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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

七日目(14)

「七日目」の十四回目です。
これで最終回となります。
二週間という長い間一本の物語にお付き合いくださりありがとうございました。

それではどうぞ。


14、
「皇帝陛下、ご紹介いたします。我が機械帝国の新たなる戦士、メカレディA1、A2、A3、A4の四体にございます」
謁見の間にて俺は背後に従えた四体のメカレディを紹介する。
もちろん壇上の玉座には誰もいない。
だが、皇帝陛下は全てを見通しておられ、それはメカレディたちにもわかるだろう。
俺たちの両脇には機械将アルマー、機械博士ヘルブール、そして機械部隊長メレールが控えている。
アルマーは憎憎しげに、ヘルブールは無機質に、そしてメレールは笑みを浮かべながら俺に視線を向けていた。

『メカレディたちよ』
玉座より重々しい声が響く。
「「ギーッ!」」
俺に対するときとは違い、片ひざをついた状態で右手を胸のところで水平にするメカレディたち。
頭を垂れて皇帝陛下の威光にひれ伏している。
『予に忠誠を誓うがいい』
「「ギーッ! 私たちは機械帝国のメカレディ。皇帝陛下に永遠の忠誠を誓います」」
見事なハーモニーで答えるメカレディたち。
『うむ。これより機械参謀ゴラームに従い、地上を支配する人間どもを駆逐するのだ。よいな』
「「ギーッ! お任せくださいませ。地上に巣食う虫けらのごとき人間どもを駆逐し、皇帝陛下のご威光を知らしめてご覧に入れます」」
『ゴラームよ』
「ハハッ」
俺は皇帝陛下のお言葉に思わずかしこまる。
『メカレディたちを使った作戦、楽しみにしておるぞ。存分に手腕を発揮して見せよ』
「ハハッ」
そうだ。
これで終わりではない。
これからが俺の作戦のスタートなのだ。
地上の人間たちよ恐怖に打ち震えるがいい。
隣人があくる日には機械になっている恐ろしさをたっぷりと味あわせてやる。

『アルマー、ヘルブール、それにメレールよ』
「「ハハッ」」
皇帝陛下のお言葉に思わず頭を下げる三人。
『ゴラームに従いその作戦の手助けをせよ。ゴラームの命は予の命だと心得るがよい』
うわ・・・
俺は思わず振り向いてしまう。
「な、なんですと? この私にこんな出来損ないの指揮下に入れと言われますのか?」
愕然とした表情で顔を上げているアルマー。
無理もない。
さんざん俺のことを機械の出来損ないとバカにしていた奴だ。
今さら俺の指示に従うつもりもないだろう。
俺としてもアルマーに命令するなど願い下げなんだが・・・
『予の命ぞ、アルマー』
「聞けません! このような出来損ないの指揮下にされるなど機械将の名折れ。そのようなふざけた命など聞けるものか!」
すっくと立ち上がるアルマー。
こいつ、何をする気だ?
「機械帝国の指揮官はこの私だ! こんなでく人形などに頼らずとも地上は支配して見せるわ!」
腰につるされた剣が抜き放たれる。
しまった!
アルマーはメカレディたちを破壊する気か。
俺は歯噛みした。
間に合わない。
「A1! よけろ!」
俺はアルマーに跳びかかりながら叫んでいた。

ガシュッ!!
剣が振り下ろされ、赤いオイルが飛び散る。
俺がカバーに入る間もなくアルマーの剣がA1を襲ったのだ。
だが、飛び散ったのはA1の循環液ではなかった。
「メ、メレール!」
俺は目を疑った。
俺がアルマーに跳びかかるよりも前に、メレールがA1のカバーに入ってくれたのだ。
そしてアルマーの剣はそのメレールの肩口を切り裂いていたのだった。
「メレール様!」
「メレール様!」
A1もA4もただ声を上げるだけ。
上位機種であるアルマーには逆らえないのだ。

「くそっ、離せ出来損ないめ!」
俺はアルマーに二度目の斬撃を行なわせないように必死にしがみつく。
情けない話だ。
機械将であるアルマーは俺とは性能が違う。
だが、同格であることから、俺はアルマーに跳びかかることができたのだ。
絶対離してなるものか!
「ア・・・アルマー・・・皇帝陛下の命令に逆らうつもり?」
肩を抑えながら立ち上がるメレール。
ちくしょう!
茶色い毛皮が赤く染まっているじゃないか。
すぐに修理しないと・・・
「黙れ! ゴラームのような出来損ないに・・・」
こいつめ、まだ俺が人間だったことをそのように・・・
俺は機械帝国の機械参謀だぞ!

『愚か者め』
皇帝陛下の重々しい声が響く。
その言葉にビクッとなり動きが止まるアルマー。
皇帝陛下の恐れ多さは俺自身も動きが止まるぐらいだ。
もうアルマーが剣を振るうことなどできないだろう。
『機械将アルマーよ。無様だぞ。もうよい。ご苦労であった』
「こ、皇帝陛下。そ、それは?」
アルマーがふらふらと玉座に向かう。
俺はただなすすべもなく手を離して見送るだけ。
『機械将の任を解く。スクラップとなるがよい』
「バ、バカなー!」
アルマーが叫ぶと同時に躰の各所から火花が飛び散る。
そして轟音とともにアルマーの躰ははじけ跳んだ。

俺はただ唖然としてその光景を見ているだけだった。
あの尊大で何者も恐れないと豪語したアルマーが・・・
俺はあらためて皇帝陛下の恐ろしさを感じるとともに、その偉大さにひざをついて敬意を表した。

『メレールよ』
「は、はい、皇帝陛下」
メレールもすぐにひざをつき頭を下げる。
肩からはまだ循環液が流れ落ち、回路を遮断したのか右腕は垂れ下がったままだ。
『そなたを後任の機械将に任ずる。すぐに修理を受け、任務に就任せよ。よいな』
「は、はい。ありがたき幸せ」
「めれーるヨ、シュウリスルカラコチラヘコイ」
ヘルブールが立ち上がる。
「う、うん、頼むよ」
二人が謁見の間を出て行くのを俺はホッとした気持ちで見送った。

リラックスルームのソファーに座っているメレール。
右肩はもう修理を終えたらしい。
俺は保管庫からオイルジュースを取り出すと、メレールに向かって放り投げる。
「あ、ありがと」
修理された右腕がなんでもないことを見せるように、メレールは右手でボトルを受け取った。
俺はもう一本オイルジュースを取り出すと、メレールの隣に腰を下ろす。
キャップをひねって一口飲むと、心が落ち着いていくのがわかった。
「もう大丈夫なのか?」
「うん。もう大丈夫。ヘルブールがちゃんと直してくれたから」
にこっと微笑むメレール。
いかんなぁ。
この微笑みは魅力的過ぎる。
「そうか・・・」
俺はもう一口オイルジュースを流し込む。
「心配した?」
「当たり前だ。アルマーの剣の前に飛び出すなんてどうかしている。肩だけですんだからいいようなものの・・・一つ間違えば修理不能なことになっていたかもしれないんだぞ!」
それは本当のこと。
アルマーの斬撃は並みじゃない。
コマンダースーツだって一撃で切り裂くのだ。
「うん、それはわかってる。あたしだってあんなことするなんて考えなかった。でもね・・・」
「でも?」
「A1が斬られるのいやだった。あのまま壊されたくないって思ったの。もしかして・・・これってゴラームの言っていた“好き”の一種なのかな?」
答えを求めるように俺を見つめるメレール。
「だったら・・・そうだったら、あたしもメカレディが好き。一番好きなのはゴラームだけど、メカレディも好きでいい」
なんだ・・・
メレールもメカレディを気に入ってくれたんじゃないか。
だからあんなことを・・・
ふふふふ・・・
俺は思わず笑みが浮かんだ。

シュッと空気が切り裂かれ、またしてもオイルジュースのボトルが切り裂かれる。
「うわっ?」
俺は思わず跳び退った。
「むーっ! あたしが真剣に話しているのに笑ったなー! 赦せーん! ぶっ殺ーーす!」
フーッと毛を逆立てているメレール。
その鉤爪が鈍く光る。
こいつはー。
ジュースぐらいちゃんと飲ませろよ。
俺は切り裂かれたボトルを握ったまま、メレールと対峙する。
やれやれ・・・
俺は苦笑した。
この時間がいつの間にか楽しくなっていることに気が付いたのだ。
確かに俺はアルマーの言うとおり、矛盾だらけの機械もどきだろう。
だが、こうして純粋機械のメレールと戯れることに楽しさを感じる。
おそらくこれが俺の幸せなのだろうな。
ただ・・・オイルジュースはまともには飲めないらしい。
まったくもって、やれやれだ・・・

                        ******

「はっ、こ、ここは?」
手術台の上に大の字で寝せられている黄田彩華(きだ あやか)。
いや、コマンダーイエローといったほうがいいだろう。
コマンダーブレスレットは取り外され、生まれたままの姿で何も身につけてはいない。
「目が覚めたようね、彩華」
「えっ? ひ、弘美先輩?」
彩華のそばに現れたのはメカレディA1。
かつてのコマンダーピンク桃野弘美だ。
ほかにもA2以下三体が笑みを浮かべて彩華を見下ろしている。
「うふふふ・・・それは私のかつての名前。今の私は機械帝国の忠実なしもべ。メカレディA1なの」
「メ、メカレディ? そ、そんな・・・メディカルチェックは・・・」
愕然としている彩華。
救出されコマンダーピンクに復帰したA1が、まさか機械帝国の一員だったとは思わなかったのだろう。
おろかなことだ。
「うふふふ・・・私は機械なのよ。機械に思いのままのデータを表示させるなど簡単なことだわ」
冷たい笑みを浮かべているA1。
無力化したコマンダーイエローの姿が楽しいのだろう。
「そ、そんな・・・弘美先輩が機械帝国の・・・」
「心配はいらないわ。すぐにあなたも機械であることを誇りに思うようになる。ゴラーム様はあなたもメカレディに加えることになさったの。光栄に思いなさい」
「そんな・・・そんなのいやぁっ! 機械になるなんていやよぉっ!」
手術台の上で必死にもがく彩華。
だが両手両脚を固定されている以上、逃れることなどできはしない。
「おとなしくなさい。あなたは幸運よ。ゴラーム様は私たちのデータから、より効率的に思考をメカレディ化することができるようになったの。二日もあればあなたはもう完璧なメカレディに生まれ変わることができるわ」
A1が彩華の頭を優しく撫でる。
そして控えていたメカデクーたちに彩華の機械化を命じた。
「ひいっ!」
すぐに手術台の周囲からアームがせり出し、彩華の躰を機械化していく。
俺はその様子を眺め、メカレディたちにうなずいてやった。

                        ******

「ゴラーム様、連れてまいりました。さあメカレディA5(えーふぁいぶ)、ゴラーム様にご挨拶なさい」
「ギーッ! ゴラーム様、私はメカレディA5。かつては黄田彩華などという不完全な生き物でしたが、ゴラーム様のおかげで機械として生まれ変わることができました。どうぞ何なりとご命令くださいませ」
右手を胸のところに水平にして、服従の声を上げるメカレディA5。
黒いレオタード姿を誇らしげに晒している。
この二日間でコマンダーイエローは完全にメカレディへと変化した。
もはやこいつにとってはピースコマンダーは憎むべき敵である。

彼女の背後にはこの数日で機械化された女たちがほかにも五体立っていた。
いずれもが機械帝国に服従を誓い、機械となったことを喜んでいる。

「A5、おまえはA1とともにコマンダーベースへと戻り、怪しまれないように行動せよ。そして俺の命令があり次第コマンダーベースを破壊するのだ。いいな」
「「ギーッ!」」
A1とA5が敬礼する。
「ほかのものはメレールの指示に従え。メレール、うまくやれよ」
俺は機械将のマントを羽織ったメレールに目をやる。
マントを羽織ったメレールはいつになく美しい。
「むっ、あたしを信用しないのか? 言われなくたってちゃんとやって見せるわよ。メカレディたちと一緒にガーッと出てってババーンと暴れてドカーンと破壊してくるんだからね」
「だから、それじゃダメだと何度も言っているだろーが!」
「大丈夫だって。作戦指揮はあたしに任せなさいって」
胸を張るメレール。
やれやれ・・・
ま、やる気も充分なようだし、お手並み拝見といくとしようか。
俺はこれからメレールと一緒にこのメカレディたちを使い、地上に大混乱を起こしてやる。
待っているがいい人間ども。

END


いかがでしたでしょうか?
二週間の間お付き合いくださり、改めましてお礼申し上げます。
ありがとうございました。

できましたら拍手や感想などをいただけましたらうれしいです。
よろしくお願いいたします。
  1. 2008/12/28(日) 20:44:47|
  2. 七日目
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七日目(13)

「七日目」の十三回目です。
残すも今日と明日のみ。
今日はいよいよ七日目です。

それではどうぞ。


13、
七日目。
今日でケリをつけなくてはならないな。
とはいえ、メカレディたちはもうほとんど抵抗心がなくなっているはず。
あとは仕上げるだけと言っていいだろう。

俺はいつものようにメカレディたちを整列させる。
「「ギーッ!」」
黒いレオタード姿で直立する彼女たちは、俺をまっすぐに見詰め右腕を胸のところで水平にする機械帝国の敬礼を行なう。
その表情にはすでにためらいや不安はうかがえない。
すべてを自由にさせているにもかかわらず、俺に反抗する様子はないのだ。
俺は彼女たちの態度に笑みが浮かんだ。

「ゴラーム様、どうなさったのですか?」
「ん、いや、なんでもない」
俺はA1にそう答えると、あらためてメカレディたちを見渡した。
いずれ劣らぬ美女たち。
人間の時も持ち合わせていた美しさに、今は機械の美しさが加わっている。
無論表面上は人間の時の姿に似せてはいるが、内部の機械がその美しさをバランスよく制御しているのだ。
作らせた俺も惚れ惚れするほど。
A1の躍動するしなやかさ。
A2の少女らしさの中の小悪魔っぽさ。
A3の若い女性の持つみずみずしさ。
A4の人妻の持つ妖艶さ。
どれをとっても人間の男は心惹かれるものだろう。
人間世界の中心は、なんだかんだ言ってもまだまだ男が占めている。
そこで工作活動を行うにはこういった女性型がいいのだ。
メカレディたちにはこれからそういった任務についてもらわなくてはな。

「さて、今日でいよいよ七日目だ。今日一日俺の命令に従えばいい。そのあとでお前たちにまだ人間として暮らしたいという気持ちがあるのならば、そのときにはお前たちを解放する」
俺の言葉に互いの顔を見合わせるメカレディたち。
だが、昨日とは違い、その顔には笑みが浮かんでいる。
ほう・・・
この笑みの意味するものは何なのやら・・・
俺は一瞬そう思ったが、彼女たちはすぐに表情を引き締めて俺に向き直る。
「「ギーッ! ゴラーム様、何なりとご命令を」」
俺はメカレディたちにうなずくと、今日の任務を命令した。

任務そのものは単純なものだ。
誰でもいいから知り合いの人間を二人殺すこと。
つまり、かつての自分を知る人間に怪しまれないように近づいて暗殺しなくてはならない。
無論殺したのがメカレディであるということを極力知られないようにしてだ。
フェイスカバーはなし。
あくまでも人間としてターゲットに近づき、暗殺するのだ。
これができればもうメカレディ計画は完成したと言っていいだろう。
やり方は自由。
力任せに首をひねろうが、銃やナイフを使おうが、毒を使おうがかまわない。
ターゲットが気を許している状態で殺せればいい。

一日目にこんな命令を出していたら、おそらく彼女たちは自発的には何もできなかっただろう。
必死で抵抗し、脳が壊れていたかもしれない。
だが、今目の前のメカレディたちは、俺の命令を黙って聞いている。
それどころか、すでにターゲットをメモリーの中から選んでいるはずだ。
そしてターゲットをどのように殺すかも・・・

「ギーッ! かしこまりましたゴラーム様。さあみんな、行きましょう」
「「ギーッ!」」
命令を受け取るとメカレディたちはA1の指示に従って地上に向かう。
殺人を命じられたにもかかわらず、みなその表情は明るい。
任務を命じられたことが嬉しいのだろう。
俺は彼女たちの後姿に満足した。

結論から言うと、メカレディたちは命令を忠実に果たして戻ってきた。

「私は学校の友人だった二人を呼び出しました。そしてハンバーガーでも食べに行こうって誘い、その途中で体内から電流を流して感電死させました」
得意げに話すA2。
友人だったという言葉が今の彼女を象徴しているだろう。
スパイロボで監視はしていたが、その手並みはなかなかのものだった。
「私は以前から誘いをかけてきていた会社の男性同僚を二人。相談があると携帯に送ったらすぐに食いついてきましたわ」
口元に薄く笑みを浮かべるA3。
たやすく人間を罠にかけることができたのが嬉しかったのだろう。
「一人ずつドライブでもと誘い、車内で首を折ってやりました。人間てホント簡単に死ぬんですよね」
「私は夫だった男と姑を・・・」
こちらはぞっとするような笑みを浮かべるA4。
まさに一番身近な人間ではないか。
「喉を潰して悲鳴を上げられないようにしてから、ゆっくりと心臓を握りつぶしてやりましたわ。うふふふ・・・あんな蛆虫どもと暮らしていたなんてバカみたい」
ほう・・・自ら帰る場所を潰したか。
それにしてもまさか自分の妻に心臓を握りつぶされるなどとは思わなかっただろうな。
「私はコマンダー訓練センターで訓練中の後輩を二人・・・」
ちょっと切なそうな顔をするA1。
まだ今回の命令に苦悩があったのか?
「私はおろかにも時々訓練のサポートをしてやっていたんです。現役ピースコマンダーとして・・・」
ぎゅっとこぶしを握り締めるA1。
なるほど。
俺の命令に対してではなく、自らの過去に苦悩したのか。
「だから・・・少しでもそんな過去は消したくて・・・それにコマンダー候補生はいずれピースコマンダーとして私たちの敵となる存在。だから・・・」
「ああ、そうだな。おそらく今頃はコマンダーピンクの代役を模索しているはずだ」
ピースコマンダーとて無敵ではありえない。
死なないまでも怪我をすることは充分に考えられるのだ。
そのバックアップ要員がいないなどということはありえない。
すでにA1が行方をくらませてから十日近くなる。
これ以上日が経てば、おそらくコマンダーピンクの入れ替えが行なわれるはずだ。
その前にこいつを戻してやりたいのだがな。

「うふふふ・・・」
俺はドキッとした。
A1が笑っているのだ。
「簡単でした。彼女たちは何の疑いもなく私の呼び出しに応じたんです。もちろん本部を通して呼び出したりはしませんでした。彼女たちとは個人的に連絡も取っておりましたので」
さすがのピースコマンダーも隊員たちのプライベートまではそう管理できないだろうからな。
ましてや単なる候補生だ。
普段からの管理などは行なわれまい。
「彼女たちは私がいまだに桃野弘美であると疑いもしないおろかな連中でした。私は彼女たちにカラオケに行こうと誘い、途中で始末してやりましたわ。うふふふ・・・」
薄笑いを浮かべているA1を俺はとても嬉しく思った。
後輩をためらいもせずに殺せるようになったのだ。
これで俺の計画は完成だ。

「よくやったぞお前たち」
「「ギーッ!」」
いっせいに服従音を発し、右手を胸のところで水平にするメカレディたち。
以前は俺がコントロールしてやらなければならなかったことだが、今では自ら当然のこととして行なっている。
「これでお前たちに課した一週間は終わった。お前たちは俺の予想以上のできであり、充分に働いてくれた」
俺の言葉にメカレディたちの顔がほころぶ。
「さて、あらためて問おう。人間としての生活に戻りたいか?」
俺はメカレディたちを見回した。

「ゴラーム様、お戯れはおやめくださいませ」
「私たちの結論はもうご存知のはずです」
「私たちが人間に戻りたいなどと考えるはずがありません」
「私たちは栄光ある機械帝国の一員、メカレディですわ」
口々に言うメカレディたち。
わかってはいたはずなのに、なぜか俺はホッとしていた。

「あ~っ、ゴラーム様、まさか私たちが人間に戻りたいって言い出すと思っていたんじゃ?」
「そ、そうなんですか、ゴラーム様? それはひどいです」
「人間なんてあんな下等生物に戻りたいわけありません。血と肉と骨の単なる塊じゃないですか」
「あんな脆弱な肉体だったなんて思うとぞっとします。私、今はメカレディにしてもらえて感謝しています」
こいつら・・・
一週間前とはえらい違いじゃないか。
「ふふふふ・・・・・・ふははははは・・・」
俺は思わず笑い出してしまっていた。

だったらこれはもう不必要だな。
俺はメカレディたちの躰をコントロールするリモコンを取り出すと、思い切り握りつぶす。
ぐしゃぐしゃに壊れたリモコンに、メカレディたちは驚きの表情を見せた。
「これはもう必要ない。お前たちはもはや完全に我が機械帝国の一員だ。コントロールなどされずとも問題あるまい?」
「「はい、私たちはメカレディ。機械帝国の忠実なるしもべです。ギーッ!」」
あらためていっせいに右手を胸のところで水平にするメカレディたち。
機械帝国の新たなる戦士たちの誕生に俺は満足した。
  1. 2008/12/27(土) 20:47:05|
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七日目(12)

「七日目」の十二回目です。
六日目後編となります。

それではどうぞ。
それにしても寒いなぁ・・・


12、
「それで、コンピュータを破壊し、脱出したというわけだな?」
戻ってきたメカレディたちが俺の前に整列している。
フェイスカバーをはずして直立不動の姿勢をとる彼女たちの表情には、一様に満足そうな表情が浮かんでいた。
任務を果たしたという達成感があるのだろう。
「はい。データはいずれも確認されたものばかりで不必要なものでしたが、そのままにしておくのも我が帝国の益にならないと判断し破壊しました。無断の行動でしたがいけませんでしたでしょうか?」
そうは言うものの、A1はいけなかったとは思っていないはず。
無論、俺もとがめるつもりはまったくない。
それよりもこいつらの意識が変わってきたことがうれしいのだ。
「いや、いけないことなど何もない。よくやったぞ。ご苦労だった」
「あ・・・」
俺の言葉にうれしそうに笑顔を見せるメカレディたち。
任務を果たし褒められたことがうれしいのだろう。
俺はご褒美の意味もかねて少しだけ快楽を送り込んでやる。
もうこのリモコンも使わなくてもよさそうだな・・・

メカレディたちを解散させた俺は、いつものようにリラックスルームに足を運ぶ。
鼻歌を歌いながらオイルジュースを手にソファーに座る。
いつになく気分がいい。
メカレディたちもほぼ手中に入った。
明日いっぱいあればもう完全だろう。
これでいよいよ俺の作戦を実行に移すことができるな。
まずはコマンダーイエローあたりか・・・

「ご機嫌そうだね、ゴラーム」
おっと、来たな・・・
そろそろ現れるころだと思ったぞ。
オイルジュースに口をつけたからな。
今日もまた残りは飲めないのか?
「ああ、気分いいぞ、メレール」
俺は座るのかと思ってメレールのためにソファーの端による。
「何かあったの? 楽しそうじゃん」
メレールも尻尾をふるふると振りながら俺の隣に腰掛ける。
やれやれ、なんだかこいつも機嫌よさそうだ。
「ああ、A1がようやくメカレディとしての自覚がでてきたようでな。明日いっぱいもあれば完全なメカレディに変貌してくれそうなんだ」
「A1って、コマンダーピンクだった奴だよね」
メレールが俺の横顔を見つめている。
こいつって・・・ホント可愛いよな。
俺は横目で見ながらそう思った。

「ああ、そうだ。A1以外はほぼもう問題ない。そのA1もじょじょに身も心もメカレディになってきつつあるんだ。どうやらうまく行きそうだよ」
「ふーん・・・ねぇ、ゴラーム」
「ん?」
俺はオイルジュースを口に含む。
「A1たちって可愛い? それって人間が言う好きっていうこと?」
「ああ、可愛いし好きだぞ。なんたって・・・」
俺の忠実なしもべたちだからなという言葉は続けられなかった。
シュッという風を切る音とともに、俺の持っていたオイルジュースのボトルは真っ二つになったのだ。
「うそつきーっ!」
へ?
嘘?
何がだ?
だが、メレールはすばやく立ち上がり、鉤爪を構えてフーッとうなっている。
そして怒りに燃えた目で俺をにらんでいるのだ。
「ま、待て待て、何が嘘なんだ?」
俺は切り裂かれたボトルを捨て、両手を前に出してカバーする。
いつもながら冗談じゃない。
こいつの鉤爪は俺の装甲ボディすら簡単に貫くんだぞ。

「うそつきーっ!! むーっ! なによなによ! あたしのこと可愛いって言ったじゃない! 親愛の情だからってキス攻撃したじゃない! それなのにA1がいいのかー? メカレディのほうが可愛いのかー? むーっ! ぶっ殺ーーす!!」
なんなんだー?
違うだろ。
そうじゃないだろ。
「ま、待て待て・・・」
俺は跳びかかってきたメレールから間一髪で跳び退る。
レクレーションルームからは、すぐにメカデクーたちの姿が消えていく。
いや、おまえたちは正しい。
俺だって、こんな猛獣と一緒にいるのは・・・

ザシュッという音とともに切り裂かれるソファー。
「むーっ! 何でこんなに悔しいのよー! コマンダー連中から逃げるのだってこんなに悔しくなかったぞー! ゴラーム! あたしは何でこんなに悔しいのよー!」
鉤爪を振り回しながらもなぜか悲しげなメレール。
なんなんだ?
いったい何があったんだ?
「待て待て。おまえ何を言ってるんだ? 俺が可愛いとか好きだとか言ったのは・・・」
「うきゃー! 聞きたくない、聞きたくないよぉ・・・ゴラームがメカレディを好きだなんてやだぁ・・・やだよぉ・・・ゴラームぅ、ほかの機械を好きになっちゃやだよ・・・好きってなんだかよくわからないけど・・・」
鉤爪を振るのをやめ、ぺたんと床に座り込んでしまうメレール。
その悲しそうな目が俺を見つめてくる。
ふっ・・・
そういうことか・・・
こいつは“嫉妬”に駆られたんだ。
精巧な機械生命体であるメレールは、しっかり“嫉妬”の感情に苛まれたわけか・・・
俺は恐る恐るメレールのそばに行く。
そしてその細く華奢な躰を抱きしめた。
「メレール・・・」
こいつはこんなに華奢だったのか・・・
普段はあんなに暴れ者なのに・・・
可愛いやつめ・・・
俺はそっとメレールにキスをした。

「・・・・・・」
動きが止まるメレール。
「落ち着いたか?」
「う・・・うん・・・」
じっと俺を見つめる目。
カメラアイの焦点が俺の顔に合わされている。
「いいか、よく聞け。俺がメカレディのことを可愛いとか好きだとか言ったのは、俺が自分で作り出したモノだからだ。そいつらがじょじょに俺に懐いてきたとしたら、可愛いし好きにもなるだろう。違うか?」
「わかんない」
あ・・・
うーむ・・・
わからんかなぁ・・・
「たとえばだ。おまえだって自分の命令によく従うメカデクーがいたら、面倒見てやろうって気にならないか?」
「ならない。メカデクーは命令には従うもん」
あ・・・
うーむ・・・
「じゃ、じゃあ、たとえば犬とか猫をおまえが飼ったとしてだなぁ・・・」
「飼わないよ。もう、なによー! 好きだとか何とかわけわからないことばっかり言って! あたしをバカにしているのかー!」
メレールの目がギラッと光る。
いかん、こいつまたぶち切れる。
「違うってば! とにかく、俺が一番好きなのはおまえなの! メカレディたちとは違うんだよ!」
んあ?
俺は今何を言った?
見ろ。
メレールだって目を点に・・・
「ゴラーム・・・今言ったことホント? あたしが一番好きだって・・・それってメカレディたちよりあたしのほうが上だってことなんだよね?」
メレールが俺を見上げている。
「あ、ああ、そうだ。どうやらそうらしい。俺はおまえが一番好きならしい・・・」
くそっ、何で俺がこんなことを・・・
まいったなぁ・・・

「んふふふ・・・そうなんだー。ゴラームはあたしのことが好きなんだー。やったぁ!」
いきなり俺の首筋に抱きついてくるメレール。
「あたしも好き。好きってよくわからないけど、きっとこれが好きってことなんだと思う。だからあたしもゴラームが好き」
メレールの柔らかい唇が俺の口に押し付けられる。
「心臓ポンプがどきどきしてるよ。熱も発生しているよ。ほら、触ってみて」
唇を離すと俺の手を取り、ビキニアーマーの胸の上に当てようとする。
「ま、待て、待てって、それはやばい!」
くそー!
おまえ以上に俺の心臓ポンプがはじけそうだよ。
何でこんなことになったんだ?
やれやれ・・・
でもまあ・・・
これも悪くないか・・・
俺はメレールの胸に手を当てて、再び唇を重ねるのだった。

「それで? 夕べとは違う動きをしていると?」
メレールと別れた俺は、モニタールームに顔を出していた。
女性型メカデクーからメカレディたちがまたしても怪しげな動きをしているという報告が入ったのだ。
おそらく夕べのようにお楽しみかとも思ったのだが、どうも夕べの動きとは違うらしい。
結局俺自身で確かめるべく、こうしてモニタールームに足を運んだというわけだ。
「オオマカナコウドウハサクジツトドウヨウデスガ、イチブチガウウゴキガミラレマス」
女性型メカデクーがモニターを指し示す。
暗視に切り替えられたモニターには、昨日と同じようによりそうメカレディたちの姿が映っていた。
何だ、夕べと同じではないか。
ああ、そうか。
楽しみ方にもいろいろあるのだということをこのメカデクーたちには教えていなかったな。
「心配はいらん。楽しみ方にもいろいろ・・・」
俺は何てことないのを確かめて部屋に戻ろうとした。
待て・・・
あれはいったい?
俺はカメラをズームにした。

『ひゃあぁぁぁ・・・な、何これぇ・・・』
『うふふふ・・・どう? すごいでしょ』
『う、うん・・・来る・・・全身に来るよぉ・・・』
躰を小刻みに震わせているA3。
その首筋には一本のケーブルがつながれている。
そしてそのケーブルは寄り添って寝ているA2へとつながっているのだ。
『うふふふ・・・こうしてパルスでA3を可愛がるなんて想像もしなかったなぁ。昨日とはまったく違うよね』
『う、うん、全然違うよぉ。こっちのほうがずっといいよぉ』
口を薄く開け、快楽に酔いしれているA3。
見ると、隣のベッドではA1がA4にケーブルをつないでいた。
『ああ・・・こ、怖いわ』
『心配しないで。ちょっとパルスのやり取りをするだけよ。すごく気持ちいいの。人間のときのセックスなんか比べ物にならないわ』
『ん・・・はぁっ? う、うそぉ・・・』
パルスが流れ込んできたのか、A4が躰を震わせる。
なるほど。
俺が快楽中枢を刺激する手段を自分たちでも見つけたということか。
やれやれ・・・
ますますリモコンは不必要になったということか。
まあ、それでも、パルスで快楽を得るなんてのは、機械の躰に順応したということだろう。
『あハァ・・・ん・・・いい・・・いいよぉ・・・』
『でしょ? A4も私にパルスを送ってみてよ。気持ちいいよぉ』
『こ、こう?』
『ひゃぁん! し、刺激が強すぎる! もっと弱めてぇ! イッ、イッちゃうぅぅぅぅ』
いきなりの最大級の快楽にあっという間に登りつめるA1。
『うひゃぁ・・・わ、私もぉ・・・』
『私もイくぅ・・・』
A4もA3も快楽に飲み込まれていく。
やれやれ・・・
ほどほどにしておけよ。

『はふう・・・すごいよぉ・・・気持ちいい・・・』
『本当ね。パルスが躰中を駆け巡って・・・もう最高の気分』
『機械の躰って最高だわぁ。あんな不完全な肉の塊でいたなんてバカみたい』
『A1の言う通りね。あんな血と肉の塊だったなんてぞっとするわ』
絶頂の余韻に浸りながら、メカレディたちは口々につぶやいている。
俺はその言葉にほくそ笑んでいた。

不測の事態に備えるという名目で、俺は結局メカレディたちのお楽しみが終わるまでモニタールームに待機していた。
もちろんモニター内で行なわれていることについては目を向けてはいたものの、さほど興味を引くものではない。
彼女たちが機械の躰であることを喜びと感じること。
生身の生命体だったものに機械化された躰による永遠の存在に近づける喜びを教えてやること。
皇帝陛下のお考えとは若干違うかもしれないが、これこそが俺の理想であり誇りでもある。
だからこそ人間を機械にするなどということを行なっているのだ。
さて、いよいよ明日で最後だな。
  1. 2008/12/26(金) 20:48:25|
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七日目(11)

「七日目」の十一回目です。
六日目の前編になります。

それではどうぞ。


11、
六日目。
やれやれ、なんとなくメカレディたちの顔を見るのが照れくさい。
それにあんなシーンを見ていたなんて知れたらメレールになんて言われることか。

「「ギーッ!」」
いつもと同様に俺の前に整列しているメカレディたち。
だが、その表情が心なしか明るく感じるのは気のせいか?
黒いレオタードに身を包んだその姿も、なんとなく誇らしげに見える。

「さて、今日で六日目だ。精神波モニターによれば、お前たちの一部にはこれでもまだ人間への執着心があるらしいな。このままでは明日いっぱいでお前たちを解放しなくてはならない」
俺の言葉に一瞬複雑そうな表情を見せるメカレディたち。
そっとお互いの顔を見合わせる。
「心配するな。俺は約束は守る。栄光ある機械帝国の参謀だ。嘘は言わない」
まあ、これ自体が嘘みたいなものだがな。
それに精神波モニターではだいぶメカレディであることの抵抗もなくなっている。
明日いっぱいもあれば、彼女らをメカレディにするのは何とかなるだろう。

「あの・・・」
A3が手を上げる。
「なんだ?」
「誰か一人でも人間でいたいと望めば、この四人みんなが解放されるのですか?」
ふふふ・・・どうやらA3はほかがどうあれメカレディでいたいと感じるようになってきたな。
「そうだな・・・一人でも望めばみんな開放してやる。どうせ作戦は失敗だ」
これも嘘だ。
できれば四人いるのが望ましいが、潜入活動など四人揃わなくてもいい場合もある。
「そう・・・ですか・・・」
A3とA2がチラッとA1のほうを見たのを俺は見逃さない。
いい傾向じゃないか。

「今日の任務もお前たち自身に作戦を立ててもらおう。これを見ろ」
俺は背後のスクリーンに建物の写真を映し出す。
「「これは?」」
スクリーンに見入るメカレディたち。
A1も見入っているということはどうやら知らない建物のようだな。
「これは防衛隊装備研究所だ。主に陸海空の防衛隊の装備を研究しているが、そこから派生してピースコマンダーの装備を研究したりもしているらしい」
らしいという、たかだかこの程度の情報を得るのにどれほど苦労させられたことか。
日本は情報がだだ漏れという奴もいるが、ことピースコマンダー関連に関しては情報統制はかなり図られていると言っていい。
「ピースコマンダーの装備もですか?」
A1が驚いたように言う。
まあ、ピースコマンダーの一員とは言え、知らされないことのほうが多いだろうからな。
「ああ、とは言ってもお互いに情報提供しあったりとか、ピースコマンダーの装備をスペックダウンして量産をはかり防衛隊の装備の質的向上を図ったりとかという研究らしいがな」
「なるほど・・・」
うなずくA1。
「それで、私たちに何をしろと・・・」
「ここへ侵入して、コンピュータデータを奪って来い。それだけだ」
A3の質問に俺は作戦目的を言う。
もっとも、データなどは二の次で、真の作戦目的はメカレディたちの潜入工作訓練だがな。

「データをですか? でも、膨大な量になりませんか?」
A4が戸惑いの視線を向けてくる。
すでに作戦そのものには疑問を抱いてない。
実行面での不安を感じているだけだ。
命令に従うことにはもはや問題ないようだな。
「お前たちに取捨選択は任せる。我が帝国に必要だと思えば奪って来い。必要ないデータだと思えば奪うには及ばない」
こんな形で命令すれば、以前であれば侵入することなく、すべてのデータは不要だと判断しましたと言ってごまかしただろう。
人間の不利益になるようなことはしないだろうからだ。
だが、今は違う。
おそらくメカレディたちにこの施設に侵入しないという選択肢は無いだろう。
俺の命令に従うことは、それだけ彼女たちの中でも当たり前になっているのだ。

「私たちが判断してもいいのですか? ゴラーム様にご確認しなくてもいいのですか?」
A2が驚いている。
自分たちに一任されることが信じられないようだ。
「無論だ。それだけの能力はお前たちに与えてある。お前たち自身で判断し行動しろ。すべては任せる」
「ありがとうございます、ゴラーム様。必ずご期待に添えてみせます」
「ありがとうございます」
眼を輝かせているA2とA3。
「施設に関するデータは好きに見ていいぞ。侵入方法その他一切を任せるからな。好きにしろ」
「かしこまりましたゴラーム様。さ、行きましょA1、早速作戦を練らなきゃね」
A3がA1の腕を引く。
「あ・・・そ、そうね。それではゴラーム様、行ってまいります」
「「行ってまいりますゴラーム様。ギーッ!」」
いっせいに服従音を発して右手を水平にするメカレディたち。
やはりあとはA1だけだな。
部屋から出て行く彼女たちの後姿を見送りながら、俺はそう思っていた。

俺はいつものようにモニタールームでメカレディたちの動向を監視する。
やれやれ・・・
まったく我ながら覗き魔になってしまったものだ。
困ったものだな・・・
控え室内のメカレディたちは、早速A1を中心にして侵入工作の作戦を立てている。
その表情は真剣そのもの。
いつになく積極的な雰囲気だ。
やはり少しずつ意識の変容が行なわれているのだろう。
防衛隊の施設に侵入するという人間にとっては大いに不利益となる行動をするはずなのに、メカレディたちは笑みを浮かべていたりもするのだ。
それだけ、彼女たちにとっては難しくない任務ということか。

『それじゃこれで行くわね。みんな問題ない?』
『OKだよ』
『大丈夫』
『任せてくれていいわ』
A1の言葉に三人がしっかりとうなずく。
いずれの顔にもこれからの任務に備えて引き締まった表情がうかがえる。
ふふ・・・
頼もしいことだ。
思わず俺も笑みが浮かんだ。

夜になり、身支度を整えたメカレディたちが控え室を出て行く。
いずれもがフェイスカバーをつけている。
今回は素顔を晒すのは避けたということか。
それがどういう意図で行なわれたのかが気になるところだな。
人間に戻りたいがために素顔を晒したくなかったのか・・・
それとも・・・
俺は精神波モニターに眼をやった。
いずれもが安定している。
無論、これからの任務に備えて多少の興奮は起こっているが、それは問題ない。
ただ、フェイスカバーをつけた瞬間の精神波の乱れが気になった。
ふふふ・・・
どうやらフェイスカバーがわずらわしくなってきたかな・・・

我が機械帝国の地底城は、あちこちに出入り口を張り巡らせている。
そのいずれもが下水道などの人目に付かない場所に通じている。
だからこそ我らは神出鬼没に動けるのだ。
すでに放ってあったスパイロボからの映像を、俺はモニタールームで眺めている。
万一何かあった場合は、すぐにバックアップしなければならないからな。

マンホールのふたを開け、周囲をすばやく探るA4。
目指す防衛隊の装備研究所はすぐ近くだ。
暗闇の中、漆黒のレオタードとロングブーツに身を包んだメカレディたちが、ひそかにマンホールから姿を現す。
装備研究所は郊外に建てられているので、周囲には人家はまばらにしかなく人影はない。
もちろん彼女たちのセンサーもそのことは充分にわかっているだろう。
メカレディたちは、互いに顔を見合わせてうなずくと、それぞれ所定の行動を取り始めた。
音も無く門に忍び寄り、警戒に当たっていた防衛隊員二人を一撃に倒すA1とA3。
首筋への一撃は、おそらく二人を殺してしまったことだろう。
その間にもA2とA4は監視所に忍び込み、中の二人を始末する。
こちらはガスを使ったらしい。
気を失わせてその間に侵入ということか。

『どうしようA1・・・こいつ、死んじゃったわ』
『ええっ? あんなに手加減したのに?』
スパイロボが拾った音声が流れてくる。
なるほど・・・
殺すつもりではなかったということか。
まだまだ甘いが、仕方が無いか。
『やっぱり人間ってもろいのね・・・仕方が無いわ。私もやっちゃったみたいだし』
倒した防衛隊員を確認し、肩をすくめるA1。
『A1も?』
『こんなに人間がすぐ死ぬなんて思わなかったわ。これでもずいぶん手加減したのよ。これで死ぬなんてふざけてるわよ』
ほう・・・
A1の声に苦いものが混じっている。
だがそれはこんなに簡単に死んでしまった人間に対する侮蔑とも言うべき感情のようだ。
悪くない。
『A1、こっちはOKよ。行きましょう』
A4がA1を呼ぶ。
すぐにA1とA3もその場をあとにした。

ここから先は我が機械帝国にも情報は少ない。
小型のスパイロボといえども目に見えないほど小さくできるわけもなく、施設の中を昆虫が飛び回るのも不自然というもの。
せいぜいハエ型のを数匹飛ばしてある程度の見取り図を作成した程度だ。
だから、これからがメカレディたちの腕の見せ所である。
さて・・・

俺の予想以上にメカレディたちの行動は上手だった。
A1とA3、A2とA4がペアを組み、それぞれが相互支援して侵入していく。
持ち前のセンサーで監視カメラやセンサーを識別し、人間の防衛隊員はできるだけやり過ごすようにして、目指すコンピュータルームへ向かうのだ。
その侵入の腕前に俺は感心する。
いつの間にここまで上達したものやら。
となると、こちらも足を引っ張るわけには行かないな。
俺はスパイロボをハエ型の二機だけにして、センサーなどに引っかからないように操作する。
まあ、こういうために作られたものだ。
へまさえしなければ問題は無い。

配電用のケーブルダクトや、通路の天井を使うなどして、メカレディたちはコンピュータルームに忍び込む。
ここまでは上出来だ。
自分の能力を遺憾なく発揮してくれている。
あとはハッキングするのみだが、正直言ってこれは警報を発せられてしまうはず。
あとはいかに手早く撤収できるかだ。
防衛隊員数人ぐらいならば問題なく対処できるはずだが、コマンダーチームが派遣されてくるようでは厄介だからな。
おそらく三十分程度。
それぐらいの時間の余裕しかあるまい・・・

『ここがコンピュータルームね』
『さすがに大きいわ。情報もたっぷりと入っていそうね』
A1とA4が目の前の大型コンピュータに感心している。
『A2、お願い。どうやらまだ嗅ぎ付けられてはいないようだから手早くね』
『了解』
A2がすばやくコンピュータに駆け寄り、腰のポーチからケーブルを取り出す。
そしてコンピュータに接続すると、もう片方の端を自分のうなじにあるソケットに差し込んだ。
『行くよ』
そのまま制御卓に付くと、A2は目にも止まらぬ速度でキーボードを叩き始める。
補助脳がバックアップしているとはいえ、彼女の脳自体が機械の躰に順応しているのだ。
そうでなければこれほど早くできはしないだろう。
その間もA3は周囲の警戒に余念がなく、A4はさらにそのバックアップ体制と役割が決められているようだ。
ずいぶんと成長したじゃないか。

『ふあ・・・』
突然奇妙な声を出すA2。
『何? どうしたの?』
驚いたA1が駆け寄った。
『あ・・・う、ううん。なんでもない』
少し頭痛でも起こしたかのように頭を振るA2。
何だ?
何かあったのか?
まさか逆にコンピュータに何かされたとか?
『そう? ならいいけど・・・』
そう言って離れようとしたA1の腕を掴むA2。
『ね、A1もちょっと味わってみてよ』
フェイスカバーの目がA1を見上げている。
『味わうって? 何を?』
『いいから』
A2は自分のうなじからケーブルをはずすと、それをA1に差し出した。
『付けてみてよ』
『これを?』
不思議そうにしているA1に、A2は無言でうなずく。
よくわからないままにうなじのソケットにケーブルを差し込むA1。
その仕草が妙に美しい。

『ひっ!』
突然声を上げたA1にA3とA4が振り向く。
『あ、な、なんでもないわ。なんでも』
あわてて両手を振り何もないことを示すA1。
いったい何があったというのだ?
A2もA1も妙だろう。
『うふふ・・・どう? 気持ちいいでしょ?』
『A2、あなた』
『私も今知ったの。これがこんなに気持ちいいことだったなんて・・・A1もそう思うでしょ?』
『う・・・す、すごい・・・気持ち・・・いい・・・』
もじもじしているA1。
両手が胸や股間に伸びているのはもしかして・・・欲情しているのか?
『だ、ダメ・・・これはダメ・・・』
『回路閉鎖すればいいのよ。うふふふ・・・でもすごいでしょ。夕べのなんか目じゃないよね』
いたずらっぽく笑うA2。
『う、うん。すごいわ。パルスのやり取りがこんなに気持ちよかったなんて』
『発見だよね。あとでA3やA4にも教えてあげなきゃ』
『そ、そうね。でも今は・・・』
ようやく躰を落ち着かせるA1。
まさかいきなり欲情するとはなぁ。
コンピュータとのデータやり取りが、快楽回路を刺激したということか?

『A1、まだなの? そろそろ敵が来るわよ』
A3が多少の苛立ちを見せる。
敵とは誰のことやら・・・
『ごめん、もう少し。でもたいしたデータはないわね。我が機械帝国の役に立つような・・・って、私いつの間に我が機械帝国なんて・・・』
口元に手を当てて驚きを見せるA1。
いつの間にか機械帝国の一員として考えていることに驚いたのか?
『A1、何? あなたまだ・・・』
A4がA1をにらみつける。
A1がまだ人間にこだわっていることに多少いらついているのかもしれない。
『違うの・・・』
『違う?』
『違うの・・・なんだか妙なの。なんだか・・・すごくうれしいの』
『うれしい?』
首をかしげるA4。
『うん、うれしいの。今ね、すごく素直に我が機械帝国って言えたの。なんだかそれがすごくうれしいの。自分の居場所なんだって気がしたの』
両手を胸に当てて感触を確かめるような仕草をするA1。
なるほど。
ようやく機械帝国の一員であることを深層心理が受け入れたか。
やれやれ、まずはこれで一安心かな。

『A1・・・』
『ごめん、今は任務中だったわね。A2、どう?』
A2に振り向くA1。
『データの確認は終わったわ。A1の言う通りほとんど役に立つようなデータはないわね。持って帰っても意味ないわ。すでに確認されているデータばかり』
『そう、だったら破壊しましょ。こんなもの我が機械帝国の邪魔なだけだわ』
A1は我がに力を込めきっぱりとそう言った。
  1. 2008/12/25(木) 20:53:48|
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七日目(10)

「七日目」もいよいよ十回目です。
今回は五日目後編です。

それではどうぞ。


10、
「自分が助けられたというのにA4を・・・」
「あんな男死ねばよかったのよ」
A1がこぶしを握り締め、A3が唇を噛み締める。
放心したようなA4をA2も心配そうに見つめていた。

俺はA4に近づくと、そっと抱きしめてやる。
「えっ?」
おそらくA4は戸惑いの表情を浮かべているだろう。
「何を嘆くことがある。あの男の無様さを見ただろう? 腰を抜かして地面に這いつくばっていたじゃないか。あんな蛆虫のようなやつをお前は気にかけていたのか?」
A4の躰がピクッと震える。
「あんな蛆虫?」
「そうだ。奴らは下等な蛆虫さ。所詮人間どもにお前たちメカレディのすばらしさはわからない」
「人間どもに私たちメカレディのことはわからない?」
A4が鸚鵡返しに俺の言葉を繰り返す。
「そうだ。人間のような生き物に機械のすばらしさがわかるはずがない。お前たちはすばらしい。機械帝国の最高傑作のひとつなのだ」
「人間に機械のすばらしさがわかるはずが・・・ない?」
「そうだ。奴らはただの血が詰まった肉の塊だ。そんなグロテスクな生身の生き物に機械のすばらしさはわからない。奴らは恐れているのさ、お前たちを」
「「私たちを恐れる?」」
A4だけじゃなく他のメカレディも俺の言葉に思わず答える。
「そうさ。お前たちは強い。人間などまったく問題にならない。だから人間はいびつなコマンダースーツシステムなんかの力を借りて我らに対抗しようとする。だが、そんなのはおろかなことだと思わないか?」
「おろかな・・・こと・・・」
A1が考え込む。
俺の言葉を考えているのだ。
それでいい。

「そうよ・・・」
俺の耳元でA4がつぶやく。
「人間に私たちのことなどわかるはずないわ・・・機械の感覚なんてわかるわけない」
「そうよ。人間どもになんてわかってたまるものですか」
A3が賛同する。
「・・・・・・」
無言のA1。
だが、その胸中は大きく揺れているはずだ。
「お前たちはよくやった。今日はゆっくり休め。いいな」
俺はA4を離し、メカレディたちを前にする。
「「ギーッ!」」
彼女たちはいっせいに敬礼した。

「ふう・・・」
相変わらずリラックスルームに俺はやってくる。
入れ替わりにこそこそと出て行くメカデクーたち。
おいおい・・・
俺は何かの災厄か?
まあ、メレールが暴れまくるとなれば災厄以上だがな。
俺はいつものようにオイルジュースを取り出して口をつける。
いつもならこのあたりであいつの可愛い声が聞こえてくるはずなんだが、今日はそうも行かないか・・・
「ゴラーム」
「ん?」
俺は顔を上げる。
「あ・・・メレール・・・か?」
そこには俺が声を聴きたいって思っていた奴がいた。
両手を後ろで組み、俺のほうに顔を突き出している。
茶色の毛に覆われた猫耳が頭の上でピンと立ち、縦長の瞳が俺をじっと見つめていた。
「どうだった、ラジコン人間? うまくいった?」
「ああ、ばっちりだ。助かったよ、メレール」
パアッと表情が明るくなるメレール。
どうやら褒められて気分がいいらしい。
尻尾も心なしか大きく揺れているようだ。
「うんうん、当然でしょ。あたしが仕掛けたんだもん」
エッヘンと言わんばかりに胸を張るメレール。
ビキニ型のアーマーに覆われた形のよい胸がつんと上を向いている。
「まあ、使ったのは三体だけだったがな。また何かあったらよろしく頼む」
俺はそう言って再びジュースに口をつけようとした。

シュッと空気が切れる音がして、俺の持っているオイルジュースのボトルが真っ二つに切り裂かれる。
「わぁっ! 何をする!」
俺はいきなりのことに驚いてメレールを見上げる。
「それだけ? それだけなの?」
「へっ?」
鉤爪を振るったメレールがシュンとしている。
何だ?
いったいどうしたんだ?
「むーっ! なによー! ゴラームがきっとあのあたしをどきどきさせるキスとかいう攻撃を仕掛けてくると思って待ってたのにー! また頼むの一言だけなんてー! むーっ! ぶっ殺ーーす!!」
ギロリとこちらをにらみつけ、いきなりぶちきれるメレール。
鉤爪が紙一重の差でよけた俺の前髪を切り裂いていく。
じょ、冗談じゃないぞ。
頭はやめろ。
脳を破壊されたら修理不能なんだぞ。
俺を殺す気かっ?
て・・・ぶっ殺すって言っているのか・・・
いや、そんな場合じゃ・・・

俺はメレールの動きをかいくぐる。
いざとなればこのぐらいの動きは何とかなるものだ。
そして鉤爪を振るう彼女の両腕を押さえつつ、足を払って床に組み伏せる。
どうだ。
怒りのままに闇雲に鉤爪を振るうだけなら、俺だって実行部隊長を組み伏せるぐらいはできるんだぞ。
そう思いながら、ふと仰向けのメレールの上に馬乗りになっていることに気がついた。
いかん・・・
これじゃ俺がメレールを襲ったみたいじゃないか?
「ゴラーム・・・痛いよ・・・」
ぐはぁっ!
何でそこでしおらしい表情をするかお前は!
俺はもう何も考えずにメレールの唇に自分の唇を重ね合わせる。
しまったなぁ・・・
俺もどうやら攻撃されてしまったらしい。
胸がどきどきして躰が熱いぞ。
メレール・・・このくそ可愛いやつめ。
メレールの腕が俺の首に回されたのをいいことに、俺はしばらくメレールと口付けを交わしていた。
やれやれだ・・・

『ごらーむサマ・・・ごらーむサマ』
「ん・・・?」
メレールと別れ自室で眠りについていた俺は通信機からの声に起こされる。
まったく・・・
人間の脳は休息が必要なのが厄介だ。
『ごらーむサマ。オキテイラッシャイマスカ、ごらーむサマ』
「何だ? どうした?」
俺は上半身を起こすと、ベッドの脇の通信機に手を伸ばす。
画像が入って女性型メカデクーの一体が現れた。
『オヤスミノトコロモウシワケアリマセン。シキュウモニタールームニキテイタダケマスデショウカ』
モニタールーム?
メカレディたちに何かあったのか?
「今行く!」
俺はすぐに跳ね起きた。

「どうした。何があった?」
モニタールームに駆け込んだ俺を、二体の女性型メカデクーが出迎える。
量産型の彼女たちは、黒い全身タイツに銀色のフェイスカバーをつけてまったく同じ姿で立っている。
ここに配置されたメカデクーがなぜ女性型なのかは、皇帝陛下の深慮遠謀によるものだ。
地底城内での戦闘任務以外の雑用任務に就くメカデクーは女性型であるべし。
理にかなっている配置ではないか。
「ゴランクダサイ。めかれでぃA2ノヨウスガ、ツウジョウデハアリマセン」
「何だと?」
俺はすぐにモニターに眼をやった。
メカレディたちの控え室を映し出す四つのモニター画面。
部屋の四周に配置され、彼女たちの行動を常にモニターしている。
本来は捕らえた人間を入れておくような部屋なのだが、今回のために改修したのだ。

その画面は今は闇に覆われている。
夜時間なのでメカレディたちも脳の休息に当てているはず。
暗視カメラもメカレディたちがおとなしく寝ている姿を・・・
ん?
何だ?
A2がベッドの中でもぞもぞと動いている。
表情も何か苦しいような切なそうな表情だ。
これは一体?
どこかに不具合が発生したのか?

『ん・・・あ・・・ダメ・・・声が出ちゃう・・・』
必死に声を押し殺しながら、もぞもぞと躰を動かしているA2。
俺はピンと来ると同時に思わず躰が熱くなった。
こいつは・・・楽しんでやがる。
「ふふっ、ふははは・・・」
思わず笑ってしまった俺を、女性型メカデクーたちが無表情で見つめてくる。
「問題は無い。じきに終わる。気にしなくていい」
「カシコマリマシタ。モニターヲツヅケマス」
何事も無かったかのように席に着く女性型メカデクーたち。
そのまま無言でモニターを続けるのを見て部屋に戻ろうとした俺は、モニターの中で何かが動いた気がして立ち止まる。
「今のは何だ?」
俺は一体のメカデクーの肩に手を置き、モニターを覗き込んだ。
「A3デス。A3ガA2ニチカヅキマシタ」
「A3が?」
俺はいぶかしんだ。
いったい何がおきているのだ?

『ん・・・んあ? ひゃん』
いきなりベッドにのしかかられて驚くA2。
目を閉じてお楽しみの最中だったから接近には気づかなかったのか?
いや、メカレディのセンサーは接近を察知していたのだろうが、仲間であるA3に対しては警戒が無かったのだろう。
『うふふ・・・一人でお楽しみなんてずるいわよ、A2』
俺は暗視モニターの精度を上げる。
・・・・・・
何をやっているんだ、俺は?
いやいや、これはメカレディたちの状態を監視するために必要な・・・
嘘だな。
すまん。
正直に言ってこの展開が気になっているだけだ。
『A3?』
『あんな声を出してもぞもぞされたら、こっちだって感じちゃうでしょ。もう、さっきから聴覚センサーフル稼働なのよ』
そういいながらA3の手はA2の布団をはいでいく。
『ひゃん』
『うふふ・・・すごい洪水じゃない。一人でするのがそんなによかったの?』
『あ・・・だって・・・』
大事なところに手を入れられ、おそらくA2は真っ赤になっているだろう。
それぐらいの表情はできるはずだからな。
『わかるわ。この躰ってすごく感度がいいもんね。私もこっそりしちゃったことあるもの』
『A3も?』
『もちろん。メカレディになってよかったわぁ。すごく気持ちいいもんね』
自らの行為を思い出しているのか、A3の表情も妖艶だ。
『だ・か・ら、一人で楽しまないで、みんなで楽しみましょ』
『えっ? みんな?』
『そう、そこでこっそり楽しもうとしているA1もね』
A3の言葉にピクッと躰を振るわせるA1。
なるほど。
みんな楽しみたいわけか。
『あららぁ、A1もなの? じゃあ、私も一緒に楽しんでいい?』
A4が起きだしてA1のところへいく。
『えっ? あ・・・違・・・A4、ダメ・・・』
布団を掴んで否定するA1。
ふふ・・・可愛いじゃないか。
『何がダメなの? さっきからこっそりいじってたくせに。私のセンサーはごまかせないわよ』
『あ、ダメ・・・A4、やめて』
『ダーメ。しっかり可愛がってあげる。ひいひい言わせてあげるわよ』
お前はSか、A4?
『あ、ダメだったら・・・』
A4に布団を剥ぎ取られ、のしかかられてしまうA1。
やれやれ、乱交パーティになってしまいそうだな。
俺は苦笑しながら彼女たちの楽しんでいる姿に見入っていた。
  1. 2008/12/24(水) 20:46:55|
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七日目(9)

「七日目」の九回目です。
五日目前編になります。
ちょっと流れが微妙かも・・・

それではどうぞ。


9、
五日目。
さて、今日もまたわが帝国のために働いてもらうとしようか。
自分たちが機械帝国の一員であるという自覚をさらに深く植えつけてやろう

「さて、今日で五日目。残りは今日を入れてあと三日だ。まったく・・・これほど苦しめられることになるとは思わなかったぞ。お前らの内に潜む人間と言う奴にはほとほと手を焼く。このままでは時間切れでお前たちを解放しなくてはならなくなるではないか」
くすっとメカレディたちに忍び笑いが漏れる
俺が困った表情をするのが楽しいのだろう。
ただ、俺の目の前にはいつもと違う光景が広がっていた。
メカレディが三人しかいないのだ。
A1、A3、A4の三人だけ。
A2はここにはいない。
昨日の作戦でダメージを受けたA2は、修理を終えたあと休ませていたのだ。
そろそろ呼んでやるか。

「今日もまたお前たちには任務を与える。だがその前に会わせたい者がある。入ってこい」
俺は部屋の入り口に待機させていたA2を呼ぶ。
「はい、ゴラーム様」
控え室に入ってきたA2に、三人のメカレディたちが顔をほころばせる。
「A2」
「A2」
「A2、よかった・・・」
口々にA2のナンバーを呼び駆け寄るメカレディたち。
「よかった・・・完全に修理できたのね?」
「以前と変わらないわ・・・ん? A2、あなた胸が少し大きくなったんじゃない?」
A4が鋭い指摘を浴びせかける。
「ありがとうみんな。あはは、わかっちゃった? せっかくだからゴラーム様にお願いして胸を少し大きくしてもらったの」
ちょっと恥ずかしげなA2。
「やっぱり。私のセンサーはごまかせないわよ」
「わかるに決まっているでしょ」
「う、その手があったか。どうしようかなぁ・・・私も少し」
A1が自分の胸をゆさゆさと持ち上げる。
肌に密着する黒いレオタードが形のよい胸を浮き立たせていた。
「A1は今のままで充分よ。こんなに感度がいいんですもん」
「ひゃぁっ!」
いきなり背後から両胸をつかまれるA1。
A4がいたずらっぽく笑いながら、A1の胸をもんでいる。
おいおい・・・
「A4、ゴラーム様があきれているわよ」
「あ、失礼いたしましたゴラーム様。A2を救ってくれてありがとうございました」
「私からもお礼を言います。ありがとうございました」
A4に続いてA1も頭を下げる。
素直に俺に頭を下げられるようになってきたか。
「A2は大事な戦力だからな。失うわけには行かないだろう」
素直に頭を下げられると、俺はちょっと面映い。
「うふふ・・・ゴラーム様照れているんですか?」
A3が口元に手を当てて笑っている。
困った奴らだ。
いきなり俺に対して積極的になったじゃないか。
A2を助けてくれと懇願したことが、ずいぶんと俺との距離を縮めたということか?
「そんなことはない。いいか、任務を与えるぞ」
「「ギーッ!」」
メカレディたちはすぐさまいっせいに整列し、俺に対して敬礼した。

「今日はお前たちに都内の自由行動をさせてやる」
「「えっ?」」
一様に驚きの表情を見せるメカレディたち。
「好きなところに行っていいぞ。家族や友人に会ってくるのもいいだろう。好きに過ごすがいい」
「ど、どういうことですか?」
「目的がわかりません。どうして急に?」
戸惑っているようだな。
彼女らはみんなで顔を見合わせている。
「お前たちに求められるのは隠密性だ。機械帝国のメカレディでありながら、人間のごとく振る舞い周りの人間を欺いていく。そのための練習だ」
「練習?」
「練習・・・」
複雑な胸中を表すかのように表情が困惑を浮かべている。
「ただし。夜20時までにこの地底城に戻るのだ。それを過ぎた瞬間に俺はお前らの躰を強制支配する。そして手当たり次第に暴れてもらうぞ。コントロール波をシャットしようとしても無駄だ。お前らの中にある補助脳に命令を刷り込んでおいたからな。コントロール波がなくてもお前たちの躰は勝手に周囲を破壊することになるだろう。それがいやなら20時までにもどれ。いいな」
そう、メカレディの体内には頭脳強化として補助脳が埋め込まれている。
この補助脳がメカレディの躰をある程度コントロールできるため、俺はメカレディの躰を支配できるのだ。
「それともう一つ。今日は各自に命令を与える」
俺はそう言って一人ずつメカレディを呼び寄せた。

「ゴラーム、あんたの言ったとおりに“人間ラジコン作戦”のときにヘルブールの作った人間操作機を数人の男女に取り付けてきたわ。それとこいつだけは絶対って言われた奴にも取り付けた。でも、こんなのでどうするの? 確かこの作戦は受信機を破壊されてあっという間にだめになったんじゃなかったっけ?」
司令室に入った俺をメレールが出迎える。
夕べのうちに頼んでおいたことを、朝早くからきっちりとやってくれたのはさすが実行部隊長。
俺はうれしかった。
「今回はちょっとしたことに使うからいいんだ。それに状況によっては使わないかもしれないしな」
「ふーん・・・でもいつになったらコマンダーたちをやっつけるのさ。もう飽きてきたよ」
尻尾が小刻みに揺れ始めるメレール。
まずい。
今回は遠くから人間操作機を打ち込み、生かしたまま返せって指示したから、気が立っているのか?
適当に暴れさせてやらないとなぁ・・・
「もう少し待て。そのうち暴れさせてやるから」
「むーっ! 絶対だよ!」
そう言ってしぶしぶ引き下がるメレール。
よかった・・・
まだ限界には達してなかったようだな。
俺はホッとして、メカレディたちのモニターに取り掛かった。

今回の目的は確かに隠密行動の練習も一つだが、より大きくは人間との違いを感じてもらい、機械であることの優越感を養うことにある。
人間であることよりも、機械であることのほうがすばらしいとより感じさせてやるのだ。
そうすれば人間に戻ることにためらいを持つようになるだろう。
そのために俺はあえてメカレディたちに自由行動を取らせたのだ。
スパイメカからの映像がいくつものモニターに映し出されている。
いつもの黒いレオタードやフェイスカバーではなく、用意された普通の服を着て出かけるメカレディたち。
一応簡単な任務を与えたために出かけないわけには行かないのだ。
そうじゃなければ出かけないという可能性もある。
やはり変わってしまった自分を友人や家族に知られたくないと言う思いから、友人や家族には会いに行かない可能性が高い。
だとしたら出かけることさえしないかもしれないからな。
さて、ラジコン人間を使うことになるかどうか・・・

俺は四人がばらばらに行動すると思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
今のところ一緒に行動しているようだ。
やはり自分が異質な存在になってしまったことをわかっていて、単独行動をためらってしまうのかもしれないな。
それぞれに与えた単独任務も全員で一つずつこなしていくつもりのようだ。
まあ、それでもかまわないか。

『それで? ゴラーム様はなんて?』
公園のベンチで四人が相談している。
手には炭酸飲料やお茶を持っているようだ。
『それがね。私には好きなものを万引きして来いって』
『『万引き?』』
A2の言葉に他のメカレディがあきれたような声を上げる。
『うん、万引き。なに考えているんだろうね。万引きなんて誰でもやっているのにね』
『誰でもかどうかは別にして、万引きして来いってのは妙な命令ね』
A1が苦笑する。
A2の学校ではみんなやっていたことなのか?
『まあ、万引きぐらいならいいんじゃない? 誰かを殺して来いって言われたわけじゃなし』
『そういうA3は何を命令されたの?』
『えっ? うーん・・・それがね』
A3の表情が曇る。
『会社の社長室に忍び込んで社長を眠り薬で眠らせて来いって』
『社長って、勤めている会社の?』
『具体的には言われなかったからどこでもいいとは思うんだけど、忍び込むなら知っている会社のほうがいいわよね』
A3の言葉に他のメカレディたちはうなずいている。
『侵入工作の練習ってことね。しかも知人たちのいる中で』
『そうだと思うわ。でも、うまくできるかしら』
『大丈夫よ。あなたならきっとうまくやれるわ。私たちもバックアップするから』
『あう~』
A1がA3を励ます中、いきなりおかしな声を上げるA2。
『ど、どうしたのA2?』
『何かあった?』
みんなの視線がA2に集中する。
『う~。ついつい成分分析しちゃったよぉ・・・こんな成分のものを今まで美味しいって飲んでいたんだね。オイルジュースのほうがましだよぉ』
『あ、その気持ちわかるわぁ。私もさっきからお茶が飲めないって言うかこんなもの飲むのいやだなって思っちゃって』
『何で、人間ってこんなもの飲むのよぉ』
『うんうん、そうよねぇ。こんなものわざわざ飲んでバカみたい』
四人の笑い声が公園の明るい空に響いていた。

                         ******

「頭にくるわ、あの男。A4には悪いけど殺してやろうかと思った」
「ひどいよ。A4がかわいそうだよ」
憤慨しているA1と泣きそうな顔のA2。
その脇で複雑な表情を浮かべているA3と呆けてしまったようなA4。
どうやらあの男は思った以上の効果を与えてくれたようだな。
夜になって戻ってきたメカレディたちを、俺は控え室で出迎えてやる。
「戻ったようだな。ご苦労、報告しろ」
当然のごとく何があったかは把握しているが、俺はわざとに聞いてやる。
メカレディたちもよく考えれば俺がモニターしていることはわかるはずだが、やはり様子を尋ねられるのは悪いものではないだろう。
「ゴラーム様、聞いて下さい」
「ゴラーム様、どうして私たちがあのような暴言に耐えなくてはならないのですか?」
「ゴラーム様、私たちが機械だと何がいけないんですか?」
A4を除く三人が口々にまくし立ててくる。
「落ち着けお前たち。くだらん人間のように感情をあらわにするな」
俺はまず彼女たちを落ち着けさせる。
彼女たちはメカレディなのだ。
くだらん人間たちのように感情に流されるのでは困る。
「失礼しました、ゴラーム様。私から説明いたします」
自らを落ち着けるように一呼吸置き、A1が報告を始める。

報告は俺がモニターしていたことを確認するだけに過ぎなかった。
A2は五ヶ所もの店で万引きを働き、お菓子から本、はてはCDやゲームソフトも盗んでいた。
最初は恐る恐るだったものだが、そのうち徐々に大胆になり、しまいにはずいぶんと楽しんでいるようだった。
まあ、メカレディとしての能力を持ってすれば、万引きなどたやすいことだろうからな。
楽しくなるのも当たり前か。

A3は勤めていた会社に出向き、上司にここ数日の欠勤のことをわびていたようだった。
だが、明らかにメカレディとなった今の自分よりもはるかに能力の劣る上司に嫌悪感を持ったようであり、この上司の下でなど働く気にはなれないと感じたのであろう。
早々に会社を辞める旨を伝え、唖然とする上司を尻目に悠々とその場をあとにしたのだ。
そして身を隠すようにして社長室に入り込むと、ためらいもせずに用意した麻酔薬で社長を眠らせ、会社を出てきたのだった。
その口元には笑みが浮かんでいたのを俺は見逃してはいない。

A1にはピースコマンダーの末端施設の写真を取らせてやった。
もちろんそれでもフェイスカバーをしていない状況では顔バレの危険性が充分あるのだが、末端施設の人員がコマンダーピンクの顔を知っているという可能性も少ないだろう。
A1は複雑な思いだったかもしれないが、かえってこちらに知られてもいい箇所のみを撮ろうとし、メカレディの能力を発揮していることに気がついていない。
いや、もうそれだけメカレディとしての躰になじんでいるのだ。
こちらももう一息と言うところだろう。

そしてA4。
彼女に与えた命令は単純なもの。
夫には会わなくてもいいから、夕方からいつもどおりに近所のスーパーで買い物をし、近所の主婦仲間と時間をすごすことと言うものだ。
これが問題なくできれば、メカレディの擬態能力はほぼ問題がないだろう。
A4はこの命令を忠実にこなしていたが、スーパーでの買い物はイライラのしっぱなしだったようだ。
補助脳などの力もあって瞬時に買った金額を計算できるA4が、だらだらとレジに並ぶのは苦痛以外の何者でもない。
その証拠に彼女は買い物籠をレジに乗せたとたんに合計金額を言ってのけ、その場を通り過ぎようとしてしまったのだ。
まあ、そうは行かないから結局レジ打ちに付き合う羽目になったようだが、いつも綺麗なA4が口をへの字に曲げて不満そうにしていたのが面白い。

その後、近所の主婦たちと談笑をしていたA4。
ただ、それは俺の命令だから仕方なくやっているようで、心底楽しんでいるものではないのが精神波モニターからは見て取れた。
表面上はとても楽しそうにしている姿は人間には演技とはとても思えないだろう。
俺は時間を見計らい、そろそろと言うあたりで仕掛けたのだった。

ぴくりとも動かないラジコン人間たち。
死んだかもしれないが、そんなことはどうでもよかった。
思わず出してしまった手。
それが目の前でへたり込んでいる男に与えた衝撃は大きいものがあるだろう。
もちろん、そんな状況を男に見られてしまったA4にも大きな衝撃のはずだった。

俺は帰宅途中の男をラジコン人間を使って襲わせた。
まだ人通りが多い時間帯だったが、かまいはしない。
タイミング的な問題もあるし、どうせ警察あたりにはメカレディには手が出せない。
メレールが選んでくれたラジコン人間は、こちらの送信機で自分の意思とはまったく無関係に動かされる。
俺は近くに配置しておいた二人を使い、ナイフで男を脅させた。
それも主婦たちと談笑していたA4が見える位置でだ。
案の定A4は駆け出した。
当然だ。
男たちに絡まれたのはA4の夫だからだ。
人間だった彼女ならとてもそんなことはできなかっただろう。
警察に任せて、夫の身を気遣うしかできなかったに違いない。
だが、彼女はメカレディだ。
とっさに能力差を判断し、夫を助けられると思ったのだ。

俺はここでA4の中にある夫への愛情を断ち切るつもりだった。
A4はメカレディであり、機械帝国に忠誠を捧げてもらわなくてはならない。
人間に愛情を持っているなどあってはならないのだ。

A4は唖然とする夫の前で、わずか二撃でラジコン人間二人を打ち倒す。
しかも相手の武器が自分に影響を与えることはないとの判断から、打撃を重視して防御を無視した結果、A4は相手のナイフにわき腹を切り裂かれていた。
無論ボディにダメージなどでるはずもない。
単に着ていた服が切り裂かれていたに過ぎない。
だが、それこそが俺の望んだ結果だった。

ナイフを持った男二人を打ち倒し、へたり込んでしまった夫にA4は手を差し伸べた。
だが、その手に男の手が重ねられることはなかった。
うつろに見開かれたその目は、正面のA4を見据えているものの焦点はあっていない。
そして、その口からはあまりにも辛らつな言葉がつむがれる。
「ば・・・化け物・・・く、来るな」
A4は立ち尽くしていた。
そしてパトカーのサイレンが聞こえたとき、初めて何があったか気が付いたように逃げ出したのだった。
あの男にも人間操作機が付けられており、俺の指示で言葉を発したなど気が付くはずもなく。
  1. 2008/12/23(火) 20:21:01|
  2. 七日目
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七日目(8)

「七日目」の八回目です。
四日目後編です。
ようやく後半に突入です。
長いお話をだらだらと続けてしまってすみません。
残り今日を含めて七日間、楽しんでいただければ幸いです。

それではどうぞ。


8、
『そこまでだ! 機械帝国の木偶人形ども!』
『その子たちを解放しろ!』
現れたな・・・
A1たちの正面に立ちはだかるピースコマンダーたち。
赤、青、黄、緑を基調としたスーツに銀のラインが入っている。
『み、みんな・・・』
A1が戸惑いの声を上げる。
おそらくは今一番会いたくない連中だったかもしれないな。
『我らピースコマンダーがいる限り』
『お前たち機械帝国の好きにはさせない!』
『今回は女の姿で私たちを油断させるつもりね?』
『そうはいくかってんだ!』
何もセリフを四人で分け合うこともあるまいに。
『それにお前たちには聞きたいこともある』
『桃野弘美をどこへやった!』
『弘美先輩を返しなさい!』
『コマンダーピンクがいないからって、俺たちピースコマンダーを舐めるなよ!』
『みんな、違うの。これにはわけが』
A1が首を振る。
フェイスカバーのせいで声がくぐもるから、奴らはコマンダーピンクの声と気がつかないのか。
『問答無用! 子供を返せ!』
おいおい、聞きたいことがあるんじゃなかったのか?

『だから、命令が来たらこの子たちは返すって言ってるでしょ! 邪魔しないで!』
『お願いです。私たちをほっといて!』
A2もA4も何とかこの場を切り抜けようとしているようだ。
まさか子供たちを抱えたままピースコマンダーと戦うわけにも行かないだろうからな。
『黙れ! お前たち機械のいうことなんか信用できるか!』
『可愛い声だしたって無駄だぜ!』
ピースコマンダーたちはまったく取り合う様子がない。
『機械って・・・私たちは機械じゃない!』
『私たちは人間です。この格好は理由があって・・・』
メカレディたちが必死に訴える。
『動きが止まったぞ! 今だ!』
俺は息を呑んだ。
コマンダーブルーのビームガンの一撃がA2の胸を撃ちぬく。
畜生!
まさか撃ってくるとは思わなかった。
『キャーッ!』
胸から火花を散らして倒れこむA2。
抱えていた幼女たちが宙に放り投げられる。
『トウッ』
『トウッ』
コマンダーイエローとコマンダーグリーンがジャンプして幼女たちを抱え降りる。
なんて奴らだ。
『A2!』
『A2!』
いきなりのことにA3もA4も抱えていた子供たちを放してA2に駆け寄ってしまう。
くそっ!
なんてこった。
俺も焼きが回ったか。
ピースコマンダーは撃ってこないだろうという甘い認識があったのは否めない。
その認識の甘さがこれか。
俺はこぶしを握り締めて歯噛みした。
「A3、A4、A2の様子はどうだ?」
俺はマイクに向かって怒鳴りかける。
『A3です。A2が胸をやられました。中の機器類がショートしています』
チッ!
装甲をもう少し改良する必要があるな。
「TG17のバルブを閉じるんだ。脳へのダメージを防げ! A1、聞こえるか?」
『聞こえます。ブルー・・・あなたなんてことを・・・』
A1のカメラアイは、撃ったブルーに向けられていた。
「撤収しろ、今回はここまでだ!」
『どうしてですか? A2がやられたんですよ? ブルー・・・赦さないわよ!』
「落ちつけ。今はA2を確保して帰還しろ。いずれやつらには報いを味わわせてやる」
『り、了解』
ふう・・・
だが、A1がここまで怒るとはな。
結果オーライか?

『見ろ! その穴から覗いているのは機械じゃないか! どこが人間なんだ!』
『黙って! 私たちは人間よ。人間なのよ。あなたたちにはわからないの?』
『機械帝国の奴らが何を言う! さあ、その子たちを解放しろ。じゃないと次はお前の躰に穴が開くぞ!』
再びビームガンを構えるコマンダーブルー。
射撃の名手とは聞いていたが、この状況で撃つとはな。
『撃てるものなら撃ってみなさい。私の躰は自動的に遠隔操作されてこの子たちを殺しちゃうわ』
A1・・・だからそれは悪のセリフだぞ。
『A3、A4、A2を抱えて。離脱するわ』
『了解』
『まてっ!』
『えいっ』
A1が抱えていた子供たちをピースコマンダーたちに放り投げる。
無論彼らがちゃんと受け止められるようにだ。
ピースコマンダーたちが子供たちを受け止めた一瞬の隙をついて、メカレディたちは離脱する。
俺はスパイメカを使って電波妨害やかく乱煙幕を張って援護した。
その間にメカレディたちは能力をフルに使って逃走する。
どうやら、逃げることには成功したようだな。
俺はホッと胸をなでおろした。

「A2は、A2は直るんですか?」
「お願いです。A2を助けて・・・」
「何でもします。命令にも服従します。ですからA2を・・・」
帰還してフェイスカバーをはずしたメカレディたちが必死に俺に頭を下げる。
A2はメカレディたちの中でも一番幼いこともあって、可愛がられていたのだな。
「システムをチェックしないとなんとも言えんが、脳が問題なければ大丈夫だ。最悪ヘルブールに俺が頭を下げればすむ」
「ああ・・・」
「よかった・・・」
「ありがとうございます、ゴラーム・・・様」
「「ありがとうございます。ゴラーム様」」
A1もA3A4も一様にホッとした表情を見せる。
俺だってA2は失いたくないからな。
いざとなればヘルブールに頭でも何でも下げてやるさ。

「ふう・・・」
リラックスルームのソファーに腰を下ろす。
とりあえずA2の修理は無事に済んだ。
脳への損傷もまったくなく、部品の交換と外装の張替えで済んだのだ。
当たり所がよかったというべきか。
それにしてもピースコマンダーの武器は恐るべき威力だ。
大砲とは言わないまでも、20ミリクラスの機関砲弾ぐらいなら貫通させない強化ボディをいとも簡単に撃ち抜いてくれるとはな・・・
A2はとりあえず休ませた。
目を覚ましたときのホッとしたような表情がよかったな。
やれやれ。
人間がペットを飼うときの気持ちはこんなものなのかもしれないな。

「ヒアッ」
俺は驚いた。
いきなりオイルジュースのボトルを首筋に押し付けられたのだ。
「むーっ、また浮かない顔してる。そんな顔見に来たんじゃないのに」
「メレール・・・驚かすなよ」
俺は差し出されたオイルジュースのボトルを受け取った。
どうやら俺を驚かせるために、センサーをかく乱してきたらしい。
「なによ! あんたがそんな顔しているからでしょ。そんな顔見たくないもん」
ストンと俺の隣に腰掛けるメレール。
茶色のふかふかの毛皮がなんとなく心地よい。
「ああ、すまない。ちょっとな・・・」
俺はできるだけ笑顔を作ろうとする。
やれやれ・・・
どうも顔に出てしまうのはよくないな。
「今日のことでしょ? だから言ってるじゃない。あたしがババーンと出てってドカーンとやっつけちゃうって」
「そう簡単に行かないのはわかっているだろ。いや、ピースコマンダーの連中との戦いのことじゃないんだ。あそこで撃ってくると想定しなかった俺の作戦の甘さを悔やんでいたのさ」
キャップを開けて一口飲む。
リラックスにはちょうどいいのだが、今の俺には苦く感じた。

「悔やむってなに? ねえねえ、それってあたしにもできる?」
まっすぐにきらきらした目で俺を見つめてくるメレール。
こいつはー・・・
なんて可愛い顔しやがるんだ。
「あのなー、悔やむってのはやってしまったことをしなければよかったなって考えてしまうことなんだ。いやな過去をなくしたいんだよ」
「記憶システム調節すればいいじゃん」
ふっ・・・
俺は思わず吹き出した。
「むーっ! なによー! せっかく心配してやっているのにー!」
シャキンと鉤爪が俺の喉元に伸びてくる。
「いや、違うんだ。お前の言うとおりだなと思ってさ。悔やんでも仕方がない。先を考えたほうがいいってことだな」
俺はうんうんと自分でうなずき、そっとメレールの鉤爪を遠ざける。
「むーっ、なんかよくわかんないけど、わかったんならよし」
自分のほうがなんか納得してないような顔で俺を見つめるメレール。
可愛いなぁ。
俺はついそっとメレールの顔を引き寄せてキスをした。
「なっ!」
いきなり跳び退るメレール。
手の甲で口をぬぐって俺をにらみつけてくる。
「ゴラーム! あたしに今何をしたー!!」
フーッと毛を逆立てて臨戦体勢に入るメレール。
あれ?
キスしたのまずかったかな・・・?
「いや、なにって・・・キス」
「そ、それってどんな攻撃よー!! うあぁ・・・大変だー!! 心臓ポンプが異常活動してるよー! 体温調節機能も作動不能で全身が熱いくらいに熱持ってるよー! うあぁー! あんたあたしを殺す気ね! こっちからぶっ殺ーーーす!!」
「ま、待て!」
俺の目の前で持っていたオイルジュースのボトルが真っ二つに切り裂かれる。
「うがぁー!!」
「待てってばー!」
俺は必死にメレールの鉤爪を避けて行く。
「違う! あれは攻撃じゃない!」
「黙れー! だったら何であたしの心臓ポンプが破裂しそうなのよー! 何であたしの躰がこんなに発熱してるのよー!」
ずたずたに切り裂かれていくさっきまで座っていたソファー。
置き換えたばかりのオイルジュースの保管庫もぐずぐずに切り裂かれる。
やれやれ・・・
「あれはキスといって親愛の情を示す行為だ。お前があまりに可愛いからついしちゃったんだよ」
ぴたっとメレールの動きが止まる。
「親愛の情? 可愛い? それ本当?」
「ほ、本当だよ」
すでに部屋の一角に追い詰められていた俺は、メレールの動きが止まったことにホッとした。
「むふふふふ・・・そうなんだー。あたしってゴラームから見て可愛いんだ」
いきなり抱きついてくるメレール。
「お、おい」
その勢いに負けて俺はしりもちをついてしまう。
「な、なんなんだお前はいったい」
「知らないよー。ゴラームが悪いんだ。あたしにこんな思いをさせるからゴラームが悪いんだよーだ」
ニコニコと笑みを浮かべながらほお擦りしてくるメレール。
やれやれだ・・・
  1. 2008/12/22(月) 20:42:51|
  2. 七日目
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七日目(7)

「七日目」の七回目です。
今回は四日目前編です。

それではどうぞ。


7、
四日目。
そろそろメカレディたちに居場所を与えてやる必要があるだろう。
どこでもないこの機械帝国こそが自分たちの居場所であるという感覚をだ。
そのためには少々リスクの高い作戦も必要か・・・

もう見慣れた光景になりつつある整列して敬礼するメカレディたち。
俺はいつもと同じように彼女たちの前に出る。
「今日で四日目だ。まだまだお前たちは人間の世界に戻りたいようだな。お前たちがこれほどまでに人間であることに執着するとは思いもしなかったぞ。このままでは俺の負けになるかも知れんな」
表情を変えずに立ち尽くすメカレディたちだが、俺の言葉に一瞬ほころんだような表情を見せる。
人間世界に戻れるという希望がまだ根強いことを俺は感じ取った。
「さて、今日も任務に励んでもらおう。なに、今日の任務は昨日のような殺人ではない。安心していいぞ」
俺の言葉にさらに表情が緩むメカレディたち。
機械帝国の幹部の言うことを素直に信じているという事実をわかっているのだろうか。
「今日の任務もA1、お前が指揮を取れ」
「ギーッ!」
躊躇無く服従の音声を発するA1。
いいぞ、だいぶ素直になったじゃないか。

「任務は簡単だ。都内のどこでもかまわんから幼稚園を襲撃しろ。幼稚園バスでもかまわんぞ。むしろそちらのほうが定番かな」
「幼稚園を?」
互いに顔を見合わせるメカレディたち。
俺の意図がはかりかねるようだ。
「心配するな。さっきも行ったとおり今回は殺人は行なわない。むしろその逆だ」
「逆?」
不思議そうな顔をするA1。
「そうだ。お前たちは幼稚園を襲撃し、そこの園児を適当にさらうのだ。そして都内を適当につれまわせ」
「さらってつれまわす? 意味がわからないわ。目的は何なんですか?」
おいおい、敵に作戦の意図を確認するつもりか?
俺は思わず笑みが浮かぶ。
無意識的に俺の意図に沿った作戦行動をしようとしているのに気がついていないのだ。

「意図は宣伝だ。ここだけの話だがこれまでアルマーらが行った作戦が失敗の連続だったため、機械帝国恐れるに足らずと言う認識が人間どもの間に広がっている。特にピースコマンダーたちの行動によってこちらの作戦が何度と無く阻まれたことで、ピースコマンダーたちへの人間どもの信頼は最高レベルにまで上がっているといっていい」
俺の言葉にうつむくA1。
その様子を他のメカレディがチラッと目を向ける。
「そこであらためてわれわれ機械帝国の恐ろしさを人間どもに焼き付けてやるのだ。われわれはいつでも無防備な子供をさらうことができるのだぞと知らしめ、その上で警察や防衛隊ひいてはピースコマンダー連中をも翻弄して奴らの無力を見せ付ける。これほどの宣伝がほかにあるかな?」
「意図はわかったわ。本当に子供たちをさらって連れ歩くだけでいいのね?」
俺はA1にうなずいてやる。
「ただし、俺が命じるまでは絶対に子供を解放してはならん。それまではどんな妨害も実力で排除しろ」
「実力で?」
「そうだ。もしその妨害によって子供たちに何らかのダメージが出たとしてもそれは問題にするな。妨害をする奴らの責任であって妨害さえなければ起こりえないことだからだ」
「それは子供が死んでも・・・と言うことですか?」
A4が心配そうに尋ねてくる。
自らに子供はいなくても、彼女は子供が好きなのだろう。
こんなことが無ければ夫の子供を生みたかったに違いあるまい。
もっとも、そんな思いはいずれ消え去ると思うがな。
「そういうことだ。それがいやなら妨害をさせるな。相手を圧倒してお前たちの力を示せ。妨害が無意味であることを思い知らせるんだ」
「ギーッ、わかりました」
A4はうなずいた。

「それと最初に言っておく。今回はお前たちが自分で行動しろ。こちらからの躰の支配は一切行なわない」
「えっ?」
一様に驚いた表情を浮かべるメカレディたち。
「驚くことはあるまい。その躰にももう慣れただろう。遠隔操作より自分で自由に動かしたほうが子供たちに対する危険も少ないと思わないか?」
「それはそうだけど・・・いいの? 私たちは地底城を出た瞬間に脱走するかもしれないわよ」
俺はA1に笑みを浮かべて見せる。
「ふふふ・・・そのときはお前たちの躰を再び支配下に置き、壊れるまで暴れまわらせるさ。少なくとも大勢の人間が死ぬことになるだろう」
「そんな・・・」
「脱走はしません。しませんからそんなことはやめて」
「私もしない」
「私もしません」
口々に脱走しないことを約束するメカレディたち。
ふふふふふ・・・
これでいい。
「では始めろ。行け!」
「「ギーッ!」」
メカレディたちはいっせいに跳び出していった。

彼女たちが出て行ったあとで、俺は小型のスパイメカを発進させる。
カメラとマイクを積んだだけの小型メカだが、敵の動向を探ったりするにはちょうどいい。
トンボ型やアゲハチョウ型など大型昆虫に偽装してあるので、そうそう見破られもしないのだ。
さて、メカレディたちはうまくやっているかな?
俺は作戦司令室に足を運んだ。

どうやらA1は都内の一軒の幼稚園をターゲットに選んだらしい。
幼稚園バスを襲撃してもらいたいものだったが、まあ仕方ないだろう。
いつものようにフェイスカバーをつけ、黒いレオタードに身を包んだ彼女たちはなかなか魅力的である。
俺はスパイメカを二機ほどそばに貼り付け、他のスパイメカは周囲の様子を探らせる。
A3が入り口を確保して、他の三人が幼稚園に侵入する。
たちまち悲鳴が湧き起こる園内。
もっとも、子供たちは何かのアトラクション的なイメージがあるのか、時々小さな笑いも聞こえる。
『静かにしなさい。私たちは機械帝国。おとなしくしていれば危害は加えないわ』
『黙って言う通りにしてよね』
『あなた方も死にたくは無いでしょ?』
園児たちを黙らせ、保母たちを一角に押し込めるA1たち。
その手際は打ち合わせていたのかなかなかいい。
『A3、玄関はもういいわ。こちらに来て』
『了解』
『いいわね。打ち合わせどおり子供を二人ずつ抱えて連れて行くわ』
A1の指示に他の二人がうなずいている。
ほう・・・車か何かに乗せて連れて行くかと思ったが。
『両手がふさがっていれば、警察もピースコマンダーたちも私たちが攻撃できないと思うに違いないわ。こちらからの攻撃が無ければ向こうからの攻撃もきっと無いはずよ』
なるほど一理ある。
だが、手がふさがっているからこそ一気に取り押さえようとしてくる可能性は捨て切れんぞ。
『あなたとあなた、いらっしゃい』
『私はこの娘とこの娘を連れて行くね』
『それじゃ私はこの娘かしら』
次々と園児たちを抱きかかえるA2たち。
『あなた方、その娘たちをいったいどうするつもり!』
青ざめた顔をしながらも、必死に子供たちを守ろうとする一人の保母。
『静かにしてなさい。おとなしくしていれば危害は加えないわ。ただ機械帝国の恐ろしさを知らしめるだけよ』
おいおいA1よ、いいセリフじゃないか。
『そうそう、あとでちゃんと返してあげるから。おとなしく待ってなさい』
A2が二人の幼女を抱え上げて行く。
すぐに残りの三人も園児たちを抱きかかえて幼稚園をあとにした。

サイレンが鳴り響く。
赤色回転灯が瞬いている。
都内各所は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
四体の機械帝国の女たちが幼稚園児を誘拐したというのだ。
騒ぎになるのも当然だろう。
四人は両手に子供たちを抱えて悠々と通りを歩いている。
俺の宣伝と言う名目を律儀に守っているのだ。
『私たちには手を出すな! 私たちは機械帝国の恐ろしさを知らしめたいだけだ。この子たちには危害は加えない。私たちには手を出すな!』
『お願いだから私たちに手を出さないで! この子たちはあとでちゃんと返します。だから私たちには手を出さないでください!』
A1とA4が必死に叫びながら通りを練り歩く。
A2とA3も油断無くあたりを見渡しながら歩いている。
おそらくこれでは警察は手が出せまい。
事実彼女たちの行進をパトカーが先導し、さらに後ろをたくさんの警察車両とマスコミの車両がついて歩いている始末だ。
報道各局のヘリコプターが空を埋め尽くし、テレビもラジオも臨時ニュースであふれかえっている。
さて、そろそろかな・・・
  1. 2008/12/21(日) 20:49:27|
  2. 七日目
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七日目(6)

「七日目」の六回目です。
三日目を全部載せますのでちょっと長いです。

それではどうぞ。


6、
三日目。
さて、そろそろ彼女たちにも自発的行動を取ってもらわなくてはならないな。
だが、そう簡単に彼女たちが自発的行動を取るとも思えない。
そこで俺はあることに思い至る。
達成感だ。
これはおそらく高度な精神活動を行う者だけが持ちうるものだ。
低級機械は命令を実行しそれが終了したとしても達成感などは感じない。
当然のことだ。
メカデクーたちが任務を遂行し終わったとしてそこに満足感や達成感があろうはずはない。
だが、俺たちは違う。
機械将アルマーにしてもメレールにしても皇帝陛下のために何かを行い、それを成し遂げたときには達成感を感じるもの。
それによって新たな命令に従おうとする気持ちもわいてくる。
俺はメカレディたちに単に褒美としての快楽だけではなく、この達成感を感じさせてやることにした。

「「ギーッ!」」
いつものように俺の前に直立不動で立ち、胸の前で右腕を水平にするメカレディたち。
どうやらこれに対してはそれほど嫌悪感は抱かなくなってきたかな。
「今日で三日目だ。俺は正直にお前たちに謝らなくてはならない」
俺の言葉に一瞬戸惑いの表情を見せるメカレディたち。
それはそうだろう。
まさか俺が謝るなどとは思っていないだろうしな。
「俺は正直言ってお前たちが簡単に服従すると思っていた。だがお前たちはいまだに人間でいたいと思い俺に服従しようとはしない。これほどお前たちが抵抗するとは思いもしなかった。このままではお前たちを解放しなくてはならないのかもしれないな」
メカレディたちの表情が緩む。
やはりなんだかんだ言っても解放されたいのだ。
まあ、そうはさせないがな。
「だが、まだ今日を入れて五日間ある。その間は俺に従ってもらうぞ。いいな」
「「ギーッ!」」
解放されるかもしれないという思いが多少は励みになっているのか、服従音声も心なし元気そうだ。
「さて、今日はパズルを解いてもらおう」
俺は一枚の見取り図を取り出した。

「なに、ちょっとした王を追い詰める知的ゲームだ。これはある総合病院の見取り図だ。ここの八階にはVIPルームがあってな。現在そこにある人物が入院している」
俺はテーブルの上に見取り図を広げる。
大都中央病院の見取り図だ。
現在ここの八階にはあの杜畔耕造(もりぐろ こうぞう)代議士が入院している。
常に財界との癒着を噂され、あまつさえ暴力団ともつながりがあると雑誌にすっぱ抜かれたことでマスコミの矢面に立たされそうになったのだが、体調不良を理由に緊急入院し、その後なぜか雑誌社のほうから記事はフリーライターの捏造であり迷惑をかけたと謝罪がなされる始末。
まあ、何が行われたかは容易に想像がつくことだ。

「これは・・・大都中央病院だわ」
俺はA3が小さくつぶやくのを聞く。
「ほう、知っているのか」
俺はA3に視線を向けた。
「・・・はい」
A3が小さくうなずく。
「私の友人が入院してまして・・・何度かお見舞いに行きました」
「そうか。まあそれなら話は早い。その通り、ここは大都中央病院だ。お前たちにはこれから作戦行動時間三時間以内に八階のVIPルームに陣取る王を除去する作戦を立ててもらう。時間は今から二時間やろう」
「二時間で作戦を私たちが立てろと?」
A4が驚いた顔で俺のほうを見る。
無理もない。
作戦などと言う言葉すら無縁に生きてきた主婦だ。
立てられるはずが無いのだ。
それはA2A3と手同じだろう。
だが、A1は違う。
コマンダーピンクとして活動してきた彼女ならば、このぐらいの作戦を立てることはできるはず。
そうでなくては意味が無い。
「そのとおりだ。お前たちが作戦を立てるんだ」
「む、無理よ」
「無理です、そんなこと」
A2とA3が顔を見合わせる中、一人A1だけが見取り図に見入っている。
ふふふ・・・いいことだ。

「言っておくが病院ごと爆破するとかのような作戦はだめだぞ。あくまで隠密裏が前提だ。排除するのは王とその護衛ぐらいまでにしろ」
「一つ聞かせて」
「なんだ?」
俺は顔を上げたA1に眼をやった。
「ここにいるのは誰? それにこの作戦は実際に行われるの?」
ほう、やはり気になるか。
「ここに入院しているのは杜畔代議士だ。スキャンダルのほとぼりを冷ましているのさ。当然病気じゃないから女性看護師相手に好き勝手なことでもしているだろうよ」
「あの腹黒が?」
「杜畔代議士ってあの暴力団ともつながりがあるって言う・・・」
A3もA4もその名にいい顔はしない。
税金を流用して遊興費に当てているという噂まである男だ。
腹黒代議士などといわれるのも無理はない。
「作戦が実行されるかどうかはお前たちの立てる作戦次第だな。いい作戦なら採用させてもらおう」
「そんなのごめんこうむるわ。作戦など立てるはず無いじゃない」
「どうしてだ」
俺はこちらをにらみつけるA1にそう訊いた。
「バカにしないで。いくら相手が悪徳代議士でも殺すことなんてできるはずが無いわ。そんな作戦を私たちがはいそうですかと立てるとでも思うの?」
こぶしを握り締めて今にも殴りかかってきそうな勢いだ。
当たり前の話だな。
「そうか・・・それでは仕方が無い。お前たちに病院で暴れまわってもらうことにしよう」
「な? そんな」
「どうも俺には才能が無いらしくてな。代議士だけを排除する作戦が思い浮かばなかった。だからやむを得ん。少々リスクは高いがお前たちに病院ごと破壊してもらおう」
「そんなことできるわけが・・・」
「いやぁっ! そんなことしたくない!」
「いやです! やりたくありません!」
口々に叫ぶメカレディたち。
思ったとおりの反応に俺は思わず笑みが浮かぶ。
昨日の殺戮を思い出したのだろう。
「まあ、二時間後にまた来るよ。そのとき作戦ができてなかったり、くだらない作戦ならお前たちに暴れてもらうことにする」
俺はそう言って部屋を出た。

『どうするの? 私たちはいったいどうしたらいいの?』
部屋を出た俺はまっすぐにモニタールームに行ってメカレディたちの行動をモニターする。
思ったとおり葛藤しながら議論をしているようだ。
モニターには苦悩の表情を浮かべるメカレディたちの姿が映し出されていた。
『このままじゃ私たちはまた躰を操られて病院を破壊しちゃうわ。私たちならそれは簡単なことだもの』
『でもそんなのはいや! いやよぉ!』
両手で自分の躰を抱きしめるA4と頭を抱え込むA3。
いずれもが絶望感を感じている様子が伝わってくる。
『排除・・・しようよ・・・』
ポツリとつぶやくA2。
やはり一番最初に折れるのはこの娘か?
『A2、あなたなんてことを? 人を殺して平気なの?』
A1がA2をにらみつける。
コマンダーピンクとしては許されざる行為だろうからな。
『平気じゃないけど・・・平気じゃないけど、仕方ないじゃない! 私だっていやよ! でも、でも排除しなかったら私たちは病院にいる人たち全部を殺しちゃうんだよ! そんなの・・・そんなの耐えられないよ・・・』
A2がうなだれる。
うんうん、可愛い奴だ。
『排除しましょう、A1』
『A4、あなたまでなんてことを・・・』
『お願いA1、あの男を排除する作戦を作って。そうじゃないと私・・・入院している友人を殺しちゃうかもしれない・・・』
『A3・・・』
『A1、お願い。あなたなら作れるでしょ? コマンダーピンクだったあなたなら。それにあんな男は死んでも誰も文句は言わないわ。むしろ喜ばれるぐらいよ』
何かを決意したかのようにA4がA1を見据えている。
『死ぬのは少ないほうがいいわ。A1、あなたは私たちに大量殺戮をしろと言うの?』
『A4・・・みんな・・・』
A2もA3もA1を見つめている。
ふふふふ・・・
さてどうするかな、A1よ?

一度目を閉じるA1。
やがてゆっくりと目を開け、はっきりとうなずいた。
『わかったわ。やりましょう』
『ああ・・・』
『A1・・・』
『ありがとうA1。感謝します』
三人がホッとしたような表情を浮かべる。
『仕方ないわ。死ぬのは少ないほうがいい。それに警察も手を出せないあの男を排除するのは正しい行為だとも思うわ』
『その通りよA1』
『やりましょう』
口々に男を排除することを自らが認めていく。
ふふふふ・・・
大量殺人をしない代わりに、お前たちは自ら人間を殺すことを選んだのだぞ。

二時間後。
俺の前には彼女たちが練り上げた作戦案が提出された。
人の出入りの少ない夜間を作戦行動の時間とし、メカレディの能力を使ってエレベーターシャフトや排気ダクトを使用して八階に潜入。
護衛を排除して王を確保すると言うものだ。
俺の考えとほぼ一致した上に、予想以上にできがよく、俺は満足だった。
そして・・・
勝手な行動をできないようにした上で実際にメカレディたちに作戦を行わせた結果、彼女たちは見事なまでに作戦を遂行し、杜畔代議士の暗殺に成功したのだ。
そのほかの人間には指一本触れずにだ。
もっとも殺人を犯すことにはやはり抵抗を感じるらしく、杜畔代議士を前に動きの止まってしまったメカレディたちの躰を操作して死に至らしめてやったのだがな。
無論罪悪感を一人に背負わせないためにも、メカレディの全員が杜畔に一撃を食らわせるというやり方をとってやった。
杜畔代議士の死を人間どもが知ったのは翌朝のことだった。

「ご苦労だった。よくやったぞ」
任務を終えて引き上げてきたメカレディたちを、俺はいつものように出迎える。
「作戦は成功だ。杜畔代議士は死に、お前たちは任務を達成した。見事だった」
俺はことさらに強調して褒めてやる。
もちろん多少快楽を与えてやることも忘れない。
「ギーッ! お褒めの言葉、ありがとうございます・・・」
フェイスカバーをはずしたA1がメンバーを代表して礼を言う。
だが、その表情は苦悩に満ちていた。
ふふふ・・・
やはり人間を殺すのは耐えられないか?
だが慣れてもらわねば困る。
まどろっこしいやり方だが、自意識を持った機械人間となってもらわねばな。

「嘆くことはない。お前たちはたった一人を殺しただけだ。それも人間のくずをだ。違うか?」
俺はA1の肩に手を置く。
そして快楽のパルスを多少強めてやった。
「あ・・・」
顔を上げるA1。
「任務達成は気持ちいいだろう? それもお前たち自信が立てた作戦で、しかも死んだのはくずが一人だけ。最高じゃないか?」
「そ、それは・・・そうですけど・・・」
戸惑いの表情が浮かぶA1。
ふふふ・・・
任務の達成感が湧いてきたようだな。
「お前はよくやった。見事に任務を達成した。そうだろうみんな?」
俺はA1を抱きかかえるようにして振り向かせ、他のメカレディたちと向かい合わせる。
「はい。A1のおかげで私は入院している友人を殺さなくてすみました」
「A1の作戦はすばらしかったわ。私たちはターゲットを排除するだけで事足りたんですもの」
「A1のおかげだよね。ありがとうA1」
口々にA1に礼を言うメカレディたち。
おそらく大量殺戮をしなくてすんだ安堵感があるのだろう。
病院を丸ごと殺しまくるなど人間にとってはぞっとしないだろうからな。

「ありがとうみんな・・・そう言ってもらえると、少しは気が楽になるわ」
なんとなくうれしそうなA1。
誰だって褒められるのはいい気分なものだ。
俺によって快楽を与えられているため、普通以上にうれしい気持ちが強いだろう。
「気にすることはないわA1。仕方なかったのよ。私たちは命令に従ったまで」
「そうだよ。命令でくずを排除しただけ。そういうことだよね」
「そう。私たちのせいじゃないわ。A1、あなたも気にする必要ないのよ」
違うな。
気にしたくないのは自分たちなのだ。
人間を殺してしまった罪悪感から逃れたいのだ。
それでいい。
命令で殺せるようになればいいのだ。

「ありがとう。確かに今回は仕方なかったんだと思う。そうだよね」
A1の言葉に他のメカレディたちがうなずく。
心なしかA1の表情も明るくなったようだ。
いい顔をしている。
「これで邪魔者は消え去った。あのような男は我が機械帝国にとっても邪魔なだけ。それをお前たちは見事に排除した。よくやった。今日はゆっくり休むがいい」
「「ギーッ! ありがとうございます」」
声をそろえて敬礼するメカレディたち。
俺は彼女たちを残し、部屋をあとにした。

「来てたのか」
リラックスルームにやってきた俺の目に、ソファーに寝そべっている美しい機械の雌豹が映る。
「むーっ! 来てたのかとはご挨拶ね。せっかく顔を見に来てあげたのにー」
一瞬にして彼女の表情が険しくなる。
やれやれ・・・
今日もまたオイルジュースは飲めないのか?
俺は置きなおされたジュースの保管庫から一本取り出すと、メレールにもいるかと身振りで訊いてみる。
だが彼女は首を振った。
「いらないのか。それにしてもお前も暇なのか? アルマー将軍は謹慎中だがやることとか無いのか? 俺の顔なんか見に来たってつまらないだろうに・・・」
俺はオイルジュースのキャップを開けて口にする。
だが、次の瞬間、俺のジュースはまたしても半分になっていた。
「むーっ! なによなによ! 暇なんかじゃないわよ! それをあたしがわざわざこうやってあんたの顔を見に来ているってのに、暇なのかですってーっ! ぶっ殺ーーす!」
ジュースに濡れた鉤爪がきらりと光り、メレールの怒りの篭った目が俺を見据えている。
何でだ?
俺が何か悪いこと言ったか?
「ま、待て待てって。だから何で俺の顔なんか見に来るんだよ。俺はメカレディを仕上げるのに忙しいんだし、お前だって忙しいなら来なくてもいいよ。俺の顔なんか見たってつまらないだろ? こうやってすぐに怒るし・・・」
ダンと俺の脇にあったジュースの保管庫が鉤爪で串刺しになる。
ぼたぼたとジュースが流れて床を汚していく。
「何よーー! あたしが来ちゃだめなわけ? つまらない顔ってつまらないけどつまらなくないよ! 見に来ちゃだめなのかーー!!」
何なんだー?
「別にだめとは言ってないだろ。見に来たかったら勝手にしろよ。こんな顔でよければ見せてやるよ」
パアッと顔が明るくなるメレール。
何だぁ?
「見に来ていいの? やったぁ」
いきなり俺に抱きつくようにほお擦りしてくるメレール。
「おいおい、何なんだよいったい」
「知らないよぉ。知らないけどなんかうれしいんだもん。いいじゃん」
「いや・・・まあ、いいけど・・・わっ」
俺はまるで押し倒されるかのように、ジュースに濡れた床にメレールと倒れこんだ。
やれやれだ・・・
  1. 2008/12/20(土) 20:44:32|
  2. 七日目
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七日目(5)

「七日目」の五回目です。
二日目になります。

それではどうぞ。


5、
二日目。
俺は新たな任務をメカレディたちに与える。
今度の任務で俺は彼女たちにより強いショックを与えてやることにする。
そのための任務なのだ。

「さて、今日は二日目だ。まだまだ任務についてもらうぞ」
俺は整列したメカレディたちの前に立つ。
「今日、日本を代表する電気製品メーカーの重役陣が成田より出国する。K国企業との提携の詰めの作業ということだ。奴らを途中で襲撃し、殺せ」
息を呑むメカレディたち。
まさか今日は殺人を命じられるとは思わなかったのだろう。
だが、ショックを与えて自我を失わせるにはちょうどいい。
成功しても失敗してもメカレディたちが衝撃的な任務につくというだけでいいのだ。
口々に何か言いたそうなメカレディたちだったが、昨日と同じように発声機能をシャットダウンし、何もしゃべらせずに命令だけを伝えていく。
あまりのことに泣きそうになっているA2や、口元に手を当てて驚愕しているA3、そして相変わらずに俺をにらみつけてくるA1。
いずれもショックを受けている。
これでいい。

昨日と同じように俺はメカレディたちにフェイスカバーをつけさせる。
フェイスカバーをつけると、彼女たちがなんとなくホッとするように感じるのは気のせいか?
どちらにしろ、俺は彼女たちの躰を支配し、一切の抵抗を許さない。
「「ギーッ!!」」
右手を胸のところで水平にし、服従の音声を発するメカレディたち。
俺は無言でうなずくと、彼女たちを送り出した。

任務はあっけないほど簡単に終了する。
いくら日本を代表する電機メーカーの重役とて護衛がつくようなものではない。
四体ものメカレディの襲撃に対処できるはずがないのだ。
乗っていた車はあっさりと破壊され、あわてて逃げ出した重役たちも次々と肉塊に変えられる。
わずか数分で、周囲にたまたまいた車や通行人もろとも彼らは皆殺しになっていた。
モニターしていたメカレディたちの精神的抵抗は昨日と同様かそれ以上に激しかったものの、ターゲットである重役や女性秘書などを一人二人と殺していくにしたがって低下して行くのが見て取れた。
A1も最大レベルに近い拒絶反応を示していたものの、自らの手で運転手を始末したあとは拒絶がかなり弱まり、その後は多少の諦めが入ったのか淡々と任務をこなす自分の躰に抵抗しなくなったようだ。
よしよし・・・
いい傾向じゃないか。

「「ギーッ!」」
殺人という大役を果たして帰還したメカレディたちを俺はしっかりと出迎える。
無論褒美の快楽を与えてやることも忘れない。
フェイスカバーをはずした彼女たちは、皆なんとなくホッとしたような困惑したような複雑な表情を浮かべていた。
殺人を犯してきたというのに、昨日よりも苦悩の度合いが多少は低いようにも感じる。
ただ一人、A1は唇を噛み締めて、自らの躰が行った行為を苦しんでいるようだった。
俺は彼女たちにねぎらいをの言葉をかけてやり、控え室に戻らせた。

メカレディたちは控え室にいるときは最低限の制御のみで自由に過ごさせてやっている。
無論控え室の様子はモニターされ、異常があればすぐに俺に知らされる。
俺はモニタールームで少し彼女たちの様子を探ることにした。

『くう・・・どうにもならないのかしらこの躰。自分の躰だというのに自分の思い通りにならないなんて・・・』
ベッドに腰掛けて頭を抱えているA1。
やはりコマンダーピンクとして精神力はかなりのものだ。
『無理ですよA1・・・私はもうあきらめます。脱走したくても躰が地底城から出てくれないし、命令に逆らうこともできないもの』
ひざを抱えてうつむいているのはA3か。
この元OLはわりと精神的にはもろいようで、境遇を受け入れ初めているのかもしれない。
さぞかし企業としては使いやすいOLだったかもしれないな。
彼女たちにはお互いのことをナンバーで呼ぶように制御してある。
たとえ苗字や名前で呼ぼうとしても、発声システムが受け付けないのだ。
今のところはあなたとか私とかでごまかしているようだが、いつまでそうしていられるかな。
『あきらめたらだめよ! 何か方法があるはずだわ・・・ピースコマンダーセンターならこの躰だって元に戻せるかもしれないのよ』
『私は・・・私はもう元に戻れなくてもいい・・・』
『えっ?』
ベッドの上で枕を抱えているA2の言葉にびっくりするA1。
それはそうか。
彼女にとっては人間に戻らなくてもいいなどという言葉は信じられないだろうからな。
『ど、どうして? このままメカとして永遠に奴らの言いなりになってもいいの?』
『だって・・・』
うつむいてしまうA2。
A3もA4も彼女の次の言葉が気になるようだ。
『だって・・・このままならもう受験とか将来のこととか不安に思わなくていいし・・・歳を取っておばあさんになることもないし・・・それに・・・』
『それに?』
『命令されると・・・気持ちいいし・・・』
俺はほくそ笑んだ。
狙った効果が出始めているようだ。
『なに言ってるの? あなた自分が何言ってるかわかってるの? 命令されて人殺しをするのが気持ちいいの?』
A1の表情が険しくなっている。
おそらく心の片隅では自分もそう思ってしまったのだろう。
だからこそA2の言葉に反発するのだ。
『気持ちいいもん! 命令で人殺すの気持ちよかったもん! それに・・・そんなの私のせいじゃないもん!』
うつむいて枕を抱きしめるA2。
『それが奴らの手だってことがわからないの? 気持ちよくさせて言うことを聞かせようとしているのよ。負けちゃだめ。一週間。たった一週間の我慢じゃない。人間として生きるのよ』
『人間? 私たちが人間? 可笑しいわ。私たちが人間なわけないじゃない。この躰のどこが人間なの? 私たちはメカレディよ。機械帝国のメカレディなのよ。もうほっといて!』
ヒステリック気味に叫んで枕に顔をうずめてしまうA2。
そう言いつつも彼女自身まだまだ葛藤があるようだな。
生身の人間の脳とはなんと厄介なものか・・・
だが、悪くない。

メカレディたちを観察した後、俺は一息つくためにリラックスルームにやってくる。
やれやれ・・・
彼女らもそうだが、生身の部分が残っているというのは厄介なものだ。
それがほんの脳の一部だとわかっていても、こうして息抜きを求めてしまう。
もちろん精巧に作られた機械生命体とも呼べる上級幹部たちはやはり息抜きが必要で、メレールもしょっちゅうここでくつろいでいる。
もっとも、彼女の場合はサボっているというのが適当かもしれないが・・・
俺はそんなことを思い、オイルジュースを取り出して口にする。
味など知ったことではないが、飲み物を口にするという行為はリラックスするにはいいものだ。
さて、次にメカレディたちには何をやらせようか・・・

「こんなとこにいた!!」
「へ?」
なにやら強烈な威圧感を感じ、入り口に振り向いた俺のアイカメラに、まさに怒髪天をつくといった感じで毛を逆立てているメレールの姿が映る。
「ゴラーム!! あんたってば・・・むーっ!! ぶっ殺ーーーす!!」
「な、なんだー?」
いきなり鉤爪をシャキンと繰り出し、俺に向かって跳びかかってくるメレール。
尻尾をピンと伸ばし、すらっとしたしなやかな躰が跳躍するさまはとても美しい。
などと見入っているわけには行かない。
思わずカバーに繰り出した右手に握っていたボトルがすっぱりと切り取られる。
やれやれ、まともにジュース飲めないぞ。
俺は紙一重でメレールの斬撃をかわすと、後方に一回転して距離を取る。
これでも機械帝国の参謀という肩書きだ。
ピースコマンダーとも渡り合うぐらいの身体能力は備えている。
だが、メレールは怒りに目を赤く輝かせ、俺の懐にすばやく入り込んでくる。
速い!
さすがは猫をモチーフに作られた実行部隊長だけはある。
俺は再び紙一重で斬撃をかわすものの、服の胸の辺りを切り裂かれ、ボディーに一筋傷がついた。
「メレール、待て待て! これはしゃれにならないぞ!」
「黙れ! あんたなんか・・・あんたなんかの作戦に期待したあたしがバカだったわよーーー!!」
ブンと鉤爪が目の前をなぎ払い、俺の背後にあったオイルジュースの保管庫が一撃で切り裂かれる。
うわー・・・
「ど、どういうことだ? 俺の作戦はまだ始まっていないぞ」
「えっ?」
メレールの振り下ろした鉤爪が俺の数センチ前で止まる。
やばかった。
次の一撃は80%の確率で避け切れなかったのだ。
「始まってないって? うそ? だってちんけな紙切れ奪ってきたり、太った人間殺してきたじゃん。あんなことさせるためにメカレディ作ったんじゃないの?」
「あんなことって・・・昨日今日の一件か?」
俺は恐る恐るメレールの鉤爪をつかんで下げる。
「そうだよ! あんなことさせるぐらいならあたしに言ってくれればいくらでもやってあげるのに・・・むーっ!! 何で言ってくれないのよー!!」
再び振上げられるメレールの鉤爪。
「お前にやってもらったんじゃ意味がないんだよ。あれはメカレディを完全に仕上げるための一環なんだ」
「仕上げるための一環? どうしてそんな面倒くさいことをするの? やっぱり元人間だから? そんなの気にしなくていいのに」
振上げた鉤爪を上空で止めたまま俺のことを見つめているメレール。
まったく・・・
可愛いじゃないか・・・
「そんなことじゃないが、手間をかけるのは理由があるんだ。そのうち話すから」
「じゃあ、じゃあ、ほんとにあんなことのためにメカレディ作ったんじゃないんだね?」
お?
なんとなく機嫌がよくなったか?
「当たり前だろ。金を奪ったり企業の重役殺すだけならこんな手間をかけやしない。それこそお前にやってもらったほうがずっといいに決まってる」
「ほんと? ほんとにそう思う? あたしにやってもらったほうがいいって」
何を思ったのかいきなり顔を近づけてくるメレール。
心なしか目が輝き、何かを期待しているかのようだ。
「ああ、お前にやってもらったほうがいい。殺したり破壊したりは得意だろ?」
パアッと表情が明るくなるメレール。
何なんだ、いったい?
機嫌がよくなったり悪くなったり忙しい奴だ。
どこかにバグでもあるんじゃないのか?
「うん、得意。殺したり破壊したりは楽しいもん!!」
いきなりメレールは俺に抱きついてきた。
やれやれ・・・
なんか知らんが殺されずにすんだらしい。

「今回は赦してあげる。次からはちゃんと言ってね。あたしがすぐに人間どもなんかぶっ殺してあげるから」
ざらざらした舌でペロッと俺の頬を舐めたメレールは、なにやら上機嫌で行ってしまう。
ハア・・・
何なんだいったい?
だからお前にやってもらったんじゃメカレディの仕上げにはならないんだっての。
俺はどっと疲れを感じてソファーに座り込む。
オイルジュースをもう一本とも思ったが、保管庫が叩き潰されていてそれも無理。
やれやれ・・・
俺はメレールに舐められた頬に手をやって、なんとなく苦笑した。
  1. 2008/12/19(金) 20:47:41|
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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