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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

性処理用女ジャドーガ兵マナミ

今日は10月10日。
1010(千十 せんとお)ということで、勝手ながら「(特撮・アニメ系)戦闘員の日」というのを提唱させていただいております。

ということで、女戦闘員ネタSSを一本投下いたします。
タイトルは「性処理用女ジャドーガ兵マナミ」です。

実はもともとはこの作品は、基本プロットを「GIGA」様に送ったものだったのですが、どうせなら自分で書こうということで取り下げたものだったんですよね。
今回「戦闘員の日」に間に合わせて書き上げることができ、ホッとしました。
(^o^;)

ということで、お楽しみいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。


性処理用女ジャドーガ兵マナミ

 「イエローニードル!」
 「キキーッ!」
 黄色のバトルスーツに身を包んだ女性の持つ細身の剣が、黒い全身タイツをまとったような姿の男の胸を貫いていく。

 「レッドハンマー!」
 その隣では赤いバトルスーツ姿の男性が、片手振りのバトルハンマーで同じく黒い全身タイツの男を倒していく。

 「あとはお前だけだカマキリ野郎! 食らえ! ブルーショット!」
 カマキリと人間を掛け合わせたような怪人に対し、青いバトルスーツの男が手にした銃を発射してもうもうたる爆炎が上がる。
 だが、射撃を受けたカマキリの怪人は悠然と爆炎の中から姿を現した。
 「キシャシャシャシャーッ! 俺様をジャドーガ兵どもと一緒にしてもらっては困る! そのようなもの、このジャドーガ獣カマキリーガには効かぬわ!」
 「何っ!」
 頭部全体を覆う青いヘルメットから漏れる声にも驚愕が含まれる。

 「ならばこれはどうだ! レッドハンマーブーメラン!」
 先ほどジャドーガ兵という黒い全身タイツの男を倒したハンマーを、そのまま回転させるようにして投げつける赤いバトルスーツ姿の男。
 だが、彼の投げつけたハンマーもカマキリーガとか言うカマキリの怪人のカマによって叩き落されてしまう。
 「キシャシャシャシャ……効かぬ効かぬ!」
 巨大な複眼をぎらつかせて笑うカマキリーガ。

 「それじゃこれはどう? イエローダガー!」
 黄色のバトルスーツの女性が三本の短剣を一斉に投げる。
 相手がジャドーガ兵たちならいっぺんに三人を倒せる技だ。
 だが、これもカマキリーガは三本ともに叩き落してしまう。
 「そんな……」
 「キシャシャシャシャー! トライパワードの武器など俺様には効かぬと言っておるのだ!」
 強靭な外骨格を誇示するように胸を張るカマキリーガの姿に、トライパワードの三人が思わず息を飲む。
 必殺技のパワードスパークをぶつけようにも、どこかで相手の隙を生み出さねばならないのだ。
 今のままでは必殺技をぶつけてもかわされてしまうに違いない。
 いったいどうしたら……
 ヘルメットの中の三人の額に汗がにじむ。

 『目よ! 目を狙いなさい! あの複眼はそれほど強い防御はされていないはずよ』
 その時、トライパワードの三人のヘルメットに声が響く。
 「そうだ、目だ! 目を狙おう。いいな、みんな!」
 「おう!」
 「ええ!」
 その声にレッドが答え、ブルーとイエローもそれに応じる。
 「ブルーショット!」
 素早く銃を抜き連射する青いバトルスーツのブルーパワード。
 「グギャッ! グギャァァァッ!」
 その射撃が見事にカマキリーガの巨大な複眼に命中する。
 「レッドハンマーブーメラン!」
 赤いバトルスーツのレッドパワードの手からバトルハンマーが投じられ、回転しながらカマキリーガの首に当たる。
 「ゴグァッ!」
 たまらず両目をカバーしようとしていたカマキリーガの両手が首を押さえ、両目が再び無防備になる。
 「イエローダガー!」
 そこにすかさず黄色いバトルスーツのイエローパワードがダガーを投げ込み、カマキリーガの両目に突き刺さる。
 「ギヤァァァァァッ!」
 ブルーショットで傷ついた個所を的確に貫くイエローダガー。
 カマキリーガの悲鳴とともに目の輝きが消えていく。

 「よし、今だ!」
 「おう!」
 「ええ!」
 トライパワードの三人がうなずき合う。
 「「「パワードスパーーーク!!」」」
 三人の声が一つになり、それぞれの胸のところからエネルギー波が放たれる。
 赤、青、黄色の三色のエネルギー波が途中でらせん状に絡み合い、そのままカマキリーガへと突き刺さる。
 「グギャァァァァァァッ!」
 カマキリーガの断末魔の悲鳴が上がり、その肉体が光の中へと消えていく。
 あとには塵となった残骸が残るのみだったが、やがてそれも風に吹き飛ばされて散っていった。

 「ふう……やったな」
 「手強かったな……」
 「司令のアドバイスが無かったらどうなっていたか……」
 三人が安堵の息を漏らす。
 『ご苦労様。ジャドーガ獣の消滅を確認したわ。直ちに本部へ帰還してちょうだい。温かいコーヒーでも用意させておくから』
 先ほど聞こえてきた声がまたヘルメット内に流れてくる。
 「了解です、司令」
 「すぐに引き上げまーす」
 三人は手首に付いたブレスレットを操作してバトルスーツを解除し、それぞれ普段の若い男女の姿に戻り、本部へと帰還していった。

 「ふう……今回も何とか乗り切ってくれたみたいね」
 ドローンから送られてきた現場の中継映像を切り、こちらもホッと息をつく一人の女性。
 まだ三十代前半の美しい容姿を、紺色のタイトスカートの制服に包み込んでいる。
 名前は真木原愛美(まきはら まなみ)と言い、トライパワードチームの司令官を務めている女性だ。
 彼女の明晰な頭脳は幾度となくジャドーガの作戦を打ち破り、トライパワードを勝利に導いてきた。
 まさにトライパワードチームの要と言っていい存在だったのだ。

 「さ、みんなが帰ってくる前に、美味しいケーキとコーヒーでも用意しておきましょうか」
 にこやかに笑顔を浮かべ、軽やかな足取りで司令室を出ていく愛美。
 司令官であると同時に、彼女はチームメンバーの頼れる姉でもあったのだった。

                   ******

 「ぬおおお! またしても……おのれトライパワードめ! あと一息のところであったものを!」
 ぎりぎりと音を立てそうなぐらいにこぶしを握り締める甲冑姿の男。
 トゲの付いた鎧で胴体を包み、腕にも脚にもごつい防具を着けている。
 頭にもがっしりとしたヘルメットをかぶり、その下の赤く輝く目は怒りに満ちていた。
 彼こそ暗黒結社ジャドーガの指揮官ガロム将軍である。

 今世紀に入り地球をじわじわと侵略し始めた謎の集団。
 動物や昆虫などと人間を組み合わせたような怪人ジャドーガ獣を生み出し、ジャドーガ兵と呼ばれる目だけを出したフルマスクと全身タイツ姿の戦闘員を多数繰り出して暗躍する。
 そして重要人物を暗殺したり国家的機密事項を奪ったり破壊したりなどするのだ。
 そうして各国の力が弱まったところを一気に征服する。
 それが暗黒結社ジャドーガの目的であり、作戦は順調なはずだった。

 しかし、ジャドーガの前に立ちふさがったのが特殊戦隊トライパワードだった。
 赤、青、黄色の三色のバトルスーツに身を包んだ三人の男女が、ジャドーガの誇るジャドーガ獣やジャドーガ兵たちを蹴散らしていくのだ。
 このままでは作戦遂行に支障が出ると考えたジャドーガの首領は、まずこのトライパワードの排除を優先することにし、ガロムを指揮官として送り込んだ。
 だが、これまでのところはそのガロムも敗北が重なり、トライパワードに煮え湯を飲まされ続けている有様だった。

 個々のジャドーガ獣の能力では決して引けは取っていない。
 ジャドーガ兵の数による攻撃も悪くはない。
 だが、勝てない。
 やつらのチームワークに敗れ、そして指揮分析能力に敗れているのだ。
 それを何とかしなくてはならない。
 だがどうすれば……
 そこがガロムにとっての悩みだった。

 「キキーッ! ガロム様」
 苦虫を噛み潰したような表情をしているガロムの元に、ジャドーガ兵が一体現れ、右手を上げて敬礼する。
 ジャドーガ兵とは、体格のいい男が目の部分以外をすべて黒いナイロンの全身タイツで覆ったような姿をしたジャドーガの戦闘員である。
 わずかに目が覗いているマスクの穴の縁取り部分と額の逆三角マークが赤く、、腰に巻いたベルトに付いているジャドーガの毒蛇の紋章の銀色をしたバックルだけが黒以外の色だ。
 彼らは数を擁した集団戦闘に長けており、トライパワードのメンバーと言えどもバトルスーツ着用前の状態であればてこずる相手である。

 「なんだ? なにか用か?」
 今日の敗北にいらだっていたガロムは、思わず口調が荒くなる。
 「キキーッ! も、申し訳ありませんガロム様。実は……そろそろ我々ジャドーガ兵たちの性欲が溜まってきており……」
 少しオドオドした様子で報告するジャドーガ兵。
 「なんだ……そんなことか。そんなことなら人間の女どもを適当にさらってくればいいことではないか」
 何か問題でも起きたのかと思っていたガロムはやや拍子抜けする。
 ジャドーガの構成員の大多数を占めるのはジャドーガ兵たちであるが、彼らは肉体を強化して戦闘力を高める引き換えに性欲が強まっており、ある程度の間隔でその性欲を発散させてやらなくてはならないのだ。
 ただ、人間の数倍の力を持つジャドーガ兵たちの性欲を発散させるには人間の女性では難しく、たいていの女性たちはジャドーガ兵に性欲を発散されると死んでしまうため、そのたびにさらってくるなりして補充しなくてはならなかったのだった。

 ジャドーガ兵たちの性欲処理についてはガロムも気にしているところであり、彼らの戦闘力を維持するためにもできれば専用の性処理用の存在を用意したいとガロムは考えていた。
 そうなれば任務を終えて戻ってきたジャドーガ兵たちに性欲を発散させるという褒美を与えることもできるのだ。
 待てよ……
 確かトライパワードチームの司令官は女だったはず……
 やつらが強いのはその指揮統制によるところが大きい。
 であれば……その女司令官を取り除くことができれば、奴らの戦闘力はかなり低下するのではないか?
 そしてその女司令官にジャドーガ兵たちの性処理をさせてやるというのはどうだろうか……
 クククク……
 これは面白い……
 女司令官を洗脳したうえで肉体を強化し、性処理用の女ジャドーガ兵を作るというのも悪くない。
 ガロムの口元がにやりと歪む。

 「キキーッ! ではそのように」
 「おい、待て」
 出ていこうとしたジャドーガ兵を引き留めるガロム。
 「キキーッ!」
 呼び止められたジャドーガ兵はすぐさま立ち止まって振り返り、右手を上げて敬礼する。
 「いいことを思いつたぞ。出撃の準備をしろ!」
 「キキーッ!」
 人間の女たちをさらいに行くつもりだったジャドーガ兵は一瞬落胆したものの、すぐに気を取り直して仲間たちのところへと戻っていった。

                   ******

 「お疲れ。トレーニングだったのか?」
 控え室に入ってきた賢哉(けんや)に声をかける竜司(りゅうじ)。
 彼らは地球を守るトライパワードチームの三人のうちの二人で、レッドパワードが賢哉、ブルーパワードが竜司である。
 彼らは基本的には常時この控え室で待機しており、ジャドーガの出現にいつでも出撃できるように備えているのだ。

 「ああ、ひと汗かいてきた。そっちは今日も読書か?」
 冷蔵庫から缶コーラを取り出して蓋を開ける賢哉。
 「ああ、こっちは頭のトレーニングさ」
 ソファに横になり、分厚い本を読んでいる竜司。
 賢哉もチームリーダーとして充分な程度の知識と教養は備えてはいるものの、やはり知力では竜司の方が上である。
 そのため司令部では愛美が、現場では竜司が知力面でのサポートを行うのだ。
 もちろんそれを総合的に判断して戦うのが、リーダーである賢哉の仕事でもある。

 「愛美司令は?」
 缶コーラを飲みながらたずねる賢哉。
 彼らはチームワークを良くするため、お互いを名前で呼び合うことにしているのだ。
 司令官に対しても彼らは愛美司令と呼んで親しんでいた。
 「参謀本部の秘密会議場で会議らしい。そろそろ戻ってくる頃だと思うが……」
 賢哉の問いに壁にかかった時計を見る竜司。
 予定ではもう会議は終わっているはずだが……
 ちょっと遅いな……
 なんだかいやな予感が竜司の胸をよぎる。

 「大変よ!」
 真っ青な顔で控え室に飛び込んでくる一人の女性。
 彼女もパワードチームの一人イエローパワードである理沙(りさ)だ。
 司令室で待機し、司令の帰りを待っていたところだったのだ。

 「どうした、理沙!」
 賢哉が声をかけ、竜司も本を置いて起き上がる。
 「司令が……愛美司令が消息を絶ったって……」
 「なんだって? 愛美司令が?」
 賢哉も竜司も驚愕の表情を浮かべる。
 「会議を終えてこちらに向かったあと行方が分からなくなったって。司令の車は破壊された状態で見つかったわ」
 「しまった!」
 右手の拳を左手に打ち付ける賢哉。
 竜司もいやな予感が当たってしまったことに表情を歪める。

 「俺らが付いていれば……」
 「いや、それはかえってジャドーガの目を引くということで、あえて司令は単独で動かれていた。だが、こうなってみると……」
 唇を噛む竜司。
 やはり目を引いたとしてもガードに付いた方がよかったのかもしれない。
 「理沙、司令は消息を絶ったと言ったな? ということは死体が見つかったとかではないんだな?」
 「ええ……でもどこに行ったのか……」
 理沙が首を振る。
 「だったらどこかに身を隠して俺たちの助けを待っているかもしれない」
 「あるいは……ジャドーガに連れ去られた……か」
 竜司が悪い方の考えを口にする。
 あえて最悪の状況を口にすることで、それに対する対処を考えるのだ。
 だが、今はまだ状況が不明すぎる。
 「とにかくこうしていてもしょうがない。俺と竜司は司令の車の周囲を捜索してみよう。理沙は司令からの連絡があるかもしれないから、ここで待機していてくれ」
 「了解だ」
 「わかったわ」
 こういう決断をすぐに下すところが賢哉のいいところである。
 竜司も理沙もうなずくと、すぐに三人は控え室を後にした。

                   ******

 「う……こ、ここは?」
 ゆっくりと目を開ける愛美。
 どうやら気を失っていたらしい。
 ここはいったい?

 躰を動かすとジャラリと音がする。
 気付くと、どうやら両手が鎖で縛られ上から吊り下げられているのだ。
 どうりで腕が体重がかかって痛かったはずだ。
 愛美はあらためて姿勢を直してきちんと立つ。
 これで少なくとも腕への負担は格段に減った。
 とはいえ、両手が縛られて吊り下げられているのは変わらない。

 周囲は殺風景なやや広めの部屋。
 コンクリートがむき出しになっており、ところどころがどす黒くなっている。
 もしかしたら血の跡かもしれない。
 捕らえた相手を拷問するにはちょうどいい部屋だろう。
 愛美の表情が硬くなる。

 「フッフッフ……お目覚めかな?」
 背後から聞こえてくる重々しい声。
 愛美が振り向くと、そこにはトゲの付いた銀色の鎧に身を包んだ体格のいい男が立っていた。
 ヘルメットの下から覗く目は赤く鋭く輝き、不敵に笑う口元は顎の傷をさらに目立たせている。
 「くっ……ジャドーガ!」
 愛美は自分がジャドーガに捕えられてしまったことに気付く。
 「そうだ。我らはジャドーガ。真木原愛美よ、ようこそ我がジャドーガのアジトに」
 ガロムが目の前の獲物を確認するかのように眺めていく。
 トライパワードチームの司令官というわりにはまだまだ若く、制服に包まれたスタイルも悪くない。
 彼をにらみつけてくる顔も美しいと言えるだろう。
 見た目だけで言えば、この女がジャドーガに何度も煮え湯を飲ませてきたとはとても思えないくらいの美女だ。

 「するとあなたがガロム将軍! ジャドーガの指揮官ね」
 「いかにもその通りだ。トライパワードの指揮官真木原愛美」
 ガロムがゆっくりと近づき、愛美の顎を持ち上げる。
 「司令官にしておくにはもったいないくらいのいい女ではないか。クククク……」
 「くっ、私を人質にしても無駄よ。トライパワードは私を人質にしたところでジャドーガに屈したりはしないわ。残念だったわね」
 ガロムの手を振り切るように首を振る愛美。
 「トライパワードチームは常に万一の状況に対応するよう訓練されているわ。それはたとえ司令官を失ったとしても変わらない」
 愛美の目がキッとガロムをにらみつける。

 ふん……
 おそらくこの女の言うことは本当だろう。
 ガロムはそう思う。
 だが、それでもこの女がいなくなれば大きく戦力ダウンすることは間違いないはずだ。
 それに……
 ダウンしなくてもそれはそれでまあかまわない。
 今回の目的はそこにはないのだから。

 「わかったらさっさと殺したらいいわ。私を生かしておくと後悔することになるわよ」
 精いっぱいの憎しみを込めてガロムをにらみつける愛美。
 残念だが人質にされるぐらいなら殺されてしまった方がいい。
 ああは言ったものの、おそらくパワードチームは自分を助けようと必死になるだろう。
 だが、それではジャドーガの思うつぼなのだ。
 ここで私が死ねば、きっと彼らはその死をバネにしてジャドーガを打ち倒してくれるだろう。
 だからむしろ殺されたほうがいいのだ。
 殺されれば彼の元へも行ける……
 愛美はジャドーガとの戦いで散った恋人のことを思い出す。
 命を落とした彼のためにも、ジャドーガは倒さねばならない敵なのだ。

 「クククク……」
 不意にガロムが笑いだす。
 「な、何が可笑しいの?」
 「クククク……まあ、そういきり立つな。お前を殺しはせん」
 「なっ、わ、私を殺さないと後悔すると言ったはずよ!」
 愛美はもう一度相手を挑発する。
 人質にされるわけにはいかないのだ。

 「クッ」
 愛美の顎を再びガロムが手で掴む。
 「お前には何度も苦杯を飲まされた。そのお返しをせねばならんのでな」
 「だ、だったらひと思いに殺しなさい」
 「そうはいかん。お前にはたっぷりと屈辱を味わってもらわねば。ただし……お前自身がそれを屈辱と感じるかどうかは別だがな。クククク……」
 にやにやと笑っているガロム。
 「これからお前には我らの役に立ってもらう。これが何かわかるか?」
 そう言ってガロムは愛美の顎から手を離し、傍らに置いてあった四角い機械のところへ行く。
 それは正面にレンズが付いた機械で、まるで何かの映像を投影するようなものに見えた。
 「それはいったい?」
 「クククク……お前はジャドーガ兵がどのようにして作られるか知っているか?」
 その機械を愛美の正面に持ってくるガロム。
 「えっ? ま、まさか……」
 「そう。こいつは人間をジャドーガ兵にする機械でな。こいつから出るビームが人間の組織を変化させジャドーガ兵へと作り変えるのだ」
 「そ、そんな……」
 愛美は愕然とする。
 それでは今まで倒してきたジャドーガ兵たちは……

 「クククク……今までは人間の男ばかりをジャドーガ兵にしてきた。それは女はいくらジャドーガ兵にしたところで男のジャドーガ兵の方が強いだろうからだ。だが……」
 「だが?」
 「ジャドーガ兵どもは強化した反動で性欲が高まってしまってな。数日おきに“性欲処理”をしてやらねばならんのだ。これまでは人間の女をさらってきて性処理をさせていたのだが、すぐに壊れてしまって使い物にならん。そこでだ……性処理専用に女ジャドーガ兵を作ってみてはどうだろうかとな」
 機械をセットしながら笑みを浮かべているガロム。
 その笑みが意味するところを愛美は感じ取る。
 「ま、まさか私を……」
 「そうだ。お前にはこれからジャドーガ兵どもの性処理をする“性処理用女ジャドーガ兵”になってもらう。どうだ? トライパワードの司令官ともあろう者が敵の性処理をするようになるというのは? なかなか痛快だとは思わんかね?」
 「そ、そんな……」
 青ざめる愛美。
 よりによってそんなことをさせるために私を捕えたというのか?

 「ふ、ふざけないで! だ、誰がそんなことをするもんですか!」
 なんとか自由になろうと必死でもがく愛美。
 両手を縛った鎖がジャラジャラと音を立てる。
 だが、手首に巻き付けられた鎖は外れようとはしてくれない。

 「心配はいらん。この機械から出るビームは、肉体を強化して皮膚をスーツ状に変化させるのと同時に脳にも影響を与え、我がジャドーガの忠実なしもべになるように改造するのだ。次にお前が目覚めたときには、お前はジャドーガの忠実な性処理用女ジャドーガ兵へと生まれ変わっていることになる。クハハハハハ……」
 「い、いやっ! やめて! そんなのはいやぁっ! いっそ殺してぇ!」
 高笑いをするガロムに対し、鎖をジャラジャラと慣らして身をよじる愛美。
 だが、どうしても鎖は外れない。
 「さらばだトライパワードの司令官よ。新たな生を楽しむがよい」
 ガロムがスイッチを押し、機械のレンズが七色のビームを愛美に浴びせる。
 「きゃああああああ……」
 愛美の躰がビームに包まれ、虹色の光で覆われる。
 「ククククク……」
 ガロムはその様子を見つめていた。

 「あああああ……いやっ! いやぁぁぁぁっ!」
 愛美の着ていた服が消滅し、生まれたままの姿になる。
 やがてその躰がじわじわと変色し始め、じょじょに黒く染まっていく。
 染まった部分の皮膚はさらにその周囲を染めていき、愛美の躰が黒く覆われていく。
 手も脚も黒く染まり、やがて首から下はすべて黒く染まってしまう。
 すると、その染まった皮膚が変質し始め、まるでナイロンのタイツのようにと変化していく。
 ジャドーガ兵たちと同じく全身タイツ状へと変わっていくのだ。
 足の指は消え去ってつま先が一つにまとまり、やがてその上にブーツのようなものが作られていく。
 かかともまるでハイヒールのかかとのように固く尖ったものへと変化する。
 両手は肘までが黒い手袋を嵌めたような形へと変わり、腰にはどこからともなく現れた黒い蛇のようなものが巻き付いてベルトへと変化すると、その頭部がジャドーガの毒蛇の模様の付いたバックルへと変化する。
 愛美の首から下はまさに女性らしいラインのままでジャドーガ兵と同じに変化してしまったのだ。

 「ううう……やめ……やめてぇ……」
 変化は愛美の頭部にも及んでいく。
 愛美の茶色の髪も白い肌もすべて黒く染まっていき、やがて目の周り以外は黒一色になってしまう。
 そして黒く変色した部分がすべてナイロンのマスクのようなものへと変化していき、愛美の頭部を覆っていく。
 「ああ……あああ……頭が……頭がぁ……いやぁ……」
 やがて愛美の頭は目だけが露出したナイロンのマスクのようなもので包み込まれ、そのマスクの目の縁取り部分と額のところに現れた逆三角形のマークだけが赤く染まっていく。
 「ああ……ああああああああ……」
 そこまで変化したところで、愛美の躰が力を失いその首がガクンと垂れ下がる。

 「ククク……終わったようだな……」
 腕組みをして見つめていたガロムが機械のスイッチを切り、愛美を縛り付けていた鎖を外す。
 両手を縛っていた鎖が外されたことで、ドサッと床に倒れる愛美の躰。
 その姿は完全に女性型のジャドーガ兵という姿になっていた。

 ぐったりと横たわる女ジャドーガ兵。
 だが、その全身タイツに包まれたような形良い胸が呼吸に合わせて上下している。
 「起きるのだ」
 ガロムが女ジャドーガ兵に声をかける。
 マスクから露出している目がかすかにピクリと動く。
 「起きるのだ! 起きてお前が何者か言ってみるがいい」
 今度はやや強い口調でガロムが命じる。
 すると、閉じられていた女ジャドーガ兵の目がパチッと開き、ゆっくりと躰を起こしていく。
 そしてそのまま立ち上がると、カチッとかかとを合わせて姿勢を正し、右手をスッと斜めに上げる。
 「キキーッ! 私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵。ジャドーガとガロム様に心からの忠誠を誓います。キキーッ!」
 先ほどまでの愛美からは考えられないような言葉を口にする女ジャドーガ兵。
 愛美の身も心も完全に作り変えられてしまったのだ。

 「クククク……いいのかな、そんなことを言って? お前はトライパワードの司令官ではなかったのか?」
 わざとに意地悪い質問をするガロム。
 もちろん返事は決まっているはずなのだ。
 「キキーッ! それは先ほどまでの私です。今の私は偉大なるジャドーガの忠実なるしもべ。トライパワードは我らジャドーガに歯向かうおろか者たち。憎むべき敵です!」
 はっきりとそう口にする女ジャドーガ兵。
 その目はトライパワードへの憎しみをはっきりと浮かべていた。

 「クククク……それでいい。お前は今日からジャドーガに仕える性処理用女ジャドーガ兵マナミだ。よいな?」
 先ほどと同様にマスクに包まれたマナミの顎を手で持ち上げるガロム。
 「キキーッ! 私は性処理用女ジャドーガ兵マナミ。どうぞ何なりとご命令を。キキーッ!」
 力強い手で顎を掴まれたことで目がとろんと蕩けるマナミ。
 今の彼女にとってガロムは敬愛する上官なのだ。
 「クククク……お前は自分が何をするべきかわかっているな?」
 「キキーッ! もちろんです。私の任務は偉大なるジャドーガの世界征服の手伝いとして、ジャドーガで働く皆様の性欲をこの肉体で発散していただくよう性処理を行うことです」
 マナミは何のためらいもなくそう口にする。
 彼女にとってそれはもう当然のことなのだ。

 「クククク……男どもの性処理など屈辱ではないのか?」
 「キキーッ! とんでもありません。ジャドーガの皆様に気持ちよく働いていただくために、この躰で性処理を行なえることはとても喜ばしいことであり、光栄に思います」
 マナミの思考はもうそう思うように変えられてしまっていた。
 ジャドーガメンバーの性処理を行うことこそが彼女の喜びになってしまったのだ。

 「クククク……いいだろう。ではまずは俺様も処理を行なってもらおうか……」
 「キキーッ! かしこまりました、ガロム様」
 ガロムが顎から手を離すと、すぐにひざまずいてその股間に頬擦りをするマナミ。
 敬愛するたくましく強い上官の性処理をさせていただけるなど、幸せ以外の何者でもないのだ。
 今までこのお方と偉大なるジャドーガに歯向かってきた自分は、なんとおろかだったのだろう。
 マナミは心からそう思うようになっていた。

 ガロムの股間からムクムクとせり出してくる黒いペニス。
 男性のジャドーガ兵もそうだが、彼の股間もまた普段は黒いタイツ状のスーツに覆われている。
 それが性的刺激を受けることにより、そのままペニス状の突起として伸びてくるのだ。
 もちろん先端からは白濁した精液も放出される。
 その黒いペニスにマナミは頬擦りし、愛おしそうにキスをしてそのままくわえていった。

 女ジャドーガ兵となったマナミの顔は目以外をマスクのようなスーツで覆われ、口も開くことはできない。
 だが、マスクの口の部分はかなりの柔軟性があり、まるで口を開けたかのようにそのままペニスを頬張ることができるのだ。
 マナミはその機能をフルに生かしてガロムのペニスをくわえていく。
 「んん……ん……ん……」
 マスクに唾液がにじみ、ガロムのペニスを濡らしていく。
 「ククク……いい子だ。気持ちいいぞ」
 「ん……んん……」
 マナミの目に喜びが浮かぶ。
 うれしい……
 自分の口奉仕で喜んでもらえるのがとてもうれしくなる。
 もっともっと気持ちよくなってもらいたい。
 昨日までの愛美なら決して思わなかった気持ちをマナミは感じていた。

 「んっ」
 ガロムのそそり立つペニスから白濁液が放出される。
 「んんん……」
 大量の精液がマスク越しにマナミの中へと浸み込んでくる。
 「ぷあ……」
 思わずくわえていたペニスから口を離し、白濁液に染まったマスクの口をガロムに見せる。
 そしてそのまま指で口を撫でるようにして白濁液をさらにマスクへと浸み込ませていく。
 「クククク……それでいい。マスクに覆われたジャドーガ兵の口は、もう普通の食べ物を食うことはできない。だが心配はいらん。専用の液状食料を食べる男のジャドーガ兵と違い、性処理用に特別改造されたお前の躰は男の精液が栄養となるのだ。しかも口だけではなく躰中どこでもかけられた精液をそのスーツが吸収してお前の体内へと送り込む。お前が性処理をして男の精液を浴びている限り、お前は飢えることが無くなったのだ。クククク……うれしかろう?」
 「ああ……はい……キキーッ!」
 ガロムの言葉に喜びの声を上げるマナミ。
 精液を浴びて生きていくことができるなんて……
 なんてすばらしいのだろうとマナミは心からそう思った。

                   ******

 「キキーッ! キキーッ!」
 「キキーッ!」
 室内に男女のジャドーガ兵の声が響く。
 ガロムの命令でマナミはジャドーガ兵たちの性処理をしているのだ。
 気持ちいい……
 気持ちいい……
 ジャドーガ兵同士のセックスがこんなに気持ちがいいものだなんて思わなかった。
 マナミは心からそう思う。

 後ろから突き込まれるジャドーガ兵のペニス。
 それは普段はナイロンの全身タイツのようなスーツに隠れているものの、性欲を感じるとムクムクとそそり立ってくる。
 今それが四つん這いになっているマナミの後ろから突き立てられている。
 ジャドーガ兵のペニスを感じることで、女ジャドーガ兵であるマナミのスーツにも変化が生じ、股間に性器が作られる。
 そしてナイロン状の被膜に包まれた性器同士がセックスをするのだ。
 それはある意味ゴムを着けてセックスをするようなもの。
 だが、ナイロン状の被膜同士がこすれ合う気持ちよさはその比ではない。
 それにナイロン皮膜を通してジャドーガ兵のザーメンが放出され、それをマナミのスーツが吸収して栄養分にするのだ。
 マナミにとっては性処理は生命維持活動の一つでもあった。

 「キキーッ! キキーッ!」
 ジャドーガ兵としての歓喜の声を上げ続けるマナミ。
 ナイロン皮膜同士がスリスリとこすれ合って最高の快楽を与えてくれる。
 このセックスに比べたら、あの人間の彼とのセックスなど児戯に等しい。
 どうしてあのような男とのセックスを気持ちいいなどと思っていたのだろうか。
 あの男のことを大切に思い、今まで偉大なるジャドーガに歯向かっていただなんて……
 あんな男は死んで当然だし、もっと早く女ジャドーガ兵にしていただけばよかった……
 ジャドーガ兵のペニスが与えてくれる快楽に酔いしれながら、マナミはそう思っていた。

 「キキーッ! んむっ」
 マナミの前にやってきた別のジャドーガ兵が、そのペニスをマナミのマスクに覆われた口のところに当ててくる。
 マナミは喜んでそのペニスに頬擦りし、そのままマスク越しに咥え込む。
 そして後ろから突かれるリズムに合わせてそのペニスをしゃぶっていく。
 「キキーッ!」
 ジャドーガ兵が気持ちよさにたまらず声を上げ、それがまたマナミを気持ちよくさせる。
 前からも後ろからもペニスを突き込まれ、マナミは最高の快楽を味わうのだった。

                   ******

 「くそっ、まだ司令の行方はつかめないのか?」
 イラついたようにうろうろと司令室を行き来する賢哉。
 「落ち着けよ賢哉。焦ったって仕方がない。今防衛隊もみんな必死で捜索を続けてくれている」
 オペレーター席につき、コンソールのモニターを見つめている竜司。
 二人ともに司令の行方を心配しているのは同じだ。
 「そんなこと言っても、もう十日にもなる……くそっ! まさかもうすでに司令は……」
 この世にいないのでは……と不吉な考えを口にしようとして思わず止める賢哉。
 「それは大丈夫だ」
 「どうしてわかる?」
 きっぱりと否定する竜司に賢哉は驚く。
 「おそらく司令を拉致したのはジャドーガの連中だ。だとしたら、司令がすでに殺されているのであれば、それを高らかに宣言しないはずがない。宣言したほうがはるかに俺たちや世間に対する衝撃が大きいからな。だが、それをしていない以上、まだ司令は生きているはずだ……」
 とはいえ、生存の確率が日ごとに少なくなっていくだろうということは竜司にもわかっている。

 「だったら、なおのこと早く司令を見つけなければ……」
 「わかってる……だから焦るな。とにかく今は……」
 「二人とも大変よ! すぐに来て!」
 賢哉と竜司が話しているところに飛び込んでくる理沙。
 「どうした?」
 「何があった?」
 賢哉も竜司もすぐに理沙に反応する。
 「そ、それが……ジャドーガから荷物が届いたの」
 「「はあ?」」
 理沙の言葉に賢哉と竜司は思わず顔を見合わせた。

 「これか? その荷物ってのは?」
 トライパワードの三人の前にあるのは、床に置かれた大きなトランクケース。
 まさに人間一人くらいなら入りそうなくらいの大きさだ。
 「内部に入れちゃって大丈夫なのか? 爆発したりとか……」
 「それは大丈夫みたい。爆発物反応はなかったわ。でもX線での透視はできないみたい」
 竜司の懸念に理沙が答える。
 とはいえ、万が一に備えて三人はいずれもバトルスーツを着用し、場所もやや広めの空き部屋に運び込んである。

 「それにしても……奴ら一体何を送ってきたというんだ?」
 「まさか……な……」
 首をかしげる賢哉と不吉な想像をしてしまう竜司。
 「とにかく、開けてみましょう」
 「ああ、そうだな」
 理沙の言葉にレッドパワード姿になった賢哉がトランクケースに近づいていく。
 緊張した様子でかがみこみ、横に寝かされたトランクケースの留め具を外していくレッドパワード。
 ブルーパワードとイエローパワードも息を飲んで見守っている。

 パチンと音がして留め具が外れ、レッドがゆっくりと大きな蓋を開けていく。
 「な? こ、これは?」
 思わず声を上げるレッド。
 「なんだ? 何があった?」
 すぐさまブルーとイエローも駆け寄ってきてトランクケースの中を見る。
 「これは……」
 三人は思わず顔を見合わせた。

 トランクケースに入っていたのは一体のジャドーガ兵。
 躰を丸めて膝を抱え込むような、まるで胎児のような姿でトランクに押し込められていたのだ。
 しかもそのシルエットからは女性のようだ。
 「女? 女のジャドーガ兵?」
 「女のジャドーガ兵なんて、今まで見たことないぞ」
 「いったいどういうことなの?」
 困惑する三人。

 その時、ブウンと音がして、開いたトランクケースの蓋の裏が光りはじめる。
 三人はすぐに後ろに飛び退って距離を取り、身構えて何が起きてもいいような姿勢を取る。
 すると、光はやがてトゲの付いた鎧に持を包んだ男の姿を空中に映し出した。
 「なっ?」
 「貴様は、ガロム将軍!」
 現れた姿に驚くトライパワードチーム。
 映し出されたのはまさに宿敵ともいうべきジャドーガの幹部、ガロム将軍だったのだ。

 『クククク……これはこれは、三人ともお揃いのようだな』
 映し出されたガロムが三人を見渡す。
 どういう仕組みかわからないが、どうやら向こうにも三人の姿が見えているいるらしい。
 「ガロム将軍! 貴様いったい何を!」
 「ジャドーガ兵を送り込んでくるなんて、どういうつもり?」
 『まあ、待て待て。今日は貴様らに探し物を送り返してやったまでだ』
 今にもとびかかってきそうなトライパワードたちを相手に、ガロムは悠然と構えている。
 「探し物?」
 「どういうことだ?」
 レッドもブルーもいらだちを隠せない。
 今にも手が届きそうな場所に敵の指揮官がいるというのに、それは単なる映像なのだ。

 『クククク……なに、貴様たちが大事な司令官を探していると聞いたのでな? 送り返してやったのよ。ちょっと以前の姿とは違っているがな』
 にやにやと意地の悪い笑みを浮かべているガロム。
 「な、何っ?」
 「えっ? まさか……」
 三人の背中に冷たいものが走る。
 『クククク……さあ、起きるのだ。起きてお前が何者なのかをこいつらに教えてやれ』
 その声にケースの中に入っていた女ジャドーガ兵の目がカッと開く。
 そしてゆっくりと起き上がると、立ち上がってトランクの外に出る。
 床を踏みしめるブーツのかかとがカツッと音を立てる。
 「キキーッ! 私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵マナミ。偉大なるジャドーガとガロム様の忠実なるしもべです。キキーッ!」
 右手を斜め上にスッと挙げ、忠誠の声を上げるマナミ。
 その胸が誇らしげにピンと張られている。

 「な?」
 「ま、愛美?」
 「こ、このジャドーガ兵が愛美司令だというの?」
 愕然とする三人のパワードたち。
 当然だろう。
 今目の前にいるのは、全身をナイロン状のタイツのようなスーツで覆い、腰にはジャドーガの紋章の付いたベルトを締めているまぎれもないジャドーガ兵なのだ。

 「キキーッ! 私はもう司令官などではありません。私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵マナミ。トライパワードは憎むべき敵です!」
 「そ、そんな……」
 「愛美司令が……」
 「嘘でしょ……」
 憎むべき敵とまで言われ、三人は言葉を失う。
 探していた司令がまさかこんなことになっているとは……

 『くはははは……お前たちの司令官はずいぶんと役に立ってくれたぞ。実はジャドーガ兵は男ばかりでな、定期的にたまった性欲を処理してやらねばならんのだ』
 「なんだと!」
 「そんな……」
 ガロムの言葉に唖然とする三人。
 性処理用という意味を、あらためて理解してしまったのだ。
 『マナミのおかげでジャドーガ兵たちの性処理もずいぶんとはかどったのでな、二体目三体目もこうして作ったというわけだ』
 ガロムの両脇に新たな女ジャドーガ兵が姿を現す。
 『キキーッ! 私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵ユウコ。私の躰で皆様の性処理をいたします』
 『キキーッ! 私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵ミユキ。ジャドーガとガロム様に忠誠を誓います』
 それぞれマナミと同様に右手を上げて宣言する二体の女ジャドーガ兵たち。

 「ま、まさかその二人も?」
 「誰かを改造して?」
 『もちろんだとも。こっちのユウコは確か結婚したばかりとか言っていたな。こっちのミユキは女子高生だったか?』
 『キキーッ! それは私が性処理用女ジャドーガ兵になる前のことです』
 『キキーッ! ガロム様、私はもう女子高生などではありません』
 ガロムに腰を抱き寄せられ、嬉しそうにする二体の女ジャドーガ兵たち。
 おそらくこの二人の夫や家族が見れば、愕然としてしまう光景だろう。

 『クククク……というわけだ。今後はいくらでも性処理用の女ジャドーガ兵を用意できることになったのでな、マナミはお前たちが探しているようだから帰してやるというのだ。ありがたく受け取るがいい。くはははは!』
 高笑いを残しながら画像が消えていく。
 「ま、待てっ!」
 「し、司令を元に戻しなさい!」
 「待てっ!」
 三人が駆け寄るが、映像は消え去り、トランクケースの蓋は発光をやめていた。

 「くそっ、逃げられたか!」
 「まあ、今のは映像だから、実際に奴がここにいたわけじゃないけどな」
 悔しそうにこぶしを握り締めるレッドに思わず苦笑するブルー。
 とはいえ、レッドのそういう熱血なところが頼もしくもある。
 「だが、それよりもこの状況をどうするかだ」
 「どうするか?」
 ブレスレットを操作してバトルスーツを解除するブルーパワードの竜司に、レッドパワードの賢哉もスーツを解除する。
 「ああ……この人を……彼女をどうするのか……ジャドーガ兵だから倒す……というわけにもいくまい」
 竜司の言葉に賢哉も理沙もハッとする。
 そうだ……
 ジャドーガ兵は人類の敵ジャドーガの手先。
 倒さねばならない相手なのだ。
 だが……

 「た、確かに……くそっ!」
 賢哉がマナミの方に振り返る。
 「あなたは……あなたは本当に愛美司令なんですか? 本当に?」
 「キキーッ! それは以前の私。お前たちとともに偉大なるジャドーガに歯向かったなどとは思い出したくもない過去。今の私は偉大なるジャドーガの忠実なるしもべ。性処理用女ジャドーガ兵マナミ」
 誇らしく胸を張り右手を上げるマナミ。
 そのマスクから覗いた目が賢哉をキッとにらみつけている。

 「そんな……司令、目を覚ましてください! あなたはジャドーガを憎み私たちとともに戦っていたじゃないですか! それにあなたの恋人は……」
 「キキーッ! 私は正気よ。偉大なるジャドーガを憎むなどあり得ない。あの男は偉大なるジャドーガに歯向かったおろかな男。そんな男は死んで当然。あの男のことなど思い出したくもないわ」
 「そんな……」
 きっぱりと否定され、愕然とする理沙。
 これがあの凛々しかった愛美司令だというの?

 「と、とにかく、俺たちには判断は無理だ。上層部に報告して判断を仰ぐしかないだろう」
 「そ、そうだな……」
 竜司の言葉に賢哉もうなずく。
 まさかこんなことになるとは……
 「だが……すぐに結論が出るということも無いだろう……その間をどうするか……」
 「ああ……仕方ない。とりあえず司令の自室でおとなしくしていてもらうしかないだろう。俺が見張りにつく」
 監視役を買って出る賢哉。
 「大丈夫か?」
 「ああ……ジャドーガ兵なら俺一人でもなんとかなるだろう。それに……報告と交渉は俺よりもお前の方がいいだろう。頼むよ」
 「……わかった」
 竜司が決意を込めてうなずく。
 なんとしても愛美司令を元に戻す方向で上と交渉するのだ。

 「理沙はそのまま待機していてくれ。何かあったらいろいろと頼むかもしれん」
 「わかったわ」
 理沙もこくんとうなずく。
 「さあ、来てください。とりあえず自室にいてもらいます」
 「キキーッ! 私はガロム様からここに送り込まれた身。外に連れ出すというのでなければかまわない」
 抵抗する様子もなくマナミはすたすたと歩きだす。
 賢哉はあらためて彼女の入ってきたトランクを見て、中に何も入っていないことを確認すると、蓋を閉じてそのまま一緒に持って行く。
 ここに置いておくよりも、むしろ一緒にして監視していた方がいいだろうと判断したのだ。
 そして、さっさと部屋を出て自室へと向かうマナミの後を追っていく。
 どうやら以前の記憶はあるようだ。
 だが、その思考はすっかり変えられてしまっているのだろう。
 その姿を竜司と理沙は暗い表情で見つめていた。

                   ******

 「覚えてますか? ここが司令の部屋です」
 「キキーッ! 当然覚えているわ。こんなところにいたことなど思い出したくもないけど」
 落ち着いた雰囲気でまとめられている部屋を見渡すマナミ。
 以前の自分がここにいたことは覚えている。
 だが、ここにいたのは以前の自分であって、今の自分ではない。
 ガロム様の命令でなければ、こんなところにはいたくもないのだ。

 「はは……まあ、なんとか俺たちが以前の愛美司令に戻れるように頑張りますから。ジャドーガの洗脳を必ず解いてみせます」
 トランクを脇に寄せ、入り口のドアのところに立つ賢哉。
 ここで監視するつもりなのだ。
 この部屋は執務室とは違い自室なので、特に重要な機材もない。
 司令室との通信機は特に問題は無いだろうし、パソコンは外してあとで理沙に持って行ってもらうとしよう。
 とにかく、愛美司令を元に戻さなくては……
 賢哉はそう思う。

 「ふん……」
 奥の扉を開け、寝室へと入っていく女ジャドーガ兵。
 机の上のパソコンには手を出さなかったことに、賢哉はとりあえずホッとする。
 司令のパソコンである以上、いろいろと機密情報が入っているのは間違いないのだ。
 やはりこの部屋じゃないほうが良かったかな……
 とはいえ、ジャドーガ兵の捕虜として扱うというのも……
 そもそも、彼女をどう扱えばいいのか……
 賢哉は悩ましく感じる。

 「キキーッ! いつまでそこにいるの? こっちに来たら?」
 奥の部屋から声がする。
 「い、いや、俺は……」
 さすがに寝室に入るのはためらわれ、賢哉は思わず口ごもる。
 「私を見張るのではないの? 私はお前たちの捕虜なんでしょう?」
 確かにそうかもしれない。
 だが、賢哉にとっては尊敬する上官でもあったし、その凛々しさにひそかな憧れを抱いていた相手でもあったのだ。
 「見ていないのなら、私は何かするかもしれないわよ」
 賢哉の返事が無いからか、やや挑発するような声で語りかけてくるマナミ。
 「それは……困ります」
 実際に何かされる恐れは少ないとは思いつつも、賢哉は仕方なく寝室の入口へと移動する。
 そしてドアのところで見張っていようと中を見た。

 「!!」
 思わず息を飲む賢哉。
 寝室では、女ジャドーガ兵がまるで見せつけるようにそのすらっとした長い脚を組んで、ベッドに腰かけていたのだ。
 その躰は全身がナイロン状のスーツで覆われているにもかかわらず、まるでなにも着ていないかのように女のラインを浮き彫りにしており、賢哉の目を惹き付けるには充分すぎるほどだ。
 「キキーッ! どうしたの? 女ジャドーガ兵の躰は見慣れてなかったかしら?」
 見慣れるも何も、女ジャドーガ兵という存在自体がマナミが第一号なのだ。
 見たことなどあるはずがない。
 「うふふ……どう? 私の躰……味わってみたいと思わない?」
 スッと立ち上がり、腰をくねらせるような歩きで近寄ってくる女ジャドーガ兵。
 「だ、ダメです。来ないで」
 賢哉はそう言って近寄らせないようにしようとするが、やはりその姿には魅力を感じてしまう。

 「いいのよ。私は偉大なるジャドーガの性処理用女ジャドーガ兵。憎い敵でも性処理してあげるわ」
 自らの躰を賢哉の胸に預け、その手で彼の股間を撫でるマナミ。
 「ふふふ……ほら、もうこんなに硬くなっているじゃない。私がちゃんと処理してあげるわよ」
 「だ、ダメです! ダメだってば!」
 賢哉はともすれば誘惑に乗ってしまいそうな自分を必死に抑え、彼女の躰を引き離す。
 「うふふ……心配しなくてもいいのに。マスク越しでもちゃんと口でするようにおしゃぶりしてあげるし、スーツ越しでも生でするのと変わらないセックスを味わえるのよ」
 マナミは見せつけるように指をマスク越しに舐め、もう片方の手の指をスーツ越しに股間に入れていく。
 「だ、ダメです! し、失礼します」
 賢哉は慌てて彼女から離れると、そのまま机のパソコンを持って逃げるように司令の部屋を後にする。
 「ふふ……」
 それを見てひそかに笑うマナミ。
 案外と初心な男のようね……
 ガロム様の指令を実行するのも容易そうだわ……
 マナミはそう思った。

 「はあはあ……」
 「ど、どうしたの?」
 小脇にパソコンを抱えて息を切らしながら入ってきた賢哉に、理沙は思わずそう問いかける。
 彼は司令の部屋で愛美司令を見張っているのではなかったのか?

 「す、すまん、交代してくれ。や、やはり女性の見張りは女性の方がいいだろう……」
 「何かあったの?」
 赤い顔をして息を切らせている賢哉に、理沙は困惑する。
 何かあったのだろうか?
 「い、いや、特に……ほら、やはり男だといろいろと問題があるかもしれんだろ?」
 「ふーん……まあ、いいけど」
 なんだか妙な感じの賢哉だが、まあ確かに女性の部屋で男がいるといろいろと気まずいのかもしれない。
 それに、あのジャドーガ兵が愛美司令だとして、元に戻す手がかりのようなものも一緒に居ると掴めるかもしれないとも理沙は思う。

 「頼む。まあ……理沙なら大丈夫だと思うよ。俺はここにいるから、何かあったらすぐに呼んでくれ」
 「了解」
 うなずいて部屋を出ていく理沙を賢哉は見送る。
 まさか女性に対してはあのような行動はしないだろうと賢哉は思ったのだ。
 それにしても性処理用だなんて……
 ジャドーガめ、ひどいことをしやがる……

                   ******

 「失礼します」
 やはりこの部屋に入る時にはそう口にしてしまう理沙。
 今ここにいるのは以前の司令ではなく、敵のジャドーガの一人だというのはわかっているのだが、やはり理沙にとってはこの部屋は司令の部屋なのだ。
 愛美司令……
 どちらかと言うと上官というよりは先輩という感じが強く、理沙にとっても賢哉同様に司令は憧れの人でもある。
 この部屋にも何度かお邪魔させていただき、トライパワードの一員としての話や私的な話もさせてもらったものだった。

 「司令?」
 部屋に入ってみたものの、中には誰もいない。
 だが、奥の部屋に通じるドアが開いているので、おそらくそちらにいるのだろう。
 「失礼します、司令」
 理沙は奥の扉へ向かうと、中に入る前に一度壁をノックして、あらためてそう言ってから寝室に入る。

 ハッとした次の瞬間、黒い腕が背後から理沙の首に巻き付いてくる。
 ドアの影に隠れているという古典的な手で背後を取られてしまったのだ。
 しまったと思ったものの、すでに腕は理沙の首に嵌まってしまっている。
 「キキーッ! 甘いわね。偉大なるジャドーガを舐めているのかしら?」
 耳元で女ジャドーガ兵の声がする。
 そんな……
 息ができない。
 急速に意識が遠くなっていく。
 薄れゆく意識の中で、理沙はあらためて相手がもはや身も心もジャドーガの一員にされているのだと思い知った。

 腕を外すとドサッと床に倒れ込む理沙。
 「ふふふ……」
 完全に意識を失ったことを確認し、マナミは笑みを漏らす。
 この女がイエローパワード……
 偉大なるジャドーガに歯向かう、おろかな女。
 安心しなさい。
 お前は殺しはしないわ。
 お前もこれからは偉大なるジャドーガの一員になるのよ。
 光栄に思いなさい。

 マナミは理沙を軽々と持ち上げると、そのままベッドに運んでいく。
 すでに肉体をジャドーガ兵に改造されたマナミにとっては、この程度の重さなどどうということはない。
 変身をしていない状態のトライパワードなら、ジャドーガ兵でも対処は可能。
 ましてや油断している相手など、赤子の手をひねる様なものである。
 マナミはそのまま室内にあった荷造り用の紐で、理沙の両手をベッドに縛り付けていく。
 目を覚ましたとしてもこれなら抵抗できないだろう。
 もちろんイエローパワードのスーツを装着するためのブレスレットも外しておく。
 あとは……
 椅子をずらしてその上に自分が入れられてきたトランクケースを置いていく。
 バカな連中ね……
 このトランクケースが何のためにあるのかもわからずに……
 マナミはそう思う。
 これで準備は整った。

 「はっ!」
 頬を叩かれて目を覚ます理沙。
 目の前には、頭全体を覆っている黒いマスクから目だけが露出した女ジャドーガ兵の顔がある。
 「クッ」
 身構えようと思った理沙だったが、両手が拘束されてベッドに寝かされていることに気が付いた。
 「キキーッ! 目が覚めたようね。相手が元司令とはいえ油断しすぎじゃないかしら? 今の私は偉大なるジャドーガのしもべなのよ」
 「ち、違います司令! 目を覚ましてください! 司令はジャドーガに操られているだけなんです!」
 確かに油断していたことは間違いない。
 そのことに理沙は臍を噛む。
 ここはなんとかこの場を脱出して賢哉たちに応援を頼まなくては。

 「キキーッ! 私は操られてなどいないわ。私はガロム様によってジャドーガの偉大さ、素晴らしさを教えていただいたの。ジャドーガこそ地球を支配するのにふさわしい組織。それを邪魔するものは死あるのみよ」
 冷たい目が理沙を見下ろしてくる。
 「そんな……本当に司令は姿だけではなく心までジャドーガに染まってしまったんですか?」
 理沙は悲しくなる。
 あれほどジャドーガを憎み、亡くなった彼の無念を晴らすと言っていた愛美司令なのに……
 「キキーッ! 何度も言わせないで。お前たちこそジャドーガに歯向かうおろか者たちだわ」
 いきなり理沙の頬が張り飛ばされる。
 「あぐっ!」
 「キキーッ! 安心なさい。お前は殺したりしないわ。むしろお前は喜ぶべきよ。ガロム様はお前にもチャンスをくださったわ。偉大なるジャドーガにお仕えするチャンスをね」
 マナミの手が理沙の顎を掴む。
 「えっ? それはどういう……」
 「お前も私と同じ性処理用女ジャドーガ兵になるのよ。キキーッ!」
 その言葉に理沙の顔は青くなる。
 そんな……
 私をジャドーガ兵にしようというの?

 「クッ! そんなことは……」
 理沙は必死に身を起こそうとするが、拘束された手首が引っ張られてしまって起き上がれない。
 イエローパワードであればこんな荷造り用の紐など簡単に引きちぎれるだろうが、生身の状態ではそれも難しい。
 「くっ!」
 なんとか身をよじって逃げようとするものの、両手を縛られているのでどうしようもない。
 「キキーッ! 無駄よ。そう簡単には外れないわ」
 理沙から離れて椅子にセットしたトランクケースのところに行くマナミ。
 あとはスイッチを押すだけなのだ。

 「キキーッ! 見なさい。このトランクケースには私をこの素晴らしい躰に改造してくれたジャドーガ兵化ビームの発射機が仕込まれているわ。このビームを浴びれば、お前も私と同じように偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵になることができるの。ジャドーガの皆様の性処理を喜んで行うようになるのよ」
 理沙に向けられたトランクケースの側面には、確かに小さなレンズのようなものがある。
 そこからビームが発射されるようになっているのだ。
 「いやっ! そんなのいやです! 私は絶対にジャドーガ兵になんかならない!」
 必死で身をよじる理沙。
 なんとしてもこの場を抜け出さなければ……
 「だ、誰かぁ! 誰か来てぇ!」
 お願い……
 誰か来て!

 「うふふふ……無駄よ。この部屋の防音がしっかりしているのは知っているでしょ?」
 小さく笑う女ジャドーガ兵。
 確かにこの部屋は司令の私室ではあるものの、場合によっては司令官としてひそかに外部との連絡を行なったりすることもあるため、部屋の外に音が漏れないように作られている。
 そのことは当然理沙も知っていた。
 「そ、そこまで見越して……」
 「キキーッ! ええ、そうよ。ガロム様がわざわざ私をここに送り込んだのは、私がここに詳しいから。お前たちが私を監禁するとすればここにするだろうと読んだとおりだったわ。まあ、違っても別にかまわなかったけどね。ここのことは知り尽くしているのだし」
 「くっ……」
 あらためて理沙は相手が自分たちの司令官であった人物であり、この本部のことはよく知っているということを認識せざるを得ない。

 「司令……」
 「キキーッ! おしゃべりはここまで。次に会話をするときにはお前も偉大なるジャドーガを崇拝するようになっているわ」
 理沙に向けたトランクのスイッチを押す女ジャドーガ兵。
 「いやっ! いやぁっ!」
 理沙の躰にトランクのレンズ部分から七色の光が浴びせられる。
 「ああっ! ああああああ……」
 着ていたものが消滅し、理沙の美しい肢体があらわになる。
 だが、すぐにその白い肌が黒く変化していき、全身が黒く覆われていく。
 それはやがてナイロンの全身タイツのように変質し、理沙の躰をぴったりと包み込む。
 足のつま先は指が消えて一つになり、かかとがハイヒールのように変化してブーツ状に変わっていく。
 両手は全身タイツの上に、さらにひじくらいまでの長さの黒革の手袋のようなものが作られ、腰にはヘビの模様のバックルの付いたベルトが巻かれていく。
 最後に頭部は目の部分以外がすべて覆われ、マスクをかぶったように変化した。

 七色の光線の照射が終わり、ベッドの上には新たな女ジャドーガ兵が横たわっている。
 マナミはゆっくりと近づくと、両手を縛っていた荷造り用の紐を解いてやる。
 そして、一歩下がると命令を口にした。
 「キキーッ! さあ、起きなさい。偉大なるジャドーガに仕える新たな性処理用女ジャドーガ兵リサ」
 「キキーッ!」
 その言葉に従ってむくりと上半身を起こすリサ。
 その目には暗い輝きが灯っている。

 「キキーッ! さあ、立ちなさい。立ってお前が何者か自らの口で言うのよ」
 マナミの言葉にこくんとうなずき、ベッドから降りて立ち上がるリサ。
 その姿はマナミと全く同じ黒い全身タイツに包まれている。
 「キキーッ! 私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵リサ。この身をジャドーガにお捧げいたします。キキーッ!」
 カツッとハイヒールのかかとを鳴らし、気を付けの姿勢から右手を斜めに上げて宣言するリサ。
 「キキーッ! それでいいわ。今日からあなたも私と同じ性処理用女ジャドーガ兵。ともにジャドーガのために働くのよ」
 マナミも姿勢を正して右手を上げる。
 「キキーッ! もちろんです。私のこの身も心もすべて偉大なるジャドーガのもの。ジャドーガのためなら何でもいたします!」
 誇らしげに胸を張るリサ。
 そこにはすでに先ほどまでの理沙の姿は無い。

 「ふふ……それじゃガロム様に新たな女ジャドーガ兵の誕生をご報告しないとね」
 マナミがあらためてトランクケースの蓋を開ける。
 すると、蓋の裏が光りはじめ、先ほどと同じように空中に精悍なガロムの姿を映し出す。
 「キキーッ!」
 「キキーッ!」
 現れたガロムの姿にすぐさま右手を上げる女ジャドーガ兵たち。
 「ほう……」
 映像のガロムは目の前に二人の女ジャドーガ兵がいるのを見て、ニヤッと笑う。
 「マナミよ、うまくいったようだな」
 「キキーッ! ガロム様、新たな性処理用女ジャドーガ兵のリサを紹介いたします。さあ、リサ、ガロム様にご挨拶を」
 「キキーッ! 偉大なるジャドーガの大幹部ガロム様。私は新しく性処理用女ジャドーガ兵となりましたリサと申します。これからは偉大なるジャドーガに永遠の忠誠を誓います。どうぞ、よろしくお願いいたします。キキーッ!」
 マナミに促されてガロムに挨拶をするリサ。
 ジャドーガの誇る大幹部の姿に、思わず緊張してしまう。
 「うむ。マナミよ、この女はイエローパワードか?」
 ガロムの目がリサからマナミに向けられる。
 「キキーッ! その通りですガロム様。リサは先ほどまでは我らジャドーガに歯向かう憎き敵でしたが、こうして私と同じ性処理用女ジャドーガ兵に生まれ変わりました。そうよね?」
 「キキーッ! その通りです。先ほどまでの私はおろかにも偉大なるジャドーガに楯突くバカな女でした。ですが、こうして性処理用女ジャドーガ兵に生まれ変わりジャドーガの一員となった今は、どうしてそのような考えをしていたのか理解に苦しみます。偉大なるジャドーガこそがこの世界を支配するのにふさわしい組織。私はジャドーガのためなら何でもいたします!」
 あらためてガロムに宣言するリサ。
 今のリサにとって先ほどまでの自分は赦されない存在であり、今までの行為を償うためにも全身全霊でジャドーガにために働くのだ。

 「ククク……よくやったぞマナミ。これで目障りなトライパワードのうち一人は消えたということだな」
 「キキーッ! お褒めの言葉、ありがとうございます。ガロム様」
 マナミの胸が熱くなる。
 今までトライパワードの指揮官などという愚かな行為をしてきた自分を褒めてくださったのだ。
 感激以外の何物でもない。
 「では、残る目障りな二人もお前たちの手で葬り去るのだ。できるな?」
 「キキーッ! もちろんです!」
 「キキーッ! お任せくださいませ!」
 二人のジャドーガ兵が目を輝かせる。
 「うむ。頼んだぞ。クハハハハハ……」
 高笑いを残してガロムの映像は消え去った。

                   ******

 『賢哉! すぐに来てくれる?』
 控え室で今後のことを考えていた賢哉の下に、スピーカーから理沙の声が流れてくる。
 「わかった! すぐに行く!」
 賢哉はすぐに飛び出すようにして控え室を後にする。
 おそらく何かあったのだろう。
 もしかしたら、女ジャドーガ兵にされてしまった愛美司令と戦う羽目になってしまったのかもしれない。
 くそっ!
 ジャドーガめ!
 絶対に赦さん!

 「理沙!」
 司令の自室のドアを開け、中に飛び込む賢哉。
 だが、その瞬間に後頭部に一撃を食らい、思わず床に倒れ込む。
 理沙も食らった古典的な手法だが、それだけに効果的な手段でもあるのだ。
 「クッ!」
 なんとか気を失うことは避けたものの、すぐに黒い影が賢哉の上にのしかかってくる。
 賢哉は慌てて引きはがそうとするが、その手を別の黒い影が押さえ込む。
 「なにっ?」
 どういうことだ?
 ジャドーガ兵が二体?

 「くそっ!」
 必死に抵抗するものの、バトルスーツ装着前ではジャドーガ兵と言えども強敵だ。
 一体を相手ならまだしも、二体相手となると賢哉も苦戦は免れない。
 それにしてもいったいどこから二体目が?
 「ぐあっ!」
 腕を固められ、躰をぐるりと仰向けにされる。
 そのまま両手を万歳のように上げた状態で抑え込まれ、顔に柔らかいものが押し付けられる。
 それが女ジャドーガ兵のお尻だと気付いたものの、振りほどこうにも腰から下をもう一人の女ジャドーガ兵が押さえ込んでいて動けない。
 「くっ……むぐっ!」
 「キキーッ! うふふふ……私のお尻の感触はどうかしら、賢哉?」
 体重を乗せて圧迫してくるお尻に、賢哉の鼻と口が塞がれてしまう。
 そしてその声に賢哉は聞き覚えがあった。
 ま、まさか……
 理沙?
 理沙なのか?

 「んん……んぐっ! んん?」
 「キキーッ! うふふ……私の名前を呼んでいるのかしら? ええ、そうよ。私はリサ。でもイエローパワードだった以前の私ではないわ。今の私は偉大なるジャドーガにお仕えする性処理用女ジャドーガ兵リサよ」
 リサはそういうと、賢哉の頭を太ももで締め付けていく。
 「んぐっ! んんんん……」
 「キキーッ! あらあら苦しそうね。今気持ちよくしてあげるわ」
 賢哉の下半身を押さえつけているマナミが、躰で両足を押さえつけたまま賢哉のズボンのベルトを外していく。
 そしてそのまま下着ごとズボンを下ろし、股間をむき出しにしてしまう。
 まだ萎えたままのチンポがあらわになり、マナミの目がうっとりとそれを眺めていく。
 「キキーッ! あらぁ? せっかく女ジャドーガ兵が二人も密着しているというのに、元気が無いわねぇ。うふふふ……」
 「キキーッ! 心配はいらないわ。私たちがすぐに大きくしてあげる。あむっ」
 あざけるように笑うリナと、そのままマスク越しに賢哉のチンポを咥え込むマナミ。
 彼女たちにとって敵であろうとも、チンポはごちそうなのだ。

 「むぐっ! むぐぅ……」
 必死にもがく賢哉。
 リナのお尻が鼻と口をふさいでいるため、呼吸がほとんどできないのだ。
 なんとかどかせたいのだが、リナの膝が賢哉の両腕を抑え込んでおり、なかなかどかせることができない。
 「キキーッ! 無駄よ。トライパワードと言えども変身前の力では私たちにはかなわないわ」
 尻の下でもがく賢哉に、リナはさらに体重をかけていく。
 「ん……んちゅ……ぷあ……うふふふ……苦しくても躰は正直。ほら、大きくなってきたわ」
 呼吸が苦しいにもかかわらず男としての反応は起きてしまうようで、マナミが口を離すと、確かに賢哉のチンポは勃起を始めていた。
 「キキーッ! 彼女のフェラは気持ちいいでしょ? 私たちは性処理用女ジャドーガ兵。偉大なるジャドーガに歯向かうバカな男でもちゃんと抜いてあげるわ」
 「キキーッ! ねえ、かわいそうだから少し緩めてあげたら、リサ? せっかく出したくても苦しくて出せないみたいよ」
 「キキーッ! そうみたいね。これでどう?」
 マナミの言葉にリサが少しだけお尻を持ち上げる。
 「む……ぷ……ぷはぁっ! はあはあ……や、やめろ理沙……二人ともやめるんだ!」
 少し呼吸ができるようになった賢哉が、またもがき始める。
 「キキーッ! うるさいわねぇ。黙って私たちに性処理されればいいのよ。気持ち良くあの世に送ってあげるわ。うふふふ……」
 「あむっ……んん……んちゅ……」
 再び賢哉のチンポを口に含むマナミ。
 「あ……」
 賢哉をたまらない快楽が襲う。
 マスク越しのねっとりとしたフェラがとても気持ちがいいのだ。
 「や、やめてください司令! やめるんだ理沙!」
 賢哉はなんとか逃れようとするものの、腕はリサの膝に押さえつけられ、脚もマナミががっちりと押さえ込んでいる。
 変身しようにも手首のブレスレットを操作しなくてはならないため、変身もできないのだ。
 それでも相手が普通の女性二人なら、トライパワードとして鍛えている賢哉ならなんとでもなっただろう。
 だが、今の二人は女ジャドーガ兵として肉体が強化されており、賢哉の力ではどうにもできない。
 せめて竜司が戻ってきてくれれば……

 「う……うあっ……」
 賢哉のチンポから白濁液がほとばしる。
 「ん……んぐ……んん」
 マスクの口の部分でそれをすべて受け止めるマナミ。
 みるみるうちに白濁液はマスクに吸い取られていき、マナミはうっとりと目を細める。
 「あはぁ……美味しい。ザーメンは最高のごちそうだわぁ」
 濡れた口の周りを指でなぞるマナミ。
 彼女にとってはもう普通の食事など意味がないのだ。
 精液こそが彼女の飢えを満たしてくれる。
 「う、うう……ん、むぐっ」
 フェラチオで射精してしまった気持ちよさと情けなさが入り混じる賢哉だったが、その顔に再びリサのお尻が押し付けられていく。
 「キキーッ! 気持ちよく抜いてもらえたみたいね。今度は私にクンニしてくれない?」
 ぎゅっとお尻で圧迫してくるリサ。
 とはいえ再び鼻も口も塞がれ、クンニするどころではない。
 「ん……むぐっ……ぐっ」
 呼吸ができなくなり、必死に逃れようともがく賢哉。
 「うふふふ……ダメねぇ。チンポが萎びたままよぉ。だらしないわねぇ」
 マナミがチンポに頬擦りするも、苦しくてそれどころじゃない。
 「うふふふ……最後に気持ちよくなれたんですもの、幸せよねぇ? さあ、私のお尻に包まれてくたばりなさい」
 ますます体重を乗せて圧迫するリサ。
 先ほどまでトライパワードの仲間としてともに戦ってきた気持ちなどは、きれいに消えている。
 「むぐ……がっ……」
 呼吸のできない苦しさに必死にもがく賢哉。
 「ぐぐぅ……う……」
 だがその躰もじょじょに力が抜け、やがて動きを止めてしまう。

 「うふふ……どうやらくたばったようね」
 「ええ、これでレッドパワードはもういなくなったわ」
 「うふふふ……」
 「うふふふ……」
 死体となった賢哉からゆっくりと離れて立ち上がる二体の女ジャドーガ兵。
 お互いにどちらからともなく歩み寄り、その躰を抱き合ってお互いの口同志をマスク越しに重ね合う。
 「ん……ぷあ……ふふふ……よくやったわ、リサ」
 「ありがとうございます。偉大なるジャドーガのお役に立てて光栄です」
 抱き合ったままで言葉を交わし合う二体の女ジャドーガ兵。
 「これであとはブルーパワードのみ」
 「ええ、偉大なるジャドーガに歯向かうものには死を」
 「もちろん手伝ってくれるわね?」
 「もちろんです。それと、ブルーが戻ってくる前にオペレーターの紗友里(さゆり)ちゃんにも偉大なるジャドーガのすばらしさを知ってもらうのはいかがでしょう?」
 「キキーッ! それはいいわね。彼女もきっといい性処理用女ジャドーガ兵になれるわ」
 「キキーッ! ガロム様にいい報告ができますかと」
 「うふふ……」
 「うふふ……」
 ゆっくりと離れる二人。
 「さあ、行きましょう。偉大なるジャドーガのために」
 「ええ、偉大なるジャドーガのために」
 「「キキーッ!」」
 二体の女ジャドーガ兵たちは向かい合い、右手を斜め上に上げてジャドーガの敬礼をするのだった。

END

いかがでしたでしょうか?
「戦闘員の日」ということで、女戦闘員化ネタでした。
よろしければ感想コメントなどいただけますと嬉しいです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2022/10/10(月) 20:00:00|
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奥様は愛する旦那をいたぶりたい

今日は超短編SSを一本投下します。

タイトルは「奥様は愛する旦那をいたぶりたい」です。

先日ふと、「悪堕ちさせたヒロインに命令を下したら、速攻で拒否された首領」というのも面白いなぁと思いまして、そんな話を2時間ちょっとで書いてみた作品です。(笑)
なので、本当に堕ちシーンだけのシチュのみSSです。
よろしければご笑覧くださいませ。

それではどうぞ。


奥様は愛する旦那をいたぶりたい

 う……
 ゆっくりと意識が戻ってくる。
 こ、ここは?
 私はいったい?
 目を開けて周りを見回す美那子(みなこ)。
 だが、周囲は漆黒の闇で何も見えない。
 躰もふわふわして、立っているのか横たわっているのかもわからない。
 まるで黒い水の中に浮いているような感じだ。
 だからと言って呼吸ができないということも無い。

 え?
 ここは……ここはどこ?
 どこなの?
 困惑する美那子。
 どうしてこんなところにいるのだろう?

 『目が覚めたようだな、津雲(つくも)美那子よ』
 闇の中から声が聞こえる。
 「だ、誰? 誰なの?」
 美那子は声の主を探すものの、そもそもが闇の中で何もわからない。
 『我はヤミオー。このヤミノランドの王である』
 「ヤミオー? そ、そんな……」
 その名を聞いた美那子は戦慄する。
 ヤミノランドと言えば世間を騒がせている謎の組織であり、世界を支配しようとしている邪悪な集団ではないか。
 奇妙な姿のヤミノ獣という怪物を操り、人々を恐怖に陥れているのだ。

 『ククク……そうだ。我はヤミオー。世界を闇で覆う者。お前は当然そのことを知っているだろう?』
 「……」
 美那子は唇を噛みしめる。
 そう、彼女は知っているのだ。
 世間一般の人々よりもそのことを知っている。
 なぜなら、彼女の夫である津雲大造(つくも だいぞう)は、ヤミノランドに対抗するために設立された陽光戦隊テラスンジャーの一員テラスブルーであり、日夜ヤミノランドと戦っていたからだ。

 『ククク……お前の夫はテラスブルー。我の忌々しい憎むべき敵。そうであろう?』
 どうやら美那子のことは知られているらしい。
 テラスンジャーのメンバーの関係者であることは高度の機密事項のはずだが、いったいどこから漏れたのだろうか……
 「違うと言っても通じないでしょうね……」
 『なに、違うなら違うでも利用価値はそうは変わらん』
 ヤミオーはそう答える。
 もっとも、違うなどとは思ってもいないようだが……
 「私を人質にでも?」
 美那子は闇をにらみつける。
 過去にもテラスンジャーは何度か人質作戦を受けたことはある。
 だが、多数のために少数の犠牲はやむなしということで、救出を最前提とはするものの要求には応じないという姿勢を貫いてきたのだ。

 だが、それは言ってしまえばテラスンジャーチームの関係者が人質ではなかったからで、身内が人質にされたとしたら、その姿勢を貫けるかどうか……
 特に夫の大造に美那子を見捨てる決断を下せるとは思いたくない。
 美那子は夫を心から愛していたし、夫もそうであると思いたかったのだ。
 だから、彼女が人質にされれば、テラスンジャーは危機に陥ることになるだろう……
 それを防ぐためには……
 美那子はその決断をしなくてはと考える。

 『ククク……人質にされる前に死ぬつもりかもしれんが、そうはさせん。お前には我が手駒になってもらおう』
 「えっ?」
 思わず顔をあげた美那子に、周りの闇が絡みつき始める。
 「えっ? いやっ! いやっ!」
 躰にまとわりつくタールのような闇を、両手で振り払おうとする美那子。
 だが、ねっとりとした闇は払おうとしてもまとわりつくだけであり、じょじょに美那子の躰に広がっていく。
 「いやっ! いやぁっ!」
 全身に広がっていく闇に恐怖し、美那子は必死で手を動かしていくが、逆にそれが闇を躰に塗り込むことになっていることにも気づかない。
 「いやっ! む、むぐっ!」
 闇は美那子の首の上にまで広がり始め、やがて口まで覆っていく。
 「ん……んんん……」
 呼吸ができないのか、口を覆った闇を必死で取り去ろうとする美那子。
 だが、闇は頭全体を覆い尽くし、美那子はすっかり闇に包まれたマネキン人形のようになってしまう。

 「……」
 やがて美那子は動きを止め、両手をだらんと下げて棒立ちになったような姿勢になる。
 そしてしばらくその姿勢で動かなくなっていたが、やがてそのまとわりついていた闇が細かい粒子となって飛び散っていく。
 そして中からは、先ほどまでとは違う衣装を身にまとった美那子の姿が現れる。
 それは黒いレオタードのようなインナーを基本とし、その上に銀のアーマーが胸と股間を覆っているもので、両手はひじ上まで、両足は膝上までが同じような黒い長手袋とブーツで覆われていた。
 額には銀に紫の宝石が嵌まったサークレットが付けられ、目にはアイシャドウが、唇には黒いルージュが引かれている。
 それはまさに妖艶に生まれ変わった美那子の姿だった。

 『ククク……生まれ変わった気分はどうかな、津雲美那子? いや、我がしもべヤミノレディ・ミナよ』
 その声にミナはゆっくりと目を開ける。
 「はい、ヤミオー様。とっても良い気分ですわ。私はヤミノランドの一員でありヤミオー様の忠実なるしもべ、ヤミノレディ・ミナ」
 スッと片膝をつき、頭を下げて一礼するミナ。
 もはや彼女は先ほどまでの彼女ではない。
 ヤミノランドの一員としてヤミオーに仕えるヤミノレディなのだ。

 『クククク……それでよい。これからは我のために働いてもらうぞ、ヤミノレディ・ミナよ』
 「もちろんでございますヤミオー様。どうぞこの私に何なりとご命令を」
 喜びに満ちた表情で顔をあげるミナ。
 ヤミオー様のために働けるなど、なんと喜ばしいことだろうか。

 『クククク……ではミナよ、お前に命じる。テラスブルー津雲大造をその手で殺すのだ!』
 「お断りいたします!」
 『は?』
 予想外のミナの答えに面食らうヤミオー。
 『断るとはどういうことだ? お前は我のしもべではないのか? 我に忠誠を誓ったのではないのか?』
 「私はヤミオー様のしもべです。ヤミオー様に心から忠誠を誓っております」
 再び頭を下げるミナ。
 『ではなぜ断る?』
 「テラスブルー、いいえ、津雲大造は私の愛する夫。いくらヤミオー様のお言葉でも愛する彼を殺すなんてできません」
 ミナが首を振る。
 『なんと!』
 完全に闇に染めたはずのミナの言葉にヤミオーは驚く。

 「それに……」
 顔をあげてにやりと歪んだ笑みを浮かべるミナ。
 「なぜあっさりと殺せなどとお命じになられるのですか? テラスブルーはヤミオー様に散々逆らった憎むべき相手。それをただ殺すなどもったいないと思います。どうか私にやつをもっと苦しめろ、たっぷりといたぶってやれ、死ぬよりつらい目に遭わせろとおっしゃってくださいませ」
 『なんと……ただでは死なさんというのか?』
 「もちろんです。彼は私の愛する夫。簡単には死なせたりはしませんわ」
 ぺろりと舌なめずりをするミナ。
 『ククク……いいだろう。好きにするがいい』
 やや呆れたように許可を出すヤミオー。
 もしかしたら闇が美那子の歪んだ愛の部分に火を点けたのかもしれない。
 だが、それはそれで面白かろう。

 「ありがとうございます、ヤミオー様」
 スッと立ち上がるミナ。
 「では早速、我が夫に私の愛を届けて差し上げますわ。うふふふ……」
 そう言ってミナはヤミオーの謁見の間を後にする。
 ヤミノランドの一員となったミナには、闇の中は我が家のようなもの。
 どう動けばいいかはわかっている。
 ああ、なんて素晴らしいのだろう。
 待っててねあなた。
 これからは私がたっぷりといたぶってあげる。
 苦しめて苦しめて身も心も痛めつけてあげるの。
 死んだほうがマシだなんて言ったって、絶対に死なせてあげないんだから。
 私と一緒に世界がヤミオー様の闇に包まれるのをその目で確かめましょうね。
 そして絶望に満ちたあなたの顔を私に見せてちょうだい。
 その表情こそ私にとっては最高の快楽ですの。
 愛してるわ……あなた。
 うふふふふ……

END

いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけましたら幸いです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2022/09/18(日) 19:00:00|
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ターゲットは知能指数600、スポーツ万能の男

今日は11月11日。
いぃーっ、いぃーっということで、「ショッカーの日」なんですよね。
(^o^;)

いつもは10月10日の「戦闘員の日」の方を優先するので、「ショッカーの日」はショッカーに限られてしまうことなどもあり、SS投下とかはあんまりしていないんですけど、今回は「ショッカー生誕50周年」ということもあり、一時間ほどで超短編を作り上げたので投下します。

タイトルは「ターゲットは知能指数600、スポーツ万能の男」です。
「仮面ライダー」第一話の冒頭シーンの裏側という感じです。

短いですがお楽しみいただければと思います。
それではどうぞ。


ターゲットは知能指数600、スポーツ万能の男

 「いい天気。気持ちいい」
 「ほんとね。風が気持ちいい」
 私と優子(ゆうこ)はヘルメットを脱いで髪を風にさらしていく。
 ずっとヘルメットをかぶっているから汗で蒸れちゃうのよね。
 こうして風にさらすと汗が引いていく感じ。

 「いい景色」
 「うん。最高ね」
 私たちは峠の頂上の展望台にある駐車スペースから広がる景色を眺めている。
 山々の緑と谷あいを流れる川が素敵なコントラストを見せていた。
 「やっぱりここはいいね」
 「うん」
 優子も笑顔で答えてくれる。
 たまにこうして峠をバイクで走るのは楽しいよね。

 私も優子もバイク乗り。
 時々二人で一緒に走る。
 女性のバイク乗りはあんまりいないから、優子は貴重な仲間というところ。
 今回はこの峠を二人で上ってきたのだった。

 「それにしても今日は人が少ないね」
 「そうね……いつもはもっと人がいるのにね」
 優子に言われて私も周囲を振り返る。
 確かに今日は車が少ない。
 黒塗りの大型セダンが一台いるくらい?
 いつもなら数台は止まって展望台に行き来する人がいるのに……

 私が不思議に思っていると、黒塗りのセダンのドアが開く。
 「えっ?」
 車の中からは黒いベレー帽をかぶった男たちが現れた。
 いずれも赤と緑の色が塗られた不気味な顔をしており、一人は赤の混じった黒の躰にぴったりしたタイツのような服を、他の三人は黒一色の同じような躰にぴったりとした服を着ている。
 腰には大きなバックルの付いたベルトを締めており、アーッ、アーッと奇妙な声を上げていた。

 「な、なにあれ?」
 その普通じゃない格好に私は驚く。
 「聡子(さとこ)、逃げよう」
 優子も男たちの異様さに恐怖を感じたのか、私の腕をつかんでくる。
 「うん」
 私も優子にそう答え、すぐにバイクのところへ向かう。
 「きゃっ!」
 だが、突然私たちの上からねばつく網のようなものが降ってきて、私たちは身動きが取れなくなってしまった。

 「な、なにこれ?」
 「な、なんなの?」
 私たちは必死でもがくものの、もがけばもがくほど網が躰に貼り付いてくる。
 そして、あのアーアー言う黒い男たちのほかに、私は信じられないものを見た。

 「バイクに乗る女は貴重だ。お前たちをショッカーに招待しよう」
 私たちの前に現れたのは六角形の目を三つ持ち、牙の生えた口や角が生えた頭をした赤と緑色の躰の化け物だった。
 「ひいっ!」
 「きゃぁー!」
 私も優子も思わず悲鳴を上げてしまう。
 い、いったいこれは何なの?
 私は夢でも見ているの?
 こんな化け物がいるなんて……

 「連れていけ」
 化け物がしわがれた声で黒い男たちに命令すると、男たちはアーアー言いながら私と優子を押さえつける。
 そして私たちは担ぎ上げられるようにして持ち上げられ、黒いセダンのトランクに放り込まれると、ガスのようなものを吹きかけられ、私は意識を失った。

                   ******

 『目覚めるのだ』
 『ショッカーの女戦闘員よ。目覚めるのだ』
 声が聞こえる。
 私はゆっくりと目を開ける。
 「ふふふふふ……」
 私はゆっくりと躰を起こした。
 力がみなぎる。
 気分もとてもいい。
 私は選ばれた。
 偉大なるショッカーの一員に選ばれたのだ。

 「うふふふふ……」
 私の隣でもう一人の女戦闘員が起き上がる。
 改造された肉体を示す赤と緑のフェイスペイント。
 躰を包む黒いレオタード。
 腰には赤いサッシュが巻かれ、脚は網タイツと黒いブーツが覆っている。
 私と同じ格好、ショッカーの女戦闘員の恰好だ。

 「お前たちはショッカーの一員となった。これからはショッカーのために働くのだ」
 聞き覚えのあるしわがれた声。
 蜘蛛男様のお声だ。
 私たちは手術台から立ち上がると、蜘蛛男様に一礼する。
 「お前たちはこれより訓練を受け、オートバイ部隊の一員となるのだ。よいな」
 「はい、蜘蛛男様」
 「仰せのままに」
 私たちはそう答えた。

                   ******

 五台のバイクが道に並ぶ。
 「うふふふふ……」
 「ふふふふふ……」
 みんなの顔に笑みが浮かぶ。
 私たちはショッカーのオートバイ女戦闘員部隊。
 今からある男を捕らえるのだ。
 ターゲットは知能指数600、スポーツ万能のバイク乗り。
 バイクの腕も相当なものだという。
 でも問題はない。
 私たちは選ばれた存在。
 偉大なるショッカーの一員。
 ただの人間が私たちにかなうはずもない。
 それに……
 蜘蛛男様も控えていらっしゃる。
 万一にも失敗する恐れはない。

 もうすぐ男がやってくる。
 バイクの爆音が聞こえてくる。
 さあ、狩りをはじめよう。
 ふふふふふ……

END

いかがでしたでしょうか?
ほんとに短い即堕ち二コマ作品ですみません。
(^_^;)ゞ

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2021/11/11(木) 18:31:51|
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コスプレしちゃった (SSタイトルです)

先週の10月10日は1010で千十(せんとお)から「(特撮・フィクション系)戦闘員の日」と提唱させていただき、SSを一本投下させていただきました。
おかげさまで多くの方に賛同していただき、10月10日からの一週間を「戦闘員の日週間」として作品等を見せてくださる方もおられ、ありがたい限りです。

今日10月17日はその「戦闘員の日週間」も最終日。
そこで短い作品ですが、トリを飾る感じでSSを一本投下します。
タイトルは「コスプレしちゃった」です。
お楽しみいただければと思います。

それではどうぞ。


コスプレしちゃった

 「真紀(まき)! 風邪はもういいの?」
 三日ぶりに学校に来た真紀に、私は思わず声をかける。
 「おはよう、愛梨沙(ありさ)。あー……うん、まあね……」
 メガネの奥の瞳が少し泳ぎ、てへっという感じで笑う真紀。
 すぐに私はピンときた。
 「ああー、またずる休みしたなぁ? ホントにもう……出席日数足りなくなっても知らないよ」
 もう……
 心配したんだからね。
 LINEに既読はつかないし、電話かけても出ないし、自宅に電話をかけてもおばさんが風邪を引いたのよって繰り返すばかりだし……
 今日あたり家に行こうかって思っていたくらいなんだから……

 「ああ……出席日数なんてもうそんなのはどうでもいいのよ。学校なんてどうでもいいの。ふふっ」
 真紀の口元に冷たい感じの笑みが浮かぶ。
 「えっ?」
 どうでもいい?
 今どうでもいいって言ったの?
 どういうこと?

 「ねえ、そんなことよりも今日学校が終わったら家に来ない? 愛梨沙に見せたいものがあるの」
 真紀の表情がガラッと変わる。
 さっきは一瞬ものすごく冷たいような顔をしたのに……
 いや、それよりもこれではっきりした。
 「ははーん……それで二日も休んだんだ。今度は何やるの?」
 あのアニメの魔法少女か?
 それとも先月始まった作品のビキニアーマー女戦士か?
 いずれにしても、この二日間は衣装づくりにいそしんでいたというわけだ。
 まったくもう……
 それならそうと言ってくれればいいのに……

 「ふふっ、それは来てからのお楽しみ。来るでしょ?」
 「もう……こっちに選択権なんてないくせに……」
 私は肩をすくめるが、その実楽しみにも思っていた。
 今度はどんなコスプレが見られるのか?
 真紀のコスプレを見るのは私にとっても楽しみなのだ。

 席に向かう真紀を見送り、私も席に着く。
 なんだかうきうきしてしまう。
 彼女はいったいどんな格好をしてくれるのか?
 もしかしたら思いもよらないキャラということもあるかも。
 結構きわどいコスも着たりするのよね。

 はっきり言って真紀はオタクである。
 そりゃ私もアニメは見るしマンガも読む。
 でも、真紀は守備範囲が段違いに広いのだ。
 深夜アニメも録画して見るし、少年マンガ少女マンガ問わずしょっちゅう読んでいる。
 同人誌めいたものも描いたりするし、コミケなんかも顔を出す。
 なによりコスプレが好きで、アニメや漫画のキャラのコスを器用に作っては着て見せてくれる。
 コミケでコスプレを披露したりもするし、SNSに写真をアップもしていたりする。
 もちろんその場合は顔出しNGにはしているが。

 つまり昨日一昨日と休んだのも、コスの制作に夢中だったということなのだろう。
 それだけ気合を入れているということなのかもしれない。
 まったくもう……
 LINEぐらい返事しなさいよね。

 で、そんな真紀となんだかんだでもう一年半くらいになるのよねー。
 高校に入って同じクラスになって席が隣同士になったのが去年の春か。
 最初はなんだか壁を作られているかなとも感じたけど……
 気が付くとおしゃべりするようになってて……
 アニメや漫画の話でいろいろと聞けるのが面白くて……
 ふう……
 なんだか不思議ね……

 いけないいけない……
 授業授業……
 やれやれだわぁ……

                   ******

 放課後、私は朝言ってた通り、真紀と一緒に彼女の家に向かっていた。
 でも、今日の真紀はなんだかいつもと感じが違う。
 いつもは真紀の方がよく話しかけてくるのに、今日は私の方が話しかけているし、返事もどこか上の空だ。
 もしかして……寝不足?
 それならまあ、いいんだけど……

 「さあ、入って」
 「お邪魔しまーす」
 私は真紀と一緒に玄関を入る。
 真紀の家は一軒家。
 真紀のお父さんが結構いいところの部長さんだそうで、頑張っているからとのこと。
 うちはマンションなのでうらやましい。

 「お帰りなさい」
 奥のキッチンから真紀のお母さんが顔を出す。
 「ただいま」
 「こんにちは。お邪魔します」
 私はぺこりと頭を下げる。
 真紀のお母さんは専業主婦。
 共働きのうちとはこのあたりも違うところ。

 「愛梨沙を呼んだから、二階には来ないで」
 「はい……」
 真紀の言葉に無表情でコクンとうなずくおばさん。
 その姿に私は何か違和感を覚えてしまう。
 真紀のお母さんって、もう少し明るい人だったような……

 「愛梨沙」
 「あ、うん」
 私は真紀に呼ばれ、そのまま後について彼女の部屋に行く。
 「ね、ねえ、なんだかいつものおばさんと雰囲気が違ったような……」
 階段をのぼりながら私は真紀に聞いてみる。
 「そう? 別に気にしなくていいわ」
 「えっ?」
 気にしなくていいって……
 そりゃ、私の気のせいかもしれないけど……

 「入って」
 「うん」
 二階の真紀の部屋に私は入る。
 「えっ?」
 私は思わず声を上げてしまった。
 いつも遊びに来ていた真紀の部屋とは全く違っていたのだ。
 マンガ本とテレビとアニメの円盤があった一角は片付けられてしまっており、窓には分厚いカーテンがかけられて薄暗い。
 それに、壁には今までは存在しなかった大きな頭蓋骨のタペストリーがかけられていたのだ。
 「こ、これって?」
 「ちょっとした模様替えよ。用意してくるから、少しここにいてもらうわ」
 私が戸惑っていると、真紀はカバンを放り投げるようにして置き、すぐに部屋を出て行ってしまう。
 「ちょ、ちょっとまっ……」
 私が呼び止めようとしたときにはすでにドアは閉じられていた。
 な、なんなの?
 いつもと違う……

 それにしても……
 あまりにもいつもの真紀の部屋とは違いすぎる。
 カーテンだって閉め切っているし、壁にはあんな不気味なドクロのタペストリーなんてかかっているし……
 あんなにあったマンガ本やブルーレイだってどこにやってしまったのやら……
 おかげで何か借りて読んで待つってわけにもいかないじゃない……
 どうしよう……

 「お待たせ」
 私が真紀のベッドに腰かけ、さてどうしたものかと思っていると真紀が戻ってくる。
 「えっ? えええっ?」
 部屋に入ってきた真紀を見て、私は思わず声を上げた。
 真紀はもうコスプレをしていたのだ。
 その……首まであるハイネックの黒いレオタードを身に着け、足には網タイツを穿き、さらには室内だというのに黒いブーツまで履いている。
 頭には黒いベレー帽をかぶり、メガネを外した目元には青いアイシャドウを入れ、唇も青い口紅が塗られている。
 首には赤いスカーフを巻き、腰にはタペストリーについていたようなドクロ模様のバックルの付いたベルトを締めている。
 なんというか……不気味な感じもするし、躰のラインがもろバレでいやらしい感じもするような格好だ。
 これはいったい何のキャラ?

 「ふふふふ……」
 私が唖然としていると、真紀は妖しい笑みを浮かべて近寄ってくる。
 「あ……真紀……?」
 「うふふふ……違うわ。私は偉大なる秘密結社グォモグの女戦闘員。私のこの姿を見た者は生かしては帰さない」
 「ヒッ!」
 ベッドに腰かけていた私を見下ろす真紀の目が真剣そのもので、私は思わず息をのむ。
 お、女……戦闘員?

 「なーんてね。あはははは……どう? ちょっと怖かった?」
 「えっ? ええっ?」
 いきなりいつものように笑顔になる真紀。
 も、もしかして今のは演技?
 すごく真剣だった感じだったけど……
 「あはは……ごめんごめん。それよりどう? 似合う?」
 私の前でクルリと一回転する真紀。
 その躰のラインが見事に浮き出ている。
 真紀って、知っていたけどスタイルいいよね……

 「う、うん……似合うけど、すごく躰のラインが出るコスだね。なんのキャラなの?」
 こんなキャラ出てくる作品なんて私は知らない。
 「うふふ……これ」
 机の中からブルーレイのパッケージを取り出す真紀。
 着ているコスがレオタードなだけに、かがんだ時にものすごくお尻が強調されることがわかる。
 「仮面ライダー?」
 これって日曜の朝にやっているやつだっけ?
 私は見たことないけど……
 「そう。これは初代でね。もうかなり昔の作品なんだけど、これの一話と三話にだけレオタードと網タイツ姿の“女戦闘員”っていうのが出てくるの。これはそれをアレンジしたコスチュームで、その女戦闘員を気に入った首領様が採用したスタイルなの」
 真紀がふふんと誇らしげにする。
 なるほど、そういう設定ですか。
 昔の特撮にこんなキャラが出ていたんだぁ……

 「うふふ……それでね、愛梨沙も着てみない? あなたの分もあるんだけど」
 「へ?」
 私は妙な声を上げてしまう。
 わ、私も?
 そのコスを着ろと?
 「いやいやいやいや、無理無理無理無理。私には無理ー!」
 私は思い切り首を振る。
 いつだって着るのは真紀で、私はそれを鑑賞する側だったじゃない。
 「うふふ……そう言うと思った。でもダメよ。言ったでしょ? ただでは帰さないって」
 「えええ?」
 「あなたなら絶対女戦闘員にふさわしいの。それに女戦闘員って複数いないと絵にならないでしょ? だからあなたも女戦闘員になるの!」
 ずいっと顔を近づけてくる真紀。
 その目は真剣そのものだ。
 あう……・
 でもぉ……

 「ここには私とあなたしかいないから。恥ずかしくないから。着るだけでいいから」
 畳みかけてくる真紀。
 「うう……」
 どうしよう……
 困ったなぁ……
 「着てどうしてもだめだったらあきらめるわ。残念だけど……」
 がっかりした表情になる真紀。
 ううう……
 そんな顔をされると……
 「い……一度だけ……なら」
 どのみち着ないと納得してくれなさそうだし……
 は、恥ずかしいけど……い、一度だけなら……

 「よかった。あなたを殺さなくて済むわ」
 ホッとしたような顔をする真紀。
 「えっ?」
 「あ、ううん、なんでもない。これ、あなたの分。着方はわかる?」
 真紀が脇に置いてあった大きな紙袋を渡してくる。
 その紙袋はその衣装が入っていたのか。
 ずいぶん大きな紙袋があるとは思っていたけど……
 「だ、大丈夫とは思う」
 レオタードなんだから、着るぐらいはできると思う。
 「そう、それじゃ私は部屋から出ているわ。いい、下着から何からすべて脱いでから着るのよ。いいわね?」
 「う、うん」
 なんか異様な迫力がある真紀に、私は気圧されてしまう。
 着ているコスのせいだろうか?
 「それじゃドアの外にいるから、着替え終わったら呼んで」
 「う、うん」
 私はそう返事をすると、ドアから出ていく真紀の姿を見送った。

 「ふう……」
 やれやれ……なんだか変なことになっちゃった。
 まあ、でも、こんなことでもないと、なかなか網タイツだのレオタードだのなんて着ることないから、そういう意味ではちょっとドキドキしている自分もいる。
 うー……
 でも、私はそんなにスタイル良くないから、真紀みたいに似合うとは思えないよぉ。
 こんなことならもっとダイエットしておくんだったぁ……
 うー……

 でも仕方ない。
 私は覚悟を決めて紙袋から衣装を取り出していく。
 黒いレオタードに網タイツ。
 膝くらいまであるブーツに黒い手袋。
 黒いベレー帽に赤いスカーフ。
 それと腰に巻くドクロ模様のバックルの付いた太いベルト。
 それらをベッドの上に広げさせてもらうと、私は意を決して制服を脱いでいく。
 下着もソックスも脱いで裸になる。
 うう……
 本当に誰も見てないよね?

 私はまず網タイツに足を通していく。
 網タイツなんて穿くの初めて。
 なんだかドキドキしてしまう。
 両足を通して腰まで上げ、偏りを直して落ち着かせる。
 うわぁ……
 網タイツってこんな感じなんだぁ……
 なんだか自分の脚じゃないみたい。
 うはは……

 次はレオタードかな?
 背中のファスナーを下ろして、パンツを穿くような感じで足を通す。
 腰から胸へと引き上げ、袖に腕を通していく。
 両袖に腕を通して背中のファスナーを……
 背中のファスナーを……
 ファスナーを……
 うぐぐぐ……
 か、躰がぁ……
 ぐすっ……

 と、とりあえずファスナーは後回しにして、手袋を嵌め、ブーツを……
 えっ?
 室内でブーツ履いていいの?
 えーと……

 「真紀?」
 私はドアの外に声をかける。
 「なに? 着終わった?」
 ドアの外から声が聞こえる。
 「えーと、まだなんだけど、背中のファスナーが一人じゃ閉じられなくて……それと、ブーツを室内で履いちゃっていいのかなとか……」
 「…………入ってもいい?」
 「う、うん。いいよ」
 ガチャリとドアが開いて真紀が入ってくる。
 なんだか表情が厳しい?
 「後ろ向いて」
 「あ、はい」
 私は真紀に背中を向ける。
 ジーッという音がして、背中のファスナーが引き上げられる。
 それと同時にレオタードが首まで密着して私の躰を包み込む。
 うん……結構気持ちがいいかも。

 「ここまで着たなら、私はもう部屋から出なくてもいいわよね?」
 「あ、うん。ありがとう」
 私は振り向いて礼を言う。
 うう……
 レオタード姿で向き合うのって、なんか恥ずかしい……

 「ブーツは履いて構わないわ。というか履いて」
 「あ、はい」
 私はベッドに腰かけさせてもらってブーツを履く。
 「うん。いい感じ。愛梨沙も似合っているわよ」
 「そ、そう?」
 履き終わって立ち上がった私を見つめる真紀。
 うう……やっぱり恥ずかしい。
 なんか顔から火が出そうだわ。

 「もう一回後ろ向いて」
 「えっ?」
 「いいから」
 「あ、うん」
 私は再び真紀に背を向ける。
 ええ?
 もしかして私のお尻を見られるの?

 違った。
 真紀は私の腰にあのドクロ模様のバックルの付いたベルトを締めてくれたのだ。
 ややズシッとする重みのあるベルトが、私の腰を締め付ける。
 なんか身も引き締まる感じ。
 さらに真紀は私の首に赤いスカーフを巻き付ける。
 なんかどんどん私と真紀がお揃いになっていく。
 ちょうど私の正面にはあのドクロのタペストリーがかかっており、なんだか私たちのことを見ているみたい。

 「はい、こっちを向いて」
 私はもう真紀の言うがままに彼女の方へと向き直る。
 なんだかこうしていると気持ちいいな。
 真紀とおそろいなんてうれしいかも。
 向き直った私の頭に、真紀がベレー帽を乗せてくれる。
 そしてパレットを取り出して、私の目元にアイシャドウを、唇にも青のルージュを乗せてくれる。
 うふふ……
 気持ちいい……

 「これでいいわ。ふふふ……これであなたも女戦闘員よ」
 真紀の言葉に私はドキドキしてしまう。
 私は女戦闘員。
 私は女戦闘員なんだわ。
 「さあ、見て。偉大なる首領様も私たちをご覧になられているわ」
 「えっ?」
 真紀が指し示すのはあのドクロのタペストリー。
 そのドクロの目が赤く輝いている。
 さっきは赤くなんてなかったはずなのに……
 ああ……
 そうか……
 あのドクロを通して偉大なる首領様が私を見てくださっているんだわ……

 私はなんだかちょっと恥ずかしくなる。
 私はちゃんと首領様の好みのスタイルをしているだろうか?
 女戦闘員として恥ずかしくない恰好をしているだろうか?
 もっと躰を鍛えておけば……
 より女戦闘員のコスチュームが似合ったかもしれないのに……

 でも、なんだかとても気持ちがいい。
 あのドクロの目を見つめていると頭がふわっとなって躰がポカポカしてくるの。
 まるで首領様の腕に包まれているみたい。
 「キキーッ!」
 思わず声を上げたくなってしまうわ。
 これは服従の声。
 この声を発することで、私たちは女戦闘員である喜びと、首領様に服従する幸せを感じるのね。
 なんて素敵。
 「キキーッ! キキーッ!」
 ああ……気持ちいい……

 「うふふ……どう? 女戦闘員になった気分は?」
 私は真紀に笑顔を向ける。
 「ええ、とっても気持ちがいいわ。コスプレってこんなにいい気持ちになれるものだったのね」
 「コスプレ? ああ……それで刷り込まれちゃったんだ。まあいいわ。たいした問題じゃないでしょうし」
 一瞬怪訝そうな顔をする真紀。
 あれ?
 コスプレ……でいいんだよね?
 私はこの衣装を着て女戦闘員になったんだもん。

 真紀が机の中から何かを取り出す。
 黒いボトル?
 いったい何だろう?
 私が不思議に思っていると、真紀はボトルの中身を口にする。
 飲み物だったのかな?
 「んふ……」
 えっ?
 真紀が私の方に来て、私の頭を掴んで引き寄せる。
 えっえっえっ?
 そのまま真紀の口が私の口に重ねられる。
 ええええ?
 キス?
 キスしちゃった?
 とろりと甘い液体が私の口の中に流し込まれてくる。
 これって……さっきのボトルの中身?
 真紀ったら……
 私は流し込まれた液を飲み込んでいく。
 すべてを飲み込んだ後も、私たちは唇を重ね合わせたまま。
 お互いの躰を抱きしめていく。
 「ぷわ……ふふふ……」
 唇を離して微笑む真紀。
 「これって?」
 「肉体の強化薬よ。これを飲むことで肉体が強化されるの。私たちは女戦闘員なんだから強くなくてはいけないわ」
 ああ……真紀の言うとおりだ。
 私たちは女戦闘員なんだから、強くなくては。
 首領様に歯向かうものは私たちが始末するのよね。

 「後で躰が少し熱くなってくると思うけど心配ないわ。明日には男三人ぐらいなら平気で相手にできるくらいの力になれる」
 「すごい……」
 男三人を相手にしても平気だなんて。
 うふふ……
 力を試すのが楽しみになっちゃう。
 「さあ、あらためて首領様に忠誠を誓いましょう。私に従って」
 「キキーッ!」
 私は服従の声で返事をする。
 「その調子よ。それじゃ始めるわね」
 私は真紀と並んでタペストリーに向き直る。
 「キキーッ! 私は偉大なる秘密結社グォモグに仕える女戦闘員」
 「キキーッ! 私は偉大なる秘密結社グォモグに仕える女戦闘員」
 右手を斜めに上げ、一言一句真紀の言うとおりに繰り返す私。
 「身も心も首領様に捧げ、グォモグに忠誠を誓います。キキーッ!」
 「身も心も首領様に捧げ、グォモグに忠誠を誓います。キキーッ!」
 ああ……なんだかドキドキする。
 コスプレとはいえ、こうして首領様に忠誠を誓うと身が震えるような喜びだわ。

 「それでいいわ。私は女戦闘員073号。よろしくね」
 「真紀?」
 「それは擬態時の名前よ。あなたも今日からは秘密結社グォモグの女戦闘員076号。いいわね?」
 なるほど。
 このコスを着ているときはナンバーで呼び合うのね。
 わかったわ。
 「当面は私とコンビで動くことになると思う。校内で数人の女にあたりはつけてあるから、そのうちメンバーを増やすことができると思うわ」
 「キキーッ! 了解です073号」
 私も073号のおかげでこうしてコスプレの楽しみを知ることができたわ。
 きっと他の娘たちも喜んでくれるに違いないわね。

 「これ、私がこの二日間でレクチャーを受けたことをメモしてあるから、帰ったら読んで。もっとも、基本的な事項は頭の中に刷り込まれているから問題ないと思う」
 私は073号が差し出してきたメモを受け取る。
 あとでじっくり読まなくては。
 「それじゃ、あんまり遅くなると親がうるさいと思うからひとまずこれで帰っていいわ。道具類はまとめておいたからカバンに入れて持っていくように。催眠波装置も入れておいたから、両親に使って疑念を持たれないようにして置くこと」
 「キキーッ! 了解しました」
 なるほど。
 073号の母親が言いなりになっていたのは催眠波装置のためだったのね。
 うふふ……面白そう。
 私の母も私の言いなりにしてやるわ。
 うふふふふ……

                   ******

 『予定通り獲物はそっちへ向かったわ。追い詰めて!』
 耳に嵌めたイヤホンから073号の声が聞こえてくる。
 うふふふ、バカなやつ。
 私たち女戦闘員から逃げられるとでも思っているのかしら。
 私は隣にいる082号に合図をすると、屋根から通りに向かって飛び降りる。
 女戦闘員のコスプレをした私たちには、このくらいの高さなど何の問題もない。
 ほんと、コスプレって最高。

 逃げてきた男の前に立ちはだかる私と082号。
 「キキーッ! 私たちから逃げられるとでも?」
 「な、なんだお前たちは? 何者なんだ?」
 大事そうにカバンを抱える背広姿の男。
 残念ね。
 お前なんかには用はないわ。
 私たちが用があるのはカバンの中身。
 「キキーッ! 私たちは秘密結社グォモグの女戦闘員」
 082号が誇らしげに口にする。
 擬態時には私のクラスメートでおとなしい娘だけど、私と073号が女戦闘員のコスプレに誘ったら、すっかりはまってしまったみたい。
 今ではしっかり私たちのチームに溶け込んでくれているわ。

 「お、女戦闘員?」
 「キキーッ! そうよ。私たちは女戦闘員。お前の持っているそのカバンに入っている資料をいただくわ。おとなしく渡すことね」
 そう、このコスは私たちが女戦闘員であることの証。
 このコスを着ているときには、私は女戦闘員。
 首領様とグォモグのためならなんでもするの。
 さっさとカバンを渡しなさい。

 「こ、これは会社の重要な……」
 男は私たちに背を向け、必死にカバンを抱えて逃げようとする。
 バカな男。
 私たちから逃げられるはずがないのに。

 私は082号に目配せすると、すぐにジャンプして相手を飛び越えその正面に飛び降りる。
 うふふ……
 このコスプレはこんなことだって簡単なの。
 なんたって私は女戦闘員なんだもの。
 「うわっ」
 私は男の脚を払って男を地面にたたきつける。
 すぐに082号も駆けつけ、二人で男を取り押さえる。
 うふふ……
 人間の力で私たちを振り払えるものですか。

 「ふふふ……取り押さえたようね」
 073号も駆けつけてくる。
 「ええ、ご覧のとおりよ。キキーッ!」
 私が押さえつけている間に、082号がカバンを取り上げて073号に引き渡す。
 「この資料で間違いないみたい。よくやったわ、二人とも」
 チームリーダーである073号の言葉はなんだかうれしい。
 女戦闘員のコスプレをしていることで、少しは首領様のお役に立てたかしら。

 「カ、カバンを返せ」
 私の下でもがいている男。
 うるさい男だわ。
 少しはおとなしくしていたらどうかしら。
 「076号、そいつはもう用済みよ。始末していいわ」
 「キキーッ!」
 073号の許可が出たので、私は男の首に手を回す。
 そしてちょっと力を入れると、すぐに男の首がへし折れた。
 簡単簡単。
 人間なんて殺すのは簡単なものよね。

 「うふふ……これでいいわ。さあ、人が来ないうちに引き上げましょう。二人とも気を付けるのよ。また明日学校でね」
 「キキーッ! また明日ね」
 「キキーッ! 楽しかったぁ」
 私たちはそれぞれ敬礼をしあってその場を後にする。
 早く家に帰らなくちゃ。
 コスプレしているところを誰かに見られたらヤバいもんね。
 それにしても……
 ああん……
 女戦闘員のコスプレって最高だわぁ……
 うふふふふ……

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければコメントなどいただけますと嬉しいです。

また来年の「戦闘員の日」に何か投下できればと思います。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2021/10/17(日) 19:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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キョーアク獣ブタラードのメスブタ作戦

今日は10月10日。
ということで1010(千十:せんとお)から語呂合わせで「(特撮・フィクション系)戦闘員の日」ということを、五年前くらいから提唱させていただいておりますです。

ですので、「戦闘員の日」にまつわるSSを一本投下いたしますです。
まあ、どっちかと言うと「戦闘員」というよりも、「ヒロイン悪堕ち」の面が大きくなってしまった感じではありますけど、お楽しみいただけましたら幸いです。

タイトルは「キョーアク獣ブタラードのメスブタ作戦」です。

それではどうぞ。


キョーアク獣ブタラードのメスブタ作戦

 「今日は遅くなっちゃったわ……」
 人の気配の無くなった夜の道。
 一人の若い女性が帰路を急ぐ。
 夜道の不安はあるものの、周囲に人の気配が無いことは、逆にほんの少し不安を和らげてくれる。
 これがもし背後に人の気配でも感じようものなら、彼女はもっと緊張していただろう。
 「とにかく早く家に帰らなくては……」
 彼女はやや速足で歩みを進める。

 「ヒッ!」
 あと少しで家に着くというあたりで、彼女は青ざめて小さく声を上げる。
 街灯の下に黒い太った人影が立っていたのだ。
 しかも、それはシルエットではなく、本当に躰が真っ黒いのだ。
 「ブヒヒヒ……なかなかいい女だブヒ。ボクちんのメスブタにふさわしいブヒ」
 ノシッと足を踏み出す黒い姿。
 街灯の明かりに照らされたその姿は、太った人間の躰に豚の頭が載ったような化け物だった。
 大きな鼻がフゴフゴとひくつき、三角形をした耳が頭に付いているのだ。

 「ひ、ひぃぃぃぃ! だ、誰か!」
 女性は悲鳴を上げて助けを求める。
 だが恐怖のせいか、声はか細く小さくて、この場を逃げ出そうにも膝が震えて動けない。
 「ブヒブヒ。おとなしくするブヒ。怖がることはないブヒ。ブヒヒヒ……」
 ノシノシと近寄ってくる黒豚男。
 その両手も両足も豚のような蹄が付いている。
 「いやぁっ! いやぁっ!」
 女性は恐ろしさのあまり地面にへたり込んでしまう。
 「ブヒヒヒヒ……」
 「ひぃぃ!」
 黒豚男の豚そのもののような顔が近づき、女性はその強烈な臭いにおいと恐怖のあまりに意識を失ってしまう。
 黒豚男はニヤッと笑い、気を失った女性を担ぎ上げると、闇の中へと消え去っていった。

                   ******

 「確かにまだブラックズーの仕業と決まったわけじゃないけど……」
 周囲を窺うようにしながら夜道を歩いていく若い女性。
 栗色の髪をした整った顔立ちをしており、ピンク色のミニスカートとジャケットを身に着け、ピンク色のブーツを履いている。
 右手には変身用のブレスレットを装着し、いつでも変身できるように身構えている。
 彼女は桜原美愛(さくらはら みあ)。
 キョーアク獣を使い世界を恐怖に陥れる悪の軍団ブラックズーと戦う、正義の戦隊アニマルクインテットの一人、アルマジロピンクなのだ。

 今、この世界はブラックズーに狙われている。
 動物と人間を掛け合わせたようなキョーアク獣という怪人が出現し、街を暴れまわるのだ。
 彼らの力は強力で、軍でもなかなか歯が立たない。
 そこでブラックズーに対抗するために、こちらも動物の力を取り入れたスーツを開発し、それを身に着けて戦う五人の戦士が選ばれた。
 彼らはアニマルクインテットと呼ばれ、それぞれコンドルレッド、バッファローブルー、ジャガーイエロー、アルマジロピンク、マンモスグリーンというコードネームが付けられている。
 美愛はこのメンバーの一人だった。

 ここ二週間ほどの間に、この付近では立て続けに三人もの若い女性が消息を絶っている。
 たまたまということもあり得るものの、美愛はブラックズーが何らかのかかわりがあるのではとにらんでいた。
 そのため、何か手掛かりはないかと、こうして出向いてきたのだ。
 単独行動という形ではあるものの、他のメンバーとはいつでも連絡は取れるようになっている。
 何かあれば、すぐにみんなも駆けつけるはずだった。

 「とはいうものの……ふう……」
 今のところは何の手掛かりもない。
 行方不明の三人も、共通点はこの付近に暮らす若く美しい女性というくらいで、OLだったり女子大生だったり若い主婦だったりと様々だ。
 そのため警察ではよくある失踪が偶然重なったとしてしかとらえてなく、ブラックズーの仕業とは考えていない。
 「私の考えすぎだった……かしら……」
 人気のない夜道に立ち止まる美愛。
 辺りは静かで誰もいない。
 このあたりは住宅もまばらで、昼間でも人通りは少ないのだろう。
 まだそれほど遅い時間でもないのに、まるで深夜のような気分になる。
 明かりも街灯以外は少し離れたところにある住宅の明かりぐらいなのだ。
 「確かに人をさらうにはいい場所かもしれないけど……肝心の人がいないわよね」
 思わず苦笑いしてしまう美愛。

 『きゃあっ!』
 少し離れたあたりから悲鳴が聞こえる。
 「えっ?」
 美愛はすぐに反応し、悲鳴の方へと駆け出していく。
 おそらくこの付近では、あの悲鳴が聞こえたのは自分だけかもしれない。
 急いで状況を確認しなければ!

 「待ちなさい!」
 悲鳴が聞こえたあたりに駆け付けた美愛は、女性を肩に担いだ黒い影を呼び止める。
 気を失っていると思われる女性を担いで、どこに連れて行こうというのか?
 「ブヒ?」
 「はっ!」
 振り向いた黒い影に息をのむ美愛。
 その影は太った黒い豚だったのだ。
 いや、黒豚男というべきか。
 太った真っ黒い躰に豚の頭部を持ち、足には豚の蹄が付いている。
 まさに豚と人間が融合したような姿であり、間違いなくブラックズーのキョーアク獣だ。

 「やはりブラックズーのキョーアク獣ね! 彼女を離しなさい!」
 素早く身構える美愛。
 いつでも変身できるようにブレスレットを構える。
 「ブヒブヒッ! これまたボクちん好みのメスが来たブヒ。今日は大漁だブヒ」
 豚の鳴き声を発しながらニタッと笑っている黒豚男。
 「今まで女性たちをさらったのもあなたなのね? いったい彼女たちをどこへやったの?」
 美愛は黒豚男をにらみつける。
 「ブヒブヒッ、彼女たちなら巣でボクちんの帰りを待っているブヒ。みんなかわいいボクちんのメスブタ兵になったんだブヒ」
 「メ、メスブタ?」
 思わず声が出てしまう美愛。
 女性たちはこのブヒブヒ鳴く黒豚男のメスブタにされているというの?

 「ブヒブヒッ、心配しなくてもお前もすぐにメスブタ兵にしてやるブヒ。ボクちんのためなら何でもするメスブタ兵になるんだブヒ」
 ニタニタと下卑た笑みを浮かべている黒豚男。
 「くっ、ふざけないで! 誰があんたなんかに! いいわ、あんたを倒してみんな助ける! へんし……」
 「おっと、変身したらこの女が死ぬブヒ」
 美愛がブレスレットを掲げてアルマジロピンクに変身しようとした寸前、黒豚男が抱えていた女性を下ろしてその首に手をかける。
 「くっ!」
 思わずブレスレットのボタンを押す手が止まってしまう美愛。
 「ブヒブヒッ、道理で見たことのある顔だと思ったブヒ。お前はアニマルクインテットのアルマジロピンクだったかブヒ」
 うんうんと一人で納得したかのようにうなずいている黒豚男。
 どうやら彼女の正体を知っているらしい。

 「卑怯者! 彼女を離しなさい!」
 「そうはいかないブヒ。この女はボクちんのメスブタ兵になるんだブヒ。メスブタ兵にしてボクちんのハーレムの一員にしてやるブヒ。お前にも一緒に来てもらうブヒ」
 黒豚男は女性を抱きかかえてその首に手をかけたまま、ゆっくりと美愛の方へと近づいてくる。
 「くっ」
 じりじりとあとずさる美愛。
 その手はブレスレットのボタンに指をかけたままだ。
 「そのブレスレットを外すブヒ。外さないと……」
 女性の首にかけた手に力が入る。

 「ま、待って……わかったわ……」
 美愛はゆっくりとブレスレットを外す。
 女性の命には代えられないし、チャンスはきっと来るはず。
 それに……
 美愛はこっそりブレスレットの緊急ボタンを押す。
 これで他の仲間に信号が伝わるのだ。
 おそらく10分もすれば誰かが駆けつけてくるはず。
 それまでこいつを足止めしておけば……

 「ブヒブヒッ、そのブレスレットを遠くに放り投げろ。お前にはもう必要ないものだブヒ」
 「えっ?」
 さすがに捨てろと言われたら足元にでも落とそうと思っていた美愛も、放り投げろと言われて戸惑ってしまう。
 だが、再び黒豚男の手に力が入るのを見て、美愛はあきらめてブレスレットを放り投げる。
 信号をキャッチした仲間がブレスレットしかないことに気付き、周囲を探してくれれば何とかなるかもしれない。
 とにかく、今は時間を……

 「よしよし、それでいいブヒ。さあ、お前も来るんだブヒ」
 女性から手を離し、再び肩に担ぎ上げる黒豚男。
 そのままさらに美愛の方へと近づいていく。
 「その前に彼女を離しなさい!」
 ブレスレットは外してしまったものの、美愛とてアニマルクインテットの一人である。
 格闘術は身についており、いつでも戦えるように構えを取る。
 「ブヒブヒッ、そうはいかないブヒ。この女はボクちんのかわいいメスブタ兵にすると言ったブヒ。そしてお前もそうなるブヒ」
 「そんなのごめんこうむるわ!」
 近づいてきた黒豚男に渾身の蹴りをお見舞いする美愛。
 うまくいけば女性を離すかもしれない。
 だが、その願いはむなしかった。

 「なっ!」
 美愛の躰が地面に転がされる。
 蹴り上げた足を跳ね上げられ、バランスを崩してしまったのだ。
 見た目とは裏腹に黒豚男の戦闘力はさすがキョーアク獣というべきだろう。
 「ブヒブヒッ、おとなしくするブヒ。ふうーっ」
 倒れ込んだ美愛に口から猛烈に臭い息を吹きかける黒豚男。
 「うっ! げほっ!」
 そのにおいに美愛は思わず咳き込んでしまう。
 あまりに強烈な臭さは、まるで脳に突き刺さってくるかのようだ。
 「げほっ! ごほっ!」
 必死ににおいを吸い込まないようにする美愛。
 だが、周囲は臭い息で覆われ、頭がくらくらしてしまう。
 やがて美愛は意識が遠くなってしまい、その場にぐったりと横たわった。

                   ******

 「はっ!」
 美愛が気付いた時、そこは固い台の上だった。
 周囲には何やら医療器具のようなものがいくつか置かれ、天井には無影灯が輝いている。
 手術台?
 美愛はそう思い、躰を起こそうとしたが、両手首と両足首が固定されてしまっていることに気付く。
 「えっ? 嘘……」
 しかも美愛の躰は服を脱がされてむき出しになっており、この手術台の上に裸で寝かされているのだ。
 美愛の額に汗が浮かぶ。
 まさかこうも簡単に捕らえられてしまうとは……
 仲間を呼びたくてもブレスレットは外してしまったし、ここがどこかもわからない。
 となれば、おそらく見つけてもらえる可能性は低いだろう。
 なんとか自分で脱出するしかない。
 でも、どうやって……

 「ブヒブヒッ、改造の準備が整ったブヒ。先にこっちからブヒ」
 数人の足音がして、声が近づいてくる。
 それと同時に嗅いだことのある吐き気を催すような臭いにおいまで漂ってきた。
 見ると、あの黒豚男とその背後に数人の人影が見える。
 えっ?
 嘘……
 まさか……そんな……
 美愛が言葉を失う。

 黒豚男の背後にいたのは女性たち三人。
 失踪した三人の女性たちだったのだ。
 ただ、そのいずれもが異様な格好をしている。
 彼女たちの頭には三角の豚の耳が付いており、顔にも大きな豚の鼻が付いているのだ。
 両手と両足には黒革の長手袋と膝上までのロングブーツを着けているが、つま先は豚の蹄のように二つに割れており、手にも豚の蹄状の突起が付いていた。
 そして胴体部分には黒革のコルセットが着けられているものの、逆に股間と両胸はむき出しでさらけ出されている。
 あまりにも恥ずかしい格好をしているというのに、三人はいずれもその顔にうっとりと笑みを浮かべ、黒豚男に付き従っていた。

 「彼女たちは!」
 「ブヒブヒッ、目が覚めたかブヒ? そう、お前が探していたのはこのメスブタたちだブヒ」
 ニタッと笑みを浮かべる黒豚男。
 「い、いったい彼女たちに何をしたの!」
 確かにメスブタにしたとは言っていたが、まさかこんな格好にされているとは思わず、美愛は愕然とする。
 「ブヒブヒッ! こいつらはボクちんのかわいいメスブタ兵にしてやったんだブヒ。そうだな、お前たち?」
 黒豚男が三人を振り返る。
 「ブヒブヒブヒィッ! はい、私はブタラード様にお仕えするメスブタ兵カズミ。ブタラード様のためなら何でもいたします。ブヒィッ!」
 「ブヒブヒィッ! 私はメスブタ兵カナ。ブタラード様の太くて素敵なおチンポ様にご奉仕するために生まれてきたメスブタです。ブヒィッ!」
 「ブヒブヒィッ! 私はメスブタ兵マユカです。ブタラード様に身も心もお捧げし、私の卑しいメスブタ穴をお使いいただくのが喜びです。ブヒィッ!」
 女性たちが一斉に右手を斜め上に上げ、うっとりとした表情で黒豚男に宣誓する。
 その姿にとても信じられないという表情をする美愛。
 いったい、彼女たちに何があったのだろうか?

 「彼女たちに何をしたの?」
 「ブヒブヒッ! 言っただろ、ボクちん好みに改造したんだブヒ。こいつらはボクちん専用の戦闘員として、ネズネズ兵と同等の強さを獲得させているブヒ。だから強いんだブヒ」
 「ふあぁぁぁん……ブタラード様ぁ……ブヒィ……」
 黒豚男ブタラードに抱き寄せられて甘い声を上げるメスブタ兵マユカ。
 確か彼女には家で心配して帰りを待っている旦那さんがいたはずなのだ。
 それが豚のように鼻を鳴らしてブタラードにしなだれかかっている上に、ブラックズーの戦闘員であるネズネズ兵と同等の強さがあるなんて……

 「私を捕らえたからといっていい気にならないようにね。すぐに他のアニマルクインテットが来てくれるわ。そうなればもうお前はおしまいよ。それが嫌ならすぐに私と彼女たちを解放することね」
 美愛は精いっぱいの虚勢を張る。
 もちろんそれがほぼ無理であることは美愛自身が一番わかっているし、このブタラードとか言うキョーアク獣が彼女を解放することもあり得ないだろう。
 だが、なんとか時間を稼いで隙を見つけるしかないのも事実。
 その間に仲間が救出しに来てくれるのを願うしかないのだ。
 お願い……
 コンドルレッド、ジャガ―イエロー、マンモスグリーン、バッファローブルー。
 早く来て……

 「ブヒブヒッ! 確かにそうだなブヒ。いつ奴らが来るかわからんブヒ。その前にお前をボクちんのメスブタ兵に改造してしまおうブヒ」
 「クッ……」
 強烈な臭気を発しながら近づいてくるブタラードに、美愛は顔をそむけたくなるのを必死にこらえてにらみつける。
 「そう怖い顔をするなブヒ。すぐにお前もボクちんのことが好き好き大好きブタラード様と思うようになるブヒ」
 「絶対にならないわ! なるもんですか! あんたみたいな臭いやつはお断りよ!」
 ガチャガチャと手足の拘束を何とか外そうとする美愛。
 だが、やはり彼女の力では外れない。

 「ブヒブヒッ、まずはお前の躰からだブヒ」
 ブタラードが機器類のスイッチを押す。
 ウィンウィンと機器類がうなり始め、いくつかのアームが美愛に向かって伸びていく。
 「いやっ! いやぁっ!」
 美愛は身をよじってなんとか逃れようとするが、アームは正確に美愛の動きに追随し、彼女の躰に針を突き立てていく。
 「あうっ!」
 薬剤が注入される痛みと熱さのようなものを感じる美愛。
 すぐに躰がほてってきて、全身が焼けるように熱くなる。
 「ああっ……あああっ……」
 灼熱の暑さに身を焼かれるように感じる美愛。
 その躰がだんだん変化し始める。
 「い……いやっ……躰が……躰が熱い……フ……フゴッ」
 鼻がじょじょに大きくなって上を向き、まるで豚の鼻のように変化する。
 頭からも黒い豚耳が生え、人間の耳は小さくなって髪に隠れていく。
 お尻の尾てい骨部分からはクルリと丸まった豚のシッポが生え、腹部が黒革のコルセット状のものに覆われていく。
 足も太ももから下の部分が黒革のロングブーツを履いたような形へと変化し、つま先も豚の蹄のように二つに割れていく。
 両手も二の腕までの黒い手袋をはめたような形へと変化し、手の甲部分に豚の蹄のような突起が作られる。
 それはまさにブタラードの背後にいた三人の女性たちと同じ姿に他ならなかった。

 「ブヒブヒッ、いつ見てもボクちんのかわいいメスブタ兵ができていくところは楽しいブヒ」
 「ブヒィッ! 自分がメスブタ兵になった時のことを思い出してしまいますぅ」
 「ブヒブヒィ! 彼女の体臭も私たちのようにかぐわしくなってきましたわぁ」
 「ブヒィ……あん……なんだかおマンコが濡れてきちゃいますぅ」
 ブタラードと三体のメスブタ兵が美愛の変化を見つめていく。
 「ああ……いやぁ……いやぁ……こんなのいやぁ……」
 躰の熱がじょじょに引き、目を開けた美愛は、自分の躰の変化に愕然とする。
 「ひどい……元に……元に戻して! ブヒィィィィッ」
 思わず豚の鳴き声を上げてしまったことに驚く美愛。
 「そんな……わ、私は……」
 「ブヒブヒッ、お前の躰はもうメスブタ兵になったんだブヒ」
 「ひぃぃぃぃぃっ! いやぁぁぁぁぁっ!」
 首を振って泣きわめく美愛。
 よりにもよって豚にされるなんてひどすぎる。

 「ブヒブヒッ、嘆くことはないブヒ。すぐにお前の思考を変えてやるブヒ。そうすればお前はメスブタ兵となった喜びに包まれるんだブヒ」
 「いやよぉ……そんなのいやぁ……ブヒィッ!」
 泣きわめく美愛を尻目に新たなスイッチを押すブタラード。
 「ひぐっ!」
 美愛の両目がカッと見開かれる。
 彼女の頭に新たな針が突き立てられたのだ。
 「あ……あああ……」
 脳がかき混ぜられるかのように感じる美愛。
 目の前がぐるぐると回り、何も考えられなくなっていく。
 まるで頭の中で台風が吹き荒れているかのようなのだ。
 「ああああ……」
 瞬きすらできずに目を見開いている美愛。
 その口からはよだれが一筋垂れていく。

 やがて、美愛の目がとろんとなり、うっとりとした目つきに変わっていく。
 口元にも笑みが浮かび、幸せそうな表情になる。
 「フゴッ……フゴッ……ブヒィ……」
 鼻を鳴らして鳴き声を上げるようになっていく。
 先ほどまでは悪臭としか感じなかったブタラードの体臭も、とてもかぐわしく甘美なにおいに感じてくる。
 豚であることの喜びが湧き、豚ではない人間たちが下等に思えるようになってくる。
 美愛の思考は変えられ、メスブタであることが誇らしく感じてくる。
 「ブヒッ……ブヒィィィィッ!」
 鳴き声を上げることが当たり前になり、鳴き声を上げないなどあり得ないことに感じていく。
 美愛はメスブタへと変わっていた。

 美愛の頭から針が抜き取られる。
 「ブヒィィィィィッ!」
 ひときわ高らかに鳴き声を上げる美愛。
 その手足の拘束が外されると、すぐに美愛はブタラードの前に土下座をする。
 「ブヒブヒィィィッ! ああ……ブタラード様……私をメスブタ兵にしてくださり心から感謝いたします。私はもうアルマジロピンクの桜原美愛などではありません。ブタラード様にお仕えするメスブタ兵ミアでございます。どうぞ何なりとご命令を。ブヒブヒブヒィィィッ!」
 まるで床に頭をこすりつけるかのように頭を下げる美愛。
 もはや彼女はブタラードのしもべであるメスブタ兵ミアへと生まれ変わってしまったのだ。

 「ブヒブヒッ、それでいいブヒ。これからはお前もボクちんのために働くんだブヒ」
 「もちろんです。私の身も心もブタラード様のもの。私のすべての穴をブタラード様に捧げ、ブタラード様のためなら何でもいたします。ブヒィィッ!」
 「ブヒブヒッ、いい子だブヒ。立ってその姿をボクちんに良く見せるブヒ」
 「ブヒィッ! はい、かしこまりました」
 ブタラードの前にゆっくりと立ち上がるメスブタ兵ミア。
 頭には豚耳が付き、鼻は大きな豚の鼻をしていて、両胸は惜しげもなくさらされ、腰には黒革のようなコルセットが締められている。
 股間は陰毛がすべてなくなって性器がむき出しとなっているが、今のミアはそれを恥ずかしいと思うことはない。
 それどころかいつでもブタラードにおチンポをはめてもらえるという喜びを感じてしまうのだ。
 そしてお尻には豚のシッポが生え、両手と両足は黒革の手袋やブーツを着けたようになっている。
 ブタラードの背後に控えるメスブタ兵たちと同じ姿になっていた。

 「ブヒブヒッ、あのアニマルクインテットの一人アルマジロピンクが、こうしてボクチンのメスブタ兵になるのは最高だブヒ。今日からお前にはメスブタ兵の指揮を任せるブヒ。アルマジロピンクだったお前ならできるだろうブヒ?」
 「ブヒィィィィッ! 本当ですか? ありがとうございます! もちろんです。メスブタ兵たちの指揮を執り、ブタラード様に歯向かうおろか者たちはすべて私たちメスブタ兵が排除いたします。ブヒィッ!」
 ブタラードの言葉に感激するミア。
 これからは彼女が指揮を執り、ブタラード様のためにメスブタ兵を動かすのだ。
 ミアは最高の喜びを感じてしまう。

 「ブヒブヒッ、ではさっそくお前に最初の命令を下すブヒ」
 「ブヒィッ! ハッ、なんなりと!」
 姿勢を正し、右手を上げて敬礼するミア。
 今の彼女にとってはブタラードの命令は絶対なのだ。
 「お前と一緒に連れてきたもう一人の女。これをお前の手でボクちんのかわいいメスブタ兵に改造するんだブヒ。いいなブヒ」
 にたりと笑うブタラード。
 「ブヒィッ! かしこまりました。私とともに捕えられたあの女を、私の手でブタラード様にお仕えするメスブタ兵に改造いたします。お任せくださいませ。ブヒブヒィィッ!」
 ためらいもなく答えるミア。
 もはや捕らわれた女性を助けようとしていたことなど消え去っているのだ。
 それどころか、命令を受けた喜びに彼女の股間はじんわりと濡れてくる。
 ブタラードの命令を受けるということは、それだけメスブタ兵にとっては快感なのだ。
 「ブヒィッ!」
 ミアは喜びに頬を染め、すぐにとらわれた女性をメスブタ兵にするための準備をし始めるのだった。

                   ******

 手術台に寝かされている一人の女性。
 ミアと一緒にさらわれてきた女性だ。
 すでに衣服は脱がされ、手足も固定されて、いつでも改造できるようになっている。
 あとはスイッチを押すだけと言っていい。

 「う……」
 ミアが近づくと女性が顔をしかめる。
 彼女のにおいに反応したのだろう。
 今のミアはブタラードに劣らぬ臭い体臭を発しているのだ。
 無意識にその臭さに顔をしかめてしまったのかもしれない。

 思えば今の自分があるのは彼女のおかげではないだろうか……とミアは思う。
 彼女が悲鳴を発してくれたことで、ミアはブタラード様の行動に気付き、彼に捕えられることになったのだから。
 彼女が悲鳴を発してくれなかったとしたら、ミアはまだおろかにもアニマルクインテットなどの一員として行動し、ブタラード様と戦っていたかもしれないのだ。
 そう思うとミアはゾッとする。
 ブタラード様と戦うなんて……あり得ない……

 でも、そうならずに済んだのは、彼女が悲鳴を発してくれたおかげ。
 そう思えば感謝してもしきれないくらい。
 だから、彼女が自分と同じメスブタ兵になるのはとてもうれしい。
 一緒にブタラード様にお仕えできるのよ。
 ともにブタラード様のために働きましょうね。

 「う……うん……臭い……」
 目を開ける女性。
 「ひっ!」
 目の前にミアがいることに気付き、小さく悲鳴を上げてしまう。
 「ブヒィィィッ! 目が覚めたかしら? ちょうどよかったわ。すぐにあなたもメスブタ兵に改造してあげる」
 おびえた表情の女性に、ミアはゾクゾクしてしまう。
 うふふ……なんだか気持ちいい……
 人間の怯える顔を見るのって気持ちいいわ……

 「こ、ここは? あなたはいったい?」
 「ブヒィッ! 私はブタラード様にお仕えするメスブタ兵のミア。あなたもメスブタ兵になるのよ」
 そう、これからミアは彼女を自分と同じメスブタ兵にしてあげるのだ。
 下等な人間であることをやめ、メスブタ兵としてブタラード様にお仕えするのだ。
 「い、いやっ! そんなのいやです! 家に返して!」
 強烈な臭いにおいに思わず息がつまりそうになりながらも、彼女は泣きそうな顔で必死に首を振る。

 「ブヒブヒッ、臭い? 私のにおいを臭く感じるのはあなたがまだ人間だからよ。私たちメスブタ兵はブタラード様の体臭と同じように臭い体臭を持っているの。でもそれは私たちが常にブタラード様に忠実にお仕えするメスブタ兵である証の体臭でもあるのよ。すぐにあなたもこの体臭をかぐわしいと思うようになるわ。そしてブタラード様を見るだけで発情するようになるのよ」
 それはミア自身が感じていること。
 こうしてブタラード様の名を口にするだけで、ミアはおマンコが感じてしまうくらいなのだ。
 「そ、そんな……いやぁっ!」
 必死に手足を動かして逃れようとする彼女。
 ミアはそんな彼女を哀れに思う。
 彼女はまだ下等な人間なんだわ……
 早く私と同じメスブタ兵にしてあげないと……
 「おしゃべりはここまでね。改造を始めるわ」
 ミアは手術台の脇にあるスイッチを押す。
 「いやぁっ!」
 女性の躰に向かってアームが何本も伸びて行った。

                   ******

 「ブヒブヒッ、美味い美味い」
 メスブタ兵たちが差し出す食い物を次々と平らげていくブタラード。
 彼にしなだれかかるように三匹のメスブタ兵たちが寄り添っている。
 一匹はワインの入ったグラスを持ち、また一匹は肉の盛られた皿を持っている。
 もう一匹はチーズの載った皿を持ち、交互にブタラードの口へとそれらを運んでいるのだった。
 「ブヒブヒッ、かわいいメスブタ兵たちだブヒ」
 ブタラードは空いた両手で彼女たちの胸や尻を揉み、その感触を楽しんでいた。

 カツカツと足音が響き、二匹のメスブタ兵たちが入ってくる。
 「ブヒブヒィィィッ! ブタラード様、新たなメスブタ兵を連れてまいりました。ブヒィッ!」
 二匹はブタラードの前までやってくると、スッと右手を上げて敬礼する。
 「ブヒブヒッ、終わったようだな。よくやったぞ、メスブタ兵ミア」
 「ブヒィィィッ! お褒めのお言葉ありがとうございます。さあ、メスブタ兵ルミ、ブタラード様にご挨拶なさい」
 ブタラードの言葉に喜びを感じつつ、背後のメスブタ兵に指示を下すミア。
 「ブヒィィッ! 私はブタラード様にお仕えするメスブタ兵ルミです。私をメスブタ兵にしていただき、ありがとうございます。ブヒィィッ!」
 挨拶をしている間にも、ルミの股間はじんわりと濡れてくる。
 改造前にミアが言ったとおり、ブタラードの姿を見、その体臭を嗅いだだけで発情してしまうのだ。
 メスブタ兵になった今、彼女にとってはそれは当たり前のことだった。

 「ブヒブヒッ、それでいいブヒ。あとでたっぷりとかわいがってやるから、これからはボクちんのために働くブヒ」
 「ブヒィッ! もちろんです。私の身も心もブタラード様のもの。何なりとご命令ください」
 ルミが嬉しそうに答える横で、ミアはもじもじと切なそうな表情を浮かべる。
 「ブヒブヒッ? どうしたブヒ?」
 「あ……はい……私も……私もかわいがっていただきたいです……ブヒィッ!」
 ミアはまだブタラード様のおチンポ様を味わっていないのだ。
 ルミだけじゃなく、自分もかわいがってほしかった。
 「私も……」
 「私もお願いしますブヒィッ!」
 ミアに続き他のメスブタ兵たちも口々に願い始める。
 「ブヒブヒッ、わかったわかったブヒ。全員まとめてかわいがってやるブヒ」
 「わあ……」
 「ありがとうございます。ブヒィッ!」
 「ブヒッ! ブヒィッ!」
 ミアもカズミもマユカもカナもみんなが喜びの声を上げていた。


                   ******

 「ブヒブヒィッ! やぁっ!」
 「ブヒブヒッ! とうっ!」
 気合の入った声と金属のこすれ合うような音が響く。
 「ブヒブヒィッ! ほら、気を抜かない! 私たちはブタラード様にお仕えするメスブタ兵なのよ! ブタラード様のためにももっともっと強くならなくてはいけないわ!」
 「ブヒブヒィッ! はい!」
 「わかりました! ブヒィッ!」
 四匹のメスブタ兵たちが二組に分かれ、お互いに格闘し合っている。
 こぶしでの一撃、足の蹴り、手の蹄による打撃など、いずれもが一撃で人間を即死させることのできるものばかりだ。
 見た目は露出癖のある変態女性のような恰好でありながら、その強化された肉体は人間を大幅に超えている。
 まさに兵士と呼ぶにふさわしい。
 その四匹のメスブタ兵を指揮し、訓練しているのがメスブタ兵ミア。
 彼女はアルマジロピンクだった過去を振り払うかのように、その戦闘技術を他の四匹にレクチャーしているのだった。

 「ブヒブヒッ、だいぶ激しくやっているようだなブヒ」
 その巨体の腹を揺らしてトレーニングルームにやってくるブタラード。
 「ブヒィィッ! 訓練止め! ブタラード様に敬礼!」
 「「「ブヒィィッ!」」」
 ミアの号令ですぐさま整列し、右手を上げて敬礼するメスブタ兵たち。
 「ブヒブヒッ、いいねいいね。さすがはボクちんのかわいいメスブタ兵たちだブヒ」
 「ああ……」
 「はぁん……」
 メスブタ兵たちの表情がうっとりとなる。
 ブタラードにかわいいと言われただけで、もう発情してしまうのだ。
 ミアにしてもその顔をとろけさせ、今すぐにでも彼のおチンポ様をはめてほしくて仕方なくなってしまう。

 「ブヒブヒッ、仕上がりはどうだブヒ?」
 「ブヒィッ! はい、今すぐにでもブタラード様のために働けます。私たちメスブタ兵に何なりとご命令を……ブヒィッ!」
 ブタラードの息を嗅ぐだけでイってしまいそうになるほどの快感。
 ああ……
 なんて素敵なの……
 ミアは心からそう思う。

 「ブヒブヒッ、それじゃお仕事してもらうブヒ。ブラックズーにはまだまだ邪魔者が多いブヒ。お前たちはそういう邪魔者を一人ずつ始末していくんだブヒ。まずはこいつだブヒ」
 ブタラードが一枚の写真を見せる。
 それは中年の男性だったが、ミアはその顔に見覚えがある。
 確かアニマルクインテットの武装にその知識を生かした男。
 ミアの心に憎しみが湧いてくる。
 アニマルクインテットの協力者はブタラード様の敵なのだ。

 「ブヒブヒッ、こいつの超音波研究はブラックズーにとっては目障りだブヒ。始末するブヒ」
 「ブヒィィッ! かしこまりました。ただちにこの男を私たちで始末してまいります。お任せ下さいませ。ブヒィッ」
 ブタラードの命令を受けて喜びの鳴き声を上げるミア。
 彼女にとってはもはや人間など下等な存在で獲物にすぎない。
 「さあみんな、ブタラード様のご命令よ。行きましょう。ブヒィッ!」
 「「「ブヒィィッ!」」」
 五匹のメスブタ兵たちは喜んでトレーニングルームを飛び出していった。

                   ******

 美愛……どうしてしまったのかしら……
 ついそのことを考えてしまう猪羽智惠(のわ ちえ)。
 「ん? どうかしたかね?」
 その浮かない表情に隣を歩いていた男性が気付く。
 「あ、いえ、なんでもありません……」
 慌てて首を振る智恵。
 いけないいけない……
 今は任務中……
 防衛隊の一人として、この男性のボディガードを務めているのだ。
 とはいうものの、音信不通となってすでに四日となる美愛のことは、アニマルクインテットのメンバーたちばかりではなく、同じブラックズーの魔手から世界を守ろうとする防衛隊の間でも心配なことには違いないのだ。
 ましてや知恵と美愛は訓練所では同期だったこともあり、片やアニマルクインテットのメンバー、片や防衛隊の女性士官となった今でも、時折連絡をかわし合う仲だったのだ。

 「うっ、なんだこのにおいは?」
 周囲にいる男たちが鼻を押さえはじめる。
 強烈な臭気が漂ってきたのだ。
 それと同時に数人の人影が現れる。
 「博士、下がって」
 智恵はすぐに男性を下げてカバーする。
 男たちもすぐに博士と呼ばれた男性をを囲むように展開してガードする。

 「ブヒブヒィッ! 巧妙字(こうみょうじ)博士、お前は我がブラックズーのキョーアク獣ブタラード様にとっては目障りな存在。私たちメスブタ兵が始末するわ。ブヒブヒブヒィッ!」
 現れた人影に絶句する男たち。
 智恵も思わず目が丸くなる。
 それもそのはず。
 現れたのは黒い長手袋やブーツを履き、胴には黒いコルセットのようなものを着けてはいるものの、肝心の両胸や股間は全く隠されずに露出した女たちの姿なのだ。
 そのいずれも豚のような耳と鼻を持ち、お尻からは豚のシッポが生えている。
 手袋やブーツも豚の蹄のように先が割れたりしていた。
 しかも、先ほど声を発した中央にいる女性は、豚鼻や豚耳を付けてはいるが、智恵の見知った人物だった。

 「そんな……美愛……」
 智恵はわけがわからないままに博士のガードに専念せざるを得ない。
 なぜなら、豚の姿をした女性たちが、いっせいに襲い掛かってきたのである。
 女性たちの力は強く、鍛え抜かれた防衛隊の男たちが、次々と倒されていく。
 格闘術も優れている上に、どうしても露出している胸や股間に目が捕らわれてしまうのかもしれない。
 拳銃で応戦しようにも、動きが素早くすぐに懐に入り込まれ、一撃を食らってしまう男たちばかりだった。

 「クッ!」
 街中ゆえに発砲を一瞬ためらってしまった智恵は、腕に強い衝撃を受けて拳銃を取り落としてしまう。
 先ほどから漂う耐えがたい臭気も智恵を悩ませていた。
 思うように呼吸がしづらいのだ。
 これが目的の臭気だとしたら、相手は相当に手ごわいことになる。
 智恵はすぐに格闘に切り替えて相手に拳を叩きこむ。
 並の相手であればこれで動きを封じるくらいはできただろう。
 だが、智恵の前に現れたのは並の相手ではなかった。
 悪の軍団ブラックズーのキョーアク獣であるブタラードによって、メスブタ兵へと改造された美愛だったのだ。

 「ブヒブヒッ! 久しぶりね、智恵」
 「あなた! やっぱり美愛!」
 かろうじて相手の蹴りをよけながら、智恵は聞き慣れていた声に衝撃を受ける。
 「ど、どうして……」
 ともすれば意識が会話に向いてしまいそうになるのを、智恵は必死に戦いに向けさせる。
 彼女の攻撃は本気なのだ。
 本気で智恵を殺しに来ている……

 「ブヒブヒィッ! ええ、私はミア……でももう以前の桜原美愛なんかではないわ。私はブタラード様の改造を受け、メスブタ兵ミアとして生まれ変わったの。今の私はブタラード様の忠実なるしもべ。ブタラード様の邪魔者は私が始末するわ。あなたも邪魔をするなら殺すわよ。ブヒィッ!」
 強烈な攻撃を繰り出してくるミアに、智恵は防戦一方となる。
 「くっ、そんな……あなたはアニマルクインテットの一人だったはず! しっかりしなさいよ!」
 「ブヒブヒッ! それは思い出したくもない過去よ! ブタラード様はそんなおろかだった私をこうしてメスブタ兵にしてくださった。だからこそ私はブタラード様のためなら何でもするわ! ブタラード様こそ私のすべてなの。ブヒブヒィッ!」
 「うああっ!」
 ミアの蹴りを避けきれずに食らってしまう智恵。
 路上にたたきつけられ、気が遠くなりかける。
 「くっ……」
 必死に意識をつなぎとめる智恵。
 「ブヒブヒッ、いいことを思いついたわ。智恵、あなたもブタラード様にお仕えするメスブタ兵になりなさい。そうすればブタラード様がどんなに素晴らしい方なのか、メスブタ兵としてお仕えすることがどんなに素敵なことなのかがわかるわ。それに……」
 ゆっくりと近づいてくるミアを見上げる智恵。
 その智恵にミアは一方向を指さす。

 「ぐわぁっ!」
 博士の悲鳴が上がり、数体のメスブタ兵が博士を取り囲んでいたことがわかる。
 「博士……」
 智恵は任務の失敗を悟らざるを得ない。
 「ブヒィッ! あなたが護ろうとしていたものは死んだわ。もう戦う必要はないの。これからはブタラード様のために戦うのよ」
 「ふ、ふざけないで! そんなのはごめ……がはっ!」
 腹部に強烈な蹴りを入れられて気を失う智恵。
 「ブヒブヒッ、あなたの意思など関係ないわ。すぐにあなたもブタラード様の忠実なメスブタ兵にしてあげる。うふふ……」
 ミアは智恵の躰を担ぎ上げ、他のメスブタ兵たちに撤収の合図をする。
 「うふふふ……さあ、一緒に行きましょう智恵。これからはあなたも一緒にブタラード様にお仕えするのよ。また仲良くしましょうね。楽しみだわ。ブヒブヒブヒィッ」
 ミアのうれしそうな鳴き声が空に響く。
 やがて、女たちの姿は消え、あとには男たちの死体だけが残っていた。

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントなどいただけますと嬉しいです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2021/10/10(日) 19:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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ラビドナの復活 (後)

昨日に続きまして、「ラビドナの復活」の後編です。
お楽しみいただければと思います。

それではどうぞ。


                   ******

 「ん……」
 私はゆっくりと目を開ける。
 あ……れ?
 私は……いったい……
 そうか……
 あのあと眠ってしまったんだ……
 はあ……ん……

 なんだか躰にまだ余韻が残っている。
 あそこにあの太いあれの感触が感じられるくらい。
 この躰が喜んでいる。
 ふふ……

 私は両手で胸にそっと触れてみる。
 あん……
 柔らかい胸……
 これは私の胸……
 うふふ……
 触れていると、さっきの荒々しく揉まれた感触がよみがえってくる。
 ブズロム様の大きな手で、また揉んでほしくなってくる……

 すべすべした白い肌。
 ほっそりした長い腕。
 なんだかとても素敵……
 これが私の躰……

 あ……ん……
 私は指であそこに触れる。
 さっきまでブズロム様のあれが……
 はあ……ん……
 じっとりとまた濡れてきちゃいそう……

 私は立ちあがってシャワーを浴びに行く。
 このままだとそのままオナニーをしてしまいそうだ。
 あれからどのくらい経ったのだろう?
 ここにいると時間の感覚がつかめなくなってしまう。
 急いでどこかに行かなくちゃいけない気がしていたんだけど……

 シャワーを浴びて躰をきれいにした私は、濡れた髪を乾かして、バトルスーツを身に着けようと手を伸ばす。
 タイツ状のレッグガードを穿き、バニーガールの衣装のようなボディスーツを着込んでいく。
 このスーツは本当に私の躰にぴったりフィットして気持ちがいい。
 さらにブーツとアームカバーを着け、首にはチョーカーを着ける。
 そうか……
 気付いてなかったけど、このチョーカーってフィールド発生器になっているのか……
 これでフィールドを発生させることで、より防御力が高まるというわけね。
 うふふ……
 なかなか素敵じゃない。

 最後に耳をカバーするヘッドフォンを着ける。
 両耳をすっぽりと覆う形で、ヘッドバンド部分にはウサギの耳を模したセンサーが付いている。
 これを着けることで、周囲の状況をより把握できるというわけなのか。
 ちゃんと考えられているのね。

 私は鏡の前に行っておかしなところがないか確かめる。
 うん。
 問題なし。
 後ろのシッポもちゃんと位置に収まっているわ。
 ふふ……
 下等な人間のオスどもはこの格好につい油断をするというもの。
 バニーガールのようなこの格好もちゃんと理由があるんだわ。

 身支度を整えた私は、これから何をするつもりだったのか思い出そうとする。
 確か急いでここを出て……
 えっ?
 あれ?
 私?
 えっ?
 私って?
 それとも……俺?

 私はもう一度鏡を見る。
 どこもおかしな……
 違う……
 違う違う違う!
 俺は……
 俺は女なんかじゃ……
 あれ?
 俺?
 俺って……女だっけ?

 鏡の中で困惑している女の顔。
 これが俺の顔?
 いや……違う……
 これはラビドナの……ラビドナの顔……
 じゃあ俺は?
 俺の顔って……どんな顔だった?
 俺の顔は?
 俺は……誰だったっけ?
 俺は……いったい……

 待て……
 落ちつけ……
 よく思い出すんだ……
 私はベッドに腰かけて考える。
 俺は……
 俺は……

 ダメだ……
 頭がぼうっとなってよく思い出せない。
 俺はいったい……
 覚えているのはここから抜け出さなければヤバいってことと、ダガーナイツとかいう連中にブズロム様のことを知らせなければということぐらい。
 ブズロム様……
 彼のことを思うだけで胸がきゅんとなってくる。
 先ほどの荒々しい感触が脳裏によみがえり、あそこがまた濡れてきそうになる。
 なぜ彼のことをダガーナイツに知らせなければならないのか?
 でも……
 知らせなくてはならないと頭のどこかが叫んでいる。
 とにかくここを抜け出して、ダガーナイツに連絡を取らなくては……

 私は立ちあがって部屋を出る。
 あとのことはあとで考えよう。
 とりあえずここにいてはいけない。
 ここにいたら私はまたブズロム様に……
 でも、ここからどうやって出たら……

 やみくもに廊下を歩き回ってみる。
 時々ドロッコーたちが通りかかるが、俺の姿を見ると慌てて避けてくれる。
 くそっ……
 ここからどうやって出たらいいの?
 アンゴクーのみんなはどうやって地上に?

 「ここは……」
 行きついたのはあの何もない広間。
 廊下の突き当りに位置し、広いわりに入ってきたところ以外にはどこにも出口は無く、がらんとした殺風景なところ。
 いったい何のための部屋なのか?
 物置き……という感じでもないし……

 『ゲートを開きますか?』
 えっ?
 俺は驚いた。
 いきなり俺の耳に着けていたヘッドフォンから声が聞こえたのだ。
 ゲート?
 あ……まさか?

 「ゲートを開け」
 俺は誰にともなく命じてみる。
 すると、部屋の中央に黒い闇の球体が現れた。
 そうか……
 これが外へのゲートか……
 このヘッドフォンを着けないとわからなかったのか……

 俺は思い切って闇の球体の中へと入ってみる。
 「うわ……」
 途端にめまいのような感覚が襲い、俺は目を開けられなくなってしまう。
 何かふわふわした感じが躰を包み、俺をどこかへ運んでいく。
 こ、これはいったい……

                   ******

 ひんやりとした風が躰に当たる。
 私は恐る恐る目を開ける。
 暗い?
 でも真っ暗じゃない。
 木々の葉を揺らす風の音。
 天にちりばめられたような星の群れ。
 外だ……
 俺は地底城から出られたんだ……
 やったぁ。
 脱出成功だ。
 だが……
 ここはどこ?

 あたりは暗い夜。
 街灯の明かりが周囲を照らしている。
 街灯の下には誰もいないベンチ。
 どうやら人気のない公園のようだ。
 もしかしたら結構遅い時間なのかもしれない。

 とにかくダガーナイツに連絡を取らなくては。
 でも、どうやって?
 今の私にはスマホも何もないのに……
 どうしたら……

 「うぇひひ……やっぱりオニキスたんはかわいかったでござるなぁ」
 「まあ、オニキスはあの作品じゃ鉄板だからな。俺はむしろオパールの方が好きなんだが」
 「うぇひひ……戸村(とむら)殿はオパールたん推しでござるか。彼女も捨てがたい魅力がありますからなぁ」
 近づいてくる話し声。
 どうやら人間の男たちらしい。
 俺は一瞬身構えようとするが、思いとどまって気を落ち着ける。
 いけないいけない……
 相手はただの人間だ。
 敵じゃない……

 そうだ……
 彼らならたぶんスマホくらいは持っているはず。
 なんとかそれを貸してもらえば……
 スマホでダガーナイツに連絡できるじゃないか。

 「そ、その……す、すまない。ちょっとお願いがあるのだが」
 俺は近づいてきた男たちの前に姿を現す。
 「お、おおっ? バ、バニーガールさんでござるか? しゃ、写真撮ってもいいでござるか? 写真? それとSNS」
 太ってメガネをかけている方の男が早口でまくしたて、スマホを取り出す。
 よかった、スマホ持ってる。
 「な、なになに、君? コスプレ? それともお店の宣伝かなんか?」
 もう一人のスマートな優男も一緒になって目を輝かせ、俺の躰を舐め回すように見てくる。
 うわ……
 ちょ……
 は、恥ずかしい……
 こんな連中にじろじろと見られるなんて……

 「あ、あの、悪いんだけどスマホを貸してくれない? どうしても連絡したいところがあるの」
 とにかく彼らからスマホを借り、ダガーナイツに連絡しなきゃ。
 そして……えーと……とにかく連絡をして……
 「ス、スマホでござるか? わ、我が輩のでよければ……」
 太った方がスマホを差し出そうとする。
 だが、スマートな優男の方が手で遮ってそれを止めた。
 「まあ、待て待て。ただでってのは失礼だよなぁ? 当然お礼はしてくれるよな?」
 にやりと笑う優男。
 「お礼?」
 お礼と言われても……今は金なんか持ってないし……
 「そ、それは……連絡先に連絡が付けばなんとか」
 とにかく連絡したいんだってば……
 一刻も早くダガーナイツに……

 「ああ、いやいや、別にお金をくれとか言ってるんじゃなくてさ。そのさ……もし仕事でその恰好でここにいなきゃならないとかじゃなければさ、少し俺たちに付き合わね? カラオケとかさ」
 優男が俺の躰を見ながらにやにやと笑っている。
 付き合う?
 「そ、それはいいでござるな戸村殿! バニーガールさんと過ごせるなんてめったにないことでござるよ。いかがでござるか? ぜひぜひ我が輩たちと」
 せっかく差し出したスマホを引っ込めてしまう太った男。
 うう……
 どうしよう……
 こんなやつらからならアームカバーの刃で引き裂いて奪ってやってもいいんだけど……

 「うう……わかった。カラオケだけなら」
 俺は仕方なく付き合うことにする。
 なんだかこいつらをむやみに殺したりするのはいけないような気がするし、今はこのあたりに他に人はいないようだから、スマホを借りるためには仕方がない。
 二、三曲も付き合えば、きっとスマホを貸してくれるだろう。
 それまで我慢だ。
 我慢……

 俺は少しもやもやしたものを覚えながらも、男たちについていく。
 公園を出て通りを少し歩くと、明るくにぎやかなところに出る。
 どうやら飲食店街のようで、居酒屋やスナック、カラオケ店などが軒を連ねている。
 俺は左右を男たちに挟まれるような形で歩き、優男は図々しくも俺の肩まで抱いてくる。
 太った男の方は、時々先に行ったり後ろに回ったりして、俺の写真ばかり撮っている。
 一度などは道に寝転がって下から見上げるようにして撮ってきた。
 その様子に通りを歩く人間たちまでもが、こっちをじろじろと見つめてくる。
 まったく……私の躰はお前たちになど見せるものではないのに……
 スマホさえ貸してもらえばこんな男たちなど用済みなんだが……

 男たちに連れられ、俺は一件のカラオケ店に入っていく。
 そういえばカラオケなんてしばらく来てないな。
 このところ奴らとの戦いで忙しかったし……
 今度みんなで来るのもいいかもしれないな……
 アンゴクーのみんなで……

 「さあさあさあさあ座って座って。飲み物はなにがいい? アルコール入れちゃう?」
 男たちと部屋に入り、椅子に座った俺の前に広げられる食べ物のメニュー。
 どれもみんな美味しそうだけど……
 「ほんとにお金は持ってないんだけど……」
 俺はちょっと困ったようにそのことを伝える。
 「まあまあ、いいでござるよ。ここは我が輩が奢るでござる」
 「よっ、見かけ通りの太っ腹! さすが橋本(はしもと)はお大尽様ですねぇ」
 なるほど……この二人は太った方が橋本、優男が戸村というのか。
 「というわけだから、気にしないで好きなモノ頼んで。俺たちもバニーガールさんとカラオケできるなんてうれしいからさ。そうそう、バニーさんのお名前は?」
 「えっ?」
 名前……あれ?
 俺……名前……
 俺の名前はなんだったっけ?
 「そ、その……ラ、ラビドナ」
 俺はとっさに思い浮かんだ名前を口にする。
 そうだった……
 ラビドナ……
 私はラビドナよ……

 「ラビドナさんか。いい名前だね。俺は戸村雄治(ゆうじ)」
 俺の隣に座って名を名乗る優男。
 「わ、我が輩は橋本則也(のりや)でござる」
 遠慮がちに向かい側に座る太った男。
 俺はとりあえず二人にちょこんと頭を下げておく。
 正直こんな連中の名前を覚える気など全然ないし、さっさと歌でも歌ってスマホを借りたいんだが……

 結局俺は彼らが主に歌うのを聞き、俺自身は一曲二曲歌う程度で済ませていく。
 運ばれてきた食べ物を食べ、飲み物を飲んで彼らの会話に相槌を打ち、なんとか時間をつぶしていく。
 まあ、俺あんまりカラオケの持ち歌ないんだよね……
 それよりも……いつになったら終わらせる……つもり……だ?
 あ……れ……?
 なんか頭がぼうっと……
 あ……れ……
 躰が……なんだか……熱い……
 なんか……変な気分が……

 「うぇひひ……効いてきましたかね?」
 「ああ、やっぱこいつは効くなぁ」
 二人が何か言っている……
 効くって……
 もしかして……薬?

 「んむっ」
 優男が……戸村だっけ?
 彼が俺の唇にキスをする。
 何か甘い液体が流し込まれ、俺はそれを飲み込んでいく。
 あれ?
 これって……ヤバいんじゃ?
 頭が……うまく働かない……
 俺……何やって……

 「ふわぁぁん」
 思わず声が出る。
 男の手が俺の胸を揉んだのだ。
 な、なにこれ?
 気持ちいい……

 「ふへへ、効いてる効いてる」
 「うほっ。このとろけたような顔。たまりませんですなぁ」
 「ふあぁぁぁん」
 男の手が私の胸を揉むのをやめる。
 やん……
 私は思わず胸を突き出す。
 どうしてぇ……
 そうしてやめちゃうのぉ……
 もっと……
 もっと私の胸を揉んでぇ……

 ダ、ダメ……
 何かおかしい……
 躰が火照る……
 頭がぼうっとして何も考えられなくなる……
 ど、どうしちゃったの?

 「うぇひひ……戸村殿の薬は効果バッチリですなぁ」
 「だろ? なんでもダガーなんとかって言う特殊戦闘チームにも薬品を納入している会社って話だからな。こういう裏の薬も作ってるんだとさ」
 男たちが何か話している……
 ダガーなんとか?
 ああ……ん……
 そんなことより……
 切ない……
 あそこが……あそこがキュンキュンする……
 ああ……
 欲しい……

 「おら! これが欲しいんだろ?」
 俺の前にズボンのファスナーを下ろし、太い肉棒をむき出しにする優男。
 あ……
 その肉棒を見た途端、私の胸がドクンとなる。
 舐め……たい……
 あれが……欲しいよ……

 私は彼の肉棒に顔を近づける。
 ぷんと漂うオスの香り。
 あ……
 何かがはじけ飛んでいく。
 薬のせいでも何でもいい……
 欲しい……
 欲しいのぉ……

 俺は舌を出して肉棒を舐めようとする。
 「へへへ……ほらよ」
 押し込まれるように肉棒が口の中に入ってくる。
 ああん……
 これ……
 これいい……
 私は熱い肉棒を舐め回す。
 塩気のある味がたまらない。
 おマンコがキュンキュンする。
 ああん……
 好きぃ……
 おチンポ好きぃ……

 「ウヒヒ……すっかりメロメロでござるな」
 「ああ……いい感じで舐めてくるぜ」
 「おマンコの方はいただいてもいいですかな?」
 「チッ……しょうがねぇなぁ。譲ってやるよ」
 「うぇひひ……サンクスでござるよ、戸村殿」
 二人が何か会話している。
 でも、そんなのはどうでもいい。
 おチンポ美味しい……
 舐め回しているとドキドキする。
 はあぁぁん……
 サイコー……

 「あん……」
 背後からいきなり胸を揉まれてしまう。
 そのままカップを剥がすようにして服がずり下げられて、タイツと一緒に太もものあたりまで下げられる。
 むき出しになったお尻が持ち上げられ、あそこを指でいじられる。
 「ひゃあぁぁん」
 おしゃぶりしていたのに思わず声が出てしまう。
 おマンコ……
 おマンコが気持ちいいよぉ……

 私はおチンポをしゃぶりながら、腰を動かしていく。
 ああ……ん……
 なんていいのぉ……
 オスに前後から挟まれているぅ……
 興奮するわぁ……

 おマンコに突き立てられる熱い肉棒。
 まるで熱した金属みたい。
 それがピストンのように私を動かし、その波が私の口を前後させる。
 「う……おおっ」
 口の中に放たれるねばつく液体。
 これがザーメンの味……
 ねっとりと舌に絡みついて……美味しい……
 とっても美味しいわ……

 「はあぁぁぁん」
 躰を動かすピストンが続き、どんどん頭がとろけてくる。
 全身を快感が走り、何も考えられなくなってくる。
 「あ……あああ……」
 「うおお……わ、我が輩も出るでござるよ」
 ああ……私も……私も……
 ああ……ん……イ……イく……
 「うおおお……」
 「はあぁぁぁん」
 私は声をあげながら快感を全身で味わっていった。

 「ハアハア……イッてしまったでござるよ」
 「へへ……やっちまったな。なんかムラムラしちゃってよ。ほんとはラブホに連れ込むつもりだったんだがな」
 「二回目はラブホに行くでござるよ。薬はまだ効いてるでござろう? こんなエロいバニーガールさんなんて恰好見てたらムラムラするのは当然でござるよ」
 「だな。二回目は俺がマンコだからな?」
 「と、当然でござるよ。それにしてもここまでセックスしたくなるようにさせる薬というのもすごいでござるな」
 「ああ……毎回びっくりするぐらいだぜ」
 「裏ルート様様でござるな」
 オスたちが何か言っている……
 私はペロッと舌を舐める。
 はあん……
 どうやらイっちゃったらしい……
 頭がだんだんすっきりしてくる。
 ふふ……
 気持ちよかったぁ……

 私は何を怯えていたのだろう……
 私は何を戸惑っていたのだろう……
 この快感こそが女の躰……
 この快楽こそが女の喜び……
 私は女……
 女なんだわぁ……

 私は立ちあがって服を直す。
 いつまでも裸をさらしているつもりはない。
 私の裸を見ていいのはあの方だけ。
 それに……
 こいつらにはお礼をしなくては……

 「お、ラビドナ殿も起きられましたか? どうです、場所を変えて楽しむではござらんか?」
 「まだまだ物足りないだろ? もっと気持ちよくさせてやるぜ」
 ニタニタと笑っているオスたち。
 私も思わず笑みが浮かぶ。
 さて……
 私は腕を振り上げた。

 「あん?」
 近づく私を見上げる優男。
 その目が驚愕に見開かれる。
 うふふ……
 私は腕を振り下ろし、アームカバーから延びる刃で男の躰を切り裂いていく。
 腕に伝わってくる肉を切り裂く感触。
 それがゾクゾクするほどに気持ちがいい。
 ああ……
 これが人間を殺す楽しさなのね……

 「ひ? ひへ?」
 自分の頬や服に飛び散ってきた血しぶきに唖然としている太った男。
 何の反応もできずにアワアワとうろたえるだけの愚か者。
 こんな連中に躰を好き勝手にされてしまったなど……私らしくもない失態だわ。
 でも、人生の最後に私の躰を堪能できたんだもの、感謝しなさい。

 「や、やめ……」
 私を見る恐怖におびえる目。
 うふふ……
 そうよ……
 その目がいいわ……
 もっと恐怖におびえなさい!

 「ス、スマホなら……ふぎゃっ!」
 あわててスマホを差し出す男に対し、私は腕を振り下ろす。
 先ほどよりもやや強い感触なのは、男の脂肪が厚いせいか?
 だが、そんなことはお構いなしに私の刃は男を切り裂いていく。
 周囲に血しぶきが飛び散り、男は私の足元に倒れ込んだ。
 うふふふふ……
 気持ちいい……
 人間を殺すのは気持ちがいいわ……
 あはははは……

 足元に転がるスマホ。
 そうだわ、連絡を……
 そう思ったところで私はハッとする。
 連絡を?
 どこに連絡を取ろうというの?
 ダガーナイツ?
 私は思わず笑いがこみあげてきてしまう。
 なぜそんな連中に連絡を取らなくてはいけないのか?
 どうして私は地底城を抜け出してこんなところにいるのか?
 自分の愚かさ加減に笑ってしまう。
 おかげでこんな下等な人間どもと躰を交わらせてしまったではないか……
 まったく忌々しいにもほどがある……
 私の躰は……
 私のこの躰は……
 ブズロム様のものなのに……

 早く戻らなくては。
 きっとブズロム様はお怒りのはず。
 勝手に抜け出してダガーナイツに連絡を取ろうとしていたなんてどうかしている。
 奴らは偉大なる皇帝陛下に歯向かうおろかな人間たちではないか。
 我らアンゴクーの憎むべき敵だというのに……

 私は自分の愚かしさを叩きつけるように、転がっているスマホを踏みつぶす。
 そして一刻も早く地底城に戻ろうと踵を返したとき、部屋の隅にカメラがあることに気が付いた。
 そうか……
 先ほどの行為を覗き見していたやつがいるというわけね……
 ちょうどいいわ……
 こいつらだけでは少し物足りなかったところなの……
 たっぷりと楽しませてもらおうかしら……
 私はわくわくする思いを胸に、ゆっくりと部屋を出た。

                   ******

 「それでどうしたのだ?」
 玉座のような肘掛椅子に座り、私を見下ろしているブズロム様。
 元は以前の私が座っていた椅子というが、今の私にはそんなことはどうでもいいこと。
 むしろ、ブズロム様にこそふさわしい。

 「はい。店のあらかたを破壊し、客と店員はすべて皆殺しにいたしました」
 私はその前にひざまずいて一部始終を報告する。
 おそらくあの男どもとの映像は瓦礫と炎の中で消えただろう。
 まったく愚かな行為をしてしまったもの。
 この身を汚されてしまったことはなんの申し開きもできないが、ブズロム様は寛大にも赦してくださったのだ。
 なんという心の広いお方なのだろうか。
 私は感謝で胸がいっぱいになった。

 「ククク……それで奴らが来たのだったな?」
 「はい。誰か小賢しき奴が通報したと見え、まずは警察が、そしてダガーナイツらが現れました」
 憎むべき連中。
 五色のうち四色が現れたのだ。
 「奴らは何か言っていたか?」
 「はい。しきりに『レッドはどうした』だの『レッドはどこにいる』だのとわめいておりました」
 「クックック……で、お前はなんと答えたのだ?」
 「はい。ダガーレッドなどはもういない。消滅したと……」
 私は過去の自分を思って唇を噛む。
 私が……ダガーレッドだったなど……

 「ほう……お前がダガーレッドではなかったのか?」
 私は顔を上げて首を振る。
 「違います、ブズロム様! 私はラビドナ。偉大なる皇帝陛下のしもべであり暗黒帝国アンゴクーの女戦士。そして……ブズロム様にお仕えするメスでございます」
 「ククク……本当にそう思っているのか?」
 手を伸ばして私の顎を掴むブズロム様。
 がっしりとした手が痛いほどに顎を固定し、私の目をブズロム様の目に合わせてくる。
 「はい。もちろんです。私はラビドナ。もうダガーレッドなどではありません。信じてください」
 ああ……
 私がダガーレッドだったなんて自分でも思いたくない。
 記憶は薄れたとはいえ、まだいくらかは残っているのだ。
 あんな過去は焼き尽くしてしまいたいくらいだわ……

 「ククク……ならば我が手駒としてダガーナイツと戦えるな?」
 ブズロム様の手が私の顎を離す。
 「もちろんです。ブズロム様のために憎きダガーナイツどもを私の手で滅ぼしてみせます!」
 力強くうなずく私。
 ダガーナイツどもはきっと私の手で……

 「そうだ。それでいい。だが、その前に……わかるな?」
 ニタッと笑うブズロム様。
 私はブズロム様の言わんとすることをすぐに理解する。
 まずはメスとしての働きを見せなくては……
 「はい、ブズロム様」
 ああ……ん……
 ブズロム様にご奉仕すると考えただけであそこが濡れてしまう……
 私はブズロム様の方へさらに近づくと、そのズボンから素敵な肉棒を取り出していく。
 ああ……
 なんて太くて大きいの……
 あんな下等な人間どものチンポなんて比べるべくもない。
 このおチンポにご奉仕できるなんて、私は何と幸せ者なのだろう……
 私はその喜びをかみしめるように、ブズロム様の肉棒を口いっぱいに頬張った。

END


いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントをいただけますと嬉しいです。

それではまた次作でお会いいたしましょう。
今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2021/09/20(月) 20:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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ラビドナの復活 (前)

連休ですし、ちょうど仕上がりましたので、今日明日でSSを一本投下いたします。

タイトルは「ラビドナの復活」です。
悪の女幹部を倒したはずが……

お楽しみいただければと思います。
それではどうぞ。


ラビドナの復活

 「ラビスラッシュ!」
 声とともに鋭い刃が俺の眼前をよぎる。
 「ダガースパーク!」
 間一髪でかわした俺は、かざした短剣に電撃を込め、その一撃を相手に放つ。
 「あうっ!」
 衝撃を受けたラビドナの顔が苦悶に歪む。
 いけるか?
 俺は追い打ちをかけるべくもう一撃を振り下ろす。

 相手は暗黒帝国アンゴクーの女幹部ラビドナだ。
 見た目には俗にいうバニーガールのような格好をした美しい姿で人間を惑わせ、両手のアームカバーに付いた鋭い刃で相手を斬り裂いていく。
 残忍な性格を持ち、人間を殺すことを喜びとさえ感じる女で、俺たちダガーナイツも何度となく苦しめられた相手だ。
 だが、今回相手の罠にわざと乗ったとはいえ、こうして一対一で戦えるというのは逆にチャンスでもある。
 魔獣人の相手はみんなが対処してくれるはず。
 ここはなんとしても俺がラビドナを倒さねば。

 「クッ」
 ラビドナの脚がふらつく。
 今だ!
 「ダガーストライク!」
 「舐めるなぁっ!」
 俺のダガーと奴の刃が交差する。
 うぐっ……
 腹部に痛みが走り血しぶきが飛び散る。
 目の前では驚愕の表情をしたラビドナがゆっくりと倒れていく。
 そして俺も……その場にがっくりと崩れ落ちた……

 「ハア……ハア……」
 大の字になって地面に横たわる俺。
 腹が焼けるように熱い……
 どうやら奴の刃にざっくりと斬り裂かれてしまったようだ……
 だが俺のダガーストライクも、奴の眉間に命中していたから……相討ちってところか……
 倒れたままの奴はピクリとも動かない。
 しかし、それは俺も似たようなもの。
 くそっ……
 ざまぁないな……
 血がどくどくと流れていく……
 だが……これでアンゴクーはラビドナという指揮官を失うことになる……
 俺が……いなくても……
 みんな……あとは……
 頼ん……だ……ぞ……

                   ******

 「はっ?」
 俺は目を覚ます。
 どこだ、ここは?
 俺はいったい?
 助かったのか?

 ひんやりとした薄暗い部屋。
 天井全体がぼうっと光っている。
 俺が寝ているのはふかふかのベッド。
 躰には薄い毛布が掛けてある。
 いったいここはどこなんだ?
 病院ではないようだが……

 「ふん……目が覚めたようだな」
 野太い声が脇から聞こえる。
 誰だ?
 聞いたことない声だが……
 俺はゆっくりと顔を動かしてそっちを見る。
 そこには角の付いたヘルメットをかぶり、がっしりとした大柄の躰を銀色に輝く鎧で包んだ男がいた。
 まったく見覚えのない男で、浅黒い肌のいかめしい顔を俺に向けている。
 誰なんだ、こいつは……
 俺がそう思っていると、男は座っていた椅子から立ち上がり、俺の方へと近寄ってきた。
 「どうやら手術は成功したようだな。ククククク……」
 俺の顔を見下ろして男が笑う。

 「手術? お前はいったい?」
 えっ?
 俺は驚いた。
 今のは何だ?
 今のは、俺の声なのか?
 ちょっと甲高い女みたいな声じゃないか……
 「クックック……俺様の名はブズロム。お前の代わりに新たに皇帝陛下よりこの地の制圧を命じられた者だ」
 男がにやにやと笑いながら名を名乗る。

 「ブズロム? 俺の……代わりに? この地を制圧?」
 何を言っているんだ?
 俺の代わりに?
 皇帝からだって?
 まさか……
 「お前は……アンゴクーの?」
 「そうだ。我が前任者ラビドナよ。俺様はお前の後任だ」
 えっ?
 ラビドナ?
 あいつが生きて?
 なぜ俺にそれを?

 俺は慌てて跳ね起きる。
 かけてあった毛布が落ち、俺の躰があらわになる。
 「な? こ、これは?」
 俺は目を疑った。
 俺の胸には二つの大きなおわん型のものがあり、白い肌をした腹部は括れ、股間についているはずのものは無く、すらりとした脚が伸びていたのだ。
 「お、俺は? 俺はいったい?」
 目の前に持ってきたこのほっそりとした白い手が、俺の両手なのか?
 俺は夢でも見ているというのだろうか?

 「クックック……混乱するのも無理はない。お前の意識はまだダガーレッドのままだろうからな。だが、お前の躰はラビドナのものなのだ」
 「うあ……」
 男がいきなり俺の顎を掴んで上向かせる。
 「ラ、ラビドナのもの?」
 この躰がラビドナの?
 「そうだ。お前たちが戦い終わった後に俺様が駆けつけ、お前たちを収容したというわけだ」
 男は俺をまっすぐに見つめてくる。
 浅黒い肌をした顔は、まるでブルドッグのようないかつい顔つきだ。
 「ど、どうして?」
 どうして俺の躰がラビドナの躰に?
 「ふっ、ラビドナという女、中身はともかく姿は俺様の好みに合うなかなかに美しい女だ。そのまま死なせるには惜しい。だが、蘇生させようにも脳がダメになっていた。一方お前の方は脳はまだ生きていたが、躰の方はズタズタだ。だったらラビドナの蘇生にお前の脳を使わせてもらおうと思ったわけだ」
 「な! ふざけるな! 俺の躰を返せ!」
 ラビドナを蘇生するために俺の脳を使っただと?
 ふざけるな!
 俺はありったけの憎しみを込めてこの男をにらみつけてやる。
 「ふん、思ったとおりかわいい声ではないか。姿といい声といいまさに俺様好みの女だ。お前を俺様のメスに作り変えてやろう」
 「な? ん……んん……」
 男がいきなり俺にキスをする。
 ふわぁ?
 な、なんだこれ?
 俺は躰が震えてくる。
 まるで全身に電気が走ったみたいだ。
 一瞬で力が抜けてしまう。
 こ、これがキス?
 ど、どうして?

 「ククク……美味い唇だ」
 「ハア……ふ、ふざけるな! 俺を元通りにしろ!」
 こんなラビドナの躰なんて冗談じゃない!
 俺は男だ!
 女の躰なんて願い下げだ!
 「ふん、お前の躰などとっくに処分したわ。あきらめろ。お前はその躰でラビドナとして生きていくんだ。俺のかわいいメスとしてな」
 男がニタッと笑う。
 「ふざけるな! 俺は男だぞ! 誰がお前のメスになんかなるものか! 元に戻せぇ!」
 俺は男を一発殴り飛ばそうとした。
 だが、俺の腕は男の手でがっちりと受け止められてしまう。
 「えっ?」
 ならばと足で蹴りを入れても、男の鎧が蹴りを受け付けない。
 「クククク……無駄なことはよせ。お前の力では俺には勝てん。それにな、実はお前の脳を移植するときにちょっとした仕掛けをしておいたのさ」
 「仕掛けだと……」
 俺は男をにらみつける。
 「そうだ。お前はこれからアンゴクーの一員として過ごす。だからアンゴクーのメンバーに対しては危害を加えられないようにな」
 「クッ……」
 それで力が思うように入らないのか……
 くそっ!
 俺がアンゴクーの一員だと?
 ふざけるな!

 「それともう一つ」
 「わっ!」
 男が俺をベッドに押し倒す。
 「お前の躰は非常に感じやすくしておいた。女としての快感を良く味わえるようにな」
 「な? や、やめろ!」
 男の手が俺の胸を揉んでくる。
 ふわぁぁぁぁ
 なんだこれなんだこれ?
 やめろぉ……
 胸を……胸を揉まれるのが……こんなに気持ちいいなんて……
 ああーん……
 はぁぁぁん……
 ダ、ダメだぁ……
 感じてしまうぅぅぅ……

 ずぶりと男の指があそこに入ってくる。
 俺の躰がビクンと撥ねる。
 や……やだ……
 そんなところに指を入れるな……
 やめろぉ……
 そこは……そこはぁ……
 俺の中に入ってくるなぁ……
 ぐりぐりとかき回されていく俺の中。
 男の指が俺の奥を刺激する。
 はあぁぁぁん……
 な、なんだこれぇ……
 こ、これが女の?
 いやぁぁぁん…… 
 ダメだぁ……
 感じるぅ……

 「クククク……どうだ? 気持ちいいだろう?」
 「そ、そんなこと……」
 俺は必死に否定する。
 で、でも……
 男の指が俺の中を刺激して……
 き、気持ちいい……
 気持ちいいよぉ……
 中をかき回されるのって、こんなに気持ちいいことなのか?
 嘘だろ……
 これが……感じるってことなのか?
 「ククククク……気を付けろよ。感じやすくしてやったが、あんまり感じてイッてしまうと、元には戻れなくなるぞ」
 戻れなくなる?
 「そ、それはどういう……」
 「クククク……お前が一回イくたびに、お前の脳には女であることの喜びとアンゴクーの一員としての自覚が刷り込まれるようにしておいたのさ。何度もイッてると、ダガーレッドとしての意識が上書きされてしまうぞ。クックック……」
 「な? ふざけるな!」
 俺は男を蹴り飛ばそうとするが、全然力が入ってくれない。
 それどころか、躰が気持ちよさに身を任せてしまっているみたいだ……
 ダ、ダメだ……
 き……気持ち良すぎる……

 「はあぁぁぁん」
 ずぶりと男の太いものが俺の中に入ってくる。
 嘘……
 こ、これって?
 まさか……
 いやだぁ……
 俺は男なのに……
 男なのに……
 ダ、ダメ……
 で、でも……
 き、気持ちいいよぉ……
 これが……これがセックスなのかよ……
 あれを入れられるってこんな感じなのかよ……
 い、今までの男の感覚と全然違うぅ……
 ああーん……
 ダメェ……

 荒々しいピストンが俺の躰を揺さぶってくる。
 男のものが俺の奥まで突いてくる。
 躰ががくがくと震えていく。
 やだぁ……
 気持ちいい……
 気持ちいいよぉ……
 頭がぼうっとなる……
 躰がどこかに飛んでいきそう・・・
 ダメ……
 ダメ……
 ダメェ……
 ああああああああ……

 「クククク……どうやらイッたようだな」
 あ……
 頭が真っ白になって……
 イッた?
 俺……イッたのか?
 今のが……イく?

 男の大きな手が俺の頭をなでる。
 「ここはお前の部屋だ。好きに使え。あと地底城内なら好きにうろついても構わん。クックック……また可愛がってやる」
 あ……
 男はそう言うと、さっさと出て行ってしまう。
 俺は……
 俺は何をどうしたら……
 俺は……

                   ******

 汗と愛液で汚れた躰をシャワーで洗い流す。
 指に触れてくる柔らかい躰の感触。
 下を向くと否応なしに目に入る二つの胸。
 肌の色だってとても白い。
 本当に俺の躰は女に……ラビドナの躰にされてしまったようだ。
 胸の重みもチンポの無い股間も現実のものだ。
 ちくしょう……
 俺の躰を返せ……
 俺の男の躰を……
 ちくしょう……

 それにしても……
 地底城の連中も人間と変わらない生活をしているのだろうか?
 少なくとも、このラビドナにあてがわれた部屋を見る限りはそんな感じがする。
 戸惑いながらもシャワーを終えた俺は、タオルで躰を拭き部屋に戻る。
 大きな鏡が俺の躰を映し出している。
 丸い二つのふくらみを持つ胸。
 きゅっとくびれた細い腰。
 処理してあるのか、毛が無くつるんとした割れ目だけの股間。
 ここにさっきあの男のものが……
 あの感触が脳裏に浮かぶ……
 俺は唇をかみしめる。
 俺は……女のセックスをしたのか……
 
 鏡の向こうから見つめてくるラビドナの顔。
 倒したと思った憎むべき相手の顔。
 でも……
 俺はゆっくりと鏡に近寄る。
 そもそも俺はラビドナの顔をこんなにはっきりと見たことがあっただろうか?
 俺の目の前に現れるラビドナは、常に魔獣人やドロッコーと呼ばれる戦闘員たちを引き連れ、俺たちを憎々しげににらみつけてくるのがいつものことだ。
 そのラビドナが……こんな美しい顔をしていたなんて……

 もちろん違和感はぬぐえない。
 これが自分の顔だなんて思えない。
 でも……
 いやではない……気がする……
 ほんとに美しいと思うし、もしラビドナが普通の人間だったとしたら好きになれそうな顔だと思う……
 これが……
 ラビドナの顔……

 俺は首を振り、とりあえず着るものを探すことにする。
 いくらなんでもずっと裸でいるわけにはいかないし、とにかく服を着たいのだ。
 でも、いったい何を着ればいいのか……
 まさか……女の服?
 せめてズボンでもあれば……
 俺は何かないかとベッドの横にあるクロゼットを開けて見る。
 中にあったのは一揃いの服だけ。
 これは……
 ラビドナがいつも着ていた服じゃないか……
 脚を覆う薄手の黒タイツに、胸から股間までをカバーする黒いバニーガールスタイルの服。
 お尻にはご丁寧に白く丸いシッポまで付いている。
 両腕には肘から先を覆うがっちりとした灰色のアームカバーが付き、手首部分の外側からは細めの鋭い刃が伸びている。
 両脚用にもブーツ状の灰色のレッグアーマーが付き、かかとはハイヒールのようになっていた。
 首用には蝶ネクタイのようなリボンの付いた襟だけのものがあり、頭に着けるウサギ耳の付いた両耳を覆う形のヘッドフォンまである。
 まさにカジノなどで見かけるようなバニーガールそのものと言っていい。
 違うとすれば、両手両足が灰色のアーマーになっているというぐらいだろう。
 これを着ろと言うのか?
 俺は思わず顔がほてってくる。
 ラビドナは、は……恥ずかしくはなかったのか?
 確かにあいつはこの格好で俺たちと戦ってはいたけど……

 さすがにこれは恥ずかしいということでほかに探してはみたものの、結局これしか着るものは無く、俺は仕方なくこの衣装を着ることにする。
 は、恥ずかしい……
 俺は顔から火が出るような恥ずかしさを感じながらも、裸でいるわけにもいかないので、とりあえずストッキングのような透け感がある黒タイツを手に取って穿いていく。
 これ、下着もなしに直接穿くんだ……
 うう……なんでこんな目に……
 でも……穿いていくと、脚にぴったりフィットしてなんだか気持ちいい……
 タイツなんて子供の頃に穿いたくらいのような気がするけど、こんな穿き心地のいいものだったんだ……
 それに、このタイツは伸縮性はあるけど、とっても丈夫でちょっとやそっとじゃ破れたりしないみたいだな。
 見た目に反して結構防御性も高いのかもしれない。
 なにせ、ラビドナはこの衣装で戦っていたんだし……

 黒タイツを穿き終わると、次にレオタードというか水着のような黒いバニーガールのコスを着る。
 お尻に白く丸いシッポの付いた奴で、まあ、この尻尾がウサギってことなんだよな……
 なんというか、パンツを穿くような感じで両脚を通し、腰まで引き上げてから、両胸を服のカップ部分に収めていく。
 うう……なんというか見てはいけないものを見ているような気が……
 女って毎日こんなおっぱいを見ているのか?
 それにしても、この服もまたこの躰にぴったりフィットして、腰回りから腹部、そして胸をしっかりと覆ってくれる。
 肩ひもとかが無いので、胸のところがずれそうな気もしたけど、カップが吸い付くように胸の丸みをしっかりと受け止めるような感じで包み込んでくれるので、全く問題はないようだ。
 ラビドナの胸って……大きいし柔らかくて気持ちいいんだな……
 あ……ん……
 触っているとなんだか感じちゃいそうだ……

 俺は次に肘から先をガードするアームカバーに腕を通す。
 この灰色のアームカバーは外側に膨らみがあって相当に硬く、俺たちダガーナイツの主装備であるダガーでも簡単に受け止めてしまう。
 それどころかそこから鋭い細身の刃が伸びるようになっており、その刃は俺たちのナイツスーツすらすっぱりと斬り裂いてしまうのだ。
 おかげで俺は……
 お腹にまだあの時の痛みを感じるようだ……
 俺は首を振って、飛び出た状態の刃を引っ込めていく。
 なるほど、普段は格納できて、戦うときに腕を一振りすれば飛び出してくる仕組みか。
 俺は腕を振ってみる。
 シャキンという音がして刃が飛び出してくる。
 へえ……
 なんだか俺たちの装備より便利そうだな……

 俺はもう一度刃をカバーに収めると、今度はブーツを手に取りベッドに腰かける。
 そして黒タイツを穿いた足をブーツに差し込んでいく。
 自分の足とは全く思えない細身の足が、太もものあたりまでブーツに覆われる。
 この灰色のブーツもアームカバーと同じ素材でできていて、かなり硬くできている。
 でも、履いてみるとすごくフィットして俺の足を包み込んでくれる。
 膝上部分まで覆ってくれるので、防御効果も高そうだ。
 立ち上がってみると、やはりハイヒールで履き慣れない感じはするけど、なんとなくしっくりする感じだ。
 ハイヒールなんて穿いたことないのに……もしかして、これはこの躰の記憶みたいなものなのだろうか?

 あと残ったのは首に着けるリボンのついた襟の形をしたチョーカーと、頭に着けるウサギの耳を模した形の付いたヘッドフォン。
 あれ?
 チョーカーなんて言葉、俺いつの間に?
 何かで……見たのかな?
 ともかくこいつを着ければ首のところもカバーされるし、ヘッドフォンはスピーカー部分が両耳をすっぽり覆う形で、頭の上にウサギの耳がピンと立つ感じのものだ。
 俺はしばらくそれを眺めていたが、今は着けるのをやめにする。
 なんといっても恥ずかしいし、ほかはともかくこの二つは別に無くても困らないだろう。
 ラビドナはよくこんなものを着けていたものだ……

 ウサミミヘッドフォンとチョーカー以外を身に着けた俺は、あらためて姿見の前に立ってみる。
 うわぁ……
 むちゃくちゃ恥ずかしいけど……まあ似合っていると言えないこともない……
 だが、鏡に映っているのは暗黒帝国アンゴクーの女幹部ラビドナだ。
 俺たちダガーナイツを何度も翻弄してくれた憎むべき敵……
 なのに……これが今の俺の姿……
 どうしてこんなことに……

 ともかく今はここを脱出することだ。
 あの男が言ったようにもう俺の躰が処分されているとすれば、ここにいたところで元に戻れる可能性は低い。
 であれば、ここを脱出してダガーナイツのところに戻った方がいいだろう。
 この躰でダガーナイツに戻ったとして、はたして受け入れてもらえるかはわからないが、とにかくあのブズロムとか言う新たなアンゴクーの幹部のことを知らせなくちゃ。
 俺は気を付けながらそっと歩き出す。
 ハイヒールの足元が不安定でふらつく。
 それに、胸の重みが予想以上だ。
 女性って、いつもこんな重いものをつけて動いているのか?
 信じられないな……
 紗月希(さつき)もこんな感じで戦っていたのだろうか……

 ブーツのヒールの高さに戸惑いながらも、俺はゆっくりと歩いて部屋の入口まで行き、ドアを開けて左右を覗き見る。
 静かな薄暗い通路が伸びていて、どっちに行けばなにがあるのやら見当もつかない。
 ラビドナならわかるのだろうけど、あいにく今のこの躰は俺が脳だ。
 この城の構造がどうなっているのかなんてわかるはずがない。
 とにかく出口を探して動き回ってみるしかないか……

 カツコツと廊下に響くヒールの音。
 少し歩いただけなのに、なんとなくこのブーツにも胸の重みにも慣れてきた気がする。
 やっぱり躰としての記憶みたいなものだろうか?
 歩くことにも不安は感じなくなったし、なんとなくこのヒールの音が心地いい。

 左右にいくつかのドアはあるが、ここはおそらく居住区のようなものだろう。
 だとすれば、魔獣人やドロッコーたちがいるかもしれない。
 下手な動きをして、あのブズロムという男に知らせられても面倒だ。
 どこかこのあたりのドアとは違うドアを見つけた方がいいだろう。
 早く出口を見つけなくては……

 ザッザッという足音が廊下の向こうから近づいてくる。
 しまった!
 ここは身を隠すものが何もない。
 かと言ってここから逃げ出すにも、後ろ姿を見られてしまうだろう。
 こうなったら……
 他に知らせられる前に倒すしかない……
 俺は腕を一振りして、アームカバーから刃を引き出す。
 シャキンと音がして、一瞬で鋭い刃が伸びてくる。
 なるほど、これは使いやすい感じだ。
 この刃なら、一撃で相手を殺すことができるはず。
 俺は腕を胸のところで構えつつ廊下の壁を背にして、近づいてくる相手を待った。

 「ドローロー!」
 「ドローロー!」
 廊下をやってきたのはドロッコーと呼ばれる戦闘員二体だった。
 躰のラインの浮き出る全身タイツのような茶色のスーツを身にまとい、顔には目が一つだけという下級の魔人だが、集団での戦闘力はなかなか侮りがたく、警察や軍隊などでは歯が立たない。
 もっとも、俺たちダガーナイツにかかれば、こいつらが数体程度なら一人で何とでもなる相手だ。
 今の俺でもこいつら程度なら……
 だが俺が待ち構えていると、奴らは俺の姿を見るなり、気を付けをして右手を上げて敬礼する。
 そ……うか……
 俺はハッとする。
 一瞬驚いたけど、俺は今ラビドナの姿なんだ……
 こいつらにとって俺は指揮官であり、従うべき存在なのか……

 「ご、ご苦労。見回りか?」
 俺はアームカバーに刃を収め、ドロッコーたちに言葉をかける。
 敵対されないなら、むやみに戦うこともないだろう。
 この少し高い女声にも慣れてきた気がするな。
 「「ドローロー!」」
 敬礼をしたままコクコクとうなずく二体。
 「そ、そうか。引き続き頼むぞ」
 「「ドローロー!」」
 俺に声をかけてもらったことでなんとなく嬉しそうな二体のドロッコー。
 いや……
 なんというか、こんな感じで命令に素直に従われるのは、こっちもなんだかうれしくなる。
 俺は不動の姿勢を取る二体の脇を抜けて先へ進む。
 振り向くと、二体も何事もなかったかのように廊下を歩いていくところだ。
 そうか……
 下手にこそこそするより、こうしてこの姿を生かした方がいいのか……

 「ドローロー!」
 「ドローロー!」
 それから俺は特に身を隠そうとすることもなく、堂々とこの地底城内を調査する。
 どの部屋に行ってもドロッコーたちが背筋を伸ばして敬礼してくれるので気持ちがいい。
 実に規律が行き届いているみたいだ。
 もしかしたらダガーナイツなんかよりもずっと上下関係が厳しいのかもしれない。
 それだけ皇帝陛下は恐るべき相手ということなのだろうか……

 それにしても、地底城は広い。
 いったいこんな広い空間のものがどこに存在しているのかとも思う。
 巨大な動力炉らしき部屋。
 原理はよくわからないが、地底城内の動力を賄っているらしい。
 なぜか広間のような何もない空間も。
 とはいえ、放置されている部屋ではなさそうだ。
 訓練室なんかもあり、作られたばかりのドロッコーたちが訓練を受けている。
 食堂……のようなものもあったが、ドロッコーたちが泥の中から虫のようなものを取り出して、顔にある一つ目の中に入れていくという不思議な光景だった。

 だが、外に出る出口のようなものはどこにあるのだろう?
 一刻も早くこの地底城のことを奴らに伝えなくてはならないのに……
 まったく……
 こんな地底城のことをダガーナイツが知らないなんて……
 奴らの情報収集はどうなっているというのか……
 いや、これはアンゴクーの情報統制が完璧に行われているということなのかもしれない……

 ふう……
 歩き回っては見たものの、結局俺は元の居住区のあたりに戻ってきてしまう。
 出口のようなものは見つからなかった……
 いや、俺が見落としているだけなのかもしれないが……
 いったいどうやってここを脱出したらいいんだ……
 くそっ……

 「ほう……やはりその衣装はとても似合っているな」
 「お前は!」
 確かこのあたりだったと思いながら、さっき出てきた部屋の近くまで戻ってきた俺の前に、あの男が現れる。
 角の付いたヘルメットをかぶり、がっしりとした躰を鎧で覆った男だ。
 名はブズロム。
 そいつが廊下の向こうからやってきたのだ。
 俺は精いっぱいの憎しみを込めて奴をにらみつけてやろうとする。
 だが、それと同時に俺の心臓はドキドキと鼓動を速めていく。
 思わず男の股間に目が行き、そこに何があるのかを考えてしまう。
 あんなことを……
 あんなことをしてくるなんて……
 俺の脳裏にあの部屋でのことが思い出される。
 あんな……ことを……するなんて……

 「耳はどうした? その恰好ならやはり耳は必要だろう?」
 「そ、そんなのはどうでもいいだろ。こっちの勝手だ」
 俺はなんとか奴の股間から顔を上げてにらみつけようとするものの、なぜか奴の言葉につい目をそらしてしまう。
 この格好でいるところをじろじろと見られると、やはりとても恥ずかしくて顔がほてってきてしまう。
 どうして……
 どうしてそんな目で俺を見るんだ……

 「クックック……どうした? 何を怯えている? 怯える必要などない。お前は俺様のメスなのだからな、ラビドナ」
 ずかずかと近寄ってくるブズロム。
 「ふざけるな! 俺はラビドナなんかじゃない! 俺はダガーナイツの一員ダガーレッド! 赤村弘樹(あかむら ひろき)だ!」
 俺はそう言いながらも、奴から逃れるように思わず後ろへと下がってしまう。
 くそ……
 なんだか奴に見られているだけで力が入らない感じだ。
 なんなんだよ……

 「はっ?」
 奴は後ろに下がった俺に手を伸ばし、いきなり顎を掴んでくる。
 「は、離せ!」
 俺は振りほどこうとはしたものの、強い力で顔を上げられ、真正面から奴の顔を見てしまう。
 ブルドックのような浅黒くいかつい顔がニタニタと笑っている。
 「いいや……お前はラビドナだ。だが、以前のラビドナではない。俺様にひれ伏し、俺様のチンポを欲しがる俺様好みのいやらしいメスになるラビドナだ。クックック……」
 ぐっと顔を使づけてくるブズロム。
 「違う! 俺はおと……むぐっ!」
 いきなりブズロムの口が俺の口をふさいでくる。
 その瞬間俺の躰には電気が走る。
 ふわぁ……
 や、やめ……・
 俺の腰が奴の手で抱き寄せられ、彼の舌が俺の口に割り込んでくる。
 や……だ……
 だ……め……
 力が急激に抜けていく。
 なんで?
 なんでこんな……
 躰が溶けそうな……
 甘い……キス……

 「ぷあ……」
 唇が離れ、彼の唾液がつと糸を引く。
 あ……
 「ククク……またやりたくなったぞラビドナ。たっぷり可愛がってやろう」
 そう言われ、俺の躰は軽々と抱きかかえられてしまう。
 「やめ……ろ……」
 なんだか頭がぼうっとする。
 胸がドキドキして苦しくなる。
 躰がふわふわして力が入らない。
 なんだ……これ……
 俺……どうなって……

 ドアが開けられ、俺は部屋の中へと連れ込まれる。
 ここは……さっき出てきた俺の部屋だ……
 ふわっと躰が浮き、出てきたときのままのベッドが、彼の手から俺の躰を受け止める。
 ゴトンと音がして、なにがなんだかわからないうちに俺の脚からレッグアーマーが外される。
 「うあ……やめ……」
 俺はなんとか抵抗しようとするが、彼は無理やり俺の躰にかぶさってきてしまう。
 「ふあぁぁぁん」
 思わず声が出てしまう。
 服の上から彼の手が俺の胸を揉んできたのだ。
 ダメェ……
 胸は……胸は感じちゃうぅ……
 ああぁぁん……
 胸……揉まれてるぅ……
 気持ちいいよぉ……

 荒々しく引き下ろされる俺の服。
 あっという間に腰の下まで下げられてしまい、上半身が裸になってしまう。
 「ククク……そそる姿だ」
 彼の言葉に俺はゾクゾクッと感じてしまう……
 彼は……
 彼は俺の躰に興奮してくれているんだ……
 俺の躰に……
 ああ……
 どうして?
 どうしてうれしいの?

 「はぁぁぁん……はぁん」
 むき出しになった俺の胸がしゃぶられる。
 彼の舌が俺の乳首を刺激する。
 熱いよぉ……
 すごく熱いよぉ……
 あぁぁん……

 腰を持ち上げられ、服もタイツも無理やり下げられる。
 俺の躰は膝から上があらわになり、膝下にタイツとバニー服が引っかかっただけになる。
 むき出しになった股間を探り当てるようにごつい手が俺の下腹部を動き、彼の指が俺の中に入ってくる。
 「ひゃぁぁん」
 「いい声だ」
 彼の言葉に躰がカアッと熱くなる。
 なんでぇ?
 なんで声が出ちゃうのぉ?
 ダメなのに……
 こんなの絶対……ダメなのに……
 はぁぁん……
 気持ち良すぎるよぉ……

 俺の奥までかき混ぜてくる彼の指。
 よくわからないうちにどんどん気持ち良くされていってしまう。
 躰がただただ熱くなり、何も考えられなくなっていく。
 ああぁぁん……
 はあぁぁん……
 勝手に腰が動いていく。
 もっともっと奥までいじって欲しいと願ってしまう。
 俺の躰……どうなってるの?

 「あ……え?」
 急に指が抜かれてしまう。
 え?
 どうして?
 どうして抜いちゃうの?
 はぁぁん……
 いやぁ……
 ぬ、抜かないでぇ……
 もっと……
 もっと指でいじってぇ……

 気が付くと俺は足から服を蹴り捨て、彼の腰にからめるようにして回していく。
 ふあぁぁん……
 お願い……
 もっと……
 もっと欲しいのぉ……

 「ククククク……ずいぶんと欲しがるじゃないか。そんなにこれが欲しいのか?」
 彼が股間から太い肉棒を取り出している。
 あ……
 俺は思わず息をのむ。
 大きい……
 俺のなんかと……全然違う……
 その凶悪な太さに背筋がゾクゾクッとなる。
 ああ……
 あれを入れられたら……
 俺はどうなってしまうんだろう……

 「欲しいのかと訊いている」
 あ……
 ほ……欲しい……
 欲しいです……
 俺は無言でコクンとうなずく。
 「ならばお願いしろ。ブズロム様の太いチンポが欲しいですと」
 彼がニタッと笑みを浮かべる。
 あ……
 お、俺は……
 ダメだ……
 言っちゃダメだ……
 ダメなのに……
 俺は……
 「お、お願いです……ブ、ブズロム様の……太いチンポが……欲しいです」
 ああ……ブズロム様……欲しいです……

 「ひゃぁぁぁぁぁん」
 俺は思わず声を上げてしまう。
 彼の太いものが俺の中に入ってきたのだ。
 あああああああ……
 なんて……
 なんて太い……
 さっきも味わったはずなのに、まるで初めて味わう太さのように感じてしまう。
 はぁぁぁん……
 はぁぁぁん……
 気持ちいい……
 こんな太いものが入ってきたのに、私の躰は喜んでいる。
 もっと……
 もっと奥まで突いてほしい……
 もっと私をめちゃくちゃにしてぇ……

 「そうだ。それでいい。お前は俺様のメスなのだ」
 「はいぃ……はいぃ……」
 俺はうなずきながら、彼の首に両手を回し必死になってしがみつく。
 彼の強いピストンが私の中を突くたびに快感が全身を走っていく。
 信じられない……
 これがオスとメスのセックスだなんて……
 これが女の快感だなんて……
 最高……
 最高だよぉ……
 あああああ……

 「さあ、イけ。快楽を味わってイってしまえ。そうすればお前は上書きされる。新たな俺様好みのラビドナとなるがいい!」
 彼の言葉が聞こえてくる。
 上書き……されちゃう……
 ダメなのに……
 イっちゃダメなのに……
 止まらない……
 気持ちいいのが止まらない。
 躰がイきたいと望んでいる。
 ああああああ……
 頭がまたスパークする。
 もう何も考えられなくなっていく。
 はあああん……
 はあああああああん……
 ダメぇぇぇぇぇ……
 イくぅ……
 イッちゃうぅぅぅぅぅ・・・
 ひゃぁぁぁぁぁぁぁん……

(後)に続く
  1. 2021/09/19(日) 21:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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私はヒトツメドール

ブログ16周年記念SS第三弾を投下しますー。
フッフッフ……まだ弾があったのだよ。

と言いましても、先日Twitterで話していたネタを基にチャチャッと書き上げたものですので短いです。
あららっという間に読めてしまうと思います。

タイトルは「私はヒトツメドール」です。
女の子に助けを求められたヒロインは……

今回Twitterのフォロワー様でありますHowling様より、Twitterの会話を基にしたイラストをいただきましたので、挿絵として使わせていただきました。
Howling様、ありがとうございました。

それではどうぞ。


私はヒトツメドール

 「メメーッ!」
 奇妙な青い全身タイツ姿の少女が右手を上げる。
 頭のてっぺんからブーツ状に変化した足のつま先まで全身を鮮やかな青の全身タイツにすっぽりと包み、まだほんのちょっぴり幼さの残る女性のボディラインを惜しげもなくさらしている。
 その足元にはカバンが落ちており、脱ぎ捨てられた高校の女子制服が、彼女が何者であったかを示している。
 不思議なことに、全身タイツのマスクに包まれた顔には目鼻口どころか凹凸すらまったく無く、まるで青いゆで卵のようにつるんとしていた。
 そして二つの丸い胸の谷間のちょっと上には、白目部分が黄色く瞳が赤い目玉模様が描かれており、青一色の躰にアクセントを与えている。
 腰には銀色の同じ目玉模様の付いたベルトが締められており、まるで特撮番組に登場する“戦闘員”のようだった。

 「クヒヒヒ……吾輩(わがはい)のかわいいヒトツメドールよ。お前は吾輩の手足となって働く人形となったのだ。よいな?」
 胸に目玉模様を付けた青い全身タイツ姿の少女の前には、こちらも奇妙な格好をした男が立っている。
 白い全身タイツをまとい、凹凸の無いつるんとのっぺりとした顔には、少女と同じく黄色に赤い瞳の目玉模様が一つ描かれているだけで鼻も口も無い。
 腰にはこちらは少女とは違う悪魔の顔を模した模様のバックル付きのベルトが締められ、両手と両足には黒いブーツと手袋をはめ、頭には黒のシルクハットを乗せ、肩からは黒いマントを羽織っていた。

 「メメーッ! 私はドールン様にお仕えするヒトツメドール。何なりとご命令を。メメーッ!」
 男に対し、青い全身タイツ姿の少女は先ほどと全く同じ姿勢で右手を上げたままそう答える。
 その答えに満足したドールンと呼ばれた男は、マントを広げて少女を誘う。
 少女はフラフラと男の元へ行くと、男はその躰をマントで包み込む。
 すると周囲には黒い闇が現れて二人を飲み込み、やがて二人の姿とともに消え去った。

                  ******

 「うーん……いい天気。そろそろ洗濯物も乾いたかしら」
 ガラス戸を開けて庭に出る一人の主婦。
 名前は優美(ゆみ)といい、まだ三十代と若く、さわやかな笑顔はかわいらしさを残している。
 小学校に行っている娘が一人いるものの、とてもそうは見えないというところだ。
 彼女は両手をうんと伸ばして背伸びをすると、サンダルをつっかけて物干し竿のところへ行き、干してあった洗濯物を取り込み始める。
 その様子をドールンが屋根の上から見下ろしていた。

 「クヒヒヒ……次はあの女あたりが良さそうですね。さぞかしドールスーツが似合う人形になるでしょう。クヒヒヒヒ……」
 スッと手を持ち上げて手のひらを上に向けるドールン。
 彼の手の上に闇が現れ、それが形を持っていく。
 やがて彼の手には目玉模様の付いた青い全身タイツが折りたたまれた状態でできあがる。
 「クヒヒ……」
 青い全身タイツは彼の手を離れると、そのまますうっと女性が取り込んでいる洗濯物の中に紛れ込む。
 「クヒヒヒ……お前も吾輩のかわいい人形になるのですよ。クヒヒヒヒ……」
 口がないにもかかわらず、ドールンは笑い声を発していた。

 「そろそろ麻梨(まり)が帰ってくる頃ね……おやつは冷蔵庫にプリンがあるからそれを出して……夕飯はひき肉を買ってあるから……」
 洗濯物をたたみながら今後の段取りを考える。
 主婦は段取りが大切なのだ。
 特に子供が帰ってくると、いろいろと段取り外のことも起こるため、臨機応変が欠かせない。
 「あら?」
 洗濯物の中に鮮やかな青色のものが入っている。
 青は自分も夫も好きな色ではあるが、こんな鮮やかな青い衣装はあっただろうか?
 彼女はその青い衣装を取り出してみる。
 「えっ?」
 驚くほど手触りが良い。
 まるで吸い込まれそうな感じがする。
 手で触っただけでもう惹きこまれてしまいそうだ。

 「何これ?」
 広げてみたそれは、まったく予想もしていなかったものだった。
 両手両足に頭まである人型をした衣装。
 テレビなどで時々見かける全身タイツというものだろうか?
 青一色で作られており、胸のところには白目部分が黄色で瞳が赤い丸になっている目玉模様が付いている。
 見たこともないものだが、いったいなぜこれが洗濯物の中に紛れていたのだろう?

 両肩の部分をもって持ち上げてみる。
 全身タイツを実際に目にするのは初めてだ。
 どうしてこんなものが……
 「あっ……」
 全身タイツの目玉模様と目が合ってしまう。
 その途端、彼女はとてもこの全身タイツが着てみたくなってしまう。
 この手触りの良さを全身で感じてみたくなったのだ。
 「あ……あああ……」
 着たい……
 着てみたい……
 この全身タイツを着てみたい……
 欲望が止まらなくなっていく。
 自分のものではないとわかっているのに、どうにも着てみたくてたまらないのだ。
 ちょっとだけ……
 そう、ほんのちょっとだけ……
 一回着たらそれでいいから……
 ちゃんと洗濯して返すから……
 ちょっとだけ……
 一回だけ……

 「ただいまぁ」
 玄関でそう言いながら靴を脱ぐ麻梨。
 背中には大きなランドセルが背負われている。
 今日も一日楽しかった学校が終わり、家へと帰ってきたところだ。
 今日のおやつはなんだろうな……

 「ただいまお母さん。えっ?」
 ランドセルを置き、手洗いとうがいをしようとした麻梨は驚きの声を上げる。
 部屋で母親が裸になって、青いタイツのようなものを腰まで上げているところだったのだ。
 顔もいつも優しい笑顔を見せる母親の顔ではなく、どこか焦点の合わない目を着ようとしているものに向け、狂気じみた薄笑いを浮かべている。
 「お母さん! お母さん!」
 何か異質なものを感じた麻梨は、母親のもとに駆け寄っていく。
 「うるさいわね! 邪魔しないで!」
 「きゃあっ!」
 母親に弾き飛ばされてしまう麻梨。
 「お母さん! お母さん!」
 「ああ……なんて気持ちいいの……最高だわ……最高よ……」
 麻梨の声が届かないかのように、全身タイツを着こんでいく母。
 両手を袖に通し、肩まで引き上げていく。
 背中の切れ込みがすうっと消え、首から下が全身タイツに覆われる。
 「ああ……あああ……気持ちいい……気持ちいいですぅ……」
 うっとりと両手で胸の目玉模様を撫でる母。
 「誰か……誰か助けてぇ! お母さんが! お母さんが!」
 自分では手に負えないと考えた麻梨は、助けを求めて部屋を出た。

                   ******

 「誰かぁ! 助けてぇ!」
 一人の女の子がそう言いながら家から飛び出してくる。
 たまたま通りかかった若い女性が一人、その様子にただならぬものを感じて立ち止まる。
 「お嬢ちゃん、こっちよ」
 彼女は女の子に手を振って見せ、自分も女の子の方へと駆け寄っていく。
 「いったい何があったの?」
 女の子の目線に合わせるようにしゃがみ込む。
 彼女の前にやってくる女の子。
 その顔は青ざめている。
 きっと何か恐ろしいことがあったに違いない。
 「大丈夫。お姉ちゃんは正義の味方よ。ジャハラインって知ってる?」
 彼女がそう言うと、女の子の顔がぱあっと明るくなる。
 魔人軍団と戦うジャハラインが正義の戦士たちであるということは、女の子も知っていたのだ。

 「お姉ちゃん、ジャハラインなの?」
 「そうよぉ。私の名は青間凛香(あおま りんか)。ジャハラインのブルーハラインよ。お嬢ちゃんのお名前は?」
 力強くうなずき、女の子に名前をたずねる凛香。
 「麻梨……凛香お姉ちゃん、お願い。お母さんを助けて!」
 「麻梨ちゃんね? ええ、もちろん。いったい何があったのか話してみて」
 凛香は麻梨に話を聞く。
 なんでも麻梨が家に帰ると、母親が奇妙な衣装を着ようとしていたらしい。
 普段とは全然違う表情をしており、麻梨がやめてと言っても聞いてくれなかったという。
 それどころか突き飛ばされたとも話していて、何かあったのは間違いないようだ。

 「わかったわ麻梨ちゃん。凛香お姉ちゃんが確かめてあげる。あの家ね?」
 凛香が一軒の家を指さすと、麻梨がコクンとうなずく。
 とにかく何があったのか確かめなくては。
 もしかしたら魔人軍団がまた何かを始めたのかもしれない。

 玄関を開け、そっと中へと入っていく凛香。
 特に怪しい物音などはしない。
 「お邪魔します」
 凛香は靴を脱ぎ、家の中へと上がらせてもらう。
 ゆっくりと部屋の中を覗き込む凛香。
 そこには、鮮やかな青い全身タイツを着た、明らかに女性とわかるボディラインをした人影が立っていた。
 「誰? そこで何をしているの?」
 凛香が声をかけると、全身タイツ姿の女が振り向く。
  ヒトツメドール1
 「えっ?」
 凛香は驚いた。
 女には全く顔が無かったのだ。
 本来顔のある位置には凹凸すらなく、まるで青いゆで卵のよう。
 そして胸のところには赤い丸い瞳をした目玉模様が付いている。
 いったい何者なの?
 凛香が困惑する。
 魔人軍団のアクマー兵に似ていると言えば似ているが、あっちは男の姿だし色も黒なのだ。

 「メメーッ!」
 突如奇声を発して襲い掛かってくる全身タイツの女。
 「クッ!」
 凛香は最初の一撃をかわし、手刀を叩きこむ。
 「メメーッ!」
 一瞬よろめいたものの、すぐに態勢を立て直してかかってくる女。
 「やあっ!」
 凛香は素早く蹴りを入れて相手を床に叩きのめすと、とどめとばかりに拳を振り上げる。
 「やめてぇ! お母さんなの!」
 「えっ?」
 当たる寸前で拳を止める凛香。
 見ると外にいたはずの麻梨が、部屋の入り口からこっちを覗いていたのだ。

 「お母さん?」
 凛香は驚く。
 この倒れているのは魔人軍団の一員ではなかったのか?
 この全身タイツを着た女性が麻梨ちゃんのお母さんだというの?

 「お母さん! お母さん!」
 「ダメ! 来ちゃダメ!」
 駆け寄ろうとした麻梨を止める凛香。
 とりあえず気を失わせることはできたようだが、何をするかわからないのだ。
 「り、凛香お姉ちゃん、お母さんは?」
 「大丈夫。気を失っただけよ。本当にこの人がお母さんなの?」
 麻梨と倒れている女を見比べる凛香。
 「うん。胸にその目玉があったの……」
 麻梨の指さす先には、形良い胸の双丘の上の目玉模様がある。
 すると、この子の母親がこの妙な全身タイツを着たことでおかしくなってしまったのだろうか……
 だとすれば、脱がせればなんとかなるかもしれない……

 凛香は気を失った女の躰をうつぶせにし、背中にファスナーか何かがないかを探してみる。
 だが、全身タイツはまるで最初から彼女の皮膚であったかのように張り付いており、とても脱がせられるような感じはない。
 手や足も一見ブーツや手袋をはめたように見えるのだが、どうやらこれも一体化して脱がすことは難しそうだ。
 いったいどうしたら……

 「クヒヒヒヒ……無駄無駄。もはやそのドールスーツはそのヒトツメドールの皮となっておるのだ。脱がすことなどできん」
 「きゃあっ! 放してぇ!」
 入口の方から二つの声がする。
 「えっ?」
 見ると、小脇に麻梨を抱えた白い全身タイツの男が立っていた。
 その顔の部分には倒した女と同じく白目部分が黄色で赤く丸い瞳がある目玉模様が描かれており、頭には黒のシルクハットをかぶって背中には黒いマントを羽織っている。
 両手と両足には黒いブーツと手袋がはめられ、腰には魔人軍団のシンボルである悪魔の顔を模した模様の付いたベルトが締められていた。

 「魔人軍団……」
 「いかにも。吾輩は魔人軍団の人形つかいドールン。そこの女は吾輩のドールスーツを身に着け、吾輩のかわいいヒトツメドールに生まれ変わったのだ。クヒヒヒヒ……」
 凛香のにらみつけてくる視線を正面から受け止めているドールン。
 「なんてことを……今すぐ彼女を元に戻しなさい!」
 「クヒヒヒヒ……そんなことを吾輩がすると思うのかね?」
 「ならば腕ずくでも!」
 凛香はブルーハラインに変身するべく、ブレスレットをかざそうとする。
 「おっとそこまでだ。この子がどうなってもいいのかな? クヒヒヒヒ……」
 「きゃあっ!」
 ドールンの右手が麻梨の首にかかる。
 「クッ……・卑怯者め……」
 凛香の動きが止まり、ブレスレットをはめた右手を下ろしていく。
 今の状況で変身するのは麻梨が危険すぎる。
 なんとかドールンとか言うやつのスキを突いて、あの子を助けなくては……

 「クヒヒヒヒ……それでいいのだ。では、お前にも吾輩の作ったヒトツメドール用のドールスーツを差し上げよう。きっとお似合いですぞ。クヒヒヒ……」
 今にも麻梨の首を絞めようとした右手が離れ、その手の上に折りたたまれた青い布が現れる。
 「ほら、受け取るがいい」
 「えっ?」
 放り投げられてバサッと広がる鮮やかな青い布を、凛香は空中で受け止める。
 「これは?」
 凛香が受け取ったそれは、まさに先ほど倒した女性が身に着けていた青い全身タイツだった。
 頭まですっぽりと覆うタイプで、両手両足の先まで包み込むようになっている。
 胸の部分にはドールンという魔人の顔に描かれているものと同じ、白目の部分が黄色で瞳が丸い赤で描かれた目玉模様が付いていた。

 「凛香お姉ちゃん、ダメ!」
 ドールンに抱えられながらも麻梨が叫ぶ。
 「えっ?」
 麻梨の声に顔をあげようとする凛香。
 だが、なぜか凛香は手にした全身タイツの目玉模様から目をそらすことができない。
 それどころか、目玉模様がまるで自分を吸い込むような感じがしてしまう。
 はあ……ん……
 なんていい手触りなのだろう……
 つるつるすべすべでとっても気持ちがいい……
 それに、この目玉模様がすごく素敵……
 胸のところにこの目玉模様があるのがすごくいいわ……
 ああん……着てみたい……

 「クヒヒヒ……さあ、着るがいい」
 「凛香お姉ちゃんダメ! 着ちゃダメ! お母さんみたいになっちゃう!」
 凛香の耳に二人の声が聞こえる。
 ええ……そうよ……わかっているわ……
 これを着ちゃダメ……これを着たら、あの子のお母さんのように、この魔人の言いなりになってしまう……
 でも……
 でも……
 ちょっとぐらいなら大丈夫かも……
 一度だけなら……

 「お姉ちゃん! 凛香お姉ちゃん!」
 「大丈夫……大丈夫だから……」
 全身タイツの目玉模様を見つめたまま凛香は答える。
 そう……大丈夫……私は大丈夫……
 ちょっとだけだから……
 一回着たらすぐに脱ぐから……
 それにほら……一度着れば、脱ぎ方もわかるかもしれないわ……
 一回だけ……一回だけだから……

 「クヒヒヒ……」
 「凛香お姉ちゃん!」
 ドールンと麻梨の前で凛香は全身タイツを床に捨てる。
 「凛香お姉ちゃん……」
 麻梨の顔が明るくなる。
 だが、次の瞬間麻梨は絶望を感じてしまう。
 凛香が着ているものを次々と脱ぎ始めたのだ。
 「凛香お姉ちゃん!」
 「大丈夫……大丈夫よ。私はブルーハライン……魔人なんかには負けないから……ちょっとだけ……ちょっとだけ着てみるの……一回だけよ……」
 凛香は着ているものを下着まですべて脱いでいく。
 その顔には歪んだ笑みが浮かび、ドールンのことも麻梨のこともどうでもよくなっていた。
 ただ、この青い全身タイツが着たくてたまらなかったのだ。

 はあん……ひゃぁぁぁん……
 背中に開いた開口部から足を差し入れ、つま先にまで通していく。
 それだけでもうゾクゾクするほどの気持ちよさが凛香を襲う。
 吸い付くような感触が足を包み込み、まるでさわさわとマッサージをされてるような気持ちよさだ。
 はあん……はああん……
 両足を通して腰までたくし上げていく。
 膝から太ももと覆われていくだけで、何か自分の足ではなくなっていくような感じ。
 とても気持ちよくてたまらない。

 「凛香お姉ちゃん!」
 麻梨の目の前で青い全身タイツを着こんでいく凛香。
 先ほど母親が見せていたのと同じ恍惚とした表情を浮かべている。
 麻梨の目から涙がこぼれた。

 袖に手を通し、手袋部分に指をはめていく。
 手を握ったり開いたりしてなじませていき、肩まで袖を引き上げる。
 首から下はすべて青く覆われ、両胸のやや上に目玉模様が輝いている。
 マスク部分を前からかぶり、後頭部まですっぽりと覆っていく。
 全身が包み込まれると同時に、背中の開口部が閉じられ、何もなかったかのように消えて行った。

 頭が包まれたことで、凛香は何も見えなくなってしまったことに気付く。
 普通の全身タイツであれば、布を通してうっすらと見えそうなものなのだが、まったく何も見えないのだ。
 それどころか音も聞こえなくなり、何かをしゃべることもできない。
 においも全く感じない。
 まるで頭部にあるすべての機能が失われてしまったかのよう。

 だが、凛香に恐怖はない。
 それよりも、全身を包まれた気持ちよさがたまらない。
 両手で躰を撫でまわしていくが、そのすべてが気持ちいい。
 むしろ、顔を撫でたときに眼窩のくぼみや鼻のでっぱりが気になるくらいだ。
 どうしてこんな凹凸があるのだろう……

 (クヒヒヒ……吾輩の作ったドールスーツの着心地はどうかな?)
 頭の中に声が聞こえてくる。
 それはなんとも力強く素敵な声。
 もっともっと聞いていたくなる声だ。
 はい……とても気持ちがいいです……こんな素晴らしいスーツだったなんて……
 凛香は声を出さずに返事をする。
 (クヒヒヒ……ちょっとだけのつもりだったのだろう? 脱いでもいいのだぞ)
 とんでもありません!
 このスーツを脱ぐなんてありえません!
 凛香は首を振る。
 こんな気持ちいいスーツを脱ぐなんてありえないわ……

 (クヒヒヒヒ……ならば吾輩に従え。吾輩のものとなるのだ)
 響いてくる素敵な声。
 それは支配者の声であり、彼女の守護者の声でもあった。
 はい……私はドールン様のものになります。
 凛香はためらいもせずにそう答える。
 彼女の支配者はドールン様であり、すべてはドールン様に捧げなくてはならない。

 (クヒヒヒ……では感じるがいい。お前の新たな一つ目を)
 すうっと視界が開けてくる。
 闇が晴れ、室内の様子が見えてくる。
 今まで見ていた二つの目の視界ではない。
 胸に付いている一つ目の目玉模様による視界だと凛香は理解する。
 なんて素敵なのだろう……
 一つ目のおかげで彼女は物が見えるのだ。
 いや、それどころか、一つ目のおかげで音も聞こえるし、しゃべることだってできるのだ。
 すべては一つ目のおかげ。
 この目が彼女の新たな目なのだ。

 全身タイツのマスクに覆われた凛香の顔に変化が現れる。
 顔の凹凸がすうっと消え、つるんとしたタマゴのような頭部に変化したのだ。
 凛香は手で顔を撫でさすり、凹凸が消えたことがわかるとうれしくなる。
 不快だった凹凸が無くなったのだ。
 なんて気持ちがいいのだろう。

 (クヒヒヒ……これでお前は吾輩のかわいい人形。ヒトツメドールとなったのだ)
 凛香はスッと右手を上げる。
 「メメーッ! はい、私はヒトツメドール。ドールン様にお仕えする人形です。メメーッ!」
 彼女の中から青間凛香という名が消える。
 腰に一つ目模様のバックルの付いたベルトが作られ、両手は手袋、両足はハイヒールのブーツのように変化する。
 私はヒトツメドール。
 ドールン様に作られた人形の一体。
 ああ……幸せだわ……とても幸せ……
  ヒトツメドール2

 「クヒヒヒ……それでいい。ヒトツメドールよ。そこに倒れているもう一体のヒトツメドールを起こすのだ」
 「メメーッ! かしこまりました、ドールン様」
 新たなヒトツメドールが、倒れているもう一体のヒトツメドールをブーツ状に変化した足で小突く。
 ドールン様の前だというのに意識を失うなんてだらしない人形だわ。
 さあ、早く起きなさい!

 やがてもう一体のヒトツメドールが起き上がり、ドールンに対して右手を上げる。
 「メメーッ! 申し訳ありませんドールン様。私はヒトツメドール。ドールン様にお仕えする人形です」
 「クヒヒヒ……それでいい。かわいい人形が二体も。しかも一つは予想外の女を人形にできたわい。クヒヒヒヒ」
 満足そうにうなずくドールン。

 「クヒヒ……ほら、お前にはもう用はない。どこへでも行くがいい」
 抱えていた麻梨を放り出すドールン。
 「きゃっ!」
 床に落とされた麻梨が悲鳴を上げるが、二体のヒトツメドールは全く反応しない。
 「クヒヒヒ……さあ、来るのだ」
 マントを広げてヒトツメドールたちを呼ぶドールン。
 「お母さん! 凛香お姉ちゃん!」
 床に倒れたまま麻梨は叫ぶ。
 だが二体のヒトツメドールは見向きもしない。
 もはや二体にとって麻梨は無意味な存在なのだ。
 「お母さん! 凛香お姉ちゃん!」
 麻梨の目の前で二体のヒトツメドールはドールンのマントに包まれる。
 「クヒヒヒ……さあ、次の人形を作りに行くとするか。お前たちも手伝うのだ」
 「かしこまりました。メメーッ!」
 「ドールン様の仰せのままに。メメーッ!」
 自らが作り出した闇の中へと消えていくドールン。
 あとには麻梨だけが残された……

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントなどいただけますと励みになりますです。

これで16周年記念SS祭りは終了となります。
またしてもストックを全部使いきってしまいました。(^_^;)ゞ
次のイベントに向かってまた書き溜めないとなりませんねー。

今日はこんなところで。
それではまた次作をお楽しみに。

  1. 2021/07/21(水) 20:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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家に帰ってきたというのに……

今日は一本SSを投下いたします。

先日、いつも創作等でお世話になっております「Kiss in the dark」のg-than様が、ご自身のTwitterでとても素敵な「ショッカー女戦闘員」のイラストを投下されておりました。

そのイラストが、今回pixivにも投下されましたこちら。
帰ったら目の前に女戦闘員の足が…

Twitterでこのイラストを見たときには、まだ三枚目のイラストはありませんでしたので、ふと私は、この女戦闘員が帰ってきた人間の妻だったらさらなる悲劇だよなぁと思い、彼女が女戦闘員にされてしまうシーンをSS化してみようということで書かせていただきました作品です。

タイトルは「家に帰ってきたというのに……」です。
g-than様のイラストと一緒にお楽しみいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


家に帰ってきたというのに……

 「ハッ」
 冷たく固い台の上で目を覚ます一人の女性。
 歳の頃は三十代半ばくらいか。
 いまだ容色は衰えず、肌もみずみずしさを保っている。
 おそらく近所でも美しい女性として通っているだろう。
 その彼女は、今、両手と両足を金属の枷で固定され、円形の台の上で大の字に寝かされていた。

 「こ、ここは? 確か私は……」
 必死に記憶を手繰り寄せる彼女。
 玄関の呼び鈴が鳴り、郵便配達人から主人宛ての小包を受け取ったことまでは覚えている。
 そして、その小包から突然白い煙が噴き出してきたことも……

 『目が覚めたようだな、智田恵理子(ともだ えりこ)』
 突然、頭の上の方から声が響く。
 恵理子が首を動かすと、壁の上の方に大きなワシのレリーフが飾られており、そこから声が流れてきたようだった。
 おそらくスピーカーが埋め込まれているのだろう。
 むしろ恵理子が恐ろしさを感じたのは、その声の重厚さからではなく、相手が自分の名前を把握していることだった。
 つまり人違いでここに連れてこられたのではないということだ。
 いったい何が目的だというのだろう……
 思い当たることは……
 主人に絡むことかもしれない……

 「わ、私をどうするつもりですか?」
 恵理子は改めて自分の置かれた状況を確認する。
 両手と両足は、それぞれ手首と足首のところが金属の枷で固定されていて動かせない。
 衣服はすべてはぎとられており、下着一つ身につけていない状態だ。
 正直に言って恥ずかしいことこの上ないのだが、そんなことを気にしている余裕さえない。
 どうやってここから抜け出して助けを求めるのか、恵理子には全く思いもつかなかった。

 『お前にはこれより改造手術を受けてもらう』
 ワシのレリーフのちょうどお腹の位置には、緑色に輝くランプがあり、それが声といっしょに明滅している。
 その緑色の光が恵理子の顔を照らしていた。
 「改造手術?」
 聞いたことのない言葉だ。
 手術というからには躰を切り刻まれるのかもしれない。
 だが、改造とは?

 「そうだ。これよりお前には我ら“ショッカー”の誇る肉体改造手術を受けてもらい、女戦闘員へと生まれ変わってもらう」
 「ひっ!」
 頭上にのみ注意が行っていたせいで、足の方から声がしたことに驚いた恵理子は小さく悲鳴を上げる。
 見ると、そこには三人の白衣を着た男たちが立っていた。
 医者?
 恵理子はそう思ったが、彼らの顔には異様な赤と緑の色が縞模様のように塗られており、とても普通の医者たちとは思えない。
 それに女戦闘員というのはいったい何なのだろう?

 「い、いやっ! 手術なんていやです!」
 自分が何か得体のしれないものにされるかもしれないという恐怖が恵理子を包み、彼女は首を振って拒絶する。
 「誰もが最初はそう思う。だが、ショッカーの改造手術を受ければ、偉大なる組織の一員になれたことを感謝するようになるのだ!」
 顔を塗った白衣の男が恵理子の周囲にやってくる。
 その手には何に使うのかよくわからない器具や、緑色の液体の詰まった注射器が握られていた。

 「いやっ! いやあっ! どうして私がそんな目に?」
 『智田恵理子、お前の夫智田幸作(ともだ こうさく)は、東央技科学研究所の主任技術者だ。奴の存在は我がショッカーにとって望ましくない。お前が奴を始末するのだ!』
 恵理子の目が驚愕に見開かれる。
 そんな……
 主人を……あの人を私に始末しろというの?
 そ、そんなのは……
 考えるだけでも恐ろしい。

 「そんなのはいやあっ! 誰かぁっ! 助けてぇ!」
 「無駄だ。このショッカーアジトには誰も来ない。おとなしく手術を受けるのだ」
 「いやぁっ! いやですぅっ! あ……」
 恵理子の腕に注射器が突き立てられ、緑色の液体が流し込まれていく。
 白い肌に透けて見える血管が、緑色に染まっていく。
 「あ……あああああ……・」
 恵理子の全身に注射液が回っていくに連れ、恵理子の躰に激痛が走っていく。
 三人の白衣の男たちはその様子に笑みを浮かべると、おもむろにスイッチを入れる。
 恵理子の躰を注射液と光線の照射で強化していくのだ。
 これによって恵理子の肉体は常人の数倍の力を発揮できるようになり、まさに“戦闘員”としての肉体を手に入れることになるのである。

 キラキラと赤や緑の光線が恵理子の躰に照射され、恵理子の肉体が変化する。
 白い肌が青い強化された皮膚へと変化し、筋肉も見た目は変わらないものの、今までとは比べ物にならない力を発揮できるように変わっていく。
 「ああ……あああ……がふっ」
 激痛と肉体の急激な変化に恵理子の意識が耐えきれなくなり、恵理子は気を失ってしまう。
 だが、これはむしろ好都合であり、三人の白衣の男たちは次の段階へと移っていく。
 台の周囲から細いワイヤーのようなものが伸び始め、恵理子の両耳から頭蓋骨の中へと潜り込んでいく。
 恵理子の脳に思考支配と服従のためのチップが埋め込まれ、耳には通信機がセットされる。
 これによってショッカーの戦闘員はいつでも首領や怪人の命令を聞くことができ、その命令に従って行動するようになるのだ。
 恵理子も例外ではないだろう。

 変化が収まってくることで、恵理子の呼吸も静かな規則的なものへと変わっていく。
 青く染まった胸が強くなった心臓の鼓動を響かせる。
 チップを埋め込まれることで恵理子の顔には新たな模様が生まれ、赤と青のペイントがされた特徴的な顔となる。
 それはショッカーの女戦闘員に特有の顔であり、恵理子が女戦闘員として完成したことを示していた。

 ここまで順調に終わったことで、三人の白衣の男たちにも安堵の表情が浮かぶ。
 肉体強化時に細胞が耐えきれずに死んでしまうことは時々あることなのだ。
 もちろんそれは、単にショッカーにふさわしくない肉体だったというだけのことなのだが、この女はそこをクリアして見せたのだ。
 あとは仕上げをするだけでいい。

 恵理子の両手と両足の枷が外され、大の上で気をつけの姿勢をしているように手と足が閉じられる。
 その上からはかまぼこ型のカバーがかけられ、首から上だけが露出するように覆われる。
 一人がスイッチを入れ、最後の仕上げが行われていく。
 やがて、かまぼこ型のカバーが開けられると、恵理子の躰には戦闘員用の強化スーツが着せられていた。
 それは俗にレオタードと呼ばれるものにそっくりな形をした黒の特殊スーツで、ある程度の防弾防刃機能を持ち、強化された肉体を保護してくれるものだ。
 脚には網タイツのようなものが穿かされているが、これも同じ目的であると同時に、女戦闘員の“女”であることを最大限に生かし、敵の多くが男であることを利用してその目を引き付けるためのものでもある。
 両手と両足にはそれぞれ手袋とブーツが履かせられ、首には赤いスカーフが、腰には赤いサッシュが巻かれている。
 いわばこれがショッカー女戦闘員の“制服”と言っていいだろう。

 「首領、手術完了です」
 手術台を挟んで、壁の上のワシのレリーフに一礼する三人の白衣の男たち。
 彼らとて手術に失敗すればそれなりに咎めを覚悟しなくてはならないのだ。
 このような戦闘員ならともかく、最高の素材を選んで作られる怪人クラスの手術に失敗したとなれば、それこそ命はない。
 それがショッカーという組織の掟なのである。

 『起きるのだ、女戦闘員』
 ワシのレリーフから声が響く。
 その声は耳の通信機を介して脳へと直接届けられる。
 偉大なる首領の命じる声。
 それは今の彼女にとっては何よりも重要な声だ。
 命じられるままに手術台の上の新たな女戦闘員がカッと目を見開く。
 先ほどまでの恐怖はどこかに消え去り、その目には暗い闇の光が浮かんでいた。
 「ふふ……」
 口元に冷たい笑みを浮かべ、ゆっくりと躰を起こす女戦闘員。
 レオタード状のスーツに包まれた美しい肉体が起き上がる。
 そのまま躰を回すようにして、手術台から脚を下ろし、ブーツに包まれた足を床に着ける。
 小さくカツッと音がして、女戦闘員はその身を手術台の横へと立たせた。

 「イーッ!」
 スッと右手を斜めに上げ、女戦闘員は奇声を上げる。
 それはショッカー戦闘員が服従のために上げる声であり、首領への忠誠の表れである。
 この声を上げて首領に忠誠を誓う。
 それこそが今の彼女にとって一番大事なことであり、それ以外はすべて取るに足りないこと。
 彼女はそう考えるようにされてしまっていた。

 『お前はショッカーの女戦闘員として生まれ変わった。ショッカーのために働くのだ』
 首領の声はまるで躰に染みわたるよう。
 聞いているだけで躰が興奮に震えてくる。
 この身すべてを捧げ、ショッカーのために働かねばならない。
 新たな女戦闘員はそう思う。
 すべてはショッカーのため。
 「はい、お任せくださいませ。イーッ!」
 女戦闘員は力強くそう答えた。

                   ******

 「ハア……ハア……」
 呼吸を整えて周囲を確認する。
 夜も更けた住宅街。
 どうやら人の気配はなく、周囲の家々も静まり返っている。
 無事に逃げ切れたようだ。
 途中で助けてくれた青年を置いてくるような形になってしまったが、彼も逃げろと言ってくれていたし、あの場にとどまる方が危険だっただろう。

 それにしてもやつらは何者なのか?
 全身を躰にぴったりフィットするようなタイツ状の黒い衣服で覆い、奇声を上げてナイフで切りかかってくるとは……
 あの時現れた紺のブレザー姿の青年は、出たなショッカーとかなんとか言っていたが、青年にも見覚えは無いし、ショッカーというのも初耳だ。
 今研究所で開発している装置に関わることなのだろうか?
 だとすると、明日にも研究所で他のメンバーにも注意を促さなくてはならないだろう。
 ともかく今は……

 門を開けて家の敷地に入り込む。
 さすがにこの時間では恵理子も眠ってしまったようで、家に明かりは点いていない。
 先ほどまでの恐怖を考えれば、恵理子の優しい顔を見、声を聴いて安心したいところだが、どうやら寝顔を見るだけで我慢するしかないようだ。
 ふっ……やれやれ……
 命が助かったばかりでなんと贅沢なことを言っているのか。
 寝顔を見られるだけで充分ではないか。

 玄関まで近づいて血の気が引く。
 ドアが少し開いていたのだ。
 鍵がかかっていないというだけなら、かけ忘れたという可能性も考えられるが、ドアが開いているとなれば……
 まさかさっきの連中が?

 「恵理子!」
 まるで転がり込むような勢いで家の中に飛び込んでいく智田幸作。
 一刻も早く妻の無事を確かめなくてはという気持ちばかりが焦る。
 「恵理子!」
 靴を脱ぎ散らかして廊下を抜け、リビングに飛び込んでいく幸作。
 「はっ!」
 次の瞬間、彼の目に網タイツに包まれた魅惑的な太ももが映り、頭上にブーツの踵が落ちてくる。
 「がはっ!」
 強烈な衝撃を受けて床にたたきつけられる幸作の前に、顔に赤と青の奇妙なペイントをして、黒いレオタードを着た妻の姿が現れる。
 「恵……理子……」
 「まさか生き延びて戻ってくるとは思わなかったけど、私がここにいて正解だったみたいね。さすがは偉大なるショッカーのコンピュータがはじき出した作戦だわ」
 衝撃で意識を失いそうになるのを必死でこらえ、幸作は変わってしまった妻の姿を見上げる。
 「恵理……子」
 「それは今朝までの私の名前。今日私は偉大なるショッカーの改造手術を受け、女戦闘員として生まれ変わったのだ」
 冷たい笑みを浮かべて見下ろしてくる妻の顔に、幸作は恐怖を覚える。
 ああ……そんな……
 彼女は……
 彼女はもう別のものに作り変えられてしまったのか……

 「お前は我がショッカーにとっては邪魔な男。この私が始末するわ。お前はここで死ぬのよ。ふふふふふ……さようなら、あなた」
 今まで見たことのない冷酷な妻の顔。
 女戦闘員の手刀が振り下ろされ、幸作の意識は闇に沈んでいった。

END

いかがでしたでしょうか?
今回投下前にg-than様にも読んでいただき、おかげさまで楽しんでいただきましたようで、投下の許可もいただけました。
このSSが少しでもg-than様のイラストの補完になればよいのですが。

それではまた。
  1. 2021/05/09(日) 18:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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選ばれてしまった母と娘 (再掲)

マーチン・シン様の作品の二次創作と言いますか、イラストに感化されて文章を書いてみましたという作品でして、一時マーチン・シン様のpixivページに掲載していただきました作品です。

諸事情で掲載ページが消えてしまいましたので、許可をいただきまして、当ブログの方で掲載させていただくことになりました。
すでにご覧になられた方も多いとは思いますけど、あらためてお楽しみいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


選ばれてしまった母と娘

だんだんと日差しが強くなってくる季節。
ただ、暑さはまだそれほどでもない。
放課後、日が沈むまでの長い時間を木陰で読書をして過ごすにはいい季節だ。
蓮生愛華(はすお あいか)は公園のベンチに腰掛け、好きな歴史小説を読んでいる。
もう何度も繰り返し読んでいる歴史なのに、作者が違うと表現も違い、新しい世界のように思えてくるのが面白い。
かつてお隣の大陸で繰り広げられたという三国の群雄史。
多彩な登場人物がそれぞれの思いをかけて相争う。
愛華が一番好きなのは時代が三国に収束する前の戦乱の時代。
のちの三国でトップに立つ群雄たちがのし上がってくるあたりだ。
このあたりは何度読んでも面白い。
だから、愛華はついつい後半よりも前半を多く読むことが多かった。

雷に驚いて箸を落す。
だがそれは小心者と見せかけることで、相手に大したことのない人物と思わせるのが目的の偽装。
虚々実々の駆け引きなのだ。
こういうところが面白い。
だから、愛華はこの物語が好きだった。

「お待たせー」
公園に駆けてくる一人の女子高生。
城北アカデミーの制服を身に着け、軽やかな動きでやってくる。
にこやかな笑顔が日差しとも相まってまぶしいくらい。
やや明るい茶色の髪を両脇でお団子にした彼女は、ちぎれんばかりに手を振ってくる。
伸びやかな躰はまるでネコ科の動物を思わせるようなしなやかさだ。
この躍動感こそが彼女の魅力であり、虎島美子(こじま みこ)の本質なのだろう。
愛華は思わず自分も小さく手を振り、読んでいた本を閉じた。

「遅くなってごめーーん。待った?」
愛華の前にたどり着き、ハアハアと息を切らせている美子。
どうやらかなり急いできたらしい。
「ううん、これ読んでいたし、そんなに急がなくてもよかったのよ」
愛華は立ち上がって読んでいた本を見せ、笑顔を浮かべる。
だが、こうして美子が急いで来てくれたということは素直にうれしい。
「や、ずいぶんと待たせちゃったかなって思ってさ」
美子も笑顔を浮かべる。
やはり運動を得意としているからなのだろうか、息はもうほとんど整ったようだ。
運動が苦手な愛華にとってはうらやましい限りである。

「ハルちゃん先生?」
「うん。研究会の方は特にやることはなくて済んだんだけど・・・ね」
美子が苦笑する。
ハルちゃん先生というのは、美子が所属する考古学研究会の顧問である北原はるかのことだ。
気さくで優しい教師である彼女のことを、生徒たちは親しみを込めてハルちゃん先生と呼んでいる。

だが、ハルちゃん先生は美子にとってはもう一つ別の顔を持っていた。
それは、ガイア・フォースの支援者としての顔である。
ガイア・フォースとは、ガイア(地球)の力を借りて戦う三人の少女たちのことであり、そのうちの一人が虎島美子本人だったのだ。
彼女はガイアの力を秘めたガイア・キーによってガイア・タイガーへとチェンジし、魔人ジャーラーの復活をたくらむヤーバン一族と、日夜人知れず戦っているのだった。
そしてそのガイア・フォースの活動を知り、情報面等で支援してくれているのが、ハルちゃん先生こと北原はるかだったのだ。

とはいえ、美子本人はガイア・フォースのガイア・タイガーと言えども城北アカデミーの生徒であり、北原はるかも城北アカデミーの教師である。
当然ガイア・フォースに絡まない部分での関わりというものもあるわけで・・・
先ほどまで美子はハルちゃん先生に勉強の様子を尋ねられていたのだ。
「うー・・・次の試験が不安だよー」
美子が思わず頭を抱える。
そうなのだ。
運動が得意な美子だが、勉強の方はそれほど得意ではない。
もちろん城北アカデミーに通っているのだから、頭は悪くはない。
ただ、どうしても躰を動かすほうが優先されてしまうのだ。

そんな美子を見て愛華がポンと背中をたたく。
「ほらほら、そんな顔は美子には似合わないよ。クレープでも食べに行きましょ」
途端に美子の顔が晴れやかになる。
生来の食いしん坊である美子は、食べることには目がないのだ。
「行く! クレープ食べる!」
すでに目を輝かせてクレープのことしか頭になくなっているかのよう。
このくるくると表情が変わるところも、ネコ科ぽくて愛華は好きだった。

「行きましょ。それと日曜日は空いてる?」
カバンを持ち歩き出す二人。
「日曜? 空いてると思うよ」
「じゃあ、うちに来ない? 一緒に勉強しましょ」
「ホント? やったぁ!」
思わずガッツポーズを作る美子。
彼女と違って愛華はどちらかというと勉強を得意としている。
メガネをかけ、キリッとした表情の中にも人懐こさを見せる愛華は、美子にとっては大事な大事な親友だ。
もちろんガイア・フォースのほかの二人は別格だが、城北アカデミーに転校してきて右も左もわからなかった美子に、いろいろと声をかけてくれたのが愛華だった。
それ以来二人はとても仲の良い友人として付き合ってきたのだった。

「うちのママもきっと喜ぶよ。最近美子ちゃん来ないけどどうしたのって言ってたから」
「ホント? あんまり押しかけたりしたら悪いと思っていたから・・・」
「そんなことないよ。うちはいつでも大歓迎」
愛華が眼鏡の奥の人懐こい目で美子を見る。
そのきれいな目が美子は大好きだった。

                   ******

闇・・・
深い闇・・・
いずこともしれぬ闇の中、一人の女性がいた。
黒を基調とした躰にぴったりとした衣装を着た彼女は、まさに妖艶という言葉がふさわしいような美しさを持っていたが、今はその顔に苦虫をかみしめたようなきつい表情が浮かんでいた。
その目には怒りが満ち、先端にヘビをかたどった杖を握る手も硬く握りしめられている。
彼女こそ、ヤーバン一族の事実上のトップともいうべき存在。
大魔女・ソヤと呼ばれる存在だった。

敗北。
この二文字が彼女に怒りをもたらしている。
偉大なる魔人ジャーラー。
彼を復活させ、ヤーバン一族の再びの繁栄をもたらすこと。
これこそが大魔女・ソヤの願いである。
そのためには希望の鍵と呼ばれるものを手に入れなくてはならない。
ヤーバン一族の力をもってすれば、容易いことと思われたが、事態はそう簡単にはいかなかった。

かつて魔人ジャーラーを封じ込めた忌々しい存在、ガイア・フォースが再び立ちはだかってきたのだ。
地球の力を借りて戦う三人の人間たち。
その容姿からおそらくは少女と思われるその三人、ガイア・イーグル、ガイア・オルカ、ガイア・タイガーによって、ヤーバン一族の行動はことごとく阻止されてしまっていたのだ。

人間など簡単に蹴散らしてしまうジャラジャラ兵や、さらにその上の力を持つ蛮獣人という戦力を繰り出しても、ガイア・フォースによって倒されてしまう。
何とか彼女たちを倒さなくてはならない。
ソヤはそのことに怒っていたのだった。

だが、そのためには戦力がいる。
失われてしまった戦力の立て直しが必要なのだ。
特に先日の戦いで失われた女ジャラジャラ兵の損失は痛かった。
なんとしても最優先で補充を行う必要があるだろう。

ジャラジャラ兵とは、ヤーバン一族の戦闘ユニットである。
黒い全身タイツのようなジャラジャラスーツに身を包み、ヘビが牙をむきだした顔を模したような模様の付いたマスクで頭部を覆っている。
手足はブーツと手袋で覆い、腰には紋章入りのバックルの付いたベルトを締めている。
胸の部分はグレーのプロテクターで覆われており、少々のダメージなど意にも介さない。
まさに理想の兵士とも言うべき存在であり、複数で連携の取れた行動をとるのが特徴だった。

一方女性型のジャラジャラ兵は、姿こそ男性型ジャラジャラ兵とほぼ同じものの、躰のラインは女性のようにしなやかで美しく、また全身を覆うジャラジャラスーツの色も小豆色をしている。
力は男性型に劣るものの、その主目的は隠密行動や諜報活動、大魔女・ソヤの行う儀式の補佐などであり、直接戦闘をするものではない。
プロテクターの肩ベルトの部分も男性型が右肩にかかっているのに対し、左肩と逆になっていた。

ジャラジャラ兵は主に古代人の亡骸を大魔女・ソヤが魔人ジャーラーの力を借りてよみがえらせたものである。
しかし、人間を素材に作ることもできないわけではなく、その場合は若干の個性を持たせることも可能だった。
特に隠密や諜報活動を行う女ジャラジャラ兵は、個々の判断力が必要な局面が多く、むしろ人間を素材として作った方が都合がいい。
事実、今大魔女・ソヤが重宝している女ジャラジャラ兵は、かつてはカイシャというものに属するOLと呼ばれる平凡な人間の女性だったのだ。
だが、適性をソヤによって見いだされた彼女は、女ジャラジャラ兵に作り変えられ、ソヤにとって非常に使い勝手のいい女ジャラジャラ兵へと生まれ変わっていた。
彼女のような女ジャラジャラ兵があと数体は欲しい。
ソヤはまずそこから手を付けることにした。

手にした杖に魔力を込めるソヤ。
杖の先端のヘビの頭部の目が光り、周囲に淡い光を放ち始める。
その光に向かって何やら呪文を唱えるソヤ。
すると、その光の中に町の光景が浮かび上がる。
町の光景はしばらくあちらこちらへと視点が切り替わっていったが、やがて道行く一人の女性がアップになる。
成熟した大人の女性で、落ち着いた雰囲気を持っている。
住宅街を歩いているところを見ると、どこかで用でも済ませてきたのかもしれない。
やさしそうな顔立ちではあるものの、どこか芯の強さのようなものも感じられる。
なるほど。
この女なら素質がありそうだ。
まずはこの女を女ジャラジャラ兵に作り変えてやろう。
ソヤの口元に笑みが浮かぶ。
その女は一軒の家にたどり着くと、玄関を開けて中に入っていく。
表札には、蓮生と表示されていた。

「エリナ」
「ヤー!」
大魔女・ソヤの呼びかけに即座に返事が返ってくる。
ソヤが振り向くと、小豆色のジャラジャラスーツに身を包んだ女ジャラジャラ兵がかしこまってひざまずいていた。
「出かけるわ。ヤーバンエキスを用意しなさい」
「ヤー!」
一礼してすぐに闇の中に姿を消す女ジャラジャラ兵。
すぐに再び現れると、その手には小瓶が握られていた。
「ふふふ・・・お前の仲間を作ってあげる。楽しみにしてなさい」
「ヤー!」
ソヤはその小瓶を受け取ると、笑みを浮かべてそう口にする。
お前のように使い勝手のいい女ジャラジャラ兵ができるといいわね・・・
「ふふ・・・うふふ・・・おほほほほほ・・・」
手の甲を口元にあてながら高笑いをするソヤ。
カツコツとヒールの音を響かせながら、やがてその姿は闇の中へと消えていった。

                   ******

「ふう・・・」
用事を終えて家に帰ってきた蓮生美乃里(はすお みのり)は、上着を脱ぐとエプロンを身に着ける。
早ければもうすぐ娘の愛華が学校から帰ってくるはず。
夕食の仕込み等してしまわなくてはいけないだろう。
そう考え、室内着に着替えるよりもエプロンで仕込みまではやってしまおうと考えたのだ。

キッチンに戻る途中、リビングの棚に立てかけてある家族写真が目に入る。
昨年、愛華が城北アカデミーに入学した記念に家族で写したものだ。
真新しいアカデミーの制服を身に着けて誇らしげにしている愛華の表情が明るい。
思えばあの子ももう高校生。
早いものだわと美乃里は思う。
若くして愛華を産んだために夫ともども苦労もしたが、おかげでこうして並んで写真を撮っても、まるで姉妹かのようにも見えるほどに美乃里の姿は若々しい。

夫に似たのであろう物静かなところのある愛華は、本が大好きで、ともすれば本を友達としてしまうようなところがある。
そのため学校では友人ができないのではないかと心配したものの、幸い転校してきた子とすごく仲良くなったらしい。
家でも、先日美子がとか、今日の美子はなどとその子のことをしょっちゅう話題に上らせる。
家に連れてきたときもとても楽しそうにしていたものだった。
その子、虎島美子という名の子だったが、愛華とはまるで正反対と言っていい娘で、愛華の静に対して美子の動、知に対して勇といった感じだったものの、それがかえっていい方向に作用して馬が合っているようで、美乃里もいい友人ができたものとうれしく思っていた。

もしかしたら今日は二人でどこかに寄ってくるかもしれないか・・・
そう美乃里は思う。
もちろん仲のいい二人がどこかに寄って楽しんでくるのは大賛成だし、それならそれでいい。
どっちにしても下ごしらえだけしておけば、あとはどうとでもなるだろう。
美乃里はそう思い、キッチンに入った。

「ヒッ!」
思わず息をのむ美乃里。
誰もいないはずのキッチンに、一人の女性が立っていたのだ。
灰色の長い髪を背中に垂らし、頭の両側からは角が生えている。
額にはまるで目のような赤く輝く石の付いたサークレットを嵌め、負けず劣らず赤い目が美乃里を見つめている。
口元にはやや冷たい笑みが浮かび、先の尖った耳にはイヤリングが揺れていた。
黒を基調にした水着のような衣装には、まるであばら骨のようなものが左右の腰のあたりを飾っており、お腹のあたりには蛇腹のような部分が付いている。
すらりと伸びた脚は目の細かいメッシュのようなタイツに覆われ、ヒールの高いブーツがふくらはぎのあたりから下を包んでいた。
両腕は二の腕まで衣装と同じ黒い長手袋が嵌められ、右手には女性の身長よりもやや短い長さの杖が握られている。
まさに妖艶という言葉を絵にしたような妖しい女性がそこにいたのだった。

「あ、あなたはいったい・・・?」
動物的な本能ともいうべきものが美乃里に危険を知らせてくる。
一刻も早く逃げ出さなくてはならないはずなのだが、美乃里の躰は動けなかった。
女性のあの赤い目を見た瞬間、美乃里はまるでヘビに睨まれたカエルのように動けなくなってしまっていたのだ。

「うふふふふ・・・我が名はソヤ。ヤーバン一族の長である魔人ジャーラー様にお仕えする大魔女・ソヤ」
にっこりと微笑むソヤ。
その笑みがさらに美乃里の背筋を凍らせる。
「大魔女・・・ソヤ・・・」
ガクガクと震えるひざ。
かろうじて絞り出す言葉。
逃げなくては・・・
悲鳴を上げて助けを求めねば・・・
そう思うものの、躰は全くいうことを聞こうとしない。
たすけ・・・て・・・あなた・・・雄介(ゆうすけ)・・・さん・・・
心の中で夫の名を呼ぶ美乃里。
いつだって彼は駆けつけてくれた。
美乃里や愛華が困っているときにはいつも助けてくれた。
心から愛する夫、雄介。
お願い・・・
助けて・・・

「うふふふふ・・・そう怖がることはないわ。お前は脱皮するのだ。我が忠実なるしもべとして」
ずいと美乃里のそばに近寄るソヤ。
「脱・・・皮?」
「そう。その人間とやらの皮を脱ぎ捨て、ヤーバン一族のジャラジャラ兵としての皮を着る」
ぺろりと舌なめずりをするソヤ。
その舌がまるでヘビのように先が二つに割れていることに美乃里はさらなる恐怖を受ける。
「うふふふ・・・さあ、このヤーバンエキスをお飲み」
右手の杖を離し、手の中に小瓶を生じさせるソヤ。
驚いたことに手から離された杖はそのまま宙に浮いていた。

「くっ」
小瓶の中身が何であるかはわからないものの、とにかく何かを飲まされまいと固く口を閉じる美乃里。
だが、予想に反してソヤはその小瓶の中身を自らの口に含んでしまう。
そして、動けずにいる美乃里の顎を持ちあげると、その口を美乃里の唇と重ね合わせた。
「ん・・・んんん・・・」
必死に抵抗する美乃里。
しかし、ソヤの舌が強引に美乃里の唇を割り開き、中の液体を流し込んでくる。
あ・・・
甘い・・・
美乃里がその液体の味を感じたとき、彼女の意に反して、液体は喉の奥へと滑り落ちていくのだった。

躰がカアッと熱くなる。
胸が苦しくて息ができない。
目の前が赤くなり、まるで焼けた鉄を喉から流し込まれでもしたかのようだ。
全身が熱を持ち、躰をめぐる液体が細胞の一つ一つを何か別のモノに変えていく。
「あ・・・ぐ・・・」
唇を離された美乃里がかすかにうめき声を上げた。

心が冷えていく。
熱を持つ躰とは裏腹に、心はどんどん冷えていく。
冷たく、暗く、闇の中へと沈んでいく。
愛、優しさ、母性、慈しみ、希望、そういったものがすべて闇に塗りつぶされ、代わりに忠誠、服従、冷酷、嗜虐、そういったものが美乃里の中に作られていく。
人間であったことは過去のこととして追いやられ、代わりにヤーバン一族となったことの喜び、誇り、そして優越感が満ちてくる。

「ああ・・・あ・・・」
自分が違うものへと変わっていく恐怖。
だが、それも徐々に消えていく。
むしろ変わることの喜びがだんだんと増してくる。
その美乃里の目にも喜びが浮かび、瞳には小さい緑色の点が浮かび上がっていた。

「服を脱ぎなさい」
ヤーバンエキスが浸透してきたことを見て取ったソヤが、そう命令する。
「・・・・・・ヤー・・・」
美乃里は小さくそう答えると、着ているものを脱いでいく。
エプロン、ブラウス、スカート、ストッキング・・・
ショーツに手をかけたとき、一瞬ためらいを見せた美乃里だったが、やがてそのままショーツを下ろしていく。
最後にブラジャーを外し、美乃里はまっさらな姿でソヤの前に立つのだった。

「これを着るのよ」
ソヤが手をかざすと、小豆色の折りたたまれた布のようなものが現れる。
美乃里はそれを無言で受け取り、広げていく。
それは首から下をすっぽりと覆う小豆色の全身タイツ。
ジャラジャラ兵のジャラジャラスーツだった。

背中側に切れ込みがあるその全身タイツに、美乃里は無言で脚を差し入れる。
「あ・・・」
かすかに漏れる小さな声。
つま先が滑り込んだだけで、美乃里の躰にはまるで電気が走るように快感が走ったのだ。
なんてすべすべで気持ちいいの・・・
美乃里の心臓がどきどきする。
こんな素敵なものに包まれるなんて・・・
こんな素敵なものが私を包んでくれるなんて・・・

何かに憑かれたようにタイツをたくし上げていく美乃里。
それにつれて小豆色のタイツが美乃里の脚を染めていく。
まるで吸い付くかのようにフィットするタイツ。
その気持ちよさに美乃里の息は荒くなる。
ハア・・・ハア・・・ハア・・・
包まれれば包まれるほど気持ちよくなっていく。
太ももあたりまでたくし上げた後で、今度はもう片方の足を差し入れる。
ハア・・・ハア・・・ハア・・・
なんて気持ちよさ。
なんて快感。
そう・・・
これは快感。
これは快楽。
今まで味わったことのない強烈な快楽だ。

小豆色に包まれた自分の脚。
つま先は一つになり、足の指など消え去ってしまったかのよう。
美乃里はさらにタイツをたくし上げていく。
太ももから腰へ。
腰からお腹へ。
お腹から胸へと上げていく。
タイツが胸まで来たら、今度は袖に手を通す。
右腕を入れ、袖を手繰って指先まで通していく。
つま先と違ってこちらは手袋状になっており、五本の指がそれぞれ包まれるようになっている。
すぐに指の一本一本がタイツと密着し、貼り付いたように一体となる。
左腕も同様にタイツが覆い、小豆色へと染まっていく。
両腕が肩まで覆われ、胸元の部分を引き上げると、美乃里の躰は首までぴったりとジャラジャラスーツに覆われた。

「あ・・・」
背中の切れ目が閉じていく。
ファスナーなどがあるわけではない。
何もしないのに、ただ閉じるのだ。
閉じた後には何も残らず、切れ目があったことすらわからない。
それを美乃里は背中で感じ取っていた。
いや、全身がそれこそこのジャラジャラスーツに包まれたことで、むしろ鋭敏な感覚となっていたのだ。

美乃里は理解する。
これは脱皮なのだ。
確かに動作的には着込んだように見える。
だが、これはヒトという皮を捨て、ヤーバン一族のジャラジャラ兵という新たな皮に脱ぎ変わったのだということを。
もうこのジャラジャラスーツが脱げることはない。
それはそうだろう。
自分の皮膚を脱いだりする者はいない。
これは新たな自分の皮膚なのだ。
その証拠に、乳首はピンと浮き出ており、おへそのくぼみもはっきりとわかる。
股間の性器すら、うっすらと浮き出ているようではないか。
だが、ヘビが硬いうろこに躰が守られているように、彼女もこのジャラジャラスーツに守られる。
熱にも冷気にも耐えるし、衝撃にも強いだろう。
まさに強靭な皮が守ってくれるのだ。

「はあ・・・」
美乃里は悩まし気に熱い吐息を吐く。
気持ちよくてたまらない。
ヒトであることなど、もはやどうでもいい。
このジャラジャラスーツに包まれた自分はもうヒトなどではないのだ。
それがたまらなく気持ちいい。
美乃里の指はジャラジャラスーツに包まれた躰を愛しげになぞっていた。

ひとしきり自分の躰を愛撫した後、美乃里の手は置かれていたブーツに伸びる。
さらに自分の躰を強化するのだ。
ジャラジャラ兵としてヤーバン一族のために働くのだ。
そのために・・・
美乃里はブーツに足を入れる。
黒革でできたようなハイヒールのブーツは美乃里の足をすっぽりと覆い、内側に開いた切れ目が閉じていく。
このブーツはジャラジャラ兵の足をさらに保護し強化するもの。
彼女の蹴りを格段に強くし、ジャンプ力などもアップする。
美乃里はもう片方の足にもブーツを履く。
スーツとブーツが密着し、美乃里の脚はすねから下がブーツの黒に覆われる。

次は手袋。
こちらもブーツと同じで彼女の手を保護し強化するもの。
ひじまでの長さの長手袋になっており、美乃里はそれらを嵌めていく。
指先まで通して手になじませると、手袋はすぐにスーツと一体化して、美乃里の手そのものとなる。
両手が黒く染まったのを見て、美乃里は口元に笑みを浮かべた。

そしてプロテクター。
胸はやはりジャラジャラ兵としてもカバーすべきところなのだ。
そのため、男女ともにジャラジャラ兵は胸の部分をプロテクターで覆っている。
肩ベルトの位置が左右で違う以外は同じと言っていい。
美乃里はそのプロテクターを胸に当てて止める。
すぐにプロテクター自体が美乃里の躰に順応し、引き締めるように一体化することで彼女の豊かな胸を覆っていった。

美乃里が最後に手にしたのはマスク。
頭部をすっぽりと覆うフルマスクであり、顔の部分にはヘビが牙をむきだしたような顔を模した模様が浮かんでいる。
ヒトが見れば異形で恐怖を覚えるようなその模様も、今の美乃里にとっては素敵で誇らしく、かぶりたくなる模様だ。
これをかぶれば・・・
美乃里はドキドキする。
すでに恐怖などはどこにもない。
新たな生が始まるのだ。
自分は生まれ変わりジャラジャラ兵となるのだ。
それは素晴らしいことだった。

マスクを持つ美乃里。
その様子を大魔女・ソヤが見つめている。
美乃里の動きが止まっているのは、うまくいっていないからでもためらっているからでもない。
楽しんでいるのだ。
美乃里はジャラジャラ兵に生まれ変わるのを楽しんでいる。
なぜなら、美乃里の瞳はすでに焦げ茶色ではなく深い緑色へと染まっており、ジャラジャラ兵と同じになっていたし、その唇を舐める舌も、かすかに先が二つに割れ、ヤーバン一族と同じになっていたからだ。
あとは・・・
ふふっと小さくソヤは笑った。

やがて美乃里の手がマスクを頭にかぶせていく。
「はあああ・・・」
大きく声を出す美乃里。
マスクに包まれる快楽に酔いしれているのだ。
髪の毛を中に閉じ込むようにしてすっぽりとかぶっていく。
美乃里の頭が小豆色に覆われていく。
首元までマスクをかぶり、目の位置を合わせていく。
ジャラジャラ兵のマスクは、そのヘビの顔をした模様の目の位置が、ちょうど合わさるようになっているのだ。
マスクの目の奥に、美乃里の目が現れる。
深い緑色に染まった瞳。
それがまるでマスクのヘビの目となったかのように、目全体が緑色へと広がった。
それと同時に襟元に広がったマスクの首元が、喉に貼り付くように密着し全身タイツと一つになる。
すべての露出部分がなくなり、美乃里の躰は完全にジャラジャラスーツに覆われた。

全身を小豆色のスーツに包んだ美乃里のところに近づくソヤ。
彼女はそっと美乃里の背後に回り込む。
そしてその手にベルトを作り出すと、それを美乃里の腰へと回しながら、彼女の耳元でささやいた。
「これでお前は、完全なジャラジャラ兵となるのだ」
その言葉にゾクゾクするほどの感激を覚える美乃里。
完全なジャラジャラ兵。
そう・・・
私はジャラジャラ兵になるのよ。

腰にベルトが嵌められる。
無地だったバックルにヤーバン一族の紋章がすうっと浮かび上がってくる。
美乃里は下腹部にズシッとした重さを感じ、同時に強烈な力強さが湧いてくる。
ヤーバン一族の力。
魔人ジャーラー様によってもたらさせる大いなる力。
ジャラジャラ兵としての力だった。

「ジャ・・・ジャラッ・・・」
マスクの口元から小さく声がする。
マスクをかぶった後、ずっと両手で愛撫するように頬を撫でていた美乃里。
その口から声が漏れるのだ。
「ジャラ・・・ジャラ・・・ジャラジャラッ! ジャラジャラッ!」
だんだんと力強く繰り返されていく。
それはジャラジャラ兵の鳴き声。
まるでガラガラヘビが尻尾を鳴らして威嚇するような声。
新たなジャラジャラ兵の誕生の産声だった。

「ジャラジャラッ! ジャラジャラッ!」
ジャラジャラと声を上げながらソヤに振り向くジャラジャラ兵。
「うふふふ・・・さあ、お前が何者か言ってごらん」
「ヤーッ! 私はヤーバン一族の一員、ジャラジャラ兵ミノリ! 魔人ジャーラー様と大魔女・ソヤ様の忠実なしもべです。ジャラジャラッ!」
右手を上げて忠誠を誓うジャラジャラ兵ミノリ。
もはや彼女は人間ではない。
ヤーバン一族の新たなジャラジャラ兵へと生まれ変わったのだった。

「オホホホホ! それでいいのよ。これからは我のために働きなさい。いいわね」
「ヤーッ! 私はジャラジャラ兵ミノリ。ソヤ様のためなら何でもします。何なりとご命令を。ジャラジャラッ!」
高笑いしつつ、その返事に満足するソヤ。
新たな使い勝手のいい駒を手に入れたことに喜びを覚える。
ほかにももう一二体ほど手に入れたいところだ。
「まあ、それは次にでも・・・」
そう思って、ミノリを連れて立ち去ろうと思ったソヤは、ふと立てかけてある家族写真に気が付いた。
あれは・・・
このジャラジャラ兵の娘か?
なるほど・・・
うふふふふ・・・
写真に写る愛華の姿に、ソヤはミノリと同じものを感じ取る。

「ミノリ」
「ヤーッ!」
名を呼ばれ、すぐにソヤのそばに行くジャラジャラ兵ミノリ。
ジャラジャラスーツが見事なまでに彼女の美しいボディラインを描き出す。
「この娘はお前の娘かい?」
「ヤーッ! ソヤ様、その娘は私が以前ヒトだった時には確かにその通りですが、今の私はジャラジャラ兵です。その娘とは何の関係もありません」
まったくためらいもなく答えるミノリ。
彼女にとっては写真に写っている夫も娘もただの関係ないヒトなのだ。

「ふふ・・・ミノリ、以前のヒトの姿に擬態しなさい。この娘もジャラジャラ兵にするわ。手伝いなさい」
「ヤーッ! かしこまりました、ソヤ様」
ミノリはソヤに手を上げて敬礼すると、両手を顔の前でクロスする。
次の瞬間、ミノリの姿は以前の蓮生美乃里の姿へと変化した。
ジャラジャラスーツが外見を擬態したのである。
ただ、その瞳は以前の茶色ではなく深い緑色をしており、唇もピンク色ではなく小豆色だ。
そこからちらりと覗く舌も、先がかすかに割れている。
ジャラジャラ兵として人間に擬態するにも限界があるのだった。

ほぼ以前の清楚な人妻の姿に擬態したジャラジャラ兵ミノリに、以前と同じようにふるまうよう命じるソヤ。
これでいい。
あとはこの写真の娘が帰ってくるのを待つだけ。
これで使い勝手のいい女ジャラジャラ兵が二人手に入るというものだ。
「オホホホホホ・・・」
ソヤは嬉しそうに笑っていた。

                   ******

今日もまた楽しい時間だった。
美味しいクレープに楽しいおしゃべり。
愛華自身はあまりしゃべる方ではないものの、美子がいろいろと面白い話題には事欠かない。
今日も美子が8、愛華が2くらいの割合でしゃべっていただろうか。
だからと言ってお互いに不満なわけではない。
美子は思い切りしゃべることができるし、愛華はそれを楽しく聞いていられる。
それでいて、時々愛華が意見を付け加えたりすると、美子は感心したようにそうだねぇ、ホントだねぇとうなずいてくれるのだ。
考古学研究会にも鯱原南美(しゃちはら なみ)という天才少女がいるという話なのだが、どうも彼女のいうことは美子にとっては難しく感じるらしく、愛華に聞いた方がよくわかるらしい。
きっとひいき目もあるのだろうけど、愛華はそう言ってもらえてうれしかった。

日曜日に美子を呼んだことをママにも言わなくちゃ。
きっと喜んでくれるはず。
ママも美子のことを好いていてくれているみたいだから。
日曜日が楽しみ。

学校でほぼ毎日会っているというのに、休日にも会うというのは何か特別なようにも感じる。
勉強もしなくてはならないだろうけど、多分ほとんどの時間は他愛もないおしゃべりになるだろう。
それがまた楽しいのだ。

「ただいまぁ」
玄関を開けて家に入る愛華。
日が長くなってきたとはいえ、そろそろ家の中はかなり暗い。
「あれ?」
いつもならリビングの光が廊下に漏れてきているものなのだが、今日はリビングも暗いようだ。
ママ、出かけているのかな?
愛華はそう思いながら靴を脱ぎ、カバンを手にリビングまで進んでドアを開ける。

「えっ?」
一瞬愛華はギョッとする。
リビングのテーブルのところに誰かが座っていたのだ。
慌ててドアの横の照明のスイッチを入れる。
「ママ・・・」
ホッとする愛華。
部屋が明るくなると、テーブルに着いていたのは母親だったことがわかったのだ。
「お帰りなさい・・・ジャラ・・・」
無表情で愛華に言葉をかけたミノリが、急に口をつぐむ。
「もう、ママったらびっくりさせないでよ。誰かと思ったじゃない」
愛華は安堵すると同時に、驚かされたことにちょっとだけ文句を言う。
「あら、どうして?」
席を立つミノリ。
「だって暗い中に座っているんだもの。どうして明かりを点けなかったの?」
「えっ? そうね・・・暗かったの気が付かなかったわ」
ジャラジャラ兵は暗闇でも目が見える。
そのためミノリには暗かったという意識がなかったのだ。
「えっ?」
母の言葉に愛華は驚く。
あんなに暗かったのに気が付かなかったというの?
それに・・・何かいつものママと雰囲気が違うような・・・

「それよりも、先ほどからソヤ様がお待ちかねよ」
スッと愛華の背後に回り、その肩に手を置くミノリ。
「えっ? 誰?」
愛華は母の方を振り返って聞き返す。
ソヤなんて名は聞いたこともない。
「大魔女・ソヤ様。今日からお前の支配者となられるお方よ」
グッと肩をつかまれ、押し出されるように歩かされる愛華。
「痛っ・・・マ、ママ? なに?」
訳も分からず無理やりリビングの中央に押し出される愛華。
いったい何がどうなっているの?

「オホホホホ・・・娘が来たようね」
キッチンから姿を現す一人の女性。
それはまさに妖艶な美女と言ってよい姿だったが、躰のラインを強調するかのような黒を基調とした衣装を身につけ、頭部の両側には角のようなものが伸びており、手にした杖も先端がヘビのような形をしたまがまがしいものだ。
「あ、あなたは?」
愛華は驚く。
どうしてこんな人が家にいるの?
どうしてママはこんな人を家に入れたの?

「オホホホホ・・・我はソヤ。魔人ジャーラー様にお仕えするヤーバン一族の大魔女」
「ヤーバン・・・一族?」
その一族のことを耳にしたことはあった。
美子がふとした時に言っていたような記憶がある。
考古学研究会に関する事柄だと思い、気にも留めはしなかったのだが。

「そう。お前も今日からヤーバン一族のジャラジャラ兵になるのよ。ジャラジャラッ!」
耳元で声がする。
「えっ?」
振り向く愛華の目に、ヘビが牙を突き立てるような模様の付いた小豆色のマスクに緑色の目がらんらんと輝いている顔が映る。
「ヒッ!」
息をのむ愛華。
肩をつかんでいたのは母親だと思っていたのに、いつの間にか小豆色の躰にぴったりしたスーツを着た女性に変化していたのだ。

「オホホホホ・・・ご覧、お前の母親はもうすでに立派なジャラジャラ兵へと生まれ変わったわ」
口元に手を当てて高笑いをするソヤ。
「嘘・・・ママ・・・なの?」
この小豆色のスーツを着ているのがママだっていうの?
愛華は愕然とする。
「ジャラジャラッ! 違うわ。私はもうお前の母親などではないの。私はヤーバン一族のジャラジャラ兵ミノリ。さあ、お前もジャラジャラ兵におなりっ!」
肩を押さえていた手を、素早く愛華の胴と首に回すジャラジャラ兵ミノリ。
「あうっ」
その力はものすごく強く、愛華は身動きができなくなってしまう。
「オホホホホ・・・無駄よ。ジャラジャラ兵の力は人間などとは比べ物にならないわ。抜け出せはしない」
ソヤの言うとおりだ。
愛華の力ではとても抜け出すことなどできないだろう。
「ママ、やめてぇ! 放してぇ!」
必死に逃れようともがく愛華。
だが、ジャラジャラ兵ミノリの拘束はびくともしない。
「おだまり! お前はジャラジャラ兵に選ばれたのよ。光栄に思いなさい。ジャラジャラッ!」
まるでガラガラヘビの威嚇音のようにジャラジャラと鳴くジャラジャラ兵ミノリ。
「いやぁっ! そんなのはいやぁっ! 助けて! 助けてぇ! ママァ! パパァ! 美子ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
かすかな望みを託して親友の名を叫ぶ愛華。
だが、応えるものはいなかった。

「うぶっ!」
羽交い絞めにされた愛華の口をソヤの口が覆う。
その口が無理やりこじ開けられ、甘い液体が流れ込む。
ああ・・・
いやぁ・・・
喉の奥を滑り落ちていく液体。
その甘さが愛華を変えていく。
自分が何か別のモノへと変わっていく感覚。
ごめんね・・・美子・・・
私・・・もう・・・
あな・・・た・・・と・・・
愛華の目から涙が一筋流れ落ちた。

                   ******

手の中にあるのは小豆色のマスク。
その表面には、ヘビの顔を模したような模様が浮かんでいる。
ああ・・・
なんて素敵なのだろう。
ヘビはヤーバン一族の象徴。
素晴らしい生き物。
今、愛華はそのヘビの一族の一員となる。
こんなうれしいことはない。

全身を包む小豆色のジャラジャラスーツはもう愛華の皮膚。
気持ちよくてたまらない。
こんなにジャラジャラ兵になることが素晴らしいことだなんて思わなかった。
どうしてさっきまであんなに嫌がっていたのかわからない。
最高の気分だわ。

愛華の目はもう深い緑色に染まっている。
もうメガネになど頼る必要はない。
すべてのものがはっきりと見える。
舌の先もかすかに二つに割れている。
その舌でぺろりと唇を舐める愛華。
その頬がほんのりと赤く染まり、息がやや荒くなっている。
ドキドキが止まらない。
このマスクをかぶれば私はジャラジャラ兵になる。
偉大なるヤーバン一族の一員になれる。
魔人ジャーラー様や大魔女ソヤ様のお役に立てるようになる。
ああ・・・
私は今、ジャラジャラ兵になるんだわ。

マスクをかぶる愛華。
そのヘビの目と愛華の目が重なり合う。
「あああああ」
思わず歓喜の声が出る。
全身を貫く電流のような快感。
ヒトであることを捨て去る喜び。
まさに脱皮。
愛華は生まれ変わるのだ。

「ジャラ・・・」
両手でマスクに包まれた顔を撫でまわす愛華の口から声が漏れる。
「ジャラ・・・ジャラジャラ・・・」
それは産声。
「ジャラジャラッ・・・ジャラジャラッ・・・」
新たな生を受けた喜びの声。
「ジャラジャラッ! ジャラジャラッ!」
力強く繰り返され、声を発するのが当たり前になっていく。
「ジャラジャラッ! ジャラジャラッ! あああ・・・気持ちいいぃぃぃぃぃ!」
全身で官能の快楽を味わう愛華。
その様子にソヤは笑みを浮かべていた。

「オホホホホ・・・どうやら終わったようね。さあ、お前が何者か言ってごらん?」
「ヤーッ! 私はヤーバン一族のジャラジャラ兵アイカ。魔人ジャーラー様と大魔女・ソヤ様の忠実なるしもべです。ジャラジャラッ!」
スッと右手を上げてソヤに敬礼するアイカ。
もはや彼女はヒトではない。
ヤーバン一族のジャラジャラ兵に生まれ変わったのだ。
「それでいいわ。今日からお前もミノリとともに我のために働きなさい」
手を伸ばしてそっとアイカの頬を撫でるソヤ。
「ジャジャァァァァァァ・・・」
それだけでアイカは奇妙な声を上げてしまい、へなへなと腰が抜けてしまうほどの気持ちよさを感じてしまう。
「あらあら・・・ジャラジャラスーツが気持ちよすぎちゃったかしら」
「ヤ・・・ヤー、気持ちいいですぅ・・・」
躰をかき抱くようにして両手で全身を愛撫するアイカ。
床にぺたんと座ってうっとりとしている。

「ジャラジャラッ! おめでとうジャラジャラ兵アイカ。これであなたも私の仲間ね」
床にしゃがみ込み、アイカの頬を撫でるジャラジャラ兵ミノリ。
その手にアイカのジャラジャラスーツの感触が伝わってきて気持ちがいい。
「ありがとう、ジャラジャラ兵ミノリ。私たちはジャラジャラ兵の仲間同士。仲良くしましょうね」
頬を撫でるミノリの手に自分の手を重ねるアイカ。
アイカもミノリのジャラジャラスーツの気持ちよさが伝わってくる。
触れあっただけでこれほど気持ちがいいのであれば、抱き合ったりしたらどうなるのだろう。
もっともっと仲間同士で触れ合いたいと二人は思う。
彼女たちはもう母と娘ではなく、ジャラジャラ兵という同じ仲間同士だった。

「お前たち、じゃれあうのは戻ってからにしなさい」
「ヤ、ヤーッ!」
「ヤーッ!」
ソヤの言葉に立ち上がる二人のジャラジャラ兵。
元は母と娘なだけに、ミノリの方が背が高いものの、それ以外はほとんど同じと言っていい。
ともにヘビが牙をむきだしたような顔の模様のマスクから緑色の目を光らせ、すらりとしたしなやかで美しいラインを惜しげもなくさらしている。
素質から見て充分使い物になるだろう新たなジャラジャラ兵が二体も手に入ったことに、ソヤも満足感を感じていた。

「オホホホホ・・・これでここにもう用はないわ。引き上げるわよ」
「ジャーッ! お待ちください、ソヤ様」
新たなジャラジャラ兵二人を従えて引き上げようとするソヤを、ジャラジャラ兵アイカが引き留める。
「何か?」
気分良く引き上げようとしたところを引き留められ、やや気分を害するソヤ。
その口元の笑みが消える。
「ジャーッ! 申し訳ありません。一つ提案がございます」
片膝をついて頭を下げるジャラジャラ兵アイカ。
「提案? 面白い。言ってみよ」
ソヤの不機嫌がいっぺんに吹き飛んでいく。
これなのだ。
ただ作っただけのジャラジャラ兵は提案などしない。
この二体はヒトというものを器として作ったもの。
だから思考というものを持っている。
ヒトを器にジャラジャラ兵を作るのは、こういうことを求めているからなのだ。

「ヤーッ! ジャラジャラ兵となった今、ヒトのいう友情などと言うものは全く感じておりませんが、私がヒトだった時に友人という存在だった女がいます」
許可を得て話し始めるアイカ。
もちろん友人というのは美子のことだ。
「名前は虎島美子。彼女は拳法の使い手であり、物事の観察力が豊かで隠密行動にはふさわしいと思います。彼女をジャラジャラ兵に脱皮させれば、ソヤ様のご期待に沿える働きをするかと」
アイカは何のためらいもなく美子をソヤに差し出す。
美子であればソヤ様の役に立つだろう。
そのことだけがアイカにとっては重要なのだ。

「ソヤ様、その少女なら私からも推薦いたします。彼女であれば有能なジャラジャラ兵になるかと」
ジャラジャラ兵ミノリも口添えをする。
数度遊びに来ている少女のことは彼女も気に入っていたし、彼女であれば仲間にしても問題ないと思うのだ。

「ほう・・・そのような女が・・・」
ソヤは杖の先をジャラジャラ兵アイカに向ける。
アイカから美子の記憶を読み取るのだ。
もちろんすべてを読み取れるわけではないが、ジャラジャラ兵にふさわしい素体かどうかぐらいのデータは読み取れる。
「フフフ・・・面白い。この女ならジャラジャラ兵にふさわしかろう。すぐに呼び出すがいい」
ソヤの口元にまた笑みが浮かぶ。
今日はなんといい日だろうか。
ジャラジャラ兵にふさわしい器が三つも手に入るとは。

「ヤーッ! ですがお言葉なれど今呼び出すのは得策ではないかと」
「どういうことか?」
ソヤはますますこのジャラジャラ兵を気に入る。
このジャラジャラ兵は状況というものを確実に認識している。
目的を達成するためにどう行動すればいいかを考えている。
そのためにはソヤの命令通りにあえて行動しないということすらできるのだ。
それがソヤのためであるから。

「彼女とは二時間ほど前に別れたばかりです。今呼び出せば、何かあったかと思われ、変な警戒をされてしまうかもしれません」
「ほう・・・」
「彼女とは日曜日にここで会う手はずになっております。その時まで待った方が確実かと思います」
アイカは恐れながらも意見を述べる。
ソヤの忠実なしもべとして、ソヤのためになると思うからこそだ。

「ソヤ様、私もジャラジャラ兵アイカの考えに賛成です。日曜日に来るということであれば、ここで待ち構えるほうがよろしいかと」
すかさずアイカの意見を支持するミノリ。
娘を思う母ではなく、仲間同士のつながりなのだ。

ソヤは考える。
この二人の意見はもっともだし、そうするほうが良いというのは彼女もすぐに理解した。
であれば、いったん二人を連れてここを立ち去るか、それとも二人をここに残すかを決めねばならない。
ソヤはちらっと写真を見る。
ジャラジャラ兵になる前のミノリとアイカ、それに男が一人写っている家族写真だ。
男の方はどうでもいい。
男性型のジャラジャラ兵はそれこそコマ。
命令に従って戦ってくれればそれでいい。
女性型のように様々な自立行動を求められることはない。
だから器にこだわる必要もない。
この男をジャラジャラ兵にするつもりはないのだ。

二人を連れてここを立ち去るのは簡単だ。
だが、そうなるとこの男は二人を探すだろう。
もしかしたら、その美子という娘に二人の行方を尋ねるかもしれない。
それではやはり警戒させてしまうだろう。
かといって二人を擬態させてこの場に残すというのも考え物だ。
もちろん二人にはその能力はあるだろう。
だが、この男はあまりにも近い存在すぎる。
何がきっかけで二人がヒトではなくジャラジャラ兵となったことに気が付かないとも限らない。
やはり危険だ。
ならば・・・
ふふふふ・・・
ソヤは二つに割れた長い舌で唇を舐めた。

                   ******

「ただいまー。ああ・・・疲れた・・・」
日もとっぷりと暮れ、時計が21時を差すころに、この家の主である蓮生雄介(はすお ゆうすけ)が帰宅する。
今のご時世、なかなか定時で帰るというわけにはいかず、だいたいがこのくらいの帰宅時間だ。
とはいえ、家に帰れば妻の手料理が待っているし、お酒も楽しめる。
まあ、そう悪い話でもあるまいと雄介は思う。

「帰ったよ」
今晩の夕食は何かなと思いながらリビングに入る雄介。
だが、いつもなら聞くことができるお帰りなさいの声はなく、テーブルの上もまっさらで何もない。
妻と娘の二人はテーブルに着いて座っているが、無言のままで顔を上げようともしない。
なんだ?
なんだ、いったい?
雄介は不思議に思う。
二人はいったいどうしたというんだ?

「美乃里・・・愛華?」
雄介は二人に声をかける。
「うふふ・・・」
「ふふふ・・・」
その声に反応したかのように二人がスッと立ち上がる。
「うふふふ・・・一応お帰りなさい、かしら」
「ふふふ・・・そうだね」
いつもと様子の違う二人に雄介は戸惑う。
いったいどうしたというのだ、二人とも。
それに、様子だけではなく何かが違う。

「美乃里・・・愛華・・・その目はいったい?」
いつもと違う深い緑色をした目に気が付く雄介。
それに愛華はいつもしているメガネをかけていない。
「あーあ・・・気が付いちゃったのね」
「ちょうどいいよ。私、いつまでもこんなヒトの姿に擬態しているのなんて嫌だもの」
「私もそうだわ。早く本当の姿に戻りたい」
くすくすと笑いながら意味の分からない言葉をつぶやいている妻と娘。
雄介は思わず後ずさる。
「お前たちはいったい・・・」

「ジャーッ!」
「ジャーッ!」
突然、声を上げながら両手を顔の前でクロスする二人。
次の瞬間、二人の姿が変化し、小豆色のジャラジャラスーツに包まれたジャラジャラ兵の姿になる。
「わ、わっ!」
驚く雄介。
いきなり妻と娘が、ヘビが牙をむきだしたような顔の模様の付いたマスクと小豆色の全身タイツで躰を覆ったような姿に変わってしまったのだ。
いったいこれはどういうことなのか?
困惑する雄介の前で、二人は向かい合ってお互いの顔を撫でまわす。
「ジャラジャラッ! ハア・・・やっぱりこの姿がいいわぁ」
「ジャラジャラッ! ええ、これこそ私たちの本当の姿。ミノリの顔、とても気持ちいい」
「アイカの顔もいいわぁ。ずっとこうして撫でまわしたくなっちゃう」
お互いの顔をうっとりと撫でまわす二人。
「二人とも・・・いったい?」
「ジャラジャラッ! うふふふ・・・私たちはヤーバン一族のジャラジャラ兵」
「私たちは脱皮して生まれ変わったの。私はジャラジャラ兵アイカ」
「私はジャラジャラ兵ミノリよ。ジャラジャラッ!」
唖然とする雄介に二人は自分たちが何者かを名乗っていく。
それは二人にとってとても誇らしいことだった。

「グハッ!」
突然床にたたきつけられる雄介。
いきなり躰が宙に舞ったかと思うと、床にしたたかに叩きつけられたのだ。
あまりの衝撃に息も一瞬止まるほど。
「グ・・・グウ・・・」
あおむけに横たわる彼を、二人のジャラジャラ兵と、彼を背後から投げ飛ばしたと思われる異形の存在が見下ろしている。
頭の両側にギョロッとした大きな丸い目を回転させ、肩には大きなとげが突き出ている。
がっしりとした躰は緑色や赤い色が覆っており、がっしりとした足には黒いブーツが履かれていた。

「ば・・・ばけも・・・グハッ」
強烈な蹴りが雄介の脇腹に炸裂する。
「ジャラジャラッ! 失礼な男ね。ガメレオン様は化け物などではないわ」
ジャラジャラ兵ミノリが雄介を蹴り飛ばしたのだ。
「ジャラジャラッ! この方は蛮獣人ガメレオン様。お前などとは比べ物にならない素敵なお方なのよ」
ジャラジャラ兵アイカのマスクの緑色の目が見下したように雄介に向けられる。
「グゲゲゲゲ。今日からは俺がこの家の主となってやる」
不気味な笑い声をあげる蛮獣人ガメレオン。
その目は絶えず周囲をきょろきょろと見回している。
「な・・・に?」
「うふふふ・・・そういうこと。お前はもう用済みなの」
「今日からはガメレオン様がお前の代わりをしてくださるわ」
愕然とする雄介にくすくすと二人のジャラジャラ兵の笑いが向けられる。

「そう言うことだ。グゲゲゲゲ」
蛮獣人ガメレオンが笑いながら両手を顔の前で交差させる。
みるみるその躰がスマートになっていき、人間の躰へと変化する。
顔も床で倒れている雄介の顔そのものとなり、にやりと笑みを浮かべていた。
「そ・・・んな・・・」
化け物がもう一人の自分になってしまったことに恐怖する雄介。
それに合わせるように二人のジャラジャラ兵も両手を顔の前で交差させ、顔だけを人間の顔に擬態する。
そして、ゆっくりと雄介に擬態したガメレオンの左右に行くと、彼にそっと身を寄せ、本物の雄介に笑みを見せた。
「うふふふ・・・どう? これなら誰も気付かないでしょ?」
「これからは私たちが仲良し家族を演じるから、安心してね」
くすくすと笑いながら偽の雄介に躰を預けるミノリとアイカ。
「グゲゲゲ・・・かわいい“妻”と“娘”ができて、俺もうれしいぜ」
「ああん、かわいいだなんてうれしいですわ、“あなた”」
「これからはガメレオン様が私の“パパ”ですわ」
両手を二人の肩に回し、優しく抱きしめる偽の雄介。
それをうっとりとして受け入れる二人の女たち。
まさにあの家族写真のような光景がそこにあった。

「愛華・・・美乃里・・・」
奪われてしまった幸せに雄介の目から涙がこぼれる。
「うるさいわねぇ。もうお前には用はないわ」
「目障りだからさっさと死んでくれる?」
胸のプロテクターからナイフを取り出す二人のジャラジャラ兵。
首から下は小豆色のスーツに包まれているのに、顔だけが以前の愛華と美乃里のままであることが、余計に雄介を絶望させる。
「愛華・・・美乃里・・・」
絶望と叩きつけられたダメージとで動けなくなっている雄介に二人が迫る。
「うふふふ・・・さよなら、用のなくなったあなた」
「さよなら、もういらなくなったパパ」
二人のナイフが雄介に突き刺さる。
「グハッ」
絶命し、シュウシュウと音を立てて煙のように消えさっていく雄介の死体。
あとには血痕すら残らない。

「グゲゲゲ・・・これでいい。今日からここはヤーバン一族の拠点の一つとなるのだ」
偽の雄介が室内を見回してニヤッとする。
なかなかにいい家だ。
ここを我が物にできるというのはありがたい。
「ソヤ様のためにも、ここを拠点にできれば様々な情報収集ができますわ」
顔をマスク姿に戻すジャラジャラ兵ミノリ。
人間の顔などよりも、こっちの方が本当の自分の顔なのだ。
「あとは日曜日に虎島美子をここに呼んで・・・うふふ」
ジャラジャラ兵アイカも顔をマスクに戻してくすくすと笑う。
美子がジャラジャラ兵の仲間になるのが今から楽しみなのだ。
そのために、アイカはスマホを使ってメッセージを送る。
「うふふふふ・・・美子、あなたもきっとジャラジャラ兵になれたことを喜んでくれるに違いないわ」
アイカは心からそう思った。

                   ******

「あー、気持ちよかったぁ」
バスタオルで髪を拭きながらバスルームから出てくる美子。
あとは、スマホでネットサーフィンでもしながら、寝るまでの時間をゆったりと過ごすだけ。
「ん?」
スマホにメッセージが着信している。
愛華からだ。
何かあったかな?
そう思ってメッセージを確認すると、明日から土曜日まで急な用事が入って学校に行けなくなったという。
でも、日曜日には家にいるので、忘れずに来てねということだった。
会えないというのは残念だったが、用事ということであれば仕方がない。
むしろ日曜日が楽しみだ。
どうかヤーバン一族が土曜の夜や日曜日に活動したりしませんように。
美子はそう思いながら返事を打つ。
「必ず行くからよろしくね」
そうメッセージを送り、美子は日曜日に思いを馳せるのだった。

END

いかがでしたでしょうか?
コメント等いただけますと嬉しいです。

明日、もう一作の方も再掲載いたしますね。
ではでは。
  1. 2021/01/09(土) 21:00:00|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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