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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

S・S・Bに栄光あれ!

セミ女さん完結です。
終わりましたー。

当初二回ぐらいと思っていたのが、書くごとに伸び伸びになってしまいました。
ほんとに自分でも驚きでした。

でも書き終えて満足です。
うまくg-thanさんのイラストに繋がりましたでしょうか・・・
この場を借りてg-thanさんに感謝を述べさせていただきます。
ありがとうございました。

それと、メッセでアイデアをいろいろと提示していただいたEnneさんにもこの場を借りてお礼申し上げます。
EnneさんがいなければこのSSはできなかったと言っても過言ではありません。
どうもありがとうございました。

最後に、このSSはフィクションです。
それはご理解いただければと思います。

7、
ふらふらと通りを歩いている紀代美。
周囲の喧騒も、人通りの多さもただ彼女の心をいらいらさせる。
はあ・・・はあ・・・
どうして・・・
どうしてこんなに・・・
どうしてこんなに人間が多いのかしら・・・
意味無いのに・・・
こんなに生きている意味無いのに・・・
邪魔臭い・・・
わずらわしい・・・
ウザったい・・・・
殺しちゃいたい・・・
思いっきり殺しちゃいたいわ・・・
だめよ・・・
殺すなんていけない・・・
どうして?
どうしていけないの?
人間はすぐに他の生き物を殺すじゃない・・・
食事のために殺し・・・
害になると言っては殺し・・・
危険だからと殺し・・・
邪魔になると言っては殺し・・・
気持ち悪いという理由だけで昆虫なんかも殺し・・・
果ては無意識にすら殺しているじゃない・・・
だったら・・・
だったら私が殺してなぜいけないの?
下等な生き物を殺してなぜいけないの?
私は改造人間・・・
選ばれたる存在・・・
下等な人間どもとは違うわ・・・
私は選ばれたのよ・・・
ふふふ・・・
そうよ・・・
私は人間なんかじゃない、改造人間なのよ・・・
ふふふふふ・・・

アパートの近くにある公園。
夜になると周囲にはあまり人通りがなくなり、柄の悪い男たちがたむろする。
今までの紀代美なら近くを通ることは避けていた公園。
だが、紀代美は躊躇いもなくその公園へ入っていく。
カツコツとパンプスの音が敷石に響き、街灯がその姿を照らし出す。
肩から鞄を提げ、スーツとストッキングに包まれたその姿はかなりの美人と言っていい。
かつての紀代美が持っていたおどおどした姿はそこにはなく、毅然とした姿勢がその美しさを際立たせていた。
公園の中央部あたりには三人の男がベンチで所在無げにタバコを吸っている。
制服を着ているところからすると学生だろう。
みんな一様に歩いてくる女性の姿に目を奪われている。
「よう、ねーちゃん。仕事帰りかい?」
「こっち来ないか? 俺たち暇でさー」
「一緒に楽しまないか? え? きゃっははははは」
男たちが紀代美に声をかける。
紀代美はただうるさそうに一瞥をくれると、そのまま歩き去ろうとした。
「おっととと、そりゃねえよ、ねーちゃん」
男たちが立ち上がり、紀代美の先へ回り込む。
「俺たち寂しいんだよ。相手してくれよ」
「あんたも楽しませてやるぜ。ひいひい言わせたるよ」
「「ぎゃははははは」」
下卑た笑いを上げる男たち。
だが、無造作にポケットに入れた手にはナイフぐらいは持っているに違いない。
下衆ども・・・
下等な腐った生き物たち・・・
紀代美の心に湧き上がってくる感情。
それは殺意。
いや、それは明確な殺意ですらない。
排除、または処理と言ってもいいかもしれない。
邪魔な人間どもを処理する・・・
それは改造人間には当たり前のこと・・・
私は改造人間・・・
こいつらは蛆虫ですらない・・・
蛆虫の方がよほど高等な生き物だわ・・・
殺すわ・・・
始末するわ・・・
処理するわ・・・
消去するわ・・・

「何とか言えよ、おい!」
「無理無理、ビビッちゃってんだよ。さっさとやっちゃおうぜ」
「そうそう」
「「ぎゃははははは」」
男どもの笑い声が公園に響く。
紀代美は顔を上げる。
その目は妖しく輝き、口元にはゆがんだ笑みが浮かんでいる。
「死ね」
紀代美の右腕が一閃し、正面に立っていた男の顔を薙ぐ。
血しぶきと肉片が飛び散り、男は顔をえぐられて骨と眼球が露出した。
「ぎゃああああああ!」
一拍置いて男の悲鳴が上がる。
「な、何?」
「なんだと!」
紀代美を囲むように両脇に立っていた男たちは一瞬何があったかわからない。
そのまま紀代美は右手をすぼめ、錐のように突き刺した。
「げぼっ」
顔をえぐられた上に胸を貫かれた男はドウッと倒れて動かなくなる。
敷石に血が広がり、赤黒く染まっていく。
「ふふ・・・うふふ・・・」
紀代美が笑った。
その右手はスーツの袖口から先がつややかな外骨格に覆われ、鋭い爪の付いた指先が血で光っていた。
「あ、お、お前は一体?」
男たちが後ずさる。
その目は驚愕に見開かれていた。
「うふふ・・・なぁんだ・・・こんなに簡単だったんだわ・・・私ったら馬鹿みたい・・・」
紀代美はうっとりと自分の右手を見つめる。
「綺麗・・・知らなかったわ・・・こんなに気持ちがいいなんて・・・」
「て、てめえ! よくも浩二を!」
「うらぁあああ」
左右からナイフを取り出して襲ってくる男たち。
このまま逃げ出すのは彼らのプライドが許さなかったのだろう。
紀代美は避けもせずに笑みを浮かべたまま立ち尽くしている。
その両脇から男たちのナイフが突き刺さった。

「「!」」
男たちは戸惑う。
確かに今まで本当に人を刺したことなどない。
だが、この硬質な手ごたえは人間の肉を刺した感触とは思えなかった。
「ふふふふ・・・」
紀代美の笑い声が聞こえてくる。
二人が顔を上げると、紀代美は冷たい笑みを浮かべたままだった。
「馬鹿な男たち。そんなナイフで私が傷付くとでも思っているのかしら・・・」
「・・・・・・」
恐怖が男たちを捕らえる。
思わずナイフから手を離して後ずさる。
ナイフは支えを失ったかのように敷石に落ちて硬質な音を立てた。
切れ目の入った紀代美のスーツ。
その切れ間から茶色い外皮が覗く。
「ば、化け物?」
「うふふふ・・・下等生物のくせに私を化け物呼ばわり? 許せないわ。私は改造人間セミ女なのよ!」
紀代美はスーツを引き裂いた。
その下からは茶色い外骨格に覆われ、美しい女性的なラインを持ったセミの合成人間が現れる。
「ひいっ!」
思わず腰を抜かしてしまう男たち。
圧倒的な威圧感が彼らを動けなくしてしまっている。
「うふふふ・・・さあ、死んでしまいなさい!」
セミ女の腹部が共鳴し、その口から鳴き声が発せられる。
「ぎーーーーーーーー」
「うわぁっ!」
両手で耳を押さえても鳴き声は容赦なく二人の男を苦しめる。
のたうちまわり転げまわる男たち。
やがて全身を痙攣させ、口から血を吐いて死んでしまう。
動かなくなった男の躰をハイヒールブーツのように変化した足で蹴るセミ女。
「ふふふふ・・・どう? 私の殺人音波の味は」
満足そうにセミ女は死体を見下ろす。
「ああ・・・気持ちいい・・・擬態を解くのがこんなに開放感があるなんて・・・人間を殺すのがこんなに気持ちいいなんて・・・」
両手で胸をかき抱くように快感に浸るセミ女。

「おめでとうございます、セミ女様」
「人間どもを始末したご気分はいかがですか?」
「とっても気持ちよくありませんか?」
夜の公園に人影が現れる。
街灯に照らされる五人の少女たち。
「あなたたち・・・今のを・・・」
現れた合唱部の五人をにらみつけるセミ女。
「ご心配なく、セミ女様」
「私たちはセミ女様のお味方です」
「後始末はどうかお任せ下さいませ」
妖しい笑みを浮かべて近寄ってくる少女たち。
その姿にセミ女は警戒を解く。
改造された脳がこの娘たちが敵ではないことを告げているのだ。
「そう・・・それじゃ後は任せるわ。始末しておきなさい」
セミ女はそう言うと、ジャンプして街灯の上に立つ。
そのまま街灯や屋根を伝って自宅の方へ姿を消した。

「うふふ・・・思った以上に役に立ってくれたわね」
「こんなクズどもでも役に立って喜んでいるんじゃないですか?」
綾乃の言葉に響子もうなずく。
「セミ女様の持ち物は鞄と靴以外は処分しました。鞄と靴は明日お渡しします」
聡里が両手に紀代美のバッグと靴を持ってくる。
「それがいいわ。もっとも・・・そんなものも使わなくなるでしょうけどね」
「これでセミ女様は・・・」
「ええ、私たちの素晴らしいご主人様よ」
「「うふふふふふ・・・」」
夜の公園に少女たちの笑い声が響いた。

                  ******

「センセー」
「センセー、一緒にお昼にしませんか?」
「ちょっと来てほしいところがあるんですけどぉ」
いつものように合唱部の五人が紀代美を呼びに来る。
「ええ、いいわよ。どこに行くの?」
きりっとした姿勢で女生徒たちのほうへいく紀代美。
その姿は以前とはまったく違い、あの真海でも何となく声をかけづらい。
今朝の職員室ではついに真海は一言も紀代美に口を聞けなかったのだ。
「来てもらえればわかりますぅ」
「きっと気に入ってもらえると思います」
左右から紀代美の手を取る聡里と美咲。
それは紀代美にとっても嬉しくなる行動だ。
「わかったわ。行きましょう」
紀代美は五人に連れられるようにその場を後にした。

「あら、いつもの部室じゃない」
紀代美たちが来たのは合唱部に部室としてあてがわれた旧舘の一室だった。
校舎のはずれにあることもあって、あんまり使うことがない。
狭い部室で歌うよりも天気のよい日は外で歌う方が気持ちがいいのだ。
「いいからどうぞ入ってください、先生」
部長の響子がドアを開ける。
「これは?」
部屋に入った紀代美の前に大きなカプセルを中心とした機械が並んでいる。
「ふふふ・・・セミ女様。ここでは擬態は必要ありませんわ」
「擬態を解いてくつろいで下さいませ」
どこから持ってきたのかゆったりした椅子を用意する綾乃。
「あなたたち・・・ふふふ・・・」
紀代美は笑みを浮かべて椅子に座る。
「セミ女様。私たちはS・S・Bによって改造されたセミ女様の直属女戦闘員なんです」
「どうぞ、私たちの姿をご覧下さい」
そう言って、少女たちはその制服を脱ぎ去り、エイミーがスクリーンで見たのと同じ紺色のレオタード姿に変化する。
それぞれがまったく同じ衣装を身にまとい、背中から前に回りこむ半透明の翅を身に付け、胸元にはセミの口吻をかたどった口元を覆うマスクが下がっていた。
「私はセミ女様直属女戦闘員01です」
部長の響子が妖しく微笑む。
「私は02です」
「私は03」
「私は04です」
「05です。セミ女様」
口々に自分のナンバーを伝える女戦闘員たち。
彼女たちは素晴らしい主人を前にして多少興奮しているようだった。
「そうだったの・・・ふふ・・・うふふふ・・・」
紀代美がすっと立ち上がる。
スーツのボタンを外して上着を脱ぎ、ゆっくりとスカートを下ろして行く。
全ての衣類を脱ぎ捨てた紀代美は擬態を解いてセミ女へと姿を変えた。
「「わあ・・・」」
目の前でセミ女へと変身する紀代美に女戦闘員たちは喜びを隠しきれない。
「はあ・・・気持ちいいわぁ。擬態を解いて本当の姿になるのは気持ちいいわね」
「素敵です。セミ女様」
「素晴らしいお姿です」
「ありがとう。あなた方も素敵な姿よ」
セミ女が腕を組んで椅子に座る。
その姿は支配者としての威厳に満ちていた。
思わず五人の女戦闘員たちは跪く。
「私たちはこのカプセルで改造を受けました」
背後のカプセルを示す01。
「とっても気持ちがいいんですぅ」
「03ったら洗脳が病みつきになっちゃってるんですよ」
「02だってそうじゃない!」
思わず微笑んでしまうセミ女。
ここが自分の居場所・・・
この娘たちは私のしもべ・・・
私は改造人間セミ女なんだわ・・・
セミ女はそう思う。

「あなたたち、静かになさい」
01の声が飛ぶ。
「「ハッ」」
すぐに静まり返る室内。
「セミ女様。私たちに最後の調整をお願いいたします」
「最後の調整?」
「はい。セミ女様はS・S・B並びにプロフェッサー・エイミー様に忠誠を誓われますか?」
01が真剣ななまざしを向ける。
セミ女に迷いは無い。
「もちろんよ。私をこの素晴らしい躰に改造してくださったエイミー様には感謝してもしきれないわ。これからは身も心も全てをS・S・Bとエイミー様に捧げるわ」
「よかったぁ。ありがとうございますセミ女様」
「これで私たちもセミ女様に全てを捧げることが出来ます」
「ありがとうございます。セミ女様」
嬉しそうな女戦闘員たち。
「どういうこと?」
セミ女は首をかしげた。
「あ、すみません。セミ女様が忠誠を誓うまでは私たちはセミ女様の監視役を命じられていたんです」
01が頭を下げる。
「でもこれで私たちは監視の任を解かれ、セミ女様のみに従う女戦闘員になれたんです」
嬉しそうな佐崎綾乃こと女戦闘員02。
「あ・・・ああ・・・」
へたり込んで呆けてしまう飛鷹聡里こと女戦闘員05.
「あは・・・もしかして05ったらイッちゃった?」
優しく声をかける渡鍋美咲こと女戦闘員04。
「は、はい・・・私、嬉しくて嬉しくて・・・」
股間を押さえたまま感じているようだ。
「そうだったの・・・ふふふ・・・これからはあなたたちは私のしもべ。私のために仕えるのよ」
「「はい! セミ女様!」」
すっと立ち上がり一斉に右手を胸の前で水平にする。
「うふふふ・・・手始めにまずはこの学院を支配するのよ。学院の生徒たちを私の催眠音波で支配し、S・S・Bの忠実な工作員に仕立て上げるの」
妖しく笑みを浮かべるセミ女。
「「はい、セミ女様。何なりとご命令を」」
「もうすぐ研修旅行があるわ。そのときが作戦開始よ。教室と違ってバスの中なら逃げ場はないわ。たっぷりと私の催眠音波を聞かせてあげるの。うふふふふふ・・・」
「「かしこまりましたセミ女様! S・S・Bに栄光あれ!」」
女戦闘員たちの声が響く。
「S・S・Bに栄光あれ!」
セミ女も誇らしげに声を上げるのだった。

To be continued to Kiss in the dark 2005/8/6

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  1. 2006/04/16(日) 20:11:32|
  2. セミ女
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セミ女直属戦闘員

今日はちょっと短いですがセミ女の6回目です。
無計画さ浮き彫り・・・orz

それでもここまでこられましたー。
楽しんでいただければ幸いです。

6、
「恵畑先生」
呼びかけられた紀代美は急いで指先に擬態を施す。
美しい外骨格がひ弱な指先に変化するのを見て、紀代美は少し寂しさを感じた。
「あ、何ですか? 野戸先生」
「あなた・・・やる気あるの?」
腕組みをして紀代美を見下ろしている野戸理奈子。
「えっ?」
突然のことに戸惑う紀代美。
「困るのよね、あなたみたいのがいると」
「えっ?」
何のことだか紀代美にはわからない。
「あなたのせいで矢際先生が増長するのよ。他の先生の迷惑になるのがわからないの?」
「そ、そんな・・・」
そんなこと言われても・・・
紀代美は唖然とする。
いつもは味方になってくれていたはずの野戸先生がそんなふうに思っていたなんて・・・
それに私ばかりじゃなく他の先生方だって矢際先生に追従しているじゃない・・・
「いじめってのはね、いじめられる方にもかなりの原因があるの。いつもビクビクおどおどしているから付け込まれるのよ」
あきれたように紀代美を見つめる理奈子。
「・・・・・・」
口をつぐんでしまう紀代美。
こういった場合は言い返せばかえって相手に反撃されてしまう。
紀代美はじっとうつむいてしまった。
「あなた聞いてるの? あなたみたいなのがいると困るって言っているの。辞めちゃったら? どうせたいした能力もないんだし・・・」
ギリ・・・
悔しさに歯噛みする。
どうしてそんなことを言われなくちゃならないの?
私が能力ないってどうしてあなたにわかるの?
そんなにあなたは優秀なの?
改造された私以上に?
「矢際先生も先生だけど、あんたもあんたなのよ。見ていると鬱陶しいたらありゃしない」
頭ごなしに言い放たれる。
鬱陶しい?
鬱陶しいのはあなたの方よ・・・
ただの人間のくせに・・・
私は改造されているのよ・・・
あなたなんかとは違うのよ・・・
この私より優秀ですって?
たかが人間のくせに笑わせないでよね!

「お黙り」
「えっ?」
うつむいた紀代美の発した言葉に一瞬耳を疑う理奈子。
「黙りなさいって言ったのよ」
ゆっくりと顔を上げる紀代美。
その表情に怒りが浮かんでいる。
「あ、あなた・・・」
「能力がないですって? 鬱陶しいですって? あなたにそんなことを言われる筋合いはないわ」
「ふん。口だけは一人前? それとも開き直りかしら?」
紀代美から感じる不気味さを押し殺して強がる理奈子。
いつも感じる弱さは微塵も感じられない。
「ただの人間のくせに!」
紀代美は立ち上がるとすっと右手を伸ばして理奈子の首を握り締める。
「くだらない人間のくせに!」
「ぐ、がはっ」
紀代美の右腕が上に伸び、理奈子の躰が持ち上がる。
「あ、げほっ、た・・・たひへへ」
真っ青になる理奈子。
「恵畑先生!」
「恵畑先生、止めてください!」
職員室に残っていた教師たちが止めに入る。
殺してやる・・・
殺してやる・・・
殺してやる・・・
人間なんて・・・殺してやる・・・
「あがが・・・」
「恵畑先生!」
「恵畑先生!」
男性教師二人が両側から紀代美と理奈子を引き離そうとする。
殺して・・・えっ?
ハッとする紀代美。
わ・・・私は・・・
私はどうしたと・・・
はあ・・・はあ・・・はあ・・・
心臓がドキドキする・・・
躰が興奮している・・・
殺したくて仕方が無い・・・
だめよだめよだめよ・・・
人を殺すなんてだめよ・・・
でも・・・
どうしてだめなの?

「恵畑先生!」
「放しなさい、恵畑先生!」
「あ・・・」
右手を離す紀代美。
崩れ落ちるように倒れこむ理奈子。
男性教師が抱えるように理奈子を支える。
「あ・・・私・・・私・・・」
紀代美は走り出していた。
職員室にはいられない・・・
ロッカーから鞄を持ち出すと紀代美は学院を飛び出していった。

「あーあ・・・飛び出して行っちゃいましたよ、エイミー様」
ハエロボットからの映像をスクリーンで見ていた官子が心配そうに言う。
「上出来よ。あそこまで行動させられたんですもの。あと一押しで彼女はセミ女として覚醒するわ」
エイミーの口元には余裕の笑みが浮かんでいる。
「それにしても回りくどいですねぇ。いつものエイミー様ならさっさと洗脳しちゃうんじゃないですか?」
「言ったでしょ。これも実験のうちなの。宗教などという物を使って洗脳を行なう神彌弥に対抗するためにも、洗脳に関してのデータは多ければ多いほどいいのよ」
エイミーのこめかみがヒクヒクとひくつく。
それだけエイミーは首領の寵愛を受けている神彌弥という存在が気になるのだった。
「あはは・・・そ、そうなんですか・・・」
官子はただ苦笑せざるを得ない。
この二人の確執が首領の目論んだものなのか、はたまた意識せずにこうなってしまったものなのか。
それは官子にもわからない。
もっとも、対抗意識を燃やしているのはエイミーの方だけかもしれないが・・・
そのとき電子音が鳴り、スクリーンの脇にあるコンソールが明滅する。
「あ、通信が入っていますよ。エイミー様」
「つないでちょうだい」
ムチを手にスクリーンに向き直るエイミー。
「了解です」
てきぱきとコンソールパネルを操作する女戦闘員。
すぐにスクリーンが切り替わり、見慣れた姿が映し出される。
聖光女学院の合唱部部長、西来響子だ。
だがそれは普段の制服姿ではなく、光沢のある紺色のレオタードを着込み、背中から躰の両側を通って前にまでまわってきている半透明の翅のようなマントを羽織っているうえ、胸元にはセミの口のような鋭い口吻の付いたマスクが下がっている姿だった。

響子はすっと右手を胸に水平にして一礼をする。
「セミ女様直属女戦闘員01よりご報告いたします。学院の女性教師に音波催眠をかけ、セミ女様の覚醒を促すことに成功いたしました。引き続きセミ女様の覚醒を促すよう作戦行動を続行いたします」
西来響子、いや、すでに官子によって洗脳と改造を施されたセミ女直属女戦闘員01はエイミーに受けた指示を忠実に実行するべく、その途中経過を報告してきたのだ。
「ご苦労。あの教師には後催眠をかけて騒ぎ出さないようにしなさい。警察にでも駆け込まれたりしたら面倒だからね」
エイミーが細かな指示を出す。
ある程度はやはり指示を出してやらねばならないのだ。
「かしこまりました。そのようにいたします」
一礼をして通信を切る女戦闘員01。
「さあ、そろそろ仕上げにかかるわよ。うふふふ・・・」
エイミーの顔に満足そうな表情が浮かぶ。

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  1. 2006/04/15(土) 20:11:04|
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選ばれた存在?

セミ女さん第五話目です。
そろそろ心も変わってきてます。

5、
無味乾燥な授業・・・
くだらない人類の歴史・・・
真剣に聞いている生徒はごく一部・・・
イライラする・・・
私はなぜこんなことをしているのだろう・・・
内職と称して授業とは関係のないことを行なう生徒・・・
手紙のやり取りをして放課後の事を相談する生徒・・・
イライラする・・・
どうしてこの娘たちは整然とした行動ができないのだろう・・・
無秩序の集団・・・
それはまさに人間そのもの・・・
支配・・・
誰かが支配をする・・・
人間を支配する・・・
支配しなくてはならない・・・
人間を支配しなくては・・・ならない・・・

「そこ! 何をしているの? 今は授業中よ」
紀代美は一人の女生徒を指し示す。
その女生徒は紛れも無く机の下でマンガを読んでいた。
「えっ? な、何もしてません。ほ、本当です」
女生徒はすぐにマンガを机の中に開いたまましまいこむ。
「何か関係ないものを読んでいたんじゃない?」
「読んでいません! そんなことしていません!」
首を振る女生徒。
「嘘言いなさい!」
紀代美はつかつかと女生徒のところへ行って、女生徒を立たせて机の中を引っ掻き回す。
「これは何!」
開かれたマンガを机の上に取り出す紀代美。
それは紀代美にとっても初めてのことだった。
今まではどうしても注意することに臆して注意できなかったのだ。
「そ、そんなの知りません。たまたま休み時間に読んでいたままだっただけです」
「黙りなさい!」
パシーンという音が教室内に響く。
唖然として頬を押さえる女生徒。
シーンと静まり返る教室。
紀代美は思わず自分の右手を見つめる。
わ、私は・・・
私は今何をしたの?
私は・・・生徒を・・・
生徒を叩いてしまったの?
ゾクッとするものが紀代美の背中を走り抜ける。
ドキドキと心臓が高鳴る。
ど、どうしたの私は・・・
気持ち・・・いい?
気持ちいい?
はあ・・・
気持ちいい・・・
ざわめき始める教室内。
叩かれた女生徒はまだショックを受けている。
「もういいわ、座りなさい」
「はい・・・」
おとなしく言うことを聞く女生徒。
「みんな静かに! 授業を続けます!」
ざわめきが一瞬にして静まる。
完全にコントロールされた教室。
紀代美の一挙手一投足が生徒たちを支配する。
気持ちいい・・・
なんて気持ちいいんだろう・・・
紀代美は先ほどまで感じていたイライラが消え去ってしまったことを感じていた。

「「そして~私が~迷い込むのは~薄闇の世界~♪」」
五人の声が一つになる。
CDの伴奏に合わせて響く綺麗な歌声。
いつものように体育館脇で練習をしている合唱部の女生徒たち。
紀代美はタクトを振っている。
最初はまったくぎこちなかったものだが、今ではかなり上達した。
歌うのはほとんどがアニメソングやドラマの主題歌。
将来はともかく、まだ部になったばかりの今は歌うことが楽しければそれでいいのだ。
生徒たちはここ最近見違えるほど一体感が出てきていた。
ハーモニーも素晴らしい。
何より、紀代美のタクトに合わせて一糸乱れない姿勢が紀代美を満足させていた。
「ふう・・・少し休憩しましょ」
「「さんせーい!」」
みんなの顔がほころぶ。
木陰にいつものように敷いたビニールシートの上に座り込む。
「疲れたー!」
「うふふ・・・でも気持ちいいわ」
真柴里緒と佐崎綾乃は二人寄り添って微笑んでいる。
「あ、西来さん。私がお金出すからみんなにジュース買ってきてくれないかしら」
紀代美がポケットから財布を取り出す。
「えっ? よろしいのですか?」
西来響子がすぐに紀代美のそばに来てスッと跪く。
「ありがとうございます、先生」
「「ありがとうございます」」
四人もいっせいに跪いて一礼をする。
あ・・・
なんて気持ちがいいのかしら・・・
この娘たちはとても素晴らしいわ・・・
これこそがあるべき姿・・・
これこそが・・・
「いいのよ。私も喉が渇いたから、私の分もお願いね」
財布から千円札を取り出す紀代美。
「かしこまりました」
響子が恭しく千円を受け取る。
「あ、私が行きます、リーダー」
一年の聡里が手を上げる。
いつも部長と呼ばれていたはずなのに、最近はリーダーと呼ばれていることが多い。
「そう、じゃお願いするわ。先生の分をまず第一にね」
「はい」
すっと立ち上がって響子から千円を受け取ると、聡里はすぐに駆け出して行く。
紀代美はその姿が頼もしかった。

「センセー、センセーは電車通勤ですよね? 痴漢とかに遭わないですか?」
ゴクゴクと冷たいウーロン茶を飲んでいる渡鍋美咲。
メガネがとてもよく似合う俗に言うメガネ美人だ。
「えっ? 痴漢?」
紀代美は思わず聞き返す。
紀代美は何回か痴漢に遭っている。
朝の混雑する電車内でお尻を触られたことがあるのだ。
そのときは声を上げることさえできなかった。
紀代美の気の弱さが痴漢に恐怖を感じさせていたのだ。
だけど、それをそのまま言ってもいいものなのかしら・・・
痴漢に遭ったら大声で助けを求めなさいって指導していたはず・・・
教師の私が痴漢に遭って震えていましたなんて言えないわ・・・
「ええ、痴漢にあったことないですか?」
「ハーイ。私ありまーす」
元気よく右手を上げる飛鷹聡里。
さっきドリンクを抱えて走ってきたというのに汗一つかいていない。
「私もあるわ」
部長の響子も小さく右手を上げた。
「西来さんも?」
紀代美は驚いた。
五人中二人も痴漢に遭っていると言う。
これは問題ではないだろうか。
「リーダーはそういう時どうするんですか? 私は次の駅で痴漢と一緒に降りてトイレに誘って殺しちゃいました」
まるで昨日見たテレビの感想でも言うかのようにあっさりと言う聡里。
「ああ、先日のあれは聡里ちゃんだったんだ」
「ええ、音波を使って殺したから、心臓発作としか思わなかったみたい」
「あまり派手にやっちゃだめよ。怪しまれないようにしないと」
缶コーヒーを飲んでいる綾乃が心配そうにする。
「リーダーはどうしたんですか? やっぱり殺したんでしょ?」
「当然でしょ」
こともなげに言う響子。
長い髪をかき上げてペットボトルの果汁ジュースを飲んでいる。
「くだらない人間には死を与えてやるのが当然だわ」
「ま、待って!」
紀代美が口を挟む。
「あなたたちいったい何の話をしているの? 殺すだの殺さないだのって・・・いったいあなたたちどうしちゃったの?」
「先生」
「えっ?」
響子が冷たい視線を向けてくる。
「先生はくだらない人間どもが多すぎるとは思わないんですか?」
「センセーだって殺しちゃいたいクズどもがいないですか?」
「そんなのは殺しちゃえばいいんですよ」
「人間は少しぐらい死んだ方がいいんです」
響子と同じように冷たい表情で笑みを浮かべている少女たち。
それはあまりにも不自然な光景であるにもかかわらず、紀代美には彼女たちには相応しく思えていた。
「そ、それは・・・」
くだらない人間?
殺しちゃいたいクズども?
少しぐらい死んだ方がいい?
ああ・・・わからない・・・
わからないわ・・・
確かにくだらない人間は多いわ・・・
殺しちゃいたいクズだってそばにいる・・・
でも・・・
でも・・・
殺しちゃってもいいの?
殺すことが正しいことなの?
わからない・・・
わからないよぉ・・・
「センセー、センセーは選ばれたんですよ」
紀代美のそばで囁く真柴里緒。
「私たちがお手伝いいたしますわ」
「先生は心の赴くままに支配者として振舞えばいいんです」
「私たちにお任せ下さい」
「「どうか、私たちにご命令を」」
紀代美の前に跪く五人の少女たち。
「い、いや・・・いやよ・・・いやぁっ!」
紀代美はその場を逃げ出した。
少女たちといると、自分の心の奥底に秘められたものが、白日の下にさらけ出されそうだったのだ。

「ハアハア・・・」
心臓がドキドキ・・・しない?
息が切れ・・・ない?
息が切れたように思ったのは人間だったときの感覚を引き摺っているから?
私の躰・・・
「本当に改造されちゃったんだわ・・・」
紀代美は職員室の自分の席に着き、顔を伏せてしまう。
顔の下側になっている右手の指先だけそっと擬態を解いてみる。
つややかな外骨格に覆われた強靭な指先と鋭い爪が現れた。
「綺麗・・・」
どうして逃げ出したのかな・・・
人間なんてどうしようもない生き物・・・
誰かが支配しないとだめなんじゃないのかな・・・
『先生は選ばれた存在なんですよ』
西来響子の言葉が思い出される。
「選ばれた存在・・・か・・・」
何となく嬉しい・・・
改造されたことで選ばれた存在になれたのだろうか・・・
だとしたら私は本当に選ばれた存在なのかもしれないな・・・
「うふふ・・・」
紀代美の口元に笑みが浮かぶ。
気持ちよかったな・・・
国原さんたらすっかりおとなしくなっちゃって・・・
私が叩いたおかげよね・・・
クラスの娘たちも私の言うとおりになって・・・
気持ちよかったな・・・
今度試してみようかな・・・
私の鳴き声で確か言うとおりにさせることが出来たはず・・・
やってみようかな・・・
紀代美の脳裏に彼女の指図どおりに行動する生徒たちの姿がよぎる。
素敵だろうな・・・
「うふふ・・・」
紀代美は擬態を解いた指先をぼんやりと眺めていた。

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  1. 2006/04/14(金) 21:12:26|
  2. セミ女
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合唱部の女の子たち

すみません・・・orz
続いています。

文章中に悪事を肯定するような表現がありますが、あくまでSS中のフィクションですので、その辺はご理解のほどを。

ではでは。

4、
「はあ・・・」
購買で昼食用の調理パンを買い求めた後で、今日も紀代美はため息をついていた。
朝早々に教頭から昨日の無断欠勤の注意をねちねちといわれた後で、矢際真海から今度行なわれる研修旅行のパンフレット作成を押し付けられたのだ。
本来なら学院に勤めて間が無い紀代美のするようなことではなく、取引業者とかとそれなりの対応の取れる中堅の教師が行なうべきことなのだが、真海が安請け合いをして紀代美に丸投げしてきたのだ。
『研修旅行は毎年のことだからある程度はパターンが決まっているけど、トラブルが起こったらあんたのせいだからね。私に恥じかかせるんじゃないよ』
真海のその言葉に紀代美はいつに無く腹が立った。
殺してやりたいとさえ思ったのだ。
だが、紀代美はうなずいていた。
逆らうことの怖さと無意味さを知っていたからだ。
手を握り締めて耐えるだけ。
あくまで噂だが真海に逆らったために職場を失い、転々とする羽目になった教師が何人もいるとか。
せっかくの職場を失いたくは無かった。

「センセー! 恵畑センセー!」
「センセー!」
にこやかにやってくる女生徒たち五人。
手に手にとりどりの包みを持っている。
今日もお誘いに来てくれたのだろう。
いつも声をかけてくれる五人の女生徒たち。
もうすっかり顔なじみだが、もともとはこれも真海の押し付けから始まったことだった。
「先生、今日もお昼一緒に食べませんか?」
「今日は先生もうお昼用意しちゃいました?」
「見てください、綾乃がセンセの分のお弁当も作ってきたんですよ」
「お口に合うかどうかわからないんですけど、よろしければ食べてくれませんか?」
あっという間に紀代美を取り囲んで口々にしゃべり始める少女たち。
思わずその情景に紀代美は微笑んでしまう。

制服に身を包んだ五人の少女たちはいずれも紀代美が顧問を押し付けられた合唱部の娘たちだった。
吹奏楽部あたりは人気があって生徒たちもたくさんいるのだが、なぜかこの学院では合唱部は今まで無かったらしく、今年になって五人目が入ったということで同好会から格上げされたのだ。
格上げされたからには顧問が必要なのだが、出来たばかりの合唱部の顧問など誰もやりたがらず、音楽教師にいたっては自分の吹奏楽部の敵だと言わんばかりであったので、結局真海が紀代美に押し付けてきたのだった。
音楽の経験などまったくない一介の社会科教師、それも世界史担当とあっては合唱のことなどわかるはずも無い。
それでも紀代美は一所懸命に音楽関係の本を読んだり、TVの合唱コンクールを録画したりして何とか合唱を把握しようと努めてきた。
生徒たち五人も一緒に合唱部を作って行くんだという感じで、紀代美に逆に教えたり一緒に録画を見たりして仲良くなったのだ。
最近は体育館脇のスペースでCDを伴奏に歌っていると、数人の生徒たちが聞きに来てくれるまでになっていた。
残念ながら入部希望者まではいなかったが、五人と紀代美の仲はすごくよかったのだ。

紀代美は生徒たちの間では人気がある。
だからお昼のお誘いはそこそこあって、たまに十人以上の大所帯となることもあったが、中心となるのはいつもこの娘たちだった。
生徒たちととる食事は楽しく、またいろいろと生徒の悩みや相談ごとも聞くことができるので有意義だった。
そのことがまた真海にとっては面白くないらしく、いろいろと嫌みを言われたりもするので、紀代美にとっては真海に見つからないように校舎脇とか屋上の隅とかで集まることが多かった。
「今日はあっちに行きましょう」
紀代美は校舎脇の木陰に生徒たちを連れて行く。
夏の日差しが暑かったが、木陰で取る食事は美味しいだろう。
「「ハーイ」」
生徒たちの声が見事にハモる。
紀代美と五人の生徒たちはわいわいとしゃべりながら場所を移動していった。

「センセー、どうぞ」
目に前に差し出される四角い包み。
すごく嬉しい・・・
「でも、悪いわ。私ならほら、パンも買ってきたし」
紀代美は購買の袋を指し示す。
「それは後でも傷まないですよ。せっかく綾乃が作ってきたんですから食べてやってよ」
「綾乃ちゃん昨日はがっかりしてたんだよね」
「センセが来なかったもんね」
口々に言いながらひざの上にお弁当を広げて行く女生徒たち。
さすがに女の子。
お弁当の中身はカラフルである。
紀代美も料理は好きな方だったが、連日帰りが遅くなる状態では自炊はなかなか出来なかった。
それでついついスーパーの惣菜かコンビニのお弁当ということになってしまう。
お弁当だってそんな事情だからあまり作ることは無かった。
購買で調理パンを買うことが多かったのだ。
「センセ、お願いです。食べてみてください」
二年C組の佐崎綾乃(ささき あやの)がうつむきながら差し出しているお弁当。
紀代美はうなずいて受け取った。
「やったね、綾乃」
そっと綾乃の肩を小突く同じ二年C組の真柴里緒(ましば りお)
ソプラノの美しい声の持ち主である。
「佐崎先輩、おめでとうございます」
紀代美は苦笑した。
一年C組の飛鷹聡里(ひだか さとり)だ。
この娘のおかげで部に昇格したのだけど、お弁当を受け取ったぐらいでおめでとうとは・・・
「よかったね、綾乃。あんたずっとセンセにお弁当作ってくるって言っていたもんね」
二年D組の西来響子(にしき きょうこ)。
合唱部の部長をしている責任感の強い娘だ。
「センセー。早く食べて食べて」
二年A組の渡鍋美咲(わたなべ みさき)。
紀代美以上に興味深そうにお弁当箱が開けられるのを待っている。
「はいはい。それじゃいただくわね佐崎さん」
紀代美は受け取ったお弁当を開ける。
玉子焼きやから揚げといった定番のおかずが並び、ご飯には海苔がかぶせられている。
その海苔も一枚をきちんと食べやすいように切り分けて乗せてあり、綾乃の心遣いが感じられた。
「あ、あんまり見ないで下さい・・・恥ずかしいから」
綾乃は赤くなっている。
だが、紀代美が食べるのを待っていて、自分のお弁当には手がついていない。
「「・・・・・・」」
固唾を呑んで紀代美を見つめている女生徒たち。
紀代美は玉子焼きに箸をつけ、そっと口へ運んで行く。
玉子焼きが紀代美の口の中に消え、もぐもぐと咀嚼されていく。
ごくんという音が聞こえてきそうなのどの動きが終わり、一瞬静寂が訪れる。
「美味しい」
「「やったーっ!」」
五人は思わず両手を上に上げて万歳したり、こぶしを握り締めたりしていた。
この瞬間、紛れも無く紀代美は幸福だった。

セミが鳴いている・・・
ミーンミーンミーン・・・
ジージージー・・・
複数のセミが織り成す音のハーモニー。
思わず紀代美は顔を上げる。
木の幹で樹液をすすっているセミが目に入る。
あれはアブラゼミだわ・・・
セミの種類など気にしたことも無いのにそれはすぐにわかった。
なんて可愛いのかしら・・・
昆虫などグロテスクなはずだったが、セミは別だ。
セミは美しい生き物。
人間など比べ物にならないほどに美しい・・・
「えっ?」
私、私今何を・・・

「センセー、センセーってば」
呼びかけてくる声にハッとなる紀代美。
「えっ? あ、ごめんなさい。聞いていなかったわ」
食事を終えて昼休みをおしゃべりで過ごしている女生徒たち。
紀代美も午後の授業の準備まではまだ時間があったのだ。
少し意識が飛んでいたらしい。
寝不足だったかも。
紀代美は何の気なしに視線を落として愕然とした。
躰を支えている右手の指先が外骨格に覆われて鋭い爪が覗いていたのだ。
ああ・・・嘘・・・
すぐに擬態を施して人間の指先に戻す。
指先は再び滑らかな指先に変化した。
やっぱり・・・擬態は無意識状態になると失われちゃうんだわ・・・
昨晩自宅へ帰った紀代美はシャワーを浴びてそのまま眠りについたのだ。
だが、朝目が覚めたときには悲鳴を上げないようにするのが精いっぱいだった。
いつの間にか擬態は解け、セミ女の姿に戻っていたのだ。
急いで擬態を施し人間の姿になって学校へ来たのだが、常に意識の隅で擬態を意識していないとだめなのかもしれない。
もちろん、慣れればそんなことはなくなるのかもしれないが、紀代美にとっては重大事だった。

「センセー、聞いてます?」
「あ、ご、ごめんなさい。何の話だったかしら」
「綾乃のお姉さんのことですよぉ。綾乃のお姉さんたら会社の帰りに複数の男たちに襲われたんですって」
えっ?
襲われた?
「父も母もおろおろしちゃって馬鹿みたいなんですよ。隙があるからそんな目に遭うんだってわからないんですよ」
あっさりと言い切っている綾乃。
「だよねー。私だったらそんな奴ら殺しちゃうね」
「うんうん」
何?
この娘たちは何を言っているの?
紀代美は彼女たちの言葉が信じられない。
襲われたとか殺すとか・・・一体何を言っているの?
「うん、私もそういったの。殺してこなかったのって。そしたらそんなことは出来ないとか何を言っているんだとか・・・もううざいったらありゃしないわ」
「わかるわかる。うちもうざくってさ、早く始末していいよって指令が来ないかなぁ」
綾乃の言葉にうなずいている里緒。
クラスが同じだけに二人はいつも仲がよい。
「勝手な行動はだめよ、指示通りにするの。いいわね?」
「「わかってます、リーダー」」
響子の言葉にうなずく四人。
一体何がどうなっているのか・・・
紀代美は背筋が冷たくなる。
だが、同時に何か得体の知れない感情も沸き起こっていた。
殺す・・・
捕まえて殺す・・・
獲物を捕まえて引き裂いて殺す・・・
獲物を捕まえて引き裂いてぐちゃぐちゃにして原形をとどめないほど破壊して殺す・・・
ドキドキドキ・・・
心臓が早鐘のように連打する。
それは悪魔の鳴らす鐘の音だった。
「センセーもそう思いませんか? うざい連中やクズな人間は殺しちゃえって」
一年生の聡里が屈託の無い笑顔を向けてくる。
それは自分の言葉にまったく疑問を持っていないということ。
「えっ?」
紀代美は我に帰る。
「一体どうしたの? 何でそんなことを言うの? みんな変よ。どうかしているわ」
「そうですか先生?」
響子が不思議そうな顔で紀代美を見る。
「人間なんていう生物は無秩序すぎませんか? 支配されないと奴らはこの世界を食いつぶしませんか?」
「優れたものが奴らを支配して、クズどもを排除しないと世界の調和が取れないんじゃないですか?」
「センセーだってそう思いませんか?」
口々に笑みを浮かべながら語る生徒たち。
「そ、そんなこと・・・」
紀代美は答えられない。
混乱して答えられないのだ。

授業開始五分前の予鈴がなる。
すっと隙の無い動きで立ち上がる五人の女生徒たち
「先生は選ばれた存在です。支配者となる必要があるんですよ」
「えっ?」
そういい残して響子は他の四人とともに教室へもどって行く。
「私は選ばれた・・・存在・・・」
その後ろ姿を見送る紀代美はそうつぶやいていた。

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  1. 2006/04/13(木) 21:14:58|
  2. セミ女
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仲のいい二人(笑)

本当は二回か三回で終わらせたかったのですが、なんか話が膨らんでしまって今回でも終わりませんでした。

でも、その分楽しんでいただけたらと思います。
それではドゾー。

3、
マスクがかぶせられ麻酔ガスが流される。
「あ、う・・・げふっ」
必死になって呼吸を止める紀代美だったが、苦しさに耐え切れずに呼吸をしてしまう。
「あ・・・」
だんだん意識が遠くなる。
「い・・・や・・・」
だめ・・・
だめよ・・・
意識を失ったらだめ・・・
だが、紀代美の意識は遠くなっていった。

「まったく・・・みんなして私のことを狂っている狂っているって・・・」
口を尖らせているエイミー。
彼女にしてみれば当然の事を行なっているに過ぎないのだ。
「エイミー様はそんなに狂っちゃいないですよね」
「そ・ん・な・に?」
エイミーが振り向くと同時に官子は思わず自分の口を押さえてしまう。
「いいのよ。そんなに慰めてくれなくても。うふふふ・・・」
ムチをしならせるエイミー。
「あ、あはは・・・エイミー様目が、目がすわっていますぅ」
一歩二歩と下がる官子。
「そりゃあ私は毎日毎日手を変え品を変えて生き物とたわむれ、人体改造のことばかり考えているんですものねぇ」
「あ、あはは・・・そ、そんなこと無いですよエイミー様。エイミー様はそれがお仕事ですから・・・」
「そう。そう言ってくれて嬉しいわ、官子。うふふふ・・・」
「ヒイッ!」
エイミーの冷たく怪しい笑みに官子は観念して背中を向ける。
エイミーの短めのムチが空気を切って官子のお尻に当てられた。
「ヒギャァッ!」
「おほほほ・・・お仕置きよ、お仕置き」
「ヒギャァッ!」
一回二回とエイミーのムチが官子のお尻でいい音を立てて行く。
その様子にいつものことと肩をすくめる戦闘員たち。
これはエイミーにとっても官子にとってもいい意味での楽しみなのだ。

「ふう・・・このぐらいで良しとしましょう。改造の方も順調のようね」
シーツを剥ぎ取られ、裸で手術台に横たわっている紀代美の周囲からはいろいろな機器やチューブが伸びている。
ボックスに入れられていたセミたちは液体によってどろどろに溶かされ、そのエキスが紀代美に注入されていく。
細胞を変化させるために光線が照射され、紀代美の細胞がセミのDNAを受け入れて行く。
表皮は硬くなり外骨格を形成して行き、関節には節が作られていく。
頭部の周囲にはカチューシャのようにセミの複眼や口の辺りが作られ、髪の毛を飾って行く。
紀代美の目の周囲にはカバーが現れてサングラスのように保護される。
大学時代には知り合いからミスキャンパスに推薦されそうになり、慌てて断ったという美しいボディラインは外骨格が覆っても変わらずにその流れるようなラインを保持していた。
胸の膨らみも腰のくびれもセミの外皮が覆い、背中からは半透明の美しい翅が伸びて行く。
つま先は指が消え去り、かかとが伸びてハイヒールブーツ状に整えられる。
手の指先には鋭い爪が伸びて、獲物を切り裂く武器となる。
紀代美はいまやセミと人間の合成された改造人間セミ女と変貌していったのだった。

「うふふ・・・素敵だわ。これこそ選ばれたる者の美しさ」
うっとりとした表情を浮かべるエイミー。
その手に持ったムチも喜びに打ち震える。
「あとは脳改造ですね。エイミー様」
機嫌が良さそうなエイミーに思わず官子の表情もほころんだ。
「お黙り、官子。それよりも手配してもらったことはちゃんとできたんでしょうね?」
「えっ? は、はい。もちろんです」
かしこまる官子。
「そう。わざわざトラックにカプセル一式と医療戦闘員を用意したのだから、失敗するはずが無いわよね?」
「も、もちろんです、エイミー様。すでに改造も終わっていますけど・・・でも戦闘員にしては手間をかけていませんか?」
エイミーの顔にゆがんだ笑みが浮かぶ。
「うふふふ・・・いいのよ。これも一つの実験なんだから」
「そうなんですか・・・」
官子はそんなエイミーを見て内心でほくそえんでいた。

薄暗い部屋。
無影灯も機器の灯りも消えている。
「ん・・・」
紀代美はゆっくりと目を覚ます。
「あ・・・こ、ここは・・・」
頭を振ってぼんやりした状態をはっきりさせようとしながら上半身を起こす紀代美。
「ヒッ!」
薄暗い中でも紀代美にははっきりと自分の躰が目に入る。
「あ・・・こ、これは・・・」
変わってしまった自分の両手を見つめる紀代美。
関節ごとに節で区切られ、外骨格に覆われて爪が鋭く伸びている自分の手。
「い、いやぁっ!」
思わず叫び声を上げて両手で顔を覆う紀代美。
「あらあら、そんな素敵な躰になったのに何が不満?」
影の中から現れるエイミーの姿。
「ああ・・・ひ、ひどい、ひどいよぉ。元に・・・お願いだから元に戻してぇっ!」
顔を覆いながら首を振って泣き喚く紀代美。
「うふふふ・・・それは無理よ。改造された躰が元にもどるわけ無いじゃない」
「そ、そんなぁ・・・」
紀代美はすがるようにエイミーを見上げる。
「でも心配は要らないわ。あなたの脳にはすでにその躰の情報がインプットされているの。わかるでしょ? あなたには特殊能力があって、人間体に擬態できるってことが」
エイミーがムチの先でセミ女紀代美の顎を持ち上げる。
「人間体なんかよりもこっちの方が素敵だと思うんだけどなぁ」
「あ・・・」
紀代美は首を振る。
こんな化け物のような姿などいらない・・・
私は人間・・・
人間の姿になるのよ・・・
紀代美は細胞の配列を擬態モードに切り替える。
エイミーが言うとおり彼女にはそれができることが“わかった”のだ。
セミ女としての外骨格に包まれた姿はじょじょに肌色を取り戻し、やがて裸の女性の姿が現れる。
「できた・・・私はいったい・・・」
自分の姿に“戻れた”ものの、こんなことができること自体が紀代美にとってはショックだった。
「言ったでしょ。あなたは我がS・S・Bの改造人間セミ女。その姿はあくまで擬態なのよ」
裸の紀代美にエイミーはガウンを渡す。
「ち、違います。私は恵畑紀代美。聖光女学院の社会科教師です」
ガウンを受け取った紀代美は必死になってそう主張した。
そうしなければセミ女であることを認めたことになってしまいそうだったのだ。
「私はセミ女なんかじゃありません。私は・・・私は恵畑紀代美ですぅ・・・」
「うふふ・・・まあいいわ。あなたがそれほどまでにセミ女であることを嫌がるのなら、私も無理強いは出来ないものね。その姿で暮らしたければそうしたらいいわ」
紀代美はエイミーの言葉に一瞬驚く。
「えっ?」
「はあ・・・どうやら洗脳はうまく行かなかったみたいね。本来ならばあなたは誇らしげに自分がセミ女であることを宣言するはずなのに」
肩をすくめるエイミー。
「そんなことはしません。私はセミ女なんかじゃないわ。私は恵畑紀代美です!」
ガウンを羽織り、いつに無く強い調子で紀代美は言う。
それを紀代美は意識していなかった。
「はいはい。あなたは恵畑紀代美。改造された躰を元には戻せないけど、擬態モードで暮らせば紀代美として生きられるでしょうね」
「そうさせてもらいます」
エイミーをにらみつける紀代美。
「あなたを解放するわ。残念だけど仕方が無い」
エイミーは指を鳴らして戦闘員を呼び寄せる。
「「お呼びでしょうかエイミー様」」
二人の戦闘員がやってきて跪く。
「この女を適当なところで解放しなさい。わかったわね」
「「かしこまりました。どうぞこちらへ」」
「それじゃ失礼します」
恭しく紀代美を案内する戦闘員についていきながら、紀代美はエイミーに対して一瞥をくれる。
「うふふ・・・いつでも戻っていらっしゃい」
「そのつもりはありませんから」
紀代美は振り向くことなく手術室をあとにした。

「エイミー様・・・」
闇の中から官子が現れる。
「うふふふ・・・」
楽しそうに笑っているエイミー。
「どういうことなんですか? 脳改造はしなかったのですか?」
「したわよ。セミ女としての躰のコントロールの仕方など一通りね」
官子の疑問にさらっと答えるエイミー。
「でも洗脳が・・・」
「ええ、洗脳はしていないわ。最小限のセイフティだけ。彼女はこんな目に遭ったというのに警察へ行こうと思ったりはしないでしょうね」
「どうしてですか?」
官子が驚く。
せっかく改造を施したというのに洗脳もしないで放り出すとは危険極まりない。
「これは実験よ。以前別種の生物を寄生させることで肉体を変異させ、思考も変化させることに成功したわ。今回は環境を使って思考を変えさせられるかの実験なの」
得意そうにムチを打ち鳴らすエイミー。
「環境ですか?」
「そう。あの生徒思いの紀代美センセが生徒から・・・うふふふ・・・」
「あ、なるほど。それであれを用意したんですね?」
納得したように官子もうなずく。
「うふふふふ・・・」
エイミーの忍び笑いが手術室に響き渡った。

「夕暮れ?」
解放された紀代美は空を見て驚いた。
どうやら捕らえられてからかなりの時間が経っているようだ。
無断欠勤してしまったことになるのかもしれない。
「はあ・・・」
なんていう一日だったのだろう・・・
S・S・Bなどという組織に捕らえられて改造なんていう目に遭ったなんて・・・
擬態することで自分の姿に戻ることは出来たけど・・・
これからどうしたらいいのだろう・・・
自分の中にはセミ女という肉体が隠れている・・・
それをどうしたらいいのだろう・・・
「考えても仕方ないか・・・」
紀代美は夕べ買ったコンビニのお弁当をぶら下げて自宅への道を歩いていった。

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  1. 2006/04/12(水) 21:07:28|
  2. セミ女
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エイミー様登場

セミの種類も結構ありますよね。
鳴き方もさまざま。

セミ女さんはどんな鳴き方をするんでしょうね。
やっぱり「みーんみーん」が一番かなぁ。

それではセミ女の二回目です。

2、
「先生、恵畑先生~」
制服姿の女生徒たちがやってくる。
その手には綺麗な包みを抱えているところから察するにお昼のお誘いだろう。
「恵畑先生はお昼はどうするんですか?」
「良かったら私たちとご一緒しませんか?」
色とりどりの包みを抱えている女生徒たち。
その表情は柔らかで屈託の無い笑顔を向けてくる。
誘ってくれるんだわ、嬉しいなぁ・・・
紀代美は素直に嬉しくなる。
大学をでてまだ間もないこともあるせいか、紀代美は結構生徒たちに人気があった。
女生徒たちはニコニコしながら紀代美の返事を待っている。
「もちろんいいわよ。どこで食べましょうか?」
「わあ」
パアッと表情がほころぶ女生徒たち。
あ・・・
私はこの笑顔を見るために教師をしているんだわ・・・
紀代美は幸福感を感じていた。

「あ・・・」
ひんやりした空気が頬を撫でる。
暗い部屋で目を覚ます紀代美。
夢?
今のは夢だったの?
紀代美は頭を振って起き上がろうとする。
「えっ?」
その時になって紀代美は気がついた。
両手両脚が固定され、台のようなものに寝かされているのだ。
「ど、どうして?」
紀代美は何がなんだかわからない。
そういえば私は・・・
妖しげな紫色の女の人に・・・
記憶を呼び戻す紀代美。
私は誘拐されたんだわ・・・
どうしよう・・・
身代金なんか払えないよぅ・・・
それよりも逃げ出さなくては・・・
紀代美はまず自分の状態を確認する。
痛いところは無い。
どこも怪我をしている様子は無い。
もちろん躰を起こすことすら出来ないので、目で見たわけではないが、首を回してみたところ問題は無さそうだ。
それよりも問題は、どうも服を脱がされているようなのだ。
上に白いシーツのようなものをかけられているが、ひんやりしてスースーする。
両手と両脚は手首と足首のところで固定されている。
金属ではなく革のベルトみたいだけど・・・どちらにしても引きちぎったり出来ない以上変わりは無い。
はあ・・・
逃げられないわ・・・
首を振る紀代美。
どうしよう・・・
不安だけが頭をよぎる。

「お目覚めのようね。恵畑紀代美さん」
ドアが開いて灯りが差し込んでくる中、人影が現れて声がする。
「だ、誰ですか? どうして私を誘拐したんですか?」
首を横に向けて灯りの方を見る紀代美。
「うふふ・・・当然の疑問ね」
入ってきたのは女性が二人だった。
緑色の髪をポニーテールにした躰の線を強調するような上下セパレートの服と網タイツの女性と、青い髪の毛をまとめ、ミニスカート型の服を着た童顔の女性。
そのあとから数人の肌が紫色の女性たちが入ってくる。
彼女たちはなにやらパネルやスイッチを操作して、機械類を作動させているようだ。
「ここは我が組織S・S・Bの秘密アジト。そして私はS・S・Bの化学主任のプロフェッサー・エイミー。よろしくね」
そばへやってきたポニーテールの女性が自己紹介をする。
「プロフェッサー・エイミー・・・」
紀代美は驚いた。
まだ20代前半と思われるその女性がプロフェッサーとは思えなかったのだ。
それに衣装も奇抜すぎる。
どこの大学だって彼女の服装は顔をしかめるだろう。
「彼女は私のサポートをしてくれている副官子(ふく かんこ)。私ともどもよろしく。いずれあなたの上官となるのだからね」
「エイミー様、私の名前は・・・」
官子の抗議を無言でにらみつけるエイミー。
「あ、あはは・・・はい、そうです。私は副官子です。あはは・・・」
冷や汗を流しながら一歩後ずさる官子。
その表情からもこの冷たい笑みを浮かべているプロフェッサー・エイミーと名乗る女性が厳しい人物であることがよくわかる。
「これからあなたは私の改造手術を受けるのよ」
「改造手術?」
一体何のことだろう・・・
私をどうするつもりなのだろう・・・
紀代美は彼女を見下ろして笑みを浮かべているこの女性がとても恐ろしく思えた。

「官子。改造モチーフは決まっていたでしょ? 準備は出来ているの?」
「あ、はい、エイミー様。今回の作戦には音波を使用しますのでセミを使います」
官子がすでに機械にセットされているボックスの中の昆虫を指し示す。
そこには透明なケースに捕らわれた数匹のセミが蠢いていた。
「ヒッ!」
紀代美はつい顔をそむける。
鳴き声は聞きなれていて別に嫌悪感を抱くものではないのだが、六本の足を動かして蠢く複数の昆虫の姿は気色悪さを感じさせるものなのだ。
「うふふ・・・夏休みの昆虫採集よろしく可愛い戦闘員たちが林の中で採ってきたセミなのよ。毛嫌いすること無いじゃない」
エイミーが手にしたムチで紀代美の顔をそっと自分に向けさせる。
「それにね・・・うふふ・・・あのセミたちはあなたと一緒になるのよ。あなたはセミ女となるの」
「セ、セミ女?」
紀代美は青ざめた。
狂っている・・・
この人は何か狂っているわ・・・
それともこれは何かの撮影にでも巻き込まれたの?
だったら早く解放してよ・・・
「今回の作戦には複数の音波が必要ですからね。複数のセミの合成怪人になるんですよね、エイミー様」
官子がにこやかに補足する。
「ええ、アブラゼミにミンミンゼミ、ヒグラシにツクツクホーシ。そういったセミの合成怪人にあなたはなるの。どう? 素晴らしいでしょ? あはははは・・・」
口元に手を当てて高らかに笑うエイミー。
「狂っているわ。あなたは狂っている!」
「お黙り!」
エイミーのムチがピシッと音を立てて紀代美の寝せられている手術台に当たる。
「ヒッ!」
「私は狂ってなどいないわ! 私はS・S・Bの化学主任のプロフェッサー・エイミーよ! 私に不可能など無いわ!」
エイミーの剣幕に紀代美はおびえる。
「ああ・・・ごめんなさい、ごめんなさい。もう赦して・・・うちへ帰してください・・・」
すぐに泣き顔になってしまう紀代美。
相手が強い口調を使うと紀代美は気後れしてしまうのだ。
「心配は要らないわ。あなたのその性格も変えてあげる。これからのあなたは他人を踏みつけるサディストになるのよ」
「そんなのいやです。うちへ、うちへ帰して・・・ここのことを黙っていろと言うなら誰にも言いません。言いませんから・・・」
「お黙りなさい! あなたは選ばれたのよ! 他の誰でもない、あなたが選ばれたのよ!」
「エイミー様、もうとっとと改造しちゃいましょう」
紀代美をにらみつけるエイミーに対し官子が口を挟む。
「そうね。改造を始めましょう」
「いやぁ、いやですぅっ!」
紀代美は必死に訴えるが、エイミーと官子は紀代美のそばを離れて戦闘員たちに指示を与えて行く。
手術用の無影灯が点灯し、紀代美の周囲からさまざまな機器が彼女に伸びていく。
「いやぁっ!」
紀代美の叫びもむなしく、改造手術は始まったのだった。

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  1. 2006/04/11(火) 22:00:45|
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g-than様ありがとうございます

当ブログにもリンクしていただいておりますg-than様のブログ、「Kiss in the dark」は皆様ご存知だと思います。

g-thanさんは素晴らしいイラストやマンガ形式で素敵なストーリーを展開していらっしゃいますが、今回嬉しいことにイラストの一つにSSを書かせていただけることになりました。

「Kiss in the dark」の2005年8月6日をご覧下さい。
素敵なセミ女さんが作戦を展開しているイラストが掲載されています。

そのイラストに至るまでのSSを今回書かせていただく許可をもらうことができました。
いずれは「Kiss in the dark」の別館に掲載いただければと思いますが、とりあえずはこちらで掲載させていただきます。

ということで一回目です。

1、
「恵畑先生、これもお願いしますね」
職員室で仕事に取り組んでいる恵畑紀代美(えばた きよみ)の机の脇にファイルが数冊無造作に置かれる。
「えっ? でも・・・」
思わず顔を上げる紀代美。
教師というものはこれでなかなか忙しい。
担任を持っていない紀代美でも、やることは山のようにあるのだ。
その仕事もあと少しで終わる目処がついたというのに・・・
「ごめんね、この埋め合わせは今度するから。ちょっと用事があるのよ」
同僚の矢際真海(やぎわ まさみ)は悪びれた様子も無く、ウインクをしてみせる。
「いいでしょ? お願い」
「え、ええ・・・」
紀代美はうつむいてしまう。
真海はこの聖光女学院の教師たちの中ではある意味実力者だ。
彼女の機嫌を損ねると陰湿な嫌がらせを受けることになるのは、紀代美は身を持って体験していた。

この学院に勤めるようになって数ヶ月。
右も左もわからない紀代美はいろいろなことを同僚に教わろうとしたものの、真海の機嫌を損ねてしまったばかりに仕事を押し付けられたり、重要な連絡事項を伝えてもらえなかっらしたことがあるのだ。
もともと気の弱い紀代美は、おとなしく真海に従うしかないと感じ、できるだけ逆らわないようにしてきていた。

はあ・・・またかぁ・・・
心の中でため息をつく紀代美。
「アー、矢際先生もしかしてデートですか?」
「うふふ、まあね」
他の女性教師の冷やかしににこやかに答える真海。
デートかぁ・・・
紀代美はまだ特定の男性とお付き合いしたことは無い。
二十四にもなって晩熟だとは思うが、何となく男性を敬遠してきたのだ。
「矢際先生! お仕事は済んだんですか?」
「野戸先生? ええ、恵畑先生が手伝ってくださったものですから」
「またですか? 恵畑先生、あなたも人がよすぎますよ!」
野戸先生が真海をにらみつける。
この学院の女性教師の中でも、芯の強い曲がったことが嫌いな野戸理奈子(のと りなこ)は矢際真海の意に沿わない唯一の人物だった。
だが、彼女が真海に忠告することはかえって紀代美にはつらいことだった。
「あ、野戸先生、私は別に・・・」
嵐にならないように紀代美はすぐに取り繕う。
真海が機嫌を損ねれば、八つ当たり的に仕事量が増えるのだ。
とりあえず言われたとおりにしていれば真海の機嫌が悪くなることは無い。

「恵畑先生がそんなだから・・・」
理奈子は肩をすくめて仕事に戻る。
まるで奴隷のようだと思うが、肝心の紀代美自体が唯々諾々と従っているのでは仕方が無い。
学院の理事長にコネがあるからと言って、好き勝手に振舞うのはどうかしているし、それに流されている連中も連中だと理奈子は思う。

「ふう・・・終了っと」
ファイルを閉じる紀代美。
時計はもう21:30を指している。
「わあ、もうこんな時間だわ・・・」
すでに同僚の全ては帰ってしまって、校舎に残っているのは警備員ぐらい。
「早く帰らなきゃ・・・おなかも空いたし」
紀代美は鞄を取り出すと、肩に掛けて帰り支度を整える。
灯りを消して職員室を出る紀代美。
その姿をじっと見つめる存在が一つ。
天井に張り付いたハエがその大きな複眼を入り口に向けていた。
紀代美の姿が消え去ったあと、そのハエは驚いたことにモーターの音をかすかにさせて背中の翅をヘリコプターのローターのように回転させる。
やがてその奇妙なハエは換気口を使って外に出て行った。

「冴えない女性ですねぇ。いいように顎で使われちゃっているじゃないですか。ほんとに彼女を今回の作戦に使うつもりなんですか? エイミー様」
まだ少女と言ってもいいような童顔の女性が不思議そうに背後を振り返る。
青い髪を頭の後ろでお団子にまとめ、紫がかったコルセットは胸のところを強調するかのように黄色があしらわれ、申し訳程度の白のミニスカートとガーターストッキングをまとっている。
「ふふふ・・・彼女は心にどす黒い闇を抱えていることでしょうね。そういった人物こそが我がS・S・Bには相応しいのよ」
彼女の背後で冷たい笑みを浮かべている女性。
緑色の髪をポニーテールにし、ワインレッドのブラジャーとパンティ。
すらりとした脚には網タイツを穿き、黒革のグローブとロングブーツを身に着けている。
「そんなもんなんですか?」
今ひとつ納得が行かないような表情の小柄な女性。
だが、ワインレッドの女性はじろっとひとにらみをすると、こう言った。
「実行部隊に連絡。彼女を拉致しなさい!」
「は、はいっ!」
弾かれたように指示を伝えに通信機に向かう小柄な女性。
作戦は始まったのだ。

「はあ・・・」
何度目のため息だろう・・・
紀代美自身この状況を何とかしたかった。
だが、どうも真海に声をかけられると、ヘビににらまれた蛙のように反抗できなくなってしまう。
何度か学院を辞めようかと思ったこともあったが、生徒たちと接するのが大好きな彼女は学院を辞めることは出来なかった。
もうすぐ研修旅行。
クラスの副担任である彼女もその旅行に参加することになっている。
きっと楽しいことだろう。
出来ることなら生徒たちと語り合いたいもの。
紀代美はわくわくしながらその日を指折り数えていた。

夏も盛りに近くなったが、夜も10時近くなると人通りも少なくなる。
手近なコンビニに寄ってお弁当を買ってきた紀代美は家路を急いでいた。
「うう・・・栄養偏るなぁ。最近自分でご飯作っていないよぅ」
そうつぶやきながら歩いて行く紀代美。
その目前に人影が二つ現れる。
「えっ?」
思わず紀代美は目を見張った。
現れたのは女性だったが、そのいでたちがあまりにも異質だったのだ。
全身の肌が驚いたことに紫色。
腰回りを覆うオレンジ色のパレオ。
胸と手足は黒革のコルセットとブーツにグローブ。
およそリオのカーニバルでも注目を引くこと間違いないのだが、彼女たちはその姿を恥ずかしげもなく当然のように受け止めている。
「あ、あなた方は?」
「聖光女学院の恵畑紀代美ね?」
鋭い視線を向けてくる二人の異質な女性たち。
「そ、そうですけど・・・あなた方は一体?」
少しあとずさる紀代美。
本能が危険を知らせている。
振り向いて走り出すか、大声を上げるべきなのだろうが、二人の鋭い眼差しがそれを許さない。
「私たちはS・S・Bのプロフェッサー・エイミー様所属の女戦闘員。お前をエイミー様がお呼びなのよ。一緒に来てもらうわ」
二人は笑みを浮かべるとゆっくりと一歩一歩近づいてくる。
「い、いやぁっ!」
紀代美は悲鳴を上げたが、人間とは思えないほどの素早さで二人の女戦闘員は紀代美の口をふさいでしまう。
薬の臭いが紀代美の鼻腔に届いてきて、紀代美の意識は闇に飲み込まれてしまった・・・
  1. 2006/04/10(月) 22:27:45|
  2. セミ女
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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