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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

少し嗜好の違うものを

今日は少し早めにアップ。
なんか寒さが日ごとに増していってますので、皆様風邪などひかないようにして下さいね。

今日は今までとちょっと変わったSSを投下します。
楽しんでいただければ幸いです。

雷鳴・・・
外はものすごい雨・・・
馬車の車輪が回転する音さえ掻き消される。
時々強い稲光が窓から差し込んでくる。
ガラスを叩く雨音はますます強くなるばかり。
私は恐ろしさに手を握り締めた。

『旦那ぁ、日も暮れかかっているしこれ以上は無理でさぁ』
御者台の上からずぶ濡れになりながら馬車を操る御者の声がする。
「何とか行けるところまで行きたいんだが次の村まではどれくらいかね?」
私の隣で優しく私の肩を抱いてくれている良人の声がする。
暖かく力強い良人の手。
私にとって安らぎをもたらしてくれる手。
『あと二時間は掛かりますぜ。山道はこの天気じゃ危険だ』
「明後日の夕刻には到着しなくてはならないんだ。何とか頼む」
窓越しでの会話にすら大声で怒鳴りあわなくてはならないほどの雨音。
『しかし旦那・・・』
「倍額払う。何とかやってくれ」
『へ、へい・・・』
しぶしぶといった感じの御者の声。
この雨では無理も無いわ・・・
私はただ恐ろしさに目をつぶって震えている。
「あなた・・・」
私の肩を抱く腕に力がこもったのを感じ、私は良人の顔を見上げた。
「大丈夫だよ。仕事が忙しくて出発が遅れてしまったが君の妹さんの式には間に合わせるからね」
「でもこの雨の中では・・・」
私は心配だった。
これからは山道に差し掛かる。
雨は道を崩れやすくしてしまうのではないだろうか・・・
「なあに心配はいらないよ。彼はプロだ。良くも悪くもね。こういった天気で走るのには慣れているしお客の懐から割増料金をもらう術も心得ているのさ」
眼鏡越しの優しい瞳が私に向けられている。
青いその瞳は私を夢の世界に連れて行ってくれそうなほど淡く深い。
私は彼に身を預けて寄りかかる。
恐怖など何も無い。
彼がいてくれれば私にはほかに何も必要なかった。

窓から差し込む稲光。
それはますます激しくなる。
馬車は先ほどから全速に近い速度で走り続けていた。
二頭立ての馬車は一刻も早くこの忌々しい山道を抜けてしまおうとするかのように右へ左へとカーブを切る。
そのたびに良人の手が私を支えてくれていた。
私の愛する良人。
この人がもしもいなくなってしまったら私はきっと死んでしまうだろう。
「想像以上にひどい雨だな・・・道が崩れなければいいが・・・」
良人のそんな言葉を聞いた時、私の体は宙に浮いた。
「きゃあああああ・・・」
「な、なにぃっ!」
瞬く間に世界が反転して行く。
馬車の床と天井がぐるぐると回転する。
波にもまれる木の葉のごとく私の躰はもてあそばれる。
ドンッと言う音とともに私の意識は遠ざかっていった。

『ヘレン・・・へレン・・・しっかりするんだヘレン』
どこからか良人が私を呼んでいる。
私は闇の中から手を伸ばす。
だが良人の姿がどこにも見えてこない。
『あなたぁ・・・あなたぁ!』
私は声を限りに呼びかける。
でも私の声は闇に吸い込まれるだけ・・・
ああ・・・あなたはどこ・・・
私を・・・私を助け出して・・・
お願いです・・・あなた・・・私の愛するあなたぁ・・・

「ヘレン・・・へレン・・・しっかりしなさい」
・・・・・・
私の目の前に良人がいる。
私はまだよく見えない目を瞬きし、それが幻ではないことを確認する。
「あ、あなた・・・」
「気がついたかいへレン。よかった」
良人の眼鏡の奥の瞳が優しく私を見つめている。
夢ではない。
これは夢ではないんだわ。
私は胸の奥からこみ上げるものを感じて良人に向かって手を伸ばす。
「ああ・・・あなたぁ」
「よかった・・・無事でよかったよヘレン」
良人の優しい腕が私の上半身を抱き上げて包み込んでくれる。
そのぬくもりに私は良人の愛を感じて嬉しくなる。
良人は私をそっと放すとベットに横たわるように促し、今までのことを話し始めた。

「事故?」
「ああ、馬車が山道を転げ落ちたんだ。まったくひどい目に遭ったよ」
良人は忌々しげに吐き捨てる。
「御者は死んだよ。まったく、自業自得だ」
「いけないわあなた。亡くなった方をそんなふうに責めちゃ」
「何を言うんだヘレン。奴がきちんと馬車を走らせていればこんな目には遭わなかったんだ。君だって怪我をしなかったからよかったが、もしかしたら死んでいたかもしれないんだぞ」
良人はそう言って私の髪の毛をやさしく梳いてくれる。
その手はとても暖かい。
「運良くここの下男が私たちを見つけてくれたからいいようなもの、そうでなければあの雨の中で震えていたところだ」
そういえばここはどこなのだろう。
柔らかくふかふかのベッドと上質な家具が置いてあり、とても宿や普通の家庭の一室とは思えない。
「あなた、ここはどこなの?」
「ん? ウェルブルック伯爵の別荘でね。ご好意に甘えさせていただいているんだ」
伯爵様の別荘?
それで上質な家具が取り揃えてあるのね。
ろうそくの明かりが部屋中を照らし出している。
普通はこんなにろうそくを使いはしない。
伯爵様はかなり優雅な方なのだろう。
「さあ、少し休むといい。朝まではまだ間がある。すっかり躰も冷えてしまっただろうからね」
良人はそう言うとそっと布団を掛けてくれる。
そのときノックの音がした。

「失礼、奥方の様子はどうかな? いい薬を持ってきたのだが」
入ってきたのは背の高い金髪を心持ち長めにした30代前半ぐらいの若い紳士だった。
黒いスーツを見事に着こなす姿はとても様になっており、さぞかし高貴な方と伺える。
「これは伯爵。わざわざありがとうございます」
良人が席を立って頭を下げる。
この方が伯爵様なんだわ。
私も上半身を起こして挨拶をしようとする。
「ああ、目が覚めていたんですね? 構いません、そのままに」
伯爵様は私に気がつくと右手を上げて私を制した。
「申し訳ありません、伯爵様」
私はまだ躰が思うように動かなくて、そのお言葉に甘えてしまう。
「躰のあちこちを打たれたのですからね。無理も無い。これをどうぞ。楽になります」
銀のトレイの上に置かれたワイングラス。
その中には真っ赤な液体が入っている。
赤ワインに薬を溶かすというのはよく聞く話。
きっとこれもそうなのだろう。
「奥方に差し上げてよろしいかな? ロックウッドさん」
「リーザスで結構です伯爵。もちろんですよ」
良人がにこやかに脇へどける。
伯爵様は一つうなずくと良人の脇を通り私のところへやってくる。
「どうぞ。痛み止めと少々の眠り薬が入っています。ぐっすりと眠れますよ」
グラスを取り上げて私に差し出す伯爵様。
私はそれを受け取ると良人の方を見る。
「ご好意だよ、受け取りなさい」
「ええ、ありがとうございます伯爵様」
良人の言葉に私はうなずいてグラスを受け取り、一気にのどの奥へと流し込む。
薬だから苦いと思ってそうしたのだったが、意外に苦さよりもほのかな甘さが後味として残った。
「さあ、お休みなさい。私はこれで失礼しよう」
「ありがとうございます伯爵。このようにご迷惑をお掛けして恐縮です」
良人がそう言っているのを聞きながら、私は早くも睡魔に捕らわれ眠りの中におちていった・・・

誰かがいる・・・
これは誰?
私は朦朧とした意識のなかでそれを感じる。
部屋の中に誰かがいる・・・
それは本当のこと?
それともこの朦朧とした意識が作り出す幻影?
私の上に掛かっている布団をそっとめくっていく・・・
下着だけの私の上半身・・・
彼はそっと私の肩に手を掛けて抱き起こす・・・
彼?
それとも彼女?
私は首の座らない赤ん坊のように頭を揺らしている・・・
私を抱きかかえている誰かはそんな私にそっと囁く・・・
「・・・・・・」
私はその言葉にこくんとうなずいた・・・
首をかしげるようにして首筋を晒す・・・
彼? 彼女? は私の首筋にそっと舌を這わせる・・・
「・・・・・・」
気持ちいい・・・
首筋にキスされるのは気持ちがいい・・・
良人のキスではない・・・
これは良人が与えてくれないキス・・・
私にとって最高に素敵なキスだった・・・

雷鳴・・・
外はものすごい雨・・・
ガラスに叩きつける音は昨日とちっとも変わりはしない。
メイド姿のまだ少女という感じの女性がカーテンを開けてくれたものの、外は夜明け前のようにうす暗かった。
躰がだるい・・・
上半身を起こす気力さえ湧いてこない。
何か躰が金属でできているよう。
熱っぽくてだるい・・・
少女に何か言いたかったが、それが何かすら出てこない。
私はどうしたのだろう・・・
何もわからない・・・
何も考えたく無い・・・
ただ目をつぶっていたいだけだった。

『ヘレン・・・へレン・・・起きているかい?』
良人の声が聞こえてくる・・・
返事をしなくては・・・
「ええ、あなた・・・」
か細く蚊の鳴くような声。
私の声はこんなに小さいものだったかしら?
それに声を出すことがこんなに力が要ることだったかしら?
「ヘレン、外は雨だがそろそろ出かける準備をしないと間に合わなくなるんだが」
「ええ、今支度を・・・」
私は上半身を起こそうとしたが起こせなかった。
躰が鉛のように重い。
両手で支えようにも力が入らない。
「ヘレン、大丈夫か? しっかりしろ」
良人が駆け寄ってくる。
やっぱりとてもやさしい私の大事な人。
「ヘレン・・・大変だ、熱があるじゃないか。伯爵に言ってこなければ」
良人は私の躰に触れただけで私の躰がおかしいと気がついたらしい。
私をそっと寝かせるとそのまま部屋を出て行った。
私は再び目をつぶった。

「雨に濡れたのと打撲のショックで熱がでたのでしょう。医者を呼びに行かせますが、私は多少薬の知識がありますので解熱剤を用意しましょう」
「ありがとうございます、助かります伯爵」
良人と伯爵様が何か話している。
私は力の入らない躰に捕らわれていて何もすることができない。
しばらくすると伯爵様がまた赤ワインのグラスを持ってきて私に飲ませてくれる。
良人のようにそっと優しく・・・
薬だというのにちっとも苦くない・・・
素敵な甘い液体・・・
私の躰に染みとおっていくよう・・・
私は心地よさに包まれて眠りについた。

「ごめんなさいあなた・・・」
「いいさ、仕方が無いことだ。式には間に合わなくても君の妹さんは許してくれるだろう」
そう、明日は私の妹の結婚式。
でもこれではとても行けそうに無い。
「早く良くなって挨拶だけでもしに行こう。そのためにも食べなくては」
そう言って良人はスープの皿を持ってくる。
むっとするような調味料の臭い。
煮込んでどろどろになってしまった野菜たち。
全てのエキスを吸い出され硬さだけの残っている肉。
よくもこんなものが食べられるものだわ。
「あのメイドさんが作ってくれたんだ。美味しいぞ」
「ごめんなさいあなた・・・私食べたくありません」
それよりも私は先ほどからトレイの片隅に乗っているワイングラスに目が行っていた。
「お薬だけいただきます、あなた」
「そ、そうか?」
スープをひとくち口にしてワイングラスに手を伸ばす良人。
私はグラスを受け取るとゆっくり味わうようにして喉に流し込んでいった。

闇・・・
心地よい闇・・・
今夜はわかる・・・
部屋にいるのは伯爵様だわ・・・
ろうそくも何も無い闇だというのに昼間のように感じられる・・・
黒いスーツに裏地の赤い黒のマント・・・
うっすらと浮かべた笑みはこの世のものとは思えないほどに美しい・・・
「・・・・・・」
私はその言葉にうなずくと上半身を起こす。
そして首筋を伯爵様に向けて・・・を待つ。
「・・・・・・」
嬉しくなる伯爵様のお言葉。
そう・・・この身は伯爵様のもの・・・
リーザスなどのものではないわ・・・
伯爵様が私の肩にそっと触れる。
愛しむような優しい触れ方。
私はこの方に愛されている・・・
私は首筋に感じる疼きを至福の喜びを持って受け止めた。

雨音はしない・・・
カーテンの隙間からは朝の日差しが憎らしいほどに輝いている・・・
あのメイドが来たらきちんと閉めてもらわないといけない・・・
日の光は嫌い・・・
太陽を見るなど一生必要ない・・・
夜だけ・・・
夜の闇だけあればいい・・・
躰のだるさは続いている・・・
でも熱っぽさはもう無い・・・
いえ、どちらかというと冷えている・・・
躰の芯まで冷え切っている・・・
暖かい・・・を飲みたい・・・
キスをして・・・を飲みたい・・・

『ヘレン・・・へレン・・・調子はどうだい?』
ドアの外であの男の声が聞こえる。
粗野で野蛮で知性のかけらもない男。
眼鏡をかけて下卑た笑いで私を不愉快にさせる男。
・・・・・・
わ、私は一体何を?・・・
何でそんなふうに?・・・
「あ、あなた・・・ど、どうぞ」
私は上半身を起こして良人を迎える。
「どうだい、少しはよくなったかい?」
良人の優しい下卑た微笑み。
いつ聞いても心地よい耳障りな声。
「あ・・・ご、ごめんなさい・・・まだ調子がよく無くて・・・」
「そうか・・・伯爵は君がよくなるまで滞在していいと言ってくれたものの、いつまでも厄介になるわけにはなぁ」
「そ、それならあなただけでも先に行ってくださらない? 私はもう少し調子が良くなってから・・・」
そうよ・・・一刻も早くお前は行ってしまうがいいわ・・・
私の前から消えてしまいなさい・・・
・・・・・・
私・・・私どうかしている・・・
私どうしちゃったの?
私はこの人を愛して・・・
愛して・・・
愛して?
私は・・・
「ヘレン、ヘレン?」
良人が私を揺さぶる。
なんて・・・なんて・・・いやらしい男なの・・・
「あ、ああ・・・わ、私気分がすぐれませんの・・・どうか一人にしてくださらない?」
「あ、ああ、わかった。しかしどうしたんだ、その首筋?」
早く・・・早く行って・・・
「わ、わかりません。どうか一人にさせてください」
私は頭を抱える。
この不快感は耐えられない・・・
「わ、わかった」
良人が部屋を出て行ったことに私はホッとしていた・・・

食事は欲しくなかった・・・
メイドが持ってくる赤ワインの薬。
それだけで充分だった・・・
躰はますます冷え切ってくる・・・
早く夜が来て欲しい・・・
夜になれば・・・
夜になればあの方に会える・・・
夜になればあの方の下へいける・・・
夜になれば・・・

闇・・・
心地よい闇・・・
全てを覆いつくし奪い去っていく闇・・・
そして・・・
私を導いてくださる闇の主・・・
「いらっしゃいませ伯爵様」
私はベッドから起き上がる。
白いネグリジェが闇に映える。
対照的に伯爵様は今日も黒のスーツ。
そして裏地が真っ赤な黒いマント。
心持ち長めの金髪に赤く輝く瞳。
そして・・・白い鋭い牙が口元から覗いていた。
「女よ。我が物となるか?」
「はい。私は伯爵様のもの。この身も心も全て伯爵様にお捧げしております」
私は伯爵様に跪く。
「では、今宵そなたに洗礼を施そう」
伯爵様の手が肩に置かれる。
「はい、お願いいたします伯爵様」
私は嬉しさに気が遠くなりそうだった。

伯爵様の牙が首筋に触れる。
少しの痛みと甘い疼きが私の躰を駆け巡る。
すでに芯まで冷え切っていたはずなのに、私の中から全ての熱が伯爵様に流れて行く。
代わりに伯爵様の氷のような冷気が私の中を満たして行く。
私の体の隅々まで冷気は容赦なく浸透して行き、全てを伯爵様のものとして変えて行く。
命の最後の一滴まで伯爵様に流れ込んでいった時、私はあまりの快感に絶頂を迎えていた。
それは決してほかでは得られないものだった・・・

闇・・・
心地よい闇・・・
私は目を覚ますと蓋を開けて起き上がる。
この屋敷に住むものとしてふさわしいベッドも、私が身にまとう黒いドレスも全て伯爵様にいただいたもの。
私は伯爵様のもの。
この屋敷で永遠を生きるもの。
今夜は遠出をしなくてはならない。
リーザスの血の量などたかが知れていたし、それに私の妹のことをお話したら伯爵様は興味を示してくださったわ。
生贄を集めると同時に妹をこの屋敷に招待しましょう。
うふふふふ・・・
私は湧き上がる高揚感に身を浸しながら、窓を開けて夜の闇に飛び立っていった。

[少し嗜好の違うものを]の続きを読む
  1. 2005/11/15(火) 20:21:49|
  2. 異形・魔物化系SS
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プロフィール

舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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