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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

カマキリとサソリ

昨日の「ゴム女のフェラ」はいかがでしたでしょうか?
いつもの作品とはちょっと違う感じだったので、違和感を感じられた方もいらっしゃったかもしれませんね。

今日はいつものように女怪人に改造されちゃうお話です。
まあ、オーソドックスなありがちな話かも。
タイトルは「カマキリとサソリ」です。
お楽しみいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


カマキリとサソリ

轟音とともに巨大な炎を噴きあげて爆発が起こる。
またしても送り出した怪人がミラージュマリーによって倒されてしまったのだ。
青いコスチュームに身を包んだミラージュマリーは、彼らワームリアに取って天敵だ。
彼女を倒さない限り、この地球を支配することはできない。
そのため、何体もの怪人を送り込み彼女の抹殺を計ったのだが、ことごとく返り討ちにあってしまったのだ。
そして今回もまた・・・

「うぬぅ・・・おのれミラージュマリー! 次こそは必ず・・・」
とげとげの付いた全身鎧のような衣装に身を包んだ偉丈夫が歯噛みする。
ワームリアの作戦指揮官グモーゾだ。
その実力は首領にも認められているのだが、このままミラージュマリーに負け続けるようなことがあれば、いつ処刑されてもおかしくはない。
その焦りがグモーゾを苛立たせる。
「なんとか・・・なんとかせねば・・・」
だが、妙案と呼べるものは浮かばない。
せめてミラージュマリーの戦う気持ちをそらせたり、隙を作り出すことができれば打つ手も生まれようというものなのだが・・・

「む?」
いつまでも見ていても仕方がないと思い、モニタードローンを回収しようと思ったところ、思いもかけないものをグモーゾは目にしてしまう。
「これは・・・」
それはいつも怪人を倒したあとすぐに姿を消していたミラージュマリーの追跡に成功していたのだ。
たまたま周回させていたモニタードローンのカメラに納まったもののようだったが、そこにはミラージュマリーがごく普通の女性、しかも制服姿の女子高生になる瞬間のシーンが捉えられていたのだ。
「なんと! ミラージュマリーの正体は日本の女子高生ということなのか! この女子高生の正体を早急に調べるのだ!」
「キキーッ!」
グモーゾの指示に従い、全身を黒タイツに包んだ戦闘員たちが調査に出発する。
ミラージュマリーの正体が判明するのは、それから間もなくのことだった。

                   ******

「う・・・」
意識がゆっくりと戻ってくる。
ここは?
私はいったい?
自分に何が起こったのかを思い出す。
そうだわ・・・私は確か外出中に・・・

その日所用で外出していた彼女は、その帰り道でいきなり黒づくめの連中に襲われ、意識を失わされたのだ。
おそらくそのまま車にでも乗せられ、連れてこられてきたのだろう。
いわば誘拐されたわけだ。

躰を動かそうとした彼女は、自分の躰が何かで拘束されていることに気が付いた。
両手首と両足首が固定され、何か台のようなものに磔にされているのだ。
「こ、これは?」
試しに手足を動かそうとしてみるが、がっちり固定されているために動けない。
いくら逃げられないようにするためとは言っても、ここまで拘束するとは普通じゃないのではないだろうか。
しかも周囲は薄暗く、何があるのかもよくわからない。
まるで闇の中に放り出されてしまったかのようだ。
「誰かぁー! 誰かぁー!」
少し大きな声で呼んでみるものの、どこからも返事はない。
いったいこれからどうなってしまうのか・・・
彼女は恐怖に震えていた。

やがて、闇の一部が開き、体格のいい男が一人、制服姿の少女を抱えて入ってくる。
少女は両手をだらんと下げ、どうやら意識を失っているらしい。
おそらく彼女と同じく拉致されてきたのだろう。
「あなたが私をここへ?」
男をにらみつけるようにそう尋ねる彼女。
「ん?」
顔まですっぽりと覆うヘルメットの下から鋭い視線が彼女を射る。
「気が付いていたのか。少し待っていろ」
男は抱えていた少女を、彼女から少し離れた位置の台に彼女と同じように寝かせていく。
そして両手と両足を金具で固定し、外れないことを確かめた。

「えっ? あ、茜(あかね)ちゃん? まさか茜ちゃんなの?」
寝かされた少女の横顔に見覚えがあることに気が付く彼女。
娘の友人であり、よく家に遊びに来てくれている子に間違いない。
彼女もいつしか苗字よりも名前で呼ぶことに慣れてしまったぐらいなのだ。

「ククク・・・そうだ。この娘は持林茜(もちばやし あかね)。お前の娘である秋中麻里亜(あきなか まりあ)の友人だ。そうであろう、秋中喜美子(あきなか きみこ)?」
いかつい男が彼女の名前を言い当ててくる。
これは明らかに彼女のことを知っていて誘拐してきたのだ。
「私たちをどうするつもりですか? 何か恨みでも? そうだとしても、その子はまだ未成年なんですから、解放してあげて」
男をにらみつけながらも、できるだけ冷静に話そうとする喜美子。
いったいこの男が何者なのかさっぱりわからないが、どうして自分たちを狙ってきたのだろう。

「クククク・・・そう心配するな。お前たちは大事な素体だ。手荒に扱ったりはせん」
台に寝かされた二人を前に、グモーゾは笑みを浮かべる。
この二人を改造し、ワームリアの怪人にするのだ。
母親と友人がワームリアの怪人となれば、ミラージュマリーも手を出すのをためらうに違いない。
そこを攻撃することができれば、ミラージュマリーもたやすく倒せるかもしれないのだ。
そのためにもこの女たちを念入りに改造してやらねば。
クックック・・・

「う・・・うーん」
台に寝かされた少女がゆっくりと目を開ける。
「茜ちゃん! 茜ちゃん!」
「えっ? あっ、麻里亜ちゃんのおば様?」
喜美子の声に振り向いた茜が友人の母を認識する。
「良かった。目が覚めたのね」
「おば様、私はいったい?」
目が覚めたことで自分が捕らわれていることに気が付く茜。
両手両足が固定されていて動けないのだ。
どうやら二人ともが同じ状況らしい。
「私たちは彼に誘拐されてしまったみたい。でも、きっとすぐに警察が・・・」
「それはどうかな?」
ニヤニヤと笑っているグモーゾが口をはさむ。
「ここは我々ワームリアの地底アジト。人間の警察風情がここまで来られるとでも思うのかね?」
「ワームリア・・・」
「ワームリア!」
茜と喜美子の表情が青ざめる。
ワームリアと言えば最近世間を騒がせている謎の組織である。
まるでテレビの特撮番組の世界から抜け出てきたような怪人が暴れ回り、謎の女性がそれを倒しているというのだ。
この男はそのワームリアだというの?

「先ほども言った通り、お前たちは大事な素体だ。傷つけるつもりはないから安心しろ」
「私たちをどうするつもりなんですか? ワームリアがなぜ私たちを?」
喜美子が先ほどと同様にグモーゾをにらんでくる。
やはりあのミラージュマリーの母親だ。
意志の強さが感じられる。
「お願いです。うちに帰して・・・」
少女のほうはそうでもないようだが、それが逆にか弱さを感じさせてミラージュマリーを油断させるだろう。

「ククク・・・お前たちはミラージュマリーの正体を知っているのではないか?」
「えっ?」
グモーゾの質問に思わず顔を見合わせ、ふるふると首を振る茜と喜美子。
「知りません」
「ミラージュマリーが私たちと何の関係が?」
「ほう・・・本当に知らんようだな。では教えてやる。我らワームリアに歯向かうミラージュマリーの正体は、秋中麻里亜なのだ」
「えっ?」
「えっ? 麻里亜ちゃんが?」
喜美子も茜も驚きに目を丸くする。
それはそうだろう。
自分の娘が、自分の友人が謎のヒロインとしてワームリアと戦っているなんて信じられるはずがない。
「嘘! 嘘です! あの子がそんな・・・」
「嘘ではない。お前の娘はミラージュマリーなのだ」
「そんな・・・」
言われてみれば娘はときどき怪我をしていた。
かすり傷程度らしかったし、学校で運動中に傷をつけたと言っていたけど・・・
あれは戦いの傷だったの?
喜美子はそのことに気付かなかったことを悔やんでしまう。
あっ・・・
であれば・・・

「私たちを人質にするのですか?」
人質にされ娘が苦しむのを見るぐらいなら・・・
喜美子はそう思う。
でも・・・茜ちゃんは・・・
「私はどうなっても構いません。でも茜ちゃんは、茜ちゃんは未成年なんです。家に帰してあげて!」
「おば様」
「茜ちゃん、人質なら私だけで充分よ。あなたは解放してもらうから」
「おば様・・・」
今にも泣きそうな顔で喜美子を見る茜。
どうして私たちがこんな目に・・・

「残念だが二人とも帰すわけにはいかんな」
「どうしてですか? 人質なら私だけで・・・」
「言ったであろう。お前たちは大事な素体だと。お前たちはこれより改造を受け、我がワームリアの女怪人へと生まれ変わるのだ」
腕を組んでククッと含み笑いを漏らすグモーゾ。
二人の女たちの青ざめる顔がなかなかにそそる。
「女怪人に? まさか・・・私たちに娘と戦わせようと?」
「いやっ! いやぁっ!」
「そう。そのまさかだ。お前たちを女怪人にしてミラージュマリーを始末させる。母親や友人が怪人化したとなれば、ミラージュマリーとて冷静ではいられまい。その動揺した隙をついて倒すのだ」
愕然とする喜美子や絶叫する茜に言い放つグモーゾ。
「そんな・・・娘と戦うなんてできるはずが!」
「いやぁ・・・怪人になるのはいやぁっ!」
「クックック・・・すぐにそんな感情は消え、ワームリアのためなら何でもするようになるのだ。楽しみにしているがいい」
指をパチンと鳴らして合図するグモーゾ。
その合図を待ちかねたかのように数名の戦闘員たちが現れ、喜美子と茜の周囲の装置を操作する。
やがて天井から手術用の無影灯のようなものが下がってきて、カクテル光線のようなきらびやかな光を二人の躰に当てていく。
同時にいくつものチューブが二人の躰に突き刺さり、毒々しい色の液体が注ぎ込まれていく。
「いやぁっ!」
「ああっ! あああっ!」
苦悶の表情を浮かべる二人。
その様子を見て、グモーゾは笑みを浮かべながらその部屋を後にした。

                   ******

カツコツと硬質な足音が響いてくる。
ハイヒールのかかとが床を打つような音だ。
室内に現れる二つの影。
その姿にグモーゾはニヤッと笑みを浮かべた。
「改造が終わったようだな。さあ、お前たちが何者か、俺に言うがいい」
「ケケケケケ! 私は偉大なるワームリアの女怪人カマギリアですわぁ。ケケケケケ!」
全身が緑色の外骨格に覆われ、巨大な複眼と触角の付いた頭部を持ち、両手のカマを振り上げるカマキリの女怪人。
だが、そのボディラインは、元となった喜美子のスタイルが色濃く出ており美しい。
「シュシュー! 私は女怪人サソリアです。どうぞ何なりとご命令を。シュシュー!」
カマギリアの隣にはやや小柄で紫色の外骨格に覆われた女怪人が立っている。
黒い単眼の付いた頭部を持ち両手の先はハサミ状になっていて、背中からお尻にかけたラインに沿うように尾てい骨部分から長い尾が伸びていた。
もちろんその先からは、鋭い毒針が覗いている。
茜が改造されたサソリの女怪人だ。
二人とも口元だけは以前の人間のままであり、うっすらと笑みを浮かべている。
それがまた妖しい雰囲気を漂わせてるのだった。

「それでいい。お前たちはワームリアの怪人として生まれ変わった。これからはワームリアのために働いてもらうぞ」
「ケケケケケ! もちろんですわ」
「シュシュー! ワームリアのためなら何でもいたします」
二人の女怪人は喜ばしそうにうなずいている。
「お前たち二人、力を合わせてミラージュマリーを始末するのだ。できるな?」
「ケケケケケ! お任せくださいませ。私はもうあの子の母親などではありませんわ。ワームリアに歯向かうものはすべて敵。必ずやミラージュマリーを始末してまいります。ケケケケケ!」
「シュシュー! 私の毒ならミラージュマリーと言えどもただでは済まないはず。カマギリアとともに彼女を。シュシュー!」
もはや身も心も完全にワームリアの女怪人に変貌した二人には、ミラージュマリーを殺すことは当然のことだった。

                   ******

「麻里亜ちゃん、今日遊びに行ってもいい?」
放課後、家に帰ろうと思っていた麻里亜を茜が呼び止める。
「えっ? うちに?」
「うん。ダメかな?」
友人の茜の申し出に、麻里亜はぶんぶんと首を振る。
「とんでもない。茜ちゃんが来てくれるのは大歓迎だよ。お母さんも茜ちゃんが来たら喜ぶと思うし」
「ありがとう。実は今日両親がいきなり遠くへ行っちゃったものだから」
なんとなく冷たい笑みを浮かべる茜。
「えっ? そうなの? じゃ、今日はうちへ泊りなよ。いろいろとおしゃべりしよう」
うきうきと帰り支度をする麻里亜。
茜が自宅に来るのはそこそこあれど、泊りは久しぶりだ。
パジャマで二人遅くまで他愛もないおしゃべりができると思うと、麻里亜の心は浮きたった。

「お母さんもいいって。茜ちゃんが来るの楽しみだって言ってた」
すぐにスマホで確認した麻里亜が茜に伝える。
「そう。私もおば様に会うのが楽しみだわ。うふふ・・・」
「どうする? うちにも何かあるとは思うけど、帰りに何か買ってく?」
目をキラキラと輝かせている麻里亜。
茜がお泊りということでテンションが上がっているのだ。
「うーん・・・別に何か欲しいものがあるわけでもないからいいわ。それより早く麻里亜ちゃんの家に行きたいな」
「おお! それは早く私と二人きりになりたいってことですかぁ? あははは・・・」
「まあ、麻里亜ちゃんたら。あははは・・・」
楽しそうに笑いあう麻里亜と茜。
二人はそのまま笑いあいながらカバンを手に学校を後にした。

「ただいまー。お母さん、茜ちゃん来たよー」
元気よく玄関を開けて家に入る麻里亜。
「お帰りなさい。いらっしゃい、茜ちゃん」
奥から二人を出迎えに出てくる喜美子。
水仕事でもしていたのか、手をタオルで拭っている。
「こんにちはおば様。お邪魔します」
「どうぞどうぞ。入って入って」
にこやかに二人を招き入れる喜美子。
麻里亜はふと、その手に持っているタオルが赤黒くなっていることに気が付く。
それと、何とも言えない血のにおいのようなものも感じた。
「お母さん、何かしてたの?」
「えっ? ああ、カスを切り刻んでいたのよ。ケケケケケ・・・」
奇妙な笑い声をあげる喜美子。
麻里亜はちょっと変に思いながらも、あとについてリビングへと入っていく。

「ひっ!」
リビングに入ったとたんに絶句する麻里亜。
ソファに血まみれで死んでいる父親の姿があったのだ。
「お、お父さん!」
「ケケケケケ・・・ほんと、間の悪い男ねぇ。やはり所詮は下等な人間ということかしら。これからの楽しみを邪魔しに帰ってくるんだもの」
父の死体を前に笑っている母。
その様子に麻里亜は愕然とする。
「お、お母さん? ま、まさかお母さんが?」
「ええ、そうよぉ。だって、これからミラージュマリーを切り刻むのを楽しみにしていたのに、風邪で熱が出たからとか言って早退してくるんですもの。邪魔くさいったらありゃしないでしょ。だから切り刻んでやったの。ケケケケケ・・・」
口元に手の甲をあてて笑う喜美子。
「お・・・お母さん・・・そんな・・・」
あまりのことに言葉が出ない麻里亜。
いったい何が起こったというのだろうか?

「ケケケケケ! ねえ、もうそのお母さんお母さんってのいい加減にやめてくれない? 私はもうお前のお母さんなんかじゃないわ。私は偉大なるワームリアによって改造され生まれ変わったの」
そう言って躰を変化させていく喜美子。
見る間に全身が緑色の外骨格で覆われ、頭部が巨大な三角形の形になり、目も大きな複眼へと変化する。
両手はとげの付いたカマとなり、両脚もハイヒールのブーツのような形になっていく。
背中には翅が生え、お尻も大きくなって、カマキリと人間が融合した姿に変わっていく。
「ケケケケケ! どう? これが今の私の本当の姿よ。私はワームリアの女怪人カマギリアなの。ケケケケケ!」
ここだけは人間のままである口元に笑みを浮かべ、笑い声をあげるカマギリア。

「お母さん・・・お母さんがワームリアの怪人に・・・」
麻里亜は唇をかみしめる。
自分は何のために・・・
何のためにミラージュマリーとして戦ってきたのか・・・
父や母を、友人たちを守るためではなかったのか・・・
その母がワームリアの怪人にされてしまうなんて・・・
お母さん・・・

ハッとする麻里亜。
今はとにかく茜だけでもこの場から逃がさないと。
「茜ちゃん! 逃げ・・・て・・・」
振り返りざまに背中に激痛が走る。
「茜・・・ちゃん?」
そこには茜ではなく、全身を紫色の外骨格に覆われ、人間のままの口元からくすくすという笑い声を発しているワームリアの女怪人がいた。
「どうして私が逃げないとならないのかしら? せっかくカマギリアとともにミラージュマリーを始末できるチャンスだというのに。シュシュー!」
「茜・・・うぐっ・・・」
がっくりと膝をつく麻里亜。
「私ももう茜などという名前なんかじゃないの。私はワームリアの女怪人サソリア。よろしくね、ミラージュマリー。シュシュー!」
「そんな・・・」
麻里亜の全身に強烈な痛みが走る。
どうやら毒を流し込まれたらしい。

「ケケケケケ! どうしたの? 変身しないの? 私のカマで切り刻んであげるわよぉ。ケケケケケ!」
「無理よ、カマギリア。私の毒は強力ですもの。もう全身が痛くて起き上がれないと思うわ。シュシュー!」
「おかあさ・・・あか・・・ね・・・ちゃ」
激痛に耐え必死に手を伸ばす麻里亜。
その手をカマギリアは踏みつける。
「言ったでしょ。私はもうお母さんじゃないって。頭悪いわねぇ。ケケケケケ!」
「まだ息があるようだから切り刻んでいいわよカマギリア。少しは楽しめるんじゃない? シュシュー!」
二人の冷たい笑みが麻里亜を見下ろしている。
「そうね。そうさせてもらおうかしら。ケケケケケ!」
カマギリアがカマを振り上げたとき、麻里亜は意識を失った。

                   ******

「クククク・・・まさかこうも簡単にミラージュマリーを排除することができるとは。よくやったぞお前たち」
「「ハッ、ありがとうございます」」
上機嫌のグモーゾの前で片膝をつき頭を下げるカマギリアとサソリア。
「ケケケケ・・・ですが・・・もう少しでミラージュマリーを切り刻むことができましたのに、止められてしまったのは残念ですわぁ」
褒められたものの、カマギリアはやや不満そうな表情だ。
無理もない。
今にもカマを振り下ろそうとしたとき、グモーゾから待ての命令が来てしまったのだ。
ワームリアに歯向かうミラージュマリーに一撃を与えられると楽しみにしていた彼女にとっては不満だろう。
「シュシュー! ご命令に従いあの女をこの地底アジトに運び込みましたが、どうなさるおつもりなのですか?」
サソリアにしても今一つ納得がいっていない。
彼女たち二人はミラージュマリー抹殺のために改造され、この素晴らしい躰に生まれ変わったはずではなかったのだろうか。

「うむ。首領様のご命令でな」
「首領様の?」
カマギリアとサソリアが顔を見合わせる。
首領様がミラージュマリーを生かしたまま連れてこいと命じられたというのか?
「うむ。ミラージュマリーを無力化した以上、殺すよりもいい方法があると仰せになられたのだ。その方法を聞いた時、俺もなるほどと納得した」
いい方法?
「シュシュー! そのいい方法とは?」
「クククク・・・すぐにわかる」
サソリアの質問に対し、グモーゾはニヤッと笑う。

カツコツというヒールの音が響く。
「ククク・・・噂をすれば影か。入るがいい」
「キキキキ! 偉大なるワームリアの女怪人ドクガリア、ただいま参りました」
そう言って入ってくる一体の女怪人。
やや小柄でサソリアと同じぐらいの大きさだ。
巨大な二つの複眼と二本の触角が付いた頭部を持ち、茶色の細かい毛が体を覆っている。
背中には大きな翅が広がっており、いくつかの斑紋が浮き出ている。
口元はカマギリアはサソリアのように人間のままであり、うっすらと冷たい笑みを浮かべていた。

「クククク。よく来たなドクガリア。生まれ変わった気分はどうだ?」
「キキキキ! はい、とてもいい気分です。愚かにもミラージュマリーなどと名乗り偉大なるワームリアに歯向かっていた私を、このような素晴らしい躰に改造していただけたなんて、感謝の言葉もございません」
スッと片膝をつき一礼するドクガリア。
その姿にカマギリアとサソリアも笑みが浮かぶ。
「ケケケケケ! なるほどそういうことでしたの」
「シュシュー! これでまた一緒にいることができるわね。仲良くしましょう、ドクガリア」
「キキキキ! ええ、こちらこそよろしく、カマギリア、サソリア。これからは私もワームリアのためにすべてをささげるわ」
三人の女怪人たちが笑顔を見せるのを、グモーゾは満足そうに眺めるのだった。

                   ******

「ン・・・あん・・・だ・・・ダメ・・・ダメよ・・・」
「んちゅ・・・んふふ・・・カマギリアのここ、こんなにとろとろになってる。美味しい。シュシュー!」
ぺろりと舌なめずりをして、再びカマギリアの股間に顔をうずめるサソリア。
その舌が外骨格の継ぎ目から中の秘肉に刺激を与え、愛液を溢れさせていく。
「ケケ・・・ああ・・・こ、こんな・・・ダメ・・・ダメよ・・・」
「うふふ・・・何がダメなの? シュシュー! 私たちは女怪人同士。楽しみ合ったって問題はないわ」
サソリアの黒く丸い単眼がカマギリアの痴態を見つめ、口元には笑みが浮かんでいる。
「ケケ・・・で・・・でも・・・ドクガリアが来たら・・・」
「来ないわ」
「え?」
その返事にやや苦いものを感じたカマギリアが驚く。
「シュシュー! ドクガリアは来ないわ。彼女は今頃グモーゾ様に犯されている頃よ。うふふ・・・」
「犯されて?」
「ええ。今は女怪人とは言え元はミラージュマリーを犯せるんですもの。グモーゾ様はとても喜んでいるんじゃないかしら。シュシュー!」
「ケケケ・・・そ、そんな・・・」
「シュシュー! 気になるかしら? 元娘のことだから・・・」
「あ、あん・・・」
サソリアの手の先にあるハサミの先端がそっと差し入れられ、カマギリアの躰に快感が走る。
「シュシュー! 渡さない。ドクガリアとカマギリアがかつて母娘だったとしても、先にカマギリアのパートナーになったのは私」
「サソリア・・・」
「私、うらやましかったのよ。あなたたちのことが。私の母親はろくな奴じゃなかったから・・・だからこうして女怪人になれて、カマギリアとパートナーになれたことがとてもうれしかったわ。クズどもも始末できたしね。シュシュー!」
言葉を紡ぎながらも、その手はカマギリアの肉襞を優しく刺激することをやめはしない。
「サソリア・・・あ、あん・・・」
サソリアのハサミがカマギリアの躰の官能の炎を燃え上がらせる。
それに、そう言ってもらえることもカマギリアにはうれしかった。
一緒に女怪人になった者同士、カマギリアにもサソリアのことを好ましく思わない理由はなかったからだ。

「シュシュー! だから私は渡さない。カマギリアは私のものよ」
カマギリアの上で躰を回転させていくサソリア。
その秘部がカマギリアの顔の位置にやってくる。
「ねえ、お願い。私のも舐めて。カマギリアの舌で私を気持ちよくして。シュシュー!」
「・・・・・・わかったわ、サソリア」
カマギリアの舌がサソリアの肉襞に触れる。
とろとろの愛液がカマギリアの舌を伝って流れてくる。
「ああん・・・いい・・・カマギリアの舌・・・いい・・・」
腰をくねらせて快感に打ち震えるサソリア。
すぐに自らもカマギリアの襞に舌を這わせていく。
「ケケケケケ! サソリアの舌もたまらないわ・・・あん・・・イっちゃう・・・」
二体の女怪人の痴態はいつ果てるとも知れずに続くのだった。

END

いかがでしたでしょうか?
明日は三日目最終日。
明日もいつもとはちょっと違ったSSだと思います。
先日ちらっと書きましたあの話です。
お楽しみに。

  1. 2018/07/18(水) 21:00:00|
  2. 改造・機械化系SS
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寮母さんはドククラゲ

今日は久しぶりにSSを投下します。
と言いましても、いわゆるシチュのみ短編で、いつものごとく女性が怪人化するだけのお話です。

タイトルは、「寮母さんはドククラゲ」です。
タイトルそのまんまのお話です。
女性が女怪人にされるシーンが好きというお方に楽しんでいただければと思います。

それではどうぞ。


寮母さんはドククラゲ

「「「行ってきまーす」」」
「行ってらっしゃい」
朝、学校へ向かう女子学生たちを見送り、私は少しホッとする。
今朝も彼女たちを無事に送り出すことができたからだ。
あとは学校でも事故がないことを祈るだけ。
勉強頑張ってね。

とはいえ、私の仕事はこれからが本番。
まずは皆が食べた朝食の後片付けをして、それから午前中のうちにお風呂や共用部分の掃除、午後からは寮内の点検をして壊れたりしているものがあったら取り替え、さらに夕食等のための買い物に行き、帰ってきたら夕食づくり、そのころにはもう早い子は学校から帰ってくるし、お風呂も用意しなくてはならない。
他にもこまごましたことがたくさんあって、ほんと寮母というのは大変だわぁ。
まあ、うちは厳密には学生寮というというよりは、一人暮らしのための賄いつき女性用アパートというべきもので、管理人を任された私が女子学生たちの食事等の面倒も見ているという形だから、住んでいる女子学生たちも6人ほどと少ないんだけどね。
とはいえ、だからこそ何もかもを一人でやらなくてはいけないので大変。
かといってお給料が高いってわけでもないしねー。

さてさて、ちゃっちゃと片付けちゃいましょうか。
私は腕まくりをすると、台所にたまった食器を手際よく洗浄して片付けていく。
6人もの娘がいる大家族のお母さんっていうのはこんなものなのかしらね?
もっとも、私自身まだ20代なんだし、あの娘たちの母親というよりはあの娘たちのほうにこそ近いのよね。
結婚だってまだなんだし・・・

ふう・・・
最後の食器を水切り籠の中に収める。
これで朝食の後片付けは終了。
次はお掃除をしなくちゃ・・・
あら?
なんだか玄関の方で人の気配がするわ。
玄関の呼び鈴が鳴った?
聞こえなかった気がするけど・・・
「はぁい、どちらさま?」
私は急いで玄関へと向かう。
郵便か宅配便でも届いたのかしら・・・

「ひっ!」
玄関に来た私は思わず小さく悲鳴を上げてしまう。
だってそんな・・・
まさかこんなのがいるなんて・・・

玄関に立っていたのは、郵便配達の人でも宅配便の人でもなく、全身を黒光りする西洋の甲冑のようなものを身にまとった人物だったのだ。
頭から足の先までがすべて金属に覆われた人物。
そんなものが立っていたら、思わず悲鳴が出てしまうというもの。
い、いったい何なの?
コスプレ?

「あ、あなたはいったい?」
私はその異質な存在をにらみつける。
ここが女性専用のアパートと知って来たのなら、警察を呼ぶことも考えなくてはならない。
「ククク・・・ちょうどよさそうな女だ。まずはこいつで・・・」
声からして甲冑の中身は男のようだ。
フェイスガードの付いたヘルメットをかぶっているので、顔は全くわからない。
「出ていってください。出ていかないと警察を呼びます」
私はポケットからスマホを取り出し、110番をセットしてすぐに発信できるようにする。
「出ていかないと本当に呼びますよ」
「フフフフ・・・本当に呼べるかな?」
「えっ?」
甲冑の男が手を私のほうに向かってかざしてくる。
すると、私の持っていたスマホが突然破裂した。
「キャッ!」
私は思わず持っていたスマホを放り捨てる。
そんな・・・
手をかざしただけでスマホを壊すことができるなんて・・・
いったい?

私は共用室にある固定電話を使おうと踵を返す。
でも、走りだそうとしたのに躰が前に動かない。
「えっ?」
「クククク・・・逃がしはせんよ。お前は大事な実験材料だ」
そんな・・・
私の躰が何かに引き付けられるように動かない。
共用室に一刻も早く行って電話をしなくてはならないのに・・・
足が一歩も動かないのだ。
「さて、始めるとしようか・・・ククク・・・」
私は自分で意図したわけでもないのに、再び躰を回転させて甲冑の男のほうを向く。
「そんな・・・」
私の目の前には、いつの間にか空中にゆらゆらと漂うクラゲのようなものが浮いていた。
「クラゲ?」
「それは特殊なドククラゲでな。なかなかに強力な毒を持っているものを改造したものだ」
「ひっ!」
毒のクラゲ?
そんなものがどうして?

「行け」
甲冑の男がそういうと、クラゲはふよふよと私に近づいてくる。
「ひぃぃぃっ! 誰かぁ! 誰か助けてぇ!」
私は必死で叫び声をあげる。
だが、躰は全く動いてくれない。
逃げ出そうにも逃げ出せないのだ。
クラゲは私の顔のすぐそばまで来ると、その触手を私の頭に巻き付ける。
「ひぃーー! いやぁぁぁぁ!」
ひんやりとしたヌメッとした触手が私の頬に絡みついてくる。
そしてクラゲの本体部分がふわっと私の頭の上に移動したかと思うと、そこからベシャッと私の頭に覆いかぶさってきた。
「ひぃぃぃぃ! むごっ! むぐっ・・・」
クラゲは私の頭をすっぽりと覆うと、悲鳴を上げていた私の口の中に触手を入り込ませてくる。
いや、口ばかりじゃない。
鼻の穴からも、耳の穴からも触手が入り込んできたのだ。
「あがっ・・・たすけ・・・が・・・」
「クククク・・・どうやらそいつはお前が気に入ったようだぞ。殺されなくてよかったな」
殺されない?
嘘・・・
触手のおかげで息もできず・・・
苦し・・・
助け・・・て・・・

ひぐっ!
頭に激痛が走る。
鼻や耳の穴から入り込んだ触手が、私の頭の中にまで入り込んできたのだ。
死・・・死ぬ・・・死んじゃう・・・
私は倒れ込むこともできずに突っ立ったままで激痛に耐えていく。
なんで?
なんで私がこんな目に・・・

あひゃ?
あへ?
突然激痛がすうっと引いていく。
替わりになんだか気持ちよさが広がってきた。
何なの?
何が起こっているの?
あ・・・
頭の中で触手がうねうねと動いている・・・
脳がクチュクチュとかき混ぜられている感じ・・・
あひゃ・・・
気持ちいい・・・
なんだかとっても気持ちがいいよぉ・・・

クチュクチュ・・・クチュクチュ・・・
脳がいじられていく。
なんだか私が私じゃないみたい・・・
躰がふわふわしてとても気持ちがいい・・・
口から入ったクラゲの触手は私のお腹の中で蠢いている。
あは・・・
私の躰がだんだん触手に作り変えられていくんだわ・・・
あひゃひゃひゃ・・・
なんだか素敵・・・
アタシは一体どうなっちゃうのかしら?

あにゃ?
なんだか目が見えてきたわ。
でも・・・なんかぐにゃぐにゃして水の中にいるみたい・・・
あひゃ・・・
あひゃひゃひゃ・・・
バカねぇ、アタシ・・・
アタシはクラゲなんだから、水の中にいるのは当たり前じゃない・・・
あれ?
でも・・・あたしは人間だったようなぁ・・・
あひゃ・・・
どうでもいいかぁ・・・そんなこと・・・
なんだかとっても気持ちがいいしぃ・・・

するりと何かが肌を滑り落ちていく・・・
足もとを見ると、なんだか布の塊が落ちている。
ああ・・・
アタシが着ていたものが落ちたんだわ・・・
アタシの触手が着ていた服をはぎ取ったんだ。
クフフフフ・・・
だってあたしはクラゲだもん。
クラゲが服を着ていたらおかしいよね・・・

アタシは自分の躰を見下ろしてみる。
半透明の躰がとてもきれい。
よく見れば反対側が透けて見える。
いくつかの内臓が半透明のグニュグニュした中に浮いている。
きれい・・・
これがアタシ・・・
クラゲのアタシ・・・
アタシはクラゲ・・・
アタシはドククラゲ・・・

「クククク・・・どうやらうまく融合が行われたようだな。これでお前はドククラゲ女になったのだ」
私の目の前のお方・・・偉大なるダスロムの大幹部ゼーゴス様のお言葉が聞こえるわ・・・
ドククラゲ女・・・
クフフフフ・・・
そうなんだわぁ・・・
アタシはドククラゲ女なんだわぁ・・・
あひゃひゃひゃひゃ・・・
最高!
気持ちいいわぁ!

「気分はどうだ、ドククラゲ女よ」
「クフフフフ・・・はい、とてもいい気分ですわゼーゴス様。アタシはドククラゲ女。どうぞ何なりとご命令を。クフフフフ・・・」
そうよぉ・・・
アタシは偉大なるダスロムのドククラゲ女。
下等な人間とはもう違う存在なの。
ダスロムに必要ない人間どもはアタシがこの毒触手で始末してあ・げ・る・・・
あひゃひゃひゃひゃ・・・
アタシはうねうねと動く自分の腕を見つめ、思わず笑みを浮かべていた。

「それでよい。お前にはほかにも実験を命じる」
「はい、何なりと」
アタシはゼーゴス様に一礼する。
どのような実験を命じられるのだろう・・・
ワクワクするわぁ。

                   ******

「いただきまーす」
「いただきまーす」
美味しそうにアタシの作った睡眠薬入りの料理を口に運ぶ女たち。
クフフフフ・・・
睡眠薬が入っているとも知らずに、バカな女たちだわ。
でも喜びなさい。
お前たちは実験材料に選ばれたのよ。
偉大なるダスロムの人体実験にね。
クフフフフ・・・

ゼーゴス様にご命令をいただいた後、アタシは人間の姿に擬態して、これまでと変わらないふりをして夕食を作った。
もちろん女子学生たちに気付かれないためだ。
今夜はカレーにしたから、少々の薬は混ぜたとしても気付くまい。
まあ、気付くような人間がいれば、始末してしまえばいいだけのこと。
誰か一人ぐらい気付かないかしらね。
クフフフフ・・・
アタシはひそかに腕を触手に変えて舌舐めずりをする。
ああん・・・早くこの毒触手を誰かに突き刺したいわぁ。

カタンと音がして、カレースプーンが手から滑り落ちる。
「あ・・・ふ・・・」
そのままテーブルに突っ伏したり、椅子にもたれかかるようにして眠り込んでいく女子学生たち。
クフフフフ・・・
強力な睡眠薬ね。
こんなに早くみんながお寝んねしちゃうなんて。
クフフフフ・・・

アタシは擬態を解除してドククラゲ女の姿に戻る。
ああーん、気持ちがいいわぁ。
やっぱりこの姿こそが本当のアタシよね。
アタシは鏡に映る自分の姿に満足を覚える。
半透明の躰にクラゲのように笠が広がった頭部。
胸のふくらみや腰の括れは以前のアタシのように人間ぽい形をしているけど、頭部に広がった笠や肩のあたりから生えているいくつもの細い触手はクラゲのもの。
そう・・・アタシはクラゲと人間が融合したドククラゲ女。
偉大なるダスロムの一員なの。

アタシは眠りこけた女子学生たちを一人ずつ床に寝かせていく。
もちろん着ているものも脱がせていくのを忘れない。
変化に衣服は邪魔ですものね。
彼女たちは睡眠薬が効いているから目を覚ますことはない。
クフフフフ・・・
これが最後の人間としての眠り。
もうすぐお前たちも・・・
クフフフフ・・・

くちゅ・・・
あん・・・
気持ちいい・・・
アタシは触手状にした腕を股間に差し入れる。
思わずオナニーしたくなっちゃうわぁ・・・
でも・・・
ん・・・
ポトリポトリと黒くウネウネするものがアタシの股間から落ちてくる。
クフフフフ・・・
上手く孵っているわ。
ゼーゴス様にいただいた実験用の卵。
それをアタシの中で孵した蟲たちなの。
見た目は・・・そう・・・黒いナメクジといったところかしら。
アタシは床の上で蠢くその黒いナメクジたちを拾い上げると、眠っている女子学生たちの耳のそばに置いていく。
クフフフフ・・・
喜びなさい。
このナメクジがお前たちをダスロムに選ばれた存在にしてくれるわ。
融合が失敗しなければだけどね・・・
クフフフフ・・・

黒いナメクジたちがもぞもぞと這った跡を黒く残して耳の中へと入っていく。
「ひっ! あ、あぐっ!」
「あっ! ギャッ! ひぎっ!」
ナメクジに耳の奥に入り込まれた女子学生たちが苦痛に悲鳴を上げる。
クフフフフ・・・
痛いのは最初のうちだけ。
すぐに気持ちよくなってくるわ。
そうすれば・・・お前たちもアタシと同じように・・・
クフフフフ・・・

「あぐっ・・・うぐっ・・・」
「あががが・・・あが・・・」
全身をぴくぴくと痙攣させ、もがき苦しむ女子学生たち。
だが、やがてその苦悶の表情がすっと穏やかになっていく。
そして痙攣も収まり、じょじょに首筋のあたりから黒く染まっていく。
ナメクジが躰の中から彼女たちを変化させているのだ。
クフフフフ・・・

「あがっ! グゲゲゲゲッ!」
突然女子学生の一人が目を見開いて口から泡を吹く。
チッ・・・
適合不良が出たみたいね。
偉大なるダスロムにはふさわしくなかったということか。
哀れな奴。
まあいいわ。
他の五人は順調なようだし・・・
適合不良となった女は、そのままぐずぐずと液状化して溶けていく。
ふん・・・
床が汚れてしまったではないか。
いまいましいわ。

やがてほかの女子学生たちは全身が黒い皮膚で覆われていく。
クフフフフ・・・
偉大なるダスロムの女戦闘員としての姿だわ。
両脚はつま先が一つになり、かかとも伸びてハイヒールのブーツのような形に変化する。
両手も手袋をはめたように変化し、力も人間の数倍へと強化される。
首から上も黒い皮膚で覆われていき、まるでマスクでもかぶったように、目の周り以外はすべて包み込まれていく。
最後に額のあたりからニュルっとナメクジの触角のようなものが二本生え、変化が終了する。
クフフフフ・・・
おめでとう。
これであなたたちも偉大なるダスロムの一員ね。

ゆっくりと起き上がる女戦闘員たち。
その目は最初少しぼんやりしていたが、やがてはっきりと輝き吊り上がっていく。
五人は私の前に横一列に並ぶと、右手をいっせいに上げてキキーッという服従の声を出す。
自分が偉大なるダスロムの女戦闘員ですという宣言の声だ。
クフフフフ・・・
素晴らしいわ。
実験は成功ね。

アタシは女戦闘員たちにゼーゴス様より預かったダスロムの紋章の付いたベルトを渡す。
アタシもベルトを手に取って彼女たちと一緒に腰に巻くが、何とも言えない誇らしさを感じるわ。
偉大なるダスロムの一員である誇り。
ダスロムのためなら何でもするわ。

「「「キキーッ!」」」
同じようにベルトを巻いた女戦闘員たちが右手を上げる。
クフフフフ・・・
今日からここはダスロムの拠点の一つ。
アタシたちはこの世界をダスロムのものにするために働くのよ。
手始めにもっと女戦闘員を増やさないとね。
お前たちは友人を連れてきなさい。
クフフフフ・・・
楽しみだわぁ・・・
アタシは実験が成功して女戦闘員が五体完成したことをゼーゴス様に報告するため、共用室を後にした。

END

  1. 2018/05/19(土) 20:30:20|
  2. 改造・機械化系SS
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仮面ライダー第42話IF 「怪奇ハエ男と6体の蜂女」

今日はSSを一本投下します。
今日のSSは久しぶりに仮面ライダー(二号)の二次創作となります。
なんか、タイトルが「山田くんと七人の魔女」みたいな感じになってしまいましたね。(笑)

それではどうぞ。


仮面ライダー第42話IF 「怪奇ハエ男と6体の蜂女」

エンジン音を響かせて疾駆するオープンタイプのスポーツカー。
青年が運転し、助手席と後席には若い女性が乗っている。
「おらおらぁ! どけどけぇ! 道を開けろぉ!」
「キャー、かっこいい!」
乱暴な運転で前を走る車をあおり、避けたところを抜かしていく。
自分の運転に自信を持っているのか、後ろの車を振り返ってバカにしたように舌打ちする。
「おっせぇんだよ!」
「ホント、おっそーい。ねえ、修(おさむ)、もっと飛ばしてぇ!」
「よし来た!」
助手席の女性に応えるようにぐっとアクセルを踏み込む青年。
その様子に後席の女性は少し顔を曇らせる。
「ね、ねえ・・・あんまり飛ばすのは・・・」
「なぁに? 洋子(ようこ)ったら怖いの?」
助手席の女性がニタニタと笑いながら振り返る。
「そ、そういうわけじゃ・・・」
内心を隠しながらも洋子は首を振る。
「だったらいいじゃん。こんなかっこいいスポーツカーなんだもん、飛ばさなきゃ嘘よね」
「ああ、安心しろって、俺がハンドル握ってんだからさ!」
運転席の青年はまるで脅かすかのようにハンドルを左右に切って車を蛇行させる。
そのたびに周囲の車が慌てたように避けていくのだ。
修にはそれが面白くてたまらない。
洋子はそんな彼にこれ以上何も言えなかった。

                   ******

五、六人の小学生たちが交差点に差し掛かる。
「さあ、みんな、横断歩道だ。注意しようね」
先頭を歩く少年が後ろの子たちに声をかける。
近くの立花(たちばな)レーシングクラブによく顔を出す石倉五郎(いしくら ごろう)という少年だ。
なかなかに面倒見がいい性格なので、近所の子供たちに慕われている。
「横断歩道は右左を見て渡りましょう」
五郎は横断歩道の手前で車が止まってくれたことを確認し、運転手に礼を言うと、みんなを連れて横断歩道を渡りはじめる。
だが、その時、猛スピードのスポーツカーが停車した車を追い越すようにして横断歩道を横切ってきた。
「危ない!」
きしむタイヤと急ブレーキの音が響く。
五郎たちはとっさに逃げたものの、運悪く一人の少年がひっかけられてしまう。
「あっ、ひろし!」
道路に倒れた少年の名を五郎が叫ぶ。

ちょうどその時、急ブレーキの音に何事かと外に出てきた大人たちがいた。
すぐ近くの立花レーシングクラブのメンバーたちである。
彼らは横断歩道に倒れた少年の姿を見て、何が起こったのかをすぐに把握した。
「おい! 大丈夫か?」
「おい!」
思わず駆け寄ってくる立花レーシングクラブの面々。
中でも真っ先に駆け寄ったのは、ほかでもない一文字隼人(いちもんじ はやと)だ。
彼は少年の救護をほかの人に任せると、怒りの形相でスポーツカーを運転していた青年をにらみつける。
「君たちは・・・」
怒りのあまりその後の言葉が続かない。
こんな市街地で横断歩道を渡っていた少年を撥ねるなど、よほどスピードを出していたか前方不注意だったかに違いないのだ。

「うるさいわねぇ・・・かすっただけでしょ」
「そっちがもたもたしているから悪いんだ」
助手席の女も運転席の男も、まるで悪びれる様子がない。
「なんてことを言うんだ!」
あまりのことに立花レーシングクラブの会長である立花藤兵衛(たちばな とうべえ)も、思わず声を荒げてしまう。
「へっ、あばよ!」
だが、男は意に介した様子もなく、そのまま車を発進させる。
まさか逃げるとは思っていなかった隼人と藤兵衛は、一瞬反応が遅れてしまった。
「ま、待て!」
慌てて追いかけようとしたが、車はどんどん遠ざかる。
「くそっ!」
「隼人兄ちゃん!」
「滝(たき)、あとは頼む! 五郎、俺に任せろ!」
ひき逃げ犯が逃走してしまうことを恐れた五郎に、隼人は力強く答えると、すぐにレーシングクラブの前に止めてあったバイクにまたがってスポーツカーを追う。
モトクロスレーサーだった一号ライダー本郷猛(ほんごう たけし)には及ばぬものの、彼とて仮面ライダーと呼ばれる改造人間だ。
普通のスポーツカーを追うのぐらいわけはない。

「チッ、追ってきやがるのか・・・」
バックミラーに映るオートバイ。
そのバイクにまたがっている男が先ほどの男だと知った修は、さらにアクセルを踏み込んでいく。
「ねえ、人をひいてしまったのよ。おとなしく警察に・・・」
後席から心配そうに洋子が言う。
根がおとなしい彼女に取り、人をひいてしまったということは大変なことなのだ。
「なぁに? 洋子ったら修が警察に捕まってもいいわけ?」
「へっ、ガキの一人や二人ひいたからなんだっていうんだ。まあ、いざとなりゃ親父がもみ消してくれるだろうけどな。あんまり親父に迷惑もかけられないしな」
バックミラーにぴったりと付いてくるバイクに少々焦りを感じる修。
何とか振り切って逃げきらなければ・・・
親父にくそうるさく言われるのはごめんなのだ。
「くそっ・・・あの野郎・・・」
背後にぴったりと付いてくるバイクの男に、修は憎悪を抱くのだった。

                   ******

猛スピードで疾走するスポーツカーとバイク。
その様子を道路わきの地面からせり出した一台のカメラが中継する。
その映像はある場所に設置されたモニターに映し出され、その映像を黒マントを羽織り車椅子に座る老人がじっと見つめていた。

「これだ・・・この男こそ、我々が探し求めていた男。この男には冷たい悪魔のような血が流れている」
老人がその骸骨のように痩せた顔にニヤリと笑みを浮かべる。
子供をひいたことを悪びれもせず、一人二人ひいたところでなんだというんだとまで言い放つ男。
こういう男こそが、悪魔の組織ショッカーの尖兵となる改造人間にふさわしい。
「この男を捕まえろ。ハエ男に改造するのだ」
「イーッ!」
老人の背後に立つ数人の黒づくめの男たちが奇声を上げる。
彼らは全身を躰にぴったりした黒い衣装で包み、顔には目鼻口だけが露出するマスクをかぶっている。
マスクの額にはハエの模様が書き込まれ、腰には鷲のマークの付いたベルトを締めていた。
彼らこそ、世界征服を企む悪の秘密結社ショッカーの手先である戦闘員たちであり、彼らに命じた老人こそ、改造手術の権威である死神博士その人だった。

映像の中では逃げるスポーツカーが映し出されている。
どんなに頑張っても一文字隼人のバイクを振り切れないのだ。
戦闘員の一人が機器のスイッチを操作する。
すると、映像の中に白煙が立ち込めていく。
『な、なんだこれは?』
『えっ? 霧?』
『こわーい!』
スポーツカーの男女の声がモニターから流れてくる。
戦闘員がさらにボタンを押すと、白煙に包まれたスポーツカーは道路ごと地下へと沈んでいく。
開いた穴はすぐにまた覆われ、一文字のバイクはその上を通過していく。
煙が晴れた時、一文字は追っていたスポーツカーが突如消え去ったことに愕然とした。

                   ******

「もう大丈夫ですよ。怪我のほうも軽いものでしたし、この分なら二三日で退院できるでしょう」
医者の言葉にホッとした表情を浮かべる五郎と女性たち。
立花レーシングクラブのエミと、車に撥ねられたひろしの母の澤子(さわこ)である。
息子が撥ねられたと聞いて、急いで病院に駆け付けた息子思いの美しい女性だ。
「よかったわねぇ」
エミが笑顔を見せる。
五郎も心からホッとしたように安堵の表情を浮かべていた。
「皆さん、本当にありがとうございました。五郎ちゃん、もういいわよ。あなたには何の責任もないんですから」
お礼を言い、五郎の負担を考えて帰っても大丈夫と伝える澤子に五郎は首を振る。
「ひろし君のおばさん、ボクもう少しひろし君のそばにいますから」
「そう? ありがとう」
五郎の申し出に澤子はうれしくなる。
ひろしにこんなにいい少年が付いていてくれるなら、学校でも安心だろう。
「よかったなひろし。あとは隼人兄ちゃんが犯人を捕まえてくれれば万々歳だ!」
「うん、ありがとう五郎ちゃん」
ひろしも怪我はしたものの、その表情は明るさを失っていなかった。

                   ******

円形の台に寝かされているスポーツカーを運転していた男。
その周囲には白衣の男たちが集まり、様々な器具をセットしているところだった。

「加納(かのう)修。金持ちの家に生まれ、周囲の人間を見下している冷酷な男。この男こそ、ハエ男の素材としてふさわしい」
一段高くなった位置から円形手術台を見下ろす死神博士。
黒いマントの襟が誇らしげに高く立っている。
『死神博士よ。ハエ男は仮面ライダー抹殺のための強力な怪人。だが、それだけで仮面ライダーに勝てるのか?』
壁にかけられた鷲のレリーフが明滅し、重々しいショッカー首領の声が響く。
「ご安心を、首領。そのほかにも手は打ってあります。仮面ライダーもその戦闘力をフルに発揮することはできますまい」
レリーフを見上げ、にやりと笑みを浮かべる死神博士。
その表情はまさに死神の名にふさわしい。
『うむ。頼んだぞ、死神博士』
「ハッ、よし、改造手術を始めるのだ」
レリーフに一礼し、手術台の周囲の連中に指示を下す。
その命に従い、白衣の男たちは加納修の手術を開始するのだった。

手始めに修の躰には薬剤が注入されていく。
この薬剤によって遺伝子合成が可能となり、他生物の遺伝子を取り込むことが可能となるのだ。
今回はネパールの秘境に存在するという大型の肉食バエを修の躰に取り込ませるのだ。
すぐに肉食バエの遺伝子を混ぜ込んだ第二の薬剤が用意され、修の躰に流し込まれる。
それと同時に、筋肉や内臓の強化のために機械部品が埋め込まれる。
この生物と生物に加え、生物と機械の融合もまた、ショッカーの改造人間の特徴であった。

やがて修の躰に変化が生じてくる。
全身に黒くかたい毛が生え始め、頭の形もハエの頭部のように変わっていく。
胸の部分は緑色のなめし皮のような蛇腹となり、両目は大きな緑色の複眼が形成されていく。
両手も黒い毛に覆われ、鋭い爪が伸びていく。
最後は脳にショッカーへの忠誠を刻み込む脳改造が行われ、改造手術が完了する。

「ブルルルル・・・」
ゆっくりと起き上がるハエ男。
その全身はまさにハエと人間が融合した姿であり、グロテスクなものだった。
「ハエ男よ。お前には一文字隼人の抹殺を命じる」
起き上がったハエ男に指示を下す死神博士。
「ブルルルルッ! 一文字隼人? 誰だそれは?」
「この男だ」
指揮棒でモニターを指し示す死神博士。
そこには先ほどまで修を追ってきていたバイクの男の姿が映し出されていた。
「ブルルルルッ! この男か! 俺はこの男が憎い! 喜んで殺してこよう!」
「待て、ハエ男よ。やつこそは仮面ライダーと名乗り、このショッカーに歯向かう小癪な男。万全を期すためにもお前に配下を付けてやろう。入ってこい」
出かけようとしたハエ男を制する死神博士。
するとその言葉に呼応したように手術室の扉が開き、二人の人影が入ってくる。
そのスタイルからして女のようだったが、その姿もまた異様なものだった。

彼女たちは二人ともが全身を青いなめし皮のような皮膚に覆われ、背中からは薄く黄色い翅が伸びている。
その形良い両胸は黒と黄色の同心円状に模様が広がり、まるで蜂のお尻のようなイメージだ。
頭には紫色の髪が広がり、額からは蜂の胴体のような硬質な部分が頭頂部まで覆っている。
両目は緑色の複眼となっているものの、ハエ男と違って口元は人間のままとなっている。
そして腰には、ハエ男と同じショッカーの紋章が入ったベルトをつけていた。

「ブルルルルッ! この二人は?」
入ってきた異形の女たちを見やるハエ男。
「お前と一緒に車に乗っていた女たちに、日本支部初期の改造人間蜂女をベースにした改造を施したもの。いわば量産型蜂女の一号と二号だ。お前の好きに使うがいい」
満足そうに完成品を眺める死神博士。
簡易改造で作り上げたにしては完成度が高いのだ。
満足するのも無理はない。
「ブルルルルッ! ミッチ、洋子、お前たちも生まれ変わったようだな。これからは俺様のために働くのだ」
「キキーッ! 私は量産型蜂女一号。ハエ男様に従います」
「キキーッ! 私は量産型蜂女二号。何なりとご命令を」
二体の量産型蜂女が右手を上げて返事をする。
助手席に座っていたミッチも後席にいた洋子も、改造を受け量産型蜂女へと変わってしまっていた。
もはや彼女たちに人間らしい心は残っていない。

「ハエ男よ。このカプセルを人間の女に飲ませれば、その女は量産型蜂女に生まれ変わる。あと四つあるこのカプセルで、立花レーシングクラブの女たちとお前が撥ねた少年の母親を量産型蜂女にするのだ。そうすれば一文字隼人は知り合いと戦うことができず、その戦闘力は大幅に落ちるだろう。そこを殺すのだ」
「ブルルルルッ! それは面白い! 任せてくれ、死神博士」
死神博士からカプセルの入ったケースを受け取るハエ男。
その緑色の複眼が不気味に光り輝いた。

                   ******

「お、三人そろってお出かけかい?」
ちょうど立花レーシングクラブに戻ってきたFBI捜査官滝和也(たき かずや)と、入れ替わるようにユリ、エミ、ミカの三人が出てきたのだ。
「ええ、これからひろし君が入院している病院まで」
「ああそうか。今日も五郎は学校が終わったらまっすぐ病院に行っているんだっけ?」
ユリの言葉に合点がいく滝。
「うん。だからお見舞いと差し入れを持っていくの。あと人手があった方が助かるだろうからみんなで行ってこいって会長が」
エミも手にしたバスケットと花束を持ち上げてみせる。
「なるほど。気を付けて行ってこいよ。俺はあのひき逃げ犯の家がわかったことを知らせに来たんだ」
「ホント? さすがは滝さん。一文字さんなら会長と一緒よ」
ミカが感心したように滝を褒める。
「わかった」
ヘルメットをバイクにおいて、すぐに滝は中へ入っていく。
一刻も早く犯人の住所を知らせようというのだろう。
「これでひき逃げ犯も捕まるわね」
「ひろし君にいい報告ができそうね」
「それじゃ行きましょ」
三人の女性たちはいい話に笑顔になりながら、病院への道を歩いて行った。

やがて、人通りの少ないあたりに来たところで、三人の前に黒いワンボックスカーが停車する。
「な、なに? いきなり」
急に現れたワンボックスカーに戸惑う三人。
するとワンボックスカーのサイドドアが開き、中からハエの躰をした怪人が現れる。
「キャーッ!」
「ショ、ショッカー!」
「に、逃げ・・・」
慌てて逃げ出そうとした三人だったが、すでに背後にも二人の蜂のような姿をした女性が立っていた。
「ふふふふ・・・逃げられはしないわ」
「ふふふふ・・・あなたたちも量産型蜂女になるのよ」
二人の蜂女はそういうと、エミとミカの顔にスプレーをかけて気を失わせてしまう。
「エミ! ミカ! あうっ」
空手の経験があり、とっさに口をふさぐことができたユリだったが、ハエ男に背を向けてしまったことで首筋を強打され、彼女も気を失ってしまった。
「ブルルルルッ! よし、連れていけ!」
「「イーッ!」」
ワンボックスカーから黒づくめの戦闘員たちが現れ、三人を車の中に連れて行く。
やがてワンボックスカーはハエ男や二人の蜂女も乗せ、いずこともなく去っていった。

                   ******

「ブルルルルッ! 死神博士、このカプセルを飲ませればいいのだな?」
ハエ男の鋭い爪をした指先が白いカプセルをつまみ上げる。
彼の前には大きな台に寝かせられた三人の女性たちがいた。
「その通りだ。この女たちにそのカプセルを飲ませるのだ」
車いすに座った死神博士がハエ男にうなずく。
「ブルルルルッ! 一文字隼人よ、お前の仲間はショッカーの一員となるのだ。ブルルルルッ!」
ハエ男はほくそ笑むような鳴き声を発し、ユリ、エミ、ミカにカプセルを飲ませていく。
やがて彼女たちの躰が極彩色の光に覆われていき、皮膚の色が青く変化し始める。
顔も大きな複眼が形成され、額から頭頂部にかけて蜂の腹部のような外骨格が覆っていく。
髪は紫色となり、胸も黒と黄色の同心円の模様の蜂の腹部のように変化する。
背中から薄く黄色い翅が生え、彼女たちの変化は完了した。

「ブルルルルッ! 終わったようだな。さあ、起き上がって自分が何者か言ってみろ」
ハエ男の言葉に従うようにゆっくりと起き上がる三人の女たち。
「私は量産型蜂女三号。ショッカーに忠誠を誓います」
「私は量産型蜂女四号。ハエ男様に従います」
「私は量産型蜂女五号。何なりとご命令を」
ユリ、エミ、ミカの三人はそれぞれ量産型蜂女の三号、四号、五号へと変化してしまっていた。
もはや彼女たちからは仮面ライダーとともにショッカーに立ち向かうなどという正義の心は消え失せ、悪魔の組織ショッカーの一員となった喜びがあるだけだった。

「この三人の姿を見れば、一文字隼人もまともには戦えぬはず。あとはやつをおびき寄せるためにも、少年の母親も量産型蜂女にしてしまうのだ。行け! ハエ男よ!」
「ブルルルルッ! お前たち、付いてこい!」
「「「キキーッ!」」」
死神博士の命に、ハエ男は新たに量産型蜂女となった三人とこれまでの二人をを引き連れてアジトを出る。
向かうはひろし少年の入院している病院だった。

                   ******

「五郎ちゃん。今日もきてくれてありがとう。でも本当にいいの? ひろしのことならもう心配はいらないのよ」
「おばさん。ボクの気が済むまで・・・ひろし君が退院するまではいさせてください。お願いします」
真剣な表情で頭を下げる五郎に澤子は胸を打たれる。
本当にありがたいことだ。
「そう? それじゃおばさんちょっと用事を済ませてくるから、その間ひろしのそばにいてくれる?」
「はい。もちろんです」
顔を輝かせる五郎。
ベッドでそのやり取りを聞いていたひろしも顔をほころばせる。
「ありがとう五郎ちゃん」
「いいんだよひろし。それにもうすぐユリ姉ちゃんやエミ姉ちゃんたちが来ると思うし。あっ、そうだ! クラスの友達からノート借りてきたから、勉強も遅れないで済むよ」
そう言ってカバンの中からノートを取り出す五郎。
「それじゃ、ちょっとの間お願いね」
澤子はそんな二人をほほえましく見ながら、病室を後にした。

「急いで銀行に行って来なくちゃ」
澤子は入院費などのためにお金を降ろしに銀行へ向かおうと、病院の廊下を歩いていく。
そして物品庫の前に差し掛かった時、いきなりドアが開いて中から伸びた手が澤子を物品庫の中へと引きずり込む。
「きゃっ! な、なに?」
突然のことに驚く澤子。
すると左右から奇妙な姿をした女たちが澤子の躰を押さえつける。
「い、いやっ! だ、だれか!」
「ブルルルルッ! お前もこのカプセルを飲むのだ」
目の前に現れたハエの化け物が、澤子の口にカプセルを押し込んでくる。
「む・・・むぐっ」
何とか飲み込まないように抵抗する澤子だったが、無理やり口をこじ開けられるようにして飲まされてしまう。
「あ・・・あああ・・・」
喉を掻きむしるようにして倒れ込む澤子。
躰が熱を持ったように熱いのだ。
やがて思考がぼんやりし、なにがなんだかわからなくなっていく。
「あああ・・・」
じょじょに澤子の躰が極彩色の光に覆われ、躰が変化し始める。
数分後、澤子の躰はほかの女たちと同じように、蜂の怪人へと変わっていた。

「私は量産型蜂女六号です。ハエ男様、何なりとご命令を」
ゆっくりと立ち上がり、ハエ男に向かって右手を上げる量産型蜂女六号。
「ブルルルルッ! 俺様はお前のガキを跳ね飛ばした男だぞ。その俺様に従うというのか?」
試すように意地悪く質問するハエ男。
自分を憎んでいただろう撥ねた相手の母親を支配するというのは、気持ちがいいものだ。
「はい。もちろんです。あの子はもう私にとってはどうでもいい存在。私にとって大事なのは偉大なるショッカーとハエ男様です」
「ブルルルルッ! ならばあのガキどもを始末するのだ。できるな?」
「もちろんです。ハエ男様」
こくりとうなずく量産型蜂女六号。
「ブルルルルッ! ならば行け!」
「キキーッ!」

病室にノックの音が響く。
「どなたですか?」
五郎がひろしに代わって返事をする。
おそらくは立花レーシングクラブの三人の誰かか、ひろしの母澤子が戻ってきたのだろう。
『私よ。ひろしの母よ』
ドアの向こうからの声に、安心してドアを開ける五郎。
だが、そこに立っていたのは、全身を青い皮膚に包んだ異形の女だった。
「わぁ! 化け物だ!」
思わず飛びのいてしまう五郎。
「五郎ちゃん!」
ひろしもベッドから躰を起こす。
「ふふふふふ・・・お前たちは一文字隼人を引き寄せる餌。だが、お前たちが死んでもいずれやつはここに来る。だから死ね!」
ゆっくりと病室に入ってくる蜂の怪人。
「あっ、お母さん!」
その姿や顔の造りにひろしは自分の母の面影を見る。
「オホホホホ・・・私はもうお前の母親などではないわ。私はショッカーの量産型蜂女六号。お前たちはここで死ぬのよ。ホホホホホ・・・」
手の甲を口元に当てて高笑いをする量産型蜂女六号。
すでに彼女はひろしの母親という気持ちを失っているのだ。

「ひろし! こっちだ!」
ベッドの上で愕然とするひろしの手を引き、窓から逃げ出そうとする五郎。
だが、その窓を開けたところには、三人の同じ姿をした量産型蜂女が待ち構えていた。
「うふふふ・・・逃がしはしないわ」
「どこへ行くつもりなのかしら?」
「お前たちはここで死ぬのよ」
「そ、そんな・・・ユリ姉ちゃん、エミ姉ちゃん、ミカ姉ちゃんまで・・・」
五郎の顔が青ざめる。
その蜂女たちは立花レーシングクラブでいつも見慣れた顔の面影があったのだ。

                  ******

「畜生! 子供が子供なら親も親だ!」
「ああ・・・だがいずれは家に戻ってくるはず。立花の親父さんが見張っていてくれるそうだから、今度は逃がさんぞ」
ぶつくさと文句を言いながら病院にやってくる滝と一文字。
滝の情報をもとにひき逃げ犯の家に行ってみたものの、うちの子がそんなひき逃げなどするはずがないとけんもほろろに追い返されたのだ。
二人はやむなくそのことを病院に来ているはずのレーシングクラブのメンバーに伝えるつもりだった。

『助けてー!』
奥の病室の方から声が上がる。
「おい、今のは?」
「五郎の声だ!」
「行くぞ!」
すぐに病室に向かう滝と一文字。
二人が病室に飛び込むと、今まさに鋭い爪で二人の少年を引き裂こうとしている量産型蜂女たちの姿があった。
「こ、これは・・・」
「ショッカー!」
二人は体当たりを食らわせるようにして、蜂女たちを突き飛ばすと、二人の少年を確保する。
「隼人兄ちゃん! 滝兄ちゃん!」
「よし、五郎。もう大丈夫だ!」
滝が二人を抱えるようにして引き寄せる。
その三人をカバーするように立ちはだかる一文字。
「滝兄ちゃん! その四人はユリ姉ちゃんやエミ姉ちゃん、ミカ姉ちゃんとひろし君のおばさんなんだ!」
五郎が半分泣きながら蜂女たちを指さす。
「なんだって?」
滝も一文字もその言葉に衝撃を受ける。
確かに四体の蜂女たちは、いずれも見覚えのある面影があった。

「なんてこった・・・ショッカーめ!」
一文字が歯噛みする。
そして四体の蜂女の背後から、新たに二体の蜂女を引き連れたハエの怪人が現れる。
「ブルルルルッ! どうだ一文字隼人! こいつらは死神博士のカプセルで、量産型蜂女へと生まれ変わったのだ。こいつらが相手では、お前も戦うことはできまい!」
「出たな、ショッカーの改造人間!」
「俺様はハエ男! 貴様を抹殺するために作られたのだ。ブルルルルッ!」
「うふふふ・・・」
「おほほほほ・・・」
ハエ男と六体の蜂女たちが笑い声をあげる。

「滝! 子供たちを連れて窓から逃げろ! 俺はこいつらを食い止める」
「わかった!」
滝はそう返事をすると、二人の少年を連れてさっき五郎が逃げ出そうとした窓から外へ出る。
「変身! とうっ!」
力強い変身ポーズと掛け声が上がり、一文字隼人は仮面ライダーへと変身する。
「ブルルルルッ! 現れたな仮面ライダー! やれっ!」
「「キキーッ!」」
ハエ男の命に従い仮面ライダーに向かってくる量産型蜂女たち。
今、仮面ライダーのつらい戦いが始まった。

END
  1. 2018/01/28(日) 20:53:56|
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ある事故の結末

今日は楽しいクリスマスイブということで、短編SSを一本投下いたします。

タイトルは「ある事故の結末」です。
なんかやや誰得のSSになってしまったかという気もしますが、私には得ですので、よろしければご覧くださいませ。
楽しんでいただけましたら幸いです。


ある事故の結末

「あなた・・・あなた・・・起きて。6時よ。起きて。6時0分15秒になったわ。起きないと遅刻するわよ。今6時0分32びょ・・・」
そこまで言いかけて口をつぐむ。
またやってしまった・・・
もっとアバウトに人間らしくしなくてはいけないのに、どうしても機械の正確さがにじみ出てしまう・・・

「う、うーん・・・もう朝かぁ?」
布団の中でゆっくりと目を開ける夫。
赤外線視覚で見ると体温の異常は感じられないし、声も問題はなさそう。
健康状態には数値的問題はないみたいね。
私は視覚を通常に戻すと、夫に笑顔を見せる。
「そうよ。もう6時3分18びょ・・・よ」
またやりそうになってしまい、思わず苦笑プログラムが働く。
人間は秒単位まで気にしないというのに・・・

夫が布団から抜け出したのを確認し、私は台所に戻る。
お味噌汁が沸騰してしまうタイミングまでは、まだあと28秒ほどあるはずなので、余裕をもって火を止められるわ。
夫が洗顔等を済ませている間に、私はタマゴを焼いて目玉焼きを作る。
切っておいたキャベツの千切りを添えて、朝食のおかずができあがる。
夫がテーブルに着くときには、おかずもごはんもお味噌汁も用意ができているというわけ。
こういうタイミングを合わせるのは、今の躰は本当に便利でいい。
でも・・・
以前の私ならやっぱり生身でいたかったと思うのかしら・・・
こんなに素晴らしい躰なのに。

                   ******

私は記憶を再確認する。
あの日、用事があって出かけた私は、車を運転中に躰にとても熱いものを感じ、意識を失った。
しばらくして目が覚めた時、私は何かよくわからない白い光の中にいた。
どこだろうと思って周りを見ようと首を動かそうとしたけれど、なぜか全く首が回らない。
手を動かそうと思ったけど、手も動かない。
いったい何が起こったのかがわからず、私は軽く混乱していた。

そのうち、光の中で人の影のようなものが姿を現したわ。
白い光の中で黒い人の形だけ。
輪郭もぼやけて人っぽく見える影と言った方がいいような姿。
その影が一言発したの。
申し訳ないって・・・

私は何が申し訳ないのか聞き返したわ。
すると、私の躰が蒸発してしまったことを詫びてきたの。
えっ?
私の躰が?
嘘でしょ?
だって、今も躰があるのは感じているのに?

それは幻の感覚だと彼は答えたわ。
男の声っぽかったから彼と言ったけど、性別はわからない。
そもそも性別があるかどうかもわからない。
彼は続けた。
犯罪者を追い詰め、抵抗してきたのを取り押さえるために撃った一撃が、偶然にも次元のはざまを飛び越して君の乗っていた輸送機器に命中してしまった。
そのため、君の輸送機器の下側部分と君の躰は瞬時に蒸発し、かろうじて直撃をまぬがれた君の頭部だけを緊急回収した。
なんとか君を救うべく、今は一時的に頭部のみを生かしている状態に過ぎない・・・と。

何を言っているのか?
私は何か質の悪い冗談に付き合わされているのではないか?
そんな思いをよそに、彼は続ける。
本当に申し訳ないことをした。
我々のできる限りの補償はさせていただく。
偶然とはいえ、放った衝撃波が現地の知的生物を傷つけてしまうことはあってはならないことだ。
可及的速やかに補償について話し合いたいと思っているため、こうして君に覚醒してもらったというわけだ。

補償とは?
私の質問に彼は答える。
君の乗っていた輸送機器については問題ない。
あの程度の低テクノロジーの輸送機器であれば、ほぼ完全に再現が可能だ。
事故時点の記録から、すでに再現は行われているので、確認してほしい。
彼がそういうと、私の目の前に車が現れる。
私の乗っていた車だ。
私が過去に運転をミスってつけてしまった傷も同じ位置にある。
ナンバーももちろん同じ。
再現?
単に私の乗っていた車を持ってきたのでは?
そうではないと彼は言う。
この輸送機器の下部は君の躰とともに蒸発した。
残っていた上部はそのまま利用しようとも思ったが、どうせならと作り直した。
上部を元のと取り換えるならそれでもいい。
私は首を振ろうとして振れないことに気が付いた。
だから、そのままでいいとだけ答えた。

問題は・・・
と彼が言う。
影しかないのに、彼が難しい顔をしたような気がした。
君の躰のほうだと続ける彼。
君の躰は残念ながら元通りに再現するのは無理だと判明した。
えっ?
無理?
車を傷の部分まで完璧に再現できるのに?
確かに君たちの種族の基本的構成要因はそれほど複雑なものではない。
しかし、我々は生命技術においてはいまだ発展途上であり、無から君たちの躰を作り出すことはまだできないのだ。
我々が君に提示できる選択肢は二つ。
我々の種族の躰に君の脳を移植し、我々の種族の一員として今後暮らすというものが一つ。
もう一つは、君の躰を模した機械を用意し、そこに君のデータを落とし込むことで機械の一種として生きていくこと。
この二通りだ。
もちろんこれ以外にそのまま死を受け入れるというのもあるが、それは君は望まないだろう?

あなたたちの種族になるということは、家族と離れなくてはならないのですか?
もちろんだ。
我々は犯罪者を追ってたまたまこの世界にかかわったに過ぎない。
それも事故によってだ。
なので、この件が終われば我々はここを離れる。
我々の種族の一員となれば、我々の世界で生きてもらうことになるが、もちろん全力でサポートするつもりなので安心してほしい。

機械になれば家族と離れずに済むのですか?
機械とはいえ、特殊素材でできた外皮により、君の種族と見た目的な差異はなくすることが可能だ。
事故直前の情報から、君そっくりの外見を再現することもできる。
ただし、機械に君のデータを移し替えるため、機械的な思考になることはあり得るし、長期にわたって外見上に老化は起きない。
そのため、いずれは家族に違和感を感じられてしまう可能性はある。

私の答えは決まっていた。
少なくともこんなことで家族と別れるのはいやだ。
私は機械の躰を用意してもらい、そこに“私”を移し替えてもらったのだ。

                   ******

それ以来、私は何食わぬ顔をして家族と一緒に暮らしている。
いずれは家族に違和感を感じられる可能性はあるが、現状ではその可能性は3%ほどと低い数値だ。
と・・・あと28秒で6時30分。
娘を起こさないと。
部屋を出て娘の部屋に行くまでに8秒。
不測の事態が起きても対応できる時間はあるわね。
私はそう計算し、リビングを出て娘の部屋に向かった。

4分12秒で娘を起こしてリビングに戻ってくると、夫は黙々と食事を続けていた。
何も言わずに食べているけど、その表情から計算すると、今朝の食事に満足している確率は77%。
悪くない数値である。

「おはよー」
パジャマ姿の娘がリビングに入ってくる。
「おはよう。早く顔を洗ってらっしゃい。朝御飯できてるわよ」
「はぁい」
娘は私に返事をしてそのまま洗面所に向かう。
その間に私はご飯とお味噌汁を用意する。
ちょうど娘が戻ってきてテーブルに着く。
うん。
計算通り。

「お父さんもおはよう。いただきます」
「ああ、おはよう」
「うん、いいにおい。最近お母さんって手際が良くなったよねー」
そう言いながらご飯を口に放り込む娘。
「ご飯もおいしくなったしさ。お父さんもそう思わない?」
「そうだな・・・朝はきちんと時間通りに起こしてくれるしな。前は自分でも寝過ごしていたぐらいなのにな」
夫が笑っている。
そうだったかしら?
時間に合わせて行動するのは当たり前でしょ?
ご飯だってグラム単位で計算していれば味覚に合うぐらい当然だわ。
って・・・これももう少しアバウトにした方がいいのかしら?
なんだかアバウトっていやなのよね・・・

「キャベツの千切りだってすごくきれい。いつの間にこんなに上手になったの?」
目玉焼きの付け合わせのキャベツの千切りを口に運んでいる娘。
包丁をミリ単位で動かせばいいだけのことだから、何でもないことなのに・・・
生身だった時はできていなかったかしら・・・

「ごちそうさま。さて、行くとするか」
食事を終えて身支度を整えていく夫。
私は置いてあったカバンを取ってきて手渡す。
「行ってらっしゃい」
「うん、それじゃ行ってくる」
私からカバンを受け取ると、夫は娘にも手を振って玄関へ向かう。
「行ってらっしゃーい」
娘も夫に手を振ると、食事を済ませ、制服に着替えるために部屋に向かった。

                   ******

夫も娘も出かけると、私は後片付けを済ませ、充電に入る。
今の私には食事は不要なもの。
夫や娘に怪しまれないように食べる真似はできるけど、食べたものはそのままトイレで吐き出している。
食事なんかより充電のほうが私は好き。
電気が充填されていくと、躰がほてって気持ちよくなるの。
私はスカートを捲り上げ、ショーツをずらして尾てい骨のところからコードを伸ばす。
そして家庭用コンセントにコードを差し込むと、その前で四つん這いになって充電を楽しむ。
ああ・・・ん・・・
気持ちいいわぁ。
脳にも躰にも電流が流れ、機械である喜びを感じることができる。

「ピッ! プログラムを開始・・・通信を行います」
私の口から普段とは違う電子音が発せられる。
それと同時に、左右の耳からアンテナがせり出していく。
プログラムが起動し、“彼ら”へとデータが送られていくのだ。
私の見聞きしたこの世界のデータ。
専業主婦である私には大した情報は持たないが、それでもこの世界を知る貴重なデータになるだろう。
いずれこのデータをもとに彼らの行動が行われることになる。
時間的計算で言えば、私のデータを使うことですでに私と同じように機械人間に置き換えられた人間は90%以上の確率で10体以上。
70%以上に範囲を広げれば50体以上はいると言える。
置き換えられた私たちは、時期が来たら彼らの組み込んだプログラムに従って人間を攻撃し、彼らがこの世界を支配する手助けをする。
そのことがわかっていながら、私はそのことを家族に伝えようとは思わない。

なぜなら、私はすでに彼らの側として行動するようにプログラムされており、彼らに従うことこそが私の存在理由となっているから。
いずれ彼らのプログラムが発動して、私自らが家族を攻撃する日が来る。
だが、私はそのことを心待ちにしている自分を抑えられない。

彼らが私の躰を作ってくれたのは補償からでも好意からでもなんでもない。
都合がよかったからなのだ。
彼らの示した選択肢を私がどう選ぼうと彼らはよかった。
脳移植を受け彼らの一員となれば、私は喜んで彼らにこの世界の情報を伝えていただろうし、機械人間になれば、こうして彼らの手先として世界に潜り込ませられるのだから。

私を巻き込んだ事故は確かに100%偶発的なものだった。
しかし、その事故の元となった“犯罪者”は、この世界に彼らの侵略が迫っている危険を知らせようとしていた確率が70%を超える。
犯罪者を始末した結果、偶然私を手に入れることができたことは、彼らにとって喜ばしいことだったであろう。
おかげで私はこうして人間のふりをしながら彼らのために行動している。

「ん・・・充電終了」
私は通信と充電を終え、アンテナを格納してコードも収納する。
立ち上がってショーツとスカートを直し、外見を整える。
今日は買い物ついでに町中にでも出かけてみよう。
些末な情報でも彼らにとっては有意な情報となるのだから。
今晩のおかずは何がいいかしら。
今はせいぜい家族のために尽くすようにとプログラムが命じている。
いずれ時が来たら・・・
うふふふふ・・・
私は充電による満足感とは違う、何か別の喜びをプログラムによって感じさせられていた。

END

それでは皆様良いクリスマスをお楽しみください。
年末年始にはまた二三本SSを投下できるかと思いますので、お楽しみに。
ではでは。
  1. 2017/12/24(日) 20:46:30|
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クモとアリ

ブログ開設から4500日記念SSの第三段です。
今日はショッカー風女怪人SSです。

タイトルは「クモとアリ」です。
まあ、そのまんまです。(笑)
お楽しみいただけましたら幸いです。

それではどうぞ。


クモとアリ

「はあ・・・」
玄関を開けた時の絶望感・・・
今日もまた家には誰もいなかった・・・
一人・・・
たった一人の人がいてくれないことがこれほどつらいことだとは・・・
「優斗(ゆうと)さん・・・」
確かに時間的にはまだ帰っていない時間かもしれない。
いつもなら誰もいない家に帰ってくるのは普通のことだった。
でも・・・
それはあと二時間もすれば彼が帰ってくるのがわかっていたからのこと。
だが今は・・・
「優斗さん・・・あなたはいったいどこに・・・」
今日は・・・
今日こそは家に戻ってきてくれているかもしれない・・・
そう希望をもって家に帰るようになって一週間。
いまだ彼は戻っていない。
誰も出迎えてくれなかった玄関で、紗月(さつき)は思わず膝をつき、涙を流すのだった。

「それじゃ行ってくるよ」
いつも通りに玄関を出ていく優斗。
「あ、行ってらっしゃい。私もすぐ出ます」
身支度を整えながら彼を見送る紗月。
スーツ姿の優斗がにこやかに手を振っていく。
いつもと変わらぬ二人の朝。
だが、この日から優斗は帰ってこない。
会社はいつも通りに退社したという。
事故や事件という話もない。
両親や親戚の家に行ったという報告もない。
共通の友人に聞いても誰一人彼の行方を知る者はいなかった。

三日後には警察にも届け出た。
もはやそれ以上できることはなく、あとは帰りを待つしかない。
最初は浮気も疑ったが、もはや戻ってきてくれるのならどうでもいい。
結婚して一年ちょっと。
スポーツマンの彼にあこがれたのは彼女の方。
それからはことあるごとにアタックし、彼女の座を射止めた。
そして結婚。
本当に幸せだった。
でも・・・
幸せだったのは自分だけだったのではないだろうか・・・
魅力のない自分に飽きられてしまったのだろうか・・・
もっと女を磨いていればよかったのだろうか・・・
何となく惰性で夫婦をしていたからではないだろうか・・・
いろいろなことが思い浮かぶ。
とにかく戻ってきてほしい。
彼がいないのでは生きている意味がない・・・

食事を作る気にもならず、部屋に一人でいることにも耐えられず、紗月は家を飛び出した。
どこへ行く当てがあるわけでもない。
ただ一人でいるのがいやだった。
いつも二人で笑って過ごしていたあの部屋。
一人でいるのは耐えられない・・・
「優斗さん・・・どこなの?」
夜の街をうろつく紗月。
いつしかその足は人気のない暗闇へと向かっていた。

「えっ? あれ?」
気が付くと暗い裏路地を歩いていた紗月。
どこをどうやって歩いてきたのか・・・
そもそもここはどこなのか?
「いけない・・・戻らなきゃ」
そう思って来た道を戻ろうとはするものの、はたして自分が来たのは右の道からだっただろうか、左の道からだっただろうか記憶がない。
「えっ? どうしよう・・・ここどこ?」
昼間ならまだ周囲の風景から判別がついたかもしれない。
だが、今はもう夜。
街灯も少なく、住宅もちらほらとしかなく、さっぱり方角がわからない。
「どうしよう・・・」
紗月は青ざめたが、とにかく行けるところまで行ってみようと道を歩き出す。
その時だった。

「きゃっ!」
突然彼女の躰に何かが絡みつく。
ねばつく太いヒモのようなものが手足に絡みついて、もがけばもがくほど絡まってしまうのだ。
「やだ、何これ? 何なの?」
引きちぎろうとしても、彼女の力では引きちぎることもできない。
それどころか、かえって絡まりを深めてしまう。
「だ、だれか・・・助けて」
まるで蜘蛛の巣にでも引っかかてしまったかのように、ヒモに絡めとられてしまう紗月。
そこに数人の人影が現れる。
「あ、すみません、たすけ・・・」
一瞬助けを求めかけた紗月だったが、現れた人たちの異様な姿に言葉を失ってしまう。

それは何とも異様な姿。
体形から男性が二人に女性が一人ということはわかるものの、そのいずれもが頭のてっぺんからつま先までの全身を黒いタイツ状の衣服で覆っており、顔も目の部分以外は覆われているため、日本人なのか外国人なのかもよくわからない。
両手両足は黒いブーツと手袋を付けており、腰にはドクロのマークの付いたベルトを締めている。
まるで何かで見た特撮のキャラクターみたいだ。
そしてそれ以上に驚くべき姿なのが、彼らの後ろに立っている異形の姿。
がっしりした体格だが、全身を黒く短い剛毛が覆い、ところどころに赤い筋状の毛が走っている。
頭には角のような二本の突起があり、赤く丸い目が大きいのが二つに小さいのが四つこちらをにらんでいる。
口元には左右に開くあごのようなものがあり、肩からは片方二本ずつの人間の腕のようなものが生えていた。
「あ・・・あああ・・・」
まるで蜘蛛と人間が融合したかのようなその異形の姿に、紗月は声も出ない。
この躰に絡みついたヒモのようなものは、この化け物の巣だったとでもいうの?

「シュシュ―! この女だ。連れていけ」
「キキィーッ!」
蜘蛛の化け物の言葉に黒づくめの連中が奇声を上げて応える。
男二人が左右から紗月の腕を抑え、女は紗月の口に何やら布をかぶせてくる。
「やっ、何を、やめ・・・て・・・」
何かの薬品の臭いが紗月の鼻を通り、彼女は急速に意識が遠くなっていった。

                   ******

「ん・・・」
意識が戻ってくる。
「ここは?」
ぼんやりと見上げる天井。
そこにはTVなどでよく見る手術用の無影灯のようなものが点いていた。
「えっ?」
慌てて躰を起こそうとしたものの、両手と両足が固定されていて起き上がれない。
それどころか、首まで固定されているではないか。
「ちょ、ちょっと、何これ?」
自分がいったいどうなったのか、紗月は全く見当もつかない。
わかっているのは、自分があの化け物たちに捕らえられたことと、ここに寝かされていることだけ。
いったい何がどうなっているのか・・・

スッと彼女の額に何かが触れる。
「ひっ!」
思わず小さな悲鳴を上げる紗月。
見ると、彼女の頭のところに、あの蜘蛛の化け物が立っているではないか。
「ひぃーー! いやぁぁぁぁぁ!」
恐怖のあまり大声でわめき首を振る。
「シュシュ―! サツキ・・・」
「えっ?」
突然自分の名前が呼ばれたのだ。
「ど、どうして?」
「シュシュ―! サツキ・・・怖がるな・・・」
彼女の額をなでながら、躰の位置を彼女の横に移す蜘蛛怪人。
「ど、どうして私の名を・・・」
そう尋ねた紗月の脇に、チャラッと音がしてペンダントが置かれる。
それは新婚旅行で二人で買ったペンダント。
もう片方は紗月の首にかかっており、もう片方は・・・
「まさか・・・優斗・・・さん?」
「シュシュ―! それは改造を受ける前の俺の名だ。今の俺は組織の改造によって生まれ変わり、クモ男となったのだ」
複数の赤く丸い目が紗月を見つめている。
「まさか・・・そんな・・・」
紗月は言葉が出ない。
探していた愛する人がまさかこんな姿になっていようとは・・・

「シュシュ―! 恐れることはない。お前は試験に合格した。お前も組織の改造人間になれるのだ」
「えっ? 改造人間?」
「シュシュ―! そうだ。首領様にお仕えし、組織の一員として人間どもを支配する改造人間だ。俺はお前を俺のパートナーとして改造人間に推薦した。そしてお前は見事に試験に合格したのだ」
何を言っているのか?
改造人間?
組織?
紗月には何が何だかさっぱりわからない。
そもそもこの状況は現実なのだろうか?
本当に目の前のこの異形の姿があの優斗さんなのだろうか?

「シュシュ―! 俺はお前を失うのが怖かった。下等な人間のままでは、いつかお前は組織によって単なる奴隷にされてしまう。だから俺はお前を改造人間に推薦したのだ。せめて女戦闘員でもと・・・だがお前は改造人間になれるのだ。俺も誇らしく思うぞ」
紗月の耳元で語り掛けているクモ男。
だが、紗月にはそんな言葉は耳に入ってこない。
「いやぁ・・・いやです。お願い・・・家に、家に帰して」
「シュシュ―! バカなことを。お前は選ばれたのだ。組織の一員となる栄誉を与えられたのだ。おとなしく改造を受けるのだ」
「いやっ! いやぁっ! 改造なんていやよぉ!」
必死になって身をよじる紗月。
化け物になんかなりたくない。
そう思い、何とか逃げ出そうとするものの、手足の枷は彼女の力ではどうすることもできない。
「シュシュー! 構わん。この女の手術を始めるのだ」
「キキィーッ!」
いつの間に現れたのか、全身を白い全身タイツに包んだ男女がクモ男の指示に従い、紗月の手術を開始する。
「いやっ! いやぁぁぁぁっ!」
もがく紗月の口に麻酔のマスクが付けられ、紗月はまたしても深い闇の中へと意識が沈んでいくのを感じていた。

                   ******

紗月は夢を見ていた。
夫優斗との楽しい夢。
二人で他愛もない話をして笑い、手をつないで抱きしめ合う。
夫のたくましい胸に抱かれ、そのぬくもりに包まれる。
安心と希望に満ちた世界だ。
やがて夫の姿が変化する。
その躰には黒く短い剛毛が生えていき、腕も四本に分裂する。
顔も剛毛に覆われ、角のような突起や赤く丸い目ができていく。
紗月は一瞬驚いたものの、むしろその姿を好ましく感じることに気が付いた。
改造人間となり、蜘蛛の力を手に入れた夫。
下等な人間からより高い存在へと生まれ変わったのだ。
なんて素敵なのだろう・・・
羨ましい・・・
自分もそうなりたい・・・
改造され、改造人間として生まれ変わりたい・・・
紗月は強くそう思う自分に気が付いた。

すると、紗月の躰に変化が起こる。
内臓が強化され、補助機械がその機能をサポートする。
心臓も、肺も、消化器官も、すべてが強化されていく。
力も強くなっていく。
筋肉が強化されていくのだ。
人間の何倍もの力が出せる筋肉。
それが紗月の躰を変えていく。

脳にも機械が埋め込まれる。
より自分の躰を制御できるように、より組織のことを理解するために。
新たな社会をつくる組織。
自分もその一員に加わるのだと紗月は理解する。
首領様に従い、一糸乱れぬ統率で組織のために働く。
それが組織の一員である自分の務めなのだ。
なんてすばらしいのだろう。
今までの自分はおろかだった。
下等な人間どもの一部として地球を汚すことしかできなかった。
だが、これからは違う。
自分は選ばれたのだ。
首領様に選ばれたのだ。
改造人間になる栄誉を与えられたのだ。
こんなうれしいことはない。
これからは首領様のためなら何でもする。
紗月はそう思う。

やがて紗月の躰に黒くて硬い外皮が貼り付けられていく。
銃弾すら跳ね返すことのできる硬い外皮だ。
これからはこの外皮が自分の肌となる。
そのことが紗月はうれしかった。
両手も、両脚も、胴体も外皮に覆われていく。
胸のところは形良く膨らんだ昆虫のお尻を思わせる感じだ。
ここからは酸を吹き出すことができる。
母乳などというくだらないものではない。
下等な人間を溶かす強力な酸だ。
なんと素晴らしい事だろう・・・

最後は頭も変わっていく。
髪の毛はきれいになくなり、硬い外皮で覆われる。
額には二本の触角が作られ、これまで以上に感覚が研ぎ澄まされていく。
これなら暗闇の中で行動しても問題はないだろう。
目も複眼に置き換わり、より多数の目で見ることができる。
たった一つの目でものを見ていたなど、なんと下等だったのだろう。
自分は進化するのだ。
改造人間というより高度な存在に。
そして組織のために行動する。
それこそが自分が生まれ変わる意味なのだ。

『目覚めよ。アリ女よ』
首領様の声が響く。
その瞬間、紗月は自分が何者かを理解した。
自分はアリなのだ。
強靭な外皮を持ち、両手の爪でトンネルを掘り進み、不要な人間を蟻酸で始末するアリなのだ。
紗月などという名前にはもはや用はない。
それは下等な人間だった時の名前。
今の自分はアリ女。
改造人間アリ女なのだ。

「リリリリー!」
彼女はゆっくりと起き上がる。
そして手術台からゆっくりと降り、首領に対して一礼した。

                   ******

ドアをたたくノックの音。
硬質な響きが気持ちいい。
あらためて自分の躰が硬質化したことを感じさせてくれる。
「シュシュー! 誰だ?」
ドアの向こうからクモ男の声がする。
それだけでアリ女の心は踊る。
「リリリリー! 私はアリ女。入ってもいいかしら、クモ男?」
あらためて自分の名を口にして喜びに浸る。
アリ女・・・
なんていい響きだろう。

「シュシュー! もちろんだ。今開ける」
ドアのロックが外される。
先ほどまでトレーニングをしていたと戦闘員に聞いていたので、おそらく今は休息中だったはず。
もしかしたら後にしてくれと言われるかと思っていたが、入れてもらえてうれしい。
「シュシュー! よく来たな、アリ女。歓迎するぞ」
ドアを開けてアリ女を出迎えるクモ男。
その剛毛に包まれた躰がたくましい。
改造人間というのはこんなにも素敵なものだったなんて・・・

「リリリリー! 休息中にお邪魔だったんじゃないかしら?」
「シュシュー! とんでもない。お前が来てくれるのを待っていた」
「リリリリー! ホント? うれしいわ」
クモ男の部屋に入るアリ女。
アジトの控室は質素だが一通りのものはそろっている。
椅子、テーブル、ベッドなど。
室内にある鏡に彼女の姿が映っている。
大きな頭には額から触角が伸び、楕円形の複眼が鏡の中から彼女を見ている。
左右に開くあごは鉄の棒さえ噛みちぎる。
全身は黒光りする外皮に覆われていてとても硬いが、滑らかなラインは彼女が女性の改造人間であることをあますところなく表している。
二つの胸のふくらみはアリの腹部を模しており、そこから出る蟻酸は強力だ。
まさにアリと人間の融合した姿は、彼女にとって誇らしい姿だった。

「シュシュー! 座るがいい」
クモ男が椅子をすすめてくる。
どうやら彼自身はベッドにでも腰掛けるつもりらしい。
「リリリリー! 私もそっちへ行っていいかしら?」
せっかく二人になったのだ。
そばに行って触れ合いたい。
アリ女はそう思う。
自分が改造人間になれたのはクモ男の口添えがあってのこと。
そのお礼もしたい。

アリ女はクモ男の返事を待つことなく彼の隣に座る。
そしてその身を彼にもたれかけさせる。
温かい。
クモ男の体温を感じる。
なんだかとても懐かしい。
もちろん、あのころのことなど思いだしたくもない。
自分が人間だったなど吐き気がする。
だから・・・
私たちは新たに時を刻んでいこう。
改造人間同士の素晴らしい時間を・・・
「リリリリー! ねえ、クモ男。どう? 私は生まれ変わったわ。私は改造人間アリ女。あなたのおかげよ。感謝しているの」
「シュシュー! 俺もうれしいぞ。お前は美しい。これからはともに組織のため、首領様のために働こうではないか」
「リリリリー! ええ、もちろんよ。偉大なる首領様。あの方のためなら何でもするわ。でも、その前に・・・」
アリ女はクモ男の顔を見つめる。
「シュシュー! その前に?」
「リリリリー! あなたにお礼がしたいのよ。私を改造人間に推薦してくれたお礼。それにね、私、まだ自分の躰のすばらしさを味わいきってないの。あなたが味わわせてくれると嬉しいんだけど・・・」
クモ男の顔を手で引き寄せながら、アリ女はベッドに躰を横たえる。
「シュシュー! それじゃたっぷりと味わわせてやるとしよう。ケケケケケ・・・」
クモ男は奇妙な笑い声をあげ、そっとアリ女の上に重なった。

                   ******

「うわーーー! ば、化け物だーー!」
悲鳴を上げて逃げてくる警備員。
失礼な男だわ・・・私たちは化け物なんかじゃないわよ・・・
もうすぐここにやってくるであろう警備員に対してアリ女はそう思う。
自分たちは首領様に選ばれた改造人間なのだ。
下等な人間どもとは違う。

警備員の背後では、シュシューというクモ男の声や、キキーッという戦闘員たちの声が聞こえてくる。
既に大半の警備員は始末したはずだが、生き残りがいたようだ。
私たちの姿を見たからには始末しなくてはならない。
人間を殺せると思うとアリ女の心は高ぶってくる。
まるでこれからセックスでもするかのよう。
アリ女の顎が笑みを浮かべるようにやや左右に開く。
クモ男とのセックスは最高。
改造人間同士のセックスがあんなに気持ちがいいものとは思わなかったわ。
任務が終わったらまた・・・
くふふ・・・

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
息を切らせた警備員がやってくる。
もうすぐ玄関ということで、少し安堵したのかもしれない。
愚かな男。
所詮は下等な人間ということね。
暗闇からゆっくりと姿を現すアリ女。
薄暗い中に黒光りする外皮が反射する。
「うわーーー! こ、こっちにも化け物がーーー!」
「リリリリー! まったく失礼な男ね。私たちは化け物なんかじゃないわ。私たちは改造人間。お前たち下等な連中とは違うのよ」
腰が抜けたのか、へたり込んでしまった警備員を見下ろすアリ女。
おびえた表情で自分を見上げる警備員に、アリ女は嗜虐心をくすぐられる。
「リリリリー! 私たちを見たものは死あるのみ。死ね!」
両手でアリの腹部のような乳房を持ち上げ、そこから強力な蟻酸を吹きかける。
「ギャーーー!」
蟻酸をかけられた警備員は断末魔の悲鳴を上げ、ドロドロに溶けていく。
その姿がなんとも見ていて気持ちいい。
人間を殺すことがこんなにも気持ちがいいなんて・・・
アリ女は改めて改造人間となった自分を素晴らしく感じた。

「シュシュー! 始末したようだな」
クモ男が天井から降りてくる。
どうやら彼のほうも終わったようだ。
「リリリリー! ええ、始末したわ」
足もとの液体を見やるアリ女。
警備員は骨も残さずに溶けきっていた。
「シュシュー! よくやったぞ。これでお前も組織の立派な一員だ」
我がことのようにうれしそうなクモ男。
推薦したことが間違っていなかったと思っているのだろう。
「リリリリー! 当然でしょ。私は改造人間アリ女。組織の忠実なしもべよ」
「シュシュー! そうだな」
「リリリリー! それにしても・・・人間を殺すのって楽しいのね。もっともっと殺したいわ。クフフフ」
「シュシュー! 安心しろ。次の任務ではもっともっと殺せるさ。それより・・・」
二本ある右手でアリ女の腰を抱き寄せるクモ男。
「シュシュー! 早くアジトに帰って楽しもうぜ」
「リリリリー! ええ、もちろんよ。今夜は寝かせてあげないんだから。クフフフフ」
自らも躰を寄せるアリ女。
二体の異形の怪人たちは、仲良く闇に消えていくのだった。

END


四日間にわたりましたSS投下期間、お楽しみいただけましたでしょうか?
お読みいただきまして本当にありがとうございました。
また次回作に向けて執筆頑張りますので、どうか今後とも当ブログ「舞方雅人の趣味の世界」をよろしくお願いいたします。

それではまた。
  1. 2017/11/13(月) 20:47:19|
  2. 改造・機械化系SS
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ハニトラボーグ

今日は短編SSを一本投下します。
短編と言いましても、できれば二回に分けたかったぐらいの長さなのですが、どうも分けるところがなかったので、今回は一気に投下しちゃいます。

タイトルは「ハニトラボーグ」です。
楽しんでいただければ幸いです。
それではどうぞ。


ハニトラボーグ

「すんすん・・・ぐすん・・・」
どこかですすり泣く声が聞こえる・・・
「ぐすっ・・・お願い・・・助けてぇ」
だれが助けを求めているのだろう・・・
私はいったい・・・

「ハッ」
私は目を覚ます。
ここは?
私はいったい・・・

私は躰を起こそうとして、手足と首が固定されていることに気が付いた。
「えっ?」
まるで台の上に大の字で磔にされているみたい。
かろうじて首を左右に振ることはできたので、私は周囲を確認する。
「くすんくすん・・・」
私の右側には少女が寝かされている。
しかも全身丸裸にされているではないか。
いったいこれは?

躰の感じからどうやら私も裸らしい。
ひんやりとした部屋の空気を肌に感じる。
顔を上げて確認しようにも、首が固定されているのでそれもできない。
どうしてこんなことに・・・

確か私は職場を出て家に帰る途中だった。
晩御飯の食材の買い出しに行こうと思って、スーパーへの道を歩いている途中、向かい側から歩いてきた男性にスプレーを浴びせられ・・・
そのまま気が遠くなってしまったんだった・・・

どうしよう・・・
私誘拐されてしまったんだわ。
おそらく隣の彼女もそうなんだ。
どうしよう・・・
助けて・・・晴樹(はるき)さん・・・

「すん・・・すん・・・ママ・・・パパ・・・」
隣で少女がすすり泣いている。
年のころは中学生か高校生ぐらいかしら・・・
「あなたもさらわれたの?」
私は思い切って声をかけてみる。
可能なら二人でここから脱出したい。

「あ・・・は、はい。学校から帰る途中で・・・」
私の声に気が付いたのか、彼女はこっちを向いてくれる。
どうやら彼女も手足と首を固定されているみたい。
どことなく幼さが残るかわいい顔立ちの子だ。
「やっぱり学生さんなんだ。高校生?」
「はい。東高校の二年生です」
「わお、有名な進学校じゃない。頭いいんだ」
私は思わずそう言ってしまう。
私は東高入れなかったもんなぁ。
「いいって程では。たまたま受かっただけで」
「謙遜謙遜。あ、私は島月春歌(しまづき はるか)って言います。春の歌って書いて春歌」
「私は森生更紗(もりお さらさ)って言います。よろしく。島月さんも誘拐されて?」
こんな状況なのに、丁寧にわざわざよろしくまで付けてくれる。
きちんとしたお嬢様なのかもしれない。
「春歌でいいわ。ええ、どうやらそうみたい。それにしてもこんな格好にさせられて、どういうつもりなのかしら・・・」
私は今更ながらに自分が素っ裸なことに恥ずかしくなる。
「わかりません・・・うち、貧乏なので身代金なんか払えない・・・」
「うちもそうよ・・・貯金は結婚式で結構使っちゃったしなぁ・・・」
私は思わず苦笑する。
もちろんお金はこれから晴樹さんと二人で貯めていけばいいねって話していたところだったけど。
「島月さん、あ、春歌さんは結婚されていたんですか?」
「そうよぉ。まだ新婚半年ちょっとなんだぞ。それなのに・・・」
ちょっとおどけて見せる私。
もう一度晴樹さんに会いたい・・・
会って思い切り甘えたい・・・

「いいなぁ、結婚。私もいつか・・・」
「更紗ちゃんならいい人とめぐりあえるわよ。あ、それとももう彼氏がいた?」
「いいえ、まだいません」
「そうか。でも、すぐに見つかるわよ」
うん。
ちょっと話しただけだけど、更紗ちゃんいい子だもん。

「さて、おしゃべりはそろそろやめにしてもらおうか。準備が整ったのでね」
突然部屋に数名の男たちが入ってくる。
黒いスーツにサングラスをかけた男や、白衣を着てサングラスをかけている男。
共通しているのは全員がサングラスをかけていることで、それがとても不気味だ。
「私たちをどうするつもりですか?」
「お願い。家に帰して!」
私も更紗ちゃんも男たちをにらみつける。
どうして私たちのような女を誘拐したりなんかしたのか。

「心配はいらない。君たちはすぐに家に帰れることを約束しよう。ただ・・・ちょっとした手術を受けてもらうことになるが・・・」
家に帰れるという言葉に一瞬喜んだ私だったが、男の次の言葉に背筋が凍る。
手術ですって?
「いったい何の手術ですか?」
「私はどこも悪くないです!」
私だって悪いところなんか・・・
そう考えて、私はある考えに思い至る。
「まさか腎臓や肝臓とかを・・・」
臓器売買の組織があるとかいう噂はネットでは見かけるもの。
まさか私たちはそのために誘拐されたのでは・・・

「はっはっは・・・そうだね。確かにそれも有効な資源なのだが、もっと単純に君たちそのものが必要なのだ」
黒服のサングラスの男が冷たく笑う。
私たちが必要?
どういうこと?
「ふむ。見せたほうが早いだろう。おい、ナンバー12を呼べ」
男は脇にいるもう一人のサングラスの男に指示をすると、その男が部屋を出る。
しばらくすると、男は赤いロングドレスを身にまとった一人の女性を連れてきた。
とても美しい女性だわ。
「12号。二人に挨拶を」
「かしこまりました。私はハニートラップ用サイボーグナンバー12です。よろしくお願いいたします」
女性が私たちのほうに優雅にお辞儀をする。
サイボーグ?
ハニートラップ用?
サイボーグというのはアニメなどで聞いたことがある。
この人は・・・
もしかしてこの人は機械?

「ナンバー12よ、お前の任務はなんだ?」
「はい。私の任務は組織の命令に従い、ターゲットにハニートラップを仕掛け、目的を達成することにあります」
サングラスの男の質問にすらすらと答えていくドレスの女性。
直立不動で微動だにしない。
「目的は主にどんなものがある?」
「はい。目的は主にターゲットが所有する情報の引き出しです。ほかにターゲットそのものの暗殺も含まれます」
「今まで何人のターゲットを暗殺した?」
「はい。三人です」
えっ?
この女性は人を三人も殺したことがあるというの?
私は驚いた。
そんなことって・・・

「二人に胸を見せてやれ」
「かしこまりました」
そう言って女性はドレスから形良い胸をさらけ出す。
全く頬を赤らめたりもせずに胸を出す彼女に対し、逆に私のほうが恥ずかしさを感じてしまう。
「針を出せ」
「かしこまりました」
えっ?
彼女の胸の乳首から針がのびてくる。
注射器についているような針だ。
ど、どうして?
サ、サイボーグって・・・
「その針は何のためにある?」
「薬物注入のためです。主に自白剤の注入や、麻痺毒の注入に使われます」
「その針をターゲットに突き刺すわけだな?」
「その通りです」
彼女はにこやかに両手で胸を持ち上げ、乳首の先端の針を私たちに見せつける。

「もういいぞ。下がってよし」
「失礼いたします」
ドレスの中に胸をかくし、一礼して下がっていく女性。
歩き方も優美で、男なら見惚れてしまうに違いない。

「彼女も元は君たちと同じく一般人でね。優れた容姿に目を付けた我々が拉致してサイボーグ化したというわけだ。以前は普通のOLだったが、今では我々の忠実な手駒となっているよ」
サングラスの男がにやりと笑う。
「君たちにもそうなってもらう。光栄に思いたまえ。君たちは選ばれたのだよ。我々に」
「いやぁっ! いやですっ! 帰して! おうちに帰してぇ!」
悲鳴を上げる更紗ちゃん。
無理もないわ。
私だって大声で叫びたい。
サイボーグにされるのなんていやぁっ!

「まあ、そういわずに。なに、サイボーグ化が終われば、プログラムの影響でいやだなどとは思わなくなるよ。それどころか組織のために働くのこそ使命だと思うようになる」
「ど、どうして・・・どうして私たちなんですか? 容姿ならほかに優れている方がいっぱい・・・モデルさんとか」
「顔が知られているようなのは目立つし警戒もされる。君たちのように普通からやや上ぐらいのほうが需要が多いのだよ。もちろん女子高生も好まれる」
「そんな・・・」
私は言葉を失う。
どうしたらいいの・・・

「それでは始めよう。スタッフも待ちかねているしね。なに、麻酔から覚めれば君たちは新たな自分に生まれ変わるのだ。期待したまえ」
「いやっ! いやぁっ!」
「いやっ! やめてください! 放して!」
私たちの叫びもむなしく、私の顔には麻酔用のマスクがかぶせられ、私は急速に意識が遠くなっていった・・・

                   ******

ピッ・・・
電源接続完了・・・
充電中・・・
脳内で私がしゃべっている・・・
胸の部分が少し熱くなって、バッテリーに充電されていくのがわかる・・・
充電率20%
作動最低値に到達、各部チェック開始・・・
下肢、上腕ともに異常なし、関節正常。
脳への循環液流入正常。
疑似体温発生問題なし、体表面32度まで上昇、なおも上昇中。
充電率30%
制御プログラム作動開始。
メモリーチェック、人格制御異常なし。
理念改変正常、異常衝動なし。

私は躰の各部をチェックしていく。
どこにも問題はない。
まだ筋肉動作が行われていないため動作は不能だが、思考作業は可能。
各部痛覚センサー異常なし。
音声センサー正常値。
発声装置試験開始。
「あ・・・あ・・・あいう・・・えお・・・私は・・・サイボーグです・・・」
発声機能正常。
胸部薬液注入装置試験開始。
注入針伸縮装置正常。
薬液注入装置正常。
カートリッジ交換装置正常。
私の胸から薬液注入針が伸び縮みするのを感じる。
うふっ・・・
なんだかくすぐったい・・・

充電率40%
視覚センサー試験開始。
私はゆっくりと目を開ける。
天井の位置に自動で焦点が合わさり、くっきりと見える。
これなら遠くまで見ることも問題ない。
赤外線視覚に切り替え。
私の目の中で小さく音がして視覚が切り替わる。
赤外線で見ているのだ。
一瞬異質な感じがしたけど、すぐに慣れてしまう。
視覚センサー正常、通常視覚に切り替え。
また小さな音がして赤外線から普通の視覚に切り替わる。
うふふ・・・
とても便利。
これなら暗闇の中でも行動できるわ。

「充電率はどのくらいだ、ナンバー23?」
「はい。現在52%です」
隣の手術台から声が聞こえる。
「ナンバー24はどうか?」
「はい。現在47%です」
私は現在の充電率を答える。
「起動には問題ないな。よし、ナンバー23、ナンバー24、起動して状況を知らせろ」
「「はい、かしこまりました」」
私とナンバー23が同時に返事をして躰を起こす。
各部動作に異常なし。
関節部の駆動正常。
私は手術台から降りて床に立ち、体内の再チェックを行う。
異常なし。
「報告します。ハニートラップ用サイボーグナンバー23、起動しました。各部異常ありません。すべて正常です」
「報告します。ハニートラップ用サイボーグナンバー24、起動しました。各部異常ありません。すべて正常です」
私はナンバー23に続いて現状報告を行う。
「うむ。お前たちは今日から我々の指示に従って行動してもらう。いいな?」
「「かしこまりました」」
ナンバー23とともに一礼する私。
組織によってサイボーグとなった私ですもの、組織の命令に従うのは当然のこと。

「ではまずお前たちに最初の任務を命じる。写真のターゲットにハニートラップを仕掛け、会社の同僚の名前を二人聞き出したうえで暗殺せよ。ただし女性ターゲットに対しては暗殺のみでよい」
コマンダーから写真を受け取る私。
ナンバー23は二枚受け取ったようだけど、私は一枚のみ。
写真には男性が写っている。
メモリーに照会し、この男性が島月晴樹と確認する。
私の夫だ。
この男がターゲットなのね。
「確認したら写真は返せ。お前たちは記憶できるだろう?」
コマンダーの言うとおり、私はターゲットを記憶して写真を返す。
この男にハニートラップを仕掛け、情報を引き出して暗殺すればよい。
私はもうどのように行動するかを考えていた。
「では行け。24時間以内に完遂するのだ。いいな」
「「かしこまりました」」
私とナンバー23は頭部に差し込まれた充電用コードを引き抜き、髪の毛で差込口を隠すとそのまま部屋を出る。
服を着てターゲットの元へ行かなくてはならないのだ。
24時間もあるのだから急ぐ必要はない。

「ナンバー23、あなたのターゲットは二人なのね?」
廊下を並んで歩くナンバー23に私は尋ねる。
彼女は同じハニートラップ用サイボーグで、私よりナンバーが一つ若い。
外見はおとなしく優しそうな少女であり、メモリーによれば人間の時は女子高校生だった。
「ええ、ナンバー24。私が人間だった時の父と母よ」
仲間に対する礼儀か表情を笑顔にして私に答えてくれるナンバー23。
「私のターゲットは一人。夫だった男ね」
「そうなんだ。一番近い身内をターゲットにしているのね」
「その確率は80%以上だと判断するわ。身内だったターゲットに怪しまれずに任務を遂行できなければ意味がないということでしょう」
「私もその判断を支持するわ、ナンバー24。ターゲットがこちらを怪しむ可能性は時間ごとに高くなるわ。その前に行動するのがベスト」
「ええ、ターゲットに接触後5時間以内であれば、成功率は95%と判断するわ。とはいえ、24時間後でも怪しまれない可能性は70%以上とも判断できるけど」
ターゲットに対する行動はすでに過去のデータから適切なものを選び出せる。
予期せぬエラーが起こらない限り、ターゲットの暗殺はたやすいはず。
「ええ、私もそう判断するわ。お互いに任務成功を目指しましょう」
「ええ、ナンバー23」
私たちはインプットされていた部屋に入り、服装を整える。
ここへ連れてこられたときに着ていた服を着て、鏡で身だしなみを整える。
この状態では外見から私をサイボーグだと認識できる可能性は1%にも満たない。
完璧と言っていいわ。

私は着替えを終えて部屋を出る。
廊下で同じく着替え終わったナンバー23と合流すると、私たちは目的地へ向かうために車に向かう。
途中で処置前に出会ったナンバー12と廊下で会う。
「ふふ・・・処置が終わったみたいね。サイボーグになった気分はどう?」
そんなこと聞かれるまでもないわ。
「最高に決まっているでしょ」
どうやらナンバー23も私と同じ気持ちらしい。
「ええ、こんな素晴らしい躰になれたなんて。感謝しているわ」
私も歩みを止めることなくそう答える。
全身が機械に置き換わったのはとても素晴らしいこと。
私の脳がそうささやいてくるの。
「うふふ・・・でしょ。初任務頑張ってね」
「ありがとう、ナンバー12」
「問題はないわ。ナンバー12」
私たちは手を振ってナンバー12と別れ、駐車場でワンボックスカーに後部シートに乗り込む。
これで目的地に向かうのだ。

向かい合わせのシートに黒いスーツと黒いサングラスを身に着けたソルジャーが一人座る。
今回の任務のサポートに当たる人間だ。
コマンダーから直接指示を受けている。
「今回は任務についての説明は省く。すでにコマンダーより指示があったはずだ」
こくりとうなずく私。
サイボーグ同士と違い、人間にはきちんと態度や行動で見せなくてはならない。
「お前たちが連れてこられてから、すでに20時間が経っている。つまり一晩過ぎている。すべてのパーツをあらかじめ準備しておくとはいえ、サイボーグ処置にはそれだけの時間がどうしてもかかるのだ」
私のデータはあらかじめ入手され、それに基づいて内部部品は準備できるが、外装や脳に対する処置など、どうしても素体本体に手がかかってしまうということだ。
「一応携帯などからナンバー23に関しては友人宅に宿泊する旨、ナンバー24に関しては急なトラブルによる残業という旨を各家庭に伝えてはあるが、いろいろと聞かれることは想定しておけ。お前たちには人間としての脳が残っているから、そのあたりはうまくやれるだろう。そうでなきゃサイボーグにする意味がない」
私がサイボーグである大きな理由の一つだわ。
プログラムに従うとはいえ、瞬時の判断に人間の脳は必要ということ。
「ターゲットの処理が終わったら連絡しろ。迎えに行く」
私はこくんとうなずいた。

一棟のマンションの前で停車するワンボックスカー。
私は車を出てそのマンションに入っていく。
ここはターゲットと私が暮らしていたマンション。
私はこれまでと同じようにエレベーターに乗り、5階の507号室へと向かう。

鍵を開けて部屋の中に入る私。
時間は15時を過ぎたところ。
ターゲットはまだ会社から帰宅していない。
私はメモリーをもとに自分の部屋に向かう。
メモリーによれば、昨日まで私はここで過ごしていたはずなのに、全く異質な空間に感じるわ。
今の私には何の関係もない空疎な部屋。
私は組織のハニートラップ用サイボーグ。
このような場所で暮らすことなどありえない。

私は自分の部屋に入ると着ていた服を脱ぐ。
仕事のときに着ていた服をずっと着ているのはターゲットに怪しまれる。
以前と同じように行動しなくてはならない。
私は下着も脱ぐと、クロゼットから黒の下着と普段着を取り出す。
以前の私は好まなかったようだが、今の私にはこういう黒の下着は好ましい。
ターゲットを誘惑する確率が上がるのを、ほかのサイボーグが実証しているからだ。
過去にターゲット自体がこの下着を購入してくれたことは幸運と言えるだろう。
私は下着を身に着け、普段通りの地味な服を着る。
以前の私が好んだ服だが、誘惑効果は乏しい。
だが、今回の任務ではこの服のほうがターゲットに怪しまれる確率は低くなる。

服を着替えた私は着ていたものをクロゼットに押し込むと、偽装工作のために料理を作る。
冷蔵庫内のものを使ったありあわせだが、こうして料理を作っておけば、ターゲットの警戒心は50%以上落ちると判断する。
男を誘惑するには手料理をふるまうのも手段の一つだわ。

一通りの料理を作った私は、ターゲットの帰宅までに追加の充電をおこなう。
私たちハニートラップ用サイボーグは、施設での急速充電のほかに家庭用コンセントからも充電が可能だ。
私はコンセントの前に四つん這いになると、喉の奥のカバーを外してコードを引き出し、伸ばして差込口をコンセントに嵌める。
電流が胸のバッテリーに流れ込んでくるのが感じられて気持ちがいい。
ターゲットが帰宅するまでに充電率が60%ぐらいにまで上がってくれればいいのだが。

                   ******

20時。
メモリーによれば、ターゲットがだいたい帰宅する時刻。
私は充電を切り上げ、冷めた料理を温め直す用意をする。
幸い充電は64%まで上昇した。
行動に問題はない。
私は椅子に座り、ターゲットの帰宅を待つ。
念のためにテレビも点けておく。
見るつもりはないが、これもターゲットの警戒心を解くのに有効と判断する。

20時13分にターゲットが帰宅する。
私は玄関に出迎えに行く。
「お帰りなさい。晴樹さん」
メモリーと照合。
ターゲットと確認。
「ただいま。今日は帰ってこれたんだね。良かった。心配したよ」
にこやかな笑顔で私にカバンを渡してくるターゲット。
「ごめんなさい。急なトラブルで帰るに帰れなくて。終電も逃してしまったから会社に泊まるしかなかったの」
私は全力で申し訳ないという表情を作る。
女のこういう表情に男は弱いというデータもある。
「そういうことはあるからなぁ。でも今日は早く帰ってこられたのかい?」
「ええ、おかげで料理を作る時間も作れたわ」
「おっ、そりゃ楽しみだ」
ターゲットは計算通りに私への警戒を解き、そのまま室内へと入っていく。
無防備な背中をさらして私の前を歩いていく。
私は持っていたカバンを置くと、ターゲットに後ろからそっと抱きつく。
「おっ? おいおい、どうしたんだい?」
「だってぇ・・・昨夜は会えなかったんですもの・・・」
メモリーでは以前の私はこのターゲットと結婚して一年に満たない。
ならばこういう接し方でターゲットに甘えるのは80%以上の確率で有効だ。
「ははは、春歌は甘えん坊だな。あっ、痛っ!」
「えっ? どうかした?」
私は何も気づかないふりをして胸の針を引っ込める。
媚薬入りの自白剤の注入に成功。
ターゲットに充分な量を打ち込んだわ。
「あ、いや、背中に針が刺さったような痛みが・・・」
「えっ? ご、ごめんなさい。ピンが刺さっちゃったのかも」
私はターゲットから離れ、髪のピンをいじる。
これでターゲットは疑問に思うのを70%以上の確率でやめるはず。
「そ、そうか? なんかちくっと痛かったから・・・」
「本当にごめんなさい」
振り返ったターゲットに私は頭を下げて謝る。
あとは5分ほど待てばいい。

私がターゲットに食事を温め直している間に、ターゲットが着替えを終えて戻ってくる。
見ると、ターゲットの穿いているスウェットパンツの股間が膨らみ、うつろな目で私を見つめている。
先ほどの薬が効いたのね。
「どうかした、晴樹さん?」
私は気が付かないふりを装ってそう尋ねる。
「あ・・・いや・・・その・・・なんというか・・・」
言いにくそうにもごもごしているターゲット。
「言いなさい」
自白剤の効果を確かめるためにも、少し高圧的に私は言う。
「あ、ああ・・・昨日顔を見ていないからかなぁ・・・君が・・・すごく欲しいんだ・・・」
「ふふっ・・・そう・・・それじゃ食事の前に二人で楽しむ?」
私は温め直した料理をテーブルに置き、ターゲットの元へと歩み寄る。
そしてしなだれかかるようにして、ターゲットの股間に手を這わせ、耳元でささやいた。
「ここはもうこんなになっているのね・・・うれしいわ」
「いや・・・その・・・」
「さあ、ベッドへ行きましょう。二人でたっぷり楽しみましょうね」
「あ・・・ああ・・・」
私はターゲットをベッドルームへと誘い、リビングを後にした。

                 ******

んちゅ・・・くちゅ・・・
私はプログラムを駆使してコマンダーのペニスを舐めしゃぶる。
その表情からコマンダーも満足してくれている確率は80%以上と判断する。
このまま射精に導き、ご満足いただくのが私の使命。
先日のターゲットも、早々に私の口の中に射精していたわ。

「うっ・・・ん・・・」
私の口中にコマンダーの精液が流れ込む。
私はそれを喉を鳴らすようにして飲み込んだ。
後で吐き出して洗浄すればいい。
もちろんワギナもアヌスも洗浄済みだから、コマンダーには気持ちよく使っていただける。
カバーのおかげで内部にも影響はない。

「それで? 報告の続きを」
「かしこまりました。ターゲットをベッドルームに連れ込んだ後は、フェラチオをしつつ情報を引き出しました。二名の名をご報告いたしましょうか?」
私はコマンダーを優しく寝かせ、その横に寄り添うように寝そべると、彼のペニスをそっと握る。
「いや、必要ない。今回の任務はお前の能力のチェックにすぎない。続きを」
「はい。情報を聞き出したあとは、ターゲットと性行為をおこない、充分に興奮させたところで麻痺毒を注入し殺害いたしました。心臓の停止を確認後、ご指示通りに連絡を取りました」
私は報告を続けながらも、コマンダーのペニスを優しく愛撫する。
私にプログラミングされた愛撫に勃起しない男性はほぼ皆無と言っていいだろう。
コマンダーのペニスもすぐに力強さを取り戻してくださった。
「ご苦労だった。すると彼は、最後に愛する妻の手料理を食べることもできなかったわけか。クククク・・・」
「死亡確認後、すぐに生ごみとして処理いたしました。私には必要のないものでしたので。いけなかったでしょうか?」
私にはあのような食事など必要はない。
電気を充電していただければいいの。
「いや、問題はない。さて、じっくりとお前の躰を堪能させてもらうとするか、ナンバー24」
「はい、存分にご堪能くださいませ」
私はコマンダーの躰にやさしく乗り、その大きくて太いペニスを入れてもらう。
ああ・・・
私はハニートラップ用サイボーグナンバー24。
次のご命令を心からお待ちいたします。

END

  1. 2017/10/07(土) 20:24:33|
  2. 改造・機械化系SS
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おまわりさんがパトカーモチーフのセクサロイドに

Twitterで私がいつもお世話になっております彗嵐(すいらん)さんというお方が、スロットメーカーで「ろぼっこめーかー」なる、人物機械化シチュスロットを制作されまして、そこで出来上がったシチュ「おまわりさんが パトカーモチーフの セクサロイドに」というのをご自身でイラスト化されたものをツイッターにアップされておりました。

DKde7FOUIAEPsel.jpg   DKde7FNVAAEA7nX.jpg   DKde7FPUIAAz3mX.jpg
(彗嵐さんがお描きになられましたイラスト)

そのシチュとイラストが、私のとてもツボにはまりまして、これはもうSS化したいという欲求がむくむくと湧きましたので、短いながらSSを作ってしまいました。
彗嵐さんにご覧になっていただいたところ、快く公開を許諾していただきましたので、今回SSを公開させていただきます。
彗嵐さん、本当にありがとうございます。

それではどうぞ。


おまわりさんがパトカーモチーフのセクサロイドに

「待たせたね」
深夜、一台のセダンの助手席に恰幅のいい男が乗り込んでくる。
髪の生え際も後退し、そこそこ歳を取っているのが見て取れる。
「いえいえ、お気になさらず。それよりも署長自らお呼び出しとは、何かありましたか?」
運転席の男がちらっと助手席を見る。
こちらは一見しておとなしめのサラリーマンのようなスーツ姿だ。
「うむ。どうも我々のことに探りを入れてきている者がいるようだ」
「探りを?」
「うむ。それも署内にな。全く頭が痛いよ」
「それはそれは・・・どこかへ飛ばすなりしてはいかがで?」
運転席の男が苦笑する。
「それも考えてはみたが・・・余計なことをして藪を突いて蛇を出してもなぁ。目が届かなくなったら何をするかわからん」
助手席の男は逆に苦虫を噛み潰したような顔をする。
「どんな人間なのです?」
「署内の刑事課の婦警でな。このところ管内で若い女性の行方不明者が数人相次いだことに疑念を持ったらしい。君らが少しやりすぎたということだ」
「これは手厳しい。われわれとしては一定地域に偏らないようにしているつもりなのですけどね」
「ともかく、少しの間おとなしくしてくれんか? ほとぼりが冷めるまで。まったく・・・あの女、顔や躰は最高なんだが・・・」
腕を組んで仏頂面をする署長。
闇組織とのつながりが表に出たりしたら、目も当てられない。

「顔や躰は・・・ということは、署長好みなのですか、その女は?」
ぼそっとつぶやくように運転席の男がたずねる。
「ああ、わしがもう少し若ければ口説いてみたかもしれん。今はもう人妻だがな」
「ならばいっそのこと、その女刑事を“処理”してしまうのはいかがです? 署長好みにプログラムして差し上げますよ」
「何っ?」
思わず運転席の男を見る署長。
「署長にはいろいろと便宜を図っていただいてますからね。これもサービスです」
「なるほど・・・その手があったか・・・ちょうどいい、近々交通安全啓発用に何か用意しようと思っていたところだ」
「ではそっち方面で資料を用意しておきますよ」
二人の男はそれぞれにやりと笑みを浮かべた。

                  ******

「ようこそNRSナアシルカロボットサービスの工場へ。お待ちしておりました」
ブルーの作業着を身に着けたメガネの男性が出迎える。
作業着とはいえシミひとつないことから、実際に作業に当たる人物ではないのだろう。
「初めまして。東中警察署から参りました三坂壬鈴梨(みさかみ すずり)と申します。今日は見学よろしくお願いします」
タイトスカートのスーツを素敵に着こなしたスタイルのいい女性が笑顔で挨拶する。
「三坂壬さんですか、珍しいご苗字ですなぁ。あ、私はここの管理主任をやっております林(はやし)と言います。よろしくお願いします」
受け取った名刺に目を落とし、自己紹介する林。
「早速ですが、お話によりますと、交通安全啓発用のマスコットになるようなロボットということでよろしかったですか?」
「はい。上司から女性の視点でデザインを確認してほしいとのことでしたので。本来なら交通課の人の仕事なんでしょうけど・・・」
やや不満げな表情の鈴梨。
本来の仕事ではないことに時間を取られるのだから無理もない。
「そうでしたか。ちょうど今デザインがあがったところですので、ご確認いただきましょう。こちらへどうぞ」
林に促されて事務室に向かう鈴梨。
鈴梨に背を向けた林の口がにたっと笑う。

「これがそうなんですか?」
鈴梨の前に広げられる何枚かのデザイン資料。
白と黒で大まかにまとめられ、ところどころに赤が混じる。
いわば警察のパトカーをモチーフにしたもので、全体のフォルムは女性らしい形状をしている。
頭部はまさにパトカーと言ってもいい感じで、ヘッドライトが目を、タイヤがヘッドフォンのような耳を、そして頭頂部には赤色回転灯が付いている。
胴体部は白いプラスチックボディに黒いアーマーが付けられたようになっており、それがまるで女性のブラジャーとショーツのように胸と腰の部分を覆っている。
背中側にもウイング状の赤色回転灯が付いていて、点滅するようになっていた。

「なんというか・・・確かに女性ぽくて親しみやすいのかもしれませんけど、どことなく女性過ぎるような・・・もっと丸みのある・・・そうゆるキャラのようなもののほうがいいのではないでしょうか?」
デザイン資料を見た鈴梨は林にそう提案する。
なんと言うか、口は人間そのもののような感じだし、何より股間のところにある開閉可能な開口部が、いやらしく感じてしまったのだ。
だが、林はにやりと笑って首を振る。
「いやいや、これでいんですよ。なんと言っても署長様が結構気に入られたようでして」
「えっ? 署長が?」
「はい。あの女もロボットになってしまえばいうことを聞くだろうし、これならなかなかいやらしそうでいいじゃないかと」
「なんですか、それ? あの女とはどういう・・・うっ!」
突然立ち眩みのようなめまいに襲われる鈴梨。
「ああ、薬が効いてきましたか。先ほどのお茶に混ぜておきましたので。ご安心を。死にはしません」
「ど、どうし・・・」
必死に意識を保とうとする鈴梨。
だが、強い眠気が彼女を襲う。
「このロボットは、あなたを改造してつくられるのですよ。あれをごらんなさい」
林が部屋の窓から見える工場内部を指し示す。
そこにはまだ高校生ぐらいの少女が、装置に裸で磔にされていた。
「な・・・」
「クライアントからの要望でしてね。彼女をバニーガール型ロボットにしてほしいとのことで、これから改造をはじめます。あなたより一足先に完成するでしょう」
「ふざけ・・・」
必死に立ち上がって怒りをぶつけようとする鈴梨。
だが、躰がもう言うことを聞かない。
「ごゆっくりお眠りください。次に目覚めた時には、新しい自分に生まれ変わってますよ。そう、セクサロイドという新しい自分にね」
林がそういうのをかすかに聞きながら、鈴梨の意識は闇へと沈んだ。

                   ******

「ピポー! 皆様コンニチワ。ワタシはこの交通安全教室のサポートを行いますSR37とモウシマス。よろしくお願いイタシマス」
ところどころ発音が機械的になる声であいさつをする一台の女性型ロボット。
白と黒を基調とし、頭部や腰にはウィング型の赤色回転灯が明滅している。
頭はパトカーのような形になっており、ヘッドライトが目、タイヤが耳になっている。
どういうわけか人間らしい口元はなまめかしさも感じられ、大きな胸とお尻、それとくびれた腰は女性のラインをこれでもかと意識させる。
その姿に保護者の一部はやや眉をひそめたが、子供たちにとってはかっこいい女性パトカーロボであり、彼女の登場で会場は大いににぎわっていた。

「ピポー! 皆様も、交通ルールはヨクマモリ、交通安全にツトメマショウ。SR37とのオヤクソクです」
彼女が口元に笑みを浮かべると、子供たちから歓声が起こる。
今日も交通安全教室は成功をおさめていた。

                   ******

「今日も盛況のようだったね。お前が来てから我が署で行う交通安全教室はいつも子供たちが大勢来てくれるそうじゃないか」
署長室で椅子にふんぞり返り、机の前に立つSR37を眺めている所長。
その口元には下卑た笑みが浮かんでいる。
「ピポー! ハイ。オオゼイの方に来てイタダキマシタ」
直立不動で署長に答えるSR37。
その姿はやはりどことなくなまめかしい。
「うむ。いい事だ。ところで、我が署の刑事課の三坂壬という婦警が行方不明になっているのだが、お前は何か知っておらんか?」
「ピポー! メモリー検索イタシマシタところ、三坂壬鈴梨はワタシの素体とナッテオリ、現在は存在イタシマセン」
「するとお前が三坂壬鈴梨なのかね?」
「ピポー! チガイマス。ワタシはSR37です」
「わしに対しては正式名称で答えたまえ」
「ピポー! カシコマリマシタ。ワタシはパトカーモチーフセクサロイド37デス」
その返事に満足そうにうなずく署長。
「そうだ。お前はわしのために作られたセクサロイドだ。わしのために奉仕するのがお前の役目だ。忘れるな」
「ピポー! ハイ。マスター」
「ふふふ・・・お前の口が人間のようなのも、お前の股間が開閉式なのも、すべては男を喜ばせるためのもの。さっそく奉仕してもらおうか。こっちへ来い」
「ピポー! カシコマリマシタ、マスター。ご奉仕させてイタダキマス」
署長の元に歩み寄り、ひざまずいてズボンのファスナーを開け、肉棒を取り出すSR37。
その口が署長の肉棒を愛しそうに舐めしゃぶる。
こうして一人の女性警察官が、一体のセクサロイドへと生まれ変わってしまったのだった。

END
  1. 2017/09/27(水) 20:45:18|
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そしてネコ

今日はSSを一本投下です。

タイトルは「そしてネコ」です。
先日投下してご好評をいただきました拙作「オオカミとコウモリ(前)」及び「オオカミとコウモリ(後)」で、ちらっとだけ触れられた遊佐司令の堕ちるシーンで、いわば続編となっております。
お楽しみいただければと思います。

それではどうぞ。


そしてネコ

「うーん・・・」
ゆっくりと目を開ける遊佐明香(ゆざ めいか)。
「ここは? 私はいったい・・・」
薄暗い中で自分がどうなったのかを思い出す。
確か私は・・・
そこで初めて彼女は自分が今どうなっているのかを把握した。
全ての衣服を取り去られ、生まれたままの姿で台の上に寝かされている。
両手と両足は金具のようなもので固定され、上からみると大の字のようにされているようだ。
「こ、これは・・・」
彼女はどうにか頭を持ち上げて、自分が身動きできなくさせられていることを確認した。
「捕らわれた・・・というわけね・・・」
どのみち彼女の力でこの金具をはずすことはできないだろう。
ならば、何らかの隙を見つけて脱出するしかない。
その隙はきっとあるはずだ・・・

それにしても・・・と明香は思う。
アースダガーのうち二人の女性が敵に回ったというのは大きな衝撃だった。
あの凛とした由梨(ゆり)、優しかった絵里(えり)が仲間を引き裂いて殺しただなんて・・・
異形化した姿を見せられ、こうして捕らわれているにもかかわらず、なおも明香にはそのことが信じられない思いだった。

「キキキキー! お目覚めですか、遊佐司令?」
甲高い鳴き声を上げ、そばにやってくるバットピンク。
その濃いグレーのバイザーに覆われた顔からは、中の絵里の表情はうかがえない。
いや、すでにこのバイザーがバットピンクの顔であり、絵里という人間はもういなくなってしまったのかもしれない。
あらためて目の前で見せつけられる事実。
あの優しい絵里はもういない。

「アオーン! あんまり目を覚まさないから、強く殴りすぎたかと心配になりましたわ。ホント、人間って下等でもろいわねぇ」
吠え声をあげながらバットピンクの隣にやってくるウルフイエロー。
彼女もグレーのバイザーの顔で明香を見下ろしてくる。
表情こそないものの、二人とも人間を下等な存在と軽蔑しているのは間違いない。

「アオーン! でももうすぐ司令は生まれ変われますわ。偉大なるガブーのガブー怪人として。うらやましいですわ」
「キキキキー! ええ、本当に。首領様がきっと素敵なガブー怪人にしてくださいますから、安心してその身をささげてくださいね」
二人が顔を見合わせて笑うのを見て明香は青ざめる。
この二人は本当に自分をガブー怪人にするつもりなのだ。
地球人がガブー怪人になるなど聞いたことがない。
そんなことが本当に?
だが、すでに目の前の二人がそれを証明している。
地球を守るアースダガーの二人は、今や地球を支配しようとするガブーの一員なのだ。
私もそうなってしまうというの?
明香は背筋が凍るような気がした。

「グルルルル・・・首領様はまだお姿を見せないのか?」
「アオーン! はい、いまだお見えになっておりません」
ゆっくりと姿を現したウルフガブーにそう答えるウルフイエロー。
その青白い毛皮に覆われて立つ姿は、まさに狼男であり、明香を驚かせるには充分だったが、それ以上に明香が愕然としたのは、やってきたウルフガブーにまるで恋人のようにしなだれかかって甘え始めるウルフイエローの姿だった。
「ケケケケ・・・これが首領様の所望された人間の女か? このままでもなかなかいい女ではないか」
「キキキキー! アースダガーチームの司令官遊佐明香です。きっと有能な女ガブー怪人に生まれ変わるはずですわ」
もう一体のガブー怪人バットガブーが現れ、バットピンクの肩を抱く。
こちらもウルフイエローに負けじとバットガブーに甘えるようだ。

「ああ・・・そんな・・・」
思わず目をそらす明香。
二人がガブー怪人に寄り添うのを目にして、改めて二人が悪に染まってしまったことに悔しさと悲しさを感じてしまう。
できれば二人をもとの姿に戻したい。
ガブーの侵略を阻止したい。
そのためには何とか隙を見て逃げ出さなくては・・・
きっとチャンスは来るはず。
明香はそのチャンスをじっと待つ。

『皆そろったようであるな』
突然部屋に重々しい声が響く。
「「「「ハッ、ハハーッ!」」」」
その声にいっせいに答え、ひざまずく四体の怪人たち。
まさか・・・
これがガブーの首領の声なの?
明香はその声の圧倒的な重厚さに驚いた。

『その女が遊佐明香か?』
「アオーン! 偉大なるガブーの首領様、その通りでございます」
「キキキキー! ガブーに歯向かう愚かなアースダガーチームの司令官を勤めていた女でございます」
ウルフイエローとバットピンクが顔を上げ、声に答える。
見ると、彼女たちの向いた方の壁に、大きく開いた獣の口のような紋章があり、上下に伸びた鋭い牙が、鈍い光を放っていた。
どうやら声はその牙の紋章から発せられているらしい。

『うむ。アースダガーの働き、なかなかに手強いものであった。よって、そなたに我がガブーの一員となる栄誉を与えよう。我が力を受け、生まれ変わるがいい』
まるで死刑の宣告であるかのような重々しい宣言。
ガブーの首領の手で、このままガブー怪人にされてしまうというの?
それだけは・・・
「ま、待って! 待ってください!」
思わず声をあげる明香。
何とかこの場を切り抜けなくては・・・
ガブー怪人になどされてたまるものですか・・・

『何か言いたいことがあるのか? 遊佐明香よ』
「は、はい。も、もう抵抗はしません。降参です。ですから・・・ですから私もガブーの一員にお加えくださいませ」
『ほう。自ら我がガブーに加わりたいと申すか?』
「はい。どうせもう人類は負けです。ならば、ガブーの一員に加わって生き残り、来るべき社会で支配者側になって暮らしたいですわ」
心にもないことを明香は必死に訴える。
ここで首領に信用してもらえば、何とかチャンスができるかもしれない。
『ふむ。なるほど』
「私は首領様に忠誠を誓います。それに、怪人やクグチューばかりではなく、人間の姿のままの部下がいれば、潜入活動等で何かと役に立つはずです。怪人化などしていただかなくとも、このままで充分にお役に立って御覧に入れますわ」
ガブー怪人などにさえされなければ、いつか首領を出し抜くことだってできるはず。
それまでは多少のことも我慢して・・・
明香はそう思う。
しかし、彼女は肝心なことを失念していた。

『ブォッフォッフォッフォ・・・』
紋章から奇妙な笑い声が響く。
「な、う、嘘ではございません。私は心からガブーに・・・」
『なるほどそなたは頭が切れる。人間にしておくにはもったいない』
「いえ、むしろ人間のままでいさせていただく方が・・・」
なんとか怪人化をまぬがれようと、明香は訴える。
『確かに人間の姿で活動できる者がいるほうが、我がガブーにとっては便利であろう。だが、それは何もそなたである必要はない。見よ!』
紋章からの声にうなづき、ウルフイエローとバットピンクが右腕のブレスレットを操作する。
すぐさま黄色とピンクの粒子が飛び散り、二体の女怪人は辛木(からき)由梨と相園(あいぞの)絵里の姿となる。
「あっ!」
その姿に臍を噛む明香。
確かに彼女のいた司令室に入ってきたとき、二人は人間の姿だったではないか。
だからこそ自分は怪しまなかったのだ。
つまり、彼女が提言した、人間の姿で暗躍できる部下をすでに首領は持っていたということなのだ。

『理解したようだな、遊佐明香よ。人間のままのそなたなど欲しくはない。むしろ我はそなたを完全なる我がしもべとしたいのだ』
「いやぁっ! いやよぉっ!」
明香は何とか手足の枷を振りほどこうと身をよじる。
もはやチャンスを待つなどと悠長な場合ではなくなってしまったのだ。
『無駄なことはやめるのだ。そなたの力ではその枷ははずせぬ。我が力を受け取るがいい』
「いやぁ! 助けてぇ! いやよぉっ!」
明香の叫び声が部屋中に広がった。

『むん!』
首領の声とともに、明香の躰を色とりどりの光が照らし始める。
光はスポットライトのように明香の躰を円形に照らし出し、赤や緑や黄色の光が明滅しながら回転する。
「いやぁっ! 何? なんなの? 躰が熱い! いやぁっ!」
首を振って苦悶の表情を浮かべる明香。
やがてその躰に変化が起き始める。
明香の躰が黒く染まっていき、まるでナイロンの全身タイツを着たかのようなつややかになっていくのだ。
胸の部分と股間にはまるで黒い毛で作られたブラジャーやショーツを穿いているかのように、毛が生えていって形作られる。
両手首から先はこれも黒い毛が生えていき、指先からは鋭い爪がのびていく。
両足はひざ下のあたりから黒い毛が生えていき、猫の足先のように変化する。
お尻からは黒くて長い尻尾がのび、ゆらゆらと揺れていた。
変化は頭部にも及んでいき、明香の顔は鼻がのびて頬からはひげが生え、両耳も三角形の猫の耳へと変化する。
口からは尖った牙が覗き、両目は瞳が細い猫の目へと変わり、完全なる黒猫の頭部へと変わっていった。

同時に明香の中でも変化が起こる。
まるで洪水のように流れ込んでくるガブーの思想。
それは明香の中にある人間への愛情や平和への思いをあっという間に塗りつぶしていく。
人間は下等で地球を食いつくす害獣であり、首領に選ばれたもののみがガブーの管理の下で生き残ることができるもの。
それ以外の人間はすべて狩りの対象であり、ガブー怪人によって狩りつくさなくてはならないのだ。
そして彼女は首領に選ばれ、ガブー怪人に生まれ変わる。
それは光栄なことであり、喜ぶべきこと。
そういった思考が彼女の中で作られていく。

「ああ・・・あああ・・・いやぁーぉぅ・・・うなぁーおぅ」
無意識のうちにだんだんと明香の悲鳴が鳴き声に変わる。
人間の肉に牙を突き立て、鋭い爪で引き裂きたい。
人間を殺してその血を浴びて酔いしれたい。
人間は獲物。
殺したい殺したい殺したい。
「ウナーオ! ナーオゥ!」
自然と鳴き声が漏れてくる。
私は猫。
偉大なる首領様に作られた猫。
私はガブーの女怪人キャットガブー!

明香の価値観が上書きされる。
地球は守るべきものではなく支配するもの。
偉大なるガブーの首領様によって支配され、人類は管理されなくてはならない。
その尖兵となるのがガブー怪人であり、首領様の手足となって働くのだ。
偉大なる首領様にお仕えできる喜び。
ガブー怪人に生まれ変われる幸せ。
明香の中でそれらが増幅されていく。
私はガブーの女怪人。
偉大なる首領様のしもべ。

「ウナーーーオゥ!」
ひときわ高く鳴き声を上げ、明香は目を開ける。
その目は金色に輝き、瞳は細く縦に長い。
同時に両手と両足の枷が外れ、躰が自由になる。
すぐに彼女は躰を起こし、台から降りる。
ひたひたと静かな足音を立て、彼女は牙の紋章に近づいていく。
そしてゆっくりとひざまずくと一礼した。
「偉大なる首領様。私をこのような素晴らしい躰にしてくださり、感謝いたします。ウナーオゥ!」
『うむ。気分はどうか?』
「はい。とてもいい気分です。ガブー怪人に生まれ変わることがこんなにも素晴らしい事だったなんて。なぜあのように嫌がったりしたのか・・・バカみたいですわ。私はガブーの女怪人キャットガブー。どうぞ何なりとご命令を」
誇らしげに顔をあげる明香。
いや、黒猫のようなその顔といい、もはや彼女は身も心も完全なガブー怪人キャットガブーと化していたのだった。

『うむ。期待しておるぞ、キャットガブー』
「はい。お任せくださいませ、首領様。ナーオゥ!」
首領の言葉に嬉しそうに返事をして立ち上がるキャットガブー。
すらりとした全身は女性らしいラインをあらわにし、両手両足に頭部、それに胸と股間と尻尾だけに毛が生えているのがなんともなまめかしい。

「キキキキー! お誕生おめでとうございます、キャットガブー様」
「おめでとうございます。アオーン!」
バットピンクとウルフイエローがそばにやってきてひざまずく。
彼女たちはバットガブーやウルフガブーの眷属という位置であり、ガブー怪人であるキャットガブーは彼女たちより上位なのだ。
「ありがとう二人とも。これもあなた方のおかげよ。私をここに連れてきてくれたことに礼を言うわ。ナーオゥ!」
鋭い牙をのぞかせて笑みを浮かべるキャットガブー。
生まれ変わった自分の躰が誇らしい。

「ケケケケ・・・これは何とも美しいガブー怪人ではないか。吾輩はバットガブー。以後お見知りおきを」
「グルルルル・・・まあ、見た目はわるくない。だが、実力のほどはどうかな? 首領様の失望を買わねばいいがな」
バットガブーとウルフガブーもやってくる。
新たな仲間、しかも女怪人の誕生に立ち会うなど初めてのことだ。
「ケケケケ・・・ウルフガブーめ、そんなことを言っているが、キャットガブーを一目見てずいぶんと発情していたようではないか?」
「ば、バカを言うな、バットガブー! いくらお前でも俺様の牙の餌食にしてやるぞ!」
図星を指されたのか、慌てたようにバットガブーをにらみつけるウルフガブー。
「ウナーオゥ! そんなふうに言ってくださるなんて嬉しいですわ。こちらこそよろしく、ウルフガブーにバットガブー。お二人ともとても素敵ですわよ。私も思わず発情しちゃいますわぁ。ウナーオゥ!」
二人の怪人に笑みを見せながら、胸を揺らして見せつけるキャットガブー。
「グルルルル・・・なんだったらたっぷりと可愛がってやるぜ、キャットガブー」
「ケケケケ・・・吾輩も楽しませてもらうとしようか」
「まあ、うれしい。三人でたっぷりと楽しみましょう。怪人同士の濃厚なセックスを・・・ウナーオゥ!」
二人の間に入り、両腕を二人の腕にからめるキャットガブー。
三体のガブー怪人と二体の眷属は、そろって牙の紋章の間を後にするのだった。

                  ******

「キャーッ!」
「が、ガブー怪人だ!」
悲鳴を上げる男と女。
親子と見えて、女性のほうは少女を足もとに抱いている。
楽しい遊園地からの帰り、自宅まであと少しという夜道でこんなことになるとは思わなかったに違いない。
「ナーオゥ! 私は偉大なるガブーの女怪人キャットガブー! お前たち、私の餌食になりなさい!」
両手の鋭い爪を光らせる黒猫のガブー怪人。
黒い全身タイツを着た女性のようだが、両手両足や頭部は猫のものであり、長い尻尾も揺れている。

「く、くそっ! この化け物め!」
なんとか妻と娘を逃がす時間を稼ごうとしたのか、男が背負っていたリュックを振り回して立ち向かう。
「ぐわっ」
だが、あっさりとかわされたうえ、キャットガブーの蹴りを食らって地面にうずくまってしまう。
「あなた!」
「パパ!」
逃げなくてはとは思うものの、足がすくんで逃げることもできず、目の前で打ち倒された男に思わず声が出てしまう妻と娘。
「ナーオゥ! 愚かな男ね。ガブー怪人に人間ごときが立ち向かえるとでも思っているの? そこでおとなしく見ていなさい!」
うずくまった男に蹴りを入れ、妻と娘に向かっていくキャットガブー。
「い、いやっ、来ないで!」
「いやぁっ!」
慌てて走り出す二人だったが、キャットガブーは難なく追いついて母親のほうを捕まえてしまう。
「きゃぁー!」
「マ、ママ!」
「郁美(いくみ)!」
思わず足を止めて母親を見る少女。
母の向こうには地面に倒れて必死に手を伸ばしている父もいる。
「に、逃げて! 香奈(かな)は逃げなさい! きゃぁー!」
必死に娘を逃がそうとした母親だが、その首筋にキャットガブーが噛みついた。
その場にどさりと倒れる母。
「ママ!」
動かなくなった母を見てどうしていいかわからない少女。
逃げることも母に駆け寄ることもできずにただ立ち尽くしていた。

「ウナーオゥ! クフフフ・・・私のエキスを流し込んだわ。さあ、起きなさい」
血の付いた牙を手の甲で拭うキャットガブー。
その目が怪しく輝いている。
「ニャーオ!」
むくりと起き上がる母親。
その目の瞳は細く、頭には三角の猫耳が生えている。
口には犬歯が長くのび、両手の爪は鋭く尖っていた。
「ニャーオ!」
もう一度猫の鳴き声を上げる母親。
「ナーオゥ! クフフフ・・・これでお前は私のしもべ。人間たちはおそらくお前のことを化け猫とでも呼ぶのかしら。さあ、あの子を取り押さえなさい」
「はい・・・キャットガブー様。ニャーオ!」
両手の爪をかざし、目を光らせて娘に向かう母。
「キャー!」
娘は逃げようとするが、母は人間を超えたジャンプで娘を飛び越えて立ちはだかる。
「マ、ママ・・・」
「ニャーオ!」
おびえる娘をがっちり捕まえ、母はぺろりと舌なめずりをする。
「あああ・・・」
目の前の母親がもう人間ではないことに、娘は恐怖した。

「クフフフフ・・・よくやったわ。さあ、お前も私のしもべになるのよ。ナーオゥ!」
一声鳴いて娘の首筋に噛みつくキャットガブー。
娘はすぐに地面に倒れ込み動かなくなる。
やがて母親と同様に瞳が細くなった目を輝かせ、口からは伸びた犬歯をのぞかせ、頭に猫耳を生やした娘が起き上がる。
「ニャーオ! 私はキャットガブー様のしもべです。どうぞ何なりとご命令を」
鋭い爪の伸びた手を胸元で丸め、甘えたような目でキャットガブーを見上げる娘。
「ナーオゥ! それでいいわ。さあお前たち。その爪であそこに倒れている男を引き裂きなさい」
「はい、キャットガブー様。ニャーオ!」
「ご命令のままに、キャットガブー様。ニャーオ!」
猫女になった二人がかつての夫、かつての父にとびかかる。
「や、やめろ! ぎゃーーー!」
血が飛び散り、男の悲鳴が闇に響く。
その様子を見てほくそ笑むキャットガブー。
「クフフフフ・・・なんてすばらしいのかしら。この調子でどんどん私のしもべを増やし、下等な人間どもを駆逐するの。世界は偉大なるガブーのものになるのよ! ウナァーーーオゥ!」
キャットガブーは大きく鳴き声を上げ、ガブーの女怪人に生まれ変わったことを心の底から喜ぶのだった

END
  1. 2017/09/24(日) 21:02:02|
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オオカミとコウモリ(後)

新作SS「オオカミとコウモリ」の後編です。
タイトル通りコウモリが登場です。
お楽しみいただけましたら幸いです。


                   ******

クレープ屋からの帰り道。
夕暮れの中、二人の女戦士が道を歩く。
「うーん・・・美味しかったぁ」
クレープのおいしさに満足気な顔の絵里。
その様子に隣で由梨が苦笑する。
「ん? 由梨は美味しくなかった?」
確かにあんまり多くは食べてはいなかったようだが・・・
「いや、そんなことは・・・」
だが、由梨にとって物足りなかったのも事実だった。
人肉を食べてみたい・・・
ウルフイエローとなった由梨には、クレープなんかよりもそっちの方がよほどおいしそうに感じるのだ。

「やっぱりあれ? 昼間の一件が尾を引いてる?」
目の前で人間が引き裂かれるのを見たというのだ。
食欲がなくて当然だろう。
甘いもので元気を出してもらおうと思ったけど、もしかしたら裏目に出てしまったのかもしれない。
絵里は自分の考えの浅さに思い至る。
「ううん・・・そんなことないわ」
「だといいけど・・・」
「ねえ・・・ちょっとこっちを通っていかない? 夕陽がきれいなところがあるのよ」
「えっ? ええ」
突然の由梨の申し出に一瞬戸惑う絵里。
だが、気晴らしになるならそれもいいとすぐにうなずく。
二人は高台にある公園へと向かった。

「うわぁ、きれいねぇ」
高台から夕陽を望む絵里。
確かに由梨の言う通り夕陽がとてもきれいに見える。
この街でこんなところがあるとは知らなかった。
いや、この高台公園そのものは知っていたのだが、夕陽がきれいとまでは知らなかったのだ。
「でしょ。まるで血の色みたい」
「えっ?」
驚いて隣の由梨に目をやる絵里。
そこにはとても冷たい目と笑みを浮かべた由梨が立っていた。
「由梨・・・どうしたの? 何か変よ?」
「そうかしら。ほら、人間どもの血の色って素敵じゃない?」
「由梨・・・昼間の件がそんなにショックで?」
「ショック? いいえ、とても楽しかったわよ。泣きわめく家族を爪で引き裂いていくのは本当に楽しかったわ。うふふふふ・・・」
「ゆ、由梨? いったい何を・・・?」
絵里は思わず一歩後ずさる。
いつも仲良く付き合っていた友人が急に全く知らない人物に思えたのだ。

「うふふ・・・あの人間どもを引き裂いて殺したのは私だって言っているのよ。楽しかったわ」
冷たい目を輝かせて笑う由梨。
その手に付けられたブレスレットのスイッチが押される。
「由梨! 何を?」
こんなところで変身するなんてどういうつもりなの?
そう思う絵里の目の前で、由梨の躰に黄色の粒子がまとわりつき、彼女をウルフイエローに変えていく。
大まかな外見はかつてのイエローダガーと変わらない。
だが、両脇の白いラインは黒くなり、両手の手袋と両足のブーツには毛が生え、足先はオオカミの足のようになっている。
お尻には黄色のふさふさの尻尾が生え、ヘルメットにはオオカミの耳が付いていた。
「由梨・・・その姿は・・・?」
思わず息をのむ絵里。
「アオーン! うふふふふ・・・これが本当の私の姿よ。私はウルフイエロー。ウルフガブー様によって眷属に生まれ変わったの。アオーン!」
「そ、そんな・・・由梨が・・・そんな・・・」
目の前で起こった出来事が信じられない絵里。
だが、周囲にいた市民たちの悲鳴が絵里をハッとさせる。
「皆さん、逃げて! 早く逃げて!」
すぐに周囲の人たちに逃げるよう指示する絵里。
そして自分もブレスレットに手をかける。
「由梨、待ってて、すぐに元に戻してあげる。ダガーチェンジ!」
絵里の躰にピンク色の粒子がまとわりつき、それがダガースーツへと変化する。
ピンク色に白のラインが両脇に入ったミニスカート型のスーツ。
バイザーに前面を覆われたフルフェイス型のヘルメット。
両手両足もブーツと手袋でカバーされ、露出部分は一切ない。
「ピンクダガー、降臨!」
アースダガーチームの一人、ピンクダガーがそこにいた。

「由梨、目を覚まして! あなたはガブーに操られているのよ!」
「アオーン! 違うわ。私は生まれ変わったの。ウルフガブー様のおかげで偉大なるガブーのすばらしさに目覚めたのよ」
鋭い爪をピンクダガーに向けるウルフイエロー。
あの爪ならダガースーツも無事では済まないかもしれない。
ピンクダガーがそう思うほどの鋭さだ。
「仕方ないわ。あなたを倒して由梨を取り戻す!」
ぐっとこぶしを握り締め、ウルフイエローに対峙するピンクダガー。
だが、彼女は背後から近づくもう一体の存在に気が付かなかった。

「グッ! えっ?」
いきなり背後から首を絞められるピンクダガー。
「グルルルル・・・油断したようだな。敵が目の前にいるだけとは限らんのだ」
「ガッ・・・ま、まさか・・・ガブー怪人?」
両手で首に回された相手の腕を引きはがそうとするピンクダガー。
だが、すぐにその手をウルフイエローが引き離し、左右に広げられてしまった。
「なっ?」
「グルルルル・・・俺様はガブー怪人のウルフガブーだ。そしてこいつは俺様の忠実なしもべになったというわけさ。そうだな?」
「アオーン! はい、ウルフガブー様。私はウルフガブー様のためなら何でも致します。アオーン!」
嬉しそうに吠え声をあげるウルフイエロー。
バイザーに浮き出た牙の模様が心なしか笑ったようにすら見える。
「くっ・・・あなたが由梨を・・・」
「グルルルル・・・そうさ。だが心配はいらん。お前もこいつと同じ俺様の眷属にしてやろう」
「本当ですか、ウルフガブー様? よかったわね。あなたも私と同じウルフガブー様のしもべになるのよ」
「くっ! だ、だれが・・・あなたの眷属になど・・・」
必死にもがき、何とか逃れようとするピンクダガー。
だが、二人がかりで押さえられてはどうしようもない。

「ケケケケケ・・・そいつは吾輩にもらえないかな? ウルフガブーよ」
「むぅ! 誰だ?」
夕闇が広がってきた公園に声が響く。
「ケケケケケ・・・吾輩だよ、ウルフガブー」
バサッと空気を切る音がして、黒い影が降りてくる。
全身を短い黒い毛に覆われ、両耳が大きく広がり、両腕には大きな羽が広がっている。
「グルルルル・・・バットガブーではないか。どうしてここへ?」
「ケケケケ・・・お前が面白いことができたと言っていたのでな。どうだ、その女は吾輩のモノにさせてもらえぬか?」
コウモリの怪人バットガブーがウルフガブーに話しかける。
「グルルルル・・・ほう、いいとも。ほかならぬお前の頼みだ。この女はお前のモノにするがいい」
あっさりと了承するウルフガブー。
同じガブー怪人同士ということもあるが、バットガブーとは妙に馬が合うのだ。
そのバットガブーの頼みであれば断る理由はない。

「ケケケケケ・・・それはありがたい。では早速」
「いやっ! 何を!」
ピンクダガーの両手をイエローウルフから受け取り、そのままその首筋に牙を突き立てるバットガブー。
「ひぐっ! ダ、ダガースーツが・・・そんな・・・」
バットガブーの牙に貫かれた首筋から何かが流れ込んでくる。
「ケケケケケ・・・吾輩のエキスをたっぷりと注入してやったぞ」
首筋から牙を離し、満足そうに笑みを浮かべるバットガブー。
「あ・・・躰が・・・しびれ・・・」
突き飛ばされるようにウルフガブーに放り出され、そのまま地面に倒れ込むピンクダガー。
その躰が小刻みに痙攣し、もはや声も上げられないようだ。

やがてピンクダガーのスーツにも変化が起き始める。
両脇の白いラインがすうっと黒く染まっていき、両足のブーツがコウモリの足のように変化する。
両腕からピンクの飛膜が形成し始め、コウモリの羽のように広がっていく。
手袋の指先からは鋭い爪がのびて尖っていく。
フルフェイスのヘルメットの両脇には大きなコウモリの耳ができ、バイザーの口のあたりに三角系の牙の模様が浮かび上がった。

「ケケケケ・・・ほう、これはこれは。さあ、起きるがいい」
バットガブーの言葉にゆっくりと起き上がるピンクダガー。
だが、その姿は以前とは異なり、両腕から胴体にかけてコウモリのような飛膜が広がっている。
「キキキキキー! なんて気持ちがいいのかしら。素晴らしいわ。私は生まれ変わりました。ありがとうございます、バットガブー様」
自分の躰をかき抱くようにしてくるくると回るピンクダガー。
「ケケケケ・・・これでお前は吾輩の眷属となったのだ。バットピンクと名乗るがいい」
「はい。それが私の新しい名前なのですね。私はバットピンク。バットガブー様の忠実な眷属です。何なりとご命令を。キキキキキー!」
スッとひざまずいて一礼するピンクダガー。
いや、もはや彼女はバットガブーによってバットピンクに作り替えられてしまったのだった。

「ケケケケケ・・・これは何とも面白いではないか。ウルフガブーよ、どうしてこんなことができるとわかったのだ?」
ピンクダガーが眷属と化したことに満足しながらも、なお驚きを隠せないバットガブーがウルフガブーに振り返る。
「グルルルル・・・先日人間を襲った時にな、噛みついたところに唾液を流し込んでしまったのだ。そうしたらその人間がオオカミ人間になったのでな。これは面白いと思ったのさ」
「なるほどなぁ」
腕を組んでうんうんとうなずくバットガブー。
「まあ、そいつは変化に耐えきれずにすぐに死んだがな。こいつらアースダガーならもしかしてと思ったのさ。こうもうまくいくとはね」
ウルフガブーがウルフイエローを抱き寄せる。
「あん・・・」
うっとりとしたしぐさでウルフガブーに寄り添うウルフイエロー。
「グルルルル・・・よくやったぞウルフイエロー。お前はもう完全に俺様のモノだな」
「もちろんですウルフガブー様。私はウルフガブー様の忠実なる眷属です。アオーン!」
それを見てバットピンクを立たせ、その肩を抱き寄せるバットガブー。
「ケケケケケ・・・これからはお前にも働いてもらうぞ、バットピンク」
「はい。何なりとご命令を。バットガブー様。キキキキー!」
ウルフイエローに負けずバットガブーにしなだれかかるバットピンク。
彼女ももはや身も心もバットガブーに完全に支配されてしまったのだ。

「ケケケケケ・・・まったく最高ではないかウルフガブーよ。で、どうするのだ? ほかの連中も眷属にするのか?」
「グルルルル・・・お前がそうしたければするがいい。俺様は野郎の眷属などいらんがな」
「ケケケケケ・・・それもそうだ。吾輩もいらん」
ウルフガブーの言葉に苦笑して首を振るバットガブー。
「グルルルル・・・だが、これで奴らを倒すのはこいつらにやらせればいい。できるな?」
「もちろんです。あんな連中と仲間だったなんて思いだしたくもありません。アオーン!」
「私もですわ。この生まれ変わった素晴らしい躰を見せつけ、奴らをこの爪で引き裂いてやります。キキキキー!」
ウルフイエローもバットピンクも両手の爪をかざしてみせる。
「ケケケケケ・・・どうやらもう仲間に対する親愛の情はなくなったようだな」
バットガブーの言葉に二人は深くうなづいた。

                   ******

「失礼します。うふふふふ・・・」
「うふふふふ・・・」
執務室に入ってきた由梨と絵里の二人に、机から顔をあげる遊佐司令。
二人が妙に冷たい笑みを浮かべており、また二人とも濃いアイシャドウを引いているのが明香には気になった。
「どうしたの、二人とも? 何か用?」
「うふふふふ・・・司令は今日何の日かご存知ですか?」
「当ててみてください。ふふふふ・・・」
つかつかと机のそばまでやってくる二人。
どうにもいつもと雰囲気が違う。
いったいどうしたというのだろう?

「さあ、わからないわ。ごめんなさい。誰かの誕生日だったかしら?」
首をかしげる明香。
いろいろと考えてみるが思い当たるものはない。
「うふふふ・・・残念」
「残念ですわ。ふふふふ・・・」
冷たく微笑んでいる由梨と絵里の二人。
「もう。意地悪しないで教えてちょうだい。いったい何の日なの?」
務めて明るくしようとする明香。
きっと二人は何かサプライズを仕掛けようとしているのかもしれない。

「うふふふ・・・それでは発表です」
「ふふふふ・・・実は・・・アースダガーの最後の日なんですよ、遊佐司令」
「えっ? 最後の?」
きょとんとしてしまう明香。
いったい二人は何を言っているのだろう?
最後の日とは?
「最後の日って・・・どういうこと?」
「うふふふふ・・・人間は察しが悪いですね」
「ふふふふ・・・仕方ないわよバットピンク。下等な人間どもには理解しがたい事なんだわ」
「それもそうね、ウルフイエロー」
顔を見合わせてくすくすと笑っている二人。
下等な人間だなどと、ガブーのようなことを・・・
えっ?
思わず椅子から立ち上がる明香。
「あなたたち・・・まさか?」
「うふふふふ・・・ようやく気が付いたのかしら?」
「ふふふふ・・・愚かな人間ね。さあ、私たちの本当の姿を見せてあげましょう」
そう言って二人は腕のブレスレットに手を伸ばす。
すぐさまピンクと黄色の粒子が彼女たちを包み込み、由梨と絵里の姿をウルフイエローとバットピンクへと変貌させた。
「アオーン! やっぱりこの姿がいいわぁ。人間の姿なんてしたくないわね」
「キキキキー! まったくだわ。この姿こそ本当の私」
以前のイエローダガーやピンクダガーの姿とそれほど変わっていないはずなのに、耳や尻尾、羽が付いただけでこうもまがまがしい雰囲気になるものか?
明香は二人の変化に愕然としていた。

「あ、あなたたち・・・」
「アオーン! どう? この姿。素敵でしょ? 私はウルフガブー様のおかげで生まれ変わったの。今の私はウルフガブー様の眷属ウルフイエロー」
「キキキキー! 私も生まれ変わりました。今の私はバットガブー様の眷属バットピンクなんですよ、遊佐司令」
「そんな・・・くっ!」
我に返った明香はすぐにインターコムに手を伸ばす。
自分はともかくこの状況をほかに知らせなくてはならない。
「レッド! ブルー! グリーン! 大至急司令官室へ来て! イエローとピンクがガブーに取り込まれたわ! 大至急来て!」
きっと呼び出している最中に襲われるものと覚悟していた明香だったが、意外にも二人は襲ってはこなかった。
それどころか腕組みをして明香の様子をうかがっている。
「もういいんですか? 司令。キキキキー!」
「何なら、もっと助けを呼んでもいいんですよ。アオーン!」
その言葉に色を失う明香。
「ま・・・まさか・・・」
「ふふふふ・・・厚司の躰を切り裂くのは気持ちがよかったわ。アオーン!」
「大樹もよ。結構筋肉質だったから切り裂き甲斐があったわ。キキキキー!」
鋭い爪をかざして見せつける二人。
「博人はちょっとだけ私たちを疑ったみたいだけど・・・」
「二人で襲えばなんてことなかったわね」
「三人とも・・・なの?」
がっくりと椅子に崩れ落ちる明香。
「ほかにもオペレーターとか警備兵とか。アオーン!」
「いっぱい切り刻んでやりましたわ。キキキキー!」
「最後は私というわけなのね・・・」
あきらめた表情を浮かべつつ、机の下の拳銃に手を伸ばす明香。
この拳銃の特殊弾ならダガーショットと同じ程度の威力を持つ。
おそらくこの二人にもかなりの効果があるに違いない。

「うっ? うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
突然頭の中をかき混ぜられるような激しい頭痛が明香を襲う。
思わずもんどりうって椅子から転げ落ちる明香。
取り出した拳銃も床に転がってしまう。
「ああ・・・あああ・・・」
「アオーン! ふふふふ・・・バットピンクの超音波はさすがね」
「キキキキー! ダメですよ、司令。そんなもので私たちに歯向かおうとするなんて」
超音波を止め、転がっている拳銃を遠くへ蹴り飛ばすバットピンク。
「うう・・・ううう・・・」
超音波が止まったことで頭痛は収まったものの、激しい衝撃で躰がうまく動かない。
「うふふふふ・・・心配はいりませんわ。司令を殺すつもりはありません。キキキキー!」
彼女のそばにやってくるイエローウルフとバットピンク。
「な・・・なんで?」
「ふふふふ・・・偉大なるガブーの首領様は、司令の才能を見込まれたのです。人間にしておくには惜しいと。アオーン!」
「ですから、司令を首領様の下へお連れして、首領様のお力で生まれ変わらせていただけるのですわ。キキキキー!」
動きのとれない明香を見下ろし、楽しそうに話している二人。
「うらやましいな。私たちは眷属だけど、司令はガブー怪人に生まれ変われるんだもの。アオーン!」
「本当ですわ。司令ならきっと素敵なガブー怪人に生まれ変われますよ。キャットガブーなんてどうでしょう? キキキキー!」
「そんな・・・ことは・・・」
「さあ、行きましょう司令。首領様がお待ちですわ。キキキキー!」
「や・・・やめろ・・・」
何とか抵抗しようとする明香。
だが、ウルフイエローが抱きかかえるようにして彼女を連れ去っていく。

やがてオオカミとコウモリのガブー怪人と、そいつらに率いられる黄色とピンクの女怪人に加え、黒猫と人間の女性が合わさったようなガブー怪人が現れるようになるまでに、そう時間はかからなかった。

END
  1. 2017/09/06(水) 20:49:32|
  2. 改造・機械化系SS
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オオカミとコウモリ(前)

久しぶりにSSが一本書きあがりましたので、今日明日の二日間で投下したいと思います。
タイトルは「オオカミとコウモリ」です。
楽しんでいただけると幸いです。

それではどうぞ。


オオカミとコウモリ

『イエロー、そっちは大丈夫?』
ヘルメットの内蔵スピーカーから聞こえてくるピンクの声。
「こっちは大丈夫。クグチューぐらいは私だけで充分」
そう答えて路地に逃げ込むクグチューたちを追っていくイエローダガー。
奴らを逃がしてしまえば、いずれまたどこかで悪事をおこなうに違いないのだ。
非情なようだが、敵は殲滅する。
それが地球を守るアースダガーの一員たる彼女の役目。

「ガブーのクグチューめ、ちょこまかと・・・でも逃がしはしないわよ!」
脇に白いラインの入った、黄色のミニスカート型のダガースーツと呼ばれるバトルスーツで全身を覆い、フルフェイスのヘルメットで頭部をカバーした姿は、まさに特撮番組に出てくるヒロインそのものだが、彼女の所属するアースダガーもまさにその特撮番組に出てくる正義の戦隊と言っていい。
レッド、ブルー、グリーン、イエロー、ピンクの五人の戦士たちが、地球侵略をもくろむ謎の組織ガブーと戦っているのだ。
現実だと言ってもなかなか信じてもらえないに違いない。

近年世界を騒がせている謎の組織ガブー。
最初は新たなテロリストの組織かと思われたものの、まるで動物の着ぐるみを着ているかのようなガブー怪人や、灰色の全身タイツにネズミのような頭と尻尾を持つクグチューと呼ばれる戦闘員が集団で現れ、世界征服を表明するに至っては冗談としか思われなかった。
だが、ガブー怪人やクグチューたちの力はすさまじく、警察力で抑え込むのは不可能と理解されるのにそれほど時間はかからなかった。
各国は軍隊による対応に乗り出したが、それさえも簡単に蹴散らしていくガブー怪人たちに、世界は驚愕し、頭を悩ませることになったのだ。

そんな中、日本では特殊バトルスーツの開発に成功し、アースダガー戦隊を作ることによってガブー怪人たちの阻止に成功していた。
ガブー怪人を五人のコンビネーションで翻弄して倒していくアースダガー戦隊。
これによって各国もそれぞれ自前の戦隊チームを編成し、ようやくガブー怪人に対処する目途が立ってきたという現状だったのだ。

「チュチュ―!」
「チュチュ―!」
お尻から伸びる尻尾を振りながら狭い路地を逃げていく二体のクグチューたち。
頭には大きな丸い耳が付いていて、時々ぴくぴくと動いている。
彼らがかぶり物や着ぐるみを着ているわけではないことが、そのことからもわかる。
「くそっ、こうも動き回られては・・・」
戦闘区域の周辺には警報が出され、一般市民は屋内待機を指示されてはいるものの、こうした狭い路地ではいつ市民と出くわさないとも限らない。
また、塀や生垣の向こうには民家があるわけで、こういう場所では拳銃型の武器「ダガーショット」を撃つわけにもいかなかった。
なんとか追いついて格闘戦に持ち込まねば・・・
次第に焦りを感じてくるイエローダガー。

「チュチュ―!」
「チュチュ―!」
突然クグチューたちの脚が止まる。
行き止まりの路地に入り込んでしまったのだ。
すぐさま戻って違う道に入ろうとしたものの、その前にイエローダガーが立ちはだかる。
「追いつめたわよ。もう逃がさない」
急いでクグチューたちを倒してしまわなくてはならない。
時間がかかれば、どっちかが塀を乗り越えて民家に入ってしまうかもしれないのだ。
そのため、一気に片をつけるべくイエローダガーはクグチューたちに飛び掛かった。
「ヤーッ!」
イエローダガーの手刀がクグチューの喉を砕く。
「チュチュ―!」
もんどりうって倒れるクグチュー。
すかさずもう一体の方には長い足を生かして蹴りを入れる。
「チュチュ―!」
蹴り飛ばされて塀に躰をたたきつけられたクグチューは、これもその場に倒れて動かなくなった。
「ふう・・・」
肩の力を抜いて息を吐くイエローダガー。
どうやらこいつらを逃がさずに済んだようだ。
思わずヘルメットのまま額の汗をぬぐおうとし、気が付いて苦笑する。

「グルルルルル・・・」
「えっ? 誰?」
背後からの唸り声に振り向くイエローダガー。
そこには青白い毛皮に覆われ、耳をぴんと立て、黄色の目をらんらんと輝かせ、牙をむき出して唸る直立したオオカミの姿があった。
「ガブー怪人!」
驚くイエローダガー。
先ほどタイガーガブーというガブー怪人をアースダガーは倒したばかりだったのだ。
これまでのガブーの動向から言って、数日は動きがなくなるはずだった。
それなのにまさかという思いがあったのだ。

「グルルルル・・・俺様はウルフガブー。イエローダガー、よくもクグチューたちを倒してくれたな」
牙をむき出し鋭い爪を向けてくるウルフガブー。
その威圧感に思わず一歩後ずさりしてしまう。
まずい・・・みんなを呼ばなければ・・・
ガブー怪人と一対一では倒すのは難しい。
負けるとまでは言わないものの、やはりチームで当たるのが正しいだろう。
だが、そんな思いをよそにウルフガブーが飛び掛かってくる。
「くっ!」
間一髪のところでウルフガブーの爪を避けるイエローダガー。

「ほう、よく避けたな。俺様の動きについてこられる奴はそうはいない」
振り向いてにらみつけてくるウルフガブー。
「くっ・・・」
奴の言うとおりだ。
一瞬でも気を抜けばあの爪や牙に引き裂かれてしまうだろう。
みんなを呼ぶにはどうしてもそちらに気をとられる。
いったいどうしたら・・・
イエローダガーのヘルメットの中で冷や汗が流れる。

「グルルルル・・・今度はどうかな?」
挑発するかのように笑みを浮かべるウルフガブー。
その鋭い爪がギラリと光る。
勝負は一瞬。
奴が飛び掛かってくるときの一瞬にかけるしかない。
ごくりとつばを飲み込むイエローダガー。
その手のひらにも汗が浮く。
失敗は許されない。
なんとしても・・・

「ガァァァァァッ!」
唸り声をあげて飛び掛かってくるウルフガブー。
「今だ!」
イエローダガーの手が腰のホルスターからダガーショットを抜き、そのまま射撃する。
狭い路地だがやむを得ない。
「グオッ!」
「ガッ!」
お互いに苦悶の声をあげる二人。
イエローダガーを飛び越えて着地したウルフガブーは、その肩の毛皮がちりちりと焦げている。
イエローダガーのほうも右肩に受けた衝撃で思わずダガーショットを落としていた。

「グルルルル・・・なかなかやるな。気に入ったぞ」
「それはどうも」
お互いにまた向き直る二人。
だが、イエローダガーは確実にダメージを受けていた。
衝撃で右手がしびれて、ダガーショットを拾えないのだ。
次に飛び掛かってこられたら・・・
どうしたらいいの・・・

「ガァァァァァッ!」
「グッ!」
飛び掛かってくるウルフガブーに身構えるイエローダガー。
だが、予想された爪による攻撃は来ず、代わりに素早く背後に回ったウルフガブーに羽交い絞めにされてしまう。
「なっ?」
いきなりのことに驚くイエローダガー。
次の瞬間、彼女の首筋に痛みが走る。
「あぐぅ!」
それがウルフガブーに噛みつかれたものだということにイエローダガーは気付く。
そ、そんな・・・
ダガースーツを貫いたというの?
防弾防刃の強化服であるダガースーツを貫くなど、通常では考えられない。
だが、現に彼女は首筋に食い込む牙の痛みを味わってしまっていた。

「グルルルル・・・これでいい」
あっさりとイエローダガーを離すウルフガブー。
がっくりとその場に膝をつくイエローダガー。
か、躰がしびれ・・・る・・・
全身に広がる痛みとしびれ。
立っていることもできないのだ。
「な・・・何を・・・」
「グルルルル・・・俺様のエキスをたっぷり含んだ唾液をお前の中に流し込んでやったのさ」
「だ・・・えき・・・?」
たまらず地面に倒れ込むイエローダガー。
その躰が小刻みに痙攣している。
「そうだ。お前を俺様の眷属にするためにな。喜べ。お前は俺様のものとなる」
「そ・・・んな・・・」
必死に立ち上がろうとするイエローダガー。
だが、すでに目はかすみ、意識も朦朧となってくる。
やがて彼女の意識は闇の中に沈んでいった・・・

ぴくぴくと痙攣するイエローダガーの躰。
やがてその躰に変化が表れてくる。
黄色のダガースーツの脇にある白いラインが黒く染まっていき、ブーツにもこもこと毛が生え始め、つま先がオオカミの足先のように変化する。
お尻からは黄色の毛におおわれたオオカミの尻尾が生え、ぱたぱたと揺れ動く。
「グルルルル・・・ほう、スーツごと変化していくか。面白い」
鼻づらの長いオオカミの口元に笑みを浮かべるウルフガブー。
その間にもイエローダガーの躰は変化し、両手の手袋にも毛が生え、指先からは鋭い爪がのびていく。
フルフェイスのヘルメットにも毛に覆われたオオカミの耳が生え、バイザーの口元のあたりには白い三角の牙のようなマークが描かれる。

「うう・・・ううう・・・アオ・・・アオーーン!」
やがてオオカミのような吠え声をあげ、ゆっくりと起き上がるイエローダガー。
両手両足に毛が生え、尻尾と耳が付いた姿は、まさにオオカミと化したイエローダガーの姿だった。
「グフフフフ・・・どうやら俺様の眷属に生まれ変わったようだな。今日からお前はウルフイエローと名乗るがいい」
「アオーン! それが私の新しい名前なのですね? ありがとうございますウルフガブー様。私はウルフイエロー。ウルフガブー様の忠実な眷属です」
尻尾をぱたぱたと振り、ウルフガブーの足元にひざまずくイエローダガー。
いや、もはや彼女はウルフガブーによって作り出されたウルフイエローだった。

「グルルルル・・・ではお前の力を見せてみろ。そこの民家にいる連中を始末するのだ」
路地脇の一軒を指し示すウルフガブー。
「かしこまりました。うふふふふ・・・アオーン!」
こくりとうなずき、吠え声をあげて民家に飛び込んでいくウルフイエロー。
悲鳴と笑い声が交錯し、やがて両手を血に染めたウルフイエローが戻ってくる。
「三人ほどいましたので皆殺しにしてまいりました。人間を爪で切り裂くのって楽しいです。アオーン!」
「グフフフフ・・・よくやったぞ。完全に俺様の眷属と化したようだな」
「ありがとうございます、ウルフガブー様」
足元にひざまずき、ウルフガブーに頭をなでられ尻尾をぱたぱたと振るウルフイエロー。
「グルルルル・・・ところで人間の姿になることはできるのか?」
「やってみます。アオーン!」
以前と同じように右腕のブレスレットでスーツの解除をするウルフイエロー。
すると、一瞬全身が光に包まれ、アンダースーツ姿の女性の姿が現れた。
だが、その目には冷たい光が宿り、濃いアイシャドウが引かれ、口元にも邪悪な笑みが浮かんでいる。
「どうやら可能なようです、ウルフガブー様」
「グルルルル・・・そのようだな。これはいい・・・いいか、お前はその姿で奴らの元へ戻るのだ。そして俺様からの次の命令を待て。いいな?」
顎に手を当ててうんうんとうなづくウルフガブー。
これはいい手駒が手に入ったと考えたのだ。
「かしこまりました。ウルフガブー様のご命令のままに」
再びひざまずく彼女。
そして立ち上がると、くるりと振り返り、かつての仲間たちの元へと戻っていった。
邪悪な笑みを浮かべたまま・・・

                   ******

「あ、居た居た。おーい! こっちだ!」
「大丈夫? 由梨!」
路地から出たところで、レッドダガーとピンクダガーの二人が駆け寄ってくる。
レッドダガーはほかの二人も手招きして呼んでいるようだ。
真っ先に駆け寄ってきたピンクダガーが、自分もダガースーツを解除する。
茶色のショートカットの似合う、少し幼い感じのする女性だ。
凛として少しきつめの感じのイエローダガーこと辛木由梨(からき ゆり)とは対照的だが、ダガーチームの女性陣は二人きりということもあって仲は良い。
「ええ、大丈夫よ、絵里」
心配そうなピンクダガーこと相園絵里(あいぞの えり)にちらっと眼をやりそう答える由梨。
その目のいつもと違う冷たい感じに絵里は違和感を感じる。
それにいつもこんなに濃いアイシャドウを引いていただろうか・・・
「クグチューたちはどうしたの? 何かあった?」
「倒したわ。何も問題はないわよ」
表情を変えずに歩きだす由梨。
躰にぴったりしたアンダースーツがそのラインを際立たせている。
「お、無事だったな? なんだもう解除したのか? その格好で歩くと男たちには目の毒だぜ」
遅れてやってきたブルーダガーが軽口をたたく。
「やめてよ。もう敵はいないんだしいいでしょ。なんならあなたたちもアンダースーツ姿になれば?」
じろりとブルーダガーを見やる由梨。
思い過ごしだろうか・・・
だが、どことなくいつもと感じが違う・・・
絵里は何となくそう感じるのだった。

迎えの車に乗り込みアースダガーベースへ向かう五人。
その中で由梨はぼんやりと外を見ている。
何となく周囲を拒絶しているようで、絵里はやはり気になった。
ダガーチーム五人のうち、ピンクダガーの絵里とイエローダガーの由梨だけが女性であり、絵里と由梨という名前の語感も似ていることから、二人はユリエリコンビとして知られていた。
絵里にしても由梨は頼りになるメンバーだし、全幅の信頼を寄せている。
逆に由梨に頼ってもらえているかというと・・・
そっちの方はやや心もとないと絵里は思う。
だが、今日の由梨はどうしたのだろう・・・
どうにも違和感がぬぐえないのだ。

「あの路地で惨殺死体が見つかったぞ! 由梨、何か見なかったか?」
今日の戦いのデータをチェックしていたレッドダガーこと熱野厚司(ねつの あつし)が振り返る。
「えっ?」
「聞いてなかったのか? お前がクグチューを追いかけて入ったあの路地で惨殺死体が見つかったんだよ」
上の空のような返事をする由梨に、厚司が繰り返す。
「あ・・・ああ・・・ガブーの怪人が・・・」
何か言いよどむ由梨。
「怪人が? 怪人がいたのか?」
「なんで言わないんだ?」
アンダースーツ姿のブルーダガーこと空田博人(そらた ひろと)と、グリーンダガーこと林原大樹(はやしばら だいき)も振り返る。
まさかあの場に怪人がいたなんて・・・
タイガーガブーだけじゃなかったの?
由梨の言葉に絵里も驚きを隠せなかった。

「すぐに立ち去って行ったし、クグチューたちを相手にしてて報告が後回しになってしまって・・・ごめん」
頭を下げる由梨。
「そうか・・・まあ、次回はすぐに俺たちにも知らせてくれ」
「ああ。奴らが一度に二体以上の怪人を送り込んできたとなると・・・」
「厄介だな・・・」
腕を組んで今後のことを考える大樹や博人。
厚司も今のことをノートPCに打ち込んで報告する。
アースダガーベースに着くまでにも、リーダーはやることはいろいろとあるのだ。

「それで・・・その怪人がやったの?」
「ええ・・・ずたずたに切り裂いて・・・楽しんでいたわ」
「そう・・・」
絵里は由梨の違和感の理由がわかった気がした。
怪人が人間をずたずたに切り裂くところなんて正視に耐えられるものじゃない。
きっとそれで由梨はショックを受けたんだわ・・・
そう自分で納得し、あとで気晴らしに連れ出そうと考える絵里だった。

                   ******

「みんなお疲れ様。第二の怪人が現れていたということは、今後の対応として留意すべきことだけど、とりあえず今のところ動きはないみたい。みんなには準待機態勢で申し訳ないんだけど、それぞれ休息に入ってちょうだい」
アースダガーベースに戻ってきたチームのメンバーを出迎える、アースダガーチーム司令官の遊佐明香(ゆざ めいか)。
まだ三十代の若さでアースダガーチームの指揮を執る有能な女性だ。
個性の強いメンバーをしっかりと把握して取りまとめている。
彼女に敬礼し、それぞれの部屋に引き上げるメンバーたち。
そんな中、絵里は部屋に入ろうとした由梨に声をかける。
「由梨」
「・・・何?」
一瞬にらまれたような感じがしてドキッとする絵里。
だが、すぐにいつもの由梨の表情に戻っていた。
「一息ついたら甘いもの食べに行かない? クレープの美味しい店が雑誌に紹介されていたの」
「・・・いいわ」
ぎこちなく笑みを浮かべる由梨。
やはり目の前で行われた惨殺が堪えているのかもしれない。
それでも気丈にふるまっているのが由梨らしいと絵里は思う。
「それじゃあとで呼びに来るね」
「ええ」
そう言って絵里は手を振って由梨と別れる。
絵里が立ち去ったことで、どことなくホッとしたような顔をする由梨。
そのまま自分の部屋に入ってドアを閉める。

「アオーーーーン!」
自室に入ると由梨は思わず吠え声をあげる。
胸糞の悪い連中と一緒にいたので気分が悪かったのだ。
早くあんな連中は皆殺しにしたい。
由梨は心の底からそう思う。
奴らは偉大なるガブーとウルフガブー様に歯向かう愚かな連中。
ウルフガブー様の命令でなければ、さっさと爪で引き裂いているだろう。
由梨はダガースーツを起動させ、本当の姿に変身する。
黄色い粒子が彼女の躰にまとわりつき、彼女の姿を変えていく。
黒いラインが入った黄色のスーツ。
その足は毛に覆われたオオカミの足。
その手は鋭い爪がとがった毛むくじゃらの手。
お尻からもふさふさした尻尾が生え、ヘルメットにはオオカミの耳がぴんと立つ。
これこそがウルフイエローに生まれ変わった彼女の本当の姿だ。
「アオーン! なんて気持ちがいいのかしら。これこそが本当の私。私はウルフガブー様の眷属、ウルフイエロー」
姿見に映った自分の姿に満足するウルフイエロー。
とりあえずアースダガーベースへの潜入には成功した。
今後のことをウルフガブー様に伺わなくてはならない。
「ウルフガブー様・・・ウルフガブー様・・・」
彼女は心から崇拝するウルフガブーに思念派を送る。
眷属に許された能力だ。
「ウルフガブー様・・・」
まるで愛しい恋人の声を聞きたいかのように、彼女はウルフガブーを呼び続けた。

(グルルルル・・・どうやらうまく忍び込めたようだな?)
「はい、ウルフガブー様。奴らの基地に忍び込みました。途中、奴らの仲間を引き裂きたいのをこらえるのに大変でした」
主からの思念派に思い切り尻尾を振るウルフイエロー。
(グルルルル・・・我慢しろ。近いうちに思い切り暴れさせてやる。だがその前に強敵アースダガーを始末しなくてはならん)
「はい。もちろんです。奴らの仲間だったことなど早く忘れたいですわ。アオーーン!」
(そのためには一人ずつになった時を狙うのだ。できれば外へおびき出し、お前と俺様の二対一になったところで仕留める)
「それならばさっそくいいチャンスがございます。先ほどピンクダガーより一緒に外出しないかと誘われました」
(ほう・・・それはいい。では俺様の元へ連れてくるのだ。いいな?)
「かしこまりましたウルフガブー様。必ずや仰せの通りに。アオーン!」
吠え声をあげて思念派を切るウルフイエロー。
胸のところで構えた爪がきらりと光った。

続く
  1. 2017/09/05(火) 20:38:40|
  2. 改造・機械化系SS
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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