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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

スイミングクラブの罠

元日から心が痛む事態が起きておりますが、私にできることはごくごく限られておりますし、こういう場合に少しでも楽しみを提供できればいいのかなと思いますので、予定通り新作SSを一本投下いたしますね。

今回は「戦闘員化」系のSSとなります。
タイトルは「スイミングクラブの罠」です。
お楽しみいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


スイミングクラブの罠

 「クゥワァーッ!」
 深夜の港の倉庫街に奇声が響く。
 直立したトカゲを思わせるような全身をうろこで覆った異形の怪物が発する声だ。
 「トウッ!」
 「ヤァッ!」
 その怪物を追うようにして屋根の上を走り、拳を叩き込む赤や青の影。
 ダメージを受けた異形の怪物が、思わず足をふらつかせる。

 「キエッ?」
 そのままバランスを崩し、屋根から転がり落ちるようにして海に落下する異形の怪物。
 「逃がすか!」
 「おうっ!」
 その後を追うように赤と青の人影も海に飛び込んでいく。
 「あっ、待っ……」
 その後に続こうとしたピンクの人影が、思わず足を止めてしまう。
 「う……海……」
 倉庫の屋根から暗闇の海面を見つめ、立ちすくんでしまうピンク。
 だが、一回コクンとうなずくと、エイッとばかりに海に飛び込んだ。

                   ******

 「ヌウウ……なんたるザマだ!」
 黒い甲冑に身を包んだ巨体の男が、先ほどまで戦いの様子が映し出されていたモニターをにらみつける。
 大きな傷跡があるいかつい顔が、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
 結局海に落ちたリザードアクーは海中ではまともに戦うこともできず、トリプルノヴァの必殺技を食らって消し飛んだのだ。
 作戦だったとはいえ、あのような港の倉庫街などで戦わせたことを悔いてももう遅い。
 これでまたしてもトリプルノヴァにしてやられることになったのだ。
 この世界を支配せよと命じられた偉大な皇帝陛下に、顔向けができないではないか。
 なんとかしてトリプルノヴァの三人を倒さねば……
 アクードン帝国の幹部ヤルドン将軍の顔に、今度は苦悩が浮かんだ。

 「ヤルドン様」
 ピタピタという足音をさせて現れる一つの影。
 「ピラニアアクーか? 何か用か?」
 近づいてきたのがアクー魔人の一人、ピラニアアクーであることを確認するヤルドン。
 アクー魔人とはアクードンが世界を支配するために送り込む強力な魔人であり、その多くが地球上の生物と人間を融合させたような姿をしている。
 ピラニアアクーもピラニアのような鋭い歯をむき出しにし、全身を銀色のうろこに包んだ半魚人のような異形の姿をしているが、全体的なフォルムは人間の女性のように柔らかい曲線を持ち、二つの丸い乳房が目を引いた。

 「先ほどのリザードアクーの最後を私も拝見させていただきました。陸上生物であるリザードアクーが海中で苦戦するのは当然ですが、どうやらトリプルノヴァの方も海中では動きが鈍る様子。となれば私の出番かと。クフフフ……」
 ぎざぎざの鋭い歯が並んだ口を大きくゆがませてニヤッと笑うピラニアアクー。
 「ふむ……確かに我々は今まで常に陸上で奴らを相手にしてきた。水中でというのは面白いかもしれんな……」
 顎に手を当て、ピラニアアクーの提案に興味を持つヤルドン将軍。
 躰を覆う黒い甲冑がガチャリと鳴る。

 「だが、水中ではデクアクーどもも使えんぞ。むろんデクアクーはトリプルノヴァに対抗できるものではないが、奴らの集中を乱すぐらいのことは可能だ。デクアクーが使えなければお前単独で戦うことになるが、いいのか?」
 水中で戦うことの問題点を告げるヤルドン将軍。
 さすが作戦指揮を執るだけあり、すぐに問題点を見抜いたのだ。
 「おほほほ……もちろんその点も考慮しておりますわ」
 口元に手の甲を当てて笑うピラニアアクー。
 指先の鋭い爪がきらりと輝く。
 「デクアクーが使えなければ、それに代わる水中戦用の戦闘員を用意すればいいのですわ。そのことについても許可をお願いいたします」
 「ほう……デクアクーに代わる水中戦用の戦闘員か……それは面白い。やってみろ!」
 ヤルドン将軍も思わず笑みが浮かぶ。
 水中だろうがなんだろうがトリプルノヴァを倒せれば、それに越したことはないのだ。
 「ハハッ! お任せくださいませ。クケケケケ」
 背中に縦に走る背びれが見えるほどに深く一礼するピラニアアクー。
 早くもアクードンの新たな作戦が始まったのだ。

                   ******

 「ふう……やれやれ。まさか水の中で戦うことになるとはな……」
 戦闘の報告を終え、控室に戻ってきたノヴァレッドの赤巻祐司(あかまき ゆうじ)が疲労した躰をソファに下ろす。
 「ああ、めったに水中戦などやるものではないからな。だが、逃がさずに済んでよかった」
 冷蔵庫から清涼飲料水を取り出して飲んでいるノヴァブルーの青川健太(あおかわ けんた)。
 「そ、そうね……」
 なぜかばつが悪そうに言葉を濁すノヴァピンクの桃浜美織(ももはま みおり)。
 彼女はトリプルノヴァの三人の中の紅一点だ。
 この三人がアクードンの魔手から地球を守るトリプルノヴァの三人である。

 「ん? どうかしたのか、美織?」
 祐司がどこかいつもと雰囲気が違う美織に気づく。
 「そういえばさっきの戦いにもワンテンポ遅れていたな。何かあったのか?」
 ペットボトルを傾ける健太も美織に目を向ける。
 彼らはチームであり、一人の不調はみんなの危機にもなるのだ。
 問題があるなら共有しておいた方がいい。

 「あ、う……ううん……別に……」
 ごまかすように笑顔で首を振る美織。
 「ただ、ちょっと……疲れたかなと……それでちょっとぼうっとして」
 「そうか? それならいいんだが……」
 「確かにあのスーツは水中でも呼吸ができるが、動きは鈍くなるからな。疲れてしまうのも無理はない」
 心配そうな祐司と、納得したようにうんうんとうなずく健太。
 「先に休むことにするわ」
 そんな二人をあとに残し、美織は控え室を出るのだった。

 「あ、美織さん」
 廊下に出た美織は声をかけられて顔を上げる。
 どうやらついうつむいていたらしい。
 声をかけてきたのは優香(ゆうか)ちゃんだ。
 神高(かみたか)優香といい、トリプルノヴァ本部でオペレーターをやっている。
 「優香ちゃん?」
 まだ若いためにどことなく少女っぽさが残る幼い顔立ちをしており、年下ということもあってつい彼女をちゃん付けで呼んでしまう美織。
 「はい、優香です。どうしたんですか? なんだか憂鬱そうなお顔ですよ。何かお悩みなんですか?」
 まっすぐなまなざしで見つめられたうえ、ズバリと心境を言い当てられた美織はドキッとしてしまう。
 「そ……べ、別にたいしたことじゃないのよ。ちょ、ちょっと疲れているだけ」
 「嘘です。美織さん、何か悩んでいますね? 私でよければお話聞きますよ」
 ごまかそうとした美織の目論見はもろくも崩れ去る。
 普段からオペレーターとしてトリプルノヴァの三人と接しているのである。
 表情や声の調子から相手の内面を察するのは、優香はわりとうまい方だったのだ。

 「うー……」
 言葉に詰まることで、悩みがあることを図らずも露呈してしまう美織。
 「はあ……」
 美織は思わずため息をついてしまう。
 悩みがあることは確かだし、どうにかしたいと思っていることも確かなのだ。
 それに隠さなければならないというほどの物でもない。
 「優香ちゃん、ちょっといい?」
 「はい、いいですよ」
 優香と美織は場所を変えることにした。

 「えっ? 水が怖い?」
 優香が美織から打ち明けられた悩みは意外なものだった。
 美織は水に恐怖心があるというのだ。
 どうやら子供の時に溺れかけたことがあるらしく、それ以来水が苦手になってしまったのだという。
 ノヴァスーツは水を通さないし、ヘルメットを着けていれば呼吸も問題はない。
 なのに、海面を見て一瞬足がすくみ、それで飛び込むのが遅くなってしまって他の二人に迷惑をかけてしまったのだという。
 優香からは赤巻さんも青川さんもそんなことは気にしていないだろうとは言ってくれたものの、美織自身がやはり気にしてしまう。
 このままではもしアクードンが水中で活動するようなことをした場合、美織が足を引っ張ってしまう可能性があるのだ。
 だから美織は、なんとかしてこの水への恐怖心を取り除きたいと思っていたのだった。

 「でも今はまだ二人にはこのことは知られたくないの。私が泳げないことでからかうような人たちじゃないのはわかっているけど、余計な心配をかけたくないの」
 「了解です。このことは私の胸にしまっておきますね」
 人のいない資料室で二人きりで話していた美織と優香。
 このことは二人だけの内緒だ。
 優香は絶対にだれにもしゃべったりしないと心の中で誓いつつ、何か美織の力になれないかなと思っていた。

                   ******

 「美織さん、美織さん」
 数日後、パトロールから戻ってきた美織を物陰から優香が呼ぶ。
 そんなことをしたらかえって祐司や健太に気付かれそうな気もするが、彼女なりに気を使ってくれているのだろう。
 「何? どうしたの?」
 美織は苦笑しつつ優香の近くに行く。
 「美織さん、これ、行ってみません?」
 そういって優香が一枚のビラを手渡してくる。
 「これは?」
 見るとレディース向けのスイミングクラブ開講のビラだ。
 スタイルの良い女性がワンピースの水着を着てプールで泳いでいる。
 初心者歓迎、誰でも見違えるように泳げるようになりますといううたい文句までついている。
 「どうですか、美織さん? ここで泳ぎの練習をしてみては?」
 なるほど、優香は先日の会話を覚えていてくれたらしい。
 それで水が怖いという美織にスイミングクラブを紹介してくれているのだ。
 確かにここなら女性ばかりのようだし、初心者でも泳ぎを教えてもらえそうだ。

 「なるほど、スイミングクラブか。確かに一から泳ぎを教えてもらうというのはよさそうね」
 「でしょでしょ? それで……その、私もいっしょに行ってもいいですか?」
 「えっ? 優香ちゃんも?」
 美織が驚く。
 てっきり優香は泳げると思っていたのだ。
 「えへへ。実は私も泳ぎはあんまり得意じゃないので。なので美織さんが習うのならいっしょにと思いまして」
 てへっという感じで肩をすくめる優香に、美織はまた苦笑する。
 もしかしたら美織のためというよりも優香自身のためにスイミングクラブを探していたのかもしれない。
 「もう……しょうがないわねぇ。じゃあ、一緒に行ってみる?」
 「やったぁ、お願いします」
 思いきり笑顔になる優香。
 「それじゃぁ、善は急げで明後日の夜はどうですか? ここは20時からの一クラスだけみたいですし、明後日は体験会があるみたいですから」
 「そうねぇ」
 確かにビラには20時からのコースしか載っていない。
 おそらく夜のコースは日中とは別なのだろう。
 日中は子供たち相手にでも教えているのかもしれない。
 「体験会があるならとりあえずお試しで行ってみましょうか。水着はレンタルで、入会するとクラブ専用の水着を購入する感じのようね」
 おそらくこのビラの写真のような紺色のワンピース水着を着ることになるのだろう。
 なんとなくスクール水着っぽいかもしれない。

 「それじゃ明後日ですね。アクードンが現れないといいなぁ」
 「そうね。奴らがおとなしくしていてくれることを期待しましょう」
 できれば泳げるようになるまではおとなしくしていてほしいわ……
 美織はそう思い、優香とその場は別れるのだった。

                   ******

 翌々日、パトロールを終えた美織は優香と示し合わせて本部を出る。
 そして二人で軽く夕食を済ませた後で、目的の場所へとやってきたのだ。
 「ここ?」
 美織の前にはワンフロアがプールになっているスポーツジムのビルがある。
 「地図だとここですけど……ここって有名なスポーツクラブですよね? ビラに書いてあるスイミングクラブとは名前が違うような……」
 優香も首をかしげる。
 確かにビラの地図の場所はここなのだが、名称が違うのだ。
 「アクドスイミングクラブねぇ……もしかしたら建物の一画を借りているのかも。とりあえず入ってみましょう」
 「そうですね」
 美織の言葉に優香もうなずき、二人は入り口を通って中に入ってみる。
 すると簡易の立て札が立てられており、『アクドスイミングクラブにお越しの方はこちら』という文字が、矢印とともに書かれていた。
 美織も優香もやっぱりという表情を浮かべてうなずきあう。
 どうやら大手のスポーツクラブに間借りしているスイミングクラブということのようだ。
 場所が間違っていなかったことにホッとした二人は、そのまま矢印に従って通路を進むのだった。

 照明が節電で消されてでもいるのか、薄暗い通路を進んでいく美織と優香。
 二人の後ろからも二人ほどの女性がついてくる。
 もしかしたら同じスイミングクラブに行くのかもしれない。

 一瞬、なにか視界が歪んだような気がしたものの、二人は受付カウンターと思われる場所に出る。
 見ると、『アクドスイミングクラブ体験会受付』と書かれた立て札も立っている。
 「ここのようね」
 美織はカウンターまで行って呼び出しボタンを押す。
 するとすぐに奥から女性が一人現れ、カウンターへとやってきた。
 「いらっしゃいませ。体験会の参加希望の方ですか?」
 「あ、はい。二人で」
 美織が指を二本立て、隣の優香がうなずく。
 「ではこちらにお名前をご記入ください。そちらの方々も体験会でしょうか?」
 受付嬢が用紙とペンを差し出し、美織たちのあとからやってきた女性たちにも声をかける。
 「あ、そうです」
 「私も」
 あとから来た二人にも用紙とペンが渡され、自分たちの名前を記入していく。
 「では、あちらが更衣室になりますので、水着に着替えて奥のプールの方にお進みください。水着はレンタルとなりますが、サイズは取り揃えておりますので、ご自身に合うサイズをお選びくださいませ」
 「あ、はい」
 記入を終えた美織と優香は更衣室へと向かうの。
 その後ろ姿を受付嬢の口元には笑みが浮かんでいた。

 「わあ、美織さんってやっぱりスタイルいいですよねー」
 まるでスクール水着のようなレンタルの紺色の水着を身に着け、白のスイミングキャップをかぶった美織に、優香の目が釘付けになる。
 「そ、そんなことないわよ。優香ちゃんだって充分スタイルいいじゃない」
 真正面からスタイルを褒められ、思わず恥ずかしくなってしまう美織。
 確かにノヴァピンクとして鍛えられた彼女の躰は引き締まっていて、いいスタイルなのは間違いない。
 しかも、それが水着によってあらわになっているのだからなおさらだ。

 「私なんて全然ですよぉ。もう少し痩せなきゃぁ」
 ぶんぶんと首を振る優香。
 オペレーターである優香は、当然それほど厳しい訓練をしているわけではない。
 とはいえ、スタイルの良さでは美織に引けを取ってはおらず、美しいのは間違いないのだ。
 だから美織はついつい彼女の言葉に苦笑する。
 まあ、女性というものは、いつだって痩せたいものなのだ。
 「さあ、行きましょ。ほかの人を待たせてはいけないわ」
 「そうですね。行きましょう」
 着替え終わった二人の美女は、更衣室を後にした。

 「へえ、結構立派なものね」
 目の前のプールに感心する美織。
 もちろんオリンピックを行えるようなものではないだろうが、都会のビルのプールにしてはいい感じなのだ。
 「ほんとですね。なんだか私でも泳げそう」
 優香もプールの広さに感心する。
 もしかしてビルのフロアよりも大きいのではないだろうか、とすら思ってしまう広さなのだ。
 覗き防止のためなのか、窓が一切無いので広さがわかりづらいのかもしれない。

 「ええと、お二人も体験会ですか?」
 受付で美織たちの後に続いて来ていたと思われる若い女性二人が話しかけてくる。
 二人とも美織や優香と同じ紺色の水着を着て、頭にはスイミングキャップをかぶっている。
 「あ、はい、そうなんです。ここで泳ぎを習おうかなーって」
 「私たちもなんです。よかった、ほかにも人がいて」
 美織の言葉に笑顔を浮かべて顔を見合わせる二人。
 確かに美織にしても優香にしても、二人だけならなんとなく心細かったことだろう。
 「あ、私は桃浜と言います」
 「私は神高です」
 「私は美村(みむら)と言います。彼女は同僚で……」
 「志月(しづき)と言います。よろしく」
 お互いに自己紹介をしあう四人。
 やがてほかにも更衣室から女性たちがやってくる。
 皆紺色の水着に白いスイミングキャップ姿だ。
 体験会の参加者だろう。
 とりあえず四人は体験会が始まるのを待つことにした。

                   ******

 「キキーッ! ピラニアアクー様、人間の女たちが集まりました」
 先ほど美織たちの受付をした女性が奇声を発して右手を上げる。
 「そう、うふふ……さて、どんな女たちが集まったかしら? 当然選別はしたのでしょう?」
 「キキーッ! もちろんです」
 ピラニアアクーの命令で美しい女性を優先するように受け付けていたのだ。
 「うふふ……それでいいわ」
 赤い唇をピンク色の舌がぺろりと舐める。
 うろこ模様のついた銀色のワンピース水着を着た妖艶な女性だ。
 だが、その正体はアクー魔人ピラニアアクーの擬態である。

 「お前はもういいわ。元の姿に戻って、誰もここには近づけないようにしなさい」
 「キキーッ! かしこまりました。」
 ピラニアアクーの命を受けた受付嬢が答えると、その姿がグニャグニャとうねるように変形し、黒いマネキン人形のような姿に変わる。
 アクードン帝国の戦闘員であるデクアクーの姿だ。
 目も鼻も口もないつるんとしたゆでたまごのような頭部をしており、黒い全身タイツで覆われたような躰をしている。
 闇から作り出される存在で男性型と女性型があり任務によって使い分けられるのだが、今回ここにいるのは女性型だ。
 デクアクーの姿に戻った受付嬢は、そのまま美しい女性型の肢体を惜しげもなくさらし、入り口に向かって歩いていく。
 邪魔な人間を寄せ付けないようにするのだ。
 「さて、では始めましょうか。ふふふ……」
 ピラニアアクーは椅子から立ち上がると、妖艶な笑みを浮かべてプールへと向かった。

                   ******

 「皆様こんばんは。今日は当アクドスイミングクラブの体験会にようこそおいで下さいました。私は当クラブでコーチを務めておりますピラニと申します。よろしくお願いいたします」
 「よろしくお願いします」
 「よろしくお願いします」
 ピラニという名の金髪の外国人女性コーチに擬態したピラニアアクーが挨拶をし、体験会に参加した女性たちも頭を下げる。
 横一列に並んだ女性たちは総勢8名。
 皆紺色の水着と白いスイミングキャップをかぶった美しい女性たちだ。
 うふふ……これはこれは……思った以上にいい素材がそろったみたいだわ。
 目の前に並んだ女性たちを品定めするように見渡すピラニアアクー。
 その目が怪しげに光る。

 まさか外国の方がコーチとは思わなかったわ。
 美織は目の前に立つコーチの美しさに驚いていた。
 やや灰色っぽい銀色の競泳水着を着たそのスタイルは引き締まっていて、まさにグラビアモデルとしても通りそうだし、金色の長い髪と白い肌、そして赤い唇が印象的なのだ。
 水泳のコーチともなるとここまで美しくなるものだろうか?
 うらやましいわぁ。
 美織は思わずそんなことを考えてしまう。

 「さて、皆さん。今日は皆さんにとって記念すべき日です。この体験会であなた方は水の中を自由自在に泳ぐマーメイド部隊の一員となるのですわ。オホホホホ……」
 口元に手の甲を当てて笑うピラニ。
 彼女の目的はここで水中戦専用の戦闘員を作り上げることだったのだ。
 もちろんここにいる人間たちが皆泳げないことも構わない。
 どうせ肉体改造と洗脳を行うのだから。

 マーメイド部隊?
 何の事だろうと美織は思う。
 ほかの女性たちも同じように思ったようで、お互いに顔を見合わせて不安そうにしている。
 ただのスイミングスクールの体験会ではないのだろうか?
 何かあるとは思わないものの、美織はそっと左手首に付けたノヴァスーツ着用のためのブレスレットに右手を伸ばした。

 「キキーッ!」
 「キキーッ!」
 突然ガラガラという音と奇声が響き、全身真っ黒な男たちが現れる。
 もちろん彼らはアクードンの戦闘員デクアクーであり、体験会に来ていた女性たちを囲んでいく。
 「きゃぁーっ!」
 「いやぁーっ!」
 恐怖のあまり悲鳴を上げる女性たち。
 それとは別に、女性コーチピラニの背後には人間がすっぽりと入りそうな灰色のカプセルのようなものが運び込まれてくる。
 その様子をピラニはにやにやと笑みを浮かべながら眺めていた。

 突然現れたデクアクーたちに身構える美織と優香。
 こんなところでアクードンが現れるとは思わなかったものの、訓練された肉体はすぐに反応するのだ。
 美織はすぐにノヴァスーツの着用をするべくブレスレットのスイッチに指をかける。
 優香もオペレーターとはいえ戦闘訓練を受けている女性であり、ただちに身構えて戦闘態勢をとる。
 だが、二人の動きをピラニは見逃さなかった。
 「おっと、そこの二人、動くんじゃないよ! 動くとほかの人間が死ぬことになるわ」
 「キキーッ!」
 ピラニの目配せに反応し、すぐさまデクアクーの一体が女性の首筋にナイフを突きつける。
 先ほど一緒に受付をした志月という女性だ。
 「ひっ!」
 ギラリと輝くナイフに、思わず声が出てしまう。

 「ひ、卑怯よ!」
 美織は一瞬遅かったことに唇を噛む。
 いや、たとえスーツを着用していたとしても、人質を取られては戦えなかっただろう。
 美織はピラニというコーチをにらみつけるしかない。
 「なんとでもお言い。それにしてもお前はただ者ではないね? その腕に着けているものが何か知らないけど、外して床に捨てなさい」
 「くっ……」
 ピラニの言葉にしまったと思う美織。
 中途半端にブレスレットに手をかけたことで、このブレスレットのチェンジ機能を怪しまれてしまったのだ。
 今更これは特別なものではないとごまかしたところで遅いだろう。
 仕方なく美織はブレスレットを外して床にそっと置く。
 もちろんその時に救援要請信号のスイッチを押すことは忘れない。
 これで本部に美織の危機が伝わるはず。
 あとは祐司と健太が駆けつけてくれるのを待てばいい。

 「ふふふ……それでいいのよ。お前たち、その女を押さえつけなさい!」
 「「キキーッ!」」
 ブレスレットを置いた美織の両腕を、デクアクーたちが取り押さえる。
 ほかの女性たちが人質に取られている以上、美織は抵抗したくてもできないのだ。
 それは優香も同じことで、彼女もおとなしく両腕をデクアクーたちにつかまれていた。
 祐司……健太……早く来て……
 美織はそう願うしかない。

 「うふふふ……どうやらおとなしくなったようね。もうこんな擬態をしている必要もないわ」
 ピラニがそういうと、彼女の美しい姿がグニャグニャと歪んでいく。
 「ひっ!」
 「きゃぁーーーっ!」
 女性たちが悲鳴を上げる中、じょじょに形を変えていくピラニの躰。
 やがてそれは人間の女性のようなスタイルをしているものの、全身を銀色のうろこに包まれ、腕と足の両サイドにひれのようなものを持ち、指先には鋭い紫色の爪が輝く躰へと変化する。
 顔も美しかった顔は大きな口に鋭い歯を持つ魚のような顔となり、頭から背中にかけて背びれが広がっていた。
 それはまさに人間の女性とピラニアが融合したような姿であり、アクー魔人ピラニアアクーの姿に他ならなかった。

 魚人女性2

 「アクー魔人!」
 擬態を解いたピラニアアクーの姿に、思わず美織は声を出してしまう。
 「うふふ……やはり私たちのことを知っているようね。まあいいわ。お前が何者かはお前の口から聞かせてもらいましょう」
 口元ににやりと笑みを浮かべるピラニアアクー。
 鋭い歯が並んでいるのが見える。
 「私が何かしゃべるとでも?」
 決意を秘めたように美織はピラニアアクーに鋭い視線を向ける。
 「おほほほ……お前は何でもぺらぺらとしゃべるようになるわ。私の配下、水中戦用戦闘員のマーメイド部隊の一員になればね」
 「水中戦用戦闘員?」
 美織はハッとする。
 そのために彼女たちはここに集められたのだ。
 なんてこと……

 「おあいにく様ね。残念ながら私は泳げないのよ」
 自嘲するようにふふっと笑う美織。
 まさか泳げないことが役に立つことになるとは……
 「あら、それは構わないのよ。どうせ今からお前たちの肉体を改造し、水中戦用にふさわしい肉体にするのだから。むしろ変に泳げない方が好都合ね」
 「そ、そんな……」
 愕然とする美織。
 「ふふふ……それじゃまずはお前からにしましょう。私のかわいいマーメイドにしてあげるわ。オホホホホ……その女をカプセルに!」
 「「キキーッ!」」
 美織の腕を両側からつかんだデクアクーたちが奇声を上げる。
 「くっ、離しなさい!」
 なんとか抵抗しようとする美織だが、さすがにノヴァスーツを着ていない状況ではデクアクーに歯が立たない。
 「美織さん!」
 同じように両腕をつかまれた優香が、心配そうに声をかける。
 「心配しないで優香ちゃん。きっともうすぐ二人が来るから!」
 美織は優香に向かって安心するように笑顔を見せる。
 そのはずなのだ。
 きっと今頃二人はこっちに向かっている。

 「そうそう。気付いていないようだけど、ここはすでにアクー空間なの。はたしてあなたが送った信号は届いているのかしらね? オホホホホ……」
 カプセルに入れられる直前の美織にピラニアアクーの笑い声が浴びせられる。
 「えっ?」
 愕然とする美織。
 そんな……いつの間に……
 「くっ! しまっ……」
 なんとかデクアクーたちの隙を見つけようとしていた美織だったが、愕然とした一瞬にふたを開けた灰色のカプセルに放り込まれてしまう。
 すぐさま立ち上がって出ようとしたものの、無情にも閉じてきたふたが彼女を中に閉じ込めてしまう。
 「こんなこと……私は、負けな」
 美織の言葉を遮るようにふたが完全に閉まり、美織の姿が見えなくなる。
 「うふふふ……それはどうかしらね」
 ピラニアアクーが笑みを浮かべて見つめる中、カプセルはウォンウォンとうなりを上げ始めるのだった。

 「くっ! 開かない」
 閉じ込められた美織はなんとかカプセルのふたを開けようとするが、まったくびくともしない。
 アクー魔人は自分をマーメイドにすると言っていた。
 するとこのカプセルは何らかの肉体改造をするものなのかもしれない。
 早く外に出ないと取り返しがつかないことになるかもしれない。
 早く外に出ないと……
 早く外に出てみんなを助けなければ……
 ここから出てアクードンの……
 アクードンの邪魔を……
 アクー魔人を倒そうとする……
 アクー魔人ピラニアアクー様に捕らわれているみんなとともに……
 ああ……躰が熱い……
 なんだか頭もぼうっとする……
 早く出なくちゃ……
 早く出てピラニアアクー様の手助けを……
 アクードンの邪魔をする連中を排除して……
 ああ……熱い……

 デクアクーたちに囲まれたまま女性たちが息をのんで見守る中、やがてカプセルのうなりが止む。
 ゆっくりとカプセルのふたが開き、中から美織が立ち上がって姿を見せる。
 だが、それは先ほどまでの美織とは異なっていた。
 彼女の着ていた紺色の水着は、やや灰色がかった銀色のうろこ模様の競泳水着のように変化しており、両手も肘から先が同じ色のうろこ模様の手袋を嵌めたようになっていた。
 カプセルから踏み出した足もひざ下が同じようにうろこ模様のブーツを履いたように変化しており、そのつま先は足ひれのように先が広がっていた。
 指先は鋭い爪が伸び、指の間には水かきが作られており、冷たく笑みを浮かべた口からはギザギザの鋭い歯が覗いていた。
 目元にはアイシャドウが引かれていてその眼差しは冷たく、以前の美織の優しさは影を潜めていた。
 美織は無言でカプセルを出ると、足ひれ状になった足にペタペタと音を立てさせながら、そのままゆっくりとピラニアアクーのもとへと歩いていく。

 「キキーッ!」
 ピラニアアクーの前でスッと右手を上げ、奇声を発する美織。
 それはデクアクーたちがアクー魔人やアクードンに対して行う行為に他ならない。
 「そんな……美織さん……」
 美織の変化に思わず息を飲む優香。
 「オホホホホ……改造が終わったようね。マーメイド部隊の一員になった気分はどうかしら?」
 またしても口元に手の甲を当てて笑うピラニアアクー。
 人間を水中戦専用の戦闘員にするというアイデアは、思った以上に有効のようだ。

 「キキーッ! はい。とてもいい気分です。私はもうトリプルノヴァの一人ノヴァピンクなどではありません。私はピラニアアクー様にお仕えするマーメイド部隊の一人、マーメイド1(ワン)。このような素晴らしい躰にしていただきありがとうございます!」
 自分自身と周囲にも言い聞かせるように声を響かせる美織。
 いや、彼女はもうピラニアアクー配下のマーメイド部隊の一員、マーメイド1だった。

 「オホホホホ……そう、お前はノヴァピンクだったのね。でも、これからは私のために働くのよ」
 「キキーッ! もちろんですピラニアアクー様。どうぞこのマーメイド1になんなりとご命令を」
 ピラニアアクーの言葉にマーメイド1が誇らしげに答える。
 「それでいいわ。それじゃ次はお前がマーメイド2(ツー)を作りなさい」
 「キキーッ! かしこまりました、ピラニアアクー様」
 命令を受けたマーメイド1はうれしそうに返事をし、恐怖に震えている女性たちの方を向く。
 そして冷たい笑みを浮かべ、ゆっくりと近づいて行った。

 「そんな……美織さん……」
 まっすぐに自分のところに来たマーメイド1に、優香は思わずそうつぶやく。
 「うふふ……私はもうそんな名前じゃないわ。私はピラニアアクー様にお仕えするアクードンのマーメイド部隊の一員、マーメイド1なの」
 以前の美織では決して見せないような冷たい笑みを浮かべているマーメイド1。
 「ああ……そんな……」
 優香はショックを隠せない。
 地球を守るべきトリプルノヴァの一人、ノヴァピンクがアクードンの手に堕ちてしまったのだ。
 いったいどうすればいいというのか……

 「そんな悲しい顔はしなくていいのよ。見て、この素晴らしい躰を。水中を自由自在に泳げるわ。この爪で人間どもを引き裂いてやるの。うふふふ……あなたもすぐにこの素晴らしさがわかるわ」
 「そんな……美織さん、目を覚まして!」
 鋭くとがった爪をかざすマーメイド1に、優香はかすかな希望を込めて美織の名を呼ぶ。
 「言ったでしょ。私はもう桃浜美織なんかじゃないと。次に私をそんな名前で呼んだら殺すわ。マーメイド部隊のメンバーは別にあなたじゃなくてもいいのよ」
 途端に表情が険しく殺気立つマーメイド1。
 優香は思わず息をのんで言葉を失う。
 「さあ、死にたくなければカプセルに行きなさい」
 「い……いや……いやです」
 小さく首を振る優香。
 マーメイド部隊になど入りたくはない。
 「そう……じゃあ死ぬ?」
 「ひっ!」
 優香の頬に一筋の切り傷が作られ、血がにじんでくる。
 マーメイド1が爪で切り裂いたのだ。
 「ああ……」
 戦闘の訓練もしているとはいえ、オペレーターである優香の心が折れてしまう。
 「ほら、さっさと行きなさい」
 マーメイド1の爪で小突かれるように押され、優香はうなだれて歩き出す。
 ほかの女性たちからはすすり泣く声が聞こえる中、優香はカプセルに入れられた。

                   ******

 「「「キキーッ!」」」
 一斉に右手を挙げて奇声を上げるマーメイド部隊の女性たち。
 皆一様に冷たい笑みを浮かべ、誇らしげに胸を張っている。
 躰には灰色がかった銀色のうろこ模様の水着を身にまとい、両手両足も同色同模様の手袋とブーツが覆っていた。
 手袋の指先には鋭い爪が輝き、指の間には水かきが付いている。
 足のつま先も泳ぎやすいように広がって足ひれのようになっていた。
 先ほどまでとはうって変わって冷酷な光をたたえるその目は、自らがマーメイド部隊の一員であるという誇りに満ちている。
 体験会にやってきた女性たち八人は、今やアクードンの水中戦用戦闘員マーメイド部隊のマーメイド1からマーメイド8(エイト)へと変貌していたのだった。

 「オホホホ……いい眺めだわ。お前たちは私のかわいいマーメイド部隊。これからは私とアクードンのために働くのよ」
 「「「キキーッ!」」」
 彼女たちの前に立つピラニアアクーの言葉に、再び奇声を上げるマーメイドたち。
 先ほどまでの恐怖におびえた表情は消え去り、邪悪な笑みが彼女たちを彩っていた。

 「いい子たちねぇ。それじゃお前たちにまず楽しみを教えてあげるわ。獲物を連れてきなさい」
 「キキーッ!」
 今度はデクアクーたちが奇声を上げ、ピラニアアクーの指示に従ってプールから出ていく。
 そしてスーツ姿の会社帰りと思われる中年男性とジーンズ姿の若い男性を連れてきた。
 「な、なんだ、お前たちは?」
 「なんなんだよこれ!」
 困惑と怒りを表情に浮かべている男たち。
 だが、ピラニアアクーが軽く手を振ってデクアクーたちに命じると、二人はプールに突き落とされてしまう。
 「うわぁっ、何をする!」
 「てめえら、ふざけんな!」
 プールはそれなりの深さがあるのか、二人の男たちはなんとか水面に顔を出して息をする。
 足が底に着かないので、立ち泳ぎのような格好だ。
 スーツの中年はスーツが水を吸って重そうであり、すでにカバンは手を離れていた。

 「オホホホ……さあかわいいマーメイドたち、お行きなさい。獲物よ」
 「「「キキーッ!」」」
 ピラニアアクーの言葉に一斉に奇声を上げ、プールへと駆け出していくマーメイド部隊の女たち。
 いずれも獲物を見て目を色を変えたかのように水中へと飛び込んでいく。
 「わっ、わわっ」
 「な、なんだ?」
 そして両足のひれを使って男たちの周りを円を描くように泳いでいく。
 皆一様に薄く笑みを浮かべ、その目は水中の男たちに向いていた。
 水中戦用に改造された彼女たちは、水中でも呼吸ができるようになっており、目もゴーグルなどなくても水中で明瞭に見えるのだ。

 一向に水面に顔を出さずに泳ぎ続ける女性たちに、男たちは恐怖を感じる。
 うろこ模様の水着とも相まって、まるで半魚人女性のようなのだ。
 逃げようにも囲まれている状況では逃げることもできない。

 「キキーッ!」
 「キキーッ!」
 やがて一斉の両手の鋭い爪をかざして男たちに襲い掛かるマーメイド部隊。
 「ギャーッ!」
 「うわぁーっ!」
 あっという間に男たちの躰が切り裂かれてずたずたになっていく。
 やがて肉の塊のようになった二つの死体が浮き、水面が血で染まっていく。
 マーメイドたちは水面に顔を出して冷たい笑みを浮かべると、そのままプールから上がってピラニアアクーの元へと戻っていった。

 「オホホホホ……よくやったわ。獲物を切り刻んだ気分はどうかしら?」
 「キキーッ! 最高です!」
 「キキーッ! とてもいい気分です。ピラニアアクー様」
 「キキーッ! 人間を切り裂くのがこんなに楽しいとは思いませんでした。ピラニアアクー様」
 口々に喜びを言い合うマーメイドたち。
 マーメイド1となった美織も、マーメイド2となった優香も血に濡れた自分の爪を見てうっとりと笑みを浮かべている。
 「オホホホホ……それでいいわ。お前たち、これからはアクードンのためにたっぷりと人間どもを切り刻みなさい」
 「「「キキーッ! はい、ピラニアアクー様! アクードンに栄光あれ!」」」
 マーメイドたちが再び一斉に右手を上げる。
 それを見て、ピラニアアクーは満足そうに微笑んだ。

 「それではマーメイド1とマーメイド2以外は下がりなさい。デクアクーがお前たちに部屋を割り当てるわ。それに従いなさい」
 「「「キキーッ!」」」
 ピラニアアクーに言われ、マーメイド3からマーメイド8までがその場を去る。
 残った二人をピラニアアクーが手招きする。
 「ふふふ……お前たちはトリプルノヴァの一員だったわね」
 「キキーッ! ピラニアアクー様、それは昨日までのこと。今の私はピラニアアクー様にお仕えするマーメイド部隊の一員、マーメイド1です」
 「キキーッ! 私もです。私はマーメイド2です」
 かつての美織と優香はそのことを否定する。
 二人にとってはもうトリプルノヴァは敵なのだ。

 「オホホホ……そうじゃないわ。お前たち、以前の姿に擬態しなさい。できるはずよ」
 「キキーッ! かしこまりました」
 「キキーッ!」
 二人が両手を顔の前にかざすと、その姿が変化して以前の美織と優香の姿に変化する。
 それはどこからどう見ても以前のままの姿であるが、ただ、その顔には冷酷で冷たい笑みが浮かんでいた。
 「それでいいわ。お前たちはその姿で何食わぬ顔をしてトリプルノヴァのところに戻りなさい。そして内部からかく乱するのよ。いいわね」
 「キ……かしこまりました、ピラニアアクー様」
 「必ずやトリプルノヴァにダメージを与えてやります」
 思わず奇声を上げようとしてしまったのを必死にこらえ、二人はピラニアアクーの命にうなずく。

 「さあ、行きましょうマーメイド2……じゃなかった優香ちゃん。ふふ……気を付けないとダメね」
 「そうですよマーメイド1……じゃなく美織さん。お互いに気を付けましょうね」
 二人は思わず苦笑しながら歩いていく。
 その姿を見送り、ピラニアアクーは望外の成果に笑いがこみあげてくるのを抑えることができなかった。

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントなどを頂けますと嬉しいです。

明日はもう一本別のSSを投下する予定ですのでお楽しみに。
今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2024/01/02(火) 19:00:00|
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一緒にお出かけ

今日は10月10日ですね。
この10月10日を1010と見立て、せんとお(千十)と読むことで、この日を特撮・アニメ系に登場する雑魚敵ともいうべき「戦闘員」を愛でる日にしようということで、以前より「10月10日は(特撮・アニメ系の)戦闘員の日」ということを提唱させていただいておりますです。

おかげさまで多くの方にも賛同いただきまして、いくつもの「戦闘員」にまつわる作品が投下されております。
ありがとうございます。
ヾ(゚ー゚*)ノ゙

ということで言い出しっぺであろう私も一本SSを投下します。

タイトルは「一緒にお出かけ」です。
誰とどこに行くことになるのか、お読みいただければと思います。

それではどうぞ。


一緒にお出かけ

 「ねえ、梨緒(りお)、土曜日ショッピングに行くつもりなんだけど、一緒に行かない?」
 帰り道、いつも一緒に帰る梨緒に、私はお誘いをかけてみる。
 「え? 行く行く。何買うの? どこ行くの?」
 思った以上に即答され、私はなんだか驚いてしまう。
 このところテストだなんだとストレスが溜まっていたからなのかもしれない。
 ショッピングで気晴らししたいもんね。

 「んと、とりあえず服をいくつかとコスメも見たいかな。でも特に何を買うとかは決めてるわけじゃないの」
 言ってしまえば私にとってショッピングは口実だ。
 梨緒とお出かけしたいのが本当のところであり、何も買わなくても商店街をぶらぶらして、どこか適当なところでお茶しながらあーでもないこーでもないとおしゃべりして楽しみたいのだ。
 「いいね。私もそろそろ新しい服とか見たかったし、行こ行こ」
 梨緒もうんうんとうなずいている。
 「それじゃ決まりね。土曜日迎えに行くわ。あーあ……明日がすぐ土曜日ならいいのに」
 「あはは……そだねー」
 残念ながら明日は金曜日で学校だ。
 でもこうして土曜日にお出かけできるとなれば、明日はウキウキ気分で過ごせるというもの。
 それはとてもありがたいことだ。

 「それじゃまたね」
 「うん。また明日」
 いつもの十字路で私たちは別れあう。
 私はまっすぐで梨緒は左。
 残念ながら一緒に帰れるのはここまで。
 私は手を振って梨緒と別れる。
 梨緒も私に手を振って去っていく。
 明日までほんのちょっとお別れ。
 明日はまた学校で。

                   ******

 今日、梨緒は学校に来なかった。
 私が送ったメッセージも既読が付かない。
 いつもなら、『ごめん、風邪ひいちゃったみたい。学校休むわ。明日も行けないかも。ほんとごめーん』って感じでメッセージが送られてくるのに……
 いったいどうしたんだろう……
 昼休みに電話を掛けたけどつながらなかったし……
 心配だよ……

 帰り道、私はいつもの十字路を左に曲がる。
 梨緒の家に寄ってみるつもり。
 私と梨緒はお互いの家は知っているし行き来もある。
 調子悪くて顔を出せないにしても、梨緒のお母さんに様子をうかがうことはできるはず。
 様子がわかればそれでいいのだ。

 そういえば梨緒とは一年の時からだっけ……
 たまたまクラスが同じになって、たまたま席が隣同士になって、話してみたらお互いに何となく気が合って……
 考えてみれば奇跡みたいなものだよねー。
 知り合ってみればお互いに近所だったとはいえ、それまでは面識もなかった同士だったしね。

 ここだ。
 私は住宅街の一軒家にやってくる。
 うちも一軒家だけど、梨緒の家は庭付きの大きな家。
 以前お庭でバーベキューやるということでお呼ばれしたんだよね。
 いいよねー、バーベキュー。

 私は玄関のところに行ってインターホンのボタンを押す。
 しばらく待つけど返事がない。
 もう一度押してみる。
 やっぱり返事はない。
 留守……かな?
 梨緒、家にいないのかな?

 どうしようかなと思っていると、カチャッと鍵の開く音がしてドアが開く。
 「え?」
 その瞬間、家の中から何か妙な金属のようなにおいが漂ってきたのを感じたが、それ以上に私は姿を現した梨緒に息を飲んだ。
 まだ外は暑いというのにロングのコートを羽織って前を閉じ、黒いロングブーツを履いている。
 そしてそれ以上に彼女から私に向けられた視線が、まるで氷の刃のように冷たく鋭かったのだ。

 「あ……梨緒」
 「……何しに来たの? 帰って! 早く!」
 梨緒の冷たい言葉に私は衝撃を受けてしまう。
 「あ……その……どうしたのかな……と」
 「どうもしないわ。早く帰って!」
 まるで迷惑な押し売りでも来たかのような目で、私をにらみつけてくる梨緒。
 いったいどうしてしまったんだろう……
 私が何か梨緒を傷つけるようなことでもしてしまったのだろうか?

 「あ……と、突然来て、ご、ごめん……」
 「……」
 私が突然お邪魔したことを詫びると、梨緒の表情が一瞬緩む。
 「私の中に残るあなたへの思いに免じて忠告するわ。早くここから立ち去って。そして二度と来ないで。私のことは忘れて」
 梨緒はそう言うとドアをバタンと閉じてしまう。
 「えっ? それはどういう……」
 すでに私の前にあるのは閉じられたドア。
 「梨緒……」
 閉ざされたドアは開く気配はない。
 私は何が何だかわからないまま、その場をを後にするしかなかった。

                   ******

 「ん……う……」
 私はふと目を覚ます。
 あれ?
 下の方でなんか物音がしたような……
 気のせいかな?

 今何時だろう?
 私は枕元の時計に目を向ける。
 まだ深夜の2時半。
 もう一度寝よう。
 明日は早く起きて支度して梨緒と……

 私はハッとする。
 そうだ……
 明日は梨緒とは……
 私はまた悲しくなる。
 あの後のことはよく覚えてない。
 お母さんが言うには半分泣きながら帰ってきたらしい。
 晩御飯もほとんどのどを通らなかったんだっけ……
 私……
 梨緒に嫌われたのかな……

 ギシッと何かの音がする。
 違う……
 気のせいなんかじゃない。
 何かが下で起きている?

 私はそっとベッドを抜け出す。
 もしかして泥棒?
 いつでも通報できるようにスマホを持って行った方がいい?
 私は充電コードを抜いてスマホを手に取る。
 不思議なもので、これがあるだけで心強く感じる。
 でも、下にはお父さんとお母さんがいたはず。
 二人はどうしたんだろう。

 私はそっと部屋を出ると、ゆっくりと階段の方に行く。
 階段の角から下をそっとのぞき込むが、明かりは点いていなくて真っ暗だ。
 「このにおい……」
 下からかすかに漂ってくるにおい。
 つい最近嗅いだような……
 梨緒の家?
 あのにおい?
 いったい何のにおいなの?

 私はそっと階段に足をかけ、ゆっくりと下り始める。
 音が立たないようにゆっくりとそっと。
 何かがいる気配がある。
 何かが……
 いったい何が?

 階段を降り切った私は、またそっと角から先を覗いてみる。
 この先は和室兼寝室があり、その奥にリビングがある。
 音はもうしなくなっているが、気配はリビングの方だ。
 私はいつでも警察を呼べるように通話先を入力し、あとは発信ボタンを押すだけにしておく。
 あとは何なのか確認して……

 そっと廊下を進む私。
 暗いけど、窓から月明かりが差し込んでいるので見えないことはない。
 においがだんだん強くなる気がする。
 いったい何のにおいなんだろう。

 私は和室兼寝室の前まで来る。
 ここはお父さんとお母さんが寝ている部屋だ。
 私はお父さんとお母さんに声をかけようか迷ったが、何者かに気付かれても困るのでそれはやめ、そっと中を覗いてみる。
 「えっ?」
 私の手からスマホが落ちる。
 室内には黒い何かが撒き散らされたように飛び散っていた。
 布団は乱雑に乱れ、寝ていたはずのお父さんもお母さんも、まるで暑くて寝苦しかったかのように両手両足を放り出し、目を見開いていた。
 着ていたパジャマもずたずたになって黒く染まっていて、さっきから気になっていたにおいが部屋中に漂っていた。

 一目でわかった。
 お父さんもお母さんも死んでいるということが……
 このにおいが血のにおいだったことが……
 あの時どうして梨緒の家でこのにおいがしたのだろう?
 そんなことが頭をよぎる。

 「ひ……」
 悲鳴を上げようとした私の口が誰かの手でふさがれる。
 「騒ぐな。騒ぐと殺す」
 静かに耳元でささやかれる声。
 それは何度も聞いた聞き覚えのある声。
 梨緒の声だ……
 どうして?
 どうして梨緒がここにいるの?

 「来い」
 私は口をふさがれたまま、右手を後ろ手に捻り上げられる。
 痛っ、痛い!
 ものすごい力で右手を掴まれていて、とても振りほどけない。
 梨緒って、こんな力が強かったっけ?
 口をふさがれているので、悲鳴を上げることも無理。
 どうして梨緒がこんなことをするのか?
 彼女はどうしてしまったのか?
 私にはさっぱりわからない。
 警察を呼ぼうにも、先ほどスマホは落としてしまった。
 おとなしくしてないと、私も殺されるのだろうか?

 私は梨緒に押されるように歩き出す。
 梨緒は私をリビングに連れていくようだ。
 もしかしたらそこに他の人がいるのかもしれない。
 もしかしたら……もしかしたら梨緒はその人に騙されてそそのかされているのかも……

 リビングには何かがいた。
 カーテンが開いてて、そこから外の明かりが差し込んでいて、暗い中でもその姿がわかる。
 梨緒に口を押えられていなければ、私は悲鳴を上げていただろう。
 彼女に右手を捻り上げられていて動けないことが、私を逆に冷静にさせていたのかもしれない。

 テーブルに腰かけていたのはカマキリだった。
 いや、カマキリのような格好をした人だ。
 それも女性。
 両胸がおわん型に突き出ている。
 頭はカマキリの顔のような面を着けているみたいに見える。
 額からは触覚も伸びている。
 お腹の部分は緑色をした硬そうな外皮に覆われていて、それ以外の部分は何か黒いタイツのような感じだ。
 両手はカマキリの鎌のようになっていて胸の前で組まれている。
 両足はハイヒールのブーツのようになっていて、こちらも太もものところで組んでいた。
 なんというか……どこかカマキリのコスプレをした女性のようにも見えないこともない。
 いったい彼女は何者なの?

 そして彼女の両脇にも人がいた。
 こちらは若い女性たち。
 多分私と同じくらいの年齢で、二人ともとても美人。
 驚いたことに二人とも躰の線が露出するレオタードを着て、足には網タイツとブーツを穿いている。
 腰のところには何かの紋章の付いたベルトを締め、紋章が外からの明かりを反射していた。
 二人はまるでカマキリ女の付き人であるかのように、無言でそばに立っていたのだ。

 「K12、その娘がお前の言っていた娘なの?」
 「キーッ! その通りです、カマキリガ様」
 私の口をふさいでいる梨緒が、カマキリの女に答える。
 やっぱり梨緒はこの女性に何かされたに違いない。
 どうしたらいいの?

 「キーッ!」
 「キーッ!」
 カマキリの女が手首を振ると、両脇に立っていた女性たちが奇妙な声を上げて私の方へとやってくる。
 そして梨緒が私の右手から手を離したタイミングで左右から私の腕を掴み、逃げられないようにした。
 そんなに力を入れているようには見えないのに、やはり私は全然腕が動かせない。
 梨緒と同じくすごい力だわ。

 「死にたくなければ大声を上げないこと。カマキリガ様がお前の顔を見たいとの仰せよ」
 耳元でささやく梨緒に私はうなずく。
 大声で助けを呼んでも、おそらく助けが来る前に殺されてしまうに違いない。
 梨緒の手がそっと私の口から離れ、私はしゃべれるようになる。
 そしてそのまま私の脇を通り、カマキリの女のところに歩いていく。
 私は驚いた。
 梨緒も私を押さえつけている女性たちと同じ服装だったのだ。
 黒いレオタードを着て、足には網タイツとブーツを履き、腰にはベルトを締めている。
 そしてベルトにはナイフと思われるものが鞘に収まっていた。

 「梨緒」
 私は思わず彼女を呼ぶ。
 「私はもう梨緒なんて名前じゃないわ。私はカマキリガ様にお仕えする女戦闘員K12よ」
 カマキリガという名前らしいカマキリ女のところに行った梨緒が振り返り、ものすごく冷たい目で私を見る。
 「そんな……梨緒……」
 私は言葉を失う。
 どうして彼女はそんなことを言うの?

 「うふふ……へえ、結構かわいいじゃない。気に入ったわ。この娘も配下に加えましょう。K12、お前のミスは帳消しにしてあげる」
 「ありがとうございます、カマキリガ様」
 梨緒がうれしそうにひざまずく。
 「あなた……梨緒に……彼女に何をしたの?」
 梨緒がこんなことになったのは、きっとあのカマキリ女のせいなんだわ。
 「うふふ……この娘は昨日……いえ、もう一昨日かしらね。見かけて気に入ったから私の配下にしたの。今では私のかわいい戦闘員。そうでしょ、K12?」
 「キーッ! その通りです、カマキリガ様」
 右手を斜めに上げて答える梨緒。
 そんな……気に入って配下にって……

 「お父さんとお母さんを殺したのもあなたなの?」
 「うふふふ……ええ、そうよ。私たちの姿を見た可能性がある者を生かしてはおかないわ。本当ならあなたも死ぬはずだったのよ」
 「えっ?」
 私も?
 「あなた、K12が以前の家族を殺した現場に来たでしょ? 本当ならK12はあなたを殺さなければならなかったの。でも見逃した。いけない娘ねぇ。だから私が殺しに来たわけ」
 「そんな……」
 あの時梨緒は自分のお父さんややお母さんを殺していたと?
 あのにおいはそういう?

 「でもよかったわね。あなたはかわいいから私の配下に加えてあげる。光栄に思いなさい」
 「配下に?」
 「ええ、あなたも私のかわいい女戦闘員になるのよ」
 まるでカマキリの面がニヤッと笑ったような気がして、私はゾッとした。
 「いやっ! そんなのいやっ!」
 私は掴まれた腕を振り払おうとするが、全然びくともしない。
 「この娘を連れて行きなさい。K12、お前はあとしまつを」
 「キーッ! かしこまりました。死体を消去します」
 「いやっ! 離して! 誰か……あっ」
 叫ぼうとした私の顔に何かスプレーが吹きかけられ、私の意識は遠くなった。

                   ******

 「K12、こっちはOKよ。警備員は始末したわ」
 私はナイフをベルトの鞘に収めて声をかける。
 うふふ……
 人間の警備員程度が私たち女戦闘員にかなうはずないわ。
 忍び寄って殺すなど簡単なこと。

 「こっちもOKよ、K13」
 K12もナイフを仕舞いながらやってくる。
 これで見張りはいなくなったわ。
 あとはターゲットを始末するのみ。
 中程度の重要性しか持たない人間の暗殺など私たちだけで充分。
 わざわざカマキリガ様がお姿を見せることもないというもの。
 うまくターゲットを始末し、カマキリガ様に喜んでいただきたいわ。

 「行きましょ、K12」
 「ええ、K13」
 私はK12とともに闇の中へと進んでいく。
 なぜかK12とは息が合うので、彼女と組むのはとてもうれしい。
 彼女もそう思ってくれているといいな。
 私はK12と一緒に、ターゲットのいる部屋へと音もなく忍び寄るのだった。

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントなどいただけますとうれしいです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2023/10/10(火) 21:00:00|
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前任者の意思を継がされた女

今日から当ブログは19年目に突入です。
あと2年続ければ20年ですよ。(笑)
そこまで続けられるといいなぁ。
(*´ω`)

ということで、今日は18周年記念ということでSSを一本投下します。
タイトルは「前任者の意思を継がされた女」です。

それではどうぞ。


前任者の意思を継がされた女

 「ぬおおお! おのれ斬剣戦隊めーーー!」
 全身の黒い鎧にあちこちひび割れを生じ、がっくりと膝をつくアルメ団の幹部キュイラス。
 さんざん地球で暴れまわり、人々を苦しめてきた大男にもついに最後の時が来たのだ。
 人々の幸せを願い、必死にアルメ団と戦ってきたソードイエローの黄森裕美(きもり ゆみ)にとっても、待ち望んできた瞬間だ。

 よろよろとしながらも手にした巨大ハンマーを杖代わりにして立ち上がり、ヘルメットの下のいかつい顔を上げ、その目で彼女たち斬剣戦隊の五人をにらみつけてくるキュイラス。
 瀕死の重傷を負ってもなお戦おうとするその姿は、さすがに地球を狙うアルメ団の幹部にふさわしい。
 だが、裕美たち五人にとっては憎むべき敵であり、倒さねばならない相手なのだ。

 「ぐふっ……このままでは終わらんぞ……必ず俺の意思を継ぐ者が……クククク……」
 ニヤッと笑みを浮かべて不気味に笑うキュイラス。
 そして杖代わりの巨大ハンマーをゆっくりと持ち上げる。
 なんという気力だろうか。
 もはやそんな力は残っていなかっただろうに……

 「とどめだ! ソードパワー!」
 「「「ソードパワー!」」」
 ソードレッドの声にブルー、イエロー、ピンク、グリーンが唱和する。
 それぞれが高く掲げた剣に力が集中し、光となって現れる。
 「「「レインボーカッター!!」」」
 掛け声とともにレッドの剣にそれぞれの光が集中し、五色の光の剣となって振り下ろされる。
 「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!」
 光の剣がキュイラスを真っ二つに切り裂いたようにその躰を通り抜け、断末魔の悲鳴が上がる。
 何体ものアルメ団の装甲獣を葬ってきた無敵の必殺技だ。
 さすがのキュイラスとはいえ、ひとたまりもないだろう。

 ドサッとその場に倒れるキュイラス。
 「ふう……」
 思わずソードレッドが息をつき、他の四人も集中を解く。
 裕美はすぐにピクリとも動かなくなったキュイラスに近づくと、その死を確かめるためにかがみこむ。
 「ひっ!」
 小さく悲鳴を上げる裕美。
 突然キュイラスの目が開き、その手がガシッと裕美の足を掴んできたのだ。
 「イエロー!」
 「イエロー!」
 すぐにほかのメンバーも駆け寄ってきて、裕美の足からキュイラスの手を引きはがす。
 「こ、これで……ぐふっ」
 引きずられるようにしてソードイエローから引き離されたキュイラスはそれだけ言って絶命し、その躰は塵になって崩壊する。
 「大丈夫か、イエロー?」
 「え、ええ。突然掴まれたからびっくりしたけど、大丈夫」
 裕美は掴まれた自分の右足をじっと見る。
 確かにケガをしたり痛みがあったりするわけではない。
 どうやらただ掴まれただけのようだ。
 「そうか。よかった」
 「まったく……驚かせやがるぜ」
 レッドもブルーもほっと安堵したようだ。
 イエローを道連れに自爆でもされるのではと思ったのだ。
 「とにかくこれでキュイラスは死んだ。戻って司令に報告しよう」
 「ああ」
 「ええ」
 五人は着ていたバトルスーツを解除すると、急いで基地へと戻るのだった。

                   ******

 「ふう……疲れちゃったのかな?」
 シャワーを浴び終え、パジャマに着替えた裕美はベッドに腰を下ろして、まだ乾ききっていない髪を拭いていく。
 キュイラスを倒したことで本部は喜びに包まれ、ささやかにお祝いも行われたのだが、裕美はなんとなく気分がすぐれずにいたのだ。
 このままで済むはずがない……
 そういう気持ちがある。
 アルメ団がこんなことぐらいで滅ぶはずがないのだ。
 必ず次の手を打ってくるに違いない。
 そう思うと、浮かれているみんながバカみたいに思える。
 ふう……
 裕美は手で右足に触れる。
 キュイラスにがっしりと掴まれた感触がよみがえってくる。
 別に痛みがあったり痣になったりしたわけではない。
 だが、掴まれた瞬間にゾワッとしたものを感じたのは事実だ。
 あれはなんだったのだろうか……

 立ち上がって髪を拭いていたタオルをハンガーにかけに行く。
 気にしてもしょうがない。
 突然掴まれたからびっくりしただけだろう。
 明日に備えて寝なくては。
 気にすることはないわ……
 裕美はそう思い、ベッドに戻ると眠りについた。

 規則正しい寝息を立てていた裕美。
 その目がカッと見開かれる。
 ゆっくりと上半身を起こす裕美。
 その口に笑みが浮かぶ。
 「ふふふ……どうやら眠りについたようだな」
 そうつぶやくと、ゆっくりとベッドから抜け出して明かりをつける。
 そしておもむろに自分の躰を見下ろした。
 「これがこの女の躰か。ふふ……悪くはない。男に比べて力は劣るが、なに、そのようなものはどうとでもなる」
 手を握ったり足を曲げたりして躰の感触を確かめる裕美。
 「ククク……まさかソードイエローとはな。女に取り憑くことになるとは思わなかったが、近くに来たのがこいつだったからやむを得ん」
 やがて裕美はゆっくりと鏡のところに向かっていく。
 そして鏡に映る自分の顔をじっくりと見つめていく。
 「ふふ……普段ヘルメットに覆われた姿しか見たことは無かったが、なかなかの美人ではないか」
 鏡の前で顔の向きを変え、いろいろな角度から自分の顔を映していく裕美。
 「なに……心配するな。お前を傷付けたりはせん。俺はもうすぐ消える。だが、その前にお前の思考に干渉し、お前を俺と同じ思考に変えてやる」
 まるで鏡の向こうにいる裕美に話しかけるようにつぶやく裕美。
 「そう……お前を俺の後継者にしてやるのだ。ふはははは……」
 静かな夜の一室に、裕美の低い笑い声が響いた。

                   ******

 目覚ましが鳴っている。
 もう朝か……
 「う、うーーーん……」
 裕美はベッドの中で思い切り伸びをする。
 躰が伸びて気持ちがいい。
 「ふわぁあ」
 大きくあくびをして起き上がる。
 まだ寝ていたいところだが仕方がない。
 今日も一日が始まるのだ。

 「ふふっ」
 洗顔のために洗面所に来た裕美は、鏡を見て小さく笑う。
 自分で言うのもなんだが、なかなかいい女だと思うのだ。
 胸だってそこそこあるし、躰だって引き締まっている。
 悪くない躰だ。
 これならバカな男どもをたぶらかすのはわけないだろう。
 「うふふ……」
 人間なんてそんなもの。
 愚かな連中。
 はたしてそんな連中に守る価値などあるのだろうか……

 「えっ?」
 そこまで考えて裕美はハッとする。
 私はいったい……
 私はソードイエロー。
 人々を守るのが私の……

 裕美は一度頭を振って気を取り直すと、顔を洗って身支度を行なっていく。
 そしていつもの通りに斬剣戦隊の本部へと向かった。

 「おはようございます」
 「おはよう」
 「おう、おはよう」
 「おはようございます」
 本部の控え室に入ると、裕美の挨拶にメンバーが返事を返してくる。
 どうやらソードグリーンこと緑村(みどりむら)とおるはまだ来ていないらしい。
 赤野(あかの)、青沢(あおさわ)、桃山(ももやま)の三人だけだ。
 あとは緑村が来れば斬剣戦隊の五人がそろうわけである。

 「異常は?」
 「今のところはないな」
 昨晩は本部詰めだった青沢が答える。
 「昨日キュイラスを失っているんだ。動くはずもないさ」
 赤野の言う通りだろう。
 大幹部であるキュイラスを失ったのだ。
 そう簡単にアルメ団が動けるはずもない。
 そうよ……
 アルメ団は大切な大幹部を失ったのよ……
 早く後継者を用意しないと……
 意思を継ぐ邪悪な後継者を……

 「裕美さん?」
 「えっ?」
 気付くと香織(かおり)ちゃんがこちらをのぞき込んでいた。
 桃山香織はソードピンクとして、裕美とともに斬剣戦隊の二人の女性のうちの一人である。
 「ぼうっとしてましたけど、どうかしました?」
 「えっ? そ、そうだった?」
 アルメ団のことを考えていたからだろうか?
 香織ちゃんは自分より年下だけど、結構しっかりしたところがあるから、装甲獣に改造しても面白いかもしれない。
 きっと彼女ならいい装甲獣に生まれ変わる……
 えっ?
 ぎょっとする裕美。
 わ、私は今何を?
 香織ちゃんを装甲獣に?
 確かに彼女なら……

 「ほら、また。もしかして昨日飲み過ぎちゃいました?」
 「そ、そんなことは」
 首を振る裕美。
 そもそも夕べは気分がすぐれなかったので、早々に部屋に戻ったはずなのだ。
 飲み過ぎるわけがない。
 「まあ、ちょっとぐらい飲み過ぎていたとしても、今日なら大丈夫ですよ。アルメ団も今頃は地球から逃げ出す準備でもしているんじゃないでしょうか」
 「そんなはずないでしょ!」
 思わず強い口調で言ってしまう裕美。
 アルメ団がそんなやわな組織のはずはないのだ。
 偉大なる首領様の元に精強な軍団をしたがえる素晴らしい組織なのよ。
 何も知らない小娘のくせに。

 「パトロールに行ってくるわ」
 裕美はそういうと、ヘルメットを手に控え室を後にする。
 どうもなんだかイライラしてしまうのだ。
 あまり緊張感のない雰囲気にイラついてしまったのかもしれない。
 くそっ!
 忌々しい……

 オートバイにまたがり道路を疾走する裕美。
 せっかくアルメ団の幹部を倒したというのに、ちっともうれしいとは感じない。
 それどころか、なぜか悔しさを感じてしまうのだ。
 地球人のような下等な連中に敗北するなど、アルメ団の幹部にあるまじき行為だ。
 偉大なる首領様もきっとお嘆きになっているはず……

 それでもこうしてバイクで風を切って走っていると、少しは気分も晴れてくる。
 どうせパトロールなど口実なのだ。
 このまま少し郊外まで行ってみようか。
 裕美はバイクのアクセルを回す。
 ヘルメットの下から伸びる裕美の髪が風になびいた。

                   ******

 「ふう……」
 バイクを駐車スペースに戻してヘルメットを脱ぐ裕美。
 髪が広がって解放感に包まれる。
 今日は楽しかった。
 途中でパトカーに追いかけられたが、軽く引き離してやったのだ。
 斬剣戦隊のメンバーの腕を舐めないでほしいわ。
 スピード違反?
 事故らなければいいのよ。
 くだらないルールに縛られるなんてばかばかしい。
 どうして今までルールに従おうなどと思っていたのだろう。
 下等な人間の決めた勝手なルールだというのに……

 とにかく気分がスカッとしたことは間違いない。
 どこかもやもやしていたものも吹き飛んだというものだ。
 このまま……
 このまま戦いに望みたいくらいだわ。
 戦い?
 私は戦いを望んでいるというの?

 「お帰り。何か異常はあったか?」
 裕美が控え室に入ると、雑誌を読んでいた青沢が顔を上げて声をかけてくる。
 ほかのメンバーはそれぞれ出かけているらしい。
 「別にないわ」
 そっけなく答える裕美。
 なんだろう……
 いつもなら愛想よく答えていた気がするのだが、なぜかそんな気にならないのだ。
 それどころか、スカッとしたはずの気分がまたもやもやとしてくる。
 神経がイラ立ってくるのだ。
 私はどうしてこんなところにいるのだろう……
 むしろアルメ団と遭遇したい気さえする。
 アルメ団と……

 「どうせここにいてもやることはないでしょ? やっぱり気分があんまりよくないの。今日はこれで上がるわ」
 このままここにいてもイラつくだけだと感じた裕美は、戻ったばかりだが早々に引き上げることにする。
 「ん、そうか。お大事にな」
 青沢もそれ以上は何も言わない。
 基本的には連絡がつけばいいのだ。
 「あっ」
 部屋を出ようとしたところで、戻ってきた香織とぶつかりそうになる裕美。
 「気を付けて! あ、いえ、ごめんなさい」
 裕美は一瞬声を荒げてしまうものの、ハッとしてすぐに謝る。
 「あ、いえ、こっちこそすみません」
 香織がすぐに脇によけてくれる。
 「ごめんね香織ちゃん」
 せっかくよけてくれたので、裕美は片手をちょっと上げて礼を言い、そのまま廊下へと出る。
 「どちらへ?」
 「あー、うん、どうも今日も気分がすぐれないの。家に戻るわ」
 「そうなんですか? ドクターに診てもらわなくても大丈夫ですか?」
 心配そうに声をかける香織。
 「ええ、そこまでではないわ。少し寝れば大丈夫だと思う」
 「わかりました。お大事に」
 「何かあったらすぐに連絡ちょうだいね」
 「はい」
 そんな会話をして裕美は廊下を歩きだす。
 さっきは思わず香織ちゃんを怒鳴りつけてしまった。
 なんだか自分の前を遮られたのが不愉快だったのだ。
 私の前を遮ることができるのは……偉大なる首領様……
 えっ?
 今私は何を?
 なんだか……何かが変だわ……

                   ******

 「ふう……」
 どうにも神経がいら立つ。
 どうしたというのだろう?
 自宅に帰ってきた裕美はそう思う。
 特に仲間たちの言動にいら立つのだ。
 こんなことは今までになかったこと。
 でも……
 なんだかみんなが敵に見えてしまう……

 体調が良くないのかもしれない。
 頭もなんだか少しぼんやりする。
 どこか自分が自分ではないような……
 ああ……
 偉大なる首領様……
 もうすぐ……

 いけない……
 なんだか本当に思考がまとまらないような気がするわ。
 これじゃいざというときに戦えない。
 今日はさっさと横になろう。
 風邪とかじゃないといいけど……

 とりあえず裕美は食事なども軽く済ませ、早々に横になって眠りにつく。
 明日になってもまだよくないようなら、本部のメディカルチェックを受けてもいいだろう。
 斬剣戦隊の戦士にとっては体調管理も重要なことなのだ。
 やがて裕美は規則正しい寝息を立てはじめた。

 深夜、裕美が目を開ける。
 そしておもむろに躰を起こす。
 「はあ……はあ……どうやら俺はここまでのようだ。だが……この女の思考はだいぶ俺と同じに……ククク……」
 どこか苦し気な表情だが、ニヤリと笑う裕美。
 「俺はもう消える……だがあとは……あとは……」
 そうつぶやいて一旦目を閉じる。
 そしてもう一度目を開けると、裕美はうつろな表情でこうつぶやいた。
 「はい……あとは私が……」

                   ******

 「うーん……ふわぁ」
 躰を起こして伸びをする。
 気持ちのいい朝だ。
 なんだか頭もすっきりしている。
 昨晩ぐっすりと眠れたおかげだろうか。

 さて……
 身支度をして出かけなくては。
 裕美はパジャマを脱ぎ捨てて着替えをし、もろもろの身支度を整えて家を出る。
 そしていつものようにバイクにまたがると、アクセルを回して走り出した。

 あれ?
 気付くと見慣れない場所にいる裕美。
 本部へ向かうつもりだった気がするが、いつの間にか違うところに来ていたのだ。
 いや、そうではない。
 ここに来るつもりだったような気もする。
 このアルメ団のアジトに……

 住宅街の一角のなんの変哲もない一般的な民家。
 どこにでもある一軒家の住宅。
 裕美は無造作に駐車スペースにバイクを止め、そのまま玄関へと歩いていく。
 塀で囲まれたそこそこ裕福な家庭が暮らすような家。
 だが人の気配はない。
 窓もカーテンが閉じられ、中を伺うことはできない。
 玄関のドアも鍵がかかっている。
 当然だ。
 ここは人間どもが入っていい場所ではない。
 団のメンバーだけが入れる場所なのだ。

 「メゼニソルアズラムフ」
 自然にそんな言葉が口から出る。
 カチッと音がしてドアが開く。
 裕美はそのまま中に入ってドアを閉める。
 「グーデ!」
 玄関に入ったところで再び言葉を口にする裕美。
 すると黒い闇が目の前に現れ、裕美の躰を飲み込んでいく。
 やがて闇が晴れた後には、裕美の姿は消え去っていた。

 ひんやりとした闇の回廊。
 裕美の歩く足音がカツカツと響く。
 初めて歩く場所のはずなのに、どこか懐かしさを感じるのはなぜだろう?
 この先にあるのはアルメ団のアジトの中心部。
 先ほどのはアジトから通じる外界との出入り口の一つに過ぎない。
 あのような出入り口はたくさんあり、アルメ団は自由自在に様々な場所に出現することが可能なのだ。
 ふふっ……
 思わず裕美の口元に笑みが浮かぶ。
 こんなことすら斬剣戦隊の連中は知らないなんて……
 対応が後手後手になるはずだわ。
 その程度でアルメ団に対抗しようだなんて……
 愚かにもほどがある……

 意外なことに、アジトの中だというのに誰にも会うことがない。
 裕美はとがめられることも無くアジトの中心部にやってくる。
 そこは薄暗いホールのような場所。
 正面には一段高くなって誰もいない椅子があり、そこに向かって両側に白い柱が立ち並んでいる。
 誰もいないはずなのに、どこか威圧感のようなものを感じる裕美。
 それとともに親愛の情のようなものも湧いてくるのだ。
 裕美はそのまま前に進み、段の前まで進み出る。
 そして、そのまま片膝をついてひざまずいた。

 (顔を上げよ)
 偉大なる首領様の声がじかに頭に響いてくる。
 聞くだけで心が高揚してくるようなお声だ。
 裕美はその声に従い顔を上げる。
 一段高くなったところにある椅子に、黒い人型の影が座っている。
 裕美はそれがアルメ団の偉大なる首領様の影であることに気が付いた。

 慌てて再び顔を下げる裕美。
 偉大なる首領様を直接仰ぎ見るなど恐れ多いと思ったのだ。
 (よい。かまわぬ)
 再び響く首領様の声。
 「あ、ありがとうございます」
 裕美は恐る恐るまた顔を上げる。
 (ふふふ……我がもとによくぞ来た。キュイラスの後継者よ)
 「えっ?」
 思わず声をあげてしまう裕美。
 後継者?
 私が……キュイラスの後継者?
 だが、驚きはやがて確信へと変わっていく。
 そうだわ……
 私はキュイラスの後継者。
 彼に代わってアルメ団の指揮を執り、偉大なる首領様のために働くのが私の役目。

 「はい。私はキュイラスの後継者。彼に代わってアルメ団の指揮を執り、この世界を征服して首領様にお捧げします」
 決意に満ちた表情で、裕美はきっぱりとそう口にする。
 (それでよい。お前は我がしもべ。アルメ団の指揮を執るがいい)
 「ははっ! お任せくださいませ」
 (立つがよい。お前に力を与えよう)
 「はっ!」
 裕美はスッと立ち上がる。
 椅子の人影が手を伸ばし、そこから黒い闇が伸びて裕美の躰を包み込んでいく。
 「ひっ!」
 一瞬戸惑う裕美だったが、闇は彼女の躰を完全に包み込み、何も見えなくしてしまう。
 裕美は自分の躰がほてってくるのを感じたものの、それはなんとも心地よいほてりだった。
 やがて闇が晴れてくると、全身を灰色の全身鎧に包んだ裕美の姿が現れる。
 頭部にも灰色の兜が被られ、顔以外はすっぽりと覆われていた。

 黒いアイシャドウが引かれた目をゆっくりと開ける裕美。
 ハッと気づいたように、あらためて自分の躰を見下ろしていく。
 「こ、これは?」
 全身を灰色の鎧に包み込まれた彼女の躰。
 両胸のところは丸く膨らみ、腰の部分はくびれて彼女の躰にぴったりとフィットしている。
 それに躰の内側から力があふれてみなぎってくるようだ。
 なんてすばらしいのだろう。
 私はもう下等な人間などではないのだわ。

 (黄森裕美よ。我が力を受け取った気分はどうか?)
 首領様の声が聞こえてくる。
 「はっ! ありがたき幸せ。首領様のお力をいただき、天にも昇る気持ちでございます」
 すぐさまあらためてひざまずき頭を下げる裕美。
 このような力をいただけるなんて……
 なんと幸せなのだろうと裕美は思う。
 (それでよい。これよりお前は魔将ラメラ―と名を改め、キュイラスの後継者として我がアルメ団の指揮を執るのだ)
 魔将ラメラ―!
 なんとすばらしい名前だろう。
 私はもう黄森裕美などというくだらない人間ではないのだ。
 「はっ! 我が名は魔将ラメラ―。偉大なる首領様に心からの忠誠を誓い、キュイラス殿の後継者としてアルメ団の指揮を執ります!」
 ラメラ―は心からの喜びに満ち溢れ、邪悪に染まったその美しい顔を上げるのだった。

                   ******

 「う……」
 ゆっくりと目を開ける桃山香織。
 いったいどうしたのだろう?
 確か裕美さんと一緒にパトロールに出たところまでは覚えているが……
 「えっ?」
 躰を起こそうとして、香織は自分が裸で寝かされていること、さらには両手首と足首を固定されていて起き上がれないことに気付く。
 「こ、これは?」
 いったいどういうことなの?
 私は捕らわれてしまったというの?
 何がなんだか香織はわからない。

 「うふふ……目が覚めたようね、香織ちゃん」
 「えっ?」
 声がした方に顔を向ける香織。
 そこには全身を灰色の全身鎧に覆った女性が立っている。
 「あ、あなたは?」
 「うふふ……仲間の顔を見忘れたのかしら?」
 近寄ってきた女性の兜の下の顔に気が付く香織。
 「そ、そんな……裕美さん? 裕美さんなんですか?」
 「うふふ……ええ、以前はそんな名前だったわね。でも今は違うわ。私は偉大なる首領様にお仕えする魔将ラメラ―。キュイラス殿の後継者として新たにアルメ団の指揮を執る者よ」
 にやりと冷たく笑うラメラ―。
 それは香織が見知っている裕美なら絶対に浮かべないような冷酷な笑みだ。
 「ど、どうして? どうして裕美さんが?」
 愕然とする香織。
 昨日まで……いや、先ほどまで一緒にアルメ団と戦ってきた仲間だったはずでは?

 「私はアルメ団のすばらしさに気付いたの。地球は偉大なる首領様が手になさるべき星。その邪魔をするなどおろか者のすることだとね」
 ゆっくりと語りかけるように話すラメラ―。
 すでに準備は整っているのだが、香織の驚愕と絶望の表情がたまらないのだ。
 「そんな……目を、目を覚ましてください裕美さん! あなたは騙されているんです! 地球をアルメ団なんかの手に渡しては……あっ!」
 「おだまりなさい!」
 ラメラ―のガントレット(籠手)の甲が香織の頬を打つ。
 「地球はアルメ団が支配するべき星よ。ごめんね……痛かった? 大丈夫。香織ちゃんもすぐに理解するわ」
 そのあとですぐに打った後の頬を優しく撫でるラメラ―。
 香織を傷付けるつもりはないのだ。
 彼女にはこれからアルメ団のために働いてもらうのだから。

 「理解? 私をどうするつもりですか?」
 香織はゾッとする。
 まさか自分も裕美のようになってしまうのではないだろうか?
 「うふふ……心配しないで。香織ちゃんはこれから改造を受けて装甲獣になるのよ。人間なんかの躰を捨てて、強い強い装甲獣に生まれ変わるの。とても素晴らしいことだとわかってくれると思うわ」
 香織が寝かされている台に腰かけ、優しく諭すように語り掛けてくるラメラ―。
 「そんな……い、いやっ! いやです!」
 身をよじって何とか拘束を解こうとする香織。
 だが、手首足首の拘束はがっちりとして外れない。

 「無駄よ。その枷は人間ごときには外せないわ。おとなしく装甲獣になるのよ」
 腰かけていた台から立ち上がり、そのわきにあるスイッチを押す。
 「ひああ……」
 寝かされていた香織の躰に電気のようなものが走り、ビクンと躰が跳ね上がる。
 「ああ……あああ……」
 全身が焼けるような熱さに包まれ、苦悶の表情を浮かべる香織。
 やがてその躰に変化が起きていく。
 白く抜けるような肌が、灰白色の硬い皮膚へと変化していき、体毛がすべて抜け落ちる。
 顔も鼻のあたりからせり出していき、鋭い角が生えていく。
 足の指も一つにまとまり、かかとも伸びてハイヒールのブーツを履いたように変化する。
 手の爪も鋭く伸び、鉤爪のように変わっていく。
 香織の躰はまるで人間の女性と動物のサイが融合したような姿へと変わっていった。

 それと同時に香織の精神も変化する。
 人間であったことは忌むべき過去となり、装甲獣であることが誇らしく思えてくる。
 アルメ団の首領に従うことこそが素晴らしいことであり、歯向かうものは皆殺しにしたくなる。
 地球はアルメ団のものであり、下等な人間は支配されて当然だと思うようになる。
 香織はもはや以前の香織ではなくなってしまっていた。

 「ブルルルル……」
 すっかり変化してサイのような顔になった香織がうなり声をあげる。
 「ふふふ……どうやら終わったようね。立ち上がりなさい、装甲獣ライノーサ」
 ラメラ―がスイッチを押すと、香織の手足を固定した枷が外される。
 「ブルルルル……」
 変化した躰をゆっくりと起こす香織。
 そのまま台から足を下ろし、その脇に立ち上がる。
 「うふふふふ……気分はどうかしら、装甲獣ライノーサ」
 「ブルルルル……それが私の新しい名前なのですねラメラー様」
 姿勢を正してラメラ―の前に立つライノーサ。
 「そうよ。お前は我がアルメ団の装甲獣ライノーサ」
 「ブルルルルッ! なんてすばらしい名前。最高の気分です。私はもう人間なんかじゃないわ。私は装甲獣ライノーサ! アルメ団の忠実なる戦士」
 喜ばしそうに胸を張るライノーサ。
 まるで灰白色の装甲に覆われたような躰だが、両の胸のふくらみも腰の括れもそのままで、女性らしいラインは損なわれていない。

 「うふふふ……それでいいわ。お前は装甲獣ライノーサ。これからはアルメ団のために働きなさい」
 「もちろんですラメラ―様。地球は偉大なる首領様のもの。歯向かう者はこの装甲獣ライノーサが角で突き殺してやりますわ。ブルルルルッ!」
 スッとひざまずくライノーサ。
 早く命令を下してほしいかのようだ。
 「うふふふ……暴れなさいライノーサ。お前が好きなソードレッドを含む斬剣戦隊を皆殺しにするのよ」
 「ラメラ―様、それは私が下等な人間だった時に抱いていたくだらない感情。そのようなものはもう今の私には存在いたしません。斬剣戦隊はアルメ団に歯向かう愚かな連中。このライノーサが必ず皆殺しにしてご覧に入れますわ」
 「ふふふ……頼もしいわ。さあ、行きなさい、ライノーサ!」
 ライノーサの答えに満足するラメラ―が命令を下す。
 「はっ! お任せくださいませ、ラメラ―様! ブルルルルッ!」
 うなり声を上げて立ち上がるライノーサ。
 カツカツと足音を響かせて出ていくその後ろ姿を見て、ラメラ―は笑みを浮かべるのだった。

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想などいただけますとうれしいです。

明日も一本投下する予定です。
お楽しみに。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2023/07/17(月) 18:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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性処理用女ジャドーガ兵マナミ

今日は10月10日。
1010(千十 せんとお)ということで、勝手ながら「(特撮・アニメ系)戦闘員の日」というのを提唱させていただいております。

ということで、女戦闘員ネタSSを一本投下いたします。
タイトルは「性処理用女ジャドーガ兵マナミ」です。

実はもともとはこの作品は、基本プロットを「GIGA」様に送ったものだったのですが、どうせなら自分で書こうということで取り下げたものだったんですよね。
今回「戦闘員の日」に間に合わせて書き上げることができ、ホッとしました。
(^o^;)

ということで、お楽しみいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。


性処理用女ジャドーガ兵マナミ

 「イエローニードル!」
 「キキーッ!」
 黄色のバトルスーツに身を包んだ女性の持つ細身の剣が、黒い全身タイツをまとったような姿の男の胸を貫いていく。

 「レッドハンマー!」
 その隣では赤いバトルスーツ姿の男性が、片手振りのバトルハンマーで同じく黒い全身タイツの男を倒していく。

 「あとはお前だけだカマキリ野郎! 食らえ! ブルーショット!」
 カマキリと人間を掛け合わせたような怪人に対し、青いバトルスーツの男が手にした銃を発射してもうもうたる爆炎が上がる。
 だが、射撃を受けたカマキリの怪人は悠然と爆炎の中から姿を現した。
 「キシャシャシャシャーッ! 俺様をジャドーガ兵どもと一緒にしてもらっては困る! そのようなもの、このジャドーガ獣カマキリーガには効かぬわ!」
 「何っ!」
 頭部全体を覆う青いヘルメットから漏れる声にも驚愕が含まれる。

 「ならばこれはどうだ! レッドハンマーブーメラン!」
 先ほどジャドーガ兵という黒い全身タイツの男を倒したハンマーを、そのまま回転させるようにして投げつける赤いバトルスーツ姿の男。
 だが、彼の投げつけたハンマーもカマキリーガとか言うカマキリの怪人のカマによって叩き落されてしまう。
 「キシャシャシャシャ……効かぬ効かぬ!」
 巨大な複眼をぎらつかせて笑うカマキリーガ。

 「それじゃこれはどう? イエローダガー!」
 黄色のバトルスーツの女性が三本の短剣を一斉に投げる。
 相手がジャドーガ兵たちならいっぺんに三人を倒せる技だ。
 だが、これもカマキリーガは三本ともに叩き落してしまう。
 「そんな……」
 「キシャシャシャシャー! トライパワードの武器など俺様には効かぬと言っておるのだ!」
 強靭な外骨格を誇示するように胸を張るカマキリーガの姿に、トライパワードの三人が思わず息を飲む。
 必殺技のパワードスパークをぶつけようにも、どこかで相手の隙を生み出さねばならないのだ。
 今のままでは必殺技をぶつけてもかわされてしまうに違いない。
 いったいどうしたら……
 ヘルメットの中の三人の額に汗がにじむ。

 『目よ! 目を狙いなさい! あの複眼はそれほど強い防御はされていないはずよ』
 その時、トライパワードの三人のヘルメットに声が響く。
 「そうだ、目だ! 目を狙おう。いいな、みんな!」
 「おう!」
 「ええ!」
 その声にレッドが答え、ブルーとイエローもそれに応じる。
 「ブルーショット!」
 素早く銃を抜き連射する青いバトルスーツのブルーパワード。
 「グギャッ! グギャァァァッ!」
 その射撃が見事にカマキリーガの巨大な複眼に命中する。
 「レッドハンマーブーメラン!」
 赤いバトルスーツのレッドパワードの手からバトルハンマーが投じられ、回転しながらカマキリーガの首に当たる。
 「ゴグァッ!」
 たまらず両目をカバーしようとしていたカマキリーガの両手が首を押さえ、両目が再び無防備になる。
 「イエローダガー!」
 そこにすかさず黄色いバトルスーツのイエローパワードがダガーを投げ込み、カマキリーガの両目に突き刺さる。
 「ギヤァァァァァッ!」
 ブルーショットで傷ついた個所を的確に貫くイエローダガー。
 カマキリーガの悲鳴とともに目の輝きが消えていく。

 「よし、今だ!」
 「おう!」
 「ええ!」
 トライパワードの三人がうなずき合う。
 「「「パワードスパーーーク!!」」」
 三人の声が一つになり、それぞれの胸のところからエネルギー波が放たれる。
 赤、青、黄色の三色のエネルギー波が途中でらせん状に絡み合い、そのままカマキリーガへと突き刺さる。
 「グギャァァァァァァッ!」
 カマキリーガの断末魔の悲鳴が上がり、その肉体が光の中へと消えていく。
 あとには塵となった残骸が残るのみだったが、やがてそれも風に吹き飛ばされて散っていった。

 「ふう……やったな」
 「手強かったな……」
 「司令のアドバイスが無かったらどうなっていたか……」
 三人が安堵の息を漏らす。
 『ご苦労様。ジャドーガ獣の消滅を確認したわ。直ちに本部へ帰還してちょうだい。温かいコーヒーでも用意させておくから』
 先ほど聞こえてきた声がまたヘルメット内に流れてくる。
 「了解です、司令」
 「すぐに引き上げまーす」
 三人は手首に付いたブレスレットを操作してバトルスーツを解除し、それぞれ普段の若い男女の姿に戻り、本部へと帰還していった。

 「ふう……今回も何とか乗り切ってくれたみたいね」
 ドローンから送られてきた現場の中継映像を切り、こちらもホッと息をつく一人の女性。
 まだ三十代前半の美しい容姿を、紺色のタイトスカートの制服に包み込んでいる。
 名前は真木原愛美(まきはら まなみ)と言い、トライパワードチームの司令官を務めている女性だ。
 彼女の明晰な頭脳は幾度となくジャドーガの作戦を打ち破り、トライパワードを勝利に導いてきた。
 まさにトライパワードチームの要と言っていい存在だったのだ。

 「さ、みんなが帰ってくる前に、美味しいケーキとコーヒーでも用意しておきましょうか」
 にこやかに笑顔を浮かべ、軽やかな足取りで司令室を出ていく愛美。
 司令官であると同時に、彼女はチームメンバーの頼れる姉でもあったのだった。

                   ******

 「ぬおおお! またしても……おのれトライパワードめ! あと一息のところであったものを!」
 ぎりぎりと音を立てそうなぐらいにこぶしを握り締める甲冑姿の男。
 トゲの付いた鎧で胴体を包み、腕にも脚にもごつい防具を着けている。
 頭にもがっしりとしたヘルメットをかぶり、その下の赤く輝く目は怒りに満ちていた。
 彼こそ暗黒結社ジャドーガの指揮官ガロム将軍である。

 今世紀に入り地球をじわじわと侵略し始めた謎の集団。
 動物や昆虫などと人間を組み合わせたような怪人ジャドーガ獣を生み出し、ジャドーガ兵と呼ばれる目だけを出したフルマスクと全身タイツ姿の戦闘員を多数繰り出して暗躍する。
 そして重要人物を暗殺したり国家的機密事項を奪ったり破壊したりなどするのだ。
 そうして各国の力が弱まったところを一気に征服する。
 それが暗黒結社ジャドーガの目的であり、作戦は順調なはずだった。

 しかし、ジャドーガの前に立ちふさがったのが特殊戦隊トライパワードだった。
 赤、青、黄色の三色のバトルスーツに身を包んだ三人の男女が、ジャドーガの誇るジャドーガ獣やジャドーガ兵たちを蹴散らしていくのだ。
 このままでは作戦遂行に支障が出ると考えたジャドーガの首領は、まずこのトライパワードの排除を優先することにし、ガロムを指揮官として送り込んだ。
 だが、これまでのところはそのガロムも敗北が重なり、トライパワードに煮え湯を飲まされ続けている有様だった。

 個々のジャドーガ獣の能力では決して引けは取っていない。
 ジャドーガ兵の数による攻撃も悪くはない。
 だが、勝てない。
 やつらのチームワークに敗れ、そして指揮分析能力に敗れているのだ。
 それを何とかしなくてはならない。
 だがどうすれば……
 そこがガロムにとっての悩みだった。

 「キキーッ! ガロム様」
 苦虫を噛み潰したような表情をしているガロムの元に、ジャドーガ兵が一体現れ、右手を上げて敬礼する。
 ジャドーガ兵とは、体格のいい男が目の部分以外をすべて黒いナイロンの全身タイツで覆ったような姿をしたジャドーガの戦闘員である。
 わずかに目が覗いているマスクの穴の縁取り部分と額の逆三角マークが赤く、、腰に巻いたベルトに付いているジャドーガの毒蛇の紋章の銀色をしたバックルだけが黒以外の色だ。
 彼らは数を擁した集団戦闘に長けており、トライパワードのメンバーと言えどもバトルスーツ着用前の状態であればてこずる相手である。

 「なんだ? なにか用か?」
 今日の敗北にいらだっていたガロムは、思わず口調が荒くなる。
 「キキーッ! も、申し訳ありませんガロム様。実は……そろそろ我々ジャドーガ兵たちの性欲が溜まってきており……」
 少しオドオドした様子で報告するジャドーガ兵。
 「なんだ……そんなことか。そんなことなら人間の女どもを適当にさらってくればいいことではないか」
 何か問題でも起きたのかと思っていたガロムはやや拍子抜けする。
 ジャドーガの構成員の大多数を占めるのはジャドーガ兵たちであるが、彼らは肉体を強化して戦闘力を高める引き換えに性欲が強まっており、ある程度の間隔でその性欲を発散させてやらなくてはならないのだ。
 ただ、人間の数倍の力を持つジャドーガ兵たちの性欲を発散させるには人間の女性では難しく、たいていの女性たちはジャドーガ兵に性欲を発散されると死んでしまうため、そのたびにさらってくるなりして補充しなくてはならなかったのだった。

 ジャドーガ兵たちの性欲処理についてはガロムも気にしているところであり、彼らの戦闘力を維持するためにもできれば専用の性処理用の存在を用意したいとガロムは考えていた。
 そうなれば任務を終えて戻ってきたジャドーガ兵たちに性欲を発散させるという褒美を与えることもできるのだ。
 待てよ……
 確かトライパワードチームの司令官は女だったはず……
 やつらが強いのはその指揮統制によるところが大きい。
 であれば……その女司令官を取り除くことができれば、奴らの戦闘力はかなり低下するのではないか?
 そしてその女司令官にジャドーガ兵たちの性処理をさせてやるというのはどうだろうか……
 クククク……
 これは面白い……
 女司令官を洗脳したうえで肉体を強化し、性処理用の女ジャドーガ兵を作るというのも悪くない。
 ガロムの口元がにやりと歪む。

 「キキーッ! ではそのように」
 「おい、待て」
 出ていこうとしたジャドーガ兵を引き留めるガロム。
 「キキーッ!」
 呼び止められたジャドーガ兵はすぐさま立ち止まって振り返り、右手を上げて敬礼する。
 「いいことを思いつたぞ。出撃の準備をしろ!」
 「キキーッ!」
 人間の女たちをさらいに行くつもりだったジャドーガ兵は一瞬落胆したものの、すぐに気を取り直して仲間たちのところへと戻っていった。

                   ******

 「お疲れ。トレーニングだったのか?」
 控え室に入ってきた賢哉(けんや)に声をかける竜司(りゅうじ)。
 彼らは地球を守るトライパワードチームの三人のうちの二人で、レッドパワードが賢哉、ブルーパワードが竜司である。
 彼らは基本的には常時この控え室で待機しており、ジャドーガの出現にいつでも出撃できるように備えているのだ。

 「ああ、ひと汗かいてきた。そっちは今日も読書か?」
 冷蔵庫から缶コーラを取り出して蓋を開ける賢哉。
 「ああ、こっちは頭のトレーニングさ」
 ソファに横になり、分厚い本を読んでいる竜司。
 賢哉もチームリーダーとして充分な程度の知識と教養は備えてはいるものの、やはり知力では竜司の方が上である。
 そのため司令部では愛美が、現場では竜司が知力面でのサポートを行うのだ。
 もちろんそれを総合的に判断して戦うのが、リーダーである賢哉の仕事でもある。

 「愛美司令は?」
 缶コーラを飲みながらたずねる賢哉。
 彼らはチームワークを良くするため、お互いを名前で呼び合うことにしているのだ。
 司令官に対しても彼らは愛美司令と呼んで親しんでいた。
 「参謀本部の秘密会議場で会議らしい。そろそろ戻ってくる頃だと思うが……」
 賢哉の問いに壁にかかった時計を見る竜司。
 予定ではもう会議は終わっているはずだが……
 ちょっと遅いな……
 なんだかいやな予感が竜司の胸をよぎる。

 「大変よ!」
 真っ青な顔で控え室に飛び込んでくる一人の女性。
 彼女もパワードチームの一人イエローパワードである理沙(りさ)だ。
 司令室で待機し、司令の帰りを待っていたところだったのだ。

 「どうした、理沙!」
 賢哉が声をかけ、竜司も本を置いて起き上がる。
 「司令が……愛美司令が消息を絶ったって……」
 「なんだって? 愛美司令が?」
 賢哉も竜司も驚愕の表情を浮かべる。
 「会議を終えてこちらに向かったあと行方が分からなくなったって。司令の車は破壊された状態で見つかったわ」
 「しまった!」
 右手の拳を左手に打ち付ける賢哉。
 竜司もいやな予感が当たってしまったことに表情を歪める。

 「俺らが付いていれば……」
 「いや、それはかえってジャドーガの目を引くということで、あえて司令は単独で動かれていた。だが、こうなってみると……」
 唇を噛む竜司。
 やはり目を引いたとしてもガードに付いた方がよかったのかもしれない。
 「理沙、司令は消息を絶ったと言ったな? ということは死体が見つかったとかではないんだな?」
 「ええ……でもどこに行ったのか……」
 理沙が首を振る。
 「だったらどこかに身を隠して俺たちの助けを待っているかもしれない」
 「あるいは……ジャドーガに連れ去られた……か」
 竜司が悪い方の考えを口にする。
 あえて最悪の状況を口にすることで、それに対する対処を考えるのだ。
 だが、今はまだ状況が不明すぎる。
 「とにかくこうしていてもしょうがない。俺と竜司は司令の車の周囲を捜索してみよう。理沙は司令からの連絡があるかもしれないから、ここで待機していてくれ」
 「了解だ」
 「わかったわ」
 こういう決断をすぐに下すところが賢哉のいいところである。
 竜司も理沙もうなずくと、すぐに三人は控え室を後にした。

                   ******

 「う……こ、ここは?」
 ゆっくりと目を開ける愛美。
 どうやら気を失っていたらしい。
 ここはいったい?

 躰を動かすとジャラリと音がする。
 気付くと、どうやら両手が鎖で縛られ上から吊り下げられているのだ。
 どうりで腕が体重がかかって痛かったはずだ。
 愛美はあらためて姿勢を直してきちんと立つ。
 これで少なくとも腕への負担は格段に減った。
 とはいえ、両手が縛られて吊り下げられているのは変わらない。

 周囲は殺風景なやや広めの部屋。
 コンクリートがむき出しになっており、ところどころがどす黒くなっている。
 もしかしたら血の跡かもしれない。
 捕らえた相手を拷問するにはちょうどいい部屋だろう。
 愛美の表情が硬くなる。

 「フッフッフ……お目覚めかな?」
 背後から聞こえてくる重々しい声。
 愛美が振り向くと、そこにはトゲの付いた銀色の鎧に身を包んだ体格のいい男が立っていた。
 ヘルメットの下から覗く目は赤く鋭く輝き、不敵に笑う口元は顎の傷をさらに目立たせている。
 「くっ……ジャドーガ!」
 愛美は自分がジャドーガに捕えられてしまったことに気付く。
 「そうだ。我らはジャドーガ。真木原愛美よ、ようこそ我がジャドーガのアジトに」
 ガロムが目の前の獲物を確認するかのように眺めていく。
 トライパワードチームの司令官というわりにはまだまだ若く、制服に包まれたスタイルも悪くない。
 彼をにらみつけてくる顔も美しいと言えるだろう。
 見た目だけで言えば、この女がジャドーガに何度も煮え湯を飲ませてきたとはとても思えないくらいの美女だ。

 「するとあなたがガロム将軍! ジャドーガの指揮官ね」
 「いかにもその通りだ。トライパワードの指揮官真木原愛美」
 ガロムがゆっくりと近づき、愛美の顎を持ち上げる。
 「司令官にしておくにはもったいないくらいのいい女ではないか。クククク……」
 「くっ、私を人質にしても無駄よ。トライパワードは私を人質にしたところでジャドーガに屈したりはしないわ。残念だったわね」
 ガロムの手を振り切るように首を振る愛美。
 「トライパワードチームは常に万一の状況に対応するよう訓練されているわ。それはたとえ司令官を失ったとしても変わらない」
 愛美の目がキッとガロムをにらみつける。

 ふん……
 おそらくこの女の言うことは本当だろう。
 ガロムはそう思う。
 だが、それでもこの女がいなくなれば大きく戦力ダウンすることは間違いないはずだ。
 それに……
 ダウンしなくてもそれはそれでまあかまわない。
 今回の目的はそこにはないのだから。

 「わかったらさっさと殺したらいいわ。私を生かしておくと後悔することになるわよ」
 精いっぱいの憎しみを込めてガロムをにらみつける愛美。
 残念だが人質にされるぐらいなら殺されてしまった方がいい。
 ああは言ったものの、おそらくパワードチームは自分を助けようと必死になるだろう。
 だが、それではジャドーガの思うつぼなのだ。
 ここで私が死ねば、きっと彼らはその死をバネにしてジャドーガを打ち倒してくれるだろう。
 だからむしろ殺されたほうがいいのだ。
 殺されれば彼の元へも行ける……
 愛美はジャドーガとの戦いで散った恋人のことを思い出す。
 命を落とした彼のためにも、ジャドーガは倒さねばならない敵なのだ。

 「クククク……」
 不意にガロムが笑いだす。
 「な、何が可笑しいの?」
 「クククク……まあ、そういきり立つな。お前を殺しはせん」
 「なっ、わ、私を殺さないと後悔すると言ったはずよ!」
 愛美はもう一度相手を挑発する。
 人質にされるわけにはいかないのだ。

 「クッ」
 愛美の顎を再びガロムが手で掴む。
 「お前には何度も苦杯を飲まされた。そのお返しをせねばならんのでな」
 「だ、だったらひと思いに殺しなさい」
 「そうはいかん。お前にはたっぷりと屈辱を味わってもらわねば。ただし……お前自身がそれを屈辱と感じるかどうかは別だがな。クククク……」
 にやにやと笑っているガロム。
 「これからお前には我らの役に立ってもらう。これが何かわかるか?」
 そう言ってガロムは愛美の顎から手を離し、傍らに置いてあった四角い機械のところへ行く。
 それは正面にレンズが付いた機械で、まるで何かの映像を投影するようなものに見えた。
 「それはいったい?」
 「クククク……お前はジャドーガ兵がどのようにして作られるか知っているか?」
 その機械を愛美の正面に持ってくるガロム。
 「えっ? ま、まさか……」
 「そう。こいつは人間をジャドーガ兵にする機械でな。こいつから出るビームが人間の組織を変化させジャドーガ兵へと作り変えるのだ」
 「そ、そんな……」
 愛美は愕然とする。
 それでは今まで倒してきたジャドーガ兵たちは……

 「クククク……今までは人間の男ばかりをジャドーガ兵にしてきた。それは女はいくらジャドーガ兵にしたところで男のジャドーガ兵の方が強いだろうからだ。だが……」
 「だが?」
 「ジャドーガ兵どもは強化した反動で性欲が高まってしまってな。数日おきに“性欲処理”をしてやらねばならんのだ。これまでは人間の女をさらってきて性処理をさせていたのだが、すぐに壊れてしまって使い物にならん。そこでだ……性処理専用に女ジャドーガ兵を作ってみてはどうだろうかとな」
 機械をセットしながら笑みを浮かべているガロム。
 その笑みが意味するところを愛美は感じ取る。
 「ま、まさか私を……」
 「そうだ。お前にはこれからジャドーガ兵どもの性処理をする“性処理用女ジャドーガ兵”になってもらう。どうだ? トライパワードの司令官ともあろう者が敵の性処理をするようになるというのは? なかなか痛快だとは思わんかね?」
 「そ、そんな……」
 青ざめる愛美。
 よりによってそんなことをさせるために私を捕えたというのか?

 「ふ、ふざけないで! だ、誰がそんなことをするもんですか!」
 なんとか自由になろうと必死でもがく愛美。
 両手を縛った鎖がジャラジャラと音を立てる。
 だが、手首に巻き付けられた鎖は外れようとはしてくれない。

 「心配はいらん。この機械から出るビームは、肉体を強化して皮膚をスーツ状に変化させるのと同時に脳にも影響を与え、我がジャドーガの忠実なしもべになるように改造するのだ。次にお前が目覚めたときには、お前はジャドーガの忠実な性処理用女ジャドーガ兵へと生まれ変わっていることになる。クハハハハハ……」
 「い、いやっ! やめて! そんなのはいやぁっ! いっそ殺してぇ!」
 高笑いをするガロムに対し、鎖をジャラジャラと慣らして身をよじる愛美。
 だが、どうしても鎖は外れない。
 「さらばだトライパワードの司令官よ。新たな生を楽しむがよい」
 ガロムがスイッチを押し、機械のレンズが七色のビームを愛美に浴びせる。
 「きゃああああああ……」
 愛美の躰がビームに包まれ、虹色の光で覆われる。
 「ククククク……」
 ガロムはその様子を見つめていた。

 「あああああ……いやっ! いやぁぁぁぁっ!」
 愛美の着ていた服が消滅し、生まれたままの姿になる。
 やがてその躰がじわじわと変色し始め、じょじょに黒く染まっていく。
 染まった部分の皮膚はさらにその周囲を染めていき、愛美の躰が黒く覆われていく。
 手も脚も黒く染まり、やがて首から下はすべて黒く染まってしまう。
 すると、その染まった皮膚が変質し始め、まるでナイロンのタイツのようにと変化していく。
 ジャドーガ兵たちと同じく全身タイツ状へと変わっていくのだ。
 足の指は消え去ってつま先が一つにまとまり、やがてその上にブーツのようなものが作られていく。
 かかともまるでハイヒールのかかとのように固く尖ったものへと変化する。
 両手は肘までが黒い手袋を嵌めたような形へと変わり、腰にはどこからともなく現れた黒い蛇のようなものが巻き付いてベルトへと変化すると、その頭部がジャドーガの毒蛇の模様の付いたバックルへと変化する。
 愛美の首から下はまさに女性らしいラインのままでジャドーガ兵と同じに変化してしまったのだ。

 「ううう……やめ……やめてぇ……」
 変化は愛美の頭部にも及んでいく。
 愛美の茶色の髪も白い肌もすべて黒く染まっていき、やがて目の周り以外は黒一色になってしまう。
 そして黒く変色した部分がすべてナイロンのマスクのようなものへと変化していき、愛美の頭部を覆っていく。
 「ああ……あああ……頭が……頭がぁ……いやぁ……」
 やがて愛美の頭は目だけが露出したナイロンのマスクのようなもので包み込まれ、そのマスクの目の縁取り部分と額のところに現れた逆三角形のマークだけが赤く染まっていく。
 「ああ……ああああああああ……」
 そこまで変化したところで、愛美の躰が力を失いその首がガクンと垂れ下がる。

 「ククク……終わったようだな……」
 腕組みをして見つめていたガロムが機械のスイッチを切り、愛美を縛り付けていた鎖を外す。
 両手を縛っていた鎖が外されたことで、ドサッと床に倒れる愛美の躰。
 その姿は完全に女性型のジャドーガ兵という姿になっていた。

 ぐったりと横たわる女ジャドーガ兵。
 だが、その全身タイツに包まれたような形良い胸が呼吸に合わせて上下している。
 「起きるのだ」
 ガロムが女ジャドーガ兵に声をかける。
 マスクから露出している目がかすかにピクリと動く。
 「起きるのだ! 起きてお前が何者か言ってみるがいい」
 今度はやや強い口調でガロムが命じる。
 すると、閉じられていた女ジャドーガ兵の目がパチッと開き、ゆっくりと躰を起こしていく。
 そしてそのまま立ち上がると、カチッとかかとを合わせて姿勢を正し、右手をスッと斜めに上げる。
 「キキーッ! 私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵。ジャドーガとガロム様に心からの忠誠を誓います。キキーッ!」
 先ほどまでの愛美からは考えられないような言葉を口にする女ジャドーガ兵。
 愛美の身も心も完全に作り変えられてしまったのだ。

 「クククク……いいのかな、そんなことを言って? お前はトライパワードの司令官ではなかったのか?」
 わざとに意地悪い質問をするガロム。
 もちろん返事は決まっているはずなのだ。
 「キキーッ! それは先ほどまでの私です。今の私は偉大なるジャドーガの忠実なるしもべ。トライパワードは我らジャドーガに歯向かうおろか者たち。憎むべき敵です!」
 はっきりとそう口にする女ジャドーガ兵。
 その目はトライパワードへの憎しみをはっきりと浮かべていた。

 「クククク……それでいい。お前は今日からジャドーガに仕える性処理用女ジャドーガ兵マナミだ。よいな?」
 先ほどと同様にマスクに包まれたマナミの顎を手で持ち上げるガロム。
 「キキーッ! 私は性処理用女ジャドーガ兵マナミ。どうぞ何なりとご命令を。キキーッ!」
 力強い手で顎を掴まれたことで目がとろんと蕩けるマナミ。
 今の彼女にとってガロムは敬愛する上官なのだ。
 「クククク……お前は自分が何をするべきかわかっているな?」
 「キキーッ! もちろんです。私の任務は偉大なるジャドーガの世界征服の手伝いとして、ジャドーガで働く皆様の性欲をこの肉体で発散していただくよう性処理を行うことです」
 マナミは何のためらいもなくそう口にする。
 彼女にとってそれはもう当然のことなのだ。

 「クククク……男どもの性処理など屈辱ではないのか?」
 「キキーッ! とんでもありません。ジャドーガの皆様に気持ちよく働いていただくために、この躰で性処理を行なえることはとても喜ばしいことであり、光栄に思います」
 マナミの思考はもうそう思うように変えられてしまっていた。
 ジャドーガメンバーの性処理を行うことこそが彼女の喜びになってしまったのだ。

 「クククク……いいだろう。ではまずは俺様も処理を行なってもらおうか……」
 「キキーッ! かしこまりました、ガロム様」
 ガロムが顎から手を離すと、すぐにひざまずいてその股間に頬擦りをするマナミ。
 敬愛するたくましく強い上官の性処理をさせていただけるなど、幸せ以外の何者でもないのだ。
 今までこのお方と偉大なるジャドーガに歯向かってきた自分は、なんとおろかだったのだろう。
 マナミは心からそう思うようになっていた。

 ガロムの股間からムクムクとせり出してくる黒いペニス。
 男性のジャドーガ兵もそうだが、彼の股間もまた普段は黒いタイツ状のスーツに覆われている。
 それが性的刺激を受けることにより、そのままペニス状の突起として伸びてくるのだ。
 もちろん先端からは白濁した精液も放出される。
 その黒いペニスにマナミは頬擦りし、愛おしそうにキスをしてそのままくわえていった。

 女ジャドーガ兵となったマナミの顔は目以外をマスクのようなスーツで覆われ、口も開くことはできない。
 だが、マスクの口の部分はかなりの柔軟性があり、まるで口を開けたかのようにそのままペニスを頬張ることができるのだ。
 マナミはその機能をフルに生かしてガロムのペニスをくわえていく。
 「んん……ん……ん……」
 マスクに唾液がにじみ、ガロムのペニスを濡らしていく。
 「ククク……いい子だ。気持ちいいぞ」
 「ん……んん……」
 マナミの目に喜びが浮かぶ。
 うれしい……
 自分の口奉仕で喜んでもらえるのがとてもうれしくなる。
 もっともっと気持ちよくなってもらいたい。
 昨日までの愛美なら決して思わなかった気持ちをマナミは感じていた。

 「んっ」
 ガロムのそそり立つペニスから白濁液が放出される。
 「んんん……」
 大量の精液がマスク越しにマナミの中へと浸み込んでくる。
 「ぷあ……」
 思わずくわえていたペニスから口を離し、白濁液に染まったマスクの口をガロムに見せる。
 そしてそのまま指で口を撫でるようにして白濁液をさらにマスクへと浸み込ませていく。
 「クククク……それでいい。マスクに覆われたジャドーガ兵の口は、もう普通の食べ物を食うことはできない。だが心配はいらん。専用の液状食料を食べる男のジャドーガ兵と違い、性処理用に特別改造されたお前の躰は男の精液が栄養となるのだ。しかも口だけではなく躰中どこでもかけられた精液をそのスーツが吸収してお前の体内へと送り込む。お前が性処理をして男の精液を浴びている限り、お前は飢えることが無くなったのだ。クククク……うれしかろう?」
 「ああ……はい……キキーッ!」
 ガロムの言葉に喜びの声を上げるマナミ。
 精液を浴びて生きていくことができるなんて……
 なんてすばらしいのだろうとマナミは心からそう思った。

                   ******

 「キキーッ! キキーッ!」
 「キキーッ!」
 室内に男女のジャドーガ兵の声が響く。
 ガロムの命令でマナミはジャドーガ兵たちの性処理をしているのだ。
 気持ちいい……
 気持ちいい……
 ジャドーガ兵同士のセックスがこんなに気持ちがいいものだなんて思わなかった。
 マナミは心からそう思う。

 後ろから突き込まれるジャドーガ兵のペニス。
 それは普段はナイロンの全身タイツのようなスーツに隠れているものの、性欲を感じるとムクムクとそそり立ってくる。
 今それが四つん這いになっているマナミの後ろから突き立てられている。
 ジャドーガ兵のペニスを感じることで、女ジャドーガ兵であるマナミのスーツにも変化が生じ、股間に性器が作られる。
 そしてナイロン状の被膜に包まれた性器同士がセックスをするのだ。
 それはある意味ゴムを着けてセックスをするようなもの。
 だが、ナイロン状の被膜同士がこすれ合う気持ちよさはその比ではない。
 それにナイロン皮膜を通してジャドーガ兵のザーメンが放出され、それをマナミのスーツが吸収して栄養分にするのだ。
 マナミにとっては性処理は生命維持活動の一つでもあった。

 「キキーッ! キキーッ!」
 ジャドーガ兵としての歓喜の声を上げ続けるマナミ。
 ナイロン皮膜同士がスリスリとこすれ合って最高の快楽を与えてくれる。
 このセックスに比べたら、あの人間の彼とのセックスなど児戯に等しい。
 どうしてあのような男とのセックスを気持ちいいなどと思っていたのだろうか。
 あの男のことを大切に思い、今まで偉大なるジャドーガに歯向かっていただなんて……
 あんな男は死んで当然だし、もっと早く女ジャドーガ兵にしていただけばよかった……
 ジャドーガ兵のペニスが与えてくれる快楽に酔いしれながら、マナミはそう思っていた。

 「キキーッ! んむっ」
 マナミの前にやってきた別のジャドーガ兵が、そのペニスをマナミのマスクに覆われた口のところに当ててくる。
 マナミは喜んでそのペニスに頬擦りし、そのままマスク越しに咥え込む。
 そして後ろから突かれるリズムに合わせてそのペニスをしゃぶっていく。
 「キキーッ!」
 ジャドーガ兵が気持ちよさにたまらず声を上げ、それがまたマナミを気持ちよくさせる。
 前からも後ろからもペニスを突き込まれ、マナミは最高の快楽を味わうのだった。

                   ******

 「くそっ、まだ司令の行方はつかめないのか?」
 イラついたようにうろうろと司令室を行き来する賢哉。
 「落ち着けよ賢哉。焦ったって仕方がない。今防衛隊もみんな必死で捜索を続けてくれている」
 オペレーター席につき、コンソールのモニターを見つめている竜司。
 二人ともに司令の行方を心配しているのは同じだ。
 「そんなこと言っても、もう十日にもなる……くそっ! まさかもうすでに司令は……」
 この世にいないのでは……と不吉な考えを口にしようとして思わず止める賢哉。
 「それは大丈夫だ」
 「どうしてわかる?」
 きっぱりと否定する竜司に賢哉は驚く。
 「おそらく司令を拉致したのはジャドーガの連中だ。だとしたら、司令がすでに殺されているのであれば、それを高らかに宣言しないはずがない。宣言したほうがはるかに俺たちや世間に対する衝撃が大きいからな。だが、それをしていない以上、まだ司令は生きているはずだ……」
 とはいえ、生存の確率が日ごとに少なくなっていくだろうということは竜司にもわかっている。

 「だったら、なおのこと早く司令を見つけなければ……」
 「わかってる……だから焦るな。とにかく今は……」
 「二人とも大変よ! すぐに来て!」
 賢哉と竜司が話しているところに飛び込んでくる理沙。
 「どうした?」
 「何があった?」
 賢哉も竜司もすぐに理沙に反応する。
 「そ、それが……ジャドーガから荷物が届いたの」
 「「はあ?」」
 理沙の言葉に賢哉と竜司は思わず顔を見合わせた。

 「これか? その荷物ってのは?」
 トライパワードの三人の前にあるのは、床に置かれた大きなトランクケース。
 まさに人間一人くらいなら入りそうなくらいの大きさだ。
 「内部に入れちゃって大丈夫なのか? 爆発したりとか……」
 「それは大丈夫みたい。爆発物反応はなかったわ。でもX線での透視はできないみたい」
 竜司の懸念に理沙が答える。
 とはいえ、万が一に備えて三人はいずれもバトルスーツを着用し、場所もやや広めの空き部屋に運び込んである。

 「それにしても……奴ら一体何を送ってきたというんだ?」
 「まさか……な……」
 首をかしげる賢哉と不吉な想像をしてしまう竜司。
 「とにかく、開けてみましょう」
 「ああ、そうだな」
 理沙の言葉にレッドパワード姿になった賢哉がトランクケースに近づいていく。
 緊張した様子でかがみこみ、横に寝かされたトランクケースの留め具を外していくレッドパワード。
 ブルーパワードとイエローパワードも息を飲んで見守っている。

 パチンと音がして留め具が外れ、レッドがゆっくりと大きな蓋を開けていく。
 「な? こ、これは?」
 思わず声を上げるレッド。
 「なんだ? 何があった?」
 すぐさまブルーとイエローも駆け寄ってきてトランクケースの中を見る。
 「これは……」
 三人は思わず顔を見合わせた。

 トランクケースに入っていたのは一体のジャドーガ兵。
 躰を丸めて膝を抱え込むような、まるで胎児のような姿でトランクに押し込められていたのだ。
 しかもそのシルエットからは女性のようだ。
 「女? 女のジャドーガ兵?」
 「女のジャドーガ兵なんて、今まで見たことないぞ」
 「いったいどういうことなの?」
 困惑する三人。

 その時、ブウンと音がして、開いたトランクケースの蓋の裏が光りはじめる。
 三人はすぐに後ろに飛び退って距離を取り、身構えて何が起きてもいいような姿勢を取る。
 すると、光はやがてトゲの付いた鎧に持を包んだ男の姿を空中に映し出した。
 「なっ?」
 「貴様は、ガロム将軍!」
 現れた姿に驚くトライパワードチーム。
 映し出されたのはまさに宿敵ともいうべきジャドーガの幹部、ガロム将軍だったのだ。

 『クククク……これはこれは、三人ともお揃いのようだな』
 映し出されたガロムが三人を見渡す。
 どういう仕組みかわからないが、どうやら向こうにも三人の姿が見えているいるらしい。
 「ガロム将軍! 貴様いったい何を!」
 「ジャドーガ兵を送り込んでくるなんて、どういうつもり?」
 『まあ、待て待て。今日は貴様らに探し物を送り返してやったまでだ』
 今にもとびかかってきそうなトライパワードたちを相手に、ガロムは悠然と構えている。
 「探し物?」
 「どういうことだ?」
 レッドもブルーもいらだちを隠せない。
 今にも手が届きそうな場所に敵の指揮官がいるというのに、それは単なる映像なのだ。

 『クククク……なに、貴様たちが大事な司令官を探していると聞いたのでな? 送り返してやったのよ。ちょっと以前の姿とは違っているがな』
 にやにやと意地の悪い笑みを浮かべているガロム。
 「な、何っ?」
 「えっ? まさか……」
 三人の背中に冷たいものが走る。
 『クククク……さあ、起きるのだ。起きてお前が何者なのかをこいつらに教えてやれ』
 その声にケースの中に入っていた女ジャドーガ兵の目がカッと開く。
 そしてゆっくりと起き上がると、立ち上がってトランクの外に出る。
 床を踏みしめるブーツのかかとがカツッと音を立てる。
 「キキーッ! 私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵マナミ。偉大なるジャドーガとガロム様の忠実なるしもべです。キキーッ!」
 右手を斜め上にスッと挙げ、忠誠の声を上げるマナミ。
 その胸が誇らしげにピンと張られている。

 「な?」
 「ま、愛美?」
 「こ、このジャドーガ兵が愛美司令だというの?」
 愕然とする三人のパワードたち。
 当然だろう。
 今目の前にいるのは、全身をナイロン状のタイツのようなスーツで覆い、腰にはジャドーガの紋章の付いたベルトを締めているまぎれもないジャドーガ兵なのだ。

 「キキーッ! 私はもう司令官などではありません。私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵マナミ。トライパワードは憎むべき敵です!」
 「そ、そんな……」
 「愛美司令が……」
 「嘘でしょ……」
 憎むべき敵とまで言われ、三人は言葉を失う。
 探していた司令がまさかこんなことになっているとは……

 『くはははは……お前たちの司令官はずいぶんと役に立ってくれたぞ。実はジャドーガ兵は男ばかりでな、定期的にたまった性欲を処理してやらねばならんのだ』
 「なんだと!」
 「そんな……」
 ガロムの言葉に唖然とする三人。
 性処理用という意味を、あらためて理解してしまったのだ。
 『マナミのおかげでジャドーガ兵たちの性処理もずいぶんとはかどったのでな、二体目三体目もこうして作ったというわけだ』
 ガロムの両脇に新たな女ジャドーガ兵が姿を現す。
 『キキーッ! 私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵ユウコ。私の躰で皆様の性処理をいたします』
 『キキーッ! 私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵ミユキ。ジャドーガとガロム様に忠誠を誓います』
 それぞれマナミと同様に右手を上げて宣言する二体の女ジャドーガ兵たち。

 「ま、まさかその二人も?」
 「誰かを改造して?」
 『もちろんだとも。こっちのユウコは確か結婚したばかりとか言っていたな。こっちのミユキは女子高生だったか?』
 『キキーッ! それは私が性処理用女ジャドーガ兵になる前のことです』
 『キキーッ! ガロム様、私はもう女子高生などではありません』
 ガロムに腰を抱き寄せられ、嬉しそうにする二体の女ジャドーガ兵たち。
 おそらくこの二人の夫や家族が見れば、愕然としてしまう光景だろう。

 『クククク……というわけだ。今後はいくらでも性処理用の女ジャドーガ兵を用意できることになったのでな、マナミはお前たちが探しているようだから帰してやるというのだ。ありがたく受け取るがいい。くはははは!』
 高笑いを残しながら画像が消えていく。
 「ま、待てっ!」
 「し、司令を元に戻しなさい!」
 「待てっ!」
 三人が駆け寄るが、映像は消え去り、トランクケースの蓋は発光をやめていた。

 「くそっ、逃げられたか!」
 「まあ、今のは映像だから、実際に奴がここにいたわけじゃないけどな」
 悔しそうにこぶしを握り締めるレッドに思わず苦笑するブルー。
 とはいえ、レッドのそういう熱血なところが頼もしくもある。
 「だが、それよりもこの状況をどうするかだ」
 「どうするか?」
 ブレスレットを操作してバトルスーツを解除するブルーパワードの竜司に、レッドパワードの賢哉もスーツを解除する。
 「ああ……この人を……彼女をどうするのか……ジャドーガ兵だから倒す……というわけにもいくまい」
 竜司の言葉に賢哉も理沙もハッとする。
 そうだ……
 ジャドーガ兵は人類の敵ジャドーガの手先。
 倒さねばならない相手なのだ。
 だが……

 「た、確かに……くそっ!」
 賢哉がマナミの方に振り返る。
 「あなたは……あなたは本当に愛美司令なんですか? 本当に?」
 「キキーッ! それは以前の私。お前たちとともに偉大なるジャドーガに歯向かったなどとは思い出したくもない過去。今の私は偉大なるジャドーガの忠実なるしもべ。性処理用女ジャドーガ兵マナミ」
 誇らしく胸を張り右手を上げるマナミ。
 そのマスクから覗いた目が賢哉をキッとにらみつけている。

 「そんな……司令、目を覚ましてください! あなたはジャドーガを憎み私たちとともに戦っていたじゃないですか! それにあなたの恋人は……」
 「キキーッ! 私は正気よ。偉大なるジャドーガを憎むなどあり得ない。あの男は偉大なるジャドーガに歯向かったおろかな男。そんな男は死んで当然。あの男のことなど思い出したくもないわ」
 「そんな……」
 きっぱりと否定され、愕然とする理沙。
 これがあの凛々しかった愛美司令だというの?

 「と、とにかく、俺たちには判断は無理だ。上層部に報告して判断を仰ぐしかないだろう」
 「そ、そうだな……」
 竜司の言葉に賢哉もうなずく。
 まさかこんなことになるとは……
 「だが……すぐに結論が出るということも無いだろう……その間をどうするか……」
 「ああ……仕方ない。とりあえず司令の自室でおとなしくしていてもらうしかないだろう。俺が見張りにつく」
 監視役を買って出る賢哉。
 「大丈夫か?」
 「ああ……ジャドーガ兵なら俺一人でもなんとかなるだろう。それに……報告と交渉は俺よりもお前の方がいいだろう。頼むよ」
 「……わかった」
 竜司が決意を込めてうなずく。
 なんとしても愛美司令を元に戻す方向で上と交渉するのだ。

 「理沙はそのまま待機していてくれ。何かあったらいろいろと頼むかもしれん」
 「わかったわ」
 理沙もこくんとうなずく。
 「さあ、来てください。とりあえず自室にいてもらいます」
 「キキーッ! 私はガロム様からここに送り込まれた身。外に連れ出すというのでなければかまわない」
 抵抗する様子もなくマナミはすたすたと歩きだす。
 賢哉はあらためて彼女の入ってきたトランクを見て、中に何も入っていないことを確認すると、蓋を閉じてそのまま一緒に持って行く。
 ここに置いておくよりも、むしろ一緒にして監視していた方がいいだろうと判断したのだ。
 そして、さっさと部屋を出て自室へと向かうマナミの後を追っていく。
 どうやら以前の記憶はあるようだ。
 だが、その思考はすっかり変えられてしまっているのだろう。
 その姿を竜司と理沙は暗い表情で見つめていた。

                   ******

 「覚えてますか? ここが司令の部屋です」
 「キキーッ! 当然覚えているわ。こんなところにいたことなど思い出したくもないけど」
 落ち着いた雰囲気でまとめられている部屋を見渡すマナミ。
 以前の自分がここにいたことは覚えている。
 だが、ここにいたのは以前の自分であって、今の自分ではない。
 ガロム様の命令でなければ、こんなところにはいたくもないのだ。

 「はは……まあ、なんとか俺たちが以前の愛美司令に戻れるように頑張りますから。ジャドーガの洗脳を必ず解いてみせます」
 トランクを脇に寄せ、入り口のドアのところに立つ賢哉。
 ここで監視するつもりなのだ。
 この部屋は執務室とは違い自室なので、特に重要な機材もない。
 司令室との通信機は特に問題は無いだろうし、パソコンは外してあとで理沙に持って行ってもらうとしよう。
 とにかく、愛美司令を元に戻さなくては……
 賢哉はそう思う。

 「ふん……」
 奥の扉を開け、寝室へと入っていく女ジャドーガ兵。
 机の上のパソコンには手を出さなかったことに、賢哉はとりあえずホッとする。
 司令のパソコンである以上、いろいろと機密情報が入っているのは間違いないのだ。
 やはりこの部屋じゃないほうが良かったかな……
 とはいえ、ジャドーガ兵の捕虜として扱うというのも……
 そもそも、彼女をどう扱えばいいのか……
 賢哉は悩ましく感じる。

 「キキーッ! いつまでそこにいるの? こっちに来たら?」
 奥の部屋から声がする。
 「い、いや、俺は……」
 さすがに寝室に入るのはためらわれ、賢哉は思わず口ごもる。
 「私を見張るのではないの? 私はお前たちの捕虜なんでしょう?」
 確かにそうかもしれない。
 だが、賢哉にとっては尊敬する上官でもあったし、その凛々しさにひそかな憧れを抱いていた相手でもあったのだ。
 「見ていないのなら、私は何かするかもしれないわよ」
 賢哉の返事が無いからか、やや挑発するような声で語りかけてくるマナミ。
 「それは……困ります」
 実際に何かされる恐れは少ないとは思いつつも、賢哉は仕方なく寝室の入口へと移動する。
 そしてドアのところで見張っていようと中を見た。

 「!!」
 思わず息を飲む賢哉。
 寝室では、女ジャドーガ兵がまるで見せつけるようにそのすらっとした長い脚を組んで、ベッドに腰かけていたのだ。
 その躰は全身がナイロン状のスーツで覆われているにもかかわらず、まるでなにも着ていないかのように女のラインを浮き彫りにしており、賢哉の目を惹き付けるには充分すぎるほどだ。
 「キキーッ! どうしたの? 女ジャドーガ兵の躰は見慣れてなかったかしら?」
 見慣れるも何も、女ジャドーガ兵という存在自体がマナミが第一号なのだ。
 見たことなどあるはずがない。
 「うふふ……どう? 私の躰……味わってみたいと思わない?」
 スッと立ち上がり、腰をくねらせるような歩きで近寄ってくる女ジャドーガ兵。
 「だ、ダメです。来ないで」
 賢哉はそう言って近寄らせないようにしようとするが、やはりその姿には魅力を感じてしまう。

 「いいのよ。私は偉大なるジャドーガの性処理用女ジャドーガ兵。憎い敵でも性処理してあげるわ」
 自らの躰を賢哉の胸に預け、その手で彼の股間を撫でるマナミ。
 「ふふふ……ほら、もうこんなに硬くなっているじゃない。私がちゃんと処理してあげるわよ」
 「だ、ダメです! ダメだってば!」
 賢哉はともすれば誘惑に乗ってしまいそうな自分を必死に抑え、彼女の躰を引き離す。
 「うふふ……心配しなくてもいいのに。マスク越しでもちゃんと口でするようにおしゃぶりしてあげるし、スーツ越しでも生でするのと変わらないセックスを味わえるのよ」
 マナミは見せつけるように指をマスク越しに舐め、もう片方の手の指をスーツ越しに股間に入れていく。
 「だ、ダメです! し、失礼します」
 賢哉は慌てて彼女から離れると、そのまま机のパソコンを持って逃げるように司令の部屋を後にする。
 「ふふ……」
 それを見てひそかに笑うマナミ。
 案外と初心な男のようね……
 ガロム様の指令を実行するのも容易そうだわ……
 マナミはそう思った。

 「はあはあ……」
 「ど、どうしたの?」
 小脇にパソコンを抱えて息を切らしながら入ってきた賢哉に、理沙は思わずそう問いかける。
 彼は司令の部屋で愛美司令を見張っているのではなかったのか?

 「す、すまん、交代してくれ。や、やはり女性の見張りは女性の方がいいだろう……」
 「何かあったの?」
 赤い顔をして息を切らせている賢哉に、理沙は困惑する。
 何かあったのだろうか?
 「い、いや、特に……ほら、やはり男だといろいろと問題があるかもしれんだろ?」
 「ふーん……まあ、いいけど」
 なんだか妙な感じの賢哉だが、まあ確かに女性の部屋で男がいるといろいろと気まずいのかもしれない。
 それに、あのジャドーガ兵が愛美司令だとして、元に戻す手がかりのようなものも一緒に居ると掴めるかもしれないとも理沙は思う。

 「頼む。まあ……理沙なら大丈夫だと思うよ。俺はここにいるから、何かあったらすぐに呼んでくれ」
 「了解」
 うなずいて部屋を出ていく理沙を賢哉は見送る。
 まさか女性に対してはあのような行動はしないだろうと賢哉は思ったのだ。
 それにしても性処理用だなんて……
 ジャドーガめ、ひどいことをしやがる……

                   ******

 「失礼します」
 やはりこの部屋に入る時にはそう口にしてしまう理沙。
 今ここにいるのは以前の司令ではなく、敵のジャドーガの一人だというのはわかっているのだが、やはり理沙にとってはこの部屋は司令の部屋なのだ。
 愛美司令……
 どちらかと言うと上官というよりは先輩という感じが強く、理沙にとっても賢哉同様に司令は憧れの人でもある。
 この部屋にも何度かお邪魔させていただき、トライパワードの一員としての話や私的な話もさせてもらったものだった。

 「司令?」
 部屋に入ってみたものの、中には誰もいない。
 だが、奥の部屋に通じるドアが開いているので、おそらくそちらにいるのだろう。
 「失礼します、司令」
 理沙は奥の扉へ向かうと、中に入る前に一度壁をノックして、あらためてそう言ってから寝室に入る。

 ハッとした次の瞬間、黒い腕が背後から理沙の首に巻き付いてくる。
 ドアの影に隠れているという古典的な手で背後を取られてしまったのだ。
 しまったと思ったものの、すでに腕は理沙の首に嵌まってしまっている。
 「キキーッ! 甘いわね。偉大なるジャドーガを舐めているのかしら?」
 耳元で女ジャドーガ兵の声がする。
 そんな……
 息ができない。
 急速に意識が遠くなっていく。
 薄れゆく意識の中で、理沙はあらためて相手がもはや身も心もジャドーガの一員にされているのだと思い知った。

 腕を外すとドサッと床に倒れ込む理沙。
 「ふふふ……」
 完全に意識を失ったことを確認し、マナミは笑みを漏らす。
 この女がイエローパワード……
 偉大なるジャドーガに歯向かう、おろかな女。
 安心しなさい。
 お前は殺しはしないわ。
 お前もこれからは偉大なるジャドーガの一員になるのよ。
 光栄に思いなさい。

 マナミは理沙を軽々と持ち上げると、そのままベッドに運んでいく。
 すでに肉体をジャドーガ兵に改造されたマナミにとっては、この程度の重さなどどうということはない。
 変身をしていない状態のトライパワードなら、ジャドーガ兵でも対処は可能。
 ましてや油断している相手など、赤子の手をひねる様なものである。
 マナミはそのまま室内にあった荷造り用の紐で、理沙の両手をベッドに縛り付けていく。
 目を覚ましたとしてもこれなら抵抗できないだろう。
 もちろんイエローパワードのスーツを装着するためのブレスレットも外しておく。
 あとは……
 椅子をずらしてその上に自分が入れられてきたトランクケースを置いていく。
 バカな連中ね……
 このトランクケースが何のためにあるのかもわからずに……
 マナミはそう思う。
 これで準備は整った。

 「はっ!」
 頬を叩かれて目を覚ます理沙。
 目の前には、頭全体を覆っている黒いマスクから目だけが露出した女ジャドーガ兵の顔がある。
 「クッ」
 身構えようと思った理沙だったが、両手が拘束されてベッドに寝かされていることに気が付いた。
 「キキーッ! 目が覚めたようね。相手が元司令とはいえ油断しすぎじゃないかしら? 今の私は偉大なるジャドーガのしもべなのよ」
 「ち、違います司令! 目を覚ましてください! 司令はジャドーガに操られているだけなんです!」
 確かに油断していたことは間違いない。
 そのことに理沙は臍を噛む。
 ここはなんとかこの場を脱出して賢哉たちに応援を頼まなくては。

 「キキーッ! 私は操られてなどいないわ。私はガロム様によってジャドーガの偉大さ、素晴らしさを教えていただいたの。ジャドーガこそ地球を支配するのにふさわしい組織。それを邪魔するものは死あるのみよ」
 冷たい目が理沙を見下ろしてくる。
 「そんな……本当に司令は姿だけではなく心までジャドーガに染まってしまったんですか?」
 理沙は悲しくなる。
 あれほどジャドーガを憎み、亡くなった彼の無念を晴らすと言っていた愛美司令なのに……
 「キキーッ! 何度も言わせないで。お前たちこそジャドーガに歯向かうおろか者たちだわ」
 いきなり理沙の頬が張り飛ばされる。
 「あぐっ!」
 「キキーッ! 安心なさい。お前は殺したりしないわ。むしろお前は喜ぶべきよ。ガロム様はお前にもチャンスをくださったわ。偉大なるジャドーガにお仕えするチャンスをね」
 マナミの手が理沙の顎を掴む。
 「えっ? それはどういう……」
 「お前も私と同じ性処理用女ジャドーガ兵になるのよ。キキーッ!」
 その言葉に理沙の顔は青くなる。
 そんな……
 私をジャドーガ兵にしようというの?

 「クッ! そんなことは……」
 理沙は必死に身を起こそうとするが、拘束された手首が引っ張られてしまって起き上がれない。
 イエローパワードであればこんな荷造り用の紐など簡単に引きちぎれるだろうが、生身の状態ではそれも難しい。
 「くっ!」
 なんとか身をよじって逃げようとするものの、両手を縛られているのでどうしようもない。
 「キキーッ! 無駄よ。そう簡単には外れないわ」
 理沙から離れて椅子にセットしたトランクケースのところに行くマナミ。
 あとはスイッチを押すだけなのだ。

 「キキーッ! 見なさい。このトランクケースには私をこの素晴らしい躰に改造してくれたジャドーガ兵化ビームの発射機が仕込まれているわ。このビームを浴びれば、お前も私と同じように偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵になることができるの。ジャドーガの皆様の性処理を喜んで行うようになるのよ」
 理沙に向けられたトランクケースの側面には、確かに小さなレンズのようなものがある。
 そこからビームが発射されるようになっているのだ。
 「いやっ! そんなのいやです! 私は絶対にジャドーガ兵になんかならない!」
 必死で身をよじる理沙。
 なんとしてもこの場を抜け出さなければ……
 「だ、誰かぁ! 誰か来てぇ!」
 お願い……
 誰か来て!

 「うふふふ……無駄よ。この部屋の防音がしっかりしているのは知っているでしょ?」
 小さく笑う女ジャドーガ兵。
 確かにこの部屋は司令の私室ではあるものの、場合によっては司令官としてひそかに外部との連絡を行なったりすることもあるため、部屋の外に音が漏れないように作られている。
 そのことは当然理沙も知っていた。
 「そ、そこまで見越して……」
 「キキーッ! ええ、そうよ。ガロム様がわざわざ私をここに送り込んだのは、私がここに詳しいから。お前たちが私を監禁するとすればここにするだろうと読んだとおりだったわ。まあ、違っても別にかまわなかったけどね。ここのことは知り尽くしているのだし」
 「くっ……」
 あらためて理沙は相手が自分たちの司令官であった人物であり、この本部のことはよく知っているということを認識せざるを得ない。

 「司令……」
 「キキーッ! おしゃべりはここまで。次に会話をするときにはお前も偉大なるジャドーガを崇拝するようになっているわ」
 理沙に向けたトランクのスイッチを押す女ジャドーガ兵。
 「いやっ! いやぁっ!」
 理沙の躰にトランクのレンズ部分から七色の光が浴びせられる。
 「ああっ! ああああああ……」
 着ていたものが消滅し、理沙の美しい肢体があらわになる。
 だが、すぐにその白い肌が黒く変化していき、全身が黒く覆われていく。
 それはやがてナイロンの全身タイツのように変質し、理沙の躰をぴったりと包み込む。
 足のつま先は指が消えて一つになり、かかとがハイヒールのように変化してブーツ状に変わっていく。
 両手は全身タイツの上に、さらにひじくらいまでの長さの黒革の手袋のようなものが作られ、腰にはヘビの模様のバックルの付いたベルトが巻かれていく。
 最後に頭部は目の部分以外がすべて覆われ、マスクをかぶったように変化した。

 七色の光線の照射が終わり、ベッドの上には新たな女ジャドーガ兵が横たわっている。
 マナミはゆっくりと近づくと、両手を縛っていた荷造り用の紐を解いてやる。
 そして、一歩下がると命令を口にした。
 「キキーッ! さあ、起きなさい。偉大なるジャドーガに仕える新たな性処理用女ジャドーガ兵リサ」
 「キキーッ!」
 その言葉に従ってむくりと上半身を起こすリサ。
 その目には暗い輝きが灯っている。

 「キキーッ! さあ、立ちなさい。立ってお前が何者か自らの口で言うのよ」
 マナミの言葉にこくんとうなずき、ベッドから降りて立ち上がるリサ。
 その姿はマナミと全く同じ黒い全身タイツに包まれている。
 「キキーッ! 私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵リサ。この身をジャドーガにお捧げいたします。キキーッ!」
 カツッとハイヒールのかかとを鳴らし、気を付けの姿勢から右手を斜めに上げて宣言するリサ。
 「キキーッ! それでいいわ。今日からあなたも私と同じ性処理用女ジャドーガ兵。ともにジャドーガのために働くのよ」
 マナミも姿勢を正して右手を上げる。
 「キキーッ! もちろんです。私のこの身も心もすべて偉大なるジャドーガのもの。ジャドーガのためなら何でもいたします!」
 誇らしげに胸を張るリサ。
 そこにはすでに先ほどまでの理沙の姿は無い。

 「ふふ……それじゃガロム様に新たな女ジャドーガ兵の誕生をご報告しないとね」
 マナミがあらためてトランクケースの蓋を開ける。
 すると、蓋の裏が光りはじめ、先ほどと同じように空中に精悍なガロムの姿を映し出す。
 「キキーッ!」
 「キキーッ!」
 現れたガロムの姿にすぐさま右手を上げる女ジャドーガ兵たち。
 「ほう……」
 映像のガロムは目の前に二人の女ジャドーガ兵がいるのを見て、ニヤッと笑う。
 「マナミよ、うまくいったようだな」
 「キキーッ! ガロム様、新たな性処理用女ジャドーガ兵のリサを紹介いたします。さあ、リサ、ガロム様にご挨拶を」
 「キキーッ! 偉大なるジャドーガの大幹部ガロム様。私は新しく性処理用女ジャドーガ兵となりましたリサと申します。これからは偉大なるジャドーガに永遠の忠誠を誓います。どうぞ、よろしくお願いいたします。キキーッ!」
 マナミに促されてガロムに挨拶をするリサ。
 ジャドーガの誇る大幹部の姿に、思わず緊張してしまう。
 「うむ。マナミよ、この女はイエローパワードか?」
 ガロムの目がリサからマナミに向けられる。
 「キキーッ! その通りですガロム様。リサは先ほどまでは我らジャドーガに歯向かう憎き敵でしたが、こうして私と同じ性処理用女ジャドーガ兵に生まれ変わりました。そうよね?」
 「キキーッ! その通りです。先ほどまでの私はおろかにも偉大なるジャドーガに楯突くバカな女でした。ですが、こうして性処理用女ジャドーガ兵に生まれ変わりジャドーガの一員となった今は、どうしてそのような考えをしていたのか理解に苦しみます。偉大なるジャドーガこそがこの世界を支配するのにふさわしい組織。私はジャドーガのためなら何でもいたします!」
 あらためてガロムに宣言するリサ。
 今のリサにとって先ほどまでの自分は赦されない存在であり、今までの行為を償うためにも全身全霊でジャドーガにために働くのだ。

 「ククク……よくやったぞマナミ。これで目障りなトライパワードのうち一人は消えたということだな」
 「キキーッ! お褒めの言葉、ありがとうございます。ガロム様」
 マナミの胸が熱くなる。
 今までトライパワードの指揮官などという愚かな行為をしてきた自分を褒めてくださったのだ。
 感激以外の何物でもない。
 「では、残る目障りな二人もお前たちの手で葬り去るのだ。できるな?」
 「キキーッ! もちろんです!」
 「キキーッ! お任せくださいませ!」
 二人のジャドーガ兵が目を輝かせる。
 「うむ。頼んだぞ。クハハハハハ……」
 高笑いを残してガロムの映像は消え去った。

                   ******

 『賢哉! すぐに来てくれる?』
 控え室で今後のことを考えていた賢哉の下に、スピーカーから理沙の声が流れてくる。
 「わかった! すぐに行く!」
 賢哉はすぐに飛び出すようにして控え室を後にする。
 おそらく何かあったのだろう。
 もしかしたら、女ジャドーガ兵にされてしまった愛美司令と戦う羽目になってしまったのかもしれない。
 くそっ!
 ジャドーガめ!
 絶対に赦さん!

 「理沙!」
 司令の自室のドアを開け、中に飛び込む賢哉。
 だが、その瞬間に後頭部に一撃を食らい、思わず床に倒れ込む。
 理沙も食らった古典的な手法だが、それだけに効果的な手段でもあるのだ。
 「クッ!」
 なんとか気を失うことは避けたものの、すぐに黒い影が賢哉の上にのしかかってくる。
 賢哉は慌てて引きはがそうとするが、その手を別の黒い影が押さえ込む。
 「なにっ?」
 どういうことだ?
 ジャドーガ兵が二体?

 「くそっ!」
 必死に抵抗するものの、バトルスーツ装着前ではジャドーガ兵と言えども強敵だ。
 一体を相手ならまだしも、二体相手となると賢哉も苦戦は免れない。
 それにしてもいったいどこから二体目が?
 「ぐあっ!」
 腕を固められ、躰をぐるりと仰向けにされる。
 そのまま両手を万歳のように上げた状態で抑え込まれ、顔に柔らかいものが押し付けられる。
 それが女ジャドーガ兵のお尻だと気付いたものの、振りほどこうにも腰から下をもう一人の女ジャドーガ兵が押さえ込んでいて動けない。
 「くっ……むぐっ!」
 「キキーッ! うふふふ……私のお尻の感触はどうかしら、賢哉?」
 体重を乗せて圧迫してくるお尻に、賢哉の鼻と口が塞がれてしまう。
 そしてその声に賢哉は聞き覚えがあった。
 ま、まさか……
 理沙?
 理沙なのか?

 「んん……んぐっ! んん?」
 「キキーッ! うふふ……私の名前を呼んでいるのかしら? ええ、そうよ。私はリサ。でもイエローパワードだった以前の私ではないわ。今の私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵リサよ」
 リサはそういうと、賢哉の頭を太ももで締め付けていく。
 「んぐっ! んんんん……」
 「キキーッ! あらあら苦しそうね。今気持ちよくしてあげるわ」
 賢哉の下半身を押さえつけているマナミが、躰で両足を押さえつけたまま賢哉のズボンのベルトを外していく。
 そしてそのまま下着ごとズボンを下ろし、股間をむき出しにしてしまう。
 まだ萎えたままのチンポがあらわになり、マナミの目がうっとりとそれを眺めていく。
 「キキーッ! あらぁ? せっかく女ジャドーガ兵が二人も密着しているというのに、元気が無いわねぇ。うふふふ……」
 「キキーッ! 心配はいらないわ。私たちがすぐに大きくしてあげる。あむっ」
 あざけるように笑うリナと、そのままマスク越しに賢哉のチンポを咥え込むマナミ。
 彼女たちにとって敵であろうとも、チンポはごちそうなのだ。

 「むぐっ! むぐぅ……」
 必死にもがく賢哉。
 リナのお尻が鼻と口をふさいでいるため、呼吸がほとんどできないのだ。
 なんとかどかせたいのだが、リナの膝が賢哉の両腕を抑え込んでおり、なかなかどかせることができない。
 「キキーッ! 無駄よ。トライパワードと言えども変身前の力では私たちにはかなわないわ」
 尻の下でもがく賢哉に、リナはさらに体重をかけていく。
 「ん……んちゅ……ぷあ……うふふふ……苦しくても躰は正直。ほら、大きくなってきたわ」
 呼吸が苦しいにもかかわらず男としての反応は起きてしまうようで、マナミが口を離すと、確かに賢哉のチンポは勃起を始めていた。
 「キキーッ! 彼女のフェラは気持ちいいでしょ? 私たちは性処理用女ジャドーガ兵。偉大なるジャドーガに歯向かうバカな男でもちゃんと抜いてあげるわ」
 「キキーッ! ねえ、かわいそうだから少し緩めてあげたら、リサ? せっかく出したくても苦しくて出せないみたいよ」
 「キキーッ! そうみたいね。これでどう?」
 マナミの言葉にリサが少しだけお尻を持ち上げる。
 「む……ぷ……ぷはぁっ! はあはあ……や、やめろ理沙……二人ともやめるんだ!」
 少し呼吸ができるようになった賢哉が、またもがき始める。
 「キキーッ! うるさいわねぇ。黙って私たちに性処理されればいいのよ。気持ち良くあの世に送ってあげるわ。うふふふ……」
 「あむっ……んん……んちゅ……」
 再び賢哉のチンポを口に含むマナミ。
 「あ……」
 賢哉をたまらない快楽が襲う。
 マスク越しのねっとりとしたフェラがとても気持ちがいいのだ。
 「や、やめてください司令! やめるんだ理沙!」
 賢哉はなんとか逃れようとするものの、腕はリサの膝に押さえつけられ、脚もマナミががっちりと押さえ込んでいる。
 変身しようにも手首のブレスレットを操作しなくてはならないため、変身もできないのだ。
 それでも相手が普通の女性二人なら、トライパワードとして鍛えている賢哉ならなんとでもなっただろう。
 だが、今の二人は女ジャドーガ兵として肉体が強化されており、賢哉の力ではどうにもできない。
 せめて竜司が戻ってきてくれれば……

 「う……うあっ……」
 賢哉のチンポから白濁液がほとばしる。
 「ん……んぐ……んん」
 マスクの口の部分でそれをすべて受け止めるマナミ。
 みるみるうちに白濁液はマスクに吸い取られていき、マナミはうっとりと目を細める。
 「あはぁ……美味しい。ザーメンは最高のごちそうだわぁ」
 濡れた口の周りを指でなぞるマナミ。
 彼女にとってはもう普通の食事など意味がないのだ。
 精液こそが彼女の飢えを満たしてくれる。
 「う、うう……ん、むぐっ」
 フェラチオで射精してしまった気持ちよさと情けなさが入り混じる賢哉だったが、その顔に再びリサのお尻が押し付けられていく。
 「キキーッ! 気持ちよく抜いてもらえたみたいね。今度は私にクンニしてくれない?」
 ぎゅっとお尻で圧迫してくるリサ。
 とはいえ再び鼻も口も塞がれ、クンニするどころではない。
 「ん……むぐっ……ぐっ」
 呼吸ができなくなり、必死に逃れようともがく賢哉。
 「うふふふ……ダメねぇ。チンポが萎びたままよぉ。だらしないわねぇ」
 マナミがチンポに頬擦りするも、苦しくてそれどころじゃない。
 「うふふふ……最後に気持ちよくなれたんですもの、幸せよねぇ? さあ、私のお尻に包まれてくたばりなさい」
 ますます体重を乗せて圧迫するリサ。
 先ほどまでトライパワードの仲間としてともに戦ってきた気持ちなどは、きれいに消えている。
 「むぐ……がっ……」
 呼吸のできない苦しさに必死にもがく賢哉。
 「ぐぐぅ……う……」
 だがその躰もじょじょに力が抜け、やがて動きを止めてしまう。

 「うふふ……どうやらくたばったようね」
 「ええ、これでレッドパワードはもういなくなったわ」
 「うふふふ……」
 「うふふふ……」
 死体となった賢哉からゆっくりと離れて立ち上がる二体の女ジャドーガ兵。
 お互いにどちらからともなく歩み寄り、その躰を抱き合ってお互いの口同志をマスク越しに重ね合う。
 「ん……ぷあ……ふふふ……よくやったわ、リサ」
 「ありがとうございます。偉大なるジャドーガのお役に立てて光栄です」
 抱き合ったままで言葉を交わし合う二体の女ジャドーガ兵。
 「これであとはブルーパワードのみ」
 「ええ、偉大なるジャドーガに歯向かうものには死を」
 「もちろん手伝ってくれるわね?」
 「もちろんです。それと、ブルーが戻ってくる前にオペレーターの紗友里(さゆり)ちゃんにも偉大なるジャドーガのすばらしさを知ってもらうのはいかがでしょう?」
 「キキーッ! それはいいわね。彼女もきっといい性処理用女ジャドーガ兵になれるわ」
 「キキーッ! ガロム様にいい報告ができますかと」
 「うふふ……」
 「うふふ……」
 ゆっくりと離れる二人。
 「さあ、行きましょう。偉大なるジャドーガのために」
 「ええ、偉大なるジャドーガのために」
 「「キキーッ!」」
 二体の女ジャドーガ兵たちは向かい合い、右手を斜め上に上げてジャドーガの敬礼をするのだった。

END

いかがでしたでしょうか?
「戦闘員の日」ということで、女戦闘員化ネタでした。
よろしければ感想コメントなどいただけますと嬉しいです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2022/10/10(月) 20:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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奥様は愛する旦那をいたぶりたい

今日は超短編SSを一本投下します。

タイトルは「奥様は愛する旦那をいたぶりたい」です。

先日ふと、「悪堕ちさせたヒロインに命令を下したら、速攻で拒否された首領」というのも面白いなぁと思いまして、そんな話を2時間ちょっとで書いてみた作品です。(笑)
なので、本当に堕ちシーンだけのシチュのみSSです。
よろしければご笑覧くださいませ。

それではどうぞ。


奥様は愛する旦那をいたぶりたい

 う……
 ゆっくりと意識が戻ってくる。
 こ、ここは?
 私はいったい?
 目を開けて周りを見回す美那子(みなこ)。
 だが、周囲は漆黒の闇で何も見えない。
 躰もふわふわして、立っているのか横たわっているのかもわからない。
 まるで黒い水の中に浮いているような感じだ。
 だからと言って呼吸ができないということも無い。

 え?
 ここは……ここはどこ?
 どこなの?
 困惑する美那子。
 どうしてこんなところにいるのだろう?

 『目が覚めたようだな、津雲(つくも)美那子よ』
 闇の中から声が聞こえる。
 「だ、誰? 誰なの?」
 美那子は声の主を探すものの、そもそもが闇の中で何もわからない。
 『我はヤミオー。このヤミノランドの王である』
 「ヤミオー? そ、そんな……」
 その名を聞いた美那子は戦慄する。
 ヤミノランドと言えば世間を騒がせている謎の組織であり、世界を支配しようとしている邪悪な集団ではないか。
 奇妙な姿のヤミノ獣という怪物を操り、人々を恐怖に陥れているのだ。

 『ククク……そうだ。我はヤミオー。世界を闇で覆う者。お前は当然そのことを知っているだろう?』
 「……」
 美那子は唇を噛みしめる。
 そう、彼女は知っているのだ。
 世間一般の人々よりもそのことを知っている。
 なぜなら、彼女の夫である津雲大造(つくも だいぞう)は、ヤミノランドに対抗するために設立された陽光戦隊テラスンジャーの一員テラスブルーであり、日夜ヤミノランドと戦っていたからだ。

 『ククク……お前の夫はテラスブルー。我の忌々しい憎むべき敵。そうであろう?』
 どうやら美那子のことは知られているらしい。
 テラスンジャーのメンバーの関係者であることは高度の機密事項のはずだが、いったいどこから漏れたのだろうか……
 「違うと言っても通じないでしょうね……」
 『なに、違うなら違うでも利用価値はそうは変わらん』
 ヤミオーはそう答える。
 もっとも、違うなどとは思ってもいないようだが……
 「私を人質にでも?」
 美那子は闇をにらみつける。
 過去にもテラスンジャーは何度か人質作戦を受けたことはある。
 だが、多数のために少数の犠牲はやむなしということで、救出を最前提とはするものの要求には応じないという姿勢を貫いてきたのだ。

 だが、それは言ってしまえばテラスンジャーチームの関係者が人質ではなかったからで、身内が人質にされたとしたら、その姿勢を貫けるかどうか……
 特に夫の大造に美那子を見捨てる決断を下せるとは思いたくない。
 美那子は夫を心から愛していたし、夫もそうであると思いたかったのだ。
 だから、彼女が人質にされれば、テラスンジャーは危機に陥ることになるだろう……
 それを防ぐためには……
 美那子はその決断をしなくてはと考える。

 『ククク……人質にされる前に死ぬつもりかもしれんが、そうはさせん。お前には我が手駒になってもらおう』
 「えっ?」
 思わず顔をあげた美那子に、周りの闇が絡みつき始める。
 「えっ? いやっ! いやっ!」
 躰にまとわりつくタールのような闇を、両手で振り払おうとする美那子。
 だが、ねっとりとした闇は払おうとしてもまとわりつくだけであり、じょじょに美那子の躰に広がっていく。
 「いやっ! いやぁっ!」
 全身に広がっていく闇に恐怖し、美那子は必死で手を動かしていくが、逆にそれが闇を躰に塗り込むことになっていることにも気づかない。
 「いやっ! む、むぐっ!」
 闇は美那子の首の上にまで広がり始め、やがて口まで覆っていく。
 「ん……んんん……」
 呼吸ができないのか、口を覆った闇を必死で取り去ろうとする美那子。
 だが、闇は頭全体を覆い尽くし、美那子はすっかり闇に包まれたマネキン人形のようになってしまう。

 「……」
 やがて美那子は動きを止め、両手をだらんと下げて棒立ちになったような姿勢になる。
 そしてしばらくその姿勢で動かなくなっていたが、やがてそのまとわりついていた闇が細かい粒子となって飛び散っていく。
 そして中からは、先ほどまでとは違う衣装を身にまとった美那子の姿が現れる。
 それは黒いレオタードのようなインナーを基本とし、その上に銀のアーマーが胸と股間を覆っているもので、両手はひじ上まで、両足は膝上までが同じような黒い長手袋とブーツで覆われていた。
 額には銀に紫の宝石が嵌まったサークレットが付けられ、目にはアイシャドウが、唇には黒いルージュが引かれている。
 それはまさに妖艶に生まれ変わった美那子の姿だった。

 『ククク……生まれ変わった気分はどうかな、津雲美那子? いや、我がしもべヤミノレディ・ミナよ』
 その声にミナはゆっくりと目を開ける。
 「はい、ヤミオー様。とっても良い気分ですわ。私はヤミノランドの一員でありヤミオー様の忠実なるしもべ、ヤミノレディ・ミナ」
 スッと片膝をつき、頭を下げて一礼するミナ。
 もはや彼女は先ほどまでの彼女ではない。
 ヤミノランドの一員としてヤミオーに仕えるヤミノレディなのだ。

 『クククク……それでよい。これからは我のために働いてもらうぞ、ヤミノレディ・ミナよ』
 「もちろんでございますヤミオー様。どうぞこの私に何なりとご命令を」
 喜びに満ちた表情で顔をあげるミナ。
 ヤミオー様のために働けるなど、なんと喜ばしいことだろうか。

 『クククク……ではミナよ、お前に命じる。テラスブルー津雲大造をその手で殺すのだ!』
 「お断りいたします!」
 『は?』
 予想外のミナの答えに面食らうヤミオー。
 『断るとはどういうことだ? お前は我のしもべではないのか? 我に忠誠を誓ったのではないのか?』
 「私はヤミオー様のしもべです。ヤミオー様に心から忠誠を誓っております」
 再び頭を下げるミナ。
 『ではなぜ断る?』
 「テラスブルー、いいえ、津雲大造は私の愛する夫。いくらヤミオー様のお言葉でも愛する彼を殺すなんてできません」
 ミナが首を振る。
 『なんと!』
 完全に闇に染めたはずのミナの言葉にヤミオーは驚く。

 「それに……」
 顔をあげてにやりと歪んだ笑みを浮かべるミナ。
 「なぜあっさりと殺せなどとお命じになられるのですか? テラスブルーはヤミオー様に散々逆らった憎むべき相手。それをただ殺すなどもったいないと思います。どうか私にやつをもっと苦しめろ、たっぷりといたぶってやれ、死ぬよりつらい目に遭わせろとおっしゃってくださいませ」
 『なんと……ただでは死なさんというのか?』
 「もちろんです。彼は私の愛する夫。簡単には死なせたりはしませんわ」
 ぺろりと舌なめずりをするミナ。
 『ククク……いいだろう。好きにするがいい』
 やや呆れたように許可を出すヤミオー。
 もしかしたら闇が美那子の歪んだ愛の部分に火を点けたのかもしれない。
 だが、それはそれで面白かろう。

 「ありがとうございます、ヤミオー様」
 スッと立ち上がるミナ。
 「では早速、我が夫に私の愛を届けて差し上げますわ。うふふふ……」
 そう言ってミナはヤミオーの謁見の間を後にする。
 ヤミノランドの一員となったミナには、闇の中は我が家のようなもの。
 どう動けばいいかはわかっている。
 ああ、なんて素晴らしいのだろう。
 待っててねあなた。
 これからは私がたっぷりといたぶってあげる。
 苦しめて苦しめて身も心も痛めつけてあげるの。
 死んだほうがマシだなんて言ったって、絶対に死なせてあげないんだから。
 私と一緒に世界がヤミオー様の闇に包まれるのをその目で確かめましょうね。
 そして絶望に満ちたあなたの顔を私に見せてちょうだい。
 その表情こそ私にとっては最高の快楽ですの。
 愛してるわ……あなた。
 うふふふふ……

END

いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけましたら幸いです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2022/09/18(日) 19:00:00|
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ターゲットは知能指数600、スポーツ万能の男

今日は11月11日。
いぃーっ、いぃーっということで、「ショッカーの日」なんですよね。
(^o^;)

いつもは10月10日の「戦闘員の日」の方を優先するので、「ショッカーの日」はショッカーに限られてしまうことなどもあり、SS投下とかはあんまりしていないんですけど、今回は「ショッカー生誕50周年」ということもあり、一時間ほどで超短編を作り上げたので投下します。

タイトルは「ターゲットは知能指数600、スポーツ万能の男」です。
「仮面ライダー」第一話の冒頭シーンの裏側という感じです。

短いですがお楽しみいただければと思います。
それではどうぞ。


ターゲットは知能指数600、スポーツ万能の男

 「いい天気。気持ちいい」
 「ほんとね。風が気持ちいい」
 私と優子(ゆうこ)はヘルメットを脱いで髪を風にさらしていく。
 ずっとヘルメットをかぶっているから汗で蒸れちゃうのよね。
 こうして風にさらすと汗が引いていく感じ。

 「いい景色」
 「うん。最高ね」
 私たちは峠の頂上の展望台にある駐車スペースから広がる景色を眺めている。
 山々の緑と谷あいを流れる川が素敵なコントラストを見せていた。
 「やっぱりここはいいね」
 「うん」
 優子も笑顔で答えてくれる。
 たまにこうして峠をバイクで走るのは楽しいよね。

 私も優子もバイク乗り。
 時々二人で一緒に走る。
 女性のバイク乗りはあんまりいないから、優子は貴重な仲間というところ。
 今回はこの峠を二人で上ってきたのだった。

 「それにしても今日は人が少ないね」
 「そうね……いつもはもっと人がいるのにね」
 優子に言われて私も周囲を振り返る。
 確かに今日は車が少ない。
 黒塗りの大型セダンが一台いるくらい?
 いつもなら数台は止まって展望台に行き来する人がいるのに……

 私が不思議に思っていると、黒塗りのセダンのドアが開く。
 「えっ?」
 車の中からは黒いベレー帽をかぶった男たちが現れた。
 いずれも赤と緑の色が塗られた不気味な顔をしており、一人は赤の混じった黒の躰にぴったりしたタイツのような服を、他の三人は黒一色の同じような躰にぴったりとした服を着ている。
 腰には大きなバックルの付いたベルトを締めており、アーッ、アーッと奇妙な声を上げていた。

 「な、なにあれ?」
 その普通じゃない格好に私は驚く。
 「聡子(さとこ)、逃げよう」
 優子も男たちの異様さに恐怖を感じたのか、私の腕をつかんでくる。
 「うん」
 私も優子にそう答え、すぐにバイクのところへ向かう。
 「きゃっ!」
 だが、突然私たちの上からねばつく網のようなものが降ってきて、私たちは身動きが取れなくなってしまった。

 「な、なにこれ?」
 「な、なんなの?」
 私たちは必死でもがくものの、もがけばもがくほど網が躰に貼り付いてくる。
 そして、あのアーアー言う黒い男たちのほかに、私は信じられないものを見た。

 「バイクに乗る女は貴重だ。お前たちをショッカーに招待しよう」
 私たちの前に現れたのは六角形の目を三つ持ち、牙の生えた口や角が生えた頭をした赤と緑色の躰の化け物だった。
 「ひいっ!」
 「きゃぁー!」
 私も優子も思わず悲鳴を上げてしまう。
 い、いったいこれは何なの?
 私は夢でも見ているの?
 こんな化け物がいるなんて……

 「連れていけ」
 化け物がしわがれた声で黒い男たちに命令すると、男たちはアーアー言いながら私と優子を押さえつける。
 そして私たちは担ぎ上げられるようにして持ち上げられ、黒いセダンのトランクに放り込まれると、ガスのようなものを吹きかけられ、私は意識を失った。

                   ******

 『目覚めるのだ』
 『ショッカーの女戦闘員よ。目覚めるのだ』
 声が聞こえる。
 私はゆっくりと目を開ける。
 「ふふふふふ……」
 私はゆっくりと躰を起こした。
 力がみなぎる。
 気分もとてもいい。
 私は選ばれた。
 偉大なるショッカーの一員に選ばれたのだ。

 「うふふふふ……」
 私の隣でもう一人の女戦闘員が起き上がる。
 改造された肉体を示す赤と緑のフェイスペイント。
 躰を包む黒いレオタード。
 腰には赤いサッシュが巻かれ、脚は網タイツと黒いブーツが覆っている。
 私と同じ格好、ショッカーの女戦闘員の恰好だ。

 「お前たちはショッカーの一員となった。これからはショッカーのために働くのだ」
 聞き覚えのあるしわがれた声。
 蜘蛛男様のお声だ。
 私たちは手術台から立ち上がると、蜘蛛男様に一礼する。
 「お前たちはこれより訓練を受け、オートバイ部隊の一員となるのだ。よいな」
 「はい、蜘蛛男様」
 「仰せのままに」
 私たちはそう答えた。

                   ******

 五台のバイクが道に並ぶ。
 「うふふふふ……」
 「ふふふふふ……」
 みんなの顔に笑みが浮かぶ。
 私たちはショッカーのオートバイ女戦闘員部隊。
 今からある男を捕らえるのだ。
 ターゲットは知能指数600、スポーツ万能のバイク乗り。
 バイクの腕も相当なものだという。
 でも問題はない。
 私たちは選ばれた存在。
 偉大なるショッカーの一員。
 ただの人間が私たちにかなうはずもない。
 それに……
 蜘蛛男様も控えていらっしゃる。
 万一にも失敗する恐れはない。

 もうすぐ男がやってくる。
 バイクの爆音が聞こえてくる。
 さあ、狩りをはじめよう。
 ふふふふふ……

END

いかがでしたでしょうか?
ほんとに短い即堕ち二コマ作品ですみません。
(^_^;)ゞ

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2021/11/11(木) 18:31:51|
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コスプレしちゃった (SSタイトルです)

先週の10月10日は1010で千十(せんとお)から「(特撮・フィクション系)戦闘員の日」と提唱させていただき、SSを一本投下させていただきました。
おかげさまで多くの方に賛同していただき、10月10日からの一週間を「戦闘員の日週間」として作品等を見せてくださる方もおられ、ありがたい限りです。

今日10月17日はその「戦闘員の日週間」も最終日。
そこで短い作品ですが、トリを飾る感じでSSを一本投下します。
タイトルは「コスプレしちゃった」です。
お楽しみいただければと思います。

それではどうぞ。


コスプレしちゃった

 「真紀(まき)! 風邪はもういいの?」
 三日ぶりに学校に来た真紀に、私は思わず声をかける。
 「おはよう、愛梨沙(ありさ)。あー……うん、まあね……」
 メガネの奥の瞳が少し泳ぎ、てへっという感じで笑う真紀。
 すぐに私はピンときた。
 「ああー、またずる休みしたなぁ? ホントにもう……出席日数足りなくなっても知らないよ」
 もう……
 心配したんだからね。
 LINEに既読はつかないし、電話かけても出ないし、自宅に電話をかけてもおばさんが風邪を引いたのよって繰り返すばかりだし……
 今日あたり家に行こうかって思っていたくらいなんだから……

 「ああ……出席日数なんてもうそんなのはどうでもいいのよ。学校なんてどうでもいいの。ふふっ」
 真紀の口元に冷たい感じの笑みが浮かぶ。
 「えっ?」
 どうでもいい?
 今どうでもいいって言ったの?
 どういうこと?

 「ねえ、そんなことよりも今日学校が終わったら家に来ない? 愛梨沙に見せたいものがあるの」
 真紀の表情がガラッと変わる。
 さっきは一瞬ものすごく冷たいような顔をしたのに……
 いや、それよりもこれではっきりした。
 「ははーん……それで二日も休んだんだ。今度は何やるの?」
 あのアニメの魔法少女か?
 それとも先月始まった作品のビキニアーマー女戦士か?
 いずれにしても、この二日間は衣装づくりにいそしんでいたというわけだ。
 まったくもう……
 それならそうと言ってくれればいいのに……

 「ふふっ、それは来てからのお楽しみ。来るでしょ?」
 「もう……こっちに選択権なんてないくせに……」
 私は肩をすくめるが、その実楽しみにも思っていた。
 今度はどんなコスプレが見られるのか?
 真紀のコスプレを見るのは私にとっても楽しみなのだ。

 席に向かう真紀を見送り、私も席に着く。
 なんだかうきうきしてしまう。
 彼女はいったいどんな格好をしてくれるのか?
 もしかしたら思いもよらないキャラということもあるかも。
 結構きわどいコスも着たりするのよね。

 はっきり言って真紀はオタクである。
 そりゃ私もアニメは見るしマンガも読む。
 でも、真紀は守備範囲が段違いに広いのだ。
 深夜アニメも録画して見るし、少年マンガ少女マンガ問わずしょっちゅう読んでいる。
 同人誌めいたものも描いたりするし、コミケなんかも顔を出す。
 なによりコスプレが好きで、アニメや漫画のキャラのコスを器用に作っては着て見せてくれる。
 コミケでコスプレを披露したりもするし、SNSに写真をアップもしていたりする。
 もちろんその場合は顔出しNGにはしているが。

 つまり昨日一昨日と休んだのも、コスの制作に夢中だったということなのだろう。
 それだけ気合を入れているということなのかもしれない。
 まったくもう……
 LINEぐらい返事しなさいよね。

 で、そんな真紀となんだかんだでもう一年半くらいになるのよねー。
 高校に入って同じクラスになって席が隣同士になったのが去年の春か。
 最初はなんだか壁を作られているかなとも感じたけど……
 気が付くとおしゃべりするようになってて……
 アニメや漫画の話でいろいろと聞けるのが面白くて……
 ふう……
 なんだか不思議ね……

 いけないいけない……
 授業授業……
 やれやれだわぁ……

                   ******

 放課後、私は朝言ってた通り、真紀と一緒に彼女の家に向かっていた。
 でも、今日の真紀はなんだかいつもと感じが違う。
 いつもは真紀の方がよく話しかけてくるのに、今日は私の方が話しかけているし、返事もどこか上の空だ。
 もしかして……寝不足?
 それならまあ、いいんだけど……

 「さあ、入って」
 「お邪魔しまーす」
 私は真紀と一緒に玄関を入る。
 真紀の家は一軒家。
 真紀のお父さんが結構いいところの部長さんだそうで、頑張っているからとのこと。
 うちはマンションなのでうらやましい。

 「お帰りなさい」
 奥のキッチンから真紀のお母さんが顔を出す。
 「ただいま」
 「こんにちは。お邪魔します」
 私はぺこりと頭を下げる。
 真紀のお母さんは専業主婦。
 共働きのうちとはこのあたりも違うところ。

 「愛梨沙を呼んだから、二階には来ないで」
 「はい……」
 真紀の言葉に無表情でコクンとうなずくおばさん。
 その姿に私は何か違和感を覚えてしまう。
 真紀のお母さんって、もう少し明るい人だったような……

 「愛梨沙」
 「あ、うん」
 私は真紀に呼ばれ、そのまま後について彼女の部屋に行く。
 「ね、ねえ、なんだかいつものおばさんと雰囲気が違ったような……」
 階段をのぼりながら私は真紀に聞いてみる。
 「そう? 別に気にしなくていいわ」
 「えっ?」
 気にしなくていいって……
 そりゃ、私の気のせいかもしれないけど……

 「入って」
 「うん」
 二階の真紀の部屋に私は入る。
 「えっ?」
 私は思わず声を上げてしまった。
 いつも遊びに来ていた真紀の部屋とは全く違っていたのだ。
 マンガ本とテレビとアニメの円盤があった一角は片付けられてしまっており、窓には分厚いカーテンがかけられて薄暗い。
 それに、壁には今までは存在しなかった大きな頭蓋骨のタペストリーがかけられていたのだ。
 「こ、これって?」
 「ちょっとした模様替えよ。用意してくるから、少しここにいてもらうわ」
 私が戸惑っていると、真紀はカバンを放り投げるようにして置き、すぐに部屋を出て行ってしまう。
 「ちょ、ちょっとまっ……」
 私が呼び止めようとしたときにはすでにドアは閉じられていた。
 な、なんなの?
 いつもと違う……

 それにしても……
 あまりにもいつもの真紀の部屋とは違いすぎる。
 カーテンだって閉め切っているし、壁にはあんな不気味なドクロのタペストリーなんてかかっているし……
 あんなにあったマンガ本やブルーレイだってどこにやってしまったのやら……
 おかげで何か借りて読んで待つってわけにもいかないじゃない……
 どうしよう……

 「お待たせ」
 私が真紀のベッドに腰かけ、さてどうしたものかと思っていると真紀が戻ってくる。
 「えっ? えええっ?」
 部屋に入ってきた真紀を見て、私は思わず声を上げた。
 真紀はもうコスプレをしていたのだ。
 その……首まであるハイネックの黒いレオタードを身に着け、足には網タイツを穿き、さらには室内だというのに黒いブーツまで履いている。
 頭には黒いベレー帽をかぶり、メガネを外した目元には青いアイシャドウを入れ、唇も青い口紅が塗られている。
 首には赤いスカーフを巻き、腰にはタペストリーについていたようなドクロ模様のバックルの付いたベルトを締めている。
 なんというか……不気味な感じもするし、躰のラインがもろバレでいやらしい感じもするような格好だ。
 これはいったい何のキャラ?

 「ふふふふ……」
 私が唖然としていると、真紀は妖しい笑みを浮かべて近寄ってくる。
 「あ……真紀……?」
 「うふふふ……違うわ。私は偉大なる秘密結社グォモグの女戦闘員。私のこの姿を見た者は生かしては帰さない」
 「ヒッ!」
 ベッドに腰かけていた私を見下ろす真紀の目が真剣そのもので、私は思わず息をのむ。
 お、女……戦闘員?

 「なーんてね。あはははは……どう? ちょっと怖かった?」
 「えっ? ええっ?」
 いきなりいつものように笑顔になる真紀。
 も、もしかして今のは演技?
 すごく真剣だった感じだったけど……
 「あはは……ごめんごめん。それよりどう? 似合う?」
 私の前でクルリと一回転する真紀。
 その躰のラインが見事に浮き出ている。
 真紀って、知っていたけどスタイルいいよね……

 「う、うん……似合うけど、すごく躰のラインが出るコスだね。なんのキャラなの?」
 こんなキャラ出てくる作品なんて私は知らない。
 「うふふ……これ」
 机の中からブルーレイのパッケージを取り出す真紀。
 着ているコスがレオタードなだけに、かがんだ時にものすごくお尻が強調されることがわかる。
 「仮面ライダー?」
 これって日曜の朝にやっているやつだっけ?
 私は見たことないけど……
 「そう。これは初代でね。もうかなり昔の作品なんだけど、これの一話と三話にだけレオタードと網タイツ姿の“女戦闘員”っていうのが出てくるの。これはそれをアレンジしたコスチュームで、その女戦闘員を気に入った首領様が採用したスタイルなの」
 真紀がふふんと誇らしげにする。
 なるほど、そういう設定ですか。
 昔の特撮にこんなキャラが出ていたんだぁ……

 「うふふ……それでね、愛梨沙も着てみない? あなたの分もあるんだけど」
 「へ?」
 私は妙な声を上げてしまう。
 わ、私も?
 そのコスを着ろと?
 「いやいやいやいや、無理無理無理無理。私には無理ー!」
 私は思い切り首を振る。
 いつだって着るのは真紀で、私はそれを鑑賞する側だったじゃない。
 「うふふ……そう言うと思った。でもダメよ。言ったでしょ? ただでは帰さないって」
 「えええ?」
 「あなたなら絶対女戦闘員にふさわしいの。それに女戦闘員って複数いないと絵にならないでしょ? だからあなたも女戦闘員になるの!」
 ずいっと顔を近づけてくる真紀。
 その目は真剣そのものだ。
 あう……・
 でもぉ……

 「ここには私とあなたしかいないから。恥ずかしくないから。着るだけでいいから」
 畳みかけてくる真紀。
 「うう……」
 どうしよう……
 困ったなぁ……
 「着てどうしてもだめだったらあきらめるわ。残念だけど……」
 がっかりした表情になる真紀。
 ううう……
 そんな顔をされると……
 「い……一度だけ……なら」
 どのみち着ないと納得してくれなさそうだし……
 は、恥ずかしいけど……い、一度だけなら……

 「よかった。あなたを殺さなくて済むわ」
 ホッとしたような顔をする真紀。
 「えっ?」
 「あ、ううん、なんでもない。これ、あなたの分。着方はわかる?」
 真紀が脇に置いてあった大きな紙袋を渡してくる。
 その紙袋はその衣装が入っていたのか。
 ずいぶん大きな紙袋があるとは思っていたけど……
 「だ、大丈夫とは思う」
 レオタードなんだから、着るぐらいはできると思う。
 「そう、それじゃ私は部屋から出ているわ。いい、下着から何からすべて脱いでから着るのよ。いいわね?」
 「う、うん」
 なんか異様な迫力がある真紀に、私は気圧されてしまう。
 着ているコスのせいだろうか?
 「それじゃドアの外にいるから、着替え終わったら呼んで」
 「う、うん」
 私はそう返事をすると、ドアから出ていく真紀の姿を見送った。

 「ふう……」
 やれやれ……なんだか変なことになっちゃった。
 まあ、でも、こんなことでもないと、なかなか網タイツだのレオタードだのなんて着ることないから、そういう意味ではちょっとドキドキしている自分もいる。
 うー……
 でも、私はそんなにスタイル良くないから、真紀みたいに似合うとは思えないよぉ。
 こんなことならもっとダイエットしておくんだったぁ……
 うー……

 でも仕方ない。
 私は覚悟を決めて紙袋から衣装を取り出していく。
 黒いレオタードに網タイツ。
 膝くらいまであるブーツに黒い手袋。
 黒いベレー帽に赤いスカーフ。
 それと腰に巻くドクロ模様のバックルの付いた太いベルト。
 それらをベッドの上に広げさせてもらうと、私は意を決して制服を脱いでいく。
 下着もソックスも脱いで裸になる。
 うう……
 本当に誰も見てないよね?

 私はまず網タイツに足を通していく。
 網タイツなんて穿くの初めて。
 なんだかドキドキしてしまう。
 両足を通して腰まで上げ、偏りを直して落ち着かせる。
 うわぁ……
 網タイツってこんな感じなんだぁ……
 なんだか自分の脚じゃないみたい。
 うはは……

 次はレオタードかな?
 背中のファスナーを下ろして、パンツを穿くような感じで足を通す。
 腰から胸へと引き上げ、袖に腕を通していく。
 両袖に腕を通して背中のファスナーを……
 背中のファスナーを……
 ファスナーを……
 うぐぐぐ……
 か、躰がぁ……
 ぐすっ……

 と、とりあえずファスナーは後回しにして、手袋を嵌め、ブーツを……
 えっ?
 室内でブーツ履いていいの?
 えーと……

 「真紀?」
 私はドアの外に声をかける。
 「なに? 着終わった?」
 ドアの外から声が聞こえる。
 「えーと、まだなんだけど、背中のファスナーが一人じゃ閉じられなくて……それと、ブーツを室内で履いちゃっていいのかなとか……」
 「…………入ってもいい?」
 「う、うん。いいよ」
 ガチャリとドアが開いて真紀が入ってくる。
 なんだか表情が厳しい?
 「後ろ向いて」
 「あ、はい」
 私は真紀に背中を向ける。
 ジーッという音がして、背中のファスナーが引き上げられる。
 それと同時にレオタードが首まで密着して私の躰を包み込む。
 うん……結構気持ちがいいかも。

 「ここまで着たなら、私はもう部屋から出なくてもいいわよね?」
 「あ、うん。ありがとう」
 私は振り向いて礼を言う。
 うう……
 レオタード姿で向き合うのって、なんか恥ずかしい……

 「ブーツは履いて構わないわ。というか履いて」
 「あ、はい」
 私はベッドに腰かけさせてもらってブーツを履く。
 「うん。いい感じ。愛梨沙も似合っているわよ」
 「そ、そう?」
 履き終わって立ち上がった私を見つめる真紀。
 うう……やっぱり恥ずかしい。
 なんか顔から火が出そうだわ。

 「もう一回後ろ向いて」
 「えっ?」
 「いいから」
 「あ、うん」
 私は再び真紀に背を向ける。
 ええ?
 もしかして私のお尻を見られるの?

 違った。
 真紀は私の腰にあのドクロ模様のバックルの付いたベルトを締めてくれたのだ。
 ややズシッとする重みのあるベルトが、私の腰を締め付ける。
 なんか身も引き締まる感じ。
 さらに真紀は私の首に赤いスカーフを巻き付ける。
 なんかどんどん私と真紀がお揃いになっていく。
 ちょうど私の正面にはあのドクロのタペストリーがかかっており、なんだか私たちのことを見ているみたい。

 「はい、こっちを向いて」
 私はもう真紀の言うがままに彼女の方へと向き直る。
 なんだかこうしていると気持ちいいな。
 真紀とおそろいなんてうれしいかも。
 向き直った私の頭に、真紀がベレー帽を乗せてくれる。
 そしてパレットを取り出して、私の目元にアイシャドウを、唇にも青のルージュを乗せてくれる。
 うふふ……
 気持ちいい……

 「これでいいわ。ふふふ……これであなたも女戦闘員よ」
 真紀の言葉に私はドキドキしてしまう。
 私は女戦闘員。
 私は女戦闘員なんだわ。
 「さあ、見て。偉大なる首領様も私たちをご覧になられているわ」
 「えっ?」
 真紀が指し示すのはあのドクロのタペストリー。
 そのドクロの目が赤く輝いている。
 さっきは赤くなんてなかったはずなのに……
 ああ……
 そうか……
 あのドクロを通して偉大なる首領様が私を見てくださっているんだわ……

 私はなんだかちょっと恥ずかしくなる。
 私はちゃんと首領様の好みのスタイルをしているだろうか?
 女戦闘員として恥ずかしくない恰好をしているだろうか?
 もっと躰を鍛えておけば……
 より女戦闘員のコスチュームが似合ったかもしれないのに……

 でも、なんだかとても気持ちがいい。
 あのドクロの目を見つめていると頭がふわっとなって躰がポカポカしてくるの。
 まるで首領様の腕に包まれているみたい。
 「キキーッ!」
 思わず声を上げたくなってしまうわ。
 これは服従の声。
 この声を発することで、私たちは女戦闘員である喜びと、首領様に服従する幸せを感じるのね。
 なんて素敵。
 「キキーッ! キキーッ!」
 ああ……気持ちいい……

 「うふふ……どう? 女戦闘員になった気分は?」
 私は真紀に笑顔を向ける。
 「ええ、とっても気持ちがいいわ。コスプレってこんなにいい気持ちになれるものだったのね」
 「コスプレ? ああ……それで刷り込まれちゃったんだ。まあいいわ。たいした問題じゃないでしょうし」
 一瞬怪訝そうな顔をする真紀。
 あれ?
 コスプレ……でいいんだよね?
 私はこの衣装を着て女戦闘員になったんだもん。

 真紀が机の中から何かを取り出す。
 黒いボトル?
 いったい何だろう?
 私が不思議に思っていると、真紀はボトルの中身を口にする。
 飲み物だったのかな?
 「んふ……」
 えっ?
 真紀が私の方に来て、私の頭を掴んで引き寄せる。
 えっえっえっ?
 そのまま真紀の口が私の口に重ねられる。
 ええええ?
 キス?
 キスしちゃった?
 とろりと甘い液体が私の口の中に流し込まれてくる。
 これって……さっきのボトルの中身?
 真紀ったら……
 私は流し込まれた液を飲み込んでいく。
 すべてを飲み込んだ後も、私たちは唇を重ね合わせたまま。
 お互いの躰を抱きしめていく。
 「ぷわ……ふふふ……」
 唇を離して微笑む真紀。
 「これって?」
 「肉体の強化薬よ。これを飲むことで肉体が強化されるの。私たちは女戦闘員なんだから強くなくてはいけないわ」
 ああ……真紀の言うとおりだ。
 私たちは女戦闘員なんだから、強くなくては。
 首領様に歯向かうものは私たちが始末するのよね。

 「後で躰が少し熱くなってくると思うけど心配ないわ。明日には男三人ぐらいなら平気で相手にできるくらいの力になれる」
 「すごい……」
 男三人を相手にしても平気だなんて。
 うふふ……
 力を試すのが楽しみになっちゃう。
 「さあ、あらためて首領様に忠誠を誓いましょう。私に従って」
 「キキーッ!」
 私は服従の声で返事をする。
 「その調子よ。それじゃ始めるわね」
 私は真紀と並んでタペストリーに向き直る。
 「キキーッ! 私は偉大なる秘密結社グォモグに仕える女戦闘員」
 「キキーッ! 私は偉大なる秘密結社グォモグに仕える女戦闘員」
 右手を斜めに上げ、一言一句真紀の言うとおりに繰り返す私。
 「身も心も首領様に捧げ、グォモグに忠誠を誓います。キキーッ!」
 「身も心も首領様に捧げ、グォモグに忠誠を誓います。キキーッ!」
 ああ……なんだかドキドキする。
 コスプレとはいえ、こうして首領様に忠誠を誓うと身が震えるような喜びだわ。

 「それでいいわ。私は女戦闘員073号。よろしくね」
 「真紀?」
 「それは擬態時の名前よ。あなたも今日からは秘密結社グォモグの女戦闘員076号。いいわね?」
 なるほど。
 このコスを着ているときはナンバーで呼び合うのね。
 わかったわ。
 「当面は私とコンビで動くことになると思う。校内で数人の女にあたりはつけてあるから、そのうちメンバーを増やすことができると思うわ」
 「キキーッ! 了解です073号」
 私も073号のおかげでこうしてコスプレの楽しみを知ることができたわ。
 きっと他の娘たちも喜んでくれるに違いないわね。

 「これ、私がこの二日間でレクチャーを受けたことをメモしてあるから、帰ったら読んで。もっとも、基本的な事項は頭の中に刷り込まれているから問題ないと思う」
 私は073号が差し出してきたメモを受け取る。
 あとでじっくり読まなくては。
 「それじゃ、あんまり遅くなると親がうるさいと思うからひとまずこれで帰っていいわ。道具類はまとめておいたからカバンに入れて持っていくように。催眠波装置も入れておいたから、両親に使って疑念を持たれないようにして置くこと」
 「キキーッ! 了解しました」
 なるほど。
 073号の母親が言いなりになっていたのは催眠波装置のためだったのね。
 うふふ……面白そう。
 私の母も私の言いなりにしてやるわ。
 うふふふふ……

                   ******

 『予定通り獲物はそっちへ向かったわ。追い詰めて!』
 耳に嵌めたイヤホンから073号の声が聞こえてくる。
 うふふふ、バカなやつ。
 私たち女戦闘員から逃げられるとでも思っているのかしら。
 私は隣にいる082号に合図をすると、屋根から通りに向かって飛び降りる。
 女戦闘員のコスプレをした私たちには、このくらいの高さなど何の問題もない。
 ほんと、コスプレって最高。

 逃げてきた男の前に立ちはだかる私と082号。
 「キキーッ! 私たちから逃げられるとでも?」
 「な、なんだお前たちは? 何者なんだ?」
 大事そうにカバンを抱える背広姿の男。
 残念ね。
 お前なんかには用はないわ。
 私たちが用があるのはカバンの中身。
 「キキーッ! 私たちは秘密結社グォモグの女戦闘員」
 082号が誇らしげに口にする。
 擬態時には私のクラスメートでおとなしい娘だけど、私と073号が女戦闘員のコスプレに誘ったら、すっかりはまってしまったみたい。
 今ではしっかり私たちのチームに溶け込んでくれているわ。

 「お、女戦闘員?」
 「キキーッ! そうよ。私たちは女戦闘員。お前の持っているそのカバンに入っている資料をいただくわ。おとなしく渡すことね」
 そう、このコスは私たちが女戦闘員であることの証。
 このコスを着ているときには、私は女戦闘員。
 首領様とグォモグのためならなんでもするの。
 さっさとカバンを渡しなさい。

 「こ、これは会社の重要な……」
 男は私たちに背を向け、必死にカバンを抱えて逃げようとする。
 バカな男。
 私たちから逃げられるはずがないのに。

 私は082号に目配せすると、すぐにジャンプして相手を飛び越えその正面に飛び降りる。
 うふふ……
 このコスプレはこんなことだって簡単なの。
 なんたって私は女戦闘員なんだもの。
 「うわっ」
 私は男の脚を払って男を地面にたたきつける。
 すぐに082号も駆けつけ、二人で男を取り押さえる。
 うふふ……
 人間の力で私たちを振り払えるものですか。

 「ふふふ……取り押さえたようね」
 073号も駆けつけてくる。
 「ええ、ご覧のとおりよ。キキーッ!」
 私が押さえつけている間に、082号がカバンを取り上げて073号に引き渡す。
 「この資料で間違いないみたい。よくやったわ、二人とも」
 チームリーダーである073号の言葉はなんだかうれしい。
 女戦闘員のコスプレをしていることで、少しは首領様のお役に立てたかしら。

 「カ、カバンを返せ」
 私の下でもがいている男。
 うるさい男だわ。
 少しはおとなしくしていたらどうかしら。
 「076号、そいつはもう用済みよ。始末していいわ」
 「キキーッ!」
 073号の許可が出たので、私は男の首に手を回す。
 そしてちょっと力を入れると、すぐに男の首がへし折れた。
 簡単簡単。
 人間なんて殺すのは簡単なものよね。

 「うふふ……これでいいわ。さあ、人が来ないうちに引き上げましょう。二人とも気を付けるのよ。また明日学校でね」
 「キキーッ! また明日ね」
 「キキーッ! 楽しかったぁ」
 私たちはそれぞれ敬礼をしあってその場を後にする。
 早く家に帰らなくちゃ。
 コスプレしているところを誰かに見られたらヤバいもんね。
 それにしても……
 ああん……
 女戦闘員のコスプレって最高だわぁ……
 うふふふふ……

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければコメントなどいただけますと嬉しいです。

また来年の「戦闘員の日」に何か投下できればと思います。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2021/10/17(日) 19:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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キョーアク獣ブタラードのメスブタ作戦

今日は10月10日。
ということで1010(千十:せんとお)から語呂合わせで「(特撮・フィクション系)戦闘員の日」ということを、五年前くらいから提唱させていただいておりますです。

ですので、「戦闘員の日」にまつわるSSを一本投下いたしますです。
まあ、どっちかと言うと「戦闘員」というよりも、「ヒロイン悪堕ち」の面が大きくなってしまった感じではありますけど、お楽しみいただけましたら幸いです。

タイトルは「キョーアク獣ブタラードのメスブタ作戦」です。

それではどうぞ。


キョーアク獣ブタラードのメスブタ作戦

 「今日は遅くなっちゃったわ……」
 人の気配の無くなった夜の道。
 一人の若い女性が帰路を急ぐ。
 夜道の不安はあるものの、周囲に人の気配が無いことは、逆にほんの少し不安を和らげてくれる。
 これがもし背後に人の気配でも感じようものなら、彼女はもっと緊張していただろう。
 「とにかく早く家に帰らなくては……」
 彼女はやや速足で歩みを進める。

 「ヒッ!」
 あと少しで家に着くというあたりで、彼女は青ざめて小さく声を上げる。
 街灯の下に黒い太った人影が立っていたのだ。
 しかも、それはシルエットではなく、本当に躰が真っ黒いのだ。
 「ブヒヒヒ……なかなかいい女だブヒ。ボクちんのメスブタにふさわしいブヒ」
 ノシッと足を踏み出す黒い姿。
 街灯の明かりに照らされたその姿は、太った人間の躰に豚の頭が載ったような化け物だった。
 大きな鼻がフゴフゴとひくつき、三角形をした耳が頭に付いているのだ。

 「ひ、ひぃぃぃぃ! だ、誰か!」
 女性は悲鳴を上げて助けを求める。
 だが恐怖のせいか、声はか細く小さくて、この場を逃げ出そうにも膝が震えて動けない。
 「ブヒブヒ。おとなしくするブヒ。怖がることはないブヒ。ブヒヒヒ……」
 ノシノシと近寄ってくる黒豚男。
 その両手も両足も豚のような蹄が付いている。
 「いやぁっ! いやぁっ!」
 女性は恐ろしさのあまり地面にへたり込んでしまう。
 「ブヒヒヒヒ……」
 「ひぃぃ!」
 黒豚男の豚そのもののような顔が近づき、女性はその強烈な臭いにおいと恐怖のあまりに意識を失ってしまう。
 黒豚男はニヤッと笑い、気を失った女性を担ぎ上げると、闇の中へと消え去っていった。

                   ******

 「確かにまだブラックズーの仕業と決まったわけじゃないけど……」
 周囲を窺うようにしながら夜道を歩いていく若い女性。
 栗色の髪をした整った顔立ちをしており、ピンク色のミニスカートとジャケットを身に着け、ピンク色のブーツを履いている。
 右手には変身用のブレスレットを装着し、いつでも変身できるように身構えている。
 彼女は桜原美愛(さくらはら みあ)。
 キョーアク獣を使い世界を恐怖に陥れる悪の軍団ブラックズーと戦う、正義の戦隊アニマルクインテットの一人、アルマジロピンクなのだ。

 今、この世界はブラックズーに狙われている。
 動物と人間を掛け合わせたようなキョーアク獣という怪人が出現し、街を暴れまわるのだ。
 彼らの力は強力で、軍でもなかなか歯が立たない。
 そこでブラックズーに対抗するために、こちらも動物の力を取り入れたスーツを開発し、それを身に着けて戦う五人の戦士が選ばれた。
 彼らはアニマルクインテットと呼ばれ、それぞれコンドルレッド、バッファローブルー、ジャガーイエロー、アルマジロピンク、マンモスグリーンというコードネームが付けられている。
 美愛はこのメンバーの一人だった。

 ここ二週間ほどの間に、この付近では立て続けに三人もの若い女性が消息を絶っている。
 たまたまということもあり得るものの、美愛はブラックズーが何らかのかかわりがあるのではとにらんでいた。
 そのため、何か手掛かりはないかと、こうして出向いてきたのだ。
 単独行動という形ではあるものの、他のメンバーとはいつでも連絡は取れるようになっている。
 何かあれば、すぐにみんなも駆けつけるはずだった。

 「とはいうものの……ふう……」
 今のところは何の手掛かりもない。
 行方不明の三人も、共通点はこの付近に暮らす若く美しい女性というくらいで、OLだったり女子大生だったり若い主婦だったりと様々だ。
 そのため警察ではよくある失踪が偶然重なったとしてしかとらえてなく、ブラックズーの仕業とは考えていない。
 「私の考えすぎだった……かしら……」
 人気のない夜道に立ち止まる美愛。
 辺りは静かで誰もいない。
 このあたりは住宅もまばらで、昼間でも人通りは少ないのだろう。
 まだそれほど遅い時間でもないのに、まるで深夜のような気分になる。
 明かりも街灯以外は少し離れたところにある住宅の明かりぐらいなのだ。
 「確かに人をさらうにはいい場所かもしれないけど……肝心の人がいないわよね」
 思わず苦笑いしてしまう美愛。

 『きゃあっ!』
 少し離れたあたりから悲鳴が聞こえる。
 「えっ?」
 美愛はすぐに反応し、悲鳴の方へと駆け出していく。
 おそらくこの付近では、あの悲鳴が聞こえたのは自分だけかもしれない。
 急いで状況を確認しなければ!

 「待ちなさい!」
 悲鳴が聞こえたあたりに駆け付けた美愛は、女性を肩に担いだ黒い影を呼び止める。
 気を失っていると思われる女性を担いで、どこに連れて行こうというのか?
 「ブヒ?」
 「はっ!」
 振り向いた黒い影に息をのむ美愛。
 その影は太った黒い豚だったのだ。
 いや、黒豚男というべきか。
 太った真っ黒い躰に豚の頭部を持ち、足には豚の蹄が付いている。
 まさに豚と人間が融合したような姿であり、間違いなくブラックズーのキョーアク獣だ。

 「やはりブラックズーのキョーアク獣ね! 彼女を離しなさい!」
 素早く身構える美愛。
 いつでも変身できるようにブレスレットを構える。
 「ブヒブヒッ! これまたボクちん好みのメスが来たブヒ。今日は大漁だブヒ」
 豚の鳴き声を発しながらニタッと笑っている黒豚男。
 「今まで女性たちをさらったのもあなたなのね? いったい彼女たちをどこへやったの?」
 美愛は黒豚男をにらみつける。
 「ブヒブヒッ、彼女たちなら巣でボクちんの帰りを待っているブヒ。みんなかわいいボクちんのメスブタ兵になったんだブヒ」
 「メ、メスブタ?」
 思わず声が出てしまう美愛。
 女性たちはこのブヒブヒ鳴く黒豚男のメスブタにされているというの?

 「ブヒブヒッ、心配しなくてもお前もすぐにメスブタ兵にしてやるブヒ。ボクちんのためなら何でもするメスブタ兵になるんだブヒ」
 ニタニタと下卑た笑みを浮かべている黒豚男。
 「くっ、ふざけないで! 誰があんたなんかに! いいわ、あんたを倒してみんな助ける! へんし……」
 「おっと、変身したらこの女が死ぬブヒ」
 美愛がブレスレットを掲げてアルマジロピンクに変身しようとした寸前、黒豚男が抱えていた女性を下ろしてその首に手をかける。
 「くっ!」
 思わずブレスレットのボタンを押す手が止まってしまう美愛。
 「ブヒブヒッ、道理で見たことのある顔だと思ったブヒ。お前はアニマルクインテットのアルマジロピンクだったかブヒ」
 うんうんと一人で納得したかのようにうなずいている黒豚男。
 どうやら彼女の正体を知っているらしい。

 「卑怯者! 彼女を離しなさい!」
 「そうはいかないブヒ。この女はボクちんのメスブタ兵になるんだブヒ。メスブタ兵にしてボクちんのハーレムの一員にしてやるブヒ。お前にも一緒に来てもらうブヒ」
 黒豚男は女性を抱きかかえてその首に手をかけたまま、ゆっくりと美愛の方へと近づいてくる。
 「くっ」
 じりじりとあとずさる美愛。
 その手はブレスレットのボタンに指をかけたままだ。
 「そのブレスレットを外すブヒ。外さないと……」
 女性の首にかけた手に力が入る。

 「ま、待って……わかったわ……」
 美愛はゆっくりとブレスレットを外す。
 女性の命には代えられないし、チャンスはきっと来るはず。
 それに……
 美愛はこっそりブレスレットの緊急ボタンを押す。
 これで他の仲間に信号が伝わるのだ。
 おそらく10分もすれば誰かが駆けつけてくるはず。
 それまでこいつを足止めしておけば……

 「ブヒブヒッ、そのブレスレットを遠くに放り投げろ。お前にはもう必要ないものだブヒ」
 「えっ?」
 さすがに捨てろと言われたら足元にでも落とそうと思っていた美愛も、放り投げろと言われて戸惑ってしまう。
 だが、再び黒豚男の手に力が入るのを見て、美愛はあきらめてブレスレットを放り投げる。
 信号をキャッチした仲間がブレスレットしかないことに気付き、周囲を探してくれれば何とかなるかもしれない。
 とにかく、今は時間を……

 「よしよし、それでいいブヒ。さあ、お前も来るんだブヒ」
 女性から手を離し、再び肩に担ぎ上げる黒豚男。
 そのままさらに美愛の方へと近づいていく。
 「その前に彼女を離しなさい!」
 ブレスレットは外してしまったものの、美愛とてアニマルクインテットの一人である。
 格闘術は身についており、いつでも戦えるように構えを取る。
 「ブヒブヒッ、そうはいかないブヒ。この女はボクちんのかわいいメスブタ兵にすると言ったブヒ。そしてお前もそうなるブヒ」
 「そんなのごめんこうむるわ!」
 近づいてきた黒豚男に渾身の蹴りをお見舞いする美愛。
 うまくいけば女性を離すかもしれない。
 だが、その願いはむなしかった。

 「なっ!」
 美愛の躰が地面に転がされる。
 蹴り上げた足を跳ね上げられ、バランスを崩してしまったのだ。
 見た目とは裏腹に黒豚男の戦闘力はさすがキョーアク獣というべきだろう。
 「ブヒブヒッ、おとなしくするブヒ。ふうーっ」
 倒れ込んだ美愛に口から猛烈に臭い息を吹きかける黒豚男。
 「うっ! げほっ!」
 そのにおいに美愛は思わず咳き込んでしまう。
 あまりに強烈な臭さは、まるで脳に突き刺さってくるかのようだ。
 「げほっ! ごほっ!」
 必死ににおいを吸い込まないようにする美愛。
 だが、周囲は臭い息で覆われ、頭がくらくらしてしまう。
 やがて美愛は意識が遠くなってしまい、その場にぐったりと横たわった。

                   ******

 「はっ!」
 美愛が気付いた時、そこは固い台の上だった。
 周囲には何やら医療器具のようなものがいくつか置かれ、天井には無影灯が輝いている。
 手術台?
 美愛はそう思い、躰を起こそうとしたが、両手首と両足首が固定されてしまっていることに気付く。
 「えっ? 嘘……」
 しかも美愛の躰は服を脱がされてむき出しになっており、この手術台の上に裸で寝かされているのだ。
 美愛の額に汗が浮かぶ。
 まさかこうも簡単に捕らえられてしまうとは……
 仲間を呼びたくてもブレスレットは外してしまったし、ここがどこかもわからない。
 となれば、おそらく見つけてもらえる可能性は低いだろう。
 なんとか自分で脱出するしかない。
 でも、どうやって……

 「ブヒブヒッ、改造の準備が整ったブヒ。先にこっちからブヒ」
 数人の足音がして、声が近づいてくる。
 それと同時に嗅いだことのある吐き気を催すような臭いにおいまで漂ってきた。
 見ると、あの黒豚男とその背後に数人の人影が見える。
 えっ?
 嘘……
 まさか……そんな……
 美愛が言葉を失う。

 黒豚男の背後にいたのは女性たち三人。
 失踪した三人の女性たちだったのだ。
 ただ、そのいずれもが異様な格好をしている。
 彼女たちの頭には三角の豚の耳が付いており、顔にも大きな豚の鼻が付いているのだ。
 両手と両足には黒革の長手袋と膝上までのロングブーツを着けているが、つま先は豚の蹄のように二つに割れており、手にも豚の蹄状の突起が付いていた。
 そして胴体部分には黒革のコルセットが着けられているものの、逆に股間と両胸はむき出しでさらけ出されている。
 あまりにも恥ずかしい格好をしているというのに、三人はいずれもその顔にうっとりと笑みを浮かべ、黒豚男に付き従っていた。

 「彼女たちは!」
 「ブヒブヒッ、目が覚めたかブヒ? そう、お前が探していたのはこのメスブタたちだブヒ」
 ニタッと笑みを浮かべる黒豚男。
 「い、いったい彼女たちに何をしたの!」
 確かにメスブタにしたとは言っていたが、まさかこんな格好にされているとは思わず、美愛は愕然とする。
 「ブヒブヒッ! こいつらはボクちんのかわいいメスブタ兵にしてやったんだブヒ。そうだな、お前たち?」
 黒豚男が三人を振り返る。
 「ブヒブヒブヒィッ! はい、私はブタラード様にお仕えするメスブタ兵カズミ。ブタラード様のためなら何でもいたします。ブヒィッ!」
 「ブヒブヒィッ! 私はメスブタ兵カナ。ブタラード様の太くて素敵なおチンポ様にご奉仕するために生まれてきたメスブタです。ブヒィッ!」
 「ブヒブヒィッ! 私はメスブタ兵マユカです。ブタラード様に身も心もお捧げし、私の卑しいメスブタ穴をお使いいただくのが喜びです。ブヒィッ!」
 女性たちが一斉に右手を斜め上に上げ、うっとりとした表情で黒豚男に宣誓する。
 その姿にとても信じられないという表情をする美愛。
 いったい、彼女たちに何があったのだろうか?

 「彼女たちに何をしたの?」
 「ブヒブヒッ! 言っただろ、ボクちん好みに改造したんだブヒ。こいつらはボクちん専用の戦闘員として、ネズネズ兵と同等の強さを獲得させているブヒ。だから強いんだブヒ」
 「ふあぁぁぁん……ブタラード様ぁ……ブヒィ……」
 黒豚男ブタラードに抱き寄せられて甘い声を上げるメスブタ兵マユカ。
 確か彼女には家で心配して帰りを待っている旦那さんがいたはずなのだ。
 それが豚のように鼻を鳴らしてブタラードにしなだれかかっている上に、ブラックズーの戦闘員であるネズネズ兵と同等の強さがあるなんて……

 「私を捕らえたからといっていい気にならないようにね。すぐに他のアニマルクインテットが来てくれるわ。そうなればもうお前はおしまいよ。それが嫌ならすぐに私と彼女たちを解放することね」
 美愛は精いっぱいの虚勢を張る。
 もちろんそれがほぼ無理であることは美愛自身が一番わかっているし、このブタラードとか言うキョーアク獣が彼女を解放することもあり得ないだろう。
 だが、なんとか時間を稼いで隙を見つけるしかないのも事実。
 その間に仲間が救出しに来てくれるのを願うしかないのだ。
 お願い……
 コンドルレッド、ジャガ―イエロー、マンモスグリーン、バッファローブルー。
 早く来て……

 「ブヒブヒッ! 確かにそうだなブヒ。いつ奴らが来るかわからんブヒ。その前にお前をボクちんのメスブタ兵に改造してしまおうブヒ」
 「クッ……」
 強烈な臭気を発しながら近づいてくるブタラードに、美愛は顔をそむけたくなるのを必死にこらえてにらみつける。
 「そう怖い顔をするなブヒ。すぐにお前もボクちんのことが好き好き大好きブタラード様と思うようになるブヒ」
 「絶対にならないわ! なるもんですか! あんたみたいな臭いやつはお断りよ!」
 ガチャガチャと手足の拘束を何とか外そうとする美愛。
 だが、やはり彼女の力では外れない。

 「ブヒブヒッ、まずはお前の躰からだブヒ」
 ブタラードが機器類のスイッチを押す。
 ウィンウィンと機器類がうなり始め、いくつかのアームが美愛に向かって伸びていく。
 「いやっ! いやぁっ!」
 美愛は身をよじってなんとか逃れようとするが、アームは正確に美愛の動きに追随し、彼女の躰に針を突き立てていく。
 「あうっ!」
 薬剤が注入される痛みと熱さのようなものを感じる美愛。
 すぐに躰がほてってきて、全身が焼けるように熱くなる。
 「ああっ……あああっ……」
 灼熱の暑さに身を焼かれるように感じる美愛。
 その躰がだんだん変化し始める。
 「い……いやっ……躰が……躰が熱い……フ……フゴッ」
 鼻がじょじょに大きくなって上を向き、まるで豚の鼻のように変化する。
 頭からも黒い豚耳が生え、人間の耳は小さくなって髪に隠れていく。
 お尻の尾てい骨部分からはクルリと丸まった豚のシッポが生え、腹部が黒革のコルセット状のものに覆われていく。
 足も太ももから下の部分が黒革のロングブーツを履いたような形へと変化し、つま先も豚の蹄のように二つに割れていく。
 両手も二の腕までの黒い手袋をはめたような形へと変化し、手の甲部分に豚の蹄のような突起が作られる。
 それはまさにブタラードの背後にいた三人の女性たちと同じ姿に他ならなかった。

 「ブヒブヒッ、いつ見てもボクちんのかわいいメスブタ兵ができていくところは楽しいブヒ」
 「ブヒィッ! 自分がメスブタ兵になった時のことを思い出してしまいますぅ」
 「ブヒブヒィ! 彼女の体臭も私たちのようにかぐわしくなってきましたわぁ」
 「ブヒィ……あん……なんだかおマンコが濡れてきちゃいますぅ」
 ブタラードと三体のメスブタ兵が美愛の変化を見つめていく。
 「ああ……いやぁ……いやぁ……こんなのいやぁ……」
 躰の熱がじょじょに引き、目を開けた美愛は、自分の躰の変化に愕然とする。
 「ひどい……元に……元に戻して! ブヒィィィィッ」
 思わず豚の鳴き声を上げてしまったことに驚く美愛。
 「そんな……わ、私は……」
 「ブヒブヒッ、お前の躰はもうメスブタ兵になったんだブヒ」
 「ひぃぃぃぃぃっ! いやぁぁぁぁぁっ!」
 首を振って泣きわめく美愛。
 よりにもよって豚にされるなんてひどすぎる。

 「ブヒブヒッ、嘆くことはないブヒ。すぐにお前の思考を変えてやるブヒ。そうすればお前はメスブタ兵となった喜びに包まれるんだブヒ」
 「いやよぉ……そんなのいやぁ……ブヒィッ!」
 泣きわめく美愛を尻目に新たなスイッチを押すブタラード。
 「ひぐっ!」
 美愛の両目がカッと見開かれる。
 彼女の頭に新たな針が突き立てられたのだ。
 「あ……あああ……」
 脳がかき混ぜられるかのように感じる美愛。
 目の前がぐるぐると回り、何も考えられなくなっていく。
 まるで頭の中で台風が吹き荒れているかのようなのだ。
 「ああああ……」
 瞬きすらできずに目を見開いている美愛。
 その口からはよだれが一筋垂れていく。

 やがて、美愛の目がとろんとなり、うっとりとした目つきに変わっていく。
 口元にも笑みが浮かび、幸せそうな表情になる。
 「フゴッ……フゴッ……ブヒィ……」
 鼻を鳴らして鳴き声を上げるようになっていく。
 先ほどまでは悪臭としか感じなかったブタラードの体臭も、とてもかぐわしく甘美なにおいに感じてくる。
 豚であることの喜びが湧き、豚ではない人間たちが下等に思えるようになってくる。
 美愛の思考は変えられ、メスブタであることが誇らしく感じてくる。
 「ブヒッ……ブヒィィィィッ!」
 鳴き声を上げることが当たり前になり、鳴き声を上げないなどあり得ないことに感じていく。
 美愛はメスブタへと変わっていた。

 美愛の頭から針が抜き取られる。
 「ブヒィィィィィッ!」
 ひときわ高らかに鳴き声を上げる美愛。
 その手足の拘束が外されると、すぐに美愛はブタラードの前に土下座をする。
 「ブヒブヒィィィッ! ああ……ブタラード様……私をメスブタ兵にしてくださり心から感謝いたします。私はもうアルマジロピンクの桜原美愛などではありません。ブタラード様にお仕えするメスブタ兵ミアでございます。どうぞ何なりとご命令を。ブヒブヒブヒィィィッ!」
 まるで床に頭をこすりつけるかのように頭を下げる美愛。
 もはや彼女はブタラードのしもべであるメスブタ兵ミアへと生まれ変わってしまったのだ。

 「ブヒブヒッ、それでいいブヒ。これからはお前もボクちんのために働くんだブヒ」
 「もちろんです。私の身も心もブタラード様のもの。私のすべての穴をブタラード様に捧げ、ブタラード様のためなら何でもいたします。ブヒィィッ!」
 「ブヒブヒッ、いい子だブヒ。立ってその姿をボクちんに良く見せるブヒ」
 「ブヒィッ! はい、かしこまりました」
 ブタラードの前にゆっくりと立ち上がるメスブタ兵ミア。
 頭には豚耳が付き、鼻は大きな豚の鼻をしていて、両胸は惜しげもなくさらされ、腰には黒革のようなコルセットが締められている。
 股間は陰毛がすべてなくなって性器がむき出しとなっているが、今のミアはそれを恥ずかしいと思うことはない。
 それどころかいつでもブタラードにおチンポをはめてもらえるという喜びを感じてしまうのだ。
 そしてお尻には豚のシッポが生え、両手と両足は黒革の手袋やブーツを着けたようになっている。
 ブタラードの背後に控えるメスブタ兵たちと同じ姿になっていた。

 「ブヒブヒッ、あのアニマルクインテットの一人アルマジロピンクが、こうしてボクチンのメスブタ兵になるのは最高だブヒ。今日からお前にはメスブタ兵の指揮を任せるブヒ。アルマジロピンクだったお前ならできるだろうブヒ?」
 「ブヒィィィィッ! 本当ですか? ありがとうございます! もちろんです。メスブタ兵たちの指揮を執り、ブタラード様に歯向かうおろか者たちはすべて私たちメスブタ兵が排除いたします。ブヒィッ!」
 ブタラードの言葉に感激するミア。
 これからは彼女が指揮を執り、ブタラード様のためにメスブタ兵を動かすのだ。
 ミアは最高の喜びを感じてしまう。

 「ブヒブヒッ、ではさっそくお前に最初の命令を下すブヒ」
 「ブヒィッ! ハッ、なんなりと!」
 姿勢を正し、右手を上げて敬礼するミア。
 今の彼女にとってはブタラードの命令は絶対なのだ。
 「お前と一緒に連れてきたもう一人の女。これをお前の手でボクちんのかわいいメスブタ兵に改造するんだブヒ。いいなブヒ」
 にたりと笑うブタラード。
 「ブヒィッ! かしこまりました。私とともに捕えられたあの女を、私の手でブタラード様にお仕えするメスブタ兵に改造いたします。お任せくださいませ。ブヒブヒィィッ!」
 ためらいもなく答えるミア。
 もはや捕らわれた女性を助けようとしていたことなど消え去っているのだ。
 それどころか、命令を受けた喜びに彼女の股間はじんわりと濡れてくる。
 ブタラードの命令を受けるということは、それだけメスブタ兵にとっては快感なのだ。
 「ブヒィッ!」
 ミアは喜びに頬を染め、すぐにとらわれた女性をメスブタ兵にするための準備をし始めるのだった。

                   ******

 手術台に寝かされている一人の女性。
 ミアと一緒にさらわれてきた女性だ。
 すでに衣服は脱がされ、手足も固定されて、いつでも改造できるようになっている。
 あとはスイッチを押すだけと言っていい。

 「う……」
 ミアが近づくと女性が顔をしかめる。
 彼女のにおいに反応したのだろう。
 今のミアはブタラードに劣らぬ臭い体臭を発しているのだ。
 無意識にその臭さに顔をしかめてしまったのかもしれない。

 思えば今の自分があるのは彼女のおかげではないだろうか……とミアは思う。
 彼女が悲鳴を発してくれたことで、ミアはブタラード様の行動に気付き、彼に捕えられることになったのだから。
 彼女が悲鳴を発してくれなかったとしたら、ミアはまだおろかにもアニマルクインテットなどの一員として行動し、ブタラード様と戦っていたかもしれないのだ。
 そう思うとミアはゾッとする。
 ブタラード様と戦うなんて……あり得ない……

 でも、そうならずに済んだのは、彼女が悲鳴を発してくれたおかげ。
 そう思えば感謝してもしきれないくらい。
 だから、彼女が自分と同じメスブタ兵になるのはとてもうれしい。
 一緒にブタラード様にお仕えできるのよ。
 ともにブタラード様のために働きましょうね。

 「う……うん……臭い……」
 目を開ける女性。
 「ひっ!」
 目の前にミアがいることに気付き、小さく悲鳴を上げてしまう。
 「ブヒィィィッ! 目が覚めたかしら? ちょうどよかったわ。すぐにあなたもメスブタ兵に改造してあげる」
 おびえた表情の女性に、ミアはゾクゾクしてしまう。
 うふふ……なんだか気持ちいい……
 人間の怯える顔を見るのって気持ちいいわ……

 「こ、ここは? あなたはいったい?」
 「ブヒィッ! 私はブタラード様にお仕えするメスブタ兵のミア。あなたもメスブタ兵になるのよ」
 そう、これからミアは彼女を自分と同じメスブタ兵にしてあげるのだ。
 下等な人間であることをやめ、メスブタ兵としてブタラード様にお仕えするのだ。
 「い、いやっ! そんなのいやです! 家に返して!」
 強烈な臭いにおいに思わず息がつまりそうになりながらも、彼女は泣きそうな顔で必死に首を振る。

 「ブヒブヒッ、臭い? 私のにおいを臭く感じるのはあなたがまだ人間だからよ。私たちメスブタ兵はブタラード様の体臭と同じように臭い体臭を持っているの。でもそれは私たちが常にブタラード様に忠実にお仕えするメスブタ兵である証の体臭でもあるのよ。すぐにあなたもこの体臭をかぐわしいと思うようになるわ。そしてブタラード様を見るだけで発情するようになるのよ」
 それはミア自身が感じていること。
 こうしてブタラード様の名を口にするだけで、ミアはおマンコが感じてしまうくらいなのだ。
 「そ、そんな……いやぁっ!」
 必死に手足を動かして逃れようとする彼女。
 ミアはそんな彼女を哀れに思う。
 彼女はまだ下等な人間なんだわ……
 早く私と同じメスブタ兵にしてあげないと……
 「おしゃべりはここまでね。改造を始めるわ」
 ミアは手術台の脇にあるスイッチを押す。
 「いやぁっ!」
 女性の躰に向かってアームが何本も伸びて行った。

                   ******

 「ブヒブヒッ、美味い美味い」
 メスブタ兵たちが差し出す食い物を次々と平らげていくブタラード。
 彼にしなだれかかるように三匹のメスブタ兵たちが寄り添っている。
 一匹はワインの入ったグラスを持ち、また一匹は肉の盛られた皿を持っている。
 もう一匹はチーズの載った皿を持ち、交互にブタラードの口へとそれらを運んでいるのだった。
 「ブヒブヒッ、かわいいメスブタ兵たちだブヒ」
 ブタラードは空いた両手で彼女たちの胸や尻を揉み、その感触を楽しんでいた。

 カツカツと足音が響き、二匹のメスブタ兵たちが入ってくる。
 「ブヒブヒィィィッ! ブタラード様、新たなメスブタ兵を連れてまいりました。ブヒィッ!」
 二匹はブタラードの前までやってくると、スッと右手を上げて敬礼する。
 「ブヒブヒッ、終わったようだな。よくやったぞ、メスブタ兵ミア」
 「ブヒィィィッ! お褒めのお言葉ありがとうございます。さあ、メスブタ兵ルミ、ブタラード様にご挨拶なさい」
 ブタラードの言葉に喜びを感じつつ、背後のメスブタ兵に指示を下すミア。
 「ブヒィィッ! 私はブタラード様にお仕えするメスブタ兵ルミです。私をメスブタ兵にしていただき、ありがとうございます。ブヒィィッ!」
 挨拶をしている間にも、ルミの股間はじんわりと濡れてくる。
 改造前にミアが言ったとおり、ブタラードの姿を見、その体臭を嗅いだだけで発情してしまうのだ。
 メスブタ兵になった今、彼女にとってはそれは当たり前のことだった。

 「ブヒブヒッ、それでいいブヒ。あとでたっぷりとかわいがってやるから、これからはボクちんのために働くブヒ」
 「ブヒィッ! もちろんです。私の身も心もブタラード様のもの。何なりとご命令ください」
 ルミが嬉しそうに答える横で、ミアはもじもじと切なそうな表情を浮かべる。
 「ブヒブヒッ? どうしたブヒ?」
 「あ……はい……私も……私もかわいがっていただきたいです……ブヒィッ!」
 ミアはまだブタラード様のおチンポ様を味わっていないのだ。
 ルミだけじゃなく、自分もかわいがってほしかった。
 「私も……」
 「私もお願いしますブヒィッ!」
 ミアに続き他のメスブタ兵たちも口々に願い始める。
 「ブヒブヒッ、わかったわかったブヒ。全員まとめてかわいがってやるブヒ」
 「わあ……」
 「ありがとうございます。ブヒィッ!」
 「ブヒッ! ブヒィッ!」
 ミアもカズミもマユカもカナもみんなが喜びの声を上げていた。


                   ******

 「ブヒブヒィッ! やぁっ!」
 「ブヒブヒッ! とうっ!」
 気合の入った声と金属のこすれ合うような音が響く。
 「ブヒブヒィッ! ほら、気を抜かない! 私たちはブタラード様にお仕えするメスブタ兵なのよ! ブタラード様のためにももっともっと強くならなくてはいけないわ!」
 「ブヒブヒィッ! はい!」
 「わかりました! ブヒィッ!」
 四匹のメスブタ兵たちが二組に分かれ、お互いに格闘し合っている。
 こぶしでの一撃、足の蹴り、手の蹄による打撃など、いずれもが一撃で人間を即死させることのできるものばかりだ。
 見た目は露出癖のある変態女性のような恰好でありながら、その強化された肉体は人間を大幅に超えている。
 まさに兵士と呼ぶにふさわしい。
 その四匹のメスブタ兵を指揮し、訓練しているのがメスブタ兵ミア。
 彼女はアルマジロピンクだった過去を振り払うかのように、その戦闘技術を他の四匹にレクチャーしているのだった。

 「ブヒブヒッ、だいぶ激しくやっているようだなブヒ」
 その巨体の腹を揺らしてトレーニングルームにやってくるブタラード。
 「ブヒィィッ! 訓練止め! ブタラード様に敬礼!」
 「「「ブヒィィッ!」」」
 ミアの号令ですぐさま整列し、右手を上げて敬礼するメスブタ兵たち。
 「ブヒブヒッ、いいねいいね。さすがはボクちんのかわいいメスブタ兵たちだブヒ」
 「ああ……」
 「はぁん……」
 メスブタ兵たちの表情がうっとりとなる。
 ブタラードにかわいいと言われただけで、もう発情してしまうのだ。
 ミアにしてもその顔をとろけさせ、今すぐにでも彼のおチンポ様をはめてほしくて仕方なくなってしまう。

 「ブヒブヒッ、仕上がりはどうだブヒ?」
 「ブヒィッ! はい、今すぐにでもブタラード様のために働けます。私たちメスブタ兵に何なりとご命令を……ブヒィッ!」
 ブタラードの息を嗅ぐだけでイってしまいそうになるほどの快感。
 ああ……
 なんて素敵なの……
 ミアは心からそう思う。

 「ブヒブヒッ、それじゃお仕事してもらうブヒ。ブラックズーにはまだまだ邪魔者が多いブヒ。お前たちはそういう邪魔者を一人ずつ始末していくんだブヒ。まずはこいつだブヒ」
 ブタラードが一枚の写真を見せる。
 それは中年の男性だったが、ミアはその顔に見覚えがある。
 確かアニマルクインテットの武装にその知識を生かした男。
 ミアの心に憎しみが湧いてくる。
 アニマルクインテットの協力者はブタラード様の敵なのだ。

 「ブヒブヒッ、こいつの超音波研究はブラックズーにとっては目障りだブヒ。始末するブヒ」
 「ブヒィィッ! かしこまりました。ただちにこの男を私たちで始末してまいります。お任せ下さいませ。ブヒィッ」
 ブタラードの命令を受けて喜びの鳴き声を上げるミア。
 彼女にとってはもはや人間など下等な存在で獲物にすぎない。
 「さあみんな、ブタラード様のご命令よ。行きましょう。ブヒィッ!」
 「「「ブヒィィッ!」」」
 五匹のメスブタ兵たちは喜んでトレーニングルームを飛び出していった。

                   ******

 美愛……どうしてしまったのかしら……
 ついそのことを考えてしまう猪羽智惠(のわ ちえ)。
 「ん? どうかしたかね?」
 その浮かない表情に隣を歩いていた男性が気付く。
 「あ、いえ、なんでもありません……」
 慌てて首を振る智恵。
 いけないいけない……
 今は任務中……
 防衛隊の一人として、この男性のボディガードを務めているのだ。
 とはいうものの、音信不通となってすでに四日となる美愛のことは、アニマルクインテットのメンバーたちばかりではなく、同じブラックズーの魔手から世界を守ろうとする防衛隊の間でも心配なことには違いないのだ。
 ましてや知恵と美愛は訓練所では同期だったこともあり、片やアニマルクインテットのメンバー、片や防衛隊の女性士官となった今でも、時折連絡をかわし合う仲だったのだ。

 「うっ、なんだこのにおいは?」
 周囲にいる男たちが鼻を押さえはじめる。
 強烈な臭気が漂ってきたのだ。
 それと同時に数人の人影が現れる。
 「博士、下がって」
 智恵はすぐに男性を下げてカバーする。
 男たちもすぐに博士と呼ばれた男性をを囲むように展開してガードする。

 「ブヒブヒィッ! 巧妙字(こうみょうじ)博士、お前は我がブラックズーのキョーアク獣ブタラード様にとっては目障りな存在。私たちメスブタ兵が始末するわ。ブヒブヒブヒィッ!」
 現れた人影に絶句する男たち。
 智恵も思わず目が丸くなる。
 それもそのはず。
 現れたのは黒い長手袋やブーツを履き、胴には黒いコルセットのようなものを着けてはいるものの、肝心の両胸や股間は全く隠されずに露出した女たちの姿なのだ。
 そのいずれも豚のような耳と鼻を持ち、お尻からは豚のシッポが生えている。
 手袋やブーツも豚の蹄のように先が割れたりしていた。
 しかも、先ほど声を発した中央にいる女性は、豚鼻や豚耳を付けてはいるが、智恵の見知った人物だった。

 「そんな……美愛……」
 智恵はわけがわからないままに博士のガードに専念せざるを得ない。
 なぜなら、豚の姿をした女性たちが、いっせいに襲い掛かってきたのである。
 女性たちの力は強く、鍛え抜かれた防衛隊の男たちが、次々と倒されていく。
 格闘術も優れている上に、どうしても露出している胸や股間に目が捕らわれてしまうのかもしれない。
 拳銃で応戦しようにも、動きが素早くすぐに懐に入り込まれ、一撃を食らってしまう男たちばかりだった。

 「クッ!」
 街中ゆえに発砲を一瞬ためらってしまった智恵は、腕に強い衝撃を受けて拳銃を取り落としてしまう。
 先ほどから漂う耐えがたい臭気も智恵を悩ませていた。
 思うように呼吸がしづらいのだ。
 これが目的の臭気だとしたら、相手は相当に手ごわいことになる。
 智恵はすぐに格闘に切り替えて相手に拳を叩きこむ。
 並の相手であればこれで動きを封じるくらいはできただろう。
 だが、智恵の前に現れたのは並の相手ではなかった。
 悪の軍団ブラックズーのキョーアク獣であるブタラードによって、メスブタ兵へと改造された美愛だったのだ。

 「ブヒブヒッ! 久しぶりね、智恵」
 「あなた! やっぱり美愛!」
 かろうじて相手の蹴りをよけながら、智恵は聞き慣れていた声に衝撃を受ける。
 「ど、どうして……」
 ともすれば意識が会話に向いてしまいそうになるのを、智恵は必死に戦いに向けさせる。
 彼女の攻撃は本気なのだ。
 本気で智恵を殺しに来ている……

 「ブヒブヒィッ! ええ、私はミア……でももう以前の桜原美愛なんかではないわ。私はブタラード様の改造を受け、メスブタ兵ミアとして生まれ変わったの。今の私はブタラード様の忠実なるしもべ。ブタラード様の邪魔者は私が始末するわ。あなたも邪魔をするなら殺すわよ。ブヒィッ!」
 強烈な攻撃を繰り出してくるミアに、智恵は防戦一方となる。
 「くっ、そんな……あなたはアニマルクインテットの一人だったはず! しっかりしなさいよ!」
 「ブヒブヒッ! それは思い出したくもない過去よ! ブタラード様はそんなおろかだった私をこうしてメスブタ兵にしてくださった。だからこそ私はブタラード様のためなら何でもするわ! ブタラード様こそ私のすべてなの。ブヒブヒィッ!」
 「うああっ!」
 ミアの蹴りを避けきれずに食らってしまう智恵。
 路上にたたきつけられ、気が遠くなりかける。
 「くっ……」
 必死に意識をつなぎとめる智恵。
 「ブヒブヒッ、いいことを思いついたわ。智恵、あなたもブタラード様にお仕えするメスブタ兵になりなさい。そうすればブタラード様がどんなに素晴らしい方なのか、メスブタ兵としてお仕えすることがどんなに素敵なことなのかがわかるわ。それに……」
 ゆっくりと近づいてくるミアを見上げる智恵。
 その智恵にミアは一方向を指さす。

 「ぐわぁっ!」
 博士の悲鳴が上がり、数体のメスブタ兵が博士を取り囲んでいたことがわかる。
 「博士……」
 智恵は任務の失敗を悟らざるを得ない。
 「ブヒィッ! あなたが護ろうとしていたものは死んだわ。もう戦う必要はないの。これからはブタラード様のために戦うのよ」
 「ふ、ふざけないで! そんなのはごめ……がはっ!」
 腹部に強烈な蹴りを入れられて気を失う智恵。
 「ブヒブヒッ、あなたの意思など関係ないわ。すぐにあなたもブタラード様の忠実なメスブタ兵にしてあげる。うふふ……」
 ミアは智恵の躰を担ぎ上げ、他のメスブタ兵たちに撤収の合図をする。
 「うふふふ……さあ、一緒に行きましょう智恵。これからはあなたも一緒にブタラード様にお仕えするのよ。また仲良くしましょうね。楽しみだわ。ブヒブヒブヒィッ」
 ミアのうれしそうな鳴き声が空に響く。
 やがて、女たちの姿は消え、あとには男たちの死体だけが残っていた。

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントなどいただけますと嬉しいです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2021/10/10(日) 19:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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ラビドナの復活 (後)

昨日に続きまして、「ラビドナの復活」の後編です。
お楽しみいただければと思います。

それではどうぞ。


                   ******

 「ん……」
 私はゆっくりと目を開ける。
 あ……れ?
 私は……いったい……
 そうか……
 あのあと眠ってしまったんだ……
 はあ……ん……

 なんだか躰にまだ余韻が残っている。
 あそこにあの太いあれの感触が感じられるくらい。
 この躰が喜んでいる。
 ふふ……

 私は両手で胸にそっと触れてみる。
 あん……
 柔らかい胸……
 これは私の胸……
 うふふ……
 触れていると、さっきの荒々しく揉まれた感触がよみがえってくる。
 ブズロム様の大きな手で、また揉んでほしくなってくる……

 すべすべした白い肌。
 ほっそりした長い腕。
 なんだかとても素敵……
 これが私の躰……

 あ……ん……
 私は指であそこに触れる。
 さっきまでブズロム様のあれが……
 はあ……ん……
 じっとりとまた濡れてきちゃいそう……

 私は立ちあがってシャワーを浴びに行く。
 このままだとそのままオナニーをしてしまいそうだ。
 あれからどのくらい経ったのだろう?
 ここにいると時間の感覚がつかめなくなってしまう。
 急いでどこかに行かなくちゃいけない気がしていたんだけど……

 シャワーを浴びて躰をきれいにした私は、濡れた髪を乾かして、バトルスーツを身に着けようと手を伸ばす。
 タイツ状のレッグガードを穿き、バニーガールの衣装のようなボディスーツを着込んでいく。
 このスーツは本当に私の躰にぴったりフィットして気持ちがいい。
 さらにブーツとアームカバーを着け、首にはチョーカーを着ける。
 そうか……
 気付いてなかったけど、このチョーカーってフィールド発生器になっているのか……
 これでフィールドを発生させることで、より防御力が高まるというわけね。
 うふふ……
 なかなか素敵じゃない。

 最後に耳をカバーするヘッドフォンを着ける。
 両耳をすっぽりと覆う形で、ヘッドバンド部分にはウサギの耳を模したセンサーが付いている。
 これを着けることで、周囲の状況をより把握できるというわけなのか。
 ちゃんと考えられているのね。

 私は鏡の前に行っておかしなところがないか確かめる。
 うん。
 問題なし。
 後ろのシッポもちゃんと位置に収まっているわ。
 ふふ……
 下等な人間のオスどもはこの格好につい油断をするというもの。
 バニーガールのようなこの格好もちゃんと理由があるんだわ。

 身支度を整えた私は、これから何をするつもりだったのか思い出そうとする。
 確か急いでここを出て……
 えっ?
 あれ?
 私?
 えっ?
 私って?
 それとも……俺?

 私はもう一度鏡を見る。
 どこもおかしな……
 違う……
 違う違う違う!
 俺は……
 俺は女なんかじゃ……
 あれ?
 俺?
 俺って……女だっけ?

 鏡の中で困惑している女の顔。
 これが俺の顔?
 いや……違う……
 これはラビドナの……ラビドナの顔……
 じゃあ俺は?
 俺の顔って……どんな顔だった?
 俺の顔は?
 俺は……誰だったっけ?
 俺は……いったい……

 待て……
 落ちつけ……
 よく思い出すんだ……
 私はベッドに腰かけて考える。
 俺は……
 俺は……

 ダメだ……
 頭がぼうっとなってよく思い出せない。
 俺はいったい……
 覚えているのはここから抜け出さなければヤバいってことと、ダガーナイツとかいう連中にブズロム様のことを知らせなければということぐらい。
 ブズロム様……
 彼のことを思うだけで胸がきゅんとなってくる。
 先ほどの荒々しい感触が脳裏によみがえり、あそこがまた濡れてきそうになる。
 なぜ彼のことをダガーナイツに知らせなければならないのか?
 でも……
 知らせなくてはならないと頭のどこかが叫んでいる。
 とにかくここを抜け出して、ダガーナイツに連絡を取らなくては……

 私は立ちあがって部屋を出る。
 あとのことはあとで考えよう。
 とりあえずここにいてはいけない。
 ここにいたら私はまたブズロム様に……
 でも、ここからどうやって出たら……

 やみくもに廊下を歩き回ってみる。
 時々ドロッコーたちが通りかかるが、俺の姿を見ると慌てて避けてくれる。
 くそっ……
 ここからどうやって出たらいいの?
 アンゴクーのみんなはどうやって地上に?

 「ここは……」
 行きついたのはあの何もない広間。
 廊下の突き当りに位置し、広いわりに入ってきたところ以外にはどこにも出口は無く、がらんとした殺風景なところ。
 いったい何のための部屋なのか?
 物置き……という感じでもないし……

 『ゲートを開きますか?』
 えっ?
 俺は驚いた。
 いきなり俺の耳に着けていたヘッドフォンから声が聞こえたのだ。
 ゲート?
 あ……まさか?

 「ゲートを開け」
 俺は誰にともなく命じてみる。
 すると、部屋の中央に黒い闇の球体が現れた。
 そうか……
 これが外へのゲートか……
 このヘッドフォンを着けないとわからなかったのか……

 俺は思い切って闇の球体の中へと入ってみる。
 「うわ……」
 途端にめまいのような感覚が襲い、俺は目を開けられなくなってしまう。
 何かふわふわした感じが躰を包み、俺をどこかへ運んでいく。
 こ、これはいったい……

                   ******

 ひんやりとした風が躰に当たる。
 私は恐る恐る目を開ける。
 暗い?
 でも真っ暗じゃない。
 木々の葉を揺らす風の音。
 天にちりばめられたような星の群れ。
 外だ……
 俺は地底城から出られたんだ……
 やったぁ。
 脱出成功だ。
 だが……
 ここはどこ?

 あたりは暗い夜。
 街灯の明かりが周囲を照らしている。
 街灯の下には誰もいないベンチ。
 どうやら人気のない公園のようだ。
 もしかしたら結構遅い時間なのかもしれない。

 とにかくダガーナイツに連絡を取らなくては。
 でも、どうやって?
 今の私にはスマホも何もないのに……
 どうしたら……

 「うぇひひ……やっぱりオニキスたんはかわいかったでござるなぁ」
 「まあ、オニキスはあの作品じゃ鉄板だからな。俺はむしろオパールの方が好きなんだが」
 「うぇひひ……戸村(とむら)殿はオパールたん推しでござるか。彼女も捨てがたい魅力がありますからなぁ」
 近づいてくる話し声。
 どうやら人間の男たちらしい。
 俺は一瞬身構えようとするが、思いとどまって気を落ち着ける。
 いけないいけない……
 相手はただの人間だ。
 敵じゃない……

 そうだ……
 彼らならたぶんスマホくらいは持っているはず。
 なんとかそれを貸してもらえば……
 スマホでダガーナイツに連絡できるじゃないか。

 「そ、その……す、すまない。ちょっとお願いがあるのだが」
 俺は近づいてきた男たちの前に姿を現す。
 「お、おおっ? バ、バニーガールさんでござるか? しゃ、写真撮ってもいいでござるか? 写真? それとSNS」
 太ってメガネをかけている方の男が早口でまくしたて、スマホを取り出す。
 よかった、スマホ持ってる。
 「な、なになに、君? コスプレ? それともお店の宣伝かなんか?」
 もう一人のスマートな優男も一緒になって目を輝かせ、俺の躰を舐め回すように見てくる。
 うわ……
 ちょ……
 は、恥ずかしい……
 こんな連中にじろじろと見られるなんて……

 「あ、あの、悪いんだけどスマホを貸してくれない? どうしても連絡したいところがあるの」
 とにかく彼らからスマホを借り、ダガーナイツに連絡しなきゃ。
 そして……えーと……とにかく連絡をして……
 「ス、スマホでござるか? わ、我が輩のでよければ……」
 太った方がスマホを差し出そうとする。
 だが、スマートな優男の方が手で遮ってそれを止めた。
 「まあ、待て待て。ただでってのは失礼だよなぁ? 当然お礼はしてくれるよな?」
 にやりと笑う優男。
 「お礼?」
 お礼と言われても……今は金なんか持ってないし……
 「そ、それは……連絡先に連絡が付けばなんとか」
 とにかく連絡したいんだってば……
 一刻も早くダガーナイツに……

 「ああ、いやいや、別にお金をくれとか言ってるんじゃなくてさ。そのさ……もし仕事でその恰好でここにいなきゃならないとかじゃなければさ、少し俺たちに付き合わね? カラオケとかさ」
 優男が俺の躰を見ながらにやにやと笑っている。
 付き合う?
 「そ、それはいいでござるな戸村殿! バニーガールさんと過ごせるなんてめったにないことでござるよ。いかがでござるか? ぜひぜひ我が輩たちと」
 せっかく差し出したスマホを引っ込めてしまう太った男。
 うう……
 どうしよう……
 こんなやつらからならアームカバーの刃で引き裂いて奪ってやってもいいんだけど……

 「うう……わかった。カラオケだけなら」
 俺は仕方なく付き合うことにする。
 なんだかこいつらをむやみに殺したりするのはいけないような気がするし、今はこのあたりに他に人はいないようだから、スマホを借りるためには仕方がない。
 二、三曲も付き合えば、きっとスマホを貸してくれるだろう。
 それまで我慢だ。
 我慢……

 俺は少しもやもやしたものを覚えながらも、男たちについていく。
 公園を出て通りを少し歩くと、明るくにぎやかなところに出る。
 どうやら飲食店街のようで、居酒屋やスナック、カラオケ店などが軒を連ねている。
 俺は左右を男たちに挟まれるような形で歩き、優男は図々しくも俺の肩まで抱いてくる。
 太った男の方は、時々先に行ったり後ろに回ったりして、俺の写真ばかり撮っている。
 一度などは道に寝転がって下から見上げるようにして撮ってきた。
 その様子に通りを歩く人間たちまでもが、こっちをじろじろと見つめてくる。
 まったく……私の躰はお前たちになど見せるものではないのに……
 スマホさえ貸してもらえばこんな男たちなど用済みなんだが……

 男たちに連れられ、俺は一件のカラオケ店に入っていく。
 そういえばカラオケなんてしばらく来てないな。
 このところ奴らとの戦いで忙しかったし……
 今度みんなで来るのもいいかもしれないな……
 アンゴクーのみんなで……

 「さあさあさあさあ座って座って。飲み物はなにがいい? アルコール入れちゃう?」
 男たちと部屋に入り、椅子に座った俺の前に広げられる食べ物のメニュー。
 どれもみんな美味しそうだけど……
 「ほんとにお金は持ってないんだけど……」
 俺はちょっと困ったようにそのことを伝える。
 「まあまあ、いいでござるよ。ここは我が輩が奢るでござる」
 「よっ、見かけ通りの太っ腹! さすが橋本(はしもと)はお大尽様ですねぇ」
 なるほど……この二人は太った方が橋本、優男が戸村というのか。
 「というわけだから、気にしないで好きなモノ頼んで。俺たちもバニーガールさんとカラオケできるなんてうれしいからさ。そうそう、バニーさんのお名前は?」
 「えっ?」
 名前……あれ?
 俺……名前……
 俺の名前はなんだったっけ?
 「そ、その……ラ、ラビドナ」
 俺はとっさに思い浮かんだ名前を口にする。
 そうだった……
 ラビドナ……
 私はラビドナよ……

 「ラビドナさんか。いい名前だね。俺は戸村雄治(ゆうじ)」
 俺の隣に座って名を名乗る優男。
 「わ、我が輩は橋本則也(のりや)でござる」
 遠慮がちに向かい側に座る太った男。
 俺はとりあえず二人にちょこんと頭を下げておく。
 正直こんな連中の名前を覚える気など全然ないし、さっさと歌でも歌ってスマホを借りたいんだが……

 結局俺は彼らが主に歌うのを聞き、俺自身は一曲二曲歌う程度で済ませていく。
 運ばれてきた食べ物を食べ、飲み物を飲んで彼らの会話に相槌を打ち、なんとか時間をつぶしていく。
 まあ、俺あんまりカラオケの持ち歌ないんだよね……
 それよりも……いつになったら終わらせる……つもり……だ?
 あ……れ……?
 なんか頭がぼうっと……
 あ……れ……
 躰が……なんだか……熱い……
 なんか……変な気分が……

 「うぇひひ……効いてきましたかね?」
 「ああ、やっぱこいつは効くなぁ」
 二人が何か言っている……
 効くって……
 もしかして……薬?

 「んむっ」
 優男が……戸村だっけ?
 彼が俺の唇にキスをする。
 何か甘い液体が流し込まれ、俺はそれを飲み込んでいく。
 あれ?
 これって……ヤバいんじゃ?
 頭が……うまく働かない……
 俺……何やって……

 「ふわぁぁん」
 思わず声が出る。
 男の手が俺の胸を揉んだのだ。
 な、なにこれ?
 気持ちいい……

 「ふへへ、効いてる効いてる」
 「うほっ。このとろけたような顔。たまりませんですなぁ」
 「ふあぁぁぁん」
 男の手が私の胸を揉むのをやめる。
 やん……
 私は思わず胸を突き出す。
 どうしてぇ……
 そうしてやめちゃうのぉ……
 もっと……
 もっと私の胸を揉んでぇ……

 ダ、ダメ……
 何かおかしい……
 躰が火照る……
 頭がぼうっとして何も考えられなくなる……
 ど、どうしちゃったの?

 「うぇひひ……戸村殿の薬は効果バッチリですなぁ」
 「だろ? なんでもダガーなんとかって言う特殊戦闘チームにも薬品を納入している会社って話だからな。こういう裏の薬も作ってるんだとさ」
 男たちが何か話している……
 ダガーなんとか?
 ああ……ん……
 そんなことより……
 切ない……
 あそこが……あそこがキュンキュンする……
 ああ……
 欲しい……

 「おら! これが欲しいんだろ?」
 俺の前にズボンのファスナーを下ろし、太い肉棒をむき出しにする優男。
 あ……
 その肉棒を見た途端、私の胸がドクンとなる。
 舐め……たい……
 あれが……欲しいよ……

 私は彼の肉棒に顔を近づける。
 ぷんと漂うオスの香り。
 あ……
 何かがはじけ飛んでいく。
 薬のせいでも何でもいい……
 欲しい……
 欲しいのぉ……

 俺は舌を出して肉棒を舐めようとする。
 「へへへ……ほらよ」
 押し込まれるように肉棒が口の中に入ってくる。
 ああん……
 これ……
 これいい……
 私は熱い肉棒を舐め回す。
 塩気のある味がたまらない。
 おマンコがキュンキュンする。
 ああん……
 好きぃ……
 おチンポ好きぃ……

 「ウヒヒ……すっかりメロメロでござるな」
 「ああ……いい感じで舐めてくるぜ」
 「おマンコの方はいただいてもいいですかな?」
 「チッ……しょうがねぇなぁ。譲ってやるよ」
 「うぇひひ……サンクスでござるよ、戸村殿」
 二人が何か会話している。
 でも、そんなのはどうでもいい。
 おチンポ美味しい……
 舐め回しているとドキドキする。
 はあぁぁん……
 サイコー……

 「あん……」
 背後からいきなり胸を揉まれてしまう。
 そのままカップを剥がすようにして服がずり下げられて、タイツと一緒に太もものあたりまで下げられる。
 むき出しになったお尻が持ち上げられ、あそこを指でいじられる。
 「ひゃあぁぁん」
 おしゃぶりしていたのに思わず声が出てしまう。
 おマンコ……
 おマンコが気持ちいいよぉ……

 私はおチンポをしゃぶりながら、腰を動かしていく。
 ああ……ん……
 なんていいのぉ……
 オスに前後から挟まれているぅ……
 興奮するわぁ……

 おマンコに突き立てられる熱い肉棒。
 まるで熱した金属みたい。
 それがピストンのように私を動かし、その波が私の口を前後させる。
 「う……おおっ」
 口の中に放たれるねばつく液体。
 これがザーメンの味……
 ねっとりと舌に絡みついて……美味しい……
 とっても美味しいわ……

 「はあぁぁぁん」
 躰を動かすピストンが続き、どんどん頭がとろけてくる。
 全身を快感が走り、何も考えられなくなってくる。
 「あ……あああ……」
 「うおお……わ、我が輩も出るでござるよ」
 ああ……私も……私も……
 ああ……ん……イ……イく……
 「うおおお……」
 「はあぁぁぁん」
 私は声をあげながら快感を全身で味わっていった。

 「ハアハア……イッてしまったでござるよ」
 「へへ……やっちまったな。なんかムラムラしちゃってよ。ほんとはラブホに連れ込むつもりだったんだがな」
 「二回目はラブホに行くでござるよ。薬はまだ効いてるでござろう? こんなエロいバニーガールさんなんて恰好見てたらムラムラするのは当然でござるよ」
 「だな。二回目は俺がマンコだからな?」
 「と、当然でござるよ。それにしてもここまでセックスしたくなるようにさせる薬というのもすごいでござるな」
 「ああ……毎回びっくりするぐらいだぜ」
 「裏ルート様様でござるな」
 オスたちが何か言っている……
 私はペロッと舌を舐める。
 はあん……
 どうやらイっちゃったらしい……
 頭がだんだんすっきりしてくる。
 ふふ……
 気持ちよかったぁ……

 私は何を怯えていたのだろう……
 私は何を戸惑っていたのだろう……
 この快感こそが女の躰……
 この快楽こそが女の喜び……
 私は女……
 女なんだわぁ……

 私は立ちあがって服を直す。
 いつまでも裸をさらしているつもりはない。
 私の裸を見ていいのはあの方だけ。
 それに……
 こいつらにはお礼をしなくては……

 「お、ラビドナ殿も起きられましたか? どうです、場所を変えて楽しむではござらんか?」
 「まだまだ物足りないだろ? もっと気持ちよくさせてやるぜ」
 ニタニタと笑っているオスたち。
 私も思わず笑みが浮かぶ。
 さて……
 私は腕を振り上げた。

 「あん?」
 近づく私を見上げる優男。
 その目が驚愕に見開かれる。
 うふふ……
 私は腕を振り下ろし、アームカバーから延びる刃で男の躰を切り裂いていく。
 腕に伝わってくる肉を切り裂く感触。
 それがゾクゾクするほどに気持ちがいい。
 ああ……
 これが人間を殺す楽しさなのね……

 「ひ? ひへ?」
 自分の頬や服に飛び散ってきた血しぶきに唖然としている太った男。
 何の反応もできずにアワアワとうろたえるだけの愚か者。
 こんな連中に躰を好き勝手にされてしまったなど……私らしくもない失態だわ。
 でも、人生の最後に私の躰を堪能できたんだもの、感謝しなさい。

 「や、やめ……」
 私を見る恐怖におびえる目。
 うふふ……
 そうよ……
 その目がいいわ……
 もっと恐怖におびえなさい!

 「ス、スマホなら……ふぎゃっ!」
 あわててスマホを差し出す男に対し、私は腕を振り下ろす。
 先ほどよりもやや強い感触なのは、男の脂肪が厚いせいか?
 だが、そんなことはお構いなしに私の刃は男を切り裂いていく。
 周囲に血しぶきが飛び散り、男は私の足元に倒れ込んだ。
 うふふふふ……
 気持ちいい……
 人間を殺すのは気持ちがいいわ……
 あはははは……

 足元に転がるスマホ。
 そうだわ、連絡を……
 そう思ったところで私はハッとする。
 連絡を?
 どこに連絡を取ろうというの?
 ダガーナイツ?
 私は思わず笑いがこみあげてきてしまう。
 なぜそんな連中に連絡を取らなくてはいけないのか?
 どうして私は地底城を抜け出してこんなところにいるのか?
 自分の愚かさ加減に笑ってしまう。
 おかげでこんな下等な人間どもと躰を交わらせてしまったではないか……
 まったく忌々しいにもほどがある……
 私の躰は……
 私のこの躰は……
 ブズロム様のものなのに……

 早く戻らなくては。
 きっとブズロム様はお怒りのはず。
 勝手に抜け出してダガーナイツに連絡を取ろうとしていたなんてどうかしている。
 奴らは偉大なる皇帝陛下に歯向かうおろかな人間たちではないか。
 我らアンゴクーの憎むべき敵だというのに……

 私は自分の愚かしさを叩きつけるように、転がっているスマホを踏みつぶす。
 そして一刻も早く地底城に戻ろうと踵を返したとき、部屋の隅にカメラがあることに気が付いた。
 そうか……
 先ほどの行為を覗き見していたやつがいるというわけね……
 ちょうどいいわ……
 こいつらだけでは少し物足りなかったところなの……
 たっぷりと楽しませてもらおうかしら……
 私はわくわくする思いを胸に、ゆっくりと部屋を出た。

                   ******

 「それでどうしたのだ?」
 玉座のような肘掛椅子に座り、私を見下ろしているブズロム様。
 元は以前の私が座っていた椅子というが、今の私にはそんなことはどうでもいいこと。
 むしろ、ブズロム様にこそふさわしい。

 「はい。店のあらかたを破壊し、客と店員はすべて皆殺しにいたしました」
 私はその前にひざまずいて一部始終を報告する。
 おそらくあの男どもとの映像は瓦礫と炎の中で消えただろう。
 まったく愚かな行為をしてしまったもの。
 この身を汚されてしまったことはなんの申し開きもできないが、ブズロム様は寛大にも赦してくださったのだ。
 なんという心の広いお方なのだろうか。
 私は感謝で胸がいっぱいになった。

 「ククク……それで奴らが来たのだったな?」
 「はい。誰か小賢しき奴が通報したと見え、まずは警察が、そしてダガーナイツらが現れました」
 憎むべき連中。
 五色のうち四色が現れたのだ。
 「奴らは何か言っていたか?」
 「はい。しきりに『レッドはどうした』だの『レッドはどこにいる』だのとわめいておりました」
 「クックック……で、お前はなんと答えたのだ?」
 「はい。ダガーレッドなどはもういない。消滅したと……」
 私は過去の自分を思って唇を噛む。
 私が……ダガーレッドだったなど……

 「ほう……お前がダガーレッドではなかったのか?」
 私は顔を上げて首を振る。
 「違います、ブズロム様! 私はラビドナ。偉大なる皇帝陛下のしもべであり暗黒帝国アンゴクーの女戦士。そして……ブズロム様にお仕えするメスでございます」
 「ククク……本当にそう思っているのか?」
 手を伸ばして私の顎を掴むブズロム様。
 がっしりとした手が痛いほどに顎を固定し、私の目をブズロム様の目に合わせてくる。
 「はい。もちろんです。私はラビドナ。もうダガーレッドなどではありません。信じてください」
 ああ……
 私がダガーレッドだったなんて自分でも思いたくない。
 記憶は薄れたとはいえ、まだいくらかは残っているのだ。
 あんな過去は焼き尽くしてしまいたいくらいだわ……

 「ククク……ならば我が手駒としてダガーナイツと戦えるな?」
 ブズロム様の手が私の顎を離す。
 「もちろんです。ブズロム様のために憎きダガーナイツどもを私の手で滅ぼしてみせます!」
 力強くうなずく私。
 ダガーナイツどもはきっと私の手で……

 「そうだ。それでいい。だが、その前に……わかるな?」
 ニタッと笑うブズロム様。
 私はブズロム様の言わんとすることをすぐに理解する。
 まずはメスとしての働きを見せなくては……
 「はい、ブズロム様」
 ああ……ん……
 ブズロム様にご奉仕すると考えただけであそこが濡れてしまう……
 私はブズロム様の方へさらに近づくと、そのズボンから素敵な肉棒を取り出していく。
 ああ……
 なんて太くて大きいの……
 あんな下等な人間どものチンポなんて比べるべくもない。
 このおチンポにご奉仕できるなんて、私は何と幸せ者なのだろう……
 私はその喜びをかみしめるように、ブズロム様の肉棒を口いっぱいに頬張った。

END


いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントをいただけますと嬉しいです。

それではまた次作でお会いいたしましょう。
今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2021/09/20(月) 20:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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ラビドナの復活 (前)

連休ですし、ちょうど仕上がりましたので、今日明日でSSを一本投下いたします。

タイトルは「ラビドナの復活」です。
悪の女幹部を倒したはずが……

お楽しみいただければと思います。
それではどうぞ。


ラビドナの復活

 「ラビスラッシュ!」
 声とともに鋭い刃が俺の眼前をよぎる。
 「ダガースパーク!」
 間一髪でかわした俺は、かざした短剣に電撃を込め、その一撃を相手に放つ。
 「あうっ!」
 衝撃を受けたラビドナの顔が苦悶に歪む。
 いけるか?
 俺は追い打ちをかけるべくもう一撃を振り下ろす。

 相手は暗黒帝国アンゴクーの女幹部ラビドナだ。
 見た目には俗にいうバニーガールのような格好をした美しい姿で人間を惑わせ、両手のアームカバーに付いた鋭い刃で相手を斬り裂いていく。
 残忍な性格を持ち、人間を殺すことを喜びとさえ感じる女で、俺たちダガーナイツも何度となく苦しめられた相手だ。
 だが、今回相手の罠にわざと乗ったとはいえ、こうして一対一で戦えるというのは逆にチャンスでもある。
 魔獣人の相手はみんなが対処してくれるはず。
 ここはなんとしても俺がラビドナを倒さねば。

 「クッ」
 ラビドナの脚がふらつく。
 今だ!
 「ダガーストライク!」
 「舐めるなぁっ!」
 俺のダガーと奴の刃が交差する。
 うぐっ……
 腹部に痛みが走り血しぶきが飛び散る。
 目の前では驚愕の表情をしたラビドナがゆっくりと倒れていく。
 そして俺も……その場にがっくりと崩れ落ちた……

 「ハア……ハア……」
 大の字になって地面に横たわる俺。
 腹が焼けるように熱い……
 どうやら奴の刃にざっくりと斬り裂かれてしまったようだ……
 だが俺のダガーストライクも、奴の眉間に命中していたから……相討ちってところか……
 倒れたままの奴はピクリとも動かない。
 しかし、それは俺も似たようなもの。
 くそっ……
 ざまぁないな……
 血がどくどくと流れていく……
 だが……これでアンゴクーはラビドナという指揮官を失うことになる……
 俺が……いなくても……
 みんな……あとは……
 頼ん……だ……ぞ……

                   ******

 「はっ?」
 俺は目を覚ます。
 どこだ、ここは?
 俺はいったい?
 助かったのか?

 ひんやりとした薄暗い部屋。
 天井全体がぼうっと光っている。
 俺が寝ているのはふかふかのベッド。
 躰には薄い毛布が掛けてある。
 いったいここはどこなんだ?
 病院ではないようだが……

 「ふん……目が覚めたようだな」
 野太い声が脇から聞こえる。
 誰だ?
 聞いたことない声だが……
 俺はゆっくりと顔を動かしてそっちを見る。
 そこには角の付いたヘルメットをかぶり、がっしりとした大柄の躰を銀色に輝く鎧で包んだ男がいた。
 まったく見覚えのない男で、浅黒い肌のいかめしい顔を俺に向けている。
 誰なんだ、こいつは……
 俺がそう思っていると、男は座っていた椅子から立ち上がり、俺の方へと近寄ってきた。
 「どうやら手術は成功したようだな。ククククク……」
 俺の顔を見下ろして男が笑う。

 「手術? お前はいったい?」
 えっ?
 俺は驚いた。
 今のは何だ?
 今のは、俺の声なのか?
 ちょっと甲高い女みたいな声じゃないか……
 「クックック……俺様の名はブズロム。お前の代わりに新たに皇帝陛下よりこの地の制圧を命じられた者だ」
 男がにやにやと笑いながら名を名乗る。

 「ブズロム? 俺の……代わりに? この地を制圧?」
 何を言っているんだ?
 俺の代わりに?
 皇帝からだって?
 まさか……
 「お前は……アンゴクーの?」
 「そうだ。我が前任者ラビドナよ。俺様はお前の後任だ」
 えっ?
 ラビドナ?
 あいつが生きて?
 なぜ俺にそれを?

 俺は慌てて跳ね起きる。
 かけてあった毛布が落ち、俺の躰があらわになる。
 「な? こ、これは?」
 俺は目を疑った。
 俺の胸には二つの大きなおわん型のものがあり、白い肌をした腹部は括れ、股間についているはずのものは無く、すらりとした脚が伸びていたのだ。
 「お、俺は? 俺はいったい?」
 目の前に持ってきたこのほっそりとした白い手が、俺の両手なのか?
 俺は夢でも見ているというのだろうか?

 「クックック……混乱するのも無理はない。お前の意識はまだダガーレッドのままだろうからな。だが、お前の躰はラビドナのものなのだ」
 「うあ……」
 男がいきなり俺の顎を掴んで上向かせる。
 「ラ、ラビドナのもの?」
 この躰がラビドナの?
 「そうだ。お前たちが戦い終わった後に俺様が駆けつけ、お前たちを収容したというわけだ」
 男は俺をまっすぐに見つめてくる。
 浅黒い肌をした顔は、まるでブルドッグのようないかつい顔つきだ。
 「ど、どうして?」
 どうして俺の躰がラビドナの躰に?
 「ふっ、ラビドナという女、中身はともかく姿は俺様の好みに合うなかなかに美しい女だ。そのまま死なせるには惜しい。だが、蘇生させようにも脳がダメになっていた。一方お前の方は脳はまだ生きていたが、躰の方はズタズタだ。だったらラビドナの蘇生にお前の脳を使わせてもらおうと思ったわけだ」
 「な! ふざけるな! 俺の躰を返せ!」
 ラビドナを蘇生するために俺の脳を使っただと?
 ふざけるな!
 俺はありったけの憎しみを込めてこの男をにらみつけてやる。
 「ふん、思ったとおりかわいい声ではないか。姿といい声といいまさに俺様好みの女だ。お前を俺様のメスに作り変えてやろう」
 「な? ん……んん……」
 男がいきなり俺にキスをする。
 ふわぁ?
 な、なんだこれ?
 俺は躰が震えてくる。
 まるで全身に電気が走ったみたいだ。
 一瞬で力が抜けてしまう。
 こ、これがキス?
 ど、どうして?

 「ククク……美味い唇だ」
 「ハア……ふ、ふざけるな! 俺を元通りにしろ!」
 こんなラビドナの躰なんて冗談じゃない!
 俺は男だ!
 女の躰なんて願い下げだ!
 「ふん、お前の躰などとっくに処分したわ。あきらめろ。お前はその躰でラビドナとして生きていくんだ。俺のかわいいメスとしてな」
 男がニタッと笑う。
 「ふざけるな! 俺は男だぞ! 誰がお前のメスになんかなるものか! 元に戻せぇ!」
 俺は男を一発殴り飛ばそうとした。
 だが、俺の腕は男の手でがっちりと受け止められてしまう。
 「えっ?」
 ならばと足で蹴りを入れても、男の鎧が蹴りを受け付けない。
 「クククク……無駄なことはよせ。お前の力では俺には勝てん。それにな、実はお前の脳を移植するときにちょっとした仕掛けをしておいたのさ」
 「仕掛けだと……」
 俺は男をにらみつける。
 「そうだ。お前はこれからアンゴクーの一員として過ごす。だからアンゴクーのメンバーに対しては危害を加えられないようにな」
 「クッ……」
 それで力が思うように入らないのか……
 くそっ!
 俺がアンゴクーの一員だと?
 ふざけるな!

 「それともう一つ」
 「わっ!」
 男が俺をベッドに押し倒す。
 「お前の躰は非常に感じやすくしておいた。女としての快感を良く味わえるようにな」
 「な? や、やめろ!」
 男の手が俺の胸を揉んでくる。
 ふわぁぁぁぁ
 なんだこれなんだこれ?
 やめろぉ……
 胸を……胸を揉まれるのが……こんなに気持ちいいなんて……
 ああーん……
 はぁぁぁん……
 ダ、ダメだぁ……
 感じてしまうぅぅぅ……

 ずぶりと男の指があそこに入ってくる。
 俺の躰がビクンと撥ねる。
 や……やだ……
 そんなところに指を入れるな……
 やめろぉ……
 そこは……そこはぁ……
 俺の中に入ってくるなぁ……
 ぐりぐりとかき回されていく俺の中。
 男の指が俺の奥を刺激する。
 はあぁぁぁん……
 な、なんだこれぇ……
 こ、これが女の?
 いやぁぁぁん…… 
 ダメだぁ……
 感じるぅ……

 「クククク……どうだ? 気持ちいいだろう?」
 「そ、そんなこと……」
 俺は必死に否定する。
 で、でも……
 男の指が俺の中を刺激して……
 き、気持ちいい……
 気持ちいいよぉ……
 中をかき回されるのって、こんなに気持ちいいことなのか?
 嘘だろ……
 これが……感じるってことなのか?
 「ククククク……気を付けろよ。感じやすくしてやったが、あんまり感じてイッてしまうと、元には戻れなくなるぞ」
 戻れなくなる?
 「そ、それはどういう……」
 「クククク……お前が一回イくたびに、お前の脳には女であることの喜びとアンゴクーの一員としての自覚が刷り込まれるようにしておいたのさ。何度もイッてると、ダガーレッドとしての意識が上書きされてしまうぞ。クックック……」
 「な? ふざけるな!」
 俺は男を蹴り飛ばそうとするが、全然力が入ってくれない。
 それどころか、躰が気持ちよさに身を任せてしまっているみたいだ……
 ダ、ダメだ……
 き……気持ち良すぎる……

 「はあぁぁぁん」
 ずぶりと男の太いものが俺の中に入ってくる。
 嘘……
 こ、これって?
 まさか……
 いやだぁ……
 俺は男なのに……
 男なのに……
 ダ、ダメ……
 で、でも……
 き、気持ちいいよぉ……
 これが……これがセックスなのかよ……
 あれを入れられるってこんな感じなのかよ……
 い、今までの男の感覚と全然違うぅ……
 ああーん……
 ダメェ……

 荒々しいピストンが俺の躰を揺さぶってくる。
 男のものが俺の奥まで突いてくる。
 躰ががくがくと震えていく。
 やだぁ……
 気持ちいい……
 気持ちいいよぉ……
 頭がぼうっとなる……
 躰がどこかに飛んでいきそう・・・
 ダメ……
 ダメ……
 ダメェ……
 ああああああああ……

 「クククク……どうやらイッたようだな」
 あ……
 頭が真っ白になって……
 イッた?
 俺……イッたのか?
 今のが……イく?

 男の大きな手が俺の頭をなでる。
 「ここはお前の部屋だ。好きに使え。あと地底城内なら好きにうろついても構わん。クックック……また可愛がってやる」
 あ……
 男はそう言うと、さっさと出て行ってしまう。
 俺は……
 俺は何をどうしたら……
 俺は……

                   ******

 汗と愛液で汚れた躰をシャワーで洗い流す。
 指に触れてくる柔らかい躰の感触。
 下を向くと否応なしに目に入る二つの胸。
 肌の色だってとても白い。
 本当に俺の躰は女に……ラビドナの躰にされてしまったようだ。
 胸の重みもチンポの無い股間も現実のものだ。
 ちくしょう……
 俺の躰を返せ……
 俺の男の躰を……
 ちくしょう……

 それにしても……
 地底城の連中も人間と変わらない生活をしているのだろうか?
 少なくとも、このラビドナにあてがわれた部屋を見る限りはそんな感じがする。
 戸惑いながらもシャワーを終えた俺は、タオルで躰を拭き部屋に戻る。
 大きな鏡が俺の躰を映し出している。
 丸い二つのふくらみを持つ胸。
 きゅっとくびれた細い腰。
 処理してあるのか、毛が無くつるんとした割れ目だけの股間。
 ここにさっきあの男のものが……
 あの感触が脳裏に浮かぶ……
 俺は唇をかみしめる。
 俺は……女のセックスをしたのか……
 
 鏡の向こうから見つめてくるラビドナの顔。
 倒したと思った憎むべき相手の顔。
 でも……
 俺はゆっくりと鏡に近寄る。
 そもそも俺はラビドナの顔をこんなにはっきりと見たことがあっただろうか?
 俺の目の前に現れるラビドナは、常に魔獣人やドロッコーと呼ばれる戦闘員たちを引き連れ、俺たちを憎々しげににらみつけてくるのがいつものことだ。
 そのラビドナが……こんな美しい顔をしていたなんて……

 もちろん違和感はぬぐえない。
 これが自分の顔だなんて思えない。
 でも……
 いやではない……気がする……
 ほんとに美しいと思うし、もしラビドナが普通の人間だったとしたら好きになれそうな顔だと思う……
 これが……
 ラビドナの顔……

 俺は首を振り、とりあえず着るものを探すことにする。
 いくらなんでもずっと裸でいるわけにはいかないし、とにかく服を着たいのだ。
 でも、いったい何を着ればいいのか……
 まさか……女の服?
 せめてズボンでもあれば……
 俺は何かないかとベッドの横にあるクロゼットを開けて見る。
 中にあったのは一揃いの服だけ。
 これは……
 ラビドナがいつも着ていた服じゃないか……
 脚を覆う薄手の黒タイツに、胸から股間までをカバーする黒いバニーガールスタイルの服。
 お尻にはご丁寧に白く丸いシッポまで付いている。
 両腕には肘から先を覆うがっちりとした灰色のアームカバーが付き、手首部分の外側からは細めの鋭い刃が伸びている。
 両脚用にもブーツ状の灰色のレッグアーマーが付き、かかとはハイヒールのようになっていた。
 首用には蝶ネクタイのようなリボンの付いた襟だけのものがあり、頭に着けるウサギ耳の付いた両耳を覆う形のヘッドフォンまである。
 まさにカジノなどで見かけるようなバニーガールそのものと言っていい。
 違うとすれば、両手両足が灰色のアーマーになっているというぐらいだろう。
 これを着ろと言うのか?
 俺は思わず顔がほてってくる。
 ラビドナは、は……恥ずかしくはなかったのか?
 確かにあいつはこの格好で俺たちと戦ってはいたけど……

 さすがにこれは恥ずかしいということでほかに探してはみたものの、結局これしか着るものは無く、俺は仕方なくこの衣装を着ることにする。
 は、恥ずかしい……
 俺は顔から火が出るような恥ずかしさを感じながらも、裸でいるわけにもいかないので、とりあえずストッキングのような透け感がある黒タイツを手に取って穿いていく。
 これ、下着もなしに直接穿くんだ……
 うう……なんでこんな目に……
 でも……穿いていくと、脚にぴったりフィットしてなんだか気持ちいい……
 タイツなんて子供の頃に穿いたくらいのような気がするけど、こんな穿き心地のいいものだったんだ……
 それに、このタイツは伸縮性はあるけど、とっても丈夫でちょっとやそっとじゃ破れたりしないみたいだな。
 見た目に反して結構防御性も高いのかもしれない。
 なにせ、ラビドナはこの衣装で戦っていたんだし……

 黒タイツを穿き終わると、次にレオタードというか水着のような黒いバニーガールのコスを着る。
 お尻に白く丸いシッポの付いた奴で、まあ、この尻尾がウサギってことなんだよな……
 なんというか、パンツを穿くような感じで両脚を通し、腰まで引き上げてから、両胸を服のカップ部分に収めていく。
 うう……なんというか見てはいけないものを見ているような気が……
 女って毎日こんなおっぱいを見ているのか?
 それにしても、この服もまたこの躰にぴったりフィットして、腰回りから腹部、そして胸をしっかりと覆ってくれる。
 肩ひもとかが無いので、胸のところがずれそうな気もしたけど、カップが吸い付くように胸の丸みをしっかりと受け止めるような感じで包み込んでくれるので、全く問題はないようだ。
 ラビドナの胸って……大きいし柔らかくて気持ちいいんだな……
 あ……ん……
 触っているとなんだか感じちゃいそうだ……

 俺は次に肘から先をガードするアームカバーに腕を通す。
 この灰色のアームカバーは外側に膨らみがあって相当に硬く、俺たちダガーナイツの主装備であるダガーでも簡単に受け止めてしまう。
 それどころかそこから鋭い細身の刃が伸びるようになっており、その刃は俺たちのナイツスーツすらすっぱりと斬り裂いてしまうのだ。
 おかげで俺は……
 お腹にまだあの時の痛みを感じるようだ……
 俺は首を振って、飛び出た状態の刃を引っ込めていく。
 なるほど、普段は格納できて、戦うときに腕を一振りすれば飛び出してくる仕組みか。
 俺は腕を振ってみる。
 シャキンという音がして刃が飛び出してくる。
 へえ……
 なんだか俺たちの装備より便利そうだな……

 俺はもう一度刃をカバーに収めると、今度はブーツを手に取りベッドに腰かける。
 そして黒タイツを穿いた足をブーツに差し込んでいく。
 自分の足とは全く思えない細身の足が、太もものあたりまでブーツに覆われる。
 この灰色のブーツもアームカバーと同じ素材でできていて、かなり硬くできている。
 でも、履いてみるとすごくフィットして俺の足を包み込んでくれる。
 膝上部分まで覆ってくれるので、防御効果も高そうだ。
 立ち上がってみると、やはりハイヒールで履き慣れない感じはするけど、なんとなくしっくりする感じだ。
 ハイヒールなんて穿いたことないのに……もしかして、これはこの躰の記憶みたいなものなのだろうか?

 あと残ったのは首に着けるリボンのついた襟の形をしたチョーカーと、頭に着けるウサギの耳を模した形の付いたヘッドフォン。
 あれ?
 チョーカーなんて言葉、俺いつの間に?
 何かで……見たのかな?
 ともかくこいつを着ければ首のところもカバーされるし、ヘッドフォンはスピーカー部分が両耳をすっぽり覆う形で、頭の上にウサギの耳がピンと立つ感じのものだ。
 俺はしばらくそれを眺めていたが、今は着けるのをやめにする。
 なんといっても恥ずかしいし、ほかはともかくこの二つは別に無くても困らないだろう。
 ラビドナはよくこんなものを着けていたものだ……

 ウサミミヘッドフォンとチョーカー以外を身に着けた俺は、あらためて姿見の前に立ってみる。
 うわぁ……
 むちゃくちゃ恥ずかしいけど……まあ似合っていると言えないこともない……
 だが、鏡に映っているのは暗黒帝国アンゴクーの女幹部ラビドナだ。
 俺たちダガーナイツを何度も翻弄してくれた憎むべき敵……
 なのに……これが今の俺の姿……
 どうしてこんなことに……

 ともかく今はここを脱出することだ。
 あの男が言ったようにもう俺の躰が処分されているとすれば、ここにいたところで元に戻れる可能性は低い。
 であれば、ここを脱出してダガーナイツのところに戻った方がいいだろう。
 この躰でダガーナイツに戻ったとして、はたして受け入れてもらえるかはわからないが、とにかくあのブズロムとか言う新たなアンゴクーの幹部のことを知らせなくちゃ。
 俺は気を付けながらそっと歩き出す。
 ハイヒールの足元が不安定でふらつく。
 それに、胸の重みが予想以上だ。
 女性って、いつもこんな重いものをつけて動いているのか?
 信じられないな……
 紗月希(さつき)もこんな感じで戦っていたのだろうか……

 ブーツのヒールの高さに戸惑いながらも、俺はゆっくりと歩いて部屋の入口まで行き、ドアを開けて左右を覗き見る。
 静かな薄暗い通路が伸びていて、どっちに行けばなにがあるのやら見当もつかない。
 ラビドナならわかるのだろうけど、あいにく今のこの躰は俺が脳だ。
 この城の構造がどうなっているのかなんてわかるはずがない。
 とにかく出口を探して動き回ってみるしかないか……

 カツコツと廊下に響くヒールの音。
 少し歩いただけなのに、なんとなくこのブーツにも胸の重みにも慣れてきた気がする。
 やっぱり躰としての記憶みたいなものだろうか?
 歩くことにも不安は感じなくなったし、なんとなくこのヒールの音が心地いい。

 左右にいくつかのドアはあるが、ここはおそらく居住区のようなものだろう。
 だとすれば、魔獣人やドロッコーたちがいるかもしれない。
 下手な動きをして、あのブズロムという男に知らせられても面倒だ。
 どこかこのあたりのドアとは違うドアを見つけた方がいいだろう。
 早く出口を見つけなくては……

 ザッザッという足音が廊下の向こうから近づいてくる。
 しまった!
 ここは身を隠すものが何もない。
 かと言ってここから逃げ出すにも、後ろ姿を見られてしまうだろう。
 こうなったら……
 他に知らせられる前に倒すしかない……
 俺は腕を一振りして、アームカバーから刃を引き出す。
 シャキンと音がして、一瞬で鋭い刃が伸びてくる。
 なるほど、これは使いやすい感じだ。
 この刃なら、一撃で相手を殺すことができるはず。
 俺は腕を胸のところで構えつつ廊下の壁を背にして、近づいてくる相手を待った。

 「ドローロー!」
 「ドローロー!」
 廊下をやってきたのはドロッコーと呼ばれる戦闘員二体だった。
 躰のラインの浮き出る全身タイツのような茶色のスーツを身にまとい、顔には目が一つだけという下級の魔人だが、集団での戦闘力はなかなか侮りがたく、警察や軍隊などでは歯が立たない。
 もっとも、俺たちダガーナイツにかかれば、こいつらが数体程度なら一人で何とでもなる相手だ。
 今の俺でもこいつら程度なら……
 だが俺が待ち構えていると、奴らは俺の姿を見るなり、気を付けをして右手を上げて敬礼する。
 そ……うか……
 俺はハッとする。
 一瞬驚いたけど、俺は今ラビドナの姿なんだ……
 こいつらにとって俺は指揮官であり、従うべき存在なのか……

 「ご、ご苦労。見回りか?」
 俺はアームカバーに刃を収め、ドロッコーたちに言葉をかける。
 敵対されないなら、むやみに戦うこともないだろう。
 この少し高い女声にも慣れてきた気がするな。
 「「ドローロー!」」
 敬礼をしたままコクコクとうなずく二体。
 「そ、そうか。引き続き頼むぞ」
 「「ドローロー!」」
 俺に声をかけてもらったことでなんとなく嬉しそうな二体のドロッコー。
 いや……
 なんというか、こんな感じで命令に素直に従われるのは、こっちもなんだかうれしくなる。
 俺は不動の姿勢を取る二体の脇を抜けて先へ進む。
 振り向くと、二体も何事もなかったかのように廊下を歩いていくところだ。
 そうか……
 下手にこそこそするより、こうしてこの姿を生かした方がいいのか……

 「ドローロー!」
 「ドローロー!」
 それから俺は特に身を隠そうとすることもなく、堂々とこの地底城内を調査する。
 どの部屋に行ってもドロッコーたちが背筋を伸ばして敬礼してくれるので気持ちがいい。
 実に規律が行き届いているみたいだ。
 もしかしたらダガーナイツなんかよりもずっと上下関係が厳しいのかもしれない。
 それだけ皇帝陛下は恐るべき相手ということなのだろうか……

 それにしても、地底城は広い。
 いったいこんな広い空間のものがどこに存在しているのかとも思う。
 巨大な動力炉らしき部屋。
 原理はよくわからないが、地底城内の動力を賄っているらしい。
 なぜか広間のような何もない空間も。
 とはいえ、放置されている部屋ではなさそうだ。
 訓練室なんかもあり、作られたばかりのドロッコーたちが訓練を受けている。
 食堂……のようなものもあったが、ドロッコーたちが泥の中から虫のようなものを取り出して、顔にある一つ目の中に入れていくという不思議な光景だった。

 だが、外に出る出口のようなものはどこにあるのだろう?
 一刻も早くこの地底城のことを奴らに伝えなくてはならないのに……
 まったく……
 こんな地底城のことをダガーナイツが知らないなんて……
 奴らの情報収集はどうなっているというのか……
 いや、これはアンゴクーの情報統制が完璧に行われているということなのかもしれない……

 ふう……
 歩き回っては見たものの、結局俺は元の居住区のあたりに戻ってきてしまう。
 出口のようなものは見つからなかった……
 いや、俺が見落としているだけなのかもしれないが……
 いったいどうやってここを脱出したらいいんだ……
 くそっ……

 「ほう……やはりその衣装はとても似合っているな」
 「お前は!」
 確かこのあたりだったと思いながら、さっき出てきた部屋の近くまで戻ってきた俺の前に、あの男が現れる。
 角の付いたヘルメットをかぶり、がっしりとした躰を鎧で覆った男だ。
 名はブズロム。
 そいつが廊下の向こうからやってきたのだ。
 俺は精いっぱいの憎しみを込めて奴をにらみつけてやろうとする。
 だが、それと同時に俺の心臓はドキドキと鼓動を速めていく。
 思わず男の股間に目が行き、そこに何があるのかを考えてしまう。
 あんなことを……
 あんなことをしてくるなんて……
 俺の脳裏にあの部屋でのことが思い出される。
 あんな……ことを……するなんて……

 「耳はどうした? その恰好ならやはり耳は必要だろう?」
 「そ、そんなのはどうでもいいだろ。こっちの勝手だ」
 俺はなんとか奴の股間から顔を上げてにらみつけようとするものの、なぜか奴の言葉につい目をそらしてしまう。
 この格好でいるところをじろじろと見られると、やはりとても恥ずかしくて顔がほてってきてしまう。
 どうして……
 どうしてそんな目で俺を見るんだ……

 「クックック……どうした? 何を怯えている? 怯える必要などない。お前は俺様のメスなのだからな、ラビドナ」
 ずかずかと近寄ってくるブズロム。
 「ふざけるな! 俺はラビドナなんかじゃない! 俺はダガーナイツの一員ダガーレッド! 赤村弘樹(あかむら ひろき)だ!」
 俺はそう言いながらも、奴から逃れるように思わず後ろへと下がってしまう。
 くそ……
 なんだか奴に見られているだけで力が入らない感じだ。
 なんなんだよ……

 「はっ?」
 奴は後ろに下がった俺に手を伸ばし、いきなり顎を掴んでくる。
 「は、離せ!」
 俺は振りほどこうとはしたものの、強い力で顔を上げられ、真正面から奴の顔を見てしまう。
 ブルドックのような浅黒くいかつい顔がニタニタと笑っている。
 「いいや……お前はラビドナだ。だが、以前のラビドナではない。俺様にひれ伏し、俺様のチンポを欲しがる俺様好みのいやらしいメスになるラビドナだ。クックック……」
 ぐっと顔を使づけてくるブズロム。
 「違う! 俺はおと……むぐっ!」
 いきなりブズロムの口が俺の口をふさいでくる。
 その瞬間俺の躰には電気が走る。
 ふわぁ……
 や、やめ……・
 俺の腰が奴の手で抱き寄せられ、彼の舌が俺の口に割り込んでくる。
 や……だ……
 だ……め……
 力が急激に抜けていく。
 なんで?
 なんでこんな……
 躰が溶けそうな……
 甘い……キス……

 「ぷあ……」
 唇が離れ、彼の唾液がつと糸を引く。
 あ……
 「ククク……またやりたくなったぞラビドナ。たっぷり可愛がってやろう」
 そう言われ、俺の躰は軽々と抱きかかえられてしまう。
 「やめ……ろ……」
 なんだか頭がぼうっとする。
 胸がドキドキして苦しくなる。
 躰がふわふわして力が入らない。
 なんだ……これ……
 俺……どうなって……

 ドアが開けられ、俺は部屋の中へと連れ込まれる。
 ここは……さっき出てきた俺の部屋だ……
 ふわっと躰が浮き、出てきたときのままのベッドが、彼の手から俺の躰を受け止める。
 ゴトンと音がして、なにがなんだかわからないうちに俺の脚からレッグアーマーが外される。
 「うあ……やめ……」
 俺はなんとか抵抗しようとするが、彼は無理やり俺の躰にかぶさってきてしまう。
 「ふあぁぁぁん」
 思わず声が出てしまう。
 服の上から彼の手が俺の胸を揉んできたのだ。
 ダメェ……
 胸は……胸は感じちゃうぅ……
 ああぁぁん……
 胸……揉まれてるぅ……
 気持ちいいよぉ……

 荒々しく引き下ろされる俺の服。
 あっという間に腰の下まで下げられてしまい、上半身が裸になってしまう。
 「ククク……そそる姿だ」
 彼の言葉に俺はゾクゾクッと感じてしまう……
 彼は……
 彼は俺の躰に興奮してくれているんだ……
 俺の躰に……
 ああ……
 どうして?
 どうしてうれしいの?

 「はぁぁぁん……はぁん」
 むき出しになった俺の胸がしゃぶられる。
 彼の舌が俺の乳首を刺激する。
 熱いよぉ……
 すごく熱いよぉ……
 あぁぁん……

 腰を持ち上げられ、服もタイツも無理やり下げられる。
 俺の躰は膝から上があらわになり、膝下にタイツとバニー服が引っかかっただけになる。
 むき出しになった股間を探り当てるようにごつい手が俺の下腹部を動き、彼の指が俺の中に入ってくる。
 「ひゃぁぁん」
 「いい声だ」
 彼の言葉に躰がカアッと熱くなる。
 なんでぇ?
 なんで声が出ちゃうのぉ?
 ダメなのに……
 こんなの絶対……ダメなのに……
 はぁぁん……
 気持ち良すぎるよぉ……

 俺の奥までかき混ぜてくる彼の指。
 よくわからないうちにどんどん気持ち良くされていってしまう。
 躰がただただ熱くなり、何も考えられなくなっていく。
 ああぁぁん……
 はあぁぁん……
 勝手に腰が動いていく。
 もっともっと奥までいじって欲しいと願ってしまう。
 俺の躰……どうなってるの?

 「あ……え?」
 急に指が抜かれてしまう。
 え?
 どうして?
 どうして抜いちゃうの?
 はぁぁん……
 いやぁ……
 ぬ、抜かないでぇ……
 もっと……
 もっと指でいじってぇ……

 気が付くと俺は足から服を蹴り捨て、彼の腰にからめるようにして回していく。
 ふあぁぁん……
 お願い……
 もっと……
 もっと欲しいのぉ……

 「ククククク……ずいぶんと欲しがるじゃないか。そんなにこれが欲しいのか?」
 彼が股間から太い肉棒を取り出している。
 あ……
 俺は思わず息をのむ。
 大きい……
 俺のなんかと……全然違う……
 その凶悪な太さに背筋がゾクゾクッとなる。
 ああ……
 あれを入れられたら……
 俺はどうなってしまうんだろう……

 「欲しいのかと訊いている」
 あ……
 ほ……欲しい……
 欲しいです……
 俺は無言でコクンとうなずく。
 「ならばお願いしろ。ブズロム様の太いチンポが欲しいですと」
 彼がニタッと笑みを浮かべる。
 あ……
 お、俺は……
 ダメだ……
 言っちゃダメだ……
 ダメなのに……
 俺は……
 「お、お願いです……ブ、ブズロム様の……太いチンポが……欲しいです」
 ああ……ブズロム様……欲しいです……

 「ひゃぁぁぁぁぁん」
 俺は思わず声を上げてしまう。
 彼の太いものが俺の中に入ってきたのだ。
 あああああああ……
 なんて……
 なんて太い……
 さっきも味わったはずなのに、まるで初めて味わう太さのように感じてしまう。
 はぁぁぁん……
 はぁぁぁん……
 気持ちいい……
 こんな太いものが入ってきたのに、私の躰は喜んでいる。
 もっと……
 もっと奥まで突いてほしい……
 もっと私をめちゃくちゃにしてぇ……

 「そうだ。それでいい。お前は俺様のメスなのだ」
 「はいぃ……はいぃ……」
 俺はうなずきながら、彼の首に両手を回し必死になってしがみつく。
 彼の強いピストンが私の中を突くたびに快感が全身を走っていく。
 信じられない……
 これがオスとメスのセックスだなんて……
 これが女の快感だなんて……
 最高……
 最高だよぉ……
 あああああ……

 「さあ、イけ。快楽を味わってイってしまえ。そうすればお前は上書きされる。新たな俺様好みのラビドナとなるがいい!」
 彼の言葉が聞こえてくる。
 上書き……されちゃう……
 ダメなのに……
 イっちゃダメなのに……
 止まらない……
 気持ちいいのが止まらない。
 躰がイきたいと望んでいる。
 ああああああ……
 頭がまたスパークする。
 もう何も考えられなくなっていく。
 はあああん……
 はあああああああん……
 ダメぇぇぇぇぇ……
 イくぅ……
 イッちゃうぅぅぅぅぅ・・・
 ひゃぁぁぁぁぁぁぁん……

(後)に続く
  1. 2021/09/19(日) 21:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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舞方雅人

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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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