「デスダム2」の三回目、これでこのSSはおしまいになります。
三日間お付き合いくださりありがとうございました。
また、いつもながらSS作成に多大なるご支援を下さった親愛なるメンバーの方々に心よりお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
それではどうぞ。
「デスダム2」(3)
無言で任務に励む女戦闘員たち。
各地の情報収集に余念がない。
日本を征服するという崇高な目的のために首領様に全てを捧げる彼女たちを、DACは倒さねばならないんだわ。
それはDACにとっても苦しい戦いとなるだろう。
だからこそ一刻も早く私を救出に来なくてはいけないはずなのに・・・
無能な奴らめ・・・
もっとも・・・このデスダムのアジトは完璧なカモフラージュによって護られているわ。
そうそう簡単に見つかりっこない。
DACごときじゃ見つけられないのかもしれないわね・・・
「ヒャイーッ! エリアKにおける新アジトの建設状況の報告があります」
一人の女戦闘員が、髑髏のレリーフの前にやってくる。
新アジト?
新しいアジトを建設中ということなのね。
『うむ。報告せよ』
「ヒャイーッ! し、しかし・・・」
チラッと私の方を見る女戦闘員。
ああ、そうよね。
私は部外者だもの・・・
首領様への報告を私が聞くわけにはいかないわ・・・
私はちょっと寂しく感じながら、その場を離れようとした。
『かまわん。シャドウレディの前で報告せよ』
えっ?
私は立ち止まる。
いいの?
私がそんな大事なことを聞いてもいいの?
「首領様・・・」
私は思わずレリーフを見上げる。
『シャドウレディよ、お前はわが話し相手だ。報告も聞くがいい』
「ハッ、ありがとうございます」
うれしい。
なんてうれしいのかしら。
私は膝を折って一礼すると、立ち上がって女戦闘員に向き直った。
「首領様のご命令よ。報告しなさい」
「ヒャイーッ! では報告いたします」
報告はエリアKにおける新アジトの建設が計画通りに進捗しているものの、DAC隊員による警戒が厳しく、このままでは早晩接触してしまうだろうというものだった。
エリアKか・・・
確かあそこには・・・
「DACの警戒が厳重なのも当然ですわ」
『ほう、なぜだシャドウレディ』
「エリアKにはADOの研究施設がございます。DACがデスダムの襲撃を警戒しているのは当然です」
あそこの研究施設はADOの重要施設の一つ。
警戒も厳重になろうというもの。
『ふむ。だがシャドウレディよ、それをわれらに教えてしまっていいのかな?』
「うふふふ・・・」
私は口元に手を当てる。
「私なりに考えた上でのことですわ。あえてADOの施設があるといえば、デスダムは警戒するでしょう。そうなれば動きが鈍くなり新アジト建設も滞るはず」
動きが鈍れば、DACとの接触も少なくなるはずだわ。
もっとも・・・これでDACが新アジトを見つけるのも困難になるかもしれないけど、それはそれ。
『ふむ。そういうことか。ならばその情報はありがたくいただこう。新アジト建設チームに警戒するように伝えるのだ』
「ヒャイーッ」
女戦闘員が戻っていく。
私はそれを見送った上で髑髏のレリーフに向き直る。
「ですが首領様はご存知でしたはず。洗脳した83号をはじめ、ADOの施設の存在などの情報は簡単に手に入ります。だからこそエリアKに新アジトの建設をされるのでは?」
私は先ほどから感じていた疑問を首領様に向けてみる。
デスダムの首領様がADOの研究施設の情報ぐらい知らないはずはないわ。
『気が付いていたようだな。それでこそシャドウレディ。そうだ、われは知っていた』
やっぱり・・・
「うふふ・・・やっぱりそうでしたか。首領様もお人が悪いですわ。私に情報の裏づけをしゃべらせたんですね」
首領様の考えが見通せたことで私は思わず笑みが浮かぶ。
首領様とのやり取りは知的ゲームのよう。
お互いに心を通わせつつも腹の底を探り合うような。
それがとても楽しいわ。
裏づけをとらせてしまったような形になったけど、どうせ施設のありかなど隠し通せるものじゃないわ。
知られた上でなお襲撃を受けないようにするのが施設運用というもの。
その点ではデスダムの方が一枚も二枚も上手だわ。
見習わなくちゃね。
はたしてDACの連中はどこまで楽しませてくれるのかしら?
うふふふふ・・・
******
もうこのアジトで暮らして何日経ったのかしら?
一週間?
十日?
それともまだ五日ぐらい?
私はいつものように首領様のおそばでデスダムの組織運用に目を配る。
DACに付け入れられる隙があれば、すぐにそれを首領様に申し上げるのだ。
私がDACに戻れば、そういった隙は見逃さない。
でも、そんな隙を突いてデスダムに勝利したとしても、それは一次的なものに過ぎないわ。
少しの隙もないデスダムを倒してこそDACが日本を護れるというもの。
だから少しでも隙を見せるわけにはいかないわ。
だというのに・・・
「それでイカゲゾー、そのままおめおめと逃げ帰ってきたというのですか?」
私の前にはデスダムのイカ型怪人イカゲゾーが肩を落としてうずくまっている。
首領様の怒りを恐れているのだろうけど、首領様どころか私だって腹が立つわ。
あれほどDACパワーズは甘く見てはいけないと念を押したにもかかわらず・・・
「お、お赦しくださいシャドウレディ様。決しておめおめと逃げ帰ってきたわけではありません。ADOの研究施設にはそれなりのダメージも与えたし、パワーズブルーにも相当のダメージを与えたはずでございます・・・」
「お黙り!」
思わず私は声を荒げてしまう。
ADOの研究施設など、いずれ復旧されるのは目に見えている。
それにパワーズブルーのお調子者は、どうせスタンドプレーの挙句にダメージを負った程度でしょう。
その程度のことと引き換えに、こちらの女戦闘員を十四名と新アジトの放棄では割に合わなさ過ぎるというものではないか。
デスダムの怪人はその程度のこともわからぬ愚か者なのか?
『パワーズピンクがいなくなったことで、DACパワーズの戦力は大幅に減ったはず。だが、油断はならぬと申したはずだな、イカゲゾー』
首領様の重々しいお言葉がホールに響く。
思わず私も周囲の女戦闘員たちも息を飲む。
「け、決して油断など・・・」
がっくりとうなだれているイカゲゾー。
「油断をしないでそのざまとでも? それこそ無能者の証ではないの?」
「そ、そんな・・・」
イカゲゾーがすがるような目で私を見る。
ふふ・・・
うふふふふ・・・
そんな目で私を見ても無駄なこと。
首領様のおっしゃるとおり、私のいないDACパワーズは本来の力を出せていないはずなのよ。
これだからデスダムの怪人がDACパワーズに勝てないんだわ。
もう少し戦い方を考えたらどうなのかしら?
私は思わず腰に巻きつけたムチに手をやっていた。
首領様のお言葉さえあれば、これを打ち付けてやれるのに・・・
「首領様、このような無能者はデスダムには不必要なのではありませんか? DACパワーズを利するだけのような気がしますわ。もっとも、私はその方がありがたいのですけど」
私はあえてそう言った。
だが、これは本気じゃない。
イカゲゾーを処刑すれば、それこそDACパワーズが喜ぶだけ。
冗談じゃないわ。
DACパワーズごときにそうやすやすと勝利させるわけには行かないのよ。
彼らが今のままでは日本を護れないと気が付くまで攻めてやらなくては・・・
「お、お赦しを。首領様。シャドウレディ様」
肩を震わせて処刑の恐怖におびえるイカゲゾー。
うふふふふ・・・
なんて可愛いのかしら。
恐怖におびえる姿を見るのは最高に気分がいい。
もっと痛めつけてやりたくなるわ。
『シャドウレディよ。イカゲゾーには再度チャンスを与えてやるのだ。だが、このまま放免というわけにはいかん。犯した失態の痛みを教えてやるがいい』
「はい、かしこまりました首領様」
首領様のお許しが出たわ。
うふふふふ・・・
私は腰のムチを取り外してイカゲゾーの前に立ちはだかる。
「シャ、シャドウレディ様・・・」
「首領様のご命令が下ったわ。イカゲゾー、お前にムチ打ちの刑を下します」
恐怖にすくむイカゲゾーを前に、私の興奮は高まっていく。
ムチを持つ手が震えてくる。
「お、お赦しを・・・」
「だめよ。失態の痛みを知りなさい。それっ!」
ヒュンとムチが空を切り、イカゲゾーの背中を打ち付ける。
パシーンという小気味よい音が響き、イカゲゾーの表情が苦悶に満ちた。
あはぁ・・・
なんて気持ちいいの・・・
無能者をムチ打ち、矯正してやるのは最高だわ・・・
もっとよ・・・
もっとおびえて悲鳴を上げなさい!
そしてデスダムの大義をその身に刻み込みなさい!
首領様の御心の尊さを知るがいいわ!
もっと!
もっと!
もっとよ!
私は何度もイカゲゾーをムチ打ちながら、自らにもデスダムの大義が染みとおる快楽に酔いしれた。
あっ!
突然イカゲゾーの触手が私の頬を張り飛ばす。
恐怖のあまり身をかばおうとした触手が、私の頬に当たったのだ。
私は思わず床に叩きつけられ、サークレットがはじけ飛ぶ。
えっ?
張り飛ばされた頬の痛みと、床に叩きつけられた衝撃が、私の頭をすっきりさせる。
い、いったい?
いったい私は何をやっていたの?
あ・・・
私は・・・
私は・・・
「シャドウレディ様!」
「シャドウレディ様、大丈夫ですか?」
女戦闘員たちが駆け寄ってくる。
「も、申し訳ありませんシャドウレディ様。つい躰をかばおうと・・・」
イカゲゾーも私の方を心配そうに見てくれる。
ムチ打たれていたのは彼の方なのに・・・
私はそんな彼をムチ打って・・・
喜んでい・・・た?
あ・・・
そんな・・・
気が付くと私はホールを飛び出していた。
あんなところにはいられない。
私は・・・
私はDACパワーズ。
パワーズピンクなのよ。
それなのに・・・
それなのに・・・
私は走った。
どこへなんて考えずに私は走った。
この数日の間にすっかりなじんでしまったロングブーツ。
脱ぐことなど考えられない、私の肌になってしまったようなボンデージ。
それらが私に力をくれる。
いくら走ったって問題ない。
でも・・・
でも、そんなのはいやぁ・・・
私をここから出してぇ!!
薄暗い倉庫。
最初に閉じ込められていた牢屋の近く。
あまり使われていないこの倉庫に女戦闘員が来ることなどめったにない。
私はいつの間にかこんなところにうずくまっていた。
膝を抱えて泣いていたのだ。
どうして・・・
私はどうしてあんなことを・・・
デスダムに協力し・・・まるでデスダムの一員のように振舞っていた・・・
シャドウレディなんていうコードネームで呼ばれ、それを当然のようにさえ感じていた・・・
DACを強化するためなどと思い込み、デスダムの強化に役立つようなことばかり教えていた・・・
首領様の命令で怪人をムチ打ち、ムチ打つことを喜んでいた・・・
あの・・・
あのサークレットのせいだわ・・・
きっとそう・・・
寝るときすらはずさなかったあのサークレット・・・
あれが私を洗脳していたんだわ・・・
でも・・・
でも、いまさらどうしようもない。
今の私にできることは、すぐにここを脱出してDACに戻り、デスダムのアジトで得た情報を彼らに伝えること。
それしかないわ。
だから一刻も早くここを出て・・・
ここを出て・・・?
ドクン・・・
心臓が跳ね上がる。
DACに戻る?
DACに戻ってどうなるの?
洗脳されたとはいえ、私はデスダムに協力したのよ・・・
DACに対する重大な裏切り行為だわ・・・
裏切りは赦されるものじゃない・・・
少なくともデスダムでは裏切った者は死を与えられる・・・
裏切った者は死・・・
そう・・・裏切り者や無能者、非効率な者が死を与えられるのは当たり前・・・
だから私も・・・
ドクンドクン・・・
裏切りは死・・・
やだ・・・
やだよ・・・
死にたくない・・・
死にたくないわ・・・
怖い・・・
怖い怖い怖い・・・
DACには戻れない・・・
DACに戻れば殺される・・・
怖い怖い怖い・・・
私はもう、DACには戻れない・・・
いいえ、戻るもんですか・・・
でも・・・
でもどうしよう・・・
私はどこにいたらいいの?
「ヒャイーッ! シャドウレディ様、こちらでしたか」
顔を上げた私の前にデスダムの女戦闘員が立っていた。
「シャドウレディ様、これを」
差し出されたのはあのサークレット。
デスダムの髑髏のマークが飾られたあのサークレットだ。
「これは・・・これは洗脳サークレットだわ。私にまたこれを付けろというの?」
「ヒャイーッ! それはシャドウレディ様のご自由です。首領様はただ一言、待っているぞと」
待っている?
私を・・・待っている?
私は・・・ここにいてもいいの?
首領様は私を待っていてくれているの?
私はデスダムに必要とされているの?
このアジトに来てからのことが脳裏をよぎる。
首領様とお話をする喜び・・・
デスダムを運営強化する喜び・・・
怪人や戦闘員を思うままに指揮する喜び・・・
無様な失態を犯したものをムチ打つ喜び・・・
そして・・・首領様に洗脳され支配される喜び・・・
そうよ・・・私はもう一度洗脳されたい・・・
私はもう一度支配されたい・・・
私は・・・
私はごくりとつばを飲み込む。
女戦闘員の手の上で鈍く輝くサークレット。
その髑髏のマークが私に微笑みかけている。
これを付ければ・・・
これさえあれば・・・
私は女戦闘員の手からサークレットを受け取った。
そして私の意志でこのサークレットを頭に嵌める。
すうっと恐怖がひいていく。
DACに対する恐れは消え去った。
私はデスダムの女。
私はデスダムのシャドウレディ。
DACはもはや私の敵。
これからは私がお前たちに恐怖を与えてやるわ。
楽しみにしているがいい。
私は立ち上がると、女戦闘員を従えて力強く歩き出す。
私の敬愛する首領様の下に向かって。
END
- 2008/01/29(火) 19:44:48|
- デスダム
-
| トラックバック:0
-
| コメント:6
「デスダム2」の二回目です。
勿体つけてすみません。
「デスダム2」(2)
金属の鋲が打ち込まれた黒エナメルのハイネックレオタード。
金属のとげとげがついた黒エナメルの長手袋。
太ももまで達する黒エナメルのハイヒールブーツ。
これはいったい・・・
いわゆるボンデージっていう奴かしら・・・
これを私に着ろというの?
「どういうこと? これを着ろとでも?」
私は紙袋を突き返す。
こんなもの着られるわけがないじゃない。
何を考えているの?
「おい」
「「ヒャイー!」」
リーダーらしき女戦闘員が背後の二人にあごでしゃくって命令する。
たちまち二人の女戦闘員が私の背後から両腕と両肩を押さえつけてしまう。
「な、は、離して」
私は必死にもがくが、パワーズスーツを身につけていない今はこいつらは振りほどけない。
そして、動けなくなった私の頬にリーダーらしき女戦闘員の平手打ちが打ち付けられた。
「くっ」
私は痛みをこらえて精いっぱいにらみつける。
悔しい。
絶対に赦さないんだから。
いきなりスパッとブラウスが切り裂かれる。
見ると女戦闘員の人差し指の爪がナイフのように鋭く伸びていた。
これまでも私たちを襲ってきた強靭で厄介な不可解な素材でできた爪だ。
思わず私は身構えたけれど、爪は容赦なくスカートを切り裂いていく。
ストッキングも引き摺り下ろされる。
ショーツとブラジャーもあっという間に切り裂かれてしまい、私は生まれたままの姿にさせられてしまった。
「ふっ、着たくなければその格好で首領様に会ってもらうが、それでもいいのか?」
口元に笑みを浮かべる女戦闘員。
くっ、なんてこと・・・
裸じゃどうしようもないじゃない・・・
仕方・・・ないか・・・
私は観念して着ることにした。
黒エナメルのレオタードはハイネックになっていて、背中のファスナーを下ろしたうえで身につける。
下着も切り裂かれちゃったから、素肌に身につけるしかない。
うう・・・
何でこんなことになっちゃったのかなぁ・・・
腰まで引き上げて袖を通すと、躰にぴたっと張り付くようでなんだかひんやりとする。
背中のファスナーは女戦闘員の一人が何も言わずに上げてくれ、首までぴったりとしたレオタードに包まれる。
黒光りするエナメルのレオタードは、所々に銀色に光る金属の鋲が埋め込まれていて、なんだか強そうにも感じるわ。
私は次に、長袖のレオタードにもかかわらず二の腕までもある手袋を嵌めていく。
これも手の甲や手首のあたりなどにとげとげが付いていたりして、殴ったりしたら結構なダメージが行きそう。
手を握ったり開いたりして手袋をなじませると、最後に私は太ももまでもあるロングブーツに足を通す。
サイドのジッパーをぎゅっと上げると、ブーツは私の脚にぴったりと密着し、なんだか履いているというよりも一体化したみたいな感じがするわ。
普段履かないハイヒールだから、慣れるまでは歩きづらいかもしれないけど、これならそんなに問題はなさそうね。
「着替え終わったわよ。これでいいの?」
私はくるっと一回転して戦闘員たちに姿を見せ付ける。
なんだか私が私じゃないみたい。
こんな服を着るのは生まれて初めて。
結構いい気分だわ。
「最後にこれを嵌めなさい」
女戦闘員が出してきたのは髑髏のマークの付いた毒々しいとげとげのサークレット。
「えっ? ちょっと待ってよ。こんなの着けたらまるで私がデスダムの一員になったみたいじゃない」
「黙って嵌めるのだ」
「ふう・・・わかったわよ」
逆らっても無駄のようだわ。
今はおとなしくしていたほうがいいわね。
それに何も本当にデスダムの一員になるわけじゃないんだもの。
サークレットぐらい嵌めても問題ないわ。
それに・・・
結構この格好って素敵じゃない。
私は髑髏のマークの付いたサークレットを頭に嵌める。
何か洗脳みたいなことをされるのではないかとも思ったけど、別になんてこともないみたい。
デスダムは日本を狙う悪魔のような軍勢だし、私は彼らから日本を護るDACパワーズの一員よ。
デスダムに協力するつもりなんてこれっぽっちも起きないわ。
「首領様のお見立てどおり。とてもよくお似合いです」
女戦闘員たちが私を見つめている。
なんだかとても気持ちいいわね。
こうして部下を従えるってのも悪くないわ。
「さあ、こちらへ。首領様がお待ちです」
「わかったわ。案内して」
私は女戦闘員たちに従って、デスダム首領の元に向かった。
******
そこはホールだった。
ここはいくつかあるデスダムのアジトの一つということらしかったけど、このホールはどこでも造りが同じらしい。
正面に髑髏のレリーフが飾られ、周囲のコンソールには女戦闘員たちが操作のためについている。
私は戦闘員たちの後に従ってホールの中央に行き、そして髑髏のレリーフに向き合った。
「ヒャイーッ! 首領様、パワーズピンクこと糊倉美智留をお連れいたしました」
いっせいに右手を上げてレリーフに敬礼する女戦闘員たち。
まさか、この髑髏が首領なの?
『ようこそ糊倉美智留。いや、DACのパワーズピンク』
驚いたことに、髑髏の眼窩の奥が赤く光り、そこから声が聞こえてきたのだ。
「なるほど・・・本体はどこか別のところにいて、このレリーフを通して指令を伝えているってわけね」
首領が呼んでいるなんて言ったって、こういうことだったのね。
私はちょっとがっかりした。
もしかしたらデスダムの首領の正体がわかるかもしれないとかすかに考えていたのにね。
「それで? 私に何の用かしら? 私がDACパワーズの一員なんて言っているけど、見当違いもいいところ。私は単なるOLよ。DACとはなんのかかわりもないわ」
おそらく調べられているのでしょうけど、あっさり認めるわけにも行かない。
できるだけごまかさなきゃ。
奪われた装備だって、パッと見ただけじゃDACの道具だとはわからないものも多いしね。
『クククク・・・無駄なことはやめたまえ。君がDACパワーズのパワーズピンクであることは調べは付いているのだ』
ふう・・・やっぱりね。
でもどうして情報が漏れたのかしら・・・
まさかDAC内部にスパイがいるのかしら。
だとしたら大変だわ。
早急に手を打ってもらわなきゃ。
『君を呼んだのは他でもない。われは少々退屈なのだ。お前に話し相手になってもらいたい』
「ええっ?」
私は驚いた。
話し相手になってくれですって?
いったい何を考えているの?
「話し相手ですって?」
『そうだ。だが、心配することはない。DACの秘密を漏らせなどというつもりはないし、デスダムに協力しろと強要するつもりもない』
「デスダムへの協力など、そんなこと頼まれたってできるものですか!」
私は大声で怒鳴りつける。
戦闘員たちに殺されたってかまうものか。
私はDACパワーズのパワーズピンクよ。
見損なわないで。
『君にはこのアジト内を自由にうろつくことを許可しよう。戦闘員たちも自由に使役してかまわない。怪人に関しては若干問題があるが、その衣装を着ている限り我がデスダムの怪人といえども容易には君を害することはできんだろう』
えっ?
容易には害せない?
私は思わず自分の姿を見下ろした。
黒エナメルのボンデージレオタードがつややかに輝いている。
この衣装にそれほどの力があるというの?
『このアジトから外に出ることは許さん。もし外へ出ようとしたときには、君は死ぬことになる』
「死ぬ?」
『そうだ。このアジトを出た瞬間、その衣装には高圧電流が流れるようになっている。君は一瞬で黒焦げだ』
なんてこと。
やっぱりこの衣装は罠だったんだわ。
私はすぐさま背中のファスナーに手を伸ばす。
でも、ファスナーが降りてこない。
がっちりと固定されちゃったんだわ。
しまったぁ・・・
『無駄だ。その衣装は脱ぐことはできない。あきらめるがいい』
「卑怯者! 私にこんな格好をさせてどうしようって言うの?」
悔しい。
こんなことなら裸の方がましだったわ。
『言っただろう。われの話し相手になれと。それだけでいいのだ』
私は唇をかんだ。
どうやらこの衣装が脱げない以上どうしようもない。
外に出れば電流が流れるということは、アジト内でも流そうと思えば流せるだろう。
私は自ら電気椅子に座ってしまったようなものなのだわ。
「わかったわ。話し相手にはなります。でも、それ以上のことはしません。いいですね」
『結構だ、シャドウレディよ』
「シャドウレディ? 影の女ってこと?」
『美智留とかパワーズピンクなどと呼ぶ気にはならんのでな。勝手ながらそう呼ばせてもらおう。なに、ここでのコードネームのようなものだ』
「くっ、勝手にしなさい」
私は髑髏のレリーフをにらみつけた。
******
驚いたことに、このアジト内での私の行動は自由だった。
自室も用意され、お酒や食事もちゃんと用意された。
読みたい本や雑誌も用意され、お菓子だって食べられた。
気味が悪かったのは、この衣装を脱ぐ必要がまったくないこと。
このボンデージを着て以来、私はトイレに行っていない。
もうあれから三日にもなるというのに一度もだ。
どうもこのボンデージ自体が私の代謝に影響を与え、排泄物を分解してしまうらしい。
肉体も強化され、女戦闘員たちとも互角以上に渡り合える。
それにパワーズピンクの時に主武器として使っていたムチもデスダム特製のものを渡されて、今では腰の金具にいつでもムチを巻きつけている。
デスダムの首領が話し相手が欲しかったというのは本当のことだったのかもしれない。
ここでデスダムの連中を観察していると、怪人たちはともかく女戦闘員は個性を消されてしまっているので、会話を楽しむという目的には不向きなのだ。
驚いたのは、この女戦闘員たちが元は人間だったってこと。
83号なんてDACの隊員の一人だったらしい。
強化レオタードによって肉体を強化し、洗脳マスクによってデスダムへの忠誠心を植えつけることで、人間の女性がデスダムの女戦闘員となってしまうのだ。
私がDACパワーズの一員であることが知られていたのも無理はない。
この様子では、他にもADOやDACの関係者が女戦闘員にされているかもしれないわ。
まったく・・・
DACはそんなことも気が付かないのかしら・・・
コンコンとノックの音がする。
私が入室の許可を出すと、すぐにスライドドアが開いて一人の女戦闘員が入ってきた。
「ヒャイーッ! シャドウレディ様、首領様がお呼びです。すぐにいらしてくださいませ」
右手を高く上げて敬礼し、用件を伝えてくる戦闘員。
なんだかこれって悪くない気分なのよね。
シャドウレディ様って呼ばれるのも慣れてきちゃった。
ここだけのことなんだし、別にいいよね。
DACに戻ればパワーズピンクになればいいだけなんだし。
「わかりました。すぐに行きますとお伝えを」
「ヒャイーッ! 失礼いたします」
回れ右をして女戦闘員が部屋から出て行く。
その動作はきびきびしていてとても気持ちがいい。
DACももう少しきびきびしたところがあってもいいんじゃないかしら。
護人や健二だっていつもいつもいがみ合ったりして。
日本を護るって言う意識が低すぎるわ。
無能な存在は抹消されちゃうのよ。
わかっているのかしら。
私は鏡台に向かって、いつものように黒の口紅で唇を染め、アイシャドウをひいて目元を妖しく黒く塗る。
全身を包む黒エナメルのボンデージと、黒く染まった目元や唇が美しい。
これなら首領様も気に入ってくださるはず。
私は鏡に向かってウインクをすると、首領様の元へ向かうのだった。
「お呼びかしら、首領様」
口調こそ皮肉っぽく振舞ったものの、私は髑髏のレリーフに膝を折って礼を尽くす。
ここで生かしていただいている以上、きちんと礼を尽くすのは当然のこと。
それに、私はこの聡明な悪の首領と話すのが嫌いじゃない。
他愛もないおしゃべりを悪の首領とするなんてどうかしているのかもしれないけど、デスダムの首領という存在をより深く感じるためにはとてもいいことだと思うわ。
いずれDACにも“偉大な首領様”のことを知らしめてやる必要もあるしね。
『来たかシャドウレディよ。またしばしそばにいるがいい』
重厚な声がレリーフの奥から聞こえてくる。
今日もこの声の主、声だけからでも想像が付く巨大な存在にただ一人で立ち向かうのよ。
まさに偉大な敵、いや・・・もっと何か・・・
その声を聞くだけで私は何か心地よささえ感じてしまう。
まるで敵というよりも大きな父性とかそんな感じ。
「ふ、仰せのままに」
私は再び手を胸にかざすと、ことさら礼儀正しく一礼してみせる。
でも、この皮肉は首領様にしか通じていない。
周囲にいる女戦闘員たちが私の態度をどう思っているかなどどうでもいいわ。
私の気持ちが首領様に届いていればいいのよ。
私はこれからの首領様と過ごす時間を楽しみに思い立ちあがる。
そして、レリーフの前にその身をさらすと、振り返って女戦闘員たちを見渡した。
- 2008/01/28(月) 20:32:19|
- デスダム
-
| トラックバック:0
-
| コメント:2
ブログ妖精のココロも記事を書くんですね。
なんだかコメントまでいただいているし、拍手ももらってますよ。
私が記事を書くよりも受けそうです。(笑)
とりあえずこれからもココロの記事が書かれると思いますけど、笑ってみてやってくださいませ。
今日は先日報告したとおりSSを掲載いたします。
元日に掲載した「デスダム」の続編「デスダム2」となります。
本来なら全部いっぺんにお見せしたいところなんですが、やっぱりじっくりと楽しんで欲しいなというのもありますし、私自身がいっぺんはもったいないと思ってしまうので、今日から三日間で公開いたします。
今までのと似たような展開とは思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
それではどうぞ。
「デスダム2」(1)
「ヤアッ!」
毎日の訓練に研ぎ澄まされた躰が自然に反応する。
「ヒャイーッ」
デスダムの女戦闘員が私のムチ捌きで宙に舞い、そして地面に叩きつけられる。
ぐったりとなった女戦闘員の腹部にとどめの一撃を見舞い、私はすばやく体勢を立て直した。
『これであとは奴だけだ』
私が最後の女戦闘員を倒したのを見たレッドが、クラゲ怪人に向き直る。
『油断しないでレッド、デスダムの怪人はどんな能力を持っているかわからないのよ!』
ホワイトの言うとおり。
デスダムの怪人はどんな能力を持っているかわからない。
目の前の相手はその姿からクラゲがモチーフのよう。
両手にあたる太い触手のほかにも、いくつかの細い触手をうねうねと動かしている。
あまり素敵な姿とはいえないわ。
「シュルシュルシュルー!」
触手を伸ばす擬音なのか、それともそういううなり声なのかわからないけど、クラゲ怪人は私たちに触手を伸ばして攻撃してくる。
先ほどまでは戦闘員たちが連携していたために、私たちも単独での対応を余儀なくされたけど、戦闘員たちがいなくなればこっちのもの。
子供たちの見る特撮番組なら、単なる雑魚扱いの戦闘員たちだが、デスダムの女戦闘員たちはなかなか手ごわく、怪人と連携されると侮れない。
でも、怪人単独なら脅威は半減したも同じ。
『ウリャーッ!』
ブルーのソードが触手を叩き落し、イエローのハンマーが怪人の腹部を直撃する。
私も負けじとムチを振るい、クラゲ怪人の足を絡めて動きを止める。
『よし今だ! パワーズクラッシュをかけるぞ!』
「了解」
私はレッドの指示に答えると、スーツの導くままに体内の全ての力を放出する。
私の力はスーツによって加速され、まるで大砲でも撃ち出すかのように相手に向けた手のひらから放出され、それが五人分集まることによってすさまじいエネルギーの奔流を生み出すのだ。
このエネルギーの奔流に巻き込まれたものは、その肉体をばらばらに粉砕され、塵となって吹き飛ばされる。
「グギャァァァァァ」
デスダムの怪人だって例外ではない。
クラゲ怪人がエネルギーに巻き込まれて砕け散っていく。
でも、これは一度使用すると体内の力を放出してしまうので、連続では使えない。
そのためにこれは最後の切り札として、怪人の動きを封じたあとでないと使えなかった。
『ようし! これで今日もデスダムの野望は俺たちが打ち砕いてやったぜ!』
『ああ、俺たちDACパワーズがいる限り、日本はデスダムの好きにはさせないさ』
レッドとブルーががっちりと手を握る。
その上にイエロー、ホワイト、そして私が手を重ね、私たちは今日も勝利を噛み締めた。
『やったわね』
「ええ、今日も勝ちましたね」
『それはいいんだが・・・パワーズクラッシュは腹へっていかんよ。さっさと帰ってラーメンでも食いに行こう』
大きなお腹をさするイエロー。
思わず私たちは笑い出してしまったのだった。
「お疲れー」
「お疲れ様」
私たちはベースを出てそれぞれに帰宅する。
もちろんいつでも連絡は取れるし、集合となれば30分もかからずに現場に急行できるような態勢も整っている。
もちろんまだまだ日本全土での緊急態勢をとるには程遠いけど。
デスダムの出現パターンは首都に集中しているので、私たちも首都を重点に警戒しているのだ。
「美智留(みちる)、乗ってけよ。帰りにどこかで茶でもしないか?」
真っ赤なスポーツカーを歩き出した私の脇に止める健二(けんじ)。
スーツの色はブルーなのに、彼はことのほか赤が好きらしい。
そのためレッドの護人(もりと)とはスーツの色でいつも険悪になる。
なんでもスーツの色は各人の適正に合わせられているので、好きな色が与えられるというわけではないのだそう。
だから赤が好きな健二は、赤をもらった護人のことを妬んでいるらしいわ。
それにちょっと格好付けの所もあって目立ちたがり。
たまに先走ってデスダムの反撃に遭ったりするので、護人が時たまたしなめる。
それがまた気に食わないらしいのよね。
「ごめんなさい、今日は遠慮するわ。ほら、さっきみんなでニクタンと食事したでしょ。お腹いっぱいだし寄る所もあるから」
私はそう言って断りを入れる。
ニクタンというのはイエローのこと。
新多桑一郎(にった そういちろう)というのが本名なんだけど、あの通り大きな躰をしているし、桑一郎の桑の字がくわとも呼べるので、新多のにと桑のくでにく、あだ名だから可愛くしてニクタンというらしい。
考えてみればひどい侮辱のあだ名なんだけど、本人は結構気に入っているらしくて、自己紹介でもニクタンと呼ばれてますって自分から言っちゃう人。
だからみんな彼のことをニクタンって呼んでいる。
「そんなこと言わずに乗ってけよ。行きたいところがあれば送るよ」
「ごめんなさい、またにしましょ」
私はとりあえず先送りにしようと思い歩き出す。
だが、健二はあきらめ切れないようで、スポーツカーをゆっくりと進めてきた。
困ったなぁ・・・
「健二、そのくらいにしておけ。美智留に嫌われるぞ」
いつの間にかやってきていた一台のバイク。
またがっているのは護人だ。
あちゃ・・・
ありがたいけどまずいかな。
「ちっ、護人には関係ないだろ」
明らかに不機嫌そうな顔をする健二。
デスダムと戦っているときはいいチームワークなのになぁ。
「関係ないことないさ。美智留が困っているじゃないか」
「わかったわかった。美智留、それじゃまたな」
ウインクをして窓を閉め、そのままスポーツカーを走らせて行ってしまう健二。
ホッとしたけど、なんか気まずいのも確かだわ。
「美智留、なんかあったら俺に言えよ。それじゃな」
ヘルメットのバイザーを閉めて、護人もバイクで走り去る。
ふう・・・
やれやれだわ。
私は去り行く護人に手を振って、自宅への道を歩き出した。
「ふう・・・」
自宅へ戻る途中のデパートで、気に入ったアクセサリーなどを買い求めてきた私は、セキュリティの完備した自宅マンションに戻ってくる。
入り口は暗証番号無くしては開かないし、暗証番号自体も二月に一度は変更される。
もっとも、そのたびに覚えなくちゃならないのは大変なんだけどね。
まあ、私がDACパワーズの一員のパワーズピンクだと知っているのは、DACの中でもごく一部だし、まさかDACパワーズがこんなマンションに住んでいるとは誰も思わないでしょうけど。
警戒は厳重にするに越したことはないってことよね。
「あら?」
マンション前にたどり着いた私は、マンションの入り口前に救急車が止まっていることに気が付いた。
赤色回転灯が点灯し、これから患者を運び出すみたい。
誰かが怪我か病気にでもなったのかな?
私はそんなことを考えながら、マンションの入り口を通り抜けた。
「えっ?」
突然わき腹にチクッとした痛みが走る。
「な、何?」
振り向いた私の目に、救急車の後部から現れるデスダムの女戦闘員。
白衣を着ているものの、黒いマスクに黒手袋は間違いない。
彼女たちはマスクから覗く口元に笑みを浮かべ、私を強引に救急車の中に連れ込もうとする。
私は必死に抵抗しようとしたものの、急速に力が抜けてくるのをとめることができなかった。
「ま、麻酔薬だ・・・わ・・・」
私は朦朧としてくる意識を何とかとどめようとする。
「うふふふ・・・無駄ですよ、糊倉美智留(のりくら みちる)さん。あなたにはこれからデスダムのアジトに来てもらいます」
私の耳元で女戦闘員がそう言っているのを聞きながら、私は救急車に連れ込まれて意識を失った。
******
ピチャン・・・
ピチャン・・・
何の音かしら・・・
ピチャン・・・
そうだ・・・水道の蛇口がちゃんと閉まっていないんだわ・・・閉めなくちゃ・・・
私はうっすらと目を開ける。
夕べ飲みすぎたのか頭ががんがんするわ・・・
違う・・・
私はハッと気が付いた。
ここは?
私は周囲を確認する。
そうだ・・・私はうかつにもデスダムに捕らえられてしまったはず。
だとするとここは・・・
周囲は岩肌がむき出しになったような洞窟っぽい。
天井からは時々地下水がしたたっている。
その音が蛇口を連想させたんだわ。
正面にはしっかりと鉄格子が嵌められている。
そしてほかに出口はない。
どうやら天然の洞窟を牢屋にして使っているようだわ。
ふう・・・
湿っぽいところはいやなんだけどなぁ・・・
私は改めて状況を確認する。
躰のどこにも怪我はないみたい。
頭の痛みも麻酔薬のせいだったのか、今はほとんど感じない。
問題はこれから。
腕時計に見せかけた通信機もイヤリング型の緊急発信機も奪われている。
もちろんバッグなんてどこにもない。
靴のかかとに仕込んだ非常用の金属を切ることのできるワイヤーソーも、ご丁寧に靴ごと奪われているわ。
とりあえずレイプ紛いのことはされてないみたいだし、着ているものもブラウスやスカート下着は問題ない。
でも、靴無しのストッキングだけの足じゃ歩くには不便だわね。
とにかくここから脱出して救出を求めないとならないわ。
私は様子を確かめるべく、鉄格子に近づいてその向こうを確認する。
そこは洞窟の続きになっていて、先に扉がある。
あの扉、おそらく鍵がかかっているでしょうね。
でも、少なくても扉のこちら側には誰もいない。
どこかでモニターしているというのも考えづらい。
それらしいカメラらしきものは見えないからだ。
もっとも、手間暇かけて岩をくり抜いて配線をしてカメラを設置して、また岩に見えるようにカモフラージュするなんてことをしていれば別だけど。
そんなことしてまで牢屋を見張るメリットがあるとは思えない。
私はとりあえず鉄格子が緩んだりしていないかゆすぶってみる。
当然のことまったくびくともしない。
私の力でどうにかなる鉄格子じゃ意味がないものね。
パワーズスーツがあればこんな鉄格子ぐらい・・・
ガチャリ。
私は心臓が飛び跳ねた。
奥の扉の鍵が開き、デスダムの女戦闘員たちが入ってきたのだ。
美しいボディラインを惜しげもなくさらけ出す黒いレオタードにストッキング姿の女たち。
その数三人。
見れば見るほど人間そっくりだけど、デスダムによって作り出された合成人間という話だ。
真っ黒なマスクに覆われた頭部は口元だけが見える。
黒く塗られた唇が女の私から見ても色っぽい。
女戦闘員たちは鉄格子の前まで来て立ち止まる。
よく見ると、一人は何か紙袋を持っていた。
まるでショッピングにでも行ってきたみたい。
こいつらも買い物なんかするのかしら・・・
「糊倉美智留、出ろ」
鉄格子の一部を開き、女戦闘員が私を呼ぶ。
いい気分ではないけど、このままここにいるよりははるかにいい。
もしかしたらチャンスもあるかもしれないわ。
私は無言で鉄格子をくぐり、牢屋を出る。
「首領様がお呼びだ。これに着替えて着いて来い」
紙袋が私の前に差し出される。
着替えろ?
首領様が呼んでいる?
どういうこと?
私はよくわからないながら紙袋の中を覗いて見た。
「な?」
私は思わず声を上げてしまう。
紙袋の中には私が唖然とするようなものが入っていたのだ。
- 2008/01/27(日) 20:26:30|
- デスダム
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
新年初日の更新も、やはりSSで行きましょう。
なんとなく以前書いた作品に似通ったものになっちゃいましたが、結局舞方はこういう悪堕ちネタが大好きなんですよということで。
多少の似通りは笑って許してくださいませ~。
「えっ? あれは?」
私は一瞬目を疑った。
あれは暗黒組織デスダムの女戦闘員?
不気味な口元だけを出した黒いマスクをかぶり、漆黒のレオタードを身にまとった女たちだ。
これはチャンスだわ。
奴らのあとを追えば、アジトを発見できるかも。
私は一人うなずくと、気づかれないように奴らを追う。
いつのころからか出没し始めた暗黒組織デスダム。
日本はその脅威にさらされてしまった。
政治家の暗殺や公共施設の破壊、経済活動の妨害などさまざまなことで日本はデスダムに翻弄される。
そこで日本政府は、特別組織として対デスダム専従対策機構ADO(アド:アンチ・デスダム・オーガニゼーション)を発足させ、特別メンバーによるデスダム対策に乗り出したのだ。
ADOは選抜されたメンバーに、特別製の強化スーツを着せてデスダムの怪人に対抗した。
デスダムは驚異的な科学力で人体を改造した改造人間を使い、この日本を混乱に陥れようとしていたが、ADOの活躍で少なくとも当面の暗躍は防げていたのだ。
でも、デスダムの拠点がどこにあるかわからない今は、すべての対策が後手に回ってしまうのは当然で、デスダムの活動に対応するのが精一杯。
デスダム自体を壊滅させる目処は立っていないのが実情だった。
そんな中で私はADOの職員に選ばれ、デスダムと直接対決するDAC(ダック:デスダム・アタック・クルー)の一般隊員として活動していた。
デスダムの怪人や戦闘員たちには、DACの中でも強化服をまとった五人、DACパワーズが対処するのだけど、デスダムの動きを監視したり、活動拠点を捜索したりするのは私たち一般隊員の任務なの。
けれど、やはりデスダムは狡猾であり、今まで奴らのアジトと目された地点は、いつももぬけの空となっていた。
もしかしたら・・・
今日こそは彼らのアジトを見つけられるかも。
私ははやる心を押さえつけ、女戦闘員たちを見失わないように細心の注意を払いながら歩みを進めた。
通常のパトロールを終え、基地に戻って報告書を作成しなどとやっていたら時間はすでに夜の10時。
毎日ではないとはいえ、独身女性が一人でうろつく時間じゃないわね。
そんなことを思い、苦笑しながら帰り道を歩いていたのがつい先ほど。
でも、今は帰りが遅くなったことに感謝だわ。
前方を歩いていくのはデスダムの女戦闘員二名。
マスクをかぶっているとはいえ、恥ずかしげもなくレオタード姿で歩いている。
もちろん脚にはストッキングとブーツ、手には長手袋を嵌めているとはいえ、躰のラインは裸となんら変わりがない。
うう・・・
スタイルいいなぁ。
腰のくびれといい全体的なバランスのよさといい・・・
うらやましいものを感じるわよね。
人通りがない夜の通りを、足音もなくひそやかに歩いていく女戦闘員。
大胆というべきかも知れないが、どうやら人の気配を察すると手近な闇に溶け込むように隠れてしまう。
漆黒のレオタードやマスクが彼女たちの身を闇に溶け込ませてしまうのだ。
実際ほんの数メートルの距離を会社帰りの男性が通りがかったにもかかわらず、彼女たちにはまったく気が付かずに通り過ぎていってしまった。
おそらく私も、こうしてずっと見ていなければ、すぐに見失っていただろう。
やがて、彼女たちは一軒の雑居ビルに入って行く。
もしかしてここがデスダムのアジトなのかしら?
見たところ一階には喫茶店が、二階には探偵事務所の看板が出ているただの雑居ビルのようだけど・・・
どうする・・・
応援を呼ぼうか・・・
でも、単に彼女たちがここに何かをしに来ただけということも考えられるわ。
アジトかどうかの確認をしてからでも、応援を呼ぶのは遅くないわね。
私は女戦闘員たちが入っていった雑居ビルの入り口に向かっていった。
暗い・・・
電灯をつけるわけにも行かず、私は闇の中手探りに近い状態で通路を進む。
少し行ったところに階段があり、上と地下に続いているようだ。
左側には喫茶店の入り口があり、月明かりが差し込む店内には誰もいないよう。
まさかデスダムの女戦闘員が喫茶店に用があるとも思えないしね。
私は奥の階段へ行き、少し悩んだあとで地下に下りる。
上に向かったとも考えづらいし、地下にいなければあらためて上に向かえばいい。
それに、こういった雑居ビルの地下からアジトにつながっているなんて、いかにもありそうなことじゃない。
私はそっとそっと足音を忍ばせて階段を下りていった。
「機械室?」
階段を下りた先にはドアがあり、そこにはこう書かれたプレートがついていた。
「関係者以外立ち入り禁止」
まあ当然だわね。
私は肩から提げていたバッグの中から拳銃を取り出すと、そっとドアノブをまわしてみる。
DACの隊員は、一般隊員といえども銃の携帯を許可されているのだ。
もちろん、これは人に向けて撃つものではなく、デスダムの戦闘員などに向けて撃つものなのだ。
かちゃり
小さな音だったにもかかわらず、まるでシンバルでも鳴らしたかのようにノブのまわった音がする。
鍵がかかっていないのだ。
これはビンゴかもしれない。
普通はこういった場所には鍵がかかっているもの。
女戦闘員が出入りするために鍵が開いていたのだろう。
私は音がしないように、そっとそっとドアを開け、ぎりぎりの隙間から中に入り込む。
中は真っ暗。
充分になれたはずの目にもほとんど周囲が見えはしない。
しんと静まり返った室内で、私はそっとドアを閉める。
ふと気が付くと、奥のほうに一箇所薄く明かりが漏れているところがある。
ドアかなんかになっていて、その隙間から明かりが漏れているみたいだわ。
私は慎重に足音を忍ばせて、明かりのところまで歩いていった。
やっぱりそうだ。
頑丈そうな扉だが、その隙間から明かりが漏れている。
こちらの部屋が真っ暗だったから気が付いたものの、そうじゃなかったら気が付かないだろう。
ますます怪しいわ。
でも、見たところ取っ手も何も見当たらない。
どうやって開けるのかしら。
私が扉をどうやって開けるのか調べようとしたとき、突然私の足元の床が無くなり、私は悲鳴を上げながら落ちてしまった。
「痛たたた・・・」
タイトスカートの上からお尻をさすり、思わず痛みに顔をしかめてしまう。
どうやら私は罠に嵌められてしまったらしい。
落とし穴に引っかかるなんて我ながら間抜けだわ。
私はしてやられたことに唇をかみ締めながら、周囲の様子を確認する。
ここは小さな部屋になっているようで、私の正面にはスライド式と思われるドアがあり、そのほかの三面はコンクリートむき出しの無機質な壁になっている。
床には少しクッションが利かせてあるのか、足が少し沈むような感じを受ける。
おかげでお尻を打っただけですんだらしいわね。
とりあえず拳銃もバッグも一緒に落ちてくれたようだから、床に落ちていたそれらを拾い上げて肩にかける。
無論拳銃はいつでも取り出せるように上着の胸ポケットに入れておく。
まあ、抜き撃ち早撃ちとは行かないけど、バッグよりはいいでしょう。
さてと・・・
扉が開くとは思えないけど・・・
やはり扉は開かなかった。
天井はずっと上。
二階分ぐらい落ちたみたいだわ。
通信機も役に立たないし、扉の鍵の部分と思われる箇所を拳銃で撃ってみたけど意味が無かった。
弾を一発無駄にしちゃったわ。
こうなるとあとはおとなしくチャンスを待つしかないわね。
食事の差し入れぐらいはしてくれるでしょうから、そのときを狙うのが一番ね。
私はとりあえず体力温存のために動くのをやめて床に座った。
なんだろう・・・
なんかいい匂い・・・
花の香りのようないいにおいがするわ・・・
なんか眠い・・・
あ・・・れ・・・
ねむ・・・い・・・
ね・・・む・・・
ハッ!
いけない!
催眠ガスかなんかを嗅がされたかも・・・
私は眠気を振り払うように飛び起きる。
そして、どのくらい眠り込んでしまったのかを確認するために腕時計に眼を・・・
えっ?
これはいったい?
私の腕は真っ黒に染め上げられていた。
いや、黒革の長手袋を嵌められていたのだ。
そればかりではない。
私の・・・私の躰にはあの女戦闘員たちの漆黒のレオタードとストッキング、それに膝までの黒革のブーツが履かされていたのだ。
「こ、これは・・・」
私は思わず黒革の手袋を嵌めた自分の両手を見つめてみる。
いったいいつの間にこんなものを・・・
そうだわ・・・
眠らされた間に着替えさせられたんだ。
私は急いで周囲を確認する。
今まで私が身に着けていたものは見事に何もなくなっていた。
靴も上着もバッグもすべてだ。
レオタードの下にはストッキングを直穿きで穿かされていて、下着もつけてはいない。
「そ、そんなぁ・・・」
私はいったい何をやっているの?
DACの一員としてこんな恥ずかしい目にあうなんて。
悔しいけど、それもこれも私自らの油断のせい。
こうなったら少しでもデスダムのことを調べて脱出しなくては。
『目が覚めたようだな』
突然室内に声が響く。
どこかに監視カメラとスピーカーがあるに違いない。
「誰? 誰なの?」
私は周囲を確認するが、カメラもスピーカーも見当たらない。
おそらく巧妙に隠されているのだろう。
『クックック・・・我はデスダムの首領。世界の支配者である』
「ふざけないで! あなた方などに世界を支配させたりはしないわ。ADOやDACがある限りあなた方に勝ち目は無いのよ!」
私は精一杯の大声を張り上げる。
私はドジをしてつかまってしまったけど、DACは負けたりしない。
DACパワーズがいつかデスダムの野望を打ち砕いてくれるわ。
『クックック・・・さすがに威勢がいい娘だ。デスダムにようこそ。樽蔵麻理奈(たるくら まりな)君』
その声とともにスライドドアが開いていく。
ドアの向こうには、二人の女戦闘員が立っていて、私に出てくるようにあごをしゃくって指示してくる。
「どういうつもり?」
「いいから出なさい。首領様がお待ちかねよ」
驚いたことにデスダムの女戦闘員は流暢な日本語をしゃべった。
今までキャイーとかヒャイーとかしか発したことが無かったから、てっきりしゃべられないものだと思っていたわ。
首領が待っているって?
いいわ、会ってやろうじゃない。
脱出するにしても、首領の正体を見たうえで脱出できればそれに越したことは無いわ。
デスダムの首領がどんな奴だかしっかり見てやるんだから。
連れて行かれたのは、いくつかの通路を歩かされた先だった。
スライドドアが開くと、そこは一種のホールになっていて、数人の女戦闘員たちがなにやら壁に向かって作業をしている場所だった。
奥の壁には巨大な髑髏のレリーフがかけられていて、デスダムの趣味の悪さがうかがえる。
私は背後から押されるようにホール中央に連れて行かれ、その髑髏のレリーフと向き合う形を取らされた。
「ちょっと、首領が待っているってどこに首領がいるのよ」
私は周囲を確認する。
ここにいるのはいずれもデスダムの女戦闘員ばかり。
そのいずれもが漆黒のレオタードに身を包み、バランスの取れたボディラインを隠すことなくさらしている。
「黙れ! お前はすでに偉大なるデスダム首領様の前にいるのだ。おとなしくしろ」
「えっ?」
私が驚く間もなく、私を連れてきた女戦闘員たちは髑髏に向かって直立不動の姿勢をとり、右手を斜め上に伸ばす。
「「ヒャイー! 偉大なるデスダム首領様。樽蔵麻理奈を連れてまいりました」」
まったく同じ言葉を発する二人。
同じ個体が二つに分かれたかのようだわ。
『うむ。樽蔵麻理奈よ、よく来たな。我がデスダム首領なり』
正面の髑髏のレリーフの目の中が赤く光りだす。
そしてそのレリーフから声が流れてきたのだ。
「そういうこと・・・がっかりだわ」
私は遠慮なくそう言ってやった。
首領が待っているだなんて言ったって、結局姿を見せずにこけおどしのレリーフに仕掛けたスピーカーから声を出しているだけじゃない。
本人はどこかで隠れて私の姿をカメラででも見ているのでしょう。
所詮悪事を働く連中の首領なんてそんなものなのだわ。
本物の首領に会えるとちょっとだけ期待していただけに、私はがっかりだった。
「クックック・・・我が姿を現さぬことが不服か。だが、これはお前たちに対する配慮でもある」
「配慮?」
いったい何の配慮なんだか・・・
「我が姿は生身の人間には衝撃的でな。お前にショックを与えないためにこうしているのだ」
「それはそれは、ご配慮痛み入ります首領様」
私は意地悪くそう言ってやる。
どうせこいつは私からDACの情報を得ようというのだろう。
そしてそれがうまくいかなければ殺すつもりに違いないわ。
私は情報を吐くつもりもないし、死ぬのもごめんだけど、だからといって下手に出て媚を売るつもりも無いわ。
怒るなら怒ればいい。
『クックック・・・敵の首領を前にしてその態度。なかなかにできることではないな。やはりお前を選んだのは正解のようだ。多少捕らえるのがあっけなかったがな』
「選ぶ? 私を選んで誘い込んだというの?」
『当然のことだ。デスダムの女戦闘員が人間の尾行を感じ取れぬはずが無い』
やはり罠だったんだわ・・・
私はそれにまんまと引っかかった間抜けってわけか・・・
悔しい・・・
「それで? 私をどうするつもりなの? こんな格好をさせてまさか私をデスダムの女戦闘員にでもしようというのではないでしょうね?」
『くっくっくっく・・・その通りだよ麻理奈君。お前には我がデスダムの女戦闘員になってもらい、DACに対する工作活動に就いてもらおう』
髑髏の中の赤い輝きが笑い声にあわせて明滅する。
まるで本当に髑髏が笑っているかのよう。
「ふざけないで!」
私は怒鳴りつけた。
「私がデスダムの女戦闘員にですって? バカも休み休み言いなさいよね! 私はDACの一員よ。いくら金を積まれようと、たとえ身内を人質に脅迫されたってデスダムに協力するなどありえないわ! 私の意志は絶対変わらないわよ」
『クックック・・・お前の意志など問題ではない。なぜならお前の意思などおまえ自身が否定することになるからだ』
「えっ?」
私自身が否定する?
どういうこと?
『おい』
「ヒャイー!」
今まで背後に下がっていた女戦闘員が、なにやら黒い布切れのようなものを取り出してくる。
「そ、それは?」
私はとてもいやな予感がして、一歩二歩とあと退る。
『これは洗脳マスクだ。このマスクをかぶせられた者は、我が意を受けデスダムに忠実なしもべとなる』
洗脳マスク?
じょ、冗談じゃないわ。
私は急いで逃げ出そうと出口目指して駆け出そうとした。
だが、時すでに遅かったのだ。
私の背後にはいつの間にか女戦闘員たちが集まっており、私は何とか彼女たちの間をすり抜けようとしたものの、一瞬のうちに腕をつかまれて取り押さえられてしまう。
彼女たちは私の両腕と両肩を左右から押さえつけ、私は髑髏の前にひざまずかされてしまう。
くっ・・・
なんて力なの?
まったく振りほどけやしない。
DACで受けた対人用護身術の訓練がまったく通用しないなんて・・・
『無駄なことだ。こいつらも元はただの人間だが、洗脳マスクをかぶり全身がその衣装に包まれたことで肉体が強化され、常人の三倍の力が出るようになっている。お前の力では振りほどくことはできないのだ』
何ですって?
この女戦闘員たちも元は普通の女性だったというの?
そんなバカなことが・・・
『さて、そのマスクをかぶってもらおうか。クックック・・・』
「い、いやぁーー! 離してぇ!! 戦闘員になんかなりたくないー!!」
私は必死に頭を振って抵抗する。
でも、戦闘員の一人が私の頭をがっちりと固定して、もう一人の女戦闘員がマスクをかぶせてきた。
私はどうすることもできなかった。
視界が奪われたのは一瞬のこと。
マスクが私の頭に密着すると、すぐにマスクを通して視界が明瞭に開けてくる。
それと同時に私の頭の中にデスダムの全てが流れ込んでくる。
ああ・・・
デスダム・・・
デスダムは・・・
デスダムはなんてすばらしいのかしら。
首領様が全てを支配し、全てのしもべが首領様に従う世界。
首領様の下に統一された世界はとてもすばらしい。
ああ・・・
デスダムこそ全て。
私はデスダムの一員。
デスダムの女戦闘員よ。
デスダムに栄光あれ。
私は自らマスクを整えてしっかりとかぶる。
全身がデスダムの衣装に包まれた今、私はすごく幸せな気持ちに浸っていた。
私を押さえつけていた仲間たちも私から離れ、私はすっと立ち上がる。
偉大なる首領様。
私はこの偉大なる首領様に全てを捧げる喜びに打ち震える。
知らず知らず私は右手を斜めに高く上げ、首領様にデスダムの女戦闘員である証を示した。
「ヒャイー!!」
ああ・・・
なんて気持ちがいいのだろう。
私はデスダムの女戦闘員。
偉大なる首領様のためなら何でもできるわ。
『クックック・・・樽蔵麻理奈、いやデスダム女戦闘員83号よ』
「はい、偉大なるデスダム首領様」
名前ではなくナンバーで呼ばれることの喜び。
人間だったときには味わえない喜びだわ。
『まだ我が命には従えぬか?』
「ああ・・・お赦しくださいませ。先ほどは偉大なる首領様におろかなことを申しました。私はデスダム女戦闘員83号、首領様の忠実なるしもべです。ご命令のままDACに対する工作活動を行わさせてくださいませ」
ああ・・・先ほどまでの私はなんておろかだったのかしら。
偉大なる首領様に逆らったなんて信じられない。
『うむ、お前の知識を生かし、DACを壊滅させるために働くがよい』
「ヒャイー!! お任せくださいませ」
私は偉大なる首領様の命令に、心を弾ませながら任務に就く。
憎きDACを壊滅させるために・・・
END
いかがでしたでしょうか。
衣装はグレイバーまんまですね。
漆黒レオタにストッキング、ブーツに手袋に口元だけ出ているマスク。
今の舞方の一番好みの衣装なんですよー。
なので許してくださいませネ。
さてさて、それでは今年もよろしくお願いいたします。
- 2008/01/01(火) 19:44:02|
- デスダム
-
| トラックバック:0
-
| コメント:5