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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

○○の妻は変身ヒーローである夫を補佐していましたが、悪の組織のばら撒いた細菌兵器をモロに浴びて、高速戦闘のエキスパート、カサカサ動くゴキブリ女にされました。

昨日で終わったと思った?
もうちょっとだけ続くんじゃ。

ということで、新年SS第三弾です。
タイトルは「○○の妻は変身ヒーローである夫を補佐していましたが、悪の組織のばら撒いた細菌兵器をモロに浴びて、高速戦闘のエキスパート、カサカサ動くゴキブリ女にされました。」です。

診断メーカーさんに「妻が寝取られて怪人にされたー(悪魔と妖怪もあるよ!)」という診断があるのですが、そちらで診断した結果をSS化してみました。
ですので、タイトルは診断結果そのものです。
お楽しみいただければと思います。

それではどうぞ。


○○の妻は変身ヒーローである夫を補佐していましたが、悪の組織のばら撒いた細菌兵器をモロに浴びて、高速戦闘のエキスパート、カサカサ動くゴキブリ女にされました。

「首都Bエリア、27ブロックにデムパー怪人出現との通報です! ヤッタレンジャーの出動要請が出ました!」
コンソールパネルを操作していたオペレーターの緑羽千紗(みどりば ちさ)が声を上げる。
「よし、ヤッタレンジャー、出動!」
司令官席の上昆寺(かみこんじ)司令が野太い声で指令を出す。
恰幅のよい人のいいおじさんといった顔立ちをしているが、司令官としての能力に疑いはない。
彼の指令はすぐに待機していたヤッタレンジャーの五人に伝達され、待機ボックスから出撃していく五人の姿がモニターに映し出された。
「行ってらっしゃい、あなた。気を付けて・・・」
思わず小声でそうつぶやく千紗。
できれば出撃する夫のそばに行って声をかけたい。
だがそれはかなわないこと。
だからこそ、千紗はモニター越しに夫の無事を祈らずにはいられなかった。

地球を狙う悪の組織「デムパー」
数年前から暗躍し始めたこの組織に対し、日本は特殊でユニークな方法で対抗した。
それこそ、子供向け特撮番組と思われるような特殊戦隊を編成し、デムパーに対抗したのだ。
行動戦隊ヤッタレンジャー。
レッド、ブルー、イエロー、ピンク、グリーンの五人の戦士が力を合わせてデムパー怪人を打ち倒す。
この方法は特撮番組を見慣れた日本人にはなじみやすく、五人の戦いは極めてスムーズに受け入れられたばかりか、デムパーに対する恐怖感も緩和してパニックを沈めるという副次効果をも生み出していた。
おかげでデムパーの侵略は一進一退で食い止められており、今ではこの様子を見た各国でも同様の正義の戦隊が結成されている。
このヤッタレンジャーの一人、ヤッタレグリーンこと緑羽健斗(みどりば けんと)こそ、千紗の愛する夫なのだった。

「ヤッタレレッドより入電。デムパー怪人の駆除に成功。周辺の被害は極めて軽微とのことです」
「警察や消防からも同様の報告が入っております。デムパー軍団の撤退は間違いないようです」
千紗やほかのオペレーターたちが次々と報告を行う。
どうやら今回もデムパーの侵略は未然に防ぐことができたようだ。
それにメンバーにもケガ人などは出ていないらしい。
もちろん念のためのメディカルチェックを行うので、おそらく今夜は戻っては来られないだろう。
だが、それでもとにかく無事でよかった。
千紗はほっと胸をなでおろした。

千紗はヤッタレンジャーのオペレーター。
ヤッタレンジャー本部で様々な情報を受け取り、上昆寺司令へと伝えるのが主な仕事である。
地味で危険性も少ないと言える仕事だが、それでもヤッタレンジャーの作戦行動にとっては無くてはならない存在であり、千紗もそのことは承知している。
そもそも彼女がヤッタレンジャーのオペレーターになったのも、少しでも夫である健斗の役に立ちたいと思ったからなのだ。
少しでも夫の役に立ちたい。
それが千紗の願いであった。

                 ******

「交代です」
本部オペレーターの制服を着た同僚の古橋(ふるはし)が千紗の席にやってくる。
主にシフトで彼女の交代番に入ってくれる男性だ。
「交代します。よろしくお願いします」
「はい、お疲れ様でした」
千紗はヘッドホンを外し、席を立つ。
入れ替わりに古橋が席に着き、すぐにオペレーター業務を始める。
ヤッタレンジャー本部に一瞬の隙があってもならないのだ。
いつ何時、救援要請が入るのかわからないのだから。

「それじゃ、お先に失礼します」
「うむ、ご苦労さん」
上昆寺司令に挨拶して、司令室を出る。
ロッカーで着替えをして本日の勤務は終了。
「ふう・・・」
緊張から解放される瞬間だ。
ここから先はまるっきりの一般人として、ヤッタレンジャーとは全く関係ない人間を装わねばならない。
それはそれで苦労もあると言えばあるのだが、デムパーの魔手を逃れるためにはやむを得ないのだ。
ヤッタレンジャー本部の誰かがデムパーに捕らわれたりしたら大変なのだから。

見慣れた我が家の近くまで戻ってくる。
どうやら今日も何事もなく済んだようだ。
おそらく夫が帰るのは明日の朝だろう。
で、あれば、明日の朝は美味しいものでも用意してあげようか。
そんなことを考える千紗。
ふと見ると、通りに人が倒れているのが目に入る。
「えっ?」
驚いた千紗は、すぐさま駆け寄って声をかける。
「もしもし、大丈夫ですか? ヒッ!」
千紗は思わず息をのむ。
倒れていた男性の顔が、どす黒く変色し、苦悶の表情を浮かべていたのだ。
すでに息はなく、死んでいるのは間違いない。

すぐにスマホを取り出す千紗。
救急車?
いや、この場合は警察だろうか?
とにかく通報を・・・
そう思った千紗が顔を上げると、通りのあちこちで人が死んでいることに気が付く。
家から外に出ようとドアを開けたまま倒れている女性。
窓から上半身を外に乗り出したまま絶命し、垂れ下がっている男性。
街灯や家の中の明かりが照らす中、十数人がみな同じように顔をどす黒く変色させて死んでいるのだ。
「あ・・・あああ・・・」
あまりのことに地面にへたり込んでしまう千紗。
これはいったい・・・
まさかデムパーの・・・
一刻も早く・・・

「グッ・・・」
全身がカアッと熱くなる。
息が苦しくなり、目の前が真っ赤になる。
「あがっ・・・あがが・・・」
何か言おうとしても言葉が出ない。
全身が激痛に襲われ、焼けるように熱い。
「た・・・すけ・・・」
地面に横たわる千紗。
苦しい苦しい苦しい・・・
熱い熱い熱い・・・
誰か・・・
助けて・・・
あ・・・な・・・た・・・
意識が遠ざかる。
『キュヒーッ!』
『キュヒーッ! 実験は成功だ! 全員死んだか確認しろ!』
薄れていく意識の中、千紗はデムパーの戦闘員の声がかすかに聞こえたような気がした。

                  ******

「はっ・・・」
ひんやりとした感触に目が覚める。
それもそのはず。
彼女は冷たく硬い台の上に寝かせられていたのだ。
「こ、ここは? 私はいったい?」
首を回して周囲を見る。
薄暗い室内に、様々な機械類が置かれ、ちかちかと光が明滅している。
病院かとも思ったが、とてもそんな雰囲気ではない。
「う・・・くっ」
躰を起こそうとしたものの、うまく動かない。
それにどうやら今の彼女は服も着ていないようだ。
いったいどういうことなのか?

「ほう・・・やはり生きていたか」
闇の中から重厚な声が響く。
千紗が声の方に振り向くと、ゆっくりと男が姿を現した。
トゲの付いた軍服風の衣装を着た偉丈夫。
その姿と顔を、千紗は見たことがある。
デムパーの指揮官ジュシンガー将軍だ。
「ジュシンガー将軍・・・」
そうつぶやいてから、思わずしまったと気付く千紗。
「ほう、俺を知っているとは、ヤッタレンジャーの関係者か?」
「た、たまたまテレビで見ただけです」
千紗は何とかごまかそうとする。
「ふん、まあいい。それよりも・・・」
「ひゃっ!」
ジュシンガー将軍の手が千紗の太ももに触れてくる。
「腐りもせず、ほぼ何の問題もなしとはな・・・驚いたぞ」
「な、何?」
何のことを言っているのか?

「ふん、わかっていないようだな。お前は我らの細菌兵器バイペストの実験に生き残ったのだ。これは信じられないことなのだぞ」
「細菌・・・兵器?」
やはりあの人たちはデムパーの犠牲に?
「そうだ。通常のペストの二倍の威力を持つバイペスト菌を散布した実験だ。あの地区の人間はことごとく死んだのに、お前だけは生き残った。なぜだ?」
「そ、そんなこと・・・」
千紗は首を振る。
彼女にだってわかるはずがないのだ。

「ふん、どうやらお前にはバイペスト菌に対する耐性があるようだ。そこで我々はお前を有効活用することにした」
ニヤリと笑うジュシンガー将軍。
整った顔だけに、その笑みは迫力がある。
「有効活用?」
「そうだ。お前をバイペスト菌をまき散らすゴキブリ怪人に改造し、バイペスト菌撒き散らし作戦を行わせる」
「わ、私を?」
千紗は愕然とする。
よりにもよって彼女を怪人にしようというのか?
そんな・・・

「い、いやっ! いやです!」
躰を起こして逃げようとする千紗。
だが、躰が思うように動かない。
「無駄だ。すでに改造は最終段階を残すのみとなっている。始めろ」
「「キュヒーッ!」」
白衣を着た数名の戦闘員たちが現れ、千紗の躰に電極やチューブを取り付けていく。
「いやっ! いやぁっ! むぐ・・・」
千紗の顔にマスクが付けられ、気体が流し込まれてくる。
ああ・・・
千紗は再び意識が遠くなっていくのを感じていた。

                   ******

意識がだんだんと戻ってくる。
それと同時に力もみなぎってくる。
気持ちがいい。
今までとはまるで違う自分。
生まれ変わるというのはこういうことを言うのかもしれない。

「キシュシュ・・・」
彼女の口から声が漏れる。
今までに発したこともないような声。
でも、これこそが自分の声だと彼女は思う。

『起きるのだ』
命令が下る。
命令は絶対。
命令には従わなければ。
起きなければならない。

彼女は躰を起こす。
上にかけられていた白い布がはらりと落ちる。
それに伴い、彼女の新しい肉体があらわになる。
茶褐色のつややかな外皮。
蛇腹状の腹部。
硬くトゲのある両脚と両手。
すべてが力強くすぐれた肉体だ。

カツリと音がする。
台から足を下ろし、硬い床を踏みしめた彼女の足音。
鋭い爪と尖ったヒールが床を鳴らしたのだ。
彼女はそのまま立ち上がる。
背中には硬い翅。
髪の毛のような邪魔なものは消え、頭も固い外皮で覆われている。
額からは長い二本の触角。
ゆらゆらと揺れ、空気のかすかな振動さえも感じ取れた。

「クククク・・・さあ、お前が何者か言ってみろ」
ジュシンガー将軍が彼女の前に立ち、その指揮棒が彼女を指す。
「キシュシュシュ・・・私は偉大なるデムパーの蟲人ゴキブリ女ゴキブリージョですわ。キシュシュシュシュ」
奇妙な笑い声をあげる千紗。
いや、彼女はもはやデムパー怪人ゴキブリージョに変えられてしまっていた。
彼女の躰はまさに女性とゴキブリが融合した姿。
直立した女ゴキブリだったのだ。

「ククク、それでいい。改造中にお前のことがわかったぞ。お前はこいつの妻だったそうだな。こいつのことをどう思う?」
目の前に出される緑羽健斗の写真。
それは先日までは千紗の愛する夫だった人。
だが、今の彼女はその写真を鋭い爪で引き裂いていく。
「キシュシュシュシュ・・・この男は私たちデムパーの邪魔をする憎むべき男。このような男の妻だったことなど思い出したくもありませんわ」
「クククク・・・そうだ、お前はもうこんなやつの妻などではない。我がデムパーの蟲人だ。ならば、この男の始末はできるな?」
「もちろんです。私はヤッタレンジャーの司令部の位置を知っております。この躰をもってすれば忍び込むことなど容易いこと。そこでバイペスト菌をまき散らせば・・・キシュシュシュシュ・・・」
手の甲を口元にあてて笑うゴキブリージョ。
ヤッタレンジャーにとって最大のピンチが、今訪れようとしていた。

END

以上です。
残念ながら寝取られ風味はほとんどなかったかと思いますが、怪人化SSとして見ていただければ。
よろしければコメントなどいただけますと嬉しいです。

これで新年SSはすべて終了です。
手持ち全部放出しましたので、次作までは少々お時間をいただくかもしれません。
どうか気長にお待ちいただければと思います。

ではではまたー。
  1. 2020/01/05(日) 20:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
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  4. | コメント:7

悪の女幹部ブラックマルス様の忙しい日々

ツイッターで相互フォローしておりますあおばさん@aoba_aunanaが、先日とても素敵なイラストを投下しておられましたので、思わず短編SSを作ってしまいました。
あおばさんご本人から掲載の許可をいただきましたので、その元となったツイート含めて投下したいと思います。

タイトルは「悪の女幹部ブラックマルス様の忙しい日々」です。

元となりましたツイートはこちら
https://twitter.com/aoba_aunana/status/1200974907129024513?s=20
https://twitter.com/aoba_aunana/status/1201011845810675712?s=20
https://twitter.com/aoba_aunana/status/1204403407517151232?s=20

それではどうぞ。


悪の女幹部ブラックマルス様の忙しい日々

「行ってきまーす」
元気よく玄関から飛び出していく少年。
背中に背負ったランドセルも、そろそろ使い古されてきた感じがある。
もう小学校高学年ともなればそんなものかもしれない。
「車に気を付けるのよー!」
玄関から顔を出し、少年に声をかける母親。
とても若々しく、美しい。
少年の友人たちの間でも、評判の美人ママだ。
それは少年にとっても誇らしく、時々家に友人を連れてくる。
美人でやさしいママは少年の自慢だった。

「八時十五分、アルファ任務終了」
少年が遠ざかった後、急に無表情になる母親。
そしてくるりと背を向けると、家の中へと戻っていく。
そして玄関に鍵をかけ、室内に入るとそのまま直立の姿勢になる。
「連絡。ブラックマルス、ベータ任務への移行可能。指示を待ちます」
彼女の両耳から銀色のアンテナが伸び、通信を送る。
一瞬目が虚ろになり、躰がぴくっと小さく震える。
「命令受信完了。直ちに参ります」
エプロンを外して椅子に掛ける母。
やがてその姿がじょじょに薄く透けていき、消えていく。
あとには誰もいなくなった部屋だけが残った。

                   ******

どことも知れぬ場所。
奥にある玉座のような重厚な椅子に一人の男が座っている。
黒い服とマントを着け、その顔には笑った顔のような白い仮面が付けられていた。
その仮面の下の顔を知っているものはごくわずか。
たいていの者は彼のそばに近寄ることすらできない存在。
それが秘密結社バクアクーの首領ワラアクーである。
その彼のもとに、今、一人の女性がやってきた。

カツカツとハイヒールブーツの足音が響く。
黒革の躰にフィットしたボンデージ衣装。
背中にはマントがなびく。
手には乗馬鞭が握られ、二の腕までの長い手袋がはめられていた。
その顔は美しいものの、まったくの無表情。
まるで人形のような冷たい美しさだった。

「首領様、ブラックマルスただいま参りました」
スッとひざまずくブラックマルスと名乗った女性。
その肌はまるで白磁のように白くつややか。
まるでプラスチックのようであったが、それもそのはず、ブラックマルスはその躰が機械でできた女性だったのだ。

「ご苦労、ブラックマルスよ。的島弥生(まとしま やよい)としての生活に異常はないか?」
玉座で足を組んだワラアクーが声をかける。
「はい。アルファ任務にはなんの支障もございません。直紀(なおき)も全く普段と変わった様子はございません。定期的に刷り込みも行っておりますので、私の正体に感づいている可能性は5%以下と思われます」
顔を上げ、偉大なる首領にそのまなざしを向けるブラックマルス。
バクアクーの冷酷なる女幹部として、人間たちを恐怖せしめる存在とは思えない美しさだ。
この美しさは、ある意味作られたものではあるものの、また自然の美しさでもあった。
なぜなら、彼女は的島弥生をそのまま機械化したものであったからだ。

「うむ、それでいい。ブラックマルスよ、抜かりないようにするのだ」
「ハッ、お任せくださいませ、首領様」
頭を下げて一礼するブラックマルス。
さらさらの髪がはらりと流れる。
「今夜の作戦も頼んだぞ」
「もちろんでございます、首領様。それでは、私は仕度がございますので」
スッと立ち上がるブラックマルス。
今夜の作戦に備え、部下たちと準備を進めねばならない。

「BM-03、ガンマ任務を命じる」
立ち去ろうとしたブラックマルスの背後からワラアクーが声をかける。
「ピッ」
電子音を発し、その場で動きが硬直してしまうブラックマルス。
「ゴ命令ヲ受領、ガンマ任務モードニ入リマス」
先ほどまでとはうって変わった抑揚の無い電子音声で答え、くるりと振り返る。
そして無表情のまま肩からマントを外し、着ている衣装を脱いでいく。
ブーツも手袋も脱ぎ捨て、完全に裸になるブラックマルス。
その姿は人間と変わらないものの、関節部や胴体部などには継ぎ目ともいうべきラインが入り、彼女の外皮が作られたものであることを示していた。

「美しい・・・」
裸になったブラックマルスを前にしてそうつぶやくワラアクー。
10年前から全く変わっていない美しさだ。
この美しさを手に入れるために彼は力を手に入れたと言っても過言ではない。
そして今、その集大成として、彼女を指揮官として地上をもてあそぼうとしているのだ。
異星のものと思われるテクノロジー。
それを我が物とし、10年かけて作り上げた組織バクアクー。
その首領として好きなように世界で遊ぶ。
これほどの楽しみがほかにあるだろうか。

11年前はただあこがれの女性だった。
優しくて笑顔が素敵で美しくて、まるで女神のようだった女性。
その彼女が嫁ぐと知った時の絶望感は計り知れなかった。
仕方がない。
そうあきらめることができれば楽だっただろう。
彼女は25才であり、自分は17歳の高校生。
彼女の相手は30歳のエリートで、収入も高くとても太刀打ちできるようなものではない。
彼女自身もその相手を愛しており、相思相愛の二人の間に割り込むような余地などなかった。
もともと、たまたま知り合っただけの高校生男子に彼女がどれほど意識を向けていたというのか?
おそらく名前を聞いたら思い出す程度でしかなかっただろう。
だから・・・本当ならあきらめるべき女性だった。

だが、機会が巡ってきた。
彼はひょんなことから異星のものと思われる技術遺産を手に入れた。
それは不時着した宇宙船らしきもの。
なぜそんなものがそこにあったのかはわからない。
なぜ彼以外にそれを見つけた者がいなかったのかもわからない。
だが、彼はそれを見つけた。
そしてその技術を使うことができた。
人間と機械を融合させる技術。
そんなものがこの世界にあるなんて信じられなかったが、彼はそれを使った。
それを使って彼女を彼のものにしようと思ったからだ。

翌年、彼女はそのエリートの夫との間に子を作った。
許せることではなかった。
だが、彼女を我が物とするには時間が必要だったのだ。
二体の実験体を使い、技術を完全に理解する時間が。
その時間を要している間に、彼女は子を作ってしまったのだ。

これ以上待つことはできない。
彼は彼女を誘拐した。
誘拐して機械と融合し、彼女を完全なる機械人間へと改造した。
彼女は抵抗し、必死に夫に助けを求めていたが、改造後は身も心も彼のものとなった。
コンピュータと融合した脳が、彼の組み込んだプログラム通りに彼の求めるままの行動を彼女にさせ、彼女は彼の望む女性に生まれ変わったのだ。

BM-03、ブラックマルスとして生まれ変わった彼女は、夫のもとへと帰り、喜ぶ夫を何のためらいもなく抹殺した。
それが彼の望むことだったから。
彼の望むことをするのが彼女の喜びだったから。
彼女にとって夫はもう必要なかったのだ。

子供は生き残った。
かわいかった。
あの男との間との子とは言え、彼女の子供でもある。
殺すこともないと思った。
むしろ彼女にこの子を育てさせれば、カムフラージュになるだろうと思った。
なので、彼女に疑似人格を与え、以前の的島弥生として暮らすように仕向けた。
もちろん、すでに身も心も彼のものとなった彼女は、呼び出せばいつでもこうして彼のもとに来る。
そして、こうして彼に性奉仕すらしてくれるのだ。
10年前と変わらぬ姿で。
今の28歳の彼にふさわしい26歳の時のままの姿で。

「う・・・」
「アア・・・アアン・・・イク・・・」
彼の上で腰を振り、快楽プログラム通りに彼とともに絶頂に達するブラックマルス。
快感にとろけた表情はとても作られたものとは思えない。
発熱機能によって躰も温かく、触った時の特殊プラスチックの柔らかい質感がやや気になるとはいえ、彼にとってはもう慣れたもの。
それよりも彼のものをすっぽりと咥え込んだ彼女の性器は、まさに彼に最高の快楽をもたらしてくれる名器と言っていいだろう。
まさに彼は最高の機械式セックスドールを手に入れたのだ。

「ウフ・・・首領様、ゴ奉仕サセテイタダキ、アリガトウゴザイマス」
ゆっくりと躰を起こし、首領の前で笑顔を見せるブラックマルス。
いや、今の何も身にまとっていない彼女は的島弥生だろうか?
彼に性奉仕することを喜びと感じ、そのために存在する機械人形。
だが、それがいいのだ。
人間のように彼を裏切ったり、別の男に気持ちを許したりしない存在。
それこそが彼の望む彼女なのだから。

「BM-03、ガンマ任務モードを解除し、ベータ任務モードに戻れ」
身支度を整え直し、彼女に新たな命令を与える。
「ピッ、命令ヲ受領。がんま任務モード解除。べーた任務モード二移行シマス」
一度無表情になって電子音声で答えるブラックマルス。
次の瞬間には、引き締まった表情となり、すっと彼にひざまずく。
「ブラックマルス、ベータ任務モードに移行しました。これより今宵の作戦の準備にかかります」
「うむ、頼んだぞ」
「ハッ、お任せくださいませ、首領様」
立ち上がって踵を返し、部屋を出ていくブラックマルス。
部下たちにとっては厳しい女幹部のお出ましといったところだろうか。
だが、彼女が部下たちに慕われていることは間違いない。
仮面の下の口元が思わず歪むのを彼はこらえきれなかった。

                   ******

「キーッ!」
「キーッ!」
全身を黒い全身タイツ状のスーツで覆い、目の部分にはスキーゴーグルのようなものをかけた男たちが片手をあげてブラックマルスに敬礼する。
彼らは秘密結社バクアクーの末端構成員であり主力でもある戦闘員たちで、ブラックマルスの手足となって働く連中である。
「ご苦労。すでに首領様より命が下っていると思うが、今宵作戦行動に入る。その準備はできているか?」
指揮台に上がり戦闘員たちを見渡すブラックマルス。
キリッとした表情が彼女の別の面を見せている。
「キーッ! いつでも行動に移れます。ターゲットの捕捉も完了しております」
戦闘員のリーダー格の一人がそう答え、モニターにターゲットを映し出す。
そこには初老の紳士が映し出され、大きな建物に入っていくところだった。
「よろしい。私のパーツの準備は?」
「キーッ! それもこちらに」
戦闘員たちが四つのトランクケースを彼女の前に差し出す。
フタが開けられたそれらのケースには、巨大なクモの脚やお尻のようなものが入っていた。
「よろしい。あらためてチェックを兼ねて装着してみます」
「キーッ! かしこまりました」
戦闘員たちは一礼し、トランクケースの中のパーツを指揮卓の上に並べていく。
その並べられたパーツをブラックマルスは組み立て始め、やがて大きなクモの胴体部分が組みあがってくる。
胴体部分が出来上がったところで、ブラックマルスはその胴体部に自分の躰をはめ込み、各部を結合する。
「おおー!」
戦闘員たちが感嘆の声をあげる中、ブラックマルスはその下半身を大きなクモとして、その六本の脚を器用に動かし歩いていく。
「悪くないわね。今回の任務にはぴったりだわ」
お尻から粘液状のものを吹き出し、それが空気に触れることでロープのようなクモ糸となり、天井に貼り付かせることによって天井からぶら下がって見せるブラックマルス。
それはまさにクモ女のようだ。
あとは両手のパーツと頭部にセンサー類を付ければ完成だろう。
今夜の任務の成功をブラックマルスは95%の確率で成功とはじき出していた。
あとは時間まで仮の住まいで待機していればいい。

                   ******

「ただいまー」
学校を終えた少年が帰宅する。
「お帰りなさい。おやつあるから手を洗ってきてね」
玄関まで出迎えてくれる母。
いつも通りのにこやかな笑顔は少年の大好きな母の顔だ。
子供のころからずっと見慣れた笑顔だけど、やっぱりいつ見ても母の笑顔が一番いい。
「はーい」
少年は靴をそろえ直してから洗面所へ向かい、手を洗ってうがいする。
その間に母はおやつを用意してくれて、少年は食べるだけで済むようになっていた。
「今日はお友達は?」
「今日は誰も呼んでいない」
友人たちもそうそう呼べるわけではない。
自慢の母を見せつけたい気持ちはあるが、独り占めしたい気持ちもある。
誰のものでもない、自分のものである母。
大好きな母なのだ。

「そう・・・誰も来ないのね?」
少年の背後にやってくる母。
「だったら・・・いつもいい子の直紀に、今日もママがイイことしてあげる。ふふっ」
少年の顎から頬にかけてそっと撫でる母。
それだけで少年はもうおやつなどどうでもよくなってしまう。
「ママ・・・」
振り返って母を見上げる少年。
その目には欲望が浮かんでいる。
「さあ・・・いらっしゃい」
少年をいざない寝室へと誘う母。
少年は食べかけのおやつを残したまま、母のあとをふらふらと追った。

「うふふ・・・いい子ね」
ベッドに寝そべって少年を受け入れる母。
少年はそそり立つ股間のものを母に突き入れ、快楽をむさぼっていく。
いつ頃からだろう。
気が付くと少年は母とセックスを楽しむようになっていた。
それは友人たちには決して言ってはいけない秘密の行為。
でも、大好きな母と気持ちいいことができるのはとてもうれしい。
それに、こうしていると、母がいろいろと語りかけてくれるのだ。
あとになってみれば何を話してくれたのかさっぱり覚えていないのだが、とにかく母に語り掛けられながらのセックスは、少年にとっては最高の行為だった。

「さあ、ママの目を見て」
自分の上で腰を振る少年に母は語り掛ける。
少年が顔をあげて母を見る。
母の目が虹色に明滅し始め、耳からはアンテナが伸びていく。
明滅する母の目を見ていた少年は、やがて目が虚ろになり、動きもゆっくりとなっていく。
「どう? 気持ちいい?」
「・・・うん・・・気持ちいい・・・」
母の問いに答える少年。
「そう。じゃあ、おさらいを始めましょう」
「はい・・・」
「お前の名前は?」
「的島・・・直紀・・・」
「お前のママの名前は?」
「的島・・・弥生・・・」
次々と問いに答えていく少年。
躰はもう全く動いていない。

「いい子ね。ママのことで何か気になったことはある?」
「・・・・・・ママの躰・・・」
「ママの躰?」
「・・・ママの躰には・・・あちこち継ぎ目があるのに・・・クラスの女の子や女の先生の躰は継ぎ目がない気がする・・・」
「そう・・・それが気になるのね?」
「うん・・・」
こくりとうなずく少年。
その目はじっと母の目を見つめている。
「よく聞きなさい。ママの躰には何もおかしいことはないの。お前は何も気にならない。ママの躰のことなど気にしない。いいわね?」
「はい・・・ママ・・・」
「いい子ね。今のことは忘れなさい。そして記憶に封じるの。いいわね?」
「はい・・・」
再びこくりとうなずく少年。
「いい子ね。それじゃ続きをしましょうね」
母の目が通常に戻り、耳から延びていたアンテナが縮む。
「ああ・・・ママ・・・」
少年の腰が再び動き出し、やがて少年は大好きな母の中に精液をほとばしらせるのだった。

                  ******

「キーッ! ブラックマルス様、配置につきました」
片手をあげて敬礼するバクアクーの戦闘員。
ブラックマルスはそれに対してうなずくと、両手のパーツの具合をもう一度確認する。
「いいわ。ターゲットの抹殺は私がやるから、お前たちは気付いたり逃げ出そうとした人間がいたら始末しなさい」
「キーッ! かしこまりました、ブラックマルス様」
再び敬礼をしてほかの戦闘員たちのもとへ向かう戦闘員。
ブラックマルスはそれを一瞥すると、クモのパーツを組み込んだ下半身の巨大なお尻から糸を噴射し、それを使って建物の壁を登っていく。
バクアクーの邪魔者は始末しなくてはならないのだ。
ブラックマルスは、ターゲットのいる部屋へと迫っていった。

「ご苦労だった、ブラックマルスよ」
任務を終えて帰還したブラックマルスを、首領のワラアクーがねぎらう。
「ハッ、ありがとうございます、首領様」
クモ女の姿のまま床に腹を着くようにして頭を下げるブラックマルス。
機械である彼女は、任務や作戦ごとにそのパーツを様々に組み合わせ活動する。
今回の任務にはこのクモ女仕様が実にぴったりだったことは言うまでもない。
「奴の抹殺には成功したのであろうな?」
「ハッ、もちろんでございます。私がこの手で確実に息の根を止めました」
任務の詳細はすでにワラアクーも把握しているが、こうしてブラックマルス自身の口からも説明させることが重要なのだ。
クモ女仕様とはいえ、上半身はいつものブラックマルスというか的島弥生のボディであるため、あの優しい女性がこうして冷酷に任務を遂行したと報告をしてくることがそそられる。
「よろしい。朝まではまだ時間がある。メンテナンスを受けていくがいい」
「ハッ、ありがとうございます、首領様」
ブラックマルスは一礼して部屋を出る。
幸い、出入り口は広めに作られているのでこういう場合でも問題はない。
ブラックマルスはクモ女の姿のまま廊下を歩きラボへと向かった。

人間にも健康診断や病院が必要なように、機械の躰にもメンテナンスは必要である。
基本的に消耗品を取り換えるような必要性はないものの、各部のチェックをして異常があれば改善する必要があるのは人間と同じだ。
ブラックマルスは技師たちにメンテナンスに来たことを告げ、クモのパーツを外して人間の姿に戻る。
そしてメンテナンスハンガーに躰を固定し、マネキンのように立った状態で各部チェックを行うのだ。
その際は機能のほとんどが停止され、外部に対する反応は失われる。
そのためほぼ無防備な状態と言っていい。
なので、ごく限られた者のみが、ブラックマルスのメンテナンスに立ち会うことができるのだった。
だが・・・

「ピッ・・・」
ブラックマルスの目が虚ろになり、周囲の機械類が稼働を始める。
「始まったか?」
「ああ・・・メンテナンスモードに切り替わった」
ラボ内のメンテナンスルームにいる二人の技師が顔を見合わせる。
もちろんこの二人も改造を受けており、戦闘員と同じ黒い全身タイツにゴーグル型のモニターグラスを目のところにかけているが、その上から白衣を着て技術科学班員であることを示している。
「ラッキーだな。まさか今晩メンテナンスが入るとは」
「ああ、シフトが入っててよかったぜ。それにしてもそそるお姿だ」
「まったくだ。こんな裸をそのままさらしてくれるなんてたまらんぜ」
しげしげとブラックマルスの肢体を眺める二人。
高級な美術品を見るというよりは、モデルグラビアを見るようなものだろう。
まさに美の化身と言っていい。

「ふ・・・いつも俺たちブラックマルス様から命令されてるけど、こうなるとただのエロ人形だよな」
虚ろな目をして呆けたように立ち尽くしているブラックマルスを腕組みしながら見ている二人。
「まったくだ。それにしてもエロい」
一人がゆっくりと近づいていく。
「おい、触るなよ。バレたら殺されるぞ」
もう一人が止めようとするが、近づいた方が首を振る。
「なんだ? お前はブラックマルス様のメンテに立ち会ったの初めてか? 大丈夫だ。これも役得さ」
そう言ってそっとブラックマルスの躰を触っていく。
「うおお、柔らけぇ。いいモン持ってますなぁ、ブラックマルスさまぁ」
最初はお腹のあたりを撫でていたものが、だんだんと大胆になり両手でたわわな胸を持ち上げていく。
ずっしりとした柔らかい胸の揉み心地がたまらない。
「本当か? お、俺にも・・・」
もう一人も恐る恐る近づくと、その柔らかな太ももに手を這わせていく。
「柔らけぇ・・・プラスチックでできているのにすごく柔らけぇ」
「だろぉ? ここも素敵だぜ。まさに名器ですよ、ブラックマルス様」
彼女の股間に指を差し入れる技師。
指に絡みつくような温かく柔らかい感触が伝わってくる。
「ピッ」
その指の動きが刺激となったのか、ブラックマルスの口から電子音が出て、二人を驚かせる。
「ア・・・アリガトウゴザイマス」
おそらくガンマ任務モードの時の反応が出たのだろうが、二人の技師は思わず顔を見合わせて安堵した。
ブラックマルスが起動したかと思ったのだ。
もし起動していたとすれば、二人の命はなかったであろう。

「ふう・・・驚かせやがる」
「ああ・・・だが、ありがとうございます、だってよ」
緊張の解けた技師たちが笑う。
「へへへ・・・ブラックマルス様がお望みならば、いつでもお相手いたしますよ」
「俺も俺も。へへへへ・・・」
再びブラックマルスの躰を触り始める技師たち。
その様子をワラアクーは監視カメラのモニター越しに見つめ、仮面の下で笑みを浮かべていた。
彼らをとがめるつもりはない。
いずれこういうことをする奴がいるだろうとは最初から思っていたことだ。
むしろ、大事なものをぎりぎりまで他人に汚されるというそのことが彼を興奮させるのだ。
もちろん一線を超えるようなことは許されない。
彼女の躰を犯そうとするものは容赦しない。
だが、彼女の躰を無遠慮に見つめ、触れ、撫でまわすぐらいのことはいくらでもして構わなかった。

「ピッ・・・メンテナンス終了。再起動シマス」
慌てて技師たちがブラックマルスから離れる。
つながっていたケーブル類が外れ、表情が引き締まり、目が焦点を合わせていく。
「ん・・・メンテナンス終了。異常なし」
メンテナンスハンガーからゆっくりと降りるブラックマルス。
「外部チェックの方はどうか?」
「キーッ! 問題ありません。ブラックマルス様ご自身のデータと一致しております」
技師が慌ててモニターにデータを映し出す。
やれやれ、バレてはいないようだ。
「ブ、ブラックマルス様、首領様より命じられておりましたパーツの試作ができております。チェックをしていただいてもよろしいでしょうか?」
もう一人はあらかじめ用意してあった新パーツを取り出してくる。
もともと以後の作戦用に作成を命じられていたものだから、この際チェックをしてもらえばいいと考えたのだ。
「ん、いいわ」
「それではお手数ですが、もう一度メンテナンスハンガーに乗っていただけますか?」
「わかったわ」
ブラックマルスは指示に従い、再度メンテナンスハンガーに乗る。
「それでは失礼して」
技師が彼女の背中にモニターチェック用のケーブルを取り付ける。
こうして新パーツの適合具合を外部チェックするのだ。
「今回のパーツは、ブラックマルス様の右腕に暗殺用の内蔵火器を仕込むものです。現時点では小型化が完了しておりませんのでブラックマルス様の腕より一回り大きくなってしまってますが、動作チェックが問題なければ小型化すればいいだけとなりますので」
「わかったわ」
躰を固定し右腕を差し出すブラックマルス。
技師がその腕を二の腕部分で外し、そこに新しいパーツの基部を差し込んでいく。
「ピッ・・・パーツ認識・・・正常」
「いかがですか?」
「悪くないわね。これなら問題なく使えそ・・・ピッ・・・ピピピピッ」
笑みを浮かべていたブラックマルスの表情が変わる。
「ブラックマルス様?」
「ピッ・・・ピピピピピ・・・エエエエラーガ・・・ガガガ・・・」
「ブラックマルス様!」
「ピピピピ・・・セーフティモード起動・・・シマス」
再びメンテナンス時と同じように無表情となるブラックマルス。
二人の技師がとりあえず再チェックを行う。
「よし、ブラックマルス様・・・いや、ここは・・・」
技師が言いかけて途中でやめる。
「BM-03、接続状況はどうだ?」
普段とは違う高圧的な口調だ。
もう一人の技師もその意図に気が付く。
「ピッ、接続ハ正常二動作シテイマス。問題アリマセン」
抑揚の無い電子音声で答えるブラックマルス。
その表情も無表情で目も虚ろである。
「どうやら一時的なもののようだな。再起動してもらえば大丈夫そうだ」
「やれやれ・・・それにしてもやっぱりいい女だぜ」
「ああ・・・首領様がうらやましい」
「まったくだ」
二人の技師はホッとして顔を見合わせた。

「キーッ! お疲れ様でした、ブラックマルス様」
「お前たちもご苦労。時間まで任務を続けるように」
「ハッ」
敬礼する二人の技師に背を向けラボを後にするブラックマルス。
メンテナンスが終了したことを首領様に報告しなくてはならない。
そしてそのあとはアルファ任務モードに切り替え、的島弥生として仮の住まいへ戻り、学校へ行く子供の世話をしなくてはならないのだ。
また一日が始まる。
ブラックマルスにとっては毎日が忙しい日々だった。

END

以上です。
あおばさん、このたびは素敵なイラストを拝見させていただきありがとうございました。
また、SSの掲載を許可してくださり、ありがとうございました。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/12/15(日) 20:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
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こういうシチュって好きじゃないですか?

なんか今日は書くネタがないので、こういうシチュが好きですーというようなものを。
45分ぐらいででっち上げたものです。(笑)

ズーギャット化したナイトブルー

「いやっ! いやだぁ! 魔物になんかなるものかぁっ!」
両手を鎖につながれ、柱に吊るされている一人の女性。
その躰はボロボロになった衣装に包まれており、皮膚にもいくつかのミミズ腫れが走っている。
その衣装はつい先ほどまでは彼女の躰を守り抜いていた青いバトルスーツであったものの、今はもうただの布切れと化していた。

「ククククク・・・魔物ではない、魔獣だ」
ケージに入った黒い毛むくじゃらの動物を持ってくる魔将軍。
さんざん手を焼かせてきたこのナイトブルーを、この魔獣と合成し、彼のペットとしてやるのだ。

「どっちでもいやっ!」
罠とも知らずに踏み込んだ結果がこのざまということにナイトブルーは後悔したが、決して屈するつもりはない。
何とか時間を稼いでいれば、パートナーであるナイトレッドが助けに来てくれるはず。
それまでは・・・
とはいうものの、まさか拷問や尋問ではなく魔獣と合成しようとなどされるとは思いもしなかった。
合成されてしまえばどうなってしまうのか・・・
想像するだけでも恐ろしい。

「ククククク・・・心配はいらん。こいつはズーギャットと言って、どう猛だが主人にはよく懐く。お前もすぐに俺に懐くようになる」
「ふざけないで! どんなことになってもだれがあなたになど!」
ガチャガチャと鎖を鳴らして身をよじるナイトブルー。
だが、しっかりと手首を固定され、どうにも外れそうにない。

「ギシャァァァ!」
ケージの中で黄色い目を光らせてナイトブルーをにらみつけているズーギャット。
地球の猫のような生き物のようだが、こんなものと融合されるというのだろうか?

「ククククク・・・」
ケージの中からズーギャットを取り出す魔将軍。
ゴロゴロと喉を鳴らし甘えてくるそのズーギャットを、魔将軍は脇にある機械に放り込む。
そしてスイッチを入れると、機械はグオングオンと音をたて、同時にズーギャットの断末魔の悲鳴のような鳴き声が響いた。
「な、なんてことを!」
思わず目をそらすナイトブルー。
まさかあの生き物を機械で殺したというの?

やがて機械から液体が流れ出し、下に置かれたグラスに注がれる。
青黒いその液体はグラスに満ち、あふれんばかりとなったところで、流れが止まる。
「ククククク・・・」
そのグラスを手に取る魔将軍。
「特殊な薬剤とズーギャットの体液のカクテルだ。これをお前に飲ませれば。ククククク・・・」
「そんな・・・」
あれを飲まされるというの?

必死に口を閉じて抵抗するナイトブルー。
だが、鼻をつままれ、呼吸せざるを得なくさせられてしまい、ついに口を開けてしまったところにグラスから液体が流し込まれる。
「ガッ! ガハッ!」
喉を滑り降りていく液体を何とか吐き出そうとしたものの、液体はすでに彼女の胃の中へと流し込まれてしまっていた。

「ククククク・・・またあとで来てやろう。お前の生まれ変わった姿を見るのが楽しみだ」
全身が焼けるように熱く、苦悶の表情を浮かべるナイトブルーをその場に残し、魔将軍は姿を消した。

                   ******

椅子に座る魔将軍。
その足元には黒い毛におおわれた女性型の魔獣が躰を摺り寄せていた。
胴体と両手両足を黒い毛で覆い、むき出しの二の腕と太もも、それに顔は青黒い肌になっている。
爪は鋭く、歯もギザギザで犬歯が鋭い牙になっている。
目は黄色く、らんらんと輝いていた。
お尻からはふさふさの毛で覆われた尻尾が伸び、ゆらゆらと揺れている。
それはまさにズーギャットとナイトブルーの融合した姿だった。

「ククククク・・・かわいい奴め」
「ギニャア・・・嬉しいですぅ。私はご主人様のもの。ご主人様のためなら何でも致しますぅ」
頭を撫でられ、幸せそうに身を寄せるズーギャット化したナイトブルー。
「もうすぐナイトレッドがここに来るだろう。そうしたらどうする?」
「ギニャア・・・ご主人様に歯向かうものは私がこの爪と牙で引き裂いてやります。ご主人様の敵は私の敵ですぅ。ギニャア」
鋭い爪を振りかざす彼女。
「いい子だ。楽しみにしているぞ」
「はい、ご主人様。ギニャア」
満足そうな魔将軍の顔を見て、彼女は幸せそうに躰を摺り寄せた。

END

こういうのいいですよねー。
このあとは彼女の変貌に戸惑うレッドとのご対面ですよね。
むふふふふ・・・

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/11/25(月) 19:27:20|
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メイドロボット「メイ」

今日は短編SSを一本投下いたします。
タイトルは「メイドロボット『メイ』」です。

先日ツイッターでつぶやいたネタを基に書いてみました。
楽しんでいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


メイドロボット「メイ」

「う・・・あ・・・」
意識がだんだんと戻ってくる。
俺はいったい?
何がどうなって・・・
確か戦闘が終わってスーツを解除したまでは覚えているが・・・

俺はその場で起き上がろうとしたが、手足が固定されているのか全く起き上がることができない。
なんだ?
どうなっているんだ?
「ククク・・・どうやら目を覚ましたようだぞ」
「ああ・・・はい。どうせまたすぐに意識を失うことになるのですから、そのまま目覚めなければよかったものを・・・」
俺が困惑してごそごそと動いたからなのか、声が聞こえてくる。
重厚で張りのある男の声と、柔らかいがやや冷たい女の声。
この女の声はどこかで・・・

「うふふふふ・・・気分はどう? 聖司(せいじ)」
誰かの近づいてくる足音がしたかと思うと、香奈美(かなみ)が俺の顔を覗き込んでくる。
「か、香奈美?」
俺は驚いた。
道理で聞き覚えのある声だったはずだ。
香奈美の声だったのか。

だが、これはどういうことだ?
俺の顔を覗き込んでいる香奈美は、いつもの俺の知っている香奈美ではない。
目元にはアイシャドウを引き、唇には真っ赤な口紅を塗っている。
それに栗色の髪をした頭には、銀色に光るヘッドバンドのようなものを締めており、左右の耳にはヘッドホンのようなものが覆っていて左右に短いアンテナが伸びている。
首から下もいつものピンク色のジャケットではなく、躰のラインをあらわにするような黒に紫のラインの入ったぴったりしたスーツを着込んでいた。
「香奈美・・・その姿はいったい?」
「うふふふふ・・・私はもうピンクランサー桃葉(ももは)香奈美なんかじゃないの。今の私はデマイン帝国の女戦士ラネーカなのよ」
冷たく笑みを浮かべている香奈美。
香奈美がデマイン帝国の女戦士だって?
どういうことなんだいったい?

「ククククク・・・そういうことだ、レッドランサー赤見(あかみ)聖司。こいつはもはや我の忠実なるしもべ。そうだな?」
ゆっくりと銀色の甲冑を着た男が香奈美の隣にやってくる。
こいつはデマイン帝国のディグザーン将軍じゃないか!
半分機械化されたサイボーグであり、それゆえに強力なパワーで俺たちを苦しめてきたやつだ。
そのディグザーンが香奈美の肩に手を置き、香奈美はその手に愛しそうに自分の手を重ねている?
なんなんだいったい?
「はい、ディグザーン様。私はデマイン帝国の女戦士ラネーカ。ディグザーン様の忠実なるしもべです」
うっとりとした表情を浮かべる香奈美。
どうなっているんだこれは?

俺は思わず躰を起こそうとする。
だが、やはり固定された両手両足はびくともせず、立ち上がることができない。
くそっ!
なんでこんなことに?

「香奈美! 目を覚ませ! どうしてしまったんだ!」
「うふふふ・・・私はディグザーン様にサイボーグ化手術をしていただき洗脳チップを埋め込んでいただいたの。おかげで今までの私がどんなに愚かだったかを知ることができたわ。デマイン帝国こそが地球を支配するべきということも」
「なっ? バカな!」
「ディグザーン様は寛大にも愚かだった私をデマイン帝国の女戦士として迎えてくださったわ。だから私は今までの行為の罪滅ぼしのためにも、デマイン帝国に歯向かう地球人どもを血祭りにあげてやるの。その手始めがあなただったというわけ」
俺は愕然とした。
あの敵にさえ哀れみを向ける香奈美がどうしてこんな・・・
「うふふふふ・・・あなたったら全く私を疑いもしないんだもの。スーツを解除した時に眠らせるなんて簡単だったわ。でも安心して聖司。ディグザーン様はあなたを殺さないっておっしゃってくださったの。あなたにはこれから死ぬよりも屈辱的なことをさせてあげるって。よかったわね。うふふふふ・・・」
冷たい目で俺を見下ろしている香奈美。
いや・・・もう彼女は香奈美ではないのか・・・
くそっ!
なんてこった・・・
何とかこの場を逃げ出さなくては・・・

「さて、レッドランサーよ。せっかく目が覚めたようだったが、もう一度眠ってもらうことにしよう。ラネーカよ、スイッチを押すがいい」
「かしこまりましたディグザーン様。それじゃおやすみなさい聖司。次に目覚める時は違う姿になっているわ。楽しみにしててね」
ディグザーンの言葉にうなずきスイッチを押す香奈美。
「ま、待て! やめろ!」
俺の言葉もむなしく、上からカバーのようなものが下りてきて俺の体を覆っていく。
そして俺は意識を失った。

                   ******

ピッ
私は起動を確認する。
ん?
私?
俺?
どっちだっけ?
なんだか頭が混乱している感じだ。
しっかりしなくては・・・

フル充電状態を確認。
各部動作準備OK。
視覚センサー及び聴覚センサー問題なし。
俺はゆっくりと目を開ける。
可視光及び赤外線センサー問題なし。
外部に可視光はわずかしかないので赤外線に切り替え。
周囲に行動する物体無し。

俺は充電器から離脱して歩き出そうとするが、躰がピクリとも動かない。
各部チェックは問題ないのにどうして?
原因はすぐに判明する。
首から下の動作にロックがかけられているのだ。
解除プログラムを入れてもらわない限り動けない。
なんだ?
解除プログラムとか各部チェックとか充電とかって・・・
俺はいったい?

その時室内の明かりが点く。
俺はすぐに視覚センサーを赤外線から可視光に切り替え、誰が入ってきたのか確認する。
「お目覚めかしら? おはよう、“メイ”」
「ふむ・・・これはなかなか・・・クククク・・・」
入ってきたのは躰にぴったりの黒と紫のスーツを着た女性と、全身を銀色の金属鎧で包んだ男性。
もちろんラネーカ様とディグザーン様だ。
何か面白いことでもあったのかディグザーン様は笑っていらっしゃる。
ラネーカ様とディグザーン様?
どうして俺は二人を様付けでなど・・・

「返事は? “メイ”」
「おはようございます。ラネーカ様」
俺の口から予想もしない言葉が出る。
なんだ?
俺は何を?
それにこの甲高い声はなんなんだ?
「うふふふ・・・いい子ね。さあ、あなたは何者か言ってみなさい」
「はい。私はデマイン帝国によって作られましたメイドロボットです。ナンバーはMR01。コードネームはメイです」
ラネーカ様の質問に俺はすらすらと答えていく。
違う・・・
違う違う違う!
俺はメイドロボットなんかじゃない!
俺はランサーチームのレッドランサー!
赤見聖司だ!

「うふふふ・・・そう、お前はメイドロボットのメイ。今日からこのアジトで雑用をこなすのよ。いいわね」
「はい、かしこまりました。ラネーカ様」
違う!
俺はメイドロボットなんかじゃ・・・
ピッ
生体脳による抵抗を感知。
最適化します。
私は・・・
私はメイ・・・
メイドロボットのメイ・・・

「ふむ、いいだろう。動作制御の解除を命じる」
「はい。動作ロック解除します」
私はふらふらと前に出る。
急に充電器とのロックが外れたのでふらついてしまったのだ。
もちろんすぐに態勢を立て直し、ディグザーン様とラネーカ様の前で直立する。
うん、躰の制御に問題はない。
「クククク・・・あのレッドランサーがこのざまとはな。これからはせいぜいこき使ってやるか」
ディグザーン様はそう言って私の躰を眺めてくる。
どこにも問題がないか確認してくださっているのだと私は判断する。
「ひゃん」
突然の胸への接触に、センサーが反応して声が出てしまう。
そうプログラムで反応づけられているのだ。
ディグザーン様が私の胸を揉んでくださった。
すぐに私のプログラムが作動し、表情を緩める。
性的奉仕モードへの移行をせよとのことなのだと判断。
今は衣服を着用していないので、そのまま性的奉仕モードにいつでも入ることができる。
・・・って、えっ?
俺は慌てて胸を見る。
なんだこれ?
おわん型の柔らかそうな胸が俺に?
えええええ?

「ふふふ・・・ほら、見てごらんなさい」
ラネーカ様の言葉に俺は右を向く。
そこにはとても華奢な感じの少女と言っていいかわいらしい女性が立っていた。
しかも裸でだ。
首だけを左に向けて俺の方を見つめている。
ま・・・まさか・・・
すべての答えは一致している。
あれは鏡。
鏡に映った俺なのだ。
俺は・・・
俺は・・・
ピッ
生体脳に脳波の乱れを感知。
制御します。
・・・何を驚くことがあったのだろう・・・
私はメイドロボット。
女性をかたどられているのは当然のこと。
それにディグザーン様への性的奉仕を行うためにも私は女性型をしている必要がある。
何も問題はない。

「ディグザーン様、彼女にはメイドロボットであると認識させるためにも、機能チェックを兼ねてプログラム動作をやらせておき、私はそろそろ出撃したいと思いますが」
笑みを浮かべながらラネーカ様が私をちらっと見る。
「ふむ。そうだな・・・我も行こう。レッドランサー、ピンクランサーの脅威はなくなったとはいえ、まだブルーランサーやグリーンランサーが残っているからな」
「ディグザーン様! そのような連中は私にお任せくだされば・・・ディグザーン様のお手を煩わせるまでもありません!」
「いや、我にも楽しみというものがある。ククククク・・・」
「かしこまりました。ラネーカはディグザーン様の忠実なるしもべ。常におそばに従います」
ラネーカ様が優雅に一礼する。
「メイ。あなたはそこにある服に着替え、機能チェックを兼ねてアジトの掃除などプログラムに従った行動を行いなさい。いいわね」
「かしこまりました、ラネーカ様」
私はラネーカ様に服従の意を示すため、スカートを持ち上げてのカーテシーを行おうとしたが、スカートを穿いていなかったので片足を下げ膝を曲げるだけのカーテシーを行う。

お二人が部屋を出て行った後、私は脇のケースから衣装を取り出して身にまとう。
黒い下着にガーターストッキング。
足元ぐらいまでもある長いスカートのワンピースは白いエプロンの付いたエプロンドレスになっている。
それを着たらホワイトプリムを頭に付けて靴を履く。
いわゆる地球人たちが呼称するメイド服というもので、メイドロボットである私には当然の衣装である。

メイド服に着替えた私は、プログラムに従いアジト内の掃除を行う。
吸引式の掃除機を床にかけ、作戦テーブルやデスクを丁寧に拭いていく。
掃除をしてきれいになっていくのは気持ちがいい。
もっともっと掃除がしたくなるわ。

一通りの掃除が終わったことで、私のプログラムは終了する。
あとは次の命令を待てば・・・
次の命令って?
俺は・・・いったい何をやっているんだ?
メイドだなんて冗談じゃない。
こんな躰、ふざけるなと言いたくなる。
こんな・・・こんな女の躰にされたなんて・・・
何とか元の俺の躰を取り戻さなくちゃ。
無事に残っているといいけど・・・

とにかくこうしちゃいられない。
躰のことは心配だが、とにかくまずはここを脱出しなくては。
香奈美がデマイン帝国の一員にされてしまったことも伝えなくてはならないし。
頼むぞ、ブルー、グリーン、何とか俺が戻るまで持ちこたえてくれよ。

俺はさっき掃除をしたことで理解したこのアジトの一室に向かって走り出す。
どうやらここからは特殊な空間転移で移動するらしい。
だからここから出るには転移室に行けばいいわけだ。
それにしてもこの長いスカートは何とかならないのか?
それに躰がすごく弱弱しく感じてしまう。
機械の躰とはいえ、戦闘用でないからさほど強さはないのだろう。
くそっ!

ピッ
転移室のドアのスイッチに手をかけた私は、すぐにその手を引っ込める。
転移室は私の許可領域外であることを確認。
この部屋に入ることは私は許可されていない。
次の命令に向けて待機していなくてはならないのに、どうしてこんなところに来てしまったのだろう。
早く待機部屋に戻らなくては。
電池残量はまだ80%以上あるので、充電器に接続しなくてはならないほど電力を消費したわけではないから、ただ単に待機していればいい。
ディグザーン様やラネーカ様がお戻りになれば、次の命令を下さる確率は80%を超える。
その時に備えて準備しなくては。

くそっ!
気が付いたら最初の部屋に戻ってきてしまっているじゃないか。
俺の脳にAIが干渉しているんだ。
くそっ!
このままじゃ俺はずっとここにいてメイドをやらされる羽目になってしまう。
ディグザーンが言っていたという死ぬよりも屈辱的なことってこのことかよ!
ふざけるな!

俺はもう一度脱出を試みる。
転移室に入れば・・・
転移しさえすれば・・・
絶対に脱出してやるぞ!

                   ******

「クククク・・・それで何度試してみたのだ?」
「はい。ディグザーン様がお戻りになるまでに三度試しました」
私はディグザーン様の質問に答える。
その間もディグザーン様のペニスを舐めることは続けたままだ。
先ほどディグザーン様はお戻りになると、すぐに私を性的奉仕モードに切り替え自室へとお呼び下された。
私は性的奉仕プログラムに従い、ご命令のままにディグザーン様のペニスをしゃぶっていく。
太くてたくましいディグザーン様のペニス。
私の生体脳にもその素晴らしさが刻み込まれていく。
ああ・・・
なんて幸せなのだろう。
ディグザーン様に性的ご奉仕ができるなんてメイは最高にうれしいです。

もちろんフェラチオだけではなく、本来のセックスも欠かせない。
ディグザーン様のペニスを入れていただき、プログラムに従って感じていく。
そしてディグザーン様をご満足させ、同時に私も大きな喜びを得る。
ディグザーン様・・・
ディグザーン様・・・
メイをずっとおそばにおいてくださいませ・・・

待機部屋に戻り服を脱ぐ。
充電器に躰をセットすると、躰に電気が流れ込んでくる。
なんだかポカポカして気持ちがいい。
今日はそれほど電池を消耗したわけではないけど、やはり充電するのは気分がいいものなのだ。
いや違う・・・
違う違う違う。
しっかりしろ。
俺は・・・
俺は人間だ・・・
ロボットなんかじゃない!
俺は人間なんだぞ!
何が充電だ!
ふざけるなー!
ちくしょうちくしょうちくしょう!
このままでは・・・
このままでは・・・
何とかしなくては・・・
そう思うのに・・・

俺は自分の躰を触ってみる。
特殊プラスチックで作られた皮膚は、強靭であるのにしなやかで柔らかい。
少々のことでは傷はつかないから、手荒に扱われても平気。
それでいて充分な性的奉仕ができるよう、性処理機能も充実している。
胸も弾力や柔らかさは帝国の女性と変わらないし、もちろんここも・・・
俺の指が股間の性器に触れていく。
「ん・・・」
プログラムが反応して声が出る。
これが・・・
これが私の躰・・・
気持ちいい・・・

                   ******

「ふふっ・・・上手よ、メイ」
「ありがとうございます、ラネーカ様」
ほめられたことで私はとても幸せな気持ちになる。
ラネーカ様の髪の毛をブラッシングして差し上げているのだ。
ラネーカ様はヘッドギアをされていらっしゃるので、そこから下の部分を梳いて差し上げる。
栗色の髪がとてもきれい。
美しさと強さを兼ね備えたデマイン帝国の女戦士なのだ。

「昨日は残念ながら逃げられちゃったのよね」
「そうなのですか? それはお気の毒です」
「あら、聖司にとってはそのほうがよかったんじゃない?」
聖司?
聖司って・・・?
そう・・・そうだ・・・俺は・・・
「香奈・・・」
ピッ
固有名詞にエラー。
修正します。
「ラネーカ様、私はメイです。聖司ではありません」
「ふふ・・・そうだったわね」

「もういいわ。あとは掃除をお願い。夕食もね」
「かしこまりましたラネーカ様」
私はスカートをちょっと持ち上げてカーテシーをする。
こうしてディグザーン様やラネーカ様に従うのは気持ちがいい。
メイは幸せです。

私はラネーカ様のご命令通りに掃除をし、夕食を作ってお出しする。
ディグザーン様もおいでになり、何やら意味ありげな笑みを浮かべて食事をなさっていらっしゃった。
でも、食事の味には満足してくれたであろう確率は70%は下らないと思われるので、もう少し確率を上げるようにプログラムを組み替えるのがよいだろう。
生体脳部分にも組み込んでいかなくては。

                   ******

充電がいっぱいになったのを確認し、私は充電器から躰を離す。
今は夜中・・・行動に移すチャンス。
明かりを点けずに視覚センサーを赤外線にして、いつも通りにメイド服を着込んで身支度を整える。
隅っこの方に埃がたまっているのを見つけて悲しくなるが、今はそんな場合ではない。
これ以上AIに思考を変えられてしまう前に、何とかここを脱出しなくては、自分を保つのさえ難しい。
もう私は聖司と呼ばれるよりもメイと呼ばれる方が当たり前に感じてきている。
私はメイじゃないとさっきから必死に思い込もうとしているのだ。
どうしてそんなことをしているのかわからないけど、そうしないといけない気がするの。
私が私であるうちに・・・

何度試しても転移室は入れない。
だからそれ以外の道を見つけるしかない。
幸い、動力室には冷却用の水循環システムがある。
そのパイプは私のこの躰なら通れる確率が97%。
そこから外部に出れば、アジトの外に出られる確率は65%はある。
今日こそは・・・

私はいつも通り掃除をするふりをして動力室に入り込む。
警備ロボットが警備しているが、私が挨拶をすると通してくれる。
ごめんなさい。
あなたが悪いわけではないの。
悪いのは・・・

動力室の冷却用水パイプ。
太くて大量の水が循環している。
これを破壊すれば、このアジトの動力は停止し、一部は水没するだろう。
その間に私はパイプの中を抜けて外に出て、デマイン帝国のアジトのことを・・・
アジトのことを・・・
アジトのことを地球人に伝えてどうなるというのだろう?
デマイン帝国に歯向かう地球人に?
私がここを出て行ってまで伝えるべきことだというの?
ここは私の家であり仕事場なのに・・・
ディグザーン様もラネーカ様もメイ、メイと言ってかわいがってくださっている。
私もお二人のお世話をするのがとても楽しい。
ほかにもこのアジトには何台ものロボットがいる。
彼らと赤外線通話するのも楽しいし、電波で刺激しあうのも気持ちがいい。
私はここを出てどこへ行くというのだろう・・・

                   ******

「お帰りなさいませ、ディグザーン様、ラネーカ様」
私はスカートを持ち上げて右足を引き、カーテシーをしてお出迎えをする。
お二人ともなんだかうれしそうな表情をしているのを見て、私も思わずうれしくなる。
「ああ、メイか。今日は何度試してみた?」
「試す・・・ですか?」
ディグザーン様の質問が私にはピンとこない。
何か試すように命令を受けただろうか?
メモリーにはそのようなことは記録されていないけど・・・

「ここから抜け出そうとはしなかったのか?」
「申し訳ありません。メイには質問の意味がよくわかりません。メイはこのアジトでディグザーン様及びラネーカ様にお仕えするメイドロボットです。ここから抜け出す理由などありません」
どうして私がここから抜け出したりするのだろうか?
私はここにいることが私の存在理由なのに。
「ククク・・・そうか。いや、それならいい。夕食後我が部屋に来い。いいな」
「かしこまりました、ディグザーン様」
私の肩をポンとたたいて転移室を出ていくディグザーン様。
夕食後には性的ご奉仕が待っている。
なんて幸せなのだろう。

「うふふ・・・すっかりメイドロボットになったわね、メイ」
「そう・・・なのでしょうか? 私はずっとメイドロボットのはずなのですが・・・」
ラネーカ様も私にはよくわからないことをおっしゃられる。
私はデマイン帝国製のメイドロボットMR01メイ。
それ以外の何者でも・・・
「うふふ・・・まあいいわ。そうそう、今日はグリーンランサーを始末したわよ。残るはブルー一人ね」
グリーンランサーとは、デマイン帝国に歯向かう愚かな地球人の一人。
ラネーカ様がそれを倒したなんて。
なんてすばらしいことでしょう。
「おめでとうございます、ラネーカ様」
私は心からのお祝いを伝える。
デマイン帝国の女戦士ラネーカ様。
とても素敵なお方。
私はラネーカ様にお仕えできて幸せ。

「メイ、あなたはこれからもこのアジトのメイドロボットとしてしっかり働きなさい。いいわね?」
「かしこまりましたラネーカ様。メイはこれからもずっとこのアジトのメイドロボットとして働きます」
私はもう一度カーテシーを行って心からの忠誠を誓う。
ああ・・・
私はなんて幸せなのだろう。
ディグザーン様、ラネーカ様、これからもメイをよろしくお願いいたします。

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントなどいただけますと嬉しいです。
よろしくお願いいたします。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/08/29(木) 21:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
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クモ女の誕生

今日は私の誕生日なのですが、超短編が一本できたので投下いたします。
タイトルは「クモ女の誕生」です。

はい、タイトルを見てわかりますとおり、先日投下しました「サソリ女の誕生」「サソリ女の暗躍」と同じ世界観で書いてます。
いつもの通り、シチュのみの超短編ではありますが、楽しんでいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


クモ女の誕生

「またねー」
「また明日ー」
「じゃあねー」
手を振って別れあう女子高校生たち。
みな学校が終わった安堵感と、明日また会えるという確信を持って家路につく。
そう、その確信が何の根拠もないことに気づかずに・・・

「さて、急がなきゃ」
友人たちと別れた後、彼女は一人街中へと通じる道に向かう。
今日はジムで練習がある日だ。
急いで行かなくては遅れてしまう。
幼いころに病弱だった彼女は、体力を付けるためにと運動をすすめられ、子供のころからジムで体操を行ってきた。
もちろんそのような目的だったから、オリンピックを目指すなどというようなものではなく、今では健康維持と美容目的のようなものだ。
おかげで中学以降は体力にも自信が付き、風邪などもめったにひかなくなっている。
ありがたいことだった。

「あれ?」
角を曲がったところで、彼女は思わず足を止める。
いつも通っていた道だったが、この先工事中につき通行止め、迂回してくださいという立て看板とともに、バリケードが置かれていた。
見たところこの先で工事をやっているような様子もなかったが、二日前に通った時にはこのような表示はなかったので、昨日か今日工事が始まったのだろう。
だとすれば大型の機械が入ったりするのはまだこれからなのかもしれない。

「ちぇっ」
少し口をとがらせつつ、この通りを通るのをあきらめた彼女は、先を急ごうと迂回路へと入っていく。
そっちは細い路地であるが、この際はやむを得ない。
少し遠回りになるはずだから急がなくてはならないだろう。
背中のリュックを背負いなおし、少し早歩きで路地を行く彼女。
その背後に黒いスーツと帽子をかぶってサングラスをかけた二人の男たちが歩いてくる。
最初は特に気にも留めなかった彼女だったが、早歩きで歩いているにもかかわらず距離が離れないことに、ふと気づく。
確かに大人の男性と女子高校生の彼女とでは歩幅に違いはあるだろうが、それでも距離が遠ざかりも近づきもしないというのは何か変だ。
そう思い、彼女はさらに足を速めようとして、恐怖する。
前からも同じく黒のスーツに黒の帽子とサングラス姿の男たちが現れたのだ。

逃げ道を探して周囲を見回す彼女だったが、路地はブロック塀に挟まれたようになっており、どこかの家に通じる玄関口もない。
わき道に入るにはどちらかの男たちを超えていくしかなく、もはや逃げ場がない状態なのだ。
「くっ」
意を決して正面からくる男たちの間を何とかすり抜けようと走り出す彼女。
もしかしたら、男たちはたまたまそんな恰好をしてたまたま通りを歩いてきただけで、走り出した彼女を奇異の目で見ながら避けて通してくれるのではないかとも思ったが、残念ながらそうではなかった。
後ろの男たちは彼女が駆け出すと同時に走り始め、前の男たちは彼女を取り押さえようと待ち構えるのがすぐにわかったのだ。
「あうっ!」
彼女は何とか男たちの手を逃れようとしたが、腕をつかまれ、さらに何か薬のようなものを吹きかけられて、その場で意識が遠くなってしまったのだった。

                   ******

「ん・・・んん・・・」
ゆっくりと意識が戻ってくる。
そっと目を開けると薄暗い室内のようだ。
周囲には何やら様々な機械があって、明滅したり小さな稼働音を響かせている。
「ここは? えっ?」
躰を起こそうとした彼女は、両腕が固定されていて動かせないことに気が付いた。
見ると、手首のところががっちりと金属の枷で留められており、感触からおそらく足首もそうなっているらしい。
つまり彼女は台の上に寝かされて身動きできなくなっているということなのだ。
しかも白い布をかけられている以外はおそらく裸で。
「ど、どうして?」
なぜこんな目に遭っているというのだろうか。
彼女には全く思い当たる節がない。
これからどうなってしまうのか、彼女は恐怖に打ち震えた。

『目が覚めたようだな。箕原愛梨沙(みのはら ありさ)』
スピーカーを通したような重々しい声が聞こえてくる。
しかも複数のスピーカーが天井に仕掛けられているようだ。
「どうして私の名前を?」
愛梨沙は驚いた。
名前を呼ばれたということは、誰かに間違われたのではなく、彼女が狙われたということだからだ。
『箕原愛梨沙よ。我々はヘルザロン』
「ヘルザロン?」
聞いたこともない名称だ。
人の名前なのか、それとも団体や会社名なのだろうか?
『そうだ。闇結社ヘルザロン。我はその首領である』
結社?
首領?
まるで一昔前の特撮番組のようではないか。
「私を・・・私をどうする気なんです?」
『箕原愛梨沙、お前は選ばれたのだ。我がヘルザロンはお前を歓迎する。お前は我が組織の改造人間にふさわしい存在だ。改造手術を受け、ヘルザロンの一員として生まれ変わるがいい』
愛梨沙の顔が青ざめる。
改造?
手術?
よくわからないが、自分の躰にろくでもないことが行われようとしているのははっきりとわかる。
冗談じゃないわ。
「いやっ! いやです! どうして? どうして私なの?」
首を振っていやいやをする愛梨沙。
『お前は肉体的に健康であり、体操の経験を有している。激しい動きをする改造人間には適しているのだ』
「そんなの私なんかより優秀な人はいっぱいいるじゃない!」
『優秀であればいいというものではない。むしろ肉体的な差異は改造でいくらでも強化できる。かえってお前のような目立たずそれでいてそれなりの経験を持つ者こそがふさわしい』
「そんな・・・いやぁっ!」
『恐怖を感じるのは今のうちだ。脳改造まで完了すれば、お前は改造人間となった喜びを感じるだろう。そしてヘルザロンへの忠誠を誓うようになる』
「いやぁっ! やめてぇっ!」
必死に躰をよじって逃れようとする愛梨沙。
だが、両手両足の枷はびくともしない。

ごとりと彼女の脇にある機械の上に透明なケースが置かれる。
「ひっ!」
その中では手のひらほどもある巨大なクモが蠢いていた。
『これは南米に生息する毒グモだ。このクモをお前に移植し融合させる。お前は改造人間クモ女として生まれ変わるのだ』
「ひぃーっ! いやぁぁぁぁっ! 助けてぇっ! 誰かぁぁぁぁっ!」
あらん限りの声で叫ぶ愛梨沙。
だが、その間にも彼女の躰に様々な機器類が取り付けられていく。
全身を白衣で包み、頭には目だけが覗くマスクをかぶった男女が無言で作業をしているのだ。
全員全く彼女の叫びには反応しようとさえしない。
『箕原愛梨沙の改造を始めよ』
「「「ヒィーッ!」」」
首領の声に白衣の男女たちは奇声を上げて応え、愛梨沙の顔に麻酔ガス用のマスクをつけていく。
必死に抵抗する愛梨沙だったが、やがて麻酔ガスが効き始め、意識が再び闇へと飲み込まれていった。

                   ******

サッと躰にかけられていた白い布がはがされる。
下からは、黒と赤の短い毛におおわれた異形の躰が現れる。
それは愛梨沙の滑らかで美しいボディラインそのままであり、腰の括れや両胸のふくらみも女性らしさを思わせるものだったが、全身は短い剛毛に覆われ、黒と赤の縞が両腕と両脚を彩っていた。
足のつま先は一つになって大きなかぎ爪となっており、かかとはハイヒールのようにとがっている。
両手も指先には鋭い爪が伸び、手首のあたりにはトゲのようなものもついていた。
何より変化が大きいのは頭部であり、巨大な触角状の角が両脇から伸びており、髪の毛はすべて無くなって躰と同じような短い剛毛が覆っている。
目は大きな丸い単眼が二つの他に額にも四つあり、それぞれ黒く輝いていた。
口元は人間のようではあるものの、左右からは鋏角が伸びており、下あごも左右に開くようになっている。
それはまさにクモと若い女性の融合した姿であり、クモ女という名にふさわしい姿だった。

『目覚めるのだ、クモ女よ』
重々しい声が響く。
その声に寝ていたクモ女の躰がピクリと動き、黒い単眼に光が反射する。
次の瞬間、大きな音を立てて彼女の両手両足を固定していた枷が勢いよく吹き飛んでいく。
改造された躰の威力を首領に見せつけるのだ。
以前とは比べ物にならない力に、思わずクモ女の口元に笑みが浮かぶ。
「ケケケケケ・・・」
ゆっくりと躰を起こすクモ女。
その目が自分の躰を見下ろしている。

『目覚めたようだな、クモ女よ』
「ケケケケケ・・・はい、首領様」
スッと姿勢を正し、両手をクロスして一礼するクモ女。
『気分はどうかな?』
「はい、とてもいい気分です。私は闇結社ヘルザロンの改造人間クモ女。このような素晴らしい躰に改造していただき感謝いたします。どうぞ何なりとご命令を。ケケケケケ・・・」
誇らしげに笑い声をあげるクモ女。
ヘルザロンの誇る脳改造によって、彼女の思考は完全にゆがめられてしまっている。
もはや彼女は女子高生の箕原愛梨沙ではなく、闇結社ヘルザロンの改造人間クモ女なのだ。

『それでよい。お前は生まれ変わったのだ。これよりはヘルザロンのために働くがよい』
「もちろんです。ヘルザロンのためなら何でも致します。ヘルザロンこそ私のすべて。ケケケケケ・・・」
『では最初の命令を与える。お前の家族を始末してくるのだ。できるな?』
「お言葉ですが首領様、あいつらは元家族です。始末するなど造作もないこと。このクモ女にお任せくださいませ。ケケケケケ・・・」
深く一礼し、くるりと背を向けて手術室を後にするクモ女。
その口元には最初の使命を命じられた喜びの笑みが浮かんでいた。

                   ******

カツカツと硬質な足音がアジトの廊下に響いていく。
初任務を終えてきたので、足取りもなんだか軽い。
家族だったなどという目障りな存在も抹消できた。
硬質化した自分の躰。
外骨格の強靭な肉体。
なんてすばらしいのだろうか。
こうして足音を響かせるのは本当に誇らしい。
そうクモ女は思う。

「あら、新入りさんかしら? キシュシュシュシュ・・・」
ちょうど自室から出てきたところらしい仲間の改造人間に声をかけられる。
茶褐色の硬そうな外骨格に覆われた美しい肉体に、巨大なハサミと化した右腕。
お尻からは毒針のついた尻尾が伸びている。
「はい。私はクモ女。改造を受けたばかりの者ですが、よろしく。ケケケケケ・・・」
「私はサソリ女よ。殺人なら任せて頂戴。よろしくね。キシュシュシュシュ・・・」
ハサミをカチカチと打ち鳴らして笑みを浮かべるサソリ女。
確かに人殺しは得意そうだ。
「私の部屋はここなの。気が向いたら遊びに来てね。キシュシュシュシュ・・・」
そう言って同じように誇らしげにカツカツと足音を響かせて去っていくサソリ女。
仲良くできそうな仲間がいるのは心強い。
あとでタイミングを見て部屋に行ってみることにしよう。
そう思ってほほ笑むクモ女。
さて、次の任務まで待機しなくては・・・
早く命令してほしいわ・・・

                   ******

夜道を歩く一人の少女。
スイミングスクールからの帰りとのこと。
おそらく改造前の自分と同じぐらいだろうとクモ女は思う。
よかったわね・・・
あなたは選ばれたのよ・・・
偉大なる闇結社ヘルザロンにね・・・
もうすぐあなたは改造人間になれる・・・
素晴らしい世界が待っているわよ・・・

周囲に誰もいなくなったのを確認し、木から木へと飛び移るクモ女。
改造人間である彼女にとってこんなことは造作もない。
事実枝をゆする音さえわずかで、人間の耳では聞こえないくらいだ。
あの少女も何も気が付いていないに違いない。

「ひっ!」
突然頭上から白いひものようなものが巻き付いてきたことに驚く少女。
「いやっ! 何?」
ねばつき絡みついてくるひもを必死ではがそうとするが、動けば動くほど絡みついてくる。
「いやっ! いやっ!」
全身に巻き付いてくるひもから何とか逃れようとするが、ひもはどんどん絡まってくるのだ。
「ケケケケケ・・・無駄よ。私の糸は人間の力ごときでは切れないわ」
「えっ?」
頭上からの声に思わず顔を上げる少女。
「ひぃっ!」
そこには木の上で彼女を見下ろしている黒と赤の毛で覆われたクモの化け物がいたのだ。
その化け物がお尻から糸を出し、彼女を絡めとっている。

「いやっ、むぐ・・・」
悲鳴を上げようとするものの、ひもと言っていい太さのクモの糸が彼女の口を封じてしまう。
「怖がることはないわ。あなたは選ばれたのよ。闇結社ヘルザロンにね。ケケケケケ・・・」
彼女が身動きできなくなったのを見計らい、樹上から降りてくるクモ女。
そして右手を上げて戦闘員たちを呼びつける。
すぐに数人の戦闘員たちが現れ、クモ糸に絡みつかれて動けなくなった少女をワンボックスカーへと運び込む。
「うふふふ・・・あなたはどんな改造人間になるのかしら。水泳の心得があるみたいだから、きっと水が得意な改造人間だと思うけど。改造が終わったら仲良くしましょうね。ケケケケケ・・・」
運び込まれた少女に向かってそうつぶやくと、クモ女は周囲を再度確認して自らもワンボックスカーに乗り込む。
やがてワンボックスカーはいずこへともなく闇の中へと消え去るのだった。

エンド

以上です。
感想などいただけますと嬉しいです。

それではまた。
  1. 2019/06/09(日) 20:13:56|
  2. 改造・機械化系SS
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サソリ女の暗躍

先日投下いたしました超短編シチュのみSS「サソリ女の誕生」の続編というか夫を始末するシーンを書きましたので投下いたします。

虫も殺せないような人が改造されて怪人になってしまい、嬉々として残忍なことをするというのは皆さんお好きでしょうか?
私は大好きなので、こういうシーンを書いちゃいました。
私同様にお好きな方に楽しんでいただければと思います。(*´ω`)

それではどうぞ。


サソリ女の暗躍

カツカツと廊下に硬い足音が響く。
外骨格がハイヒールのブーツのような形になった彼女の足が立てる音だ。
それが何だかうれしく感じる。
自分の躰が硬いことの証明だからだ。
大きな鋏のようになった右手も、動かすとカチカチと硬質の音を立ててとても気持ちがいい。
早くこの鋏で人間の首を挟んでねじ切りたいものだと思う。
「キシュシュシュシュ・・・」
サソリ女は思わず笑みを浮かべていた。

「キィー!」
廊下にいくつかあるドアのうちの一つに、全身を黒尽くめの躰にフィットした全身タイツで覆った男が一人立っている。
この闇結社ヘルザロンの尖兵たる戦闘員の一人だ。
彼女の部屋を示してくれているのだろう。
右手を斜めに上げて彼女に敬礼する戦闘員を見ると、あらためて偉大なるヘルザロンの一員となった喜びを感じてくる。
彼女は選ばれた改造人間であり、彼ら戦闘員の上位に立つ存在なのだ。
彼らを生かすも殺すも彼女次第であり、そのことがサソリ女のプライドをくすぐってくる。

「ご苦労様。キシュシュシュ・・・」
サソリ女は戦闘員にそう言うと、示されたドアを開けて部屋に入る。
そこは簡素だが清潔な部屋になっていて、普段過ごすには何の問題もなさそうだ。
彼女はそのままベッド脇にある姿見のところへ足を進める。
そこに映るのは生まれ変わった自分の姿。
茶褐色の硬い外骨格に覆われた躰は、少々の攻撃にはびくともしない。
拳銃やライフルの弾程度では傷つきすらしないであろう。
右手の鋏は人間の首くらい簡単にへし折ることができるだろうし、お尻から伸びる毒針は象さえも殺す。
そのことが彼女にはわかっていた。
彼女は生まれ変わったのだ。
偉大なるヘルザロンの改造人間に。
そのことが彼女はとても誇らしかった。
だが・・・

サソリ女は腕を顔の前でクロスするようにしてゆっくりと下ろしていく。
擬態モードにチェンジするのだ。
ポーズと意識によるスイッチとで擬態モードが発動し、彼女を以前の改造される前の姿へと変えていく。
擬態モードは改造人間の姿を人間のように見せ、周囲に怪しまれないようにさせるもので、潜入や暗殺などの活動には欠かせない。
彼女が改造されたのも夫である地境亮一の暗殺のためであり、そのためには元の地境美知恵の姿に擬態することが一番確実であるのだから、そうするのだ。

ゆっくりと腕を下ろし終わった彼女の姿は、改造される前の地境美知恵の姿そのものとなっていた。
もっとも、その目は冷たく表情は浮かない。
「このような姿・・・任務でなければするものですか・・・」
柔らかく白い肌。
これではほんのちょっとしたことで傷ついてしまうだろう。
力だって弱く、身を守ることさえ難しい。
人間とはなんと醜くひ弱な生き物なのか。
このような存在であったことが呪わしくさえ感じる。
改造人間になれたのはなんと幸運だったのだろうか。
人間になど二度と戻りたくはない。

ベッドの上に畳んで置かれていた服を着る。
それはこのアジトに連れてこられたときに着ていたもの。
同じものでないと、どこでどう怪しまれるかわからない。
サソリ女は服を着て身支度を整えると、任務を果たすために部屋を出た。

「「「キィー!」」」
ワンボックスカーの前で三体の戦闘員たちが敬礼する。
そのワンボックスカーには見覚えがあり、どうやら彼女を連れ去った時に乗せられたもののようだ。
おそらくこの三人も彼女を連れ去ったうちの三人だろう。
あの時の彼女は恐ろしさしか感じなかったはずだが、今の彼女にとっては彼らは使い勝手のいいコマたちだ。
どのように使っても構わないだろう。
「行くわ。車を出しなさい」
「キィー!」
ワンボックスカーの後部シートに乗り込むと、戦闘員たちに命令する。
すぐに黒いワンボックスカーは地下駐車場を出て、夜の街へと走り出した。

                  ******

やがて住宅街の一角に停車する黒いワンボックスカー。
そのスライドドアが開き、中から一人の女性が現れる。
「あなたたちは待機していなさい。いいわね」
「キィー!」
車の中にそう言うと、彼女はかつての我が家へと歩き出す。
「ふふ・・・懐かしの我が家・・・か・・・今は懐かしくもなんとも思わないけどね」
くすりと冷たい笑みを浮かべる彼女。
以前の地境美知恵ならばそのような表情を浮かべることはまずなかっただろう。

玄関の呼び鈴が鳴った時、地境亮一は脱兎のごとく玄関へと飛びだしていた。
こんな時間になるまで妻の美知恵が帰っていないなど、普通では考えられなかったからだ。
もし今晩一晩戻ってこないようなら、警察に行くことも考えていたぐらいだったのだ。
だから、玄関を開けてそこに妻の美知恵が立っているのを見た時には、思わず安堵の溜息を洩らしたぐらいなのだった。

「美知恵・・・よかった・・・よかった・・・」
「遅くなってごめんなさい、あなた」
しおらしくうつむいて見せる美知恵。
「うんうん。とにかく入って。話はあとだ」
「ええ、そうね」
美知恵は夫の後について家の中に入る。
そしてそのままリビングに行くと、亮一はぐったりとソファに深く腰を下ろした。
「よかったぁ・・・もしかして事故かなんかに巻き込まれたんじゃないかと心配したんだ。無事でよかった」
「ふふふ・・・ええ、大丈夫よ。私は何の問題もないわ」
「うん、よかったよ。でも、どうしてこんなに遅くなったんだい?」
亮一にとっては気になるところだ。
いったいなぜこんなに遅くなったのか?

「ふふふ・・・それはね、とても念入りにじっくりと改造手術をしていただいたおかげなの。だから時間がかかってしまったのよ」
リビングの入り口に突っ立ったままで笑みを浮かべている美知恵。
「えっ? 手術? 手術っていったい?」
「うふふふ・・・私は偉大なる闇結社ヘルザロンによって改造手術をしていただいたの。おかげで私は改造人間に生まれ変わったのよ」
「な、何を言ってるんだ?」
いつもと違う様子の妻に戸惑う亮一。
いったいどうしたというのだろうか?
「私はもうくだらない人間などではないわ。今本当の私の姿を見せてあげる」
そう言って彼女は服を脱ぎ始める。
「み、美知恵・・・いったい?」
突然服を脱ぎ始めた妻に驚き、思わずソファから立ち上がる。
「うふふふふ・・・見て、これが今の私の本当の姿よ。キシュシュシュシュ・・・」
何もかも脱ぎ捨てた美知恵は、両腕を顔の前でクロスするようにしてゆっくりと下ろしていく。
擬態モードが解除され、彼女の躰がみるみる外骨格に覆われていく。
亮一があっけにとられている間に、美知恵の躰は元のサソリ女の姿へと変貌していた。

「キシュシュシュシュ・・・」
「わぁっ! ば、化け物!」
思わず叫ぶ亮一。
目の前で美しかった妻がサソリの怪物になってしまったのだ。
「失礼な男ね。この素晴らしい躰が化け物ですって? 私から見れば人間の方がよほど醜い生き物だわ。キシュシュシュシュ・・・」
口元に笑みを浮かべ、ゆっくりと亮一に近づくサソリ女。
「み、美知恵は・・・美知恵はどうしたんだ?」
「キシュシュシュシュ・・・言ったでしょ。地境美知恵などという女はもういなくなったわ。私は生まれ変わったの。今の私は闇結社ヘルザロンの改造人間サソリ女よ!」
「そ、そんな・・・」
じわじわと近づいてくるサソリ女ににらみつけられ、亮一は身がすくんでしまったのか足が動かない。
「私の使命はヘルザロンの邪魔者であるお前を始末すること。お前が生きていては邪魔なのよ」
「や、やめろ! やめてくれ!」
必死に後ずさる亮一。
だが、すぐに壁に背中が付いてしまう。
「キシュシュシュシュ・・・無駄よ。お前はすでに私の姿を見た。ヘルザロンの改造人間の姿を見たものは生かしてはおかないわ」
サソリ女の右手が突き出され、亮一の首を挟み込む。
「ぐ、ぐわぁっ!」
「キシュシュシュシュ・・・このまま首をねじ切られるのと、象をも殺す猛毒の毒針に刺されるのとどっちがいいかしら?」
「た・・・助け・・・」
何とか鋏を外そうと必死に両手でサソリ女の腕をつかむ亮一。
「おしゃべりはここまでよ。お前には感謝しているわ。お前の妻だったおかげで、こうして私はヘルザロンの改造人間にしていただくことができたんですもの。ありがとう。うふふふふ・・・死ねっ!」
ひゅんと音を立て、サソリ女の尻尾が亮一の首筋に突き刺さる。
「グハッ!」
毒針から毒が注入され、見る間に顔色が紫色となって腫れあがり、口から泡を吹いて絶命する亮一。
「うふふふふ・・・私の毒の味はどうだったかしら? キシュシュシュシュ・・・」
掴んでいた鋏を外し、床に転がった死体を蹴り飛ばすサソリ女。
死体はすぐにぼこぼこと泡立ちはじめ、どろどろになって溶けていく
やがてじゅうたんに人型の跡と着ていた服が残るだけで、亮一の死体はきれいさっぱりと消え去ってしまった。
「キシュシュシュシュ・・・死体がなくなれば人が殺されたとは誰も思わない。夫婦でどこかへ行ったものと思うでしょうね」
サソリ女は満足そうにそう言うと、かつての我が家を後にして新たな自分の居場所へと戻るのだった。

エンド

いかがでしたでしょうか?
今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/05/18(土) 20:15:36|
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サソリ女の誕生

今日は午後から超短編を一本書きましたので投下しようと思います。
例によってシチュのみのものすごく短いものですが、こういうシチュが好きという方に楽しんでいただければ幸いです。

それではどうぞ。


サソリ女の誕生

「う・・・うーん・・・わ、私はいったい?」
固い台の上で地境美知恵(ちさかい みちえ)は目を覚ます。
天井には手術で使う無影灯のような照明が付いており、彼女をまぶしく照らしていた。
いったいどうして自分はこのようなところに寝ているのか?
だが、すぐに美知恵はその理由に思い至る。
彼女は誘拐されたのだ。
それも奇妙な連中に。

「は、離して! あなたたちはいったい?」
いつものように買い物を済ませて家に向かっていた彼女は、突然路地から姿を現した全身黒づくめの連中に襲われたのだ。
いずれも屈強な男たちのようだったが、その全員が全身にぴったりとフィットするタイツ状の衣装を身にまとい、頭には目だけが覗くマスクをすっぽりとかぶった上、腰には奇妙な紋章の付いたベルトを締めてキィーだのヒィーだのよくわからない奇声を発しているだけだったので、日本人なのか外国人なのかもわからない。
そんな連中が五人ほど現れて彼女を取り囲み、有無を言わさず抑えつけて車に連れ込んだことを彼女はまざまざと思い出す。
そこから先は記憶があやふやだが、おそらくガスのようなものを嗅がされ、意識がもうろうとなってしまったのだろう。

ガチャリと金属質の音がする。
腕を動かそうとしたところ、どうやら金属の留め具で固定されているらしく、両手を広げたままで動かせない。
両足も同じようで、彼女はいわば台の上に大の字になって寝かされているのだった。
しかも、上からかけられた白い布の下は一糸まとわぬ裸のようである。
どうしてこんなことになっているのか?
彼女には全く分からなかった。

『目が覚めたようだな、地境美知恵よ』
突然重々しい声が響き渡る。
それは頭上の方からであり、複数のスピーカーを通して音が発せられているらしい。
「わ、私の名を? あなたはいったい?」
美知恵は自分の名前を言われたことにショックを受ける。
それはとりもなおさず誰でもよかったことにたまたま巻き込まれたのではなく、明らかに彼女を狙ってこの連れ去りを行っているということだからだ。
『我はこの闇結社ヘルザロンの首領である。ヘルザロンはお前を歓迎する』
「ヘルザロン? 首領? 歓迎?」
いったいどういうことなのか、美知恵には全く分からない。
ヘルザロンとやらもその首領とやらも聞いたことのないものであったし、歓迎するなどと言われてもこのような目に遭わせておいて何を言っているのかと言いたくなる。

「ど、どういうことなのですか? 私を放してください」
ガチャガチャと金具を鳴らして何とか躰を自由にしようともがく美知恵。
だが、全く金具は外れる気配はない。
『無駄だ。その金具は人間の力では外れない』
重々しい声の言う通りなのだろう。
彼女の力ではとても外れそうにない。
「私をどうするつもりなのですか? 身代金でも取るつもりなのですか?」
『お前はこれより我がヘルザロンの誇る改造手術を受けるのだ。そしてヘルザロンの改造人間として生まれ変わる』
「手術? 改造人間?」
またわけのわからない言葉が語られる。
どんな手術なのかわからないが、冗談ではない。
『そうだ。お前はこれより改造手術を受け、我がヘルザロンの忠実な改造人間となって、我が命に従うのだ』
「い、いやです! そんなのはいやぁっ!」
首を振っていやいやをする美知恵。
『黙れ! お前は我がしもべとなって地境教授を始末するのだ。お前ならば教授に怪しまれずに近づくことができる』
「ええっ?」
美知恵は愕然とする。
地境教授とは夫の地境亮一(ちさかい りょういち)のことに違いないからだ。
私に夫を殺せというの?

『お前の夫の地境亮一は、若き新鋭の物理学者として注目を集め、新たなるエネルギー源の実用化にももうすぐ目処が立つというではないか。そのようなことをされては我がヘルザロンにとって不利益となる。よって、お前の夫は始末されねばならない』
「そんな・・・そんな理由で夫を、あの人を殺そうというのですか?」
なんと恐ろしいことだろう。
このヘルザロンというのはくるっている。
美知恵は背筋が凍るような思いがした。
『我がヘルザロンの邪魔者は消えてもらう。お前がその役目を果たすのだ』
「いやっ! いやです! 冗談じゃないわ! あの人を殺すなんて絶対にいやっ!」
ガチャガチャと音を立て、必死に抜け出そうとする美知恵。
だが、手も足も全く自由になる気配はない。

『今はそう思うだろう。だが、改造手術を受ければ、お前は我が忠実なしもべとなり、喜んで我が命に従うようになるのだ』
「いやっ! いやぁぁぁぁぁっ!」
『黙れ! 手術を開始する。この女にふさわしい生物は決まったか?』
「はっ、この女には暗殺向きの生き物として、砂漠にすむ猛毒の殺人サソリを提案します」
いつの間にか彼女の周囲に現れた白衣の連中の一人が声に答える。
その手には禍々しく尾を振り上げる大きなサソリがガラスケースに入れられたものを持っている。
「ひっ!」
猛毒を持つというサソリの姿に美知恵は思わず声をあげる。
だが、白衣の連中は意に介した様子もなく、美知恵の寝かされている台の周囲に様々な機械を用意し始めた。
いずれも頭には黒づくめの連中と同じような目だけが覗く白いマスクをかぶっており、その目が冷たく美知恵を見下ろしている。
中には女性と思える体形の者もいるが、皆無言で器具をセットしていた。

「準備完了しました」
『手術を開始せよ』
「「「ヒィーッ!」」」
重々しい声に応えるように白衣の連中が奇声を上げ、スイッチを入れていく。
「いやぁっ! 放してぇっ! いやぁっ!」
美知恵の躰にチューブが差し込まれ、どす黒い液体が送り込まれていく。
顔にはマスクが嵌められ、そこから麻酔ガスが流される。
美知恵は必死にもがいていたが、やがて意識は闇の中へと飲み込まれていくのだった。

                   ******

数時間後、かけられていた白い布がはがされる。
そこには異形の姿の女が一人寝かされていた。
全体的な躰のラインは美しい女性のものであり、腰の括れや両胸のふくらみも女性らしいものであったが、その全身は茶褐色の外骨格に覆われ、頭も髪の毛がすっかりなくなってヘルメット状の外骨格が覆っており、目は黒く丸いサソリの単眼となり、口元には左右に鋏角が形成されていた。
背中からお尻にかけては節状のラインが走り、そのまま毒針を持つ尻尾となって伸びている。
右手は力強く大きな鋏と化しており、挟まれればただでは済まないだろう。
つまりそこにいるのは人間の女性とサソリが融合したものであり、まさに人間サソリと呼べるような姿だったのだ。

『目覚めるのだ、サソリ女よ』
天井から重々しい声が響く。
その声に反応したかのように寝ていた躰がピクリと動き、大きな音を立てて手足を拘束していた金具が飛び散っていく。
これは一種のデモンストレーションであり、生まれ変わった強力な躰を首領に見せるためでもあった。
「キシュシュシュシュ・・・」
奇妙な声をあげながらゆっくりと起き上がるサソリ女。
それは改造手術を受けて生まれ変わった美知恵の姿であった。

「キシュシュシュシュ・・・」
『目覚めたようだな、サソリ女よ』
重々しい声にコクリとうなずくサソリ女。
「はい、首領様。私は偉大なるヘルザロンの改造人間サソリ女。どうぞ何なりとご命令を。キシュシュシュシュ・・・」
両手をクロスするようにして首領に一礼するサソリ女。
脳改造によって、彼女の意識はもはやヘルザロンの一員に染められてしまっていたのだ。
『サソリ女よ。お前にヘルザロンの邪魔者である地境亮一の抹殺を命じる。できるな?』
「もちろんです。ヘルザロンの邪魔者はこの私が抹殺いたします。キシュシュシュシュ・・・」
猛毒の尻尾を振り立て、ぺろりと舌なめずりをするサソリ女。
『ほう・・・愛する夫を殺すなどできないのではなかったか?』
「ああ・・・申し訳ありません。それは生まれ変わる前の愚かな人間だった時のことです。今の私にはあの男への思いなど全く存在いたしません。むしろヘルザロンの邪魔者として憎しみを感じるぐらいですわ。キシュシュシュシュ・・・」
思わず膝を折ってさらに深く頭を下げるサソリ女。
『では行くがいい、サソリ女よ。地境亮一を始末してくるのだ』
「かしこまりました首領様。このサソリ女にお任せくださいませ。キシュシュシュシュ・・・」
すっと立ち上がり、口元に笑みを浮かべるサソリ女。
そしてくるりと振り返ると、彼女は任務を果たすためにその場を後にするのだった。

エンド

いかがでしたでしょうか?
今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/05/12(日) 19:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
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新たなる組織

昨日で「かわいいは正義」も終了し、今年の新年SSも終了かと思ったじゃろ?
もうちょっとだけ続くんじゃ。

ということで、年明け早々に短編一本書き上げましたので、投下します。
タイトルは「新たなる組織」です。
まあ、だれもが考えたようなシチュ短編です。
ドラゴンを倒した者はドラゴンとなるのです。

お楽しみいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。


新たなる組織

「「「サンダー・キャノン・アターーーーーック!!」」」
三人の声が一つになり、構えたバズーカのようなキャノン砲が光の束を撃ち出していく。
今までに数多くの悪の怪人たちを葬り去ってきたサンダーチームの決め技だ。
赤青黄色の三つのパーツを組み合わせてできるサンダーキャノンは、彼ら三人のピンチをたびたび救い、そのたびに悪の組織ザゴーンの首領は苦い思いをしてきたのだ。
そして今、ついに追い詰められたザゴーンは首領自らが出撃したものの、サンダーチームの決死の反撃で逆に最後の時を迎えたのだ。

赤青黄色の三本の光の束が集束し、渦を巻いて襲い掛かる。
「お、おのれーーー! 話が違うではないかーーー!!」
全身を黒いフード付きの衣装で覆ったザゴーンの首領が叫び声をあげる。
次の瞬間、光の束が首領の躰を貫き、光の中へと飲み込んでいく。
「うおおおおおお!」
首領の断末魔の叫びが光の中から響き、やがて小さくなっていった。

「ハアハアハア・・・や、やったのか?」
赤いスーツとヘルメットを身に着けたサンダーレッドが、荒い息を整えながらそうつぶやく。
「ハアハアハア・・・あ、ああ・・・どうやらな・・・」
同じデザインの青いスーツとヘルメットのサンダーブルーも、どこか信じられないと言った雰囲気だ。
「終わったの? 私たち・・・勝ったの?」
パーソナルカラーは黄色だが、チームの紅一点のサンダーイエローも半信半疑で首領の消滅した後を見つめていた。

やがてゆっくりと決めポーズを解除し、サンダーキャノンを各々のパーツに分解してベースに転送する三人。
もうこのサンダーキャノンを使うこともないだろう。
世界は平和になったのだ。
長い戦いが今終わった。

『ご苦労様。こちらでも首領の消滅を確認したわ。完全に消滅よ。復活はありえないとコンピュータの計算でも出たわ』
三人のヘルメットに司令部からの通信が入る。
耳に心地の良い柔らかい声で指示を伝えてくるいつものオペレーターではなく、水海明日香(みずみ あすか)司令官本人が直接呼びかけてきたのだ。
その声はやや震えているようで、司令自身もザゴーンの首領が消滅したことをどこか信じられない気持ちなのかもしれない。
『とにかく三人ともベースに帰還してちょうだい。詳しい話はそこで聞くわ』
「了解です。よし、みんな、ベースに戻ろう」
「了解」
「はい」
三人の戦士たちはうなずき合い、スーツを解除してベースに戻るのだった。

                  ******

「カンパーーイ!!」
「「「カンパーーイ」」」
カシンカシンとグラスの当たる音がする。
サンダーチームの司令部では、ささやかながら祝宴が行われていたのだ。
いくつものオードブルがいつもは作戦地図などが広げられているテーブルの上に広がり、おいしそうな香りが立ち上っている。
アルコール類も日本酒やワイン、ビールなどがたくさん置かれていた。
いずれも防衛軍本部からの差し入れらしく、今回の勝利があらためて地球に平和をもたらしたことを感じさせられる。
今日は、その防衛軍本部から代表として佐崎(ささき)防衛本部長もやってきて、サンダーチームをねぎらっていた。

あのあと、司令部では再度ザゴーンの状況を確認したものの、やはりその活動や痕跡を確認することはできなかった。
つまり、悪の組織ザゴーンは首領とともに完全に消滅したのであり、もはや地球に災厄をもたらすことはなくなったと判断されたのだ。
そのため、正式にサンダーチームの功績をねぎらい、お祝いをしようということになったのである。

「いやぁ、本当によくやってくれた。水海司令、それにサンダーチームの諸君」
日本酒を満たしたグラスを手に、サンダーチームをねぎらう佐崎本部長。
サンダーチームは防衛軍の一部局であり、本部長はその防衛軍を統括する立場なのだ。
いわばサンダーチームにとっては上部組織のトップということになる。

「こちらこそありがとうございました、本部長。これまでの数々の本部の支援無くして、今回の勝利はありえなかったと思います。本当に本部の後方支援に感謝いたします」
いつもの司令官の制服ではなく、今日はドレスに身を包んでいる水海司令。
そのすらっとした姿は凛として美しい。
「いやいや、我々としても支援してきた甲斐があったというものだよ。まさかザゴーンを滅ぼせるとは正直思っていなかったのだ」
「そうなのですか?」
少し意外という表情をする水海司令。
「いやいや、もちろん君たちがいる限り負けはしないとは思っていたよ。だから、いずれは奴らが諦めて手を引くものと思っていたのだ。滅ぼすというのではなくな」
ああ、なるほどと水海司令は納得する。
確かに予算や装備等の様々な制約がある中で、ザゴーンを滅ぼせるとは彼女にも予想外のことだったかもしれない。

「だが・・・これで、ここも閉鎖になる。寂しくなるな」
佐崎本部長の声のトーンが少し落ちる。
「ええ・・・確かに・・・」
ぐるりと司令室内部を見渡す水海司令。
苦しかったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、さまざまな思い出がこの司令部には詰まっていた。
だが、ザゴーンが滅びた今、それはすでに過去の思い出なのだ。

「ねえねえ、尊(たける)はこれからどうするの?」
サンダーイエローの由香里(ゆかり)が、サンダーレッドこと尊に声をかける。
「そうだなぁ。やっぱり俺はもう一度レーサーに挑戦かな」
オードブルの鶏もも肉を食べながら尊が答える。
彼はサンダーレッドに選抜される前は、若手レーサーとして活躍していたのだ。
「丈(じょう)はどうする?」
そのまま自分が聞かれたことをサンダーブルーこと丈に聞く。
「そうだなぁ・・・弁護士の資格でも取ろうかな」
ワインを傾けながら答える丈。
彼はその明晰な頭脳と豊富な知識で、何度となくチームの危機を救ってきたのだ。
「そういう由香里はどうなんだ?」
「私はねぇ。アクション女優さんとかいいかなぁって。ほら、サンダーチームで本当のアクションたくさんやったし」
目を輝かせる由香里。
確かに容姿端麗で運動神経も抜群な彼女ならアクション女優にはうってつけかもしれない。
三人はそれぞれ今後のことを考え始めていたのだった。

「司令? 水海司令はこれからどうするんですか?」
ワクワク顔の由香里。
「ええ? 私? そうねぇ・・・しばらくは夫や子供と家族水入らずで過ごしたいわね」
家族のことを思い笑顔を浮かべる水海司令。
彼女はいわば女性ながら単身赴任であり、夫と息子とは離れて暮らしてきたのである。
「あー、やっぱりそうですよねー。幸一(こういち)君も寂しかったでしょうしねー」
「そうねぇ。これからはやっと一緒に暮らせるわ・・・ね」
司令の手からグラスが落ちる。
「司令? あ・・・」
思わず駆け寄ろうとした由香里も、急に意識を失ったように床に倒れ込む。
「う・・・あ・・・こ、これ・・・は」
「ま、まさか・・・くす・・・り?」
尊も丈もその場に崩れるように倒れ込む。
「み・・・んな・・・これ・・・は・・・」
なんとか意志の力でテーブルに片手を付き立っていた水海司令だったが、彼女も急速に意識が遠くなっていく。
「ああ・・・」
ついに耐え切れずに床に倒れ込む水海司令。
その様子を、佐崎本部長は冷たい笑みを浮かべて見つめていた。

                   ******

「う・・・う・・・ん」
ゆっくりと目を開ける水海司令。
その拍子に躰が動き、ジャラジャラと鎖が鳴る音がする。
「はっ? こ、ここは?」
周囲は薄暗く肌寒い。
それもそのはず、彼女は一糸まとわぬ裸で両手首を手錠のようなもので固定され、天井から鎖でつながれてしまっていたのだ。
「な? こ、これはいったい?」
自分の置かれた状況に愕然とする水海司令。
いったい何がどうなってしまったというのか?

「おや、目が覚めてしまったのかね? できれば寝たまま新たな人生を始めてもらおうと思ったのだが・・・」
聞きなれた声がする。
「佐崎本部長? これはいったい?」
じゃらっと鎖の音をさせ、声のする方をにらみつける水海司令。
そこには防衛軍本部長の制服に身を包んだ佐崎本部長がいた。

「ん? 君たちが困ったことをしてくれたのでねぇ。その責任を君たち自らに負ってもらおうというのだよ」
佐崎がそう言うと、水海司令の前の壁がスライドしていく。
「あっ、尊君、丈君、由香里ちゃん!」
スライドした壁の向こうには巨大なガラスのシリンダーのようなものが三本並んでおり、そのそれぞれに裸にされたサンダーチームの三人が入れられている。
いずれも気を失ったままのようであり、シリンダーのガラス壁に寄り掛かるようにして立たされていた。
「佐崎本部長! いったいこれはどういうことなんですか!」
両手を固定されているので動ける範囲は限られているが、水海司令は必死に本部長に詰め寄ろうとする。

「水海君・・・君には失望したよ。我々の飯の種を奪ってしまってどうするつもりかね?」
「は? どうする・・・とは?」
「わからんのかね? ザゴーンが消滅してしまえば、我々防衛軍に対する予算も減り、人員も縮小される。現にサンダーチームはお払い箱で、君だって職を失うではないか。いったい全体で何人の人間が不幸な目に遭うかわかっているのかね?」
佐崎本部長がふうとため息をつく。
おそらく彼自身ザゴーン崩壊を機に後任に席を譲るために勇退を迫られるだろう。
そんなことがあってはならないのだ。
「だいたい女性である君を司令官などにしたのは、たいして戦闘に詳しくないだろうからザゴーンと一進一退の適当な勝負をしてくれると思ったからだよ。本気でザゴーンを滅ぼすつもりなら、最初から君を司令官などにはしない」
「そ・・・んな・・・」
本部長の言葉に青ざめる水海司令。

「まあ、滅んでしまったものは仕方がない。ザゴーンもそろそろ退場してもよかったのだ。ほら、特撮番組でも新番組との入れ替え時期ということだよ」
にやりと笑う本部長。
その笑みがことのほか不気味に思える。
「組織を維持するためには敵がいればよい。新たな敵ということだな。敵さえいれば、わが防衛軍の必要性は増し、予算もいつも通りに降りるだろう。人員整理もせずに済むというものだ」
そして、彼自身もザゴーンとの戦闘を指揮した経験が重要視され、より重要な職に就けるに違いない。
「そこでだ。君たちには新たな敵となってもらおうと思うのだ。今度の敵は昆虫系で行こうと思うのだがどうかね? 昆虫系はグロテスクだし、人々の嫌悪感も大きいと思うのだがね。組織名も考えてあるぞ。私は親切だな。バグデモンというのだがどうかね?」
「あ・・・あなたは・・・あなたはそれでも平和を守る防衛軍の人間か!」
怒りに燃える目で本部長をにらみつける水海司令。
自分たちの仕えていた上司がこんな人間だったとは・・・

「平和ねぇ。平和など幻想だよ。戦いこそが人間を強くするのだ。なに、安心したまえ。君たちの後任はすでに選定作業に入っている。君たちが新たな破壊活動を始めるころには、こちらの態勢も整うだろう」
「ふざけるなぁっ!」
「新組織の女王となる君ともあろうものが、そんなに感情的ではいかんなぁ。ここが何かわかるかね?」
本部長の指し示す先には、三人が入れられているガラスのシリンダーのほか、様々な機械が壁面を埋め尽くしている。
まるで何かの研究室のようだ。
「ここは表向きは防衛軍の科学研究所だがね、実のところはザゴーンの怪人製造所でね。つまり、君たちが戦ってきた相手というのは、ここで生み出された怪人たちだったのだよ。一般人をさらってきてね」
「そ・・・んな・・・」
言葉が出ない。
すると今まで倒してきたザゴーンの怪人たちは・・・

「さて、まずはサンダーチームの三人に新たな敵役となってもらうとしよう。残念なことにカプセルが三つしかないのでね。君の順番はそのあとだ」
「や、やめて! 三人を開放して! 敵は私だけでもいいでしょ!」
「そうはいかん。敵はある程度組織化されているように見せねばな。なに、こいつらは今後も君の部下として役立ってくれるさ」
佐崎本部長が顎をしゃくってスイッチを入れるように促す。
それを見て、白衣の研究所員たちがいくつかのスイッチを入れていった。

「うわぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁ!」
「ぐあぁぁぁ!」
急激に躰に走る電流に目を覚まし、苦痛の悲鳴を上げる三人。
ガラスのシリンダー内にモクモクと白い煙が湧き出して充満していく。
「な、なんだ? ぐわぁぁぁ!」
「ゲホッゲホッ! た、たすけ・・・」
「うごっ・・・うごわぁぁぁ」
煙に覆われて三人の姿が見えなくなっていく。
それに合わせるように、三人の声もだんだんと聞こえなくなっていく。
「や、やめて! やめてぇ!」
「ふふふふ・・・君の新たな部下たちの誕生だよ。喜んであげたまえ」
「いやっ! いやぁぁぁ!」

                   ******

やがて、シリンダー内の煙が晴れ、ゴウンゴウンという音とともにシリンダー自体が上に持ち上げられていく。
「キシャー!」
「クキキキキー!」
「ギシュシュシュシュ!」
奇声を上げながら、ゆっくりと歩み出す三体の異形の怪物たち。
それは先ほどまで、彼女の良く見知っていた人物たちであったが、今や三人はこれまでとは似ても似つかない怪物になっていたのだった。

「キシャー! なんていい気分なんだ。俺様のこの力で人間たちをひねりつぶしてやるぜ」
サンダーレッドであった尊は、黒光りする外骨格に覆われ、額から巨大な角を振りかざすカブトムシの化け物になっていた。
「俺様はデスビートル。これからはバグデモンのために働くぜ。キシャー!」
両手のこぶしを握り締め、力強さを誇示するデスビートル。

「クキキキキー! アタシはキラーワスプよぉ。アタシのこの針で、人間どもをたくさん始末してやるわぁ。クキキキキー!」
サンダーイエロー由香里はスズメバチの女怪人となっていた。
両胸とお尻には鋭い針が突き出ており、先端からは猛毒が滴っている。
口元だけは以前の由香里のままであり、真っ赤な唇が妖艶さを漂わせていた。

「ギシュシュシュシュ! 俺様はヘルワーム。俺様のかわいいミミズたちは人間の脳を食い荒らし、俺様の思うままに動く虫人間となるのだ。ギシュシュシュシュ!」
サンダーブルー丈も巨大なミミズの化け物と化していた。
彼の躰はくねくねと軟体のように動き、節々にしがみついている小型ミミズは耳から人間の頭に入り込んで脳を食い、ヘルワームの意思によってコントロールされるのだ。

「キシャー! 俺たちはバグデモン三人衆」
「クキキキキー! これからは人間どもにたっぷりと恐怖を味わわせてやりますわぁ」
「ギシュシュシュシュ! さあ、司令も生まれ変わり、われらの女王となるのです」
三体の怪人たちはにやにやと笑いながら、水海司令のそばに来る。
「い、いやっ! 来ないで! いやぁっ!」
必死に身をよじって逃れようとする水海司令。
だが、抵抗もむなしく、彼女は三体の怪人たちに拘束した鎖を引きちぎられ、無理やりガラスのシリンダーに入れられてしまう。
「いやぁっ! 出してぇ! お願いよぉ!」
どんどんとシリンダーのガラス壁をたたくものの、全くびくともしない。
やがて、スイッチが入れられると、彼女の姿も白い煙の中へと消えていった。

                   ******

「ゴギギギギィ! なんてすばらしい躰なのかしらぁ。私はもう下等な人間などとは違いますわぁ。ゴギギギギィ!」
茶褐色の外骨格に覆われた躰を愛しそうに眺める水海司令。
彼女の躰はまるで巨大化したゴキブリのようであり、つややかな翅が背中に広がり、蛇腹状の腹部は多数の卵を産むためのタンクになっている。
額からは長い触覚が伸び、両目は複眼と化していたが、こちらもキラーワスプ同様に口元だけは人間のままで、それが妙に妖しい色気を出していた。
「ゴギギギギィ! 私はバグデモンの女王クィーンローチよぉ。これからこの世界は私たちバグデモンのものになるの。そのためにかわいいローチ兵をたっぷりと産んでやりますわぁ。ゴギギギギィ!」
そう言って口元に手の甲を当て高笑いをするクイーンローチ。
もはや彼女の心に正義を愛する心はない。
いかにして地球をわがものにするかしか考えられなくなっているのだ。

「キシャー! 偉大なる女王クイーンローチ様」
「クキキキキー! どうかアタシたち三人衆に」
「ギシュシュシュシュ! 何なりとご命令を」
三体の蟲怪人たちがひざまずく。
「ゴギギギギィ! お前たち、人間どもにわれらの恐ろしさをたっぷりと思い知らせてやるのです。いいですわね」
「「「ハハァッ!」」」
女王の命に三体がいっせいに頭を下げる。
その様子に、脇の方から拍手の音が響いた。
「いやぁ、さすがにバグデモンの女王。これからはしっかりと頼みますよ」
にやにやと笑っている佐崎本部長。
「ゴギギギギィ。お任せください。バグデモンの強さをとくとご覧くださいませ」
「ふふふふ・・・私に対して服従する機能はうまく働いているようだな。あとは新戦隊を発足させ、バグデモン対策に乗り出さねば」
下等な人間と言いつつ、人間である自分を襲おうとはしない四体の怪人に満足する本部長。
これで防衛軍も安泰で、彼自身も出世するだろう。
そしていずれは政界にでも・・・

「そうそう。君の夫と息子には、君は突然失踪したということにでもして伝えても構わんかね?」
新戦隊の準備のためにこの場を立ち去ろうとした本部長が、足を止めて振り向く。
「ゴギギギギィ! 夫? 息子? 私はバグデモンの女王クイーンローチですわぁ。人間の夫だの息子だのそのようなもの、私にはもう関係がありませんですわぁ。ゴギギギギィ!」
口元に笑みを浮かべているクイーンローチ。
きっと今後の人間たちに対する襲撃を考えて胸をときめかせているのだろう。
「そうだったな。まあ、適当にやっておくさ。それじゃ頑張りたまえ、女王よ」
「ゴギギギギィ! さあ、お前たち。新たな私たちの巣を作りに行くわよ。ついていらっしゃい」
「キシャー!」
「クキキキキー!」
「ギシュシュシュシュ!」
本部長が出ていくのを見届けた四体は、これまでザゴーンの怪人を送り出してきた出口を抜け、そこから外へと出ていくのだった。

今、新たな戦いが始まる。

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければコメントなどいただけますと嬉しいです。

今年の新年SSはここまでです。
また次作に向けて頑張りますのでよろしくです。

それではまた。
  1. 2019/01/05(土) 21:00:00|
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カマキリとサソリ

昨日の「ゴム女のフェラ」はいかがでしたでしょうか?
いつもの作品とはちょっと違う感じだったので、違和感を感じられた方もいらっしゃったかもしれませんね。

今日はいつものように女怪人に改造されちゃうお話です。
まあ、オーソドックスなありがちな話かも。
タイトルは「カマキリとサソリ」です。
お楽しみいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


カマキリとサソリ

轟音とともに巨大な炎を噴きあげて爆発が起こる。
またしても送り出した怪人がミラージュマリーによって倒されてしまったのだ。
青いコスチュームに身を包んだミラージュマリーは、彼らワームリアに取って天敵だ。
彼女を倒さない限り、この地球を支配することはできない。
そのため、何体もの怪人を送り込み彼女の抹殺を計ったのだが、ことごとく返り討ちにあってしまったのだ。
そして今回もまた・・・

「うぬぅ・・・おのれミラージュマリー! 次こそは必ず・・・」
とげとげの付いた全身鎧のような衣装に身を包んだ偉丈夫が歯噛みする。
ワームリアの作戦指揮官グモーゾだ。
その実力は首領にも認められているのだが、このままミラージュマリーに負け続けるようなことがあれば、いつ処刑されてもおかしくはない。
その焦りがグモーゾを苛立たせる。
「なんとか・・・なんとかせねば・・・」
だが、妙案と呼べるものは浮かばない。
せめてミラージュマリーの戦う気持ちをそらせたり、隙を作り出すことができれば打つ手も生まれようというものなのだが・・・

「む?」
いつまでも見ていても仕方がないと思い、モニタードローンを回収しようと思ったところ、思いもかけないものをグモーゾは目にしてしまう。
「これは・・・」
それはいつも怪人を倒したあとすぐに姿を消していたミラージュマリーの追跡に成功していたのだ。
たまたま周回させていたモニタードローンのカメラに納まったもののようだったが、そこにはミラージュマリーがごく普通の女性、しかも制服姿の女子高生になる瞬間のシーンが捉えられていたのだ。
「なんと! ミラージュマリーの正体は日本の女子高生ということなのか! この女子高生の正体を早急に調べるのだ!」
「キキーッ!」
グモーゾの指示に従い、全身を黒タイツに包んだ戦闘員たちが調査に出発する。
ミラージュマリーの正体が判明するのは、それから間もなくのことだった。

                   ******

「う・・・」
意識がゆっくりと戻ってくる。
ここは?
私はいったい?
自分に何が起こったのかを思い出す。
そうだわ・・・私は確か外出中に・・・

その日所用で外出していた彼女は、その帰り道でいきなり黒づくめの連中に襲われ、意識を失わされたのだ。
おそらくそのまま車にでも乗せられ、連れてこられてきたのだろう。
いわば誘拐されたわけだ。

躰を動かそうとした彼女は、自分の躰が何かで拘束されていることに気が付いた。
両手首と両足首が固定され、何か台のようなものに磔にされているのだ。
「こ、これは?」
試しに手足を動かそうとしてみるが、がっちり固定されているために動けない。
いくら逃げられないようにするためとは言っても、ここまで拘束するとは普通じゃないのではないだろうか。
しかも周囲は薄暗く、何があるのかもよくわからない。
まるで闇の中に放り出されてしまったかのようだ。
「誰かぁー! 誰かぁー!」
少し大きな声で呼んでみるものの、どこからも返事はない。
いったいこれからどうなってしまうのか・・・
彼女は恐怖に震えていた。

やがて、闇の一部が開き、体格のいい男が一人、制服姿の少女を抱えて入ってくる。
少女は両手をだらんと下げ、どうやら意識を失っているらしい。
おそらく彼女と同じく拉致されてきたのだろう。
「あなたが私をここへ?」
男をにらみつけるようにそう尋ねる彼女。
「ん?」
顔まですっぽりと覆うヘルメットの下から鋭い視線が彼女を射る。
「気が付いていたのか。少し待っていろ」
男は抱えていた少女を、彼女から少し離れた位置の台に彼女と同じように寝かせていく。
そして両手と両足を金具で固定し、外れないことを確かめた。

「えっ? あ、茜(あかね)ちゃん? まさか茜ちゃんなの?」
寝かされた少女の横顔に見覚えがあることに気が付く彼女。
娘の友人であり、よく家に遊びに来てくれている子に間違いない。
彼女もいつしか苗字よりも名前で呼ぶことに慣れてしまったぐらいなのだ。

「ククク・・・そうだ。この娘は持林茜(もちばやし あかね)。お前の娘である秋中麻里亜(あきなか まりあ)の友人だ。そうであろう、秋中喜美子(あきなか きみこ)?」
いかつい男が彼女の名前を言い当ててくる。
これは明らかに彼女のことを知っていて誘拐してきたのだ。
「私たちをどうするつもりですか? 何か恨みでも? そうだとしても、その子はまだ未成年なんですから、解放してあげて」
男をにらみつけながらも、できるだけ冷静に話そうとする喜美子。
いったいこの男が何者なのかさっぱりわからないが、どうして自分たちを狙ってきたのだろう。

「クククク・・・そう心配するな。お前たちは大事な素体だ。手荒に扱ったりはせん」
台に寝かされた二人を前に、グモーゾは笑みを浮かべる。
この二人を改造し、ワームリアの怪人にするのだ。
母親と友人がワームリアの怪人となれば、ミラージュマリーも手を出すのをためらうに違いない。
そこを攻撃することができれば、ミラージュマリーもたやすく倒せるかもしれないのだ。
そのためにもこの女たちを念入りに改造してやらねば。
クックック・・・

「う・・・うーん」
台に寝かされた少女がゆっくりと目を開ける。
「茜ちゃん! 茜ちゃん!」
「えっ? あっ、麻里亜ちゃんのおば様?」
喜美子の声に振り向いた茜が友人の母を認識する。
「良かった。目が覚めたのね」
「おば様、私はいったい?」
目が覚めたことで自分が捕らわれていることに気が付く茜。
両手両足が固定されていて動けないのだ。
どうやら二人ともが同じ状況らしい。
「私たちは彼に誘拐されてしまったみたい。でも、きっとすぐに警察が・・・」
「それはどうかな?」
ニヤニヤと笑っているグモーゾが口をはさむ。
「ここは我々ワームリアの地底アジト。人間の警察風情がここまで来られるとでも思うのかね?」
「ワームリア・・・」
「ワームリア!」
茜と喜美子の表情が青ざめる。
ワームリアと言えば最近世間を騒がせている謎の組織である。
まるでテレビの特撮番組の世界から抜け出てきたような怪人が暴れ回り、謎の女性がそれを倒しているというのだ。
この男はそのワームリアだというの?

「先ほども言った通り、お前たちは大事な素体だ。傷つけるつもりはないから安心しろ」
「私たちをどうするつもりなんですか? ワームリアがなぜ私たちを?」
喜美子が先ほどと同様にグモーゾをにらんでくる。
やはりあのミラージュマリーの母親だ。
意志の強さが感じられる。
「お願いです。うちに帰して・・・」
少女のほうはそうでもないようだが、それが逆にか弱さを感じさせてミラージュマリーを油断させるだろう。

「ククク・・・お前たちはミラージュマリーの正体を知っているのではないか?」
「えっ?」
グモーゾの質問に思わず顔を見合わせ、ふるふると首を振る茜と喜美子。
「知りません」
「ミラージュマリーが私たちと何の関係が?」
「ほう・・・本当に知らんようだな。では教えてやる。我らワームリアに歯向かうミラージュマリーの正体は、秋中麻里亜なのだ」
「えっ?」
「えっ? 麻里亜ちゃんが?」
喜美子も茜も驚きに目を丸くする。
それはそうだろう。
自分の娘が、自分の友人が謎のヒロインとしてワームリアと戦っているなんて信じられるはずがない。
「嘘! 嘘です! あの子がそんな・・・」
「嘘ではない。お前の娘はミラージュマリーなのだ」
「そんな・・・」
言われてみれば娘はときどき怪我をしていた。
かすり傷程度らしかったし、学校で運動中に傷をつけたと言っていたけど・・・
あれは戦いの傷だったの?
喜美子はそのことに気付かなかったことを悔やんでしまう。
あっ・・・
であれば・・・

「私たちを人質にするのですか?」
人質にされ娘が苦しむのを見るぐらいなら・・・
喜美子はそう思う。
でも・・・茜ちゃんは・・・
「私はどうなっても構いません。でも茜ちゃんは、茜ちゃんは未成年なんです。家に帰してあげて!」
「おば様」
「茜ちゃん、人質なら私だけで充分よ。あなたは解放してもらうから」
「おば様・・・」
今にも泣きそうな顔で喜美子を見る茜。
どうして私たちがこんな目に・・・

「残念だが二人とも帰すわけにはいかんな」
「どうしてですか? 人質なら私だけで・・・」
「言ったであろう。お前たちは大事な素体だと。お前たちはこれより改造を受け、我がワームリアの女怪人へと生まれ変わるのだ」
腕を組んでククッと含み笑いを漏らすグモーゾ。
二人の女たちの青ざめる顔がなかなかにそそる。
「女怪人に? まさか・・・私たちに娘と戦わせようと?」
「いやっ! いやぁっ!」
「そう。そのまさかだ。お前たちを女怪人にしてミラージュマリーを始末させる。母親や友人が怪人化したとなれば、ミラージュマリーとて冷静ではいられまい。その動揺した隙をついて倒すのだ」
愕然とする喜美子や絶叫する茜に言い放つグモーゾ。
「そんな・・・娘と戦うなんてできるはずが!」
「いやぁ・・・怪人になるのはいやぁっ!」
「クックック・・・すぐにそんな感情は消え、ワームリアのためなら何でもするようになるのだ。楽しみにしているがいい」
指をパチンと鳴らして合図するグモーゾ。
その合図を待ちかねたかのように数名の戦闘員たちが現れ、喜美子と茜の周囲の装置を操作する。
やがて天井から手術用の無影灯のようなものが下がってきて、カクテル光線のようなきらびやかな光を二人の躰に当てていく。
同時にいくつものチューブが二人の躰に突き刺さり、毒々しい色の液体が注ぎ込まれていく。
「いやぁっ!」
「ああっ! あああっ!」
苦悶の表情を浮かべる二人。
その様子を見て、グモーゾは笑みを浮かべながらその部屋を後にした。

                   ******

カツコツと硬質な足音が響いてくる。
ハイヒールのかかとが床を打つような音だ。
室内に現れる二つの影。
その姿にグモーゾはニヤッと笑みを浮かべた。
「改造が終わったようだな。さあ、お前たちが何者か、俺に言うがいい」
「ケケケケケ! 私は偉大なるワームリアの女怪人カマギリアですわぁ。ケケケケケ!」
全身が緑色の外骨格に覆われ、巨大な複眼と触角の付いた頭部を持ち、両手のカマを振り上げるカマキリの女怪人。
だが、そのボディラインは、元となった喜美子のスタイルが色濃く出ており美しい。
「シュシュー! 私は女怪人サソリアです。どうぞ何なりとご命令を。シュシュー!」
カマギリアの隣にはやや小柄で紫色の外骨格に覆われた女怪人が立っている。
黒い単眼の付いた頭部を持ち両手の先はハサミ状になっていて、背中からお尻にかけたラインに沿うように尾てい骨部分から長い尾が伸びていた。
もちろんその先からは、鋭い毒針が覗いている。
茜が改造されたサソリの女怪人だ。
二人とも口元だけは以前の人間のままであり、うっすらと笑みを浮かべている。
それがまた妖しい雰囲気を漂わせてるのだった。

「それでいい。お前たちはワームリアの怪人として生まれ変わった。これからはワームリアのために働いてもらうぞ」
「ケケケケケ! もちろんですわ」
「シュシュー! ワームリアのためなら何でもいたします」
二人の女怪人は喜ばしそうにうなずいている。
「お前たち二人、力を合わせてミラージュマリーを始末するのだ。できるな?」
「ケケケケケ! お任せくださいませ。私はもうあの子の母親などではありませんわ。ワームリアに歯向かうものはすべて敵。必ずやミラージュマリーを始末してまいります。ケケケケケ!」
「シュシュー! 私の毒ならミラージュマリーと言えどもただでは済まないはず。カマギリアとともに彼女を。シュシュー!」
もはや身も心も完全にワームリアの女怪人に変貌した二人には、ミラージュマリーを殺すことは当然のことだった。

                   ******

「麻里亜ちゃん、今日遊びに行ってもいい?」
放課後、家に帰ろうと思っていた麻里亜を茜が呼び止める。
「えっ? うちに?」
「うん。ダメかな?」
友人の茜の申し出に、麻里亜はぶんぶんと首を振る。
「とんでもない。茜ちゃんが来てくれるのは大歓迎だよ。お母さんも茜ちゃんが来たら喜ぶと思うし」
「ありがとう。実は今日両親がいきなり遠くへ行っちゃったものだから」
なんとなく冷たい笑みを浮かべる茜。
「えっ? そうなの? じゃ、今日はうちへ泊りなよ。いろいろとおしゃべりしよう」
うきうきと帰り支度をする麻里亜。
茜が自宅に来るのはそこそこあれど、泊りは久しぶりだ。
パジャマで二人遅くまで他愛もないおしゃべりができると思うと、麻里亜の心は浮きたった。

「お母さんもいいって。茜ちゃんが来るの楽しみだって言ってた」
すぐにスマホで確認した麻里亜が茜に伝える。
「そう。私もおば様に会うのが楽しみだわ。うふふ・・・」
「どうする? うちにも何かあるとは思うけど、帰りに何か買ってく?」
目をキラキラと輝かせている麻里亜。
茜がお泊りということでテンションが上がっているのだ。
「うーん・・・別に何か欲しいものがあるわけでもないからいいわ。それより早く麻里亜ちゃんの家に行きたいな」
「おお! それは早く私と二人きりになりたいってことですかぁ? あははは・・・」
「まあ、麻里亜ちゃんたら。あははは・・・」
楽しそうに笑いあう麻里亜と茜。
二人はそのまま笑いあいながらカバンを手に学校を後にした。

「ただいまー。お母さん、茜ちゃん来たよー」
元気よく玄関を開けて家に入る麻里亜。
「お帰りなさい。いらっしゃい、茜ちゃん」
奥から二人を出迎えに出てくる喜美子。
水仕事でもしていたのか、手をタオルで拭っている。
「こんにちはおば様。お邪魔します」
「どうぞどうぞ。入って入って」
にこやかに二人を招き入れる喜美子。
麻里亜はふと、その手に持っているタオルが赤黒くなっていることに気が付く。
それと、何とも言えない血のにおいのようなものも感じた。
「お母さん、何かしてたの?」
「えっ? ああ、カスを切り刻んでいたのよ。ケケケケケ・・・」
奇妙な笑い声をあげる喜美子。
麻里亜はちょっと変に思いながらも、あとについてリビングへと入っていく。

「ひっ!」
リビングに入ったとたんに絶句する麻里亜。
ソファに血まみれで死んでいる父親の姿があったのだ。
「お、お父さん!」
「ケケケケケ・・・ほんと、間の悪い男ねぇ。やはり所詮は下等な人間ということかしら。これからの楽しみを邪魔しに帰ってくるんだもの」
父の死体を前に笑っている母。
その様子に麻里亜は愕然とする。
「お、お母さん? ま、まさかお母さんが?」
「ええ、そうよぉ。だって、これからミラージュマリーを切り刻むのを楽しみにしていたのに、風邪で熱が出たからとか言って早退してくるんですもの。邪魔くさいったらありゃしないでしょ。だから切り刻んでやったの。ケケケケケ・・・」
口元に手の甲をあてて笑う喜美子。
「お・・・お母さん・・・そんな・・・」
あまりのことに言葉が出ない麻里亜。
いったい何が起こったというのだろうか?

「ケケケケケ! ねえ、もうそのお母さんお母さんってのいい加減にやめてくれない? 私はもうお前のお母さんなんかじゃないわ。私は偉大なるワームリアによって改造され生まれ変わったの」
そう言って躰を変化させていく喜美子。
見る間に全身が緑色の外骨格で覆われ、頭部が巨大な三角形の形になり、目も大きな複眼へと変化する。
両手はとげの付いたカマとなり、両脚もハイヒールのブーツのような形になっていく。
背中には翅が生え、お尻も大きくなって、カマキリと人間が融合した姿に変わっていく。
「ケケケケケ! どう? これが今の私の本当の姿よ。私はワームリアの女怪人カマギリアなの。ケケケケケ!」
ここだけは人間のままである口元に笑みを浮かべ、笑い声をあげるカマギリア。

「お母さん・・・お母さんがワームリアの怪人に・・・」
麻里亜は唇をかみしめる。
自分は何のために・・・
何のためにミラージュマリーとして戦ってきたのか・・・
父や母を、友人たちを守るためではなかったのか・・・
その母がワームリアの怪人にされてしまうなんて・・・
お母さん・・・

ハッとする麻里亜。
今はとにかく茜だけでもこの場から逃がさないと。
「茜ちゃん! 逃げ・・・て・・・」
振り返りざまに背中に激痛が走る。
「茜・・・ちゃん?」
そこには茜ではなく、全身を紫色の外骨格に覆われ、人間のままの口元からくすくすという笑い声を発しているワームリアの女怪人がいた。
「どうして私が逃げないとならないのかしら? せっかくカマギリアとともにミラージュマリーを始末できるチャンスだというのに。シュシュー!」
「茜・・・うぐっ・・・」
がっくりと膝をつく麻里亜。
「私ももう茜などという名前なんかじゃないの。私はワームリアの女怪人サソリア。よろしくね、ミラージュマリー。シュシュー!」
「そんな・・・」
麻里亜の全身に強烈な痛みが走る。
どうやら毒を流し込まれたらしい。

「ケケケケケ! どうしたの? 変身しないの? 私のカマで切り刻んであげるわよぉ。ケケケケケ!」
「無理よ、カマギリア。私の毒は強力ですもの。もう全身が痛くて起き上がれないと思うわ。シュシュー!」
「おかあさ・・・あか・・・ね・・・ちゃ」
激痛に耐え必死に手を伸ばす麻里亜。
その手をカマギリアは踏みつける。
「言ったでしょ。私はもうお母さんじゃないって。頭悪いわねぇ。ケケケケケ!」
「まだ息があるようだから切り刻んでいいわよカマギリア。少しは楽しめるんじゃない? シュシュー!」
二人の冷たい笑みが麻里亜を見下ろしている。
「そうね。そうさせてもらおうかしら。ケケケケケ!」
カマギリアがカマを振り上げたとき、麻里亜は意識を失った。

                   ******

「クククク・・・まさかこうも簡単にミラージュマリーを排除することができるとは。よくやったぞお前たち」
「「ハッ、ありがとうございます」」
上機嫌のグモーゾの前で片膝をつき頭を下げるカマギリアとサソリア。
「ケケケケ・・・ですが・・・もう少しでミラージュマリーを切り刻むことができましたのに、止められてしまったのは残念ですわぁ」
褒められたものの、カマギリアはやや不満そうな表情だ。
無理もない。
今にもカマを振り下ろそうとしたとき、グモーゾから待ての命令が来てしまったのだ。
ワームリアに歯向かうミラージュマリーに一撃を与えられると楽しみにしていた彼女にとっては不満だろう。
「シュシュー! ご命令に従いあの女をこの地底アジトに運び込みましたが、どうなさるおつもりなのですか?」
サソリアにしても今一つ納得がいっていない。
彼女たち二人はミラージュマリー抹殺のために改造され、この素晴らしい躰に生まれ変わったはずではなかったのだろうか。

「うむ。首領様のご命令でな」
「首領様の?」
カマギリアとサソリアが顔を見合わせる。
首領様がミラージュマリーを生かしたまま連れてこいと命じられたというのか?
「うむ。ミラージュマリーを無力化した以上、殺すよりもいい方法があると仰せになられたのだ。その方法を聞いた時、俺もなるほどと納得した」
いい方法?
「シュシュー! そのいい方法とは?」
「クククク・・・すぐにわかる」
サソリアの質問に対し、グモーゾはニヤッと笑う。

カツコツというヒールの音が響く。
「ククク・・・噂をすれば影か。入るがいい」
「キキキキ! 偉大なるワームリアの女怪人ドクガリア、ただいま参りました」
そう言って入ってくる一体の女怪人。
やや小柄でサソリアと同じぐらいの大きさだ。
巨大な二つの複眼と二本の触角が付いた頭部を持ち、茶色の細かい毛が体を覆っている。
背中には大きな翅が広がっており、いくつかの斑紋が浮き出ている。
口元はカマギリアはサソリアのように人間のままであり、うっすらと冷たい笑みを浮かべていた。

「クククク。よく来たなドクガリア。生まれ変わった気分はどうだ?」
「キキキキ! はい、とてもいい気分です。愚かにもミラージュマリーなどと名乗り偉大なるワームリアに歯向かっていた私を、このような素晴らしい躰に改造していただけたなんて、感謝の言葉もございません」
スッと片膝をつき一礼するドクガリア。
その姿にカマギリアとサソリアも笑みが浮かぶ。
「ケケケケケ! なるほどそういうことでしたの」
「シュシュー! これでまた一緒にいることができるわね。仲良くしましょう、ドクガリア」
「キキキキ! ええ、こちらこそよろしく、カマギリア、サソリア。これからは私もワームリアのためにすべてをささげるわ」
三人の女怪人たちが笑顔を見せるのを、グモーゾは満足そうに眺めるのだった。

                   ******

「ン・・・あん・・・だ・・・ダメ・・・ダメよ・・・」
「んちゅ・・・んふふ・・・カマギリアのここ、こんなにとろとろになってる。美味しい。シュシュー!」
ぺろりと舌なめずりをして、再びカマギリアの股間に顔をうずめるサソリア。
その舌が外骨格の継ぎ目から中の秘肉に刺激を与え、愛液を溢れさせていく。
「ケケ・・・ああ・・・こ、こんな・・・ダメ・・・ダメよ・・・」
「うふふ・・・何がダメなの? シュシュー! 私たちは女怪人同士。楽しみ合ったって問題はないわ」
サソリアの黒く丸い単眼がカマギリアの痴態を見つめ、口元には笑みが浮かんでいる。
「ケケ・・・で・・・でも・・・ドクガリアが来たら・・・」
「来ないわ」
「え?」
その返事にやや苦いものを感じたカマギリアが驚く。
「シュシュー! ドクガリアは来ないわ。彼女は今頃グモーゾ様に犯されている頃よ。うふふ・・・」
「犯されて?」
「ええ。今は女怪人とは言え元はミラージュマリーを犯せるんですもの。グモーゾ様はとても喜んでいるんじゃないかしら。シュシュー!」
「ケケケ・・・そ、そんな・・・」
「シュシュー! 気になるかしら? 元娘のことだから・・・」
「あ、あん・・・」
サソリアの手の先にあるハサミの先端がそっと差し入れられ、カマギリアの躰に快感が走る。
「シュシュー! 渡さない。ドクガリアとカマギリアがかつて母娘だったとしても、先にカマギリアのパートナーになったのは私」
「サソリア・・・」
「私、うらやましかったのよ。あなたたちのことが。私の母親はろくな奴じゃなかったから・・・だからこうして女怪人になれて、カマギリアとパートナーになれたことがとてもうれしかったわ。クズどもも始末できたしね。シュシュー!」
言葉を紡ぎながらも、その手はカマギリアの肉襞を優しく刺激することをやめはしない。
「サソリア・・・あ、あん・・・」
サソリアのハサミがカマギリアの躰の官能の炎を燃え上がらせる。
それに、そう言ってもらえることもカマギリアにはうれしかった。
一緒に女怪人になった者同士、カマギリアにもサソリアのことを好ましく思わない理由はなかったからだ。

「シュシュー! だから私は渡さない。カマギリアは私のものよ」
カマギリアの上で躰を回転させていくサソリア。
その秘部がカマギリアの顔の位置にやってくる。
「ねえ、お願い。私のも舐めて。カマギリアの舌で私を気持ちよくして。シュシュー!」
「・・・・・・わかったわ、サソリア」
カマギリアの舌がサソリアの肉襞に触れる。
とろとろの愛液がカマギリアの舌を伝って流れてくる。
「ああん・・・いい・・・カマギリアの舌・・・いい・・・」
腰をくねらせて快感に打ち震えるサソリア。
すぐに自らもカマギリアの襞に舌を這わせていく。
「ケケケケケ! サソリアの舌もたまらないわ・・・あん・・・イっちゃう・・・」
二体の女怪人の痴態はいつ果てるとも知れずに続くのだった。

END

いかがでしたでしょうか?
明日は三日目最終日。
明日もいつもとはちょっと違ったSSだと思います。
先日ちらっと書きましたあの話です。
お楽しみに。

  1. 2018/07/18(水) 21:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
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寮母さんはドククラゲ

今日は久しぶりにSSを投下します。
と言いましても、いわゆるシチュのみ短編で、いつものごとく女性が怪人化するだけのお話です。

タイトルは、「寮母さんはドククラゲ」です。
タイトルそのまんまのお話です。
女性が女怪人にされるシーンが好きというお方に楽しんでいただければと思います。

それではどうぞ。


寮母さんはドククラゲ

「「「行ってきまーす」」」
「行ってらっしゃい」
朝、学校へ向かう女子学生たちを見送り、私は少しホッとする。
今朝も彼女たちを無事に送り出すことができたからだ。
あとは学校でも事故がないことを祈るだけ。
勉強頑張ってね。

とはいえ、私の仕事はこれからが本番。
まずは皆が食べた朝食の後片付けをして、それから午前中のうちにお風呂や共用部分の掃除、午後からは寮内の点検をして壊れたりしているものがあったら取り替え、さらに夕食等のための買い物に行き、帰ってきたら夕食づくり、そのころにはもう早い子は学校から帰ってくるし、お風呂も用意しなくてはならない。
他にもこまごましたことがたくさんあって、ほんと寮母というのは大変だわぁ。
まあ、うちは厳密には学生寮というというよりは、一人暮らしのための賄いつき女性用アパートというべきもので、管理人を任された私が女子学生たちの食事等の面倒も見ているという形だから、住んでいる女子学生たちも6人ほどと少ないんだけどね。
とはいえ、だからこそ何もかもを一人でやらなくてはいけないので大変。
かといってお給料が高いってわけでもないしねー。

さてさて、ちゃっちゃと片付けちゃいましょうか。
私は腕まくりをすると、台所にたまった食器を手際よく洗浄して片付けていく。
6人もの娘がいる大家族のお母さんっていうのはこんなものなのかしらね?
もっとも、私自身まだ20代なんだし、あの娘たちの母親というよりはあの娘たちのほうにこそ近いのよね。
結婚だってまだなんだし・・・

ふう・・・
最後の食器を水切り籠の中に収める。
これで朝食の後片付けは終了。
次はお掃除をしなくちゃ・・・
あら?
なんだか玄関の方で人の気配がするわ。
玄関の呼び鈴が鳴った?
聞こえなかった気がするけど・・・
「はぁい、どちらさま?」
私は急いで玄関へと向かう。
郵便か宅配便でも届いたのかしら・・・

「ひっ!」
玄関に来た私は思わず小さく悲鳴を上げてしまう。
だってそんな・・・
まさかこんなのがいるなんて・・・

玄関に立っていたのは、郵便配達の人でも宅配便の人でもなく、全身を黒光りする西洋の甲冑のようなものを身にまとった人物だったのだ。
頭から足の先までがすべて金属に覆われた人物。
そんなものが立っていたら、思わず悲鳴が出てしまうというもの。
い、いったい何なの?
コスプレ?

「あ、あなたはいったい?」
私はその異質な存在をにらみつける。
ここが女性専用のアパートと知って来たのなら、警察を呼ぶことも考えなくてはならない。
「ククク・・・ちょうどよさそうな女だ。まずはこいつで・・・」
声からして甲冑の中身は男のようだ。
フェイスガードの付いたヘルメットをかぶっているので、顔は全くわからない。
「出ていってください。出ていかないと警察を呼びます」
私はポケットからスマホを取り出し、110番をセットしてすぐに発信できるようにする。
「出ていかないと本当に呼びますよ」
「フフフフ・・・本当に呼べるかな?」
「えっ?」
甲冑の男が手を私のほうに向かってかざしてくる。
すると、私の持っていたスマホが突然破裂した。
「キャッ!」
私は思わず持っていたスマホを放り捨てる。
そんな・・・
手をかざしただけでスマホを壊すことができるなんて・・・
いったい?

私は共用室にある固定電話を使おうと踵を返す。
でも、走りだそうとしたのに躰が前に動かない。
「えっ?」
「クククク・・・逃がしはせんよ。お前は大事な実験材料だ」
そんな・・・
私の躰が何かに引き付けられるように動かない。
共用室に一刻も早く行って電話をしなくてはならないのに・・・
足が一歩も動かないのだ。
「さて、始めるとしようか・・・ククク・・・」
私は自分で意図したわけでもないのに、再び躰を回転させて甲冑の男のほうを向く。
「そんな・・・」
私の目の前には、いつの間にか空中にゆらゆらと漂うクラゲのようなものが浮いていた。
「クラゲ?」
「それは特殊なドククラゲでな。なかなかに強力な毒を持っているものを改造したものだ」
「ひっ!」
毒のクラゲ?
そんなものがどうして?

「行け」
甲冑の男がそういうと、クラゲはふよふよと私に近づいてくる。
「ひぃぃぃっ! 誰かぁ! 誰か助けてぇ!」
私は必死で叫び声をあげる。
だが、躰は全く動いてくれない。
逃げ出そうにも逃げ出せないのだ。
クラゲは私の顔のすぐそばまで来ると、その触手を私の頭に巻き付ける。
「ひぃーー! いやぁぁぁぁ!」
ひんやりとしたヌメッとした触手が私の頬に絡みついてくる。
そしてクラゲの本体部分がふわっと私の頭の上に移動したかと思うと、そこからベシャッと私の頭に覆いかぶさってきた。
「ひぃぃぃぃ! むごっ! むぐっ・・・」
クラゲは私の頭をすっぽりと覆うと、悲鳴を上げていた私の口の中に触手を入り込ませてくる。
いや、口ばかりじゃない。
鼻の穴からも、耳の穴からも触手が入り込んできたのだ。
「あがっ・・・たすけ・・・が・・・」
「クククク・・・どうやらそいつはお前が気に入ったようだぞ。殺されなくてよかったな」
殺されない?
嘘・・・
触手のおかげで息もできず・・・
苦し・・・
助け・・・て・・・

ひぐっ!
頭に激痛が走る。
鼻や耳の穴から入り込んだ触手が、私の頭の中にまで入り込んできたのだ。
死・・・死ぬ・・・死んじゃう・・・
私は倒れ込むこともできずに突っ立ったままで激痛に耐えていく。
なんで?
なんで私がこんな目に・・・

あひゃ?
あへ?
突然激痛がすうっと引いていく。
替わりになんだか気持ちよさが広がってきた。
何なの?
何が起こっているの?
あ・・・
頭の中で触手がうねうねと動いている・・・
脳がクチュクチュとかき混ぜられている感じ・・・
あひゃ・・・
気持ちいい・・・
なんだかとっても気持ちがいいよぉ・・・

クチュクチュ・・・クチュクチュ・・・
脳がいじられていく。
なんだか私が私じゃないみたい・・・
躰がふわふわしてとても気持ちがいい・・・
口から入ったクラゲの触手は私のお腹の中で蠢いている。
あは・・・
私の躰がだんだん触手に作り変えられていくんだわ・・・
あひゃひゃひゃ・・・
なんだか素敵・・・
アタシは一体どうなっちゃうのかしら?

あにゃ?
なんだか目が見えてきたわ。
でも・・・なんかぐにゃぐにゃして水の中にいるみたい・・・
あひゃ・・・
あひゃひゃひゃ・・・
バカねぇ、アタシ・・・
アタシはクラゲなんだから、水の中にいるのは当たり前じゃない・・・
あれ?
でも・・・あたしは人間だったようなぁ・・・
あひゃ・・・
どうでもいいかぁ・・・そんなこと・・・
なんだかとっても気持ちがいいしぃ・・・

するりと何かが肌を滑り落ちていく・・・
足もとを見ると、なんだか布の塊が落ちている。
ああ・・・
アタシが着ていたものが落ちたんだわ・・・
アタシの触手が着ていた服をはぎ取ったんだ。
クフフフフ・・・
だってあたしはクラゲだもん。
クラゲが服を着ていたらおかしいよね・・・

アタシは自分の躰を見下ろしてみる。
半透明の躰がとてもきれい。
よく見れば反対側が透けて見える。
いくつかの内臓が半透明のグニュグニュした中に浮いている。
きれい・・・
これがアタシ・・・
クラゲのアタシ・・・
アタシはクラゲ・・・
アタシはドククラゲ・・・

「クククク・・・どうやらうまく融合が行われたようだな。これでお前はドククラゲ女になったのだ」
私の目の前のお方・・・偉大なるダスロムの大幹部ゼーゴス様のお言葉が聞こえるわ・・・
ドククラゲ女・・・
クフフフフ・・・
そうなんだわぁ・・・
アタシはドククラゲ女なんだわぁ・・・
あひゃひゃひゃひゃ・・・
最高!
気持ちいいわぁ!

「気分はどうだ、ドククラゲ女よ」
「クフフフフ・・・はい、とてもいい気分ですわゼーゴス様。アタシはドククラゲ女。どうぞ何なりとご命令を。クフフフフ・・・」
そうよぉ・・・
アタシは偉大なるダスロムのドククラゲ女。
下等な人間とはもう違う存在なの。
ダスロムに必要ない人間どもはアタシがこの毒触手で始末してあ・げ・る・・・
あひゃひゃひゃひゃ・・・
アタシはうねうねと動く自分の腕を見つめ、思わず笑みを浮かべていた。

「それでよい。お前にはほかにも実験を命じる」
「はい、何なりと」
アタシはゼーゴス様に一礼する。
どのような実験を命じられるのだろう・・・
ワクワクするわぁ。

                   ******

「いただきまーす」
「いただきまーす」
美味しそうにアタシの作った睡眠薬入りの料理を口に運ぶ女たち。
クフフフフ・・・
睡眠薬が入っているとも知らずに、バカな女たちだわ。
でも喜びなさい。
お前たちは実験材料に選ばれたのよ。
偉大なるダスロムの人体実験にね。
クフフフフ・・・

ゼーゴス様にご命令をいただいた後、アタシは人間の姿に擬態して、これまでと変わらないふりをして夕食を作った。
もちろん女子学生たちに気付かれないためだ。
今夜はカレーにしたから、少々の薬は混ぜたとしても気付くまい。
まあ、気付くような人間がいれば、始末してしまえばいいだけのこと。
誰か一人ぐらい気付かないかしらね。
クフフフフ・・・
アタシはひそかに腕を触手に変えて舌舐めずりをする。
ああん・・・早くこの毒触手を誰かに突き刺したいわぁ。

カタンと音がして、カレースプーンが手から滑り落ちる。
「あ・・・ふ・・・」
そのままテーブルに突っ伏したり、椅子にもたれかかるようにして眠り込んでいく女子学生たち。
クフフフフ・・・
強力な睡眠薬ね。
こんなに早くみんながお寝んねしちゃうなんて。
クフフフフ・・・

アタシは擬態を解除してドククラゲ女の姿に戻る。
ああーん、気持ちがいいわぁ。
やっぱりこの姿こそが本当のアタシよね。
アタシは鏡に映る自分の姿に満足を覚える。
半透明の躰にクラゲのように笠が広がった頭部。
胸のふくらみや腰の括れは以前のアタシのように人間ぽい形をしているけど、頭部に広がった笠や肩のあたりから生えているいくつもの細い触手はクラゲのもの。
そう・・・アタシはクラゲと人間が融合したドククラゲ女。
偉大なるダスロムの一員なの。

アタシは眠りこけた女子学生たちを一人ずつ床に寝かせていく。
もちろん着ているものも脱がせていくのを忘れない。
変化に衣服は邪魔ですものね。
彼女たちは睡眠薬が効いているから目を覚ますことはない。
クフフフフ・・・
これが最後の人間としての眠り。
もうすぐお前たちも・・・
クフフフフ・・・

くちゅ・・・
あん・・・
気持ちいい・・・
アタシは触手状にした腕を股間に差し入れる。
思わずオナニーしたくなっちゃうわぁ・・・
でも・・・
ん・・・
ポトリポトリと黒くウネウネするものがアタシの股間から落ちてくる。
クフフフフ・・・
上手く孵っているわ。
ゼーゴス様にいただいた実験用の卵。
それをアタシの中で孵した蟲たちなの。
見た目は・・・そう・・・黒いナメクジといったところかしら。
アタシは床の上で蠢くその黒いナメクジたちを拾い上げると、眠っている女子学生たちの耳のそばに置いていく。
クフフフフ・・・
喜びなさい。
このナメクジがお前たちをダスロムに選ばれた存在にしてくれるわ。
融合が失敗しなければだけどね・・・
クフフフフ・・・

黒いナメクジたちがもぞもぞと這った跡を黒く残して耳の中へと入っていく。
「ひっ! あ、あぐっ!」
「あっ! ギャッ! ひぎっ!」
ナメクジに耳の奥に入り込まれた女子学生たちが苦痛に悲鳴を上げる。
クフフフフ・・・
痛いのは最初のうちだけ。
すぐに気持ちよくなってくるわ。
そうすれば・・・お前たちもアタシと同じように・・・
クフフフフ・・・

「あぐっ・・・うぐっ・・・」
「あががが・・・あが・・・」
全身をぴくぴくと痙攣させ、もがき苦しむ女子学生たち。
だが、やがてその苦悶の表情がすっと穏やかになっていく。
そして痙攣も収まり、じょじょに首筋のあたりから黒く染まっていく。
ナメクジが躰の中から彼女たちを変化させているのだ。
クフフフフ・・・

「あがっ! グゲゲゲゲッ!」
突然女子学生の一人が目を見開いて口から泡を吹く。
チッ・・・
適合不良が出たみたいね。
偉大なるダスロムにはふさわしくなかったということか。
哀れな奴。
まあいいわ。
他の五人は順調なようだし・・・
適合不良となった女は、そのままぐずぐずと液状化して溶けていく。
ふん・・・
床が汚れてしまったではないか。
いまいましいわ。

やがてほかの女子学生たちは全身が黒い皮膚で覆われていく。
クフフフフ・・・
偉大なるダスロムの女戦闘員としての姿だわ。
両脚はつま先が一つになり、かかとも伸びてハイヒールのブーツのような形に変化する。
両手も手袋をはめたように変化し、力も人間の数倍へと強化される。
首から上も黒い皮膚で覆われていき、まるでマスクでもかぶったように、目の周り以外はすべて包み込まれていく。
最後に額のあたりからニュルっとナメクジの触角のようなものが二本生え、変化が終了する。
クフフフフ・・・
おめでとう。
これであなたたちも偉大なるダスロムの一員ね。

ゆっくりと起き上がる女戦闘員たち。
その目は最初少しぼんやりしていたが、やがてはっきりと輝き吊り上がっていく。
五人は私の前に横一列に並ぶと、右手をいっせいに上げてキキーッという服従の声を出す。
自分が偉大なるダスロムの女戦闘員ですという宣言の声だ。
クフフフフ・・・
素晴らしいわ。
実験は成功ね。

アタシは女戦闘員たちにゼーゴス様より預かったダスロムの紋章の付いたベルトを渡す。
アタシもベルトを手に取って彼女たちと一緒に腰に巻くが、何とも言えない誇らしさを感じるわ。
偉大なるダスロムの一員である誇り。
ダスロムのためなら何でもするわ。

「「「キキーッ!」」」
同じようにベルトを巻いた女戦闘員たちが右手を上げる。
クフフフフ・・・
今日からここはダスロムの拠点の一つ。
アタシたちはこの世界をダスロムのものにするために働くのよ。
手始めにもっと女戦闘員を増やさないとね。
お前たちは友人を連れてきなさい。
クフフフフ・・・
楽しみだわぁ・・・
アタシは実験が成功して女戦闘員が五体完成したことをゼーゴス様に報告するため、共用室を後にした。

END

  1. 2018/05/19(土) 20:30:20|
  2. 改造・機械化系SS
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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