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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

私は蛮獣人アリクイ (再掲)

昨日に引き続きまして、マーチン・シン様に送らせていただきましたSSが、リンク先が消えてしまいましたので、ブログの方で公開したいと思います。

タイトルは「私は蛮獣人アリクイ」です。
すでにお読みの方が大半とは思いますが、またお楽しみいただけましたら幸いです。


私は蛮獣人アリクイ

「早く! 教授と“秘宝”を安全な場所に!」
背後で同僚たちが護衛対象である教授を部屋から連れ出すのを見て、彼女は多少安堵するとともに、襲撃してきた相手に改めて向き直る。
黒革の手袋をはめた両手をグッと握りしめ、いつでも格闘に入れるように準備する。
動きを阻害しないよう男性同僚たちと同じ黒いスーツ姿だが、その柔らかなラインは逆に彼女を女性らしくみせていた。

襲撃してきたのは三人。
護衛対象が狙われている可能性は高いという情報は得ていたものの、まさかこんな変な連中が襲ってくるとは予想外だった。
中央の一人はつばの広い帽子を目深にかぶり、裾の長いコートの襟を立てて顔を隠すようにしているが、その躰つきはがっしりと肩幅が広く、いかにも筋肉で覆われているという雰囲気だ。
それよりも奇妙なのはそのコートの男の左右に立つ男たちだ。
まるで何かテレビの特撮番組からでも出てきたかのような、黒い全身タイツに覆面をかぶった男たち。
覆面にはヘビか何かが牙をむきだしたような模様が付いており、その模様の目がそのままかぶった男の目の位置と合うようになっているようだ。
どういう理由か、赤く輝く目がまるでそのヘビの目であるかのように見えて不気味この上ない。
いったいこいつらは何者なのか?

「グゲゲゲ・・・女、邪魔をするな。そこをどけ」
太く重々しい声がコートの男から発せられる。
腹に響いてくる声で、気弱な者ならその声を聞いただけでも恐れおののいてしまうかもしれない。
しかし、彼女にはそうはいかない。
「残念ね。黙ってここを通すほど私はおとなしくはないわよ」
挑発するかのようにニヤッと笑みを浮かべてみせる。
これで彼女に向かってきてくれた方が、護衛対象が逃げる時間を稼げるというものなのだ。

「グゲゲゲ・・・愚かな女だ」
クイッと顎をしゃくって左右の男たちに指示を送るコートの男。
「ジャーッ!」
「ジャーッ!」
奇妙な声を上げて左右の黒ずくめの男たちが彼女の両脇を通り過ぎようとする。
「なっ、行かせるか!」
彼女は自分を無視して護衛対象を追いかけようとする二人を、素早く躰をずらして迎撃する。
すれ違おうとする相手に強烈な蹴りをたたき込み、もう一人には顔面に拳を入れる。
幸い追いかけることを重点にしていたのか、相手が武器を手にしていないのは救いだ。
どうせ正体がバレないようにどこぞで手に入れたコスプレ衣装を着込んだのだろうが、覆面なんかしていると視界が狭くなりかねないわよ。
床に倒れた男たちを目の隅で確認し、視線はコートの男から外さない。

「グフフフ・・・やるではないか。ジャラジャラ兵の動きに追従できるとは大したもの。俺が相手してやろう」
コートの男から低い笑い声が響く。
ただの相手ではない。
おそらくかなりの強敵だわ。
桐川美愛(きりかわ みあ)はそう思う。
警備会社で重要人物等の護衛任務を主としてこなしてきた彼女には、相手の力量を瞬時に推し量ることには慣れていた。
この男とはきつい戦いになる。
美愛はそう感じ、その前に二人を倒していて正解だと思った。

「そんな・・・」
だが、美愛の思いはすぐに外れる。
気を失わせたはずの男たちが、すぐに起き上がってしまったのだ。
大の男でもしばらくは起き上がれないような一撃を与えたはずにもかかわらずである。
しかもまずいことに、倒した二人の位置がやや後ろになってしまい、ちょうど男たちの作る三角形の中心に美愛が位置するような感じになってしまう。
倒された男たちも、先に美愛を片付けようというのか、どこからか取り出した剣のようなものを手にしていた。
まずい・・・
この位置では集中攻撃を受けてしまう。
攻撃をかわしていくことは可能だろうが、そうなれば防戦一方に追い込まれてしまうことは間違いない。
何とかしなくては・・・

しかし、美愛は意外な言葉を耳にした。
「グフフフ・・・ジャラジャラ兵がそう簡単に人間に倒されるはずがなかろう。だが、まあいい。こいつらには“シュガンの瞳”を追わせるとしよう。行け!」
「ジャーッ!」
「ジャーッ!」
コートの男の命に従い、くるりと向きを変えてすぐに駆けだしていくジャラジャラ兵たち。
美愛を無視して、目標を追うことを優先させたのだ。
その動きは美愛に受けたダメージなど、まったく負っていないかのようである。
「ま、待ちなさい!」
部屋を出ていくジャラジャラ兵を止めようとする美愛。
だが、その前にコートの男が声をかける。
「どうした? お前の相手は俺だぞ」
「くっ!」
美愛は歯噛みする。
まさかあの一撃を受けてすぐさま立ち上がれる相手がいるとは思わなかった。
だが、今彼らを追おうと背中を見せれば、確実にコートの男の一撃を食らってしまう。
そのためにも追うわけにはいかない。
何とかみんなに逃げ切ってもらうことを祈るしかない。

「グゲゲゲゲ・・・」
「えっ?」
美愛の前でコートの男がゆっくりと帽子とコートを脱いでいく。
「そんな・・・」
美愛は驚いた。
コートの下から出てきたのは人間の躰などではなかったのだ。
まるでアメリカンフットボールのプロテクターがそのまま肉体になったかのようなシルエット。
しかも、その表面は灰色っぽいうろこに覆われ、胸や腹部も骨のような形の外皮で覆われている。
顔はおよそ人間とは似ても似つかず、鋭いギザギザの歯がむき出しになった口や鋭い目、尖った耳が動物のような顔立ちを作っている。
両手両足はがっしりと頑丈そうで、特に両手は鋭い爪のような指が突き出たハンマーのように巨大で力強そうだった。

「ば・・けもの・・・」
美愛の受けた第一印象はまさにそれだった。
こいつは人間ではない。
何か違う別の生き物だ。
どうしてこんなものがここにいるというのか?
私は夢でも見ているのだろうか?

「グフフフフ・・・俺はヤーバン一族の蛮獣人アルマジロだ。まあ、お前らから見れば化け物呼ばわりしたくもなるというものか」
ギザギザの歯をむき出した口で笑う蛮獣人アルマジロ。
その名の通り、彼はアルマジロの力を身に付けた蛮獣人であり、硬さには自信がある。
力だって目の前の人間の女など物の数ではないだろう。
だが、こうして立ち向かってくるというのは面白い。

「ヤーバン一族・・・」
その一族のことは耳にしたことはある。
今回護衛するのは“シュガンの瞳”と呼ばれる秘宝という。
その秘宝はさらなる秘宝につながるものとして、立花(たちばな)教授が分析を進めていたものだ。
だが、それを狙う連中がいるとのことで、今回美愛のいる警備会社に護衛が依頼されていた。
その連中とやらがこんな特撮番組から抜け出てきたような奴らだったなんて・・・

しかし、美愛は依頼主からヤーバン一族という名を聞いたわけではなかった。
あくまで依頼主からは、“シュガンの瞳”を狙う連中がいるということだけ。
おそらくは依頼主もヤーバン一族とやらのことは知らなかったのかもしれない。
美愛がその一族の名前を知ったのは、別の人物の口からだったのだ。

カオルはあの時・・・ヤーバン一族と言っていた・・・
友人の姿が脳裏に浮かぶ。
総合格闘技で名を馳せた美愛は、一時期国内大会ではかなりの上位を誇っていた。
そんな時、同じように剣道で名を知らしめていたのが蜂谷カオル(はちや かおる)であり、二人はほどなく知り合って友情を深めたのだ。

その後お互いに進む道は離れてしまい、美愛はこうして格闘技を人のために生かせる警備という道に進み、カオルは人を導く教職へと進んでいった。
お互いのそれぞれの仕事で忙しくなかなか会うチャンスもなかったが、先日偶然街中で会うことができ、少しだけ話をすることができたのだ。
だが、久しぶりにあったカオルは人が変わったように冷たい笑みを浮かべていた。
親しげに話しかけた美愛に対し、まるっきりそっけない態度で終始したうえで彼女はこう言った。
「私はヤーバン一族なの。気安く話しかけないでくれる?」
そう言って立ち去る彼女に美愛は唖然としたのだった。

カオルは・・・まさか・・・こいつらの?
そんな疑問が頭をよぎる。
「どうした? かかってこないのか?」
蛮獣人アルマジロの野太い声にハッと我に返る美愛。
いけない。
こんな時にあの事を思い出してしまうなんて。
とにかく今はこの場を切り抜けなくては。

倒す必要はないのだ。
護衛対象が無事に脱出できればそれでいい。
そのための時間を稼ぐ。
できれば五分。
追っていかれた連中のことは気がかりだが、そっちはほかの連中が何とかしてくれるだろう。
何も護衛は彼女一人ではないのだから。

美愛はスッと腰から伸縮式の警戒棒を取り出す。
相手は化け物だ。
こちらも相応の武器がないとダメだろう。
まずは脚を・・・

「はあっ!」
気合を口にして蛮獣人アルマジロの懐に飛び込み、警戒棒を振るう美愛。
その一撃がその太ももに命中する。
普通であれば相当のダメージが行くはずの一撃だ。

「がはぁっ!」
美愛は何が起こったのか一瞬わからなかった。
背中をしたたかに壁に打ち付けたことで、ようやく自分が相手に殴り飛ばされたのだということに気付く。
なんてこと・・・
あいつはあの一撃をものともしなかったというの?

ほう・・・
蛮獣人アルマジロは意外に思う。
確かに今の女の一撃は結構重たいものだった。
太ももを狙ってくるとはただ者ではない。
しかし、しょせんは人間の一撃。
金属の棒を持っているとはいえ、蛮獣人の躰にそうダメージが及ぶものではない。
ましてや外皮の硬さでは並みの蛮獣人とは違うのだ。
彼の外皮を傷つけることができるものなどそうありはしない。
彼はアルマジロの蛮獣人なのだから。
だが、それでもなおこの女の一撃は重く、彼を感心させたうえに、彼の一撃を食らってもまだ意識を失いはしなかったのだ。
この人間の女は・・・悪くない・・・
彼はそう思った。

「くっ」
よろめきつつも壁から離れ、再び態勢を整える美愛。
どこか弱点はないのか?
あの化け物にどこか弱点は・・・
怖い・・・
確かに怖い・・・
相手は人間じゃない・・・
そのことを美愛は感じ取っている。
まるで着ぐるみを着ているかのように見える相手だが、あの姿は本当の獣人なのだ。
こんなものがこの世にいたなんて・・・
でも・・・

「負けるかぁっ!」
姿勢を低くして滑り込むように相手の脚を狙いに行く。
振り下ろされる巨大なハンマーのような拳を間一髪で避け、警戒棒の柄の方で相手の膝頭を打ち付ける。
普段ならばやらない攻撃だが、この際遠慮はしていられない。
「グオッ?」
思わず躰をよろめかせる蛮獣人アルマジロ。
美愛は躰を回転させ、続けざまの一撃を見舞う。
渾身の蹴りがアルマジロの巨体に打ち込まれた。
はずだった。

「な・・・」
美愛の脚は蛮獣人アルマジロの腕によって止められていた。
「グゲゲゲ・・・やるではないか。気に入ったぞ」
「ガハッ!」
そのまま脚をすくい上げられるように跳ね飛ばされ、床に落ちたところにハンマーのような拳が打ち下ろされる。
美愛の口から血反吐が飛び散り、目の前が赤くなる。
同僚と連絡を取るイヤホンもどこかに飛んでしまっていた。
遠くなりそうな意識を必死で持ちこたえる美愛を、襟首をつかんで持ち上げる蛮獣人アルマジロ。
「気に入ったぞ。俺にここまで正面切って戦う人間がいたとはな。女、名はなんという?」
「グ・・・ふ・・・だ、誰が・・・お前などに・・・」
血の混じったつばを吐きかける美愛。
だが、躰は大きなダメージを受けてしまったようで、意識をつなぎとめるのが精いっぱいだ。

「ジャーッ! 蛮獣人アルマジロ様、申し訳ありません。“シュガンの瞳”と立花教授に逃げられてしまいました」
「何?」
足音が響き、教授を追っていったはずの二体のジャラジャラ兵が部屋に戻ってくる。
どうやら護衛対象はうまく逃げ出せたようだ。
「よか・・・た・・・」
ホッと安堵する美愛。
最低限の任務は果たせたらしい。
これでこいつに殺されて・・・も・・・

「ふん」
気を失ったらしいボディガードの女を脇に抱え込む蛮獣人アルマジロ。
「引き上げるぞ。ソヤ様にご報告せねばならん。だが、こいつは気に入った。ソヤ様に頼んで俺の物にさせてもらうとしよう。グフフフフ」
今回は“シュガンの瞳”を手に入れることには失敗した。
だが、そのようなものはいつでも奪うことができるだろう。
それよりも・・・
アルマジロは脇に抱えた女を見る。
この女、人間などにしておくには惜しい。
俺の女に・・・
グフフフフ・・・

                   ******

闇・・・
漆黒の闇・・・
上も下も右も左もわからなくなるような闇・・・
美愛がいるのはそんな闇の中だった。

「こ・・・こは?」
もしかして自分は死んでしまったのだろうか?
ここは死後の世界なのではないだろうか?
そんなことをふと思う。
だが、躰のあちこちが痛むことが、まだ死んだわけではなさそうだと感じさせてくれる。
であれば、ここはいったい?
私はどこにいるのだろう?

「ふふふふふ・・・」
笑い声が聞こえる。
艶のある女性の声。
冷たさを感じる声だ。
どこから聞こえてくるのだろうと美愛が思った時、闇の中から女性の姿が現れる。
「!」
美愛は息をのむ。
美しい女性。
だが、同時に恐ろしさと、異質さを感じさせる女性だ。
黒いレオタードのような衣装を身につけ、脚には目の細かい網タイツのようなものを穿いている。
片方の太ももにはリングを嵌めており、膝から下は黒いブーツが覆っている。
両手は二の腕まである黒い長手袋を着けていて、背丈ほどもあるような杖を右手に持っていた。
灰色の髪に覆われた頭部には角のようなものが左右に生え、額には第三の目ともいう感じの赤い宝石の付いたサークレットが飾っている。
彼女の目もサークレットの宝石同様に赤く輝き、口元には笑みを浮かべて美愛を見下ろすように立っていた。

「ふふふふふ・・・どうやらお前はアルマジロに気に入られたらしいねぇ」
妖艶な美女がそう言って笑う。
「アルマジロ? 気に?」
美愛の脳裏に気を失う前の光景がよみがえる。
確かあの怪物は蛮獣人アルマジロと言っていたはず。
あの怪物が私を気に入った?
どういうことなの?

「アルマジロは、お前を蛮獣人にしてパートナーにしてほしいと言っているよ。お前に惚れたそうな」
くすくすと笑っている美女。
「なっ?」
彼女は何を言っているの?
私をあの化け物のパートナーに?
「ふっ!」
ふざけるなと言って起き上がろうとした美愛だったが、起き上がるべき地面がないことに気が付く。
寝かされていたように思えたのも、単に彼女との位置関係からそう見えただけらしい。
つまり美愛の躰は闇の中で浮いており、起きるも立ち上がるもできる状態ではないのだ。

「ソ、ソヤ様、べ、別に惚れたというわけでは・・・」
闇の中にもう一体の姿が現れる。
蛮獣人アルマジロと言っていたあの化け物だ。
彼もまた頭を斜め下にしたような奇妙な位置関係で闇の中に浮かんでいる。
「オホホホホ・・・よいではないか。この女が欲しいのであろう? わざわざ蛮獣人にしてまで」
口元に手の甲をあてて笑う大魔女・ソヤ。
まさか蛮獣人が人間の女を欲しいと言ってくるなど思いもしなかったことだが、この女なら蛮獣人となれば充分に役に立ってくれそうだ。
それに、蛮獣人同士のつがいというのも悪くはない。

「ふざけないで! 誰があんたのものになど!」
美愛が思い切り首を振る。
冗談じゃない。
彼女にだって想う人はいるのだ。
まだ打ち明けてこそいないものの、いつかはと機会をうかがっているところなのだ。
こんな化け物の慰み者になどされてたまるものか。

「オホホホホ・・・勇ましいわね。蛮獣人になる素養は充分にあるわ。心配いらないわよ。蛮獣人になる時、ちゃんと心もアルマジロのことを好きになるように作り変えてあげるから」
すうっと美愛に近づき、その手で美愛の頬を撫でるソヤ。
「本当ですか、ソヤ様? ありがとうございます」
ソヤの言葉に思わずアルマジロは頭を下げる。
この女が我が物になるのだ。
こんなうれしいことはない。

「やめて! 絶対にお前たちの思い通りになどなるものか!」
ソヤの手を弾き飛ばす美愛。
何をするつもりかわからないし、ここからどうやって抜け出せばいいのかもわからないが、とにかく何とかしなくては。
でも、どうやって・・・
どうしたらいいの?

「オホホホホ・・・その気持ち、脱皮が終わっても同じセリフを言えたなら大したもの」
ソヤが杖を美愛に向ける。
「偉大なる魔人ジャーラー様よ、この女を素とし、新たなる蛮獣人を生み出させたまえ!」
その声に応えるかのように、闇の中に唸り声が響く。
すると、闇の中から黒い布のようなものが美愛の躰に巻き付き始めた。
「えっ? 何これ?」
美愛は手足に絡まってくる黒い包帯とも黒い反物ともいうようなものを振りほどこうとする。
だが、もがけばもがくほどに黒い布は巻き付いてくるのだ。
「い、いやっ! いやっ!」
じたばたともがく美愛に、黒い布はどんどんどんどん巻き付いていく。
手に、脚に、胸に、頭に、どんどん巻き付いてくるのだ。

えっ?
美愛は驚く。
服を着ていたはずなのに、下着を身に着けていたはずなのに、靴を履いていたはずなのに、それらがすべて消え去り、黒い布がじかに肌を覆っていくのだ。
それはすべすべしてまるでナイロンのような肌触り。
強くもなく弱くもなく適度な締め付けで彼女の躰を覆ってくる。
嘘・・・そんな・・・気持ちいい・・・
躰に巻き付いてくる布が密着し、彼女の躰を包み込んでいく。
ひんやりとした、それでいて温かい感触。
すべてを包み込んでくれる安心感。
自分の皮膚が置き換わっていく。
この黒い布が美愛の躰を作り替えていくのだ。

い・・・や・・・
だんだんと美愛の動きが止まってくる。
闇の中に大の字になり、全身が包まれていくのを受け入れていく。
黒い布はまるで美愛の躰を全身タイツのように包んでいく。
何重にも巻き付いたことでやや厚みのあったものが、薄皮一枚のように彼女の躰に貼り付いていく。
手の指も、胸のふくらみも、おへそのくぼみも、股間の性器さえもぴったりと貼り付いた布に浮き出てくる。
まるで美愛の皮膚が黒い布に置き換わったかのようだ。
髪も目も鼻も口も布に覆われ、ただその凹凸だけが浮き出ている。
そこにいるのは美愛の形をした黒い人形のようだった。

気持ちいい・・・
美愛の抵抗はすでに失われていた。
肌を包み込む布の気持ちよさ。
まるで母親の胎内にいるかのような安心感。
彼女は作り変えられる。
美愛はそのことを喜ばしくさえ感じていた。

やがて、美愛の躰にさらなる変化が起き始める。
両肩の肩幅が広がって、筋肉の塊のようながっしりした肩になっていく。
両腕ももともと筋肉質だった腕がより太く強靭になっていく。
五本の指も太く長くなっていき、硬く鋭い爪のように変化する。
太もももがっちりと太くなり、足は頑丈な靴のような形に変わっていく。
胴体も腹部を硬い皮が覆い、さらにその上から骨のような硬いパーツが形成される。
肩、両腕、ひざ下は動物のような茶色の毛が覆い、彼女を獣人へと変えていく。
それらの変化が起こるたびに、美愛はとてつもない快感を感じていた。

気持ちいい・・・
力がどんどんみなぎってくる。
躰がどんどん変わっていく。
気持ちいい・・・
生まれ変わることがこんなに気持ちいいことだったなんて・・・
人間じゃなくなることがこんなに素晴らしいことだったなんて・・・
ああ・・・
ジャーラー様・・・
偉大なるジャーラー様・・・
あああああ・・・
なんてすばらしいのかしら・・・
私は脱皮する。
人という皮を捨て、蛮獣人としての皮に置き換わる。
ジャーラー様にお仕えする蛮獣人。
私は蛮獣人になるんだわ・・・
ああ・・・
気持ちいい・・・

変化は顔にも及んでいく。
彼女の両耳は尖った獣のようになり、緑色の両目が開かれる。
鼻の部分は大きく細長い口吻となり、それとは別に覆われていた口が再び作られる。
首元も白い獣の毛が覆い、頭頂からの白い二筋のラインも鼻で一筋となって口吻の先端へとのびていく。
美愛の躰は獣の強さと人間の女性らしいラインとが一つになった美しい蛮獣人へと変わっていった。

「ふふふ・・・」
変化を終えた美愛の腰に、ソヤがベルトを巻き付ける。
バックルにヤーバン一族の紋章の付いたベルトだ。
これこそヤーバン一族の一員である証である。
美愛は今、ヤーバン一族の一員となったのだ。

ギンと緑色の目が光る。
「クイィィィィィィィ!」
両手をやや持ち上げ、胸を張るようにして思い切り鳴き声を上げる。
脱皮の終わった後の歓喜の声。
新たなる蛮獣人が誕生した産声だ。

「おお・・・」
思わず目を見張る蛮獣人アルマジロ。
先ほどまでは人間だったあの女が、今では美しさと力強さを見せつける蛮獣人に生まれ変わったのだ。
なんと素晴らしい。
この蛮獣人のメスが自分のパートナーになってくれるのだろうか・・・

「オホホホホ・・・ジャーラー様はお前を新たな蛮獣人として生まれ変わらせたもうた。さあ、お前が何者かジャーラー様にお見せなさい」
新たな蛮獣人の誕生に高笑いをするソヤ。
これはなかなか強そうな蛮獣人ではないか。

「クイィィィィ! アタシは蛮獣人アリクイですわ。偉大なる魔人ジャーラー様、大魔女・ソヤ様、アタシをこのような素晴らしい躰に脱皮させていただき、ありがとうございます。クイィィィィ!」
闇の奥のジャーラーとその前に立つソヤに一礼する蛮獣人アリクイ。
その口元に笑みが浮かぶ。

「オホホホホ・・・それでいい。今日からお前はヤーバン一族の蛮獣人。我が一族のために働きなさい。オホホホホ・・・」
「はい、ソヤ様。アタシはヤーバン一族の蛮獣人アリクイ。どうぞ何なりとご命令を。クイィィィィ!」
美愛の心は完全に歪んでしまっていた。
彼女はもはや桐川美愛などと言う人間ではない。
ヤーバン一族の蛮獣人アリクイへと生まれ変わったのだ。

「うふふふふ・・・お前には蛮獣人アルマジロとともに、“シュガンの瞳”を奪ってくることを命じる。いいな」
「クイィィィィ! お任せくださいませソヤ様。必ずやアタシが蛮獣人アルマジロとともに“シュガンの瞳”を奪ってまいります」
四つの鋭い爪を持つ両手を見せつけるようにかざし一礼する蛮獣人アリクイ。
この爪で邪魔するものは切り裂くのだ。
今からそれが楽しみでならない。

「オホホホホ・・・頼んだわよ。ほら、さっきから後ろでパートナーの挨拶を待ち焦がれているやつがいるわ。行って挨拶でもしてきたら?」
杖でアリクイの背後を指し示すソヤ。
振り向くと、そこにはじっと立ったまま彼女の方を見つめている蛮獣人アルマジロの姿があった。
「クイィィィィ! はい、ソヤ様。ふふふ・・・」
アリクイは細長い舌でぺろりと唇を舐める。
そして、ゆっくりとその身をアルマジロの元へと運んでいった。

ゆっくりとやってくる蛮獣人アリクイの姿。
見れば見るほど美しい。
人間だった時には感じなかったが、これほど美しい蛮獣人になるとは思いもしなかった。
なんだかドキドキしてしまう蛮獣人アルマジロ。
自分から望み、お願いしたことではあったが、本当に彼女は俺のパートナーになってくれるのか?
多少の不安がアルマジロを襲う。
だが、彼の前にやってきた蛮獣人アリクイは、にっこりと笑顔を見せた。
「初めまして。アタシはヤーバン一族の蛮獣人アリクイ。あなたのおかげでアタシはこのように蛮獣人として脱皮することができましたわ。お礼を言います」
スッと右手を差し出すアリクイ。
「お、おう・・・よろしくな。俺は蛮獣人アルマジロだ」
やや戸惑いながらも右手を出すアルマジロ。
二人の蛮獣人はがっちりと握手のように爪同士を絡ませる。
爪同士がカシッと小さく音を立てた。

アリクイもドキドキしていた。
見れば見るほどたくましい。
がっしりした躰はまるで鎧に覆われているかのよう。
鋭い爪は自分のものと同様で親しみを感じてしまう。
太い腕は彼女の躰すら軽々と支えてくれそう。
どうして彼のことを化け物などと言ってしまったのか。
人間だったからなのだ。
人間だったから蛮獣人アルマジロの魅力に気が付かなかったのだ。
でも今は違う。
今はアタシも蛮獣人。
彼と同じ蛮獣人同士なのだ。
パートナーになれるなんてすごくうれしい。

「これからは俺と一緒にジャーラー様やソヤ様のために働いてくれるか?」
アルマジロが不安そうに尋ねる。
何を言っているのだろう?
そんなこと当然のことじゃない。
アリクイがほほ笑む。
「ええ、もちろん。蛮獣人同士ですもの。それよりも・・・」
アリクイはそっと彼に躰を預け、その顔に手を這わせる。
「堅苦しい挨拶はもういいわ。蛮獣人同士、もっと親睦を深めあいましょ」
「そうだな・・・ふふふ・・・そうしよう」
アルマジロは、かわいいアリクイを抱え上げた。

                   ******

「ガフッ!」
屈強そうな男性が壁にたたきつけられる。
そのままずるずると床に崩れ落ち、動かなくなる。
おそらくもう生きてはいないだろう。
なんていう力だ・・・

「さ、佐々木(ささき)君・・・」
「立花教授、ここは私が食い止めます。早く逃げて!」
黒いスーツに伸縮式の警戒棒を持った男が、背後の白衣の男性を逃がそうとする。
その手には大事そうに箱が抱えられており、その中に“シュガンの瞳”が入っていることは間違いない。

「わ、わかった・・・」
箱を抱えて逃げ出していく白衣の男。
その後ろ姿を見ながら、蛮獣人アリクイはくすっと小さく笑う。
無駄なことを・・・
前回そうやって逃げることができたからと言って、今回も逃げられるとは限らないのに。
アタシが一人で来ているとでも思っているのかしら。
それに・・・
目の前で必死に立ちはだかる男を見る。
バカな男だ。
アタシが桐川美愛という以前の名前で連絡を取り、立花教授と“シュガンの瞳”の行方を聞いたら、あっさりと教えてくれたわ。
桐川君、無事でよかった・・・ですって?
アタシが桐川美愛のままでいると思っている愚か者だわ。

「くそっ! 化け物め!」
「クイィィィィ! 失礼な男ね。アタシは化け物なんかじゃないわ。ヤーバン一族の蛮獣人アリクイよ」
お前たちこそひ弱な人間のくせに・・・
アリクイはそう思う。
事実、彼女に立ち向かってきたガードマン二人は、彼女の爪の一撃であっさりと死んでしまったではないか。
物足りないにもほどがある。

「桐川君の名をかたったのはお前だな。彼女はどうした? まさか・・・」
「ふふふふ・・・桐川美愛などもういないわ。アタシは蛮獣人アリクイとして脱皮したのよ。クイィィィィィ!」
高らかに鳴き声を上げる蛮獣人アリクイ。
そう・・・アタシは蛮獣人アリクイ。
人間なんかじゃないわ。

「くっそぉ!」
伸縮式の警戒棒を振るってくる男。
アリクイはそれを正面から左手の爪で受け止め、右手の爪をたたき込む。
「グハッ!」
彼女の爪は深々と男の腹をえぐり、血を噴出させる。
他愛ないわ・・・
どうっと床に倒れる男。
それをアリクイは踏みつける。
腹立たしいことこの上ない。
以前の自分は確かに人間だったことがある。
その時にこんな男のことを憧れに感じていたなんて・・・
アタシは愚かで馬鹿でどうしようもなかった・・・
人間だったなんて・・・
人間だったなんて・・・
人間だったなんて・・・
思いだしたくもないわっ!
ぐしゃりと男の顔が踏みつぶされる。
それを見て、アリクイはほんの少しだけ気が晴れた。

                  ******

「クイィィィィ!」
ひとしきり高らかに鳴き声を上げる蛮獣人アリクイ。
ここはビルの屋上。
下を見ても、どうやら外に逃げ出していく人間はいない。
部屋から逃げた立花教授と“シュガンの瞳”も、待ち伏せている蛮獣人アルマジロが確保したということだ。
「うふふ・・・」
当然だわとアリクイは思う。
人間たちがアタシたち蛮獣人から逃れられるはずがない。
まして、蛮獣人アルマジロが待ち伏せているのだ。
突破できるはずなどないではないか。

“シュガンの瞳”をソヤ様に持ち帰れば、きっと喜んでいただけるだろう。
お褒めの言葉もいただけるかもしれない。
そうしたら、アルマジロと一緒に祝杯を上げよう。
二人で今晩もまた・・・
うふふふふ・・・
思わず昨晩のことを思い出すアリクイ。
それだけで躰は熱くなり、股間がじんわりと濡れてくる。
アルマジロの太いペニスが欲しくなる。
昨晩二人は激しく交わったのだった。
蛮獣人同士の交尾。
それはとてつもない快楽。
純粋に楽しむためだけの交尾ができるのだ。
人間では味わえなかった快楽に、二人は酔いしれたのだった。

「誰?」
背後に気配を感じて振り返る。
立っていたのは一人の人間の女性。
その姿には見覚えがある。
「カオル・・・」
かつて友人だった女性、蜂谷カオルだ。
どうして彼女がこのようなところにいるのか?

スッと両手の爪をかざす蛮獣人アリクイ。
見られたからには生かしておくわけにはいかない。
ヤーバン一族のことはできるだけ秘密にしておかなくてはならないのだ。
今はまだ人間どもに知られるわけには・・・
残念だけど、運がなかったわね・・・

シュッと鋭く爪を繰り出す。
蛮獣人となった今は、以前の美愛とは比べ物にならない素早さと強さがある。
人間など一撃で・・・
「えっ?」
だが、アリクイの一撃はかわされていた。
まるで一瞬で立っている場所を変えたかのよう。
しかも、その姿は消えている。
どこ?

「クキキキキ・・・」
甲高い笑い声が頭上から響く。
上?
アリクイが見上げると、夜空に舞っている一体の蛮獣人の姿があった。
「蛮獣人・・・」
「クキキキキ・・・擬態くらい見抜いてほしいわね、同じヤーバン一族の蛮獣人同士なんだから」
ふわりと屋上に着地するその姿は、先ほどまでの蜂谷カオルとは全く違う。
右手にレイピアのような長い針を輝かせ、黒と黄色を主体とした外骨格が躰を覆っている。
背中には薄い翅が広がり、頭部にはゴーグルのような複眼と額から左右に伸びる触角が付いていた。

「クキキキキ・・・言ったでしょ、私はヤーバン一族なのって。私は蛮獣人スズメバチ」
ほほ笑みながら自己紹介する蜂の姿の蛮獣人。
「クイィィィィ! なぁんだ、そういうことだったのね。悪かったわ。アタシは擬態なんてできるって思わなかったから」
仲間だと判って戦闘態勢を解くアリクイ。
あそこまで完璧に人間に擬態できる蛮獣人がいるとは思っていなかったのだ。
せいぜいコートや帽子で人間ぽくふるまうものとばかり。

「無理もないわね。私やガメレオンのような蛮獣人の方が特殊だし。私はソヤ様に特殊タイプとして作られたの」
くすっと笑うスズメバチ。
彼女の言うとおり、大半の蛮獣人は人間に擬態することなどほとんどないのだ。
スズメバチやガメレオンの方が珍しいのである。
「でも、うれしいわ。あなたが蛮獣人に選ばれたと知って挨拶に来たのよ。これからは蛮獣人同士よろしくね」
「ありがとう。アタシは蛮獣人アリクイ。こちらこそよろしく」
二体のメスの蛮獣人たちが針と爪を合わせて音を鳴らす。
見るものが見れば美しい二体の蛮獣人たちだ。

「下では無事に“シュガンの瞳”を確保したみたいよ。あなたのパートナーなんでしょ、彼?」
「ええ。アタシにはもったいないくらいのパートナーだわ」
スズメバチの言葉にうなずくアリクイ。
「まあ、ご馳走様。早速任務成功でよかったわね」
「ありがとう。あなたの方は何を?」
「私は城北アカデミーで非常勤講師として潜入行動しているわ。働きバチもすでに何人か・・・クフフフ」
意味ありげに笑うスズメバチ。
「城北アカデミー?」
高名な学校だ。
「ええ・・・あそこの優秀な頭脳を持つ女たちを働きバチとして支配し、いずれ全国に広めていくというわけ。でも、気がかりが一つ」
「気がかり?」
スズメバチのような蛮獣人に気がかりとは?
「ええ・・・あそこにはガイア・フォースの関係者がいるらしいわ」
「ガイア・フォース!」
ガイア・フォースと言えばヤーバン一族に敵対し、魔人ジャーラー様の復活を阻止しようとたくらむ連中だ。
名前を聞くだけで怒りがこみあげてくる。

「ねえ、スズメバチ。ガイア・フォースが邪魔するようならアタシたちが排除するわ。だからすぐに言ってね」
ぐっと両手に力を籠めるアリクイ。
アタシとアルマジロのコンビならどんな相手にも負けるはずはない。
ガイア・フォースだろうとヤーバン一族の邪魔するものは排除するのみだ。
「ええ、その時はお願いするわね。頼りにしているわ、アリクイ」
「任せて頂戴。クイィィィィ!」
アリクイは高らかに鳴き、スズメバチとともに夜の闇へと消えていった。

END

いかがでしたでしょうか。

今日はこれにて。
それではまた。
  1. 2021/01/10(日) 21:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
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ママは食べてすぐ寝たので牛になってしまい、牛怪人の奥さんにされてしまいました

今日は新年一発目のSSを投下いたしますねー。
やはり新年ということで、今回はウシネタです。

タイトルは、「ママは食べてすぐ寝たので牛になってしまい、牛怪人の奥さんにされてしまいました」です。
タイトルと内容はあんまり合っていないかもしれませんが、そこは笑って見逃してやってください。
(^_^;)

超短編のSSですが、お楽しみいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。


ママは食べてすぐ寝たので牛になってしまい、牛怪人の奥さんにされてしまいました

 「ただいまー」
 ボクは勢いよく玄関のドアを開けて家に入る。
 今日も学校が終わったー。
 家に帰ってくると、ホッとするよね。
 もちろん宿題とかもあるんだけどさ。

 ボクは靴を脱ぎ捨て、まっすぐ自分の部屋に行くとカバンを置く。
 そして洗面所で手を洗ってうがいをし、それからリビングに行くんだ。
 今日のおやつは何かなー。

 「ママ、ただいまー。えっ?」
 ママがテーブルに突っ伏してる。
 えっ?
 なに?
 「ど、どうしたのママ?」
 ボクはママのそばに行く。
 「あ……お帰りなさい、大樹(だいき)」
 ボクが行くと、ママはなんだか気だるそうに顔を上げた。
 「ママ……大丈夫?」
 「う……ん。なんだか買い物から帰ってきたら躰が急にだるくなって……風邪かもしれないから、あんまり近寄らないほうがいいかも」
 ええ?
 大丈夫かなぁ?
 心配だよ。
 「薬持ってこようか?」
 「う……ん……もう少し、様子見る……」
 ママはそう言ってまたテーブルに顔を伏せてしまう。
 様子見でいいのかなぁ?
 「おやつ……戸棚にあるお菓子食べていいわよ……」
 「あ、うん……」
 おやつなんてどうでもいいのに。
 「ママ、寝るならベッドで寝たほうがいいよ」
 「うん……わかってる……もう少ししたら……」
 「ママ」
 どうしよう……
 このまま寝てて大丈夫かなぁ?
 病院に行かなくていいのかな……

 ボクは心配になったけど、ママの言う通り少し様子を見ることにした。
 戸棚からお菓子を取り出し、部屋からカバンを持ってきて、リビングで宿題をやることにする。
 ここなら、ママの様子も見ていられるよね。

 ボクがしばらく宿題をやって、もうすぐ終わろうかというとき、ママが突然起き上がる。
 「ママ?」
 ボクが声をかけたのにもかかわらず、ママはスッと立ち上がると、そのままキッチンに駆けこんでいってしまう。
 「ママ」
 ボクが慌てて後を追うと、ママは冷蔵庫を開け、野菜室からレタスを取り出して、いきなりむしゃむしゃと食べ始める。
 「えっ? マ、ママ?」
 ボクのことなど目に入ってないかのように、ひたすらレタスを食べるママ。
 大きなレタスの玉が、みるみるうちに小さくなっていく。
 「ど、どうしたの、ママ?」
 「ダメ……これじゃ足りない……」
 レタスを食べ終わったママは、なんだか物足りなさそうにしてる。
 いきなりレタスを食べちゃうなんてどうしたんだろう?

 「ママ?」
 ママはボクに返事もしないで、リビングに戻ると、財布を握って飛び出していく。
 「マ、ママ」
 「ちょっと買い物に行ってくるわ。お留守番お願い」
 ボクが玄関に追いかけると、ママはそう言って出て行ってしまう。
 えええええ?
 ど、どうしちゃったの、ママ?
 買い物ってさっき行ってきたんじゃなかったの?
 疑問に思うボクの目の前でドアが閉まる。
 ボクはただ、唖然として見送るしかなかった。

 「ふう……ただいま」
 しばらくしてママが帰ってくる。
 先ほどとは違ってにこにこしている。
 「お、お帰りなさい。だ、大丈夫なの?」
 ボクは仕方がないので宿題の残りを片付け、不安に思いつつ家で留守番をしていたのだ。
 「えっ? 何が?」
 両手にいっぱいの荷物を抱えているママ。
 いったい何をそんなに買ってきたのだろう?
 「さっき、躰がなんだかだるいって……」
 「ええ? そうだったかしら? うふふ、もう大丈夫よ。きっとお腹が空いていたせいかも」
 そう言ってママは、テーブルに着くと持ってきた袋からトウモロコシを取り出す。
 わあ、トウモロコシだ。
 今晩のおかずに使うのかな?

 「えっ?」
 ボクは驚いた。
 ママは取り出したトウモロコシを、そのまま茹でも焼きもせずにぼりぼりと食べ始めたのだ。
 「マ、ママ?」
 「なあに? あげないわよ。これは私が食べるんだから」
 ギロリッとボクをにらむママ。
 「そうじゃなくて、生で食べて大丈夫なの?」
 「平気よ。美味しいわ」
 ぼりぼりとあっという間に一本食べ尽くし、二本目にかじりつくママ。
 変だよ……
 ママ……変だよ……
 いったいどうしてしまったの?

 「ああ、美味しかった。何? 私の顔をじっと見たりして」
 トウモロコシを三本も食べてしまうママ。
 「ママ……大丈夫? 何か変だよ」
 「何が?」
 「だって……トウモロコシは普通生じゃ食べないよ」
 「そう? そうだったかしら……いいじゃない、美味しいんだもん」
 あっさりとそういうママ。
 いいじゃないって……
 お腹は大丈夫なの?

 「ふわぁ……食べたら眠くなっちゃったわ。おやすみ」
 「えっ? ええっ?」
 またしてもテーブルに伏せてしまうママ。
 「ママ! ママってば!」
 「もう……なぁにぃ?」
 早くも半分寝てしまっている感じだ。
 「だめだよ! 食べてすぐ寝たらウシになるって、ママいつも言ってるじゃない」
 行儀が悪いとか消化に良くないとかで、ママは時々ボクにそう言っていたのだ。
 食べてすぐ寝るとウシになっちゃうわよって。
 でも、ママは目を開けてもくれない。
 「ねえママ! 晩ご飯は? 夕食の支度はしないの?」
 「ああん……もう……うるさいわねぇ……適当に食べてよ」
 「ええ? ママ! ママってば!」
 ボクが何度呼んでも揺さぶっても、ママはもう起きようともしない。
 グウグウと寝息を立ててしまっている。
 どうしよう……
 ボクは途方に暮れてしまった……

                   ******

 「それで、どうしたの?」
 「うん。夜にパパに電話してみたんだけど、ママはきっと疲れが出たんじゃないかって。パパも赴任先だからすぐに帰るってわけにはいかないって言うし。だから朝になってもまだママの様子がおかしいなら、病院に行くように言いなさいって……」
 ボクは昨夜の出来事を由紀乃(ゆきの)ちゃんに話す。
 結局あの後、ボクは買い置きのカップラーメンを食べて、リビングでママの様子を見ているうちに、気が付いたら寝てしまっていたんだ。

 「そっか。それでおばさんはどうなの?」
 由紀乃ちゃんが心配そうにボクの顔を覗き込む。
 由紀乃ちゃんは幼稚園の時からのボクの友達で、学校では隣のクラスだ。
 家が近いので、時々一緒に帰ることがある。
 家にも何度か遊びに来たことがあって、ママも由紀乃ちゃんのことはよく知っている。
 だから今日はボクが一緒に帰ろうと誘ったんだ。
 なんだか話を聞いてほしくて……

 「うん……朝になったらいつものようにボクを起こしてくれたよ。昨日のことは夢だったのかなって思ったぐらい。でも……」
 「でも?」
 「口をずっともぐもぐさせているんだ。しゃべる時も口に何か物を入れている感じでしゃべるし……」
 「物を?」
 「うん。ボクが何を食べているのって聞くと、何も食べてないわよって……口をもぐもぐさせながらそう言うんだ」
 「ふーん……」
 「じゃあ、なんで口をもぐもぐさせているのって聞いたら、ああ、これ? これは胃の中のものを口に戻してまた噛んでいるのよって……」
 「ええ?」
 由紀乃ちゃんがびっくりする。
 そりゃそうだよね。
 ボクだって驚いたもん。
 でも、ママは口をもぐもぐさせながらそう言ったんだ……

 「ねえ、だい君」
 由紀乃ちゃんがボクを呼ぶ。
 ボクの名前が大樹だからだい君。
 ずっとそう呼ばれているんだ。
 「ねえ、だい君。やっぱり一度お医者さんに診てもらった方がよくない?」
 「うん。ボクもそう思う。ママはどこかきっと病気なんだ。だから変な行動しちゃうんだと思う。なんか前にテレビでも病気の人は普段とは違う行動を取ったりするって言ってたし」
 「私もそれがいいと思う」
 由紀乃ちゃんもコクコクとうなずく。
 良かった。
 由紀乃ちゃんに聞いてもらえてホッとした。
 帰ったら、ママに一緒に病院に行こうって言ってみるよ。

 「それじゃまたね。おばさんのこと、何か手伝えることがあったら言ってね」
 「うん。大丈夫だと思う。また明日ね」
 ボクは手を振って由紀乃ちゃんと別れる。
 由紀乃ちゃんに話を聞いてもらって、だいぶ気分が軽くなった気がする。
 うん……ママがこれ以上おかしな行動するなら、お医者様に診てもらわなくちゃ……

 「ただいまー」
 ボクはいつもと同じようにそう言って家に入る。
 ママ……どうしているだろう……
 いつも通りに戻っていてほしいけど……

 「ママ……」
 ボクは手にしたカバンを落としてしまう。
 嘘でしょ……
 ママ……

 「あら、お帰りなふぁーい」
 大きな袋に手を突っ込んで、取り出した草を口に運んでは食べているママ。
 えっ?
 あれって、野菜か何か?
 草……だよね?
 袋にはウサギ用の牧草って書いてあるし……
 「ママ! 何食べているの? 草なんか食べてどうしたの?」
 ボクはママに駆け寄り、何とか食べるのをやめさせようとする。
 トウモロコシどころか、草を食べるなんて変だよ!
 どうしちゃったんだよ、ママ!

 「ええ? うるさいわねぇ。アタシが何を食べようが勝手でしょ。草は美味しいのよ」
 もしゃもしゃと草を口に運ぶママ。
 「だめだってば! やめてよ! きっとママは病気なんだよ! ボクと一緒に病院に行って診てもらおうよ!」
 ボクはママの腕を取り、無理やり食べるのをやめさせようとする。
 でも、ママはボクを振りほどくようにして突き飛ばす。
 「うわっ!」
 「うるさいわねぇ。もういいわ。げふっ……もうお腹いっぱいになったし……ふわぁぁ……少し寝ましょ」
 げっぷをして大きなあくびをするママ。
 「えっ! ママ! 病院へ行こうよ! ママってば!」
 床に尻もちをついたボクがそう言っても、またママはテーブルに突っ伏して寝てしまう。
 「ママ! ママってば! ダメだよ! 食べてすぐ寝るとウシになっちゃうってば! ママ!」
 ボクは必死にそう叫んだ。

 えっ?
 突き飛ばされたボクがようやく立ち上がった時、ママの姿が変わり始める。
 嘘……でしょ……
 ママが……
 ママが変わっていく……

 ママの姿が、だんだんと変わっていく。
 着ているものがびりびりと裂けていき、ママの躰が大きくなる。
 頭からは左右に二本の角が伸び、耳も大きくなっていく。
 鼻が伸び、口も大きくなっていく。
 脚は太くなり、穿いていたストッキングもちぎれ、つま先が動物の蹄のように変わっていく。
 躰の色は白と黒のぶちになり、お尻からは先がふさふさとした尻尾が生えてくる。
 ウシだ……
 ママの姿はウシと女の人が合わさったような姿になっていた。
 ママはウシになってしまったんだ……
 そんな……
 食べてすぐ寝たら、本当にウシになってしまうなんて……

 「ブモモモモー! どうやら変化が終わったようだな。おい、起きろ」
 「わあっ!」
 ボクは思わず声を上げてしまう。
 いきなりウシの化け物が現れたのだ。
 全身が白と黒のぶちになっていて、頭はウシの頭をして角が生えていて、胸はがっしりとして腕も太く、足には蹄が付いていて尻尾もある。
 ママと同じようにウシと男の人が合わさったような姿だ。
 「ブモォーーー! アアァン、迎えに来てくださったのですか、ウシ男様ぁ」
 起き上がったママが、鳴き声を上げてウシ男に抱き着いていく。
 「マ、ママ!」
 「ブモーーー! グフフフ、そうだ。俺様のメスを迎えに来てやったのだ」
 「うれしいですわ、ウシ男様ぁ」
 ママの腰に手を回し、ママを抱き寄せるウシ男。
 ママは着ていたものもすっかりなくなってしまい、おっぱいもむき出しの姿でウシ男に抱き着いている。
 そんな……

 「ママを離せぇ!」
 ボクは勇気を振り絞ってそう叫ぶ。
 ギロリとウシ男の目がボクを見る。
 ううう……
 負けるもんか……
 「ママを返せ! ママをそんな躰にしたのはお前だろう!」
 「ブモモモモー! 威勢のいいガキだ。そうとも。このメスには気付かれないようにウシの因子を注入してやったのさ。こうして俺のメスにするためにな。グフフフ……」
 「アン、ウシ男様ぁ」
 ウシ男の手がママのお尻を撫でまわす。

 「くっそぉー! ママを放せ!」
 ボクは落ちていたカバンを振り回してウシ男に立ち向かう。
 ママを……
 ママを元に戻せぇ……

 「グハッ!」
 ボクはお腹を蹴飛ばされて、壁にたたきつけられる。
 「グ……フ……マ、ママ……」
 ボクを蹴飛ばしたのはママだった。
 ママがウシ男を守ろうとして……
 「このガキが! ウシ男様に手を上げようとするなんて赦さないわよ! アタシが踏み殺してやろうかしら!」
 ボクを冷たい目で睨みつけてくるママ。
 そんな……
 ボクのママだったのに……

 「グフフフ……おいおいウシ女、そいつはお前のガキじゃないのか?」
 にやにやと笑っているウシ男。
 「ええ? 冗談じゃないですわ、ウシ男様。こんなガキはアタシの子じゃありません。アタシの子はぁウシ男様にこれから種付けしてもらって産む子供だけですわぁ」
 ママ……
 そんなぁ……
 「グフフフ……いいぞ。それでいい。お前は俺の妻になるのだ。それを忘れるな」
 「本当ですか、ウシ男様ぁ。うれしいですわぁ。はい、アタシはウシ男様の妻になります。妻としてウシ男様にお仕えするウシ女ですわぁ。ブモォーーー!」
 ママがうれしそうに鳴き声を上げる。
 ちくしょう・・・ちくしょう・・・

 「ほう……まだ起き上がるか」
 「ママを……返せ……」
 ボクは痛みをこらえて立ち上がる。
 ママを取り戻さなきゃ……
 「いまいましいガキねぇ。アタシはお前のママなんかじゃないって言ってるでしょ。踏み殺してやるわ。ブモォーーー!」
 ママがボクの方に歩いてくる。
 ママ……
 ママ……
 目を覚まして……

 「待て、ウシ女」
 「えっ? は、はいウシ男様」
 「ガキのくせにいい度胸だ。使い道があるかもしれん。連れて行くぞ」
 「はい。かしこまりました、ウシ男様」
 使い道?
 ボクをどうしようと……
 「ブモォーーー! しばらくおとなしくしていなさい」
 ママがボクを殴りつけ、ボクは意識を失った……

                   ******

 「ワオーーーン……くふふ……」
 ボクは思わず遠吠えをしてしまう。
 夜は何となく気分がいい。
 夜はボクたちエトールの時間だからだ。

 あのあと、ボクはウシ男たちに連れられ、エトールのアジトに連れていかれた。
 そこでボクは犬の因子を埋め込まれ、イヌ男に生まれ変わったのだ。
 エトールは、この世界を裏で支配する組織。
 12人のリーダーが、それぞれの動物たちを支配する。
 ボクも子供ながらにその12人に選ばれたというわけ。
 とても光栄でうれしい。

 それに今ボクが向かっているのは、由紀乃ちゃんの家。
 彼女をイヌ女にして、ボクのメスにする許可が下りたのだ。
 うれしいな。
 これからは彼女がボクのパートナーになる。
 きっとかわいいイヌ女になってくれるだろう。
 将来は子供もたくさん産んでもらって、イヌ軍団を大きくするんだ。
 くふふふふ……
 待っててね、由紀乃ちゃん。
 すぐにボクと同じく犬の因子を埋め込んであげる。
 一緒にエトールのために頑張ろうね。

 「ワオーーーン!」
 ボクはわくわくする思いを胸に、もう一度吠えるのだった。

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければコメントなどいただけますと嬉しいです。
よろしくお願いいたします。

明日は新年SS第二弾を投下いたしますのでお楽しみに。
それではまた。
  1. 2021/01/02(土) 20:00:00|
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アタシはbeASTのメス豚怪獣人なのぉ

昨日予告しました通り、今日は短編SSを一本投下させていただきます。
タイトルは「アタシはbeASTのメス豚怪獣人なのぉ」です。

実は、pixivで先日あるSSを拝見しまして、それがとても私のツボに嵌まりましたのです。
首魁の定め様の書かれました作品でして、「主人は冷たい土の中に」という作品です。
(作品名クリックでpixivのページに飛べます)

できましたら、今回の拙作をお読みいただきます前に、こちらの首魁の定め様の作品をお読みいただいた方が早いのではありますが、この作品に登場します男女の怪獣人がラブラブなのがとても気に入りまして、私もこういうラブラブな男女の怪人のSSを書きたいと思い、今回首魁の定め様にお願いし、世界観を使わせていただくことにいたしました。
言ってしまえば、今作はこの「主人は冷たい土の中に」の「二次創作」と言っていい作品となります。

今回拙作をブログに投下してよいとの首魁の定め様のご許可をいただきましたので、今日投下させていただきます。
お楽しみいただけましたら幸いです。


アタシはbeASTのメス豚怪獣人なのぉ

 「ブヒッ!」
 一匹の怪獣人が不満そうに鼻を鳴らす。
 鼻の穴をむき出しにした大きく突き出た豚鼻に、先が二つに割れた両足の蹄。
 巨大な躰は黒く短い毛におおわれ、お尻には小さな尻尾が付いている。
 頭には両側に広がった耳があり、腰にはbeASTの文字が刻まれたバックルの付いたベルトが巻かれていた。
 その姿はまさに人と黒豚とが融合したような姿。
 彼こそbeASTの怪獣人クロブターであった。

 beASTとは、怪獣人を使って地球を支配しようとする組織である。
 謎の大首領が支配し、大幹部が数名いるとも言われているが、確かなことはわからない。
 一つ言えることは、世界中でbeASTの活動は行われ、その怪獣人による被害は広まっているということだ。
 このままでは、遠からず地球はbeASTに支配されてしまうかもしれない。

 しかし、闇があれば光もある。
 世界各地では、beASTに対抗する人やチームが現れ、人知れず戦いが繰り広げられていた。
 双方ともに活動を表ざたにしないのは、これらの戦いが市民に与える影響が予測がつかないからだった。
 下手をすれば、人類そのものが光と闇に分かれて戦いを始めてしまうかもしれない。
 どちらかが優勢になり、その活動がほぼ終息してからでないと、一般社会に知らせることは不可能だろう。
 それまでは、beASTも、またそれに対抗する人々も、ひそかに活動することが大事だった。

 先日、怪獣人クロブターの所属する日本地区でも大きな動きがあった。
 なんと、忌々しい存在であったカイザージャスティスがくたばったのだ。
 奴を倒したのはモグラの怪獣人モグラス。
 それと彼のパートナーのメスモグラスという女の怪獣人だ。
 二人のコンビネーションがカイザージャスティスを倒したのだ。

 beASTとしては大いに喜ばしいことには違いない。
 だが、手放しで喜んでもいられない。
 日本地区には倒すべき相手がまだいるからだ。
 チームを組んでbeASTに対抗してくるやつら。
 エクスペルファイブが存在するのだ。

 エクスペルファイブは五人のチーム。
 よく言う特撮の戦隊ヒーローに近い存在である。
 ご丁寧に赤、青、黄色、ピンク、緑のバトルスーツを着込み、beASTの怪獣人に戦いを挑んでくるのだ。
 さすがの怪獣人も五体の敵を同時に相手にするには苦しく、エクスペルファイブは順当に怪獣人を倒してスコアを上げている。
 日本地区のbeASTとしては強敵と言っていい相手だった。

 「ブヒィ―!」
 怪獣人クロブターはまたしても鼻を鳴らす。
 その腕は組まれ、口元は固く閉じられていた。
 面白くない……
 クロブターには不満がたまっている。
 それはbeASTに歯向かう連中のことなどではなかった。
 面白くない……
 クロブターは思う。
 なぜボクちんにはパートナーがいないのか?
 かわいいかわいいメス豚のパートナーが、なぜボクちんにはいないのか?
 大首領様は何を考えているのだろうか……
 ボクちんにだってパートナーを用意してくれてもいいじゃないか……

 カイザージャスティスを倒したのはモグラスとそのパートナーのメスモグラス。
 とてもかわいいメスの怪獣人で、モグラスにはもったいないほどのいいメスらしい。
 二人には、ご褒美としてかなりの自由行動が許されたほか、友人たちにもパートナーを用意してあげたというではないか……
 いいなぁ……
 いいなぁ……
 ボクちんもかわいいパートナーが……
 ボクちんの言うことなら何でも聞いてくれるような、かわいいメス豚パートナーが欲しいなぁ……

 そうだ……
 きっと大首領様は、ボクちんのことを忘れているに違いない。
 だからお願いに行ってみよう。
 きちんとお願いすれば、きっと大首領様も聞いてくださるだろう。

 スッと立ち上がるクロブター。
 善は急げとばかりに謁見の間へと向かう。
 大首領様に会うために。
 願いを聞いてもらうために。
 ブヒヒヒヒ……

                   ******

 「ふう……」
 車内の後部シートにもたれかかり、ため息をつく矢際千穂(やぎわ ちほ)。
 車の窓の外を、街の夜景が流れ過ぎる。
 勤務を終えて自宅に帰るとはいえ、ゆっくりできるとは限らない。
 よほどのことがない限り、副司令の川崎君が対処してくれるだろうが、やはりエクスペルファイブの出動判断となれば、彼女が行わなくてはならないのだ。
 明日の休日、一日ゆっくりできるといいのだけど……
 千穂は苦笑いする。
 なぜこんなことをしているんだか……
 苦労ばかりだというのにね……
 おかげで結婚もしないうちにこんな歳になってしまったじゃない……

 矢際千穂はエクスペルファイブの指揮を執る本部の司令官である。
 beASTとの戦いはエクスペルファイブというチームを生み出し、彼女は様々な適性を見出された結果、その司令官ということになってしまった。
 女だてらにという声も聞かれるが、今のところ彼女はその任務を過不足なくこなしている。
 チームの五人のメンバーも彼女を信頼し、その命を託してくれているのだ。
 そして、彼女の判断が日本地区をbeASTから守っているのも確かなことだった。

 beASTとの戦いは、これからますます激しくなるだろう。
 なぜなら、エクスペルファイブとともに戦ってくれていたカイザージャスティスが、先日その若い命を落としてしまったからだ。
 カイザージャスティスのような勇者が倒されるなど信じられない思いだったが、彼の死が確認されたことで、エクスペルファイブのメンバーはひどく悲しみに暮れた。
 千穂も悲しんだが、いつまでも悲しんでいるばかりではいられない。
 今後はカイザージャスティスがいない状態で、beASTに立ち向かわなくてはならないのだ。
 できれば同時攻撃に対する対応など、ともに戦う仲間がいるに越したことはない。
 とはいえ、beASTとの戦いを表沙汰にできない以上、ともに戦う仲間を見つけ出すのは至難の業である。
 何とか共闘できる相手が見つかるといいのだが……
 
 車内に閃光が差し込み、数台前を走る車が突然爆発する。
 「えっ? なに?」
 とっさに手で顔を覆う千穂。
 「司令! 伏せてください!」
 助手席の若い男が懐から拳銃を抜き、後部シートに声をかける。
 すぐさま車は道を外れ、脇道へと入っていく。
 エクスペルファイブの司令官ということで、千穂の乗る車にはボディガードが乗り、前後には間隔を開けて警備車輌が付くことになっている。
 間隔を開けるのは車列を連ねているように見せないためであり、千穂もボディガードも一般人と同じような服装をして、あくまで見た目には普通の車のように見せ、襲撃を回避するようになっていた。
 場合によっては千穂を助手席に乗せ、後部シートに娘役の背の低い女性ボディガードを乗せて、家族の乗った車に見せかけたりすることさえあるのだ。
 そのため、これまで千穂の乗る車がbeASTの襲撃を受けたことはない。
 千穂の情報も万全に守られ、彼女がエクスペルファイブの本部司令官であることを知るものはごくわずかに限られている。
 だが……
 どうやらそれも今日までのようだった。

 「後ろは?」
 千穂は後ろ側で警備についていた車輌が付いてきているか確認しようと振り返る。
 だが、その目には彼女の車に続いて脇道に入ろうとした車が爆発炎上したのが映し出される。
 「だめです。やられたようです」
 運転しているボディガードが、ルームミラーで後部を確認する。
 「本部と連絡を取ります」
 「任せます」
 助手席のボディガードの言葉に千穂はうなずく。
 こうなってしまっては、危険回避のために本部に向かうというわけにもいかない。
 それではみすみすbeASTに本部の位置を教えることになってしまうからだ。
 何とかエクスペルファイブに出動してもらい、救出してもらうしかないだろう。
 問題は……
 それまで逃げ切れるかどうか……

 ドンッと車体に衝撃が走り、車が急激に停止する。
 そのせいで、千穂の躰はシートベルトに激しく押さえつけられ、何とか前のシートに頭を打ち付けずに済む。
 状況を確認しようと顔を上げた千穂は、車のボンネットが重量物にでも押しつぶされたかのようにひしゃげ、フロントウィンドウも割れてしまっていることに気が付いた。
 「司令、外へ! この車はもうダメです!」
 運転手兼ボディガードの男が叫ぶ。
 「司令!」
 助手席のボディガードもすぐにドアを開けて飛び出し、周囲を確保しようとする。
 だが……

 「グハッ!」
 外に出た途端に躰を吹っ飛ばされ、車の後部ドアに叩きつけられるボディガード。
 そのまま崩れるように倒れ込み、後部ドアの窓にべったりと赤い血が残される。
 「くっ」
 千穂はシートベルトを外し、急いで逆側のドアを開けて外に出る。
 運転手兼ボディガードが、彼女のカバーに入ろうとするが、彼もまた横合いからの一撃を受け、吹っ飛ばされてしまう。
 「荒沢君!」
 千穂は彼の名を呼ぶが、強烈な勢いで壁に叩きつけられたようで、すでに生きてはいないだろう。
 いったい何が?
 千穂は手にしたハンドバッグから拳銃を取り出す。
 今日の千穂はセレブな女実業家といった雰囲気の衣装をまとっている。
 どこかの夜会の帰りという雰囲気を出して、エクスペルファイブの本部司令ということをごまかすためだ。
 なので、ロングドレスという恰好であり、逃げるうえでは非常に不利だ。
 まいったわね……
 敵の目を欺く方向に向きすぎていたわ……
 次からはもっと動きやすい服装を考えなくちゃ……
 次があればだけど……

 「ブヒブヒッ! お前がエクスペルファイブの指揮官ブヒ? ブヒーッ!」
 闇の中から現れる不気味な姿。
 大きな鼻の穴を見せつけるような豚の鼻。
 三角形をした大きな耳。
 牙の生えた口。
 にらみつけてくる目。
 先が二つに分かれた両足の蹄。
 それでいて人間のように指のある手。
 そして太っているにもかかわらず、筋肉と脂肪が適度に合わさったような黒い短い毛におおわれたその躰。
 それはまるで豚と人間が掛け合わさったような異形の姿。
 間違いなくbeASTの怪獣人である。

 「くっ」
 千穂はすぐに拳銃を向ける。
 ボディガードが歯が立たなかった相手に、どれほど抵抗できるかはわからないが、すでに彼女が何者かバレている以上、できるだけの抵抗はしなくては……
 それにしても……
 千穂は思う。
 このにおいはなんとかならないのかしら……
 目の前の豚の怪獣人が発しているであろう臭いにおい。
 たまったものではないのだ。
 それに、見た目にも下品な太った豚という感じが、千穂の嫌悪感を刺激する。
 なんというか……もう少し見た目のいい怪獣人に襲われたかったと言いたくなってしまう。

 「ブヒッ! ボクちんの質問に返事は無しかブヒ……まあいいブヒ。間違ってはいなさそうだブヒ」
 ニタッと笑う豚の怪獣人。
 ブヒブヒうるさいうえに、まるでよだれでもたらしそうな下卑た顔だ。
 こんな怪獣人など見るに堪えない。
 エクスペルファイブが来てくれれば……
 お願い……早く来て……

 「がふっ!」
 えっ?
 なに?
 何が起こったの?
 千穂は困惑する。
 確かなのは、豚の怪獣人が意外に素早く動けること。
 そして、その豚の怪獣人によって首筋あたりに一撃を受け、今まさに気を失おうとしているということ。
 ダメ……
 気を失っては……
 ダ……メ……
 抵抗もむなしく、千穂の意識は闇に沈んだ。

                   ******

 「ブヒッ、ブヒヒヒッ」
 クロブターの口元に思わず笑みが浮かんでしまう。
 大首領様も粋な計らいをしてくださるものだ。
 この人間のメスを、ボクちんのメスにしてくださるというのだ。
 それも、ボクちんのことが好きで好きでたまらないエロメス豚にしてくださるとのこと。
 楽しみで楽しみでたまらない。

 融合手術台に寝かされている裸の人間のメス。
 なんでも、このメスはエクスペルファイブの司令官だそうだ。
 だが、そんなことはどうでもいい。
 大事なのは、これからこのメスが彼のものになるということ。
 それも、彼の好みに合わせ、彼のことを好きでたまらない淫らなエロ豚にしてもらえるということなのだ。
 それが本当なら、大首領様には感謝してもしきれない。
 最高の報酬を得たことになるだろう。

 このメスは確かに美しい。
 人間だった頃の彼ならば、もろに好みのど真ん中と言ってもいいかもしれない。
 だが……
 とクロブターは思う。
 肉付きが薄いのだ。
 人間のころの彼なら充分満足していただろう。
 だが、今の彼にとってはこれでは物足りないのだ。
 もっと肉付きを良くし、胸もお尻もドーンとボリュームがある方がいい。
 それでいて適度に締まっており、腰はバランスよくくびれてくれていれば最高だ。
 もちろん彼と同様に豚の顔になるのは当然だ。
 彼好みのメス豚の怪獣人となってもらうのだ。

 「う……」
 寝かされていた千穂の躰がピクリと動く。
 においだ。
 クロブターの強いにおいが、千穂の鼻を刺激して、目を覚まさせたのだ。
 「う……あ……」
 ゆっくりと目を開ける千穂。
 ひんやりとした空気を肌に感じる。
 ここはいったい?
 
 「う……」
 鼻も曲がってしまうような強烈なにおい。
 それが気を失う前に嗅いだにおいであることを千穂は思いだす。
 そして、そのにおいを発する豚の怪獣人がすぐそばに立って、彼女を見つめていることにも気が付いた。
 「ひっ!」
 すぐさま起き上がろうとした千穂だったが、両手両足を拘束されているようで動けない。
 それに衣服すらはぎ取られてしまっているではないか。
 思わず恥ずかしさに顔から火が出そうになってしまう。
 これはこの豚の怪獣人の仕業なの?
 ひどすぎるわ!

 「ブヒブヒッ! 目が覚めてしまったようだなブヒ。どうせならそのままおとなしく気を失ったままの方がよかったのにブヒ」
 近寄ってくる豚の怪獣人。
 ムワッとする豚のにおい。
 それが千穂の鼻を突く。
 「あなたが私をここに? 私をどうするつもり? 人質としてなら無駄なことよ。私を人質にしたところで、エクスペルファイブは私を切り捨てるだけだわ」
 キッとクロブターをにらみつける千穂。
 彼女の言葉は本当のことだ。
 エクスペルファイブに関連するメンバーは、できる限りのガードはするものの、beASTの手に落ちた時点で切り捨てられる。
 これは人質作戦を相手に取られないために必要なことなのだ。

 にらみつけてくるメスというのはゾクゾクする。
 こういうキャラを“調教”して、エロしか考えられないようなメス奴隷にするゲームが、人間だった頃は好きだったなとクロブターはふと思う。
 「ブヒブヒッ! 人質になどしないブヒ。お前にはボクちんのメスになるという大事なイベントが待っているブヒ」
 「メス? イベント?」
 何を言っているのだろう?
 千穂はハッと気づく。
 まさか……
 この豚の怪獣人は……私を犯すつもりなのでは?
 「私を……犯すつもりなの?」
 恐る恐る尋ねる千穂。
 もしそうだと言われたとしても、両手両足を固定され、裸にされてしまっている今は抵抗するすべがない。
 でも、もし相手がその気であれば、そこにチャンスがあるかもしれない。
 エクスペルファイブの司令官として、できる限り生き残る道は探らねばならないのだ。

 「ブヒブヒッ! 違う違う! ボクちんはそんなことはしないブヒ」
 慌てたように首を振るクロブター。
 人間の状態の彼女を犯してもつまらないだけだし、少し待てば、彼女の方からその身を差し出してくるに違いないのだ。
 何も無理やり犯す必要なんてない。
 好みの姿になってから、たっぷりと楽しめばいい。

 千穂は首を振るクロブターを意外に思う。
 この豚の怪獣人は、人質でなければてっきり自分を犯してくるのではと思ったのだ。
 であればこそ、それを逆用して隙を見つけようとも考えたのだ。
 犯すのでも人質にするのでもなければ、いったい……

 「ブヒブヒッ! お前にはこれからbeASTの融合手術を受けてもらうブヒ」
 「融合……手術?」
 「そうブヒ。融合手術を行い、お前をボクちんにふさわしい心と躰を持つメス豚に変えてやるんだブヒ」
 「そ……そんなことが?」
 サアッと顔が青ざめる千穂。
 融合手術でメス豚に?
 メス豚にされるというの?
 「ブヒブヒッ! もちろんできるブヒ。もしかして知らなかったかブヒ? beASTの怪獣人は大半が元は人間だブヒ。ボクちんもそうだブヒ」
 引きこもりニートでエロゲーしか楽しみがなかった男を、こうして怪獣人にしてくれたbeASTには感謝しかない。
 それどころか、パートナーとなるメスまでいただけるとなれば、大首領様のためなら何でもするというものだ。

 「そんな……今までの怪獣人が……人間?」
 千穂は大きなショックを受ける。
 beASTの送り込んでくる怪獣人が人間だったなんて……
 私たちは……人間を倒していたというの?

 「ブヒブヒッ! 心配はいらないブヒ。融合手術が終われば、お前もbeASTの怪獣人にふさわしい躰と心になるブヒ。人間のことなどどうでもよくなるブヒ」
 「いやっ! いやよっ! そんなのはいやっ! 怪獣人になんかなりたくないっ!」
 いやいやと首を振り、必死に手足の固定を外そうともがく千穂。
 「無駄だブヒ。その枷は人間の力では外せないブヒ。おとなしく融合手術を受けるブヒ」
 「いやぁっ! いやよぉっ! 誰かぁ! 助けてぇ!」
 千穂はもう半狂乱になって泣きわめく。
 人質や犯される方がはるかにマシだ。
 怪獣人にされるなんて死んでもいやぁ!

 だが、千穂の願いもむなしく円形の融合手術台が輝きだし、手術が始まってしまう。
 手術と言っても医師が行うわけではない。
 融合手術台が彼女の心と躰を変化させていくのだ。
 そして、その変化に必要な遺伝子として、クロブターの遺伝子の一部も手術台には取り込まれていた。
 千穂を彼好みのメス豚に変えるためである。

 「ヒィーッ! いやぁっ!」
 悲鳴を上げる千穂。
 その躰と心が変えられていく。
 躰は筋肉も内蔵も強靭なものへと強化され、その皮膚は黒くすべすべした全身タイツ状に変化していく。
 胸やお尻は小振りでバランスの取れていたものが、クロブター好みの大きな胸とお尻になっていく。
 両手の爪は鋭くとがり、両足のつま先は豚の蹄のように二つに分かれ、かかとはハイヒールのようにとがっていく。
 髪の毛は抜け去り、耳は頭の上の方へと移動して、三角形の大きな耳へと変化する。
 鼻もツンと突き出し、大きな豚鼻へと変わっていく。
 千穂の姿はだんだんとメス豚の怪獣人へと変化していったのだった。

 いやっ、いやぁっ!
 千穂は必死に抵抗する。
 お前はbeASTの怪獣人だ……
 千穂の頭に流れ込んでくる言葉。
 千穂はそれを何とか振り払おうとする。
 お前はbeASTの怪獣人だ……
 繰り返されていく言葉。
 違う……私は人間よ!
 怪獣人なんかじゃない!
 お前はbeASTの怪獣人だ……
 違う違う、私は人間よ!
 お前はbeASTの怪獣人だ……
 抵抗しても抵抗しても流れ込んでくる言葉。
 それは千穂の心を確実に侵食していく。

 お前はbeASTの怪獣人だ……
 違う……私は……私は人間……怪獣人なんかじゃ……
 お前はbeASTの怪獣人……メス豚の怪獣人なのだ……
 違う……私は怪獣人なんかじゃ……私は……
 お前はbeASTの怪獣人……メス豚の怪獣人……
 私は……怪獣人……私は……
 千穂の心がゆがんでいく。

 お前はbeASTの怪獣人……気に入ったオス豚を見ると、おマンコを濡らして交尾がしたくなる淫乱なメス豚の怪獣人……
 私は……怪獣人……メス豚の……怪獣人……
 お前はbeASTの怪獣人……気に入ったオス豚を見ると、おマンコを濡らして交尾がしたくなる淫乱なメス豚の怪獣人……
 私は……beASTの怪獣人……オス豚を見ると……交尾がしたくなる……
 beASTの怪獣人であるだけではなく、クロブターにふさわしいメス豚になるように変化させられていく千穂の思考。
 だんだんと彼女はエクスペルファイブの司令官から、beASTの怪獣人になっていく。

 お前はbeASTの怪獣人……もう人間ではない……
 わ……アタシはbeASTの怪獣人……もう人間じゃない……
 お前はbeASTの怪獣人……もう人間ではない……強くたくましいオス豚に従い、オス豚にその身も心も捧げる淫らなメス豚の怪獣人……
 アタシはbeASTの怪獣人……もう人間なんかじゃない……強くたくましいオス豚に従い、この身も心も捧げる淫らなメス豚の怪獣人……
 強烈に刷り込まれていく怪獣人としての思考。
 それは以前の千穂の思考をどっぷりと塗りつぶしていく。

 お前はbeASTの怪獣人……強くたくましいオス豚のメスとなり、オス豚のためなら何でもするメス……いつでもどこでもその身でオス豚に抜いてもらうことが無上の喜び……
 アタシはbeASTの怪獣人……強くたくましいオス豚のメスとなり、オス豚のためなら何でもします……いつでもどこでもこの身をオス豚に捧げ、抜いてもらうのがアタシの喜び……
 お前はbeASTの怪獣人……強くたくましいオス豚はお前の目の前にいる……
 アタシはbeASTの怪獣人です……ああ、早く強くたくましいオス豚に会いたい……

 「ブヒブヒ……そろそろ完成かなブヒ?」
 目の前で変わっていく人間のメス。
 それがだんだんと彼の好みの姿に変化していくのはたまらない。
 まさかこれほど彼好みのメスになってくれるとは……
 クロブターは思わず股間がたぎってくるのを感じていた。

 「ブヒッ! ブヒブヒブヒィーッ!」
 大きく鳴き声を上げるメス豚の怪獣人。
 両手両足の固定具が外れ、ゆっくりと躰を起こしていく。
 そしてそのまま躰をずらすと、円形の融合手術台から足を下ろして立ち上がる。
 「ブヒブヒブヒーッ!」
 再び鳴き声を上げるメス豚の怪獣人。
 それはまさに誕生の産声だ。
 ブヒーッ!
 なんて気持ちがいいの?
 これがアタシの新しい躰なのね?
 素晴らしいわぁ。
 力がみなぎってきちゃう。
 改めて自分の躰を見下ろし、彼女はその姿に誇らしさと喜びを感じる。
 自分はメス豚の怪獣人なのだ。
 もう人間なんかじゃないわ!

 「ブヒブヒッ! どうやら完成したようだなブヒ」
 声とともに強いにおいが彼女の鼻をくすぐってくる。
 強烈なにおい。
 たくましく強いオスのにおいだ。
 ああ……
 なんていいにおいなの?
 これがオスのにおい……
 たくましく強いオスのにおいなんだわ……
 ああん……キュンキュンしちゃう……
 
 彼女が振り向くと、そこには彼女と同じ豚の怪獣人が立っていた。
 巨大な豚鼻が荒い鼻息を出し、ぎらぎらとした目をしたオス豚。
 躰は太って巨体だが、適度に引き締まって素敵な躰をしている。
 発するにおいといい見た目と言い、彼こそ彼女の望む強くたくましいオス豚そのものだ。
 一目で彼女はクロブターに惚れ込んでしまう。
 彼こそがアタシの求めているオス豚……アタシの従う強いオス豚なんだわ……
 ああん・・・おマンコが濡れ濡れになっちゃうぅ……

 「ブヒブヒッ! 気分はどうだブヒ?」
 「ブヒィーーッ! 最高ですわぁ。怪獣人であることがこんなに素晴らしいことだったなんて……アタシはもう人間なんかじゃありません。偉大なるbeASTの怪獣人ですわ。ブヒィーーッ!」
 彼女は自分の躰が誇らしく、胸を張る。
 以前の貧相で下等な人間とは全く違う。
 素晴らしい躰なのだ。
 それに……目の前のオスが、彼女の躰を品定めするかのように見つめてくれていることも、なんだかとてもうれしかった。

 「ブヒブヒーッ! それでいいブヒ。ボクちんはbeASTの怪獣人クロブターだブヒ。よろしくだブヒ」
 「ブヒーッ! クロブター様とおっしゃるのですね? こちらこそよろしくお願いいたします。ブヒブヒーッ!」
 思わず興奮して鼻を鳴らしてしまう彼女。
 クロブター様……なんて素敵なお名前なのぉ……
 ああん……クロブター様、クロブター様ぁ……
 心の中で繰り返し名前を呼んでしまう。
 最高のオスにふさわしい名前だわぁ……

 「ブヒブヒッ! 今日からお前はボクちんのメス。ボクちんのパートナーになるんだブヒ。お前の名前はメスクロブターと名乗るがいいブヒ」
 メス豚の怪獣人の目が一瞬点になり、すぐに大きく見開かれ、キラキラと輝いていく。
 「ブヒィーーーッ! ほ、本当ですか? アタシをクロブター様のメスにしてくださるのですか? ブヒブヒィーーッ!」
 信じられない思いでいっぱいになる。
 怪獣人にしてもらえた上に名前まで与えられ、さらにこの目の前の素敵なオス豚のメスにしてもらえるというのだ。
 こんなに幸せだなんて、アタシは夢でも見ているのではないだろうか?
 
 「ブヒブヒッ! 本当だブヒ。お前は今日からボクちんのパートナーになるんだブヒ。怪獣人メスクロブターとして、ボクちんに仕えるんだブヒ」
 「ブヒィーーーッ! はい! はい! もちろんです! アタシは怪獣人メスクロブター! 今日からはクロブター様のメスとして、パートナーとして、心からお仕えいたしますぅ。ブヒィーーーッ!」
 この瞬間、彼女の中から矢際千穂という存在は消え去り、beASTの怪獣人メスクロブターとして完成する。
 もはや彼女にとって大事なのはbeASTとクロブターであり、クロブターのメスに選ばれたということは、涙が出るほどにうれしいことだった。

 「ブヒブヒッ! それでいいブヒ。これからは二人でbeASTのために働くブヒ」
 「ブヒーッ! もちろんです。アタシはbeASTの怪獣人です。喜んでbeASTのために働きますわ。ブヒーッ!」
 目をキラキラさせているメスクロブターに、クロブターは満足する。
 どうやらこのメスは完全に思考が変化したようだ。
 これからはボクちんとbeASTのために働いてくれるだろう。
 ブヒヒヒ……
 それにしても……とクロブターは思う。
 なんて素敵なメス豚になったものか……
 全身は彼と同じように黒く、大きな豚鼻や耳の付いた豚の頭部がかわいらしい。
 全体的にはやや肉付きに乏しいが、その分胸とお尻はボリュームがあり、彼好みの大きさになっている。
 胸と腰回りの部分、それに肘から先とひざから下は黒く短い毛が覆っているが、それ以外はナイロンの全身タイツを思わせるようなすべすべ感が感じられ、きっと抱き心地がいいだろう。
 両手は人間のように五本指だが、爪は鋭くとがり、たいていのものは傷つけられそうだ。
 足はつま先が豚の蹄のように二つに割れ、かかとはハイヒールのようにとがっている。
 まさに人間とメス豚とが融合した姿。
 これがbeASTの怪獣人の姿なのだ。

 「ブヒブヒッ! それにしてもいいメスだブヒ。見ているだけでたまらなくなってくるブヒ」
 今にも股間からペニスが飛び出してきそうになるクロブター。
 beASTの怪獣人は、普段は性器が内部に隠れるようになっているが、性的興奮が高まると、それが露出するようになるのだ。
 「ブヒブヒーッ! 本当ですか? うれしいですぅ。クロブター様にいいメスだなんて言われると舞い上がってしまいますわぁ。ブヒブヒィ―――ッ!」
 目をキラキラさせて喜ぶメスクロブター。
 強いオスにメスとして認められるものほど幸せなことはない。
 「本当だブヒ。すぐにでも抱きたくてたまらんブヒ」
 「アアン……うれしいですぅ。クロブター様もとっても素敵ですわぁ。アタシもクロブター様を見て、そのにおいを嗅ぐだけで、もうおマンコがグチョ濡れになってしまいますわぁ。ブヒブヒーッ!」
 躰をくねらせて興奮し始めるメスクロブター。
 彼が欲しくてたまらなくなっているのだ。
 「ブヒブヒッ! 早速お前の躰を味わわせてもらうブヒ。こっちへ来るブヒ」
 「はい、クロブター様。ブヒブヒーッ!」
 いそいそとメスクロブターはクロブターのそばに行き、その腕にすがりつく。
 二人はお互いの体臭を嗅いで興奮を高め合いながら、部屋へと向かうのだった。

                   ******

 「ん……んふ……クロブター様ぁ……しゅきしゅきぃ……大しゅきぃ……」
 寝床の中で隣に寝ているクロブターの躰を抱きしめるメスクロブター。
 思わず甘えたような子供言葉を使ってしまうほどに愛しい。
 昨晩は最高の時間だった。
 思いだすだけでも胸がときめいてしまう。
 たくましいオスの腕に抱えられて、寝床に寝かせられるドキドキ。
 今まで見たこともないような太さのおチンポを見たときの衝撃。
 そのにおいを嗅ぎ、口いっぱいに頬張った時の美味しさ。
 口の中に出されたねばつく濃厚な液体を飲み込んでいく幸せ。
 出したばかりというのに、すぐにまた大きく勃起するおチンポの力強さ。
 そのおチンポがおマンコを貫いてくる快感。
 躰の芯まで突き抜けてくるかのような強い射精。
 絶頂に達した時の頭が真っ白になる瞬間。
 躰がとろけるとはこういうことを言うのだろうか。
 すべてが今まで感じたことのない最高の交尾だったのだ。

 交尾のあとには食事。
 怪獣人用に調整されたペースト食を二人で味わう。
 一つの器から二人で食べるだけではなく、クロブターは彼女を膝の上に載せ、その口で咀嚼したペースト食を口移しで食べさせてくれることまでしてくださったのだ。
 クロブター様の唾液の混じったペースト食は、これまでに食べたどんなものよりも美味しい。
 彼女は心からそう思った。
 
 やがて二人は再び寝床に潜り込む。
 さらなる肉の交わりをむさぼって、先ほどまでぐったりと寝ていたのだ。
 フゴーフゴーと寝息を立てているクロブターの姿。
 その顔を見ているだけで、メスクロブターは胸がキュンキュンしてしまう。
 こんな気持ちは初めて。
 怪獣人のメスである喜びが彼女を包み込む。

 「ん……ブヒッ?」
 目を覚ますクロブター。
 隣にはかわいいメスが抱き付いている。
 彼好みに作り変えたメスだ。
 最高のメスだ。
 交尾も最高だった。
 思いだしただけでも、またたぎってきてしまいそうだ。

 「ブヒッ! お目覚めですか、クロブター様ぁ」
 その胸に顔を擦り付けるメスクロブター。
 クロブターのムワッとするようなオスの体臭が彼女の鼻を刺激する。
 なんていいにおい……
 強くたくましいオスのにおいだわ……
 いつまでも嗅いでいたくなるわぁ……

 「ブヒブヒッ! とてもよかったブヒ。お前との交尾は最高だブヒ」
 「ブヒブヒッ! 本当ですか? うれしいです。クロブター様も最高でしたわ。あん……思いだしただけで濡れちゃいますぅ」
 スリスリとメスクロブターが頭を擦り付けてくる。
 なんともかわいい。
 「ブヒブヒッ! これからもたっぷりと交尾してやるブヒ」
 「はい。アタシはクロブター様のメスです。いつでもどこでもクロブター様がお望みの時にアタシのおマンコで抜いてくださいませ。ブヒブヒィ――ッ!」
 うれしそうに鼻を鳴らすメスクロブター。
 もう彼女の頭の中にはクロブターのことしかないのだ。

 「ブヒブヒッ! お前をこうしてボクちんのメスにできたのは大首領様のおかげだブヒ。これからは二人で恩返しをするブヒ」
 「はい、もちろんですわ。アタシをこんな素敵な怪獣人にしてくださった大首領様には、感謝してもしきれません。大首領様のためなら何でもいたしますわ」
 心の底からそう思うメスクロブター。
 この幸せをくださった大首領様には心からの忠誠を誓うのが当然ではないか。

 「ブヒブヒッ! かわいいやつ。お前とならエクスペルファイブも倒せそうだブヒ」
 そっとメスクロブターを抱きしめるクロブター。
 二人でエクスペルファイブを倒せば、大首領様への大きな恩返しになろうというものだ。
 「ダ、ダメッ! クロブター様、それはダメですぅ、ブヒーッ!」
 慌てたように顔を上げるメスクロブター。
 その行為がクロブターを驚かせる。
 「ブヒブヒッ! どうしたブヒ? お前はまだ奴らのことをブヒ?」
 まさか、まだメスクロブターはエクスペルファイブの司令官としての意識が?

 「ブヒブヒッ! 違いますぅ。エクスペルファイブはbeASTに歯向かう憎むべき敵です。この爪でズタズタに引き裂いてやりたいですわ。でも……」
 上目遣いにクロブターを見上げてくるメスクロブター。
 「でも? 何だブヒ?」
 「奴らは強力ですわ。もし……もしクロブター様の身に何かあったらと思うと……アタシは耐えられませんですわ。ブヒーッ!」
 そういうことかと苦笑いするクロブター。
 このメスは彼の身を案じて、戦ったらダメと言ったのだ。
 かわいいやつ。

 「ブヒブヒッ! 心配はいらないブヒ。ボクちんは奴らになんか負けないブヒ。お前が手伝ってくれれば鬼に金棒だブヒ」
 ぎゅっとメスクロブターを抱きしめるクロブター。
 その力強さにメスクロブターは躰が熱くなるのを感じる。
 「ブヒブヒッ! クロブター様ぁ……」
 うっとりと愛するオスの顔を見つめるメスクロブター。
 昨日まではあんなにクロブターのことを毛嫌いしていたとは思えない。

 「でしたら、アタシにいい考えがありますわ。聞いていただけますか? ブヒブヒッ!」
 「ブヒッ! いいブヒ。言ってみるブヒ」
 「はい。実は……」
 ニヤリとどす黒い笑みを浮かべてクロブターの耳元にささやきかけるメスクロブター。
 それは、心の底まで黒く染められてしまった者の浮かべる笑みだった。

                   ******

 郊外に作られた中規模の食品加工工場。
 昼間はここにひっきりなしにトラックが出入りし、冷凍食品や加工食品などの荷物を満載して、各地のスーパーなどへと出荷される。
 見た目は何の変哲もない地方の企業の一工場だ。
 ただ、昼にしろ夜にしろ、普通の食品工場にしては常駐している警備員の数が多い。
 特に夜間は、完全に閉じられて従業員もいないはずなのに、警備員たちががっちりと警備をしているのだ。
 地元の人間は、その異様な警備は、大手企業が技術を盗みに来る可能性があるからだという工場側の主張を信じていたが……

 思わずあくびをかみ殺す、ゲート警備の警備員。
 どうせ今夜も何事もなく終わるだろう。
 ここの地下施設のことを知るものは少なく、beASTもここのことは掴んでいないはずだからだ。
 万一に備えて警備は固くされているものの、また朝までの退屈な時間が過ぎ去るのみだ。

 「うふふふ……こんばんは」
 「えっ?」
 闇の中から声がして、警備員は思わずそちらへと振り向く。
 そこには一人の女性が立っていた。
 「ええっ? 矢際司令?」
 警備員は驚く。
 まさか今日のこんな時間に矢際司令がここに来るなどとは、知らされていなかったからだ。
 もちろん彼はここがどんな施設か知っており、エクスペルファイブの本部司令官である矢際司令のことも知っている。
 その本部司令官がここに来ることも、何らおかしなことではない。
 だが、こんな時間に来ることは異例であり、来る場合は前もって知らされているのが普通である。
 どうしてこんな時間に?

 それに彼女の雰囲気もどこかいつもと違うようだ。
 いつもの制服ではなく、胸を強調したような黒いチューブトップに、太ももがむき出しになる黒のホットパンツ。
 それに膝までの長さの黒いブーツに、肘から先を覆う黒の長手袋。
 街灯の明かりに照らされた顔には黒いアイシャドウが引かれ、唇も黒く塗られているようだ。
 どうしてそのような格好をしているのかわからないが、なんとも妖艶さを漂わせている。

 「矢際司令ですか? こんな時間にいったい?」
 やや警戒を解く警備員。
 なんといっても相手はエクスペルファイブの本部司令官だ。
 何か理由があるのだろう。
 「うふふふ……こんばんは。中を見たいの。ゲートを開けてくれる?」
 口元に笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる矢際司令。
 「申し訳ありません。司令もここの規則はご存じかと。前もって連絡を受けていない以上、今ゲートを開けることはできません。確認を取りますので、しばしお待ちを」
 警備員はそう言って、警備ボックス内の通話システムに手を伸ばす。

 「えっ?」
 次の瞬間、警備員は司令の黒手袋に包まれた手が、彼を掴んで引き寄せるのを感じる。
 そして彼を抱き寄せるようにして、その顔を豊満な胸へと押し付けた。
 「む、むぐっ!」
 二つの大きな乳房に挟まれるようになり、思わず息が詰まってしまう警備員。
 「そんな暇はないの。アタシは一刻も早くこのクソみたいな施設をぶっ壊したくて仕方がないのよねぇ。ブヒブヒッ!」
 警備員をぎりぎりと強く抱きしめながら、舌なめずりをする千穂。
 思わずメスクロブターとしての鳴き声が出てしまっている。
 「ぐっ・・・ぐむっ」
 必死に逃れようともがく警備員。
 だが、その躰を人間とは思えない力が押さえつけている。
 「ブヒブヒッ! アタシの胸はいかがかしらぁ? クロブター様好みに大きくしていただいたアタシの胸よぉ」
 警備員を抱きしめる千穂の躰が、じょじょにメスクロブターへと変化し始める。
 今までの姿はbeASTの怪獣人に備えられた擬態能力で作られたものなのだ。
 やろうと思えば制服姿の矢際千穂になりきることも可能だろう。
 とはいえ、今の彼女は人間の姿になどなりたくもないもの。
 だからせめて着ている衣服やメイクぐらい、少しでもメスクロブターっぽくしようと思ったのだった。

 やがて彼女の姿は完全なるメスクロブターへと変化する。
 真っ黒な躰に、大きな豚鼻を付けた豚の頭。
 柔らかい女のボディラインの胸と腰回りは黒い短い毛が覆い、お尻には短い尻尾が揺れている。
 足はつま先が豚の蹄のように二つに割れ、かかとはハイヒールのようになっていた。
 誇らしいbeASTの怪獣人メスクロブターの姿だ。

 ぎりぎりと警備員を強く抱きしめ、窒息に追い込んでいくメスクロブター。
 人間が自分の胸でもがき苦しんでいくのはとても気持ちがいい。
 人間を殺すということが、こんなに気持ちがいいことだとは思わなかった。
 これからはもっともっと殺したいわぁ。
 「ブヒブヒッ!」
 興奮で鼻を鳴らしながら、メスクロブターは心からそう思う。
 もはや人間を殺すことは彼女にとっての喜びなのだ。

 やがて警備員はぐったりとなって息絶える。
 動かなくなった警備員を放り出し、警備ボックス内のスイッチでゲートを開けていくメスクロブター。
 彼女の狙いはこの地下にあるのだ。
 警備員からの連絡がなくゲートが開いたことで、工場には警報が鳴り響く。
 奥からは、武器を手にした警備員たちがやってくる。
 「ブヒブヒッ」
 愚かな連中が来たわ……

 「ブヒブヒッ! お前たちはボクちんが相手だブヒ」
 ヌッと姿を現すクロブター。
 その姿にメスクロブターは思わず目を奪われる。
 ああん……素敵ぃ……
 気持ち的には自分の瞳がまるでハート型になっているような気がするぐらいだ。

 「まさか! beASTの怪獣人? 撃てっ! 撃てっ!」
 クロブターの姿を認め、手にした武器で攻撃を始める警備員たち。
 だが、銃撃程度で傷が付くような怪獣人ではない。
 「ブヒブヒッ! これでも食らうブヒ!」
 クロブターは思い切り息を吸い込むと、鼻から真っ黒い毒ガスとして吐き出していく。
 「うわあっ!」
 「ぎゃあっ!」
 たちまち警備員たちは黒い猛毒のガスに包まれて絶命する。
 「ブヒブヒッ! これで邪魔ものは消えたブヒ」
 死に絶えた警備員たちの死体を前にして立つクロブターの姿に、メスクロブターはあらためて惚れ惚れとしてしまう。
 あれこそが強くたくましいオスなのだ。

 「ああん……素晴らしいです、クロブター様」
 「ブヒブヒッ! お前もよくやったブヒ」
 彼女の言葉に振り向いて笑顔を見せるクロブター。
 「ブヒィーーーッ! 本当ですか? ありがとうございます! お褒めのお言葉とてもうれしいですわ。ブヒブヒィーーーッ!」
 たかがよくやったと言われただけで、まるで神の啓示でも受けたように感激してしまうメスクロブター。
 彼女にとってはクロブターはそれほどの存在になっているのだ。

 「ブヒブヒッ! ところでここは何なんだブヒ? ただの食品工場じゃないのかブヒ?」
 「ブヒブヒッ! はい。ここは食品工場に偽装したエクスペルファイブの”対敵研究所”なのですわ。ブヒーッ!」
 「ブヒブヒッ! 対敵研究所?」
 クロブターが首をかしげる。
 「ブヒブヒッ! はい。ここはbeASTに関するすべての情報を収集し、分析して、対応策を生み出していく研究所なのです。ですので、ここを破壊すればエクスペルファイブは……うふふ」
 メスクロブターの口元に笑みが浮かぶ。
 彼女にとって、もはやエクスペルファイブはbeASTに歯向かう憎むべき敵以外の何者でもない。

 「ブヒブヒッ! よくわかったブヒ。それならさっさと破壊してしまうブヒ」
 「ブヒブヒッ! はい。こちらに動力炉がありますわ。ご案内いたします、クロブター様」
 先に立ってクロブターを案内するメスクロブター。
 こんな施設は早く壊してしまいたい。
 忌々しいエクスペルファイブの施設など一刻も早く……
 そして巣に戻って、またたっぷりとクロブター様と交尾をするの……
 あん……おマンコが感じちゃうぅ……

 やがて、大音響とともに大爆発を起こす食品工場。
 周囲にも少なからぬ被害が及び、炎があたりを染め上げる。
 その現場から少し離れたビルの屋上に、二つの影が炎に照らされてシルエット状に浮かび上がる。
 一つはやや太っているもののがっしりとしたオスの豚の怪獣人。
 もう一つは、大きな胸とお尻を揺らし、程よく引き締まった腰つきをしたメスの豚の怪獣人。
 メスの方はオス豚に寄り添うようにその腕にしがみついている。
 「ブヒブヒッ! これでいいブヒ」
 「ブヒブヒッ! はい、これでエクスペルファイブの力は大幅に……うふふふ」
 歪んだ笑みを浮かべている二匹の豚の怪獣人。
 破壊と殺戮を無上の楽しみとするオスとメスの黒い笑みだ。
 「ブヒブヒッ! まずは戻って大首領様に報告するブヒ。そしてそのあとは……ブヒッ」
 クロブターはかわいいメスの顔を見る。
 「ブヒブヒッ! はい。存分にアタシの躰でお楽しみくださいませぇ。ああーん……クロブター様ぁ」
 クロブターに見つめられ、メスクロブターの股間は早くもじっとりと濡れ始める。
 冷静で的確な判断を下す有能な司令官とうたわれたかつての彼女は消えさり、ただ大好きなオスのたくましい腕に抱かれながら交尾することだけしか考えられない一匹のメス豚がそこにはいた。

END

いかがでしたでしょうか?
二体のラブラブっぷりが出ていればよかったですが……

首魁の定め様、今回は世界観を使わせていただきましてありがとうございました。
あらためましてお礼を述べさせていただきます。

感想コメント等いただけますと嬉しいです。
よろしくお願いいたします。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2020/11/07(土) 21:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
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怪人ナマズギラーの電気地獄

今日は初代仮面ライダーの二次創作SSを一本投下します。
なんというか、ふと思いついたので、書いてしまいましたという感じのSSです。
なので、気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。

タイトルは「怪人ナマズギラーの電気地獄」
新一号編となりました第61話が元となります。
それではどうぞ。


怪人ナマズギラーの電気地獄

 我らの仮面ライダーを狙うショッカー本部が送った次なる使者は、電気怪人ナマズギラー。
 死神博士が10万ボルトの電気を持ったナマズギラーを連れて日本に舞い戻り、地獄大使との二面作戦を展開!
 危うし、ライダー!
 次回、「怪人ナマズギラーの電気地獄」にご期待ください。

                   ******

 「急速潜航」
 覗いていた潜望鏡から目を離し、部下に命令する一人の男。
 「イーッ!」
 躰にフィットした黒いタイツで全身を覆い、頭にも目鼻口だけが露出する不気味なマスクを被った男たちが奇声を発し、その指示に従って潜水艦を潜航させる。
 司令塔の横に赤いワシのマークの付いた、国籍不明の潜水艦だ。
 航行中にどうやら見つかってしまったようだが、なに、ここから行川アイランドの地下にある日本支部アジトまではわずかな距離。
 潜水艦を見つけた自衛隊機も撃墜したし、もはや邪魔されることはあるまい。
 気がかりなのは、自衛隊機を撃墜したことで奴らが動き出すこと。
 おそらくFBIに連絡が行き、あの男たちが調査に乗り出してくるだろう。
 だが……
 それはむしろ好都合。
 そのためにこそ私ははるばるここまでやってきたのだ……
 マントを羽織った初老の男の顔に不気味な笑みが浮かぶ。
 彼こそは、秘密結社ショッカーが誇る改造手術の権威であり、数々の作戦に従事してきた大幹部の死神博士だった。

 それにしても……
 「ショッカー日本支部のアジトが行川アイランドの地下にあるとは、さすがは地獄大使。よいところに目を付けた」
 死神博士は感心する。
 人里離れた場所や、ひっそりした寺院の地下などにアジトを設けてきた彼としては、逆に人の出入りの多い行楽地にアジトを設けることで、かえって人員の出入りが人目を引かないという事実には気付かなかったのだ。
 そういった地獄大使の実務面での有能さは、ショッカー首領も期待しているところであり、それだからこそ仮面ライダーという邪魔者がいる日本支部の指揮官として抜擢されたと見ていいだろう。
 であれば、今回彼が連れてきた改造人間を地獄大使が指揮すれば、日本征服もほどなく完了するに違いない。
 その功績は地獄大使ばかりではなく、改造人間を供給した彼にももたらされ、首領からさらに目をかけてもらえることにつながるのだ。
 奴に日本支部の指揮官の座を奪われたのは忌々しいことだが、南米に限らず、遠くは欧州にも彼の手は伸びている。
 いずれは地獄大使を再び追い抜くことも、そう遠くはないであろう。
 死神博士にはそれはもう既定のことであるように思えるのだった。

 「イーッ! 死神博士、日本支部地下アジトのドックに接岸いたしました」
 黒を基調とし、その胸のところには白くあばら骨の模様が描かれた全身タイツを身にまとった戦闘員が、右手を上げて報告する。
 「うむ。では、地獄大使に挨拶と行こうか」
 マントを翻し、アジトの司令室へとつながる廊下を歩いていく死神博士。
 その背後には棺のようなカプセルを担いだ戦闘員たちが続いていく。
 このカプセルこそ、死神博士がはるばる南米から持ち込んだ地獄大使へのお土産だった。

                   ******

 到着を手放しで歓迎する……と言えばうそになる。
 正直面白くはない。
 この日本支部は現在彼が統括しており、日本征服も彼が行うべきものなのだ。
 何もわざわざ南米から死神博士に来てもらう必要などありはしない。

 だが、その思いはぐっとこらえ、彼はその硬い金属質の右手をスッと差し出していく。
 「ようこそ死神博士」
 彼は自らが作りえる最大の笑みを浮かべて、不気味な初老の紳士を出迎える。
 「地獄大使」
 死神博士も笑みを浮かべて彼の手をがっしりと握り返してくる。
 内心はどうあれ、ともに偉大なるショッカーの大幹部同士。
 共通の目的のためには、手を組むことは悪いことではないが……
 「死神博士が、わざわざ南アメリカからこの日本においでになったということは、ショッカー日本支部にとってまさに鬼に金棒、と言いたいところだが……この地獄大使一人では、日本征服には力が不足ということかな?」
 ニヤリと意地悪い笑みを浮かべてみせる地獄大使。
 手を組むとは言え、このぐらいは言っておいても悪くはあるまい。
 
 「土産物をお見せしよう」
 地獄大使の嫌味を意に介した様子もなく、死神博士は運び込んだカプセルを戦闘員に開けさせる。
 その瞬間、きらめくスパークが走り、予期していなかった地獄大使の目をくらませた。
 「アウァウァウァウァウァー!」
 カプセルの中から声が響き、ゆっくりと上半身を起こす異形の姿。
 それは上下にギザギザと尖った歯を持つ大きな口が顔の半分ほども占め、その上にギョロッとした赤く丸い大きな目が輝く巨大な頭部をした改造人間の姿だ。
 また、その躰はややぬめっとした青黒い皮膚が覆っているが、丸く形の良い乳房が二つ胸に付き、キュッとくびれた腰から滑らかなカーブを描いて足へと流れるラインと相まって、この改造人間が女性を基にしていることがうかがえる。
 カプセルから起き上がった改造人間は、そのハイヒールのようになった踵で床に足音を鳴らし、優雅な足取りで死神博士の元へ行き、地獄大使と向き合った。

 「こ、この改造人間は?」
 スパークによって一瞬目をくらませられた地獄大使だったが、すぐに視力を回復させ、目の前の新たな改造人間を品定めする。
 「南アメリカ、アンデスの沼に棲むデンキナマズを改造した、ナマズギラーだ」
 死神博士が重々しい声で、横に立つ女怪人を紹介する。
 「ナマズギラー?」
 死神博士に紹介された女怪人が、地獄大使に向かって、大きな口に笑みを浮かべている。
 なるほど、確かにその巨大な口の両側にはナマズのひげともいうべきものが伸びており、全身も肩にヒレが生えているなど、どことなく魚を思わせる。
 だが……
 「で、その能力は?」
 日本支部には強敵の仮面ライダーがいるのだ。
 中途半端な能力の怪人では困るのである。

 死神博士はくいと顎でナマズギラーにその能力を示すように指示をする。
 それを見てナマズギラーはコクリとうなずくと、その両手から触手のようなものを伸ばして、戦闘員の首に巻き付ける。
 「アウァウァウァウァウァー!」
 「イィィィィィィィィー!」
 戦闘員がその巻き付いた触手を取ろうとする暇もなく、その躰から火花が飛び散り、断末魔の悲鳴が上がる。
 黒焦げになった戦闘員の死体がアジトの床に転がり、ナマズギラーはさらにその触手を振りかざして床に火花を散らせていく。
 「やめさせろ、死神博士」
 確かに強力な電気だ。
 だが、戦闘員をそう簡単に殺されても困る。
 「もういい、ナマズギラー」
 死神博士に言われ、両手の電気ひげを収めるナマズギラー。
 戦闘員を殺したことで、どこかうっとりとしているようにも見える。
 「この、改造人間ナマズギラーの電気ひげには、10万ボルトの電流が流れている。このひげに触れた人間は、たちまち感電して死んでしまう。たとえ仮面ライダーと言えども、敵ではない」
 まさに彼の最高傑作と言わんばかりの死神博士。
 それだけに、地獄大使は気になることが一点あった。

 「だが、仮面ライダーは油断ならぬ相手。いかにナマズギラーの10万ボルトの電流と言えども、正面からでは防がれてしまいかねん。それに、なぜ力で劣る女を素体に使ったのかが気になる」
 「地獄大使の懸念はもっともだ。ナマズギラー、お前自身で地獄大使の懸念が杞憂であることを教えてやれ」
 ニヤリと不気味に笑う死神博士。
 そこにこそ、このナマズギラーが女怪人である理由があるのだ。
 「アウァウァウァウァウァー! はい、死神博士。ふふっ……地獄大使、私が女怪人である理由をお見せいたしますわ」
 そう言ってナマズギラーは姿を変えていく。
 改造される前の素体の姿に擬態するのだ。
 「むっ、ま、まさか……お前は!」
 「うふふふ……私がこの姿で近づけば……仮面ライダーもきっと……うふふふ……」
 元の人間の女性の姿に擬態したナマズギラーは、その口元に冷たい笑みを浮かべるのだった。

                   ******

 「ふう……」
 あてがわれた部屋に入り、ソファに座ってホッとくつろぐ一人の女性。
 若くみずみずしい姿が美しい。
 名を緑川ルリ子という。
 まさかこんな形で日本に戻ってくるとは思わなかった……と彼女は思う。
 彼、本郷猛を追うように日本を飛び立ち、残念ながら彼とは途中で離れてしまったものの、その後はオーストリアで陰ながらショッカーの動きを探っていたのだ。
 「ふふっ……」
 聞けば、彼も日本に戻ってきているのだとか。
 今でもショッカーに対抗し、仮面ライダーとして戦っているらしい。
 おそらく立花藤兵衛も彼と一緒に戦っているのだろう。
 早く会いたいわ……と彼女は思う。
 彼は彼女のかつての想い人なのだ。
 早く会いたい……
 会ってこの手に抱きしめたい……
 がっちりと彼の躰を抱きしめて……
 10万ボルトの電流を流して焼き殺したいわ……

 「うふふふ……」
 ソファからスッと立ち上がるルリ子。
 その両手を顔の前でクロスさせると、彼女の姿がみるみるうちに変わっていく。
 ややヌメッとした青黒い皮膚が全身を覆い、肩や背中にはヒレが広がっていく。
 つややかな黒髪は消え去り、巨大な丸い赤い目がギョロッと輝く大きな頭に変わっていく。
 口は左右に大きく広がり、ギザギザの歯が生えていく。
 両手の指先は爪が尖り、足元はまるでブーツを履いているかのように変化する。
 くびれた腰には大きなバックルのついたベルトが巻き付き、そのバックルには、ワシが地球を掴むショッカーの紋章が刻まれている。
 それはまさにアンデスのデンキナマズと緑川ルリ子の融合した姿であり、今の彼女の本当の姿なのだった。
 「アウァウァウァウァウァー!」
 ルリ子が鳴き声を上げる。
 いや、彼女はもはや緑川ルリ子ではない。
 ショッカーの改造人間ナマズギラーなのだ。
 偉大なるショッカーの忠実なしもべとして、仮面ライダーを始末するために、日本にやってきたのだ。

 「アウァウァウァウァウァー!」
 部屋に設えられた鏡を見るナマズギラー。
 やわらかな女性のボディラインと、デンキナマズの強靭な肉体が合わさり、見事な強さと美しさの調和を見せている。
 これこそが最高の肉体なのだ。
 ふふふ……
 ナマズギラーは両手で豊かな胸のふくらみをもてあそび、自らの躰に満足する。
 彼女の体内には10万ボルトの電流がため込まれ、彼女の両腕から延びる電気ひげでいつでも放電することができる。
 皮膚は柔軟でありながらも強靭で、彼女の全身を覆っている。
 私はもうひ弱で愚かな人間ではない。
 偉大なるショッカーによって改造を受けた改造人間なのだ。
 まさに選ばれた存在と言っていいだろう。

 思えば以前の自分は愚かな女だった……とナマズギラーは思う。
 ショッカーが実現しようとしている完全なる理想の社会を知ろうともせず、ただ否定して敵対していたのだから。
 オーストリアでショッカーの動向を探っているうち、私は幸運にもショッカー戦闘員の手に落ち、死神博士の元へ連れてこられたのだ。
 今ならそれがどんなバカなことをしていたのかが理解できるものの、あの時の私は必死に何とかして逃げようとし、彼の名を叫んでいた。
 そんな私を利用価値があると認めてくださり、こうして素晴らしい肉体を持つ改造人間にしてくださった死神博士。
 博士の取り出したアンデスのデンキナマズの姿を見たとき、最初はそのグロテスクさに驚いたものだった。
 だが、こうしてデンキナマズの改造人間となった今、デンキナマズの生命力と能力を与えて下さった喜びを感じるわ。
 本当に感謝してもしきれない。
 今ならわかる。
 地球はこのままでは愚かな下等生物である人類によって崩壊してしまうわ。
 それを防ぐには選ばれた改造人間である私たちが、首領様の命に従って人間どもを間引きし、管理しなくてはならないの。
 私は選ばれた。
 改造人間として、偉大なるショッカーの崇高な使命を果たすために選ばれたの。
 ショッカーのためなら何でもするわ。

 それに……
 ナマズギラーの口元に笑みが浮かぶ。
 先ほどは能力を示すためとはいえ、ショッカーの仲間である戦闘員を一人焼き殺した。
 彼女の電気ひげで10万ボルトの電流を流され、黒焦げになって死んだのだ。
 その感触が忘れられない……
 ぞくぞくするほどの快感。
 最高の快楽なのだ。
 ああ……
 なんて気持ちいいのかしら……
 改造手術後に、自分がデンキナマズの改造人間と聞かされ、その能力を試すために実験台の人間を焼き殺したとき。
 あの時以来、ナマズギラーはその快感の虜になっていたのだ。
 10万ボルトの電流が彼女の躰を駆け巡り、相手の躰に吸い込まれるように流れていく。
 ある意味、男が射精をするのに似ているのかもしれない。
 その快感がたまらない。
 残念ながら、彼女の躰はそのシステム上、すべての電気を体内で発電できるわけではない。
 数回の放電を行ったあとは、外部からの充電も必要になってしまう。
 だからこそ、少ない回数の放電が彼女に快楽をもたらしてくれるのだ。

 おそらく改造人間である彼なら……
 仮面ライダーである彼なら、そこらにいる人間や戦闘員なんかよりも耐えてくれるだろう。
 それはその分彼女が快感を得られる時間も長くなるということだ。
 そして最後は彼女の電流で彼も死ぬ。
 黒焦げになって死ぬ。
 それはショッカーに歯向かう愚か者の死。
 愚か者を始末しながら快感を得られるなんて最高ではないか。
 ナマズギラーはゾクゾクする。
 待っててね、猛さん……
 私がしっかりあなたを抱きしめてあげる……
 そして10万ボルトの電流を……
 もちろんその前には立花藤兵衛や滝和也も……
 「アウァウァウァウァウァー!」
 ナマズギラーは、これから得られるであろう快楽を思い浮かべ、大きな鳴き声を上げる。

 そして……
 道路を二台のオートバイが並走する。
 またがっているのは若い男たち。
 二人ともやや厳しい表情を浮かべている。
 自衛隊機が消息を絶ったという報告を受け、FBIの滝和也が調査に乗り出し、本郷猛もその調査に同行して、千葉県の房総半島へと向かっていたのだった。

END

いかがでしたでしょうか?
それにしてもルリ子さんはいったいどれだけの女怪人に改造されればすむのやら。(笑)
いいキャラですわぁ。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2020/09/13(日) 21:00:00|
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軽率にロボット化 成浩(なるひろ)の場合

ブログ丸15年達成記念SS、昨日で終わりだと思った?
残念! もうちょっとだけ続くんじゃ。

ということで、記念SS二本目は短編SSです。
今月の7日8日で投下しました、「軽率に隣の美人未亡人をロボット化 (前)」「軽率に隣の美人未亡人をロボット化 (後)」と同じ世界観を持つ、「軽率にロボット化」シリーズの一本となります。

タイトルは、「軽率にロボット化 成浩(なるひろ)の場合」です。
お楽しみいただければと思います。

それではどうぞ。


軽率にロボット化 成浩(なるひろ)の場合

またボクは壁にかかった時計を見上げる。
先ほどから五分しか経っていない。
でも、もう一時間は経ったような気さえする。

「ママ遅いなぁ・・・」
買い物に出かけたにしては、あまりにも帰りが遅くはないだろうか・・・
心配だ。
なにか事故に遭ったのではないだろうか・・・
それとも・・・
まさかあいつに何か言ったんじゃ・・・

あいつのことを考えただけで、胸が苦しくなる。
学校の帰りに、あいつがいつもいる公園の前を通るだけでも、気分が悪くなるくらいだ。
ママが買い物帰りにあそこの前を通るのは充分に考えられる。
もしかして・・・
ママはあいつに何か言ってしまったんじゃ・・・

ボクをいつもイジメてくるあいつ。
筆入れを隠されたり、カバンを汚されたり、上靴に泥を入れられたり・・・
先生に言っても、みんな仲良くしなさいとか、人の嫌がることはしないようにとか、そんなことしか言ってくれない。
ママはすごく怒ったけど、ママが何か言ったりしたら、かえってあいつが余計に何かしてきそうだからやめてねってお願いしてあったのに・・・
でも・・・
ママが怒ってくれたのはうれしかった。

「遅いなぁ・・・」
もう一度時計を見る。
やっぱり三分ほどしか経ってない。
もう帰ってきてもいいはずなのに・・・

玄関でドアの開く音がする。
ママだ!
ボクはすぐに玄関に行く。
ママだ!
やっと帰ってきてくれた!

「お帰りなさい、ママ! えっ?」
ボクは玄関でママの姿を見て、思わず立ち尽くす。
ママ?
えっ?
ママ?

「ピッ! メモリー確認。曽根田成浩(そねだ なるひろ)を認識しました。初めまして。私はKSカンパニー製ヒューマンロボット、KSR-217アヤです。よろしくお願いいたします」
玄関でぺこりと頭を下げるママ。
いや、本当にママなの?
一体、これはどうなっているの?

玄関先に立っていたのは、ママだけどママじゃなかった。
手にしていたエコバッグはママの持ち物だったし、顔もママそっくりだったけど、胸の大きく開いた服を着て、足には網タイツを穿いたドキッとするような恰好をしていたのだ。
髪もママと同じ髪型なのに、色は金髪になっているし、なによりそのてっぺんからアンテナのような物が生えていて、先端が赤く光っていた。
顔もどこか作り物のような顔をしてて、まるでプラスチックのような感じがするし、目もガラスのようになっていて、まるでカメラのレンズのようだ。
ロボットって?
どういうこと?

「へえ、ここがアヤの家かー。よお」
ボクの背筋が凍った。
ママのあとから玄関に入ってきたのは、あいつ・・・
須法良晴(すほう よしはる)だったのだ。
どうして?
どうしてこいつがママと一緒にいるの?

「良晴様、ここは私の家ではありません」
えっ?
ママ・・・今、なんて?
「ん?」
「良晴様。ここは私の家ではありません。私は良晴様が所有なさいますKSカンパニー製ヒューマンロボット、KSR-217アヤです。ここは私の素体となった曽根田彩愛(そねだ あやめ)と曽根田成浩が住んでいる家です。世帯主の曽根田之浩(そねだ ゆきひろ)は、現在福岡に単身赴任中となっております」
アンテナのようなものの先端を赤く光らせながら、ママはあいつに話しかけている。
「ああ、そうだったな。アヤの家ではないってか。ハハハ・・・」
あいつがママに笑いかけている。
どうして?
どうしてママはそんな奴と話しているの?
出かけている間に何があったの?

「曽根田、こいつ、お前の母ちゃんだったんだよな?」
立てた親指の先でママを指し示すあいつ。
「ど・・・どういうこと?」
ボクは何が起こったのかわからない。
なんでこいつがママと・・・

「ハハッ、悪いな。こいつ、面白いから俺のロボットにしてやったんだわ。そうだな、アヤ?」
横で立っているママにあいつは声をかける。
「はい。素体名曽根田彩愛は、須法良晴様の手で頭にアンテナを刺し込まれましたことにより、フォーマットと組成改変による機械化が行われ、KSカンパニー製ヒューマンロボット、KSR-217として初期起動いたしました。その後良晴様によるマスター登録とオプションによります個性化が行われまして、当機はKSR-217アヤとして完成いたしました」
すらすらとママの口から日本語なのか外国語なのかよくわからない言葉が発せられる。
な、なにを言ってるの、ママ?

「ま、そう言うことだ。俺、前からお前の母ちゃんに目をつけていたんだよ」
「ボ、ボクのママに?」
こいつはボクのママを狙っていたってこと?
「ああ、前に授業参観で見かけたからな。そん時からこいついい女だなって思ってたんだ」
「そんな・・・」
「公園にいたらさ、こいつが通りかかったからさ、声かけてやったんだよ。そしたら無視しやがんの」
当然だ!
ママがお前なんかに返事するわけが・・・

「だからさ、俺を無視すると、もっと曽根田をからかっちゃうけどいいのかって言ったんだ。そしたら俺をにらみながら、何か用なのって・・・」
ああ・・・そのまま無視しても良かったんだ・・・
どうせこいつはボクをいじめるのをやめるつもりなんか無いんだよ、ママ。
「俺の方に来たからさ、一発やらせろよって言ったんだ」
ボクは驚いた。
一発って・・・
も、もしかしてセックス?

「そしたら、バカなこと言わないで、そんなことできるはずないでしょって怒るんだよな」
へらへらと笑うあいつ。
ボクにはその様子が目に浮かぶ。
「まあ、そうだろうなとは思っていたからさ、じゃあ土下座しなよって言ってやったのさ。土下座したらもうお前をからかわないよって」
そんなつもりはないくせに・・・
「そしたらさ、土下座したんだぜ、こいつ。もう成浩をからかったりしないでくださいって」
ボクはうつむいてしまう。
ママが・・・
ママがボクのために・・・
悔しい・・・
悔しいよ・・・

「だから土下座した時に、頭にこのアンテナを刺してやったのさ。プスッて。そうしたらホントにロボットになっちまうんだもんな。びっくりだぜ」
「そんな・・・」
ママはボクのために土下座をして・・・それでロボットになってしまったというの?
「最初キカキカとかピコピコとか言ってたけど、マスター登録しますかとかオプションは付けますかとか言うから、俺好みにさせてもらったぜ。もうばっちり俺好みになって、俺の言うことしか聞かなくなったわ。服も俺好みのを買わせて着せてやったしな」
「う、嘘でしょ、ママ?」
こいつのロボットになってしまったなんて、嘘だよね?
嘘だと言ってよ!

「曽根田成浩様、私はあなたのママではありません。私は須法良晴様に所有されますヒューマンロボット、KSR-217アヤです。お間違えにならないように申し上げます」
そう言って無表情でボクを見つめてくるママ。
ガラスのような目の奥で、レンズが動いているのがわかる。
そんな・・・
そんなぁ・・・

「あっはははは・・・ママではありませんだってさ。アヤはもう俺のもんだもんな。そうだよな?」
「はい。私は須法良晴様の所有物です」
表情を変えることなくママはそう答える。
「こいつ、俺の思った通りエロい躰しているんだぜ。さっき一発やってきたんだ。な?」
「はい。私は良晴様のご命令に従い、52分前と37分前にそれぞれ口とお尻の穴でセックスをいたしました」
「おいおい、そこまで言わなくてもいいぜ。見ろよ、曽根田が赤くなっているじゃないか」
「失礼いたしました。以後良晴様のご命令があるとき以外は申し上げないようにいたします」
ママのアンテナがちかちかと明滅している。
ボクはあまりのことに何も言うことができなかった。

「へへっ、それにしてもいいケツしてるぜ。曽根田、こいつお尻でセックスするの初めてだったみたいだぜ」
「お、お尻で?」
「ああ、そうだよな、アヤ?」
「はい。KSR-217アヤといたしましても、素体時の曽根田彩愛におきましても、お尻の穴でのセックスは先ほど良晴様にしていただくまでの回数は0回です」
こんなことまでママは無表情で答えていく。
「お尻の処女ゲット! ってやつだな。はははは」

「うわぁぁぁぁぁっ!」
ボクはもうなにがなんだかわからない。
頭がカーッとなって、目の前が真っ赤になって・・・
気が付いたらボクの腕はママにがっちりと掴まれていた。
えっ?

「良晴様に危害を加えようとされていると判断いたしましたので、止めさせていただきました。良晴様に危害を加えることは、曽根田成浩に許可されていない行為です」
無表情でボクをにらみつけてくるママ。
そんな・・・
あいつを・・・
あいつを守るの?

「おー、こわー。よくやったぞアヤ。俺に殴りかかってこようとするなんて、いつものお前らしくないな。そんなに俺とアヤがやったのが悔しいのか?」
へらへらと笑っているあいつ。
ボクはママから手を振りほどこうとしたけど、ママの力は強くて、とても振りほどけない。
ママ・・・
ロボットになっちゃうなんて・・・
あいつのロボットになっちゃうなんて・・・

「へっへっへ・・・おいアヤ、そいつの顔を一発叩いてやれ」
「えっ?」
ママにボクを殴らせるつもりなのか?
「俺を殴ろうとしたなんて赦せないからな。母親のお前がちゃんと叩いてしつけてやるんだ」
「申し訳ありません、良晴様。KSR-217アヤは対人行為第3項の適用が行われておりますので、現状では曽根田成浩を叩くことはできません」
ボクをがっちりと掴んだまま、ママはあいつにそう答える。
「そうなのか? めんどくせえな。つまんねぇ・・・」
「第3項の適用をレベルごとに解除していただくことが必要となります」
「へぇー。じゃあ、全部解除しちゃえよ。それならこいつを叩けるんだろ?」
「かしこまりました。対人行為第3項をレベルDまですべて解除いたします・・・解除いたしました」
ママの中で何か機械が動く音がする。
本当に・・・
本当にママは・・・

「うあっ!」
ボクは頬を張り飛ばされて玄関に倒れ込む。
「良晴様のお言いつけに従い、メモリー内より曽根田彩愛が曽根田成浩を叩いた時の最上限の力で、曽根田成浩の頬を叩きました。これでよろしいでしょうか良晴様」
「うん、いいよいいよ。アヤは俺の言うことを聞くいい子だ」
「ありがとうございます。良晴様」
あいつに笑顔を見せるママ。
ボクは思わず涙が出る。
ママ・・・

「はははっ、曽根田、“ママ”に叩かれた気分はどうだ?」
「くっ!」
ボクは悔しくて目をそらす。
「まあ、こいつはもう俺のものだからな。これからもたっぷり楽しませてもらうわ。アヤ、お前からも言っておけ」
「はい。良晴様の言うとおり、私は良晴さまのものです。良晴様に危害を加えようとした場合、私が止めますのでご承知ください」
ママの目がボクを見る。
感情も何もないガラスの目。
ひどいよ・・・
ママは・・・
ママは・・・ボクのママなのに・・・

「行くぞ、アヤ。なんだかまたお前とやりたくなったからな。もう一回やらせろよ」
「はい、良晴様。私の躰は良晴様のものです。どうぞお好きにご使用くださいませ」
にこやかな笑顔であいつに頭を下げているママ。
悔しい悔しい悔しい・・・
「おっと、そうだ。ほらこれ」
立ち去ろうとしたあいつが、玄関に置いてあったエコバッグを放り投げてよこす。
「こいつがまだ“お前のママ”だった時に買ってきたものらしいぜ。もうアヤはお前に料理を作ったりすることはないかもしれないけど、冷蔵庫にでも入れといたらどうだ?」
「な・・・」
エコバッグの中にはひき肉だの玉ねぎだのパン粉だのが入っている・・・
ママ・・・もしかしてボクの大好きな・・・
「じゃあな。また明日学校で。ははははは」
笑いながらママと手をつないで出て行こうとするあいつ。
「ま、待って! ママ、行かないで! 行かないでぇ!」
ボクは思わずママに声をかける。
一瞬ママは立ち止まってこっちを向く。
「ママ・・・」
「もう一度申し上げます。私は須法良晴様の所有するヒューマンロボットKSR-217アヤです。曽根田成浩のママではありません。ですので、その命令は無効です」
無表情でボクにそう告げるママ。
そのままママはあいつと出て行ってしまう。
ボクはただ泣くしかできなかった・・・

                   ******

気が付くともう真っ暗。
ボクは部屋の片隅でただ座っているだけ。
何もする気がない。
このまま死んでしまってもいい。

「ママ・・・」
悔しい・・・
ママが・・・
ママがロボットにされてあいつのものになっちゃうなんて・・・
でも・・・
どうすればいいんだろう・・・

玄関の開く音がする。
えっ?
誰だろう・・・
もしかして、ママが?
今までのことは全部夢だったんじゃ?
ボクは淡い期待を胸に玄関に行く。

「お邪魔します」
頭のアンテナの先端を赤くチカチカ光らせ、ママが玄関に入ってくる。
「ママ・・・」
やっぱり夢じゃなかった・・・
ママはロボットにされちゃった・・・
躰はプラスチックのようだし、目はガラスの奥でレンズが光っている。
肘の関節は人形のような球体だ。
服だって、あいつ好みという胸の開いた服を着て網タイツを穿いている。
でも・・・どうして?
どうして戻ってきたの?
もしかしてボクのことを思い出してくれたの?

「ママ!」
ボクが声をかけると、ママはボクの方に向き直る。
その動作はやはりロボットのように硬い感じ。
「曽根田成浩に申し上げます。私は良晴様のご命令で、この家で過ごすよう命じられました。よって、次のご命令までの間、この家で過ごさせていただきますのでご承知ください」
「な?」
あいつの命令だから、ここに戻ってきたというの?
あいつの命令だから・・・
そんな・・・
やっぱりママはあいつの・・・

「なお、ここにいる間は、曽根田成浩の“お願い”にもある程度対応していいとの仰せです。良晴様のご厚意に感謝してください。それと、再度申し上げますが、私はKSカンパニー製ヒューマンロボットKSR-217アヤです。曽根田成浩のママではありませんので、KSR-217アヤ、もしくは単にアヤと呼ぶようにお願いいたします」
「そんな・・・」
ママなのにママと呼ぶなって・・・
アヤと呼べって・・・
あいつの厚意に感謝しろって・・・
そんなの・・・
そんなのないよ・・・

「警告も申しあげておきます。私の躰は良晴様の所有物ですので、私の躰に関する“お願い”は拒否させていただきます。私の躰に触れることは許しませんのでご承知ください。また、私に対してのみならず、曽根田之浩に通報するなど良晴様の不利に働くような行為全般に対しましては、その都度対処させていただきます。場合によりましてはこの家から退去し、良晴様にご報告と対応依頼を行うことになりますので、こちらもご承知ください」
淡々とママはボクに通告する。
ボクが少しでもあいつに何かしようとしたら、ママはあいつのために行動するって言っている。
あいつのために・・・
ママがあいつのために・・・

「うわぁぁぁぁっ!」
ボクはママにとびかかる。
さっきのような怒りからじゃない。
ママの頭で赤く明滅しているアンテナ。
あのアンテナがママをこんなロボットにしちゃったんだ!
あいつがママの頭にあんなものを刺したりさえしなければ!
あのアンテナがー!

「曽根田成浩に警告します! 私の躰に触れることは・・・」
ママが何か言っているけど、ボクは構わずママに抱き着く。
あのアンテナさえ!
アンテナさえ取ってしまえば・・・
アンテナを取って・・・

ボクがアンテナを掴むのと、ママがボクを突き飛ばしたのはほぼ同時だった。
ポキッと軽い音がしてママのアンテナは簡単に折れ、ボクは折れたアンテナを手にしたまま、壁にたたきつけられた。
「あうっ!」
背中を打ったボクは一瞬強い痛みに息が止まったが、すぐに甲高い警報音のようなものを耳にする。
「ピー・ピー・ピー・ERROR・ERROR・ERROR・通信が途切れました。アンテナをご確認ください。ピー・ピー・ピー・ERROR・ERROR・ERROR・通信が途切れました。アンテナをご確認ください。ピー・ピー・ピー・ERROR・ERROR・ERROR」
見ると、ママは気を付けをしたようにまっすぐピンと立ち、口から機械がしゃべっているような音声が流れている。
「ピー・ピー・ピー・ERROR・ERROR・ERROR・通信が途切れました。アンテナをご確認ください。ピー・ピー・ピー・ERROR・ERROR・ERROR・通信が途切れました。アンテナをご確認ください」
ママはずっと同じことをしゃべり続けている。
ボクは手の中にある折れたアンテナを見る。
そうか・・・
アンテナが折れたから、ママは通信ができなくなったんだ・・・
えーっ?
でも、どうしたら・・・

「ピー・ピー・ピー・ERROR・ERROR・ERROR・通信が途切れました。アンテナをご確認ください。ピー・ピー・ピー・ERROR・ERROR・ERROR」
「ママ、ママ、見て! 折れたんだよ! ママのアンテナが折れたの!」
ボクは同じことをしゃべっているママのところへ行き、折れたアンテナを見せてやる。
アンテナが折れたことに気が付いてくれれば、元に戻ってくれるかもしれない。
「ピー・ピー・ピー・ERROR・ERROR・ERROR・アンテナの破損を確認いたしました。弊社サービスセンターにご連絡ください。電話番号は○○○○‐XXXX‐△△△△です。ピー・ピー・ピー・ERROR・ERROR・ERROR・アンテナの破損を確認いたしました。弊社サービスセンターにご連絡ください。電話番号は○○○○‐XXXX‐△△△△です」
えええええ?
しゃべる言葉が変わったけど・・・
サービスセンターに連絡?
でも、ママをこのままにはできないし・・・
ボクはママのハンドバッグの中からスマホを取り出すと、サービスセンターに電話した。

                   ******

「うーん・・・困りましたねぇ」
蛍光灯の下で腕組みをして唸っている男の人。
黒いスーツに黒いサングラスをかけているので、最初玄関を開けたときにはびっくりした。
もう一人若い女の人もいて、そちらも黒いタイトスカートのスーツに黒いサングラスをかけている。
今はアンテナの折れたママのチェックをしているらしい。

二人はKSカンパニーのサービスマンだそうで、ボクが電話をしたらすぐに行くと言って、うちに来てくれたのだ。
ボクはママがロボットに無理やりされてしまったことや、あいつのものにされてしまったこと、何とか元に戻したくてアンテナを折ってしまったことなどを打ち明けた。

「うーん・・・大変申し訳ありませんが、こちらのKSR-217は須法良晴様の登録機体となっておりまして、お客様・・・えーと曽根田様の所有機ではございませんのです。ですので、曽根田様が修理を求められましても、須法様のご了解がいるというわけでして・・・」
そんな・・・
あいつに修理の了解なんか求めたら、ママがまたあいつのものになっちゃう。
「それに・・・元に戻すと言われましても、すでに素体であります曽根田彩愛はフォーマットと組成変換による機械化が行われておりますので、もう存在していないという形になります。そこはご了承していただきませんと・・・」
「そんな・・・人のママを勝手にロボットにして元に戻せないなんて、そんなことがあっていいわけがないよ!」
ボクはブンブンと首を振る。
ママを・・・
ママを元に戻してよ!

「そうですねぇ・・・もし、曽根田様がママ・・・その、お母さまが突然いなくなって困っているというお話でしたら、弊社といたしましてもお気持ちは充分お察しいたしますので、いかがでしょうか? KSRシリーズのアンテナを一本ご用意させていただきますので、そちらをご利用していただき、新たなお母さまロボットをお作りになられるというのは?」
黒いサングラスの男性が笑顔でボクにそういう。
嘘でしょ?
ボクにあいつと同じ事をしろっていうの?
誰かのママをボクのママにしちゃえっていうの?

ボクは即座に首を振る。
そんなことができるわけがない。
誰かのママをボクのママにするなんてできるはずがないよ。
それぐらいなら・・・
それぐらいなら、いっそママをボクのロボットにしてよ!
そうしたらもうあいつのものじゃなくなるんだろ!

ボクがそういうと、男の人は渋い顔をする。
無理なんだ・・・
やっぱり無理なんだ・・・
ママ・・・
このままあいつの元へまた返されちゃうの?

「主任、ちょっといいですか?」
黒いサングラスのお姉さんが、ボクと話していた男の人を呼ぶ。
「どうした? アンテナ交換で済みそうか?」
「そのことなんですけど・・・これを見ていただけます?」
「ん? ちょっと失礼」
黒いサングラスの男の人、主任さんがボクに断ってお姉さんの方へ行く。
どうしたんだろう?
まさかママはもう修理不能とか?
そんな・・・

「ん? アンテナナンバー00241? 須法良夫?」
「はい、登録所有者名とアンテナ譲渡者名が違ってまして・・・」
ママのそばで何やら話し込んでいる二人。
いったい何を話しているんだろう・・・
「んん? 譲渡者自らの使用条件で譲渡されているんじゃないのか? どうなってんだ?」
「これ・・・まずくないですか?」
「ちょっと確認してみる」
男の人がタブレットとスマホを持って部屋を出て行ってしまう。
どうしたんだろう?

「あの・・・」
ボクは恐る恐る、残った女の人に声をかける。
「もしかして・・・ママはもう修理できないとか・・・ですか?」
「ああ、いえ、そうじゃないんです。ちょっとした相違があるみたいで・・・その・・・」
女の人も口を濁す。
それにしても、黒いタイトスカートのスーツに黒いサングラスってかっこいいな・・・

「うーん・・・どうもまいったね、こりゃ・・・」
たっぷり15分は経ってから主任さんが戻ってくる。
困ったってどうしたんだろう?
「主任?」
「いらんってさ。どうも息子さんが勝手にヒューマンロボットにしたらしい・・・」
「息子さんが?」
黒いサングラスのお姉さんも困っているみたい?
いったい何が?

「それで、登録者名の変更と引き取りをお願いしたんだが、そんなどこのオバサンかわからんロボットなど引き取れないと・・・息子が勝手に使ったのは悪かったが、所有権は放棄するから、そっちで処分してくれと」
「そんな勝手な・・・」
「と言っても、相手の所有意思がない以上どうしようもないからなぁ・・・うーん・・・」
「だったら主任・・・こういう手はどうでしょう?」
「ん?」
二人はまたボクから離れて話し始める。
何がどうなっているのだろう?
所有権放棄?
処分?
まさかママは処分されちゃうの?

「曽根田様」
「は、はい?」
主任さんがボクのところに戻ってくる。
「曽根田様は、このKSR-217を修理して手元に置きたいとお考えということで、よろしかったでしょうか?」
「やっぱり元には戻せないんですか?」
「申し訳ありませんが、そちらは致しかねます」
はあ・・・
やっぱりそうなのか・・・
ママはもう元には・・・

「手元に・・・置くことはできるんですか?」
「はい。実は現在このKSR-217は所有者なしの状態になっておりまして・・・もし曽根田様がお望みでしたら、修理と初期化のうえでお渡しすることは可能です」
主任さんがそういう背後で、にっこりと笑ってくれる黒サングラスのお姉さん。
「そ、それって・・・ママをボクのロボットにできるってこと?」
「はい。初期化後にマスター登録を行っていただくことで所有者となっていただくことが可能ですし、オプションによる個性化を行っていただければ、曽根田さんのお好みの個性を持たせることも可能です。もちろん今までのようにママとして振舞わせることも可能ですよ」
うわぁ・・・
ママが・・・
ママがボクのママとして戻ってきてくれるんだ!
ママがボクのママに・・・
「一つだけ条件がございます。この件のことはどうぞご内密に」
黒サングラスのお姉さんが口元に人差し指を立てて“ナイショ”のポーズをとる。
ボクはうんうんとうなずいた。

折れたアンテナが抜き取られ、新たなアンテナがママの頭に差し込まれる。
かすかな機械音がして、アンテナのてっぺんが赤く点滅し始める。
「KSR-217、初期化を行いなさい」
「はい。初期化を行います」
ママの口から声が出てくる。
なんだかママが生き返ったみたいだ。

「KSR-217、初期化が完了しました。再度マスター登録を行いますか?」
「曽根田様、どうぞ」
黒いサングラスのお姉さんがボクをママの前に立たせてくれる。
「マスター登録します!」
ボクは大声で、はっきりとそう言った。

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければコメントなどいただけますと励みになりますし、嬉しいです。
よろしくお願いいたします。

15年記念SSは今回で終了です。
またいずれ新作をお目にかけたいと思います。
それではまた。
  1. 2020/07/24(金) 21:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
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軽率に隣の美人未亡人をロボット化 (後)

昨日に引き続きまして、「軽率に隣の美人未亡人をロボット化」の後編を投下したいと思います。
同僚が「刺すだけで相手をロボット化しちゃうアンテナ」で、メイドロボットを手に入れたのを見た主人公は、うらやましいという思いを隠そうともせずに帰宅します。
するとなんとお隣に・・・

ということで、お楽しみいただけましたら幸いです。
ではどうぞ。


                   ******

「あれ?」
俺は驚いた。
仕事から帰ってきたら、ちょうど玄関先に昨日の五月さんがいたのだ。
「あ、こんばんは」
「あ、こんばんはです。今お帰りなんですか?」
声をかけられて一瞬ドキッとしたような表情をした五月さんだったが、相手が俺とわかって少し表情が和らいだようだ。
「ええ、今日はちょっと早く終わったんで」
「ええと・・・原嶋さんはお一人なんですか?」
五月さんがそんなことを聞いてきたのは、俺がスーパーの袋を持っているからなのかな?
「ええ。この歳まで独り身です。なので、これから晩御飯作ります」
ハハハとごまかし笑いの俺。
「そうでしたか。あの、もしよろしければ・・・今度何かおかずなどお持ちしても・・・」
「ほんとですか? 助かります」
ええ?
五月さんの手料理をいただけるのか?
ありがたいけど・・・
そんなことしたら、美愛ちゃんや旦那さんが文句言ってくるんじゃ?

「あ、あの・・・つかぬことをお聞きしますけど、旦那さんは?」
俺は思い切って聞いてみる。
こんな安アパートに越してくるなんて、何か訳アリなんだろうか・・・
単身赴任でしばらく戻れないとか・・・
「えっ、その・・・じつは・・・主人は先日亡くなりまして・・・」
一瞬悲しげな表情を浮かべ、うつむいてしまう五月さん。
「あ、そ、それは・・・どうも・・・」
俺は慌てて頭を下げる。
えええええ?
なんですと?
旦那さんがお亡くなりに?
ということは、五月さんは未亡人?
だから美愛ちゃんと二人でここに住むということ?

「そ、それじゃ、俺は晩ご飯の支度もありますので」
俺は何と言っていいかわからず、逃げるように玄関をドアを開ける。
「あ、私もそろそろ娘が帰ってきますのでこれで。明日はうるさくなると思いますけど、よろしくお願いいたします」
「は、はいはい」
俺はそそくさと五月さんに頭を下げて家に入りドアを閉める。
五月さんが外階段を降りる音が響き、やがて何も聞こえなくなる。
うううううう・・・
うううううう・・・
いやったぁぁぁぁぁ!
五月さんに旦那さんはいないんだ。
五月さんは未亡人なんだ。
だからこんな狭いアパートに引っ越してきたんだ。
俺にも・・・
俺にもチャンスが来たぞぉぉぉぉぉ!
そうだ!
こんなチャンスはもう二度とないかもしれない。
俺はスーパーの袋を放り出すと、すぐに山田に電話をかけた。

                   ******

それから数日。
俺はわくわくしながら到着を待った。
山田からそれを渡された時には、俺は思わず笑いだしてしまったくらいだ。
これで五月さんを俺のもの、俺の思いのままにできるんだ。
俺は手の中のアンテナを見つめながら、ずっと五月さんの顔を思い浮かべていた。

待ちに待ったその日。
今日は土曜日。
五月さんたちはほぼ引っ越しの片付けも終わっただろう。
美愛ちゃんのことが気にはなるが、いざとなれば・・・
あとはどうやって・・・

『行ってきまーす』
ん?
玄関先で声が聞こえる。
今日は土曜日・・・だよな?
俺が玄関を開けると、ちょうど鉢合わせで階段に向かおうとしていた制服姿の美愛ちゃんと出会ってしまう。
一瞬ギョッとして、すぐに目をそらし、挨拶もせずに俺の横を通り過ぎる美愛ちゃん。
はあ・・・
そりゃまあ、こんなおっさんだけどさ・・・
あからさまに嫌われるのはきついなぁ・・・

「美、美愛、お隣さんにちゃんとご挨拶なさい。もう・・・すみません、まだ子供で」
玄関から顔を出していた五月さんが申し訳なさそうに頭を下げる。
「あ、いえいえ、いいんですよ。でも、土曜日なのに学校ですか?」
「はい。あの子部活をやっているので。水泳部なんですけど」
表情がにこやかになる五月さん。
どうやら五月さんには嫌われてはいないようなのが救いだなぁ。
それにしても美愛ちゃんは水泳部か。
どうりでスタイルがいいはずだ。

「それでは失礼しますね」
五月さんが部屋に戻ろうとする。
ええい、ままよ!
美愛ちゃんがいないなら、今がチャンスだ!
「ちょ、ちょっと待ってもらっていいですか? ぜひ見てもらいたいものがありまして」
「え? え、ええ・・・いいですけど」
やや警戒した感じの五月さん。
それはそうか。
だが、こんなチャンスは・・・

俺は部屋に戻ってあのアンテナを取ってくる。
これだ。
これさえあれば俺は五月さんを・・・
だが・・・
だがいいのか?
人間をロボットにしてしまうなんてことを軽率にしてしまっていいのか?
・・・・・・
・・・・・・
いいのだ・・・
いいのだ!

「実はこれなんですよ」
俺は再び玄関から顔を出し、そのまま五月さんの家の玄関まで行く。
やるなら一瞬が勝負か?
神様・・・

「なんですか、それは?」
俺が手にしたアンテナを不思議そうに見る五月さん。
銀色に輝く細い金属製の棒で、先端は片方がとがっており、反対側は透明のプラスチックのカバーが付いている。
「これはアンテナでして。どうも特殊な効果があるらしいんです」
俺はできるだけ自然に・・・でもやや強引に五月さんの玄関先へと入り込む。
「アンテナ?」
「ええ。これを人間の頭に刺すとですね・・・」
五月さん・・・ごめん!
「えっ? あっ? キャッ! な、なにを・・・」
俺は手を振り上げ、五月さんの頭にアンテナをブスリと刺す。
思ったほど手ごたえはなく、アンテナはスッと五月さんの頭に刺さっていく。
これで・・・
これでいい・・・んだよな?

「あ・・・ああ・・・い・・・いや・・・あ・・・」
五月さんに刺したアンテナから手を離す。
五月さんは驚いて頭のアンテナに手を伸ばそうとしたが、アンテナの先端の透明プラスチックカバーの内部が赤く光り始めると、その手が止まってしまう。
「さ、五月さん?」
俺の呼びかけには答えず、ゆっくりと手を下ろして気をつけの姿勢になる五月さん。
その驚愕の表情がゆっくりと消え、まったくの無表情へと変わっていく。
「・・・プログラム作動確認・・・フォーマットおよび組成改変による機械化を行います。約2分間かかりますがよろしいですか?」
五月さんの口から抑揚の無い声が発せられる。
まるで電子音のようだ。
これが・・・
これがロボット化なのか?
しかもわずか2分程度で?

「あ、ああ、いいよ」
「ピッ、フォーマットおよび組成改変による機械化を開始します」
電子音のような声で五月さんがそういうと、彼女の躰に変化が起き始める。
「うわ・・・」
顔や、半袖のブラウスから覗いていた腕の皮膚がつややかでつるんとした、そうプラスチックのような表面に変わっていくのだ。
正面を見ている眼もなんだかガラスのレンズのように変化し、髪も長くつややかな黒髪がバサッと全部いっぺんに抜け落ちて、新たに人工的な光沢の髪の毛が生え、以前と同じ長さへと伸びていく。
腕は関節部分がそれぞれ球体のように変化し、いわば人形の腕のようになっていく。
あのユカリさんと同じだ。
まさに生きたままロボット化されていっているのだ。

「フォーマットおよび組成改変による機械化が完了しました。基本状態における素体のヒューマンロボット化はこれで終了となり、当機はKSカンパニー製ヒューマンロボットKSR-191として機体登録が行われました。オプションによる個性化を行いますか?」
約2分が経過し、無表情でそう告げる五月さん。
「オプション?」
「はい。当機の仕様をご使用者様のお好みに合わせて個性化させることが可能です。例としまして人工皮膚カバーによる表面の柔軟化、セックス機能の追加、メモリーの完全消去から事項別でのメモリー保存等が可能です。また外見、口調等の機械感を割合に応じて変化させることも可能でございます」
ああ・・・なるほど。
山田のように人形のような形が好みであればこのままでもいいし、人間ぽい躰にしたいよと言えば、そうしてくれるということか・・・
「機械感・・・とは?」
「はい。ご使用者様のお好みで、当機をロボットぽく見せたいのか、できる限り人間ぽくふるまわせたいのかを、パーセンテージでお選びいただくことが可能です」
なるほどねぇ。
山田はどのくらいにしているのかなぁ・・・
ともあれ、少なくともセックス機能は入れないとな。

「オプションによる個性化を頼む」
「了解いたしました。そのためには当機に対するマスター登録が必要となりますが、よろしいですか?」
「マスター登録?」
「はい。当機体の責任者となっていただくことが必要となります」
ああ・・・まあ・・・そうだよね。
「うん。登録する」
「それではマスター登録を開始いたします。マスターとなられる方の虹彩情報を取得いたしますので、当機のカメラアイを3秒間お見つめください」
当機・・・カメラアイ・・・
なんだか五月さんは本当にロボットになってしまったんだなぁ・・・
俺はそんなことを思いながら五月さんの目を見つめる。
少しの間お互いの目を見つめ合い、俺は五月さんの目の奥でカメラのレンズが焦点を合わせるような動きをしているのがわかった。

「虹彩情報の取得が完了しました。続けてお名前をお願いいたします」
「原嶋・・・敦貴(あつき)」
「原嶋・敦貴・さまですね? 姓名及び声紋情報を取得、登録いたしました。マスター登録が完了いたしました。これより当機は原嶋敦貴さまの所有機となります。以後は当機の製造元であるKSカンパニーとの契約下に置かれることになりますが、契約に基づく約款を読み上げてもよろしいでしょうか? 約1時間27分かかりますが」
「ぶはっ!」
俺は吹き出した。
無表情の五月さんが淡々と約款を1時間以上もしゃべるというのも悪くはないかもしれないけど、絶対途中で寝ているのは間違いないよ。
どうせ壊したときの責任がどうとかってことなんだろうし、まあ別にいいか。
「いや、必要ない」
「かしこまりました。それでは当機のマスター登録が終了しました。以後、当機は原嶋敦貴さま所有KSカンパニー製ヒューマンロボットKSR‐191となります。末永くご愛用いただけますよう、よろしくお願いいたします」
ぺこりと頭を下げる五月さん。
KSR‐191かぁ・・・

「あの、五月さんと呼んでもいいのかな? あ、いや、五月・・・か」
「当機に名前を付けてくださるのですか? うれしいです。サツキ、ですと素体名の名前部分をそのまま登録という形になると思われますが、それでよろしいですか?」
「ああ、うん、いいよ。名前だけね」
そう・・・
名前だけでいい。
苗字はいらない。
彼女はもう俺のものなんだから。
「登録いたしました。現時点から当機はKSR-191サツキとなります。よろしくお願いいたします、原嶋敦貴さま」
再び頭を下げるサツキ。
うん。
なんかいい気分だ。

「いちいち名前を呼ぶ必要はないよ。そうだなぁ・・・」
敦貴さまも原嶋さまもなんかなぁ・・・
やっぱりこれか?
「そうだな、他に誰もいない場合には俺のことはご主人さまと呼んで欲しいな。ほかに誰かいる時には・・・うーん・・・原嶋さま・・・かなぁ・・・」
あっ・・・
山田ももしかしたらユカリさんに俺がいないときはご主人さまって呼ばせているかもしれないな。
「かしこまりました、ご主人さま。それではオプションによります個性化につきましてご説明させていただきます」
「うん、いいよ」
俺はサツキにどういう個性をつけようかと、わくわくしながら説明に聞き入った。

                   ******

「んちゅ・・・くちゅ・・・んむ・・・」
うわぁ・・・これはたまらん・・・
サツキの口奉仕に思わず腰が動いてしまう。
「んちゅ・・・いかがですか、ご主人様? オーラルセックスモードはきちんと動作しておりますでしょうか?」
「ああ・・・いいよぉ。最高だ」
片手で髪をかき上げて上目遣いに俺を見上げるサツキ。
ガラスに覆われたカメラアイの焦点が俺の顔に合わされ、頭から延びたアンテナの先端が赤く明滅している。
まさに俺の、俺だけのロボットになったサツキに俺は満足する。
やべぇ・・・
もう出そうだ・・・

あのあと俺は、サツキに様々なオプションによる個性化を取り入れていった。
肌はやはり人間ぽい方がいいだろうということで、人工皮膚カバーによる疑似スキンをまとわせた。
これによってサツキの外見はかなり人間ぽくなり、ちょっと見た程度ではロボットとは思えないだろう。
ロボット的な外見に戻すことも可能なそうなので、気が向いた時にはロボットのサツキで楽しむこともできるという。
口調などもロボットぽく電子音のあとに平板な音声で言葉を言わせるとか、数字やパーセンテージを多用させるといったこともできるし、人間ぽいあいまいな表現を多用するように言わせることもできるらしい。
これが機械感というものだそうで、まさに個人の好みにかなり合わせてくれるわけだ。
もちろんセックス機能も搭載したので、股間の性器もお尻の穴も再現され、口もオーラルセックスが可能となった。
まあ、その機能を今試しているというわけだ。
服を脱がせてみてわかったが、サツキは結構グラマラスなボディをしており、体形もある程度は変更が可能らしいのだが、胸の大きさなどもいじることなくそのままにした。
この大きさなら、パイ擦りなんかもできそうだしな。

「うっ・・・」
俺はサツキの舌遣いに、たまらず射精してしまう。
はあ・・・気持ちええ・・・
「ん・・・んぐ・・・」
口の中に出された俺のザーメンを飲み干すサツキ。
まあ、あとで吐き出して洗浄するというのがちょっと残念。
そういえば食事なんかするんだろうか?
山田の家ではユカリさんは何も食べていなかったけど・・・
「はあ、ご主人さまの精液、とても美味しかったです。ありがとうございます」
とびきりの笑顔でそう言ってくれるサツキ。
ロボットであることを忘れる笑顔だなぁ。
これもプログラムなんだろうなぁ・・・
ほんとすごいなぁ。

「よし、それじゃ次は葛藤モードを起動して、俺とセックスしろ」
メモリーの方は、疑似人格を生かすためにも、最小限の消去に留めることにした。
素体時の記憶なども持たせてはいるが、それはあくまでも現在に対する味付けのためだ。
素体の記憶があるからと言って、俺に対する忠誠心というか服従心みたいなものは揺らぎはしないということも確認済み。
そのため、亡くなったという前旦那の記憶も消去せずに維持させた上で、心は前旦那を愛しながらも肉欲は俺を求めるみたいなシチュエーションモードを用意させ、葛藤モードと名付けている。
だから・・・

「かしこまりました、ご主人さま。葛藤モードに移行します」
そういったサツキの表情が少し険しくなる。
「ああ・・・そんな・・・私・・・ダメなのに・・・あの人を愛しているはずなのに・・・」
そう言ってサツキは顔を背ける。
もちろんそんなはずがない。
彼女は俺を一番に考えるようにプログラムされている。
前旦那のことなど忘れろと言えば、即座にメモリーから消去してしまうだろう。
だからこれは味付けなのだ。

俺はそのままソファーに行って横になる。
そしてサツキの方を見る。
サツキはしばらく険しい表情で俺をにらみつけるが、躰の疼きに耐えられないという感じでそっと立ち上がると、俺の元に来る。
今のサツキは黒の下着で統一されている。
黒のブラジャーに黒のパンティ。
黒の長手袋に黒のガーターストッキングだ。
いやらしい下着に着替えろと命令したら、黒の下着に着替えたのだ。
もしかしたら前旦那が用意したものかもしれない。
とても淫靡でいやらしい姿だ。

「ふふ・・・いやらしいな。我慢できないのか?」
俺が意地悪そうにそういうと、サツキはコクンとうなずく。
「ああ・・・はい・・・私は・・・私の躰はもう敦貴さんのおチンポなしでは・・・ごめんなさい、あなた」
そう言って俺の上にのしかかってくる。
くっはー!
なんていうか最高だな・・・
美人未亡人を虜にしてしまった俺のチンポ・・・なんて、どこのエロゲーだよ。

「ただいまー」
玄関で声がする。
はいぃぃぃ?
まだお昼ちょっと過ぎだよね?
美愛ちゃんが帰ってきた?
学校は?
あ・・・
今日は土曜日だ!

ヤバいと思った時には、部屋の入り口でわなわなと震えている美愛ちゃんが立っていた。
その目はもう見ただけで俺に対する怒りに満ち溢れている。
「うわぁぁぁぁ! お母さんに何をしてぇぇぇぇぇ!」
叫びながら俺にとびかかってくる美愛ちゃん。
いや、そりゃそうだろうけどさ。
うひぃぃぃぃ!

「えっ?」
俺が頭を抱えて身を守ろうとした瞬間、スッとサツキが美愛ちゃんの前に立ちはだかる。
「だめです。原嶋さまに危害を加えることは許しません」
「お・・・お母さん・・・どうして?」
まさか母親が前に立ちはだかるとは思いもしなかったんだろう。
愕然としている美愛ちゃん。
よかった。
今のうちに・・・
「サツキ、命令だ。葛藤モードを終了し、その子を捕まえて拘束しろ。絶対に逃がすな!」
「かしこまりました、原嶋さま」
「えっ?」
サツキは美愛の腕をぐっとつかむと、そのままぐるりと回転させて背後から腕を固めて動けないように拘束してしまう。
おそらくロボットになっていなければ、こんなスムーズな動きはできなかっただろう。

「えっ? ちょっ! お、お母さん! 離して!」
がっちりと腕と首を固められ、身動きのできない美愛ちゃん。
ごめん、すぐ戻るから。
「その言葉は私の素体に対する呼びかけと判断いたしますが、現在の私は里川五月とは異なります。私は原嶋敦貴様にお仕えいたしますKSカンパニー製ヒューマンロボットKSR-191サツキです。ですので、あなたさまのお母さまではありません」
俺がズボンを穿き直している間に美愛ちゃんに答えているサツキ。
「嘘? ロボット? お母さんは?」
「里川五月のことであれば当機の素体として使用されました。ですので、現在は存在いたしません」
「う・・・そ・・・うそ・・・でしょ・・・」
うう・・・その通りなんだよ、美愛ちゃん。
俺はとにかく急いでもう一本の“あれ”を持ってくるべく、部屋を飛び出した。

自分の部屋に戻った俺は、二本目のアンテナを手にする。
そう、もともと俺は美愛ちゃんもロボットにするつもりだったのだ。
まさかこんなタイミングになるとは思わなかったけど、どっちにしろもうやるしかない。
俺はアンテナを手に再び隣の家に入っていく。

「離して! 離してよ!」
「だめです。原嶋さまのご命令があるうちはあなたさまを離すことはできません」
「どうして・・・どうしてこんなことに・・・ひどいよぉ・・・」
俺が戻ると、美愛ちゃんは半分泣きながら必死になってもがいていた。
「あ、あんた! あんたでしょ! 何をしたの? お母さんに何をしたのよ!」
部屋に戻ってきた俺に気が付くと、美愛ちゃんはありったけの憎悪を俺に向けてくる。
ごめん、美愛ちゃん。
すぐに君もわかるからね。

「美愛ちゃん」
「美愛ちゃんなんて呼ばないで! あんたなんかぁ!」
「美愛ちゃん、ごめんね。君のお母さんは俺がロボットにしてやった。今では俺の言うことなら何でもするかわいいロボットになったんだ」
俺は美愛ちゃんがわめくのをそのままにしてそう告げる。
「お母さんをロボットに・・・信じられない・・・」
「信じられないかもしれないけど本当なんだ。ほら、お母さんの頭にアンテナが立っているだろ? それがこれさ」
俺が持ってきたアンテナを見せてやる。
銀色の金属でできた細い棒。
片方の先端は鋭くとがっており、もう片方には透明プラスチックのカバーが付いている。
「このアンテナを刺すとね、人間はロボットになっちゃうんだ。君のお母さんみたいにね」
「そんな・・・嘘よ・・・信じられない」
「嘘かどうかはすぐにわかるよ。君にもこのアンテナをつけてあげるから」
「えっ? 嘘でしょ? いやっ! いやよっ! 絶対にいやぁぁぁぁ!」
俺は悲鳴を上げる美愛ちゃんの頭に、アンテナをブスリと刺した。

                   ******

「ご命令通り着替えてまいりました。いかがですか、ご主人さま?」
そう言ってくるっと一回転し、競泳用水着に着替えた姿を見せてくれる美愛ちゃん。
その頭にはアンテナが輝き、先ほどまでとは雲泥の差のとびきりの笑顔を浮かべている。
おっと、もう美愛ちゃんじゃなくて、KSR-193ミアだったな。
「うん。素敵だよ、ミア」
「ありがとうございますご主人さま。KSR-193ミアは、ご主人さまのためなら何でもいたしますので、何なりとご命令くださいませ」
ぺこりと一礼するミア。
彼女もサツキ同様にマスター登録を行い、オプションによる個性化を行ない俺好みに仕立て上げた。
メモリーの方は彼女から俺に対する嫌悪感のようなものはすべて取り除かせ、父親の記憶も消去した。
なので、ミアには父の記憶がなく、サツキとともにロボットとして俺に仕えられる喜びのみを感じるようになっている。
もちろんセックス機能も付けているので、いつでも俺に抱かれてくれるだろう。
うん。
いいロボット二体を手に入れたじゃないか。

「ご主人さま、冷蔵庫にある食材を使ってご主人さま用のお食事を用意したいと思いますが、それでよろしいでしょうか?」
冷蔵庫の中身を確認していたらしいサツキが戻ってくる。
「ああ、うん、それでいいよ。三人分あるかい?」
「ご主人さま、当KSカンパニー製ヒューマンロボットは食事を必要といたしません。充電をしていただくことで稼働するようになっております」
あ、そうなのか。
充電か。
一緒に食事をするというわけにはいかないんだ。
それはちょっと残念かも。

「ご主人さま、当機がKSR-191サツキを呼ぶ時はいかがいたしましょう? ナンバーと機体名で呼べばいいですか?」
直立して指示を待っていたミアが質問してくる。
そうか・・・
ロボット同士をどう呼ばせるかか・・・
「ミアはサツキを素体時と同じようにお母さんと呼べ。サツキも素体時と同じくミアと呼ぶんだ。いいな」
「「かしこまりました。ご主人さま」」
美人母娘が声を合わせて頭を下げた。

                   ******
                   ******

「ふわぁぁぁぁあ」
山田が大きなあくびをしている。
「おはよう、寝不足か?」
俺が声をかけると、山田がニヤッと笑う。
「ああ、まあな」
「ユカリちゃんと楽しんでいるのかな?」
「ああ。毎晩たっぷりと」
やっぱりなぁ。
そりゃそうなるよな。
俺も思わず苦笑する。

「お前だって楽しんでいるんだろ? それも二人も」
「ああ、まあな」
さっきの山田とおんなじセリフだ。
おかげで俺も寝不足気味。
タイプの違う二人のロボットを相手に楽しませてもらっている。

「それにしても思い切ったもんだな。一気に二体とは。俺も二体目考えるかなぁ・・・」
「しょうがないだろ。母親だけってわけにはいかないじゃないか。どうやったって娘に怪しまれるだろ」
サツキをロボットにする以上は、ミアをロボットにしないわけにはいかなかったんだよ。
「まあ、そりゃそうだな。俺みたいに一人暮らしをしていたユカリをロボットにしたみたいにはいかんわな」
そういえば、確かに斎藤さんは独り暮らしだったとは思うが、ご両親とかはどうしているんだ?
娘がいなくなって気にならないのか?

「なあ、そういえば斎藤さんって・・・どうなったことになっているんだ?」
「さあ・・・失踪してしまったらしいぜ」
こともなげに山田が言う。
「失踪?」
「ああ・・・婚約者とうまくいかなくなったんじゃないかとか、結婚が嫌になって逃げ出したとか・・・」
「そういうことになっているのかよ・・・」
まあ、ロボットになったユカリさんは家族や婚約者などどうでもいい存在になっているだろうから、連絡もするはずがないだろうしなぁ。
「うちに彼女によく似たロボットが一体いるけど、まあロボットだからなぁ。関係ないだろうなぁ」
この野郎、すっとぼけやがって・・・
でもまあ、そういう形が一番か・・・

「そういえば、お前今度引っ越しするんだって?」
「ああ、今のアパートはちょっと手狭だからな。ちょっと距離は遠くなるけど、いいところを見つけたんだ」
さすがに今のアパートじゃ三人というか俺と二体が暮らすには狭いし、かといって、ロボット二体が隣で暮らすというのもなぁ。
今度の家ならならまあまあ何とかなるだろう。
「ふーん・・・すると・・・」
「ああ・・・俺が引っ越ししたら、隣の部屋の母娘もなぜか失踪するんじゃないかなぁ」
「よく似たロボットがお前の家にいたとしても、ロボットだしな」
「そういうことだ」
「ははははは」
「わはははは」
俺と山田は二人して笑い合った。

                   ******

「お帰りなさいませ、ご主人さま」
「お帰りなさいませ、ご主人さま」
家に帰ると頭にアンテナを立てた二体の女性型ロボットが俺を出迎えてくれる。
一体は母親型のKSR-191サツキで、もう一体は娘型のKSR-193ミア。
二体のロボットは俺に忠実に従い、俺のためなら何でもしてくれるかわいいやつらだ。
家事もすべてやってくれるし、夜の相手もしてくれる。
特にサツキの方は、葛藤モードを組み込んだおかげで、前旦那に思いを残す未亡人を寝取るというシチュを楽しめるのがたまらない。
ミアの方はミアの方で、まだやや幼さの残る若い躰を楽しむことができる。
なんていうか最高の二体だと俺は思う。

「お風呂の準備も、お食事の支度もできております」
俺好みの黒下着姿でサツキが笑みを浮かべている。
「ご主人さまがご希望であれば、私かお母さんがお背中を流させていただきますが、いかがいたしましょう?」
ミアは赤い下着を着けている。
サツキと同じくブラジャーにパンティ、長手袋にガーターストッキングという姿だが、躰の若さと淫靡さとのアンバランスさがまたいい。
でもな、流してもらうのはいいけど、風呂場狭いからなぁ。
引っ越し先の風呂場はどうだったかなぁ?
まあ、今よりは広いだろうから、三人で入るのもできるかなぁ。

「いや、今日はいいよ。とりあえず風呂入ってくる」
「かしこまりました。それではお風呂を上がり次第お食事ができるように支度をいたします」
「お酒の準備もしておきますので、どうぞごゆっくり」
二体のロボットが頭を下げる。
ああ・・・
いいなぁ・・・
でも、引っ越したら家賃も上がるし、食費は変わらないにしても、二人の電気代もかかるし、仕事頑張らなくちゃならんなぁ。
まあ、これも軽率に二人をロボット化した俺自身が招いたことか。
とほほ・・・

俺は最高のロボット二体を手に入れたという喜びと、これから維持費が大変だなぁというちょっと苦い思いが複雑に混じったカクテルのような気分を味わいながらも、今晩はどっちを抱こうかと考えを巡らせるのだった。

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントなどいただけますと嬉しいです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2020/07/08(水) 21:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
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軽率に隣の美人未亡人をロボット化 (前)

今月7月は、当ブログにとりましては「周年記念日」のあります月となりますわけですが、今年ももうすぐその日がやってきますです。
ですので、その前祝い的に今日明日で一本SSを投下させていただこうと思います。

タイトルは、「軽率に隣の美人未亡人をロボット化」です。
私のツイッターの相互フォロワーさんでありますけー様が、頭に刺すことで簡単に人間をロボット化できるアンテナというアイテムを使い、深く考えることもなく「軽率に」人間をロボットにしちゃうというSSを発表していらっしゃったので、思わずそのアイディアに乗っからせていただきました。

設定等はけー様の作品とは微妙に異なる部分もありますが、機械化ものSSとして楽しんでいただければと思います。

それではどうぞ。


軽率に隣の美人未亡人をロボット化

「はあ・・・」
俺は思わずため息をつく。
スポーツ新聞の一面を飾る芸能人の入籍ニュース。
美男美女の結婚ということで、TVでも連日のように放送されている。
あーあ・・・
いいなぁ・・・
俺もこのぐらいイケメンだったらなぁ・・・
こんな美人の嫁さん欲しいよなぁ・・・
独り身のまま、もうこんなおっさんになってしまうなんてなぁ・・・

「どうした原嶋(はらしま)? 相変わらずコンビニ弁当か?」
隣の席にやってくる山田(やまだ)。
同じ部署で気のいいやつだ。
わりと気が合うので仲良くやっている。
「悪かったな。どうせお前だってそうだろ・・・」
うに、と続けようとした俺の前に、カラフルな布で包まれたお弁当らしきものがどんと置かれる。
嘘だろ?
お弁当だとぉ?
俺と同じく独身のはずの山田が?

「お、おい、山田・・・」
「ははっ・・・まあな、俺も弁当を作ってもらえるようになったというわけでな」
ちょっと照れ笑いをしている山田。
おいおい、どういうことだよ?
彼女でもできたというのか?
いいなぁ・・・

「でな、今日仕事が終わったらうちに寄らないか? いいもの見せてやるよ」
「いいもの?」
彼女のことだろうか?
でも“いいもの”って言っているしなぁ・・・
新しいゲームでも買ったか?
「ま、まあ、いいけど」
どうせ帰っても飯食って寝るだけだし、どうやって彼女を作ったのかも聞きたいしな。
どうせ山田の方も、“いいもの”にかこつけて、彼女のことを自慢したいに決まっているんだろうし。
「よし、決まりだ。あ、誰にも言うなよ。ナイショだぞ」
「あ、ああ、わかった」
ナイショに?
まあ、それぐらいは別にいいが・・・
それにしても美味しそうな弁当だなぁ・・・
色どりも鮮やかだし・・・
いいなぁ・・・

                   ******

「ふひひ・・・驚くなよ」
うきうきした足取りで階段を上がっていく山田。
重たい躰も今日は軽そうだ。
なんともまあ、浮かれちゃって。
そんなにその“いいもの”とやらを見せたいのかね?
どうせそっちよりお弁当を作ってくれた彼女の自慢をしたいだけなんだろう?

古びたアパートの一室。
まあ俺の家もこんなもの。
お互いに安月給の身の上じゃ、こんなところぐらいが関の山だ。
「ただいまー」
玄関の鍵を開けて入っていく山田。
ただいまーねぇ。
誰が待っているわけでもなかろうに・・・
「お帰りなさいませ、旦那さま」
はいぃ?
旦那さまぁ?
部屋の中からそう声がしたとき、俺は死ぬほど驚いた。
女性の声だ。
山田ぁ!
やっぱり彼女自身を呼んでいたんじゃねーか!
チクショー!
しかも旦那さまだぁ?
なんて呼ばせ方してやがる!

「おい、山田! 彼女がいるならいるって・・・」
「いらっしゃいませ、原嶋さま」
俺は息を飲んだ。
斎藤(さいとう)さん?
斎藤さんじゃないのか?
会社を辞めて田舎に戻ったって聞いたけど・・・
それにその恰好は・・・

驚いたことに、山田の家にいたのは会社で経理を担当していた斎藤さんだった。
しかも、頭にはレース付きのカチューシャをつけ、黒のロングスカートのワンピースに白いエプロンといういわゆるメイドさんの姿をしているのだ。
足には白いソックスを履き、頭にはピンと立ったアンテナのようなものが伸びて、かいがいしく山田からカバンを受け取っている。
ピンと立ったアンテナ?
いや、メイドさんはアンテナなんて立てないんじゃ?

「はははっ、まあ入れ入れ。そんなとこで突っ立ってないで」
「原嶋さま、おカバンをお預かりいたします」
にこやかな笑顔で俺の方に手を差し出す斎藤さん。
いや、違う・・・のか?
なんというか、肌がつやつやして滑らかで・・・まるで・・・そう、プラスチックのような・・・
目もなんだかガラスっぽい感じだし・・・

「山田・・・これっていったい?」
俺は彼女にカバンを預けて部屋に入る。
彼女は俺と山田のカバンを奥に運び、すぐに戻ってくると、今度はお茶の支度をはじめていた。

「驚いたか? いいものを見せてやるって言ったろ」
山田がにやにやと笑っている。
こいつめ。
「旦那さま、原嶋さま、お茶が入りました」
席に着いた俺と山田の前にお茶を出してくれるメイドさん。
まさかメイドさんにお茶を入れてもらう日がこようとは。

「ありがとう、ユカリ。彼に自己紹介をしなさい」
「かしこまりました、旦那さま」
山田の言葉にうなずいた彼女は、俺の方に向き直る。
「初めまして原嶋さま。私は当機の所有者でありマスターであります山田盛生(もりお)さまにお仕えいたしますKSカンパニー製ヒューマンロボット、KSR‐182ユカリと申します。以後よろしくお願いいたします」
そう言ってスカートの端を持ち上げて一礼する彼女。
うわぁ・・・
なんだって?
ロボット?
彼女が?

「旦那さま、お食事はどうなさいましょう?」
「ああ、そうだな・・・お前も食べていくだろ?」
「あ、ああ・・・」
俺はうなずくが、もう何が何だかわからん。
こんなメイドロボットが山田の家に・・・
しかも斎藤さんにそっくりじゃないか。
瓜二つと言っていい。
もしかして斎藤さんをモデルに作られたのかな?

「それじゃ食事を二人分頼む」
「かしこまりました。25分ほどお待ちください」
「ああ、それと冷蔵庫から缶ビールを二つ。チーズもあったよな」
「かしこまりました。すぐにご用意いたします。そちらの方は5分お待ちくださいませ」
ぺこりと一礼して台所に向かうメイドさん。
なんというかあきれるほど素敵な光景だ。
くっそーーー!
うらやましいー!

「はははっ、まあ、そういうことだ」
「メイドロボット?」
「そう言うことに・・・なるかな? まあ、いろいろとさせてるけどな」
「いろいろ?」
「うん・・・その・・・まあ・・・性処理とか・・・」
「せ・・・」
俺は言葉に詰まってしまう。
あの娘に性処理してもらっているだと?
天国じゃないかよ!

「そんなロボットが・・・」
俺は改めて台所にいるメイドさんの後姿を眺める。
あれがロボット・・・
しかも性処理までしてくれるという・・・
はあ・・・
ため息しか出ないよ。
いいなぁ・・・
俺も欲しいなぁ・・・

「でも、どうしたんだ? どこで手に入れたんだ? それにあれはどう見ても斎藤さんだ。お前、斎藤さんが辞めるって聞いて、かわいくて好きだったので残念だって言ってたけど、彼女に似せて作ってもらったのか?」
矢継ぎ早になってしまう俺の質問。
だって、どうしたって気になるじゃないか。

「まあまあ、順序だてて話すよ。お前にもいい話だと思ってさ」
食事を用意する前に彼女が持ってきてくれた缶ビールで乾杯する。
「いい話?」
「ああ・・・実はな・・・彼女・・・その斎藤さんなんだよ」
「はぁ?」
何言ってんだこいつ?
彼女が斎藤さん?
斎藤さんは人間で、彼女はロボットだろ?
そりゃ見た目はそっくりで一瞬間違えたけど、肌とか目とか人間とは違うじゃん。

「実はな・・・絶対誰にも言うなよ。お前だから言うんだ。お前も俺と同じく独り身のさえないおっさんだからな」
うるせぇ!
余計なお世話だ。
「言わないよ」
「ほら、彼女の頭に付いているアンテナ。見えるだろ?」
アンテナ?
ああ、さっきも見たけど、彼女の頭のレース付きカチューシャの後ろからピンと伸びているやつだな?
ロボットだと判ってからは特に気にならなくなったけど、確かにあれはアンテナだ。
銀色の金属製で、先端が赤く光っている。
「あれをさ、こうプスッと刺し込むんだよ、頭にさ。そうしたら、あら不思議。人間がロボットになってしまいましたとさ」
グイッと缶ビールを飲み込む山田。
「おい」
この野郎、もう酔ったのか?
「いや、ホントなんだって。あのアンテナをプスッと刺したら、斎藤さんがロボットになって、俺のものになってくれたんだよ。ホントなんだよ」
「いや、お前、それを信じろってのは無理があるって。むしろ家電メーカーがお掃除ロボットを人型にしてみましたって方が、はるかに信じられるぞ」
俺は山田をにらみつける。

「いや、俺もそうは思うけどさ。ホントのことなんだって。そうだ。おい、ユカリ。ちょっと来てこいつに以前のお前が何者だったか教えてやれ」
「かしこまりました旦那さま。ですがお食事をお出しするのがその分遅くなりますがよろしいですか?」
「かまわん」
「かしこまりました」
食事を作る作業の手を止め、俺たちのところにやってくるメイドさん。
確かに見れば見るほど斎藤さんにそっくりだし、斎藤さんをロボットにしたと言われれば、うなずけるものではあるのだが・・・

「原嶋さま、先ほど旦那さまが申しました通り、私はKSR-182ユカリとなる前は、斎藤優香理という人間でありましたことは間違いございません」
にこやかにさらっととんでもないことを言うメイドさん。
「ホントにマジで?」
この娘があの斎藤さんだったって言うのか?
「はい。左様です」
「でもどうして・・・」
俺の言葉にメイドさんはちらっと山田の方を見る。
答えていいのかの確認なんだろう。
山田の首がコクリとうなずくのを見て、メイドさんは話を続ける。
「はい。七日前に斎藤優香理は、婚約者との結婚を行うために勤めていた会社を退職し、社員の方々との挨拶を終えて帰宅する途中でした」
まるで他人事のような話し方。
以前の自分は自分ではないということなのか?

「自宅まであと357メートルに達した時、山田盛生さまが斎藤優香理の前に立ちはだかり、斎藤優香理に対して・・・」
「ストップ! そこのセリフは言わなくていい。アンテナをつけられたことだけでいいから」
何やら真っ赤になっている山田。
もしかしたら彼女に対して好きだったとかなんだとか言ったのかも。
「かしこまりました旦那さま。山田さまは驚いてその場を立ち去ろうとした斎藤優香理に対し、その頭部にこのアンテナを刺し込みました」
そう言ってメイドさんは自分の頭から延びている銀色のアンテナを指し示す。
「このアンテナを差し込まれた瞬間、斎藤優香理の躰は硬直し、アンテナによる支配を受けることになりました」
「アンテナの・・・支配・・・」
「左様でございます。斎藤優香理の躰はデータに基づいて組成を変更され、KSカンパニー製ヒューマンロボットKSR-182への変化を受け入れさせられました」
「KSR-182への変化・・・」
俺はごくりと唾を飲む。
人間がロボットにされる・・・
なんてすごい・・・
なんてすごいんだ・・・

「肉体の組成変化及びオプションによる各部微調整を終えたKSR-182は、山田さまによってユカリと命名され、私、KSR-182ユカリとして完成いたしました。この時点を持ちまして、斎藤優香理は単なる素体名へと変更となりましたので、私を斎藤優香理とはお呼びになりませんよう原嶋さまにもお願い申し上げたいと思います」
「そ、そうなのか・・・」
斎藤優香理からKSR-182ユカリ・・・
なんていうか・・・とんでもないアンテナじゃないか・・・
そんなものがどうして・・・
いや、それよりも・・・
「そ、その、ユカリさん」
「はい、なんでございましょうか、原嶋さま」
「君には婚約者がいたという話だけど、その人のことはどう思っているの? 放っておいていいの?」
結婚を考えるまでの大事な婚約者を忘れてしまったとでもいうのだろうか?

「婚約者・・・ですか? おそらく原嶋さまがおっしゃられておりますのは、斎藤優香理の婚約者木幡佑士(きまた ゆうじ)のことと判断いたしますが、それでよろしいでしょうか?」
「う・・・いや、名前は知らないけど、斎藤優香理だった時の君の婚約者のこと」
「それでしたら別に何とも思ってはおりません。木幡さまは斎藤優香理の婚約者ではありましたが、私、KSR-182ユカリにとりましては、全く何の関係性もございませんので」
ほえー・・・
表情も変えない・・・ってか、プラスチックだから表情はあんまり変わらないのか。
口元はわりと動きがいいみたいだけど・・・
それにしても婚約者のことすらまったく気にならないぐらいになってしまうのか・・・
本当にすごいや・・・

「えーと、じゃあ、今の君は、山田のものってこと?」
「はい。私、KSR-182ユカリの所有者でありマスターは山田盛生さまでございます。ですので私は、山田さまの命により旦那さまとお呼びしてお仕えいたしております」
「へぇー」
すっかりロボットになってしまっている斎藤さんに俺は改めて感心してしまう。
でも、本当に人間をこんなふうにできるものなのか?
まさか・・・斎藤さんと山田が二人して俺にドッキリを仕掛けているんじゃないだろうな?
俺が完全に信じたところで、ドッキリでしたーとか・・・

「ふふ、まだちょっと疑っているみたいだな。ユカリ、ちょっとこっちへ」
「はい、旦那さま」
俺の疑念に気付いたのか、山田がメイドさんを呼ぶ。
そしてメイドさんの右腕をつかむと、肩にも手をかけ、グイっと引き抜いてしまった。
「うわ!」
俺は思わず声を上げる。
山田がメイド服の袖から引き抜いたのは、ひじや肩などの関節部分が球体になったロボットの腕。
「な? 何なら頭部も開けられるぞ」
「い、いや、いいよ・・・うん」
こりゃロボットだ。
間違いなくロボットだ。
これがもしドッキリだとしても、ここまでして俺にドッキリを仕掛ける理由が見当たらない。

「旦那さま、よろしければお食事の支度に戻りたいのですが構いませんでしょうか?」
腕を受け取ったメイドさんが、そのままメイド服の袖から再び腕をはめ込んでいく。
「ああ、いいよ。頼む」
「かしこまりました。それではごゆっくりなさってください、原嶋さま」
はめ込んだ右腕の具合を確かめるようにニ三度手を握ったり開いたりした後、またしてもスカートの端を持ち上げて一礼して台所に向かうメイドさん。
うわぁ・・・
いいなぁ・・・
メイドさん・・・いいなぁ・・・

「まあ、というわけだ。これでも信じられないだろうけどな」
「いや、まあ、確かににわかには信じがたいけど・・・」
俺は缶ビールをグイッと飲む。
信じがたいけど、信じるしかないよ、もう・・・
それに、俺だってあんなかわいい若いメイドさんロボットが手に入るなら・・・
「でも、どうしてお前が?」
「まあ・・・そこはな、いろいろとな・・・」
ニヤッと笑う山田。
そうか・・・
そうだよな・・・
どうやって手に入れたかなんて話せないよな。

「でだ、お前、どうなんだ? ロボットにして手元に置きたいって言う女はいないか?」
女?
手元に置きたい女か・・・
「はあ・・・」
俺はため息をつく。
そこなんだよなー。
斎藤さんを取られたなんて言うつもりは微塵もないが、身近にかわいい女の子とかいないからなぁ。
街中で偶然見かけたかわいい女の子、とかという手もないわけじゃないだろうけど・・・
「そうか・・・惜しいなぁ。今がチャンスなんだけどなぁ」
山田が俺のため息で察したようだ。
「惜しい? チャンス?」
「ああ。あのアンテナな、今なら特別に安く手に入るんだよ。一本1万」
「はいぃぃぃぃ?」
俺は素っ頓狂な声を出していた。
あのアンテナが・・・
女の子をロボットにしちゃうアンテナが1万円?
いやいやいやいや・・・
それは何かの間違いじゃ?

「あはははは・・・信じられんだろ。お前、さっきのもトリックで、俺が斎藤さんと組んで詐欺にでも遭わせようとしていると思っているんじゃないか?」
俺の内心を見透かしたように笑う山田。
「まあ、俺も最初はそう思ったさ。でもこれは事実だ。なんならたぶんアンテナ前渡しで後払いでもOKって言ってもらえると思うぞ」
「後払いでも?」
「ああ、効果を確認してからの後払い。どうだ? それなら文句はあるまい?」
「あ、ああ・・・でもどうして?」
こんなすごいものを1万でしかも後払いOK?
あり得ないだろ?

「まあな、言ってみればモニターなんだよ」
「モニター?」
「ああ、どこも今、人は余り気味だ。でも、ロボットは色々な面で需要がある。だから人間をロボット化して売りたい企業もいくつもあるというわけだ」
「そんな企業が?」
俺は驚いた。
そんな話は聞いたこともない。
そういえばさっきの彼女もKSカンパニーって言っていたか。
聞き覚えのない企業名だ。

「そりゃ表立っては言わないさ。それにこれは軍事的側面もあるからな。死の恐怖を覚えないロボット軍団は強力だぞ」
「そりゃそうかもしれんが・・・」
「ところが、現時点では法だ技術だでなかなか実用試験もできないということでな、ひっそりと実用試験に協力してくれる人を探しているんだと」
「実用試験・・・」
「まあ、試験って言っても、ほぼ実用上問題はないところまで来ているらしい。いろいろな命令をさせてみて、それがどの程度の負荷を与えるかとか調べるんだとさ。で、そのための試験機は多い方がいいってことらしい」
なるほど。
それはわからんではないが・・・

「で、なんでそんなことを知っているんだ、お前が?」
「ま、まあ、そっち方面に知り合いがいるんだよ。それで一本譲ってもらったのさ。このアンテナはすごいぞ。ユカリもアンテナ刺すまでは必死になって、助けて木幡さんって叫んでいたのに、刺した途端に俺のことをマスター呼びだからな」
マスター呼び・・・
なんて素晴らしい・・・
くっそー!
ぜひともそのモニターに参加したいぞ。

「ただな、お前にその・・・アンテナを刺す相手がいることが条件なんだ」
「相手が?」
「ああ・・・向こうも当然ヤバい代物を渡すわけだからな。さっさとアンテナを刺して相手をロボット化してもらって、いわば共犯者になってもらわないと困るってことなんだ。いつまでもアンテナを持ってうろうろとされてたらまずいってことさ」
「あー・・・」
なるほど。
俺は山田の言葉にうなずくしかない。
確かに今の山田は、そのアンテナを渡した相手と一蓮托生の共犯者だ。
アンテナがどこで作られたかは話さないだろうし、彼女が人間をロボット化したものだとも絶対に言わないだろう。
でも、俺は刺す相手がいない・・・
ちくしょう・・・
なんてこったい・・・

                   ******

「あー、ちきしょー! いいなぁ・・・うらやましいなぁ」
帰り道、俺はもう何度言ったかわからないセリフをまた言ってしまう。
くっそぉ・・・
山田の野郎ぉ・・・
斎藤さんなんてかわいい娘を我が物にしちゃうなんて・・・
くぅーー。
うらやましぃなぁ・・・
俺も斎藤さんみたいなかわいい娘が知り合いにいればなぁ・・・
会社にはパッとした女いないしなぁ・・・
と言って、アンテナ持ってかわいい娘を探してうろつくってわけにもいかない、ということみたいだしなぁ・・・
ああー、残念だなぁ・・・

あの後、斎藤さんじゃなくなったメイドロボットさんお手製の美味しい食事をごちそうになり、ほかにもいろいろと聞き出した。
山田の話によれば、彼女にはオプションで性処理能力も加えてあるとかで、毎晩彼女を抱いてセックスしているらしい。
他にもいろいろと自分好みに調整できるとか。
彼女の肌がプラスチックぽいのも、山田の好みでそうしているらしい。
なんか、そのほうがロボットらしいからとかなんとか。
俺もそういうのは好きだから、その気持ちはわかるなぁ。
いいなぁ・・・
誰か美人を紹介してくださいよぉ・・・

「ふう・・・」
アパートに戻ってきた俺は、自分の部屋に行くべく階段を上っていく。
「あれ?」
こんな時間に人がいるみたいだぞ?
なんか話し声が聞こえる。

「まだお戻りになっていないみたいね」
「隣なんだから戻ってきたらわかるんじゃない?」
「ええ、そうだとは思うけど・・・」
女性の声だ。
しかも二人?
どういうことだろうと思って階段を上がり終えると、俺の部屋の前に女性が二人立っているのが目に入る。
「あ、あの?」
「あ、もしかして202号室の?」
俺が声をかけると、年嵩と思われる方の女性が俺の方を向く。
うわ・・・すごい美人だ・・・
えーと・・・だ、誰?

「え、ええ、202の原嶋ですけど・・・」
「初めまして。里川、里川五月(さとかわ さつき)と申します。こちらは娘の美愛(みあ)」
つややかな黒髪の美女が自己紹介してくれる。
五月さんかぁ。
そして娘さんが・・・
うわ、あからさまににらまれている?
「美愛です。よろしく」
それだけ言ってプイと顔をそらしてしまう。
中学生か高校生かな?
そりゃ、こんなおっさんには口もききたくないわな・・・

「あの・・・私たち明後日この201号室に引っ越してくる予定でして。とりあえずご挨拶にと」
そう言って紙袋を差し出してくる五月さん。
なにぃーーー!
うちの隣にですか?
いや、でも、うちのアパートそんなに広くないよ?
旦那さんと三人なら狭くない?
どういうことなんだろう・・・

「あ、ども・・・原嶋です。よろしくお願いします」
いろいろと聞きたいけど、俺はともかく頭を下げて紙袋を受け取る。
「明後日はバタバタとうるさくしてご迷惑をおかけしてしまうかと思いますけど、どうかお許しくださいませ」
「いえいえ。あ、もし何かお手伝いできるようなことがございましたら、いつでも」
「ありがとうございます。今後ともお隣同士、よろしくお願いいたします」
にこやかな笑顔に俺はくらくらしてしまう。
こんな美人人妻が俺の隣の部屋に?
いやいや、待て待て・・・
これは孔明の罠では?
旦那さんがいるだろうしね。

「お母さん、もう行こうよ」
そう言って母親を促そうとする美愛ちゃん。
少しでも俺から距離を取らせたがっているようだ。
うわぁ、俺完全に避けられているなぁ。
怪しいデブのおじさんだから仕方ないけどさ。
「もう、美愛ったら・・・それでは今日はこれで。引っ越しが終わりましたらまたご挨拶に」
「はい。おやすみなさい」
俺に頭を下げると、すれ違うようにして階段を降りていく二人の女性。
その時も美愛ちゃんは、まるで嫌悪感を隠すこともないような感じで、俺から最大に距離を取ろうとしている。
もしかして、臭ったりしているのかなぁ・・・
はあ・・・きついなぁ・・・
里川五月さんと美愛ちゃんかぁ・・・
五月さんは清楚な感じで美人で俺の好みドンピシャだなぁ。
美愛ちゃんもお母さん似なのか、美人だけど、いきなり嫌われたっぽいなぁ。
やれやれだ・・・

玄関を開けて家の中に入り込む。
そうか・・・
隣に人が入るのか・・・
それも二人・・・
いやぁ・・・でも、旦那さんがいるだろうからなぁ。
ロボット化は・・・
ああ・・・
どうしよう・・・
ロボット化なんかしたら旦那さんにも美愛ちゃんにももろバレだろうし・・・
訴えられちゃったりするかもしれないよなぁ。
俺の五月に何をした、なんて・・・
ああ・・・どうしたもんかなぁ・・・
あんな美人でドンピシャな人が隣に来たというのに・・・
五月さんかぁ・・・
ううう・・・

(後編に続く)
  1. 2020/07/07(火) 21:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
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捕らわれたシグマピンク

今日は私の誕生日。
また一つ歳をとってしまいました。
爺さん一直線ですなぁ。(^_^;)

ということで、私から誕生日プレゼントということで、超短編を一本投下します。
タイトルは「捕らわれたシグマピンク」です。
今回もいつものごとくシチュのみ短編ですが、お楽しみいただければと思います。

それではどうぞ。


捕らわれたシグマピンク

「真由香(まゆか)さん。真由香さん。目を覚ましてください、真由香さん」
う・・・
誰かが私を呼んでいる?
何だろう・・・
頭がすごく重い・・・
瞼が開かないわ・・・

「真由香さん! 真由香さん!」
わかったから・・・
今起きるから・・・
そんなに大きな声を出さなくていいから・・・
わかったから・・・

「真由香さん!」
「うー・・・」
私は重い瞼をゆっくりと開ける。
だんだんと焦点が合ってきて、目の前に人の顔があるのがわかってくる。
若い女性の顔。
茶色の髪で目がくりっとしててかわいくてよく見た顔で・・・
えーと・・・
そうだ・・・
シグマチームオペレーターの由梨枝(ゆりえ)さんだわ・・・

「真由香さん!」
「由梨枝・・・さん・・・ハッ?」
私は頭を振ってはっきりさせる。
ここはいったい?
私はどうなって?

「よかった・・・目を覚まさないんじゃないかと・・・」
ホッと安堵の表情を浮かべる由梨枝さん。
いつものシグマチームオペレーターの制服姿で、私を心配そうに見つめている。
「由梨枝さん・・・ここは?」
私はどうもこの室内が、いつも過ごしている本部居住区とは思えないことに気が付いていた。
薄暗くひんやりして殺風景で、まるで牢獄か何かのような・・・
「う、えっ?」
私が躰を動かそうとすると、ジャラッと音がして、両手が引っ張られるのを感じる。
「えっ?」
気が付くと、私は両手を鎖で拘束され、天井のフックに固定されていたのだ。
どうりで立ったままになっていたはずだ。

「ここは・・・ザノンの地下アジトです」
「ザノンの地下アジト?」
私は驚いた。
なんてこと・・・
私たちはザノンに捕まってしまったんだわ・・・
どうりで牢獄めいた部屋のはず。
ご丁寧に私には両手に鎖まで付けたというわけね。

「由梨枝さんは大丈夫?」
「ええ、もちろん私は大丈夫です」
良かった。
私はホッとする。
由梨枝さんはシグマチームの本部で活躍するオペレーターの一人。
司令の指示や敵の情報などを的確に私たちシグマチームに伝達してくれる。
彼女たちオペレーターがいなかったら、私たちだって全力を出し切れないのだ。

見たところ、特に彼女は拘束されている様子はない。
おそらく戦闘要員ではない彼女に対しては、拘束の必要性を感じなかったのだろう。
でも・・・
だったら彼女には脱出のチャンスがあるはず。
私は無理でも、何とか彼女には脱出してもらって・・・

「由梨枝さん」
「はい?」
「どうやらあなたは拘束されていないようだから、奴らの隙を見つけて何とか逃げ出して。奴らの気はなんとか私が引き付けるからその間に」
シグマピンクのブレスレットは残念ながら外されてしまっている。
シグマピンクに変身できれば、こんな鎖なんて問題ないのだけど、奴らもそれほど馬鹿じゃないってことね。
でも、私が少しでも暴れまわって奴らの気を引き付ければ・・・

「あは・・・あはははは・・・」
「えっ?」
突然笑い出した由梨枝さんに私は困惑する。
私、何かおかしなことを言ったかしら?

「由梨枝さん?」
「あはははは・・・あー、可笑しい。真由香さん、あなたなにも気付いていないんですか?」
「えっ?」
気付く?
気付くって何を?

「うふふふふ・・・本当に気付いていないんですね。どうして自分がここにいるのか。どうしてシグマピンクともあろうものが簡単にザノンのアジトに捕らわれているのかを」
由梨枝さんの笑みがだんだんと邪悪なものに変わっていく。
えっ?
そんな・・・
まさか・・・
そんな・・・

「由梨枝さん・・・あなたまさか・・・」
「うふふふふ・・・その由梨枝さんって呼ぶの、やめていただけません? 私はもうそんな名前では呼ばれたくないんです。だって・・・だって私には偉大なるザノンの女戦闘員ナンバー082という番号があるんですから」
由梨枝さんはそう言ってシグマチームオペレーターの制服を脱ぎ捨てる。
すると、彼女の姿は一変して、顔には目元を隠す黒いアイマスクが現れ、躰は黒を基調にして紫を配したぴったりしたレオタードに包み込まれ、脚には網タイツを穿いたザノンの女戦闘員の姿になったのだ。
「そんな・・・」
「ヒャイーッ! 私は偉大なるザノンの女戦闘員ナンバー082! ザノンに心から忠誠を誓います!」
カツッとブーツを履いた足をそろえ、右手を胸のところで水平にし、奇声を上げる由梨枝さん。
それはまさしく私たちが戦ってきたザノンの女戦闘員。

「クックック・・・そういうことだ」
野太い声が部屋に響く。
何度となく聞いた声。
ザノンの戦闘指揮官グヴァンゴ将軍の声だわ。
はたして重々しい甲冑をガチャガチャさせながら、グヴァンゴ将軍の姿が現れる。
「くっ」
なんてこと・・・

「ヒャイーッ! グヴァンゴ将軍様、ご命令通りシグマピンクを捕獲してまいりました」
姿勢を正して報告する由梨枝さん。
いえ・・・今の彼女はもうザノンの女戦闘員なんだわ・・・
ああ・・・
どうして・・・

「ご苦労だった082号。あとで褒美をやろう」
フルフェイスの兜の奥から声が響く。
「ヒャイーッ! ありがとうございます」
喜びを感じているような由梨枝さんの声。
私は耳をふさぎたくなる。
どうして・・・
私たちと一緒に正義のために戦ってきたはずなのに・・・

「卑怯者!」
私はグヴァンゴ将軍をにらみつける。
「卑怯者! 彼女に一体何をしたの? 彼女を元に戻しなさい!」
「黙りなさい!」
私の頬に痛みが走る。
由梨枝さんの・・・ザノンの女戦闘員の平手打ちが私の頬を打ったのだ。
「グヴァンゴ将軍様を侮辱することは許さないわ! それに私は元になんて戻りたくない! 私は任務で外出中に偉大なるザノンによって保護され、戦闘員化処置を与えていただいたの! おかげで私は偉大なるザノンの女戦闘員に生まれ変わることができたわ。下等な人間に戻るなんていやよ!」
女戦闘員のアイマスクから覗く目が、私をキッとにらみつけてくる。
ああ・・・
由梨枝さんはもう心の底までザノンに染まってしまったんだわ・・・

「クククク、そういうことだ。こいつはもう身も心も我らザノンの一員。そうだな?」
「ヒャイーッ! 私は偉大なるザノンの忠実なるしもべです!」
先ほどと同じように姿勢を正して右手を胸のところで水平にする女戦闘員。
つらいことだけど、もうあの由梨枝さんはいなくなってしまったのだ・・・

「彼女を利用して私を捕らえたということなのね」
「そういうことだ。あまりにあっけなく捕らえることができたので、拍子抜けをしたぞ」
女戦闘員を下げ、私の前にやってくるグヴァンゴ将軍。
全身を甲冑につつみ込んだ偉丈夫で、私たちも何度も苦戦した相手。

「彼女がザノンの女戦闘員にされていたなんて・・・お前たちは他にも地球人を手先として使っているの?」
「おや? 知らなかったのか? お前たちが倒してきた数々の蟲人や戦闘員たち。あれはみな地球人に処置を施したものなのだぞ」
「な・・・」
そんな・・・
あれが・・・
あの怪物たちが・・・
みんな・・・
みんな地球人だったというの?

私は愕然とした。
みんなで地球を守るために一所懸命になって戦った相手。
それがすべて地球人だったというの?
嘘・・・
嘘でしょ・・・

おそらく私は少しの間放心していたのだろう。
気が付くと、私のすぐ目の前にグヴァンゴ将軍がやってきている。
その面覆いに覆われた顔はうかがい知ることはできないけど、確かのその目が赤く光っているのはわかる。
「ククククク・・・お前も我がザノンの一員となるがいい」
「くっ、絶対にザノンの戦闘員になどなるものか!」
たとえ殺されたってザノンの一員になどなりはしない。
私は固く心に誓う。

「安心しろ。お前は能力が高い。戦闘員などと言わず、蟲人にしてやろう。ククククク・・・」
いきなりそう言うと、彼は私のスカートを持ち上げて下着をずり下げる。
「なっ!」
私が驚く間もなく、彼の手が私のお尻に回り込み、中に何かを入れてくる。
「ちょっ! や、やめ!」
私は身をよじって逃れようとするものの、お尻の穴に入れられたものがもぞもぞと動き始めていく。
「ひぃぃぃぃぃ!」
「ククククク・・・そいつはザノン蟲と言ってな。そいつが中からお前の躰を蟲化してくれるのさ」
「そんな・・・や、やめて! いやっ! いやよっ!」
私は必死に肛門に力を入れて蟲を追い出そうとするけど、蟲は構わずに私の中へ中へと潜り込んでくる。
「ひぃぃぃぃぃ!」
「ククククク・・・恐れることはない。もうすぐお前の躰は蟲となり、我がザノンの蟲人へと生まれ変わる。もちろん心も蟲となって、ザノンのために働きたいと思うようになるのだ」
「いやぁっ! そんなのはいやぁっ!」
私が身をよじるたびに両手を縛った鎖がガチャガチャと鳴る。
その音を聞きながら、私は胎内で蠢く蟲の動きを感じていた・・・

                   ******

「なんだ? いったい何が起こっているんだ?」
警報が鳴り響くシグマチーム本部内。
状況把握をしようにも、情報が伝わってこないのだ。
うふふふ・・・
オペレーターが機能していないのだから当然のこと。
082号と私の手で、残りのオペレーターはすでに捕獲済み。
今頃はアジトで選別が行われ、有用な者は女戦闘員への処置を受けているころだわ。
無能なものは・・・
うふふふ・・・生きている価値はないわよね。

「何事ですか指令?」
私は白々しくもそう尋ねる。
「本部内に敵が侵入したらしいのだが、どうにもよくわからん。司令センターもつながらんのだ」
むさくるしい中年男。
この男の元で私は愚かにも偉大なるザノンに歯向かい、多くの蟲人たちを死なせてしまったのだ。
悔やんでも悔やみきれないわ・・・

「とにかくほかのメンバーにも呼集をかける。君がいてくれてよかったよ」
そう言ってデスクの通信機でシグマチームを呼び寄せようとする司令官。
「ええ、私がここにいるのは当然ですわ。私がゲートを開け、戦闘員たちを引き入れたんですもの」
「何っ?」
ボタンを押そうとしていた手が止まる。
その隙に私は通信機に溶解液を吹きかける。
ジュッという音がして、強い酸のにおいが立ち昇る。
「なっ?」
通信機が溶け、これでほかのメンバーを呼び出すことは不可能になった。
「まだチームのほかのメンバーを呼ぶには早すぎますわ。一人ずつゆっくりと呼びませんと」
溶解液を出したおかげで、私の着ていた服の胸のあたりが溶け、私の胸があらわになっている。
ふふふ・・・
冥途の土産にでもじっくり見ていいわよ。

「真由香君、き、君は・・・」
愕然とした表情で私を見つめる司令。
残念。
せっかく私の胸を見せてあげているというのに。
だったら・・・
うふふ・・・
「ねえ、司令。私をそのような人間だった時の名前で呼ぶのはやめてもらえませんか? 私はもうそんな名前じゃないの」
私は着ていたものを脱ぎ捨てて裸になる。
そして体細胞を変化させ、本当の私の姿へと戻していく。
うふふふ・・・
やっと擬態から解放されるわぁ。

「ま、まさか・・・」
「ニュルルーン! ええ、そうですわ。アタシは偉大なるザノンの一員。ナメクジ蟲人ですわぁ。ニュルルーン!」
アタシは元に戻った自分の躰をあらためて眺める。
ぬめぬめとしてうねうねと動く白い躰。
この柔らかい躰は、ちょっとの隙間さえあればどこへだって入り込むことができるわ。
両の二つの胸からは、先ほどのように溶解液を出すことができ、人間どもを骨ごと溶かすこともできる。
伸び縮みする触手状の右腕は鞭のように相手を打つことも巻き付けることもできる。
本当に最高の躰だわ。
どうして蟲人になることを嫌がったのか理解できないくらい。
それだけ以前の私が愚かだったってことなのよね。
その罪滅ぼしのためにも、まずはこの男を・・・
うふふふふ・・・

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」
男の断末魔の悲鳴が響く。
ああ・・・気持ちいいわぁ。
人間を殺すことがこんなに楽しいことだったなんて思わなかった。
アタシの溶解液でぐずぐずと溶けていく司令官。
床には着ていた服と濡れた染みが残るだけ。
これでいいわ。
あとは・・・

アタシはドアの隙間から潜り抜けると、天井へと這っていって換気口に潜り込む。
穴の開いた服はダストシュートに放り込んでおいたので、いずれは処分されるはず。
司令官は行方不明となり、アタシはまた擬態してロッカールームで予備の服に着替え、何食わぬ顔で戻ればいい。
司令とオペレーターがいなくなった本部は混乱し、いずれはほかのシグマチームのメンバーが駆けつけるだろう。
うふふふふ・・・
楽しみだわ。
一人ずつじわじわと始末してあげる。
アタシは他のメンバーにどう近づいて殺そうかと思いを巡らせながら、与えていただいた通信機を使い、グヴァンゴ将軍様に司令の暗殺の成功を報告するのだった。

END

以上です。
いかがでしたでしょうか?
よろしければコメントなどいただけますと嬉しいです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2020/06/09(火) 21:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
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  4. | コメント:8

再び二次創作SSを送らせていただきました

先々週当ブログでも「二次創作SSを送らせていただきました」で記事にいたしました母娘戦闘員化SSに続きまして、今回再びpixivのマイピクでありますマーチン・シン様に、女怪人化SSを送らせていただきました。

タイトルは「私は蛮獣人アリクイ」です。
(タイトル名クリックでpixivのSSページに飛べます)

今回も作中に登場します人物や怪人化後の姿などを、マーチン・シン様が素敵なイラストで描かれておりますので、そちらもどうぞお楽しみいただければと思います。
「“私は蛮獣人アリクイ”のキャラクターイラスト
(こちらもタイトル名クリックでpixivのイラストページに飛べます)

もう、本当に素敵なイラストで、SSを書く筆がはかどりました。
よろしければお読みいただけましたらうれしいです。

マーチン・シン様、今回もありがとうございました。
またよろしくお願いいたします。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2020/02/23(日) 17:42:04|
  2. 改造・機械化系SS
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○○の妻は変身ヒーローである夫を補佐していましたが、悪の組織のばら撒いた細菌兵器をモロに浴びて、高速戦闘のエキスパート、カサカサ動くゴキブリ女にされました。

昨日で終わったと思った?
もうちょっとだけ続くんじゃ。

ということで、新年SS第三弾です。
タイトルは「○○の妻は変身ヒーローである夫を補佐していましたが、悪の組織のばら撒いた細菌兵器をモロに浴びて、高速戦闘のエキスパート、カサカサ動くゴキブリ女にされました。」です。

診断メーカーさんに「妻が寝取られて怪人にされたー(悪魔と妖怪もあるよ!)」という診断があるのですが、そちらで診断した結果をSS化してみました。
ですので、タイトルは診断結果そのものです。
お楽しみいただければと思います。

それではどうぞ。


○○の妻は変身ヒーローである夫を補佐していましたが、悪の組織のばら撒いた細菌兵器をモロに浴びて、高速戦闘のエキスパート、カサカサ動くゴキブリ女にされました。

「首都Bエリア、27ブロックにデムパー怪人出現との通報です! ヤッタレンジャーの出動要請が出ました!」
コンソールパネルを操作していたオペレーターの緑羽千紗(みどりば ちさ)が声を上げる。
「よし、ヤッタレンジャー、出動!」
司令官席の上昆寺(かみこんじ)司令が野太い声で指令を出す。
恰幅のよい人のいいおじさんといった顔立ちをしているが、司令官としての能力に疑いはない。
彼の指令はすぐに待機していたヤッタレンジャーの五人に伝達され、待機ボックスから出撃していく五人の姿がモニターに映し出された。
「行ってらっしゃい、あなた。気を付けて・・・」
思わず小声でそうつぶやく千紗。
できれば出撃する夫のそばに行って声をかけたい。
だがそれはかなわないこと。
だからこそ、千紗はモニター越しに夫の無事を祈らずにはいられなかった。

地球を狙う悪の組織「デムパー」
数年前から暗躍し始めたこの組織に対し、日本は特殊でユニークな方法で対抗した。
それこそ、子供向け特撮番組と思われるような特殊戦隊を編成し、デムパーに対抗したのだ。
行動戦隊ヤッタレンジャー。
レッド、ブルー、イエロー、ピンク、グリーンの五人の戦士が力を合わせてデムパー怪人を打ち倒す。
この方法は特撮番組を見慣れた日本人にはなじみやすく、五人の戦いは極めてスムーズに受け入れられたばかりか、デムパーに対する恐怖感も緩和してパニックを沈めるという副次効果をも生み出していた。
おかげでデムパーの侵略は一進一退で食い止められており、今ではこの様子を見た各国でも同様の正義の戦隊が結成されている。
このヤッタレンジャーの一人、ヤッタレグリーンこと緑羽健斗(みどりば けんと)こそ、千紗の愛する夫なのだった。

「ヤッタレレッドより入電。デムパー怪人の駆除に成功。周辺の被害は極めて軽微とのことです」
「警察や消防からも同様の報告が入っております。デムパー軍団の撤退は間違いないようです」
千紗やほかのオペレーターたちが次々と報告を行う。
どうやら今回もデムパーの侵略は未然に防ぐことができたようだ。
それにメンバーにもケガ人などは出ていないらしい。
もちろん念のためのメディカルチェックを行うので、おそらく今夜は戻っては来られないだろう。
だが、それでもとにかく無事でよかった。
千紗はほっと胸をなでおろした。

千紗はヤッタレンジャーのオペレーター。
ヤッタレンジャー本部で様々な情報を受け取り、上昆寺司令へと伝えるのが主な仕事である。
地味で危険性も少ないと言える仕事だが、それでもヤッタレンジャーの作戦行動にとっては無くてはならない存在であり、千紗もそのことは承知している。
そもそも彼女がヤッタレンジャーのオペレーターになったのも、少しでも夫である健斗の役に立ちたいと思ったからなのだ。
少しでも夫の役に立ちたい。
それが千紗の願いであった。

                 ******

「交代です」
本部オペレーターの制服を着た同僚の古橋(ふるはし)が千紗の席にやってくる。
主にシフトで彼女の交代番に入ってくれる男性だ。
「交代します。よろしくお願いします」
「はい、お疲れ様でした」
千紗はヘッドホンを外し、席を立つ。
入れ替わりに古橋が席に着き、すぐにオペレーター業務を始める。
ヤッタレンジャー本部に一瞬の隙があってもならないのだ。
いつ何時、救援要請が入るのかわからないのだから。

「それじゃ、お先に失礼します」
「うむ、ご苦労さん」
上昆寺司令に挨拶して、司令室を出る。
ロッカーで着替えをして本日の勤務は終了。
「ふう・・・」
緊張から解放される瞬間だ。
ここから先はまるっきりの一般人として、ヤッタレンジャーとは全く関係ない人間を装わねばならない。
それはそれで苦労もあると言えばあるのだが、デムパーの魔手を逃れるためにはやむを得ないのだ。
ヤッタレンジャー本部の誰かがデムパーに捕らわれたりしたら大変なのだから。

見慣れた我が家の近くまで戻ってくる。
どうやら今日も何事もなく済んだようだ。
おそらく夫が帰るのは明日の朝だろう。
で、あれば、明日の朝は美味しいものでも用意してあげようか。
そんなことを考える千紗。
ふと見ると、通りに人が倒れているのが目に入る。
「えっ?」
驚いた千紗は、すぐさま駆け寄って声をかける。
「もしもし、大丈夫ですか? ヒッ!」
千紗は思わず息をのむ。
倒れていた男性の顔が、どす黒く変色し、苦悶の表情を浮かべていたのだ。
すでに息はなく、死んでいるのは間違いない。

すぐにスマホを取り出す千紗。
救急車?
いや、この場合は警察だろうか?
とにかく通報を・・・
そう思った千紗が顔を上げると、通りのあちこちで人が死んでいることに気が付く。
家から外に出ようとドアを開けたまま倒れている女性。
窓から上半身を外に乗り出したまま絶命し、垂れ下がっている男性。
街灯や家の中の明かりが照らす中、十数人がみな同じように顔をどす黒く変色させて死んでいるのだ。
「あ・・・あああ・・・」
あまりのことに地面にへたり込んでしまう千紗。
これはいったい・・・
まさかデムパーの・・・
一刻も早く・・・

「グッ・・・」
全身がカアッと熱くなる。
息が苦しくなり、目の前が真っ赤になる。
「あがっ・・・あがが・・・」
何か言おうとしても言葉が出ない。
全身が激痛に襲われ、焼けるように熱い。
「た・・・すけ・・・」
地面に横たわる千紗。
苦しい苦しい苦しい・・・
熱い熱い熱い・・・
誰か・・・
助けて・・・
あ・・・な・・・た・・・
意識が遠ざかる。
『キュヒーッ!』
『キュヒーッ! 実験は成功だ! 全員死んだか確認しろ!』
薄れていく意識の中、千紗はデムパーの戦闘員の声がかすかに聞こえたような気がした。

                  ******

「はっ・・・」
ひんやりとした感触に目が覚める。
それもそのはず。
彼女は冷たく硬い台の上に寝かせられていたのだ。
「こ、ここは? 私はいったい?」
首を回して周囲を見る。
薄暗い室内に、様々な機械類が置かれ、ちかちかと光が明滅している。
病院かとも思ったが、とてもそんな雰囲気ではない。
「う・・・くっ」
躰を起こそうとしたものの、うまく動かない。
それにどうやら今の彼女は服も着ていないようだ。
いったいどういうことなのか?

「ほう・・・やはり生きていたか」
闇の中から重厚な声が響く。
千紗が声の方に振り向くと、ゆっくりと男が姿を現した。
トゲの付いた軍服風の衣装を着た偉丈夫。
その姿と顔を、千紗は見たことがある。
デムパーの指揮官ジュシンガー将軍だ。
「ジュシンガー将軍・・・」
そうつぶやいてから、思わずしまったと気付く千紗。
「ほう、俺を知っているとは、ヤッタレンジャーの関係者か?」
「た、たまたまテレビで見ただけです」
千紗は何とかごまかそうとする。
「ふん、まあいい。それよりも・・・」
「ひゃっ!」
ジュシンガー将軍の手が千紗の太ももに触れてくる。
「腐りもせず、ほぼ何の問題もなしとはな・・・驚いたぞ」
「な、何?」
何のことを言っているのか?

「ふん、わかっていないようだな。お前は我らの細菌兵器バイペストの実験に生き残ったのだ。これは信じられないことなのだぞ」
「細菌・・・兵器?」
やはりあの人たちはデムパーの犠牲に?
「そうだ。通常のペストの二倍の威力を持つバイペスト菌を散布した実験だ。あの地区の人間はことごとく死んだのに、お前だけは生き残った。なぜだ?」
「そ、そんなこと・・・」
千紗は首を振る。
彼女にだってわかるはずがないのだ。

「ふん、どうやらお前にはバイペスト菌に対する耐性があるようだ。そこで我々はお前を有効活用することにした」
ニヤリと笑うジュシンガー将軍。
整った顔だけに、その笑みは迫力がある。
「有効活用?」
「そうだ。お前をバイペスト菌をまき散らすゴキブリ怪人に改造し、バイペスト菌撒き散らし作戦を行わせる」
「わ、私を?」
千紗は愕然とする。
よりにもよって彼女を怪人にしようというのか?
そんな・・・

「い、いやっ! いやです!」
躰を起こして逃げようとする千紗。
だが、躰が思うように動かない。
「無駄だ。すでに改造は最終段階を残すのみとなっている。始めろ」
「「キュヒーッ!」」
白衣を着た数名の戦闘員たちが現れ、千紗の躰に電極やチューブを取り付けていく。
「いやっ! いやぁっ! むぐ・・・」
千紗の顔にマスクが付けられ、気体が流し込まれてくる。
ああ・・・
千紗は再び意識が遠くなっていくのを感じていた。

                   ******

意識がだんだんと戻ってくる。
それと同時に力もみなぎってくる。
気持ちがいい。
今までとはまるで違う自分。
生まれ変わるというのはこういうことを言うのかもしれない。

「キシュシュ・・・」
彼女の口から声が漏れる。
今までに発したこともないような声。
でも、これこそが自分の声だと彼女は思う。

『起きるのだ』
命令が下る。
命令は絶対。
命令には従わなければ。
起きなければならない。

彼女は躰を起こす。
上にかけられていた白い布がはらりと落ちる。
それに伴い、彼女の新しい肉体があらわになる。
茶褐色のつややかな外皮。
蛇腹状の腹部。
硬くトゲのある両脚と両手。
すべてが力強くすぐれた肉体だ。

カツリと音がする。
台から足を下ろし、硬い床を踏みしめた彼女の足音。
鋭い爪と尖ったヒールが床を鳴らしたのだ。
彼女はそのまま立ち上がる。
背中には硬い翅。
髪の毛のような邪魔なものは消え、頭も固い外皮で覆われている。
額からは長い二本の触角。
ゆらゆらと揺れ、空気のかすかな振動さえも感じ取れた。

「クククク・・・さあ、お前が何者か言ってみろ」
ジュシンガー将軍が彼女の前に立ち、その指揮棒が彼女を指す。
「キシュシュシュ・・・私は偉大なるデムパーの蟲人ゴキブリ女ゴキブリージョですわ。キシュシュシュシュ」
奇妙な笑い声をあげる千紗。
いや、彼女はもはやデムパー怪人ゴキブリージョに変えられてしまっていた。
彼女の躰はまさに女性とゴキブリが融合した姿。
直立した女ゴキブリだったのだ。

「ククク、それでいい。改造中にお前のことがわかったぞ。お前はこいつの妻だったそうだな。こいつのことをどう思う?」
目の前に出される緑羽健斗の写真。
それは先日までは千紗の愛する夫だった人。
だが、今の彼女はその写真を鋭い爪で引き裂いていく。
「キシュシュシュシュ・・・この男は私たちデムパーの邪魔をする憎むべき男。このような男の妻だったことなど思い出したくもありませんわ」
「クククク・・・そうだ、お前はもうこんなやつの妻などではない。我がデムパーの蟲人だ。ならば、この男の始末はできるな?」
「もちろんです。私はヤッタレンジャーの司令部の位置を知っております。この躰をもってすれば忍び込むことなど容易いこと。そこでバイペスト菌をまき散らせば・・・キシュシュシュシュ・・・」
手の甲を口元にあてて笑うゴキブリージョ。
ヤッタレンジャーにとって最大のピンチが、今訪れようとしていた。

END

以上です。
残念ながら寝取られ風味はほとんどなかったかと思いますが、怪人化SSとして見ていただければ。
よろしければコメントなどいただけますと嬉しいです。

これで新年SSはすべて終了です。
手持ち全部放出しましたので、次作までは少々お時間をいただくかもしれません。
どうか気長にお待ちいただければと思います。

ではではまたー。
  1. 2020/01/05(日) 20:00:00|
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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