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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

mikoto

このところなかなか妄想を形にできなかった私に業を煮やされましたのか、お世話になっておりますjuntegral様より、投稿作品をいただきました。

タイトルは「mikoto」
少女がじわじわと変化していく姿をご堪能くださいませ。

それではどうぞ。



「ねぇーミコト知ってる、最近この辺で変な宗教が流行ってるらしいよ。」

「宗教?別に宗教くらい個人の自由じゃないの?」

「それがさー、結構ヤバそうなのよ、ウチの友達の友達がさぁ、その宗教にハマっちゃって高校中退したらしいの。」

「友達の友達って(笑)。なんで宗教にハマったくらいで学校やめちゃうのよ?」

「うーん、あたしも詳しくは知らないんだよ、なにせ友達もその子のこと話したがらないし・・・」

「へぇー、でもあたしはそーゆーの興味ないし、今はインターハイに向けて陸上に専念したいしね。」

「あはは、まぁミコトは大丈夫だよね、学力優秀、運動神経抜群のスーパーガールだもんね。」

「おまけに美人。」

「自分で言うなよ。まぁでも、ミコトは女のあたしからみても美人だと思うよ。でも色気ないよねー、その膝まであるスカートまずなんとかしたら?(笑)」

「うっるさいわねー、私は別に男とか興味ないし。」

「まぁ、ミコトは高嶺の花って感じで、釣りあう男もなかなかいないしねー。男もあんたみたいなお堅そうなのみたら逃げちゃうよ(笑)」

「ほっとけー。」

「ふふふ、じゃああたしは、ここで。バイバーイ。」

「バイバイ・・・、ったくぅ。」




「アンケートにご協力いただけませんか。」

 カナと別れ、一人歩いていると若い女性に話しかけられた。

「え?」

「いま学生の意識調査アンケートをしてるんですよ。アンケートに答えてもらった方には粗品もご用意してますよ。」

「は、はぁ・・・」

「ありがとうございます、簡単に終わるアンケートです。あまり悩まず直観的に答えてもらって結構です。」
 
ミコトは若い女性からアンケート用紙が挟まれたクリップボードとボールペンを渡される

(あー、またこの手のアンケートかぁ・・・私ってなんでこういうの断れないんだろ・・・まぁなんかくれるみたいだし、すぐ終わりそうだしいっか・・・どれどれ・・・)

・興味のあること、悩みをもっていることに○をつけてください

 ・家族     ・友達     ・異性     ・趣味   
 
 ・健康     ・美容     ・ファッション ・体型

 ・政治     ・経済     ・学問     ・宗教

(家族、○。友達、○。異性・・・そりゃ興味なくはないわよ・・・私だってピチピチの17歳だし・・・、○。でも陸上の部活で忙しいし・・・、趣味○。まぁこんなもんか。)

 結局ミコトが○をつけたのは最初の4つだけだった。

「終わりました。」

「ありがとう・・・へぇ・・・やっぱりあなたくらいの年頃の子はみんな異性には興味あるのね・・・でもファッションや美容には興味はないのね・・・なるほど。」

「は、はぁ・・・」

(何この人失礼すぎない?・・・、せっかく答えてあげたのに・・・やっぱ立ち止まらなきゃ良かった・・・それに・・・)

 ミコトは若い女性の全身を、舐めるように見る。

(すごい厚化粧・・・、シャツも胸がはだけてるし、スカートもすごく短いし、すごく香水臭い・・・全身から男大好きアピールがでるじゃない・・・私はあなた程男の子に興味ないし、今はインターハイに向けて陸上に専念したいし、あなたみたいに娼婦みたいな格好で、一日中男のこと考えてる暇はないの!)

「今、異性にモテるためのコツをレクチャーするセミナーをやってるんですけど、よかったら参加してみませんか?あなたにピッタリだと思いますよ?」

(この後に及んでまだこんなことを・・・私は今日はもう部活で疲れてるから休みたいのに・・・)

「結構です・・・それじゃあ。」

 少し怒った口調で立ち去ろうとするミコト

「あ、待って、まだ粗品が・・・」

 女性がミコトの腕をつかむ

「粗品は結構です」

 ミコトが振り返る

「そんなこと言わずに、ねっ」

「プシュッ!」

「あ・・・」
 
 さっきまで怒っていたミコトの顔が、みるみる弛緩していく。

「ふふ・・・、気持ちいいでしょ?どんな子でも一発で素直になれる素敵な香薬よ・・・」

 女性の前でだらしない顔をして立ちすくむミコト

「一度だけでいいからセミナーに参加してくれない?いいでしょ?嫌だったら2回目からは来なくていいから、ねっ、お願い」

(そうだ、嫌なら2回目からいかなきゃ良いだけだし、それに、こんなに頼んでるのを無碍に断るのも悪いよね・・・)

「はい・・・わかりました・・・」

「ふふっ、そうそう、女の子は素直が一番よ。」





「こっちよ。」

「はい・・・」

(ガールズセンター・・・?ここでセミナーが行われているのね・・・)

「まずはこの部屋でこのセミナーについての説明があるから、退屈かもしれないけどすぐ終わるから安心して。」

「はい。」

「じゃあ、もうすこしここでまっててね。」

 そういって若い女性は部屋を去って行った。

「一体何が始まるのかしら・・・、ここにきてる女の人たちも私と同じでセミナーに誘われた人みたいね」
 教室には4人掛けの机が縦3横3の9個並べられていて、高校生から大学生くらいの若い女性たちが一つの部屋に集められていた。どの女性も美人だが、おとなしめで地味な女性ばかりだった。

(30人くらいかな?みんな結構美人だなー・・・)

「ガチャッ」
 
 ドアを開け一人の女性が入ってくる。

(ま、またすごく濃い化粧ね・・・、やっぱりここの人達ってかなりヤバイ集団なんじゃ・・・、さっきはボーっとしちゃってついてきちゃたけど、カナも気になること言ってたし、この講義が終わったらすぐに帰らないと・・・)

「みなさん、はじめまして。わたくしはこの施設のスタッフの宮村まどかといいます。それではこの施設で行われているセミナーについてこれから私が説明します。まずこのセミナーで私たちが教えることは、男性にモテるためのコツです。」

(か・・・帰りたい・・・)

「男性にモテなくて悩んでいる女性は多いと思います。それは勘違いをしている方が多いからだと私は思うのです。これからセミナーを始めるにあたってあなた方に一番大事なことを言っておきます。」

「それは、『今時、おしとやかな女性はもてない』ということです。」

 教室全体がざわつく。

「もちろんおしとやかで、貞操観念が強く、知的な女性が好きな男性もたくさんいますが、そういう女性は、高嶺の花という印象を与えやすく、しかもそういうおとなしいタイプの女性を好きな男性というのは、容姿や性格、趣向に問題のある方が多いのです。」

 教室中の女性達がウンウンと頷く。

(たしかに、いつも教室の隅っこで数人で集まって2次元最高とかいってる男子はこういう女の子が好きそうよね・・・)

 ミコトも思わずうなづいてしまう。

「努力しておしとやかな女性を演じても、結局気持ち悪い男にしか好かれないのは馬鹿らしいでしょう」

 ミコトも含め、女性達が頷く。

「このタイプの女性は、まだ男性にモテるという点で救いがありますが・・・、えーとそこのあなた、名前は?」

(え、わたし?)

「み、ミコトです。」

「ミコトさん、あなたのような『おしとやか』というより、男勝りで、色気のない、サバサバしたタイプの女性は、残念ながらどの層の男性にも需要がありません。」

(ガーン・・・!、キッパリ言われちゃったよ・・・、まぁ、わかってはいたけど・・・、でも、じゃあどうすればいいの・・・)

 マドカの言葉を素直に受け止め、悲しそうな顔をするミコト。施設に来る前吸いこんだ薬の効果がまだ少し残っているのか、あるいは教室全体の雰囲気に流されてか、彼女の話術に翻弄されてか、おそらくはその全てであろう。ミコトはいつの間にかこの怪しい組織の術中に嵌ってしまっていた。

「あなたも男にちやほやされたいでしょ?」

「はい・・・ちやほやされたいです。」

「あなたも普段は興味ないフリをしてるけど、本当は男が大好きなんでしょ?」

 ミコトをじっとみつめながらマドカが言う。

(あぁ・・・そうなのかもしれない。私は本当は男の人が大好きなんだわ。)

「はい・・・男が大好きです。」

「でも残念だったわね、あなた今のままじゃ、ちやほやどころか、相手にもされないわ」」

(そんな・・・)

「じゃ、じゃあ、私はどうすればいいんですか?」

 マドカは洗脳のプロで、相手の女性の思考を口先だけで意のままに操ることができた。

「安心しなさい、あなたは幸運よ、今日セミナーにきて本当に良かった。これから積極的にセミナーに参加すれば大丈夫よ。あなたには期待してるわ。がんばってね。」

(あぁ、このセミナーに参加して本当に良かった・・・、マドカさんも私に期待してくれてる・・・、頑張って積極的にセミナーに参加しなきゃ・・・)

「ここにいるみなさんも、私の言う通り従えば全て上手くいくわ。あなた達は本当に運が良いわ。」

 暗い顔をしていた女性達の表情が、パァーっと明るくなる。

「さぁみなさん、わたしとここにきたみなさんとの出会いに感謝し、みんなで拍手しましょう」

「パチパチパチパチ・・・」

 教室中に盛大な拍手が鳴り響く。教室中の女性は、すでにマドカの言いなりになってしまっていた。もちろんミコトもその一人である。

(あぁ、みんなで拍手するのって何故か気持ちいいわぁ、みんなと一緒に頑張らなきゃ・・・)







「パチパチ・・・」

「ん・・・」

 ミコトをセミナーに勧誘した女性スタッフが、ドアの窓から中の様子を覗く。

(あらあら、ミコトちゃん、あんな嬉しそうに拍手しちゃって・・・すっかり堕ちちゃったか。正直、彼女はマドカさんでも扱うのは難しいと思ったんだけど・・・。まぁマドカさんは心の隙を突くのが上手だからコロっと操られちゃったんだろうね。)






「・・・というわけで、あなた達みたいなタイプの女性には、良い男は寄ってこないというのはわかったわね。つまり全く逆のタイプの女性になれば良いのよ。そう、ケバくて派手で、色気のある女性にね。」

 ミコトはマドカの言葉に聞き入っていた。

「そういうわけでこれから実習を行うわ、そうね、ちょうど30人いるし10人ずつ3グループを作って別室に移動してもらいましょうか。じゃあそこの10人は私についてきて、そこの10人はあちらの女性に、そこの10人はあちらの女性に、それぞれついて行ってね。」

 ミコトのグループはマドカが担当することになり、ほかの2グループはこのセミナーの卒業生が担当することになった。





「では、この部屋に入って円卓に座って少し待っていてください。」

 マドカがそう言うと、ミコトのグループの女性達が部屋に入っていく。

「あ、ミコトさんは私に着いてきてちょうだい。」

「はい。」

(え、なんで私だけ?)

 疑問に思いながらもマドカについていくミコト。

「実は、あなたには、このグループのリーダーになってもらいたいの。」

 歩きながらミコトに話しかけるマドカ。

「リーダー・・・ですか?」

「ええ、リーダーと言ってもやることは簡単な指揮をとったり、みんなのお手本となるようなことをしてもらうだけよ。あなたにはすごく期待しているから、あなたにして欲しいの。どう?やってくれるかしら?」

(さっきの言葉はお世辞じゃなかったんだ。本当にマドカさんは私に期待してくれてる・・・。マドカさんはこの施設の中でも一番偉い人だし・・・そんなすごい人が私にして欲しいだなんて・・・嬉しい!)

「や、やります!私がんばります!」

 マドカの口車にまんまと乗せられ、快諾してしまうミコト。

「あなたならそう言ってくれると思ったわ。頑張ってね。それじゃあ、まずあなたはみんなのお手本になってもらうわ。」

 そういって立ち止まりドアノブに手をかける。

「さぁ、はいって」

(この部屋って・・・)

「あなたにはみんなのお手本として、まず化粧をしてもらうわ。」

「は、はい・・・」

「自分でやったことはある?」

「ないです・・・一度も・・・」

ミコトはおしゃれには無縁だった。中学から陸上を始めて、それから陸上一筋で生きてきたからだ。高校にもなると周りの女の子も化粧をしだしたりスカートを短くしたし始めたが、ミコトはそんな男に媚びを売るような格好は嫌っていた。

「じゃあ、今回はわたしが特別にしてあげるわ」






「ポンポン、パフパフ、スッスッ」

「ベースはこんなもんね。次はアイシャドーよ。」

 ミコトはそっと紫のアイシャドーのひかれたマドカの顔を覗く

(すごい濃いアイシャドー・・・わたし初めてだし、いくらなんでも、あんなに濃くは塗らないよね・・・)

「目を閉じて」

 マドカは、そっと目をとじたミコトに青色のアイシャドーをべっとりとしつこく瞼から眉毛の下にかけて塗っていく。そして仕上げに濃い青紫のアイシャドーを目の際に目尻から目頭にかけて塗っていく。

「よし、できた。」

 その後マスカラをつけ、チークをつけ、眉毛を描き、最後に青紫色の口紅をつけた。

「ミコトちゃん、できたわ、ホラ。」

 そういってミコトに鏡を差し出すマドカ

(これが・・・あたし・・・?)

「ふふふ・・・ミコトちゃんの顔、すごくいやらしいわ。でもとっても似合ってるわよ・・・」

「そんな・・・わたしはこんな子じゃ・・・」

「何言ってるの、今のあなたすごくかわいいわよ、これなら男の子もあなたのことを意識してくれるわ。」

「でも・・・」

「ふふ、まだ自信が持てないみたいね。まぁ、いいわ。さっきの部屋に戻りましょう。みんなが待ってるわ。」

(どうしよう・・・、でもマドカさんは私に期待してくれてるし、私はみんなのリーダーだし、お手本にならないといけないのに・・・)





「みんな、待たせたわね。ミコトちゃんがこのグループを代表して化粧をしてくれたの。みんなの感想を聞かせてあげて。」

 もじもじと部屋にはいるミコト。

「わー・・・素敵ぃ・・・」

「かわいい・・・」

「いいなぁ・・・」

突然、円卓に座って待っていた女性達から感嘆の声が上がる。

「え・・・」

ミコトもこんな反応を予想していなかったのか、驚いてしまう

それもそのはず、普通の人間ならこの異常とも言える厚化粧をみて不快に思うことはあっても、憧れたり、かわいいと思ったりすることはない。

実は、この部屋にいる女性は、ミコトを含む4人を除く全てが、この組織の息のかかったサクラなのだ。しかし、ミコトがそんなことに気づくはずもなく、彼女達の言葉を真に受けてしまう。やがてサクラでない女性達も雰囲気に流され、次々にミコトを褒め始めた。

(嘘・・・みんな私に憧れてるわ・・・そんなに素敵かしら・・・。)

壁にかかっているスタンドミラーに映る自分をみつめるミコト

「かわいー・・・」

「ミコトちゃん、似合ってるよ!」

「うらやましい・・・」 

 彼女達の声を聞いていると、どうみてもケバケバしくて妖艶なこの厚化粧が、ミコトにとってとても素敵なものに思えてきた。

(あぁ・・・でも、良く見るとこの化粧、結構いやらしくて素敵だわ・・・。ふふ・・・やっぱり女は、すこし娼婦なくらいが素敵なのね。なんでこんな簡単ことに気付かなかったんだろ。馬鹿みたい。このセミナー受けて本当に良かったわ。ふふ、ケバい化粧大好き・・・)

 いつのまにかミコトは、スタンドミラーに映る自分をうっとりと見つめていた。

(さっきのファンデーションに入っていた催眠暗示パウダーのせいで、厚化粧が大好きになっちゃったみたいね。馬鹿な娘。フフ・・・)





 その後、ミコトは毎日部活が終わるとセミナーに通い、どんどん嵌り込んでいった。

 通い始めてしばらくして、セミナーを行っているのが、ケバビッチ教という教団であることをマドカから告げられた。しかし、宗教だったからと言ってミコトは嫌な顔もせず進んで毎日通い、もっと教団のために時間を使いたいと思い、部活もやめてしまった。

「ふふ、今日も、お化粧ばっちりだわ。いってきまーす。」

 ミコトは薄めの化粧を施し家を出る。マドカに、学校にはあまり濃い化粧で行かないように、と言われていたからだ。制服のシャツは、わざと一つ小さいサイズをきて、第3ボタンまではずし、胸を強調し、スカートは膝上25cmと、歩いているだけでチラチラ下着が見えるほど短い。

「毎日毎日学校があるから大変ねぇ・・・、あんなくだらないところ行っても行かなくても同じなのにね。車には気をつけるのよ。」

 ミコトの母、ユイがタバコを燻らせながらミコトを見送る。

 ミコトの母、ユイも、最初娘が化粧をしているのを見た時はすぐにやめるように説得していた。厳しい母だったので、どうにかやめさせようと、ミコトが毎日通っていると言うガールズセンターに出向いたが、あっという間にマドカに洗脳され、いまでは、ミコトが部屋で化粧をしているのを見ると『今日も頑張ってるわね。』と勉強を頑張る娘を励ますかの様に、声をかけるようになった。また、ユイ自身も、吸わなかったタバコを吸うようになり、夫への態度も冷たくなった。さらに、昼間は家事をさぼり、厚化粧を施して近所のパチンコ屋に行き、タバコを吸いながらスロットをうったりと、家事も料理もしつけも良く出来た母親の面影は消えていた。しかし、そんなユイでも、ミコトのことは大好きなのは変わらないようだ。




 登校途中、電車の中や街でサラリーマンや、男子学生がミコトの姿をチラチラ横目で見る。

(ふふ、みんな私をみてるわ。男ほど単純な生き物はいないわね。でも、見られるのって気持ちいいわぁ・・・)

『娼婦のようないやらしい格好で男に媚びへつらうことが、女にとっての幸せ』という教団の教えを、マドカから教え込まれていたミコトにとって、性的な目で見られることが嬉しくて仕方なかった。




「ミコトちゃんって変わったよね・・・」

「うん、前はもっと男勝りな感じで、かっこよかったのに・・・」

 以前まで仲良くしていた友達も、変わり果てたミコトと距離を置くようになった。

「あ、メイちゃん、マコちゃんおはよー。」

「お、おはよう・・・ミコトちゃん。」

「おはよー・・・」

「あれ、どうしたの?元気ないね。何か悩みでもあるの?それだったら、こんど私が言ってる自己啓発セミナーに参加してみない?」

「ミコト!、あんたそうやって友達まで変な宗教に誘うのやめなよ!メイ、マコ。あたしと、ミコト二人にさせて。」

「う、うん。」

 二人はその場を後にする。

「あ、カナじゃん。久しぶりー。カナも一緒にくる?」

 相変わらずヘラヘラとしているミコト。

「行かないし、あんたも行かせない。最近様子がおかしいと思ってたけど親友まで巻き込もうなんて異常よ!やっぱり変な宗教にハマったのね。さっさと宗教なんてやめなよ。」

「なんでカナにそんなこといわれなきゃだめなの?なにしようとあたしの勝手でしょ。」

 そういって去っていくミコト。

「待ちなさいよ!ミコト・・・はやく目を覚まして・・・」





 その後、ミコトは、セミナー料、教団が売っている法外な値段の化粧品、お布施、さらにはいままで着たこともないような派手な服や、バッグを買うためにホステスや風俗嬢として夜は働くようになり、客の男や、店の経営者、一緒に働いている女友達との付き合いから、酒やタバコも嗜むようになった。夜の仕事が終わっても、悪友と遊んでいると朝帰りになってしまい、学校にも行かなくなっていた。
 
 実は、ケバビッチ教団の真の目的は、世界平和などではなく、若い女性を洗脳し信者をつくり、主に化粧品や、派手なアクセサリーを高値で信者に売りつけて、儲けることである。それ故ケバビッチ教に嵌ると、ほとんどの信者が化粧品やアクセサリーを買うためにお金を作るために、水商売に身を落としてしまい学校を辞めてしまう。また、信者が教団以外から化粧品や、アクセサリーを購入することはない。『教団の売っている化粧品やアクセサリーが、もっとも女を魅力的にする』と教え込まれているからだ。そう、ケバビッチ教団とは典型的な破壊的カルトなのだ。




 

「ふふ、流石ミコトちゃん。私が見込んだだけあって、素晴らしい女になったわね。」

 マドカは、つい最近まで優等生だったミコトが娼婦のようないやらしい格好をしているのを見て、満足していた。紫のアイシャドーに青紫色の口紅、髪は金髪に染め、胸やお腹の露出した服を着ている。さらに、右胸には蝶のタトゥーが彫られ、おへそにはピアスが光っている。すっかり教団員としての風格も出てきて、いまではセミナーの既卒生となり、マドカの右腕として、勧誘活動などに励んでいた。

「すべてマドカ様のおかげです、あのセミナーを受けずに、今でも陸上なんて汗臭いことをやっていたらと思うとぞっとしますわ。あのころの私は本当に馬鹿でしたわ。ただ走ったり、跳ぶだけの競技の何が面白いのかしら・・・ふふふ・・・」

「ふふ・・・、そう言ってもらえると嬉しいわ。」

 そういってマドカは机の上にあるタバコを一本取り火をつけた。

「マドカ様、ワタシも吸ってもいいですか?」

「あら、あなたもタバコを吸うの?全然構わないわよ。はい」

 マドカは自分のタバコを一本ミコトに差し出す。

「あ、私、自分の持ってますから、大丈夫です」

「へぇ、普段から吸ってるのね。お家でも吸うの?」

「はい。自分の部屋でいつも吸ってます。灰皿もインテリアとして結構部屋に合うんですよ。机に一つとベッドの枕元に一つ。すぐ吸いたくなるから取りに行かなくて済むように二つ用意してるんです。」

 笑いながらタバコに火をつけるミコト

(まだ17歳なのに、そんな嬉しそうにタバコの話なんかしちゃって。ミコトちゃんって、本当にかわいいわぁ)

「お母さんもマドカ様に会ってからタバコを吸うようになったんですよ。でも、毎日リビングでスパスパ吸ってるから、お父さんが仕事終わって帰ってくると、煙たそうな嫌そうな顔をして、タバコをリビングで吸うのはやめてくれ、って言うんですよ。どこで何をしようが、お母さんの自由なのに!マドカさんもそう思いません?」

「そうね、どこで吸ってもお母さんの自由ね。」

「あんまりムカついたから、次の日、お父さんがいないうちにお母さんと二人で、お父さんの部屋でタバコを吸って、タバコ臭くしておきました。その日からお父さんはタバコに関して何も言わなくなりましたわ。お母さんも、"あいつはほんとに昔からヘタレな男だったわ、なんであんな男と結婚したんだろう"、って、笑っちゃいますよね、ふぅ・・・」

 ケラケラと笑いながらタバコを吸うミコト

「ウフフ・・・、笑っちゃうわね。」

 ミコトの他愛のない話もしっかり聞いてやるマドカ。マドカは人の心を操るのが上手なだけあって、聞き上手でもあったので、ミコトはマドカをお姉さんのように慕っていた。

「ふぅー、タバコおいしい・・・、マドカ様と一緒に吸えていつもよりおいしいですわ。」

「私もよ、ミコトちゃん・・・。」






おわり


まさに私の大好きなエロケバ化。
タバコも吸うようになって最高です。
お母さんも堕ちちゃっているのがいいですね。
juntegral様、ありがとうございました。
大変楽しませていただきましたです。

それではまた。
  1. 2010/05/15(土) 21:34:50|
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女神聖騎士 セイントマイ(闇月様作)

皆様は闇月様を覚えていらっしゃいますでしょうか?
かつて「闇月の創作メモ」様というブログを公開されておりましたが、残念なことに閉鎖されてしまいました。
いくつもの悪堕ちSSを公開されていたので、楽しまれた方も多かったのではないでしょうか。

今回、その闇月様より投稿SSをいただきました。
タイトルは、「女神聖騎士 セイントマイ」です。
以前「闇月の創作メモ」様で公開されていたものの改訂版ということです。

こうしてまた作品をいただけるのはうれしいことですね。
どうか皆様もお楽しみくださいませ。
それではどうぞ。


【女神聖騎士 セイントマイ】



「おのれぇ、セイントマイめ、私の最終奥義で消えるがよいっ!」

首から足先までの黒い全身タイツに黒いマントの青年が、私たちに強力な攻撃を仕掛けてくる。

「そうはいかない。私たちは絶対に負けないんだから! ミュウモ、力を貸してっ!」
「了解だモ! 光の力、女神様の加護を受け取るモ、セイントマイ!」

ミュウモから放たれた七色の光が、私の持つ『セイント・スティック』に吸い込まれ、巨大な光の玉を形成する。

「覚悟しなさいっ、ズラ卿…いっけぇ~、セイント・プリズムシュート!」
「何度言えばわかるっ!? 私はズラではない、ザラだ…って、ぐわぁ~!」

私の必殺技を受け、ズラ、じゃなかった、ザラ卿の体は光に包まれ、消えていった。

「やったぁ~!」
「やったね、マイちゃん。これでダークネス三幹部はあと一人だモ」
私たちは手を取り合って飛び上がり、全身で喜びを表現した。


私の名前は神代マイ。ごく普通の中学2年生…だった、この前までは。

事の始まりは学校からの帰り道。“ぬいぐるみの熊とリスを足して2で割ったような生物”が私の前にとつぜん現れた。
この生物は、光の女神ルナマリアの精霊ミュウモと名乗り、私に『女神聖騎士』になって、人間界に潜む闇の王国『ダークネス』の一団と戦ってほしいと言ってきたのだ。
その時の私はパニック寸前で、その場から逃げ出してしまった。

その夜、私の夢の中に女神ルナマリアが現れて、「マイちゃん、人間界で『女神聖騎士』になれるのは貴女しかいないんです…」とか言われちゃって。
結局、私は『女神聖騎士』の変身アイテムであるブローチを受け取ってしまったのだ。

こんなの、アニメやマンガの話だと思ってた。
でも今は、『ダークネス』が人間界で悪いことをする前にミュウモが察知して、私が『女神聖騎士 セイントマイ』に変身してやっつけている。

『ダークネス』には闇王キラの下に3人の幹部がいて、最初にアスハ卿を、そして今ザラ卿を倒し、あとはもう一人と闇王キラを残すのみとなっていた。
早く残りの二人をやっつけたいんだけど、ザラ卿でこれだけ苦労したんだからそう簡単にはいかないだろうなぁ…

でも、ミュウモと一緒ならきっと大丈夫。私たちは絶対に負けないんだから!


「…マイちゃん、あぶないモ!」
突然、ミュウモが叫んで私を突き飛ばす。

「ミュウモ、何すんのよ…って、ミュウモっ!」
私がミュウモのいる方向を見た時、ミュウモは黒い霧のようなものに包まれていた。
私はミュウモを助けようと黒い霧に手を伸ばしたが届かず、黒い霧はミュウモと共にあっという間にその場から消え去ってしまった。

「ミュウモ、ミュウモっ!」
後には、私の空しい叫び声が響くだけだった。


 ★

「…ここはどこなんだモ?」

マイちゃんをかばい、黒い霧に包まれたわたし。
気がつくと、薄暗い空間に一人だった。

ここが、人間界でも、ましてやルナマリア様のいる光の世界でもないことはわかる。
もしかして、ここは…

「目覚めたかい? ルナマリアの精霊さん」
「お、お前は…!?」

わたしの前に現れたのは、かつて『ダークネス』を率いて光の世界に攻め込んできた少年。
ところどころに金色の刺繍が施された漆黒の衣装と身に纏うオーラの強さが少年が闇王キラであることを物語っていた。

「闇王キラ…ミュウモをどうするつもりだモ?」
「大丈夫、手荒なことはしないよ。本当はセイントマイをここに呼び寄せるつもりで放った『召還の黒霧』にキミが捕らわれたのでね…どうしようか考えているところだよ」

そう言って微笑む闇王キラ。
どうやら逃げ場はないようだし、うかつなこともできそうにない。

「ところでミュウモ、キミは何のために人間界で僕らと戦っているの?」
「ルナマリア様の命令に決まってるモ」
わたしは当たり前のことを聞くなと言わんばかりに即答した。

「確かに…僕たちは闇の一族。光の一族とは敵同士かもしれない。でも、人間界にとって僕たちは敵なのかな?」
「…何が言いたいんだモ?」
「人間界でキミと一緒に僕たちと戦っているのは光の一族じゃなくて、人間の女の子だろ? 彼女は普通の生活を犠牲にして、ルナマリアやキミの命じるまま戦っている。彼女はそれをどう思ってるんだろうね?」

キラの言葉に、わたしは返す言葉が見つからなかった。

キラの言っていることは正しい。
確かにマイちゃんは人間界の、光の一族や闇の一族とは全く関係のない女の子だ。
そんなマイちゃんを、ルナマリア様の命令とはいえ、自分たちの戦いに巻き込んでしまったのだ。

そういえば、『ダークネス』は人間界に潜んではいるが、人間たちに害を及ぼすようなことは今のところ全くしていない。
それなのに、自分たちは…


わたしは数日前のマイちゃんとの会話を思い出していた。

「マイちゃん、セイントマイとして戦うのは大変じゃないモ?」
「正直言うとね、大変だよ。ゲームと違ってやられると痛いし…でもね、ミュウモは私の大切な友達だから、友達のために頑張ろうって思ってるの。だから大丈夫だよ」
「マイちゃん…」
「ミュウモ、私たち、友達だよね?」
「…うん。友達だモ。マイちゃんはミュウモの大切な友達だモ」


(マイちゃんは、ミュウモは大切な友達だから、ミュウモのために戦ってくれている。それなのに、ミュウモは…)

「セイントマイは、キミにとってどんな存在なんだい?」
「セイントマイは…マイちゃんは、ミュウモの大切な友達だモ」
「その友達に、キミはルナマリアの命令だからという理由だけで戦わせているのかい?」
「そ、それは…」

キラの言葉にわたしはとまどう。
この時、先程からわたしの周囲に漂っている黒い霧が、少しずつ私の体に吸い込まれていることに気づいていなかった。

(わからないモ。ミュウモ、どうしていいのかわからないモ。何を信じていいのかわからないモ)

わたしの中で、何かが少しずつ変わろうとしていた。


「ミュウモ、キミは本当は、セイントマイをこれ以上僕たちとの戦いに巻き込みたくないんだろう?」

今まさに自分の中に浮かんだ考えをキラに指摘され、わたしは驚く。

「キラ、貴方はミュウモを…わたしをどうするつもりなんだモ?」
キラに対する口調が最初と微妙ながら変化していることに、わたしは気づいていなかった。
それが、あの黒い霧の影響だということも。

「それはキミの答え次第だよ。さぁミュウモ、どうしたい?」

「わたしは…マイちゃんをこれ以上『ダークネス』と戦わせたくない…モ。たとえそれが、ルナマリアの命令に反することでも…」

「よく決心してくれたね。僕がキミを光の女神の呪縛から開放してあげよう」
キラはそう言うと、目の前に来てわたしの体に手をかざした。

わたしはそれに抵抗することなく、キラの手から発せられるオーラを素直に受け入れていた。

(なんだろう…すごく、心地いい)
黒い霧は、いつの頃からかわたしの中から噴き出していた。
わたしの中にあった“何か”と一緒に。


 ☆

ミュウモが私の前からいなくなって3日が過ぎた。
私は時間の許す限り心当たりを探してみたけど、ミュウモはどこにもいなかった。

「お嬢さん。何かお困りのようだね」
ミュウモと最後に一緒だった公園で、私はベンチに座っていた初老の紳士に声をかけられた。

「大切な友達…じゃなかった、ぬいぐるみを探しているんです」
「ほほう…ぬいぐるみではなくて、ミュウモという光の精霊じゃろ?『女神聖騎士』のお嬢さん」

(この人、私が『女神聖騎士』だって知ってるの!? まさか、この人は…)
私はすぐに動けるよう身構える。

「自己紹介がまだじゃったな。わしはダークネス三幹部の一人、クライン卿じゃ」
「あなたが…三幹部最後の一人なのね」
「いかにも。騎士道精神に則り、正々堂々勝負をしたい。お相手願えるかな?」

老紳士が立ち上がると、その姿が黒い闇に包まれ、ザラ卿と同じ衣装に変わる。

私にセイントマイに変身するよう促しているのね。こっちには好都合だわ。
でも、ミュウモがいなくて、私は戦えるんだろうか?

「…そんなこといってられないわね。いくわよ。ホーリー・メタモルフォーゼ!」
私の変身の呪文に胸のブローチの『聖水晶』が反応し、まばゆい光を発する。

光の中で、学校指定の制服が真っ白なワンピースに変わり、スカート部分がフリル状の紅いレースに彩られる。
ちょっと自慢の細長い足はレースと同じ紅いロングブーツに包まれ、茶色がかった黒髪は明るい金髪に変わり、紅いリボンで束ねられる。
こうして私は『神代マイ』から、『女神聖騎士 セイントマイ』に身も心も変わっていくのだ。

「光の女神の名のもとに、闇を消し去りましょう。女神聖騎士セイントマイ、ここに参上!」
変身を終えた私はいつものように名乗りをあげ、『セイント・スティック』を手にクライン卿と対峙した。


(どうしよう…このままじゃやられちゃう)

今までの敵には効果のあった攻撃技が、クライン卿には簡単に返されてしまう。
私の服はボロボロ、あちこちにできた傷が痛む。
さすが最後の幹部。今までの敵とはレベルが違うわ。

胸元のブローチの『聖水晶』にも細かなひびが入っている。
ミュウモがいない今、必殺技『セイント・プリズムシュート』は使えない。
これってもしかして…最大のピンチ!?


「どうしたのかね? 『女神様の加護』とやらもたいしたことないようじゃな…」
「クッ…私は…負けるわけにはいかないのよっ!」
「セイントマイ、君ほどの力の持ち主なら、我々の仲間になれば心強いのだがのぅ」
「な…何を言ってるの? 冗談じゃないわ」
「それは残念じゃ…そろそろとどめといこうかのぅ」

クライン卿の剣が私に振り下ろされる。

もうダメ…と思ったその時。
一筋の光がに私たちの間に入り、私をクライン卿から引き離した。

「マイちゃん、大丈夫だモ?」

光から発せられた声に、私は驚く。
光の正体、それはなんとミュウモだったのだ。

「ミュウモ…ほんとにミュウモなの!?」
「マイちゃん、心配かけてごめんモ。ミュウモ、このとおり元気だモ」
「よかった…でもミュウモ、どうしよう? 今の私じゃクライン卿に勝てないよ!」
「マイちゃん、安心するモ。ミュウモ、新しい力を見つけてきたモ」
「ほんと!?」

(ミュウモ、ありがとう。これでまた戦える、女神様の聖騎士として…)

私はミュウモから渡されたブローチを胸につけ、中央部に位置する水晶に触れる。
水晶から私を変える新たな呪文と力の使い方といった様々な情報が流れ込んでくる。

でも、私の中に流れ込んできたのは、『女神様の加護』ではなかった。

「ミュウモ、これってどういうこ…」
私がミュウモのいた方向を見ると、そこには信じられない光景があった。

ミュウモは、クライン卿の隣で、今まで見たことがない邪な笑みを浮かべていたのだ。

「ミュウモ、なんで…そいつの隣にいるの…?」
私の声はショックで震えていて、それ以上言葉を続けることができなかった。

「ミュウモ、そろそろ『今の姿』に戻ってはどうじゃ?」
「クライン卿、そうするモ。闇王キラ様の手で生まれ変わったミュウモをマイちゃんに見てもらうモ」

ミュウモはそう言うと、瞳を閉じる。
再び開かれた瞳は真紅に輝いていた。
黒い霧がミュウモを包み込み、その中でミュウモの姿が変わっていく。
霧が晴れた時、そこにいたのは黒いミニワンピースに黒のショートブーツ、肩まで伸びた紫の髪に金のカチューシャをつけた、10歳位の人間の少女だった。

「これが今のわたし。邪精霊ミュウモだよ。よろしくね、マイちゃん」
ミュウモと名乗った少女は容貌に似つかわしくない妖艶な笑みを浮かべた。

「『邪精霊』って…ミュウモ、どうしちゃったのよ? ルナマリア様に仕える精霊じゃなかったの?」

「ルナマリアですって!? わたしの大切なマイちゃんに大変な思いをさせてるヤツなんてもうどうでもいいわ」
はき捨てるように答えるミュウモ。

「わたしはね、マイちゃんにこれ以上戦って傷ついてほしくなかったの。友達が傷つく姿を見てるのは辛かったの。そしたらね、キラ様がわたしをこの姿に生まれ変わらせてくれたの。そして、マイちゃんを助けるための力をくれたんだよ」
「ま、まさかこのブローチは…」
「そう、マイちゃんにあげたのは『邪水晶』のブローチ。マイちゃんを光の女神の呪縛から解き放ってくれる、すばらしいアイテムよ」

私は恐怖で震えていた。
私の頭の中に新たな呪文が浮かび上がり、早く唱えるように促す。

(だめ…この呪文を唱えたら、私は『セイントマイ』ではなくなってしまう)

「女神様…助けてください。ルナマリア様ぁ!」
私の叫びに女神様は答えてはくれない。
どうして? 私の心が絶望に染まっていく。
それに呼応するかのように、『邪水晶』が漆黒に染まり、闇の力が強くなっていく。

「マイちゃん、貴女が苦しんでいるのに、ルナマリアは何もしてくれない。わかったでしょ? 光の一族ではなく、ただの人間の貴女はあいつの手駒の一つでしかなかったのよ。だから、闇を受け入れて…光の呪縛を破りましょう」

私が闇の力に抵抗している間に近づいてきたミュウモ。
私の耳元に顔を寄せると、そっと、優しく囁く。

「マイちゃん、わたしたち、友達だよね?」

ミュウモのその言葉が私の心の迷いを打ち払う。
そうよ、ミュウモは私の大切な友達。
友達と戦うなんてできない。だから私は…

「新たな力を我に! ダーク…メタモルフォーゼ!」
私は、『邪水晶』が教えてくれた新たな呪文を唱えた。




「マイちゃん、見て。新たな『女神聖騎士』が現れたわ」
「ほんとだ。なによ、ルナマリアのヤツ、『人間界で聖騎士なれるのは貴女しかいないんです』とか言ってたくせに…結局いいように使われていたのね」

ビルの屋上から、眼下で繰り広げられている戦いを見物している私とミュウモ。
かつての私と同じ衣装を身に纏い、『女神聖騎士 セイントアイ』と名乗った私と同い年くらいの少女が『ダークネス』の一般兵を相手に戦っている。

「どうするの? そこそこ強そうだよ」
「そんなの関係ないわ。『ダークネス』を、キラ様を滅ぼそうとするものは全て私たちの敵でしょ」
私の言葉に「そうね」と肯くミュウモ。

雲間から現れた月が、私たちを照らす。
私が身に纏うのは、スカート部分がフリル状の蒼いレースに彩られた漆黒のワンピースに、レースと同じ色のロングブーツ。
闇王キラ様が美しいと言ってくださった漆黒の髪は蒼いリボンで束ねられていた。

今の私は、『ダークネス』の闇騎士 ダークマイ。
クライン卿と共に闇王キラ様に仕える、ダークネスの女幹部だ。

「彼女もキラ様の力を借りて光の女神の呪縛から解放するの?」
「いいえ。それは私たちだけでじゅうぶんよ」

私にはキラ様と、親友のミュウモがいればいいの。あんな女、『ダークネス』にはいらないわ。

「彼女はね…私がルナマリアの呪縛から解き放ってあげる…彼女の死をもってね」

うふふ、その日が待ち遠しいわ。
だから、もっと強くなってから戦いましょうね、新たなる女神聖騎士さん。


(終)
  1. 2010/04/06(火) 21:37:21|
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ジャスティスハンター壊滅(2)

mg_max様よりいただきました「ジャスティスハンター壊滅」の後半です。
とても素敵な作品だと思いますので、皆様もお楽しみいただけると思います。

それではお楽しみくださいませ。



久しぶりに姿を現した美獣を撃退した五月は、未だかつてない激しい欲情に襲われ、任務を終えると体調不良を理由に基地には戻らず自宅のマンションに戻って、呼び出した実里が来るまでに数十回の絶頂を迎えていた。
「五月さん、ずいぶん苦しそうですね。 大丈夫ですか?」
「ダ…ダメ… もう…これだけじゃ……   …したい… …実里と…したい…  …誰でもいい… したい… したくて…したくて…堪らないの…」
実里は五月のショーツを軽く引っ張り、黒皮と肌の隙間にゲル状の薄膜がはっていることを確認すると口元を吊り上げ微笑んだ。
(クス… ハンターホワイト、スキンを脱がなくなったのね…  スキンが癒着しはじめているわよ…)
垂れ目気味だった優しい面影はなく、黒いアイラインで目尻を吊り上げ、派手なメイクを施したように残忍な顔つきになっている実里。
五月がまともな状態であれば、実里の変化に気づいて疑念を抱いたかもしれないが、いまの五月にはそんな観察力も判断力もない。
「み…実里… …して…おねがい……イかせて…  …冒させて……実里を…冒したい…」
人とは思えない力で実里をベッドに押さえつけた五月は獣のような眼で実里を見下ろし、舌なめずりする。
「…実里… …舐めて… …わたしをイかせなさい…  …そのあとで… …実里を… …メチャクチャにしてあげるから… ンフ…フフフ…」
「クスクス… 完全に理性を失ってる… 昼間倒させたマウスに仕込んでいたフェロモンガスで体内の美獣セルが活性化されたみたいね。 クス… この様子だとハンターホワイトがクイーン・レオ様のシモベになるのも… クスクス…」
黒い手で実里の服を引き裂いた五月は涎を垂らしながら実里の胸からヘソ、淫核へと舌を這わせた。
「クゥゥン… そうですよ… それがレオ様がもっとも悦ばれる責めです…  そこから舌でアッ… そ…そう……中まで舌を…」
実里は自分がレオに躾けられた責め方で五月を責め、彼女をレオ好みのシモベにする準備をしていた。
「イィッ… ンフゥ……上手ですよ五月さん…  次はわたしがお手本を… しっかり憶えて下さいね…」
「ウグゥッ… ウゥゥンッ…  実里… イィ… ザラザラした…舌が…奥まで… イィッ… クリ…クリ…イィ… モット…モット…舐めて…  ハヒィィィッ…」
実里は生まれ変わった姿に変容し、人外の物となった舌で五月を冒しまくった。


翌朝…
「五月さん、起きて下さい… 本部からの呼び出しですよ」
五月の耳元で実里が優しく囁く。
「う…うぅぅん…… 実里…さん…  あれ…いつのま……エ、エマージェンシー!!」
ベッド脇に置いてある通信機能を備えたブレスレット型パワースーツ装着ユニットを慌てて取り上げた。
「ハイ、来栖です。 ハイ、問題ありません大丈夫です。  湾岸地区Cエリアに美獣が!  ハイ、了解しました。 直ぐに向かいます」
「美獣帝国が現れたんですか…」
「ごめんなさい実里さん… わたし直ぐに出動しないといけないの。 戻ったらまた連絡するから…」
「気にしなくていいですよ。  あの五月さん…」
「ン? どうしたの実里さん」
黒い皮を身に着けたまま白のライダースーツを着用しようとした五月が手を止めて実里を見やった。
「また昨日の夜のようになるといけないから… これを…」
実里はバッグから黒のライダースーツとブーツ、それとグローブを取り出した。
「まさかそれは…」
「ハイ、黒い皮で出来ています。 ある方が五月さんの為に、特別に作って下さったんですよ」
実里の言った『ある方』が誰なのか問うこともなく、五月は手に持っていた愛用のライダースーツを床の上に落し、フラフラと実里に歩み寄ると黒いライダースーツを受け取っていた。
「それを着ていれば、昨夜のようにはならないと思います」
「そ、そうね… 助かるわ…  それにこの皮は体に張り付くように馴染むから…」
黒い皮。
クイーン・レオが用意した美獣スキンの虜になった五月がそれを拒めるはずもなく、全てを皮で包まれる悦びに恍惚の笑みを浮かべながら、その感触を確かめるようにライダースーツを装着してゆく。
そして指先に爪のような金具が付いた肘下までのグローブをロンググローブの上から嵌め、ライダーブーツとは思えない高さのあるヒールのサイハイブーツも何の躊躇いもなく身に着けた。
「ンフゥ… 素敵な着心地… まるで何も着けていないような… 自分の肌のようなこの感じ…」
黒い皮で覆われた体をうっとりとした表情で撫でます五月の顔に、何か動物の顔を表しているような怪しい隈取が浮かび上がり直ぐに消えた。
それを見ていた実里が邪悪に微笑むとネコを思わせる隈取が表れ、それも直ぐに消えてしまった。
「クスクス… とても似合ってます。 素敵ですよ」
「ウフフッ… ありがとう」
妖艶に微笑んだ五月の目尻は黒く染まり、吊り上がったように変化していた。





「クク… 待っていたわ。 私の忠実なシモベ、ハンターホワイト」
湾岸地区に駆けつけたホワイトは、薄暗い倉庫の中でクイーン・レオと対峙していた。
「待っていた? わたしがあなたのシモベ?  フッ… 面白いこと言うわね…」
「ククク… まだ正気の部分が残っているのね。 さすがハンターホワイト、と褒めておくわね…」
語気に迫力を感じないホワイトを、レオは愛しい者を見るような眼でじっと見つめていた。
「残っている?  さっきから訳のわからないこと言って…   勝負よ、レオ」
「クク… 私と闘えるのかしら?   ククク…」
優しく微笑んではいるが、レオの眼力は美獣化が進んでいるホワイトを大人しくさせるのに、十分過ぎる力があった。
拳を握りしめて身構えていたホワイトの両手がゆっくりと体の横に下ろされる。
(えっ… なぜ… どうして…  どうしてわたし… レオを攻撃しないの…)
「クク… お前は私に逆らえない。 既にお前は私の忠実なシモベ、いまからそれを気づかせてあげる」
妖しく微笑んだレオは、これみよがしに舌なめずりをしてみせる。
「ふざけないで… どうして…わたしが… エッ…ハゥ…」
ビクンと体を震わせたホワイトはレオの前に跪くように地面に膝を着いた。
(こんなときに…どうして……   あぁ…したい…  …されたい…)
自身を抱しめるように腕をまわし、レオの前でうずくまるホワイト。
「ククク… 我が忠実なるシモベ来栖五月、その忌々しいスーツを脱ぎなさい」
「いい加減に…しなさいよ…  わたしが… あなたの…」
「クク… わたしがしてあげるわ…  ククク…」
跪く五月の顎に指を掛けて上を向かせたレオは、ヘルメットの口の部分に唇を重ねる。
「や…やめ… ハゥッ…」
(どうして… 感じるの…   ダメ…おかしくなる…)
ホントにキスをされているように感じはじめた五月は、レオの行為に答えるようにヘルメットの中で舌を出し猥らに動かした。
「ククク… スーツを脱ぎなさい… 素直に従うのよ… 私の可愛い五月…」
「ンムゥ… はあぁぁ…」
天を仰いだまま悦楽にひたるホワイトの体が光に包まれた次の瞬間、纏っていたパワースーツは消滅していた。
「クク… そうよ、いい子よ」
「ンフゥ… フゥ… どう…して…わたし……スーツ…を…」
虚ろな眼で戸惑う五月。
「ククク… それはお前が私のシモベ、我が美獣帝国に仕える美しき美獣だからよ…」
レオは黒い皮のライダースーツに浮かび上がる胸の尖りを優しく愛撫する。
「ンハァッ… そんな… わたしが… …なわけ…  イィッ…」
小さく息を切った五月の顔に怪しい隈取が微かに浮かび上がった。
「ククク… お前は私のシモベ、私の可愛い美獣…」
「ウッ…ウゥゥン… わたし…わたしは…… ハァッ…アッ……アッ…アァァ…ハァァン… イィ…」
黒い体を撫で回されて感じはじめた五月の顔の隈取がはっきりしてくる。
「クク… 来栖五月、お前は私の何?」
「わたしは…ハンター…… …そこ… もっと…中まで…」
レオは五月の顔を両手で押さえ、瞳を覗き込んだ。
「来栖五月」
「ア……ハ……ハ…ィ…」
「お前は私の何?」
「わたし… わたしは…… わたしは……ハンター…ホワ…ほわ…」
「ククク… まだそんな事を… だったら素直になれるようにしてあげるわ… ンム…ンチュ…」
レオの唇が五月の唇に重なり、体液が口の中に流し込まれると五月はそれを受け入れた。
「ンフゥ…  クク… 五月、言いなさい。 お前は私の何?」
「ハァァ…アァ…… ハイ… わたしは…シモベ…  クイーン…レオ様の…シモベ…」
隷属の言葉を口にした五月がうっとりとした顔でレオを見つめる。
「クク… そうよ。 あなたは私の部下、我が美獣帝国の忠実なるシモベ」
五月は虚ろな眼でレオの言葉をオウム返しで答えた。
「ハイ… わたしは…レオ様の部下…美獣帝国の忠実なシモベ…  ハアァァァッ…」
小さく身震いした五月が全身に拡がる従属の悦びに淫靡な笑みを浮かべると、レオも満足の笑みを浮かべ、五月を優しく抱きしめて耳元で囁く。
「今夜、…を連れて私の所にいらっしゃい。 それまであなたは私の敵、ハンターホワイトでいるのよ」
開放された五月はゆっくりと立ち上がり、直立不動の姿勢で答える。
「ハイ… クイーン・レオ様… 仰せのままに…」
「ククク… ンチュ…」
レオが五月に口付けをして姿を消すと、五月の顔の隈取が消え、瞳に強い意志の輝きが戻っていた。
「ハッ… なに… どうしてわたしスーツを…  パワースーツ・オン!!」
白と銀のパワースーツを再装着した五月は取り囲んでいるマウスを圧倒すると仲間と合流し、マウスを指揮していた美獣を葬り去った。





そして…
冷たく微笑みながらレオの前に佇む五月。
その顔には隈取が浮かび上がっている。
「五月、どうしたの! どうしてあなたが!!」
濃紺のJHの制服を身に着けた女が腕に手錠を掛けられ、レオの前に転がされていた。
「ククク… ハンターホワイトは、お前の妹来栖五月は、私の忠実なシモベ、美獣に生まれ変わるのよ」
レオは手招きで五月を呼び寄せ、足元に跪かせた。
「ククク… お前が私のシモベとなったことを、あの女に見せてお上げなさい」
「ハイ、クイーン・レオ様」
「ナッ! やめなさい、五月!! あなたはJH、ハンターホワイトよ、しっかりしなさい!!」
レオの淫核に優しく口付けをした五月は、実里から教えられたレオが悦ぶ愛撫をはじめる。
「クフゥン… しっかり躾けられたようね… ハァッ… そう…そうよ……もっと奥を…  ンフゥ…そう…もっと音をたてて…私の蜜を舐めなさい…」
「ハイ、レオ様…ンフ…ンフ…ンチュ…」
レオの愛液を舐める五月の体が少しずつ変化しはじめる。
身に着けている美獣スキンのライダースーツ、グローブ、ブーツの継ぎ目や皺、弛みがなくなり、ピタリと体にフィットすると表面がヌメヌメした輝きを宿す。
そして無駄なく鍛えられた体が締めつけられて、よりシャープでしなやかなフォルムへと整形されると、印核や胸の尖り、秘唇がくっきりと浮き出して、スキンは完全に五月の躰と化した。
「やめなさい五月… あなたは… あなたは…   さ…五月…」
美獣化してゆく妹に正気を取り戻させようとしていた三月が絶句し、顔から血の気が失せる。
レオの陰部に顔を押し付けている五月の黒いお尻の一部が隆起し、細く長く伸びるとクネクネ動き出した。
「ククク… 美獣に生まれ変わる気分はどう?」
「ハイ、クイーン・レオ様。 とてもイイ気分です。  ウフフ… 美獣になることがこんなに素晴らしいなんて… どうしてもっと早くに気づかなかったのかと後悔しています」
陰部から顔を離した五月の隈取は猛獣を思わせるデザインに変わり、目は白目と黒目が反転して、もはや人とは思えない形相になっていた。
「さ…五月……あなた…ホントに……ホントに…美獣に…なってしまう…」
恐怖に顔を引き攣らせる三月をレオは横目で見やり。
「クク… まだ信じられないようね。  ロシアン、マスクを持って来なさい」
「ビジューッ! かしこまりました。 クイーン・レオ様」
返事と共に現れた青白い肌に青灰の短い髪の毛、同じ毛色のショーツとブラ、そしてソックスと指なしグローブを着けたような美獣が優雅に尻尾を動かしながら、黒い皮のマスクを持ってレオに近づいてくる。
「あ、あなたは…」
青灰の毛の中にある三角の耳をピクリと動かした女は、猫を思わせる化粧が施された顔に妖艶な笑みを浮かべて三月を見やった。
「クスクス…」
「実里さん…大道寺実里さん… あなたまで美獣に…」
「クス…クスクス…」
実里は何も答えず三月を横目で見やりながら、レオの近くまで行くと跪いて頭を下げ、持っていた黒いマスクを両手でレオに差し出した。
「ククク… 来栖五月。 このマスクを被り、美獣キラーパンサーとなるのです」
「ビジューッ!」
美獣の名を与えられた五月は美獣帝国の奇声で答え、ゆっくりと立ち上がりながら残忍な笑みを三月に向けた。
「ウフフ… 姉さん… これを被れば、わたしは完全な美獣に、レオ様のシモベに生まれ変われるのよ」
「や、やめて、五月… いまならまだ…あなたを…  ダメよ、五月!!」
「ウフフフ…」
横目で三月を見やりながら、五月はレオから受け取ったマスクを何の躊躇いもなく被った。
『ンッ…ングゥ……ングッ』
鼻も口も覆われた五月はくぐもった声を漏らし、マスクで覆われた顔を撫で回していた。
「五月、脱ぎなさい… 早く脱いで…」
『ンン…ン…ンンン…』
「五月…」
マスクはヌチャヌチャと五月の頭部を租借するように蠢き、鈍い音をたてながら頭蓋骨を作り変えてゆく。
「ウグッ…イギィ……ギギィ…グガァァ……… ンフゥ…フゥ…フゥ…… フッ…フフッ……ウフフフッ…」
青白く変色した顔の下半部が開放され、黒く彩られた唇を吊り上げて微笑む五月の口元に銀色の鋭い犬歯が現れる。
そして頭部の変化が程なくして完了すると、五月の顔は黒い豹へと変貌していた。
「ウグルルゥ……グルルッ……」
黒い眼の中にある不気味に輝く白い瞳を縦長に細めた五月は、喉を鳴らしながら、変化し終えた躰を嬉しそうに眺めていた。
「さつ…き…」
「グルルッ… 素晴らしい… これが美獣帝国の力… グルルッ… 早くこの爪で人間ども八つ裂きにしたいわ…」
「ウソ… ウソよね… 五月…」
両手の指先にあるナイフのような爪を出し入れさせて、紫に変色した長い舌で舌なめずりしながら微笑む五月の姿は三月を失意のどん底に突き落とした。
「ククク… キラーパンサー、頼もしいシモベ…」
「ビジューッ! 偉大なるクイーン・レオ様、この忠実なるシモベ、キラーパンサーに何なりとご命令を…」
レオの前に跪き、臣下の礼をとる五月に正義のヒロインとしての意志は微塵も残されていなかった。
「クク… キラーパンサー、この女をどうすればいいか、意見を聞かせてもらえるかしら」
「ビジューッ! 恐れながら… この女の指揮能力は大きな戦力となりましょう。 この能力を活かせる美獣に改造すれば、レオ様のお役に立てるのではないかと…」
「な…なにを言うの五月… 私たちは姉妹… 姉の私を美獣にするつもりなの…  カハッ」
キラーパンサーは怯えた顔で震えている三月の鳩尾に軽く拳を当てた。
「グルッ… うるさい女ね! わたしはキラーパンサー、もうお前の妹などではない!」
「…サ…ツ……キ…」
床の上に突っ伏して苦しむ三月をさげすみながら、キラーパンサーは口元に残忍な笑みを浮かべていた。
「ククク… その女には自分が指揮を執っていたJH基地を制圧させてあげましょう。 ロシアン…」
「ビジューッ! かしこまりました」
名前を呼ばれた青灰の猫、美獣ロシアンにされた実里が三月に近づく。
「な、なにをする気なの… やめて… 私は美獣なんかになりたく…ンッ!」
三月の言葉はロシアンの唇でさえぎられた。
「ンッ…ンン……  ンフ…ンフゥ…」
首を動かして抵抗していた三月の動きが直ぐになくなり、口内に流し込まれるロシアンの甘い唾液を恍惚とした顔で飲み干してゆく。
「ククク… ロシアンの体液には、どんなに強靭な意志を持った人間でも数分で欲情させる効果があるのよ…」
「ンハッ… ア…アァ……ハァァン…」
虚ろな眼で体をよじりはじめた三月の服を脱がせたロシアンは、三月の秘所から溢れ出している愛液を舐めとる。
「イヒィ……イィ……  ハヒィ…」
ビクンと体を震わせた三月の美しい顔が快楽に崩れ、だらしなく半開きになった口元から涎と舌を垂らしていた。


72時間後…
灰色のキャットスーツに黒いグローブとブーツを着けたような躰。
意志のない白い眼をし、ネズミを思わせる隈取が描かれた顔の女が2人、レオの前に立っている。
彼女たちはJH基地に所属する三月の秘書官と看護士の1人だったが、先に基地に戻った五月に、三月の体調が優れないので見てきて欲しいと頼まれ、三月のマンションを訪れたところをマウスに襲われて美獣帝国に拉致されてきた。
「ククク… お前が産み落とすマウスピューパを呑まされた人間はインファントマウスとなり、コマンダーであるお前の意のままに… そしてインファントマウスは数日で完全なマウスへと成長する。  クク… その力、気に入ったかしら? ラットコマンダー」
「ビジューッ! 素晴らしい力です。 この力で人間どもを美獣帝国に隷属させてご覧に入れます」
インファントマウスの前に、白い躰に灰色のロングサイズのグローブとブーツ、顔の下半部を露出した白いネズミの全頭マスクを被っているようなラットコマンダーが直立不動の姿勢で立っていた。
「ククク… 美獣ラットコマンダー。 JH司令、来栖三月の生まれ変わった姿… 素敵よ」
「ビジューッ! ありがとうございます。 クイーン・レオ様」
「「ビジューッ!」」
美獣にされた来栖三月が右手を高く掲げて敬礼の姿勢で答えると、インファントマウスも同じ姿勢で声を上げた。
「クク… ラットコマンダー、その力でJH基地を美獣帝国の前線基地と化すのです」
「ビジューッ! かしこまりました、クイーン・レオ様」
再敬礼した三月が腕を下ろすと、ラットコマンダーからJH司令来栖三月の姿に、インファントマウスもJHの制服を着た女の姿に戻っていた。



6時間後…
JH司令室の床の上にインファントマウスが倒れている。
「ウフフフ… オペレーターの交代は1時間後だったわね… ミーティングルームに警備部、技術部の女たちを集めなさい」
「ハイ… かしこまりました… ラットコマンダー様…」
自分のシートに腰掛ける来栖三月の手に黒い縞模様のある灰色をした不気味な物体、マウスピューパが握られていた。
「ウフフ… キラーパンサーはJHを始末できたかしら? 地下模擬戦場の映像を…」
「ビジューッ!」
床の上に倒れていたインファントマウスが起き上がり、オペレーターシートで端末の操作を始めると、オペレーターだったときの姿に戻る。
「ラットコマンダー様… 地下模擬戦場の映像です… 現在戦闘は…」
「とっくに片付けたわよ」
司令室の入り口で答える五月が冷たい笑みを浮かべながら、血塗られた変身ブレスレット4つを床に放り投げた。
「ウフフフ… そう… こっちも急がないといけないわね…五月… いいえ、キラーパンサー」
妖しく微笑んだ三月が秘所に添えていた手を広げると粘液に包まれた産みたてのマウスピューパがあった。

END


いかがでしたでしょうか?
よろしければ拍手、感想などをいただけますと、mg_max様もとても喜ばれると思います。

mg_max様、とても素敵な作品をお送りいただきましてありがとうございました。
もしまたご縁がありましたらよろしくお願いいたします。
  1. 2009/09/09(水) 21:30:05|
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ジャスティスハンター壊滅(1)

皆様はGIGAというアダルト動画のブランド様をご存知でしょうか?

特撮系ヒロインの陵辱モノなどを手がけているブランド様なのですが、このGIGA様がこの6月ごろから映像作品のプロット案を一般の方から広く募集しております。

その名も「ヒロイン妄想計画」
一般投稿者からストーリープロットを広く募集し、その中から優れたプロットをベースにして映像化していこうというおもしろい企画です。
すでに多数の投稿があり、うちいくつかの映像化が決まっているようです。

特撮系ヒロイン陵辱モノということで、いわゆるバッドエンドである悪堕ちモノストーリーもいくつか見られ、私自身おーっと思ったり、これは使わせてほしいストーリーだなーと思ったりすることもあるのですが(笑)、その中の一つに「ヒロイン改造(仮)」というストーリー案がありました。

ストーリー案を作られた方はmg_max様という方で、私自身おもしろいストーリーだなぁと思っていたのですが、今はこのストーリー案は「ヒロイン妄想計画」サイト様には記載されておりません。

それというのも、mg_max様ご本人が、そのストーリーをSSとして完成させ公開したいとお考えになられたからでして、GIGA様にご承諾いただき投稿を削除なさったからなのです。

そして今回、ご縁がありまして、当ブログにそのmg_max様からそのSSを頂戴いたしました。
悪堕ち作品を公開する場所として、当ブログを選んでくださったというわけなのです。
悪堕ち好きとしてとても光栄なお話であり、すごくうれしいことでした。

そこで、今日明日の二日に分け、mg_max様の作品を投下したいと思います。
どうか皆様もmg_max様の作品をお楽しみくださいませ。
mg_max様、このたびは本当にありがとうございました。

それではどうぞ。


- ジャスティスハンター壊滅 -



クイーン・レオ率いる美獣帝国が人類を脅かしはじめたのは、数ヶ月前に起きた月が太陽を覆い尽くした皆既日食の日。
いつどこで誕生したのか、素性や起源は全く分からず、人々のあいだで戦時中の生態兵器、環境汚染による生物の突然変異と噂が絶える事がなく、彼女たちが侵略者であるにも関わらず、その美しい容姿に心を魅かれる者は少なくなかった。


鬱蒼とする樹海。
その奥深くにある人工建造物。
放棄された戦時中の司令室跡が美獣帝国の侵略拠点となっている。
レオは女性ばかりを誘拐し、ここで人とネズミを組み合わせた構成員マウスや美しい獣の姿をした怪人、美獣に改造して、帝国の尖兵としていた。


優秀な人材が揃う女子大を襲撃し、美獣にする獲物の調達を企てたレオだったが、政府が極秘裏に編成したチーム、特殊パワースーツを装着して美獣帝国と戦う5人の戦士ジャスティスハンターにその企てを阻止され、失敗に終わった事を忠臣レッドアイに聞かされた。
「またしても… 忌々しいジャスティスハンター…」
首もとの白く美しい毛を撫でながらレオが呻くような声を漏らすと、闇と同化する漆黒の躰に紅い眼を輝かせるレッドアイが報告を続ける。
「ですが、レオ様。 マウスに随伴させたわたくしの部下が、面白い情報を持ち帰っております」
「面白い情報?」
「ハッ 自分の命を助けることを条件に、情報を提供してきた者が居たようです。 JH(ジャスティスハンター)のパワースーツには次世代宇宙服の技術が流用されており、その研究者の娘が先ほど襲撃した大学に在籍していると…  情報を聞き出したあと、その者は始末しております」
「ククッ… もし本当なら、その娘は使えそうね…」
「ハッ 今回はわたくしが赴き、この娘を捕獲して参ります」
レッドアイは無言で頷き微笑んだレオに一礼すると、自ら人であることを捨て、美獣に生まれ変わった政府諜報員の姿に戻り、ターゲットの捕獲に向かった。





「私がスーツの開発に関わっていたことは、キミたち以外に知る者はいないはずじゃなかったのか!!」
近い未来、実用化が有望視されている超軽量宇宙服の設計者で、その技術を流用したJHの装備パワースーツの開発を任された大道寺(だいどうじ)は、彼に呼び出されて駆けつけた来栖(くるす)姉妹、JH総司令官の姉三月(みつき)とパワースーツ装着者で唯一女性のハンターホワイト妹五月(さつき)に掴み掛かっていた。
「もちろん、そのことを知っているのは、開発に立ち会っていた私と来栖隊員以外にいません」
「だったらなぜ、美獣帝国が娘の身柄と引き換えに、パワースーツのデータを要求して来るんだ!!」
「エッ! 実里(みのり)さんが美獣帝国に!!」
三月は美獣帝国から届けられたメモリーカードを大道寺から受け取るとモバイル端末に挿入する。
そして薄暗い部屋に拘束されている大道寺実里の姿を確認した。
「まさか、昼間の襲撃で実里さんを…」
「それは無いわ。 作戦終了後に、実里さんの無事を確認しているのよ」
「そんな事はどうでもいい!! 私はパワースーツのデータを渡し、実里を還してもらうつもりだ。 私たち家族の安全を保障する。 それがキミたちに協力する条件だったはずだ、異論はあるまい」
「ま、待って下さい、大道寺教授」
(五月、いま大道寺教授に何を言っても無駄よ。 それにレオが素直に実里さんを還すハズがないわ…)
三月は五月に耳打ちすると頭を下げ、大道寺邸をあとにした。


その頃、美獣帝国では…
「ククク… 大道寺がJHに協力していたと言う情報は本当だったみたいね…」
「ヒッ… や、やめて下さい… わたしになにを…」
レオに押し倒された実里の顔が恐怖に歪む。
「ククク… 父親のもとに還す前に、少し楽しませてもらうだけよ…」
「イ、イヤ… やめて…」
「クク… 怖がることないわ… 直ぐに気持ちよくしてあげるから…」
鋭い牙が生えているレオの口が実里の口を塞ぐ。
「やめ…やめて…やめてッ……ンムグッ…ンッ…ンン……ング……ング…ング…」
レオの唾液を口の中に流し込まれた実里の動きは徐々に鈍くなり、目がトロンと惚けて体から力が抜けると、レオは実里の服を脱がせ、舌と指で全身を愛撫しはじめた。
「アッ……ハアァん…… イィ…キモチィィ…」
「クク… いい子ね…」
艶めかしい声を漏らす実里は、口元に近づけられたレオの指に舌を絡ませていた。


24時間後…
裸に白い毛皮のブラとショーツ、そして襟巻きを着けているような女。
だが白く長い髪の中に見える三角の耳とお尻で優雅に動く尻尾が、彼女が人ではない存在であることを示していた。
「クク… 殺しはしないわ。 しばらく眠ってなさい…」
足元で仰向けに倒れている白と銀のパワースーツの戦士の腹にレオの足がメリ込み、その一撃でピクリともしなくなった戦士の体は光の粒子に包まれ、白いライダースーツを身に着けた女の姿に戻る。
人質奪還と機密情報の漏洩を防ぐ為、密かに交換場所に潜り込んだJHは、待ち伏せていた美獣とマウスに襲われ、個々に切り離されてホワイトのみが取り残された。
そしてハンターホワイトはクイーン・レオのもとに誘き出され、その圧倒的な力の前に敗北していた。
「クク… ハンターホワイト、お前を誘き出すことが目的だったのよ…」
意識を失いぐったりしている五月はマウスたちに裸にされ、淫核に紫の液体が充填された圧力注射器を押し付けられた。
鈍い発射音と同時に五月はピクンと体を跳ね上げたが、目を覚ます事はなかった。
「ククク… このクスリはとってもいい気持ちになるクスリよ…  クク… したくてしたくて堪らなくなって… 女を襲い、イキまくるの…」
邪悪な笑みを浮かべたレオはそう言い残すと五月の隣に実里を寝かせ、その場をあとにした。





「ン…ウウン…  ここは…」
「五月さん、気が付きました? 気分はどうですか?」
「あなたは…実里さん… 大道寺実里さん…」
「ハイ、実里です。 助けて頂いてありがとうございます」
意識を失い倒れていた五月は、実里と一緒に助け出されて医療センターに収容されていた。
「助けただなんて… わたしは何も…」
「みなさんが言ってました。 五月さんはわたしをかばうように倒れていたって…」
(…そんなハズない…わたしは何も… レオに負けて…意識を失い…)
「でもよかった… 五月さん… 3日も眠り続けたままだったんですよ。 このまま起きないんじゃないかって…」
潤んだ瞳で五月を見つめる実里は微かに紅潮している。
「わたしの所為で… 五月さんがケガをしたと聞いて…」
「実里さん?」
「美獣帝国に捕まったとき… きっと助けに来てくれると…」
「ちょ、ちょっと実里さ…ウッ…」
五月の中で何かがドクンと脈打ち、これまで抱いたことのない淫猥な感情を覚える。
(…な…なに… どうして…こんな……   したい………やりたい……この子を…ムチャクチャにしたい…)
「み…みの……みの…り…」
ベッドに添えられている実里の手を握りしめた五月の瞳が虚ろになり、強引に引き寄せるとその唇を奪っていた。
「ンン…ン…ウンン……」
激しく吸いつき舌を絡ませる五月。
実里もそれに応えて舌を絡ませた。
「ンふゥ…」
唾液を交換しあった二人は少し離れて、互いに顔を伏せた。
「…どうして… こんなことを…」
「や…やっぱり…  やっぱり…五月さんもクスリを…」
「エッ…クスリって…」
実里はショーツを脱いで紫色に染まっている淫核を五月に見せる。
「この気持ちになったとき… こ…ここが…紫に……   たぶん…五月さんも…」
慌てて五月もショーツの中を確認すると、実里の話したとおり、淫核は紫に染まり秘所から愛液が溢れていた。
「なっ…」
「クイーン・レオに…ヘンなクスリを注射されてから……  ずっと…」
話をする実里の様子が見る見る変化し、唇が五月の唇に迫る。
「ま、待って… 実里さん…しっかり……しっかりして…」
「わたし… ずっと憧れて… 五月さんにされたいって…  眠ってる五月さんの唇を…何度も…何度も…」
「エッ… み…みの…実里さん… ダメ…惑わされないで… これはレオの…」
実里は自分の秘所を愛撫して指に愛液を絡めると、その指で五月の唇をなぞった。
「や、やめて… ちょ、ちょっと…みの……みの……み………」
鼻腔をくすぐる実里の吐息と愛液の香りが五月の思考を狂わせる。
うっとりと実里の顔を見つめたまま、五月は舌先で唇に塗られた愛液を舐め、妖しく微笑んでいた。


数日後…
体に異常が見つからなかった五月はすぐに任務に復帰していたが…。
「ンフゥ… イィ…イクッ…」
五月と実里が互いの秘所を舐め合い、小さく体を振るわせる。
怪しいクスリを注射されて体がヘンになっていると、五月は三月に言い出せず、毎晩マンションを訪れる実里と絡み合っていた。
「ハァ…  ダメだってわかってるのに… どんどん抑えられなくなってる…  もう基地の中ですれ違う女性隊員を襲ってしまいそうで… レオは何を企んでいるの…   やっぱり司令に相談して… 精密検査を…」
「それは… それはもう少し…待って下さい…」
「でも精密検査を受ければ、成分が判明すれば、中和するクスリも…」
「実はインターネットで調べてわかったことがあるんです。 亜熱帯地域に紫の羽根を持つ美しい蝶がいるそうなんです。 その蝶の鱗粉は媚薬に似た、他の生物のメスを発情させる成分が含まれているらしくて、この鱗粉を吸い込んだ女性はみんな… いまのわたしたちみたいに…   鱗粉からこの成分だけを抽出した麻薬もあるらしくて… これと言った中和剤もなく、この麻薬を打たれた女性は、ずっとこの状態が続くそうです…」
「まさか、レオはその麻薬をわたしたちに…」
「でも、この蝶を好んで捕食する生物がいるらしくて、その因果関係はわかってないみたいですけど、その生物の皮を身に着けると症状を抑えることができるそうなんです。  いまその地域に詳しい教授にお願いして、その皮を取り寄せて貰ってます」
「皮を身に着けるって… なんだか胡散臭い話だけど…」
「だからもう少しだけ、他の人に相談するのは待って下さい。 わたしと五月さんがこんな関係になってるって…」
五月は頬を紅潮させながら唇を重ねてくる実里を拒むことが出来なかった。
「わかった… その皮が届くまで…もう少し…  このままで…」
治まりつつあった欲情を呼び覚まされた五月は、ベッドに押し倒した実里の体に舌を這わせはじめていた。


2日後…
白かピンクの下着しか着けないと言っていた実里が黒いショーツを着けている。
それは妖しい光沢を放ち、実里の体にピタリと張り付くように着けられていた。
「見て下さい五月さん… これがお話した皮です… 五月さんも着けてみて下さい…」
実里から黒い皮のショーツを受け取った五月は、すでに実里が着けているが怪しい物でないかを確認しようとした。
「大丈夫ですよ、五月さん…」
五月が着ている白い革のライダースーツのファスナーを実里は手馴れた手つきで下ろしてスーツを脱がせる。
「このショーツ… 驚くほどフィットして… 気持ちイイですよ…」
いつもと違う妖しさを秘める実里の瞳にあらがえず、誘われるようにショーツに足を通す五月。
腿の中ほどまで引き上げたところで、実里が妖しく微笑み五月のショーツの端を摘むと一気に上まで引き上げた。
「ちょ、ちょっと…実里さん、自分で着けれる… イッ…ヒャッ!!」
実里の行為を拒もうとした五月の体がビクンと弾け、背中を大きく仰け反らせる。
「クスクス… これを着けると凄く感じやすくなるんですって… 軽く弄っただけなのに、イッちゃったでしょう…」
「ヒッ…イィッ…」
「クス… これを着けてイクと… クスリの効果を一時的に抑えることができるらしいですよ…」
「ハヒィ…」
「クスクス…  クスクスクス…」
指で五月の淫核を愛撫する実里は冷たい笑みを浮かべていた。
「クスクス… 大丈夫ですよ五月さん… いまは何も考えないで… 全身を駆け巡る悦びをしっかり憶えて下さいね…」
「ダ、ダメッ……イクッ… やめ、やめてぇ… 頭が…頭がおかしく… ま、またッ… イクゥゥッ!」
そのままベッドに押し倒された五月は、実里に操られるようにイカされ続けた。


翌朝…
「五月さん、起きて下さい…」
ベッドの上に寝かされている五月を優しく起こす実里。
明け方までイカされ続けた五月は死んだように眠っていた。
「う…ううん… 実里…さん……ンッ!?   み、実里さん、朝から何を…」
いきなり唇を重ねてきた実里を五月は両手で突き飛ばしてしまった。
「アッ、ごめんなさい。 実里さんが急に… 出掛ける前にあの気持ちになりたくなかったからつい…」
「クス… 大丈夫ですよ。 それよりどうですか?  わたしと…したくなりました?」
「エッ! そ、そう言えば…」
実里に問われてはじめて、あの忌々しい欲情がないことに気が付いた。
「クスクス… 効果ありましたね。 どれくらい持続するかわかりませんが、他の女性を襲いたくなったら… ショーツの上からこうして…」
実里は五月の淫核と秘所を黒皮ショーツの上から優しく撫でる。
「ヒャァ…   み、実里さん、やめてよ…」
「クスッ… ごめんなさい。  だからこのショーツは脱がないようにした方がいいと思いますよ…」
「そ、そうね…わかったわ  ありがとう実里さん   汗を流してくるわ」
頬を紅く染めながら五月は実里に礼を言うとバスルームに向かった。
「クスクス…」
バスルームに向かう五月を見送る実里は邪悪な笑みを浮かべていた。





ショーツを着けるようになってから2人は会っていなかったが、五月から連絡を受けた実里は彼女のマンションを訪れていた。
「はじめは良かったけど… 2日位前から…またあの気持ちになることが多くなって…  効果が切れると言うか… 間隔が短くなって、そのときはこれまで以上に強く… 誰かと… したいって…」
話をしている五月の瞳は虚ろに濁り、実里の唇を見つめたまま、ゆっくりと顔を近づけていた。
「わたしはもうショーツを着けなくても大丈夫に… あっ、さ、五月さん、ダメですンムッ…」
実里は激しく唇を吸われ、ベッドに押し倒された。
「もう…ダメなの… 自分でするだけじゃ満足できないの…我慢できないの…  お願い…実里さん… わたしをイカせて… わたしに…舐めさせて…」
そう言うと五月は実里の淫核を舐め、自分の淫核を実里の口に近づけた。
「五月さん、落ち着いて…ンッ…ンン…   わ、わかりました…だからもう少し…優しく…」
獣のように襲い掛かる五月を馴らすように、実里は五月が感じやすい場所をピンポイントに責める。
「クアッ…ハゥ… イィ…み…みのり…さん… もっと…もっとお願い… ヒギィ…ィ…イィ…」
欲情した胸の尖りをつねられて激しく仰け反る五月。
彼女の体を知り尽くした実里の責めは、瞬く間に彼女をベッドに鎮めた。
「盛りのついた五月さんは、胸を責められると直ぐイッちゃうんですよね… クスクス…」
「ハッ…ハッ……ハッ…  み、実里さん… ごめんなさい…  わたしいま…無意識に…」
「クス…気にしないで下さい。 わたしで良ければいつでも五月さんの…」
実里は優しく微笑みながらベッドの上で余韻に浸っている五月の胸に、ショーツと同じ黒い皮のブラを着けた。
「これを着けていれば、またしばらくは症状を抑えることができると思いますよ…」
「エ… このブラは…」
「ハイ、ショーツと同じ皮で出来ています。 クスクス… 用意して来て正解だったかな。  けどわたしはショーツだけで治まったのに五月さんは…  注射されたクスリの量が違うのか、もしかしたらクスリの成分が違ったのかもしれませんね…  それを着けてもう少し様子を見たほうがいいかもしれませんね…   それより五月さん… もう少し…しませんか?」
頬を紅く染めて訊ねる実里に、五月は『うん』と頷きたかったが、これ以上は実里に迷惑が掛かると思い、そうすることが出来なかった。
「あ、ありがとう…実里さん… このブラのおかげかな… もう大丈夫みたい…」
「そ、そうです…か…   でも、また何かあったら連絡して下さいね」
五月の言葉に実里は少しガッカリした表情を見せていた。


それから2週間あまりが経過した夜…
実里に薦められるまま、欲情を抑える為の黒い皮を身に着けていった五月は、いつのまにか仲間や姉に相談することを考えなくなり、唯一自分のことを理解している実里だけを頼るようになっていた。
黒い皮のブラとショーツ、そして数日前に渡された黒い皮のストッキングを着けて自慰にふける五月に、実里は新しい皮を用意していた。
「五月さん、具合はどうですか?」
「ンフゥ… も…もうダメみたい… 新しい皮を…皮を…着けないと… 治まらないの…」
ベッドの上を這いずり実里にすがりつく五月をさげすみ、邪悪に微笑む実里。
(クスクス… すっかり皮の虜になったみたいね…)
「クス… そうじゃないかなぁと思って、これを用意して来ましたよ」
そう言うと実里は黒い皮のロンググローブを取り出した。
「これを嵌めて、アソコを指で掻き回せば…  クスクス… 想像しただけでイッちゃうんじゃないですか」
実里が誘うようにグローブの口を広げると、五月は小さく頷き、躊躇なくそこに腕を滑り込ませる。
「ハァッ…気持ちイィ…  しっとり…肌に吸い付く感じ… 体の一部になってゆくみたい…」
反対の腕もグローブの中に入れた五月は指の先までしっかり馴染ませるようにグローブを引き上げた。
「その通りですよ…」
「エッ?」
「クスクス… 何も言ってませんよ。  それよりどうですか五月さん、落ち着きました?」
「エェ… でも… もう少し落ち着きたいから…   実里さん…してもいい?」
嬉しそうに微笑んだ実里は五月が失神するまでイカせ続けた。


それから数時間後…
樹海の人工建造物。
美獣帝国の謁見の間に実里の姿があった。
レオに捕らえられた実里は開放される前に、レオに洗脳調教を施されて彼女の意のままに働く従順なペットにされていた。
「クイーン・レオ様、ハンターホワイトは快楽を求めるのはクスリの所為だと思い込み、美獣スキンに疑問を抱いている様子はありません。 もうスキンを身に着けていないと落ち着かないようです」
「クク… クスリはただの催淫剤、とっくに効果は消えているわ。 いま快楽を求めているのは、美獣スキンから体内に取り込まれた美獣セルが脳を侵し、美獣帝国に相応しい思考への改造が順調に進んでいるから…  ククク… 上出来よ。 お前にご褒美をあげないといけないわね…」
手招きで実里を誘うレオ。
実里は顔を紅潮させ、淫猥な笑みを浮かべていた。
「ハ、ハイ… ありがとうございます。 クイーン・レオ様」
着ている物を全て脱ぎ、裸になった実里は四つん這いでレオの足元まで移動すると、嬉しそうにレオの足を舐めはじめた。
「ククク… 何て可愛いペットかしら… ちゃんと躾けたとおりに出来るのね…」
実里はお尻を左右に振り、レオに服従する悦びを表していた。
「クク… ハンターホワイトはお前のことを疑いもしない。  それどころか、自分が美獣に改造されている事に気づきもせず… ククク…」
裸で足元にひれ伏し、嬉しそうに足を舐めている実里の頭を撫でながら。
「ククク… そうね、そろそろお前にも私のペットに相応しい躰を与えてあげないと…」
  1. 2009/09/08(火) 21:40:11|
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真祖リリス(後篇)

三日間連続で公開させていただきました「真祖リリス」も今日で最終回です。
一風変わった吸血鬼ストーリーの締めを存分にお楽しみくださいませ。


【真祖リリス(後篇)】
 
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 美奈子のほうを見ると、彼女はジュリアとともに壁際に追い詰められていた。
 いや、背後に回り込まれるのを避けるため、自らそこまで退いたのだろう。
 美奈子は五業の仕込杖を手にしており、すでに斬り伏せた吸血鬼は二匹。
 残るは六匹。
 だが、美奈子たちの失敗は、この場から逃げ出さなかったことだ。
 劣化吸血鬼たちを全て屠ったところで、まだリリスがいる。そして私がいる。
 もっとも、逃げたところで私がどこまでも追いかけるわけだが……
 私は抜き身の剣を携えて、美奈子たちに近づいて行った。
「下がりなさい」
 劣化吸血鬼たちに命じる。
 リリスにとっては可愛いペットだろう。無駄に数を減らすこともない。
 いまや同属の――いや、彼らよりもリリスに近い存在になった私の言葉に、劣化吸血鬼たちは素直に従った。
「…………、梓……」
 剣道のように中段に仕込杖を構えた美奈子が、怒りを込めて私を見た。
「あなたが何を考えてるか、わからない。でも……五業やマルコを、仲間を裏切ったあなたは赦せないっ!!」
「……美奈子」
 私は、にっこりと笑ってみせた。美奈子にずっと見せたかった笑顔。
 そして、私は美奈子に伝える。私の本当の想いを。
「全部、美奈子のためよ」
「何が……何が、あたしのためなのっ!?」
「美奈子は学校でもハンター仲間のあいだでも人気者。いつでも笑顔で皆を惹きつける」
 私は言う。
 憧れていた美奈子のような笑顔で。
「私は美奈子みたいになれなかった。学校では、いつも一人ぼっち。ハンターとしても腕は認められてたけど」
「そんな……そんなことっ!?」
「そんなことないと言ってくれるの? そうね、学校でも美奈子だけは友人として接してくれた」
 私は剣を下段に構えた。
 びくりと、美奈子が僅かに震えた。私の剣の腕を美奈子は知っている。
 それに対して彼女は素人。剣道の構えなど見よう見まねだ。
 しかし気丈に、美奈子は叫んだ。
「五業やマルコ、ジュリアだって! 大事な仲間だし友達だったじゃないっ、それをっ!?」
「私はね……美奈子と、もっと仲良くなりたかったのよ?」
 そう言って、私は微笑んだ。
 そして次の一瞬で間合いを詰め、下段から右手一本で剣を振り上げた。
 
 ――ギンッッッ!
 
 美奈子の手から仕込杖が飛んだ。
 こちらは片手で打ち込んだとはいえ、素人の美奈子に私の剣を受けとめられる筈もない。
 そして呆然とした美奈子の腕を左手でつかんで引き寄せ、私は――
 大きく口を開けて剥き出した牙で、美奈子の白い首筋に喰らいついた。
「――――――――!」
 身を引き裂かれるような悲鳴を美奈子は上げた。
 びくっ、びくっと震える美奈子の身体を、私は剣を捨てて両腕で抱きしめた。
 温かな血を存分に啜り上げながら、いくらか汗の匂いが混じった美奈子の体臭を味わう。
「あぁっ、あぁっ……、あぁぁぁぁ……」
 口をぱくぱくさせて美奈子は呻いた。彼女の手から落ちた十字架が床に当たって乾いた音を立てた。
 私は美奈子の首から牙を抜き、自分の指をそれに押し当てた。
 我ながら驚くほど鋭く尖った牙の先で、指の腹の皮膚が破れて血が滲んだ。
 その指で美奈子の唇をなぞった。紅を差すように。
 美奈子は素顔も美しいが、化粧をしても映える。
「……あっ、あっ、ああっ……!」
 視界の端でジュリアが私に向かって十字架をかざしながら、がたがた震えていた。
 十字架は劣化吸血鬼を遠ざける役には立つだろう。
 ジュリアは使うのを忘れているようだが、聖水ならば吸血鬼になった私に傷を負わせることもできるだろう。
 だが、それだけのことである。
 私を屠りたいならば、銀鍍金(めっき)した刀剣で心臓を抉ることだ。
 吸血鬼とはいえヒトのかたちをした相手を刺し殺す度胸は、ジュリアにはない。
 美奈子の口の中に、私の血に濡れた指を潜り込ませた。
 涙に潤んだ眼が、私を見た。しかし、もはや拒む力は美奈子には、ない。
「美奈子……」
 私は微笑みかけた。
「好きよ……愛してるの、美奈子……」
 力を喪いかけている美奈子の身体を強く抱き締めて、私は、彼女と唇を重ねた。
 その寸前に自分の舌を噛み破り、口の中を血で満たしておいた。
 私の血を――吸血鬼の血を、美奈子に注ぎ込む。
「んっ……ふ……」
 眼を閉じた美奈子が呻く。ぴくぴくっと、身体が僅かに震える。
 そして――
 美奈子が、再び……ゆっくりと眼を開けて、私を見た。
 私は唇を離し、美奈子を見つめ返した。
 熱を帯びたような眼を、美奈子は私に向けている。
「……あ、ずさ……」
「なあに、美奈子?」
 微笑み返す私に、美奈子は哀しげな表情(かお)をしてみせた。
「……梓の気持ち、気づいてなかったわけじゃないのよ……。でも、それは赦されないことだと……」
「ええ……ええ、そうね」
 私は笑顔のままで頷く。女が女を愛するなんて、常識に縛られた人間には禁忌だろう。
 美奈子は視線を逸らすように眼を伏せ、
「……梓は大事な仲間で、友達で……だから、その想いに気づかないフリをするしか、できなくて……」
「いいのよ、美奈子」
 私は答えて言った。微笑みながら。
「私だって、あなたに想いを伝える勇気がなかった。いいえ……断られるのが怖くて、伝えられなかった」
 受け入れてもらえる筈がなかったから。
 美奈子のように素敵な笑顔の女(ひと)に。
 笑うことのできない、魅力のカケラもない私を――人間だったときの私を。
「…………、梓……」
 眼を伏せたまま、美奈子は問うた。
「あたしが、あなたを追い詰めたの……? だから、吸血鬼になったの……?」
「私の意志よ。私が、私であるための」
 きっぱりと私は言った。
 美奈子が罪を感じる必要はないのだ。美奈子には笑顔が一番、似合うのだから。
「……あず、さ……」
 美奈子がもう一度、私を見た。
「これが……これが、吸血鬼になるってことなの……? あたし……こんなのって、間違ってるのに……」
 眼に涙を溜めて、首を振りながら美奈子は、笑った。
「……どんな理由があっても、五業やマルコを殺した梓を、赦しちゃいけないのに……」
 どうやら美奈子もリリスや私の劣化コピーではなく、自分の人格を保ったまま吸血鬼になれたようだ。
 だが、人間だったときに、どれほど使命感に燃える悪魔祓いであったとしても。
 吸血鬼になってしまえば、血の呪縛からは逃れられない。
「美奈子……愛してるわ、美奈子」
 私は言った。何度でも言おうと思った。
 心からの笑顔で。美奈子に見せたかった笑顔で。
 そのために私は吸血鬼になったのだから。
 美奈子は泣きながら笑っていた。それでも美奈子の笑顔は美しかった。
「梓……あたし、身体が火照って……それより、渇いて……我慢、でき……ない……」
「そのシスターを好きにするといいわ」
 リリスが言った。くすくすと愉しそうに笑いながら。
「せっかく美人だし、リリスのペットにしようと思ったけど……あなたたちのエサにして構わなくてよ」
「美奈子……?」
 私は微笑みながら美奈子に問いかける。
 美奈子は頬を紅く染めながら眼を伏せた。
「……鎮めて、梓……」
「ええ」
 私は、にっこりと笑うと美奈子の顎先に指をやり、顔を上向かせる。
 眼が合った美奈子を安心させるように、笑顔のままでもう一度、言った。
 何度でも言える台詞を。
「愛してるわ、美奈子」
「梓……」
 美奈子も、笑った。
 吸血鬼になってから初めて、私の憧れる輝くような笑顔を見せてくれた。
「梓の気持ち、人間だったときには応えられなかったけど……嬉しくなかったわけじゃないわ」
 私たちは唇を重ねた。血の交換のためではない本当のキス。
 舌が触れ合い、身体中に痺れが走る。
 それは吸血鬼になったときに味わったよりも甘美な感覚。
 私は、ようやく望むものを手に入れたのだ。
 そして私たちは身体を離し、ジュリアに向き直った。
「ああ……神よ、梓さんと美奈子さんの罪をお赦しください……」
 ジュリアは、がたがた震えながらも私たちに十字架を向け、彼女の神に祈っていた。
 私は剣を拾い上げて、彼女に告げた。
「祈るなら、自分のために祈りなさい」
「……梓、さん……」
 ジュリアは、ひどく哀しげな顔をした。
 恐らくは私への憐憫。彼女には理解できない選択をした私への。
 それからジュリアは眼を閉じ、両手で十字架を捧げ持って祈った。
「神様……、マリア様……」
 私は剣を振るい、ジュリアの首が床に転がった。
 首を喪った胴体から血しぶきが火柱のように噴き上がった。
 美奈子と私はそれを浴び、新鮮な血で喉を潤した。
 リリスは、くすくすと笑っていた。
「もっと嬲って愉しめた筈なのに、随分と淡白ね。それとも仲間だったシスターへの憐みかしら?」
「それもないとは申しませんが……それ以上に私は、ジュリアには興味を抱いておりませんでした」
 私が、にっこりと笑って答えると、リリスは「あはっ!」と声を上げて笑う。
「正直ね、あなた。そうね、欲しいものは手に入ったのですものね。リリスは嫉妬してしまいそう」
 残り六匹の劣化吸血鬼たちもリリスの周りでお追従の薄笑いを浮かべている。
 考えてみれば、リリスは哀れな存在だ。
 数千年の間には私のように自我を保ったまま吸血鬼になった臣下もいなかったわけではないだろう。
 だが結局、いま周りに侍るのはリリス自身の劣化コピーばかり。
 仲間の吸血鬼を犠牲にして、何千年も存在し続けてきたとリリスは言った。
 その言葉がリリスの臣下たちの末路を表している。
 リリスは孤独だ。自ら選んだことだとしても。
 私にとっての美奈子のような存在を、リリスは得たことがないのだろう。
 リリスは再び、指をしゃぶって濡らした。
 その指で自らの乳首を転がすように弄びながら、上目遣いに私を見た。
「あなたの見世物は、これでおしまい? リリスの敵は人間ではないわ、退屈がリリスを滅ぼすのよ」
「心得ております、真祖リリス」
 私は微笑みを返しながら、恭しく頭を下げた。
「どうぞ、私たちふたりに伽(とぎ)をお申しつけ下さい」
「いいの? せっかく望みが叶ったのに、あなたたち、ふたりきりで愉しみたいのではなくて?」
 おどけて眼を丸くしてみせるリリスに、くすくすと私は笑って、
「望むものは何であれ赦すと、おっしゃったではありませんか。真祖は嘘をつかない筈では?」
 たった十七年、人間として生きただけの私が。
 吸血鬼としては「なり立て」の私がリリスに同情するなど、おこがましいことだろう。
 けれども一時(いっとき)にせよ、美しい主人を慰めることができるなら。
 私は、それをしたいと望んだのだ。
「あなた欲張りね。とても吸血鬼らしいわ」
 リリスも笑いながら、美奈子に視線を向けた。
「あなたはどうなの? 告白されて愛し合うようになったばかりで、彼女、もうリリスに色眼を使ってるけど」
「あたしは……」
 美奈子は隣に並ぶ私の顔を見上げた。
 そしてもう一度、輝くような笑顔を見せると、私の手に指を絡ませてきた。
 私と手を繋ぎながらリリスに向き直り、美奈子は言った。
「あたしのために、ここまでした梓が……もうあたしを裏切ることはないと信じてます」
「あなたたち、リリスを嫉妬で狂わせるつもりね」
 リリスは、くすくすとおかしそうに笑った。
「いいわ、こちらにいらっしゃい。あなたたちも愉しんでいいけど、ちゃんとリリスを満足させなさいね」
「はい……」
 美奈子と私は顔を見合わせ、くすっと笑い合うと。
 仲間だった吸血鬼ハンターたちの血で染まった衣服を脱ぎ捨て、リリスの待つソファへ向かった。
 
----------------------------------------------------------------------------------------------------
【終わり】


いかがでしたでしょうか?
芹沢軍鶏様の素敵な世界が見事に広がっておりましたですね。
芹沢軍鶏様、あらためまして投稿ありがとうございました。

それではまた。
  1. 2009/06/12(金) 21:22:40|
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真祖リリス(中篇)

芹沢軍鶏様よりの投稿作品、真祖リリスの二回目です。
いよいよ梓の行動の謎が明かされる?

お楽しみください。


【真祖リリス(中篇)】
 
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「──ぐぁはっ!?」
 断末魔のように聞こえたのは、肺に溜まった空気が口から漏れ出ただけだろう。
 私の剣は過(あやま)たず、五業の心臓を抉ったから。
 彼は何が起きたか理解する暇もなく――「仲間」である筈の私に裏切られたこともわからずに死んだ。
 私が殺した。
 五業の腰を蹴りつけて剣を引き抜き、私は返す刀でマルコを仕留めにかかった。
「……五業っ!?」
「梓っ!? 何でっ……!?」
 ジュリアと美奈子が叫ぶ。
 何で、ですって?
 美奈子……『あなたのため』よ。
 マルコが唯一の武器である十字架を私に向かってかざした。
「父と子と精霊の御名において、千野梓の内に潜みし悪魔よ、去れ!」
「無駄よ」
 ためらうことなくマルコの胸に剣を突き立てる。
「私は、まだ人間だもの」
「……ぐぶぉあっ……!?」
 マルコが血を吐き、私のブラウスとスカートにそれが撥ねかかった。
 心臓を外れて即死とはいかなかったようだ。私も詰めが甘い。
「……マルコ……、梓……、何で……?」
 視界の端でジュリアが、がくがくと震えている。
 美奈子へは視線を向ける気になれない──いまは、まだ。
 いずれにせよ剣術家の私に抗える戦闘能力は彼らにはない。
 マルコの身体から力が抜けるのを感じて、私は剣を引き抜いた。
 彼の顔は蒼ざめ、その眼は、すでに焦点が定まっていなかった。
 私が一歩、身を引くと、マルコは前のめりに倒れて、それきり動かなくなった。
「……梓……、いったい……どうして……?」
 美奈子が呼びかけてきたが、私は答えず、リリスたち吸血鬼に向き直った。
 リリスの配下の吸血鬼たちも何が起きたか理解できていないようだった。
 薄笑いをこわばらせて、こちらを見ている。
 だが、リリスだけは違った。
 彼女は事の成り行きを楽しんでいるようで、私と眼が合うと、にっこりと微笑んでさえみせた。
 私は抜き身の剣を手にしたまま吸血鬼たちに近づいた。
 薄笑いの劣化コピー吸血鬼たちに動揺が走る。
 吸血鬼ハンターの仲間割れという余興は彼らの主人を歓ばせたらしい。
 だが、それを演じた私が彼らの味方であるかどうかは、わからないのだ。
 私は人間で、彼ら吸血鬼の同類ではないから。
「道を開けてあげなさい」
 リリスが呼びかけ、臣下の吸血鬼たちは素直にそれに従った。
 私がリリスに仇なす可能性を危惧したとしても、主人の命令に抗うことは彼らの行動の選択肢にはない。
「真祖リリス――」
 私はリリスの前まで進み出ると、その場に片膝をついて剣を置き、頭(こうべ)を垂れた。
「――我が剣と血を捧げます。願わくば臣下の末席にお加え下さい」
「梓さん! 何ていうことを……!」
「梓っ……!?」
 ジュリアと美奈子が叫ぶが、私は振り返らない。
 この手で五業とマルコを殺して、後戻りできるわけがない。
「吸血鬼になることを望んだ人間は、あなたが初めてではないけど、なかなか手際は見事だったわ」
 リリスが、くすくすと笑いながら言った。
「愉しませてくれたご褒美よ。あなたが望むものを手に入れなさい。──顔を上げて」
「はい……」
 間近で仰ぎ見るリリスは、背筋がざわつくほどの美貌だった。
 幼げな裸身も、すらりと長い手足の均整がとれて妖精のように可憐であった。
 数千年にわたって彼女が啜り、その体内で入り混じったあらゆる民族の血。
 そこから優れた外見的要素ばかりが抽出されたのか。
 リリスは「ふふっ……」と微笑んだ。
「望むものを手に入れなさいと言ったわ。ええ……それが何であれ赦すわよ」
「いえ……」
 私は眼を伏せる。
 リリスは美しい。だが、私が求めるのは彼女ではない。
「そうね……リリスの臣下になっても、あなたが忠誠を誓う対象はリリスではないのでしょうね」
 くすくすと笑いながら、全てお見通しであるかのようにリリスは言った。
 そして右手の人差し指を口に含むと、濡らした指で自身の未成熟な胸に――花の蕾のような乳首に触れた。
「……んっ……はあっ……」
 心地よさげに吐息をつき、自らの乳首を指先で転がす。
 眼を伏せたままの私の視界の端に、その様子が映っている。
 それから、リリスはいったん指を離し――その指先、いや爪が鋭く尖ったかと思うと。
 己の膨らみかけの――しかし永遠にそれより成長しない筈の――乳房に、爪を突き立てた。
「……んくぅっ……!」
 リリスは呻く。人間を嬲り殺して愉しむ彼女も痛覚と無縁ではないらしい。
 鮮やかなほど赤い血が傷口から溢れ、爪を濡らす。
「……んはぁっ!」
 リリスは爪を引き抜いた。そして血にまみれたその指を、私に突き出した。
「リリスの血をあなたに与える。その前に、リリスがあなたの血を吸う」
「はい……」
 私は再び眼を上げて、リリスの顔を見る。
 リリスは、にっこりとして、
「吸い尽くされて干からびる前に、この指を吸いなさい」
「……はい」
 私が頷くと、リリスはソファを降りて床に膝をつき、私の頬に左手で触れ、髪をかき上げた。
 そして首筋に顔を近づけて来る。
 吹きかかる吐息が、こそばゆい。幼い裸身が放つ、甘い体臭が鼻をくすぐる。
「やっ……やめてっ、梓っ!」
 美奈子が叫び、びくりと私は身を固くした。
 リリスが「ふふっ……」と笑い、私に囁きかける。
「どうする? やめる?」
「いえ……」
 私は首を振る。
「させないっ!」
 叫んだ美奈子を、しかしリリス配下の吸血鬼たちが阻んだようだ。
「フフフ……儀式ノ邪魔ハサセナイワ……」
「オマエタチモ全能ナル真祖りりす様ニ従ウノヨ……ウフフフフ……」
「どきなさいっ! どいてっ!」
「美奈子さん待って! わたしも戦います!」
 ジュリアも叫び、ともに戦うようだが、多勢に無勢。
 出来損ないの劣化吸血鬼でも八匹いれば、美奈子とジュリアの二人きりでは手に余るだろう。
 私は彼らに背を向けたまま、リリスの接吻を待った。
 そして――
 
 ――――――――!
 
 リリスの牙が、私の首に突き立った。
 鋭い痛みと、深い谷底へ一気に落ちていくように全身が粟立つ感覚。
 眼の前が真っ暗になり、何も見えない。
 だが、リリスの指が唇に触れるのを感じ、私は無我夢中でそれを口に含んだ。
 
 ――――――――!!
 
 痺れが走った。
 いや、生半可な形容では効かない感覚だった。
 これが性的な絶頂であるとしたら、私はいままで本当の絶頂を味わっていなかったことになる。
(自慰行為でしか経験していないことではあるが。)
 しかし、そんな生易しいものでないことを消し飛びかけた私の理性が訴えていた。
「……あはははは、あははは、あはっ……!」
 笑いがこみ上げて、私はリリスのいや御主人様の指を口から離してのけぞった。
 御主人様の牙は、すでに私の首筋から離れている。
「あははははっ、あはははっ、あはははははっ……!!」
 素晴らしい!
 素晴らしいわ!
 これが吸血鬼! これが全能なる真祖リリス様の血!
 身体中に吸血鬼の力が漲(みなぎ)るわ!
 何もかもを可能にする真祖の力が!
 なぜ私は人間であることに囚われていたのかしら!
 真祖の全能を知りながらリリス様の元に馳せ参じなかったのかしら!
 浅ましくも退魔剣士を気取ってリリス様に弓を引いたのかしら!
「あはははははは……! あはは……! あははははは……!!」
 素晴らしいわ! これが!
 吸血鬼! これが!
 これが…………!
「…………ぐっ、ぐぅぅぅぅぅっ…………!」
 私は溢れる感情を必死で抑え込んだ。
 両手で頭を抱え、背を丸め、歯を食いしばって激情に打ち克とうとした。
 何のために五業とマルコをこの手で殺したのだ。
 何のために美奈子の眼の前で、彼女が赦すはずもない裏切りを演じたのだ。
 全ては、私が。
 ほかの誰でもない、リリスの劣化コピーなどではない、この私が。
 私の欲するものを手に入れるためではないか!
「……くぅっ、くぅぅぅぅ……!!」
 ぶるぶると身体が震える。抑え込まれて行き場を失った力が、そうさせる。
 指が頭に食い込みそうだ。胸に引きつけた膝で肋骨が砕けそうだ。
 ――だが。
「……ははっ、ははは、はは……!」
 不意に、頭が冴え渡るように感じだ。
 激情も葛藤も苦痛も消えた。
 私は私だった。
 母を知らず、父を父と呼べず師としてのみ仰ぎ、幼い日から剣と神事の修行に明け暮れた私ではなく。
 自分を律するといえば聞こえはいいが、人並みの情緒を歪め、撓(たわ)め続けた偽りの私ではなく。
 欲しいものを手に入れる。
 当たり前のことを当たり前のようにできる、本当の私だ。
 私は顔を上げ、リリスを見た。
 リリスは紅のように唇を染めた血を――私の血を――手の甲で拭いながら、微笑んだ。
「リリスの血は強すぎて、みんなを狂わせてしまうのよ。さて、あなたはどうかしら?」
「私は、私です。狂っているとすれば初めからです」
 答えて言った私は、微笑みを返す。
 本当の私は当たり前のように笑えるのだ。リリスのように。
 美奈子のように。
 リリスは、にっこりとした。
「あなた、笑うと綺麗ね」
「……ありがとうございます」
 私は、くすくすと笑ってしまう。
 笑うことは本当に気持ちがいい。それができなかった私は――人間だったときの私は、本当の私ではない。
「さあ、欲しいものを手に入れてらっしゃい」
「……はい」
 ソファに戻ったリリスに促され、にっこりと笑った私は再び剣をとって立ち上がった――
 
----------------------------------------------------------------------------------------------------
【続く】
  1. 2009/06/11(木) 21:18:32|
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真祖リリス(前編)

いつも私がお世話になっております、当ブログのリンク先であります、「芹沢軍鶏もしくは【】の人の敗北宣言」の芹沢軍鶏様より、投稿作品をいただきました。

ちょっと長めの作品でしたので、今日、明日、明後日の三日間に分けて掲載させていただきます。
芹沢軍鶏様の妖しい世界をどうぞお楽しみくださいませ。


【真祖リリス(前篇)】
 
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 夢スタジアムTOKYO2016──
 東京都の財政破綻による五輪開催返上に伴い、完成目前で放棄されたメインスタジアム予定施設。
 真祖たる吸血鬼リリスの「王宮」が、そこにあった。
 ついに、ここまで来た……
 地下四階、非常用自家発電機室。
 その入口の扉を前にして、私の胸に熱いものがこみ上げた。
 灰色に塗られた金属製の扉の奥に、真祖リリスの玉座があるのだ。
 ここまで一緒に闘ってきた吸血鬼ハンターの「仲間」たちを見やる。
 寡黙な密教僧でリーダー格の五業(ごぎよう)。
(巡礼装束に仕込杖を携え、ヘッドライト付きのヘルメットをかぶった姿はシュールだけど。)
 カトリックに属する皮肉屋の青年司祭、マルコ(洗礼名で、生粋の日本人だ)。
 同じくカトリックの生真面目なシスター、ジュリア(年齢は二十歳、彼女も日本人)。
 在日英国教会主教の娘で天性の悪魔祓い(エクソシスト)、美奈子・ホルムウッド。
 名前から察せられる通り日英ハーフの彼女は、私と同じ高校に通う大切な「友人」でもある。
 そして私――、千野(ちの)流剣術宗家二十一代にして式内小社千野神社宮司家継承者、千野梓(あずさ)。
 神職の位階の取得前なので立場は巫女だが、剣術家としての技量を認められてこの場にいる。
 着ているものは美奈子と一緒で高校の制服だけど。
 この格好で日本刀を携えているのは漫画みたいだ(かといって巫女装束は余計に似合わない)。
 ちなみに、五業以外はキャンプ用のLEDランタンを手にしている。
 戦闘中は足元に置けば周囲を照らしてくれるので、ありがたい。
「──いよいよ、だな」
 五業が口を開いた。
「これで、最後だ」
「そうですね、どちらに転んでも」
 マルコが眼鏡をかけた端正な顔に、いつもながらの皮肉めいた微苦笑を浮かべる。
「向こうに逃げ道はない、こちらも逃げるつもりはない。これが最終決戦です」
「わたしたちがリリスを退けなければ、吸血鬼の犠牲者が出続けることになります」
 ジュリアが力を込めて言った。
「必ず……勝ちます!」
 吸血鬼リリス。
 神話の時代から存在し続けるといわれる彼女は気まぐれな暴君だ。
 その毒牙にかかった人間は吸血鬼に変じ、妻は夫の、娘は父の、母は我が息子の血と生命を吸い尽くす。
 哀れな犠牲者にリリスが慈悲深くも赦しを与えるまで、たっぷりと時間をかけて。
 愛する者に裏切られ、絶望と苦痛のうちに死んでいく犠牲者たちをリリスは眺め、愉しむのである。
「さあっ、気合の入ったところで行きましょうかっ♪」
 軽いノリの口調で皆に呼びかけたのは美奈子だった。
 くりくりとした眼に悪戯っぽい光をたたえた彼女は、ハンター仲間のムードメーカーだ。
 ところどころに金色が筋のように混じった栗色のショートの髪。
 身長一五五センチとやや小柄だが均整のとれた身体つきで、制服のブラウスの胸は誇らしげに膨らむ。
 ぎりぎりまで丈を詰めたスカートからは形のいい素脚がチアリーダーのように伸びている。
 実際のところ学校ではチアリーダー部に所属しているが、いつも笑顔を絶やさない彼女にはぴったりだろう。
「……ええ」
 我ながら、もう少し気の利いたリアクションができないのかと思うが、私はそう頷いただけだった。
 私は女としては美奈子と対照的だ。
 一七九センチと高すぎる背丈。子供の頃から巫女を務めるために伸ばし続けた髪は腰に届く長さ。
 顔立ちは私を生んですぐ亡くなった母に似ているといわれる。
 けれどもアルバムに残された写真で見る限り、母は私などが及びもつかない美人だ。
 どの写真を見ても笑顔の母は、むしろ美奈子に似ている。
 剣術家として、宮司家継承者として自分を律することを求められて育った私は、母のようには笑えない。
 五業が扉の把手に手をかけた。
「……行くぞ」
 その言葉に皆は頷き返し、マルコとジュリア、美奈子と私がそれぞれ戸口の左右に分かれて身を隠す。
 不意打ちはリリスの趣味ではないというが、臣下の吸血鬼がそれをするのを止めることもしないだろう。
 五業自身は扉を盾にできる。
 吸血鬼は人間を凌駕する身体能力を備えた化け物だが、金属の扉を突き破れるほど非常識な怪力ではない。
 ――がちゃり。
 五業が把手を回し、扉を少し引き開けたが――室内から光が漏れてきて、怪訝に眉をしかめて手を止めた。
 明かりがあるのだ。
 暗闇の中でも自在に活動できる吸血鬼には必要ない筈だが。
 罠だろうか。せっかくランタンの僅かな光の中での戦いに慣れたところなのに。
 私たちの眼が室内の明るさに馴染んだところで、不意に周囲を暗闇に戻す目論見か。
 リリスは不意打ちを好まないとはいうが、それは「より長く狩りを愉しみたい」という悪趣味な理由からだ。
 人間を動揺させて精神的に追い詰めることは、むしろリリスは大の得意である。
 ここに来る途中で私たちは、「なり立て」の吸血鬼を何匹も始末するはめになった。
 人間としての自我を失いきっていない彼らは、リリスに襲われた恐怖さえ拭いきれていなかった。
 涙を流し、怯えて震えながら、しかし血への渇望を抑えきれず、私たちに襲いかかってきた。
 私たちにできたのは、すみやかに彼らをリリスの軛(くびき)から解放すること――
 すなわち「真の死」を与えることだけだった。
「……どうぞ、入っていらして。いまさら遠慮なさることないでしょう?」
 室内から少女の声が呼びかけてきた――リリスだろうか?
 扉の外で、私たちは頷き合った。
 五業が大きく扉を開き、彼を先頭に私たちは自家発電機室に入った。
 そこは床も壁もコンクリートの打ち放しの無機質な空間だった。
 広さと天井の高さは学校の体育館ほど。もちろん地下深くであるから窓はない。
 室内の中央にはマイクロバスほどの大きさの機械が二台、据え置いてある。
 ガスタービン発電機だろう。ここに来る前のブリーフィングで説明を受けた。
 燃料は軽油を使用するそうだが、それが運び込まれる前に、この施設は放棄された。
 だが驚くべきことに、発電機は「生きて」いた。
 ガスタービン特有の――ジェット旅客機のエンジンを想像すればいいらしい――甲高い駆動音は、ない。
 しかし確実に、発電機は「脈動」していた。
 ぶるるん、ぶるるんと、かすかな音を立てて震えながら。
 リリスの魔力によるのだろう。
 その源泉は、何千年もの間、彼女が奪い取ってきた人間たちの生命――
「あなたがたのために明かりを用意しておいたのよ。せっかく、ここに発電機があるのですもの」
 疑問に答えるように言ったリリスは、発電機の前にいた。
 そこに置かれた真紅の革張りのソファの上に、しどけなく横座りして。
 見た目には十二、三歳の少女のようだ。
 おかっぱにした黒い髪とのコントラストが眩しい、色白の幼い裸身を晒している。
 ソファの周りの床の上には七、八人の女が、やはり全裸で侍っていた。年齢は十代から三十代。
 こちらを気にせず抱き合っていたり口づけを交わしているのは、ソドムさながらの肉欲の宴の最中か。
 ジュリアが素早く十字を切るのを見て、リリスは、くすくすと笑った。
「罪深いリリスたちのために祈ってくださるなんて、優しいシスター様」
「己(おのれ)の罪を理解しているのなら、なぜ悔い改めないのです!」
 ぴしゃりとジュリアが言い返すと、リリスはおどけるように肩をすくめて、
「皮肉で言ってあげたのに。カナンの最古の支配者であるリリスが、ヘブライ人の律法に従う謂れはないのよ」
「無駄とわかっていても、ついお説教したくなるんですよ」
 いつもの皮肉めかした調子でマルコが言った。
「彼女も僕も、職業柄……ね」
「こういうのはどうかしら」
 リリスは私たちを見渡すように視線を動かしながら言った。
 マルコや五業より、ジュリアと美奈子に眼を向けている時間が長く感じられたのは気のせいではないだろう。
 リリスは人間の男を食欲を満たすためのエサ、あるいは嗜虐欲を満たすための玩具としか見なさない。
 だが、眼鏡にかなった女は吸血鬼に変え、臣下として側近くに侍らせる。
 ジュリアと美奈子は美貌の主だ。
 いまソファの周りにいる女たちを見ても、リリスの審美眼の確かさはわかる。
「この国を出て行くから、追いかけては来ないで。お互い、これ以上は傷つかずに済むわ」
 最後に私を見たとき、リリスは、くすっ……と、笑いかけてきた。
 背筋に冷たいものが走り、私は剣をつかむ手に、ぐっと力を込めた。自分を奮い立たせるように。
 ここまで来て後戻りなどできはしない。
「話にならんな」
 五業が、きっぱりと撥ねつけるように言った。
「その髪の色、顔かたち……この国の人間と似た姿になるまで、いったいどれだけ血を吸った?」
 リリスは日本に現れる以前はロシアにいたことが知られているが、当時の彼女は金髪碧眼であったという。
 行く先々の土地で地元民の血を吸い続けることで、彼らと似た身体的特徴にリリスは変化するという。
「戯れに嬲り殺した人間の数はそれ以上だろう。ここで、その報いを受けてもらう」
「交渉決裂ね」
 リリスは、くすくすとおかしそうに笑った。
「でも、機会は与えてあげたのよ。そのことは覚えておいてね……自分たちの愚かさを呪うために」
 すっ――と、リリスの周りに侍る女たちが立ち上がり、主人を守るように横一列に並んだ。
 皆、同じように薄笑いを浮かべながら。
 リリスによって吸血鬼に変えられた者は、主人の残忍な性格をコピーされるという。
 それにしてはリリスと比べて薄っぺらな笑いに見えるのは、劣化コピーというところか。
「リリスの忠実な臣下たち――でも、元はあなたがたと同じ人間よ。まずは彼女たちを滅ぼして御覧なさい」
 リリスは言って、にっこりとした。
「ここに来るまで何匹も始末したでしょうから、いまさら、ためらうこともないでしょう?」
「卑怯者! あなたは、どこまで卑怯なのです! ヒトを盾にしないで自分で戦いなさい!」
 ジュリアがそう叫んだのは、しかしリリスを面白がらせただけだった。
「リリスは卑怯よ。だから何千年も存在し続けて来られたの。多くの人間や仲間の吸血鬼を犠牲にして、ね」
「……ねえ、リリス」
 美奈子が口を開き、私は少しばかり驚いた。
 彼女の口調がリリスへの怒りや憎悪が籠もるものではなかったからだ。
 だが、それが感情を抑えたものだということは、美奈子の顔を見て理解できた。
 いつもの笑顔が消えていた。
「あなたは嘘はつかないと聞いたわ」
 そう言った美奈子に、リリスは微笑みながら小首をかしげた。
「……ええ、嘘で人間を騙すのは簡単すぎてつまらないもの。それがどうかして?」
「だったら訊くけど、吸血鬼になったヒトを元の人間に戻す方法はあるの?」
「その質問をしたのは、あなたが初めてではないわ。リリスの答えは、いつも同じだけど」
 リリスは言って、にっこりとした。
「死んだ人間は生き返らない。吸血鬼になるということは、人間としては死んだのと同じことよ」
「あっさり答えてもらえると思わなかった」
 美奈子は眼を丸くして、肩をすくめた。
 それから、自分を鼓舞するためだろう、あえて笑顔を見せて言う。
「でも……だったら、そのヒトたちを解放するのに何もためらう必要ないよねっ♪」
 その言葉が合図になった。
 五業が仕込杖を抜き放ち、私も剣を抜いた。
 マルコとジュリア、そして美奈子は十字架を構える。
 吸血鬼との戦いでは五業と私が前衛を務めるのが常だ。
 そこで五業はいつも通り、前へ進み出たのだが──
 私は一歩、踏み出しを遅らせると。
 五業の、無防備な背中へ。
 剣を……突き立てた!
 
----------------------------------------------------------------------------------------------------
【続く】
  1. 2009/06/10(水) 21:01:38|
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ディープ・パープル

このたび、私がいつもお世話になっております闇月様より、新作SSを投稿していただきました。

タイトルは「ディープ・パープル」
楽しい作品でございますので、ぜひ皆様もお楽しみいただければと思います。

それではどうぞ。


【ディープ・パープル】

数本の蝋燭のみが灯された部屋に、下着姿のショートカットの少女が捕らえられていた。
少女の両手首と両足首は黒いロープのようなもので縛られ、その先は彼女の両側にある太い石柱にくくりつけられている。

カツーン、カツーンと部屋に響く靴音。
どこからともなく現れ、少女へと近づいてきたのは一人の若い女性だった。
色白の肌、腰の辺りまでまっすぐ伸びた紫の髪。
両肩から先を露出させた、深紫色のマーメードラインのロングドレスが女性の美しさを引き立たせている。

「お目覚めのようね…」

「あなたは誰? どうしてこんなことをするのよ?」
少女は女性をキッと睨み叫んだ。

「うふふ…元気なお嬢ちゃんだこと」
「ちょっと、私を子ども扱いしないでよ! これでもいちおう24なんだから!」
「ちょっとからかっただけよ。貴女が何者なのかはよーくわかっているんだから…対『カラーズ』特殊部隊後方支援員、藤野(ふじの)ゆかりさん」

「え、ちょ、何を言っているの? 私はそんなんじゃ…」
女性の言葉に、ゆかりは動揺を隠せない。

「隠さなくてもいいのよ。私は『カラーズ』最高幹部の一人、ミス・パープル。貴女のことも、貴女のお姉さんのことも調査済みなんだから」
ミス・パープルと名乗った女性は妖艶な笑みを浮かべ、驚愕の表情のまま固まるゆかりを見つめていた。

  *****

半年前、異空間から突然現れた謎の集団。
ブラック総帥率いる彼らは『カラーズ』と名乗り、全世界に宣戦布告し侵略の手を広げ始めた。
そんな『カラーズ』に対し、政府は水面下で特殊部隊を組織し、最新鋭の装備を投入した。
最前線で戦う戦闘要員は『ペインター』と呼ばれる3人の男女。
特殊スーツに身を包み、3人は『カラーズ』から送られてくる異形の怪人達を撃破していた。

藤野ゆかりの姉、あおいは『ペインター』唯一の女性、コードネーム「ペインター2」として日々戦っていた。
そんな姉を少しでも助けたいと思い、ゆかりは後方支援員に志願したのだ。
見た目は中学生か高校生くらいにしか見えない幼い風貌のゆかりだが、彼女は大学の情報工学科を首席で卒業し、部隊では戦略分析を担当している。

そして、ゆかりは休日にひとりで街へ出かけようとしたところを全身黒タイツの集団に襲われ、意識を取り戻した時には囚われの身となっていたのだった。

  *****

「うふふ、くるくる表情を変えるところがまたかわいいわね…」
ミス・パープルはそう言うと、小声で何か呟きながら右手を高く上げた。

すると、彼女の周囲から紫色の煙が噴き出し、瞬く間に部屋全体に広がっていく。

「な、何をするの? 私を毒ガスで殺すつもり!?」
「貴女を殺すためにここに連れてきたわけじゃないわ…それに、この『紫の煙』は毒ガスじゃないから安心しなさいな」
「じゃあ、なんなのよこの煙は!?」

ゆかりはロープで縛られた両手足をじたばたと動かし、なんとかして煙から逃れようともがく。
ミス・パープルはそんなゆかりの目の前まで近づくと、グイとゆかりの顎を掴み、彼女の眼をじっと見つめた。

「おとなしくしなさい」
ミス・パープルの瞳が淡い紫色に輝き、ゆかりの瞳を射抜く。

(あ…)
アメジストの光を見たゆかりの瞳は曇り、ボーっとした表情に変わった。

「そう、それでいいのよ」
ミス・パープルはそう言うと一歩後方に下がり、右手をゆかりの方にかざす。
すると、ミス・パープルの白い肌に絡み付いていた紫の煙が、ゆかりに向かって一直線に流れていき、下着姿のゆかりの身体にまとわりついた。

(なんなの、この煙…嫌なのに…身体が言うことをきかない…)
身体を嘗め回す紫の煙に、ミス・パープルの瞳術により身体の自由を奪われ、虚ろな瞳のゆかりはもはや抵抗することができなかった。


(さて、外だけでなく、内にも流し込んだ方が『効果』が早いわね)
再びゆかりの目の前に立ったミス・パープルは無抵抗のゆかりの唇に、自分の唇を重ねる。
舌で口をこじ開け、ゆかりの舌と自分の舌を絡ませ、唾液と一緒に『何か』をゆかりの喉の奥へ送り込んだ。

「ぁ…はぁ、はぁ…はぅん」
ゆかりの口から艶やかな喘ぎ声が漏れてくると、ゆかりの身体にまとわりついていた紫の煙が露出した肌に染み込んでいく。

(な、なんなのこれぇ…気持ちいい、気持ちいいよぉ)
ゆかりの心と身体は絶え間なく与えられる快感にされるがままになっていた。

それから数分後。

「ケムリ…紫のケムリぃ、気持ちいいよぉ…吸いたい…もっとちょうだぁい…」
最初は嫌悪していた紫の煙が自分に更なる快楽を与えてくれることに気づいたゆかりは、身体をくねらせて紫の煙を求める。

「うふふ…お望みとあらばいくらでもあげるわ。そのかわり…」
ミス・パープルがゆかりの耳元で優しく、そして妖しく囁く。

ミス・パープルの囁きに、ゆかりはニッコリ微笑んだ。

「はぁい、わかりましたぁ…ゆかりを好きなようにしちゃってくださぁい。ミス・パープルさまぁ」

ゆかりがそう言うと、ミス・パープルから今までのものよりさらに濃厚な紫の煙が発せられる。
煙は恍惚の表情を浮かべたゆかりの両耳の穴に入り込み、彼女の中に消えていく。

(あぁ…アタマの中にもキモチイイのがきたぁ…さいこぉ…)

「も、もうだめぇ…あぁぁぁぁぁぁぁ!」

快楽の絶頂に上り詰めたゆかりは叫び声をあげ、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。
そして、ゆかりの身体から濃い紫色の煙が噴き出すと、気絶した彼女の全身を包みこんでいった。


(そろそろかしら…)
紫のロングドレスを纏った『魔女』、ミス・パープルは目の前に作られた深紫色の繭を見つめ、両腕を広げる。

「さぁ、目覚めなさい」

すると、繭にピシリとひびが入り、やがて真っ二つに割れると、中から小柄な女性が姿を現す。
肩まで伸びた薄紫の髪、色白の肌に、髪の色と同じ薄紫のショートドレスを纏っている。
女性は幼さの残る顔に似合わぬ妖艶な笑みを浮かべ、ミス・パープルの前までくるとその場に跪き、頭をたれた。

「今の気分はいかがかしら、ゆかり?」
「全身に快感が広がっていて、最高の気分です。ミス・パープル様」

ミス・パープルに『ゆかり』と呼ばれた女性は嬉しそうに彼女を見つめた。

「今の貴女は『藤野ゆかり』ではなく、『パープル・シャドウ』…私の『影』、私の『分身』」
「…私は『パープル・シャドウ』…ミス・パープル様の『影』…」

ゆかり―パープル・シャドウはミス・パープルの言葉を復唱し、自分自身に言い聞かせる。

「私に『様』はいらないわよ。貴女は私なのだから…」
「失礼しました、ミス・パープル」
「それと、貴女は『カラーズ』のシモベだけど、私の命令だけに従いなさい。私の命令が『カラーズ』からの命令よ、わかったわね?」
「はい、わかりました。私はミス・パープルの命令を『カラーズ』からの命令とし、その命令のみに従います」

パープル・シャドウはミス・パープルの言葉を疑うこともしなかった。
今の彼女にとってはミス・パープルが絶対の存在とされていたからだ。

「じゃあ、最初の命令よ、パープル・シャドウ。『藤野ゆかり』の姿に戻って、今までどおりの生活を続けなさい。そして、私に『ペインター』の情報を流すのよ」

パープル・シャドウはミス・パープルの命令に笑顔で答えると、目を閉じて小声で何か呟く。
すると、パープル・シャドウの身体は薄紫色の風に包まれ、一瞬のうちに藤野ゆかりの姿に変身した。

「では、行って参ります…早く元の姿に戻って、貴女とともに世界を支配したいですわ」
『ゆかり』はそう言うと、ミス・パープルと甘い口付けを交わし、部屋から姿を消した。


「うふふ…素敵な『人形』が手に入ったわ。ザコ戦闘員とヘボ怪人を生み出すことしか脳がないドクトル・グレイより、私のほうが優れているということを総帥に見せてさしあげますわ」

ミス・パープルはそう言うと、ヒールの音を高く鳴らし、部屋から姿を消したのだった。



いかがでしたでしょう?
闇月様、ありがとうございました。
またよろしくお願いいたします。
  1. 2009/06/05(金) 21:32:13|
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「双闇の邂逅」END部分差し替えました

2009年4月8日と4月9日の二日間にわたって掲載させていただきました、闇月様よりいただきました投稿作品「双闇の邂逅」ですが、このたび闇月様のご希望によりましてEND部分を差し替えさせていただきました。

差し替え前のバージョンは残さずに差し替えさせていただきましたので、再度新たに掲載という形はとりませんが、ぜひぜひもう一度ご覧になっていただければと思います。

初回はこちら 「双闇の邂逅(1)」 (クリックでページに跳びます)

差し替えられたENDの二回目はこちら 「双闇の邂逅(2)

闇月様ご自身が前回のENDに若干の不満をお持ちだったとのことでして、今回差し替えて欲しいとのご依頼がございましたので差し替えさせていただきました。
闇月様、どうもありがとうございました。
  1. 2009/05/11(月) 21:07:59|
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双闇の邂逅(2)

昨日に引き続き、闇月様のSS「双闇の邂逅」の後編をお送りいたします。

それではどうぞ。


「響子様、只今戻りました」

アジトに戻ってきたコックローチレディの顔色は優れなかった。
初めての任務失敗が相当ショックだったようだ。

「ご苦労様、コックローチレディ」
部下の失敗を気にすることなく、響子は笑顔を見せた。

「響子様、申し訳ありません」
「気にすることはないわ。あとはマンティスウーマンがうまくやってくれるでしょうから。それにしても…」

響子は少し困ったような表情で言葉を続ける。

「…私の作った装置で破れないセキュリティがあるなんて驚きだわ。装置に改良を加えないといけないわね」

響子の言葉をコックローチレディはその場から動くことなく黙って聞いている。

「コックローチレディ、下がっていいわよ」
響子がコックローチレディに声をかける。
しかし、彼女はその場から動こうとしない。

「コックローチレディ、聞こえなかったの? 下がっていいって言ってるのよ!」

若干苛立ちのこもった響子の声に、コックローチレディがくすくす笑い始めた。

「コックローチレディ、何がおかしいの?」
「くすくす…響子様、お気づきになられないんですか?」

コックローチレディの言葉に、違和感を感じ始める響子。

「…あなた、コックローチレディじゃないわね。何者なの?」
「あら、さすが犯罪教授様。勘は鋭いみたいですね…」

そう言ったコックローチレディの姿がぼやけ、姿形が変化していく。
現れたのは襟元からつま先まで黄色のレオタードに覆われ、首に黒いスカーフを巻き、虹色のアイマスクをつけた女性だった。

「あたしは『ポワゾン・レディース』のカメレオン・レディ…最近話題の犯罪教授様にお会いできて光栄ですわ」
「『ポワゾン・レディース』…名前は聞いたことがあるわ。私たちと同じく、社会の裏で暗躍する者たちね」

「犯罪教授に私たちのことが知られてるなんて、嬉しい限りですわ」
“カメレオン・レディ”と名乗ったアイマスクの女性はにっこり微笑んだ。

「見事な変装…いえ、“変身”と言ったほうが正しいかしらね、カメレオン・レディさん」
いつもの冷静さを取り戻した響子がカメレオン・レディと対峙する。

「あたしは一度見た相手なら誰にだって“変身”できるの。汗とか唾液といったものを得れば遺伝子単位まで全て同じになれるのよ。すごいでしょ?」
上機嫌で自分の持つ能力を説明するカメレオン・レディ。

「それは素晴らしい能力ね。ぜひとも私の手駒に加えたいわ」
「せっかくのお申し出ですけど、お断りよ。あたしが従う相手はあたしが決めるから」
響子の申し出を即行で断るカメレオン・レディ。

「あなたの意思なんて関係ないの。どうせ私の手で変えられるんだから」

響子の言葉に危機感を感じたカメレオン・レディは、カメレオンのごとく姿を消して逃げようとした。
そんなカメレオンレディの身体に後方からワイヤー巻きつき、彼女の動きを封じた。

「ありがとう、ミス・スパイダー。いつもながら素晴らしいワイヤー捌きね」
「ありがとうございます響子様」

カメレオン・レディに絡みついたワイヤーの先を持っていたのは、胸のところに蜘蛛のマークが白く入った黒のレオタードに、顔には蜘蛛の模様をあしらったマスクをつけ、口元だけを覗かせた女性。
ミス・スパイダーと呼ばれる犯罪教授の部下だった。

「そのまま彼女を抑えていなさい。すぐに終わらせるから」
そう言ってカメレオン・レディに近づく響子。

「な、何をするつもりなの?」
カメレオン・レディは恐怖からか、身体を小刻みに震わせている。

「あなたの思考をちょっといじらせてもらうわ。あなたの場合忠誠の対象をちょっと変えるだけだから簡単に済むわ」
響子の言葉に、カメレオン・レディはギョッとした表情を浮かべ、ミス・スパイダーの拘束から必死に逃れようとする。

響子の手が自分の額にかざされたのを最後に、カメレオン・レディの意識は一旦途切れた。


「あなたはここに何をしに来たの、カメレオン・レディ?」
「これを渡すように頼まれてきたんです、響子様」

カメレオン・レディはそう言って一通の手紙を響子に差し出した。

(あら、どうやらターゲット直々の招待状みたいね。面白そうだわ…)
手紙の内容をさっと読んだ響子はにっこり微笑んだ。

「あの…響子様、あたしはどうすればいいでしょうか? ご命令を」
「そうね…あなたの古巣に戻っていいわよ。『ポワゾン・レディース』にあなたの変貌ぶりをみせつけてらっしゃい」
「はいっ! ありがとうございます、響子様」

響子の前に跪くカメレオン・レディに、響子は笑顔でそう命じる。
響子の命令に嬉々とした表情を見せ、カメレオン・レディは部屋を出て行った。


こうして、『ポワゾン・レディース』のアジトに戻ったカメレオン・レディだったが、リーダーであるサイキック・レディの能力によってあっさり思考を戻されてしまった。
そして、サイキック・レディともう一人の仲間であるメディスン・レディにこっぴどく叱られたのは言うまでもない。



「こんな素敵なお嬢さんをお待たせするとは…申し訳ありません」

右隣から聞こえた声に、少女―案西響子は回想をやめ、再び眼を開ける。

響子の横に座っていたのは、『ノワール・コーポレション』社長、黒田 圭(くろだ けい)。
彼女は黒田に呼ばれ、『ノワール』にやって来たのだった。

「“私の部下”が“あなたの部下”にお世話になったようね」
響子はそう言って、グラスに残っていた『クライム・プロフェッサー』を飲み干す。

「“私の手駒”も貴女方にお世話になったようで…そのカクテル、気に入っていただけましたか?」
「えぇ、とても素敵なカクテルでしたわ…味もネーミングも」
響子の答えを聞いた黒田がにこやかに微笑む。

「今回、私達は依頼を果たせなかった。こんなことは初めてだわ。完全な敗北ね」
「いえ、それは違いますよ。しいて言えば、引き分けといったところでしょう」
黒田の言葉に、響子は驚きの表情を浮かべる。

「『ノワール・コーポレーション』が『ポワゾン・レディース』とつながっていることを知られてしまった。『ノワール・コーポレーション』が普通の企業ではないということに気づかれては困るのです…『ノワール・コーポレーション』という“隠れ蓑”を使っている我々には。だから“引き分け”なんですよ」

話を続ける黒田の表情は真剣だった。
嘘を言っているとは思えない、と響子は思った。

「あなたは…何者なの?」

響子は震えた声で黒田に問う。
黒田は響子の眼を見つめ、にっこり笑って答えた。

「貴女のような素敵なお嬢さんをお待たせしたお詫びに教えましょう。私の“もう一つの顔”はキング・ノワール。『ノワール・キングダム』の王です」
「『ノワール・キングダム』ですって?」
「我々は『ノワール・コーポレーション』の陰で、密かに世界を闇に染めようと画策している。犯罪教授、貴女と貴女の部下は特殊な能力や人並み外れた身体能力をお持ちかもしれないが、我々と『ポワゾン・レディース』は“ヒトならざる者”と言ったほうが正しいかもしれないね」

『ノワール・キングダム』、“ヒトならざる者”。
信じられない言葉の連続に、響子は黒田の話をただ聞いていることしかできなかった。
気がつくと、身体がかすかに震えている。
黒田から感じられる“恐怖の闇”に彼女の脳が危険信号を発しているからだった。

「大丈夫。我々はこれ以上貴女方には何もしない。今後、貴女方が我々に何もしなければ、ね…」

黒田は震える響子の両肩にそっと手を置き、響子の耳元でそう囁くと、漆黒の瞳で響子をじっと見つめる。

(なんて、きれいな瞳なんだろう…まるで、漆黒の闇のよう)
響子の中で“恐怖の闇”が“憧憬の闇”へと変化していく。
黒田の漆黒の瞳に吸い込まれそうになり、響子は黒田に肩をつかまれて立っているのがやっとの状態になっていた。

「…今回、君達に依頼してきた者がどこの誰か、教えてくれないかい?」
黒田は響子に優しい声で問う。

(…悪いけど、あなたの思い通りにはいかないわよ)
響子は声に抗い、唇をかみしめる。

黒田は更に2回、同じ問いを繰り返したが、響子に答える意思が全くないことを悟ると、残念そうな表情を浮かべた。

「私の“闇”に屈しないとは…君のような女性は初めてだよ」
「私を誰だと思っているの? 『犯罪教授』を甘く見ないで」

呼吸が荒く、今にも倒れそうな響子だったが、彼女の発する言葉には強い意志がこもっていた。

「君の“闇”は脅威だね…今後、我々と君達が二度と関わりあいにならないことを祈っているよ」
黒田のその言葉を最後に、響子は意識を失い、その場に崩れ落ちた。


気がつくと、響子は見覚えのある公園のベンチに座っていた。
『ノワール』の場所も、自分がどうやってここまで来たのかも思い出せなかった。

『ノワール』での出来事は夢だったのだろうか?
でも、口の中に残る自分の“もう一つの顔”と同じ名前のカクテルの味と、両肩に残る黒田の手の感触が、夢ではないと響子に教えてくれた。

(…『ポワゾン・レディース』に『ノワール・キングダム』か)
響子は心の中でそっと呟くと、かわいい部下達が待っているであろう“我が家”に向かったのだった。


数日後、響子は新聞で今回の件の依頼者の死を知らせる小さな記事を見つけた。

「…結局、消されたのね」

響子はそう呟いて新聞をたたむと、制服に着替え、家を出た。


END


いかがでしたでしょうか。
闇月様、楽しいSSを投稿していただきありがとうございました。
もうすぐサイトの閉鎖と言うことですが、ご事情もあってやむをえないこととはいえ寂しく感じます。
またいつでも当ブログに遊びに来てくださいませ。
投稿も大歓迎です。

それではまた。

(2009年5月11日、闇月様よりのご依頼にてEND部分差し替えさせていただきました)
  1. 2009/04/09(木) 21:26:49|
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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