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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

地底帝国の女幹部 ラスト

四回に分けて掲載してきた「地底帝国の女幹部」も今日で最後です。

シーン的にちょっと長くなりますが、どうか最後まで楽しんでいただければと思います。

よろしければ感想などもお寄せ下さいませ。
すごく励みになります。

それではどうぞ。

4、
朝、私はブリーフィングルームにリストアップした三十四人を集めるように命令する。
これから行なわれる訓練はこの本部を劇的に変えて行くことだろう。
美しく優秀な三十四人。
彼女たちがこの全身タイツを身に付けるところを想像する。
それは素晴らしい光景だろう。
準備そのものは宮島三尉が行なってくれた。
適当な紙袋を用意してもらった私は、戦闘員用の全身タイツをそれぞれの袋に小分けしてブリーフィングルームに運ばせる。
中に入っているものを知ったらきっと驚くでしょうね。
やがてインターコムから準備が整ったことを知らせてくる。
私はそれを了承し、おもむろにラボを呼び出した。
『はい、こちらラボです』
「アユミだけど、白鳥博士の部屋につないでちょうだい」
『えっと、千影司令ですよね? 白鳥博士ですか? 少々お待ちを』
受け付けた女性が戸惑いを見せた。
ああ・・・そうか。
私が名前の方で言ってしまったからだわ。
だって・・・
千影だなんて自分じゃないみたいなんだもの。
私はアユミ。
それ以外の何者でもないわ。
『あの・・・』
「どうしたの?」
『それが・・・白鳥博士・・・何か風邪でも引いたみたいで、うまくしゃべれないみたいなんです』
風邪?
それはいけないわね。
でも彼女には出てもらわなくちゃ。
「構わないから呼びなさい」
『あ、はい。つなぎます』
そう言って呼び出し音がなる。
『ひゃいー。し・・・ら・・・り・・・です』
一字一句区切るような香奈美の声。
発声器官に影響が出ているのだろう。
「香奈美? アユミよ。夕べは楽しんだかしら? これからすぐに司令部棟のブリーフィングルームへ来てちょうだい。もちろんその姿でね」
『ひゃいー! かし・・・りま・・・した』
うふふ・・・
私には香奈美がインターコムの向こうで右手を水平に構えている光景が目に浮かぶ。
全身タイツに包まれた香奈美の口元には薄笑いが浮かんでいるだろう。
私はもう一度ラボに通話をつなぎ、白鳥博士が実験のために地底帝国の戦闘員の姿をしていることを告げ、騒ぎ立てないように伝える。
警備兵ごときにどうにかできるとは思えないけど、騒ぎになるのは好ましくない。
私は立ち上がると、ブリーフィングルームへ向かう。
これからの訓練が楽しみだわ。

「ひあっ! ち、千影司令、その姿は?」
宮島三尉が息を飲む。
当然でしょうね。
私は堂々と地底帝国の女幹部のコスチュームのまま司令官室から出てきたのだから。
「それはいったい・・・司令?」
「あとで説明するわ。黙って付いていらっしゃい」
私は唖然としている宮島三尉を引きつれ、ブリーフィングルームへ向かう。
宮島三尉は不審そうな顔をしながらも私の後ろに従った。

ブリーフィングルームはちょっとした広さがある部屋だ。
一方の壁面にスクリーンがあり、作戦を指示できるようになっている。
その壁面を向いて椅子が並べられてあり、その足元には紙袋が置かれていた。
私は三十三人が待ち構えているブリーフィングルームに入って行く。
残り一人は宮島三尉だ。
私が入ると、部屋の皆は一斉に立ち上がって敬礼する。
が、すぐにどよめきが部屋中に広がった。
「静粛に!」
私は意に介さずにスクリーンの前に立つ。
唖然とした表情の女たち。
その中にはアースディフェンサーの三人もいる。
婦人自衛官の制服を元にしたディフェンサーチームの制服や、医療部やラボの白衣、技術部門の作業服などとりどりの衣装が並んでいる。
見苦しい混沌とした光景。
いやなものだわ・・・
「座っていいわ」
私の言葉に全員が席に着く。
宮島三尉も席に着いて、これで全員が揃った。

「驚いたかしら」
私は口を開く。
「あなたたちは今疑問に思っているはず。なぜディフェンサーチームの司令官が地底帝国の女幹部エメリアのコスチュームを身に纏っているのか? と」
私の言葉に数人がうなずく。
「その理由を説明します。これはあなたたち選ばれたメンバーによる特別の訓練です」
「訓練?」
「訓練ですって?」
またしてもブリーフィングルームはざわめきに包まれた。
「黙って! 静かにしなさい!」
私は多少いらついてくる。
少しの間ぐらい静かにして欲しい。
地底帝国では幹部の発言に戦闘員が口を差し挟むなど許されることではない。
地上人どもの愚劣さの表れだわ。
「白鳥博士、入りなさい」
私は先ほどブリーフィングルームの外に待機しているように指示した白鳥博士を部屋に入れる。
「ひゃいー」
ドアを開けて香奈美が入ってくる。
背筋をピンと伸ばし、美しいボディラインをきびきびと歩ませる姿はとても素敵だ。
「え?」
「地底帝国の戦闘員!」
思わず立ち上がるアースディフェンサーの三人。
「座りなさい!」
私は声を荒くした。
聞き分けのない連中は大嫌い。
選ばれた連中といえども許されるものではない。
私はアースディフェンサーの三人を座らせると、香奈美を私の脇に立たせる。
漆黒の戦闘員用全身タイツに身を包んだ香奈美がそばに立っていると、なんだかとても気分がいい。
きっと地底帝国では当たり前のことだからだわ。
「見たとおり、白鳥博士には地底帝国の戦闘員用全身タイツを身に纏ってもらいました」
私は話を続ける。
「地底帝国は女幹部エメリアを失いました。しかし、地底帝国はまだ地上侵略をあきらめてはいません。再度の地上侵攻が行なわれるのです」
三十四人の視線が私に集中する。
これでいいわ。
「私たちは地底帝国のことを何一つ知らないと言って過言ではないわ。そのため、地底帝国のことを深く知る必要があるのよ」
自分でも口調が強くなるのがわかる。
私は幹部。
女幹部なのだ。
部下に優しい口調を使う必要などない。
「幸い、白鳥博士によってここに三十四着の地底帝国の戦闘員用全身タイツが保管されていました。これを使ってあなたたちには地底帝国の戦闘員として過ごしてもらいます」
「ええ?」
「ど、どういうこと?」
またしてもざわめく女たち。
顔を見合わせてお互いに不安そうな表情を浮かべている。
「いい加減にしなさい!」
私の一括に静かになる女たち。
まったく困ったもの。
意思統制ができてなさ過ぎる。
「あなたたち選ばれた者には、これから三日間地底帝国の戦闘員の全身タイツを身に纏い、その思考法を身につけてもらいます。それによって、地底帝国の考えを理解し地上侵攻がどのように行なわれるかがわかるようになるでしょう」
すっと手が上がる。
ディフェンサーレッドの沖波楓(おきなみ かえで)が質問のために手を上げたのだ。
「なにか?」
「そのようなことをして何になるんですか、千影司令。今までどおり地底帝国の侵攻を粉砕するだけで充分なんじゃないんですか?」
意志の強いしっかりした目が私をにらんでくる。
「甘いわね。それでもアースディフェンサーの一人なの? 地底帝国のことを知らずに戦いができるわけがないじゃない。地底帝国の一員として行動することで地底帝国の行動原理を知り、それに沿った行動ができるようになるとは思わないの?」
「私たちは地上人です。地底帝国の一員として行動なんてできません」
ディフェンサーイエローの原真理子(はら まりこ)も納得がいかないという表情だ。
「形だけでもそう行動してみるのよ。それによって見えてくるものもあるわ。現に私と白鳥博士はこういったコスチュームを身に着けることで、新たな気持ちで地底帝国を見ることができているのよ」
「形だけ・・・ですか?」
「無論よ。私はあなたたちに心の底から地底帝国の戦闘員になれと言っているのではないわ。三日間そうやって過ごすことで得るものがあるだろうと言っているのよ」
私は楓の目を見つめる。
いい目をしている。
地底帝国の戦闘員としてなら上級戦闘員というところだろう。
だが、目をむき出しにして相手を見るのは下劣なこと。
地底帝国の戦闘員は目を出すようなことはない。
マスクがしっかりとカバーしてくれるのだ。
「・・・・・・」
納得がいかないといった顔のアースディフェンサーの三人。
ほかにも不審そうな目を向けてくるものが多い。
まあ、それも仕方ないこと。
いきなり地底帝国の一員として行動してみろと言われても、理解できないに違いない。
ふう・・・
音声コミニュケーションというのは不便なものだわ。
相手に理解させるのに不完全すぎる。
「命令・・・ですか?」
ディフェンサーブルーの秋村恵理がつぶやくように言う。
命令なら従おうというのだろう。
「ええ、これは命令です。ディフェンサーチームの司令官としてあなたたち三十四人に地底帝国の戦闘員用全身タイツの着用を命じます」
「・・・わかりました」
しぶしぶといった感じで楓たちがうなずいた。
「こ・・・れは・・・じ・・・けんの・・・一環・・・きょ・・・りょく・・・し・・・てね」
香奈美の言葉に皆が肩をすくめる。
やれやれまた白鳥博士の実験のモルモットにされるのか・・・といった感じだ。

「あなたたちの足元にある紙袋を開けてみなさい。地底帝国の戦闘員用全身タイツが入っているわ。それを着用するのよ」
がさがさと紙袋が開かれる音がする。
昨晩全てを休眠状態から解き放ってある。
手に取ればきっとその魅力に取り付かれるわ。
「うわぁ・・・すべすべ・・・」
「ああ・・・いい手触りだわ」
「・・・結構素敵ね・・・」
「うぅ~・・・全身タイツなんて初めて見るよぉー」
またしてもざわめく女たち。
まあ、これは仕方ないわね。
この全身タイツを手に取れば声が出てしまうのは当たり前だ。
「これは身につけているもの全てをはずして着用すること。指輪やピアスなども全部よ」
「はい」
「わかりました」
女たちはうっとりとした表情を浮かべ始めている。
戦闘員用全身タイツと一体化し始めたのだろう。
これで彼女たちは地底帝国のことをもっと知るようになる。
新たな世界が広がることだろう。
「ああ・・・すべすべで気持ちいい・・・」
「着なきゃ・・・これを着なきゃ・・・」
ディフェンサーブルーもディフェンサーイエローもうっとりとしてタイツの手触りを楽しんでいる。
あのディフェンサーレッドの沖波楓も先ほどまでの嫌悪感は無さそうだ。
むしろ嬉々として全身タイツに頬擦りをしてさえいる。

・・・?
私は一人の隊員に目をやった。
彼女は他の女たちとは違い、膝の上に手を置いたまま小刻みに震えている。
よく見ると頬を涙が伝っている。
私は気になって、すぐに彼女のそばへ行く。
「何をしているの?」
私は彼女に対してそう言った。
命令に従わないなど許されることではない。
「千影司令・・・」
彼女は涙に濡れた顔を上げた。
茶色の瞳が潤み、悲しみをあらわにしている。
「わ、私の両親と弟は地底帝国の戦闘員に殺されたんです・・・そ、それなのに・・・戦闘員の格好をしろなんて・・・つらすぎます・・・」
なるほど。
それで躊躇っていたというわけか・・・
うふふ・・・
そんなこと気にならなくなるのにね。
私は制服の名札を確認する。
橋倉(はしくら)か・・・
「橋倉さん」
「は、はい」
彼女はピクッとして返事をした。
「あなたの気持ちはわかるわ。でもね、この訓練をすることで新たな気持ちになれるのよ。無理に着なくてもいいから手に取るだけ取ってみて」
「は、はい」
彼女はしぶしぶと紙袋に手を入れる。
「はわ・・・」
彼女の口から驚きの声が漏れる。
その表情が悲しみからうっとりとしたものに変わっていく。
彼女は紙袋から戦闘員用の全身タイツを取り出し、それをしばらく見つめていたあとでしっかりと抱きしめた。
「どう? 着ても大丈夫かしら?」
「はい・・・素敵です・・・すぐに着替えますわ・・・」
彼女の言葉に私は満足した。

すでにこのブリーフィングルーム内は一種の更衣室と化していた。
女たちは皆何のためらいもなく着ているものを脱ぎ捨て、戦闘員用の全身タイツを身に付け始めていたのだ。
「ああん・・・気持ちいい・・・」
「しゅごい・・・躰にぴったりして・・・ああ・・・」
「ああ・・・すばらしいわぁ・・・」
ピアスや指輪などのアクセサリーも床に投げ捨てられ、生まれたままの姿を次々と全身タイツに包み込んで行く女たち。
真っ黒なボディが恥ずかしいのかうつむいたりするものの、誰もが嫌がったりはしていない。
かえってマスクが目鼻を覆うことで、自分が自分で無いように感じるのか、大胆にポーズを取る者すら現れる。
やがてブリーフィングルームは漆黒の女たちで埋め尽くされる。
皆一様に素敵なボディラインを晒し、口元には薄い笑みが浮かんでいる。
きちんと整列して指示を待つ彼女たちに私は命令を下す。
「今日からあなたたちはその姿で過ごしなさい。各部署には私の方から通達します。地底帝国の思考を身に付け、今後に生かしなさい。では解散」
ざっと一斉に右手を額のところへ持って行き敬礼する女たち。
私は苦笑した。
自衛隊式の敬礼など見苦しいだけ。
いずれそのことにも気がつくでしょう。

私は隊員たちが去ったあとで香奈美を呼び寄せる。
彼女のおかげで隊員たちに戦闘員用の全身タイツを渡すことができたのだ。
研究用という名目で確保していてくれてよかったわ。
「ひゃいー・・・お・・・よび・・・しょう・・・か」
私は香奈美の唇に人差し指を当ててしゃべるのをやめさせる。
その上で思念波を送ることにした。
(もうしゃべるのが苦痛になっているんでしょ? 構わないわ。思念波を使いなさい。使えるでしょ?)
「ひゃいー」
(これでよろしいでしょうか?)
香奈美の思念波が流れ込んでくる。
(上出来よ)
(ありがとうございます)
香奈美が右手を胸のところで水平にする。
地底帝国の敬礼ね。
(あなたはこのままラボの指揮を取りなさい。対策は怠らないようにね。地底帝国がいつ動き出してもいいように)
「ひゃいー!」
(かしこまりました。ディフェンサースーツの調整も滞りなく)
(いい娘ね)
直立不動の香奈美を私はそっと抱き寄せる。
そしてご褒美の口付けをしてやった。
(あ、ありがとうございます。アユミ様)
香奈美のドキドキした感情が流れ込む。
うふふ・・・可愛いわね。
(では行きなさい)
「ヒャイー!」
はっきりとした発音で鳴き声を上げ、香奈美はブリーフィングルームを出て行く。
私はその姿がとても誇らしかった。

香奈美を見送った私は司令官室へ戻ってくる。
途中あちこちの部署で悲鳴や歓声が上がるのを耳にした。
通達をしてあるにもかかわらず、地底帝国の戦闘員が入り込んだとでも思っているのだろう。
この程度でうろたえるとは困ったものだわ。
そういった意味でもこの訓練は重要。
地底帝国にとってこの本部のどこが弱点なのか、それを知ることは大事なことなのだ。
歓声の方は・・・
うふふ・・・
きっと男どもが目を楽しませているのでしょうね。
スタイルもよくて能力もある女性というのはそれほど多くは無い。
今回選ばれた女たちはその点でも一級品。
戦闘員用の全身タイツを見事に着こなして、その美しいボディラインをあらわにしているのだ。
男たちが目を奪われるのも当然。
うふふ・・・
その油断が命取りになるのよ。
気をつけることね。

司令官室のドアを開け中に入ると、まずは秘書官室となっている。
その奥こそが私の司令官室となるのだ。
「お疲れ様です」
机に向かっていた宮島三尉がすぐに立ち上がって敬礼する。
真っ黒い全身タイツに包まれた女性らしい柔らかい曲線は見事なもの。
「あ・・・」
宮島三尉はすぐに気がついたように、おずおずと右手を額の脇から下げて胸のところで水平に構える。
「ひゃ、ひゃい・・・」
すごく恥ずかしそうにそう口にする宮島三尉。
私はそれがすごく可愛らしく思えて、思わず彼女のそばへ行って顎を持ち上げキスをする。
可愛らしい部下へはこれがご褒美なのだ。
「あ・・・」
小柄な宮島三尉の躰が少し震える。
「うふふ・・・可愛いわ。きちんと地底帝国の敬礼ができたわね」
「あ・・・は、はい・・・ありがとうございます」
唇を離した私をうっとりと見上げている宮島三尉。
細くて尖った顎は私の手にピッタリと収まっている。
「わ、私は・・・地、地底帝国の・・その・・・戦闘員役なのですから・・・地底帝国の・・・敬礼をしようと」
「えらいわ。すごくよく似合っているわよ」
「あ、ありがとうございます・・・」
私はゆっくりと手を離して彼女を解き放つ。
宮島三尉は胸のところで手を組んで私をうっとりと見つめていた。
ふふふ・・・幹部に対する崇敬の念が浮かんでいるのね。
「着心地はどう?」
「は、はい・・・その・・・すごく恥ずかしい・・・です・・・」
そう言ってうつむいてしまう宮島三尉。
「そう・・・それじゃかわいそうだから特別に脱ぐのを許可しようかしら?」
私は意地悪くそう言った。
「え?」
彼女は驚いて顔を上げる。
「脱いでもいいわよ。恥ずかしいんでしょ?」
「あ、い、いいえ、だ、大丈夫です。着ています。着ていさせてください!」
焦ったように訴える彼女を見て私は思わず微笑んでしまう。
脱ぎたくないのだ。
当然のことだろう。
この全身タイツを身につけたら、脱ぎたいなんて思うはずが無いわ。
「いやなんじゃないの?」
「いやなんか・・・全然いやなんかじゃありません。すごく気持ちよくて・・・ずっと着ていたいんです」
胸と股間に手を当てて全身タイツの着心地を確かめる宮島三尉。
「そう。じゃ、構わないわ。ずっと着ていなさい」
「は、はい。じゃ無かった、ひゃい」
彼女は慌てて胸のところで右腕を水平にする。
私はその姿にうなずくと、自室の扉を開けた。

ふう・・・
私は席に着くとパソコンの電源を立ち上げる。
そして司令官権限でパスワードを入力し、本部施設内のモニターカメラの映像をモニターに表示した。
この本部施設内はモニターで二十四時間監視ができる体制になっている。
もちろん普段はそんなことはしていないし、隊員たちのほとんどはそんなことは知らないだろう。
誰でも自分の行動が監視されていると思う中で仕事などしたくない。
だからモニターカメラは表面上見えるような設置のされ方はしていないし、気付かれることはまずありえない。
もともとは地底帝国の急襲に対するためのものだったが、こうして隊員の普段の姿を見ることができるというのも便利なもの。
私は各セクションの様子を覗いてみる。
ところどころに地底帝国の戦闘員姿の女性たちが仕事をしているのが見えた。

『それにしてもすごい格好だよなぁ。目のやり場に困るよ』
『そうそう、あのお尻のライン・・・たまらないですね』
『そこ! 何をおしゃべりしているの! 作業は済んだの?』
セクハラまがいの発言を同僚としていた男性隊員が怒鳴りつけられる。
『私の格好は気にしないでちょうだい。無理かもしれないけど・・・意識されるとこっちも恥ずかしいんだからね』
腰に手を当てて威圧するように立っている戦闘員姿の女性。
うふふ・・・
あれでは意識するなと言う方が無理よね。
私はモニターを切り替える。
こちらでは白衣の看護師たちに混じって真っ黒な全身タイツの戦闘員が医療行為を行っていた。
『あう・・・』
『緊張しなくていいんですよ。緊張すると血圧がきちんと測れませんから』
そう言って血圧計を操作する戦闘員姿に、測られる男性は気が気で無いようだ。
『せ、先生、何とかならないんですか?』
傍らの男性医師に助けを求める男性隊員。
『そ、そうは思うんだが、訓練の一環ということだしなぁ』
『そうですよ。私はこの姿でもきちんと任務を遂行します。偉大なる・・・って、え?』
『な、なんか言った?』
『な、なんでもないですよ・・・私・・・いったい・・・』
頭を振って考えをまとめようとしているようだ。
私はまたモニターを切り替えた。

『やぁー!』
『えぇい!』
ここはトレーニングルームね。
威勢のいい掛け声が聞こえるわ。
どうやら数人の戦闘員姿の女たちがトレーニングを行なっているよう。
吊り下げられたサンドバッグにパンチや蹴りを打ち込んでいるのはアースディフェンサーの三人だわ。
ほかにもペダルを漕いでいるのやベルトの上をジョギングしている者もいる。
体力は何よりも重要なこと。
トレーニングに励むのは素晴らしいことだわ。
『いやぁー!』
鋭い蹴りがサンドバッグを相当に揺らす。
『ひゃいー!』
周囲の視線がその声を発したディフェンサーイエローの真理子に集中した。
『真理子・・・』
『真理ちゃん・・・』
ブルーの恵理とレッドの楓が思わず手を止めていた。
『あ、あはは・・・何となく・・・戦闘員らしいかなって・・・』
苦笑している真理子。
その様子に他の二人も肩をすくめる。
『で、でもでも、この全身タイツってすごく動きやすいよね』
『そうだな、動きがまったく阻害されないよ。それに着ているととても気持ちいいしね』
真理子の言葉に楓がうなずく。
『ディフェンサースーツなんか無くても充分な気がしますね』
『うん・・・て言うか・・・あれってもう着たくないよ』
『私も着たくないですわ。あんな野暮ったいものを着て戦うなんてごめんです』
『ですよねー』
三人はうんうんとうなずきあう。
『地底帝国の戦闘員か・・・悪くないな』
楓のパンチはサンドバッグをぶち抜き、中の砂が床にこぼれていった。

『まったく・・・千影司令もとんでもないこと考えたものだな。これじゃ仕事にならないよ』
これは技術部門かしら。
ここにも一人の全身タイツを纏った女がいる。
『でも、命令ですから・・・』
あら?
この声はさっきの橋倉さんだわ。
『それはそうだが・・・その・・・目のやり場が・・・な』
『構わないです。少し慣れてきましたから』
胸に手を当てて全身タイツを愛しそうに撫でている。
『君はよくても他の連中が困る。それに君だってそんな格好をするのはいやだろう? 黙っているから脱いだらどうだ?』
『うふふ・・・お気になさらないで下さい。両親のことはありますけど・・・地底帝国の戦闘員だったら当然のことをしたに過ぎませんですから』
彼女は唇に薄く笑みを浮かべる。
うふふ・・・
この分では皆が地底帝国の思考を手に入れるのは案外早く済むかもしれないわね。
私はモニターを消すとたまっていた仕事に取り掛かる。
いつ皇帝陛下が動いてもいいようにしておかなければ・・・

混乱と戸惑いの一日も終わり。
私は夕べと同じようにソファーに毛布をかけて仮眠する。
戦闘員用の全身タイツを着た女たちは、誰一人帰ろうとしなかった。
まあ、あの姿を地上人に晒すのは今のところ得策では無いと思うので、仮眠室とブリーフィングルームに寝具を用意して対処する。
もちろんそのあたりのことはヨシノがうまくやってくれた。
しっかりしていてとても有能な戦闘員だわ。
上級戦闘員にしてあげても構わないでしょうね。
私はそんなことを考えながら眠りにつく。
仮眠室から漏れてくる思念波が、彼女たちがそれぞれお楽しみであることを告げている。
全身タイツの気持ちよさに浸っているのだ。
困ったものね・・・
思念波の使い方がまだまだだわ。
もっと上手にならないとね。

翌日。
いつものように執務を続ける私の目の前でインターコムが呼び出し音を鳴らす。
「私よ。どうしたの?」
『ヒャイー!』
(縁根一尉がお見えになっております。多少怒っておられるようですが)
ヨシノの思念波が伝わってくる。
思念波はかなりの距離を到達できる上に、地上の通信網に載せることもできるので便利なのだ。
「構わないわ。通して」
『ヒャイー!』
ヨシノの鳴き声が終わるか終わらないかのうちに、ドアがけたたましく開けられて一人の女性士官が入ってきた。
普通科の縁根百合子(ふちね ゆりこ)一尉だ。
この本部ではアースディフェンサー以外の普通科隊を指揮する立場にある。
女性が多いこの本部では女性仕官の方がいいだろうということで行なわれた人事だ。
婦人自衛官の制服をピシッと着こなした彼女は、入ってくるなり私に対して怒鳴りつけてくる。
「千影司令! 今すぐこのばかばかしい訓練を中止してください!」
ダンと机に両手をついて正面から私をにらみつける縁根一尉。
ドアのところでは直立の姿勢でヨシノが中の様子を窺っている。
ふう・・・まったく・・・
バカな女というのはどこにでもいるものね。
「ばかばかしい訓練?」
「そうです! こんな訓練に何の意味があるんですか? 司令自ら敵の服を着て訓練だなんてばかげています」
縁根一尉の怒鳴り声が部屋中に響く。
「訓練の意義は説明したはずですが?」
「納得いきません! こんな訓練は意味がありません。それどころか・・・私の部下数名は何を言ってもひゃいーとしか言わないし・・・薄笑いを浮かべて・・・まるで・・・まるで・・・」
ゾクッと躰を震わせる縁根一尉。
「まるで? なんなのかしら?」
「まるで・・・本当に地底帝国の・・・ま、まさか・・・」
縁根一尉が後ずさる。
「これは・・・まさか・・・地底帝国の侵攻作戦?」
うふふ・・・
バカねぇ。
そんなことあるわけ無いじゃない。
皇帝陛下からは何のご指示も受けていないのだもの。
侵攻作戦なんてものじゃないわ。
ただの訓練よ。
「落ち着きなさい。そんなはず無いでしょう」
私は青ざめた縁根一尉を落ち着かせるために立ち上がる。
「う、動かないで下さい!」
縁根一尉の腰のホルスターから拳銃が抜かれる。
その銃口はまっすぐに私に向けられた。
「何のまね? すぐに下ろしなさい」
「ええ、下ろします。ですがその前にその奇妙な敵の服を脱いでください。司令は・・・司令はきっと洗脳されているんです」
この服を脱げ?
正気で言っているの?
この服を脱ぐなんて考えられないわ。
この服は私の皮膚も同然なのよ。
あなたなんかにはわからないわ。
「脱ぐ気は無いわ。おとなしく銃を下ろしなさい」
「おことわりします。司令がその服を脱いでくださったら、すぐにでも下ろしますから、どうか脱いでください」
しっかりと両手でSIGのP220を保持し、型どおりの射撃姿勢を取っている。
この距離でははずしはしないだろう。
バカな女・・・
私はこくんとうなずいた。
「ハッ?」
さすがに普通科の士官だけはある。
縁根一尉はすぐさま後ろを振り返り、ヨシノに銃を向けようとした。
しかし、戦闘員の動きには付いていけるはずも無い。
ヨシノの鋭い蹴りが一旋し、構えていた拳銃を叩き落す。
「あっ」
縁根一尉が手を押さえようとしたときには、彼女の頭上から踵落しが落ちていた。
「あぐっ」
もんどりうって床に倒れる縁根一尉。
そこを背後から馬乗りになったヨシノが首を持ち上げてねじる。
鈍い音がして縁根一尉は動かなくなった。

「ヒャイー!」
立ち上がって右手を胸のところで水平に構えるヨシノ。
私はその強さに満足した。
彼女は秘書官であり、戦士ではない。
しかし、今の彼女は戦闘員として申し分ない働きができるだろう。
私は死体をごみ処理機に入れるように命じて席に着く。
私が洗脳されているですって?
おかしなことを言うものだわ。

モニター越しの本部内の風景。
美しい全身タイツの戦闘員たちは無言で任務についている。
いや、無言に感じるのは音声コミニュケーションを考えているからに過ぎない。
彼女たちは思念波でお互いに会話している。
時々鳴き声を上げるが、あれはお互いの注意を引くため以外の何者でもない。
地上人のように不完全な音声コミニュケーションなど必要ないのだ。
一緒に仕事している隊員たちはよそよそしい態度で遠巻きに見ている感じ。
多少の不気味さも感じているんでしょうね。
まさに地底帝国の戦闘員になりきっている証拠。
きっと地底帝国の思考に染まっていっているんだわ。
それでこそ皇帝陛下のご意向に沿うことができるのよ。

何か頭がぼうっとする。
机に向かっているのかソファーに寝ているのかわからない。
躰がふわふわ浮いている。
周囲は真っ暗で何も見えない。
変だわ・・・
暗闇でもまったく見えないなんてありえないのに・・・
あ・・・
あそこだわ・・・
うっすらと赤い光が差し込む暗いホール。
そこに私は引き寄せられているんだわ。
ああ・・・
嬉しい・・・
何でかわからないけど・・・
すごく嬉しい・・・
私はすっと足を下ろし、神聖なるホールに降り立った。
私が降り立つと同時に、周囲の闇の中からは漆黒の全身タイツを纏った戦闘員たちが現れる。
私は戦闘員たちを従えて歩き出す。
向かうは奥の間。
偉大なる存在がお待ちになっていらっしゃる。
私は胸をときめかせ、ホールの奥に歩んでいった。

真っ暗な闇。
でも心地よい闇。
私はそこで立ち尽くす。
私の後ろには何人もの戦闘員たちが並び、一様に口を引き結んで直立不動で立っている。
やがて・・・
私の正面に一筋の切れ目が横に入り、それがゆっくりと上下に開く。
目。
巨大な目。
目蓋を開けるように見開かれた大きな一つ目がそこにはあった。
ああ・・・
なんて素晴らしいお姿。
全てを見通すようなその眼差し。
私の躰の奥底まで見られるような快感。
私は軽く絶頂を味わっていた。
『アユミヨ・・・』
「は、はい。皇帝陛下」
私は身を震わせるほどの喜びを感じながら片膝を折って床に右手を付く。
すぐに戦闘員たちも一斉に片膝をついて敬意を表わした。
『オマエハ、ワガテイコクノオンナカンブ。チジョウシンリャクノシキヲトルガイイ』
「ああ・・・はい。私は地底帝国の女幹部アユミ。皇帝陛下の忠実なしもべです。地上侵略はお任せ下さい」
ああ・・・そうよ。
私は地底帝国の女幹部アユミ。
皇帝陛下のためならばどんなことでもしてみせるわ。
『アユミヨ・・・ウケトルガイイ』
皇帝陛下のお言葉とともに、私の額にサークレットが形成される。
そして、腰には乗馬ムチが付けられる。
これこそが皇帝陛下の代理人たる幹部の証。
私の言葉は皇帝陛下のお言葉となるのだ。
『アユミヨ、イクガイイ』
「ハッ、必ずや吉報をお届けいたします」
私はすっと立ち上がり、右手を胸のところで水平に構える。
背後の戦闘員たちも一斉にならい、右手を構えた。
「偉大なる皇帝陛下のために!」
「「「ヒャイー!」」」

               ******

私は三日間の訓練を終えた戦闘員たちをブリーフィングルームに集める。
地底帝国の戦闘員としての思考に染まった彼女たちは、もはや地上人ではない。
全身タイツも肌と一体になり、脱ぐこともできはしない。
そう、死ぬまでこの全身タイツは彼女たちの肌として彼女たちの身を護ってくれるのだ。
それは私も同じこと。
ローズレッドのアーマーと漆黒の全身タイツは私の躰の一部。
はずれることなく私を護ってくれるのだ。
ブリーフィングルームに向かう私の後ろには二体の戦闘員が付き従う。
戦闘員78号と79号だ。
元の名前は・・・カナミとかヨシノとかいった気がするがそんなものはどうでもいい。
彼女たちは私のそばに仕える上級戦闘員として番号が与えられている。
鮮やかなローズレッドに染まった唇を誇らしげに舌で舐め、胸を張って歩いている。

「「「ヒャイー!」」」
一斉に戦闘員たちの鳴き声が上がる。
ブリーフィングルームに入った私を出迎えて一斉に敬礼をしてきたのだ。
右手を胸のところで水平に構える地底帝国の敬礼。
一部の隙も無く戦闘員たちが一斉に敬礼するのは気持ちがいい。
私はスクリーンの前に立つと右手に持った乗馬ムチを左手に打ち付ける。
ピシッと言う音が緊張感を引き締めた。
「お前たち! 私は地底帝国の女幹部アユミ。これよりお前たちの指揮を取る!」
「「「ヒャイー!」」」
呼応するごとくに戦闘員たちは鳴き声を上げる。
「皇帝陛下よりのご命令が下された。これより我が地底帝国は地上侵略を再開する」
「「「ヒャイー!」」」
戦闘員としての統一された思考。
彼女たちには皇帝陛下の命令が全て。
なんて素晴らしいのだろう。
地上人ども、覚悟するがいい。
「手始めにこのディフェンサー本部を破壊する。歯向かう奴は殺せ! 地底帝国に逆らうものは皆殺しにするのだ!」
私の右手がムチを振るう。
「「「ヒャイー!」」」
戦闘員たちの鳴き声がディフェンサー本部壊滅の号砲だった。
  1. 2006/11/22(水) 19:16:34|
  2. 地底帝国の女幹部
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地底帝国の女幹部 その3

三回目ですー。
いよいよ他への侵食が始まり・・・

楽しんでいただければと思います。

3、
「はあ・・・」
何となく自己嫌悪に陥ってしまう。
全身タイツを着たままオナニーしちゃうなんて・・・
まるで変態じゃない。
でも気持ちよかったわ・・・
今までのオナニーとはまるで違う・・・
天にも昇る気持ちってのはああいうことを言うのかもしれないわね。
それに・・・
私はベッドから立ち上がって自分の姿を見下ろす。
夕べは確かに存在していた股間の秘部が、今はのっぺりと全身タイツに覆われている。
うふふ・・・
私はちょっと意識を集中した。
すると全身タイツは見る見るうちに私の股間に秘部を形成して行く。
真っ黒なひだひだに囲まれて顔を出しているクリトリスもちゃんとある。
指で確かめてもそれは紛れもない私の秘部。
私は充分に満足して笑みを浮かべる。
やがて秘部はするすると単なる全身タイツに戻っていった。
すごいわ・・・
まさにこの全身タイツは私の躰。
私の皮膚そのものだわ。
私はとても嬉しくなって、思わずくるくると回っていた。

あっといけない・・・
そろそろ司令部に行かなくては。
今日もまた戦いが始まる。
女幹部エメリア亡き今、きっと皇帝陛下は次の策を練っているに違いない。
負けられないわ。
私も頑張らなくちゃ。
私は姿見に自分の姿を映す。
全身タイツに包まれた真っ黒い私のボディ。
皇帝陛下に捧げるには相応しい。
「偉大なる皇帝陛下のために」
私は右手を胸のところで水平に構える。
あ・・・れ?
なんか変な気が・・・
何かしら・・・
まあいいわ。
別にたいしたことじゃないでしょう。

いつもの習慣で朝食を取ろうとしたものの、そんなものはまったく必要ないことを思い出す。
いけないいけない。
私ったら何をやっているのかしら。
この全身タイツがエネルギーを受け取ってくれるので、食事などは必要ないのだ。
同様に排泄行為も無用なこと。
肉体からの不要物は全てこのタイツが分解してくれる。
汗にも垢にもまみれることはない。
常に全身タイツの表面はすべすべに保たれるのだ。
私は空いた時間でゆっくりと身支度をし、テレビでニュースを見て出かけることにする。
どうやら地底帝国に関わるような事件は起きてはいないようだわ。
平和な日本。
勤勉に働く地上人ども。
日常の光景がそこにはある。
それこそが私たちが手に入れようと戦ってきたもの。
ディフェンサーチームの成果なのだ。

私はディフェンサーチームの司令官たる制服に身を包む。
この状態でも私の躰はしっかりと全身タイツに保護されている。
手と、スカートから見えるふくらはぎの部分だけが全身タイツがあらわになっているが構わないだろう。
もしそれを見咎められるようなら殺してしまってもいい。
私の邪魔をするものは誰だろうと許さない。
私は幹部なのだ。

「おはようございます」
「おはよう」
ゲートの警備兵に挨拶を返し、私はゲートを抜ける。
指紋及び網膜パターン認証式のゲートだが、私はもう無意識のうちに全身タイツの手のひらの表面に指紋を浮かび上がらせていた。
警備システムは何の警報を発することもできずに私を通す。
まったく・・・
ザル警備にもほどがあるわね。
いずれ改修させなくてはならないわ。
そう、私の居場所に相応しく・・・

「おはようございます、司令」
秘書官の宮島三尉が敬礼して出迎えてくれる。
小柄だけどスタイル抜群の彼女は婦人自衛官の制服を見事なまでに着こなしている。
いろいろな雑務をてきぱきとこなしてくれる彼女は有能な秘書官だ。
地底帝国で言えば上級戦闘員に相応しいかもしれないわね。
そう、地底帝国の戦闘員も上級と下級の区別がある。
もちろん見た目にはほとんど違いはない。
全身をすっぽりと覆う気持ちのいい全身タイツ状の戦闘員スーツも同じだし、開いた口元も全く同じ。
でも一箇所だけ違うのだ。
それは唇に浮かぶ紅の色。
下級戦闘員は黒に近いパープルの唇をしている。
上級戦闘員はそれが私のアーマーと同じくローズレッドに染まるのだ。
この違いによって上級戦闘員は思念波以外にも視覚的にも違いを見せることができるのだ。
もちろん最初は下級戦闘員として作られる。
その中で優秀なものが上級戦闘員へと導かれるのだ。
彼女なら地底帝国でも上級戦闘員になれるだろう。
「おはよう」
私はにこやかに挨拶を返す。
「今日の予定なんですが、13時から市ヶ谷の統合幕僚監部において対地底帝国対策の緊急会議が開かれます。女幹部エメリア討伐後の地底帝国の今後の動向に対する対策とのことです」
「そう、ありがとう」
私はそのまま自室へ入る。
もちろん指紋認証システムは全身タイツには意味を持たない。
宮島三尉は手帳を持ちながらその後についてきた。
私のスケジュールの調整とかがあるのだ。
私はバッグをデスクの上に置き、そのまま席に着く。
「統幕議長はその後首相官邸での報告会とのことですが、司令には出席要請は来ておりません。そのほか特に変更はございません。ディフェンサーチームには待機態勢に入ってもらっております」
「わかったわ。いつものように地底帝国に対する警戒を厳にしてね」
「ハッ」
宮島三尉は敬礼をする。
きびきびした動作は見ていて気持ちがいい。
と、その目が私の手に注がれているのに私は気が付いた。
「ん? どうかした?」
「あ、いえ、手袋をされているんですね、それといつもストッキングなのに今日は厚手のタイツ。室温が低すぎますでしょうか?」
宮島三尉は私の身を案じているのだわ。
きっと私が寒いからこんな姿をしていると思っている。
うふふ・・・可愛い娘。
「いいえ、そんなことはないわ。快適な室温よ」
「それならいいのですが・・・寒いようでしたらすぐに言ってください。調節いたしますので」
私は首を振る。
「気にしないでいいわ。大体この部屋にだってエアコンはあるもの」
「それはそうですが・・・」
何となく違和感を覚えているのね。
無理もないわね。
この全身タイツの快適さを知らないのだもの。
普通のタイツを穿くにはもう季節は暑すぎるのだし。
「気にしないで、これはファッションのようなもの」
「そうでしたか。失礼いたしました」
再度敬礼する宮島三尉に私は答礼を返す。
そのまま出て行こうとする宮島三尉を私は呼び止めた。
「あ、宮島三尉」
「はい、なんでしょう?」
出て行きかけた宮島三尉が立ち止まる。
「しばらくは誰も入れないでちょうだい。しばらく一人になりたいの」
「了解しました」
再び敬礼して宮島三尉は部屋を出る。
私はそれを見ておもむろに立ち上がった。

ドアに鍵をかけ、ロッカーの扉を開ける。
そこにはあのローズレッドに輝くアーマー類があった。
ああ・・・
たった一晩はずしていただけなのに・・・
まるで自分の半分を取り戻したかのよう。
私はすぐさま制服を脱ぎ捨てる。
こんなものを着ているなんてわずらわしい。
私にはこのアーマーこそが相応しいのだ。
私は何もかも脱ぎ捨てて全身タイツだけの姿になると、まずは胸のアーマーを手に取った。
ローズレッドの素敵なアーマー。
私はアーマーに思念波を送る。
それだけでいいのだ。
どうして夕べは留め金をはずすなんてことをしたのだろう。
胸のアーマーは私の思念波に答えてその姿をゲル状に変える。
どろっとしたアーマーを胸にぺちゃっと当てるだけ。
すぐにアーマーは固化して元の通りのアーマーに変わるのだ。
同じことは腰のアーマーにも言える。
どろっと半液状化したアーマーを腰のところに当てるだけ。
それでしっかりとアーマーに変化してくれるのだ。
私はガントレットもブーツも身につける。
全てを身に付け終わった私はとても気持ちが安らいだ。
姿見に映る地底帝国の女幹部。
私はおもむろに右手を胸のところで水平に構える。
「偉大なる皇帝陛下のために」
私ははっきりとそう口にした。

午後、市ヶ谷へ向かう大型乗用車の車中に私はいた。
もちろん制服の下は全身タイツのまま。
脱ぐなんて考えられないわ。
でも、アーマーに関してはさすがにはずさないと変に思われる。
私は身を引き裂かれる思いでアーマーをはずし、制服を着込んだのだ。
本当はあの幹部スタイルのまま連中に姿を見せてやりたかったけど・・・
いずれはあの姿のまま指揮を取る日が来るだろう。
私はそれが楽しみ。
私は挑戦的に黒いタイツ地が覗いている脚を組んで後部座席に座っていた。
運転手のいやらしい視線がバックミラー越しに私の脚に注がれる。
いやな男・・・
こんな男が痴漢や性犯罪を犯すんだわ
殺してしまったほうがいいわね・・・
もちろんその時もただ殺しはしない。
はらわたを引きずり出して躰に巻きつけてやるわ。
心臓も動いたまま取り出して・・・
この男の目の前で潰してやるの。
うふふ・・・
私は躰のうちから湧き上がる殺意を楽しんだ。

統合幕僚監部での会議は退屈そのものだった。
エメリアが死んだ今、地底帝国のさしたる脅威は感じられない。
今は戦力の充実に努め、こちらから打って出るような相手を刺激する行動は慎もうというもの。
西統幕議長も舞方防衛庁長官も危機感はまるで無い。
愚か者の集まりだわ。
こうしている間にも皇帝陛下は着々と次の手を打ってきているというのに・・・
それに対する対抗手段をとろうともしない。
アースディフェンサーさえいればいいとでも思っているの?
事なかれ主義の見本というところね。
私は会議終了後、早々にこの場を後にした。

私は市ヶ谷から戻ると、司令部へは向かわずにラボの方へ行く。
香奈美に会いに行くのだ。
私はゲートをいつものように通り抜け、ラボのブロックに入り込む。
そこで私は香奈美を呼び出してもらった。

「鮎美。突然来るなんてどうしたの? あ、エメリアのスーツ、持って来てくれたの?」
所長室に通された私を白鳥香奈美は驚きを持って迎えた。
私の方からこのラボにくることなど滅多になかったからだ。
私はディフェンサーチームの司令官であり、司令官室にいることのほうが多いのだ。
「あ、そのことなのよ。あのエメリアのスーツはやはり女幹部用の特殊なものかもしれないわ」
「ええ、それは私もわかっているわ。だからこそディフェンサースーツのメンテと改修が終われば真っ先に分析しようと思っているの」
香奈美は白衣のポケットからタバコを取り出す。
「一服いい?」
私は首を振った。
「えっ?」
香奈美が驚く。
いつもなら私がただうなずくだけだったからだ。
「そ、そっか・・・あんたは吸わないしね・・・」
戸惑いながらもタバコをポケットに戻す香奈美。
私が許可しないなどとは考えもしなかったのだろう。
タバコなど大嫌い。
いつも香奈美が吸うのは我慢してきた。
でも・・・
いやなものはいやだ。
幹部である私が何で我慢しなければいけないの?
我慢するのはあなたの方よ、香奈美。
「そ、それで?」
「それでちょっと確認したいことがあるの。今このラボには何体分の戦闘員用全身タイツがあるの?」
私はある事を考えていた。
そのためには数は多いほうがいいのだけど。
「そうねぇ・・・一応回収できる物は全て回収したはずだから、三十体分ぐらいはあると思うわ」
うふふ・・・
それだけあれば充分ね。
「そう。今一着見せてもらえるかしら?」
「えっ? どういうこと?」
メガネの奥の知的な瞳がちょっと戸惑いを見せる。
香奈美にはわからないこと。
そして、教えてあげる必要もない。
「確認したいことがあるだけよ。今後のこともあるしね」
「むぅ・・・わかったわ」
納得していないような顔をしていながらも、香奈美はインターコムのスイッチを押す。
「白鳥よ。急いで地底帝国の戦闘員用の全身タイツを所長室まで持って来て。一着でいいわ」
『かしこまりました。すぐにお持ちします』
インターコムの向こうからの声が流れる。
程なく白衣を着た可愛らしい女性研究員が丁寧にたたまれた地底帝国の戦闘員用全身タイツを持ってきた。
もっともその間、香奈美はタバコを吸いたそうにポケットの中でタバコの箱をもてあそんでいたけれども。

応接セットのテーブルの上に置かれた戦闘員用の全身タイツ。
私が着ているものよりは艶が鈍いものの、ナイロンのような手触りとすべすべ感はなんとも言えず気持ちがいい。
私は香奈美の許可も得ずにその全身タイツを手にとっている。
思ったとおりだわ。
この全身タイツは休眠状態にあるだけ。
ちょっとパワーを送ってやればすぐに目を覚ます。
うふふふ・・・
私は自らの全身タイツの指先からそっとパワーを送り込んでやる。
すると、私の手の中で戦闘員用の全身タイツは嬉しそうにちょっとだけ震えた。

「ねえ、あんた手袋なんかしているの?」
香奈美が私の両手が黒いのに気が付く。
「ふふ・・・手袋? 手袋なんかじゃないわ。それよりも、ねえ・・・」
私は戦闘員用の全身タイツを、肩のところを持って広げて見せる。
「手袋じゃないっ・・・て、その脚・・・あんたまさか・・・」
香奈美のメガネの奥の瞳が見開かれる。
「ええ、私はエメリア用の全身タイツを着ているわ。香奈美、これを御覧なさい」
私は驚いている香奈美に広げた全身タイツを見せ付ける。
つややかで漆黒の輝きを見せる全身タイツはいつ見ても美しい。
「着ているって? ちょ、ちょっと、鮎美・・・あなた変よ・・・まさか・・・」
後ずさる香奈美。
机の方へ下がって行く。
引き出しに拳銃というところか。
進歩のないことだわ。
「うふふ・・・洗脳でもされているとか? まさか。洗脳なんかされていないわ。私はただエメリアの全身タイツを身につけただけ。とっても気持ちがいいのよ」
「あ、ああ・・・」
ゆっくり私は近づいていく。
はらり・・・
私が持っている戦闘員用の全身タイツに変化が現れた。
彼女を着用者と認めたのだろう。
マスクのところに開いた口元の穴の下の部分から、股間の辺りまでに切れ込みが入って、はらりと開いたのだ。
「うふふ・・・香奈美も着てごらんなさいよ。すごく気持ちがいいわよ」
「ああ・・・あああ・・・そ、そんな・・・」
香奈美の目が全身タイツに釘付けになる。
その目に欲望が浮かび始めてくる。
全身タイツが彼女と結びつき始めたのだ。
これでいいわ。
これで香奈美はこの戦闘員用の全身タイツを着る。
そう、着ずにはいられないわ。

ゆっくりと香奈美の手が全身タイツに触れる。
その手が全身タイツを受け取り、そっと頬擦りしてすべすべした感触を確かめる。
やがて香奈美は全身タイツを脇に置くと、白衣を脱ぎだした。
うふふ・・・
「どう? 着てみたいでしょ」
「ええ、着たいわ。とても着てみたいわ」
香奈美はそう言いながら、きれいな裸身が現れるまで何もかもを脱ぎ捨てて行く。
すっかり裸になった香奈美は、椅子に座るとおもむろに戦闘員用の全身タイツを手に取った。
するすると真っ白い脚が真っ黒な全身タイツの脚の部分に収まって行く。
垂れ下がっていた足先がぴんと伸びてつま先が天井をさす。
やがて両脚がすっかり真っ黒に染まると、香奈美は立ち上がって腰までたぐり上げ、袖に手を通して行く。
右手が手袋の先まで差し込まれ、密着させるように二度三度と握られる。
左手も同じように指先まで収まると、背中に垂れていたマスクを頭に被りこむ。
口元だけがあらわになったマスクが顔を覆い、襟元を閉じるとそこで切れ込みがすうっと消えて行く。
口元以外の全身が漆黒に覆われて、香奈美の躰は全身タイツに包まれた。
すると、香奈美の足元で変化が起こる。
戦闘員は全身タイツがそのまま戦闘用のアーマーになる。
そのため全身タイツの足元がつま先が尖り、かかとが伸びることでハイヒール状になるのだ。
バランスが悪いと思われるだろうが、まったくそんなことはない。
むしろこの形が戦闘員として当たり前の足の形なのだ。
私もアーマーを密着させることによってブーツをそのまま私の足とすることができる。
ガントレットもアーマーも同様だ。
むしろ今のように着脱したりすることのほうがおかしいこと。
コスチュームというより第二の皮膚と言っていい。
着たままでいるのが当たり前のことなのよ。

「着心地はどうかしら? 香奈美」
私は全身タイツを纏った香奈美に問いかける。
「はい・・・とても気持ちいいです。ずっとこのままでいたいぐらい」
自分の躰を愛しそうに撫でる香奈美。
うふふ・・・
可愛いわ。
「これで地底帝国のことをより深く知ることができるわよ」
「ええ、そう思います。ああ・・・なんて素晴らしいのかしら・・・この全身タイツは最高だわ」
自分の姿を見下ろし、躰をよじって着用感を確かめている。
「うふふ・・・メガネが無くても気にならないんじゃない?」
「はい。まったく気になりません。あんなものをつけていたなんて馬鹿みたい・・・」
のぞく口元に笑みが浮かぶ。
「それはよかったわ。それじゃ残りの全身タイツもケースに入れて私が受け取れるように指示してちょうだい。持って行くわ」
「はい。すぐに」
全身タイツに包まれ戦闘員の姿となった香奈美は、すぐにインターコムで言われたとおりの指示を出す。
「ふふふ・・・それでいいわ。後はじっくりと地底帝国の戦闘員というものを研究するのね」
私は香奈美ののどを撫でてやり、この部屋を出るべくドアに向かう。
「そうそう。今日はこの部屋に泊まったら? どうせその全身タイツを脱いで帰る気はないんでしょ?」
「ひゃい。そうします」
唇に指を這わせ薄く笑みを浮かべる香奈美。
淫らな美しい女戦闘員がそこにはいた。

ケースに入った戦闘員用全身タイツを受け取り、私は司令部に戻る。
会議の後にラボへ寄ったものだから、戻った時にはすでに18時を過ぎていた。
私は宮島三尉を早々に帰らせて司令官室に閉じこもる。
急いでアーマーを身に纏い地底帝国の女幹部の姿に戻って一息ついた私は、ケースの中身を確認した。
折りたたまれていたとはいえ結構な量の全身タイツ。
その数は三十四着。
訓練を行なうにはちょうどいいぐらいだわ。
私はディフェンサーチームのメンバーのリストをパソコンに映し出す。
ディフェンサーチームには司令部やラボのほかに医療部や警備部などいくつかの部門がある。
実働部隊としての戦力はアースディフェンサーのわずか三人であるものの、そのサポートとしての各部門は欠かせない。
そして・・・チームの構成上女性が多いのも特徴である。
私はその中から美しく能力のある女性たちを三十四人選び出していた。

「んん・・・」
司令官室の応接セットのソファーの上に私は横たわっている。
もう時刻は真夜中。
私は相変わらず女幹部のコスチュームをつけたまま。
着替えるのなんていや。
このコスチュームを脱ぐなんて考えられない。
今日はこのまま泊り込もう。
どうせ帰ったって地底帝国の襲撃があれば呼び出されるのだ。
今までだって泊り込んだことなど数知れない。
あ・・・ん・・・
闇の中で私の指が蠢いている。
腰まわりのアーマーは私の意に従ってその形を変え、股間部分をあらわにする。
全身タイツも同じこと。
のっぺりとしていた私の股間が秘部を形成して蠢く指を迎え入れた。
くちゅ・・・
いやらしい水音が私の耳に聞こえてくる。
くちゅくちゅ・・・
指の動きが激しくなると、水音も高まって行く。
あ・・・あん・・・
私の背中は伸び、乳首は胸のアーマーすら押し上げて行く。
くちゅくちゅくちゅ・・・
やけどしそうなほどに熱い秘部の中で私の指は遊んで行く。
ブーツのつま先が伸びて、果てしない快感が私の脳を染め上げる。
荒い息の中で私は昇り詰めて行くのだった。
  1. 2006/11/21(火) 20:29:42|
  2. 地底帝国の女幹部
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地底帝国の女幹部 その2

二回目です。
今日はシーンの関係上短めとなりますが、お楽しみいただければ嬉しいです。

2、
どれぐらいそうしていただろう・・・
気が付くと時刻はすでに22時を過ぎていた。
このコスチュームのあまりの着心地のよさに我を忘れていたと言っていい。
立ったり座ったり、脚を曲げたり伸ばしたり、腕を上げたり下ろしたり。
そんなことを繰り返しているうちにこんな時間になってしまったのだった。
そうやってわかったことは、この全身タイツとアーマーが本当に体の動きを阻害しないこと。
肌にピッタリと密着しているというのに突っ張るような感じも何もない。
軽くて温かくて動きやすい素晴らしいコスチュームなのだ。
こんなコスチュームは地上には存在しない。
どういった素材でできているのかも我々にはわからないのだ。
でも、着ているだけで力がわいてくる。
そんな感じのするコスチュームだった。

「いい加減そろそろ帰らないとね・・・」
私は帰り支度をするためにロッカーのところへ行く。
ロッカーの扉の内側にある姿見に私の姿が映し出される。
そこにいたのは邪悪な地底帝国の女幹部。
肌の色や髪の毛の色に目の色、それに額のサークレットが無いから、間違われることはないだろうけど、それでもまるでエメリアが生き返ってきたかのよう。
地底帝国の女幹部エメリア。
邪悪で強力な女戦士だった。
彼女によってアースディフェンサーが窮地に陥ったことも一度や二度ではない。
だが、そのたびに私たちはチームワークで乗り切ってきた。
『覚えていろ! いずれこの地上は偉大なる皇帝陛下によって支配される。そのときを楽しみにしているがいい!』
アースディフェンサーによって作戦を頓挫させられた時のエメリアの棄て台詞を思い出す。
まるで子供向けの特撮番組のようなセリフだわ。
私は思わず苦笑する。
バカな女・・・
確かに卑劣な手段を用いることもしばしばであり、その作戦指導は侮れないものの、彼女はあまりにも正面切っての攻撃が多かった。
もう少し搦め手から攻撃していれば・・・
私なら・・・
私ならそうするわ・・・
偉大なる皇帝陛下の御ためにこの地上を・・・

地底帝国は偉大なる皇帝陛下に率いられた暗黒の軍団だ。
その実態は謎に包まれ、我々にはうかがい知る事はできない。
わかっているのは、皇帝陛下を頂点とした身分社会であるということ。
皇帝陛下の下に幹部がいて、幹部の下に戦闘員がいる。
姿を見せるのは幹部と戦闘員ぐらいであり、その他の構成員がいるのかはわからない。
人類と同じような姿をしているが、人類とは違うと思われ、どちらかというとアリやハチに近いかもしれない。
戦闘員の姿が女性形であるというのもアリやハチを思わせる。
黒い全身タイツ姿だから黒アリかもしれないわね。
私は笑いを浮かべた。
だが、彼女らは恐るべき存在なのだ。
皇帝陛下のもとに一糸乱れぬ行動でこの地上を混乱に貶める。
口元が覗き、黒っぽく塗られた艶めかしい唇が見えているというのに、彼女たちは言葉を発しない。
『ヒャイー!』
私は彼女たちの発する叫びというか鳴き声を思い出す。
音として発するのはそれだけであり、それで意思疎通を図っているのかは不明だ。
こうしてみると地底帝国については何一つわれわれはわかっていないと言ってもいいのかもしれない。

『偉大なる皇帝陛下のために』
『『ヒャイー!』』
一度、見せしめのために首相が、いえ、前首相が地底帝国によって磔にされたことがあった。
わざとらしく十字架に磔にして、戦闘員二人が槍で突き刺したのだ。
その様子は電波ジャックによって各家庭のテレビへと流された。
日本の士気を喪失させるには充分であり、翌日の緊急国会は紛糾した。
結局降伏とはならなかったが、あの映像は衝撃を与えたと言っていいだろう。
その時にエメリアが叫んだのがこのセリフであり、整列した戦闘員たちが一斉に右手を胸のところで水平に構えた姿が印象的だった。
「偉大なる皇帝陛下のために・・・」
私はそうつぶやくと右手を胸のところで水平に構える。
鏡の中の私は薄く笑いを浮かべていた。

ピルルルルルル・・・・
インターコムのコール音に私は心臓が跳ね上がるほど驚いた。
私は我に返るとすぐにインターコムのスイッチを入れる。
「はい、千影です」
『あ、まだいたんだ~。ヤホー』
スピーカーから香奈美の声が流れてくる。
何となくホッとして、私は椅子に腰を下ろした。
『連絡くれたんでしょ? なんかあったの?』
あ・・・
そうだった・・・
あれ?
何で私は香奈美に連絡したんだったかしら・・・
何かこのコスチュームのことであったような気が・・・
・・・・・・
まあ、いいか・・・
「あ、いいのいいの。たいしたことじゃなかったわ」
私は目の前で真っ黒く染まった自分の手を閉じたり開いたりしてみる。
すべすべした生地に包まれた手は美しい。
『そうなの? ならいいけど』
「ごめんね、煩わせちゃって」
『別に構わないよ。それよりも、若い女がこんな時間まで仕事なんかしていたらだめよ』
私は苦笑した。
「それはお互い様でしょ。そっちこそ彼氏を放ったらかしじゃないの?」
彼氏と言っても本当の彼ではない。
香奈美が家に飼っているオス猫のことだ。
『いいんだよ。カリカリはたくさん置いてきてあるから。それに私が居ないほうがのんびりできるって』
カリカリというのはキャットフードのこと。
香奈美の家の真っ黒なオス猫がキャットフードを食べているところを想像して、私は何となく優しい気持ちになる。
「そんなことないって。早く帰ってあげなよ」
『ああ、もうチョイで一区切り付くからね。そうしたら帰るよ』
「うん、それがいいわ。私ももう帰るから。お休みなさい」
『お休みー。気を付けてねー』
「バイバーイ」
私はインターコムのスイッチを切る。
そうして私は再びロッカーのところへ行った。

「あ・・・」
私はハッとする。
なぜさっきは思い出さなかったんだろう・・・
この全身タイツがこのままじゃ脱げないことに気が付いたのだ。
「ど、どうしよう・・・」
もう一度香奈美を呼び出そうか・・・
でも・・・
もしかしたら・・・
私はとりあえずアーマーだけでもはずすことにした。
ガントレットをはずしてブーツを脱ぐ。
“素足”でリノリュウムの床に立つとひんやりとした感触が伝わってくる。
とりあえずローヒールのパンプスを履き、腰まわりと胸のところのアーマーをはずす。
真っ黒な全身が靴だけを履いているようでちょっと恥ずかしい。
私は首のところに手をやるが、やはりすき間もなく肌に密着しているために、指を入れることすらできなかった。
「はあ・・・仕方ないか・・・」
いまさら香奈美に来てもらうなんてできないし・・・
明日でもいいわよね・・・
私は適当な紙袋に下着とパンストを突っ込み、ブラウスを羽織ってから制服のスカートに脚を通す。
そして上着を着ると、何も変なところは無くなった。
ただ手の先とスカートの下から伸びる脚だけが真っ黒に染まっている。
まあ、手袋を嵌め、厚手の黒いタイツを穿いたとでも言えばいいし、気にする人もいないだろう。
それに、この全身タイツに包まれているという安心感は何物にも代えがたい。
私はアーマーを丁寧にロッカーに隠し、何食わぬ顔で部屋を出た。

「ご苦労様」
私は身分証を提示して警備のゲートを抜ける。
赤いスポーツタイプの自家用車は私が自分の好みで買ったもの。
地下の道路を走り抜け、とあるマンションの地下駐車場に出る。
ディフェンサーチームの本部やラボはカムフラージュのために直接行けるルートは限られている。
このルートもその一つで、このマンションの地下駐車場の壁が開くと、本部施設への道路が繋がっているのだった。
ばかげているわね。
私はそう思う。
地底帝国の侵略に対抗する施設を地底に作っているのだから。
いずれこんな施設は破壊されてしまうかもしれない。
そのときは地上が支配されるときかもしれないわね。

私は地上に出ることなくそのままマンションの駐車場の一角に車を止める。
このマンションは防衛庁が手をまわして作ったもの。
ディフェンサーチームの関係者もちらほらと住んでいた。
もっとも、妻帯者や郊外に家を持っている者たちも多いから、ここに住んでいるのは一握り。
とはいえ、私とディフェンサーブルーの秋村恵理(あきむら えり)もこのマンションに住んでいる。
時々恵理はアースディフェンサーの一員としてではなく友人として部屋に遊びに来てくれる。
それは楽しいことだった。

「ただいまぁ」
誰もいない部屋だが、私はいつもそう言って入ることにしている。
暗いひんやりした部屋は人のぬくもりには乏しい。
私は灯りをつけるとバッグと紙袋を放り出してソファーに座り込む。
「ハア・・・疲れたぁ・・・」
なんだかんだ言って23時。
そういえば何も食べていないのにおなかが空かないわね・・・
それにトイレも行っていないし・・・
まあ、この全身タイツが脱げないんだから、トイレ行きたくなっても困るからいいけどね・・・
私は上着を脱いで立ち上がる。
きちんとかけておかないとしわになってしまうからね。
私はベッドルームに行くと、クロゼットからハンガーを取り出す。
はあ・・・この制服もしわにならないようなこの全身タイツみたいのだったらいいのに・・・
私はそう思いながら上着をかけ、スカートも脱いだあと丁寧にしわを伸ばしてかけておく。
ブラウスは紙袋の中の下着と一緒に洗濯かごに放り込み、丸めてあったネクタイもきちんとかけておく。
「ハア・・・」
私は“裸”のままベッドに腰を下ろすと、そのまま横になった。
気持ちいい・・・
すべすべした肌は本当に気持ちがいい。
シーツのタオル地が肌に優しい。
「ああ・・・シャワー浴びなきゃ・・・」
うつらうつらしてきた私はそう言って起き上がろうとするけど、なんだかとても眠りたい。
いいか・・・明日の朝浴びれば・・・
私は毛布をかけると深い眠りに入っていった。

「ん・・・」
ふわふわした感覚が私の躰を包んでいる。
目を開けていないはずなのに周りが見えてくる。
これは夢?
ここはどこ?
闇の中に私は浮いている。
ふわふわして気持ちがいい。
どこか水の中に浮いているみたい。
漆黒の闇の中、私はまどろみながらたゆたっているんだ・・・
あれ?
なんだろう・・・
下のほうに何かが見える・・・
暗い赤い光がうっすらと差し込んでいるホールのよう・・・
あれは何?
なんだろう・・・
私はそこが気になった。
とても静かで神聖な場所。
そんな気がする。
行ってみよう・・・
そう思ったとたんに私の躰は徐々に動き出す。
ふわふわとゆっくり引き寄せられる私の躰。
それによってホールの状況がよく見えてくる。
薄暗く赤い光しかないにもかかわらず、ちっとも気にならない。
むしろ明るすぎるよりよっぽどよく見えるわ。

やがて私はホールの中央に着地する。
気がつくと私は脱いだはずのアーマーにガントレットを身につけ、ブーツも履いていた。
「静かだわ・・・」
何か身が引き締まる思いがする。
私は周りを見渡した。
ここは広いホール。
周囲は闇に覆われて壁があるのかすらわからない。
私はゆっくりと歩き出す。
向かうのはホールの奥。
そこに何があるのか・・・
私は何となくわかっていた。
気が付くと私の背後に数体の人影が現れる。
見なくてもわかる。
地底帝国の戦闘員たち。
マスクに開いた口元から見える唇に笑みを浮かべて私の後についてくる。
皇帝陛下にお仕えする可愛いしもべたち。
私はまるで彼女たちを従えるようにして奥に進んで行った。

「ハッ!」
私はベッドから跳ね起きる。
「ハアハア・・・」
今の夢はいったい・・・
いったい何なの?
まるで・・・まるで私が・・・
全身に冷たいものが走る。
あんな夢を見るなんて・・・
まるで私がエメリアになったよう・・・
もしかして・・・
もしかしてこの全身タイツのせい?
私は着ていることすら感じさせない全身タイツに指を這わせる。
「あ・・・」
すごく敏感になっている私の肌。
ちょっと触れただけなのに躰に電気が走る。
あんな夢を見た後だというのに汗一つかいていない。
「はあ・・・ん・・・」
なんで?
私・・・いやらしい気持ちになっている・・・
まだ暗い部屋の中で私は自分の胸に指を這わせる。
全身タイツの下で乳首がピンと立っているのがわかる。
いや、全身タイツと一体になって浮き上がっているのだ。
「ああ・・・」
左手の親指の腹で私は尖った乳首をもてあそぶ。
右手は知らず知らずに下腹部に伸びていた。
くちゅ・・・
えっ?
まさか・・・
私は人差し指と中指で秘部を探る。
そこには紛れも無くぬめりを帯びたひだが、熱くひくついていた。
そんな・・・
私は全身タイツを着ているはずなのに・・・
そう思いながらも私の指は動くのを止めはしない。
ヌルヌルした愛液が指に絡まり、ぷくっと膨らんだクリトリスが私の躰に快感を伝えてくる。
「あ・・・はん・・・あん・・・」
私はもうベッドの上でただただ躰をくねらせる。
右手も左手も私の気持ちいいところを的確に刺激してくる。
頭のてっぺんからつま先までがまるで痺れたように快感に打ち震えている。
「ああ・・・あああ・・・」
頭が真っ白になってくる・・・
何も・・・何も考えられない・・・
「ああ・・・陛下・・・皇帝陛下・・・」
私は何を言っているのだろう・・・
「ああ・・・イッちゃう・・・イッちゃいますぅ・・・」
ガクガクと躰が震える。
指の動きは激しくなるばかり。
まるで・・・まるで犯されているかのよう・・・
「ああ・・・陛下・・・鮎美は・・・アユミは・・・イッちゃいますぅ・・・」
気持ちいい・・・気持ちいいよぉ・・・
『・・・!』
あ・・・
嬉しい・・・
許可をいただけた・・・
イっていいんだ・・・
思い切りイッちゃっていいんだわ・・・
「ありがとうございます、陛下ぁぁぁぁぁぁぁ」
私は全身に喜びを感じて絶頂を迎えたのだった。
  1. 2006/11/20(月) 20:08:29|
  2. 地底帝国の女幹部
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地底帝国の女幹部 その1

お待たせしました。
今日から四日連続で単発悪落ちSSを掲載して行きます。

本来なら一括掲載と思ったのですが、ちょっと長くなりましたので、分割掲載させていただきます。

皆様に楽しんでいただければ幸いです。

1、
「うふふ・・・私は地底帝国の女幹部エメリア。地上人ども、我が前にひれ伏すがいい・・・なーんてね」
私は苦笑しながら鏡を見る。
そこに映っている私はまさに奇妙な姿をしていたのだ。
黒いナイロンのようなものでできた全身タイツのような全身を覆うアンダースーツ。
胸と腰まわり、それに両手と両脚をカバーするローズレッドの外骨格のようなアーマーとブーツにガントレット。
それらは地底帝国の女幹部エメリアが身につけていたものだった。
私は今、そのエメリアのコスチュームを身につけているのだった。

                 ******

「サンダークラッシュ!!」
「バーニングファイヤー!!」
「ウインドカッター!!」
三人の女たちの必殺技が炸裂する。
赤と黄色と青のコスチュームの女たち。
いずれもが同色のヘルメットを被っていて眼差しはわからないものの、その引き締まった口元は精悍だ。

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
必殺技の直撃を受けて吹き飛ばされる女幹部エメリア。
地底帝国の戦闘指揮官として、地上侵攻軍団の指揮を取り、数々の攻撃を行なってきた彼女だったが、そのいずれもが地上の守り神として立ちはだかったアースディフェンサーの三人によってことごとく潰されてきたのだった。
そして今、最後の攻撃も三人には歯が立たず、彼女は自らの最後を迎えたのだった。

「やった・・・」
「やったぞ」
「油断しないで」
三人の女たちはそれぞれ身構えながら、倒れたエメリアに近づいていく。
いつもならば次元ホールが開いてエメリアは脱出して行くのだが、今回は倒れたままだ。
恐る恐る近づくアースディフェンサーの三人。
地面に倒れた美しい女幹部エメリアはそれをゆっくりと目を開けて見上げていた。
「エメリア・・・」
リーダーのディフェンサーレッドがちょっと複雑な表情でエメリアを見下ろす。
「ふ・・・ふふ・・・これで済んだと思うなよ・・・地底・・・帝国は・・・なん・・・どで・・・も・・・」
静かにその青い瞳を閉じてこと切れるエメリア。
それが地上を恐怖に陥れた美しく残忍な女幹部の最後の言葉だった。

                 ******

「それで? これが残ったって言うの?」
デスクに置かれたエメリアの遺物。
それは彼女が身にまとっていたものだった。
「はい、司令。エメリアは最後の言葉を言った後、その肉体は砂のようにさらさらと崩れ去り、このコスチュームだけが残りました」
ディフェンサーレッドの言葉にイエローもブルーもうなずく。
もっとも、その状況は彼女たちをバックアップするこの本部でも映像として記録していたので、間違いはない。
地底帝国の連中は太陽光線には極端に弱い。
生命活動が停止するとすぐに分解されてちりになってしまうのだ。
真っ黒くて口元だけの開いた全身タイツを纏った戦闘員たちも、生命活動が停止するとすぐに中身は失われてしまう。
まるで風船の空気が抜けるように全身タイツだけを残して消え去ってしまうのだ。
おそらく素顔を晒していたエメリアも戦闘員たちと同じだったのだろう。
生命反応が消え去ったので、肉体を維持できなくなったのだ。
「わかったわ。これはこちらでラボに回します。それにしてもよく頑張ったわね。しばらくの間は休息を取ってちょうだい」
私は三人をねぎらい、解散させる。
地底帝国もしばらくはおとなしくしているだろう。
これで地上侵攻をあきらめてくれればいいのだが・・・

『はい、こちらラボ』
私はデスクのインターコムでラボにコールを入れた。
「千影です。白鳥博士はいらっしゃいます?」
『あ、千影司令ですね? 少々お待ち下さい』
そう言ってしばらく待たされる。
白鳥博士も忙しい方ですものね・・・
私は苦笑しながら待った。
『あ、鮎美なの? なんか用?』
「なんか用って・・・あなたねぇ」
最初のセリフがこれかい。
『あたしは今忙しいの。ディフェンサースーツのメンテもしなきゃいけないし、地底帝国のことだって調べなきゃいけないし』
それはわかるけど・・・

マッドサイエンティストの異名をとる白鳥香奈美(しらとり かなみ)はディフェンサースーツの開発者だ。
彼女のおかげでこの地上は守られたと言っていい。
彼女はスーツの力を引き出すのは女性でないとできないと言い張り、半ば無理やりに三人の女性自衛官をディフェンサースーツの装着者にしてしまったのだ。
そして、たまたま彼女の大学時代の友人であり、三人の上官であるという理由だけで私千影鮎美(ちかげ あゆみ)はディフェンサーチームの司令官に祭り上げられてしまった。
いや、あきれた防衛庁が押し付けてきたのだと言っていいだろう。

最初は政府も警察力に対抗させた。
しかし、地底帝国の黒い全身タイツの戦闘員は警察力でどうにかなる相手ではなかった。
女性としか思えないボディラインをあらわにした戦闘員たちは、そこだけが開いた口元に薄い笑みを浮かべながら冷酷に任務を遂行する。
要人の白昼堂々の殺害や、重要建造物の破壊などが行なわれるようになって、初めて政府はこれが非常事態であるという認識にいたり、警察庁と防衛庁の縄張りの綱引きを行った挙句に防衛出動を発令した。

だが、防衛庁にとってもこれは手に余る事態であることは明白だった。
89式小銃やM249機関銃の5・56ミリ弾は戦闘員の全身タイツを貫けず、40ミリグレネードランチャーや81ミリ及び120ミリの迫撃砲では周囲の被害だけが増幅され、肝心の戦闘員は直撃を食らったとしてもほとんど問題無いという状況なのだ。
かと言って陸上自衛隊ご自慢の90式戦車の120ミリ主砲などは、直撃でもなければたとえ榴弾といえどもビルを吹き飛ばすぐらいの役にしか立たないだろうし、対戦車ヘリのガトリングガンや対戦車ミサイルにしたって同じことなのだ。
俊敏な地底帝国の戦闘員に直撃を食らわせるのは並大抵のことでは無い。
しかも、驚いたことに地底帝国の戦闘員は、90式戦車はともかく軽装甲機動車の装甲板ぐらいは殴っただけでぶち抜ける。
きわめて厄介な相手だったのだ。

人員の被害が無視できない情況にいたり、防衛庁はさじを投げた。
ことここにいたり、白鳥博士の特殊スーツを投入するという選択を行なったのだ。
それが効果を上げるにしたがってやっかみによる足の引っ張りはあったけれども、とにかくディフェンサーチームは日本の平和を守っていた。
今のところは・・・

「お忙しいところすみませんね。実は敵の女幹部エメリアの纏っていたスーツがあるんです。分析をお願いできませんか?」
私は多少意地悪な口調で用件を伝える。
もちろん彼女とは10年近くの付き合いだ。
この程度でへそを曲げることはない。
『エメリアの? それで本体は?』
「本体はやはりちりと化したそうです。残ったのはスーツのみ」
私は目の前のたたまれた黒い全身タイツを手に取ってみる。
すべすべした手触りはナイロンのタイツを思わせて気持ちがいい。
『ハア・・・やっぱりか・・・本体が無いんじゃねぇ。またどうせ黒いタイツなんでしょ? あれって分析してもわからないのよねぇ』
そう、彼女の言うとおりアースディフェンサーによって倒された戦闘員の黒いタイツはラボに何着も保管されている。
だが、分析しても未知の素材でできているということしかわからず、しかも継ぎ目がないのでどうやって着ていたのかすらわからないのだ。
開いた口元のスペースだけではどうしたって着られるものではない。
一度レーザーメスで切り裂いて中を確認したところ、ちりになった本体の一部が見つかったのみで、まさに単なるナイロンの口元だけ開いた全身タイツと言っても過言ではない。
もちろん防弾防刃性は桁外れであるが。
志願者を募り、背中の部分をレーザーメスで切り裂いたタイツを着てもらったこともあるが、特におかしなところは無く、普通の全身タイツを着たのと同じとのこと。
つまり、このスーツには単なる防護服としての意味以上のものは無さそうなのだ。
『いいわ、後で誰か取りにやらせるからそちらにおいといて。なんなら着てみてもいいわよ』
「バ、バカなこと言わないで」
『あははは・・・どうせファスナーも無いから着れないでしょ』
彼女の言うとおりだ。
持ち上げた全身タイツはどこにもファスナーなど無い。
首のところだけは開いているが、そこから躰を入れるのは無理そうだしね。
『まあ、置いといてちょうだい。ディフェンサースーツのメンテが終わったら取りに行くから。そうね・・・明日か明後日になると思うけど』
「まあ、いいけど。早く取りに来てよね」
『ええ、それじゃ仕事に戻るわ。またね』
「うん、またね」
私はすっかり仲のいい友人同士の会話となった通話を終える。
それにしても・・・
私はエメリアの全身タイツを両手で広げる。
彼女は私が見ても素敵なボディラインを晒していた。
くびれるところはキュッとくびれ、出るところはボンと出ているのだ。
地底帝国の戦闘員もそれは同じ。
単純に判断はできないものの、全ての戦闘員はボディラインだけから判断するならば見事なプロポーションを持った女性ばかりだったのだ。
う、うらやましくなんか・・・

対エメリア戦の報告書を打ち込み終えた私は、凝った肩をほぐすべく首を動かす。
「ふう・・・」
思わずため息をつき、年寄り臭いなぁと思ってしまう。
「今日はこのぐらいにしようかしら」
そう独り言を言い時計を見ると、すでに時刻は20時を過ぎていた。
「もうこんな時間・・・はあ・・・今日もまたコンビニのお弁当か・・・」
一人暮らしをしている私に食事を作ってくれる人は居ない。
香奈美も一人暮らしだが、彼女の場合は研究最中に何らかの食べ物を口に運ぶことを行なっているので、家に帰って食事を取ることはないらしい。
躰壊すわよって言ってやったら、壊れた時には取り替えるなんて言っていたっけ・・・
私は帰るために支度をするべく席を立つ。
三佐の肩書きには豪華すぎる部屋の隣には、秘書官兼副官である宮島佳乃(みやじま よしの)三尉が詰めていて、諸事万端整えてくれている。
きっと今日は彼女も疲れているだろう。
「宮島三尉。今日はもう何も無いわ。あがってちょうだい」
私はインターコムのスイッチを入れる。
『了解です、司令。お先に失礼いたします』
いつも聞きなれている透明感のある声がインターコムから流れてきた。
これでよし。
それにしても・・・
私は隅に置かれたエメリアのコスチュームを見やる。
あの強敵だったエメリアが・・・ね・・・
私はちょっと複雑な気持ちになる。
残酷で卑劣な手も厭わない相手だったけど、何となく好敵手を失ったような・・・そんな寂しさのようなものも感じていたのだ。

「あら?」
私はバッグを取り出そうとしていた手を止める。
たたんであった全身タイツの首もとのところが切れ込みができて開いていたのだ。
「え? どういうこと?」
私は気になってそちらへ行くと、黒いすべすべした全身タイツを手に取った。
「やっぱり・・・開いているわ」
手に取った全身タイツは、前の部分が首元から胸にかけてファスナーが開いたかのように切れ込んでいた。
「どうして?」
私は奇妙に思い、その全身タイツをいろいろな角度から見てみる。
それは本当にナイロンで作られたかのような手触りですべすべしており、光をまったく通さない上に軽くて着心地は良さそうだった。
私はすぐにそれを手にしたまま、デスクのインターコムでラボを呼び出す。
『はい、こちらはラボです』
「千影だけど、白鳥博士は手が空いているかしら」
私は目の前で妖しくつややかに輝く全身タイツを見つめながらそう言った。
『白鳥博士ですか? 博士はディフェンサースーツのメンテナンス中です。しばらくは手が空かないと思われますが。緊急でしょうか?』
緊急・・・?
緊急というわけじゃないわね。
どうせ明日か明後日には取りに来るって言っていたし・・・
「いえ、それならいいわ。騒がせてごめんなさい」
『いえ、問題ございません。よろしければ伝言をお伝えいたしましょうか?』
「必要ないわ。こちらへ来た時でいいことだから」
そう・・・焦る必要などないのに・・・
『かしこまりました』
「失礼するわ。それじゃ」
私は通話を切って、再び全身タイツに目をやった。
すべすべして気持ち良さそうな手触り。
軽くてピッタリ密着しそうな形状。
あのエメリアはどんな気持ちでこれを着ていたのだろう・・・
この全身タイツを着て、あそこにある革でできたようなアーマーとガントレット、それにブーツを身に付ける。
気持ち良さそう・・・
着て・・・みようかな・・・
なぜこの切れ込みができたのかも気になるし・・・
香奈美の手を煩わさなくても・・・私が着ることで何かわかるかもしれないし・・・
着て・・・みても・・・いいかな・・・

私は何かいけないことでもするかのように、そっと隣の部屋へのドアを開ける。
隙間から覗いた私の目には、すでに宮島三尉は帰宅したらしく誰もいなくなった副官室が映った。
ドクンドクン・・・
なぜか早まる私の心臓。
これでおそらく緊急事態以外ではここに人が来ることはないだろう。
人が来るよりも携帯で私を呼び出すほうが早いだろうし、私がここにいるとは限らないのだから。
カチャリ・・・
ドアを閉めて鍵をかける。
鍵の掛かる音がまるでシンバルでも鳴らしたように私の耳に響く。
ドクンドクン・・・
なんだろう・・・
すごくドキドキするわ。
まるで初めて男性に抱かれる時みたい。
私はそんなことを考えながらデスクの上に置かれた全身タイツを改めて手に取った。
つやつやした真っ黒い全身タイツ。
ハイネックの首のところから胸の下のあたりまでがスパッと切ったように切れ込みが入っている。
戦闘員たちの全身タイツと違って、首から上のマスクは無い。
両手は指先まで一体になっており、五本の指がきちんと収まるようになっている。
両脚はつま先まで包み込む形で、普通のタイツとおんなじだ。
ドクンドクン・・・
着て・・・みたい・・・
着てみたい・・・

私はおもむろに婦人自衛官の制服をベースにディフェンサーチームの司令官用の制服としてデザインされた上着を脱ぎ始める。
それを椅子の背もたれにかけ、スカートのホックをはずす。
するっとスカートを床にすべり落とし、またぐようにして脱ぎ捨てる。
ネクタイを取って、白のブラウスのボタンをはずし、脱いでからこれも椅子の背もたれにかける。
ローヒールのパンプスを脱いで、ベージュのナチュラルパンストを腰からずり下げる。
椅子に腰を下ろして、つま先から引っこ抜くようにしてパンストも脱ぎ捨てる。
下着だけになった私は自分の躰を見下ろした。
トレーニングはそれなりにしているから、そこそこは引き締まっているとは思うんだけど・・・
モデル体型には程遠い自分の躰に多少の自己嫌悪を覚えてしまう。
全身タイツを着たら躰の線がモロバレね・・・
そう思うものの、やはり着てみたい。
まあ、いいか・・・誰に見せるわけでもないし。
私はそう自分自身を納得させる。
下着も脱いだほうがいいわよね・・・
ドクンドクン・・・
私・・・もしかしてとんでもないことをしている?
夜、一人だけのディフェンサーチームの司令官室で裸になって全身タイツを着ようとしている・・・
よく考えたらなんてことしているのかしら・・・
私は苦笑しながらも、何か秘密の楽しみを楽しんでいるような気がしてわくわくするのを抑えきれない。
私はブラジャーのホックをはずして脱ぎ捨てると、そのままパンティーも取り去ってしまった。
ひんやりとした部屋の空気が肌に心地いい。

私は黒い全身タイツを持ち上げる。
このタイツをあのエメリアが身につけていたことなどどうでもいい。
このタイツを着るのが楽しくて仕方が無かった。
私は椅子に腰を下ろすと、切れ込みのところを手にして広げ、つま先部分を手繰り寄せる。
そして右足をゆっくりと差し入れた。
「ハア・・・」
思わず吐息が漏れる。
つま先を包み込んだだけなのに、まるで吸い付くように肌に密着するのだ。
それがとても気持ちいい。
そのまますすすっとタイツをたくし上げて行く。
「ああ・・・」
なんて気持ちがいいんだろう・・・
私はエメリアがうらやましく思えた。
こんな気持ちのいいものを着ていたなんて・・・
こんな気持ちのいいもので毎日を過ごしていたなんて・・・
私はたまらずに左足を差し入れる。
全身を駆け抜ける快感がたまらない。
そのまま左足の部分もたくし上げ、立ち上がって腰まで引き上げる。
すごい・・・
ピッタリと密着してしわが一つも出ないのだ。
まるで皮膚に張り付いてしまったよう。
とても気持ちいい。

私は多分少しの間呆けていたかもしれない。
それほどこの全身タイツは気持ちよかった。
私は袖の部分を持ち上げると、おもむろに右手を通す。
密着するために奥まで通すのが大変かなと思ったが、まったくそんなことはない。
私の指先はあっという間に手袋部分に入り込み、そのままそこで密着した。
「すごいわ」
私は手を握ったり開いたりして確かめる。
密着した全身タイツは動きをまったく阻害しない。
着ているのに着ていないようなのだ。
私は左手も通し、完全に首までをタイツの中に納め終わる。
すると、今まで入っていた切れ込みがすうっと消えていった。
「ええっ?」
私は驚いた。
ファスナーでもマジックテープでもなく、他の生地の部分とまったく同じになってしまったのだ。
「ど、どうしよう・・・これじゃ脱げなくなる・・・」
私は首もとに手をやって切れ込みを探したが、切れ込みどころか肌に密着した全身タイツは襟から指を入れることさえできなくなっている。
「ど、どうしよう・・・張り付いちゃったわ」
私は慌ててロッカーを開けて、扉に付いた姿見で自分の姿を映し出す。
そこには茶色の肩までの髪ととび色の瞳をした黒い全身タイツの女性が映っていた。
肌に密着した全身タイツはしわ一つ無く、見事なまでのプロポーションを見せている。
「これが・・・私?」
私のプロポーションはこんなには・・・
私は背中を映したり横から映したりとくるくる鏡の前で回ってみる。
綺麗・・・
すごく自信がわいてくる。
そう、全ての者を跪かせるような・・・
女王のような私・・・
そんなことさえ考える。
私は薄く笑みを浮かべると、そのままロッカーをあとにした。

ローズレッドに輝く胸と腰まわりのアーマー。
私はそれを手に取ると、脇の留め金をはずす。
どうしてそこが留め金になっているのか、どうやったらはずれるのか私は知っていた。
私は上から被るようにして胸のアーマーを取り付ける。
私の胸を覆うようにローズレッドのアーマーが被さった。
次に腰まわりのアーマーを下から履くようにして取り付ける。
これでローズレッドのブラジャーとパンティーを穿いたかのように私の躰は保護される。
銃弾ごときでは傷付きもしないアーマー。
なんて頼もしいのだろう。
残りは両手のガントレットと、両足のブーツ。
私はまずブーツを履く。
ローズレッドで統一されたブーツは私の足にピッタリと収まった。
立ち上がるとかかとの高いピンヒールが少々不安定だったが、少し歩いてみただけですぐに慣れることができた。
最後はガントレット。
手の甲と手首から肘までをカバーする物だ。
これで殴れば装甲車といえども穴が開く。
私は留め金をはずして右手から左手と順に取り付けた。
これで私は地底帝国の女幹部エメリアのコスチュームを全て身につけたのだった。

「うふふ・・・私は地底帝国の女幹部エメリア。地上人ども、我が前にひれ伏すがいい・・・なーんてね」
私はロッカーの姿見に映った姿を見る。
このコスチュームは本当に気持ちがいい。
ずっと着ていたくなる。
明日か明後日にはラボに引き渡さなければならないのに・・・
「それまでは・・・いいよね」
私は自分自身に言い聞かせる。
こんな姿をしているところを見られたら、きっと気が狂ったと思われるかもしれない。
ディフェンサーチームの司令官が敵のコスチュームを着ているのだから当然だ。
でも・・・
椅子にかけられた制服を見る。
それがすごく違和感のあるもののように感じて仕方が無かった。
  1. 2006/11/19(日) 19:27:35|
  2. 地底帝国の女幹部
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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