暑いですねぇ・・・
私の住む地域はそれほど暑さの厳しい地域ではないはずなのに、今年はいつもより暑い気がします。
夜寝ていても暑くて寝苦しく、目を覚ましてしまうこともしばしば。
おかげで寝不足がたたって体力が落ち気味です。
まあ、もう少ししたらまた寒い季節がやってきちゃうんですけどね。
それまでの辛抱ですね。
さて、いつものSSを投下します。
今日はどうにか書けたので、お楽しみいただければ幸いです。
20、
「あ・・・」
「おっと!」
通りへ出て角を曲がったところで弘子はいきなり人にぶつかってしまった。
「ごめんなさい」
無意識的に頭を下げて通り過ぎようとする弘子。
「待って!」
「えっ?」
急に声を掛けられて弘子は立ち止まる。
今までぶつかった相手が男か女かもわかっていなかったが、振り返るとそこには黒革のツナギを見事に着こなしたスタイルのよい黒髪の女性が立っていた。
「何か?」
弘子は何か文句を言われるのかと思ったが、相手の口から出たのは意外な言葉だった。
「あなた・・・そのままだと・・・死ぬわよ」
「え・・・?」
「あなたは今思考能力を奪われているわ。そのままだと何も考えられなくなって死ぬことになるわ」
弘子は驚いた。
確かに最近何も考えたくないし、何も考えられなくなっている。
学校へ行っても授業を受けている記憶すらない時があるのだ。
最初は疲れているのかとも思ったが、最近ではそんなものだろうと思い気にならなくなっていた。
「ちょっと来なさい」
革ツナギの女性は弘子を呼び寄せる。
何も考えられないまま弘子はその言葉に従った。
女性は弘子をそばに呼び寄せると、印を組み破魔の言葉をつぶやく。
ぽうっとその手が光ると弘子の頭の中の靄がすうっと消えていった。
「あ・・・」
「うふふ・・・どうかしら?」
彼女の言葉を聴くまでもなく、弘子は全てをはっきり認識していた。
学園の中で何かが起こっており、いく人かの姿が消えてしまったことも・・・
そう・・・彼女の親友の由紀美も最近は様子が変わってしまって、妖しい笑みを浮かべながら後輩を誘っているのを見たことがあった。
「あ・・・ああ・・・あああああ・・・い、いやぁぁぁぁぁ」
弘子は頭を抱えてうずくまる。
「ちょ、ちょっと、大丈夫? しっかりして」
心配してくれる声を余所に弘子は頭を振り続けた。
「怖い・・・怖いよぉ・・・怖いよぉ・・・」
「だ、大丈夫。大丈夫だから」
そっと優しく弘子は抱きしめられる。
弘子はしばらくすがり付いて泣き続けるしかできなかった。
しばらくして落ち着きを見せた弘子を彼女はそっと解放する。
「どうやら落ち着いたようね。ごめんね、自己紹介が遅れて。私は破妖汀。退魔師をやっているわ」
「破妖さん? 退魔師なんですか? 私は酒本弘子です」
「そうか、よろしくね酒本さん」
「はい、ありがとうございました破妖さん」
弘子はぺこりと頭を下げた。
「早速なんだけど、どうしてそんなことになったのか教えてくれない? あなた、あの白鳳学園の学生さんでしょ? あの学園で今何が起こっているの?」
「わからない・・・わからないんです。でも、何かが起こっているんです。何人もの人がいなくなっているのに誰も変に思わないなんて・・・」
弘子は首を振る。
「そう・・・やっぱり行って調べてみるしかないわね・・・」
汀は決意した。
白鳳学園へ乗り込み、学園に巣くう魔を打ち払うのだ。
「わかったわ。あなたは今日は帰りなさい」
「いやです」
弘子はきっぱりと断る。
「へ?」
思わず目が点になる汀。
この娘は危険がわかっていないのだろうか。
「が、学校は危険なのよ」
「わかっています。でも・・・何かお手伝いできればと思って・・・」
「お手伝いって言っても・・・」
汀は渋い表情を浮かべた。
この娘にはこの娘なりの思いがあるのだろうが、危険には違いない。
「破妖さん私の学校は初めてですよね? どこに何があるかわかりますか?」
「ウッ・・・」
「不案内なところで何かあったら困るじゃないですか」
「それは・・・そうだけどね・・・」
弘子は引き下がらない様子だ。
「だから・・・連れて行ってください。足手まといなら見捨てられても構いません」
しっかりと汀を見つめる目には決意がみなぎっていた。
「ふう・・・まずったなぁ・・・声をかける相手を間違ったか」
汀も説得をあきらめた。
「いい、何があっても私のそばから離れないでね」
「はい、破妖さん」
弘子がうなずく。
「汀でいいわ。よろしくね酒本さん」
「あ、それなら私のことも弘子って呼んでください」
「わかったわ、弘子」
汀はうなずき、手を差し出す。
弘子はしっかりと受け取って握手をした。
- 2005/08/13(土) 20:00:42|
- 退魔師
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