相互リンクをさせていただいているMACXE'S様に投稿する作品を書き上げました。
こちらでも公開させていただこうと思いますので、よろしければお楽しみ下さい。
「バトルビューティ」
「こ、ここは?」
意識がだんだん戻ってくる。
真衣が気がつくとそこは透明なカプセルの中だった。
「えっ? 嘘・・・」
両手で目の前の透明なカバーを押してみる。
だが、カバーはびくともしなった。
「私・・・そうだわ。学校の帰りに異次元獣に襲われて・・・」
そう、真衣は学校から帰る途中に異次元帝国ゼオンの異次元獣に襲われて意識を失ってしまったのだった。
「するとここは異次元帝国ゼオンの基地?」
真衣は自分が囚われの身となってしまったことに気がついた。
「そ、そんな・・・」
心細さから真衣の瞳に涙が浮かぶ。
異次元帝国に捕まってしまったら生きては帰れないかもしれないのだ。
「だ、誰か助けて・・・」
真衣は必死になってカプセルを開けようとするが、彼女の力ではどうすることもできない。
「助けて・・・助けてバトルビューティ!」
真衣はついにそう叫んだ。
ある日忽然と地上に現れたモンスターたち。
ゴリラと熊を掛け合わせたような怪物や、トラの頭にワニの胴体を持つ怪物などが突然現れて人間を襲い始めたのである。
異次元帝国ゼオンの異次元獣たちだった。
異次元獣たちはゼオンの将軍テラームに率いられ、瞬く間に地上の戦力を粉砕して行く。
しかし、そのとき颯爽と一人の女性が立ちはだかったのだった。
白を基調にしピンクのラインを配したミニスカート型コスチュームを身にまとい、白のブーツと手袋を嵌めて、やはり白をベースにピンクを配したヘルメットをかぶった彼女はその素早さと強さで異次元獣を片っ端から倒していった。
バトルビューティ。
人々は現れた救世主をそう呼んだ。
以来異次元帝国ゼオンとバトルビューティとの戦いは続いているのだった。
「目が覚めたようだな、鷹森真衣」
突然自分の名前を呼ばれたことに真衣は驚く。
振り向いた真衣はそこに一人のいかつい男が立っていることに気がついた。
「あ、あなたは誰?」
真衣は思わずそう尋ねる。
男はがっしりとした躰にグレーを基調にした軍服風のコスチュームをまとい、背中にはマントを羽織っている。
「ふっふっふ、俺は異次元帝国ゼオンの将軍テラームだ」
「テラーム将軍?」
真衣はテレビのニュースで聞いた名前に戦慄を覚える。
異次元帝国ゼオンのテラーム将軍といえば異次元獣を操る冷酷無比な人物として有名だ。
「わ、私をどうするつもり?」
震える声で真衣は尋ねる。
まだ高校生の真衣にとっては悪夢としか言いようがない。
「鷹森真衣、これを見るのだ」
震えている真衣の前にスクリーンが用意される。
そこには異次元獣と闘うバトルビューティの姿が映し出されていた。
「バトルビューティ!」
真衣の顔に希望が浮かぶ。
もしかしたら捕らわれの真衣を救いにきてくれるのかもしれない。
「これは以前わが異次元獣とバトルビューティの戦いを録画したものだ」
「えっ?」
するとこれは以前の映像・・・
真衣の表情が暗くなる。
それを見てテラーム将軍は笑みを浮かべた。
「これを見よ」
テラーム将軍がスクリーンを指差す。
それは異次元獣との戦いを終えたバトルビューティがヘルメットを取って髪を翻したところだった。
「マ、ママ・・・」
真衣は愕然とする。
そこに映し出されていたのは、バトルビューティの衣装を身につけてホッとした表情を浮かべている真衣の母親鷹森雪子だったのだ。
「そうだ。お前の母親鷹森雪子だ。バトルビューティの正体は鷹森雪子だったのだ」
テラーム将軍の言葉は真衣の耳には入らなかった。
あの優しいママがバトルビューティだったなんて・・・
若くして真衣を生んだ雪子はまだ30台である。
その美しさは真衣にとっても自慢の種だった。
その母親がバトルビューティとして異次元帝国ゼオンと闘っていたとは・・・
そういえば・・・
真衣は思う。
時々ママは怪我をしていたっけ・・・
「私はドジだからすぐ転んじゃって」
なんて言ってニコニコしていたわ・・・
あれは、異次元獣との戦いで受けた怪我だったのかもしれない・・・
真衣の心に後悔が走る。
今までまったく知らなかったことが悔やまれる。
知っていれば何かできたかもしれないのだ。
しかし、知ってしまった今は異次元帝国に捕らえられてまったく無力なのだ。
それどころか人質としてママを苦しめてしまうかもしれない・・・
真衣の目から涙があふれる。
「私を人質にするつもりね・・・」
「ククク・・・最初はそれも考えた。しかし、お前にはもっと違う役目を果たしてもらおう」
テラーム将軍は不気味な笑みを浮かべてカプセルの上から真衣を見下ろした。
「違う役目?」
「そうだ。これからこのカプセルに暗黒次元の闇の力を送り込んでやる。そうすればお前は・・・ふはははは」
テラーム将軍の高笑いとともに真っ黒なガス状のものがカプセル内に噴出する。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ」
真衣の叫びはすぐに小さくなっていった。
「ぐぎゃぁぁぁぁ」
ライオンと蜘蛛が組み合わさったような異次元獣が断末魔の悲鳴を上げる。
強力な異次元獣だったが何とか倒すことができたのだ。
ファイティングポーズを構えたままチリになって消えて行く異次元獣を見つめているバトルビューティこと鷹森雪子。
「ふう、どうやら片付いたようね」
雪子は躰の力を抜く。
だが、そのとき鋭い蹴りが雪子を襲った。
「やあっ!」
気合とともに繰り出される蹴りをかろうじてかわす雪子。
「だ、誰?」
後ろに下がって間合いを取り、相手を確認する雪子。
彼女の目の前にはまだ幼さを感じさせるものの妖しい魅力を滲ませる女性が立っていた。
「ま、真衣?」
そこに立っていたのは紛れも無く娘の真衣だった。
だが、いつもの真衣とはまったく違う。
黒いエナメルのレオタードに金属のベルト、それに長手袋とハイヒールのブーツ。
額には妖しげなサークレットを嵌め冷酷な笑みを浮かべる黒く塗られた唇。
それはバトルビューティのダークバージョンと言っても過言ではない。
「ま、真衣。いったいどうしたの?」
「うふふふ・・・私は異次元帝国ゼオンの戦闘隊長キラーマイ。バトルビューティ、覚悟しろ!」
冷たい表情でそう言い放つ真衣。
「キ、キラーマイ? い、いったい?」
雪子はまったくうろたえてしまう。
まさか自分の娘が敵になるなんて思いもしなかったのだ。
「ハハハハ、驚いたかね、バトルビューティ。君の娘はもはや我が帝国の女戦士として生まれ変わったのだ」
テラーム将軍の笑い声が響く。
「そ、そんな・・・真衣が・・・」
雪子は愕然としながら必死にキラーマイの攻撃を受け止める。
「あははは・・・これがあのバトルビューティなの? 我が帝国の異次元獣はこんな女に負けたというの?」
笑いながらキラーマイは次々と蹴りや手刀を叩き込んで行く。
そのたびに雪子は苦悶の表情を浮かべながらかわしきれないダメージを負っていった。
「ま、真衣、目を覚まして。あなたは優しい女の子でしょ」
「あははは・・・おろかな女ね。私は異次元帝国ゼオンの戦士よ。優しさなどという感情など持つはずが無いじゃない」
キラーマイの言葉に雪子は絶望感を募らせる。
もはや真衣を元に戻すことはできないのではないか・・・
だが、雪子には真衣を倒すなんてできるはずが無かった。
一方的に攻められ、ついに雪子は地面に倒れ伏す。
「あ・・・ま、真衣・・・」
「うふふふ・・・我がゼオンに歯向かうおろかな女。今殺してあげるわ」
「待て、キラーマイよ。その女を殺してはならん」
テラーム将軍の言葉にキラーマイの攻撃が止む。
「その女を連れてくるのだ」
「はい、テラーム様」
その声を聞きながら雪子の意識は闇に飲まれていった。
雪子が気がつくと透明なカプセルに入れられていた。
「こ、ここは?」
「あら、目が覚めた?」
冷たい笑みを浮かべたキラーマイがカプセルを覗き込む。
「他愛ないわねぇ。バトルビューティさん」
「ま、真衣・・・」
黒いレオタード姿の真衣を見て雪子は悲しくなる。
あの優しかった真衣は今はキラーマイというゼオンの女戦士になってしまったのだ。
「ふっふっふ・・・心配はいらんバトルビューティよ。これからお前にも暗黒次元の闇の力を植え付けてやろう。そうなればお前も・・・ふっふっふ」
テラーム将軍の声が響く。
「うふふ・・・そうなんですか、テラーム様? よかったわねママ。これからはずっと一緒にいられるわよ」
「や、闇の力? もしかして真衣にもそれを?」
雪子はテラームをにらみつけるがテラームはふんと鼻を鳴らすだけだった。
「ああ、そうだ。すぐにお前にもわかる」
そう言ってテラーム将軍はスイッチを入れる。
すぐにカプセルの中には真っ黒なガスが噴出し、雪子の視界を奪って行く。
「いやぁぁぁぁ・・・げほげほっ」
呼吸が苦しい。
何も見えない。
躰が言うことを聞かない。
ああ・・・
苦しい・・・
助けて・・・
だが、やがて呼吸が楽になって行く。
それと同時に雪子の心に言いようのない幸福感が浮かんでくる。
闇の力が浸透してくる喜び。
それは素晴らしかった。
雪子は思いっきり闇の中に身を沈めていった。
「わぁぁぁぁ」
人々の悲鳴が上がる。
異次元獣の攻撃で人々は次々と血しぶきを上げて死んでいく。
その様子を見て雪子は満足そうに笑みを浮かべていた。
いや、今の彼女は異次元帝国の女幹部キラービューティだ。
ところどころに金属のとげの付いた黒いボンデージのレオタードに身を包み、黒手袋に黒のハイヒールブーツ。黒い口紅を付け、額にはまがまがしいサークレットを嵌めている。
長いムチを持った悪の女王。
それが今の雪子だった。
その傍らには同じく黒の衣装を身につけたキラーマイがうっとりとした表情を浮かべている。
「うふふふ・・・我が異次元帝国ゼオンに歯向かうものは皆殺しよ」
「ええ、人間どもが死んでいくざまは素敵よね」
「うふふふふ・・・」
「ふふふふ・・・」
二人の邪悪な女たちの笑い声が響いていた。
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- 2005/10/13(木) 23:29:13|
- 女幹部・戦闘員化系SS
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