こんばんは。
なかなか思うように時間を作れないものですね。(笑)
もう少し書きたかったんですが、今日はここまでです。
少しですが、ご勘弁を。m(__)m
33、
階段を下りた汀は、由紀美がてっきり教室の方へ向かうものと思っていたが、彼女が体育館の方へ歩くのを見て苦笑した。
なるほど・・・ご主人様は体育館か・・・
それにしても手駒たちを何人も倒してきた退魔師をやすやすと迎え入れるとはどういうつもりだろうか。
やけっぱちになって最後の決戦を挑んでくるつもりか?
それとも和を請うて、この世界から離脱するつもりか?
まあ、どちらにしても会わなければならない。
弘子が人質となっているのは問題だが、最悪の場合は彼女を見殺しにしてでも魔物を浄化しなくてはならない。
もちろんそれは最後の手段であり、弘子を確保するのが最優先だ。
それにしても・・・
初めての所を訪問するのに、この格好はどうだろう・・・
汀はあちこちを切り裂かれ、黒革のツナギから白い肌が覗く自分の姿を見下ろして苦笑せざるを得ない。
ドレスとは言わないが、もう少し気の利いた格好で訪問しないと失礼というものだろう。
「まあ、今回は許してもらいましょう」
「えっ? 何か言いました?」
由紀美が汀の方へ振り向く。
「この格好よ。せっかくあなたのご主人様に会うのにズタボロだわ」
「気にしないでいいわ。その方がご主人様もお喜びになるでしょう」
由紀美の顔に邪悪な笑みが浮かぶ。
「へえ、あなたのご主人様はけっこういやらしいのね」
「んふふ・・・すぐにわかります」
そう言って由紀美は再び歩みを進める。
汀はほとんど動かなくなった右腕を押さえその後を歩いていった。
“それ”は気配を感じていた。
間もなくここにタイマシが来る。
せっかく作り上げたしもべたちをいくつも除去したタイマシだ。
タイマシとは何なのか?
精気を補充し力を蓄えた今、この世界に“それ”にとっての脅威は存在しない。
存在しないはずだった。
この世界に存在するのは捕食されるものたち。
“それ”の生存を脅かしはしないはずだ。
だが、どの個体の情報を調べてもタイマシという存在に該当するものはいなかった。
よくわからない存在だが、それは確実に“それ”に仇なすものであるのは間違いない。
しもべたちで排除できなかったタイマシという存在を“それ”は知っておきたかった。
体育館ではうつろな目をした少女たちが体操服姿で何をするでもなく座っているだけだった。
ジャージ姿の男性教師も呆けたように出席簿を片手にぶつぶつとつぶやいている。
それは異様で不気味な光景だった。
「こっちよ」
由紀美はそこを通り抜け、裏手に繋がる扉を開く。
そこからは倉庫のような建物が見えていた。
「あれは?」
「体育用具倉庫。ご主人様はあそこにいらっしゃるわ」
汀の質問に答える由紀美。
「そう・・・あそこに・・・」
汀は左手の妖刀を確かめる。
柄だけの姿だが、気を込めればすぐにでも刀身を現すだろう。
「さあ、いらっしゃ・・・」
由紀美は突然襲った胸の痛みに言葉が詰まった。
見ると何か尖ったものが胸から突き出ている。
「悪いわね。だますようで気が引けるけど、あなたをそのままにしてあそこへ行くわけにはいかないわ」
汀が左手の妖刀を引き抜く。
「が・・・ぐふっ・・・」
「魔物が退魔師に後ろを見せるべきではないわよ」
汀はそのまま左手の妖刀を一閃させた。
ごろんと音がして由紀美の首がころがる。
「ふう・・・」
汀は呪文を唱え、由紀美の体を浄化する。
青白い炎が上がり、由紀美の頭部と胴体は燃えていった。
「奴はあなたを捨て駒にしたのよ・・・私を連れてくるためにね・・・」
汀は体育用具倉庫の扉をにらみつけると、妖刀を携えてその扉に向かった。
[扉の前で・・・]の続きを読む
- 2005/09/27(火) 22:12:11|
- 退魔師
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0