら・・・」
そうつぶやきながらメモに必要な食材を書いていく。
帰りにスーパーで買ってくるためだ。
異変はそのとき起きた。

部屋が突然暗くなる。
もちろんカーテンが閉まっていたわけでも日食が起きたわけでもない。
一瞬にして留理香の居る部屋だけが暗くなったのだ。
「えっ? な、何?」
留理香は驚いた。
完全な闇ではないものの、周囲の家具や足元の鞄すらよく見えない。
「で、電気を・・・」
よくわからないが、とにかく明かりをつけようと手探りでスイッチを探す。
だが、一歩踏み出した途端に彼女の躰はずぶずぶと沈み始めた。
「えっ? 嘘?」
ここは部屋の中のはず・・・
足元には確固たる床があるはずなのに・・・
だが留理香の躰は沈んでいく。
ずぶずぶと足掻いてももがいても沈むのは止められない。
「だ、誰かぁ! 助けてぇ!」
留理香は声を限りに助けを呼ぶが誰も来てはくれない。
やがて留理香の躰は床に胸までつかり、さらに首、口元と沈んでいく。
「だ、誰かぁ・・・ごぼっ」
液体のようにどろっとした床だったものが留理香の口をふさぎ、留理香は声を上げることさえできなくなる。
やがて床は静かに留理香を飲み込んでいき、最後に残った右手の指先も見えなくなっていった。
後には何事も無かったように誰も居なくなった部屋だけが残っていた。

「はう~・・・お腹空いたよう」
廊下を少し急ぎ足で歩いている紗希と明日美。
四時間目が体育という地獄を切り抜け教室へ戻るところだったのだ。
もう他の子たちは戻っているが、用具当番だった紗希は明日美と一緒に後片付けをしていて遅くなったのだった。
「本当にお腹がすきましたわね。今日はどんな献立でしょう」
「はう~・・・もう口に入れば何でもいいよぅ」
へとへとという感じで紗希は歩いている。
その様子が普段の元気な紗希とは雲泥の差なので、思わず明日美は微笑んでしまう。
「大丈夫ですわ、紗希ちゃん。今日の当番は林君ですからおかずを多めに盛ってくださいますわよ」
「そっか。それは楽しみぃ」
最後の元気を振り絞るように廊下を歩いていく二人。
もう各教室からは給食のいい香りが漂ってくる。
異変はそのとき起きた。

「うわぁっ! 何?」
「きゃぁっ!」
突然廊下を歩いていた二人はまぶしい光に包まれる。
まぶしさに目をつぶった二人は、そっと目を開けてみると周りが白一色で覆われていることに気が付いた。
「うわあっ、真っ白けだ」
「紗希ちゃん、これはいったいどうしちゃったんでしょうか・・・」
二人は顔を見合わせる。
驚いたことに何か雲の上にでも居るみたいに躰がふわふわして足元がおぼつかない。
白一色の世界に赤い服の明日美と青が基調の服を着た紗希だけが色のついた存在としてそこに居るようだった。
「私たちって・・・学校に居たんだよね?」
「ええ、そうですわ。廊下を教室に戻るところだったんですわ」
「で、でも・・・何もなくなっちゃったよ」
紗希の言うとおり二人の周囲にはただ白一色の世界が広がっているだけだった。
「どこか・・・どこかに出口があるはずですわ・・・」
心細そうな明日美の声。
「うん、早く抜け出して給食を食べに行かなきゃね」
紗希はそう言って明日美の手を握る。
それがどれほど心強いか紗希は気が付いていないかもしれない。
でも、紗希とさえ居れば明日美には怖いものなど無く思えるのだった。
「どっちかなぁ・・・まさか学校の中で迷子になるなんてね。方向音痴ではないんだけどなぁ」
「ここはゆっくりと出口を探しましょう。焦るときっと迷い込んでしまいますわ」
「うん」
二人はゆっくりと歩き出す。
ふわふわしていて気持ち悪いが、躰が沈み込むようなことは無かった。

やがて当ても無く歩いていた二人の前に扉が現れる。
それはただの扉であり、そのまわりに壁があるわけでもない。
回り込むこともできるが、裏側に回ると扉は単なる一枚の壁のようだった。
「なんだろうね。これ」
「扉には違いないようですが、どこかに通じているとは思えないですわね」
紗希も明日見も首をかしげるしかない。
なんと言っても二人は小学五年生であり、こういった不思議体験は初めてなのだ。
「開けてみようか」
「紗希ちゃんがそういうのでしたら開けてみませんか?」
二人は顔を見合わせて頷きあう。
親友同士の二人の結束は固いのだ。
「よし、開けるね」
「はい、準備はOKですわ」
「んじゃ、せーの」
紗希は扉のノブをまわして引く。
意外なことに扉は簡単に開くと、広間のようなところに続いていた。
「なんでしょうか・・・ここは・・・」
「気をつけてね、明日美ちゃん」
二人は思わず手をつないだまま中に入っていく。
足元は先ほどのところよりはよほどしっかりしているのだが、毛足の長いじゅうたんが敷き詰められているようで、やっぱりふわふわしてしまう。
やがてホールの奥の方に椅子に座った人影が見えることに二人は気がついた。
「誰かいるよ、明日美ちゃん」
「ええ、いったいこんなところにどなたがいらっしゃるのでしょうか・・・」
不安そうに紗希に答える明日美。
ここがどこかもわからない以上、うかつに人に話しかけるのは躊躇われたのだ。
「とにかく出口を聞かなくちゃ・・・もうおなかペコペコだもん」
紗希は居ても立ってもいられないような表情を浮かべている。
空腹が全ての警戒心を失わせているのだろう。
明日美はくすっと笑みを漏らした。
こういう場所でも自分を失わない、よく言えば大胆不敵、悪く言えば鈍感な紗希のことが明日美にはとても頼もしい。
とりあえずは様子を見なくちゃ・・・
明日美はそう思って紗希と一緒に人影の方に近づいていく。

その人影は女性だった。
一段高いところにある玉座のような豪華な椅子に座って、すらりとした脚を挑発的に組んでいる。
憂いを含んだような目は切れ長で小さな唇といいバランスを作っている。
白いゆったりとしたドレスを身にまとい、額にはサークレットが嵌まっていた。
妖艶と言ってもいい感じの女性であり、若いようにもある程度年齢がいっているようにも思えた。
「あ、あの・・・」
二人は彼女の座っている椅子の前にやってくると自然と彼女を見上げるような形となり、まず紗希が口を開いた。
「ようこそ。光に選ばれし少女たちよ」
「選ばれた? 私たちがですか?」
壇上の女性は二人を見下ろしながらにこやかに微笑む。
それを見た明日美は何かいやな感じがするのを振り払えなかった。
「私たちはここに迷い込んでしまっただけなんです。早く学校へ戻らないと給食を食べ損なっちゃうんです。どうかここからでる出口を教えてください」
紗希は一所懸命にそう訴えた。
選ばれた少女だかなんだか知らないが、こんなところに居るわけにはいかないのだ。
「私の名はゼーラ。いきなりここへ呼び出されて混乱しているのはわかりますが、まずは落ち着いて私の話しを聞くのです」
壇上の彼女はきりっとしたまなざしを二人に向ける。
「は、はい・・・」
それは無言の威圧感となり、さすがの紗希も押し黙ってしまう。
「あなたたちの世界は大いなる闇に侵食されつつあります。最近あなたたちの周りで悲しむべき事件が増えてはいませんか?」
そう言われると紗希も明日見も少し思い当たることがある。
子供が連れ去られたり、簡単に人が殺されたり・・・
紗希の母親も、明日美の母親も、学校の行き帰りは充分に注意するように二人に言い聞かせてくれていた。
「た、確かに最近は悲しい事件が多いと思います。けど、それがその闇とかのせいなんですか?」
「闇が侵食するって・・・どういうことなんでしょうか?」
紗希も明日見も闇だの光だのと言われてもわからない。
しかもそれが自分たちと何の関わりがあるというのだろう。
「闇によるこの世界への侵食をこれ以上許してはなりません」
ゼーラと名乗った女性は凛とした声で言い放つ。
それは彼女自身が相当に闇を嫌悪しているかのようだった。
「でも、私たちにどうして欲しいのですか? 私たちはまだ小学生なんです」
「そうです。明日美ちゃんの言う通りです。私は早く給食を食べたいだけなんです」
明日美も紗希もこの女性が何を言いたいのか、何をして欲しいのかわからない。
「心配はいりません。今からあなたたちには光の聖なる力を授けましょう。その力を持って闇を振り払うのです」
ゼーラはにこやかに微笑んだ。
それはまるで天使が微笑んだかのように映っただろう。
「いらないよ。そんな力なんていらない!」
「私も同じですわ。そんな力なんていりません」
紗希も明日美も首を振る。
聖なる力で闇を振り払えなどと言われても、そんな物語の中のようなことには関わりたくない。
「うふふふ・・・心配は無用です。あなたたちにはこのホーリーペンダントを差し上げます」
ゼーラは中央に赤と青の宝石が嵌まったペンダントを取り出す。
それは妖しげな輝きを発していて、見る者を惹き込まずには居られないかのようだった。
「うわぁ、綺麗・・・」
「紗希ちゃん、いけませんわ。あれは何か良くない物のような気がしますわ」
思わずペンダントに見惚れてしまう紗希を明日美は手を引っ張って気付かせる。
「このペンダントを身につけ、聖なる力を発動させれば、あなたたちは聖なる戦士ホーリードールとなるのです。そしてこの世界を大いなる闇から救うのです」
「そんなの勝手じゃない。私たちが何で世界を救わなければならないの?」
「そうです。どうして私たちなんですか?」
二人ともこんなところからは一刻も早く立ち去りたかった。
しかし、足が動いてくれないのだ。
元来た扉へ戻りたくても戻れないのだ。
「おほほほほ・・・あなたたちはこの世界を救う使命を与えられたのよ。おとなしく聖なる力を持って闇を打ち払いなさい」
「いやだ、そんなのやだよ!」
「私だっていやですわ!」
ゼーラの言葉に首を振る二人。
「そう・・・バカな娘たちね・・・いいわ」
そう言うとゼーラの瞳が妖しく光る。
「こちらへいらっしゃい、荒蒔紗希」
「えっ? あっ、いやぁっ!」
ゼーラの言葉が紗希を捕らえ、紗希は自分の意思では体が動かせなくなってしまう。
「紗希ちゃん!」
必死に手を握る明日美。
「手を放してそこで待っているのです。浅葉明日美」
ゼーラの言葉により明日美は自分の意思とは関係なく手を離してしまう。
「そ、そんな・・・ひどいですわ」
「あ、明日美ちゃん。わ、私の躰が・・・」
ギクシャクという動きで紗希はゆっくりと壇上に上っていく。
明日美はただそれを黙って見ているしかできなかった。
「ひどい・・・何をするのですか? 紗希ちゃんを自由にしてください」
「お黙り! あなたたちは聖なる戦士に選ばれたのです。光栄に思いなさい!」
ゼーラがぴしゃりと言い放つ。
「い、いやだ・・・いやだぁ」
紗希はそう叫びながらゼーラの前に立ってしまう。
「さあ、荒蒔紗希よ、このペンダントで聖なるホーリードールへと変身しなさい」
そう言ってゼーラはペンダントを紗希の首にかける。
それと同時にペンダントの青い宝石が光り輝き紗希の体を包み込む。

「紗希ちゃん!」
明日美の目の前で青い光はじょじょに収まっていく。
そしてその中からは・・・
「紗希ちゃん!」
明日美の呼びかけにゆっくりと紗希は振り向いた。
その姿は紗希のままだったが、服装は青いミニスカート型のコスチュームへと変わり、青い手袋とブーツを嵌め、額には青い宝石の嵌まったサークレットを嵌めていた。
「紗希・・・ちゃん・・・」
明日美が声をかけても紗希は無表情のままだった。
「さあ、荒蒔紗希、いいえ、ホーリードールサキよ、あなたはこれより聖なる光の戦士として、大いなる闇を打ち払うのです」
「はい、ゼーラ様。私はホーリードールサキ。聖なる光の戦士です」
薄く微笑む紗希。
その笑みはどこか冷たい。
「紗希ちゃん・・・ひどい、紗希ちゃんに何をしたのですか?」
明日美は悲しくなった。
先ほどまでの紗希はそこにはいなかったのだ。
「うふふふ・・・明日美ちゃん、何も心配しないで。私はゼーラ様にホーリードールにしていただいただけなんだよ」
サキはそう言って壇から降りてくる。
「ホーリードールサキ。その子も連れてきなさい」
「はい、ゼーラ様」
紗希は冷たい笑みを浮かべながら明日美に近づいてくる。
「ああ・・・紗希ちゃん・・・紗希ちゃん・・・」
明日美の目から涙があふれる。
だが、躰の自由が利かないまま、明日美はサキに手を握られ壇上で待つゼーラの下へと連れて行かれる。
「お願い・・・紗希ちゃんを元に戻して・・・」
「明日美ちゃん、心配しないで。全てゼーラ様にゆだねていいんだからね」
ゼーラの前でも明日美はけなげに訴えかける。
しかし、ゼーラはただにこやかに明日美にも赤い宝石の嵌まったペンダントを首にかけた。

「さあ、お行きなさい、二人とも。この世界を大いなる闇から護るのです」
「はい、ゼーラ様。行こうホーリードールアスミ」
「ええ、行きましょう。ホーリードールサキ」
赤いミニスカート型のコスチュームと手袋にブーツというサキと同じ色違いのコスチュームを身につけた明日美は、もはや何のためらいも無く大いなる闇との戦いに身を投じる聖なる光の戦士だった。

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  1. 2005/12/19(月) 22:19:58|
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好きな作品パートⅢ

各地で大雪になっているようですね。
いろいろと大変だと思いますが、皆様お気をつけてくださいね。

さて、今日はまた個人的に好きな作品を紹介します。

マンガ
「実験王」 長田ノオト著 東京三世社
これもまた古い作品なんですが、この本の中に「怪奇!! 少女島」という作品が有ります。
実験王と呼ばれる人物が、自分の好みにあった少女を誘拐し、猫や蛾や魚などと合成した改造人間を作り出し、少女島と呼ばれる島で悦に入っているわけですが、少年探偵の活躍で野望(?)を挫かれてしまいます。

改造されるのはそれぞれ美しい美少女たちばかりであり、改造後もその面影を残したまま猫少女や蛾少女などとして実験王のペットとなるのです。
改造される前の記憶などは洗脳装置によって思い出せなくなっており、実験王の従順なペットとしての生活を送るように仕向けられているようです。

ちょっと驚きなのは、改造はあくまでも運任せであり、改造に失敗する素体もかなり高率で発生するようですね。
バレリーナであった少女も改造されてしまいますが、実験王の思惑とはまったく違うハエとの合成のような姿になってしまい、失敗作として『オキシジェン・デストロイヤー』(笑)で溶かされようとします。

でも、少女を改造してペットにしてしまう実験王はまさに個人的にはツボでして、時々読み返しては楽しんでおります。
ちょっと古いので、手に入りにくいかも。

アダルトマンガ
「10after」 山文京伝著 コアマガジン
先日「砂の鎖2」を出された山文先生の過去作品ですが、この単行本の中にある、「id」が大好きな作品です。
寝取り、洗脳、そういったシチュで有名な山文先生だけに、この作品も大変楽しませていただきました。
レジスタンスのリーダー格の女性が捕らわれ、思想犯収容所に送られるのですが、そこでは犬型のヘルメットをかぶせられ、帝国の素晴らしさを始終聞かされ続けます。
それと同時に知らないうちに薬物や電気的刺激により性感を刺激され、快楽による帝国への忠誠心を植えつけられていきます。
やがて彼女は帝国軍の慰安将校となり、かつての仲間の情報を帝国に伝えてレジスタンスの壊滅に一役買うようになります。

まさに私の好きなシチュであり、とても楽しませていただきました。

今日はこの二点を紹介させていただいて終わりとします。
またいずれ行ないますね。
  1. 2005/12/18(日) 22:21:51|
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ミグ対ミグ

中東と同じように、いやそれ以上に火薬庫として世界中に緊張を与えている地域にインドとパキスタンがあります。

ここは宗教的対立の国々であり、お互いに相容れない上に双方とも核兵器を装備しているというなかなか厄介な国々でもありますね。

ここも幾度かの印パ戦争を戦ってきているのですが、お互いに似通った兵器を装備しているのが面白いところですね。

第一次印パ戦争の頃には旧宗主国であるイギリスから兵器を買い入れていたインド軍対アメリカ製兵器を主要装備としていたパキスタン軍とが戦うことになりました。
地上兵器についてはちょっと良くわからないのですが、航空戦はインド空軍のイギリス製ホーカーハンターやフランス製ダッソーウーラゴン対パキスタン空軍のF-86セイバーとが戦ったようですね。

どちらも西側諸国が対ソ連戦を意識して製造した航空機でありますが、どうも空戦そのものに関してはパイロットの質と航空機の性能などで、パキスタン空軍がインド空軍に差をつけていたようです。

その後、この第一次印パ戦争でアメリカからの武器援助を受けられなくなったパキスタンは、何も文句を言わずに兵器を売ってくれる中国に接近。
最近ではミサイル技術などで北朝鮮とも提携をしているようです。

一方インドも安価で生産しやすいソ連製兵器をライセンス生産し、ミグ21を国内で生産して行きます。
フランス製のミラージュやラファールなども装備していますが、数の上での主力はミグ21であり、インドの上空を護っています。

パキスタンはパキスタンで、安くて手軽な中国製兵器を使っているのですが、もちろん航空機も中国製。
しかもそれは中国がソ連と仲が良かった頃にライセンス生産したミグ19やそれを独自に改良した強撃5型、それに図面だけから作り上げた中国製ミグ21なのです。

つまり、インド空軍とパキスタン空軍はお互いにほとんど同じ形状のインド製ミグ21と中国製ミグ21でお互いの領空を護っているわけですね。

実際ミグ21同士の戦闘はまだ起こっていないようですが、インド空軍のミグ21対パキスタン空軍のミグ19は空戦をやったことがあるようです。

戦争が起こらないに越したことは有りませんが、実際次の印パ戦争が起こったときは両軍のパイロットは敵味方の識別に苦労するかもしれませんね。

もっとも、最近は敵味方識別もかなりの精度になっているようでは有りますが。
それではまた。

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  1. 2005/12/17(土) 22:43:59|
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片道燃料だけ・・・

映画「男たちの大和」が劇場公開されます。
久々の戦争映画な感じがしますね。
チャンスがあれば見に行きたいものですが、この映画はご存知のように大和を中心とする帝国海軍残存艦艇による沖縄への水上特攻作戦を描いたものです。

よく言われることですが、この時大和を含めた各艦艇は片道燃料だけを積んで出撃したといわれます。

実際はそんなことは無く、死にに行くものには腹いっぱい食わせてやれというので、各艦艇とも満タンにしたというのが実情らしいのですが、計画では片道燃料だけということだったので、燃料搭載を確認した係官が片道分と報告したらしいですね。

では当時日本は本当に燃料が無かったのでしょうか?

実は太平洋戦争の1941年12月から1945年8月までで一番日本の燃料生産が多かったのが1944年から1945年の終戦直前だったんですね。

つまり日本がもっとも燃料が余っていた時期に大和は片道燃料で出撃などという計画で出撃をしなくてはならなかったんですね。

では、その豊富な燃料はどこにあったのか?

もちろん日本本土には有りませんでした。
スマトラやジャワの製油施設に大量に備蓄されていたんですね。

その豊富な燃料をただ日本は本土に運ぶことができなかったんです。

日本は商船の護衛という分野にはほとんど注目していませんでした。
いや、注目しようにも国力の問題で主要戦闘艦にしか建造力を割けなかったというのが実情です。

結果、日本の商船は米軍の潜水艦にいいように沈められてしまいました。
小型の海防艦を増産しても間に合わず、かえって海防艦自身も潜水艦に沈められる有様でした。
油送船も原油や石油を積んだまま次々と沈められ、本土にはほとんど到着しなかったのです。

結局、日本は豊富な石油資源を手中にするべく南方に進出し戦争が始まりましたが、その石油資源を活用することはできなかったのです。
ただ現地であふれている石油とまったく石油の無い日本本土という状況。

手に入れるだけではなく、それをどうやって運ぶかにまで思いが至らなかった日本は、やはり負けるべくして負けてしまったのかもしれませんね。

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  1. 2005/12/16(金) 23:06:02|
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呉越同舟・・・ちょっと違うかな

第二次世界大戦時ドイツの占領下にあったチェコスロバキア(当時)はドイツの軍事産業にとっても重要な地でした。
何せヒトラーはベルリンを護るよりもチェコを護れと言っていたぐらいであり、ベルリンを失ってもチェコが顕在ならまだ戦争は継続できると思っていたようです。

そのチェコスロバキアは戦後もドイツ製兵器を作って輸出をしていたわけですが、その恩恵にあずかったのがイスラエルでした。

先日チェコスロバキアよりスピットファイアを手に入れたことはお話しましたが、それはイギリスがチェコスロバキア義勇軍に与えたものでした。
それを再整備の上でイスラエルに渡したわけですが、今度は自国で生産したアヴィアS199戦闘機をイスラエルに売り渡します。

写真がないのでわかりづらいかもしれませんが、このアヴィアS199戦闘機はメッサーシュミットBF109と瓜二つであり、それもそのはず、この戦闘機はメッサーシュミットBF109をチェコスロバキアで改良生産した代物だったのです。

このアヴィアS199戦闘機により強化されたイスラエル空軍は先に述べたスピットファイアとアヴィアS199=メッサーシュミットBF109という大戦時に敵味方として戦った名機同士が一緒にアラブ軍と戦うという奇妙な光景が現出することになりました。

この大戦中の敵味方の兵器が一緒に味方として戦うというのは、何もイスラエルに限ったことではなく、アラブ軍でもその武器の供給源によっては同じように現出したのです。

例えばシリア軍は機甲兵団の装備として接収されたドイツ軍の四号戦車や四号駆逐戦車を装備していましたが、友好国であったソ連からT-34/85の供与を受けて同一の機甲部隊で運用しています。
もしドイツ軍人やソ連軍人が見たらさぞかし奇妙な思いにかられたでしょうね。
何せ四号戦車とT-34/85がM4やオチキスH-39(フランス軍の戦車)と撃ち合うのですから。

このように第一次中東戦争は両軍ともが第二次世界大戦の余剰兵器をそれぞれ購入して戦った第二次世界大戦型の戦争だったんですね。

その後イスラエルは当てにならない大国からの武器購入に見切りをつけて自国生産に切り替えて行くようになりますが、そういった技術力を持たない(持たせてもらえない?)アラブ諸国は東西両陣営の冷戦により主としてソ連製兵器で装備を固めて行きます。

第三次及び第四時中東戦争では西側技術を導入したイスラエル軍とソ連製兵器のアラブ軍による新兵器の実験場と化して行くことになります。

そして東西冷戦の終結とともに中東も一応の平穏を見せることになりますが、現在でも中東は次の戦争に備えて各国とも牙を研いでいる状態といえるでしょう。

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  1. 2005/12/15(木) 21:52:07|
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スピットファイア対スピットファイア

スーパーマリン・スピットファイア。
第二次世界大戦時の英国の空の守り神としてあまりにも有名な戦闘機ですね。
ヨーロッパ機の常として航続距離の短さは有りますが、優秀な格闘性能を誇り、メッサーシュミットBF109のライバルとして大戦を戦い抜きました。

第二次世界大戦後、そのまま余生を送るかと思われたスピットファイアは新たな戦場が待っていました。
第一次中東戦争です。

ユダヤ人が自分たちの国を作るべくイスラエルを建国した時、周辺のアラブ諸国は当然それを認めませんでした。
ユダヤ人は建国したばかりのイスラエルを護るため、アラブ諸国はイスラエルという国を葬り去るために戦争が勃発します。

以前もこのブログで書きましたが、当時のイスラエルには戦力が乏しく、航空戦力は皆無と言ってもいい状況でした。
架空の映画会社をでっち上げてまで航空機を獲得していったわけですが、チェコスロバキア(当時)から手持ちのスピットファイアを売却してもよいという打診がありました。

当然イスラエルはこの申し出に飛びつき、スピットファイアを約五十機手に入れます。
このスピットファイアはイスラエル空軍の主力として、第一次中東戦争を戦うわけですが、当時敵対国であったエジプトにはイギリスから航空戦力としてスピットファイアが導入されておりました。

その同じスピットファイア同士が(形式など細かい部分は違いますが)中東の砂漠地帯の上空で航空戦を繰り広げたのです。
イスラエル空軍のパイロットは第二次世界大戦に義勇兵として従軍していたパイロットが多く、その技量は優秀だったようでして、エジプト空軍のスピットファイアを圧倒しました。

現在でもイスラエル空軍は中東随一の強さを誇っておりますが、その基本は英国を救ったスピットファイアによってもたらされたんでしょうね。

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  1. 2005/12/14(水) 22:24:33|
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お姫様のその後・・・

今日は以前書いた女騎士さんがガーゴイルレディになってしまったお話の続編です。
お話的にはこれで終わりとなります。

もともと前作で終わらせるつもりもあったんですが、やはり脱出した姫様のその後を見せたいという気持ちがあったので、今回書いてしまいました。

ある意味蛇足ではございますが、ごらんいただければ幸いです。

「姫様・・・」
祈りを捧げている私の元に黒い尼僧服を纏った清楚な女性が声をかけてくる。
「シスターフレア、ご心配にはおよびません。私は自ら命を絶ったりするようなマネはいたしませんわ」
私はそう言って微笑み、彼女を安心させてあげる。
幾人かの生き残りの騎士たちの話では、城は炎上し落城したという・・・
お父様もお母様も生死は不明。
城の中ではそれはもう凄惨な戦いが繰り広げられ、生き残るものは皆無だったらしい。
そのような戦いの中ではおそらく二人とも命を失ったことだろう。
そう思っただけで私の目からは涙があふれてくる。
でも泣いてはいけない・・・
私は泣くわけには行かない。
そう・・・私はロッテリア・グラコロバーグ。
この国の姫なのだから。

我が国ファストフド王国は、小さいながらも周辺の国々からはその文化と技術レベルの高さとで一目を置かれる存在でした。
そう、それはつい先日まではそうだったのです。
ですが、突然地の底から湧き出したかのような魔物の群れに襲われ、郊外の戦いで王宮騎士団は壊滅。
続く市街での戦いでも我が軍勢は聖堂騎士団を含めるもことごとく蹴散らされてしまいました。
あまりの急激な出来事に周辺諸国に救援を求めることもかなわず、我が国は・・・
私は凶悪なモンスターどもを率いる恥知らずな魔人ブルグォスから逃れるために、騎士団の一人であるトリスティアとともに城を抜け出し、この隠れ家にやってきたのです。

墓地の地下。
カタコンベの一角を利用した隠れ家は暮らすには何不自由は無い。
ここのことを知る者はごくわずかだし、その気になればブルグォスなどには見つからずに一生暮らして行けるだろう。
だが、それではお父様お母様にも国民のみんなにも申し訳が立たない。
私はなんとしてでもこの国を魔人ブルグォスから取り戻し、元の豊かな国にしなくてはならないのよ。
そのためには周辺諸国を競合し、この国に対する救援軍を編成してもらわなくては。
そのためなら私にできることなら全て行なう覚悟はあるわ。

「姫様、こちらにおいででしたか」
私の侍女を勤めているハベリアがやってくる。
いつもメイド服姿が凛々しい彼女は、私よりは二歳年上なだけなので、いつも心安く話すことのできる相手だ。
「ハベリア、様子はどうなの?」
「はい、残念ながらトリスティア様は城へ入られたきり出ていらっしゃらないようです」
いつも楽しそうな彼女の表情が曇る。
「そう・・・」
あの時お父様お母様と別れるのがいやで駄々をこねた私を連れ出してくれた彼女。
王宮騎士団の中でも実力に秀で、私付きの騎士としていつも式典の時などはそばに居てくれた彼女・・・
その彼女も今はもう・・・
「それでもう一つの方は?」
私は悲しみを振り切ってそう尋ねる。
「はい、二人の王宮騎士が隣国ヨシノーヤとドンキーへ向かいました。順調に行けば二、三日中にはお返事をいただけるかと」
「ありがとう。今ならばまだ魔物の軍勢もこの国を占領してホッとしているでしょうから、反撃のチャンスは充分にあるわ」
私はそう言ってうなずいた。
「でも、姫様。ヨシノーヤ王国もドンキー王国も隙あれば他国の領土を掠め取ろうとするような国ですわ。そのような国が援軍を出してくださるでしょうか?」
シスターフレアの言うのはもっともだわ。
私だってこの二カ国がただで軍を出すとなど思わない。
当然領土の割譲と私自身を求めてくるでしょうね。
そうなればこのファストフド王国を我が物とできるでしょうから・・・
でもそうはさせないわ。
できるだけ上手に利用して、この国から魔物を追い払ったあとはお互いに牽制させて手出しができなくしてやるつもり。
「シスターフレア、今はどんな手でも打てるだけ打っておく事が必要です。お母様の実家であるモス辺境伯領からも軍勢がこちらへ向かってくるでしょうが、その数は多くはありませんからね」
「わかりました姫様。差し出た口を挟みましたことをお許し下さいませ」
シスターフレアが頭を下げる。
ウィンプルに覆われた頭部から隠しきれない髪の毛がはらりと舞った。
「いいのよ、気にしないで」
私がそう言った時に異変は起こった。

ガコンという音。
ちょっとした地響き。
墓地に繋がっている入り口がこじ開けられたに違いない。
「まさか・・・ここを見つけたというの?」
シスターフレアが愕然とする。
「誰かがここを通報したのかも・・・」
「ハベリア、口を慎みなさい。仮にも人間が魔物に通じているなどと思っているのですか?」
私はそう言って目を閉じて祈る。
主よ・・・
私たちにお力を・・・
「姫様はここでお待ちを。私が様子を見てまいります」
シスターフレアが両手に手袋とナックルガードを付け、グッとこぶしを握り締める。
私は無言で頷くと彼女は微笑んで扉の向こうへ消えていった。
「姫様・・・」
「ハベリア、お茶をちょうだい。美味しいのをね」
「あ、はい・・・」
震えながらも彼女は奥のキッチンへ向かう。
これでいいわ。
何かをしていれば気もまぎれるでしょう。
あとは・・・
シスターフレアが戻ってくるのを待つばかりね・・・

扉が再び開けられる。
お茶をいただいていた私の前に奇妙な姿の女性が現れる。
少しグレーがかった肌に黒革のボンデージのような衣装と思われるものを身につけ、すらりとした脚にはブーツを履いていて背中からはコウモリのような翼が広がっている。
その手にはぐったりとしたシスターフレアの髪の毛がつかまれており、あちこちを引き裂かれた尼僧服姿のシスターフレアの胸がかすかに上下していた。
魔物はぎらぎら光る目を私に向けていたが、その顔は驚いたことに私の知っている女性にそっくりだった。
「うふふふ・・・見ーつけた」
「クリスティーヌ・トリスティア・・・」
私はカップをテーブルに戻すと彼女にそう呼びかけた。
「こいつ結構抵抗するからさぁ。ちょっと痛めつけてやったのよね。殺してもよかったんだけど連れて帰ることにするわ。あなたと一緒にね」
まるでぼろきれをほうり出すようにシスターフレアの髪の毛を掴んで放り投げる魔物の女。
床に打ち付けられたシスターは少しうめき声を上げるが、またぐったりとなってしまう。
「シスターフレア! クッ、答えなさい、あなたはなぜクリスの顔をしているのですか?」
「あはははは・・・そんなの決まっているわよ。あたしがそのクリスティーヌ・トリスティアだからに決まっているじゃない」
「な、何ですって!」
魔物の女の言葉は私には信じられなかった。
あのクリスが・・・
王宮騎士団のバラとも言うべきクリスティーヌが魔物だったというのか?
「うふふ・・・あたしねぇ、ブルグォス様に魔物に改造してもらったのよ。今のあたしはガーゴイルレディ。ブルグォス様の忠実なしもべなのよねぇ」
くすくすと含み笑いを浮かべるガーゴイルレディ。
その表情は以前のクリスからは想像もできない。
「バカな・・・そんなバカな・・・」
私はそばに立ててあったレイピアを手に取ると鞘を取り払った。

戦いはほんの一瞬に過ぎなかった。
もとより私の付け焼刃的な剣技などクリスティーヌに及びも付かないうえに、彼女自身が魔物化しているのだから余計に手強くなっているのだから当然のことだわ。
私のレイピアはただ空を切りつけ、彼女のこぶしが私の腹部に入ってくる。
私は気を失いかねないほどの激痛に身を折って苦しみ、レイピアを取り落とした。
「ああ、姫様!」
バカ・・・出て来ちゃだめじゃない・・・
私は苦痛の中でそう思ったが、ハベリアが私の元に駆け寄ってくることをどうしようもなかった。
「あらあら、うふふふ・・・獲物がまた一匹でてきたわぁ。でもあなたもブルグォス様が喜びそうねぇ」
舌なめずりをするガーゴイルレディ。
「ハベリア・・・逃げてぇ・・・」
私は苦しみながらそう言うのが精いっぱい。
「お黙り!」
「ガハァッ!」
ガーゴイルレディのつま先が私のお腹に再び突き刺さる。
「姫様、キャアッ!」
駆け寄ってきたハベリアもガーゴイルレディの手で髪の毛をつかまれて振り回されていく。
「キャハハハ・・・だらしないのね、人間って」
「いやぁっ!」
ハベリアはそのまま壁に叩きつけられてぐったりとしてしまう。
「ああ・・・ハベリア・・・」
私はお父様やお母様の無念を晴らすことができない悔しさに歯噛みする。
「うふふ・・・さあ、おとなしく来てもらうわよ」
私は絶望とともにガーゴイルレディの立ち尽くす姿を見上げていた。

『あああ・・・誰かぁ・・・助けてぇ・・・』
うっすらとそんな叫び声が聞こえてくる。
私はゆっくりと目を開けた。
いつの間にか気を失ってしまっていたらしい。
「お目覚めかな、姫君」
すぐ隣から野太い声が私の耳に届いた。
私はハッとして隣を見る。
「あ、あなたは・・・」
私の隣に居たのは青黒い肌をして口が耳まで裂け、髪の毛の無い頭部からは二本の角を突き出し、背中からは黒々とした皮膜でできた羽を生やしている魔人ブルグォスその人だったのだ。
「魔人ブルグォス・・・」
私はすぐに立ち上がってそいつから離れようとした。
しかし、私の躰は首から下がピクリとも動かすことができなかった。
「こ、これは・・・いったい?」
「クククク・・・しばらくおとなしくしているのだ姫君よ。そなたの躰には少し術を施して動けなくしてある。もちろん逃げられないようにだがね」
ブルグォスが笑う。
私はなんとしてもその場を逃れようと力を入れるものの、躰はまったく動いてはくれない。
奴は事もあろうにお父様の席に座り、私をお母様の席に釘付けにしているのだった。
「クククク・・・見たまえ。もうすぐ君の侍女も魔物として生まれ出る頃だ」
「えっ? ハベリアが?」
見ると玉座の前の広間には白い巨大な卵のような球体があり、細かく震えているようだった。
「あの中にハベリアが?」
「ああ、そうだとも。先ほどゴーレムの核を基にした膜で覆ってやったから、もうすぐでゴーレムレディとなるはずだ。主人の命令には忠実だぞ」
「ゴーレムレディ? そんな・・・」
私は力が抜けるような気がした。
こいつは人間をあの卵で包んで魔物にしてしまうというの?
そんなことが・・・
だが、私の見ている前で卵にはひび割れが生じ、やがてそのひび割れを広げるようにして腕が突き出されてくる。
その腕は灰色でまるで石のようであり、やがてぬらぬらした液体を滴らせて女性系の魔物が姿を現した。
全身がまるで石のように灰色だが、滑らかな女性のラインはそのままであり、まるでハベリアがそのまま石になってしまったかのよう。
「ハ、ハベリア・・・」
「うふふ・・・ロッテリア姫様、私はもうハベリアなどという人間ではございませんですわ。私はブルグォス様に作られたゴーレムレディ。どうか何なりとご命令を」
無機質の声が私にハベリアを失ってしまったことを感じさせる。
「ああ・・・そんな・・・」
「クククク・・・ゴーレムレディよ、控えておれ。すぐにそなたの主人を作り変えてやろう。だがその前にもう一人」
「もう一人? まさか・・・」
私はブルグォスの言葉に彼のほうを向く。
「ククク・・・シスターを連れてくるのだ」
「やめて! やめなさい! お願いです、やめてください。私ならあなたの物になりますから・・・」
私は必死で懇願する。
せめてもう犠牲者は出したくない。
シスターフレアだけでも助けて・・・
「クククク・・・そなたはすでに我のものだ。我の新たな女王となるのだ。女王にはふさわしい部下が必要だろう?」
ブルグォスの顔が私のそばにまで近づいてくる。
その臭い息に私は思わず顔をそむけた。

「私はどうなってもいい! 姫様を放しなさい! 魔人ブルグォス!」
「うるさいよ! 静かにしな!」
入り口から凛とした声が流れてくるが、すぐにかき消されてしまう。
しかしぼろぼろの尼僧服を纏っているシスターフレアはいまだ憎しみを込めた目でブルグォスをにらみつけていた。
「ブルグォス様、シスターをお連れしました」
シスターフレアの手首は縛られ、その先をあのガーゴイルレディが握っている。
あの状況では彼女に逃げ道は無いでしょう・・・
悔しいけどどうすることもできはしない。
「姫様・・・申し訳ありません。姫様をこのような屈辱的な目に合わせてしまいました。この上は私の命を持って姫様を・・・うぐぅ」
「シスターフレア!」
「何勝手にしゃべっているの? ブルグォス様の前なんだからおとなしくしてよね」
そう言ってガーゴイルレディはシスターフレアを床に突き飛ばす。
「クククク・・・威勢がいい女だ。この国は男どもはたいしたことが無いが、女は楽しませてくれる」
「ブルグォス・・・姫様を離せ・・・」
床に転がされながらもシスターフレアはなお言い放つ。
私はその姿に心打たれた。
「シスターフレア、もういいの・・・もう・・・いいのです」
「姫様・・・あきらめてはなりません。今もこの城目掛けて救援軍が近づいているのです。ここでこの魔人に屈してはなりません」
「シスター・・・」
私はその言葉が私を勇気付けるための嘘だとわかっていた。
救援の軍勢など望むべくも無いのだから・・・
「私はどうなってもいい、姫様を離しなさい!」
「まあ、そういうなシスターフレアよ。お前はなかなか可愛いしわが妻に忠実だ。よってお前を魔物の一員にしてやろう」
ブルグォスが薄笑いを浮かべている。
「だめ、だめです、やめてください!」
私は必死で懇願した。
「クッククク・・・」
ブルグォスは指を鳴らす。
すると先ほどまで黙って立っていたハベリア・・・いえ、ゴーレムレディが廊下に出て何かを持ち帰ってきた。
「クククク・・・」
「ニャーン」
「猫?」
ブルグォスに渡されたのは一匹の黒猫だった。
ブルグォスは手渡された黒猫をいきなり握りつぶすと口の中に放り込む。
あたりには血しぶきと猫の断末魔の悲鳴が響き渡った。
「な、何を・・・」
私があっけにとられていると、ブルグォスはくちゃくちゃと噛んでいたものを風船でも膨らますかのように膨らませて行く。
彼はそのまま立ち上がり、大きく膨らませたその風船をシスターフレアに近づけた。
「あ・・・」
それは一瞬のうちにシスターフレアをその中に取り込んでしまい、すぐに硬質化していく。
「あ・・・な、何なのこれは・・・いや、いやぁ」
最初のうちはシスターフレアの姿がうっすらと見えていたものの、やがて風船が硬くなるに従って半透明から白くなっていき、その姿が見えなくなっていく。
やがて声も聞こえなくなり、あのゴーレムレディを生み出したときのような巨大な卵と化していた。
「あ、ああ・・・まさか・・・」
「その通りだ姫君よ。彼女はあの中でキャットレディとなるだろう。可愛いペットの出来上がりだ」
私はブルグォスの恐ろしさに打ちひしがれた。

バリバリと音を立て殻が砕けて行く。
粘液を滴らせかつてシスターフレアだったものがゆっくりと起き上がる。
ネコ型の耳を頭の左右に生やし、胸から股間にかけては黒い毛が下着のように覆っている。
両手と両脚は鋭い爪を持ち、先はやはり毛に覆われていて太ももと二の腕だけがアンバランスに人間のままのように見える。
お尻からはフルフルと長い尻尾が揺れており、顔にはピンとした猫のひげが生えていた。
「うにゃぁ~・・・くふふふ・・・私はキャットレディ。ブルグォス様ぁ、とても嬉しいですにゃ」
あのシスターがこんなふうになってしまうなんて・・・
キャットレディは猫のように顔を手でこすりながら、甘えるようにブルグォスの足元に擦り寄った。
「クククク・・・なかなか萌えるキャラになったではないか」
ブルグォスがキャットレディののどを撫でる。
それをとても気持ち良さそうにごろごろと喉を鳴らしながら撫でられるままになっているキャットレディ。
・・・・・・
可愛い・・・
いけない。
こんなふうにシスターを変えてしまうなんて・・・
でも私にはどうすることもできないわ。
ああ・・・主よ、私を救ってください・・・

「さて、いよいよそなたの番だ、姫君よ」
「わ、私も魔物にするというのですか?」
私は精いっぱいの憎しみを込めてブルグォスをにらむ。
たとえどんな姿にされようともこの思いだけは変わりはしない。
私はこの魔人を永遠に憎み続けてやるわ。
「ただの魔物ではない。そなたには女王となってもらわねばならん」
「女王? 魔物たちの女王になれというのですか? この私に」
なんとふざけたことを言うのだろう。
私が魔物たちの女王になるなんてまっぴらだわ。
「そうだ。お前は女王。魔物たちとそして俺の女王となるのだ」
「おことわりします。たとえシスターのように魔物にされても、絶対にあなたを憎む心は捨てませんから」
「頼もしいな。その気持ちは女王にふさわしい」
そう言ってブルグォスはゴーレムレディからサソリを受け取る。
「サソリ? 私をサソリに?」
「ただのサソリではない。猛毒のデススコーピオンだ。それに俺様の血を混ぜてやろう」
私の目の前でブルグォスはサソリを口の中に入れ、自分の腕を噛みちぎる。
私は恐ろしかった・・・
もし・・・
もし私の心も・・・
もし私の心も魔に捕らわれてしまったら・・・
くちゃくちゃと咀嚼する音と私の心臓の音が重なって聞こえる・・・
私の目の前で風船が膨らんで行く・・・
私は・・・
私はロッテリア・グラコロバーグ・・・
私は・・・ロッテリア・・・・
私は・・・
わたしは・・・
ワタシハ・・・
わ・・・た・・し・・・は・・・

               ******

「モス辺境伯の軍勢は壊滅です」
ガーゴイルレディが報告を持ってくる。
当然だわ。
人間の軍勢などどれほどいようとも我が夫にはかなうはずが無い。
私は隣で頷いている夫ブルグォスの横顔を眺めた。
彼を見るたびに心がざわめき、彼を愛していることを思い出させる。
私は魔人ブルグォスの妻であり、魔物の女王スコーピオンレディ。
私の躰はつややかな外骨格に覆われ、お尻には素敵な毒針の付いた尻尾が伸びている。
その姿はまるで真っ赤なエナメルのボンデージを着ているみたい。
両手両脚にはまるで手袋やブーツのように外骨格が覆っていてかっこいい。
この姿は夫もとても気に入っているみたい。
これからも我が軍勢に立ちはだかるものは私が容赦しないわ。
私の毒針の威力を思い知らせてやるわね。
私はそっと夫の肩に躰を預けた。

「ほら、もっときちんと舐めなさい!」
私は愛する夫につま先を舐めさせる。
「ああ・・・我が女王様。おみ足を舐めさせていただけるなんて光栄です」
「御託はいいからさっさと舐めなさい! まったくグズなんだから」
私はヒールで蹴飛ばしてやる。
うふふふ・・・
気持ちいいでしょ?
お前はこうして虐められたいマゾなんだものね。
私はすっと立ち上がると尻尾の毒針から毒を出さないようにしながら、彼を尻尾で鞭打ってやる。
「ひいぃぃ! お許しを、女王様」
「お黙り! いつまで経っても満足に足を舐めることも出来ない下衆は私には不要だわ」
私はヒールで彼の腹をぐりぐりとえぐるようにねじ込んで行く。
「ぐはぁぁぁ」
それだけで彼の股間のモノははちきれんばかりになり、たっぷりと美味しいミルクをあふれさせる。
まったくもったいないわねぇ。
少しは私に味わわせなさいよね。
私は足の下でひいひい言っている夫の姿を見ながらとてつもない満足感を感じていた。

私は女王。
私は女王スコーピオンレディ。

[お姫様のその後・・・]の続きを読む
  1. 2005/12/13(火) 19:35:23|
  2. 異形・魔物化系SS
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うーん・・・ちょっと趣味が入り込みすぎ?

先ほどまで録画してあった「めぐりあい宇宙」を見ていました。
やっぱり絵の古さは感じられますが、戦闘シーンなんかは今見ても迫力ですねぇ。
当時の意気込みが伝わってくるようです。

今日もローネフェルト中尉のお話を少し。
戦いにはまだ入りませんが、幕間劇だと思ってみてください。

今日のネタは先日メッセの友人とお話したときにいただいたものです。
個人的にすごくいいなぁと思ったので使用させていただきました。
この場を借りてお礼を申し述べます。
ありがとうございました。

「キャハハ・・・ねえ、あたしのモビルスーツはどれぇ?」
ハンガーに入ってくる一人の士官。
少尉の階級章を付けた黒いつややかな髪の若い女性士官だ。
この基地に来て始めて見る姿のような気がする。
「ああ、少尉殿の機はそちらに・・・」
整備兵が指差すそちらには真新しいMS-07Bが置かれている。
彼女はそちらにすたすたと歩いていくとしげしげと眺めていた。
「へえ・・・これがグフかぁ・・・フフフッ、ムチなんか付いちゃってあたしに女王様にでもなれって言うのぉ?」
「彼女は?」
私は先ほどの整備兵に聞いてみる。
どうやらモビルスーツパイロットのようだが、あの呆けたような笑みがちょっと気になった。
「彼女はアドラー少佐の配下のパイロットですよ。名前は確か・・・アヤメ・ミナヅキ少尉だったかな・・・」
「ミナヅキ少尉・・・」
私はマントのように後ろに翻るジオン独特の軍服の襟を見つめていたが、彼女はそれに気が付いたのか私のほうへやってきた。
「あはぁ、あなたがローネフェルトとか言う泥棒猫さんですねぇ? どうやってご主人様に取り入ったのか知りませんけどぉ・・・あまり舐めたことすると殺しますからね」
私はそのミナヅキ少尉のあまりの言葉と、その目に表れていた狂気に息を呑んだ。
「少尉、それはどういう意味ですか? 私はアドラー少佐に取り入った覚えなどありません」
「ふん、口ではなんとでも言えますわぁ。でも覚えておいてくださいねぇ。ご主人様のそばにあなたの居場所など無いんですからね」
彼女はそう言うと憎々しげに私をにらみつけ、くるりと背を向けてハンガーを出て行った。
「な、何なの? あれ?」
私はあっけにとられてただ見送るだけしかできなかった。

噂はすぐに広まっていた。
シャア大佐が率いるマッドアングラー隊が、ジャブローに到着した木馬のおかげでジャブローの侵入口を発見したらしいというのだ。
キャリフォルニアは見る間に慌ただしくなり、モビルスーツ隊にも次々と出撃準備が指示されているようだった。
そして・・・

「単独任務ですか?」
「ああ、中尉は不服かな?」
アドラー少佐の言葉にいくつかの忍び笑いが漏れてくる。
どうにも居心地が悪いところだわね。
ブリーフィングルームにはアドラー少佐と私のほかに四人のパイロットが居る。
ガムを噛みながら下卑た笑いを浮かべているブラウスキー中尉。
ジオンでは珍しい黒人のモビルスーツパイロットルムンバ少尉。
軍服の前を開けたまま足を投げ出しているイ中尉。
そして、私に対する敵意を隠そうともしないミナヅキ少尉。
ヨーロッパ系移民が大多数であるジオン公国の中では少数民族の人たちを好んで集めたような編成だわね。
「いえ、不服などございません。私は軍人です。命令とあればどんな任務でも不服などあるはずがありません」
「型通りの答えだな山猫」
「型通りでは不服でしょうか?」
私の言葉にニヤニヤといつものようないやらしい視線を向けてくるアドラー少佐。
「いや、不服は無い。だが、俺はまだお前のその野生の目が気に入らんな」
「野性の目?」
「ああ、まだ飼いならされていない野性の目だ。だが、今に飼いならしてやるよ。獲物は歯ごたえがあるほうが楽しいからな。あのアヤメのようにな」
アヤメのように?
あのミナヅキ少尉はこの男に飼いならされたというのかしら?
なるほど・・・それで“ご主人様”か・・・
笑ってしまうわね・・・
「いいか、俺たちはジャブローに降下するバカどもができるだけ仕事をしやすいように敵の戦力をひきつけるのが仕事だ。敵はウヨウヨ来るぞ。みんな血祭りに上げてやれ」
「おお!」
なるほどね・・・
私たちは囮か・・・
私は他のパイロットたちのように素直に敵の多さを喜ぶことはできない。
敵は少ない方がいいからだ。
「今回の仕事が終われば宇宙へ帰れるぞ。たっぷりと特別ボーナスをもらってな」
「それそれ、それが楽しみ」
「ああ、俺はズムシティに一戸建てを買うぞ」
「そりゃ無理ってもんよ」
イ中尉やブラウスキー中尉が笑い声を上げる。
特別ボーナス?
いったいこの部隊は・・・?

「オーライ、オーライ」
薄いパープルに塗装された巨大な航空機に私のMS-07Hが搭載されていく。
ジオンの誇る空中要塞、ガウ級の攻撃空母だ。
飛び立たせるために莫大な運用経費を垂れ流し、制空権下をよたよたと飛ぶだけの代物。
しかしその威力は絶大なものがあり、搭載しているモビルスーツとドップによりこれ一機で一地域を制圧できる。
今、その前部格納庫には私のMS-07Hとミナヅキ少尉のMS-07B、そしてアドラー少佐のMS-07C3の三機が収められていた。
「中尉殿、出発です。早く乗り込みを」
「了解です。今行きます」
私はその声にせきたてられるように荷物を持ってガウに乗り込んだ。

ふう・・・
私はため息をつきながらドアの前に立った。
出撃したばかりだというのに呼び出されるとは・・・
いったい何の用だというのだろうか・・・
「アマリア・ローネフェルト中尉です」
私はノックをしてそう告げる。
『おう、入れ』
アドラー少佐の声が中から聞こえてくる。
「入ります」
私は扉を開けて中に入る。
これは?
くちゅくちゅという濡れた音が狭い部屋の中に満ちている。
デスクの前の椅子にはアドラー少佐が座っている。
そして・・・
彼の前には黒髪の連邦軍の女性士官が跪いて一心に彼のモノをしゃぶっているのだ。
「ん? どうした? フェラチオは初めて見たか?」
「いえ、そ、そうではありませんが・・・彼女は?」
「ん、こいつか?」
そう言ってアドラー少佐は彼女の髪の毛を掴んで顔を上げさせる。
「あ、ああ・・・ご、ご主人さまぁ」
「ミナヅキ少尉?」
口元が涎にまみれた顔を上げたのはあのアヤメ・ミナヅキ少尉だった。
「これは、いったい・・・連邦の軍服では・・・」
私は驚いていた。
こんなガウの中でのフェラチオといい連邦の軍服といいなかなか驚かされる。
「こいつは俺のペットでな。撃ち落したセイバーフィッシュに乗っていたのさ。最初はギャンギャン喚いていたんだが、今じゃ俺のミルクが一番の大好物になったんだ。そうだろ?」
「ああ・・・はい・・・あたしはぁ、ご主人様のミルクが一番好きぃ」
うっとりとしたような表情でミナヅキ少尉は少佐を見上げている。
髪の毛を掴まれていることなど微塵も感じさせてはいない。
「ふふん、なかなかいいと思わんか? こうしていると連邦を踏み付けているような気分になる」
「捕虜を・・・捕虜を虐待したのですか?」
「虐待? おい、アヤメ。これは虐待か?」
にやりと笑みを浮かべて彼女に問いかけるアドラー少佐。
「はあん・・・違いますぅ・・・これはぁ、ご主人様がペットにミルクを下さっているんですぅ」
「ミナヅキ少尉」
「あんたには上げないよ!」
突然きっとして私の方を向く少尉。
すでにその心は壊され、少佐の手のひらでもてあそばれている。
「こらぁ! 何勝手なこと言ってんだ! こいつもお前と同じくペットになるんだ。仲良くしないか!」
「あぐぅ・・・す、すみません、ご主人さまぁ」
髪の毛を引っ張られ苦痛の表情を浮かべるミナヅキ少尉。
私をペットに・・・か・・・
私を飼いならすつもりか、この男は。
冗談だと思って聞き流してきたけど、これは気を引き締めた方が良さそうね。
「呼び出されたのはこの状況を見せ付けるためですか? 少佐殿」
私はできるだけ軽蔑するように少佐をにらみつける。
こんな男の下で戦うなんてごめんこうむるわ。
「いや、これからの戦いについてだがな、お前には少し戦いの怖さってものがわかっていないように思えてな」
掴んでいた髪の毛を緩め、再び少尉にフェラチオをさせて行く少佐。
「そうでしょうか。自分はそれなりには戦いを知っているつもりですが」
「いいや、知らんな。山猫などと呼ばれて有頂天になっているのがその証拠だよ。で、だ。お前には俺の先鋒を務めてもらう」
「先鋒を・・・ですか?」
なるほど・・・前からも後ろからも弾が来るというわけか・・・
「なに、心配するな。俺がぴったり後ろについてやるよ」
下卑た笑みを少佐は浮かべる。
「了解しました。少佐殿が後ろを守っていただけるというのであれば、それほど心強いものはありません。安心して敵に当たります」
「ああ、頼むぞ、中尉。行っていい」
「失礼します」
私は敬礼して少佐の部屋を後にした。 [うーん・・・ちょっと趣味が入り込みすぎ?]の続きを読む
  1. 2005/12/12(月) 20:02:53|
  2. ガンダムSS
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来年は山内一豊

今日でNHKの大河ドラマ「義経」が終了したようですね。
私個人は今年の大河「義経」はあまり興味をもてない題材だったので、ほとんど見ておりませんでしたが、視聴率的には平均で19%ぐらいとかなり健闘していたようです。

来年は山内一豊とその妻のお話が描かれることになるようですね。
戦国時代のファンとしては嬉しいことなんですが、うーん・・・もっとメジャーな方を主人公にして欲しかったような気も・・・
島津家あたりはそれなりに楽しめそうな気もするんですがねぇ。

ともあれ、来年は山内一豊で再来年が山本勘助だったはずですね。
戦国時代が続きそうで楽しみです。

大河ドラマも楽しみなんですが、NHKで企画している坂ノ上の雲の映像化も期待しているんですけどね。
まだいつになるのか未定だったような気がするなぁ。
2007年以降ということらしいんですけどね。

日露戦争下の日本を映像で見ることができるというのはなかなか無いことでしょうから、NHKには頑張って欲しいですね。

日本海海戦とか旅順攻略戦とかはやっぱりCGを駆使した映像になるのかな・・・
きちんとしたカーキ色の軍服で撮影されるといいんですけどね。

さて、今日はこのぐらいで。
それでは。

[来年は山内一豊]の続きを読む
  1. 2005/12/11(日) 22:02:02|
  2. 映画&TVなど
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機動力は必要だったのだろうか・・・

もう月も替わってかなり経つのでいまさらな気がしてしまいますが、「グランドパワー」の一月号は特集がドイツの三号突撃砲でした。

ご存知な方はご存知でしょうが、この車両はドイツ軍が第一次世界大戦のときに一般的に行なわれた塹壕への歩兵突撃を支援するための移動歩兵砲として開発が開始されたものです。

敵兵の篭もっている塹壕に対し、後方の重砲がまず攻勢支援射撃を展開。
その後敵兵が混乱している状態に乗じて歩兵が突撃を敢行するわけですが、どうしても敵の塹壕の手前百メートルぐらいからは味方砲兵の支援砲撃は同士討ちを避けるためにも停止されてしまいます。

そのためその敵の塹壕の手前百メートルから、敵の塹壕で盛んに射撃してくる機関銃を撲滅するために、歩兵と一緒に塹壕へ向かって進撃する歩兵砲として、装甲された車体に威力のある榴弾を撃てる短砲身砲を載せた亀のような車両が三号突撃砲なわけですが、この車両が戦場に投入された時にはその任務を非常によくこなし、歩兵たちから絶大なる信頼を受けた車両でした。

三号突撃砲はその名の通り三号戦車の車体を流用して開発された車両であり、その足回りは機動戦車の名にふさわしい三号戦車譲りのトーションバーサスペンションを使用した結構当時としては贅沢な車両でした。

ドイツ軍の戦車メーカーでもこのトーションバーサスペンションの技術は持っているところが少なく、その技術を持つ会社が三号戦車を、持たない会社が外装式サスペンションの四号戦車を製作するように振り分けられたようですね。

このトーションバーサスペンションは現用戦車でも使用されるぐらい地形追従性がよい代物で、のちのパンターやティーガーも使用しています。

もちろん機動性のある突破戦車として計画された三号戦車には欠かせない代物なのですが、さて、はたして歩兵の支援任務が主で、歩兵と一緒の速度で戦場を行動することが基本の三号突撃砲には必要だったのでしょうか・・・

もちろん機動性はあるに越したことはありません。
しかし、主力戦車(三号突撃砲計画時)の三号戦車の車台を使用し、主力戦車の製造を阻害してまでもこの車両がトーションバーサスペンションの車台が必要だったのかは疑問だと思いますね。
あのグデーリアン将軍もこんな車両よりも戦車を作れと言っていたぐらいですから。

もちろん戦争の推移により、三号戦車が早々に主力の座を引き摺り下ろされてしまい、その車台だけが三号突撃砲用として終戦まで造られ続けることになったわけですが、それはあくまで結果論。

そしてこれも結果論ではありますが、待ち伏せで敵戦車を狩る自走対戦車砲と化してしまった後期の三号突撃砲はそのトーションバーサスペンションの能力を生かす機動戦闘などは皆無となってしまったわけです。

車台の作りやすさから言えばトーションバーサスペンションを持たない四号戦車の車台を流用するか、のちのヘッツァーのように38(t)の車台を流用したほうがよかったのかもしれませんね。

事実、連合軍の空襲で三号突撃砲の生産がストップした時に、その穴埋めとして四号戦車の車台に三号突撃砲の上部戦闘室を搭載した四号突撃砲が作られましたが、機動性は何も問題にはならず、かえって大きな車体で居住性や操作性が向上したと喜ばれたそうです。

まあ、いずれも後知恵的な結果論であり、地形追従性の高い車台でしかも手ごろな大きさというところに目を付けられたんでしょうね。

いろいろといいましたが、個人的には好きな車両です。
ドイツ歩兵にとってはどこにいるかわからないトラやヒョウよりも常に身近に居て頼りになる存在だったんでしょうね。

[機動力は必要だったのだろうか・・・]の続きを読む
  1. 2005/12/10(土) 22:46:32|
  2. 趣味
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10万ヒット達成ですー。感謝感謝!

いつもいつもこの拙いブログに足を運んでいただいてありがとうございます。m(__)m
本日ついに十万ヒットを突破いたしました。

ページビュー合計 : 100214 今日のページビュー : 659
今週のページビュー : 5400 1 時間以内のページビュー : 70

先ほどの時点でのカウンター数が上の通りです。

7月16日にブログを開設以来、わずか五ヶ月に満たずに達成できるとは驚きです。
これもいつも訪れてくださる皆様のおかげです。
本当にありがとうございました。

皆様のご厚情に報いるにたいしたことはできませんが、近いうちにまた楽しいSSを創作してアップしていきたいと思いますので、そちらでお礼に代えさせていただこうと思います。

とりあえず、今日はご報告まで。
皆様本当にありがとうございました。

[10万ヒット達成ですー。感謝感謝!]の続きを読む
  1. 2005/12/09(金) 21:51:29|
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捕虜の扱いはジュネーブ条約に基づいて・・・

私事で恐縮ですが、このブログを訪れてくださった方々がのべで十万人にあと少しで達することになりました。
先ほどの時点でのカウンターの数字が99319でしたので、明日ぐらいには達成ということになりそうです。
皆様のご訪問に深く感謝感謝です。
記念のSSなどとかは特に考えておりませんが、達成の際にはまた改めて御礼を述べさせていただきますね。

さて、今日のニュースに国際赤十字のシンボルマークに、また一つ新たなシンボルマークが加わったということが伝えられておりました。

永世中立国のスイスで発祥した戦時における負傷者を敵味方無く救護するという理念の下に作られた国際赤十字は、そのシンボルマークとしてスイスの国旗の赤と白を入れ替えた旗を使用いたしました。

ここには当然キリスト教の十字架のイメージが内包されているわけですが、そのために理念と行動に共感はできてもシンボルマークには共感できないという国々がありました。

中東などのイスラム教諸国がそうで、彼らは国際赤十字には所属したいが、シンボルマークは我慢がならないという状況のために、彼ら共通のシンボルマークとして赤い三日月をシンボルマークとした旗を考案いたしました。

それが国際赤十字にも認められ、今では赤新月旗として赤十字と同様の意味を持つものとして扱われております。

しかし、赤十字のキリスト教的イメージにも、赤新月のイスラム教的イメージも使用したく無いという国も若干ながら存在しました。

その代表格がユダヤ教を信奉するイスラエルです。
彼らはそのために「ダビデの赤い盾社」を設立し、赤いひし形を旗印にしてきました。

その赤いひし形(赤菱)がこのたびジュネーブで行なわれた総会で認められ、国際赤十字の活動に加わることができるようになったそうなのです。

これにより国際赤十字は三つのシンボルマークを国により使い分けながら全世界的な活動を行ないことになるのです。

実は日本も明治時代には赤十字がキリスト教を連想させるということで、一時期だけですが赤い横棒一本の赤一文字旗を使用していたことがあるそうで、理念と行動には共感できてもシンボルマークが問題という宗教的側面は創立当時から続いているようですね。

なんにしても、世界で救護が必要な事態が起きた時に真っ先に手を差し伸べる赤十字活動は、これからも中立の立場で頑張っていって欲しいものですね
  1. 2005/12/08(木) 22:25:29|
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来月に期待・・・しても大丈夫かなぁ

闘姫陵辱の10巻目を購入してきました。

いつもながら単なる陵辱物の作品が多く、MCや悪堕ち系の作品は見当たらなかったのですが、今回は連続物が幾つかあり、その中にいい感じで次号に続くものがありましたので、来月に期待したいと思いますね。

魔法特捜グリーディア
魔法生物の取引現場に単身乗り込んだ魔法婦警が、魔力を身にまとって悪漢と戦うわけですが、魔法生物の触手によって捕らえられ陵辱を受けます。
魔力を奪われイかされながらも気丈さを失わない魔法婦警さんですが、更なる陵辱が・・・以下次号。

ソウルレイザーユナ第二話
町を襲う異形の怪人に立ち向かうソウルレイザーユナ。
まだ半人前でちょっとドジなユナだが何とか怪人と戦い倒します。
しかし新たな怪人が現れ、一般人の女性を襲います。
そのときのセリフが「オ前モ改造シテ我々ノ仲間ニシテヤロウ」というものなんですよ。
そして、その前段階として体液を注入するために触手を挿入して陵辱していくのですが、そのときユナが助けに現れます。
しかし、ユナは力を発揮できないまま怪人に陵辱されてしまい、気を失ってしまいます。
「チョウドヨイ。連レ帰ッテ我ラノ仲間ニ改造シテヤロウ。イイ怪人ニナリソウダ」
このセリフを言ったところで以下次号。

うーん・・・
続きが気になりますねぇ。
特に後者のソウルレイザーユナは連れ帰られて怪人にされちゃったりすると、個人的にはもろツボな作品になるのですが、どうなるのかなぁ。
まあ、二次元エンドで有名な二次元ドリームコミックスですから、過度の期待はしないほうがいいんでしょうけどね。

とりあえず、来月の11号は購入する予定です。(笑)

[来月に期待・・・しても大丈夫かなぁ]の続きを読む
  1. 2005/12/07(水) 22:02:03|
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今日はDVDの鑑賞日

今日は私が休みだったこともあって、うちの妹(人妻)が遊びに来ました。
それで、以前から見たがっていたスターウォーズのEP3と名探偵コナン「水平線上の陰謀」をレンタルショップで借りてきて見ていました。
それにしてもなんちゅう組み合わせなのか。(笑)

スターウォーズのEP3は、私がこのブログ開設時に記事として載せているんですが、早いものであれからほぼ五ヶ月が経とうとしているんですね。
月日の経つのは早いものです。

それにしても、ジョージ・ルーカスが全編を通しての語り部という位置においている二体のドロイド、R2-D2とC-3POなんですが、いつ見ても素敵なコンビですよね。

うちの妹いわく、C-3POは物語の(スターウォーズのという意味ではなく)ヒロイン的位置づけであり、ピンチに再三陥って悲鳴を上げているものの、最後にはヒーローが助けてくれる役回りなんだそうです。

となると、当然そのヒーローはR2-D2であり、C-3POを助けて活躍することになるのでしょうが、確かに言われてみると、R2-D2は常に危険の中で寡黙に任務を淡々とこなしていっているんですよね。

追っ手に追われる危険なメッセンジャーを務め、デススター内部ではルークたちのプレスを防ぎ、X-ウィングの後部ではむき出しのままコ・パイロットを務めています。

新三部作の方でも仲間が次々と破壊されていく中でシールドの修理をしたり、今回のEP3でもジェダイ二人は彼無しではとても任務を遂行できないような状態だったりしますからね。
まさしくヒーローの名にふさわしい活躍を黙々とこなしていく様はかっこよいです。

もう一つの作品である名探偵コナン劇場版「水平線上の陰謀」は、初見であることもあってじっくりと拝見いたしました。

ストーリーについては・・・どうなんでしょう。(笑)
やっぱりどうしても復讐劇が多くなっちゃうのかなぁ。
まあ、これだけ続いていますと、ネタも無くなっちゃいそうですからね。

で、ちょっと気になったのが、客船を舞台にしていたので船好き舞方の血が疼いたわけなんですが、今の客船てデッキ表示ではなくフロア表示なんですね。

古い人間なものですから、タイタニックから進歩していないもので、船内を一階だとか五階だとかって言うとは思っていなかったんですよ。
てっきりAデッキだとかCデッキだとかって呼ぶものだとばかり思っていました。

それで商船三井さんのHPを拝見したら、ちゃんと階層表示になっていたので、納得いたしました。

個人的にはデッキ表示のほうが船らしいなぁと思うのですが、今は呼びなれている階層表示の方がわかりやすいということなんでしょうね。

それにしても・・・洋上に居る船なのに地下と呼ぶのはいかがなものなのだろう・・・(笑)

[今日はDVDの鑑賞日]の続きを読む
  1. 2005/12/06(火) 19:14:56|
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思いっきりいやな奴

とりあえず昨日の続きです。
今日は自分でもいやな奴だなあと思いながら書いていました。
でもこういう奴ほど、書いていると楽しんですけどね。

「アマリア・ローネフェルト。入ります」
『おう、入れ』
部屋の中から野太い声がする。
私は呼び出しを受けてウォルフガング・アドラー少佐の下に出頭しに来たのだった。
「失礼いたします」
私は扉を開いて部屋の中に入り、敬礼した。
「アマリア・ローネフェルト中尉であります。出頭命令により参りまし・・・た・・・」
私は言葉を失った。
部屋の中にはアルコール臭が漂い、床のあちこちに酒瓶が転がっているのだ。
テーブルの上には食い散らかされたスナック菓子がこぼれ、まだ中身の入った酒が二・三本立っていた。
ソファには酔いつぶれた士官が二人ほど腰掛けていたが、二人ともどんよりした目で私をチラッと見ただけで、いびきをかいて寝てしまっていた。
奥の革張りのシートに座っていた男がラッパ飲みしていた酒瓶をゆっくりとテーブルに置くと、私の方を無遠慮にじろじろと見つめてくる。
「ほう、アラスカの山猫はなかなかの美人じゃないか」
「失礼ですがアドラー少佐殿でありますか?」
私は目を疑った。
軍服の前をだらしなく開け放して酒を飲んでいるこの男が私の直属上司になる男だというのだろうか。
「ああ、そうだ。俺がウォルフガング・アドラー少佐殿だよ。中尉殿」
この男は私が嫌いならしい。
構わないわね。
私もどうやら嫌いになりそうだから。
「初めまして少佐殿。このたび少佐殿の・・・」
「ああ、お前は俺の部下になったんだ。これからは俺の命令に従ってもらうぞ。何でも言う通りにするんだ。俺が靴を舐めろといったら靴を舐め、俺がチンポをしゃぶれといったらしゃぶるんだ。いいな!」
酒瓶を手に取り、中の液体をグイッと流し込むアドラー少佐。
「それは今この場でそうしろとのご命令でしょうか? 少佐殿」
私は精いっぱいの憎しみを込めて少佐をにらみつける。
「ん? ふふふ・・・今は必要ない。そのうちにお前のほうからさせてくれとせがませてやるさ・・・」
下卑た笑いを浮かべているアドラー少佐。
だが油断がならない男のようだ。
「中尉、アラスカじゃ山猫などと呼ばれていい気になっていたようだが、ずいぶんと部下を失っているじゃないか。結構部下を危険に晒して自分は後ろで手柄を独り占め・・・そうじゃないのか?」
少佐は自分が口をつけていた瓶からグラスに琥珀色の液体を注ぎ、私に差し出してくる。
「おっしゃる意味がわかりかねますが。少佐殿」
私は吐き気を感じながらもグラスを受け取り、さりげなくテーブルに置く。
願わくば飲めとは言われませんように。
「ん、ふふふふ・・・心配するな中尉。俺はそういう奴は嫌いじゃないんだ。むしろ俺にふさわしい女じゃないかと思っているんだがね。まあ、飲めよ」
私は目をつぶった。
やはり飲まずには済まされないか・・・
私はグラスを取り上げると、一気にのどの奥に流し込む。
アルコールの喉を焼く感じが奥まで伝わって行く。
「いい飲みっぷりじゃないか。いい女だ」
少佐は立ち上がると私の前にやってきて私のあごを持ち上げる。
「俺の女になれ。そうすれば楽をさせてやるぞ」
「それはご命令でしょうか? 少佐殿」
私は目をそらさずに少佐をにらんだ。
「いや、上位者からの忠告だよ。中尉」
「ありがとうございます。ご忠告はありがたく承りますが、あいにく今は誰の物になるつもりもございませんので」
「ふふん、気の強い。さすがに山猫だな」
少佐は私のあごから手を離すと再び革張りの椅子に座りなおした。
端正な顔立ちだが、どこか猜疑心の塊のような感じを漂わせている。
先ほど私に言った部下の手柄を独り占めというのは少佐のことではないのだろうか・・・
「中尉、一つ言っておこう。俺は先日までグラナダに居たんだ。わかるか、この意味が? 俺はキシリア閣下にも目をかけていただいているんだよ」
「それは重畳でした。では、なぜ今ここにいらっしゃるのでしょうか?」
むっとした表情を浮かべるアドラー少佐。
いい気味だわ。
「もういい、行け。行って自分の愛機を磨いて置け」
私はその言葉を待っていたので、敬礼をして少佐の部屋を後にした。

「ふう・・・」
ため息をついて私は苦笑する。
最近ため息をつくことが多すぎるようだわ。
年寄りじみてしまっているんじゃないだろうか。
そんなことを考えながら、私は結局少佐の言われたとおりにハンガーにやってきていた。

グレーの塗装のMS-07Hグフ飛行試験タイプ。
いつものように幾人かの整備兵たちがこまごまとした整備をしている。
彼らがいなければこんなモビルスーツなどというものはすぐに動かぬ鉄くずに成り果てるのだろう。
「あら?」
私はグフの脇に巨大な円柱が置かれていることに気が付いた。
よく見るとその円柱にはトリガーと弾倉が付いていることからバズーカだということがわかったものの、ザクが持つタイプよりも口径が大きい感じがする。
私は整備兵たちのところへ行き、声をかけた。
「今晩は。ご苦労様」
「これは中尉殿」
「ご苦労様です、中尉殿」
整備兵たちが作業の手を止めて一斉に敬礼をした。
「ごめんなさい、そのまま続けて。一つ聞きたいことがあっただけなのよ」
「はい、なんでしょうか」
結局私の正面に運悪く立ってしまった小柄な女性整備兵が私の問い掛けに応える役になってしまったようで、そのほかの兵たちは作業に戻っていった。
「あれって、バズーカでしょ? ザクのじゃないわよね」
「ああ、あれはジャイアントバズですよ。MS-09用なんですがこいつにも使えそうなんで」
「ジャイアントバズ? MS-09用の?」
私は驚いた。
ジャイアントバズは噂では連邦のマゼラン級宇宙戦艦も容易に沈めることができるという。
そんなものを持たされているとはなかなかのものだわね。
「でも、この機体には格闘戦用の武器が無いんですよね」
「えっ?」
そういえばもらった資料にも固定武装については記載があったが、白兵戦用の武器は載っていなかったわ・・・
「まったく無いの? 白兵戦用の武器が? グフなのに?」
「ええ、ヒート剣もヒートホークもまったく無しです。まあ、試験機だからなんでしょうけどね」
彼女の言葉に私は少し考える。
確かに今までなら格闘戦はほとんど必要なかった。
たまに連邦が鹵獲したザクを使ってくることがあったが、そんなのはそれほど脅威ではなかったわ。
でも、今度の行き先はもしかしたらジャブロー。
そんなところへ行くのに白兵戦用の武器が無いのは心もとない。
私はだめもとで頼んでみることにした。
「ねえ、あの07Hの右腕をエネルギーコネクターのある06Jのものと交換できないかしら?」
「ええ? そりゃ同じジオニック社製ですからやってやれないことは無いと思いますが・・・」
目の前の女性整備兵は明らかに驚いている。
無理も無いわね。
前代未聞のことを押し付けているのだから。
「何とかお願い。そしてどこかにヒートホークを引っ掛けといて欲しいの」
「ふう・・・わかりました。やってみますね」
私が拝むようにお願いすると、彼女はやれやれといった感じで引き受けてくれた。

「オーライ、オーライ・・・」
ハンガーの外からモビルスーツが搬入されてくる。
やっぱり見たことの無い機種で紫色が主体のカラーリングがされている。
「あれは?」
「ああ、あれはアドラー少佐の機体ですよ。グフ重装型って奴です」
「アドラー少佐の?」
がっしりとした重量感のある機体は確かに分厚そうな装甲を纏っているようだわ。
「ええ、あれってドムよりも装甲が厚いんですよ」
「ドムよりも?」
見たところホバー能力も無いようだし、それじゃさぞかし機動性は悪いでしょうね。
「ええ、アドラー少佐はあんな分厚い装甲のモビルスーツに乗りながら、自分は後方で指揮を取るって評判なんですよね」
「後方で?」
あきれた・・・
あんなに重装甲ならあのタンクもどきの弾だって弾くでしょうにね・・・
「ええ、指揮官は死ぬわけにはいかないとかで。そういえば知っていますか? 少佐って壊し屋って言われているんですよ」
「壊し屋?」
「ええ、少佐の部下になると、死ぬか精神が壊れるかだって言う話ですよ」
「精神が?」
「良くわからないんですけど・・・少佐は気に入った部下は壊しちゃうって話なんですよ」
どういうことなんだろう・・・
まあ、近いうちに私自身が身をもって体験することになりそうだわね・・・
私はあのアドラー少佐の下卑た笑いを思い出して身震いした。 [思いっきりいやな奴]の続きを読む
  1. 2005/12/05(月) 20:12:07|
  2. ガンダムSS
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いろいろ登場

今日もまたガンダムネタでお送りします。
ちょっと短めですがよろしくお願いします。

「ふう・・・」
私は新たに配備された機体を見上げる。
どちらかというとグレー系の塗装をされた機体は、今まで見慣れたグリーンやブルーの機体とは違い、何となく精悍さを感じさせてはくれる。
でも・・・
バランスが極端に悪そうな太い脚が私は気になった。
こんな脚で本当に歩けるのだろうか・・・
相変わらず左手には固定武装の機関砲を持っているものの、右手に仕込んであったヒートロッドは無くなっている。
「ねえ・・・」
私は傍らの技術士官に声をかけた。
「なんですか? ローネフェルト中尉」
長い髪を一まとめにして後ろで束ね、メガネをかけている女性士官だ。
確か・・・シムス・バハロフ中尉といったはず。
「これって・・・グフとは違いますよね?」
私がそう尋ねると、彼女はメガネを直して私をじろりと見つめ返した。
「ええ・・・これはMS-07H。グフのホバー試験タイプです」
「ホバー試験?」
何のこと?
「新型のMS-09ドムはご存知でしょう?」
シムス中尉は少しあきれたような顔をした。
ふう・・・
アラスカから来たばかりだというのに・・・
「ええ、知っています。使い物にならないMS-07の後継機ですよね」
「正確にはMS-06Jの後継と言ってよいでしょう。ツィマッド社の自信作ということですが、地上での高機動性を得るためにホバーによる機動を行なうのです。で、対抗するためにジオニック社もホバー機動の実験を行なった機体がこれですわ」
「なるほど・・・それでその実験の結果これが量産されるんですか?」
グフにホバー機動をさせれば多少は使い勝手がよくなるということなのかもしれないわね。
「まさか。ジオニック社はホバーでの機動をあきらめたようですわよ。次期主力機はMS-06Jと同じく足で歩くつもりでしょうね」
「え? それじゃ、これは?」
「実験はしたけどさほど機動性の向上は見込めなかった・・・でも作った以上は使って欲しい。前線は一機でも多くのモビルスーツが欲しい。で、ここにこれがあるということですわ」
なんていうこと・・・
「使い物にならない機体を前線に押し付けた?」
「使い物になるかどうかは中尉の腕次第でしょうね・・・期待していますよ」
シムス中尉はそう言ってにやりと笑った。
ふう・・・
私は再びため息をつくことになった。

キャリホルニアはあわただしかった。
ヨーロッパ方面で連邦の一大反攻作戦が開始されて以来、全ての基地機能は二十四時間体制でフル稼働している。
私もコーニッグ中隊長の指揮下を離れ、このキャリホルニアに呼び出されたのだ。
アラスカの前線基地はかなりの痛手を受け放棄をせざるを得なくなり、パトリシアは怪我の療養をかねてグラナダへ送られた。
連邦の白い悪魔は各地で出没し、あのランバ・ラル隊も壊滅したという。
我が軍の歯車は狂ってきているのかもしれない・・・

「おい、君。司令部まで案内してくれないか?」
ハンガーを離れ兵舎の方へ向かっていた私はいきなりそう声をかけられた。
振り返るとバギーの運転席から私を見上げている男と目が合った。
「どうかな、中尉。助手席で案内してくれるとありがたいんだがね」
「それはくどき文句ですか? 少佐殿」
私は思わず笑みを浮かべてしまう。
銀髪に多少の茶が入ったような髪の色。
優男にも見えるが内に多少の危険さを秘めているような男だわ。
「ふふふ・・・どうとってもらっても結構だ。俺はニムバス・シュターゼン。君は?」
「アマリア・ローネフェルト中尉です。シュターゼン少佐殿」
私は敬礼する。
「ほう・・・うわさのアラスカの山猫か・・・さあ、乗ってくれ」
「わかりました」
私はバギーの助手席に乗り込み腰掛ける。
すぐにバギーは広い基地内を走り始めた。
「少佐殿もこちらに呼ばれたのですか?」
「ああ・・・厄介ごとを押し付けられてな」
苦い表情をするシュターゼン少佐。
「ふん・・・まあ、俺にはどうでもいいことだがな」
「少佐殿・・・あ、そこ右です」
私はそれ以上聞くことはできずに司令部までの案内に徹する。
やがてバギーは司令部に到着した。
「すまんな、中尉。今度飯でもおごらせてくれ」
入り口脇の駐車スペースにバギーを止めた少佐はそう言って兵士を手招きする。
「ハッ、何でありましょうか?」
「中尉を望むところまで送ってやってくれ。それからバギーはここに置いておいてくれればいい」
「ハッ、了解であります。中尉殿、どちらまで?」
若い兵士はいやな顔せずに運転席に座り、そう言って私の方を向く。
「兵舎まで送ってちょうだい。それでは失礼します。少佐殿」
私は敬礼してシュターゼン少佐と別れた。

翌日。
シュターゼン少佐以下の小部隊はガウ級攻撃空母に搭載されて出発する。
見たことの無い新型モビルスーツが搭載されていたようだったが、イフリート改というらしかった。
そして・・・
私にも呼び出しが掛かったのだった。

「ジャブローを攻撃?」
私は驚いた。
ジャブローは鉄壁の防衛ラインを敷いているという。
その防御ラインを崩す作戦でも考え付いたのだろうか。
ブリーフィングルームの士官たちは皆一様に懐疑的な表情を浮かべていた。

「諸君の懸念はもっともだ。これまで幾度となく我が軍はジャブローに対する攻撃計画を作っては廃棄してきたのだからな」
モビルスーツ隊の指揮官であるハイドリッヒ大佐が私たちを見渡した。
「だが、現在シャア大佐率いる潜水艦隊が連邦の木馬を追跡中である。スパイの報告によれば木馬はジャブローに向かっているとのことだ。程なくシャア大佐から朗報があろう」
シャア大佐といえば赤い彗星と異名をとるモビルスーツ乗りの天才だわ。
でも最近は連邦の白い悪魔に翻弄され続けているとか・・・
ガルマ・ザビ司令を護りきれなかったというけど、連邦のモビルスーツはそれほどのものなのかしら・・・
「われわれはシャア大佐からの報告が有り次第、この基地の全力を上げてジャブローに降下作戦を開始する。諸君もそのつもりで居て欲しい」
降下作戦?
ハイドリッヒ大佐の言葉に私はふと疑問を感じる。
木馬がそうやすやすと入り口を教えてくれるというの?
もしかしたら木馬はおとりで、シャア大佐に付けられているのを承知でジャブローに向かっているのだとしたら、われわれはみすみす敵の罠に飛び込むことになるのではないの?
「以上。解散」
私は不安を抱えながら席を立った。 [いろいろ登場]の続きを読む
  1. 2005/12/04(日) 21:41:47|
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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