ようやく長かったSSにケリをつけることができました。
お待ちいただき申し訳ありませんです。m(__)m
それではどうぞ。
36、
暗闇の中汀は両手両足を触手に絡まれ床に大の字にさせられてしまう。
首に絡みついた触手はその先端を鎌首のように持ち上げて汀を見下ろしていた。
「いやぁっ! いやよぉっ!」
恐怖が汀を支配する。
すでに退魔師としての勇気は失われ、陵辱を前にして怯える一人の女になっていた。
強力な妖魔はそうそう出現するものではない。
だが、ごく稀に出現した時には幾人かの退魔師が命を落とすことも珍しくはなかった。
先天的な能力が要求される退魔師は肉体的な構造の違いが影響を及ぼすのか圧倒的に女性が多い。
しかし、戦いという場においてはその女性という性別が不利に働くことが多く、妖魔に陵辱され殺される退魔師もまた多かったのだ。
汀の友人も何人かは連絡が取れなくなっている。
そのうちの何割かは人知れず妖魔との戦いに敗れ命を落としているのだろう。
「いやぁっ」
汀は必死になって体を動かす。
しかし、二重にも三重にも絡みつかれた体はわずかに動かすことができるぐらいで、振りほどくことはできなかった。
ようやく動きを止めたタイマシ。
“それ”の触手によってタイマシは絡め取られ、床の上でもがくだけとなった。
ブキもまた動きを止め、床の上に転がっている。
タイマシと切り離されたブキは動くことはできない。
それは今までの戦いでわかっていることだ。
ではタイマシと他の人間との違いは何か?
それを確かめるべく“それ”は触手を動かしていった。
汀を見下ろしている黒くグロテスクな触手の先端。
黒人のペニスを間近で見るとこんな感じなのかもしれない。
汀だって処女ではない。
数人と性交渉を持った事だってあるし、男性のモノを間近で見たことだってある。
だが、それだからこそこの触手の先端はペニスと見紛うほど似ていると思うのかもしれなかった。
手は動かせない。
右手はともかく左手もがっちりと触手に絡みつかれて妖刀を振るうどころかピクリとも動かせない。
さらに妖刀そのものが手から離れてしまっていて、拾うことさえできないのだ。
イヤだ・・・
イヤだイヤだ・・・
こんなところで死ぬのはイヤだ・・・
死にたくない・・・
死にたくないよ・・・
汀は触手から顔をそむける。
できる精一杯の抵抗だ。
だが・・・
それにしても・・・
なぜこんな時に体が疼くのだろう・・・
触手の先端はゆっくりと汀の喉元に忍び寄る。
すでにズタズタに切り裂かれあちこちから白い肌を露出させてはいるものの、汀の体はいまだ黒の革ツナギによって保護されていた。
その革ツナギのハイネックの首元にあるファスナーを触手は器用に下ろしていく。
ジジジジジという音がまるで時が止まってしまったかのような倉庫内に響いていく。
ファスナーはふくよかな胸を下り、滑らかなお腹を通り過ぎ、股間のところで動きを止める。
白いショーツが姿を現し、汀の大事なところを精一杯保護するべく抵抗しているようだ。
「やめて・・・いやぁ・・・」
汀は目を閉じていやいやと首を振る。
だが、そんなことはお構い無しに触手は数を増し、革ツナギを両側へ開くとブラジャーの中央を持ち上げて引きちぎる。
ポロンという形容がふさわしい感じで汀の形良い両の乳房が晒された。
ああ・・・そんな・・・
身動きできない自分に対する悔しさと魔物に対する憎しみとが汀の唇を噛み締めさせる。
えっ?
驚いたことに触手が両胸に優しく巻きつき、柔らかくこね始めたのだ。
う、嘘・・・
柔らかく揉みしだかれる胸は汀に女としての快感を送り込んでくる。
最近味わっていない女としての喜び。
それを今この魔物は与えてくれようというのか?
あ・・・あ・・・
汀の体が快楽を求め始める。
両胸を揉まれ、さらに他の触手が首筋を優しく撫でさする。
「は・・・あ・・・」
なまめかしい吐息が汀の口から漏れる。
晒された白いショーツにじんわりと染みが浮き始めた。
ど・・・どうして?
汀は自分の体の反応の速さに驚く。
ちょっと胸を揉まれ首筋を撫でられたぐらいでこんな・・・
「ま、まさか・・・」
汀が目を見開く。
体液だ・・・
魔物の体液が気化しそれを吸い込んでしまった私は・・・
最初からこれは罠?
私を嬲るためにここへ?
バカな・・・
汀は悔しかった。
このような状況に陥って手も足も出ない自分が呪わしかった。
「ひあっ」
汀の体に電気が走る。
触手がピンと立った乳首の先端を突付いてきたのだ。
ああ・・・
自然と腰が浮く。
もうショーツには恥ずかしい染みが広がっていることだろう。
でも構わない・・・
欲しかった・・・
そこに熱くたぎるモノを入れて欲しかった。
体が快感を欲している。
刺激を欲しているのだ。
ああ・・・ああん・・・
汀は腰を上げて、浅ましくもの欲しそうに腰を揺らし始める。
欲しい・・・欲しいの・・・
触手が焦らすようにおへそのあたりを触っている。
「ああん・・・ああん・・・お願い・・・お願い・・・」
何がどうなっているのかわからない・・・
どうして自分がこんなふうにお願いしているのかもわからない・・・
両手も両足も動かせない。
もどかしくて気が狂いそうだ・・・
いや、もう狂っているのかも知れない・・・
「はあん・・・あはん・・・」
構わない・・・
狂っていても構わない・・・
太いのが・・・
太くてたくましいモノが・・・
欲しかった。
「頂戴! お願いだから私に頂戴!」
汀は声を限りに叫んでいた。
変わらない。
どこも変わりはしない。
タイマシはやはり人間だ。
恐るべきはタイマシではなくブキの方なのか?
ならば恐れることはない。
ブキはタイマシを離れて活動できない。
タイマシも今までの人間と同じように精気を啜りしもべに変えてやればいい。
ずいぶんとしもべを失ってしまった。
このタイマシをしもべとすればいくらかは埋め合わせになるだろう。
すでにタイマシは“それ”の体液によって酔いしれている。
後はいつもどおり快楽を送り込みながら体組織を変化させてやればよい。
白いショーツはもう汀の愛液でグチョグチョに濡れていた。
待ちきれないように腰を振りながら、汀は触手を求めもどかしい思いをしていた。
触手は胸を揉み、おへそや首筋を撫でながら汀の官能を高めていく。
「はあん・・・はあぁん・・・」
口からは涎が一筋流れている。
浅ましいメスの顔がそこにはあった。
やがて“それ”は触手を使って白いショーツを引きちぎる。
それを汀は喜びを持って受け止めていた。
ついに待ち焦がれたモノを受け取れるのだ。
「来てぇ・・・私の内膣に来てぇ・・・早くぅ」
もう何も考えられなかった。
今までの事など思い出しもしなかった。
自分が何者なのか、相手がどんな存在なのか、そんなことはもうどうでもよかった。
今の汀はただ浅ましくモノを欲しがるメスだった。
触手の鎌首が持ち上がる。
使い込まれていない汀の秘部。
ピンク色のひだが愛液に輝き、触手を求め蠢いている。
ぷっくりと膨れたクリトリスはいまや遅しとその瞬間を待ち望んでいた。
触手は一瞬躊躇うように入り口で止まった後、ゆっくりとその身を中に沈めて行く。
「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
汀の喜びの声が響く。
両手両足を広げ、全身で触手を迎え入れるように体で受け止める。
ジュプ・・・ジュプ・・・
触手がその身を潜り込ませる。
初めはゆっくり。
そして小刻みに出入りをして汀の体を燃え立たせる。
「ひゃん・・・ひゃんひゃん・・・」
体を震わせて歓喜に浸る汀の体。
「ひゃぁん・・・いい・・・いいわぁ・・・感じるぅ・・・感じるのぉ・・・」
ガクガクと腰を振り触手の動きにシンクロさせる。
「あ、もぶっ・・・もむっ・・・」
大きく開けていた口にも触手が潜り込んでくる。
息が苦しくなるがそんなことは構わない。
のどの奥まで犯されることこそ汀の喜びだったのだ。
ああ・・・気持ちいい・・・気持ちいいわ・・・
全てをさらけ出してむさぼるように快楽を全身で受け取って行く。
のどの奥をゴンゴンと突いてくる痛みさえも心地よかった。
どろっとしたものがのどの奥へ流れ込む。
痛みは薄れ気持ちよさだけがどんどん膨らんで行く。
ほんのちょっとした刺激だけで汀の体は弾け飛んでしまうだろう。
体の奥へ突き入れてくる触手はひだを刺激して気持ちよすぎる。
イく・・・イッちやう・・・イッちやうの・・・
汀はその瞬間の訪れを待ち望み、快楽の海の中で目を開けて触手を見る。
「!」
凍りついた。
息が止まった。
まるで冷水を浴びせられたようだった。
汀の目に入ってきたのは快楽を与え汀を篭絡しようとしている触手ではなく、壁際でぐったりと横たわっている弘子の姿だった。
その姿はとてもか弱く、まるで巣から落ちた雛鳥を思わせる。
守らなければならない彼女を放っておいて私は何をしているのか?
ここで私がこいつに屈したら彼女はどうなるの?
このまま快楽の海に流されていいの?
汀は思いっきり口に含んでいるものを噛んだ。
どろっとした液体が口の中であふれ、むせ返るのも構わずに汀は噛んだ。
ピクピクとのどの奥で触手が暴れている。
歯をのこぎりのように左右に動かしながら汀は噛む。
ブチッという感触とともに触手は噛み切れ、のどの奥へ滑り落ちる。
口の中の気色悪い液体を唾と一緒に吐き出すと、汀は何とかしようと再びもがき始める。
股間を刺激する触手の与えてくる官能の炎を何とか理性で防ぎながら汀は考える。
何をすればいいのか・・・
どうすればこの状態を脱出できるのか・・・
両手両足も動かせないし、膣内には触手が入り込んでともすれば快楽に負けてしまいそうになる。
汀は周囲を見回す。
この状況を改善できるのならば何でもいい。
何か無いか・・・
そのとき汀の目にもう一つのものが映る。
床に転がっている妖刀。
今は柄だけとなっているが汀はそちらへ手を伸ばす。
再度口を目掛けて延びてくる触手を唇を噛み締めながらかわし、何とか妖刀へと左手を伸ばして行く。
もう少し・・・あと少し・・・
下腹部はすでに自分の物ではないように快楽に打ち震えている。
触手の動きがとても気持ちいい。
意識が飛んでイッちゃいそうになる。
あと少し・・・
汀の左手が触手に逆らい妖刀の柄に少しずつ近づいて行く。
あと三センチ・・・二センチ・・・一センチ・・・五ミリ・・・一ミリ・・・
中指の指先が柄に届く。
汀は指先で柄を転がし、手元に引き寄せるとしっかりと掴み取る。
ふう・・・
汀の目から涙がこぼれる。
これで・・・これで終わりにするのだ・・・
全てを終わりに・・・
汀は振り返る。
壁際の弘子は先ほどから変わらずに横たわっている。
胸のかすかな動きが彼女が死んでいないことを物語っている。
弘子・・・ごめんね・・・
汀は心の中で謝る。
言葉にしようと口を開ければ触手が入り込んできてしまう。
だから声を出すことはできない。
弘子ごめんね・・・私・・・あなたを道連れにしちゃう・・・
でも・・・
でもあなただけは触手に犯させはしないわ・・・
綺麗なままでいさせてあげる・・・
汀の涙が床に広がる。
弘子・・・
汀は妖刀へ向かって念を凝らした。
瞬間、世界が反転した。
意識がゆっくりと浮かび上がる。
薄く目を開ける。
暗い・・・
薄暗い部屋だ・・・
ここは・・・
ここはいったい?
弘子はゆっくりと起き上がった。
体がぎしぎし言う。
私は・・・
そうだ・・・
私は由紀美ちゃんに連れてこられて・・・
するとここは?
周囲を見渡す弘子。
暗くてよく見えない・・・
弘子は立ち上がるとうんと伸びをする。
ずっと固い床に寝ていたせいか体のあちこちが痛い。
体を少し動かすとやっと人心地が付く。
それから改めて室内を見渡した。
そして・・・
床に倒れている汀が居た。
「汀さん!」
弘子は駆け寄った。
******
花束とリンゴを抱えて病室へ向かう弘子。
中央病院に汀は収容されていた。
原因不明の高熱と衰弱。
意識不明の重態だった。
医者にも良くわからない。
あちこちの傷はふさがっているものの、衰弱が激しいのだ。
いったい何があったのかいろいろ聞かれたものの、弘子にも説明できるはずはなかった。
学園でも何人もの生徒が衰弱している状態だったが、時期外れのインフルエンザの集団感染の疑いがあるということで一週間の学校閉鎖になっていた。
警察も医療関係者も首を傾げるものの、魔物が学園を支配していたなどと言っても信じてはもらえないだろう。
全ては終わったのだ。
汀の倒れていた近くには黒々とした燃えカスのような塊があるだけだった。
弘子にはそれが悪夢の元凶だったということが何となくわかったが、口をつぐんでいた。
どうせ言っても信じてはもらえない。
「こんにちは。毎日お見舞いに来ているのね」
白衣を纏った一人の看護師が階段の途中で弘子に声をかけてくる。
「こんにちは、山岸さん。今日まで学校もお休みですから」
にこやかに答える弘子。
山岸聖歌(やまぎし せいか)は汀の担当の看護師さんだ。
まだ若くてちょっとドジなところがあるらしく、いつも看護師長さんに叱られるらしい。
でもその笑顔は一級品だと弘子は思う。
「早く行ってあげなさい、破妖さん気が付いたわよ」
「えっ?」
弘子は持っていた袋を落とすところだった。
「ほ、本当ですか?」
「ええ、先ほど先生の診察も終わったわ。衰弱さえ回復すれば大丈夫だそうよ」
山岸看護師がにこやかに微笑む。
この笑顔こそ患者にとっては天使の笑顔だろう。
「は、はい。ありがとうございます」
弘子は慌ててつんのめるように階段を上って行き、病室へ向かう。
汀の病室は個室で奥にある。
走り出したくなるのを必死でこらえて弘子は廊下を進んで行く。
病室の前で弘子は一旦立ち止まると息を整えてノックした。
「はい・・・どうぞ」
汀の声が聞こえてくる。
弘子はすぐに扉を開けた。
汀はベッドに上半身を起こしていた。
ピンクのパジャマが妙に可愛い。
ぼろぼろになって倒れていた汀が病院に担ぎ込まれた後、弘子が買ってきて渡したものだ。
「弘子ちゃん・・・無事だったのね・・・」
「汀さんこそ・・・」
その後は言葉が出てこなくなる。
弘子の頬には後から後から涙が伝ってくるのだ。
「汀さん・・・よかった・・・本当によかった・・・」
弘子はベッドのところへ行くとへたり込んで泣き出してしまった。
「汀さん・・・私・・・私・・・」
ベッドの突っ伏して泣きじゃくる弘子の肩を汀がそっと抱いてやる。
「弘子ちゃん・・・終わった・・・終わったのよ・・・」
か弱く泣きじゃくる弘子を汀は優しく見つめていた。
「汀さん・・・」
涙を拭って弘子が汀を見上げる。
「もう終わったのよ・・・あとは私が・・・力を蓄えるだけ・・・」
くすっと笑みを浮かべる汀。
「そうですね。今リンゴ剥いてきます」
弘子は何か照れくさくなってリンゴの入った袋を手に病室を出る。
後に残った汀はその後ろ姿を見送った。
「ねえ酒本さん、これからみんなでマックでお茶しない?」
「ごめんね、今日は中央病院へ行かなくちゃ」
友人の誘いをあっさりと断ってしまう弘子。
「病院? 何しに行くの?」
友人は怪訝そうな顔をする。
一週間の休みで学生たちはすっかり体力も回復していた。
いまさら病院なんて行く必要がないはずなのだ。
「お世話になった人が入院しているんだもん。お見舞いに行かなきゃ」
「あ、そうなんだ。大変だね」
所詮は人事でしかない友人はあっさりしている。
彼女の命がその人によって救われたなどとは露ほども思ってはいないのだ。
「別に大変じゃないよ。でも土日ちょっと顔を出せなかったからね。今日は行かなきゃ。それじゃね」
弘子は手を振って友人と別れるとバス停へ向かう。
自動ドアが開き病院内に入って行く弘子。
いつものように受付を通り階段へ向かう。
今日は何となく静かな感じだ。
月曜日なのに外来が少ないのかもしれない。
階段を上がるといつもの廊下を山岸看護師が歩いてくる。
でも何となくぼうっとした感じで顔も少し赤い。
風邪でも引いたのだろうか・・・
「こんにちは」
「あら酒本さん、いらっしゃい。汀様がお待ちかねよ」
「えっ?」
弘子は聞き返した。
今なんて言ったの?
確か汀様?
「うふふ・・・さあ、早く行ってらっしゃい。ずっとお待ちなのよ」
そう言うと山岸さんはふらふらと廊下を歩いて行ってしまう。
弘子は何かとてもいやな予感がした・・・
そう・・・まだ終わってはいないのではないのだろうか・・・
だとしたら汀さんに早く良くなってもらわないといけない。
見舞いに来るぐらいしかできないものの、弘子は汀に早く良くなってもらうようにいつも果物は欠かさない。
今日は定番のバナナを持ってきている。
でも、喜んでくれるだろうか。
そんなことを思いながら弘子は病室の扉をノックした。
「こんにちは弘子。ちょうど食事を終えたところなのよ」
ベッドに上半身を起こしている汀。
弘子は少しホッとした。
今日は顔色もずいぶんよくなっている。
このままなら後数日で退院できるかもしれない。
「えっ? そうなんですか? でももうすぐ夕方ですしお昼遅くなったんですか?」
「うふふ・・・違うわ」
汀はそう言って妖しく微笑んだ。
「今日はバナナを持ってきたので食べてくださいね」
弘子が袋をベッドの脇に置く。
「そんなものはいらないわ」
「えっ?」
「うふふ・・・可愛いわ・・・弘子。私が欲しいのはあなた」
汀はゆっくりと人差し指に舌を這わせる。
その爪は黒く鋭く、舌もまた黒い色をしていた。
「あ・・・そ・・・そんな・・・」
弘子はぞっとした。
魔物は滅びたのではなかったのか?
「うふふ・・・もっともっと力をつけなきゃね・・・さあ、弘子、こちらへいらっしゃい」
「あ・・・ああ・・・」
汀に掛けられている布団が盛り上がり、しゅるしゅるという音がして触手が顔を出す。
それはあの体育倉庫で見たものと同じだった。
「い、いやぁぁぁぁぁっ!」
悲鳴を上げて扉を開ける弘子。
だがそこには山岸看護師が立っていた。
「あ、ああ・・・」
「だめですよ酒本さん。汀様から逃げたりしちゃ」
山岸看護師の白衣の下から触手がゆっくりと鎌首をもたげる。
「あ、あなたも・・・」
「うふふ・・・彼女はすでにわたしの可愛いしもべなの。今日もたっぷりと精気を啜ってきてくれたのよ」
背後で汀の艶めかしい声がする。
「ああん・・・当然ですわ。私は汀様の忠実なしもべですもの」
うっとりとした表情で汀に答える山岸聖歌。
弘子は目の前が真っ暗になったような気がした。
「心配はいらないわ、弘子。あなたは可愛い私の大事な人。念入りに妖魔に生まれ変わらせてあげる」
弘子の目の前で病室の扉はゆっくりと閉じていった。
「うふふふ・・・いかがですか汀様。この女をしもべにすればいろいろと便利だと思いますけど」
黒革のボンデージに身を包み、ハイヒールのブーツとロンググローブを身に着けて院長室の椅子に座っている汀に妖艶な笑みを浮かべた弘子が言う。
弘子も真っ赤なコルセットに同じような赤いブーツとグローブを嵌めている。
妖艶さを漂わせる汀と違い、少し幼さを残す弘子にはちょっとアンバランスだったが、それがかえって可愛く見せている。
弘子の前には裸で四つん這いにさせられた女が一人いた。
その股間とお尻には弘子から伸びた触手が差し込まれ、与えられる快楽にうっとりと涎をたらしている。
「うふふ・・・弘子に任せるわ。好きになさい」
妖艶で残虐な妖魔に変化した弘子を頼もしげに汀は見つめる。
「そうですか? じゃあ、私のしもべにしちゃいますね。市長の秘書ですから使えそうですし」
冷たい笑みを浮かべて触手を動かし、さらに口にまで突っ込んでいく。
「むぐぐぐ・・・」
「あはははは・・・気持ちいいでしょ? お前は生まれ変わるのよ。私に仕える妖魔になるの。嬉しいでしょ?」
弘子にもてあそばれながらその女はじょじょに身も心も変えられていくのだ。
「汀様、例の件はいかがなさいますか?」
汀のそばにいたもう一人の女性が声をかける。
白衣を着込んでいるものの、その下からはうねうねと触手が蠢いている。
汀によってこの病院の院長となった山岸聖歌である。
「ああ、派遣されてくる退魔師ね? ご丁寧に私に連絡してくるんだものね」
くすくすと手の甲を口元に当てて笑う汀。
「歓迎してあげましょう。この私がたっぷりとね。うふふふ・・・」
汀の笑いが部屋に響いた。
これにて終了です。
どこかで見たような最後になってしまいました。
パクリと思われても仕方ないかな。
とりあえずここまでお付き合いありがとうございました。
また別の作品をいずれ投下いたしますので、そのときはまたよろしくお願いいたしますね。
[最終回です]の続きを読む
- 2005/10/04(火) 19:12:04|
- 退魔師
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いよいよ最後の戦いです。
私自身、今日は書いていてわくわくものでした。
ご一緒に楽しんでいただければ幸いです。
35、
闇の中に目を凝らしてもその形はわからない。
だが“それ”は確実にそこに居て汀を狙っているのだ。
闇に目が慣れても近くを這いずる触手しか見えてこない。
それほどここは闇が深かった。
先ほどまでうっすらと差し込んでいた光も奥まではまったく届かないのだ。
「いきなりとはご挨拶ね」
汀が妖刀を構えあとずさる。
せめて背後を取られないようにしなければならない。
入り口の扉に背が触れたところで汀は態勢を整えた。
「で、あなたはしゃべれるのかしらね?」
汀の頬を一筋の汗が流れる。
ここに満ちている妖気はまさに圧倒的だった。
妖気の強さはそのまま相手の強さに結びつく。
汀は唾を飲み込んだ。
そこに居たのは何の変哲もない“人間”だった。
今まで何度となく精気を啜り、利用してきた存在。
それらとなんら変わるところは無いように“それ”には思えた。
唯一違いがあるとすれば、それは彼女が手に持っているもの。
何か強い力を持ち“それ”をも容赦なくねじ伏せてくるようなもの。
それを彼女は使役できるようだった。
ブキというものだろうか・・・
タイマシとはブキを使う人間のことだろうか・・・
確かにブキは強力そうだ。
だが、それを持つタイマシは人間と同じだとするともろい存在だ。
確認しなければならない。
タイマシが主なのか、ブキが主なのか・・・
“それ”は触手を再び伸ばしていった。
来るっ!
汀は左手で妖刀を振るい、飛び掛ってくる何本もの触手を切り裂いていく。
毒々しいどす黒い液体が切り口から飛び散り、汀の体を汚して行く。
噎せかえるような濃密な臭い。
まるで発情したメスのような濃厚な臭いがあたりに満ちていく。
いつこういうことがあるかわからないからと言われ、右手でも左手でも妖刀を振るえるように訓練してあったのが役に立っていた。
もう右手はほとんど動かない。
体内の血も足りない。
動くたびに動悸が激しく感じてくる。
長期の戦いはできっこない。
勝機は一瞬だろう。
それにしても奴は一体何本の触手を持っているのか?
真っ黒いゴムホースのような太い触手。
その先端はおぞましくも男の股間のものにそっくり。
鈴口からはいつ先走りの液が垂れてきても不思議では無さそう・・・
しごけばそのまま真っ白いどろっとした液体を吐き出してきそうな形状をそれはしていた。
汀が妖刀を振るうたびに触手が途中から切り取られ、ビチビチとのたうちながら床に転がる。
それはさながらバイブレーターが床の上で振動しているようにも見えてしまう。
「うふっ・・・うふふふ・・・」
汀は自分が何か滑稽に思えてきた。
幾人もの男性に囲まれ、そのたくましいペニスを何本も目の当たりにし、それを無慈悲にも切り落として行く魔女。
今の汀はその魔女なのかもしれない。
「あは・・・あははは・・・・」
汀は笑い声を上げながら触手との剣の舞を舞っていた。
イタミ・・・
これがイタミというものだろうか・・・
幾本もの触手がタイマシに向かって行き、ブキによって切り裂かれていく。
久しく感じたことのなかった感じ。
イタミ・・・
触手を伸ばす。
タイマシが動きブキが切り裂く。
イタイ・・・
イタイイタイ・・・
切り裂かれた触手は自らの内に引っ込めれば元に戻る。
だが、このイタミという感覚は不快この上ない。
触手の数を増し、タイマシの上からも下からも動かしてみる。
だが、タイマシはくるくるとブキをひらめかせ近づく触手を切り取っていく。
イタイイタイ・・・
イタイイタイイタイ・・・
切られた触手はすぐに引っ込めて新たな触手を伸ばす。
二本同時でだめなら三本。
三本同時でだめなら四本。
四本同時でだめなら五本。
それはいつ果てるとも知れない闇の中でのダンスの競演だった。
「はあ・・・はあ・・・」
息が切れてくる。
体が重くなってくる。
先ほどまで感じていた滑稽さは失せ、じょじょに絶望感がつのってくる。
触手は一向に数を減らさない。
それどころかますます数が増えている。
本体がある辺りは見当が付いても、そこへ行くことが出来ない。
背中を壁に押し付かせて妖刀を振るうのが精一杯だ。
体からかなり離れたところで切り裂いていた触手はいまや体の直前で切り落としている。
このままではいずれ体に接触されてしまうだろう・・・
どうしたらいい?
汀は唇を噛む。
周囲から群がってくる触手はすでに汀の処理能力を超えていた。
「キャッ」
足元を襲った触手が右足に絡みつく。
そのまま引っ張られた汀は思い切り尻餅をつくようにしてへたり込んだ。
「しまった!」
汀が気を取り直したときには触手は汀の左腕にも絡みつき、動きを止められてしまう。
ヤバ・・・これはまずい・・・
汀は何とか逃れようと体を動かそうとするが、すぐに触手が幾本も絡みついてきて両手両足そして首にも巻きついてしまう。
「あうっ・・・は、離せ!」
じたばたともがいてみるものの絡みついた触手を振りほどくことができない。
汀は血の気が引いていくのを感じていた。
「だ、誰か助けてー!」
それは汀の心が折れた瞬間だった。
[剣の舞]の続きを読む
- 2005/10/03(月) 22:43:04|
- 退魔師
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ほんのちょっとですがSSを投下します。
明日にはもう少しまとまった量を投下できると思います。
34、
ガラガラガラ・・・
重々しい音を立てて扉が開く。
ひんやりとした冷気とも言うべきものが汀の足元に流れ出した。
ぼんやりと薄暗い倉庫内。
跳び箱やマット、ボールの入った籠などが所狭しと置かれている・・・はずだった。
今、そこには何も無い。
暗い室内はがら空きだった。
ただ、壁際にうなだれた形で制服を着た少女が一人もたれかかっているだけだった。
「弘子!」
汀が駆け寄る。
「弘子」
跪いて抱え起こすが反応がない。
どうやら眠らされているようだ。
何かされた様子は・・・ない。
「ふう・・・」
思わず汀はホッとする。
もっとも由紀美の例もあるので油断はできないが、この短時間で同化融合できるほどとは思えなかった。
「!」
背後で開いていた扉がガラガラと音を立て閉まる。
汀の周囲は一瞬にして闇に包まれた。
「クッ!」
左手の妖刀を握りなおして身構える。
闇に目が慣れるまで不用意には動けない。
それに・・・先ほどまで感じなかった魔物の気配が強烈に膨らんでいる。
薄暗い倉庫内が闇に包まれていく。
汀は目を閉じ気配を探ると同時に闇に目を慣らす。
「ハッ!」
足元をかすめる一筋の触手。
その気配を察した汀は素早くジャンプして飛び退る。
最後の戦いが始まったのだ。
[戦闘開始]の続きを読む
- 2005/10/02(日) 22:44:44|
- 退魔師
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こんばんは。
なかなか思うように時間を作れないものですね。(笑)
もう少し書きたかったんですが、今日はここまでです。
少しですが、ご勘弁を。m(__)m
33、
階段を下りた汀は、由紀美がてっきり教室の方へ向かうものと思っていたが、彼女が体育館の方へ歩くのを見て苦笑した。
なるほど・・・ご主人様は体育館か・・・
それにしても手駒たちを何人も倒してきた退魔師をやすやすと迎え入れるとはどういうつもりだろうか。
やけっぱちになって最後の決戦を挑んでくるつもりか?
それとも和を請うて、この世界から離脱するつもりか?
まあ、どちらにしても会わなければならない。
弘子が人質となっているのは問題だが、最悪の場合は彼女を見殺しにしてでも魔物を浄化しなくてはならない。
もちろんそれは最後の手段であり、弘子を確保するのが最優先だ。
それにしても・・・
初めての所を訪問するのに、この格好はどうだろう・・・
汀はあちこちを切り裂かれ、黒革のツナギから白い肌が覗く自分の姿を見下ろして苦笑せざるを得ない。
ドレスとは言わないが、もう少し気の利いた格好で訪問しないと失礼というものだろう。
「まあ、今回は許してもらいましょう」
「えっ? 何か言いました?」
由紀美が汀の方へ振り向く。
「この格好よ。せっかくあなたのご主人様に会うのにズタボロだわ」
「気にしないでいいわ。その方がご主人様もお喜びになるでしょう」
由紀美の顔に邪悪な笑みが浮かぶ。
「へえ、あなたのご主人様はけっこういやらしいのね」
「んふふ・・・すぐにわかります」
そう言って由紀美は再び歩みを進める。
汀はほとんど動かなくなった右腕を押さえその後を歩いていった。
“それ”は気配を感じていた。
間もなくここにタイマシが来る。
せっかく作り上げたしもべたちをいくつも除去したタイマシだ。
タイマシとは何なのか?
精気を補充し力を蓄えた今、この世界に“それ”にとっての脅威は存在しない。
存在しないはずだった。
この世界に存在するのは捕食されるものたち。
“それ”の生存を脅かしはしないはずだ。
だが、どの個体の情報を調べてもタイマシという存在に該当するものはいなかった。
よくわからない存在だが、それは確実に“それ”に仇なすものであるのは間違いない。
しもべたちで排除できなかったタイマシという存在を“それ”は知っておきたかった。
体育館ではうつろな目をした少女たちが体操服姿で何をするでもなく座っているだけだった。
ジャージ姿の男性教師も呆けたように出席簿を片手にぶつぶつとつぶやいている。
それは異様で不気味な光景だった。
「こっちよ」
由紀美はそこを通り抜け、裏手に繋がる扉を開く。
そこからは倉庫のような建物が見えていた。
「あれは?」
「体育用具倉庫。ご主人様はあそこにいらっしゃるわ」
汀の質問に答える由紀美。
「そう・・・あそこに・・・」
汀は左手の妖刀を確かめる。
柄だけの姿だが、気を込めればすぐにでも刀身を現すだろう。
「さあ、いらっしゃ・・・」
由紀美は突然襲った胸の痛みに言葉が詰まった。
見ると何か尖ったものが胸から突き出ている。
「悪いわね。だますようで気が引けるけど、あなたをそのままにしてあそこへ行くわけにはいかないわ」
汀が左手の妖刀を引き抜く。
「が・・・ぐふっ・・・」
「魔物が退魔師に後ろを見せるべきではないわよ」
汀はそのまま左手の妖刀を一閃させた。
ごろんと音がして由紀美の首がころがる。
「ふう・・・」
汀は呪文を唱え、由紀美の体を浄化する。
青白い炎が上がり、由紀美の頭部と胴体は燃えていった。
「奴はあなたを捨て駒にしたのよ・・・私を連れてくるためにね・・・」
汀は体育用具倉庫の扉をにらみつけると、妖刀を携えてその扉に向かった。
[扉の前で・・・]の続きを読む
- 2005/09/27(火) 22:12:11|
- 退魔師
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こんばんは。
夕べは酔っ払い状態ですみませんでした。m(__)m
今日は久し振りにSSの投下です。
最後へ向かって一直線と行きたいですね。
32、
黒々とした太いホースのようなもの。
その先端は亀の頭のようにも見え、縦に裂け目が入っている。
亀の首の辺りはくびれ、えらが張ったようにも見える。
キシャーという声でも出しそうな縦の裂け目からは粘ついた液体が涎のごとく糸を引いている。
それは以前インターネットで見たことがある男の人の股間にあるモノを思わせた。
それが何本も弘子の周囲には延びてきて、うねうねと上下動を繰り返す。
不気味この上ないはずなのに、由紀美はそれを見てうっとりと頬を上気させていた。
「ああん・・・ご主人様の触手・・・素敵ぃ」
「触手・・・?」
弘子は悲鳴を上げることさえできなくなっていた。
触手・・・と呼ばれたそのホースが弘子の顔の辺りまでやってきたからだ。
まるで臭いでも嗅ぐように三本の触手が弘子の顔のそばをうねうねと蠢く。
顔をそむけ、歯がガチガチ鳴るのを必死でこらえる弘子。
もう恐怖で気が狂ってしまった方がどんなに楽だろうかとさえ思う。
「うふふ・・・弘子ちゃんもすぐにご主人様のしもべになれるわ。そうしたら二人で一緒に精気を吸いまくりましょうね」
由紀美の優しいキスがかえって弘子の恐怖を煽る。
私もこの触手をご主人様と呼んでしまうのだろうか・・・
私も由紀美ちゃんと一緒にあそこからうねうねと触手を出す化け物になってしまうのだろうか・・・
いやだいやだ・・・
そんなのはいやだ・・・
誰か・・・
誰か助けて・・・
誰か・・・
汀さん・・・
お願い・・・助けて・・・
ぴたりと触手の動きが止まる。
まるで凍りついたように動きが止まる。
それはしもべである由紀美にとっても意外なことだったらしく、不思議そうな表情を浮かべていた。
「ご、ご主人様、どうなされましたか?」
由紀美が不安そうに尋ねる。
触手はそのままするすると弘子から離れはじめた。
「ご、ご主人様?」
由紀美も弘子を押さえつけた手を離し、ふらふらと触手のあとを追う。
だが、由紀美はすぐにびくんと体を硬直させた。
「あ・・・はい・・・え?・・・まさか・・・はい・・・かしこまりました、ご主人様」
由紀美は宙に向かいつぶやくようにそう言うと弘子の方へ向き直った。
「弘子ちゃん、私ちょっと校舎に戻らなければならないの。少しの間ここでおとなしくしていてね」
由紀美は笑みを浮かべると弘子のそばに跪き、そっと頬を撫でるとふっと息を吹きかける。
それはキスをする仕草にも見え、弘子は再び闇の中に引きずり込まれていった。
目の前で青白い炎が燃え盛る。
それはかつて人間であったモノ。
東倉郁海と呼ばれ、生徒たちから慕われた女教師の最後の姿・・・
壁に背を付け、床にへたり込みその炎をぼんやりと眺めている。
浄化せずにすむのならばこれほど良いことは無いのだろう・・・
だが、取り憑かれただけでなく、同化してしまった以上は浄化せねばならない。
大元を倒しても、同化されてしまった人間は新たな魔物として人間の脅威となってしまうのだ。
「ふう・・・さすがだったわよ・・・郁海センセ・・・」
汀が腰を下ろしている床には血だまりができている。
右腕は切り裂かれもはやぶらぶらだし、脇腹もすっぱりと抉られている。
皮のツナギはすぱすぱと切り裂かれ、あちこちから血が流れている。
汀はぼんやりとしながら左手で呪符を取り出し、呪文を唱えた。
かろうじて傷がふさがっていき、血が止まる。
「クッ・・・血が流れすぎね・・・」
ふらふらと立ち上がる汀。
もう一戦やれと言われてもこの状態ではきついだろう。
一度撤退し、仲間を呼んだほうがいいかもしれない・・・
到着までに数日かかり、その間に再び同化した人間を作られてしまうがやむを得ないか・・・
「侮ったつもりは無いんだけど・・・ここまで強力とはね・・・」
汀が自嘲気味に笑う。
その能力の高さゆえに自由行動を許されている退魔師の一人だが、これでは形無しだ。
「弘子ちゃんを呼びに行かなきゃ・・・」
ふらふらと階段の入り口へ向かう汀。
太陽がまぶしい。
霞む目にその入り口に誰かが立っているのが映った。
「あなた・・・確か・・・」
「こんにちは。退魔師さん」
そこに立っていたのは由紀美だった。
「弘子ちゃんと一緒に居たんじゃなかったのかしら?」
汀は臍を噛んだ。
何のことは無い。
私は守るべき存在をむざむざと差し出していたのだ。
うかつなことでは済まされない。
「ええ、つい先ほどまでご主人様と一緒の場所で・・・」
「すでに同化されていたとはね・・・異質な存在を感知できなかったはずだわ」
「ふふん・・・退魔師ともあろう方が・・・かしらね」
小悪魔的な笑みを浮かべる由紀美。
汀は左手に妖刀の柄を握り、由紀美をにらみつける。
「それにしてもすごいわ・・・ご主人様のしもべを何人も・・・とても人間とは思えない」
「お褒めいただいて光栄ね。ついでにご主人様の場所を教えてくれないかしら?」
「ええ、今から案内するわ。ご主人様があなたをお連れするようにとおっしゃっているの」
「えっ?」
返事を期待していた汀ではなかったが、驚いたことに期待以上の答えを由紀美は返してきた。
「ご主人様がお呼びなのよ。あなたを連れて来なさいってね」
「そう・・・いよいよ直接お会いできるってわけね」
ぶらぶらになった右手に汀は顔をしかめる。
この状態で直接対決は心もとないが、弘子を見捨てるわけには行かない。
何とかするしかない。
「さあ、来て下さい。ご主人様がお待ちかねですわ」
くるりと背を向けて階段を下って行く由紀美。
汀は覚悟を決めそのあとに続いた。
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- 2005/09/26(月) 22:06:10|
- 退魔師
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間が開いてしまってすみません。
仕事の関係で休みが変わってしまったものですから。
それでは投下です。
31、
汀が観念したようにうな垂れる。
その様子を見た少女たちは薄く笑みを浮かべて汀に近づいていく。
左右にピンと張った触手が心なしか緩んだように見える。
「うふふ・・・観念したようね。おとなしくしていれば苦しまずに快楽の中で死なせてあげるわ」
恭子は汀の顎を持ち上げて、キスをする。
汀はそれを何の抵抗も無く受け入れ、入り込んでくる恭子の舌に自分の舌を絡めていく。
やがてそっと離れた唇からつうっと唾液の糸が伸びていった。
「ああん、先生ずるい」
「私たちにもこいつの精気を吸わせてください」
両脇で汀の両腕を絡めている少女たちが不満を言う。
その表情は淫らな欲望でいっぱいだった。
「うふふふ・・・人気者ねぇ、退魔師さん。これから私たちが前からも後ろからもあなたを吸い尽くしてあげるわ」
「うふふふ・・・」
「美味しそう・・・ふふふ・・・」
三人が充分に近づいたことを確認した汀は薄く笑みを浮かべる。
「ごめんこうむるわ」
「なにっ!」
汀は素早く左手の袖口に挟みこんであった呪符を引き出し、呪文を口ずさむ。
「や、やめろぉ!」
恭子の絶叫が響く中、呪符は光と灼熱を発し汀の両腕に絡み付いている触手を焼き尽くして行く。
「きゃぁぁぁぁぁ・・・」
「うぎゃぁぁぁぁ・・・」
触手から全身に火がまわり、真っ赤な炎が少女たちを包み込む。
「あうっ」
はじかれるように恭子は尻餅をついてしまう。
見る間に少女たちを包む炎は青白く変わり、ぐずぐずと崩れて行く。
「晶、愛美!」
郁海にも一瞬のことで何が起こったのかわからない。
だが目の前ではご主人様に選ばれた二人の少女があっけなく燃え落ち、恭子がなす術もなくそれを見ているというだけ。
汀は両腕に少し焦げ跡を残したまま床に転がると妖刀を手に取る。
「恭子!」
「えっ? 何?」
郁海は己を呪った。
声をかけるべきではなかったのだ。
声をかけたばかりに恭子の注意は一瞬逸れた。
その結果は・・・
「がはっ・・・」
恭子の口からどす黒い液体がこぼれ落ちる。
それは床に広がって黒い水たまりを作り上げる。
「あ・・・あは・・・」
「恭子・・・」
恭子の胸からは何かが突き出ていた。
ゆらめき、まるで陽炎のよう。
「ひ・・・ひがし・・・わ・・・た・・・し・・・」
恭子の目が宙を泳ぎ裏返る。
どさっと言う音とともに恭子は倒れた。
「恭子!」
郁海は駆け寄ろうとした。
だがその背後に立ち上がった人影が彼女を立ち止まらせる。
「退魔師・・・」
「ふう・・・ちょっとてこずったかしらね」
汀が右手を押さえつつ妖刀をかざす。
「貴様ぁ! 何をした!」
「フラッシュ&バーニングってところかしらね。呪符を使わせてもらったわ」
「呪符・・・」
郁海の顔に激しい怒りが表れた。
「ええ、呪符よ。退魔師なら当然のね」
「なぜお前は?」
「魔に反応するのよ。当然でしょう?」
ぎりっと音がして郁海の唇からどす黒いものが流れる。
「赦さない・・・八つ裂きにしても赦さない」
郁海がスカートの中から触手を覗かせた。
「うぅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
五本の触手をうねらせながら郁海は汀に向かって行く。
その爪は黒く輝き、太陽を照り返していた。
暗闇の中うっすらと目を覚ます。
「う・・・ん・・・こ、ここは?」
「目が覚めた? 弘子ちゃん」
呼びかけられた弘子が見上げると、そこには由紀美が妖しい笑みを浮かべて立っていた。
「ゆ、由紀美ちゃん・・・」
「うふふ・・・弘子ちゃん喜んで。ご主人様は弘子ちゃんをしもべにしてくださるそうよ」
口元に手の甲を当てて薄笑いをする由紀美。
その様子は以前の由紀美にはありえないことだった。
「由紀美ちゃん・・・あなたはすでに・・・」
絶望にかられる弘子。
「ええ、私はもう人間なんかじゃないわ。ご主人様に選ばれた忠実なしもべ。見て、私の触手」
由紀美はスカートを持ち上げる。
するとその影からしゅるしゅると三本の触手が伸びてくる。
「!」
弘子は息を呑んだ。
とっさに後ずさるが、壁が背中にあたりそれ以上下がれない。
「くすっ。恐がらないで。すぐに弘子ちゃんにもご主人様が分けてくださるわ」
「い、いやよ・・・いやぁっ!」
ゆっくりと近づいてくる由紀美に弘子は恐怖を覚える。
「ダーメ、弘子ちゃんは私と一緒にご主人様にお仕えするの・・・」
しゅるしゅると言う音を立てて触手が弘子の足に絡みつく。
そのまま左右に引っ張られ、弘子は床の上で股を広げさせられてしまう。
「いやぁっ! や、やめてぇっ!」
何とかスカートを押さえて股間を隠そうとするが、近寄ってきた由紀美が両手で弘子の腕を持ち上げる。
「うふふ」
そのまま由紀美は弘子の両腕を壁に押し付け、弘子は万歳をしたような格好になってしまう。
「いやぁ、いやよぉっ!」
両手を万歳させられ、両足を触手に広げられてしまった弘子は、まったく無防備な状態で晒されてしまう。
「うふふ・・・可愛いわ、弘子ちゃん」
由紀美は黒く染まった舌で弘子の頬を舐める。
それはまるで味見をされているようで、弘子の背筋は凍りついた。
「ひいぃぃぃぃぃ」
弘子の悲鳴が用具室内に響く。
「あん・・・恐がらないで、弘子ちゃん。すぐにとっても気持ちよくなるんだから。ご主人様、お願いします」
由紀美が振り返り、暗闇に声をかけた。
そこにはただ闇がわだかまっているだけに弘子は思えたが、やがてそこからずるずるという音が聞こえ、何かが蠢くのが見て取れた。
「いいやぁっ!」
弘子の広げられた股間から覗く白いショーツにはみるみる染みができ、白い湯気が上がってしまった。
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- 2005/09/20(火) 21:39:46|
- 退魔師
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ウオー!
阪神勝ったぞー!
巨人相手に大勝じゃー!
優勝目指して一直線じゃー!
ごめんなさい。m(__)m
ちょっと浮かれてしまいました。
いつもSS楽しみにしていただいてありがとうございます。
展開が遅々として進まなくてすみません。
頑張って行きますのでよろしくお願いいたします。
30、
風が舞う。
太陽が中天に差し掛かる時間が近づいていた。
足元の影も短い。
辺りは静か。
ただ風として空気の動く音だけが汀の耳を震わせていた。
正面で彼女をにらみつけているのは恭子と呼ばれた女教師。
股間から伸びている触手をすでに隠すことさえしていない。
だがその数は先ほどまでとは違っていた。
女子学生をコントロールしていた触手は汀に切り捨てられ、その分が減っている。
「さすがは退魔師ね。恭子の触手が回復しないなんてね」
対照的に落ち着いた表情の郁海。
彼女はまだ触手を晒してはいない。
その黒革のスカートの中には一体何本の触手が隠されているのか・・・
「ふふっ、ただの剣じゃないからね」
汀は薄く微笑む。
「そのようね。惜しいわ」
「惜しい?」
汀は郁海のその言葉の意味を量りかねた。
「うふふ・・・ご主人様の愛撫を受ければあなただってきっと考えが変わるでしょうにね」
「それは無いわね。ご主人様とやらに言っておいてよ、あんたの命を貰い受けに行きますってね」
「おことわりだわ」
郁海はクスクスと忍び笑いをした。
そしてすっと右手を上げ、まるで戦闘開始の合図ででもあるかのようにぱちんと指を鳴らす。
「いやぁっ!」
気合を込めた叫びを上げて恭子が触手と爪を振りかざし駆け込んできた。
汀は妖刀を構えてその突進を受け止めるべく身構える。
「!」
そのとき予想もしないことが汀を襲った。
左右から伸びてきた黒々とした触手が汀の両腕を捕らえたのだ。
「なにっ?」
強い力で左右から引っ張られ、思わず正面を向けていた妖刀が右へ振られる。
「グウッ」
どすっと言う音とともに汀の口からうめき声が漏れた。
恭子が繰り出した触手が汀のボディを打ち据え、前のめりになる汀。
そのまま両腕を左右に引っ張られ、図らずも磔のように立たされてしまう。
「クッ」
左右を見た汀は、そこに冷たい笑みを浮かべた少女たちが触手をスカートから伸ばしているのが見えた。
「うふふふ・・・私たちがただ気配をそのままにしていただけじゃないのよ。あなたの意識をこちらに向けておきたかったの」
郁海が微笑む。
汀としても階段での襲撃は考えていたが、屋上へきて二人を見た時に周囲への警戒が薄くなったのは否めない。
近づいてきた恭子の右手が一閃し、汀の右腕が切り裂かれる。
「あうっ・・・」
血しぶきが飛び散り妖刀が汀の手を離れて転がって行く。
「よくも私の触手を傷付けてくれたわね。赦さないわ」
恭子の憎しみを込めた眼差しが汀を貫いた。
「ねえ、先生、こいつただ殺しちゃうの?」
「みんなで精気をいただいちゃいませんか?」
両腕を押さえる触手を伸ばし、少女たちは淫らに微笑む。
両腕を絡めとられたままでいる汀はなすすべもないように見えた。
スパッと言う感じで黒革のツナギの前が切り裂かれる。
純白のブラジャーがその一部を切り裂かれた部分から覗かせる。
大きく形良い胸がその存在を誇示するかのように革のツナギを押し上げていた。
「うふふ・・・さすがの退魔師も形無しってところかしら?」
冷酷な笑みが恭子の口元を彩る。
「先生、私たちにもおすそ分けしてくださいね」
「この人けっこう美味しそうですね」
少女たちから伸びている触手は二本ずつ。
それが汀の両腕にがっちりと絡み付いている。
「そうね、死なない程度に手足の腱を切ってから楽しみましょうか」
黒く鋭い爪を汀に見せ付けるように恭子はかざす。
その爪が汀ののど元に押し付けられ、一筋のラインを引いた。
[なかなか進まなくてすみません]の続きを読む
- 2005/09/13(火) 21:46:24|
- 退魔師
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今日はお休みだったんですが、思ったほど書くことができませんでした。
まあ、どのぐらい書いたかはこのあとを読んでもらうとして、自民党圧勝でしたね。
これで日本の政治がどうなるのか。
いい方向へ向かって行って欲しいものです。
それにしても民主だらしないなぁ。
さて、SSです。
29、
階段の途中で迎撃されるのを覚悟していたが、まったく拍子抜けするように静かなものだった。
屋上への出入り口は鍵すら掛かっていなくて、開け放たれていた。
「ふう・・・正面きってやろうって訳?」
汀は苦笑しながら屋上に立つ。
いい天気が広がり、風も気持ちいい。
お昼をここで食べるのは美味しいだろうと汀は感じた。
「あら、逃げなかったのね」
「勇気があるのか馬鹿なのか」
髪を風に嬲らせながら二人の女性がフェンスにもたれかかっている。
ただそれだけを見れば一つの絵にもなりそうな光景だ。
「ふふ・・・尻尾巻いて逃げたのに言うだけは一人前ね」
汀が唇の端をゆがめる。
「クッ・・・」
「恭子・・・」
郁海と呼ばれていた女性が静かに嗜める。
恭子よりも若いであろうにどうやら彼女の方が指示を出す側のようだ。
もしかしたら魔物に先に支配されたのかもしれない。
「さて、巣はどこにあるのかしら?」
汀は妖刀をすっとかざす。
「素直に教えると思っているのかしら?」
郁海がやはり笑みを浮かべる。
「思ってはいないわ。でもあなた方をそのままにはしておけないからね」
「そういうことね。こちらもあなたをこのまま返すわけには行かないわ」
すっと黒く鋭い爪をかざす郁海。
隣では恭子も体制を低くしていつでも飛びかかれるように身構える。
汀の額に汗が光った。
昼なお暗く日も差さない体育用具倉庫。
“それ”の前には一人のしもべが立ち尽くしている。
その手には一体の獲物が抱かれていた。
“それ”は喜びを感じていた。
しもべを通して精気を啜るのもいいが、やはり直接啜る方がいいのだ。
“それ”は触手を伸ばすべく蠢いたが、しもべが何か伝えたがっていることにも気が付いた。
“それ”は獲物を受け取ると、触手をしもべのスカートの中に差し入れ、触手同士を絡めあう。
「ひゃあん・・・はあ・・・はあ・・・」
すぐにしもべは頬を染めて息を荒げる。
言い知れない快感に躰が反応しているのだ。
「ああ・・・いい・・・すごくいい・・・ひゃあん・・・」
口元から涎をたらし、腰をガクガクさせて快楽をむさぼっていく。
「はひはひぃ・・・」
膣内で蠢く触手同士が絡み合い、毒液を振りまきながら敏感な肉壁をこすり刺激していくのだ。
「ら・・・らめぇ・・・」
しもべはその場に崩れ落ち、びくびくと体を震わせる。
そして体をピンと反らせて絶頂を迎えるのであった。
[今日は休みだったんですが・・・]の続きを読む
- 2005/09/12(月) 22:23:54|
- 退魔師
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本日めでたく20000ヒットを迎えることができました。
それにしてもカウンター表示できないのかなぁ。
証拠が無いじゃん。
困るよなぁ。
あと、monmon様のサイトMACXE'S様とリンクさせていただきました。
楽しいサイトさんですのでご贔屓にお願いいたします。
さて、SSの続きをどうぞ。
28、
「弘子、大丈夫?」
汀は扉を開ける。
驚いたことにそこには弘子の他にもう一人の女子学生が立っていた。
ショートカットの茶色の髪の少しボーイッシュな感じのする女の子。
彼女は弘子を少しかばうように彼女の前に体を置いている。
「汀さん」
弘子が彼女を脇へ下がらせる。
「無事なようね。彼女は?」
汀は素早く彼女の様子を探ってみた。
だが、校舎内は魔物の結界によるものらしく、魔の気配がそこらじゅうでするために感じ取ることができない。
「あ、紹介しますね。羽田野由紀美ちゃん。私の親友です」
弘子にそう紹介されると、由紀美はちょっと照れくさそうに頭を下げる。
「羽田野由紀美です。よろしくお願いします」
「あ、私は破妖汀。よろしく」
汀は手を差し出す。
一瞬きょとんとした由紀美だったが、にこやかに差し出された手を受け取り握手をする。
汀はこれを狙っていたのだ。
接触することで彼女が魔に取り付かれているかどうかを感じることができる。
感じない? 考えすぎか?
汀は手を離す。
由紀美からは彼女以外の異質な存在を感知することはできなかった。
ふうと息を吐き緊張を解く汀。
その様子を弘子はニコニコと眺めていた。
「由紀美ちゃんも、気が付いたら周りが変だったんでここに隠れていたらしいんです」
「え、ええ」
「そう、それじゃもうしばらく身を隠していてくれるかしら。彼女たちは屋上へ向かったわ。親玉の居場所を吐いてもらわないとね」
汀は背後を振り返る。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。もう少しの辛抱。親玉さえ倒せばこの学校も元通りになるわ」
一部を除いてという言葉を汀は付け加えなかった。
取り付かれたり精気を吸い取られて死んでしまったものたちは元には戻らない。
それはどうしようもないことだった。
「それじゃね。しばらくの辛抱よ」
汀はそう言い残しトイレを出て行く。
弘子はちょっと不安を覚えたが、由紀美の存在がすごく心の支えになっていた。
「由紀美ちゃん、ちょっと隠れているには適当じゃない場所だけど、しばらくここにいようね」
「ええ、しばらくの間ね」
由紀美は笑みを浮かべる。
弘子はその笑みがひどく蠱惑的なものに思われた。
「ゆ、由紀美・・・ちゃん?」
その笑みは以前どこかで見たことがあったような気がする。
弘子はそれがどこで見たのか思い出した。
由紀美が一年生を妖しく誘った時に見せた笑み。
それと同じ笑みを今由紀美は浮かべていた。
「うふふ・・・弘子ちゃん・・・もしかしてわかっちゃった?」
「あ、あああ・・・」
弘子は汀の名を叫ぼうとした。
「み、みぎ・・・」
そこから先は声を上げることができなかった。
由紀美が吹きかけてきた息が弘子の意識を遠くさせてしまったのだ。
「あ・・・」
そのまま床に崩れる弘子。
その姿を由紀美は笑みを浮かべて見下ろしていた。
「うふふ・・・弘子ちゃん、これからとっても素敵な方に会わせてあげる。私がご主人様にお願いしてあげるね。弘子ちゃんにもお力を与えてくださいって」
由紀美の股間から触手がしゅるしゅると現れ、弘子の体を巻き取って持ち上げる。
「うふふ・・・さあ、行きましょ。弘子ちゃん」
由紀美は弘子の体を触手から受け取り抱きかかえると、女子トイレを後にした。
[ありがとうございます]の続きを読む
- 2005/09/10(土) 21:32:07|
- 退魔師
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今晩から明朝にかけて風雨が強くなりそうです。
被害が出ないといいけどなぁ。
雨が降らないのも困りますが、降り過ぎるのも困りますよね。
さて、続きです。
27、
「ゆ、由紀美ちゃん・・・」
「ひ、弘子ちゃん・・・」
目に涙を浮かべて少女は弘子に抱きついてきた。
「怖かった・・・怖かったよ・・・弘子ちゃん」
「由紀美ちゃん・・・一体?」
弘子は驚いた。
いつも一緒にいた弘子にとっての一番の親友がこんなところにいるなんて。
「ぐす・・・ぐす・・・弘子ちゃん・・・」
「お、落ち着いて由紀美ちゃん。大丈夫。大丈夫だから」
いつもは弘子のほうが由紀美に励ましてもらうことが多いのに、いつもと逆になっていることに弘子は苦笑する。
「由紀美ちゃん・・・」
肩を震わせている少女はいつも元気な少女とは思えない。
弘子はその栗色のショートカットの少女をそっと抱きしめた。
「弘子ちゃん・・・そ、そうだ。先生が・・・」
由紀美が顔を上げる。
青い顔色をしてよほど怖かったのだろう。
「うん、わかっている。今退魔師の汀さんが退治してくれているわ」
「退魔師?」
「うん、破妖汀さんて言うの。強い人なの・・・よ・・・」
「弘子ちゃん?」
弘子の声が小さくなる。
「でも、私が邪魔しちゃったの。私がいなければ・・・」
「弘子ちゃん・・・」
「あ、それはそうと由紀美ちゃんは何で?」
弘子はそれが気になった。
どうして彼女はここにいるのだろう。
「わ、私は・・・逃げてきたの」
「逃げて?」
「うん、気が付いたら周りの娘たちはみんな人形みたいになっちゃってて、東倉先生がスカートからグニャグニャしたものを出して・・・」
首を振る由紀美。
思い出したくない光景なのだろう。
その細い肩が震えていた。
「怖くなって・・・気が付いたらここに・・・」
「そっか。でも由紀美ちゃんが無事でよかった」
「うん、私も弘子ちゃんが来てくれてよかった」
そっと弘子の手を握る由紀美。
弘子もその手を握り返す。
ホッとしたものが弘子の胸に広がった。
「うふふ・・・」
笑みを浮かべて汀を見つめている郁海。
突然彼女はくるりと背を向ける。
そのまますたすたと廊下を歩き出す郁海。
恭子はそのすぐあとを追うように郁海に従って歩き出す。
「退魔師さん、屋上で待っているわ」
そう言うと郁海と恭子は廊下の角にある階段を上がって行く。
その様子に汀はあっけに取られた。
張り詰めていたものが一気に失われる。
あの二人の行動は態勢を整えるためか自分たちに有利なところで彼女を迎え撃つつもりなのだろう。
それはわかっているのだが、この瞬間はとにかく戦いをしなくてすむということが彼女の張り詰めていたものを失わせたのだった。
すぐに追うべきかもしれない。
だが、それは罠に飛び込むことになるかもしれないのだ。
ただでさえここは魔物の餌場。
用心に越したことは無い。
だが、彼女たちを放っておいて魔物を探し出したとしても、背後を取られてはたまらない。
結局彼女たちを放っておくことができないならば、屋上へ行くしかないだろう。
「さてと・・・」
汀は後ろを振り返る。
女子トイレに隠れている弘子に声をかけなくてはならない。
汀はトイレに近づいた。
[台風接近中]の続きを読む
- 2005/09/07(水) 21:47:16|
- 退魔師
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