FC2ブログ

舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

クモ女の誕生

今日は私の誕生日なのですが、超短編が一本できたので投下いたします。
タイトルは「クモ女の誕生」です。

はい、タイトルを見てわかりますとおり、先日投下しました「サソリ女の誕生」「サソリ女の暗躍」と同じ世界観で書いてます。
いつもの通り、シチュのみの超短編ではありますが、楽しんでいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


クモ女の誕生

「またねー」
「また明日ー」
「じゃあねー」
手を振って別れあう女子高校生たち。
みな学校が終わった安堵感と、明日また会えるという確信を持って家路につく。
そう、その確信が何の根拠もないことに気づかずに・・・

「さて、急がなきゃ」
友人たちと別れた後、彼女は一人街中へと通じる道に向かう。
今日はジムで練習がある日だ。
急いで行かなくては遅れてしまう。
幼いころに病弱だった彼女は、体力を付けるためにと運動をすすめられ、子供のころからジムで体操を行ってきた。
もちろんそのような目的だったから、オリンピックを目指すなどというようなものではなく、今では健康維持と美容目的のようなものだ。
おかげで中学以降は体力にも自信が付き、風邪などもめったにひかなくなっている。
ありがたいことだった。

「あれ?」
角を曲がったところで、彼女は思わず足を止める。
いつも通っていた道だったが、この先工事中につき通行止め、迂回してくださいという立て看板とともに、バリケードが置かれていた。
見たところこの先で工事をやっているような様子もなかったが、二日前に通った時にはこのような表示はなかったので、昨日か今日工事が始まったのだろう。
だとすれば大型の機械が入ったりするのはまだこれからなのかもしれない。

「ちぇっ」
少し口をとがらせつつ、この通りを通るのをあきらめた彼女は、先を急ごうと迂回路へと入っていく。
そっちは細い路地であるが、この際はやむを得ない。
少し遠回りになるはずだから急がなくてはならないだろう。
背中のリュックを背負いなおし、少し早歩きで路地を行く彼女。
その背後に黒いスーツと帽子をかぶってサングラスをかけた二人の男たちが歩いてくる。
最初は特に気にも留めなかった彼女だったが、早歩きで歩いているにもかかわらず距離が離れないことに、ふと気づく。
確かに大人の男性と女子高校生の彼女とでは歩幅に違いはあるだろうが、それでも距離が遠ざかりも近づきもしないというのは何か変だ。
そう思い、彼女はさらに足を速めようとして、恐怖する。
前からも同じく黒のスーツに黒の帽子とサングラス姿の男たちが現れたのだ。

逃げ道を探して周囲を見回す彼女だったが、路地はブロック塀に挟まれたようになっており、どこかの家に通じる玄関口もない。
わき道に入るにはどちらかの男たちを超えていくしかなく、もはや逃げ場がない状態なのだ。
「くっ」
意を決して正面からくる男たちの間を何とかすり抜けようと走り出す彼女。
もしかしたら、男たちはたまたまそんな恰好をしてたまたま通りを歩いてきただけで、走り出した彼女を奇異の目で見ながら避けて通してくれるのではないかとも思ったが、残念ながらそうではなかった。
後ろの男たちは彼女が駆け出すと同時に走り始め、前の男たちは彼女を取り押さえようと待ち構えるのがすぐにわかったのだ。
「あうっ!」
彼女は何とか男たちの手を逃れようとしたが、腕をつかまれ、さらに何か薬のようなものを吹きかけられて、その場で意識が遠くなってしまったのだった。

                   ******

「ん・・・んん・・・」
ゆっくりと意識が戻ってくる。
そっと目を開けると薄暗い室内のようだ。
周囲には何やら様々な機械があって、明滅したり小さな稼働音を響かせている。
「ここは? えっ?」
躰を起こそうとした彼女は、両腕が固定されていて動かせないことに気が付いた。
見ると、手首のところががっちりと金属の枷で留められており、感触からおそらく足首もそうなっているらしい。
つまり彼女は台の上に寝かされて身動きできなくなっているということなのだ。
しかも白い布をかけられている以外はおそらく裸で。
「ど、どうして?」
なぜこんな目に遭っているというのだろうか。
彼女には全く思い当たる節がない。
これからどうなってしまうのか、彼女は恐怖に打ち震えた。

『目が覚めたようだな。箕原愛梨沙(みのはら ありさ)』
スピーカーを通したような重々しい声が聞こえてくる。
しかも複数のスピーカーが天井に仕掛けられているようだ。
「どうして私の名前を?」
愛梨沙は驚いた。
名前を呼ばれたということは、誰かに間違われたのではなく、彼女が狙われたということだからだ。
『箕原愛梨沙よ。我々はヘルザロン』
「ヘルザロン?」
聞いたこともない名称だ。
人の名前なのか、それとも団体や会社名なのだろうか?
『そうだ。闇結社ヘルザロン。我はその首領である』
結社?
首領?
まるで一昔前の特撮番組のようではないか。
「私を・・・私をどうする気なんです?」
『箕原愛梨沙、お前は選ばれたのだ。我がヘルザロンはお前を歓迎する。お前は我が組織の改造人間にふさわしい存在だ。改造手術を受け、ヘルザロンの一員として生まれ変わるがいい』
愛梨沙の顔が青ざめる。
改造?
手術?
よくわからないが、自分の躰にろくでもないことが行われようとしているのははっきりとわかる。
冗談じゃないわ。
「いやっ! いやです! どうして? どうして私なの?」
首を振っていやいやをする愛梨沙。
『お前は肉体的に健康であり、体操の経験を有している。激しい動きをする改造人間には適しているのだ』
「そんなの私なんかより優秀な人はいっぱいいるじゃない!」
『優秀であればいいというものではない。むしろ肉体的な差異は改造でいくらでも強化できる。かえってお前のような目立たずそれでいてそれなりの経験を持つ者こそがふさわしい』
「そんな・・・いやぁっ!」
『恐怖を感じるのは今のうちだ。脳改造まで完了すれば、お前は改造人間となった喜びを感じるだろう。そしてヘルザロンへの忠誠を誓うようになる』
「いやぁっ! やめてぇっ!」
必死に躰をよじって逃れようとする愛梨沙。
だが、両手両足の枷はびくともしない。

ごとりと彼女の脇にある機械の上に透明なケースが置かれる。
「ひっ!」
その中では手のひらほどもある巨大なクモが蠢いていた。
『これは南米に生息する毒グモだ。このクモをお前に移植し融合させる。お前は改造人間クモ女として生まれ変わるのだ』
「ひぃーっ! いやぁぁぁぁっ! 助けてぇっ! 誰かぁぁぁぁっ!」
あらん限りの声で叫ぶ愛梨沙。
だが、その間にも彼女の躰に様々な機器類が取り付けられていく。
全身を白衣で包み、頭には目だけが覗くマスクをかぶった男女が無言で作業をしているのだ。
全員全く彼女の叫びには反応しようとさえしない。
『箕原愛梨沙の改造を始めよ』
「「「ヒィーッ!」」」
首領の声に白衣の男女たちは奇声を上げて応え、愛梨沙の顔に麻酔ガス用のマスクをつけていく。
必死に抵抗する愛梨沙だったが、やがて麻酔ガスが効き始め、意識が再び闇へと飲み込まれていった。

                   ******

サッと躰にかけられていた白い布がはがされる。
下からは、黒と赤の短い毛におおわれた異形の躰が現れる。
それは愛梨沙の滑らかで美しいボディラインそのままであり、腰の括れや両胸のふくらみも女性らしさを思わせるものだったが、全身は短い剛毛に覆われ、黒と赤の縞が両腕と両脚を彩っていた。
足のつま先は一つになって大きなかぎ爪となっており、かかとはハイヒールのようにとがっている。
両手も指先には鋭い爪が伸び、手首のあたりにはトゲのようなものもついていた。
何より変化が大きいのは頭部であり、巨大な触角状の角が両脇から伸びており、髪の毛はすべて無くなって躰と同じような短い剛毛が覆っている。
目は大きな丸い単眼が二つの他に額にも四つあり、それぞれ黒く輝いていた。
口元は人間のようではあるものの、左右からは鋏角が伸びており、下あごも左右に開くようになっている。
それはまさにクモと若い女性の融合した姿であり、クモ女という名にふさわしい姿だった。

『目覚めるのだ、クモ女よ』
重々しい声が響く。
その声に寝ていたクモ女の躰がピクリと動き、黒い単眼に光が反射する。
次の瞬間、大きな音を立てて彼女の両手両足を固定していた枷が勢いよく吹き飛んでいく。
改造された躰の威力を首領に見せつけるのだ。
以前とは比べ物にならない力に、思わずクモ女の口元に笑みが浮かぶ。
「ケケケケケ・・・」
ゆっくりと躰を起こすクモ女。
その目が自分の躰を見下ろしている。

『目覚めたようだな、クモ女よ』
「ケケケケケ・・・はい、首領様」
スッと姿勢を正し、両手をクロスして一礼するクモ女。
『気分はどうかな?』
「はい、とてもいい気分です。私は闇結社ヘルザロンの改造人間クモ女。このような素晴らしい躰に改造していただき感謝いたします。どうぞ何なりとご命令を。ケケケケケ・・・」
誇らしげに笑い声をあげるクモ女。
ヘルザロンの誇る脳改造によって、彼女の思考は完全にゆがめられてしまっている。
もはや彼女は女子高生の箕原愛梨沙ではなく、闇結社ヘルザロンの改造人間クモ女なのだ。

『それでよい。お前は生まれ変わったのだ。これよりはヘルザロンのために働くがよい』
「もちろんです。ヘルザロンのためなら何でも致します。ヘルザロンこそ私のすべて。ケケケケケ・・・」
『では最初の命令を与える。お前の家族を始末してくるのだ。できるな?』
「お言葉ですが首領様、あいつらは元家族です。始末するなど造作もないこと。このクモ女にお任せくださいませ。ケケケケケ・・・」
深く一礼し、くるりと背を向けて手術室を後にするクモ女。
その口元には最初の使命を命じられた喜びの笑みが浮かんでいた。

                   ******

カツカツと硬質な足音がアジトの廊下に響いていく。
初任務を終えてきたので、足取りもなんだか軽い。
家族だったなどという目障りな存在も抹消できた。
硬質化した自分の躰。
外骨格の強靭な肉体。
なんてすばらしいのだろうか。
こうして足音を響かせるのは本当に誇らしい。
そうクモ女は思う。

「あら、新入りさんかしら? キシュシュシュシュ・・・」
ちょうど自室から出てきたところらしい仲間の改造人間に声をかけられる。
茶褐色の硬そうな外骨格に覆われた美しい肉体に、巨大なハサミと化した右腕。
お尻からは毒針のついた尻尾が伸びている。
「はい。私はクモ女。改造を受けたばかりの者ですが、よろしく。ケケケケケ・・・」
「私はサソリ女よ。殺人なら任せて頂戴。よろしくね。キシュシュシュシュ・・・」
ハサミをカチカチと打ち鳴らして笑みを浮かべるサソリ女。
確かに人殺しは得意そうだ。
「私の部屋はここなの。気が向いたら遊びに来てね。キシュシュシュシュ・・・」
そう言って同じように誇らしげにカツカツと足音を響かせて去っていくサソリ女。
仲良くできそうな仲間がいるのは心強い。
あとでタイミングを見て部屋に行ってみることにしよう。
そう思ってほほ笑むクモ女。
さて、次の任務まで待機しなくては・・・
早く命令してほしいわ・・・

                   ******

夜道を歩く一人の少女。
スイミングスクールからの帰りとのこと。
おそらく改造前の自分と同じぐらいだろうとクモ女は思う。
よかったわね・・・
あなたは選ばれたのよ・・・
偉大なる闇結社ヘルザロンにね・・・
もうすぐあなたは改造人間になれる・・・
素晴らしい世界が待っているわよ・・・

周囲に誰もいなくなったのを確認し、木から木へと飛び移るクモ女。
改造人間である彼女にとってこんなことは造作もない。
事実枝をゆする音さえわずかで、人間の耳では聞こえないくらいだ。
あの少女も何も気が付いていないに違いない。

「ひっ!」
突然頭上から白いひものようなものが巻き付いてきたことに驚く少女。
「いやっ! 何?」
ねばつき絡みついてくるひもを必死ではがそうとするが、動けば動くほど絡みついてくる。
「いやっ! いやっ!」
全身に巻き付いてくるひもから何とか逃れようとするが、ひもはどんどん絡まってくるのだ。
「ケケケケケ・・・無駄よ。私の糸は人間の力ごときでは切れないわ」
「えっ?」
頭上からの声に思わず顔を上げる少女。
「ひぃっ!」
そこには木の上で彼女を見下ろしている黒と赤の毛で覆われたクモの化け物がいたのだ。
その化け物がお尻から糸を出し、彼女を絡めとっている。

「いやっ、むぐ・・・」
悲鳴を上げようとするものの、ひもと言っていい太さのクモの糸が彼女の口を封じてしまう。
「怖がることはないわ。あなたは選ばれたのよ。闇結社ヘルザロンにね。ケケケケケ・・・」
彼女が身動きできなくなったのを見計らい、樹上から降りてくるクモ女。
そして右手を上げて戦闘員たちを呼びつける。
すぐに数人の戦闘員たちが現れ、クモ糸に絡みつかれて動けなくなった少女をワンボックスカーへと運び込む。
「うふふふ・・・あなたはどんな改造人間になるのかしら。水泳の心得があるみたいだから、きっと水が得意な改造人間だと思うけど。改造が終わったら仲良くしましょうね。ケケケケケ・・・」
運び込まれた少女に向かってそうつぶやくと、クモ女は周囲を再度確認して自らもワンボックスカーに乗り込む。
やがてワンボックスカーはいずこへともなく闇の中へと消え去るのだった。

エンド

以上です。
感想などいただけますと嬉しいです。

それではまた。
  1. 2019/06/09(日) 20:13:56|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:7

サソリ女の暗躍

先日投下いたしました超短編シチュのみSS「サソリ女の誕生」の続編というか夫を始末するシーンを書きましたので投下いたします。

虫も殺せないような人が改造されて怪人になってしまい、嬉々として残忍なことをするというのは皆さんお好きでしょうか?
私は大好きなので、こういうシーンを書いちゃいました。
私同様にお好きな方に楽しんでいただければと思います。(*´ω`)

それではどうぞ。


サソリ女の暗躍

カツカツと廊下に硬い足音が響く。
外骨格がハイヒールのブーツのような形になった彼女の足が立てる音だ。
それが何だかうれしく感じる。
自分の躰が硬いことの証明だからだ。
大きな鋏のようになった右手も、動かすとカチカチと硬質の音を立ててとても気持ちがいい。
早くこの鋏で人間の首を挟んでねじ切りたいものだと思う。
「キシュシュシュシュ・・・」
サソリ女は思わず笑みを浮かべていた。

「キィー!」
廊下にいくつかあるドアのうちの一つに、全身を黒尽くめの躰にフィットした全身タイツで覆った男が一人立っている。
この闇結社ヘルザロンの尖兵たる戦闘員の一人だ。
彼女の部屋を示してくれているのだろう。
右手を斜めに上げて彼女に敬礼する戦闘員を見ると、あらためて偉大なるヘルザロンの一員となった喜びを感じてくる。
彼女は選ばれた改造人間であり、彼ら戦闘員の上位に立つ存在なのだ。
彼らを生かすも殺すも彼女次第であり、そのことがサソリ女のプライドをくすぐってくる。

「ご苦労様。キシュシュシュ・・・」
サソリ女は戦闘員にそう言うと、示されたドアを開けて部屋に入る。
そこは簡素だが清潔な部屋になっていて、普段過ごすには何の問題もなさそうだ。
彼女はそのままベッド脇にある姿見のところへ足を進める。
そこに映るのは生まれ変わった自分の姿。
茶褐色の硬い外骨格に覆われた躰は、少々の攻撃にはびくともしない。
拳銃やライフルの弾程度では傷つきすらしないであろう。
右手の鋏は人間の首くらい簡単にへし折ることができるだろうし、お尻から伸びる毒針は象さえも殺す。
そのことが彼女にはわかっていた。
彼女は生まれ変わったのだ。
偉大なるヘルザロンの改造人間に。
そのことが彼女はとても誇らしかった。
だが・・・

サソリ女は腕を顔の前でクロスするようにしてゆっくりと下ろしていく。
擬態モードにチェンジするのだ。
ポーズと意識によるスイッチとで擬態モードが発動し、彼女を以前の改造される前の姿へと変えていく。
擬態モードは改造人間の姿を人間のように見せ、周囲に怪しまれないようにさせるもので、潜入や暗殺などの活動には欠かせない。
彼女が改造されたのも夫である地境亮一の暗殺のためであり、そのためには元の地境美知恵の姿に擬態することが一番確実であるのだから、そうするのだ。

ゆっくりと腕を下ろし終わった彼女の姿は、改造される前の地境美知恵の姿そのものとなっていた。
もっとも、その目は冷たく表情は浮かない。
「このような姿・・・任務でなければするものですか・・・」
柔らかく白い肌。
これではほんのちょっとしたことで傷ついてしまうだろう。
力だって弱く、身を守ることさえ難しい。
人間とはなんと醜くひ弱な生き物なのか。
このような存在であったことが呪わしくさえ感じる。
改造人間になれたのはなんと幸運だったのだろうか。
人間になど二度と戻りたくはない。

ベッドの上に畳んで置かれていた服を着る。
それはこのアジトに連れてこられたときに着ていたもの。
同じものでないと、どこでどう怪しまれるかわからない。
サソリ女は服を着て身支度を整えると、任務を果たすために部屋を出た。

「「「キィー!」」」
ワンボックスカーの前で三体の戦闘員たちが敬礼する。
そのワンボックスカーには見覚えがあり、どうやら彼女を連れ去った時に乗せられたもののようだ。
おそらくこの三人も彼女を連れ去ったうちの三人だろう。
あの時の彼女は恐ろしさしか感じなかったはずだが、今の彼女にとっては彼らは使い勝手のいいコマたちだ。
どのように使っても構わないだろう。
「行くわ。車を出しなさい」
「キィー!」
ワンボックスカーの後部シートに乗り込むと、戦闘員たちに命令する。
すぐに黒いワンボックスカーは地下駐車場を出て、夜の街へと走り出した。

                  ******

やがて住宅街の一角に停車する黒いワンボックスカー。
そのスライドドアが開き、中から一人の女性が現れる。
「あなたたちは待機していなさい。いいわね」
「キィー!」
車の中にそう言うと、彼女はかつての我が家へと歩き出す。
「ふふ・・・懐かしの我が家・・・か・・・今は懐かしくもなんとも思わないけどね」
くすりと冷たい笑みを浮かべる彼女。
以前の地境美知恵ならばそのような表情を浮かべることはまずなかっただろう。

玄関の呼び鈴が鳴った時、地境亮一は脱兎のごとく玄関へと飛びだしていた。
こんな時間になるまで妻の美知恵が帰っていないなど、普通では考えられなかったからだ。
もし今晩一晩戻ってこないようなら、警察に行くことも考えていたぐらいだったのだ。
だから、玄関を開けてそこに妻の美知恵が立っているのを見た時には、思わず安堵の溜息を洩らしたぐらいなのだった。

「美知恵・・・よかった・・・よかった・・・」
「遅くなってごめんなさい、あなた」
しおらしくうつむいて見せる美知恵。
「うんうん。とにかく入って。話はあとだ」
「ええ、そうね」
美知恵は夫の後について家の中に入る。
そしてそのままリビングに行くと、亮一はぐったりとソファに深く腰を下ろした。
「よかったぁ・・・もしかして事故かなんかに巻き込まれたんじゃないかと心配したんだ。無事でよかった」
「ふふふ・・・ええ、大丈夫よ。私は何の問題もないわ」
「うん、よかったよ。でも、どうしてこんなに遅くなったんだい?」
亮一にとっては気になるところだ。
いったいなぜこんなに遅くなったのか?

「ふふふ・・・それはね、とても念入りにじっくりと改造手術をしていただいたおかげなの。だから時間がかかってしまったのよ」
リビングの入り口に突っ立ったままで笑みを浮かべている美知恵。
「えっ? 手術? 手術っていったい?」
「うふふふ・・・私は偉大なる闇結社ヘルザロンによって改造手術をしていただいたの。おかげで私は改造人間に生まれ変わったのよ」
「な、何を言ってるんだ?」
いつもと違う様子の妻に戸惑う亮一。
いったいどうしたというのだろうか?
「私はもうくだらない人間などではないわ。今本当の私の姿を見せてあげる」
そう言って彼女は服を脱ぎ始める。
「み、美知恵・・・いったい?」
突然服を脱ぎ始めた妻に驚き、思わずソファから立ち上がる。
「うふふふふ・・・見て、これが今の私の本当の姿よ。キシュシュシュシュ・・・」
何もかも脱ぎ捨てた美知恵は、両腕を顔の前でクロスするようにしてゆっくりと下ろしていく。
擬態モードが解除され、彼女の躰がみるみる外骨格に覆われていく。
亮一があっけにとられている間に、美知恵の躰は元のサソリ女の姿へと変貌していた。

「キシュシュシュシュ・・・」
「わぁっ! ば、化け物!」
思わず叫ぶ亮一。
目の前で美しかった妻がサソリの怪物になってしまったのだ。
「失礼な男ね。この素晴らしい躰が化け物ですって? 私から見れば人間の方がよほど醜い生き物だわ。キシュシュシュシュ・・・」
口元に笑みを浮かべ、ゆっくりと亮一に近づくサソリ女。
「み、美知恵は・・・美知恵はどうしたんだ?」
「キシュシュシュシュ・・・言ったでしょ。地境美知恵などという女はもういなくなったわ。私は生まれ変わったの。今の私は闇結社ヘルザロンの改造人間サソリ女よ!」
「そ、そんな・・・」
じわじわと近づいてくるサソリ女ににらみつけられ、亮一は身がすくんでしまったのか足が動かない。
「私の使命はヘルザロンの邪魔者であるお前を始末すること。お前が生きていては邪魔なのよ」
「や、やめろ! やめてくれ!」
必死に後ずさる亮一。
だが、すぐに壁に背中が付いてしまう。
「キシュシュシュシュ・・・無駄よ。お前はすでに私の姿を見た。ヘルザロンの改造人間の姿を見たものは生かしてはおかないわ」
サソリ女の右手が突き出され、亮一の首を挟み込む。
「ぐ、ぐわぁっ!」
「キシュシュシュシュ・・・このまま首をねじ切られるのと、象をも殺す猛毒の毒針に刺されるのとどっちがいいかしら?」
「た・・・助け・・・」
何とか鋏を外そうと必死に両手でサソリ女の腕をつかむ亮一。
「おしゃべりはここまでよ。お前には感謝しているわ。お前の妻だったおかげで、こうして私はヘルザロンの改造人間にしていただくことができたんですもの。ありがとう。うふふふふ・・・死ねっ!」
ひゅんと音を立て、サソリ女の尻尾が亮一の首筋に突き刺さる。
「グハッ!」
毒針から毒が注入され、見る間に顔色が紫色となって腫れあがり、口から泡を吹いて絶命する亮一。
「うふふふふ・・・私の毒の味はどうだったかしら? キシュシュシュシュ・・・」
掴んでいた鋏を外し、床に転がった死体を蹴り飛ばすサソリ女。
死体はすぐにぼこぼこと泡立ちはじめ、どろどろになって溶けていく
やがてじゅうたんに人型の跡と着ていた服が残るだけで、亮一の死体はきれいさっぱりと消え去ってしまった。
「キシュシュシュシュ・・・死体がなくなれば人が殺されたとは誰も思わない。夫婦でどこかへ行ったものと思うでしょうね」
サソリ女は満足そうにそう言うと、かつての我が家を後にして新たな自分の居場所へと戻るのだった。

エンド

いかがでしたでしょうか?
今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/05/18(土) 20:15:36|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5

サソリ女の誕生

今日は午後から超短編を一本書きましたので投下しようと思います。
例によってシチュのみのものすごく短いものですが、こういうシチュが好きという方に楽しんでいただければ幸いです。

それではどうぞ。


サソリ女の誕生

「う・・・うーん・・・わ、私はいったい?」
固い台の上で地境美知恵(ちさかい みちえ)は目を覚ます。
天井には手術で使う無影灯のような照明が付いており、彼女をまぶしく照らしていた。
いったいどうして自分はこのようなところに寝ているのか?
だが、すぐに美知恵はその理由に思い至る。
彼女は誘拐されたのだ。
それも奇妙な連中に。

「は、離して! あなたたちはいったい?」
いつものように買い物を済ませて家に向かっていた彼女は、突然路地から姿を現した全身黒づくめの連中に襲われたのだ。
いずれも屈強な男たちのようだったが、その全員が全身にぴったりとフィットするタイツ状の衣装を身にまとい、頭には目だけが覗くマスクをすっぽりとかぶった上、腰には奇妙な紋章の付いたベルトを締めてキィーだのヒィーだのよくわからない奇声を発しているだけだったので、日本人なのか外国人なのかもわからない。
そんな連中が五人ほど現れて彼女を取り囲み、有無を言わさず抑えつけて車に連れ込んだことを彼女はまざまざと思い出す。
そこから先は記憶があやふやだが、おそらくガスのようなものを嗅がされ、意識がもうろうとなってしまったのだろう。

ガチャリと金属質の音がする。
腕を動かそうとしたところ、どうやら金属の留め具で固定されているらしく、両手を広げたままで動かせない。
両足も同じようで、彼女はいわば台の上に大の字になって寝かされているのだった。
しかも、上からかけられた白い布の下は一糸まとわぬ裸のようである。
どうしてこんなことになっているのか?
彼女には全く分からなかった。

『目が覚めたようだな、地境美知恵よ』
突然重々しい声が響き渡る。
それは頭上の方からであり、複数のスピーカーを通して音が発せられているらしい。
「わ、私の名を? あなたはいったい?」
美知恵は自分の名前を言われたことにショックを受ける。
それはとりもなおさず誰でもよかったことにたまたま巻き込まれたのではなく、明らかに彼女を狙ってこの連れ去りを行っているということだからだ。
『我はこの闇結社ヘルザロンの首領である。ヘルザロンはお前を歓迎する』
「ヘルザロン? 首領? 歓迎?」
いったいどういうことなのか、美知恵には全く分からない。
ヘルザロンとやらもその首領とやらも聞いたことのないものであったし、歓迎するなどと言われてもこのような目に遭わせておいて何を言っているのかと言いたくなる。

「ど、どういうことなのですか? 私を放してください」
ガチャガチャと金具を鳴らして何とか躰を自由にしようともがく美知恵。
だが、全く金具は外れる気配はない。
『無駄だ。その金具は人間の力では外れない』
重々しい声の言う通りなのだろう。
彼女の力ではとても外れそうにない。
「私をどうするつもりなのですか? 身代金でも取るつもりなのですか?」
『お前はこれより我がヘルザロンの誇る改造手術を受けるのだ。そしてヘルザロンの改造人間として生まれ変わる』
「手術? 改造人間?」
またわけのわからない言葉が語られる。
どんな手術なのかわからないが、冗談ではない。
『そうだ。お前はこれより改造手術を受け、我がヘルザロンの忠実な改造人間となって、我が命に従うのだ』
「い、いやです! そんなのはいやぁっ!」
首を振っていやいやをする美知恵。
『黙れ! お前は我がしもべとなって地境教授を始末するのだ。お前ならば教授に怪しまれずに近づくことができる』
「ええっ?」
美知恵は愕然とする。
地境教授とは夫の地境亮一(ちさかい りょういち)のことに違いないからだ。
私に夫を殺せというの?

『お前の夫の地境亮一は、若き新鋭の物理学者として注目を集め、新たなるエネルギー源の実用化にももうすぐ目処が立つというではないか。そのようなことをされては我がヘルザロンにとって不利益となる。よって、お前の夫は始末されねばならない』
「そんな・・・そんな理由で夫を、あの人を殺そうというのですか?」
なんと恐ろしいことだろう。
このヘルザロンというのはくるっている。
美知恵は背筋が凍るような思いがした。
『我がヘルザロンの邪魔者は消えてもらう。お前がその役目を果たすのだ』
「いやっ! いやです! 冗談じゃないわ! あの人を殺すなんて絶対にいやっ!」
ガチャガチャと音を立て、必死に抜け出そうとする美知恵。
だが、手も足も全く自由になる気配はない。

『今はそう思うだろう。だが、改造手術を受ければ、お前は我が忠実なしもべとなり、喜んで我が命に従うようになるのだ』
「いやっ! いやぁぁぁぁぁっ!」
『黙れ! 手術を開始する。この女にふさわしい生物は決まったか?』
「はっ、この女には暗殺向きの生き物として、砂漠にすむ猛毒の殺人サソリを提案します」
いつの間にか彼女の周囲に現れた白衣の連中の一人が声に答える。
その手には禍々しく尾を振り上げる大きなサソリがガラスケースに入れられたものを持っている。
「ひっ!」
猛毒を持つというサソリの姿に美知恵は思わず声をあげる。
だが、白衣の連中は意に介した様子もなく、美知恵の寝かされている台の周囲に様々な機械を用意し始めた。
いずれも頭には黒づくめの連中と同じような目だけが覗く白いマスクをかぶっており、その目が冷たく美知恵を見下ろしている。
中には女性と思える体形の者もいるが、皆無言で器具をセットしていた。

「準備完了しました」
『手術を開始せよ』
「「「ヒィーッ!」」」
重々しい声に応えるように白衣の連中が奇声を上げ、スイッチを入れていく。
「いやぁっ! 放してぇっ! いやぁっ!」
美知恵の躰にチューブが差し込まれ、どす黒い液体が送り込まれていく。
顔にはマスクが嵌められ、そこから麻酔ガスが流される。
美知恵は必死にもがいていたが、やがて意識は闇の中へと飲み込まれていくのだった。

                   ******

数時間後、かけられていた白い布がはがされる。
そこには異形の姿の女が一人寝かされていた。
全体的な躰のラインは美しい女性のものであり、腰の括れや両胸のふくらみも女性らしいものであったが、その全身は茶褐色の外骨格に覆われ、頭も髪の毛がすっかりなくなってヘルメット状の外骨格が覆っており、目は黒く丸いサソリの単眼となり、口元には左右に鋏角が形成されていた。
背中からお尻にかけては節状のラインが走り、そのまま毒針を持つ尻尾となって伸びている。
右手は力強く大きな鋏と化しており、挟まれればただでは済まないだろう。
つまりそこにいるのは人間の女性とサソリが融合したものであり、まさに人間サソリと呼べるような姿だったのだ。

『目覚めるのだ、サソリ女よ』
天井から重々しい声が響く。
その声に反応したかのように寝ていた躰がピクリと動き、大きな音を立てて手足を拘束していた金具が飛び散っていく。
これは一種のデモンストレーションであり、生まれ変わった強力な躰を首領に見せるためでもあった。
「キシュシュシュシュ・・・」
奇妙な声をあげながらゆっくりと起き上がるサソリ女。
それは改造手術を受けて生まれ変わった美知恵の姿であった。

「キシュシュシュシュ・・・」
『目覚めたようだな、サソリ女よ』
重々しい声にコクリとうなずくサソリ女。
「はい、首領様。私は偉大なるヘルザロンの改造人間サソリ女。どうぞ何なりとご命令を。キシュシュシュシュ・・・」
両手をクロスするようにして首領に一礼するサソリ女。
脳改造によって、彼女の意識はもはやヘルザロンの一員に染められてしまっていたのだ。
『サソリ女よ。お前にヘルザロンの邪魔者である地境亮一の抹殺を命じる。できるな?』
「もちろんです。ヘルザロンの邪魔者はこの私が抹殺いたします。キシュシュシュシュ・・・」
猛毒の尻尾を振り立て、ぺろりと舌なめずりをするサソリ女。
『ほう・・・愛する夫を殺すなどできないのではなかったか?』
「ああ・・・申し訳ありません。それは生まれ変わる前の愚かな人間だった時のことです。今の私にはあの男への思いなど全く存在いたしません。むしろヘルザロンの邪魔者として憎しみを感じるぐらいですわ。キシュシュシュシュ・・・」
思わず膝を折ってさらに深く頭を下げるサソリ女。
『では行くがいい、サソリ女よ。地境亮一を始末してくるのだ』
「かしこまりました首領様。このサソリ女にお任せくださいませ。キシュシュシュシュ・・・」
すっと立ち上がり、口元に笑みを浮かべるサソリ女。
そしてくるりと振り返ると、彼女は任務を果たすためにその場を後にするのだった。

エンド

いかがでしたでしょうか?
今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2019/05/12(日) 19:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5

新たなる組織

昨日で「かわいいは正義」も終了し、今年の新年SSも終了かと思ったじゃろ?
もうちょっとだけ続くんじゃ。

ということで、年明け早々に短編一本書き上げましたので、投下します。
タイトルは「新たなる組織」です。
まあ、だれもが考えたようなシチュ短編です。
ドラゴンを倒した者はドラゴンとなるのです。

お楽しみいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。


新たなる組織

「「「サンダー・キャノン・アターーーーーック!!」」」
三人の声が一つになり、構えたバズーカのようなキャノン砲が光の束を撃ち出していく。
今までに数多くの悪の怪人たちを葬り去ってきたサンダーチームの決め技だ。
赤青黄色の三つのパーツを組み合わせてできるサンダーキャノンは、彼ら三人のピンチをたびたび救い、そのたびに悪の組織ザゴーンの首領は苦い思いをしてきたのだ。
そして今、ついに追い詰められたザゴーンは首領自らが出撃したものの、サンダーチームの決死の反撃で逆に最後の時を迎えたのだ。

赤青黄色の三本の光の束が集束し、渦を巻いて襲い掛かる。
「お、おのれーーー! 話が違うではないかーーー!!」
全身を黒いフード付きの衣装で覆ったザゴーンの首領が叫び声をあげる。
次の瞬間、光の束が首領の躰を貫き、光の中へと飲み込んでいく。
「うおおおおおお!」
首領の断末魔の叫びが光の中から響き、やがて小さくなっていった。

「ハアハアハア・・・や、やったのか?」
赤いスーツとヘルメットを身に着けたサンダーレッドが、荒い息を整えながらそうつぶやく。
「ハアハアハア・・・あ、ああ・・・どうやらな・・・」
同じデザインの青いスーツとヘルメットのサンダーブルーも、どこか信じられないと言った雰囲気だ。
「終わったの? 私たち・・・勝ったの?」
パーソナルカラーは黄色だが、チームの紅一点のサンダーイエローも半信半疑で首領の消滅した後を見つめていた。

やがてゆっくりと決めポーズを解除し、サンダーキャノンを各々のパーツに分解してベースに転送する三人。
もうこのサンダーキャノンを使うこともないだろう。
世界は平和になったのだ。
長い戦いが今終わった。

『ご苦労様。こちらでも首領の消滅を確認したわ。完全に消滅よ。復活はありえないとコンピュータの計算でも出たわ』
三人のヘルメットに司令部からの通信が入る。
耳に心地の良い柔らかい声で指示を伝えてくるいつものオペレーターではなく、水海明日香(みずみ あすか)司令官本人が直接呼びかけてきたのだ。
その声はやや震えているようで、司令自身もザゴーンの首領が消滅したことをどこか信じられない気持ちなのかもしれない。
『とにかく三人ともベースに帰還してちょうだい。詳しい話はそこで聞くわ』
「了解です。よし、みんな、ベースに戻ろう」
「了解」
「はい」
三人の戦士たちはうなずき合い、スーツを解除してベースに戻るのだった。

                  ******

「カンパーーイ!!」
「「「カンパーーイ」」」
カシンカシンとグラスの当たる音がする。
サンダーチームの司令部では、ささやかながら祝宴が行われていたのだ。
いくつものオードブルがいつもは作戦地図などが広げられているテーブルの上に広がり、おいしそうな香りが立ち上っている。
アルコール類も日本酒やワイン、ビールなどがたくさん置かれていた。
いずれも防衛軍本部からの差し入れらしく、今回の勝利があらためて地球に平和をもたらしたことを感じさせられる。
今日は、その防衛軍本部から代表として佐崎(ささき)防衛本部長もやってきて、サンダーチームをねぎらっていた。

あのあと、司令部では再度ザゴーンの状況を確認したものの、やはりその活動や痕跡を確認することはできなかった。
つまり、悪の組織ザゴーンは首領とともに完全に消滅したのであり、もはや地球に災厄をもたらすことはなくなったと判断されたのだ。
そのため、正式にサンダーチームの功績をねぎらい、お祝いをしようということになったのである。

「いやぁ、本当によくやってくれた。水海司令、それにサンダーチームの諸君」
日本酒を満たしたグラスを手に、サンダーチームをねぎらう佐崎本部長。
サンダーチームは防衛軍の一部局であり、本部長はその防衛軍を統括する立場なのだ。
いわばサンダーチームにとっては上部組織のトップということになる。

「こちらこそありがとうございました、本部長。これまでの数々の本部の支援無くして、今回の勝利はありえなかったと思います。本当に本部の後方支援に感謝いたします」
いつもの司令官の制服ではなく、今日はドレスに身を包んでいる水海司令。
そのすらっとした姿は凛として美しい。
「いやいや、我々としても支援してきた甲斐があったというものだよ。まさかザゴーンを滅ぼせるとは正直思っていなかったのだ」
「そうなのですか?」
少し意外という表情をする水海司令。
「いやいや、もちろん君たちがいる限り負けはしないとは思っていたよ。だから、いずれは奴らが諦めて手を引くものと思っていたのだ。滅ぼすというのではなくな」
ああ、なるほどと水海司令は納得する。
確かに予算や装備等の様々な制約がある中で、ザゴーンを滅ぼせるとは彼女にも予想外のことだったかもしれない。

「だが・・・これで、ここも閉鎖になる。寂しくなるな」
佐崎本部長の声のトーンが少し落ちる。
「ええ・・・確かに・・・」
ぐるりと司令室内部を見渡す水海司令。
苦しかったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、さまざまな思い出がこの司令部には詰まっていた。
だが、ザゴーンが滅びた今、それはすでに過去の思い出なのだ。

「ねえねえ、尊(たける)はこれからどうするの?」
サンダーイエローの由香里(ゆかり)が、サンダーレッドこと尊に声をかける。
「そうだなぁ。やっぱり俺はもう一度レーサーに挑戦かな」
オードブルの鶏もも肉を食べながら尊が答える。
彼はサンダーレッドに選抜される前は、若手レーサーとして活躍していたのだ。
「丈(じょう)はどうする?」
そのまま自分が聞かれたことをサンダーブルーこと丈に聞く。
「そうだなぁ・・・弁護士の資格でも取ろうかな」
ワインを傾けながら答える丈。
彼はその明晰な頭脳と豊富な知識で、何度となくチームの危機を救ってきたのだ。
「そういう由香里はどうなんだ?」
「私はねぇ。アクション女優さんとかいいかなぁって。ほら、サンダーチームで本当のアクションたくさんやったし」
目を輝かせる由香里。
確かに容姿端麗で運動神経も抜群な彼女ならアクション女優にはうってつけかもしれない。
三人はそれぞれ今後のことを考え始めていたのだった。

「司令? 水海司令はこれからどうするんですか?」
ワクワク顔の由香里。
「ええ? 私? そうねぇ・・・しばらくは夫や子供と家族水入らずで過ごしたいわね」
家族のことを思い笑顔を浮かべる水海司令。
彼女はいわば女性ながら単身赴任であり、夫と息子とは離れて暮らしてきたのである。
「あー、やっぱりそうですよねー。幸一(こういち)君も寂しかったでしょうしねー」
「そうねぇ。これからはやっと一緒に暮らせるわ・・・ね」
司令の手からグラスが落ちる。
「司令? あ・・・」
思わず駆け寄ろうとした由香里も、急に意識を失ったように床に倒れ込む。
「う・・・あ・・・こ、これ・・・は」
「ま、まさか・・・くす・・・り?」
尊も丈もその場に崩れるように倒れ込む。
「み・・・んな・・・これ・・・は・・・」
なんとか意志の力でテーブルに片手を付き立っていた水海司令だったが、彼女も急速に意識が遠くなっていく。
「ああ・・・」
ついに耐え切れずに床に倒れ込む水海司令。
その様子を、佐崎本部長は冷たい笑みを浮かべて見つめていた。

                   ******

「う・・・う・・・ん」
ゆっくりと目を開ける水海司令。
その拍子に躰が動き、ジャラジャラと鎖が鳴る音がする。
「はっ? こ、ここは?」
周囲は薄暗く肌寒い。
それもそのはず、彼女は一糸まとわぬ裸で両手首を手錠のようなもので固定され、天井から鎖でつながれてしまっていたのだ。
「な? こ、これはいったい?」
自分の置かれた状況に愕然とする水海司令。
いったい何がどうなってしまったというのか?

「おや、目が覚めてしまったのかね? できれば寝たまま新たな人生を始めてもらおうと思ったのだが・・・」
聞きなれた声がする。
「佐崎本部長? これはいったい?」
じゃらっと鎖の音をさせ、声のする方をにらみつける水海司令。
そこには防衛軍本部長の制服に身を包んだ佐崎本部長がいた。

「ん? 君たちが困ったことをしてくれたのでねぇ。その責任を君たち自らに負ってもらおうというのだよ」
佐崎がそう言うと、水海司令の前の壁がスライドしていく。
「あっ、尊君、丈君、由香里ちゃん!」
スライドした壁の向こうには巨大なガラスのシリンダーのようなものが三本並んでおり、そのそれぞれに裸にされたサンダーチームの三人が入れられている。
いずれも気を失ったままのようであり、シリンダーのガラス壁に寄り掛かるようにして立たされていた。
「佐崎本部長! いったいこれはどういうことなんですか!」
両手を固定されているので動ける範囲は限られているが、水海司令は必死に本部長に詰め寄ろうとする。

「水海君・・・君には失望したよ。我々の飯の種を奪ってしまってどうするつもりかね?」
「は? どうする・・・とは?」
「わからんのかね? ザゴーンが消滅してしまえば、我々防衛軍に対する予算も減り、人員も縮小される。現にサンダーチームはお払い箱で、君だって職を失うではないか。いったい全体で何人の人間が不幸な目に遭うかわかっているのかね?」
佐崎本部長がふうとため息をつく。
おそらく彼自身ザゴーン崩壊を機に後任に席を譲るために勇退を迫られるだろう。
そんなことがあってはならないのだ。
「だいたい女性である君を司令官などにしたのは、たいして戦闘に詳しくないだろうからザゴーンと一進一退の適当な勝負をしてくれると思ったからだよ。本気でザゴーンを滅ぼすつもりなら、最初から君を司令官などにはしない」
「そ・・・んな・・・」
本部長の言葉に青ざめる水海司令。

「まあ、滅んでしまったものは仕方がない。ザゴーンもそろそろ退場してもよかったのだ。ほら、特撮番組でも新番組との入れ替え時期ということだよ」
にやりと笑う本部長。
その笑みがことのほか不気味に思える。
「組織を維持するためには敵がいればよい。新たな敵ということだな。敵さえいれば、わが防衛軍の必要性は増し、予算もいつも通りに降りるだろう。人員整理もせずに済むというものだ」
そして、彼自身もザゴーンとの戦闘を指揮した経験が重要視され、より重要な職に就けるに違いない。
「そこでだ。君たちには新たな敵となってもらおうと思うのだ。今度の敵は昆虫系で行こうと思うのだがどうかね? 昆虫系はグロテスクだし、人々の嫌悪感も大きいと思うのだがね。組織名も考えてあるぞ。私は親切だな。バグデモンというのだがどうかね?」
「あ・・・あなたは・・・あなたはそれでも平和を守る防衛軍の人間か!」
怒りに燃える目で本部長をにらみつける水海司令。
自分たちの仕えていた上司がこんな人間だったとは・・・

「平和ねぇ。平和など幻想だよ。戦いこそが人間を強くするのだ。なに、安心したまえ。君たちの後任はすでに選定作業に入っている。君たちが新たな破壊活動を始めるころには、こちらの態勢も整うだろう」
「ふざけるなぁっ!」
「新組織の女王となる君ともあろうものが、そんなに感情的ではいかんなぁ。ここが何かわかるかね?」
本部長の指し示す先には、三人が入れられているガラスのシリンダーのほか、様々な機械が壁面を埋め尽くしている。
まるで何かの研究室のようだ。
「ここは表向きは防衛軍の科学研究所だがね、実のところはザゴーンの怪人製造所でね。つまり、君たちが戦ってきた相手というのは、ここで生み出された怪人たちだったのだよ。一般人をさらってきてね」
「そ・・・んな・・・」
言葉が出ない。
すると今まで倒してきたザゴーンの怪人たちは・・・

「さて、まずはサンダーチームの三人に新たな敵役となってもらうとしよう。残念なことにカプセルが三つしかないのでね。君の順番はそのあとだ」
「や、やめて! 三人を開放して! 敵は私だけでもいいでしょ!」
「そうはいかん。敵はある程度組織化されているように見せねばな。なに、こいつらは今後も君の部下として役立ってくれるさ」
佐崎本部長が顎をしゃくってスイッチを入れるように促す。
それを見て、白衣の研究所員たちがいくつかのスイッチを入れていった。

「うわぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁ!」
「ぐあぁぁぁ!」
急激に躰に走る電流に目を覚まし、苦痛の悲鳴を上げる三人。
ガラスのシリンダー内にモクモクと白い煙が湧き出して充満していく。
「な、なんだ? ぐわぁぁぁ!」
「ゲホッゲホッ! た、たすけ・・・」
「うごっ・・・うごわぁぁぁ」
煙に覆われて三人の姿が見えなくなっていく。
それに合わせるように、三人の声もだんだんと聞こえなくなっていく。
「や、やめて! やめてぇ!」
「ふふふふ・・・君の新たな部下たちの誕生だよ。喜んであげたまえ」
「いやっ! いやぁぁぁ!」

                   ******

やがて、シリンダー内の煙が晴れ、ゴウンゴウンという音とともにシリンダー自体が上に持ち上げられていく。
「キシャー!」
「クキキキキー!」
「ギシュシュシュシュ!」
奇声を上げながら、ゆっくりと歩み出す三体の異形の怪物たち。
それは先ほどまで、彼女の良く見知っていた人物たちであったが、今や三人はこれまでとは似ても似つかない怪物になっていたのだった。

「キシャー! なんていい気分なんだ。俺様のこの力で人間たちをひねりつぶしてやるぜ」
サンダーレッドであった尊は、黒光りする外骨格に覆われ、額から巨大な角を振りかざすカブトムシの化け物になっていた。
「俺様はデスビートル。これからはバグデモンのために働くぜ。キシャー!」
両手のこぶしを握り締め、力強さを誇示するデスビートル。

「クキキキキー! アタシはキラーワスプよぉ。アタシのこの針で、人間どもをたくさん始末してやるわぁ。クキキキキー!」
サンダーイエロー由香里はスズメバチの女怪人となっていた。
両胸とお尻には鋭い針が突き出ており、先端からは猛毒が滴っている。
口元だけは以前の由香里のままであり、真っ赤な唇が妖艶さを漂わせていた。

「ギシュシュシュシュ! 俺様はヘルワーム。俺様のかわいいミミズたちは人間の脳を食い荒らし、俺様の思うままに動く虫人間となるのだ。ギシュシュシュシュ!」
サンダーブルー丈も巨大なミミズの化け物と化していた。
彼の躰はくねくねと軟体のように動き、節々にしがみついている小型ミミズは耳から人間の頭に入り込んで脳を食い、ヘルワームの意思によってコントロールされるのだ。

「キシャー! 俺たちはバグデモン三人衆」
「クキキキキー! これからは人間どもにたっぷりと恐怖を味わわせてやりますわぁ」
「ギシュシュシュシュ! さあ、司令も生まれ変わり、われらの女王となるのです」
三体の怪人たちはにやにやと笑いながら、水海司令のそばに来る。
「い、いやっ! 来ないで! いやぁっ!」
必死に身をよじって逃れようとする水海司令。
だが、抵抗もむなしく、彼女は三体の怪人たちに拘束した鎖を引きちぎられ、無理やりガラスのシリンダーに入れられてしまう。
「いやぁっ! 出してぇ! お願いよぉ!」
どんどんとシリンダーのガラス壁をたたくものの、全くびくともしない。
やがて、スイッチが入れられると、彼女の姿も白い煙の中へと消えていった。

                   ******

「ゴギギギギィ! なんてすばらしい躰なのかしらぁ。私はもう下等な人間などとは違いますわぁ。ゴギギギギィ!」
茶褐色の外骨格に覆われた躰を愛しそうに眺める水海司令。
彼女の躰はまるで巨大化したゴキブリのようであり、つややかな翅が背中に広がり、蛇腹状の腹部は多数の卵を産むためのタンクになっている。
額からは長い触覚が伸び、両目は複眼と化していたが、こちらもキラーワスプ同様に口元だけは人間のままで、それが妙に妖しい色気を出していた。
「ゴギギギギィ! 私はバグデモンの女王クィーンローチよぉ。これからこの世界は私たちバグデモンのものになるの。そのためにかわいいローチ兵をたっぷりと産んでやりますわぁ。ゴギギギギィ!」
そう言って口元に手の甲を当て高笑いをするクイーンローチ。
もはや彼女の心に正義を愛する心はない。
いかにして地球をわがものにするかしか考えられなくなっているのだ。

「キシャー! 偉大なる女王クイーンローチ様」
「クキキキキー! どうかアタシたち三人衆に」
「ギシュシュシュシュ! 何なりとご命令を」
三体の蟲怪人たちがひざまずく。
「ゴギギギギィ! お前たち、人間どもにわれらの恐ろしさをたっぷりと思い知らせてやるのです。いいですわね」
「「「ハハァッ!」」」
女王の命に三体がいっせいに頭を下げる。
その様子に、脇の方から拍手の音が響いた。
「いやぁ、さすがにバグデモンの女王。これからはしっかりと頼みますよ」
にやにやと笑っている佐崎本部長。
「ゴギギギギィ。お任せください。バグデモンの強さをとくとご覧くださいませ」
「ふふふふ・・・私に対して服従する機能はうまく働いているようだな。あとは新戦隊を発足させ、バグデモン対策に乗り出さねば」
下等な人間と言いつつ、人間である自分を襲おうとはしない四体の怪人に満足する本部長。
これで防衛軍も安泰で、彼自身も出世するだろう。
そしていずれは政界にでも・・・

「そうそう。君の夫と息子には、君は突然失踪したということにでもして伝えても構わんかね?」
新戦隊の準備のためにこの場を立ち去ろうとした本部長が、足を止めて振り向く。
「ゴギギギギィ! 夫? 息子? 私はバグデモンの女王クイーンローチですわぁ。人間の夫だの息子だのそのようなもの、私にはもう関係がありませんですわぁ。ゴギギギギィ!」
口元に笑みを浮かべているクイーンローチ。
きっと今後の人間たちに対する襲撃を考えて胸をときめかせているのだろう。
「そうだったな。まあ、適当にやっておくさ。それじゃ頑張りたまえ、女王よ」
「ゴギギギギィ! さあ、お前たち。新たな私たちの巣を作りに行くわよ。ついていらっしゃい」
「キシャー!」
「クキキキキー!」
「ギシュシュシュシュ!」
本部長が出ていくのを見届けた四体は、これまでザゴーンの怪人を送り出してきた出口を抜け、そこから外へと出ていくのだった。

今、新たな戦いが始まる。

END

いかがでしたでしょうか?
よろしければコメントなどいただけますと嬉しいです。

今年の新年SSはここまでです。
また次作に向けて頑張りますのでよろしくです。

それではまた。
  1. 2019/01/05(土) 21:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:7

カマキリとサソリ

昨日の「ゴム女のフェラ」はいかがでしたでしょうか?
いつもの作品とはちょっと違う感じだったので、違和感を感じられた方もいらっしゃったかもしれませんね。

今日はいつものように女怪人に改造されちゃうお話です。
まあ、オーソドックスなありがちな話かも。
タイトルは「カマキリとサソリ」です。
お楽しみいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


カマキリとサソリ

轟音とともに巨大な炎を噴きあげて爆発が起こる。
またしても送り出した怪人がミラージュマリーによって倒されてしまったのだ。
青いコスチュームに身を包んだミラージュマリーは、彼らワームリアに取って天敵だ。
彼女を倒さない限り、この地球を支配することはできない。
そのため、何体もの怪人を送り込み彼女の抹殺を計ったのだが、ことごとく返り討ちにあってしまったのだ。
そして今回もまた・・・

「うぬぅ・・・おのれミラージュマリー! 次こそは必ず・・・」
とげとげの付いた全身鎧のような衣装に身を包んだ偉丈夫が歯噛みする。
ワームリアの作戦指揮官グモーゾだ。
その実力は首領にも認められているのだが、このままミラージュマリーに負け続けるようなことがあれば、いつ処刑されてもおかしくはない。
その焦りがグモーゾを苛立たせる。
「なんとか・・・なんとかせねば・・・」
だが、妙案と呼べるものは浮かばない。
せめてミラージュマリーの戦う気持ちをそらせたり、隙を作り出すことができれば打つ手も生まれようというものなのだが・・・

「む?」
いつまでも見ていても仕方がないと思い、モニタードローンを回収しようと思ったところ、思いもかけないものをグモーゾは目にしてしまう。
「これは・・・」
それはいつも怪人を倒したあとすぐに姿を消していたミラージュマリーの追跡に成功していたのだ。
たまたま周回させていたモニタードローンのカメラに納まったもののようだったが、そこにはミラージュマリーがごく普通の女性、しかも制服姿の女子高生になる瞬間のシーンが捉えられていたのだ。
「なんと! ミラージュマリーの正体は日本の女子高生ということなのか! この女子高生の正体を早急に調べるのだ!」
「キキーッ!」
グモーゾの指示に従い、全身を黒タイツに包んだ戦闘員たちが調査に出発する。
ミラージュマリーの正体が判明するのは、それから間もなくのことだった。

                   ******

「う・・・」
意識がゆっくりと戻ってくる。
ここは?
私はいったい?
自分に何が起こったのかを思い出す。
そうだわ・・・私は確か外出中に・・・

その日所用で外出していた彼女は、その帰り道でいきなり黒づくめの連中に襲われ、意識を失わされたのだ。
おそらくそのまま車にでも乗せられ、連れてこられてきたのだろう。
いわば誘拐されたわけだ。

躰を動かそうとした彼女は、自分の躰が何かで拘束されていることに気が付いた。
両手首と両足首が固定され、何か台のようなものに磔にされているのだ。
「こ、これは?」
試しに手足を動かそうとしてみるが、がっちり固定されているために動けない。
いくら逃げられないようにするためとは言っても、ここまで拘束するとは普通じゃないのではないだろうか。
しかも周囲は薄暗く、何があるのかもよくわからない。
まるで闇の中に放り出されてしまったかのようだ。
「誰かぁー! 誰かぁー!」
少し大きな声で呼んでみるものの、どこからも返事はない。
いったいこれからどうなってしまうのか・・・
彼女は恐怖に震えていた。

やがて、闇の一部が開き、体格のいい男が一人、制服姿の少女を抱えて入ってくる。
少女は両手をだらんと下げ、どうやら意識を失っているらしい。
おそらく彼女と同じく拉致されてきたのだろう。
「あなたが私をここへ?」
男をにらみつけるようにそう尋ねる彼女。
「ん?」
顔まですっぽりと覆うヘルメットの下から鋭い視線が彼女を射る。
「気が付いていたのか。少し待っていろ」
男は抱えていた少女を、彼女から少し離れた位置の台に彼女と同じように寝かせていく。
そして両手と両足を金具で固定し、外れないことを確かめた。

「えっ? あ、茜(あかね)ちゃん? まさか茜ちゃんなの?」
寝かされた少女の横顔に見覚えがあることに気が付く彼女。
娘の友人であり、よく家に遊びに来てくれている子に間違いない。
彼女もいつしか苗字よりも名前で呼ぶことに慣れてしまったぐらいなのだ。

「ククク・・・そうだ。この娘は持林茜(もちばやし あかね)。お前の娘である秋中麻里亜(あきなか まりあ)の友人だ。そうであろう、秋中喜美子(あきなか きみこ)?」
いかつい男が彼女の名前を言い当ててくる。
これは明らかに彼女のことを知っていて誘拐してきたのだ。
「私たちをどうするつもりですか? 何か恨みでも? そうだとしても、その子はまだ未成年なんですから、解放してあげて」
男をにらみつけながらも、できるだけ冷静に話そうとする喜美子。
いったいこの男が何者なのかさっぱりわからないが、どうして自分たちを狙ってきたのだろう。

「クククク・・・そう心配するな。お前たちは大事な素体だ。手荒に扱ったりはせん」
台に寝かされた二人を前に、グモーゾは笑みを浮かべる。
この二人を改造し、ワームリアの怪人にするのだ。
母親と友人がワームリアの怪人となれば、ミラージュマリーも手を出すのをためらうに違いない。
そこを攻撃することができれば、ミラージュマリーもたやすく倒せるかもしれないのだ。
そのためにもこの女たちを念入りに改造してやらねば。
クックック・・・

「う・・・うーん」
台に寝かされた少女がゆっくりと目を開ける。
「茜ちゃん! 茜ちゃん!」
「えっ? あっ、麻里亜ちゃんのおば様?」
喜美子の声に振り向いた茜が友人の母を認識する。
「良かった。目が覚めたのね」
「おば様、私はいったい?」
目が覚めたことで自分が捕らわれていることに気が付く茜。
両手両足が固定されていて動けないのだ。
どうやら二人ともが同じ状況らしい。
「私たちは彼に誘拐されてしまったみたい。でも、きっとすぐに警察が・・・」
「それはどうかな?」
ニヤニヤと笑っているグモーゾが口をはさむ。
「ここは我々ワームリアの地底アジト。人間の警察風情がここまで来られるとでも思うのかね?」
「ワームリア・・・」
「ワームリア!」
茜と喜美子の表情が青ざめる。
ワームリアと言えば最近世間を騒がせている謎の組織である。
まるでテレビの特撮番組の世界から抜け出てきたような怪人が暴れ回り、謎の女性がそれを倒しているというのだ。
この男はそのワームリアだというの?

「先ほども言った通り、お前たちは大事な素体だ。傷つけるつもりはないから安心しろ」
「私たちをどうするつもりなんですか? ワームリアがなぜ私たちを?」
喜美子が先ほどと同様にグモーゾをにらんでくる。
やはりあのミラージュマリーの母親だ。
意志の強さが感じられる。
「お願いです。うちに帰して・・・」
少女のほうはそうでもないようだが、それが逆にか弱さを感じさせてミラージュマリーを油断させるだろう。

「ククク・・・お前たちはミラージュマリーの正体を知っているのではないか?」
「えっ?」
グモーゾの質問に思わず顔を見合わせ、ふるふると首を振る茜と喜美子。
「知りません」
「ミラージュマリーが私たちと何の関係が?」
「ほう・・・本当に知らんようだな。では教えてやる。我らワームリアに歯向かうミラージュマリーの正体は、秋中麻里亜なのだ」
「えっ?」
「えっ? 麻里亜ちゃんが?」
喜美子も茜も驚きに目を丸くする。
それはそうだろう。
自分の娘が、自分の友人が謎のヒロインとしてワームリアと戦っているなんて信じられるはずがない。
「嘘! 嘘です! あの子がそんな・・・」
「嘘ではない。お前の娘はミラージュマリーなのだ」
「そんな・・・」
言われてみれば娘はときどき怪我をしていた。
かすり傷程度らしかったし、学校で運動中に傷をつけたと言っていたけど・・・
あれは戦いの傷だったの?
喜美子はそのことに気付かなかったことを悔やんでしまう。
あっ・・・
であれば・・・

「私たちを人質にするのですか?」
人質にされ娘が苦しむのを見るぐらいなら・・・
喜美子はそう思う。
でも・・・茜ちゃんは・・・
「私はどうなっても構いません。でも茜ちゃんは、茜ちゃんは未成年なんです。家に帰してあげて!」
「おば様」
「茜ちゃん、人質なら私だけで充分よ。あなたは解放してもらうから」
「おば様・・・」
今にも泣きそうな顔で喜美子を見る茜。
どうして私たちがこんな目に・・・

「残念だが二人とも帰すわけにはいかんな」
「どうしてですか? 人質なら私だけで・・・」
「言ったであろう。お前たちは大事な素体だと。お前たちはこれより改造を受け、我がワームリアの女怪人へと生まれ変わるのだ」
腕を組んでククッと含み笑いを漏らすグモーゾ。
二人の女たちの青ざめる顔がなかなかにそそる。
「女怪人に? まさか・・・私たちに娘と戦わせようと?」
「いやっ! いやぁっ!」
「そう。そのまさかだ。お前たちを女怪人にしてミラージュマリーを始末させる。母親や友人が怪人化したとなれば、ミラージュマリーとて冷静ではいられまい。その動揺した隙をついて倒すのだ」
愕然とする喜美子や絶叫する茜に言い放つグモーゾ。
「そんな・・・娘と戦うなんてできるはずが!」
「いやぁ・・・怪人になるのはいやぁっ!」
「クックック・・・すぐにそんな感情は消え、ワームリアのためなら何でもするようになるのだ。楽しみにしているがいい」
指をパチンと鳴らして合図するグモーゾ。
その合図を待ちかねたかのように数名の戦闘員たちが現れ、喜美子と茜の周囲の装置を操作する。
やがて天井から手術用の無影灯のようなものが下がってきて、カクテル光線のようなきらびやかな光を二人の躰に当てていく。
同時にいくつものチューブが二人の躰に突き刺さり、毒々しい色の液体が注ぎ込まれていく。
「いやぁっ!」
「ああっ! あああっ!」
苦悶の表情を浮かべる二人。
その様子を見て、グモーゾは笑みを浮かべながらその部屋を後にした。

                   ******

カツコツと硬質な足音が響いてくる。
ハイヒールのかかとが床を打つような音だ。
室内に現れる二つの影。
その姿にグモーゾはニヤッと笑みを浮かべた。
「改造が終わったようだな。さあ、お前たちが何者か、俺に言うがいい」
「ケケケケケ! 私は偉大なるワームリアの女怪人カマギリアですわぁ。ケケケケケ!」
全身が緑色の外骨格に覆われ、巨大な複眼と触角の付いた頭部を持ち、両手のカマを振り上げるカマキリの女怪人。
だが、そのボディラインは、元となった喜美子のスタイルが色濃く出ており美しい。
「シュシュー! 私は女怪人サソリアです。どうぞ何なりとご命令を。シュシュー!」
カマギリアの隣にはやや小柄で紫色の外骨格に覆われた女怪人が立っている。
黒い単眼の付いた頭部を持ち両手の先はハサミ状になっていて、背中からお尻にかけたラインに沿うように尾てい骨部分から長い尾が伸びていた。
もちろんその先からは、鋭い毒針が覗いている。
茜が改造されたサソリの女怪人だ。
二人とも口元だけは以前の人間のままであり、うっすらと笑みを浮かべている。
それがまた妖しい雰囲気を漂わせてるのだった。

「それでいい。お前たちはワームリアの怪人として生まれ変わった。これからはワームリアのために働いてもらうぞ」
「ケケケケケ! もちろんですわ」
「シュシュー! ワームリアのためなら何でもいたします」
二人の女怪人は喜ばしそうにうなずいている。
「お前たち二人、力を合わせてミラージュマリーを始末するのだ。できるな?」
「ケケケケケ! お任せくださいませ。私はもうあの子の母親などではありませんわ。ワームリアに歯向かうものはすべて敵。必ずやミラージュマリーを始末してまいります。ケケケケケ!」
「シュシュー! 私の毒ならミラージュマリーと言えどもただでは済まないはず。カマギリアとともに彼女を。シュシュー!」
もはや身も心も完全にワームリアの女怪人に変貌した二人には、ミラージュマリーを殺すことは当然のことだった。

                   ******

「麻里亜ちゃん、今日遊びに行ってもいい?」
放課後、家に帰ろうと思っていた麻里亜を茜が呼び止める。
「えっ? うちに?」
「うん。ダメかな?」
友人の茜の申し出に、麻里亜はぶんぶんと首を振る。
「とんでもない。茜ちゃんが来てくれるのは大歓迎だよ。お母さんも茜ちゃんが来たら喜ぶと思うし」
「ありがとう。実は今日両親がいきなり遠くへ行っちゃったものだから」
なんとなく冷たい笑みを浮かべる茜。
「えっ? そうなの? じゃ、今日はうちへ泊りなよ。いろいろとおしゃべりしよう」
うきうきと帰り支度をする麻里亜。
茜が自宅に来るのはそこそこあれど、泊りは久しぶりだ。
パジャマで二人遅くまで他愛もないおしゃべりができると思うと、麻里亜の心は浮きたった。

「お母さんもいいって。茜ちゃんが来るの楽しみだって言ってた」
すぐにスマホで確認した麻里亜が茜に伝える。
「そう。私もおば様に会うのが楽しみだわ。うふふ・・・」
「どうする? うちにも何かあるとは思うけど、帰りに何か買ってく?」
目をキラキラと輝かせている麻里亜。
茜がお泊りということでテンションが上がっているのだ。
「うーん・・・別に何か欲しいものがあるわけでもないからいいわ。それより早く麻里亜ちゃんの家に行きたいな」
「おお! それは早く私と二人きりになりたいってことですかぁ? あははは・・・」
「まあ、麻里亜ちゃんたら。あははは・・・」
楽しそうに笑いあう麻里亜と茜。
二人はそのまま笑いあいながらカバンを手に学校を後にした。

「ただいまー。お母さん、茜ちゃん来たよー」
元気よく玄関を開けて家に入る麻里亜。
「お帰りなさい。いらっしゃい、茜ちゃん」
奥から二人を出迎えに出てくる喜美子。
水仕事でもしていたのか、手をタオルで拭っている。
「こんにちはおば様。お邪魔します」
「どうぞどうぞ。入って入って」
にこやかに二人を招き入れる喜美子。
麻里亜はふと、その手に持っているタオルが赤黒くなっていることに気が付く。
それと、何とも言えない血のにおいのようなものも感じた。
「お母さん、何かしてたの?」
「えっ? ああ、カスを切り刻んでいたのよ。ケケケケケ・・・」
奇妙な笑い声をあげる喜美子。
麻里亜はちょっと変に思いながらも、あとについてリビングへと入っていく。

「ひっ!」
リビングに入ったとたんに絶句する麻里亜。
ソファに血まみれで死んでいる父親の姿があったのだ。
「お、お父さん!」
「ケケケケケ・・・ほんと、間の悪い男ねぇ。やはり所詮は下等な人間ということかしら。これからの楽しみを邪魔しに帰ってくるんだもの」
父の死体を前に笑っている母。
その様子に麻里亜は愕然とする。
「お、お母さん? ま、まさかお母さんが?」
「ええ、そうよぉ。だって、これからミラージュマリーを切り刻むのを楽しみにしていたのに、風邪で熱が出たからとか言って早退してくるんですもの。邪魔くさいったらありゃしないでしょ。だから切り刻んでやったの。ケケケケケ・・・」
口元に手の甲をあてて笑う喜美子。
「お・・・お母さん・・・そんな・・・」
あまりのことに言葉が出ない麻里亜。
いったい何が起こったというのだろうか?

「ケケケケケ! ねえ、もうそのお母さんお母さんってのいい加減にやめてくれない? 私はもうお前のお母さんなんかじゃないわ。私は偉大なるワームリアによって改造され生まれ変わったの」
そう言って躰を変化させていく喜美子。
見る間に全身が緑色の外骨格で覆われ、頭部が巨大な三角形の形になり、目も大きな複眼へと変化する。
両手はとげの付いたカマとなり、両脚もハイヒールのブーツのような形になっていく。
背中には翅が生え、お尻も大きくなって、カマキリと人間が融合した姿に変わっていく。
「ケケケケケ! どう? これが今の私の本当の姿よ。私はワームリアの女怪人カマギリアなの。ケケケケケ!」
ここだけは人間のままである口元に笑みを浮かべ、笑い声をあげるカマギリア。

「お母さん・・・お母さんがワームリアの怪人に・・・」
麻里亜は唇をかみしめる。
自分は何のために・・・
何のためにミラージュマリーとして戦ってきたのか・・・
父や母を、友人たちを守るためではなかったのか・・・
その母がワームリアの怪人にされてしまうなんて・・・
お母さん・・・

ハッとする麻里亜。
今はとにかく茜だけでもこの場から逃がさないと。
「茜ちゃん! 逃げ・・・て・・・」
振り返りざまに背中に激痛が走る。
「茜・・・ちゃん?」
そこには茜ではなく、全身を紫色の外骨格に覆われ、人間のままの口元からくすくすという笑い声を発しているワームリアの女怪人がいた。
「どうして私が逃げないとならないのかしら? せっかくカマギリアとともにミラージュマリーを始末できるチャンスだというのに。シュシュー!」
「茜・・・うぐっ・・・」
がっくりと膝をつく麻里亜。
「私ももう茜などという名前なんかじゃないの。私はワームリアの女怪人サソリア。よろしくね、ミラージュマリー。シュシュー!」
「そんな・・・」
麻里亜の全身に強烈な痛みが走る。
どうやら毒を流し込まれたらしい。

「ケケケケケ! どうしたの? 変身しないの? 私のカマで切り刻んであげるわよぉ。ケケケケケ!」
「無理よ、カマギリア。私の毒は強力ですもの。もう全身が痛くて起き上がれないと思うわ。シュシュー!」
「おかあさ・・・あか・・・ね・・・ちゃ」
激痛に耐え必死に手を伸ばす麻里亜。
その手をカマギリアは踏みつける。
「言ったでしょ。私はもうお母さんじゃないって。頭悪いわねぇ。ケケケケケ!」
「まだ息があるようだから切り刻んでいいわよカマギリア。少しは楽しめるんじゃない? シュシュー!」
二人の冷たい笑みが麻里亜を見下ろしている。
「そうね。そうさせてもらおうかしら。ケケケケケ!」
カマギリアがカマを振り上げたとき、麻里亜は意識を失った。

                   ******

「クククク・・・まさかこうも簡単にミラージュマリーを排除することができるとは。よくやったぞお前たち」
「「ハッ、ありがとうございます」」
上機嫌のグモーゾの前で片膝をつき頭を下げるカマギリアとサソリア。
「ケケケケ・・・ですが・・・もう少しでミラージュマリーを切り刻むことができましたのに、止められてしまったのは残念ですわぁ」
褒められたものの、カマギリアはやや不満そうな表情だ。
無理もない。
今にもカマを振り下ろそうとしたとき、グモーゾから待ての命令が来てしまったのだ。
ワームリアに歯向かうミラージュマリーに一撃を与えられると楽しみにしていた彼女にとっては不満だろう。
「シュシュー! ご命令に従いあの女をこの地底アジトに運び込みましたが、どうなさるおつもりなのですか?」
サソリアにしても今一つ納得がいっていない。
彼女たち二人はミラージュマリー抹殺のために改造され、この素晴らしい躰に生まれ変わったはずではなかったのだろうか。

「うむ。首領様のご命令でな」
「首領様の?」
カマギリアとサソリアが顔を見合わせる。
首領様がミラージュマリーを生かしたまま連れてこいと命じられたというのか?
「うむ。ミラージュマリーを無力化した以上、殺すよりもいい方法があると仰せになられたのだ。その方法を聞いた時、俺もなるほどと納得した」
いい方法?
「シュシュー! そのいい方法とは?」
「クククク・・・すぐにわかる」
サソリアの質問に対し、グモーゾはニヤッと笑う。

カツコツというヒールの音が響く。
「ククク・・・噂をすれば影か。入るがいい」
「キキキキ! 偉大なるワームリアの女怪人ドクガリア、ただいま参りました」
そう言って入ってくる一体の女怪人。
やや小柄でサソリアと同じぐらいの大きさだ。
巨大な二つの複眼と二本の触角が付いた頭部を持ち、茶色の細かい毛が体を覆っている。
背中には大きな翅が広がっており、いくつかの斑紋が浮き出ている。
口元はカマギリアはサソリアのように人間のままであり、うっすらと冷たい笑みを浮かべていた。

「クククク。よく来たなドクガリア。生まれ変わった気分はどうだ?」
「キキキキ! はい、とてもいい気分です。愚かにもミラージュマリーなどと名乗り偉大なるワームリアに歯向かっていた私を、このような素晴らしい躰に改造していただけたなんて、感謝の言葉もございません」
スッと片膝をつき一礼するドクガリア。
その姿にカマギリアとサソリアも笑みが浮かぶ。
「ケケケケケ! なるほどそういうことでしたの」
「シュシュー! これでまた一緒にいることができるわね。仲良くしましょう、ドクガリア」
「キキキキ! ええ、こちらこそよろしく、カマギリア、サソリア。これからは私もワームリアのためにすべてをささげるわ」
三人の女怪人たちが笑顔を見せるのを、グモーゾは満足そうに眺めるのだった。

                   ******

「ン・・・あん・・・だ・・・ダメ・・・ダメよ・・・」
「んちゅ・・・んふふ・・・カマギリアのここ、こんなにとろとろになってる。美味しい。シュシュー!」
ぺろりと舌なめずりをして、再びカマギリアの股間に顔をうずめるサソリア。
その舌が外骨格の継ぎ目から中の秘肉に刺激を与え、愛液を溢れさせていく。
「ケケ・・・ああ・・・こ、こんな・・・ダメ・・・ダメよ・・・」
「うふふ・・・何がダメなの? シュシュー! 私たちは女怪人同士。楽しみ合ったって問題はないわ」
サソリアの黒く丸い単眼がカマギリアの痴態を見つめ、口元には笑みが浮かんでいる。
「ケケ・・・で・・・でも・・・ドクガリアが来たら・・・」
「来ないわ」
「え?」
その返事にやや苦いものを感じたカマギリアが驚く。
「シュシュー! ドクガリアは来ないわ。彼女は今頃グモーゾ様に犯されている頃よ。うふふ・・・」
「犯されて?」
「ええ。今は女怪人とは言え元はミラージュマリーを犯せるんですもの。グモーゾ様はとても喜んでいるんじゃないかしら。シュシュー!」
「ケケケ・・・そ、そんな・・・」
「シュシュー! 気になるかしら? 元娘のことだから・・・」
「あ、あん・・・」
サソリアの手の先にあるハサミの先端がそっと差し入れられ、カマギリアの躰に快感が走る。
「シュシュー! 渡さない。ドクガリアとカマギリアがかつて母娘だったとしても、先にカマギリアのパートナーになったのは私」
「サソリア・・・」
「私、うらやましかったのよ。あなたたちのことが。私の母親はろくな奴じゃなかったから・・・だからこうして女怪人になれて、カマギリアとパートナーになれたことがとてもうれしかったわ。クズどもも始末できたしね。シュシュー!」
言葉を紡ぎながらも、その手はカマギリアの肉襞を優しく刺激することをやめはしない。
「サソリア・・・あ、あん・・・」
サソリアのハサミがカマギリアの躰の官能の炎を燃え上がらせる。
それに、そう言ってもらえることもカマギリアにはうれしかった。
一緒に女怪人になった者同士、カマギリアにもサソリアのことを好ましく思わない理由はなかったからだ。

「シュシュー! だから私は渡さない。カマギリアは私のものよ」
カマギリアの上で躰を回転させていくサソリア。
その秘部がカマギリアの顔の位置にやってくる。
「ねえ、お願い。私のも舐めて。カマギリアの舌で私を気持ちよくして。シュシュー!」
「・・・・・・わかったわ、サソリア」
カマギリアの舌がサソリアの肉襞に触れる。
とろとろの愛液がカマギリアの舌を伝って流れてくる。
「ああん・・・いい・・・カマギリアの舌・・・いい・・・」
腰をくねらせて快感に打ち震えるサソリア。
すぐに自らもカマギリアの襞に舌を這わせていく。
「ケケケケケ! サソリアの舌もたまらないわ・・・あん・・・イっちゃう・・・」
二体の女怪人の痴態はいつ果てるとも知れずに続くのだった。

END

いかがでしたでしょうか?
明日は三日目最終日。
明日もいつもとはちょっと違ったSSだと思います。
先日ちらっと書きましたあの話です。
お楽しみに。

  1. 2018/07/18(水) 21:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8

寮母さんはドククラゲ

今日は久しぶりにSSを投下します。
と言いましても、いわゆるシチュのみ短編で、いつものごとく女性が怪人化するだけのお話です。

タイトルは、「寮母さんはドククラゲ」です。
タイトルそのまんまのお話です。
女性が女怪人にされるシーンが好きというお方に楽しんでいただければと思います。

それではどうぞ。


寮母さんはドククラゲ

「「「行ってきまーす」」」
「行ってらっしゃい」
朝、学校へ向かう女子学生たちを見送り、私は少しホッとする。
今朝も彼女たちを無事に送り出すことができたからだ。
あとは学校でも事故がないことを祈るだけ。
勉強頑張ってね。

とはいえ、私の仕事はこれからが本番。
まずは皆が食べた朝食の後片付けをして、それから午前中のうちにお風呂や共用部分の掃除、午後からは寮内の点検をして壊れたりしているものがあったら取り替え、さらに夕食等のための買い物に行き、帰ってきたら夕食づくり、そのころにはもう早い子は学校から帰ってくるし、お風呂も用意しなくてはならない。
他にもこまごましたことがたくさんあって、ほんと寮母というのは大変だわぁ。
まあ、うちは厳密には学生寮というというよりは、一人暮らしのための賄いつき女性用アパートというべきもので、管理人を任された私が女子学生たちの食事等の面倒も見ているという形だから、住んでいる女子学生たちも6人ほどと少ないんだけどね。
とはいえ、だからこそ何もかもを一人でやらなくてはいけないので大変。
かといってお給料が高いってわけでもないしねー。

さてさて、ちゃっちゃと片付けちゃいましょうか。
私は腕まくりをすると、台所にたまった食器を手際よく洗浄して片付けていく。
6人もの娘がいる大家族のお母さんっていうのはこんなものなのかしらね?
もっとも、私自身まだ20代なんだし、あの娘たちの母親というよりはあの娘たちのほうにこそ近いのよね。
結婚だってまだなんだし・・・

ふう・・・
最後の食器を水切り籠の中に収める。
これで朝食の後片付けは終了。
次はお掃除をしなくちゃ・・・
あら?
なんだか玄関の方で人の気配がするわ。
玄関の呼び鈴が鳴った?
聞こえなかった気がするけど・・・
「はぁい、どちらさま?」
私は急いで玄関へと向かう。
郵便か宅配便でも届いたのかしら・・・

「ひっ!」
玄関に来た私は思わず小さく悲鳴を上げてしまう。
だってそんな・・・
まさかこんなのがいるなんて・・・

玄関に立っていたのは、郵便配達の人でも宅配便の人でもなく、全身を黒光りする西洋の甲冑のようなものを身にまとった人物だったのだ。
頭から足の先までがすべて金属に覆われた人物。
そんなものが立っていたら、思わず悲鳴が出てしまうというもの。
い、いったい何なの?
コスプレ?

「あ、あなたはいったい?」
私はその異質な存在をにらみつける。
ここが女性専用のアパートと知って来たのなら、警察を呼ぶことも考えなくてはならない。
「ククク・・・ちょうどよさそうな女だ。まずはこいつで・・・」
声からして甲冑の中身は男のようだ。
フェイスガードの付いたヘルメットをかぶっているので、顔は全くわからない。
「出ていってください。出ていかないと警察を呼びます」
私はポケットからスマホを取り出し、110番をセットしてすぐに発信できるようにする。
「出ていかないと本当に呼びますよ」
「フフフフ・・・本当に呼べるかな?」
「えっ?」
甲冑の男が手を私のほうに向かってかざしてくる。
すると、私の持っていたスマホが突然破裂した。
「キャッ!」
私は思わず持っていたスマホを放り捨てる。
そんな・・・
手をかざしただけでスマホを壊すことができるなんて・・・
いったい?

私は共用室にある固定電話を使おうと踵を返す。
でも、走りだそうとしたのに躰が前に動かない。
「えっ?」
「クククク・・・逃がしはせんよ。お前は大事な実験材料だ」
そんな・・・
私の躰が何かに引き付けられるように動かない。
共用室に一刻も早く行って電話をしなくてはならないのに・・・
足が一歩も動かないのだ。
「さて、始めるとしようか・・・ククク・・・」
私は自分で意図したわけでもないのに、再び躰を回転させて甲冑の男のほうを向く。
「そんな・・・」
私の目の前には、いつの間にか空中にゆらゆらと漂うクラゲのようなものが浮いていた。
「クラゲ?」
「それは特殊なドククラゲでな。なかなかに強力な毒を持っているものを改造したものだ」
「ひっ!」
毒のクラゲ?
そんなものがどうして?

「行け」
甲冑の男がそういうと、クラゲはふよふよと私に近づいてくる。
「ひぃぃぃっ! 誰かぁ! 誰か助けてぇ!」
私は必死で叫び声をあげる。
だが、躰は全く動いてくれない。
逃げ出そうにも逃げ出せないのだ。
クラゲは私の顔のすぐそばまで来ると、その触手を私の頭に巻き付ける。
「ひぃーー! いやぁぁぁぁ!」
ひんやりとしたヌメッとした触手が私の頬に絡みついてくる。
そしてクラゲの本体部分がふわっと私の頭の上に移動したかと思うと、そこからベシャッと私の頭に覆いかぶさってきた。
「ひぃぃぃぃ! むごっ! むぐっ・・・」
クラゲは私の頭をすっぽりと覆うと、悲鳴を上げていた私の口の中に触手を入り込ませてくる。
いや、口ばかりじゃない。
鼻の穴からも、耳の穴からも触手が入り込んできたのだ。
「あがっ・・・たすけ・・・が・・・」
「クククク・・・どうやらそいつはお前が気に入ったようだぞ。殺されなくてよかったな」
殺されない?
嘘・・・
触手のおかげで息もできず・・・
苦し・・・
助け・・・て・・・

ひぐっ!
頭に激痛が走る。
鼻や耳の穴から入り込んだ触手が、私の頭の中にまで入り込んできたのだ。
死・・・死ぬ・・・死んじゃう・・・
私は倒れ込むこともできずに突っ立ったままで激痛に耐えていく。
なんで?
なんで私がこんな目に・・・

あひゃ?
あへ?
突然激痛がすうっと引いていく。
替わりになんだか気持ちよさが広がってきた。
何なの?
何が起こっているの?
あ・・・
頭の中で触手がうねうねと動いている・・・
脳がクチュクチュとかき混ぜられている感じ・・・
あひゃ・・・
気持ちいい・・・
なんだかとっても気持ちがいいよぉ・・・

クチュクチュ・・・クチュクチュ・・・
脳がいじられていく。
なんだか私が私じゃないみたい・・・
躰がふわふわしてとても気持ちがいい・・・
口から入ったクラゲの触手は私のお腹の中で蠢いている。
あは・・・
私の躰がだんだん触手に作り変えられていくんだわ・・・
あひゃひゃひゃ・・・
なんだか素敵・・・
アタシは一体どうなっちゃうのかしら?

あにゃ?
なんだか目が見えてきたわ。
でも・・・なんかぐにゃぐにゃして水の中にいるみたい・・・
あひゃ・・・
あひゃひゃひゃ・・・
バカねぇ、アタシ・・・
アタシはクラゲなんだから、水の中にいるのは当たり前じゃない・・・
あれ?
でも・・・あたしは人間だったようなぁ・・・
あひゃ・・・
どうでもいいかぁ・・・そんなこと・・・
なんだかとっても気持ちがいいしぃ・・・

するりと何かが肌を滑り落ちていく・・・
足もとを見ると、なんだか布の塊が落ちている。
ああ・・・
アタシが着ていたものが落ちたんだわ・・・
アタシの触手が着ていた服をはぎ取ったんだ。
クフフフフ・・・
だってあたしはクラゲだもん。
クラゲが服を着ていたらおかしいよね・・・

アタシは自分の躰を見下ろしてみる。
半透明の躰がとてもきれい。
よく見れば反対側が透けて見える。
いくつかの内臓が半透明のグニュグニュした中に浮いている。
きれい・・・
これがアタシ・・・
クラゲのアタシ・・・
アタシはクラゲ・・・
アタシはドククラゲ・・・

「クククク・・・どうやらうまく融合が行われたようだな。これでお前はドククラゲ女になったのだ」
私の目の前のお方・・・偉大なるダスロムの大幹部ゼーゴス様のお言葉が聞こえるわ・・・
ドククラゲ女・・・
クフフフフ・・・
そうなんだわぁ・・・
アタシはドククラゲ女なんだわぁ・・・
あひゃひゃひゃひゃ・・・
最高!
気持ちいいわぁ!

「気分はどうだ、ドククラゲ女よ」
「クフフフフ・・・はい、とてもいい気分ですわゼーゴス様。アタシはドククラゲ女。どうぞ何なりとご命令を。クフフフフ・・・」
そうよぉ・・・
アタシは偉大なるダスロムのドククラゲ女。
下等な人間とはもう違う存在なの。
ダスロムに必要ない人間どもはアタシがこの毒触手で始末してあ・げ・る・・・
あひゃひゃひゃひゃ・・・
アタシはうねうねと動く自分の腕を見つめ、思わず笑みを浮かべていた。

「それでよい。お前にはほかにも実験を命じる」
「はい、何なりと」
アタシはゼーゴス様に一礼する。
どのような実験を命じられるのだろう・・・
ワクワクするわぁ。

                   ******

「いただきまーす」
「いただきまーす」
美味しそうにアタシの作った睡眠薬入りの料理を口に運ぶ女たち。
クフフフフ・・・
睡眠薬が入っているとも知らずに、バカな女たちだわ。
でも喜びなさい。
お前たちは実験材料に選ばれたのよ。
偉大なるダスロムの人体実験にね。
クフフフフ・・・

ゼーゴス様にご命令をいただいた後、アタシは人間の姿に擬態して、これまでと変わらないふりをして夕食を作った。
もちろん女子学生たちに気付かれないためだ。
今夜はカレーにしたから、少々の薬は混ぜたとしても気付くまい。
まあ、気付くような人間がいれば、始末してしまえばいいだけのこと。
誰か一人ぐらい気付かないかしらね。
クフフフフ・・・
アタシはひそかに腕を触手に変えて舌舐めずりをする。
ああん・・・早くこの毒触手を誰かに突き刺したいわぁ。

カタンと音がして、カレースプーンが手から滑り落ちる。
「あ・・・ふ・・・」
そのままテーブルに突っ伏したり、椅子にもたれかかるようにして眠り込んでいく女子学生たち。
クフフフフ・・・
強力な睡眠薬ね。
こんなに早くみんながお寝んねしちゃうなんて。
クフフフフ・・・

アタシは擬態を解除してドククラゲ女の姿に戻る。
ああーん、気持ちがいいわぁ。
やっぱりこの姿こそが本当のアタシよね。
アタシは鏡に映る自分の姿に満足を覚える。
半透明の躰にクラゲのように笠が広がった頭部。
胸のふくらみや腰の括れは以前のアタシのように人間ぽい形をしているけど、頭部に広がった笠や肩のあたりから生えているいくつもの細い触手はクラゲのもの。
そう・・・アタシはクラゲと人間が融合したドククラゲ女。
偉大なるダスロムの一員なの。

アタシは眠りこけた女子学生たちを一人ずつ床に寝かせていく。
もちろん着ているものも脱がせていくのを忘れない。
変化に衣服は邪魔ですものね。
彼女たちは睡眠薬が効いているから目を覚ますことはない。
クフフフフ・・・
これが最後の人間としての眠り。
もうすぐお前たちも・・・
クフフフフ・・・

くちゅ・・・
あん・・・
気持ちいい・・・
アタシは触手状にした腕を股間に差し入れる。
思わずオナニーしたくなっちゃうわぁ・・・
でも・・・
ん・・・
ポトリポトリと黒くウネウネするものがアタシの股間から落ちてくる。
クフフフフ・・・
上手く孵っているわ。
ゼーゴス様にいただいた実験用の卵。
それをアタシの中で孵した蟲たちなの。
見た目は・・・そう・・・黒いナメクジといったところかしら。
アタシは床の上で蠢くその黒いナメクジたちを拾い上げると、眠っている女子学生たちの耳のそばに置いていく。
クフフフフ・・・
喜びなさい。
このナメクジがお前たちをダスロムに選ばれた存在にしてくれるわ。
融合が失敗しなければだけどね・・・
クフフフフ・・・

黒いナメクジたちがもぞもぞと這った跡を黒く残して耳の中へと入っていく。
「ひっ! あ、あぐっ!」
「あっ! ギャッ! ひぎっ!」
ナメクジに耳の奥に入り込まれた女子学生たちが苦痛に悲鳴を上げる。
クフフフフ・・・
痛いのは最初のうちだけ。
すぐに気持ちよくなってくるわ。
そうすれば・・・お前たちもアタシと同じように・・・
クフフフフ・・・

「あぐっ・・・うぐっ・・・」
「あががが・・・あが・・・」
全身をぴくぴくと痙攣させ、もがき苦しむ女子学生たち。
だが、やがてその苦悶の表情がすっと穏やかになっていく。
そして痙攣も収まり、じょじょに首筋のあたりから黒く染まっていく。
ナメクジが躰の中から彼女たちを変化させているのだ。
クフフフフ・・・

「あがっ! グゲゲゲゲッ!」
突然女子学生の一人が目を見開いて口から泡を吹く。
チッ・・・
適合不良が出たみたいね。
偉大なるダスロムにはふさわしくなかったということか。
哀れな奴。
まあいいわ。
他の五人は順調なようだし・・・
適合不良となった女は、そのままぐずぐずと液状化して溶けていく。
ふん・・・
床が汚れてしまったではないか。
いまいましいわ。

やがてほかの女子学生たちは全身が黒い皮膚で覆われていく。
クフフフフ・・・
偉大なるダスロムの女戦闘員としての姿だわ。
両脚はつま先が一つになり、かかとも伸びてハイヒールのブーツのような形に変化する。
両手も手袋をはめたように変化し、力も人間の数倍へと強化される。
首から上も黒い皮膚で覆われていき、まるでマスクでもかぶったように、目の周り以外はすべて包み込まれていく。
最後に額のあたりからニュルっとナメクジの触角のようなものが二本生え、変化が終了する。
クフフフフ・・・
おめでとう。
これであなたたちも偉大なるダスロムの一員ね。

ゆっくりと起き上がる女戦闘員たち。
その目は最初少しぼんやりしていたが、やがてはっきりと輝き吊り上がっていく。
五人は私の前に横一列に並ぶと、右手をいっせいに上げてキキーッという服従の声を出す。
自分が偉大なるダスロムの女戦闘員ですという宣言の声だ。
クフフフフ・・・
素晴らしいわ。
実験は成功ね。

アタシは女戦闘員たちにゼーゴス様より預かったダスロムの紋章の付いたベルトを渡す。
アタシもベルトを手に取って彼女たちと一緒に腰に巻くが、何とも言えない誇らしさを感じるわ。
偉大なるダスロムの一員である誇り。
ダスロムのためなら何でもするわ。

「「「キキーッ!」」」
同じようにベルトを巻いた女戦闘員たちが右手を上げる。
クフフフフ・・・
今日からここはダスロムの拠点の一つ。
アタシたちはこの世界をダスロムのものにするために働くのよ。
手始めにもっと女戦闘員を増やさないとね。
お前たちは友人を連れてきなさい。
クフフフフ・・・
楽しみだわぁ・・・
アタシは実験が成功して女戦闘員が五体完成したことをゼーゴス様に報告するため、共用室を後にした。

END

  1. 2018/05/19(土) 20:30:20|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:7

仮面ライダー第42話IF 「怪奇ハエ男と6体の蜂女」

今日はSSを一本投下します。
今日のSSは久しぶりに仮面ライダー(二号)の二次創作となります。
なんか、タイトルが「山田くんと七人の魔女」みたいな感じになってしまいましたね。(笑)

それではどうぞ。


仮面ライダー第42話IF 「怪奇ハエ男と6体の蜂女」

エンジン音を響かせて疾駆するオープンタイプのスポーツカー。
青年が運転し、助手席と後席には若い女性が乗っている。
「おらおらぁ! どけどけぇ! 道を開けろぉ!」
「キャー、かっこいい!」
乱暴な運転で前を走る車をあおり、避けたところを抜かしていく。
自分の運転に自信を持っているのか、後ろの車を振り返ってバカにしたように舌打ちする。
「おっせぇんだよ!」
「ホント、おっそーい。ねえ、修(おさむ)、もっと飛ばしてぇ!」
「よし来た!」
助手席の女性に応えるようにぐっとアクセルを踏み込む青年。
その様子に後席の女性は少し顔を曇らせる。
「ね、ねえ・・・あんまり飛ばすのは・・・」
「なぁに? 洋子(ようこ)ったら怖いの?」
助手席の女性がニタニタと笑いながら振り返る。
「そ、そういうわけじゃ・・・」
内心を隠しながらも洋子は首を振る。
「だったらいいじゃん。こんなかっこいいスポーツカーなんだもん、飛ばさなきゃ嘘よね」
「ああ、安心しろって、俺がハンドル握ってんだからさ!」
運転席の青年はまるで脅かすかのようにハンドルを左右に切って車を蛇行させる。
そのたびに周囲の車が慌てたように避けていくのだ。
修にはそれが面白くてたまらない。
洋子はそんな彼にこれ以上何も言えなかった。

                   ******

五、六人の小学生たちが交差点に差し掛かる。
「さあ、みんな、横断歩道だ。注意しようね」
先頭を歩く少年が後ろの子たちに声をかける。
近くの立花(たちばな)レーシングクラブによく顔を出す石倉五郎(いしくら ごろう)という少年だ。
なかなかに面倒見がいい性格なので、近所の子供たちに慕われている。
「横断歩道は右左を見て渡りましょう」
五郎は横断歩道の手前で車が止まってくれたことを確認し、運転手に礼を言うと、みんなを連れて横断歩道を渡りはじめる。
だが、その時、猛スピードのスポーツカーが停車した車を追い越すようにして横断歩道を横切ってきた。
「危ない!」
きしむタイヤと急ブレーキの音が響く。
五郎たちはとっさに逃げたものの、運悪く一人の少年がひっかけられてしまう。
「あっ、ひろし!」
道路に倒れた少年の名を五郎が叫ぶ。

ちょうどその時、急ブレーキの音に何事かと外に出てきた大人たちがいた。
すぐ近くの立花レーシングクラブのメンバーたちである。
彼らは横断歩道に倒れた少年の姿を見て、何が起こったのかをすぐに把握した。
「おい! 大丈夫か?」
「おい!」
思わず駆け寄ってくる立花レーシングクラブの面々。
中でも真っ先に駆け寄ったのは、ほかでもない一文字隼人(いちもんじ はやと)だ。
彼は少年の救護をほかの人に任せると、怒りの形相でスポーツカーを運転していた青年をにらみつける。
「君たちは・・・」
怒りのあまりその後の言葉が続かない。
こんな市街地で横断歩道を渡っていた少年を撥ねるなど、よほどスピードを出していたか前方不注意だったかに違いないのだ。

「うるさいわねぇ・・・かすっただけでしょ」
「そっちがもたもたしているから悪いんだ」
助手席の女も運転席の男も、まるで悪びれる様子がない。
「なんてことを言うんだ!」
あまりのことに立花レーシングクラブの会長である立花藤兵衛(たちばな とうべえ)も、思わず声を荒げてしまう。
「へっ、あばよ!」
だが、男は意に介した様子もなく、そのまま車を発進させる。
まさか逃げるとは思っていなかった隼人と藤兵衛は、一瞬反応が遅れてしまった。
「ま、待て!」
慌てて追いかけようとしたが、車はどんどん遠ざかる。
「くそっ!」
「隼人兄ちゃん!」
「滝(たき)、あとは頼む! 五郎、俺に任せろ!」
ひき逃げ犯が逃走してしまうことを恐れた五郎に、隼人は力強く答えると、すぐにレーシングクラブの前に止めてあったバイクにまたがってスポーツカーを追う。
モトクロスレーサーだった一号ライダー本郷猛(ほんごう たけし)には及ばぬものの、彼とて仮面ライダーと呼ばれる改造人間だ。
普通のスポーツカーを追うのぐらいわけはない。

「チッ、追ってきやがるのか・・・」
バックミラーに映るオートバイ。
そのバイクにまたがっている男が先ほどの男だと知った修は、さらにアクセルを踏み込んでいく。
「ねえ、人をひいてしまったのよ。おとなしく警察に・・・」
後席から心配そうに洋子が言う。
根がおとなしい彼女に取り、人をひいてしまったということは大変なことなのだ。
「なぁに? 洋子ったら修が警察に捕まってもいいわけ?」
「へっ、ガキの一人や二人ひいたからなんだっていうんだ。まあ、いざとなりゃ親父がもみ消してくれるだろうけどな。あんまり親父に迷惑もかけられないしな」
バックミラーにぴったりと付いてくるバイクに少々焦りを感じる修。
何とか振り切って逃げきらなければ・・・
親父にくそうるさく言われるのはごめんなのだ。
「くそっ・・・あの野郎・・・」
背後にぴったりと付いてくるバイクの男に、修は憎悪を抱くのだった。

                   ******

猛スピードで疾走するスポーツカーとバイク。
その様子を道路わきの地面からせり出した一台のカメラが中継する。
その映像はある場所に設置されたモニターに映し出され、その映像を黒マントを羽織り車椅子に座る老人がじっと見つめていた。

「これだ・・・この男こそ、我々が探し求めていた男。この男には冷たい悪魔のような血が流れている」
老人がその骸骨のように痩せた顔にニヤリと笑みを浮かべる。
子供をひいたことを悪びれもせず、一人二人ひいたところでなんだというんだとまで言い放つ男。
こういう男こそが、悪魔の組織ショッカーの尖兵となる改造人間にふさわしい。
「この男を捕まえろ。ハエ男に改造するのだ」
「イーッ!」
老人の背後に立つ数人の黒づくめの男たちが奇声を上げる。
彼らは全身を躰にぴったりした黒い衣装で包み、顔には目鼻口だけが露出するマスクをかぶっている。
マスクの額にはハエの模様が書き込まれ、腰には鷲のマークの付いたベルトを締めていた。
彼らこそ、世界征服を企む悪の秘密結社ショッカーの手先である戦闘員たちであり、彼らに命じた老人こそ、改造手術の権威である死神博士その人だった。

映像の中では逃げるスポーツカーが映し出されている。
どんなに頑張っても一文字隼人のバイクを振り切れないのだ。
戦闘員の一人が機器のスイッチを操作する。
すると、映像の中に白煙が立ち込めていく。
『な、なんだこれは?』
『えっ? 霧?』
『こわーい!』
スポーツカーの男女の声がモニターから流れてくる。
戦闘員がさらにボタンを押すと、白煙に包まれたスポーツカーは道路ごと地下へと沈んでいく。
開いた穴はすぐにまた覆われ、一文字のバイクはその上を通過していく。
煙が晴れた時、一文字は追っていたスポーツカーが突如消え去ったことに愕然とした。

                   ******

「もう大丈夫ですよ。怪我のほうも軽いものでしたし、この分なら二三日で退院できるでしょう」
医者の言葉にホッとした表情を浮かべる五郎と女性たち。
立花レーシングクラブのエミと、車に撥ねられたひろしの母の澤子(さわこ)である。
息子が撥ねられたと聞いて、急いで病院に駆け付けた息子思いの美しい女性だ。
「よかったわねぇ」
エミが笑顔を見せる。
五郎も心からホッとしたように安堵の表情を浮かべていた。
「皆さん、本当にありがとうございました。五郎ちゃん、もういいわよ。あなたには何の責任もないんですから」
お礼を言い、五郎の負担を考えて帰っても大丈夫と伝える澤子に五郎は首を振る。
「ひろし君のおばさん、ボクもう少しひろし君のそばにいますから」
「そう? ありがとう」
五郎の申し出に澤子はうれしくなる。
ひろしにこんなにいい少年が付いていてくれるなら、学校でも安心だろう。
「よかったなひろし。あとは隼人兄ちゃんが犯人を捕まえてくれれば万々歳だ!」
「うん、ありがとう五郎ちゃん」
ひろしも怪我はしたものの、その表情は明るさを失っていなかった。

                   ******

円形の台に寝かされているスポーツカーを運転していた男。
その周囲には白衣の男たちが集まり、様々な器具をセットしているところだった。

「加納(かのう)修。金持ちの家に生まれ、周囲の人間を見下している冷酷な男。この男こそ、ハエ男の素材としてふさわしい」
一段高くなった位置から円形手術台を見下ろす死神博士。
黒いマントの襟が誇らしげに高く立っている。
『死神博士よ。ハエ男は仮面ライダー抹殺のための強力な怪人。だが、それだけで仮面ライダーに勝てるのか?』
壁にかけられた鷲のレリーフが明滅し、重々しいショッカー首領の声が響く。
「ご安心を、首領。そのほかにも手は打ってあります。仮面ライダーもその戦闘力をフルに発揮することはできますまい」
レリーフを見上げ、にやりと笑みを浮かべる死神博士。
その表情はまさに死神の名にふさわしい。
『うむ。頼んだぞ、死神博士』
「ハッ、よし、改造手術を始めるのだ」
レリーフに一礼し、手術台の周囲の連中に指示を下す。
その命に従い、白衣の男たちは加納修の手術を開始するのだった。

手始めに修の躰には薬剤が注入されていく。
この薬剤によって遺伝子合成が可能となり、他生物の遺伝子を取り込むことが可能となるのだ。
今回はネパールの秘境に存在するという大型の肉食バエを修の躰に取り込ませるのだ。
すぐに肉食バエの遺伝子を混ぜ込んだ第二の薬剤が用意され、修の躰に流し込まれる。
それと同時に、筋肉や内臓の強化のために機械部品が埋め込まれる。
この生物と生物に加え、生物と機械の融合もまた、ショッカーの改造人間の特徴であった。

やがて修の躰に変化が生じてくる。
全身に黒くかたい毛が生え始め、頭の形もハエの頭部のように変わっていく。
胸の部分は緑色のなめし皮のような蛇腹となり、両目は大きな緑色の複眼が形成されていく。
両手も黒い毛に覆われ、鋭い爪が伸びていく。
最後は脳にショッカーへの忠誠を刻み込む脳改造が行われ、改造手術が完了する。

「ブルルルル・・・」
ゆっくりと起き上がるハエ男。
その全身はまさにハエと人間が融合した姿であり、グロテスクなものだった。
「ハエ男よ。お前には一文字隼人の抹殺を命じる」
起き上がったハエ男に指示を下す死神博士。
「ブルルルルッ! 一文字隼人? 誰だそれは?」
「この男だ」
指揮棒でモニターを指し示す死神博士。
そこには先ほどまで修を追ってきていたバイクの男の姿が映し出されていた。
「ブルルルルッ! この男か! 俺はこの男が憎い! 喜んで殺してこよう!」
「待て、ハエ男よ。やつこそは仮面ライダーと名乗り、このショッカーに歯向かう小癪な男。万全を期すためにもお前に配下を付けてやろう。入ってこい」
出かけようとしたハエ男を制する死神博士。
するとその言葉に呼応したように手術室の扉が開き、二人の人影が入ってくる。
そのスタイルからして女のようだったが、その姿もまた異様なものだった。

彼女たちは二人ともが全身を青いなめし皮のような皮膚に覆われ、背中からは薄く黄色い翅が伸びている。
その形良い両胸は黒と黄色の同心円状に模様が広がり、まるで蜂のお尻のようなイメージだ。
頭には紫色の髪が広がり、額からは蜂の胴体のような硬質な部分が頭頂部まで覆っている。
両目は緑色の複眼となっているものの、ハエ男と違って口元は人間のままとなっている。
そして腰には、ハエ男と同じショッカーの紋章が入ったベルトをつけていた。

「ブルルルルッ! この二人は?」
入ってきた異形の女たちを見やるハエ男。
「お前と一緒に車に乗っていた女たちに、日本支部初期の改造人間蜂女をベースにした改造を施したもの。いわば量産型蜂女の一号と二号だ。お前の好きに使うがいい」
満足そうに完成品を眺める死神博士。
簡易改造で作り上げたにしては完成度が高いのだ。
満足するのも無理はない。
「ブルルルルッ! ミッチ、洋子、お前たちも生まれ変わったようだな。これからは俺様のために働くのだ」
「キキーッ! 私は量産型蜂女一号。ハエ男様に従います」
「キキーッ! 私は量産型蜂女二号。何なりとご命令を」
二体の量産型蜂女が右手を上げて返事をする。
助手席に座っていたミッチも後席にいた洋子も、改造を受け量産型蜂女へと変わってしまっていた。
もはや彼女たちに人間らしい心は残っていない。

「ハエ男よ。このカプセルを人間の女に飲ませれば、その女は量産型蜂女に生まれ変わる。あと四つあるこのカプセルで、立花レーシングクラブの女たちとお前が撥ねた少年の母親を量産型蜂女にするのだ。そうすれば一文字隼人は知り合いと戦うことができず、その戦闘力は大幅に落ちるだろう。そこを殺すのだ」
「ブルルルルッ! それは面白い! 任せてくれ、死神博士」
死神博士からカプセルの入ったケースを受け取るハエ男。
その緑色の複眼が不気味に光り輝いた。

                   ******

「お、三人そろってお出かけかい?」
ちょうど立花レーシングクラブに戻ってきたFBI捜査官滝和也(たき かずや)と、入れ替わるようにユリ、エミ、ミカの三人が出てきたのだ。
「ええ、これからひろし君が入院している病院まで」
「ああそうか。今日も五郎は学校が終わったらまっすぐ病院に行っているんだっけ?」
ユリの言葉に合点がいく滝。
「うん。だからお見舞いと差し入れを持っていくの。あと人手があった方が助かるだろうからみんなで行ってこいって会長が」
エミも手にしたバスケットと花束を持ち上げてみせる。
「なるほど。気を付けて行ってこいよ。俺はあのひき逃げ犯の家がわかったことを知らせに来たんだ」
「ホント? さすがは滝さん。一文字さんなら会長と一緒よ」
ミカが感心したように滝を褒める。
「わかった」
ヘルメットをバイクにおいて、すぐに滝は中へ入っていく。
一刻も早く犯人の住所を知らせようというのだろう。
「これでひき逃げ犯も捕まるわね」
「ひろし君にいい報告ができそうね」
「それじゃ行きましょ」
三人の女性たちはいい話に笑顔になりながら、病院への道を歩いて行った。

やがて、人通りの少ないあたりに来たところで、三人の前に黒いワンボックスカーが停車する。
「な、なに? いきなり」
急に現れたワンボックスカーに戸惑う三人。
するとワンボックスカーのサイドドアが開き、中からハエの躰をした怪人が現れる。
「キャーッ!」
「ショ、ショッカー!」
「に、逃げ・・・」
慌てて逃げ出そうとした三人だったが、すでに背後にも二人の蜂のような姿をした女性が立っていた。
「ふふふふ・・・逃げられはしないわ」
「ふふふふ・・・あなたたちも量産型蜂女になるのよ」
二人の蜂女はそういうと、エミとミカの顔にスプレーをかけて気を失わせてしまう。
「エミ! ミカ! あうっ」
空手の経験があり、とっさに口をふさぐことができたユリだったが、ハエ男に背を向けてしまったことで首筋を強打され、彼女も気を失ってしまった。
「ブルルルルッ! よし、連れていけ!」
「「イーッ!」」
ワンボックスカーから黒づくめの戦闘員たちが現れ、三人を車の中に連れて行く。
やがてワンボックスカーはハエ男や二人の蜂女も乗せ、いずこともなく去っていった。

                   ******

「ブルルルルッ! 死神博士、このカプセルを飲ませればいいのだな?」
ハエ男の鋭い爪をした指先が白いカプセルをつまみ上げる。
彼の前には大きな台に寝かせられた三人の女性たちがいた。
「その通りだ。この女たちにそのカプセルを飲ませるのだ」
車いすに座った死神博士がハエ男にうなずく。
「ブルルルルッ! 一文字隼人よ、お前の仲間はショッカーの一員となるのだ。ブルルルルッ!」
ハエ男はほくそ笑むような鳴き声を発し、ユリ、エミ、ミカにカプセルを飲ませていく。
やがて彼女たちの躰が極彩色の光に覆われていき、皮膚の色が青く変化し始める。
顔も大きな複眼が形成され、額から頭頂部にかけて蜂の腹部のような外骨格が覆っていく。
髪は紫色となり、胸も黒と黄色の同心円の模様の蜂の腹部のように変化する。
背中から薄く黄色い翅が生え、彼女たちの変化は完了した。

「ブルルルルッ! 終わったようだな。さあ、起き上がって自分が何者か言ってみろ」
ハエ男の言葉に従うようにゆっくりと起き上がる三人の女たち。
「私は量産型蜂女三号。ショッカーに忠誠を誓います」
「私は量産型蜂女四号。ハエ男様に従います」
「私は量産型蜂女五号。何なりとご命令を」
ユリ、エミ、ミカの三人はそれぞれ量産型蜂女の三号、四号、五号へと変化してしまっていた。
もはや彼女たちからは仮面ライダーとともにショッカーに立ち向かうなどという正義の心は消え失せ、悪魔の組織ショッカーの一員となった喜びがあるだけだった。

「この三人の姿を見れば、一文字隼人もまともには戦えぬはず。あとはやつをおびき寄せるためにも、少年の母親も量産型蜂女にしてしまうのだ。行け! ハエ男よ!」
「ブルルルルッ! お前たち、付いてこい!」
「「「キキーッ!」」」
死神博士の命に、ハエ男は新たに量産型蜂女となった三人とこれまでの二人をを引き連れてアジトを出る。
向かうはひろし少年の入院している病院だった。

                   ******

「五郎ちゃん。今日もきてくれてありがとう。でも本当にいいの? ひろしのことならもう心配はいらないのよ」
「おばさん。ボクの気が済むまで・・・ひろし君が退院するまではいさせてください。お願いします」
真剣な表情で頭を下げる五郎に澤子は胸を打たれる。
本当にありがたいことだ。
「そう? それじゃおばさんちょっと用事を済ませてくるから、その間ひろしのそばにいてくれる?」
「はい。もちろんです」
顔を輝かせる五郎。
ベッドでそのやり取りを聞いていたひろしも顔をほころばせる。
「ありがとう五郎ちゃん」
「いいんだよひろし。それにもうすぐユリ姉ちゃんやエミ姉ちゃんたちが来ると思うし。あっ、そうだ! クラスの友達からノート借りてきたから、勉強も遅れないで済むよ」
そう言ってカバンの中からノートを取り出す五郎。
「それじゃ、ちょっとの間お願いね」
澤子はそんな二人をほほえましく見ながら、病室を後にした。

「急いで銀行に行って来なくちゃ」
澤子は入院費などのためにお金を降ろしに銀行へ向かおうと、病院の廊下を歩いていく。
そして物品庫の前に差し掛かった時、いきなりドアが開いて中から伸びた手が澤子を物品庫の中へと引きずり込む。
「きゃっ! な、なに?」
突然のことに驚く澤子。
すると左右から奇妙な姿をした女たちが澤子の躰を押さえつける。
「い、いやっ! だ、だれか!」
「ブルルルルッ! お前もこのカプセルを飲むのだ」
目の前に現れたハエの化け物が、澤子の口にカプセルを押し込んでくる。
「む・・・むぐっ」
何とか飲み込まないように抵抗する澤子だったが、無理やり口をこじ開けられるようにして飲まされてしまう。
「あ・・・あああ・・・」
喉を掻きむしるようにして倒れ込む澤子。
躰が熱を持ったように熱いのだ。
やがて思考がぼんやりし、なにがなんだかわからなくなっていく。
「あああ・・・」
じょじょに澤子の躰が極彩色の光に覆われ、躰が変化し始める。
数分後、澤子の躰はほかの女たちと同じように、蜂の怪人へと変わっていた。

「私は量産型蜂女六号です。ハエ男様、何なりとご命令を」
ゆっくりと立ち上がり、ハエ男に向かって右手を上げる量産型蜂女六号。
「ブルルルルッ! 俺様はお前のガキを跳ね飛ばした男だぞ。その俺様に従うというのか?」
試すように意地悪く質問するハエ男。
自分を憎んでいただろう撥ねた相手の母親を支配するというのは、気持ちがいいものだ。
「はい。もちろんです。あの子はもう私にとってはどうでもいい存在。私にとって大事なのは偉大なるショッカーとハエ男様です」
「ブルルルルッ! ならばあのガキどもを始末するのだ。できるな?」
「もちろんです。ハエ男様」
こくりとうなずく量産型蜂女六号。
「ブルルルルッ! ならば行け!」
「キキーッ!」

病室にノックの音が響く。
「どなたですか?」
五郎がひろしに代わって返事をする。
おそらくは立花レーシングクラブの三人の誰かか、ひろしの母澤子が戻ってきたのだろう。
『私よ。ひろしの母よ』
ドアの向こうからの声に、安心してドアを開ける五郎。
だが、そこに立っていたのは、全身を青い皮膚に包んだ異形の女だった。
「わぁ! 化け物だ!」
思わず飛びのいてしまう五郎。
「五郎ちゃん!」
ひろしもベッドから躰を起こす。
「ふふふふふ・・・お前たちは一文字隼人を引き寄せる餌。だが、お前たちが死んでもいずれやつはここに来る。だから死ね!」
ゆっくりと病室に入ってくる蜂の怪人。
「あっ、お母さん!」
その姿や顔の造りにひろしは自分の母の面影を見る。
「オホホホホ・・・私はもうお前の母親などではないわ。私はショッカーの量産型蜂女六号。お前たちはここで死ぬのよ。ホホホホホ・・・」
手の甲を口元に当てて高笑いをする量産型蜂女六号。
すでに彼女はひろしの母親という気持ちを失っているのだ。

「ひろし! こっちだ!」
ベッドの上で愕然とするひろしの手を引き、窓から逃げ出そうとする五郎。
だが、その窓を開けたところには、三人の同じ姿をした量産型蜂女が待ち構えていた。
「うふふふ・・・逃がしはしないわ」
「どこへ行くつもりなのかしら?」
「お前たちはここで死ぬのよ」
「そ、そんな・・・ユリ姉ちゃん、エミ姉ちゃん、ミカ姉ちゃんまで・・・」
五郎の顔が青ざめる。
その蜂女たちは立花レーシングクラブでいつも見慣れた顔の面影があったのだ。

                  ******

「畜生! 子供が子供なら親も親だ!」
「ああ・・・だがいずれは家に戻ってくるはず。立花の親父さんが見張っていてくれるそうだから、今度は逃がさんぞ」
ぶつくさと文句を言いながら病院にやってくる滝と一文字。
滝の情報をもとにひき逃げ犯の家に行ってみたものの、うちの子がそんなひき逃げなどするはずがないとけんもほろろに追い返されたのだ。
二人はやむなくそのことを病院に来ているはずのレーシングクラブのメンバーに伝えるつもりだった。

『助けてー!』
奥の病室の方から声が上がる。
「おい、今のは?」
「五郎の声だ!」
「行くぞ!」
すぐに病室に向かう滝と一文字。
二人が病室に飛び込むと、今まさに鋭い爪で二人の少年を引き裂こうとしている量産型蜂女たちの姿があった。
「こ、これは・・・」
「ショッカー!」
二人は体当たりを食らわせるようにして、蜂女たちを突き飛ばすと、二人の少年を確保する。
「隼人兄ちゃん! 滝兄ちゃん!」
「よし、五郎。もう大丈夫だ!」
滝が二人を抱えるようにして引き寄せる。
その三人をカバーするように立ちはだかる一文字。
「滝兄ちゃん! その四人はユリ姉ちゃんやエミ姉ちゃん、ミカ姉ちゃんとひろし君のおばさんなんだ!」
五郎が半分泣きながら蜂女たちを指さす。
「なんだって?」
滝も一文字もその言葉に衝撃を受ける。
確かに四体の蜂女たちは、いずれも見覚えのある面影があった。

「なんてこった・・・ショッカーめ!」
一文字が歯噛みする。
そして四体の蜂女の背後から、新たに二体の蜂女を引き連れたハエの怪人が現れる。
「ブルルルルッ! どうだ一文字隼人! こいつらは死神博士のカプセルで、量産型蜂女へと生まれ変わったのだ。こいつらが相手では、お前も戦うことはできまい!」
「出たな、ショッカーの改造人間!」
「俺様はハエ男! 貴様を抹殺するために作られたのだ。ブルルルルッ!」
「うふふふ・・・」
「おほほほほ・・・」
ハエ男と六体の蜂女たちが笑い声をあげる。

「滝! 子供たちを連れて窓から逃げろ! 俺はこいつらを食い止める」
「わかった!」
滝はそう返事をすると、二人の少年を連れてさっき五郎が逃げ出そうとした窓から外へ出る。
「変身! とうっ!」
力強い変身ポーズと掛け声が上がり、一文字隼人は仮面ライダーへと変身する。
「ブルルルルッ! 現れたな仮面ライダー! やれっ!」
「「キキーッ!」」
ハエ男の命に従い仮面ライダーに向かってくる量産型蜂女たち。
今、仮面ライダーのつらい戦いが始まった。

END
  1. 2018/01/28(日) 20:53:56|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3

ある事故の結末

今日は楽しいクリスマスイブということで、短編SSを一本投下いたします。

タイトルは「ある事故の結末」です。
なんかやや誰得のSSになってしまったかという気もしますが、私には得ですので、よろしければご覧くださいませ。
楽しんでいただけましたら幸いです。


ある事故の結末

「あなた・・・あなた・・・起きて。6時よ。起きて。6時0分15秒になったわ。起きないと遅刻するわよ。今6時0分32びょ・・・」
そこまで言いかけて口をつぐむ。
またやってしまった・・・
もっとアバウトに人間らしくしなくてはいけないのに、どうしても機械の正確さがにじみ出てしまう・・・

「う、うーん・・・もう朝かぁ?」
布団の中でゆっくりと目を開ける夫。
赤外線視覚で見ると体温の異常は感じられないし、声も問題はなさそう。
健康状態には数値的問題はないみたいね。
私は視覚を通常に戻すと、夫に笑顔を見せる。
「そうよ。もう6時3分18びょ・・・よ」
またやりそうになってしまい、思わず苦笑プログラムが働く。
人間は秒単位まで気にしないというのに・・・

夫が布団から抜け出したのを確認し、私は台所に戻る。
お味噌汁が沸騰してしまうタイミングまでは、まだあと28秒ほどあるはずなので、余裕をもって火を止められるわ。
夫が洗顔等を済ませている間に、私はタマゴを焼いて目玉焼きを作る。
切っておいたキャベツの千切りを添えて、朝食のおかずができあがる。
夫がテーブルに着くときには、おかずもごはんもお味噌汁も用意ができているというわけ。
こういうタイミングを合わせるのは、今の躰は本当に便利でいい。
でも・・・
以前の私ならやっぱり生身でいたかったと思うのかしら・・・
こんなに素晴らしい躰なのに。

                   ******

私は記憶を再確認する。
あの日、用事があって出かけた私は、車を運転中に躰にとても熱いものを感じ、意識を失った。
しばらくして目が覚めた時、私は何かよくわからない白い光の中にいた。
どこだろうと思って周りを見ようと首を動かそうとしたけれど、なぜか全く首が回らない。
手を動かそうと思ったけど、手も動かない。
いったい何が起こったのかがわからず、私は軽く混乱していた。

そのうち、光の中で人の影のようなものが姿を現したわ。
白い光の中で黒い人の形だけ。
輪郭もぼやけて人っぽく見える影と言った方がいいような姿。
その影が一言発したの。
申し訳ないって・・・

私は何が申し訳ないのか聞き返したわ。
すると、私の躰が蒸発してしまったことを詫びてきたの。
えっ?
私の躰が?
嘘でしょ?
だって、今も躰があるのは感じているのに?

それは幻の感覚だと彼は答えたわ。
男の声っぽかったから彼と言ったけど、性別はわからない。
そもそも性別があるかどうかもわからない。
彼は続けた。
犯罪者を追い詰め、抵抗してきたのを取り押さえるために撃った一撃が、偶然にも次元のはざまを飛び越して君の乗っていた輸送機器に命中してしまった。
そのため、君の輸送機器の下側部分と君の躰は瞬時に蒸発し、かろうじて直撃をまぬがれた君の頭部だけを緊急回収した。
なんとか君を救うべく、今は一時的に頭部のみを生かしている状態に過ぎない・・・と。

何を言っているのか?
私は何か質の悪い冗談に付き合わされているのではないか?
そんな思いをよそに、彼は続ける。
本当に申し訳ないことをした。
我々のできる限りの補償はさせていただく。
偶然とはいえ、放った衝撃波が現地の知的生物を傷つけてしまうことはあってはならないことだ。
可及的速やかに補償について話し合いたいと思っているため、こうして君に覚醒してもらったというわけだ。

補償とは?
私の質問に彼は答える。
君の乗っていた輸送機器については問題ない。
あの程度の低テクノロジーの輸送機器であれば、ほぼ完全に再現が可能だ。
事故時点の記録から、すでに再現は行われているので、確認してほしい。
彼がそういうと、私の目の前に車が現れる。
私の乗っていた車だ。
私が過去に運転をミスってつけてしまった傷も同じ位置にある。
ナンバーももちろん同じ。
再現?
単に私の乗っていた車を持ってきたのでは?
そうではないと彼は言う。
この輸送機器の下部は君の躰とともに蒸発した。
残っていた上部はそのまま利用しようとも思ったが、どうせならと作り直した。
上部を元のと取り換えるならそれでもいい。
私は首を振ろうとして振れないことに気が付いた。
だから、そのままでいいとだけ答えた。

問題は・・・
と彼が言う。
影しかないのに、彼が難しい顔をしたような気がした。
君の躰のほうだと続ける彼。
君の躰は残念ながら元通りに再現するのは無理だと判明した。
えっ?
無理?
車を傷の部分まで完璧に再現できるのに?
確かに君たちの種族の基本的構成要因はそれほど複雑なものではない。
しかし、我々は生命技術においてはいまだ発展途上であり、無から君たちの躰を作り出すことはまだできないのだ。
我々が君に提示できる選択肢は二つ。
我々の種族の躰に君の脳を移植し、我々の種族の一員として今後暮らすというものが一つ。
もう一つは、君の躰を模した機械を用意し、そこに君のデータを落とし込むことで機械の一種として生きていくこと。
この二通りだ。
もちろんこれ以外にそのまま死を受け入れるというのもあるが、それは君は望まないだろう?

あなたたちの種族になるということは、家族と離れなくてはならないのですか?
もちろんだ。
我々は犯罪者を追ってたまたまこの世界にかかわったに過ぎない。
それも事故によってだ。
なので、この件が終われば我々はここを離れる。
我々の種族の一員となれば、我々の世界で生きてもらうことになるが、もちろん全力でサポートするつもりなので安心してほしい。

機械になれば家族と離れずに済むのですか?
機械とはいえ、特殊素材でできた外皮により、君の種族と見た目的な差異はなくすることが可能だ。
事故直前の情報から、君そっくりの外見を再現することもできる。
ただし、機械に君のデータを移し替えるため、機械的な思考になることはあり得るし、長期にわたって外見上に老化は起きない。
そのため、いずれは家族に違和感を感じられてしまう可能性はある。

私の答えは決まっていた。
少なくともこんなことで家族と別れるのはいやだ。
私は機械の躰を用意してもらい、そこに“私”を移し替えてもらったのだ。

                   ******

それ以来、私は何食わぬ顔をして家族と一緒に暮らしている。
いずれは家族に違和感を感じられる可能性はあるが、現状ではその可能性は3%ほどと低い数値だ。
と・・・あと28秒で6時30分。
娘を起こさないと。
部屋を出て娘の部屋に行くまでに8秒。
不測の事態が起きても対応できる時間はあるわね。
私はそう計算し、リビングを出て娘の部屋に向かった。

4分12秒で娘を起こしてリビングに戻ってくると、夫は黙々と食事を続けていた。
何も言わずに食べているけど、その表情から計算すると、今朝の食事に満足している確率は77%。
悪くない数値である。

「おはよー」
パジャマ姿の娘がリビングに入ってくる。
「おはよう。早く顔を洗ってらっしゃい。朝御飯できてるわよ」
「はぁい」
娘は私に返事をしてそのまま洗面所に向かう。
その間に私はご飯とお味噌汁を用意する。
ちょうど娘が戻ってきてテーブルに着く。
うん。
計算通り。

「お父さんもおはよう。いただきます」
「ああ、おはよう」
「うん、いいにおい。最近お母さんって手際が良くなったよねー」
そう言いながらご飯を口に放り込む娘。
「ご飯もおいしくなったしさ。お父さんもそう思わない?」
「そうだな・・・朝はきちんと時間通りに起こしてくれるしな。前は自分でも寝過ごしていたぐらいなのにな」
夫が笑っている。
そうだったかしら?
時間に合わせて行動するのは当たり前でしょ?
ご飯だってグラム単位で計算していれば味覚に合うぐらい当然だわ。
って・・・これももう少しアバウトにした方がいいのかしら?
なんだかアバウトっていやなのよね・・・

「キャベツの千切りだってすごくきれい。いつの間にこんなに上手になったの?」
目玉焼きの付け合わせのキャベツの千切りを口に運んでいる娘。
包丁をミリ単位で動かせばいいだけのことだから、何でもないことなのに・・・
生身だった時はできていなかったかしら・・・

「ごちそうさま。さて、行くとするか」
食事を終えて身支度を整えていく夫。
私は置いてあったカバンを取ってきて手渡す。
「行ってらっしゃい」
「うん、それじゃ行ってくる」
私からカバンを受け取ると、夫は娘にも手を振って玄関へ向かう。
「行ってらっしゃーい」
娘も夫に手を振ると、食事を済ませ、制服に着替えるために部屋に向かった。

                   ******

夫も娘も出かけると、私は後片付けを済ませ、充電に入る。
今の私には食事は不要なもの。
夫や娘に怪しまれないように食べる真似はできるけど、食べたものはそのままトイレで吐き出している。
食事なんかより充電のほうが私は好き。
電気が充填されていくと、躰がほてって気持ちよくなるの。
私はスカートを捲り上げ、ショーツをずらして尾てい骨のところからコードを伸ばす。
そして家庭用コンセントにコードを差し込むと、その前で四つん這いになって充電を楽しむ。
ああ・・・ん・・・
気持ちいいわぁ。
脳にも躰にも電流が流れ、機械である喜びを感じることができる。

「ピッ! プログラムを開始・・・通信を行います」
私の口から普段とは違う電子音が発せられる。
それと同時に、左右の耳からアンテナがせり出していく。
プログラムが起動し、“彼ら”へとデータが送られていくのだ。
私の見聞きしたこの世界のデータ。
専業主婦である私には大した情報は持たないが、それでもこの世界を知る貴重なデータになるだろう。
いずれこのデータをもとに彼らの行動が行われることになる。
時間的計算で言えば、私のデータを使うことですでに私と同じように機械人間に置き換えられた人間は90%以上の確率で10体以上。
70%以上に範囲を広げれば50体以上はいると言える。
置き換えられた私たちは、時期が来たら彼らの組み込んだプログラムに従って人間を攻撃し、彼らがこの世界を支配する手助けをする。
そのことがわかっていながら、私はそのことを家族に伝えようとは思わない。

なぜなら、私はすでに彼らの側として行動するようにプログラムされており、彼らに従うことこそが私の存在理由となっているから。
いずれ彼らのプログラムが発動して、私自らが家族を攻撃する日が来る。
だが、私はそのことを心待ちにしている自分を抑えられない。

彼らが私の躰を作ってくれたのは補償からでも好意からでもなんでもない。
都合がよかったからなのだ。
彼らの示した選択肢を私がどう選ぼうと彼らはよかった。
脳移植を受け彼らの一員となれば、私は喜んで彼らにこの世界の情報を伝えていただろうし、機械人間になれば、こうして彼らの手先として世界に潜り込ませられるのだから。

私を巻き込んだ事故は確かに100%偶発的なものだった。
しかし、その事故の元となった“犯罪者”は、この世界に彼らの侵略が迫っている危険を知らせようとしていた確率が70%を超える。
犯罪者を始末した結果、偶然私を手に入れることができたことは、彼らにとって喜ばしいことだったであろう。
おかげで私はこうして人間のふりをしながら彼らのために行動している。

「ん・・・充電終了」
私は通信と充電を終え、アンテナを格納してコードも収納する。
立ち上がってショーツとスカートを直し、外見を整える。
今日は買い物ついでに町中にでも出かけてみよう。
些末な情報でも彼らにとっては有意な情報となるのだから。
今晩のおかずは何がいいかしら。
今はせいぜい家族のために尽くすようにとプログラムが命じている。
いずれ時が来たら・・・
うふふふふ・・・
私は充電による満足感とは違う、何か別の喜びをプログラムによって感じさせられていた。

END

それでは皆様良いクリスマスをお楽しみください。
年末年始にはまた二三本SSを投下できるかと思いますので、お楽しみに。
ではでは。
  1. 2017/12/24(日) 20:46:30|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6

クモとアリ

ブログ開設から4500日記念SSの第三段です。
今日はショッカー風女怪人SSです。

タイトルは「クモとアリ」です。
まあ、そのまんまです。(笑)
お楽しみいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


クモとアリ

「はあ・・・」
玄関を開けた時の絶望感・・・
今日もまた家には誰もいなかった・・・
一人・・・
たった一人の人がいてくれないことがこれほどつらいことだとは・・・
「優斗(ゆうと)さん・・・」
確かに時間的にはまだ帰っていない時間かもしれない。
いつもなら誰もいない家に帰ってくるのは普通のことだった。
でも・・・
それはあと二時間もすれば彼が帰ってくるのがわかっていたからのこと。
だが今は・・・
「優斗さん・・・あなたはいったいどこに・・・」
今日は・・・
今日こそは家に戻ってきてくれているかもしれない・・・
そう希望をもって家に帰るようになって一週間。
いまだ彼は戻っていない。
誰も出迎えてくれなかった玄関で、紗月(さつき)は思わず膝をつき、涙を流すのだった。

「それじゃ行ってくるよ」
いつも通りに玄関を出ていく優斗。
「あ、行ってらっしゃい。私もすぐ出ます」
身支度を整えながら彼を見送る紗月。
スーツ姿の優斗がにこやかに手を振っていく。
いつもと変わらぬ二人の朝。
だが、この日から優斗は帰ってこない。
会社はいつも通りに退社したという。
事故や事件という話もない。
両親や親戚の家に行ったという報告もない。
共通の友人に聞いても誰一人彼の行方を知る者はいなかった。

三日後には警察にも届け出た。
もはやそれ以上できることはなく、あとは帰りを待つしかない。
最初は浮気も疑ったが、もはや戻ってきてくれるのならどうでもいい。
結婚して一年ちょっと。
スポーツマンの彼にあこがれたのは彼女の方。
それからはことあるごとにアタックし、彼女の座を射止めた。
そして結婚。
本当に幸せだった。
でも・・・
幸せだったのは自分だけだったのではないだろうか・・・
魅力のない自分に飽きられてしまったのだろうか・・・
もっと女を磨いていればよかったのだろうか・・・
何となく惰性で夫婦をしていたからではないだろうか・・・
いろいろなことが思い浮かぶ。
とにかく戻ってきてほしい。
彼がいないのでは生きている意味がない・・・

食事を作る気にもならず、部屋に一人でいることにも耐えられず、紗月は家を飛び出した。
どこへ行く当てがあるわけでもない。
ただ一人でいるのがいやだった。
いつも二人で笑って過ごしていたあの部屋。
一人でいるのは耐えられない・・・
「優斗さん・・・どこなの?」
夜の街をうろつく紗月。
いつしかその足は人気のない暗闇へと向かっていた。

「えっ? あれ?」
気が付くと暗い裏路地を歩いていた紗月。
どこをどうやって歩いてきたのか・・・
そもそもここはどこなのか?
「いけない・・・戻らなきゃ」
そう思って来た道を戻ろうとはするものの、はたして自分が来たのは右の道からだっただろうか、左の道からだっただろうか記憶がない。
「えっ? どうしよう・・・ここどこ?」
昼間ならまだ周囲の風景から判別がついたかもしれない。
だが、今はもう夜。
街灯も少なく、住宅もちらほらとしかなく、さっぱり方角がわからない。
「どうしよう・・・」
紗月は青ざめたが、とにかく行けるところまで行ってみようと道を歩き出す。
その時だった。

「きゃっ!」
突然彼女の躰に何かが絡みつく。
ねばつく太いヒモのようなものが手足に絡みついて、もがけばもがくほど絡まってしまうのだ。
「やだ、何これ? 何なの?」
引きちぎろうとしても、彼女の力では引きちぎることもできない。
それどころか、かえって絡まりを深めてしまう。
「だ、だれか・・・助けて」
まるで蜘蛛の巣にでも引っかかてしまったかのように、ヒモに絡めとられてしまう紗月。
そこに数人の人影が現れる。
「あ、すみません、たすけ・・・」
一瞬助けを求めかけた紗月だったが、現れた人たちの異様な姿に言葉を失ってしまう。

それは何とも異様な姿。
体形から男性が二人に女性が一人ということはわかるものの、そのいずれもが頭のてっぺんからつま先までの全身を黒いタイツ状の衣服で覆っており、顔も目の部分以外は覆われているため、日本人なのか外国人なのかもよくわからない。
両手両足は黒いブーツと手袋を付けており、腰にはドクロのマークの付いたベルトを締めている。
まるで何かで見た特撮のキャラクターみたいだ。
そしてそれ以上に驚くべき姿なのが、彼らの後ろに立っている異形の姿。
がっしりした体格だが、全身を黒く短い剛毛が覆い、ところどころに赤い筋状の毛が走っている。
頭には角のような二本の突起があり、赤く丸い目が大きいのが二つに小さいのが四つこちらをにらんでいる。
口元には左右に開くあごのようなものがあり、肩からは片方二本ずつの人間の腕のようなものが生えていた。
「あ・・・あああ・・・」
まるで蜘蛛と人間が融合したかのようなその異形の姿に、紗月は声も出ない。
この躰に絡みついたヒモのようなものは、この化け物の巣だったとでもいうの?

「シュシュ―! この女だ。連れていけ」
「キキィーッ!」
蜘蛛の化け物の言葉に黒づくめの連中が奇声を上げて応える。
男二人が左右から紗月の腕を抑え、女は紗月の口に何やら布をかぶせてくる。
「やっ、何を、やめ・・・て・・・」
何かの薬品の臭いが紗月の鼻を通り、彼女は急速に意識が遠くなっていった。

                   ******

「ん・・・」
意識が戻ってくる。
「ここは?」
ぼんやりと見上げる天井。
そこにはTVなどでよく見る手術用の無影灯のようなものが点いていた。
「えっ?」
慌てて躰を起こそうとしたものの、両手と両足が固定されていて起き上がれない。
それどころか、首まで固定されているではないか。
「ちょ、ちょっと、何これ?」
自分がいったいどうなったのか、紗月は全く見当もつかない。
わかっているのは、自分があの化け物たちに捕らえられたことと、ここに寝かされていることだけ。
いったい何がどうなっているのか・・・

スッと彼女の額に何かが触れる。
「ひっ!」
思わず小さな悲鳴を上げる紗月。
見ると、彼女の頭のところに、あの蜘蛛の化け物が立っているではないか。
「ひぃーー! いやぁぁぁぁぁ!」
恐怖のあまり大声でわめき首を振る。
「シュシュ―! サツキ・・・」
「えっ?」
突然自分の名前が呼ばれたのだ。
「ど、どうして?」
「シュシュ―! サツキ・・・怖がるな・・・」
彼女の額をなでながら、躰の位置を彼女の横に移す蜘蛛怪人。
「ど、どうして私の名を・・・」
そう尋ねた紗月の脇に、チャラッと音がしてペンダントが置かれる。
それは新婚旅行で二人で買ったペンダント。
もう片方は紗月の首にかかっており、もう片方は・・・
「まさか・・・優斗・・・さん?」
「シュシュ―! それは改造を受ける前の俺の名だ。今の俺は組織の改造によって生まれ変わり、クモ男となったのだ」
複数の赤く丸い目が紗月を見つめている。
「まさか・・・そんな・・・」
紗月は言葉が出ない。
探していた愛する人がまさかこんな姿になっていようとは・・・

「シュシュ―! 恐れることはない。お前は試験に合格した。お前も組織の改造人間になれるのだ」
「えっ? 改造人間?」
「シュシュ―! そうだ。首領様にお仕えし、組織の一員として人間どもを支配する改造人間だ。俺はお前を俺のパートナーとして改造人間に推薦した。そしてお前は見事に試験に合格したのだ」
何を言っているのか?
改造人間?
組織?
紗月には何が何だかさっぱりわからない。
そもそもこの状況は現実なのだろうか?
本当に目の前のこの異形の姿があの優斗さんなのだろうか?

「シュシュ―! 俺はお前を失うのが怖かった。下等な人間のままでは、いつかお前は組織によって単なる奴隷にされてしまう。だから俺はお前を改造人間に推薦したのだ。せめて女戦闘員でもと・・・だがお前は改造人間になれるのだ。俺も誇らしく思うぞ」
紗月の耳元で語り掛けているクモ男。
だが、紗月にはそんな言葉は耳に入ってこない。
「いやぁ・・・いやです。お願い・・・家に、家に帰して」
「シュシュ―! バカなことを。お前は選ばれたのだ。組織の一員となる栄誉を与えられたのだ。おとなしく改造を受けるのだ」
「いやっ! いやぁっ! 改造なんていやよぉ!」
必死になって身をよじる紗月。
化け物になんかなりたくない。
そう思い、何とか逃げ出そうとするものの、手足の枷は彼女の力ではどうすることもできない。
「シュシュー! 構わん。この女の手術を始めるのだ」
「キキィーッ!」
いつの間に現れたのか、全身を白い全身タイツに包んだ男女がクモ男の指示に従い、紗月の手術を開始する。
「いやっ! いやぁぁぁぁっ!」
もがく紗月の口に麻酔のマスクが付けられ、紗月はまたしても深い闇の中へと意識が沈んでいくのを感じていた。

                   ******

紗月は夢を見ていた。
夫優斗との楽しい夢。
二人で他愛もない話をして笑い、手をつないで抱きしめ合う。
夫のたくましい胸に抱かれ、そのぬくもりに包まれる。
安心と希望に満ちた世界だ。
やがて夫の姿が変化する。
その躰には黒く短い剛毛が生えていき、腕も四本に分裂する。
顔も剛毛に覆われ、角のような突起や赤く丸い目ができていく。
紗月は一瞬驚いたものの、むしろその姿を好ましく感じることに気が付いた。
改造人間となり、蜘蛛の力を手に入れた夫。
下等な人間からより高い存在へと生まれ変わったのだ。
なんて素敵なのだろう・・・
羨ましい・・・
自分もそうなりたい・・・
改造され、改造人間として生まれ変わりたい・・・
紗月は強くそう思う自分に気が付いた。

すると、紗月の躰に変化が起こる。
内臓が強化され、補助機械がその機能をサポートする。
心臓も、肺も、消化器官も、すべてが強化されていく。
力も強くなっていく。
筋肉が強化されていくのだ。
人間の何倍もの力が出せる筋肉。
それが紗月の躰を変えていく。

脳にも機械が埋め込まれる。
より自分の躰を制御できるように、より組織のことを理解するために。
新たな社会をつくる組織。
自分もその一員に加わるのだと紗月は理解する。
首領様に従い、一糸乱れぬ統率で組織のために働く。
それが組織の一員である自分の務めなのだ。
なんてすばらしいのだろう。
今までの自分はおろかだった。
下等な人間どもの一部として地球を汚すことしかできなかった。
だが、これからは違う。
自分は選ばれたのだ。
首領様に選ばれたのだ。
改造人間になる栄誉を与えられたのだ。
こんなうれしいことはない。
これからは首領様のためなら何でもする。
紗月はそう思う。

やがて紗月の躰に黒くて硬い外皮が貼り付けられていく。
銃弾すら跳ね返すことのできる硬い外皮だ。
これからはこの外皮が自分の肌となる。
そのことが紗月はうれしかった。
両手も、両脚も、胴体も外皮に覆われていく。
胸のところは形良く膨らんだ昆虫のお尻を思わせる感じだ。
ここからは酸を吹き出すことができる。
母乳などというくだらないものではない。
下等な人間を溶かす強力な酸だ。
なんと素晴らしい事だろう・・・

最後は頭も変わっていく。
髪の毛はきれいになくなり、硬い外皮で覆われる。
額には二本の触角が作られ、これまで以上に感覚が研ぎ澄まされていく。
これなら暗闇の中で行動しても問題はないだろう。
目も複眼に置き換わり、より多数の目で見ることができる。
たった一つの目でものを見ていたなど、なんと下等だったのだろう。
自分は進化するのだ。
改造人間というより高度な存在に。
そして組織のために行動する。
それこそが自分が生まれ変わる意味なのだ。

『目覚めよ。アリ女よ』
首領様の声が響く。
その瞬間、紗月は自分が何者かを理解した。
自分はアリなのだ。
強靭な外皮を持ち、両手の爪でトンネルを掘り進み、不要な人間を蟻酸で始末するアリなのだ。
紗月などという名前にはもはや用はない。
それは下等な人間だった時の名前。
今の自分はアリ女。
改造人間アリ女なのだ。

「リリリリー!」
彼女はゆっくりと起き上がる。
そして手術台からゆっくりと降り、首領に対して一礼した。

                   ******

ドアをたたくノックの音。
硬質な響きが気持ちいい。
あらためて自分の躰が硬質化したことを感じさせてくれる。
「シュシュー! 誰だ?」
ドアの向こうからクモ男の声がする。
それだけでアリ女の心は踊る。
「リリリリー! 私はアリ女。入ってもいいかしら、クモ男?」
あらためて自分の名を口にして喜びに浸る。
アリ女・・・
なんていい響きだろう。

「シュシュー! もちろんだ。今開ける」
ドアのロックが外される。
先ほどまでトレーニングをしていたと戦闘員に聞いていたので、おそらく今は休息中だったはず。
もしかしたら後にしてくれと言われるかと思っていたが、入れてもらえてうれしい。
「シュシュー! よく来たな、アリ女。歓迎するぞ」
ドアを開けてアリ女を出迎えるクモ男。
その剛毛に包まれた躰がたくましい。
改造人間というのはこんなにも素敵なものだったなんて・・・

「リリリリー! 休息中にお邪魔だったんじゃないかしら?」
「シュシュー! とんでもない。お前が来てくれるのを待っていた」
「リリリリー! ホント? うれしいわ」
クモ男の部屋に入るアリ女。
アジトの控室は質素だが一通りのものはそろっている。
椅子、テーブル、ベッドなど。
室内にある鏡に彼女の姿が映っている。
大きな頭には額から触角が伸び、楕円形の複眼が鏡の中から彼女を見ている。
左右に開くあごは鉄の棒さえ噛みちぎる。
全身は黒光りする外皮に覆われていてとても硬いが、滑らかなラインは彼女が女性の改造人間であることをあますところなく表している。
二つの胸のふくらみはアリの腹部を模しており、そこから出る蟻酸は強力だ。
まさにアリと人間の融合した姿は、彼女にとって誇らしい姿だった。

「シュシュー! 座るがいい」
クモ男が椅子をすすめてくる。
どうやら彼自身はベッドにでも腰掛けるつもりらしい。
「リリリリー! 私もそっちへ行っていいかしら?」
せっかく二人になったのだ。
そばに行って触れ合いたい。
アリ女はそう思う。
自分が改造人間になれたのはクモ男の口添えがあってのこと。
そのお礼もしたい。

アリ女はクモ男の返事を待つことなく彼の隣に座る。
そしてその身を彼にもたれかけさせる。
温かい。
クモ男の体温を感じる。
なんだかとても懐かしい。
もちろん、あのころのことなど思いだしたくもない。
自分が人間だったなど吐き気がする。
だから・・・
私たちは新たに時を刻んでいこう。
改造人間同士の素晴らしい時間を・・・
「リリリリー! ねえ、クモ男。どう? 私は生まれ変わったわ。私は改造人間アリ女。あなたのおかげよ。感謝しているの」
「シュシュー! 俺もうれしいぞ。お前は美しい。これからはともに組織のため、首領様のために働こうではないか」
「リリリリー! ええ、もちろんよ。偉大なる首領様。あの方のためなら何でもするわ。でも、その前に・・・」
アリ女はクモ男の顔を見つめる。
「シュシュー! その前に?」
「リリリリー! あなたにお礼がしたいのよ。私を改造人間に推薦してくれたお礼。それにね、私、まだ自分の躰のすばらしさを味わいきってないの。あなたが味わわせてくれると嬉しいんだけど・・・」
クモ男の顔を手で引き寄せながら、アリ女はベッドに躰を横たえる。
「シュシュー! それじゃたっぷりと味わわせてやるとしよう。ケケケケケ・・・」
クモ男は奇妙な笑い声をあげ、そっとアリ女の上に重なった。

                   ******

「うわーーー! ば、化け物だーー!」
悲鳴を上げて逃げてくる警備員。
失礼な男だわ・・・私たちは化け物なんかじゃないわよ・・・
もうすぐここにやってくるであろう警備員に対してアリ女はそう思う。
自分たちは首領様に選ばれた改造人間なのだ。
下等な人間どもとは違う。

警備員の背後では、シュシューというクモ男の声や、キキーッという戦闘員たちの声が聞こえてくる。
既に大半の警備員は始末したはずだが、生き残りがいたようだ。
私たちの姿を見たからには始末しなくてはならない。
人間を殺せると思うとアリ女の心は高ぶってくる。
まるでこれからセックスでもするかのよう。
アリ女の顎が笑みを浮かべるようにやや左右に開く。
クモ男とのセックスは最高。
改造人間同士のセックスがあんなに気持ちがいいものとは思わなかったわ。
任務が終わったらまた・・・
くふふ・・・

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
息を切らせた警備員がやってくる。
もうすぐ玄関ということで、少し安堵したのかもしれない。
愚かな男。
所詮は下等な人間ということね。
暗闇からゆっくりと姿を現すアリ女。
薄暗い中に黒光りする外皮が反射する。
「うわーーー! こ、こっちにも化け物がーーー!」
「リリリリー! まったく失礼な男ね。私たちは化け物なんかじゃないわ。私たちは改造人間。お前たち下等な連中とは違うのよ」
腰が抜けたのか、へたり込んでしまった警備員を見下ろすアリ女。
おびえた表情で自分を見上げる警備員に、アリ女は嗜虐心をくすぐられる。
「リリリリー! 私たちを見たものは死あるのみ。死ね!」
両手でアリの腹部のような乳房を持ち上げ、そこから強力な蟻酸を吹きかける。
「ギャーーー!」
蟻酸をかけられた警備員は断末魔の悲鳴を上げ、ドロドロに溶けていく。
その姿がなんとも見ていて気持ちいい。
人間を殺すことがこんなにも気持ちがいいなんて・・・
アリ女は改めて改造人間となった自分を素晴らしく感じた。

「シュシュー! 始末したようだな」
クモ男が天井から降りてくる。
どうやら彼のほうも終わったようだ。
「リリリリー! ええ、始末したわ」
足もとの液体を見やるアリ女。
警備員は骨も残さずに溶けきっていた。
「シュシュー! よくやったぞ。これでお前も組織の立派な一員だ」
我がことのようにうれしそうなクモ男。
推薦したことが間違っていなかったと思っているのだろう。
「リリリリー! 当然でしょ。私は改造人間アリ女。組織の忠実なしもべよ」
「シュシュー! そうだな」
「リリリリー! それにしても・・・人間を殺すのって楽しいのね。もっともっと殺したいわ。クフフフ」
「シュシュー! 安心しろ。次の任務ではもっともっと殺せるさ。それより・・・」
二本ある右手でアリ女の腰を抱き寄せるクモ男。
「シュシュー! 早くアジトに帰って楽しもうぜ」
「リリリリー! ええ、もちろんよ。今夜は寝かせてあげないんだから。クフフフフ」
自らも躰を寄せるアリ女。
二体の異形の怪人たちは、仲良く闇に消えていくのだった。

END


四日間にわたりましたSS投下期間、お楽しみいただけましたでしょうか?
お読みいただきまして本当にありがとうございました。
また次回作に向けて執筆頑張りますので、どうか今後とも当ブログ「舞方雅人の趣味の世界」をよろしくお願いいたします。

それではまた。
  1. 2017/11/13(月) 20:47:19|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:9

ハニトラボーグ

今日は短編SSを一本投下します。
短編と言いましても、できれば二回に分けたかったぐらいの長さなのですが、どうも分けるところがなかったので、今回は一気に投下しちゃいます。

タイトルは「ハニトラボーグ」です。
楽しんでいただければ幸いです。
それではどうぞ。


ハニトラボーグ

「すんすん・・・ぐすん・・・」
どこかですすり泣く声が聞こえる・・・
「ぐすっ・・・お願い・・・助けてぇ」
だれが助けを求めているのだろう・・・
私はいったい・・・

「ハッ」
私は目を覚ます。
ここは?
私はいったい・・・

私は躰を起こそうとして、手足と首が固定されていることに気が付いた。
「えっ?」
まるで台の上に大の字で磔にされているみたい。
かろうじて首を左右に振ることはできたので、私は周囲を確認する。
「くすんくすん・・・」
私の右側には少女が寝かされている。
しかも全身丸裸にされているではないか。
いったいこれは?

躰の感じからどうやら私も裸らしい。
ひんやりとした部屋の空気を肌に感じる。
顔を上げて確認しようにも、首が固定されているのでそれもできない。
どうしてこんなことに・・・

確か私は職場を出て家に帰る途中だった。
晩御飯の食材の買い出しに行こうと思って、スーパーへの道を歩いている途中、向かい側から歩いてきた男性にスプレーを浴びせられ・・・
そのまま気が遠くなってしまったんだった・・・

どうしよう・・・
私誘拐されてしまったんだわ。
おそらく隣の彼女もそうなんだ。
どうしよう・・・
助けて・・・晴樹(はるき)さん・・・

「すん・・・すん・・・ママ・・・パパ・・・」
隣で少女がすすり泣いている。
年のころは中学生か高校生ぐらいかしら・・・
「あなたもさらわれたの?」
私は思い切って声をかけてみる。
可能なら二人でここから脱出したい。

「あ・・・は、はい。学校から帰る途中で・・・」
私の声に気が付いたのか、彼女はこっちを向いてくれる。
どうやら彼女も手足と首を固定されているみたい。
どことなく幼さが残るかわいい顔立ちの子だ。
「やっぱり学生さんなんだ。高校生?」
「はい。東高校の二年生です」
「わお、有名な進学校じゃない。頭いいんだ」
私は思わずそう言ってしまう。
私は東高入れなかったもんなぁ。
「いいって程では。たまたま受かっただけで」
「謙遜謙遜。あ、私は島月春歌(しまづき はるか)って言います。春の歌って書いて春歌」
「私は森生更紗(もりお さらさ)って言います。よろしく。島月さんも誘拐されて?」
こんな状況なのに、丁寧にわざわざよろしくまで付けてくれる。
きちんとしたお嬢様なのかもしれない。
「春歌でいいわ。ええ、どうやらそうみたい。それにしてもこんな格好にさせられて、どういうつもりなのかしら・・・」
私は今更ながらに自分が素っ裸なことに恥ずかしくなる。
「わかりません・・・うち、貧乏なので身代金なんか払えない・・・」
「うちもそうよ・・・貯金は結婚式で結構使っちゃったしなぁ・・・」
私は思わず苦笑する。
もちろんお金はこれから晴樹さんと二人で貯めていけばいいねって話していたところだったけど。
「島月さん、あ、春歌さんは結婚されていたんですか?」
「そうよぉ。まだ新婚半年ちょっとなんだぞ。それなのに・・・」
ちょっとおどけて見せる私。
もう一度晴樹さんに会いたい・・・
会って思い切り甘えたい・・・

「いいなぁ、結婚。私もいつか・・・」
「更紗ちゃんならいい人とめぐりあえるわよ。あ、それとももう彼氏がいた?」
「いいえ、まだいません」
「そうか。でも、すぐに見つかるわよ」
うん。
ちょっと話しただけだけど、更紗ちゃんいい子だもん。

「さて、おしゃべりはそろそろやめにしてもらおうか。準備が整ったのでね」
突然部屋に数名の男たちが入ってくる。
黒いスーツにサングラスをかけた男や、白衣を着てサングラスをかけている男。
共通しているのは全員がサングラスをかけていることで、それがとても不気味だ。
「私たちをどうするつもりですか?」
「お願い。家に帰して!」
私も更紗ちゃんも男たちをにらみつける。
どうして私たちのような女を誘拐したりなんかしたのか。

「心配はいらない。君たちはすぐに家に帰れることを約束しよう。ただ・・・ちょっとした手術を受けてもらうことになるが・・・」
家に帰れるという言葉に一瞬喜んだ私だったが、男の次の言葉に背筋が凍る。
手術ですって?
「いったい何の手術ですか?」
「私はどこも悪くないです!」
私だって悪いところなんか・・・
そう考えて、私はある考えに思い至る。
「まさか腎臓や肝臓とかを・・・」
臓器売買の組織があるとかいう噂はネットでは見かけるもの。
まさか私たちはそのために誘拐されたのでは・・・

「はっはっは・・・そうだね。確かにそれも有効な資源なのだが、もっと単純に君たちそのものが必要なのだ」
黒服のサングラスの男が冷たく笑う。
私たちが必要?
どういうこと?
「ふむ。見せたほうが早いだろう。おい、ナンバー12を呼べ」
男は脇にいるもう一人のサングラスの男に指示をすると、その男が部屋を出る。
しばらくすると、男は赤いロングドレスを身にまとった一人の女性を連れてきた。
とても美しい女性だわ。
「12号。二人に挨拶を」
「かしこまりました。私はハニートラップ用サイボーグナンバー12です。よろしくお願いいたします」
女性が私たちのほうに優雅にお辞儀をする。
サイボーグ?
ハニートラップ用?
サイボーグというのはアニメなどで聞いたことがある。
この人は・・・
もしかしてこの人は機械?

「ナンバー12よ、お前の任務はなんだ?」
「はい。私の任務は組織の命令に従い、ターゲットにハニートラップを仕掛け、目的を達成することにあります」
サングラスの男の質問にすらすらと答えていくドレスの女性。
直立不動で微動だにしない。
「目的は主にどんなものがある?」
「はい。目的は主にターゲットが所有する情報の引き出しです。ほかにターゲットそのものの暗殺も含まれます」
「今まで何人のターゲットを暗殺した?」
「はい。三人です」
えっ?
この女性は人を三人も殺したことがあるというの?
私は驚いた。
そんなことって・・・

「二人に胸を見せてやれ」
「かしこまりました」
そう言って女性はドレスから形良い胸をさらけ出す。
全く頬を赤らめたりもせずに胸を出す彼女に対し、逆に私のほうが恥ずかしさを感じてしまう。
「針を出せ」
「かしこまりました」
えっ?
彼女の胸の乳首から針がのびてくる。
注射器についているような針だ。
ど、どうして?
サ、サイボーグって・・・
「その針は何のためにある?」
「薬物注入のためです。主に自白剤の注入や、麻痺毒の注入に使われます」
「その針をターゲットに突き刺すわけだな?」
「その通りです」
彼女はにこやかに両手で胸を持ち上げ、乳首の先端の針を私たちに見せつける。

「もういいぞ。下がってよし」
「失礼いたします」
ドレスの中に胸をかくし、一礼して下がっていく女性。
歩き方も優美で、男なら見惚れてしまうに違いない。

「彼女も元は君たちと同じく一般人でね。優れた容姿に目を付けた我々が拉致してサイボーグ化したというわけだ。以前は普通のOLだったが、今では我々の忠実な手駒となっているよ」
サングラスの男がにやりと笑う。
「君たちにもそうなってもらう。光栄に思いたまえ。君たちは選ばれたのだよ。我々に」
「いやぁっ! いやですっ! 帰して! おうちに帰してぇ!」
悲鳴を上げる更紗ちゃん。
無理もないわ。
私だって大声で叫びたい。
サイボーグにされるのなんていやぁっ!

「まあ、そういわずに。なに、サイボーグ化が終われば、プログラムの影響でいやだなどとは思わなくなるよ。それどころか組織のために働くのこそ使命だと思うようになる」
「ど、どうして・・・どうして私たちなんですか? 容姿ならほかに優れている方がいっぱい・・・モデルさんとか」
「顔が知られているようなのは目立つし警戒もされる。君たちのように普通からやや上ぐらいのほうが需要が多いのだよ。もちろん女子高生も好まれる」
「そんな・・・」
私は言葉を失う。
どうしたらいいの・・・

「それでは始めよう。スタッフも待ちかねているしね。なに、麻酔から覚めれば君たちは新たな自分に生まれ変わるのだ。期待したまえ」
「いやっ! いやぁっ!」
「いやっ! やめてください! 放して!」
私たちの叫びもむなしく、私の顔には麻酔用のマスクがかぶせられ、私は急速に意識が遠くなっていった・・・

                   ******

ピッ・・・
電源接続完了・・・
充電中・・・
脳内で私がしゃべっている・・・
胸の部分が少し熱くなって、バッテリーに充電されていくのがわかる・・・
充電率20%
作動最低値に到達、各部チェック開始・・・
下肢、上腕ともに異常なし、関節正常。
脳への循環液流入正常。
疑似体温発生問題なし、体表面32度まで上昇、なおも上昇中。
充電率30%
制御プログラム作動開始。
メモリーチェック、人格制御異常なし。
理念改変正常、異常衝動なし。

私は躰の各部をチェックしていく。
どこにも問題はない。
まだ筋肉動作が行われていないため動作は不能だが、思考作業は可能。
各部痛覚センサー異常なし。
音声センサー正常値。
発声装置試験開始。
「あ・・・あ・・・あいう・・・えお・・・私は・・・サイボーグです・・・」
発声機能正常。
胸部薬液注入装置試験開始。
注入針伸縮装置正常。
薬液注入装置正常。
カートリッジ交換装置正常。
私の胸から薬液注入針が伸び縮みするのを感じる。
うふっ・・・
なんだかくすぐったい・・・

充電率40%
視覚センサー試験開始。
私はゆっくりと目を開ける。
天井の位置に自動で焦点が合わさり、くっきりと見える。
これなら遠くまで見ることも問題ない。
赤外線視覚に切り替え。
私の目の中で小さく音がして視覚が切り替わる。
赤外線で見ているのだ。
一瞬異質な感じがしたけど、すぐに慣れてしまう。
視覚センサー正常、通常視覚に切り替え。
また小さな音がして赤外線から普通の視覚に切り替わる。
うふふ・・・
とても便利。
これなら暗闇の中でも行動できるわ。

「充電率はどのくらいだ、ナンバー23?」
「はい。現在52%です」
隣の手術台から声が聞こえる。
「ナンバー24はどうか?」
「はい。現在47%です」
私は現在の充電率を答える。
「起動には問題ないな。よし、ナンバー23、ナンバー24、起動して状況を知らせろ」
「「はい、かしこまりました」」
私とナンバー23が同時に返事をして躰を起こす。
各部動作に異常なし。
関節部の駆動正常。
私は手術台から降りて床に立ち、体内の再チェックを行う。
異常なし。
「報告します。ハニートラップ用サイボーグナンバー23、起動しました。各部異常ありません。すべて正常です」
「報告します。ハニートラップ用サイボーグナンバー24、起動しました。各部異常ありません。すべて正常です」
私はナンバー23に続いて現状報告を行う。
「うむ。お前たちは今日から我々の指示に従って行動してもらう。いいな?」
「「かしこまりました」」
ナンバー23とともに一礼する私。
組織によってサイボーグとなった私ですもの、組織の命令に従うのは当然のこと。

「ではまずお前たちに最初の任務を命じる。写真のターゲットにハニートラップを仕掛け、会社の同僚の名前を二人聞き出したうえで暗殺せよ。ただし女性ターゲットに対しては暗殺のみでよい」
コマンダーから写真を受け取る私。
ナンバー23は二枚受け取ったようだけど、私は一枚のみ。
写真には男性が写っている。
メモリーに照会し、この男性が島月晴樹と確認する。
私の夫だ。
この男がターゲットなのね。
「確認したら写真は返せ。お前たちは記憶できるだろう?」
コマンダーの言うとおり、私はターゲットを記憶して写真を返す。
この男にハニートラップを仕掛け、情報を引き出して暗殺すればよい。
私はもうどのように行動するかを考えていた。
「では行け。24時間以内に完遂するのだ。いいな」
「「かしこまりました」」
私とナンバー23は頭部に差し込まれた充電用コードを引き抜き、髪の毛で差込口を隠すとそのまま部屋を出る。
服を着てターゲットの元へ行かなくてはならないのだ。
24時間もあるのだから急ぐ必要はない。

「ナンバー23、あなたのターゲットは二人なのね?」
廊下を並んで歩くナンバー23に私は尋ねる。
彼女は同じハニートラップ用サイボーグで、私よりナンバーが一つ若い。
外見はおとなしく優しそうな少女であり、メモリーによれば人間の時は女子高校生だった。
「ええ、ナンバー24。私が人間だった時の父と母よ」
仲間に対する礼儀か表情を笑顔にして私に答えてくれるナンバー23。
「私のターゲットは一人。夫だった男ね」
「そうなんだ。一番近い身内をターゲットにしているのね」
「その確率は80%以上だと判断するわ。身内だったターゲットに怪しまれずに任務を遂行できなければ意味がないということでしょう」
「私もその判断を支持するわ、ナンバー24。ターゲットがこちらを怪しむ可能性は時間ごとに高くなるわ。その前に行動するのがベスト」
「ええ、ターゲットに接触後5時間以内であれば、成功率は95%と判断するわ。とはいえ、24時間後でも怪しまれない可能性は70%以上とも判断できるけど」
ターゲットに対する行動はすでに過去のデータから適切なものを選び出せる。
予期せぬエラーが起こらない限り、ターゲットの暗殺はたやすいはず。
「ええ、私もそう判断するわ。お互いに任務成功を目指しましょう」
「ええ、ナンバー23」
私たちはインプットされていた部屋に入り、服装を整える。
ここへ連れてこられたときに着ていた服を着て、鏡で身だしなみを整える。
この状態では外見から私をサイボーグだと認識できる可能性は1%にも満たない。
完璧と言っていいわ。

私は着替えを終えて部屋を出る。
廊下で同じく着替え終わったナンバー23と合流すると、私たちは目的地へ向かうために車に向かう。
途中で処置前に出会ったナンバー12と廊下で会う。
「ふふ・・・処置が終わったみたいね。サイボーグになった気分はどう?」
そんなこと聞かれるまでもないわ。
「最高に決まっているでしょ」
どうやらナンバー23も私と同じ気持ちらしい。
「ええ、こんな素晴らしい躰になれたなんて。感謝しているわ」
私も歩みを止めることなくそう答える。
全身が機械に置き換わったのはとても素晴らしいこと。
私の脳がそうささやいてくるの。
「うふふ・・・でしょ。初任務頑張ってね」
「ありがとう、ナンバー12」
「問題はないわ。ナンバー12」
私たちは手を振ってナンバー12と別れ、駐車場でワンボックスカーに後部シートに乗り込む。
これで目的地に向かうのだ。

向かい合わせのシートに黒いスーツと黒いサングラスを身に着けたソルジャーが一人座る。
今回の任務のサポートに当たる人間だ。
コマンダーから直接指示を受けている。
「今回は任務についての説明は省く。すでにコマンダーより指示があったはずだ」
こくりとうなずく私。
サイボーグ同士と違い、人間にはきちんと態度や行動で見せなくてはならない。
「お前たちが連れてこられてから、すでに20時間が経っている。つまり一晩過ぎている。すべてのパーツをあらかじめ準備しておくとはいえ、サイボーグ処置にはそれだけの時間がどうしてもかかるのだ」
私のデータはあらかじめ入手され、それに基づいて内部部品は準備できるが、外装や脳に対する処置など、どうしても素体本体に手がかかってしまうということだ。
「一応携帯などからナンバー23に関しては友人宅に宿泊する旨、ナンバー24に関しては急なトラブルによる残業という旨を各家庭に伝えてはあるが、いろいろと聞かれることは想定しておけ。お前たちには人間としての脳が残っているから、そのあたりはうまくやれるだろう。そうでなきゃサイボーグにする意味がない」
私がサイボーグである大きな理由の一つだわ。
プログラムに従うとはいえ、瞬時の判断に人間の脳は必要ということ。
「ターゲットの処理が終わったら連絡しろ。迎えに行く」
私はこくんとうなずいた。

一棟のマンションの前で停車するワンボックスカー。
私は車を出てそのマンションに入っていく。
ここはターゲットと私が暮らしていたマンション。
私はこれまでと同じようにエレベーターに乗り、5階の507号室へと向かう。

鍵を開けて部屋の中に入る私。
時間は15時を過ぎたところ。
ターゲットはまだ会社から帰宅していない。
私はメモリーをもとに自分の部屋に向かう。
メモリーによれば、昨日まで私はここで過ごしていたはずなのに、全く異質な空間に感じるわ。
今の私には何の関係もない空疎な部屋。
私は組織のハニートラップ用サイボーグ。
このような場所で暮らすことなどありえない。

私は自分の部屋に入ると着ていた服を脱ぐ。
仕事のときに着ていた服をずっと着ているのはターゲットに怪しまれる。
以前と同じように行動しなくてはならない。
私は下着も脱ぐと、クロゼットから黒の下着と普段着を取り出す。
以前の私は好まなかったようだが、今の私にはこういう黒の下着は好ましい。
ターゲットを誘惑する確率が上がるのを、ほかのサイボーグが実証しているからだ。
過去にターゲット自体がこの下着を購入してくれたことは幸運と言えるだろう。
私は下着を身に着け、普段通りの地味な服を着る。
以前の私が好んだ服だが、誘惑効果は乏しい。
だが、今回の任務ではこの服のほうがターゲットに怪しまれる確率は低くなる。

服を着替えた私は着ていたものをクロゼットに押し込むと、偽装工作のために料理を作る。
冷蔵庫内のものを使ったありあわせだが、こうして料理を作っておけば、ターゲットの警戒心は50%以上落ちると判断する。
男を誘惑するには手料理をふるまうのも手段の一つだわ。

一通りの料理を作った私は、ターゲットの帰宅までに追加の充電をおこなう。
私たちハニートラップ用サイボーグは、施設での急速充電のほかに家庭用コンセントからも充電が可能だ。
私はコンセントの前に四つん這いになると、喉の奥のカバーを外してコードを引き出し、伸ばして差込口をコンセントに嵌める。
電流が胸のバッテリーに流れ込んでくるのが感じられて気持ちがいい。
ターゲットが帰宅するまでに充電率が60%ぐらいにまで上がってくれればいいのだが。

                   ******

20時。
メモリーによれば、ターゲットがだいたい帰宅する時刻。
私は充電を切り上げ、冷めた料理を温め直す用意をする。
幸い充電は64%まで上昇した。
行動に問題はない。
私は椅子に座り、ターゲットの帰宅を待つ。
念のためにテレビも点けておく。
見るつもりはないが、これもターゲットの警戒心を解くのに有効と判断する。

20時13分にターゲットが帰宅する。
私は玄関に出迎えに行く。
「お帰りなさい。晴樹さん」
メモリーと照合。
ターゲットと確認。
「ただいま。今日は帰ってこれたんだね。良かった。心配したよ」
にこやかな笑顔で私にカバンを渡してくるターゲット。
「ごめんなさい。急なトラブルで帰るに帰れなくて。終電も逃してしまったから会社に泊まるしかなかったの」
私は全力で申し訳ないという表情を作る。
女のこういう表情に男は弱いというデータもある。
「そういうことはあるからなぁ。でも今日は早く帰ってこられたのかい?」
「ええ、おかげで料理を作る時間も作れたわ」
「おっ、そりゃ楽しみだ」
ターゲットは計算通りに私への警戒を解き、そのまま室内へと入っていく。
無防備な背中をさらして私の前を歩いていく。
私は持っていたカバンを置くと、ターゲットに後ろからそっと抱きつく。
「おっ? おいおい、どうしたんだい?」
「だってぇ・・・昨夜は会えなかったんですもの・・・」
メモリーでは以前の私はこのターゲットと結婚して一年に満たない。
ならばこういう接し方でターゲットに甘えるのは80%以上の確率で有効だ。
「ははは、春歌は甘えん坊だな。あっ、痛っ!」
「えっ? どうかした?」
私は何も気づかないふりをして胸の針を引っ込める。
媚薬入りの自白剤の注入に成功。
ターゲットに充分な量を打ち込んだわ。
「あ、いや、背中に針が刺さったような痛みが・・・」
「えっ? ご、ごめんなさい。ピンが刺さっちゃったのかも」
私はターゲットから離れ、髪のピンをいじる。
これでターゲットは疑問に思うのを70%以上の確率でやめるはず。
「そ、そうか? なんかちくっと痛かったから・・・」
「本当にごめんなさい」
振り返ったターゲットに私は頭を下げて謝る。
あとは5分ほど待てばいい。

私がターゲットに食事を温め直している間に、ターゲットが着替えを終えて戻ってくる。
見ると、ターゲットの穿いているスウェットパンツの股間が膨らみ、うつろな目で私を見つめている。
先ほどの薬が効いたのね。
「どうかした、晴樹さん?」
私は気が付かないふりを装ってそう尋ねる。
「あ・・・いや・・・その・・・なんというか・・・」
言いにくそうにもごもごしているターゲット。
「言いなさい」
自白剤の効果を確かめるためにも、少し高圧的に私は言う。
「あ、ああ・・・昨日顔を見ていないからかなぁ・・・君が・・・すごく欲しいんだ・・・」
「ふふっ・・・そう・・・それじゃ食事の前に二人で楽しむ?」
私は温め直した料理をテーブルに置き、ターゲットの元へと歩み寄る。
そしてしなだれかかるようにして、ターゲットの股間に手を這わせ、耳元でささやいた。
「ここはもうこんなになっているのね・・・うれしいわ」
「いや・・・その・・・」
「さあ、ベッドへ行きましょう。二人でたっぷり楽しみましょうね」
「あ・・・ああ・・・」
私はターゲットをベッドルームへと誘い、リビングを後にした。

                 ******

んちゅ・・・くちゅ・・・
私はプログラムを駆使してコマンダーのペニスを舐めしゃぶる。
その表情からコマンダーも満足してくれている確率は80%以上と判断する。
このまま射精に導き、ご満足いただくのが私の使命。
先日のターゲットも、早々に私の口の中に射精していたわ。

「うっ・・・ん・・・」
私の口中にコマンダーの精液が流れ込む。
私はそれを喉を鳴らすようにして飲み込んだ。
後で吐き出して洗浄すればいい。
もちろんワギナもアヌスも洗浄済みだから、コマンダーには気持ちよく使っていただける。
カバーのおかげで内部にも影響はない。

「それで? 報告の続きを」
「かしこまりました。ターゲットをベッドルームに連れ込んだ後は、フェラチオをしつつ情報を引き出しました。二名の名をご報告いたしましょうか?」
私はコマンダーを優しく寝かせ、その横に寄り添うように寝そべると、彼のペニスをそっと握る。
「いや、必要ない。今回の任務はお前の能力のチェックにすぎない。続きを」
「はい。情報を聞き出したあとは、ターゲットと性行為をおこない、充分に興奮させたところで麻痺毒を注入し殺害いたしました。心臓の停止を確認後、ご指示通りに連絡を取りました」
私は報告を続けながらも、コマンダーのペニスを優しく愛撫する。
私にプログラミングされた愛撫に勃起しない男性はほぼ皆無と言っていいだろう。
コマンダーのペニスもすぐに力強さを取り戻してくださった。
「ご苦労だった。すると彼は、最後に愛する妻の手料理を食べることもできなかったわけか。クククク・・・」
「死亡確認後、すぐに生ごみとして処理いたしました。私には必要のないものでしたので。いけなかったでしょうか?」
私にはあのような食事など必要はない。
電気を充電していただければいいの。
「いや、問題はない。さて、じっくりとお前の躰を堪能させてもらうとするか、ナンバー24」
「はい、存分にご堪能くださいませ」
私はコマンダーの躰にやさしく乗り、その大きくて太いペニスを入れてもらう。
ああ・・・
私はハニートラップ用サイボーグナンバー24。
次のご命令を心からお待ちいたします。

END

  1. 2017/10/07(土) 20:24:33|
  2. 改造・機械化系SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:9
次のページ

カレンダー

06 | 2019/07 | 08
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

AquariumClock 2

プロフィール

舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

ブログバナー


バナー画像です。 リンク用にご使用くださってもOKです。

カテゴリー

FC2カウンター

オンラインカウンター

現在の閲覧者数:

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

管理人にメールなどを送りたい方はこちらからどうぞ

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

ブログ内検索

RSSフィード

ランキング

ランキングです。 来たついでに押してみてくださいねー。

フリーエリア

SEO対策: SEO対策:洗脳 SEO対策:改造 SEO対策:歴史 SEO対策:軍事

フリーエリア