ケイオシアムからアバロンヒルを経てホビージャパンから日本語版が発売されたTRPGに「ルーンクエスト」というものがありました。
今はもう手に入れるのは非常に難しいと思いますが、(私の紹介するものはこんなのばかりですね)このTRPGの中に面白い種族がありましたので、紹介いたしますね。
ご他聞に漏れず、このゲームもファンタジー世界を楽しむためのロールプレイゲームです。
人間の他にもいろいろな種族がいるのですが、エルフやドワーフといった有名どころのほかに、ダック(文字通りのアヒル)やトロウル(モンスターの一種)などもプレイすることができます。
で、そのいろいろな種族の中に、主に敵役で出てくる種族にスコーピオンマンというのがいます。
これは文字通りのサソリ人間でして、サソリの下半身というか巨大なサソリの頭の部分に人間の上半身がくっついているというものです。
強力なハサミと猛毒の尻尾を持つ強力な敵役なんですが、その種族には女王がいるんですね。
その女王というのが幾多ものタマゴを生んで種族を増やして行くのですが、その能力の一つに食べた相手をタマゴとして生み、その上半身を持つスコーピオンマン(場合によってはスコーピオンエルフやスコーピオンダックということもありえる)に生まれ変わらせてしまうことができるのです。
しかもすごいことに、食われる以前の記憶を持ったままスコーピオンマンにしてしまうこともできるんですね。
もっとも、記憶を持ったままだと、卵から孵った時に発狂してしまうことが多いそうですので、いまいち記憶をとどめるのは難しいそうなんですが、場合によっては以前の記憶を持ったままスコーピオンマンになってしまって、その姿を嘆きながら人間を襲うというのもありそうです。
個人的にはスコーピオンマンの女王を退治しに行った女戦士や女魔術師あたりが返り討ちにあって、記憶をとどめたまま女王の忠実なしもべとしてスコーピオンレディになってしまうようなのが好みなのですが、そんなSSも今度書いてみようかなぁ。
もしよろしければ、こんなシチュでストーリーを作ってみてほしいというのがございましたら、コメントなどいただけると嬉しいですね。
それではまた。
[サソリの女王バゴック]の続きを読む
- 2005/11/30(水) 22:33:31|
- TRPG系
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表題の本が学研より出ているのですが、このたび購入してきました。
ミリタリーオタクの舞方ではありますが、日本の武器についてはあまり知りません。
明治以後の帝国陸海軍の武器であればある程度は知っているのですが、江戸期以前、いわゆる鎌倉武士の太刀や、戦国時代の長柄の槍や鉄砲、打刀についてはほとんど知りませんでしたので、この本は私にとっては大変役立ってくれますね。
中でも弓については知らないことばかりでした。
先日のブログでも書きました「Fate/hollow ataraxia」でも主人公は弓道部に属していたりするんですが、特に弓について今まで調べたこともなかったので、漠然とファンタジーTRPGに出てくる西洋の弓をイメージして読んでおりました。
でも、日本の弓は世界でも例の無い珍しいものだったんですね。
普通は弓の真ん中を持って矢をつがえて射るわけですが、日本の弓は全体の下側三分の一の場所を握るんですね。
そんなことも知らなかったのか? と言われそうですが、実際知りませんでした。
西洋や中国などとは弓の作り、及び構造がまったく違うために、日本の弓は長大になったようですが、それによって握りの位置が違ったりすると同時に威力の面でも世界的に見てかなり強力な弓であったようですね。
表題の本に掲載された実験写真によれば水の入ったバケツを貫通し、厚さ1.6ミリのフライパンも貫いているものがありました。
私は世界的に見て英国のイングランドロングボウが高威力の弓の代表格だと考えておりましたが、どうやら日本の弓も威力という面では劣らないものであったようですね。
もっとも、弓はその使用に熟練を要する面が大きく、その点でさほど訓練に時間を要せずに大威力の弾丸を投射できる鉄砲が出てくると、弓の活躍する場面は狭まって行きます。
戦国後期には鉄砲の比率が大きくなり、弓足軽はほとんど見られなくなっていき、江戸時代を迎えるわけですね。
弓にしても鉄砲にしても遠距離から安全に敵を倒そうとした投射兵器ですが、その延長が大砲からミサイルになっていったんでしょうね。
- 2005/11/29(火) 22:27:05|
- 本&マンガなど
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今日は休みでしたので、一本SSを書き上げました。
こんなのも舞方の好きなシチュということです。
よければ読んでみて下さいませ。
あと、久し振りに「正義の女戦士クリスタルローズ」を更新させていただきました。
E=MC^2様に掲載されておりますので、そちらの方もよろしくお願いいたします。
はあ・・・はあ・・・
何たる無様さ・・・
王国一の騎士と言われたのは誰だったのか・・・
並み居る男たちを打ち負かしてきたのは一体誰だったのか・・・
このままでは死んだ父にも、私の盾となってくれた同僚にも顔向けができない。
せめて・・・せめて・・・陛下と王妃様をお連れ申し上げねば・・・
数日前から気配はあった。
森へ行った木こりも狩人も戻ってこなかったり、家畜が何者かに殺されていたり・・・
前兆はあったのだ。
なぜ・・・
なぜ私はそれを見過ごしたのか・・・
悔やんでも悔やみきれない。
私はただ一心に馬を飛ばして王宮へ向かっていった。
城下町が見えてくる。
だが、昨日までの城下町はそこにはなかった。
あちこちから黒い煙が上がっている。
風に乗ってまだ悲鳴がかすかに聞こえてくる・・・
私は歯噛みした。
すまない・・・
許してくれとは言わない・・・
だが、そなたたちの無念は私が・・・
私が必ず・・・
城下町の城壁に開いた門をくぐる。
むっとした血の臭いと魔物たちのざわめきが聞こえてくる。
まるで新たな獲物の到着を喜んでいるかのよう。
だが、お生憎さま。
私はお前たちの獲物になったりはしない。
私は腰に吊るしてあったサーベルを抜き放つと、通りでうろちょろしているオークやゴブリンどもをなぎ払っていった。
こいつらは単体ではそう怖い存在ではない。
ただ集団になると我ら騎士団でも手こずることがあるのだ。
もっとも、今は家々の略奪を繰り返している状態なので、こちらに向かってくるものはほとんど居ない。
「どけぇっ!」
私は声を上げながら、魔物たちを馬蹄にかけていく。
目指す城まではあと一息だった。
******
それはあまりにもあっけなかった。
王城の郊外に魔物の集団が現れたとの報に接し、軍勢の主力たる王宮騎士団が出撃。
郊外の平原での決戦が行なわれた。
だが、結果は一方的だった。
騎士団長たるムネアルスキー伯爵は百戦錬磨のつわものであり、今まで幾多の魔物たちとの戦いで国を護ってきた勇者だ。
その奢りが彼の目を曇らせたわけでは決して無い。
宮廷魔術師のロリスキー師はお歳こそ召されているものの、その魔術の腕は一級品である。
彼の魔力が年齢によって衰えたわけでも決して無い。
しかし、我が騎士団は完膚なきまでに敗れたのだった。
我が騎士団が平原に展開したのは、まだ太陽が中天に差し掛かる前のこと。
これから気温も上がり、地面の湿気も飛んでしまって、騎馬戦にはうってつけの条件になるはずだった。
だが、魔物たちの中央には、髪の毛の無い頭部から二本の角を突き出し、青黒い肌をして口が耳まで裂けているような魔人が居た。
筋肉質の躰には何も纏わず、背中からは黒々とした皮膜でできた羽を生やしている。
まさしく物語に出てくるような悪魔といった容貌。
それが魔人ブルグォスだった。
ブルグォスはその牙だらけの口でにやっと笑ったかと思うと、強大な魔力を投じて周囲一帯に結界を張ったのだ。
それほど広くない結界ではあったが、我が騎士団を包み込むには充分な広さだった。
そして奴はその結界内に濃霧を発生させたのだった。
晴れて視界が良好だった戦場は、たちまちのうちに右も左もわからぬ濃密な白い闇に覆われてしまう。
宮廷魔術師のロリスキー師がいくら術を解こうとしても、奴のあざ笑いが聞こえてくるだけで、一向に視界は晴れなかった。
そのうちに我が騎士団の周囲で怒号と悲鳴が交錯しはじめた。
魔物には闇の中でも目が見える種が居る。
我らは夜間に魔物と戦うような愚を犯さずに、奴らを引き寄せ日中での戦いに持ち込むことに成功していたのだ。
だが、今の状況は夜間での戦闘に等しいどころか、まだ悪い。
濃密な霧はまとわり付くように周囲に漂い、太陽の光は月明かりさえましなほどに弱々しかった。
我が騎士団は目が見えなくなってしまったのだ。
それから先はまさに戦闘ではなく殺戮に過ぎなかった。
ロリスキー師の悲鳴が聞こえたような気がしたが、確かではない。
ムネアルスキー伯爵も護衛の騎士たちとともに白い闇に飲み込まれていった。
「クリス! ここは退けぇ! 城に戻って姫様を守るんだ。お前は姫様の騎士なのだから」
私の方を向いて怒鳴っている若い騎士。
彼が同僚のパイシャブリフであることがすぐにはわからないほど、私もこの状況に翻弄されていたのだろう。
「パイシャブリフ、後退なら皆で・・・」
「間に合わん! 俺たちはとにかくここで時間を稼ぐ。その間に姫様を遠くに・・・安全なところへお連れするんだ!」
私の言葉は彼によってさえぎられてしまった。
それと同時に幾人もの顔がいっせいに私の方を向く。
「クリスさん、行って下さい」
「クリスさん、ここは我らが」
「行って下さい。姫様をお願いいたします」
「みんな・・・」
私は不覚にも涙があふれてくる・・・
「行くんだ、クリス。よおし、みんな、俺に続けぇっ!」
「おおっ!」
騎士たちの剣を持った右手が上がり、力強い言葉が発せられる。
「いいか、クリス。お前の足元には幸いなことに道がある。それをただひたすら走っていくんだ。周りのことは気にするな。いいな」
「パイシャブリフ・・・」
「城で会おうぞ。ハアッ!」
馬の脇を蹴り白い闇の中へ彼は消えて行く。
そのあとを勇敢な若い騎士たちが追うように消えていった。
そのあとどうしたのかは正直言ってよく覚えていない。
私はよろけるように王宮にたどり着き、陛下の前で騎士団の苦境を申し上げたのだった。
陛下は・・・聡明で偉大なグラコロバーグ三世陛下は私の言葉を黙って聞いていたあとに、ただひと言ご苦労だったと告げられた。
「クリスティーヌ・トリスティア。そなたに頼みがある」
「は、はい、国王陛下。何なりとお命じ下さいませ」
私は跪き頭を垂れる。
「娘を・・・ロッテリアをマクドナルド師のところへお連れしてくれ」
「マクドナルド師の元へ?」
私は思わず顔を上げる。
マクドナルド師は王国教会の司祭長だ。
なぜそんなところへ?
「以前よりマクドナルドには王家の危急の時には娘を預けることにしてあったのだ。わしが行き先を知っていたのでは何かの時に口を滑らしてしまうかも知れんが、行き先を知っているのがマクドナルドということになればわしは口を滑らせる心配は無い」
「かしこまりました。これよりすぐに私は姫様をマクドナルド師の元へお連れいたします」
私を信じて打ち明けてくださった陛下に報いるためにも、私はなんとしても姫様をお連れしなくてはならない。
「頼んだぞ。クリス」
「ハッ!」
私は気を引き締めて陛下の前を辞去した。
陛下のたった一人の跡取り娘であるロッテリア姫は今年十六歳になったばかり。
とても美しくかつ聡明であられ、周辺国の間でも噂の的だと言う。
すでに各国から縁組の相談が持ち込まれているらしいが、陛下はなかなか首を振らないらしい。
それもそうだろう。
何せこの国と姫様という二つの陛下にとっては大事なものを渡すのだ。
おいそれと渡せるはずは無い。
その命より大事な姫様を私は馬車にお乗せして、城を後にする。
泣きじゃくり城に残ると言い張る姫様を説得し、ほとんど無理やりに近い形でお連れしたため、姫様の機嫌はすこぶる悪い。
いつもならとても私のことを慕ってくださっているので、仕方が無いこととはいえ辛い。
城下町一の大きさを誇る聖堂は、王宮騎士団に数では劣るものの、精鋭が揃っていることでは引けをとらない聖堂騎士団が護っている。
ここであれば姫様も問題は無いだろう。
私は聖堂騎士に来訪の目的を告げ、マクドナルド師に会わせてもらう。
マクドナルド師は赤と白の僧衣を纏った太った中年の男性だ。
生理的にあまり好きにはなれないものの、この国では陛下に次ぐ実力を持っていらっしゃる。
「良くわかりました。ではしばしお待ちを」
マクドナルド師は何かを部下に告げ、私たちを礼拝堂で待たせる。
すぐに一人の尼僧服姿のシスターが現れ、私たちの元へやってきた。
「初めまして。シスターフレアと申します」
青い瞳のシスターはそう言って私たちに頭を下げた。
「彼女が隠れ家まで案内いたします。どうか彼女の後に付いて行って下さい」
マクドナルド師にそういわれ、私とロッテリア姫、それに侍女のハベリアがシスターフレアのあとに続く。
シスターフレアの案内の下、しばらくしてようやくたどり着いたのは郊外の墓地だった。
「こんなところに・・・」
私は驚きながらも感心した。
確かにこんなところに高貴な方が隠れているとは思うまい。
シスターフレアが墓石の一箇所を操作すると、地下へ通じる階段が出てくる。
私たちが姫様を連れて中に入って行くと、そこは少し狭い感じがするものの、快適そうな地下室になっていた。
部屋の隣には倉庫があり、食料なども充分に用意されているという。
私は満足してあとのことをシスターフレアに任せると外へ出た。
「騎士様、あれを・・・」
外へ出た私を侍女のハベリアが呼び止める。
その指差す先では、遠くからでも城が炎上しているのが見えた。
私は無我夢中で馬に飛び乗ると駆け出していた。
******
ゴブリンやコボルド、オークやノールなどの魔物の死体と王宮騎士や衛士たち、それに市民の死体が通りのあちこちに転がっている。
動くものはほとんど無い。
あちこちでくすぶっている残り火が城下町の惨状を端的に表わしていた。
城門は開いていた。
衛兵の死体といくつもの魔物の死体。
破壊された門扉と降ろされた跳ね橋。
私は注意しながらゆっくりと進んで行く。
すでに城内もあちこちが破壊されて、かつての面影は無い。
戦いが終わり、略奪するものがなくなったのか、城内は閑散としていた。
時々ゴブリンの一団が死体漁りをしているのを見かけたり、死んだ侍女を犯したりしているのに出会うものの、すでに彼らには戦意はなく、私の姿を見ると逃げ散ってしまうのが関の山だった。
私は陛下と王妃様の消息を尋ねるべく謁見の間へ向かう。
いつもならば陛下はそこに居るはずだし、もしかしたらまだ残存の騎士が陛下をお護りしているかもしれない。
そう考えて私は首を振った。
それならば、城内はまだざわめいているはずだし、魔物たちも私に対して攻撃してくるだろう。
私を攻撃しない理由はただ一つ。
意味が無いからに過ぎない。
生きて元気な人間を襲わなくても、食うことができ金目の物を漁れるのであれば襲う理由は無い。
私は暗澹たる思いを胸に抱きながら先へ進んでいった。
両開きの重々しい扉。
いつもならば着飾ったお飾りの衛兵が両脇に控え、来客に合わせて両側から扉を開ける役目を負っている。
だが今は誰も居ない。
血が飛び散ったあとと、壁や扉に剣の傷だか魔物の爪あとだかが残るだけ。
静寂があたりを包んでいる。
私は剣を握り締めて扉を開けた。
「きゃはははは・・・」
「ぐわははははは・・・」
私はあっけにとられた。
扉を開けた途端に狂ったような笑い声が聞こえてきたのだ。
謁見の間にはざわめきがあった。
だが、それは私が望んでいたざわめきではなかった。
玉座にはあのブルグォスが肘掛けに肩肘を付いて座っていた。
恐れ多くも代々の陛下がお座りになられた玉座を・・・
私は悔しさに歯噛みする。
玉座の周りにはさまざまな種類の魔物たちがいくつもブルグォスに付きしたがっている。
ここから切りかかっても奴らに止められてしまうのは必至だった。
だが、そんなことよりも私の目を奪っていたのは、玉座より低い床の上で行なわれていることだった。
「陛下・・・王妃様・・・」
私は思わずそう口にしていた。
「がははははは・・・おい、もっとだ。もっと持ってくるのだ。これではすぐに食べつくしてしまうではないか」
陛下はそう言いながら狂気に満ちた目で衛兵の死体から内臓を貪り食っていた。
美味しいご馳走は誰にもやらんとばかりに幾人もの死体を両手で抱えて、それでも足りなくてもっともっと持って来いと言っているのだ。
その腹は今にもはちきれそうであるにもかかわらず、陛下は食べるのを止めはしない。
無限に続く空腹感に苛まれているのだろう。
「きゃはははは・・・そうよ、そう・・・もっと腰を振りなさい。次は誰? 私の高貴なおマンコに太いのを差し込むのはいったい誰なの?」
王妃様はそう言いながらすでに事切れている騎士の股間に腰を擦り付けていた。
すでにものの役に立たないにもかかわらず、幾人もの死体のペニスを握り締めておいしそうに口に含んだり、丸見えの股間に無理やり押し込んだりしているのだ。
クリトリスはぷっくりと真っ赤に充血し、だらだらと愛液を垂れ流しているのに止めようとしない。
無限に続く性の欲求に苛まれているのだろう。
「ふふふふ・・・ようやく来たか騎士殿よ」
玉座からにたりと笑っているブルグォス。
私は怒りに震えた。
「貴様・・・貴様、陛下と王妃様に何をした!」
「クククク・・・知れたことよ。ロッテリア姫をどこに隠したかを聞き出そうとしたのだがな」
「姫様を?」
「ああ、美貌と才知にあふれた姫だと聞いたのでな。我が物にしたくてこうしてやってきたというのにだ。こいつらは知らんとほざくんでな。ちょっと欲望のままに生きるようにしてやっただけのことよ。ぐははははは」
下卑た笑いを浮かべるブルグォス。
「ふ、ふざけるなぁっ!」
私は怒りに剣を構えて玉座へ突進する。
だが、私の前には幾人もの魔物たちが立ちはだかった。
私は当たるを幸い、リザードマンを切り伏せ、オーガーの脇を抜け、ワーウルフやガーゴイルに切りつけたが、そこまでだった。
サイクロプスの背後からの一撃を受けて転倒したところを、両脇から押さえつけられてしまったのだ。
「うぐっ、くそっ、離せぇ」
私は押さえつけられて身動きできない状態でもブルグォスをにらみつけるのをやめない。
「殺すなよ。なかなか可愛い奴だ。それにこいつには姫の行き先を教えてもらわなければならん」
「馬鹿な魔人ね。私のような一介の騎士が姫様の行き先など知るわけが無いでしょう」
私はそう言ってやる。
絶対に、何があっても姫様の居場所をこいつらには教えない。
死んだって言うものか。
「ふむ。どうなんだ? こいつで間違いないのだろうな?」
「マチガイ・・・アリマセン」
私はその言葉に顔を上げた。
「い、いやぁぁぁぁぁ」
そこにはあのマクドナルド師が居た。
ただし、首から上だけであり、ちぎられた頭部が杖のようなものに乗せられているのだ。
どろんとした目で私を見下ろし、無機物のようにしゃべるマクドナルド師の首は、私に恐怖を与えるのに充分だった。
「ふふふ・・・ロッテリア姫の居場所を言う気は無いか?」
「あああ・・・い、言わない・・・言うものか」
私は最後の勇気を振り絞る。
だが、これでは死んでもしゃべらせられてしまうに違いない。
どうしたらいいの・・・
「ふふふ・・・なかなかの女だ。気に入ったぞ」
ブルグォスが私のところへやってくる。
私は両側から押さえられたまま立たされてブルグォスと向き合わされた。
「人間にしておくには惜しい女だ」
「ふざけるな!」
私は唾を吐きかける。
せめてもの抵抗をしなければ気がすまない。
「ふふふふ」
だが、ブルグォスは意に介した様子もなく、私に背を向けるとそばにいたガーゴイルを呼びつける。
私は何が起こったのか一瞬わからなかった。
ブルグォスの目の前でガーゴイルは石になって砕け散ったのだ。
その手には輝く石のようなもの。
魔法生物であるガーゴイルからその核を抜き取ったというの?
「ククク・・・」
ブルグォスはその石を口に放り込むとくちゃくちゃと咀嚼し始める。
しばらく咀嚼を繰り返したブルグォスは、やがて口から白い風船のようなものを膨らまし始めた。
その風船は見る間に大きくなり、私よりも大きいくらいに膨らんで行く。
そしてそれはそのまま私の方へ近付き・・・
「あ、ああ・・・な、なんなの・・・これ?」
気がつくと私はその半透明の風船の中に捕らわれていた。
ぶよぶよしたその膜はいくら力を入れても破れない。
剣は取り上げられていたが、短剣はまだあったのでそれを突き立てるが、まったく無駄。
「出して・・・出してよぉ」
ぶよぶよの膜をこぶしで叩いても跳ね返されるだけで、どうにもできない。
「えっ?」
私は驚いた。
ぶよぶよだったものが硬くなってきているのだ。
それにともなって半透明だった色も真っ白くなっていき、外部の光が入ってこなくなる。
じょじょに硬く、薄暗くなる中で、奇妙なことに私は安らぎと眠気を感じ始め、いつの間にかひざを抱えて丸くなっていた。
そしてまどろみが私を闇に誘って行った・・・
******
鉤爪が殻を破り外の明かりが漏れてくる。
あたしは力任せに殻を引き裂くと、ねっとりした液体を振り払うように外へ出た。
周りには幾人もの男どもが飢えたような目であたしを見ているわ。
あたしは笑みを浮かべながら自慢の胸を突き出してやる。
うふふ・・・
ごめんねー。
やっぱり最初はブルグォスさまに抱かれたいわぁ。
あたしは生まれ変わった自分の姿を見下ろした。
黒いレザーのような皮膚が股間から胸までを覆っていて、足にはやっぱりつややかな輝きのブーツのような形が包んでいる。
両手の指先からは鋭い爪が伸びていて、これでいつでも獲物をいたぶり引き裂くことができるのよ。
そして背中には大きなガーゴイルの羽。
空だって飛べるわ。
それにプリプリのお尻にはすうって伸びた尻尾があるのよ。
巻きつければ人間の首くらいはあっという間にへし折っちゃうんだからね。
ああ、もう最高の気分だわぁ。
あたしはガーゴイルレディ。
ブルグォス様に作られた存在。
ブルグォス様のためならなんだってしちゃうわぁ。
ああん・・・ブルグォス様がこっちを見てるわぁ。
あの視線だけで感じちゃうの・・・
ちょっとでも触れられたらきっとあたしイッちゃう・・・
ええ、わかっておりますわぁ。
ロッテリア姫とやらを捕らえてくればいいのですね。
お任せ下さいませ。
あたしが必ず連れてまいりますわぁ。
うふふふ・・・抵抗する人間どもは皆殺しっと。
あたしはブルグォス様に一礼をすると、謁見の間の壊れた窓から外へ飛び出していった。
[ある女騎士の物語]の続きを読む
- 2005/11/28(月) 20:12:04|
- 異形・魔物化系SS
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表題のPCゲームはもうご存知の方が多いことでしょう。
私も先日全てのシーンを見終わり、後はミニゲーム関連のCGを残すのみとなりました。
いやぁ、やっぱり面白い作品を作ってくれますねぇ。
シナリオライターの奈須きのこ氏にはもうただ脱帽するばかりです。
ものを書くという一点においてのみ共通点を持たせていただいているわけですが、どこをどうしたらああまで素敵な文章を書くことができるのか、脳の中身を拝見してみたいぐらいです。
ストーリーはもちろんネタバレになりますので差し控えますが、新キャラクターとして投入されたカレン・オルテンシアも前作で名前だけ設定にあったバゼット・フラガ・マクレミッツも、もう魅力的なキャラクターとしてそれは素敵に書かれていました。
そしてその奈須氏の書かれる人物を、ビジュアルとして見せてくださる武内崇氏の描かれるキャラクターイラストはこれまた素晴らしい出来栄えで、可愛く凛々しいキャラクターにもう惚れまくりです。(笑)
そして作品に深みを与えてくれる音楽。
前作もそうでしたが、今作品も見事で聞かせてくれる音楽が各所にちりばめられています。
いずれもシーンに絡めず単独で聞いてもその存在を主張できる素敵な音楽ばかりです。
で、今日そのオリジナルサントラを購入してきました。
いいですねー。
ボーカル曲の「アタラクシア」はもう何べんでも繰り返して聞いてしまいます。
「back to the night」の重々しさも、「カレンのテーマ」の明るさも、「legend」の物悲しさも、もうたまらない魅力にあふれています。
久し振りにサントラを買いたいと思わされました。
いつもはまずCDなんて買わないんですけどね。(笑)
なんか最初から最後まで宣伝になってしまいましたが、たまにはいいでしょう。
それではまた。
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- 2005/11/27(日) 21:43:40|
- PCゲームその他
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昨日まで書き綴ってきたガンダムネタじゃないですが、OVA「08MS小隊」でもオープニングに出てきたジャングルボートはまさしくこれを基にしたものでしょう。
ベトナム戦争で投入された米軍の兵器はたくさん有りますが、代表的な兵器を上げろといわれれば、M113APC・UH-1輸送ヘリコプター・F-4ファントム戦闘機・そしてこのPBR(パトロールボート・リバー)あたりではないでしょうか。
映画「地獄の黙示録」では主人公が目的地へ行くのに便乗して川をさかのぼります。
あまつさえUH-1に吊るされたりしてなかなか存在感をアピールすることも忘れません。
当時アメリカには徴兵制度がありました。
目端の利く若者は危険性の少ない(と思われる)軍に志願して、死なないようにと考えます。
志願者が多かったのは空軍だったそうです。
パイロットでなければ、後方の拠点で整備などに携わることで危険性は少なかったのです。
次に多かったのは海軍でした。
トンキン湾もベトナム海軍というものがほとんど存在しなかったこともあり安全性は高かったのです。
徴兵される若者は海兵と陸軍が引き受けました。
最前線を担当するのはこういった若者たちでした。
でも、安全と思われていた海軍もメコン川を担当するブラウンウォーターネイビーは、陸軍や海兵隊とまったく同じ苦労を味わうことになったのです。
プラスチックで作られたモーターボートですが、12・7ミリの機関銃を前後に持ち、ウォータージェット推進で浅いところも何のその。
屋根の上になべを伏せたようなレーダーを持ち、星条旗を誇らしげに掲げる姿はまさしく軍艦といった感じなのですが、残念なことに装甲はなく、乗組員もむき出しのまま。
暑さと湿度で汗だくの中、防弾ジャケットに身を包んで行きかうボートを臨検しなくてはなりません。
ベトコンはいつ現れるかわからず、岸からRPGを撃ち込まれたり、手榴弾を投げ込まれたりということもあったそうです。
きっとPBR乗り組みを命じられた兵士たちはおのれの境遇を嘆いたのかもしれないなぁ。
[PBR]の続きを読む
- 2005/11/26(土) 22:36:46|
- 趣味
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ふう・・・
遅くなりましたが、バーナード准尉とローネフェルト中尉の戦いの結末をお届けします。
書いていていろいろと都合よく済ませてしまったところは有りますが、楽しんで書くことができました。
またいつかガンダムネタでSSを書きたいものですね。
「チィッ! 見境無しかよ」
木立の影で次々と吹き飛んで行く味方車両を俺は歯噛みしながら眺めている。
敵の新型は左手に機関砲を仕込んでいるらしく、振り回しながら砲弾をばら撒いていた。
「軍曹、側面から突っ込め!」
「了解! 行きますよ!」
シン軍曹の表情が引き締まり、俺は遠心力でシートに押し付けられた。
頭を振って意識を呼び戻す。
シートベルトをしていたはずなのに、いつの間にか外していたらしい。
本来ならベルトが守ってくれるのだが、外していては意味が無いのは当然ね。
私は周囲の状況を確認するためにモノアイを周回させる。
パトリシアのグフは健在だった。
私はホッと一息つくと、パトリシアに無事を伝えようと無線のスイッチを入れる。
がりがりという空電ノイズが耳を突き、私は思わず顔をしかめた。
「ノイマン曹長、ノイマン曹長、聞こえますか?」
私が呼びかけるものの、返事は聞こえてこない。
『はあ・・・はあ・・・はあ・・・』
息遣いだけがヘッドフォンに聞こえてくる。
「ノイマン曹長、返事をしなさい!」
私が怒鳴ったちょうどそのとき、グフの脇からミサイルホバーが顔を出した。
「ノイマン曹長!」
私はザクを立ち上がらせた。
「ドンピシャ!」
俺はシン軍曹の操縦の腕に舌を巻く。
ファンファンは見事に新型の脇から射撃位置を占位した。
新型が振り向き、そのモノアイが輝くがもう遅い。
「食らえ!」
俺はトリガーを引く。
頭上から対戦車ミサイルがうなりを上げて飛んで行く。
片方のポッド全てをぶち込んだ後、シン軍曹はすぐさま回避行動に入り離脱する。
そのタイミングは見事の一言だ。
ミサイルは次々と新型に命中していった。
「ノイマン曹長!」
私は目を疑った。
グフのあちこちから爆発が巻き起こる。
近距離からミサイルの攻撃を受けては回避のしようが無い。
モノアイが破壊され、シールドと左腕が吹き飛ばされる。
『キャァァァァァ・・・』
パトリシアの悲鳴が流れ込む。
私はザクをグフのカバーに向かわせた。
「やりましたよ、准尉殿!」
「いや、まだだ。あの新型はまだ動く。中隊長! 残りの車両で一斉射を!」
離脱しながら振り向くと、敵の新型に先ほどタックルしたザクが再び立ち上がっている。
もう一機のザクは援護射撃のつもりか林に向かって弾をばら撒いていた。
『わかっているわ。各車照準! てぇーっ!』
パターソン大尉の声とほぼ同時に残りの車両が砲火を向けた。
私はザクをグフの前に立ちはだからせようとした。
しかし、わずかに届かなかった。
敵の砲弾とミサイルが次々にグフに命中し、各所に穴を開けて行く。
「ノイマン曹長!」
グフはゆっくりと仰向けに倒れて行く。
まるでスローモーションの映像を見ているよう・・・
ずんと言う地響きが私のコクピットにも伝わってくる。
『ああ・・・いや・・・いやぁっ!』
おびえたようなパトリシアの声。
「ノイマン曹長! 脱出しなさい!」
『いやぁっ! 火が出てるぅ! いやぁっ!』
「ノイマン曹長! 脱出するのよ! 早くっ!」
私はザクをグフの脇に跪かせる。
狙い撃ちされたって構うものか。
「今度こそやりましたね。」
シン軍曹が嬉しそうにそういった。
敵の新型は各所から火を噴き、もう動けないだろう。
もう一台のザクも傍らにしゃがみこんでいるし、マシンガンも失っていて戦闘力は無さそうだ。
援護のザクは新型を倒されたことと、残余の車両からの砲撃を避けるためにデカブツの残骸の陰に隠れこむ。
こちらも相当な被害だが、敵もかなりの痛手を受けただろう。
『助けてぇ! 誰か助けてぇ!』
「ノイマン曹長!」
グフはあちこちが火花を散らしている。
このままだと内部で爆発が起こりかねない。
一刻も早く脱出して、パトリシア。
『ああ・・・ち、中尉殿、助けてください! 火が・・・火が燃えているんですぅ!』
「ハッチを開けて! 早く脱出しなさい!」
『開かないんです! ハッチが開かないんです中尉殿ぉ!』
「何ですってぇ!」
私は歯噛みした。
ザクとは・・・ザクとは違うはずでしょう!
ハッチが開かないなんてふざけるんじゃないわよ!
私はザクから飛び降りた。
「准尉殿、あれを」
「?」
シン軍曹の指し示す方を見ると、ザクから一人の兵士が新型に向かって行くところだった。
「何をする気だ?」
「どうします? 撃ちますか?」
俺は首を振った。
「その必要は無いよ。どうやら新型のパイロットを救出するようだ」
「でも、あの分じゃもうすぐ爆発しますよ」
それは俺もそう思った。
新型はあちこちから火花を散らしているし、黒煙を吹き上げている。
いつ爆発しても不思議じゃない。
『中隊長より各車へ。中隊長より各車へ。師団の攻撃が始まったわ。直ちに指揮車の周囲に集結して』
無線でパターソン大尉が呼んでいる。
「准尉殿、集結命令です」
「ああ・・・ちょっと待ってくれ」
俺はザクのパイロットの動向を目で追った。
私は倒れたグフの胴体によじ登る。
モクモクと立ち昇る煙がすごくきな臭い。
私はコクピットのハッチのところにたどり着くと、非常開閉スイッチを作動させる。
!
「開かない?」
私は何度もスイッチを押す。
スイッチは確かに作動しているのだが、何かが引っかかっているのだ。
「何が?」
私はハッチの周りを見る。
「あれか?」
ハッチと胴体の境目に破片が食い込んでいるのが目に入る。
「くそっ」
私は破片に駆け寄り、力任せに引っ張った。
「開かないのか? シン軍曹、こいつをあの新型の脇に止めてくれ」
「ええっ?」
「いいから!」
幸い師団の攻撃が始まったのが伝わったのか、もう一機のザクはデカブツの生き残りとともに離脱して行く。
ここでの戦闘は終わったのだ。
だったらちょっとぐらい手伝ってやってもいいだろう。
俺は道具箱の中からバールを取り出すと、ファンファンの着陸を待った。
「抜けろぉ! 抜けてちょうだい!」
左右に振ったり押したり引いたりしたが破片は取れてこない。
「ちょっと待ってろ! こいつをてこにするんだ」
私が顔を上げると、連邦軍の士官が居た。
「あ、あなたは?」
「話は後だ。いいか、せーのーでで引っ張るんだぞ!」
私はこの士官にうなずくと、彼はにやっと笑みを浮かべてバールの先をハッチと破片の間に差し込んだ。
「いいか、せーのー」
「でっ!」
私は思いっきり破片を引っ張る。
ぎしっと言う音とともに破片は抜け、私は危うく尻餅をつくところだった。
私はすぐにハッチを開け、中を覗きこむ。
煙がうっすらと出てきたが、炎は上がっていない。
ノーマルスーツのヘルメットの奥でパトリシアが目をつぶってぐったりしていた。
「ノイマン曹長!」
「どいてろ!」
連邦軍の青年士官がコクピットに入り込み、パトリシアを抱きかかえて私に差し出す。
私は黙って彼女を受け取ると、すぐにグフから滑り降りる。
「早く逃げて!」
「わかっている!」
青年士官の声がして、すぐに彼も飛び降りてきた。
「推進剤や弾薬が爆発するわ! 離れて!」
「おう!」
私はパトリシアを抱きかかえて林の中へ駆け込み、大きな木の陰に隠れこむ。
振り返ると連邦の士官は乗ってきたホバーに飛び乗ると、急速に発進していった。
「あ・・・」
私は大ばか者だ・・・
お礼も何も言っていないし、名前すら聞くことができなかった・・・
「う、う・・・ん・・・」
パトリシアが身じろぎをする。
「ノイマン曹長」
私は安堵の気持ちで一杯になった。
「そういや二人とも女だったなぁ・・・」
「ジオンのパイロットがですか?」
「ああ・・・」
林の中を縫うように進んで行くファンファンの中で俺はさっきのことを思い返していた。
自分の攻撃で倒しておきながら、パイロットだけは助けるなんてなんという矛盾だろう。
でも構わないじゃないか・・・
死ななくてすむのなら死なない方がいい・・・
俺はすっかり明るくなった窓の外をぼんやりと眺めながら、集結地点へ向かうファンファンに揺られていた。
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- 2005/11/25(金) 23:18:57|
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表題の武将をご存知の方はかなりのマニアな方か、かなりお年を召した方かもしれません。
徳川家康でも、織田信長でもなく、この木村長門守重成という人物に、私は心惹かれるものを感じるんですね。
徳川家康が江戸に幕府を開き、すぐさま息子秀忠に将軍職を譲ったことで、大坂の豊臣秀頼が将軍に就けるかもしれないという淀君の淡い期待は打ち砕かれました。
強硬派の秀忠と違い、徳川家康は大坂城と秀頼が切り離され、地方の一大名として存続するのであれば認めるつもりだったといいます。
しかし、秀頼は家康の思惑を理解していたものの、大坂城を出れば殺されると信じていた(あながち妄想とはいえない)淀君は、大坂城退去を頑として拒みます。
結局江戸と大坂は不穏な状況となり、関が原の戦いで土地を失ったり主家を失った浪人たちが、一花咲かせるべく大坂に参集します。
その中に、若干十九歳(二十二歳説も有り)の若武者が登場いたします。
木村長門守重成
父は秀吉の近習であり、淀君のおそばに仕えていたこともあるため、秀頼の乳兄弟として育ったそうです。
秀頼にとっては一番の心許せる友人であり、眉目秀麗な重成は、その折り目正しさもあって大坂城の浪人衆からも一目置かれている存在でした。
もちろん関が原以後十年以上も合戦がなかったのですから、重成はまだ戦に出たことは有りません。
歴戦の勇者たる後藤又兵衛基次にしてみればはなたれ小僧も同然だったでしょう。
重成は大坂冬の陣の前日、わざわざ後藤又兵衛のもとを訪れ、こう言ったそうです。
「後藤殿、私はまだ若輩ゆえいまだ戦場での経験が有りません。どうか明日はよろしくお指図をお願いいたします」
この言葉に又兵衛は感激し、以後重成をまるで息子のようにして、彼のサポートをし続けてくれたのです。
戦場での重成はその指揮ぶりに時々若さを覗かせたものの、勇猛果敢な戦いぶりはかの後藤又兵衛も感心するほどだったそうです。
しかし、いったんの和睦後、外堀を埋め尽くされた裸の大坂城で大坂夏の陣を迎えることになり、木村長門守重成も死を覚悟するようになります。
食事の量がみるみる減ってしまった重成を心配した妻が、なぜ食べないのかを尋ねたところ、斬られたところから食べたものがはみ出すのはいかにも見苦しいからだと答えたといわれます。
戦場に出る前日には湯に入り、髪の毛を洗って香を焚き染めて兜をかぶったそうです。
大坂夏の陣では大坂方は苦戦を強いられますが、木村隊は見事藤堂隊を蹴散らします。
しかしやがて衆寡敵せず重成は討ち死に。
その首は家康の元へ運ばれますが、家康がよく見ようと近づいた時に香の香りが漂い、家康は若輩者だが死に方を知っている男だと言って涙を流したといわれます。
後世の創作もたぶんにありましょうが、一人の若武者の見事さが個人的にはすごく気に入っています。
- 2005/11/24(木) 22:25:44|
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うーん・・・
予想以上に手強いですね。
戦闘シーンは難しい。
とりあえずアップしますね。
『中隊長より各車。中隊長より各車。新しい情報を伝えます』
俺は無線のボリュームを上げる。
『哨戒機が送ってくれた情報によると目的地にジオンの小部隊が向かっている可能性有り。繰り返す。目的地にはジオンの小部隊がすでに存在する可能性有り』
「やれやれ・・・」
俺は思わずそうつぶやいた。
「小部隊ですか? どのくらいの規模なんですかね?」
「哨戒機が言ってくるんだ。それなりの規模だろう。そうじゃなきゃ無視するか見落としているさ」
シン軍曹に俺はそう言ってやる。
「確かに・・・くすっ、やっぱり准尉殿は頼りになりますね」
「よせよ。褒めたって何も出ないさ」
俺は苦笑いしながら目をつぶった。
まだ目的地までは遠い。
小休止をはさみつつ、俺たちは丘陵地帯へ向かっていった。
「ん・・・う・・・」
夢の中をさまようパトリシアをそっと揺り起こす。
「起きなさいノイマン曹長」
「ん・・・あ、は、はい、中尉殿」
寝ぼけ眼をこすりつつもすぐにパトリシアは起き上がった。
「そろそろ時間よ。支度をしていつでも出られるようにしなさい」
「は、はい。了解です」
私は立ち上がって敬礼する彼女を残して部屋を出る。
「お、起きられましたか」
ギャロワのブリッジに顔を出した私を迎えてくれたのはヒンメル中尉だった。
「おはようございます。もうすぐですか?」
「ええ、後三十分ほどでしょう。おい、中尉にコーヒーを」
ブリッジ内には数人がつめているが、そのうちの一人がコーヒーを用意しに出て行った。
「ありがとうございます。私たちモビルスーツ隊は現地到着時の展開でいいのですか?」
「問題ないでしょう。あの丘陵地帯に連邦軍が進出しているという情報は無いですし、このギャロワと違って連邦軍はビッグトレー級でも無い限り、あそこから届く重砲はいちいち牽引して持って行かなければなりませんからね」
ヒンメル中尉の言うのはもっともだわ。
今向かっている丘陵地帯は、確かに砲撃するにはいい地点だけど、急速に砲兵を展開するには不適当だし、戦車や自走砲クラスの砲では射程が足りない。
どうしても重砲が必要になるけど、牽引式重砲では展開に時間が掛かってその間に気づかれてしまうものね。
そう考えるとこのギャロップ級というのも侮れないものだわ。
何せモビルスーツを搭載しながら、背中には支援用の重砲を装備しているのだから。
「了解です。それではしばらく待機いたします」
私は敬礼して出て行こうとした。
「待ちたまえよ中尉。コーヒーを飲んで行け」
ヒンメル中尉の言葉と同時にカップが私の前に置かれる。
湯気とともにいい香りが私の鼻をくすぐった。
「ありがとうございます。いただきます」
私はカップを受け取った。
「ノイマン曹長、ハインツ軍曹、準備はいい?」
乗りなれたMS-06J陸戦型ザクのコクピットで私は手袋を嵌め直す。
最近はコクピット内でノーマルスーツを着ることも少ないが、手袋だけは欠かせない。
『パトリシア・ノイマン曹長、MS-07B準備完了』
『オスカー・ハインツ軍曹、MS-06J準備完了です』
「了解した。ギャロワが停止し次第出るぞ」
私はそう言ってじっと目をつぶった。
わずかな振動が私のお尻の下に高温の熱核融合炉がある事を教えてくれる。
『ローネフェルト中尉、聞こえるか?』
「聞こえます。シュナイダー大尉殿」
ヘッドフォンに明瞭に聞こえてくる野太い声。
ミノフスキー粒子下ではとてもこうは聞き取れないだろう。
『こちらは位置についた。出発してくれ』
「了解です。ノイマン曹長、ハインツ軍曹、出撃!」
『了解』
『了解』
二人の声を聞きながら、私はアクセルペダルを踏んでいた。
十月ともなるとこの高緯度地方では夜明けが遅い。
寒さも厳しくなってくる。
ファンファンのコクピットもヒーターが必要になってくる。
「准尉殿、間もなく目的地です」
シン軍曹の声が俺をまどろみから呼び戻した。
時刻は05:30。
「ん、すまんな」
俺はシートを立てて無線機のスイッチを入れる。
「こちらバーナード。先行します」
『どういうこと? 准尉』
「偵察です。居るかもしれないんでしょ?」
俺は苦笑した。
『何もあなたが・・・いえ、頼むわ』
「了解です」
俺は無線機のマイクを戻す。
「軍曹、すまんな。貧乏くじだが」
「いいえ、行きましょう。准尉殿」
シン軍曹はファンファンの速度を上げる。
まだ漆黒の闇の中、俺たちは先へ進んでいった。
「居たな・・・やっぱり・・・しかも参ったな」
「准尉殿、あれは?」
ファンファンを降りた俺たちは丘の上に陣取っているデカブツに双眼鏡を向ける。
見たこと無い奴だが、凶悪な砲塔から伸びる二門の砲身が俺たちの基地の方へ向いている。
しかも悪いことにその周囲を三機ものモビルスーツが囲んでいた。
「見たこと無い機体だな・・・」
「ええ、私も見たことありません。新型でしょうか・・・」
シン軍曹もその形状の違いに気がついたようだ。
肩のスパイクもそうだがマシンガンを持っていないのが気になるな・・・
「そうかもしれないな。しかし・・・このまま空軍が来るのを待っているわけにも行かないな。やるしかないのか・・・」
「空軍は今頃出撃しているはずですよね?」
「陽動をかけるって言っていたからな。やばいっ、見ろ!」
俺たちの目の前で敵の砲塔は砲身を持ち上げて行く。
「軍曹、戻れっ! 中隊長に連絡してガンタンクの射撃準備をさせるんだ」
俺はシン軍曹をファンファンへ戻し、その後を追う。
すぐさまコクピットに入り込むと無線で中隊長を呼び出した。
『パターソンです。どうしました?』
ミノフスキー粒子が薄いのが幸いだな。
「中隊長、すぐに移動を中止してガンタンクに射撃準備をさせてください。奴らが基地を砲撃するつもりです」
『何ですって? わかったわ。シャイロー曹長に射撃準備をさせて!』
向こうも慌てているのが良くわかる。
「弾種はHEAT。地図上でL2-H5の位置にぶち込んでください」
『わかったわ。五分待って』
「三分で・・・」
俺がそう言った瞬間、轟音とともに敵の主砲が火を噴いた。
「軍曹、出せ!」
「了解!」
シン軍曹がファンファンを飛ばし始める。
うっすらと明け始めた夜空を背景に敵のシルエットが浮かんでいた。
『始まりましたね、中尉殿』
パトリシアの可愛らしい声が聞こえる。
ギャロワが主砲を撃ち始めたのだ。
はるかかなたの連邦軍基地に火柱が上がる。
この距離であそこまで飛ばせるのだから戦艦並の主砲ということだ。
連邦が反撃をしようにもどこから撃たれているのかわからないだろうし、航空機が来る頃には離脱できるだろう。
あと一時間は砲撃を続けられるに違いない。
「気を抜かないで。敵が潜んでいるかもしれないのよ」
私自身この言葉がまさか事実だとは思いもしなかった。
轟音とともにギャロワの側面が炎を吹き上げる。
「な、何なの?」
私は周囲を見回す。
明け始めてきたのでじょじょに視界が開けているが、それでも麓の方は見えづらい。
『ローネフェルト中尉、敵は見えるか?』
「今のところまだ。注意してください!」
私はとにかくザクをしゃがませて姿勢を低くする。
麓からだとすればこちらはいい目標だ。
それにしてもどこから・・・
『中尉殿!』
ハインツ軍曹のザクがそばに来てしゃがみこむ。
少なくとも敵はギャロワの左舷側だ。
モノアイを熱源感知に切り替えて捜査する。
・・・・・・
「あれか?」
深い紺色の中に赤く映し出される奇妙な物体。
すぐに通常モードに切り替え、その姿を視認する。
「なんだあれは?」
それは我が軍で作業用に使っているザクタンクにそっくりだった。
ただ違っていたのはそいつの両肩には巨大な重砲が載せられていることだった。
「シュナイダー大尉! 八時の方角!」
私がそう怒鳴った時、二発目の被弾がギャロワの熱核ロケットを装備した翼に命中した。
「命中! 続いて次弾もHEAT。射角修正左一度」
『了解です』
ガンタンクのシャイロー曹長が返事をする。
こちらの指示通りに弾が命中するのは気持ちがいい。
しかも初弾はあのデカブツの足を止めたらしく、動く様子が無い。
さらに今のでロケットを吹き飛ばしたからまず奴は動けなくなっただろう。
まだこちらに気づいた様子も無いし後はあの砲塔を吹き飛ばせば・・・
「准尉殿! 砲塔が・・・」
待て、奴はどこを・・・
「シャイロー曹長、早く撃てぇ!」
俺はマイクに向かって怒鳴りつけた。
『中尉殿! あそこです! 敵はあそこ!』
パトリシアのグフが麓へ向かって走り降りる。
「ノイマン曹長! 待ちなさい!」
私の静止も届かない。
「ハインツ軍曹、援護して!」
『了解です』
私はザクを立ち上がらせて後を追う。
『やらせるかぁっ!』
「ノイマン曹長!」
パトリシアは興奮している。
初陣ということもあるし、いきなりの砲撃で周りがわからなくなっているのだ。
「ノイマン曹長!」
駆け下りる私の背後でギャロワの主砲が火を噴き、そして吹き飛んだ。
「シャイロー曹長っ!」
見下ろす俺の視線の先で、あのデカブツの主砲の直撃を食らったガンタンクはゆっくりと前のめりになって・・・吹き飛んだ。
「准尉殿、あれを」
シン軍曹の指差す先にはあのデカブツが火山の噴火のように炎を吹き上げている。
「相討ちかよ」
「来ます。新型!」
青いモビルスーツが駆け下りてくる。
「嘘だろ・・・一直線か? 中隊長! 新型が向かっています!」
『わかっているわ。すでに捕らえた』
林の中から全ての61式が主砲を振り上げる。
『ウォォォォォォォ』
「ノイマン曹長!」
私はマシンガンを投げ捨ててひたすらグフを追いかける。
すでに敵のタンクもどきは吹き飛んだというのに戦場特有の高揚感がパトリシアを包んでいる。
林には敵の戦車が待ち構えているはず。
あのタンクもどきが一台きりのはずが無い。
私はザクをジャンプさせた。
『撃てぇ!』
パターソン大尉の命が飛ぶ。
十六門の主砲からHEATとAPFSDSが新型に向かって放たれたそのとき、ザクが新型にタックルした。
前のめりに倒れるザクと新型。
十六発の砲弾は新型をそれ、わずかに一発だけがザクの左腕を吹き飛ばした。
『中尉殿! 中尉殿! いやぁ! 中尉殿ぉ!』
意識が霞む・・・
頭を打ってしまったらしい・・・
地上でモビルスーツにタックルなぞするものじゃないわね・・・
『中尉殿! 中尉殿ぉ!』
返事をしなければ・・・
パトリシアが冷静になれるように・・・
『ああ・・・私のせいだ・・・私のせいで中尉殿が・・・』
違うわパトリシア・・・
あなたのせいじゃない・・・
ここに敵が居ることを疑いもしなかった私のせい・・・
ああ・・・
どうして声が出ないのか・・・
「准尉殿!」
「立ち上がったか。中隊長、位置を変えてください!」
俺はマイクに向かって怒鳴りつける。
「軍曹、回り込め」
「了解」
シン軍曹は俺の意図を正確に把握しているようだ。
見る間にファンファンを新型の側面へ向けて行く。
立ち上がった新型は驚いたことに左手の指先から砲弾をばら撒き始めた。
木立の影に位置していたミサイルバギーも61式も砲弾の雨が包み込んで行く。
いくつもの火柱が立ち昇っていった。
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- 2005/11/23(水) 22:05:27|
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のわー!
昨日のSSを読んでくださった皆様。
誠に誠に申し訳ございませんでした。m(__)m
ローネフェルトたんの階級を少尉と誤って記述してしまっておりました。
正しくはアマリア・ローネフェルト中尉(このストーリー時点での階級)となります。
早速修正を加えましたのでお許し下さいませ。
今日はもう戦闘に入れると思っていたんですが、甘かったです。
基地を出発するまでで結構かかってしまいました。
戦闘はこの次までお待ち下さいませ。
それではそれでは。
21:00
俺たちのいる前線基地前に第一中隊の全車両が集結する。
61式が八両、ファンファン型ミサイルホバーが六両、有線ミサイルバギーが六両、APC二両、指揮車型装甲トラック一両、そしてガンタンク型モビルスーツが一機である。
一個中隊としては大きめの戦力に見えるが、本来の定数は61式が二十両といったところであり、戦力不足は否めない。
「ランディス・バーナード准尉、今回はあなたには貧乏くじを引いてもらうわ」
俺は出発前のブリーフィングでパターソン大尉の言われたことを思い出していた。
「貧乏くじ?」
「ええ、今回あなたにはA小隊の指揮を離れてもらうわ」
パターソン大尉のメガネの奥の瞳が多少潤んでいるように見えるのは気のせいか?
「小隊の指揮を? ではA小隊は?」
「アルバーグ曹長にやってもらうわ。そろそろ彼もそういった仕事に就いてもいい頃よ」
俺はうなずいた。
先日の戦闘後に階級も上がったし、彼ならば問題無いと思う。
「で? 俺は何を?」
「61式を降りてファンファンに乗って欲しいの。砲撃指揮と着弾観測をやってちょうだい」
ああ・・・そういうことか・・・
ファンファンで飛び回ってガンタンクの砲弾がどこに落ちるか見ながら指示を下す役割だ。
大変重要な仕事だが、敵も真っ先に撃ち落しに来るだろう。
生き残る確率は非常に低い。
まあ、死ねと言われているわけではないが似たようなものだろう。
「あなた以外には頼めないわ。新兵には頼めないし・・・」
俺の無言を一種の拒否と取ったのだろう。
「了解です。大尉殿」
俺がうなずくと大尉は目に見えてホッとした表情を浮かべた。
ずいぶんとわかりやすい人かもしれない。
「よかったわ。ファンファンは五番機を使ってちょうだい。シン軍曹には言ってあるから」
そう言って大尉はその場を去っていった。
それが昼過ぎの話であり、俺はその後砲撃管制の手順書などを見返していたのだった。
「五番機・・・五番機・・・と、これか」
俺は並んでいるファンファン型ミサイルホバーの一機に近寄って行く。
グリーンとグレーの森林用迷彩の施された機体の尾翼側面に数字の5が記されていた。
俺はコクピットを開けて中を覗き込む。
使い込まれた操縦桿はところどころ色がはげていた。
すぐ撃墜されることの多いファンファン型にしては結構長期にわたって使われているらしい。
運がよい機体なのか、それとも操縦手の腕がいいのか・・・
「誰だ! そこで何をしているって・・・准尉殿?」
L型懐中電灯の明かりを向けられた俺はその声の方に振り向いた。
「ああ、バーナード准尉だ。すまないが明かりを下げてくれないかな」
「失礼しました。私はシン・ファンレイ軍曹、この五番機のパイロットです」
立っていたのはヘルメットをすっぽりとかぶった女性兵士だった。
シン軍曹なんていうからてっきり男だとばかり思っていたのだ。
東洋系の顔立ちがとても魅力的な笑顔を作り出している。
「こっちこそ不用意だった。謝るよ」
「いえ、いきなり失礼しました。准尉殿が来られるということは聞いていたのですが、この時間まで来られなかったものですから」
シン軍曹はすまなそうにしている。
そんなにかしこまることは無いのだが。
「砲撃管制のやり方を思い出していたんだ。それでね」
「砲撃管制?」
シン軍曹はいぶかしげに首をかしげた。
「なんだ? 明日の任務を聞いていないのか?」
「私はただ准尉殿を乗せて指示通り飛べということだけしか・・・」
そういうことか・・・
「基本的にはその通りだが、危険度がまるっきり違うんだ。君と俺はこいつで前線を飛び回り砲撃管制を行なうことになるんだ」
「そ、そうだったんですか・・・」
目を丸くしているシン軍曹。
もっともなことで、前線での砲撃管制は本来ならファンファン型なんかでやるもんじゃない。
装甲トラックあたりの観測班が見晴らしのいい高地に陣取ってやるもんだ。
だが今回は何十門もの支援砲火を導くのではなく、ガンタンク一機の砲撃を管制するだけ。
だったら自分らでやれということなのだろう。
「ああ、はっきり言って撃ち落される可能性が非常に高い。だが、やるしかないんだ」
「了解です。しっかりとご指示通りに飛んで見せます」
気を引き締めたように敬礼をするシン軍曹。
「よし、出発準備をしてくれ。あと二時間で出発だ」
「はいっ」
シン軍曹は勇んでファンファンに乗り込んだ。
一日整備中隊に付き合って自分のザクを調整しながら、パトリシア・ノイマン曹長に合わせてMS-07Bグフが調整されていくのにも付き合った。
要するにこの07Bという機体は、敵にモビルスーツがいた場合、そいつと格闘するように作られていると言っても過言じゃない。
連邦に鹵獲されたザクを相手にしたことは何回かあるものの、連邦がモビルスーツを投入してきたというのが事実になった以上、こういった機体が必要なのかもしれない。
技術中尉に聞いた話だとすでに先行量産された機体がアジア方面のゲリラ部隊に回されているらしい。
ガルマ・ザビ司令のあだ討ち部隊だというからモビルスーツ戦を念頭に置いているのだろう。
それにしてもこのグフの武器はなかなかのものだ。
片手を丸まる機関砲にしているのはどうかとも思うが、右腕に仕込まれたヒートロッドという電磁ムチはその強力放電によって電装系をパンクさせる。
昼過ぎにパトリシアのミスで垂れ下がったヒートロッドにスイッチが入った途端、近くの装甲車の電子機器類はいっぺんでお釈迦になってしまったのだ。
幸い人員に被害は出なかったものの、私とパトリシアは技術中尉と中隊長にお叱りを受ける羽目になってしまった。
だが、あれなら当たっただけでも敵のモビルスーツは動けなくなるだろう。
もっとも、敵のモビルスーツなどというものにはできるだけ会いたくは無いものだわ。
「ローネフェルト中尉。ちょっと来てくれ」
コーニッグ中隊長が呼んでいる。
「はい、ただいま」
私はすぐに駆け寄った。
「ご用はなんでしょうか? 中隊長殿」
「まあ座れ」
直立し敬礼する私を椅子に座らせる大尉。
テーブルにはこの付近の地図が広げられている。
「はい、失礼いたします」
私は腰を下ろした。
「どうだ、グフは使えそうか?」
大尉はいきなり切り出してきた。
「あ、はい。ノイマン曹長は問題ありません。むしろ私の方がどうやってあの機体を役立てようかと悩んでおります」
これは事実。
あんな接近格闘戦用の機体をこの森林地帯で戦車やバギー相手に使えるのかどうか・・・
「そうか。それじゃ一つ頼みがある」
「なんでしょうか?」
軍隊で頼みがあるというのは命令だと言っているのと同義だ。
断るなどできはしない。
「奴らの前線基地に動きがあるらしい。ここのところおとなしかったが、もしかしたら攻勢を考えているのかもしれない」
「はい」
私はうなずく。
ガルマ・ザビ司令の戦死が伝わるにつれて連邦軍は息巻いてきているらしい。
攻勢に出てくるというのはありえる話だわ。
「そこでだ。グフの慣熟訓練も兼ねてちょっかいをかけて欲しい」
「ちょっかい?」
「そうだ。シュナイダー大尉がデカブツをもらったんでな。それで砲撃をかけて様子を見る」
なるほど。
「威力偵察ということですね?」
「そういうことだ。君の小隊は全部載せられるから歩かんでも大丈夫だぞ」
載せられる?
ザク二機とグフ一機を?
「詳しくはシュナイダー大尉と決めてくれ。俺は一個小隊を出すように言われただけなんでな」
大尉が席を立つ。
それでこの話は終わり。
私は立ち上がって敬礼し、大尉を見送った。
「シュナイダー大尉殿はどちら?」
私は戦車隊の方へ顔を出す。
マゼラアタックを指揮する歴戦の勇士シュナイダー大尉は尊敬できる立派な軍人だ。
それは戦車隊のみんなも同じらしく、シュナイダー大尉はたくさんの部下の信頼を勝ち得ている。
「ギャロワのほうにいると思います。中尉殿」
「ギャロワ?」
伍長の言葉に聞き慣れないものを聞いて思わず私は聞き返す。
「ギャロップ級の陸戦艇ですよ」
「陸戦艇?」
陸戦艇といえば部隊を搭載し砂漠や草原を移動する移動基地的代物のはず。
それがなぜこんなところに?
「あそこにありますから行ってみて下さい」
「わかったわ。ありがとう」
私は伍長に礼を言うとギャロップ級陸戦艇ギャロワへ向かう。
そこには確かにダークイエローを基調としたガウ級攻撃空母並みのデカブツが鎮座していた。
「確かにこれならグフもザクも入るわね」
私はその巨大さに圧倒されながらも近づいていった。
「失礼します。ローネフェルト中尉、入ります」
兵士に案内されてやってきたギャロップ級ギャロワの艇長室。
その扉をノックして私はそう言った。
「おう、山猫か? 入ってくれ」
山猫というのはいつの間にかついた私のあだ名。
ザクで木々の間をすり抜けるかららしいが、結構気に入っているのでシールドにパーソナルマークを描いてもらったりしている。
「失礼します」
私がドアを開けて入ると、さほど広く無い部屋にシュナイダー大尉と、大尉の副官であるヒンメル中尉が地図を前にして話していた。
「すまんな、無理を言って」
「いえ。ですがどのようなことをすればいいのでしょうか」
「すでにコーニッグ大尉殿からお聞きでしょうが、われわれは敵の前線基地に対してこのギャロワの主砲による攻撃をかけます」
私の質問に対しヒンメル中尉がそう答える。
このギャロワの主砲による砲撃ということはかなりの遠距離からの砲撃ということになるか・・・
「お偉方もまさかこいつが到着するとは思っていなかったんだろうな。申請したって届かないのが当たり前の状況だからとりあえず申請だけは出したんだろう。で、届いてしまったんで使わなきゃならないってところなのさ」
シュナイダー大尉が肩をすくめる。
それほど大柄では無い大尉だが、なぜか大きく感じてしまうのは人徳のなせる業か。
私がそんなことを思っていると、ガコンという音がして、このギャロワが少し振動した。
「搬入作業が始まったな」
「搬入?」
「ああ、ローネフェルト中尉の小隊のモビルスーツを積み込んでいるのさ。今夜中に砲撃地点に陣取り、明日早朝から砲撃を開始する」
「このギャロワには整備の連中も同乗します。中尉は明日までゆっくりしてくださって構いません」
全てが私の手の届かないところで進んでいるような気がする。
シュナイダー大尉もヒンメル中尉も優しそうな笑顔を見せてくれているが、何か落ち着かないような気分だわ。
「01:00には出発する。目的地はこの丘だ。ここなら見晴らしもよく主砲の砲撃には絶好だろう」
「現地到着は05:20ぐらいです。中尉以下のモビルスーツ隊は砲撃時の護衛を頼みます」
地図上の一点を指し示す大尉。
湖の近郊のなだらかな丘陵地帯だ。
確かにここならば遠距離砲撃には絶好だろう。
射程の関係から今までは使えなかった場所だが、陸戦艇の主砲は二十センチクラスだから充分に届く。
「了解しました。全力で護衛に当たります」
私は敬礼をする。
「部屋はパイロット用の部屋を好きに使ってくれ。当番兵に言ってくれれば夜食も用意させる」
「ありがとうございます。では失礼いたします」
私はその場を後にした。
『出発!』
パターソン大尉からの通信が入る。
23:00
第一中隊の全車両が目的の丘陵地帯へ向けて出発を開始した。
目的地点到達は06:00の予定。
そこにガンタンクを布陣させると同時に61式とファンファンは林へ下り敵の迎撃に備える。
ただ一機、俺とシン軍曹の五番機だけが先行して敵の基地に接近し、その座標をガンタンクに送信する。
ガンタンクはその座標を元にデータを入力して待機。
師団の攻撃開始時刻の07:00より砲撃を開始する。
敵は師団の攻撃に対応しなくてはならない上に、側面からの砲撃により戦力を減らされていくことになる。
と、都合よく行けばそういう結果になるのだが、戦場での格言に『敵と出会った瞬間に全ての計画は台無しになる』というものがある以上、そうそううまく行くはずも無いだろう。
「どちらにしても、再びここへ戻ってこられる確率はかなり低いということか」
「そんなことありません准尉殿。准尉殿はいつも無事に戻られていると聞きますし、この五番機は幸運の妖精が守ってくれますから」
シン軍曹が恥ずかしそうにコクピットに飾ってあるキーホルダーの人形を指差した。
それはにこやかに翅を広げたファンタジーに出てくるような妖精で、もうかなり薄汚れていたがその笑みは変わっていないようだ。
「俺が触ってへそを曲げられたら困るな。幸運にあやかるために手を触れるのはやめにしておこう」
「あ、そんな意味じゃ・・・」
「構わないよ。それよりも後ろ付いてきているか?」
俺は振り返ってみるが、すでに周囲は闇であり、前方を行く61式とかなり後方から就いてくる巨大な自走砲とも言うべきガンタンクのシルエットぐらいしかわからない。
「大丈夫です。簡易センサーにはしっかりと反応していますから」
「ならいいんだ」
俺は視線を前に戻した。
上空は見事な星空。
そんな中を木立の中に作られた一本の道を進んで行く。
あの星々の中でも戦闘が行なわれているのかもしれない。
それは俺たち以上に絶望的な戦いかもしれなかった。
ごうごうという音とかすかな振動。
林の中を抜けるなどこの巨体には無理なこと。
荒地を迂回し、湖の上を走ることで目的地へ向かって行く。
ホバークラフトならではの行動力だ。
私は明日に備えて少し横になる。
どちらにしても浅い眠りしか取れないが、眠らないと判断力が鈍ってしまう。
軍服のままでベットにころがり振動に身を任せる。
こんこん・・・
こんこん・・・
うつらうつらしていた私はその音で目が覚める。
あれはノックの音に間違いない。
「どなた?」
「ノイマンです・・・起きていらっしゃいましたでしょうか?」
パトリシア?
一体どうしたというの?
「起きているわ。入りなさい」
「失礼します」
少しおどおどしたような感じのパトリシア・ノイマン曹長が入ってくる。
「どうしたの? 寝ていなくちゃだめじゃない」
「す、すみません・・・どうしても眠れなくて・・・」
少しうつむいて口ごもるパトリシア。
そうか・・・
彼女にとっては初陣なのだわ。
軍服を着ているとはいえ、彼女は十七歳の少女に過ぎない。
明日のことを考えると眠れないのは当たり前だろう。
「仕方ないわね・・・こっちへいらっしゃい」
私はベットの傍らを開けてパトリシアを呼ぶ。
「よ、よろしいんですか?」
そのつぶらな瞳が輝いているのに拒否なんかできるわけが無い。
「どうせそのつもりだったんでしょ?」
「ありがとうございます。中尉殿」
彼女は喜んで私の隣に寝転がる。
そして、私に笑顔を見せていたのもつかの間、すうすうと寝息を立ててしまっていた。
「お休みなさい曹長」
私はその寝顔にそっと囁いて眠りについた。
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- 2005/11/22(火) 20:05:35|
- ガンダムSS
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えーと・・・
調子に乗ってます。
昨日の続き的な話を書いちゃっています。
ガンダムネタで書くのがこんなに楽しいと思わなかったもので・・・
すみませんがいま少しお付き合いのほどを。m(__)m
「攻勢に出る? こちらから?」
俺は耳を疑った。
わざわざジャブローから派遣されてきたという大尉殿は突拍子もないことを言ってくれる。
「ええ、敵は我が軍のモビルスーツガンダムによって北アメリカ方面軍司令官ガルマ・ザビを失っています。敵の指揮系統が混乱している今こそこのアラスカ方面で攻勢に出てキャリフォルニアを圧迫するのです」
メガネの奥の瞳を輝かせながらとうとうと御説を披露してくれるキャサリン・パターソン大尉殿。
言っていることに間違いはない。
確かに敵の上層部の指揮系統は混乱しているだろう。
それに乗じて攻勢に出るというのも作戦として悪く無いと思う。
ただし、見合った戦力があればの話だ。
「大尉殿。お言葉ですがそれには戦力が不足していると思われます。補充は見込めるのですか?」
「もちろん。私はあなた方に無理をしろと言っているのではありません」
「それは助かる。で、どれだけの戦力が?」
俺と同様に戦車小隊の指揮を取っているオーソン・マクスウェル准尉が顔をほころばせる。
無理もない。
先日の戦闘では彼の小隊は二両しか残らなかったのだ。
戦力の補充は一刻も早く欲しいところだろう。
「ファンファン型ミサイルホバーに有線ミサイルバギーが六両。士気の高い負け知らずの若手の兵士たち。それにガンタンク型のモビルスーツが一機です」
モビルスーツが来る?
いよいよ我が軍にもモビルスーツが配備されるのか?
「詳細は追って指示しますが、三日後には攻勢に出れるようにしてください。いいですね」
「ハッ」
俺もマクスウェルも敬礼をして命令を受ける。
それしかできることはないのだから。
「補充ですか?」
缶詰の魚を飲み込みながら私はそう言った。
連邦軍は相変わらず美味しいものを食べている。
この缶詰だって鹵獲したものだが、その味は一級品だろう。
どだい私たちジオン人は魚をそうしょっちゅう食べられるものではない。
本国の漁業コロニーで作られる魚はとても高くておいそれとは手が出ない。
お母さんもぼやいていたっけ・・・
「ああ、君にもようやく新型が回せるぞ」
「新型?」
私は中隊長であるコーニッグ大尉に聞き返した。
06Jの後釜ということなんだろうか・・・
「ああ、先ほどファットアンクルが持ってきてくれた。MS-07Bグフというらしい」
「グフ・・・ですか?」
聞いたことがない機体だが、06Jみたく宇宙用から地上用にしてみました的な機体で無ければいいけれど・・・
「それと部下を一名預ける。いいな」
「あ、はい」
私は敬礼して大尉を見送った。
あとで新型を見てこようなどと柄にもなくうきうきしながら・・・
「大尉殿・・・これは?」
俺とマクスウェルの前には巨大な戦車が組み立てられていた。
「RX-75ガンタンク・・・ね・・・まさかこんな代物だったなんて・・・」
パターソン大尉も何か落胆したような表情に見える。
ジャブローで聞いていたのとは違ったということなのか?
「ただのでかい戦車じゃねえか」
「一応手らしきものはあるな」
マクスウェルにそう言ってやるが、気休めにもならない。
あのザクが自由に武器を持ち替えることができるのに比べれば、指さえ付いていないこいつは手なんていうものじゃない。
「単にロケットランチャーをつける場所がなかっただけだろ」
俺もそう思う。
「で、どうするんですか? 大尉殿」
「どうもこうもやるしかないでしょう・・・手持ちを駆使して攻勢に出るしかないわ」
メガネを指で直しながら大尉は不安を隠そうともしない。
「あのー・・・」
「なんだ!」
背後からの声にマクスウェルが荒々しく反応する。
「第18師団第2大隊第1中隊はこちらでしょうか・・・」
歯切れの悪いおどおどしたような尋ね方。
マクスウェルが一番嫌うタイプだな。
俺が振り返ると、そこには男女取り混ぜた軍服を着た高校生たちが居た。
「そうだけど・・・」
パターソン大尉が彼らを見回す。
「よかった。私たちは本日付で第一中隊に配属されました。以後よろしくお願いいたします」
「お願いいたします」
「お願いいたします」
口々にそう言って頭を下げて行く。
俺とマクスウェルは顔を見合わせ、パターソン大尉はがっくりとうなだれた。
「ふう・・・」
食事のあとの散歩としゃれ込む。
中央のランディングゾーン付近のハンガーでは煌々とライトが点いてモビルスーツの整備作業が行なわれているようだ。
私はそちらの方へ足を向ける。
MS-07B・・・
どんな機体なのだろう。
どうしよう・・・
なんかわくわくしている・・・
ああん・・・どうしよう・・・
私は知らず知らず足を速めてハンガーへ駆け込むようにたどり着く。
かまぼこ型のハンガーは立ったままのモビルスーツを整備するために天井がとても高い。
その入り口で歩哨に立っている若い兵士たちに答礼を返し、私は中に入っていった。
そこにあるのは六機のモビルスーツ。
二個小隊の定数が揃っている。
いつ以来だろう、定数が揃ったのは。
いつも二個小隊で四機あればいいほうだったのに。
しかもその中央に青いモビルスーツがいる。
両肩からはまるで天を突くように先の尖ったスパイクが生えていて、背中には驚いたことに中世の戦士のような剣を背負っている。
左腕には06Jなんか問題にならないぐらいの大きい盾を装備して・・・?
指先が・・・無い?
左手の指先は中途半端な位置で途切れて穴が開いているわ・・・
あれは一体?
それに右手にも手首のところに大きなボックスがついている。
あそこから何かが出てくるみたいだけど・・・
「来ましたね、ローネフェルト中尉」
「えっ? あっ」
私が振り返ると整備中隊の技術中尉がやってくるところだった。
「あれがMS-07Bグフです。どうですか?」
技術中尉は私の隣に立つとグフを見上げてそう言った。
「青はこのあたりでは目立ちますね。グリーンにしてくれると助かるんですが」
「残念ですがそれはできかねます。この青は一応は電磁波吸収塗料でして、上に塗ってしまうと意味をなさないんですよ」
私の提案をあっさり断ってくれる技術中尉。
ミノフスキー粒子を撒けばそのあたりは気にしなくても良さそうだし、音響センサーや熱源センサーはごまかしようが無いと思うんだけどな・・・
「あの左手の指は取り付け前?」
「それも違います。あれはこのグフの自慢の一つだそうでして機関砲が仕込んであるようです」
仕様書をめくりながら答えてくれる技術中尉。
「宇宙空間の戦闘でMS-06Cが戦闘中に武装を失うという事態が頻発しましてね。固定武装が欲しいという要望に答えたそうです」
それは単にマシンガンやバズーカを手放してしまっただけの事だと思うけど・・・
「マシンガンやバズーカは持てるの?」
「そりゃあ、持とうと思えば持てないことも無いでしょうが・・・右手にもヒートロッドという武器がありますから必要ないでしょう」
そうかしら・・・
武器はいつでも多い方がいい。
ザクのいいところはその手持ち武器の多さだと思うのに・・・
「それと装甲も厚くなっています。コクピットの直撃でもなければそうそう戦闘力を失うことはありませんよ」
確かにそう・・・
でも先日の戦闘では的確にそこを狙われたわ。
「ローネフェルト中尉殿」
呼びかけに私は振り向く。
そこには地上だというのに真新しいノーマルスーツに身を包み敬礼をしている栗色の髪の少女がいた。
「あなたは?」
「はい。このたび中尉殿の貴下に配属されましたパトリシア・ノイマンです」
少女はそのつぶらな瞳をまっすぐに私に向けてきた。
「目標はここよ。ジオンの前線基地」
パターソン大尉が地図上の一点を指差す。
林の中に作られたジオンの拠点だ。
先日の連中をもそこを中心にこちらに攻勢を仕掛けてきたのだった。
「今度はこちらからということですか・・・」
「ええ、そうよ。ここを放っておけばアラスカでのにらみ合い状態が続いてしまうわ。それは避けたいし・・・ヨーロッパから敵の目をこちらに向けたいし・・・」
「ヨーロッパから?」
マクスウェルが聞き返した。
「ええ、これは絶対に秘密にして欲しいんだけど・・・もしどこかで話が聞こえたら私はあなた方を疑うからそれでもいい?」
「結構ですよ。聞かせて下さい」
俺は何となくパターソン大尉に親近感を持った。
普通はこういった重要なことは教えられるもんじゃない。
「ええ、近いうちにヨーロッパで一大反攻作戦があるわ。そのために各地の我が軍は策動して敵の目をひきつけることになるの。ここでもアジアでもアフリカでもよ」
「なるほど・・・それで戦力も整わないうちに攻撃に出ろ出ろって言うわけだ」
マクスウェルの言葉に俺と大尉はうなずいた。
どちらにしても待っていれば戦力が増えるという保証も無いし、敵がガルマ・ザビの戦死から立ち直ってしまいかねない。
俺たちの中隊だけじゃなくどの中隊だって戦力は乏しいし、この際贅沢は言っていられないか・・・
「大尉殿、航空攻撃である程度叩けないんですか?」
「だめね。近くにジオンの前線飛行場があるわ。24時間体制で偵察哨戒機が飛んでいるからすぐに迎撃されちゃうの」
「それで納得がいきましたよ」
そうだったのだ。
この近くでは比較的ミノフスキー粒子の濃度が薄い。
無線通信もわりとやりやすいんだが、それがなぜか引っかかっていたのだ。
偵察機の能力を発揮するためにわざとある程度しか撒いていないのだとすると話はわかる。
「となると、あながちあのデカブツも無意味じゃないか・・・あいつならかなりの射程があるからな」
「そういうこと。私たちは林を迂回しこの地点まで進出。師団の攻撃にしたがって側面から砲弾を叩き込む」
パターソン大尉は林の外周を囲む丘陵地に印を付ける。
そこからならあのガンタンクの主砲弾で前線基地を射程内に納められるのだ。
「敵の航空索敵にはこちらもディッシュで対抗するわ。TINコッドとフライマンタが陽動をかけてドップ隊を引きつける。その間にできるだけ進出するためにも明日の夜には出発よ」
「夜間行軍ですね? 了解です・・・が・・・」
一抹の不安がよぎる。
やってきたばかりの連中はまだこのあたりに不慣れで右も左もわからない。
そんな状態での夜間行軍は迷子続出になりかねない。
かと言ってライトを煌々と点けての夜間行軍では何の意味も無い。
「バーナード准尉の言いたいことはわかるわ。新米たちのことでしょ?」
「ええ」
「仕方ないわね。いつかはやってもらわなければならないんだし、私が最後尾でできるだけサポートするわ」
「わかりました」
俺はうなずくしかできなかった。
「あなた・・・歳はいくつ?」
レディに歳を聞くのは心苦しい。
だけど明らかに彼女は少女だ。
学校を出ているのかさえ疑わしくなる。
「は、はい。じゅ、十七歳です」
「じゅ、十七?」
私は息を飲んだ。
本国の人的資源の払底はここまで深刻なのか?
「ハイスクール生じゃない・・・」
「あ、でも訓練はきちんと受けていますし・・・それに私・・・志願兵ですから」
まっすぐな眼差し。
恐れも何も無い。
「志願ですって? どうして・・・」
私にはわからない。
私のように徴兵期間中に戦争が始まったのならともかく、自ら彼女のような少女が志願するなんて・・・
「我が家では長子は男女問わず強くあらねばならないんです。ですから私も」
「あなたの父親をここへすぐに呼びなさい! 私がひっぱたいてやるわ!」
「父は宇宙です。艦隊を率いて戦っています」
パトリシアの目が険しくなる。
自分の決めた道だから父は関係ないというように・・・
「わかったわ。ごめんなさい。でもいいこと? 私の命令には絶対服従。いいわね?」
「はい!」
彼女の背筋がピンと伸びる。
「グフの操縦は?」
「え? は、はい。シミュレータでの訓練は受けています」
「なら、これはあなたが乗りなさい」
私はそう言って背後の青い機体を指し示す。
目立つ色だが06Jよりは生き残る確率が高いはず。
少なくとも私より動かし方を知っているだけましだろう・・・
「で、でも・・・」
「これは命令よ。私は乗りなれた機体の方がいいの。ということだからこの娘用に調節してあげてください技術中尉殿」
「いいんですか?」
今まで黙って聞いていた技術中尉がにやりと笑う。
「いいのよ。ザクよりははるかに生残性が高いんでしょ?」
「それはそうですが・・・」
「ならこの娘に乗ってもらいたいわ。コーニッグ大尉にもそう言っておきますから」
私はそう言ってこの基地内を案内するためにパトリシアの手を取った。
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- 2005/11/21(月) 22:33:36|
- ガンダムSS
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なんか以前に比べて登場人物が成長してしまったかもしれません。
以前より前の時点の話なので問題なんですが、書いていっているとキャラが勝手にセリフを言い始めて苦労します。
まあ、大目に見てやって下さいませ。m(__)m
『林を抜けてきたところでモノアイを潰すんだ』
「了解です」
俺はそう返事をすると主砲の照準を木立の上に合わせておく。
『接近中。足音は二台。キャタピラ音が三台です』
装甲トラックの音響センサーからの情報だ。
それにしてもかなりの戦力だな。
こちらは一個機械化中隊。
向こうは二個小隊といったところだろうが、戦力は圧倒的に向こうが上だ。
こちらのチャンスは奇襲のみ。
林を抜けてきたところで一斉射撃をぶつけてやる。
それしか勝ち目は無いだろう。
「航空支援は?」
『発煙弾で呼べる。安心しろ』
航空戦力だけはまだこちらが優勢だが、それとていつまで持つものか・・・
彼らは宇宙育ちの癖に地上でも良く動き回る。
俺の車両の周囲にはダックイン姿勢で主砲を宙に持ち上げている61式が十一両。
そのほかに後方支援車両として音響センサーつきの指揮トラックが一両。
ファンファンタイプのミサイルホバーが三両。
APCで待機している歩兵が十数人。
これだけの戦力で少なくても数時間は敵を足止めしなければならないのだ。
よそう・・・
考えるだけで気が滅入る・・・
俺はハッチを開けて外の空気を取り込んだ。
まったく歩きづらいったらありゃしない・・・
重力下で二本の足で歩くにはこのモビルスーツというやつは大きすぎる。
マシンガンを持った腕で枝をへし折りながら進んでいかなくてはならないのだ。
こちらの歩いた後を悠々とマゼラアタックが付いてくるのが何か腹立たしくも感じてしまう。
『中尉殿、もうすぐ林を抜けます』
先行する二番機のワルター・オーグマン少尉が言ってくる。
ヒートホークが熱源として捕らえられるかもしれないが、どうせ音響センサーをごまかすことはできないし、木立を抜けるには仕方が無い。
「林を抜けたところでアンブッシュしているでしょうね。気をつけて」
『心配いりませんよ。戦車じゃこちらには勝てませんって』
何を馬鹿なことを言っているのかしら・・・
連邦軍だって馬鹿じゃないし、モビルスーツだって無敵じゃない。
対戦車ミサイルの直撃だって当たり所が悪ければ動けなくなるのだ。
ここは宇宙じゃない。
アラスカとカナダの国境地帯。
アラスカにある連邦軍の基地はまだまだ健在だし、この森林地帯では視界だって届きづらいのだ。
足元を吹き飛ばされればザクはただの動けぬ機械に成り下がる。
脚を吹き飛ばされようが腕を無くそうが動ける宇宙とは違うのだ。
「オーグマン少尉、ここは地上よ。気を抜けばやられるわ」
『中尉殿はこいつが信用できないんですか?』
私は内心舌打ちする。
信用するしないではなくこのザクに対する備えをしているだろうということがなぜわからないのか?
『ローネフェルト中尉、われわれは両翼に展開する』
後方のマゼラアタックが左右に分かれて行く。
「了解です。ご武運を」
『おう、そちらもな』
マゼラアタックの指揮官シュナイダー大尉はなかなか気持ちのいい人だ。
部下思いで部下からの信頼もあると聞く。
だが、そういう人に限ってこういった辺境に飛ばされてくるのはどうしてなのか・・・
ルウムの戦いでは05型で連邦の巡洋艦を沈めたという話だから、モビルスーツパイロットとしての腕は確かだろうに・・・
「オーグマン少尉、マゼラが展開するまで停止します」
『了解。さっさとしてくれないですかね、ホント戦車ってグズなんだから』
「オーグマン少尉!」
私は歯噛みした。
誰がこんな馬鹿にザクを任せたのか?
マゼラアタックもドップもザクも持ちつ持たれつだ。
どれかが欠けても戦場で生き残るのは困難になるというのがわからないのか・・・
『どうかしたんですか、中尉殿? いきなり大声出して』
「無駄口を叩かずに前方を注意していろ」
私はそれだけ言って口を閉じた。
『キャタピラ音左右に展開。こちらの待ち伏せに気がついたようです』
ふう・・・
俺は内心でため息をつく。
だが、まあ当然だろう。
林を抜けたところでのアンブッシュはあまりにも当たり前のことだ。
敵が警戒しなければそれこそ馬鹿の集まりになっているところだろう。
「確認するぞ、弾種はM35だな」
「ええ、しっかり二門とも装填済みです」
「よし、モノアイ潰しはほかに任せてこっちはコクピットを撃ち抜くんだ」
APFSDSのM35ならコクピット周りの複合装甲だって何とか抜けるはず。
手足を潰すよりも手っ取り早い。
「ええ、いつまでも奴らにいい顔はさせませんよ」
照準器を覗き込みいつでも引き金を引けるように待機しているアルバーグ軍曹。
こっちへ来てからの付き合いだが主砲の扱いは一級品だと思う。
『バーナード准尉、一号車聞こえるか?』
「こちら一号車。どうぞ」
『敵が出てくるぞ、用意はいいか?』
装甲トラックの中隊長はいつでも逃げ出せる準備をしているだろう。
それが戦争なんだから仕方が無いが・・・
「いつでもいいです」
『よし、戦車隊の指揮は任せる。こちらは気にせずに頑張ってくれたまえ』
ふう・・・
俺はもう一度ため息をついた。
『ローネフェルト中尉、こっちはOKだ。前進を開始してくれ』
「了解です」
シュナイダー大尉に返事をして私はアクセルペダルを踏みしめる。
MS-06J陸戦型ザクがゆっくりと前進を開始する。
林の切れ目はもうすぐ。
そこを抜ければ連邦軍の待ち伏せがあるだろう。
『あらよっと』
私はその軽口に思わず振り向いた。
林の木立を無造作にヒートホークで切り倒す馬鹿がそこにいた。
「オーグマン少尉!」
私は思わず怒鳴っていた。
目の前の木立が次々となぎ払われていく。
今までその姿を隠してくれていた木々の向こうにあのMS-06ザクの姿が視認できる。
『バーナード准尉・・・』
瞭車からの無線が入る。
ミノフスキー粒子の濃度が薄く、まだ無線が我慢できる状態だ。
「もう少しひきつけろ。おあつらえ向きだが・・・」
俺の車両を含めて六台の61式の十二門の主砲がゆっくりとその軸先を変更して行く。
息の詰まるような瞬間だが、じっくりと待つ。
ザクはその武装であるヒートホークでわざわざ射線を通してくれている。
この林の戦闘には慣れていないのが一目でわかるが、宇宙から降りてきたばかりなのだろうか・・・
そのザクが立ち止まる。
モノアイが輝き、こちらの存在を確認する。
まるで驚いたように一瞬の静止。
「撃てぇ!」
俺はそう言い放った。
「オーグマン少尉・・・」
私の目の前でザクの頭部が吹き飛んで行く。
右腕がマシンガンとともに吹き飛んで行く。
左肩のシールドが付け根から外れて吹き飛んで行く。
そして・・・
胴体部分からどす黒い煙がみるみる吹き出して行く。
「オーグマン少尉!」
返事は無い・・・
当然だ・・・
あれだけのHEATとAPFSDSの直撃を受ければザクの複合装甲だって撃ち抜かれてしまう。
せっかくこのアラスカの森林がザクの巨体を隠してくれていたというのに切り払ってしまっては意味が無い。
私は歯噛みしながらクラッカーを取り出すと放り投げた。
「次が来るぞ、後退しろ!」
俺はダックイン姿勢から急速にバックさせる。
せっかく掘った壕だがそこにいては命が無い。
キャタピラをきしませながら全ての車両が後退を始めるが、あまりに戦果が喜ばしかったのだろう。
数両は反応が遅れていた。
ザクが倒れるところに見惚れていたのかもしれない。
しかしそのお返しは苛烈だった。
ザクの手榴弾が上空で炸裂し、逃げ遅れた三両が一瞬にして炎上する。
「くそっ」
炎上する61式から二人ほどが火達磨になりながら転げ出て来るがあれでは助からないだろう。
「弾種M32、撃てっ」
主砲が轟音とともにHEATを吐き出す。
自動装填装置がすぐに排莢して次弾を装填して行く。
ザクをも隠しかねない原始林の木がまた一本倒れて行く。
「ホッパー来ます!」
操縦手のレックス伍長が声を張り上げた。
見るとザクの脇からジオンの特殊戦車の砲塔が飛び上がり始めている。
「いつもながら汚いよな、ジオンの奴ら」
俺はそう言いながらアルバーグの肩を蹴飛ばす。
そうでもしないと戦闘中は夢中になってしまって命令が伝わらない。
「アルバーグ、上だ! ホッパーが来る」
「了解、撃ち落してやります」
61式の主砲が虚空に向かってせり上がっていった。
『ローネフェルト中尉は支援してくれ。ここは俺らが引きつける』
「大尉、すみません。むざむざザクを・・・」
『弁解はあとだ。そこの位置から単射にして狙撃しろ』
「了解しました」
私はシュナイダー大尉の言うとおりにマシンガンをシングルショットに切り替えて木立の影から狙いをつける。
大尉はわざわざ安定性を犠牲にしてマゼラトップを飛び立たせて囮よろしく敵の目を引いてくれる。
マゼラトップは高位置から敵の上面装甲を撃ち抜くように作られているが、その設計はどちらかというと机上の空論を無理やり形にしたものと言っていい。
空中での主砲の命中率は極端に落ちてしまうのだ。
それなのに飛び上がる理由は囮以外の何者でも無いだろう。
私はマゼラトップの一機に向かうミサイルホバークラフトに一撃をお見舞いした。
「惨敗だな・・・」
後退する61式の砲塔の上で俺はタバコをふかしていた。
たなびいていく煙が戦場の方へ流れて行く。
結局戦果はMS-06J一機とマゼラアタック型戦車の砲塔が一機のみ。
こちらはファンファン型が二機に61式が七両、それに装甲トラックを失っていた。
中隊長の戦死が引き金となり、戦場を離脱するものが続出してしまったのだ。
頼みの航空支援はぎりぎりのところでフライマンタが二機来てくれただけ。
それでも、そのおかげで俺はこうして生きていた。
あのフライマンタの少尉にはいつか会ってお礼をしたいものだ。
耳に心地よい優しい声。
きっと美人だろうとは思いつつも一抹の不安はある。
確か・・・エリアルド少尉といったはず。
あと、あのザクのエンブレム・・・
あの山猫は忘れない・・・
そこかしこに残骸が転がっている。
ところどころでまだ黒煙を上げているものもある。
短いが苛烈な戦闘はとにかく終わった。
私のザクもほとんど弾を撃ち尽くし、もう少しで弾切れを起こすところだった。
オーグマン少尉のザクは間もなくやってくるファットアンクルが回収して行くだろう。
見事なまでの一斉射撃。
確かに少尉はうかつだったが、あそこまでの集中砲火は予想していなかった。
中でもコクピットへのAPFSDSの一撃は一瞬で少尉の命を奪っていっただろう。
これからの戦いは厳しくなりそうだ・・・
「ローネフェルト中尉、無事で何より」
「ありがとうございますシュナイダー大尉」
私は歴戦の勇士に敬礼する。
「さすが山猫だな。木々の間をすり抜けるさまは見事だった」
「それほどでは・・・大尉こそマゼラトップで二両撃破。さすがです」
「まあ、君にばかりいい顔はされたくないからな。それよりも聞いたか?」
「は?」
私は何のことかわからずに問い返す。
「連邦もモビルスーツを投入してきたらしい。カリフォルニアでは蜂の巣をつついたような騒ぎだ。ガルマ司令が戦死したってな」
「ま、まさか・・・」
私は絶句した。
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- 2005/11/20(日) 22:25:29|
- ガンダムSS
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昨日に引き続いて三国志好きな群雄パートⅡです。
その名も高き? 袁紹殿です。(笑)
まあ、言うまでも無く名家中の名家出身ですね。
四代続いて三公(太尉・司空・司徒の三つの高い位)を務めたほどの名家の出身ですからいわゆるお坊ちゃんです。(笑)
見た目は堂々としていかにも頼りがいのある男子といった風貌だったそうですが、残念なことに見た目のように頼れる方ではなかったようです。
都で傍若無人の行動をとっている董卓に反対して逃亡。
反董卓連合軍の盟主となりどさくさにまぎれて勢力を伸ばします。
しかし、董卓が死に帝がさまよっている時に、軍師である郭図が帝を手中にするべしという進言を行ないますが、何もしないままただ曹操に帝を持って行かれます。
で、何もしなかったのだからあきらめればいいものを地団太踏んで悔しがったりするんですよね。(笑)
また沮綬がなりませんと諌めたにもかかわらずに、息子たちに領地を分配したため、それぞれが半独立状態となり統一行動が取れなくなっちゃいます。
そのようになかば自分の行動が原因で袁家が衰退してきたにもかかわらず、曹操が大きな顔をするのは許せんとばかりに戦いを挑みます。
いわゆる官渡の戦いなんですが、ここでも軍師の意見を退けて決戦を挑み敗れます。
結局失意のうちに世を去るのですが、死ぬ時に跡継ぎを伝えておかなかったために肉親同士で後継者争いが勃発。
そこを曹操に突かれて袁家は滅亡するんですね。
最後の最後まで周りに迷惑な男だったんですが、まあ、これほど好き勝手やって死ぬのも個人的には好きですね。
(参考文献 学研歴史群像シリーズ三国志上下)
- 2005/11/19(土) 22:27:05|
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数々の英雄が乱立する中国三国時代ですが、魏、呉、蜀の三国鼎立以後のいわゆる三国志時代よりもそこに至るまでの群雄割拠の時期の方がいろいろと一癖も二癖もある連中が揃っていますよね。
もちろん劉備、孫権、曹操のような生き残り組みではなく、滅んで行く群雄が多かったわけですが、わけても袁家は生き残るチャンスをみすみす失ってしまったように感じます。
私は袁家の二人、袁紹と縁術のともに好きなんですよね。
名門の誇りを持ち、実力が伴わないことに気がつかず、やがて滅んで行くのですが、中でも袁術はその滅び方がすざまじいですよね。
兄貴分である袁紹とともにいるかと思えば袁紹に敵対してみたり、個人の欲望に任せた行動が彼の基本です。
帝が行き場を失った時も、それを支えて帝室を再興・・・などとはつゆほども考えずに、「俺が皇帝になってやろう」と言い出し周囲を慌てさせますね。
しかもついにそれを実践してしまい、周囲の諸群雄から嘲笑を買ってしまいます。
しかし本人はそんな周囲の顰蹙をものともせずに皇帝として領民に重税を課し、贅沢三昧の暮らしをするんですよね。
酒池肉林の限りを尽くし、領民は飢えに苦しんでいても宮殿では食料が消費されずに腐っていく状態だったそうです。
結局自分さえよければいいという状態では敵にかなうはずがなく、劉備や呂布に破れて袁紹の下に逃げ込む途中で亡くなります。
まあ、好き勝手した挙句の惨めな死なんですが、私はこういう人がとても好きなんですよ。
自分の無能ゆえに名門の家を滅ぼしてしまうのは日本でもありますよね。
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- 2005/11/18(金) 22:22:30|
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今日も個人的に好きな作品を紹介しますね。
古い作品ばかりで手に入れづらい作品ばかりでしょうが、ご勘弁下さいませ。
小説
「女教師痴漢通学」 倉田稼頭鬼著 フランス書院文庫
美人女教師が学生である主人公に痴漢されたり陵辱されたりします。
しかし、主人公に陵辱されている時に主人公の家庭教師である女性が現れ、彼女の言いなりに反撃するうちにヒロインの中にもサディズムが呼び覚まされていきます。
最後は自ら学園内で男子学生を挑発したりする女王となって行くのですが、その変貌振りが萌えでした。
アダルトマンガ
「触手」 市川和彦著 司書房
そのものずばりのタイトルですが、この単行本内の「妖魔誕生」という作品がツボでした。
妖魔の巣くう森に女戦士が乗り込んで行くのですが、雑魚を倒したものの妖魔(男性形態)に翻弄され、その邪眼によって発情させられてしまいます。
そして妖魔とのセックスに溺れて行き、妖魔の精液を飲み続けて・・・
新たに妖魔を退治に来た戦士を不敵に見下ろしていた妖魔は女性形であり、かつての女戦士が妖魔に変貌してしまったものでした。
「欲望の螺旋」 星野竜一著 ミリオンコミックス
この単行本内の「THE SPIRAL OF DESIRE」が好きな作品です。
学園内でカリスマ性を発揮する男子学生を調査する主人公の彼女。
しかしその男子学生は催眠術を駆使して学園内で権力を掌握していたのです。
主人公の彼女も催眠にかけられ言いなりに・・・
最後は主人公の逆転勝利に終わるのですが、まあ楽しめました。
今日はこんなところで。
ではまた。
[好きな作品パートⅡ]の続きを読む
- 2005/11/17(木) 22:52:03|
- 本&マンガなど
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改造スキーな舞方としては外すことのできない仮面ライダーfirstをようやく見てくることができました。
映像としてはなかなか見せてくれますねー。
藤岡さんや佐々木さんとは違う本郷猛や一文字隼人がどうかなと思いましたが、黄川田さんも高野さんも彼らなりの本郷猛や一文字隼人を好演していていい感じで楽しめました。
しかーし!
(以下ネタバレとなるので、まだ見ていない方は読み飛ばされることをお薦めします。)
ちょっとしたことなんですが不満もありました。
まず最大の不満というかショッカーの問題点として、洗脳が問題ありすぎです。
確かに洗脳をしなくてもリジェクションがあるため、一定期間を置いて定期的に血液交換の必要があるのが、ショッカーの改造人間の問題点なのですが、逆にそれによって裏切られづらくなっているのも事実です。
しかし、まがりなりにも洗脳を施したと思われる本郷猛はショッカーのために一般人を襲いますが、その時に自分が大学で研究していた水の結晶=雪を見てその美しさに洗脳が解けてしまいます。
なんじゃそりゃーと思ってしまいましたね。(笑)
しかもその裏切り者本郷猛を倒すために新たに作り出した同型の改造人間、いわゆる仮面ライダー二号は本郷猛を倒すことに執着はするものの、ヒロインである緑川あすかにも執着し、仲間の改造人間バットに彼女が襲われたときにそれをかばい、またもや裏切り者認定。
作るはしから裏切られていては問題ありすぎでしょう、やはり。(笑)
あとはせっかくコブラとスネークに改造されてしまうカップルの人間であったときのエピソードを盛り込んだのですから、やっぱり改造されるシーンを入れて欲しかったですね。
病気を治すためと言われて改造されるなら喜んで改造されていくあたりを見せて欲しかったです。
まあ、とは言うものの、楽しめた作品であるには違いなく、久し振りに仮面ライダーを見たなという気分にさせてもらいました。
戦いの中で、戦う構えとしてかつての変身ポーズが取り入れられていたのには見事な取り入れ方だと思いましたよ。
個人的には最後にヒロインが改造される直前にライダーに救出されるシーンを、すでに改造されてしまって悲壮な思いで彼女と戦う仮面ライダーという感じにして欲しかったです。
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- 2005/11/16(水) 22:17:38|
- 映画&TVなど
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今日は少し早めにアップ。
なんか寒さが日ごとに増していってますので、皆様風邪などひかないようにして下さいね。
今日は今までとちょっと変わったSSを投下します。
楽しんでいただければ幸いです。
雷鳴・・・
外はものすごい雨・・・
馬車の車輪が回転する音さえ掻き消される。
時々強い稲光が窓から差し込んでくる。
ガラスを叩く雨音はますます強くなるばかり。
私は恐ろしさに手を握り締めた。
『旦那ぁ、日も暮れかかっているしこれ以上は無理でさぁ』
御者台の上からずぶ濡れになりながら馬車を操る御者の声がする。
「何とか行けるところまで行きたいんだが次の村まではどれくらいかね?」
私の隣で優しく私の肩を抱いてくれている良人の声がする。
暖かく力強い良人の手。
私にとって安らぎをもたらしてくれる手。
『あと二時間は掛かりますぜ。山道はこの天気じゃ危険だ』
「明後日の夕刻には到着しなくてはならないんだ。何とか頼む」
窓越しでの会話にすら大声で怒鳴りあわなくてはならないほどの雨音。
『しかし旦那・・・』
「倍額払う。何とかやってくれ」
『へ、へい・・・』
しぶしぶといった感じの御者の声。
この雨では無理も無いわ・・・
私はただ恐ろしさに目をつぶって震えている。
「あなた・・・」
私の肩を抱く腕に力がこもったのを感じ、私は良人の顔を見上げた。
「大丈夫だよ。仕事が忙しくて出発が遅れてしまったが君の妹さんの式には間に合わせるからね」
「でもこの雨の中では・・・」
私は心配だった。
これからは山道に差し掛かる。
雨は道を崩れやすくしてしまうのではないだろうか・・・
「なあに心配はいらないよ。彼はプロだ。良くも悪くもね。こういった天気で走るのには慣れているしお客の懐から割増料金をもらう術も心得ているのさ」
眼鏡越しの優しい瞳が私に向けられている。
青いその瞳は私を夢の世界に連れて行ってくれそうなほど淡く深い。
私は彼に身を預けて寄りかかる。
恐怖など何も無い。
彼がいてくれれば私にはほかに何も必要なかった。
窓から差し込む稲光。
それはますます激しくなる。
馬車は先ほどから全速に近い速度で走り続けていた。
二頭立ての馬車は一刻も早くこの忌々しい山道を抜けてしまおうとするかのように右へ左へとカーブを切る。
そのたびに良人の手が私を支えてくれていた。
私の愛する良人。
この人がもしもいなくなってしまったら私はきっと死んでしまうだろう。
「想像以上にひどい雨だな・・・道が崩れなければいいが・・・」
良人のそんな言葉を聞いた時、私の体は宙に浮いた。
「きゃあああああ・・・」
「な、なにぃっ!」
瞬く間に世界が反転して行く。
馬車の床と天井がぐるぐると回転する。
波にもまれる木の葉のごとく私の躰はもてあそばれる。
ドンッと言う音とともに私の意識は遠ざかっていった。
『ヘレン・・・へレン・・・しっかりするんだヘレン』
どこからか良人が私を呼んでいる。
私は闇の中から手を伸ばす。
だが良人の姿がどこにも見えてこない。
『あなたぁ・・・あなたぁ!』
私は声を限りに呼びかける。
でも私の声は闇に吸い込まれるだけ・・・
ああ・・・あなたはどこ・・・
私を・・・私を助け出して・・・
お願いです・・・あなた・・・私の愛するあなたぁ・・・
「ヘレン・・・へレン・・・しっかりしなさい」
・・・・・・
私の目の前に良人がいる。
私はまだよく見えない目を瞬きし、それが幻ではないことを確認する。
「あ、あなた・・・」
「気がついたかいへレン。よかった」
良人の眼鏡の奥の瞳が優しく私を見つめている。
夢ではない。
これは夢ではないんだわ。
私は胸の奥からこみ上げるものを感じて良人に向かって手を伸ばす。
「ああ・・・あなたぁ」
「よかった・・・無事でよかったよヘレン」
良人の優しい腕が私の上半身を抱き上げて包み込んでくれる。
そのぬくもりに私は良人の愛を感じて嬉しくなる。
良人は私をそっと放すとベットに横たわるように促し、今までのことを話し始めた。
「事故?」
「ああ、馬車が山道を転げ落ちたんだ。まったくひどい目に遭ったよ」
良人は忌々しげに吐き捨てる。
「御者は死んだよ。まったく、自業自得だ」
「いけないわあなた。亡くなった方をそんなふうに責めちゃ」
「何を言うんだヘレン。奴がきちんと馬車を走らせていればこんな目には遭わなかったんだ。君だって怪我をしなかったからよかったが、もしかしたら死んでいたかもしれないんだぞ」
良人はそう言って私の髪の毛をやさしく梳いてくれる。
その手はとても暖かい。
「運良くここの下男が私たちを見つけてくれたからいいようなもの、そうでなければあの雨の中で震えていたところだ」
そういえばここはどこなのだろう。
柔らかくふかふかのベッドと上質な家具が置いてあり、とても宿や普通の家庭の一室とは思えない。
「あなた、ここはどこなの?」
「ん? ウェルブルック伯爵の別荘でね。ご好意に甘えさせていただいているんだ」
伯爵様の別荘?
それで上質な家具が取り揃えてあるのね。
ろうそくの明かりが部屋中を照らし出している。
普通はこんなにろうそくを使いはしない。
伯爵様はかなり優雅な方なのだろう。
「さあ、少し休むといい。朝まではまだ間がある。すっかり躰も冷えてしまっただろうからね」
良人はそう言うとそっと布団を掛けてくれる。
そのときノックの音がした。
「失礼、奥方の様子はどうかな? いい薬を持ってきたのだが」
入ってきたのは背の高い金髪を心持ち長めにした30代前半ぐらいの若い紳士だった。
黒いスーツを見事に着こなす姿はとても様になっており、さぞかし高貴な方と伺える。
「これは伯爵。わざわざありがとうございます」
良人が席を立って頭を下げる。
この方が伯爵様なんだわ。
私も上半身を起こして挨拶をしようとする。
「ああ、目が覚めていたんですね? 構いません、そのままに」
伯爵様は私に気がつくと右手を上げて私を制した。
「申し訳ありません、伯爵様」
私はまだ躰が思うように動かなくて、そのお言葉に甘えてしまう。
「躰のあちこちを打たれたのですからね。無理も無い。これをどうぞ。楽になります」
銀のトレイの上に置かれたワイングラス。
その中には真っ赤な液体が入っている。
赤ワインに薬を溶かすというのはよく聞く話。
きっとこれもそうなのだろう。
「奥方に差し上げてよろしいかな? ロックウッドさん」
「リーザスで結構です伯爵。もちろんですよ」
良人がにこやかに脇へどける。
伯爵様は一つうなずくと良人の脇を通り私のところへやってくる。
「どうぞ。痛み止めと少々の眠り薬が入っています。ぐっすりと眠れますよ」
グラスを取り上げて私に差し出す伯爵様。
私はそれを受け取ると良人の方を見る。
「ご好意だよ、受け取りなさい」
「ええ、ありがとうございます伯爵様」
良人の言葉に私はうなずいてグラスを受け取り、一気にのどの奥へと流し込む。
薬だから苦いと思ってそうしたのだったが、意外に苦さよりもほのかな甘さが後味として残った。
「さあ、お休みなさい。私はこれで失礼しよう」
「ありがとうございます伯爵。このようにご迷惑をお掛けして恐縮です」
良人がそう言っているのを聞きながら、私は早くも睡魔に捕らわれ眠りの中におちていった・・・
誰かがいる・・・
これは誰?
私は朦朧とした意識のなかでそれを感じる。
部屋の中に誰かがいる・・・
それは本当のこと?
それともこの朦朧とした意識が作り出す幻影?
私の上に掛かっている布団をそっとめくっていく・・・
下着だけの私の上半身・・・
彼はそっと私の肩に手を掛けて抱き起こす・・・
彼?
それとも彼女?
私は首の座らない赤ん坊のように頭を揺らしている・・・
私を抱きかかえている誰かはそんな私にそっと囁く・・・
「・・・・・・」
私はその言葉にこくんとうなずいた・・・
首をかしげるようにして首筋を晒す・・・
彼? 彼女? は私の首筋にそっと舌を這わせる・・・
「・・・・・・」
気持ちいい・・・
首筋にキスされるのは気持ちがいい・・・
良人のキスではない・・・
これは良人が与えてくれないキス・・・
私にとって最高に素敵なキスだった・・・
雷鳴・・・
外はものすごい雨・・・
ガラスに叩きつける音は昨日とちっとも変わりはしない。
メイド姿のまだ少女という感じの女性がカーテンを開けてくれたものの、外は夜明け前のようにうす暗かった。
躰がだるい・・・
上半身を起こす気力さえ湧いてこない。
何か躰が金属でできているよう。
熱っぽくてだるい・・・
少女に何か言いたかったが、それが何かすら出てこない。
私はどうしたのだろう・・・
何もわからない・・・
何も考えたく無い・・・
ただ目をつぶっていたいだけだった。
『ヘレン・・・へレン・・・起きているかい?』
良人の声が聞こえてくる・・・
返事をしなくては・・・
「ええ、あなた・・・」
か細く蚊の鳴くような声。
私の声はこんなに小さいものだったかしら?
それに声を出すことがこんなに力が要ることだったかしら?
「ヘレン、外は雨だがそろそろ出かける準備をしないと間に合わなくなるんだが」
「ええ、今支度を・・・」
私は上半身を起こそうとしたが起こせなかった。
躰が鉛のように重い。
両手で支えようにも力が入らない。
「ヘレン、大丈夫か? しっかりしろ」
良人が駆け寄ってくる。
やっぱりとてもやさしい私の大事な人。
「ヘレン・・・大変だ、熱があるじゃないか。伯爵に言ってこなければ」
良人は私の躰に触れただけで私の躰がおかしいと気がついたらしい。
私をそっと寝かせるとそのまま部屋を出て行った。
私は再び目をつぶった。
「雨に濡れたのと打撲のショックで熱がでたのでしょう。医者を呼びに行かせますが、私は多少薬の知識がありますので解熱剤を用意しましょう」
「ありがとうございます、助かります伯爵」
良人と伯爵様が何か話している。
私は力の入らない躰に捕らわれていて何もすることができない。
しばらくすると伯爵様がまた赤ワインのグラスを持ってきて私に飲ませてくれる。
良人のようにそっと優しく・・・
薬だというのにちっとも苦くない・・・
素敵な甘い液体・・・
私の躰に染みとおっていくよう・・・
私は心地よさに包まれて眠りについた。
「ごめんなさいあなた・・・」
「いいさ、仕方が無いことだ。式には間に合わなくても君の妹さんは許してくれるだろう」
そう、明日は私の妹の結婚式。
でもこれではとても行けそうに無い。
「早く良くなって挨拶だけでもしに行こう。そのためにも食べなくては」
そう言って良人はスープの皿を持ってくる。
むっとするような調味料の臭い。
煮込んでどろどろになってしまった野菜たち。
全てのエキスを吸い出され硬さだけの残っている肉。
よくもこんなものが食べられるものだわ。
「あのメイドさんが作ってくれたんだ。美味しいぞ」
「ごめんなさいあなた・・・私食べたくありません」
それよりも私は先ほどからトレイの片隅に乗っているワイングラスに目が行っていた。
「お薬だけいただきます、あなた」
「そ、そうか?」
スープをひとくち口にしてワイングラスに手を伸ばす良人。
私はグラスを受け取るとゆっくり味わうようにして喉に流し込んでいった。
闇・・・
心地よい闇・・・
今夜はわかる・・・
部屋にいるのは伯爵様だわ・・・
ろうそくも何も無い闇だというのに昼間のように感じられる・・・
黒いスーツに裏地の赤い黒のマント・・・
うっすらと浮かべた笑みはこの世のものとは思えないほどに美しい・・・
「・・・・・・」
私はその言葉にうなずくと上半身を起こす。
そして首筋を伯爵様に向けて・・・を待つ。
「・・・・・・」
嬉しくなる伯爵様のお言葉。
そう・・・この身は伯爵様のもの・・・
リーザスなどのものではないわ・・・
伯爵様が私の肩にそっと触れる。
愛しむような優しい触れ方。
私はこの方に愛されている・・・
私は首筋に感じる疼きを至福の喜びを持って受け止めた。
雨音はしない・・・
カーテンの隙間からは朝の日差しが憎らしいほどに輝いている・・・
あのメイドが来たらきちんと閉めてもらわないといけない・・・
日の光は嫌い・・・
太陽を見るなど一生必要ない・・・
夜だけ・・・
夜の闇だけあればいい・・・
躰のだるさは続いている・・・
でも熱っぽさはもう無い・・・
いえ、どちらかというと冷えている・・・
躰の芯まで冷え切っている・・・
暖かい・・・を飲みたい・・・
キスをして・・・を飲みたい・・・
『ヘレン・・・へレン・・・調子はどうだい?』
ドアの外であの男の声が聞こえる。
粗野で野蛮で知性のかけらもない男。
眼鏡をかけて下卑た笑いで私を不愉快にさせる男。
・・・・・・
わ、私は一体何を?・・・
何でそんなふうに?・・・
「あ、あなた・・・ど、どうぞ」
私は上半身を起こして良人を迎える。
「どうだい、少しはよくなったかい?」
良人の優しい下卑た微笑み。
いつ聞いても心地よい耳障りな声。
「あ・・・ご、ごめんなさい・・・まだ調子がよく無くて・・・」
「そうか・・・伯爵は君がよくなるまで滞在していいと言ってくれたものの、いつまでも厄介になるわけにはなぁ」
「そ、それならあなただけでも先に行ってくださらない? 私はもう少し調子が良くなってから・・・」
そうよ・・・一刻も早くお前は行ってしまうがいいわ・・・
私の前から消えてしまいなさい・・・
・・・・・・
私・・・私どうかしている・・・
私どうしちゃったの?
私はこの人を愛して・・・
愛して・・・
愛して?
私は・・・
「ヘレン、ヘレン?」
良人が私を揺さぶる。
なんて・・・なんて・・・いやらしい男なの・・・
「あ、ああ・・・わ、私気分がすぐれませんの・・・どうか一人にしてくださらない?」
「あ、ああ、わかった。しかしどうしたんだ、その首筋?」
早く・・・早く行って・・・
「わ、わかりません。どうか一人にさせてください」
私は頭を抱える。
この不快感は耐えられない・・・
「わ、わかった」
良人が部屋を出て行ったことに私はホッとしていた・・・
食事は欲しくなかった・・・
メイドが持ってくる赤ワインの薬。
それだけで充分だった・・・
躰はますます冷え切ってくる・・・
早く夜が来て欲しい・・・
夜になれば・・・
夜になればあの方に会える・・・
夜になればあの方の下へいける・・・
夜になれば・・・
闇・・・
心地よい闇・・・
全てを覆いつくし奪い去っていく闇・・・
そして・・・
私を導いてくださる闇の主・・・
「いらっしゃいませ伯爵様」
私はベッドから起き上がる。
白いネグリジェが闇に映える。
対照的に伯爵様は今日も黒のスーツ。
そして裏地が真っ赤な黒いマント。
心持ち長めの金髪に赤く輝く瞳。
そして・・・白い鋭い牙が口元から覗いていた。
「女よ。我が物となるか?」
「はい。私は伯爵様のもの。この身も心も全て伯爵様にお捧げしております」
私は伯爵様に跪く。
「では、今宵そなたに洗礼を施そう」
伯爵様の手が肩に置かれる。
「はい、お願いいたします伯爵様」
私は嬉しさに気が遠くなりそうだった。
伯爵様の牙が首筋に触れる。
少しの痛みと甘い疼きが私の躰を駆け巡る。
すでに芯まで冷え切っていたはずなのに、私の中から全ての熱が伯爵様に流れて行く。
代わりに伯爵様の氷のような冷気が私の中を満たして行く。
私の体の隅々まで冷気は容赦なく浸透して行き、全てを伯爵様のものとして変えて行く。
命の最後の一滴まで伯爵様に流れ込んでいった時、私はあまりの快感に絶頂を迎えていた。
それは決してほかでは得られないものだった・・・
闇・・・
心地よい闇・・・
私は目を覚ますと蓋を開けて起き上がる。
この屋敷に住むものとしてふさわしいベッドも、私が身にまとう黒いドレスも全て伯爵様にいただいたもの。
私は伯爵様のもの。
この屋敷で永遠を生きるもの。
今夜は遠出をしなくてはならない。
リーザスの血の量などたかが知れていたし、それに私の妹のことをお話したら伯爵様は興味を示してくださったわ。
生贄を集めると同時に妹をこの屋敷に招待しましょう。
うふふふふ・・・
私は湧き上がる高揚感に身を浸しながら、窓を開けて夜の闇に飛び立っていった。
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- 2005/11/15(火) 20:21:49|
- 異形・魔物化系SS
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いつものごとくのゴキブリさんの続きです。
少々短めですが楽しいでいただければ幸いです。
10、
「うふふふ・・・素直なことはよいことよ。さあ、着てご覧なさい」
「ハーイ」
美沙は紙袋の中のレオタードを取り出しブーツや網タイツも手に取っていく。
「い、板鞍さん」
「サイズは合っていると思うわ。あなたたちのデータはお持ちなはずですから。」
音夢は舌なめずりをするようにして美沙がスカートのホックを外すのを見つめている。
「先生、いくらなんでも変です。レオタードの変更なら私たちよりも先に部長に言われるべきではないでしょうか?」
制服のスカーフを外し上着も脱ぎ始めた美沙から目をそらしながら瑠美はそう言って抗議した。
とにかく何かおかしすぎる。
こんなハイヒールのブーツで新体操ができるはずも無いし、ルール違反に違いない。
「うふふ・・・そうよね。蔭山さんに言うのが先ですわね」
音夢が妖しく笑みを浮かべる。
瑠美は自分の意見が届いたことにホッとした。
「そうです。百原先生や部長とも相談してからでないと決められません」
「心配は要らないわ。このレオタードを着用するように指示されたのは百原先生なの。」
「えっ?」
瑠美は耳を疑った。
百原先生自身がこのレオタードを?
どういうことなの? いったい・・・
「それにね、蔭山さんにはもうお話は通したのよ。入ってらっしゃい、蔭山さん」
『はい、粟崎先生』
ガラッと扉が開かれ、全身を黒で覆った蔭山えみりが入ってくる。
その姿はまさしく音夢と同じレオタードに網タイツ、それとブーツと手袋を身につけていた。
「着心地はどうかしら、蔭山さん?」
机の上で脚を組み直す音夢。
「はい、とても素敵な着心地です。躰が軽くて・・・生まれ変わったようです」
胸元に右手を当ててうっとりとした表情を浮かべるえみり。
「部、部長・・・」
「うふふ・・・香嶋さんも早く着なさい。これは新体操部の新ユニフォームに決まったことなのよ」
愕然とする瑠美にえみりは妖しげな笑みを浮かべてそう言った。
その笑みは普段のえみりからは想像もつかないほどの淫らさを持っていた。
「あ、あああ・・・な、なんなの・・・いったい・・・」
思わずあとずさる瑠美。
彼女は助けを求めるように美沙の方へ目をやった。
「い、板鞍さん・・・」
美沙はすでに網タイツを穿き終えレオタードを身につけていた。
そしてえみりが見せていたようなうっとりするような表情を浮かべていたのだ。
「い、板鞍さん・・・」
瑠美の背中を冷たいものが走る。
この場で彼女は一人ぼっちになってしまったように孤独感に捕らわれた。
「はあ・・・ん・・・これ・・・すごく気持ちいい・・・」
夢遊病のように虚ろな目をしながら美沙はブーツを履いている。
「そうでしょう? これはとても素敵なレオタードなのよ」
「うふふ・・・これで板鞍さんも私たちの仲間ね」
音夢とえみりの笑みがとても邪悪なものに感じる。
仲間という言葉が何かとても不吉なことのように瑠美には思えた。
「躰が軽いわぁ・・・とてもいい気分」
美沙は手袋をつけ腰に赤いサッシュベルトを巻いていく。
最後に首に赤いスカーフを巻いた美沙は、もう瑠美の知っている美沙ではないような感じがした。
「うふふ・・・どう? とてもいい気分でしょ?」
「はい。もうこのレオタード以外着るつもりはありません。新体操部のユニフォームはこれで決まりです」
自分の躰をかき抱くようにして両手を躰に回す美沙。
「うふふ・・・これであとは香嶋さんにも着てもらわなきゃね」
えみりが瑠美用の紙袋を手に取った。
「イ、イヤァァァッ!」
瑠美の悲鳴がこだました。
「それでは失礼します」
体育教官室の前で深々と礼をして三人の少女たちが廊下に現れる。
ところどころに蛍光灯が点いた薄暗い廊下を彼女たちは立ち去っていく。
にこやかな笑みを浮かべて他愛も無いおしゃべりに興じているところは他の女子生徒たちとなんら変わりが無い。
だが、その服装はまったく他の生徒たちとは違っていた。
三人ともが黒の網タイツにレオタード、そしてハイヒールのブーツに手袋をはめ赤のサッシュベルトとスカーフをしていたのだ。
「もう、瑠美ったらあんなに抵抗するんだもの」
「まったくだわ。押さえつけるのに大変だったのですよ」
「すみませんでした。まったく・・・どうしてあんなに抵抗しちゃったのかしら。こんな素敵なレオタードを着るのを拒んでいたなんて・・・」
えみりと美沙に対して申し訳無さそうにうつむく瑠美。
レオタードを着込んだ彼女にとって、これを着たがらなかったというのは愚かなことだったとしか思えない。
「明日が楽しみよね。部員みんなの分も届くんでしょ?」
「ええ、百原先生自らが届けてくださるらしいわ。選ばれた新体操部員たちのためにって」
「うふふ・・・なんか嬉しいな。選ばれた喜びを感じるわ」
えみりと美沙はすっかりこのレオタードが気に入ったようだ。
もちろん瑠美も今はこのレオタード以外を着るつもりなど無い。
学校指定の制服などわずらわしくて動きづらいだけだ。
だが、粟崎先生からは学校を出るときには制服を上から着るように言われている。
ちょっと残念だったが仕方なかった。
彼女たちはそれでも玄関に着くまでは制服を着るつもりは無かった。
「フシューッ、よくやったわ音夢」
入れ替わりに体育教官室に入ってくるゴキブリ女。
「イーッ、お褒めの言葉ありがとうございます」
音夢は無意識に右手を上げて敬礼していた。
変装用クリームのおかげで顔のペイントはごまかしているものの、すでにその顔には赤と緑の色が浮かんでいるはずだ。
「香嶋瑠美にはフェロモンを使わなければならないかと思ったけれど、無理やり着せちゃったわね」
「いけませんでしたでしょうか・・・レオタードさえ着せてしまえばと思いましたので」
少し叱責を恐れるようにビクッとする音夢。
「フシューッ、構わないわ。これで新体操部員は戦闘員に生まれ変わるわね」
「イーッ、彼女たちも光栄に思うでしょう」
「うふふふ・・・明日が楽しみね」
ゴキブリ女は妖しく笑みを浮かべたのだった。
- 2005/11/14(月) 21:58:15|
- デライトもの
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ジョージ・アームストロング・カスターという方をご存知でしょうか?
まあ、まず知っている方は少ないとは思いますが、第七騎兵隊とともにインディアン(ネイティブアメリカン)によって全滅させられた騎兵隊の将軍と聞くと耳にした方もおられると思います。
アメリカ陸軍士官学校を34人中34番目の成績で卒業した彼は、折からのアメリカ南北戦争に騎兵隊の士官として参加しました。
そこで持ち前の功名心と強引さで彼は瞬く間に出世し、二十三歳で准将にまで昇進します。
おしゃれな彼は軍服も自分でデザインしたものを着用し、髪を伸ばして真紅のネクタイを締めていました。
アポマトックスの戦いでは敵の補給部隊を撃破し、南軍のリー将軍を降伏にまで追い詰めます。
その功績で彼は名誉少将(正規の少将ではない)にまで登りつめますが、そこで南北戦争は終結を迎えました。
戦争が終わってしまえば軍人は大量に解雇されますが、彼は何とか軍に残ることに成功します。
しかし、階級は大尉にまで降格されました。(ここらへんがアメリカという国のすごいところ)
翌年中佐にまで復帰した彼は第七騎兵隊を率いて西部開拓の最前線へ赴きます。
そこでは開拓民と先住者であるインディアン(ネイティブアメリカン)との戦いが繰り広げられていました。
インディアンへの情け容赦のない攻撃は彼らの恨みを買い、ついにリトルビックホーンで彼と第七騎兵隊の五個中隊273名は約十倍のインディアンの襲撃を受け壊滅。
ここにカスターの命も尽きます。
わずか三十七年間の人生でした。
この彼が、南北戦争後に陸軍を飛び出し、南軍の敗残兵の中から傭兵を募って北海道へやってくるというある意味荒唐無稽な背景を持つウォーゲームがあります。
今は無くなってしまいましたが、「アドテクノス」というメーカーが出したシミュレーションウォーゲームで、その名も「北海道共和国」。
ゲームそのものは戊辰戦争末期の北海道が舞台で、榎本武揚率いる旧幕府軍と薩長を中心とした新政府軍との戦いをゲーム化したものです。
もちろん、実際の歴史に基づいた架空の歴史ゲームなんですが、そこにこのカスター将軍率いるアメリカ傭兵部隊が榎本軍に参加しているのです。
榎本軍の主力は旧幕府陸軍ですが、そこにはあの土方歳三率いる新撰組がいて、白兵戦では無類の強さを発揮します。
射撃戦では薩長側が有利なのですが、一旦白兵戦に持ち込めれば新撰組はゲーム中最強と言ってもいいでしょう。
しかしそうそう白兵戦に持ち込めないのも事実です。
ところがここにカスター隊が参戦します。
南北戦争で使われたガトリングガンやライフルなどを持ち込んだカスター率いるアメリカ傭兵は射撃戦ではゲーム中最強です。
そこで榎本軍としてはこの少数のカスター隊と同じく少数の新撰組で圧倒的多数の薩長と戦うことになります。
ゲームとしてはさまざまな評価がされるでしょうが、面白いゲームだと私は思います。
なんと言ってもカスター隊の射撃でなぎ払ったあとに新撰組が切り込んで行く様は想像しただけで血沸き肉踊ります。
実際にそういった自体にはなりませんでしたが、南北戦争終結後、武器が余ったアメリカやヨーロッパから日本へ流れ込んできたのは事実です。
きっかけさえあれば傭兵として彼らが来たかもしれません。
でもそうなったら函館戦争はもっと凄惨だったんでしょうね。
[あの人が来ていたら・・・]の続きを読む
- 2005/11/13(日) 21:44:25|
- ウォーゲーム
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第二次世界大戦中にアメリカは自由世界の武器工場として、大量の武器弾薬、被服、食料などを同盟国に供与しました。
その供与先は多岐に渡り、イギリス、自由フランス、ソ連、中国国民党などがその恩恵にあずかりました。
中でも対ドイツ戦の勝敗の八割を担うと思われたソ連に対しては多大な供与を行い戦争を遂行させ続けたと言っても過言ではないでしょう。
レンドリース法を制定したアメリカはソ連援助のためにさまざまな物資をUボートの危険を顧みずに送り続けました。
もちろんリース契約であり、戦争終結後はソ連が相応の代価を支払うことになっていたのですが、冷戦が始まったことでうやむやになってしまったようです。
その援助はまさしくソ連の戦争経済を支えていたと言ってもよく、戦車、航空機、トラック、ジープ、銃、靴、軍服、ガソリン、食料、その他あらゆる物を送り込んでいたのです。
あるソ連軍部隊などは、ソ連製品は人間だけという部隊まであったとのことです。
もちろんその後の冷戦下のソ連では、これらのアメリカからの援助物資はさほどの量ではなく、ドイツを打倒したのはソ連製の兵器や物資であるといいました。
確かに戦車も航空機もソ連軍内の一割程度がアメリカ及びイギリス製であっただけであり、ソ連の言い分は一面の真実ではありますが、戦車や航空機以外の補助戦力を支えていたのはアメリカからの物資だったといえるでしょう。
一例を挙げれば、ソ連軍の物資輸送に使われたトラックはまずほとんどがアメリカ製であり、40万両以上が送られたのです。
そのためソ連の車両工場はトラックを作らなくてもよく、その分戦車を作ることができたんですね。
また鉄道用のレールは50万トン、その上を走る機関車多数、ソ連兵一人一人にいきわたる充分な量の食料そういったものが全てアメリカ製でした。
航空機を飛ばすための高オクタン価のガソリンもアメリカ製で、ソ連の航空機はほとんどアメリカの燃料で飛んでいたのです。
トラックや鉄道、さまざまな工作機械は大戦後のソ連の再建に多大な貢献をし、アメリカとの冷戦に臨むことができたのですね。
まあ、一時に送られたわけではありませんが、40万両のトラックということは、その運転手だけで40個師団を編成できるわけでして、アメリカの物量のすさまじさを垣間見ることができますね。
それではまた。
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- 2005/11/12(土) 22:29:01|
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えーと・・・
仕事の帰りに「ルクシオン」を買いに行っていたらこんな時間になってしまいました。
あとでインストールしなければ。
で、今日のブログ用のネタが何も無いことに愕然としている状態です。(笑)
で、今まで読んだマンガや小説で気に入った作品をちょっと上げてみますね。
他の2chなどで紹介されているのもありますので、重複になるかもしれませんが、お許しくださいね。
小説ではなんと言ってもこの作品。
「魔皇騎ディ・オース」杉原丈一郎著(ナポレオン文庫)
ちょっと古いので手に入りづらいかもしれませんが、アニメの「ダンバイン」のように異世界に召喚された主人公がロボットを操り、異世界の悪事をたくらむ皇子を退治する話です。
で、その主人公の恋人が皇子の手に落ち、MCをされて主人公を憎むべき敵だと思い込まされてしまいます。
主人公のロボットとMCされたヒロインの操るロボットが戦い、結局はヒロインを取り戻すのですが、それまでのヒロインのMCされっぷりがなかなかでした。
マンガではアダルトマンガになりますが、以下の作品がツボでした。
「百花陵乱」まあたん著(ミリオン文庫)内「黒の翼」
仲のいい天使の少女二人のうち一人が信頼する女神によって堕天使にさせられてしまいます。
実はその女神もすでに堕落しており、悪魔の一員として天使を穢すために潜入していたのです。
もう一人も魔界に連れ去られ、最後には悪魔化してしまうのですが、最後はちょっと物足りませんでした。
「パラサイター未希」DON繁著(FOXコミックス)
女性に寄生する異生物の話。
寄生された女性はペニス状の器官を持ち、仲間を増やすために女性を陵辱して行きます。
女性刑事だったヒロインも寄生されますが、幸い脳を支配されるまでにはいたらなかったために寄生されてしまった同僚と戦うことになります。
女性警官や女性軍人が寄生され仲間を増やしていくシーンはなかなかです。
最後がこれもちょっと中途半端な気がします。
とりあえず今日はここまで。
またネタに詰まったらこういった紹介記事を載せようと思います。
それでは。
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- 2005/11/11(金) 22:44:49|
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冷戦終結後、戦略ミサイル原子力潜水艦のパトロール体勢も変わっていると思うので、今現在はどうかわかりませんが、冷戦当時アメリカ海軍所属の戦略ミサイル原潜には一隻に二人の艦長がいたようですね。
これは何も潜水艦の中に二人の艦長が乗り合わせてお互いに意見の交換をしていたわけではなく、艦長以下のクルー全員が二組あったということなのです。
アメリカ海軍の場合、それはブルークルー・ゴールドクルーと呼ばれ、全ての配置につきブルー・ゴールドのそれぞれの担当者が担当していたのです。
戦略ミサイル原潜は一度パトロールに出ると三ヶ月はオンステージ状態を維持します。
つまりクルーも三ヶ月間は乗りっぱなしとなるわけですね。
で、航海を終えて港に帰ってくると待望の休暇が与えられるのですが、当然休暇も長期に渡ります。
その間戦略ミサイル原潜を遊ばせておくわけにはいきません。
何せ冷戦期間中ですから、いつソ連の攻撃があるかわからないのです。
整備と補給を済ませた戦略ミサイル原潜はすぐ出港したいのですが、乗組員は休暇中。
そこでもう一組のクルーを用意して、すぐに戦略ミサイル原潜がパトロールに出られるようになっているわけなんですね。
ブルークルーが休暇中にはゴールドクルーが航海中。
逆にゴールドクルーが休暇中はブルークルーが航海中となり、戦略ミサイル原潜自体はほぼ整備と補給の期間以外はオンステージ状態を維持できるというわけです。
一隻の原潜なのに艦長が二人いるというのはこういうわけだったんですね。
もちろんこれは戦略ミサイル原潜のことであり、攻撃型原潜はこういったクルー体制になっていたかはわかりません。
また海上自衛隊の潜水艦の乗組員体制も良くわかりません。
ご存知の方がおられましたらぜひお教えいただけると嬉しいです。
それではまた。
[一隻の艦なのに艦長が二人?]の続きを読む
- 2005/11/10(木) 22:05:57|
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劇場ではZガンダムのパート2が公開されていますね。
いつ見に行こうかとタイミングを計っているのですが、そのうち終わってしまったりして・・・(笑)
でも、Zの戦いはなんかよくわからない戦いなんですよね。
ティターンズとエウーゴ、どちらも言っていることがいまいち見えてこないようで。
やっぱり独立を勝ち取ろうとするジオンとそれを阻止しようとする連邦の戦いである一年戦争が戦争らしくて好きですね。
というわけで、ローネフェルト大尉の続編です。
コーン、コーンと不気味に響く探信音。
機関を停止し息を潜めるU-34を捉えようと躍起になっている。
だが、聴音器でしっかりと確認されたわけではないらしく、連邦のフリゲートはあちらこちらを探って回っているだけのようだ。
このまま静かにして居ればそのうち行ってしまうだろう。
だが、そうは行かなかった。
水中に何かが投下される音。
どぶんどぶんと響いてくる。
「なんだ? 今の音は?」
「わかりません。何かが投下されたようですが・・・待ってください。音紋照合。アクアジムです!」
ソナーマンが解析データをスクリーンに映し出す。
「チィッ! よほど暇か連邦軍は」
艦長が歯噛みする。
水中用モビルスーツが投入されたとなれば一戦は避けられない。
私はすぐに出撃しようと艦長の方を見た。
「艦長!」
「機関最大、全速前進! 来るぞ!」
「機関最大、全速前進!」
艦長に復唱する副長。
U-34はスクリューを全開にして現在地を離脱する。
「ソナーマン、数は?」
「高速推進音三機です」
アクアジムが三機か・・・
だがこちらには・・・
「艦長!」
私は再度艦長を促した。
「すまんが出てくれるか、大尉?」
艦長が決断する。
「はい。ローネフェルト大尉出撃します」
私はすぐに敬礼して発令所を出る。
「サクハラも連れて行け。一機じゃ手に余る」
「了解です」
私は振り向きもしなかった。
ズゴックのコクピットで私は手袋を嵌めなおす。
すでにモビルスーツドック内は水が満たされていた。
後は発進許可を待つばかり。
『大尉殿、ミナコ・サクハラ曹長出撃準備完了です』
ズゴックの隣に並んでいるアッガイからの報告だ。
このズゴックよりは旧式だが、水中での性能は悪くない。
連邦のアクアジムはこちらに比べれば五年は遅れていると言っていい。
つい先日モビルスーツを実用化したばかりの連邦には水中用モビルスーツのなんたるかなどわかりはしないだろう。
「サクハラ曹長、出撃後すぐに戦闘に入る。覚悟しなさい」
『ミナコと呼んでください。歴戦の勇者である大尉殿とともに戦えるとは光栄です』
「了解。よろしく頼むわ、ミナコ」
『こちらこそ。「森の山猫」の腕前を拝見させていただきます』
私は苦笑いした。
アラスカ戦線での私のあだ名など、ここでは何の役にも立ちはしないだろう。
『発令所よりローネフェルト大尉、発進どうぞ』
「了解。ローネフェルト、ズゴック出ます」
ずんとGがかかり、私のズゴックは海中に射出される。
漆黒に近い海の中ライトが周囲を照らし出す。
すぐに後方からアッガイも追いついてきて私の隣に占位した。
「ミナコ、来るわよ」
『了解です、大尉殿』
彼女の返事が終わらないうちに至近距離を魚雷が通過する。
アクアジムの放ったものだが、厄介なのはここが水中だということだ。
宇宙や地上ではミノフスキー粒子のせいで、誘導兵器は有線と熱源追尾以外は意味を成さない。
しかし水中では音響兵器が主となるため今度はミノフスキー粒子が意味を持たなくなってしまうのだ。
今の魚雷も私たちを通過したということはU-34を狙ったものということになる。
私はすぐに反転し、ズゴックの右腕に備えられたメガ粒子砲を魚雷に向けて撃つ。
エネルギーの減殺がはなはだしいが、それでも魚雷は吹き飛んでくれた。
『大尉殿、来ます』
「やらせないわよ!」
私はズゴックをアクアジム小隊に向けた。
こいつらにU-34をやらせはしない。
私の大事な帰る場所だ。
連邦などにやらせはしない!
[ローネフェルト、行きます!]の続きを読む
- 2005/11/09(水) 22:03:12|
- ガンダムSS
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このたびマインドコントロールSSをたくさん掲載なさっているE=MC^2様から当ブログにリンクを張っていただくことができました。
大変光栄でとても嬉しくまたありがたいことでございます。
おかげさまで昨日は訪れてくださる方が一気に増えて、なんと一日で4700ものアクセス件数となりました。
これもひとえにE=MC^2様のおかげであり、訪れてくださる方々のおかげだと思います。
誠にありがとうございました。m(__)m
ところが残念なことに、こちらからのリンクが張れない状態が続いておりまして、当ブログからE=MC^2様へ行くことができない状態です。
MSNのサポートセンターの問い合わせをして、そのご指示通りにいたしてはいるのですが、何か問題があるらしくリンクができない状態が改善されません。
大変ご迷惑をお掛けしておりますが、改善に向け努力中でありますのでなにとぞご容赦をお願いいたします。
さて、今日もデライトの暗躍をつづっていきたいと思います。
改造洗脳レオタードによって女戦闘員となりつつある粟崎音夢が次に狙うのは・・・
9、
「クククク・・・改良された洗脳改造レオタードは効果的ですね。わずか一晩で肉体改造をほぼ終了しているようじゃないですか。この分では思考洗脳も明日には終わりそうですね」
スクリーンに映し出されている音夢、いや女戦闘員F131号の後ろ姿を見ながら含み笑いをもらすチャン・ザ・マジシャン。
「いかがです? ドクターリン」
「ふん。本来肉体の改造に二日も三日も掛かるほうがどうかしているんですわ。融合改造の戦士たちと違って戦闘員たちは肉体の強化と代謝の変更だけなんですから。今までが悪すぎるのですわ」
チャン・ザ・マジシャンに水を向けられたドクターは鼻を鳴らす。
洗脳改造用強化レオタードは彼女の担当ではなく機械工学部門が主となって改良を加えたものだ。
もちろん肉体の強化と代謝を変えるためのデータについてはドクターリンの生物化学部門が提供している。
それを元に微小機械であるナノマシンが織り込まれたレオタードが肉体を変化させ、パルスカラーと同様に脳に刺激を与え続けることによって思考を洗脳して行くのである。
もちろんレオタードだけではなく、ハイヒール状の強化ブーツや網タイツも同様に肉体改良に作用するのだ。
肉体改良を終えたレオタードは肌に密着し着用者の皮膚となって着用者の身を守る防護服の役割を果たすことになる。
防弾、防刃、耐熱、耐寒など内部の肉体をかなりの面で保護してくれるのだ。
拳銃の弾や砲弾の破片程度では戦闘員を殺すことはできないだろう。
もちろんむき出しの頭部はある程度損傷に弱い面も否定できないが、そこも頭蓋骨が相当の強度に強化されるため、鉄パイプや金属バットぐらいでは損傷を与えることはできない。
また、代謝も変化してしまうため、老化はかなりの間抑えることができ、実質戦闘員の寿命は100年ぐらいはあるだろう。
100年ではたいした違いは無いと思われがちだが、戦闘員たちはそのままの若々しさをそこまで保てるということであり、限界を迎えたときには急速に老化が進み瞬時に老衰死するのである。
もっとも、戦闘によって死ななければということになるが。
「クククク・・・まあそう言わないで下さい。彼らとて遊んでいるわけでは無いのですから」
「ふん、そうかしらね」
右手の中指でメガネの中心を持ち上げるドクターリン。
肉体改造を専門とする彼女にとって視力を回復するなどは雑作も無いが、メガネというアイテムを彼女は気に入っており、ゆえに使用を続けているのだった。
もっとも、チャン・ザ・マジシャンはリンの美しさを損ねているのではないかとも思っていたが。
「まあ、どちらにしても、この洗脳改造レオタードがあれば女戦闘員たちを大量に作り出すことができるのですよ。もっともそれにはある程度の素質が必要ですがね」
「フシューッ、お任せ下さいませチャン・ザ・マジシャン様。私の教え子たちならば必ずや優秀な女戦闘員に生まれ変わるはずでございますわ」
チャン・ザ・マジシャンが振り返ったのを感じて、跪いていたゴキブリ女が顔を上げる。
その表情は教え子たちがこれから試合場で晴れ姿を披露するのを楽しみにしている女教師のものだった。
「あーあ、ついていないわ。瑠美と一緒に呼び出しだなんてね」
ため息をわざとらしくつきながら廊下を歩いている女子生徒。
赤みの強いショートカットの髪の毛とくりくりした瞳が印象的な活発そうな感じを与える少女である。
「それは私のセリフです。私こそ板鞍さんと一緒に呼び出されるなど不本意ですわ」
同じく並んで廊下を歩いている女子生徒がぷいと顔をそらす。
長い腰まである髪の毛がつやつやと輝いていてまさしく碧の黒髪という表現がふさわしい。
切れ長の目と小さな口が顔全体を人形のように纏めており、少し冷たさを感じさせるもののお嬢様といった清楚さを漂わせていた。
「でも、何で呼ばれたんだろう」
「私たちが呼ばれるということは成績のことではありませんわね。それならば呼ばれるのは板鞍さんだけでしょうから」
くすっと含み笑いをする香嶋瑠美。
「うん、そう思う。って違うだろ、おい!」
何の気なしに返事をしたもののその意味を知って反論する板鞍美沙。
仲がいいとまでは言えないものの二人きりの時にはこうして冗談を言い合うこともできるのだが、後輩たちと一緒になるとなぜか素直になれなくなってしまうのだ。
「板鞍先輩の方がかっこいい」
「香嶋先輩の方がやさしい」
そういった後輩の声に私だってと思っているうちに二人は新体操部の二大リーダーになってしまったのだった。
後輩たちはある意味二人を偶像視してしまい、二人が仲が悪いものと決めてかかってしまっている。
それで後輩同士自体が相手側を避けてしまうようになり、グループが別れてしまっているのだ。
「まあ、確かにそれは冗談ですが、やはり部活のことだと思いますわ」
瑠美が表情を引き締める。
「だよね。鈴美センセもガッコ来てないみたいだし」
美沙は頭の後ろで手を組んでいる。
「風邪かもしれませんけど心配ですわ」
「鈴美センセあれでけっこう繊細なところあるからね」
「繊細でないのはあなたぐらいですわ」
しれっと言う瑠美。
「な、」
思わず美沙がにらみつけるが、瑠美は意に介した様子は無い。
「それよりも聞きました? 私たちを呼び出した粟崎先生のこと」
「ほえ? う、うん、聞いたよ」
はぐらかされてしまった美沙はそう言うしかない。
「白糸先生を完璧に無視しちゃったばかりか、逆に伸しちゃったんってんでしょ」
「伸しちゃったって言うのは違うらしいわ。無視された白糸先生が肩に手を掛けたときに脚がもつれて転んじゃったらしいわよ」
「あ、そうなんだ。でも粟崎センセらしくないよね網タイツとブーツだなんて」
「そうですわね」
二人にとって粟崎音夢は小柄な体育教師ということ以外にそれほど意味のある存在ではない。
もちろん体育の授業はきちんと行なうし、教師として無能と思うことは無いが、新体操部の顧問でコーチである百原鈴美ほどの存在感は無いのだ。
だから今回のことも普段の粟崎先生とはちょっと違うなという認識でしかない。
それがどういう結果を待つかはわかるはずも無かった。
日が暮れた体育教官室。
部活動が一通り終わったあとで顔を出すように二人は粟崎音夢に言われていたのだ。
もうすぐ夏休みなので、夏季合宿の打ち合わせかとも思ったが、それならば百原先生がいない今日はおかしいし、部長の蔭山えみり(かげやま えみり)が呼ばれるだろう。
二人のどちらを部長にしても問題があると考えた鈴美の決断だったが、結果はさして変わりが無く蔭山えみりはお飾り同然だった。
それでも一応は部長だし、行事や生徒会活動ならえみりが呼ばれるはずだったのだ。
コンコンと扉をノックする瑠美。
『どなた?』
扉の向こうから返事がある。
「香嶋です、それと板鞍の二名、まいりました」
『そう、他には誰もいない?』
えっ?
瑠美と美沙は顔を見合わせる。
他に誰かいるか?
普段教員室へ呼ばれたときにそんなことを尋ねられたことは無かった。
「は、はい、いません。二人だけです」
『そう、お入りなさい』
「はい」
二人はそっと扉を開く。
中に入った二人はそこで息を飲んだ。
そこには冷たい笑みを浮かべた粟崎音夢が、あろうことか机の上に座ってすらりとした脚を組んで二人を見つめていたのだ。
「あ、ああ・・・」
「セ、センセ?」
二人とも何がなんだかわからない。
当然だろう。
粟崎音夢はデライトの女戦闘員の黒いハイネックのレオタードに網タイツ、そしてグローブとブーツという姿だったのだから。
「扉を閉めなさい」
「は、はい」
何がなんだかわからないうちに美沙は後ろ手に扉を閉める。
「うふふふ・・・ようこそ選ばれたお二人さん。歓迎するわ」
片ひざを持ち上げ、両手でひざを抱えるようにかかとを机の上に引っ掛けた姿勢の音夢が妖しく微笑む。
「選ばれた?」
「先生、その姿はいったい?」
二人ともその視線は粟崎音夢に釘付けで、その異様なレオタード姿に戸惑いを感じている。
「うふふふ・・・素敵でしょう? とても気持ちがいいのよこのレオタード。あなた方も着ればわかるわ」
口の端をゆがめてくすくすと笑っている音夢。
「着てみればって・・・わ、私たちもですか?」
「ちょ、ちょっと恥ずいよ・・・」
瑠美も美沙もレオタードを着るのには慣れているし、大会などでは衆目を浴びることも多い。
しかし黒一色に赤のサッシュとスカーフという音夢の姿はちょっと躊躇ってしまう。
「ふふ・・・これからはこれが新体操部の衣装になるわ。いえ、戦闘員部かしらね」
「セントウイン?」
「え~っ? これが新体操部のユニフォーム?」
微妙に疑問を感じるところが違うようだったが、瑠美も美沙も何かが変なことは感じていた。
「うふふ・・・心配はいらないわ。私も着てみるまではいやだったけれど、これを着たらもう脱ごうとは思わないわ」
「先生どうしちゃったんですか?」
「まいったなぁ。瑠美は黒髪だから黒が似合うけどあたしは赤毛だから赤系がいいんだけどなぁ」
美沙はどうせなら赤がいいらしい。
「い、板鞍さん。そういう問題ではありませんでしょう?」
瑠美はあきれた。
何かがおかしいとは思わないのだろうか、彼女は。
「うふふ・・・残念ながら赤は無いわ。でも言ったでしょ。そんなことは気にならなくなるって」
音夢の妖しげな笑みがかえって瑠美には不気味だった。
こんな服装が新体操に許されるはずは無い。
それにユニフォームを変えるような話がなぜ粟崎先生から出てくるのか。
本来ならば鈴美先生から持ち出される話ではないだろうか。
「そうかなぁ。あたしでも黒似合うかなぁ」
「板鞍さん! 私は納得行きません」
「うんうん、瑠美の言いたいこともわかるよ。ちょっち恥ずいよね」
美沙がコクコクとうなずいている。
あ~・・・この娘は・・・
「でもさ、こうして見慣れるとさ、粟崎先生のこのカッコってけっこう格好よくない? なんかさ、SM女王様って感じもするし。あたし結構あれって好きなんだよね。あのボンデージって言うの」
「板鞍さん!」
瑠美は思わず声を荒げてしまう。
まったくこの娘は・・・
「え~っ、瑠美だって女王様じゃん。きっと似合うと思うけどな」
「似合う似合わないの問題じゃなくて・・・おかしいと思わないのあなたは!」
「何が?」
あ・・・
瑠美は絶句した。
だめだ・・・まったく気がついていない。
「うふふふ・・・とにかく着てみなさい。話はそれからよ」
音夢が机の脇にある紙袋を指し示す。
「えっ?」
「今着るんですか? ここで?」
さすがの美沙もそれには驚いたのだろう。
あっけにとられた様な顔をしている。
「大丈夫よ。カーテンは閉まっているし、もうここには誰も来ないわ。更衣室だと思えばいいのよ」
「そ、そんなこと言われても・・・」
「しっかたないなぁ」
瑠美のためらいをよそに美沙は紙袋に手を伸ばす。
「い、板鞍さん! あ、あなたここで着替えるつもり?」
「まあ、見られる心配ないみたいだし、粟崎先生もそう言ってるし」
紙袋の中身を取り出して並べて行く美沙。
「あ、あなた・・・このレオタードを着てみたいわけ?」
「えへへ・・・ちょっち」
あ・・・
瑠美はめまいがした。
[漫才コンビ]の続きを読む
- 2005/11/08(火) 20:01:14|
- デライトもの
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当方のブログと相互リンクをいただいておりますkiss in the darkのg-than様より大変素晴らしい贈り物をいただきました。
現在進行させていただいている暗黒結社デライトに改造された百原鈴美ことゴキブリ女さんの改造後のお姿をイラストで送っていただいたのです。
公開してもよろしいとの許可をいただきましたので、ここに公開させていただきますね。
もう、すごく素晴らしいイラストで素敵です。
g-than様はご自身のサイトでいつも素敵なイラストを公開されておられますので、ぜひぜひ皆様一度覗いてみて下さいませ。
画像をクリックすると大きな画面となります。
[ゴキブリ女さんのイラストをいただきました]の続きを読む
- 2005/11/07(月) 21:43:37|
- デライトもの
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休みだというのにばたばたとしていて落ち着かなかったせいもあるんですが、今日は気分的に乗れなくて・・・
SSもスムーズに書き進められませんでした。
ちょっと短めですし、あんまりモエモエのシーンも入っていないですが、ご容赦下さいませ。m(__)m
8、
朝、音夢は目を覚ました。
すごく気分がいい。
こんなに体が軽く感じられるのはどうしたことだろう。
彼女はソファに寝転がっていた。
夕べはベッドに入る気がしなかったのだ。
ベッドで寝ているとすぐに行動を起こせない。
なぜだかわからなかったが、すぐに躰を動かせるようにしておくことが必要に思われたのだった。
ガリッという音がして床のフローリングに傷が付く。
音夢のブーツが傷つけてしまったのだが、彼女はふと目を落とし軽蔑するような眼差しをしただけだった。
強化ブーツで傷が付くようなやわな床だなんて・・・まったく気に入らないわね・・・
音夢はふんと鼻を鳴らし、ブーツのかかとで床を蹴る。
普段はぴかぴかに磨いてあるフローリングの床に傷が付くが、今の音夢には気にならない。
それよりも躰の軽さの方が気になった。
音夢はすっと立ち上がり、躰を動かしてみる。
こぶしを握り締めてパンチを繰り出してみたり、右足を高く上げてキックを蹴りだしてみたりする。
すごい・・・
躰にまるで羽根が生えたみたいだわ・・・
音夢は嬉しくなった。
狭い部屋だが物に触れずに宙返りをすることだってできた。
この分なら三階の窓から飛び降りても平気だろうし、二階建ての屋根の上に飛び上がることだってできるだろう。
戦うにはうってつけの躰だわ・・・
音夢はそう思い、ちょっと変な感じがした。
あれ?
私は誰と戦うのかな?
だが、その疑問はすぐに意識の奥底に沈んで行く。
戦うのだ。
彼女は戦闘員なのだから。
音夢は何も考えることなく顔を洗うために洗面所に行く。
洗面所の鏡に映った彼女の顔には薄く赤と緑の色が浮かんでいた。
電話のベルが鳴る。
「はい」
音夢は受話器を取った。
『フシューッ、おはよう、気分はどう?』
ゴキブリ女の声がする。
音夢はすっと右手を上げて敬礼をした。
それがまったく当然のように無意識に。
「おはようございますゴキブリ女様」
躊躇いも無くそう口にする。
彼女にとってゴキブリ女は指揮官であり従わなければならない存在だ。
『ふふふ・・・どうやら洗脳の効果が出てきたようね』
「洗脳・・・ですか?」
音夢にはよくわからない。
洗脳って何かしら・・・
私には関係ないことだわ・・・
私はただゴキブリ女様の指示に従うだけ。
「ご指示をどうぞ」
『フシューッ、放課後に新体操部の香嶋瑠美と板鞍美沙を呼び出しなさい。そして私に連絡を取りなさい』
「わかりました」
音夢はこくんとうなずく。
ゴキブリ女の言うことは絶対だ。
音夢には逆らうことなど考えることすらできなかった。
『玄関の袋にはあなたに必要なものが入っているわ。あなたは普段どおり学校へ行くのよ。いいわね』
「かしこまりました。ゴキブリ女様」
音夢の顔に笑みが浮かんだ。
いつもの時間に家を出る音夢。
しかし今日はいつものようににこやかな表情ではなかった。
笑みは浮かべているのだが、どちらかというと冷たい感じを与える笑みであり、事実彼女は周囲の人間を冷笑しているのだった。
夏にもかかわらずハイヒールのブーツを履き、ひざを隠すほどの長さのスカートからは網タイツが覗いている。
普段の彼女はあまり穿かないスカートだったが、今日はグレーのスカートを身につけていた。
上にはパステルブルーのブラウスを身につけているものの、驚いたことに首元には真っ赤なスカーフが巻かれていて、やはり普段の彼女とは違う雰囲気をかもし出している。
ふう・・・本当ならレオタードだけで過ごしたいのに・・・でもご指示には従わなくちゃ。
音夢はあの後電話で受けた指示通りの行動を取っていた。
与えられたバッグの中に入っていたクリームで顔の色をごまかし、ボトルに入った食事を取る。
音夢はまったく気にならなかったが、以前食べていた食事はまったく口にする気にはなれなかったのだ。
それよりも出かける前にはいつもなら行くはずのトイレにもまったく行く気にはならなかった。
ボトルでの食事と強化レオタードによって組成自体を変えられた肉体は排泄をせずに済ませられるのだ。
もちろん音夢はそれらがすでに当たり前のことに思えていた。
そして、レオタードの上に洋服を羽織って出かけることにしたのだった。
鷺ノ宮学園までは電車で二駅ほどである。
程なく音夢は学園に到着したが、すでに周囲には朝早い時間に登校してくる生徒たちの姿があった。
「おはようございます」
「おはようございます」
何となく普段の粟崎先生と雰囲気が違うことを察しながらも挨拶をしていく生徒たち。
そんな生徒たちをよそに音夢は薄く冷笑を浮かべたまま職員用通用口のほうへ向かって行く。
「おはようございます」
無表情でそのまま靴を履き替えもせずに入り込む音夢。
「あ、ちょ、ちょっと粟崎先生?」
玄関で校務員が声をかけるものの、音夢は振り返りもせずに行ってしまう。
「あ、あれ?」
校務員は首をかしげるしかできなかった。
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- 2005/11/07(月) 21:39:21|
- デライトもの
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シチュだけの単発一本勝負ですが、鬼畜舞方はこんなネタもけっこう好きなんですよ。
やっぱおにゃのこを手駒にできるっていいですよね。(笑)
「過去の思い出」
すん・・・すん・・・すん・・・
誰かが泣いている。
痛いよぉ・・・やめてよぉ・・・
女の子の悲鳴。
クスンクスン・・・ひどいよひどいよぉ・・・
これは夢か?
泣いているのは誰なんだ?
私・・・私・・・初めてだったんだよ・・・
太ももに一筋の赤い線。
これは俺がやったことか?
ひどいよぉ・・・私・・・私・・・
涙でくしゃくしゃになった顔。
それは俺がよく知っている顔だった。
ばかぁ・・・弘樹のばかぁ・・・
乱れた制服の前をかき抱いて泣きじゃくる少女。
奈津紀・・・
俺は彼女の名前を知っていた。
私・・・私・・・初めては・・・初めては・・・弘樹にあげるつもりだったんだよ・・・
お互いに知り合って何年になるのだろう。
お互いに男と女だということを意識してどれくらいになるのだろう。
でも・・・でも・・・こんなのってないよぉ・・・ひどいよぉ・・・
いつも笑っていた奈津紀。
それが今は泣いていた。
それは俺がしたことなのか?
違うと言ってくれ・・・奈津紀。
「さま・・・じん様・・・ご主人様」
俺はまどろみの中から引き戻される。
「ご主人様、お目覚めですか?」
にこやかに俺の顔を覗き込んでくる奈津紀。
真っ赤なエナメルのボンデージを身にまとい、手にはムチを持っている。
「ああ、悪い。寝ていたか?」
俺は頭を振って目を覚ます。
どうやらうたた寝をしていたらしい。
「くすっ・・・ご心配なく。メスどもの調教は私がしておきましたから」
妖しく魅力的な笑みを浮かべる奈津紀。
今までずいぶん楽しんでいたのだろう。
うっすらと汗をかき、真っ赤な唇を舌先が舐めて行く。
「すまんな。まかせっきりで」
「うふふ・・・いいえ、私も楽しませていただきましたから」
しなだれかかるように俺に寄りそう奈津紀。
赤い皮の長手袋が俺の股間にそっと伸びてくる。
「どうした、欲しいのか?」
「はい、ご主人様の寝顔を見ていたら・・・その・・・」
うっとりと淫靡な表情で俺を見上げてくる奈津紀。
あの夢の中の奈津紀はどこへ行ったのだろう・・・
今の奈津紀は俺の片腕としてメスどもの調教を楽しんでいる。
真っ赤なボンデージにハイヒールブーツがとてもよく似合う淫靡な女だ。
そこにはあの奈津紀は存在しない。
だが・・・
俺は満足だった。
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- 2005/11/06(日) 20:59:41|
- その他短編SS
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軍用車両と聞いてこの名前を思い浮かべる人もきっと多いでしょう。
そう、小型軍用車両としてあまりにも有名なジープですね。
極力無駄を排除した四輪駆動の小型車で、アメリカという国の大量生産能力の象徴とも言うべき車両です。
もう、何万両作られたかわからないほどで、アメリカ軍の行くところジープありと言っても過言じゃありませんでした。
ヨーロッパの第二次大戦終結近く、フランスのアルデンヌの森でドイツ軍は大規模な攻勢を掛けました。
いわゆるバルジの戦い。アルデンヌ攻勢ですね。
ヒトラー最後の賭けとも言われるこの作戦において、ドイツ軍は特殊コマンド部隊を使用しました。
オットー・スコルツエニー指揮するコマンド部隊は英語を話せる兵士を集め、アメリカ軍の軍服を着て後方かく乱の任務に就きました。
映画「バルジ大作戦」でも使われたエピソードですが、実際のコマンド部隊の行動自体はそれほど効果はありませんでした。
しかし、ドイツ軍のコマンド部隊がアメリカ軍の軍服を着ていて行動中という話は瞬く間に広まり、それによって米軍は疑心暗鬼にかられました。
アイゼンハワー将軍も命を狙われるかもしれないということで逆に司令部に監禁状態になったそうです。
行きかう兵士たちは相手がアメリカ人かどうかを確かめるために、「ヤンキースの四番は?」とか、「第15代目の大統領は?」とか尋ねあったそうです。
一方パンターを先頭に進撃するドイツ軍は、混乱の局地でわれ先にと逃げ散ったアメリカ軍が残して言った膨大な車両に唖然としていました。
放置されたトラックやジープが進撃の邪魔になったほどだったのです。
ある兵士は米軍は兵士一人一人に車両が一台分配されるんだと信じてしまったそうです。
それほど大量のジープを米軍は使用していたわけですね。
で、アメリカ軍の後方に潜入したドイツ軍コマンド部隊も、鹵獲したジープを使用していたのですが、当然鹵獲したジープは数が少なくドイツ兵たちは三人、または四人で一台のジープを使用していたのです。
一台のジープにせいぜい二人しか乗らないアメリカ兵には、当然そんなに一台のジープに乗っているのは不審に思えました。
そこで思わぬことからドイツ軍であることがばれてしまったとのことですね。
一台のジープにはせいぜい二人しか乗らないほどアメリカ兵にとっては当たり前の車両。
現在のハンビーは高価でそれほどの数は揃えられないようですので、ジープは米軍史上もっとも配備された車両ということになるのでしょうね。
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- 2005/11/05(土) 22:34:58|
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ミリタリーオタクの舞方は0083とか08小隊とかのミリタリーチックなガンダムがけっこう好きです。
で、ガンダムネタでもチョコチョコと書いてみたくなったので、書き始めてみることにしました。
前回は連邦側で書いたので、今度はジオン側の人物を出してみようと思います。
まあ、たわけた戯言だと思って流し読みしてくれればと思います。
かすかな振動が艦内を震わせている。
息が詰まりそうな圧迫感。
周りの海水の圧力が私自身にも影響を与えてくるかのよう。
出港してから二週間。
シャワーを浴びることなど夢のよう。
核融合潜水艦といえども、艦内の水には制限がある。
ちょっとしたシャワーで汗を流したいと思っても決められた日以外は使うことはできないのだ。
汗臭い男たちの中で私は呼吸をし続ける。
この狭い艦内から解放される日が来るまで・・・
「ジブラルタルを越えます。地中海に入りました」
「ようし。お出迎えは無さそうだな」
機械と人が密集する発令所。
パネルスクリーンにはこの艦の現在位置が表示されている。
それはジブラルタル海峡を抜けて地獄の海へ入ったことを示していた。
ジオン公国所属ユーコン級潜水艦U-34
ジオン大西洋艦隊所属の外洋型大型潜水艦だ。
連邦が保持していた潜水艦を接収し、所要の改造を施したユーコン級潜水艦はジオン海軍の主力である。
海というものを持たないジオン公国にとっては、海軍戦力に関しては地球侵攻作戦以前からの検討課題ではあったものの、実際の戦力保持は第一次降下作戦及び第二次降下作戦以後になってからのことであった。
予想以上の降下作戦の成功によって、連邦軍地上戦力の拠点を包囲接収したジオン軍は、キャリフォルニアやニューヤーク、及びハワイの連邦海軍基地より艦船を接収。
構造及び運用が宇宙艦船に似通っている潜水艦に目をつけた。
核融合動力の外洋型ミサイル潜水艦を改修し、ミサイル格納庫にモビルスーツを搭載。
その運用能力を付与したタイプをユーコン級として就役させていたのだ。
元となった潜水艦の高性能もあり、ユーコン級は海中から神出鬼没の行動で水中型モビルスーツを使い、連邦海軍を混乱に貶めていた。
しかし、十月を過ぎ、連邦軍に少し余裕が出てくると、もともとの海上戦力の豊富さがものを言い始めてくる。
ヒマラヤ級対潜空母を中核としたハンターキラーグループが、太平洋大西洋の双方で潜水艦狩りに転じたのだった。
ジオンの水中用モビルスーツは確かにすぐれているものの、その行動半径はそれほど広くは無く、運用には拠点となる母艦が必要だ。
水中用モビルスーツそのものは対潜哨戒機など恐れるには足りないが、母艦であるユーコン級は航空攻撃には脆弱である。
結果、ジオン海軍は高性能な水中用モビルスーツを腹に抱えたまま母艦であるユーコン級を撃沈される事態が相次いでいた。
そして、広大な太平洋や大西洋ならともかく、敵味方の海軍戦力が入り乱れる地中海は、ジオン潜水艦隊にとっては地獄の海と言って過言ではなかったのだ。
「艦長! 出撃させてください!」
狭い発令所で私は声を荒げてしまう。
聴音器から聞こえてくる音はかなり多数のスクリュー音。
モニターブイを上げて確認した艦長の目には地中海をアレキサンドリアへ向けて航行中の一大船団が映っていた。
そのどれもが武器弾薬を満載しているのは間違いない。
ここで沈めなければアフリカの友軍が苦戦するのは目に見えているではないか。
「艦長! 出撃させてください。新鋭のズゴックであれば半数は沈められます!」
私は詰め寄るように艦長に迫った。
汗臭い男の体臭が鼻につく。
換気が働いているにもかかわらず発令所内は蒸し暑い。
そのため軍服の前を開けたラフな服装に軍帽を斜めにかぶった艦長が厳しい表情で私を見た。
「だめだ。ここでモビルスーツを出せば確かに戦果を上げることはできるだろう。しかしすぐにハンターキラーどもが来てわれわれは追い詰められる」
「ですが艦長!」
私は食い下がる。
敵がいれば闘うのが軍人だ。
こそこそ逃げ隠れをするのは軍人じゃない。
「だめだ! ここでお前を死なせるわけにはいかないんだ」
「えっ?」
私は驚いた。
それはどうことだろう・・・
「高速スクリュー音接近!」
ソナーマンの声が発令所内に響く。
U-34の艦内に緊張が走った。
「高速スクリュー音接近! 連邦のフリゲート二隻です」
「モニターブイ収容。急速潜航!」
艦長のドラ声が発令所内を引き締める。
U-34はすぐに艦首を下げて海底に向かっていく。
連邦のフリゲートは二隻で連携攻撃をしてくるだろう。
最近は連邦も水中用モビルスーツまで投入してくるらしく、油断はできない。
「艦長、ズゴックで」
「焦るなよお嬢ちゃん。トリポリまでにはまだ遠い」
にやりと笑う艦長。
「わ、私はお嬢ちゃんではありません。私はアマリア・ローネフェルト大尉。モビルスーツパイロットです」
私はきっと赤くなっていたに違いない。
お嬢ちゃんと呼ばれた事に対する恥ずかしさと怒りとでだ。
「ああ、君は優秀なパイロットだ。この戦争で死んでしまうには惜しいほどのな」
「艦長・・・」
「それにな。俺は命令を受けているんだよ。トリポリで君はこの艦を降りることになる」
私はびっくりした。
トリポリで降りる?
このU-34を?
「ど、どういうことですか?」
「宇宙へいくんだ」
「宇宙へ?」
「そうだ。君はソロモンへ行くんだ」
ソロモン・・・
我が軍の宇宙要塞・・・
私はそこへ・・・
「深度150メートル」
深度計が150の数字を指している。
「よし、機関停止。音を出すなよ」
艦長がぐいと帽子をかぶりなおした。
連邦のフリゲートのスクリュー音だけが不気味に響いていた。
[今度はジオン側で。]の続きを読む
- 2005/11/04(金) 22:24:14|
- ガンダムSS
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太平洋戦争に参加した日本戦艦の中で、最も活躍したのがこの金剛級でしょう。
日本の戦艦の中では最高速と言っていい30ノットの高速を発揮できる高速戦艦として、唯一機動部隊の直衛ができる戦艦でした。
また就役が大正初期という旧式戦艦でもあったので、惜しげもなく激戦に投入されかえって活躍したともいえましょう。
金剛級四隻の最初の艦がこの金剛ですが、明治末期に当時の最新技術を輸入する意味もあって、英国ヴィッカース社に発注されました。
太平洋戦争に参加した日本戦艦の中では唯一の外国製戦艦となります。
英国では日本の求める仕様に基づき、当時最新最強といわれたライオン級巡洋戦艦の改良型として金剛を建造しました。
35.6センチ砲を搭載し、速力も27ノット(いずれも新造時)と高速の巡洋戦艦として完成した金剛は、日本海軍の最新鋭艦として就役しましたが、驚いたことに建造した英国自体に金剛に対抗できる巡洋戦艦が無いことが判明したのです。
慌てた英国は急遽建造中のライオン級四番艦タイガーの設計を変更。
金剛に対抗しえる艦として就役させました。
幸いに金剛とタイガーが撃ち合うような事態にはならず、タイガー自体は軍縮条約に伴い退役しています。
で、日本にやってきた金剛を手本とし、比叡、榛名、霧島の三隻が同型艦として建造され、日本は強力な巡洋戦艦を四隻も保有することとなりました。
しかし、時は流れ、昭和に入るとさすがの金剛級も改装が必要になりました。
そこで海軍は金剛級の近代化改装に着手し、ドックで改装工事が行なわれます。
改装工事では装甲板などにも手が加えられたようですが、日本の技術で建造された比叡以下の三隻は問題なくドリルで穴を開ける事ができたのですが、英国の技術で建造された金剛の装甲板は硬くてドリルがすぐにだめになってしまったそうです。
まだまだ当時の日本の技術は劣っていたということなのでしょうね。
のちの太平洋戦争初頭。
マレー沖にて日本海軍はイギリス東洋艦隊所属の戦艦プリンス・オブ・ウェールズとレパルスを航空機により撃沈します。
そのとき、四連装主砲という日本海軍には存在しない砲塔を持つプリンス・オブ・ウェールズはすぐに識別できたのですが、連装砲塔を持つ英国製巡洋戦艦の流れを汲むレパルスに対しては、攻撃隊の各機が非常に困惑をしたそうですね。
あれは金剛ではないのか?
俺たちは間違って金剛を攻撃しているんじゃないのか?
という疑念が付きまとったそうです。
結局金剛は砲塔四基、レパルスは砲塔三基だったのでわかったそうですが、レパルス単独で行動していたらもしかしたら見逃されていたかもしれないですね。
それではまた。
[高速戦艦金剛]の続きを読む
- 2005/11/03(木) 22:38:51|
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今晩は。
だんだん寒くなってきましたね。
私の住む北の大地は間もなく雪に閉ざされる季節となります。
一面真っ白の銀世界は、綺麗といえば綺麗ですが、寒くていやです。(笑)
早く春が来ないかなぁ。(笑)
さて、今日もミリタリーネタで一つのエピソードを。
イスラエルという国家がありますが、第二次世界大戦後にできた新しい国ですね。
イギリス、フランスなどの(主にイギリス)二枚舌外交によってパレスチナの地にユダヤ人が入植し、作り上げた国家ですが、当然土地を追われたパレスチナ人やアラブ諸国からは敵視されてしまいます。
国連によっても認められましたが、当然周辺のアラブ諸国はイスラエルを認めずに、武力によってイスラエルを粉砕してしまおうとしました。
第一次中東戦争(イスラエル名独立戦争)の開始です。
当時イスラエルには武力らしい武力はまったくなく、戦争開始前にイスラエルは躍起になって武器を集めようとしました。
その時にさまざまな手段をとって武器を集めていったのですが、中には面白い(というと語弊があるかもしれませんが)手段でまんまと戦車をせしめたエピソードがありました。
第二次大戦後、中東パレスチナにはイギリス軍が駐屯していましたが、ユダヤ人とアラブ人との衝突に嫌気が差してさじを投げてしまい、撤収することになっていました。
当然そこに駐屯する兵士たちも一刻も早くパレスチナから帰りたいと願う兵士ばかりで、士気は劣悪な状況でした。
あるとき、戦車二両のパトロール部隊がある町に差し掛かりました。
街角には美しいユダヤ娘がいて、戦車兵たちに一緒に酒場で一杯楽しみましょうと持ちかけます。
士気の低下していたイギリスの戦車兵たちはその誘いに応じて美人のユダヤ娘たちと酒場に入って楽しむことにしました。
誰もいなくなった戦車にユダヤ人たちは早速乗り込み、二両の戦車はあっという間に持ち去られました。
イギリスの戦車兵が戻ってきた時にはすでに戦車はなく、戦車兵たちは愕然としたそうです。
もう一つ面白い話を。
戦車と同じく航空機も手に入れたいイスラエルは、一計を案じます。
イギリス軍のブリストル・ボーファイター戦闘爆撃機は第二次大戦後退役しましたが、まだまだ現役としても使える機体でした。
イスラエルはこのボーファイターを手に入れるために映画会社を一つでっち上げます。
そして第二次大戦の空戦映画を作成すると持ちかけて、ボーファイターをレンタルしたのです。
映画会社はレンタルした機体をそのままイスラエルに輸送してしまい、会社そのものは消滅しました。
ボーファイターはイスラエル軍の航空戦力となったのです。
現在の中東の軍事強国イスラエル。
その建国当時はさまざまな苦難があったようですね。
それではまた。
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- 2005/11/02(水) 22:16:06|
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今晩は。
風呂上りに一杯やっていい気分の舞方です。(笑)
今日も休みでしたのでゴキブリさんの続きを書きました。
よろしければ目を通してやって下さいませ。
あと、SSを今までのSSと、戦争物やガンダム物といったSS2とに分けましたのでご了承下さいませ。
それでは。
7、
そこに立っていたのは百原鈴美ではなかった。
黒と茶色のつやつやした外骨格を身に纏った異様な昆虫人間とでも言うべきものが立っていたのだ。
「ああ・・・いやぁ・・・」
恐怖のあまり床に尻餅をついてしまうその姿は麻理香と同じだ。
「フシューッ、今晩は粟崎先生」
人間の姿をとどめている口元からいつも聞き慣れた声がする。
「あ・・・あ・・・も、百原先生?」
必死に後ずさりながら、音夢はこの化け物が百原鈴美なのかどうかの問い掛けをした。
「フシューッ、ええ、私は百原鈴美よ。もっとも、それは改造される以前の名前ね。今の私は暗黒結社デライトのゴキブリ女なの」
すいっと躰を体育教官室に滑り込ませるゴキブリ女。
その動作はやはりゴキブリらしく無駄が無い。
「ゴ、ゴキブリ女・・・?」
スラックスが汚れることも構わずに床を後ずさり、ついに音夢は背中を壁に押し付ける形になる。
その様子を楽しげに見下ろしながらゴキブリ女はハイヒールの音を響かせて音夢の前に立った。
「ええ、そうよ。私はこの素晴らしい躰に改造されたの。お前たち下等な人間とはもう違うのよ」
酷薄そうな笑みを浮かべるゴキブリ女。
その長い触角がふるふると揺れている。
「フシューッ、これからは私たち暗黒結社デライトが人間どもを支配してあげるわ。まずは手始めにこの学園を支配するの」
「そ、そんな・・・」
誰か人を呼ばなきゃ・・・
音夢はそう思うものの躰はすくんでしまい、悲鳴を上げることすらできなくなっている。
「フシューッ、心配は要らないわ。お前は女戦闘員になれる素質があるわ。支配する側になれるのよ」
支配する側?
どういうことだろう・・・
ああ・・・でも逃げなくちゃ・・・殺されるかもしれない・・・
音夢は必死に逃げ道を探すが、彼女の前には両手を腰に当てたゴキブリ女が立っていてとても逃げ出せそうは無い。
背後の壁には窓があるが、ここは体育館の二階部分だから飛び降りるには高すぎる。
どうしたらいいのだろう・・・
音夢は絶望感に囚われた。
うふふ・・・この学園にはデライトの一員となる素質を持った女どもがたくさんいるわ。
チャン・ザ・マジシャン様がおっしゃられた通りね。
ゴキブリ女はチャン・ザ・マジシャンの命令を思い出す。
私立鷺ノ宮学園を女戦闘員の養成機関とすること。
それがゴキブリ女に与えられた使命だった。
生徒たちをフェロモンで簡易洗脳し、素質がある生徒には洗脳改造レオタードを着せて女戦闘員に育成するのだ。
そのための手駒は多い方がいい。
この粟崎音夢は女戦闘員として手駒にするにはふさわしいだろう。
うふふ・・・
邪悪な考えがゴキブリ女の胸中に沸き起こる。
ここでフェロモンを嗅がせて操るのは簡単だが、それでは何となく面白くない。
恐怖のまま人間を縛り付けるのも悪くないわ。
にやりと笑みを浮かべるゴキブリ女。
彼女は用意しておいた紙袋を粟崎音夢の前に放り出す。
「フシューッ、中身を出しなさい」
「えっ?」
音夢は目の前に置かれた紙袋に目をやった。
黒い紙袋には隅に小さく髑髏のマークが描かれている。
「早く開けて中身を出しなさい!」
「は、はい」
ゴキブリ女の声が荒くなったことで、音夢は慌てて中身を取り出した。
「こ、これは?」
音夢は今自分が置かれている状況が良くわからなくなってきた。
彼女の目の前には今取り出したものが整然と並べられている。
それは彼女自身の几帳面な性格からそうしてしまったのだが、並んだ品物は音夢もよく知っているものばかりだった。
「レ、レオタード?」
音夢の前に置かれているのは黒で統一された衣装だった。
黒のハイネックのレオタード。
黒い網タイツ。
黒い革のハイヒールブーツ。
そして黒い長手袋。
そしてワンポイントとして腰に巻くサッシュベルトと首に巻くスカーフだけが赤い色をしていた。
「フシューッ、そうよ、レオタード。裸になってこれを着なさい」
「ええっ?」
音夢は目を丸くした。
そりゃあ部活動などでレオタードを目にすることは多いが、彼女自身はほとんど着たことは無い。
体操部や新体操部の顧問ではない彼女は大体がジャージでいることが多いのだ。
ボディラインに自信が無い彼女はレオタードを着るなんて夢にも思わなかったのだ。
「早く着なさい!」
いらだったようにゴキブリ女はその鉤爪でロッカーの扉をぶち抜く。
鉄板でできているロッカーの扉だったが、まるで障子紙のように引き裂かれた。
「ああ・・・は、はい」
音夢はもう生きた心地がしない。
殺されたくない・・・死にたくないよぉ・・・
音夢は立ち上がってスラックスのベルトを外す。
そして自分がなぜこんなことをしているのかわからないままに服を脱いでいく。
うふふふ・・・
気分がいい。
人間どもを支配するのは最高の気分だわ。
ゴキブリ女の目の前で、恐怖に駆られた音夢が見る間に服を脱いでいく。
うふふふ・・・でも喜びなさい・・・あなたはその強化レオタードによって肉体を強化されていくのよ。
その強化レオタードを身に着けることはとても気持ちいいことのはず。
あなたはその快楽に包まれながらやがてはデライトの一員となれるのよ。
私に感謝しなさいね。
笑みを浮かべながらゴキブリ女はかつての百原鈴美が座っていた椅子に腰を下ろす。
音夢は服を脱ぎ終えると、救いを求めるように少しだけゴキブリ女の方を見た。
しかし何の反応もかえってこないことを知ると、覚悟を決めて下着も取り始める。
清楚な白のブラジャーとショーツを取り去り、生まれたままの姿になった音夢は美しかった。
彼女自身は自分の容姿にまったく自信を持ってはいなかったのだが、スタイル抜群とは言えないもののそのバランスは悪くなかった。
ああ・・・恥ずかしい・・・
幸い夜になっていたので窓にカーテンが掛けられているため外から見られる心配は無い。
だが、音夢にとって学校で裸になることなど考えたことも無かったことだ。
しかもわけのわからない化け物に威されるままに裸になっている。
恥ずかしさと情けなさとで音夢は泣き出したかった。
「フシューッ、何をしているの? 早くそのレオタードを着なさい!」
ゴキブリ女の声が響く。
音夢は泣き出しそうになりながらも網タイツを手に取った。
つま先まで手繰ったあと、そっと足先を入れて滑らせるようにたくし上げていく。
同じように左足も差し入れるとたくし上げながら腰まで持ち上げる。
網の目がすべすべしている彼女の脚をよりいっそう引き立てて美しく見せるが、今の音夢にはそれに気がつく余裕は無い。
それよりも網の目からはみ出す陰毛に気を取られ真っ赤になっていた。
ああ・・・恥ずかしい・・・こんなにぼうぼうだったなんて・・・ちゃんと手入れしていたはずなのに・・・
音夢は必死に股間を隠しながらさっさとレオタードを手にとって脚を差し入れる。
両脚を通してたくし上げ、長袖に手を通す。
健康的な肌色が真っ黒く覆われていくのを何か不思議な感じで音夢は眺めていた。
どうしたのかしら・・・ちょっと気持ちいいな・・・
すべすべするナイロン風の手触りを楽しむように左手の袖に右手の指を這わせる音夢。
素敵・・・レオタードってこんなに気持ちがいい服だったんだ・・・
「フシューッ、後ろを向きなさい」
ゴキブリ女が立ち上がると音夢に背中を向かせ、背中のファスナーを首筋まで上げていく。
躰に密着していく感触は音夢を夢見心地にすらさせていった。
気持ちいい・・・このレオタード気持ちいいよぉ・・・
うっとりしている音夢の表情はどこと無く淫靡ですらあった。
「フシューッ、気持ち良さそうね」
その言葉にハッと我に帰る音夢。
「あ・・・ああ・・・」
「フシューッ、気にすることは無いわ。そのレオタードを着れば当然の反応よ」
ゴキブリ女が微笑む。
「そ、そうなんですか?」
音夢は何となくホッとした。
続けて音夢は膝まであるロングブーツを履いていく。
黒革のロングブーツは踵がハイヒール状になっており、ハイヒールを普段履いていない音夢にとっては立ちづらかったが、それもすぐに慣れていく。
そして両手に黒革に長手袋を嵌めると、音夢の躰は見事に黒一色で染まってしまった。
ああ・・・なんだろう・・・すごく気持ちいい・・・
音夢は自分の躰を見下ろす。
レオタードに包まれた躰と網タイツに包まれた太もも、それにブーツを履いた足先は滑らかなラインを描いて素敵だった。
「フシューッ、さ、こっちへ来なさい」
「はい」
音夢は何も考えることなくゴキブリ女のところへ行く。
ゴキブリ女は赤いサッシュとスカーフをそれぞれ彼女に巻いてくれた。
「フシューッ、これでいいわ。見てごらん」
そう言ってゴキブリ女は音夢の両肩に手を置いて反転させる。
そこにはロッカーの扉の裏に取り付けられた鏡が音夢の姿を映し出していた。
黒いレオタードに赤いサッシュベルトとスカーフ。
それはあつらえたように音夢にピッタリだった。
その鏡の中の姿を見た瞬間、音夢にはこれ以外の服装をしている自分が考えられなくなってしまった。
これ以外の服を着るということ自体思いつかなくなってしまったのだ。
「素敵・・・」
つぶやくように音夢は言う。
「フシューッ、これでいいわ。もう家へ帰りなさい」
「えっ? 家に帰してくれるんですか?」
驚いたようにゴキブリ女に振り返る音夢。
まさか帰ることができるとは思っていなかったのだ。
「構わないわ。ただし、家に帰ってもその服装は脱がないこと。ブーツもね」
音夢はすごく気が楽になった。
そんなことでよければいくらでも言う通りにするつもりだった。
それに音夢にはこの服を脱ぐつもりはまったく無かったのだ。
「はい、言う通りにします」
「フシューッ、いい娘ね。それじゃ家まで送ってあげるわ」
「あ、はい」
音夢は言われるままにゴキブリ女の後について体育教官室を出る。
玄関までどう歩いたのかもよくわからなかった。
音夢にとってはこの服装でいることがただ気持ちよかったのだ。
玄関脇で警備員が倒れていたようだったが夢だったかもしれない。
気がつくと音夢は自分の家の玄関に立っていた。
そのままブーツを脱ぐことも無く部屋に入って行く。
お腹が空いているはずだったが、車の中で手渡されたボトルの中身を飲んだことで食事を取らなくても満腹感があった。
「うふふ・・・」
部屋の姿見であらためて自分の姿を見つめる音夢。
その表情は淫靡さを漂わせていた。
[強化レオタード]の続きを読む
- 2005/11/01(火) 20:43:07|
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