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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

正義のヒロインは選択肢を選んで悪の女戦闘員に

10月10日に始まりました「(特撮系)戦闘員の日」週間も、今日が最終日。
ということで、SSを一本投下いたします。
最後の最後にもう一本ということで。(´▽`)ノ

タイトルは、「正義のヒロインは選択肢を選んで悪の女戦闘員に」です。
今回もシチュのみ短編という感じですが、楽しんでいただければ幸いです。

それではどうぞ。


正義のヒロインは選択肢を選んで悪の女戦闘員に

「う・・・うーん・・・」
私はゆっくりと目を覚ます。
ここは・・・どこ?
私はいったい・・・
頭がズキズキする・・・
いったいどうしたというの?

私はゆっくりと躰を起こす。
「えっ?」
思わず声が出てしまう。
起きた拍子に見た自分の躰が信じられないことになっていたのだ。
なんなの、これは?

私の躰は全身がぴったりと覆われた黒いタイツのようなもので覆われていたのだ。
いわゆる全身タイツとでもいうのだろうか?
首から下はすべて覆われ、両手と両脚もそれぞれ黒いブーツと手袋に包まれていた。
腰にはベルトが巻かれ、そこには・・・ああ・・・なんてこと・・・
邪悪結社ダアルドの紋章が付いていたのだ。
「これは・・・ダアルドの?」
私は寝かされていたベッドから起き上がって躰を調べる。
どうやら傷つけられたりはしていないらしい。
どこも痛みはないし、無事なようだ。
だが、それにしても・・・
この格好はとても恥ずかしい・・・
なにせ躰にぴったりと貼り付くような感じなので、胸のふくらみはおろかおへそのくぼみもあらわになっているし、その・・・股間のあたりもくっきりと・・・

とはいえ、これはどうやって脱ぐのかもわからない。
背中にファスナーでもあるのかとも思ったけど、どうもそうでもないらしい。
ブーツや手袋、ベルトなんかは外せば外せそうだけど、これまでのダアルドとの戦いで倒した怪人や戦闘員たちはみな最後に自爆を遂げている。
ということは、このベルトを外した瞬間にドカーンということにもなりかねない。
いや、むしろ彼らはそれを狙って私にこれを着せたのかもしれないのだ。
私がこの衣装を嫌がってベルトを外したところでドカーン・・・
充分にあり得る話ではないだろうか・・・
うかつに外すわけにはいかないわ・・・
とにかくここがどこで、どうすれば出られるのかを調べなくては。
この服のことは・・・今は気にしないでいるしかなさそうね。

殺風景な部屋。
白い壁には窓一つない。
天井にも何もないが、天井自体が発光して明かりになっているようだわ。
部屋の中には私が寝かされていたベッドがあるだけ。
私の着ていたものや持ち歩いていたものもない。
そうだ・・・
思い出したわ。
確か私はショッピングに出てて、そこにダアルドの襲撃があって、スーツを装着しみんなを呼ぼうとしたところ、何人かの人質を取られて・・・
やむなくスーツの装着をあきらめたところを、ガスのようなものを嗅がされたんだっけ・・・
あの人質の人たちはどうなったのかしら・・・
無事だといいけど・・・

とにかくここからまずは脱出しなくては。
壁にはドアが一つ。
それ以外に出入りできるところはなさそう。
私はカツコツと足音を響かせてドアのところに行く。
ブーツのヒールが硬質な床をたたく音だ。
気を付けないと、この足音でダアルドの連中に気付かれてしまうかもしれない。

ドアはスライドタイプのよう。
取っ手も何も付いてない。
脇にスイッチがあるだけだわ。
このスイッチで開け閉めするのだろう。
赤いスイッチと青いスイッチ。
どちらかを押せば開き、どちらかを押せば閉じるということだろうか。
そしてスイッチのところには何か文字が書いてある。
開くとか閉じるとかの単純な言葉ではないようだが、なになに・・・
「今着ているスーツについて?」
今着ているスーツって、この黒い全身タイツみたいなもののこと?
どういうこと?

赤いスイッチのところには、“どうせ脱げないし脱いだら裸になるので脱がない”とあるわ。
そして青いスイッチの方には、“脱ごうと思えば脱げるけど着ていると気持ちいいので脱がない”と書かれている。
このどちらかを選べということ?
どっちにしても脱がないという結論に変わりはないようだけど・・・
まあ、さっきも考えたように、うかつに脱ぐのは危険だろうから、脱がないという結論には賛成だわ。
どっちを押せば開くのかしら?

私は赤いスイッチを押してみる。
どうせ今は脱げないし、裸になるので脱がないというのはその通りだもの。
だが、ドアは全く反応がない。
じゃあ、こっち?
私は青いスイッチを押す。
すると、ドアはシュッと音を立てて開いたのだ。
なるほど・・・
脱ごうと思えば脱げるけど、気持ちいいので脱がないってことね。
確かにこれだけ肌に密着していると、気持ちいいのは確かよね。
躰にフィットしてすごくなじむ感じだし。

ドアの外は左右に伸びる廊下になっている。
ここも天井がぼうっと光って明るいわ。
廊下そのものは白い壁面で作られていて、先ほどの部屋と同じ感じ。
さて、どっちへ行けばここから出られるのか・・・
そう思った私だったが、左右の廊下はどっちに行ってもすぐに行き止まりになっていた。
どういうこと?
出口はいったい?

ふと見ると、行き止まりになっている壁の脇にもスイッチがあり、文字が書かれている。
もしかして反対側にも?
念のため確認すると、反対側の壁にもスイッチがあり、こちらにも文字が書かれていた。
こちらの壁に書かれているのは、“私はダアルドの女戦闘員である”という言葉。
先ほどの壁には、“私はダアルドの女戦闘員ではない”という言葉だ。
これはもちろん私はダアルドの女戦闘員ではないというほうのスイッチを押したいのだけど、押してもたぶん開かないのではないだろうか。
試しに戻って押してみたものの、やはり壁はそのままだ。
仕方なく私は、私はダアルドの女戦闘員であると書かれたスイッチを押す。
すると、壁がグオングオンと音を立てて下に下がっていき、床に吸い込まれるようにして消え去ると、その先にも通路が続いているのが分かった。
なるほど・・・
この衣装はダアルドの女戦闘員の衣装ということなのね。
私はダアルドの女戦闘員。
そう思い込ませたいんでしょうけど、そうはいかないわ。
なんとしてもここを抜け出すんだから。

カツコツとヒールの音を響かせて廊下を歩いていく。
なんだか廊下に反響する音が気持ちいい。
さて、この先には何があるのかしらね。
ん?
廊下の途中にドアがあるわ。
中を確かめるべきかしら・・・

私はドアの前で立ち止まる。
このまままっすぐ廊下を歩いて行ってもいいのだけど、ドアの中が何なのかも気になるわ。
ドアにはさっきと同じく赤と青のスイッチ。
ここには文字は書かれていない。
確かさっきは青のスイッチで開いたのよね。
私が青のスイッチを押すと、ドアがスライドして開く。
どうやら中は部屋になっているらしい。
ここはいったい?

私は部屋に入ってみるが、そこには何もない。
空き部屋?
いや、そうではない。
奥の壁面がモニターになっているんだわ。
今は何も映されていないけど。
こんな大型モニターなら、映画なんか見たら迫力ありそうね。

突然背後でスライドドアが閉まる。
しまった!
罠だった?
私は慌ててドアのところに行くが、あるべきはずのスイッチがない。
うそでしょ?
どうやって開けるの、これ?

室内が急に暗くなり、モニターが明るくなる。
何?
何が始まるの?
どういうこと?

“ダアルドシアターへようこそ。これよりシューティングゲームをしていただきます。ゲームが終われば、背後のドアが開きます。拒否権はありません。ゲームをしなければずっとドアは閉じたままとなります”
モニターにに映し出される文字。
シューティングゲーム?
いったい何をやらせようというの?
ここから出るためにはやらなくちゃいけないというの?
くっ!
まさかゲームに何か仕掛けがあるのでは?

モニターの下側が左右に開き、そこから拳銃の載った台がせり出してくる。
拳銃とはいっても、黄色のプラスチックで作られたおもちゃの拳銃のようだ。
グリップの部分にワイヤーが付いていて、どうやら引き金を引くと信号が送られる仕組みになっているらしい。
いわばまさしくゲームセンターの拳銃ということか。
でも、これで何を撃てというの?

モニターの画面が変わり、新たな文字が映し出される。
“これより二種類の画像をモニターに映し出します。好きな方を撃ってください”
好きな方を?
どういうこと?

「えっ?」
私は息をのむ。
モニターに表示されたのは、布で口に猿轡をされ、躰を縛られた女性だったのだ。
それは紛れもなく人質になっていた女性の一人。
まさか、彼女を撃てと?
確かにこの銃はおもちゃで実弾が出るわけではないし、狙うのはあくまでもモニターの画像。
とはいえ、もしここで引き金を引いてしまえば、人質になっている彼女に何らかの危害が行くかもしれないのだ。
そんなことができるわけがない。

落ち着くのよ。
映し出される映像は二種類と言っていた。
もう一種類を確かめればいい。
私はそう思い、もう一種類の映像を待つ。
「そんな・・・」
画面が変わって映し出されたのは、私たちADAT(エーダット:アンチ・ダアルド・アタック・チーム)のマークだったのだ。
これを撃てと?
ADATの一員である私にこれを・・・

私がためらっているうちに、映像は再び縛られた女性に変わる。
やはり彼女を撃つわけにはいかないわ。
仕方ない・・・
次に画像が変わった時に・・・
マークを撃つだけだから大丈夫だと思うけど・・・
みんな・・・ごめん・・・

再度画面が変わり、ADATのマークが映し出される。
私は拳銃を構えて引き金を引く。
「ピンポーン」
画面がピンク色に輝き、風船が飛び交い、軽妙な音が鳴る。
まるで何かクイズ番組で正解を出したときのような感じだ。
あはは・・・
なんだか気持ちいい・・・

また人質の女性に切り替わる。
私は銃を構えてADATのマークに切り替わるのを待つ。
ほどなく画面が切り替わり、私はADATのマークであることを確認して撃つ。
「ピンポーン」
気持ちいい・・・
もう一発。
「ピンポーン」
もう一発!
「ピンポーン」
あはははは・・・
なんだかすっごく楽しいわぁ。

気が付くと背後の扉は開いていた。
どうやらクリアしたみたいね。
私はなんだかいい気分で部屋を出る。
さて、次は何かしら。
うふふふふ・・・

廊下を進んでいくと、またしても突き当り。
思った通り脇には赤と青のスイッチがある。
もちろん選択肢もしっかりある。
今回は何かしら?
どれどれ?

“お前にとってADATは憎むべき敵である”
“お前にとってADATは憎むべき敵ではない”
なるほどこう来ましたか。
ここは私にとってADATは憎むべき敵ではないなどを選択する理由はないわね。
選んだところでこの壁が開くわけもないでしょうから。
だとしたら、当然私にとってADATは憎むべき敵であるを選択するに決まっているわ。

私は赤いスイッチを押す。
先ほどと同様に壁がグオングオンと音を立てて床に沈んでいき、奥の通路とつながった。
うふふふふ・・・
ADATは憎むべき敵・・・
当然ね。
ADATは憎むべき敵よ。

廊下にヒールの音が響いていく。
肌に密着するスーツが心地いい。
このスーツは最高だわ。
ずっと着ていたくなる。

またしても行き止まりの通路。
もう・・・なんなのここは?
どうあっても私を閉じ込めておこうというつもりかしら。
そうはいかないんだから。

見ると右手にスライドドアがある。
もちろんここも赤と青のスイッチが。
そして選択肢も。
“お前は自らの意志ではADATと戦わない”
“お前は自らの意志でADATと戦う”
決まってるでしょ。
私は自らの意志でADATと戦うわ。
ADATは憎むべき敵ですもの。
そうよ。
ADATは倒さなくては・・・

私は青いスイッチを押す。
スライドドアが開き、私は部屋の中に入り込む。
「なっ!」
私は驚いた。
てっきり中には誰もいないと思っていたのに、立っている人影があったのだ。
しかも二人も。

私も思わず床に転がり、一回転して戦闘態勢を整える。
まさか人がいるとは思わなかったわ。
いったい誰が?
だが、相手は私に声をかけてくるでも、攻撃を仕掛けてくるでもなかった。
それどころか、私が入ってきたにもかかわらず、その場に突っ立ったままなのだ。
どういうこと?

「なーんだ」
私はゆっくりと立ち上がる。
何も反応がないはずだわ。
部屋の中で立っていたのはマネキン人形だったのだ。
それも二体とも。
不思議なことに、一体は私と同じような黒い全身タイツ姿でダアルドの紋章の付いたベルトを締めている。
もう一体は私たちの本部でよく見かけるADATオペレーターの制服姿だ。
これはどういうことなの?
ダアルドの女戦闘員とADATのオペレーター?

私が不思議に思って近づくと、足元の一角が開いて、そこから台がせりあがってくる。
よく見ると、その台には鋭い短剣が載っていて、そのそばに文字が書いてある。
“お前の敵はどちらかを見極め、この短剣を突き立てよ”
なるほど・・・
私の敵はどっちなのかということね?
そんなの決まっているじゃない。
うふふふふ・・・

私は短剣を握ると、ADATのオペレーターの制服を着たマネキンに振り下ろす。
何度も何度も何度も・・・
ADATは憎むべき敵。
ダアルドに歯向かう愚か者たち。
首領様の偉大さを解せぬやつら。
消えて当然な連中なのだ。

「ピンポーン」
正解のチャイムが鳴る。
ああ・・・うれしい。
そうよ・・・
私はダアルドの女戦闘員ですもの。
正解して当然だわ。

私は短剣でズタズタになったマネキンを蹴飛ばし、意気揚々と部屋を出る。
さあ、次はどんな選択肢が待っているのかしら?
うふふふふ・・・
楽しみだわ。

部屋を出ると、行き止まりだったところにまた通路が開いている。
正解だったから当然よね。
この先へ来いってことだわ。
うふふふふ・・・

私は誇らしげに胸を張り、通路を歩いていく。
本当にこのスーツは躰の動きを阻害しなくて最高だわ。
もうこれ以外のスーツなんて着る気もない。
これこそが私にふさわしいスーツだわ。

なんだかどんどんと奥へ奥へと向かっているような気がする。
もしかして、このアジトの中心に向かっているのかしら?
だとしたらなんだかうれしい。
もしかしたら首領様にお目通りがかなうのかも。
楽しみだわ。

突き当りにある重々しい両開きのドア。
おそらくここがアジトの中心ね。
ドアの中心にはやっぱり赤と青のスイッチがある。
もちろんこれはどちらかを選んで押せというもの。
そしてその選択肢は?

「お前はダアルドに心からの忠誠を誓うか? ・・・ね」
“はい。忠誠を誓います”
“いいえ。忠誠を誓いません”
そんなの決まっているじゃない。
「はい! 私はダアルドに忠誠を誓います!」
私はそう答え、赤いスイッチを押す。
両開きのドアがゆっくりと開き、私を中へと招き入れる。
私は喜びを感じながら室内へと入る。
この部屋に入れるのはダアルドに選ばれた者のみ。
私は選ばれたのよ。
なんて嬉しいのかしら・・・

広い室内。
奥にはモニターがあるだけ。
私はそのモニターの前に進み出てひざまずく。
するとモニターが点灯し、揺らめく影が映し出される。
『よく来た。心歪められし者よ』
偉大なる首領様の声。
心を歪められた?
どういうことだろう?
私の心は歪んでなど・・・
だが、首領様の言葉に異議をさしはさむなど許されない。
『お前はこれより、我がダアルドの女戦闘員。ダアルドのために働くのだ。よいな』
「ハッ! 私はダアルドの女戦闘員。首領様に心からの忠誠を誓います。どうぞ何なりとご命令を」
私は首領様の言葉に答え、右手を胸にあてて頭を下げる。
首領様のご命令なら何でも致します。

『早速お前に命令を下す。お前はこれよりADATの一員に成りすまし、奴らの基地に潜入せよ。そして、我が命に従い、奴らを内部から破滅させるのだ』
「かしこまりました、首領様。これより私はADATのメンバーに成りすまし、奴らの基地に潜入してご指示を待ちます。ダアルドの女戦闘員である私にお任せくださいませ」
『うむ。期待しておるぞ』
「ハハッ!」
首領様の命令を聞いて私は身震いするほどの喜びを感じる。
奴らの基地に潜入するなど、なんと素晴らしい任務だろう。
必ずやご期待に沿えなくては。
うふふふふ・・・
首領さまに歯向かう連中など皆殺しにしてあげるわ。

私は一礼して立ち上がると、首領様の元を後にする。
さあ、任務を完遂しなくては。
私はゾクゾクするほどの興奮を胸にADATの基地へと向かうのだった。

END

以上です。
いかがでしたでしょうか?
よろしければコメント等感想をお寄せいただけましたらうれしいです。

これにて戦闘員の日週間は終了です。
また来年をお楽しみに。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/10/17(木) 21:00:00|
  2. 洗脳・戦闘員化系SS
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彼女は女戦闘員(後)

台風19号は大変な状況のようなので、どうか皆様充分ご注意くださいませ。

こんな時になんなんですが、昨日の前編に続き、「彼女は女戦闘員」の後編を投下したいと思います。
台風で大変だとは思いますが、読むことができる方には読んでいただいて、少しでも楽しんでいただければと思います。
気分転換の糧にしていただけましたら幸いです。

それではどうぞ。



「あー、ねみーー」
俺は大きなあくびをしながら学校に行く。
ここ二日ほど夜更かしというか、ほとんど徹夜みたいなこともやっているしな。
眠くて当たり前ではあるんだが・・・
今日も午後の授業を捨ててどっかで寝ていようかなぁ・・・

「おはようございます、怪人様」
聴き慣れてきた鈴の音のような軽やかな声。
だが、少し沈んだ感じ?
玄関の靴箱のところで上靴に履き替えていた俺は、思わず声の方を向く。
「鴇沢さん? まさか俺を待ってたの?」
そこにはなぜか不安そうな表情でうつむき加減で俺を見上げている彼女の姿が。
待ってたのという俺の問いにコクコクとうなずいている。
なんと言うか、この小動物っぽいところもかわいいんだよなぁ。
彼女自身が小柄だから余計にそうなんだろうなぁ。

「何かあった?」
上靴に履き替えた俺は、彼女を片隅へと連れていく。
なんにしてもあんまり目立ちたくはないからな。
「あの・・・昨晩私が着替え終わる前に急に帰られてしまったので・・・何か怪人様のご気分を損ねるようなことをしてしまったのかと・・・」
鴇沢さんがうつむきながらそう言ってくる。
あー・・・
俺が昨夜さっさと帰っちゃったからか。
もしかして彼女はそれが自分のせいだと思っている?
いや、まあ、確かに彼女のせいとは言えないこともないけどさぁ・・・
帰ってから急いで布団に入って二回もしちゃったからなぁ・・・
うう・・・
まさかクラスメートの女子をオカズにあれをしちゃうことになるなんて思いもしなかったけど・・・

「怪人様?」
俺が返事をしないからか、不安そうな目で俺を見ている彼女。
「あ、いや、違う違う。単に俺が早く帰って寝ようと思っただけなんだ。鴇沢さんが悪いなんてことは一つもないから安心して」
俺は両手を振ってそんなことはないと身振りで示す。
彼女はホッとしたような表情を浮かべ、ちょっとだけ左右を確認した。
「鴇沢・・・ですか?」
「あ・・・」
俺も思わず左右を確認し、玄関にいる連中がこっちを見ていないことを確かめる。
「お前のせいじゃないから安心しろ、64号」
「よかった。ありがとうございます、怪人様」
彼女の表情がぱあっと明るくなり、ぺこりと頭を下げてくる。
何がありがとうなのかはよくわからんが、とりあえず誤解は解けたようだ。
「それじゃ私は教室に行きます。あ、カバンをお持ちしましょうか?」
「あ、いや、いいよ。俺もすぐ行くから」
「はい。それでは失礼して先に教室に行ってます、怪人様」
やはりテテテテという感じで走り去る64号。
さっきまでとは打って変わって弾むような感じだ。
ホントかわいいなぁ。
たまらんなぁ。

「怪人様」
上靴に履き替えたあとそのままにしちゃっていた外靴を靴箱に入れようとしていた俺は、背後から声をかけられ心臓が飛び上がるほどびっくりする。
彼女とは違う女性の声が俺をそう呼んだのだ。
「はいぃぃ?」
振り返ると、そこにはなんだか冷たい目で腕組みをしながら俺を見つめてくる関畑(せきはた)先生が立っていた。
音楽担当の先生で、美人と評判の先生だけど、まさか今の彼女との会話を聞かれていたのかな?

「怪人様ねぇ」
ボソッとつぶやくように言う関畑先生。
「な、なんですかそれ?」
「今の子、あなたのことをそう呼んでいたようだったから、なんなのかなーと」
まるで射抜くような目で関畑先生が俺を見る。
美人って、こういう目をすると結構怖いものだな・・・
「き、聞き間違いでは? そんなこと言ってましたっけ?」
俺はなんとかとぼけてみる。
「ふふ・・・どうだったかしらね。ほら、さっさと行かないと一時間目が始まるわよ」
ぺろりと舌で唇を舐め、俺の前から去っていく関畑先生。
なんなんだいったい?
遅刻の取り締まりでもやっていたのかな?
それにしてもなんだか迫力があったなぁ。
美人は怒らせるものじゃないな。

                   ******

さてと、午前の授業も終わってお昼だお昼だ。
それにしても午前中は眠かったなー。
というか寝てたなー。
おかげで何回か注意されたけど、眠いものは仕方ないよな。
うん。

ということで俺は購買に昼飯を買いに行く。
母さんが今日は寝過ごしたからって弁当を作ってくれなかったのだ。
千円札一枚よこして、これで昼は済ませなさいってか。
やれやれだ。
こんな時マンガだと彼女がお弁当を作って・・・
鴇沢さん・・・いや、女戦闘員64号がお弁当を作ってくれて・・・怪人様どうぞ、あーん・・・なんて・・・
そういう展開があったりするといいのになぁ。
はあ・・・
まあ、さすがにそこまでは無理か。

「怪人様」
「はわぁっ!」
購買でお昼を買って戻ってきた俺は、またしても背中から声をかけられる。
「と、鴇沢さ・・・いや、64号。驚かせるなよ」
「す、すみません」
慌てて頭を下げる彼女。
いや、そこまでしなくてもいいよ。
「どうした? 何かあったか?」
「あ、いえ・・・その・・・怪人様さえよろしければ、お昼をご一緒させていただけないかと・・・」
「は? へ? 俺と?」
「はい・・・」
手に小さなお弁当箱を持って上目遣いで俺を見る彼女。
ダメですってば!
かわいすぎるだろ!

「も、もちろんいいけど」
というかぜひ!
「よかった。それじゃこちらへ」
途端に彼女は笑顔になり、俺を案内するように先に立つ。
どこへ行くのだろう?
まあ、さすがに教室で一緒にというのは気恥ずかしいから、二人きりになれるところならどこでもいいけど。
二人きり?
二人きりかぁ・・・
ひゃっほーい!

「どうぞ」
「あ、うん」
彼女に連れてこられたのは三階の音楽室だった。
もちろん昼休みなので今は誰もいない。
二人きりになるにはいい場所かもしれないが・・・
「いつもここで?」
「はい。ここならほとんど邪魔は入りませんので」
そう言って彼女は席に着く。
「ふーん・・・」
俺も彼女の隣に座らせてもらい、購買で買ってきたものを出していく。
「怪人様はお弁当とかではないのですか?」
「ああ、今日は母が寝坊したとかで作ってくれなかったんだ。いつもは弁当だったりするんだけど」
まあ、うちの母の場合、寝坊することがわりと多かったりもするがな。
「そうなのですか? あの、ご自身でお作りになったりとかは?」
彼女もお弁当を用意して食べ始める。
彩りもきれいで美味しそうなお弁当だなぁ。
「無理無理。さすがに弁当は作らないよ」
俺は首を振る。
そりゃあ、たまに焼きそばとかチャーハンぐらいなら作ったりするけどさ。

「そうなのですか。さすが怪人様です」
なぜか目を輝かせて俺を見る彼女。
「へ? なんで?」
「擬態を完ぺきにこなすためとはいえ、下等な人間どもを親として扱い、自分の食べるものをそのような連中に任せるなど、尋常な覚悟ではありません。素晴らしいと思います」
「はいぃぃ?」
なんですかそれ?
「申し訳ありません。私にはまだそこまでの覚悟ができず、あの人間どもに私の口に入るものを作らせる気にはなりませんです。なので、朝は特別ドリンクを飲み、昼は自分でお弁当を用意し、夜はバイト先で食べると言ってアジトで食べていますです」
あ・・・
そういうことか・・・
悪の組織の女戦闘員として、敵である下等な人間が作る食事など何が入れられているかわからないと思っているんだ・・・
そういうことなのか・・・

「ですので、さすが怪人様は心構えが違うなぁと思わせられます。すごいです」
眼鏡の奥の彼女の目がキラキラしている。
いや、そんなすごくはまったくないと思うぞ。
そんなふうな目で見られてもこっちが困惑してしまう。
「いやいや、そんなことはないぞ。むしろお弁当を自分で作る方がすごい」
お弁当を作るなど、朝は結構大変だろうに・・・
「そうでもないです。材料はあの連中に用意させてますし。あの連中に財力を使わせるのもトテンコプの一員として当然のことですから。うふふふ・・・」
冷たい笑みを浮かべる彼女。
ああ・・・なるほど・・・女戦闘員というのはそういうふうに考えるものなのか・・・
普段は見せないような彼女の表情。
俺はそこになんだかゾクゾクするものを感じてしまう。
これが悪の魅力というものなのだろうか・・・
でも・・・
このままでいいのかなぁ・・・

「どうかしましたか、怪人様?」
俺が何となく彼女を見つめていたのに気が付いたらしい。
「あ、いや・・・そういえば任務って結構ヤバいのか? 誰かを殺すとか、どこか破壊するとか・・・」
もしかして・・・彼女もそんなことをしているのだろうか・・・
そういえば最初の時は彼女は俺を殺そうとしていたんだったっけ・・・
「いいえ、私はまだ新入りですから、それほど大変では。クモ女様の退路確保のために警備員の始末をしておくとか、追ってこられないように車に細工を仕込んでおくとかそのくらいですから」
いやいや、それは充分ヤバいって・・・
でも、そんなことを当たり前のようにやっちゃうのか・・・
やっぱり悪の組織の女戦闘員というのは、そうじゃなきゃ務まらないんだろうなぁ・・・
どうしたものかなぁ・・・

そうだ・・・
彼女を少しずつ普通の生活に戻していけばどうだろう。
擬態を完璧にするために日常を増やせ、みたいな感じで。
そうしてできるだけ任務から遠ざけてみて。
そうしていつかは・・・

「あの・・・あのさ」
「はい、なんでしょうか?」
「週末は任務入ったりしてる?」
「週末ですか? 今のところは入っていないと思います。クモ女様からも何も言われておりませんし」
少し首をかしげて考え込みながら、そう返事する彼女。
「だったら、どこか遊びに行くか、映画でも見に行かない?」
うあー!
誘ってしまっているよ・・・
胸がドキドキするー・・・
「遊びに・・・ですか? 怪人様と・・・ですか? 私で・・・よろしいのですか?」
なんだか目を丸くしている彼女。
よろしいんです。
君だからいいんです。
俺はコクコクとうなずく。
「はい、喜んで! うれしいです。でも、本当に私のような新人の女戦闘員でもよろしいのですか? 遊びにとおっしゃってますけど、何か極秘任務とかだったりするのではないのですか? だとすれば、私では怪人様の足手まといになるのではないかと・・・」
今度は俺がブンブンと首を振る。
「いやいやいやいや、足手まといなんかじゃないから。えーと、ほら、新人だからこそ、人間たちの中に紛れ込む擬態をもっと完璧にこなす練習をしなきゃならないだろ? 俺と一緒にその練習をしないか?」
あー・・・
くそっ!
結局怪人である俺からの命令ってことにしてるじゃん。
でも、これで彼女が誘いに乗ってくれるなら・・・
それでもいいか・・・

「あっ、確かに怪人様のおっしゃる通りです。私、家でも学校でも人間たちを見るとなんだかイライラしちゃって・・・早く世界が首領様の治める世界になってほしいとばかり・・・でも、それじゃ私が女戦闘員だということがバレてしまう可能性があるということなんですよね」
うんうんと自分で納得してうなずいている彼女。
うん、まあ、それでいいよ。
「だからごく普通の高校生同士として遊びに行くことで、擬態もよりうまくできるようになるんじゃないかなぁ」
「はい、わかりました怪人様。週末はよろしくお願いいたします。ヒャイーッ!」
突然立ち上がって奇声を上げ、右手を胸に当てる彼女。
「わぁ、だからそれがまずいってば」
「あっ、し、失礼いたしました」
思わず真っ赤になってしまう彼女に、俺は苦笑いを浮かべるのだった。

                   ******

やっほーい!
デートだデートだデートだ!
初めてのデートだー!
なんだか無理やりぽくなってしまったかもしれないけど、それはそれだ。
どこに行こうか?
何をしようか?
こりゃ午後の授業なんて受けてられないよ。

俺は午後の授業をすべて放り出すと、先日のように用具室で昼寝する。
授業なんてくそくらえだ。
そういえば、ここで昼寝して寝過ごしたから彼女とこうして話せるようになったんだったなぁ。
もっと仲良くなれるといいなぁ。
そして・・・いつでもあの女戦闘員の格好で、あん・・・怪人様ぁ、そこはダメですぅとか言って・・・
むふふふ・・・
あ、やべ・・・
勃ってきちゃった・・・

                   ******

「よっ・・・と」
俺は周囲に誰もいないのを確認し、校門をよじ登る。
ここ数日ですっかり慣れた深夜の学校。
さて、今日は彼女はもう戻ってきているかな?

昼寝で睡眠を補充した俺は、放課後になると一目散に家に帰り、手当たり次第に雑誌やネットを調べて彼女が喜びそうなデートプランを立ててきた。
幸い先日封切られた話題の超大作映画があるので、まずはそれを見ることがメインのA案と、ちょっと足を延ばして遊園地に遊びに行くことをメインとするB案の両方を用意し、彼女に選んでもらおうと思うのだ。
プランの確認だけならもちろん明日学校で聞けばいいだけなのだけど、やはり彼女の女戦闘員姿も見たい。
だから、今夜も学校にやってきたというわけだ。
さて・・・

俺はいつものように玄関のドアを確かめ、開いているのを確認する。
どうやら彼女は戻ってきているみたいだな。
ということは、急がないと着替えられてしまうかも。
俺は急いで教室へと階段を駆け上がる。
彼女の女戦闘員姿が見られなくなっちゃう。

「えっ?」
俺は驚いて足を止める。
廊下に誰かいるのだ。
すらりとした細身の女性で、タイトスカートを穿いているよう。
一瞬彼女かとも思ったけど、当然にシルエットが違う。
こんな夜中にいったい誰が?

「うふふふ・・・やっぱり来たのね。怪人君」
人影が一歩踏み出したことで、窓から差し込む外の明かりがその姿を照らし出す。
「関畑先生・・・」
そこには音楽の関畑先生が立っていたのだ。
「うふふふ・・・首領様もお人が悪いわぁ。この地区を担当する私にも一言も言わずに、単独行動の怪人を派遣するなんて」
妖しい笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる関畑先生。
「えっ?」
首領様?
ま、まさか・・・
関畑先生も?

「うふふふふ・・・」
関畑先生は足を止めると、俺を見ながら、ゆっくりと着ている服の胸のボタンを外し始める。
えっ?
何を?
ボタンを外した上着を脱ぎ捨て、腰のホックを外してスカートも足元に落とす。
黒いパンストに包まれた脚がむき出しになる。
「な、ななな?」
俺が慌てるのをよそに、先生はブラウスのボタンも外しゆっくりと脱いでいく。
そして上靴を脱ぎ捨てると、脚に穿いていたパンストも脱ぎ捨てる。
黒いブラジャーとパンティだけになった先生の姿は息をのむほど美しかったが、先生はそのブラジャーとパンティまでも脱いでしまう。
そして片手の甲を軽く腰に当て、その裸体を見せつけるように軽くポーズをとっていた。

「ふふふ・・・そろそろ擬態はやめにしたら? 私も擬態を解除するわ」
「えっ?」
擬態・・・ですと?
先生の裸体がじょじょに変化し始める。
黒い毛が躰を覆い始め、頭にも変化が現れる。
脚や腕には赤いラインが現れ、指先には鋭い爪が伸びていく。
頭頂部には二本の角のようなものが生え、目は黒く丸い目に変わっていき、額にも小さな目が現れる。
お尻には大きなふくらみができ、脇からは細い足が二本ずつ生えてくる。
口元だけは人間のままだけど、それはまるでクモと女性が融合したかのような姿だった。

「嘘・・・でしょ?」
「あら、嘘じゃないわよ。関畑綾芽(あやめ)は仮の姿。本当の私はトテンコプの女怪人クモ女なの。64号が言っていたでしょ?」
そう言って自らの姿を見せつけるようにくるっと回って見せる先生。
彼女の言っていたクモ女様って・・・関畑先生のことだったのかよ・・・
「さ、私も正体を見せたのだから、君も正体を見せたらどう、怪人君? もっとも、無理だと思うけど。うふふふふ」
大きな黒い目が二つと額の小さな目が俺を冷たく見つめてくる。
人間のままの口元にはかすかな笑み。
まるで獲物を見つめるようだ。
俺が怪人なんかじゃないことは、はなからわかっているらしい。

「いや・・・俺はそう簡単に正体を現せるもんじゃないんでね。首領様の命令があれば別だが」
うう・・・
ここは何とか時間を稼いで、隙を見て逃げ出すしか・・・
「あら、言うわね。あっさりと降参するかと思ったのに」
ちょっと意外そうな先生の声。
いや、降参したって殺しますオーラみたいなものが先生から出ているんですけど。
「先生がクモ女だっていうのは、俺も聞かされてなかったぜ。首領様は俺にも内緒だったらしい」
「うふふふ・・・結構頑張って芝居するわね。でも・・・」
「ガッ!」
気が付くと、俺の首には白い荷造りひものような太さの糸が絡んでいた。
嘘だろ・・・
糸を飛ばすところなんて見えなかったぞ・・・

「ぐわぁっ」
先生はとんとジャンプすると、そのまま廊下の天井に貼り付いて俺の真上まで這ってくる。
そしてそのまま糸を引き上げて俺の首を吊り上げ始めたのだ。
こ、殺す気だ・・・
つまり、俺が何を言おうと殺すつもりなんだ。
「さあ、白状なさい。俺は怪人なんかじゃありません、ただの下等な人間ですって。正直に言えば苦しまずに一瞬で殺してあげるから」
天井から俺を見下ろしてニヤッと笑う先生。
く・・・くそっ・・・
なんとか・・・なんとか・・・

「ほら、いつまでも強情張ってないで、さっさと白状しなさい。そうじゃないとじわじわとなぶり殺しよ」
「い、今なら・・・ま、まだ見逃してやる・・・俺を殺せば・・・首領様・・・から・・・怒られる・・・ぞ」
ええい、ハッタリだけど通じてくれー。
「バカなことを。お前のことはすでに首領様に確認済みなの。その程度のことしていないとでも思ったの?」
ぐえーっ!
く・・・苦しい・・・
息が・・・
「ほら、苦しみたくなければさっさと俺は怪人じゃありませんって言いなさい!」
「俺は・・・」
俺は・・・
俺は・・・
俺は・・・
「俺は怪人だー!!」
ちくしょう!
俺は何を言っているんだよー。
くそーっ!

急に躰が自由になる。
首への圧迫がなくなり、俺は廊下に倒れ込む。
「はあ・・・はあ・・・」
ど、どうして?
俺は喉を押さえてとにかく息を吸う。
いったい?

「ふう・・・強情ねぇ。とっくにわかっているんだから素直にごめんなさいすればいいのに」
床に降り立った先生というかクモ女が腰に手を当てて俺を見下ろしている。
「げほっ・・・げほっ・・・だ、だって・・・」
「だって?」
「俺が怪人じゃないと・・・彼女が・・・64号が俺を殺さなきゃならなくなっちゃう・・・」
「は? 64号が?」
俺はうなずく。
そうだよ。
俺が怪人じゃなければ、彼女は俺を殺さなきゃならなくなる。
彼女にそんなことはさせられない!

「ぷっ・・・あははははは」
お腹を抱えて笑い出すクモ女。
笑うなよー。
俺だって変だって思うさ。
彼女が知る前にあんたが俺を殺すんだろうし。
でも・・・
でも・・・
俺は64号に俺自身から怪人じゃないと伝えるまでは、怪人だということにしたいんだ!

「バカねぇ。64号じゃなくて私が殺すんだけど」
ゆっくりと近寄ってくるクモ女。
「それでもだ。俺が怪人じゃないとなれば、64号は俺を殺さなかったことでミスを犯したことになっちゃう。そうなれば組織が彼女を許さないんじゃないのか?」
少なくともテレビの悪の組織はそうだった。
どっちにしても、俺が怪人じゃないと言えば64号が苦しむことになる。
そんなこと・・・させられるもんか!

「なるほどね。いいわ。そんなに怪人だと主張したいのなら、君、怪人になりなさい」
「は、はい?」
なんですか、それ?
俺を怪人に?
怪人になれと?
「怪人になりなさい。そして堂々と64号と怪人として付き合えばいいのよ。うん。それがいいわ」
「待って! 先生待って!」
「うふふふ・・・先生じゃないでしょ。クモ女よ。よろしくね、怪人君」
ニヤッと笑みを浮かべるクモ女。
あー・・・
これはもう・・・
俺に選択の余地はなさそうだ・・・

                   ******

「キシュシュシュシュシュ」
俺の溶解液で金庫の扉が溶けていく。
こんな鉄の扉など、俺の溶解液にかかればひとたまりもない。
俺はもろくなった扉を簡単に開け、中の機密書類を手に入れる。
これで任務は達成だ。
容易いものだぜ。
警備員がいると言ったところで、しょせんは人間だしな。
俺や女戦闘員にかなうはずもないのだ。

「64号」
「ヒャイーッ!」
俺は背後に付き従う女戦闘員を呼び、彼女の持っているカバンに書類を入れていく。
付いてきているのは彼女一人だけだが、こんな任務にはそれで充分だ。
「キシュシュシュ。よし、引き上げるぞ」
「ヒャイーッ! かしこまりました、ムカデ男様」
女戦闘員が右手を胸に当て、敬礼する。
そのまま俺は彼女を連れてその場を後にする。
キシュシュシュシュ・・・
俺の動きに遅れないように必死についてくる女戦闘員。
よしよし、しっかりと俺に付いてきているな。
かわいいやつ。

                   ******

「ひゃっ! あん・・・ムカデ男様ぁ・・・ダメぇ・・・ダメですぅ! ひゃあん」
任務を終えた俺は家に女戦闘員64号を連れ込むと、ベッドの上で彼女の躰を抱きしめてその感触を味わっていく。
64号はくすぐったいのかそれとも恥ずかしいのか、ダメダメ言っているが、それでも俺の抱擁に身を任せている
キシュシュシュシュ・・・
まったくかわいいやつだ。
女戦闘員の躰はたまらんぜ。
あー、柔らかいなぁ。
俺は爪で女戦闘員の躰に傷を付けてしまわないように気を付けながら、その躰を愛撫する。
もちろん両脇に生えている歩肢を使うことも忘れない。
何本もある俺の歩肢がワサワサと彼女の躰を撫でるのだ。
その柔らかい躰とすべすべの衣装。
女戦闘員のすばらしさがそこにある。
キシュシュシュシュ・・・

あの日、俺はクモ女に拉致されるようにしてトテンコプのアジトへと連れていかれ、そこで怪人化の処置を受けた。
俺のモチーフにはムカデが選ばれ、俺はトテンコプの怪人ムカデ男として生まれ変わったのだ。
茶褐色の硬い外皮が俺の躰を覆い、鋭い爪は鉄の板さえ貫く。
口からは溶解液を吐くこともできるが、クモ女と同じく口元だけは人間のままの見た目を保持している。
これは言葉をしゃべるうえで都合がいいかららしい。
怪人と言えどもコミュニケーションは言葉で行うということだ。
もっとも、おかげでこうして女戦闘員のマスク越しにキスをすることもできるのだがな。
それにしても便利な躰だ。
天井を這うことも狭い隙間に入ることも簡単にできる。
人間を始末するなど容易いこと。
俺の両親にも遠くへ“旅行”に行ってもらったことで、こうして好き勝手に女戦闘員を連れ込めるというわけさ。
まったく怪人というのは最高だぜ。

「ん・・・んん・・・ぷあ・・・ああ・・・ムカデ男様」
キスを終え、マスクの奥の目がうっとりと俺を見上げてくる。
ベッドの上で俺に躰をもてあそばれているというのに、かわいいやつだ。
怪人になった俺にとって、最初はあの戦闘員スーツさえ着ていれば女戦闘員など誰でもいいようにも思ったものだったが、やはり64号は特別だ。
本来クモ女配下だった彼女を俺は譲り受け、今では俺専用の女戦闘員となっている。
その証拠に彼女の胸のマークも赤いムカデに変わっている。
誰のものでもない俺専用の女戦闘員だ。
「キシュシュシュシュ・・・そうだな?」
「えっ?」
「お前は俺専用の女戦闘員だと言ったんだ」
「あ・・・はい。私はムカデ男様専用の女戦闘員です」
うるんだ目で俺を見る64号。
学校では今まで通り擬態を続けてはいるものの、夜はこうして俺の家で楽しむことが当たり前になっている。
着替えも俺の家でするようにさせているので、夜の学校にわざわざ行く必要はない。
そのうち64号に両親を始末させ、俺の家にずっといるようにさせるのもいいかもしれない。
そうなればもっとこの躰を楽しむこともできるというもの。
まあ、おかげでクモ女あたりに任務をおろそかにしないでねと釘を刺されたりするのだが、かまうものか。
俺の好き勝手にさせてもらうさ。

「あ・・・ダメです」
俺は爪で64号の戦闘員スーツの股間部分に切れ目を入れる。
スーツなどまた用意してやればいい。
俺は股間のモノを外皮の隙間から覗かせると、屹立したそれを彼女の内膣へと突き立てていく。
「ひゃ、ひゃん! あ・・・」
躰を震わせ、喜んで俺のモノを下の口で飲み込んでいく64号。
さて、楽しい夜はこれからだ。
たっぷりと楽しませてもらおうか。
俺は64号の上でゆっくりと腰を振り始めるのだった。

END


以上です。
いかがでしたでしょうか?
よろしければ、コメントなど感想をいただければ嬉しいです。

それではまた次作をお楽しみに。
ではではー。
  1. 2019/10/12(土) 21:00:00|
  2. 洗脳・戦闘員化系SS
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彼女は女戦闘員(前)

昨日、10月10日は千十(せんとお)で「(特撮系)戦闘員の日」ということで、女戦闘員のSSを一本投下させていただきましたが、一本だけじゃちょっと寂しくありませんか?
ということで、10月10日から17日までは「(特撮系)戦闘員の日週間」と範囲を広げちゃいまして、今日と明日でSSを一本前後編で投下したいと思います。

今日はその前編です。
タイトルは「彼女は女戦闘員」です。
はい、タイトルそのままです。
ややラブコメっぽい仕上がりになっていると思います。
いつもとはちょっと違った話になっているとは思いますが、お楽しみいただけましたらうれしいです。

それではどうぞ。


彼女は女戦闘員

「嘘・・・だろ?」
俺は愕然とする。
時計を見たら夜中の1時。
なんでこんな時間まで俺は眠りこけていたんだ?
しかも学校の中で?
えええええ?

えーと、昨日は明け方までゲームしてました。
ほぼ徹夜で学校来ました。
午前中何とか授業を受けました。
お昼食べたらもう眠くてどうしようもないので、用具室で昼寝しようと思いました。
気が付くとこんな時間でした。
ってか?
やべぇ。
どうせなら朝まで目が覚めないほうがよかったんじゃね?

今から帰れるのかな?
玄関開いているのかな?
はあ・・・
まあ、とりあえず教室行ってカバン取ってこなきゃ。

俺はとりあえず用具室から出て教室へ向かう。
夜の学校ってシーンとして気味悪いなぁ。
電気点けてもいいのかなぁ?
外からの月明かりや街灯の明かりが入ってくるから、廊下が暗くて歩けないってわけじゃないけど・・・
とにかくさっさとカバン持って玄関行ってみるか。
鍵がかかってたらどうするかだなぁ・・・

「ひっ!」
「えっ?」
教室の扉を開けた俺は、予想外のものを見てしまう。
女子が一人、それも奇妙な格好をした女子が教室にいたのだ。
首から下がほとんど裸みたいに見える黒い全身タイツのようなものを着た女子が。
な、なんだぁ?

「い、いいいいい・・・」
「は?」
「いいいいいやぁぁぁぁぁぁぁ!」
「わあっ」
突然大声をあげる女子に、俺は思わずびっくりする。
彼女の方も俺を見た眼鏡の奥の目が驚愕に見開かれていた。
「みみみみみみみみ」
「な、なんだ?」
「見ーらーれーたぁぁぁぁぁ!」
いや、そりゃ見ちゃったけどさ・・・
「あああああああ、まずいまずいまずい、私が女戦闘員であることを見られたぁぁぁぁ!」
「へ?」
女戦闘員?
女戦闘員って、あれですか?
特撮とかに出てくる下っ端ですか?
彼女が?

って、よく見たら、彼女は同じクラスの鴇沢(ときざわ)さんじゃないか?
なんで彼女がこんな時間に教室にいるんだ?
しかもそんな躰のライン丸出しみたいな全身タイツを着て。
「鴇沢さん?」
「ああああああああ、私の名前まで知ってるぅぅぅぅぅぅ! 始末? 始末するしか? 始末するしかないぃぃぃぃ?」
えええ?
始末って?
始末ってドラマとかで言う殺すって意味か?
俺を殺すっていうこと?
マジですか?

ひゅっと音がして、俺の脇をナイフのようなものがかすめる。
マジなのかよぉ!
「ま、待て! 待って!」
俺は慌てて両手を前で振る。
「始末・・・始末しなくちゃ・・・私がトテンコプの女戦闘員だと知ったものは始末しなくちゃ・・・」
眼鏡の奥の目を血走らせ、俺を睨みつけるように向けてくる鴇沢さん。
まずい。
このままじゃ本当に殺されかねない。
どうしたら・・・

「待てって女戦闘員!」
ぴくっとなって動きが止まる鴇沢さん。
ダメもとで言ってみたけど、いやマジで彼女は本当に女戦闘員だっていうのか?
なんかの特撮の撮影かなんかじゃないのか?
でも、何とかこの場を切り抜けなきゃ。

「女戦闘員! お前の番号は?」
確かテレビでは戦闘員って番号とかで呼ばれていたりするよな。
彼女にも番号があるのかどうかはわからんけど、とにかく俺は番号を訊いてみる。
「ヒャ、ヒャイーッ! 私は女戦闘員64号です!」
いきなり気を付けをして右手を胸に当て、番号を言う鴇沢さん。
番号あるのかよー。
ど、どうしよう・・・
ここは合わせたほうがいいかなぁ・・・
ええい、ままよ!
「よし、ご苦労。警戒を解け。俺は敵じゃない」
「敵じゃ・・・ない?」
キョトンとする鴇沢さん。
眼鏡の奥の目が困惑している。
そりゃそうだよなぁ。
うーん・・・

「ああ、俺は敵じゃない。実は俺も組織の一員だ」
うう・・・そんなこと言って大丈夫か?
でも、ただの人間ですと言っても逃がしてもらえそうもないしなぁ。
何とかごまかして・・・
「組織の? 友倉(ともくら)君もトテンコプのメンバーなの?」
あ、よかった・・・俺のことは友倉圭太(けいた)ってわかってくれていたか。
「あ、ああ」
こうなりゃ何とか仲間だと思ってもらうしかないな。
「よかったぁ・・・私もうどうしようかと思って・・・」
そのままぺたんと床にへたり込んでしまう鴇沢さん。
ありゃ、彼女の方もかなり緊張していたのか。
それにしても目のやり場に困る・・・
完全に躰のライン丸出しの黒い全身タイツにブーツと手袋、それに怪しげな紋章のベルトですか。
まさに特撮の女戦闘員そのまんまじゃないですか。
まさかそんなのが実際にいるなんて・・・

「そ、それで友倉君も戦闘員なの?」
う・・・
戦闘員だと俺も同じような全身タイツを持っていないとやばいかな?
どうしよう・・・
「い、いや・・・俺は・・・俺は・・・俺は怪人だ!」
うう・・・
なんかどんどんドツボにはまっていっているような気がするのは気のせいか?
「か、怪人?」
鴇沢さんの目が丸くなる。
「し、失礼いたしました! ヒャイーッ!」
いきなり立ち上がって右手を胸に当て奇声を上げる鴇沢さん。
「わ、私、新入りなもので怪人様とは全く存じ上げず・・・その・・・ご無礼をお赦しください!」
目を潤ませて思い切り頭を下げる鴇沢さん。
うひゃー。
これはこの組織は相当に上下関係が厳しい感じ?

「だ、大丈夫だから。問題ないから。赦すから」
「ヒャイーッ! ありがとうございます、怪人様」
ホッとしたように表情が緩む彼女。
う・・・なんというかかわいい。
考えてみれば、鴇沢さんはクラスでも目立つ子じゃなかったから、今まで気にしたことなかったなぁ。
こうしてみると結構かわいいよなぁ。

「あ、いけない! 私ったら」
鴇沢さんが慌てたように机の上のカバンから何かを取り出す。
俺が何だろうと思っていると、彼女は眼鏡をはずしてそれを頭からかぶり、目だけが覗くようなマスク姿になる。
「ヒャイーッ! 正装もせずに失礼いたしました。あらためまして私は女戦闘員64号です。よろしくお願いします」
なるほど・・・そのマスクをかぶった姿が正しい女戦闘員の格好というわけね。
なんだかすごくエロくてたまらないんですけど。
うう・・・勃ってしまいそうだ・・・

「あ、ああ、こちらこそよろしくな」
俺はできるだけ冷静になろうとそう答える。
「あの、怪人様?」
「ん?」
「怪人様も任務を終えて学校に着替えに?」
あー、なるほど。
彼女は任務を終えてここで着替えていたのかー。
その途中で俺が入ってきてしまったと・・・
「あ、いや、俺は・・・」
「あ、そうですよね。怪人様は着替えるというよりも擬態ですもんね」
うはぁ・・・ということは、人間に擬態した怪人がこの世にいるってことかよ。
ヤバいだろ、それ・・・
「ま、まあな」
擬態なんかできませんけどね。
「すごいです。私今まで全く友倉様が怪人様だったなんてわかりませんでした」
両手を胸の前で組み合わせて何やら感動しているみたいですけど、俺自身自分が怪人だなんてそんなこと今の今までわかりませんでしたよ。

「そ、そっちこそ教室で着替えたりしていたのか?」
「はい。うちで着替えたりしたら親にバレちゃうかもしれませんから。そうしたら始末しなくちゃならなくなりますし」
う・・・そうだよなぁ。
もう俺もいまさら嘘でしたなんて言えないよぉ。
「じゃあ、親はえっと、64号でいいんだっけ? が女戦闘員だとは知らないわけだな?」
「もちろんです。知られないようにしています。組織のことを知られるわけにはいきませんから」
「そ、そうか・・・」
な、なんだろう・・・
なんか彼女の秘密を知ってしまったようなそうじゃないような・・・
うう・・・
それにしてもその格好は目の毒だよ。
彼女すごくエロい躰しているのなぁ・・・

「もしかして怪人様も?」
「あ、ああ、親に知られるわけにはな」
「怪人様もそうなんですね。うふふ」
「どうした?」
「あ、すみません。その気になれば人間など一捻りであるはずの怪人様が、親に隠れてトテンコプの任務に就いていらっしゃるかと思うと、何か親近感が湧いて・・・」
マスク越しでもわかる笑顔。
なんだよ。
かわいすぎるじゃないか、彼女。
「そりゃ、一応高校生のふりをしているからな」
「ですよね。私もまじめな女子高生を演じるように頑張ります」
「あ、ああ」
彼女が普段目立たないのは演技なのかな?
「ところで怪人様、怪人様は何モチーフの怪人様なのですか?」
「モチーフ?」
やべ・・・モチーフってなんだ?
「私が直接お仕えする怪人様はクモ女様なんです。だからほら、胸にクモのマークが」
ああ、胸のところの赤いマークはそれか。
確かにクモの形が胸に・・・
うう・・・
おっぱいがもろにそのままの形でタイツに浮き出ているよ・・・

「ああ・・・そ、それは・・・」
どうしよう・・・
下手なモチーフを言ってしまうとやばいかも・・・
「それは?」
「それは・・・新入りの女戦闘員などにはまだ教えられん」
「あっ、し、失礼いたしました。クラスメートだからついなれなれしく・・・申し訳ありません」
ぺこりと頭を下げ、見た目にもわかるほどに肩を落とす彼女。
「いやいや、気にするな。俺もクラスメートに仲間がいてうれしい」
「ありがとうございます。何かお役に立てることがありましたら、何なりとご命令ください」
「あ・・・ああ・・・」
俺が気にするなと言っただけで、ぱあっと明るい表情になる彼女。
「ま、まあ、それはともかく、さっさと着替えて帰らないとやばくないか?」
「あ、ヒャイーッ! すぐに着替えます」
彼女はすぐにマスクを脱ぎ、手袋を外して背中のファスナーを下ろし始める。
「わっ」
俺は慌てて教室の外へと飛び出した。

                   ******

結局俺は彼女が着替え終わるのを廊下で待つ。
月明かりに照らされた廊下。
これからどうしたものか・・・
それよりも、悪の組織だの女戦闘員だの何かの冗談じゃないのかとも思う。
まあ、彼女なら、冗談だったとしても最後まで付き合ってやってもいいかもしれないけどさ。

「お待たせしました、怪人様」
教室から制服に着替えた彼女が出てくる。
普段教室で見かける彼女だ。
女戦闘員だなんてホント何かの冗談としか思えない。
「どうぞ」
差し出される俺のカバン。
「あ、サンキュー」
そうそう、このカバンを取りに来たんだったっけ。
「怪人様もお帰りになられるのですか?」
廊下を歩く俺に付き従うように一歩下がって歩いてくる彼女。
「その怪人様っていうのはやめようよ。友倉でいいから。それに・・・隣を歩いてくれると嬉しいな」
「よろしいのですか? 怪人様の隣を女戦闘員の私が歩いても」
「いいから。それに怪人様はやめろって」
「かしこまりました、怪人様」
うはぁーーー!
人の話を聞けー!
でもなんだかゾクゾク来る。
女の子に様付けで呼ばれるなんて、それなんてエロゲですか?
たまりませんです。

「いや、だから友倉君でいいよ・・・」
惜しいけどな・・・
「かしこまりました、怪人様」
ダメだこりゃ。
まあ、おいおい直してもらえばいいのか・・・
とりあえず俺の言ったとおりに俺の隣を歩いてくれる鴇沢さん。
確か鴇沢澄恵(すみえ)さんだったな・・・
どうして彼女が女戦闘員になんてなったんだろう・・・

驚いたことに玄関は開いていた。
鴇沢さんが言うには、トテンコプが手を回してくれているらしい。
なので、彼女も着替えるのにここを使っているのだとか。
おいおい・・・
学校が悪の組織に利用されているのかよ。
日本は大丈夫なのか?

                   ******

「圭太! 起きなさい!」
俺は母さんの声で目を覚ます。
もう朝かぁ。
昨日は学校で夜中まで寝ていたけど、やっぱり朝は眠いよ。
そういえば結局あのあと俺たちは、普通にクラスメートが通学路で別れるようにして帰ったんだっけ。
家に帰ってきたら父さんも母さんも寝ちまっていたし・・・
息子が帰ってきてないのに心配じゃなかったのかよ。
そりゃ、時々友達のとこに遊びに行ったまま帰ってこないこともあるけどさ。
んで、結局俺は夕食を食べ損ねていたので、夜中に冷蔵庫をあさる羽目になったんだよな。

いつもと同じように支度をして学校に行く俺。
校舎を見てもなんだか昨晩のことがあったからか、少し違う雰囲気にも感じるな。
ここで鴇沢さんがあんな格好を・・・
彼女かわいかったなぁ・・・
あの女戦闘員の格好もう一回見られないかなぁ・・・

「おはよう」
俺はいつものように教室に入って席に着く。
「おはよう」
「おはよう」
これまたいつものようにクラスメートたちが俺に挨拶を返してくる。
全く何も変わらないいつもの光景。
そういえば、結局昨日はゲームやらずに寝ちゃったな。
まあ、あんなことがあったし・・・
脳裏に浮かぶ鴇沢さんの全身タイツ姿。
正直に白状すると、俺は布団に入っても全身タイツ姿の鴇沢さんのことが頭から離れず、しばらく寝られなかったんだよなぁ。

俺は席に座っている鴇沢さんの後姿に目を向ける。
もちろんいつもの制服姿で、髪は栗色のショートカット。
ここからは見えないが眼鏡をかけていて、まじめそうだけど、笑顔はとてもかわいい。
うん・・・
なんで俺は今まで彼女のかわいさに気が付かなかったんだろうな。
おとなしくて目立たなかったからかなぁ。

俺はもう一度彼女と何か話そうと、機会をうかがってみる。
残念ながら休み時間には無理だったものの、お昼休みに彼女が一人で教室を出ていくのに気が付いた。
これはチャンスだ。
俺はそう思い、彼女の後を追いかけてみる。
たぶんトイレか何かだと思うけど・・・

と思って廊下に出たものの、彼女の姿が見当たらない。
「あれ?」
しまった・・・
昼休みの廊下は行き来する生徒たちでいっぱいなのだ。
ちょっと目を離しただけで見失ってしまうには充分か。
うーん、残念。

仕方なく俺は自分のトイレを済ませると、適当に彼女を探しつつ教室へ戻る。
「まだ戻ってないか・・・」
入り口から彼女の席を確認すると、まだ席には戻っていない。
どこへ行ったんだろう・・・
「うわっ」
「キャッ」
突然背中にドンと誰かがぶつかってきた。
「わ、ごめん。俺が入り口で突っ立ってたから」
俺はすぐさまその場をよける。
「い、いえ、こちらも前をしっかりと・・・」
ぶつかったことに驚いた表情で俺を見る女子生徒。
眼鏡の奥の目がとてもかわいい。
って、あれ?
「鴇沢さん?」
ちょうど戻ってきて入り口にいた俺にぶつかったのか?
「か、怪人様?」
「わ、わ、わぁ! ちょっとこっちに来て」
俺はびっくりして鴇沢さんの手を引っ張るようにして連れていく。
背後が何かざわめいたようだが知ったことか!
そして渡り廊下につながる人気のないあたりまで二人で来る。

「あ、あの・・・怪人様?」
「わぁ、ごめん」
俺は慌てて手を離す。
夢中で鴇沢さんの手を引っ張ってきてしまった。
「いえ、問題ないです。それで私に何か?」
やや緊張した感じの鴇沢さん。
そりゃそうだよな。
いきなり引っ張ってこられたんだもん。
「あ、あの・・・」
「はい」
「その・・・」
「はい」
うー・・・なんで言葉が出てこないんだ?
「ほ、放課後・・・時間ある?」
「放課後ですか? はい。バイト行くまでの間は大丈夫ですが」
「じゃ、じゃあ・・・どっかなんか食いに行かない?」
「食べにですか? はい、喜んで」
やったー!
にっこり微笑んでくれる鴇沢さん。
その笑顔がとてもかわいい。
「ほ、ほんと? いいの?」
「もちろんです。何かの任務なのですよね? 怪人様のお手伝いができるのは光栄です」
あー・・・
そう来ましたかー・・・
まあね・・・
うん・・・
怪人の命令には逆らえないよね・・・
あーあ・・・

「あの・・・どうかなさいましたか、怪人様?」
「あ・・・いや」
えーい、くそ!
鴇沢さんと過ごせるならそれでもいいや!
ちくしょー!
なんでこんなもやもやするんだよ。
「それじゃ放課後に」
俺は彼女にそれだけ言って、そそくさと教室に戻る。
くそー!
俺は怪人なんかじゃねーぞ!

とは毒づいたものの、鴇沢さんと一緒にいられるというのはやっぱり楽しみなわけで、俺は午後の授業そっちのけで放課後を待つ。
クラスの連中に何か言われるのも面倒なので、俺は放課後になったらさっさと外に出て校門のところで彼女を待つ。
しばらくすると彼女が来てくれて、俺はホッとした。
もしかしたら来てくれないかもと思ったのだ。

「お待たせしました」
そう言ってぺこりと俺に頭を下げる彼女。
「いや、全然。来てくれてよかった」
「それは当然怪人様のご命令ですから来ますよぉ」
笑顔を浮かべる鴇沢さん。
う・・・素直に喜べないなぁ。

俺は手っ取り早く彼女を連れて近所のハンバーガーショップに行く。
そういえば彼女はこのあとバイトがあるとも言っていたし、店選びに時間をかけているわけにもいかないだろう。
「おごっていただいていいんですか?」
「いいよいいよ。遠慮なく」
ハンバーガー代くらいはいくらでも出すよということで、俺は二人分の会計を済ます。
その間に彼女は席を取っておいてくれたようだ。
俺は用意された二人分のハンバーガーセットを持って彼女のところに行く。

「それじゃいただきます」
ぺこりと俺に頭を下げ、ポテトを口に持っていく彼女。
ダメだー。
なんというか仕草の一つ一つがかわいい。
完全的に俺、彼女に参っている・・・
「どうかしましたか? あ、もしかしてまだ食べちゃいけませんでした?」
「いやいやいや、そんなことないから。どんどん食べていいから」
俺もハンバーガーにかぶりつく。
でも、味なんてわかんねぇよ。

「ところで、バイトって何やっているの? やっぱり悪の組織の?」
俺は話のきっかけにと思い、バイトのことを尋ねてみる。
「あ、ご存じなかったですか? バイトっていうのはあくまでも見せかけで、実際は訓練と待機時間になっているんです。バイトって言っておいた方が両親とかごまかせますし」
あー、なるほど。
「でもバイト代とか出ないと怪しまれない?」
「バイト代じゃなく任務の報酬はちゃんと出ますよ。バイト代よりもずっといいです。怪人様は出ないのですか?」
「あ・・・えー・・・いや、出るよ。出るけど女戦闘員はどうなのかなーと」
報酬が出る悪の組織なのかー。
「出ますよ。こうやって人間社会に紛れ込むためにもお金は必要と首領様もおっしゃってますし」
もぐもぐとハンバーガーを食べている鴇沢さん。
そりゃそうか。
戦闘員も怪人も人間社会で暮らすには金が要るか。

「いつも夜中に学校に?」
毎日あんな感じで夜中に学校にいるんじゃ、結局親に怪しまれるんじゃないか?
「いいえ。昨晩は練習でしたので。任務に向けてのクモ女様との連携の訓練のために」
「そうか・・・って、もしかしてうちの学校にほかにも怪人や戦闘員がいるのか?」
「えーと・・・言ってもいいのかな? クモ女様がいます」
「えええええ?」
ちょっと待て。
うちの学校に怪人がいるのかー?
「ご存じなかったのですか?」
「え、いや、ほら、俺は単独行動専門で別ルートからこっちに来ているからさ。まさか付近に仲間がいるとは思ってなかったんだ」
うう・・・どんどんドツボにはまっていく・・・
バレたらただじゃすまないかも・・・

「そうでしたか。もし、私でお役に立てるのでしたら、何でもご命令ください。クモ女様にもそうするように言われましたので」
「へ?」
「今日の昼休みに怪人様の件をクモ女様にご報告いたしました。クモ女様も近くに仲間がいるなんて聞いていなかったけどうれしいわ、そばにいて協力してあげてねと」
うはぁ・・・
そんな報告しちゃったんですかぁ?
もしかして俺って、かなりヤバくね?
これは正直に言った方がいいのかも・・・

「あ、あのさ・・・」
「はい、なんでしょうか?」
眼鏡の奥のくりくりした目が無邪気に俺を見つめてくる。
「その・・・もし・・・もし昨日あの場に入ってきたのが、怪人じゃなかったらどうしていた?」
「もちろん始末します。昨日は慌ててしまったのでナイフとか血しぶきが飛び散っちゃうような武器を使おうとしちゃいましたけど、次は落ち着いてロープなどで絞め殺そうと思います。あとで自殺に見せかければよいかと」
全く答えにためらいがない。
ダメだー・・・
俺、実は怪人じゃないんだ・・・なんて言おうものなら、“自殺”することになってしまう・・・
「そ、そうか」
「でもよかったです。昨日入ってきたのが怪人様で。そうじゃなかったら私、クモ女様に叱られてしまうところでした」
なんていう屈託のない笑顔。
俺が怪人じゃないとは全く疑っていないのか?
俺、怪人だという何の証拠も出していないんだぞ。

「そういえば、鴇沢さんはなんで女戦闘員なんかに?」
「はい? あ、私ですか?」
「うん」
そうだよ。
どうして彼女のような人が悪の組織の女戦闘員なんかやっているんだ?
「私は任務中のクモ女様を見てしまいまして。それで死ぬかトテンコプの一員となるか選びなさいと言われました」
「それで・・・」
「はい。死ぬのは嫌だったので、トテンコプの一員になりました。でも、おかげで女戦闘員として肉体の強化もしていただきましたし、理想の世界を作る首領様のお手伝いをすることもできるようになりました」
目を輝かせる鴇沢さん。
「じゃあ、女戦闘員になったことは後悔してない?」
「もちろんです。後悔なんてするはずがありません。私は女戦闘員であることに喜びを感じてます。怪人様にも鴇沢なんて言う人間名じゃなく女戦闘員64号って呼んでほしいです」
えええ・・・
いや、それはなぁ・・・
「64号・・・?」
俺は小声でそっと呼んでみる。
「はい! 怪人様!」
まるで子犬が喜んでいるみたいに明るい表情をする彼女。
ぐわー。
こんなに喜ばれたら、もうそう呼ぶしかないじゃん。
あああ・・・
もうダメだぁ・・・

「あっ、私そろそろアジトに行って待機しなくては。行ってもよろしいでしょうか?」
スマホで時間を確認する彼女。
「うん。いいよ」
本当はもっとお話ししたいところだったけど、仕方がない。
「ありがとうございます。それでは失礼します。ごちそうさまでした」
ぺこりと頭を下げる彼女。
「気を付けて、64号」
「ヒャイーッ! ありがとうございます、怪人様!」
突然立ち上がって右手を胸に当て奇声を発する鴇沢さん。
やべぇ!
周囲の人々が何事かとこっちを見る。
「あわわわ、し、失礼しましたぁ!」
俺は慌ててトレイとごみを片付け、急いで彼女を連れて店を出る。
ひー!
視線が痛いー!

「す、す、すみません。私、新米なもので怪人様に64号って呼んでもらえてすごくうれしくて、つい・・・」
しょぼんとしょげている鴇沢さん。
「いや、いいよ。俺もちょっとびっくりしたけど。まあせっかく擬態しているんだし、お互いできるだけ擬態しているときの名前で呼び合った方がいいかもな」
「はい・・・気を付けます」
「うん。気を付けてくれればそれでいいから。じゃ、俺はここで。また明日」
「はい。また明日よろしくお願いします。怪人様」
そういって頭を下げ、テテテテと走っていく彼女。
あーあ・・・
俺はどうしたらいいんだろう・・・

                   ******

「さすがに昨日の今日じゃ、いないかな?」
一度は布団に潜り込んだものの、結局眠れなかった俺は夜中の学校にやってくる。
校門は閉まっているようだし、誰かがいるような気配も・・・
窓からは非常口を示す緑色の明かりや、消火栓の位置を示す赤ランプの明かりが漏れているぐらい。
まあ、昨晩だって明かりは点けなかったから、いるとしたって明かりが点いているはずはないんだけど・・・

「あれ? もしかして怪人様ですか?」
「えっ?」
振り向いた俺の前には、全身を黒い全身タイツで覆い、目だけを出したマスクをかぶった女戦闘員が立っていた。
「と、鴇沢さ・・・いや、ろ、64号か?」
「ヒャイーッ! はい、私は女戦闘員64号です!」
ぴしっと背筋を伸ばして気を付けをし、右手を胸に当てる64号。
「わ、バカ! 大声を出すな!」
「あ、すみません」
慌てて自分の口をマスクの上から押さえている彼女。
「いや・・・大丈夫そうだ。任務・・・終わったのか?」
俺は周囲に何の反応もないのを確かめると、声を潜めてそう尋ねる。
学校の周囲が雑木林でよかったよ。

「ヒャイーッ! 任務と言いますか昨日と同じく訓練でした」
俺と同じように彼女も声を潜めて答える。
会えたのはうれしいけど、とりあえずここにいるのはまずいだろう。
学校の中に入った方がよさそうだ。
「今日も着替えに戻ってきたのか?」
「はい。制服が教室にありますので」
「じゃあ、行こう」
「はい、怪人様」
うなずいて俺のあとについてくる64号。
とはいうものの、校門は閉まっているしどうしたら・・・
「怪人様?」
どうしたものかときょろきょろしていた俺に、彼女が声をかけてくる。
「あ、ああ、校門がしまっているからどうしようかと・・・」
「あっ、失礼いたしました。怪人様は擬態していらっしゃったんでしたね。少々お待ちを」
彼女はそういうと、すぐにスススッと走ってジャンプする。
「何っ?」
驚いたことに、彼女は背丈以上の高さの校門をあっという間に飛び越えてしまったのだ。
そして校舎側に飛び降りると、すぐに校門を開けてくれる。
「すごいな・・・」
「お待たせしました。どうぞ」
「あ、ああ・・・」
俺は彼女が開けてくれた校門を通って敷地内に入り、そのまま校舎に入り込む。
やはりトテンコプとやらが玄関を開けておいてくれているのだろう。

俺たちは昨日とは逆に夜の廊下を教室に向けて歩いていく。
最初は俺の背後に付こうとした64号だったが、俺が隣を歩くように指示をする。
それにしても、彼女の着ている戦闘員の衣装は躰のラインがめちゃめちゃ強調されて、毎度目のやり場に困ってしまう・・・
並ぶと彼女の胸がドンとせり出しているのも一目瞭然だし・・・
「怪人様も任務だったのですか?」
「あ・・・いや・・・うん・・・」
本当は彼女に会いに来たんだけど・・・やっぱりそう言うのは照れ臭い。
「お疲れ様です。単独任務は大変ではありませんか?」
マスクをかぶった顔が俺の方を向いている。
不思議なもので、布が全部覆い隠しているのに、鼻や口の動きとかで、彼女の表情を感じ取れる。
「いや・・・まあ・・・大したことは・・・」
うう・・・
俺が本当はただの人間で、怪人なんかじゃないとバレたらどうなってしまうのだろう。

階段上って廊下を歩いて俺たちは教室の前に来る。
「それじゃ、すぐに着替えてきますので少々お待ちください」
そう言って教室に入ろうとする64号。
「あ・・・待って」
「はい?」
あ・・・
う・・・
彼女が俺の方を見ている。
うう・・・
「その・・・もう少し・・・」
「はい」
「もう少し・・・その恰好の64号を見て・・・いたいんだけど・・・」
ううう・・・
言ってしまった・・・
変態じゃん俺・・・
でも・・・
でも・・・
すごく魅力的なんだよ、その恰好・・・

「はい・・・いいですけど」
キョトンとしたまま窓から差し込む光の中に立っている64号。
美しい・・・
普段見る制服姿とは全く違う・・・
首から肩、そして脇から腰を通って足へと流れるライン。
括れた腰を強調するベルト。
たわわな胸に貼り付いたかのようなクモのマーク。
なんというかたまらない。
ヤバい・・・
あそこがヤバいことになってきた・・・

「も、もういいよ」
「あ、はい」
よくわからないという感じで首をかしげながら教室に入っていく64号。
ふう・・・
まずいよこれ・・・
俺完全に変態じゃん。
全身タイツ姿の女性にこんなに見惚れちゃうなんて・・・
ヤバすぎる・・・
それにズボンの中ではちきれそうになっているこっちもヤバい・・・

「ご、ごめん。俺先に帰るから。ごめん。また明日」
俺は教室の中で着替えている64号にそう声をかけ、返事も聞かずにその場を後にする。
これ以上ここにいたらどうなっちゃうかわからない。
ヤバいヤバいヤバい。
俺はとにかく一目散に家に帰ることだけを考えた。

                   ******

(続く)
  1. 2019/10/11(金) 21:00:00|
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脱出を試みる女たち

今日は10月10日です。
この数字にちなんで「目の愛護デー」ですとか「トートバッグの日」ですとか「トマトの日」なんて言う記念日もあるようですが、1010を千十(せんとお)と読ませて「銭湯の日」でもあったりするわけです。
で、1010を千十(せんとお)と読ませるのであれば、当然私などはごろ合わせで「(特撮系の)戦闘員の日」としたいわけでして、数年前から勝手にこの「戦闘員の日」を提唱させていただいておりました。

おかげさまで最近はこの10月10日は「(特撮系)戦闘員の日」というのも、それなりに知っていただけているようで、何人かの方々に賛同していただいたりしているようでありがたい限りです。
ということで、もちろん私も何か作品を上げないわけにもいきませんので、短編SSを一本投下いたしたいと思います。
タイトルは「脱出を試みる女たち」です。
楽しんでいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


脱出を試みる女たち

「ああ・・・ダメだわ。ここも見張られているみたい」
廊下の角から奥をそっと覗き込んだ古和(ふるわ)先生ががっかりとうなだれる。
「先生・・・」
「そんな・・・」
私はあきらめきれずに、先生と入れ替わるようにしてそっと角から覗いてみる。
ああ・・・そんな・・・
あの女たちが三人もいるなんて・・・

そこは普段使われることのない非常口の一つ。
何か災害があった時のために設けられている出入り口。
そんな非常口の前にも、あの女たちが三人も配置されているとは・・・
いったいあの人たちは何者なの?

目だけが覗く黒いマスクで頭を覆い、首から下も躰のラインがあらわになるレオタードのような衣装を身に着け、脚には網タイツを穿いている。
腰には大きなバックルの付いたベルトを嵌め、両手両足は黒い手袋とブーツを着け、背丈ほどもある棒を一本武器として持っているのだ。
女たちは全員同じ格好をしており、日本人なのか外国人なのかさえわからない。
一応は日本語をしゃべるようだけど、外国人だって日本語を上手にしゃべる人は大勢いるし。
わかっているのは、彼女たちが私たちをこの校舎に押し込め、どこにも出られないようにしているということと、デクダルンという国だか組織だかに属しているらしいということだけ。
いったいどういうことなのだろう・・・

「先生・・・」
「先生・・・」
美羅(みら)ちゃんも亜寿香(あすか)ちゃんも不安そうな顔で先生を見つめている。
でも・・・先生だってきっと不安に違いない。
どうしてこんなことになってしまったのだろう・・・
わからないことだらけだ。

私たちは林間学校で、今はそういう行事のための宿泊用となっているこの廃校舎にやってきた。
校舎の周りの林を散策したり、みんなで夕食を作って食べたり、校庭でみんなで遊んだり楽しい時間を過ごしていたのに、二日目の夜に突然あの女たちが現れて、私たちをこの校舎に閉じ込めてしまった。
逃げ出そうとした人は何人もいたけど、悲鳴が聞こえてそれっきり。
男子と女子は校舎の両端に分かれるようにさせられ、男子がどうしているのかはわからない。
もしかしたら・・・もう・・・
私は不吉な思いを振り払うように首を振る。
先に逃げた人たちが何人かは無事に逃げ出せているかもしれない。
もしかしたら助けが来るかもしれない。
でも、だからと言ってじっとしているわけにもいかないわ。
何とかここから逃げださなきゃ。

私は、古和先生が逃げ出せそうなところを見つけてくるというので、一緒についてきた。
ほかの人たちのように部屋でじっとしているなんてできないもの。
できるだけのことはしたいじゃない。
美羅ちゃんと亜寿香ちゃんも部屋でじっとしているのは嫌だと言ってついてきた。
何とかみんなで逃げ出せれば・・・

「でも、どうします先生? 玄関も裏口もあの人たちが見張ってますし、窓から逃げてもすぐに見つかってしまいます」
私は先生の決断を促す意味でもそう尋ねてみる。
実際に窓から逃げた男子もいたようだったが、すぐにあの女たちにつかまってしまったようだった。
だからこそ、この非常口は校舎の裏側にあたり、すぐに裏の林に逃げ込める。
できることならここから逃げ出すのが一番だろう。
でも・・・あの女の人たちに勝てるとは思えないし・・・

「私に考えがあるわ」
古和先生が立ち上がる。
「どうするのですか?」
「いつまでもここにいては危ないわ。こっちに来て」
先生が先に立って歩き始めたので、私も美羅ちゃん亜寿香ちゃんと一緒に後を追う。
やがて先生は元は物置か何かだったのかもしれない小部屋の中に入り、私たちもその後に続いた。

そこにはいくつか銀色に輝くトランクケースのようなものが並べられていた。
「これは?」
「朝に出口を探しているときに見つけたの。これを使えば何とかなるかも」
そういって先生がそのトランクケースの一つを開ける。
「えっ?」
「これって?」
私も亜寿香ちゃんも目を丸くする。
トランクケースの中には、あの女の人たちが着ていた黒い衣装が入っていたのだ。
黒いレオタードに網タイツ。
ブーツに手袋。
それに大きなバックルの付いたベルトと黒いマスク。
あの女の人たちが着ていた衣装一式が入っている。

「私がこれを着れば、奴らの仲間の一人と思わせられると思うの。それで私が何とか非常口を見張っている三人を別の場所に連れて行くから、あなたたち三人はその間に非常口から外へ出て裏の林に入り、街まで戻って警察に知らせてちょうだい」
先生がもう上着を脱ぎ始める。
「先生、危険です! もしバレたりしたら・・・」
「たぶん大丈夫。このマスクは目だけしか露出しないわ。だから着ているのが誰なのかなんてわからないと思う」
「でも・・・」
私も美羅ちゃんも亜寿香ちゃんも顔を見合わせるしかできない。
確かにマスクをかぶってしまえば誰が誰だかわからなくなるとは思うけど・・・

「これしかもう手はないわ。むしろあなたたちの方こそ気を付けるのよ。私は彼女たちが何の目的でこんなことをしているのか探ってみるわ」
スカートを脱ぎ、ブラウスも脱いでいく先生。
「先生・・・」
確かにこれしか方法はないのかもしれないけど・・・
「えーと・・・そろそろ後ろを向いててくれると助かるんだけど」
先生がにこっと笑みを見せる。
「あっ」
私たちは急いで先生に背を向けた。

「これを・・・んしょ・・・ん・・・次は・・・すごいすべすべ・・・気持ちいい・・・」
「先生?」
「あ、ごめん。なんだかこれすごく着心地がいいのよ。すごく躰にフィットする感じ。次はこれね・・・」
私の背後でごそごそと先生が着替えをしている。
あの女の人たちが着ていた衣装は、すごく躰のラインを強調するような衣装だった。
あんなの着たらとても恥ずかしい気がするけど、今はそれどころじゃないから、とにかく先生の格好を見ても気にしないようにしなきゃ。

「あ・・・ふ・・・はあ・・・ひゃ、ひゃん・・・ひゃいーーー!」
先生が突然大声を上げたので私はびっくりした。
「せ、先生? 大丈夫ですか?」
「先生?」
「先生? どうしたんですか?」
「・・・・・・何でもないわ。大丈夫よ」
落ち着いた声が返ってきて私はホッとする。
そして着替え終わったかどうか尋ねようとしたとき、先生は私たちの脇を通り抜けて自分から前に出てきた。
「さあ、行きましょう」
先生の格好はあの女の人たちと全く同じになっていた。
目だけが覗く黒いマスクをすっぽりと頭にかぶり、首から下は黒いレオタードを身に着け、脚には網タイツを穿いている。
腰にはベルトを嵌め、両手と両脚には手袋とブーツを着けていた。
唯一違うのは背丈ほどもある棒を持っていないだけで、なんというか雰囲気まで変わった感じがする。
制服の持つイメージのすごさだろうか。

私たちは先生の後について部屋を出る。
カツコツと先生の履いているブーツのヒールの音が響く。
「先生・・・足音が」
私が後ろから近寄って小声で声をかける。
足音が響いては気付かれてしまうのではないだろうか。
「大丈夫よ。心配ないわ」
すたすたと気にする様子もなく歩いていく先生。
もしかしたら、こそこそするほうがかえって怪しまれると考えているのかも。

私たちは先ほどの廊下の角まで来る。
ここを曲がればあの非常口だ。
先生はその先をちらっとだけ覗き、私たちの方を向く。
いつも冷静な先生の目がマスクの中から私たちを見つめていた。
「あなたたちはここにいなさい。いいわね」
いつもより威圧感のある先生の声に私たちはうなずき、姿勢を低くする。
そして先生が足音を響かせてあの女の人たちの方に行くのを、廊下の角からそっと覗き込む。

先生の予想通り、あの女の人たちは同じ衣装を着た先生が近づいても警戒する様子はない。
やがて先生は女たちのところに行くと、いきなり気を付けをして右手を斜めに上げた。
「ヒャイーッ! 私は偉大なるデクダルンの女戦闘員! 今日から皆様とともにデクダルンのために働きます」
えっ?
突然のことに私はびっくりする。
あれは先生がとっさに考えたことなの?
女戦闘員って何なの?

「ヒャイーッ! ご報告があります。あの廊下の角に脱走しようとしている女たちが三人います。すぐに取り押さえるべきかと」
右手を上げたまま私たちの方をちらっと見る先生。
う、うそでしょ・・・
そんな・・・

「ヒャイーッ! ご苦労! すぐに取り押さえよ!」
「ヒャイーッ!」
「ヒャイーッ!」
真ん中の女の命令に左右の女たちが右手を上げ、すぐに私たちの方へと走ってくる。
「逃げて!」
私は美羅ちゃんと亜寿香ちゃんにそう叫び、自分もとにかく走り出す。
うそでしょ・・・
先生が・・・
先生がそんな・・・

廊下を走って逃げる私たちの背後から女たちが追ってくる。
速い。
これじゃ追いつかれ・・・
「ガッ!」
突然全身に電気が走ったような衝撃を受ける。
思わずその場に倒れこむ私。
衝撃に気が遠くなりながらも見ると、女たちが持っている棒を美羅ちゃんや亜寿香ちゃんに向けていた。
「あ・・・う・・・」
ダメだ・・・声が出ない・・・
女たちの棒の先端から電気のようなものが走り、美羅ちゃんも亜寿香ちゃんも廊下に倒れこんでしまう。
「そ・・・な・・・」
「ヒャイーッ! 逃げられはしないわ。連れて行きなさい」
「ヒャイーッ!」
「ヒャイーッ!」
女たちが言葉を交わしあい、美羅ちゃんと亜寿香ちゃんを担ぎ上げる。
私は何とか逃げようとするけど、躰がしびれて動かない。
「あら、まだ意識があるのね。おとなしくしなさい」
私を抱え上げようと屈み込む黒いマスクの女。
その声に私は聞き覚えがあった。
「せ・・・せ・・・」
「ヒャイーッ! 私はもうお前たちの先生ではないわ。私は偉大なるデクダルンの女戦闘員。さあ、おとなしく来るのよ」
私の躰が抱え上げられ、私は意識を失った。

                   ******

「は、放してー!」
「た、助けてぇーーー!」
美羅ちゃんと亜寿香ちゃんの声がする・・・
いったい何があったの?
私はいったい?

私はゆっくりと目を開ける。
ここは?
私は夢でも見ていたの?
でも、そんな思いはすぐに吹き飛んでしまう。
私の前には、十字架に磔になったような美羅ちゃんと亜寿香ちゃんがいたのだ。
しかも、二人ともあの黒いレオタードや網タイツを穿いており、その躰のラインがむき出しになっているではないか。
あの女たちと違うのは、目だけが出る黒いマスクをかぶっていないだけなのだ。
「美羅ちゃん! 亜寿香ちゃん!」
「伊代美(いよみ)ちゃーん」
「伊代美ちゃーん」
泣きじゃくる二人が私の名前を呼んでいる。
すぐさま二人の元へ駆け寄ろうとした私だったが、気が付くと私の両手両足も彼女たちと同じように固定されていて、しかも私も同じようにレオタードや網タイツを身に着けていた。
「う、嘘・・・これは」
私も二人と同じ格好をしているなど全然気づかなかった。
いつの間にこんな格好をさせられたというのだろう。
ともかく私は何とか自由になろうともがくが、手足の固定はびくともしない。
どうしたらいいの?

「ヒャイーッ! 目が覚めたようね」
磔にされている私の隣にあの女たちの一人がやってくる。
ほかの女たちと違って、レオタードの首元に赤いV字型のラインが入っている。
もしかしたらリーダーなのかもしれない。
私が何も答えずにいると、美羅ちゃんと亜寿香ちゃんのところにも女たちが近寄っていく。
その手には何か黒い布のようなものを持っていた。
あれは何?

「その服の着心地はどう? 躰にフィットして気持ちいいでしょう?」
私は無言を貫く。
でも、彼女の言う通りだった。
この服は躰にフィットして着ていることを感じさせないぐらい。
まるで第二の皮膚であるかのような感じさえする。
私はともすればこの服に気持ちよさを感じるのを、必死の思いで否定した。

「うふふふ・・・残念なことにマスクの洗脳能力は、対象が意識を失っているとあまり効果を発揮しないの。だからあえてお前たちが目を覚ますまで待っていたというわけ」
マスクの・・・洗脳能力?
それじゃ先生は・・・
あのマスクをかぶってしまったから、この女たちの仲間になってしまったというの?

私が愕然としていると、もう一人の女がそばにやってくる。
「マスクを持ってきたようね」
「ヒャイーッ! こちらにお持ちしました」
それは目だけが出る頭をすっぽりと覆う黒いマスク。
そしてそれを持ってきた女の人の声は・・・
先生の声・・・

「うふふふ・・・あそこにおいておけば、一人ぐらいは私たち女戦闘員に変装しようとして自分から着るのではないかという首領様のお言葉の通りだったわね。どう? デクダルンの女戦闘員になった気分は?」
「ヒャイーッ! 最高です。まるで生まれ変わったような気持ちです。デクダルンの女戦闘員であることがこれほど誇らしく素晴らしいことだったなんて・・・それに78号というナンバーも与えていただいて・・・ああ・・・幸せです」
うっとりとした口調で答えている先生。
ああ・・・もうあの先生はいなくなってしまったんだわ・・・

「うふふふふ・・・喜びなさい。この女だけでなく、お前たちも選ばれたのだから」
「選ばれた?」
どういうこと?
私たちも選ばれたとは?
「お前たちは部屋でおとなしくしているということをせずに、ここから脱走しようとした。そういう行動力のある女は偉大なるデクダルンの女戦闘員にふさわしい」
女戦闘員に?
ふさわしい?
まさか・・・
私たちも先生と同じように?

「うふふふふ・・・あなた方もすぐにデクダルンの女戦闘員になれるわ。このマスクをかぶればね」
赤いVラインの入った女が顎をしゃくってほかの女たちに指示をする。
「いやっ! やめてぇ!」
「いやぁっ!」
美羅ちゃんと亜寿香ちゃんに女たちがマスクをかぶせていく。
「美羅ちゃん! 亜寿香ちゃん! むぐっ!」
私にも先生がマスクをかぶせてくる。
私はなんとかかぶせられないようにと頭を動かすが、手足が固定されている以上それもわずかな抵抗でしかない。
「や、やめ・・・」
私の視界が黒い布でふさがれ、鼻も口も覆われていく。
首元までマスクが引き下げられると、目のところがのぞき穴に合わせられ、外が見えるようになる。
目が見えるようになりホッとしたのもつかの間、私の頭に声が響いてくる。
女戦闘員・・・
デクダルンの女戦闘員・・・
私はデクダルンの女戦闘員・・・
デクダルンに忠誠を誓い、首領様のために働くことが私の使命・・・
デクダルンに忠誠を誓い、首領様のために働くことが私の喜び・・・
やめ・・・やめて!
私の中に入ってこないで!
私は女戦闘員なんかじゃない!
私は女戦闘員なんかじゃ・・・
私は女戦闘員・・・
私はデクダルンの女戦闘員・・・
デクダルンに忠誠を誓い、首領様のために働きます・・・
デクダルンに忠誠を誓い、首領様のために・・・

手足の枷が外され、私の躰が自由になる。
私は手首をさすりながら、脇に置かれていた手袋を着け、ブーツを履いていく。
そして偉大なるデクダルンの紋章の付いたベルトを腰に巻き、デクダルンの一員になった喜びを感じていく。
そう・・・
私はデクダルンの女戦闘員。
偉大なる首領様の手足となって働くことが私の喜び。
なんてすばらしいのかしら。
首領様の命令なら何でもするわ。

私と同じように手袋やブーツ、ベルトを身に着け終わった二人もやってくる。
私の仲間たち。
これからはともに首領様のために働くのだ。
「「「ヒャイーッ!」」」
私たちは上級戦闘員であるC07号に右手を上げて敬礼し、服従の声を出す。
ああ・・・なんて気持ちがいいのだろう。
これまでの愚かな人間だった時のことなど洗い流されていくみたい。
もうそんな過去は思い出したくもないわね。

「ヒャイーッ! うふふふ、いい子たちね。今日からはお前たちも女戦闘員。偉大なるデクダルンのために働きなさい」
「「「ヒャイーッ! 仰せのままに!」」」
私たちは再び服従の声を上げる。
「それでいいわ。お前たちはこれからそれぞれ79号、80号、81号と名乗りなさい」
「「「ヒャイーッ! ありがとうございます!」」」
ああ・・・なんて嬉しい。
私にもナンバーをくださったんだわ。
私は81号というわけね。
なんて素敵。
私は女戦闘員81号。
私はデクダルンの女戦闘員81号よ。
デクダルンに栄光あれ!

                  ******

「そっちへ行ったわ80号!」
「ヒャイーッ! 了解。うふふふふ・・・逃げられるとでも思っているのかしら」
80号の言うとおりだわ。
この周囲一帯はもう私たちデクダルンの制圧下。
逃げられるはずがないのに。
愚かな人間たち。

「いやっ、来ないで!」
地面に這いずりながら、必死で逃げようとする女。
哀れな女。
残念ながらお前は選ばれなかったのよ。
私たちのような女戦闘員にはね。
だから死になさい。

私はスパークロッドの先を女に向けてスイッチを押す。
「きゃぁぁぁぁ」
電撃が放たれて女が黒焦げになる。
うふふふふ・・・
これで不要な人間がまた一人消えた。
偉大なる首領様の求める世界にまた一歩近づいたわ。
ああ・・・
偉大なる首領様。
私にさらなるご命令を。
私は女を始末したことを報告するために、アジトへと戻るのだった。

END

以上です。
よろしければ感想コメントなどいただけますと嬉しいです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/10/10(木) 21:00:00|
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バニーガールコス姿が普段着と認識洗脳させられた美人ママ

今年も夏コミが始まったみたいですね。
暑い中大変だと思いますけど、熱中症には充分ご注意を。

で、私はというと、何となく妄想SSを一本書いちゃいましたので投下します。
タイトルは「バニーガールコス姿が普段着と認識洗脳させられた美人ママ」です。
はい、舞方はボンデージも大好きですけど、バニーガールコスも大好きです。
どこかに美人バニーガールさん落ちていないですかねー。
落ちていたらすぐ拾って帰るんですけどねー。(笑)

まあ、益体もない妄想SSですけど、お楽しみいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。


バニーガールコス姿が普段着と認識洗脳させられた美人ママ

「お邪魔しますー」
ボクは友達のタケル君の家に入る。
「あら、いらっしゃい。ゆっくりしてってね」
「は、はいーー?」
玄関に出てきたのはタケル君のママ。
だけど、その恰好はテレビなんかで見るバニーガールの格好をしていたのだ。
頭にはウサギの耳を付け、躰には黒い水着みたいなバニーガールの服を着て、脚には網タイツを穿いている。
タケル君のママは美人だからすっごく似合うんだけど、なんでなんでなんで?
なんでバニーガールなの?

「やあ、来たな。あがれよ。ママ、コーラね」
奥からタケル君が出てきて、ボクを家に上げてくれる。
「はーい、ご主人様」
タケル君のママはぺこりとタケル君に頭を下げると、お尻の白いウサギの尻尾を振るような歩き方で奥に戻っていく。
「は・・・はあ・・・」
ボクがあっけにとられていると、タケル君がにやにやしていた。
「いいからあがれよ。話はあとだ」
「うん」
ボクはタケル君に促されるままタケル君の部屋に通させてもらった。

とりあえずボクはタケル君の部屋で腰を下ろすと、一息つく。
あー、びっくりした。
まさかタケル君のママがバニーガールの格好しているなんて思わなかったもんな。
でも、すごく似合っていたなぁ。
きれいだった。
うちのママだとあんなにきれいじゃないよなぁ・・・
いいなぁ・・・
マナミさんもバニーガールの格好してくれないかなぁ・・・
ボクは隣のマナミお姉さんのことを思い出す。
マナミさんなら、きっとすごくバニーガールの格好が似合うと思う。

「はぁい、お待たせしましたぁ」
すぐにグラスとコーラのペットボトルを載せたトレイを持ったタケル君のママがやってくる。
うわぁ、あらためて見ると本当にきれいなバニーガールさんだ。
脚なんか網タイツですらっとしてて、黒い背中の開いたコスチュームもとても似合ってて、お尻には白い尻尾が揺れていて・・・
なんだか見惚れちゃうよぉ。

「はぁい、どうぞぉ」
甘い声でボクにグラスを差し出してくれるタケル君のママ。
「ど、どうも」
ボクがグラスを受け取ると、そこにコーラを注いでくれる。
シュワーッという音とともに炭酸がはじけ、冷たさが手に伝わってくる。
でもボクは注いでくれたタケル君ママの胸が気になってしまってそれどころじゃない。
衣装のカップに収まった胸の谷間がもろに見えてしまうんだもん。
ボクは何とか気をそらすために、コーラを一息に飲んでしまう。
「ぷはぁー」
「あら、喉が渇いていたのね。もう一杯どうぞぉ」
半分以上減ったグラスに、またコーラを注いでくれるタケル君ママ。
頭の上ではウサギの耳飾りがゆらゆらと揺れているし、真っ赤な口紅を付けた唇がすごく目を惹いてしまう。
きれいだ・・・
タケル君ママすごくきれい・・・

「それじゃごゆっくりどうぞ。ご主人様、何かありましたらすぐにお呼びくださいませ」
グラスとコーラを置いてトレイを手にお辞儀をするタケル君ママ。
「ああ、行っていいよ。そうだ。ママ、そこでゆっくりくるっと回るんだ」
「はぁい、ご主人様」
タケル君がそういうと、タケル君のママはにこにこしてそこでゆっくりと回ってくれる。
うわぁ・・・
こんなにバニーガールさんを間近でじっくり見られるなんて思わなかったよ。

「ハハッ、だいぶ驚いたみたいだね」
タケル君のママが部屋を出て行った後、ゲームの準備をし終えたタケル君が笑っている。
「そりゃそうだよ。まさかタケル君のママがあんな格好しているなんて・・・」
「ハハッ、うちのママはもうあれが普段着だと思っているのさ。放っておけばあの格好で買い物に行ったりすると思うよ。まあ、騒ぎになっても困るから、とりあえずそれはやめさせているけどな」
「普段着? あれが?」
えーっ?
バニーガールの格好が普段着だなんてどういうことなの?
タケル君のママは普段からあんな格好しているの?

「うん、そうだよ。ママはね、もうオレの言うことを心から信じるようになったんだ。だから俺が、『お前の普段着はバニーガールの格好だ』って言ったら、すっかりそう信じ込んでいるのさ」
「えーっ? 何それ? どうしてそんなことに?」
ボクは驚いた。
タケル君の言うことを何でも信じるって?
「まあ待てよ。最初から説明するからさ。実はこれのおかげなんだ」
タケル君はそう言ってベッドの下に隠すように置いてあった箱を取り出すと、その中身を見せてくれた。
「えっ? 何これ?」
そこには、まるでおちんちんのような形をした石が入っていたのだ。
それもボクのおちんちんなんかじゃなく、パパのおちんちんと同じぐらいの大きさだ。
「まるでおちんちんみたいだ」
「な? そう思うだろ? オレもそう思ってさ、思わず拾ったんだよ」
タケル君がニヤッとする。
「拾った?」
「ああ、学校帰りに川岸を歩いていたらさ、草むらに落ちていたんだ」
こんなのが草むらに?
もしかして流されてきたのかな?

「で、見るからにおちんちんだからさ、みんなに見せようと思って拾ったんだ。そしたら、なんだかすごく躰がピリピリとしてさ、すごく元気になったような気がしたんだ」
そういってタケル君はそのおちんちん石を取り出して見せてくる。
「で、いい気分で家に帰ってきたらさ、ママが手を洗えだのうがいしろだの宿題やれだのうるさいからさ。なんだか文句言いたくなって、『うるさい。オレに命令するな。お前こそオレの言うとおりにしろ』ってこの石を突き付けながら言ってやったんだ。そうしたらママが『はい・・・言うとおりにします』って言ってさ、それからはオレの言うとおりにするようになったんだ」
「ええ? 何それ?」
「オレもよくわかんないけどさ、こいつがなんか魔法みたいなものでママに俺の命令を聞かせるようにしたんだと思う。だからさ、オレはママをオレの召使にしてやってさ、オレの好きなバニーガールの格好をさせているわけ」
ああ、タケル君もバニーガールの格好が好きなのかー。
確かにあの格好ってすごくいいもんね。
ボクも大好きなんだ。

「今じゃなんでもオレの言いなりなんだぜ。お尻を触らせろって言ったら触らせてくれるし、おっぱいだって触れるぞ。もちろんあの格好で」
「いいなぁ。バニーガールさんの胸を触れるなんて」
「それに、オレの好きなものだけ出すように言ってあるから、ハンバーグや唐揚げ、カレーなんかいつも作ってくれるんだ」
「野菜は食べなくていいの?」
うちはちゃんと野菜も食べなさいってママが言うからなぁ。
「もちろんさ。野菜は嫌いだから出すなって言ってあるからな」
「いいなぁ」
うらやましいなぁ。
あんなきれいなママがバニーガールの格好して美味しいもの作ってくれるなんて最高だよー。

「パパは今は単身赴任中だからいないけど、今度帰ってきたらパパもオレの召使にしてやるつもり。お小遣いいっぱいもらうんだ」
「あー、いいなぁ」
お小遣いいっぱいほしいよね。
「あと先生も召使にしようか? 先生には宿題を出さないのが当たり前って信じさせて、水着あたりを普段着にしてやろうか。くふふふ」
「あー、それもいいな。先生前にプール学習の時水着姿きれいだったもんね」
「だろう?」
うんうん。
先生が毎日水着で授業なんてすごくいいかも。

「トオルは誰か召使にしたい奴いるか? なんだったらオレがそいつをトオルのいうことは何でも信じる召使にしてやるぞ」
「えっ? いいの?」
ボクは思わず聞き返す。
「いいよ。その代わりこのことは内緒だぞ」
「うん、もちろん」
ボクはうなずく。
どうしよう・・・
誰がいいかなぁ・・・
やっぱり・・・

                   ******

「お帰りなさい、ご主人様ぁ」
ボクが家に帰ると、マナミさんがバニーガールの格好で出迎えてくれる。
大きなおっぱいがバニーガールのコスチュームからはみ出そうだ。
「ただいまぁ」
ボクはマナミさんにカバンを渡し、家の中に入っていく。
そのボクの後を召使であるマナミさんが付いてくるんだ。
なんて気持ちがいいんだろう。
最高だよー。

「お帰りなさい。おやつあるわよ」
ママがテーブルにおやつを用意してくれている。
今日はシュークリームだ。
やったー。

ボクは自分の部屋にカバンを置きにマナミさんを行かせ、その間に手洗いとうがいを済ます。
戻ると、すでにマナミさんはいつものように椅子に座って待っているので、ボクはそのマナミさんの上に座る。
こうするとマナミさんの胸がボクの背中に当たるので気持ちがいい。
「はい、ご主人様、どうぞぉ」
マナミさんがシュークリームを取ってボクに食べさせてくれる。
マナミさんはもうボクの召使。
タケル君がマナミさんにあの石を突き付け、ボクの召使になってボクの言うことは何でも信じるように命じたから、マナミさんはボクの召使になった。
あとはママやパパ、隣のおじさんおばさんにもそのことが当たり前のことだと思うようにしておしまい。
こうしてマナミさんはボクの家でずっとボクの召使として過ごしている。
もちろんボク好みのバニーガールの格好が普段着だと思い込んでいる。
最高だー。

タケル君は今度は先生を召使にするという。
きっと水着姿で授業をしてくれるようになるだろう。
楽しみだなぁ。
早くその日が来ないかな。
ボクはワクワクしながら、マナミさんが差し出すシュークリームを頬張った。

END

いかがでしたでしょうか?
今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/08/10(土) 20:30:00|
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人妻の蛇足

先日投下いたしました短編SS「正義戦隊に追われた怪人がうちに逃げ込んできた人妻」が、予想以上に好評でうれしい限りです。

おかげさまでハニーセレクトでの画像をいただいたりと、作者としても冥利に尽きますです。

とまあ、その影響もありまして、ついついあの続きを書いてしまったりしてしまったわけです。(笑)
もうね、蛇足以外の何物でもないわけですが、カーマギリーと一体化してしまった人妻のその後を楽しんでいただければと思います。

それではどうぞ。


人妻の蛇足

「初めまして、尾倉(おぐら)博士。週刊科学週報の五里(ごり)と申します」
“私”は名刺入れから偽造名刺を出し、初老の紳士に手渡す。
尾倉博士は先ごろ新エネルギー理論を発表し、新たなエネルギー源の可能性を打ち出した地球人。
そんな地球人が生きていてもらっては困るのよ。

「これはこれはようこそ。あまり長い時間は取れませんがよろしいかな?」
「ええ、それはもう。お話を聞けるだけで充分ですので」
“私”はできるだけ笑顔を浮かべ、相手の警戒心を解くように努める。
それにしても、地球人のオスはメスには弱い。
特に美しいメスには。
だからこそ、“私”の躰には利用価値があるというもの。

今回は単独インタビューということで、室内には“私”と博士の二人きり。
なんと好都合なのか。
地球人のメスの姿をしているというだけで、これほど無防備になるとは思わなかった。
これならゴリグランの地球侵略もやりやすくなるというものだが、どうもそう簡単にも行かないらしい。
“私”の報告により、将軍は“私”以外のドルビードルやセンチピーにも合体をやらせてみたらしいが、それがどうにもうまくいかなかったとのこと。
合体した地球人のオスやメスが狂ってしまってどうにもならなくなったそう。
もしかして、“私”は運がよかったということなのかしら・・・

それはともかく、こうして“私”は一つになれている以上、楽しまなくては損である。
地球人のオスを躰で誘惑するというのは実に楽しい。
“私”はでたらめなインタビューをしながら、黒ストッキングを穿いた脚をこれ見よがしに組み替えたり、胸元が見えたりする角度を向けたりして初老の紳士の反応を楽しんでいく。
博士はインタビューに答えながらも、その目は“私”の脚を追い、または胸元にくぎ付けになったりしているのがすぐわかる。
本当に楽しいわぁ。

でたらめインタビューのネタも尽き、視線を楽しむのもそろそろやめにしなくてはならない。
“私”の目的を果たさなくてはね。
“私”は立ち上がって博士に丁寧に礼を言うと、そのままカーマギリー様と分離する。
この何とも言えない自分の半分が失われるような切なさ。
あらためて私がカーマギリー様の一部であるということが再認識される。
もう私はカーマギリー様なしではいられないわ。

「ぐわーー!」
カーマギリー様の右手のカマが一閃し、博士の躰を引き裂いていく。
血しぶきが飛び散り、哀れな紳士は絶命する。
「クキキキキ・・・ゴリグランの邪魔者は死あるのみだ」
カーマギリー様が死体を見下ろして笑っている。
「うふふふふ・・・」
私も思わず笑みが浮かんでしまう。
カーマギリー様の言う通りよ。
下等な地球人のくせにゴリグランの邪魔をしようなどとは愚かなこと。
私のように躰を使っていただけるのは本当に幸せ者なんだわ。

私は部屋の窓を開けると、すぐにカーマギリー様の前に立つ。
するとカーマギリー様が私の躰の中に戻ってくる。
「クふふふふ・・・」
これで私はまた“私”に戻ったわ。
なんて気持ちがいいのかしら。
何度感じても最高だわ。

“私”はその場で床に倒れて気を失ったふりをする。
すぐに外からバタバタと音がして、何人かが部屋に入ってきた。
「何が? うわっ!」
「博士! 博士!」
「救急車! 救急車を呼べ!」
「君! 君! しっかりしたまえ!」
研究所の所員たちが“私”を揺さぶり起してくる。
ほかにも救急車を呼んだり博士に声をかけたりしているようだが、もう遅いわ。
「う・・・うーん・・・あっ、きゃぁぁぁぁ!」
“私”は目を覚ましたように見せかけ、多少大げさに悲鳴を上げる。
「大丈夫か? 何があったんだ?」
「あ・・・ば、化け物が・・・化け物が突然窓から入ってきて・・・」
「なんだって?」
“私”を抱え起こした所員が窓から外を確認する。
「誰もいないぞ」
「本当です! 本当なんです!」
“私”は躰を抱えるようにして大げさに震えてみせる。
クふふふふ・・・
こうして演技をするのもなんだか癖になりそう。

「とにかく君はここにいたまえ」
「はい・・・その前にちょっと吐きそうなのでトイレに行っていいですか」
「ああ、行ってきなさい」
“私”は所員に頭を下げ、トイレに行くふりをして隙を見つけて建物から出る。
玄関には救急車が到着し、パトカーのサイレンも聞こえてくる。
おそらくはストームチームも駆けつけるに違いない。
クふふふふ・・・
愚かな連中だわ。
せいぜいいなくなった怪物を探し求めるのね。

“私”は何食わぬ顔で通りを歩き、アジトへ戻るための転送場所へと向かう。
転送そのものはどこでもできないことはないけど、やはり地球人の目の前で転送するのは問題だからだ。
できるだけ人目につかないところへ行き、そこからアジトに戻るのだ。

「美穂(みほ)? 美穂じゃないか?」
「えっ?」
“私”は思わず振り向いてしまう。
「美穂・・・美穂だろ?」
“私”を呼び止めたのはビジネススーツ姿の地球人のオスだった。
あ・・・
あな・・・た・・・
“私”の中の記憶が呼び起こされる。
二週間ほど前まで一緒にいた“私”のつがいのオスがそこにいたのだ。

「美穂・・・美穂・・・どうしていなくなって・・・」
このオスは“私”を以前のままの私だと思っているんだわ。
それに、“私”の中の私にもこのオスを好ましく思っているところがまだ残っているみたい。
だが・・・このオスに“私”が以前の私とは違うと感づかれて騒がれたりしても面倒だわ。
どうしたものかしら・・・

「美穂・・・何か言ってくれ・・・美穂」
まるで懇願するかのように“私”に詰め寄ってくる地球人のオス。
このような人目のあるところで注目を浴びるのは得策ではない。
「あ、あの・・・人違いだと思います」
“私”はこの場を切り抜けようと、このオスとは無関係を装うことにする。
“私”の中の私がちょっとだけ何か反応するが、今はそれを押し殺す。
「えっ? 人違い?」
驚いたように“私”の顔を見る地球人のオス。
名前は七斗佑士(ななと ゆうじ)といったか。
おとなしくこれで引き下がってくれればいいが。

「はい。“私”は五里ちひろと言います。美穂じゃありません」
“私”は先ほど尾倉博士に渡した偽の名刺を取り出してみせる。
「そんな・・・そんなに似ているのに・・・」
“私”の名刺を見て愕然としている佑士。
これで納得してくれただろうか。
だが、なんだ・・・
“私”の中で何かが・・・
胸が痛い・・・

がっくりと膝をつく佑士。
「大丈夫ですか?」
思わず“私”は彼に声をかける。
「ああ、はい。大丈夫です。あなたがあまりに妻に似ていたもので」
よろめくようにしながらも立ち上がる彼。
「妻に?」
「はい。実は妻が先日から行方不明になっていまして・・・」
どくん・・・
“私”の心臓が跳ね上がる。
“私”の中の私が反応しているというのか?

「行方不明?」
「はい。先日家の近所でゴリグランが現れたらしいのですが、その時以来行方不明なのです」
「そうなのですか・・・」
“私”は彼の言葉にうなずく。
どうしたというのだ・・・
このような地球人のオスは放って、早く転送場所に行かなくてはならないのに・・・

「ははっ・・・あなたを見たときに美穂がいた、美穂が無事だったと思い込んで思わず声をかけてしまいました。すみません」
「いえ・・・そんな・・・」
似ているなんて当然だ。
それはつい先日までの私なのだもの。
くそっ・・・
どうしてこんなに離れがたい・・・
いっそこいつは始末するべきなのか?

「でも、確かに別人と言われて納得です」
「えっ?」
どういうこと?
「その・・・うまく言えないんですけど、妻とは雰囲気が違うんです。やっぱり違うものなんでしょうね」
「雰囲気が・・・」
なんだか胸が痛い。
“私”が私ではないと言われ、ちょっとショックを受けているというのか?
“私”は・・・私?

「どうもすみませんでした。お時間を取らせてしまってごめんなさい」
そういって彼は立ち去ろうとする。
あ・・・
「あの・・・」
どうした?
“私”は何を言おうとしているんだ?
「“私”・・・このあと少し時間があるんです。よかったら少しお話しませんか?」
“私”はにっこりと笑顔を浮かべていた。

                   ******

「ん・・・んん・・・んちゅ・・・」
どうしてこんなことになっているのか?
“私”はいつしかラブホテルとやらで、彼の交尾器官、チンポとやらを口にくわえて舐めしゃぶっていた。
いったい何をやっているというの?
どうして“私”がこんなことを?
でも、“私”の中の私が喜んでいる。
彼のチンポをおいしく感じている“私”がいる。
“私”はオスのはずなのに・・・

仕方ないのよ・・・
これは今後の作戦のため・・・
だって、彼が今後も妻を探そうとするなら、もしかしたら“私”の正体に気づいてしまうかもしれない。
そうなったらストームチームに通報されてしまうかもしれないわ。
だから、ここで彼の口を封じてしまわなくてはならないのよ。
それに・・・
あんながっかりした彼の姿を見たら、そのままにはしておけなかったのよ・・・

「ち、ちひろさん・・・だ、だめだよ。で、出ちゃう・・・」
「ん・・・いいの・・・出して。“私”の口の中にたっぷりと」
“私”はさらに喉の奥まで彼のものをほおばっていく。
クふふふふ・・・
なんだかおもしろい。
“私”の口でこんなに感じてくれているなんて・・・
これまた癖になっちゃいそう・・・

「あ・・・ああ・・・」
“私”の口の中に飛び出してくる大量の精液。
“私”はそれを余さず飲み込んでいく。
クふふふふ・・・
なんだか変な気分。
オスと交わるというのも悪くないわね。

「ちひろさん・・・」
「今日はここまで。奥さんには秘密よ」
“私”はいたずらっぽくウィンクする。
「あ・・・ああ・・・」
うなずく彼。
ダメだわ・・・
彼の口を封じるなんて・・・
“私”には無理・・・

                   ******

「えっ? 何?」
“私”をかばおうとした軍服姿の女を、“私”は後ろから羽交い絞めにする。
「あ、あなたはいったい?」
「クふふふふ・・・罠にかかったわね、ストームチームの司令官智田梓(ちだ あずさ)」
「そ、そんな・・・あなたもゴリグランの?」
“私”に押さえつけられて愕然としている梓司令。
ストームチームの司令官であり、頭脳である彼女も、しょせんは下等な地球人のメスにすぎない。
“私”がちょっとゴリグランに襲われているという演技をしただけでこのざまだ。

「ええ、そうよ。“私”はゴリグランの一員。でも恐れることはないわ。あなたも運が良ければすぐにゴリグランの一員になれるわよ」
“私”はじたばたともがく梓司令を後ろから羽交い絞めにして、身動きができないようにする。
「ギシュシュシュシュ・・・そのまま押さえつけておいてくれ。こいつの躰は俺が戴くぜ。ギシュシュシュシュ」
梓司令の前にはゴリグランの仲間であるゴキローチがいて、彼女と合体しようとしているのだ。
うまくいけば彼女の躰を使って、ストームチームの本部に潜入できるかもしれない。
運任せともいえる合体だが、試してみる価値はあるだろう。
ダメならダメでも構わないのだ。

「いやっ! いやぁぁぁぁっ!」
梓司令の躰にゴキローチが潜り込んでいく。
クふふふふ・・・
このままうまくいくといいわね。
さあ、ゴキローチと一つになりなさい、梓司令。

「キシュ・・・キシュシュ・・・キふふふふ・・・もう手を放してもいいぜ。じゃない、いいわ」
“私”はゆっくりと手を放す。
「キふふふふ・・・どうやらうまくいったようだな。智田梓と俺は一つになったというわけね」
自分の手を見つめながら笑みを浮かべている梓司令。
これで彼女もしばらくすれば、ゴキローチに躰を使ってもらえる喜びを感じるようになるわ。
「おめでとうゴキローチ。いえ、ストームチーム司令官智田梓」
「ありがとうカーマギリー。いえ、五里ちひろさんだったかしら?」
“私”の方に振り返り、ニヤリと笑う梓司令。
「この姿の時は五里ちひろでも七斗美穂でもどっちでもいいわ。まあ、あのオスの前では五里ちひろで通すけど」
どうせ作戦で必要だったから付けただけの名前だけど、あのオスの前ではちひろで通さないとね。
「そうなの? まあ、地球人の名前なんてどうでもいいわね」
「あら、そうでもないわよ。潜入にはその名前が大事なんだから、しっかり自分のものにしなさい。もっとも、その躰のほうでちゃんと反応してくれると思うけど」
まあ、“私”の場合はそう名前を呼ばれる状況もなかったけどね。

「だから、しっかりとその躰をかわいがって、ちゃんとしつけてあげなさい。そうすれば躰の方でも協力してくれるようになると思うわ」
「キふふふふ・・・そうみたいね。もうだいぶ抵抗する気もなくなってきたみたいだし、ストームチームの本部の様子も問題なくわかるようになってきたわ。それどころかだんだんと自分の手でストームチームを滅ぼすのが楽しみに感じ始めているみたい」
自分の躰をあらためて見つめている梓司令。
彼女もきっと躰を使われる楽しさと、地球人を騙すことができる快感を感じ始めているんだわ。
クふふふふ・・・
「それじゃあとはよろしくね。楽しんでくるといいわ」
「ええ。しっかりと楽しんでくるわね。キふふふふ・・・」
“私”はゴキローチと一体化した梓司令に手を振ってその場を後にする。
ストームチームも風前の灯火かしら。
さて。
“私”のお楽しみはこれからね。

                   ******

“私”はある家の玄関の呼び鈴を押す。
すぐに玄関の扉が開いて、地球人のオスが一人顔を出す。
「あ・・・ちひろさん・・・」
「クふふふふ・・・来たわよ、佑士さん」
“私”はそのまま彼を押しのけるようにして上がり込む。
ここはかつての“私”の家。
勝手知ったるなんとやらだわ。
さあ、たっぷりと楽しまなくちゃね。

「あ・・・ああ・・・ちひろ様・・・」
素っ裸で“私”の足元に寝転がり、“私”を様付けで呼んでいるオス。
そのそそり立つチンポとかいう交尾器官を、“私”は網タイツを穿いた足でしごいてやる。
クふふふふ・・・
“私”の足の裏でチンポがぴくぴくしているわ。

「いやらしいオスねぇ。“私”の足に踏まれてチンポをぴくつかせているなんて。あんたちょっと変態じゃないの?」
“私”がそういうと、オスはますますチンポを硬くする。
地球人とは奇妙なものだ。
バカにされているような言葉を言われているのに、まるで喜んでいるようだわ。
クふふふふ・・・
気持ちいい・・・
地球人のオスをこうやってしつけるのも悪くないわねぇ。

素っ裸なオスと比べ、“私”は太ももまでの網タイツを穿き、黒いコルセットで躰を締め付ける。
胸と股間があらわになるので、必要な部分を隠していないような気もするが、それがオスを喜ばせるのだ。
両手には黒い手袋を嵌め、短めのムチをしならせている。
これでたたくとオスはひいひい言いながらも喜ぶのだ。
まったく地球人のオスは面白い。
もっともっといじめたくなるわぁ。

「ねえ、変態さん。こうしていじめてくれる“私”と、いなくなってしまった奥さんと、どっちがあなたに必要かしら?」
「ああ・・・あああ・・・ちひろ様・・・ちひろ様です」
“私”にチンポを足でしごかれながら、“私”の名前を連呼するオス。
「クふふふふ・・・それじゃ、もう奥さんのことを探すのはやめて、“私”に従いなさい。いいわね?」
「は、はいぃ・・・もう妻は探しません。ちひろ様に従いますぅ・・・」
こくこくとうなずきながら、オスは今にもはち切れそうなチンポをぴくつかせている。
「いい子ね。それじゃご褒美よ」
“私”は足を前後させ、オスのチンポをさらに踏みつけるようにしてしごいてやる。
「あ、あひぃぃぃ」
すぐにオスのチンポからは白い交尾液が飛び出して、“私”の足の裏をぬるつかせた。
「もう出したの? 早いのね。汚れたわ。舐めなさい」
“私”は交尾液のついた足の裏をオスの顔に押し付け、舌で舐めさせる。
オスの舌が網タイツ越しに足の裏を舐めてくすぐったい。
ああん・・・
なんて気持ちがいいのかしら。
最高だわ。
地球人のオスをメスとしてしつけるのって最高。
これからはもっと多くのオスをしつけていこうかしら。
きっとたのしい毎日になりそうね。
クふふふふ・・・
“私”は自分の指を唇に這わせ、この快楽に身悶えした。

END

いかがでしたでしょうか。
よろしければコメントなどいただけますと嬉しいです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/08/02(金) 21:00:00|
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正義戦隊に追われた怪人がうちに逃げ込んできた人妻

先日ツイッターで、ふと「正義戦隊に追われた怪人がうちに逃げ込んできたんだけどという人妻」とつぶやきましたところ、フォロワーさんのHowling様が反応してくださり、アイデアが一本浮かんだとおっしゃってくださいましたので、それならいっそ二人でこのつぶやきを基にしたSSを書きませんかと提案させていただきました。

するとHowling様もご快諾くださりまして、期せずして同じツイートを基にしたSSの競作という形が出来上がり、このたびそのSSが完成しましたので投下させていただきます。

タイトルはそのまま「正義戦隊に追われた怪人がうちに逃げ込んできた人妻」です。
なお、Howling様の作品はこちら(正義戦隊に追われた怪人がうちに逃げ込んできた人妻)になりますので、ぜひご覧いただければと思います。

それではどうぞ。


正義戦隊に追われた怪人がうちに逃げ込んできた人妻

「うーん・・・」
私は曲げていた腰を伸ばして背伸びをする。
まだ午前中だというのに暑いわぁ。
さすがにもう夏ねぇ。
外はぎらぎらと太陽が照り付けているようだし。
これは洗濯物もすぐに乾きそうねぇ。

私は洗濯を終えた洗濯物をかごに入れ、庭の物干し竿のところへ持って行って干していく。
くわー、まぶしい。
お日様が一杯ねぇ。
これなら乾燥機で乾かすよりも早く乾いてふわふわになってくれそうだわ。

一通り洗濯物を干し終わり、かごを片付けていると、表の方からパトカーのサイレンの音が聞こえてくる。
何か近くで事故でもあったのかしら?
『・・・要不急の外出は控え、戸締りをして充分にご注意ください。何か異変を感じましたら・・・』
サイレンと一緒にスピーカーで何か言っているみたい。
外出を控えて戸締りを?
どういうことなのかしら?
もしかして?

私はすぐにテレビをつけてみる。
いつもならワイドショーをやっている時間なのに、今はニューススタジオが映し出された。
「付近の方は充分にご注意ください。繰り返します。先ほど市内東方の市民公園付近でゴリグランの集団が出現いたしました。通報によって駆け付けたストームチームによって集団は撃退されましたが、その際怪人の一体が逃走し、なお付近に潜伏中とのことです。現在ストームチームと警察が協力して逃げた怪人を追跡しておりますが、公園付近の方は戸締りを厳重にして充分にご注意ください」
大変だわ。
市民公園と言ったらこの近くじゃない。
さっき何か騒いでいると思ったらそういうことだったのね。
子供達でもはしゃいでいるのだと思っていたわ。

私はすぐに開けっ放しになっていた庭へのガラス戸を閉じようと思い、急いでそちらへ向かう。
だが遅かった。
「ひっ!」
私は思わず立ち止まる。
そこには奇怪な巨大カマキリのような化け物が立っていたのだ。
緑色の外骨格に覆われ、三角形の頭部には巨大な複眼が輝き、右手にはカマキリのカマが鋭い先端を見せている。
人間とカマキリが融合したような化け物。
テレビで言っていたゴリグランの怪人がここに?

「クキキキキ・・・地球人のメスよ、騒ぐな!」
思わず助けを求めて悲鳴を上げようとしていた私は、何も言えなくなってしまう。
カマキリ怪人のカマが私の喉元に突き付けられたのだ。
「騒いだら殺す。いいな? クキキキキ・・・」
私は無言でうなずくしかない。
ああ・・・どうしてこんなことに・・・
誰か助けて・・・

私は外から見えないように庭に通じるガラス戸を閉じてカーテンを閉める。
カマキリ怪人にそうしろと言われたからだ。
ガラス戸を閉める時に声を出そうかと一瞬考えたものの、隣の家は昼間は留守だし、庭から逃げ出そうにも柵を超えなくてはならない。
その間にカマキリ怪人に殺されてしまうだろう。
今はおとなしくして、助けを待つしかないと思う。

「クキキキキ・・・よし、おとなしくしていれば殺しはしない。やつらの警戒が緩み、転送装置の故障が直れば引き上げてやる」
「は、はい・・・」
カマキリ怪人がリビングのソファに腰を下ろしてそういう。
どうやらすぐに殺される心配はなさそうだわ。
でも・・・
これからどうしたらいいの?

「あ・・・あの・・・」
「クキキキキ・・・なんだ?」
「か、買い物に行っても・・・」
せめて外に出られれば・・・
「ダメだ」
カマキリ怪人が首を振る。
やっぱり・・・
行かせてくれるはずがないとは思ってはいたけど・・・

『・・・は控え、戸締りを厳重にして・・・』
「ちっ、しつこいやつらだ」
外ではパトカーのサイレンの音とスピーカーからの声が流れている。
今なら警察に助けてと言えば助かるのでは・・・
私はそっと玄関の方へと近づいていく。
何とか気づかれずに・・・
「クキキキキ・・・おとなしくしていろと言ったはずだ。おかしな真似をするな」
カマキリ怪人の複眼がぎろりと私をにらんでくる。
やっぱりダメだわ・・・
これじゃ逃げるのは無理・・・
どうしたらいいの?

「ひゃぁっ!」
どきんと心臓が跳ね上がる。
いきなり我が家の玄関の呼び鈴が鳴ったのだ。
誰かが来たらしい。
私は出ていいかどうかカマキリ怪人の方を見る。
「クキキキキ・・・ちっ、奴らめ、まさか一軒一軒回っているのか?」
「ど、どうすれば?」
ああ・・・お願い・・・私に行かせて・・・
そうすれば玄関から逃げ出せるわ・・・

「よし、出ろ。おかしな真似はするな」
「は、はい」
私は玄関へ行こうと振り向く。
「いや、待て。あれを試してみるか。今までやったことはないが・・・」
「えっ?」
ソファから立ち上がり、立ち止まって振り向いた私の方へとやってくるカマキリ怪人。
そしてそのまま、私を壁に押し付けてくる。
「な、何を!」
私が悲鳴を上げる間もなく、カマキリ怪人の躰が私の中にずぶずぶとめり込んでくる。
えっ?
えええええ?
な、何?
何なの?
私の躰、どうなっているの?

カマキリ怪人の躰がすっかり消え去ると、私は何事もなかったかのように玄関へと向かう。
えっ?
私の躰が勝手に?
ど、どうなっているの?
「クキキキキ・・・いや、うふふふふ・・・だな」
私の口が勝手に言葉を紡いでいく。
どうして?
私じゃない。
私がしゃべっているんじゃないわ。

「はい。どなたですか?」
玄関のドアを開ける“私”。
やや出るまでに時間がかかったせいか、留守だとみなして隣の家に行こうとしていたのであろう警官二人と若い男性一人が足を止める。
あれは確かストームチームのストームブルー。
厄介なやつがいるな。
「ああ、いらっしゃいましたか。お留守かと思いました」
「ごめんなさい。ちょっと着替えていたものですから」
“私”がすらすらと返事をする。
そんな・・・
私が言ったんじゃないわ。
助けて!
私の中にカマキリ怪人がいるの!
お願い!
わかって!

「そうでしたか、こちらこそすみません。実はこの近辺にゴリグランの怪人が潜伏していると思われる状況でして。何か変わったこととかそれらしいものを見たとかありませんか?」
若い男性、ストームブルーが“私”に問いかける。
クキキキキ・・・
すっかりこの外見に騙されているようだな、ストームブルーめ。
えっ?
今私は何を?
これはカマキリ怪人の意識なの?
そんな・・・
いやぁっ!
助けてぇ!
私は必死に叫ぼうとするが、まったく声が出せない。
それどころか、このことに気が付かないストームブルーが愚かにさえ思えてくる。
どうして?
どうして気が付いてくれないの?
下等な地球人め・・・

「いいえ、何も。もしなんでしたら、家の中を確認なさいますか?」
大げさにドアを広く開け、家の中を見せるようにする“私”。
ストームブルーは一応家の中をちらっとは見るものの、すぐに首を振る。
「いえいえ、それには及びません。もし何かありましたら、すぐに警察なりストームチームの本部なりに知らせてください。いいですね」
「はい、わかりました。ご苦労様です」
“私”はにっこりと微笑み、ストームブルーたちに頭を下げる。
そして彼らが立ち去るのを見てドアを閉めた。
うふふふふ・・・
うまくいったわ。
すっかりこの姿に騙されたようね。
“私”はドアにもたれたまま思わず笑ってしまう。
この躰はなかなかいい。
アジトの転送装置が回復するまで、しばらくこの躰で過ごさせてもらうとしよう。
うふふふふ・・・クキキキキ・・・

“私”は部屋に戻ると、どさっとソファに座り込む。
なんだかさっきまであんなに怖がっていたのがバカみたい。
クキキュふふ・・・
こうしてみると、“私”って結構おっぱい大きいのね。
脚だってすらっとして悪くない感じだし。
“私”は両手でおっぱいを持ち上げ、脚を組む。
この躰、メスの躰だが悪くないわぁ。

髪をかき上げたり、唇に指を這わせたり、脚を組みなおしたり、おっぱいをゆすってみたりとひとしきり自分の躰を楽しんだ後、“私”は立ち上がって鏡に向かう。
クふふふふ・・・
“私”ってこんないやらしい顔をしていたのね。
この顔と躰なら、ほかにももっと地球人を騙せそう。
なんだかこうやって地球人を騙すのも楽しそうね。

“私”は冷蔵庫から缶ビールを取り出して一口飲む。
冷たいのど越しが気持ちいい。
そう言えばこれは誰のために買ってあったんだっけ?
このメスのつがいのオスのため?
クふふふふ・・・
そんなオスのことはもうどうでもいいか。
とりあえずストームブルーはうまくごまかせたみたいだし、あとはアジトに戻るだけ。
まあ、将軍には怒られるかもしれないけど、あんな行き当たりばったりの作戦を考える将軍が悪いのよ。
って・・・作戦の良し悪しがわかるなんて、なんだか“私”頭がよくなったのかしらね。
“私”と一つになったからかしら。
あー、ビールが美味い。

それにしても、転送装置が故障したと言われた時にはどうしようかと思ったが、こうして地球人と合体するという実験もできたし、結果オーライといったところかしら。
あん・・・
もうビールが空になったわ。
冷蔵庫の中にももうなさそうだし・・・
そうだ。
ちょっとこの躰で外に出てみよう。
クふふふふ・・・
面白そうだ。

“私”はこれまで着ていた衣服を脱ぎ捨てる。
これが“私”の裸か・・・
地球人のメスというのは面白くも美しい姿をしているものだわ。
クふふふふ・・・
さて、“私”はどんな衣装を持っていたかしらね。

“私”は寝室のクロゼットからなるべくオスの目を惹きそうなものを選んでいく。
元の“私”の知識がこういう時には役に立つわ。
それにしてもあんまりそういうオスの目を惹きそうな衣装は持っていないのよね。
今度用意しておかなくちゃ。
って、今度があるのか?
またこうして“私”が一つになる?
クふふふふ・・・
それも悪くないかもね。

とりあえず“私”は太ももまでのガーターストッキングと黒の下着を身に着け、胸元が開けられるシャツとタイトスカートを穿いてみる。
鏡に映る“私”はなかなかのもので、これならオスの目を惹きつけるぐらいはできそうだ。
“私”はそのまま玄関に行くと、かかとの高い靴を履いて外に出る。
あれからもう小一時間は経っているからか、どうやらパトカーのサイレンも遠くで鳴っているだけのようだ。
どうやら特に怪しまれてもいないようだな。
クふふふふ・・・

                   ******

「ふう・・・これは面白いな。クふふふふ・・・」
“私”は買ってきた缶ビールを冷蔵庫に入れ、そのうち一本を開けて口にする。
「このビールというものもうまい。地球人はいいものを飲んでいる」
“私”はソファに腰を下ろし、再度ビールを喉に流し込みながら、先ほどまでのことを思い出す。
それは本当に滑稽な情景だ。
“私”が何者かも知らずにこの姿に見惚れるオスたちの多いこと。
地球人のオスに懐かれても面白くもなんともないはずなのに、どうやら“私”としてはまんざらでもない気分になる。
変な気分になりそうだわ。

それにちょっと声をかければすぐに言うことを聞いてくれそうなオスも多く、今後の作戦に生かせそうな気がしないでもない。
今回の作戦は失敗だったが、この成果を持って帰れば、将軍もそれなりに満足してくれるのではないだろうか。
地球人との合体は今後も試してみる価値があるだろう。
クふふふふ・・・

おっと、将軍がお呼びのようだ。
どうやら転送装置も回復したらしいな。
さて・・・

あっ・・・
気が付くと私の目の前にはカマキリ怪人が・・・
いえ、ゴリグランのカーマギリーが立っている。
「クキキキキ・・・お前には楽しませてもらったぞ。だから殺さないでおいてやる」
右手のカマが私の顎を持ちあげ、その大きな複眼が私を見つめてくる。
あ・・・
何?
この気持ちは・・・
「行ってしまう・・・のですか?」
私は何を言っているのだろう?
さっさと出て行ってほしいはずではなかったのか?
ゴリグランの・・・怪人なんて・・・

「クキキキキ・・・当然だ。私はアジトに戻るわ・・・と、お前のせいで口調がおかしくなったではないか」
苦笑するように口を開け、首を振るカーマギリー。
「あの・・・あの・・・」
私は・・・
私は何を言おうとしているの?
私は・・・
なんで?
なんでこんなに喪失感を感じているの?
いや・・・
いやよ・・・
分離してしまうなんていや・・・

「私も・・・私も連れて行ってください。お願い・・・私も一緒に・・・」
言ってしまった・・・
私はどうしてしまったのだろう・・・
でも・・・
でも・・・

「クキキキキ・・・どうした? さっさと出て行ってほしいのではなかったか?」
「それは・・・その・・・あなたと一つになるのがとても気持ちよくて・・・中身があなたなのに全く気が付かないバカな地球人を見るのが楽しくて・・・もっと・・・もっとあなたに私の躰を使ってほしい・・・」
私はそっとカーマギリーに近寄ってもたれかかる。
そう・・・
私は彼と一つになりたい。

「クキキキキ・・・そうか、いいだろう。俺も・・・いや私もお前の躰は気に入った。来るがいい」
「はい」
私はそのまま顔を上げ、彼を受け入れるようにする。
再び彼の姿が私の中に潜り込み、私はもう一度“私”となる。
「クふふふふ・・・では行くとしようか」
ニヤリと笑みを浮かべる“私”。
はい。
私は“私”に心の中でそう答え、アジトへの転送を待つ。
さようなら、今までの私。
そして、新たなる“私”が歩み出す。
クふふふふ・・・

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントなどいただければと思います。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/07/28(日) 23:10:00|
  2. 洗脳・戦闘員化系SS
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悪の歌

14周年記念シチュのみ超短編SSの二本目です。
タイトルは「悪の歌」です。
これも短い作品ではありますが、お楽しみいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


悪の歌

『またしてもトライデントファイターにしてやられたではないか! 愚か者め! 恥を知れ!』
「ハ、ハハァッ!」
壁に掲げられた奇妙な文様から流れ出る重々しい声に、思わず平伏する男。
その巨体をトゲだらけの鎧に収め、兜から覗く眼光は鋭いものの、その背中には冷たい汗が流れている。
大王様のお怒りはごもっともなのだ。
これまで何度となく魔獣を繰り出し地球制圧を目論んできたものの、そのすべてはトライデントファイターに倒されてしまっている。
戦闘員たちなどは数えることすらバカバカしくなる数だ。
これ以上の失態は彼自身の命すら危うくするだろう。
なんとしてもこの地球を大王様に献上せねば・・・
邪空結社ジャドーガンの地球制圧部隊長として派遣された彼、ドリーゴンとしての立場がないというもの。
何とかせねば・・・

「ふう・・・」
とりあえずそれ以上の叱責は免れたようで、ホッとして大王の前から下がってきたドリーゴン。
だが、これ以上何をどうすればいいのか、彼にも妙案があるわけではない。
強力な魔獣はこれまでも何回も送り出してきた。
中にはオメガ星を滅ぼした魔獣すらいたのだ。
だが、トライデントファイター連中を追い詰めはしたものの、結局は倒されるという結果に終わり、ドリーゴンを驚愕させた。
力だけでは奴らを倒すのは難しい。
そのことはドリーゴンとしても認めざるを得なかった。
ではどうすれば・・・

「お困りのようですなぁ、ドリーゴン閣下」
「むっ?」
苦悩の表情を浮かべていたドリーゴンが、声をかけてきた方へと振り返る。
そこには、胴体部分に四角いテレビモニターを備え、顔の部分が巨大なスピーカーの形をした頭部を持ち、右手の先にはマイクが付いているという奇妙な姿をした人物が立っていた。
「なんだ、誰かと思えばカラオーケンではないか。今は忙しいのだ。お前の歌など聞くような場合ではない」
ふんとばかりにカラオーケンから視線を外すドリーゴン。
ジャドーガンの宴会部長などと言われているカラオーケンごときが口を出すような問題ではないのだ。

「いやいや、ドリーゴン閣下。ちょっと我輩にアイディアがあるのですが」
いつもならへらへらと笑ってすぐに退散するであろうカラオーケンが、いつになく食い下がる。
アイディアだと?
「ふむ。よかろう。言ってみろ」
「ハハァッ。閣下もご存じとは思いますが、我輩の能力は他人に歌を歌わせること。我輩のモニターに歌詞を流し、我輩がマイクを向ければ、そのものは思わず歌ってしまうのです」
「そんなことはわかっている」
だからこそ、ジャドーガンの宴会部長などと言われ、歌いたくないものにも無理やり歌わせることで場を盛り上げさせることができるのだ。
「ですがそれだけではありません。我輩の能力は歌に合わせて歌った者の意識に刷り込みを行い、歌詞に合わせた行動をさせることもできるのです」
「なんだと?」
「例えばモニターに映る歌詞が『あなただけについていく』などというものだったらどうでしょう? その歌を歌った者は、我輩の後をついて歩くようになるのです」
「なんだと? なぜそんな能力があることを今まで黙っていたのだ!」
思わず声に力が入るドリーゴン。
「はあ、聞かれませんでしたので・・・」
確かにカラオーケンにお前の能力はどんなものだとは聞いてはいない。
だが・・・だからと言って・・・

「むう・・・まあいい。よし。やってみろ。お前の力でトライデントファイターを倒してみろ」
とりあえずやらせてみることにするドリーゴン。
「ハハァッ! ご期待あれ」
ドリーゴンに一礼してその場を去っていくカラオーケン。
その後ろ姿を見て、これはもしやひょっとすればひょっとするかもしれんとドリーゴンは思うのであった。

                   ******

「お疲れ様でしたー」
司令室を後にして、セキュリティチェックを抜け、地下駐車場に出る。
商業ビルの地下が地球を守るために拠点となっているとは、さすがにジャドーガンと言えども気付かないだろう。
とはいえ、油断は禁物。
あくまでも勤務を終えて自宅へ帰るように見せかけなくては。
トライデントイエローこと伊江路紗友里(いえじ さゆり)は目立たない一般的な軽自動車に乗り込み、地下駐車場を後にした。

トライデントファイターは三人のチームである。
それぞれ赤・青・黄色の三色のバトルスーツに身を包み、謎の侵略者ジャドーガン一味と戦っているのだ。
バトルスーツは特殊な布で作られており、装着者の身を守ると同時にその力を強化してくれる。
そのため、彼女のような女性であってもジャドーガンの魔獣と互角の戦いができるのだ。
また、どういうわけかバトルスーツには適性のようなものがあるらしく、スーツの能力を極限まで発揮させることができるのは女性に限られていた。
男性が着用しても、女性が着用するほどの能力強化とはならず、かえって女性が着用するより劣ってしまうため、現状トライデントファイターの三人は全員女性という状況だった。

「そうだ。帰る前に買い物していかなきゃ」
紗友里は車を総合スーパーに向ける。
食事は本部の食堂でも摂ることができるが、彼女とて女性。
スイーツの一つ二つは常備しておきたいものなのだ。
この総合スーパーには贔屓のスイーツ店がある。
自分へのお土産に買っていくとしよう。

「ふんふんふーん」
総合スーパーの駐車場に車を止め、鼻歌交じりで車を降りる。
時間も遅いせいか、駐車場はがらんとしてほかに車も数台しか止まっていない。
いつもなら閉店が近づくこの時間帯だと、値引きをされた売り切り商品を目当ての買い物客もいるのだが、ほかの客の姿もない。
何となく変だとは思いつつも、紗友里はスーパーへの入口へと向かう。
まあ、おそらく店内に入ればいつもと同じように客もいるのだろうと思いながら。

「ケヒヒヒヒ・・・お待ちしておりましたよ。トライデントイエロー」
駐車場の柱の陰からヌッと姿を現す人影。
いや、それは人間ではなく、異形の存在だった。
ぱっと見は太めの人間のようだったものの、胴体部分には四角いテレビモニターがあり、頭部も顔の部分が大きなスピーカーになっている。
右手の先はマイクになっており、それを彼女の方へと差し出していた。
「なっ! ジャドーガン!」
すぐさま飛びのいて身構える紗友里。
まさかこんなところで待ち伏せされるとは・・・

「おおっと、そんなに身構えることはありませんよ。我輩はただ単にあなたにカラオケを歌ってもらおうと思ったまでなのですから」
「か、カラオケぇ?」
紗友里は一瞬あっけにとられる。
カラオケを歌ってもらおうとはいったい何の冗談なのか?
確かにこいつは今まで見たこともないやつだ。
これまでの魔獣とは全く違う。
それに言われてみれば、確かにカラオケの機械のような姿もしている。
だからと言って・・・

「我輩はジャドーガンのカラオーケンと申す者。見ての通りカラオケが大好きな者でしてな。ぜひ一度、トライデントファイターの歌声を聞いてみたかったのですよ」
両手を広げるようにして敵意はないと言いたげなポーズをとるカラオーケン。
だが、油断はできない。
相手はジャドーガンの一員なのだ。
これも相手の作戦かもしれない。
そう思った紗友里は、ひとまずバトルスーツの装着をしようとした。

「おっと、そうはさせませんよぉ。音楽スタート!」
カラオーケンの胴体のモニターが映像を映し出し、顔のスピーカーが音楽を流し出す。
「えっ? なっ!」
その音楽を聴いた途端、紗友里の躰はピタッと止まり、目は自然とモニターの方へと引き寄せられた。
「ど、どうして?」
やがて前奏が終わり、モニターに文字が表示され、その文字が流れるように色が変わっていく。
全く見たこともない文字なのに、紗友里の脳にはその文字が日本語のように見え始めてくる。
「ああ・・・わた・・・しは・・・」
カラオーケンの右手のマイクが口元に差し出され、紗友里の口が勝手に言葉を紡いでいく。
「そうそう。いいですよぉ。しっかり心に染み入るように歌ってくださいねぇ」
「あな・・・たの・・・とりこ・・・そのすがた・・・みるだけで・・・こころがはずむ♪」
だんだんと言葉が歌になっていく。
それと同時に紗友里の目もとろんとうっとりとしたものへと変化する。

「ああーわたしはーあなたのーとりこー♪ あなただけにーみをまかせーすべてささげるー♪」
やがてモニターの文字を目で追いながら大きな声で歌い始める紗友里。
「そうですよぉ。あなたは我輩のとりこなのですよぉ。ウヒヒヒヒ・・・」
一曲歌い終わるころには、もう紗友里はトライデントイエローに変身しようなどとは思わなくなっていた。
もっともっと歌いたい。
彼のカラオケでもっと歌いたい。
そう思うようになっていたのだ。

「どうです? もっと歌いたいですか?」
「はい。歌いたいです」
こくりとうなずく紗友里。
「では、我輩と来るのだ。よいかな?」
「はい・・・私はあなたのとりこ」
うっとりとした表情を浮かべ、カラオーケンに従う紗友里。
二人の姿はやがてかき消すように駐車場から消えていった。

                   ******

「ぜんうちゅうーすべてはだいおうさまにー♪ いだいなーだいおうさまとーわたしはあゆむー♪」
薄暗い一室にスポットライトが輝く中で紗友里の歌声が響く。
その目はモニターに映る文字を見つめ、音楽に合わせて躰を揺らしている。
その歌詞は彼女の心の中に染み込み、彼女の意識を変えていく。
「いい声ですねぇ。歌うのはとても楽しいでしょう?」
「はい、カラオーケン様。すごく楽しいです。なんだか自分が生まれ変わっていくような感じです」
一曲を歌い終え、にこやかにほほ笑む紗友里。
汗を拭き、用意されたドリンクを味わう。
「いいですねぇ。ではもう一曲歌いましょう」
「はい。カラオーケン様」
スッと再びカラオーケンの右手のマイクの前に立ち、モニターの映像とスピーカーからの音楽を待ち望む紗友里。
やがて前奏が流れ出し、人間たちが逃げ惑う映像が流れ出す。
「おろかなーちきゅうじんー♪ かとうなーおまえたーちー♪ われらがだいおうのしはいをうけよー♪ はむかうものはみなごろしー♪」
紗友里は楽しそうに躰を動かし、大声で歌い続ける。
その目はモニターを見つめ、その光景を当然のものと感じるようになっていた。
「わたしはーだいおうさまのしもべー♪ いだいなるーじゃどーがんのーいちいんなのー♪」

いったい何時間歌い続けているのだろう?
もう喉は枯れ、疲れ果ててもいいはずなのに、一向にそんな気配はない。
むしろもっともっと歌いたくなる。
カラオーケン様の歌を歌い、ジャドーガンの一員となる。
もっともっと・・・
いつしか紗友里は衣装を変えていた。
普通のOLのようなタイトスカートのスーツから、黒い躰にぴったりしたレザーのレオタードへ。
両腕には黒革の長手袋をはめ、両脚にはこれも黒革の膝までのロングブーツを履いている。
これはステージ衣装。
ジャドーガンの歌を歌うのにふさわしい衣装なのだ。
それがなんだか紗友里にはうれしかった。

                   ******

「ドリーゴン閣下」
「ん?」
次なる作戦のための新たなる魔獣の生成を命じ終え、ついさっき謁見の間兼司令室に戻ってきたドリーゴンにカラオーケンが声をかける。
その背後には黒革のレオタードを着た紗友里が付き従っていた。
「新たなるジャドーガンのメンバーを連れてまいりました。サユリよ、ドリーゴン閣下にご挨拶を」
「はい、カラオーケン様」
そう言ってうなずき、前に進み出た紗友里は、ドリーゴンの前で片膝をつく。
「ドリーゴン閣下。私はサユリ。偉大なる大王様及び邪空結社ジャドーガンに心から忠誠を誓います」
「こ、これは!」
モニター越しで見ていた憎き敵、トライデントイエローこと伊江路紗友里が彼の足元にひざまずいているではないか。
「クヒヒヒヒ・・・予想以上にうまくいきましたぞ、ドリーゴン閣下。どうやら地球人は精神的な支配には弱いようです。もはやこの者はすっかりジャドーガンの意識に染まりました」
ひざまずくサユリの後ろでスピーカーの形をした顔から笑い声を出すカラオーケン。
「うーむ、まさかこれほどとは・・・サユリよ、本当にお前はジャドーガンに忠誠を誓えるか?」
「はい。もちろんですドリーゴン閣下。私のような愚かで下等な地球人を大王様が取り上げていただいたことに感謝し、これよりはジャドーガンのために誠心誠意働くつもりです」
頭を下げて一礼するサユリに、ドリーゴンも満足する。
「うむ。ならば、ほかのメンバーも同じようにジャドーガンに加わるよう働きかけることはできるか?」
「もちろんです。きっとほかの二人もカラオーケン様とカラオケを歌えば、大王様の偉大さとジャドーガンのすばらしさに気が付くと思います」
顔を上げて目を輝かせるサユリ。
「では行くがよい。トライデントレッドとトライデントブルーの二人を我が下にひざまずかせるのだ」
「かしこまりました、ドリーゴン閣下」
サユリは一礼して立ち上がる。
そしてドリーゴンに背を向けると、カラオーケンとともに部屋を出ていくのだった。

                   ******

「なっ! ジャドーガンの一味?」
自宅に帰ってきたところに突然現れた異形の存在に驚く麻赤恵美(まあか めぐみ)。
まさかジャドーガン一味に自宅を知られているとは思わなかったのだ。
「クヒヒヒヒ・・・一曲歌いませんかぁ、トライデントレッド?」
「ど、どうして?」
相手が自分の正体までも知っていることに恵美は愕然とする。
これはどこかで情報が漏れたに違いない。
なんとしても司令やほかのみんなに知らせなくては。

「くっ」
とにかくこの場を切り抜けるには変身するしかない。
そう思い、ブレスレットに手を伸ばす恵美。
だが、その手をはねのけられてしまう。
「えっ?」
「だめですよ、恵美さん。せっかくカラオーケン様がカラオケにお誘いくださっているんですから、一曲歌いましょうよ。歌えばすぐに恵美さんもジャドーガンのすばらしさ、大王様の偉大さを知ることができますよ」
恵美は目を疑った。
そこにいたのはトライデントイエローの紗友里なのだ。
だが、いつもの紗友里ではない。
つややかな黒革のレオタードのようなぴったりした衣装を着て、太ももまでのロングブーツを履いている。
いつもの紗友里ならこんな衣装は絶対に着ないだろう。

「さ、紗友里?」
「ええ、サユリです。さあ、一曲どうぞ」
ぐっと肩をつかみ、強引に彼女を振り向かせるサユリ。
その目の前にカラオーケンの右手のマイクが差し出される。
「音楽スタート!」
軽妙な前奏がカラオーケンの顔であるスピーカーから流れ始め、その瞬間から恵美はその胴体にあるモニターから目を離せなくなってしまった。
「あ・・・ああ・・・わたしは・・・」
口が勝手に歌詞を紡ぎ始めていく。
そして歌詞がどんどんと恵美の心に浸透する。
「わたしはーあなたのとりこー♪」
やがて恵美は楽しそうに歌を歌い始め、その後彼らとともに姿を消した。


しばらくして、ジャドーガン一味に黒いバトルスーツを着た三人の女たちが現れ、地球人たちを恐怖に陥れた。
しかし、地球を守るべきトライデントファイターは現れてはくれなかった。

END

よろしければ感想コメントなどいただけますと嬉しいです。
今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/07/19(金) 21:00:00|
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私の仕事は教師です

14周年記念シチュのみ超短編SSの一本目です。
タイトルは「私の仕事は教師です」です。
短い作品ですが、楽しんでいただければ嬉しいです。

それではどうぞ。


私の仕事は教師です

「おはようございます、先生ー」
「おはようございまーす」
学園の校門をくぐる私に、生徒たちが朝の挨拶をしてくる。
まだ朝のホームルームにはかなりの時間があるが、早い生徒はもう学園に登校してくるのだ。
「おはよう。みんな早いのね」
私は生徒たちににこやかに挨拶を返す。
生徒たちも笑顔で私に頭を下げ、自分たちの玄関へと向かっていく。

私は教職員玄関から校舎に入ると、ロッカールームで身支度を整え職員室へと向かう。
そう・・・
私の仕事は教師。
さあて、今日も一日頑張りますか。
一時間目はどのクラスからだったっけ?
そんなことを考えながら職員室へ向かう私。

『な、なんなんですかあなたは? いきなりやってきて今日からこの学園は俺のものって、出て行かないなら警・・・うっ!』
えっ?
私は思わず学園長室の前で立ち止まる。
今のは何?
この中からだわ。
何かあったのかしら?

私はそっとドアを開けて中を見る。
正面にある重厚な学園長の机の前に、どうやら男の人が立っているようだ。
学園長ご自身はその男の人の影になっているようではっきりとは見えない。
男の人は右手を学園長の方に向かって伸ばしている。
一体何をしているのだろう?
学園長の声もしなくなったようだけど?

「学園長、何かありました?」
私は室内に入って学園長に声をかける。
そして応接用のソファーをよけて学園長に近寄った。
「ん?」
私の声に男が振り向く。
男は学園長に向かって手をかざしていたらしい。
何なんだろう?
そもそもこんな朝早くなのにこの男の人は誰なのだろう?

「ハッ! あっ、三竹(みたけ)先生。だめっ! 逃げて!」
なんだかぼうっとしていたような学園長が声を上げる。
「えっ? でも・・・」
私の目が学園長の方に向いた時、男の手が私に向かってかざされる。
「あっ、えっ?」
突然頭の中にもやがかかったようになって、何も考えられなくなってしまう。
いったいこれは・・・
何が・・・起こったの?

「ほう、さすがに名門女学園だ。教師もかわいいじゃないか。そこに座っておとなしくしているんだ。いいな」
「・・・はい」
私の口が勝手にそう答え、私は応接用のソファに腰掛ける。
な、なんで?
いったい私は?
「今から俺がこいつの心の地図を塗り替えるところを見ているんだ。次におまえにもしてやるからな」
「はい」
また私の口が勝手に?
心の地図?
塗り替える?
いったいどういうことなの?

「くっ! か、彼女には・・・」
「無駄だ。お前はもう立てない。動きは封じた。おとなしく俺のものになるしかないのさ」
学園長が苦悶の表情を浮かべながら椅子から立ち上がろうとしている。
でも立てないのだ。
おそらく学園長も私と同じように躰の自由が利かないのだろう。
私も立ち上がって何とかしようとは思うものの、躰は一向に立ち上がろうとしてくれないのだ。
いったい私の躰はどうなってしまったというの?

「マップオープン」
男が学園長の額に向かって手をかざす。
すると、学園長の額の上の空間に長方形の地図のようなものが浮き上がる。
まるで複数の色で塗り分けられた世界地図のようなものだ。
えっ?
何なのあれ?
どうしてあんなものが?

「こ、これは?」
目を丸くして驚いている学園長。
「これはお前の心の地図さ。お前の心の中で何がどれだけの範囲を示しているかがわかるというわけだ。例えばこの海のように広がっている水色の部分。これはお前の社会性や道徳心を示している。結構広い範囲に広がっているから、あんたは正しさや公正さを重んじる人なんだろう」
男が学園長に説明する。
私の位置からは斜めでやや死角になっているので男の詳しい表情まではわからないが、その口元にはゆがんだ笑みが浮かんでいるようだ。

「わ、私の心?」
「そうだ。この水色の部分をこうやって、俺に対する盲目的な服従と崇拝を示す黒に塗ってしまうとどうなるかな?」
「えっ?」
えっ?
学園長の声は私の声だ。
黒に塗る?
色を塗り替えるなんてできるというの?
この男はいったい何者なの?

男が右手の人差し指を、男が心の地図と呼んでいるものに置いてその表面をなぞっていく。
すると、水色の部分が指の動きに合わせて黒く染まっていく。
「はひぃ? あ・・・あああ・・・い、いや・・・」
学園長が突然目を見開いて苦悶の表情を浮かべる。
「が、学園長・・・」
私は必死に躰を動かそうとするが、躰は全く動いてくれない。
かろうじて声だけが出せたので、何とか学園長に声をかける。

わずかの間に地図からはすっかり水色の部分がなくなり、そこが真っ黒に塗りつぶされてしまう。
あれが本当に心の地図だったとして、塗りつぶされてしまったらどうなるの?
学園長はどうなってしまったの?
「学園長・・・」
私は再度か細い声しか出せない中で学園長を呼ぶ。
「はあ・・・はああ・・・」
苦しそうに肩で息をする学園長。
だが、すぐにその呼吸が落ち着いていく。
「はあ・・・はあ・・・ふふ・・・うふふふふ・・・」
学園長の顔に笑みが浮かぶ。
「学園長?」
「ああ・・・心配はいらないわ、三竹先生。もう大丈夫だから」
私に向かってほほ笑む学園長。
だが、その笑みがいつもと違うことに私は気が付いた。
何かとても冷たい笑みのように感じたのだ。

「どうかな? 俺の言うことがわかっただろう?」
「はい。あなた様はとても素晴らしいお方です。先ほどまでのご無礼をどうかお赦しください」
うっとりとした表情を浮かべて男を見上げる学園長。
まさか・・・そんな・・・
本当に心が塗りつぶされて書き換えられてしまったというの?
「ふふふふ・・・まあ、お前にはこれからいろいろと俺の手駒になってもらわなくてはな。ほかにもいくつか塗りつぶさせてもらうぜ」
「はい。どうぞご自由になさってくださいませ。私の心はあなた様のものです」
学園長のあまりの変化に私は愕然とする。
そんな・・・学園長が・・・
いったいどうしたら・・・

男は次々と学園長の心の地図を塗り替える。
家族に対する愛情を表すというピンクを無関心の白に。
学園の生徒たちに対する慈愛の紫色を性的欲望を表す黄色に。
そして清楚さを好む赤を淫靡さを好む藍色へと塗り替えていったのだ。
もはや学園長の心の地図は、最初の色合いとは全く違う色合いへと変わってしまっていた。

「これでいい。躰の自由を戻してやろう」
地図の塗り替えを終わった男は、再び手のひらをかざして地図を消す。
そして学園長の額を指先でつんと突いた。
「あん・・・ありがとうございます。その・・・ええと・・・」
「俺のことはご主人様と呼べ。いいな?」
「はい。かしこまりましたご主人様」
席を立ち、男の足元で三つ指をついてひれ伏す学園長。
その様子に男は満足しているようだった。

「さて、今日からこの学園は俺が支配する。いいな?」
「もちろんです、ご主人様。父から受け継いだこの学園は今日からご主人様のものです」
うっとりと男を見上げほほ笑んでいる学園長。
昨年この学園を先代学園長の急死によって受け継いだ時、この学園は父の宝だったので、しっかり受け継いでいくと言ったあの学園長は消え去ってしまっていた。
「お前にはいろいろと俺の手足となって働いてもらう。いいな?」
「はい、もちろんです。ご主人様」
「ではそろそろ朝の職員会議の時間だろ? 行ってこの女が遅れる旨伝えてこい」
男が腕時計を見て、私の方に目を向ける。
「かしこまりましたご主人様。職員会議に出て三竹先生は遅れると伝えてまいります。うふふ・・・」
「が、学園長・・・」
私が何かを言おうとする間もなく、スッと立ち上がり、私の方を見もせずに部屋から出て行ってしまう学園長。
「あ・・・」
もうあの学園長は先までの学園長じゃない・・・
私はそのことを思い知らされる。

「さて、三竹先生って言ったね?」
男が私の方にゆっくりと近づいてくる。
「あ・・・」
「なに、怖がることはない。学園長を見ただろ? すぐに君も俺のことを崇拝するメスになる。ふふふふふ・・・」
男がスッと手を上げる。
「いやっ! いやぁぁぁぁっ!」
私は必死にそう叫んでいた。

                   ******

すがすがしい朝。
今日もまた一日が始まる。
うふふふふ・・・
今日も楽しい一日になりそう。
私は思わず笑みが浮かぶ。

「おはようございます」
「おはようございます、先生」
かわいい生徒たちが朝の挨拶をしてくる。
「おはよう。今日も早いわね」
私も笑顔で生徒たちにそう答える。
もちろん品定めも忘れない。
私の出勤時間と同じくらいに登校する生徒たちはもうほとんど把握したはずだけど、どこかに見落としがあるかもしれないものね。
やはり容姿のいい娘は高値が付くとご主人様もおっしゃっておられるし。
獲物の選定は私たちに任せるとのうれしいお言葉ですもの、しっかり品定めをしなくちゃ。
殿方に喜んでいただけるメスを用意しないとね。

あの日から二ヶ月余り。
あの日を境に私は以前の私ではなくなった。
素晴らしいご主人様にお仕えするメスとして生まれ変わったのだ。
そのことが私にはとても誇らしく、またうれしい。
今の私はご主人様のために生きるメス。
ご主人様のためなら何でもするの。
そうすればご主人様に喜んでいただけるのだから。
ああ・・・
ご主人様のことを思うだけで幸せな気持ちになれるわぁ。

あら?
見かけない娘がいるわ。
うふふ・・・容姿的には合格ね。
そろそろ今の娘も手を離れそうだし、次はあの娘でもいいかも。
うふふふふ・・・

「おはよう。えーと・・・」
私はその娘に声をかける。
「あ、おはようございます三竹先生。二年C組の小野原(おのはら)です」
二のCか、どうりであんまり見ない娘だと思ったわ。
Cの授業は吉原先生の担当ですものね。
「あんまりこの時間には見ないようだけど、今日は早いんじゃない?」
「あ、はい。今日はテニス部の朝練があって」
なるほど。
テニス部の娘なのね。
でも、テニスなんかよりももっといいことを教えてあげるわ。
うふふふふ・・・
私は彼女と別れると職員玄関へと向かう。
これからが楽しみだわ。
早速学園長に報告しなくては。
もちろんご主人様にも。

「失礼します。三竹です」
「あら、おはよう。朝からこっちに顔を出すなんてどうしたの?」
私が学園長室に入ると、床にぺたんと座っていた学園長が顔を上げる。
どうやらご主人様にフェラチオをしていたらしい。
口の端に注いでいただいたばかりの精液がちょっと付いている。
私もお昼休みにいただかなくちゃ。

「おはようございます、ご主人様、学園長。先ほど次のメスにふさわしい娘を見つけましたのでご報告に」
「あらそう。じゃあ資料を用意して提出してちょうだい。どんな娘か楽しみね」
立ち上がってご主人様のそばに行く学園長。
形よい胸を露出した真っ赤なボンデージ姿がとてもお似合いでうらやましい。
脚もすらっとしてて、太ももまでのブーツがとても映えている。
ご主人様が好みとおっしゃるのも無理はない。
もちろん学園長も今では旦那さんも子供もどうでもよくなり、ご主人様のためだけに尽くしている。

「はい。用意しておきます」
「あ、そうそう。新しいパンフレットのデザインができたのよ。見て頂戴」
私が立ち去ろうとすると、学園長は机の上にあったパンフレットのデザインを私に渡してくる。
今度印刷する予定の学園の新しいパンフレットだ。
『21世紀の新しいメス奴隷育成を目指して』
学園の写真をバックに大きな文字が載せられている。
『当学園では、お客様の細かいご要望にも応じた21世紀型のメス奴隷を安定的に供給いたします』
『清楚、従順、高技術はもちろんのこと、サディスト、マゾヒスト、淫乱などもご要望に応じしっかりとした授業を行います』
『ぜひ、当学園のメス奴隷をお試しください。きっとご満足いただけるはずです』
うちの生徒たちがいかに優秀なメス奴隷であるかを訴えるものになっているのね。
担当教師として学園長と私の写真まで。
ボンデージ姿で生徒に授業を行う写真が載っているわ。

「それを裏社会に撒いていく。需要はあるだろうからな。高値で売れるようなメス奴隷を作ってくれよ」
応接用のソファに座ったご主人様がにやりと笑う。
「かしこまりました」
「お任せくださいませ、ご主人様」
私は改めて身が引き締まる思いでご主人様に頭を下げた。

                   ******

「それでは失礼します」
放課後、私は雑務をほかの先生に押し付けて職員室を出る。
これは学園長が私に与えてくれた特権。
もちろん学園長にそう命じたのはご主人様に他ならない。
それに・・・今では学園長に意見するような教師は、ご主人様に地図を塗り替えられ、学園長の言いなりにするようにされている。
この学園はご主人様のもの。
ご主人様のために存在するのよ。

ボイラー室のわきにある備品倉庫。
今ではここは私たちの新たな教室になっている。
もちろん、だれもが自由に入れる場所ではない。
ご主人様と学園長、それに私が認めた生徒たちだけが入ることができる特別教室だ。

『誰?』
私が入り口をノックすると、中から学園長の声がする。
もうすでに始まっているようだ。
「私です。三竹です」
私がそう返事をすると、中から鍵が開けられる。
そしてドアが開き、朝と同様真っ赤なレザーのボンデージを着た学園長が出迎えてくれた。
「お疲れさま。早く着替えてらっしゃい」
「はい、学園長」
私は学園長のわきを通り抜け、用意されたロッカーで服を着替えていく。
スーツを脱ぎ捨て、本当の私へと変身するの。
うふふふふ・・・

躰にぴったりした黒革のボンデージタイプのレオタード。
胸の部分がくり抜かれていてあらわになってしまうけど、むしろそれが誇らしくさえ感じちゃう。
両手には二の腕までもの長さのある黒革の長手袋。
そして両脚には太ももまでのロングブーツを履いていく。
うふふふふ・・・
ロッカーの鏡に映る本当の私。
さあ、今日もしっかり生徒にメス奴隷としての喜びを教えてあげないとね。

私は乗馬鞭を手に教室内へと入っていく。
すでにそこにはご主人様と学園長がいて、学園長に促されご主人様の靴を舐めているメス奴隷が一人。
もう一人は、私の授業を今か今かと待ち望んで、首輪だけの姿で正座している。
いい娘ね。
すぐにたっぷりとかわいがってあげるわね。
私はこれからの楽しい授業を思い、ぺろりと舌なめずりをする。
さあ、殿方に喜んでもらえるメス奴隷となるための授業を始めましょうか。
うふふふふ・・・
そう・・・
私の仕事は教師なの。

END


いかがでしたでしょうか。
よろしければ感想コメントなどいただけますとありがたいです。

明日はシチュのみ超短編SSの二本目を投下しようと思います。
どうぞお楽しみに。

それではまた。
  1. 2019/07/18(木) 21:00:47|
  2. 洗脳・戦闘員化系SS
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11月11日はショッカーの日

今日11月11日は「靴下の日」だとか「ポッキー・プリッツの日」だとか様々な記念日であるわけですが、どうも「ショッカーの日」でもあるらしいです。
たぶん「1111」が「いい いい」になって、「\(^o^)イーッ \(^o^)イーッ」ってことなんだと思うんですけど、まあ、由来はどうあれ、「ショッカーの日」ということで一本SSを書いてみました。

タイトルは「女戦闘員37号」です。
今回はちょっと悲しいお話です。
それではどうぞ。


女戦闘員37号

「イーーーーーーッ!」
気が付くと、私は変な奇声を上げながら地面にたたきつけられていた。
頭に猛烈な衝撃が走り、一瞬何が何だか分からなくなる。
な・・・何?
いったい何が起こったの?
私はいったい?

全身に耐えがたいほどの痛み。
まるで躰がバラバラになってしまったかのよう。
「ゲホッ」
打ち付けたショックで一瞬呼吸が止まり、肺が空気を求めてあえいでいる。
「あ・・・」
ここは・・・どこ?
私はなんでこんなところで地面に寝転がっているの?
目を開けると遠くにコンクリートの天井が見える。
薄暗く広い空間は、ところどころに照明がついている。
排気ガスのにおいもする。
そうか・・・
ここは地下の駐車場か何かなんだ・・・
でも・・・
でも、なんでこんなところに私はいるの?

私はゆっくり手を動かしてみる。
よかった・・・
まだ手は動く。
私は右手を上に上げる。
あれ?
何この袖。
真っ黒ですべすべしてて、まるでナイロンのタイツみたい。
それに黒い手袋をしている。
こんな手袋、私持っていたっけ?
私は痛みを我慢しながら、首を動かして躰を見る。
袖からつながった黒いタイツのような服が私の躰を包んでいる。
えええええ?
右手で躰を支えて少し起こすと、それがまるで水着のような衣装であることに気が付いた。
なんで?
なんで私はこんな服を着ているの?
脚も網みたいなタイツを穿いているし、私はいったいどうしちゃったの?

「イーッ!」
「イーッ!」
「とうっ!」
「たあっ!」
「シュシューッ! シュシューッ!」
「ライダーーーキーーーック!」
「グギャァァァァッ!」

なんだかよくわからない声が遠くでする。
あれは何?
いったい何が起こっているの?
私はどうしてこんなところにいるの?

帰ら・・・なきゃ・・・
うちに帰らなきゃ・・・
お母さんが・・・お父さんが心配しちゃう・・・
なんか躰があちこち痛い。
まるで高いところから地面にたたきつけられたみたい。
なんで・・・なんでこんなことに・・・

ようやくの思いで立ち上がった私がふらふらと歩き出すと、その先には何かがいた。
人のようだけど、赤くて大きな丸い目が光っている。
全身も黒い姿で腰には大きな太いベルトを巻いているようだ。
あれは・・・何?

「まだ生き残りがいたか!」
私の方に近づいてくるその人影。
天井からの明かりがその人影を照らし出す。
「ひっ!」
私は思わず声を上げた。
だって・・・
それは人ではなかったんだもの。

それは人のような姿をしていたけど、明らかに人ではなかった。
大きな赤い丸い目を輝かせ、額には二本のアンテナのようなものが伸び、全身を黒いスーツのようなもので覆っていて、胸には昆虫の腹を思わせるような分厚い皮膚が付いていた。
裏切り者のバッタ男・・・いや、仮面ライダー・・・
なぜ?
なぜ私はそんなことがわかるの?
バッタ男って何?
裏切り者って何?
私はいったいどうしてしまったというの?

「ショッカーの女戦闘員! お前たちを生かしておくわけにはいかん!」
ショッカーの・・・女戦闘員・・・
私は・・・ショッカーの女戦闘員・・・
そう・・・だわ・・・
私は・・・ショッカーの・・・

すっとバッタ男の・・・いや仮面ライダーの手が振り上げられる。
あれを私に向かって振り下ろすつもりなのだろう。
それを理解した瞬間、私は悲鳴を上げていた。
「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!」
それを聞き、なぜかライダーの腕が一瞬止まる。
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。赦してください。殺さないでぇ!」
頭を抱えるようにしてうずくまってしまう私。
でも、予想していた手の一撃はなかなか来ない。
恐る恐る私は顔を上げる。
すると、そこには、何やら難しそうな表情をしている青年の姿があった。
これが・・・本郷・・・猛?
なんて・・・なんてかっこいい人なんだろう・・・

「悲鳴を上げ、ごめんなさいという。それに顔のフェイスペイントも消えているし・・・もしかして、君は正気に戻っているのではないか?」
「えっ?」
正気?
私が正気?
「ど、どういう?」
「ショッカー戦闘員は脳改造を受けていて、ショッカーのためには自分の命すらも惜しまないようにされている。なのに君は悲鳴を上げて赦しを請うた。君は脳改造から抜け出したのではないのか?」
かがみこんで私と目線を合わせてくれる本郷さん。
「わ、わかりません。気が付いたら私、ここで倒れてて、躰中が痛くて死にそうで・・・」
「そうか・・・俺がさっき投げ飛ばしたショックが、君の脳改造を解除したんだ」
そんなことが?
でも、本郷さんの言葉で私は思い出していた。
私は・・・そう・・・ショッカーに改造されちゃったのだ。

私、三羽礼子(みつわ れいこ)はあの日学校から友人の幸子(さちこ)と一緒に帰る途中、黒服の男たちに囲まれ、薬を嗅がされて気を失ってしまった。
気が付いた時には、私は台の上に寝かされていて、両手両足を固定されていた。
台を見下ろすような位置にはワシのレリーフがはめ込まれ、そのお腹のところにあるランプが光り輝くと、室内に重々しい声が流れてきたのを覚えている。

『三羽礼子。お前はこれより脳改造を受け、ショッカーの女戦闘員となるのだ』
「えっ? 何ですか、いったいそれは? 私を家に帰してください!」
『もう遅い。すでにお前の躰は強化され、プロレスラーや鍛えぬいた軍人とも互角以上に戦えるような力を持った。あとは脳改造が済めば、お前はショッカーの女戦闘員となり、ショッカーのために働くようになるのだ』
「いや! いやです! いやぁっ!」
私は必死でもがいたけど、すぐにまた薬を嗅がされて気を失った。
それから後のことは・・・
なんだか自分が自分ではなかったような気がする。
でも、私はショッカーの女戦闘員として活動し、こうして仮面ライダーに倒されてしまったというわけだ。

「私・・・私・・・」
「落ち着きたまえ。今は躰のダメージとショックで混乱しているんだ。とりあえずここを出よう。また奴らが来るといけない」
そう言って本郷さんは着ていたブレザーを私の躰にかけてくれる。
そういえば、私・・・とんでもない恰好をしているんだった・・・
思わず顔がほてってしまう。
おそらく相当に赤い顔をしているに違いない。

私は本郷さんのブレザーに腕を通し、とりあえず上だけは隠すことができた。
でも、下は今はどうしようもない。
網タイツにブーツなんてなんていやらしい恰好なんだろう。
でも、脳改造されていた時には、そんなことは思い出しもしなかった。
この躰で男を誘惑し、ショッカーの思い通りに操ることしか考えていなかった。
なんてことなのだろう。

私は本郷さんのバイクの後ろに乗り、腰に手を回してしっかりと握って振り落とされないようにする。
「ん・・・大丈夫だ、そんなに強くしなくても、君の力は強化されている。振り落とされる心配はない」
本郷さんに言われて私は少し力をゆるめる。
そうだ・・・
私はもう普通の人間じゃなかったんだ・・・

本郷さんのバイクは地下駐車場を抜け、外に出る。
そのまま通りを走っていくけど、やっぱりすごく恥ずかしい。
私は顔を隠すようにして本郷さんの背中に密着する。
本郷さんの広い背中が温かい。
若い女性が男のバイクに二人乗りして、足元は網タイツにブーツだなんてお母さんが知ったらなんて言うことか・・・
でも・・・
怒られてもいいからお母さんに会いたい。
もちろんお父さんにも。
会いたいよ。

スナックアミーゴ。
本郷さんと立花藤兵衛さんが拠点としている場所。
私にはそう記憶がある。
ショッカーから与えられた記憶だ。
私も何度かこの前を通って仮面ライダーの動向を監視していたことがあった。
「とりあえずここで君をかくまおう。君一人しか残っていなかったから、おそらく君が生き残っていることはショッカーには知られていないとは思うが、しばらく様子を見た方がいい。それに君の躰の回復も待たなくては」
「は、はい」
確かに私の躰はあちこち痛い。
でも、幸い骨折したり内臓に問題があるようなことはなさそうだ。
コンクリートの床にたたきつけられてこの程度なのだから、強化された躰に感謝しなくてはいけないのかもしれないけど・・・

「いらっしゃい・・・と、猛か、その娘は?」
店にはパイプを片手に新聞を読んでいた立花藤兵衛さんが一人だけ。
バーテンさんはまだ来ていないようだ。
「立花さん・・・実は、この娘を一時預かってほしいんです」
「預かる? それは構わんが、どうしてだね?」
パイプをふかしてはいるものの、厳しい表情は崩さない。
さすが仮面ライダーの協力者としてショッカーを手こずらせているだけのことはある。
「それは・・・君、上着を脱いでもらってもいいかな?」
「あ、はい」
恥ずかしいけれど仕方がない。
私は上着を脱いで、黒い水着・・・じゃないレオタードっていうんだっけ、女戦闘員の衣装姿を立花さんに見せる。
「おい、猛! この娘はこりゃあショッカー!」
立花さんが目を丸くする。
無理もないわ。
普段敵であるショッカーの女戦闘員が目の前にいるんですもの。

「立花さん。確かに彼女はショッカーの女戦闘員です。いや、でした。でも、どうやら脳改造がショックで解除されたようなんです」
「なんだって? 脳改造が?」
「ええ。私がショッカーの生き残りだと思って攻撃しようとしたとき、悲鳴を上げてごめんなさいと言ったんです。ショッカーの脳改造が機能していれば、そんな言葉を言うはずがない」
本郷さんが再び私の肩に上着をかけてくれる。
なんて優しいのだろう。
「なるほど。確かに猛の言う通りだろう。あいつらがごめんなさいなどと言うはずがないからな」
うんうんとうなずいている立花さん。
「君、名前は?」
先ほどとは違い、立花さんが笑顔で私に尋ねてくる。
「あ、はい。私は女戦闘員37ご・・・ちがっ、み、三羽礼子って言います。三羽は数字の三に鳥の羽の羽です」
私は思わず女戦闘員37号と答えそうになった自分に驚いた。
まだ脳改造の影響が残っているのだろうか。
「三羽さんのご両親にも連絡をした方がいいだろう。おそらく娘さんがいなくなってずいぶん経つだろうから心配していると思うからな。すぐにというわけにはいかないだろうが、いずれはご両親のもとに」
「そうですね。奴らがもう彼女が死んだものとみなして放っておかれるようになれば安心でしょう。幸い奴らは死ねば躰が溶けてしまう。死体を確認するわけにはいかないから好都合です」
顔を見合わせて相談している立花さんと本郷さん。
親子ほど年齢が離れているにもかかわらず、お互いを心から信頼していることがうかがえる。
なんだかうらやましい感じ。

「さあさあ、そうと決まれば奥の部屋で休みなさい。まずは躰を休めることだ。ご両親にはあとでわしの方から連絡しよう。電話番号は覚えているかい?」
「ええと・・・はい、覚えています」
私が電話番号を言うと、立花さんがそれをメモに書き留める。
「よし、猛、表に行って怪しい奴がいないかどうか確かめてこい。この店はショッカーに見張られているかもしれんからな」
「そうですね。行ってきます」
すぐに本郷さんが出ていこうとしたので、私は呼び止めて上着を返す。
「ありがとう。じゃあ、ゆっくりと休んで」
「こちらこそありがとうございます」
にこやかな笑顔で私に礼を言う本郷さんに、私も思わず頭を下げる。
こんないい人なのにショッカーはこの人を狙っているんだわ・・・

                   ******

私はそれから三日間ほどアミーゴでお世話になった。
女戦闘員の衣装の代わりに緑川るり子さんが用意してくれたパジャマや服に着替えると、なんだか以前の自分に完全に戻れたような気がして嬉しかった。
強化された躰のおかげでケガの回復も早く、三日目にはもうほとんど動きには問題がなくなっていた。
こういう部分だけは強化されていてよかったとは思う。

お父さんお母さんとも連絡が付いたらしい。
二人とも私が無事だったことをとても喜んでくれたと立花さんが言っていた。
本郷さんもとても喜んでくれて、安全が確認でき次第送り届けてくれるという。
その安全も、どうやらショッカーは別の行動に専念しているらしく、このアミーゴを見張っているような気配はないらしい。
別の行動というのが気がかりではあるがと言いながらも、まずは私の安全が確保できたのは喜ばしいと言ってくれた。

私はと言えばちょっと残念だ。
せっかく本郷さんや立花さん、バーテンの史郎さんやるり子さんとお知り合いになれたのに、お別れしなくちゃいけないんだもの。
ううん・・・そんなことないよね。
家に戻って、学校にも行き、生活が落ち着いたらいつでも来てくれて構わないって言ってくれたもの。
私、ここのみんなにはまた会いたいし、きっとまた来ることに決めているんだから。

最後に私の全快祝いと称してアミーゴではパーティをやってくれた。
ささやかなものと立花さんは言っていたけど、おいしい食事やケーキも出してもらって、本当にうれしかった。
私はこの人たちの敵として、この人たちを殺そうとしていた女戦闘員だったのに、こんなにしてもらえるなんてありがたすぎる。
本当にいい人たちだ。
どうかショッカーがこの人たちの手で消し去られますように。
そのためには私も覚えていることとか協力しないとね。

「それじゃお世話になりました」
私は皆さんにお礼を言って、本郷さんのバイクの後ろに乗せてもらう。
来た時もそうだったし、立ち去るときも同じというのは、なんだか感慨深い。
ここへ来た時には私は本郷さんの上着を羽織った以外は女戦闘員の衣装だった。
でも、今はるり子さんのおかげで普通の同じ年代の女子と同じような格好をしている。
過去の私、女戦闘員だった私はもういないんだ。

「それじゃお願いします」
「しっかりつかまっているんだよ」
「はい」
私は本郷さんにしっかりつかまって身を預ける。
やっぱり本郷さんの大きな背中がたくましくて温かい。
ずっとこうしていられたらいいのにな・・・

しばらく走ると見慣れた景色が増えてくる。
そして懐かしの我が家の姿が・・・
帰ってきた・・・
本当に私は帰ってきたんだわ。

なんだかドキドキする。
本当に入っていいのだろうか?
お父さんお母さんに怒られたりはしないだろうか。
思わず足が止まってしまった私を思いやり、本郷さんが先に玄関の呼び鈴を鳴らす。
すぐに玄関が開いて、お父さんとお母さんが現れる。
「礼子!」
「礼子!」
お父さんもお母さんも本郷さんの背後にいる私にすぐに気づいて声をかけてくれる。
懐かしい、思い出のままの声だ。
いったい何日この声を聴いていなかったのだろう。
「お父さん・・・お母さん・・・」
涙がこぼれる。
「礼子」
「礼子」
お父さんが、お母さんが手を広げて迎えてくれる。
「お父さん・・・お母さぁん」
私はお母さんのところに行き、その胸に飛び込んだ。
「まあ、この子ったら」
「本当によく無事で・・・心配したぞ」
「本当によく帰ってきてくれたわ」
お母さんが私を抱きしめ、お父さんの大きな手が私の頭をなでてくれる。
よかった・・・
私はやっと帰ってこられたんだ・・・

「本郷さん・・・」
私は母から離れ、にこやかに私たちを見ていた本郷さんのところへ行く。
「本当にありがとうございました」
「しばらくはまだ外をうろつかない方がいい。たぶん大丈夫とは思うが、万一ということがある。充分気を付けて」
「はい、本郷さん」
「それじゃまた。いつでもアミーゴに遊びに来て」
「はい。絶対に行きます」
本郷さんの大きな手が差し出され、私は本郷さんと握手する。
「本当にこの度はなんとお礼を言ってよいか」
「この娘がお世話になり、本当にありがとうございました」
お父さんとお母さんも本郷さんにお礼を言う。
「礼子ちゃんのお父さんお母さん、彼女は本当にいろいろと大変な目に遭ったんです。どうかゆっくりと休ませてあげてください」
「はい。それはもう」
「ゆっくりと休ませてやります」
お父さんが私の肩に手を置く。
本郷さんにはかなわないけど、大きくて力強い手だ。
「それじゃ失礼します」
本郷さんがバイクにまたがり、走り去っていく。
私はその姿が見えなくなるまで手を振っていた。

本郷さんが立ち去って、私たちは家に入る。
ああ・・・全然変わってない。
すごく懐かしく感じる。
「礼子」
お母さんが居間に入った私を後ろからそっと抱きしめてくる。
もう、お母さんたら・・・
でも、お母さんも私がいなくなって寂しかったのかもしれないな。
「お母さん」
「本当によく帰ってきてくれたわ。ありがとう。女戦闘員37号」
「えっ?」
私の首筋に鋭い痛みが走り、急速に力が抜けていく。
「お・・・かあ・・・さん・・・なに・・・を?」
「うふふふ・・・それは改造人間にも効果がある毒物よ」
「躰の自由が利かなくなってきただろう? ふふふふ」
床に倒れこんだ私を冷たい目で見降ろしてくるお父さんとお母さん。
「おと・・・さん・・・ど・・・して」
だんだん言葉が出なくなってくる。
「お前には感謝しているよ、女戦闘員37号」
「ええ。お前がまだ生きていることを確認した偉大なるショッカーは、お前がいずれここに戻ってくると見込んで私たちを改造してくださったの」
「お前のおかげで俺たちは生まれ変わることができたのさ。俺たちはもうお前の親などではない。ふふふふふ・・・」
「うふふふふ・・・」
躰がどんどん麻痺していく私を見つめながら笑っているお父さんとお母さん。
そんな・・・そんなことって・・・

「イーッ!」
「イーッ!」
二人が服を脱ぎ捨てる。
そこには、黒く躰にぴったりとしたタイツのような服で全身を覆ったお父さんと、以前私が着ていたような黒いレオタードと網タイツを身にまとったお母さんがいた。
二人とも顔には赤と青のペイントが塗られ、お父さんはベレー帽をかぶって腰にショッカーのマークの付いたベルトを、お母さんは赤いサッシュを巻き付けていた。
「そ・・・な・・・」
「イーッ! 俺はショッカー戦闘員143号」
「イーッ! 私はショッカー女戦闘員42号。私たちはショッカーを脱走した女戦闘員37号の処刑を命じられたのよ」
アジトで見慣れたショッカーの戦闘員と女戦闘員。
それが今私の目の前にいるなんて。
「お前がのこのこと帰ってきてくれたおかげで、俺たちは任務に成功し、意気揚々とアジトに戻ることができる」
「礼を言うわ、37号。うふふふふ・・・」
お母さんのブーツが私の脇腹を蹴る。
「ぐっ」
「普通の人間ならもうとっくに死んでいるのに、さすがにショッカーに改造された肉体は死ぬまで時間がかかるわね」
「なに・・・どうせもう助からんさ。ふふふふ」
お父さんがそう言って笑った時、居間のガラスが突然割れた。

「遅かったか! まさかすぐに手を出してくるとは!」
ガラスを破って飛び込んできたのは・・・本郷さん?
目がかすんできてよく見えない・・・
でも・・・声は間違いなく本郷さん・・・
「イーッ! 本郷猛!」
「帰ったのではなかったの?」
「あまりにもアミーゴ周辺にショッカーの気配がなくなったのが不自然だったのでな。アミーゴではなくこっちで彼女を襲うものと思って周囲を警戒していたのだが・・・まさかご両親がとは・・・」
本郷さんの言葉に苦いものが混じっているような感じがする。
でも・・・これは本郷さんが悪いんじゃない・・・
ショッカーが狡猾すぎたのよ・・・

「くそっ! この毒をお前もくらえ!」
「やぁっ!」
お父さんとお母さんが・・・ううん、ショッカーの戦闘員と女戦闘員が本郷さんに飛び掛かっていったみたい。
でも、本郷さんは強いわ・・・
負けたり・・・しない・・・

「とうっ!」
「イーッ!」
「たぁっ!」
「イーッ!」
遠くで何か聞こえてくる。
もう目の前が真っ暗で何も見えない。
なんだか最初に本郷さんと会った時のよう・・・

「しっかり! しっかりするんだ礼子ちゃん!」
私の躰がふわっと浮く。
あ・・・
私は本郷さんに抱きかかえられているんだ・・・
嬉しい・・・
本郷さんに抱いてもらえた・・・
「ほ・・・ご・・・ん」
「いいからしゃべるな。すぐに病院に連れていく」
本郷さんの声だ。
私は本郷さんに抱かれ、本郷さんの声を聞きながら死んでいける。
なんて嬉しい・・・
本郷さん・・・
好きでした・・・
私の・・・バイクに乗った王子様・・・

END
  1. 2018/11/11(日) 18:24:39|
  2. 洗脳・戦闘員化系SS
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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