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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

何なりとご命令を・・・

時間が欲しー。
思わずそう叫んでしまいたくなりますね。
借りているDVDも見なくちゃならないし、やりかけのエロゲーはやらなきゃならないし、そして何よりSSを書きたいし。
ということでとにかく書きたいSSを書くことにしました。
思ったほど書くことができませんでしたが、ゴキブリさんの続きです。
よろしかったら目を通してやって下さいませ。

6、
うつろな表情で自分を見上げている麻理香を見ていたゴキブリ女は、えもいわれぬ感情が沸き起こってくるのを止められなかった。
そう・・・人間を支配する喜び・・・
その感覚の虜になっていたのである。
「フシューッ、さあ、私の足をお舐め」
そう言ってゴキブリ女は自分の脚を麻理香の前に出す。
「はい、ゴキブリ女様」
麻理香は躊躇いもせずに恭しく這い蹲るとぺろぺろと舌で彼女の硬質な輝きを放つつま先を舐め始めた。
そのうっとりした表情はなまめかしい。
ああ・・・なんて素敵なの・・・
ゴキブリ女はその状況に酔いしれる。
そうよ・・・人間どもは私たちが支配してやるのよ。
私たち暗黒結社デライトが支配するの。
ああ・・・私はなんて幸運なのかしら・・・デライトによって改造を受けることができたなんて・・・
そうよ、私は暗黒結社デライトのゴキブリ女。
こんなことをしていられないわ。
ゴキブリ女は表情を引き締めると麻理香から足を引き離す。
「フシューッ、もういいわ。来なさい」
「はい」
麻理香も立ち上がるとふらふらとゴキブリ女のあとに続いた。

ああ・・・私ったらなんて恩知らずなことを・・・一刻も早く戻らなきゃ・・・
ゴキブリ女は首元に手を当てるとスイッチを押す。
パルスカラーには通信装置としての機能も持っているのだ。
「フシューッ、こちらはゴキブリ女。蜘蛛女、近くに居ますか?」
『シュシューッ、ええ、すぐ近くに居るわよ。どうしたの?』
すぐにゴキブリ女の頭の中に蜘蛛女の声が響く。
振動によって音声を伝えるこの装置は音を出さないため潜入行動などに支障をきたすことは無い。
「フシューッ、人間を一人連れてアジトへ行きたいのですが許可願いますか?」
『お待ちなさい。今確認を取るわ・・・OKよ。すぐに迎えに行くわ』
「お願いします」
ゴキブリ女は麻理香を連れて玄関先で待つ。
程なく黒塗りのワンボックス車がやってきてドアを開けた。

「シュシューッ、素敵よ、ゴキブリ女」
ワンボックス車の後部は向かい合わせに座ることができ、蜘蛛女の前にはゴキブリ女と夢遊病者のような麻理香が座っていた。
「フシューッ、ありがとうございます、私もこの躰はとても気に入りましたわ」
ゴキブリ女が妖しく微笑む。
「改造してもらってよかったでしょ?」
「フシューッ、ええ、あんなに改造を拒否していたなんて馬鹿みたいでした」
そう言ってゴキブリ女は改造された躰を愛しむように両手でかき抱く。
「シュシューッ、この女はどうしたの?」
「フシューッ、私のフェロモンの実験ですわ。戦闘員にできそうかなと思ったものですから連れてきました」
「そう、女性警官を操るとはなかなかやるわね」
蜘蛛女もくすくすと忍び笑いを漏らす。
「イーッ、間もなくアジトに到着いたします」
助手席のF91が振り向いた。
「シュシューッ、わかったわ」
蜘蛛女がうなずいた。

ひんやりとしたデライトのアジト内。
その中央にあるホールにゴキブリ女はやってきていた。
奥の壁には髑髏のレリーフが飾られ、その前には赤と緑の服装をしたデライト極東担当幹部のチャン・ザ・マジシャンが立っている。
ゴキブリ女はその前に跪くと頭を下げた。
「フシューッ、お赦し下さいませ、チャン・ザ・マジシャン様」
「クククク・・・お帰りなさい、ゴキブリ女。よく戻りましたね」
白く塗られた顔に不気味な笑みを浮かべるチャン・ザ・マジシャン。
その顔を見上げたゴキブリ女はとても気持ちが安らぐことに気がついた。
私は・・・私はどうしてここから出て行ったりしたのかしら・・・
こここそが私の居場所。
もう二度と出て行ったりはしないわ・・・
「申し訳ありません、勝手なことをいたしました。これからはチャン・ザ・マジシャン様の命令に心から服従いたします。何なりとご命令を」
「クククク、けっこうですね。早速あなたにはやってもらいたいことがあるんですよ」
そっとチャン・ザ・マジシャンはゴキブリ女の肩に手を置く。
その手が肩に触れたとき、ゴキブリ女は嬉しくて涙が出そうになった。
ああ・・・私は・・・私はこの方のためならば何でもできるわ・・・
「はい、何なりとお命じ下さい」
「クククク・・・」
チャン・ザ・マジシャンが不気味な笑い声を上げた。

「百原先生どうしちゃったのかなぁ・・・」
もう暗くなった窓の外をふと眺める粟崎音夢(あわさき ねむ)。
私立鷺ノ宮学園の女性体育教師の一人である。
小柄で華奢な体格で、茶色の髪と丸みを帯びた顔が実際よりずいぶん幼く感じさせるため、生徒から友達感覚で声を掛けられることが多い。
いつもは百原鈴美が新体操部の面倒を見ているが、今日は連絡も無しで休んでいたのだ。
そのため彼女が新体操部に顔を出したのだが、もちろん彼女に新体操のコーチができるわけは無い。
結局香嶋と板鞍が仕切る形で練習が行なわれたのだ。
まあ、二人とも実力は折り紙付きだし、後輩も慕っているようだから任せておいてもいいだろう。
風邪だとしても明日には連絡があるだろうし、百原先生がこのまま来なくなるわけじゃないだろうから。
音夢はそう思って日誌の記入を終えると帰り支度を始める。
今日は予定外の新体操部の面倒を見たので普段より遅くなっていた。
すでに校内に人は少なく、体育教官室には彼女しかいない。
「さて・・・と」
鞄を持って立ち上がる音夢。
机の上を振り返って忘れ物が無いか確認する。
そして再び向き直ると扉へ向かった。

コンコンとノックの音がしたとき、音夢はびっくりした。
「えっ? ど、どなた?」
思わず手にした鞄を取り落とすところだったのを隠すように平静を装う。
『フシューッ、うふふ、いてくれたのね、粟崎先生』
「えっ? 百原先生? 百原先生ですか?」
扉の向こうからした声はいつも聞き慣れていた声だった。
『うふふふふふ・・・』
何が楽しいのか、百原先生は笑っている。
そして扉が開かれる。
そこに立っていた姿を見て粟崎音夢は悲鳴を上げた。

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  1. 2005/10/31(月) 21:32:11|
  2. デライトもの
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そりゃぁ無いよ・・・トホホ・・・

10/27の阪神四連敗記念でガンダムのSSを書かせていただきましたが、その中で登場するコロンブス級輸送艦を改装した簡易型MS母艦「ガンビア・ベイ」。
これは元になったネタがありまして、太平洋戦争中に米海軍によって大量に建造されました「カサブランカ」級護衛空母の一隻「ガンビア・ベイ」が元になっています。

わずか一年間で五十隻もの大量建造がなされた「カサブランカ」級護衛空母。
船体は戦時標準型貨物船を使用し、飛行甲板を取り付けた簡易型の空母ですが、大西洋ではUボートハント、太平洋では上陸部隊の護衛と対地攻撃と実に縦横無尽の活躍をすることになります。

そのうちの一隻、USS・CVE73「ガンビア・ベイ」は1944年10月25日タフィ3と呼ばれる護衛空母艦隊の一隻として、僚艦「ファンショ-・ベイ」「セント・ロー」「ホワイト・プレーンズ」「カリーニン・ベイ」「キトカン・ベイ」とともにクリフトン・スプレイグ少将指揮の下フィリピンのサマール島沖を遊弋中でした。

前日にはシブヤン海において日本の戦艦武蔵が航空攻撃で沈没しており、栗田提督率いる日本艦隊は後退したと思われていました。
ところが栗田艦隊は後退していなかったのです。

偶然が偶然を呼び、スプレイグ少将指揮下のタフィ3は戦艦大和・長門・金剛・榛名を主力とする日本の栗田艦隊とまともに出くわしてしまったのです。

栗田提督はこれぞ神が与えてくれたチャンスとばかりに戦艦や重巡に砲撃を命じました。
史上最大級の艦載砲である大和の46センチ主砲がついに空母に対して火を噴いたのです。
「ガンビア・ベイ」を初めとする護衛空母は艦載機を発進させつつ煙幕を張って退避行動に移りますが、何せ商船改造の空母ですから鈍足で19ノットがせいぜいです。
本当ならばスプレイグ提督の指揮下にある六隻の護衛空母の運命は風前の灯でした。

しかし、ここでも日本軍に錯誤が生じます。
栗田提督以下の艦隊首脳はこれこそハルゼー提督指揮する主力空母部隊だと思い込んでしまいました。
主力の正規空母なら当然船体には装甲を施し、速度も30ノット近いはず。
そのため主砲弾を徹甲弾とし、信管の調節も厚い装甲を貫いて爆発するように調節されました。

大和以下の各艦が猛然と撃ち出し、その46センチ砲弾は哀れな護衛空母に突き刺さります。
しかし、当たったはずの砲弾はなんと爆発しませんでした。
それもそのはず、厚い装甲にめり込まないと爆発しないように調節されていた砲弾は、護衛空母のぺらぺらの舷側外版に当たっても簡単に突き抜け、あまつさえ反対側すら突き破って海に落ちてしまったのです。

主砲弾が当たっても沈まなく、速度も遅い敵空母が正規型の空母ではなく護衛空母であることにようやく栗田艦隊が気がついたときにはすでにかなりの時間が経っていました。
栗田提督は空母を追いまくっているうちに分散した艦隊を集合させようと考え、集結命令を出します。
サマール島沖の不期遭遇戦はこうして集結しましたが、戦闘開始時には全滅必至と見られていた六隻の護衛空母のうち、戦闘終結時にはまだ五隻が浮いておりました。

この時失われたたった一隻の護衛空母が「ガンビア・ベイ」でした。
しかし、彼らはこの戦いで一方的に叩かれていたわけではなく、艦載機によって重巡鳥海・筑摩・鈴谷に損傷を与えていたのです。
そして栗田艦隊はレイテ湾への突入をしませんでした。
その理由の一つにこの護衛空母群の手強さがあったのかもしれませんね。
何せ大和の砲弾でも沈まないのですから。(笑)

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  1. 2005/10/30(日) 22:32:48|
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どこの国でもあることですが・・・

風邪の方もどうにか持ち直し、とりあえずは元気になりました。
ご心配をお掛けしてすみませんでした。m(__)m

さて、今日もミリタリーネタを一つ。

第二次世界大戦開始時において、世界最大の陸軍大国と目されていたのは総兵力277万人を擁するフランスでした。
フランス軍は長大なマジノ要塞を整備するために軍の近代化は遅れがちとはいえましたが、それでも当時装備していた戦車はカタログデータ上ではドイツ軍の一号、二号戦車などは問題にならず、38(t)戦車と同等かそれ以上という戦車を多数装備しておりました。
その中で、数の上での主力となったのが、ルノーR35とオチキス(ホチキスとは読まない)H35、H38、H39でした。
もともとルノーR35とオチキスH35は歩兵科が歩兵の直接支援用にということで競作させた歩兵戦車でした。
もちろん歩兵の支援ですから動くトーチカ的な使用を考慮されていたわけで、機動力よりは防御力を重視しておりました。
で、実際に試験をしてみると防御力は甲乙付けがたいものの、機動性はR35の方がすぐれているという結果がでて、歩兵科はルノー社のR35を装備することになりました。

本来であればここでオチキス社の敗北=H35は消え去る運命でした。
ところがここに救い主が現れます。
それはフランス軍でも長い伝統を誇る騎兵科でした。

騎兵は以前の馬から高速軽装甲の装甲車に乗り換えてその存在を維持していました。
しかし高速であっても軽装甲の装甲車は戦場では生き残りづらいことが判明し、騎兵科の車両にも装甲防御力が求められたのです。

本当ならば騎兵科と歩兵科で話し合い、共通の戦車を使用できるのが理想ですが、騎兵科は歩兵科との伝統的な確執があり、共通の戦車を装備するなどとは夢にも思わなかったようです。
オチキス社の売り込みも功を奏したのか、なんと歩兵科からすら機動性が劣るといわれたH35は騎兵科の主力戦車として採用されました。
もちろん騎兵科は機動性が売り物ですから、オチキス社に即座に改良を命じました。
その結果H38,H39とエンジンや武装を改良した型が作られていき、それなりの性能にはなったようです。

どこの国でも陸軍と海軍の確執はあるものですが、陸軍内でもやはり歩兵と騎兵それに戦車兵や砲兵といった各兵科で確執ができてしまうものなのかもしれないですね。
  1. 2005/10/29(土) 22:38:12|
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夢のようです

最近会社内でも風邪が流行っており、ヤバいなあと思っていましたが、案の定捕まってしまいました。
今朝起きたら喉はガラガラ、咳はゲホゲホ、くしゃみと鼻水の二重攻撃。(笑)
幸い熱は出なかったんですが、仕事がしゃべる仕事なので今日は休ませていただきました。
風邪薬を飲んで寝ていたら今はかなりよくなったので、明日は会社に行けそうです。

で、そんな状態にありながらも、ブログの更新だけはしっかりやろうと思って開いたら、なんとなんと五万ヒット行ってしまいました。
本日今現在の数字です。
ページビュー合計 : 50001 今日のページビュー : 409
今週のページビュー : 3764 1 時間以内のページビュー : 23

四万ヒットからまだ半月ですが、皆様がせっせと足を運んでくださったおかげです。
ありがとうございます。m(__)m
これからも頑張りますのでよろしくお願いいたします。

今日はミリタリーネタを一つ。
皆さんはカナリアと聞いて思い浮かべるイメージはどういったものでしょうか?
黄色く愛らしい小鳥で、鳴き声が素敵だという感じだと思います。
でも、そのカナリアが戦車に乗って軍事行動をしていたのはご存知でしたでしょうか?

まあ、軍事行動というのは行きすぎですが、戦車にカナリアが載せられたのは事実らしいです。
戦車は第一次世界大戦で初めて戦場に駆りだされました。
第一次世界大戦では幾多もの新兵器が使用されましたが、戦車も同様に新しい兵器でした。
新兵器の中には毒ガスもあり、塹壕で向かい合っている兵士たちにとっては恐怖の兵器だったと思います。

炭鉱や鉱山では昔から地中より噴出する毒性のあるガスや可燃性のガスの検知器代わりにカナリアが使われていたそうですね。
ガスが発生するとカナリアが死んで危険を教えてくれたのです。

最初はその鉱山でのカナリアの利用法にヒントを得ての毒ガス検知用だったのではないかと思われる(これについては私の推測)のですが、新しい兵器である戦車には毒ガスにまさるとも劣らない危険があったのです。
それは排気ガス。
ガソリンエンジンを搭載したトラクターに装甲を貼り付けた感じの初期の戦車は、排気ガスの処理がきちんとできていなかったようで、車内に逆流してくることが多かったそうです。
敵陣への突撃時ですら、密閉した車内への排気ガスの充満を恐れ、ハッチを開けたままにしたことも多かったとか。
そこでカナリアが登場し、車内の排気ガス検知器として戦車に積まれることになったのです。

ガタガタ揺れ騒音でやかましい車内では、カナリアのさえずりは聞こえてこなかったかもしれませんが、鳥かご内のカナリアは多少は戦車搭乗員の慰めになったかもしれません。
排気ガスで死んだカナリアも多かったと思います。
でも、なんか妙に戦車とカナリアという取り合わせが面白く感じました。
まあ、現代の戦車では考えられない話ですよね。

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  1. 2005/10/28(金) 20:28:27|
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阪神四連敗記念

阪神が四連敗で終わったことで、舞方は少し壊れ気味です。
こんなのを書いちゃいました。(笑)

「よくも生き残ったものね・・・」
ボソッとソフィア・エリアルド中尉がつぶやいた。
ルナツーの港湾ブロックに隣接するレクリェーション区画のベンチで俺はタバコをくゆらせていた。
空気が貴重品と言っていい宇宙ではなかなか楽しむことのできない贅沢だろう。
中尉の言葉はまさしく俺にとっても実感として感じられることだった。
一方的な完敗。
あの戦闘はそう言っていいだろう。
オカダ大佐の旗艦をはじめ巡洋艦三隻轟沈。
かろうじて「ボルゴグラード」だけが戦場を離脱できたのだが、こちらも艦橋に被弾し、カネモト艦長以下主だった艦橋要員が戦死。
補助艦橋からの操作でよたよたとルナツーに到着したのが先日のことだった。
全部で二十四機いたボールは俺を含めて四機のみ、GMも十二機中三機しか残らなかった。
ジオンの新型リックドムは見事なロッテ(二機編隊のこと)を組み、こちらは各個撃破されていったのだ。
「ふふ・・・君も生き延びたのね。これでベテランの仲間入りって所かしら」
「どうですか・・・ただ逃げ回っていただけですからね」
俺はタバコの煙を吐いて苦笑いする。
「それでいいのよ。見苦しくぶざまでも生き残ったものの勝ちだわ」
エリアルド中尉が肩をすくめる。
「笑ってくれていいわよ。私も逃げ回っていたんだから」
「笑えるわけ無いでしょう・・・」
「・・・そうか・・・」
俺はエリアルド中尉とともに青空が映し出されている天井パネルを無意味に見上げた。

「エリアルド中尉、バーナード少尉、出頭命令です」
わざわざこのレクリェーション区画まで迎えに来てくれるとはよっぽど連邦も人手不足なのか・・・
「わかった、すぐ行く」
「了解、すぐ行くわ」
俺と中尉はそう答えルナツーの司令部に出頭する。
そこで待っていたのは・・・

「また、貧乏くじなんでしょうかね」
「ふふふ・・・そうかもね」
無重力状態のブリーフィングルームで俺はまずいコーヒーを飲んでいた。
そばでは再び一緒の船に乗ることになったエリアルド大尉が苦笑いをしている。
生き残った。
ただそれだけで俺たちは出世したのだ。
エリアルド中尉は大尉に。
そして俺は中尉にだ。
で、それに伴って責任まで押し付けられることになる。
「バーナード中尉、ここでしたか」
「中尉、私たちはどうすれば・・・」
黄色のノーマルスーツを身につけた女学生がやってくる。
パイロット訓練を終えたばかりの雛鳥たち。
彼女らが俺の小隊の二番機と三番機のパイロットたちなのだ。
「機体の整備は終わったのか?」
「えっ?」
「整備は整備兵が・・・」
型どおりの言葉に俺は苦笑いする。
ほんの二ヶ月前までは俺もそうだったことを思い出すが、ここでそれを言っても始まらない。
「バカ、自分の棺桶ぐらい自分でチェックしとけ!」
俺はそう言って、コーヒーのカップを握りつぶすと彼女たちを連れてブリーフィングルームを後にした。

コロンブス級輸送艦を改装した簡易型MS母艦「ガンビア・ベイ」
「ホワイトベース」級MS母艦が高価なため、手っ取り早く作れるMS母艦として急速に数を増やしている簡易型MS母艦の一隻だ。
輸送艦の貨物室にMSハンガーを設置し、GM二個小隊及びボール二個小隊を搭載できる。
大艦巨砲の権化たるマゼラン級戦艦の甲板に野ざらしで搭載するよりはよほど運用性は高い。
しかし、元が輸送艦であるために足の遅さが問題だった。
そして俺たちは「ガンビア・ベイ」と護衛の巡洋艦「ニューヨーク・シティ」及び「イシカリ」の三隻でグラナダ方面でかく乱行動を取りア・バオア・クーとの分断を図ることになるのだった。 [阪神四連敗記念]の続きを読む
  1. 2005/10/27(木) 22:34:53|
  2. ガンダムSS
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1939ポーランド

終わりました・・・
阪神の四連敗で終わりました・・・
これほど一方的になるとはなぁ。
また来年頑張りましょう。

もう一つ大ボケしちゃいましたねー。
昨日のゴキブリ女さんのSSで蜘蛛女さんやゴキブリ女さんがしゃべる時に怪人特有のうなり声を入れるのをすっかり忘れておりました。
修正しましたのでご容赦を。

今日は先日の空風鈴ハイパー様のリクエストに応えてみようと思います。
ちょっとお付き合いいただけると嬉しいです。

「軍曹、ミューラー軍曹、出撃命令です。」
愛車のエンジンルームの上で寝そべっていた俺にシュミットが声を掛けてくる。
俺は顔に載せていた黒いベレー帽を取り上げて起き上がった。
「出撃命令?」
「はい、いよいよ開戦ですよ。今度は延期は無いでしょう」
シュミットは意気揚々とした表情でそういった。
「ふん・・・始まるか・・・」
俺は砲塔に登ってハッチを開けもぐり込む。
こうして俺の、いや、俺たちの戦争が始まった。

1939年9月、俺たちはポーランドに侵攻した。
ポーランドが我が国の要求を受け入れず、わが国に対して攻撃を仕掛けてきたらしい。
嘘かホントかなどはどうでもよかった。
大事なのは目の前に現れるポーランド軍を撃破することのみだ。
俺はシュミット、ハイドマンの両名と一台の二号戦車に乗り込み、ポーランドの平原を駆け抜ける。

「ミューラー軍曹、第二十歩兵師団が攻撃を受けているようです。われわれは支援に向かうとのことです」
ヘッドセットをつけたハイドマンが無線の指示を伝えてくる。
「了解だ、小隊長車に続け」
俺はハッチから身を乗り出して指示を伝える。
先頭の一号戦車が道を外れ、俺たちはそのあとに続く。
友軍の危機を放置することはできない。
待っていろよ。

「あれだ・・・」
俺は驚いた。
第二十歩兵師団はかなりの痛手を受けている。
我が軍の歩兵たちが右往左往する中をあの勇猛なポーランド騎兵が蹂躙しているのだ。
俺は血が上った。
あんな時代遅れの騎兵たちに負けるわけには行かない。
「シュミット! 全速だ。歩兵の援護をするぞ!」
俺はハッチを閉めて機関砲と機関銃のセットをする。
こいつならばむき出しの騎兵などは蹴散らせるだろう。
俺たちの戦車は小隊と一緒にポーランド騎兵たちに突っ込んでいった。

第二十歩兵師団の損害は思った以上に大きかったようだが、ポーランド軍は後退していった。
驚いたことに彼らは生身で戦車に立ち向かってきたのだ。
雄々しくサーベルを振り上げて突撃してくる彼らを俺は機関砲と機関銃でなぎ払った。
中にはサーベルで切りつけて来る奴もいたが、戦車の装甲を切り裂くことなどできはしない。
勇猛果敢ではあったが、彼らには後退しか道は無かった。

「ふう・・・」
戦闘終了後エンジンルームに寝そべって俺はタバコをふかす。
今日の戦いは終わった。
だが、この戦争はまだ始まったばかりだった。

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  1. 2005/10/26(水) 22:27:49|
  2. ミリタリー系SS
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フェロモン

今日はゴキブリさんの続きです。
身も心も変わってしまった彼女。
これからどういう行動に出るのでしょうか。

5、
黒のレオタードに網タイツ姿の女戦闘員が走ってくる。
「イーッ、目撃者の始末を終わりました。」
彼女は右手を上げて敬礼するとそう言った。
まだ高校生ぐらいの少女と言っていい感じの女性だが、発する言葉は普通では考えられない言葉である。
「シュシューッ、ご苦労様、F91号」
黒塗りのワンボックス車の後席で脚を組んで座っている蜘蛛女が笑みを浮かべる。
妖しく魅力的な笑みだ。
改造される以前にはさぞかし男の気を惹くに充分な笑みだったろう。
「イーッ、どうやらゴキブリ女様も改造された喜びに目覚めつつあるようですね」
「うふふ・・・当然でしょうね。改造された躰の素晴らしさに気が付けば、わがデライトの改造戦士であることを誇りに思うようになるわ」
蜘蛛女はそんなのは当たり前と言わんばかりだ。
「蜘蛛女様もそうだったのですか?」
「・・・ええ、そうね・・・」
蜘蛛女は表情を曇らせる。
「シュシューッ、以前の私は何のとりえも無い平凡な主婦だったわ。夫と娘に囲まれて日々を暮らすだけの無意味な存在だったの」
「蜘蛛女様・・・」
「でもね、あるとき偶然私はデライトに捕らえられてしまったのよ。そこで私は光栄なことにデライトの改造戦士の素体として選ばれたわ。改造を受けて蜘蛛女に生まれ変わった私は、今とても幸せなのよ」
そう言って蜘蛛女は優しく微笑んだ。
「シュシューッ、だからきっとゴキブリ女も自分が幸せであることに気がつくはずよ」
「イーッ、私もそう思います。私もデライトの女戦闘員であることに誇りと喜びを感じていますから」
右手を上げて嬉しそうにF91号も微笑み返した。
そのとき遠くからサイレンの音が近づいてくる。
「イーッ、蜘蛛女様、どうやら誰かが警察を呼んだようです」
運転席の女戦闘員F67号が振り向く。
「シュシューッ、なんてこと。仕方ないわ、ゴキブリ女がしくじるようなら始末しましょう。それまでは様子見よ」
「イーッ、了解です」
F91号もワンボックス車に乗り込みその場を離れ、様子を見ることにする。
程なく一台のパトカーがゴキブリ女のアパートの前に停車した。

「はあ・・・すごく気持ちいい・・・」
うっとりとした表情でそうつぶやくゴキブリ女。
姿見に映し出されたその姿はつややかな外骨格に覆われた昆虫特有の硬質さを持っている。
「うふふ・・・私はゴキブリ女・・・私はゴキブリ女」
自分の存在を確かめるように自らの躰を抱きしめるゴキブリ女。
彼女にとってもう百原鈴美という名前は意味を持たなくなっており、ゴキブリ女という名前だけが脳裏を支配しているのだ。
「うふふ・・・なんて素敵なのかしら・・・この躰・・・私に逆らう人間は皆殺しにしてやるわ・・・」
ぞっとする笑顔を浮かべるゴキブリ女。
かつての生徒思いの女教師はそこにはいない。
「?」
サイレンの音が近づいてくる。
「フシューッ、警察? うふふふ・・・誰かが呼んだのね・・・」
ゴキブリ女はぺろりと舌なめずりをした。

「ここですか? 化け物が人を襲ったって言うのは?」
パトカーのドアを開けて一人の女性警察官が降りてくる。
「ああ、まあ、いたずらだとは思うけど、ここの夫婦はしょっちゅう喧嘩をしててね。付近の住民から苦情も出ているから、それと関係があるかもしれない」
運転席の方からは中年の男性警察官が降り、そう言って彼女の方を見る。
「旦那の方は俺が話しをするから、君は奥さんと話をして欲しいんだ。以前男は旦那の味方をするから話したくないって言っていたんでさ、君に来てもらったんだ」
「それは構いませんよ。派出所勤務としては当然のことですから」
にこやかにうなずく女性警察官。
まだ若く栗色のショートカットが可愛い感じだ。
おそらく配属されたばかりなのだろう。
二人は何気なくアパートに近づいていくが、その夫婦の部屋の扉が壊れていることに気がついた。
「なんだ? ゆがんでいるぞ」
「何かで叩き壊したんでしょうか?」
二人の警察官は顔を見合わせると、部屋の中に入り込んだ。

「ご免下さい」
「お邪魔いたします」
二人が入っていくと、玄関先にどす黒い血だまりができていることに気がつく。
「こ、これは?」
「ヒッ!」
驚愕し、思わず口元を押さえる女性警察官。
「大変だ、応援を呼んでくる」
そう言って同僚が出て行くのを、吐き気を抑えながら何とかうなずく。
死体を見るのは初めてではないが、床に転がっている半ば潰れた首を見たのは初めてなのだ。
「ガフッ!」
ピシャッという音がして彼女の足元に赤い液体が撒き散らされる。
「えっ?」
口を押さえて下を向いていた彼女はゆっくりと振り向いた。

そこには外へ向かった同僚が立ち止まっていた。
だらんと両手を下にしてうつむいている彼の背中から妙なものが生えている。
グロテスクな鉤爪を持った昆虫の脚のようなもの。
その先からは赤い液体が滴り、彼の足元を見る見るうちに真っ赤にしていく。
「あ、後東さん・・・?」
彼女が派出所に配属されて以来何くれとなく面倒を見てくれた先輩警察官の名前を呼んでみる。
まるでその返事を聞けばこの悪夢から逃れられるような感じだったのかもしれない。
「うふふふ・・・」
後東警察官の向こうから笑い声が聞こえてくる。
まるで楽しくて仕方がなく、つい笑みが漏れてしまったかのよう。
「だ、誰?」
彼女の躰に震えが走る。
ガクガクとひざが震えてしまっているのだ。
「フシューッ、うふふふ・・・ぶざまよねぇ。こんなにもろい躰をしているんだものね」
ブンと腕を振り、胸を貫いた死体を振り払うゴキブリ女。
その姿があらわになり、女性警察官はぺたんと尻餅をついてしまう。
「あ、ああ・・・あ・・・」
「うふふふ・・・まったく人間てすぐ死んじゃうのね・・・」
鉤爪の先に付いた血を舌で舐め取るゴキブリ女。
「い、いや・・・いや・・・」
必死に後ずさりしようとするが、血濡れの廊下は滑ってしまう。
おびえた彼女の股間からはちょろちょろと液体が流れ始めていた。

ああ・・・なんて可愛いのかしら・・・
おびえて半泣きになっている女性警察官を見てゴキブリ女はそう思う。
この女を支配したら・・・うふふ・・・楽しそうだわ・・・
人間を支配する。
そのことこそが下等な人間に対する正しい接し方であるように彼女には思えた。
うふふ・・・この女で試してみようかな・・・
ゴキブリ女はにやりと笑うと目の前のおびえた女に話しかけた。
「フシューッ、うふふふ・・・心配はいらないわ。あなたは私が支配してあげる」
「し、支配?」
女性警察官は泣きべそをかき、ぶざまに彼女を見上げている。
「フシューッ、ええ、支配してあげるわ。私のペットにしてあげる」
「あ、ああ・・・そんなのいやぁ・・・」
涙を流しながらいやいやをするが、ゴキブリ女は冷酷な笑みを浮かべて見下ろしていた。
「フシューッ、ねえ、これを嗅いでみてよ」
ゴキブリ女は自分の股間からフェロモンを滲ませる。
それはたちまち気化して女性警察官の鼻腔をくすぐった。
「えっ? あ・・・はあ・・・ん・・・」
彼女は少しの間鼻をひくつかせると、すぐにうっとりとした表情を浮かべるようになる。
「ああ・・・ああん・・・」
「フシューッ、上手くいったようね。どう、気持ちいいでしょ?」
ゴキブリ女がそっと手を差し伸べる。
すると女性警察官はうっとりとして微笑みながらその手にのどを差し出した。
「はあ・・・気持ちいいですぅ・・・ああ・・・私・・・私ぃ・・・」
「うふふ・・・私はゴキブリ女よ。お前の名前は?」
ゴキブリ女は彼女ののどを撫でてやる。
「は、はい・・・私は・・・私は安栖麻理香(あんざい まりか)ですぅ・・・」
「フシューッ、私は安栖麻理香です、ゴキブリ女様。でしょ?」
意地悪そうにのどを撫でる手の動きを止めるゴキブリ女。
「あ・・・は、はい。すみません、ゴキブリ女様ぁ」
そういった麻理香の表情は幸せそうだった。

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  1. 2005/10/25(火) 21:17:05|
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UH-1イロコイ

今日は休みだったのに部屋の片づけやら掃除やらでへとへとになりました。
これも普段から片付けていないばちが当たったんだなぁ。
ゴキブリさんの続きを書きたかったんだけど、まったくと言っていいほど書けませんでした。
明日は書くぞ!
・・・多分・・・(笑)

表題は軍用ヘリコプターとしてあまりにも有名な輸送ヘリコプターですね。
この形式名を知らなくても、映画「地獄の黙示録」でベトコンの村を「ワルキューレの騎行」をスピーカーから流しながら攻撃するシーンに出てきたヘリコプターと聞けば、その機体をイメージすることは容易でしょう。
ベトナム戦争は「ヘリコプターの戦争」とまで言われるほどヘリが活躍した戦争でした。
映画「プラトーン」のDVDを買ってきたのですが、やっぱりこのヘリが出てきます。
結局ジャングルの海の中では連続した戦線など作ることは不可能で、米軍は輸送ヘリを使って拠点を防御するのが精一杯という状況だったようです。

その拠点にしてもヘリのランディングゾーン(LZ)自体がベトコンのロケット攻撃にさらされたりして、着陸時に周囲を制圧する攻撃ヘリが必要ということになりました。
で、UH-1に機関銃やロケット弾を搭載して攻撃ヘリにしたのですが、さすがの輸送ヘリでも攻撃ヘリとしては力不足だったようです。
そのため、のちにこのUH-1をベースにAH-1コブラが攻撃ヘリとして作られ、これもまた名機として現在でも使用されています。

ベトナムのジャングルで周囲が敵ばかりの状況のG・Iたちは上空に現れるこういった攻撃ヘリや輸送ヘリはまさに天使の出現だったのかもしれませんね。

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  1. 2005/10/24(月) 22:24:58|
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日本シリーズ第二戦

昨日は阪神が負けちゃいましたが、今日は何とか勝って欲しいですね。
ということでちょっとこんなのを書いちゃいました。

カチッというかすかな音がしてデジタル時計が5:00を示す。
俺はベッドから起き上がって身支度を整え始めた。
隣で安らかな寝息を立てているエレーナ・クリモワ曹長の寝顔が美しい。
ジャブローから打ち上げられた時には慣れるなんて想像もできなかった無重力でのセックスにも、いつの間にか慣れてしまった。
軍服を着込み、そっと部屋を出ると早朝時間の艦内はまだ静かだった。
俺は艦内通路をマグネットシューズを使い走り始める。
居住区から艦首へ行き、そこから引き返して艦尾まで走るとまた居住区へ戻ってくる。
それだけでこの巡洋艦「ボルゴグラード」ではけっこうな距離になるのだ。
体力維持に俺は毎日走るのを日課にしている。
途中で長い髪の毛を後ろで纏めたソフィア・エリアルド中尉が向こうから走ってきた。
時間ピッタリ。
相変わらずきつめの表情だが、そこが魅力でもあるし、GM小隊の小隊長として部下の人望も厚い。
「ヨッ、君も時間ピッタリだね」
片手を挙げてエリアルド中尉が走り去る。
モビルスーツパイロットとしては体力維持は欠かせない。
機種は違うが俺も同じことだ。
この「ボルゴグラード」にはエリアルド中尉が率いるGM小隊と、モーリス中尉の率いるボール小隊があり、俺はそのボール小隊の二番機のパイロットを務めている。

RB-79「ボール」
わが連邦軍の物量の象徴とも言うべき存在だが、要は安く早く適当に作れる機体がこれしかなかったというのが実情だと俺は思う。
作業用モビルポッドに大口径の主砲を取り付けただけの代物。
180ミリキャノンの威力はガンタンクで実証済みで、当たればジオンのザクなどは吹き飛んでしまうが、いかんせん宇宙空間での命中率は高いものではない。
ミノフスキー粒子下での戦闘は目視でというのが標準だが、照準器だけで大砲の弾を高速で移動するモビルスーツにあてるのは至難の業だ。
結局弾をばら撒いてまぐれ当たりを期待するしかないのだが、ばら撒くだけの弾数も搭載できやしない。
最終的には小隊単位でGM隊の後方から支援砲撃をするだけになるのだが、まあ、情けないものである。
男としては噂のガンダムとは言わないまでもGMのパイロットとしてモビルスーツに乗りたいものであるが、現状では仕方が無い。

艦内を一周した俺はシャワーを浴びて汗を流すと、ノーマルスーツに身を包み他のパイロットたちがいるブリーフィングルームへ向かうことにする。
すでに部屋にはクリモワ曹長の残り香だけが残されており、今頃は彼女が俺のボールに弾を補充している頃だろう。
あと数時間後にはわが小艦隊はソロモンの哨戒圏内に入ることになる。
明日にはあの第十三独立艦隊も戦場に到着するはずだ。
わが艦隊はティアンム総司令指揮する艦隊の前衛としてソロモンに接近する。

「前方にジオンのパトロール艦隊!」
「総員戦闘配置!」
サラミス級巡洋艦「ボルゴグラード」の艦橋に緊張が走る。
相手はムサイ級巡洋艦三隻からなる小艦隊。
対するこちらはタイガー・オカダ大佐率いるサラミス級巡洋艦が四隻。
戦力的には五分と五分だろう。
先日の遭遇戦では一敗地にまみれ、無念の後退となったが、今日はそうは行かないはず。
俺は「ボルゴグラード」艦長カネモト中佐の発進命令を受け、甲板にむき出しで係留されているボールへ向かう。

俺のボールはすでにクリモワ曹長が発進準備を終えていた。
俺は整備兵たちに敬礼しボールのコクピットにもぐりこむ。
クリモワは整備状況を知らせる振りをして近づいてくると、ヘルメットをこつんと接触させた。
「死なないで下さい」
俺は彼女の言葉に無言でうなずくとハッチを閉める。
すでに敵はあの新型のリックドムとやらを展開中らしい。
さて、プレイボールと行くとしようか・・・

ということで何とか勝って欲しいのですが、どうも旗色は悪いようですね。
頑張れタイガース。(笑) [日本シリーズ第二戦]の続きを読む
  1. 2005/10/23(日) 20:02:12|
  2. ガンダムSS
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哨戒艇102号

うーん・・・
やっぱりミリタリーネタは受けが悪いのかしらん。(笑)
まあ、個人的趣味をつらつらと書いているだけなので仕方ないかもしれないですね。
でも、一部の方には楽しみにされているようなので、今日もミリタリーネタで行きます。(笑)

えーと、表題の哨戒艇102号はちょっと数奇な運命をたどった軍艦なのでちょっと紹介しますね。
この哨戒艇は太平洋戦争中の大日本帝国海軍に所属した船なんですが、もともとはアメリカ海軍の駆逐艦でした。
太平洋戦争開始時にはアメリカアジア艦隊に所属し、インドネシアのバリ島(観光地であり最近はテロで有名)沖海戦では日本艦隊と戦火を交えました。
この海戦で損傷を受けたアメリカ海軍駆逐艦「スチュアート」はスラバヤのドックで修理を受けていましたが、結局日本軍の侵攻により自沈処分されました。

日本海軍はこの沈んでいた駆逐艦「スチュアート」を引き上げ、改修して哨戒艇102号として就役させました。
4本だった煙突を3本にしたり武装を増やしたりとかなりの改造を施しはしましたが、それでももともとの持つアメリカ軍艦らしさは消えず、日本軍艦としては特異な艦形となりました。

哨戒艇102号は日本海軍にとっては捕獲した軍艦ですから、ある意味惜しげもなく船団護衛用の艦船としてあちこちに送り込まれました。
昭和19年にはアメリカ潜水艦「ハーダー」を撃沈さえしているのです。

この日本軍艦らしくない哨戒艇は「スチュアート」が喪失されたと信じていたアメリカ海軍には困惑の種だったそうです。
アメリカの哨戒機や潜水艦がこの哨戒艇102号を発見しても、味方艦かも知れないという疑念から攻撃をためらってしまうことまであったようです。

幸運なことに哨戒艇102号は太平洋戦争を生き延びました。
終戦により日本の軍艦はアメリカ軍が接収することになりましたが、この艦が元アメリカ軍艦だったことでアメリカ軍はまたもや困惑することになりました。
無事に戻ってきたこの駆逐艦をアメリカ海軍は自国の駆逐艦として再登録しようとしましたが、なんとすでに「スチュアート」という艦名は別の駆逐艦がつけていたのです。

結局艦番号DD-224という番号だけの復活となり名前はもらえませんでした。
そして終戦の翌年には標的として処分。
ここに数奇な運命をたどったこの哨戒艇102号は最後を迎えたのです。
(参考文献:世界の艦船日本海軍護衛艦艇史)

けっこう面白く、印象に残った船でしたので紹介させていただきました。
それではまた。

[哨戒艇102号]の続きを読む
  1. 2005/10/22(土) 22:41:42|
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加賀

加賀の国といえば今の石川県の一部。
戦国時代には一向宗の拠点があり、隣国越前の朝倉氏、能登の七尾氏と勢力争いをしていた地域ですね。
江戸期には前田氏が入り、加賀百万石として知られた強大な国でした。

その後明治維新を迎え、新政府によって廃藩置県が行なわれた結果、加賀の国という名称は消えることになりました。
しかし、その後加賀の名はまた一世を風靡することになるんですね。

ご存知かもしれませんが、明治期以後の大日本帝国海軍は主力である戦艦に旧国名をつけることを慣習としていました。
加賀も土佐型戦艦の二番艦として期待とともに建造が開始されたのです。
国力を無視した戯言ですが、当時アメリカが戦艦には州名をつけていたため、アメリカは戦艦を五十隻ぐらいしか作れないが、日本は七十隻以上も作れると言っていたそうです。(アメリカは当時48州に対し旧国名は70以上あったから)
まあ、それは笑い話なのですが、世界が戦艦の大量建造を始めた第一次世界大戦後、そのあまりの建造費の高さに各国は経済が立ち行かなくなるのを恐れて軍縮条約を結びました。
その条約により建造途中で破棄される戦艦が各国で相次ぎました。
新鋭戦艦として建造中だった土佐、加賀も出来上がる前に廃艦として処分されてしまうことになったのです。

一方高速戦艦として建造中だった赤城は同型艦天城とともに戦艦ではなく空母として改造されることになりました。
このまま何事も無ければ加賀の名は消え去っていたでしょう。
ところがここにある出来事が起きました。
関東大震災です。

改造途中の天城はこの震災で破壊されてしまいました。
困った帝国海軍は廃艦予定の加賀を急遽空母へ改装することにしたのです。
そして加賀は死の淵からよみがえり、帝国海軍の新鋭大型空母として赤城とともに活躍することになるのです。

ただ、残念なことに戦艦として作られた加賀は最高速度が28ノット程度で赤城の30ノットとは合わせることが難しかったようですね。
しかし、加賀はその名にふさわしい強力な航空戦力を持って、シナ事変から太平洋戦争初頭の真珠湾攻撃、そして運命のミッドウェーまで活躍し続けたのです。
その最後についてはまた今度。

[加賀]の続きを読む
  1. 2005/10/21(金) 22:39:56|
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たった一隻の軍艦の存在感

北海道は江差町に復元された幕末の軍艦開陽が固定されています。
徳川幕府が海軍力拡充のためオランダに発注した軍艦開陽は幕末の東アジア随一の戦闘力を持つ戦闘艦でした。
その開陽を中心とした榎本武揚率いる幕府海軍は当時かなりの海軍力であり、実際薩長の海軍力では幕府海軍に対抗することはかないませんでした。

鳥羽伏見の戦い以後江戸湾に待機していた幕府海軍は、その後の陸戦が薩長側有利になり幕府軍が奥羽越列藩同盟とともに東北各地を転戦するようになるとひそかに江戸湾を脱出しました。
宮古湾を経由し、函館にやってきた幕府海軍は周辺の制海権を確保して、幕府残党とともに蝦夷地に上陸します。

函館を拠点として活動する旧幕府海軍は開陽を中心とした艦隊でしたが、新政府側には対抗手段がありませんでした。
そこで旧幕府が購入する予定だった軍艦「スト-ンウォール」を手に入れ、甲鉄と命名して新政府海軍の中心戦力とします。
しかしそれでも開陽と対決するには心もとなく、新政府は歯噛みしながら海軍力の拡大を図るしかありませんでした。

その間にも旧幕府軍は着実に蝦夷地に地保を固め蝦夷地在住の新政府勢力を江差に追い詰めます。
しかし江差で陸軍が苦戦しているとの古い情報に榎本武揚は開陽を派遣して海上から支援することを決定しました。
冬の北海道の荒れた海に船出した開陽は、果たして様子のわからぬ北の海で座礁することになるのです。
何とか離礁しようとするものの、万策尽きた開陽はついに沈没。
旧幕府海軍は一瞬にしてその戦闘力の大半を失ってしまいました。

新政府軍は海軍力の低下した旧幕府軍から制海権を奪うと、蝦夷地上陸を果たし旧幕府軍は五稜郭に追い詰められます。
結局函館戦争は新政府軍の勝利に終わり、戊辰戦争は終結しました。
しかし、開陽が存在しその勇姿を誇示していたら新政府は蝦夷共和国を認めざるを得なかった可能性があったとも言います。
たった一隻の軍艦の喪失が一つの政府(蝦夷共和国政府)を瓦解させたという例は古今東西でも珍しいでしょう。
それだけ当時の開陽は強力な軍艦だったのでしょうね。

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  1. 2005/10/20(木) 23:15:52|
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胃カメラ飲みました

会社の健康診断がありまして、もう若くないので人間ドックをそのとき受けたのですが、やはり来ましたね~。
要再検査という文字が。(笑)
胃のレントゲン検査で微妙な影があったそうで、再検査を早急に受けるように指示されちゃいました。

で、先日そのために胃腸器科の病院へ行き、胃カメラを飲んでまいりました。
その日のうちにできるということなので、朝のうちに行ったのですが、待てど暮らせど順番が来ない。(笑)
で、検査前の診察が受けられたのが午後三時。

それで胃カメラまで待つことになったのですが、またしても待たされる待たされる。(笑)
結局胃カメラまでたどり着いたのが、午後六時でした。
つまりその日の最後の検査だったんですね。
胃カメラですので食事はできないわ、腹は減るわでへとへとになりました。

口とのどに麻酔をし、器具をくわえさせられてゆっくり押し込まれるのですが、やはり辛かったですね。
げっぷは出るし唾液は出るしで見られたもんじゃありません。(笑)

幸いなことに胃の内部にも十二指腸にも潰瘍もガンも無いよとのことでホッと一安心。
太っているため胃がちょっとゆがんでいるので再検査となったのだろうということでした。
まあ、つらい思いをしましたが綺麗な胃の写真を見せられて安堵しました。

健康はやっぱり大事ですよね。
皆様もお体はお大事に。

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  1. 2005/10/19(水) 22:08:59|
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うふふ・・・私はゴキブリ女よ

鈴美先生のその後です。
個人的にはこうして精神がじょじょに変化して行くのが好きなんですが、やっぱり書ききるのは難しいですね。
今回もうまく心の変化を書ききれていないような気がします。
それと少し冗長になっているような気もしますので、読んでくださる方々にはちょっと辛いかも。
とりあえず投下しますので、よろしければ目を通してくださいませ。

4、
「どういうつもり? 家へ帰しちゃうなんて」
深い青さをたたえた瞳をメガネの奥から向けてくるドクターリン。
「クククク・・・なに、ちょっとした実験ですよ。パルスカラーが彼女を洗脳するのに周囲の環境がどれほど影響を与えるかをね」
チャン・ザ・マジシャンは不適に笑う。
その自信はパルスカラーと呼ばれる洗脳装置に向けられたものだった。
今まで何人もの改造戦士が作り出されてきた。
初期の頃の洗脳技術は未熟であり、裏切り者まで出る始末だったという。
改造されることによって人間とは違った存在になったにもかかわらず、あまりの変貌振りにショック死してしまったものもいた。
そういった失敗を積み重ね、現在もっとも信頼が置けるのが改造戦士たちに取り付けたパルスカラーと呼ばれる首輪だった。
微弱な洗脳波が装着者の脳にじょじょに影響を及ぼし、次第にその精神を暗黒結社デライトの改造戦士としてふさわしいものに変えて行くのである。
先日改造を施した蜘蛛女も、改造以前は優しく慈愛に満ちた主婦だったのだが、このパルスカラーによって今では冷酷で無慈悲な改造戦士として暗殺などに活躍してくれている。
「まあ、改造後の戦士に対してはあなたの権限ですからね。とやかくは言わないけど、目撃されたりしたらまずいんじゃない?」
仕方ないわねという感じで肩をすくめるドクターリン。
その顔にいたずらっ子の少女のような表情が浮かぶ。
「クククク・・・心配は要りませんよ、ドクターリン。すでに彼女はパルスカラーの影響下にありますからね。人間どもを取るに足りない存在と感じ始めているでしょう」
チャン・ザ・マジシャンはこれから起こることへの期待にわくわくするものを感じていた。

郊外にある古びた廃屋。
その地下室の扉が開く。
顔を出して周囲を確認する赤と緑のメイクを施した女性。
「イーッ、こちらです、ゴキブリ女様」
「フシューッ、ありがとうF115号」
無意識に身をかがめて周囲を探る鈴美。
ゴキブリ女と呼ばれることもこの女戦闘員からなら気にならなかった。
「さ、行きましょう」
小柄でまだ幼さの残る可愛いこの女戦闘員F115号を鈴美は気に入っていた。
だから何も考えずにその後ろに従うことができたのだ。
F115号は先に立って廊下を進み、アジトの隠れ蓑となっている廃屋のリビングに到達する。
そこには紙袋と鈴美のハンドバッグが置かれていた。
F115号はそれを拾い上げると鈴美の方へ差し出す。
「フシューッ、それは?」
「イーッ、ゴキブリ女様の着ていらっしゃったお洋服とかが入っています」
「フシューッ、洋服?」
鈴美は自分の躰を見下ろした。
言われるまで気がつかなかったが、今の彼女は裸と言っていいだろう。
でも・・・
服を着るなんて必要あるのかしら・・・
鈴美は不思議に思う。
服を着るなんてのは自分の肉体を保護する必要がある下等な人間だからだ。
だから今の私には・・・
そこまで思って鈴美は何か変なことに気がついた。
私・・・私は人間?・・・私は・・・私は・・・
「イーッ、どうなさったのですか、ゴキブリ女様?」
「え? あ・・・わ、私は・・・私は何なの? 私は人間じゃないの?」
鈴美は何がなんだかわからなくなる。
自分が人間なような気もするし、そんな下等生物とは違うという気持ちもあるのだ。
「イーッ、あなた様は我が暗黒結社デライトの改造戦士ゴキブリ女様。下等な人間のごとき汚らわしい存在ではございません」
F115号は心配そうに鈴美を見つめる。
その目には彼女に対する深い信頼が寄せられていた。
そうか・・・そうよね・・・私は改造戦士ゴキブリ女だったっけ・・・
何か釈然としないながらも鈴美は考えるのをやめた。
そして紙袋を受け取り中身を確認する。
シンプルな白のブラウスと紺のスカート、それにショーツとブラジャーが入っている。
鈴美はそれを見つめていたがどうにも違和感を感じて仕方が無かった。
私はこんなものを身につけていたというの?
服を着るということが必要だとは思えない。
だが、とりあえずは持って行くことにしよう。
鈴美はハンドバッグと紙袋を手に取ると玄関へ向かう。
「イーッ、そろそろ夜明けが近くなります。充分に気をつけてください」
「フシューッ、わかったわ、ありがとう」
鈴美は少し不安に思ったが、意を決して外へでる。

外はまだ星空が広がっていた。
その時になって鈴美は廃屋には明かりがまったく点いていなかったにもかかわらず、まったく見るのに不都合が無かったことに気がついた。
やっぱり私は改造戦士なんだわ・・・
そう思うと何か気分がよくなる。
鈴美は無意識に首もとの首輪に手を当てた。
「イーッ、少しお待ち下さい」
そう言ってF115号は玄関前に止められていた黒塗りのセダンのところへ行き後部扉を開けた。
「イーッ、どうぞ、ゴキブリ女様」
F115号が直立して待っている。
鈴美はすごく気分がよかった。
そうよ・・・そうだわ・・・これこそが秩序よ・・・正しい世界なのよ・・・
「フシューッ、ご苦労様」
そう言って鈴美はセダンの後部座席に座る。
すぐに扉が閉められF115号は運転席へ回り込む。
セダンの窓は全てシェードが掛けられ、外から内部を覗くことはできない。
唯一正面だけがシェードが無かったが、そこから内部はよく見えないだろう。
「イーッ、まだ通る車も少ないはずです。ご自宅の住所をお教えいただいておりますので、しばらくお休み下さい」
そう言ってF115号は車を走らせ始めた。
鈴美はすごく安心した気分になり、やがてうつらうつらし始めたのだった。

「イーッ、ゴキブリ女様、着きました」
その声に鈴美は目が覚める。
見ると窓の外にはいつも暮らしていたアパートがある。
周囲はそろそろ夜が明け始めて薄明るくなりかけていた。
「フシューッ、ありがとう、送ってくれて」
「イーッ、いえ、これも任務ですので」
F115号はにこやかに微笑んだ。
その笑みはすごく可愛い。
鈴美は長い触角を揺らしながら車から降り立つと、自分の部屋がある二階へ向かう。
朝早いため周囲に人影は無い。
鈴美は肩から提げていたハンドバッグから鍵を取り出すと扉を開けて中に入る。
F115号はそれを見届けて車を出した。

「フシューッ・・・」
バッグと紙袋を放り出し、ベッドに寝転がる鈴美。
いろいろなことがあって疲れているはずなのに躰は休息を欲してはいない。
先ほどうつらうつらしたのも躰ではなく頭がこんがらかっていることが大きかった。
私はいったいどうなってしまったのだろう・・・
一人きりになって鈴美はそう思う。
夕べ学校から帰る途中で蜘蛛女に私は捕らわれた・・・
そして暗黒結社デライトのアジトへ連れて行かれ、そこであのチャン・ザ・マジシャン様やドクターリン様に出会った・・・
いつの間にか彼らを様付けで呼んでいることに鈴美は気がつかなかった。
そしてゴキブリとの融合手術を受けたんだわ・・・
鈴美は自分の右手を見つめた。
黒と茶色の外皮に覆われた腕はつややかでとても堅く、力だって強い上に鋭い鉤爪が付いている。
ゴキブリと融合した素晴らしい躰だが人間どもにはこの美しさはわからないだろう。
私・・・どうしたらいいのかな・・・
長い触角をそのまま右手に取り、口元に持ってきて舌で舐める。
舌の感触が触覚を通じて感じられてくすぐったい。
学校へ行かなきゃ・・・
だが果たして学校へ行ってもいいのだろうかとも思う。
この躰じゃ生徒たちが怖がるかな・・・
そう思ったとき鈴美は言い知れない苛立ちを感じた。
この美しい躰は改造戦士たる証だわ・・・
それが人間どもにはわからないのよ・・・
元の躰なら・・・
元の躰?
あんな躰に戻ってどうしようというの?
この躰こそ私の躰・・・
素晴らしい躰なのよ・・・
鈴美は両手で躰を抱きしめる。
でも、どうしよう・・・
今日は学校休んじゃおうかな・・・
鈴美はベッドの上で体を丸めた。

ガチャーン!
皿の割れる音がする。
『出てって! 出てってよ!』
『お前こそ出て行け!』
怒鳴り声も聞こえてくる。
鈴美は頭を抱えた。
また始まったのだ。
アパートの下の階に住む夫婦はしょっちゅう夫婦喧嘩が絶えない。
そのたびに物が投げられ壊れる音や怒鳴りあう声で起こされるのだ。
朝早く出勤する主人が支度をしている時に限ってその妻が不満をぶちまける。
その結果朝っぱらからの怒鳴りあいとなって周囲に迷惑を振り撒くことになるのだった。
それにしても今日は激しいわね・・・
防音が不十分とはいえいつもはこれほどはっきり聞こえることは無い。
それが今日はまるでこの部屋で怒鳴りあっているかのように聞こえるのだ。
『いい加減にしろ!』
『あなたはいつもそうじゃない!』
怒鳴りあいの声が鈴美をいらいらさせる。
布団をかぶってもまったく効き目が無い。
うるさいわねぇ・・・
喧嘩ならどこか別のところでやってよ・・・
下等生物のくせに・・・
鈴美はムカムカと腹が立ってくる。
「フシューッ、ああっもう、うるさいわねぇ!」
布団を跳ね除け、かつかつと足音も高く玄関へ向かい外へ出る。
階段を下りるのももどかしかったので、手すりを越えて飛び降りた。
キャーという悲鳴が聞こえたような気がするがそんなことはどうでもいい。
鈴美は下の階の部屋の前に立つとどんどんと扉をノックした。
「フシューッ、ちょっといい加減にしてよね! こんな朝早くから喧嘩なんて!」
驚いたことに軽くノックをしたつもりだったが、扉がゆがんでしまい開いてしまう。
「えっ? キャー!」
玄関先に出てこようとしていた中年女がいきなり鈴美の顔を見て悲鳴を上げた。
「どうした。うわぁ、ば、化け物!」
奥から様子を覗いたこの家の主人も驚いて悲鳴を上げる。
ば、化け物ですって?
私が化け物?
下等生物のくせに・・・
鈴美は怒りが湧き起こるのを押さえ切れなかった。
目の前で口を開けて驚いている中年女の頬を張り飛ばす。
ベシャッという音がして廊下の壁が真っ赤に染まる。
鈴美の鉤爪が女の顔を切り裂き、首を刎ねたのだ。
ああ・・・
気持ちいい・・・
鈴美は壁に撒き散らされた血を見た瞬間軽くイってしまうほどの快感を感じた。
「あは・・・あはははは・・・」
うっとりと血塗られた鉤爪を見つめる鈴美。
「う、ウワーッ!」
部屋の奥へ逃げて行こうとする男。
「フシューッ、逃がしはしないわ。あははははは」
鈴美は熱に浮かされたように男を追いかけて部屋に入っていく。
そして男の襟首を掴むとそのまま壁に叩きつける。
男の頭部はあっけなくつぶれ、血と脳漿を撒き散らして絶命した。
「あは・・・あははははは・・・」
鈴美はうっとりとして笑い続ける。
気持ちがよかった。
ただ気持ちがよかったのだ。
鈴美はひとしきり笑い続けると足元の死体を見下ろして踏みつける。
「フシューッ、下等生物のくせに私をイラつかせるからよ」
そう言って部屋を出る鈴美。
どうやら何人かの人間どもが見ているようだが、邪魔になるようなら殺せばいいだろう。
そう・・・私は改造戦士ゴキブリ女なのだ。
下等な人間どもは支配してやるのだ。
そう・・・私は選ばれた改造戦士ゴキブリ女。
鈴美の心から『百原鈴美』という名前が消えていく。
笑みを浮かべながらゴキブリ女は自分の部屋に戻った。

「あらあら、騒ぎになっちゃうわよ」
スクリーンを見つめていたドクターリンがニヤリと笑みを浮かべる。
「クククク、ご心配は無用ですよ、ドクターリン」
赤と緑の服の襟に両手の親指を掛けおどけたようなポーズを取るチャン・ザ・マジシャン。
彼はいつでも真面目そうに見えることが無い。
しかしその手腕は確かで、幾つもの作戦を成功させているのだ。
「ゴキブリ女の周囲には女戦闘員と蜘蛛女が待機しています。騒ぎは短時間で収束するでしょう」
「なるほど。手回しがいいのね」
感心したようにうなずくドクターリン。
「クククク・・・あなたの傑作ですからね。失いたくはありません」
「そんなことを言うわりには危ない橋を渡るわね。アジト内で過ごさせれば意識変化も問題無いでしょうに」
ドクターリンがメガネの奥の瞳を無遠慮に向ける。
「クククク、言ったでしょう、実験だと。もし万が一改造後に脱走などされても問題無いのかどうかを確かめるためにね。もちろんパルスカラーの能力は実証済みではありますが、いつ不測の事態というものが起きるかわかりませんからね」
手にしたステッキをくるくると回してドクターリンの目を楽しませながらも、その目はスクリーンの方を向いている。
「うふふふ・・・そんなこと言いながら楽しんでいるんでしょ?」
「おお、もちろんですよ、ドクターリン」
チャン・ザ・マジシャンは右手を胸に当てて慇懃に腰を折った。

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  1. 2005/10/18(火) 21:34:49|
  2. デライトもの
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う、嘘でしょ・・・私の躰が・・・

いつもより早い時間ですが、鈴美先生の変化シーンをお届けします。
あと、10/11投下分で手術室にいた女戦闘員を白いレオタードの医療用女戦闘員に修正いたしました。
ご了承下さいませ。m(__)m

3、
「いやぁっ! やめてぇっ!」
鈴美が声を限りに張り上げるが周りの連中はまったく意に介さない。
「イーッ、おとなしくなさい」
以前見た黒レオタードの女たちとは違い、白いレオタード姿に赤と緑の不気味なメイクを施した女が鈴美の腕を取り、注射器を突き立てる。
「いやぁっ!」
毒々しい蛍光ピンクの液体がシリンダー内から鈴美の体内に注入されていく。
「あ、あああああ・・・」
不気味な液体が注射されることに恐怖のあまり声も出せなくなってしまう。
注射器の針が抜かれると、代わりにドクターリンと呼ばれた女性が近づいて鈴美の頬をそっと撫でた。
「うふふふ・・・素敵だわぁ。この引き締まった素晴らしい肉体が茶色く節くれだった外骨格に覆われて行くのよ。完成を想像しただけでもうイッちゃいそう・・・」
艶めかしく吐息を吐きながらうっとりと鈴美の躰を眺めるドクターリン。
「く、狂っているわ・・・」
「お黙り! 私は狂ってなどいないわ。私の能力を理解できない愚か者どもだけが私を気違い呼ばわりするけど首領様は違った」
鈴美の言葉にキッとなってドクターリンはにらみつける。
「首領様は私の能力を認めて私をデライトに迎えて下さったわ。人間を改造することに関しては私の右にでるものなどいない!」
「そんなことをするのは狂った人だけよ」
鈴美はそう言ったが、その間にじょじょに躰が熱くなってくるのを感じていた。
「はあ・・・はあ・・・」
「うふふ・・・あなたに注射した薬はあなたの細胞を遺伝子レベルから変えて行くことができるの」
「遺伝子レベル・・・から・・・?」
躰が火照る。
頭がぼうっとしてくる。
何がどうなっているのかわからなくなってくる。
「さて、次はこれよ。」
ドクターリンはガラス瓶の中で蠢く大きなゴキブリを見せつける。
ガラス瓶の中で行き場を求めて足を動かす様はかさかさという音が聞こえてくるようだ。
「いや・・・やめてぇ・・・」
火照る躰に苛まれながら鈴美は懇願する。
だが、その目の前でドクターリンはそのガラス瓶に蛍光グリーンの液体を注ぎこんだ。
液体はすぐにゴキブリを溶かしていき、ガラス瓶の中はただのグリーンの液体だけになる。
「うふふ・・・ごらん。ゴキブリの遺伝子がこの液体に溶け込んだわ。あとはこれをあなたに注ぎ込むの」
「いやぁっ!」
「あははははは・・・」
ドクターリンの高笑いが鈴美の悲鳴をかき消して行く。
そしてドクターリンは機械の一つにその蛍光グリーンの液体の入ったボトルを機械にセットした。
すぐに白レオタードの女戦闘員たちが機械から伸びるチューブを鈴美の躰に取り付ける。
彼女たちはドクターリンの手伝いをするべく看護師から改造されたドクターリン専用の戦闘員たちだった。
鈴美の右手に取り付けられたチューブからは彼女の赤い血が吸い出されていく。
そして一旦機械に吸い込まれるとグリーンの液体と混じりあい、どす黒い液体となって左手のチューブから鈴美の躰に再び流れ込んでいった。

ああ・・・体が熱い・・・いったい何なの?
鈴美は台の上で体を切なそうにゆする。
微妙な火照りが彼女の躰を悩ませる。
「ああ・・・ん・・・はあ・・・はあ・・・」
鈴美の口から漏れる吐息がじょじょに艶を帯びてくる。
「うふふ・・・さあ仕上げに掛かるわよ。細胞活性線を浴びせなさい」
「イーッ」
ドクターリンの命令に右手を高く上げ敬礼する女白戦闘員。
すぐさま彼女の操作で手術用の無影灯のようなものが天井から降りてきて色とりどりのライトを鈴美に浴びせてきた。
「ああ・・・ああ・・・」
ライトは鈴美に適度な刺激を与え、火照りを快感に高めて行く。
「はあ・・・ん・・・ああ・・・はあん・・・」
鈴美の表情が徐々にうっとりしたものに変わっていく。
「クククク・・・以前と比べるとずいぶん気持ちよく変化していくようですね。ドクターリン」
その様子を壁にもたれかかりながら含み笑いを浮かべているチャン・ザ・マジシャンが見つめていた。
「うふふふ・・・ええ、改造に対し嫌悪感を失くせばそれだけ後の洗脳もやりやすいでしょ?」
鈴美の躰の表面に浮かび上がり始めた黒いつややかな染みが、徐々に広がり始めているのをうっとりと見下ろしているドクターリンが振り返りもせずに答える。
「後のことまで考えていただくとはありがたいですね。もっともパルスカラーはそんなことは関係なく洗脳しちゃいますがね」
クククと含み笑いをもらすチャン・ザ・マジシャン。
彼の持つステッキにはいつの間にか鈴美用の首輪が掛けられていて、くるくると回転させられていた。
「まあそうかもしれないけど、変化はやっぱり気持ちいいほうがいいじゃない」
ドクターリンがそう言う目の前では鈴美の躰がじわじわと黒と茶の外骨格に覆われていくところだった。
鈴美の滑らかな皮膚はつややかな堅い外皮に変化して行き、額からはピンと長い触角がゆらゆらと揺れ始めている。
頭部も髪の毛の代わりにヘルメット状の外皮が被さり、つやつやと輝いている。
両手の先は細かい毛の生えた鉤爪のある指先に変わっていき、両足の先も足指が無くなりハイヒール状に踵が尖っていく。
黒と茶の外皮は鈴美の躰を満遍なく覆っていき、腹部は茶色い節々が細かい毛を持ちながら覆っていく。
形良い柔らかな胸も茶色い外皮で包まれていき、女性であることを示す性器も堅い外皮がカバーする。
背中には柔らかな翅が生え、その外側をつやつやした堅い外翅が包み込む。
目も複眼に変化した鈴美は唯一口元だけが人間らしさを保っていた。
もちろん皮膚は強化され、歯も牙状に変化しているので人間のままではないものの、比較的人間らしい形状をしていたのだ。
「うふふ・・・どうやら完成のようよ」
「クククク・・・これは見事ですね。素晴らしい改造戦士の誕生だ」
台上で横たわるゴキブリ女に二人は満足そうに笑みを浮かべた。

ひんやりした台の上で鈴美は目が覚めた。
あ、あれ・・・?
私はどうしたんだっけ?・・・
確か家に帰る途中・・・
そこまで思い出したとき、鈴美は天井に見慣れない奇妙な生き物が彼女を見下ろしていることに気がついた。
「ヒッ!」
思わず両手で口元を覆う鈴美。
だがその不気味な生き物は、鈴美と同様に口元を押さえたのだ。
「えっ?」
鈴美はその生き物をよく見ようとした。
いくつもの映像が重なり合ってその生き物の細かいところまでも良くわかる。
しかもそれは平板な板に映し出されたものだった。
「鏡・・・?」
鈴美はすぐに気がついた。
あれは天井にある鏡だ。
その鏡に映っているのは自分なのだ。
「あ・・・ああ・・・」
そうだ・・・私はあのピエロに連れて来られて白衣の女に不気味な液体を注射されたんだわ。
そして私は・・・
「目が覚めたようだなゴキブリ女よ」
鈴美は声のした方へ振り返った。
そこにはあの赤と緑のピエロが笑みを浮かべて立っていた。
「ち、違うわ。私は百原鈴美よ。ゴキブリ女なんかじゃない」
鈴美は上半身を起こして首を振る。
長い触角がふるふると揺れて空気の流れの中からかすかな気配さえ読み込んで行く。
この部屋には彼一人しかいない。
鈴美は何となくホッとして首に付けられた首輪にそっと手をやった。
ああ・・・気持ちが落ち着くわ・・・
鈴美はこの首輪がとても気に入っていた。
首輪なんて犬みたいだったが外す気にはまったくならなかった。
「クククク・・・そうでしたね。あなたは百原鈴美。これは失礼した」
慇懃に腰を折りふかぶかと一礼するチャン・ザ・マジシャン。
だが不気味な笑みはまったく変わりが無い。
だが鈴美はその笑みが素敵に思えた。
先ほどまで感じていた嫌悪感は消えうせていた。
それに今彼が呼んだ『百原鈴美』という名前もどういうわけかピンと来なかった。
彼女は百原鈴美のはずなのに、百原鈴美ではない。
そんな気がしたのだ。
鈴美は首輪を触り続ける。
それだけで心が落ち着いた。
「クククク、改造は終わりました。それでどうしますか?」
チャン・ザ・マジシャンが両手を広げて鈴美に問いかける。
「えっ? どうするって・・・どういうこと?」
鈴美はつやつやした外皮に覆われハイヒールブーツのようになった自分の脚をずらして、手術台に腰掛けるようにして向き直る。
「私としてはこのままあなたにここにとどまっていただき、我が暗黒結社デライトの一員となってくれることを望むのですがね」
白く塗られた顔がゴキブリと融合した鈴美を見つめている。
「ですが、あなたが家へ帰りたいというのなら止めはしません」
「えっ? 帰っていいの? 私、家に帰ってもいいの?」
肩をすくめるチャン・ザ・マジシャンに鈴美は思わずそう言っていた。
「構いませんよ。我が暗黒結社デライトは自主性を重んじますからね。あなたが帰ると言うならば帰っていただいてけっこうです」
「か、帰ります。私・・・帰ります」
そう言って鈴美は立ち上がる。
ゴキブリと融合した躰はとても軽く、今ならどんな難易度の技でもできそうだった。
すごい・・・躰がこんなに軽いなんて・・・
「ああ・・・実に残念ですね。せっかく素晴らしい素質をもち、ゴキブリ女になれたというのに・・・クククク・・・・」
鈴美はちょっと気が咎めた。
そう・・・せっかく改造してもらったのに・・・このまま帰っていいのだろうか・・・
「な・・・わ、私はいったい何を・・・」
鈴美はわきあがった感情に驚いた。
こんな躰にされたことを感謝するなんて信じられない。
「どうしたかな、百原鈴美?」
「な、なんでもないわよ!」
鈴美は気を落ち着けようと首輪を触る。
「そうですか、それは失礼。ですがこのアジトの入り口はいつでも開いていますからね。クククク・・・」
チャン・ザ・マジシャンは相変わらず不気味な笑みを浮かべていた。
「ち、ちょっと聞かせて下さい。この躰は・・・元には・・・」
「クククク・・・戻せるものではありませんよ。ですがそんなに嫌いですか?」
鈴美はドキッとした。
先ほどからこの躰でもいいかなという気持ちが鈴美の中には確かにあったからだ。
「き、嫌いに決まっています。ゴ、ゴキブリなんて・・・嫌い・・・だわ・・・」
ゴキブリが嫌い?
嘘だわ・・・
こんなに生命力に満ち溢れ環境適応能力の高い生き物は他に無いじゃない。
黒光りするつややかな躰・・・
素敵な生き物よ。
鈴美は思わず目をそらす。
そのままチャン・ザ・マジシャンの脇を通り抜け通路に出ると、一人の黒レオタードの女性が立っていた。
確か・・・彼女たちは女戦闘員って言うんだったわ・・・
すらりとしたスレンダーな躰にハイネックのレオタードがよく似合っている。
太ももの網タイツもふくらはぎを包む黒いハイヒールブーツもあつらえたようにピッタリだわ。
顔のペイントがすごく美しい。
デライトのために働く下級戦士たちだけど、彼女たちがいてこそ暗黒結社デライトは成り立っているのよね。
「イーッ、出口までご案内いたします、ゴキブリ女様」
片手を挙げて敬礼する女戦闘員。
最近は生徒たちだってこれほど礼儀正しくは無い。
鈴美はすごく嬉しくなった。
「フシューッ、お願いするわ女戦闘員さん」
鈴美は無意識のうちに特有のうなり声を上げていた。
「イーッ、F115号とお呼びください」
「フシューッ、わかったわF115号。行きましょう」
鈴美は女戦闘員とともに通路を歩いていった。

[う、嘘でしょ・・・私の躰が・・・]の続きを読む
  1. 2005/10/17(月) 21:12:01|
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四ヶ月目に突入です

あまりこういうことを書くのは良くないのかもしれませんが、どうにか一日も欠けずに丸三ヶ月を過ごすことができました。
これからも続けられる限りは毎日更新を続けていきますので応援よろしくお願いいたします。

今日も戦争にまつわるエピソードなど。
皆さんは映画「八甲田山」をご存知でしょうか。
高倉健さんと北大路欣也さんが主演で大日本帝国陸軍の八甲田山雪中遭難事件を基にした映画ですが、有名な映画ですのでご覧になられた方も多いはず。

では、なぜあの雪中行軍が行なわれたか?
これは意外と知られていないかもしれないですね。

日清戦争で大陸への足がかりを得た日本に対し、ロシアが満州に進出して一触即発になって行きます。
いつ開戦になるかもしれない情勢下で気になったのは日本国内の交通通信事情でした。
津軽海峡をロシア艦隊に封鎖され、陸奥湾を制圧下に収められたら、冬の青森は孤立化しかねないと考えた帝国陸軍は、冬の八甲田近辺を通る通信連絡路を確保しようと思い立ちました。
「冬の八甲田を歩いてみたいとは思わんかね?」
この一言で青森5連隊、弘前31連隊は困難な冬の八甲田山雪中行軍をすることになったのです。

観測史上稀に見る悪天候に襲われ、青森5連隊神成隊は雪の中をさ迷い歩き、壊滅的損害を出してしまいます。
一方の弘前31連隊福島隊は全工程を無事に乗り越え、貴重な体験記録を持ち帰りました。
しかし、陸軍の防寒装備の改善は福島隊の成功記録より神成隊捜索のための救出隊の体験の方が大きかったそうですね。
もし、天候に恵まれ両隊とも無事に八甲田山系を踏破できたとしたら、いつかもっと大きな被害をどこかの戦場で出していたかもしれないですね。

結局こういった無謀とも言える雪中行軍をすることになったのも、日露の緊張が高まったからということが言えるでしょう。
いつの時代も国家間の緊張は死ななくていい人々を死なせてしまうことになるようです。

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  1. 2005/10/16(日) 22:34:01|
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これも神風

ミリオタ舞方のブログだけあって、コメントを寄せてくださる方の中にも戦史や兵器が好きな方がいらっしゃるようで、私としても嬉しい限りです。

で、今日はこんなエピソードを。
けっこう多くの方が元寇はご存知でしょうね。
フビライ率いる元の国が日本へ攻め寄せた戦いですね。
二回やってきましたが、いずれも時期はずれと言っていい台風によって元の艦隊は壊滅的な打撃を受けました。
これによって日本は救われたということで、これを神風と呼ぶようになったようですね。

で、太平洋戦争で神風というと大多数の方が特攻隊を思い浮かべると思います。
私もそうなんですが、でも、こんなエピソードもあったんですよ。

水雷艇「友鶴」の転覆事故及び第四艦隊事件で、大日本帝国海軍は荒天下での艦船の復元性の重要さを身に沁みて知りました。
水雷艇の船体に駆逐艦並みの重武装だった「友鶴」は荒れた海であっという間に転覆。
その後演習中に第四艦隊が台風に遭遇、これまた多数の艦艇が損傷を受けました。
台風によって艦船が被害を受けるということを知った海軍は、この事件をひたすら秘密にしました。
なぜなら、この事件が知られれば、各国とも対策を採ってしまい台風で沈んだりしなくなってしまうからです。
日本の近海までやってきたアメリカ海軍艦船がもしかしたら台風で沈んでくれることを期待したわけですね。

はたして太平洋戦争終盤、アメリカ海軍の大艦隊がフィリピン沖に集結していたときに、台風の直撃を食らいました。
沈没した船はさすがに無かったはずですが、かなりの艦船が被害を受けて修理しなくてはならなくなったそうです。

実はこの損害こそが、アメリカ海軍が太平洋戦争中に被った損害の中で最大のものだったそうですね。
日本の機動部隊の攻撃よりも、特攻隊の体当たりよりも、台風による被害こそが大きかったとは戦争の皮肉をまさに示している気がいたします。

それではまた。

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  1. 2005/10/15(土) 22:33:04|
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信じられないが本当だ

本日丸3ヶ月を目前にして四万ヒットを超えました。
本日21:15現在の数値です。

ページビュー合計 : 40337 今日のページビュー : 473
今週のページビュー : 3624 1 時間以内のページビュー : 35


本当に嬉しさでいっぱいです。
皆様のご訪問に感謝感謝です。
拙いブログですがこれからもよろしくお願いいたします。

えーと、アメリカ南北戦争でのエピソードを一つ。

南軍の指揮官リーが南部の勝利を目指し、第二次ブル・ランの戦いで北軍のポープ将軍の率いる部隊を蹴散らしたことで、北軍は窮地に追い込まれました。
リーはこの勝利を確実なものにするべく、部隊を率いて北部侵攻を実行に移します。
北軍は平時の名将、戦時の凡将であるマクレランに部隊を集中し、リーの侵攻に対抗することになります。
リーは北軍を翻弄するべく、部隊を複数に分け(北軍に比べ少数の自軍部隊をさらに分けるという大胆な行動)それらに行動を指示した命令書を渡しました。
この指示書が何枚の複写を取られたのかは定かではありませんが、ある南軍兵士の手元にあったのは間違いありません。
なぜならその南軍兵士はその命令書の写しに自分の大事な葉巻タバコを包んで持ち歩き、それを落としてしまうのです。

その葉巻タバコを包んだ包みはある北軍兵士が拾いました。
開いてみてびっくりしたでしょうね。(笑)
敵の作戦命令書だったのですから。
その命令書は北軍の指揮官マクレランの手元に渡りました。
マクレランは喜び、これでリーの首を取ったも同然だと喜んだそうです。

しかしそうは事は運びませんでした。
南軍に味方する住民から北軍の情報を得ていたリーは、マクレランがなぜか命令書を手に入れたことを知り、再度部隊を集結させます。
一方マクレランは自分が育て訓練した部隊を危険に晒したくなかったのか、緩慢な動きでリーを打つ絶好のチャンスを逸してしまいます。

結局両軍はアンティータムで正面からぶつかり合いました。
南軍のほぼ二倍の兵力の北軍は終始押し気味でしたが、リーが戦場を撤退した時にまたしてもマクレランは自軍の損失が予想以上に多かったのに意気消沈し追撃をしないというお粗末な結果になったのです。

平時には有能でアメリカ連邦軍の若きナポレオンとまで言われ、写真もわざわざナポレオンのポーズを真似していたマクレランでしたが、戦場で有能さを発揮することはついに無く、リーの引き立て役となってしまったような気がします。

それでも戦場に残ったのは北軍であり、リンカーンはこれを北部の勝利として政治的な切り札「奴隷解放宣言」を打ち出して、政治的にも南部を追い詰めました。
しかし戦争はまだ後三年も続くのです。

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  1. 2005/10/14(金) 21:45:08|
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MACXE'S様へ投稿です

相互リンクをさせていただいているMACXE'S様に投稿する作品を書き上げました。
こちらでも公開させていただこうと思いますので、よろしければお楽しみ下さい。

「バトルビューティ」

「こ、ここは?」
意識がだんだん戻ってくる。
真衣が気がつくとそこは透明なカプセルの中だった。
「えっ? 嘘・・・」
両手で目の前の透明なカバーを押してみる。
だが、カバーはびくともしなった。
「私・・・そうだわ。学校の帰りに異次元獣に襲われて・・・」
そう、真衣は学校から帰る途中に異次元帝国ゼオンの異次元獣に襲われて意識を失ってしまったのだった。
「するとここは異次元帝国ゼオンの基地?」
真衣は自分が囚われの身となってしまったことに気がついた。
「そ、そんな・・・」
心細さから真衣の瞳に涙が浮かぶ。
異次元帝国に捕まってしまったら生きては帰れないかもしれないのだ。
「だ、誰か助けて・・・」
真衣は必死になってカプセルを開けようとするが、彼女の力ではどうすることもできない。
「助けて・・・助けてバトルビューティ!」
真衣はついにそう叫んだ。

ある日忽然と地上に現れたモンスターたち。
ゴリラと熊を掛け合わせたような怪物や、トラの頭にワニの胴体を持つ怪物などが突然現れて人間を襲い始めたのである。
異次元帝国ゼオンの異次元獣たちだった。
異次元獣たちはゼオンの将軍テラームに率いられ、瞬く間に地上の戦力を粉砕して行く。
しかし、そのとき颯爽と一人の女性が立ちはだかったのだった。
白を基調にしピンクのラインを配したミニスカート型コスチュームを身にまとい、白のブーツと手袋を嵌めて、やはり白をベースにピンクを配したヘルメットをかぶった彼女はその素早さと強さで異次元獣を片っ端から倒していった。
バトルビューティ。
人々は現れた救世主をそう呼んだ。
以来異次元帝国ゼオンとバトルビューティとの戦いは続いているのだった。

「目が覚めたようだな、鷹森真衣」
突然自分の名前を呼ばれたことに真衣は驚く。
振り向いた真衣はそこに一人のいかつい男が立っていることに気がついた。
「あ、あなたは誰?」
真衣は思わずそう尋ねる。
男はがっしりとした躰にグレーを基調にした軍服風のコスチュームをまとい、背中にはマントを羽織っている。
「ふっふっふ、俺は異次元帝国ゼオンの将軍テラームだ」
「テラーム将軍?」
真衣はテレビのニュースで聞いた名前に戦慄を覚える。
異次元帝国ゼオンのテラーム将軍といえば異次元獣を操る冷酷無比な人物として有名だ。
「わ、私をどうするつもり?」
震える声で真衣は尋ねる。
まだ高校生の真衣にとっては悪夢としか言いようがない。

「鷹森真衣、これを見るのだ」
震えている真衣の前にスクリーンが用意される。
そこには異次元獣と闘うバトルビューティの姿が映し出されていた。
「バトルビューティ!」
真衣の顔に希望が浮かぶ。
もしかしたら捕らわれの真衣を救いにきてくれるのかもしれない。
「これは以前わが異次元獣とバトルビューティの戦いを録画したものだ」
「えっ?」
するとこれは以前の映像・・・
真衣の表情が暗くなる。
それを見てテラーム将軍は笑みを浮かべた。
「これを見よ」
テラーム将軍がスクリーンを指差す。
それは異次元獣との戦いを終えたバトルビューティがヘルメットを取って髪を翻したところだった。
「マ、ママ・・・」
真衣は愕然とする。
そこに映し出されていたのは、バトルビューティの衣装を身につけてホッとした表情を浮かべている真衣の母親鷹森雪子だったのだ。
「そうだ。お前の母親鷹森雪子だ。バトルビューティの正体は鷹森雪子だったのだ」
テラーム将軍の言葉は真衣の耳には入らなかった。
あの優しいママがバトルビューティだったなんて・・・
若くして真衣を生んだ雪子はまだ30台である。
その美しさは真衣にとっても自慢の種だった。
その母親がバトルビューティとして異次元帝国ゼオンと闘っていたとは・・・
そういえば・・・
真衣は思う。
時々ママは怪我をしていたっけ・・・
「私はドジだからすぐ転んじゃって」
なんて言ってニコニコしていたわ・・・
あれは、異次元獣との戦いで受けた怪我だったのかもしれない・・・
真衣の心に後悔が走る。
今までまったく知らなかったことが悔やまれる。
知っていれば何かできたかもしれないのだ。
しかし、知ってしまった今は異次元帝国に捕らえられてまったく無力なのだ。
それどころか人質としてママを苦しめてしまうかもしれない・・・
真衣の目から涙があふれる。
「私を人質にするつもりね・・・」
「ククク・・・最初はそれも考えた。しかし、お前にはもっと違う役目を果たしてもらおう」
テラーム将軍は不気味な笑みを浮かべてカプセルの上から真衣を見下ろした。
「違う役目?」
「そうだ。これからこのカプセルに暗黒次元の闇の力を送り込んでやる。そうすればお前は・・・ふはははは」
テラーム将軍の高笑いとともに真っ黒なガス状のものがカプセル内に噴出する。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ」
真衣の叫びはすぐに小さくなっていった。

「ぐぎゃぁぁぁぁ」
ライオンと蜘蛛が組み合わさったような異次元獣が断末魔の悲鳴を上げる。
強力な異次元獣だったが何とか倒すことができたのだ。
ファイティングポーズを構えたままチリになって消えて行く異次元獣を見つめているバトルビューティこと鷹森雪子。
「ふう、どうやら片付いたようね」
雪子は躰の力を抜く。
だが、そのとき鋭い蹴りが雪子を襲った。
「やあっ!」
気合とともに繰り出される蹴りをかろうじてかわす雪子。
「だ、誰?」
後ろに下がって間合いを取り、相手を確認する雪子。
彼女の目の前にはまだ幼さを感じさせるものの妖しい魅力を滲ませる女性が立っていた。
「ま、真衣?」
そこに立っていたのは紛れも無く娘の真衣だった。
だが、いつもの真衣とはまったく違う。
黒いエナメルのレオタードに金属のベルト、それに長手袋とハイヒールのブーツ。
額には妖しげなサークレットを嵌め冷酷な笑みを浮かべる黒く塗られた唇。
それはバトルビューティのダークバージョンと言っても過言ではない。
「ま、真衣。いったいどうしたの?」
「うふふふ・・・私は異次元帝国ゼオンの戦闘隊長キラーマイ。バトルビューティ、覚悟しろ!」
冷たい表情でそう言い放つ真衣。
「キ、キラーマイ? い、いったい?」
雪子はまったくうろたえてしまう。
まさか自分の娘が敵になるなんて思いもしなかったのだ。

「ハハハハ、驚いたかね、バトルビューティ。君の娘はもはや我が帝国の女戦士として生まれ変わったのだ」
テラーム将軍の笑い声が響く。
「そ、そんな・・・真衣が・・・」
雪子は愕然としながら必死にキラーマイの攻撃を受け止める。
「あははは・・・これがあのバトルビューティなの? 我が帝国の異次元獣はこんな女に負けたというの?」
笑いながらキラーマイは次々と蹴りや手刀を叩き込んで行く。
そのたびに雪子は苦悶の表情を浮かべながらかわしきれないダメージを負っていった。
「ま、真衣、目を覚まして。あなたは優しい女の子でしょ」
「あははは・・・おろかな女ね。私は異次元帝国ゼオンの戦士よ。優しさなどという感情など持つはずが無いじゃない」
キラーマイの言葉に雪子は絶望感を募らせる。
もはや真衣を元に戻すことはできないのではないか・・・
だが、雪子には真衣を倒すなんてできるはずが無かった。
一方的に攻められ、ついに雪子は地面に倒れ伏す。
「あ・・・ま、真衣・・・」
「うふふふ・・・我がゼオンに歯向かうおろかな女。今殺してあげるわ」
「待て、キラーマイよ。その女を殺してはならん」
テラーム将軍の言葉にキラーマイの攻撃が止む。
「その女を連れてくるのだ」
「はい、テラーム様」
その声を聞きながら雪子の意識は闇に飲まれていった。

雪子が気がつくと透明なカプセルに入れられていた。
「こ、ここは?」
「あら、目が覚めた?」
冷たい笑みを浮かべたキラーマイがカプセルを覗き込む。
「他愛ないわねぇ。バトルビューティさん」
「ま、真衣・・・」
黒いレオタード姿の真衣を見て雪子は悲しくなる。
あの優しかった真衣は今はキラーマイというゼオンの女戦士になってしまったのだ。
「ふっふっふ・・・心配はいらんバトルビューティよ。これからお前にも暗黒次元の闇の力を植え付けてやろう。そうなればお前も・・・ふっふっふ」
テラーム将軍の声が響く。
「うふふ・・・そうなんですか、テラーム様? よかったわねママ。これからはずっと一緒にいられるわよ」
「や、闇の力? もしかして真衣にもそれを?」
雪子はテラームをにらみつけるがテラームはふんと鼻を鳴らすだけだった。
「ああ、そうだ。すぐにお前にもわかる」
そう言ってテラーム将軍はスイッチを入れる。
すぐにカプセルの中には真っ黒なガスが噴出し、雪子の視界を奪って行く。
「いやぁぁぁぁ・・・げほげほっ」
呼吸が苦しい。
何も見えない。
躰が言うことを聞かない。
ああ・・・
苦しい・・・
助けて・・・
だが、やがて呼吸が楽になって行く。
それと同時に雪子の心に言いようのない幸福感が浮かんでくる。
闇の力が浸透してくる喜び。
それは素晴らしかった。
雪子は思いっきり闇の中に身を沈めていった。

「わぁぁぁぁ」
人々の悲鳴が上がる。
異次元獣の攻撃で人々は次々と血しぶきを上げて死んでいく。
その様子を見て雪子は満足そうに笑みを浮かべていた。
いや、今の彼女は異次元帝国の女幹部キラービューティだ。
ところどころに金属のとげの付いた黒いボンデージのレオタードに身を包み、黒手袋に黒のハイヒールブーツ。黒い口紅を付け、額にはまがまがしいサークレットを嵌めている。
長いムチを持った悪の女王。
それが今の雪子だった。
その傍らには同じく黒の衣装を身につけたキラーマイがうっとりとした表情を浮かべている。
「うふふふ・・・我が異次元帝国ゼオンに歯向かうものは皆殺しよ」
「ええ、人間どもが死んでいくざまは素敵よね」
「うふふふふ・・・」
「ふふふふ・・・」
二人の邪悪な女たちの笑い声が響いていた。

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  1. 2005/10/13(木) 23:29:13|
  2. 洗脳・戦闘員化系SS
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装甲蒸気艦同士の戦い

鈴美先生のゴキブリ女への改造をお待ちの方々には申し訳ありませんが、今日はSSはお休みです。
船好きミリオタ舞方の趣味の世界ですので、しばしお付き合いのほどを。

アメリカ南北戦争の数あるエピソードの中でも、装甲艦同士の砲撃戦はその後の海戦をガラッと変えたと言っても過言ではないでしょう。
その装甲艦同士の戦いで片方の主役を務めたのが南部連盟海軍所属の装甲艦「メリマック」(南軍名称ヴァージニア)です。

もともとこの船は北部連邦海軍所属の蒸気フリゲート艦でした。
ところがその母港ノーフォークが位置するヴァージニア州が連邦を離脱し、南部連盟の一員として北部に叛旗を翻しました。
そこで北軍海軍はノーフォークに所在する各艦艇が南軍に接収されるのを恐れ、焼いてしまうことにしたんですね。
結局ノーフォークを脱出した軍艦はわずかで、ほとんどが北軍によって焼き捨てられました。

一方北部連邦の海上封鎖作戦で輸出入の道を閉ざされた南部連盟は何とかしてその海上封鎖部隊を排除する必要が生じました。
もともと南部には海軍力は無く、南部連盟海軍というものはほとんど形を成してなかったので、北軍の軍艦はたとえ焼き捨てられたものでもとても重要なものでした。
そこで南軍はノーフォークに打ち捨てられていた「メリマック」を引き上げて改造を施したのです。
(うーん・・・改造という言葉に萌えるなぁ)(笑)
その時に南軍は大事な軍艦が簡単に沈まないように装甲を施すことにしたのです。
ただでさえ少ない鉄を確保するために南軍は鉄道のレールを使い、それを打ち直して「メリマック」の船体に貼り付けました。
その鉄で囲まれた上部船体に大砲十門を据え付けた「メリマック」は「ヴァージニア」と改名され南部連盟海軍の主力として使用されることになったのです。

北軍の木製軍艦に対して「メリマック」(ヴァージニア)は圧倒的な優位を誇り、北軍の弾は弾き返されるだけなのに対して「メリマック」(ヴァージニア)の弾は軽々と木製の船体を貫いたのです。

結局北軍は装甲艦には装甲艦で対抗するしか無いとして装甲艦「モニター」を作り出します。
小型だが回転砲塔を持ち、全体が装甲された「モニター」と「メリマック」(ヴァージニア)はハンプトン・ローズの戦いでお互い撃ち合うことになりました。
この戦いは「メリマック」(ヴァージニア)によって北軍の木造艦が沈められたものの、「モニター」との撃ち合いではともにその装甲を貫くことができずにお互いの弾を弾きあっていたそうです。
結局お互いに撃つ弾が無くなったので双方引き上げるという引き分け状態で海戦は終結しました。

装甲艦という艦種を改造してどうにか作り上げた南軍と、すぐさま対抗手段としての装甲艦を新造してしまう北軍。
このあたりにも南北戦争に至った経済格差があるようですね。
それではまた。

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  1. 2005/10/12(水) 22:28:07|
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我がデライトに選ばれたことを光栄に思うのです

何とか改造シーンまで書きたかったのですが、ちょっとそこまでいたりませんでした。
改造手術台の上の鈴美さんをお楽しみ下さいませ。

2、
「シュシューッ、怖がることはないわ。あなたは我がデライトによって選ばれた存在。人間を超える存在になれるのよ」
不気味に微笑む蜘蛛女。
その笑顔は優しく見えるものの、口元の牙や額の球形の目によって人間離れしている。
「い、いやです! 誰か、誰か来てぇ!」
鈴美は大声で叫ぶと振り返って走り出す。
そこにいる異形の者から一刻も早く遠ざかりたかった。
それが何者なのかは知らないがそばに居てはいけない者だ。
鈴美は本能的にそう感じ、走り出したのだ。
「シュシューッ、馬鹿な娘ね・・・こんな素晴らしい躰にしていただけるというのに・・・」
蜘蛛女はにやっと笑みを浮かべると、トンッという音とともにジャンプする。
そして音もなく民家の屋根に降り立つと鈴美の先回りをするべく中腰で駆け出した。

「はあっ・・・はあっ・・・」
息を切らせながら鈴美は走る。
後ろを振り返るのが怖い。
振り返ってもしそこにあの蜘蛛女がいたりしたら自分は腰を抜かしてしまうだろう。
そう思うととても怖くて振り返られなかったのだ。

だが、その必要ななかった。
鈴美の正面の白いもやの中から再び蜘蛛女が姿を現す。
「あ・・・ああ・・・」
驚きのあまり立ち尽くす鈴美。
いったいいつの間に正面に回りこんだのか・・・
「シュシューッ、驚くことはないわ。私は改造戦士ですもの。人間など足元にも及ばない動きができるのよ」
カツコツとヒールの音が闇に響く。
くすくすと薄く笑いながら蜘蛛女はゆっくりと近づいてくる。
「い、いや・・・来ないで・・・来ないでよぉ!」
鈴美は必死になって叫び、再び踵を返して走り出そうとした。
だが、シュッという音がして鈴美は脚を取られてしまう。
「キャアッ!」
思い切り前につんのめって転んでしまう鈴美。
「シュシューッ、逃がしはしないわ。一緒に来てもらうわよ」
鈴美が振り返るとそこには蜘蛛女が両手に白い糸を持ち、その糸が彼女の足に絡んでいるのが見て取れた。
蜘蛛女の糸は股間から伸ばされ、それを彼女は器用に両手で操っている。
「いやぁっ」
鈴美は必死になって足に絡みついた糸を外そうと両手を伸ばしたが、粘つく糸は外れるどころか彼女の指先まで絡め取ろうとくっついてくる。
「ああ・・・いやぁっ」
指先に絡みつく糸を解こうとしてもまったくかなわない。
「シュシューッ。無駄なことはおよしなさい。私の糸はダンプカーだって動きを止められるほど強靭なのよ」
蜘蛛女はさらに糸を繰り出して絡み付ける。
鈴美がもがけばもがくほど糸は両手足に絡まって行き、動きを固められてしまうのだ。
「だ、誰かぁ・・・助けてぇ!」
鈴美はもはや助けを呼ぶしか手がなくなっていた。
だがまだ夜の8時ごろだというのに誰も家から出てこない。
これだけ叫んでいれば誰かが顔を出しそうなものだったが、それすらないのだ。
「シュシューッ、無駄よ。この一画は眠らせてあるわ。お前の叫びは誰にも聞こえないわ」
「そ、そんな・・・」
絶望に打ちひしがれる鈴美。
「シュシューッ、さて、それじゃお休みなさい」
蜘蛛女がそう言うと、彼女の背後から数人の黒いレオタードを着た女たちが現れる。
みんな一様に真っ黒なハイネックのレオタードに網タイツ、そしてブーツを履いている。
腰には赤いサッシュを巻き、顔には異様な赤と緑色のペイントを施していた。
そのうちの一人が身動きのできなくなった鈴美に近づくとスプレーを吹き付ける。
「ぐ・・・げほっ」
思わず咳き込む鈴美。
だが、すぐに彼女の意識は闇の中に沈んでいった。

ひんやりとした空気。
真夏だというのにとても肌寒い。
いったいどうしてなのだろう・・・
そう思ったところで鈴美は目が覚めた。
「!」
慌てて身を起こそうとした鈴美は、一瞬にして息が詰まった。
「こ、これは?」
鈴美の首も両手も両足もがっちり固定されているのだ。
かろうじて動かせる首を回すと、鈴美の両手首はベルトで土台と拘束されていたのだった。
そしてその土台の上に鈴美は寝かされていることに気がつく。
背中がひんやりとしているのはそのせいだった。
だが、それだけではない。
驚いたことに鈴美は裸だったのだ。
「う、嘘でしょ・・・」
鈴美はブラウスはおろかブラジャーすらはずされていることに驚いた。
しかも下半身もむき出しになっているのは間違いない。
「そ、そんな・・・」
鈴美は何とか首を動かして周りを確認した。
そこは薄暗く、壁際にはいくつかのスイッチ類やメーターが明滅していた。
人影はなく、天井からは小さな明かりだけが鈴美を照らしていて、まるで薄暗いスポットライトを浴びているようだった。
私はいったいどうなるのだろう・・・
心細さが鈴美を捕らえて離さない。
声を上げて助けを呼びたかったが、裸では呼ぶのにもためらいを感じてしまう。
これからいったいどうなるのかしら・・・
鈴美の目には自然と涙が浮かび上がっていた。

「クククク・・・目が覚めたようですね」
声が響き、室内が明るくなる。
鈴美は自分が円形の台に載せられていることがわかった。
天井の一部が鏡のようになっているのだ。
鈴美は顔をそむけるようにして声のほうを向いた。
そこには赤と緑の衣装を着たピエロが立っていた。
白いメイクに鼻の頭や頬などに赤いワンポイントがあしらわれている。
テレビや映画などで見かけるピエロがそこに立っていたのだ。
「あ・・・あなたは?」
「これは失礼。自己紹介が遅れましたね。私はチャン・ザ・マジシャン。暗黒結社デライトの極東方面担当幹部というところです」
チャン・ザ・マジシャンは恭しく一礼し、その不気味な顔に笑みを浮かべる。
「チャン・ザ・マジシャン・・・?」
私はいったいなんでこんなところにいるのだろう・・・
この男はいったい何者なんだろう・・・
鈴美は何がなんだかわからなかった。
「クククク・・・その通りですよお嬢さん。我が名はチャン・ザ・マジシャン。以後お見知りおきを。クククク・・・」
「わ・・・私をどうするつもり?」
身動きできない鈴美は唇を震わせている。
「おやおや、震えていますね。心配は要りません。あなたは生まれ変わるのです。我が暗黒結社デライトの一員としてね」
チャン・ザ・マジシャンはにこやかに鈴美のそばへやってくる。
「そう、あなたはこれより改造手術を受けるのです。そして我が組織の改造戦士として生まれ変わるのですよ。クククク・・・」
そう言ってチャン・ザ・マジシャンは鈴美の額の髪を梳いていく。
鈴美はその行為にぞっとしたものを感じたが、どうすることもできなかった。
「いや・・・いやよ・・・お願い・・・家へ帰して・・・」
弱々しく懇願する鈴美。
だが、チャン・ザ・マジシャンはまったく構わずにこう言った。
「始めてください。ドクターリン」

「ええ、早速」
そう言って入ってきたのは白衣を纏った女性だった。
小柄な女性だが金髪と青い瞳はそれなりに整っている。
柔らかなラインを描く脚は網タイツに覆われており、黒いブーツが引き締めていた。
メガネの奥の眼差しは知的なものを感じさせるが、彼女を捕らえているのはただ改造への欲望だけだった。
「うふふふ・・・初めまして素体さん。私は暗黒結社デライトの生物化学担当のドクターリン。あなたの改造を担当するわ」
ドクターリンはメガネをすっと直し、にこやかに微笑みかける。
「あなたは運がいいのよ。我々デライトに選ばれたのですもの。もう人間などという脆弱な生物ではなくなるのよ」
人間じゃなくなる?
鈴美はドクターリンの言葉が信じられなかった。
だが、彼女を捕らえたあの蜘蛛女は特撮の着ぐるみなどではなかった。
まさしく女と蜘蛛が融合した生物だったのだ。
「や、やめて・・・お願いやめて・・・」
首を振り訴える鈴美。
しかしドクターリンはすでにいくつかの機械装置をセットし始めていた。
そして幾人かの白いレオタードの女たちが壁際の装置を操作し始め、室内にはブーンという機械の作動音がかすかに響き始めていた。

「クククク・・・ドクターリン、彼女はどんな改造戦士にするつもりです?」
「うふふ・・・この素体は元は体操選手だったのですよね」
ドクターリンの目がおびえる鈴美を見下ろしている。
「体操ではなく新体操ですよ。ドクターリン」
「くすっ、失礼、そうでしたわね。そこでその躰のしなやかさを生かしてゴキブリと融合させますわ」
そう言ってドクターリンはボトルに入った巨大なゴキブリを手元に取り寄せる。
それは黒と茶色が混じったつやつやした翅を持つ気味悪い生物であり、鈴美にとっては見るのもいやな生き物だった。
「クククク・・・ゴキブリですか。それはさぞかし素敵な改造戦士になるでしょうね」
不気味に微笑むチャン・ザ・マジシャン
しかし鈴美にとっては死刑宣告の方がまだましにさえ思える。
「い、いやぁっ! ゴキブリなんていやぁっ!」
鈴美は声を限りに叫び、必死になって拘束から逃れようともがくが、彼女を押さえ込んでいるベルトはびくともするものではなかった。
「お、お願い。何でも言うことを聞くから・・・ゴ、ゴキブリはいやぁ!」
「うふふ・・・そう嫌うものではないわ。この滑らかなラインはあなたの女性らしさを存分に引き出してくれるわよ。おほほほ・・・」
ドクターリンはいつものように手の甲を口元に当てて高笑いをする。
醜い生物と美しい女性を組み合わせることで生まれる新たなる美しさ。
それこそがドクターリンにとっての美というものであった。


今日はここまでです。
ゴキブリモチーフは2chでSM様が使われていて重なってしまうのですが、個人的にドクターリンのように醜いものと美しい女性の融合に萌える方なので、あえてゴキブリにしちゃいました。
嫌いな方には申し訳ありませんです。m(__)m
それではまた。

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  1. 2005/10/11(火) 22:28:28|
  2. デライトもの
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我が組織は暗黒結社デライト

えーと、ちょっと改造ものを書きたくなったので、書き始めてしまいました。(笑)
「母娘改造」で登場した暗黒結社デライトが再び登場します。
そしてあのチャン・ザ・マジシャンも・・・

しばしお付き合い下さいませ。m(__)m

1、
「はあ・・・もうやめやめ。今日はこれでお終い。」
夜も遅くなった体育館に女性の声が響く。
フープやボールなどの手具を持って演技をしていた生徒たちが声の主を見た。
腕組みをしながら生徒たちの演技を見つめていた女性は首を振ってため息をつく。
「ふう・・・どうも呼吸が合わないわね。これ以上は集中力も続かないわ。今日はもうやめましょう」
鮮やかな赤と白のレオタードにそのみずみずしい肉体を包み込んだ女性はそう言って生徒たちを見渡した。
「はい、先生。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
同じく赤と白のレオタードに身を包んだ少女たちがいっせいに頭を下げる。
そして神妙な顔つきで更衣室の方へ向かっていった。
「ふう・・・」
その後ろ姿を目で追いながら、この新体操部顧問でコーチの百原鈴美(ももはら すずみ)は再びため息をついた。
素質は悪くない。
みんな身体能力には恵まれた娘たちばかりだ。
でも微妙に呼吸が合わないから演技がばらばらになってしまう。
手具の動きに始まり、手足の一挙手一投足まで違和感を生じてしまう。
個人では賞を取れるのに、団体では賞を取ることができないのだ。
鈴美は首を振った。
まだ若いが国体の出場経験もあり、その指導力にも期待が持たれているが今のままではその期待にこたえることはできないだろう。
まだ現役時代と同じようなプロポーションを維持している鈴美はその美しい肢体を隠すことなくレオタードにて晒している。
その美しさにこの鷺ノ宮学園(さぎのみやがくえん)の男性教師は釘付けになっているとのもっぱらの評判だった。

生徒たちがいなくなった体育館は広くがらんとしていた。
鈴美はまだ真夏にもかかわらず薄ら寒さを感じて両手で躰を抱きしめる。
生徒たちの呼吸が合わない原因はわかっていた。
二人の最上級生・・・
香嶋瑠美(かしま るみ)と板鞍美沙(いたくら みさ)。
この二人の不仲がその他の生徒たちをも巻き込んでしまっているのだ。

地区大会個人の部ではいつもこの二人が上位を争っている。
リボンの演技で香嶋が優勝すれば、ボールでは板鞍が優勝をさらっていくという具合なのだ。
いつしか二人はライバルとなり、お互いを意識するあまり派閥的なものが生じてしまった。
ある後輩を香嶋が面倒を見れば、別の後輩は板鞍が面倒を見る。
そのうち後輩たちもいずれかの派閥に加わらざるを得ない。
だからと言って団体に二チームも出すなんてことはできないし、する必要もない。
しかし、ギクシャクした派閥間は容易には解消されないのだ。
鈴美にとっては頭がいたいことだった。

「ふう・・・」
何度目かになるため息を付きながら校門をくぐる鈴美。
外は夏の遅い夕暮れもとっくに過ぎて真っ暗になっている。
レオタードからシンプルなブラウスとスカートに着替えているものの、そのしなやかな美しい躰は見る者の注目を寄せ付けずにはいられない。
だが、鈴美はいつも帰りは一人きりだ。
幾人かの男性教師が何度か誘いの声をかけたものの、そのたびに鈴美は断っているため、最近では声をかけてくる者もいなくなってしまっている。
もっとも、鈴美はそれで構いはしなかった。
生徒たちの指導に生活の中心を置いている今、男性とお付き合いする暇は無い。
まだ二十六歳の彼女だから男性と恋の一つもしたいという思いはあるものの、今はその思いは封印していた。

「それにしても・・・」
思わず言葉が口を付いて出てしまう。
もう少し仲良くしてもらえないものだろうか。
ライバルだというのはわかるが、事あるごとに張り合うようなまねをし始めてしまっているのはよくない。
取り巻きを集め相手を蹴落とすことで優位に立とうとしているのだ。
あの二人ならばそんなことをしなくても自然と後輩たちだって慕ってくるだろうに・・・
「でも、今のままではだめだわ」
鈴美はこの状況をどうしたら打破できるかずっと悩んでいるのだった。

「クククク・・・いかがですか、ドクターリン? 彼女が次の素体ですよ」
男がスクリーンに映し出される鈴美の姿をステッキで指し示す。
その姿はこの冷ややかな気配からは想像もつかないような奇妙なものだった。
すらりとした長身の男だが、赤と緑の取り合わせたピエロのような格好をしている。
顔にも白いメークをして、鼻の頭や目元などに赤いポイントが入っていた。
靴も先が上を向いていて丸い玉が付いている。
およそこの場にはふさわしくなく、サーカス小屋にいるほうがよほどしっくり来るのは間違いない。
「素敵ですわね、チャン・ザ・マジシャン。彼女ならば素晴らしい改造戦士になれるでしょう」
声を掛けられた人物がスクリーンのそばへやってくる。
白衣を身につけた小柄な女性で、金髪と青い瞳を持ちメガネをかけていた。
その白衣のすそからはすらりとした脚が伸びており、メッシュのタイツと黒いブーツを履いている。
彼女の目はスクリーンに映っている鈴美に注がれ、メガネの奥の瞳は欲望に満ちていた。
「クククク・・・間もなく我がアジトへご招待いたします。ドクターもお支度を」
恭しく演技がかった仕草で一礼する不気味なピエロ。
彼こそが暗黒結社デライトの極東担当幹部、チャン・ザ・マジシャンであった。
「ええ、お任せ下さいチャン・ザ・マジシャン。素敵な改造戦士が生まれることでしょうね。おほほほほほ・・・・」
手の甲を口元に当てて高笑いする白衣の女性。
暗黒結社デライトの生物化学担当のドクターリンだ。
彼女によって作り出される改造戦士こそ、世界の裏側で要人暗殺や拠点襲撃などのテロリズムの実行者となるのである。
そして今、その悪魔の微笑みはスクリーンに映っている鈴美に向けられていた。

バス停でバスを降り、自宅へ向かって歩く鈴美。
途中コンビニへ寄って週刊誌をチェックし、お弁当を買って行く。
「ふう・・・やれやれ、こんな食生活じゃ太っちゃうわね」
苦笑いしながらビニール袋を提げ夜道を歩いていく。
鈴美の自宅は郊外にあるため、夜間は人通りが少なくなる。
街灯は点いているものの、人気のない道はやはり寂しい。
「あーあ・・・この時間はさすがに不気味よね・・・」
何となく闇に何かが隠れていそうな気がして足取りが早くなる。
何が隠れているものでも無いと思っていたが、その思いは今日に限って裏切られた。

「霧?」
歩みを進める鈴美の周囲に白いもやが立ち込めてくる。
それはじょじょに濃くなり、鈴美の周りは白く濁り何も見えなくなってしまう。
「な、何なの?」
鈴美は足を止める。
周りは真っ白となり何も見えない。
ただの霧とは思えなかった。

「シュシューッ。こんばんは」
白い闇の中から声がする。
やさしそうな女性の声。
「だ、誰?」
鈴美は思わず身を堅くする。
カツコツと路面を踏むヒールの音がする。
白く煙る中、ゆっくりと人影が現れる。
「!」
鈴美は息を呑んだ。
柔らかな女性のラインはまぎれもないが、両肩から上に振り上げられているもう一対の腕・・・
「あ・・・あなたは・・・」
鈴美はコンビニの袋を思わず取り落としていた。
「シュシューッ・・・うふふ・・・私は暗黒結社デライトの改造戦士蜘蛛女。百原鈴美。あなたを迎えに来たわ」
黄色と黒に彩られた毛が全身を覆っている。
口元には牙、額には球形の目。
それはまさに蜘蛛と人間の女性が融合した姿に間違いない。
「蜘蛛・・・女・・・」
鈴美は逃げることさえ忘れたように立ち尽くした。

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  1. 2005/10/10(月) 23:01:10|
  2. デライトもの
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どちらを思い浮かべます?

シャーマン・グラント・リー・スチュアート・・・
これらの名前からあなたなら何を思い浮かべますか?

第二次大戦にある程度詳しく、戦車ファンなら米軍の戦車を思い浮かべるでしょう。
タミヤのプラモデルでもすべて模型化されている戦車たちですので、そっち方面から知った人もいるでしょう。
確かにこれらは第二次大戦中に活躍した米軍戦車たちですね。

でも、もっとマニアックな人たちならば、この名前がアメリカ南北戦争当時の北軍及び南軍の指揮官の名前をいただいていることをご存知でしょう。

シャーマンとグラントはともに北軍の指揮官。
リンカーンより西部戦線を任され、縦横無尽の活躍をした人たちですね。
シャーマンなんかは焦土作戦をやったおかげでいまだに南部の人には嫌われているとか。
ミシシッピ河に浮かべた河船が指揮所として使われたそうです。

リーとスチュアートは南軍の指揮官ですね。
リンカーンは最初有能なリーに北軍の指揮を取らせたかったそうですが、あいにく彼の生まれは南部だったので南軍に属することになりました。
南軍の指揮を取った彼は有能さを遺憾なく発揮し、マクレラン、フッカーといった北軍の指揮官たちを翻弄しました。
最終的には敗れはしますが、リーの指揮ぶりは北軍を最後までてこずらせたものです。
スチュアートはリーの元で騎兵を指揮した騎兵隊の司令官です。
人口でも工業力でも農業力でも北部に差をつけられていた南部ですが、唯一最後まで北部に優越していたのが騎兵の能力だったそうです。
広大な南部の大地では馬に慣れ親しむことが多く、彼らが中心となった南軍騎兵は偵察や襲撃に欠かせない存在でした。
その騎兵隊の指揮を取ったのがシチュアート将軍であり、快速の軽戦車にその名が引き継がれるのも当然なのかもしれません。

ナポレオン戦争から第一次世界大戦へいたるまでの100年のちょうど中間にあたる大戦争であり、日本では明治維新が起こりつつあった時代の有名な戦争ですが、日本ではまったく知られていない戦争と言っても過言ではないですよね。
いろいろと調べれば調べるほど言葉は悪いのですが面白い戦争なので、またそのうち南北戦争についても書きたいですね。

それではまた。

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  1. 2005/10/09(日) 22:17:01|
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再掲載でお茶濁し

以前BeeF様の「蜂女の館」に掲載させていただいた「母娘改造」の再掲載です。
個人的に気に入っている話で、いずれ続きを書こうかなと思っているので再び載せました。
新作でなくてすみません。m(__)m

「母娘改造」
「あーあ、やんなっちゃうなぁ。明日友達と約束があったのに・・・」
国道をはずれて田舎道を走る車の後部座席でセーラー服に身を包んだ女の子が口を尖らせた。
「仕方が無いでしょ、志穂。おばあちゃんが亡くなったのだから」
車の助手席では黒い喪服姿の母親が娘をたしなめた。
「それにしても驚いたな、一郎兄貴からの便りでは元気だって言っていたからな」
車のハンドルを握っているのは女の子の父親だ。
家族三人は田舎の祖父と祖母の家に行くところなのだった。ただし、ありがたくない理由で。
「本当ね、突然ですものね」
「ああ、前から胸は気にしていたんだが、心臓発作とはな」
前席でのやり取りをぼんやりと聞きながら、志穂は窓の外に目をやっていた。

彼女の名前は島岡 志穂(しまおか しほ)。
県立の高校に通う女子高生である。
茶色のショートヘアが良く似合っている。
車を運転しているのが父親の島岡 三郎(しまおか さぶろう)。
四十歳で県内の大手工場に勤務している言ってみればしがないサラリーマンだ。
助手席に座っているのは母親の島岡 喜美枝(しまおか きみえ)。
若くして結婚し志穂を生んだため、まだ三十八歳の若さである。
長い黒髪の美しい女性だ。

車はやがて山道に差し掛かる。
このあたりは地形的に似たような感じのところが多く、地元民でも道を間違えることがある。
一本、道を間違えると全然別の場所へ行ってしまうので注意が必要だった。
うっそうと木が茂った山道は昼なお暗く、薄気味が悪かった。
十五分も走った頃、父親の三郎は車を止めた。
「ありゃあ・・・道を間違えたみたいだな」
「え~? ちょっと、信じらんない! しっかりしてよお父さん」
窓外の変わらない景色にいい加減うんざりしていた志穂が思わず文句を言う。
「すまんすまん。すぐに戻るよ」
三郎は車を転回させるべくスペースを探したが、あいにくの山道は細くなかなか難しそうだった。
「これはUターンできるところまで行くしかないんじゃない?」
「そうだな」
三郎が妻の言うとおり先へ進もうと思った時に背後からエンジン音が迫りクラクションを鳴らされた。
「なんだ?」
バックミラーを見ると一台の黒塗りのトラックが背後から迫っていた。
トラックは舗装のされていない砂利道を見る見る近付いてくるものの、スピードを緩める気配はない。
「な、なんだよ、行けってか?」
三郎はやむを得ず車を発進させる。
トラックに追突されそうになりながらも車は先に立って走り始めた。
「何なの? ずいぶん乱暴じゃない?」
「お父さん、トラックの運転している人変な格好しているよ」
志穂の言葉に三郎はバックミラーを覗き込む。
すると、志穂の言うとおりトラックの運転席には顔に赤と緑のペイントをした女性がハンドルを握っている。
「なんだありゃ」
「そうなの? 私からは見えないわ」
後ろを振り返る喜美枝だが、あいにく助手席からは見づらくてよくわからない。
「どちらにしても後ろから追ってこられたらたまらないな」
細い山道を三郎は車を走らせる。
やがて木々の切れ間に閉鎖された鉱山の跡のようなものが見えてきた。
「後ろのトラックはあそこへ行く気か?」
鉱山の入り口らしきところは大きな鉄の扉がはめ込まれていて、その前が少し広い空き地になっている。
「あそこならUターンできるわね」
「全く、こんなところで時間を食ってしまったな」
三郎はそう言って空き地に車を進ませる。
すると後ろのトラックは空き地への入り口で停止し、道路とのつながりを断ち切ってしまった。
Uターンをしてまた道に戻ろうとした三郎は面食らう。
「なんだ? 出さないつもりか? この野郎」
三郎は車を止めてトラックをにらみつける。
「お父さん、後ろ!」
「何!」
志穂の声に三郎が振り向いた時には、鉱山の大型扉に付けられた小さな扉から人影が出てくるところだった。
その人影はみんな女性だった。しかも若い女性らしい。
異様だったのはそのいずれもが顔に赤と緑のペイントをして黒いレオタードと網タイツを身に付け、それに黒いブーツを履き、腰に赤いサッシュを巻いていることだった。
「何だこいつら? いかれた宗教か?」
「あなた、前にも」
喜美枝が指差す先にはトラックの幌を跳ね上げて飛び降りてくる異装の女たち、後ろから来るのと同じ黒いレオタード姿の女たちがいた。
女たちはたちまちのうちに車を取り囲んでしまい、彼らに対して身構える。
「イーッ、降りろ! 降りないと車を破壊する」
妙な奇声を発し、彼女たちはペイントされた顔で島岡一家をにらみつけた。
「あなた・・・」
「お父さん・・・」
不安そうな表情を浮かべる喜美枝と志穂。
三郎は意を決して黒レオタードの妙な連中と話をするべく車のドアを開けた。
「何だ君たちは? 俺たちは道を間違えただけだ。通してくれ。グホッ・・・」
車から降り立ちそう言った三郎は、次の瞬間腹部に鋭い痛みを覚えてうずくまった。
「キャー!」
「あ、あなたっ!」
目の前で夫が、父親が腹部を殴られるのを目の当たりにした二人は思わず悲鳴を上げてしまう。
黒いレオタードの女の一人が三郎を引き起こし、振り向かせて首を押さえ車のボンネットに押し付けた。
「イーッ、お前たちも降りるのだ。降りなければこいつの首をへし折る」
「や、やめて! お、降ります。降りますから」
助手席のドアを開けて喜美枝が降り、続いて志穂も車から降りる。
すぐに黒レオタードの女たちが彼女たちの両腕を捕らえ、二人はがっちりと捕まってしまった。
「は、離して。わ、私たちをどうするつもり?」
「や、やめろ! 妻と娘は離してくれ」
後ろ手に押さえつけられた三郎がもがくが、女の力は異常なほど強かった。
「黙れ! ここは我々栄光ある暗黒結社デライトの秘密アジトだ。立ち入った者を帰すわけにはいかない」
「そんな、そんなの知るわけないじゃん! 離してよ!」
志穂は何とか振りほどこうとするが、全く無駄だった。
「ここには迷い込んだだけだ。ここのことは誰にも言わないから離してくれ」
「黙りなさい! これよりお前たちをアジトへ連行する。連れて行け!」
「イーッ、了解です。F6号」
三郎の請願もむなしく島岡一家は黒レオタードの女たちに引きづられるように鉱山の入り口を通っていった。

暗い通路をしばらく歩かされた島岡一家は、やがて薄暗いホールに通された。
ホールの奥には人が一人立っており、その頭上には壁に髑髏のレリーフが掛けられている。
冷たい感じのするホールに一家は不気味さを感じていた。
「ククク・・・我々デライトのアジトにようこそ」
立っていたのは男だった。
すらりとした長身の男で、これまた妙なことに赤と緑の取り合わせたピエロのような格好をしている。
顔にも白いメークをして、鼻の頭や目元などに赤いポイントが入っていた。
「私は暗黒結社デライトの極東担当をしておりますチャン・ザ・マジシャンと申す者。以後お見知りおきを。クククク・・・」
男はそう名乗り、手にしたステッキを振り回して少し甲高い声で耳障りな笑い声を出す。
「き、君たちが何者かは知らない。興味もない。俺たちはここへは道を間違えて迷い込んだだけなんだ。だから帰してくれ。ここのことを黙っていろと言うなら絶対にしゃべったりしない。約束する」
三郎は勇気を振り絞りそう言った。
だが、チャン・ザ・マジシャンは薄笑いを浮かべているだけだった。
「クククク・・・先ほどあなたたちが通ってきた通路はいろいろな仕掛けがしてありましてね。あなたたちの適性を調べさせていただきましたよ」
「適性?」
三郎はいぶかしんだ。何の適性だろう。
「そう。我々デライトのために働けるかどうかをね。すると驚くべき結果がでたのですよ」
大げさに驚いたような身振りをするチャン・ザ・マジシャン。
「そこのあなた」
チャン・ザ・マジシャンのステッキが黒レオタードの女に両脇を捕らえられている喜美枝に突き出される。
「クククク・・・あなたは実にすばらしい女性だ。我々デライトの改造戦士にふさわしい」
「か、かいぞうせんし?」
喜美枝には何のことかさっぱりわからない。
だが、それが自分にとって良くないことであることは想像がついた。
「喜美枝をどうするつもりだ。妻に手を出したら俺が許さんぞ」
三郎が何とかしようともがくが、やはり両側をがっちりと押さえつけられていてどうすることもできなかった。
「無駄ですよ。こいつらは我がデライトの忠実な女戦闘員です。あなたの力ごときでは敵いっこありません」
「くそ! 離せ、離しやがれ!」
懸命にもがく三郎。だが、黒レオタードの女戦闘員は平然としていた。
「クククク・・・あなたは自分でも気が付いていないでしょうが、実にすばらしい肉体を持っている。改造すれば立派な改造戦士として生まれ変われますよ」
つかつかと喜美枝に近付き、ステッキの先で喜美枝の顎を持ち上げるチャン・ザ・マジシャン。
「や、やめろぉ! 妻に手を出すなぁ!」
「い、いやです。改造なんていや!」
「お母さんに手を出さないで!」
それぞれの叫びがホールに響く。
「黙りなさい。あなたたちの意見を聞いてなどいません。そう、本人の意見すらね。クククク・・・」
不気味に笑うチャン・ザ・マジシャン。
「あなたに許されているのは我々デライトの改造戦士となることだけ。早速始めるとしましょう。おい!」
「イーッ! 直ちにセッティングを開始いたします。チャン・ザ・マジシャン様」
三人を押さえつけている以外の女戦闘員たちが手を上げて敬礼し、ホールを出て行く。
「さて、せっかくですからお二人にも見学をさせてあげましょう。見物ですよ、これは。クククク・・・」
ステッキを一振りすると島岡一家は再びホールから引きづられるように連れて行かれた。
あとには三人の叫びだけが残った。

先ほどのホールとは違う部屋。
中央には円形のテーブルのような台が設えられている。
その台の上には下着まで取り去られた喜美枝が寝かされていた。
衣服を脱がされると知った喜美枝は必死に抵抗したものの、チャン・ザ・マジシャンのステッキが一振りされると電撃を受けたように躰の自由が奪われてしまい、ついに喪服やストッキング、下着までも取り払われてしまったのだった。
手足はベルトで拘束され、身動きをすることもできない喜美枝は、胸や股間も隠すことができずにいた。
部屋の隅には両手を鎖で縛り付けられ、フックに吊り下げられた三郎と志穂がいた。
三郎も志穂も彼らの妻であり、母親である喜美枝のあられもない姿をどうしてやることもできなかった。
「くそっ! くそっ!」
三郎は必死に戒めを逃れようとしていたが、両手を拘束している鎖ははずれることは無かった。
「お願いです・・・許して下さい。私たちを家へ帰して・・・」
裸で両手両脚を拘束された喜美枝がすすり泣きながら訴える。
だが、彼女たちを拘束したあと、あの女戦闘員たちは出て行ってしまい、部屋には一家三人だけが残されていたのだった。
「お父さん・・・お母さんを助けて・・・」
「わかっている。あいつら、許さんぞ」
ジャラジャラという音が部屋に響く。
だが、三郎も志穂も自由になることができなかった。
やがて部屋の扉が開き、黒レオタードの女戦闘員たちを先頭に先ほどのピエロ姿のチャン・ザ・マジシャンともう一人、白衣の女性が入ってきた。
小柄でメガネをかけた三十代ぐらいの彼女は、その青い瞳と金髪からも外国人であることが伺えたが、やはり白衣の下から覗くすらりとした脚には網タイツとブーツを履いていた。
白衣の女性は円形の台のそばへ行くとそこに寝かされている喜美枝を冷ややかに見下ろした。
「この女が改造戦士の素体なの? なかなかいい素材のようね」
「クククク・・・実にその通りですよドクターリン。この女はかなりのポテンシャルを秘めています」
ドクターリンと呼ばれた白衣の女性のそばにいくチャン・ザ・マジシャン。
「あとはあなたの手で彼女を素敵な改造戦士に改造してあげてくださいな」
「ええ、任せてくださいな。とても素敵な戦士にしてあげますわ。うふふふふ・・・」
ドクターリンのメガネの奥の瞳が妖しく輝く。
「いやぁ! 改造なんていやぁ! いやよぅっ!」
「やめろぉ! 妻に、喜美枝に手を出すなぁ!グホッ・・・」
叫び声を上げた三郎の腹部に女戦闘員のこぶしが入る。
「が・・・がはっ」
「お、お父さん!」
となりに吊り下げられている志穂が父親を心配して声を上げた。
「黙りなさい! お前たちは黙ってあの女性が改造されるところを見ているのよ」
黒レオタードの女戦闘員が三郎の髪の毛を掴み、寝かされている喜美枝の方へ向ける。
「やめてっ! お母さんを改造しないでっ!」
「うるさいっ!」
「キャッ」
パシンと音がして志穂の頬が張り飛ばされる。
相当に手加減されているのだろうが、志穂の頬は赤くはれ上がった。
「志穂っ! 娘に手を出さないで!」
「やめろぉ! 妻にも娘にも手を出すなぁ!」
「黙りなさい!」
チャン・ザ・マジシャンの一言に部屋はシンとなる。
「ドクターリン。騒がしいようですからしばしお待ちを。おい!」
「イーッ! かしこまりました」
女戦闘員たちは三郎と志穂の口に猿轡を嵌めていく。
首を振って抵抗した二人だったが、すぐに猿轡をされてしゃべることができなくなってしまった。
「イーッ。終了しました」
「よし。ドクターリン。始めてください」
「ええ、了解ですチャン・ザ・マジシャン」
ドクターリンはそういうと蛍光ピンクに輝く液体を注射器に取り、嫌がる喜美枝の腕に注射する。
「これは細胞を遺伝子レベルから変化させていくの。あなたの躰は全く別物になっていくのよ」
薄笑いを浮かべるドクターリン。
志穂はその笑みが悪魔のように感じられた。
「次はこれ。これがなんだかわかるかしら?」
ガラス瓶の中に入った物体がごそごそと動いている。
「きゃあっ! く、蜘蛛」
喜美枝が悲鳴を上げて目をそらす。
ガラス瓶の中には黒と黄色の縞模様が毒々しい大きな蜘蛛がうごめいていたのだ。
彼女は生理的に蜘蛛が大嫌いだった。
「あらあら、嫌いなの? でもあなたはこれから蜘蛛になるのよ」
「ええっ? そんなのいやです! やめてぇ!」
「うふふふ・・・すぐに好きになるわ。心配要らないわよ」
ドクターリンはガラス瓶の中の蜘蛛に今度は蛍光グリーンの液体をかけてかき混ぜていく。
「ほうら、どろどろに溶けていくわ。そして蜘蛛の遺伝子がこの液体と混じっていく」
「むぐぅ・・・」
志穂は吐き気を覚えた。この女は気が狂っている。
やがてガラス瓶の中のグリーンの液体をドクターリンは機械の中に注入する。
そして機械から伸びるチューブを喜美枝の両腕に突き刺した。
「あなたの血液に蜘蛛の遺伝子が混じった液体を混入するの。液体はあなたの血とともにあなたの躰を巡って隅々まで到達するわ。そしてあなたの躰を基本から変えていくの」
「いやぁ・・・いやよぅ」
機械が音を発し始め、喜美枝の腕に刺さったチューブから赤い血が吸い取られていく。
やがてその血は機械に取り込まれ、別のチューブからどす黒くなって出てきて再び喜美枝のもう片方の腕に注入されていった。
「ああ、いやぁ・・・熱い・・・体が熱い」
「でもね、そのままでは時間が掛かるわ。そこで変化を促進するためのエネルギーを与えてやるの。そうすれば数時間であなたの躰は完全なる改造戦士の肉体に生まれ変わることになるのよ」
天井からドクターリンのスイッチによって手術用の無影灯のようなものが降りてくる。
そしてそれらはいっせいに点灯し、赤や黄色の光線を喜美枝の全身に浴びせ始めた。
「ああ・・・熱い・・・熱いよう」
喜美枝が躰の熱さにぼうっとなっていくのと同時に、彼女の躰には驚くべき変化が起き始めていた。
「むぐぐ・・・」
「もぐぅ・・・」
三郎も志穂もただうなり声を出すことしかできない。
その二人の目の前で喜美枝は徐々に蜘蛛の怪人に変化していっていたのだ。
若い時から変わっていない手入れの行き届いたすべすべの肌にはごわごわした硬い毛が生え始め、滑らかな両手両脚にも剛毛が生えてくる。
手足の毛は黄色と黒の色違いとなり、縞模様を形作っていく。
お母さん・・・
目の前で変化していく母親に志穂は顔をそむけるしかなかった。
ぐったりとした喜美枝はさらに変化を続け、両肩からは肉が盛り上がると先端が鋭くとがった爪を持つ蜘蛛の脚が生え始めた。
「むぐぅぅぅ・・・」
「みにゃぁー」
猿轡のせいで奇声にしか聞こえないが、三郎も志穂も悲鳴を上げていた。
妻が、母親が人外の怪物に変化していくのを正視できるはずがない。
喜美枝の両手は黒と黄色の縞模様に彩られ、指先には鋭い爪が伸びてくる。
両脚は指先が一つにまとまり、先がとがってかかとが伸びていき、まるでハイヒールを履いているような形に形成されていく。
形のいい太ももも、黄色と黒の縞模様に覆われていき、肌色の部分は全く姿を消してしまっていた。
胴体はやはり剛毛に覆われていき、黒一色に染め上げられていく。
いまだ形の崩れていない二つの胸の膨らみも黒い毛が覆いつくしていき、股間の性器も硬い毛がカバーしていく。
額には新たな目が形成され、口元には鋭い牙が現れる。
やがて喜美枝は完全な蜘蛛女へと変貌を遂げていった。
「うふふふ・・・あとはチャン・ザ・マジシャンの仕事ね」
ドクターリンは満足そうな笑みを浮かべていた。

三郎も志穂もがっくりとうなだれたまま、鎖に繋がれて吊り下げられていた。
あれから何時間経ったのだろう。
チャン・ザ・マジシャンという奇妙なピエロもドクターリンと呼ばれた白衣の外国女性もすでに部屋にはいなかった。
二人の目の前には円形の台の上に横たわる蜘蛛と女性が一体化したような怪物となってしまった喜美枝がいるだけだった。
猿轡を嵌められているせいもあって、二人は無言で打ちひしがれたようにフックから鎖によってぶら下がっていた。
しばらくして再び扉が開き、三人の黒レオタードの女戦闘員と赤と緑のピエロの衣装のチャン・ザ・マジシャンが入ってきた。
「そろそろ目覚める頃合いですね。どうです? 素敵な姿だと思いませんか? あなたの奥さんは」
「ふざけるな! 喜美枝を元に戻せ!」
女戦闘員によって猿轡をはずされた三郎はすぐさまチャン・ザ・マジシャンに食って掛かる。
「そうよ! お母さんを元に戻して!」
同じく猿轡をはずされた志穂もチャン・ザ・マジシャンをにらみつける。
「おやおや。あなたたちにはこの美しい姿がわからないのですか?」
「美しいだなんて・・・化け物じゃない!」
志穂がそう言ったとき、台の上で喜美枝が身じろぎした。
すでに手足の拘束は解かれていた喜美枝は、ぼんやりと目を開けると複数の映像が目に入ってくることに気が付いた。
え?・・・何これ?
喜美枝は驚いたが、やがて映像は一つとなり、今までよりも数倍立体感がつかめることに気が付いた。
そして、天井には見たこともない蜘蛛のような姿をした女がいることにも気が付いた。
「ひあっ!」
思わず口元に手を当てて叫びを押しとどめる。
そして、それは蜘蛛女も同様のしぐさをすることに気が付いた。
え?・・・そんな・・・まさか・・・
喜美枝はゆっくりと右手を胸のところへ下ろしてみる。
すると天井の蜘蛛女は同じように左手を下げていた。
あれは・・・鏡?
つややかな表面を持つそれが台の上にいる自分を映し出していることに気が付くのにさほど時間はかからなかった。
あれは・・・私?
あの姿が・・・私?
いや・・・
そんなのはいや・・・
「いやぁっ!」
喜美枝は叫んで上半身をガバッと起こす。
目の前に現れた両手と下半身は鏡に映っていたのがまぎれもない自分であることを理解させるのに充分だった。
「いやぁっ! いやよぅっ! こんなのはいやぁっ!」
鋭い爪と硬い毛で覆われた両手で顔を覆い、首を振る喜美枝。
こんなのは悪夢であり、早く目覚めたかった。
「いやあ・・・いやよぉ・・・助けて・・・シュシューッ」
喜美枝の口からシュシューッといううなり声が上がる。
「喜美枝!」
「お母さん!」
二つの声が部屋に響く。
それは一番聞きたい声であり、同時に一番聞きたくない声でもあった。
「シュシューッ。あなた・・・志穂・・・」
蜘蛛女と化した喜美枝の目にはこのうす暗がりなど問題ではない。
部屋の隅に捕らわれている二人の姿が喜美枝にははっきりと見ることができた。
「喜美枝」
「お母さん」
心配そうに喜美枝を見つめる二人。
だが喜美枝にとってそれは残酷な一瞬だった。
「い、いやあっ! み、見ないで! 見ないでぇ!」
躰をかき抱くように両手で自分の躰を抱きしめる喜美枝。肩から生えた二本の蜘蛛の脚も彼女の躰にかぶさってくる。
「喜美枝・・・」
「お母さん・・・」
「シュシューッ・・・お願い、見ないで。私を見ないで・・・」
台の上で丸くうずくまり、喜美枝は首を振る。シュシューッといううなり声も意思に反してしゃべろうとするたびに口にしてしまうのだった。
三郎も志穂もその姿に声を掛けることができなかった。
「クククク・・・恥ずかしがることはありませんよ。とても素敵な姿じゃないですか。あなたは我々デライトの改造戦士蜘蛛女なんですから」
「シュシューッ。いや、そんなのはいや・・・戻して・・・戻してよ。元の姿に戻して!」
キッとチャン・ザ・マジシャンをにらみつける喜美枝。すさまじい殺気すら漂う。
「そうだ! 妻を元に戻せ!」
「お母さんを元に戻して!」
ジャラジャラと鎖が鳴る。
「黙れ!」
すぐに女戦闘員が三郎と志穂の首筋に短剣を突きつけて動きを封じた。
「グッ、くそっ!」
「お母さん!」
「シュシューッ。志穂! あなた! やめて! 夫と娘には手を出さないでぇ」
喜美枝が叫ぶ。
「ええ、構いませんよ。私が必要なのはあなたです。あなたさえ我がデライトのために働いてくれれば男と娘の命は助けましょう」
「えっ?」
思わずチャン・ザ・マジシャンの顔を見上げる喜美枝。
「喜美枝。だまされるな。元に戻してもらうんだ!」
首筋の短剣をものともせずに三郎が叫ぶ。
「元に戻れるとなど思っているのですか? あなたの躰は芸術品なのですよ」
ああ・・・
おそらくそれは本当だろう。
こんな躰になってしまった以上、元に戻るなんてできないに違いない。
あなた・・・志穂・・・
喜美枝は決断した。
「シュシューッ。わかりました・・・私はここに残ります。ですから二人は・・・」
「喜美枝・・・」
「お母さん・・・」
三郎も志穂も言葉をなくす。
「結構。ではこれを付けなさい」
そう言ってチャン・ザ・マジシャンは皮でできた首輪を差し出す。
「首輪?」
「そうです。それは我々暗黒結社デライトの一員であることの証。あなたの決意が本当なら嵌めることができるでしょう?」
ニヤリと笑うチャン・ザ・マジシャン。
「シュシューッ。わ、わかりました」
喜美枝は首輪を受け取ると止め具をはずして首に巻き、再び止め具を嵌める。
瞬間ぞくぞくっとしたものが喜美枝の背筋を走り抜け、喜美枝は快感を感じた。
え? 何これ?
なんだかとても気持ちがいい。
喜美枝は何か解放されたような気分を味わっていた。
「クククク・・・さて約束は守りましょう。そいつらを捕虜収容房へ連れて行け!」
「イーッ! かしこまりました」
女戦闘員がフックにかかった鎖をはずし始める。
「うそつき! 解放するって言ったじゃない!」
鎖をはずされながら志穂はチャン・ザ・マジシャンを怒鳴りつけた。
「はて? 私は命は助けると言いましたが、解放するとは一言も」
ニヤニヤ笑うチャン・ザ・マジシャン。
志穂はその悪魔のような男に唾を吐きかけた。
残念ながら届きはしなかったが、チャン・ザ・マジシャンはあからさまに嫌悪の表情を浮かべる。
「絶対・・・絶対あんたを赦さないから!」
女戦闘員に後ろ手に縛り上げられ、部屋から連れ出される志穂。
続いて三郎も部屋から連れ出されていった。
「クククク・・・可愛いですねぇ志穂ちゃんは」
そう言ってチャン・ザ・マジシャンはぼうっとしている喜美枝の顎をつかんで持ち上げた。
「クククク・・・その首輪は特殊でしてね。脳波に影響を与えるパルスを出し続けるのですよ。そう、そのパルスを浴びているうちにあなたは我々デライトの邪悪な心に変わっていくのです。クククク・・・」
不気味な笑いは部屋中に響いていった。

父と娘は別々の独房とも言うべき部屋に入れられる。
扉のある面は鉄格子となっており、親子は向かい合わせの位置になっていた。
「くそっ、出せっ! ここから出してくれぇ!」
「お母さん! お母さん!」
二人の叫び声だけが廊下に響く。
しばらく叫んだものの、相手の反応が無いことに落胆した志穂は膝を抱えてうずくまった。
「お母さん・・・」
志穂の目から涙がこぼれる。
普段はやれ勉強しろとか手伝いをしろとかうるさく感じていたが、やはり母親のことは大好きだったのだ。
その母親が人ではないものになってしまう。
そんなことは信じられはしなかった。
「くそっ・・・あいつら何者なんだ? 喜美枝をあんな姿にしてしまうなんて・・・」
向かいの独房でも力を失ったように三郎がへたり込む。
「とにかく、ここを出て警察に連絡しなければ・・・そうすれば喜美枝も助かるに違いない」
「でも、どうやって出るの? お父さん」
志穂が顔を上げる。
「うーん、そこが問題だな。何かいい手は無いか・・・」
三郎は首をかしげた。一所懸命に知恵を搾り出すのだ。
「お父さん・・・」
志穂は何かに祈らずにはいられなかった・・・

「イーッ! こちらの部屋をお使い下さい。蜘蛛女様」
喜美枝は黒レオタードの女、確か女戦闘員という存在だ、に部屋に案内された。
こじんまりとした部屋だったが、きちんと手入れされているし調度品もそろっていた。
「何かご不満がございましたら申し述べてくださいませ。私は女戦闘員F62号。蜘蛛女様の身の回りのお世話をさせていただきます」
赤と緑のペイントをした顔だが、若く可愛らしい娘だ。喜美枝も思わず微笑んだ。
「シュシューッ。ありがとう。何かあったらお願いします」
喜美枝はもうしゃべるたびにシュシューッといううなり声を上げてしまうことを気にするのをやめた。
気にしても止めることはできないし、うなることでしゃべりづらくなることも無いのだ。
むしろ気にしているとかえってしゃべりづらかった。
「イーッ! それでは失礼いたします。ごゆっくりおくつろぎ下さい」
F62号は右手を上げて敬礼し部屋を出て行く。後には蜘蛛女となった喜美枝だけが残された。
喜美枝はハイヒール状になった素足でかつかつと床を踏みしめソファのところへ行き座り込む。
はあ・・・どうしてこんなことになってしまったの?
喜美枝は変化してしまった自分の両手を見つめる。
それは毛に覆われて黒と黄色の縞模様が浮かび上がりとても美しく感じた。
うふふ・・・綺麗・・・素敵・・・
鋭くとがって獲物を引き裂くことのできる指先の爪。
少々のことでは傷付かない強靭な筋肉。
股間の性器のあるあたりには小さな突起ができていて、手でいじると粘つく液体が分泌される。
それは空気に触れると強靭な細い糸となり、彼女の両手で自在に操ることができた。
糸を手繰り壁やテーブルに投げつけてやると、粘つく液体が糸を張り付かせ絡まってしまう。
それはとても楽しく、彼女はしばらく糸を張ったりはずしたりして楽しんだ。
ふと見ると、部屋には鏡台が置いてあり、カバーがかけられている。
彼女は器用に糸を使ってカバーを取り去ると、立ち上がって鏡の前に立つ。
そこには胴体を黒い毛で覆われ、すらりとした両手両脚それと両肩から生えている蜘蛛脚には黒と黄色の縞模様がある一人の女性が映し出されていた。
これが私・・・
彼女はその姿をじっと見下ろす。
これが・・・私・・・
まるで蜘蛛・・・
私は・・・蜘蛛・・・
私は蜘蛛女・・・
彼女は微笑みを浮かべると満足そうにソファへ戻っていった。

             ******

あれから何日たったのだろうか?
一週間ぐらいだろうと思うけど良くわからない。
わかっているのは脱走しようとしたことはことごとく失敗に終わったということだった。
食事を運んできた時に鍵を奪おうとしても・・・
腹痛を装い気を惹こうとしても・・・
シャワーを浴びさせてもらうために独房を出たときも・・・
女戦闘員たちは見事なまでに志穂を扱い、決して隙を見せることは無かった。
向かいの独房にいる父親もすっかり疲れ果て、脱走する気力も失ってしまったかのようだ。
それよりも志穂は母親のことが気になっていた。
ここの奴ら、特にあのピエロと金髪女によって怪物にさせられてしまった母親は、時間がたてばたつほど元に戻すことができなくなるのじゃないだろうか。
志穂はそのことが心配だったのだ。

「食事よ」
黒レオタードの女が食事を持ってくる。
今日もまた差し入れられるのはプラスチックボトルに入った栄養食だ。
流動食のようなものでチュウチュウ吸い出して食べるのだが、味も素っ気も無く食事をしている気にはなれない代物だった。
「また、これ?」
志穂はうんざりしながら言ってみる。
言ったところで代えてもらえるはずは無いのだが、言わずにはいられなかったのだ。
「いやなら食べなくてもいいわ」
顔に赤と緑のペイントを施した女は無表情でそう言った。
「食べるわ・・・食べるわよ」
鉄格子の隙間に置かれたボトルを手を伸ばして受け取り、脇に置く。
「ねえ、お母さんに会わせて・・・」
「はあ?」
志穂の問い掛けに怪訝そうな顔をする女戦闘員。
「お願い。お母さんに会いたいの」
「お母さん? ・・・ああ、蜘蛛女様のことね?」
「くもおんな・・・さま?」
そうだ、確かお母さんは蜘蛛の怪物にされたんだ・・・
志穂は母親がそんな呼ばれ方をされたことに改めてショックを受けた。
「蜘蛛女様って・・・」
「あんたの母親は私たち暗黒結社デライトの蜘蛛女様になられたのよ」
「そんな・・・」
「だからお前のような小娘が偉大な蜘蛛女様に会うことなどできはしないわ」
冷たく見下すように言い放つ女戦闘員。
「そんな・・・会わせて! お母さんに会わせてよ!」
志穂は鉄格子の隙間から手を伸ばして訴えた。
「うるさい! 黙れ!」
「会わせて!」
「そうだ! 妻に会わせろ! 喜美枝に会わせてくれ!」
向かいの独房から三郎も声を上げる。
「黙れ! おとなしく食事をしろ!」
女戦闘員は困惑したようにそう言って廊下を去っていく。
「待って! 会わせて! お母さんに会わせてー!」
「喜美枝に、喜美枝に会わせてくれー!」
二人の叫びが廊下に響いた。

「くそぉ・・・出せぇ・・・出してくれよぅ」
女戦闘員が立ち去ったあとをがっくりとうなだれながら見送る三郎。
そこへこつこつという靴音が響いてくる。
「クククク・・・元気そうですね。皆さん」
現れたのはピエロの服装をしたあのチャン・ザ・マジシャンだった。
「何しに来た!」
「ここから出して!」
「おやおや。歓迎されていないようですね。せっかくいい話を持ってきたのに」
両手を広げて首を振るチャン・ザ・マジシャン。
「いい話だと?」
三郎は表情を変えた。
「ええ、いい話ですよ。先ほどの話ではあなた方は喜美枝さんに会いたいそうじゃないですか」
「会いたい。お母さんに会いたいよ」
「会わせてくれるのか? 喜美枝に」
二人の顔が明るくなる。
「はい。会わせてあげますよ。特別にね」
「ああ・・・」
「良かったね、お父さん」
「どうします? すぐに会いますか?」
冷たく微笑むチャン・ザ・マジシャン。
「ああ、会わせてくれ」
「すぐにでもお願いします」
理不尽に閉じ込められて懇願するしか無い状況に仕方なく二人はお願いする。
「いいでしょう。おい!」
チャン・ザ・マジシャンが指を鳴らすと廊下の奥から四人の女戦闘員が出てきて鍵を開ける。
「イーッ! 出るのよ」
女戦闘員たちは二人を両側から押さえつけて廊下へ連れ出すと、チャン・ザ・マジシャンを先頭にして廊下を歩き始めた。
「あ、あの・・・」
両腕を女戦闘員に捕まれながら志穂は思い切ってチャン・ザ・マジシャンに声をかけてみる。
「何です? お嬢さん」
「お母さんは・・・お母さんはどうしているのですか?」
「ああ・・・あなたのお母さんは実に優秀でしてね。すでに二人の邪魔者を抹殺してくれましたよ」
チャン・ザ・マジシャンはさらりと言ってのけた。
「ま、抹殺って・・・人を殺したんですか? お母さんが?」
「うそだ! 喜美枝が・・・喜美枝がそんなことを・・・」
志穂も三郎もショックは隠せない。化け物にされた上に人殺しまでさせられているとは・・・
「おやおや・・・では本人に聞いてみればよろしいでしょう」
その言葉に志穂の不安は募る。
もうすでにお母さんは以前のお母さんでは無いのではないだろうか・・・
そんな思いを他所に彼らは廊下を連れられていき、一つの扉の前に立つ。
チャン・ザ・マジシャンが扉をノックする。
「シュシューッ。誰なの?」
「私ですよ、蜘蛛女。入ってもいいですか?」
インターフォンから志穂にとって懐かしい声がした。
「まあ、チャン・ザ・マジシャン様ですね? どうぞお入りくださいませ」
志穂は驚いた。インターフォンの声はまるで家族を迎えるように温かく感じたのだ。この怪しげな男が尋ねているというのに。
「では失礼して」
チャン・ザ・マジシャンが扉の脇にあるパネルを操作すると、扉は音も無くスライドする。
志穂たちはチャン・ザ・マジシャンに続いて部屋の中に入っていった。

そこは薄暗い部屋だった。
赤や黒に彩られ、所々に蜘蛛の糸が張り巡らされている。
その部屋の中央のソファに両手を背もたれに広げ脚を組んだ姿の蜘蛛女が座っていた。
蜘蛛女はすぐに立ち上がるとヒールの音を響かせながらチャン・ザ・マジシャンの元へ行き、すっと膝をつく。
「シュシューッ。いらっしゃいませチャン・ザ・マジシャン様。このようなところへようこそ」
「クククク・・・お前に会いたいという者たちをつれてきたのですよ」
チャン・ザ・マジシャンは両手を広げて背後に控えている志穂たちを蜘蛛女の前に引き出させる。
「ご存知ですか? この者たちを」
「シュシューッ。まあ、島岡三郎と島岡志穂ですね? よく存じていますわ」
両腕を捕まえられている三郎と志穂に向かって蜘蛛女は立ち上がる。
「まだ生きていたとは・・・てっきり死んだものだと」
冷たい笑みが口元に浮かぶ。
「喜美枝」
「お母さん」
二人の口から言葉がほとばしる。
だがそれは冷笑にさえぎられた。
「シュシューッ。喜美枝? お母さん? 誰のことを言っているのかしら」
「俺だ、三郎だ。覚えていないのか?」
「お母さん。私よ。志穂よ」
捕まれている両手を振りほどきたいが、とてもできそうに無い。
「シュシューッ。覚えているわ。島岡三郎に島岡志穂。くだらない人間どもよ」
「く、くだらない? どういうことだ喜美枝!」
「お、お母さん?」
両手を組んで二人を見つめていた蜘蛛女はつかつかと三郎に歩み寄り手の甲で張り飛ばす。
「ハグッ」
「お黙り! 誰に向かって口を訊いていると思っているのお前たち! 私は栄光ある暗黒結社デライトの改造戦士蜘蛛女なのよ」
冷酷な目で三郎を見下ろす蜘蛛女。その目にはかつての優しさや慈愛といったものは微塵も感じられない。
「お母さん、やめて!」
「喜美枝! 思い出してくれ。以前の優しいお前だった頃を!ウグッ」
ハイヒール状のとがったかかとが三郎の腹部に食い込む。
「シュシューッ。いい加減におし! お前などに喜美枝などと呼ばれるのは我慢ならないわ。そんなほこりをかぶったような名前は私は捨てたの」
蜘蛛女は三郎の髪をつかんで顔を持ち上げる。
「これからは蜘蛛女様と呼びなさい。もっとも、返事をするとは限らないけどね。うふふふ」
「お母さん、やめて! お父さんを放して!」
志穂は信じられなかった。
あの優しい母親がこんな化け物になってしまったというのか。
「シュシューッ。私に命令する気かい? 小娘が」
ぐったりした三郎から手を離す蜘蛛女。
「お母さん・・・」
口元には牙が生え、額には新たな二つの眼が存在するが、志穂の方に振り返ったその顔は母親の顔だった。
「お黙り! いつまでもお母さん呼ばわりすると殺すよ!」
「お母さん・・・本当にお母さんは変わってしまったの? 人を殺すようになってしまったの?」
志穂の目から涙がこぼれる。
「違うよね? お母さんは人を殺したりしないよね?」
「シュシューッ。あなた馬鹿じゃないの?」
「えっ?」
冷たい笑みを浮かべる母親に志穂はぞっとする。
「私たち暗黒結社デライトの邪魔をしたり役に立たない人間は殺すに決まっているじゃない」
「そんな・・・本当に人殺しを?」
「当たり前よ。もう何人もくずどもを殺したわ。それが何?」
志穂は言葉が出なかった。
お母さんじゃない・・・
もうこの人はお母さんじゃないんだ・・・
デライトとかいうやつらに作り変えられてしまったんだ・・・
悔しい・・・
許せない・・・
「この悪魔! お母さんを返して!」
志穂は今までそばで黙ってやり取りを聞いていたチャン・ザ・マジシャンに食って掛かる。
「元に・・・お母さんを元に戻してよぅ・・・」
うなだれて泣きじゃくり始める志穂。
「クククク・・・元にかね? どうかな、蜘蛛女? 元に戻りたいかな?」
「シュシューッ。冗談じゃないですわ。こんなすばらしい躰にしていただいたというのに」
チャン・ザ・マジシャンの問い掛けに蜘蛛女は首を振る。
「だそうだよ。志穂ちゃん」
「うっうっ・・・」
涙が志穂の足元をぬらす。
「シュシューッ。鬱陶しい小娘だこと。チャン・ザ・マジシャン様。こいつらを生かしておくのですか?」
「おやおや、あなたが望んだのですよ。こいつらを殺さないでくれと」
チャン・ザ・マジシャンはニヤニヤと笑みを浮かべた。
「そう・・・でしたかしら・・・私ったら何を考えていたのかしら。よろしければ始末いたしましょうか?」
「クククク・・・よろしいのですか?」
「シュシューッ。構いませんわ。このようなくだらない連中は生かしておく価値などありませんもの」
手の甲を口元に当ててくすっと笑う蜘蛛女。
「そうですか。では男は好きにしなさい。志穂ちゃんには我がデライトの一員となってもらいましょう」
「えっ?」
うなだれていた志穂は顔を上げた。
「ど、どういうこと?」
「あなたには我がデライトの女戦闘員となってもらいましょう。おい! あれを用意しなさい」
「イーッ! かしこまりました」
チャン・ザ・マジシャンの命令に従い、女戦闘員の一人が片手を挙げて敬礼し部屋を出る。
「シュシューッ。よかったわね、島岡志穂。あなたも我々暗黒結社デライトの一員になれるのよ。光栄でしょう?」
「そ、そんなのはいやっ! いやよっ!」
首を振り身をよじって何とか抜け出そうとする志穂。
「やめろ・・・志穂には手を出すな・・・」
「シュシューッ。お前は黙っていなさい!」
振り向きざまに蜘蛛女は三郎に平手打ちを食らわせる。
両側を支えられているので倒れはしないが、三郎はがっくりとうなだれた。
「ふんっ! 下衆が」
「お父さん!」
ぐったりとなった三郎に志穂は必死で呼び掛けた。
「目障りだわ。連れてお行き!」
「イーッ! かしこまりました蜘蛛女様」
二人の女戦闘員はぐったりとした三郎を引きずるように部屋から連れ出していく。
「お父さん! お父さん! キャッ」
パシンと音がして志穂の頬が赤くなる。
「静かにしなさい」
蜘蛛女が志穂の頬を張ったのだ。
お母さん・・・
志穂は黙るしかなかった。
やがて先ほどの女戦闘員が手提げバッグを持って部屋に戻ってくる。
「イーッ! お待たせいたしました」
「クククク・・・では準備をしなさい」
「イーッ! かしこまりました」
バッグの中から出てきたのは一組の衣服だった。
彼女たち女戦闘員が着ているのと同じもの。
黒い首まであるレオタードと黒の網タイツ。それにひざ下までの黒いブーツと腰に巻く赤いサッシュ。さらに首に巻く赤いスカーフだった。
志穂は理解した。
こいつらはこれを着せるつもりなのだ。
「い、いやぁ! いやだぁ!」
志穂は何とか逃れようと必死になって身じろぎする。
「ふん!」
暴れる志穂を見たチャン・ザ・マジシャンはステッキを志穂に向けて気合を込めた。
ステッキの先からオーラのようなものがほとばしり、志穂は金縛りのように手足を動かせなくなってしまう。
「きゃあっ」
「クククク・・・だめですよ、志穂ちゃん。おとなしくしていなさい」
志穂の体は志穂自身が動かすことはできず、女戦闘員たちは動けなくなった志穂から衣服を剥ぎ取り始めた。
「きゃあっ! いやぁ! やめてぇ!」
ずっと着たきりだったセーラー服が脱がされていき、ソックスや下着も取り払われていく。
ああ・・・恥ずかしい・・・恥ずかしいよぅ。
志穂は羞恥に頬を真っ赤に染めながらも、どうすることもできなかった。
「シュシューッ。可愛いわね。この娘」
「クククク・・・まだまだと思ったが、すでに充分女としての色気を持っているようですね」
「やめてぇ・・・そんなこと言わないでぇ」
蜘蛛女とチャン・ザ・マジシャンの視線を感じながらも隠すことさえできはしない。
形のよい小振りの乳房も柔らかな叢に隠された性器も全てさらけ出されてしまっているのだ。
ああ・・・もういっそ死んでしまいたいよう・・・
次の瞬間志穂はつま先に布の感触を感じる。
えっ?
しゅるしゅるとそのままたくし上げられていくその感触は網タイツを穿かされているものだった。
ああ・・・いやだぁ・・・恥ずかしいよぅ。
腰を持ち上げられ、下着をつけることもなしに網タイツが志保の下半身を覆っていく。
網目からは隠しきれない叢が顔をのぞかせていた。
ああ・・・いやぁ・・・
両脇を背後から抱えられているので上半身は起きたような格好になっていて、志穂には自分の下半身がよく見える。
網タイツを穿いた自分の脚はいつもよりすらりとして見えた。
「次はレオタードよ」
女戦闘員が片足ずつ持ち上げ、レオタードに足を通していく。
するすると腰まで持ち上げると股間からレオタードに志穂の躰が納まっていく。
両手を袖に通して背中でファスナーを締めると志穂の体は黒に染め上げられていた。
ああ・・・恥ずかしい・・・レオタードって初めて着るけど、こんなに体の線が出ちゃうんだ・・・
日ごろから多少の運動で躰を引き締めてきただけあって、志穂の体のラインは美しかった。
次に女戦闘員は志穂の右足を持ち上げてブーツを履かせる。
サイズもぴったりのブーツは志穂のひざ下を覆いサイドのジッパーで留められる。
左足も同様にブーツを履かせられ、志穂の足は黒く彩られた。
「あとは仕上げね」
二人の女戦闘員に両脇から抱えられ立ち上がった志穂に、赤いサッシュと赤いスカーフがそれぞれ巻きつけられ、顔のペイント以外は新たな女戦闘員の誕生となった。
「シュシューッ。素敵よ」
「クククク・・・後は完成を待つばかりですね。連れて行きなさい」
「イーッ! かしこまりました」
チャン・ザ・マジシャンの命令に従い、女戦闘員は志穂を連れて再び独房へと向かう。

独房へ戻ってきた志穂は向かいの独房に父親の姿が無いことに気が付いた。
「入りなさい」
まだ力が入らない志穂を放り出すように独房へ入れる女戦闘員。
「ま、待って。お父さんは・・・お父さんはどうしたの?」
床に転がりながらも志穂は父親が心配だった。
「お前の知る必要は無い。おとなしくしていろ!」
立ち去ろうとする女戦闘員たち。
「待って! お願い教えて、F53号」
志穂は自分が叫んだ言葉にショックを覚えた。
私・・・なぜ彼女がF53号だってわかったの?
「ふふふ・・・じきにそんなことは気にならなくなるわ。おとなしくしていることね」
女戦闘員F53号は冷たい笑みを残して去っていく。
あとには静寂だけが残った。

しばらくしてようやく躰の自由を取り戻した志穂は着せられたものを脱いでしまおうと首のスカーフに手を伸ばす。
こんな格好・・・早く脱がなきゃ・・・
だが志穂の手はスカーフに掛かったところで動きを止めてしまう。
脱いでどうするの?
脱いで裸になるの?
こんなに躰にフィットして着ているのが気持ちいいのに?
志穂の指がスカーフから離れる。
別に・・・構わないわよ・・・
知り合いに見られるわけじゃなし・・・
千夏ちゃんがいたらきっと冷やかされるだろうな・・・
『なあに、その格好』って・・・
いいじゃない・・・
その時は言ってやるのよ・・・
これは暗黒結社デライトの女戦闘員の制服なんだって・・・
着ていると気持ちがいいんだって言ってやるのよ・・・
そうよ・・・
この着心地を知ったら千夏ちゃんだって・・・
決めた。
しばらく着ていよう。
見られたって構わないわ。
むしろ見せつけてやるんだから。
志穂はそう思いベッドに腰掛けた。

「食事よ」
いつものようにボトルが置かれる。
「イーッ! ありがとう」
そう言ってから志穂は思わず口を押さえた。
何? 今のは?
私今なんて叫んだの?
確か彼女たちと同じようにイーッって・・・
「ふふふ・・・ゆっくり食べな」
ボトルを置いた女戦闘員はそう言って笑みを浮かべ立ち去っていく。
「あ、ありがと・・・」
志穂はおずおずとボトルを取り口へ運ぶ。
滋養のある液体がのどを通り志穂の体を力づける。
「おいしい・・・」
そう言って満足そうな笑みを浮かべた志保の顔にはうっすらと赤と緑の色が浮かんでいた。

独房に閉じ込められている状況は退屈だった。
少し体を動かさないとね。デブデブになったら動きが鈍るから。
志穂はそう思い床で体操をし始める。
驚いたことにすごく躰の動きがよく、また柔軟性も増したように感じる。
すごい・・・躰が軽いわ・・・思ったように動く。
柔軟体操から始めてパンチやキックの練習。体を動かしているといつ実戦に出てもいいような気がする。
命令さえあれば今すぐにでも戦いたい。
戦う?
誰と戦うの?
私は誰と戦うんだっけ?
逆らうものと・・・
私に・・・私たちに逆らう者とだ・・・
そうだわ・・・私たちに歯向かう者を叩き潰すのよ。
歯向かう者は容赦しないわ。
彼女はうなずくと再びパンチやキックの練習を始めた。

「調子はどう?」
「イーッ! 快調です。F28号」
彼女はそう言って片手を挙げる。
もうイーッという叫びに違和感を覚えることは無い。
むしろそう叫ぶことで自分の存在を誇示しているようで気持ちがいい。
「それはよかったわ。そろそろ完成ね」
優しそうな笑みがF28号に浮かぶ。
「完成? どういうことですか?」
「あなた、番号はわかる?」
番号?
私の番号?
私は・・・
私は・・・
そう・・・私はF91号・・・
私はF91号だわ・・・
「はい、私の番号はF91号です」
「それでいいわ。じゃ、名前は?」
えっ?
なまえ?
名前って?
私の名前?
何かあったような気が・・・
わからない・・・
名前なんて必要なの?
私はF91号・・・
これ以外に必要なの?
「わかりません・・・名前って必要なのですか?」
彼女は尋ねる。
「ううん、必要ないわ。あなたがそんなものにこだわっているかどうか聞いただけ」
「こだわっていません。名前なんて必要ありません」
「ふふ・・・上出来よF91号。もうしばらく我慢して。そのうちお呼びがあるでしょうから」
「イーッ! かしこまりましたF28号」
彼女は先輩に敬礼する。
F91号と名乗った彼女の顔にはくっきりと赤と緑のペイントが施されていた。

「F91号、出なさい」
「イーッ! 了解です、F53号」
待ちかねていた瞬間にF91号は勇んで立ち上がった。
鉄格子の扉をくぐると彼女の先輩が二人廊下に立っている。
F28号とF53号だ。
いずれも彼女の先輩として彼女の面倒を見てくれる頼もしい女戦闘員である。
彼女は自分の躰を見下ろして着ていることさえ感じなくなった黒いレオタードと網タイツの姿を確かめる。
準備は万端。
あとは栄光ある暗黒結社デライトの一員として恥じないようにするだけだった。
「いらっしゃい、F91号」
「イーッ! かしこまりました」
彼女は元気よく敬礼すると先輩たちに従って廊下を歩いていく。
ひんやりした廊下を歩くのは気持ちがいい。
ここは私たちの秘密アジト。
ここで組織のために働くことこそが私の使命。
F91号は誇らしげにそう思う。
やがて彼女たちは中央司令室に行き当たる。
ここには暗黒結社デライトの偉大なる極東司令官チャン・ザ・マジシャン様がおられるのだ。
F91号は少し緊張した。
「イーッ! 女戦闘員F28号、新たなる女戦闘員F91号を連れてまいりました」
F28号がそう言うと両開きの扉が重々しく開く。
「クククク・・・入りなさい」
偉大なるチャン・ザ・マジシャン様の声が響く。
「はい、失礼いたします。イーッ!」
「イーッ!」
三人の女戦闘員はそれぞれ敬礼して司令室に入る。
そこは広めのホールのようであり、奥の壁には栄光ある暗黒結社デライトのシンボルである髑髏のレリーフが飾られていた。
「クククク・・・新たな女戦闘員ですか。こちらへ来なさい」
レリーフの前の椅子に座っている赤と緑の服を着たピエロが彼女を差し招く。
彼こそが偉大なるチャン・ザ・マジシャン様だ。
「イーッ! 失礼します」
F91号は呼ばれるままにチャン・ザ・マジシャンのそばへ行き、すっとひざを折る。
「クククク・・・どうやら完成したようですね。自分が何者か言って見なさい」
「はい、私は栄光ある暗黒結社デライトの女戦闘員、F91号です。よろしくお願いいたします」
「クククク・・・おや? あなたは確か島岡志穂と名乗っていませんでしたかねぇ」
チャン・ザ・マジシャンは手にしたステッキでF91号の顎を持ち上げた。
赤と緑のペイントで彩られたその顔には困惑が浮かんでいる。
「チャン・ザ・マジシャン様。それはどういうことでしょうか? 私は島岡志穂などという者ではありません。女戦闘員F91号です」
まるで自分が違う存在であると言われたようでF91号は悲しかった。
島岡志穂なんて知らないし、私には関係が無い。
「おおっと、そうでしたね。どうやら間違えてしまったようですよ、この私が」
ステッキをはずし、肩をすくめるチャン・ザ・マジシャン。
その顔には邪悪な笑みがこぼれている。
「お前は女戦闘員F91号。間違いないですね?」
「はい、間違いありません。私は暗黒結社デライトの女戦闘員F91号です。」
力強くうなづく彼女。
「いいでしょう。ではわがデライトの首領様に忠誠を誓いなさい」
そう言ってチャン・ザ・マジシャンは壁のレリーフを指し示す。
「はい、私は栄光ある暗黒結社デライトの女戦闘員F91号。この身も心も首領様にお捧げいたします」
「クククク・・・結構ですよ。それではあなたは蜘蛛女の配下といたしましょう。F28号、後は任せますよ」
「イーッ! かしこまりましたチャン・ザ・マジシャン様。さあ、いらっしゃいF91号」
チャン・ザ・マジシャンの命令に従うF28号。
「はい。では失礼いたします。チャン・ザ・マジシャン様。イーッ!」
立ち上がり右手を上げて敬礼するF91号。そして振り返るとF28号に付き従った。
「クククク・・・洗脳強化服はいつもながらすばらしいですね」
去っていくF91号の後ろ姿を見つめつつチャン・ザ・マジシャンはそうつぶやいた。

いつか歩いたことがあるような気がする廊下をF91号は先輩に連れられていく。
「ふふふ・・・あなたは運がいいわよ、F91号」
「えっ? どういうことですか?」
F53号の言葉に彼女はそう尋ねる。
「蜘蛛女様は公平なお方なの。きちんと使命を果たせばきちんと評価してくださるわ」
「そうよ、毒蛾女様なんか最悪よ。いつもお気に入りだけをはべらせて気に入らない娘は作戦の捨て駒にしちゃうのよ」
「そりゃあ、私たちはいつでも暗黒結社デライトのために命など捨てるけど、捨て駒はいやよね」
F28号とF53号がにこやかに話す。
「そうなんですか? よかった」
少しホッとするF91号。彼女とて捨て駒はいやだ。
「さあ、ここよ」
改造戦士たちに当てられた一画にある一室。
そこが改造戦士たる蜘蛛女様の部屋なのだ。
「イーッ! 蜘蛛女様、入ってもよろしいですか?」
F28号が扉をノックし、声を掛ける。
「お入りなさい」
「イーッ! 失礼いたします」
聞き覚えがあるような優しい感じの声にF91号は少し戸惑う。
この声は・・・聞いたような気がするわ・・・
扉を開けるとそこは赤や黒で彩られた薄暗い部屋だった。
部屋の中央には椅子に腰掛けた蜘蛛女様と、その脇に控えているF62号の姿が目に入る。
「シュシューッ。何の用かしら?」
乗馬用のムチを手にして脚を組んで椅子に腰掛けている姿は改造戦士としての威厳に満ちている。
「イーッ! 新たに蜘蛛女様の配下に加わった新たな女戦闘員を連れてまいりました」
敬礼し膝をつく三人の女戦闘員たち。
「そう、そっちの娘がそうなのね?」
「はい、F91号でございます」
「そう。あら? ふーん。そうなの。そういうことなんだ」
蜘蛛女がうなずいているが、三人の女戦闘員は顔を見合わせる。
「いらっしゃい、F91号」
「イーッ! 失礼いたします」
立ち上がり蜘蛛女のそばへ行くF91号。
すぐさま再びひざを折って控える。
「し、志穂!」
突然声がしたことに彼女は驚いた。よく見ていなかったので気が付かなかったが、蜘蛛女様の座っているのは布を掛けられた四つん這いの男だったのだ。
「お黙り!」
ピシッと音がして蜘蛛女の手にしたムチが男の肌を叩く。
「誰が口を開いていいと言ったの? お前はただの椅子なのよ」
「ううう・・・」
彼女のことを志保と呼んだ男はやつれた顔をして彼女を見つめてきた。
何者だろう、この薄汚い男は・・・
蜘蛛女様の椅子になっているのだから黙っていればいいのに・・・
「シュシューッ。F91号。志穂という名前に心当たりは?」
「いえ、全くございません。何者なのですか、その志穂という者は? チャン・ザ・マジシャン様からも尋ねられましたが」
「し・・・志穂・・・」
彼女の答えになぜか男は涙を流す。
この男は少しおかしいのかもしれない。
「シュシューッ。そう、それならいいわ。この下衆がっ!」
すっと立ち上がると椅子となっている男のわき腹を思い切り蹴飛ばす蜘蛛女。
「ふぐぅっ」
「こいつも飽きてきたわね。連れて行きなさい」
「イーッ!かしこまりました」
F62号が男を引きずっていく。
「シュシューッ。あの男の始末はあとにしましょう。さあ、お前たち、支度をなさい」
「イーッ! かしこまりました、蜘蛛女様」
F28号とF53号が立ち上がり敬礼する。
「お前にも早速働いてもらうわよF91号。いいわね?」
「イーッ! 何なりとご命令くださいませ」
彼女は嬉しそうに敬礼した。早速組織のために働けるのだ。
「シュシューッ。いい娘ね。では行きましょうか。新たなる世界のために」
「はい、暗黒結社デライトのために」
F28号が驚いたことに、蜘蛛女はF91号の肩を抱いていた。
そして二人は新たな世界へ向かって部屋を出て行ったのだった。

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  1. 2005/10/08(土) 22:25:11|
  2. デライトもの
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これを個人所有?

グランドパワー2005年11月号の記事の一つなんですが、英国でウォー&ピースショー2005というのが開かれたそうです。
で、その記事を見て驚いたのは、各種の第二次大戦から現在に至るまでのさまざまな軍用車両が、可動状態で保存されていて、それが惜しげもなく会場を走り回っているんですよね。
もちろん連合軍側の車両が多いんですが、M3中戦車やM3軽戦車・M4やM24といった戦車やハーフトラック、それに装輪装甲車までもきちんと保存されたり、レストアされて可動する状態で維持されたりしているんですね。

何より驚くのは、そういった車両が博物館の所有ではなく、個人が趣味で所有しているんですよね。
いくら金が掛かるか想像もつかないのですが、戦車を個人で所有するなんて日本では考えられないですよね。
しかも第二次大戦の骨董品ならまだしも、つい先日退役したばかりのチーフテンやチャレンジャー1までもがすでに個人の手にあるんですよ。
もちろん発砲したりはできないようになっているんでしょうが、庭先に戦車がある風景というのもすごいものだと思います。

年に一回そういう車両に当時の軍服を着て乗り回すというのも、優雅な英国紳士のたしなみなのかもしれませんね。(笑)

先日北海道で演習場から駐屯地まで戦車を自走させたことがありましたが、そのことがニュースになり、反対運動が起こる日本じゃまず無理だろうなぁ。

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  1. 2005/10/07(金) 21:59:26|
  2. 本&マンガなど
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むちゃくちゃ驚き

昨日(10/5)一日のアクセス数が24時間で970まで行きました。
それだけSSの最終回を楽しんでくださった方々がいたようで作者としても光栄の至りです。
次も皆様に楽しんでいただけるSSを書いていきたいですね。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。m(__)m

えーと、いまさらなんですが、以前録画しておいた「ルパン三世カリオストロの城」をDVDへダビングしなおしました。
見直してみるとやっぱり名作と言われる作品だけはありますよね。
動きの一つ一つが計算されつくし、それに合わせて音楽も見事にマッチしています。
ストーリーも単純明快でわかりやすいですし、可愛いヒロインもでてきます。
人気が出る作品であるのは当然と言えましょう。

でも、私はルパン三世の作品で一番好きな作品ではありませんね。
私が一番好きなのは「ルパン対複製人間」なんですよ。
いわゆる「マモー編」ですね。

最初あの作品を見たときには、まだ若かったこともあってストーリーが良く飲み込めませんでした。
なんだか知らないけどマモーがいっぱい出てきて、不二子が連れてかれて、ロケットの先端に巨大な脳があって・・・
なんだこりゃ状態でした。

でもね、二度、三度と見直すにしたがってストーリーが実に面白いことに気が付きました。
マモーの不気味さも故西村晃さんの好演技により見事でしたし、いろいろな伏線がきちんきちんと回収されていく様はとても素晴らしいですよね。
エンディングはルパン音頭という笑わせてくれるエンディングで、これまた秀逸。
何度見返しても面白い作品だと思います。

最近のTVスペシャルはルパンらしさがなくなっている感じですね。
荒唐無稽はそれなりにいいんですが、やはり地に足のついたストーリーでルパンを活躍させて欲しいですね。
来年のスペシャルに期待しつつ今日はここまで。
それではまた。

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  1. 2005/10/06(木) 22:22:07|
  2. 映画&TVなど
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うーん・・・

長かったSSもようやく終わり、ちょっと気が抜けてしまいました。
次の作品はちょっと間を空けて、そのうち投下開始の予定です。

さて、闘姫陵辱vol8を買ってきました。
闘うヒロイン陵辱アンソロジーということで、たまにMCっぽい展開の作品が掲載されることがあるので、それを楽しみにしているのですが、やっぱりこれはというのは無かったですね。
やっぱり陵辱アンソロジーなので、無理やり陵辱されるものが多く、しかもそれでお終いというのがほとんどです。

個人的には闘うヒロインが罠に掛かったり、人質を取られて動きを封じられたところを陵辱され、さらには洗脳されて倒すべき相手の手駒になってしまったりするのが萌えなので、(なんて趣味でしょうか)そういった作品を求めているのですが、なかなか無いですね。

結局自分の読みたい作品を自分で書いているのが現状です。(笑)
やはりそういうネタは需要が少ないんでしょうかね。 [うーん・・・]の続きを読む
  1. 2005/10/05(水) 22:39:47|
  2. 本&マンガなど
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最終回です

ようやく長かったSSにケリをつけることができました。
お待ちいただき申し訳ありませんです。m(__)m
それではどうぞ。


36、
暗闇の中汀は両手両足を触手に絡まれ床に大の字にさせられてしまう。
首に絡みついた触手はその先端を鎌首のように持ち上げて汀を見下ろしていた。
「いやぁっ! いやよぉっ!」
恐怖が汀を支配する。
すでに退魔師としての勇気は失われ、陵辱を前にして怯える一人の女になっていた。
強力な妖魔はそうそう出現するものではない。
だが、ごく稀に出現した時には幾人かの退魔師が命を落とすことも珍しくはなかった。
先天的な能力が要求される退魔師は肉体的な構造の違いが影響を及ぼすのか圧倒的に女性が多い。
しかし、戦いという場においてはその女性という性別が不利に働くことが多く、妖魔に陵辱され殺される退魔師もまた多かったのだ。
汀の友人も何人かは連絡が取れなくなっている。
そのうちの何割かは人知れず妖魔との戦いに敗れ命を落としているのだろう。
「いやぁっ」
汀は必死になって体を動かす。
しかし、二重にも三重にも絡みつかれた体はわずかに動かすことができるぐらいで、振りほどくことはできなかった。

ようやく動きを止めたタイマシ。
“それ”の触手によってタイマシは絡め取られ、床の上でもがくだけとなった。
ブキもまた動きを止め、床の上に転がっている。
タイマシと切り離されたブキは動くことはできない。
それは今までの戦いでわかっていることだ。
ではタイマシと他の人間との違いは何か?
それを確かめるべく“それ”は触手を動かしていった。

汀を見下ろしている黒くグロテスクな触手の先端。
黒人のペニスを間近で見るとこんな感じなのかもしれない。
汀だって処女ではない。
数人と性交渉を持った事だってあるし、男性のモノを間近で見たことだってある。
だが、それだからこそこの触手の先端はペニスと見紛うほど似ていると思うのかもしれなかった。
手は動かせない。
右手はともかく左手もがっちりと触手に絡みつかれて妖刀を振るうどころかピクリとも動かせない。
さらに妖刀そのものが手から離れてしまっていて、拾うことさえできないのだ。
イヤだ・・・
イヤだイヤだ・・・
こんなところで死ぬのはイヤだ・・・
死にたくない・・・
死にたくないよ・・・
汀は触手から顔をそむける。
できる精一杯の抵抗だ。
だが・・・
それにしても・・・
なぜこんな時に体が疼くのだろう・・・

触手の先端はゆっくりと汀の喉元に忍び寄る。
すでにズタズタに切り裂かれあちこちから白い肌を露出させてはいるものの、汀の体はいまだ黒の革ツナギによって保護されていた。
その革ツナギのハイネックの首元にあるファスナーを触手は器用に下ろしていく。
ジジジジジという音がまるで時が止まってしまったかのような倉庫内に響いていく。
ファスナーはふくよかな胸を下り、滑らかなお腹を通り過ぎ、股間のところで動きを止める。
白いショーツが姿を現し、汀の大事なところを精一杯保護するべく抵抗しているようだ。
「やめて・・・いやぁ・・・」
汀は目を閉じていやいやと首を振る。
だが、そんなことはお構い無しに触手は数を増し、革ツナギを両側へ開くとブラジャーの中央を持ち上げて引きちぎる。
ポロンという形容がふさわしい感じで汀の形良い両の乳房が晒された。
ああ・・・そんな・・・
身動きできない自分に対する悔しさと魔物に対する憎しみとが汀の唇を噛み締めさせる。
えっ?
驚いたことに触手が両胸に優しく巻きつき、柔らかくこね始めたのだ。
う、嘘・・・
柔らかく揉みしだかれる胸は汀に女としての快感を送り込んでくる。
最近味わっていない女としての喜び。
それを今この魔物は与えてくれようというのか?
あ・・・あ・・・
汀の体が快楽を求め始める。
両胸を揉まれ、さらに他の触手が首筋を優しく撫でさする。
「は・・・あ・・・」
なまめかしい吐息が汀の口から漏れる。
晒された白いショーツにじんわりと染みが浮き始めた。
ど・・・どうして?
汀は自分の体の反応の速さに驚く。
ちょっと胸を揉まれ首筋を撫でられたぐらいでこんな・・・
「ま、まさか・・・」
汀が目を見開く。
体液だ・・・
魔物の体液が気化しそれを吸い込んでしまった私は・・・
最初からこれは罠?
私を嬲るためにここへ?
バカな・・・
汀は悔しかった。
このような状況に陥って手も足も出ない自分が呪わしかった。

「ひあっ」
汀の体に電気が走る。
触手がピンと立った乳首の先端を突付いてきたのだ。
ああ・・・
自然と腰が浮く。
もうショーツには恥ずかしい染みが広がっていることだろう。
でも構わない・・・
欲しかった・・・
そこに熱くたぎるモノを入れて欲しかった。
体が快感を欲している。
刺激を欲しているのだ。
ああ・・・ああん・・・
汀は腰を上げて、浅ましくもの欲しそうに腰を揺らし始める。
欲しい・・・欲しいの・・・
触手が焦らすようにおへそのあたりを触っている。
「ああん・・・ああん・・・お願い・・・お願い・・・」
何がどうなっているのかわからない・・・
どうして自分がこんなふうにお願いしているのかもわからない・・・
両手も両足も動かせない。
もどかしくて気が狂いそうだ・・・
いや、もう狂っているのかも知れない・・・
「はあん・・・あはん・・・」
構わない・・・
狂っていても構わない・・・
太いのが・・・
太くてたくましいモノが・・・
欲しかった。
「頂戴! お願いだから私に頂戴!」
汀は声を限りに叫んでいた。

変わらない。
どこも変わりはしない。
タイマシはやはり人間だ。
恐るべきはタイマシではなくブキの方なのか?
ならば恐れることはない。
ブキはタイマシを離れて活動できない。
タイマシも今までの人間と同じように精気を啜りしもべに変えてやればいい。
ずいぶんとしもべを失ってしまった。
このタイマシをしもべとすればいくらかは埋め合わせになるだろう。
すでにタイマシは“それ”の体液によって酔いしれている。
後はいつもどおり快楽を送り込みながら体組織を変化させてやればよい。

白いショーツはもう汀の愛液でグチョグチョに濡れていた。
待ちきれないように腰を振りながら、汀は触手を求めもどかしい思いをしていた。
触手は胸を揉み、おへそや首筋を撫でながら汀の官能を高めていく。
「はあん・・・はあぁん・・・」
口からは涎が一筋流れている。
浅ましいメスの顔がそこにはあった。
やがて“それ”は触手を使って白いショーツを引きちぎる。
それを汀は喜びを持って受け止めていた。
ついに待ち焦がれたモノを受け取れるのだ。
「来てぇ・・・私の内膣に来てぇ・・・早くぅ」
もう何も考えられなかった。
今までの事など思い出しもしなかった。
自分が何者なのか、相手がどんな存在なのか、そんなことはもうどうでもよかった。
今の汀はただ浅ましくモノを欲しがるメスだった。
触手の鎌首が持ち上がる。
使い込まれていない汀の秘部。
ピンク色のひだが愛液に輝き、触手を求め蠢いている。
ぷっくりと膨れたクリトリスはいまや遅しとその瞬間を待ち望んでいた。
触手は一瞬躊躇うように入り口で止まった後、ゆっくりとその身を中に沈めて行く。
「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
汀の喜びの声が響く。
両手両足を広げ、全身で触手を迎え入れるように体で受け止める。
ジュプ・・・ジュプ・・・
触手がその身を潜り込ませる。
初めはゆっくり。
そして小刻みに出入りをして汀の体を燃え立たせる。
「ひゃん・・・ひゃんひゃん・・・」
体を震わせて歓喜に浸る汀の体。
「ひゃぁん・・・いい・・・いいわぁ・・・感じるぅ・・・感じるのぉ・・・」
ガクガクと腰を振り触手の動きにシンクロさせる。
「あ、もぶっ・・・もむっ・・・」
大きく開けていた口にも触手が潜り込んでくる。
息が苦しくなるがそんなことは構わない。
のどの奥まで犯されることこそ汀の喜びだったのだ。
ああ・・・気持ちいい・・・気持ちいいわ・・・
全てをさらけ出してむさぼるように快楽を全身で受け取って行く。
のどの奥をゴンゴンと突いてくる痛みさえも心地よかった。
どろっとしたものがのどの奥へ流れ込む。
痛みは薄れ気持ちよさだけがどんどん膨らんで行く。
ほんのちょっとした刺激だけで汀の体は弾け飛んでしまうだろう。
体の奥へ突き入れてくる触手はひだを刺激して気持ちよすぎる。
イく・・・イッちやう・・・イッちやうの・・・
汀はその瞬間の訪れを待ち望み、快楽の海の中で目を開けて触手を見る。

「!」
凍りついた。
息が止まった。
まるで冷水を浴びせられたようだった。
汀の目に入ってきたのは快楽を与え汀を篭絡しようとしている触手ではなく、壁際でぐったりと横たわっている弘子の姿だった。
その姿はとてもか弱く、まるで巣から落ちた雛鳥を思わせる。
守らなければならない彼女を放っておいて私は何をしているのか?
ここで私がこいつに屈したら彼女はどうなるの?
このまま快楽の海に流されていいの?
汀は思いっきり口に含んでいるものを噛んだ。
どろっとした液体が口の中であふれ、むせ返るのも構わずに汀は噛んだ。
ピクピクとのどの奥で触手が暴れている。
歯をのこぎりのように左右に動かしながら汀は噛む。
ブチッという感触とともに触手は噛み切れ、のどの奥へ滑り落ちる。
口の中の気色悪い液体を唾と一緒に吐き出すと、汀は何とかしようと再びもがき始める。
股間を刺激する触手の与えてくる官能の炎を何とか理性で防ぎながら汀は考える。
何をすればいいのか・・・
どうすればこの状態を脱出できるのか・・・
両手両足も動かせないし、膣内には触手が入り込んでともすれば快楽に負けてしまいそうになる。
汀は周囲を見回す。
この状況を改善できるのならば何でもいい。
何か無いか・・・
そのとき汀の目にもう一つのものが映る。
床に転がっている妖刀。
今は柄だけとなっているが汀はそちらへ手を伸ばす。
再度口を目掛けて延びてくる触手を唇を噛み締めながらかわし、何とか妖刀へと左手を伸ばして行く。
もう少し・・・あと少し・・・
下腹部はすでに自分の物ではないように快楽に打ち震えている。
触手の動きがとても気持ちいい。
意識が飛んでイッちゃいそうになる。
あと少し・・・
汀の左手が触手に逆らい妖刀の柄に少しずつ近づいて行く。
あと三センチ・・・二センチ・・・一センチ・・・五ミリ・・・一ミリ・・・
中指の指先が柄に届く。
汀は指先で柄を転がし、手元に引き寄せるとしっかりと掴み取る。
ふう・・・
汀の目から涙がこぼれる。
これで・・・これで終わりにするのだ・・・
全てを終わりに・・・
汀は振り返る。
壁際の弘子は先ほどから変わらずに横たわっている。
胸のかすかな動きが彼女が死んでいないことを物語っている。
弘子・・・ごめんね・・・
汀は心の中で謝る。
言葉にしようと口を開ければ触手が入り込んできてしまう。
だから声を出すことはできない。
弘子ごめんね・・・私・・・あなたを道連れにしちゃう・・・
でも・・・
でもあなただけは触手に犯させはしないわ・・・
綺麗なままでいさせてあげる・・・
汀の涙が床に広がる。
弘子・・・
汀は妖刀へ向かって念を凝らした。
瞬間、世界が反転した。

意識がゆっくりと浮かび上がる。
薄く目を開ける。
暗い・・・
薄暗い部屋だ・・・
ここは・・・
ここはいったい?
弘子はゆっくりと起き上がった。
体がぎしぎし言う。
私は・・・
そうだ・・・
私は由紀美ちゃんに連れてこられて・・・
するとここは?
周囲を見渡す弘子。
暗くてよく見えない・・・
弘子は立ち上がるとうんと伸びをする。
ずっと固い床に寝ていたせいか体のあちこちが痛い。
体を少し動かすとやっと人心地が付く。
それから改めて室内を見渡した。
そして・・・
床に倒れている汀が居た。
「汀さん!」
弘子は駆け寄った。

   ******

花束とリンゴを抱えて病室へ向かう弘子。
中央病院に汀は収容されていた。
原因不明の高熱と衰弱。
意識不明の重態だった。
医者にも良くわからない。
あちこちの傷はふさがっているものの、衰弱が激しいのだ。
いったい何があったのかいろいろ聞かれたものの、弘子にも説明できるはずはなかった。
学園でも何人もの生徒が衰弱している状態だったが、時期外れのインフルエンザの集団感染の疑いがあるということで一週間の学校閉鎖になっていた。
警察も医療関係者も首を傾げるものの、魔物が学園を支配していたなどと言っても信じてはもらえないだろう。
全ては終わったのだ。
汀の倒れていた近くには黒々とした燃えカスのような塊があるだけだった。
弘子にはそれが悪夢の元凶だったということが何となくわかったが、口をつぐんでいた。
どうせ言っても信じてはもらえない。

「こんにちは。毎日お見舞いに来ているのね」
白衣を纏った一人の看護師が階段の途中で弘子に声をかけてくる。
「こんにちは、山岸さん。今日まで学校もお休みですから」
にこやかに答える弘子。
山岸聖歌(やまぎし せいか)は汀の担当の看護師さんだ。
まだ若くてちょっとドジなところがあるらしく、いつも看護師長さんに叱られるらしい。
でもその笑顔は一級品だと弘子は思う。
「早く行ってあげなさい、破妖さん気が付いたわよ」
「えっ?」
弘子は持っていた袋を落とすところだった。
「ほ、本当ですか?」
「ええ、先ほど先生の診察も終わったわ。衰弱さえ回復すれば大丈夫だそうよ」
山岸看護師がにこやかに微笑む。
この笑顔こそ患者にとっては天使の笑顔だろう。
「は、はい。ありがとうございます」
弘子は慌ててつんのめるように階段を上って行き、病室へ向かう。
汀の病室は個室で奥にある。
走り出したくなるのを必死でこらえて弘子は廊下を進んで行く。
病室の前で弘子は一旦立ち止まると息を整えてノックした。
「はい・・・どうぞ」
汀の声が聞こえてくる。
弘子はすぐに扉を開けた。

汀はベッドに上半身を起こしていた。
ピンクのパジャマが妙に可愛い。
ぼろぼろになって倒れていた汀が病院に担ぎ込まれた後、弘子が買ってきて渡したものだ。
「弘子ちゃん・・・無事だったのね・・・」
「汀さんこそ・・・」
その後は言葉が出てこなくなる。
弘子の頬には後から後から涙が伝ってくるのだ。
「汀さん・・・よかった・・・本当によかった・・・」
弘子はベッドのところへ行くとへたり込んで泣き出してしまった。
「汀さん・・・私・・・私・・・」
ベッドの突っ伏して泣きじゃくる弘子の肩を汀がそっと抱いてやる。
「弘子ちゃん・・・終わった・・・終わったのよ・・・」
か弱く泣きじゃくる弘子を汀は優しく見つめていた。
「汀さん・・・」
涙を拭って弘子が汀を見上げる。
「もう終わったのよ・・・あとは私が・・・力を蓄えるだけ・・・」
くすっと笑みを浮かべる汀。
「そうですね。今リンゴ剥いてきます」
弘子は何か照れくさくなってリンゴの入った袋を手に病室を出る。
後に残った汀はその後ろ姿を見送った。

「ねえ酒本さん、これからみんなでマックでお茶しない?」
「ごめんね、今日は中央病院へ行かなくちゃ」
友人の誘いをあっさりと断ってしまう弘子。
「病院? 何しに行くの?」
友人は怪訝そうな顔をする。
一週間の休みで学生たちはすっかり体力も回復していた。
いまさら病院なんて行く必要がないはずなのだ。
「お世話になった人が入院しているんだもん。お見舞いに行かなきゃ」
「あ、そうなんだ。大変だね」
所詮は人事でしかない友人はあっさりしている。
彼女の命がその人によって救われたなどとは露ほども思ってはいないのだ。
「別に大変じゃないよ。でも土日ちょっと顔を出せなかったからね。今日は行かなきゃ。それじゃね」
弘子は手を振って友人と別れるとバス停へ向かう。

自動ドアが開き病院内に入って行く弘子。
いつものように受付を通り階段へ向かう。
今日は何となく静かな感じだ。
月曜日なのに外来が少ないのかもしれない。
階段を上がるといつもの廊下を山岸看護師が歩いてくる。
でも何となくぼうっとした感じで顔も少し赤い。
風邪でも引いたのだろうか・・・
「こんにちは」
「あら酒本さん、いらっしゃい。汀様がお待ちかねよ」
「えっ?」
弘子は聞き返した。
今なんて言ったの?
確か汀様?
「うふふ・・・さあ、早く行ってらっしゃい。ずっとお待ちなのよ」
そう言うと山岸さんはふらふらと廊下を歩いて行ってしまう。
弘子は何かとてもいやな予感がした・・・
そう・・・まだ終わってはいないのではないのだろうか・・・
だとしたら汀さんに早く良くなってもらわないといけない。
見舞いに来るぐらいしかできないものの、弘子は汀に早く良くなってもらうようにいつも果物は欠かさない。
今日は定番のバナナを持ってきている。
でも、喜んでくれるだろうか。
そんなことを思いながら弘子は病室の扉をノックした。

「こんにちは弘子。ちょうど食事を終えたところなのよ」
ベッドに上半身を起こしている汀。
弘子は少しホッとした。
今日は顔色もずいぶんよくなっている。
このままなら後数日で退院できるかもしれない。
「えっ? そうなんですか? でももうすぐ夕方ですしお昼遅くなったんですか?」
「うふふ・・・違うわ」
汀はそう言って妖しく微笑んだ。
「今日はバナナを持ってきたので食べてくださいね」
弘子が袋をベッドの脇に置く。
「そんなものはいらないわ」
「えっ?」
「うふふ・・・可愛いわ・・・弘子。私が欲しいのはあなた」
汀はゆっくりと人差し指に舌を這わせる。
その爪は黒く鋭く、舌もまた黒い色をしていた。
「あ・・・そ・・・そんな・・・」
弘子はぞっとした。
魔物は滅びたのではなかったのか?
「うふふ・・・もっともっと力をつけなきゃね・・・さあ、弘子、こちらへいらっしゃい」
「あ・・・ああ・・・」
汀に掛けられている布団が盛り上がり、しゅるしゅるという音がして触手が顔を出す。
それはあの体育倉庫で見たものと同じだった。
「い、いやぁぁぁぁぁっ!」
悲鳴を上げて扉を開ける弘子。
だがそこには山岸看護師が立っていた。
「あ、ああ・・・」
「だめですよ酒本さん。汀様から逃げたりしちゃ」
山岸看護師の白衣の下から触手がゆっくりと鎌首をもたげる。
「あ、あなたも・・・」
「うふふ・・・彼女はすでにわたしの可愛いしもべなの。今日もたっぷりと精気を啜ってきてくれたのよ」
背後で汀の艶めかしい声がする。
「ああん・・・当然ですわ。私は汀様の忠実なしもべですもの」
うっとりとした表情で汀に答える山岸聖歌。
弘子は目の前が真っ暗になったような気がした。
「心配はいらないわ、弘子。あなたは可愛い私の大事な人。念入りに妖魔に生まれ変わらせてあげる」
弘子の目の前で病室の扉はゆっくりと閉じていった。

「うふふふ・・・いかがですか汀様。この女をしもべにすればいろいろと便利だと思いますけど」
黒革のボンデージに身を包み、ハイヒールのブーツとロンググローブを身に着けて院長室の椅子に座っている汀に妖艶な笑みを浮かべた弘子が言う。
弘子も真っ赤なコルセットに同じような赤いブーツとグローブを嵌めている。
妖艶さを漂わせる汀と違い、少し幼さを残す弘子にはちょっとアンバランスだったが、それがかえって可愛く見せている。
弘子の前には裸で四つん這いにさせられた女が一人いた。
その股間とお尻には弘子から伸びた触手が差し込まれ、与えられる快楽にうっとりと涎をたらしている。
「うふふ・・・弘子に任せるわ。好きになさい」
妖艶で残虐な妖魔に変化した弘子を頼もしげに汀は見つめる。
「そうですか? じゃあ、私のしもべにしちゃいますね。市長の秘書ですから使えそうですし」
冷たい笑みを浮かべて触手を動かし、さらに口にまで突っ込んでいく。
「むぐぐぐ・・・」
「あはははは・・・気持ちいいでしょ? お前は生まれ変わるのよ。私に仕える妖魔になるの。嬉しいでしょ?」
弘子にもてあそばれながらその女はじょじょに身も心も変えられていくのだ。
「汀様、例の件はいかがなさいますか?」
汀のそばにいたもう一人の女性が声をかける。
白衣を着込んでいるものの、その下からはうねうねと触手が蠢いている。
汀によってこの病院の院長となった山岸聖歌である。
「ああ、派遣されてくる退魔師ね? ご丁寧に私に連絡してくるんだものね」
くすくすと手の甲を口元に当てて笑う汀。
「歓迎してあげましょう。この私がたっぷりとね。うふふふ・・・」
汀の笑いが部屋に響いた。


これにて終了です。
どこかで見たような最後になってしまいました。
パクリと思われても仕方ないかな。

とりあえずここまでお付き合いありがとうございました。
また別の作品をいずれ投下いたしますので、そのときはまたよろしくお願いいたしますね。

[最終回です]の続きを読む
  1. 2005/10/04(火) 19:12:04|
  2. 退魔師
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剣の舞

いよいよ最後の戦いです。
私自身、今日は書いていてわくわくものでした。
ご一緒に楽しんでいただければ幸いです。

35、
闇の中に目を凝らしてもその形はわからない。
だが“それ”は確実にそこに居て汀を狙っているのだ。
闇に目が慣れても近くを這いずる触手しか見えてこない。
それほどここは闇が深かった。
先ほどまでうっすらと差し込んでいた光も奥まではまったく届かないのだ。
「いきなりとはご挨拶ね」
汀が妖刀を構えあとずさる。
せめて背後を取られないようにしなければならない。
入り口の扉に背が触れたところで汀は態勢を整えた。
「で、あなたはしゃべれるのかしらね?」
汀の頬を一筋の汗が流れる。
ここに満ちている妖気はまさに圧倒的だった。
妖気の強さはそのまま相手の強さに結びつく。
汀は唾を飲み込んだ。

そこに居たのは何の変哲もない“人間”だった。
今まで何度となく精気を啜り、利用してきた存在。
それらとなんら変わるところは無いように“それ”には思えた。
唯一違いがあるとすれば、それは彼女が手に持っているもの。
何か強い力を持ち“それ”をも容赦なくねじ伏せてくるようなもの。
それを彼女は使役できるようだった。
ブキというものだろうか・・・
タイマシとはブキを使う人間のことだろうか・・・
確かにブキは強力そうだ。
だが、それを持つタイマシは人間と同じだとするともろい存在だ。
確認しなければならない。
タイマシが主なのか、ブキが主なのか・・・
“それ”は触手を再び伸ばしていった。

来るっ!
汀は左手で妖刀を振るい、飛び掛ってくる何本もの触手を切り裂いていく。
毒々しいどす黒い液体が切り口から飛び散り、汀の体を汚して行く。
噎せかえるような濃密な臭い。
まるで発情したメスのような濃厚な臭いがあたりに満ちていく。
いつこういうことがあるかわからないからと言われ、右手でも左手でも妖刀を振るえるように訓練してあったのが役に立っていた。
もう右手はほとんど動かない。
体内の血も足りない。
動くたびに動悸が激しく感じてくる。
長期の戦いはできっこない。
勝機は一瞬だろう。
それにしても奴は一体何本の触手を持っているのか?
真っ黒いゴムホースのような太い触手。
その先端はおぞましくも男の股間のものにそっくり。
鈴口からはいつ先走りの液が垂れてきても不思議では無さそう・・・
しごけばそのまま真っ白いどろっとした液体を吐き出してきそうな形状をそれはしていた。
汀が妖刀を振るうたびに触手が途中から切り取られ、ビチビチとのたうちながら床に転がる。
それはさながらバイブレーターが床の上で振動しているようにも見えてしまう。
「うふっ・・・うふふふ・・・」
汀は自分が何か滑稽に思えてきた。
幾人もの男性に囲まれ、そのたくましいペニスを何本も目の当たりにし、それを無慈悲にも切り落として行く魔女。
今の汀はその魔女なのかもしれない。
「あは・・・あははは・・・・」
汀は笑い声を上げながら触手との剣の舞を舞っていた。

イタミ・・・
これがイタミというものだろうか・・・
幾本もの触手がタイマシに向かって行き、ブキによって切り裂かれていく。
久しく感じたことのなかった感じ。
イタミ・・・
触手を伸ばす。
タイマシが動きブキが切り裂く。
イタイ・・・
イタイイタイ・・・
切り裂かれた触手は自らの内に引っ込めれば元に戻る。
だが、このイタミという感覚は不快この上ない。
触手の数を増し、タイマシの上からも下からも動かしてみる。
だが、タイマシはくるくるとブキをひらめかせ近づく触手を切り取っていく。
イタイイタイ・・・
イタイイタイイタイ・・・
切られた触手はすぐに引っ込めて新たな触手を伸ばす。
二本同時でだめなら三本。
三本同時でだめなら四本。
四本同時でだめなら五本。
それはいつ果てるとも知れない闇の中でのダンスの競演だった。

「はあ・・・はあ・・・」
息が切れてくる。
体が重くなってくる。
先ほどまで感じていた滑稽さは失せ、じょじょに絶望感がつのってくる。
触手は一向に数を減らさない。
それどころかますます数が増えている。
本体がある辺りは見当が付いても、そこへ行くことが出来ない。
背中を壁に押し付かせて妖刀を振るうのが精一杯だ。
体からかなり離れたところで切り裂いていた触手はいまや体の直前で切り落としている。
このままではいずれ体に接触されてしまうだろう・・・
どうしたらいい?
汀は唇を噛む。

周囲から群がってくる触手はすでに汀の処理能力を超えていた。
「キャッ」
足元を襲った触手が右足に絡みつく。
そのまま引っ張られた汀は思い切り尻餅をつくようにしてへたり込んだ。
「しまった!」
汀が気を取り直したときには触手は汀の左腕にも絡みつき、動きを止められてしまう。
ヤバ・・・これはまずい・・・
汀は何とか逃れようと体を動かそうとするが、すぐに触手が幾本も絡みついてきて両手両足そして首にも巻きついてしまう。
「あうっ・・・は、離せ!」
じたばたともがいてみるものの絡みついた触手を振りほどくことができない。
汀は血の気が引いていくのを感じていた。
「だ、誰か助けてー!」
それは汀の心が折れた瞬間だった。

[剣の舞]の続きを読む
  1. 2005/10/03(月) 22:43:04|
  2. 退魔師
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戦闘開始

ほんのちょっとですがSSを投下します。
明日にはもう少しまとまった量を投下できると思います。

34、
ガラガラガラ・・・
重々しい音を立てて扉が開く。
ひんやりとした冷気とも言うべきものが汀の足元に流れ出した。
ぼんやりと薄暗い倉庫内。
跳び箱やマット、ボールの入った籠などが所狭しと置かれている・・・はずだった。
今、そこには何も無い。
暗い室内はがら空きだった。
ただ、壁際にうなだれた形で制服を着た少女が一人もたれかかっているだけだった。
「弘子!」
汀が駆け寄る。
「弘子」
跪いて抱え起こすが反応がない。
どうやら眠らされているようだ。
何かされた様子は・・・ない。
「ふう・・・」
思わず汀はホッとする。
もっとも由紀美の例もあるので油断はできないが、この短時間で同化融合できるほどとは思えなかった。
「!」
背後で開いていた扉がガラガラと音を立て閉まる。
汀の周囲は一瞬にして闇に包まれた。
「クッ!」
左手の妖刀を握りなおして身構える。
闇に目が慣れるまで不用意には動けない。
それに・・・先ほどまで感じなかった魔物の気配が強烈に膨らんでいる。
薄暗い倉庫内が闇に包まれていく。
汀は目を閉じ気配を探ると同時に闇に目を慣らす。
「ハッ!」
足元をかすめる一筋の触手。
その気配を察した汀は素早くジャンプして飛び退る。
最後の戦いが始まったのだ。

[戦闘開始]の続きを読む
  1. 2005/10/02(日) 22:44:44|
  2. 退魔師
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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