このたび、また新しいリンク先が増えることになりました。
しかも私の書いたSSがきっかけといううれしいリンクです。
リンクしていただきましたのは、せぼい様が管理人をなさっておられるイラストサイト「
- aka -」様です。
(サイト名をクリックすると、リンク先にジャンプできます)
「- aka -」様は、商業誌にも作品を掲載なさっていらっしゃるせぼい様の素敵なイラストがいっぱいのすばらしいサイト様です。
せぼい様の描く女性は、みな豊かな胸をしておられ、とてもエロティックで魅力的です。
一度ご覧になられれば、きっとその魅力に病み付きになられることと思います。
実はせぼい様のサイト「- aka -」様は、私は以前より存じておりました。
寝取られ好きな舞方としては、ドラクエ5にでてくるビアンカorフローラと、馬の魔物ジャミ様との絡みは美味しいシチュでございまして、そういった作品を探していたときにめぐり合ったサイト様なのでございます。
ご覧になっていただくとわかりますとおり、せぼい様もフローラやビアンカのイラストを描いておられ、私が以前掲載しましたフローラ&ジャミのSS「奪われたフローラ」に心惹かれられたとのことで、このたびリンクを申し出てくださったのです。
はからずもドラクエ5が結んでくださった縁でございまして、こうして相互リンクさせていただけましたことは、まことにうれしいことでございます。
そこでこのたび、相互リンク記念としてちょっとしたSSを書いてみました。
以下に掲載させていただきますので、よろしければお楽しみいただけましたらと思います。
あらためまして、せぼい様、相互リンクしてくださり、ありがとうございました。
以下SS
(ふたなり・寝取られ注意)
[新リンク記念]の続きを読む
- 2009/06/13(土) 21:18:13|
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「奪われたフローラ」の最終回です。
楽しんでいただければうれしいです。
それではどうぞ。
3、
「おめえ・・・強いじゃねえか・・・けどジャミさまにはかなわねえぜ。ケケケ・・・ぐふっ!」
息絶えるキメーラLv.35。
ようやくのことでこのデモンズタワーの頂上にまで上ってきて、強敵のオークLv.20とキメーラLv.35を倒したヘボヘボはホッと息をつく。
あと一息だ。
あと一息でフローラのいる部屋にたどり着く。
あと一息で愛する妻の姿を再び見ることができる。
そして二人でグランバニアに戻るのだ。
可愛い二人の子供たち、ワクワクとテカテカが待つグランバニアの城に戻るのだ。
彼の後ろにはここまで一緒に戦ってきた仲間たちがいる。
ピエール、メッキー、ベホマン・・・
いずれも魔物たちだが、今では改心してヘボヘボとともに戦ってくれる頼もしい仲間たちだ。
彼らと一緒ならばジャミにだって負けることはない。
ヘボヘボはそう思い、下へ下る階段を降りていった。
「ん・・・んふぅ・・・ん・・・んちゅ・・・」
そこにはジャミがいた。
「ん・・・ああん・・・ふふ・・・美味し・・・」
直立した馬が、白い躰に紫の鬣をした直立した馬がいた。
だが、その前にうずくまっているのは何だ?
白くなまめかしい肌を晒し、黒い淫靡な布で躰をちょっとだけ覆っている。
青く背中まで流れる髪がさらさらと輝いている。
ぺたんと床に座り、ジャミに向かって何かをしているその姿。
それは何かの悪夢だろうか・・・
「フローラ・・・」
ヘボヘボは思わずその名を口にする。
「ん・・・んん・・・んちゅ・・・んちゅ・・・ぷあ・・・」
振り返ることなく彼に背中を向け続けるその姿。
一体これはなんなんだ・・・
「グフフフ・・・フローラよ、お前の夫が来てくれたぞ。挨拶をしてやらないか」
にやりと笑うジャミ。
「ぷあ・・・はぁい、ジャミ様ぁ」
美味しそうに舐めしゃぶっていたジャミの肉棒から顔を上げるフローラ。
その顔には淫蕩な笑みが浮かんでいる。
「うふふふ・・・お久しぶりですね、あなた」
スッと立ち上がり振り返るフローラ。
胸と股間を覆うだけの黒く淫靡な下着にガーターベルトをつけ、すらりとした長い脚を太ももから覆っている黒いストッキングを吊っている。
手には中指で引っ掛ける形の指無しの黒の手甲つき手袋を嵌め、足元は黒いエナメルのハイヒールがつややかに光っている。
目元には黒いアイシャドウが引かれ、唇には黒い紅が載せられており、額には禍々しい形のサークレットが嵌まっている。
そして、可愛くくぼんだおへそには黒光りする宝石が嵌め込まれていた。
「フ、フローラ・・・その姿はいったい?」
まるで娼婦ともいえるようなその姿にヘボヘボは驚きを隠しきれない。
「うふふ・・・いかがですかこの格好? 似合うでしょ? ゲマ様とジャミ様にいただきましたの。“えっちなしたぎ”って言うんですのよ。ご存知でしょ? なんたってグランバニア城の宝物庫に隠しているぐらいですものね」
クスッと笑うフローラ。
白く滑らかな指先が口元に運ばれる。
「ど、どうしたんだフローラ。いったい何を言っているんだ?」
「うふふふ・・・まだおわかりにならないのかしら。私はもうあなたの妻なんかではないってことを」
そう言ってフローラは左手の薬指に嵌まった“みずのリング”をゆっくりとはずす。
いぶかしがるヘボヘボの目の前で、フローラははずした“みずのリング”を床に落とし、そして、黒エナメルのハイヒールのかかとで踏み潰した。
「な?」
ヘボヘボは愕然とする。
“みずのリング”は結婚の誓いで交し合った大事な指輪。
それをあんなふうに踏みつけるなんて・・・
いったいここに来るまでの間にフローラに何があったというのだろう?
「うふふふ・・・私はもう、身も心も愛するジャミ様のものなのですわ。あなたなんかに迎えに来てなど欲しくなかったのよ」
そう言ってジャミに身を寄せしなだれかかるフローラ。
うっとりとしてジャミの腕に抱かれるフローラの姿にヘボヘボは目の前が真っ暗になる。
「グフフフ・・・そういうことだ。この女はもはやオレ様のもの。お前はおとなしくここでくたばるがいい」
「くっ、ふざけるな! ジャミ、貴様がフローラをたぶらかしたんだな! お前を倒してフローラを取り戻す!」
キッとジャミをにらみつけるヘボヘボ。
“はじゃのつるぎ”を抜き放ち、今にもジャミに切りかかろうと身構える。
「グフフフ・・・バカめ」
ジャミはにやりとほくそえむ。
「行くぞ、みんな! てぇーい!!」
そう言って飛び出そうとしたヘボヘボの脚に何かが絡みつく。
「えっ?」
思わずバランスを崩して倒れこむヘボヘボ。
見ると脚にベホマンの触手が絡み付いている。
「べ、ベホマン?」
ヘボヘボは何が起こったのかわからなかった。
「うふふふ・・・おろかな人」
フローラが笑みを浮かべながら、置いてあったムチを取る。
金属のとげの付いた“はがねのムチ”だ。
「あなたの連れてきた魔物たちはすでに私が支配したわ」
「な、何だって?」
ヘボヘボは愕然とした。
魔物たちは彼の澄んだ目を見て改心したのではなかったのか?
だが、彼と一緒に戦ってきた仲間たちは、今彼を取り押さえようと手足を押さえつけてくる。
「うふふふ・・・私もゲマ様のお力で“まものつかい”になったのよ。あなたと違い暗黒の力で魔物を支配する魔物使いにね。ああ、あのしましまの服を着てなかったからわからなかったのかしら?」
くすくすと笑うフローラ。
ヘボヘボが窮地に陥ったことが楽しくて仕方がないようだ。
「フローラ・・・」
「うふふふ・・・ゲマ様やジャミ様にはむかう愚か者は私が始末してあげるわ。安心して。あのワクワクとテカテカとか言う子供たちもいずれあなたの元へ送ってあげる。そうすれば寂しくないでしょ?」
ムチをピンと張り、今にも振り下ろそうかというフローラ。
「フ、フローラ。あの子たちは君の・・・」
「うるさいわね! あんな子供たちが私の子供だなんて考えたくもないのよ! 私はこれからジャミ様の子を生むの。人間の子供などどうでもいいのよ!」
ピシッと言う音がしてヘボヘボの躰に激痛が走る。
「フ、フローラ・・・」
「うふふふ・・・間もなく魔物たちがグランバニアを攻撃するわ。あの城は王のいないまま崩壊するの。そして新たな王としてジャミ様が君臨するのよ。もちろん王妃は私としてね。うふふふふ・・・」
「グフフフ・・・そういうことだ。まあ、ここで死ぬお前にはどうでもいいことだがな」
仲間だった魔物たちに手足を拘束されたまま、ヘボヘボは悔しさに歯噛みした。
「ああ・・・ジャミ様ぁ・・・待ち遠しいですわ。ジャミ様とともにグランバニアを支配するその日が。そのときにはたっぷりと可愛がってくださいませ」
うっとりとジャミを見つめるフローラ。
その目にはもう足元にいるヘボヘボの姿は映らない。
「グフフフ・・・もちろんだ。腰が抜けるほど可愛がってやるぞ。だがまずその前に・・・」
「ええ・・・わかっておりますわ。“あなた”」
フローラはジャミに向かってうなずく。
「目障りなこの男を始末しろ。ですね。うふふふ・・・」
「フローラ・・・」
冷たい目で自分を見下ろしてくるフローラにヘボヘボはぞっとする。
「さようなら、ヘボヘボさん。あなたを一時でも愛したことなど、もう二度と思い出すことはないと思いますわ。うふふふふ・・・ザ・ラ・キ」
自分に向かって死の呪文を唱えてくるフローラ。
ヘボヘボの見たそれが最後の光景だった。
END
いかがでしたでしょうか?
二次創作なのでドラクエⅤを知らないとわかりづらいかと思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
よければ感想などお聞かせいただけるとうれしいです。
それではまた。
- 2009/02/10(火) 21:06:07|
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「奪われたフローラ」の二回目です。
楽しんでいただければ幸いです。
ではどうぞ。
2、
何かがおかしかった。
このデモンズタワーに連れて来られてもう何日経ったのか・・・
あれほど恋焦がれていた夫のことや二人の子供のことが思い出せなくなってきているのだ。
代わりに思い出すのは醜悪な馬面の魔物の姿。
ジャミというその魔物のことを思うだけで、フローラの心はかき乱される。
夫を・・・ヘボヘボのことを愛しているはずなのに・・・
ジャミのことを考えると胸がうずき、股間はしっとりと濡れてくる。
おかしいのに・・・
変なのに・・・
それどころか間違いなくあの魔物に躰を犯されているというのに・・・
憎むことができないのだ。
それどころか最近では犯してほしいとさえ思い始めている自分がいる。
私は狂ってしまったのかもしれない・・・
フローラは唇を噛み締める。
あなた・・・
お願い・・・
私を早く助けに来て・・・
私が狂ってしまわないうちに・・・
あなた・・・
あなた・・・
「グフフフフ・・・愛しいフローラよ。また会いに来てやったぞ」
扉が開き、馬面の魔物ジャミがその巨体を部屋の中に入れてくる。
「ひっ」
フローラはその醜悪な姿に思わず部屋の隅にあとずさる。
「おやぁ? まだ俺様のことが怖いのか? 心配するな。今日もたっぷりとよがらせ狂わせてやるぜ。おいバルーン、さっさとメダパニをかけてやれ」
のしのしと巨体をフローラに近づけながら、ジャミは背後の手下モンスターに命令する。
ムササビとアヒルの合いの子のような魔物バルーンは、その飛膜の目玉模様でメダパニをかけることができるのだ。
「いやぁっ! やめてぇっ! もう私を狂わせないでぇっ!!」
必死に抵抗しようとするフローラ。
だが、バルーンの目玉模様には逆らえず、メダパニがフローラの脳をまたしても混乱へと導いていく。
「あ・・・ああ・・・」
すぐに目がとろんとなり、フローラは自分が何をしているのかがわからなくなっていく。
「グフフフ・・・さあ、フローラよ。愛しいお前の夫に挨拶するのだ」
「・・・はい・・・ジャミ様・・・私はジャミ様の妻です・・・愛する夫ジャミ様に身も心も捧げます・・・」
自分が何を言っているのかわからないまま、フローラは教えられた言葉を口にする。
だが、言葉を口にすればするほど、その言葉はフローラの中で真実にすり替わっていくのだ。
「グフフフ・・・いい娘だ。さあ、お待ちかねのモノをやろう」
ジャミの股間から巨大な肉棒がそそり立つ。
ムワッと牡の体臭が広がり、フローラは無意識に顔を歪ませる。
「どうした? 何を嫌がっている? お前はこのにおいが大好きなくせに」
ジャミがいやらしい笑みを浮かべる。
フローラに刷り込みを行い、自分好みに仕上げていくのは本当に楽しいことなのだ。
「あ・・・ああ・・・そうだわ・・・なんていいにおいなの・・・」
臭いといっていいジャミの牡の体臭を、すぐにフローラの脳はいい香りとして刷り込まれたことを思い出す。
臭さに顔をそむけていたはずなのに、フローラはそのにおいを嗅がずにはいられなくなってしまう。
鼻を鳴らすようにしてジャミの体臭を嗅ぎ始めるフローラ。
まるで芳しい花の香りでも嗅いだかのように、フローラはうっとりと胸の奥までジャミの体臭を吸い込んだ。
「しゃぶれ。お前の大好きな肉棒をしゃぶるんだ」
「はい・・・ジャミ様」
何もためらうことなくフローラはジャミの肉棒を舐めしゃぶり始める。
それが愛しく美味しく感じるように仕向けられたフローラの脳は、ジャミの巨大な肉棒を口にすることを喜びと感じるようになっていた。
舌を這わせ刺激を与え袋を愛撫して射精を促す。
こういった行為をまるで当たり前のようにフローラは行い、それ自体を楽しんでいく。
メダパニで混乱した脳は、ただそれを受け入れ刷り込んでいくのだった。
「ひゃあっ」
思わず声を上げてしまうフローラ。
飛び出した白濁液が頭から降りかかる。
「グフフフ・・・お前の大好きなミルクだ。よく味わうがいい」
「ああ・・・はい・・・美味しいです・・・」
降りかかった白濁液を指ですくって口に入れる。
とても不味いはずなのに、美味しいとしか感じない。
「美味しい・・・ミルク大好き・・・」
フローラは顔についた白濁液を舐め終えると、乳房に吸い付く赤子のようにジャミの肉棒に吸い付いて残りを全て吸い出していく。
「グフフフ・・・今度は下の口にもミルクを飲ませてやろう」
「ああ・・・はい・・・お願いします、ジャミ様・・・」
自ら横になり下着をずらすフローラ。
もはやフローラは快楽をむさぼることしか頭にない。
自らの手で秘部を開き、ジャミの肉棒を受け入れる。
「あ・・・ああーん・・・」
室内にフローラの嬌声が広がった。
******
「ああ・・・ん・・・ああ・・・ジャミ様・・・ジャミ様ぁ・・・」
白く細い指がくねくねと動く。
ぷっくりと膨らんだ敏感なところを何度も擦り、そのたびに切ない声が漏れる。
「ああん・・・いいですぅ・・・ジャミ様のがいいのぉ・・・」
フローラの脳裏に巨大な肉棒が思い浮かぶ。
最近はヘボヘボのことなど思い出すことはなくなっていた。
それどころか、寝ても覚めても愛しいジャミのことを考えるようになり、こうして自慰にふけるのだ。
それがおかしいことなどとは思いもしない。
フローラの思考はそこまでゆがめられてしまっていたのだった。
「グフフフ・・・お楽しみだったかな?」
いつものように姿を現す馬の魔物ジャミ。
ドクンとフローラの心臓が跳ね上がる。
聞きたかった声。
見たかった姿。
ああ・・・
愛しい方・・・
ジャミ様・・・ジャミ様・・・ジャミ様・・・
「ああ・・・ジャミ様ぁ・・・お待ちしておりましたぁ」
すぐに自慰をやめてベッドから立ち上がる。
そして愛しいと刷り込まれてしまったジャミの胸に飛び込んだ。
「グフフフ・・・なかなかそそる格好をしているじゃないか」
胸に飛び込んできたフローラを抱きとめながら、ジャミはその姿にほくそえむ。
今のフローラはグランバニア城から連れ去られたときのドレス姿ではなく、黒いレースの付いたブラジャーを胸につけ、腰にはガーターベルトを嵌めて太ももからつま先までを覆う黒いストッキングを吊っている。
これにベッドに脱ぎ捨てられた黒いショーツを組み合わせれば、“てつのむねあて”にも劣らない防御力を持つ“えっちなしたぎ”となるのだが、この場では防御力よりも見栄えが重視されているのは間違いない。
「うふふ・・・ゲマ様からいただきましたの。“えっちなしたぎ”って言うんですって。いかがですか、ジャミ様ぁ?」
甘えるようにジャミの胸に頬を摺り寄せるフローラ。
もはやその目にはジャミの姿しか映らないかのようだ。
「グフフフ・・・似合うぞ。へそに光るものも可愛いじゃないか」
「うふふ・・・ジャミ様にいただいたものもちゃんと付けておりますわ」
ブラジャーをめくり上げ、乳首に輝くピアスを見せつけるフローラ。
可愛くくぼんだおへそにも同様にピアスが輝いている。
メダパニによって刷り込まれた思考が彼女を支配しているのだ。
「グフフ・・・可愛い奴。もっともお前が待っていたのはこいつじゃないのか? ん?」
いつものようにそそり立つ肉棒を見せつけるジャミ。
「ああ・・・こちらもお待ちしておりましたぁ・・・うふふ・・・ああ・・・いいにおい・・・」
ひざまずいてうっとりとジャミの肉棒を握り締めるフローラ。
そのまま胸いっぱいにジャミの体臭を吸い込んでいく。
「ああ・・・もう待ちきれないですわ。おしゃぶりしてもよろしいですか、ジャミ様ぁ?」
上目遣いで甘えるフローラ。
無論ジャミに拒否するつもりはない。
「いいとも。たっぷりと味わうがいい」
ジャミが言うと同時にフローラは肉棒にむしゃぶりついた。
「あん・・・あん・・・あはん・・・はぁん・・・」
パンパンと肉と肉がぶつかり合う音が響く。
「ああ・・・いいっ・・・いいのぉ・・・ジャミ様のおチンポいいのぉ!」
秘部をずんずんと突き上げる巨大な肉棒にフローラは酔いしれる。
もはやメダパニをかけられなくても、フローラは自らジャミの肉棒を欲するようになっていた。
「あ・・・ああ・・・いいですか? イっても・・・イってもいいですか? ジャミ様ぁ・・・」
「グフフフ・・・いやらしい奴め。夫のチンポ以外でイってもいいのか?」
「あ・・・ああ・・・いいの・・・あの人なんかもうどうでもいいのぉ・・・ジャミ様の・・・ジャミ様のおチンポがいいのぉ・・・」
フローラが首を振る。
脳裏に一瞬浮かんだヘボヘボの姿を、彼女は自ら振り払ったのだ。
「ふん、夫も子供もどうでもいいか? お前はこのチンポさえあればいいんだろう?」
ずんずんとフローラを突き上げながら、ジャミはいやらしく笑っていた。
「ああん、そうですぅ・・・夫も子供もいりませぇん・・・私はジャミ様がぁ・・・ジャミ様のおチンポがあればいいんですぅ・・・イく、イくぅ・・・」
「いいぞ、イけ。イってしまえ!」
いっそう激しく突き上げるジャミ。
「イ、イきますぅ・・・イくぅっ!!」
全身を震わせて絶頂に達するフローラ。
それと同時にジャミの肉棒も締め付けられ、ほとばしる熱いものを注ぎ込む。
くったりと力の抜けたフローラを脇に寝せ、ジャミは気だるい満足感を味わった。
「ホッホッホ・・・どうやらフローラは完全にジャミの虜になったようですね」
「こ、これはゲマ様。はい。この女はもうオレの言いなりです」
突然現れたゲマに驚きながらも、ジャミはとなりで寝息を立てているフローラの頬を撫でる。
「ホッホッホ・・・どうやらグランバニアの王がこの塔のことに気が付いたようです。もうすぐここへ来るでしょう」
「なんと。うむむ・・・奴隷の境遇から抜け出したばかりか、我らの邪魔をする小憎らしい奴め」
「ホッホッホ・・・だがここまでです。この塔にたどり着いたとき、彼は絶望というものを思い知ることになるでしょう。そのための最後の仕上げをしてしまいますよ」
ベッドで寝ているフローラに眼をやり、にやりと笑みを浮かべるゲマ。
「最後の仕上げ?」
ジャミは怪訝そうに首をかしげる。
「ホッホッホ・・・まあ、見ていなさい」
ゲマはゆっくりとフローラに近寄った。
- 2009/02/09(月) 21:11:43|
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今日から三日連続でSSを一本投下します。
ただ、オリジナルの世界ではなくドラゴンクエストⅤの二次創作なので、世界を知らない人にはちょっとわかりづらいと思いますし、細切れ投下のようなものなので申し訳ないのですが、楽しんでいただければと思います。
それではどうぞ。
「奪われたフローラ」
1、
まあ・・・リリアンが私以外の者になつくなんて・・・
うれしい・・・私を選んでくださったんですね・・・
うふふ・・・これからよろしくお願いいたします・・・“あなた”
見渡す限り砂ばかり・・・暑いですわ・・・
海って広いんですね・・・どこにも陸がありませんわ・・・
メダル王様って妙なものをお集めなんですね・・・あなたもよく集めたものですわ・・・
険しい山道ですね・・・大丈夫ですわ・・・
ごめんなさい・・・足手まといになりたくなかったの・・・
目元があなたそっくりですわ・・・二人とも優しい大人になってくれますように・・・
幸せですわ・・・あなた・・・
ハッと目が覚める。
ここはどこ?
フローラは周りを見渡した。
殺風景な部屋。
寝かされているベッド以外に何もない。
冷たい雰囲気が漂うここは、まさに牢獄と言ってよかった。
ああ・・・
あらためて自分があの幸せな世界から隔絶されてしまったことを思い知る。
あの温かいグランバニアの城。
夫と二人の子供、それに優しく勤勉な城の人々。
それらが手に届かないところに行ってしまった。
フローラの頬を涙が伝う。
冷たく暗い牢獄に、悲しいすすり泣きの声が響いた。
「ホッホッホ・・・目が覚めたようですね」
突然室内に声が響く。
フローラは思わず顔を上げた。
固く閉ざされていた扉がいつの間にか開き、背の高い細面の不気味な男が立っている。
口は耳まで届こうかというばかりに裂け、薄笑いを浮かべていた。
「あ、あなたは?」
不気味さを漂わせる男に、フローラは本能的な恐怖を感じた。
「ホッホッホ・・・我が名はゲマ。あなたの夫とは多少の因縁がある者ですよ」
「ゲマ・・・」
その名はフローラも夫から聞いたことがある。
夫ヘボヘボの父パパスを殺したという邪悪な魔術師。
そのために夫は長い間・・・そう、十年もの間奴隷として生きてきたのだという。
それがどんなにつらいことか・・・
フローラには想像もできないことだったが、少しでもその悲しみを癒してあげるべく彼女なりに努力してきたのだ。
そのゲマが今また自分をさらい夫に悲しみを味わわせているというのか・・・
フローラの胸は痛かった。
「私をどうするつもりなのですか?」
フローラはあらためてゲマをにらみつける。
こんなところでくじけるわけにはいかない。
グランバニアの王となった今、夫が自分を助けに来ることは難しいだろう。
だが、希望を持って生きていれば、きっと奇跡が起こってくれるに違いない。
前王のオジロン様も、夫の身の回りのお世話をしていたというサンチョさんもいる。
きっと誰かが救出に来てくれるはず。
その日まで生きなければならないのだ。
「私を人質にしようとしても無駄です。夫はグランバニアの王。私よりも国の安全を選ぶはず。私に人質としての価値などないのです」
心の片隅では夫に来て欲しいと願う気持ちが確かにある。
だが、それは願ってはいけないことなのだ。
今までもさんざんあの人には迷惑をかけてきたのだ。
だから・・・
これ以上迷惑をかけてはいけない。
あなた・・・
どうか私のことはもう・・・
「ホッホッホ・・・」
ゲマが笑っている。
「何がおかしいのです?」
フローラは強い口調で言い放つ。
「あなた自身が信じてもいないことを言うものではありません。あなたの夫、あのヘボヘボがあなたを見捨てて探さないと思いますか?」
フローラは唇をかんだ。
そうかもしれない。
今まで幾多の困難に打ち勝ってきた彼ならば・・・
きっと私を探しに来てくれるかもしれない・・・
だがフローラは必死に首を振る。
それはいけない。
それでは私はやっぱり彼に迷惑をかけてしまうことになる。
罠とわかっていることに、むざむざと彼を呼び寄せることになってしまう・・・
来てはだめ・・・
来てはいけないの・・・
「ホッホッホ・・・おそらくあの男は来るでしょう。たとえどんなことがあってもこのデモンズタワーにくるでしょう」
ああ・・・
おそらくゲマの言うとおりだわ・・・
あの人は来てしまう・・・
国王としての責務など捨てて私を探しに・・・
そして・・・私はそれを喜んでいる・・・
ああ・・・私はなんて罪深いの・・・
フローラはいたたまれなくなり、両手を組んで祈りを捧げる。
かつて海辺の修道院で修行していたので、神に朝夕の祈りを捧げたりするのが当たり前のフローラは、やはり苦しみから救ってもらうためには祈りを捧げるのだった。
「ホッホッホ・・・思い悩むことはありませんよフローラさん」
「えっ?」
思いもかけぬ言葉にフローラは顔を上げる。
「あの男のことなど思い出したくなくなるようにしてあげましょう」
「ええっ?」
フローラは驚いた。
それはいったいどういうことなのか?
「ホッホッホ・・・私の部下のジャミがあなたをいたく気に入ったようでしてねぇ。自分のものにしたいと言うのです。その頼みを聞き入れてやることにしたのですよ。ホッホッホ・・・」
ゲマの笑みを浮かべた口元がさらに歪む。
「自分のものって・・・そんな・・・私はあの人の妻です。あの人以外にこの身を許すことなどありえません」
両手で自分自身を抱きしめるフローラ。
あまりのことに背筋がぞっとする。
「ホッホッホ・・・愛する妻が魔物に心奪われていたとなれば・・・あの男の苦悩する顔が目に浮かぶようですね」
ゆっくりと近づいてくるゲマ。
フローラは思わず叫んでいた。
「い、いやぁっ! いやです! 助けて、あなたぁ!」
だがその叫びが届くことはなかった。
「メダパニ!」
ゲマの口から呪文の言葉が発せられる。
とたんにフローラの目から生気が失われ、とろんと焦点が合わなくなった。
混乱をもたらす呪文メダパニは、戦闘中に敵味方の区別を失わせて同士討ちをさせたりする呪文である。
効果時間は長くはないものの、かかっている間は理性的な判断ができなくなり、何が正しく何が間違っているのかわからなくなってしまうのだ。
「ホッホッホ・・・かかったようですね。ジャミ、入りなさい」
「ハッ、ゲマ様」
ゲマに呼ばれて入ってきたのは、まさに直立した馬と言っていい魔物ジャミだった。
白毛の躰に紫色の鬣(たてがみ)をなびかせ、ムキムキと筋肉の発達した上半身を誇らしげに晒しているジャミは、メダパニで混乱したフローラの顔をいやらしそうに眺めていく。
「ホッホッホ・・・今からはじめましょう。この清楚な女がどう変わるか・・・見ものですねぇ」
口元を笑いでゆがめたゲマは、心底これからのことを楽しみにしているようだった。
「フローラさん、あなたの愛する者の名を答えなさい」
「は・・・い・・・私の愛する人はヘボヘボさんです・・・」
ゲマの質問に何も考えられずに素直に答えてしまうフローラ。
その目は何も見ておらず、ただ宙を見つめるのみである。
「ホッホッホ・・・それは違いますね。あなたが愛しているのは目の前にいるジャミです」
ゲマのいやらしい笑い声が響く。
「私が愛しているのは・・・ジャミ・・・」
メダパニで混乱してしまっているフローラの脳にゲマの言葉が染み通っていく。
「そうです。あなたが愛するのはこの目の前にいるジャミです。ジャミ様と呼びなさい」
「グフフ・・・なるほど。さすがはゲマ様。ありがとうございます」
ゲマが行なおうとしていることを理解したジャミの口元にも笑みが浮かぶ。
「私が愛するのはジャミ・・・ジャミ様・・・」
何もわからないままにゲマの言葉を心に刻んでしまうフローラ。
「そうです。あなたが愛するのはジャミ。ヘボヘボは愛してない」
「私が愛するのはジャミ様・・・ヘボヘボのことは愛してません・・・」
「いいですよ・・・そのことをよく心に刻み付けなさい」
ゲマの言葉にフローラはうなずいた。
「しかしゲマ様、所詮メダパニの効果は一時的なものなのでは?」
「ホッホッホ・・・確かにそのとおりです。ですが、これを毎日繰り返せば・・・この女の心はやがてメダパニで植えつけられた思考を受け入れてしまうでしょう」
「なるほど。まさに洗脳というわけですな。グフフフフ・・・」
「そのとおりですよ。ホッホッホ・・・」
ゲマとジャミは顔を見合わせて笑いあう。
「では、こいつが大好きな女にも変えていただけませんかね?」
ジャミは股間からそそり立つ肉棒を見せ付けた。
「ホッホッホ・・・たやすいことです。フローラ、よく見なさい。あなたはこれが大好きなのですよ」
ゲマにいわれるままにジャミの肉棒を見つめてしまうフローラ。
グロテスクにそそり立つ肉棒は巨大で、まるで腕ほどの太さがあるようだった。
「私は・・・これが好き・・・」
フローラの心にまたしてもゆがめられた思考が刷り込まれる。
「そうです。あなたはこれが愛しくて愛しくてたまらないのです。これがどういうものかは知っているでしょう?」
こくんとうなずくフローラ。
それがヘボヘボのモノであれば何度も受け入れ気持ちよくしてもらい、二人の子供を授かる元になったものだ。
愛しいヘボヘボのモノがフローラの脳裏をよぎる。
だが、メダパニで混乱した脳は、それをあっさりと目の前でそそり立つモノにすり替えてしまうのだった。
「これをおしゃぶりしたことはありますか?」
こくんとうなずくフローラ。
初めてのときは汚いと思ったものだったが、ヘボヘボが気持ちよさそうにしているのを見ると、そんなことは思わなくなっていたし、自分も何か満たされるような気がしたものだったことを思い出す。
「ではおしゃぶりをしなさい。あなたはジャミのこれが大好きなのです」
「はい・・・」
スッとひざまずきジャミの肉棒を舐め始めるフローラ。
混乱した頭はこれが魔物のモノであることを理解していない。
あまりにも大きすぎ、頬張ることが困難なジャミの肉棒をただただフローラは舐めしゃぶる。
「おおっ、いいぞ。これはいい!」
痛いほどいきり立ったジャミの肉棒は、やがてびくびくと脈動して白濁液をぶちまける。
それをもろにかぶることになったフローラは、ただぼんやりとかけられるままになっていた。
「ホッホッホ・・・よかったですねフローラ。あなたの大好きなミルクですよ。たっぷりとお舐めなさい」
その言葉にフローラはうなずき、顔にべっとりとかけられた白濁液を指ですくって舐め取っていく。
「ホッホッホ・・・この様子を見たらあのヘボヘボが何と言うでしょうねぇ」
フローラの痴態にゲマは笑いが止まらなかった。
- 2009/02/08(日) 21:03:48|
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DQ5二次創作二日目です。
楽しんでいただければ幸いです。
よければ拍手コメントなどいただけるとうれしいです。
「う・・・あれ・・・」
あたしはひんやりとした暗がりの中で目を覚ます。
「うあ・・・」
上半身を起こしたあたしは、自分が何も着ていないことに気がつき、思わず両手で躰を隠した。
ここはどこだろう・・・
着るものはないかしら・・・
あたりを探ってみるものの、岩壁に囲まれた小部屋のようになっているらしく、寝台代わりのわらぐらいしか置いてない。
武器も防具も何もない・・・
それどころか下着すらない・・・
一体あたしをどうしようというのだろう・・・
父の敵も討てないままこうして捕らわれるなんて・・・
あたしはこぼれそうになる涙を振り払う。
泣いていたって仕方がないのだ。
それよりも逃げ出す手段を考えなくちゃ・・・
「ホッホッホッ・・・目が覚めたようですね」
突然ゲマが現れた。
あたしはもうびっくりして敷きわらの中にもぐりこむ。
こんなものでも躰を多少は隠せるだろう。
裸を見られるなんて耐えられないよ。
「ホッホッホッ・・・驚かせてしまいましたか。まあいいでしょう。ようやく実験の準備が整いましたのでね」
そうだった。
ゲマはあたしで何か実験するって言ってたんだ。
どうしよう・・・
実験なんていやだよぉ・・・
「では始めましょう」
ゲマはそう言うと何事かをつぶやき始めた。
魔法?
あたしは思わず身を硬くする。
黒焦げにされた山賊のボスの姿が脳裏に蘇る。
あんな目に遭うのはいやだ。
誰か助けて・・・
でも違っていた。
ゲマのつぶやきが終わると、床の上に緑色のぶよぶよしたものが広がり始めたのだ。
もしかして、あれは噂に聞くバブルスライム?
毒をもつ厄介なモンスターだわ。
あたしはなるべくバブルスライムから離れるように壁のほうににじり寄った。
「ホッホッホッ・・・怖がることはありません。こいつはただのスライムです。バブルスライムではありませんよ」
えっ?
バブルスライムじゃない?
でも緑色のスライムなんて聞いたこと無いわ。
それに裸の今はただのスライムだって強敵よ。
「もっとも・・・少しばかり特殊ですがね」
ゲマがそう言ってにやっと笑った瞬間、緑色のスライムがあたしに向かって飛び掛ってきた。
「いやーっ!」
あたしはわらくずを投げつけて逃げ出した。
でも、わらくずなんて何の役にも立ちはしない。
緑色のスライムはべちゃっという感じであたしのいたところに広がって行く。
下に敷かれたわらがみるみるうちに溶かされていった。
「ひっ」
あたしは思わず悲鳴を上げてしまう。
普段何気なしに戦っていたスライムが、急に恐ろしいものに思えてきた。
「あっ」
何とか逃げ回っていたあたしだったが、ついに足にスライムが絡みつく。
「ひぃっ」
思わず足を取られてしりもちをついたあたしに、スライムは容赦なくかぶさってくる。
「いや、いやぁぁぁぁぁっ」
悲鳴を上げて逃げようとするけど、粘つくスライムは振りほどけるものじゃない。
それどころか足を伝って躰中を覆い始めるのだ。
「いやぁっ! たすけてぇっ! 死にたくないよぉ!」
あたしは必死に助けを求めた。
緑のスライムはじわじわとあたしの躰を覆ってくる。
あたしは必死でもがくけど、蹴飛ばしても叩いてもぶよぶよのゼリーみたいなスライムには効き目がない。
ひんやりしたスライムは、やがてあたしの躰全体に覆いかぶさってくる。
逃れようにもどうにもできない。
そして、首からやがて口、鼻、目と覆われて、頭の上まですっぽりと包まれてしまうのだった。
息を求めて苦しむ肺。
すっぽりと覆われてしまったあたしは空気を求めて口を開ける。
でもそこには空気はない。
あるのはぶよぶよとしたゼリー状のスライムだけ。
苦しい・・・
苦しい・・・
苦しい・・・
スライムがあたしの開けた口から流れ込んでくる。
そればかりじゃない。
鼻の穴からもお尻の穴からも入ってくる。
ぶよぶよとした感触。
でも・・・
どうしてだろう・・・
なんとなく気持ちいい・・・
気がつくと苦しさはなくなっていた。
躰を覆うスライムは気持ちいい。
息をする必要もなくなっていた。
あたしの躰はスライムに覆われ、スライムによって生かされている。
ああ・・・
なんて安らいだ気分。
なんだかとってもいい気分だわ。
やがて、あたしの躰を覆っているスライムに変化が起こってきた。
スライムがあたしの躰の周りで固まり始めたのだ。
腕の周り、脚の周り、そして胴体の周り。
すべてでスライムが硬く固まっていく。
でも、それがすごく気持ちいい。
まるであたしの躰が作り変えられているみたい。
硬くなったスライムがあたしの躰にぴったりと張り付いて・・・
まるで金属のよろいの様になっていくの。
はがねのよろいってこんな感じかな。
なんだかあたし自身が硬くなっていくみたい。
すごく気持ちいいよ。
スライムはあたしの頭の周りでも固まっていく。
それは金属のヘルメットでもかぶっているかのように変わっていく。
でもちっともいやじゃない。
かわのぼうしやきのぼうしとはぜんぜん違う。
あたしの頭自体がヘルメットになったような感じ。
視界だって妨げられないし、鼻も口ももう必要ないから気にならない。
頭の先から脚のつま先まで金属質に変化したスライムに覆われたあたし。
ゆっくり起き上がって自分の姿を見下ろしてみる。
全身を光沢ある金属よろいで包んだ姿はまるで騎士のよう。
なんだかとっても素敵だわ。
あたしは足元に広がっている緑のスライムに腰を下ろす。
ぷよぷよっとした感触が気持ちいい。
するとスライムは私の腰の下でじょじょに形をたまねぎのような形に整えていく。
股間とお尻でスライムを挟み込んだような姿勢であたしはスライムに乗っかっていた。
うふふふふ・・・
あたしはスライムに乗っているんだわ。
ううん、違う。
あたしとスライムは一体なの。
もう誰もあたしたちを引き離すことはできないわ。
あたしはうれしくなって腰に形成された剣を抜き放った。
「ホッホッホッ・・・どうやら実験は成功のようですねぇ」
実験?
何の実験なのかしら。
あたしには関係ないと思うけど・・・
あたしはいい気分のまま剣を振って感触を確かめる。
うふふ・・・
これだけじゃないのよね。
あたしは魔法も使えるのよ。
頭の中に思い描いて呪文を唱えるの。
そうすればけがの回復もできるし相手を吹き飛ばすこともできる。
素敵だわぁ。
「スライムの騎士、スライムナイトといったところですか。クックック・・・」
ゲマ様が笑っている。
なんだかとてもうれしそう。
魔界の実力者であるゲマ様はとってもすごい魔力の持ち主。
あこがれちゃうわぁ。
「さあ、スライムナイトよ。その力を我に見せなさい」
スライムナイト?
あたしのこと?
わぁ・・・
なんて素敵な名前。
あたしはスライムナイト。
スライムナイトなんだわぁ。
「かしこまりました、ゲマ様」
あたしは剣を立ててゲマ様に忠誠を誓う。
うふふふふ・・・
この剣で早く人間を切り刻みたいわぁ。
村の連中なんてきっと一刀の下に切り伏せてやれるわね。
楽しみだわぁ。
あたしはお尻の下のスライムの部分をうねうねとくねらせて外へ向かう。
もうこのスライムはあたしの下半身。
あたしはこの先に待つ殺戮の楽しみに胸を躍らせて、かつての我が家へと向かうのだった。
END
- 2008/07/30(水) 21:04:13|
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またしてもDQ5ベースの二次創作短編を一本書いてみちゃったので、今日明日で投下します。
本当は短編なので一気に投下でもいいんでしょうけど、まあ、二日に分けてもったいぶらせてくださいませ。
「えいっ!」
どうのつるぎの一太刀が、せみもぐらの胴体を一薙ぎする。
こいつらは地中に巣をつくり、作物を荒らしまわる厄介なモンスターだ。
時々頭を抱えたような格好で身を守ったりもするけれど、正直に言ってそれほど手ごわい相手ではない。
爪の一撃だってかわのよろいを貫いてくるほどじゃない。
でも油断は禁物。
ほかのモンスターと集団で現れたりするから、そういったときには気をつけないとダメ。
一体に気を取られているうちに後ろからなんてこともあるからね。
さてと、今日もまあまあの収穫ね。
あたしは倒したモンスターの必要部分を切り取って袋に入れた。
モンスターはいろいろとお金になる。
せみもぐらの殻は粉にして飲むと咳止めになるし、何に使うのか知らないけれど、スライムだって売ればお金になるのよ。
だから冒険者なんて職業が成り立つってわけ。
もっとも、あたしは冒険者じゃないけどね。
「おじさーん、これ今日の獲物。また引き取ってよ」
あたしは村で唯一のよろず屋に獲物を持ち込んだ。
ここの親父さんがあたしから獲物を買い取り、そのお金で私はいろいろなものを買うってわけ。
もっとも、このあたりのモンスターはそれほど手ごわくない代わりにお金も安いから、あんまり贅沢はできないんだけどね。
大きなお城のある地方とかだと強いモンスターがいたりするらしいけど、そのぶん売ったときのお金も半端じゃないらしい。
優れた冒険者はそういったモンスターを退治して、銀でできたシルバーメイルとかはじゃのつるぎなんてのを装備しているっていうわ。
「そうさなぁ・・・15Gってところかな」
「う~・・・もう一声」
「12G」
「何で下がるのよ!!」
なんていう掛け合いをしながら、あたしは獲物を買ってもらう。
結局、やくそう二つと交換で話がついた。
1G儲けってことかな。
やくそうもバカにはならないのよねー。
もっとも、傷口に当てるとすぐに回復するので、大変便利なんだけどね。
「ねえ、おじさんとこでもてつのよろいとかはがねのつるぎなんてのは仕入れないの? せめてうろこのよろいとかさぁ」
あたしはよろず屋さんの店内を物色しながら訊いてみる。
まあ、どうのつるぎにかわのよろいでこのあたりは充分なんだけどさ。
「そういった品々はこっちまで回ってこないんだよ。強いモンスターの出る地域に優先的に回っちまうのさ。ま、それだけこのあたりは平穏な地域だってことだよ。お前さんもいるしな」
よろず屋のおじさんがにこにこしながらあたしの獲物を仕分けしている。
町で売るものとこの村で消費するものに分けているのだろう。
「まあ、そうなんだろうけどさ。あたしで役に立っているんならいいけど・・・」
「リゼッタは充分役に立っているさ。親父さんとおんなじだよ」
あたしはなんとなく照れくさくなって、かわのぼうしを目深にかぶった。
そうなのだ。
あたしは父の後を継いでこの村で戦士をやっている。
この村はあたしの生まれ育った村。
あたしの父はここでずっと村のために村の周囲のモンスターを退治してきた。
父のおかげでこの村は守られてきたのだ。
畑の作物を荒らしたり、家畜を襲ってくるようなモンスターは父がみんな退治してくれた。
だから小さくてもこの村はみんなが笑顔で暮らせる村なのだ。
その父が死んだのは五年前。
当時噂ではあちこちの城や町から子供がさらわれるってことがあったらしい。
父のことはお城にも名前が知られていて、事件の調査に駆りだされたのだ。
そこで父は強力な魔術師に出会ってしまったという。
人間離れした強力な魔力を持ち、二体の魔物を従えた邪悪な魔術師。
名前はゲマ。
かろうじて生き残った人から父の最期を聞かされた母は、間もなく後を追うように亡くなった。
だからゲマは父と母の敵。
出会ったら絶対に赦さない。
あたしは父の後を継いで戦士になり、この村を守りながら腕を磨いているのだ。
いつかゲマを倒すために・・・
「そういえば村はずれの洞窟にまたしても山賊が住み着いているらしい。猟師のメボットさんが危うく襲われるところだったって言ってたよ」
「ええっ? また?」
あたしはため息をつく。
村はずれの洞窟は基本的にモンスターが住み着くことが多いのだけど、時々あたしが退治してしまうとその後に山賊が住み着いちゃうことがあるのだ。
洞窟からは村から町までの道が近いので、格好のねぐらになるのだろう。
「折を見てまた頼むよ。あんまり被害がでないうちに」
「わかったわ。まったく懲りない連中ね」
あたしはよろず屋のおじさんにうなずいて見せると、そのまま店を後にした。
******
「ま、待て、待ってくれ」
情けない声を上げる山賊のボス。
数人の手勢をあたしに倒されると、あっさりと土下座しちゃった。
「あなたそれでもボスなの? 今までで一番情けないボスだわ」
あたしはどうのつるぎを突きつけて、油断無いようににらみつけた。
こういう奴ってえてしてこっちの油断を誘うもの。
でも油断さえしなければ、怖い相手じゃない。
「俺たちは頼まれただけなんだ。子供をさらってくれば金がもらえることになっているんだよ」
「えっ? 子供を?」
あたしはドキッとした。
それって・・・まさか・・・
「ホッホッホッ・・・様子を見に来てみれば小娘が一匹入り込んでいましたか」
背後からの声にあたしは背筋が凍るような寒気を感じた。
「あなたがゲマね!」
振り向きざまにあたしはどうのつるぎを構えなおす。
じっとりと皮手袋の中に汗をかくあたしの前には、不気味な笑みを浮かべた一人のローブ姿の魔術師がいた。
「ホッホッホッ・・・私の名を知っているとは。ただの小娘ではなさそうですね」
悠然としてまったく動じる様子のないゲマ。
確かに恐ろしい相手・・・
あたしはひざが震えるのを必死になってこらえていた。
「あたしはリゼッタ。五年前に貴様に殺された父の敵を討たせてもらう」
「ホッホッホッ・・・何かと思えば数多く殺した虫けらの一人の娘でしたか。では、父親の下に送って差し上げましょう」
ダメだ・・・
躰が震える。
勝てる気がしないよ・・・
お父さん・・・
「えーいっ!」
あたしはどうのつるぎで切りかかる。
ドラキーのようなすばやいモンスターでも一撃で屠ってきたあたしの剣。
せめて一太刀でも与えられれば・・・
「ふむ・・・小娘にしてはなかなか」
ゲマはあっさりとあたしの剣をかわしてしまう。
いや、かわされたことすら一瞬わからなかった。
これほどまでの強敵だなんて・・・
「うひー!」
そそくさと逃げ出して行く山賊のボス。
あたしは目のすみでそれを見ていたけど、今はそれどころじゃない。
視線をはずしたら最後、あたしは殺される。
あたしは冷や汗が首筋を伝うのを感じていた。
「役立たずは消してしまいましょうか」
あたしからあっさりと視線をはずし、ゲマは何事かつぶやいた。
それが呪文だと気がついたときには、山賊のボスは黒焦げになっていた。
嘘・・・
魔法ってこんなに威力があるものなの?
手も何も触れていないのに一撃で山賊のボスが・・・
どうしよう・・・
誰か助けて・・・
「さて・・・次はあなたの番ですが・・・ただ殺すのは面白くないですね」
「えっ?」
何?
何をするつもり?
「新しい実験の実験台になってもらうとしましょうか」
「じょ、冗談じゃないわ」
お父さんごめんなさい。
あたしは一目散に逃げ出そうとした。
でもダメだった。
ゲマの吐き出した何か焼け付くような息を吹きかけられ、あたしの躰は全身がしびれてしまったのだ。
「嘘・・・こんな・・・」
あたしは必死に躰を動かそうとしたけど無駄だった。
「しばらく寝ているがいい」
ゲマがそう言った瞬間、あたしの意識は闇に飲み込まれていった。
続く
- 2008/07/29(火) 21:06:33|
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ちょっとしたドラクエⅦの二次創作SSを書いちゃいました。
主人公たち一行のアイラやマリベルではなく、前半立ち寄る砂漠の城の女王フェデルがヒロインです。
いわゆるシチュのみ短編ですが、お読みいただければ幸いです。
「闇のルビー」
ああ・・・
どうしてこのようなことになってしまったのだろう・・・
私の考えが間違っていたのだろうか・・・
私はただ、子供もお年寄りもみんなが砂漠の暮らしを快適に過ごせるようにしたかっただけなのに・・・
旅行くキャラバンも魔物の恐怖を感じることなく行き来ができるようにしたかっただけなのに・・・
精霊様のお力にすがることが、いけないことだったというのだろうか・・・
「ケケケ・・・来るがいい」
背中に羽根を生やした直立するオオトカゲといった風貌の魔物セトが私を呼びに来る。
行かないわけにはいかない。
私が行かなければ砂漠の民が・・・
私を慕い敬ってくれた砂漠の男たちや女たちが殺されてしまう。
それだけはなんとしても防がなければ・・・
私は無言で立ち上がり、牢獄ともいうべき部屋を後にする。
ベッドや絨毯も敷かれ、居心地が良くされてはいても、入り口に鍵がかけられたこの部屋はやはり牢獄。
城に残ったものたちはどうしているのだろう・・・
砂漠の村の皆はどうしているのだろう・・・
先日きらびやかな首飾りを欲しがっていた魔物に託した手紙は無事に誰かの手に渡ったのだろうか・・・
あの手紙にどうか気づいて・・・
「ケケケ・・・何を考えている?」
「別に・・・」
私はセトの問いかけにそう答えた。
このセトは砂漠の魔物を束ねる魔界の実力者。
いずことも知れぬ場所に居る魔王におもねるため、精霊の像に目をつけたのだ。
あとわずかで精霊の像は完成し、精霊様のお力で砂漠から魔物を一掃できるはずだったのに・・・
悔しさに私は唇を噛み締めた。
「見ろ」
「これは!」
私は息を飲んだ。
私が連れてこられたのは精霊の像の頭部。
精霊様を模して作られるはずだった頭の部分だ。
それがなんと、見るもおぞましい魔物の頭部に作り変えられつつあったのだ。
「ケケケ・・・砂漠に精霊の像などはふさわしくない。砂漠にふさわしいのは魔王の像だ。そうは思わんか? 砂漠の女王フェデルよ」
「そんな・・・」
私は首を振る。
長いことかかって砂漠の男たちが築き上げてきた精霊の像がこうも無残に姿になってしまうなんて・・・
「お前にはこれからやってもらうことがある」
「な、私に何をしろというのです? 精霊様の像をこのようにしてこれ以上何をしろと!」
私は思わず声を荒げてしまう。
城に残ったものたちを人質に取られてさえいなければ・・・
「ケケケ・・・あれを見ろ」
セトが指差した先には魔王像となった頭部の両目に嵌められた赤い宝玉があった。
「あれは“闇のルビー”といってな、邪悪な力を強化してくれるものだ。砂漠の女王フェデルよ。お前は巫女としての力を持っているだろう。あの“闇のルビー”に祈りを捧げ、その力をさらに強めるのだ」
なんてこと・・・
あのような禍々しき宝玉に祈りを捧げるなんて・・・
「そんなこと・・・」
「できるよなぁ? 砂漠の民の命がかかっているんだからなぁ」
「くっ・・・」
私は再び唇を噛み締める。
「お前ができないのなら、他の巫女にやらせるとしよう。だが、力の弱いほかの巫女じゃ俺様はすぐに殺してしまうかも知れんぞ」
「わ・・・わかりました」
私は怒りに躰を震わせながらも承諾するしかなかった。
ああ・・・
精霊様・・・
どうか・・・どうか・・・
お助けください・・・
私は精霊様に捧げるつもりで両手を胸で組み祈り始める。
魔王の両目に位置する“闇のルビー”が私を見下ろし、その輝きがわずかに強まったような気がする。
悔しい・・・
このような邪悪なものに力を与えてしまうなんて・・・
でも、祈りを捧げないわけにはいかない。
私が断れば誰かが命を落とすのだ。
私が死ぬのはかまわない。
でも、セトは私を苦しめるために他の民を殺すのだ。
もう誰も死んで欲しくない。
今は屈辱に甘んじても、いつかきっと・・・
何かしら・・・
すごく疲れるわ・・・
精霊様に祈りを捧げているときとはぜんぜん違う・・・
ああ・・・
“闇のルビー”が私を見つめている・・・
恐ろしく邪悪な気配が渦巻いている・・・
なのに目が離せない・・・
頭がくらくらする・・・
まるで・・・まるで赤い邪悪な光に射抜かれているかのような・・・
ああ・・・
「ケケケ・・・相当に消耗したようだな。今日はもういいだろう。連れて行け」
「ピギー」
セトの背後に控えていたピグモンエビルたちが私を両側から抱えて連れ出していく。
私は自分で歩くこともできないほどに消耗していた。
まるで・・・力を全部吸い取られでもしたかのよう・・・
「砂漠の女王フェデルよ、ゆっくり休むがいい。また明日、祈りを捧げてもらうぞ」
連れて行かれながら私はセトのほうを振り返る。
そして精いっぱいの憎しみを込めてにらみつけてやった。
******
「ケケケ・・・フェデルよ、来るがいい」
翌日、まだ力が充分に回復してない私をセトが迎えにくる。
私は疲れの残る躰をベッドから起こし、ふらふらと立ち上がった。
「充分に回復はできなかったようだな。だが祈りは捧げてもらう」
「わかっています。祈らなければ誰かを殺すというのでしょう?」
私は服装を整えてセトをにらみつけた。
「ケケケ・・・そういうことだ。来い」
私はセトのあとに続き、精霊の像をのぼっていく。
そして昨日と同じように魔王の頭部に向かい合い、“闇のルビー”に祈りを捧げ始めるのだった。
******
「フェデル様。大丈夫ですか? フェデル様」
「フェデル様・・・」
砂漠の巫女たちが心配そうに私を覗き込んでいる。
ああ・・・そうだわ・・・
私は祈りを捧げている最中に意識を失ったんだった。
何か・・・
そう・・・あの“闇のルビー”に祈りをささげているうちに、“闇のルビー”に吸い込まれそうになった気がしたのだ。
「フェデル様・・・ご無理はなさいませぬよう・・・」
「フェデル様は砂漠の女王様です。どうかご無理は・・・」
何を言っているの?
私が祈りを捧げなければどうなると思っているの?
無理はするな?
よくもそんなことが言えるものだわ。
私は無言で巫女たちを下がらせる。
あの娘たちは何もわかっていない。
誰が砂漠を支配しているのかわかっていないのよ・・・
とにかく体力を戻さなくちゃ・・・
私は巫女たちが用意してくれたスープに口を付け、体力を回復させるために横になる。
目を閉じると、“闇のルビー”の赤い輝きが脳裏に蘇る。
邪悪だけどその輝きはとても美しい。
昨日今日と見つめていただけで、私は“闇のルビー”の美しさに魅了されていた。
どうしてあのような美しい宝玉が禍々しい魔王の目になど使われるのだろう・・・
いや・・・
禍々しいからこそ美しいのかもしれないわ・・・
邪悪で美しい“闇のルビー”。
明日も祈りを捧げなくては・・・
私はそう思いながら眠りについた。
******
「ケケケ・・・見ろ。“闇のルビー”の禍々しさがいっそう増したとは思わんか?」
セトが満足そうに目を細める。
私も美しく輝く“闇のルビー”をうっとりと眺めていた。
「さすがは砂漠の女王フェデルだ。お前の祈りによって“闇のルビー”は格段に力を増してきた。おかげで我ら魔族も力があふれてくるようだ」
うふふ・・・
なんだかすごく喜んでいるのね。
セトの喜びように私も思わずうれしくなる。
「喜んでいただいて私もうれしいですわ。“闇のルビー”の美しさには、私も見惚れてしまいます」
私はあらためて魔王像の両目にはまった“闇のルビー”を見上げる。
邪悪な赤い輝きが、なんともいえず美しい。
まさに魔王の両目にふさわしい宝玉だわ。
「ケケケ・・・お前にもあの“闇のルビー”の美しさがわかるようになったようだな」
セトの口元に笑みが浮かぶ。
「くすっ・・・もちろんですわ。最初に見たときからただの宝玉ではないと思っておりました」
「ケケケ・・・これからも“闇のルビー”に祈りを捧げ、我ら魔族に協力するのだ」
「かしこまりました、セト・・・いいえ、セト様」
私はいつしかこの魔界の実力者を好ましく思うようになっていた。
強さこそがすべてを支配するのは砂漠も魔界も同じこと。
弱きものは強きものに従い、奴隷のように尽くさねばならないのだ。
さもなければ死あるのみ。
強きものは美しくすばらしい。
こんな単純なことになぜ今まで気がつかなかったのかしら・・・
精霊の像などで弱きものを守ろうだなんて偽善もいいところ。
弱きものに生きる資格など無いということにようやく気がつくなんて・・・
私は女王失格だわ。
******
「フェデル様、そのお姿は?」
「そのお化粧はいったい?」
ピーピーと騒ぎ立てる砂漠の巫女ども。
セト様にお願いして用意していただいた魔界の衣装が気に入らないとでも言うのかしら。
まったくおろかな人間どもだわ。
「おとなしくしなさい。これは“闇のルビー”に祈りを捧げるための衣装。私は闇の女王としてこの砂漠に闇を広めるのよ。お前たちにも協力してもらうわ」
私は黒のアイシャドウと口紅で染めた顔を巫女たちに向ける。
青白く変化した私の皮膚にはとてもよく似合っているとセト様には褒めてもらったもの。
「ええっ?」
「いったいどうなされたのですか、フェデル様?」
「闇の女王って・・・何をお考えなんですか?」
唖然としている巫女たち。
無理もないわね。
この娘たちはまだ“闇のルビー”のすばらしさを知らないんだわ。
でも、心配はいらない。
すぐにこの娘たちも“闇のルビー”のすばらしさに目覚めるでしょう。
そうなればこの娘たちも交えて祈りを捧げることができるわ。
砂漠はすぐに闇に覆われ、魔族の支配する世界になる。
おろかな人間どもは魔族に従って生きるしかないのよ。
そして選ばれたものたちだけが“闇のルビー”によって魔族に生まれ変われるの。
この私のようにね・・・
私はローブの下で動く尻尾と羽根に喜びを感じ、魔族として生きることを誓うのだった。
魔王像に嵌められた「闇のルビー」というアイテムに祈りを捧げさせられるというくだりがあったので、そのまま悪落ちという妄想をしちゃいました。
よければ感想や拍手などいただけるとうれしいです。
それではまた。
- 2008/06/28(土) 20:01:44|
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当ブログとリンクしていただいておりますTGN2G様のサイト、「TGN2G's BimboTransformation 」様
http://s7.artemisweb.jp/tgn2g/に今月始め、ドラゴンクエスト2のムーンブルクの王女が悪堕ちしてあくましんかんの衣装を身に纏うようになるイラストが掲載されました。
ご覧になった方も多いと思われますが、私もあのイラストにすごく心惹かれました一人でございまして、いずれあのイラストを元にSSを書きたいなと考えていたものでした。
このたびそのSSが完成し、「TGN2G's BimboTransformation 」様にお送りさせていただきました。
ありがたいことにTGN2G様は早速当方の送りましたSSをサイトに展示してくださり、当ブログでの公開も快く承諾してくださりましたので、ここに掲載させていただきます。
本来はTGN2G様のサイト「TGN2G's BimboTransformation 」様に足をお運びいただいて、イラスト付きで見ていただくのが一番ですので、ぜひそちらにもお伺いくださいませ。
それではどうぞ。
「あくましんかんナナ」
「あう・・・こ、ここは・・・?」
私は薄暗くひんやりした場所で目を覚ます。
いったい何が起こったのだろう・・・
勇者様のお供をして、邪神官ハーゴンを倒しこの世界に平和をもたらすために数多くのモンスターを倒してきた。
いよいよ邪神官ハーゴンのいる神殿に向かうため、宿で休息を取っていたところまでは覚えている。
でも、そこから先の記憶がないわ・・・
いったいどうして私はこんなところに?
「ククククク・・・目が覚めたようだな、ムーンブルクの王女ナナよ」
私はいきなりの声に飛び起きた。
すぐにいつもそばにおいていた“いかずちのつえ”に手を伸ばそうとする。
でも、ここは宿じゃなかった。
ベッドの脇に立てかけてあった“いかずちのつえ”のあった場所には何もなく、私の手はむなしく空をつかむだけ。
仕方なく私はベッドから降りて身構える。
「誰? 誰がいるの?」
周囲は闇。
ベッドの周りだけがかろうじてそばに置かれた燭台のろうそくの明かりで見えるだけ。
怖い・・・
ここはどこ?
勇者様は・・・トンヌラはどこ?
どうして私一人なの?
「ククククク・・・数々の魔物を打ち倒してきたお前たちでも、一人ではやはり心細いかな? ムーンブルクの王女ナナよ」
闇の中からさらに声がする。
私は恐ろしさのあまり悲鳴を上げそうになる自分の気持ちを必死に抑え、いつでも唱えられるように呪文を脳裏に思い浮かべた。
私の知っている魔法の中でも最大の破壊力を誇る“イオナズン”。
精神力の消耗が激しいので何度も使える魔法ではないけど、この魔法に耐えられるモンスターは多くないわ。
「誰なの? 姿を見せなさい!」
私は闇の中に向かって怒鳴りつけた。
“怖がるな・・・”
“相手が何者かわかれば対処もできる”
私は勇者様の言葉を思い出していた。
まずは相手を知ることだわ。
「ククククク・・・おびえることはない。ここは我が神殿。誰もお前に危害を加えたりはせん」
闇の中からゆっくりと姿を現したその存在に、私は心の底から驚いた。
「あなたは・・・邪神官ハーゴン」
「ククククク・・・そのとおりだムーンブルク王女ナナよ。我こそハーゴン。この神殿の神官だ」
私の前に現れたのは伝え聞いていた姿のままのハーゴンだった。
胸に悪魔の紋章を染めた白いローブを身に纏い、右手には赤い水晶球をはめ込んだ杖を持っている。
にやりと笑った口には鋭く尖った歯が並び、耳はひれか何かのように頭の左右に広がっている。
言いようのない威圧感を持つ魔物たちの統率者ハーゴン。
そのハーゴンが今私の目の前にいた。
「あ・・・ああ・・・」
私は思わずへたり込んでしまいそうになる。
勇者様・・・
助けて・・・
「ククククク・・・怖いか? 数々の魔物を倒してきたお前でも我は怖いか? ん? ムーンブルク王女ナナよ」
ハーゴンがにたにたと笑っている。
まるで獲物を前にしていたぶっているかのよう。
“気合だよ。気合で負けちゃだめだ”
勇者様の言葉が私の脳裏に思い浮かぶ。
そうだわ。
気合で負けたらモンスターにつけ込まれてしまう。
気合で負けちゃだめ。
「怖くなんか・・・怖くなんかありません。あなたこそ覚悟しなさい。もうすぐここに勇者様とトンヌラが来るわ。あなたはもうおしまいよ」
私は必死に勇気を奮い起こしてそう言った。
そうよ・・・
きっと今に勇者様が来てくれる。
犬にされていた私を救ってくれた勇者様がきっとまた来てくれるわ。
きっと・・・
「クククク・・・勇者とはあのへもへものことか? それにトンヌラ王子とな。やつらならば今頃何が起こったのかすらわからずに、右往左往しているころだろう」
「ええっ?」
私は言葉を失った。
確かに宿からいきなり私が消えたというだけでは、何が起こったのかわからないだろう。
きっと今頃は私を探して宿の周囲を探しているのかもしれないわ。
ああ・・・私がここにいることを伝えられれば・・・
「クククク・・・やつらなど恐れるに足りん。それよりもお前がここまで強くなるとは思わなかったぞ。今のお前ならば我が配下にふさわしい。どうだ? 我に仕えぬか?」
「な、何ですって?」
私は耳を疑った。
ハーゴンは私に邪神をあがめろとでも言うの?
どうしてそんなことができるというの?
「ふざけないで! 誰があなたなどに仕えるものですか! 私は勇者様とともにあなたを打ち倒して、邪神の復活を阻止して見せます!」
「クククク・・・勇ましいことよ。だが考えてみよ。世界は弱肉強食なのだ。力ある者が力無き者を支配する。それが正しい世界ではないか?」
そんなことない。
断じてそんなことはないわ。
「違います! 力があれば支配していいなんてことありません! ましてや力のために邪神をあがめるなんて赦されることじゃありません!」
「クククク・・・言いおるわ。ますます気に入ったぞムーンブルクの王女よ。重ねて問おう。我がしもべになるつもりはないか?」
「あるわけありません!」
私はきっぱりと拒絶した。
ハーゴンの目が赤く輝き、何事かをつぶやく。
その瞬間、私の周りには竜巻のような風が巻き起こり、私の着ている服を引き裂いた。
「きゃぁっ!」
私は躰を押さえて床に座り込んでしまう。
たいしたダメージは受けなかったものの、お気に入りの赤いフードもピンクのローブもずたずたに切り裂かれ、私はほとんど裸のような状態にされてしまったのだ。
「クククク・・・仕方のない娘だ。それではお前の気が変わるのをじっくりと待つとしよう。クククク・・・」
「こ、こんなことをしても私の気持ちは変わりません! むしろあなたへの憎しみが増すだけです」
私は精いっぱいの勇気を振り絞る。
イオナズンをぶつけてやろうと思い、私は呪文を思い浮かべた。
「ククククク・・・また来るとしよう」
すると、どうしたわけか、ハーゴンは闇の中へ消えて行く。
「ま、待ちなさい!」
私はイオナズンをぶつけるタイミングを逸してしまい、ハーゴンが消え去った闇の奥に目を凝らす。
「ムーンブルクの王女ナナよ。着る物がなくては困るであろう。ベッドの脇にある宝箱を開けるがよい」
闇の奥から声が響く。
私はただそれを黙って聞くだけだった。
「ふう・・・」
ハーゴンの気配がなくなってしまったことで、私は思わず息を付いた。
怖かった・・・
あれが邪神官ハーゴン。
恐るべき魔物の統率者。
はたして勇者様はハーゴンに勝てるのかしら・・・
ううん・・・
そんなこと考えちゃだめ。
勇者様は強いんだもの。
絶対にハーゴンなんかに負けるはずはないわ。
ひんやりした空気が私の肌を撫でて行く。
寒い・・・
先ほどのハーゴンのカマイタチで私はほとんど裸にされてしまっていた。
ローブの下に着ていた下着すら切り裂かれてしまったのだ。
それでも私自身にはほとんど傷はなく、かすり傷程度のものはベホイミで完全に消えていた。
でも・・・
このまま裸でいるわけには行かないわ。
リレミトで脱出しようにも、裸のままじゃどうしようもない。
そういえばハーゴンは宝箱を開けてみろといっていたわ。
私はハーゴンの言葉を思い出し、ベッドの脇を探してみた。
すると、大き目の宝箱が置いてあることにすぐに気がつく。
これがきっとそうなんだわ。
鍵は閉まっているのかしら・・・
私はそっとふたを開ける。
宝箱は鍵がかかっている様子はなく、簡単にふたが開いた。
「これは?」
宝箱を覗き込んだ私の前に、折りたたまれた白いローブと黒いマント、それに角のついた黒いフードが現れる。
「な、なにこれ・・・」
見るからに禍々しい感じを抱かせるそれらのほかに、黒い手袋やひざぐらいまでのブーツ、それに黒いストッキングまで入っている。
極めつけは先がとげとげの付いた球体になっている杖が二本入っていて、赤い一つ目のような模様と口のような黒い横筋が入った白いマスクがおいてある。
私はハッとした。
この白いローブを纏い、黒いマントを付けてこのマスクをはめたモンスターを私は知っている。
そう・・・
私が“いかずちのつえ”を手に入れることができたあの戦い。
その相手がこの格好をしていたわ。
確か・・・あくましんかん・・・
私は宝箱のふたを閉じた。
いくらなんでもこれはひどい。
着る物がないからって、あくましんかんの格好をするなんてありえない。
ハーゴンの嫌がらせだわ。
きっと、私にあくましんかんの格好をさせて、勇者様と会わせるつもりなんだ。
勇者様と同士討ちをさせるつもりなんだわ。
その手には乗るもんですか。
勇者様はきっとすぐに私だと気が付いてくれるわ。
トンヌラは・・・気がつかないかもしれないけど・・・
でも、勇者様はきっと私に気が付いてくれる。
だからといってこんなものを着る気になんかなれない。
バカにしないで!
絶対に着るもんですか!
******
寒い・・・
周囲の闇がとても寒く感じる。
私はベッドの上で躰を丸め、必死に寒さに耐えていた。
恥ずかしさをこらえて唱えたリレミトは、ふしぎなちからでかき消されてしまう。
場所を移動できるルーラは私は使えないし、キメラのつばさも持ってない。
ここから出ることは叶わないんだわ。
周囲の闇にも入ってみたけど、何がなんだかわからなくて結局ここに戻ってしまった。
寒い・・・
怖いよぅ・・・
勇者様・・・
勇者様・・・
お願い・・・助けに来て・・・
寒い・・・
どうしてこんなに寒いのかしら。
震えるほどではないはずなのに・・・
躰よりも心が寒く感じる・・・
このままじゃ・・・
このままじゃ凍えちゃう・・・
私は意を決して宝箱を開ける。
そして中からローブを取り出した。
禍々しい感じのするローブ。
魔物にはふさわしいものかもしれないわ・・・
そう思いながらも私は“あくまのろーぶ”を身につける。
白いローブだけど、胸のところには悪魔の紋章が黒く染め抜かれている。
気味が悪いけど仕方ないわ。
あのまま裸でいるわけには行かないもの。
このローブだけなら何も問題はないはずよ。
よかった・・・
少し温かくなってきたわ。
これでゆっくり眠られるわね・・・
******
もう・・・
どうしてこう寒いのかしら・・・
せっかく“あくまのろーぶ”を身につけたのに・・・
手足が冷たくて仕方がないわ。
もう・・・
私はいらだちながら宝箱を開ける。
宝箱の中にはあくましんかんの衣装が一揃い揃っているのだ。
私は黒い手袋と太ももまでのストッキング、それにひざ上までのブーツを取り出すと、一つずつ身につけていく。
ハア・・・
何かしら・・・
寒くはないのだけど・・・
心が冷たくなるような・・・
うふふ・・・
気のせいねきっと。
私は黒い手袋を嵌めた指先や、ハイヒールのブーツを履いた脚をなんとなく眺めてみる。
なんか素敵・・・
あくましんかんの格好とは言うものの、それほど悪くないかもしれないわ。
私は宝箱から頭にかぶるフードを取り出した。
フードまでかぶるのはどうかとも思ったけど、お気に入りのフードが切り裂かれてしまった今、なんとなく頭の辺りが寂しく感じたのだ。
漆黒のフードには頭の左右の位置に尖った角がついている。
武器として使えるようなものではないけど、くだらない人間に舐められないようにするぐらいの役には立つわね。
町の人間たちは、私が女と見るとすぐ舐めてかかるようなところがあるわ。
勇者様が買い物するときには定価で売るのに、私が買うときには割高になっていたり・・・
女だからってバカにするのもいい加減にして欲しいわ。
イオナズンでもぶつけてやろうかしらね。
私は漆黒の“あくまのふーど”をかぶる。
髪の毛をフードから外にたらすとなんとなく気分がいい。
私はさらに宝箱からマントも取り出す。
真っ黒なマントはまさに悪魔の名にふさわしい。
私はこのマントを見ているうちにうきうきとした気分になるのを止められなかった。
なんて素敵なマントなのかしら。
羽織ったらきっと気分がいいだろうな・・・
そう思うともう羽織らずにはいられない。
私は“あくまのまんと”を背中に回して羽織っていく。
うふふふ・・・
なんだか気分がいいわ。
心は冷えちゃってきたけど、躰の冷えは治まったみたい。
私は自分の躰を見下ろした。
あくましんかんの衣装がとても素敵。
なんだか私自身があくましんかんになったみたい。
うふふふ・・・
気分がいいわぁ・・・
******
「ほう・・・見違えたぞ。似合うではないか、ムーンブルクの王女ナナよ」
いつの間にか闇の中から現れる邪神官ハーゴン。
私は勇気を出してにらみつけてやる。
そもそもこんな格好するはめになったのは、ハーゴンが私の服を切り裂いてしまったからなのに。
まあ、あんな服よりも、今のこの服のほうが着心地いいからいいんだけど。
「これは裸でいたくないから仕方なく着たのよ。でも・・・着心地は悪くないですわ」
「クククク・・・そうしていると、まるで女あくましんかんにでもなったようだな」
女あくましんかん?
私が?
「違います。私はムーンブルクの王女です。女あくましんかんなんかじゃ・・・」
ああ・・・どうしたのかしら・・・
なんとなくうれしいような気がするわ。
えっ?
私ったら何を言っているの?
「クククク・・・まあよい。どうやら我が思い通りに行きそうだ」
「思い通りに? それはどういう意味ですか?」
「クククク・・・お前が気にすることではない。そら、プレゼントをやろう」
ハーゴンが私の前に何かを差し出す。
それは小さな薄い小箱のようなものだった。
「これは何ですか?」
「開けてみるがいい」
私はなんだろうと不思議に思いつつも開けてみた。
「わあ・・・」
それは言ってみればコンパクトだった。
ふたの裏側が鏡になっていて、アイシャドウや口紅、それに塗るための筆なんかが入っている。
「これを私に?」
「そうだ。女は美しくあるべきだからな」
にやりと笑うハーゴン。
でも、私はなんかうれしかった。
邪神官ハーゴンなんて言われているけど、それだけの実力を彼は持っている。
そのハーゴンに認められたような気がしたのだ。
ハーゴンが姿を消した後で、私は早速化粧をする。
いずれはここに勇者がやってくるに違いない。
そのときには生まれ変わった私を見てもらうのだ。
田舎くさいムーンブルクの姫ではなく、生まれ変わった私を見てもらうのだ。
私は鏡を見ながらアイシャドウを塗り、続いて口紅を塗っていく。
この口紅はちょっと変わっていて赤くないんだけど、黒い口紅というのはとても素敵。
アイシャドウで黒く染まった目元もすっきりしていい感じ。
なんだかとても気分がいいわ。
うふふふふ・・・
心がどんどん冷たくなるの。
最高にいい気分よ。
******
「いらっしゃいませハーゴン様」
闇の中から現れた偉大な邪神官ハーゴン様に私は恭しく一礼する。
どうして今まで私はこのお方の偉大さがわからなかったのだろう。
どうして私はこの方に逆らい続けたりしたのだろう。
うふふふ・・・
その原因はわかっているわ。
あの勇者とか言う男のせい。
あの男が私の心をゆがめていたのよ。
でももうだまされない。
私の心は完全に冷え切ったわ。
ああ・・・ハーゴン様・・・
私がおろかでした。
「クククク・・・どうやら完全に闇に染まったようだな。ムーンブルクの王女ナナよ。いや、あくましんかんナナよ」
あくましんかんナナ・・・
ああ・・・
うれしいわ。
そうよ・・・
私はもうムーンブルクの王女なんかじゃないわ。
あくましんかんナナよ。
ハーゴン様にお仕えするあくましんかんなのよ。
「はい、ハーゴン様。私はあくましんかんナナです。どうぞ、何なりとご命令を」
私はハーゴン様の元にひざまずく。
この方の偉大さに触れられるのはとてもうれしい。
この方のためなら何でもできるわ。
「あくましんかんナナよ。マスクを持ってくるがいい」
「はい。ハーゴン様」
私はハーゴン様より与えられた宝箱の中から、最後に残ったマスクを取り出し、ハーゴン様に手渡した。
「このマスクをつけ身も心もあくましんかんとなるが良い。そして、我がしもべとして永遠に仕えるのだ」
「ああ・・・うれしいです。私はあくましんかんナナとして、ハーゴン様に永遠にお仕えいたします」
私はハーゴン様にひざまずき、顔を上げて目を閉じた。
赤い丸い文様と横一筋の黒いラインの入ったマスクがハーゴン様の手でかぶせられる。
私の中に力がみなぎり、私はあくましんかんとして完成した。
「クククク・・・ナナよ。間もなくへもへもとトンヌラがこの神殿にまでたどり着こう。そのときはお前が相手をしてやるのだ。いいな」
「かしこまりましたハーゴン様。おろかな人間どもなどこのあくましんかんナナのイオナズンで消し炭に変えてご覧に入れますわ。うふふふふ・・・」
私はハーゴン様に逆らう愚か者どもを始末できる喜びに打ち震え、神殿にやってくるのを楽しみに待ち構えるのだった。
END
お楽しみいただけましたならば幸いです。
よろしければ拍手、感想コメントなどいただければと思います。
それではまた。
- 2008/06/19(木) 20:19:58|
- ドラクエ系SS
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海マツリ会場にあるチャットには連日多くの方々がいらしてくださっております。
本当にどうもありがとうございます。
この場を借りましてお礼を述べさせていただきます。
チャットでは、皆様といろいろなお話ができて本当に楽しいです。
そんな中にはいろいろな悪落ちネタなども、お話の中で浮かんでまいります。
先日ゲームネタのお話の折に、ドラクエⅤで攫われた主人公の妻が悪堕ちしてくれればなぁとお話ししたことがありました。
ゲーム上では石にされて主人公に助けられるのを待つだけなんですが、何か悪のアイテムあたりで悪堕ちしてくれればよかったのにと思ったものです。
そんな話をちょいと書いてみました。
短いですが、よかったら読んでみてください。
悪魔のボンデージ
「クククク・・・いけませんねぇ。我が魔族に歯向かい、あまつさえ天空の武器防具を集めようとするなんて・・・」
邪悪な笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる魔族の実力者ゲマ。
このゲマこそが、ビアンカの愛するヘボヘボの父パパスを殺し、今また世界に邪悪を広めようとしている張本人なのだ。
ビアンカの夫ヘボヘボは、幼い頃母を何処とも無く連れ去られ、父パパスを殺され、母の手掛かりである天空の武器防具を求めているうちに幼馴染であったビアンカと再びめぐりあい、彼女を生涯の伴侶として共に生きることを選んでくれたのだ。
ビアンカもそのことを喜び、夫ヘボヘボとともに冒険を重ねるうちに、お腹の中に二人の結晶を儲けてようやく出産したばかりだった。
しかし、幸せは突然撃ち破られてしまう。
ビアンカは夫ヘボヘボを良く思わなかった大臣によって引き入れられたモンスターによって城から連れ去られてしまったのだ。
彼女にできたことは生まれたばかりの双子の赤ん坊をどうにか隠すことだけ。
突然のことに戦うこともできなかった彼女は、こうしてゲマの元に連れて来られていたのだった。
「あんまり人間を舐めないほうがいいわ。私の夫が黙っていないわよ」
ビアンカはそれでも気丈にゲマをにらみつける。
魔術師系統のモンスターであろうゲマは、どちらかというと策略を好むだろう。
だが、夫ヘボヘボはどんな策略だって打ち破るに違いない。
だって彼は・・・
ビアンカの胸に温かいものがあふれてくる。
私の夫だもの・・・
魔力を封じられ、両側から腕を掴まれているにもかかわらず、目の前の人間の女はまるで気力を失っていない。
だが・・・
この気丈さが好ましい。
ゲマはそう思う。
人間は面白いもので、心の支えがあるうちはなかなかへこたれたりしないものだ。
そう・・・
あの少年も奴隷の境遇から抜け出し、われら魔族に対して敵対することをやめようとはしない。
今ではグランバニアの王ですらあるのだ。
あの男が人間を束ねて魔族に反抗するようになれば・・・
面白くないことになりかねない。
「クククク・・・確かのお前の夫ヘボヘボは稀に見る男だ。我が魔族にとっても障害になりかねない」
ゲマは笑いながらビアンカの顎に手を掛ける。
両脇から腕を掴まれているビアンカは、必死に顔をそむけようとするが、ゲマの腕はそれを赦さない。
「今に夫がここまで来るわ。さっさと逃げ出したほうがいいんじゃない?」
嫌悪感をあらわにビアンカは言い放った。
でも、はたして夫は間に合ってくれるのだろうか・・・
ううん・・・絶対に夫は間に合ってくれるはず・・・
ビアンカは必死にそう信じ込む。
「クククク・・・来てもらおうではありませんか。そしてあの男に絶望というものを味合わせてやるのです」
「えっ?」
ゲマの笑みにビアンカはぞっとする。
あ・・・
こいつの狙いは夫なんだわ・・・
ヘボヘボ、来ちゃダメよ・・・
私はどうなってもいいから来ちゃダメ・・・
ビアンカは思わずゲマから目をそらした。
がさっと言う音がする。
何?
何の音?
ビアンカは思わず音の方を見てしまう。
すると、そこにはゲマが何か真っ赤な色のものを手に持っていた。
「クククク・・・気になりますか、これが?」
ゲマが手にしたものを広げる。
それはどうやら衣装のよう。
あの噂に聞く“てんしのレオタード”のように上下ひと繋がりの水着のような形をしている。
だが、色は毒々しい真っ赤な色。
つややかに照りかえる血の色のような赤。
ところどころに鋲が打ち込まれていて、まるで革鎧のよう。
「クククク・・・これは“あくまのボンデージ”といいましてね。これを着たものは呪われるのですよ」
「呪いの衣装?」
世界には呪われたアイテムというモノが存在することは知っている。
動きを止めたり、防具なのに防御力が低くなったるするのだ。
これもそういった呪いの衣装の一つなのだろうか・・・
「あくまのボンデージ・・・」
「そうです。これを着たものは生きながらにして死者となり、魔王ミルドラース様のしもべと化すのです」
「な、なんてこと・・・」
ビアンカの背筋に冷たいものが走る。
夫との冒険の間に生きる死者、いわゆるリビングデッドとは何度か遭遇していた。
安らかな眠りにつくことすら許されず、魔王の言いなりにこき使われる哀れな存在。
これを着せられたら私もそうなってしまうの?
「い、いやっ! いやですっ!」
必死に逃げようと身をよじるビアンカ。
しかし、魔力を失っている今、彼女は逃れるすべを持たなかった。
「おとなしくするのだ」
ゲマの手がビアンカの服を引きちぎる。
「いやぁー!」
ビアンカの悲鳴が響き渡った。
必死で暴れるビアンカに手を焼いたゲマは、終いにはやけつくいきで動きを封じねばならなかったものの、ビアンカはついにあくまのボンデージを着せられてしまった。
真っ赤でつややかなレオタード型のボンデージは、子供を産んだとは思えないほどのスタイルのいいビアンカにとてもよく似合う。
そして、すぐにあくまのボンデージはビアンカの肉体に影響を及ぼし始めるのだった。
ああ・・・いやぁ・・・躰が・・・躰が冷たくなっていく・・・
ビアンカの躰は急速に命の営みを止めて行き、ほんのりと赤い肌が青白くなっていく。
ああ・・・助けて・・・助けて・・・あなた・・・
肉体が冷えて行くのと同時にビアンカの心も急速に冷えて行く。
人間らしい温かい心が魔族同様の冷たい心に変わっていくのだ。
寒い・・・寒いよ・・・どうして・・・どうして助けてくれないの・・・どうして・・・
ビアンカの頬を涙が伝う。
だがその涙もすぐに乾き、表情が消えて行く。
寒い・・・
寒い・・・
どうして・・・
どうして私は寒いの?
みんなは温かいところにいるのに・・・
私だけ除け者なの?
自分たちだけ温かければいいのね・・・
赦せない・・・
赦せない・・・
温かいところなんて嫌い・・・
人間なんて大嫌い。
私は魔王様に従う。
人間たちを皆殺しにしてやるわ。
ゆっくりと起き上がるビアンカ。
真っ赤なボンデージがその身を彩っている。
青白い顔に冷たい笑みが浮かぶ。
「クククク・・・どうやら上手く行ったようですね」
「はい、ゲマ様。私は魔王ミルドラース様の忠実なしもべ。憎むべき人間どもを滅ぼすお手伝いをさせていただきますわ」
ビアンカはそう言ってゲマに跪く。
彼女の夫が彼女を救いに来たのは、それから程なくのことだった。
END
もしかしたら時系列狂っているかもしれません。
ビアンカを攫ったのはゲマじゃなかったかも・・・
そこらへんは目をつぶっていただければ幸いです。
さてさて「海」祭り開催中です。
会場はリンク先から行けますので、どうぞ足を運んで下さいませー。
それではまた。
- 2007/09/16(日) 21:58:59|
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